- 11 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:13:21.19 ID:pAb1WOU1O
- 〜track-α〜
━━みんななら、自分の家に突然幼女が押しかけてきたらどうする?
*(‘‘)*「……」
で、そいつが開口一番にこんなことを言ったらどうする?
*(‘‘)*「ここに置いてくらさい」
(#'A`)「駄目ぇぇぇえ!」
オレなら、全力で断る。
- 12 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:14:58.75 ID:pAb1WOU1O
- ※ ※ ※ ※
━━オーケーブラザー、最初から話そう。
('A`)「その日もオレは、我が事務所の鳴らない電話の前に座って、脳と精神と意識の因果関係について取り留めも無い思考を繰っていた」
オレ達の仕事は何でも屋。
道案内からビラ配り、巨大駆動兵器との戦争までこなす近未来のダークヒーローだ。
从゚∀从「貴様の劣悪な思考回路では、一生答えの見つからない問題だ。考える必要は無い」
この銀髪赤眼、一見思春期真っ只中の女子高生的に可憐な少女の容姿を備えた毒舌娘はハインリッヒ。
純真無垢な化けの皮を剥げば、拳一つでチタン板をへこませ、腕から鉄砲が飛び出てくるロボ。
特A級護衛専任ガイノイド「アイアンメイデン」というのが彼女の正体だ。
('A`)「そして、こいつを相棒に世間の闇と日夜戦うハードボイルドなヒーロー……それがオレ、ドクオだ」
*(‘‘)*「そーなのかー」
(;'A`)「……」
さて、この幼女について説明しなきゃな。
- 15 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:16:26.32 ID:pAb1WOU1O
- 前述したようにいつもの怠惰な日常を送っていると、昼頃、突然事務所の扉を蹴り開けて小さな影が突入してきた。
('A`)「何事か?敵襲か?カスタムデザートイーグルを構えるも間に合わず、オレは侵入者に接敵を許してしまう」
*(;‘‘)*「どきどき……」
('A`)「しまった!殺られるっ…!オレは死を覚悟し、目を閉じた」
*(;‘‘)*「はらはら!」
('A`)「しかし、待てども待てども一向に死の気配はやってこない。……どういうことだ?オレは、ゆっくりと瞼を押し開けた」
*(;‘‘)*「……ごくり」
('A`)「そこでオレは、我が目を疑うこととなる。何故なら、目の前に居るのはまだ年端も行かない、リュックを背負った小さな少女だったのだから」
*(‘‘)*「あたし登場!」
('A`)「年の頃は12歳ぐらいか。亜麻色のセミロングのストレートヘアーを両耳の上でお下げにし、柔らかそうな輪郭を覆っている」
*(‘‘)*「えへへ……この髪型は気に入ってるんだぁ」
('A`)「つぶらな瞳はシマリスのよう。好奇心と純真を湛えたそこには、小さな涙のため池が出来ていた」
- 16 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:17:55.91 ID:pAb1WOU1O
- *(‘‘)*「うるうる」
('A`)「しばしの間、お互いの顔を見つめ合うオレ達。そして、戸惑うオレに彼女はこう言った」
*(‘‘)*「…奇形児?」
(#'A`)「こらぁぁぁあ!」
从゚∀从「確かに、貴様の顔面造形は凄まじい。人間のソレとはまた異なった、斬新なデザインをしている」
(#'A`)「人の事務所に土足で駆け込んできていきなり住ませろと言ったうえ、人の身体的欠点を攻撃する!
