◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:13:10 ID:6CCOWjXw0<>
どーも作者です。

新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。

半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。


話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。


この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。


まとめ

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/

大変お世話になっております。

.<>( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:15:51 ID:6CCOWjXw0<>
ソードアート・オンライン≪SAO≫

ナーブギアという機械を使用してデジタルの世界にフルダイブすることにより、全百層からなる浮遊城『アインクラッド』をクリアしていくゲームのタイトル。
2022年11月6日正式稼働。その当日、メイン製作者の手によりプレイヤーはアインクラッドに閉じ込められ、現実の世界に戻ること≪ログアウト≫が出来なくなってしまった。
現実世界に戻るには各層にいるボスモンスターをすべて倒し、百層すべてを攻略するしかない。
現在(2024年2月)半分ほどが攻略されている。
また、アインクラッドで死ぬと現実世界でも死ぬよう、ナーブギアに仕組みがされている。

攻略組
迷宮を攻略し、ボスの部屋を探し、ボスを倒し続けているプレイヤー達を指す。
アインクラッドに囚われたプレイヤーの数パーセントしかいない。
現在は『血盟騎士団』『聖竜連合』の二大ギルドと幾つかの中小ギルド、ソロプレイヤーがそう呼ばれる。

剣技≪ソードスキル≫
魔法のないアインクラッドでは、各武器の種類ごとに設定された剣技を使用して戦闘を行うことが出来る。
発動させた場合各種補正が行われ、通常の攻撃より強力な攻撃を敵に与えることが出来るたり、防御を行うことが出来る。
一度発動すれば意識をしなくても体が動くが、敵に当てるにはタイミング等それなりに修練が必要。
技の終わりには硬直時間が設定され、その瞬間は完全に無防備な状態となるため使用には注意が必要。また、途中でキャンセルした(された)場合にも硬直は発生する。硬直時間は各技ごとに違う。

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:17:59 ID:6CCOWjXw0<>
各人データ

2024年2月時点
(年齢は、2022年11月時点の年齢)
名前-身長-体型-年齢-肌色-瞳色-髪色-髪型-備考
肌色は「白-肌-小麦」の順に色黒に。
年齢はちゃんと決めてありますが、あえてぼかしました。
男の体型は全体イメージ。
女性の体型はスリーサイズをそれぞれSMLで表記。
身長を含めた体型・顔の造形は、全員現実世界の容姿と同じです。

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:19:53 ID:6CCOWjXw0<>
ギルドVIP
ショボン-172-中肉-十代-白-黒-黒-ショート-ギルドV.I.P.ギルドマスター・料理人「バーボンハウス二号店」マスター
クー-165-LSM-十代-白-黒-黒-ストレートの長い髪-ギルドV.I.P.ギルドサブマスター・薬剤師
ブーン-174-ぽちゃ-十代-肌-黒-黒-短髪-道具屋「道具屋Booon」店長
ツン-159-SSS-十代-白-薄い茶-金-ツインテールの巻き髪-裁縫師
ドクオ-163-ガリ-十代-白-黒-黒-長めショート(前髪は目が隠れるくらいある)-昔片目だけ赤にしたことがある。
ジョルジュ-182-ガッチリ-二十代-小麦-黒-黒-ソフモヒ
兄者-175-中肉-十代-白-黒-黒-長めショート-鍛冶屋(武器)「流石武具店」副店長流石兄弟の兄
弟者-175-中肉-十代-肌-茶-焦げ茶-短めショート-鍛冶屋(防具)「流石武具店」店長流石兄弟の弟
フサギコ-170-細-十代-小麦-黒-茶色-ウルフカット-調理人「バーボンハウス一号店」店長
モナー-188-ガッチリ-二十代-肌-黒-黒-短めショート-育成師「V.I.P.牧場」牧場主
クックル-186-細-二十代-小麦-茶-茶-短めショート-栽培師「V.I.P.農場」農場主
モララー-174-中肉-十代-小麦-黒-焦げ茶-長めショート-細工師・工芸師「モララー細工工房」店長
ギコ-173-中肉-十代-小麦-黒-黒-短めショート
しぃ-155-MSM-十代-肌-茶-茶-ショート-調理人兼裁縫師

ギルドNS
シャキン-178-中肉-二十代-肌-黒-黒-ショート-ギルドNSギルドマスター
ミルナ-180-ガッチリ-二十代-肌-焦げ茶-黒-短めショート-ギルドNSギルドサブマスター
デミタス-175-中肉-二十代-白-黒-焦げ茶-長めのウエーブ
ハイン-171-SSS-二十代-白-薄い茶-薄い茶-肩までのストレートワンレングスちょっと外はね
エクスト-173-細-十代-肌-黒-茶-ショート
トソン-160-MSS-二十代-肌-黒-黒-肩にかかる黒髪

ギルドANGLER
ロマネスク-174-中肉-三十代-肌-黒-焦げ茶-短めショート-ギルドANGLERギルドマスター
ヒッキー-160-ガリ-十代-白-黒-黒-短めショート

ぃょぅ-168-細-十代-肌-茶色-焦げ茶-長めショート-ソロの何でも屋
ヘリカル-150-SSS-十代-肌-黒-薄い茶-ツインテール-ぃょぅの妹

プギャー-174-中肉-二十代-小麦-黒-黒-ソフモヒ-ソロプレイヤー
シラネーヨ-178-中肉-二十代-肌-茶色-茶色-短髪-ソロプレイヤー
ブーム-169-細-十代-肌-黒-茶色-短めショート-ソロプレイヤー

その他のキャラクターは作成中。
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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:21:32 ID:6CCOWjXw0<>
番外
アルゴ-原作登場キャラクター。情報屋。金褐色の巻き毛と頬に書いた三本髭のメイクが特徴の小柄な女性。通称≪鼠のアルゴ≫


上記登場人物の中で一番を決めると、

ワイルド系イケメン−ジョルジュ
美形系イケメン−モララー
知的イケメン−デミタス

和風美人−クー
洋風美人−ツン
可愛い系−しぃ
中性美形−ハイン


残念フェイス−言わずと知れた彼


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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:25:59 ID:6CCOWjXw0<>
年表

2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
11月
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月
04月フサギコ「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル「三話 それから」
06月クックル「四話 緑の手」
07月
08月
09月
10月
11月
12月ギコ・しぃ「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月

−−−続く−−−
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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:28:21 ID:6CCOWjXw0<>


第九話 君への手紙



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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:30:20 ID:6CCOWjXw0<>
0変わらない日々


2024年3月頭

『バーボンハウス』1号店のドアが開かれると、元気な、けれど優しい声が出迎えてくれる。

ミ,,゚Д゚彡「いらっしゃいませ!」

この店のマスター、ギルド『V.I.P.』の侍、フサギコである。
同じギルドメンバーのしぃやクー、あるいはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)に任せて不在となることがたまにあるが、基本的にはいつも彼がカウンターの中にいる。

(´・ω・`)「お疲れ」

ミ,,゚Д゚彡「ショボン!」

そして扉を開けたのは、この店の初代マスターであるショボン。そして彼はフサギコの所属するギルドのギルドマスターでもある。

(´・ω・`)「お昼も過ぎて、落ち着いたみたいだね」

店の中には一組の男女。
奥で楽しそうに会話をしている。

(´・ω・`)「いいお客さんだね。窓際に座っていてくれるから、一見さんが入りやすくなる」

カウンターを出ようとするフサギコを、軽く手をあげて制しながらカウンターに備え付けられた高めの椅子に腰かけるショボン。

ミ,,゚Д゚彡「突然どうしたのだから」

座ると同時に湯気の立ち上るカップを差し出すフサギコ。
ショボンは礼を言いながら一口啜り、にっこり微笑んで不安そうにこちらを見るフサギコに美味しかったことを伝えた後、二つの紙を実体化させた。

(´・ω・`)「はい、これ。ギコと兄者から。そろそろOK出してあげたら?」

ミ,,゚Д゚彡「!」

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:31:46 ID:6CCOWjXw0<>
差し出された二組の感想文を受け取るフサギコ。

(´・ω・`)「二人と泣きそうだったよ。というか兄者は泣いてたけど」

ミ,,゚Д゚彡「二人ともしょうがないから」

(´・ω・`)「ま、これくらいで勘弁してあげなよ。他の皆の分があるから、それで十分じゃない?それに、常連さんからも感想貰ってるんでしょ」

ミ,,゚Д゚彡「!!し、しょ、しょぼん、知ってたの……」

(´・ω・`)「うん。だって両方に来てくれているお客さんいるからね。話してたよ。感想文を渡したら、デザートサービスしてくれたって」

ミ;,,゚Д゚彡「ご、ごめんだから!」

(;´・ω・`)「いや、別に謝ることはないよ。こっちの店のやり方はふさに任せているんだし。僕も飲み物のサービスは良くするしね」

ミ,,゚Д゚彡「よかったから…」

慌てふためいたフサギコをみて、慌ててしまうショボン。
しかしショボンの言葉であからさまにほっとした顔をしたフサギコを見て、思わず吹き出してしまう。

ミ,,゚Д゚彡「ど、どうしたから」

(´・ω・`)「いや、そんなに気にしなくていいのにって思ってさ」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンから受け継いだ大事な店だから!」

胸を張ってきりっとした顔を見せたフサギコを見て、今度は困ったような笑顔を見せるショボン。

(´・ω・`)「この店作った時に一緒にメニュー決めたりしたんだから、マスターは僕だったけどふさの物でもあったのに」

ミ,,゚Д゚彡「違うから。やっぱりショボンの店だから」

(´・ω・`)「屋台の頃から一緒に店をやってたのに」

ミ,,゚Д゚彡「それとこれとは別の話だから」

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:33:23 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)「強情だなあ」

呆れたように、けれど少しだけ笑顔でカップに口をつける。

(´・ω・`)「そういえばさ」

ミ,,゚Д゚彡「ん?なにだから」

(´・ω・`)「感想文は、やっぱりあれが発端?」

ミ,,゚Д゚彡「もちろんだから!」

(´・ω・`)「やっぱりそうなんだ…」

ミ,,゚Д゚彡?

(´・ω・`)「……それ、みんなには言わないでね」

ミ,,゚Д゚彡「え?」

(´・ω・`)「知られたら、また兄者にどんな恨み言を言われるか…」

肩を落とし、深いため息を着いたショボンだった。



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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:36:51 ID:6CCOWjXw0<>
1変わる毎日



2023年4月

早朝。
最前線フロア、転移門を眺めることのが出来る主街区の公園に、ショボンは屋台を出していた。

この電脳世界『アインクラッド』に閉じ込められて五カ月、ショボン達は自分にできることとやれることを模索し、生きていた。

(´・ω・`)「今日も稼ぐぞ〜」

木で出来た移動式の屋台には『バーボンハウス』と書かれた札が取り付けられ、花壇を背に出店の準備を始める。

目の前には噴水。
その向こう側に転移門が見え、周囲にはベンチもあるため人の流れが期待できる。

(a)「お、今日も来てるね」

(b)「あとで来るからおれのお気に入りを残しておいてくれ!」

【最前線フロアの主街区の転移門そばの公園】に出店を続けるうちに常連もでき、安定した売り上げは確保できるようになっていた。

とは言ってもショボン自身の戦闘スキル上げもあって毎日出店できるわけでもなく、また安定はしているが用意した材料が全てなくなるような売り上げを上げることもなく、その停滞した状況にショボンは打開策を模索している状態だった。

(´・ω・`)「頑張って稼ぐよ!」

(´・ω・`)「バグル肉とカーブ豆のピタサンドだね!了解!気を付けて行ってらっしゃい!」

それでも軽口を叩く常連たちに挨拶をし、そして昨日と変わらない今日を過ごす準備をしていた。

その視界の隅に映る一人の男。
いや、少年だろうか。
ショボンは、そこに違和感を感じた。

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:38:24 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)「ん……なんだろう。……あ、そうか」

街から街への移動は、転移門がある街同士ならば、街の名前さえわかれば戦闘エリアを通らずに移動することが出来る。
つまりレベル1であったとしても、攻略最前線の街の名前が分かれば行くことが出来る。

だがそれは本当に「行くことが出来る」だけであり、それ以上でもなければ以下でもない。

例えばレベル1の状態でゲームのスタート地点である≪始まりの街≫からで移動して、色々な街を見ることは出来るが、移動によりコル(アインクラッドでの貨幣は円などではなくコルという。1コルは10円くらいと考えるのが目安であろう)が増えることはないし、移動してもレベル1の強さで高層階の街の外を回るのは自殺行為だ。

つまり、レベルの低い者が上の層にやってきても、街の外を回れるわけではない。
確かに街そのものを楽しむことは出来るが、10層を超えた頃からはレベルの低い者、フィールドで戦闘を行っていない者はほとんどやってこなくなってきていた。

(´・ω・`)「(あの足の防具って多分初期装備だよね)」

ショボンが感じた違和感。
それは視界の隅にいる彼が見るからに低レベルだと思われる姿をしていたことに由来していた。

(´・ω・`)「(よほどレベルが高ければこの層でもあの装備で生き残れるだろうけど、それなら攻略に出てるだろうし、それならあの装備をしている意味がない。別に来ること自体は悪いことじゃないけど、珍しいよね)」

頭の中で考えつつも開店の準備を続けるショボン。

すると客が一人やってきた。

( ・∀・)「もう大丈夫か?」

(´・ω・`)「いらっしゃいませ。バーボンハウスへようこそ」

( ・∀・)「この屋台はサンプルを見てから買えるって聞いたんでけどさ」

(´・ω・`)「今から作りますよ。何か気になるメニューありますか?といっても今日はピタパン3種類に飲み物4種類しかないですけど」

( ・∀・)「全部見てから決める」

(´・ω・`)「かしこまりました。それでは少々お待ちください」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:40:00 ID:6CCOWjXw0<>
調理を始めるショボン。
そしてその後やってきた客を捌くことに注意を払い続けるうちに、朝違和感を感じた少年のことを気にする余裕はなくなっていった。



(b)「残しておいてくれてサンキュー!おれ、これ好きなんだよ」

(´・ω・`)「ありがとうございます。ピタパン65コル、クラルルジュース8コル、セット割引で70コルです」

(b)「もうちょっと安くなると最高なんだけどね」

(´・ω・`)「材料が安くなれば値段も落とせるんですけどね。皆さんが頑張っていろいろ開拓してくれれば安くできるようになるかもですよ。はい、ありがとうございます」

ウインドウ経由でコルを受け取り、品物を渡す。
美味しそうに食べながら歩く戦士と、別の物を買った仲間の戦士が羨ましそうにそれを覗き込む。

(c)「売り切れとはな〜」

(b)「これ、あの店の一番人気なんだよ」

(d)「今度は絶対おれも買う!」

(b)「がんばれ」

笑いながら去っていく三人を見つつ、ショボンが目を細めた。

(´・ω・`)「さて、お昼はこれでひと段落かな」

人の波が落ち着いたのを感じ、材料のチェックをしつつ売り上げを確認するショボン。
売れたといっても予想よりも数割程度売れた程度で、ほとんどの材料は無くなったわけではない。
しかし午後もこの調子で売ることが出来れば足らなくなるのは確実なのと、今日一番人気であった『バグル肉』が無くなってしまったので、補充したいところだった。

(´・ω・`)「(まさか売り切れるとは。ドロップしにくいから街の店で買ってるけど、それだとどうしても高くなっちゃうからいつもあんまり売れないのに。良い狩場でも見つかったのかな)」

メッセージを仲間に送るもやはりドロップしておらず、手持ちにはないらしい。
ついでに情報屋に新規狩場の情報があるかどうかのメッセージを入れた。

(´・ω・`)「(買いに行くにしても屋台をこのままにするのはな…。この世界では持ち主以外は手出しできないはずだけど、心情的に嫌なんだよね。かといって誰かに買ってきてもらうのも悪いしな。今日は迷宮潜ってるはずだから、時間もかかるし、こんなことにクリスタル使いたくないし。諦めて、屋台を設置したまま買いに行くか、一回片付けて屋台ごと持っていくか。でも一回さげちゃうとお客の波が変わるからな…。さてどうしよう)」

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:41:24 ID:6CCOWjXw0<>
それは、ほんとうにほんの気まぐれだった。
普段のショボンならやらないかもしれない。
本当に、ただの、きまぐれ。
何の意味もなく、ふと視線を右方向に向けた時、街路樹の下、簡単に声が届く場所に座り込んでいた彼と目があっただけ。

ショボンは何故か、話しかけた。

(´・ω・`)「いま、暇?」

ミ,,゚Д゚彡?!

これが、二人の出会いだった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:44:14 ID:6CCOWjXw0<>
ミ,,゚Д゚彡「あ、あの…」

(´・ω・`)「急にごめんね。実はお願いがあって。暇だったら、ちょっとこの屋台を見ていてくれないかな」

ミ,,゚Д゚彡「あ、いや……」

(´・ω・`)「食材を買い足しに行くちょっとの間で良いから」

ミ,,゚Д゚彡「え、でも、ふさ!…あ、…おれ」

(´・ω・`)「?ごめん、ほんとにちょっとの時間だからさ。二つ右の通りの商店に行くだけだから、すぐ戻るんで」

ミ,,゚Д゚彡「そ、その、」

座り込んでいたフサギコの横に立ち、両手を合わせて拝みながらお願いをしているショボン。
通り過ぎる歩行者がチラチラとみているが、ショボンは全く気にしていない。

(´・ω・`)「バイト代はそんなに出せないけど」

ミ,,゚Д゚彡「そ、そんなのいいから!あ、……いらないです…けど……」

(´・ω・`)「?いや、そうもいかないけど。労働には対価が必要だよ。あ、そうだ」

屋台に駆け戻り、サンプルで作ったピタパンを持ってくる。

(´・ω・`)「これ、『バグル肉とカーブ豆のピタサンド』っていうんだけどさ、良ければ食べてくれないかな」

ミ,,゚Д゚彡「そ、そんな高い物!だめだか…!だめ、です!」

(´・ω・`)「?あ、さっきの値段きこえてた?これ朝作ってサンプルで置いておいた奴だからさ。いつもは自分の昼ご飯にしちゃうけど、よかったらこれをバイト代にしてくれないかな。もうすぐ耐久値も切れるだろうから早めに食べてね。あ、あともし食べられたら屋台の上に乗ってる二つも食べてくれないかな。誰でもとれるように設定しておくから」

慌てるフサギコにむりやりピタパンを渡し、ウインドウを出すショボン。

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:45:57 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)「…フサギコさん…でいいのかな。もし変なやつがやってきても、メールくれるだけで良いからさ。これに返信してくれるかな。すぐ戻るから大丈夫だと思うけど、じゃ、よろしくね」

目の前にいるプレイヤーにメッセージを出し、そのまま路地に走っていくショボン。
あっけにとられてピタパンを両手で持ったまま立ち尽くすフサギコだったが、意を決したように屋台に近付く。

そして両手に持たされたピタパンを見つめる。

ミ,,゚Д゚彡「……すごくおいしそうだから」

そして、一分ほどじっと見つめた後に勢いよく噛り付いた。



時間にして10分とちょっとだろうか。
食材を購入後戻る道すがらに情報屋から返答が来たため、更に返答していたら思っていたよりも時間がかかってしまい、ショボンは慌てて屋台を設置した場所に戻ってきた。

(´・ω・`)「ごめん!ちょっと遅くなっ……た…?」

ミ,,゚Д゚彡「あ!戻ってきたか…戻ってきました」

そこには変わらず屋台があり、こちらを見て安堵の表情を見せるフサギコがいた。
それは予想の範囲だったが、何故か屋台の前には十数人のプレイヤーが並んでいた。

(´・ω・`)「え?なにこれ」

ミ,,゚Д゚彡「お客さんだか…です!はやく作ってあげてだか…ください!」

(e)「待ってたよ!」

(f)「その兄ちゃんがすごくうまそうに食べてたんだよ!」

(g)「早く作ってくれよ!」

( ´∀`)「モナも食べたいもな!」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(´・ω・`)「え、あ、は、はい」

まったく状況が分からないまでも慌てて屋台に立ち、とりあえずサンプルを作るショボン。

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◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:47:17 ID:6CCOWjXw0<>
三種のピタパンが屋台にならぶと並んでいた人たちから歓声が上がり、それが聞こえた周囲の人たちも寄ってきて、更に列が長くなる。

(´・ω・`)「あ、はい、『バグル肉とカーブ豆』を二つと、『トルメトの実とカープ豆』を一つですね。ありがとうございます。あ、はいトルメトの方はラル菜を抜きですか。じゃあカープ豆を多めにしておきますね」

注文を一人で捌いていくショボン。
いつしかフサギコは列整備を始めていた。

ミ,,゚Д゚彡「仲間同士は一緒に注文だから!二列で並ぶと良いから!最後尾はここだから!横入りはダメだから!」

(´・ω・`)「はい、『トルメトの実とラル菜』を一つと、『バグル肉とカープ豆』を一つ、バグル肉の方はカープ豆少なめですね。ラル菜の方を多くしておきますね」

ミ,,゚Д゚彡「列は落ち着いてきたから…きました」

(´・ω・`)「あ、フサギコさん。ごめん、お使い頼んでいいかな?」

調理をしつつウインドウを出し、メッセージを打つ。

(´・ω・`)「ここにいって書いたものを買ってきてほしいんだ。おかねはこれで」

ミ,,゚Д゚彡「わかったから!」

(´・ω・`)「ごめん、急ぎでね」

ミ,,゚Д゚彡「すぐ買ってくるから!」

メッセージを確認し、添付された地図マーカーを頼りに走り出すフサギコ。

(´・ω・`)「はい!ありがとうございます!」

こころなしか、列がさらに延びた。



ミ;,,゚Д゚彡「お、お疲れさまだから…」

(;´・ω・`)「お疲れ様でした」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 22:48:47 ID:6CCOWjXw0<>
それから二時間近く混雑したのち、やっと列が無くなった。

(;´・ω・`)「ごめんね…結局三回も買い物頼んじゃって。しかもバグル肉が店から無くなったから違う街まで行ってもらっちゃったし」

ミ,,゚Д゚彡「別に良いから!なんか楽しかったから!」

(´・ω・`)「そう?なら良かった」

顔を見合わせて、笑う二人。

ショボンが売り物の飲み物を二つ作り、フサギコを近くのベンチに誘う。

(´・ω・`)「ちょっと休憩しようか」

当たり前のように促されてベンチに座るフサギコ。
途端に楽しそうにしていた表情が一変して緊張した面持ちになった。
それは差し出されたストローの付いたカップを受け取っても同じだった。

ミ,,゚Д゚彡「あ、ありがとうだ…ございます」

(´・ω・`)「こちらこそ、本当にありがとう。最初のお客さんもフサギコさんのおかげだったみたいだし、その後は列の整理とか買い出しとか頼んじゃって。でも、何があったのか教えてもらえるかな?」

ミ,,゚Д゚彡「…ショボンさんが買い物に出た後、屋台のそばに行って、貰ったパンを食べたら、……すごく、すごくおいしくて、……おもわず、…残りの二つも食べてたら、いつの間にか人がいて、『そんなにおいしいの?』ってきかれたから、…おいしかった話をしていたらいつの間にかいっぱいいたか……いました」

(´・ω・`)「…それだけ?」

ミ,,゚Д゚彡「それだけだか…です」

(´・ω・`)「よっぽど美味しそうに食べてくれたのかな」

ミ,,゚Д゚彡「ものすごくおいしかったから!あんなに美味しいの、ここに来て初めてだから!あ!…です」

(*´・ω・`)「そんなに褒めてもらえると嬉しいな」

本気で嬉しがっているショボンを見てフサギコもテンションが上がったのか、矢継ぎ早にどれだけおいしかったのかを話しはじめた。

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:50:14 ID:6CCOWjXw0<>
それぞれの素材のすばらしさ、ピタパンに差し込まれたグザイのバランスの良さ、それぞれの味をまとめる調味料の良さ、それを包み込んで調和を保ちつつも歯ごたえとボリュームをあたえるピタパンの良さを、一つ一つを熱く、細かく、情感豊かに熱弁する。

(*´・ω・`)

自分の作った物の事なのに、その熱の入った語り口調は思わずよだれが出てしまいそうになるショボン。

(*´・ω・`)「(ああ…これを聞かされたらならぶよ。内容も表現豊かでおいしそうだけど、何より熱意が違う)」

ミ*,,゚Д゚彡ノノ

嬉しそうなショボンの表情を見て更にフサギコの語りには熱がこもり、時には身振り手振りを加えながら話す。

(*´・ω・`)「ありがとう、ものすごくうれしいよ」

ひとしきり話した後、高揚した顔のまま貰ったジュースに口をつけたフサギコ。
その隙に心からのお礼を言うショボン。

ミ,,゚Д゚彡「お礼を言いたいのはこっちだから!…!で、です」

(´・ω・`)「…?…。でも、今日の予定は大丈夫だった?狩りとか。…そういえば、あそこで何してたの?」

ミ,,゚Д゚彡!

(´・ω・`)「あ、ごめん。ちょっと気になっただけだから、言わなくても」

ミ,,゚Д゚彡「……あれが落ちるのを、待ってたから」

(´・ω・`)「あれ?」

ミ,,゚Д゚彡「…」

黙って自分の座っていた場所に視線を向けるフサギコ。
そこには細い街路樹があり、赤い果実が生っている。

(´・ω・`)「え…もしかして…」

果実とフサギコの顔を交互に見るショボン。
フサギコが黙って頷く。

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:51:55 ID:6CCOWjXw0<>
(;´・ω・`)「え!?あれ!?あれって落ちるの!?オブジェじゃなくて!?」

ミ,,゚Д゚彡「一日に一回か二回、おちるから。それを食べたり、売ったり」

(´・ω・`)「そうなんだ。知らなかった。高く売れるの?」

ミ,,゚Д゚彡「5コルで売れるから!」

(;´・ω・`)「5コル!?一日待ってそれだけ!?≪はじまりの街≫近くのモンスター倒しても、一時間でもっと稼げるでしょ」

ミ,,゚Д゚彡「……」

(;´・ω・`)「ご、ごめん。でも、足はともかく上の装備は初期装備じゃないから、狩りはしているんじゃないのかなと思ったから」

ミ,,゚Д゚彡「昔は…してた…」

(´・ω・`)「昔?」

ミ,,゚Д゚彡「今は…してない。一人は…こわいから…」

(´・ω・`)「仲間は?まだ下の層で仲間の募集しているところとか、ギルドとかも」

ミ,,゚Д゚彡「…………笑われる」

(´・ω・`)「?」

ミ,,゚Д゚彡「最初の仲間は…ふさ…ぼくのしゃべり方がイラつくからモンスターを倒せないって…」

(´・ω・`)「なにそれ」

ミ,,゚Д゚彡「パーティー募集とか、ギルドの審査とか、いつも……良いときは気にしないけど、状況が悪くなったりすると、怒られたり笑われたり馬鹿にされたり…」

(#´・ω・`)「なにそれ」

ミ,,゚Д゚彡「一人で戦ってると、このまま消えてしまいそうで…怖いから…。あんまり外に出ない…」

(´・ω・`)「消えてしまう?」

ミ,,゚Д゚彡「……一人で戦って、一人で死んだら、それは、この世界にいなかったも一緒だから……」

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:53:30 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)!

ミ,,゚Д゚彡「…こんなに喋ったの、久しぶり…。ありがとう」

お辞儀をし、立ち上がろうとするフサギコの腕をとっさに掴むショボン。

ミ,,゚Д゚彡「?」

(´・ω・`)「わすれもの」

ミ,,゚Д゚彡「え、な、なにも」

怪訝な顔をするフサギコの前でウインドウを出すショボン。
するとフサギコの前にウインドウが現れる。

『shobonさんからフレンド登録の申請があります。』

『 YES  or  NO 』

ミ;,,゚Д゚彡「え?」

(´・ω・`)「お願いできないかな」

ミ;,,゚Д゚彡「え、あ、で、でも」

(´・ω・`)「今日短い間だけど一緒にお店をやれて、楽しかった。だから僕はまたこんな一日を過ごしたいんだけど、フサギコはどうだった?」

ミ,,゚Д゚彡「あ…あ…」

(´・ω・`)「喋り方も、気にならない。っていうか、気にする方がどうかしてるよ。まあ周囲に特徴的な喋り方をする奴がいるってのもあるかもしれないけど」

ミ,,゚Д゚彡「で、でも」

(´・ω・`)「またお店、手伝ってよ。他にもメニューはあるから感想聞きたいし、新メニューを作ったら評価してほしい。っていうか、フサギコも料理スキルあげて一緒に作らない?」

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:54:35 ID:6CCOWjXw0<>
ミ,,゚Д゚彡「…ふ、ふ…」

(´・ω・`)「なに?」

ミ,,゚Д゚彡「ふ、ふさは…じ、じぶんのこと……ふさって呼ぶから…。どんくさいから…。片手剣も、槍も、うまく使えないから…。列並べるのも下手だったから………。喋り方が……変だから……」

(´・ω・`)「戦いがうまいから、列を整理するのがうまいから友達になりたいわけじゃない。話をして、一緒に働いて楽しかったから友達になりたい。喋り方なんて、まったくきにならない。というか、個性だから良いんじゃないかな。今まで変なやつに会いすぎたんだよ。フサギコは」

ミ,,゚Д゚彡「しょ、ショボンさん…」

(´・ω・`)「呼び捨てで良いよ」

ミ,,゚Д゚彡「ショボン…」

(´・ω・`)「なに?ふさ」

ミ,,゚Д゚彡「…ありがとうだから」

『YES』がクリックされ、二人のフレンドリストに互いの名前が登録された。

自分のフレンドリストを確認し、思わずにやけてしまうフサギコ。

(;´・ω・`)「で、さっそくで悪いんだけどさ」

ミ,,゚Д゚彡?

立ち上がりながらためらいがちに声をかけるショボン。

(;´・ω・`)「この後も手伝ってもらっていいかな?」

屋台を指さしながら向かってくる数人をみて、慌てて飲み物を飲み干すショボン。

ミ;,,゚Д゚彡「わ、わかったから!」

二人が急いで屋台に戻ると、夕方一人目の客がオーダーを始めた。



.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:56:18 ID:6CCOWjXw0<>
2楽しさと戸惑いの日々



フサギコが馴染むのは早かった。
 _
( ゚∀゚)「おう!よろしくな!今度一緒に狩りに行こうぜ!」

川 ゚ -゚)「ふさがバーボンハウスの手伝いをしてくれるから助かるよ。私は薬作りに専念できる。あ、でも他に気になることが出来たら言えよ。ショボンに流されるなよ。あいつはそういうのがうまいから」

( ^ω^)「お?僕の顔に何かついてるかお?喋り方?気にしたことないお。ふさはなにか気にすることがあるのかお?」

ξ゚听)ξ「ま、この喋り方じゃなきゃブーンじゃないしね。あんたも一緒よ。ふさ。気にするだけ無駄。気にして離れる奴なんかほっときなさい」

( ´_ゝ`)「片手剣も槍も苦手?だが打撃系っぽくもないしな…。投擲なんて選ぶのはうちのギルマスくらいだろうし。曲刀とか使ってみるか?とりあえずこれ持ってけ」

(´<_` )「その装備じゃ心もとないな。とりあえずこれとこれとこれもってけ。服はツンが用意してたから、ちゃんと着替えろよ。余ってたやつだから気にするな。あー、じゃあ、今度素材集めの探索付き合ってくれ」

('A`)「遠慮とかしたら殴られるから気をつけろよ。嫌ならイヤ、嬉しいならうれしい。はっきりしとけ。ちゃんと言えば無理強いはしないから……多分」



ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから!」



(´・ω・`)「ギルドに入らない?」



ミ,,゚Д゚彡「ふさにはもったいないから!」



.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:58:00 ID:6CCOWjXw0<>
毎日のようにショボンとフサギコは一緒に屋台で働き、時には仲間達とパーティーを組んでクエストやフィールドダンジョンを探索した。

他の武器よりは相性が良かった曲刀にフサギコも慣れ、他のメンバーよりも少しレベルは低いものの同じように戦うことが出来るようになっていった。

持って生まれた特性か全員と呼吸を合わせることもでき、それぞれの職業スキルに合わせた素材集めや戦闘訓練などにも付き合ううちに全員にとってかけがえのない仲間となりつつあった。

だがしかし、ギルドの誘いだけは断っていた。


.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 22:59:48 ID:6CCOWjXw0<>
 _
( ゚∀゚)「はいれよギルド〜。もっといっしょに遊ぼうぜ」

川 ゚ -゚)「バーボンハウスの方は、いまでもコルはもらってないのか?食事だけ?まったく…ギルドの事といい、何を意地になってるんだ」

( ^ω^)「ふさもギルドに入ったらもっと楽しくなるお!なんではいらないんだお?ときどき隠れてため息をついているのと関係あるのかお?」

ξ゚听)ξ「資格がない?うちのギルドにはいる資格なんてないわよ。重要なのは、私たちとどれくらい合うかってことくらい。こんだけ一緒に戦ってるんだから、もう入っちゃいなさいよ」

( ´_ゝ`)「金?いらんいらん。どうしても払いたかったらギルドに入ってからにしろ。そしたらうけとってやるよ。ま、その金でもっといい武器を作っておまえにプレゼントするだけだけどな」

(´<_` )「ほい、新しい防具。どうした?さっさと受け取れよ。金?いらないっていってるだろ。友達にプレゼントだよ。アーアーキコエナーイ。ギルドに入ったら受け取ってやるよ」

('A`)「ギルドとか仲間とか、めんどくさいと思うやつもいるだろうけど、ふさは違うだろ?いい加減入ったらどうだ?」



ミ,,゚Д゚彡「このギルドは、ふさにはもったいないから。ふさなんかが入っちゃだめだから」



(´・ω・`)「……どうしたもんかなぁ」




全員からの誘いに断り続けるフサギコをみて、眉間にしわを寄せて悩むショボン。
そのあまりにも意固地な物言いに、メンバーの中でもほんの少しだけイライラする者も現れていたのも、悩みの種だった。

心なしか、ギルドの雰囲気もピリピリと緊張感が漂っていた。


これは別の話だが、モナーと知り合ったのがこの頃である。



.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:01:20 ID:6CCOWjXw0<>

('A`)「ショボンも人使いが荒いよな」

ミ,,゚Д゚彡「安く手に入るのはいいことだから!」

その日は、バーボンハウスでいつも多量に使っている「ラル菜」を通常の店よりかなり安く売っている店があるという情報をもとに、探索に来ていた。

( ^ω^)「この街に初めて来たときは『一般的に役に立つ素材』くらいしかチェックしなかったおね」

('A`)「だな。この街は転移門もないし。近くに率の良い狩場とか、面白いクエストもないからほとんどほぼ素通りだっただろ」

ミ,,゚Д゚彡「ふさは初めてきたから」

( ^ω^)「おっおっ。じゃあいろいろ見てくると良いお」

('A`)「それほど見るものもないけどな。ま、どちらにしろ探すなら別れた方が都合良いだろうから、手分けするか。それほど大きくない街だからそれですぐ終わらせようぜ」

ミ,,゚Д゚彡「見つかったら連絡するから!」

( ^ω^)「来る途中で話した薬草も見ておいてほしいお」

ミ,,゚Д゚彡「わかったから」

('A`)「んー」

( ^ω^)「誰も見つけることが出来なかったら、とりあえず中央の公園に集合だお」

地図を見ながら指示を出すブーンに手を振ってそれぞれに歩きはじめる二人。

今回のメンバーはドクオとブーンとフサギコの三人。低層階でありフサギコのレベルでも充分であったため当初はドクオとフサギコの二人の予定だったが、掘り出し物があるかもと道具屋として必要なスキルをあげつつあったブーンも同行していた。

ミ,,゚Д゚彡「こんにちはだから!」

中央通りを歩くフサギコは、目につく店舗や露天商を一つ一つ覗いていった
しかし目当てのラル菜はもちろんブーンに頼まれた薬草もとくに安くは販売してなかった。

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:02:50 ID:6CCOWjXw0<>
アインクラッドにある街の多くには、公園が設置されている。
転移門のある街ならそこに転移門が設置されているわけだが、転移門のないこの街にも公園はあった。

中央に噴水が置かれ、ベンチの置かれた歩道があり、花壇がある。
基本形とも言えるその公園には街路樹もあった。

そして、その街路樹の下に、うずくまる少年と少女がいた。

街路樹をよく見ると、上には赤い果実が生っている。
おそらくはその二人も以前のフサギコのようにその実が落ちるのを待っているのであろう。

自分よりどうみても年上のプレイヤーが同じことをしているのを見たことがあったフサギコであったが、自分よりどうみても年下、しかも女の子がしているのを見るのは初めてだった。

ミ,,゚Д゚彡「!」

思わずチラチラと見ながら横を通り過ぎようとすると、少年と目があった。

ミ,,゚Д゚彡!!

きつい瞳。
人を誰も寄せ付けない、野生の獣のような瞳。
けれど瞳の奥にはどこかすがる様なものをかんじ、思わず立ち止まってじっと見つめるが、少年が目を伏せたため逃げるように再び歩き始めた。

ミ;,,゚Д゚彡「…」

公園を通り過ぎ、続きの店を覗く。

しかし目的の店は見つからず、とぼとぼと公園まで戻った。

通り過ぎてから、それほど時間は経っていない。
公園に戻ってみると、少年と少女はまだそこにいた。
果実はまだ木に生っている。
少年たちとは反対側に位置する公園の入り口付近で、立ちすくんで二人を見るフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「……」

( ^ω^)「あの子たちは何をやっているんだお?」

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:04:16 ID:6CCOWjXw0<>
後ろから突然ブーンに話しかけられ、驚いて振り向くフサギコ。
そこにはブーンとドクオが不思議そうに立っていた。

('A`)「どうした?ふさ」

ミ,,゚Д゚彡「あ、その…」

( ^ω^)「あの二人は知り合いなのかお?」

ブーンの問いかけに頭を横に振り、もう一度木の下に座る二人を見る。

ミ,,゚Д゚彡「知らない二人だから…。でも、彼らの姿は昔のふさで、ショボンに会わなかったらふさはきっと今も同じことをしてたから」

( ^ω^)「?」

('A`)「ああ、果物か…。前に話してくれたよな」

( ^ω^)「果物?あ、ああ。……あの木に生ってる赤いリンゴみたいなやつがそうなのかお?」

ミ,,゚Д゚彡「一日に一回か二回、あれが落ちるから。落ちたのは食べられるし、売れば5コルくらいで買ってもらえるから」

( ^ω^)「おいしいのかお?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンの作ってくれたご飯とは、比べ物にならないから……。ただ、空腹を満たすためだけだから…」

( ^ω^)「……この街に来れるくらいの実力があるなら、外に出て戦った方が効率が良くないかお?」

('A`)「自分でやってきたのならいいけどな」

( ^ω^)「お?どういうことだお?」

('A`)「あー」

口ごもったドクオ。
しかし、ドクオが考えた答えをフサギコが口にした。

ミ,,゚Д゚彡「MPK…」

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:06:33 ID:6CCOWjXw0<>
('A`)「ふさ、知ってるのか?」

一回顔を伏せ、少しだけ悲しそうにため息を吐いてから、また顔をあげて話しはじめる。

ミ,,゚Д゚彡「モンスターピーケー。自分で攻撃して相手を殺すPKと違って、わざとモンスターをけしかけて相手を殺す技……だから」

(#^ω^)「なんだお、それ」

('A`)「…ふさ、SAO以外にもオンラインゲームやってたのか?」

ミ,,゚Д゚彡「……ふさも昔、……ここで、引っかかりそうになったことがあるから」

('A`)!

(#^ω^)!

二人の顔を見ることが出来ないフサギコ。
ただ悲しげに、すこし遠い場所で座っている少年と少女を見る。

ミ,,゚Д゚彡「その時は相手がちょっと失敗したのと、逃げた先の街に転移門があったから、戻ることが出来たから」

('A`)「そう……か……」

(#^ω^)「許せないお!」

('A`)「落ち着けブーン。…ふさ、そいつらは」

ミ,,゚Д゚彡「レベル上げメインで探索メンバーを募集していて、ふさはバラバラに集まった最後の一人だったから」

('A`)「本当は、五人がグルで、ふさを陥れようとしたんだろうな」

(#^ω^)「そんなことして意味があるのかお!」

('A`)「そいつらにしてみたら意味があるんだろうよ。基本的には死んだ後に散らばるコルやアイテムを拾うためだけど、中にはただ純粋に、『殺すのが楽しい』っていうだけのやつも……いる」

(#^ω^)「ゆ、許せないお!ふさ!そいつらは!?」

ミ,,゚Д゚彡「あれ以来見てないから…」

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:08:15 ID:6CCOWjXw0<>
(#^ω^)「なんか覚えてないのかお!?」

('A`)「落ち着けって」

ミ,,゚Д゚彡「…メインの一人はβテスターで、みんなのレベルを安全にあげるために良い狩場に連れて行ってくれるって話だったから」

('A`)!

( ^ω^)!

ミ,,゚Д゚彡「あの頃はβテスターへの風当たりが強くなってたから、ほんとかどうかは分からないから…」

( ^ω^)「そう…かお……」

顔を隠すように公園の外に視線を向けるドクオ。
それをちらっと見て口を開くが何も言わないブーン。
フサギコは少年たちをじっと見ている。

('A`)「で、どうしたいんだ?」

ミ,,゚Д゚彡?

幾ばくかの沈黙ののち、口を開いたドクオ。

('A`)「あの二人、声をかけないのか?」

ミ,,゚Д゚彡「……ふさじゃ…なにも出来ないから」

('A`)「そんなこともないだろ」

ミ,,゚Д゚彡「それに、ショボンに頼まれた買い物もあるから」

( ^ω^)「それなら終わってるお。お店が見つかったからとりあえず買い物しちゃったお。ぼくの探していた薬草も安くあったお」

ミ,,゚Д゚彡「!れ、連絡欲しかったから」

('A`)「ブーンからのメッセージ、来てるはずだぞ」

呆れたような口調のドクオに言われれば、視界の隅に光るメッセージアイコンがあった。

.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:11:30 ID:6CCOWjXw0<>
ミ,,゚Д゚彡「あっ」

('A`)「あの二人の事で頭がいっぱいだったんだろ」

何も言えず、口をパクパクと動かす。

( ^ω^)「話しかけたらどうかお?」

ミ,,゚Д゚彡「ふ、ふさじゃ…」

('A`)「一緒にいるのがおれ達じゃ、頼りないか?ま、頼りないか」

( ^ω^)「ここにはショボンがいないからだおね。きっと」

ミ;,,゚Д゚彡「そ、そんなことないから!ドクオもブーンも大事な友達で、ふさより何倍も何百倍も頼りになるから!で、でも……だから…」

わざとすねたようなふりを見せるドクオとブーンに慌てるフサギコ。
その慌てぶりをみて、少しだけ笑顔を見せる二人。

( ^ω^)「迷惑をかけたくないとか考えてるのかお?」

ミ,,゚Д゚彡!

('A`)「ま、そんなとこだろうな。どうせギルドに入らないのもレベルとかスキルの熟練度とかがおれ達より少しだけ下なのを気にしてだろ。自分が入っておれ達に迷惑を駆けたくないって」

( ^ω^)「なんどもパーティー組んで出かけているんだから、そんなの気にしなくていいんだお」

ミ,,゚Д゚彡「あ、あ、」

('A`)「ま、それに関しては今度ゆっくり全員で話すとして」

ミ;,,゚Д゚彡「みんなで囲むのは許してほしいから」

( ^ω^)「とりあえず、あの二人と話してみたらどうかお?気になるんならそれが良いお」

ミ,,゚Д゚彡「で、でも」

('A`)「遠慮するなって言ったろ。とりあえず、命にかかわらないことはやってみるんだよ。やらなきゃ何も始まらない」

( ^ω^)「出来る範囲でちゃんとバックアップするから安心していいお」

('A`)「無理な相談まで乗るほど物好きじゃないから安心しとけ」

ミ,,゚Д゚彡「あ、ありがとうだから!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:12:57 ID:6CCOWjXw0<>
笑顔で話すブーン。
呆れたように話すドクオ。
表情は違えど自分に対する優しさと強さを感じ、感謝を告げるフサギコ。

そして、一回大きく深呼吸をしてから少年たちに向かって歩き始めた。



ミ,,゚Д゚彡「お、おふたりさん」

ぎこちなく二人の前に立ち、更にぎこちなく喋りかけるフサギコ。
そのぎこちなさは離れて見ているドクオとブーンにもわかるほどだった。

('A`;)「だいじょうぶか、おい」

(;^ω^)「右手と右足、一緒に前にで出たおね」

ミ,,゚Д゚彡「も、もっと美味しい物を食べると良いから」

ドクオとブーンの心配などよそに、落ちてきた果実を持って嬉しそうにしている二人に話しかけるフサギコ。
しかしその言葉は少年と少女の怒りを買うだけだった。

(#=゚ω゚)「ふざけるなよう!」

*(#‘‘)*「ふざけたことをぬかしてるんじゃないですよ!」

ミ;,,゚Д゚彡「ふ、ふざけてないんかないから!」

(;^ω^)「なんか、怒ってないかお」

('A`;)「確実に怒ってるな」

立ち上がる少年。
少女も立ち上がるが、喋り口調とは裏腹に、少年の背後に回った。

(#=゚ω゚)「食べれるもんなら食べてるよう!」

*(#‘‘)*「食べたくても食べられないことくらい!見れば分かるですよ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:14:22 ID:6CCOWjXw0<>
ミ;,,゚Д゚彡「で、でもこの街にいるくらいのレベルがあるなら」

(#=゚ω゚)「レベル上げに付き合ってくれるって言うから来たんだよう!」

*(#‘‘)*「モンスターに追いかけられて怖かったですよ!」

(#=゚ω゚)「切りつけても切りつけても倒せないモンスターとどう戦えばよかったんだよう!」

*(#‘‘)*「怖かった……怖かった……ものすごく…怖かったんですよ!あんたに…そんな立派な武器と防具を持ったあんたなんかに…分からないですよう……」

(=゚ω゚)「ヘリカル……」

*(#;;)*「怖くて怖くて…もう死んじゃうんじゃないかって…」

(=゚ω゚)「…ごめんだよう……ぃょぅがもっと強ければ…」

*(#;;)*「お兄ちゃんは悪くないですよ…転んだ私を助けて、ここまで連れてきてくれたんですよ」

(=゚ω゚)「……転移門のないこの街で、外にいるモンスターを倒すことなんかできなくて、ここにいることしかできないぃょぅ達の事なんて、あんたに分かるわけないよう」

泣き崩れた妹を抱きかかえるように再び座る少年。

(=;ω;)「もう、どっかいけよう…」

妹を抱きしめ、うずくまる。

('A`;)「お、おい」

(;^ω^)「大丈夫かお」

フサギコが怒鳴られているのを見て慌てて近寄った二人だったが、泣き崩れる二人を見てその場で立ちすくんでしまった。

ミ,,゚Д゚彡「はじまりの街では、十二か所の街路樹からそれが落ちるのを待つことが出来るから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:15:43 ID:6CCOWjXw0<>
フサギコの呟き。
それを聞き、少年が見上げる。

(=゚ω゚)「……え……?」

ミ,,゚Д゚彡「教会になら無料で泊まれるけど、雑魚寝で、周りに人がいっぱいいて、逆に安心できないから」

じっと少年を見ながら話しはじめる。

ミ,,゚Д゚彡「無人の建物はいっぱいあるから一人になれるけど、人の足音がモンスターの足音みたいに聞こえて、ゆっくり休むことなんてできないから。それを5コルで売ってもまともな食べ物なんて買えなくて、心が苦しくなるだけだから。それを食べても美味しくなくて、苦しくて…でもお腹はすくから食べないといけなくて…。街の外に一人で出る勇気なんてないからパーティーを組んで出ようとするけど、今はじまりの街にいるのは戦いを放棄した人か、残っている人たちを食い物にしようとする人がほとんどだから、だれも信用できなくなるから…。でも、さみしくて、一人でいるのも怖くて、信じようとして、裏切られて、モンスターに殺されそうになって…。辛かったから…」

(=゚ω゚)「あ、あんたもなのかよう。で、でも」

ミ,,;Д;彡「フサが今こんな装備でこんな服を着てここにいられるのは、奇跡の集まりだから。あの日、あの時、ショボンに、あえたのは奇跡だから。ショボンが話しかけてくれたのは、奇跡だから。ここにいるドクオやブーンにあえたのは、奇跡だから。いまのふさがこの世界でちゃんと生きているように見えるのは、奇跡だから!でも、ショボンは、みんなは言ってくれたから。ふさを、何の取り得もなくてどんくさくてどうしようもないふさを、友達だって。そのうえ、ギルドに入らないかって、……みんなの仲間にしてくれるって。うれしくて、うれしくて、でも、同じくらい怖くて…」

(=゚ω゚)「なんでだよう!」

ミ,,;Д;彡「ギルドに入って、冒険して、ふさのミスで誰かが死んだらどうするんだから!!」

(=゚ω゚)「!」

ミ,,;Д;彡「でも…ふさに奇跡があったように、きっと君にも奇跡は起きるから」

(=゚ω゚)「……ぃょぅには来ないよう」

ミ,,゚Д゚彡「きっと来るから!ふさに来たくらいだから来るから!でも、待ってるだけじゃだめだから。自分から、ほんの少しで良いから頑張ってみなきゃだから!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:17:06 ID:6CCOWjXw0<>
*(‘‘)*「何をがんばるっていうんですよ」

(=゚ω゚)「ヘリカル…」

うつむいていた少女が顔を上げる。
涙は止まっているが、こちらを見るその瞳は疑心に満ちているのが分かる。

ミ,,゚Д゚彡「人を信じることだから」

(=゚ω゚)!

*(‘‘)*!

( ^ω^)!

('A`)!

驚いたようにフサギコの顔を見る四人。

ミ,,゚Д゚彡「騙されて、死にそうになって、もう誰も信じられなくなっても、信じるしかなかったから」

(=゚ω゚)「で、できないよう…」

ミ,,゚Д゚彡「ふさは、一人だったから」

*(‘‘)*!

ミ,,゚Д゚彡「二人は、互いがいるから、一人じゃないから他の誰かを信じなくても自分以外の人がいるから。でも、ふさは一人だったから、一人のさみしさは辛いから、殺されそうになっても、人を信じていたかったから。けど、信じ続けたおかげで、そのおかげで、奇跡に出会えたから」

にっこりほほ笑んだフサギコ。
そして後方で心配そうに立っていた二人をみる。

( ^ω^)「ふさ…」

('A`)「ふさ…」

そして二人には満面の笑みを見せ、再び座り込む少年達を見た。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:20:44 ID:6CCOWjXw0<>
ミ,,゚Д゚彡「もちろん誰もかれも信用することは出来ないけど、まずは話してみないとだから。自分のことを知ってもらって、相手のことを知って。そうすれば、きっと、奇跡に出会えるから」

(=゚ω゚)「で、でも…だよう…」

*(‘‘)*「お兄ちゃん…」

(=゚ω゚)「ヘリカル?」

*(‘‘)*「私は、まだよくわかんないですよ。でも、お兄ちゃんと一緒になら、出来るような気がするですよ」

(=゚ω゚)「!」

ミ,,゚Д゚彡「もしまた苦しいことがあっても、二人が二人でいるなら、二人で頑張れば、きっとできるから」

(=゚ω゚)「できるか…よう……」

立ち上がる少年。
それにならって少女も立ち上がる。
今度は後ろに隠れず、まっすぐにフサギコを見る。
そしてお互いの顔を見て、頷きあう二人。

ミ,,゚Д゚彡?

そして二人は真剣な瞳でフサギコを見る。

(=゚ω゚)「まずは、あなたを信じてみることにするよう」

ミ,,゚Д゚彡!

(=゚ω゚)「僕の名前はぃょぅだよう」

*(‘‘)*「私の名前はヘリカルですよ」

(=゚ω゚)「ヘリカルは大事な妹だよう。絶対に死なせたくないよう」

*(‘‘)*「お兄ちゃんは私が守るですよ!」

(=゚ω゚)「でも、ここにいたら何もできないよう。力を、貸してほしいよう。今は何もお礼は出来ないけど、きっといつか何かで返すよう!」

*(‘‘)*「ヘリカルも頑張るですよ!」

ミ,,゚Д゚彡「お、お礼なんていらないから!」

('A`)「じゃあ、その果物で良いぜ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:22:14 ID:6CCOWjXw0<>
ミ,,゚Д゚彡!?

横から口を挟むドクオ。
珍しく口元に笑みを浮かべ、出来るだけ不審人物にならないように努力しているのが伺える。

( ^ω^)「その笑みは逆効果だと思うお」

('A`)「え、マジで」

ミ,,゚Д゚彡「ドクオ、ブーン」

( ^ω^)「ブーンだお。こっちで必死に不審人物に見えないように頑張っているのがドクオで、二人の前にいるのがフサギコ。ギルド『V.I.P.』、その依頼正式に受け取ったお。二人を近くの転移門のある街まで護衛するお」

('A`)「報酬はそのリンゴみたいなやつってことで」

(;=゚ω゚)「え。あ、え?」

戸惑いながら二人の顔を見るぃょぅとヘリカル。

ミ,,゚Д゚彡「信用して欲しいから。まずは依頼者としてでいいから、ふさたちを信用してほしいから。そのあとはその後だから」

*(‘‘)*「おにいちゃん、私は信じてもいいですよ」

自分の服を掴みながら、ほんの少し震えながら、けれど気丈にふるまう妹を感じる。
その手を握り、強く、けれど優しく包み込み、フサギコ達三人を見る。

(=゚ω゚)「お願いするよう」

ミ,,゚Д゚彡「わかったから!」

('A`)「ま、このフロアくらいのレベルなら楽勝だけど」

( ^ω^)「念には念を入れたほうが良いおね」

いきなりウインドウを出し、タップを繰り返す二人。

ミ,,゚Д゚彡?

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:23:36 ID:6CCOWjXw0<>
('A`)「足防具あるか?」

( ^ω^)「了解だお」

ぃょぅとヘリカルの前に浮かぶトレードウインドウ。
次々とアイテムの名前が並ぶ。

('A`)「とりあえず、それ着とけ」

( ^ω^)「武器は片手剣と槍になっちゃうけど、とりあえずそれで我慢してくれお」

(=゚ω゚)!

*(‘‘)*!

('A`)「さ、ほらほら」

( ^ω^)「早く出発しないと日が暮れちゃうお」

(;=゚ω゚)「あ、は、はいだよう。ヘリカルも、信じるんですよう」

*(;‘‘)*「わ、わかったですよ」

5分後。
装備を整えた二人を中心にして街を出発する五人の姿があった。



.<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/28(月) 23:25:09 ID:6CCOWjXw0<>
3決意の日



穏やかな、優しい風。
アインクラッドの気候は基本的には日本を模しているため、ほとんどのフロア(層)には季節がある。
説明書によると氷雪のエリアや一年中真夏のエリアなどもあるようだが、低層階は基本的に緩やかに季節の移り変わりを見せていた。

また1層はほとんど暑い寒いが無かったが、上の層になってくると気温の違いがあり、それは月の移り変わりはもちろんのこと、毎日の気候、雨の日や曇りの日、風の強い日なども出てきていた。

そんな季節の会話をしながらやってきたのは屋台を引いたショボンとフサギコ。

既に最前線フロアではなかったが、久しぶりに出会った街の公園に来ていた。

(´・ω・`)「でもどうしたの?この街が良いなんて」

ミ,,゚Д゚彡「今日は、記念の日だから」

(´・ω・`)「そっか。今日はふさが考案したメニューのデビュー日だからね」

噴水のそば。
花壇を背に屋台を設置するショボン。
フサギコはのぼりを設置してからショボンと共に料理の準備にはいる。

(´・ω・`)「でももったいないな。こんなに美味しいのに。明日は最前線の街に行こうね」

ミ,,゚Д゚彡「よろしくだから!」

(´・ω・`)「でも、ここもまだ結構栄えてるね」

早朝ではあるがちらほらと転移門を使ったり、そのまま街を出ていくプレイヤーの姿が見えた。

(´・ω・`)「今日も頑張ろうね」

ミ,,゚Д゚彡「う、うんだから」

もじもじとしているフサギコを見て首をひねりながらも準備を続けるショボン。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:26:15 ID:6CCOWjXw0<>
ミ,,゚Д゚彡「あ、そ、その、しょ、」

(´・ω・`)「そうだった!」

喋りかけようとしたフサギコに気付かずに慌ててウインドウを出すショボン。
そして一通の封筒を実体化させた。

ミ,,゚Д゚彡?

(´・ω・`)「はい、これ」

そして、笑顔でフサギコに差し出す。

ミ,,゚Д゚彡?

受け取るフサギコ。
この世界では何かを伝えたいときはメッセージで直接送るのがほとんどのため、実体化された紙、というより手紙をみるのは初めてだった。

ミ,,゚Д゚彡「なに?だから」

(´・ω・`)「この前ふさの料理を食べさせてもらって、その感想」

ミ,,゚Д゚彡!

(´・ω・`)「本当はふさがぼくにしてくれたみたいに直接話したかったんだけどね。なんか照れくさくなってちゃんと伝えられないような気がしたから。手紙にしてみた。ものすごくおいしかったから、その感動と一緒に」

ミ,,゚Д゚彡「あ…あ…あ…」

(´・ω・`)「ふさ?」

ミ,,;Д;彡「ありがとうだから…」

(´・ω・`)「な、泣かないでよ」

ミ,,;Д゚彡「うれしすぎて、止まらないから」

目をこするフサギコにショボンも困ったように、けれど少しだけ嬉しそうに笑いかける。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:28:17 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)「もう、お客さん来ちゃうよ」

ミ,,゚Д;彡「ショボン…」

(´・ω・`)「なに?」

ミ,,;Д;彡「おね…がいが……あるから」

(´・ω・`)「え!?なに!?めずらしいね。ふさがお願い事なんて。なになに?」

瞳を輝かせて詰め寄ってくるショボンを、涙を拭いてからじっと見る。

(´・ω・`)?

ミ,,゚Д゚彡「ふさを、ギルドに入れてほしいから」

(´・ω・`)!

ミ,,゚Д゚彡「何度も誘ってくれたのに、ずっと断っていてごめんなさいだから。やっと、勇気が出来たから。ショボンと、ギルドの皆と、頑張りたいから。戦いは力になれるか分からないけど、バーボンハウスを盛り立てたいから!!だから、まだ良ければ、入れてほしいから」

(´・ω・`)「ふーーーーーー」

大きなため息を吐くショボン。

ミ,,゚Д゚彡「しょ、ショボン」

(´-ω-`)「遅いよまったく」

ショボンが手を振るとウインドウが現れ、迷うことなく操作をしていく。
そして、フサギコの前にウインドウが現れた。

(´・ω・`)「はい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:29:44 ID:6CCOWjXw0<>
『shobonさんにギルド『V.I.P.』に誘われました。』

『 YES  or  NO 』

ミ,,゚Д゚彡「よろしくだから!」

『 YES 』をタップするフサギコ。

ニッコリとほほ笑むショボン。

(´・ω・`)「さて、それじゃあギルマスとしてギルメンに命令しようかな」

ミ,,゚Д゚彡「……え?」

笑顔のままウインドウを操作し始めるショボン。

(´・ω・`)「知ってると思うけど、格闘スキルはギルメン必須スキルだから、また修得に向けてのスケジュール立てようね。これは、戦闘に参加してもしなくてもとりあえず。ああでもレベルをもうちょっとあげてからの方がいいかな。でもまあその前に…」

ミ,,゚Д゚彡「え?あ?ショボン?」

(´・ω・`)「はい、これ」

フサギコの前に現れるトレードウインドウ。
そこには五桁のコルが表示されていた。

ミ,,゚Д゚彡「これは?」

(´・ω・`)「今までのバイト代。ギルメンなら、こういうのはちゃんとしないとね」

ミ,,゚Д゚彡「で、でも」

(´・ω・`)「でもは無し!コルはあるにこしたことないんだから、ちゃんともらって」

ミ,,゚Д゚彡「…」

(´・ω・`)「それに、サポートしたいんでしょ。兄妹のこと」

ミ,,゚Д゚彡「!」

思いもかけないショボンの言葉に驚くフサギコ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:31:39 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)「コルは持っていたほうが良い。何を買うにもね。ぼくたちも力は貸すけど、二人を笑顔にしてあげるのは、ふさがやらないとね」

ミ,,゚Д゚彡「ショボン…」

開いていた手を握りしめこぶしにし、胸に当てるフサギコ。
そして今までにない強い瞳でショボンを見る。

ミ,,゚Д゚彡「正直、ふさに出来ることなんてたかが知れているから。でも、ふさがショボンに会えて毎日が楽しくなったみたいに、二人にも、この世界での楽しさを知ってほしいから。救うことなんてできないと思うけど、ショボンがしてくれたみたいに、一緒に考えたり、笑ったり、出来たら楽しいと思うから」

(´・ω・`)「ふさならきっとできるよ」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとう、ショボン。がんばるから!」

(´・ω・`)「ギルドの方もね」

ミ,,゚Д゚彡「もちろんだから!」

素直にコルを受け取ったフサギコ。

(´・ω・`)「さ、今日も稼ぐよ!」

ミ,,゚Д゚彡「うんだから!」

準備の続きを始める二人。

優しい風が、二人を包んだ。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:33:16 ID:6CCOWjXw0<>
4積み重ねた毎日。



ミ,,゚Д゚彡「あれはふさの宝物だから」

(´・ω・`)「!まだ持ってるの!?」

ミ,,゚Д゚彡「もちろんだから!」

バーボンハウス一号店。

夕方前のひと時、喋っているのは今のマスターである侍フサギコと、前のマスター、ギルマスであるショボンである。
店の奥ではまだ一組のカップルが談笑している。

(´・ω・`)「もう、捨ててくれていいのに」

ミ,,゚Д゚彡「そんなことできないから!」

(´・ω・`)「もう……」

照れくさそうに笑いながら、懐から封筒を出すショボン。

それは、あの日見た、今もフサギコのストレージ内に大事に眠る封筒と、同じもの。

ミ,,゚Д゚彡!

(´・ω・`)「なんとなく、また書いてみたんだ。はい、これ。中身はこの前の夕食の感想と、まあ業務連絡みたいな感じで」

照れくさそうに差し出された封筒を、大事そうに両手で受け取るフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「…また……宝物が増えたから」

(´・ω・`)「ストレージはちゃんとあけて、クエストの時とかはちゃんとしなよ」

ミ,,゚Д゚彡「それはもちろんだから!」

顔を見合わせて、笑いあう二人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:34:06 ID:6CCOWjXw0<>
(´・ω・`)「さて、そろそろ戻ろうかな」

席を立つショボン。
すると談笑していた二人も奥から歩いてきた。

(‘_L’)「ごちそうさま」

ミセ*゚ー゚)リ「おいしかったです!特にケーキ!」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから!」

コルを支払い、出ていく男女。

(´・ω・`)「じゃあ、僕も戻るね。あとでしぃをこっちによこすから、一回は休憩取るように」

ミ,,゚Д゚彡「はいだから!」

(´・ω・`)「それじゃ、お互い頑張ろう」

こぶしをぶつけ合う挨拶をしてから店を出ていくショボン。

フサギコはそれを見送ってから手紙を読もうとするが、思い直して自分のストレージにしまった。

そして、本当に楽しそうな顔をして、午後の店の準備を始める。

店の中。
風など拭いていないはずなのに、フサギコは自分の身体が優しい風に包まれたような気がした。







.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/10/28(月) 23:37:05 ID:6CCOWjXw0<>以上、第九話でした。


ではではまた。
.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 00:25:30 ID:3VNnPQZU0<>saoは肌に合わなくて一話で挫折したのにこれは読めるんだよなぁ…

ふさー!好きだー!乙!<> 名も無きAAのようです<><>2013/10/29(火) 00:28:36 ID:N4y3UJ1w0<>乙
体術の習得ってやっぱあの修行なのかなって思ってちょっとニヤニヤしちゃったよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 00:42:06 ID:HOlQpklk0<>凄くよかったほのぼのした
ツンのSSSが可哀想
ジョルジュの外見が完全にウホッな外見なんだろうな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 01:43:37 ID:7kcVDMMo0<>面白かった。乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 02:32:22 ID:wLA0DTTs0<>残念フェイスwwww........(;A;)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 03:10:22 ID:x2tXOQuI0<>乙!今回もいい話だなー面白かった。
設定もフサの加入話も楽しみにしてたから嬉しいわ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 03:34:45 ID:8ZW.moiIO<>ω・)乙。まぁ確かにフサの喋りはちょっとうざ…ゲフンゲフン<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 21:20:19 ID:M/k0XTNs0<>久しぶりに感動で泣いた いやホントにマジ泣きした・・・ってかしてる


ゼッタイ完結させてくれ 乙おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/29(火) 21:21:20 ID:M/k0XTNs0<>久しぶりに感動で泣いた いやホントにマジ泣きした・・・ってかしてる


ゼッタイ完結させてくれ 乙おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/10/31(木) 04:02:20 ID:ehOQPz0g0<>おつ
ミセリとフィレンクト付き合い始めたのか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/01(金) 03:08:03 ID:r98x3PN.0<>この世界行って低層で適当に暮らしたいなあ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/02(土) 20:39:43 ID:iIa5ofHI0<>乙
こんなに謙遜しててギルド内バトルじゃ最強なフサが可愛らしく見える<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/05(火) 06:27:57 ID:C/E3khyQ0<>長編は重いなと思って食わず嫌いしてた、こりゃ面白い!
今はまだクックル編でじーんと来てたところなので、頑張って追いつくよ
SAOとやらにも興味が湧いちゃったな。ラノベだったら読んでみようかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/06(水) 03:12:21 ID:JsqAWNWQ0<>攻略組ってどんなやつらなんだ……
ほのぼのパートもいいけど、過酷っぽい最前線が気になるぜ<> 名も無きAAのようです<><>2013/11/06(水) 19:20:02 ID:I/ZW76qMO<>攻略組は本編に出てる奴じゃないの?

確かキリトの名前出てたし<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/06(水) 21:20:25 ID:JsqAWNWQ0<>>>61
結局買ってアインクラッド編読み終えちまった。
この作品はこの作品で展開を楽しみにしてる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/06(水) 23:51:58 ID:cdmiGKuc0<>これ読んでから原作に入ると作風の違いにビビるだろうな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/07(木) 08:09:31 ID:aVuLICvM0<>クックル細かったのか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/08(金) 22:55:12 ID:QTOOCyRM0<>俺はモナーが大男でびっくりしたよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/10(日) 05:28:11 ID:.2TA0a3E0<>だれか集合絵はよ<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:31:53 ID:P8GB301.0<>どーも作者です。

短編祭りに投下したいなと思いつつ、お菓子といえばふさだよな…と思ったらもうそれしか出てこず。

ということで、閑話の投下いきます。<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:35:30 ID:P8GB301.0<>

第D話 閑話 へきせんはうす



ミ,,゚Д゚彡「できたから!」

バーボンハウス一号店。
珍しく早くに昼の客がいなくなったため、フサギコはかねてからチャレンジしようと思って準備していたお菓子の家の作製に取りかかっていた。

コツコツと作り上げておいたお菓子達。
足りない分の焼き菓子の生地を練って形を作って焼き、チョコレートを固め、クリームをかき回し、作り溜めしておいた飴を総動員して隙間を埋め飾りつけをし、煙突のあるログハウスのような家を作り上げていく。

ミ*,,゚Д゚彡「前にショボンがNPCの店で見てこういうのも作れるのかなって言ってたから。やっとプレゼントできるから」

アインクラッドでは焼く時間や練る時間は短縮できるが、成形は規定の形以外の物を作るのはそれなりに手間がかかる。
お昼過ぎに始めた作業であったが、既に日は傾きかけていた。

そして、やっと納得のいく形が出来たと一息ついたところだった。

屋根の上の飾りに熱中してしまったため、視界の反対側の壁に取り付けていた窓に見立てた飴やチョコレートが取れてしまっていたことに気付いていなかったが、その表情には達成感が浮かんでいる。
初めて作っているため周囲には形が合わなかったビスケットやサイズが合わなかった飴、割ってしまったチョコレートなどが散乱しており、いつも几帳面に料理をするフサギコからは、珍しい光景だった。

本当は家の周りに木々もや柵に井戸なども作りたいのだが、さすがに時間が足りなかった。
最初に家を作る試しも兼ねて作ってみたそれなりに細かく精巧な犬小屋だけがあるのもバランスが変だと思うのだが、今はここで諦めて夕方の準備を始めなければと思っていたところに、店の扉がカタカタと鳴った。

勢いよく開かれる店の扉。

ミ;,,゚Д゚彡「い、いらっしゃいませだから!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:37:14 ID:P8GB301.0<>
慌てて片付けようと屋根の部分をタップする。
その衝撃か、壁面に取り付けたチョコレートの扉が取れてしまい、反対側の屋根の飾りもいくつか取れてしまったが、慌てたフサギコは気付かない。

(,,゚Д゚)「ちはっすだゴルァ」

ミ,,゚Д゚彡「なんだギコだから」

(,,゚Д゚)「なんだとはひどいぞゴルァ」

あからさまにほっとした顔をするフサギコを見て、ぶぜんとした顔をするギコ。
しかし笑いながらであったため、フサギコも笑いながら謝罪を言いつつ片づけを始めた。

(,,゚Д゚)「!すごいぞゴルァ!お菓子の家だよな!」

ミ,,゚Д゚彡「まだまだ全然だから」

カウンターの台に置かれていたそれに気付き、素直に驚きつつ近寄り、フサギコの力作をまじまじと見るギコ。
照れくさそうにつぶやいたフサギコもまんざらではなく、頭を掻きながら誇らしげに微笑んでいる。

ミ,,゚Д゚彡「しぃはまだ来てないから」

(,,゚Д゚)「今日はこの後ジョルジュとドクオと夜間演習だから、飯を食いにきた!」

ミ,,゚Д゚彡「分かったから!何が良いか言うと良いから!」

(,,゚Д゚)「今日の定食かお勧めで良いぞゴルァ!フサギコの作る飯はうまいからなんでも大丈夫だ!」

ミ*,,゚Д゚彡「わかったから!あ、ちょっと時間かかるからそこのお菓子、失敗してるのは食べくれていいから!」

(,,゚Д゚)「!良いのか!」

ミ,,゚Д゚彡「倉庫で夜の食材をチェックしてくるから!お客さんが来たら呼んで欲しいから!」

(,,゚Д゚)「食べていいのか…」

慌てて店の奥に消えたフサギコを目の端にとらえながらも、目の前のお菓子に心を奪われるギコ。

(,,゚Д゚)「おやつとして少しもらうとして、このチョコレートとクッキーみたいなやつは今食べよう」

大きなめの建物のそばにあった板チョコを手に取る。

(,,゚Д゚)「本当にすごいぞゴラァ。こんな精巧にお菓子で家を作るなんて」

ビスケットと棒状の飴を手に取る。

(,,゚Д゚)「しかも、こんな小さく」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:39:00 ID:P8GB301.0<>


ミ,,゚Д゚彡「お店番ありがとうだから!」

10分足らずで戻ってきたフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「遅くなってごめんなさいだから!すぐ作るから!」

(,,゚Д゚)「お菓子美味しかったぞゴルァ!」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから!………だから……?」

戻ってきてそのままカウンターで調理を始めようとしたフサギコ。
ギコにお菓子の味をほめられ、笑顔で誇らしげにそちらを見て、異変に気付く。

ミ,,゚Д゚彡「………あれ?」

(,,゚Д゚)「これもこんなに小さいのにすごく精巧ですごいぞゴルァ!」

お菓子で作った家のあった場所にぽつんと佇むお菓子の犬小屋。

ミ,, Д 彡「……………だから…」

(,,゚Д゚)「え?」

ミ,, Д 彡「お菓子の家は…どこ?…だから…」

(,,゚Д゚)「これだろ?」

ミ,, Д 彡「これは、『お菓子の犬小屋』…だから…」

(,,゚Д゚)「……え?」

ミ,, Д 彡「大きいのが、本体だから」

(,,゚Д゚)「え、あ、でも、色々取れてたぞゴルァ」

ミ,, Д 彡「あれが、作ってたやつだから…」

(,,゚Д゚)「ご、ご、……ごめん」

ミ,, Д 彡「お菓子の家だから…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:40:22 ID:P8GB301.0<>
(*゚ー゚)「すみません遅くなりました…って……あれ?ギコ君と……フサギコさん……ですよね」

開かれた扉。
入ってきたしぃが異様な雰囲気を感じ、動きを止める。

(;*゚ー゚)「なにか、あったんですか?外の札も準備中になってますし」

ミ#,, Д 彡「準備…中?」

(;,,゚Д゚)「!入るときに裏になんて書いてあるのか気になって…裏返して見て…」

ミ,, Д 彡「しぃちゃん」

(*゚ー゚)「は、はい」

ミ,, Д 彡「いち……いや、二時間、お店を頼むから」

(*゚ー゚)「え、は、はい」

(;,,゚Д゚)「……既視感を感じる」

カウンターを出てきたフサギコがふらふらとギコのそばにより、その手首をつかんだ。

ミ,, Д 彡「ギコ……」

(;,,゚Д゚)「ゴルァ…」

ミ,, Д 彡「連続技の特訓に付き合ってほしいから……」

(;,,゚Д゚)「やっぱりかーーー!!」

引きずられるように外に連れて行かれるギコ。

唖然とその様子を見守るしぃ。

(;*゚ー゚)「なんかよくわからないけど、頑張れギコ君」



その日、40層にあるギルドホームの中庭からはギコの叫び声が1時間ほど聞こえた。







.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/10(日) 22:48:07 ID:7mXacOoQ0<>おつおつ!
またやらかしたかww<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:53:15 ID:P8GB301.0<>

第E話 閑話 ガールズルール 2



(*゚ー゚)「何故私はこんな恰好をしているんだろう」

ギルドVIPホームのツンの部屋では、ギルドの女性三人が集まって会話を楽しんでいた。

(*゚ー゚)「会話を楽しんでいた!?」

川 ゚ -゚)「どうしたいきなり叫んで」

(*゚ー゚)「い、いえ、なんか急に叫びたくなって」

ξ゚听)ξ「大丈夫?ちょっと疲れているんじゃない」

(*゚ー゚)「……疲れているとしたらこの状況にです……」

川 ゚ -゚)「なんか言ったか?」

(*゚ー゚)「いえ、なにもーーーー」

ξ*゚听)ξ「何かあったらツンお姉ちゃんに話してね」

川*゚ -゚)「ずるいぞツン!クーお姉ちゃんにでもいいんだからな。しぃ。いや、クーお姉ちゃんの方がいいな」

ξ゚听)ξ「何言ってるのよ。私の方でしょ」

川 ゚ -゚)「やはりサブマスターの私の方が」

ξ゚听)ξ「直属の裁縫師の師匠である私の方が」

(*゚ー゚)「どちらにも相談しませんから安心してください」

川 ゚ 3゚)「ぶーーーー」

ξ゚ 3゚)ξ「ぶーーーー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:55:06 ID:P8GB301.0<>
(*゚ー゚)「もう、変な顔するの止めてください」

思わず笑ってしまったしぃを見て、同じように笑顔を見せるクーとツン。

(*゚ー゚)「にしても、こんなメイド服もあるんですね。この世界には」

ξ゚听)ξ「結構自由度高いわよ。基本の形はもちろんあるけど、スキルを鍛えれば派生スキルなんかも出てくるし。基本形の色柄はもちろん、アレンジなんかもね」

(*゚ー゚)「そうなんですか。じゃあこのメイド服も」

ξ゚听)ξ「それは基本の形」

(*゚ー゚)「………」

ξ゚听)ξ「?」

(*゚ー゚)「あ、そうなんですか」

川 ゚ -゚)「製作者側にメイド好きがいたんだろうな」

ξ゚听)ξ「でしょうね」

(*゚ー゚)「なんかあんまり考えたくないです」

ξ゚听)ξ「下着の形なんかも」

(*゚ー゚)「女性のスタッフもいたはずですしね!」

川 ゚ -゚)「いたとはおもうが、やっぱりこういうのはキモオ」

(*゚ー゚)「考えたくないのでやめてください」

ξ゚听)ξ「男の下着で褌やTバックもあるわよ」

川 ゚ -゚)「…………」

(*゚ー゚)「…………」

川 ゚ -゚)「……この話はここで終わりだな」

(*゚ー゚)「はい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:56:41 ID:P8GB301.0<>
ξ゚听)ξ「?」

微妙な空気が流れる中、お茶をすするクーとしぃ。
ツンは一人不思議そうな顔をしながら部屋の片づけを続けている。

ξ゚听)ξ「ギコで想像した?」

(*゚ー゚)「してません!」

ξ゚听)ξ「なんだつまらない」

(*゚ー゚)「つまらなくないです!」

川 ゚ -゚)「ツンも話を戻すなよ」

(*゚ー゚)「そうですよ!クーさん良いこと言った!」

川*゚ -゚)「お姉ちゃんって呼んでいいんだぞ」

(*゚ー゚)「呼びません」

川 ゚ -゚)「ちっ」

(*゚ー゚)「ところで、この格好したんですから、さっきのを録画した記録結晶、ちゃんと下さいよ」

ξ゚听)ξ「分かってるわよ。嘘はつきません」

(*゚ー゚)「信用してますけど…。(何かある気がするのよね)」

川 ゚ -゚)「(いくつ録画してあるんだ)」

ξ゚听)ξ「(四つよ)」

川 ゚ -゚)「(えらい)」

(*゚ー゚)「……なにか隠してません?」

ξ゚听)ξ「なにも」

(*゚ 3゚)「ぶーーー。絶対何かあると思う」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 22:58:01 ID:P8GB301.0<>
川 ゚ -゚)「可愛いかおが台無しだぞ」

(*゚ー゚)「二人のまねでーす」

ξ゚ 3゚)ξ「まだ甘いわね。こうよ」

(*゚ 3゚)「え?こうですか?」

ξ゚ 3゚)ξ「もっとおもいきり!」

(*゚ 3゚)「え?こ、こう?」

ξ゚ 3゚)ξ「そう!そうよ!」

(*゚ 3゚)「わかりました!こうですね!」

川 ゚ -゚)「お前たちバカだろう」

(;*゚ー゚)「!」

ξ゚听)ξ「大丈夫、あなたも仲間だから」

川 ; -;)「いやー!一緒にされたくない!」

ξ゚听)ξ「ほっほっほ」

川 ;3;)「泣きながらブーー!」

ξ;゚听)ξ「くっ。腕を上げたわね」

(;*゚ー゚)「その顔、すでに別人ですよ」

ワイワイとはしゃぐ三人。

女三人の夜は、まだまだ始まったばかり。







.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/11/10(日) 23:00:43 ID:P8GB301.0<>以上、今日の投下終了です。

次の本編では話が進む?予定です。

ではではまた。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/10(日) 23:12:04 ID:7mXacOoQ0<>追加おつおつ!
いままでこんな流れがツンとクーだけであったとおもうと歯止めもかからずどこまでいったんだろうと想像してしまうな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/10(日) 23:29:32 ID:SC7FiFHgO<>川 ;3;)

なんだこの顔…、乙ー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/10(日) 23:58:58 ID:XisRq7320<>女三人寄ればかわいい<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/11(月) 05:13:12 ID:U0r33dJU0<>乙!ギコお前…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/11(月) 06:52:53 ID:hG8yDXTE0<>ギコは犠牲になったのだ…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/11/11(月) 22:59:28 ID:IOqiUB4o0<>ギコはほんと可哀想なやつだな(主に頭が)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/05(木) 21:43:14 ID:XfNf0j1I0<>期待ッス<> 名も無きAAのようです<><>2013/12/10(火) 09:42:17 ID:kpezL4WA0<>1ヶ月か・・・<> 名も無きAAのようです<><>2013/12/14(土) 00:49:39 ID:19jf.5cU0<>年末だから忙しいんだよ……多分。気長に読み返してみます<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/19(木) 15:23:13 ID:TEGfAVrY0<>この界隈で一か月なんて余裕で全裸待機し続けれるレベルだろ

あ、そういえばたまに地の文が長くてPCから見にくいときがあるから、
適宜改行してもらえたりするとありがたかったり。
もちろん、>>1の手間になるようだったら今のままでオナシャス<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 21:46:32 ID:ZNLK2MjU0<>どうも作者です。

クリスマスネタを書きたいな〜とか本気で思った後に、最初に書いていたことを思い出して驚愕でした。
ってことで、本編がクリスマスイブ、今回がクリスマスの閑話になります。

クリスマス前に投下できて良かった。

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/20(金) 21:48:19 ID:VpI7Up1.0<>またラブラブなカポーの話が…次回も泣きながら読むから楽しみにしてるよ<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 21:49:13 ID:ZNLK2MjU0<>
第F話 閑話 こいびとたちのくりすます



2023年12月25日
前日の12月24日夜から朝日が昇るまで出張バーボンハウスを切り盛りしていたギルドVIPの面々は、昼過ぎまで泥のように眠っていた。

12時になる前にショボンからメッセージが入り、身支度を整えてホームのリビングに集まった時には、
テーブルには軽い食事から少し重めのしっかりした料理までが並び、それぞれに好きなものをつまんで
昨日のクエストのことなどで話を咲かせた。

ミ,,゚Д゚彡「ふさも起こしてくれればいいから!」

料理と飲み物のすべてをショボンが準備したため、フサギコが自分のふがいなさを嘆きつつも夕飯は
自分がメインで作るからとショボンに詰め寄っているのをみて、笑うメンバー達。

彼らは皆、緩やかな時の流れを、感じていた。


その後今日は自由行動とすること、夕飯はまたみんなで集まろうと決めてから、とりあえずの解散となった。

解散にはなったが皆なかなか部屋から出て行かず、ショボンの
「はいはい、片づけするから一回出ようねー」
という言葉で自分の部屋に戻る者と片付けを手伝う者にやっと分かれた。

片付けを手伝っていたしぃが部屋を出たのは、3時を既に過ぎていた頃だった。

(,,゚Д゚)「し、しぃ」

(*゚ー゚)「ギコくん」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 21:50:27 ID:ZNLK2MjU0<>
自分の部屋に向かうために階段を上っていると、上からギコが声をかける。

(*゚ー゚)「どうしたの?おでかけ?」

(,,゚Д゚)「あ…いや…その…」

(*゚ー゚)「夕飯は8時だって。遅れないようにね」

(,,゚Д゚)「で、でかけないぞゴルァ」

(*゚ー゚)「そうなの?ショボンさんとクーさんならまだリビングにいたけど、他の皆は自室だと思うよ」

(,,゚Д゚)「し、しぃはこの後どうするんだ?」

(*゚ー゚)「私?わたしは……」

どこか気恥ずかしそうに自分に話しかけるギコを訝しげに思いつつ話していたしぃだったが、自分の事を聞かれて少しだけ口ごもる。

左手の薬指にはまっている指輪。
昨日貰ったそれが、ほんの少しだけ重く、熱くなった気がする。

(*゚ー゚)「わたしは…どうしようかな……。ギコ君は、どうするの?」

(,,゚Д゚)「お、おれは特に予定無いぞゴルァ。だ、だから……その……」

(*゚ー゚)「そ、そうなんだ……。私も……特に用事は無いから……」

階段の途中。
二人の距離は段数にして4段。
上から見るギコと下から見上げるしぃ。
明り取りから差し込むその光が、二人をやさしく包んでいる。

(,,゚Д゚)「よ、よければ部屋に行ってもいいかゴルァ」

(*゚ー゚)「……うん。いいよ」

二人の頬が赤く染まって見えたのは、光によるだけのものではないようだった。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 21:54:47 ID:ZNLK2MjU0<>
リビングルーム。
しぃを送り出したショボンが最後の片づけをしているのを見ながら、クーがお茶を飲んでいる。

川 ゚ -゚)「よく働くな」

(´・ω・`)「そう思うなら手伝ってくれてもいいんだけどね」

川 ゚ -゚)「それは今度にしておくよ」

(´・ω・`)「まったく」

悪びれずに答えるクーに笑顔を見せつつ、大きく伸びをするショボン。

(´・ω・`)「よし終わり!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 21:56:19 ID:ZNLK2MjU0<>
川 ゚ -゚)「この後はどうするんだ?」

(´・ω・`)「この後?店の方を一回チェックして、夜の部のメニューと食材のチェックかな。
店自体はNPCのスタッフに任せちゃうから、その後は7時くらいまでだらだら過ごすよ。
夕飯はふさが張り切ってくれてたから、それくらいの時間に手伝いに行くくらいで良いだろうし」

川 ゚ -゚)「そうか。じゃあ暇なんだな」

(;´・ω・`)「いやまあうん。暇ってほど暇ではないけど暇と言えば暇なのかな」

川 ゚ -゚)「じゃあちょっと付き合ってくれないか?」

(´・ω・`)「ん?なにに?」

川 ゚ -゚)「買い物だ。32層に行きたい街があるんだが、転移門が無いんだ。32層なら二人で良いだろ?」

(´・ω・`)「そうだね。理想を言えばもう一人くらい先陣を切る面子がいると嬉しいけど、
久しぶりに片手剣の練習もかねて僕がやろうかな」

川 ゚ –゚)「よし、それじゃあ後で。部屋で準備してるから、ショボンの準備が出来たら部屋まで迎えに来てくれ」

(´・ω・`)「わかった」

川 ゚ -゚)「女の子と二人で出かけるんだから、ちゃんとおめかしして来いよ」

(´・ω・`)「え?でも戦闘エリアも」

川 ゚ -゚)「ツンにもらった服があっただろう。あれにしろ。私も服装もあれに合わせるから」

(´・ω・`)「い、いやでも」

川 ゚ -゚)「分かったな」

(´・ω・`)「……はい」

川 ゚ -゚)「では待ってるぞ」

立ち上がり、足早に部屋をでるクー。

その後ろ姿は、どこか楽しそうだった。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 21:57:48 ID:ZNLK2MjU0<>
雑貨屋booon倉庫。
棚に並んだ品物を横目で眺めつつ、開いたウインドウで在庫数をチェックしているブーン。
その背後の開いたドアから、金色の巻き毛が見え隠れしている。

( ^ω^)「なんだお?」

声をかけられるかと身構えていたがまったく反応が無く、かといって去る気配もない為ウインドウから目を逸らさずに声をかけたブーン。

しかし反応が無い。

( ^ω^)「なんだお?」



やっぱり反応が無い。

( ^ω^)「?ツン?」

不思議に思ってウインドウを閉じずに、振り返る。

そこには身体を壁に隠して顔だけ覗かしているツンがいた。

ξ゚听)ξ!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:00:29 ID:ZNLK2MjU0<>
( ^ω^)「どうしたんだお?」

ξ゚听)ξ「そ、そっちこそどうしたのよ!」

( ^ω^)「へ?」

ξ゚听)ξ「ちょっと通りかかったら見えただけなんだからね」

( ^ω^)「通りかかるって…この先行き止まり」

ξ゚听)ξ「こんなところで何やってるのよ」

( ^ω^)「いや、ここぼくの店の倉庫だから」

ξ゚听)ξ「へ理屈言わないの!」

( ^ω^)「えーーーーーー」

ξ゚听)ξ「夕食まで、どうせ暇なんでしょ」

( ^ω^)「いや、結構昨日今日でPOT系とか少なくなってるから仕入れないとだし」

ξ゚听)ξ「ブーンのくせに暇じゃないって言うの!?」

( ^ω^)「なにその『のびたのくせになまいきだ』的な」

ξ゚听)ξ「暇よね!」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「暇よね!!」

( ^ω^)「……ツン、お願いがあるお」

ξ゚听)ξ「暇よね!!!」

( ^ω^)「仕入れに行きたいから、付き合ってくれないかお?そっちはすぐ終わるから、
そしたらツンの行きたいところに付き合うお」

ξ゚听)ξ「わ、私は忙しいんだからね!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:02:03 ID:ZNLK2MjU0<>
( ^ω^)「そっか…。ツンと一緒にお買い物行きたかったけど、残念だお」

ξ゚听)ξ「そこまで言うなら付き合ってあげるわ!しょうがないわね」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ξ゚听)ξ「し、仕方なくだからなんだからね!」

( ^ω^)「嬉しいお」

慌てて壁に顔をひっこめるツン。
そしてすぐに身体ごと開かれたドアの前に現れ、何かをブーンの顔に目掛けて投げつけた。

ξ゚听)ξ「そ、外は寒いからそれを着ければいいわよ!」

( ^ω^)「お?」

ξ゚听)ξ「準備が出来たら迎えに来なさいよね!」

ブーンが自分に当たってから下に落ちた何かに視線を奪われた隙に駆け出すツン。

( ^ω^)「わかったお!」

「なるべくはやくしなさいよね!」廊下の先の方から聞こえた声に苦笑するブーン。

床に落ちたそれは、深緑と濃い紅色のマフラーと、同じ深緑色の手袋だった。

( ^ω^)「マフラーと手袋…。マフラー貰うのは二度目だおね。ツン。
こっちの方が出来は良いけど、前に貰った網目ぐしゃぐしゃのほうが、僕は好きだお。
……はやく、またあのマフラーを巻きたいお」

マフラーと手袋を自分の胸に押し当てて呟くブーン。
うつむいたその表情は見えない。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:02:43 ID:ZNLK2MjU0<>

十数分後外を歩く二人。
二人の首にはお揃いのマフラーが巻かれ、手にはブーンは深緑の、ツンは濃い紅色をした手袋がはめられていた。

「べ、べつに糸が余っただけなんだからね!」

「わかってるお。でもありがとうだお」

「分かればいいのよ…ばか……」

ホームを出て、広場へと向かう二人。

転移門を使って移動したあまり行かない街では、二色の手袋が指と指を絡めるように繋がれていた。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:03:55 ID:ZNLK2MjU0<>
しぃの部屋。

ベッドや備え付けの机と椅子に変更は無いが、シーツやまくら、隅に置かれた鏡や洋服入れなどが
女性らしさを醸し出し、穏やかな雰囲気を作り出している。

小さなテーブルと丸い椅子が三つほどあるが、ギコは机のそば、ベッドの端に腰掛けている。

(*゚ー゚)「はい、ギコ君」

(,,゚Д゚)「ありがとうだゴルァ」

小さなテーブルの上でカップにお茶を注ぎ、それをギコに手渡すしぃ。
ギコはそれを一口啜り、ニッコリと微笑む。

(,,゚Д゚)「美味しいぞゴルァ」

(*゚ー゚)「良かった」

ギコの横に腰掛けるしぃ。
こぶし二つ分の距離が、二人の今の距離。

(,,゚Д゚)「し、しぃ。その…」

(*゚ー゚)「指輪、ありがとう。本当にうれしいよ」

(,,゚Д゚)「そうか!」

(*゚ー゚)「でもね、結婚はまだ早いと思うの」

(,,゚Д゚)「そうか」

(*゚ー゚)「きっと、ひと月前の私だったらOKしてた。でも……」

自分を見ているギコの視線を感じ、横を向くしぃ。
二人の視線が重なる。

(*゚ー゚)「ギコ君がいなくなった時、本当に怖かった。本当に本当に怖かった」

(,,゚Д゚)「すまなかった…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:05:14 ID:ZNLK2MjU0<>
(*゚ー゚)「ホントだよ。もう絶対あんな危ないことしないでよね。……でもねギコ君」

(,,゚Д゚)「なんだ?」

(*゚ー゚)「それ以上に、悔しかったの。ギコ君を助けに行けない自分に。無力な自分に」

(,,゚Д゚)「それは!」

(*゚ー゚)「うん。分かってる。二人で相談したんだもんね。お互いの苦手な分野を補おうって」

(,,゚Д゚)「だから」

(*゚ー゚)「低層階ならそれでも良かった。……ううん。きっと、すごく運が良かったんだと思う。
だから、私たち二人は生きてこられたんだと思う。このままだったら、どこかで二人とも死んでたよ」

(,,゚Д゚)!

