5 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:23:54.56 ID:BD0/oEEQO
〜track-β〜

 ※ ※ ※ ※

━━ガキの話を要約するとこうだ。

('A`)「つまり、大好きな女の子をその歳で生意気にもデートに誘ってみたが、普段から女々しい事で有名なお前は一念発起、
自分の格好いいとこを見せようとダーティーでアングラなスリル溢れるニーソクをデートの舞台に選んだはいいものの、リニアを降りる際のゴタゴタで愛しの彼女とはぐれっちまったと。そういう事か」

息継ぎしないで言ったから、めちゃくちゃはぁはぁ言ってるオレ。

( ;><)「そ、そんな感じです……」

顔を真っ赤にして頷くガキ。



6 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:25:09.62 ID:BD0/oEEQO
('A`)「はぁ…はぁ…はぁ…ぜ…はぁ……」

( *><)「……」

この構図は…。

(#'A`)「まるでオレがショタコンみてぇだろうがぁぁぁあ!」

从゚∀从「違うのか?」

(;'A`)「え?や、やだなぁ……そんな訳…ないじゃないか…はぁはぁ」

( ;><)「き、気持ち悪いんです……」

(;'A`)「うぉーいクソガキちょっと待てぇぇえぇえぇ!」

オレの人生が確実に腐女子ルートに入りつつある。

これはゆゆしき事態ですぞ閣下!
9 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:26:39.36 ID:BD0/oEEQO
(;'A`)「いや、待て。みんな落ち着け。いいか、違うぞ?違うからな?何が違うって、お前…色々違うけど…な?違うから。マジで。な?」

( ;><)「……違うんですか?」

('A`)「あぁ、違うんだよ?な?だってお前……こんな可愛い子が、男の子なわけ無いだろう?」

从゚∀从「……」

( ><)「……」

(;'A`)「しまったぁぁぁぁあぁぁあ!弁解の方向性を間違えたぁぁぁあ!」

神様!どうしてこうも私めの口は、ローションを塗りたくったかのように滑りやすいのでしょうか!あんまりです!

从゚∀从「……まぁ、この際貴様の性的趣向については置いておくとして、だ」

('A`)「流石はハインリッヒ君!伊達にオレの相棒をやってないね!」

从゚∀从「この少年をどうするか。それが一番の問題だ」

そう言って彼女は、まだワンピースの裾を掴んだままのガキへと目を向ける。

( ;><)「……」

人見知り気質なのだろう。小動物のようにハインの後ろに隠れようとするガキは、やはりオレの嗜虐心を擽って止まない。
11 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:28:47.88 ID:BD0/oEEQO
('A`)「どうするかって……勿論、犬のお巡りさんに任せるしか無いだろう。“迷子”なんだから」

( ;><)「だ、だから迷子なんかじゃないんです!」

(#'A`)「うるせークソガキ!誰がどう見たってお前は迷子だ!あと、さっさとその手を離せ!こいつはお前の玩具じゃねぇ!」

从゚∀从「貴様の玩具でも無いがな」

(;'A`)「はうあっ!」

从゚∀从「それと、貴様は自分の言動が大人らしからぬものだということに気付かぬのか?社会の最低辺とはいえ、もう少し責任有る態度を身に付けて欲しいものだ」

(;'A`)「それは…その…」
13 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:30:28.81 ID:BD0/oEEQO
从゚∀从「まぁ、お説教はまた次の機会にしよう。で、君は警察のお世話になりたいか?」

完全に背中に隠れてしまったガキを振り返り確認するお小言マシン。

((( ;><)))「……」

ふるふると首を振るワカンナインデス少年。

从゚∀从「だそうだ」

(;'A`)「……ナンデ、オレに話を振るの?」

嫌な予感がした。

从゚∀从「一緒に捜してやるんじゃないのか?」

( ><)「捜してくれるんじゃないんですか?」

(#'A`)「おめぇも図々しいなこの野郎!」
15 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:32:31.55 ID:BD0/oEEQO
 ※ ※ ※ ※