なんてガキだ!許さねえ!つうか奇形児とか教育的に良くありません!ああもう親の顔が見たいよ!」
*(‘‘)*「……お父さんもお母さんも、いないもん」
(#'A`)「そんなお約束展開が通用するかばーか!今時家出娘と独身男のハートフルコメディなんて流行らねぇんだよ!お前さんが大富豪の令嬢とかなら話は別だがな!」
*(‘‘)*「じゃあ、あたしのパパは衆議院議員だよ」
(#'A`)「じゃあって何だ!ガキは家帰って糞して寝ろ!ここは小学校じゃねぇ!」
*(‘‘)*「帰る家なんて、ないもん……」
(#'A`)「だからお約束展開は……」
- 17 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:19:30.78 ID:pAb1WOU1O
- だが、オレはそれ以上言葉を紡げなかった。
少女の瞳、純真を湛えた筈のそこに今浮かんでいるのは、虚無。
暗闇を覗いた者にしか出来ない、虚ろなソレであったから。
*(‘‘)*「帰る家なんて……無いもん」
('A`)「おい、お前…ちょっと…何、マジに……」
*(‘‘)*「嫌だよ…どうして?私、何も悪いことしてないよ?……なんで…」
(;'A`)「もちけつ。その、なんだ……えーと…お菓子食うか?」
上着のポケットからこなれたビスケットを取り出し少女の前にちらつかせる。
が、少女の瞳はそれを捉えてはいない。
*(‘‘)*「怖い。怖い…ごめんなさい。やっぱりあたしが悪かったです……いい子にするから…お願いします…いい子にしますから…」
(;'A`)「おい、ちょっと……」
*( ゚ ゚)*「いい子にするからぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
(;゚A゚)「のわぁぁぁ!」
突然叫び出す少女。のけぞり、尻餅をつくオレ。壊れた人形のように、彼女は悲鳴を上げる。
*( ; ;)*「嫌だっ!イヤだよ!痛いっ!痛いぃぃぃい!離してぇぇえ!」
- 19 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:21:06.74 ID:pAb1WOU1O
- 从゚∀从「おい、クラミジア。どうするのだ?」
一人だけ、冷静に事態を静観していた機械娘がオレに耳打ちする。
(;'A`)「どうするもこうするも、とりあえず落ち着かせるしか無いだろうが」
从゚∀从「落ち着かせるとな。どうやって?」
(;'A`)「取りあえず、少しの間ここに置いてやるっていう旨を伝えるしか……」
从゚∀从「貴様にそのような甲斐性があったか?いいかベンジョコオロギ、我々の事務所の経済状況を考えてみろ。
私の定期メンテナンスに貴様の月々の維持費、それを稼ぐだけでも四苦八苦しているというのに……」
(;'A`)「だーかーらー、口約束だけだよ!口約束だけ!オレだって、こんな素性の知れない小娘を住まわせるなんて反対だ!ガキってのはこの街じゃ疫病神と同じだからな」
*( ; ;)*「ごめんなさいごめんなさいぃぃ!止めてぇ!離してぇぇぇえ!離してよぉぉぉお!」
(;'A`)「あー君、ちょっと……」
髪を振り乱して錯乱する少女の肩に手を置く。
- 21 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:22:40.88 ID:pAb1WOU1O
- *( ; ;)*「イヤ…イヤぁ……」
(;'A`)「えーと…うーんと…あー……」
*( ゚ ゚)*「イヤァァァァァァァア!」
(;'A`)「もちつけぇぇ!大丈夫!大丈夫だから!何がイヤなのかわからんが、大丈夫だ!大丈夫!大丈夫だよ!大丈夫さ!」
大丈夫を連呼するオレ。説得力皆無ワロタ。
从゚∀从「先ずは貴様が落ち着け」
(;'A`)「ひっひっふー…ひっひっふー……う、生まれるっ!」
从゚∀从「おぎゃーおぎゃー。元気な女の子ですよ」
('A`)「よし、落ち着いた」
*( ; ;)*「あぁぅ…ぁっ…ひっ……ぅぇ…」
- 22 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:24:41.25 ID:pAb1WOU1O
- ('A`)「あの、な。どんな事情が有るのか知らないけど、しばらくはここに居てもいいから。だから、取りあえず落ち着こう。な?」
*(‘‘)*「……本当?」
(;'A`)「あ、あぁ本当だ。大丈夫だ。警察に通報したりとかもしないから、安心していいんだ…よ…?」
*(‘‘)*「語尾が疑問系」
(;'A`)「ホントホント!本当だってば!」
*(‘‘)*「……」
(;'A`)「……」
*(‘‘)*「作戦成功。きゃほぅ!」
('A`)「おいてめぇ、ちょっとそこに直れ」
- 24 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:26:58.97 ID:pAb1WOU1O
- ※ ※ ※ ※
━━血飛沫が踊り、俺の身を赤く染め上げる。
(;゚±゚)「ぁ…おぅぇ…」
がぼかぼと喉を鳴らし、くず折れる対象物。
(,,゚Д゚)「南無三。…安らかに眠れ」
愛刀についた血糊を振り払い、背中の脊髄鞘に収める。任務完了だ。
「ふわぁ〜凄い凄ぉい!まるで芸術みたいだねぇ〜」
降って湧いた拍手の音に、狭苦しい路地裏を見渡す。
新月の闇の中、目を凝らせばこちらへ向かってゆっくりと歩いてくる人影が一つあった。