(*゚ー゚)「でも、生きてる。生きていて、このギルドに入ることもできた。これが、きっと最後の運」

(,,゚Д゚)「しぃ……」

(*゚ー゚)「もう、待ってるだけの自分は嫌なの。一人で立ちたい。そして、みんなの力になりたい。
それでねギコ君。私はギコ君の隣に立ちたい。ギコ君の背中を守りたい」

(,,゚Д゚)「…………」

(*゚ー゚)「ギコ君に追いついて、ギコ君と対等な立場で、一緒に歩きたい。生きていきたい」

(,,゚Д゚)「しぃ」

(*゚ー゚)「そしたら、結婚したいな」

(,,゚Д゚)「……一生結婚できないな」

(*゚ー゚)「え?」

(,,゚Д゚)「おれは、必ずしぃの前に立つぞゴルァ。追いつかれたりなんかしないぞゴラァ」

(*゚―゚)「ギコ君」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:06:19 ID:ZNLK2MjU0<>
視線を重ねたままにこやかにほほ笑む二人。

(*゚ー゚)「じゃあ勝負だね。ギコ君」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!負けないぞ!」

(*゚ー゚)「私だって!」

握ったこぶしをぶつけ合う二人。
二人で暮らしていた頃も幸せではあったが今感じている充実感は無かった気がして、
心が温かくなるのを感じた。

(*゚ー゚)「あ、でもギコ君、結婚したらストレージが一緒になるとか分かってる?」

(,,゚Д゚)「ストレージが!?」

(*゚ー゚)「あ、やっぱり分かってなかった。だから結婚したら持ち物の隠し事とかできないからね。
エッチな本とか隠せなくなるから気を付けてよ」

(,,゚Д゚)「そ、そんな本持ってないぞゴルァ。」
(ツンから強制的に受け取らされた褌は早めに捨てた方が良いような気がする)

(*゚ー゚)「あー。なんか慌ててない?」

(,,゚Д゚)「そ、そんなことないぞゴルァ」

(*゚ー゚)「怪しいな」

(,,゚Д゚)「怪しくないぞ」

からかうように笑いながらゆっくりとギコの肩に頭を乗せるしぃ。
ギコの身体が一瞬震える。

(*゚ー゚)「ギコ君……」

(,,゚Д゚)「しぃ……」

(*゚ー゚)「大好き……だよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:07:10 ID:ZNLK2MjU0<>
(,,゚Д゚)「おれもだぞ。ゴルァ」

ギコの手がしぃの肩を抱く。
上目づかいにギコの顔を見ようとするしぃ。

二人の視線が重なる。

(*゚ー゚)「……ギコ君」

しぃがギコの名を呼びながらまどろむように目を閉じる。

(,,゚Д゚)「しぃ……」

そしてギコが、自分の名を読んでから閉じられた唇に自分の唇を重ねようと顔を近付けた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:08:13 ID:ZNLK2MjU0<>


ドンドンドン!

「「「ぎーこーくん!あーそーぼ!」」」

ドンドンドン!



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:09:15 ID:ZNLK2MjU0<>
触れる寸前に扉が大きく叩かれてギコの名が呼ばれ、思わず慌てて身体を離す二人。

(,,゚Д゚)「え?」

(*゚ー゚)「え?」

ドンドン!

「ひと狩り行こうぜ!」

ドンドン!

「早く行かないと夕飯に遅れるぞ!」

ドンドン!

「とりあえずでてこーい」

アインクラッドの個室は、扉が閉まった状態では外側と完全に断絶される。
一部の例外を除けば、扉を叩いた後の数秒のみ外からの声が聞こえるようになるため、
断続的に扉が叩かれ、よく聞く…というか、先ほどまで話していた者の声が聞こえた。

因みに、扉が閉まっていれば中の声を外から聞くことは普通は出来ない。
普通ならば。

(*゚ー゚)「……はい」

疲れたようにドアを開けるしぃ。
 _
( ゚∀゚)「よ!しぃ!」

( ・∀・)「ギコ!行くぞ!準備して来い!」

( ´_ゝ`)「しぃちゃんも一緒に行くか?」

(*゚ー゚)「みなさん…」

(,,゚Д゚)「ゴルァ……」

扉の前にいたのは、思っていたより多かった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:10:12 ID:ZNLK2MjU0<>
(*゚ー゚)「……ここ私の部屋なんですど、なんでギコ君を呼んでるんですか」
 _
(;゚∀゚)「え?」

( ´∀`)「さっきギコの部屋に行ったらいなかったからこっちかと思ったもな」

(*゚ー゚)「へーーーそうなんですかーーー」

(´<_` )「棒読みにもなるよなそりゃ」

(*゚ー゚)「たしかドクオさんは」

('A`)!

(*゚ー゚)「聞き耳スキルを鍛えてあるって聞いた覚えが」

('A`)シ、シラナイナァ

(*゚ー゚)「あのスキルがあると、部屋の中の声を聴けたりするんですよね。確か」

('A`)ナ、ナンノコトカナイッタイ

(*゚ー゚)「まったく……」

呆れたように目の前のメンバーを見回すしぃ。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:11:12 ID:ZNLK2MjU0<>
 _
( ゚∀゚)←少し罪悪感。でもそれほど気にしてはいない。

( ・∀・)←分かってやってて楽しんでる。

( ´_ゝ`)←リア充もげろ

(´<_`;)←わるいな、しぃ。止められなかった。←実際は止めてない。

( ´∀`)←自分は実行犯じゃないので純粋に楽しい

▼・ェ・▼←いっぱい周りにいて楽しくて嬉しくてはしゃいでいる。

('A`)←色々可哀想

(;゚∋゚)←唯一実際に止めた人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:12:04 ID:ZNLK2MjU0<>
(*゚ー゚)「はぁ…」

大きく肩で息をするしぃ。
そしておどけた様に笑顔を見せた。

(*゚ー゚)「準備しますから、待っててください。誘ったんですから、ギコ君と私のレベルが上がるまでは
帰らないつもりでお願いしますね」

一斉のブーイングをものともせずに最上級の笑顔を見せるしぃ。

それはブーイングをするメンバー達も同じで、楽しげだった。

そして一人困ったような顔をしていたギコの顔を覗き込むしぃ。

(*゚ー゚)「ギコ君?」

(,,゚Д゚)「!な!なんだゴルァ」

(*゚ー゚)「勝負だからね」

(,,゚Д゚)「!負けないぞゴルァ!」

こぶしを上げたギコを笑顔で見守るメンバー達。



夕飯の時間に彼らが揃ったかどうかは、また別のお話。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:12:55 ID:ZNLK2MjU0<>




ミ,,゚Д゚彡「……………もう7じ57ふんだから……」








.<>
◆dKWWLKB7io<><>2013/12/20(金) 22:14:32 ID:ZNLK2MjU0<>以上、本日の投下を終了します。

本編の投下はもう少しかかりそうです。

>>86 様
そうなんです…仕事が…。

魔法少女の映画を観に行って納得いかなくて続きを書きはじめたりしてないし、
頭脳は大人、身体は子供の映画を観に行って手に汗握ったりしてないし
魔法使いと戦国武将の映画を観に行って、魔法使いはともかく戦国武将の方は無いわ〜って脱力したりしてないし、
特典欲しさにもう一度魔法少女を観に行って、「この終わりはこれはこれでありなのかな…」とか思ったりしてないんです。

ということで、本編投下はもう少しかかりそうです。


いつも感想や励ましありがとうございます。
なかなか本編が進まなくて申し訳ありませんが、お付き合いいただけると嬉しいです。

>>87 様

ご意見ありがとうございます。
閑話は地の文が少なめですが、意識してみました。
これくらいなら見やすいでしょうか。
また気付いた点等ありましたら、よろしくお願いします。


ではではまた。

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/20(金) 23:13:25 ID:zm1adUvI0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/21(土) 00:13:28 ID:RyPUHreUO<>ω・)乙。ギコもげろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/21(土) 01:06:43 ID:9ZSoImF.0<>のんびり待ってるぜ〜

ツンのツンデレの下手っぷりに理解に時間がかかった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/21(土) 02:10:41 ID:f2CSm3gk0<>乙 皆が皆可愛いな…
やっぱりクーはショボンのこと好きなんだな<> 名も無きAAのようです<><>2013/12/21(土) 12:16:32 ID:L.enx9YI0<>>>108 ギコしぃを止めてくれなかったら俺発狂してたわ←

本編も全裸待機余裕なんで楽しみに待ってまっせー<> 名も無きAAのようです<><>2013/12/22(日) 00:11:31 ID:jCN1juLQ0<>ブーンどうしたんやろ?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/22(日) 00:51:55 ID:NOY6gfpU0<>みんな仲良くて楽しそうだなww
乙!<> 名も無きAAのようです<><>2013/12/24(火) 19:10:33 ID:sSQooqrk0<>やっと本編だと思ったのに・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2013/12/30(月) 23:04:53 ID:SRphWDcI0<>>>108
遅ればせながら乙でした
クリスマスネタでほっこりできました
改行はとても見やすくてありがたかったです。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/01/06(月) 12:24:09 ID:T0MiFVyY0<>ブーンはあれだろ?現実世界でもツンにマフラーもらってたんだよ、そっちが早くつけたいなあってことでしょ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/01/16(木) 05:09:46 ID:0rwDhUdM0<>毎回楽しませていただいております。支援

※擬人化
※元サイズが大きかったのですが小さくして潰れるのも悔しかったので二つサイズを用意しました。
大きい方は重たいので気をつけてください。
(小/185kb)http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1465.jpg
(大/ 1Mb)http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1466.jpg
並び順 ←モナー、モララー、ジョルジュ、フサ、ブーン、ツン、ショボン、ドクオ、クー、兄者、弟者、ギコ、しぃ、クックル→<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/01/16(木) 07:58:02 ID:qO5G4t2o0<>あぁ俺キャラ作ったら完全に弟者だわ・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/01/16(木) 10:30:38 ID:hjfCtyLE0<>モララー沢山居そう<>
◆dKWWLKB7io<>sage<>2014/01/18(土) 14:56:21 ID:pfbr0UD20<>>>119 様

うんぁー!!、!

あ、ありがとうござます!
感動です!
全員の集合絵が見られるとは!
(T_T)
設定決めながら文字にするだけでもめんど…ゲホゲホッ
だったのに(T_T)

本当にありがとうございます。
保存しまくりました。

画に負けないように、本編頑張ります!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/10(月) 20:47:56 ID:Gp3CqCoc0<>バレンタインネタ書くんですか>>1
楽しみに待っています<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:38:20 ID:VSwEoiVw0<>


第十話 迷走




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:40:21 ID:VSwEoiVw0<>


0.依頼(夜)




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:41:30 ID:VSwEoiVw0<>
「どうですか?情報収集は」

「芳しくないですね」

「……コルも無限ではないんですがね」

「あのクエストをやっていれば、そこまで困窮もしないのでは?」

「それはそうですが、何事も限度があります。それに、情報を漏らさず私達だけで独占するのも限度がありますから」

「何をおっしゃっているのやら。今まで通り、知られたら殺せばいいだけでしょう?」

「そうもいかない相手もいる。特に、うちのギルマスのお気に入りに知られたら、まだ殺せない」

「ああ。なるほど」

「……一人より複数の方が情報も集めやすいと言ったから、OKを出したんですがね」

「ワカってますよ。…だが、まだ使い道はあるので」

「食費ばかりがかかって仕方がない」

「利用できるものは利用するだけです。……必要ではなくなったら、切ります」

「情など持たない様に」

「もちろんです」

「どうだか」

「ふっ。子供には大人のことなど分からないものです」

「大人の方が、いろいろ縛られやすいけどね」

「道理も知らない子供が」

「媚びへつらうしかできない奴は子供以下だと思うけど」

「やめんか」

「…わかった」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:43:10 ID:VSwEoiVw0<>
「…そういえば、すこし面白い情報が」

「ん?」

「目当てのモノとは関係ありませんが、どうやら圏内で決闘ではない殺人が起きたとかどうとか」

「ほう」

「ホント?」

「真偽はこれからですが。もし事実であれば、面白くなりますね」

「……それはそうだね」

「それでは、その件に関した情報収集も含めて、もう少し様子を見ましょうか。
それに、こちらでも目当てのモノに関しての情報収集を始めましょう」

「了解。案を練るよ」

「それでは私も引き続き」

「宜しくお願いします」

「…しかし……」

「どうしました?」

「あなたがそんな喋り方をしているのは、やはり違和感がありますね」

「はっはっは。仕方ないですよ。この会話を聞いている者がいないとも限りませんからね。
例えば、あなたのように【聞き耳スキル】のレベルを上げている者が、すぐそばにいないとも限らない」

「ならば、メッセージでやり取りすればよいだけでは?」

「私は目の前にあることしか信用しないのでね。
報告はもちろん、目の前にいるあなたが嘘を言っているか本当を言っているかをその場で知りたいのですよ」

「……なるほど」

「ではまた」

「ええ。また」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:43:50 ID:VSwEoiVw0<>



1.依頼(昼)



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:45:40 ID:VSwEoiVw0<>
西暦2024年4月某日

ギルドVIPホーム。
執務室としている自室の一室で、ショボンは書類整理をしていた。
目の前のソファーにはクーが座っており、こちらも同じように何枚かの書類とにらめっこをしている。

川 ゚ -゚)「ふぅ。毎月の事だが、この作業は苦手だ」

(´・ω・`)「僕も嫌いだけどね。そうも言ってられないから」

机の上から視線を外し、クーを見るショボン。
その顔には銀縁のスクエアタイプの眼鏡がかけられていた。

川 ゚ -゚)「今日のお気に入りはそれか?」

(´・ω・`)「?」

川 ゚ -゚)「眼鏡だよ。一昨日くらいまでは黒縁をかけていただろ」

(´・ω・`)「ああ。うん。モラが良いの作ってくれたから」

川 ゚ -゚)「……懐かしいな。お前は目が悪かったから」

(´・ω・`)「そうだね。初めてこの世界に来たとき眼鏡が無くて遠くまでよく見えることに驚いたよ」

川 ゚ -゚)「なんだそりゃ」

すっかり書類から目を離したクーが呆れたように呟き、ソファーの背凭れに身体を預ける。

(´・ω・`)「いやマジでマジで。
時々はコンタクトもしてたから眼鏡越しじゃない景色も見てたけど、やっぱり違うよ。
ちょっとだけ戻ったら手術受けようかと思ったくらい」

川 ゚ -゚)「…でも、今はかけているんだな」

(´・ω・`)「なんかね。小さいころからかけてたから、もうすでに体の一部だったんだなと。
戦闘用に作ってもらった命中補正のある眼鏡をかけて、思ったんだ。眼鏡をかけていたほうが、
妙に落ち着く感じがするんだよね」

川 ゚ -゚)「フレーズであったな。眼鏡は顔の一部ですとかなんとか」

(´・ω・`)「あったね」

視線を合わせて笑う二人。

(´・ω・`)「懐かしいな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:46:34 ID:VSwEoiVw0<>
川 ゚ -゚)「同じくだ。……しかし、こっちは懐かしくないな。
まさかこっちの世界まで来てこんな金勘定をすることになるとは」

(´・ω・`)「頼りにしてますよ。会計さん」

川 ゚ -゚)「会長のおおせのままに」

再び吹き出す二人。
しばらく笑った後、クーの表情が真顔に戻る。

川 ゚ -゚)「で?結局この金勘定は何に使うんだ?今回はギルドの預金額だけじゃなく、全物件、
全レアアイテムの売却額まで計算するなんて、いつもやってる月締めの勘定とはレベルが違うだろ」

(´・ω・`)「そうだね。クーには話しておこうか。実は、そろそろ拠点を上に移すのも考えようかなと思っているんだよ」

川 ゚ -゚)「うえ?」

(´・ω・`)「うん。50層の主街区、『アルゲート』にね。この前視察に行ったらまだまだ建物残ってたし」

川 ゚ -゚)「……」

(´・ω・`)「あれ?反対?」

表情を曇らせたクーに対して怪訝な顔をするショボン。

川 ゚ -゚)「理由は?」

(´・ω・`)「理由?」

川 ゚ -゚)「まさか、攻略組に…」

(´・ω・`)「ないない。それはない」

川 ゚ -゚)「まあそれはそうだとは思ったが、だとすると何故だ?特にここでも問題ないだろう」

(´・ω・`)「基本的には、上が攻略されていけば『中層』と呼ばれるエリアも上に上がるから、
請け負ってる仕事の関係上、『中層』に拠点があった方が都合がいいでしょ」

川 ゚ -゚)「…それはそうだな」

(´・ω・`)「それに、もしかするとここじゃあ手狭になるかもしれないからね」

川 ゚ -゚)「ふーん……。なるほどな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:47:55 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「とは言っても、まだ未定だよ。
真ん中の50層が中層エリアから外れることもないだろうから、
ホームの移動は最後になるだろうしね。だから慎重にいきたい。
それに、しぃがいるからバーボンハウスは三号店まで増やせるけど、ブーン以外は今のところから動かないかもだし」

川 ゚ -゚)「モナーとクックルは別として、ふさと兄弟は動かなさそうだな。モララーは…どうだろ」

(´・ω・`)「モララーが移動してくれなかったら、今のブーンの店の分が空いちゃうのがもったいない。
かといって今店持ちじゃないメンバーに接客業をできるスキルはもちろん特性のあるメンバーがね。
あてはあるにはあるけど、だからすぐにどうこうじゃないんだよ。
でも各種の打開策が見つかったときか、必要に迫られたときにすぐ動けるように準備をしておこうかと思って」

川 ゚ -゚)「そうだな。増員という点では彼女達の件もあるし……」

(´・ω・`)「そうそう」

川 ゚ -゚)「彼女たちに何かしらの店を任せることは出来ないか?」

(´・ω・`)「一応話はしてあるよ。レベルを上げておいてもらえたら、それもありだね」

川 ゚ -゚)「…うむ。まあ、とりあえず、今の説明で納得しておいてやろう」

(´・ω・`)「とりあえずもなにも、それ以外何もないんだけど」

川 ゚ -゚)「何か企んでいそうなんだよ、おまえは」

(´・ω・`)ショボーン

川 ゚ -゚)「それが私たちに対してマイナスに働かないのは信じているがな」

(´・ω・`)「……ありがと。……さて、では続きを宜しく」

川 ゚ -゚)「はいはい。だがしかしめんどくさいな。もう一人くらい欲しい。
そろそろモナーにも参加してもらうのが良いと思うがどうだ?」

(´・ω・`)「何度か打診しているんだけど、首を縦に振ってくれないんだよね。
自分には荷が重いとかなんとか言って」

川 ゚ –゚)「絶対めんどくさいだけだな」

(´・ω・`)「あと、牧場の世話があるからって」

川 ゚ -゚)「まったく」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:48:38 ID:VSwEoiVw0<>
憮然として腕を組むクー。
その表情を見て垂れた眉をさらに下げるショボン。

(´・ω・`)「折を見て、一度三人で話してみようよ。さて、続き続き」

川 ゚ -゚)「ん……。だがしかしなあショボン」

(´・ω・`)「今度は何」

再び机の上に視線を向けたショボンに対し、テーブルに広がっていた書類を片付けるクー。

川 ゚ -゚)「そろそろ時間だろ」

(´・ω・`)「え?あ……もう約束の時間か。……狙ったでしょ」

川 ゚ -゚)「なんのことかなー。あー細かい数字を見ていたら疲れたよ」

立ち上がり、大きく伸びをするクーを見てから自分の机の上も片付け始めるショボン。

(´・ω・`)「せっかくだから、依頼人に会っていきなよ」

川 ゚ -゚)「めんどくさい」

(´・ω・`)「ギルマスから、サブマスに命令です」

川 ゚ -゚)「はーい」

部屋の片づけが終わった時、来客を告げるチャイムが鳴った。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:50:42 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「初めまして。ギルドVIPでギルマスをやってます。ショボンと言います」

( ФωФ)「初めましてである。吾輩はロマネスク。ギルドANGLERのギルマスである。
ショボン殿のお噂はかねがね聞き及んでいるである」

(´・ω・`)「僕の噂ですか?」

( ФωФ)「ギルド『V.I.P.』のギルマスにしてバーボンハウスの名料理人、
アインクラッド最強最悪の投擲使い、先読みの軍師、銀時雨のショボン、七色の針使い、魔針の射手」

(;´・ω・`)「は、恥ずかしいんでもう止めてください。っていうか、聞いたことないんですけど。
『ぎんしぐれ』とか『七色の針使い』とか、なんですかそれ」

( ФωФ)「吾輩も噂で聞いただけだからよくは知らんが、『料理人』以外の二つ名を言う者は、
恐怖におびえているとか聞いていたのである。だからどのような恐ろしい方かと思いきや、
このような優しげな人と知って安心したである。なあ、ヒッキー」

(-_-)「……う、うん……。会うのがちょっと怖かった……です」
 _
( ゚∀゚)「だから言っただろ。ショボンはそんなやつじゃないって。とりあえず見た目は」

ギルドVIPホームの執務室。
先程までクーが書類を広げていたテーブルにはお茶が注がれたカップが四つ並んでいた。
執務机を背に、客を迎える側のソファーにショボンとクーが座り、その向かい側、
ドアを背にギルドANGLERの代表としてやってきたロマネスクとヒッキーが座っていた
。更に近い壁沿いにはジョルジュが立っており、その手にはカップが持たれていた。

(´・ω・`)「『とりあえず見た目』ってのは気になるところだけど、それよりも気になるのが一つ」
 _
( ゚∀゚)「ん?」

(´・ω・`)「今の二つ名、普段の君なら大笑いしてるよね。僕の隣に座って腹を抱えているクーみたいに」

川 ; -゚)「ひーひっひっひっひ。な、な、い、ろ、…ぎ、ん、し、ぐ、れ、…、ま、し、ん、の、い、しゅ……」

(´・ω・`)「…なにも泣くまで笑わなくてもいいのに……。まあいいや」

隣で涙を流しつつ静かに笑っているクーを見てからジョルジュに視線を戻すショボン。

(´・ω・`)「普段なら、ジョルジュもこれくらいで笑うでしょ。…なんで笑ってないの」
 _
(;゚∀゚)「え、あ、いや、ほら、おれは先にロマネスクのおっさんに聞いてたから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:52:06 ID:VSwEoiVw0<>
( ФωФ)「え?吾輩とそんな話しをしたであるか?ちょっと緊張しているという話はした気がするが、
そのような具体的な呼び名まで言った覚えはないである」

(-_-)「多分してないと思う」
 _
(;゚∀゚)「ちょ、ふたりとも話を合わせてくれよ」

(#´・ω・`)「ふーん」
 _
(;゚∀゚)「あっ!」

(#´・ω・`)「……まさかと思うけど、ぼくのことをそんな風に広めているのがジョルジュなんてことは」
 _
(;゚∀゚)「お、おれじゃない。おれはそんなこと」

(#´・ω・`)「だよね。ネーミングセンスがジョルジュっぽくないから。
でも、だれが言い出したのかは知ってたりして?」
 _
(;゚∀゚)「いや、おれは知らないぞ」

(´・ω・`)「ふーん」
 _
(;゚∀゚)「な、なんだよ」

(´・ω・`)「……」
 _
(;゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「まあいいや。その話はまた今度ゆっくりと」

視線を外され、ひとまず安堵の顔を見せるジョルジュ。
しかしすぐに流し目で睨まれ、肩をすくめた。

川 ゚ -;)「あー面白かった」

(´・ω・`)「まだ涙出てるよ」

川 ゚ -゚)「いかんいかん」

慌てて涙を拭くクーを視界の隅に感じながらロマネスクを見るショボン。

(´・ω・`)「失礼しました」

( ФωФ)「大丈夫である」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:53:09 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「それで今回の依頼ですが、『57層北部にある湖までの護衛』ということでよろしいのでしょうか」

( ФωФ)「そうである」

(´・ω・`)「失礼ですが、何故そんなところに」

( ФωФ)「吾輩達のギルド『ANGLER』は攻略やクエストをやるギルドではなく、
釣り好きの集まったギルドである」

(´・ω・`)「ああ…」

( ФωФ)「どこのギルドにも所属しない者の中でよく釣りで出会う者達が集まり、
ギルドを作ったのである。
便宜上吾輩がギルドマスターをしておるが、釣りに関すること以外は全て個人の判断に任せている、
いわばサークルのようなものなのである」

川 ゚ -゚)「それならばギルドにならず、フレンドリストだけでも」

( ФωФ)「釣り場の情報、難易度、釣竿や針、餌、すべての情報を管理してみんなで共有するには」

(´・ω・`)「ギルドの機能があった方が都合が良かったわけですね」

( ФωФ)「そうである、そうである。
それで、今までは下の層の湖や川での釣りを楽しんでいたのであるが、
少しずつ更に高難易度や違う魚を釣りたいと思い始めてきたのである」

(´・ω・`)「それで、57層ですか?皆さんのレベルを知らないので何とも言えませんが、
今の最上層とそれほど離れておりませんし、もし釣りに向かうとしても…」

( ФωФ)「もちろん全員で行くことは考えてないのである。よい釣り場だとしても、
ANGLERに所属している中でもレベルの高い者だけで行くことになると思うのである」

(´・ω・`)「そうですか……」

( ФωФ)「噂によると今までで一番うまい魚を釣ることが出来るそうであるから、
釣り師たちのやる気につながるのではないかと思うのである」

(´・ω・`)「やる気?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:54:10 ID:VSwEoiVw0<>
( ФωФ)「…攻略組の方のおかげで50層越えをしたではあるが、
やはり下層でくすぶっている者の中にはこの世界に囚われたことによる悲壮感が漂っているのである。
それはしょうがないことではあるが、悲しいことなのである。
ギルドの中には日々の魚以外の食料を得ることが難しい者も数多くおり、
ギルドとして得たコルを分配することにより何とか人らしい生活を得ている者もおるのである」

(´・ω・`)「…」

川 ゚ -゚)「…」
 _
( ゚∀゚)「…」

( ФωФ)「吾輩やここにいるヒッキー。そして何人かはフィールドでモンスターを狩ることによって
レベルを上げてコルを得ているであるが、ほとんどの者は毎日釣りをして、魚を食べて飢えをしのぎ、
時には魚を売ってコルを得て、なんとか暮らしているのが現状なのである」

(-_-)「ぼくだって、ロマネスクさんに会わなかったら…今頃は」

( ФωФ)「今のヒッキーがいるのはヒッキー自身の努力の賜物なのである。
すこし話がそれてしまったであるが、つまり、上の層にある湖に行けばもっと楽しい釣りができる。
美味しい魚が食べられる。高く売ることが出来ると知れば、
生きるやる気や生き続ける気力が生まれるきっかけを作ることが
出来るのではないかと思ったのである。
……浅慮ではあるが、何がきっかけで生まれるかは分からないのである……」
 _
( ゚∀゚)「おっさん…」

(´・ω・`)「浅慮だなんて思いませんよ。人の心は不思議です。
何がきっかけになるかなんてわかりませんから。
僕も一人のこのゲームのプレイヤーとして、そしてこの世界に囚われた者の一人として、
それは分かるつもりです。
ですが同じギルマスとして納得しかねる部分もあります。
正直、いままで『戦闘』をしてこなかった者が、今更戦う気になるでしょうか?
また、戦う気になった時に、ギルドとしてサポートが出来るのですか?
失礼を承知で言わせていただきますが、そんなことは自殺行為に思えます」

( ФωФ)「そうなのである。そこが懸念点なのである。しかし、だからこそ、
吾輩は57層に行く必要があると考えるのである。情報を止めることは出来ないのである。
吾輩達が知らないうちに57層の湖の事を知って、
そこ行きたいと考えるメンバーがいないとは限らないのである。
ならば吾輩達がしっかりとした情報を管理し、メンバーに告知したほうが良いのである。
さすればそこに行きたいと考えた時に吾輩達に相談してくれると思うのである。
その時に吾輩たちに何が出来るのかは分からないであるが、
一緒に考えること、悩むことが出来るのである!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:55:10 ID:VSwEoiVw0<>
熱く語るロマネスク。
ショボンの目をじっと見つめて語るその言葉に、ギルドに所属するメンバーを思う気持ちに、嘘は感じられない。

( ФωФ)「ショボン殿は、そうは思われぬか?」

(´・ω・`)「お考えは理解しました。色々な道の中で、それは正しい道の一つだと思います。
ですが、その場合情報屋などを使って情報を収集するのも手だと思いますが」

( ФωФ)「確かにそれも手である。だがそのような情報がいくらで買うことが出来るか…。
先ほどの話からもご理解いただけると思うが、
吾輩達のギルドにはあまりコルを持ってはおらぬのである。それに…」

(´・ω・`)「それに?」

( ФωФ)「これは吾輩の拘りになってしまうのであるが、吾輩は目の前にあるもの、
自分の目で見たものでないと本当に信用できないのである。どんなに信頼できる相手であっても、
聞き伝えではどこか疑ってしまうのである」

先程までの熱い口調とは違って少しだけ照れくさそうに喋るロマネスク。
隣のヒッキーは少し呆れたようにその様子を横目で見ている。

(´・ω・`)「なるほど。ですが…」
 _
( ゚∀゚)「おいおい、まだなんかあるのかよ」

川 ゚ -゚)「ジョルジュ、正式にギルドに来た依頼を受ける受けないはショボンに任せる。
これがうちのギルドのルールだ。そのショボンがまだ納得はしていない。それだけのことだ」
 _
( ゚∀゚)「それは分かってるけどよ」

川 ゚ -゚)「ならば黙っていろ」
 _
( ゚∀゚)「それにしたって」

立ち上がりかけたクーを制するショボンの手。

川 ゚ -゚)「ショボン」

クーに向かって優しく微笑み、そのあとジョルジュを悲しげに見る。

(´・ω・`)「ありがと、クー。ねえジョルジュ。僕はギルマスとしてメンバーの安全をまず一番に考える。
それが分かってもらえないのなら」
 _
( ゚∀゚)「悪かった。おまえのそれにおれは…おれ達は何度も救われている。
それは身に染みてわかってる。すまん。続けてくれ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:56:16 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「分かってもらえて嬉しいよ」

ジョルジュに向かってニッコリと微笑んでから、表情を引き締めてロマネスクを見た。

( ФωФ)「メンバーに信頼されているのであるな」

(´・ω・`)「恐怖政治で統括しているだけですよ」

ニッコリと微笑んだショボンを見て、意味合いは違うが眉間にしわを寄せるクーとジョルジュ。

( ФωФ)「はっはっは。それは良い。吾輩も目指してみるのである」

(;-_-)「やめてよロマ」

( ФωФ)「はっはっは」

おびえたような顔をしたヒッキーの肩を叩きながら豪快に笑うロマネスク。
ショボン達とは違った形で、この二人はこの二人で信頼の絆を結んでいるように見えた。

( ФωФ)「さて、ショボン殿。他に聞きたいことがあるのではないか?」

(´・ω・`)「ええ。聞きたいことというか、確認なのですが、うちのギルドに依頼すると、
多分情報屋に支払う金額よりも高くなるけど大丈夫ですか?」

( ФωФ)「……え?」

(´・ω・`)「57層というにはうちのギルドにとっても簡単な層ではないので、
高レベルプレイヤーで護衛チームを作ります。
その危険手当もそれなりなお値段になりますし、使用したPOT、結晶に関しても実費を請求します。
更に成功報酬もありますし、途中で撤退するにしても着手金は別途かかります。
現在集まっている情報の提示をしていただいて、足りない情報に関してはこちらでも収集しますので、
それにかかった実費もそれなりな額になるでしょう。
ジョルジュの知り合いですから多少は割引しますが、
どう考えても情報屋から買う金額とは比べ物にならないかと…。
もちろん細かい計算をしないとですが、おそらくは桁の違う金額の請求になるかと」

(;ФωФ)「それはその…」

(;-_-)「ジョルジュさん」
  _
(;゚∀゚)「ショボン、ちょっと喋っていいか?」

(´・ω・`)「なに?」
  _
(;゚∀゚)「分割とか」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 22:59:34 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「着手金は作戦前に支払。申し訳ないけど緊急を要する依頼というわけじゃないしね。
そして多分それだけで情報屋に支払う金額と同じくらいの金額だよ。実費は作戦完了後に完全支払。
情報屋に支払う金額も出来ればその都度欲しいかな。まぁここら辺は臨機応変に。
成功報酬はまあジョルジュに免じて利子無しの分割でもいいけど、それでも……」
  _
(;゚∀゚)「うう…」

( ФωФ)「!魚はどうであるか!?」

(´・ω・`)「魚?」

( ФωФ)「湖にたどり着いたら魚を釣るである!その魚で」

(´・ω・`)「魚……ねぇ……」
  _
( ゚∀゚)「そうだな!それが良い!ほらショボン!この前食った魚あっただろ!
俺が初めて釣ってきた!店で出したいって言ってたやつ!
あれがあそこで釣れるんだよ!だから!」

(´・ω・`)「!ああ!あの魚!美味しかったよね。確かに。あれを出せたらお客さんも喜ぶよ」
  _
( ゚∀゚)「だよな!」

(´・ω・`)「あの魚って57層で釣れるんだ」
  _
( ゚∀゚)「そうそう!その湖で釣れる!
っていうか、今のところあそこでしか釣れないからあの湖に行くしかないんだ!」

(´・ω・`)「へーーーー。その湖でしか」
  _
( ゚∀゚)「そうそう!……あ…」

良い案が出たと嬉しそうだったジョルジュの顔が曇り、額に冷や汗が浮かぶ。
その様を厳しい目でショボンが見つめ、クーが呆れた様子で冷ややかに見つめる。
その状況をよくわからずに観察するロマネスクとヒッキー。

(´・ω・`)「57層、行ったんだ。釣りをしたんだ。ふーーーーーーん」
  _
(;゚∀゚)「え、あ、そ、その……」

(´・ω・`)「僕、許可した覚えないけどな。クー、聞いてる?」
  _
(;゚∀゚)「!クー!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:00:33 ID:VSwEoiVw0<>
すがる様な表情で両手を合わせてクーを見るジョルジュ。」

川 ゚ -゚)「いや、ない」
  _
(;゚∀゚)「クーーーーー」

(´・ω・`)「うちのギルド、基本的にソロ戦闘は禁止ってことはいくらなんでももう覚えてるよね。
ジョルとドクオには戦闘職としてレベル上げや狩りに関してはいくつか特権は認めてるけど、
それでもレベルに対して高層フロアの場合は僕かクーの許可を取る決まりも。
それを破って、しかも57層……。あれからまだ1年も経って無いっていうのにまたやったんだ……。
そっか……。……ねえ、ジョルジュ」
  _
(;゚∀゚)「は、はい」

(´・ω・`)「そんなに死にたいの?」

普段の、それこそ先ほど二つ名に関して見せたような怒りとは違う、
怒りと悲しみの混じったような心の底からの怒気をショボンから感じ、何も言えなくなるジョルジュ。
  _
(;゚∀゚)「い、いや、その、、、」

じっとジョルジュを見るショボンの瞳は何の感情もないようで、その表情と合わせても何の感情も汲み取ることは出来ない。
けれど発せられる空気は身をすくませるようだった

(´・ω・`)「そんなに死にたいのなら、もうこのギ」

川 ゚ -゚)「ショボン!」

張り詰めた空気を裂くクーの声。
普段からは騒動できない大きく鋭い声によって、全員が動きを止めた。

川 ゚ -゚)「人前だ、落ち着け」

ゆっくりと隣に座るクーの顔を見るショボン。
そして氷が解けるような速度で、そこに表情が戻った。

(´・ω・`)「……ありがとう、クー」

川 ゚ -゚)「ジョルジュ」
  _
(;゚∀゚)「あ、はい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:03:17 ID:VSwEoiVw0<>
川 ゚ -゚)「すぐに部屋に戻れ。そしてこちらから指示があるまで自室待機」
 _
(;゚∀゚)「え、あ、で、でも」

川 ゚ -゚)「でももくそもない。これは命令だ。ギルマスより先にサブマスである私が、まずは待機を命ずる。
この命令は、お前が破るか私が解かない限りはギルマスでも何もできない。
解ったな?分かったならすぐに実行しろ」
 _
(;゚∀゚)「!……わ、わかった」

慌てて部屋を出ようとするジョルジュ。

しかし扉を開けたところで立ち止まり、肩ごしにちらっと中を見る。
 _
( ∀)「……ごめん、ショボン。ありがとう、クー」

部屋を出るジョルジュ。
部屋には静けさだけが残り、居心地の悪さを四者が四様に覚える。

川 ゚ -゚)「お見苦しいところをお見せした」

それを破ったのはクーだった。
普段の落ち着いた口調に戻り、その口元には微笑すら浮かべている。

( ФωФ)「あ、いや、大丈夫である」

(;-_-)「う、うん……」

(´・ω・`)「すみませんでした」

立ち上がり、深々とお辞儀をするショボン。
慌ててロマネスクとヒッキーも立ち上がってショボンに座るよう促したが、
ショボンは黙って頭を下げており、二人を困惑させる。

川 ゚ –゚)「お茶が冷めてしまいまったな。ショボン、新しいのを淹れてくれないか」

(´・ω・`)「え?あ、うん」

一人落ち着いてテーブルの上のカップに口を運んだクーが声をかけ、殻になったカップをショボンに突き出す。
ショボンがそれを受け取り、新しいカップを四人分とティーポットをストレージから取り出しながら座った。

川 ゚ -゚)「お二人もどうぞ座ってください」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:04:21 ID:VSwEoiVw0<>
( ФωФ)「わ、わかったのである」

(;-_-)「…」

クーに促されて座ると、新しいカップが目の前に置かれた。

川 ゚ -゚)「さて話を戻しますが、実際のところ57層の魚がそれほど美味しい魚だとしても、
一回の釣りで釣った量で報酬に足りるとは思えません。そうだろ?ショボン」

(´・ω・`)「うん。そうだね。今店から仕入れている魚の中で一番高い魚より高く買ったとしても、とてもじゃないけど…」

(;ФωФ)「そうであるか」

(;-_-)「…」

川 ゚ –゚)「ですが、それで諦められますか?」

(;ФωФ)「…」

(;-_-)「…」

(;ФωФ)「釣り好きな人間は、気持ちが昂ると多少の危険を気にせず向かってしまう可能性が高いと思うのである。
出来れば、……いや、吾輩は皆のためにも、諦めたくないである」

(-_-)「ロマ…」

(*ФωФ)「それに何より、吾輩が釣りたいのである」

(;-_-)「…ロマ」

(´・ω・`)「…そうは言われましても……」

川 ゚ -゚)「ショボン、57層だけでなく、今店で使っている魚、高いのも安いのもすべて、
それを供給してもらえるとしたら、どれくらいで足りそうだ?」

(´・ω・`)「!」

川 ゚ -゚)「それ以外の魚や海産物もな。もちろん手間賃くらいはプラスして。
あと、その湖に向かう道すがらで集めることの出来る鉱物や植物。
それに周辺でチャレンジできるお使いか調査・採取クエストを確認してみてくれ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:05:08 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「分かった。クーは」

川 ゚ -゚)「私は費用の概算を出す。まずはそれで計算してみよう」

( ФωФ)「あ、ルートと周辺のエリア地図と現在分かっている限りの敵出現マップは手に入れてあるのである」

(´・ω・`)「そうですか!ではまずはそれと僕の持つ情報を照らし重ね合わせて調整してみましょう」

ウインドウを出す三人。

( ФωФ)「ヒッキーは、レベルの高い何人かに同行するかどうかと、最近の釣果の確認をしてもらえるであるか」

(-_-)「うん。わかった」

ヒッキーもウインドウを出し、それぞれに作業を始めた。

ギルド『ANGLER』からの依頼を正式に受諾するのは、この二時間後だった。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:06:04 ID:VSwEoiVw0<>



2.会議(私)



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:06:53 ID:VSwEoiVw0<>
自室にて鬱々としていたジョルジュの耳にノックの音が届いたのは、部屋に戻ってから三時間後だった。
 _
( ゚∀゚)「はい!」

ベッドに腰掛けて首を垂れていたジョルジュが顔を上げる。

川 ゚ -゚)「私だ」
 _
( ゚∀゚)「開いてる!」

その声に反応するかのようにドアが開き、クーが中に入ってくる。

その表情から心底自分を軽蔑しているのがよく分かり、心が痛くなるジョルジュ。

ξ゚听)ξ「私もいるわよ」

('A`)「おれもー」

そのクーの後ろから普段通りのツンとドクオが顔を出し、ジョルジュは少しほっとした。

ξ゚听)ξ「ほんとにバカよね」

('A`)「まったくだ」

ジョルジュの部屋は装飾がほとんどされていなく、すべての部屋の基本形であるベッドと
作り付けの机とセットの椅子が一つあるくらいだった。

ξ゚听)ξ「相変わらず何もない部屋よね」
 _
( ゚∀゚)「……この部屋にいるのは寝ているときぐらいで、戦闘しているか釣りしている時以外は誰かの所にいるから」

ジョルジュと人ひとり分くらい離れてベッドに腰掛けるドクオ。
クーは当たり前のように備え付けの椅子に座っている。

ξ゚听)ξ「少しは人が来た時のことも考えなさいよ」

ウインドウを出し、自分のストレージ画面を数回タップするツン。
すると部屋の中央に低めの丸いテーブルが現れ、その周りに座り心地のよさそうな一人掛けの
ソファーが三つ現れた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:07:47 ID:VSwEoiVw0<>
ξ゚听)ξ「昔私が使っていたやつ。もう使わないからあげる」
 _
( ゚∀゚)「……さんきゅ」

ξ゚听)ξ「テンション低いわね」

呆れたように呟きながら、自分の出したソファーに腰掛けるツン。

('A`;)「いや、クーからもらったメッセージを読んだ限りじゃ、低くて当然だと思うぞ」

ξ゚听)ξ「ジョルジュがショボンを怒らせるのなんて、いつもの事じゃない」

('A`)「いや、内容がさ」

ξ゚听)ξ「どんな内容でも、謝るのは変わらないんだから、落ち込むだけ時間の無駄よ。ね、クー」

川 ゚ -゚)「そうだな。猛省はしてもらわないといけないが」
 _
( ゚∀゚)「……すまん」

川 ゚ -゚)「とりあえず依頼は引き受けることにした。もう少し詰めないといけないが、まあ大丈夫だろう」
 _
( ゚∀゚)「そうか……」

('A`)「で、ジョルジュ。なんで一人で行ったんだ?おれかギコでも誘えばよかったのに。
ショボンに話さなかったのは、美味しい魚を渡して驚かせようとしたかなんかだろうけど、
それならクーに連絡入れれば良いし」

川 ゚ -゚)「そうだな。57層だからギコは微妙だが、ドクオなら問題ない」
 _
( ゚∀゚)「それは…その……」

川 ゚ -゚)?

ξ゚听)ξ?

('A`)?
 _
( ゚∀゚)「ドクオはハインと約束がある日で、ギコとしぃはそれぞれ牧場と店の手伝いで、
おれ以外は全員店とか用事があって。おれもクックルの所に行ったんだけど、
途中で仕事が終わっちまってさ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:08:53 ID:VSwEoiVw0<>
川 ゚ -゚)「クックルを誘えばいいだろ」
 _
( ゚∀゚)「クックルはクックルで新種の栽培とかで、スキルを使っていろいろやってた」

('A`)「ああ、あの日か…。言ってくれりゃあハインと一緒に行ってもよかったのに。
ハインと三人なら戦闘も楽になるし。」
 _
( ゚∀゚)「ハインに殺される」

川 ゚ -゚)「だな」

ξ゚听)ξ「それはそうね」

('A`)「え?そこ肯定するところ?」

ξ゚听)ξ「それよりドクオ、ハインと二人で何してたのよ」

('A`)「頼まれてレベル上げの手伝いだよ。ハインとなら50層くらいまでショボに連絡しなくても行けるからな」

ξ゚听)ξ「なんだつまらない」

川 ゚ -゚)「待てツン、この二人でレベル上げってことはそれなりに高層エリアだ。でも最前線ではない。
つまり周囲に人は少ない!」

ξ゚听)ξ「!それもそうね。……ドクオ、正直に答えなさい」

('A`)「な、何をだよ」

ξ゚听)ξ「ハインに襲われたでしょ」

('A`)「そんなわけあるか!」

川 ゚ -゚)「!襲ったのか!」

('A`)「襲うかボケ!」

ξ゚听)ξ「意気地のない男よね。ほんとに」

('A`)「あーもう、うるせえな」

ξ゚听)ξ「何よ、心配してあげてるのに」

川 ゚ -゚)「そうだぞ。ドクオ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:09:35 ID:VSwEoiVw0<>
('A`)「面白がっているだけだろ」

ξ゚听)ξ「否定はしない」

川 ゚ -゚)「同じく」

('A`)「……やだもうこいつら」
 _
( ゚∀゚)「…………」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ –゚)!

('A`)!

三人で盛り上がっているのをじっと見ていたジョルジュに気付き、各自座りなおす。

('A`)「……まあとりあえず、謝るしかないんだし」

ξ゚听)ξ「そうね。それしかないわね」

川 ゚ -゚)「そうだな」
 _
( ゚∀゚)「許してくれるかな」

('A`)シラネ

ξ゚听)ξ「さあ」

川 ゚ -゚)「どうだろうな」
 _
(;゚∀゚)「え?」

すがるように三人を見たジョルジュに対し、三人は三様にさらっと返した。
 _
(;゚∀゚)「そ、そこはもっとこう」

('A`)「結局は、お前がどこまでちゃんと謝るかだろ」

ξ゚听)ξ「そうよねー。そしてそれをどこまでショボンが受け取ってくれるか」

('A`)「二回目っていうのが痛いよな」

,<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:10:16 ID:VSwEoiVw0<>
ξ゚听)ξ「死にそうにならなきゃ良いってわけでもないしね」

川 ゚ -゚)「もしその状態になってしまっていた時に、前回は駆けつけることが出来たが、
今回は駆けつけることが出来たかは分からないわけだし。
……ショボンはそれを考えてゾッとしただろうな」
 _
(;゚∀゚)「…………」

自分を励ましに来たのか落ち込ませに来たのか分からない仲間達の言葉に、
何も言えなくなってしまうジョルジュ。

すると、再び部屋がノックされた。

( ´∀`)「モナーもな」

川 ゚ -゚)「開いてるぞ」

( ´∀`)「おじゃまするもな」

▼・ェ・▼「キャン!」

ノックをしたモナーがドアを開けると、足元からビーグルが走って中に入り、
ジョルジュの膝に飛び乗った。
 _
( ゚∀゚)「ビーグル!」

勢いに負けてベッドに上半身を倒すジョルジュの腹の上にビーグルが乗る。
そしてジョルジュの顔をぺろぺろと舐めた
 _
( ゚∀゚)「ちょ!おまえ!」

( ´∀`)「ビーグル!それくらいにするもなよ」

( ・∀・)「ちぃっす」

( ´∀`)「入り口であったもな」

( ・∀・)「バカがまたバカやったんだって?」

ビーグルに続いて、しかしゆっくりと中に入ってくるモナー。
そしてその後ろからモララーが顔を出す。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:11:07 ID:VSwEoiVw0<>
(;´∀`)「モララー、本当の事でももうちょっと言葉を濁すもなよ」

('A`)「……実はモナーも毒は吐くんだよな」

( ´∀`)「もな?」

ξ゚听)ξ「ま、座ったら」

ツンに促されてそれぞれにソファーに座る二人。

( ´∀`)「それにしても、ジョルジュも懲りないもなね」

( ・∀・)「ほんとだよ、一回死にかけてるのによくもまあ」
 _
(;゚∀゚)「もうなんとでも言ってくれ」

ビーグルを抱えて上半身を起こすジョルジュ。
胸の位置にあるビーグルの頭をぐりぐりと撫でると、一鳴きしてから膝から床に飛び降りた。

( ´∀`)「まあでも元気そうで安心したもな」

自分の足元にやってきたビーグルを抱き上げて膝の上に乗せるモナー。
ビーグルは安心したように身体を丸める。

川 ゚ -゚)「さっきまで酷かったがな」

( ・∀・)「本気で反省したことをショボンに分かってもらわないと、まずいんじゃないか?」
 _
(;゚∀゚)「うう……」

( ・∀・)「ギルマス権限で、いきなり除名とか出来るんだろ?ちょっと確認してみたらどうだ?」
 _
(;゚∀゚)「こ、怖いこと言うなよ」

( ´∀`)「そうもなよ。モララー。だいたいギルドのメンバーから外されたら、この部屋いられないはずもな」

('A`)「そうなのか?」

川 ゚ -゚)「どうだろうな。この建物は二階から上はショボンか私が許可した者以外は
ギルメン以外は入れないよう設定してあるが、現時点で入っている者を登録から外した場合、
どのようになるのか…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:11:53 ID:VSwEoiVw0<>
ξ゚听)ξ「ちょっと興味あるわよね」

('A`)「入らないよう設定って言っても、扉が開かないように設定してあるだけだからなぁ…。
あれってこのエリアにも入れないように設定してあるんだろうか」

全員がジョルジュを見る。
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「ショボンに言って、ためしにジョルジュを」
 _
(;゚∀゚)「てめえモララーこのやろう!」

( ・∀・)「冗談だ冗談」

笑うモララーを恨めしげに見ながら「冗談にならねぇって」と呟くジョルジュ。

川 ゚ -゚)「兎にも角にも、誠心誠意謝るんだな」
 _
( ゚∀゚)「……許してくれるかな」

( ´∀`)「大丈夫もなよ。
ジョルジュが自分から抜けたいって言わない限り、ショボンはジョルジュを除名したりしないもな。
だから、ちゃんと謝れば許してくれるもな」

( ・∀・)「これに懲りて、二度とやらない様にするんだな」

ξ゚听)ξ「ほんとよ。あんたが落ち込んでるのは自業自得として、
ショボンが落ち込むと後に響くんだからちゃんとしてよね」
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「……『え?』っておまえ、……え?分かってない?」

川 ゚ -゚)「分かってないようだな……」
 _
( ゚∀゚)「え?え?」

( ´∀`)「ブーンの姿が見えないってことは、ショボンの所に行ってるもな?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:12:38 ID:VSwEoiVw0<>
('A`)「ああ。とりあえずはあいつで落ち着かせてる。この後でモナー、行ってくれるか?」

( ´∀`)「わかったもな。ビーグルもいるから大丈夫もなよ。他の皆にも連絡はしてあるもな?」

川 ゚ -゚)「ああ。しぃとふさと兄弟は店が終わり次第来ると言っていた」

( ´∀`)「クックルとギコは農場にいたもな。心配してたから、後で追加連絡をしてあげてほしいもな」

川 ゚ -゚)「分かった」
 _
(;゚∀゚)「え?」

ξ゚听)ξ「このバカはほんとに……」

川 ゚ -゚)「はぁ…。いいかジョルジュ、ショボンはな……」

ひとり焦ったようにきょろきょろと周囲を伺うジョルジュ。
呆れたようにそれを見る5人だったが、説明するためにクーが口を開いた。





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:13:25 ID:VSwEoiVw0<>
執務室のソファーで、一人肩を落とし項垂れているショボン。

テーブルの上のカップには琥珀色のお茶が注がれているが、既に冷めている。

(´-ω-`)「はあ…」

大きくため息をついたときに、それを待っていたかのように目の前の扉がノックされた。

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「ぼくだお」

(´・ω・`)「開いてるよ」

( ^ω^)「おつおつ」

にこやかに中に入ってくるブーン。
そして目の前のソファーに座る。

( ^ω^)「予想通り落ち込んでるみたいだおね」

(´・ω・`)「クー?」

( ^ω^)「クー」

(´-ω-`)「はあ…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:14:22 ID:VSwEoiVw0<>
( ^ω^)「おっおっお」

ため息をつきながら項垂れるショボンを見て、少しだけ楽しげに笑うブーン。

(´・ω・`)「笑い事じゃないよ、ほんとに」

( ^ω^)「ごめんだお。でもこういうショボンを見るのも久しぶりだなと思ったら、なんか嬉しくなったお」

(´・ω・`)「なにそれ」

( ^ω^)「よく気の付くギルマスさんだと有名なショボンにしては、僕が座ったのに飲み物出してこないし」

(´・ω・`)「まったく」

呆れたようにストレージを開くショボン。
そしてブーンの前に一つのカップを置く。

(´・ω・`)「はい」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ブーンはそれを取り、口をつける。
ちょうど良い暖かさのそれは口の中に淡く広がり、柔らかい果実のような甘さと紅茶のような渋みを残す。

(´・ω・`)「で?何が嬉しいのさ」

( ^ω^)「ギルマスじゃないショボンを見られて、嬉しいんだお」

(´・ω・`)「ブーン」

( ^ω^)「ショボンは頑張りすぎだお。気持ちは分かるけど、もうちょっと肩の力を抜く時間を作らなきゃだめだお」

(´・ω・`)「……抜いてるよ」

( ^ω^)「ビーグルの事かお?」

驚いたように目を見開き、ほんの少しだけ険しい瞳でブーンを見る。

( ^ω^)「気付かれてないと思ったら大間違いだお。まあ最初に気付いたのはドクオだけど」

(´・ω・`)「そっか…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:15:20 ID:VSwEoiVw0<>
( ^ω^)「安心していいお。多分気付いているのは僕ら四人だけだから。
他の皆はただ純粋にビーグルとじゃれているとしか思ってないお」

(´・ω・`)「言っておくけど」

( ^ω^)「ショボンがビーグルの事を大好きだってのはちゃんとわかってるお。
ただ、あそこまで、それこそアホみたいにビーグルとじゃれつくのは、
ギルマスとしての自分に疲れた時のリフレッシュと、そういう自分を周囲に見せるためだってことだおね」

(´・ω・`)「……全部お見通しか」

( ^ω^)「幼馴染をなめちゃだめだお」

(´・ω・`)ショボーン

( ^ω^)「そんな顔してもだめだお」

もともと垂れ気味の眉をさらに下げてブーンを見るショボン。

しばらく見つめあう二人だが、ブーンの言葉でショボンが噴き出し、それを見たブーンがまた嬉しそうに笑う。

( ^ω^)「ショボンは頑張りすぎだお。もっと頼ってくれればいいのに」

(´・ω・`)「これはぼくの性分だからね。なかなか」

( ^ω^)「昔からそうだからよく知ってるけど、それでも……だお」

(´・ω・`)「それに…」

( ^ω^)?

再び表情に影を落とすショボン。

(´・ω・`)「これは、……ぼくがやならきゃいけないことだから」

( ^ω^)「まったく……。肩の力を抜かないと、それもできなくなるかもだお」

(´・ω・`)「うう…」

( ^ω^)「まあこの話はまた今度ゆっくりするとして、今は違うことでうじうじしているんじゃないかお」

(´・ω・`)!

( ^ω^)「だおねーーー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:16:24 ID:VSwEoiVw0<>
(;´・ω・`)「な、なんのことかな」

( ^ω^)「ジョルジュはショボンのことを嫌いになったりしないから、大丈夫だお」

(´・ω・`)!

顔を強張らせて固まってしまうショボン。
それをみて、肩をすくめやれやれと呟きながらカップに口をつけるブーン。

数分固まっていただろうか、ブーンが思わず「あれ?システム的に固まってる?」などと
思ってしまった頃に、やっと動き始めるショボン。

(´・ω・`)「大丈夫……かなあ……」

( ^ω^)「ジョルジュはちゃんと理由があって怒られたのに逆切れするような奴じゃないから大丈夫だお」

(´・ω・`)「それはそうだけど…」

( ^ω^)「なにが気になるんだお?」

(´・ω・`)「ギルド辞める?とか言っちゃったし」

( ^ω^)「クーから途中で止めたって聞いたお」

(´-ω-`)「クーが止めてくれたんだよ。思わず言ってしまうところだった」

大きなため息。
眉間にしわを寄せるブーン。

( ^ω^)「でも、言ってないお。
それにたとえ言っていたとしても、言われるようなことをやってしまったのはジョルジュだお」

(´・ω・`)「でもさ…」

( ^ω^)「ジョルジュはそれくらいわかってるお。自分が愚かなことをしてしまったことくらい。
そして、ちょっと過保護ではあるけどショボンが自分を心配して、しすぎて怒っているってことくらい」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「だから、ジョルジュがショボンを嫌いになんてなってないお」

(´・ω・`)「そうか…なあ……」

( ^ω^)「……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:17:21 ID:VSwEoiVw0<>
じっとショボンの顔を見るブーン。
それを不思議そうに見るショボン。

(´・ω・`)「なにさ」

( ^ω^)「気になるのはそれだけじゃないみたいだおね」

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「………」

(´・ω・`)「そんなにぼくって分かりやすいかな。地味に落ち込むかも」

( ^ω^)「おっおっお。大丈夫だお。
種明かしすると、これも幼馴染マジックと三人からの入れ知恵だお。
多分気にしてるって言ってたんだお」

(´-ω-`)「マジか…」

( ^ω^)「ジョルジュがうちを辞めて、釣り好きギルドに行くとかありえないから大丈夫だお」

じろっとブーンを見るショボン。
その瞳を不思議そうに見つめ返すブーン。

(´・ω・`)「なんでそんなことがわかるのさ」

( ^ω^)「分かってないのはショボンくらいだお」

(´・ω・`)?

疑心に満ちたショボンの問いに笑顔で答えるブーン。

あまりに自信に満ちたその言葉に次の句を継げずにいるショボン。

( ^ω^)「だいたいショボンはジョルジュがなんで釣りをするか分かってるのかお?」

(´・ω・`)「釣りが好きだから」

( ^ω^)「おっおっお。やっぱり分かってないお」

(´・ω・`)???

面白そうに笑うブーンを問い詰めようと思った時に、扉がノックされた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:18:11 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「ぶ、は、はい!」

( ´∀`)「モナーもな」

( ^ω^)「開いてるお」

( ´∀`)「おじゃまするもなー」

扉を開けて中に入ってくるモナー。
その足元を駆け抜ける影。

(´・ω・`)!

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃん!」

座っているショボンの膝に乗り、胸に手をかけて顔をぺろぺろと舐めるビーグル。

(*´・ω・`)「ちょっ!ビーグルちゃん!」

ビーグルの行動にさすがに戸惑いながらも、嬉しさも隠しきれていないショボン。

( ^ω^)「おつかれさまだお」

( ´∀`)「おつかれさまもな」

席を立って横に移動するブーン。
モナーは礼を言いながらショボンの前のソファーに座った。

( ´∀`)「元気そうもなね」

( ^ω^)「さっきまで酷い落ち込みようだったお」

( ´∀`)「そうもなか」

(*´・ω・`)「ちょっブーン!変なこと言わない…ビーグルちゃん!そこは!」

ショボンの相手はビーグルに任せて情報を交換する二人。

( ^ω^)「あっちはどうだったお?」

( ´∀`)「あっちも酷く落ち込んでたらしいもな。モナーが着いた時には大分回復してたけど。
でもそんなに落ち込むなら最初からやらなきゃいいのに、ジョルジュはほんとにおバカさんもなね」

( ^ω^)「ほんとだおね。しかも二回目。ばれたらショボンにどれほど叱られるか想像できたはずだお」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:19:02 ID:VSwEoiVw0<>
( ´∀`)「もなもな。それを忘れるくらいその魚をみんなに食べさせたかったもな。
それは嬉しいもなけど、やっぱりおバカさんもな」

( ^ω^)「だおね」

談笑する二人を横目で見つつ、ビーグルが繰り出す攻撃を甘んじて受けて至福の時を過ごすショボン。

( ´∀`)「さて……。ビーグル、そろそろこっちにくるもな」

▼・ェ・▼「きゃん!」

その声でぴょんとショボンの膝から飛び降り、モナーに駆け寄るビーグル。
そして足元で丸くなった。

( ´∀`)「おりこうさんもなね」

ビーグルの頭を撫でてやってから、ショボンをまっすぐに見るモナー。

( ´∀`)「ショボンはどうするもな」

(´・ω・`)「え?」

( ´∀`)「ジョルジュは本当に反省していたもな。
もちろんルールを破ったことはいけないこともなけど、ショボンはどうするもな?」

(´・ω・`)「……ルールを破った罰則はつけないと。でも…それ以上は…」

( ´∀`)「そうもなね。もう一度ちゃんと謝ってくれたら、それで良いと思うもな。
でも、ショボンも謝らないとダメもな」

(´・ω・`)「!?」

( ´∀`)「クーに途中で止められたとはいえ、言っちゃいけないことを言おうとしたもな。
それに関しては、ちゃんと謝らないといけないとモナは思うもな」

優しく微笑みながらショボンをまっすぐに見るモナー。

その優しくも厳しい瞳を見て、ショボンが息をのんだ。

(´・ω・`)「うん。ちゃんと謝るよ…」

( ´∀`)「それが良いと思うもな」

更に笑顔になるモナーを見て、頼りなさげに微笑むショボン。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:19:49 ID:VSwEoiVw0<>
( ^ω^)「?ショボン?」

(´・ω・`)「モナーには、助けられてるなと思って」

( ´∀`)「モナにもな?」

(´・ω・`)「出会った時からだよ。殺さなくてもいい命を、あの時のぼくは怒りに任せて狩ろうとしていた。
それを止めてくれたのはモナーだから」

( ^ω^)「ショボン…」

( ´∀`)「あの時助けられたのはモナーもな」

(((´-ω-`)))「ううん」

瞳を閉じて首を横に振るショボン。
モナーとの出会いを思い出しているのであろう。

(´・ω・`)「あの時、そして今、助けられているのは僕の方だよ。
もちろんモナーだけじゃなく、ギルドの皆に、僕は助けられている。
そう……。それを、忘れちゃいけない。みんなを、守らなきゃいけないのに」

( ^ω^)「おっおっお。頑張るのはいいことだけど、頑張りすぎちゃだめだお」

( ´∀`)「みんながみんなを助けあって、支えあって、VIPをつくってるもな。モナーは、誰が欠けてもイヤもな」

それぞれの顔をみて、笑顔になる三人。

モナーの足元で丸くなっていたビーグルが顔を上げ、嬉しそうに一鳴きした。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:20:51 ID:VSwEoiVw0<>



3.会議(公)




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:21:52 ID:VSwEoiVw0<>
三日後
ギルドホームの食堂兼会議室に集まったVIPの面々。

既に食事も澄まし、各人の目の前にはカップが置かれている。
そして彼らにしては珍しく、ほんの少しではあるが緊張感が漂っている。

(,,゚Д゚)「なんか空気が重いぞゴルァ」

ξ゚听)ξ「ホントよね。どうしたのよ皆」

( ´_ゝ`)「安定の空気クラッシャーがいるぞおい」

(´<_` )「天然って怖い」

( ´∀`)「こういう時はこの二人がいるのがありがたいもなね」

( ・∀・)「実は二人とも計算じゃないのか」

川 ゚ -゚)「ツンが計算でこれが出来る奴ならどんなに良いか…」

(*゚ー゚)「ギコ君もですよ」

('A`)「っていうかお前らも相当だと思うぞ」

( ゚∋゚)「ま、それがこのギルドの良さではあるな」

( ^ω^)「そうだおね」

次々に言葉を繋げていく面々。
そして全員がある一人を見ている。
 _
( ゚∀゚)「……なんだよ」

(´<_` )「いや」

( ´_ゝ`)「べーつーにー」

少しだけ和らいだ空気の中。
張り詰めさせていた張本人はジョルジュなのだが、彼は自分の顔をにやにやとみるメンバーの視線を
感じて更に居心地の悪い気分を味わっていた。

もちろんメンバー達が自分をばかにしている分けではないことくらいは分かっているが。

いや、ある意味ではバカにしているのだが、そこには嘲笑の意味合いは全くなく、
馬鹿なことをした自分がどう決着をつけるのか、面白い物が見られるかもしれないという期待と、
ほんの少しの心配が含まれているんじゃないかと感じていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:22:52 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「遅くなってごめんね」

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいだから」

ドアが開き、ショボンとフサギコが入ってくる。
三日前に罰則を言い渡された時以来、メッセージで反省文を送ったりして事務的に会話はしていたが、
久しぶりに見たショボンの顔に、思わず緊張するジョルジュ。

( ´_ゝ`)「遅いぞーーー」

(´・ω・`)「ごめんごめん。

ミ,,゚Д゚彡「ごめんなさいだから」
 _
(;゚∀゚)

こちらを見てニッコリと微笑んだフサギコを見て、少しだけホッとするジョルジュ。
謹慎の三日間の間、食事を運んだり暇つぶしにショボン以外の全員は部屋に何度か来てくれたので
久し振り感は無いのだが、であってからは二日と空けずに会っていたショボンと三日も顔を
合せなかったのは、やはり違和感を残してしまっている。

ジョルジュがそんなことをぼんやりと考えているうちにショボンとフサギコも席に座っていた。

(´・ω・`)「さて、みんなもう食事も済んでるとおもうから、早速本題に入ろうかな」

ショボンの凛とした声が部屋の隅々まで響き、全員の顔が引き締まる。

(´・ω・`)「まずは一つ」

全員の顔を一回ゆっくりと見回した後、ジョルジュで視線を止めた。

(´・ω・`)「ジョルジュ。言うことあるよね」
 _
(;゚∀゚)「あ、ああ」

何かあるとは思っていたが、一番最初に呼ばれるとは思わず慌てるジョルジュ。
しかしすぐに持ち直し、けれど慌てて立ち上がった。

ブーンやモナー、そしてツンとフサギコが心配そうにこちらを見ているのが分かる。
この部屋にいるときはモナーの足元で丸くなることの多いビーグルも珍しくモナーの膝に乗っていて、
なんとなく心配そうに見ていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:23:55 ID:VSwEoiVw0<>
それを感じ、心を落ち着かせるジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「みんなすまん!おれはギルドのルールを破って、一人で57層の湖まで行ってしまった。
ルール上はまだソロ行動をしたらいけない場所だ。無事に戻ってこれたが、ルールを破ったのは事実だ!
……。ごめんなさい!!」

最後に叫ぶように謝り、同時に腰を九十度に曲げて頭を下げる。

(´・ω・`)「ルールを破っていたことが判明した時点で三日間の謹慎、その間は外に出ないで部屋にいて
反省文を書いたりして反省していた。……はず。まあ、部屋の中で何をしていたのかはみんなの方が
よく知ってると思うけど」

今度は素早くメンバーの顔を見る。

ジョルジュは『謹慎』していたわけだが、今回の罰則としてはよほどの用事が無ければ会うことは許されていない。
もちろんそれが建前であることは罰を下したショボン自身がよく分かっているのだが、
それでもやはり謹慎とはそういう事なのだということにしてある。
つまり、会いに行った、遊びに部屋まで行ったメンバーは建前上とは言えルールを破っているわけだ。

それを自覚しているため三人ほどは目をそらし、一人はよく分かっていないため不思議そうな顔をし、
残りのメンバーは分かったうえで笑顔を返した。

(´・ω・`)「まったくもう」

その口調は呆れているが、表情は柔らかい笑顔だった。
ショボンにとってギルドのメンバーのつながりが強いのは望むべきことなのだったから、当然と言えば当然だろう。

そう、その繋がりによって命がつながることがあることを、よく知っているから。

(´・ω・`)「それじゃあ今回のルール破りはこれで終了だね」

微笑みながらジョルジュを見るショボン。
そこにはあからさまにホッとした顔をしている仲間がいた。

(´・ω・`)「……ジョルジュ」
 _
(;゚∀゚)「お、おう」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:25:04 ID:VSwEoiVw0<>
立ち上がるショボン。
そしてジョルジュに向かって、彼と同じように腰から九十度に曲げて頭を下げた。
モナーとクーとブーン以外が驚く。
 _
(;゚∀゚)「しょ、ショボン?」

(´・ω・`)「僕も怒りに任せて最低なことを言ってしまうところだった。ごめんなさい」
 _
(;゚∀゚)!