━━結局捜すことになりました。

('A`)「めちゃくちゃ納得いかねー」

从゚∀从「貴様に決定権は無い」

('A`)「そもそも場面が変わった途端に、経緯とかいきさつとか、諸々をすっ飛ばして話が進むのってどうなのよ」

从゚∀从「世間とはそういうものだ」

('A`)「しっかし、何の特にもならない事をよく君も出来るな」

从゚∀从「社会への無償奉仕によって、貴様の煩悩や欲望で爛れた自堕落な精神構造が変われば、という打算的な理由がきちんとあってのことだ」

('A`)「オレは自堕落でいいんだよ!好きでダメ人間やってんだからほうっておいてくれ!」

从゚∀从「それは出来ない。何故なら貴様の精神構造を正常なものとする事が、私の活動維持にそのまま繋がるからだ。このまま貴様をほうっておいたら、いずれ私は充分なメンテナンスやケアも受けられずに朽ちてしまう危険性が有る」

散々言ってくれるな。

('A`)「へいへい、わぁーったよ」

捜しゃあいいんでしょ。捜しゃあ。
17 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:35:37.25 ID:BD0/oEEQO
('A`)「で、坊主。その…お前の愛しの彼女の名前…なんつったかな…えーと」

( ><)「ちんぽっぽちゃんですか?」

('A`)「そう、ちんこっこちゃん」

从゚∀从「ベタ過ぎて笑えぬぞ」

(;'A`)「うるへー!君も前に同じような下ネタ言ってただろうが!」

( #><)「……」

おっと。

('A`)「で、そのちん以下略ちゃんだかはどんな顔してるんだよ」

( ><)「……どんな顔って言われても…」

小首を傾げるガキ。

まぁ、確かにどんな顔か聞いたところでしょうがないか。
19 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:37:04.45 ID:BD0/oEEQO
('A`)「じゃあ、格好だ。格好。どんな格好してんのよ」

( *><)「……可愛い格好です」

(#'A`)「あーあー殺しちまおうかなこのクソガキはぁぁ」

( ;><)「ひ、ひぃぃぃぃ!?止めて下さい!止めて下さいぃぃ!前途有る少年の未来を奪わないで下さいぃぃぃ!」

ハインの背後へと全力で撤退するクソガキ。

从゚∀从「子供を虐めてもしょうがないだろう。もっと建設的な方向に話を進められないのか?」

クソガキを庇う鋼鉄の処女。

まるでこう見ると、姉弟みたいだ。
20 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:38:41.17 ID:BD0/oEEQO
('A`)「そういえばお前、さっきハインの事をお姉ちゃんだとか言ってたな」

( ;><)「それは…その…お姉ちゃんと似てるから…」

(*'A`)「ぎゃはははははは!お前シスコンかよ!シスコーンかよ!うはwwシスコンwシスコーンwwwシリアル乙www」

( ;><)「ち、ちがっ…!」

从゚∀从「おい」

突然目の前に拳が迫った、と思ったらもう遅かった。

Σ(#)A゚)「ぶべらっ!」

从゚∀从「いい加減にしろ。貴様の悪乗りは余りにも目に余る」

教育的指導……効きました。

(#)A`)「ずびばぜん」

从゚∀从「……しかし、具体的な情報が無いとどうしようも無いな。何か、特徴みたいなものは無いのか?」

( ;><)「特徴……うーん…うーん……」

そう言って唸りだしたガキは、ほうっておけば来世までうんうん言ってそうだった。

从゚∀从「まぁ、仕方ないな。取り敢えず、君がその少女とはぐれたという駅周辺をくまなく捜すしかあるまい」

( ><)「はい……」
23 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:40:55.04 ID:BD0/oEEQO
从゚∀从「しかし、件の少女の顔を知っているのは君だけだ。私達も同行するが、捜すのは君に任せたぞ」

( ><)「は、はいっ!」

頷くガキ。
それに目線を合わせるよう腰を落としたハインは、ガキの頭に手を置くと。

从^ー从「安心しろ。直ぐに見つかるさ。見つかるまでは、私達が付いている。絶対に見つけてやろう」

オレも見た事が無いような、満面の笑みを浮かべた。

( *><)「…はい!」

元気いっぱいに首をかくかくさせるガキ。

('A`)y-「……」

マルボロに火をつけるオレ。

('A`)y-「あー……」

何だろう。こういう絵も、悪くないなぁなんて思ってる自分が居る。

('A`)y-「……うん。これは、ギャルゲーだったら間違いなく一枚絵ですね」

CGゲットだぜ!