从'ー'从「黒狼なんて言うから、もっと小汚い仕事をすると思ってたんだけど、予想外だよぉ」
現れたのは、女。着崩したスーツにふわふわした癖毛のそいつは、一見して阿呆のようにも見える。
(,,゚Д゚)「……貴様の言うとおり、汚い仕事ばかりだ。時として、女子供を斬らねばならぬことも有る」
光学迷彩を起動。一瞬で距離を詰め、抜刀。女の首筋に刃を当てる。
「このように、な」
从'ー'从「うわぁ〜速い速ーい。流石、黒狼さん。全然姿が見えなかったよぉ」
- 27 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:28:36.47 ID:pAb1WOU1O
- 間の抜けた声は、余裕の現れか。
从'ー'从「でもぉ、姿が見えないのはあなただけじゃないよぉ?」
負け惜しみでは無いが、気付いていた。
俺の体を這う、いくつもの赤い光点。どれだけの銃口に狙われているのだろうか。動けば、蜂の巣だ。
(,,゚Д゚)「……随分と物騒な女人だな。光学迷彩を装備した狙撃班なぞ連れて……夜の散歩という訳でもあるまい。何者だ」
光学迷彩を解除、同時に愛刀を下げる。
从'ー'从「私、こういうものですぅ……」
胸ポケットから名刺を取り出し、俺へと手渡す女。
(,,゚Д゚)「渡辺グループ代表取締役……ワタナベ、か。日本経済を支える柱とすら言えるコングロマリットの女社長が直々に出向いて来るとは。一体何の用だ?」
从'ー'从「ビジネスのお話なんだけどぉ……少し、お時間頂けるかなぁ〜?」」
(,,゚Д゚)「無い、と言えば…?」
从'ー'从「頭がぱーん」
(,,゚Д゚)「……面白くもない冗談だ。それで?誰を殺して欲しいんだ」
从'ー'从「ううん、まだ殺す殺さないの段階まで話は進んでないのぉ。あなたに頼みたいのは、ちょっとした探偵ごっこ」
- 28 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:31:12.89 ID:pAb1WOU1O
- (,,゚Д゚)「それだったら他に適任のものが居るだろう。俺が請け負うのは、斬る斬らないの世界の話だけだ」
从'ー'从「安心してぇ。ちゃあんとあなた向けのシーンも有るはずだから。セルフで舞台を整えて欲しいだけよぉ」
(,,゚Д゚)「……ふん。どうせ、初めから俺に選択肢は無いのだろう?」
从'ー'从「そんなこと無いよぉ。職業選択の自由は法律で決められてるじゃなぁい」
(,,゚Д゚)「……抜かせ」
从'ー'从「まぁ、少なくとも…私がお願いするのは、あなたを退屈させるようなお仕事じゃ無いっての事だけは、言えるかなぁ」
(,,゚Д゚)「……まぁいい。言ってみろ」
くすり、とそこで彼女は笑みを零すと楽しげに口を開く。
从'ー'从「あのねぇ……」
その笑みは、雉討ちを楽しむ貴族のそれに似ていた。
- 30 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:33:37.12 ID:pAb1WOU1O
- ※ ※ ※ ※
('A`)「名前を教えて下さい」
*(‘‘)*「ヘリカル」
('A`)「年齢は?」
*(‘‘)*「12歳」
('A`)「特技は?」
*(‘‘)*「ペルソナ能力」
('A`)「ふーん…じゃあ、どうしてうちなんかに置いて欲しいなんて思ったのかな。志望動機を聞かせてくれる?」
*(‘‘)*「何でも屋で検索かけたら一番上に出てたから」
('A`)「あ、そう……」
何だこのガキ。可愛い気ねぇな。
- 32 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:35:09.53 ID:pAb1WOU1O
- *(‘‘)*「もっとロリロリしてた方がいい?」
('A`)「いや、別に。そこはかとなく事務的っていうのも悪くない。感情移入しなくて済むからな」
*(‘‘)*「同情…してくれないの?」
(#'A`)「ただの家出娘にくれてやるような安い同情心はねぇよ」
*(‘‘)*「酷い……」
こんな感じで小一時間ほど、オレ達は不毛な会話を繰り広げていた。
分かったことは四つ。このガキがヘリカルという名前で、12歳で、生意気なクソガキだということと、何故か知らんがオレ達の庇護を求めているということ。
- 33 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:36:39.40 ID:pAb1WOU1O
- ('A`)「あのねぇ、お嬢ちゃん。世間っていうのは、君が知っているよりずっと残酷なものなんだ。
昨日笑顔で別れた友人が、次の日にはライフルと手榴弾で武装して襲ってきたりする。ここはそういう街なんだよ」
*(‘‘)*「知ってるよ。うちのパパのお友達も、こないだマシンガン持って押し掛けてきたから」
(;'A`)「マジかよ……」
*(‘‘)*「マジ」
ものの例えで言ってみたのに……世間ってこぇー……。
(;'A`)「あー…その、だからだな、つまりオレが言いたいのは……」
*(‘‘)*「他人に頼るな」
(;'A`)「そうそう、そゆこと」
*(‘‘)*「でも私子供らもん」
(;'A`)「だから、さっさと親のところに帰りなさいと言うことだよ」
*(‘‘)*「……」
だんまり。親の話になると、必ずこのガキは黙秘権を行使しやがる。
さっきからこんな会話の堂々巡りだ。無限ループって怖くね?