(´・ω・`)「クーが止めてくれたから最後までは言わないですんだけど、
それでもあれは許されることではない。だから、謝って済むことではないけれど」
 _
(;゚∀゚)「おれは言われて当然のことをしたんだ!だから謝ったりしないでくれ!頭を上げてくれ!」

(´・ω・`)「いや、それでもやはり」
 _
(;゚∀゚)「だめだだめだだめだだめだ!このことでおれに謝ったりしたらいけない!」

(´・ω・`)「もう謝っちゃったんだけど」
 _
(;゚∀゚)「おれはきいてない!だからノーカウント!」

(´・ω・`)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな……」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

(´・ω・`)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな……」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー」

(´・ω・`)「……じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすぎょの…」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

('A`)「二人とも…」

最初は神妙だったのだが徐々に変化していき、ショボンがふざけはじめたところで全員が疲れた顔をした。

(;´∀`)「ふたりとも、というかショボン、そろそろ終わるもな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:26:19 ID:VSwEoiVw0<>
川 ゚ -゚)b「さすがモナー。もうじき二人目のサブマスになるだけのことはある」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(;´∀`)「モナは引き受けてないもな!ビーグルも喜んじゃダメもな!」

▼・ェ・▼「くぅーん」

(´<_` )「なんだこのカオスな状態は」

( ゚∋゚)「平常運転だな」

( ・∀・)「否定する気もないが否定できないのは良いことなのか?」

( ´_ゝ`)「いいんじゃね」

('A`)「おわらね…」

( ^ω^)「どくおが仕切れば」

('A`)「無理」

( ^ω^)「だおね」

(,,゚Д゚)「うわぁ」

(*゚ー゚)「ここ三日くらいは皆テンション低かったから、こういうのも楽しいね。ギコ君」

(,,゚Д゚)「お、オウだゴルァ」

ミ,,゚Д゚彡「ポジティブなのはいいことだから」

(´・ω・`)「あかまきがみあおまきがみきまきがみ、しんしんしゃんそんかしゅしんしゅんしゃんそんしょー」
 _
(;゚∀゚)「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー聞こえなーい」

ξ゚听)ξ「はい!そこまで!」

がやがやと騒ぎ始めたメンバーを諌める鶴の一声。

ツンである。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:27:15 ID:VSwEoiVw0<>
ξ゚听)ξ「ショボンもジョルジュもバカなことやってないの!」
 _
(;゚∀゚)「お、おう」

(´・ω・`)ショボーン

ξ゚听)ξ「まったく。…ショボンは依頼の話もあるんでしょ。さっさと始める!」

(´・ω・`)「はーい」

ツンに叱られ、改めて椅子に腰かけるジョルジュとショボン。
それをにやにやとみていたメンバー達だったが、ショボンが全員の顔を見ながら表情を引き締めるのを見て、
それぞれに姿勢を正した。

(´・ω・`)「それでは、ギルドに来た依頼の話に入ります」

ウインドウを出すショボン。
するとメンバー達の視界にメッセージの着信を知らせるランプが点滅した。
それぞれに自分のウインドウを開く。

(´・ω・`)「概略は今送りましたが、説明します」


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:28:40 ID:VSwEoiVw0<>
まず一つ目の依頼。護衛です。
依頼主は釣りギルド「ANGLER」のギルマス『ロマネスク』さん。
依頼内容は、57層主街区より3エリア先にある湖までの護衛と、釣りをしている最中の周囲の哨戒。
お連れするのはロマネスクさんと同じギルドのヒッキーさん。
あともしかすると増えるかもしれないようですが、最大で4人までとしてあります。

依頼そのものは難しい物ではないですが、57層という高層階のため、護衛班と哨戒班に分かれて湖まで移動します。
護衛班はそのもの護衛を。
哨戒班は先行してルートの確認とモンスターの殲滅を行います。
到着後は合流して湖で昼食及び周辺の探索。
今回はギルドとしては未踏破エリアですので、周辺の鉱物・植物の採取も積極的に行う予定です。

二つ目の依頼は戦闘訓練とパーティー戦の練習。
中層プレイヤーのレベル底上げ依頼です。
依頼主はエギル氏。
指導パーティーは『びろわかっぽ』。
盾持ち片手剣、両手槍、斧の三人組の戦闘指導とパーティー戦の練習、レベル上げを手伝います。
斧持ちは三人の中では多少レベルが高いようなので、盾持ち片手剣と両手槍の二人をメインに指導してほしいとのことです。
理想は斧使いのレベルにまで二人を引き上げることですが、そこら辺は出来る限りで。
レベル上げを兼ねた最終探索フィールドは40層を予定しています。

三つ目は調査業務。
これは情報屋アルゴさん、追加で僕からのオーダーです。
ちょっと気になるクエストがあるので、クエスト攻略と周辺の調査をお願いします。
クエストは23層ですが、時間があれば少し高層の迷宮区の調査もお願いする予定です。


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◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:29:31 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「以上、班分けはこれから発表しますが、それ以外で何か質問ありますか?」

('A`)「これは全部同じ日なのか?」

(´・ω・`)「うん。本当は護衛と調査は明日を指定されていたんだけど、今日明日明後日は、
うちのギルドは探索禁止日程だから。どうみても緊急ではないからずらしてもらった。
訓練はもともと明々後日を指定で依頼がきてたから、OKしちゃってて」

('A`)「了解」

(´・ω・`)「他はある?」

全員の顔を見るショボン。
何人かは難しい顔をしているが、特に質問は無いようなので素通りした。

(´・ω・`)「大丈夫かな。まあ自分の担当依頼が決まったところでまたあったら言ってね」

更にウインドウを操作するショボン。
新たなメッセージが全員に届く。

(´・ω・`)「じゃあ班を発表します」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:30:35 ID:VSwEoiVw0<>

護衛班
ショボン(リーダー)、兄者、弟者、ブーン、ツン、モララー

哨戒班
ドクオ(リーダー)、フサギコ、ハイン、デミタス、トソン

教育班
クー(リーダー)、ジョルジュ

調査班
クックル(リーダー)、モナー、ギコ、しぃ、ビーグル



(´・ω・`)「人数が足りなかったので、ハイン、デミタス、トソンに応援を頼みました。
  _
( ゚∀゚)「お、おい、ショボン!」

(´・ω・`)「班分けの意味と各人の役割を説明します」

川 ゚ -゚)「おちつけ、ジョルジュ」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:31:28 ID:VSwEoiVw0<>
まずは護衛班。
今回はモンスターが現れた際に守りが出来る面子が必須なので、
兄者と弟者に普段よりも重装備でよろしく。
状況によっては撤退も考慮しないといけないので、その際に活路を見出すための
速攻とコンビネーションが出来るブーンとツン。
進行・撤退等の判断はぼくがします。
モララーは全員の補佐が万遍なくできるのと、あともう一つの任務である湖についてからの
周囲のアイテム狩りでスキルを活用してもらうからよろしく。
ブーン、兄者、弟者、それにツンもそれぞれの職業に特化した鑑定スキルを持っているから、
ここらへんも期待してるよ。

哨戒班は戦闘力と隠蔽スキルをメインで構成。
今回探索する57層のエリアは二足歩行の人型獣と目で周囲を確認する虫型がほとんどだから、
隠蔽スキルが効きやすいはずだけど、気を付けて。
あとドクオにはトラップの解除関係にもそのスキルをいかんなく発揮してもらうつもりです。
デミタスとハインも同じ理由。トソンは戦闘は四人に比べて少し劣るけど、最近は状況判断が
出来るようになってきているみたいなのでそれに期待しておねがしました。
あと彼女も鑑定スキルをそれなりに鍛えているそうなので、哨戒班が採取・採掘をした時の鑑定を
やってもらうつもりです。

教育班は教える武器の種類から。
うちのギルドで盾持ち片手剣を一番使え、かつ斧の使用にも出来るのがジョルジュだから、
まずジョルジュが決定。
あとは両手槍を使えて、ジョルジュの暴走をセーブしつつ冷静に分析・指導が出来るのは
クー以外適任が見当たらなかったのでこの二人で決定。。
他の依頼のバランスから人数は二人だけど、もし教える時に周囲の警戒をするメンバーが必要なら、
NSかフリーのプレイヤーに連絡してみるので言って。

最後に調査班。
今回の調査はクックルが一人でリーダーをやってもらいます。
今までのように僕やクーの交代がない状態で、最初から最後まで指揮を執ってもらうのでがんばって。
ギコは最近練習してるスタイルを出来るだけ早くものにできるよう今回は積極的に使ってみるように。
しぃはそのギコをフォローしつつ、意識してレベル上げを。
モナーはビーグルと共に三人のフォローを。
低層階に近いしクエスト自体もそれほど難しくないようだけど、HPの残りには十分注意すること。
クエストの攻略やフラグ立て等はモナーと協力していいけど、フォーメーションの選定や戦闘時の指示、
POT強化など戦闘に関しては出来るだけクックルが一人で決めるように。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:32:35 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「以上です。だれか異議がありますか?」

全員の視線がジョルジュに集中するが、彼は一回大きく肩をすくませてから、首を振った。
 _
( ゚∀゚)「正直に言えば護衛か哨戒班になりたいところだが、今の理由を聞いても駄々をこねるほどじゃない」

(´・ω・`)「分かってもらえて嬉しいよ」

ジョルジュの言葉に笑顔で答えてから、ゆっくりとみんなの顔を見直すショボン。

(´・ω・`)「さて、他の皆も大丈夫そうだね」

('A`)「ハインよりシャキンかミルナがいい」

(´・ω・`)「隠蔽スキルの高いメンバーにしたって言ったよね」

('A`)……ハイ

うつむいたドクオを気にすることなく頷くメンバー達。

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃんの一声も出たところで、今日のミーティングは終了としようか。
今日中に各班に細かい打ち合わせをするためのミーティング日程を送るので、班別で宜しく。
ではお疲れ様でした」

 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ´∀`)( ゚∋゚)
( ・∀・)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
  「おつかれさまでした!」
      ('A`)(´<_` )

思い思いに席を立ち、隣の部屋に移動していく面々。
おそらくはソファーやクッションに座って、ショボンやクーの淹れたお茶を飲みつつ、フサギコの作った
お菓子を食べながら夜遅くまで喋るのであろう。

(´・ω・`)「……本番は明々後日……保険も、用意しておかないと」

部屋の照明を消しつつ呟いたショボンの言葉が、がらんとした白い部屋に消えた。


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◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:33:20 ID:VSwEoiVw0<>


4.作戦(午前)




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◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:35:12 ID:VSwEoiVw0<>
−教育班−


川 ゚ –゚)「失礼、パーティー『びろわかっぽ』の皆さんかな?」

30層主街区。時刻は朝の九時。
転移門前広場にいた三人組に、クーは声をかけた。

( ><)「は、はいなんです!」

クーが話しかける前からチラチラと見ていたビロードが、瞬間的に背筋を伸ばして直立不動の状態で返事をした。

(*‘ω‘ *)「落ち着くっぽ」

( <●><●>)「ビロードが緊張しているのは分かっています」

( ><)「き、緊張なんてしてないんです!す!」

(*‘ω‘ *)「ふう…」

( <●><●>)「やれやれです」

川 ゚ -゚)「久しぶりだな。三人とも。
パーティー名をつけていたから分からなかったが、なるほど。
三人の名前から『びろわかっぽ』なんだな」

仲良さそうに喋る三人を見て、同じく笑顔で語りかけるクー。

( ><)「!覚えていてくれたんですか!」

三人の顔が、花が咲いたように笑顔で輝く。

川 ゚ -゚)「何回か練習のお手伝いをさせてもらっているからな。
何度やっても盾で剣を受け流すのが下手なビロード君と」

(;><)「あ…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:36:10 ID:VSwEoiVw0<>
川 ゚ -゚)「槍使いなのに何度言っても間合い以上に前に突っ込むぽっぽちゃん」

(*‘ω‘;*)「す、少しは改善したっぽ」

川 ゚ -゚)「最初は落ち着いているけど、終わりが見えた後に敵の数が増えると計算が狂って
テンパってしまうワカッテマス君」

(;<●><●>)「そ、そんなことは……あるのは…ワカッテマス…」

笑顔で自分の弱点を指摘するクーの言葉に、先ほどとは打って変わって表情を曇らせる三人。

川 ゚ -゚)「今日はレベル上げとパーティー戦の練習がメインと聞いているが、
この弱点が克服されていなければ、今回もここを重点的にやることになるな」

(;><)(;<●><●>)
「はーい」
       (*‘ω‘;*)

川 ゚ -゚)「おいジョルジュ!こっちだ!」

広場の入り口でキョロキョロと周りを見ているジョルジュに向かって手を上げるクー。
それに気付いたジョルジュが小走りにやってくる。

川 ゚ -゚)「買えたか?」
 _
( ゚∀゚)「ああ、売ってた売ってた。この周辺のダンジョンの地図は近くの街でしか売ってないからめんどくさいよな」

川 ゚ -゚)「ショボンなら一回通った道なら全部覚えているんだろうけどな」
 _
(;゚∀゚)「さすがにそれは……いや、ショボンならほんとに覚えてそうだな」

ウインドウを出し、クーに買ってきた地図を渡すジョルジュ。
それを確認してから、三人をジョルジュに紹介した。

川 ゚ -゚)「うん。大丈夫だ。さて、ここにいる彼らが今日探索を付き合うメンバーなのだが、
ジョルジュは三人に会うのは初めてか?」
 _
( ゚∀゚)「……。ああ、そうだな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:37:05 ID:VSwEoiVw0<>
(#><)「前に一回教わったんです!」

(*‘ω‘ #)「三人ともさんざん怒られたっぽ!」

(#<●><●>)「忘れられたのは分かってます」
 _
(;゚∀゚)「え?あれ?そうだっけ?」

川;゚ -゚)「はあ…」

三人の猛抗議に思わずたじろいでしまうジョルジュ。

それをみて深いため息を吐くクーだった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:38:31 ID:VSwEoiVw0<>
−調査班−


( ´∀`)「みんな揃ったみたいもなね」

23層。主街区転移門前広場。
朝早く人影もまばらな広場に、クックル、モナー、ビーグル、しぃ、ギコが円になって立っている。

(*゚ー゚)「朝早くからスタートできるクエストなんですね」

( ´∀`)「クエストのスタートは隣の村もな。今からのんびり行けば、ちょうど良いくらいもなよ」

(*゚ー゚)「そっか」

(,,゚Д゚)「のんびりでいいのかゴルァ」

( ´∀`)「今回は一つ一つの戦闘を着実にこなして、クエストのクリアと調査をするのが目的もな。
だから戦闘自体はゆっくりでいいもなよ。クエストもそれほど難しくないはずもなしね」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

(*゚ー゚)「はい」

にこやかに話すモナー達三人。

その三人を見ながら、クックルは静かにため息をついた。
モナーの足元にいるビーグルが、心配そうに見上げる。

(*゚ー゚)「クックルさん?」

( ゚∋゚)「ああ、今日は宜しく頼む」

(,,゚Д゚)「大丈夫かゴルァ。元気なさそうだぞ」

( ゚∋゚)「元気というか…気が重いというか」

( ´∀`)「この層なら今のモナ達なら問題ないもな。緊張しすぎる方がダメもなよ」

( ゚∋゚)「…分かってはいるつもりだが」

あからさまに肩を落とすクックル。

自分より大きな男が自分より小さく感じ、しぃが困ったようにモナーとギコの顔を見るが、
二人とも気の利いたことは言えないようだった。

(*゚ー゚)「……私は、クックルさんの指揮好きですよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:39:28 ID:VSwEoiVw0<>
呟いたしぃの言葉で、驚いたようにその顔を見るクックル。
モナーとギコもしぃの顔を見るのでしぃも挙動不審になりつつ三人の顔を見る。

穏やかに自分に微笑むモナーを見て、次の言葉を紡いだ。

(*゚ー゚)「も、もちろんショボンさんやクーさんの指揮が嫌いだってわけじゃないですけど。
クックルさんの指揮も好きです」

( ゚∋゚)「おれの指揮がか?」

(*゚ー゚)「はい」

心底驚いたように聞き返すクックルに、こちらも驚いたように返事を返すしぃ。

( ´∀`)「どんな感じで好きもな?」

(*゚ー゚)「そうですね……」

小首をかしげるしぃをじっと見つめる三人。

(*゚ー゚)「ショボンさんは、上空から私たちと敵を見て、的確に指示を出す感じなんです。
そこには無駄なものが一切なくて、100ある一人一人の力を100完全に出し切れる戦闘。
そんな感じなんです。
ふつう、やっぱり自分の持つ力を100完全に使う事なんで不可能だけど、
ショボンさんはそれを出し切らせてくれる感じで、自分がこんなに戦えるなんてって、
驚いてしまいます」

( ゚∋゚)「あ、ああ。そうだな。あいつの指揮はすごい」

(*゚ー゚)「クーさんは、斜め上から私たちを見ていて、指示を出す感じです。
敵の武器や種族に対して最適な人を向かわせて、フォローできる人を一歩後ろに置いて。
ショボンさんのような細かい指示というよりは、戦いやすい場所を準備してくれる感じです」

( ´∀`)「そうもなそうもな。クーはそんな感じもな」

(*゚ー゚)「クックルさんは、私たちと同じ目線で私たちを見ていてくれる感じです。
目の前に現れた敵に対して、まず自分で考える。
そのあと、間違っていたりもっと正しいやり方があると指示を出してくれるんです。
だから自分の実力と得手不得手を感じつつ、自分で考えて成長できる感じなんです。
私たちのことをよく見ていてくれるって安心感があって。だから好きです。」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:41:47 ID:VSwEoiVw0<>
(,,゚Д゚)「おお、おれもそう感じるぞゴルァ。
ショボンやクーとは違う形の安心感がある感じだ」

( ゚∋゚)「二人とも……」

( ´∀`)「クックルがみんなの事をよく見ていて考えていてくれるから、
そんなふうに感じるもなね」

( ゚∋゚)「おれが…」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんもそうだって言ってますよ」

( ´∀`)「もなもな」

(,,゚Д゚)「考えてる時間より、動いたほうが良いぞゴルァ」

ギコが言うと、三人とも驚いたように彼を見た。

(,,゚Д゚)「?ど、どうしたゴルァ」

( ´∀`)「ギコの言う通りもなね」

(*゚ー゚)「はい」

( ゚∋゚)「……ああ、そうだな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:42:38 ID:VSwEoiVw0<>
( ´∀`)「今日はゆっくりやるもな」

(,,゚Д゚)「がっつり戦うぞゴラァ」

(*゚ー゚)「もう、ギコ君たら」

( ゚∋゚)「………三人とも」

緊張したような。
けれど凛とした声で三人に呼びかけるクックル。

( ゚∋゚)「今日は宜しく頼む」

(*゚ー゚)「はい!こちらこそ宜しくお願いします!」

( ´∀`)「それはこっちのセリフもな。頼むもなよ」

(,,゚Д゚)「おぅだゴルァ!頼むぞゴルァ!」

クックルが突き出したこぶしに向かってそれぞれにこぶしを突き出す三人。

▼・ェ・▼「きゃん!!」

ぶつけられた四つのこぶしの上に飛び乗るビーグル。

( ゚∋゚)「ああすまん、ビーグルも宜しく頼むな」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

ビーグルの行動に笑いあう四人だった。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:43:53 ID:VSwEoiVw0<>
−護衛班−


57層主街区。転移門前。

ショボンを中心に、左からブーン、ツン、兄者、弟者、モララーと円になって打ち合わせをしていた。
前線に近く油断できない場所であるため装備は自分の持つ中で最高クラスの物を設定しているが、
さすがにツンとショボンは目立たないような抑えた見た目の装備にしていた。

(´・ω・`)「こんな感じかな」

出していたウインドウを閉じ、自分を見ていた五人の顔を見るショボン。

(´・ω・`)「気になるところはある?」

( ´_ゝ`)「二列編隊、先頭俺らでブーンとツン、その後ろに依頼人たち三人、その後ろにモララーとショボン…だよな」

(´・ω・`)「うん。何か問題あるかな?」

( ´_ゝ`)「モララー楽じゃね?」

( ・∀・)「はぁ?」

( ´_ゝ`)「結局俺ら四人で戦闘するようなもんだろ?」

( ・∀・)「兄者おまえ」

(´・ω・`)「今回僕は情報の統制に専念するために、
戦闘時以外それこそ戦闘開始の数瞬前までウインドウを開いているつもりなんだ。
それでモララーには、僕がウインドウを開いている状態での目になってもらう。
通常進行時の僕の目の代わりはもちろん、
僕が指示を出せない状況になった際のバックアップもお願いしてる。
代わりに兄者がやってくれるなら隊列を考え直すけど…」

( ´_ゝ`)「よーし、お兄ちゃん先頭の守り頑張っちゃうぞ!」

ξ゚听)ξ「アホね」

( ^ω^)「アホだお」

( ・∀・)「アホだな」

(´<_` )「アホな兄貴ですまん」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:45:29 ID:VSwEoiVw0<>
( ´_ゝ`)「だって今日の役割パーティーの盾だしー。盾持ち戦闘きらいだしー。
弟者だってー、嫌いなはずだしー」

(´<_` )「でもおれ練習してるぞ。盾と片手剣での戦闘」

( ´_ゝ`)「……え?」

(´<_` )「うちのギルドは守備重視が少ないというかいないからな。
護衛の依頼の時とかはおれとかジョル、あと兄者がやらないとまずいだろ。
今日は先行で哨戒班がいるからいつもの両手斧で行くけど。
そういえば、最近はギコも練習してるっぽいぞ、盾持ち片手剣」

じっと兄者の顔を見る弟者。

( ´_ゝ`)「……だっておれそんなの聞いてないもん」

ξ゚听)ξ「自分の役割をちゃんと考えなさいって事よ」

呆れたように言い放ったツンの言葉に頷く兄者以外の四人。

( ^ω^)「兄者と弟者は割り振りや使用武器を含めて分かりやすいパワータイプだから、
初撃の削りと最後の一撃には頼もしいけど、途中の削りの時は守りに回ってもらえると、
僕やツンが思い切り動けて助かるお」

(´<_` )「だな」

( ´_ゝ`)「…弟者がやってるなら、お兄ちゃんも頑張る」

ξ゚听)ξ「きも」

( ・∀・)「きもいな」

( ^ω^)「きもいおね」

(´・ω・`)「きもいのはデフォルトか…」

( ´_ゝ`)「ひとの決意をお前ら」

あからさまにふてくされた兄者を見て笑みをこぼすメンバー。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:46:50 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「けど無理にやることは無いよ。
兄者が兄者らしく、みんながみんなの持ち味を活かして戦えるようにするのが、
指揮担当の仕事だからね。兄者の両手鎚は充分強いし守りも出来るし」

(*´_ゝ`)「ショボン…」

(´<_` )「ショボン、甘やかさなくていい。そして兄者きもい」

ξ゚听)ξ「ま、少しは周りを見ないとね。やっぱりきもいし」

( ´_ゝ`)「     」

(´・ω・`)「まあまあ、じゃあフォーメーションはそんな感じで。
状況に応じて指示は出すけど、基本的には原型保持の臨機応変。
つまりいつもの感じで、前線に近いけど緊張せずにいこう」

( ФωФ)「遅くなって済まんのである」

(-_-)「おはようございます」

ショボンの言葉に全員が頷いたとき、背後から声をかけられた。
今日の護衛の依頼主、ロマネスクである。
その横にはヒッキーがおり、背後には背の高い男がいた。

(´・ω・`)「おはようございます。時間通りですよ」

( ФωФ)「いやいや、色々と無理をお願いしているのはこちらゆえ、
本当は先に来て待っていたかったのである」

(-_-)「なのに…」

頭を下げるロマネスクと、冷たい視線で後ろにいる背の高い男を見るヒッキー。

(・∀ ・)「しかたないだろ」

ヒッキーに冷たい視線を投げつけられ、居心地が悪そうに頭を掻く男。
背の高さはクックルやモナーと同じくらいであろうか。
長い両手剣を背中に担いでいる。

(´・ω・`)「そちらが」

( ФωФ)「今日一緒に連れていく三人目である。マタンキ、挨拶をするであるよ」

(・∀ ・)「マタンキっす。よろしく頼むッす」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:47:50 ID:VSwEoiVw0<>
(´・ω・`)「ショボンです。今日は宜しくお願いします」

前に出てきて頭を下げたマタンキに右手を差し出すショボン。
マタンキは嬉しそうにその手を握り、笑顔でぎゅっとつかんだ。

それを横で見ていたロマネスクがブーン達を見ながら一歩前に出る。

( ФωФ)「こちらこそである。皆さんも宜しく頼むのである。
吾輩はロマネスク。ギルドANGLERで、一応ギルマスをやっているのである。
そしてこちらがヒッキー」

ロマネスクに促されてお辞儀をするヒッキー。

それを笑顔で返し、ショボンが隣にいたモララーに目くばせする。

( ・∀・)「モララーだ」

( ^ω^)「ブーンだお。よろしくだお」

ξ゚听)ξ「ツンです。今日はよろしくお願いします。こちらの指示には従って下さい」

(´<_` )「テイだ。悪いが弟者と呼んで欲しい」

( ´_ゝ`)「おれのことは兄者と呼んでくれ」

(・∀ ・)「?」

( ФωФ)?

(´・ω・`)「あだ名のようなものなんですが、すでにそちらの方が仲間内には浸透しているので、
彼らを呼ぶときにはそちらでお願いします」

(-_-)「流石武具店の兄者さんと弟者さんですよね」

( ´_ゝ`)「あ、やっぱり腕がいいことで有名だった?」

(-_-)「え!?あ、は、はい、い、いや、…」

(・∀ ・)「!前に言ってた変な鍛冶屋がいるってあそこか!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:48:39 ID:VSwEoiVw0<>
(;ФωФ)「ちょ、おま」

(・∀ ・)「腕は良いけど売ってくれないことがあるって言ってたあそこだろ?
特に武器担当の方が変人だとか言ってたよな」

(;-_-)「ま、マタンキ」

ξ゚听)ξ「ま、噂通りよね」

慌てるロマネスクとヒッキーをよそに喋り続けるマタンキ。

言葉をなくした兄者の肩をブーンとモララーが両側から叩き、
弟者が困ったように自分の額に指を当てて首を振った。

(´・ω・`)「それでは今日のスケジュールと進行時のフォーメーションの打ち合わせをしましょう」

何事もなかったように進めるショボン。
それに驚きつつも、ロマネスクはもらったメッセージを開くために右手を振った。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:49:27 ID:VSwEoiVw0<>
−哨戒班−


('A`)「全員集まったみたいだな」
从 ゚∀从「聞いてたのより多くないか?」

('A`)「フサのところに護衛の人数が一人増えたって連絡が来てた。
ANGLERの中では高レベルの一人で、名前はマタンキ。
見ればわかるけど、両手剣使いだ」
从 ゚∀从「なるほど」

57層転移門広場より少し離れた建物の最上階。
最上階と言ってもそれほど高い建物ではなく、彼らがいるのは5階の部屋だった。

アインクラッドにおいて、PCやNPCの持ち物ではない建造物は出入りが自由である。
ただし部屋に入っても鍵をかけることなどは出来ないし、
家具なども設置されていないことがほとんどであるため、
体を休めることには不向きであった。
結局自分のホームを持たないプレイヤーは宿屋などに泊まって体を休めている。

それでは利用価値は無いのかというとそういう事もなく、
扉を閉めれば原則的に声を外に漏らすことも無くなるため打ち合わせなどには使われている。

そして今彼らのように身を隠すために使用することもあった。

ミ,,゚Д゚彡「とりあえず予定通りみたいだから」

ウインドウを出していたフサギコがショボンからのメッセージを読む。
ロマネスクと打ち合わせをしつつ、情報を確認するふりをしながらフサギコにメッセージを打ったのであろう。

('A`)「それ、おれのところには来てないんだけど」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「多分今の状況が分かっているから」

('A`)……ソウデスカ
从 ゚∀从

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:50:35 ID:VSwEoiVw0<>
窓から外を、広場にいるショボン達を確認する三人。
しかし外からは見られないよう、窓のそばの壁に張り付き両側から広場全体を観察している。

('A`)
从 ゚∀从「で、なんでこんな風に外を見なけりゃいけないんだ?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンからの指示だから」

('A`)
从 ゚∀从「ショボンからの指示?」

('A`)「ああ、出来るだけ護衛している三人に存在を気付かれない様にすることってな」
从 ゚∀从「なんだそりゃ」

ミ,,゚Д゚彡「なにか考えがあるから」

('A`)
从 ゚∀从「それはそうだろうが」

ハインが眉間にしわを寄せて渋い顔をすると、部屋のドアが開いた。

(´・_ゝ・`)「遅くなった」

(゚、゚トソン「すみません。遅くなりまして」

入ってきたのはデミタスとトソン。
これで哨戒班の5人が揃ったことになる。

(´・_ゝ・`)「ドクオ、パーティーに入れてくれ」

二人は窓には近寄らず、入ってきた扉のそばの壁に背を当てて座った。

('A`)「了解」
从 ゚∀从

ドクオがウインドウを操作するとデミタスの前にパーティー勧誘の画面が現れる。

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/02/25(火) 23:51:22 ID:VSwEoiVw0<>
(´・_ゝ・`)「はいよ」

('A`)「トソンも」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「はい。お願いします」

トソンの前にも現れ、デミタスと同じようにYESのボタンをクリックした。

(´・_ゝ・`)「これでドクオをリーダーにしたパーティーの結成だな。出発はまだか?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンが一回道具屋に行くようにするって言ってたから。そしたら先行して出発だから」

(゚、゚トソン「それにしても、なぜ今回はこのようなシステムを取っているのでしょう」

('A`)
从 ゚∀从「だよな」

(´・_ゝ・`)「ふむ。確かに何か重い思惑がありそうなオーダーだが、行動自体はよい訓練だな」

(゚、゚トソン「訓練?」

(´・_ゝ・`)「5人パーティーで、常に隠蔽スキルを使って敵の目を欺きつつ進行。
更にエリアごとに戦闘と通過をこなしていく。
普段のギルドの戦闘からは、絶対にやらない行動だろう?」

(゚、゚トソン「それは…そうですが」

('A`)
从 ゚∀从「やらなきゃいけないわけでもないだろ?」

(´・_ゝ・`)「何事も経験さ。特にトソン」

(゚、゚トソン「はい」

(´・_ゝ・`)「今回はショボンから統制を頼まれているんだろ?」

(゚、゚トソン「統制と言っても戦闘ではなく、タイムスケジュールの管理と行程の指示だけですよ」

(´・_ゝ・`)「甘いな。行程管理、スケジュール管理ってことは戦闘によるエリア移動のタイミング、
つまりは全員の休憩時間、ヒットポイントの管理もしなきゃいけないってことだ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:52:36 ID:VSwEoiVw0<>
(゚、゚トソン「!」

(´・_ゝ・`)「頑張れ」

(゚、゚;トソン「む、無理ですよ私にそんなこと」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

デミタスとトソンの会話に割り込むフサギコ。

トソンは慌てながらフサギコに反論する。
あからさまに狼狽しているが、声を荒げたりしないのは彼女の持つ資質であろう。

(゚、゚;トソン「む、無理ですって」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

そんなトソンに対し、落ち着いて言葉を紡ぐフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「ショボンが任せられるって判断したんだから大丈夫だから」

その表情には揶揄や冷やかしは全く無く、逆にトソンに問いかけるように、
何を慌てているのか全く分からないといった顔だった。

(゚、゚;トソン「え…」

思わず絶句したトソンを見て、面白そうに声を出さずに笑うドクオ。

('A`)「諦めろトソン、ふさはショボン信者だ」
从 ゚∀从

(゚、゚;トソン「い、いや、そういう事ではなくてですね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:53:27 ID:VSwEoiVw0<>
('A`)
从 ゚∀从「ま、あいつが任せたんだから、トソンの出来る限りをやればいいさ」

(´・_ゝ・`)「そうだな。それでよい」

決して低レベルではないトソンだが、この5人の中では一番弱く経験も少ないことを自覚している。
それ故に、HPの管理などという大役を自分が行うことに狼狽えた。
しかし仲間達はそんなことは全く考えていないようで、笑顔で自分を見ていた。

(゚、゚トソン「……分かりました。どうなっても知りませんからね」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから」

諦めたように肩を落としたトソンに対し、間髪入れずにフサギコが太鼓判を押す。

さらに肩を落としたトソンを見て、面白そうにドクオ達は笑った。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:54:22 ID:VSwEoiVw0<>


('A`)「さて、動き始めたな」
从 ゚∀从

外を見ていたドクオが腰を浮かす。

ミ,,゚Д゚彡「完全に広場から出たら部屋の外に出るよう言われてるから」

しかしフサギコに制され、もう一度腰を下ろす。
そして自分の右肩に乗っている頭に声をかけた。

('A`)「おまえはそろそろ離れろ」
从 ゚∀从「部屋から出たら」

左にある窓から外を監視するドクオの右手に腕をからめて寄り添っていたハインが、
いやいやをするように首を振りつつその頭をドクオの肩に摺り寄せる。

('A`)「はぁ……」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「仲が良いのは良いことだから」

(´・_ゝ・`)「だな」

(゚、゚トソン「ですね」

('A`)
从*゚∀从

頬を赤らめたハインをみて、ドクオ以外が微笑んだ。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:55:50 ID:VSwEoiVw0<>
−教育班−


川 ゚ -゚)「だいぶ改善されてはいるが、まだ弱点は残っているな」

待ち合わせをした30層から少し下がり、22層のフィールドダンジョンを攻略したクー達5人。
訓練を申し込んだ3人から見ても低層であったが、三人は疲れていた。

(;><)「そ、そうですか」

(*‘ω‘;*)「まだダメっぽ?」

座り込んでいる二人を見つつ、クーが言葉をつなげる。

川 ゚ -゚)「そこまで疲れているのが証拠だな。
前に確認した弱点を突かれるような指示を出してはいたが、
レベルに対してそこまで疲れるということはまだ克服できていないということだ」

(;><)「うぅ……こんなんじゃダメなんです」

川 ゚ -゚)「ビロード君は体が大きくは無いから、パワータイプの敵の攻撃を盾で受け止めてしまうと、
そのあとの動きが封じられたり遅くなってしまう。その分だけ余分な動きが増えているな」

(;><)「うぅ…」

川 ゚ -゚)「後ろにいる人を守るために完全に受け止めようとする気持ちは分かるが、
自分のパワー、実力、相手との差を見極めて臨機応変に対応しないと、
逆に後ろにいる仲間達を傷つけてしまうかもしれない…。
まずはそれを考えてみると良い。そうすれば、受け流しや避ける意味も見えてくる。」

体育座りをして顔を膝に埋めてしまったビロードの次に、ぽっぽの顔を見るクー。
ぽっぽの顔がこわばる。

川 ゚ -゚)「ぽっぽちゃんは…」

(*‘ω‘ *)「わ、分かってるっぽ。突っ込みすぎなのは!」

川 ゚ -゚)「……それの理由も自分で分かっている……だな」

(*‘ω‘ *)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:57:14 ID:VSwEoiVw0<>
クーに叱られる前に自分で自分の弱点を告げたぽっぽだったが、
それを超えるクーの洞察に声をなくし、何も言えなくなってしまった。

川 ゚ -゚)「……それ自体は悪いことではないと思う。私にも経験があることだ。
だが、それは強さとは対極にあることの一つだと思う」

(*‘ω‘ *)「!…対極っぽ?」

川 ゚ -゚)「ああ。ギルド、チーム、パーティーならば、信じることも強さだと私は思う」

(*‘ω‘ *)「信じる…っぽ…」

川 ゚ -゚)「すぐには難しいが、今まで一緒に戦ってきた君たちならば出来ることだと思うぞ」

顔を上げて不思議そうに二人を見ていたビーグル。
それに気付かずにちらっと横を向いたぽっぽ

二人の視線が重なる。

(*‘ω‘ *)「な、何をこっちを見てるっぽ!」

( ><)「え?い。いや、二人が話しているのを」

(*‘ω‘ *)「女の子二人の会話を盗み聞きとか最低だっぽ!!」

(;><)「そ、そんな!だってこんな近くで話しているから」

(*‘ω‘ *)「ビロードを見損なったっぽ!」

(;><)「ぽっぽちゃん!」

立ち上がって赤くなった顔を隠すようにそっぽを向くぽっぽに対し、
慌てて立ち上がって頭を下げるビロード。

それを見て、呆れたように肩をすくめるクー。

その三人の後方に立つワカッテマス。
彼も肩を上下させて呼吸を整えながら、じっと見つめていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/25(火) 23:58:55 ID:VSwEoiVw0<>
その横にジョルジュが立つ。
 _
( ゚∀゚)「参加しないのか?」

( <●><●>)「今は二人で話したほうが良いのはワカッテマス」
 _
( ゚∀゚)「そうかねぇ」

( <●><●>)「……私の戦いぶりはどうでしたか?」
 _
( ゚∀゚)「今のレベルなら問題ないだろ。今回はイレギュラーなポップも無かったしな」

( <●><●>)「……」
 _
( ゚∀゚)「けど、なんでお前だけレベルが飛び出たかは分かった」

( <●><●>)「!?どういうことですか?」

突然声をかけられても表情一つ変えなかったワカッテマスだったが、
ジョルジュの一言で大きな目をさらに見開いて横を見た。
 _
( ゚∀゚)「お前もあの子と一緒だよ。
二人がちょっとでも危なくなったら割って入ってお前が敵を倒してきたんだろ」

( <●><●>)!
 _
( ゚∀゚)「図星みたいだな」

黙り込んで再び前を見たワカッテマスをみて、困ったように笑うジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「おまえはあの二人が本当に好きなんだな。それこそ、自分の身の安全を忘れるくらいに」

( <●><●>)「……私の行動が間違っているのはワカッテマス…」
 _
( ゚∀゚)「間違っちゃいないさ」

目を伏せつつ呟いたワカッテマスに、ジョルジュは軽く返す。
その軽さに思わず顔を上げて横を見るワカッテマス。
 _
( ゚∀゚)「間違っちゃいない。誰かを助けたいって気持ちは。その誰かが好きな相手ならなおさら」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:00:56 ID:Qw/AbN2w0<>
( <●><●>)「……」
 _
( ゚∀゚)「ただ、その方法は色々あるってだけで」

( <●><●>)「?…色々?」
 _
( ゚∀゚)「戦いの場でその身を盾にする守り方もあれば、
自分の後ろを預けて相手の後ろを守るってのもある。
更に言えば、戦いはすべて任せて、それ以外のすべてを引き受けるってのもある」

( <●><●>)「????」
 _
( ゚∀゚)「なんてな、おれも、本当に分かってきたのは最近だから、ちゃんと説明なんてできねぇ」

自嘲気味に笑い、自分を見るワカッテマスを見るジョルジュ。
その強い視線に思わず目を逸らそうとしてしまったワカッテマスだったが、
なんとか踏みとどまってじっと見つめ返した。
 _
( ゚∀゚)「けどこれは言えるぞ。今の戦い方だと、万が一お前がいなくなったときあの二人はダメになる。
そしておまえが倒せない敵が出た時は、三人ともダメになる」

( <●><●>)「!」
 _
( ゚∀゚)「極論だけど、そういうこった。けど、お前だってそれくらいわかってただろ?」

( <●><●>)「……ハイ……ワカッテマス……」
 _
( ゚∀゚)「なら、大丈夫だ。あとは勇気だな。そして、その勇気を持つためにおれ達を利用すればいい」

にやっと笑ったジョルジュ。
ワカッテマスはその顔と発言に、顔全体で大きく驚きを見せた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:02:07 ID:Qw/AbN2w0<>
−護衛班−


森を進む9人。

中央にロマネスク。
その前にヒッキーとマタンキ。
その前を兄者と弟者が先頭で歩いている。

ツンとブーンは地形に対して位置取りを変え、しんがりを務めるモララーとショボンと
声を掛け合いながら進んでいた。

( ФωФ)「みなさんはさすがの強さであるな」

(-_-)「うん。まったく危なげないよ」

(・∀ ・)「すげえっすよ!」

(´・ω・`)「そんなことはありませんよ」

開いたままのウインドウを操作しながらショボンがロマネスクたちと会話する。
状況と前方・後方の視界確認をモララーに任せ、通常歩行時は情報統制に専念していた。

ロマネスク達三人に対してはルートとポップする敵の予備知識の確認としての名目で。
実際はそれはもちろんのこと、哨戒班・教育班・調査班等との情報共有をしていた。

そして事前情報と哨戒班から入る情報により優位な状況で戦闘に入れるようコントロールしているが、
その戦いは決して楽ではなかった。

実際のところ、レベルだけをみればそれほど強敵は出てきていない。
だが高層の敵は強いソードスキルに加えてモンスター同士の連携も行われているように感じ、
各個撃破をするための位置取りやソードスキルによるモンスターの列の分断、
戦闘の振り分けなどを瞬時に行うショボンへの負担は小さくはなかった。

もちろん全員ギルドのメンバーだけで戦っているのならばある程度の余裕を持つことが出来るのだが、
今回は『護衛』という依頼で動いている以上中央の三人に被害が出ない様に戦闘を行っていたため、
普段よりも何十倍も神経を使っていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:03:01 ID:Qw/AbN2w0<>
(・∀ ・)「でももうちょっとこっちに回してくれてもいいすっよ」

(-_-)「マタンキもたまには良いこと言うね。ショボンさん、そうしてください」

(・∀ ・)「たまにとかひどいっすよ」

( ФωФ)「そうである、そうである。一匹ずつなら吾輩達でも対処できるであるからな」

(´・ω・`)「そうですね…。
情報によると、この先のエリアで細かい敵が多く出るところがある様なんです。
迂回ルートを考えていたんですが結構な遠回りになるので突っ込んでみましょうか」

ξ゚听)ξ「ちょっ。ショボン、大丈夫なの」

( ^ω^)「遠回りの方が良くないかお?」

( ФωФ)「分かったのである。釣りをする時間は多いほうが良いであるしな」

(;-_-)「ロマネスクさん…」

(・∀ ・)「正直すぎてさすがっす」

(´・ω・`)「実は先ほどから何回かお三人に戦ってもらったのは、
戦闘を見させていただく意味もあったんです。
あの戦いぶりなら大丈夫ではないかと判断もしました」

( ФωФ)「なるほどである……。『稀代の戦術師』殿にそう言われると照れるであるな」

(;´・ω・`)「な!なんですかそれ!」

( ФωФ)「また風のうわさで聞いたのである」

ロマネスクが漏らした二つ名にまた慌てるショボン。

聞いていたギルメンの五人がくすくすと笑う。

(´・ω・`)「……五人とも、帰ったら個別ミーティングね」

五人の口から洩れるブーイング。

それを見て笑みをこぼす三人。

その笑いはいつしか周りに伝播し、一人憮然とした表情のショボンを気にせず、
笑顔で次のエリアに続く道を進んだ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:04:08 ID:Qw/AbN2w0<>
−調査班−


( ゚∋゚)「しぃ右!ギコは続いてフォロー!」

狼男に向かってまっすぐに走るしぃ。

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「おう!」

自分に向かってくる敵に唸りながら曲刀を振り下ろす狼男。

しかしタイミングをずらした走法で近付いたしぃは危なげなくその刀をかわし、
狼男の武器を持たない半身側に駆け寄り、落ち着いてソードスキルを放った。

(*゚ー゚)「はぁ!」

高速の三連撃。

もともと短剣は一撃一撃のつながりが短く瞬時に複数回当てることが出来るのだが、
しぃの放つ連撃はもともと短剣を使っていたモララーが息をのむほどに成長していた。

狼男「ぎゃりゅあ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:05:10 ID:Qw/AbN2w0<>
目に見えて減少する狼男のHPバー。

それを確認することも無く、そのまま前に跳ぶしぃ。
硬直した状態ではあったが最後の一撃を放ちながらの跳躍であったため、
勢いを殺さずに狼男の後ろに着地する。

狼男「ぐりゅうぅぅ」

奇妙なうめき声を上げながらしぃを追おうとする狼男。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

狼男よりは聞き取れる雄叫びをあげながらギコの片手剣が狼男の背中を裂く。
のけ反った狼男の腰を分断するように、腰をひねりながら更に横に一閃する。

(,,゚Д゚)「今度はこっちだゴルァ!」

ギコの放った一撃はソードスキルではない。
だが、上げたレベルの分と兄者が作った片手剣の性能により、
その一撃一撃は低レベル時代の単発重攻撃技ほどの威力を持っていた。

そして無理な態勢での追撃は行わずバックステップで距離を取るギコ。

改めてギコを敵を認めて曲刀を向ける狼男。

その背中を切り刻むしぃの短刀。

迷いの無い六連撃は狼男のHPバーを黄色に変え、赤くなる手前まで減少させた。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」

動きの止まった狼男に真横に振りぬかれるギコの片手剣。

片手剣水平四連撃

その技は狼男の身体に水色に光る四本の斬撃を刻み、その体をポリゴンへと変えた。

( ´∀`)「お見事もなね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:06:56 ID:Qw/AbN2w0<>
クックルのサポートとビーグルの放ったスキルによる攪乱はあったものの、
ほぼ一人で狼男を二体片付けたモナーがクックルに近寄る。

( ゚∋゚)「ああ。あの二人は強くなったな」

( ´∀`)「それももなけど、クックルの指示ももなよ」

( ゚∋゚)「……やめてくれ」

( ´∀`)「嘘や冗談じゃないもなよ。しぃも言ってたもなけど、クックルにはクックルの指揮があるもな」

( ゚∋゚)「……」

モナーとクックルが見守る中ギコとしぃはハイタッチをして勝利を喜び、
そして二人に向かって駆け寄ってきた。



( ´∀`)「ここで一度漏れが無いか確認するもな」

安全エリアまでたどり着いた四人は、中央付近の芝生の上に集まった。
今回四人がやっているクエストはいくつかの素材アイテムを集める必要があったため、
今までの行程での採取し忘れが無いかを確認するためだった。

もちろん、休憩の意味はあるが。

(*゚ー゚)「はい」

ウインドウを開いて自分が採取した素材を確認するしぃ。
ギコは採取は行っていないため、そばに立って周囲を警戒している。

( ゚∋゚)「クエストに必要な個数は俺が持つから、一回出して渡してくれ」

(*゚ー゚)「分かりました」

クックルとしぃがクエストに絡んだ確認をしている間に、
モナーはタイムスケジュールの確認とショボンから送られてくる情報の確認をする。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:07:39 ID:Qw/AbN2w0<>
( ´∀`)「(今までならしぃの隣でウインドウを覗き込んでいたギコが、
今は誰に何かを言われたわけではなく自発的に周囲の警戒をしているもな。
モンスターが出ない安全エリアと言われているとはいえ何があるか分からないもなからね。
……本当に成長したもな)」

皆が座って打ち合わせをする中、一人立って周囲を伺っているギコを見てモナーは微笑んだ。

(,,゚Д゚)「この辺りは食べられる木の実とかは生って無いんだなゴルァ」

( ´∀`)「……感心して損したもな」

(,,゚Д゚)「?なんか言ったか?モナー」

( ´∀`)「何でもないもなよ」

つまらなそうに呟いたギコの言葉に、思わずため息を漏らしつつ呟いたモナー。
ギコの問いかけに首を振ってから、自分が開いたウインドウに目を向ける。

( ゚∋゚)「どうだ?モナー」

( ´∀`)「今のところ予定より良いペースもな。
戦闘回数・ポップ数は事前情報よりも多くなってるもなけど、時間は短縮できているもなからね」

(*゚ー゚)「事前情報との食い違いはどれくらいなんですか?」

( ´∀`)「ちょっとまつもな……。ギリギリ誤差範囲内もなね。でもこの先次第では分からないもな」

(,,゚Д゚)「前より増えてるってことか!?」

( ´∀`)「……そうもな。敵のレベルは変わってないもなけど、一度のポップ数と出現エリアの増加、
あとポップする時間が短くなっているかもしれないもな」

( ゚∋゚)「それは……」

( ´∀`)「とは言っても、今のモナ達には特に問題になる増加ではないもなよ。
まずは今日の調査を出来るだけ正確に行うことが重要もな。
難しいことはショボン達に任せておけば良いもなから」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

(*゚ー゚)「ですね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:08:40 ID:Qw/AbN2w0<>
(;゚∋゚)「そういうもんでもないと思うがな。とにかく、一応今の時点でショボンに連絡しておいてくれ」

( ´∀`)「分かったもな。そういえばショボンからもメッセージが来ていたもなよ」

( ゚∋゚)「何かあったのか?」

( ´∀`)「まだ全文しっかり読んでないもなけど、各班の現状をまとめたみたいもな。
さっき一度こちらの状況を送っておいたもなから、そのまとめもなね。
特に問題は無いと思うもなけど、一応全部読んでおくもな」

( ゚∋゚)「頼む。こちらはクエストの確認をしておく」

( ´∀`)「宜しくもな」

(,,゚Д゚)「警戒は任せろだゴルァ」

( ´∀`)( ゚∋゚)(*゚ー゚)「(なんだ。食べ物探してただけじゃなかったんだ)」

(,,゚Д゚)??

自分が意気揚々と宣言すると、三人が何とも言えない瞳でこちらを見た。
不思議に思って三人の顔を見返すと、三人が三人とも慌てて視線を逸らした。

(*゚ー゚)「お、お願いねギコ君」

( ゚∋゚)「頼んだ」

( ´∀`)「よろしくもな」

(,,゚Д゚)「お、おうだゴルァ」

釈然としないがとりあえず警戒を続けるギコ。

クックルとしぃは芝生の上にマットを広げ、
その上に素材アイテムを並べてクエストのデータと照らし合わせていく。

( ´∀`)「(『……以上』もな…っと…。さて、ショボンからのメッセージを確認するもな)」

ショボンへの報告メッセージを送ったモナーは、届いていたショボンからのメッセージを開く。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:10:05 ID:Qw/AbN2w0<>
( ´∀`)「(緊急メッセージ扱いにはされてなかったから確認しなかったもなけど、
やっぱり大丈夫そうもなね。モナ達の事と、クー達、ドクオ達のこと。みんな問題無いみたいもなね。
で、最後に護衛班の事もなけど…。護衛は結局三人になったもなか。………!!!!!)」

ショボンからのメッセージを読んでいたモナーが小さく音が出るように息をした。

( ゚∋゚)!?

(*゚ー゚)!?

(,,゚Д゚)!?

疑似呼吸しかしていないこの電子の世界において、そのような呼吸はかなり珍しく、
思わずモナーを見る三人。

三人の視界の先には、自分が見られていることにまったく気付いていないモナー。

彼は目を大きく見開いてウインドウを凝視している。
ページ移動をしていたのだろうか、人差し指を立てた手がかすかに震えているようにさえ見えた。

(,,゚Д゚)「も、モナー?何かあったのかゴルァ?」

クックルとしぃがその様子に驚いて何も言えないでいたが、ギコは率直に問いかけをした。

(;   )!

固まった表情のままギコを見るモナー。

( ´∀`)「な、何でもないもなよ。
ショボンからのメッセージに新しい家畜の情報があったから、思わず驚いてしまっただけもな」

しかしすぐにいつものモナーに戻り、にこやかにギコと話しはじめる。

(,,゚Д゚)「お、また新しい肉が食べられるのか?」

( ´∀`)「ギコはお肉が好きもなね。うまくいけばそうなるもなけど、まだ分からないもな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:11:07 ID:Qw/AbN2w0<>
(,,゚Д゚)「なんだ」

( ´∀`)「でも、新しい家畜が増えたら嬉しいもなね」

(,,゚Д゚)「この前の夕食に出た肉もうまかったぞゴルァ」

( ´∀`)「あれはどこにでもいるガルベカウもな。
ただ育成方法を変えてみたら、肉のレベルが高確率で高くなるようになったもなよ」

(,,゚Д゚)「そうなのか!」

( ´∀`)「育成も奥が深いもな」

(,,゚Д゚)「楽しみだぞゴルァ」

楽しげに会話をする二人を見て安心してアイテムに視線を戻すしぃ。

( ゚∋゚)「(……今は言えないこと……か。緊急でないなら、あとで聞けばいいか)」

(*゚ー゚)「クックルさん?」

( ゚∋゚)「ああ、すまん」

鋭い視線でモナーを見ていたクックルだったが、しぃの声に我に返りアイテムに視線を戻す。

( ´∀`)「(……今頃になってこの名前を目にするなんて……。
黒鉄宮の碑の名前は消されていなかったから、まだ生きていることは知っていたけれど……。
とりあえず、ショボンに連絡しないと。でも、なんて書けば……。
早く話しておくべきだった……。これは、おれのミスだ)」

ギコとの雑談を切り上げて、再びショボンへのメッセージを打ちはじめるモナー。

( ´∀`)「(あの日の事を、もっと詳しく話しておくべきだったんだ!)」

震えそうになる指を笑顔で抑え、メッセージを打つ。

( ´∀`)「(今のショボン達は、あの時のおれ達とは違う。だから、大丈夫だとは思うが…。
念のため、ドクオにも送った方が……。いや、でも……いたずらに……)」

打ち終えた頃、ようやく指の震えは完全に収まり、もう一度その短いメッセージを読む。
そして一呼吸した後に、しっかりと送信ボタンを押した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:11:54 ID:Qw/AbN2w0<>
( ゚∋゚)「モナー。こちらの確認は終わった。そっちはどうだ?」

( ´∀`)「こっちも大丈夫もなよ。時間はまだ大丈夫もなけど、余裕をもって出発するもな?」

( ゚∋゚)「そうだな。余裕はあったほうが良い」

(*゚ー゚)「はい」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

立ち上がるクックルとしぃ。

ギコも含めて三人で装備とフォーメーションの確認をし始める。

( ´∀`)「(そう。余裕が大事…。
……今のモナ達には、余裕を持つだけの底力はあるもな……だから大丈夫もな!)」

立ち上がるモナー。

先程のメッセージが送信されたのを確認してから、ゆっくりとした動作でウインドウを閉じる。

( ´∀`)「準備はいいもなか?」

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

( ゚∋゚)「よし、出発だ!」

手を上げて雄叫びをあげる四人。



モナーのメッセージをショボンとドクオが開くのは、その少し先だった。



第十話 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/26(水) 00:13:18 ID:1rqLX00gO<>しえええん<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:13:22 ID:Qw/AbN2w0<>
第十一話 疾走 に続く


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/26(水) 00:14:52 ID:1rqLX00gO<>と思ったら終わりだった。乙<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:17:01 ID:Qw/AbN2w0<>以上、短めですが本日の投下終了です。

何とか2月中に投下できました。

といっても、続き物ですが。

この続きも半分くらいは上がっているので3月中にはなんとか。


バレンタイン…。
そんなものもありました…。
節分ネタならあったんですが、乗り遅れました。

機会があれば季節外れネタで。


ではではまた。
.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/02/26(水) 00:17:59 ID:Qw/AbN2w0<>支援ありがとうございます(*^_^*)<> 名も無きAAのようです<><>2014/02/26(水) 00:29:15 ID:7zmPkx0Q0<>おつ、次回も楽しみに待ってる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/26(水) 01:07:57 ID:SBqO8vpY0<>乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/26(水) 01:31:38 ID:zhSeZw7w0<>乙

リア充爆発イベント待ってる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/26(水) 14:44:15 ID:6hV0WJdQ0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/02/28(金) 01:15:47 ID:I6sn4jsU0<>乙 続きはよはよ<> 名も無きAAのようです<><>2014/03/22(土) 10:09:22 ID:mrBQSh/s0<>3月ももう残り少ないけど<> 名も無きAAのようです<><>2014/03/27(木) 11:38:52 ID:iqvJIZLM0<>もう3月ないよぅ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/27(木) 13:30:39 ID:4/hxk0vA0<>そう急かすなよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/28(金) 06:06:57 ID:RSaSlYSs0<>作者応援してるよおお楽しみにしてるよおおおがんばれえええ<> アインクラッドのニーター<><>2014/03/30(日) 15:16:33 ID:iWwgDkJk0<>ブーンがこれからどうなるのか楽しみ。
>>1は最近更新してないのかな?
待ち続ける☆ZE<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:24:02 ID:JCFDYpKw0<>


第十一話 疾走




1.作戦(午後)




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:25:57 ID:JCFDYpKw0<>

-哨戒班-


木々の中を走る五人。
ドクオはいつもと同じ黒いコートだが、残りの四人は揃いの暗い迷彩柄のマントを羽織っていた。

五人が走るのは、エリアの中心を貫く人が三人並んでも余裕を持って歩ける開かれた道の両側。
左右に分かれ、木々に隠れるように走る五人だったが、トソンの指揮でその行動は統制されていた。

進行方向を見て道の右を走るのは前からドクオ、ハイン、フサギコ。
左側をトソンとデミタスが走るが、前を走るトソンよりも右側のドクオは前を走っている。

時折左後方に視線を走らせるドクオ。

トソンが右手を斜め下に振るとドクオが走りを緩め、太めの木の陰に立つ。
それを見てハインとフサギコも同じように近場の木の陰に隠れた。
その時には、トソンとデミタスもそれぞれに木の陰に隠れている。

徐々に影に溶け込む五人。

それぞれが持つ隠蔽のスキルと身に着けた武具や衣服・アイテムの効果により、
その姿は木々に紛れ、背景に溶け込んでその姿を隠した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:28:26 ID:JCFDYpKw0<>
しばらくすると道の奥から狼男が三匹現れた。
持った曲刀や刀を陽光でぎらつかせ、周囲を睨みながらゆっくりと進んでいく。

狼男が五人の存在に反応して現れたのは明らかだが、
総合的に高いスキルレベルで隠れている彼らを見付けることが出来ないでいた。

周囲を伺いながらもドクオ達五人の隠れる木々のそばまでやってくる狼男。

緊迫した空気の中、狼男達が五人に囲まれるような位置まで来た瞬間、
中央の狼男の後頭部に一本の針が突き刺さる。

狼男2「ぐrぁyぅあうううあああ!!」

雄叫びをあげて針の投げられてきた方向を向く狼男2。
それに釣られて先頭を歩いていた狼男1と一番後ろにいた狼男3もその方向を見た瞬間、
木々の陰から飛び出す二つの影。

一つはフサギコ。

背後から狼男1の胴を一閃。
ソードスキルではないがクリティカルヒットとなったその一撃は狼男1のHPを三分の一ほど削った。

狼男1「ぐりゃぁぅらやぁああぅrぁああ!」

のけ反りながら雄叫びをあげて更に振り返ろうとするが、
その視界の死角に位置を移動したフサギコはすかさず狼男1の右腕の付け根を切り裂く。

ポリゴンと化した狼男1の右腕。

右手に武器を持っていたため狼男1は攻撃手段をなくしてしまった。

左手で無くなった右手を押さえるようなしぐさをしながら絶叫する狼男1。

そしてフサギコは満を持してソードスキルを放った。

居合の構えから放たれた剣技は狼男1の身体を宙に浮かす。
そして浮いたその身体を切り刻む剣技は狼男1の身体をポリゴンへと変えた。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:29:26 ID:JCFDYpKw0<>
もう一つの影はドクオ。

狼男3の背中にまず二連撃を浴びせる。

('A`)「遅いな」

一つ一つのあたりは浅いが動きの遅い狼男3の隙をついてもう一撃を与え、
最終的にはHPを三分の一以上削った。

狼男3「ぎゃりゅるぐあぁああぁああ!!!」

闇雲に剣を振り回しながら振り返った狼男3。

しかし既にドクオは距離を取っており、冷静に観察する。

('A`)「なるほど」

ドクオが静かに体を動かす。
その動きは一見緩やかに見えるが、空気の隙間を縫うように、音を立てず、
風も起こさず、ギルド内でも三本の指に入る素早さで狼男3の真横に立ち、
武器を持つ手の肘を切り裂いた。

狼男3「ぎゃるyたあああるらあああ!!!」

('A`)「五月蝿いよ、おまえ」

同じく攻撃手段をなくした狼男3の身体を切り刻んでいくドクオの片手剣。

('A`)「これで終わり」

赤い光を纏った片手剣が、狼男3をポリゴンへと変えた。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:30:22 ID:JCFDYpKw0<>
後頭部に針による攻撃を受けた狼男2は、針が飛び出した木に向かって走り出そうとした。

そしてその背中を襲うのはハインの大鎌。

フサギコやドクオに遅れること数瞬。
木の陰から飛び出したハインは左手に持った長柄の大鎌をバトンのように振り回し、
狼男2の背中に四本の傷をつける。

狼男2「ぐりゅあありゃああrっりゃあああ!!!」

大型の曲刀を両手で構えながら振り返った狼男2の背中に、今度はデミタスが襲い掛かる。

(´・_ゝ・`)「曲刀を振り回す簡単な仕事です」

水色に輝かせた曲刀を持ったデミタス。

多重六連撃

上下左右から舞うように振り下ろされ振り上げられた曲刀が狼男2の身体を切り刻む。

从 ゚∀从「ほーらこっちもまたくるぜ!」

背中からの攻撃にのけ反りながら硬直した狼男2の身体を前面からハインの鎌が襲う。

前後からのソードスキルの応酬に、狼男2の身体はポリゴンへと変わった。


戦闘の口火を切り囮役を担ったトソンも既に木の陰から出てきており、
狼男三匹がポリゴンに変わるのを視界の隅で見ながら、
次のエリアとタイムスケジュールの確認を行っていた。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:33:01 ID:JCFDYpKw0<>


(゚、゚トソン「お疲れ様です。ここで13分休憩です」

狼男を3匹ポリゴンに変えた後三つのエリアを通り過ぎ、
うち二つのエリアで戦闘を行ったドクオ達五人は、
安全エリアでしばしの休息を取っていた。

(´・_ゝ・`)「トソンの指揮も板についてきたな」

(゚、゚;トソン「やめてください。それに私がやっているのは指揮とかではなく、
ただのタイムキーパー的な役割です」

(´・_ゝ・`)「謙遜するな」

('A`)
从 ゚∀从「頑張ってると思うぜ。戦いやすいしな」

(゚、゚トソン「もう止めてくださいよ…」

苦笑いをしながらため息を吐くトソン。

(´・_ゝ・`)「?どうした?」

(゚、゚トソン「いえ……。
実際に指揮下について戦っただけでもショボンさんのすごさは感じたつもりでしたが、
本当にあの人はすごい方だと思いまして。
劣化版も劣化版、足元にも及びませんが同じような『指揮』をする立場に立ってみて、
その凄さを改めて実感しました」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:34:19 ID:JCFDYpKw0<>
('A`)「ああ…」
从 ゚∀从

ミ,,゚Д゚彡「ショボンはすごいから」

(゚、゚トソン「おっしゃる通りです。本当に」

(´・_ゝ・`)「ま、あいつは特殊だよ。特殊」

('A`)「否定はしない」
从 ゚∀从「しないんだ」

('A`)「つーかできない」
从 ゚∀从「そりゃそうだ」

(´・_ゝ・`)「特殊っていうか、異常だな」

デミタスの言葉に頷く三人。

ミ,,゚Д゚彡「……みんなひどいから」

フサギコの少しだけ非難するような、けれど消極的な言い方に笑みをこぼす四人だった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:36:17 ID:JCFDYpKw0<>
('A`)「ん?メッセージだ」
从 ゚∀从?

ドクオがウインドウを出すと、引っ付いていたハインが離れてトソンに近寄った。

从 ゚∀从「そういえばトソン、投擲スキル上げてたのか?」

(゚、゚トソン「いえ、スキルレベルは中の下くらいですよ。意識して鍛えてませんし」

从 ゚∀从「それにしては百発百中じゃないか?」

(゚、゚トソン「的がゆっくり動いているのもありますが……ほとんどは、これのおかげです」

色白で理知的なトソンの顔によく似合う、細長い長方形の眼鏡。
アンティークシルバーのような光沢をもった細い蔓を人差し指で少しだけ動かすトソン。

从 ゚∀从「いつもかけてるのと違うけど、特殊なやつなのか?」

(゚、゚トソン「フサギコさんからショボンさんの指示書と一緒に渡されたのですが、
命中率と正確性がおそろしく大きく上がりました」

从 ゚∀从「へーーーーー」

(゚、゚トソン「すごいですよね。おいくら位するんでしょう」

ミ,,゚Д゚彡「!ごめんだから!」

(゚、゚;トソン「え、あ?いえ、欲しいとかそういことではなく」

ミ,,゚Д゚彡「伝えるの忘れてたから。
その眼鏡は今回のお礼にあげるって言ってたから」

(゚、゚;トソン「え、あ?いえ、そんな!報酬はちゃんといただくわけですし、こんな高価そうなものまで」

ミ,,゚Д゚彡「『形も色も趣味が別れるし、似合うやつも少なそうだけど、トソンなら似合うんじゃねーか?』
って言ってたから」

(゚、゚トソン!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:37:49 ID:JCFDYpKw0<>
ミ,,゚Д゚彡「『すっとした細みの顔立ちだし、頭良さそうな雰囲気だから、似合いそうじゃね』
とも言ってたから」

(゚、゚*トソン「そ、それを言ったのは…作った方…ですよね」

ミ,,゚Д゚彡「だから!」

(゚、゚*トソン「じゃ、じゃあ遠慮なくいただきます。
お礼を言いに行かないとですね。

………もうそんな……私がきれいだなんて。モララーさんたら」

ミ,,゚Д゚彡「…え?」

(´・_ゝ・`)「誰も言ってないな。そんなこと」

从 ゚∀从「二人とも、野暮ってもんだぞ」

ミ,,゚Д゚彡?

(´・_ゝ・`)?

从 ゚∀从「ダメだこいつら。
そういえば二人ともホモだったな」

ミ;,,゚Д゚彡「ふさはショボンを尊敬しているだけだから!」

(´・_ゝ・`)「おれは二次とNPCのショタだけだ!」

(゚、゚トソン「デミタスさんはアウトですね」

从 ゚∀从「アウトだな」

ミ,,゚Д゚彡「アウトだから」

(´・_ゝ・`)「この高尚な趣味が分からないとは…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:38:51 ID:JCFDYpKw0<>
('A`)「何をまたわけのわからないことを」

四人で騒いでいるところに寄ってくるドクオ。

('A`)
从 ゚∀从「メッセージは読み終わったのか?」

('A`)「あーそのことなんだけどトソ…」
从 ゚∀从?

(´・_ゝ・`)「あ、ドクオ、このマントのことなんだが…」

自分が羽織っているマントを摘まんでひらひらとさせるデミタス。

('A`)「ん?どうかしたのか?」
从 ゚∀从

そのマントは遠目で見ると一見ただの黒色だが、
そばで見ると闇よりも深いような漆黒の地に、深い緑と濃い青が迷彩の様な柄を織成している。
今は動きやすいように前を開いているが、木の陰に隠れるときは
体のサイズより大きめなそれで身体を包むように前を閉じ、
更に顔まで覆えるようなサイズのケープもついているため、
少しかがめば本当に体全部を包むことが出来た。

(´・_ゝ・`)「売ってないのか?かなり欲しいんだが」

ミ,,゚Д゚彡「それはダメって言ってたから

(´・_ゝ・`)「そうなのか?」

('A`)「まだ量産できてはないみたいだな。
ツンとモラが弟者と一緒に試行錯誤して作ってたけど、ダメみたいだ。
これよりランクの落ちる奴はある程度量産出来そうらしいけど」
从 ゚∀从

(´・_ゝ・`)「そっか。残念だ」

('A`)「ま、使ってなきゃレンタルはするだろうし、
作れるようになりゃブーンの店に並べるだろ」
从 ゚∀从

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:39:50 ID:JCFDYpKw0<>
(´・_ゝ・`)「それまで待つか。ちなみにこれ、隠蔽だけならドクオのコートクラスの能力だろ?」

('A`)「いや、まだおれのコートの方が上」
从 ゚∀从

(;´・_ゝ・`)「まじか!それも弟者作だったよな!?」

('A`)「ああ。弟者が言うには、確かに全部レアレベルの素材で作ったけれど、
なぜこんなレベルのこんな防具が出来たのかわからんって事みたいだ。
実際、いまだに作ったコートの中ではこれが一番レアらしい」
从 ゚∀从

(;´・_ゝ・`)「はーーー」

('A`)「まずはこのコートクラスの防具や衣服を作るのが目標らしい。
一回は『ちょっとだけ!ちょっとだけ!』とか言って素材に戻されそうになった」
从 ゚∀从「ツンだな」

(´・_ゝ・`)「ひでえ。さすがツン」

ミ,,゚Д゚彡「……」

(゚、゚トソン「フサギコさん、ツンさんのフォローはしないんですね」

ミ,,゚Д゚彡「今のは出来ないから」

(゚、゚トソン「それでドクオさん、何かご用ですか。そろそろ出発する時間なのでお早めにお願いします」

('A`)「ああ、悪い、この後の戦闘スケジュールはどうなっているか知りたいんだが。
多分もうすぐ目的の湖だよな?」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「はい。あと5エリア、うち3エリアで戦闘を予定しています。」

('A`)「戦闘の規模は?」
从 ゚∀从

(゚、゚トソン「二回は先ほどの狼男三匹、一回は狼男一匹に巨大蜂3匹です」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:41:31 ID:JCFDYpKw0<>
('A`)「蜂がいるか…」
从 ゚∀从?

(゚、゚トソン「どうかしましたか?」

('A`)「その戦闘、おれが抜けても大丈夫か?」

(゚、゚;トソン「え?」

('A`)「ちょっと野暮用で、ショボンの所に合流したいんだよ。無理なら諦めるが」
从 ゚∀从「えー」

(゚、゚トソン「正直厳しいと思います。
現状ドクオさん一人で一匹は倒していただいていますから」

(´・_ゝ・`)「フサが一匹、おれとハインとトソンで二匹にすれば良いだろ」

('A`)
从 ゚∀从「そうだな」

(゚、゚;トソン「で、でも蜂の方はどうしますか?」

ミ,,゚Д゚彡「トソンがこれを使えば良いから!」

いつ取り出したのか、十数本の細いナイフを手に持つフサギコ。

(゚、゚トソン「それは?」

ミ,,゚Д゚彡「もし飛ぶ敵に苦戦するようならトソンに渡す様にショボンから言われてたから」

自分に差し出されたそのナイフを受け取るトソン。
革のようなベルトに一本ずつ差し込まれている銀色のナイフ。
幅は指一本分ほどで厚さも厚くはない。というか薄い部類に入るだろう。
そして長さも手のひらにすっぽりと収まるサイズだが、重さはそれなりにあった。

(゚、゚トソン「これ…」

左手の手のひらに乗せたナイフをタップして情報を見ると、トソンの目が大きく見開いた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:43:18 ID:JCFDYpKw0<>
(´・_ゝ・`)「?どうしたトソン」

(゚、゚;トソン「けっこうなレア品です。しかも麻痺効果付」

ミ,,゚Д゚彡「兄者とショボンとクーが頑張ったから!
ショボンがその眼鏡をかけたトソンなら使いこなせるはずだって言ってたから!」

(゚、゚トソン「これ、本当に使ってよろしいんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「余ったら返してほしいから」

(゚、゚トソン「…………分かりました」

ウインドウを開き、自分の記憶とショボンから渡された行程を再チェックするトソン。
そして装備ウインドウも操作して、自分の腰に渡されたナイフを装備する。

(゚、゚トソン「ドクオさん、離脱は可能です。
ただし、それによりこちらの負荷が大きくなるため状況によってはクリスタルの離脱を行います。
予定より危険だった場合の戦闘域からの退避はショボンさんに指示されていますので、
ご了承ください」

('A`)「わかった」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:44:48 ID:JCFDYpKw0<>
(゚、゚トソン「みなさん、よろしいですね」

(´・_ゝ・`)「もちろん」

从 ゚∀从「ホントは一緒に行きたいけど、こっちは任せておけ」

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから!頑張るから!」

(゚、゚トソン「では私たちは出発します。ドクオさんは?」

('A`)「あいつらのところに向かう。……ふさ、」

ミ,,゚Д゚彡「?」

('A`)「あと、…頼んだ」

ミ,,゚Д゚彡「!分かったから」

フサギコに向かって一回無言でうなずくと、
ハインが離した腕をほんの少しだけいとおしそうに撫でながら近くの木陰に進むドクオ。
するとその姿は他の四人の視界から完全に消えた。

从 ゚∀从「どっくん…」

ミ,,゚Д゚彡「相変わらずすごいから」

(゚、゚トソン「時間です」

ウインドウを閉じ、前を向くトソン。

他の三人も会話をしながらも準備は済ませており、万全の態勢でトソンの後ろに立つ。

(゚、゚トソン「進行は右にハインさん、フサギコさんで。左は先ほどと同じ私とデミタスさん。
共通順序は私、ハインさん、デミタスさん、フサギコさん。
ハインさんは私の指揮を見逃さない様にお願いします」

フードをかぶる四人。

そして少しだけ前傾姿勢で走り始めた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:45:58 ID:JCFDYpKw0<>
−護衛班−


(´・ω・`)「おや」

通常進行時もウインドウを開いたままにしているショボン。
前のエリアでは戦闘を行っていたため閉じていたが、
次のエリアに移動してモンスターがいないのを確認した後は開いて移動していた。

前をちゃんと見ていないにも関わらずその足取りには危なげはない。
それは並んで歩くモララーが足元や前方の注意を世間話のように話しかけているからで、
与えられる過不足の無い情報によって、ショボンは普通に歩いていた。

今ショボンが見るのは自分たちが進んでいるエリアのマップ。
さらにそこにはモンスターの出現ポイントが情報として追加してある。

現状はほぼ収集した情報通りに進んでいるが、それでも細かい差異はあるため、
ショボンは通り過ぎたエリアに詳細なデータを出来るだけリアルタイムで追加していた。

本当のところ、この程度の長さと情報量ならば、ショボンは全てを記憶しておく自信はあった。
だがその場で感じたことはやはりその瞬間に記載した方が情報として確かなものであると考え、
特に今回は安全エリアでの追記ではなくリアルタイムの情報を入れるようにした。

実はその行動にはそれ以外にもいくつかの理由があるのだが、
彼自身それは杞憂で終わってほしいと思っていたため、彼の心だけが知っていた。

( ・∀・)「どうした?」

ショボンが漏らした一言に、モララーが反応する。

(´・ω・`)「いや、……調査班からメッセージが届いたからさ」

( ・∀・)「?調査班?……作戦中に?」

(´・ω・`)「うん。時間的にまだ調査は終わってないはずだし、
ついさっき状況確認の連絡ももらってるから何かなと思って」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:47:09 ID:JCFDYpKw0<>
( ・∀・)「で?なんだって?」

(´・ω・`)「今から見るところ」

画面から目を離さずに軽く相手をするショボン。

( ・∀・)「……まだ見てないのかよ」

(´・ω・`)「見てないよ。さっきまで前の戦闘メモも書いてたし」

呆れたようなモララーの言葉をさらっと流すショボン。
全く気にせずにウインドウを操作している。

(・∀ ・)「お!なんすかなんすか!」

するとすぐ前を歩いていたマタンキがやってきた。

( ・∀・)「……」

(´・ω・`)「仲間からメッセージが届いたので確認をしようって話していたんですよ」

(・∀ ・)「いいっすね良いっすね。で、なんて書いてあったんすか?」

(´・ω・`)「いや、まだ見てないので」

( ・∀・)「(こいつのキャラあわねぇ)」

なれなれしくショボンの隣に並び、ウインドウを覗き込もうとするマタンキ。
しかし当然のことながら不可視モードになっており、マタンキには画面が見えない。

(・∀ ・)「ありゃ、見えない」

( ・∀・)「(当たり前だボケ)」

(´・ω・`)「マタンキさんは、このANGLERに入って長いんですか?」

自分の肩に顎を乗せるように覗いてきたマタンキ。
ショボンはそれをさりげなく避けつつウインドウを閉じた。

(・∀ ・)「俺っすか!俺は最近すっよ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:48:18 ID:JCFDYpKw0<>
( ФωФ)「マタンキは前から釣り場でよく会っていたのであるが、
なかなかギルドには入ってくれなかったのである」

二人の会話を聞いていたロマネスクが歩調を緩め、ショボンとマタンキの横にきた。

それを見て更に後方に下がるモララー。

( ・∀・)「(やばい、なんかちょっとムカついてる。
なんだろ、これ。感覚が落ちたのか、鋭敏になったのか…。
落ち着け……おれ。冷静に観察しろ。ショボンの行動も計算に加えるんだ)」

(´・ω・`)「おや、そうなんですか?マタンキさん」

(・∀ ・)「昔パーティー組んでた時にちょっと気まずくなったことがあって、
それ以来出来るだけソロで動いてたんっすけどね。
ロマネスクさんとはうまが合ったっていうか」

( ФωФ)「釣りの腕もさることながら、ソロで動いているだけあって強さもすごいのである」

(´・ω・`)「それは先ほどまでの戦闘をみて感じていました」

(・∀ ・)「俺なんかダメダメっすよ。ただ闇雲に切りまくるだけっすから」

(´・ω・`)「またまたご謙遜を。斬撃は全て的確でしたよ」

(・∀ ・)「……すごいっすね」

(´・ω・`)?

( ФωФ)「流石ショボン殿である。あれだけの戦闘で我々の力量が分かるのであるな」

(´・ω・`)「それほどの事ではないですよ」

( ФωФ)「いやいや、『稀代の戦術師』の名はだてではないのである」

(;´-ω-`)「本気でそういった名前で呼ぶの止めてください」

笑うロマネスクとマタンキ。
苦笑いを浮かべるショボンを見ながら、モララーは今自分が抱いている負の感情を分析していた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:50:02 ID:JCFDYpKw0<>


(´・ω・`)「ここから先のエリアでは、戦闘があります」

ショボンの指示で街道の隅に集まる八人。

(´・ω・`)「お願いしていた通り、そこではロマネスクさん達三人にも戦闘に参加してもらいます」

( ФωФ)「うむ」

(・∀ ・)「任せてくれっすよ」

(-_-)「はい」

ショボンの言葉を受け、表情を引き締める三人。

(´・ω・`)「情報では、この先に出るのは狼男タイプの剣士が三匹、槍使いが一匹。
更に狼と蜂のポップが複数報告されています」

(´<_` )「結構多いな」

( ^ω^)「狼男の槍持ちは珍しいおね」

( ´_ゝ`)「二つ前の層でもでたよな。確か」

ξ゚听)ξ「居たわね。結構槍捌きがうまくて面倒だった覚えがある」

( ・∀・)「ああ出た出た。懐に入るのが面倒くさかった」

(´・ω・`)「情報によると、槍持ちが先頭に一匹、そのすぐ後ろに剣士が一匹。
少し距離を開けて剣士が一匹、その更に後方に一匹の順で出るらしい」

(´<_` )「その順序は変わらないのか?」

(´・ω・`)「今のところはね。
ただこの道は湖への道でその先の街へは別ルートで行けるから、
それほど情報は積まれてない。だから…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:51:07 ID:JCFDYpKw0<>
( ´_ゝ`)「臨機応変」

(´・ω・`)「そういうこと。一応担当は決めるけど、その都度指示を出すからよろしく」

( ^ω^)「いつもと一緒だお」

ξ゚听)ξ「よね」

(´<_` )「また身もふたもないことを」

( ФωФ)「吾輩達はどうしたらよいのであるか?」

(´・ω・`)「槍持ちはこちらで対処します。
剣士の内の一匹と、狼及び蜂が出てきた際の遊撃をお願いしたいのですが」

( ФωФ)「分かったのである。二人もよいであるな」

(・∀ ・)「腕がなるっすよ!」

(-_-)「大丈夫。問題ない」

(´・ω・`)「ただ、今話していた通り情報が少ない為変更の可能性もあります。
実際ここまでの道のりでも情報との相違点がいくつかありましたので」

( ФωФ)「!全て調査済みなのであるか?」

(´・ω・`)「はい」

驚いたロマネスクに驚きつつ頷くショボン。

今回のように戦闘をしながらのほぼリアルタイムでの情報整理は今まで行ったことが無かったが、
毎回自身やギルドのメンバーが行った戦闘は記録し、流通している情報との差異を確認していた。
今回も作戦のギリギリまで情報屋から情報を買いあさり、基本的な情報は完全と言ってもいいだろう。
整理した情報は情報屋にフィードバックを行い共有化を図っているが、
基本的にはギルドのメンバーの命を守るための行為であり、
ショボンにとっては当たり前で基本的な行為だった。

そのため、同じギルドマスターであるロマネスクが驚いたことに彼は驚いてしまった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:52:55 ID:JCFDYpKw0<>
(;ФωФ)「そ、それは全てのギルマスがやっているのであるか?」

(´・ω・`)「ギルマスがやっているかどうかは分かりませんが、
ある程度の大きさのギルドならこういった情報統制をする担当者がいるのではないかと思いますよ」

(;ФωФ)「マジであるか…」

(ФωФ)

(ФωФ )

(-_-)「僕は無理だよ」

(ФωФ;)

( ФωФ )

(・∀ ・)「ロマネスクさん頑張るっす!」

( ФωФ;)

( ФωФ)

(;´・ω・`)「え、いや、僕を見られても」

(;ФωФ)「……マジであるか…」

(;´・ω・`)「…とりあえず先に進みましょうか」

(;ФωФ)「そ、そうであるな」

あからさまに動揺したロマネスクを気遣いながら更に注意点をいくつか告げ、
戦闘エリアに足を踏み入れた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:56:08 ID:JCFDYpKw0<>
戦闘は、予定よりも長引いていた。

(;^ω^)「ツン!」

ξ゚听)ξ「こっちは大丈夫!そっちを片付けて!」

ブーンの剣が風となって狼男を切り裂き、ツンの細剣は光線のように光り輝いて狼男を突き刺す。
その攻撃は一つ一つが充分な攻撃力を持ちモンスターのHPを削るのだが、
倒すことが出来ないでいた。

▼#・w・▼「ギャウ!」

狼男の足元にいる狼。
姿はビーグルに似ているがその毛色は焦げ茶色で、一般的なモンスターである。
しかしビーグルと同じ特技を持ち、傍らに居る狼男のHPを回復することがあった。

▼#・w・▼「ギュワ!」

もちろんブーン達に対して爪や体当たりなどのの攻撃もしてくる。
その攻撃力も動きも脅威ではないため簡単にかわせるし、
たとえその攻撃が直撃してもVIPの六人にはほとんどダメージはない。
しかし動きは阻害されるため、狼男に体勢の立て直しや回復行動を取られてしまい、
戦闘は長引いてしまっていた。

(#ФωФ)「こりゃ!こりゃ!」

(-_-)「ふっ!はっ!」

ロマネスク達三人は更に苦戦していた。

三人に対してはショボン達の位置取りにより他の敵とは独立させて狼男一匹と戦ってもらっていた。
しかし狼男のHPが黄色になりかけた頃にその足元に狼が現れ、
狼男のサポートを始めた。

順調に狼男のHPを削っていた三人であったが、
お供の狼が現れた途端、一転してその戦いぶりは混乱していた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:58:07 ID:JCFDYpKw0<>
(・∀ ・)「うおりゃ!!」

マタンキの両手剣が狼男に向けて振り下ろされる。
しかしその体に狼が体当たりをくらわせ、軌道がずれた両手剣は空振りして大地に突き刺さる。

この場合、本当ならばロマネスクとヒッキーが狼の気をひいて相手をしていなければいけないのだが、
連携が取れておらず位置取りが出来ていない三人は互いが互いの動きを邪魔してしまい、
互いのフォローもモンスターへの攻撃も中途半端なものとなってしまっているように見えた。

それでもロマネスクとヒッキーは付き合いの長さからかアイコンタクトがかろうじてとれているのだが、
全く取れていないマタンキとはうまく連携が取れないでいる。
いっそのこと全員が声を上げて戦えばいいのだが、
もともとソロプレイヤーであるマタンキはそれが苦手で、
残る二人は互いとは声を出さなくても出来てしまっていたため声を出すのが逆に遅れてしまい、
思うように倒せずにいた。

(´<_` )「おい!ショボン!」

( ´_ゝ`)「どうする!」

事前情報よりも狼男は一匹多く現れ、兄者と弟者はそれぞれ狼男を一匹ずつ対応している。
そしてその足元にはそれぞれお供の狼がおり、ブーンやツンと同じ様に膠着状態と化していた。

( ・∀・)「あとはお前に任せる!」

兄者と弟者の攻撃は強力だが、連発には向かない。
つまり狼男に攻撃を仕掛け相手に大ダメージを与えることが出来るが、
その隙を狙って狼に襲われてしまい、追撃が出来なくなる。
かといって狼を狙えば狼男に隙を見せることになるためそれは出来ないでいた。

そこで活躍するのがモララーである。

モララーは主に兄者と弟者が戦っている『狼』と時折現れる蜂の相手をしていた。
空を飛ぶ敵に対して爪での攻撃は不利な様に見え、
実際短剣などリーチの短い武器を持つ者の中には苦手とする者も多い。
だがモララーの戦闘センスと経験の前では空を飛ぶというアドバンテージは無いに等しかった。
さらに言うならば、地を駆ける狼の素早さもとくに意味を持たない。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 21:59:11 ID:JCFDYpKw0<>
モララーの持つ戦闘センス。
それは『読み』である。

戦闘経験と瞬時の観察により相手の動きを読み次の行動を予測する。
飛び道具を持たない敵ならば、自分に攻撃を仕掛ける動きさえ読めれば攻撃は当たらないし、
逆にこちらの攻撃を当てることが出来る。
どんなに素早くても移動する先が分かれば避けることも追うことも出来る。

ショボンのように味方の動きも考え、更に指示を出すのは苦手だが、
視界に入った敵の数が片手の指の数ほどなら、敵の動きを読むのはショボン以上、
ギルド一と言われている。

( ・∀・)「ほい!ほい!ほい!」

そして今その能力は如何なく発揮され、兄者と弟者のサポートをしていた。

(´・ω・`)「キープ!」

( ^ω^)「了解だお!」

ξ゚听)ξ「ん!」

( ´_ゝ`)「早くな!」

(´<_` )「分かった!」

( ・∀・)「りょーかい!」

ショボンの声に反応してそれぞれにこたえる五人。

ショボンから出された指示は『キープ』
それは現状の維持。
今の状況で言うならば、本気は出さないで目の前の敵と対峙するということだった。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:00:31 ID:JCFDYpKw0<>
そしてそのショボンは何をしているのかというと、位置取りをしていた。

この戦闘エリアは、鬱蒼と茂った木々の中を長い道が半円のように大きく弧を描く形をしていた。
木々によって視界は邪魔され、入り口から入ってある程度歩かないと出口が見えない長い道。
そして敵は反対側から進んでくるため、道の半ばごろで敵と遭遇するのがほとんどだった。

今回はブーンが先頭でツンが続いて走って早めにエンカウントを行ったため、
半ばよりは出口寄りで戦闘が始まった。
そしてその中の一匹をショボンとモララーが誘導して道の入り口近くまで移動させ、
その一匹をロマネスク達三人に引き渡しつつ戦況を確認していた。

(´・ω・`)「ロマネスクさん!さらに入口の方へ誘導してください!
入口近辺は蜂もポップしないはずなので落ち着いて戦えます!
残りの敵はこちらで抑えるのでそちらには行かせません!」

( ФωФ)「分かったのである!二人とも!分かったであるな!」

(-_-)「うん!行くよマタンキ!」

(・∀ ・)「おいっす!」

攻撃を重ねる三人。
そして狼男と狼を入口の方へ追いつめた。

(´・ω・`)「そちらは頼みます!」

( ФωФ)「任せるのである!」

ロマネスク達の位置を確認した後に逆側、VIPの面々が戦う場所に走り出すショボン。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:01:49 ID:JCFDYpKw0<>
(´・ω・`)「兄者!5!重単範囲!弟者!3!単ノックバック!兄者と合流殲滅!
モラ!4!弟者の代わり!僕も入る!ブーンとツンは制限有りのキープアウト!」

腰に付けた円盤型の武器を手に取り、構えながら叫ぶ。

( ´_ゝ`)「おう!」

(´<_` )「よし!」

( ・∀・)「OK!」

( ^ω^)「わかったお!」

ξ゚听)ξ「遅い!」

ショボンの指示を受けて動きを加速させたブーン。
そしてそれを横目に見つつ、細剣の先を的確に相手に突き刺していくツン。

(´・ω・`)「1」

ショボンのもつ円盤が緑色に輝く。

(´・ω・`)「2」

簡単なモーションで円盤を投げるショボン。

(´・ω・`)「3!」

(´<_` )「うをりゃ!!!」

弟者が斜め右下から左上に大斧で狼男を切り上げると、一緒に衝撃波のような風が生まれた。

狼男はHPを減らされ硬直しつつ後退し、
足元の狼は旋風の様に吹き荒れた風によってその場に硬直する。

(´・ω・`)「4!」

(´<_` )「任せた!」

( ・∀・)「よいしゃ!」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:03:09 ID:JCFDYpKw0<>
兄者に向かって走り出す弟者。

弟者がいた場所に移動するため走り出すモララー。

その背中に向かって攻撃を繰り出そうとした蜂のHPは既にモララーによって赤に変えられており、
背後から襲うショボンの投げた円盤によって胴体を切り裂かれると、その身体をポリゴンに変えた。

(´・ω・`)「5!」

( ´_ゝ`)「こんちくしょ!」

大金鎚を頭上に掲げ、勢いよく振り下ろす兄者。

モーション的にかなりの大振りな為狼男に逃げる隙を与えてしまったが、
掠る様にその身体に当てることが出来た。

攻撃判定としては肩先のほんの少しに当たるに終わったが、
狼男のHPが目に見えて減る。

そして地面に穴を開けるような勢いで振り下ろされた大金鎚は、
その場所を中心に半径数メートルの衝撃波を生んだ。

その威力で硬直する狼男とお供の狼。

更に兄者も剣技後の硬直をしてしまうが、狼男を背中から巨大斧が袈裟懸けに切り裂いた。

( ´_ゝ`)

それを見てにやりと笑う兄者。

弟者が振る巨大斧は更に縦横無尽に狼男を切り裂き、十数秒後にその場から狼男を消した。

後方から兄者のもとに駆け寄ったショボンの右手には、手元に戻ってきた円盤が持たれている。
そしていち早く硬直が解けそうになった狼を、手に持った円盤で切り裂いた。

更にそのまま走り抜け、武器を片手剣に持ち直すとモララーの横に立って狼男と対峙した。

ショボンに切り裂かれた狼は、攻撃を受けたことにより戦闘目標の変更を起こし、
走り抜けたショボンを追おうと向きを変える。

しかしその間に兄者の硬直が解け、狼のその体に、大金鎚が振り下ろされた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:04:17 ID:JCFDYpKw0<>

本気を出したブーンのスピードは、狼男はもちろん狼の動きすらも軽く凌駕する。
しかしスピードと引き換えに重さは捨てているため、
武器の能力と各種ステータスアップアイテムによって攻撃力を上げてあるとはいえ、
掠る程度の一撃を与えたところでは狼男のHPを大きく削ることは出来ない。

しかし一撃で減らすことの出来るHPが少量だとしても、
二撃、三撃と回数を重ねることによって与えたダメージの総量は増え、
二匹の狼男と二匹の狼のHPを着実に削っていた。

数を重ねて敵を倒すブーンに対し、ツンは正確で的確な攻撃を敵に与えることによって、
敵を倒すことが多い。

今回は風の様に舞うブーンとそれに翻弄される四体のモンスターに対し、
ツンは隙間を縫うような一撃を与えていた。
普通ならばブーンの動きを邪魔することを恐れて攻撃の手を休めいてしまいそうだが、
ツンは気にすることなくモンスターを攻撃する。

信頼。
ブーンは自分に当たる様なミスはしない。
そして自分の戦闘指向や動きをブーンは分かっているはずだから、
躊躇して動きを鈍らせてしまう方がブーンの動きを阻害するだけでなく、
自分もしくはブーンを攻撃してしまう可能性が出てしまう。
だから自分は自分の出来る精一杯をする。

そして懸念。
今のブーンの動きが100%の本気ではないのは分かっているが、
それでもこの速さは精神を消耗する。
脳が、神経が焼切れるような痛み、終わった後の疲労感や倦怠感。
出来るだけ早くモンスターを倒すことによって、ブーンの負担を減らしたい。

そんなことを漠然と思いながら、ツンは攻撃を重ねた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:05:44 ID:JCFDYpKw0<>

片手剣をメイン武器として持ったショボンは、戦闘自体はそれほど強くはない。
しかし敵の動きを読むことによってその動きを阻害しつつダメージを与えた。
そしてその横にはモララーが一緒に戦っている。
彼が使う爪は武器スキルも順調に上げてあることもあり、
更に敵の動きを読むことによって的確にダメージを与えている。

ショボンはそのモララーの動きすらも読みながら、先にいるブーンとツンの戦闘を注意しつつ、
後方にいる兄者と弟者がこちらに向かっているのを感じていた。

兄者と弟者が最初の一組の狼男と狼を倒した後は、決着は早かった。

四匹の狼男と四匹の狼、そして追加ポップした蜂三匹の計十一匹を倒した後、
一息つく間もなくロマネスク達が戦っているはずである道の入り口方面に向かう。

そこには、HPを赤くした狼男とタイミングよく攻撃を加える三人がいた。
狼男の足元に狼がいないところを見ると、首尾よく先に倒すことが出来たのであろう。

(・∀ ・)「すいっち!」

(-_-)「ん!」

マタンキの呼び声でヒッキーが踊り出る。
狼男は新たな敵に対応できず、その身体に刃を受けた。

( ФωФ)「ヒッキー!」

(-_-)「はい!」

ヒッキーが三連撃の最後を狼男に当てると同時に後ろからロマネスクが叫ぶ。
返事をしつつヒッキーが左に身体を寄せると、右側をロマネスクが走り抜けた。

( ФωФ)「決めるである!」

狼男の前に進んだロマネスクがまずは袈裟切りで一閃。
そして四連撃の剣技を繰り出すと、狼男はポリゴンとなった。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:07:40 ID:JCFDYpKw0<>
(*ФωФ)「やったのである!」

(・∀ ・*)「やったっすね!」

(*-_-)「…よし!」

大きくガッツポーズをするロマネスク。
マタンキは飛び跳ねて喜んでいる。
普段は大人しくあまり感情を表に出さないヒッキーも小さくガッツポーズをし、
更には後ろからマタンキに抱きつかれて一緒になってジャンプをした。

それを少し離れて見守っているショボン達。

( ´_ゝ`)「大丈夫じゃないのか?」

( ^ω^)「だおね」

ξ゚听)ξ「油断は厳禁よ」

(´<_` )「そうだな。注意は必要だ」

( ・∀・)「ショボン、どうみる?」

(´・ω・`)「とりあえず、続行で」

ショボンの指示を受けてそれぞれに返事をしてから、
ロマネスク達三人のもとに近寄るVIPのメンバー達。

(*ФωФ)「ショボン殿!やったであるよ!」

(´・ω・`)「お見事でした。最後の方はコンビメーションも決まっていましたね」

(・∀ ・)「最初はまごついたっスけど、慣れたらこんなもんっすよ!」

(-_-)「マタンキが最後まで戸惑ってたくせして」

(・∀ ・)「……それは言ったらダメっす」

ヒッキーのツッコミに、苦笑いを浮かべながら頭を掻くマタンキ。

それを見たロマネスクが笑い、ヒッキーとマタンキも笑い出すと、
いつしか六人も笑顔を見せていた。


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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:09:01 ID:JCFDYpKw0<>
−調査班−


一つ目のクエストの調査を終え、主街区の公園の芝生の上でシートとお弁当を広げる四人と一匹。
時間は正午から一つ分針を進めようとしていた。

(*゚ー゚)「お弁当は私とフサギコさんで作ったんですよ」

(,,゚Д゚)「うまそうだぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「いっぱい作ってきたので、お二人もしっかり食べてくださいね」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*゚ー゚)「もちろんビーグルちゃんもだよ」

▼*・ェ・▼「キャンキャン!」

重箱の様な入れ物にぎっしりと詰まった美味しそうな食べ物は周囲の目を引き、
羨望の眼差しを感じながらも華麗に受け流しつつ、
四人と一匹は午前中のクエストの反省会をしながら完食をした。

(,,゚Д゚)( ゚∋゚)( ´∀`)「ごちそうさまでした(もな)!」

(*゚ー゚)「お粗末さまでした」

反省会を兼ねた食事は思ったよりも長引き、時計の針は正午から二つ目をさそうとしている。

(,,゚Д゚)「この後はどうするんだゴルァ?」

( ゚∋゚)「少し休憩したら、午前中の反省点を踏まえつつ少し上の階層を調査しようと思う」

( ´∀`)「そうもなね。
ショボンからも時間があったら見てほしい場所をいくつか出されているもなから、
その中から良さそうな所に行くもな」

これからのことを話しつつも、お茶を片手にのんびりと座っている三人。
しぃは広げられていたお弁当箱をしまった後、三人の湯飲みにお茶を注ぎ、
自分の分も用意してから座りなおした。

(*゚ー゚)「でも、足を引っ張らなくてよかったです」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:10:14 ID:JCFDYpKw0<>
(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

( ´∀`)「二人とも充分強いもなよ」

( ゚∋゚)「ああ。ギルドに入った頃とは雲泥の差だろう」

(*゚ー゚)「そうですか?」

褒められて、疑問の言葉で返しつつも嬉しそうにするしぃ。
ギコもまんざらではなさそうだ。

しかし、しぃの顔にすっと影が落ちる。

( ゚∋゚)「どうした?しぃ」

(*゚ー゚)「いえ…。実は、最近ちょっと思うことがあって…」

( ´∀`)「なにもな?」

(*゚ー゚)「……なんで、私たち二人はこのギルドに入れたのかなって」

(,,゚Д゚)「?」

モナーの問い掛けに、少しだけ躊躇した後口を開くしぃ。
そしてその言葉に、ギコが不思議そうな顔をし、
モナーがほんの少しだけ困ったような顔をしてから先を促した

( ´∀`)「どういうこともな?」

(*゚ー゚)「ギコ君を探してほしくてアルゴさんの紹介でVIPの皆さんに依頼して、
助けてもらえて…。ショボンさんからお話をいただいて…ギルドに入れていただいて」

( ´∀`)「そうらしいもなね」

( ゚∋゚)「おれ達はその場にいなかったが、後でショボンに聞いた」

(*゚ー゚)「はい。このギルドに誘ってもらえたのは、本当に感謝しています。
でも、それと同じくらい、不思議で…。
何故、私たちを入れてくれたのか」

( ´∀`)「どういう事もな?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:11:58 ID:JCFDYpKw0<>
(*゚ー゚)「…あの時の私たちは、浅慮で、無鉄砲で、力もなく、知識もなく……」

( ゚∋゚)「しぃ」

(*゚ー゚)「私たちをギルドに入れるメリットなんて、何一つありませんでした」

(,,゚Д゚)「…そうだな…」

( ´∀`)「ギコ」

(*゚ー゚)「そのうえ、私たちはそのことに気付いてもいなかった。
どこかで、攻略組じゃなくても、それほど強くなくても、
この世界を軽く生きていけるような気がしていたんです」

( ゚∋゚)「……」

(*゚ー゚)「ね、ギコ君。そうだったよね。私達」

(,,゚Д゚)「…そうだな。
俺は特に中層くらいなら戦っていける気持ちだった気がする。
今考えると、恥ずかしいぃぞゴラァ」

(*゚ー゚)「私も恥ずかしい。
私たちに足りないのはレベルだけだと思ってた。
スキルレベルの低さだけだと思ってた。
でも、違った。この世界で生きていくのに大事なことは、そんな事じゃないって気付いていなかった」

顔を見合わせ、自嘲するように言葉を紡ぐしぃとギコ。

( ゚∋゚)「今分かっているのなら、それで良いと思う。
おれ達は、死んでいない。ちゃんと生きている」

(*゚ー゚)「……はい。でもそれをわかったのはこのギルドに入って、
皆さんと一緒に戦ったり騒いだり、笑ったりするようになったからです。
言葉じゃなく、身をもって感じることが出来たからです」

( ´∀`)「…それで、何が不思議もな?」

モナーとの問いかけに熱く語っていたしぃの熱が一気に冷め、少し躊躇した後に口を開いた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:14:34 ID:JCFDYpKw0<>
(*゚ー゚)「だから、何故ショボンさんは私たちをギルドに誘ってくれたのかです。
今だってそれほど戦力じゃありません。
私たちが気にせず入れるように嘘までついて」

( ゚∋゚)「ショボンが?嘘を?」

(*゚ー゚)「はい。あの時ショボンさんは
『(´・ω・`)「攻略組とは違うので、戦闘はしなくても構いません。
今ここには来ていませんが、ほとんど戦闘に参加しないギルドメンバーもいます」』
と言いました。でも実際は職業スキルを鍛えていても全員戦闘に出ていました」

( ´∀`)「ふさは、ギルドに入った頃は戦闘はしていなかったもなよ」

(*゚ー゚)「でも私たちが入った頃はされていましたよ。
私たちがショボンさんに助けてもらった時に、
このギルドには戦闘に参加しないメンバーはいませんでした」

再び熱く語るしぃ。
普段の出来るだけ自制しようとする姿勢からはあまり想像できない熱の入り方で、
その様子からも真剣に考えていることを伺えた。

(;゚∋゚)「そうか…、うん、そうだな…」

そんなしぃの勢いに押されるように口ごもるクックル。
しかしその横のモナーは優しいほほえみを浮かべた。

( ´∀`)「ショボンは、嘘はつかないもなよ」

(*゚ー゚)「?」

(,,゚Д゚)「?」

( ´∀`)「つくときは何か理由がある時もなけど、
その時はギルドのメンバーには嘘とわかるように嘘をつくもな。
誘った時、二人は登録されたメンバーじゃなかったけど、
ショボンの中では既にメンバー扱いだったと思うもな。
だから、ショボンは嘘はついていないもな」

(*゚ー゚)「?ど、どういうことですか?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:16:43 ID:JCFDYpKw0<>
( ´∀`)「ショボンが考える『ギルド』と、しぃやギコが今考えている『ギルド』は、違うもなよ」

(*゚ー゚)!