('A`)y-「なーんて……」

なら、このクソガキにもちっとは感謝してやってもいいかな……なーんて。そう、思えるのであった。
25 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:44:15.03 ID:BD0/oEEQO
 ※ ※ ※ ※

━━駅の入り口付近に腰を下ろして雑踏を見つめていると、随分と自分に余裕が有るような錯覚に陥る時がある。

カバンを担いだサラリーマン、紙袋を下げたオタク、小走りに駆けていく義腕のゴロツキ。

社会が全速力で回転する中、自分だけがその回転の輪から外れて傍観者となったような、そんな感覚だ。

('A`)y-「あんたらは、何をそんなに焦っているんだい?」

“お前が止まっているだけだよ”

脳内哲学者のフョードル先生(オレの七つある人格の内の第四の人格。皮肉屋)が、冷ややかな言葉の槍をオレへと向ける。

休日のニーソク駅周辺は、やはり人の波でごった返していた。

('A`)y-「こんなんで見つかるんかねぇ……」

ハインとガキは、オレの座ってる位置から少し離れた場所で、道行く人々の顔を確認しながら右往左往している。

('A`)y-「つうかさ、よくよく考えてみたんだけど、ここに12歳ぐらいのガキが来てれば一目瞭然だろ」

休日とは言え、ニーソクという街はVIPの中でも屈指の治安の悪さを誇る掃き溜め区画だ。
27 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:47:17.45 ID:BD0/oEEQO
毎日、誰とも知らない奴がこれまた誰とも知らない奴に殺されているような街に、そんな幼い少女がそう何人も彷徨いている筈もない。

居れば直ぐにわかるだろう。

从゚∀从「うーむ……」

そんな事を考えていると、難しい顔をしてお二人が戻ってきた。

('A`)y-「やっぱり居なかったか」

从゚∀从「あぁ」

( ><)「はい……」

('A`)「だろうなぁ。こんな肥だめみたいな場所にお前くらいのガキが居るなんて珍しい事だから、居れば直ぐにわかると思うんだ」

从゚∀从「確かに。一度、場所を変えてみた方がいいかも知れぬな」

('A`)「あぁ」

30 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:49:17.52 ID:BD0/oEEQO
合点承知、と腰を上げるオレ。背骨がパキパキと音を立てる。

運動不足かねぇ、そんな筈は無いんだが。なんて思いつつも大きく背伸する。

\('A`)/「ふぁ…」

ドン。

(;'A`)「うぉっ」

背中に衝撃。痛みは大して無いが、思わず尻餅をついてしまった。

「す、すいません!」

謝罪の声にそちらを見れば、走り去っていく背広の背中。

あぁ、ぶつかられたのか、なんて今更気付く。
32 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:51:17.39 ID:BD0/oEEQO
('A`)「ったく、気をつけろよな……」

ズボンの尻を叩きながら立ち上がり、そこで気付いた。

('A`)「無い」

地面を見る。

(;'A`)「無い…」

全身のポケットというポケットをまさぐってみる。

(;'A`)「無い!」

从゚∀从「どうした?夢が無いのはいつもの事だろう」

(;'A`)「違ぇよ!あのチョーカーが無いんだよ!」

从゚∀从「あぁ…あの……」

(;'A`)「はっ!?」

まさか。

(;'A`)「さっきぶつかった時に!?」

間違いない。さっきまでちゃんと尻ポケットに入れてたんだ。どこかで落とした筈が無い。
35 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:53:19.77 ID:BD0/oEEQO
(;'A`)「くそったれ!」

さっきの背広姿を捜す。

ニーソクの目抜き通り、雑踏の海の中、小さくなっていくシルエット。まだ間に合う。

(;'A`)「スリだぁぁぁぁぁあ!」

全速力で駆け出す。

从;゚∀从「おい馬鹿、待て!」

(;'A`)「悪い、ありゃ大切なものなんだ!どうしても取り返さなきゃならねぇ!ガキの方は頼んだぞ!」

後ろも見ずに、謝罪文を述べるオレの足は既にギア2に突入。トップスピードまで加速すべく歯車をぐるぐると回していた。
37 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:55:43.74 ID:BD0/oEEQO
(;'A`)「誰か!誰かその人を捕まえてくださぁぁぁあい!スリでぇぇえす!」

