32 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:43:05.52 ID:OZUgbC4+O
〜track-α〜

━━人間が「過去形」になる瞬間はこれまで幾度と無く見てきた。

(;'A`)「な、な……」

それでも、今この瞬間は、間違いなく今年の「ドクオズ・サプライズ・オブ・ザ・イヤー」で金賞を狙える程に、衝撃的だった。

<ヽ●∀●>「さぁ、話を戻そうか」

宵闇が迫るオレの事務所のソファに、お着きの舎弟達を五人もはべらせ、我が物顔でふんぞり返ったその男は大陸出の顔付き。
黒のスーツに茶色のトレンチコートの前をはだけて羽織った丸サングラスをかけた出で立ちは、大昔のホロムービーから出て来たよう。

彼は、両手に一丁ずつ握ったベレッタM76を後腰のホルスターにしまうと、世間話でも始めるようにこちらを振り返った。

(;'A`)「どういうこった……」

彼の背後で、長ドスを振りかぶったヤクザ風の男が崩れるように後ろへ倒れ込む。
額には、金玉のように二つ並んだ風穴。

<ヽ●∀●>「オオカミのお坊ちゃんは教育がなってないみたいニダ。そこが何処だろうとお構いなしと来る」

彼が懐から中国葉巻を取り出しくわえると、舎弟の一人がジッポで火を灯す。
34 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:45:48.98 ID:OZUgbC4+O
<ヽ●∀●>yー~「ふぅ……」

……唐突にこの部屋を訪れたサングラスの男は、先に名をニダーと名乗った。

ニダー。チャイニーズマフィア“陳龍”の香主…つまりは、ヘッド。

そんな彼の突然の来訪に驚くオレに、「本当のサプライズはこれからだ」と言わんばかりに、事務所の扉を蹴破って現れたのが先の長ドスの男。

浪花節で奇声を上げながらニダーに切りかかった彼は、ご覧の通り脳天をぶち抜かれ、鬼籍に入った。

从゚∀从「…今日も一日、平凡怠惰に終わると思っていたが。……なかなか、面白いことになってきたじゃないか」

オレの横で不適な笑みを浮かべるハインリッヒ。
銀髪赤眼にゴスロリワンピースの彼女、特A級護衛専任ガイノイド「アイアンメイデン」は、過激な事がお好きなようだ。

('A`)「ヘイヘイヘイ、ボス。オレは今“うたた寝”で忙しい。厄介事なら他を当たってくれ」

オレ達は何でも屋。
街角でのティッシュ配りから、魔王退治まで請け負う正義の味方。

<ヽ●∀●>yー~「お宅の通常業務にはそんなものが含まれているのか。こいつぁ忙しいところ失礼したな」

35 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:48:05.21 ID:OZUgbC4+O
('A`)「そういうこった。うたた寝、居眠り、昼寝、毎日が大忙しよ」

そんな懐の広いオレ達でも、マフィア絡みの仕事だけはなるべく受け付けたくない。
うまく片づいた所で、こういった手合いの輩と連むと後腐れがある。
この上なく面倒くさいのだ。

<ヽ●∀●>yー~「その忙しいところ悪いんだが、どうしてもお宅に頼みたいことがあってね。…バオ」

名を呼ばれた舎弟の一人が、手に提げたアタッシュケースを応接テーブルの上に広げる。

ざっと見たところで、700万の札束の山。

(;'A`)「……お、おぉ…」

一瞬、現ナマの魅力に身も心もとろけてしまいそうになったが、よだれを拭いて踏みとどまる。

('A`)「いくら積まれても変わらねぇよ。タイムイズノーマネー。オレの時間はプライスレスだ」

从゚∀从「おい、インポテンツ。ついに金銭感覚が狂ったか?よもや、我々の経済事情を理解出来ていないとでも?」

意外な奴が食い付いてきた。

('A`)「あのなぁ、ハイン。前にも言わなかったか?マフィア絡みの事件程面倒くせぇもんはねぇんだよ。あと、オレの“マグナム”はちゃんと動く」

36 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:50:23.02 ID:OZUgbC4+O
从゚∀从「貴様の腐敗した発泡スチロール性脳核にとっては、何もかもが面倒だろうな。だから私も以前に言ったであろう。その腐れた脳核を新しいのと変えろ、とな」

('A`)「おい、特A級罵倒専任ガイノイド、ちょっと聞けや。いいか、オレは確かにダメ人間だがてめぇの分量はわきまえてるつもりだ。
そのオレが、この手の事件は分不相応だっつってんだよ。君だって風通しのいい肉抜きボディになんかなりたかないだろう?」

从゚∀从「私は貴様が死ななければそれでいい」

(*'A`)「きゅんっ!」

…と来たが騙されないぞ!