(,,゚Д゚)!

(;゚∋゚)「お、おいモナー」

(*゚ー゚)「そ、それはどういう」

( ´∀`)「そこから先はモナーの口からは言えないもな。
でも、今しぃが言っていた不安や苦しみをちゃんとショボンにぶつければ、
ショボンはちゃんと答えてくれるはずもなよ」

(*゚ー゚)「……答えを教えてもらう……。それで、良いんでしょうか」

( ´∀`)「それは自分で考えるもなよ」

(*゚ー゚)「…はい」

( ´∀`)「でも、これは分かってほしいもな」

(*゚ー゚)「ギコ君も私も、このギルドのメンバーで、
このギルドが大好きで、みんなが大好きで、守っていきたいです。
そしてそれは、ショボンさんはもちろん、モナーさんもクックルさんも、他の皆さんも同じ……。
ですよね?」

( ´∀`)「そうもな、そうもな。それを分かっているなら何も問題ないもな」

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)???

(*゚ー゚)「ほら、ギコ君も。帰ったらちゃんと説明するから!」

(,,゚Д゚)「お、おう!とにかく頑張るぞゴルァ!
おれんもしぃはもちろん、みんなが大好きだゴラァ!」

(*゚ー゚)「うん!頑張ろう!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:18:17 ID:JCFDYpKw0<>
立ち上がり、大きく伸びをするしぃ。
それにつられてギコも立ち上がり、両手を天に突くように身体をのばす。

そのまま出発の準備を始めたギコとしぃを見ながら、クックルがモナーに耳打ちした。

( ゚∋゚)「おいモナー。大丈夫なのか?いろいろ言ってしまって」

( ´∀`)「大丈夫もなよ。クックル。
ショボンに口止めはされていないもなし、ショボンがしぃに言ったことが間違ってないのなら、
最初から隠すつもりはないもなよ。きっと。それに……」

( ゚∋゚)「それに?」

( ´∀`)「そろそろ今の状態も変わっていく気がするもな」

( ゚∋゚)「?」

いつもと同じ柔和な笑顔を浮かべながらクックルに返すモナー。
クックルはその答えにほんの少しだけ違和感を感じたが、
打ち消す様に表情を引き締めた。

( ゚∋゚)「!そういえばモナー。
ショボンから来た連絡はなんだったんだ?
動揺していたようだが」

( ´∀`)「…クックルにはばれちゃってたもなね。
大丈夫もな。ちょっと気になったことがあったけど、ショボン達なら大丈夫もな」

( ゚∋゚)「それなら良いが」

( ´∀`)「……今日の夜、またみんなで話すもなよ」

( ゚∋゚)「ああ、分かった」

(,,゚Д゚)「二人とも!こっちは準備できたぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「次はどこに行きますか?」

今にも飛び出しそうな勢いの二人にこれからの予定を話しつつ、クックルとモナーも準備を始めた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:19:24 ID:JCFDYpKw0<>
−教育班−


フィールドエリアの戦闘訓練を終えた後、五人は主街区外れの芝生の上で円になって座っていた。
緑色の柔らかい芝が広がっているのだが、念のため下には大き目のシートが拡げられている。
すぐそばは大きな樹があり日陰を作り、彼らを挟んで反対側には外に向かう小道があった。
時間的には外に出ていく者も街に戻ってくる者もいるが、
層自体がそれほど人気のある層ではないため人通りは少ない。

川 ゚ -゚)「反省はこれ位かな」

( ><)「…はい、ありがとうございましたなんです」

(*‘ω‘ *)「…以後気を付けるっぽ…」

( <●><●>)「私たちがまだまだなのはわかってます」
 _
( ゚∀゚)「おいおいおまえら、大丈夫か?この後も訓練するんだろ」

クーから突きつけられた注意点にあからさまに気落ちする三人。
しかしその後のクーの言葉で空気が一変する。

川 ゚ -゚)「さて、お待ちかねのランチタイムだ」

( ><)「やったです!」

(*‘ω‘ *)「ビロードはお子様っぽね」

( <●><●>)「お昼くらいで」

( ><)「!二人ともずるいです!」

身体全体で喜びをあらわしたビロードを見て、冷たくあしらう二人。
けれど先ほどまでの意気消沈ぶりから比べると、二人もテンションが上がったのは明らかだ。

( ><)「バーボンハウスの食事が外で食べられるって、昨日楽しそう話してたんです!」

(*‘ω‘ *)「何のことっぽ?」

( <●><●>)「そんな夢を見たのはわかってます」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:20:43 ID:JCFDYpKw0<>
( ><)!!!!!
 _
( ゚∀゚)「おもしろいな、おまえら」

三人の漫才…というかビロードがからかわれているのを見て思わず言ってしまうジョルジュ。
それを聞いて三者三様の視線でジョルジュを見るが、クーが目の前に紙の袋を置いてくれたので、
一気に意識はそちらに向かった。

川 ゚ -゚)「とりあえずそれをひと袋ずつ。サンドイッチだ。で、これが…」

五人の中央に置かれる大き目の三段重ねの重箱。
もちろん漆塗りではないはずだが、木目の箱に深い味わいの色と光沢を放つその箱は、
日本の伝統工芸を思い起こさせた。

川 ゚ -゚)「本当は段ごとに何を入れるのか決まっているんだがな、今回は気にせずに詰めたそうだ」

クーの説明を聞きながらよだれを飲み込む四人。

クーはそれをまったく気にせずに、重箱を持ち上げた。

四人の目の前に広がる華やかな惣菜。
青野菜のサラダ。その中には赤いトマトの様な野菜が彩りを添える。
その横には茶色いからあげの様な肉料理。
別の場所には焼いた肉と白い野菜、そして緑色のキノコを串で刺して焼いてある物もある。
もちろん魚料理もあり、素揚げした小さな魚を細切りの色とりどりの野菜と共にタレに絡めた料理などが分かる。

( ><)「美味しそうなんです!」
 _
( ゚∀゚)「ショボン、気合入ってるな」

先程よりも更に分かりやすく喜びをあらわすビロード。
ぽっぽとワカッテマスは先に興味ないふりをしてしまった手前あまり気にしていないふりをしているが、
思わず呟いたジョルジュの言葉を聞き、ビロードと共に目をキラキラとさせた。

川 ゚ -゚)「こちらの段にはおにぎりも入っているが、さすがに多かった」

( ><)「食べます!」

(*‘ω‘ *)「食べるっぽ!」

( <●><●>)「食べられるのはわかってます!」

川 ゚ -゚)「…ら、別に包んで持って帰ってくれると嬉しいと言われていたんだが、大丈夫のようだな」
 _
( ゚∀゚)「こんだけ喜んでもらえるならショボンも本望だろ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:23:21 ID:JCFDYpKw0<>
ちょっと引き気味に三人を見るクーとジョルジュをキラキラとした目で見る三人」

川;゚ -゚)「それじゃあ食べようか」

( ><)「いただきます!」
(*‘ω‘ *)「いただきます!」
( <●><●>)「いただきます!」

ちゃんと両手を合わせて軽くお辞儀をした後、
それぞれに紙袋を開いたり重箱に箸をつける三人。

( ><)「サンドイッチも美味しそうなんです!」

(*‘ω‘ *)「このお肉!すごくジューシーだっぽ!味加減もほんのり塩味で最高だっぽ!」

( <●><●>)「この小魚の和え物はマリネに似ていますね。
ほんのり柑橘系の果実の様な香りと酸味が合わさって食が進むのはわかってます」

川 ゚ -゚)「のど詰まらせるなよ」

大き目のカップに飲み物を注いで三人の前に置くクー。
それぞれに「ありがとうございます」と言いつつも箸と口を動かすのを辞めない三人を見て、
クーもジョルジュも楽しそうな笑顔を見せた。

川 ゚ -゚)「デザートもあるからな、余裕を残しておけよ」

( ><)「はいなんです!」
(*‘ω‘ *)「わかったっぽ!」
( <●><●>)「それも完食するのはわかってます!」

川 ゚ -゚)「ほら、ジョルジュもちゃんと食べろよ」

三人の声を聴きつつジョルジュの前にカップを置くクー。
 _
( ゚∀゚)「クーは食べないのか?」

川 ゚ -゚)「私は…」

立ち上がり、小道を挟んだ反対側にある木を睨むクー。

川 ゚ -゚)「客が来たんでな。彼らを頼む」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:24:32 ID:JCFDYpKw0<>
 _
( ゚∀゚)?

表情を引き締め、木を睨みながら一直線に歩き始めるクー。

川 ゚ -゚)「デザートは共通タブに入れておいた。
それまでには戻るつもりだが、戻らなかったら先に食べていてくれ」
 _
( ゚∀゚)「あ、ああ」

顔を見ないで呟いたクーの言葉は食事に夢中になっている三人にも聞こえ、
思わず口を止めて歩いているクーを見た。

その緊迫した雰囲気に、クーの背中をただ見つめる三人。

彼女の向う木の幹に、うっすらと人影が浮かんだのはそのすぐ後だった。
 _
( ゚∀゚)「…鼠のアルゴ」

短めの金褐色の巻き毛を持った、頬に髭の様な三本の線をペイントしている女性プレイヤー。
情報屋のアルゴである。

ジョルジュが呟いた『鼠のアルゴ』とは通り名であり、それは頬のペイントに由来した。

(アルゴ)「よ。久しぶりだナ。クー」

川 ゚ -゚)「何の用だ?」

(アルゴ)「ん?ご機嫌斜めカナ?」

川 ゚ -゚)「仕事中なんでね。…私のところに来るなんて、珍しいな」

(アルゴ)「VIPの誰かを探していたんだヨ。…会えたのが君でよかった」

川 ゚ -゚)「?どういうことだ?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:26:51 ID:JCFDYpKw0<>
(アルゴ)「ショボンは作戦中かな」

川 ゚ -゚)「ああ。私達とは一緒ではないが」

(アルゴ)「もしかして、もう57層に行っているのか!?」

川 ゚ -゚)「……ギルドの作戦内容をそうやすやすと喋るわけにはいかないが…」

いつも飄々としていてつかみどころ無いイメージであるアルゴが慌てているようにも見え、
違和感を感じつつもギルドとしての常識を伝えるクー。

(アルゴ)「そんなことを言っている場合じゃないかもしれないゾ」

川 ゚ -゚)「どういう事だ」

何かしらの危機を感じさせるアルゴの表情に、更に警戒するクー。
『この女は情報を手に入れる為なら演技をすることぐらい当たり前だ』
といった思いが頭をよぎり、心の警戒を更に深め、アルゴの動きを観察した。

(アルゴ)「まあでもこれはアフターフォローみたいなもんか。
……ショボンはお得意様だしナ」

川 ゚ -゚)?

アルゴが右手を振ってウインドウを操作すると、クーの目の前にもウインドウが浮かぶ。

川 ゚ -゚)「57層の地図?」

(アルゴ)「広げてみナ」

促され、警戒しつつも広げると、今まさにショボン達が進んでいるであろう場所を含む地図が現れた。

川 ゚ -゚)「これは」

(アルゴ)「ここ数日、ショボンからこの付近のモンスターや宝箱、
採取ポイント等の情報を求められてかなりの量を売った。
で、さっきになってこの情報が入ってきたんダヨ」

ショボン達の目的地である湖のそば、上から見ると90度近い角度で曲がる道のエリアと、
その次の小さな広場のような場所が赤く染められている。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:28:03 ID:JCFDYpKw0<>
川 ゚ -゚)「この色の違う場所がどうかしたのか?」

(アルゴ)「どうも、トラップがあるらしいネ」

川 ゚ -゚)「トラップ?」

クーは警戒を忘れたようにアルゴの話を真剣に聞き始めた。
それを感じたのか、逆にアルゴの方は余裕を持ち始めている。

(アルゴ)「まだ確定情報じゃないから本来なら売らないけどさ、
お得意さんにいなくなられるのは辛いからサービスでメッセージ送ったんだけど、
どうもショボンに繋がらないんだヨ。あと、ドクオもネ」

川 ゚ -゚)「そのトラップはどんなものなんだ?」

クーもウインドウを操作し始める。
ショボン宛にメッセージを送るが、届いた形跡がない。

(アルゴ)「クリスタル使用不可領域の形成。モンスターの大量ポップ。
迷宮の中でなら今までもあったトラップだけど、ここにきてフィールドエリアにも…」

川 ゚ -゚)!!

(アルゴ)「その中では外部との連絡は取れない。もしかしたら……」

川   )「……そんな……」

(アルゴ)「もう、行っているんだネ」

表情をなくしたクーを見て、すべてを理解するアルゴ。

川 ゚ -゚)「協力を、感謝する。情報料は」

しかしクーはすぐに表情を引き締め、唇と共に心をきつく律した。
心の中で感嘆の声を上げるアルゴ。

(アルゴ)「これはまだ売れるネタじゃないんでネ。
さっきも言ったけど、アフターサービスでいいサ」

川 ゚ -゚)「分かった。何か分かったら、こちらからも連絡する」

(アルゴ)「……ああ。期待しているよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:30:54 ID:JCFDYpKw0<>
片手を上げて数回手を握るようなしぐさを見せて会話を終わらせるアルゴ。
しかしその場を動こうとはしない。

川 ゚ -゚)「?どうした?」

(アルゴ)「いや、やはりただってのは不味いな…。
よければ情報料の代わりに一つ、教えてくれないかナ?」

先程とはまた種類の違う真剣な表情を見せるアルゴ。
その顔はクーにとっては初めて見る顔で、
警戒しつつも得体のしれない情報屋の素の一面を見たような気がしていた。

川 ゚ -゚)「なんだ?」

(アルゴ)「ショボンは、何を企んでいる?」

川 ゚ -゚)「は?」

思わずすっとんきょな声を上げてしまう。

(アルゴ)「……サブマスターにも話していないのか」

その反応から、自分の求める答えをクーは知っていないとアルゴは判断したようだ。

川 ゚ -゚)「確かに腹黒だが、ギルド外にまで影響があるようなことはしていないと思うぞ」

クーはそれに気付いていないのか、呆れたように返答する。

(アルゴ)「いや、いい、すまないネ。変なことを聞いて。忘れてくれ」

川 ゚ -゚)「ああ」

再び片手を上げてから踵を返すアルゴ。
しかし三歩程進んでから立ち止まった。

(アルゴ)「……ギルマスが一人でどこかに行くのと、道具屋の動向は注意したほうが良い」

川 ゚ -゚)「は?道具屋って、ブーンの事か?」

(アルゴ)「じゃあナ」

答えずに走り去るアルゴ。

クーはその背中を見送った後一瞬だけ笑い、すぐに表情を引き締め、
彼女と同じように踵を返した後、ゆっくりと仲間のもとに戻った
 _
( ゚∀゚)「おい、クー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:32:22 ID:JCFDYpKw0<>
川 ゚ -゚)「ショボン達と連絡が取れない」
 _
( ゚∀゚)「!?」

川 ゚ -゚)「おそらくはトラップに引っかかったと思われる。
内容はクリスタル使用不可領域の展開とモンスターの多量ポップ。
アルゴはショボン達の進むルートにそのトラップがある可能性を教えに来てくれた」
 _
( ゚∀゚)「…どうする」

ジョルジュに対し、簡潔に状況を伝えたクー。

ジョルジュは一瞬言葉をなくしたがすぐに状況を理解し、
ギルマス不在時のギルドの決定権を持つサブマスターに次の行動の許可を求めた。

『どうする』

彼の言ったその言葉は、すぐにショボンのもとに向かってくれという言葉を期待して出た言葉だった。

そしてクーはその期待を裏切る。

川 ゚ -゚)「『どうする』?私達の今日の仕事は彼らを鍛えることだ。
午後からの予定は40層のフィールドダンジョンでの練習だ」
 _
( ゚∀゚)「な!」

想像していなかった言葉に思わず言葉をなくすジョルジュ。
しかしすぐに我に返り、勢いよくクーに詰め寄った。
 _
(#゚∀゚)「クー!おまえ本気で言っているのか!?」

川 ゚ -゚)「私達に与えられた仕事は、ショボン達のサポートじゃない。
ここにいる三人に、私達の戦闘を教えて更に強くなってもらうことだ」
 _
(#゚∀゚)「ショボン達が死んでも良いって」

川#゚ -゚)「ショボン達が死ぬわけないだろうが!!!!」
 _
(;゚∀゚)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:36:01 ID:JCFDYpKw0<>
クーの剣幕に身をすくませるジョルジュ。

どちらかと言えば沈着冷静。
一緒にバカ騒ぎはしてもどこか落ち着いていて100%の感情というよりは
選んだ感情を外に見せているような雰囲気を持つ仲間の初めて見る姿に、
ジョルジュは驚きと共にその強さを再確認した。

そして落ち着いた彼の視界の隅に映る、震える手。

それが自分に対する怒りからくる震えではないことぐらいは、ジョルジュにも分かった。

川#゚ -゚)「おまえはショボン達が死ぬとでもいうのか!!!」
 _
( ゚∀゚)「…すまん」

素直に頭を下げるジョルジュ。

納得はしていない。
今すぐにでも仲間のもとに駆け付けたい。
けれど自分よりも仲間の事を『知っている』仲間が止める以上、動くことは出来ない。
 _
( ゚∀゚)「……」

それが如実に顔に出ていたのであろう。
クーが口を開いた。

川 ゚ -゚)「…ショボンは保険はかけておくと言っていた。
それならば、これくらいのトラップはもちろん、
考えられるうちの最悪の事態の斜め上のことが起きても対処できる保険のはずだ。
あいつは、そういう男だからな。
おまえも、あいつのそういうところを見てきただろ?
そしてその『保険』の中に『私達が駆けつける』ことは入っていない。
さらいに言うならこの『私達』にはモナーやクックル達も含まれる。
例えおまえやギコが駆けつけようとしても、
私やモナー、クックルが止めることも計算しているはずだ。
逆に私達が行ってしまうことであいつの計算が狂う可能性もある」
 _
( ゚∀゚)「そう…だな。ショボンなら、それくらいの計算はしていそうだ」

川 ゚ -゚)「だから私達は、信じて待つしかないんだ……」

お互いの顔を見ながら沈黙してしまう二人。

そしてそんな二人を見ていた三人が、おずおずと声をかけた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:37:09 ID:JCFDYpKw0<>
( <●><●>)「あ、あの…」

川 ゚ -゚)「おお、すまん。ちょっとこちらの話だ。
どれ、デザートも食べ終わったようだな。
それでは出発するか」

(*‘ω‘ *)「今日の訓練はこれで終わりでもいいっぽよ」

( ><)「充分訓練したんです!」

川 ゚ -゚)「それは出来ない相談だ」

( <●><●>)「本当は今すぐ行きたいのはわかってます」

川 ゚ -゚)「そりゃそうだ。仲間の危機かもしれないからな。
だが、私達はその大事な仲間に君たちの訓練を任された。
だから、まずはそれを実行する」

(*‘ω‘ *)「でもっぽ」
 _
( ゚∀゚)「大丈夫だ。あいつらは多少の事で倒される奴らじゃねえから」

( ><)「し、心配じゃ…」

川 ゚ -゚)「もちろん」
 _
( ゚∀゚)「心配だ」

( <●><●>)「な、なら」

川 ゚ -゚)「だが、それ以上にあいつらを信じているということだ」

(*‘ω‘ *)「信じてるっぽ…?」

川 ゚ -゚)「ああ、もちろん根拠のない信頼じゃない。
今までの経験、彼らの強さ、その知恵を知っているからこそだ」

( ><)「…知っているからこその信頼……」
 _
( ゚∀゚)「心配だし、本当ならすぐにでも駆けつけたいぜ。
でも、俺らがいなくってもあいつらなら、切り抜けられると信じることが出来るってことだ」

クーとジョルジュを見る三人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:38:19 ID:JCFDYpKw0<>
先程の二人の話を聞いていて、彼らの仲間に危機が迫っていることは分かった。
どんな危機なのかは想像でしかないが、おそらくは命の危険にかかわること。
けれど、目の前の二人は助けに行かないばかりか笑顔すら見せている。

けれど、クーの右手は震えており、それを隠す様に左手で抑えている。
先程までは無かった眉間のしわが、ジョルジュの顔に浮かんでいる。

自分ならば、すぐにでも駆け出す。

横にいる自分の友も、おそらくはそうする。

けれど、目の前にいる自分達とはレベルの違う強さと経験をもった者達は、ここにとどまっている。

それが自分たちにはない強さだとするのなら、そんなものはいらないと思った。

同時に、その強さがなんなのか知りたいと思った。

( <●><●>)「……強がりなのはワカッテマス」

(*‘ω‘ *)「でも、きっとそれが私たちに欠けているものっぽ」

( ><)「わからないんです。でも、わかりたいんです」

( <●><●>)「だから、早く次の訓練にいきましょう」

川 ゚ -゚)「そうだな」
 _
( ゚∀゚)「おし!行くぜ!!」

ジョルジュの掛け声ののち、素早く準備を整え始める五人。

そして数分後には、次の目的地、40層の主街区転移門広場に移動していた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:39:39 ID:JCFDYpKw0<>
-護衛班-


戦闘を終わらせた九人はその場でまずヒットポイントを回復させた。
次のエリアや前のエリアに移動することも考えたが、
エリア移動による新たなモンスターとの戦闘は避けたかったためである。

もちろん自分達の戦闘終了後移動しながら回復薬を飲んでいたVIPの六人は完全回復していたが、
ロマネスク達三人は戦闘後にすぐ飲み始めなかったため、
六人が周囲を警戒する中じっと回復するのを待っていた。

(・∀ ・)「このポーションも、飲んだらすぐ回復すればいいっすよね」

( ФωФ)「そうであるな。飲みながらじわじわ回復するのを待つのはいらいらするのである」

ξ゚听)ξ「クリスタル使ったら良いじゃない」

(-_-)「……それはちょっと……」

( ^ω^)「クリスタルは高価だからなかなか使えないおね」

( ФωФ)「そうであるな」

( ´_ゝ`)「だが、命には代えられないだろ」

( ФωФ)「どうしてもの時用に一応買って持っているであるが、
幸いなことにそれを使わなければいけないような状態になったことはないのである」

(´<_` )「本当に使わなければいけない時に躊躇しなければいいが」

(・∀ ・)「やっぱ思い切りが必要っすよね」

( ^ω^)「だおだお」

( ФωФ)「だがしかし、物が手に入らないことには…」

( ^ω^)「物自体は定期的に入荷してるから、頑張ってお金を稼ぐと良いお」

ξ゚听)ξ「そうね。強いんだし、ギルドマスターならギルドのために釣り以外の事もしないとね」

( ФωФ)「…………」

(-_-)「ロマ、固まっちゃった」

ほのぼのとした笑いがいつしか湧き上がり、笑顔が浮かぶ。
そんな和気藹々とした雰囲気の中、三人のヒットポイントも全回復した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:41:06 ID:JCFDYpKw0<>
(´・ω・`)「さて、それでは出発しましょうか。
再ポップまでまだまだ余裕はある計算ですが、
先程のモンスターの数の様にイレギュラーなことが起きないとも限らないですしね」

ショボンの言葉に、それぞれに声を出して答える八人。

ヒットポイントが完全回復した時点で出発の準備は終わったため、隊列を整えながら歩き始めた。

そしてそれは、中央の大きなカーブを通り過ぎたところで起きた。

(・∀ ・)「宝箱発見!」

(´・ω・`)「え!?」

いきなり走り出したマタンキ。
隊列を外れ、カーブの内側の森の中に突っ込んでいった。

(´・ω・`)「マタンキさん!」

(・∀ ・)「宝箱は空けたもん勝ちって言ってたっすよね!」

(´・ω・`)「ダメです!このエリアに宝箱の情報は!!」

駆け出そうとしたショボンと既にマタンキのすぐ後ろに駆け寄ったブーン。

しかしマタンキは宝箱を開けていた。

(・∀ ・)「とりゃ!」

開けた瞬間、鳴り響く警報音。

赤く染まる空。

【CAUTION】

血の様な深い赤と闇の様に暗い黒に彩られた文字が空と周辺を飛ぶ。

それは時として今自分のいる世界がデジタルの世界だと忘れてしまうほど精巧に出来ている中で、
作り物の世界にいるということを瞬時に実感させ、そして恐怖が心を襲う。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:42:17 ID:JCFDYpKw0<>
周囲の森からポップする緑色のゴブリン。

一メートル少しの体躯に緑色の肌。
頭や額には角を持ち、手にはこん棒や剣を構えている。

空には巨大蜂。
先程まで戦っていた蜂よりは小さいが、その羽音は耳障りで、警報音と共に心をざわめかせる。

森の奥からは体長二メートルを超えたゴーレム。
横幅もその身体を支えるにふさわしい大きさで、緑色のゴーレムはこん棒を、
茶色いゴーレムは体長より長い棍を、青いゴーレムは剣を持っていた。

鳴り響く警報に反応するかのようにポップし続けるモンスター達。

その中心にあるのは宝箱であり、
開けたマタンキはまるで呆けたように周囲を見つつ動かずにいる。

その影に気付いたのは三人。

警報が鳴った瞬間にエリアの出口付近から走り始めた黒い影。

その影が進みたい道を瞬時に判断し、まず動いたのがその三人だった。

( ・∀・)「とりゃ!!」

モララーの爪がゴブリンを切り裂き、数度の攻撃でポリゴンに変える。

( ´_ゝ`)「ふん!!」

兄者の鎚は数体のゴーレムを後退させる。
更に放たれた剣技による衝撃波はゴブリン達を巻き込んで吹き飛ばし、道を作った。

(´・ω・`)「解除を頼むドクオ!ブーン!出口の確認を!」

唯一その影の正体を正確に理解していたショボンの投げたナイフと針は蜂の動きを止める。
一撃で倒すほどの力はないものの、麻痺属性のナイフと毒属性の針の二重攻撃により、
ヒットポイントを減らしつつ動きを封じていった。

そうしてできた道を通り抜けた黒い影。
そして逆方向に青い風が吹き抜けた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:43:29 ID:JCFDYpKw0<>
黒い影はショボンが呼んだその名を持つギルドVIP一のソロプレイヤー属性を持つ男。
ドクオが宝箱のそばに駆け寄った。

('A`)「罠レベルが高い。…おれでもぎりぎりか」

マタンキを押しのけて宝箱の正面に立ち、ウインドウを出して操作すると警報が鳴り止む。

('A`)「解除完了!全部倒すぞ!」

地面に座り込んでいたマタンキの首根っこを掴んだドクオが仲間のもとに走り出す。
自分より体の大きい男を半分引きずる様に連れて移動したドクオ。

その頃には既に陣形を整えており、ロマネスク達三人を中心に置いて、
周囲から押し寄せるモンスターに対抗していた。

ξ゚听)ξ「一匹一匹がそれほど強くはないのが救いね」

( ・∀・)「油断は禁物だぞ、おい」

ξ゚听)ξ「あんたに言われなくても分かってるわよ」

( ^ω^)「ダメだったお。やっぱり出られない」

出口を偵察してきたブーンが戻ってきた。

ドクオがトラップを解除したことにより警報は鳴り止んだものの空は赤いままであり、
どうやらこのエリアは周囲から隔離されてしまったようである。

(´・ω・`)「トラップの発動による空間の閉鎖。
おそらくポップした敵を全部倒すか、僕達が全員死なない限り解除はされない」

('A`)「さらっと不吉なことを言うよな」

(´・ω・`)「現実は現実として認識しておかないとね」

(´<_` )「相変わらず冷静だなおい」

( ´_ゝ`)「おれ達も人の事は言えないだろ」

( ´_ゝ`)「おれ達は流石だからな!」(´<_` )

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:44:32 ID:JCFDYpKw0<>
軽口を叩きながらも敵を倒していく七人。

(´・ω・`)「とりあえず出口側に向かおう」

ショボンの一声で、ロマネスク達三人を守って戦っていた七人が隊形を変える。

出口に向かって先頭にブーンとツン。
進むべき道の正面にいる敵に攻撃を加える。
ブーンの機動性を生かしてはいないが、
二人のコンビネーションによる隙のない連続戦闘は確実に敵を倒しポリゴンに変えていく。

その後ろにドクオとモララー。
前の二人の視界から外れた敵を外側に排除し、
斜め前を含めた横からの攻撃を流し反撃しつつ前に進む。
倒しつつも深追いはせず、こじ開けられた道を広げることに意識を向け、
まずは移動することを優先していた。

その後ろに守るべき三人を連れ、しんがりを務めるのは兄者と弟者。

この二人の役割は倒すことではなく、近寄らせないこと。
広範囲の強い攻撃を放つことで敵を寄せ付けず、
更に互いの攻撃を的確に繋げることにより空白の時間をなくした。
コンビネーションということで言えば先頭の二人に劣らないのだが、
今回は敵の種類と仲間の特性を考えて一番後ろにいる。

そしてショボンは全方位に目を配っている。
全員の視界の死角。
放った攻撃の間隙。
その空白を狙ったモンスターの攻撃、いや動きに牽制の針を飛ばしている。
その攻撃は敵の攻撃を瞬間止めるだけだが、今仲間を守るにはそれで充分であった。

動きを止めたモンスターを追撃し、倒し、止め、
退けるのはそのモンスターの一番そばにいる仲間の役目なのだから。

全員が持てる力を存分に使い、出口の位置まで移動をした。

(´・ω・`)「よし!殲滅しよう!」

移動を終わらせ、ツン、ブーン、モララー、ドクオが振り向いた瞬間に飛ぶショボンの指示。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:45:29 ID:JCFDYpKw0<>
走り出すブーンとツン。
ドクオが続き、モララーがショボンに駆け寄る。

( ´_ゝ`)「景気づけの!」

(´<_` )「一発!」

放たれる二つの大技。

兄者の鎚は上下の衝撃。
ジャンプして放たれたそれはゴーレムの脳天を叩きながら大地を叩きつける。
その衝撃波は、下から上に向かう波動となって放射線状に広がって敵の動きを止めた。

弟者の持つ斧の攻撃は右から左。
横に並んだ二匹のゴーレムを切り裂き、そのまま後方にも斬撃が飛んだ。
そしてそのまま左から右への一撃。
少しだけ斜めに、空に向かって放たれた斬撃は二匹のゴーレムをポリゴンに変え、
後ろにいたゴブリンと蜂を後方にノックバックさせる。

兄弟の作った敵のいない空間に躍り出るブーン達三人。

二人の攻撃で動きを止めヒットポイントも減らした敵を追撃するブーンの剣。
風のように縦横無尽に敵陣の中を舞い、切り裂き、ポリゴンに変えていく。

ツンの動きは閃。
細剣を構え、隙を見逃さずに鋭い攻撃を与える。
正確性を上げた武器と己の能力値は、敵のヒットポイントを確実に減らした。

そしてドクオの動きは陰。
敵の死角と懐に忍び込み、武器を振るう。
必ず二回以上剣を振り、ソードスキルを使わずとも敵のヒットポイントを大きく削る。

そしてツンとドクオの攻撃によりヒットポイントを減らした敵は、ブーンという名の風の攻撃により、
ポリゴンへと変わっていった。

大技を放って三人の動くスペースを作った流石兄弟も、その後ろから敵を倒している。

特にゴーレムは動きは緩慢だが攻撃能力が高く、ヒットポイントもゴブリンや蜂よりは多い。
そのため三人の攻撃を潜り抜けてやってくる敵も多い。

というよりは、そこに二人がいることを分かっている三人が、あえて流していた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:46:41 ID:JCFDYpKw0<>
(´<_` )「信頼してくれるのは嬉しいがな」

( ´_ゝ`)「もっとそっちで倒していいぞ」

ξ゚听)ξ「遠慮しなくていいわよ!」

('A`)「働け」

( ^ω^)「おっおっ。そいつらは頼んだお!」

ここにきて無駄口をきく余裕も出てきたのか、会話も増えていた。

( ・∀・)「まったくこいつらは」

モララーは自分の背中側にいるロマネスク達三人に意識を向けつつも、
五人の攻撃を潜り抜けてやってくる蜂とゴブリンを退治していた。

その動きは無駄が無く、敵の動きに合わせて身体を動かし、
躱しながら反撃し、交わしつつ抑え、敵を倒していった。

ショボンは武器を持ち替え、円盤型の武器を縦横無尽に飛ばしている。
周囲の敵は仲間に任せ、道の広さと位置取りの関係で近寄れないでいる敵に攻撃をしていた。
それはすぐには結果の見えない行動だったが、徐々に効果を見せ始めた。

( ^ω^)「おっおっ。最初からヒットポイントが減ってるから楽だお」

ξ゚听)ξ「ゴーレム以外はこっちにも回しなさいよ」

(´<_` )「いや、だからゴーレムもそっちで片付けてくれよ」

戦闘が長時間にも及ぶと、どうしても集中力が切れてミスが生まれる。
十回攻撃を当てれば倒せる敵に対して二回ミスをすれば、
その分相手に攻撃をするタイミングを与えてしまい、それだけ自分や仲間が死ぬ確率が高くなる。
ならば、十回で倒せる敵を九回で倒せるようにしてしまえばよい。
更に八回、七回にしてしまえばよい。
それを可能にしたのがショボンの攻撃であり、
前線で戦うメンバーはそれを分かっているからできる戦い方を行っていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:48:40 ID:JCFDYpKw0<>
敵のヒットポイント総量と現在のバーのカラーと幅から現時点でのヒットポイント量を推測し、
自分の攻撃によって削ることの出来る量を考えながら戦う。

敵との一対一での戦闘では誰もが行うことだが、その精度には個人によって雲泥の差がある。

更に周囲の敵と仲間の位置も確認して技を放つ。

集団戦、特にこういった乱戦状態では難しいことなのだが、
VIPの面子はそれを一見、事も無げに行っていた。

罠が発動してから今まで守られることしかできなかったロマネスク達三人も我を取り戻し、
武器を構えなんとか戦おうとするが彼らの戦い方を目の当たりにして二の足を踏んでいる。

(´・ω・`)「我々で何とかしますので後ろにいてください。
万が一そちらに流れた場合は声を駆けますのでよろしくお願いします」

ショボンの指示は口調は穏やかだが有無を言わさない力強さがあり、
三人はただ見守ることだけしかできなかった。

(´・ω・`)「右前前方のゴーレムの後ろに蜂二匹!」

六人が先頭に関係ない『会話』をしているのに対し、
ショボンは戦闘に関わる『指示』のみを口にする。

一体の強敵と相対した時やある程度統制のとれた敵集団を撃破する時の指示とは違うが、
それは要所要所で注意点や方向性の指示を出していた。

それはまるでショボンという司令塔のもとに他のメンバーが動くだけの様にさえ見える。

( ・∀・)「(……なるほどね)」

('A`)「(ハァ…マッタクアイツハ)」

普段と同じであり普段と全く違うその指示に、とりあえず前の敵を倒すことに集中するメンバー。

その戦いは30分を超えようとしているが、まだ終わりは見えていなかった。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:49:33 ID:JCFDYpKw0<>
-調査班-


モナーにメッセージが届いたとき、彼らはフィールドダンジョンの最深部で採取をしていた。

( ゚∋゚)「ショボンから渡されたデータよりも、収穫数が少ないな」

(*゚ー゚)「そうですね。代わりに載っていないアイテムが取れたりしてますけど」

(,,゚Д゚)「これ、おれのレベルじゃ判別できないから頼むぞゴルァ」

小ボスレベルの敵を危なげなく粉砕した後の広場。
円形に広がる芝生の周囲、大きな樹の根元にうすぼんやりと光る場所があり、
探索をするとアイテムがポップした。

( ゚∋゚)「敵の強さは変更が無かったが、獲得アイテムには変更があるな」

( ´∀`)「敵の強さも上がってたもなよ」

後ろから屈むように覗き込んできたモナーが声をかける。
足元ではビーグルがマントの裾と戯れていた。

(,,゚Д゚)「そうなのか!」

( ´∀`)「今確認したもなけど、リストに載ってる倒した敵の最大レベルが上がってたもな。
といっても1レベルもなけど、情報屋さんのリストに載っているレベルよりも大きいもなからね」

( ゚∋゚)「そうだったか」

(*゚ー゚)「でも、それほど強敵ではなかったですよね」

( ´∀`)「みんなが強くなったからそう感じただけもなよ」

(,,゚Д゚)「まだまだだぞゴルァ」

( ´∀`)「油断しないことは良いこともなけど、自分の今の強さを過不足なく判断するのも大事もなよ。
自分でするのが難しいなら、周りの意見を聞くのが大事もな」

(,,゚Д゚)「そうか。じゃあしぃ、おれの強さを教えてくれ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:50:45 ID:JCFDYpKw0<>
(*゚ー゚)「…………ダメ出しになっちゃうから帰ってからね」

(,,゚Д゚)「…………お手柔らかに頼むぞゴルァ」

張り詰めた中にも穏やかな空気を纏って採取を続ける二人。

モナーは周囲の警戒に戻り、クックルがその横に立った。

( ゚∋゚)「モナー。このあとなんだが……」

( ´∀`)「今日はこれくらいで一度ホームに戻るのを提案するもな」

( ゚∋゚)「?まだ午後も早いし、このレベルならもう一つくらいクエストを」

( ´∀`)「今さっきクーからメッセージが届いたもな。
ショボン達がクリスタル無効及びモンスターポップの罠にかかったと思われるもな」

( ゚∋゚)「なんだと!」

あくまでも穏やかなモナー。
しかしその内容に思わず声を荒げたクックル。
しぃとギコも採取を終了していたため後ろに立っており、その会話を聞いていた。

(*゚ー゚)「も、モナーさん」

(,,゚Д゚)「どういう事だゴルァ!」

( ´∀`)「どうもこうもそのままもなよ。
さっき情報屋のアルゴさんからクーに連絡が入ったそうもな。
それによればショボン達が進んでいる予定のルートに詳細不明のトラップがある可能性があるらしいもな。
クーがショボンにメッセージを送ったけど届いた形跡もなく、
位置情報もロスとしているそうもな。
モナも確認してみたもなけど、同じく位置を確認できなかったもな」

(,,゚Д゚)「す、すぐに」

( ゚∋゚)「ああ。ホームへ戻ろう」

(*゚ー゚)「え?行かないんですか」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:52:49 ID:JCFDYpKw0<>
( ´∀`)「今モナ達が行っても、何の役にも立たないもなよ。
罠が発動したと思われる場所にたどり着くときにはすべてが終わってるもな。
もしくは、モナ達も罠にかかって……。終わりかもしれないもなね」

表情を強張らせたギコとしぃ。
しぃの顔色は青ざめている。

対してモナーとクックルは落ち着いており、クックルはさすがにいつもよりも厳しい表情をしているが、
モナーはあくまでも穏やかだった。

しかしその言葉は辛辣であり、ギコとしぃに自分の無力さを確認させたものだった。

(*゚ー゚)「で、でも…」

( ゚∋゚)「いつでも動けるようにホームで待機するのが一番だ。
ギコ、ブーンの店の手伝いをした時に道具屋の倉庫のマスター設定を貰っているだろ?」

(,,゚Д゚)「!あ、ああ。貰ってるぞゴルァ」

( ゚∋゚)「しぃ、ツンとショボンの」

(*゚ー゚)「はい!貰ってます!お店の食材庫と衣服の倉庫ですよね。
ふささんのお店の方も大丈夫です。
あと、兄者さんと弟者さんに武器・防具庫のマスターも。ギコ君は」

(,,゚Д゚)「!モララーの店も手伝った時に倉庫使ったぞゴルァ!」

( ゚∋゚)「ギコには牧場と農場のマスターも使えるようにしてある。
二人がいれば、ギルドの倉庫の中の物は全部出し入れ自由だ。
これは重要な役目だからな」

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

( ´∀`)「それじゃあ戻るもな」

腰に付けた革のポーチから転移結晶を出すモナー。

それを見てギコとしぃも結晶を手にした。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:53:56 ID:JCFDYpKw0<>
( ゚∋゚)「よし、帰るぞ」

(*゚ー゚)「はい!」

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

クックル、ギコ、しぃの順に転移結晶を使ってその場から消えていく。

▼・ェ・▼「くぅん…」

( ´∀`)「心配もな?モナも心配もな」

不安げに自分の足にすり寄るビーグルを抱きかかえるモナー。
少しだけ強く抱きしめてしまいビーグルが体を震わせる。

( ´∀`)「あいつのこともあるもなから、何事も無ければ良いもなけど……。
でも、ショボン達なら大丈夫もな。ドクオとフサもそばにいるもなしね」

ビーグルのわきを両手で支えて空に掲げるモナー。

▼*・ェ・▼「きゃん!」

嬉しそうにビーグルが鳴く。

( ´∀`)「ビーグルもそう思うもなね!
よし!モナー達も帰るもな!」

クリスタルが壊れ、モナー達も自分たちのホームのある街へと飛んだ。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:55:59 ID:JCFDYpKw0<>
-護衛班-


戦闘が一時間を超えた頃、やっと終わりが見え始めた。

(´・ω・`)「よし、残りゴブ5!蜂7!ゴレ4!ブーンと僕は蜂に専念するよ!他は継続で!」

( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)( ・∀・)
      「了解!」
('A`)(´<_` )

ゴーレムや木々の後ろに隠れながら攻撃を始めた蜂に対してはショボンとブーンが担当し、
それ以外の向ってくる敵を他のメンバーで抑える。

その流れは今までと同じで、兄者と弟者が大技で敵のヒットポイントを削りつつ動きを封じ、
ドクオとツンが速攻をかけての撃破が基本の形だった。
モララーもそのラインから外れてやってくる敵に対応していた。

七人の顔には疲れが浮かんでいるが、それでも見えた終わりを感じて精一杯の戦闘を行っていた。

そして十数分後。

('A`)「ラスト!」

数が少なくなり、周囲の空間が空いて動きの良くなった敵に苦戦したものの、
最後のゴブリンの胴体をドクオの片手剣が切り裂いた。
そして耳障りな叫び声を上げながらポリゴンへと変わると、ブザーが鳴る。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 22:57:16 ID:JCFDYpKw0<>
(´・ω・`)「……トラップクリア……かな」

周囲に敵がいなくなってもそれぞれに武器を構えていたメンバー達。

しかし空が元の青空に戻り、ショボンの呟きを聞いて構えを解いた。

(;^ω^)「終わったのかお」

ξ;゚听)ξ「空も元に戻ったしね」

(´<_`;)「流石に疲れたな」

(;´_ゝ`)「流石なおれたちも流石にな」

('A`;)「…まだそんなことを言う余裕があるじゃねぇか」

一番先に飛び出して蜂を倒し続けていた剣を杖の様にしながらブーンが膝をつき、
そこにツンが駆け寄る。

そこに集まる様に動き出すメンバー達。
満身創痍でヒットポイントも全員イエロー、それももうすぐレッドになろうとする位置まで減っていた。
前の五人が動き出したのを見てから、同じように回復ポーションを口にしたショボンも歩き始める。



その背中に、剣技によって赤く光り輝いた剣が振り下ろされた。








第十一話 終





第十二話 錯走 に続く




.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/30(日) 22:59:34 ID:uYVAmDJE0<>乙
すげー躍動感だった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/30(日) 23:01:18 ID:.g19utrE0<>ですよねー!続きが気になる終わり方しやがって!乙!!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/30(日) 23:04:00 ID:L0P50wvs0<>キタ━(゚∀゚)━!

支援です<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/03/30(日) 23:06:02 ID:JCFDYpKw0<>以上、本日の投下終了です。

少し短くなりましたが、何とか三月中に投下となりました。


いつも乙とか応援とか、本当にありがとうございます。

次回は今回の連続話を一区切りさせる話になる予定です。

4月中にできればと思っておりますが、10日にSAOの新刊がでるのでもしかすると少し遅れるかもです。

それではまたよろしくお願いします。


ではではまた。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/30(日) 23:30:24 ID:l29AfXfg0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/03/30(日) 23:32:04 ID:wvcegoNw0<>乙
ドクオの側にずっといるハイン可愛い

つまりドクオ爆散しろ<> 名も無きAAのようです<><>2014/03/30(日) 23:40:07 ID:AT0bVYlU0<>ナーブギア<> 名も無きAAのようです<><>2014/03/31(月) 23:58:22 ID:StcC1//M0<>おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/02(水) 02:24:01 ID:bnY/CM2oO<>ω・)乙。モララーのイラつきはマタンキにたいしてだったのかな…。あるいは?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/03(木) 23:47:31 ID:ittrhoQI0<>ショボンを切りつけたのはマタンキなんじゃなかろうかと予測している<> 名も無きAAのようです<><>2014/04/04(金) 14:54:25 ID:f2Vv0wM60<>ショボンかわすよな?な?<> 名も無きAAのようです<><>2014/04/05(土) 04:50:43 ID:4ID4C/VQ0<>4人が注視してる前でハイド出来るって相当じゃないですか?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/05(土) 12:10:55 ID:RZvxGCe20<>コンビメーション<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/05(土) 12:32:37 ID:b.0oGh8I0<>あれ…モララー…最後…
まさかな…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/06(日) 18:07:56 ID:de3/CFxA0<>武器とは限らないじゃないか
武器の形した光るハリセンかもしれないだろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/06(日) 18:34:29 ID:Yrz5yTdo0<>そんなセガの某オンゲじゃないんだから...<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/06(日) 19:11:35 ID:SjFbRNU.0<>光るハリセン(最強武器)の可能性<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/08(火) 23:19:15 ID:TGScZ78kO<>ω・)今までずっとほのぼのした感じだったから、今回は初めて窮地にたたされた緊張感がよかった。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/04/12(土) 13:51:54 ID:7bBg6g/QO<>今日初めて読んだけど原作より好きだ
作者応援してるから<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/02(金) 23:20:31 ID:7/vvUsCQ0<>続きはまだですか?
楽しみにしてますね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/04(日) 11:20:47 ID:cxCroq9I0<>楽しみに待ってる
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1528.gif

まとめTOP絵をちょっとトレス<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/04(日) 11:58:13 ID:fIMHQmOI0<>こいつ…動くぞ!?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/07(水) 07:46:00 ID:7yZ4oo2w0<>やるじゃない…<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:02:57 ID:TgzbIDL20<>ぶ、ブーンが動いとる……。


ありがとうございます!!<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:08:10 ID:TgzbIDL20<>それでは、第十二話の投下を始めたいと思います。

よろしくお願いします。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:10:08 ID:TgzbIDL20<>



第十二話 錯走





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:12:09 ID:TgzbIDL20<>
1.作戦(夕方)




澄んだ金属音が周囲に響く。

その音に振り返ったドクオ、ブーン、兄者、弟者、ツンは、
即座に腰のポーチから取り出したヒールクリスタルでヒットポイントを全快させた。
そして武器を構えて走り出そうとするが、
ただ一人悠然と自分達を見ているショボン笑顔を見て、動きを止めた。

いつでも動けるように、武器は構えたままで。

(´・ω・`)「ありがとう、モララー」

( ・∀・)「少しは防御しろよ」

自分のすぐそば斜め後方ににいるであろうモララーに、振り向かずに言葉をかけるショボン。

すでにモララーのHPは全快している。
今ショボンを背後から攻撃しようとした者がトラップ解除後から
ショボンしか見ていないことに気付いていた彼は、
密かにクリスタルを使用していたのだ。

(´・ω・`)「今回の作戦では、モララーに命を預けてたからね」

(;・∀・)「まったく……。で?これが答か?」

(´・ω・`)「さあ。どうだろ。まだ振り向いてないし」

( ・∀・)「おまえは…」

ショボンを狙って後ろから振り下ろされた剣。

赤く鈍く光る剣技によって振り下ろされた剣を止めたのは、モララーの爪だった。

( ・∀・)「まったく。横にいたおれが気付いていなかったらどうするつもりだったんだよ」

(´・ω・`)「だから、今回は命を預けてたからさ。
それに、確信してたよ?モララーなら守ってくれるって」

(;・∀・)「はぁ…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:13:29 ID:TgzbIDL20<>
モララーの爪も青く輝いている。

爪に止められてからずっと、剣を振り下ろした者は力を込めて剣を押し力任せに攻撃を続けているが、
モララーの爪を押し込んでショボンにダメージを与えることが出来ないでいる。
それどころかモララーは笑顔を見せていた。
更に言えば力任せに剣を振り下ろそうとしている者を小馬鹿にしたような顔で見ていた。

( ・∀・)「ソードスキルはタイミングとどれだけシステムの流れに力を乗せることが出来るかだ。
ただ闇雲に力を加えたところでそれは攻撃力をアップさせることは出来ない。
そしてそれを続けたところでソードスキルを続けることには限度があるし……」

剣を振り下ろした者がそれに気付いたのと、モララーがにやりと笑ったのはほぼ同時だった。

剣が光を失う瞬間に力を込める方向を変え、爪との反発力を使って後方に飛び退いた男。
そしてそれよりも早く剣技を続けるモララー。
とは言ってもモララーの使った剣技も単発重攻撃の一つであり、爪による追撃は出来ない。

つまり本来ならばお互いに剣技の終了による硬直を起こすところなのだが、
モララーは追撃を行った。

(#・∀・)「はっ!」

普段のモララーには似つかわしくない、力の籠った低い掛け声から放たれたのは、左手の拳。

剣の使い手が驚きで息をのむ。

それはそうだろう。
これは知る人ぞ知る剣技の連携。
爪の剣技から流れるように繋がって放たれた体術スキルの技。

反応の遅れた剣の側面に、青く光る左の拳が当たる。

鈍い激突音の後、砕け散る剣。

その音を聞いてようやく振り返るショボン。

呆然としながらも更に後方に飛び退いた者を見て口を開いたが、
それは喋るためではなく驚きのためだった。

(´・ω・`)「?…あなたが?」

意識せずに漏らしたショボンの言葉を聞き、その者は悲しそうに顔をゆがめながら呟いた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:14:16 ID:TgzbIDL20<>




(-_-)「…死んでください。ショボンさん」





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:15:36 ID:TgzbIDL20<>
軽く二度指を振ると新しい片手剣がヒッキーの左手に現れる。

(´・ω・`)「……クイックチェンジ……」

ヒッキーの行った操作を冷静に観察しながらも、
取り出したクリスタルで自分のヒットポイントを全回復させるショボン。

そしてその間にヒッキーは剣を右手に持ち替え、ショボンに切っ先を向けた。

(;ФωФ)「ヒッキー!止めるのである!」

(・∀ ・;)「ヒッキーさん!いきなりどうしたんっすか!」

その光景を驚きと共に見守ってしまっていた二人が声をかける。
しゃがんでいたロマネスクを後ろから支えるように抑えているマタンキ。
二人とも動揺しているように見えるが、特にロマネスクは酷く狼狽えているように見える。

(-_-)「…死んでください」

二人の言葉を無視して突撃するヒッキー。

その瞬間速度はモララーの予測を超え、進路を防ぐことも出来なかった。

(;・∀・)「ショボン!」

再びショボンに向かって振り下ろされる剣。
今度は剣技を発動していないが、攻撃力は相当なものだろう。

('A`)「ま、今度はおれが守るわけだけど」

鳴り響く金属音。

いつの間にか傍に寄っていたドクオが振り上げた片手剣が、振り下ろされたヒッキーの片手剣を弾いた。

(;´・ω・`)「ドクオ!」

('A`)「おれにも良いかっこさせろよ」

剣を弾かれて体勢を崩したヒッキーに追撃をするドクオ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:17:31 ID:TgzbIDL20<>
川を流れる木の葉の様な軌跡を描きながら剣を振る。
動きの先を予測しにくいその剣を、体勢を整えながら弾くヒッキー。
そしてその力を使って後ろに飛び、構えを整える。

('A`)「!」

ドクオはヒッキーのその一連の動作に驚きつつも、更に前に出た。

(;-_-)「邪魔をしないで!」

('A`)「殺しをしたいならおれでもいいだろ」

(-_-)「それじゃあ……」

ヒッキーの片手剣がドクオを攻撃する。
それらすべてを受け流すドクオ。

('A`)「そんな攻撃じゃおれは倒せないぞ」

(;-_-)「どいて…ください」

ヒッキーの攻撃は決して甘くはない。
それを受け流す実力をドクオが持ち合わせているだけで、
生半可な実力の持ち主では、既にその刃の餌食となっていることだろう。

(;-_-)「くっ…」

('A`)……

どこか辛そうに、けれど覚悟を感じさせる面持ちでドクオを見るヒッキー。

再びヒッキーの剣がドクオを襲う。
しかしそれはドクオを傷つける為というよりも、ドクオを退かすか横をすり抜けるための攻撃であった。

('A`)「悪いけど…」

ヒッキーの目的が分かっている以上、その動きを邪魔する為に何をすればいいのかは、簡単に分かる。
もちろんその行動を実際行えるかどうかは別の話なのだが、ドクオは一見軽々と行っていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:18:53 ID:TgzbIDL20<>
('A`)「おまえの思う通りにはさせないさ」

以前に観察した通り、ヒッキーは相当な実力者だったことを確信しつつ、ドクオは応戦する。

おそらくは自分と同等のレベル。
自分よりもレベルが高い可能性もある。

そんなことを考えながら、剣を交わす。

時折自分からも攻撃を仕掛けてはいるが、それはヒッキーを後退させる目的のためであり、
彼を傷付けるつもりは微塵も無い。

(-_-)「……」

ドクオと剣を交わすことにより、今のままでは目的を達することが出来ないと思ったのか、ヒッキーは呟いた。

(-_-)「恨まないでください」

ヒッキーの剣のスピードが上がる。

('A`;)「うをっ」

スピードだけでなく、一撃一撃の重さも別物のように重くなっていた。

('A`)「だけど!」

本当のところ、その急激な変化にドクオは驚いていた。
しかし表情には出さず、すぐにそれに対応してヒッキーの攻撃を捌いていく。

対人戦において、相手を傷付ける覚悟の有る無しは、その攻撃に顕著に現れる。
同等のレベルで使用武器も同じ、そして装備のレア度も同じな二人が戦えば、
その心の差が勝敗を分ける。

('A`)「ここを通すわけにはいかない!」

だが、ドクオはヒッキーの剣を抑えた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:20:05 ID:TgzbIDL20<>
それは自分の後ろにいる仲間を守りたいという思いと、
同等レベルの者達との真剣勝負という経験量の違い。
ドクオはその二つによって剣にこもる心の差を埋め、更に凌駕した。

(;-_-)「なんで…」

('A`)「悪いな」

VIPの中で行われる決闘形式の訓練は、対人戦闘という場においての訓練でもあった。
罰ゲームや雰囲気を柔らかくすることで訓練そのものは穏やかなものとしていても、
実際の決闘は至極真剣に相手を倒すために自分のすべてを出し切って戦っている。
それによってVIPのメンバーは、対人戦闘において数値に現れないスキルを鍛え、磨いていた。

ヒッキーが振り下ろした大振りの一撃を弾き返すドクオ。

大きな攻撃が弾かれればその分大きな反発が生まれる。

(;-_-)「くっ」

(;ФωФ)「やめるのである!ヒッキー!」

(・∀ ・;)「だめっすよ!ヒッキーさん!」

衝撃により、ドクオの剣から離れたヒッキー。
体勢を立て直しながら構えを取ろうとした瞬間、ヒッキーに向かって細剣、鎚、斧、爪が襲い掛かる。

しかしそれは空振りに終わった。

ξ#゚听)ξ「逃げないで戦いなさい!」

(´<_` )「おれ達もいるぞ」

( ´_ゝ`)「死ね」

( ・∀・)「素早いな」

意識していなかったはずの四人からの攻撃を避け、バックステップを踏んだヒッキー。

ショボン達ともロマネスク達とも距離を取り、両方を見ながら剣を構えている。

(;ФωФ)「ヒッキー!」

(;-_-)「ロマネスク……さん」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:21:36 ID:TgzbIDL20<>
(;ФωФ)「もう止めるのである!我は」

(・∀ ・;)「ロマネスクさん!!…ダメっすよ!ヒッキーさん!」

(;-_-)「くっ」

ヒッキーに近付こうとするロマネスクを止めるマタンキ。
ロマネスクの使う片手剣とマタンキの使う両手剣は近くの地面に突き刺してあり、
今の二人は丸腰である。

(´・ω・`)「二人とも、とりあえず武器を」

(;ФωФ)「そ、それは」

(・∀ ・;)「ヒッキーさん!俺らは丸腰っす!
ヒッキーさんはそんなことをする人じゃないって信じてるっす!
だから!!」

ロマネスクを後ろから支えながらヒッキーに言葉を投げかけるマタンキ。

(・∀ ・;)「ヒッキーさん!!」

(;-_-)「くっ…」

改めてショボン達に対して切先を向けるヒッキー。

ショボンを中心に、左に兄者とツン、右に弟者とモララーが立つ。

(-_-)「僕は…僕は………。殺さなきゃいけないんだ」

ヒッキーの剣が再び赤く光った。

(´・ω・`)!

( ・∀・)!

ξ゚听)ξ!

( ´_ゝ`)!

(´<_` )!

その時、青い風が吹き抜けた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:22:56 ID:TgzbIDL20<>













( ^ω^)「どーーーーおぉっっっん!!!」













.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:23:53 ID:TgzbIDL20<>
両手を広げたブーンが掛け声とともに真横から自分のふくよかな腹を使って体当たりをした。

ξ゚听)ξ「あのバカ」

五人の後ろから吹き抜けたブーンという名の風。
そしてその風の陰から躍り出る一人の男。

ドクオが、ブーンの体当たりによって転がった男の首元に、片手剣の切先を当てた。

('A`)「武器を離して大人しくするんだな」

転がった男はすぐに体勢を立て直していたが、自分に刃を向けた男に睨む。

しかしそれは一瞬のことで、すぐににやにやと笑顔を見せた。

そして視線をショボンに向ける。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:24:40 ID:TgzbIDL20<>


(・∀ ・)「いつから気が付いてたんっすか?」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:25:50 ID:TgzbIDL20<>
マタンキが右手に持っていたアイスピックのような武器を離し、
両手の掌を空に向け、おどけた様に笑った。

(´・ω・`)「違和感は、最初から」

(・∀ ・)「さぁっすがショボンさんっすね。ってぇことはぁ、全部計算っすかぁ?」

(;-_-)「ロマ!」

(;ФωФ)「ヒッキー!」

態勢を崩して倒れていたロマネスクだったが、その原因を作ったブーンと、
即座に駆け寄っていたツンによってマタンキとは離れた場所に移動していた。

そこに片手剣を放り出したヒッキーが駆け寄る。

(;-_-)「ロマ!大丈夫!!」

(;ФωФ)「ヒッキー!すまなかったのである!吾輩のためにあんなことを…」

(;_;)「よかった…」

ξ゚听)ξ「詳しいことは後で聞くけど、とりあえずそこにいなさい。
ブーン、身体は大丈夫?」

( ^ω^)「僕は大丈夫だお」

ξ゚听)ξ「それじゃあこいつら監視してて。私が戻ってくるまでもう動くんじゃないわよ」

( ^ω^)

ξ#゚听)ξ「返事!」

(;^ω^)「はいだお!」

ξ゚听)ξ「よろしい。動いたら後でどうなるか分かってるわよね」

(;^ω^)「……はいだお」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:26:57 ID:TgzbIDL20<>
ツンはブーンの二度目の返事を聞いてから、一目散に駆け出した。

その場に残ったのは三人。
震えているヒッキーを落ち着かせるように肩に手を乗せているロマネスク。
その横に、一歩退いた形で二人を観察する様に座るブーン。
そしてブーンの視線の延長線上には、ツンが駆け寄ったショボン達がいた。

(´・ω・`)「すべての物事が計算通りに進むのなら楽なんですけどね」

(・∀ ・)「まぁたまたぁ。味方はもちろん敵の行動すら駒の様に扱ってるくせにぃ」

(´・ω・`)「……人聞きの悪い」

(・∀ ・)「いやぁ。さすが鬼畜なショボンさんっすよね」

( ・∀・)「なんだこいつ」

(・∀ ・)「で、駒の皆さんはいつから気付いてたんっすかぁ」

ξ゚听)ξ

( ´_ゝ`)

(´<_` )

無言で武器を構えなおす三人。

('A`)「そこの三人、落ち着け」

(・∀ ・)「お!さぁすが筆頭駒のドクオさんっすねぇ。
どんな時も冷静でかぁっこいいぃっすよ」

('A`)「………ちょっと黙ってろ。クズ」

(・∀ ・)「ありゃ。筆頭駒さんまで怒っちゃいましたぁ?
すぅみまぁせぇ〜ん。だまっていいぃっすぅかぁ?ショボンさん」

(´・ω・`)「…完全に黙られても聞きたいことがあるから困るけど、
ちょっとは静かにはしてほしいかな」

(・∀ ・)「はぁ〜い。駒の皆さんもおしずかにぃどうぞぉ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:28:51 ID:TgzbIDL20<>
ξ゚听)ξ「……さっさと倒そう」

( ´_ゝ`)「同感だ」

一歩踏み出したツンと兄者の前にショボンの背中が立ちふさがった。

ξ゚听)ξ「ショボン」

( ´_ゝ`)「おまえ」

(´・ω・`)「乱戦状態にして逃げるつもりみたいだけど、逃がすつもりはないよ」

(・∀ ・)「ありゃぁ。ばれちゃってるっすね。ざぁんねん」

モララーと弟者が静かに動き、マタンキを囲む様に立つ。

(・∀ ・)「すげぇっすよショボンさぁん!よぉく訓練された駒っすね!」

本気で感心したような、けれどイラつく喋り方でショボンに語りかけるマタンキ。

それを受けてツンと兄者の武器が陽光にきらめくが、まだ襲い掛からなかった。

(・∀ ・)「……ホント、よく訓練された駒っすね」

誰にも聞こえないような小さな声で呟いたマタンキ。

ドクオが切先をマタンキの首元に当てたまま身体を動かし、足元にある武器を兄者に向けて蹴った。

('A`)「兄者、頼む」

( ´_ゝ`)「……ん」

武器を下し、マタンキを睨みながら転がってきた武器を手に取る兄者。

(´・ω・`)「どう?」

( ´_ゝ`)「ほどほどにレア物だな。怪物級ではないが……一撃刺殺属性も持ってる」

(´・ω・`)「なるほどね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:31:01 ID:TgzbIDL20<>
(・∀ ・)「うまぁくいくと思ったぁんすけどねぇ〜。稀代の戦術師様にはばれちゃったぁかぁ。
どおぉしてぇばれたぁのかなぁ」

(´・ω・`)「……」

(・∀ ・)「あれぇれぇえ。黙ってどぉしたんっすかぁ?」

(´・ω・`)「僕を殺すことが目的…ではないよね?誰でもいいから殺すことでもない。
目的は、何?」

(・∀ ・)「なぁんでしょぉ」

ξ#゚听)ξ「あーもうその喋り方やめなさい!イライラする!」

(#´_ゝ`)「斬るか」

(・∀ ・)「だぁめっすよぉ。たんきはそんきっていぃますしぃ」

(´<_` )「兄者、落ち着け」

( ・∀・)「ツンも。イライラしても隙を作るだけだ」

ξ#゚听)ξ「分かってるわよ!」

( ´_ゝ`)「弟者がそういうなら抑える」

(´<_` )「きも」

ξ゚听)ξ「きも」

( ・∀・)「きも」

('A`)「きも」

(´・ω・`)「きも」

(・∀ ・)「きも」

大金鎚を構えなおした兄者。
それを抑えるように、目の前にツンの細剣の切先が横から差し出される。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:32:01 ID:TgzbIDL20<>
ξ゚听)ξ「とりあえず冷静にはなった。礼は早めに言っておく。ありがと」

( ´_ゝ`)「え、あ、うん」

冷静になったツンの言葉で冷静さを取り戻す兄者。

そして言葉も目線も交わさず、ただマタンキを警戒しながら左右に分かれて移動する二人。

(・∀ ・)「ありゃりゃぁ」

マタンキと彼の首元に片手剣の切先を当てたドクオを中心に、武器を構えた五人が並んだ。

(´・ω・`)「さて、答えてもらおうか」

(・∀ ・)「きれぇいにぃ、囲まれちゃいましたぁかぁ」

ξ゚听)ξ「もう無駄よ。あんたのその言葉より、兄者の方がきもいから」

( ´_ゝ`)「え?そういうことだったの?」

(´<_` )「兄者ナイス」

('A`)「よくやった」

( ・∀・)「流石だ」

( ´_ゝ`)「……ものすごくうれしくない」

軽口は叩いているが、その視線と構えは厳しくマタンキを警戒している。

(・∀ ・)「もおぉぉぉ。みなさぁんれいせぇいなんでぇすぅねぇ」

(´・ω・`)「もう無駄だよ。そろそろ質問に答えてもらいたい」

(・∀ ・)「さきにぼぉくの質問にこぉたえてぇ、ほぉしいなぁ」

(´・ω・`)?

(・∀ ・)「どぉしてばぁれたぁんすぅっか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:33:01 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「……」

(・∀ ・)「見当はぁ。つぅいているっすぅけどね」

首元の剣を気にすることなく、ただショボンを見るマタンキ。
その表情は笑顔で嬉しそうですらあり、口調とあいまって全員の心に小さなささくれをつくる。

(・∀ ・)「モナーかクックル。っすよねぇ?いや、モナーだけかなぁ」

(´・ω・`)

表情を変えないショボンを見て、笑顔を見せ続けるマタンキ。
ほんの少しだけ、口の端が引きつった様に上に上がった。

(・∀ ・)「せぇいかぁいだぁ。
あ、ねぇねぇショボンさぁん、クックルはまだ喋ぇることがぁできないんすぅよねぇ。
ってぇことはぁ、あの時のぉことをぉ、まぁだぁ気にしてぇるっすねぇ。
狙いどぉおりだぁけどぉ、ほぉんとぉに愚かぁなやつだぁなぁ」

最後の言葉は全員の感情を爆発させた。
そしてそれをマタンキは見逃さない。

思わず片手剣を握る手に力を込めたドクオの顔を、マタンキは再び見る。
そして、その凶悪な笑顔を初めて正面から見て思わず息をのんでしまったドクオに向かって、
しゃがんでいたマタンキは立ち上がろうとした。

それは喉元に当てられた片手剣に自ら刺さろうとすらしている行為であり、
息をのみ警戒心に穴を作られたドクオは思わず剣をひいてしまう。

そしてマタンキの手は立ち上がる前から動いていた。
手首を二度振り、その手に両手剣を持つ。

それは簡単な操作でストレージから武器を取り出すスキル。
つい先ほどヒッキーが行ったと同じスキル『クイックチェンジ』によって、
瞬時にマタンキは両手剣を装備した。

そして、立ち上がりながら自分に対して武器を向けている四人を牽制する為に両手剣を振り回した。

(´・ω・`)「ドクオ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:34:02 ID:TgzbIDL20<>
周囲を囲んでいたメンバーはともかくドクオはすぐそばにいたため、両手剣の有効範囲に入っている。

('A`)「くっ」

バックステップで飛び退くが、ちょうどジャンプした上空、両手剣が横から襲い掛かった。

('A`)!!

辛うじて片手剣の側面で剣を受け止める。
しかし、うねる様な両手剣の軌道は、ドクオの右手を襲う。

ξ゚听)ξ「ドクオ!」

( ・∀・)「おい!」

勢いによって飛ばされるドクオ。
マタンキの頭上に浮かぶカーソルがオレンジに変わった。

( ´_ゝ`)「ふん!」

飛ばされたドクオの一番そばにいた兄者がその身体を盾にしてドクオの身体を止めた。

( ´_ゝ`)「大丈夫か」

('A`)「サンキュ」

短く会話した後に、手首から先が欠損してしまったため落ちていた剣を左手で持つドクオ。
兄者もドクオが自らの足でしっかりと立ったのを見て、その右側に鎚を構えて立つ。

だが時すでに遅く、マタンキは出口のそばに移動していた。

(・∀ ・)「………ちっ」

しかしその左目にはナイフが刺さっている。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:35:01 ID:TgzbIDL20<>
(・∀ ・)「さぁすがぁっすねぇ。ショボンさぁん」

どこか面白そうに、けれど憎悪に満ちた右目でショボンを見るマタンキ。
忌々しげにナイフを抜くと、左目は潰れていた。

(・∀ ・)「なぁんのぉ迷いもぉなく目を潰そぉうとぉしてくるぅなぁんてぇ。
かろぉうじておれの両手剣がその駒をぉ傷つけぇるのがぁ早かぁったすぅけどぉ、
当たるぅのがぁ一秒はやかぁったらぁそっちぃがオレンジっすぅよぉ。
両目ぇはぁ、潰さぁれたぁくないっすぅからぁ。とぉりあえずぅ、撤退させぇてぇもらいまぁすぅねぇ」

抜いたナイフを放り投げた先に転がるもう一本のナイフ。

ショボンはマタンキの両目を狙ってナイフを二本投げていたが、一本は防がれていた。

部位欠損して潰れた左目をかばいもせず、両手剣を構えてショボンを見るマタンキ。
ショボンは表情を変えず、ただ投擲用のナイフを構えている。
そのナイフは、麻痺毒の追加により黄色く彩られていた。

その異様な光景に、思わず見守ることしかできないメンバー達。

(・∀ ・)「でぇもぉ、きめたぁっすよぉ」

(´・ω・`)「……何を」

(・∀ ・)「あんたたぁちのぉ中で、ゆういぃつ人を殺す覚悟をもぉってるショボンさぁんをぉ、尊敬するぅってぇ」

(´・ω・`)「……」

(・∀ ・)「だぁからぁ。きめぇたぁっすよ」

(´・ω・`)「……黙ってろ」

思わず漏らしたショボンの呟き。

それを聞き、本当に嬉しそうに笑うマタンキ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:35:55 ID:TgzbIDL20<>



(・∀ ・)「あんたはおれがころすってね」




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:36:56 ID:TgzbIDL20<>
出口に向かって駆け出したマタンキ。

直前のマタンキの言葉に息をのんでいたメンバー達は出遅れてしまった。
しかしすぐに後を追おうとするが、ショボンに止められた。

(´・ω・`)「もう無理だよ」

(´<_` )「だが」

(´・ω・`)「追跡系のスキルもちで一番のドクオが出ていない以上、
出遅れた状態で後を追うことは不可能だよ」

ξ゚听)ξ「それはそうかもしれないけど…」

自然とショボンの周りに集まった五人。

(´・ω・`)「それよりも、とりあえずは湖に向かおう」

(;・∀・)「いやいや、さっさとクリスタルで帰ろうぜ」

(´・ω・`)「依頼は依頼。ここまで来たんだちゃんと完了させよう」

( ´_ゝ`)「まったくこいつは…」

('A`)「お前らしいって言うかなんと言うか」

五人に向かってショボンが微笑む。
諦めたように微笑みを返す五人。

それに頷きでこたえ、ショボンが歩き始めた。

(;ФωФ)「わ、吾輩達は…」

(;-_-)「す、すみませんでした」

(;ФωФ)「謝っても意味がないのは分かっておるが!けれど!」

(´・ω・`)「とりあえず、湖に行きましょう」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:37:49 ID:TgzbIDL20<>
(;ФωФ)「え?」

(;-_-)「え?」

(´・ω・`)「依頼は完了させます。詳しい話は、その後にお願いします」

それは穏やかだが、反論することを憚れる、有無を言わせない迫力をもっていた。

(;ФωФ)「…分かったのである。」

(;-_-)「は、はい…」

頷くロマネスクとヒッキー。
それを見てからショボンは各人に指示をだす。

まずはブーンをクリスタルで帰らせた。
まだ出来ると抵抗はしていたがはたから見ても疲れているのはよく分かったため、
最終的にはツンの恫喝によりクリスタルを使わせた。

そしてブーンの位置にはドクオが入る形で隊列を整える。
五人が戦闘時の担当を念の為打ち合わせをしている最中に、
ショボンは溜まっていたメッセージを読み、いくつか返事を送った。

その後出発する八人。

本来なら戦闘がある予定だったが何故かモンスターはポップせず、
ウインドウを開いたままのショボンは困ったように、けれどどこか嬉しそうに笑っていた。

辿り着いた湖は、広く、静かな湖面は少し傾きかけた陽光できらめいていた。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:39:00 ID:TgzbIDL20<>
2.帰還



ショボン達が全てを終わらせてホームのある40層に戻ると、
転移門前にはしぃとギコ、そしてジョルジュがいた。

転移門から出てくるショボン達を見てあからさまにホッとした顔をした三人。
その表情を隠そうともしていない三人を見て、全員の顔がほころぶ。

(*゚ー゚)「みなさん!」

(,,゚Д゚)「良かったぞゴルァ」

小走りに駆け寄ってきたしぃ。
ツンの前で何かを躊躇したように立ち止まるが、ツンはそんな彼女を笑いかけながら抱きしめた。

(*゚ー゚)「つ、ツンさん」

ξ゚听)ξ「なに、心配しちゃった?ありがとうね」

(*゚ー゚)「心配なんかしてませんけど、顔を見たら安心しました」

ξ゚听)ξ「またまた強がっちゃって」

(*゚ー゚)「もう、怒りますよ!」

笑いあう二人。
しぃの目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:39:47 ID:TgzbIDL20<>
(,,゚Д゚)「良かったぞゴルァ」

('A`)「なんだ。お前も心配してくれたのか」

(´<_` )「お前に心配されるとはなぁ」

(,,゚Д゚)「まだ二人には勝ててないからそれまでは生きててくれないと困るぞゴルァ」

( ´_ゝ`)「え?じゃぁおれは死んでもいいの?」

(,,゚Д゚)「本気の兄者にも勝ててないからダメだゴルァ」

真剣な目で三人を見るギコに、思わず顔を綻ばせる三人。

(,,゚Д゚)「なんだゴルァ」

(´<_` )「まあ、まだまだお前には負けはないさ」

( ´_ゝ`)「おれの本気を見せてやるよ」

('A`)「片手剣で負けるつもりはないけどな」

(,,゚Д゚)「……お手柔らかに頼むぞ」

ギコに呟きに笑う三人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:40:48 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「ジョルジュもお出迎え?」
 _
( ゚∀゚)「メッセージで無事なのは分かってたけど…」

(´・ω・`)「ありがと。心配してくれて」
 _
( ゚∀゚)「べ、別にそこまで心配なんかしてないんだからね」

( ・∀・)「きも」

(´・ω・`)「きも」
 _
( ゚∀゚)「……」

( ><)「嘘なんです!すごく心配していたんです!」

ジョルジュの冗談に真顔のツッコミをしたモララーとショボン。
するとおもわず黙ってしまったジョルジュの後ろから、ビロードが叫んだ。

(´・ω・`)?

( ><)「ジョルジュさんもクーさんもすっごく心配していたんです!」

(*‘ω‘ *)「ちょ、ビロ、静かにするっぽ」

( <●><●>)「ビロードはうるさいですが、言っていることは間違っていないのはワカッテマス」
 _
(;゚∀゚)「ちょ、おまえら出てくるな」

(´・ω・`)「今日の戦闘訓練の皆さんですよね。ビロードさん、ぽっぽさん、ワカッテマスさん。
皆さんにも迷惑をかけてしまったようですね。申し訳ありません。
もし今日の訓練に問題があったら…」

( ><)「そんなのは無いんです!ジョルジュさんもクーさんもすごくよくしてくれたんです!」

(´・ω・`)「そうですか。それは良かった」

後方に居たビロードが駆け寄ってジョルジュの隣に立ち、ぽっぽとワカッテマスが並んでその後ろに立った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:41:48 ID:TgzbIDL20<>
( ><)「でも!わけがわかんないんです!」

(´・ω・`)「え?」

( ><)「だからここで一緒に待ってたんです!教えてほしいんです!」

(´・ω・`)「えっと…。なにを?」

( ><)「だから分けが分かんないんです!それをです!」

(;´・ω・`)「…え?」

小さな体で肩を震わせるビロード、それは怒っているようにすら見える。

( ・∀・)「おいジョルジュ。なんだこいつ」
 _
( ゚∀゚)「…なんて言って良いのやら。
訓練中にお前らがトラップに引っかかったかもしれないって情報が入って、
こいつらも心配してくれたってだけだと思ってたんだけど」

ショボンに詰め寄り始めたビロードを見て、こそこそと話しはじめる二人。

( ・∀・)「それだけじゃないだろ。これ」
 _
( ゚∀゚)「いや、なんかごちゃごちゃ言っていたけど、まさかここまでとは。
メッセージを貰った時まだ一緒にいたから無事だってことを説明したら、
一緒に出迎えたいとしか言ってなかったし」

( <●><●>)「ビロードは興奮してしまっているので、私が質問します」

鼻息の荒いビロードの肩にワカッテマスが手を置き、そのまま横に立つ。

( <●><●>)「トラップに引っかかったそうで、お疲れ様でした。ご無事で何よりです」

(´・ω・`)「ああ、いえ、ご丁寧にどうもありがとうございます」

( ・∀・)「(ホントはトラップの後の方が大変だったけど、それはメッセージ入れてないからな。
ま、入れてたとしても部外者のこいつらには漏らさないか)」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:44:09 ID:TgzbIDL20<>
( <●><●>)「トラップに引っかかったかもしれないという情報をクーさんが手にされた時、
私達はすぐそばに居ました」

(´・ω・`)「それはお騒がせしてしまい申し訳ありません」

( <●><●>)「私達はすぐに援護に行かれてはいかがですかと言いました。
しかし、クーさんとジョルジュさんは行かれず、私達の訓練を続行してくださいました」

(´・ω・`)「はあ」

( <●><●>)「何故ですか?」

(´・ω・`)「…え?」

( <●><●>)「何故ですかとお聞きしています」

(;´・ω・`)「え、いや、その…え?」

(*‘ω‘ *)「助けに向かわない理由を、信じているからだって言ってたっぽ!
心配だけど、信じてるから行かないって言ってたっぽ!
それに今は私達を訓練するからって言ってたっぽ!」

(´・ω・`)「ああ、なるほど。そういう事ですか」

(*‘ω‘ *)「わかんないっぽ。なんで助けに行かなかったっぽ」

いつの間にかショボンと三人を囲む様に面々が集まっている。
そして四人がする会話を面白そうに聞いていた。
さらにその外側、周囲には野次馬もいる。
狩り帰りやこれから夕方の戦闘に向かうプレイヤーがほとんどだが、
公園ということもあってデート中のようなカップルもいる。

(´・ω・`)「分かる必要は、ありません。
皆さんはVIPのメンバーではないのですから」

(*‘ω‘ *)!