(´<_`; )「なんだって!?よしきた任せろ!」

知らないあんちゃんが、オレの前を歩いている姉ちゃんに飛び付いた。

从;'ー'从「ふぇっ!?」

(´<_`* )「こ、こいつぅ…はぁはぁ…人の心をちょろまかすなんて、いけない子だ…はぁはぁ」

从;'ー'从「あれれぇ〜!?」

地面に転がり、絡まり合う二人。

(#'A`)「そぉい!」

あんちゃんの顔面を踏みつけるオレ。

(´<_(#)「ぶみゃ!?」

よくわからないが、制裁を加えておいた。

(;'A`)「畜生!待てっ!待ちやがれぇぇ!」

人混みを掻き分け掻き分け進む。
何事かと振り返る人々に、自分が大衆の眼差しを独り占めにしている事に気付いたが、なりふり構ってなど居られない。
39 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 22:58:14.46 ID:BD0/oEEQO
(;'A`)「くそっ!くそっ!くそっ!」

 _、_
( ,_ノ` )y━・~「待てぇぇぇえ〜ルゥパァ〜ン!」

後ろからの声に振り向けば、十メートル程後ろからオレを追い掛けてくるトレンチコートにハンチングキャップのオヤジ。

(;'A`)「なんなんだよ……」

 _、_
( ,_ノ` )y━・~「恋は追われるより追いかけたいってね……」

(;'A`)「いや、わけがわからんが……」

とかなんとか言ってる間にも横に並んでいるオヤジ。
41 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:00:02.58 ID:BD0/oEEQO
 _、_
( ,_ノ` )y━・~「時に青年、君はコーヒーは飲むか?」

(;'A`)「の、飲みますけど……」

 _、_
( ,_ノ` )y━・~「ほう。で、ブラックか?」

(;'A`)「気分によって変えるんで……」

 _、_
(#,_ノ` )y━・~「馬鹿野郎!コーヒーを飲む時は必ずブラック!砂糖なんかいれるな!あんなもの、豚が飲むもんだ!」

(#'A`)「うるせぇから黙ってろ!」

ランニングの腕振りによる慣性を利用して裏拳をかます。

「ぎゃあぁぁぁあ!目が目がぁ!」

顔面を強打したオヤジのリアクションは実に滑稽なものだった。都合によりお見せ出来ないのが残念だ。

(;'A`)「どいつもこいつも…邪魔ばっかしやがって!」

そんなドリフみたいな事をしている間にも、オレとやっこさんの距離はぐんぐん縮まっていた。

('A`)「へっ、こちとら足が資本なんだ。そこらのひったくりに負けてたまるかよ」
43 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:02:02.21 ID:BD0/oEEQO
目抜き通りを抜け、歓楽街を抜け、疾走するオレとホシ。

やがて景色はニーソクの本来の顔を見せ始め、腐るほど溢れていた人影もまばらになってくる。

裏路地の裏のそのまた裏、ビルとビルの間。

∠=#`凵L)「フギャー!」

お昼寝中の猫を飛び越え。

\(^o^)/「もっしー?私、私ぃ。ケンジさぁ、今から暇ぁ?……ってきゃあ!」

ギャルのスカートを翻し。

\(^o^)/「もうお嫁にいけない…人生オワタ」

(#'A`)「おぉぉぉ!」

ビルの谷間を抜ける頃には、オレの足のギアはトップスピードに乗っていた。
44 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:03:49.77 ID:BD0/oEEQO
彼我の距離は目測十メートル。

追い付ける!

思った瞬間、奴の動きが急に止まった。

('A`)「チャンス!」

足元に段差発見。踏み台にはもってこい。

足を乗せ、踏ん張り。

(*'A`)「踊ろう!ニルヴァーシュ!」

宙へ。

(#'A`)「アーイキャーンフラァァァァイ!」

飛び出す。

落下目標目掛け、今、必殺の!