(;'A`)「そういう問題じゃなくて……」

<ヽ●∀●>yー~「あぁー…取り込み中悪いんだが…」

('A`)「あん?」

ニダーの声に振り向けば、オレに向けられた銃口の群れ。

(;'A`)「え、えと……」

チャイニーズマフィア達の構えるベレッタは、全て寸分の狂い無くオレの脳天にポイントされている。
38 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:52:17.24 ID:OZUgbC4+O
<ヽ●∀●>yー~「…1ヶ月ほど前だったかな。うちの会計士が、雇われ鉄砲玉とナシを付けにいくと言って、そのまま帰ってこなくなったニダ」

(;'A`)「えっと……」

<ヽ●∀●>yー~「話を聞いたウリは、直ぐにそいつが交渉場所に選んだ酒場に組の者を向かわせた」

(;'A`)「あ、あの……」

<ヽ●∀●>yー~「そいつは、そこで頭をザックリと割られててね。ザクロみてぇによ。全く、ひでぇ話だわな」

ニダーの言葉にピンとくると共に、何だか嫌な予感がした。

<ヽ●∀●>yー~「…で、そいつ…ヒッキーって言うんだがな…そいつと最後に会ってた雇われ鉄砲玉ってのが誰か気になってね。ちょいと調べてみたニダ」

やばいやばいやばいやばいやばい。

<ヽ●∀●>yー~「なぁ、ドクオ君。ウリ達は、とても情に厚い。組識の奴らは、みんな家族みたいなもの何だよ」

舎弟達が、ベレッタの引き金に指をかけた。

<ヽ●∀●>yー~「その家族が、どこの馬の骨ともわからねぇゴロツキに殺られたんだ。…もうウリはカンカンだ」

39 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:53:51.68 ID:OZUgbC4+O
やばいやばいやばいやばいやばい。宇宙やばい……おっと。

やばいったらやばい。何がやばいって、こいつら完全に勘違いしてやがるのがやばい。
確かに、あのときオレはその場に居た。
居たけど、奴を殺ったのはあのいけ好かないモノノフ気取りだ。オレじゃない。断じて違う。
それを彼らに伝えなきゃいけないけど。

<ヽ●∀●>yー~「さて、ドクオ君。ここでウリ達はお前さんをミートローフの挽肉みたいにしてやってもいい」

(;'A`)「絶対信じないよな……」

積んだ。あぁー積んだ。完全に積んだわ。オレの人生終了のお知らせ。
サヨウナラ、現世。コンニチハ、エデン。
嗚呼エホバ様、そっちにエロゲはありますか?

<ヽ●∀●>yー~「だが、ウリ達も鬼じゃない。むしろマザー・テレサみてぇに優しいと自負してる。……なぁ?」

舎弟達を振り仰ぐニダー。それに舎弟達は嫌な笑みを浮かべる。

(;'A`)「あの…その…」

<ヽ●∀●>yー~「こっちの依頼を受けてくれりゃあ昔の事は水に流そうじゃねぇか。
何時までもいがみ合ってんのは格好悪いもんなぁ。人類皆兄弟。仲良くしようや」

40 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:55:49.99 ID:OZUgbC4+O
紫煙を吐き出し、左手を差し出してくるニダー。

(;'A`)「あ……ぅ……」

この手は、つまり、地獄の血の池で溺れてるオレに差し出されたお釈迦様の、それだ。
そのお釈迦様がベレッタM76なんて物騒なもんぶら下げてるなんてのは、何かの悪い冗談だろう。

…握れば、麻薬とガンパウダーと血の臭いに溢れた極楽浄土。
…握らなければ、お釈迦様のベレッタM76で頭がパーン。

どちらを選んでも、待っているのが死ならば。

(;'A`)「オレ…オマエ…トモダチ…ナカヨクスル…」

オレは片言でもってその手を握り、少しでも長生き出来る方を選んだ。
42 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:57:37.07 ID:OZUgbC4+O
 ※ ※ ※ ※