( <●><●>)!

( ><)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:45:11 ID:TgzbIDL20<>
にこやかに切り捨てたショボンの言葉に、息をのむ三人。
周囲のメンバーは全員が全員眉間に皺を寄せた。

(´・ω・`)「と、いうのは少し冷たい言い方ですが、事実です。
ぼくたちの絆を冷たいと思うのなら、皆さんはそうではないギルドに入ったり、
あるいは仲間を作ればいいことですから。
僕達のギルドは互いの技量と経験を信じ、理解し、
そこから自分がすべき最善の一手を考えることを、良しとしています。
そして今回二人が取った行動は、最善の一手だったと思います」

( ><)「……」

(*‘ω‘ *)「……」

( <●><●>)「……で、ですが」

(´・ω・`)「失礼ですが、皆さん今日の戦闘でレベルは上がりましたか?」

( <●><●>)「は、はい。三人とも一つずつ」

(´・ω・`)「先に組んだ今日の予定通りの結果です。
各々の弱点の改善と、良い点の強化は進みましたか?」

( <●><●>)「それは、明日からの課題です」

(´・ω・`)「今日のクーとジョルジュがすべきことは、
皆さんが一日でも長く生きるための手助けでした」

(*‘ω‘ *)!

( ><)!

( <●><●>)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:46:15 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「僕達もまだまだ弱いです。けれど、皆さんは僕らよりも弱い。
例え低層階に居ても、これから先どんなイベントが発生してしまうか分からない。
その階にふさわしくない強敵と出くわさないという保証は全くありません。
今日は、そのもしもの時を乗り越える力を手に入れる手助けをするのが二人のすべきことでした。
……二人が訓練を中断して僕らのところに駆け付けたとします。
その間に、皆さんがそんな強敵と出会ってしまうことが絶対にないとは言い切れません。
今日という機会を大事にした行動を、二人を取ったんです」

(*‘ω‘ *)「……やっぱり分からないっぽ」

(´・ω・`)「……」

(*‘ω‘ *)「私達は、ただの依頼者だっぽ。
仲間でもなければ、友達でもない。ただの依頼者だっぽ」

( ><)「ぽっぽちゃん…」

(*‘ω‘ *)「そんな私達の『もしも』を備えるために、大事な仲間のピンチに駆けつけないなんて…」

(´・ω・`)「そうですね。ただの依頼者です。
先ほど言ったように、ぼくらギルドの事を分かってもらう必要もない、
言ってみれば、ただの通りすがりのプレイヤーです。
でも、ぼくらは、このゲームをプレイする仲間でもあります」

(*‘ω‘ *)!

( ><)!

( <●><●>)!

(´・ω・`)「このデスゲームに囚われた。仲間でもあると思っています。
……他人で、通りすがりだけど、仲間。
これがぼくの、そしてギルドVIPに所属するみんなの気持ちです」

(*‘ω‘ *)「……」

( ><)「……」

( <●><●>)「……」

ショボンの言葉を神妙な面持ちで聞く三人。
そしてVIPのメンバー達。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:47:18 ID:TgzbIDL20<>
(;*゚ー゚)「……」

(;,,゚Д゚)「……なぁ……しぃ…」

(;*゚ー゚)「き、きかないで……」

(;,,゚Д゚)「ゴルァ……」

(;*゚ー゚)「(そんなこと考えたことなかった)」

そんな中動揺を隠せない二人。
と一人。
 _
(;゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「おまえ……」
 _
(;゚∀゚)「え、あ、いや知ってたぞ。うん。知ってた知ってた知ってたし」

(´・ω・`)「分かっていただく必要はありません。
でも、そういう気持ちでいるものも少なくないと、ぼくは思っています。
そして、ぼく達ギルド『V.I.P.』は、その精神を持って依頼にあたっています」

数名の動揺を気にせずに話し続けるショボン。
そしてその言葉を聞いて、三人は戸惑いながらも頷いた。

( <●><●>)「……分かったつもりですが、実は分かっていないのは分かってます」

(;><)「結局わかってないんです!」

( <●><●>)「ならば、ビロードは分かったというのですか?」

(;><)「そ、それは……よくは分かんないんです。で、でも…」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽたちは、自分たちのことで精一杯っぽ。
でも、経験を積んで、レベルを上げれば、少しは出来ることが増えて、
周囲に目を配ることが出来るようになるかもしれないっぽ。
…VIPの皆さんは、きっとそれが出来ているんだっぽ」

ぽっぽの言葉に頷く二人、そして改めて三人でショボンを見る。

( ><)「今日は、ありがとうございましたなんです!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:48:10 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「それは、ジョルジュとクーに言ってあげてください」

(*‘ω‘ *)「もう一杯言ったっぽ」

( <●><●>)「だから、そんなお二人の仲間である皆さんにも言いたくなりました」

( <●><●>)
( ><)    「「「ありがとうございました!」」」
(*‘ω‘ *)

横に並び、ギルドメンバー全員に頭を下げる三人。

(´・ω・`)「お役にたてて良かったです」

( <●><●>)
( ><)    「「「またすぐ宜しくお願いします!」」」
(*‘ω‘ *)

(´・ω・`)「それはまた依頼の申請をしてください。
ちょっと詰まってるので少々遅くなると思いますけど」

( <●><●>)「ダメでしたか」

(*‘ω‘ *)「結構ケチっぽね」

( ><)「わわっ!二人ともダメなんです!」
 _
( ゚∀゚)「終わった後クーに次のお願いした時に、同じことを言われてたよな」

ジョルジュの呟きにバツの悪そうな顔をする三人。
沸き起こる笑いを聞きながら、野次馬達も四散していった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:49:17 ID:TgzbIDL20<>
3.会議(VIP)




ギルドVIPホームの会議室。
白い壁の大きな部屋に、ギルドの面々がいつもの場所に座っていた。

簡単な食事をとりつつ教育班と調査班の報告を終わらせる。
ショボンはずっとウインドウを開き、それぞれの情報をまとめていた。
最初クーやツンは食事中のその姿を行儀が悪いと眉をひそめていたが、今は誰も何も言わない。
調査班の持ち帰ったデータとアイテムは精査の必要があるものではあったがそれは後回しにし、
教育班と調査班の六人は勿論のこと護衛班と哨戒班の五人もショボンの報告を始めさせた。

ショボンはそれに答え、簡潔に、けれど大事な点は漏らさないで報告を進めていく。

この後詳細な報告書はショボンがまとめて全員に配られるのは分かっていたが、
何が起きたのか、各々の目には何が見えていたのか、それを聞き漏らすまいと全員が真剣だった。

そして話は、ヒッキーがショボンを狙い、その後その黒幕がマタンキであったことにまで及んだ。

( ´∀`)「……」

( ゚∋゚)「………」

ショボンは全員の顔を見まわしながら話していたが、
モナーとクックルが表情を変えなかったことに安心しつつ違和感を覚えた。

(´・ω・`)「マタンキが逃げた後は、ロマネスクさんとヒッキーさんを湖までお連れして、
そこで二人から色々と…あの時の状況とか何が起きたのかは聞いたけど…。
一応明日また執務室に来てもらってさらに細かい話を聞く予定だから、そこら辺はまた明日。
……これで、起きたことは全てかな。
僕が彼を怪しいと思っていた理由とかは幾つかの要因が重なっているから後にするとして。
みんな、起きたことに関して何か漏れはあるかな?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:50:40 ID:TgzbIDL20<>
モララーを筆頭に、護衛班と哨戒班だったメンバーの顔を見るショボン。
誰もが首を横に振ったりOKのサインを出したため、補足は無いと判断した。

(´・ω・`)「じゃあ細かい話に入っていくけど…。
まずはツン、ブーンの具合はどうだった?大人しく寝てた?」

ξ゚听)ξ「帰った時は眠ってた。
会議前に食事届けたら起きてこっちに来るって言ったけど、顔色悪かったから殴って寝かしといた」

( ・∀・)「(それってツンに殴られたから顔色悪くなったんじゃ)」

(´<_` )「(そうだな。逆だろうな)」

( ´_ゝ`)「(ブーン…生きていてくれよ)」

ξ゚听)ξ「なに、そこの三人、なんか文句あるの?」

( ・∀・)「いえ、」
(´<_` )「なにも」
( ´_ゝ`)「ありません」

(´・ω・`)「じゃあ大丈夫だね。詳細な報告書を書く前にブーンにも話を聞くとして…」

川 ゚ -゚)「ロマネスクさんとヒッキーは、何と言っていたんだ?マタンキの事を」

(´・ω・`)「うん。今日聞いた限りだけど、『知らなかった』の一点張りだったよ」

川 ゚ -゚)「…そんなばかな」
 _
( ゚∀゚)「クーはロマのおっさんたちが嘘をついてるって言うのかよ」

川 ゚ -゚)「嘘をついていないと思う方が不自然だと思うが?」
 _
(#゚∀゚)「二人はそんなことで嘘をつけるような奴じゃねぇよ」

川 ゚ -゚)「友人だからといって、見誤るな。お前はこのギルドの一員で、
その言動によって全員の命が危うくなる可能性があることを覚えておくんだな」
 _
(#゚∀゚)「ギルド内以外に信じられる奴を作っちゃだめなのかよ!」

川#゚ -゚)「信じるか信じないかを冷静に判断しろと言っているんだ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:51:51 ID:TgzbIDL20<>
( ´Д`)「二人ともやめるもな!」

言い争いを始めたクーとジョルジュ。
ジョルジュが感情的であるのは誰の目にも明らかではあったがその気持ちも分かるため、
口を挟めないでいた。

しかしそこにモナーが割って入った。

( ´Д`)「やめるもな。ギルドの中で言い争いとかしたらダメもな…」

悲しそうに呟くモナー。

( ´Д`)「ダメもな。…お互いの意見を言い合うのは良いもな。
でも喧嘩したり、言い争いしたり、お互いに感情的になっちゃダメもな。
ほんのちょっとしたことで関係が終わってしまったりしてしまうもなよ…」

( ゚∋゚)「…モナー」

(*゚ー゚)「モナーさん」

川 ゚ -゚)「そう…だな。モナー。すまなかった。ジョルジュ、すまなかった。お前の友人を」
 _
( ゚∀゚)「いや、おれの方こそすまん。おれだって、分かってるんだ。
一緒にいて、ギルドにいたのなら、分からないはずないって。
何かしらの違和感とか、あったはずだって。でも……」

( ゚∋゚)「マタンキは、良いやつだった。
少なくとも、おれとモナーと……彼と、パーティーを組んでいた頃は」

調査班と教育班のメンバーが驚いたようにクックルを見る。
それ以外のメンバーはマタンキが最後にクックルについて喋った内容により、
うすうすとは感づいていたためそれほど驚きはしなかった。

( ゚∋゚)「あの後……。変わってしまったのかもしれない」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:52:52 ID:TgzbIDL20<>
全員が、クックルの言う『あの後』というのが、クックルとモナーの元パーティーで死者が出たこと。
二人、マタンキも入れれば三人の目の前で死んだことだと分かっていた。
そしてその原因の一つを自分が作ってしまったとクックルが悔やんでいることを知っているため、
何も言えなくなる。

しかしマタンキのクックルに対しての言葉を聞いた何人かはちらっとショボンを見たが、
ショボンは黙って視線とほんの少しの動作だけで何も言わないよう指示をだした。

(´・ω・`)「とにかく」

意識して響く声を出したショボン。
全員が彼を見る。

(´・ω・`)「その点に関しては明日、もう少し突っ込んで二人に聞いてみるので、
報告はまた明日の夜にでもするよ。で、しぃ、明日は悪いけど…」

(*゚ー゚)「40層のバーボンハウスですね。分かりました。昼夜ともはいります」

(´・ω・`)「ごめんね。疲れたら設定だけしてNPCのスタッフに任せて良いからさ」

(*゚ー゚)「いえ、大丈夫です。任せておいてください」

ξ゚听)ξ「あら、やる気十分じゃない」

川 ゚ -゚)「良いことだ。私が楽になる」

(´・ω・`)「クーは明日の聞き取りの時に同席を頼むよ」

川 ゚ -゚)「えー」

(´・ω・`)「サブマスなんだから。これは絶対です」

川 ゚ -゚)「はーい。……だから早くモナーをサブマスにしろと…」

( ´∀`)「モナーはやらないもなよ」

(*゚ー゚)「あ、あの…」

(´・ω・`)「どうした?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:54:06 ID:TgzbIDL20<>
いつものように脱線し始めた会話を、しぃがおずおずと手を上げることによって引き締めた。

(*゚―゚)「いくつかわからないことがあったので、良いですか?」

(´・ω・`)「なに?」

(*゚ー゚)「ショボンさんは最初からマタンキさんを疑っていたみたいですけど、何故わかったんですか?」

(´・ω・`)「それは説明するのは難しいな。
経験としか言いようがないところもあるけど、結局は言葉の節々や行動を観察した結果…なのかな」

(*゚ー゚)「経験と観察」

(´・ω・`)「うん。特に彼は自分が強いことを隠しにしているようにも感じたから。
今日は両手剣を使っていたけれど、もしかしたらメイン武器は違うかもしれない。
実際今日使っていた剣技は500くらいの物ばかりだったしね。
ただ何となく……もっと戦闘はこなしているような気がした。動きの端々からね」

(*゚ー゚)「そうなんですか…」

(,,゚Д゚)「ブーンはなんでマタンキがロマネスクに刺突武器を突き付けてるって分かったんだゴルァ
そっちからは見えてなかったんだろ?」

('A`)「ああ、それね」

ξ゚听)ξ「そういえばそうね。まあ大体予想はつくけど」

(´<_` )「いまここにいないあいつが裏にいたんだろ?」

('A`)「ま、そういうこった」

( ´_ゝ`)「まったく。俺らにも教えてくれればいいのに」

(´・ω・`)「あの瞬間、あれに関して動けるのはドクオとブーンだけだったからね。
僕にすらその件に関してあの時にはメッセージは来てないよ」

( ・∀・)「マジか!あいつがねー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:55:07 ID:TgzbIDL20<>
('A`)「しぃが入ってくれて作れた時間を、料理と刀スキル以外を高めることに充ててたからな。
どのスキルを鍛えるかいろいろ相談もされたし。今では幾つかのスキルではおれに匹敵するよ」

(*゚ー゚)「え?」

(,,゚Д゚)「そ、そうなのかゴルァ」

(´・ω・`)「そうだね。まずはあの時の哨戒班の動きについて説明しようか。
ドクオ、抜けてたら補足を頼むよ」

('A`)「わかった」

(´・ω・`)「哨戒班は、今回は基本的に先行して道を進んでもらって、
モンスターを減らしてもらっていたのは分かってるよね」

頷くしぃ。
ギコは頷かず目が少し泳いでいたが、気にせずに話を進めた。

(´・ω・`)「メンバーはドクオとふさ、そしてNSからデミタスとハイン、そしてトソンに来てもらった。
順調に進んでいたんだけど、マタンキに対して不信感を覚えたのでドクオにこちらに来てもらったんだ」

(,,゚Д゚)「だけど哨戒班の攻撃の要はドクオじゃないのかゴルァ」

(´・ω・`)「そう。だからそうなると哨戒班が手薄になる。
そこでぼくは、手配しておいた保険を発動させた」

(*゚ー゚)「保険?」

(´・ω・`)「ギルドNSの残りメンバーと助っ人に、逆方向から湖に到着しておいてもらったんだ」

(*゚ー゚)「は!?」

(,,゚Д゚)「ふぇ!?」

にこやかに話すショボンと驚きの声を上げる二人。
ジョルジュとクックルも少し驚いた顔をしたが、二人ほどではなかった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:56:08 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「で、ドクオは自分が抜ける代わりに逆方向から来てもらえるように連絡をした。
ドクオは自分の隠蔽スキルを最大限に利用して逆方向から僕たちのいるエリアに到着。
護衛班の誰にも気付かれない様に合流していた」

('A`)「昨日のうちにそんな準備をしてあるってショボンから教えてもらった時はびっくりした」

(*゚ー゚)「な、なんでそんなことを」

(´・ω・`)「言ったよ?保険だって。何があるか分からないからね。手は打っておいた方が良い」

(*゚ー゚)「私達にも言ってくれれば」

(´・ω・`)「保険は使わなければ使わないでそれで良いからね」

('A`)「こいつの秘密主義は今に始まったことじゃない」

川 ゚ -゚)「だな」

ξ゚听)ξ「そうね」

(´<_` )「だが、作戦に関しては言っておいてくれてもいいんじゃないか?」

(´・ω・`)「それは謝るよ。ごめんなさい。
ただ、保険を知っていると余裕が生まれてしまう可能性があるからね。
保険だって万能じゃないから、まずは自分達の力で乗り越えたかったんだ」

(´<_` )「……そうだな。
最初から知っていたら、『あいつらを呼べ!』って叫んでただろうからな。
……兄者が」

( ´_ゝ`)「え?そこでおれ?」

( ・∀・)「言うな。確実に」

ξ゚听)ξ「言うわね」

川 ゚ -゚)「言う」

(*゚ー゚)「…ですね」

( ´_ゝ`)「え?しぃちゃんまで?」

思わず漏れる微笑み。
緊迫とした空気は変わらないのだが、ほんの少しだけ穏やかな空気がつつむ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:57:23 ID:TgzbIDL20<>
( ´∀`)

( ゚∋゚)

それはモナーとクックルも柔らかく包み、
マタンキの事によって表情が硬かった二人にほんの少しだが笑みが戻った。

(´・ω・`)「その後のドクオの動きはさっき説明した通りだね。
トラップが発動したので解除のために姿を現した。
トラップ解除はモララーにお願いしてもよかったけど…」

( ・∀・)「俺のスキルレベルじゃ一発解除は難しかっただろ。どうだ?ドクオ」

('A`)「おれのレベルでギリギリだったからな」

( ・∀・)「じゃあダメだ」

ξ゚听)ξ「結構ポップ数多かったから、解除が遅れたら危険だったわね」

( ´_ゝ`)「おまえらゴーレムの相手しやしないし」

('A`)「兄者と弟者が戦った方が早いだろ。
そのかわりゴブリンと蜂はおれ達で倒したし」

ξ゚听)ξ「ゴーレムも結構頑張って削ったわよ」

( ´_ゝ`)「むーーーー」

(´<_` )「はい、兄者の負け」

今度は笑いが広がる。
緊張感も大事だが、その時でも笑顔を見せることが出来るのは素晴らし事だ。
そんなことを考えながら、ショボンは続けた。

(´・ω・`)「ここから先はトソンからもらった報告書によるけど、説明するね」

再び部屋に広がる緊張感。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:58:22 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「ドクオが離れた後、残りの四人は先のエリアに進んだ。
で、ほぼ同タイミングでシャキン達六人が合流。
この件に関してはトソン達にも話していなかったから合流したことに驚いたみたいね。
報告書の口調がきつかったよ。
そして全員でエリアのモンスターを倒した後、ふさと助っ人の三人、合計四人はドクオの後を追った」

(*゚ー゚)「どうしてですか?そんな指示をいつ?」

(´・ω・`)「僕は出してないよ」

(;*゚ー゚)「え?じゃあなんで」

('A`)「ショボンからのメール『シャキンくる』と書いてあったから、
このあとシャキン達と合流できるのは分かってた。
だからおれが離脱する時にふさには言っておいたんだ。『後を頼む』って」

(;*゚ー゚)「?」

(,,゚Д゚)「どういう事だゴルァ」

('A`)「だから、そっちが大丈夫になったら後を追ってくれって意味で、
『(そっちが大丈夫になったらおれの)あと(を追ってくれ)、頼んだ』って言った」

(*゚ー゚)「はい?」

(,,゚Д゚)「へ?」

('A`)「ん?」

(;*゚ー゚)「え、いや、ちょ、え?何を言っているんですか?」

(,,゚Д゚)「何言ってるのか分からないとかいうレベルの話じゃないぞゴルァ」

('A`)「え?ギコがバカなのは良いとして、しぃまでどうした?」

(#,,゚Д゚)「ゴルァ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 13:59:34 ID:TgzbIDL20<>
(;*゚ー゚)「い、いや普通分からないですって」

('A`)「ふさはちゃんと分かったぞ?」

(;*゚ー゚)「分かる方がおかしいんです!」

('A`)「エエエエエエエェェェェエ」

そのあとドクオの「いやだから、『あと』っていうのは『うしろ』って意味であって」といった声や、
しぃの「普通分かりません!フサさんが来たのだって奇跡ですよ!」という会話が続いたが、
もちろん結果は出ずにおわった。
最後まで不思議そうな顔をしているドクオとだんだん言葉がきつくなるしぃを見て、
周囲のメンバーは困惑と笑いを重ねた。

(*゚ー゚)「とにかく、指示はもっとちゃんとしてください」

('A`)「はーい」

(´・ω・`)「続き、良いかな?」

(;*゚ー゚)「あ、はい。お願いします」

(´・ω・`)「それで、合流したNSの皆はそのままエリアをキープ。
こちらからの連絡を待ちつつポップしてくるモンスターの排除をしてくれてた。
こちらに向かったふさと助っ人は、ぼく達がトラップに囚われたエリアの隣で待機。
あのタイプのトラップ発動中は別空間に切り離されてるから、入ってこられないからね。
前にギコが戦ったフラグの立て方によって途中参加もできるイベントボスと違って」

(,,゚Д゚)「…」

(*゚ー゚)「…」

それは二人がVIPに入るきっかけとなったクエストボスとの戦いのこと。
あの時のことを思い出し、表情を引き締めた二人。

(´・ω・`)「そして、ぼく達がトラップを解除したのを確認したふさ達は中に入り、
隠蔽スキルを使って自分達の身体を隠しつつ、状況を観察しながら前後の通路に分かれて待機。
別方向からマタンキとロマネスクさんを見て状況を判断。
ブーンとドクオにそのことをメッセージで連絡…ってところかな」

('A`)「モララーがあいつの剣を砕く前には来てたな。
『マタンキが刺突武器でロマネスクを刺そうとしてる』ってな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:00:45 ID:TgzbIDL20<>
ドクオが補足説明をすると、ショボンは話すのを止めて全員を見回した。

全員が…と言うわけではないがほとんどのメンバーは納得したようだった。

ξ゚听)ξ「で、ふさは今どこに行ってるのよ…ってまあ、聞く必要もないけど」

ツンが少し呆れたように聞くと、ショボンは笑顔を見せた。

(´・ω・`)「もちろんマタンキを追跡してもらってるよ。助っ人さん達と一緒にね」

そこで大きくため息をついたのは四人。

( ・∀・)「それで追わなくてよかったわけか」

(´<_` )「おかしいと思ったんだ。いくらドクオが追えなかったとはいえ、全く追わないなんて」

( ´_ゝ`)「考えてみれば、いくら部位欠損していたとはいえ、
ドクオが走り出さなかった時点でおかしかったんだな」

ξ゚听)ξ「……ブーンノヤツワタシニハチョットオシエテクレテモヨカッタノニ」

('A`;)「ツン、ブーンを怒らないでやってくれよ」

ξ゚听)ξ「あら。何か聞こえた?しないわよ。そんなこと」

('A`;)「そ、それなら良いんだけどよ」

ξ゚听)ξ「あとで怒るのは自分の限界レベルの動きを何度も繰り返したことに対してよ」

('A`)「あ、やっぱり怒るには怒るんだ」

ξ゚听)ξ「まったく…一回頭痛が来たらちゃんと治まるまでその動きはするなって、
口が酸っぱくなるくらい言ってるのにあいつはほんとに…。
でもそうね。怒ってるうちにいろいろ思い出しちゃうかも」

ドクオを見ながら、そこにブーンがいるかのように怒りをあらわにしたツン。
それを見た全員が「ブーン頑張れ」と思った。

(*゚ー゚)「そ、そういえば、その助っ人さんって誰なんですか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:02:26 ID:TgzbIDL20<>
全員が身震いしたのを感じ、しぃが話を変えるように慌てて喋る。

(´・ω・`)「ん?助っ人?ああ。しぃもギコも知ってるやつらだよ」

(*゚ー゚)「え?私達が知ってる人なんですか?」

(,,゚Д゚)「?」

(´・ω・`)「そうだね…。
明後日、NSの皆も集めて食事会をしようと思うんだけど、みんなの予定はどうかな?」

突然話を変えたショボンに戸惑うしぃだったが、他のメンバーは普通に回答していった。

('A`)「おれは大丈夫だ」
 _
( ゚∀゚)「おれも」

ξ゚听)ξ「昼に依頼品を渡す予定があるけど、夕方からなら大丈夫よ。ブーンにも後で聞いとく」

川 ゚ -゚)「薬の製作があるが、まあ大丈夫だろう。
あーでもそうだった。忘れてた忘れてた。すまんショボン。
それに使うアイテムとか採取しに行かなきゃいけないから、明日の同席は無理だな」

( ゚∋゚)「あれ?この前農園から持って行った量じゃ足りないのか?
あれならまだ持って行ってくれて大丈夫だぞ。
ショボン、おれも大丈夫だ。来られる」

川 ゚ -゚)「…ちっ。あ、どうせなら明日はモナーもいっしょ」

( ´∀`)「モナーも明後日なら大丈夫もな。
明日じゃなくてよかったもな。明日は何匹か出産の予定があるから忙しいもな。
ほんとう、明日じゃなくてよかったもな。クー、何か用もな?」

川 ゚ -゚)「……なんでもない」

( ・∀・)「おれも大丈夫だ。
ただデレちゃんに品物渡すのが12時前だから、そのあとデートすることになったら…」

ξ゚听)ξ「あら、モララー。あんたもデレに納品なの。
私も12時半にショボンの店で待ち合わせして、ご飯食べながら品物渡す予定なのよ。
良かったらくる?おごらせてあげるわよ」

( ・∀・)「…………いい。自分の店で一人で食う」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:03:38 ID:TgzbIDL20<>
(´<_` )「こっちも大丈夫だな。依頼されてる防具は全部出来ているし」

( ´_ゝ`)「ああ、特に予定はない」

(´<_` )「……この前言ってた依頼された鎌、出来たのか?」

( ´_ゝ`)「…………依頼?」

(´<_` )「よしわかった。帰ったら依頼書のチェックするからな」

( ´_ゝ`)「えーーーーー」

(´<_` )「『えー』じゃない!ギコ、すまんが明日朝店に来てくれ。素材集めに行くかもしれん」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ!おれも明日明後日は予定無いから一緒に出られるなら大歓迎だゴルァ」

(*゚ー゚)「わたしも特に予定はないので…」

(´・ω・`)「じゃあみんな大丈夫だね。みんな。
その時に助っ人の彼らも呼ぶから、改めてちゃんと紹介するよ。

(*゚ー゚)「あ、はい」

異議を言わせぬ流れに思わず頷くしぃ。
他のメンバーもそれぞれに了解の仕草を取る。
といってもしぃとギコ以外は大体察しがついているようで、
更にショボンがしぃとギコに教えない理由もなんとなく分かっているのか呆れたようにショボンを見た。

(´・ω・`)「さて、それじゃあ今日は終わりかな。誰か他に何かある?」

その視線に気付いているのかいないのか、にこやかに全員の顔を見るショボン。

(´・ω・`)「うん。じゃあ終わりだね。
今日は本当、みんなお疲れ様でした。ゆっくり休んでください。
明日以降のことは、明日朝にメッセージを入れるので、担当の人は宜しく」

立ち上がり、お辞儀をするショボン。
そして体を起こすと同時に一回柏手を打った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:05:27 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「では解散!お疲れ様でした」
 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)( ´_ゝ`)
( ´∀`)( ゚∋゚)( ・∀・)
(,,゚Д゚)(*゚―゚)
  「お疲れ様でした!」
  ('A`)(´<_` )

それぞれに席を立ち、部屋出ていく。

そして部屋に残ったのはショボンとモララーだった。

( ・∀・)「ショボン、このあとちょっと良いか?」

(´・ω・`)「僕は大丈夫だけど、モララーは疲れてないの?」

( ・∀・)「疲れてないわけじゃないけど、ちょっと確認しておきたいことがある」

(´・ω・`)「わかった。じゃあ執務室で良いかな」

( ・∀・)「おう」

モララーを先に外に出し、部屋の電気を消すショボン。
普段なら隣の部屋で一回のんびりするところだが、さすがに今日は全員自室に戻ったようだ。

ショボンの部屋でもある執務室に向かうショボンとモララー。

フサギコからのメッセージでマタンキを見失った事をショボンが知ったのは、数分後だった。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:08:34 ID:TgzbIDL20<>
4.五人



(;ФωФ)「ほんとうに、本当にすまなかったのである」

(;-_-)「すみませんでした!すみませんでした!」

(´・ω・`)「…そういうのは、本当にもう良いですから」

ギルドの執務室。開いた扉の前で何度も何度もお辞儀をするロマネスクとヒッキー。
動こうとしない二人をクーがホームの外まで送ってから執務室に戻ると、
執務机に突っ伏してぶつぶつ呟いているショボンと、机の周りにそれを見て笑っている三人の仲間がいた。

(´・ω・`)「なんなのあれいったい…」

川 ゚ -゚)「お疲れショボン。お疲れみんな」

ξ゚听)ξ「クーこそお疲れ様。なんか酷かったみたいね」

川 ゚ -゚)「ああ。基本的には知らぬ存ぜぬの繰り返しだった」

(´・ω・`)「酷いとかいう問題じゃないよホントに…」

('A`)「結局マタンキに対する情報は対して得られなかったんだろ?」

川 ゚ -゚)「ああ。彼らも釣り好きのソロプレイヤーくらいの認識だったようだな」

(´・ω・`)「大体それだけでギルドに入れちゃうこと自体おかしんだよ」

川 ゚ -゚)「ショボン、ぐちぐちうるさい」

(´・ω・`)「だってさ」

( ^ω^)「こういうショボンを見るのも久しぶりだおね」

垂れた眉をさらに垂らしているショボンと、楽しそうなブーン。
クーは呆れたように肩をすくませ、ツンとドクオはそんな三人を見て笑顔だ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:10:10 ID:TgzbIDL20<>
ξ゚听)ξ「ショボンはもうちょっと気を抜けばいいのよ」

( ^ω^)「そうだお。ギルドは皆で作るものだお」

(´・ω・`)「じゃあギルド管理の…」

ξ゚听)ξ「無理」

( ^ω^)「無理だお」

(´・ω・`)「むーーー」

川 ゚ -゚)「だから早くモナーをサブマスの役職に」

(´・ω・`)「クーももっと事務仕事をしてくれてもいいんだよ」

川 ゚ -゚)「嫌だ」

('A`)「またこりゃはっきりと断るな」

川 ゚ -゚)「ドクオでも良いぞ?」

('A`)「おれにできるかよ、そんな仕事。戦闘してた方が気楽だ」

(´・ω・`)「ぼくもドクオにはやらせたくないな」

('A`)「…ヒトニイワレルトカナシイヨネ」

ドクオを抜く四人の笑顔。
ひとしきり笑った後、ショボンが起き上がって大きく伸びをした。

(´・ω・`)「ギルドを作った時点で事務仕事はやるつもりだったから、良いけどさ。
戦闘指揮はクーとクックルが出来るようになってきたし、
あとはモナー、モララー、兄者、弟者とかが出来るようになってくれるとありがたいかな」

ξ゚听)ξ「兄者…」

川 ゚ -゚)「兄者…」

('A`)「兄者…ねぇ」

(´・ω・`)「そう言うけど、結構いけると思うんだけどな。兄者」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:12:31 ID:TgzbIDL20<>
('A`)「それはそれとして、今回の件はどう決着するんだ?」

(´・ω・`)「…とりあえずは、特になにも。
一応アルゴさんにお礼の連絡をして、ANGLERに関して情報収集も依頼したけど、
今のところは低層階の釣り好きで結成したサークルのようなギルドって事しか分からなかったし」

ξ゚听)ξ「追加で調査は依頼したんでしょ?」

(´・ω・`)「一応ね。何か出てくるのかどうか…それは分からないけど」

('A`)「マタンキの事も」

(´・ω・`)「もちろん」

( ^ω^)「今回の依頼に関してはどうなったんだお?」

(´・ω・`)「釣りはしなかったけど湖まではお連れしたから、完了は完了。
ただ正直ギルドとしてのお付き合いは遠慮したかったから、
現時点で支払えることの出来るコルを貰って当初の魚による支払いは遠慮したかったんだけど…」

川 ゚ -゚)「押し切られた」

ξ゚听)ξ「あら」

('A`)「おや」

( ^ω^)「おっお。珍しいおね。ショボンがそういう駆け引きで負けるの」

(´・ω・`)「あれは駆け引きとかそういったレベルの物じゃないよ」

川 ゚ -゚)「99パーセント泣き落としだな。二人して土下座して、『罪滅ぼしを!』って叫んでた」

ξ゚听)ξ「あらら」

('A`)「ハハハ」

(;^ω^)「おっおっお」

(´・ω・`)「押し通して断ることもやれたけど、そうしたら店の入り口で土下座してそうな勢いだったから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:13:33 ID:TgzbIDL20<>
川 ゚ -゚)「というか、するって言っていたな。さっきの残り1パーセントは脅しだと私は判断した」

あからさまに肩を落としたショボン。
今度は笑うことが出来ず、四人は引きつった笑顔を見せながら互いの顔を見た。

(´・ω・`)「ただ納品は週二回にしてもらった。最初は毎日のように来るって言い張ってたけど…」

川 ゚ -゚)「来たら受け取らない、契約も完全破棄、以後すべての依頼も受け付けない。
それで何とか週二回でOKさせたよ」

(´・ω・`)「……一回でも連続で来たら、その瞬間にそうしてやれるのに…」

( ^ω^)「ショボンが黒いお」

ξ゚听)ξ「ジョルジュと一緒にご飯食べに来てついでに置いていくとかしそうよね」

(´・ω・`)!

川 ゚ -゚)!

('A`)「珍しいな。ツンが思いつくことを二人が思いつかないなんて」

ξ#゚听)ξ「…それはどういう意味かしら。ドクオさん」

('A`;)「いえ、ツンさん。特に他意はございません」

川 ゚ -゚)「確かにしそうだな」

(´・ω・`)「…ジョルジュに言っておかないと……」

( ^ω^)「フサの店の方にもだお」

(´・ω・`)「だね」

大きくため息をつくショボンとクー。

ξ゚听)ξ「まあそれに関しては良いとして、
マタンキと釣りギルドの関係に関してはどう決着をつけたのよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:14:41 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「釣りギルドってこれまた直接的な。ANGLERね。名前。
……信じるしかないよ。マタンキの行動とANGLERは無関係だって。
ギルマスもそう言い張り、情報も出てこないからね」

( ^ω^)「……だおね」

(´・ω・`)「だから、とりあえずは今言ったことをまとめて全員に報告することにした」

ξ゚听)ξ「………ふうん」

(´・ω・`)「納得できない?」

ξ゚听)ξ「あんただってしてないでしょ?」

(´・ω・`)「まあね」

( ^ω^)「…マタンキの言っていたあのセリフが、問題だおね」

('A`)「まるでマタンキが仕組んだような言い様だったな。クックルが声をなくした仲間の死が」

川 ゚ -゚)「だが、出来るのか?そんなことが」

ξ゚听)ξ「前にモナーから聞いた話だと、そんな風には思えなかったけど」

(´・ω・`)「でも、モナーはなんとなくマタンキの事を怪しんでいたみたいだよ」

('A`)「ああ、そうだな」

ξ゚听)ξ「そういえば…良いわけ?それ、他の皆に説明しなくて」

(´・ω・`)「『モナーがマタンキの事を怪しんでいた』って事実が、
クックルの心を更に傷付けないとは言えないからね。
それに気付けなかった自分を、また責めてしまうかもしれない」

川 ゚ -゚)「また、声を出せなくなるかもしれない」

('A`)「それで済めばいいがな」

( ^ω^)「変なことを…いうなお…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:16:13 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「モナーと相談して、折を見て話すつもりだけどね。
喋ることが出来なくなった頃のクックルと今のクックルは、違うと思うし。
クックル以外のメンバーには、個別にちゃんと話しておくよ」

ξ゚听)ξ「マタンキねぇ…。ただのお調子者に見えたのに」

川 ゚ -゚)「戦闘能力だけじゃなく、他のスキルも鍛えてあったんだろ?」

('A`)「ふさ達が見失ったってことは、そうだろうな」

(´・ω・`)「うん。転移結晶も使いまくったみたいだね。
なんとか三回までは追えたみたいだけど」

( ^ω^)「三回も追えたのかお?」

(´・ω・`)「うん。三人には聴覚系のスキルも鍛えておいてもらったから、
クリスタルで飛ぶ際の指定を聞いて、なんとか。
それに、マタンキはあの時点でカーソルは既にオレンジだった。
オレンジプレーヤーがクリスタルで飛べるのは圏外村だけだからね。
それほど多くないから、少し聞き取れれはあたりをつけることは可能だよ。
でも飛んだ先で待ち伏せされたりするかもしれないから、すぐに追って跳べないのが懸念点だったけど」

('A`)「圏外村ってことは、そこですぐ戦闘になることもあるからな」

(´・ω・`)「そういうこと。
最初からうちのギルドやぼくを殺すことを狙っていたとしたら、
ふさの顔は知られている可能性が高い。
だからふさが先頭を切って飛ぶのは止めてもらったんだ。
残り三人のローテーションで三回は即座に跳べたけど、
四回目はちょっと時間をおいたら見失ってしまったって報告されたよ。
それ自体は賢明な判断なんだけど、残念は残念……だね」

('A`)「命あっての物種……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:17:10 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「うん。分かってるよ。
今日は、一応三人にアライメント回復クエストのスタート地点を見て回ってもらってる。
でもとてもじゃないけど全部の監視は出来ないから、見付けるのはまあ無理だろうね。
確認させてもらったけど、ロマネスクさんとヒッキーさんのフレンドリストからも消えてた。
これは確認させてもらったよ」

川 ゚ -゚)「ふさは戻ってきたんだよな」

(´・ω・`)「昨日のうちにね。今日は店に出てるよ。
こっちの店をしぃに任せちゃったから、頑張って開けてる」

('A`)「なあショボン、そろそろあの子に店に出てもらえないのか?」

(´・ω・`)「ん?あの子?ああ、ヘリカルちゃんの事?
彼女はもともとブーンのサポートが出来るようにと思って低層での道具屋をしてもらってるから、
料理スキルはそれほど上がってないんだよね。
そっちは普段の食事や道具屋の隅に置くパンを作るくらいでしかレベル上げてないだろうし。
意識して上げてるって話は前にしてたけど、店を一人で任せるのは当分無理かな。
それに、たとえ任せられるレベルだとしても、今は呼べないよ」

ξ゚听)ξ「あら。どうしてよ」

(´・ω・`)「今回の件、最初からぼく単体が狙われたのか、このギルドが狙われたのか分からないからね。
ただ、どう考えても計画的だから、たまたま狙ったとかじゃない。
そんな危険な状態の時に入れるのはね。当分は今まで通り陰から支援だよ」

ξ゚听)ξ「女の子が増えるのは楽しいのにな」

川 ゚ -゚)「だが、兄者もいるからな。そっちも注意が必要だ」

('A`)「確かに。ヘリカルちゃん可愛いからな」

( ^ω^)「……もう一人注意する人物が…」

('A`;)「ち、違うぞ!そういう意味で言ったんじゃないからな」

( ^ω^)「おっおっお。冗談だお」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:18:10 ID:TgzbIDL20<>
('A`)「やめろよまったく」

ξ゚听)ξ「ドクオだと冗談だと思われないから」

('A`;)「だからそういう事を言うとだな、いらぬ誤解をだな」

川 ゚ -゚)「お兄さんの方はどうなんだ?」

(´・ω・`)「ぃょぅ君ね。彼は順調。
週一で現状報告を貰ってるけど、隠密系のスキルはふさ以上、ドクオに近いよ」

ξ゚听)ξ「すごいじゃない」

(´・ω・`)「その分戦闘系スキルは少しおろそかだから、そろそろそちらも鍛えるメニューを増やす予定」

川 ゚ -゚)「私は会ったことないんだよな。二人とも」

ξ゚听)ξ「あら、そうなの?」

川 ゚ -゚)「ヘリカルちゃんの売っている薬は私が作った物だが、ブーン経由でしか卸してないからな。
一度お手紙を貰ったが、礼儀正しくて良い子だった。早く会いたいものだ。
ブーンは二人には会っているのか?」

( ^ω^)「ヘリカルちゃんには時々会うけど、ぃょぅ君には会ってないお。
ショボン、ぃょぅ君もまだギルドに入れないのかお?」

(´・ω・`)「実はさ、本当はそろそろ良いかなと思ってたんだ。
でも、さっきも言ったけど、今回みたいなことが起きるとね。
ぼく達よりも幼い二人に無用な危険を与えてしまうのはさ」

川 ゚ -゚)「しょうがないか」

('A`)「…そうだな」

(´・ω・`)「もともとギルドとして二人と会うメンバーは限定してあるしね。
ふさだけじゃないかな。二人と会ってるのは」

( ^ω^)「あの二人と最初に仲良くなったのはふさだおね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:19:46 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「うん。だからさ。
ギルドがそれなりに注目されちゃってるから一応って感じで陰からサポートにしてたけど、
今回はそれが幸いしたよ。
本気の悪意の持ち主なら、集団の弱いところを狙うだろうからね」

立ち上がるショボン。

(´・ω・`)「さて、ぼくは報告書を仕上げてから店に顔を出すけど、みんなはどうする?」

そう言いながら机の上の書類をまとめ、自分の周りにいる仲間達を見る。

( ^ω^)「店に戻るお」

ξ゚听)ξ「私は服の製作ね。来週までの納期物があるから、今のうちに片付けちゃうつもり」

川 ゚ -゚)「私も薬の製作をしないと。
ブーン、量は昨日聞いた分で変更なしで良いんだな?」

( ^ω^)「大丈夫だお」

('A`)「おれはギコとジョルを誘って狩りだな。
兄者たちの素材集めに行ってたら、手伝いに合流すればいいし」

(´・ω・`)「じゃあまた夕飯の時にだね」

( ^ω^)「よろしくだお」

ξ゚听)ξ「そうだ、ブーン。最近あんた食べすぎじゃない?」

( ^ω^)「そんなことないお。でもショボンとふさの料理が美味しすぎて、
知らず知らずのうちにいっぱい食べてるかもしれないけど」

('A`)「うそだな。太らないと思って暴飲暴食してるだろ」

(;^ω^)「突然なにをいっているんですか、ドクオさん」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:20:45 ID:TgzbIDL20<>
ξ#゚听)ξ「…ブーン?」

(;^ω^)「ツンさんもそんな険しい顔をしちゃダメですお」

('A`)「イイキミダーリアジュウメ」

(;^ω^)「ドクオ!」

('A`)「さっきのお返しだ、ばかめ」

ξ#゚听)ξ「で、ほんとのところはどうな訳?あんたダイエットするって言ったわよね。
その腹!あご!首回り!」

(;^ω^)「あ、アインクラッドでは体型変わらないお」

ξ#゚听)ξ「心構えを言ってるのよ!スピードでなくなるわよ!」

(;^ω^)「それは大丈夫だと思うお」

ξ#゚听)ξ「分からないでしょ!よし、今日から食べる量のチェックするからね!」

(;^ω^)「そんな…。あ!注文のお客さんがいたんだったお!
ツン、その話はまた今度だお!じゃ、ショボン、また夜に!」

ξ#゚听)ξ「こら!待ちなさいブーン!」

ショボンに手を振って慌てて部屋を出るブーンとそれを追うツン。
残った三人は、呆れたように、けれど楽しそうに顔を見合わせて笑った。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:30:13 ID:TgzbIDL20<>
5.夜会



ギルドVIP、NS、そして助っ人三人が集まったその夜は、壮観だった。

15+6+3=24

総勢二十四人。
(正確には二十三人+ビーグルだが、システム的にカウントされない場合以外は
ショボンは人数に入れているため、椅子もちゃんと用意している)

流石にいつもたむろしている会議室の隣の部屋では狭い為、
誰もがバーボンハウスを休業してそこで行うと思っていた。

しかし、

(´・ω・`)「………店は休みたくないなぁ。嫌な予感もするし」

というショボンの一言で、午前中手の空いている数名で、会議室の模様替えを行った。

とは言ってもほとんどはクリック出し入れできるのだから力仕事などは無い。
簡単なクリックで会議用の机と椅子を片付けた後白い壁を淡いベージュに変え、
床をふかふかの絨毯に変える。
その上にギルド所有で保管してあったソファーやクッション、そしてローテーブルを置き、
更に部屋の隅に観葉植物を置いて完成した。


そのはずだった。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:31:15 ID:TgzbIDL20<>
ξ゚听)ξ「ホントあんたたちセンスないわね」


ツンが現れたのは模様替えが完成した数時間後。
宴会の二時間前。

ξ゚听)ξ「はい、さっさと替えるわよ」

ツンの指示と言う名の怒声が響く会議室。

開始予定時刻の20分前に出来上がった部屋は確かにすばらしかった。
気持ちが落ち着き、ゆったりと出来るような柔らかい雰囲気が部屋を包んでいる。
それでいて人の動きも意識してあり、気持ちよく食事と会話を楽しめそうだ。

部屋を見て満足そうに頷くツンを見てその感性を素晴らしいと感心しつつも、
それならもっと早く来てくれよと思わずにはいられないメンバーだった。

(´・ω・`)「一昨日はお疲れ様でした!そしてありがとう!
今日は楽しもう!乾杯!!!」

 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)
( ´_ゝ`)( ´∀`)( ゚∋゚)
ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)
(`・ω・´)(´・_ゝ・`)( ゚д゚ )<_プー゚)フ
( ^Д^)( ´―`)|  ^o^ |
 「「「かんぱーい!」」」
 ('A`)从 ゚∀从
 (´<_` )(゚、゚トソン

▼*・ェ・▼「きゃん!」

ほぼ全員が「ハインぶれないな…」と思うなかの乾杯。
そしてそれぞれに会話を始めた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:32:17 ID:TgzbIDL20<>
(,,゚Д゚)「驚いたぞゴルァ」

m9(^Д^)プギャー

(,,゚Д゚)「ムカつくからそれ止めろゴラァ」

( ^Д^)「はっはっは」

ギコとしぃがプギャー達三人に近寄ってグラスをそれぞれにグラスを当てる。

(*゚ー゚)「でも本当に驚きましたよ。助っ人って言うから…」

( ´ー`)「ショボンとドクオの指導の下、ずっとこっそり訓練してたーよ」

|  ^o^ |「最初はショボンさんに怒られたバツだったのですが、今では感謝しています」

(*゚ー゚)「そうだったんですか。
…罰というのはその…やっぱりあの時個人情報をペラペラと喋ったアレ、ですか?」

( ´ー`)「そうだーよ」

(;*゚ー゚)「なんか、すみませんでした」

(,,゚Д゚)「でも三人はこのギルドってわけじゃないから別に従う必要はなかったんじゃないか?」

(*゚ー゚)「うん。そうだよね」

( ^Д^)「おまえら、本気で怒ったショボンに刃向う自信あるか?」

(,,゚Д゚)「…………ない」

(*゚ー゚)「…………ないです」

m9(^Д^)プギャー

(,,゚Д゚)「だから止めろそれ」

シャキン達と話しているショボンをちらっと見る五人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:33:23 ID:TgzbIDL20<>
( ´ー`)「でも、怒られたから従ったわけじゃないだーよ」

|  ^o^ |「ショボンさんは、本当に私達の事を心配してくださいました」

( ^Д^)「で、言われたんだよ。メニューを作るから鍛えてみますかってな」

(*゚ー゚)「そうだったんですか」

( ´ー`)「目標とするスキルバランスがちょっと悪い気がしたけど、やってるうちに真意も分かっただーよ」

(*゚ー゚)「真意?」

|  ^o^ |「私たち三人がやってきたことを活かしてくれたのです」

(,,゚Д゚)「やってきたこと?」

('A`)「三人はいろんなギルドやソロプレーヤーと共同でクエストや狩りをしているからな。
自分達だけで戦うことはもちろん、他の奴と一緒に戦う時に力となるスキル構成を組んだんだよ」

(*゚ー゚)「なるほど。そうだったんですか。ってドクオさん!」

(,,゚Д゚)「いきなり来るなゴルァ!」

しぃとギコの後ろから普通に会話に参加したドクオ。
五人は円になって話していたため残りの三人はドクオが違づいてきたことに気付いており、
驚いたしぃとギコを見て笑っている。

(;,,゚Д゚)「三人とも、気付いたなら教えろよゴルァ」

('A`)「お前ら驚きすぎ。人が折角解説に来てやったのに」

(;*゚ー゚)「びっくりした」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:34:28 ID:TgzbIDL20<>
('A`)「あ、そうだ。忘れないうちに渡しておく。
プギャー、始まったばかりで悪いけど、帰る時にはこれ使ってくれってさ」

プギャーの前に浮かぶトレードウインドウ。
そこには転移結晶が三つ入っていた。

( ^Д^)「ここに来る時も転移門から隠蔽使って周りに気付かれないようにやってきたけど、
帰る時も誰にも見られない様にってことか?」

('A`)「みたいだな。
今回起きた事の詳しい話は後でモララーとモナーから説明する手はずになってるらしいから、
詳細はそっちで理解してくれ。
ショボンが言うには、もし今回の件がうちのギルドやメンバーの誰かを狙った事であるのなら、
VIPと懇意にしていることは知られないほうが良いそうだ。
NSはもう無理だけど、おまえらはまだVIPと近いってことは広まってないだろ」

( ´ー`)「わかっただーよ」

(*゚ー゚)「ドクオさん、今も見張られている…ってことですか?」

顔を強張らせて呟くように小さな声でドクオに問いかけるしぃ。
震える身体を支えるように両手で自分の身体を抱きしめたその姿を見て、
まわりの四人が同じように顔を強張らせてドクオを見た。

('A`)「見られちゃいないだろ」

しかし、ドクオの返答は即答で簡潔で軽かった。

そしてその軽い物言いで、全員の緊張感が緩和される。

(*゚ー゚)「え?でも」

('A`)「あいつがよくやる、『念には念を』だろ。
言われて、ここ二時間くらい周囲もよく観察してたけど、いなかったし。
もちろん周辺の建物でも買われて、おれらが確認できないところから見張られたらアウトだけど」

(,,゚Д゚)「ゴルァ…」

(*゚ー゚)「そういえば、ショボンさんとクーさんはどうしたんですか?」

キョロキョロと周囲を見るしぃ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:35:48 ID:TgzbIDL20<>
(*゚ー゚)「さっきまでシャキンさん達と話していたのにもういないです。
それに、説明をモララーさん達に任せるなんて」

('A`)「ああ、ちょっと野暮用が出来て店の方に行くってよ。
で、しぃにも伝言。悪いけど、しぃも料理や飲み物のチェックを頼むってことだ。
これだけの人数だとふさ一人じゃ回らないだろうしよ」

(*゚ー゚)「はい。分かりました」

(,,゚Д゚)「野暮用って、二人で大丈夫なのかゴルァ」

('A`)「圏内だし、大丈夫だろ。
クーがそばにいるなら、ショボンも無茶なことはしないだろうし」

(,,゚Д゚)「それなら良いが」

('A`)「心配か?」

(,,゚Д゚)「あんなことのあった後だ、当り前だゴルァ」

('A`)「ま、そりゃそうだ」

(*゚ー゚)「でもドクオさんがここにいるなら、私達がでしゃばることも無いですね。
私達は、私たちにできることをします」

('A`)「ん。頼む」

(*゚ー゚)「それじゃあギコ君、フサギコさんとちょっと打ち合わせしてくるね」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

視線を走らせ、エクストと話しているフサギコを見付けるしぃ。
そしてギコに告げてから、改めて三人にお辞儀をした。

(*゚ー゚)「すみません。また後でいろいろお話聞かせてください」

( ^Д^)「おう」

( ´ー`)「また後でだーよ」

|  ^o^ |「お仕事頑張ってください」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:36:37 ID:TgzbIDL20<>
(*゚ー゚)「ありがとうございます。プギャーさん、シラネーヨさん、……と、お名前は…ぎ、ギコ君」

(,,゚Д゚)「お?名前?ん?なんだっけ」

|; ^o^ |「ブームです!ブーム!なんでみなさん忘れるんですか!誰かの差し金ですか!」

(*゚ー゚)「以前ジョルジュさんに、ブームさんと会ったら一回は必ずやらないといけないって言われました。
お約束だって」

(,,゚Д゚)「同じくだゴルァ」

|; ^o^ |「ジョルジュさーん!!」

離れた場所でデミタスとゲラゲラ笑っているジョルジュに駆け寄るブーム。

プギャーとシラネーヨはギコとしぃに軽く手を振ってから、笑いながらその後を追った。

しぃはフサギコの元へ。
ギコは所在なさげに突っ立っていたが、後ろからツンに頭を叩かれてモナーと三人で喋りはじめた。

('A`)「……さて、あとはショボンとクーが何をしてくるかだな」
从 ゚∀从「ん?ドックン何か言ったか?」

('A`)「なんでもない。つーか離れろ」
从 ゚∀从「イヤ。さっきは空気読んであげたから、今はダメ」

('A`;)「離れてるのが本当の姿だろうが」
从 ゚∀从「そんなのは聞こえませーん。認めませーん。ダメダメでーす」

この部屋にいる者は、それぞれに食事と会話を楽しんでいた。



そしてこの時建物の一階にいる者は、会話を苦しんでいた。


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:38:24 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「はい。それでは確かにいただきました。ありがとうございました」

バーボンハウス。
店内のカウンターの中に立つショボン。
そしてカウンターを挟んで立つ男が二人。

ロマネスクとヒッキーである。

( ФωФ)「予定時間より遅くなって申し訳ないのである」

(-_-)「申し訳ありません。釣果の集計が遅くなってしまって…」

( ФωФ)「それはこちらの事情。約束を守れなかったのが事実である」

(-_-)「…うん。ごめんなさい」

(´・ω・`)「昨日から何度も言っていますが、魚の提供はもう無くても」

( ФωФ)「ダメなのである!これはけじめであるから、やらせてほしい」

(´・ω・`)「………そうですか」

胸を張って自論を唱えるロマネスク。
隣のヒッキーは所在なさげにロマネスクの後ろにいた。
その姿からは、ドクオと対等に剣を交わしていた姿を想像できない。

ため息とも深呼吸ともとれるほど大きく一度息を吐いたショボン。

(´・ω・`)「わかりました。とりあえずは、昨日決めた形で納品してください。
ただし、納品で来る前には必ず僕に連絡し、ぼくが居る時に来るようにしてください。
あと、ジョルジュ…いえ、ギルドのメンバーと親交を深めるのは個人の自由ですから問題ありません。
その流れで当ギルドの経営する店を理由することも、ぼくが止めることではありません。
ただし、そこにギルド間の交流や今回の作戦の支払い等を行おうとする場合は、
厳正なる対処をさせていただきます。よろしいですね」

( ФωФ)「分かったのである」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:39:44 ID:TgzbIDL20<>
ショボンの口調は穏やかだが鋭さを持っており、
見た目の年齢差が10以上あるロマネスクに対して攻撃とも取れる言葉を紡いだ。

対してロマネスクは全てを受け止めたうえで口を開いた。

( ФωФ)「当然のことである。吾輩達はそれだけのことをしでかしてしまったのであるから。
だが、挽回のチャンスも欲しいのである。
吾輩達のしてしまったことは、命にかかわる重大なミスである。
自分達だけならぬ、ショボン殿たちの命を危険にさらしてしまった…。
もう、こんなミスはしたくないのである。
……虫の良い考えで、思いであることは重々承知しているのである。
だが、ショボン殿たちについて学ぶことが出来れば、
二度とこんなことをしでかさない知識と心構えを身に着けることが出来るようになるような気がするのである。
吾輩もギルドのマスターとして、命を守りたいのである。
だから、挽回のチャンスを……」

ショボンを見るロマネスクの瞳は強く、まっすぐで、静かだが力強い言葉はショボンを圧倒する。

(´・ω・`)「………」

( ФωФ)「………」

(;-_-)「………」

ミセ*゚ー゚)リ「ごちそうさまでした!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:40:45 ID:TgzbIDL20<>
じっとお互いの顔を見る二人と、心配そうにその二人の顔を交互に見るヒッキー。

その緊迫した状態は、一人の常連客によって壊された。

(´・ω・`)「あ、はい。いつもありがとうございます」

ショボンはロマネスクの言葉の真意を測ろうと思いじっと見つめていたのだが、
それは失敗に終わった。
いや、失敗というよりロマネスクの表情にも視線にも嘘や欺瞞は感じられない以上、
本来ならば信じるしかない。

ミセ*゚ー゚)リ「新作のケーキ美味しかったですよ!
クリームが最高でした!」

(´・ω・`)「ありがとうございます。レシピを作った者が喜びます」

ほんの少しほっとした表情をしてロマネスクから視線を外したショボンは、
彼女の言葉に嬉しそうに微笑み、お辞儀をする。

ミセ*゚ー゚)リ「また来ますね!いこ!フィレフィレ!」

(‘_L’)「ミセミセ。今日も食べすぎだぞ」

ミセ*゚3゚)リ「ぶーー。たっておいしいんだぽん」

(;‘_L’)「……可愛い顔が台無しだぞ。あとちゃんと喋れてない」

ミセ*゚ー゚)リ「私はこの口にするとちゃんと喋られないのよね。
でも、それも可愛いでしょ?ねっ」

(*‘_L’)「あ、うん。…………可愛い」

腕を組み、楽しそうに店を出ていくカップル。

そんな二人にあてられて、黙って二人を見送った三人。
しかし同じようなタイミングで我に返った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:42:12 ID:TgzbIDL20<>
(;´・ω・`)「そ、それでは今日はこの辺で」

(;ФωФ)「そ、そうであるな。では行こうか。ヒッキー」

(;-_-)「う、うん。お、お、おじゃましました」

何故か三人とも落ち着きをなくしたように挨拶をする。
そしてロマネスクとヒッキーは一度大きく頭を下げるお辞儀をしてから、店を出て行った。

(´・ω・`)「ふぅ……」

川 ゚ -゚)「大変だったな」

カウンター内にあるドアが開き、クーがショボンの隣に立った。

(´・ω・`)「クー。…陰で見てたんだから、助け舟を出してくれても良いんだよ」

川 ゚ -゚)「いやいや、私程度では割り込めんよ」

(´・ω・`)「まったく…」

川 ゚ -゚)「それに、さすがに出て行ったほうが良いかなと思ったら、
あのバカップルが来たから良いかなと思った次第だ」

(´・ω・`)「バカップルとか言わないの」

川 ゚ -゚)「はーい」

(´・ω・`)「でもまあ、思ったより早く帰ってくれてよかったよ」

川 ゚ -゚)「うむ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:42:54 ID:TgzbIDL20<>
(´・ω・`)「上にみんなが集まっていることを知っていて、
全員に謝りたいから入れてほしいとか言い出すんじゃないかと、ちょっとひやひやした」

川;゚ -゚)「それはさすがに穿ち過ぎじゃないか?」

(´・ω・`)「そう?まあみんなを守るためにも、それくらいのほうが良いでしょ」

川;゚ -゚)「それはそうかもしれんが」

(´・ω・`)「さて、店はNPCのカレンちゃんに任せて僕も上に行こうかな」

カウンターを人差し指で叩いて出したウインドウを操作するショボン。
ドア付近にいた地味なメイド姿の女性がこちらに向かってきて、ショボンと幾つか言葉を交わした。

川 ゚ -゚)「ああ、すまんショボン」

(´・ω・`)「ん?」

川 ゚ -゚)「実は来客でな、私は呼びに来たのもあるんだ」

(´・ω・`)「え?」

川 ゚ -゚)「ブーンの店の方に彼女がいるはずだから、行ってやってくれ」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:44:30 ID:TgzbIDL20<>
会議室。

(`・ω・´)「ま、今回一番の裏方はおれ達だからな」

( ・∀・)「ショボンの依頼とは言え、よく来たよな」

( ゚д゚ )「それほど大変ではなかったぞ。あの三人も使えたしな。
うちのギルドにスカウトしたいくらいだ」

ミ,,゚Д゚彡「シャキン達にはお世話になったから!」

<_プー゚)フ「強いモンスターと戦うのは楽しいぞ!!」

(´・_ゝ・`)「だからお前は剣を出すな剣を」

(゚、゚*トソン「あ、あのモララーさん」

( ・∀・)「お、トソン。その眼鏡やっぱり似合うな」

(゚、゚*トソン「あ、ありがとうございます!」

( ・∀・)「良いって良いって」

▼・ェ・▼「きゃん!きゃん!」

ξ゚听)ξ「何ビーグル、これ食べたいの?しょうがないわね。はい、あげる」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

( ;ω;)「確保しておいたとっておきのお肉が……」

( ´∀`)「ありがとうもな、ツン、ブーン」

ξ゚听)ξ「良いの良いの。あ、こっちも食べる?ビーグル」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

( ;ω;)「おーーーーーん!!そっちまで!!!楽しみにしていたチキン!!!」

ξ゚听)ξ「あんたはあっちの野菜スティックを食べてなさい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:45:44 ID:TgzbIDL20<>
('A`)「それよりこいつをどうにかしてくれ」
从 ゚∀从「どいつだ?」

('A`)「おまえだ!」
从 ゚∀从「え?わたし?」

( ^Д^)「バカップルが」

(,,゚Д゚)「バカップルだ」

('A`)「ギコにだけには言われたくない気がする」
从*゚∀从「どっくん、どっくん、カップルだって!」

('A`)「喜ぶな!」
从 ゚∀从「えーーーー」

( ゚∋゚)『あいかわらずだな みんな』

(*゚ー゚)「クックルさんも笑顔で安心しました。はい、お茶です
あ、それ新しいボードですね。持ちやすそう」

( ゚∋゚)『ありがとう。もらがつくってくれた』

( ´_ゝ`)「ま、みんな色々抱えてるって事さ」

( ゚∋゚)

(*゚ー゚)

( ´_ゝ`)「ん?どうした?」

(´<_` )「いきなりやってきて、兄者がいきなりまともなことを言ったら、そりゃみんな言葉をなくすだろ」

( ´_ゝ`)「え?そういうことなの?二人とも?」

(*゚ー゚)「え、いや、そんなことはないですよ。突然後ろから来られたのでびっくりしただけです」

( ゚∋゚)『そうそう』

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:46:44 ID:TgzbIDL20<>
( ´_ゝ`)「なんか色々釈然としない」

(´<_` )「考えるな」

(*゚ー゚)「それが良いと思います」

( ゚∋゚)『うむ』

|  ^o^ |「ジョルジュさんもう止めてくださいよ」
 _
( ゚∀゚)「はいはい。ちょっとした冗談なのに」

|; ^o^ |「だいたいなんで私なんですか」
 _
( ゚∀゚)「なんとなく面白そうだったから」

|; ^o^ |「なんとなくで心が折れそうになりましたよ!」
 _
( ゚∀゚)「あ、でもこの前助けた時に忘れていたのはマジだぞ」

|; ^o^ |「……うわぁ」

( ´ー`)「諦めるだーよ」

|; ^o^ |「心が折れそうです」

宴は続く。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:48:20 ID:TgzbIDL20<>
ブーンの雑貨店。店内。

カウンターにはNPCのスタッフがおり、やってきた客の対応をしている。
といっても販売作業しかできず、鑑定といったようなブーンが居なければ出来ないような対応は、
本日は非対応となっていた。

今どうしても売却したい者はカウンターにある案内を見て別の店に向かうが、
常連や急ぎではない者は「またにするか」と呟いていた。

それはひとえにブーンの人柄と、他の店よりちょっとだけサービスしてくれることを知っているからだった。

そんな店内に、頬に特徴的なペイントを施した女性がいた。
棚に置かれたアイテムを手に取り、値段を確認したりしている。

(´・ω・`)「何か欲しい物はありましたか?」

(アルゴ)「お値段も周囲より少しだけ安くしてあるのが、繁盛店の秘訣だネ」

気配を消して後ろに立ったショボンが突然声をかけても全く動じないアルゴ。
振り向いたその顔には、いつものいたずらっ子の様な笑みさえ浮かんでいた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:49:07 ID:TgzbIDL20<>
(アルゴ)「売り上げはちゃんとあるのかナ?」

(´・ω・`)「もちろんですよ。ブーンと相談して薄利多売としているだけです」

(アルゴ)「なるほど。
てっきりここは人の出入を激しくすることによって情報を集める為なのかと思ったけど、違ったかナ」

(´・ω・`)「もちろん違いますよ。
そんなこと人に聞かれたら誤解されてしまいますから、止めてくださいね」

(アルゴ)「もちろん噂や推測を外に漏らしたりしないヨ。
そこは安心して欲しいネ」

(´・ω・`)「そうですね。そこは信用していますよ」

(アルゴ)「アハハハハハ。嬉しいネ」

思わせぶりな視線を投げかけ、外に出るドアに向かうアルゴ。
ショボンは黙って後に続くが、一回だけ中に続くドアよりこちらを伺っているクーに視線を向けた。

頷き、中に消えるクー。

歩きながらそれを確認し、ショボンも外に出た。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:50:13 ID:TgzbIDL20<>
(`・ω・´)「いやいやいやいや。やっぱり女の子はだなぁ」

(゚、゚トソン「シャキンさん、いろいろ古いですよ」

(`・ω・´)「……え?」

( ・∀・)「夢見すぎだよな」

(`・ω・´)「え?そう?」

ξ゚听)ξ「もしかして…」

(`・ω・´)「!!ちゃう!断じて違う!」

(´・_ゝ・`)「良いんだ良いんだ。見栄を張らなくて」

(`;ω;´)「だってちがうもん!」

m9(^Д^)プギャー

( ´∀`)「恥ずかしいことじゃないもなよ」

(*゚ー゚)「なんかモナーさんが大人です」

( ´∀`)「モナーは大人もなよ」

( ゚д゚ )「おお!余裕のある発言!」
 _
( ゚∀゚)「あーでもシャキンの気持ちも分かるというか」

(`・ω・´)「だよな!」
 _
( ゚∀゚)「でもそこまで夢も見てないけどな」

( ´_ゝ`)「ま、恥ずかしいことじゃない」

(´<_` )「そういうことだ」

(`・ω・´)「違う!おれは違うんだ!!」

( ´_ゝ`)「だからそうムキになるとだな」

<_プー゚)フ「逆に確信してしまうってことだ!」

(´<_` )「だな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:51:09 ID:TgzbIDL20<>
(`・ω・´)「おまえらは否定しないと確定するだろうが!」

ξ゚听)ξ「当り前よ」

( ^ω^)「おっおっおっ」

('A`)「まったくこいつらは…」
从 ゚∀从「どっくんは?」

('A`)「え?」
从 ゚∀从「どっくんは?」

('A`)「………」
从 ゚∀从「………」

( ´ー`)「バカップルだーよ」

ミ;,,゚Д゚彡「こういう話題は苦手だから…」

(;゚∋゚)『同じくだ』

ミ*,,゚Д゚彡「でも、興味もあるから」

( ゚∋゚)『ふさ…』

|; ^o^ |「……ついさっきまで先日の報告でドシリアスだったのに、
こんな会話をしていて良いんでしょうか」

▼*・ェ・▼「キャン!」




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:52:15 ID:TgzbIDL20<>
(アルゴ)「説明を、してもらおうか」

路地裏の暗がり。
人通りは無く、時間も遅く街の明かりからも外れているため闇が支配している。

壁に沿うように立つショボンと、道の真ん中に立つアルゴ。

(´・ω・`)「説明?」

(アルゴ)「!だ、だから!」

(´・ω・`)「あなたが見たことの説明ってことですか?
ぼくが何故あの人達と会っていたのか」

(アルゴ)「…そういうことだ」

(´・ω・`)「何故?」

(アルゴ)「え?」

(´・ω・`)「何故、アルゴさんにそんな説明をしなければならないんですか?」

(アルゴ)「!そ、それは…」

厳しい顔をしてショボンを問い詰めようとしていたアルゴであったが、
不思議そうにこちらを見るショボンの問い掛けに、逆に言葉をなくしてしまう。

(´・ω・`)「何故ですか?」

(アルゴ)「…言うつもりはないと?」

(´・ω・`)「必要や理由があればしますが、どちらも思い当りません」

(アルゴ)「………」

(´・ω・`)「それにこれは、『情報』になる可能性があります。
『情報屋』のアルゴさんに問われるがままに説明するような内容だとも思えません」

(アルゴ)「………」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:53:48 ID:TgzbIDL20<>
苦しそうな表情でショボンを見るアルゴ。
ショボンはその視線を、表情だけは平静に受け止めている。

(アルゴ)「一つだけ、答えてほしい。
これは、『情報』じゃなく、今まで交わしてきたきた取引や言葉から、
私がこれからもお前を信じたいからだ」

(´・ω・`)「………なにを、ですか?」

(アルゴ)「お前は……オレンジ……いや、レッドプレイヤーなのか?」

(´・ω・`)「違います」

(アルゴ)「…信じて良いんだな」

(´・ω・`)「ギルドの仲間に誓って」

(アルゴ)「分かった。……信じるよ」

射るような視線でショボンを見ていたアルゴであったが、
その言葉を最後に表情を和らげて視線を一回外すと普段の表情に戻った。

(アルゴ)「悪かったナ。こんな時間につき合わせて」

(´・ω・`)「いえ」

(アルゴ)「ギルド『ANGLER』とプレイヤー『マタンキ』の情報、入ったら随時連絡するヨ」

(´・ω・`)「よろしくお願いします」

歩き始めたアルゴの後に続くショボン。
そして大通りに出た。

(アルゴ)「じゃあナ。また連絡するゼ」

ショボンが別れの挨拶をする暇も無く駆け出したアルゴ。
その姿は街の風景に隠れ消えた。

(´・ω・`)「………ふぅ」

小さくため息をついたショボンは悩むように右の眉を人差し指で軽く二回叩いた後、
バーボンハウスに戻った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 14:54:51 ID:TgzbIDL20<>
そして会議室を素通りし、執務室に戻る。

ドアを開けたままソファーに座ると、少しして自然にドアが閉まった。

川 ゚ -゚)「お疲れ様」

(´・ω・`)「クーもお疲れ様」

白い壁から浮き出るようにその姿を現したクー。
先日作戦時にフサギコやデミタスが来ていたマントを羽織っている。

川 ゚ -゚)「これはすごいな。私のスキルでも隠れることが出来た」

(´・ω・`)「ツンとモララー、弟者に依頼したものの一つだよ。
耐久性とか難点はまだまだあるけど、
隠蔽スキルの強化に特化したものとしては問題なしだね」

川 ゚ –゚)「だが…」

(´・ω・`)「うん。アルゴさんはいたことに気付いていただろうね。
流石だよ」

川 ゚ -゚)「良いのか?」

(´・ω・`)「アルゴさんのもう一つの目的は、『クーに聞かせる』ことだったと思うから。
だから多分あんな簡単に帰ったんだと思うよ」

川 ゚ -゚)「目的の一つは達したという事か」

(´・ω・`)「そういうこと。
もしかしたらどこかから見てることも考えて、
念の為クーにはここに戻るまで隠れたままにしてもらったけど」

マントを外し、ショボンの対面のソファーに腰掛けるクー。

疲れたような顔をしたショボンをみて、少し悲しそうな顔をする。

川 ゚ -゚)「大丈夫か?」

(´・ω・`)「うん。大丈夫。自分で決めたことだからね」

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/18(日) 14:55:44 ID:TgzbIDL20<>
川 ゚ -゚)「なら良いが」

(´・ω・`)「みんなにさせてる事の方が、心が痛むよ」

川 ゚ -゚)「それこそいらぬ心配だな。
私達も、自分で決めたことだ。
これで地獄に落ちるとしても、後悔はしない」

(´・ω・`)「………そこまで酷いことしてるのかな。ぼく達」

川 ゚ -゚)「いや、してない」

(´・ω・`)「だよね。びっくりした」

クーの言葉に身を乗り出して驚いた顔をしたショボンだったが、すぐに顔を綻ばせる。

そして視線を交わし、笑顔を見せる二人。

そのまま笑っていると、ドアが開いた。

中を覗き込む二人の男。

( ^ω^)「やっぱり戻ってたお!」
 _
( ゚∀゚)「ホントだ!早く来いよ!まだ夜は長いぞ!」

(´・ω・`)「はいはい」

川 ゚ -゚)「そうだな。今日はみんなで楽しもう」

部屋を出る二人。

四人で笑いながら、みんなの待つ部屋のドアをくぐった。




.<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/18(日) 15:00:19 ID:TgzbIDL20<>6.深淵




「どうでしたか?」

「順調と言えば順調…といったところでしょうか」

「そうなの?」

「ああ。」

「あれで…ねぇ」

「それで、あいつは今どこに?」

「ふつうに森で狩ってる」

「あまり目立たない様にしてもらわなくてよいのですか?」

「よいでしょう。いくら情報屋と手を組んだとしても、見付けられないでしょうから」

「いざとなれば、情報屋も殺せばよい。ですか?」

「あ、でもそれは難しそうだよ」

「というと?」

「前にちょっとイライラした時に狙ったんだけど、なかなか隙がなかったんだよね」

「それで?」

「早漏は嫌われない?彼女に」

「……それで?」

「はいはい。この前森で見かけた時にまたちょっと狙ってみたんだけど、
ガードがさらに厳しくなってた。そう簡単には殺せないかも」

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/18(日) 15:01:22 ID:TgzbIDL20<>
「なにかあったんでしょうか」

「どうだろ。レベルも上げてるだろうから、それだけかもしれないけどね」

「情報屋としてはまだ利用価値もありますから、殺さない様に気を付けましょう」

「はーい」

「それがよいですな」

「あ、ねえねえ。この前言ってた圏内殺人がどうのこうのって、結局どうだったの?」

「ああ、あれですか。結局トリックを使用して死んだように見せかけただけだったようです」

「なんだ。つまらないの」

「ただ…」

「どうした?」

「裏に『笑う棺桶(ラフィンコフィン)』がいたようです」

「ほお!」

「へー」

「そして、解決には血盟騎士団の副団長と攻略組の黒の剣士が関わっていたとかいないとか」

「…つまらん」

「そいつら、みんな殺したいな」

「噂ですよ。噂」

「でも、あいつらを殺したら楽しそうだよね」

「先ずは、目の前のあいつらですよ」

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/18(日) 15:02:37 ID:TgzbIDL20<>
「……ギルド『VIP』」

「ギルマスのショボン、剣士のドクオとジョルジュ、道具屋ブーン。とりあえず狙うのはこんな感じ?」

「あいつが、ツンとか言う女を殺したいとか言ってたな」

「指定できるならドクオを殺りたい」

「あなたはジョルジュですか?」

「そうですね。ま、その時の気分で」

「あのギルドは、殺すのに面白そうなやつが多いよね」

「半分は殺したいですが、その五人は確定ですね。主要メンバーの様ですし」

「サブマスはどうしますか?」

「クーとか言う女ですか。出来れば残して、仲間が半分以上殺されて壊れていく姿が見たいですね」

「いいね。それ」

「では、その女は残す方向で」

「いいでしょう」

「ねえ、いつやる?」

「ちゃんと殺すためにも、もう少し調べましょうか」

「つまんないのー」

「では、わたしも引き続き情報を集めることとします」

「よろしく」

「ちゃんとやってよ。おじさん」

「小僧もな」

「しかし……」

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/18(日) 15:03:20 ID:TgzbIDL20<>
「ん?なんかいった?」

「どうかしましたか?」

「いや、その日が来るのが楽しみだと思ったのである」






第十三話 終



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/05/18(日) 15:12:49 ID:8LAkt72g0<>間違えた…

第十二話終了でした。

あと、とりがとれてるし…。


誤字脱字も含め、もう少し注意深くしないとだめですね。
次回への教訓にします。


乙や感想、考察ありがとうございます。

良い意味で予想通りだったり裏切れたりしていれば嬉しいですが、いかがでしたでしょうか。

次回は残りのメンバーの話の予定ですが、息抜きの閑話やクエスト攻略の話なんかもネタのストックがあるのでまだ未定です。

4月中に投下ができなかったので次回は6月にできればと思っておりますが、ちょっと厳しいかもです。


それでは次回、またお会いできれば幸いです。


ではではまた。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/18(日) 15:52:05 ID:SQARwYQA0<>乙
面白かったです<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/18(日) 17:43:28 ID:Wm9KDmOM0<>乙
毎回シリアルな展開で終わってホッとする暇がねぇ


どっくんは爆発しろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/18(日) 18:21:32 ID:Py.t5dLY0<>結局ヒッキーが襲った理由が分からなかったんだが、マタンキに何らかの理由で脅されてたのか?のくせにマタンキ自身がロマネスクが狙われたり、よく分からんのだが…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/18(日) 18:39:41 ID:ZwPkrioU0<>またんきが無関係のロマ使ってヒッキー脅して囮にさせ、主攻はまたんき
という設定だが実際は全員グル
って読めるけど、どうなんでしょ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/18(日) 21:21:32 ID:dhfZis/A0<>おもしろかった、乙です<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/19(月) 00:41:51 ID:yXQVNaqYO<>乙
数話前にはワカビロぽっぽまで黒幕に絡んでそうと思わせる伏線もあったし気になる

プギャー達がただのモブで終わらなかったのがなんかちょっと嬉しい
ああいう一見モブっぽいけどやる時はやる立ち位置のキャラクター大好き<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/19(月) 02:15:53 ID:fRG7OIZE0<>乙 ミセリとフィレンクト付き合ってたのかよwww<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/19(月) 03:22:45 ID:d1Zd2w260<>乙
毎回展開が面白い!
次も楽しみにしてるけど、無理しないでやりやすいように投下してくれよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/21(水) 22:15:09 ID:hzPunT1Y0<>アングラーはアンダーグラウンドともかけた名前だったのかね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/25(日) 10:37:34 ID:eH3siBuU0<>面白かった!
戦闘だとブーンがだんだん尖った性能になってきてて好きだ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/05/29(木) 22:31:18 ID:kqreJoGY0<>ミセミセ<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/31(土) 20:06:42 ID:Y7c4AQnI0<>面白すぎて禿げそう
作者応援してる次が楽しみだ<> 名も無きAAのようです<><>2014/05/31(土) 22:57:15 ID:IumfasyY0<>>>400
フィレフィレ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/06/08(日) 21:58:52 ID:JAamjHnI0<>ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1543.gif
モナーが青色のスキルを覚えたようです
▼*・ェ・▼!!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/06/11(水) 03:26:31 ID:gQkH3UtQ0<>ビーグル可愛いなwww<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/07/11(金) 16:25:54 ID:LJh7h18Q0<>まだまだかかるのかなー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/07/19(土) 21:37:18 ID:M2XgIid.O<>そろそろ来るころだな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/07/31(木) 22:46:17 ID:uEoykIPc0<>8月こそは…何回最初から読み直したのかわからねぇ<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:26:54 ID:aFIw5Z7M0<>それでは、第十三話の投下をしたいと思います。

よろしくお願いします。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:28:26 ID:aFIw5Z7M0<>( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第十三話 ダイヤモンドだね




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:29:51 ID:aFIw5Z7M0<>
0.アルマース



西暦2023年八月初旬。

深夜。
一週間単位で借りることの出来る部屋でモララーはスキルを鍛えていた。

( ・∀・)「……こんなもんかな」

そこは街外れの牧場の二階。
キッチンは無いがベッドルームとリビングが分かれており、
更に風呂までついたその部屋をモララーは気に入っていた。

そして夜は家具を片付けたリビングで剣技を練習することが日課となっていた。

剣技は、敵に当てなくてもレベルを上げることが出来る。
『行う』ことが大事であり、敵に当てることや技で倒すことは大事ではない。

勿論剣技によって敵を倒すことにより経験値のボーナスが付くであろうことは想定しているが、
モララーは夜の日課を欠かすことはなかった。

今日やる分と決めていた内容を軽くオーバーしてから一息つくと、ベッドルームに移動する。
それほど柔らかくはないが寝心地の良いベッドに腰掛けると、大きく息を吐いた。
そのまま動かなくなるモララー。
まるで彫像のように瞬き一つせず、感情の無い表情で足元をみている。

どれほどそうしていただろう。
一度ゆっくりと目を閉じて、開く。
そして最近覚えた爪を外しながら自嘲気味に唇をゆがめ、ウインドウを開いて爪をしまう。
代わりに鉱石を一つ出してサイドテーブルに置くと、愛用の工具袋をその横に置いた。

( ・∀・)「考えても仕方ない。気分転換〜」

袋から最近使えるようになったノミと金鎚を出して構え、鉱物に衝撃を与える。
叩くたびに澄んだ金属音が響く。

( ・∀・)「……こい!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:30:51 ID:aFIw5Z7M0<>
気合いと共に一発叩くと、テーブルの上の鉱物が光り輝いて形を変えていく。

( ・∀・)「キター!」

何故か踊りだすモララー。
流石に人前ではできないが、一人の時は必ずやってしまうその奇行。
けれど理由はあった。

( ・∀・)「よし、出来上がり!」

光が収まると同時に踊るのを止め、形を変えた、鉱石だったものを手に取るモララー。

それは、黒い指輪だった。

黒曜石の様に深く濃い黒。
しかしライトの光を受けて輝いている。

( ・∀・)「スペックスペック」

指輪をタップしてウインドウを出す。

( ・∀・)「よしよし。やっぱ踊ると違うね」

ステイタスアップの効力を持った指輪に満足し、けれど軽い動作でテーブルの上に置いた。
そのままベッドに倒れるように寝転がり、ウインドウを開く。

スクロール操作をして自分の覚えたスキルを確認し始める。

( ・∀・)「明日はこれとこれを重点的に鍛えるか………ん?」

一番下までスクロールした時に、見知らぬスキルを見て動きを止めた。

( ・∀・)「なんだこりゃ」

上半身を起こし、ベッドに腰掛けて、クリックした。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:32:01 ID:aFIw5Z7M0<>
1.アーカンサスダイヤモンド


2023年8月末。
浮遊城アインクラッド。
百層に及ぶその世界は、三分の一ほどが攻略されていた。
その勢いは人の心に明かりを灯すのに十分な力を持っており、
一部の者には攻略組への強い憧れを抱かせていた。
そして、それは時に仲間に入りたいと自らのレベルを上げようとする行動につながり、
ほんの少しではあるが全体的にプレイヤーの活動を外に向けて活発化させていた。

( ・∀・)「さぁって今日は何を作ろうかな」

そして街が増え行えることが増えると、マイペースに自分の楽しみを見付ける者も増えていた。

( ・∀・)「ピアスは昨日作って目標レベルまで上げたし、指輪はとりあえず充分だし」

最前線の主街区。
転移門のある公園。
夜間戦闘を行った者が帰るにはまだ早く、朝から出るにはまだ少し早い、そんな時間。

人影まばらな公園の片隅。
商売をするにはかなり良い場所に、モララーは絨毯を広げていた。

( ・∀・)「とりあえずはブレスレットとネックレスかな。
そろそろアンクレットとか新しい装飾具を覚えても良い気もするけど」

呟きながらもまずは絨毯にアクセサリーを並べる。
どれも可愛く可憐で女性に人気が高そうであるが、八割方買うのは男である。

( ・∀・)「このピアスなんかは最高傑作なんだけどな…」

その手に持たれたのは小さな花のピアス。
淡い紅色をした、透き通るほど薄い花弁。
中心には小さな真っ白な真珠が輝いている。

( ・∀・)「……」

すっと日の光を当てるかのように目の高さまで上げると、
真珠の中心に花弁と同じ淡い紅色の光が浮かぶ。

( ・∀・)「可愛い女の子につけてほしいよな…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:32:57 ID:aFIw5Z7M0<>
悲しそうに呟き、指先でピアスをタップするとウインドウが開く。