(#'A`)「カットバックドロップタァァアン!」

「え?え?ぎゃぁぁぁあ!?」
46 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:06:25.86 ID:BD0/oEEQO
衝突!物凄い勢いで飛び付いてきたオレを、奴は受け止めきれる筈も無く。

(#'A`)「うぉぉおぉお!」

オレ達は絡まり合ったまま、地を転がる転がる転がる。

その勢いが削げ、回転が止まると同時にオレは立ち上がり、懐のカスタムデザートイーグルを抜き構えた。

('A`)「観念しろ。お前がオレから逃げ切る事など不可能なのだ」

「痛たたた……」

うつぶせにうずくまり、腰をさするひったくり野郎。

ふてぶてしい態度に、オレの怒りがマスタースパーキン。

(#'A`)「おらぁ!さっさと立てい!そして、素直にブツを返しやがれ!」

「な、何を言ってるんですか?」

困惑した声を上げて立ち上がる男。

その顔を見た瞬間、オレの全身を電撃に打たれたような感覚が走った。

(;'A`)「違う…他の男とは違う…スピリチュアルなレベルでわかる……まさか、これが……」

恋?
50 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:09:55.94 ID:BD0/oEEQO
(;-@∀@)「もぉー、いきなり何するんですかぁ……」

(;'A`)「田所さぁぁん!」

(;-@∀@)「は?」

(;'A`)「田所さん!田所さんの秘書さんじゃないか!何であんたがひったくりなんか……」

(;-@∀@)「いや…あの……」

(;'A`)「はっ!?まさか、こないだの任務で田所さんが体を失った事の恨み…だとか!?」

(-@∀@)「あの、もしかして、人違いじゃ無いんですか?つうか田所さんって誰?」

('A`)「え」

(-@∀@)「それと、ブツを返せと言われましても、私、あなたとは初対面でして……何も、あなたからお借りした覚えは無いのですが……」

('A`)「マジで?」

(-@∀@)「マジで」

('A`)「……」

(-@∀@)「……」

(;'A`)「はっずっかしぃぃぃい!」

オレの雄叫びが、ニーソクの街に木霊した。
53 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:12:46.92 ID:BD0/oEEQO
 ※ ※ ※ ※

━━ハリウッド顔負けのアクションを演じたオレは、ボロボロになった衣服の汚れを叩きながら、駅を目指していた。

太陽は既に沈み、街のネオンはいよいよもってその毒々しい輝きを強めつつある。

('A`)「結局、オレの不注意で落としちまったのかな……」

今は、そう思い込むしか無い。

('A`)「はぁ……オレってば、肝心なとこで詰めが甘いよな…」

その上、何をやっても中途半端で。

('A`)「……あぁ、なんか自分に絶望した」

ハイン達は、まだ待っているのだろうか。

あいつらにも、謝っとかなきゃな。
55 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:14:09.18 ID:BD0/oEEQO
('A`)「はぁ……」

溜め息をつく。駅はもう目の前だ。

('A`)「えぇ…と」

二人の姿を捜し、視線を右往左往させる。

駅の出入り口付近のベンチの上に、姉弟のように並んで腰掛ける二人の姿を見つけた。

('A`)ノ「おぉい、悪かったなぁ」

精一杯の誠意を込め、手を振りながら駆け寄る。

从゚∀从「戻ったか」

('A`)「本来に済まなかった。勝手に突っ走っちまってよ。その上、勘違いだったってんだからな。最高の笑い話だろ」
57 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:16:43.20 ID:BD0/oEEQO
自嘲の笑みを浮かべ、隣のガキに目を移す。

( ;><)「……」

('A`)「坊主、悪かったな。だけどよ、どうしても大事なものだったんだ。無くす訳にはいかなくてさ……」

ガキは何も言わず、俯いている。

やべぇ、そんなに怒らせたのか?

心なしか、ぷるぷると肩が震えているが……。

从゚∀从「あぁ、こちらも謝らなければいけない事がある。…そうだろう?」

突然話に割り込んでくると、ハインリッヒは坊主の肩に手を置く。

('A`)「へ?」

何を謝るのよ?とか考えてると、突然ガキが立ち上がった。

( ;><)「ご……」

('A`)「ご?」

( ;><)「ごめんなさい!」
59 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:18:57.84 ID:BD0/oEEQO
勢いよく頭を垂れるワカンナインデス少年12歳(想定)。

オレも突然の事に何が何だかワカンナインデス。

('A`)「いや、意味がワカンナインデスけど……」

( ;><)「ど、ドクオお兄さんの大切なちょーかーを盗んだのは、僕なんです!」

('A`)「……」

あー。冷静になれ。冷静になれドクオ。いいか、相手はガキだ。マジになったって何の特にもなりゃしない。そんな事はこの一日で分かっただろうが。クールに。クールになれ。大人の余裕で許してやるんだ。
64 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:20:43.44 ID:BD0/oEEQO
(#'A`)「ぜってぇぇ許さねー!」