('A`)「……なぁ、ハインさんよ。お手上げだ。無理無理、このガキ何言ってもここに居座るつもりみたいですぜ」
- 34 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:39:26.02 ID:pAb1WOU1O
- 助け舟を求めて鬼子母神様にすがりついてみる。
从゚∀从「ならば、私から説得を試みよう」
('A`)「頼むわ」
从゚∀从「君、ヘリカルと言ったか」
*(‘‘)*「……うん」
从゚∀从「どのような事情があってこのダメ人間を頼るのかは知らぬが、こいつの稼ぎでは君一人の食費をまかなうことが出来ないのだ。
残念だが、他をあたってはくれないか?」
*(‘‘)*「……」
理路整然とした言葉に、難しい顔で俯くガキ。やっと諦めてくれるのか。
- 36 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:42:19.63 ID:pAb1WOU1O
- と思ったら。
*(‘‘)*「じゃあ、私が自分が食べる分を自分で稼いだら、ここに置いてくれる?」
とんでもない事を抜かしやがった。
(;'A`)「はぁ?君、自分が言った言葉が理解出来るかね?」
*(‘‘)*「うん。自分の口は自分で養う。だから、ここに置いてくらさい」
从゚∀从「……と言ってもだな、君はまだ未成年だ。働き口など有るわけが無いだろう」
*(‘‘)*「ここって何でも屋なんでしょ?」
(;'A`)「あぁ…うん…え?まさか……」
*(‘‘)*「私、ここで働く」
- 37 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:43:56.71 ID:pAb1WOU1O
- (;'A`)「ちょ……」
从゚∀从「駄目だ」
有無を言わせぬ口調で割り込んできたのは、まさかのハインさん。
こいつがオレ以外の人間…しかも子供に、こんなにきっぱりと駄目出しするなんて珍しいから吃驚しちゃったよ。
*(‘‘)*「なんで?」
ぶぅ、と頬を膨らませるヘリカル。
从゚∀从「ここの仕事は、所謂アンダービジネスだ。常に命の危険を伴う。君のような年端も行かない少女を、そんなものに触れさせてはならない」
*(‘‘)*「……別に、いいじゃん」
从゚∀从「死にたいのか?」
*(‘‘)*「……もう半分死んでるようなもんらし」
こいつ本当に12歳か?なんかすっげー擦れてるんだけど……。
('A`)「……訳あり、ってことか」
*(‘‘)*「……まぁね」
こいつがどんな人生を歩んできたのか、そんな事はオレの知るところじゃない。
でも、なんだかこう……こいつみたいなのは、無性にほっとけないというか。
目を離したら、次の瞬間には死んでしまってそうな、そんな危なっかしさがあって。
- 38 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:45:50.59 ID:pAb1WOU1O
- ('A`)「なぁ、ハイン。もういいんじゃねぇかな?」
从゚∀从「何がもういいのか、私には理解しかねるが」
('A`)「いや、こいつもなんだかマジで気合い入っちまってるしよ。駄目だっつっても、こいつぁここに居座るぜ」
从゚∀从「ならば摘み出せば良かろう」
*(;‘‘)*「……!」
('A`)「だから、さっきも言ってたじゃん。こいつ、自分の食い扶持は自分で稼ぐってよ。なぁ?」
*(;‘‘)*「う…うん……」
('A`)「そういう訳だし、こいつをオレは雇おうと思う」
気付いたらオレは、こんな言葉を口走っていた。
从゚∀从「貴様、正気か?」
('A`)「正気も正気、超正気だよ」
しばしの睨み合い。無表情って一番怖いです。
从゚∀从「……勝手にしろ。そもそも、ここでの最終決定権は全て貴様に有る。貴様のやりたいようにしたらいい」
ふてくされたような口調だが、こいつは機械だ。あくまで真実を述べているだけに過ぎない。
いつもの無表情のまま、ソファに腰掛けるといつも通りに格納式暗器の手入れを始めた。