━━脳髄を貫く頭痛に、オレは“棺桶(コフィン)”の壁に頭を打ち付けた。

(,;゚Д゚)「ぐっ…あぁ…がっ…ぅぅ…」

ぶれる視界の中で枕元に転がった小瓶の蓋を開けると、八角錠を十粒ばかり口に放る。
灼熱する脳髄と軋む脳核に、やがて開放的な安らぎが戻ってきた。

(,;゚Д゚)「はぁ…はぁ…はぁ…あっ…ふぅ……」

額を伝う冷や汗を拭い、薄汚れた寝台に横になる。
何時もの痛みは、何時も通り去った。

「……まだそんなクスリに頼ってんのか」

(,;゚Д゚)「っ!」

ふいに横合いから飛び込んできた声に、腰の単分子ナイフを抜き構える。

ミ,,゚Д゚彡「力の代償は高くついたろう。いい加減、そんな汚ねぇ仕事(ビズ)からは手を引いたらどうだ」

懐かしい顔が、そこにあった。

(,,゚Д゚)「兄貴…か……」

郷愁に頬を緩め身を起こす。
ニーソクのスラムの手前。最下層のカプセルホテル。
ここが“棺桶”と呼ばれるのは、オレみたいな“先の短い”奴らしか利用しないからだ。

43 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 21:59:21.29 ID:OZUgbC4+O
(,,゚Д゚)「兄貴こそ、オレの事を言えるような立場かよ」

真っ白に染め抜いた髪は腰までの長髪。
それを後ろで束ね、髪と同じ色のスーツに身を包んだ彼の名はフサギコ。
この人の前では砕けた口調になってしまう自分に、まだ自分が青いのだとわかった。

ミ,,゚Д゚彡「オヤジは、お前が以前みたいにそんな風になる事を望んでなんかいなかった。だから、あの時もオレが組を継いだんだ」

(,,゚Д゚)「……オヤジか」

義兄の言葉に、義父の最後を思い出す。

あの日、あの時、宵闇の下。全てが暗転したあの瞬間。

美しくも平穏な日々に錆び付いていた“牙”が、もう一度その鈍い輝きを取り戻す事になった瞬間。

(,,゚Д゚)「あの人には…感謝してる。殺しと盗みしか知らなかったオレに、あの人は日の光の暖かさを教えてくれた」

ストリートで生まれたオレに、親と呼べる存在は居なかった。
いや、居たのかも知れない。今となってはわからない。
物心ついた時には既にオレの右手にはナイフが握られていて、生きる為に血を流し流させる日々を送っていたオレには。

44 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:01:26.97 ID:OZUgbC4+O
そんなオレを拾ってくれたのが、西村の15代目組長であるオヤジだった。

ニーソクのスラムで、“万魔殿”と呼ばれる無法地帯で、あの人はオレに手をさしのべてこう言ったんだ。

“そろそろナイフじゃなくて、ペンの使い方も覚えてみないか?”

(,,゚Д゚)「……あの人には、色んなものを貰った。安心して寝られる寝床、幸せな日々、家族…学校にも通わせてくれて…」

それらは、全て、あの日を境に無くなってしまった。
いいや、無くなったんじゃない。

(,,゚Д゚)「……それでもな兄貴。…やっぱりオレは、こんな風にしか生きられないみたいだ」

オレが、手放したのだ。

(,,゚Д゚)「オヤジを殺った奴をオレは許せそうも無い。いや、頭では分かってるんだ。復讐なんて馬鹿げてる。
オヤジもそんな事は望んでなんかいないだろう。あの人は、ヤクザの癖に優しかったからな」

ミ,,゚Д゚彡「……」

(,,゚Д゚)「……いや、“優しすぎた”。だから、綾瀬の奴らにつけ込まれた。その優しさを踏みにじった奴らを、オレは見過ごす事が出来ない。ただ、それだけだ」
46 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:03:17.37 ID:OZUgbC4+O
ミ,,゚Д゚彡「だからって生身を捨てて、神経加速装置なんて代物で脳みそをいじくり回す馬鹿がいるかよ」

(,,゚Д゚)「……オレには、兄貴と違って人を集める魅力も、たばかり事をする頭もない。だから、もっと単純な“力”に頼るしか無いんだ」

ミ,,゚Д゚彡「……馬鹿野郎。誰の為にオレが組を継いだと思ってんだ」

(,,゚Д゚)「…兄貴なら、分かってくれると思ってたんだがな。“オオカミ”を興したのだって、オヤジの敵討ちの為だろう?」

ミ,,゚Д゚彡「……」

沈黙は肯定の印。

“族”の頭を張り、家に寄り付く事が少なかった兄貴とオレの会話は、記憶に残ってる中では数える程しか無い。
そんな中で、オレが読み取る事が出来た兄貴の唯一の癖が、それだった。