( ;><)「ひぃぃい!?」

(#'A`)「オレがどれだけ必死こいて犯人追い掛けたかわかってんのかてめぇ!まぁ勘違いだったけどそれは置いといてとにかくオレが今日てめぇの悪戯のせいで駆けずり回った総走行距離は一体何キロメートルでしょうか!
制限時間は一分ですちっちっちっはいアウトー!不正解者には鉄拳制裁の罰ゲームが待ってまーす!」

从゚∀从「まぁ落ち着け単細胞生物。全面的に彼が悪いとはいえ、彼の弁解も聞いてやってはどうだ?」

すぐに間に入るハインお姉ちゃん。

くそぅ、保護者面しやがって……。

( ;><)「ぼ、僕…こんな引っ込み思案な性格だから、学校でもいじめられてて……」

唐突に赤裸々なワカンナインデス少年。

( ;><)「ちんぽっぽちゃんは、そんな僕をいっつも庇ってくれるんです。それは凄く嬉しいんですけど、いつまでもそうやってちんぽっぽちゃんの後ろに隠れてばかりの自分が……その…」

('A`)「情けねぇー」

从゚∀从「貴様が言うな」

殴られました。

65 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:23:02.77 ID:BD0/oEEQO
(#)A`)「……続けて」

( ><)「ドクオお兄さんの言うとおり、自分でも自分が情けないんです。それで、僕だってちょっとは男らしいんだぜってところをちんぽっぽちゃんにも見せたくて……」

今日のデートに誘ったんだっけな。

( ><)「……でも、駅に着いた途端にはぐれちゃって……ちんぽっぽちゃん、本来はここに来るのを最後まで嫌がってたんです。それでも、恐いお兄さんが居ても僕が守るからって…無理矢理連れてきちゃって……」

('A`)「……」

( ><)「結局、僕はちんぽっぽちゃんを守るって約束も守れなくて……ちんぽっぽちゃんに会ったら、何て謝ったらいいかって考えたら……もう……」

( ;><)「だから、僕、ドクオお兄さんが転んだ時に落としたちょーかーを見つけた時も、直ぐにこんなイヤらしい言い訳が頭に浮かんじゃったんです……」

( ><)「ドクオお兄さんのちょーかーを拾って、“これを買いに言ってたんだよ。一人にしてごめんね”ってプレゼントしようって……」

('A`)「このガキは……」

( ;><)「ごめんなさい!本当に本当に、ごめんなさい!このちょーかーは返します!許して下さい!」

67 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:25:02.09 ID:BD0/oEEQO
ポケットからチョーカーの入った包みを取り出し、頭を下げながら差し出すガキ。

俯いたガキの顔の下、アスファルトに出来た真新しい染み。

('A`)「……情けねぇ」

( ;><)「ごめんなさい!」

('A`)「馬鹿野郎。男の癖に泣くんじゃねぇよ」

( ,><)「ごめんなさい!」

('A`)「……やれやれ。さっきプレゼントっつったか、お前」

( ><)「……はい」

('A`)「いいか?プレゼントってぇのは、何で贈ると思う?」

( ,><)「…相手を、喜ばせる為……ですか?」



68 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:26:32.57 ID:BD0/oEEQO
('A`)「半分正解だ。じゃあ残りの半分は何だと思う?」

( ,><)「……わかんないんです」

('A`)「気持ちを伝える為だ」

( ,><)「気持ちを伝える…?」

('A`)「あぁ。感謝でもお祝いでも好意でも愛情でも何でもいい。プレゼントってのはな、気持ちを伝える為の手段でも有るんだよ」

( ,><)「は、はぁ……」

('A`)「例えば、お前がオレからパクったチョーカーをそのまま彼女にプレゼントするとしよう。その時、そのチョーカーはお前の気持ちを全て相手に伝えられるか?」
71 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:30:44.55 ID:BD0/oEEQO
( ,><)「それは……」

('A`)「伝えられないよな。お前がパクった事を隠して、何食わぬ顔でこれを渡したとして、お前がこのチョーカーをパクった時の罪悪感だとか、そういったものは伝わらないよな?」

( ><)「……はい」

('A`)「第一、プレゼントってのは罪悪感なんてみすぼらしい気持ちを伝える為のもんじゃない。お前も言ってただろう?プレゼントってのは、相手を喜ばせる為に贈るものだってな」