- 39 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:47:32.60 ID:pAb1WOU1O
- ('A`)「……と、そういう訳だ」
*(;‘‘)*「え?」
('A`)「おめでとう、君の居住権は認められた」
*(‘‘)*「私…ここに居てもいいの?」
('A`)「あぁ。ただし、先の約束は忘れるなよ?きちっと働いて貰うからな」
*(*^^)*「……うん!私、頑張るから!」
('A`)「ああ、その意気だ」
- 40 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:49:34.93 ID:pAb1WOU1O
- ヘリカルの頭に、ポンと手を置く。
そこで初めて、彼女は心の底からの笑顔を浮かべた。
('A`)「……放っておけない、ね」
お節介など、久しぶり過ぎて懐かしい。
('A`)「とんと忘れてたね、こんな感情」
もう、他人に世話なんか焼かないと思っていた。
あの日、あの夜、あの場所、あの痛み。そいつを忘れた訳じゃないが。
('A`)「たまには、こんなものもいいだろう」
いい加減にごまかしてみる。
つくづく、学習しない人間だと自嘲の笑みがこぼれた。
- 41 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:50:52.26 ID:pAb1WOU1O
- ※ ※ ※ ※
━━すえた臭いも、街頭看板のネオンも、街を行く人々の様相も。
ξ゚听)ξ「何も、変わって無いわね」
変わっていない。
血と硝煙とアルコールとニコチンが染み付いたニーソクの街並みは、六年前と何一つ変わらず、そこにある。
ξ゚听)ξ「……進歩の無い街」
腐敗と停滞。過去と憎悪。死者の行進が如き人混み。
その中に、以前は自分も混じっていたことを考えると、吐き気がする。
(仝ゝ仝)「おぅおぅ、嬢ちゃん。何だぁ?こんなとこで弾き語りでもすんのか?」
いつの間にそこに居たのか。顔面の右半分を義体化した男が、私の右手に握られたヴァイオリンケースをじろじろと眺めていた。
ξ゚听)ξ「……」
男の台詞に、一瞬憎いあいつの顔がフラッシュバックする。
(仝ゝ仝)「しっかし高価そうなもんもってんなぁ。ちょっと触らせてくれよ。な?」
物珍しそうにケースを睥睨し、手を伸ばす男。
間近で見ようと顔を近付けてくる。
気に食わなかったので、ケースの側面で強かに男の顔面を殴打してやった。
- 43 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:53:07.65 ID:pAb1WOU1O
- (#)仝ゝ仝)「てめぇ何しやがる!」
ξ゚听)ξ「……汚い手で触らないでくれる?」
こんな底辺のゴロツキとかかずりあっている暇は無い。
きびすを返し、駅へと向かう。
こんな場所に長居はしたく無かった。
(#仝ゝ仝)「おい待てよ。顔がいいからってあまり調子に乗るなよ……」
ドスの利いた声に振り返れば、男の手にはドス。下らない冗談だ。
- 45 : ◆cnH487U/EY :2008/10/24(金)
22:55:55.28 ID:pAb1WOU1O
- ξ゚听)ξ「悪いけど、あなたみたいな人間の底辺を相手にする程私も暇じゃ無いの。ダンスのお誘いなら、一人で踊ってくれる?」
スカートの下、仕込んでおいたサイレンサー付きのベレッタを抜き二、三発ゴロツキの足元へ叩き込んでやる。
(;仝ゝ仝)「お…おま……」
ξ゚听)ξ「次は頭に当てるわ。さっさと消えてちょうだい」
ゴロツキの返事を待たずに歩き出す。
「こ、このアマぁぁ!」
後ろで、獣の遠吠え。
振り返らずに、ベレッタの銃口を背中越しに向けて引き金を引く。
ξ゚听)ξ「……本当に進歩の無い街、ね」
つくづくもって、反吐が出る。
呟きと銃声は、向上心を忘れた街並みに消えた。
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