『攻撃力+4』
『防御力+3』
『素早さ−1』

( ・∀・)「……どうせまた屈強な男が買うんだろうな」

絨毯の中心、目を引く一番良い場所にピアスを置いた後、その横に『素早さ+1』をもつ指輪をおく。
可愛い女の子に買ってほしいと言いながらも、
その金額と能力値から考えて冷静に商売をするモララーだった。

ミ,,゚Д゚彡「……負けたから」

( ・∀・)「遅いよばーか」

屋台『バーボンハウス』をひいたフサギコが、ふてくされたように男を見ている。

ミ,,゚Д゚彡「向こうに行くから」

( ・∀・)「ここにしろよ。暇な時間に話せるし、昼飯買うのも楽だしさ」

ミ,,゚Д゚彡「もう賭けはしないから」

屋台や絨毯を広げて商売をする者にとって、
レベルの高いプレイヤーが多く通る最前線の転移門広場は絶好の場所である。
もちろんその売る品のレベルが低ければ見向きもされないため、自然と淘汰はされてしまう。
つまり定期的に、もしくは常駐できる生産系の職をもったプレイヤーは、
周囲から見てもある程度の高レベルの品を扱っていると判断された。
またそんなプレイヤーの数はけっして多くは無い。
そのため徐々に顔見知りにもなり、とくに売る品のジャンルが違えばライバルにもならないため、
自然とフサギコやショボンは彼と話す様になっていた。

( ・∀・)「今日はフサギコか。ってことは昼飯はタダで食えるな」

ミ;,,゚Д゚彡「賭けはしないって言ってるから」

モララーの隣に屋台を設置するフサギコ。
公園の中にも人が集まりやすい場所と集まりにくい場所があり、
モララーとフサギコ・ショボンは毎日のように場所取り争いをしているのだった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:33:54 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「そんなつれないこと言うなよ」

ミ,,゚Д゚彡「……」

黙って準備を進めるフサギコ。
そして争いは場所取りだけでなく、気まぐれな賭け事を行っていたりもした。

( ・∀・)「ふーさーぎーこー。しゃべれよー。まだ忙しくなる時間じゃないから暇だぞー」

ミ,,゚Д゚彡「……今日は負けないから」

( ・∀・)「!そうこなくっちゃ!」

それはかなり簡単な賭けだった。
例えば先に売れるのはどちらの店か。
例えば買い物をする客は男か女か。
例えばこの後売れるアクセサリーは何か。
例えばこの後売れるサンドイッチの種類は何か。

そんなことを即座に決め、勝った方が負けた方に売り物を上げたり、
同じ公園で露店を開いているプレイヤーのアイテムをプレゼントしたりしていた。

( ・∀・)「フサギコには勝ち越してるかな」

ミ,,゚Д゚彡「今日は負けないから」

( ・∀・)「この前勝ったのどっちだっけ?」

ミ,,゚Д゚彡「……モララーだから」

( ・∀・)「へっへっへ。じゃあ賭けの内容は決めて良いぜ」

コンプレックスを数多く抱えたフサギコにとって、
ギルドVIPのメンバーは気取らず喋ることのできる仲間である。
そして自分の喋り方を気にせずに会話してくれるモララーは、
同じように感じることの出来る、話すのが楽しい知り合いだった。

ミ,,゚Д゚彡「ううううううう。絶対勝つから!」

口調は激しいが笑顔で準備を進めるフサギコ。

モララーも笑いながら絨毯にアクセサリーを並べている。

その後も会話をしながら準備を進めていると、ちらほらと人が多くなりはじめた。
早朝の光から、朝の光へと周囲が変わる。
それを確認すると、会話よりも商売に重点を置き始める二人だった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:35:03 ID:aFIw5Z7M0<>
2.クァジマダイヤモンド


( ・∀・)「ユニークスキル?」

朝から昼まで一気に慌ただしく通り過ぎると、やっと休憩に入ることが出来た。

モララーは戦利品のホットドッグを食べながらフサギコから聞いた単語を繰り返す。

( ・∀・)「……なんか聞いた覚えあるけど…」

ゲームの中にいるけれど、モララーは別にゲーマーではない。
その為このゲーム専用の単語はもちろん、ゲーム専用の単語にも知らない言葉が数多く存在した。
それはモララーと絨毯を挟んで反対側にいるフサギコも変わらないのだが、
おせっかいな仲間が色々と講義をしてくれたことにより、今ではそれなりに知識を得ていた。

ミ,,゚Д゚彡「この世界に一つしかない、一人しか使えないスキルの事だから」

( ・∀・)「ああ、そっかそっか。そんな名前だったな」

話の発端はなんであっただろう。
おそらくは二人のメイン武器がエクストラスキルを持たないと使えない武器のため、
そこから話が発展したと思われる。

エクストラスキル。
最初から使える、選ぶことの出来るスキルと違い、
ある一定の条件をクリアしないと選ぶことが、使うことが出来ないスキル。
その条件にも種類があり、バラエティに富んでいる。

例えばVIPのメンバー必須スキルとしている体術は、
あるイベントをクリアすれば使えるようになるエクストラスキルである。
とは言ってもそのイベントがなかなか大変なのだが、目標を定めることはできる。

例えばフサギコが今メイン武器としている刀。
これは最初から使える曲刀を頑張って使っていると、
いつの間にか使えることが出来るようになるエクストラスキルである。
そう、『いつの間にか』使えるようになる。
明確なレベルや経験値だけでない何かの規定。
もしかするとランダムな運なんじゃないかと邪推してしまうようなその条件。
スキルを覚えた時のすべてのパラメータを解析すれば、
もしかすると分かりやすい基準があるのかもしれないが、
今この世界ではそれを出来る状況ではないため、
刀を覚えたいプレイヤーは『いつの間にか』を夢見て曲刀を振り、使い続けるしかない。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:38:54 ID:aFIw5Z7M0<>
このようなエクストラスキルの話から、ユニークスキルに話は進んでいた。

ユニークスキル。

このアインクラッドにおいて、一つしかない、一人しか使うことの出来ない夢のスキル。

今はまだ存在だけが噂として広まっており、存在が確定されてはいない。
つまりユニークスキルを使えるプレイヤーは世に知られていない。

自分一人だけが主人公であるスタンドアロンのゲームと違い、
このゲーム、『ソードアートオンライン』はプレイヤー一人一人が主人公である。

レベルの上げ方、スキルの選び方、ステータスの鍛え方、
プログラムの中では全てが自由で自分の力は自分で決めることが出来る。

そんな、全員がシステム上は同条件に居られるこの世界において、
ユニークスキルは唯一と言ってよい、ゲームが認めた『差別』であった。

( ・∀・)「けどあれって、ほんとにあるかどうか分からないだろ?」

ミ,,゚Д゚彡「あるって話だから」

( ・∀・)「…ユニークスキル…ねぇ…」

そしてそんなスキルの存在が知られてはいるが、実際にそのスキルを持つ者は未確認であり、
かつどうやれば得ることが出来るのかは謎に包まれていた。

ホットドッグを食べ終えたモララーは、わきに置いておいたサンドイッチを手にする。
因みにこれはちゃんと購入したものである。

ミ,,゚Д゚彡「!これが良いから!」

蒼いティアドロップ型の鉱石が一つぶら下がったネックレスを手にしたフサギコ。

『正確性+3』

これもまた、ステータスアップの特典の付いたアクセサリーである。

( ・∀・)「それでいいのか?二敗分だから、もっと高いのでもいいぞ?」

ミ,,゚Д゚彡「これで良いから!」

( ・∀・)「おれはいいけどよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:41:28 ID:aFIw5Z7M0<>
モララーはフサギコからネックレスを受け取り、トレードウインドウを使ってフサギコに渡す。
これによってネックレスの所有者はモララーからフサギコに移った。

ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから」

( ・∀・)「はいはい。あーチクショウ
まさか一勝した後二連敗するとは」

ミ,,゚Д゚彡「読みが当たったから!」

悔しそうに唇をゆがめるモララーと、笑顔のフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「そろそろ午後の準備をしなきゃだから」

受け取ったネックレスをしまったフサギコが立ち上がり、
一回モララーにお辞儀をしてから屋台に向かう。

( ・∀・)「……ふさぎこ」

ミ,,゚Д゚彡「なにだから」

自分の名を読んだ声に振り返るフサギコ。

( ・∀・)「もし、……もしだけどよ、自分の知ってるやつがユニークスキルをゲットしたらどうする?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:42:23 ID:aFIw5Z7M0<>
ミ,,゚Д゚彡「見せてもらうから」

( ・∀・)「へ?」

ミ,,゚Д゚彡「スキルウインドウにどんな風に載ってるのか見せてもらうから、
あと実際に使って見せてもらいたいから」

( ・∀・)「ああ……そうだよな。うん。
お前はそういうやつだな。うん
じゃあもしおまえがユニークスキルの持ち主になったらどうする?」

ミ,,゚Д゚彡「そんなこと、ならないから」

( ・∀・)「『もし』だよ、『もし』」

ミ,,゚Д゚彡「決まってるから」

( ・∀・)「どんなふうに?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンに話して、どうするのが一番いいか相談するから」

( ・∀・)「ショボンに?」

ミ,,゚Д゚彡「それでみんなとも話して相談して、どうするか決めるから」

( ・∀・)「みんな……ねぇ」

呆れたように呟いたモララーと、それを見て不思議そうな顔をするフサギコ。

互いに心に止まる棘を感じていたが、夕方の忙しさがそれを消していった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:43:28 ID:aFIw5Z7M0<>
3.アイリッシュダイヤモンド



日が暮れて、夜の狩りに向かう者達を見送ったモララーは、
フサギコと夕方になって合流したショボンに別れを告げて部屋に戻った。

そしてリビングのテーブルの上に今日の夕飯を置く。

屋台バーボンハウスで買った夕飯はリアル世界で言うところの焼肉丼と言ったところだろうか。

白米の代わりに使っているメリルという食べ物は、
現実世界の日本米より一回りから二回りほど大きいが、
食感や味はほぼ同じで、モララーは気に入っている。

ただ残念なことに色がどぎつい紫のため、
皿や丼に単品で盛られている状態だと食欲が減退する者が多いらしかった。

(´・ω・`)「赤米とか古代米とか、そんな感じだと思えば良いと思うんだけどな」

( ・∀・)「味も似てるよな。こっちの方が食べやすいくらいだろ」

(´・ω・`)「!そうだよね!」

以前、売れ残ったメリルのおにぎりを見ながら、呟いたショボンに反応したモララー。
それに反応したショボン。

ショボンとモララーは、その日から一気に仲良くなったといっても過言ではない。

メリルは、調理スキルの高い者が手の込んだ炊き方をするとかなりの絶品になるらしい。
モララーはまだ食べたことは無いが、
ショボンが売れゆきがそれほどよくないことを悲しそうに呟きながら漏らしたそれを聞いて、
いつか食べさせてもらおうと企んでいた。

今日の料理はおにぎりの様に色があからさまに分かってしまう料理と違い、
紙の様な丼に入っていた。
メリルの上にたっぷりと乗った肉やかかっているタレによって色の影響はかなり抑えられたらしく、
モララーが帰るころには売り切れていた。

ビックリしつつ残念そうな顔をして残っているメニューを選ぼうとした時に、
ショボンが陰からこっそり出してくれた時は彼の後ろに後光が見えた気分だった。

もちろん定価の金額は払ったがサービスで色々トッピングしてくれていたため、
肉の上にも野菜やら付け合せやら卵の様な物が色々乗っていて、
豪勢な夕飯をすることが出来た。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:44:15 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「うまかった!」

一緒に貰ったお茶を飲みつつ一息つく。

ソファーの背凭れに身体を預け、何を見るでもなく天井を見上げた。

今までの経験から、夕方二人で店をやっている時は次の日は二人とも露店を出さない。
おそらくは二人とも狩りに行くのであろう。

( ・∀・)「パーティー、…ギルド…か…」

今食べた丼は、本当に美味しかった。

でも、なぜか、昼間仕事の合間にフサギコと喋りながら食べたランチを思い出す。

そしてその前の日もフサギコとランチをしていた。
その前の日はショボンと食事やアイテムの事を話しながら食べた。

とりとめもなく、なんとなく、思い出す。

しばらくの間そのまま天井を見上げていたモララーだったが、
何の前触れもなく身体を起こして立ち上がると家具を片付けて、今日のノルマを始めた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:45:18 ID:aFIw5Z7M0<>
4.アレンコンダイヤモンド



西暦2023年 九月初旬

( ・∀・)「うーむ」

順調に爪のスキルとアイテム作製スキルのレベルを上げていたモララーだったが、
ここ数日低迷を感じていた。

( ・∀・)「しかたない、…出るか」

自分の持つアイテムを確認していたのだが、どうしても素材が足りない。
その素材は普段なら買い物客が持っているのを安く買いたたくところなのだが、
最近持っている客が少なくて手に入っていなかった。

だが今作りたいアイテムにはどうしてもその素材が必要だった。

( ・∀・)「はぁ…」

小さくため息をつき、戦闘用の装備を選ぶモララー。

レベルは高いがどこでも手に入りそうな防具。
爪は使える者が少ないこともありプレイヤーメイドのほどほどに高レベルの物を使っているが、
防具関係にはこだわっていなかった。

そしてそこに、自分で作ったアイテムを装備する。

両手に一つずつリング。
左手にブレスレット、
両耳にピアス。
首にはペンダント。
右の腰に鎖の様な装飾具。

『攻撃力+5』
『防御力+8』
『正確性+3』
『素早さ+1』
etc…

( ・∀・)「今日はこんな感じでいっか」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:46:15 ID:aFIw5Z7M0<>
ストックの中からできるだけ落ち着いた見た目をした装飾具を取り出して装備をする。
そして今から向かうフィールドダンジョンの特性に合わせ出来るだけプラス効果を付けた。

リビングの鏡で身だしなみをチェックするモララー。

( ・∀・)「よしよし。良い感じ良い感じ」

テーブルの上に置かれた花をモチーフにした豪奢なカチューシャ。
あまりのスペックの高さに売るのをためらっているが、
自分で身に付ける度胸も無い。

一応、念のため、使わないけどさ。

誰に聞かせるわけでもない謎の言いわけをしながらそれをストレージに保存し、
部屋を出るモララーだった。




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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:47:08 ID:aFIw5Z7M0<>
フィールドダンジョン。
『ふりかえりの森』

比較的ソロプレーヤーでも入りやすく、更に欲しい素材が落ちているダンジョンはここが適当だった。

( ・∀・)「コストパフォーマンスが良くないんだよな」

中央にある大きな湖を囲む様に広がるその森は、出没するモンスターのレベルは低くない。
だが一度に出てくる数がほとんど一匹か二匹であるため、ソロでも戦いやすかった。

迷宮の種類としても特に難しくは無く、地図があれば迷うことも無いし、各種クリスタルも使える。
妙なトラップも今のところ報告はされていないし、攻略自体は難しくない。

だが二つ、気を付ける点があった。

一つは街道のリセット。
朝8時に森の配置がリセットされ、新しい地図が無いと迷ってしまう。
森のそばにある町の道具屋で地図が売られているため、
『ふりかえりの森』に入る者は必ずそこで地図を買っていた。

そしてもう一つが中心の湖。
この森では、その湖に行くことは出来ない。
地図の中心には大きな湖が描かれているし、
街道を歩いていると、森の向こうに湖が見えることがある。
だが地図には湖に向かう道は載っていない。
森の向こうに見える湖に向かって進んでも、前に見えていた湖がいつの間にか右や左に移動し、
更には見えなくなってしまう。
街道のリセットと絡めて様々な憶測が飛んだが結局真相はまだ分かっておらず、
フロア自体も無事にクリアできたためそれほど話題にもならなくなっていた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:48:38 ID:aFIw5Z7M0<>
森に入る時のモララーの服装は、部屋を出た時の装備とは変わっていた。
と言ってもケープ付きのマントを羽織っただけなのだが、
それによってモララーのあるスキルレベルが格段に上がっていた。

隠蔽−ハインディング−

そのスキルレベルが高いと、周囲の景色に自分の身体を溶け込ませて見えなくさせることが出来る。

もちろん完全に消せるわけではないし、
対応するスキルを持つ者やモンスターには見破られてしまうこともある。
だがソロプレイヤーには必須スキルであると言ってもよい。

一度に対処できるモンスターの数が少ないソロプレイヤーにとって、
モンスターの群れと遭遇しそうになった時は隠れてやり過ごしたり逃げたりすることが、
重要となるからだった。

基本ソロで戦っているモララーも意識してスキルレベルは上げてあるが、
レベルは高ければ高いほど良いため、スキル効果をアップさせるマントを装備していた。

1エリアごと地図を確認しつつ進んでいくモララー。

途中遭遇したモンスターは同時に出てきた数が二匹までは一度に相手をして倒し、
三匹以上は隠れ、時には逃げてやり過ごした。

そして目的の鉱石を充分に確保した時には、空は赤くなりかけていた。

( ・∀・)「こんなもんか」

安全エリアでHPを全回復させたモララーは残りの回復POTを腰のポーチに移動させる。
念の為クリスタルも持ってきたが、今回は使わずに済みそうだ。

そしてもう一つ、違う色のクリスタルを手にしてじっと見つめて少し悩んだ後、
そのクリスタルも腰のポーチにしまった。

かわりに出した地図を広げる。

( ・∀・)「……帰りはこのルートだな」

鉱石の採集を目的としている時は地図で一つずつ確認していたが、
あとは脱出するだけならばそんな必要はない。
モララーにとってその程度のルートは覚える自信があったし、
ついでに帰りしなにもう一回採集できそうなポイントもチェックをした。

( ・∀・)「…よし」

地図をしまうと腰をひねる様なストレッチをし、
呟くような声で気合を入れると、モララーは出口へのルートを進み始めた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:49:58 ID:aFIw5Z7M0<>
5.ケベックダイヤモンド



そのエリアに入った瞬間、モララーは妙な違和感を感じた。

そこは森の中では大きなエリアに属し、
中心には鉱石を採取出来る石舞台があるエリアだった。
更にその石舞台のそばには芝生エリアが広がっており、
安全地帯であればコンサートでも開けそうな立地であった。

石舞台に繋がる道は大きなS字を二つ描いており、
ある程度進まないと中央のフィールドを見ることは出来ない。

( ・∀・)「なんか、さっき採取した時と雰囲気が違う気が…」

自分を落ち着かせるために独り言を呟くモララー。

普段のモララーであれば君子危うきに近寄らずを実践しているところだが、
何故か今日はそのまま進んでいく。

それはいざとなればポーチの中にあるクリスタルを使えば良いという安心感からの行動ではあったが、
それ以上に嫌な予感を感じており、進まなければいけないような気がしていた。

S字の道を半分くらい来たところで改めてフードをかぶりなおし、
マントの前を合わせて身体を包むようにする。

このエリアでは中央のフィールドに一つ目に角を一つ持った人型のモンスター『サイキュロプス』が現れる。

ポップ数は1から3の間でのランダム。
昼前に入った時は2体だったため戦い、勝利し、アイテムもゲットできた。

見た目はギリシャ神話に出てくるキュクロープスにそっくりであり、
名前もラテン名と英名を混ぜたようだった。
しかし神話に出てくるそれは巨人のはずなので、
このエリアに出てくるサイキュロプスのサイズが180センチ程のことを考えると、
どちらかと言えば日本神話に出てくる一つ目の鬼と呼んだ方がしっくりきていた。

更に色も赤と青の二色が確認されており、
特に青が持つ棍棒は日本の昔話に出てくる鬼の持つそれにそっくりで、
このエリアに入るプレイヤーの間では、『赤鬼、青鬼』の愛称で呼ばれていた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:51:04 ID:aFIw5Z7M0<>
そんなことを考えながら中央のフィールドが見渡せる場所に辿り着いたとき、
モララーの目の前には思いもしなかった光景が広がっていた。

( ・∀・)「……へ?」

そこには、神話に出てくるようなキュクロープスが居た。

( ・∀・)「…サイクロプスが英名なんだっけ」

身の丈は3メートルほど。
勿論ただ背が高いのではなく、横幅もしっかりとあり、
その威圧感は見ただけで身を震わせてしまいそうになるほどだった。

( ・∀・)「なにこれやだこわい」

肌の色は青銅色で、それこそ青銅のような硬さを思わせる光沢を放っている。
片手には背丈ほどの棍棒を持ち、大地を突けば地面が震え、
振り回せば空気を裂く音がうねる様に身体を襲う。

顔の中心にある横に長い目の奥では、黒い瞳がギョロギョロと動き、
周囲を見ている。

( ・∀・)「こんなのもいるんだー。へー。なにかのいべんとかな」

モララーの呟きは、たとえすぐ横に誰かいたとしても聞こえなかったであろう。
それほどに小さい声は誰かに聞かせるためではなく、自分を落ち着かせるためなのだが、
それは成功しているようで事態を悪化させない程度の効果しかもっていなかった。

( ・∀・)「って……あれ、え?まじ…か?」

その巨神と戦う人影が一つ。
身の丈ほどの両手剣を振り回す姿は勇ましく頼もしく見えるが、
少し観察すれば劣勢であるのは明らかだった。

そしてモララーは、その者と話をしたことがあった。

(;・∀・)「あいつ確か、フサギコとショボンの同じギルドのやつ…。だよな。
確か名前は、ジョルジュ…だっけか」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:52:17 ID:aFIw5Z7M0<>
一気に現実に引き戻され、巨人以外を観察する。
と同時に無意識のうちに右手が動きウインドウを出す。
そしてメッセージウインドウに自分の名前とジョルジュの名前、
そして状況を簡潔に書いてメッセージを交わしたことのある二人に送った。

(;・∀・)「ジョルジュも相当強いって話だったよな。確か」

心の中の確認が、口から洩れる。
それほどに動揺しているのだが、視線は確認すべきことを抑えていく。
それはモララーも幾つかの死線を乗り越えてきた実績からの無意識な行動だった。

(;・∀・)「いや……やばいだろ。あれ」

先程も確認したモンスターの頭上に浮かぶ名前は『キュクロープス』。
神話と同じ名前。
ヒットポイントバーは三本。
まだ一番上の半分しか減っていない。

対してジョルジュのヒットポイントバーは既に半分まで減っており、
イエローになっていた。

( ・∀・)「逃げられない?」

血の気の引くような感覚がモララーを襲う。

おそらくクリスタルは使えるはずだが、逃げること…クリスタルを使うことができないのだろう。

ジョルジュの後方と右横には、普段出現するサイキュロプスの赤と青が一体ずつ居た。

(;・∀・)「転移結晶を使って跳ぶまでの数瞬に攻撃されたらキャンセルさせられちまう」

思わず自分の腰あるポーチをまさぐった。

どれほど戦っているのかは分からない。
だが、あの状態でまだ生きていられたのはジョルジュの強さが本物であることに他ならない。
けれどしかし、これ以上は続かないであろうことも確かだった。

巨神「  ーーーー!!!」

音と言うよりは空気の砲撃の様な叫び声を上げた巨神キュクロープス。
そして棍棒を振り、ジョルジュに向かって振り下ろした。

(;・∀・)「!!!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:53:19 ID:aFIw5Z7M0<>
振り下ろされる棍棒を受け止めることはおそらく無理。
けれどただ逃げてもそのスピードと攻撃範囲でヒットポイントが多量に削られることは、
戦っていないモララーにも分かる。

( ・∀・)「!」

その瞬間目の前で行われたことに、モララーは一瞬ついていけなかった。

自分に向かって振り下ろされた棍棒を凝視しながら両手剣を構えるジョルジュ。
そして両手剣の攻撃範囲内に入る瞬間、彼は飛び上がりながら両手剣を左から右に剣技を放った。

緑色に光り輝いた両手剣が青銅の棍棒に当たる。

鈍い金属音が響いた瞬間、左側に吹っ飛ぶジョルジュがいた。

巨神サイキュロプスが放った棍棒はほんの少し軌道を反らせたが、
勢いは変わらず大地を叩きつけた。

衝撃波が円を描いて広がる。

しかしその場から吹っ飛んでいたジョルジュにまでは届いていない。

逆に近くにいた赤青のサイキュロプスを巻き込んでおり、2匹の動きを止めていた。

(;・∀・)「剣技による反発力を使って回避?
んなこと思いついてもやれるやつがいるなんて」

モララーの視線の先で、倒れていたジョルジュが両手剣を杖の様にして立ち上がる。

( ・∀・)「今なら逃げられる!」

しかし逃げようとはせず、今の回避で一目盛だけ減ったHPを回復させるかのように、
腰のポーチから取り出した回復POTに口を付けた。

( ・∀・)「はあ!?なんで逃げないんだよ!!」

思わず大声を上げてしまうが、巨神の咆哮と土煙でエリアは包まれており、
ジョルジュにその声は届いていない。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:54:19 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「もしかして、転移結晶持ってないのか?
でも、普通に逃げることくらい……!!」

その場から動かずに、両手剣を杖の様にしているジョルジュを見て、その足元に視線を向ける。

ジョルジュの右足首から先は欠損していた。

(;・∀・)「マジかよ」

POTを飲みながら、真剣な顔で巨神を見るジョルジュ。

欠損時間があとどれほどなのかは分からないが、巨神と赤青が動き始めるより前だとは考えにくい。

(;・∀・)「た、助けないと」

踏み出そうとする足が、震えている。

( ・∀・)「え?」

足が動かない。

( ・∀・)「お、おい、おれの足…」

震える足を支えるように手を添えるが、その震えは止まらない。

(;・∀・)「い、いやだ、おれは、変わるんだ。この世界には、逃げるために来たんじゃない…」

両足をそれぞれの手で叩くモララー。

(;・∀・)「もういやだ。見てみぬふりをするのは。あの時みたいに動けないのは。
ここには別人に、勇気を持った男になりたくて来たんだ」

止まらない震え。
それは上半身にも及ぶ。

( ;∀;)「おれは、変われない?あの頃のままなのかよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:55:43 ID:aFIw5Z7M0<>



『……逃げて…』





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 21:57:58 ID:aFIw5Z7M0<>



目の前に浮かぶ母親の必死な笑顔。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:01:10 ID:aFIw5Z7M0<>
涙で曇った視線の先に、両手剣を構えたジョルジュの姿。
その先には獲物を見付けた巨神がゆっくりと身体を向けている。
赤と青も硬直が解け、動き始めている。

ジョルジュの足の欠損は回復していない。

( つ∀;)「   」

震えたままの右足で、一歩踏み出す。
そしてもっと震えている左足を、更に前に出す。

( ・∀・)

涙を拭き、さらに一歩前に出る。

( ・∀・)「なんとか逃がすことが出来れば、おれならそのあと転移結晶で飛べる!」

震えたままの足。
けれどその歩みは勢いを増して、走り始めた。

マントを脱ぎ棄てる。

( ・∀・)「おれは……かわるんだ!」

ジョルジュに対して身体を完全に向けた巨神サイキュロプス。

一つ目に怒りに満たし、ジョルジュを睨む。
 _
(;゚∀゚)「流石にそろそろやばいか」

口を開くと、飲み終えた回復POTを地面に落ちて転がった。

POTで回復する時間は稼げたものの、
右足首から下が欠損しているから逃げることは勿論動くのも難しい。

視界の隅のカウントは、残り13秒。
 _
(;゚∀゚)「あと13秒なんとか防げれば…」

( ・∀・)「おれがその13秒を作ってやるよ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:05:19 ID:aFIw5Z7M0<>
ほんの少しだけ死を覚悟した瞬間、自分の横を走り抜けた男をみてあっけにとられる。
 _
( ゚∀゚)「え?お、おい!」

その顔には見覚えがあるが、友人と呼べる間柄ではない。

(#・∀・)「とりゃあああああああああ!!!!!!」

爪を赤く光らせて突進するモララー。

光る爪は残像を残し、まるで炎の様にジョルジュの目には映った。

巨神「ぐるああああ!!」

突然現れたモララーに反応が遅れた巨神。

その足元に潜り込み、右足の踵の少し上側に最初の一撃を与えるモララー。
それは単発の剣技であり硬直時間もほとんどないため、
そのまま剣技ではなく二回爪を振るい、いったん距離を取った。

自分を攻撃した者を見るために、巨神が振りかえる。

自分を見下ろすその怒りに満ちた瞳に恐怖で身体を震わせそうになるが、
モララーは巨神が自分に対して体を横に向けた瞬間に跳躍した。

それは今自分が覚えている爪の剣技の中で一番数の多い連撃。
一発一発の攻撃は強くないが、八連撃を全て当てればかなりのダメージを与えることが出来る。
しかも突撃属性をもっており、前に向かって跳躍したモララーの身体は普段の倍の距離を飛び、
一瞬にして巨神の右足に辿り突き、地に足を付けることなく右手に装備した爪でまず左から右に攻撃をした。

青い爪痕が巨神の肌に傷を作る。

モララーはそのまま身体をひねって一回転し、その爪痕をなぞるようにもう一度一閃する。

巨神の肌に浮かぶ爪痕の青い光が濃くなり、上からは苦痛に耐えるような唸り声が降り注いだ。

モララーはそこでやっと土に足を付け、同時に手首を返して右下から左上に向かって爪を振る。
更に振り上げた右手を弧を描くように左下に下ろし、今度は右上に向かって攻撃。
右上に振り上げた右手を更に弧を描くように右下に下ろし、再度左上に振り上げる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:10:39 ID:aFIw5Z7M0<>
腕を振って目の前に無限大の図を光の残像で描き、重なる中央に爪で格子の線を引いた。

巨神「ぎゅりゅああああああああぁああああぁああああ!!」

最初の攻撃と合わせて五つの攻撃を命中させ、更に一撃を加える。

( ・∀・)!

七つ目の攻撃は、今までと変わって下から上への一撃。
今描いた格子の図を打ち消すような強く長い斬撃を与える。

それは今装備している爪の持つ攻撃範囲をはるかに超え、
足元から三メートルほどの高さまで爪痕を残す。

( ・∀・)「よし!」

そして八つ目の攻撃を放つために腰を落とし、
爪を構えて突進しようとした瞬間、横から衝撃が襲った。

( ・∀・)「うげっ」

重なり合って転がるモララーとジョルジュ。

突進してきたジョルジュがモララーの身体に体当たりをしてきたのだった。

(#・∀・)「てめぇ!」
 _
(#゚∀゚)「周りをよく見ろボケ!」

起き上がってジョルジュに悪態を吐こうとしたモララーだったが、
今まで自分がいた場所を巨神の持つ棍棒がすさまじい速さで通り過ぎたのをみて、
冷や汗を流した。

(;・∀・)「あー。サンキュ。助かった。」
 _
( ゚∀゚)「あ、いや、こっちこそサンキュ。おかげで持ち直したぜ」

慌てて立ち上がる二人。

そして武器を構えながら巨神と距離を取る。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:12:22 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「結晶はどうした?使えないのか?」
 _
( ゚∀゚)「もってたのは使い切った」

( ・∀・)「うわ。転移結晶も?」
 _
( ゚∀゚)「使おうとしたら後ろから攻撃くらってキャンセルと消滅」

(;・∀・)「うわぁ」

無駄口を叩きながらも武器を振るう二人。

しかし連携は取れていないため、巨神と二匹の攻撃を受け、躱し、
反撃してダメージを与えるのが精一杯だった。

( ・∀・)「ていうか、こいつなんだ?」
 _
( ゚∀゚)「知らん」

( ・∀・)「言い切りやがったよこいつ」
 _
(;゚∀゚)「おれにも分からないんだよ。ここの湖に行けるルートが出来たって噂を聞いて、
ちょっとチャレンジしに来ただけだから」

( ・∀・)「……湖に?」
 _
( ゚∀゚)「ああ。あの石舞台で儀式を行うと、鍛冶の神様が現れて道を作ってくれるって」

( ・∀・)「誰から聞いたのか知らねえけど、それ多分正解だけど間違ってる」
 _
( ゚∀゚)「あ?」

( ・∀・)「あいつがキュクロープスだとしたら、鍛冶の神様だから現れたのは正解。
でもただでは作ってくれないってことだろ」
 _
( ゚∀゚)「!」

( ・∀・)「……まったく」

連携は拙いが二人とも実力者ではあるためその戦い方は安定している。
だがこの巨神と二匹を倒すには絶対的な攻撃力が足りないのは事実であり、
二人のHPはじりじりと減っている。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:13:22 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「POTの残りは」
 _
( ゚∀゚)「あと一本」

( ・∀・)「ダメじゃん!ダメダメじゃん!」
 _
( ゚∀゚)「何も言い返せない」

( ・∀・)「逃げるしかないけど」
 _
( ゚∀゚)「逃げ道は出入り口の二つ。
でも向かおうとすると赤と青が立ちふさがるし、うしろからでかいのも攻撃してくる」

( ・∀・)「やろうとはしたんだ」
 _
( ゚∀゚)v「もちろん」

( ・∀・)「この状態でも余裕だなおい」
 _
( ゚∀゚)「……おまえは転移結晶持ってるんだろ。逃げてくれ」

( ・∀・)「は?」
 _
( ゚∀゚)「自分の蒔いた種で、他の誰かを死なせるわけにはいかねえよ。
しかもそれが仲間の友達だなんて、死んでも死にきれねぇ。
おまえが転移結晶を使ってる間は俺が守るから、だから…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:14:04 ID:aFIw5Z7M0<>



『おまえ、あいつと友達なのかよ』





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:16:00 ID:aFIw5Z7M0<>


(  ∀ )「ふざけるな」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:16:45 ID:aFIw5Z7M0<>


『なわけねぇじゃん。担任に言われたからしょうがなくだよ』




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:17:30 ID:aFIw5Z7M0<>


 _
( ゚∀゚)「え?」




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:18:17 ID:aFIw5Z7M0<>



『だよなぁ』
『ほら、おれ中学受験すっからさ、内申内申』




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:19:16 ID:aFIw5Z7M0<>



(  ∀ )「何言ってやがる」




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:19:59 ID:aFIw5Z7M0<>



ジョルジュの漏らしたほんの一つの言葉が、
モララーの心に耳障りな言葉を思い出させた。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:21:51 ID:aFIw5Z7M0<>



『おれがあんな奴と友達になるわけないだろ』




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:22:57 ID:aFIw5Z7M0<>
あんな父親の子供である自分に、友達が出来た。
母親を守ることが出来なかった自分に、友達が出来た。


友達が、できた。


そう、思っていた。


嘘だった。


うそだった。


ウソダッタ。


だまされた。


そうなんだ。


できるわけないんだ。


ともだちなんてできるわけないんだ


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:23:48 ID:aFIw5Z7M0<>
(  ∀ )「     こんなおれにともだちなんてできるわけない   」

(  ∀ )「     もうにげたくないからたたかっているんだ   」

(  ∀ )「     ともだちのためとかじゃない   」

(  ∀ )「     じぶんのために   」

(  ∀ )「     よわいじぶんをかえるために   」

(  ∀ )「     もうにげるのはいやだから   」

(  ∀ )「     だから   」








.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:24:52 ID:aFIw5Z7M0<>
 _
(;゚∀゚)「お、おい」

(  ∀ )「一人で逃げるくらいなら、最初から飛び出したりしない」
 _
( ゚∀゚)「へ?」

突然ぶつぶつと呟き始めたモララーに動揺するジョルジュ。

おもわず肩を掴もうとしたジョルジュの手を払いのけ、
心配そうに自分を見る男を強い瞳で見るモララー。

(#・∀・)「おれは、戦う。逃げたりしない」
 _
(;゚∀゚)「い、いやでも」

「「戦闘中によそ見とは流石だな!!」」

巨神が振り下ろした棍棒を、真下から打ち返す巨大金鎚と大斧。
 _
( ゚∀゚)「おまえら!」

( ´_ゝ`)「華麗なる流石兄弟がうちの可憐なる兄者、仲間の危機を救うために推参!」

(´<_` )「二人とも大丈夫か」

( ´_ゝ`)「弟者ノリ悪いー。やろうって言ったのにー」

(´<_` )「やるなんて一言もいっとらん。っていうか気持ち悪いからその喋り方やめろ」

( ´_ゝ`)「兄者かなしいー」

(´<_` )「一回フロアボス戦参加して来い」

( ´_ゝ`)「遠回しな死亡フラグキター」

同じ顔をした二人を呆然と見るモララー。
そういえばショボンやフサギコと喋っているのを見たことがあるような気もするが、
直接話したことは無かった。
 _
( ゚∀゚)「余裕なのはお前らだろ」

巨神の棍棒を跳ね返した後、防戦しつつも反撃を加える二人。
鮮やかな連携で防御と攻撃を行う。
巨大な金鎚と斧を軽々と振り回して棍棒の軌道を変え、
空いた場所に片方が攻撃を加えている。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:25:49 ID:aFIw5Z7M0<>
巨神のHPを確認すると、
いつの間にか一本目のヒットポイントバーは消え、二本目になっていた。

( ´∀`)「ぼおっとしちゃだめもな」

更に横から現れる長身の男。
背よりも高い三又の槍がきらめいた。

▼・ェ・▼「キャン!」

それは狼を連れたビーストテイマー。

( ´∀`)「モナ達が近くで狩りをしていてよかったもな」

露店をやっていると時折ビーストテイマーを見るし客にもいるが、
彼のように菁銀色の毛並みをした狼を連れたテイマーは彼しか見たことが無いため、
モララーは覚えていた。

( ´∀`)「赤鬼さんの相手は任せてほしいもな。
とりあえずそっちに行かないようにしておくもなよ」

( ・∀・)「そっか、フサギコと同じギルドの」
 _
( ゚∀゚)「モナー!ビーグル!クックル!」

記憶の中の名前を呼び起こそうとした時に、隣で名前を叫ぶジョルジュ。

思わず眉をひそめてしまうと同時に、名前が一つ多いことに気付く。

( ・∀・)「クックル?」

モナーとビーグルが赤いサイキュロプスに向かう背中の向こう側に、
同じく長身の男が鬼神のごとく槍を振るっていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:27:27 ID:aFIw5Z7M0<>
( ´_ゝ`)「クックルナイス!」

(´<_` )「棍棒はおれ達で封じるから攻撃は任せた!」

二人の声に頷く男。

二人との連携は見事なもので、巨神の振り下ろす軌道を即座に理解して立ち位置を変え、
その処理は二人に任せて他の攻撃を気にしつつも色とりどりのエフェクトを輝かせながら攻撃を続けていた。

その動きに見とれてしまったモララーだったが、
青いサイキュロプスがいたことを思い出して慌てて周囲を見ながら武器を構えた。

ξ゚听)ξ「反応遅いわよ。ま、この状況じゃ仕方ないか」

そんなモララーの視界に映る豪奢な金髪。
その輝きに負けない美貌を誇る少女が、隣に立つ。

( ^ω^)「おいすー。ちょっとおくれてごめんだお」

ξ゚听)ξ「今のところ私達の出番はない…かな?」
 _
( ゚∀゚)「ツン!ブーン」

( ・∀・)「あ、あんたら」

屋台によくやってくる二人。
カップルなのかよく分からないが、
美少女の方が男の方を好きらしいのはなんとなく分かる。

( ^ω^)「ジョルジュを助けてくれてありがとうだお」

( ・∀・)「あ、いや、うん」

にこやかにお礼を言うブーンと呼ばれた男に、妙な返事をするモララー。

ξ゚听)ξ「ジョルジュ、今のうちに言い訳考えておいたほうが良いわよ」
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ^ω^)「ショボンがかなりおかんむりだお」

ブーンが少し頬を引きつらせながらジョルジュに言った言葉。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:28:39 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「ショボン?」

耳慣れた名前を聞いたモララーが問いかけると、横で何か大きなものが落ちたような音がした。

( ・∀・)「え?」
 _
( ∀ )「やべぇ…どうしよう」

(;・∀・)「え?ジョルジュ?だよな?」

両手剣を落としてしまったジョルジュが顔面蒼白になっていた。

ξ゚听)ξ「で、モララー…だったわよね。あっちは見なくていいの?」

(;・∀・)「え?」

金髪の美少女、ツンと呼ばれた少女が指差した先で戦っていたのは長い黒髪の女性。

臙脂の胴着に紫の袴を穿いた美人が、薙刀を操って青いサイキュロプスと対峙していた。

( ・∀・)「一人じゃ!」

思わず走り出そうとするモララーの前に差し出されるツンの細剣とブーンの片手剣。

ξ゚听)ξ「心配ご無用よ」

( ^ω^)「あの二人なら大丈夫だお」

( ・∀・)「え?二人?」

モララーの視線の先では薙刀を振るう美人のみ。
その動きは優雅さがあり、切り裂く血しぶきやポリゴンへと変わる肉片が花弁のようにさえ見える。

( ・∀・)「……よく見るとグロイな」

( ^ω^)「クーも容赦ないから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:29:40 ID:aFIw5Z7M0<>
川 ゚ -゚)「いくぞフサギコ!」

ミ,,゚Д゚彡「いつでも大丈夫だから!」

クーと呼ばれた美人が青いサイキュロプスの棍棒を跳ね上げる。

ほぼそれと同時にその青い体にいくつもの黄色い光の筋が走った。

ミ,,゚Д゚彡「これで終わりだから」

サイキュロプスの後方から現れるフサギコ。

濃紺の胴着と袴姿で、刀を一振りしてから鞘に納めた。

その動作と共に青いサイキュロプスがポリゴンへと変わった。

( ・∀・)「フサギコだよな」

普段喋る時とは表情すら違うその凛とした姿に、思わず息をのんだモララー。

ミ*,,゚Д゚彡「モララーだから!」

だがこちらに駆け寄ってきたフサギコはいつものフサギコで、
なんとなく悪態を吐いてしまう。

( ・∀・)「空気よめ」

ミ,,゚Д゚彡「え?」
 _
( ゚∀゚)「クー!うしろ!」

笑顔で駆け寄ろうとしてきたフサギコに、思わず一言漏らしてしまうモララー。
だがそれと同時にジョルジュの大声が響く。

川 ゚ -゚)「ん?」

青いサイキュロプスを倒したことを確認したクーもこちらに歩み寄ろうとしたが、
その後ろでは新しい青いサイキュロプスが実体化した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:30:49 ID:aFIw5Z7M0<>
ξ゚听)ξ「クー!」

既に棍棒を振り上げていた青いサイキュロプス。
ジョルジュの声とツンの叫びで振り向いたクーだったが、武器を構えるには遅い。

(´・ω・`)「ドクオ!ブーン!」

青いサイキュロプスの額に刺さる大振りのナイフ。
到着したショボンが投げたそれは、サイキュロプスの動きを一瞬止める。

態勢を整えるだけならばクーにとってその一瞬があれば充分であり、
攻撃と防御両方につなげられるよう薙刀を構える。
本来ならば即座に攻撃か回避をすべきなのだが、
ショボンの声によって彼女は最良の動きをしていた。

('A`)「油断するなよ」

( ^ω^)「こんなポップの仕方もあるんだおね」

ショボンがナイフを投げる前から走り出して加速していたドクオと、
ツンが叫ぶのとほぼ同時に飛び出したブーンが青いサイキュロプスに左右から一撃を与える。

青「ぎゃりゃああああ!」

雄叫びをあげて硬直する青いサイキュロプス。
クーはそれを確認してから改めて距離を取り、
ドクオとブーンは追撃を一回行った後左右に広がってそれぞれに武器を構えた。

(´・ω・`)「クーとフサは引き続き青の相手!倒さないで足止め!
ドクオはモナーのフォローに!
モナー!もう少し動きを止めておいて!
ジョルジュ!現状報告!」

戦場に戻るべく走り出すフサギコ。
モララーは自分の知らぬ者の様に指示を出すショボンを見て驚くが、
すぐに一歩引いて周りを見渡せる位置に移動した。
 _
(  ∀ )「あ、あの、その、おれはただ湖で良い魚を」

(´・ω・`)「ジョルジュ!敵の情報!」
 _
( ゚∀゚)「!あ、ああ、そうだな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:31:48 ID:aFIw5Z7M0<>
ショボンを見た途端に再び顔色を悪くしたジョルジュだったが、
そのショボンから発せられた鋭い口調の言葉で我に返る。
 _
( ゚∀゚)「青は今見た通り倒されて後の再ポップが異常に早い。
赤は再ポップはそれほど速くないが、強さがランダムだ。
おそらくこのエリアに出る赤サイキュロプスのレベルの内でランダムで出ると思う。
でかいのはよく分からない。
弱点は不明。棍棒は通常でも振りは早くて通常棍棒のソードスキルしか今のところは出してない。
一本目の半分くらいはおれの両手剣で削ったけど、
半分は助太刀してくれたモララーが削ってくれた。
両手剣でのソードスキルで効かなかった技は無いけど、
特に大きくダメージを与えた技も無かったと思う」

不完全で推測ばかりだが自分が戦った内容から情報をひねり出すジョルジュ。
一見粗野で敵のステイタスやスキルを読むのは苦手に見えるが、
ここまで戦って生き抜いてきた経験と実力は確かなものだった。

( ・∀・)「へー。ちゃんとそういうの考えてたんだ」
 _
(;゚∀゚)「うわ。ひでぇ」

(´・ω・`)「モララー。ジョルジュを助けてくれてありがとう。
感謝はまた後でゆっくりと。で、」

( ・∀・)「おれの武器は爪。攻撃したのは右足踵付近。
使ったのは突進単発斬撃技と、突進を最初と最後に打つ八連撃。
属性は最初と最後が突で、残りは斬。
最後の突は出さなかったから、最大威力は与えられなかった。
その他で通常斬撃を二発当ててる。
とりあえず斬と突ではプラス補正もマイナス補正も認められなかった。
私見だけど、あのモンスターは名前からしてキュクロープスがモデル。
鍛冶の神なのに武器が棍棒なのが気になるが、
前に見た絵画も棍棒だった気がするからそこまで注意する必要もないとも思う」

(´・ω・`)「ありがとう。さすがだね。
キュクロープス、英名サイクロプスに関しては僕も同じ意見だよ」
 _
(;゚∀゚)「……」

ξ゚听)ξ「なかなかやるわね」

(;^ω^)「ぼくより凄いお」

ξ゚听)ξ「あんたは観察とか苦手だからね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:33:10 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「で、逃げないで戦うのか?今のお前らなら撤退も可能だろ?」

(´・ω・`)「最初は逃げるつもりだったけどね。
この敵、もしかすると一回しか倒せないイベントモンスターの可能性もあるから」

( ^ω^)「そうなのかお?」

(´・ω・`)「みんなに先行してもらってちょっと調べたんだ。
先に兄者たち四人が辿り着いたのも連絡貰ってたから余裕があったしね。
まだ未確定だけど、あのモンスター、イベントボスである可能性は高い」

( ・∀・)「イベントボス?」

(´・ω・`)「詳しい話は後で。モララーは連携が難しいと思うから、後ろにいるか脱出を」

( ・∀・)「…いや、いるよ。ここまでかかわったんだし」

(´・ω・`)「よかった」

ニッコリと微笑んだショボンに違和感を感じつつも、
すぐに戦場に視線を移した彼に何も言えないモララー。

( ・∀・)(「良かった」?何が?笑って?)

(´・ω・`)「ブーン!クーとチェンジ!クーは青のHPが赤になったら麻痺!」

( ^ω^)「了解だお!」

川 ゚ -゚)「分かった!」

駆け出したブーンと、その動きに合わせて距離をとるクー。

(´・ω・`)「モナー!ドクオ!ビーグル!HPを赤く!ツン!その後麻痺!」

( ´∀`)「分かったもな!本気出すもなよ!ビーグル!ドクオ!」

▼・ェ・▼「きゃん!」

('A`)「ん」

ξ゚听)ξ「相変わらず覇気がないわね」

今までのらりくらりと赤いサイキュロプスの繰り出す攻撃を受け止め、時に流し、
他のメンバーに攻撃しないようその場に留まらせていたモナーが攻撃に転じた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:34:11 ID:aFIw5Z7M0<>
(´・ω・`)「兄者!弟者!クックル!カウント15で本気出していいよ!
とりあえず二本目を消す!15!」

( ´_ゝ`)「おそいぞ!」

(´<_` )「了解した!」

( ゚∋゚)「  」

( ・∀・)「え?本気出してない?」

モララーの呟きを聞いて笑顔を見せるショボン。
そして自らも円形の武器を構える。

(´・ω・`)「今やってもらっているのはあのモンスターの動きを読むための、
防御と警戒が中心だからね。
『本気の攻撃』はしていない。
でも、だいたい読めたから……。10!!」

ショボンのカウントダウンと共に敵と距離を取り始める三人。

(´・ω・`)「モララー、ぼく達の戦いをよく見ておいてもらえると嬉しい。
みんな!残り2までにセット!!9!ジョル!」

( ・∀・)「え?」
 _
( ゚∀゚)「おう!」

両手剣の剣技を使い、間合いを詰めるジョルジュ。

(´・ω・`)「8!」

そのまま一撃を与えつつ離脱。
与えるダメージが大きい大技の一つだが、剣技後の硬直時間が長い。
位置取りさえ間違えなければ今の様にそのまま離脱もできるが、使うタイミングは難しい。
本人の熟練度は勿論のこと、仲間のサポートが必須と言ってもいい技であろう。

(´・ω・`)「7!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:35:20 ID:aFIw5Z7M0<>
突然の大技を受けて叫ぶ巨神。
足元を駆け抜けて背を向けたまま硬直したジョルジュを見付け、棍棒を振り上げた。

(´・ω・`)「6!」

巨神の額に当たる緑色の光。
棍棒を振り上げたと同時であったため巨神はバランスを崩す。

光の正体はショボンの投げたチャクラムだった。

(´・ω・`)「5!」

体勢を立て直した巨神が、横目で自分を睨むのを確認したショボン。

巨神の注目を自分に向けさせることに成功しカウントを叫びつつ、
エリアの一番外側を沿い、巨神の後ろ側に向かって走る。

そして、走りながら受け取ったチャクラムを再び投げた。

(´・ω・`)「4!」

巨神を取り囲むように移動を始めたフサギコ、ブーン、モナー、ビーグル、ドクオ。

(´・ω・`)「3!」

ショボンを追って体勢を整えた巨神。
その背中に放たれる弟者の強力な一撃。

(´<_` )「とりゃあああ!!」

剣技によって飛び上がったその跳躍は、十メートルに届くほどである。
そして振り下ろされた斧が巨神の背筋の上に赤い線を刻んだ。

巨神「ぎゃりゃああああああぁぁぁぁああっぁああ!」

頭上の悲鳴を聞きながら着地し硬直した弟者を兄者とクックルが運ぶ。

( ´_ゝ`)「流石だな」

( ゚∋゚)「    」

(´<_` )「褒めても防具のメンテナンスぐらいしかやらないぞ」

(´・ω・`)「2!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:36:31 ID:aFIw5Z7M0<>
攻撃によって動きを止めた後、自分を攻撃した者を探そうとまた振り返ろうとする巨神。

いつの間にかツンとクーも巨神を取り囲む輪の中に入っていた。

(´・ω・`)「1!」

全員の武器が光り輝く。
赤、青、緑、紫、橙。
色は違えど、その切先は全て巨神に向かっている。

(´・ω・`)「ゴー!!」

号令によって全員が動いた。

数名は突進属性のある剣技を。
ある者は最大回数の連撃を。
時に最大威力の単発重攻撃を。

力強く、激しく、柔らかく、優雅に、勇ましく、舞うように、巨神のそばで乱舞する光。

(´・ω・`)「防御!」

唯一遠目から巨神の頭に向かってチャクラムを投げていたショボンが叫ぶ。

巨神「      !!!!!    !!!!!   」

音になっていない叫びをあげる巨神。

それは二つ目のHPバーも消え、残りの一つになった瞬間だった。

その音にならない声は衝撃波となり全方位を襲う。

ショボンの声で防御態勢は取っていたものの、突風の様なそれにある者は押されて後ずさり、
ある者は倒され地面を転がった。

(´・ω・`)「ふさ!ドクオ!クー!ブーン!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:37:40 ID:aFIw5Z7M0<>
ミ,,゚Д゚彡「だ、大丈夫だから!」

('A`)「問題ない!」

川 ゚ -゚)「同じく!」

( ^ω^)「大丈夫だお!」

転がった四人が態勢を整える。
今すぐに回復をしなければいけないわけではないが、
他のメンバーに比べるとHPが減った量は大きい。

(´・ω・`)「四人はPOT回復!」

ショボンが走りながらチャクラムを投げ、巨神の注意を自分に向けようとするが、
巨神の生み出した気流が巨神を守る様に渦を巻いている。

四人は何も言わずに回復POTを取り出し、小走りに後方へ退避する。

(´・ω・`)「なにかくる。モナー!クックル!防御!
クーも僕と頼む!」

( ´∀`)「分かったもな!」

( ゚∋゚)「   」

川 ゚ -゚)「了解した!」

モナーとクックルが、それぞれ槍と棍を回転させる。
クーとショボンは合流し、その間に二人とも武器を棍に替えていた。

隣り合わせに立った二人はそれぞれに棍を回転させる。
ギリギリで当たらない近さであるため、棍のレベルの低い二人の出す防御の剣技でも、
充分な広さを持てた。

(´・ω・`)「兄者!弟者!ジョルジュ!」

名を呼ばれる前に動いていた三人はそれぞれに武器を構えて三組の後ろに一人ずつ立つ。

(´・ω・`)「ドクオ!フサギコ!ブーン!ツン!」

そしてその後ろに四人が分かれて立った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:39:29 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「棍の剣技で特殊攻撃への防御。
その後ろに敵の棍棒が来た時の物理的防御をする重量武器班。
そしてその後ろには攻撃に転じる際のスピード重視の軽量武器班…か。
なるほどね」

戦闘エリアの外で、解説者の様にモララーが呟く。
それは正確で正しい観察であったが、一つ因子が抜けていた。

(´・ω・`)「ビーグル頼むよ!モナー!タイミング宜しく!」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´∀`)「わかったもな!ビーグル頑張るもなよ!」

モナーの足元で毛を逆立てて威嚇をしている一匹の小型狼。
それがショボンに名前を呼ばれると一声鳴き、
モナーが名を呼ぶと嬉しそうに身体を震わせて足元に擦り寄った。

( ・∀・)「?」

巨神「ぐぎゃああああぁぁぁらうあぁぁああああ!」

巨神の叫びとともに、渦巻いていた気流が周囲を襲う。

(´・ω・`)「っ!!みんな!!!」

( ´∀`)「大丈夫もな!」

( ゚∋゚)「    」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ!二人ならいける!」

四人の生み出した剣技の光はそれぞれの後方に居る仲間を包み、
荒れ狂う気流からその身を守る。

しかし敵の気流も恐ろしい強さであり、
幾ばくかの風の刃が剣技の壁を突き抜けて中の者を襲った。

( ´∀`)「ビーグル!回復!」

▼・ェ・▼「きゃん!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:41:49 ID:aFIw5Z7M0<>
巨神の放った風が弱まった瞬間に自分のお供の名を呼ぶモナー。
その声に反応したかのように身体を震わせる小型狼。

( ・∀・)「……まじか?」

水で濡れた体を乾かすかのような動きをすると、抜けた毛が周囲を漂い全員のもとに届く。。
そしてその毛に触れた瞬間、彼らのHPは回復した。

( ゚∋゚)「   」
 _
( ゚∀゚)「サンキュ!ビーグル!」

ビーグルの放った回復技は回復量は微々たるものだが、
その意志によって広範囲に広がり、
更に当たった毛の量によって回復量も変わる。

POTによる回復を行える状態ではない時は、非常に有益な技だった。

ξ゚听)ξ「ありがと!」

(´・ω・`)「ビーグルちゃんありがとう!」

( ´∀`)「ビーグルナイスもな」

全員から感謝の言葉をかけられて、嬉しそうに一声鳴く小型狼。

( ・∀・)「……あの狼も、仲間なんだな……」

渦巻いた気流を解き放った巨神が叫ぶ。
攻撃判定は無いもののその激しい声に身をすくませた。

巨神は変貌していた。

青銅の様な光沢をもっていた肌は赤黒く肉感的になり、
顔の中心の一つ目は真円の様に丸く大きく見開かれ、
その中の瞳も赤く輝いている。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:43:15 ID:aFIw5Z7M0<>
(;・∀・)「げっ」

( ^ω^)「あからさまに怒ってる感じだおね」

ξ゚听)ξ「さっさと倒されればいいのに」

( ´_ゝ`)「青銅系の鉱石かアイテムをゲットできるかと思ったのに」

( ´∀`)「筋肉マンもなね」

▼・ェ・▼「キャン!」

その姿を見ても軽口を叩くメンバー達。
思わず眉間に皺を寄せてしまうモララー。

(´・ω・`)「武器も変わる!」

今まで持っていた棍棒を大地に突き刺す巨神。
そしてそばに会った白い大理石のような柱を掴むと、
一気に引き抜いた。

土煙が舞い、大地が揺れる。

ミ,,゚Д゚彡「をををををっをを」

川 ゚ -゚)「なんだありゃ」

(´<_` )「結局ハンマーは使わないってことか」

('A`)「キュクロープスは鍛冶師だけど、あんまり神様ってイメージは無いんだよな。
名前から台風とか暴風とかのイメージは出ても」

( ´_ゝ`)「鍛冶屋の風上にも置けんな」

ξ゚听)ξ「前から気になってたんだけど、そういうのって風下ならおけるの?」

( ゚∋゚)「                       」

全員「へーーーーーーー!!!すごい!クックル博識!」

(*゚∋゚)「    」

( ・∀・)「余裕だなおい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:44:17 ID:aFIw5Z7M0<>
引き抜いた柱の先は二回りほど太く、更に見るからに頑丈な棘が規則正しく十数本ついていた。

川 ゚ -゚)「また実践的な武器だな」

ξ゚听)ξ「釘バットね」

( ´_ゝ`)「モーニングスターな」

ξ゚听)ξ「何それ」

( ´_ゝ`)「武器の名前!棍の一種で」

ξ゚听)ξ「一種も何も、どうみても棍でしょ。あれ」

( ´_ゝ`)「……もういい」

( ´∀`)「兄者は武器には真面目もな」

( ・∀・)「なあフサギコ。いつもこんなかんじなのか?」

ミ,,゚Д゚彡「そうだから!」

( ・∀・)「へーーー」

(´・ω・`)「ジョルジュ!兄者!弟者!防御中心!
モナー!クックル!三人のサポートを!
残りは削るよ!
ヘイトは僕が取るけど、常に状況をみてスキル選択して!」

大きな瞳で睨む巨神に対して臆することなくチャクラムを投げるショボン。

残りのメンバーはショボンの言葉にそって武器を構え、

チャクラムは吸い込まれるように巨神の目に当たった。

巨神「ぐりゅあああぁああああわああああ!」

雄叫びと共に自分を攻撃したショボンを見る巨神。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:45:16 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「自分に敵の敵対心、【ヘイト】を向けさせ、その隙に仲間が足元を攻撃してHPを削るのか。
理想的と言えば理想的かもしれないけど、大丈夫なのか」

ショボンの後ろをジョルジュが追うように走る。

それは巨神の振り下ろしたモーニングスターからショボンを守るためだった。

(;´・ω・`)「早い!」
 _
(#゚∀゚)「どりゃあああああああ!」

巨神の様な叫び声を上げながら、モーニングスターに向けて単発重攻撃を当てるジョルジュ。

身体ごと当たることで軌道を変え、ショボンへの直接攻撃を外す。

衝撃波によりショボンのHPが数ドット減ったが大した量ではない。
しかしジョルジュのHPは半分ほど減った。

(´・ω・`)「ジョルジュ!」

勢い余ってゴロゴロと転がるジョルジュ。
止まると同時にショボンに向かってサムズアップをするが、
強がりなのは明らかだった。

(´・ω・`)「ちぃっ」

ジョルジュと離れるように駆け出すショボン。

(´・ω・`)「ジョルジュは回復!」

ショボンの後を追う弟者。

駆け出すと同時に投げたショボンのチャクラムは、巨神の目を攻撃していた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:46:24 ID:aFIw5Z7M0<>
6.ぺラムダイヤモンド



何度となく振り下ろされる巨神のモーニングスター。
足元にいる軽攻撃班が攻撃されるのを避けるために、
ジョルジュと兄者と弟者、そしてモナーとクックルが二人で防御や対攻撃を行い対処していたが、
その攻撃は防御や対攻撃をした者のHPを半分近く削っていた。

POTによる回復が間に合わなくなった段階で各人の持つ回復結晶を使用し、
手持ちがなくなった者はギルドの共通フォルダから取り出している。

共通フォルダから出した段階でショボンは頭の片隅でカウントを開始し、
残りの数があと二つ減ったら決断をすることを決めた時だった。

( ^ω^)「ショボン!あれをやるお!」

(´・ω・`)「?あれ?……!だっ」

ξ#゚听)ξ「ダメよ!」

巨神の足元をくるくると器用に動き回って攻撃をしていたブーンが叫んだ。
そしてそれに反応したショボンより早く、ツンが叫ぶ。

ξ#゚听)ξ「『天使の神速斬(エンジェル・ホライズン)』はまだダメ!っていうか使っちゃダメ!」

( ´_ゝ`)「エンジェル?」

(´<_` )「ホライズン?」

(;^ω^)「ツ、ツン、その名前は?」

ξ#゚听)ξ「この前二人で考えたでしょ!」

(;^ω^)「ほ、保留と言うか……おことわりというか…」

ξ゚听)ξ「なに、あんたあたしのセンスにケチ付ける気?」

(;^ω^)「い、いや。ぼくの使う技としては、格好良すぎるかなーとかおもっちゃうお。
それに、どちらかというと名前自体いらないというか…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:47:27 ID:aFIw5Z7M0<>
ξ#゚听)ξ「名前付けないと、『いまのはちがうお』とか言ってあんたはあれをやるでしょ。
あれはやった後体調悪くするんだからダメよ!」

(;^ω^)「そ、それは名前のことだけだおね?」

ξ#゚听)ξ「今からやるのもダメ!」

('A`)「お前ら人が真剣に戦ってる時に笑わせるようなこと言うなよな」

ξ#゚听)ξ「何が笑うって言うのよ!」

('A`)「そのエンジェルホライズンってやつ。ダメだろ勝手に技に名前つけちゃ」

ξ#゚听)ξ「いいのよ!システム上の技じゃないんだから!」

('A`)「でも笑われてるぞ」

ξ#゚听)ξ「誰によ」

('A`)「そいつ」

川 ; -;)「えんじぇるほらいずん…」

ミ,,゚Д゚彡「笑いすぎて泣きながら薙刀を振るのは凄いから」

ξ゚听)ξ「この子はしょうがないのよ。笑いのツボとかセンスが人と違うから」

ほぼ全員が『お前が『人と違う』とか言うな』と思いつつも、攻撃と防御は続いていた。

(;^ω^)「でもこの状況を打破するには…」

ξ#゚听)ξ「だめったらダメ!」

ツンの細剣が巨神の足を切り裂く。
しかし与えたダメージは微々たるものであった。

(´・ω・`)「これだけ攻撃してもバーはまだ三分の二残ってる。
おそらくは形態が変わったことによって防御力も上がっている…。
たしかにこのままじゃあ…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:48:32 ID:aFIw5Z7M0<>
( ´_ゝ`)「撤退する前にやれることはやった方が良いだろ」

(´・ω・`)「兄者」

( ´_ゝ`)「おまえが『安全』だと思うレベルでやればいいだけだ」

(´<_` )「兄者の言うとおりだ。おれ達も全力でサポートする」

(´・ω・`)「二人とも…」

ショボンの左右を走る兄者と弟者。

振り下ろされたモーニングスターを跳ね返す金鎚と斧。

タイミングさえ合わせることが出来れば、その方が少ないHPのロスで防御できると分かり、
兄弟はその方法でショボンを守っていた。

( ´∀`)「そうもなね。やれることはやってみるもな」

( ゚∋゚)「     」

▼・ェ・▼「きゃん!」

その後を走るクックルとモナーとビーグル。
HPを九割ほど回復させ、戦線に合流した。
 _
(#゚∀゚)「どりゃああああああああああ!」

モーニングスターを跳ね返されてバランスを崩した巨神に向かって、
両手剣を赤く光らせたジョルジュが飛ぶ。

剣技のサポートを受けたその跳躍は『飛ぶ』という表現にかなり近く、
数メートルの距離を飛び、巨神の胸を十字に切り裂いた。

ほぼ同じタイミングで足元の軽装備隊も剣技による追加攻撃を行い、
やっと巨神のHPをイエローに変えた。

(´・ω・`)「……ツン!」

ξ゚听)ξ「…なによ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:49:40 ID:aFIw5Z7M0<>
(´・ω・`)「二十秒…いや、十五秒なら大丈夫なはずだ」

( ^ω^)「三十秒でも大丈夫だお!」

(´・ω・`)「ダメ!」

ξ#゚听)ξ「ダメよ!……そうね…ええ……」

ブーンに怒鳴った後、ツンはショボンを見る。
自分を見るその真剣な瞳に、ツンも思考を巡らせた。

ξ゚听)ξ「二十秒が限度よ。でも」

(´・ω・`)「うん。その前でも危険だと思ったらストップさせてくれ。
ブーン!それで良いね。本当にやれるんだね!」

( ^ω^)「大丈夫だお!」

(´・ω・`)「よし!みんな!」

( ・∀・)「おい!なんかくるぞ!!」

モララーの叫びに全員が改めて巨神を観察する。
HPが減ったことに恐怖し怒りをあらわしていた巨神は、
そのすぐ後に今までにしたことのない構えをした。

(´・ω・`)「!全員防御!」

ショボンの指示は即座であり、ほぼ同時にすべてのメンバーが巨神から距離を取る。

川 ゚ -゚)「ショボンより早く気付いただと?」

(´・ω・`)「固まって!物理防御!」

クーの呟きはショボン以外の全員が思った事だったが、
口にせずにショボンの指示に従った。

そしてジョルジュ、兄者、弟者を要所に置き、固まって防御の構えを取る。

(´・ω・`)「モララー!!」

( ・∀・)「わるい!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:51:12 ID:aFIw5Z7M0<>
フィールド内に戻っていたモララーを呼ぶショボン。
モララーも即座に近寄り、武器のタイプと連携を取れないことが分かっていたため、
大人しく塊の中心に身体を置いた。
 _
(;゚∀゚)「くるぞ!」

巨神はモーニングスターを両手で持ち、ハンマー投げの様に振り回す。
黄色く輝いたモーニングスターは螺旋を描きながら真上に向かい、
そのまま巨神の身体を空へと登らせた。

(;´・ω・`)「まずい!」

(;・∀・)「右斜め上方向からくる!」

自分達からみて右斜め上方向を指さすモララー。
上から見て時計と逆回りに螺旋を描いていた巨神の動きからすれば有り得ないはずなのだが、
何故かショボンはその言葉を信じた。

(;´・ω・`)「モナ!クックル!ジョル!ドク!モララーの指差す方向に向けてソードスキル!
武器の1.5倍以上の有効範囲刺突系!」

そしてショボンの言葉に反応する5人。

(´・ω・`)「防御!」

上空に飛んだ巨神が着地と同時に振り下ろすモーニングスター。

それはモララーの指した方角から訪れた。
 _
(#゚∀゚)!
(#´∀`)!
(#゚∋゚)!
('A`#)!

四人の武器がそれぞれに違う輝きを放ちながらモーニングスターの一点を攻撃した。

そしてショボンの投げた緑色の光が巨神の手に当たる。

その二つの攻撃によりモーニングスターの軌道が少しずれ、
彼らへの直撃を避けることが出来た。

しかしそれでもその威力は強大であり、全員のヒットポイントが半分量ほど削られていた。

(´・ω・`)「…撤退…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:52:40 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「するのはまだ早いぜ。ヒール!」

防御の体勢のまま苦渋の決断をしようとしたショボンの言葉を打ち消すモララーの言葉。

全員のHPが次々と全快する。
 _
( ゚∀゚)「お!」

( ゚∋゚)!

( ^ω^)「おっ」

ξ゚听)ξ「あら」

ミ,,゚Д゚彡「!」

( ´_ゝ`)「やるな」

(´<_` )「助かった」

川 ゚ -゚)「なんと」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

( ´∀`)「ビーグルにもありがとうもな」

そして最後にショボンのHPが全快した。

(´・ω・`)「ありがとう…。モララー。そんなにいっぱい…」

( ・∀・)「それについてはこれが終わってからだな」

砕け散った12個の回復結晶。
そしてさらに数個の回復結晶を手に持つモララー。

( ・∀・)「在庫はまだまだある。回復は任せろ」

(´・ω・`)「モララー……。ありがとう。頼んだ!」

大技を出して硬直をしている巨神を見るショボン。
立ち上がり、赤と青のサイキュロプスの麻痺が解けたの見た。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:53:36 ID:aFIw5Z7M0<>
7.コーニッシュダイヤモンド



ξ#゚听)ξ「ストップ!!そこまでよブーン!」

ツンが三回叫ぶと、やっとブーンが動きを止めた。

キラキラと光るポリゴンが周囲を舞っており、
その中で無表情にこちらを見たブーンの姿は神聖なものにすら見える。

(;・∀・)「なんだありゃ」

思わず見とれてしまったモララーの横を駆け抜けるフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「速攻!モララーも一緒にやるといいから!」

クックルとモナーが頭を押さえてうずくまったブーンを両側から抱えて引きずる様に撤退する中、
ツンを除く残りのメンバーが巨神に向かってそれぞれタイミングをずらしながら剣技を放つ。

その攻撃により、巨神のヒットポイントは赤に変わった。

ξ#゚听)ξ「このバカ!5秒オーバーよ!」

(;^ω^)「最初の…ストップは…」

ξ#゚听)ξ「20秒前でも私が止めるって言ったら止めるのよ!
それがルールだったはずよ!」

(;^ω^)「…ごめ……んだお…」

ξ゚听)ξ「二人は合流して。私もすぐ行く」

( ´∀`)「ブーン、後は任せるもな」

( ゚∋゚)「     」

(;^ω^)「たのむ……お……」

ブーンをフィールド外に出し、軽く声をかけてから巨神のもとに駆け出す二人。
二人の武器もすぐに剣技を発動させ、光を放つ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:54:53 ID:aFIw5Z7M0<>
ξ゚听)ξ「モララー!」

( ・∀・)「お、おう」

フサギコに誘われたものの、
連携での攻撃には不安が残るため後方で観察していたモララーを呼ぶツン。

当たり前の様に呼び捨てされたのだが違和感を覚えないのはツンの仁徳であろう。

ξ゚听)ξ「こいつの事宜しく。攻撃に参加しないように見張ってて」

( ・∀・)「あ、ああ。分かった」

ξ#゚听)ξ「ブーン!大人しくしておきなさいよ!」

(;^ω^)「わ、……わかってるお……」

片手で頭を押さえているブーンを辛そうに見つめた後、振り切るように巨神を見て駆け出したツン。

(;・∀・)「辛そうだな…」

(;^ω^)「ちょっと休めば治まるから大丈夫だお」

横になっているブーンの頭のそばに座るモララー。
視界の中にブーンの身体が映っているが、正面には追いつめられた巨神が見える。

( ・∀・)「でも、あのツンって彼女が行った後、額と顔の歪みが酷くなった。
無理に喋らなくていいし、痛くないふりもしなくていいぞ」

(;^ω^)「!なんでわかるんだお…」

( ・∀・)「……昔から、人の顔色を伺うのが得意なんでね。
あんたのあの攻撃のおかげであのキュクロープスももうすぐ倒せるだろ。
ゆっくり休むといい」

(;^ω^)「ありがとうだお…。…あの……。
喋っていたほうが気が紛れて痛さが和らぐから、お話しててもいいかお?」

( ・∀・)「ん?ああ、良いけど。じゃあ、おれから質問良いか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 22:55:56 ID:aFIw5Z7M0<>
(;^ω^)「ん?良いお?なんだお?」

( ・∀・)「あれ、すごかったけど、おれに見せて良かったのか?
ソードスキルじゃ…ないよな?」

(;^ω^)「オリジナルだお。一応ギルドの仲間以外では見せたことないけど…」

( ・∀・)「そうだよな。誰でも真似できるわけじゃないけど、不味くないか?」

(;^ω^)「なにをだお?」

(;・∀・)「いやだから、おれに見せて。ほら、おれがさ、他の奴にペラペラと」

( ^ω^)「大丈夫だお」

( ・∀・)「へ?」

( ^ω^)「大丈夫だお」

( ・∀・)「え、あ、いや、へ?」

( ^ω^)「モララーさんの事は、フサギコとショボンから色々と話を聞いてたお。
すごく良い人だって。信用できるって」

( ・∀・)「あの二人が?」

(;^ω^)「ショボンはギルドに誘おうか迷ってたみたいだお」

( ・∀・)「ギルド……」

(;^ω^)「ぼくも質問いいかお?」

( ・∀・)「ん?なんだ?」

(;^ω^)「なんでさっき、右斜めの方から攻撃が来るって分かったんだお?」

( ・∀・)「ああ。……さっきも言っただろ。人の顔色を伺うのが得意だって…」

(;^ω^)「お?」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/02(土) 22:57:22 ID:5buSNDu20<>レス飛んでる…?
支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:03:59 ID:aFIw5Z7M0<>>>473

ありがとうございます!

469と470の間に一つ入ります。<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:04:57 ID:aFIw5Z7M0<>以下469と470の間



(´・ω・`)「クーとクックルは青!ドクオとフサギコは赤!麻痺!
その後は僕のサポート!
ブーンとツンと兄者は『エンジェル・ホライズン』の準備!
残りは僕と共に巨神を引き付ける!
モララー!」

( ・∀・)「お、おう」

(´・ω・`)「後方からのヒットポイントの管理を頼む!僕たちの命を預けたよ」

( ・∀・)「あ、ああ」

即断して指示を出すショボンに圧倒され、
さらにあまりに簡単に自分に大事な役目を任せることに驚きを隠せないモララー。

その瞳に迷いは無く、メンバー達も自分を見る目は同じように真摯で優しく、
そして自分を信じてくれているのが分かる。

ほんの少しの疑念を持ちつつも、その瞳を信じることに迷いは無く、
モララーは小さく、けれど強い思いを込めて頷いた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:08:50 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「この世界は、かなり『リアル』なんだよ。
特に人型・獣型はその目の動きから次に狙ってくる場所が分かる」

( ^ω^)「それはショボンも言ってたお」

( ・∀・)「だろうな。あいつもそれを敵の動きを読む計算材料にしている。
で、更に言うと、手足の動きや筋肉の動きも、リアルに近いんだ。
だからちゃんと攻撃する前の予備動作があるし、
予備動作に繋がる体の動きがある」

(;^ω^)「お…お…」

( ・∀・)「だからその動きを見て行動を予測して、更に目線で狙っている場所が分かれば」

(;^ω^)「次の攻撃が予想できる」

( ・∀・)「ってことだ」

(;^ω^)「……すごいお…」

( ・∀・)「……そうでもない。
慣れている…だけさ。
それに筋肉の動きはともかく、予備動作は考えて観察していれば分かるようになる。
多分予備動作の方もショボンは見ているだろ。
…おれとは違うだろうから、あいつは努力したんだろうな」

(;^ω^)「お?」

( ・∀・)「お、そろそろ終わりそうだぞ」

ブーンの攻撃で巨神のHPは黄色く色を変えていた。

そして残りのメンバーの攻撃は順当に残りのHPを削り、
ショボンが一人でヘイトを自分に向けることを担当していた。

巨神のHPが赤に変わる。

時折闇雲に振るったモーニングスターがショボンや攻撃を仕掛ける者のHPが削られるが、
黄色に変わる前後でショボンとクーが回復結晶を使い回復させた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:10:10 ID:aFIw5Z7M0<>
( ^ω^)「あのクリスタルはモララーさんの?」

( ・∀・)「ああ、さっきあんたの」

( ^ω^)「ブーンだお」

( ・∀・)「え?」

( ^ω^)「ぼくの名前はブーンだお」

( ・∀・)「……ブーンの攻撃を見てる時に、ショボンに頼まれていくつか渡したから。
本当はおれがやるつもりだったんだ」

( ´^ω^`)「『危険だから、まずは僕たちでやらしてほしい。
もし対応できない時は、助けを呼ぶから頼めるかな』って感じかお?」

( ・∀・)「セリフはほぼ正解だけど、顔が気持ち悪い」

(;^ω^)「(結構ストレートにものをいう人だおね)」

( ・∀・)「でもまあ…。良いリーダーなんだろうな。ショボンは。
フサギコがそうなのは知っていたが、お前たちも信頼しているのがよく分かる。」

( ^ω^)「ショボンは凄いお。そしてショボンを中心に作ってきたVIPは良いギルドだお。
きっとモララーさんも入ったら楽しいお」

( ・∀・)「ギルド…ね」
 _
(#゚∀゚)「どりゃああああああああ!」

のんびりと話すモララーとブーンの視線の先で、ジョルジュが気合いの籠った剣技を放つ。

首元から一直線、真下に一閃したその攻撃は巨神の残りのHPをすべて消した。

巨神「     !!」

声にならない叫び声をあげ、自らで震わせた空気の中でポリゴンへと変わる。

その様子を、疲れた呼吸で見守る九人と一匹。
そしてそれを見守る二人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:12:15 ID:aFIw5Z7M0<>
 _
(*゚∀゚)「うをっっっしゃあああああ!やったぜー!」

( ´∀`)「おわったもなね」

▼・ェ・▼「きゃん」

( ゚∋゚)「    」

川 ゚ -゚)「私も疲れたよ」

ミ,,゚Д゚彡「大変だったから」

(´<_` )「全員居るな」

( ´_ゝ`)「おれ達は流石だな」

(´・ω・`)「みんな無事で良かったよ」

ξ゚听)ξ「ブーン!」
 _
( ゚∀゚)「あれ?なんでそんなにテンション低いんだよ」

( ´∀`)「当り前もな」

▼#・ェ・▼「きゃん!」

川 ゚ -゚)「誰のせいでこんな危険な戦闘をしたと思っているんだお前は」
 _
(;゚∀゚)「………ごめんなさい」

一人体全体で喜んでいたジョルジュだったが、
残りのメンバーの冷たい視線を受けて身体を小さくさせた

ツンはそんな事には見向きもせず、ブーンに駆け寄る。

ξ゚听)ξ「大丈夫?頭痛は!?」

( ^ω^)「もう大丈夫だお」

ξ゚听)ξ「本当に」

( ^ω^)「本当だお」

二人の会話を横で聞いていたモララーは、自分を見るブーンの祈るようなまなざしを感じ、
口を開くのを止めた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:13:36 ID:aFIw5Z7M0<>
ξ゚听)ξ「なによ」

( ^ω^)「も、モララーさんにはお世話になったおね」

ξ゚听)ξ「そうね。モララー、ありがと」

( ・∀・)「いや、別にいいさ」

こちらを見て、深々と頭を下げるツン。
口調はぶっきらぼうだがその表情や仕草からは深い感謝の気持ちを感じられた。

( ^ω^)「そんなわけにはいかないお。このお礼はちゃんとするお」

( ・∀・)「……別に大したことは」

ξ゚听)ξ「してないなんて言わせないわよ。
ジョルジュだけでなく、私達の命も救ってくれた恩人なんだから」

( ・∀・)「大袈裟な」

ξ゚听)ξ「なに、モララー。あんた、わたし達の命が『大したことじゃない』とか言うわけ?」

( ・∀・)「え?」

ξ゚听)ξ「言うわけ?」

(;・∀・)「い、いや、言わないけど」

ξ゚听)ξ「だったらちゃんと受け取りなさい」

(;・∀・)「はい」

( ^ω^)「(ツンはモララーさんとの相性が良いみたいだお)」

自分を冷たく睨むツンに冷や汗を流すモララー。
まだ少し頭痛が残っているものの、ショボンがこちらに駆け寄ってくるのを見てブーンは立ち上がった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:14:46 ID:aFIw5Z7M0<>
8.ハーキマーダイヤモンド



 _
(*゚∀゚)「みずうみキター!」

巨神が消えた後、石舞台の奥に道がうまれた。
駆け出したジョルジュを追うように全員が続くと、そこには水面光らせた大きな湖に辿り着いた
 _
(*゚∀゚)「釣りをするぞー!」

いそいそと釣りの準備を始めていたジョルジュを呆れた目でみるメンバー達だったが、
その嬉しそうな姿に肩をすくめながらも思い思いに周囲の散策を始めた。
 _
( ゚∀゚)「おいしいさかな!おいしいさかな!」

子供の様にはしゃぐジョルジュだったが、竿は全く動かなかった。
 _
( ゚∀゚)「………あれ?」

川 ゚ -゚)「レベルが足りないんじゃないか?」
 _
(;゚∀゚)「……え」

ジョルジュとクーの会話をにやにやと見ている兄者と弟者。
木陰で休むブーンも、隣に座るツンと共に笑っている。

( ・∀・)「釣りってやったことないけど、すぐ釣れるんじゃないのか?」

(´・ω・`)「湖にもレベルがあるらしくて、釣りスキルのレベルが低いと釣れないらしいけど」

( ・∀・)「ああ…なるほどね」

憐みの目で見るモララーの視線を振り払うかのようにジョルジュは竿を振った。
しかし竿は反応せず、ジョルジュは視線が痛かった。

('A`)「なあ、なんかこの湖普通と違くないか?」

そんな微妙な空気の中、湖の周りを歩いていたドクオとクックルとフサギコが戻り、
ジョルジュとクーに寄ってきた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:16:43 ID:aFIw5Z7M0<>
( ´∀`)「なにかあったもな?」

( ゚∋゚)「     」

ミ,,゚Д゚彡「おかしいから」

('A`)「いや、この湖だけどよ、覗き込んでも顔が映らないんだよな……ん?」

ξ゚听)ξ
( ^ω^)
川 ゚ -゚)
( ´∀`)
( ´_ゝ`)
(´<_` )

('A`;)「え?あれ?おれ、なんか変なこと言った?いや、この湖は変なんだけど」

ξ゚听)ξ「あんた、わざわざ湖覗き込んで自分の顔見ようとしたの?」

( ^ω^)「……しらなかったお。そんなことをしているなんて…」

川 ゚ -゚)「本気で引く」

( ´∀`)「美意識は人それぞれもなね」

( ´_ゝ`)「前から変なやつだとは知っていたが…」

(´<_` )「死んでも花は咲かないと思うぞ。多分」

('A`)ウツダシノウ

ふらふらと湖の畔にひざまずき、顔を近付けようとするドクオをフサギコとクックルが慌てて止める。

(;゚∋゚)「      」

ミ;,,゚Д゚彡「や、やめるから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:18:48 ID:aFIw5Z7M0<>
(´・ω・`)「はいはい。みんなからかわないの」

▼・ェ・▼「きゃん!」

ξ゚听)ξ
( ^ω^)
川 ゚ -゚)  「「「「「「はーい」」」」」」
( ´∀`)
( ´_ゝ`)
(´<_` )

ビーグルを胸に抱いたショボンが六人を諌める。
その横ではモララーが何とも言えない微妙な表情をしている。

(;・∀・)「なんだこいつら」

(´・ω・`)「で?何が変なの?」

ミ,,゚Д゚彡「湖に、何も映ってないから」

(´・ω・`)「映ってない?」

( ゚∋゚)「          」

(´・ω・`)「ああ、なるほど」

湖を覗き込むショボン。
ビーグルも身体をもぞもぞと動かしながら、覗いている。

ショボンが動いたと同時にフサギコの隣に移動するモララー。
そして彼にだけ聞こえるように声をかけた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:20:19 ID:aFIw5Z7M0<>
( ・∀・)「ふさぎこ」

ミ,,゚Д゚彡「?」

( ・∀・)「さっきから気になってたけど、あの人、喋ってるの?」

ミ,,゚Д゚彡「クックル?」

( ・∀・)「ああ」

ミ,,゚Д゚彡「クックルは…だから…」

( ・∀・)「ああ、良いよ別に。ちょっときになっただけだから」

ミ,,゚Д゚彡「……ごめん…だから…」

( ・∀・)(おそらくはギルマス、ショボンの箝口令…だろうな。
締める所は締めてるってところか。でも、てことはつまり、彼の声は何か重要なのか?
でもそれなら、おれの前で喋っているような行動はとらないとも思うが…)

(´・ω・`)「ビーグルちゃん危ないよ。…ほんとだね。映らない」

( ´∀`)「なんとなく風景にも違和感を感じていたもなけど、周りの木も映り込んでいないもなね」

川 ゚ -゚)「言われてみれば」

モナーの言葉に、周囲を改めて見るメンバー達。
ジョルジュは一人釣り糸を湖に垂らす。

そんな中ショボンはビーグルを地面に下ろすと、湖をクリックした。
目の前に現れるウインドウ。

(´・ω・`)「湖の名前が出ない。情報もクエスチョンマークばっかりだ。ブーン」

( ^ω^)「了解だお」

既にショボンの隣に移動していたブーンが湖をクリックする。
同じように現れるウインドウ。

( ^ω^)「お?名前は出るけどそれ以外はクエスチョンだお」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:21:46 ID:aFIw5Z7M0<>
(´・ω・`)「ブーンの鑑定スキルがあってもダメなのか」

ξ゚听)ξ「名前はなんていうのよ」

( ^ω^)「『回復の泉』だお」

川 ゚ -゚)「回復だと?」

( ´_ゝ`)「泉!?この大きさで!?」

(´<_` )「気にするのがそことは流石だな兄者」

(*´_ゝ`)「褒められた」

(´<_` )「褒めてはいない」

横で漫才を始めた兄弟を気にすることなく水面に近寄るクー。
そして彼女もクリックをした。

川 ゚ -゚)「…これは…」

現れたウインドウを読んで息をのむクー。

(´・ω・`)「どうしたの?」

川 ゚ -゚)「これは、でかい回復POTなんだ」

ξ゚听)ξ「はあ?」

(;゚∋゚)「    」

ミ,,゚Д゚彡「え?」

('A`)「なんだって」

ξ゚听)ξ「あ、復活した」

( ´∀`)「今回は結構長かったもなね」

('A`)ウツダシノウ

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:23:12 ID:aFIw5Z7M0<>
(´・ω・`)「だーかーらー」

ξ゚听)ξ「はーい」
( ´∀`)「もな」

( ・∀・)「(この流れでも脱線するのか)」

(´<_` )「回復POTだと?」

川 ゚ -゚)「ああ。ただ直接飲めるわけではないから正確には違うんだが…。
持ってないんだよな…」

ウインドウを出して自分のストレージ内を検索しているクー。
しかし目当てのモノは予想通り持っておらず、ブーンに声をかける。

川 ゚ -゚)「ブーン、『ガラスの小瓶』を持ってないか?」

( ^ω^)「多分今日は…」

同じように自分のストレージ内を探すブーンだったが、
クーに顔を向けて首を横に振った。

( ^ω^)「持ってないお」

川 ゚ -゚)「そうか…」

( ・∀・)「10コルで良いぞ」

川 ゚ -゚)「もってるのか?」

( ・∀・)「いや、作れる」

クーとブーンの会話に割り込んだモララーが、ウインドウを出しながら地面に座る。
そして愛用の道具と素材を出すと、目の前に【ガラスの小瓶】を作り出した。

川 ゚ -゚)「すごいな」

( ・∀・)「ほら」

放り投げられた小瓶を慌てて受け取るクー。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:24:15 ID:aFIw5Z7M0<>
川 ゚ -゚)「お金は…」

( ・∀・)「あとで良い。で、それが何になるんだ?
ガラスの小瓶って、液体系の素材を集めるくらいしか用途がないんだろ?」

川 ゚ -゚)「いや、もう一つ役目がある。通常でも使うんだ。だから、多分…」

( ・∀・)?