(,,゚Д゚)「あれだけヤクザにだけはなりたくないっつってた兄貴が、オヤジが死んだ途端に“族”の連中を引き連れて家に戻ってきた。その時から分かってた。オレ達は、血が繋がってなくても兄弟なんだなって」

47 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:05:18.37 ID:OZUgbC4+O
(,,゚Д゚)「だからオレは、兄貴のやろうとしてる事を止めるつもりは無い。お互い、不器用だよな。こんな事でしか、オヤジに恩を返せない。しかも、完全に独りよがりときた」

兄貴が、静かに拳を握るのがわかった。

(,,゚Д゚)「…だけど、これだけは約束してくれ。オレだろうが兄貴だろうが、どちらかがオヤジの敵を討ったら。……その時は、今まで通りの日常に戻って欲しい。それが、オレの唯一の希望だ」

唇を噛み締め、兄貴はオレを睨む。

ミ,#゚Д゚彡「……そりゃあオレの台詞だよ間抜け。何を抜かすかと思えば、いっちょ前によ…てめぇは、オレの弟だろうが。黙って兄貴の言うこと聞いて大人しくしとけ」

苛立たしげな恫喝。そんな彼の言葉が、何よりも優しいものだとオレは知っている。
久しぶりに触れた兄貴は、やはりオレの兄貴で。

(,,゚Д゚)「……」

やはりオレは意地っ張りな青臭い弟で。

ミ,,゚Д゚彡「……」

オレ達は互いに譲れないまま、黙り込むしか無かった。
49 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:07:32.48 ID:OZUgbC4+O
“棺桶”のチープな暖房じゃ防ぎきれない冷気が、外でしんしんと降りしきる雪の存在を暗黙のうちに告げる。

夜と、雪と、沈黙と。オレ達の間には余りにも色々な物が積み重なり過ぎていた。

ミ,,゚Д゚彡「……しぃが…」

その沈黙を破るよう、兄貴がポツリと呟いた名前。

(,;゚Д゚)「……!」

ミ,,゚Д゚彡「しぃがな…クリスマスは三人で過ごしたいと、そう言ってた」

その名前が、ゆっくりとオレの胸を締め付ける。

ミ,,゚Д゚彡「たった、三人の家族なんだ。……こんな時ぐらい、一緒に過ごしてやっちゃくれねぇか」

(,,゚Д゚)「……しぃ」

呟く。古傷が、疼いた。

ミ,,゚Д゚彡「……なんて、偉そうに言ってるオレは、クリスマスにゃあいつの側に居てやれねぇ。情けねぇわな……」

(,,゚Д゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「だからよ。…せめて、お前だけでもアイツの側に居てやってくれ。完全にオレの我が儘だけどよ…約束しちまっだ。クリスマスは、一緒に過ごすってよ」

押し殺したような声を絞り出し、兄貴はオレに背を向ける。
51 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:09:57.57 ID:OZUgbC4+O
ミ,,゚Д゚彡「……帰ってきてくれ、なんて言ってもお前は聞かねえだろ?だけどよ、せめてクリスマスだけは……」

そのまま、挨拶も無しに遠ざかっていく兄貴の背中が、泣いているように見えて。

(,,゚Д゚)「……」

それでも自分の中でせめぎ合う感情に、オレは答えを出せないでいた。
52 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:11:41.43 ID:OZUgbC4+O
 ※ ※ ※ ※