( ,><)「はい……」

('A`)「だから、相手を喜ばせる為にも、自分の気持ちを伝える為にも。プレゼントは、自分で選んで、自分のお金で買って、自分の気持ちを乗せた自分の手で、渡さなきゃなんねぇんだよ」

( ,><)「……」

从゚ー从「……」

('A`)「わかったか?」

( ,><)「はい…わかりました」

('A`)「本当かぁ?」

( *><)「はいっ!僕、ちゃんと自分で選んで、自分のお金で買って、自分の手でちんぽっぽちゃんに渡したいです!」

('A`)「ならそれ、やるよ」

( ><)「へ?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、オレを見上げるガキ。
やはり、こいつはオレの嗜虐心をくすぐって止まない。
73 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:33:17.45 ID:BD0/oEEQO
('A`)「それをお前にくれてやるって言ってんだあ、バカチン」

だから、その広いおでこちゃんにデコピンをかましてやる。

( ;><)「あぅっ!……っていいんですか?」

('A`)「あぁ。でもタダではやらねぇぞ。きちんと、オレから買え」

( ;><)「え……」

('A`)「五百円……んー、失血大サービスで三百円でいいぜ!」

にやり、と口元を歪めてみせる。

( ><)「あ……」

阿呆面のガキもオレのにやけ面に笑みを取り戻すと、財布を取り出しイソイソとやり出す。

そうして五百円玉を取り出すと、オレに差し出し生意気にもこんな事を抜かしやがった。

( ><)「お釣りはいらないんです!」

('ー`)「……バーカ、オレが割引くと思ったのか?五百円でちょうどだよ」

从゚ー从「……やれやれ」

はにかむクソガキ。にやけるオレ。腕を組んで見守るハインお姉ちゃん。

そんなオレ達の耳に、遠くから独特の言い回しを多分に含んだ声が飛び込んできた。
78 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:37:15.47 ID:BD0/oEEQO
「ワカンナインデスー!ワカンナインデスー!どこに行ったっぽー!?」

( ;><)「ちんぽっぽちゃん!?」

飛び上がるガキ。

どうやら、探し人のご登場みたいだ。

('A`)「おぅガキ、愛しの彼女かい?」

( *><)「は、はいっ!あの声は、ちんぽっぽちゃんの声に間違いないんです!」

('A`)「……なら、さっさと行ってやれ」

( ><)「で、でも……どんな風に謝っていいか」

('A`)「バーカ。オレに謝った時みたいに鼻水垂らしながら土下座すればいいんだよ」

( ;><)「ぼ、僕は鼻水なんか垂らしてないんですっ!」

80 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:39:47.10 ID:BD0/oEEQO
('A`)「いいからさっさと行け!守るって約束したんだろう?」

( ;><)「あうあう……」

('ー`)「そんで、自分の気持ちを伝えるんだろう?」

( *><)「あぅあ……」

オレとハインの顔を、交互に仰ぎ見るガキ。

从^ー从「……行っておいで」

本日二度目のエンジェルスマイルを浮かべるハイン。

( *><)「はいっ!」

それに送り出され、ガキは人混みの中へと駆けていった。
84 名前: ◆cnH487U/EY :2008/10/07(火) 23:44:15.51 ID:BD0/oEEQO
「どこほっつき歩いてたっぽ!まったくあんたは私が居なきゃ何も出来ないっぽね!」

「ごめんなさい!ごめんなさいなんです!」

「まったく……本当に…本当に……」

「ちんぽっぽちゃん!あの、僕……」

('A`)「……」

从゚ー从「……」

やがて雑踏がその姿を完全に飲み込んでしまうまでをオレ達は見届けると、どちらからともなく歩き出す。

夜の帳が下りた街は、完全にいつもと同じ顔でオレ達の家路を傍観し出した。

('A`)「ったく。らしくねぇなオレ。めちゃめちゃ臭いだろ、あの台詞は」

从゚∀从「そうだな。貴様には全く持って似つかわしくない」

('A`)「ですよねー」

从゚∀从「だから、そんな台詞が似合う男になれ」

(;'A`)「は?いやいやいや!」

从゚∀从「それを私が望むのは、当然だと思うが?」

一日が、終わる。

戻る

inserted by FC2 system