クーの言葉を聞いて不思議そうな顔をするメンバー達。

その視線を意識せずに、再び水面に指を近付けるクー。
そしてそのまま水面に右手の人差し指を付けると、指先がぼんやりと光った。

川 ゚ -゚)「やはりな」

そして左手に持った【ガラスの小瓶】を、光を移動させるように右手の人差し指で軽くタップした。

川 ゚ -゚)!

光り輝く【ガラスの小瓶】

メンバーは勿論手にしていたクーも驚いている中、光が収束する。
するとそこには【ガラスの小瓶】ではなく、さっきまで何度も飲んだ【回復POT】があった。

( ´∀`)「小瓶がPOTに変わったもな」

全員がその光景に呆気にとられて静かになった中、モナーが呟くとどよめきが起きる。

( ´_ゝ`)「おお!すごい!」

( ゚∋゚)「    」

( ^ω^)「だおだお」

(´<_` )「クーが回復POTを作る時にも使うのか?」

川 ゚ -゚)「ああ。各種素材と小瓶を使って作る。だからそうだと思ったんだが」

(´<_` )「思ったんだが?」

左手に持ったままの【回復POT】をタップし、情報ウインドウを出すクー。

川 ゚ -゚)「やっぱりか。くやしいな」
.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:25:26 ID:aFIw5Z7M0<>
(´<_` )「どうした?」

川 ゚ -゚)「弟者や兄者は分かっていると思うが、
この世界では同一品であってもレベルが違うことが多々ある」

( ´_ゝ`)「武器はそうだな」

(´<_` )「ああ、防具もだ」

川 ゚ -゚)「で、基本的には店売りよりもドロップ品、
ドロップ品よりはプレイヤーメイド品の方が高い傾向がある」

( ´_ゝ`)「作る奴のレベル次第だな」

川 ゚ -゚)「ああ。で、それは武器や防具だけではなく、POTにも言えるんだ」

ミ,,゚Д゚彡「POT?」

('A`)…イワレテミルトタシカニソンナキガスル

ξ゚听)ξ「あんたはさっさとちゃんと復活しなさい」

('A`)…ジブンタチガオチコマセタクセシテ…

川 ゚ -゚)「同じ量を飲んでも、最大回復量が違う。
店売りの回復POTの回復量を1とするなら、
今私が作るPOTは1〜1.3くらいの回復量を持つ」

( ´∀`)「固定じゃないもな?」

川 ゚ -゚)「残念ながら」

(´・ω・`)「それで、今作ったPOTはどれくらいなの?」

川 ゚ -゚)「1.5倍はある」

再びどよめくメンバー達。

ξ゚听)ξ「それは凄いわね」

川 ゚ -゚)「ああ。悔しいが、おそらくは現時点で一番能力を持つPOTだろうな。
だがしかし、私も負けんぞ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:26:40 ID:aFIw5Z7M0<>
ξ゚听)ξ「あら火が付いた」

川 ゚ -゚)「これ以上の能力を持つPOTを作ってみせる。
それに、こんな作り方が出来るのならば、色々と応用が利くような気もするんだ」

にやりと笑うクーを見て、苦笑するショボンとドクオとブーン。

( ´∀`)「どうしたもな?」

( ^ω^)「しばらくの間部屋に籠っていそうだおねと思って」

('A`)「素材集めも命令されるだろうしな」

(´・ω・`)「他にもやりたいことがあるけど、高性能なPOTが作れるようになるなら協力しないとね」

三人がため息とともに話した言葉を聞いて笑顔を見せるメンバー達。

しかしモララーは一人険しい顔をしていた。

▼・ェ・▼「きゅーん?」

その足に身体を擦り付けるビーグル。

( ・∀・)「お!おお!なんだお前!」

( ´∀`)「ビーグルは賢いもな。だからモララーさんの事が気になったもなよ。
どうしたもな?」

( ・∀・)「ああ、いや、……うん。そうだな。……ま、いいだろ」

少しだけ口澱み、迷うように周囲を見る。
不思議そうに自分を見るギルドVIPのメンバー。
その中の一人に、自分を心配する心の優しさを見る。
そしてもう一人からは自分を信じているかのような強さを感じ、それを信じてみることにした。

迷いを断ち切る様に指を振り、再度呼び出したストレージから一つのアイテムを選ぶ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:27:51 ID:aFIw5Z7M0<>
そして外に出したアイテムを掴むと、クーに向かって放り投げた。

川;゚ -゚)「お、おい。きゅうになんだ」

慌てて受け取るクー。
そして受け取ったアイテムをしげしげと見た。

川 ゚ -゚)「クリスタルに似ているが…こんな透明で色が付いていないのは見たことがない」

( ・∀・)「名前は【空結晶】。見た目とその名の通り、何の効力も持たないクリスタルだ」

何人かが息をのむ様に驚く。
残りはなぜ驚くのかが分かっておらず、
驚いた者とクーの手の中のアイテムとモララーをチラチラと見た。

川;゚ -゚)「お、おい。そんなアイテム」

(;^ω^)「ぼくも初めてだお。
見たことないアイテムはまだまだあるけど、名前すら知らないアイテムなんて」

(´・ω・`)「モララー?それは……?
!ま、まさか…もしかして?
でも、それならあんなに一杯の回復結晶を持っていたことも説明できる……でも…」

驚くものと驚かない者。
そして驚いた者の中の一人、ショボンは一つの仮説を立ててモララーの顔を凝視する。

( ・∀・)「お、ショボン。さすがに話が早いかな。
でもまあそれよりまずは、その【空結晶】にさっきやったような作業をしてもらえないか?」

クーの顔を見るモララー。
クーはショボンを見ると、自分を見て頷いたのを確認してから再び水面に人差し指の先を付けた。

先程と同じように光る指先。
そしてその光を移動する様に、【空結晶】をタップした。

川 ゚ -゚)!

光り輝く【空結晶】。
そしてその暖かい光が収束した後には、【回復結晶】が現れた。

( ・∀・)「…なるほどね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:28:44 ID:aFIw5Z7M0<>
(´・ω・`)「モララー。説明をしてもらってもいいかな?」

( ・∀・)「ああ。そうだな。
この【空結晶】はおれのスキルで作ったアイテムなんだ。
作れるようになったのは良いけど何に使うのか全く分からないアイテムだったから、
これで謎が解けた」

( ^ω^)「で、でもそんなアイテムはもちろん、そんなアイテムを作るスキルなんて…」

( ・∀・)「スキルの名前は≪結晶作製≫」

('A`)「……もしかして……」

( ・∀・)「今のところ他に持っている奴がいるという話を聞いたことは無い。
情報屋がまとめているスキルリストにも載ってない。
おれが持っているのを話したのも、これが初めてだ」

淡々と話すモララー。
逆に聞いている者達の何人かの顔がこわばっていく。

( ・∀・)「おそらく、もしかすると。多分これは、≪ユニークスキル≫ってやつだ」




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/02(土) 23:29:45 ID:aFIw5Z7M0<>少し休憩します。

12時過ぎに復活します。<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/02(土) 23:36:03 ID:JBd5WpvcO<>待ってました!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/02(土) 23:44:28 ID:g6yeSXj20<>支援<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/02(土) 23:51:52 ID:jjAwR5hY0<>まさかのユニークスキル持ちとは<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:06:01 ID:EuI.0M8A0<>キリコさんぱねえっすな30分でした。

それでは続きの投下を行きます。<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:06:53 ID:EuI.0M8A0<>9.ダイアモンド



(;´・ω・`)「撤収!!!!!!!!」

モララーが告白した後、一瞬静寂が彼らを包んだが、即座にショボンの叫びが静寂を切り裂いた。

そして言葉も無く戻る準備を始めるメンバー達。
 _
( ゚∀゚)「結局釣れなかった…」

ξ゚听)ξ「多分魚自体居ないわよ」
 _
( ゚∀゚)「回復効果を持つレア魚とかよ」

( ^ω^)「そんなのより、帰った後を心配したほうが良いんじゃないかお?」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(´<_` )「ブーンの言うとおりだ」

( ´_ゝ`)「ちょっと楽しみだったりはする」

( ゚∋゚)「     」

ミ,,゚Д゚彡「き、きっと大丈夫だから」

( ´∀`)「ちゃんと怒られるだけもな」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

('A`)「ま、がんばれ」

(´・ω・`)「話は取りあえず牧場に戻った後!モララーも一緒に来て!」

( ・∀・)「え?いや別におれは」

(#´・ω・`)「良いから来る!!」

( ・∀・)「……はい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:08:03 ID:EuI.0M8A0<>
隊列を確認して帰路につくギルドVIPのメンバーとモララー。

森の出口で待ち構えていた、情報屋のアルゴと出会ってしまうハプニングもあったのだが、

(´・ω・`)「あとでまとめて報告するから!今はごめん!!」

(アルゴ)「え、いや、ショボン、ちょっと待って……行っちゃったヨ」

といった会話をした後に、アルゴの目の前を風のように去って行った。

(アルゴ)「何かあったのかナ。報告を楽しみにしておくヨ」

ジョルジュとショボンに『ふりかえりの森』の情報を売ったのが彼女なのだから当然なのだが、
この後に彼女とショボンの駆け引き合戦が行われたのはまた別の話である。



ギルドVIPホーム。

とは名ばかりの、VIP牧場にあるレストハウスの大きなリビングである。

牧場側は一面ガラス張りのため日中なら青々とした牧場が見えるのだが、
もうすでに日が落ちているため夜の闇に閉ざされていた。

( ・∀・)「ここがお前らのホームなんか?」

(´・ω・`)「そうだともいえるし、違うともいえる。
まぁ全員が集まって相談をする場合は、今はここを使ってるんだよ」

( ´∀`)「VIP牧場にようこそもな」

▼・ェ・▼「きゃん!」

ミ,,゚Д゚彡「そこのソファーに腰掛けると良いから」

思い思いの場所に腰掛けるメンバー達。

おそらくはいつもの場所なのだろう。
なんとなく居心地の悪さを感じながらも、フサギコに言われたソファーに座るモララー。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:09:32 ID:EuI.0M8A0<>
ショボンとフサギコが忙しく歩き回ると、いつの間にか目の前に飲み物とお菓子が置かれていた。

(´・ω・`)「さてと、それじゃあいくつか整理しようか」
 _
( ゚∀゚)「さっさと初めて、さっさと飯にしようぜ!」

(´・ω・`)「ジョルジュは夕飯の後に今日のことについて説明してもらうからよろしく」
 _
(  ∀ )「あ、いや、うん。ゆっくりちゃんと整理しましょう」

ξ゚听)ξ「ほんとバカよね」

(´・ω・`)「湖の事とかクーが発見したPOTの件とかもあるけど、
まずはやっぱり……モララーの持つスキルについてだと思う」

( ・∀・)「あーいや、だけどよ、おれはほら、このギルド」

(´・ω・`)「うん。ギルドのメンバーじゃない。
でも、知ってしまった以上、この話し合いに付き合ってもらいたい。
きっと、モララーの為にもなるはずだから」

( ・∀・)「…おれの為……ねぇ…」

(´・ω・`)「正直に言うよ。本当はギルドに誘いたかったんだ。モララーの事を。
だから今回の件は凄くイレギュラーな事態だったけれど、いい機会だと思った。
ぼく達の事を知ってもらうのに」

('A`)「今だって誘えばいいだろ」

( ^ω^)「なんで過去形なんだお?」

(´・ω・`)「今だって誘いたいよ。でも、そんな簡単な話ではなくなってしまった」

ξ゚听)ξ「どういうことよ」

(´<_` )「ユニークスキルの事か?」

(´・ω・`)「ああ」

川 ゚ -゚)「確かにすごいスキルだと思うが、そんなに気にすることなのか?」

ミ,,゚Д゚彡「モララーが入ってくれたら嬉しいから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:10:37 ID:EuI.0M8A0<>
(´・ω・`)「ドクオ、ユニークスキルの定義は?」

('A`)「え?んっと…『この世界に一つしかない、一人しか使えないスキル』で良いか?」

(´・ω・`)「そう。そして今のところユニークスキルが発見されたという報告はない」

( ´_ゝ`)「あれ?どっかのギルマスが持っているとか言う噂がなかったか?」

(´・ω・`)「攻略組、トップギルドの一つ、
血盟騎士団団長のヒースクリフさんが使うという【神聖剣】だね。
あれがおそらくそうだと言われてはいるけれど、まだ確証はないはずだよ。
というか、実際に『ユニークスキル』が存在するという確証はないはずなんだ」

( ゚∋゚)「    」

(´・ω・`)「うん。無いんだよ。所詮はエクストラスキルの一つだし、
発現条件が分からないだけで、実は他にも使える者が出てくるかもしれないんだしね。
少なくともマニュアルには存在を確定する言葉は無かったと思う」

( ´_ゝ`)「なるほど。……え?あのマニュアル全部覚えてるの?¥」

(´・ω・`)「うん」

(;´_ゝ`)「…マジか」

(´<_`;)「一通り目は通したけど、覚えては無いな…」

(;´∀`)「さすがショボンもなね」

(;゚∋゚)「    」

(´・ω・`)「それに、たとえユニークスキルがあるとしても、
【神聖剣】と【結晶作製】がそうだとは限らない」

川 ゚ -゚)「それならなおさら何が問題なんだ?」

(´・ω・`)「……この世界にいる人間すべてが、そう思っているのなら問題ないよ。
問題は、ユニークスキルは存在する、【結晶作製】はユニークスキルである、
羨ましい、悔しい、って思う連中が絶対に存在してしまうって事さ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:11:41 ID:EuI.0M8A0<>
( ^ω^)「お?でも思ったからって…」

(´・ω・`)「そう、スキルの譲渡は出来ないはずだから、しょうがない。
しょうがないと思えるのならばいい。モララーを自分の仲間に引き入れようとするだけならまだ良い」

('A`)「…PK…。プレイヤーキルに狙われるって言うのか?
でもそんなことしたら、そのスキルを使える奴がいなくなっちまう」

(´・ω・`)「この世界がただのゲームなら、死んでもログアウトするだけなら、
ユニークスキルを持つアバターを殺しても変化は無い。
でも、もし、ユニークスキルを持つアバターを、そのアカウントを消してしまったら、
ユニークスキルはどうなるんだろうね」

('A`)「?どうなるって……どうなるんだ?」

(´・ω・`)「もしも、この世界の死が実際の死に繋がる様に、
実際の死がアカウントの消滅と同義であったなら…。
ユニークスキルを持っていた者が死んだとき、そのユニークスキルはどうなるんだろう」

(´<_`;)「ユニークスキル使いが死んだとき、そのユニークスキルがまたリセットされる?」

(´・ω・`)「そう考える者がいないとは、限らない」

( ´_ゝ`)「いる…だろうな。特に昔からのネトゲプレイヤーなら妬む奴も多いだろうし」

(´・ω・`)「この世界は不確定要素が多いんだよ。
作られた、デジタルの世界なのに。
本当の、リアルの世界と同じように、色々な要素が絡み合い、謎となっている」

( ^ω^)「スキルなんて力、リアルの世界にはなかったお」

('A`)「その分だけ、あるはずの明確なルールが分からないということが、
ストレスとなっておれ達にのしかかってきているってことか」

全員がモララーを見る。
その表情はほとんどがこわばっているが、見られたモララーは飄々としたものだった。

ξ゚听)ξ「あんた、怖くないの?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:13:02 ID:EuI.0M8A0<>
( ・∀・)「ん?おれ?こわい…か…」

(´・ω・`)「モララーは、今僕が言った事なんて全部考えてあるよ」

( ^ω^)「お?」

ミ,,゚Д゚彡!

( ・∀・)「…なぜ、そう思う?」

(´・ω・`)「自分のスキル一覧に見たことのないスキルがあって、
もしかしたらそれがユニークスキルかもしれないなんてことになったら、
いろんな可能性を考えて当然だからね。
それにそのスキルをある程度鍛えてあるみたいだから、考える時間は充分にあったはず。
それを踏まえて、ぼくの知っているモララーの性格と、今日の戦い方を見れば、
そう思って当然だよ」

( ・∀・)「お前、怖いやつだな」

(´・ω・`)「ありがとう。褒め言葉として受け取るよ」

( ・∀・)「……じゃあひとつ聞こう。おれはこれからどうするのが一番だと思う?」

(´・ω・`)「血盟騎士団か聖竜連合、もしくは軍に入るのが一番だと思う。
少なくともこの三つなら、殺される可能性は少なくなると思う。
おすすめは血盟騎士団だけど、あそこが一番入るのが難しいかもしれない。
なんなら、何とかしてコネを作るよ」

( ・∀・)「ちょっとびっくりした」

(´・ω・`)「え?なにを?」

( ・∀・)「いや、うちのギルドに入れって言われるかと思ったからさ」

(´・ω・`)「今の僕たちに、君を守る力はない」

(;・∀・)「おやまあハッキリ言うねぇ」

(´・ω・`)「そんなことで見栄を張っても仕方ないからね。
ユニークスキルの件がなかったら、今頃正式にギルドへの勧誘をしているところだけど。
さすがに今そんなことは出来ないよ」

ショボンの言葉も表情も真剣そのものであり、誰も口を挟むことが出来ない。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:14:12 ID:EuI.0M8A0<>
(´・ω・`)「…血盟騎士団を推すのは、ぼくの我儘でもある」

( ・∀・)「おまえの?」

(´・ω・`)「あそこならモララーを閉じ込めるようなまねはしないだろうからさ。
今までと同じように…とはいかないかもだけど、
またフサギコと三人で喋ったりすることも出来ると思うんだ。あそこなら」

ほんの少しだけ笑顔を見せるショボン。
少し悲しげだが、それは確かに笑顔だった。

(´・ω・`)「モララー。強制はしないし出来ない。
でも、君のためにはおそらく最善だと」

( ・∀・)「お前がおれの事を考えてくれているのは分かった。
だが、おれはどこのギルドにも入らない」

(´・ω・`)「モララー…」

('A`)「今のところ結晶はモンスタードロップのみで手に入る。
それを売ったりしたのが流通されている品の全て…だよな」

(´<_` )「ってことは作らなければ、システムが管理している数量を脅かすことも無いし、」

( ´_ゝ`)「ゲーマーが、手に入れたスキルを使わないわけないだろう」

( ・∀・)「おれゲーマーじゃないし」

( ´_ゝ`)「え?違うの?」

( ・∀・)「違う」

( ´_ゝ`)「じゃあいっか」

( ・∀・)「作るけどな」

('A`#)
(#´_ゝ`)「「「作るのかよ!」」」
(´<_`#)

( ・∀・)「なんか色々慣れてきて面白くなってきた」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:15:15 ID:EuI.0M8A0<>
(´・ω・`)「…何故?ギルドに入らない?
もちろんポリシーとか煩わしいからとか言う人もいるのは知ってるけど、
モララーは、違うよね?」

三人を気にせずにモララーと向き合うショボン。
その真剣な瞳に、モララーは笑顔で返す。

( ・∀・)「ほら、おれってイケメンじゃん」

思いもかけない返答に、ショボンとフサギコ以外の目が点になった。

立ち上がるモララー。
周囲を見回しながら、続きを話す。

( ・∀・)「だから昔っから結構敵が多かったんだよな」


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:16:05 ID:EuI.0M8A0<>

豚女「あいつマジ顔だけだよねー」
鳥頭女「マジマジ?でもかおはよくね?」
馬面女「成績もいいけど、面白くないって」
足裏面女「やっぱり施設育ちはダメだよね」


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:17:17 ID:EuI.0M8A0<>

( ・∀・)「男からは妬まれて、」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:18:24 ID:EuI.0M8A0<>

猿男「ちょっと顔が良いってあいついい気になってないか」
滓男「ほっとけほっとけ。ただの顔だけ野郎だ」
短足男「あいつ友達いないってホントか?」
胴長男「らしいぜ。いつも1人だしよ」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:19:26 ID:EuI.0M8A0<>

( ・∀・)「女はおれを手に入れるために仲違いをし、」



.<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/03(日) 00:19:28 ID:iKtle9.c0<>支援<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 00:21:29 ID:GOpZn4Nw0<>しえ<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:22:12 ID:EuI.0M8A0<>

豚女「げ。まじで?親無かよ」
鳥頭女「あれ?でも三者面談に汚い爺さん来てなかった?」
馬面女「なんか複雑みたいよ。
今はじいさんばあさんと一緒だけど、小っちゃいころはそういう施設にいたんだって噂」
足裏面女「マジキツイわー」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:23:05 ID:EuI.0M8A0<>

( ・∀・)「付き合った女は独占欲が酷くてさ」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:23:47 ID:EuI.0M8A0<>

ギャル「ぼっち落とすのチョー簡単だったよー。
友達いないから金持ってるし。良い財布。
え?本命?いるよー。いま転勤で遠距離。
卒業の頃に戻る予定だから、そしたら結婚するんだ。
ほら、とりあえず隣にいたら自慢できる顔じゃん。あいつ。
いいの、いいの。あたしと付き合えて感謝してもらわなきゃ」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:24:32 ID:EuI.0M8A0<>

( ・∀・)「だから、仲間とかうざいんだ。ってことで、ギルドには入らない」


.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:25:43 ID:EuI.0M8A0<>

(  ∀ )「もう、信じるもんか」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:26:32 ID:EuI.0M8A0<>
ξ゚听)ξ「きも」

川 ゚ -゚)「ひくわー」

('A`)コレダカライケメンハ

(;^ω^)「流石にひどいお」

ξ゚听)ξ「とか、」
川 ゚ -゚)「言うとでも、」
('A`)「思ったか?」
( ^ω^)「お?」

(;・∀・)「え?」

モララーの告白に分かりやすい嫌悪を見せた四人だったが、
すぐに笑顔に変わる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:27:50 ID:EuI.0M8A0<>
ξ゚听)ξ「そこの男と長いこと友達やってるとね、結構わかってくるのよ」

('A`)「そいつが言っていることが、本心かどうかってくらいはな」

川 ゚ -゚)「今のお前の言ったことは、嘘ではないかもしれないが本心ではない」

( ^ω^)「っていうか、結構わかりやすかったお。だおね」

兄者達に同意を求めると、何人かが頷く。

(;・∀・)「か、勝手にしろ」

慌てて部屋を出ようとするモララー。
しかしドアの前に、フサギコが立ちふさがる。

(;・∀・)「おれはギルドには入らない。どけよ、フサギコ」

ミ,,゚Д゚彡「ダメだから」

(;・∀・)「ああ?」

ミ,,゚Д゚彡「モララーは、VIPに入るから」

(;・∀・)「おまえ、何を言って?」

(´<_` )「お、フサギコが言うか」

( ´_ゝ`)「あのフサが言うようになったな。
お兄ちゃん嬉しい」

(´<_` )「なんだ、フサギコの兄貴になったのか?」

( ´_ゝ`)「なんだ弟者。やきもちか?
バカだなあ。おれの…」

(´<_` )「よしわかった。次のフロアのボスにソロで挑め」

( ´_ゝ`)「死亡フラグは立てませーん」

(;・∀・)「え?こんな時まで脱線?」

ミ,,゚Д゚彡「モララーはVIPに入らなきゃだめだから」

(;・∀・)「しかもスルーした!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:29:00 ID:EuI.0M8A0<>
( ^ω^)「ツッコミ要因としてもギルドに欲しいお」

( ゚∋゚)「       」

ξ゚听)ξ「言っとくけどクックルだって充分ボケだからね」

(;゚∋゚)?

ξ゚听)ξ「このギルドでツッコミだけしてるのは私ぐらいでしょ」

('A`)「(これがまた本気だからな)」

( ^ω^)「(しっ。聞こえるお)」

川 ゚ -゚)「(もう聞こえているぞ)」

ξ#゚听)ξ「なに?そこの二人文句あるの?」

('A`)「ありませーん」
( ^ω^)「ないお」

( ´∀`)「このギルドは楽しいもなよ」

(;・∀・)「うわ。ここでおれに戻すのか」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(´・ω・`)「確かに馴染んではいるみたいだけど」

(;・∀・)「なじんでないし」

ミ,,゚Д゚彡「はやく認めると良いから」

(;・∀・)「なにを?」

(´・ω・`)「でも…」

( ´∀`)「仲間が増えてうれしいもな」

(;・∀・)「おれの意思はどうした!?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:29:58 ID:EuI.0M8A0<>
( ´_ゝ`)「うむ。腕は確かだな」

(;・∀・)「なんの?」

(´<_` )「爪スキルもエクストラスキルだよな?」

(;・∀・)「そっちなんだ!」

ミ,,゚Д゚彡「モララーは入ると良いから」

(;・∀・)「おまえはまじめか!」

( ゚∋゚)「      」

(;・∀・)「おれには聞こえないから!」

(;゚∋゚)「!……」

川 ゚ -゚)「あー。クックルが落ち込んだ」

( ^ω^)「だめだおモララーさん」

('A`)カワイソウニ…

(;・∀・)「え?なに?今の俺が悪いの?ごめんなさい」

川 ゚ -゚)「お前の持つスキルをうちで活かしてみないか?」

( ・∀・)「やっと本音が出たなこのやろう。金を稼ぐなら自分でやるよ」

川 ゚ -゚)「?もう相方がいて漫才でもどこかのステージでやるのか?」

(;・∀・)「そっちのスキルかよ!やらねーよ!
っていうかそんなスキル持ってないから!」

( ^ω^)「これもノリツッコミに入るのかお?」

(;・∀・)「しるか!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:31:03 ID:EuI.0M8A0<>
ξ゚听)ξ「でも確かにこのツッコミスキルは惜しいわね」

(;・∀・)「引っ張るな!」

( ´∀`)「でもこのギルドに入るとボケに回るかもしれないもな」

( ^ω^)「おー」
ξ゚听)ξ「あー」
川 ゚ -゚)「あー」
('A`)アー
( ´_ゝ`)「あー」

視線が弟者とクックルに注がれる。

(´<_` )「おれは違うぞ。断じて違うぞ。モララー、信じてくれ」

(;・∀・)「だからおれにふるな!」

(;゚∋゚)「            」

(;・∀・)「だからおれには聞こえないって」

( ゚∋゚)「!…………」

(;・∀・)「?」

( つ∋゚)「     」

(;・∀・)「ごめんなさい!泣かないで!って言うか実は涙出てないよね!
手で隠して泣いてるふりしているだけだよね!
やっぱりおれはこの件に関して悪くないと思うんだけど!」

ミ,,゚Д゚彡「はやくギルドに入るって言うと良いから」

(;・∀・)「だからおまえはひとりまじめか!」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(;・∀・)「もうやだショボン!どうにかしてくれ!」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 00:31:19 ID:HJ2fDhZI0<>ツッコミのユニークスキルか...<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:33:21 ID:EuI.0M8A0<>
出入口をフサギコにふさがれた状態で散々喋りあうメンバーとモララー。
そしてさすがに1人でほぼ全員にツッコミを入れていたモララーは疲れ果て、
肩で大きく息をしながらショボンに顔を向ける。

(´・ω・`)「ほぼ初対面でこのメンバーと渡り合うスキルと実力。
やっぱりぼくの目は正しかった」

(;・∀・)「お前もかよ!」

(´・ω・`)「今まで話していて思ってたんだ。
モララーならこのギルドでツッコミにまわれるって」

(;・∀・)「おまえのギルメンを選ぶ基準は間違ってると思うぞ」

(´・ω・`)「うん。僕は間違っていたよ。スキルなんて関係ない。
モララーにもこのギルドに入ってもらいたい。それだけだった。
後のことは一緒に考えよう。協力するから」

( ・∀・)「なんだよ後の事って」

(´・ω・`)「漫才でステージに立ちたいなら」

(;・∀・)「そこのネタをひっぱってどうするよ!」

(´・ω・`)「さあモララー、ギルドに入るんだ」

(;・∀・)「そこでいきなり命令口調!?このタイミングで!?勧誘ウインドウまでだして!?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:34:30 ID:EuI.0M8A0<>
(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:36:04 ID:EuI.0M8A0<>
前からショボンとフサギコにじりじりと詰め寄られるモララー。

(;・∀・)「え?え?え?」

(´・ω・`)「さあ」

ミ,,゚Д゚彡「さあ」

詰め寄られ、ソファーに座ってしまうモララー。
その拍子にあげた腕が、その指先が、【YES】を触った。

( ・∀・)「あ」

(´・ω・`)「よし、これでギルドの一員だよ」

(;・∀・)「ちょ、おまえ!それはノーカンだろ、常識的に考えておい」

(´・ω・`)「この非常識な状態の世界で常識とか言われても困るな」

(;・∀・)「うわ、マジかこいつ」

ミ*,,゚Д゚彡「嬉しいから」

(;・∀・)「呑気に喜ぶなおい!」

( ^ω^)「モララーって呼んでいいおね?」

ξ゚听)ξ「最初から呼べばいいのよ、呼べば」

川 ゚ -゚)「さて、これでメシにできるな」

ξ゚听)ξ「女の子がメシとか言わないの」

川 ゚ -゚)「はーい」

ξ゚听)ξ「じゃ、ショボン、ふさ、食事の準備お願い」

('A`)オンナノコガショクジノシタクシナインダヨナ

ξ゚听)ξ「文句あるの?」

('A`)イーエアリマセン

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:37:54 ID:EuI.0M8A0<>
( ´_ゝ`)「なあなあモララー。ふりかえりの森で採取したんだろ?なんかいらない鉱石無いか?」

(´<_` )「あ、兄者、抜け駆けはずるいぞ」

( ´∀`)「モララーは何が好きもな?お肉なら相談にのるもなよ」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」
 _
(  ∀ )「めし…。その後は説教……」

(;・∀・)「それでおまえはいつまでそのままなんだよ!」

( ^ω^)「おーー」

('A`)「流石のツッコミスキルだな」

ξ゚听)ξ「ちゃんと拾うわね」

( ´∀`)「ツンはめんどくさいとスルーするもなから」

川 ゚ -゚)「これで思う存分ボケられるな」

(;・∀・)「今まではなんだったんだよ!」

疲れたように身体をソファーに投げ出しつつも、律儀にツッコミを入れ捲るモララー。

その肩を叩かれ、振り向くとクックルがいた。

( ゚∋゚)

( ・∀・)「な、なんだよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:40:44 ID:EuI.0M8A0<>
( ´_ゝ`)「なあなあモララー。ふりかえりの森で採取したんだろ?なんかいらない鉱石無いか?」

(´<_` )「あ、兄者、抜け駆けはずるいぞ」

( ´∀`)「モララーは何が好きもな?お肉なら相談にのるもなよ」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」
 _
(  ∀ )「めし…。その後は説教……」

(;・∀・)「それでおまえはいつまでそのままなんだよ!」

( ^ω^)「おーー」

('A`)「流石のツッコミスキルだな」

ξ゚听)ξ「ちゃんと拾うわね」

( ´∀`)「ツンはめんどくさいとスルーするもなから」

川 ゚ -゚)「これで思う存分ボケられるな」

(;・∀・)「今まではなんだったんだよ!」

疲れたように身体をソファーに投げ出しつつも、律儀にツッコミを入れ捲るモララー。

その肩を叩かれ、振り向くとクックルがいた。

( ゚∋゚)

( ・∀・)「な、なんだよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:42:26 ID:EuI.0M8A0<>
( ゚∋゚)「これからよろしくな」

( ・∀・)「        」

( ゚∋゚)?

(;・∀・)「いきなり声が聞こえたーーーー!!
しかも結構良い声だぞおい!!」

( ゚∋゚)「良い声とか言われると照れるな」

(;・∀・)「そっちに反応する前に、いきなり聞こえるようになった理由を教えてくれ」

( ゚∋゚)「………きもち?」

(;・∀・)「そこで精神論かよ!しかも不思議そうに!つーか理由が分かってないのかよ!」

有耶無耶のうちにギルドの一員となったモララー。
その夜は、騒がしく過ぎていった。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:46:17 ID:EuI.0M8A0<>
10.ブリリアント



五日後。

最前線の街。
転移門広場の片隅に、モララーはいた。

( ・∀・)「…久しぶりだ……」

目の前に広げた絨毯には、所狭しとアクセサリー系のアイテムが並べられている。

( ・∀・)「あのやろう…」


(´・ω・`)「とりあえず、ギルメンには必ず体術スキルは取ってもらってるから、よろしく」


( ・∀・)「よろしくじゃねえぞこのやろう」

心の中で突いているはずの悪態だが、小声で漏れているのはご愛嬌だろう。

目の前にいる二人の客も気付いていないようなので、問題も無い。

(か)「そういえば、あのギルドの話聞いたか?」

(き)「あのギルドって……ああ、VIPだっけか」

( ・∀・)?

目の前の客から洩れたギルドネーム。
どうやら自分が不本意ながらもそのギルドの一員であるということは分かっていないようなので、
そのまま聞き耳を立てた。

(か)「そうそう。すげえよな。中層ギルドなのに」

(き)「最前線とまではいかなくても、フロアボス戦レベルのクエストボスを、ここ数日で三体撃破だっけか」

( ・∀・)!?

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:47:30 ID:EuI.0M8A0<>
(か)「いや、たしかもう一匹倒して四体だったはず」

(き)「まじかよ」

(か)「例のふりかえりの森のボスを倒したのもあいつらなんだろ?」

(き)「あれのおかげで、NPCの店の回復POTのレベルが上がったんだっけ?」

(か)「いや、品揃えが良くなったとか聞いたぞ」

(き)「どっちにしてもすげえよなー。攻略組でもないのに」

(か)「生産系ギルドとしてはそこそこ有名だったらしいけど、
これで戦闘系としても名前が売れたな」

(き)「そういや、ユニークスキルも持ってるっていうよな」

(;・∀・)!

(か)「ギルマスが投擲系のユニークスキルを持ってるっていうあれか?」

(き)「あと、メンバーの一人が俊足のスキルを持ってるとか」

( ・∀・)?

(か)「へー」

(き)「ほんとかどうか、知らねーけどさ」

(か)「まあでもこれで、下手にちょっかいはかけられなくなったな」

(き)「攻略組も一目置いたって話だし、なんにせよ攻略が進むなら願ったりだ」

(か)「……百層…か」

(き)「血盟でも聖竜でも、もうビーターでもいいから、早く誰かクリアしてくんねぇかなぁ」

見ていたアクセサリーを置き、モララーに一声かけてから立ち去る二人の客。

しかし声をかけられたモララーは何も反応が出来なかった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:49:56 ID:EuI.0M8A0<>
( ・∀・)「どういうこと…だ?」

自然と洩れる言葉。

( ・∀・)「おれが岩と格闘している間にそんなことを?
しかも投擲と俊足のユニークスキルって…。
本気かあいつら?
いや……全部……おれのため?
おれのスキルを……隠すためか?」

指先が震える。

( ・∀・)「もしそうなら…。
おそらく全部、ショボンの狙い通り…。
なんだよそれ…。
自分達だってそんな風に注目されたら危険になるだろ。
なのに…」

目に浮かび始めた涙を、必死に止める。

( ・∀・)「まじか…。まじか…」

( ^ω^)「いたお!」

ミ,,゚Д゚彡「モララー!」

自分を呼ぶ声に一回うつむいてしっかりと目をぬぐうモララー。

顔をあげると、同じギルドのメンバーが三人いた。

ξ゚听)ξ「まったく。ちゃんとメッセージ返しなさいよ」

( ・∀・)「え?…あ。すまん」

ξ゚听)ξ「あら、今日は素直じゃない」

視界の隅に浮かぶメッセージ到着を知らせる点滅。

( ・∀・)「すぐ読む」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:51:20 ID:EuI.0M8A0<>
( ^ω^)「いいおいいお。すぐ戻ってほしいってメッセージだお」

( ・∀・)「ああ、悪い。え?すぐに?」

ミ,,゚Д゚彡「緊急会議だから。早く片付けるとよいから」

(;・∀・)「な、なんかあったのか?」

ξ゚听)ξ「明日、あるクエストのボスにチャレンジする予定なの。
モララーも体術スキル覚えたのなら、一緒に来なさい」

( ・∀・)「うわ。命令形」

(;^ω^)「命令じゃないけど、モララーも来て欲しいお」

ミ,,゚Д゚彡「情報を集めたから、戦い方の案を出してほしいってショボンが言ってたから」

( ・∀・)「ショボンが…ね……」

何も言わず、目の前のアイテムを片付け始めるモララー。

ξ゚听)ξ「……もっと駄々をこねるかと思った」

(;^ω^)「ツン」

絨毯を丸めて立ち上がるモララー。
そしてぼそっと呟いた。

( ・∀・)「噂。聞いた」

(;^ω^)「おっ」

ミ;,,゚Д゚彡「だ、だから」

ξ゚听)ξ「あらそう。で?」

( ・∀・)「全部、あいつの思惑通りか?」

ξ゚听)ξ「あんたの聞いた噂がどのレベルか知らないけど、多分そうね」

(;^ω^)「(ツンに一緒に来てもらってよかったお)」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:54:47 ID:EuI.0M8A0<>
( ・∀・)「あいつ、恐ろしいやつだな」

ξ゚听)ξ「何をいまさら」

(;・∀・)「え、あ、うん。で、あんたらは良いのか?」

ξ゚听)ξ「なにを?」

(;・∀・)「いや、ほら、名前が売れればいろいろ弊害が」

ξ゚听)ξ「あるかもしれないわね。でもまあ、良いんじゃない」

( ・∀・)「なんで?」

ξ゚听)ξ「ショボンがやった行動で、私達にも影響があるのなら、それはあんたの為だけじゃない。
多分、死ぬほど色々考えて、裏で手をまわして、私達にとってより良い選択をしているはずよ」

( ^ω^)「多少のリスクより、大局を見たより良い方向を選択しているはずだお」

( ・∀・)「なんでそんな」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンはいつもみんなの事を考えてるから」

( ・∀・)「…信じてるってことか…」

ξ゚听)ξ「言っとくけど、ショボンは勿論私たちにとってあんたがふざけた行動を取るなら、
私はあんたを殺すから」

ミ;,,゚Д゚彡「ツン!」

(;^ω^)「おっお」

ξ゚听)ξ「あいつは友達を信じすぎるのよ。
普段は人なんか信じてないくせして、一回信じたらもうダメ。
だから、そこら辺は私達が管理してやるの」

(;^ω^)「確かにショボンはそういうところがあるけど…」

ミ;,,゚Д゚彡「モララーは大丈夫だから」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:55:59 ID:EuI.0M8A0<>
( ・∀・)「……友達?」

ξ゚听)ξ「そ、友達。
あいつにとってこのギルドは友達の集まりなの。
そしてあいつは、自分の命に代えても私達を、友達を守るわ。
だから私達は、あいつの足りない部分を補って、守ってやるのよ」

( ・∀・)「友達……」

ξ゚听)ξ「あんたが『友達』にどんな思いがあるのか知らないけど、
すくなくともショボンとフサギコはあんたの事を信じてる。
友達だと思ってる。
私自身は友達の友達が自分にとっても友達だとか言うつもりもないし、
そんなことがある分け無いってことも知ってる。
でも、少なくとも友達の二人が信じている相手なら、
私もあんたを友達だと思えるようになるかもしれない。
っていうか、そこのバカとか何名かは、もう友達だと思ってるみたいだしね」

( ^ω^)「ご紹介にあずかりましたバカでーす。
って、誰がバカだお!」

ξ゚听)ξ「…あんたはまったく……。ツッコミスキルが低いわよ」

(*^ω^)「ノリツッコミは難しいし恥ずかしいお」

ミ,,゚Д゚彡「モララー?」

(  ∀ )「友達…」

うつむき、表情を見せないモララー。

(  ∀ )「こんな偽りの世界で、友達だとか、信じるだとか…」

ξ#゚听)ξ「あんた!」

モララーの言葉に怒りをあらわにするツンだったが、ブーンに止められる。

( ^ω^)「モララーはよくばりだお」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:56:58 ID:EuI.0M8A0<>
(  ∀ )「おれがよくばり?おれは…ただ…」

( ^ω^)「『確かに体も偽りの物だし、目に映るものも全て仮想世界。
偽りの世界と言って良い。
でも、心と命は本物。
自分自身。
なら、それ以外の何を欲しがる必要がある?
それ以外の本物とやらに、どれだけの価値がある?』」

(  ∀ )「!」

( ^ω^)「前にある人が言った言葉だお。
もちろん肉体にだって価値はあると思うけど、でも、これを聞いた時に確かにそうだと思ったお。
だから、命という本物と、心という本物を手にしていながらそれ以上を欲しがるモララーは、
欲張りさんだお」

ミ,,゚Д゚彡「フサギコの心に、嘘は無いから。
モララーは友達だから。
一緒にがんばって、生き残って、一緒に脱出したい友達だから」

(  ∀ )「命と心…」

ξ゚听)ξ「あーもう、うだうだうるさい!」

しびれを切らしたようにツンが声を荒げる。

ξ゚听)ξ「ギルドがいやなら脱退でもなんでもすればいいでしょ!
グダグダ言い訳しながらもそれをしないってことがあんたの本心なのよ!
いい加減認めなさい!
みっともない!
結局あんたはどうしたいの!!
ほんっと、情けない!」

(;^ω^)「うわぁ」

ミ,,゚Д゚彡「つ、ツン」

(  ∀ )「!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:58:25 ID:EuI.0M8A0<>
ξ゚听)ξ「なんでそんなにグダグダなのか知らないし興味もないけど、
すくなくともあの戦いで私達と一緒に動いていた時のあんたはイキイキしているように見えた。
あんな場面なのに、どこか楽しそうにすら見えた。
その後のバカ騒ぎの時もね。
私もあんたのあの姿を見たから、仲間に、友達になれるかと思った」

( ^ω^)「!(飴と鞭の使い方がうまくなったおね)」

ξ゚听)ξ「ブーンは後で正座」

(;^ω^)「(こ、心を読むスキル!)」

ミ,,゚Д゚彡「モララーは、ふさやショボンと友達になるのがイヤ…だから?」

(  ∀ )「お、おれは!!」

ξ゚听)ξ「ショボンからメッセージが来てる。
『合流は出来たみたいだけど、何か問題発生?』
だって。
フレンドリストの位置検索で私達が一緒にいるのは分かってるみたいね」

(  ∀ )「おれは…」

ξ゚听)ξ「で、どうするの?」

ウインドウを消したツンが黙ってモララーを見る。
同じようにモララーを見るブーンとフサギコ。

やがてゆっくりとモララーが顔を上げた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 00:59:51 ID:EuI.0M8A0<>
( ・∀・)「そんなにおれと友達になりたいのか。仕方ないなあ」

ξ゚听)ξ「はあ?」

( ^ω^)「おっおっ」

ミ,,゚Д゚彡「なりたいから!」

( ;∀・)「…仕方ないから、このままギルドにいてやるし、力も貸してやるよ」

ξ゚听)ξ「……あんた…」

( ^ω^)「おっおっお」

ミ,,゚Д゚彡「嬉しいから!」

( ;∀;)「……友……達…だから……な。しかた…ない…」

ξ゚听)ξ「……はいはい。じゃあとりあえずさっさと行くわよ」

( ^ω^)「おー!いくお!」

ミ,,゚Д゚彡「今度のクエストも頑張るから!」

ツンが一番先に踵を返して歩き始め、その後に涙をぬぐってモララーが歩き出す。
そしてその後ろを楽しそうにブーンとフサギコが続く。



ギルドVIPが中層クラスで最強と呼ばれ、一目置かれるようになるのはこの少し後の話。





第十三話 終




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 01:03:28 ID:EuI.0M8A0<>以上、十三話でした。

途中飛ばしたり休憩したり、失礼いたしました。

そして遅くなりました。
待っていて下さる方もいて、感謝しております。

本当にありがとうございます。
本当に書くモチベーションになります。

やはり、反応をいただけると嬉しいです。

支援、ありがとうございます。

モナーとビーグルとか、可愛くてかわいくて。
ありがとうございます。


さて今回の話が思ったよりも長くなったのは自分の力の無さ、構成力の無さですが、
それでも書きたいことは書けたので、まあいっかなと思っております。

次回は、予定では残りの誰かの話のつもりですが、
ちょっと重い話が続いた気もするので、
のんきなクエストの話か閑話になるかもです。

つまり未定です。

次回こそ来月!
と思っておりますが、どうなることやらです。


読んでいただき、ありがとうございました。
また次回、よろしくお願いいたします。

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 01:04:31 ID:bb/Io1bc0<>え!?モララーってまだギルド入ってなかったのか!!
わりといるからギルメンなのかと思ってたw<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/03(日) 01:08:55 ID:EuI.0M8A0<>あと、一応年表も置いておきます。

年表

2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月
04月フサギコ「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル「三話 それから」
06月クックル「四話 緑の手」
07月
08月
09月モララー「十三話 ダイヤモンドだね」
10月
11月
12月ギコ・しぃ「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 01:21:40 ID:a7wEU56c0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 02:54:00 ID:oswIO1n.0<>置いて行かれたアルゴさんになぜかワロタ
乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 03:22:23 ID:HOA3Fmug0<>以外とモララーの加入は遅かったんだな。なにより乙でした!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 07:06:38 ID:Z1UPpeS20<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/03(日) 16:18:29 ID:q4Xi1gM20<>今回も読みごたえあったわ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 18:15:44 ID:unStJE.M0<>そういやギコしぃが入る時に
一番最後に加入したのはモラって記述があったな
モラが一番好きだわー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 19:28:50 ID:q2ngOe/k0<>うまくいえないのか<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/03(日) 23:03:44 ID:d3PKlLyU0<>待ったかいがありました。すごく面白かったです。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/03(日) 23:48:30 ID:jc0xvA4wO<>ω・)モララーの人1倍仲間思いの理由が描かれててよかった思う<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/04(月) 03:22:54 ID:q9xAMv7U0<>乙 くそモララーに泣かされるとは思ってなかった、一気に好きになったわ
残りは流石兄弟と初期メンか、どれにしろ楽しみにしてる<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/04(月) 20:39:05 ID:IADbxA9o0<>モララーが和解するタイミングが、加入する時じゃなくて加入した後っていうのが素敵。
心を入れ換えた最後のきっかけが、ショボンでもフサギコでもなく、ツンであったっていうのも素敵。
毎話楽しみにしています。最新話更新、お疲れ様でした。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/06(水) 01:40:46 ID:9zlRjSGs0<>乙です
モラ好きだからこういう描かれ方されててすごく面白かった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/09(土) 17:49:34 ID:v5rGrXtI0<>読んでて登場人物全員の事が好きになるブーン系は何年ぶりだろ?次の更新まで毎日読み直すぞー<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/11(月) 02:11:37 ID:bwzmFtkI0<>乙。次回も楽しみにしてます。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/11(月) 16:28:26 ID:ewH/UsHo0<>ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1554.gif
( ・∀・)「イケメンの剣技をみたまえ」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/11(月) 17:04:54 ID:wdbAV7NE0<>爪で剣技とは さすがイケメン<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/11(月) 17:30:48 ID:ewH/UsHo0<>>>554
爪でも斧でもソードスキルだろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/11(月) 19:57:12 ID:M9tIIcyI0<>オ、オタ芸?<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/11(月) 20:08:24 ID:VvMvLWyo0<>>>556のせいでペンライト振るプロオタにしか見えなくなった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/11(月) 20:13:09 ID:6oqdUf9E0<>イケメンオタ芸マスターか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/12(火) 12:18:23 ID:BovpY.yA0<>ラブライバーだったのか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/15(金) 19:56:31 ID:TrOhyCfc0<>>>556-559のせいでモラが隠れオタのイメージが着いてしまったんだがどうしてくれる<> 名も無きAAのようです<><>2014/08/20(水) 06:10:58 ID:w2RI7k8YO<>思ってた以上にモララーの過去がヘビーだった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/24(日) 23:58:38 ID:PQ3N2tvg0<>ツンとの関係性に納得できた。<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:27:35 ID:TEZ8S/2k0<>八月ももうすぐ終わりですね。

ということで、十四話を投下します。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/29(金) 23:29:04 ID:.7yXe6uc0<>うっひゃあ
今日は最高だぁ
支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:29:25 ID:TEZ8S/2k0<>( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第十四話 双頭の鷲の旗の下に





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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:30:54 ID:TEZ8S/2k0<>
0.あの丘をこえて



西暦2023年1月
第二層 戦闘フィールド。

町と街をつなぐこの道には特に名前は付けられていない。
モンスターも出てくるには出てくるが、道の周囲にはまばらに木が生えているだけのこのエリアは
通常の警戒をして、更に相応の経験を重ねた者が装備を整えていれば、危険性は低い場所とされていた。

もちろんゲームの中の死が実際の死に繋がるこの世界では、
モンスターの出てくるエリアでは全ての者が周囲を警戒し、
神経を張りつめているのが常だった。

ξ゚听)ξ「ねえショボン、次の安全エリアに着いたらお茶にしよう」

(´・ω・`)「もう?早くないかな」

川 ゚ -゚)「地図によるとそろそろ半分進んだようだし、良いんじゃないか?」

( ^ω^)「今日のお茶とおやつはなんだお?」

(´・ω・`)「まだ街を出て少ししか経って無いのに良いのかなぁ」

ξ゚听)ξ「もうすぐ十時!おやつの時間よ」

('A`)「大工が家を建ててるんじゃないんだからよ」

川 ゚ -゚)「こんな緊張の連続では、心が休まらん。休めるタイミングで休むのが良い」

( ^ω^)「だおだお。いつ襲われるかドキドキしながら歩くのは大変だおね」

('A`)「はいはい」

(´・ω・`)「ドクオ先生のお許しも出たし、次の安全エリアで休憩しようか。…!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:32:32 ID:TEZ8S/2k0<>
呑気に話していたショボンが携えていた槍で空中を指し、構えを取る。
それと同時にドクオとブーンは片手剣を、ツンは細剣を持ってショボンの前に飛び出す。
クーはショボンと同じ槍を構えてショボンの隣に立った。

(´・ω・`)「まず二体!」

ショボンが槍で指した先に現れる巨大蜂と狼。

('A`)「先ずはおれが狼を行く」

ξ゚听)ξ「蜂は私ね」

前方の警戒を四人に任せて振り返るショボン。

(´・ω・`)「後方、空中に二体。このエリアならおそらく蜂。右は僕が行く」

川 ゚ -゚)「ならばもう一匹は私が行こう」

( ^ω^)「全員のフォローと警戒に回るお!」

既に前方の二匹はポップしており、ドクオとツンは戦闘を開始していた。

('A`)!

ξ゚听)ξ「は!」

この世界に囚われて二ヶ月と少し、フロアボス戦など要所の戦闘等には参加はしていないものの、
順調に戦闘を重ねてレベルを上げてきた五人にとって、このエリアの敵は脅威ではなかった。

川 ゚ -゚)「とりゃ!」

(´・ω・`)「とう!ブーン!ツンの右側2メートル!足元に一体!」

( ^ω^)「わかったお!」

四人を見渡せる位置で片手剣を構えていたブーンがツンの下に駆け寄った。

すると空間のひずみがブーンの目にも分かり、狼がポップする。

ξ゚听)ξ「もうすぐ蜂が倒せるのに!」

( ^ω^)「こいつはブーンの獲物だお!」

狼が完全に実体を現したとほぼ同時にブーンの片手剣が胴を二分割する様に閃いた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:33:55 ID:TEZ8S/2k0<>
安全エリア。
広げた絨毯の上に座る四人。
その目の前、一人一人にはカップが置かれ、
中央の籠には丸く茶色い饅頭の様なお菓子が何個も入っていた。

ξ゚听)ξ「ん。美味しい。これ初めてよね」

カップに口を付けたツンが頬を綻ばせながら更に口を付ける。

川 ゚ -゚)「昨日のより香りが好みだ」

(´・ω・`)「昨日のはちょっとジャスミンっぽい香りが強かったからね。
あれはあれで僕は好きなんだけど」

( ^ω^)「今日のお茶も昨日のお茶も美味しいお」

ξ゚听)ξ「あんたは花より団子でしょ。それ、三つ目よね。少しは控えなさい」

( ^ω^)「おっおっおっ。おまんじゅうかと思ったら、持つと硬くて、
でも硬い皮を砕くように噛むと中の雲のように軽くふんわりとした生地が口の中に入って、
さらに奥から甘すぎないクリームがとろっと溶け出すんだお」

ブーンの感想を聞いて無言で一つ目に手をのばすツンとクー。

ξ゚听)ξ「あら」

川 ゚ -゚)「おっ」

食べた瞬間に笑顔を見せる二人。

それを嬉しそうに見つめるショボン。

ほんわかとした雰囲気が四人を包む。

('A`)「おまえら……」

ξ゚听)ξ「あんたも座ったら?」

ひとり立ったままでいるドクオ。
武器を持ったまま周囲を警戒しているのだが、それでも片手にはカップを持っている。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:35:16 ID:TEZ8S/2k0<>
('A`)「安全エリアとは言え圏外だからな。
モンスターが出ないってだけだ」

(´・ω・`)「ドクオのスキルがあれば周囲に来る人も分かるわけだし、座ってもいいんじゃない?
エリアに入ってきたら流石に警戒もするからさ」

('A`)モウアンナキマズイオモイハイヤダ

(;^ω^)「ああ…」

(;´・ω・`)「あれはね」

ドクオの呟きに、同意を見せる男二人。

しかし女二人は気にせずお茶をすすっている。

('A`)「一人立って警戒してりゃあまだ体裁が整うだろ」

(´・ω・`)「あれはちょっと肩身が狭い思いしたからね」

(;^ω^)「あの気分を『ちょっと』と言ってしまうショボンもなかなかだお」

つい先日も同じような場所でお茶にしたのだが、今いる場所と決定的に違うのが、
現在かなり需要のある道のため、通るプレイヤーがかなり多かったという事だった。

他のプレイヤーの視点で考えると、
安全エリアとは言え圏外で絨毯広げて呑気にお茶とお菓子を食べている彼らは、
かなり複雑な思いを抱かせてしまうに十分だった。

しかも五人パーティーのうち二人が容姿端麗な女性なのだから、
嫉妬も入り混じっていたことであろう。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:36:05 ID:TEZ8S/2k0<>
ξ゚听)ξ「まったく変なことを気にするんだから」

川 ゚ -゚)「この道は、と言うよりこれから行く町はもう需要も少ないから人も通らないし、
良いだろう。というか、ここまで来て人目を気にしても仕方あるまい」

ξ゚听)ξ「で、ショボン、これってどこで買ったの?」

(´・ω・`)「ああ、中身は昨日行った街のショップだよ。それを軽く揚げてみたんだ」

( ^ω^)「ショボンは凄いおね。もうそんなことできるんだから」

(´・ω・`)「調理スキルのレベルは槍より上だよ」

川 ゚ -゚)「ほお!今日のお弁当も楽しみだ」

('A`)「いいのかそれ」

呆れるドクオをよそに出発の準備を始める四人。

今日はあるエクストラスキルを得るために進んでいる五人だった。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:37:22 ID:TEZ8S/2k0<>
1.テイク・オフ



予定通り昼過ぎに町に辿り着き、圏内の広場で再び絨毯を広げる五人。
今度はドクオも大人しく座っている。

(´・ω・`)「さて、ここからが目的地への本当のスタートなわけですが。
っていうか、ほんとにみんなもやるの?」

( ^ω^)「おもしろそうだお」

(´・ω・`)「話によると結構大変らしいけど」

ξ゚听)ξ「とりあえず私は見学かな。
別にすぐ取らなきゃいけないスキルってわけじゃないし」

川 ゚ -゚)「そうだな。ゆくゆくは取ってみるのもよさそうだが。
それに全員これにかかりっきりになるのも不味くないのか?
取得クエスト中はそこから動けなくなるとかいう話だし。
ドクオはどうするんだ?」

('A`)「おれか?おれは…」

(´・ω・`)「クーとツンが取らないなら、二人が別行動する時にそっちで一緒に行動してほしいけど、
でもドクオも取っておいたほうが良いよね。あれ」

それぞれの手には黒パンで作ったサンドイッチがあり、更に目の前にはお茶の入ったカップがある。
また中央にはソーセージや野菜スティックが入ったバスケットが置かれていた。

そんな穏やかな空気の中これからの事を話しているのだが、
ドクオは一人気もそぞろに周囲をきょろきょろと見回していた。

( ^ω^)「さっきからどうしたんだお?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:38:38 ID:TEZ8S/2k0<>
('A`)「あーうん」

( ^ω^)「もしかして、先輩を捜してるのかお?」

('A`)「…ああ」

(´・ω・`)「ドクオが時々言ってた?」

('A`)「ゲーム、先輩も手に入れたって言ってたから」

川 ゚ -゚)「黒鉄宮の碑に名前は…って、そうか。
ゲーム内の名前が分からないんだったな」

('A`)「なんて名前でやるかは聞いてなかったし。
おれはほら、もともとお前らと始める予定だったから、向こうで会うのはまた慣れた頃にって話してたんだ」

ξ゚听)ξ「……会えると良いわね」

('A`)「…ああ。先輩も誰かと一緒にやるって言ってたから、独りではないと思うけどさ」

川 ゚ -゚)「ブーンも友達なのか?」

( ^ω^)「ちょっと話したことがあるくらいだお。
ショボンもあるおね」

(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「ほら、一つ上の流石先輩だお。ちょっとおかしな」

(´・ω・`)「ああそっか、あの先輩か。発想が面白い。
去年の文化祭で変な格好して歩いてたよね」

( ^ω^)「そうだお!そうだお!」

ξ゚听)ξ「あーなんか見た覚えあるかも。なんかアフリカの原住民みたいなカッコしてた人よね」

('A`)「あの時やってた深夜アニメに出てるキャラのコスプレだったんだけど、
似てる小道具が揃わなくてオリジナル要素が強すぎて、一見ただの変人だったんだよ」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:40:10 ID:TEZ8S/2k0<>
( ^ω^)「確かその元のキャラクターを当てたのがドクオだけだったんだおね」

('A`)「うん。その縁で仲良くさせてもらったんだ」

川 ゚ -゚)「しかし珍しいな。ショボンが一度でも話したことのある人を忘れるなんて」

(´・ω・`)「いや、忘れたわけじゃないんだけど、なんとなくイメージが一致しないんだよね。あの人」

( ^ω^)「?そうかお?」

('A`)「ああ、三年になってから少し落ち着いた気はしたけど、相変わらずだったぞ」

(´・ω・`)「そうなんだ」

('A`)「あ、でも…」

(´・ω・`)「どうかした?」

('A`)「春休みの間に交通事故あったんだよ。先輩。
だから始業式に来れなくって…。二週間くらい遅いスタートだったのかな。
一緒に観に行く予定だった映画の日に待ち合わせ場所に来なくって、
携帯もつながらないから心配してたら、夕方お姉さんから連絡が来て。
前日の夜に結構大きな事故にあったって聞いて…」

ξ゚听)ξ「大変だったでしょうね」

川 ゚ -゚)「無事でよかったな」

('A`)「運び込まれたのがショボンの所の病院だったからお見舞いに行ったけど会えなかったくらいだしな。
なんか外傷は少ないけど頭を打って意識が戻らなくて、集中治療室ってところにいた」

(;^ω^)「おっおっ」

川;゚ -゚)「助かってよかったな」

('A`)「休み明ける少し前にも行ったけど会えなくて…お姉さんと妹さんにすごく恐縮された」

ξ゚听)ξ「妹さんもいたんだ。お兄さんがそんな状態じゃあ、心細かっただろうな」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:41:32 ID:TEZ8S/2k0<>
('A`)「確か男の兄弟もいるはず。
部屋が一緒で、気軽にオナ」

(;^ω^)「ドクオ!」
(;´・ω・`)「ドクオ!」

('A`;)「お、おおう」

ξ゚听)ξ?

川 ゚ -゚)?

('A`;)「お、おな、同じ部屋だといろいろ大変だって言ってた。
それで結局会えたのは登校してきてからだったけど、
その時はおれの顔見て不思議そうな顔してたっけ。
ちょっと記憶がおかしくなってるって言ってたから、同じクラスの人達も心配してた」

(´・ω・`)「頭を強く打ったのなら、記憶障害とかあったのかな」

('A`)「もっと休んだらどうですかって言ったら、出席日数が厳しいから来てるとも言ってたな」

ξ゚听)ξ「うちの学校、そんなの気にしてたんだ」

('A`)「そりゃ気にするだろうよ。だろ?ショボン」

(´・ω・`)「一応ね。でも要所要所の行事への出席とテストを受けて、
ちゃんとした成績が取れてれば卒業は出来たはず」

('A`)「え?そうなの?」

(;^ω^)「さすがにゆるくないかお?」

川 ゚ -゚)「だが、確かちゃんとした成績ってのが肝だっただろう?」

(´・ω・`)「うん。学年10位内とか、全国統一模試での上位成績とか」

ξ゚听)ξ「あらら」

('A`)「じゃあ無理だ……よな。多分」

(´・ω・`)「僕に聞かれても分からないけど…」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/29(金) 23:42:54 ID:hVmurqDw0<>支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:43:11 ID:TEZ8S/2k0<>
ξ゚听)ξ「あら、そこら辺の情報収集もしているのかと思った」

(´・ω・`)「張り出された順位表は見には行ってたけど、さすがに覚えてないよ」

川 ゚ -゚)「(嘘だな)」

ξ゚听)ξ「(嘘ね)」

( ^ω^)「(ショボンなら全部覚えていそうだけど…)」

('A`)「(別に教えてくれてもいいのに。確か成績悪くはなかったよな。先輩)」

(´・ω・`)「でも、今日はいつにも増して探しているみたいだけど、何かあったの?」

('A`)「いや、あの先輩なら多分あのスキルは取りたいスキルだと思うから、
もしかしたらいるかも…って思って」

ξ゚听)ξ「でもこの情報って、あの情報屋さんとお金以外の取引で手に入れたんじゃないの?
まだほとんどの人は取れていないスキルって話よね。確か」

川 ゚ -゚)「ツン…」

ξ゚听)ξ「?」

('A`)「まあ、そうなんだけどさ。
先輩ならどこかから聞きつけて、やってきてもおかしくないよなって思って。
こういったMMORPGはおれよりキャリア長いしよく知ってるから、
先輩もアルゴから情報を手に入れてたりするかもしれないし」

ξ゚听)ξ「……ごめん」

('A`)「謝る様な事じゃないさ」

( ^ω^)「会えるお」

('A`)「?ブーン?」

( ^ω^)「会えるお。今日は会えなくても、必ず。会えるお」

川 ゚ -゚)「そうだな」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:44:32 ID:TEZ8S/2k0<>
ξ゚听)ξ「ええ。そうね」

(´・ω・`)「そうだね。会えるよ」

('A`)「ああ…そうだな」

何かを吹っ切る様に手に持ったサンドイッチに食らいつくドクオ。
それを見た四人も、それぞれに思いを持ちながら食事を続けた。

全てをたいらげ、食後にもう一杯ずつお茶を飲んだ後出発の準備を始めた五人。

この町には転移門は無いが、東西南北に一つずつ出入り口である門があり、
ショボン達は手に入れた情報通りに東門に向かった。

川 ゚ -゚)「食事はこっちの芝生でもよかったな」

(´・ω・`)「そうだね。こっちも日差しが良い感じだ。
芝生もさっきのところより背が高いかな」

ξ゚听)ξ「絨毯あるし、そう変わらないでしょ」

( ^ω^)「あの絨毯はお買い得だったおね」

('A`)「ストレージは大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「うん。見た目より容量は小さいから」

('A`)「なら良いけど、いざとなったら捨ててアイテムしまえよ」

(´・ω・`)「うん。分かってる。ありがと」

('A`)「お茶とかも……!!」

会話の途中でいきなり駆け出すドクオ。

(´・ω・`)「ドクオ?」

( ^ω^)「どうしたんだお!?」

その後を追うブーン。
三人もそれに続く。

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/29(金) 23:46:58 ID:1Y7SfGqk0<>支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:48:23 ID:TEZ8S/2k0<>
東門のそば。
向かって右側の広場にそびえたつ大樹。
その下で自分のウインドウを操作している青年に向かって走っていくドクオ。
そしてそのまま叫んでいた。

('A`)「せ!先輩!?」

青年が振り向いた。

('A`)「先輩…ですよね……良かった…」

青年に駆け寄るドクオ。

(´<_` )「あれ、えっと…とくなが?」

('A`)「ゲームを手に入れたって言ってたから、ずっと気になってたんです。
このスキルの情報を手に入れた時、もしかしたら会えるかもって…。やっぱり来てたんですね!
タイミングが重なって良かった!」

(´<_` )「え?あ?え?」

ドクオの勢いに押されるように対応する青年。

( ^ω^)「流石先輩!」

('A`)「ブーン!先輩がいた!」

( ^ω^)「おっおっ!すごい偶然だお!」

(´<_`;)「ないとう…だったよな」

('A`)「【体術】スキルの事を知った時、先輩なら絶対取るだろうと思ったんです!
やっぱり、
『俺の妹が宇宙人な訳がないけど
幼馴染がゾンビで生き別れた姉さんが魔法少女になっていたから
もしかするともしかするかもしれない!』、
略して『オレナイ!』、に出てくるポコちゃんをおれの嫁と公言している先輩だったら、
このスキルを取りに来るはずだって!」

ξ゚听)ξ「なにそれ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:49:53 ID:TEZ8S/2k0<>
(;^ω^)「ラノベで深夜アニメをやってたのは知ってるけど、細かいキャラクターは僕もちょっと…」

ξ゚听)ξ「知ってる事にもひく」

川 ゚ -゚)「なるほど、流石先輩は『オレナイ!』の主要キャラの一人、
主人公のことを陰でずっと見ていて、
暴力的な事件に巻き込まれそうになるといつの間にか傍に現れて敵を片付けて、
驚いた主人公の顔を見ると頬を赤らめてもじもじしながら主人公の髪の毛を一本貰って去っていく、
『拳 法子(けん ぽうこ)』ちゃん、通称ポコちゃんのファンなのか」

ξ゚听)ξ「何そのストーカー怖い。だいたい髪の毛貰って何するのよ」

川 ゚ -゚)「その事がこの先どう絡んでくるのかがあの小説の肝の一つだ。
32巻まで出ているが、まだその謎は解けていない」

ξ゚听)ξ「そんなに出てるの!?ながっ!」

川 ゚ -゚)「年に数冊出してるから、まだ十年少しのはずだ。
ちなみに彼女は確か一巻の終わりにシルエットのみで登場してから毎巻出ている人気キャラだ。
ここに来る前に丁度32巻が出たので読んだが、やっと宇宙に行って戦い始めたな」

ξ゚听)ξ「…ラブコメなのかと思ったら戦うんだ」

( ^ω^)「(まさかクーが読んでいたとは思わなかったお)」

川 ゚ -゚)「いや、基本オレツエーなハーレム系ラブコメだ」

ξ゚听)ξ「よくあるやつなのね。でもクーが読んでるなら読んでみようかな」

( ^ω^)「(僕には知ってるだけで引くとか言っておきながらかお)」

ξ゚听)ξ「だってあんたが部屋で一人でそんなの読んでたら普通ひくし」

( ^ω^)「…普通に心の声に反応するの止めてほしいお」

ξ゚听)ξ「あんたは顔に思ってることが出すぎなのよ」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/29(金) 23:51:05 ID:xtGIMtxc0<>支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:51:19 ID:TEZ8S/2k0<>
('A`)「本当良かった。生きて会えて」

(´<_`;)「あ、ああ、そうだな」

(´・ω・`)「……スキルを取りに行かれるところですか?」

四人の勢いに多少引き気味に反応していた青年だったが、
最後に話しかけてきたショボンに落ち着いた笑みを返す。

(´<_` )「あ、いや、おれは」

('A`)「じゃあ一緒に修行しましょう!な、ショボン、良いよな」

(´<_` )「人を……え?」

(´・ω・`)「もうゲットされたのなら色々とお聞きしたかったんですが…。
これから一緒に取りに行くのは、ぼくは別に良いよ。みんなも良いのかな?」

(´<_` )「いや、おい、おれは」

( ^ω^)「いいおー」

ξ゚听)ξ「見たことある人だし」

川 ゚ -゚)「私も構わん」

('A`)「先輩!」

(´<_`;)「おいおい、」

(´・ω・`)「…じゃあ、行きましょうか」

(´<_`;)「あ、いや、だから…」

('A`)「さあ先輩!きっとポコちゃんの必殺技、スプリングシュガーキックが出来るようになりますよ!
もしかしたらオータムペッパーパンチも出来るようになるかも!」

(´<_`;)「ねえねえ、おれの声聞こえてる?」

珍しく顔全体に喜びをあらわしているドクオ。
それを見ているからこそ四人は青年の声を聞こえないふりをしていた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:52:43 ID:TEZ8S/2k0<>
川 ゚ -゚)「相変わらずの笑顔だな」

ξ゚听)ξ「さすがに私達は慣れたけどね」

( ^ω^)「満面の笑みとかほとんどしないから、顔の筋肉が慣れてなくてどこかぎこちないんだお」

青年の背中を押して、町の外へと足を進めるドクオ。
その後ろを三人が続く。

川 ゚ -゚)「特にこの世界に来てからは、初めて見たかもな」

( ^ω^)「…だおね」

ξ゚听)ξ「まだ気にしてるのかしら」

( ^ω^)「それは…きっといつまでも気にしてるお」

ξ゚听)ξ「……まったく。ま、それはもう一人もだけど」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだな」

ちらっと後ろを見る二人。
そこにはまだ歩き始めていないショボンがいた。

川 ゚ -゚)「ショボン?どうかしたか?」

(´・ω・`)「あ、いや。大丈夫。ちょっとクエスト内容を整理していたらボーっとした」

ξ゚听)ξ「ドクオがもう出ちゃうわよ。外に」

(;´・ω・`)「いやいやいやいや。
ドクオー!!」

クーに話しかけられて歩き出していたが、慌てて駆け出すショボン。

('A`)「早く来いよ!」

珍しく大声を出したドクオに引っ張られるように、三人も駆け出した。




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◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:54:35 ID:TEZ8S/2k0<>
目的地への道は、決して楽なものではなかった。

岸壁をよじ登り、小さな洞窟に潜り、スライダーの様な地下水流を滑る。

そして戦闘。

手にした情報通りの場所でのみで起こった戦闘ということもあり、
大きな問題も無く勝つことが出来た。

(´<_` )「君らは強いな」

('A`)「頑張りました!」

ξ゚听)ξ「ま、これくらいわね」

( ^ω^)「いっぱい訓練して、戦ったんだお」

川 ゚ -゚)「ブーンはもう少し剣技も練習しないとだけどな」

(;^ω^)「おー」

そして合計二時間ほど移動すると、目的の場所に辿り着いた。

そこは二層の東の端。
ひときわ高くそびえる岩山の頂上の近く。
周囲を岸壁に囲まれた小空間の中に、泉と一本の樹と、一つの小屋があった。

(´・ω・`)「着いたみたいだね。あとはクエストを受けるためのNPCに会って話しかけて…」

ショボンが先頭を歩き、小屋の前に移動する。
一度立ち止まると全員が揃ったことを一度確認し、小屋のドアを開けた。
そしてそこには、情報通り初老の男が一人いた。

土間の上で座禅を組んでいるため身長は分かりにくいが、
筋骨隆々たる体躯とバランスから、大男であることがうかがえる。

スキンヘッドに口の周りの豊かな髭を携えた見た目は、オーソドックスな【拳法の師匠】である。

ξ゚听)ξ「あれ?」

( ^ω^)「人を指さしちゃだめだお」

川 ゚ -゚)「そのようだな。頭の上に【!】マークもあるし」

(´・ω・`)「さて、多分全員でやれるはずだけど、ツンとクーはやらないとして」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:55:35 ID:TEZ8S/2k0<>
ξ゚听)ξ「やっぱやる」

(´・ω・`)「へ?」

川 ゚ -゚)「私もやろう」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

ξ゚听)ξ「まーほら、あれよ。またここに来るの面倒くさいじゃない」

川 ゚ -゚)「そういう事だ。食料は充分持ってきたんだろ?」

(´・ω・`)「うん。五人で一週間以上、六人でも一週間は持つはず。
色々器具と調味料も持ってきたから作れるし、
来る途中で採取できそうな食べ物もチェックしておいたから、
万が一足りなくなっても街まで戻らなくて大丈夫だと思う」

ξ゚听)ξ「じゃ、そういう事で」

川 ゚ -゚)「だな」

(´<_`;)「お、おれは」

(´・ω・`)「一応パーティーに誘いますので、受けてください。
同一パーティーにいないと一緒に始められないかもしれないので」

(´<_` )「いや、だから」

('A`*)「先輩!どちらが先に取れるか競争しましょう!」

(´<_`;)「ああ…うん…」

ドクオの勢いに押されて、ショボンが送ったパーティーの誘いにYESのボタンを押す青年。

(´・ω・`)「ありがとうございます。
……ゲームでは【Tei】さんなんですね。
読み方は『テイ』さんでよろしいですか?」

(´<_`;)「あ、ああ…。うん。それで良いよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:57:28 ID:TEZ8S/2k0<>
('A`)「おれは『先輩』で良いですよね?」

( ^ω^)「ブーンもそっちが良いお」

(´<_` )「別に……好きに呼んでくれていい」

('A`)「ハイ!
あ、でもブーン、『流石先輩』は止めろよ。
こういうところでリアルの名前を呼ぶのはマナー違反だからな」

( ^ω^)「おっおっお。ごめんだお。先輩もごめんなさいだお」

(´<_` )「ああ、いや、いいさ。別に」

(´・ω・`)「それじゃあ、話しかけるね」

中央の土間にどっかりと腰と座っている大男の前に立つショボン。
その後ろに全員が並ぶ。

NPC「お前達は入門希望者か?」

(´・ω・`)「はい。そうです」

NPC「修行の道は長く険しいぞ?」

(´・ω・`)「存じております」

ショボンの言葉を受け、初老の大男の頭の上のアイコンが【!】から【?】に変わった。
そして六人全員の前にクエスト受領のログが現れた後、
初老の男…師範に促されて奥のドアから外に出た。

そこは岩壁に囲まれた庭の端に位置し、巨大な岩が六個並んでいた。
一つ一つの大きさは高さ二メートル、差し渡し一メートル半ほどあるだろうか。

一番手前の岩をポンと叩いた師匠は、左手であごひげをしごきながら言った。

(師匠)「汝たちの修業はたった一つ。
両のこぶしのみでこの岩を割るのだ。
成し遂げれば、何時にわが技の全てを授けよう」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:58:28 ID:TEZ8S/2k0<>
(;´・ω・`)「話には聞いていたけど」

('A`;)「…すごく……おっきいです」

(;^ω^)「そんなこと言って、ドクオは余裕あるみたいだおね」

ξ;゚听)ξ「やっぱりやめようかな」

川;゚ -゚)「ツン、二人で抜けるか?」

(´<_`;)「なにこれ」

(師匠)「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。
汝たちには、その証を立ててもらうぞ」

呆然と岩と見つめる六人に構うことなく、師匠は懐からアイテムを取り出す。

それは、大きく、太い、立派な……筆。

全員が呆気にとられていると、左手にいつの間にか握られていた小さな壺に筆の先を入れると、
電光石火、全員の目の前をすり抜けた。

(師匠)「うむ」

満足そうに頷き、懐に筆と壺をしまう師匠。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/29(金) 23:59:36 ID:TEZ8S/2k0<>
(三´・ω・`三)「えっと…なにこれ」

(へ'A`へ)「へ?」

( s^ω^s)「おお?」

ξシ゚听リ)ξ「ちょっとまった!!」

川二゚ -゚ニ)「私はどんなだ!?」

(>´<_`<;)「……おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:02:01 ID:8BYwryE20<>
(師匠)「その証は、汝たちがこの岩を割り、修行を終えるまで消えることは無い。
信じているぞ、我が弟子達よ」

騒然とした六人を後目に、悠然と歩いて小屋に戻った師匠。

川#二゚ -゚ニ)「ショボン!」

両頬に二本ずつ髭を書かれたクー。

(;三´・ω・`三)「い、いや、情報にこれは無かった」

ショボンの両頬には三本ずつ。

(ヘ'A`へ;)「おれも聞いてない!」

鼻の下からほうれい線に沿って両側に一本ずつ髭を書かれたドクオ。
某ラーメン男の顔を思い浮かべてもらえると分かりやすいだろう。

(;s^ω^s)「おっおっお」

ドクオと似ているがもじゃもじゃっとしたあからさまにおかしな髭をかかれたブーン。

(>´<_`<;)「これ、これを割らないと消してもらえないのか?」

比較的まともな髭を書かれたテイ。

ξ#シ゚听リ)ξ「あの鼠!!!!終わったら覚えてろ!!!」

傍の泉で自分の顔を見たツンが唸る。

右の頬には細い三本のありがちな髭。左の頬には失敗したのか縦に二本の髭。
全員が「多分自分のはツンよりましだろう」と思ったとか考えたとか。

しかし切り替えの早さがこの六人に共通した良さであろう。

一度全員絶叫した後、それぞれに闇雲に割り振られた岩に拳を打ち込んでいった。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:04:11 ID:8BYwryE20<>ξ゚听)ξ「鼠を呼べ」

五日後。
六人は最寄りの町のレストランにいた。

川 ゚ -゚)「…途中で食料が切れたのは痛かったな…」

ξ゚听)ξ「フード付けたままレストランに入るのはもうごめんよ」

(´・ω・`)「まあめでたく全員【体術】スキルゲットおめでとうと言うことで」

('A`)「先輩とブーンとおれが三日で、ショボンとツンとクーが四日か」

(´・ω・`)「パラメーターのどこが一番なのかな。
筋力値は五人はそれほど変わらないはずだけど」

( ^ω^)「ご飯が足りなくなったのは参ったお」

(´・ω・`)「全員食べまくったからね。僕も人のこと言えないけどさ」

ξ゚听)ξ「何はともかく、とりあえず鼠を呼べ」

('A`;)「まあまあ」

(;´・ω・`)「あとで話はしておくよ」

川 ゚ -゚)「ん?来るのか?」

(´・ω・`)「さっきメッセージを送ったら、また情報の取引をしたいって言われたんだ。
で、後でこっちに来るって。時間も遅いし。今日はこのまま泊まることにしよう」

川 ゚ -゚)「ふーん。そうか」

(´・ω・`)?

( ^ω^)「じゃあそれまでは、お疲れ様の会だおね。
先輩もお疲れ様だお」

(´<_` )「ほんとだよ。あのひげには参った」

ξ゚听)ξ「テイはまだましでしょ」

(´<_` )「ツンに言われると何も言えんな」

ξ゚听)ξ「うるさい」

和気藹々とした空気に包まれる六人。
頼んだ食事がテーブルに並べられ、ささやかな宴は二時間ほど続いた。
.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:06:03 ID:8BYwryE20<>



二件目の店を出ると、日は落ちて街灯の明かりがぼんやりあたりを照らしていた。

視界の隅で時間を確認したショボンが口を開く。

(´・ω・`)「じゃあ僕はアルゴさんと話してくるから、
この後の行動はさっきの打ち合わせ通りで」

('A`)「ん。さっき手続きした宿屋に行ってる。けどどうする?一緒に行くか?」

ξ゚听)ξ「私が一緒に行って鼠に一発…」

(;^ω^)「それはさすがにツンさんおやめになった方が」

ξ゚听)ξ「冗談よ。クー、さっさと戻ってお風呂はいろ」

川 ゚ -゚)「ん?……あ、ああ。そうだな」

('A`)「じゃあ俺が一緒に」

( ^ω^)「僕が行くかお?」

(´・ω・`)「いや、待ち合わせはこの先のカフェだから、大丈夫だよ。
ただ、何かあったらすぐメッセージは入れるから、
ぼくが戻るまでどちらかはすぐ動ける状態でいてもらえるかな」

('A`)「りょーかい」

( ^ω^)「わかったお」

(´・ω・`)「テイさんも、今日はゆっくり休んでください。
これからの事はまた明日の朝よろしくお願いします」

(´<_` )「あ、ああ。……そうだな。今日はゆっくりさせてもらうよ」

(´・ω・`)「じゃあドクオ、よろしく」

('A`)「おう。みんな行こう」

ぞろぞろと宿屋に向かって歩いていく五人。
ショボンはそれを見送った後、街灯の光の当たらぬ陰をちらっと見てから歩き始めた。

(アルゴ)「ショボン、【体術】スキルゲットおめでとう」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 00:06:35 ID:LOK1BRSg0<>鼠を呼べにフイタ<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:07:24 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「アルゴさんはもう一回チャレンジしないんですか?」

陰から自分の斜め後ろに現れたアルゴ。
しかしショボンはそれに驚くことは無く、淡々と会話をはじめた。

(アルゴ)「……取れたら捗りそうだから、もう少しレベルが上がって情報を仕入れてからだネ」

(´・ω・`)「ぼく達五人、開始時のパラメーターと、スキルゲット時のパラメーター。
情報はそれでどうですか?」

(アルゴ)「……それは色々捗るネ。でも」

(´・ω・`)「もちろん五人の誰のパラメーターかは明らかにしません。
【体術】スキル以外のスキルに関しても。
五人だから、五分の一だから出来る情報公開の仕方になりますが、
それでも貴重だと思っています」

(アルゴ)「……いくら欲しいんダ?」

カフェの前を通り過ぎ、路地へと入るショボン。
少し奥に入り立ち止まり、後を付いてきたアルゴに向き合った。

(´・ω・`)「アルゴさんにとっても汎用性と有用性の高い情報だとは思いますが、
その分取扱いには細心の注意を図らなければいけない情報だとも思います」

(アルゴ)「ああ、その通りだヨ」

(´・ω・`)「コルではないモノとの交換を」

(アルゴ)「今度はなんの情報が欲しいのかナ?」

(´・ω・`)「今、もう一人の顔は覚えてもらいましたか?」

(アルゴ)「ああ。そういう要望だったからネ。
だからわざわざここに出向いたんだし、彼の情報も持ってきたヨ」

(´・ω・`)「ありがとうございます。情報料はこちらで」

(アルゴ)「…確かに。
これが調べた結果だヨ。」

二人の目の前に浮かぶウインドウ。
ショボンはさっと一読した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:09:38 ID:8BYwryE20<>
(アルゴ)「けど知り合いじゃないのかい?ドクオとブーン君が先輩と呼んでいたけど」

(´・ω・`)「ぼくが今考えているのはまだ仮説です。
僕がこれからアルゴさんに頼む情報の結果で、確定するか、間違いだと判明するか。
ですから、まだ分かりません」

(アルゴ)?