━━護衛依頼。

彼がオレ達に依頼してきたのは、存外に大人しいものだった。

<ヽ●∀●>yー~「近々、うちのファミリーはオオカミと戦争を始めるニダ」

オオカミ。確か、前に聞いた話では最近ニーソクのストリートに姿を見せるようになった、新興のストリートギャングだったハズだ。

<ヽ●∀●>yー~「だが、如何せんこっちには兵隊が足りなくてね。認めたくないが、ウリ達はこのままじゃベトコンみてぇな奴らにすらかなわないってのが、今の現状さ」

そういや、ヒッキーとかいうあの男もそんな事を言ってたっけ。
だから、戦力としてうちの鬼畜戦乙女の力を貸して欲しいと。

<ヽ●∀●>yー~「お宅も経緯は知ってるだろう。“黒狼”だよ。ウリ達は、奴という一つの存在に翻弄され続けてきた。奴ぁまるで呂府だ」

確かに、あの強さは一種化け物じみている。

<ヽ●∀●>yー~「だが、それも長くは続かない。呂府は劉備と曹操の連合軍の前に捕らえられる。そうだろう?」

ニダーは、中国葉巻を我が事務所のガラス灰皿に押し付けた。
55 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:14:57.36 ID:OZUgbC4+O
<ヽ●∀●>「三日前に、うちのファミリーが所属している三合会(トライアド)のシナー大香主が大陸から横浜に視察にやって来た」

三合会。通称、トライアド。
中国の犯罪組織を束ねる、マフィア達の元締め連合だ。
やはり、陳龍もトライアドに属していたか。

<ヽ●∀●>「ウリは、シナー大香主に増援の要請をしに横浜まで行く。その道中の護衛を、お宅に頼みたいのさ」

('A`)「横浜、までね」

<ヽ●∀●>「その700万は手付け金として受け取ってくれ。それで好きな“おもちゃ”でも買うといい」

('A`)「“おもちゃ”…ね」

それだけオオカミの猛攻が予想されるっつう事か?
確かに、オレの事務所に殴り込んでまでニダーのタマを取ろうとする連中だ。血気は盛んだろう。

<ヽ●∀●>「…ところでお前さん、車は運転出来るか?」

('A`)「おいおい、馬鹿にしないでくれるか?オレは何でも屋だ。ドライブがしてぇつぅ客のニーズにも答えられるよう、ちゃあんとほら」

ジャケットの内ポケットを弄り、マルボロとジッポの間から、よれよれになったゴールド免許を取り出し見せつける。
57 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:18:53.49 ID:OZUgbC4+O
オートパイロットが全ての車両に普及した最近じゃ、オレのゴールド免許もツチノコ並みに希少価値が有ろう。
ダメ人間であるオレの唯一の自慢だ。

<ヽ●∀●>「そいつは助かる。今回はなるたけ目立たないよう、少人数で行動したいからな。こいつらを運転手として連れて行く訳にもいかんニダ」

ニダーが指差すと、舎弟達は実に無念そうに顔を歪めた。
マフィアのわりになんだか可愛い奴らだな。

<ヽ●∀●>「……さて、話もまとまったようだしウリ達はこれで一旦引き取らせてもらうニダ。出発は明朝の五時。ニューソクの中華街で待っていろ」

('A`)「五時?早すぎる。目覚まし時計が必要だ」

<ヽ●∀●>「そういうもん買うための手付け金だろう、坊や」

話を切り上げ立ち上がるニダー。

<ヽ●∀●>「それじゃあ、邪魔したな。再見(ヅァイチェン)」

トレンチコートを翻して立ち去る彼の後ろを、舎弟達がぞろぞろとついて行く。

('A`)「ふぅ……」

悪趣味な中華式のパレードを見送った後、オレは溜め息一つ立ち上がるとほったらかしにされた仏様の下にしゃがみこみ。

58 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:22:08.66 ID:OZUgbC4+O
('A`)「てめぇで出したゴミは持ち帰れよな……」

从゚∀从「では貴様は直ちに焼却炉へ飛び込むのだな」

('A`)「久々にずんと来る罵倒ですね……っと」

鬼畜罵倒機械の罵詈雑言を右から左に受け流しつつ、“元”人間の体に手をかける。

('A`)「あー畜生、重いなてめぇ。あの世にいったら太るって知って……」

そこで、オレは“ソレ”に気付いた。

('A`)「なんてこった…」

从゚∀从「…どうした、人型生ゴミ」

覗き込んできた冷血乙女に、オレは無言で仏様の襟を見せる。

从゚∀从「……ふむ。これはこれは。全て、筒抜けか」

59 : ◆cnH487U/EY :2008/12/07(日) 22:23:09.96 ID:OZUgbC4+O
小さな丸ボタンに見えるそれは、盗聴器。

('A`)「…こいつぁ、面倒な事になったな」

はてさて、明日の朝五時にオレは目を覚ます事が出来るだろうか。

('A`)「ハイン、“目覚まし”は頼んだぞ。ちゃんと、五時に起こしてくれ」

“ちゃんと、生きたまま”な。

心の中で、そうつけ加えた。



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