(´・ω・`)「お願いできますか?」

(アルゴ)「持ちつ持たれつとは言え、ショボンには色々世話になってるからネ。
わかった。受けるよ」

(´・ω・`)「ありがとうございます。では、詳細と今回の情報を送ります」

(アルゴ)「ああ、頼むヨ」

ウインドウを出し、既に書いてあったメッセージをアルゴに送るショボン。
アルゴは視界の隅にメッセージ到着のしるしが出たのを見て、ウインドウを開いた。

(アルゴ)「………」

メッセージの一文字一文字をじっくりと読むアルゴ。
そして読み終わると、にやりと笑った。

(アルゴ)「なるほど、だからわざわざ……カ。
まったく骨の折れる依頼だヨ」

(´・ω・`)「でも、アルゴさんなら難しくは無いでしょ?」

(アルゴ)「ま、記憶と情報を総動員させるサ。
分かり次第連絡する」

(´・ω・`)「ありがとうございます。追加情報があったら送ります。…よろしくお願いします」

踵を返して路地を出るアルゴ。

その姿はそれと同時に夜の闇に溶け込んだ。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:11:28 ID:8BYwryE20<>
2.風紋



次の日。
まだ空は暗く、日の光が町を包むまでには一時間以上あるだろう。

宿屋の階段を下りる人影。

(´<_` )

階段を折り切ると、一度だけ振り返った。

そして数秒そうした後、再び出口に向かって歩き始める。

だが、その前に一人の男が立ち塞がった。

(´<_` )!

ロビーのソファーに座っていたショボンが、悲しそうに目の前に立っていた。

(´<_` )「……ショボン…」

(´・ω・`)「こんな時間に、どちらへ?」

(´<_` )「いや、…眠れないからちょっと外の風に…」

(´・ω・`)「フル装備で?」

(´<_` )「何があるかわからんからな」

(´・ω・`)「町の外に出るつもりなんですか?」

(´<_` )「…ああ」

下がっている眉を更に下げて自分を見るショボン。
それは強くは無いが自分を見透かすような冷静さを持ち、十秒ほどで心が折れる。

(´<_` )「どこまで、分かっている?」

(´・ω・`)「おそらくは、すべて」

(´<_` )「白日の下に晒す気か?」

(´・ω・`)「……はい」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 00:12:10 ID:PtT4HXyU0<>支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:12:34 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )「そう……か」

無言でお互いを見る二人。

(´<_` )「わかった。お前の指示に従おう」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(´<_` )「どうすればいい?」

(´・ω・`)「とりあえず、このまま。パーティーとして行動してください」

(´<_` )「良いのか?」

(´・ω・`)「はい」

(´<_` )「そうか…わかった」

踵を返し、階段に向かう。

(´<_` )「ショボン、お前も早く寝ろよ。
いつも誰よりも早く起きてるようだけど、ちゃんと眠ってるのか?」

(´・ω・`)「はい。ありがとうございます」

階段の手前。
先程と同じ場所で立ち止まり、少しだけ振り返ってショボンを見た。

(´<_` )「こちらこそ…。ありがとう」

そうつぶやいた後、階段を上り始めるテイ。

窓の外から、ほんの少し朝の光が差し込んだ。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:13:54 ID:8BYwryE20<>
八日後


('A`)「今日の狩り終了!」

(´<_`;)「ふぅ…」

最前線の層でフィールドダンジョンの狩りを終わらせた六人は、
疲れた体を癒すために街に帰ってきた。

( ^ω^)「先輩もコンビネーションに慣れてきたおね」

(´<_`;)「まだ付いていくのに精いっぱいだがな」

ξ゚听)ξ「やっぱり攻撃力が高い人が一人いると違うわね」

川 ゚ -゚)「ああ。狩りがはかどるな」

('A`)「おれ達は基本全員バランスかスピードの軽量系だからな」

【体術】スキルを獲得後低層階で一日狩りをした後、少しずつ狩場を上層階に移していた。
もともと五人はスキル獲得前から最前線の層で狩りをしていたため問題なかったが、
テイは下の層を中心にしていたこととメンバーとのスイッチ等、
コンビネーションを鍛えるために徐々に上げてきていた。

(´<_` )「しかし、前から思っていたんだが、
何故ショボンはあんなに早くモンスターの出現が分かるんだ?
ポップする位置を判別しているようだが」

('A`)「ああ、ショボンは」

(´・ω・`)「ごめんみんな。ちょっと良いかな」

五人の後ろを歩いていたショボンが声をかける。
何事かと振り返る五人。

川 ゚ -゚)「どうした?」

(´・ω・`)「ちょっと行きたいお店があるんだけど、みんなで行かない?」

ウインドウが出したままなところを見ると、今情報が来たのであろうことが伺えた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:15:26 ID:8BYwryE20<>
( ^ω^)「夕飯かお?」

(´・ω・`)「そうだね。結構おいしいらしいんだ。転移門で飛べるから、外には出なくていいし」

ξ゚听)ξ「別に良いんじゃない。美味しかったら後でショボンが再現するでしょ?」

川 ゚ -゚)「私も良いぞ。新しいお茶も欲しい」

(;´・ω・`)「新作のお茶はあるか分からないけど」

('A`)「いいんじゃないか?」

(´<_` )「ああ。おれも問題ない」

( ^ω^)「おいしいのなら問題ないお」

(´・ω・`)「じゃあ行こうか。宿屋も継続じゃないからそっちで探しても良いし」

その言葉に全員が頷き、今度はショボンが先頭で転移門広場に向かった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:16:53 ID:8BYwryE20<>
3層西の街。
街外れのカフェレストラン。

ξ゚听)ξ「ここって前にも来たことなかった?」

川 ゚ -゚)「確か、あった気がするが…」

('A`)「新しいメニューでも出たのか?」

( ^ω^)「味は良かったけど、お肉が硬かった覚えがあるお」

(´<_` )「おれは初めてだ。みんな色々行っているんだな」

周囲にはプレイヤーもほとんどおらず、中にも一組いるだけのようだ。

(´・ω・`)「とりあえず中に入ろう。ダメそうだったら他の店に行っても良いし」

ショボンに促され、中に入る五人。

すると中にいた一組のうち、奥に座った女が軽く手を上げた。

(アルゴ)「遅かったナ。ショボン」

ξ゚听)ξ「鼠!」

('A`)「…アルゴ?」

(アルゴ)「鼠って呼ぶのはいない時だけにしてほしいネ。ツンちゃん」

楽しそうに語尾を上げてツンの名を呼んだアルゴに、ツンの目尻が吊り上った。

ξ#゚听)ξ「あんたのおかげであたしはね!」

(アルゴ)「おや、直接取引をしたことは無いはずだけど、何かあったのかイ?
……ひげ……かナ?もしかして」

ξ゚听)ξ「!……な、何でもないわよ」

(アルゴ)「残念。面白い情報が手に入ると思ったのに」

('A`)「なんでお前がここに?」

(アルゴ)「アフターサービスだヨ」

笑いながら立ち上がり、軽い足取りですり抜けながら出口に向かう。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:18:09 ID:8BYwryE20<>
(アルゴ)「じゃ、ショボン。依頼はここまでダ。後はヨロシク」

(´・ω・`)「あれ、結果は気にならないの?」

(アルゴ)「…人情話は嫌いなんでネ。また今度聞かせてくれればいいサ」

(´・ω・`)「ありがとう」

(アルゴ)「じゃあナ」

ドアを開け、外に出るアルゴ。
一連の流れを、ショボン以外は不思議そうに見守り、出ていく背中を見送った。

('A`)「おい、ショボン。いったいこれは」

自分に問いかけるドクオを視線で制し、残った一人の座るテーブルに近寄るショボン。

そしてテーブルの横に立ち、会釈をした。

(´・ω・`)「お久しぶりです。先輩」

(    )「…生徒…会長?」

(´・ω・`)「良かった。覚えていていただいて」

('A`)?

( ^ω^)?

ξ゚听)ξ?

川 ゚ -゚)?

(´<_` )

(    )「こんなゲームをやるようには見えなかったけど、きていたんだな。
眼鏡じゃないし、ちょっと混乱したが」

(´・ω・`)「先輩もよく知っている友人がやっていたので」

(    )「友達?…!あいつか!?いるのか!?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:19:12 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「ドクオ!こっちに!」

ショボンに呼ばれ、ぎこちなくテーブルに近付くドクオ。
そしてショボンの隣に立ち座っている男の顔を見る。

('A`)「え?」

(    )「良かった!生きてたんだな!
気にはなっていたけど、こっちで付ける名前を聞いてなかったから!」

('A`)「どういうこと…」

(´・ω・`)「アルゴさんとの約束だと思いますが、もう立って下さって大丈夫です」

(    )「そうか!」

男が立ち上がり、ドクオの正面に立った。

( ´_ゝ`)

(;^ω^)「お?」

ξ;゚听)ξ「え?」

川;゚ -゚)「なん…だと…」

(´<_` )「……」

その男の顔は、テイと同じだった。

('A`)「せん…ぱい?」

( ´_ゝ`)「生きてたんだな!
なんか、ほら、一層の攻略依頼、色々一部で酷い言われ様になっていたから気になっていたんだ」

ハイタッチをしようと手を振り被るが、ドクオは呆然と自分より高い位置にある顔を見つめている。

( ´_ゝ`)「なんだ、どうした?
久し振りにこの美貌を見て感動してるのか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:20:43 ID:8BYwryE20<>
('A`)「ああ……先輩だ」

( ´_ゝ`)「何言ってんだお前」

(´・ω・`)「先輩、あっちの顔も懐かしくはなですか?」

( ´_ゝ`)「ん?」

目の前のドクオに会えたのが本当に嬉しかったのか、
全く周囲に気を配らずにしゃべり続けていた男だったが、
ショボンに促されてブーン達を見た。

( ´_ゝ`)「おお!お前も来てたのか!こいつの友達の、だよな」

( ^ω^)「は、はい…。おー。懐かしノリだお」

( ´_ゝ`)「可愛い子二人もつれてまったく。
ま、おれの嫁にはかなわないけどな。
みんなおれ達と同じ学校の友…達…………え?」

ブーンの後にツンとクーの顔を見て軽口を叩いた後、
その後ろで自分を見ない男の顔を見て表情が輝いた。

( ´_ゝ`)「弟者!」

駆け寄ろうと踏み出した一歩。
しかし二歩目は出ず、喜びに満ちた表情が戸惑いに変わった。

( ´_ゝ`)「……生きていてくれて、ありがとう……。
いや、生きているのは黒鉄宮の碑の名前を毎日見に行っていたから知っていたが…」

そしてテイと同じように少しだけ顔を伏せ、唇をかんだ。

( ´_ゝ`)「会えて…嬉しい」

最後の呟きは、そばにいたドクオにしか聞こえなかった。

それに対して、全く喋らないテイ。
ただ少しだけ悲しそうに、横を向いている。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:23:08 ID:8BYwryE20<>
ξ゚听)ξ「…ちょっと、どういうこと?
ショボン、説明してくれるんでしょ」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだな。ショボン。説明を」

(´・ω・`)「もちろん。僕も聞きたいことがあるしね。
ただ、このままここで話すのは不用心だから。
先輩、ここに来る前にアルゴさんと部屋を借りたかと思うんですが」

( ´_ゝ`)「ああ。借りてきた。ちょっと広いリビングのある」

(´・ω・`)「そこで話しましょう。連れて行ってもらえますか」

( ´_ゝ`)「……分かった。でもその前に一つ、聞いていいか?」

(´・ω・`)「なんでしょう?」

( ´_ゝ`)「この状況は、全部お前が作り上げたってことで良いのか?」

(´・ω・`)「はい。そう思っていただいて問題ありません」

( ´_ゝ`)「……わかった」

状況が分からず唖然としているドクオの頭を軽く叩き、
通路にいるブーン達に向かって歩き始める男。

その後ろをドクオを連れたショボンが続いた。

その動きにつられてブーン達が先にドアに向かい、表に出る。

( ´_ゝ`)「こっちだ」

最後に店を出たショボンを確認し、彼は先頭を切って歩き始めた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:24:23 ID:8BYwryE20<>
3.追想〜ある遠い日の〜



連れて行かれたのは、高級に分類される宿屋だった。

最上階、といっても四階建てだがその一番奥にあるこの部屋は、
大きなリビングと、ベッドが二つある寝室。
そしてゆったりとした洗面所とバスルームが備え付けてある。

( ^ω^)「すごいおね」

なんとなく、状況は全く分かっていないが状況に順応したブーンが呑気な声を出し、
ツンとクーに睨まれる。

部屋の中央には二人掛けのソファーが二つ。
ローテーブルを挟んで向かい合わせに置かれており、
今は片方にテイが座り、正面に同じ顔の男が座っている。

(´・ω・`)「アルゴさんお勧めの場所なので、外に漏れることも無いと思います。
もちろん聞き耳スキルを鍛えたプレイヤーがドアの外に居たら問題ですが、
場所が奥まっているので、注意していれば分かるでしょう」

二人以外は壁に沿って立っており、
特にドクオは扉のすぐそばに立って、気持ちを半分外に向けていた。

誰も何もしゃべらず、静寂が部屋を支配していた。

(´・ω・`)「……何から説明すればいいか考えましたが、まずは、状況を説明します。
それで良いですか?先輩、テイさん」

( ´_ゝ`)「ああ、頼む」

(´<_` )

テイは喋ろうとせず、ただ頷いた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:25:26 ID:8BYwryE20<>
( ^ω^)

ξ゚听)ξ

川 ゚ -゚)

('A`)

残りの四人も黙ってショボンを見ている。

(´・ω・`)「本来ならばマナー違反ですが、あえて紹介させていただきます。
みんな、こちらがぼく達と同じ学校の先輩。『流石 克睦』先輩だよ」

('A`)!

( ^ω^)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

( ´_ゝ`)「…徳永、内藤、久しぶりだな。こんな場所だが、会えて嬉しいよ。
そっちの美人二人もうちの学校だよな?
なんとなく見覚えがあった」

('A`)「あ、はい。お久しぶりです。おれも、会えて嬉しいです」

(;^ω^)「ぼ、ぼくもですお!で、でも…」

(´<_` )

自分達に久しぶりと声をかけた『先輩』に挨拶をしつつも、
今まで『先輩』と呼んでいたいテイを見てしまう。

(´・ω・`)「そして、テイさんは、先輩の弟さん…でよろしいですか?」

(´<_` )「ああ。双子の弟だ」

四人が息をのむのが分かる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:26:35 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「よろしければ、リアルの名前を、出来れば漢字も教えていただいてもよろしいですか?」

(´<_` )「ん?ああ、いいぞ」

ウインドウを開き、ショボンにメッセージを送るテイ。

(´・ω・`)「…なるほど。これはみんなにも送ってよろしいですか?」

(´<_` )「好きにしてくれ」

ショボンがメッセージを送ると、四人の視界の隅にメッセージ到着ランプが光った。

そして四人がウインドウ操作を始める前に、ショボンは話を進めようとした。

(´・ω・`)「お二人は…」

(´<_` )「先に聞いていいか?」

(´・ω・`)「はい」

(´<_` )「何故俺が『弟』だと分かった?兄者に…そいつに兄弟構成でも聞いていたのか?」

(´・ω・`)「さっき、先輩が『弟者』と呼んでいらっしゃったので」

(´<_`;)「あ…」

(´・ω・`)「ただ、その前から…。
今回の状況に対して仮説を立てた時点で、おそらく弟さんだと思ってはいました」

(´<_` )「?何故?」

(´・ω・`)「先輩の名前は知っていましたから、もしかしたらと推測しました。
その後アルゴさんが先輩を発見してこちらでの名前を送ってもらった時に、
おそらく正しいだろうと思っていました」

(´<_`;)?

('A`)「どういうことだ?ショボン」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:28:13 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「二人を兄弟と仮定した時に、
先輩の名前、『克睦』の『克』の字には『兄』という文字が入っていたのと、
テイさんの『テイ』が『弟』から来ているとすれば、答えはおのずと」

(;^ω^)「おっおっおっ。普通考え付かないお」

ξ;゚听)ξ「ほんとよ」

(´・ω・`)「そして先輩のこちらでの名前は『Kei』。読み方は『ケイ』。
『克睦(かつちか)』のどこにも『ケイ』は入ってないから、
先輩は『兄』を意味する『ケイ』なんだろうと。

川 ゚ -゚)「テイさんのリアルネームは『悌梧(だいご)』。
『悌』の字には『弟』が入っているというわけか」

(´・ω・`)「そう。だから今名前を教えてもらって、推測は正解だったと思ったよ」

ξ゚听)ξ「で、一番知りたいことが残ってる。
同じ顔をしている理由が双子の兄弟なのも、どちらが兄で弟なのも分かった。
で、なんでテイはドクオとブーンの事を知ってたのよ!」

('A`)「おれ、先輩に双子の弟がいるなんて知らなかった」

( ^ω^)「ブーンもあったことないお」

川 ゚ -゚)「というかショボン、おまえ、
いつからテイさんが私達と同じ学校の先輩じゃないと思っていたんだ?」

三人がクーの顔を見た。

ξ゚听)ξ「そうか…。そうよね。それでなきゃ、鼠に調査を依頼したりしない…」

('A`)「おい、ショボン」

(´・ω・`)「僕にしてみれば、ドクオが不思議に思ってなかったことの方が不思議だよ」

('A`)!

(´・ω・`)「でも、気持ちは分かる。
生きて会えたことが嬉しくて、多少の違和感には目をつぶってしまったんだろうね。
知らず知らずのうちに」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:29:34 ID:8BYwryE20<>
('A`)「どういうことだ?」

(´・ω・`)「あの町で会った時に、ぼくは違和感を覚えた」

('A`)!

( ^ω^)「お!?どうしてだお!?」

(´・ω・`)「先輩、ドクオから聞いたんですが、
こういったMMORPGはよくやられていたんですよね?」

( ´_ゝ`)「ああ。もともとネットゲームはやってたし、
ナーヴギアで遊ぶ初期アクションなんかもやっていた」

(´・ω・`)「そして弟さんは、やったことは無かった」

(´<_` )「そうだな…。普通のRPGはやったことあるが、
ネットにつなげてリアルタイムで他のプレイヤーと話したりするようなのはやったことは無い。
兄者がやっていたのを横目でチラ見したことはあるが…」

(´・ω・`)「おそらく、そこからのずれ…というか、
初歩的マナーのずれで、ぼくは違和感を感じました」

(´<_` )「おれ、なんかしたか?」

(´・ω・`)「初めて会った時、弟さんはドクオに向かって『徳永』、
ブーンに向かって『内藤』と呼んだんです」

( ´_ゝ`)!

('A`)!

( ^ω^)!

ξ゚听)ξ?

川 ゚ -゚)?

(´<_` )?

六人のうち三人は気付き、三人は小首をかしげる。

川 ゚ -゚)「どういうことだ?ショボン」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:30:36 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「ぼくもだけど、ツンとクーもドクオからレクチャー受けたよね。
こっちの世界に来る前に、会った時にリアルの名前は呼ばない様にって」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「そっか。言われたわね」

(´<_` )!

(´・ω・`)「そう、こういったゲーム内では、本名を言うのはマナー違反なんだよ。
だから、テイさんが普通に名前を言った時に違和感を覚えた。
ドクオに対して思わず言ってしまったとしても、その後のブーンに対しても言ったからね」

ξ゚听)ξ「あんたが何に引っかかったのかは分かったけど、
テイがドクオとブーン、そしてあんたのことまで知っていた理由は?」

(´・ω・`)「そう。だから僕も、最初はただ単にドクオに会えたことが嬉しくて、
そういったことをすべて吹っ飛ばしてしまっただけかと思った。
一緒に修行していたら、三年になってからの先輩とイメージが重なったからね。
でもだからこそ、そこに、一つ仮定が頭に浮かんだんだ」

川 ゚ -゚)「どういうことだ?」

(´・ω・`)「ぼくの知っている流石先輩は、二人いる」

ξ゚听)ξ「は?」

川 ゚ -゚)「へ?」

( ^ω^)「お?」

('A`)!

( ´_ゝ`)!

(´<_` )「…」

六者六様の反応。
呆気にとられるもの、それぞれの思いを持って驚く者。
そして、あきらめた者。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:31:43 ID:8BYwryE20<>
( ´_ゝ`)「な、何を言って」

(´<_` )「兄者、あきらめろ。そいつは全部わかってる」

( ´_ゝ`)「そ、そんなわけが!」

(´・ω・`)「僕が立てたのは、一つの仮説だけです。
それが真実かどうかなんてわかりません。
でも、それが真実ならば納得できるので、そうであろうと思っています」

(´<_` )「ああ。そうだな」

(;´_ゝ`)「い、いや」

(´<_` )「この世界でなら、ばれても良いだろう。兄者」

(;´_ゝ`)「……言って…みろ」

(´・ω・`)「三年生になってから、お二人は交代で学校に来ていたんじゃないですか?」

('A`)!

( ^ω^)!

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

(;´_ゝ`)「そ、そんなことが」

(´・ω・`)「ええ。普通ならできません。
出来るわけがない。それこそ入学時からやっていたのならともかく、
三年生になったタイミングからなんて、出来るわけない」

ξ゚听)ξ「ちょ、ちょっとショボン、自分で言っておいて出来ないって…」

(´・ω・`)「普通なら、できやしない。
でも、もし自分の友達が交通事故にあって頭を打って意識不明で二週間くらい昏睡状態で、
やっと会えたと思ったけど、なんかちょっと雰囲気が違った。
それを想像した時に、ぼくはきっと『事故のせいでちょっと雰囲気変わったかな』と、
自分の中で納得すると思う」

川 ゚ -゚)「……事故…か……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:33:08 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「多少記憶の食い違いや忘れていたことがあっても、
『頭に衝撃を受けたんだよな』
と思って、心配こそすれ不審に思うことなんてないとも、思う。
もし双子の兄弟がいることを知っていたとしても、
まさか入れ替わっているなんて思わないだろうし、
双子の兄弟がいることを知らなければ、全く想像もしない自信があるよ」

(;´_ゝ`)「……」

('A`;)「せ、先輩、ショボンが言っていることは本当なんですか」

(;´_ゝ`)「……………」

(´<_` )「ああ、本当だよ。そいつの推理は当たってる」

(;´_ゝ`)「お、弟者!」

(´<_` )「約束だったよな。誰かに見破られたら、ちゃんと告白して謝るって。
兄者の友達は、みんな良いやつだから」

(;´_ゝ`)「弟者」

(´<_` )「三年生の一学期が始まって、二ヶ月と少し、おれがかわりに通った。
頭に包帯巻いて、まだちょっと記憶が曖昧なことにして。
一年と二年の時のクラスの集合写真の顔を全部覚えて、特徴的な思い出を教えてもらって。
最初はおっかなびっくりだったけど、一ヵ月が過ぎた頃には、楽しくなっていたな。
兄者の周りには、楽しくていいやつしかいなかったし、担任も教科担当も、良いやつばかりだった」

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「……」

(´<_` )「部活はやってなかったから下級生とのつながりは無かったけど、
ドクオはおれを見付けると楽しそうに寄ってきて話してくれたな。
時々はブーンも一緒に。
話を合わせるために『オレナイ!』を30巻読んだのは大変だったけど、
楽しかった…」

('A`)「先輩…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:34:05 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )「毎日帰ると兄者に今日あったことを説明して、友達の写真を見せて、
過去の思い出を聞いたり、兄者が何を考え、今日おれが何を思ったのかを話し合った」

ξ゚听)ξ「…なにそれ……」

(´<_` )「楽しかったな。
中間テストが終わって、兄者がちゃんと復帰できるようになった時、
もう行けないんだと思ったら、悲しくなるくらいに。
でも、もともと出席日数が足りなくなるのをフォローする為だけだから、覚悟した」

(´・ω・`)

(´<_` )「そうしたら、兄者が言ったんだ。交代で学校に行こうって。
さぼり癖が付いたから、毎日学校行くの辛いって」

川 ゚ -゚)「…それは…」

(´<_` )「ああ。おれがさみしそうにしていたから、憐れんだんだろうな」

( ´_ゝ`)「弟者!それは違う!」

(´<_` )「違わない!いいんだ、兄者。
そこに関しては、感謝している」

( ´_ゝ`)「弟者…」

(´<_` )「でも、おれはそれにのった。
………楽しかったんだ。学校が、本当に」

川 ゚ -゚)「よくそんな生活が…。ご両親も知っているのか?」

(´<_` )「父者は転勤で飛行機の距離だ。母者は付いていった。妹者を連れて。
家はもともと父者の物だから、家賃とかは良いし。
姉者とおれが居れば、家事はどうにかなったからな。
姉者は、多分知ってる。黙認してた。だろ?兄者」

( ´_ゝ`)「…ああ」

沈黙が部屋を包む。
誰も何も言わず、アバターゆえの呼吸の音すら感じない世界が、ひどく冷淡に感じていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:35:06 ID:8BYwryE20<>
('A`)「お、お二人は何で別行動をしていたんですか?」

それに耐えきれなくなったドクオが口を開く。
しかしそれは兄弟の間に張り詰めた空気を招いた。

(;´_ゝ`)「そ、それは…」

(´<_` )「……」

悲しそうな顔をする兄と、表情を凍らせる弟。

('A`)「え、あ、なんか…」

(´・ω・`)「ひとつ、お聞きしても良いですか?」

('A`)「ショボン…」

(´<_` )「…なんだ?」

思わずホッとしてしまうドクオ。
すがる様にショボンを見るが、なんとなく嫌な予感を感じた。

('A`)「お、おい、ショボン?」

(´・ω・`)「先輩の成績なら中間テストくらいまで休んでも挽回できたでしょうし、
卒業も出来たと思うんですが、学校に相談しましたか?」

(;´_ゝ`)「おい!止めろ!」

(´<_` )「!なん…だと?」

(´・ω・`)「ぼくは二年生の頃の先輩の成績しか知りませんが、
確か上位の方で何度かお名前を見た覚えがあります。
それにうちの学校はそれほど鬼ではないので、
事故で入院したというちゃんとした理由があれば、補習でどうにかなったはずです」

(;´_ゝ`)「お、おい!」

(´<_` )「……兄者…」

静かに自分を呼ぶ弟の声に戸惑う兄。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:36:05 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )「兄者…いまそいつが言ったことは本当か?」

(;´_ゝ`)「い、いや、それは…」

(´<_`#)「兄者!!」

その叫び声は、怒声であり、悲痛な嘆きの声だった。

(´・ω・`)「本当ですよ。うちの学校では、授業態度、出席日数、
成績等何かしらの問題のある生徒の名前は生徒会に連絡が来ます。
これは生徒側からのフォローが出来るようにと言う学校側の救済措置で、
実際に何人かの生徒の卒業までを生徒会や各委員会でフォローした実績があります。
もし先輩が三年に進級する時点で何かしらの問題があったとしたら、
こちらに連絡が来ていたはずですから」

川 ゚ -゚)「ショボン!」

(´・ω・`)「この世界で、そんなことを隠したままでいなくてもいいでしょ」

川 ゚ -゚)「それはそうかもしれないが…」

(´<_`#)「兄者!!!!!」

ショボンの説明を全部しっかりと聞いたのかは分からないが、弟の怒りは収まらない。

(;´_ゝ`)「お、弟者」

(´<_`#)「最初から、おれの事を憐れんでいたのか!バカにしていたのか!」

(;´_ゝ`)「ち、違う!」

(´<_`#)「そうだよな、昔から兄者は友達もいっぱいいて、そんなに勉強しなくても成績良くて、
一見ちゃらんぽらんなのにいざという時は父者も母者も姉者も妹者も兄者を頼る!」

(;´_ゝ`)「そ、そんなことは」

(´<_`#)「だからおれは、兄者が行くことにした日付高に行かないで、
更に偏差値の高い設楽葉高に行ったんだ!」

(;´_ゝ`)「おと…じゃ…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:37:02 ID:8BYwryE20<>
(´<_`#)「でもついていけなくなって、鬱になって…引きこもって…」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_`#)「ずっと、ずっと、辛かった。兄者は、そんな俺を、やっぱりバカにしていたんだな」

(;´_ゝ`)「違う!」

(´<_`#)「違わない!ずっとバカにしていたん!憐れんでいたんだ!」

ξ゚听)ξ「ちょっと、あんた…」

(´<_`#)「部外者は黙ってろ!」

ξ;゚听)ξ!

(;´_ゝ`)「弟者、落ち着け」

(´<_`#)「そうやって兄貴面して、おれを上から見ていたんだろ」

(;´_ゝ`)「そんなことは」

(´<_`#)「じゃあ何故嘘を吐いた。おれの事をバカにしていたからだろ!」

(;´_ゝ`)「そんなことは」

(´<_`#)「ある!昔からずっとだ!ずっとお前はおれの事を!」

ξ#゚听)ξ「いい加減にしなさい!」

(´<_`#)「いい加減にするのはお前だ!このくそ女が!」

ξ;゚听)ξ!

('A`;)!

(#^ω^)!

川;゚ -゚)!

(´・ω・`)

(´<_`#)「殺されたくなきゃ黙ってろ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:38:02 ID:8BYwryE20<>
明確な殺意を浴びせられて身をすくませるツン。
ブーンは怒りを隠そうともせずに彼女の前に立った。

(#´_ゝ`)「弟者!」

(´<_`#)「くそが!こんないつ死ぬかもわからないような世界に連れてきて、兄貴面かよ!」

(;´_ゝ`)「あ…」

(´<_`#)「何が一緒に別の世界を楽しもうだよ、
どうせここに連れてきたのだって、
自分のテリトリーの中でうまく生きることの出来ないおれを笑うつもりだったんだろ!」

(;´_ゝ`)「そんなこと!」

(´<_`#)「ざまあねえな!それで自分もこんな世界に囚われて!
ゲームの世界で死ぬんだ!みんな死ぬんだ!お前がおれをここに連れてきたせいで!
俺はこんなところで死ぬんだ!」

(;´_ゝ`)「弟者…」

(´<_`#)「お前のせいでこんなとこに来たんだ!
そしてこんなところで死ぬんだ!
殺されるんだ!!!」

川#゚ -゚)「ふざけるな!」

弟の怒りと苦しみの叫びを邪魔したのは、クーの声だった。

(´<_`#)「お前も黙って」

川#゚ -゚)「黙るのはお前だこの包茎野郎が!」

(´<_`;)「え」

(;´_ゝ`)「え」

それは我を忘れた憤怒の声であり、突き刺すような鋭さを持っていた。

川#゚ -゚)「この世界に来たことを他の誰かのせいにするな!チンカス野郎!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:38:58 ID:8BYwryE20<>
(´<_`;)「こ、ここに来たのは兄者が」

川#゚ -゚)「無理やりナーヴギアをかぶせられたのか!
頭でも殴られて意識をなくした時にかぶせられたか!
身体の自由を封じられて無理やりかぶせられたのか!」

(´<_`;)「そ、それは…」

川#゚ -゚)「被った後に起動の言葉を言ったのはお前じゃないのか!」

(´<_`;)「!」

川#゚ -゚)「『リンクスタート』と言ったのはお前の口だろう!」

(´<_`;)「で、でも…」

川#゚ -゚)「でももくそも無い!
面倒くさい接続テストも、キャリブレーションで自分のデータを入力したのも、
最初のアバターを設定したのも、
全部自分だ!他の誰かじゃない、全部自分だ!」

(´<_`;)「そ、それは……」

川#゚ -゚)「どの瞬間にだって来ることを止めることは出来たんだ!
でも私達はここにいる!
それは誰かに連れてこられたからじゃない!
自分で選んだんだ!
自分の意思でここに来たんだ!
自分が選んだからここにいるんだ!
今ここにいることを誰かのせいにするな!」

( <_  )「お、おれは…」

( ´_ゝ`)「もう許してやってくれ!」

突然土下座をする兄。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:40:15 ID:8BYwryE20<>
( ´_ゝ`)「すまない。弟者はちょっと興奮しているんだ。だから」

川 ゚ -゚)「いつまでそうやって守るつもりだ」

矛先が兄に変わったため多少表情特徴は和らいだが、鋭さは変わらない。

( ´_ゝ`)「!」

川 ゚ -゚)「そうやって全部守ってやるから、こいつはおまえのせいにしているんじゃないのか」

( ´_ゝ`)「……だが、おれが誘ったのは事実だ」

川 ゚ -゚)「誘ったのはおまえでも、来ることを決めたのはそいつだ」

( ´_ゝ`)「…………許してやってくれ」

川#゚ -゚)「だから!」

ξ゚听)ξ「クー!」

川#゚ -゚)「ツン!おまえまで」

ξ゚听)ξ「言っても無駄よ!」

川#゚ -゚)「!」

ξ゚听)ξ「こいつらに、そんなことを言っても無駄よ」

川 ゚ -゚)「……」

ツンの言葉に息をのむクー。

ξ゚听)ξ「誰かのせいにして楽になったり、
自分のせいにして嘆いたり、
人のせいにしなきゃ立てなかったり、
全部一人で背負おうとして何も背負えなかったり」

その口調は穏やかだが、純粋に兄弟への憐れみを持っている。

そしてその穏やかさがクーの心に冷静さを取り戻させた。

ξ゚听)ξ「今を嘆くだけで何もしない、しようとすらしないグズに、何を言っても無駄よ」

川 ゚ -゚)「……そうだな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:41:20 ID:8BYwryE20<>
('A`;)

(;^ω^)

(´・ω・`)「…」

( <_ :)

(; _ゝ )

ツンは最後に自分らしい毒を吐いてから、汚物を見るように兄弟を見た。

クーは普段の冷静な自分を取り戻すと、興味を失ったように冷淡な表情をしている。

('A`;)「ま、まあ、おちついて」

(;^ω^)「そ、それがいいお。なんかお茶でも…」

('A`;)「先輩もいつまでも床に座ってないで、ソファーに座りましょう」

( ^ω^)「そうだお。そうだお。そうだ、お茶でものんで落ち着いて……」

すがる様にショボンを見たブーン。
しかし彼が出したのはお茶ではなく、更に兄弟を追い詰める言葉だった。

(´・ω・`)「それで、お二人はこれからどうするおつもりですか?」

( <_ :)!

(; _ゝ )!

('A`;)「しょ、ショボン」

(;^ω^)「今はそこまで」

何とか場の空気を穏やかにしようとするドクオとブーンの努力を、
真っ向から打ち崩したショボンの一言。

兄弟のは目に見えて動揺した。

( <_ :)「これ……」

(; _ゝ )「……から?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:42:48 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「何故二人が離れていたのか、まあ想像はできます。
どうせ最初は二人でいたのにたわいのないことで喧嘩して、
そのまま離れ離れにでもなったのでしょう。
先輩はともかく、弟さんが生きて残っていられたのは、
二人でいる間に先輩が自分の知識をしっかりと教えたからでしょうね」

( <_ :)!!

(´・ω・`)「一緒に岩を割ろうと努力している間、
時折披露される知識はドクオの持っている知識に近い『経験』を感じました。
でもどこか他人事のような話しぶりをされていて、そこも僕が違和感を感じた一つでした」

( <_ :)「…」

(´・ω・`)「フレンド登録からの場所確認も先輩はずっとしていた。
でも修行場所に入ると、その対応から外れてしまうため、ずっと心配されていたようですよ」

( <_ :)!

(´・ω・`)「最後に弟さんの位置を確認した層を中心に、ずっと探していたようです。
黒鉄宮の碑の名前を、数時間ごとに確認しにきながら」

(; _ゝ )「そ、そんなことまで」

(´・ω・`)「アルゴさん…情報屋さんからの報告なので、ソースはどこかわかりませんけど」

淡々と話していたショボンがほんのすこしだけ笑みを見せる。
だがそれは場を和やかにする力など持っておらず、
部屋の空気は冷たいままだ。

(´・ω・`)「この後、お二人はどうするつもりですか?
二人で行くのか、独りずつ生きるのか、ぼく達と共に来るのか…」

(;´_ゝ`)「できるのなら!弟者はお前達と一緒に!」

(´・ω・`)「この一週間、最初に間違えたのはぼく達だとはいえ、
それがばれた後にのほほんと一緒に来れるのなら」

(; _ゝ )「!」

( <_ :)「……五人とも…すまなかった。嘘をついて…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:44:10 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「何故二人が離れていたのか、まあ想像はできます。
どうせ最初は二人でいたのにたわいのないことで喧嘩して、
そのまま離れ離れにでもなったのでしょう。
先輩はともかく、弟さんが生きて残っていられたのは、
二人でいる間に先輩が自分の知識をしっかりと教えたからでしょうね」

( <_ :)!!

(´・ω・`)「一緒に岩を割ろうと努力している間、
時折披露される知識はドクオの持っている知識に近い『経験』を感じました。
でもどこか他人事のような話しぶりをされていて、そこも僕が違和感を感じた一つでした」

( <_ :)「…」

(´・ω・`)「フレンド登録からの場所確認も先輩はずっとしていた。
でも修行場所に入ると、その対応から外れてしまうため、ずっと心配されていたようですよ」

( <_ :)!

(´・ω・`)「最後に弟さんの位置を確認した層を中心に、ずっと探していたようです。
黒鉄宮の碑の名前を、数時間ごとに確認しにきながら」

(; _ゝ )「そ、そんなことまで」

(´・ω・`)「アルゴさん…情報屋さんからの報告なので、ソースはどこかわかりませんけど」

淡々と話していたショボンがほんのすこしだけ笑みを見せる。
だがそれは場を和やかにする力など持っておらず、
部屋の空気は冷たいままだ。

(´・ω・`)「この後、お二人はどうするつもりですか?
二人で行くのか、独りずつ生きるのか、ぼく達と共に来るのか…」

(;´_ゝ`)「できるのなら!弟者はお前達と一緒に!」

(´・ω・`)「この一週間、最初に間違えたのはぼく達だとはいえ、
それがばれた後にのほほんと一緒に来れるのなら」

(; _ゝ )「!」

( <_ :)「……五人とも…すまなかった。嘘をついて…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:45:41 ID:8BYwryE20<>
( <_ :)「なにが…真実だ…」

( ´_ゝ`)「弟者!」

( <_ :)「こんな虚構の世界で、嘘ばっかりの世界で、何が真実だ…」

( ´_ゝ`)「弟者……」

絞り出すような、心からの苦しみを口に出したような、かすれた声で呟く弟。

その言葉に対し言いたいことは全員があったが、その苦しそうな雰囲気から、
ちゃんと口にすることが出来たのは一人だけだった。

( ´_ゝ`)「弟者、はぐれる前も、似たようなことで喧嘩になったな」

( <_ :)「…」

( ´_ゝ`)「あの時は、ちゃんと考えを伝えることが出来なくてすまなかった。
でも今は、言える気がする。
弟者のことが心配で、探していたこの数日間、ずっと、思ってた」

( <_ :)「なんだよ」

( ´_ゝ`)「弟者は、これ以上何が欲しいんだ?必要なんだ?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:47:16 ID:8BYwryE20<>
( <_ :)?

( ´_ゝ`)「今おれの目の前には、弟者がいる。
弟者の心がある。
そして、悲しいことに、命もある。
確かに肉体は偽りの物だし、目に映るものも全て仮想世界。
偽りの世界、と言っても良いんだろうな。
けれど、心と命は本物だ。
俺の目の前にいるのは、本物の弟者だ。
そして、おれの心と命もここにある。
おれは、本物のお前の双子の兄だ。
まわりが全部偽物でも、これは本物だ。
おまえは、それ以外の何が欲しいんだ?
何が必要なんだ?
こんなにも明確な『本物』があるのに、おまえは何が更に必要なんだ?ほしいんだ?
それ以外の本物とやらに、おまえにとってどれだけの価値があるんだ?」

( <_ :)「で、でも二人しか本物は…」

( ´_ゝ`)「今、許すと言ってくれた四人も、
おれ達にこんな場所を用意してくれたこいつも、この世界にいる。
その心と、命と、思いは、本物だ。
この世界には偽物の世界でも、ここにいるおれ達は、本物なんだ」

( <_ :)「で、でも…」

( ´_ゝ`)「おれは、弟者におれの心と命をささげるつもりでいた。
たとえ死んでも、弟者だけは生き残らせると思っていた。
でも、違うんだな。それじゃダメなんだ。
二人で生き残って、みんなのところに帰って、そこで、ちゃんと謝る。
だからそれまでは、謝らない。
おれはおれだ。
流石克睦だ!
この世界では『Kei』だ!
お前の兄さんだ!
兄者だ!
おれは、おれらしくこの世界で生きる!」

( <_  )「兄者……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:48:07 ID:8BYwryE20<>
( ´_ゝ`)「弟者、一緒に頑張ろう。
生きて、生き抜いて、一緒に帰ろう。
帰ってから、殴られるから。
だから、それまでは、二人で貫こう。おれ達流石の人間として」

( <_  )「…兄者」

( ´_ゝ`)「弟者!」

沈黙。

二人とも何も話さない。

そして、弟者が口を開いた。

( <_  )「『流石の人間として』って、なんだ?」

( ´_ゝ`)「え?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:49:06 ID:8BYwryE20<>
( <_  )「初めて聞いた…。うちの家に…そんなの…あったか?」

( ´_ゝ`)「えっと……のり?」

( <_  )「ああ、……そうだな。あんたは…そういう人だ」

( ´_ゝ`)「いやでもほらさ、なんかカッコいいし」

( <_  )「目の前にいるのは、……兄者なんだな」

(;´_ゝ`)「え、えっと…」

ぎこちなくではあるが、兄弟が話しはじめたのを見て部屋を出ていこうとする五人。
途中でそれに気付いた兄が止めたが、
ショボンが明日の朝近くの店で一緒に朝食をとる約束をして、その晩は別行動とすることにした。

(´・ω・`)「これ、夕飯にどうぞ。サンドイッチと飲み物です」

ξ゚听)ξ「ゆっくり話すことね」

川 ゚ -゚)「そうだな。だが続きを話すのはマナー違反だから止めた方が良い」

( ^ω^)「ケイ先輩、テイ先輩、おやすみなさいだお」

('A`)「また明日、よろしくお願いします」

部屋を出る五人。
閉まるドアが、乾いた音を立てた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:50:53 ID:8BYwryE20<>
4.祈りの旅



深夜。
3層主街区。
現在の前線よりは下の層だが、主街区と言うことで人通りはそれなりにある。
しかし大きな街であればあまり使われない外への道もあるもので、
今、男は、そんな出入り口へと向かっていた。

そして簡素な木で出来た門の手前まで来て、足を止めた。

ゆっくりと、身体ごと振り返り、自分が歩いてきた先を見る。

(´<_` )「兄者、すまん」

(´・ω・`)「謝るくらいなら、戻ったらいかがですか?」

後ろから、つまり外の方から声をかけられた。

しかし彼はそれほど驚かずに、声のした方向に身体を向ける。

(´<_` )「…そうも、いかないさ」

(´・ω・`)「何故です?
先輩はあなたを心の底から心配していた。
そして、あなたも先輩に会いたかった。
あの町で会った時、あなたも先輩を、お兄さんを捜していたのでしょ?」

(´<_` )「お見通し…か」

(´・ω・`)「そんなような言葉を口走っていましたから、誰かを捜しているのかなと思っていました」

(´<_` )「ちゃんと聞こえてたのかよ」

(´・ω・`)「はい」

(´<_` )「…ならなぜ、連れて行った?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:53:22 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「違和感は感じましたが、あなたが先輩である可能性は高かった。
あの時には、双子の兄弟を想定できるほどの情報はありませんでしたから。
そしてあのままあなたを一人にしてはいけないような気がしたから。
ただそれだけです」

(´<_` )「おれ、あの時何か言ったか?」

(´・ω・`)「一人にしたらいけないと思ったのは、ただのカンですよ。
でも、まあ、それ以上に、ドクオが笑っていたのが嬉しかったからですね」

(´<_` )?

(´・ω・`)「今から言うのは極秘事項です。
一応この近辺に誰もいないのは確認しましたが、テイさんも他の人には話さないでください。
……ドクオはβテスターです。
それに参加出来たことを毎日本当に楽しそうに語っていた。
友達であるぼくらは、そのゲームに、『ソードアートオンライン』に興味を持ちました。
…彼は、ずっとそれを気にしています」

夜風が、二人の間を吹き抜けた。

(´・ω・`)「この世界に来て、あの広場でのあの告知の後からずっと、
心の底からの笑顔をドクオは見せてくれなかった。
でも、あなたに会えた時、『先輩』に会えた時、嬉しそうに笑っていた。
だからです。『先輩』に、そばにいてほしかったんですよ。僕は」

(´<_` )「おれを、利用したのか」

(´・ω・`)「はい」

(´<_`;)「あ…うん。そんな簡単に肯定されると思わなかった」

(´・ω・`)「?ぼくはあなたを『利用した』理由を話したつもりでしたけど」

(´<_`;)「ああ、うん。それは分かるけどさ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:54:24 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「?続けますね。
極端な話、もし『本当の先輩』がこの世界に居なかったら、
あなたには『先輩』で居続けてもらうつもりでした。
アルゴさんに情報収集を頼んだのも、それを確認するのが主だと言っても良い」

(´<_`#)「それは、どういうことだ?」

(´・ω・`)「ナーブギアは高額です。
ゲームのソフトも手に入れるのは困難だったはずです。
『先輩』の代わりにあなただけが来ている可能性もゼロではありません。
そして、たとえ『本当の先輩』もこの世界に来ていたとしても、今もこの世界にいるとは限らない」

(´<_`#)「……おい…」

(´・ω・`)「全て考えうる可能性の一つです」

ショボンを睨むテイ。
しかしショボンは気にすることなく言葉を続ける。

(´・ω・`)「この世界で、人を捜しながら……。
自分以外の誰かを一番に考えながら生き抜けるほど、
この世界は甘くない。
ぼくは、そう考えます。
『先輩』があなたの事を一番に考えながらも生き抜いてこられたのは、
ひとえにネットゲームの知識と、あなたを残して死ねないという使命感からだと、ぼくは思っています」

(´<_` )「おれは、一人で生きてきた」

(´・ω・`)「一人になってから、ほとんど戦闘はされていないでしょう?」

(´<_` )!

(´・ω・`)「ぼく達との戦闘、あなたの戦い方は『誰かと一緒に戦う』戦い方でした。
レベルや経験の違いから、調和はなかなか取れませんでしたが。
あ、これはドクオが気付いたことです。
もしかしたら、ソロの戦闘はほとんどしていなかったのではないか。
彼は気にしていました。
『先輩は、誰かと一緒にいたんじゃないか』って。
もともと『先輩』は誰かと一緒にやるというようなことを言っていたのを聞いていたそうなので、
多分その『誰か』と一緒にいたのではないかと。
そして今一人なのは、もしかしたら…と、心を痛めていました」

(´<_` )「……そうか」

(´・ω・`)「はい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:55:54 ID:8BYwryE20<>
じっと互いを見る二人。

(´<_` )「おれにそんな話をしたのは、何故だ?」

(´・ω・`)「分かりませんか?」

(´<_` )「……おまえは、嫌なやつだな」

(´・ω・`)「……」

(´<_` )「こちらはこれだけ本音を話した。
だからお前も本音を話せ…ってところか?」

(´・ω・`)「……」

何も言わないショボンの顔を見て、つまらなそうに少しだけ笑う。
そしてため息をついた後、口を開いた。

(´<_` )「……本当は、分かっているんだ。
兄者がいつもおれのことを考えてくれていたのを。
学校に行けなくなったおれを笑いもせず、けなしもせず、ただいつものように、
おれとして扱ってくれた。
家族でも、腫物の様に扱っていた中で、兄者だけは…。
救われていた。おれも兄者に対しては、おれでいられたから。
学校に行ってほしいって言われた時も、分かっていたんだ。
心の奥底では。そんなことしなくたって兄者は大丈夫だって。
でも、それによって兄者にカシを作れるかもしれないって、おれは心のどこかで思っていた。
心に溜まっていた、兄者に対する劣等感を、それによって解消できたんだろうな。
そして、学校生活は楽しくて、交代で行くなんてこともしてしまった…」

(´・ω・`)「…」

黙って聞いているショボン。
すでにその存在を気にすることなく、独り言のようにしゃべり続ける。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:57:18 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )「でも、学校でのおれはおれじゃない。兄者だ。
その事に目を向けない様にしながら、卒業の影が目の前をちらついたとき、
このゲームを知り、兄者と一緒に始めることにした。
一台は買ってあったから、あとは貯金とバイトして、金溜めて。
ソフトを買うために徹夜で並んで。
おれではないおれになるために。
…流石悌悟ではない、『おれ』として生きてみたくて、この世界に来た。
確かに兄者に誘われたが、ここに来たのは、おれの意思だ。
おれが、来たかったんだ!」

言葉に熱がこもり、最後には吐き捨てるように叫んだ。

(´<_` )「そうだ、おれが来たかったんだ!
自分の意思できた、自分のために来た、自分を変えたくて、やり直したくて来たんだ!
おれがおれとして、おれではないおれとして、本当のおれのまま、生きるために!」

呼吸が荒くなる。
胸を抑え、吐き出す。

( <_  )「正確には、兄者の方がおれに付き合ってきたんだ。
なのにこの状況になった時、兄者はおれに謝った。
『おれのせいだ』って。
おれはその時、何も言えなかった。
そしてその言葉に甘えた。
兄者をなじって、兄者のせいにして、兄者に甘えたんだ。
ほんとうは、おれのせいなのに。
兄者から逃げ出したのも、怖かったんだ。
ずっと兄者に甘えてしまいそうで。
知っていた。学校のことだって。
入れ替わりなんて、うまくいくはずがないんだ。
……兄者の友達たちが、協力していてくれたんだ。
何も知らないふりをして、フォローしていてくれた。
おれは……知っていて……」

(´・ω・`)「………」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:58:23 ID:8BYwryE20<>
( <_  )「おれは、甘えていた。
分かっていた。甘えていたことくらい。
だから、離れた。
でも、一人でいるのはもっと怖かった。
夜になると、毎日震えた。
会えなくても、その姿を見たかった…。
そんな時だ、お前たちに会ったのは。
久し振りだった。震えないで眠ることが出来たのは。
…そういう意味では、おれもお前達を利用していた…。
でも、どんどん怖くなった。
お前たちに嘘をついているのが。それがばれたらどうなるのかと。
だから、おまえが全部知っていると言った時、ホッとした。
知っているのに、黙っているお前を、おれはおれの中で、勝手に共犯者にしていた。
少しだけ、落ち着くことが出来た……」

強張っていた表情が、少しだけ緩む。

(´<_` )「おまえが全てを話すつもりだと聞いたとき、怖いと思った。
でも同じくらい、ホッとした。
おまえによって、おれの罪を裁いてくれるのが、確定したから。
いつ言わるか分からない恐怖はあった。
でも、決断をお前に押し付けることが出来た。だから……」

そこで言葉を切る。
そして、再び顔を強張らせてショボンの顔を見た。

(´・ω・`)「……」

(´<_` )「おまえ、もしかしてそれすらも分かっていたのか」

それは疑問でも質問でもない、確認の言葉。
テイの心の中では、確定の事実。

(´<_` )「そうか……。
完全に、手の中で踊らされていたんだな」

(´・ω・`)「そんなつもりはありません。
ぼくも利用させてもらっていたのですから」

ほんの少しだけ笑顔を見せるテイ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 00:59:27 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )「それでも、おれには安らぎだったよ」

(´・ω・`)「それなら、良かったです」

(´<_` )「なあ、…こんなおれが、これからも兄者と一緒にいても良いと思うか?」

笑顔で、吐き捨てるように問いかける。

(´<_` )「お前なら、おれの心も、兄者の心も、」

(´・ω・`)「しらんがな」

(´<_` )「……え?」

(´・ω・`)「そんなこと知らないって言っているんです」

(´<_`;)「え?え?この流れで?なんかないの?」

(´・ω・`)「ぼくは、友達を守りたいだけです。
友達と、一緒に元の世界に帰りたいだけです。
攻略なんて怖くてできないけど、せめて誰かがこの世界を壊してくれるまで、
友達と一緒に生き続けたいだけです。
先輩とはいえ、二人の心とかどうすればいいのかなんて、分かりません。
そして、分かるつもりもないです」

(´<_`;)「え?え?」

(´・ω・`)「言っときますけど、ぼくだってあなたに騙されていたんですからね。
利用したのは悪いと思いますけど、あなたに対する責任なんてありませんから」

(´<_`;)「あ…うん……そうだよね…」

(´・ω・`)「だから、そんなことは、後ろにいるその人ともっといっぱい話し合ってください」

(´<_` )!

慌てて振り返るテイ。

そこには、彼の兄が立っていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:00:48 ID:8BYwryE20<>
(´<_`;)「いつ…から?」

(;´_ゝ`)「えっと…アルゴさん経由でそいつから連絡貰ってて…」

(´・ω・`)「ドクオがそうであることを話したあたりからいらっしゃいましたよね」

(´<_`;)「それってほぼ最初から」

思わず両膝を地面につけて項垂れるテイ。

ケイはそれを見ておろおろとする。

(;´_ゝ`)「す、すまん弟者。
こちらから言うかばれるまでは声をかけるな気配を消せって言われてて」

(´<_`;)「何故いう事を素直に聞く」

(;´_ゝ`)「お前の本心が聞けるかもって言われて」

兄であるケイの言葉で、大きなため息を吐くテイ。

(´・ω・`)「じゃ、そういう事で。後は二人でやってください」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「え?」

涼しい顔で何事も無かったかのように宿に向かって歩き始めるショボン。
それを呆然とみる兄弟。

(´・ω・`)「ぼくが出来るのはここまでです。
テイさんを利用させていただいた代償として、先輩に引き合わせ、その本音を吐露させた。
先輩は実際にこちらにいることを確認させていただいて、探していた弟さんと引き合わせた。
名前は確認させていただいたので、黒鉄宮で確認もさせていただけるようになりましたし。
後はお二人でどうするのか決めてください」

(´<_`;)「あ、そう…」

( ´_ゝ`)「あーうん。そういえば、お前ってそういうやつだ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:02:29 ID:8BYwryE20<>
(´<_`;)「え?そうなの?」

( ´_ゝ`)「二年の文化祭で、こいつ一年から副会長とかやってたんだけどさ、
おれがコスプレしてて教師に捕まった時に
『こういう人がいた方が、一部では盛り上がりますし、
引く人にはバカなことをしない様に抑制になりますよ。
この人以上に問題行動をする人にも、
この人と同一視されるって言えば止めると思いますし』
って言ってたのを思い出した」

(´<_`;)「まじか…」

(´・ω・`)「でも、そのおかげであの格好で三日間楽しめたでしょ」

( ´_ゝ`)「あーうん。それに関しては感謝してる。
あの教師のおれを見る憐れんだ眼も忘れられないけど」

(´・ω・`)「じゃ、そういうことで」

二人の視線を事も無げに受け流し、二人の横を通り過ぎようとするショボン。
しかし通り過ぎると、すぐに立ち止まった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:03:47 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )?

( ´_ゝ`)?

(´・ω・`)「テイさん、ぼくはあなたを利用した。
それは紛れもない事実であり、弁解の余地はありません。
でも、これは信じてください。
スキルを手にする修行の日々も、一つのパーティーとしてダンジョンを歩いたのも、
楽しかったです。
きっと、他の四人も。
僕達五人のスキル、戦い方、それを見せることが出来たのは、
プレイヤー『Tei』を信用したからです」

(´<_` )!

(´・ω・`)「そして先輩、お会いできてよかった。
ドクオからいるかもしれないと聞いてから、いるのならばお会いしたかった。
出来るなら、パーティーになれればと思っていました。
あの文化祭の時、大人し目だった学校の雰囲気を一掃して楽しい雰囲気にしてくれたのは、
先輩たちでした。
外していいギリギリのラインまで羽目を外していた先輩は、学校のムードメーカーだった」

( ´_ゝ`)!

(´・ω・`)「出来ることなら、最初から二人同時にお会いしたかったです」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「……」

(´・ω・`)「それでは、おやすみなさい」

再び歩き始めるショボン。

すると建物の陰からドクオが現れ、二人に向かって一回お辞儀をした後、
ショボンにならんで宿へと戻っていった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:04:47 ID:8BYwryE20<>
(´<_` )「おれがこの道を選んだのを、ドクオが監視していたんだな。
だからショボンは先回りした。多分他の三人も準備していたんだろう」

( ´_ゝ`)「…完全にやられたな。弟者」

(´<_` )「…ああ。くやしいが、完敗だ」

( ´_ゝ`)「リベンジしたいな」

(´<_` )「……兄者じゃ無理だろ」

( ´_ゝ`)「え?そう?」

(´<_` )「おれでも無理だ。でも……」

( ´_ゝ`)「?」

(´<_` )「二人でなら、出来るかもな」

( ´_ゝ`)!

(´<_` )「ショボンを、あいつらをひと泡吹かせてやろう」

(*´_ゝ`)「あ、ああ!そうだな!」

空には白い明りが差し込み始め、夜が終わろうとしている。

兄弟が、お互いを見て、笑顔を見せた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:06:09 ID:8BYwryE20<>
5.夢の明日に



2023年3月某日。

フィールドダンジョンを攻略し、町へと戻ってきた六人。
 _
( ゚∀゚)「今日も快勝だな!」

('A`)「スイッチのタイミングがずれてたぞー」
 _
(;゚∀゚)「あー。ワーウルフ」

ξ゚听)ξ「ドレイクもよ」
 _
(;゚∀゚)「あれは、ほら、な」

( ^ω^)「ちょっとはやいんだおねー」

川 ゚ -゚)「前に出過ぎるんだな」

(´・ω・`)「フォーメーションとか、見直さないとかな」
 _
(;゚∀゚)「え?おれお払い箱?」

('A`)「両手剣でおれ達の中では一番一発の攻撃力が高いから、
今まで通り俺らが作った隙に大きな一撃を与えるポジションでいてほしいところだけど」

川 ゚ -゚)「タイミングがずれると結局防御に回るからな。
先制攻撃、行ってみるか?」

ξ゚听)ξ「ショボンとの連携が取れればそれが良いかもね」

( ^ω^)「ぼくとドクオなら多少反応が遅れてもスピードでカバーできるけど、
ジョルジュの場合はタイミングがずれると修正がききにくいおね」
 _
( ゚∀゚)「おれのいけんはどうしたー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:08:23 ID:8BYwryE20<>
(´・ω・`)「先ずは練習。あと、もう一人くらい重攻撃が出来るとまた違うけど…」

今日の戦いの反省を続ける六人だったが、ショボンの言葉で五人の口が止まった
 _
( ゚∀゚)「どうした?」

(´・ω・`)「いや、…前に話したよね。一時期パーティーにいた斧使いの事」
 _
( ゚∀゚)「ああ、例のスキルを取る時に一緒だったって」

(´・ω・`)「そうそう」

ξ゚听)ξ「そろそろジョルジュも取りに行かないとね」
 _
( ゚∀゚)「あ、やべ」

川 ゚ -゚)「必須だからな」
 _
( ゚∀゚)「話に聞く限りじゃ、めんどくさそうなんだよな」

ξ゚听)ξ「仲間になった以上、あの屈辱は必ず味あわせる」

('A`;)「ツン…」

(;^ω^)「ツン…」

(;´・ω・`)「ツン…」

川 ゚ -゚)「ツン…。お前よりひどい髭はなかなかないと思うが」

ξ#゚听)ξ「うるさい」

(´・ω・`)「まあ、有用性の高いスキルだから、取っておいてほしいけど」

ξ゚听)ξ「必須で」

(;´・ω・`)「…うん。そうだね」

わいわいと喋りながら歩く六人。
最前線の一つ下の主街区と言うこともあり、人通りはそれなりに多い。
人気のあるレストランもあるため、目当ての者も多いだろう。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:09:27 ID:8BYwryE20<>
六人も、今日はそのレストランに向かっていた。

(´・ω・`)「あの味の秘密がねー」

川 ゚ -゚)「はやく謎を解くんだショボン」

ξ゚听)ξ「クーはあのスープ大好きよね」

川 ゚ -゚)「だが高い」

( ^ω^)「だおねー」
 _
( ゚∀゚)「おれはオルドバードのフライが好きだな」

('A`)「ああ、あれはうまい。コスパも手頃だし」

(´・ω・`)「もしかすると、まだ手に入らないアイテムなのかなー」

大通りを歩く五人。
その前方、人ごみがあった。
 _
( ゚∀゚)「なんか騒がしいな」

川 ゚ -゚)「邪魔だな」

( ^ω^)「道の真ん中に何かあるのかお?」

('A`)「っていうより、両側を避けて歩いているような」

それは何かに対して集まっているのではなく、
道の両側を歩くことを避けたプレイヤーが道の中央に寄ってしまったために
起きた混雑だった。

徐々にその人ごみに近付く六人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:10:54 ID:8BYwryE20<>
「なにあれ…」
「プレイヤー?」
「原住民的な…イベントじゃないよな?」
「カーソルはプレイヤーだけど」

耳に入る声に、両側を見る六人。

('A`;)
(;^ω^)
ξ;゚听)ξ
川;゚ -゚)
(;´・ω・`)
 _
( ゚∀゚)「どうしたんだみんな?」

ξ;゚听)ξ「しっ黙って。通り過ぎるわよ」

('A`;)ア…

(;^ω^)「ドクオ、ドクオ」

('A`;)オレニフルナ…

(;^ω^)「だおねー」

川;゚ -゚)「君子危うきに近寄らずだ」

(;´・ω・`)「嫌な予感しかしないとか、久しぶりだよ」
 _
( ゚∀゚)?

縦一列になって道の真ん中を進む六人。
俯いて、足早に、迅速に、通り抜けようとしたその時だった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:12:35 ID:8BYwryE20<>
(*´_ゝ`)「華麗なるお前たちの美貌の先輩!
きらめきのハンマー使い兄者!ここに推参!」

(´<_`;)「た、頼れる知識…の…厳格なるせん…ぱい…。
轟雷の斧使い…弟者。ここに参上…」

(*´_ゝ`)「われら!」

(´<_`;)「ぶ、VIP…の…」

(*´_ゝ`)「新しき力!」(´<_`;)

両サイドから聞こえるたわごとから逃げるように、
歩いてはいるが走る様なスピードになる五人。
 _
( ゚∀゚)「え?今VIPって」

ξ゚听)ξ「バカジョルジュ!さっさとくる!」

川 ゚ -゚)「おいていくぞ!」
 _
( ゚∀゚)「え、でもいいのか?知り合いじゃ」

ξ゚听)ξ「知らない人よ」

川 ゚ -゚)「ああ。全く知らない」

両サイドの二人は、鏡の様に対照的なポーズを取っていた。
両手を上げ、腰をひねり、片足を少し上げた特徴的なポーズ。

そして上半身は黒のハーネス。
それは銀のリングを黒の皮でつないだもので、上半身の80%は露出している。
下半身はローライズで股下を極限まで短くした黒の短パン。
ひざ下までの光沢のある黒いブーツ。
兄は右手、弟は左手に黒い手袋もしている。

('A`)ウツダシノウ

(;^ω^)「ダメだおドクオ!早く歩くんだお!」

(;´・ω・`)「あんな服をどこで手に入れたのあの人達」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 01:13:45 ID:oPDjpCC60<>完全にサブリガです。本当にありがとうございました<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:17:08 ID:8BYwryE20<>
(*´_ゝ`)「待ってよー。ショボーン」

すり抜けようとする五人。
その背中に追い打ちをかけられるように呼ばれる名前。

(;´・ω・`)「え!?」

(´<_`;)「ど、ドークーオー。……ゴメン」

('A`)ヒーーーーーーーーー

(*´_ゝ`)「ツーンちゃーん」

ξ#゚听)ξ「クー!殺していいよね!」

(´<_`;)「ぶ、ブーンくーん……スマン」

(;^ω^)「おーーーーおーーー  −--」

(*´_ゝ`)「クーにゃーん」

川#゚ -゚)「許す!っていうか私も殺る!」

(´<_`;)「じょ、ジョルジュ?くーん……ゴメンナサイ」
 _
(;゚∀゚)「何あの人達?だれ?え?知り合い?」

(;´・ω・`)「と、とにかくあっちの路地へ!」

下を向いて一直線に歩く六人と、くねくねと変な動きをしながら後を追う二人。

ξ#゚听)ξ「決闘よ!」
川#゚ -゚)「圏外に連れ出して殺る!」

(;^ω^)「二人とも落ち着いて!まずはこっちに!」

('A`)ウツダシノウ……
 _
(;゚∀゚)「え?なんで?なにごと?」

(;^ω^)「そ、そっちの二人も前向いて!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:19:29 ID:8BYwryE20<>
(;´・ω・`)「アルゴさんから先輩がぼくたちの情報を買ったっていう情報は買ったけど、
こ、こんなテロにあうなんて」

路地に駆け込んだ六人。
建物の陰で呼吸を整えている。

ξ#゚听)ξ「あのバカ二人!」

川#゚ -゚)「ドクオ!ブーン!どうにかしてこい!」

('A`)オトウトサンモセンパイダッタヤッパリキョウダイダ

(;^ω^)「僕に言われても」

(;´・ω・`)「とにかく逃げよう、一度転移門まで」
 _
(;゚∀゚)「ゲッ。お、おい」

ジョルジュの声で、自分達の来たほうを向く五人。

(*´_ゝ`)「みーつーけーたー」

両手を空に向け、腰を振り、くねくねと寄ってくる。

ξ;゚听)ξ「い、い、い、い、嫌―――――!」

普通の女性ならここで逃げ出すところだが、ツンは違った。

腰に携えた細剣を取り、構えた瞬間駆け出す。

ξ#゚听)ξ「成敗!」

(;^ω^)「落ち着いて!」

瞬時に出せる初期の剣技を放とうとした瞬間、目の前にブーンが現れその身体を止める。

ξ#゚听)ξ「どいてブーン!そいつ殺せない!」

(;^ω^)「殺しちゃだめだお!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:21:38 ID:8BYwryE20<>
(*´_ゝ`)「圏内だから殺せないぞー」

ツンを抱きかかえたまま必死に止めるブーン。

(;^ω^)「先輩も挑発しちゃだめだお!」

川#゚ -゚)「ならば私が!」

ブーンとツンの横をすり抜けようとしたクー。

既に手に持った槍は青く光っていたが、後ろからショボンが羽交い絞めにした。

(;´・ω・`)「く、クーも落ち着いて」

川#゚ -゚)「あのような姿をした者達に往来で名前を呼ばれて落ち着いていられるか!」

(;´・ω・`)「それはぼくもそう思うけど!とりあえず武器はダメだから!」

狭い路地の中央で塊のようになる四人。
 _
( ゚∀゚)「えっと……なあドクオ、これ、どうしたらいいんだ?」

('A`)センパイハセンパイデヤッパリセンパイダッタカワラナイッテスバラシイナア
 _
(;゚∀゚)「なんかこっちもダメか。
え?じゃあ俺が収拾つけなきゃいけないの?」

(´<_`;)「なんか…スマン」
 _
(;゚∀゚)「うを!変態二号」

逆側から回ってきたもう一人が、すまなさそうに首を垂れつつ近寄ってきた。

(´<_`;)「いや変態じゃ……変態…だよなあ……この格好」
 _
( ゚∀゚)「お!こっちは話が通じ……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:22:25 ID:8BYwryE20<>
( <_ ;)「だからおれは反対したんだ。
だけど兄者が一泡吹かすならインパクトが大事だと言いだして。
それなら前にゲットしたこの防具が…とか、
前に店で見た下着が…とか、
そういえばあんなブーツも…とか言い出して、
そしたらやっぱり名乗りもしなきゃだよなとか言い出してきて、
おれはいやだって言ったのにインパクト勝負とか言い続けて、
そしたらなんかおれもそうなのかなとか思うわけで、
だから……」
 _
(;゚∀゚)「なんかこいつもダメだったー!」

(*´_ゝ`)「ツーン―ちゃーん。クーうーにゃーん。あーそーぼー」

ξ#゚听)ξ
 「殺す!」
川#゚ -゚)「

(;^ω^)
 「ダメ―!!!」
(;´・ω・`)

結局全員が落ち着いたのは、たっぷり三十分後だった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:24:45 ID:8BYwryE20<>


(*)´_ゝ`)「殴られた」

(´<_` )「それで済んでよしと思え」

(*)´_ゝ`)「圏内なのに…」

兄弟を着替えさせ、街外れの丘まで連れてきた六人。
ツンとクーはまだ少しあらぶっているが、なんとか周りが抑えている。

(*)´_ゝ`)「一緒にやったのになんで弟者は殴られなかったんだ?」

(´<_` )「殴られる前に必死に謝ったからな」

(*)´_ゝ`)「弟者ばっかりずるい―。ひいきだ―」

ξ#゚听)ξ「まだ、」
川#゚ -゚)「足りないのか?」

(*)´_ゝ`)「ごめんなさい」

(´<_`;)「もうしません」

(;^ω^)「と、とりあえず話を聞いて」
 _
(;゚∀゚)「ああ、それが良いな」

正座をしている二人を囲む様に立つ六人。
クーを抑えるのはジョルジュが変わり、ショボンが二人の正面に立っている。

(;´・ω・`)「えっと…、なんでこんなことを」

(*)´_ゝ`)「一泡吹かせようと思って」

(;´・ω・`)「その為だけに!?」

(*)´_ゝ`)「うん」

('A`)センパイハセンパイダナア

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:25:42 ID:8BYwryE20<>
(;´・ω・`)「はあ……」

ショボンの口からこぼれたため息。

(;´・ω・`)「先輩はともかく、テイさんまで…」

(´<_`;)「止められなくてスマン」

(;´・ω・`)「というか、一緒にやってましたよね。
なんか他人事みたいな空気を醸し出してますけど」

(´<_`;)「…実はちょっと楽しかった」

(*)´_ゝ`)「さすが弟者。我が弟」

にやにやと笑うケイ。
それに答えてはにかむように笑うテイ。

それを見て、全員が同じタイミングでため息をついた。

「はあ……」

(´・ω・`)「まったく……。とにかく、もうこんなことは止めてくださいね」

( ´_ゝ`)「はーい」

(´<_` )「もちろん」

ショボンの強めの言葉に素直にうなずく二人。
大きなため息を一度つくことによって少し落ち着いた残りの五人も、
なんとか気持ちを切り替えた。

ξ゚听)ξ「次は」

川 ゚ -゚)「ありませんから」

( ´_ゝ`)「はーい」

( ^ω^)「ものすごく」
 _
( ゚∀゚)「いやな予感がする返事の仕方だ」

('A`)コノヘンジノシカタッテコトハワカッテナイヨネセンパイ

( ´_ゝ`)「えー。そんなことないのにー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:27:02 ID:8BYwryE20<>
感情のこもっていない棒読みのセリフを言いながら、
隣にいる弟の顔をちらっと見る兄。

それを受けて、口を開く弟。

(´<_` )「こ、こりゃあ、おれがとめてもだめだなあ」

(´・ω・`)「テイさん?」

(´<_` )「おれだけじゃ、とめられないかもしれん。
だ、だから、その…。
なんだ…、ほら……。
お、おれたちを…その……身近で監視したほうが、良いんじゃないか?」

ξ゚听)ξ?

川 ゚ -゚)?
 _
( ゚∀゚)?

( ^ω^)?

('A`)?……!

(´・ω・`)

(´<_` )「だ、だからその…おれ達を…お前たちのギルドに、入れてほしい」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!
 _
( ゚∀゚)!

( ^ω^)!

('A`)

(´・ω・`)

(´<_` )「だ、だめか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:28:19 ID:8BYwryE20<>
絞り出したようなテイの声。
しかし誰も反応しない。
正確には兄弟以外はショボンをチラチラと見ている状態なのだが、
兄弟はショボンの顔を見るので精一杯だった。

( <_  )「……ダメ…だよな…。そりゃ…」

(;´_ゝ`)「た、ただでとは言わんぞ!この一カ月おれ達は鍛冶屋を頑張ったんだ!
おれ達を仲間にすれば、メンテナンスもタダだし新しい武器と防具は使い放題だ!」

自分のウインドウを出して武器を実体化させる兄。

それぞれの武器をそれぞれに向けて放り投げる。

(;´_ゝ`)「弟者が知っている戦い方と、アルゴから買った情報を基に作り上げた武器だ!
多分今使っている奴より数段強くなれる!…と、おもう……。
お得だろ!な!
だから…その……」

沈黙。

静寂が、八人を包む。

何も言葉をかけないショボンに、首を垂れる兄弟。

(´・ω・`)「ほんと、斜め上の事をしますよね」

やっともらえた言葉の真意がつかめず、顔を上げる兄弟。
周りを見れば、ショボン以外の全員はにやにやと笑っている。

(´・ω・`)「こんなことしなくたって、ずっと待っていたんですよ」

(*´_ゝ`)!

(´<_`*)!

(´・ω・`)「やっと来たかと思ったら、こんなことして…」

(;´_ゝ`)「あ…」

(´<_`;)「…うん」

(´・ω・`)「はい、これ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:31:18 ID:8BYwryE20<>
ショボンがウインドウを出して操作すると、テイの目の前にウインドウが浮かぶ。

【Shobonさんからギルドに誘われています】
【YES】   【NO】

(´<_` )「あ、あ、ありがとう!」

YESのボタンを押すテイ。

(*´_ゝ`)

(´・ω・`)「じゃあご飯にでも行きましょうか」

( ´_ゝ`)「え?おれは?」

(´・ω・`)「え?先輩も入るんですか?」

( ´_ゝ`)「ちょちょちょちょちょちょ」

(´・ω・`)「確か前に『弟者だけでも』とか言ってらしたかと」

( ´_ゝ`)「え、あれ?いや言ったような気もするけど」

(´・ω・`)「ですよね」

(;´_ゝ`)「いやいやいやいやいやいやいやいや」

(´・ω・`)「冗談ですよ」

ケイの目の前に浮かぶウインドウ。
慌ててYESのボタンを押す。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:32:19 ID:8BYwryE20<>
( ´_ゝ`)「鬼め…」

(´<_` )「結局負けだなおれ達の」

( ´_ゝ`)「この後輩め…。ふんだ。年上の余裕で許してやろう」

(´・ω・`)「ギルマスは除籍も出来るんですよね」

( ´_ゝ`)「ごめんなさい」

(´<_` )「すまんな、こんな兄で」

(´・ω・`)「大丈夫です。知ってますから」

ショボンが手を差し出し、テイがそれを掴んで立ち上がる。
ケイの前にはうれし涙を浮かべたドクオが立つ。

('A`)「先輩…」

( ´_ゝ`)「悪かったな。心配かけたみたいで」

('A`)「先輩と一緒に戦えて、嬉しいです」

立ち上がる兄者。

(´・ω・`)「さて、武器とか防具はまた後にして、まずはご飯に行こう!」

「おー!!!!」

それぞれに準備を整えて歩き出す八人。

( ´_ゝ`)「あ、これからおれの事は『兄者』と呼んでくれ」

(´<_` )「おれは『弟者』だ」

( ´_ゝ`)「敬語とかもいらないからなー」

ξ゚听)ξ「自分に対して使われると思っているところがムカつくわね」

( ´_ゝ`)「一応先輩だぞー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:33:18 ID:8BYwryE20<>
川 ゚ -゚)「ギルドの先輩で、レベルも戦闘経験も私達の方が上じゃないか?」

( ´_ゝ`)「MMORPGの経験…」

( ^ω^)「こっちにはドクオがいるお」

( ´_ゝ`)「………」

(´<_` )「兄者、兄者の負けだ。諦めろ」

( ;_ゝ;)「弟者―」

(´<_` )「泣くな抱きつくな!気持ち悪い!」
 _
( ゚∀゚)「また騒がしくなるな」

('A`)「ギルドにもなったし、本格的になってきたな」

思い思いにしゃべりながら歩いていくギルドVIPの面々。

(´・ω・`)「…鍛冶屋、料理とアイテム鑑定。薬の調合と服の製作…」



それはギルドVIPが生産者ギルドと呼ばれるようになる、一つの節目の出来事だった。







.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 01:36:03 ID:twdmxM0k0<>乙乙<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:49:10 ID:8BYwryE20<>以上、第十四話でした。

支援、ありがとうございます。

また、十三話の感想もありがとうございました。

そしてイケメンの剣技に酔わせていただきました。
いつもありがとうございます。

次はどの話になるかまだ未定ですが、
終わりに向かって書いていけたらいいなと思っております。

ではではまた。<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/08/30(土) 01:51:17 ID:8BYwryE20<>一応年表も置いておきます。

2022年
11月
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月流石兄弟「十四話 双頭の鷲の旗の下に」
04月フサギコ「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル「三話 それから」
06月クックル「四話 緑の手」
07月
08月
09月モララー「十三話 ダイヤモンドだね」
10月
11月
12月ギコ・しぃ「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 01:54:40 ID:BRpDARkk0<>乙です
これで追加メンバー全員だっけ?
ハインドクオ気になるー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 05:54:27 ID:aR.fSiM60<>5人はわかってたけど兄弟もリアル勢だったのかー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 09:02:02 ID:oPDjpCC60<>乙
弟者は意外なキャラだった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 10:44:49 ID:SOGzsDQI0<>モララーの時にブーンが言ってた「ある人」は兄者の事だったのか・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/08/30(土) 15:44:17 ID:BbD0DPAk0<>乙
今後も期待してる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/09/03(水) 04:37:38 ID:6N9q5HGg0<>今まで兄者の扱いひでぇなと思ってたけどこんだけ変人なら仕方ねーか…
今回も面白かった。乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/09/03(水) 10:06:27 ID:uOOt8HsU0<>まぁ兄者だし変人ロリコンはデフォでしょ<> 名も無きAAのようです<><>2014/09/08(月) 00:13:58 ID:rW8BQogk0<>双頭のryってワーグナーの行進曲だよな確か
次は本編進むのかドクオとハインとの絡みか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/09/08(月) 00:24:31 ID:g6Rh/84.0<>やっとこの前読みはじめて追いついたー
流石兄弟の話おもしろかったです
乙<> 名も無きAAのようです<><>2014/09/19(金) 16:23:45 ID:8rh6U5NI0<>ツンが弟者に怒る心理描写とか凄いと良かった。
ツンも一度通ったところなのね<> 名も無きAAのようです<><>2014/10/12(日) 12:08:37 ID:KL2CtirI0<>やはり何回読み直しても面白い<> 名も無きAAのようです<><>2014/10/25(土) 19:49:00 ID:glwsS5s20<>全部読み返しておもったんだけど
ブーンって心意システムに近いことやってるよね<> 名も無きAAのようです<><>2014/10/26(日) 00:27:09 ID:t4juxNHc0<>どこに上書き要素があんだ?原作でAGI極型の描写がないから不明だが通常型が狩りしてても疲労たまるんだから極型だとブーンくらいの持続度なんだろ<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/06(木) 10:03:19 ID:fgKdE9qI0<>まだかなー<>
◆dKWWLKB7io<>sage<>2014/11/09(日) 16:00:09 ID:fgBHdRvw0<>書き終わった…

全文チェックが済んだら投下します。
早ければ本日中。
遅くとも近日中には。

よろしくお願いします。
ではではまた。

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/09(日) 16:04:29 ID:FCMGHQBk0<>待ってますよ<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 19:55:37 ID:Am.mXpzk0<>



第十五話 表とウラと




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 19:56:44 ID:Am.mXpzk0<>
0.現実とリアルと


おれの名前はシャキン。
ああ、もちろんリアルネーム、本名じゃないぜ。
ゲームネーム?プレイヤーネーム?ってやつだ。
ハッハッハッハッハ

ん?本名?
この世界じゃあ何の意味も持たないから、もう忘れちまったぜ!
ハッハッハッハッハッハ!

え?いや、うん、もちろん覚えているけど。
でも、もう一年以上『Shakin』としか呼ばれていないと、
少しだけ、ほんの少しだけだけど希薄になるのは確かで。

ゲームの中のおれと、
リアルな世界の自分。

どちらも本物だけど、
二つの自分が重なったり離れたりしているような気がする。

それでもおれはリアルな血縁がこの世界にいるからリアルを感じられる瞬間があるけど、
他のプレイヤーはどうなんだろうな。

この世界が、作られた世界が限りなく本当に感じる瞬間が、
もしかするとおれよりも多いのかもしれない。

この世界、そう世界初のVRMMORPGの世界。

『ソードアート・オンライン』

完全なる仮想世界の中で、今おれは生きている。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 19:58:09 ID:Am.mXpzk0<>


タイトル≪シャキンはソードアート・オンラインを生き抜くようです≫



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 19:59:30 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「じゃじゃーん」

( ゚д゚ )「……で、おまえは何をやっているんだ?」

(`・ω・´)「ん?主人公としてのモノローグの練習」

(´・_ゝ・`)「アホだな」

( ゚д゚ )「アホだ」

从 ゚∀从「アホ」

(゚、゚トソン「アホですね」

<_プー゚)フ「………」

(`・ω・´)「ほら、来るべき日のために練習しておかないと」

<_プー゚)フ「………………」

(`・ω・´)「エクストだけが心の友だ」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:00:32 ID:Am.mXpzk0<>
西暦2024年5月某日

54層 ダンジョン『朝霧の洞窟』

午前4時から10時まで探索することの出来るこのダンジョンは、
敵だけではなく宝箱まで短時間でポップする為非常に人気があった。
しかしその分敵の実力も高く、
また強さは固定ではなく上層がクリアされるごとに敵のレベルが高くなっていくため、
相応の実力者で無いと攻略は難しかった。

時間は午前6時。
午前4時の入り口の出現と同時に潜り込んでいたギルドN−Sのメンバーは、
二度目の安全エリアで休息を取っているところだった。

(゚、゚トソン「でもシャキンさん、この世界にリアルの血縁の方がいらっしゃったんですね。
知りませんでした」

(´・_ゝ・`)「え?トソン、マジで言ってる?」

(゚、゚;トソン「え、ええ。聞いてませんから」

六人パーティーで進んでいるため、三人が警戒し三人が休息をしていたのだが、
洞窟の天井の突起を見ながら呟いていたシャキンに残りの五人が呆れていた。

(`・ω・´)「あのデコボコ、カメラに見えない?」

从 ゚∀从「みえない」

<_プー゚)フ「それは同意できない」

(`・ω・´)「お前たちは想像力が足りないな」

今の警戒班はシャキン、ハイン、エクスト。
休憩を取るミルナ、デミタス、トソンが座ってお茶を飲んでいる周りに立ち、
安全エリアの出入口を警戒している。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:01:48 ID:Am.mXpzk0<>
( ゚д゚ )「そうか、知らなかったのか」

(゚、゚トソン「みなさんはご存じなんですか?」

(´・_ゝ・`)「ああ。顔が似ているから、自然と」

(`・ω・´)「おれとあいつ、そんなに似てる?」

从 ゚∀从「似てないと言うやつはいないと思うぞ」

(`・ω・´)「そうかなー」

<_プー゚)フ「……え?」

(゚、゚トソン「……え?」

四人の会話を聞き、固まる二人。

ギルドN−Sは、もともとシャキンとミルナとデミタスの三人パーティーに
ハインが加入して作られたギルドであり、
その後何人かの加入と脱退があったが、
エクストとトソンの加入によってある種のまとまりを見せたギルドである。
その為、パーティーとして、ギルドとしての経験において、
三人あるいは四人との知識に差が出てしまうのはしょうがないのだが、
どうもこの件においては大きな衝撃が走ったらしい。

(゚、゚;トソン「も、もしやそれは…」

<_プー゚;)フ「もしかして…」

「ショボン(さん)?」

二人の声が重なり、懇意にしているギルドのギルドマスの名を告げる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:02:35 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「そうだけど、そんなに…」

(゚、゚;トソン「ほ、ほんとですか!?」

<_プー゚;)フ「違いすぎるだろ!」

(゚、゚;トソン「確かに顔は似ていらっしゃいますが」

<_プー゚;)フ「戦い方はともかくとしても、ギルド運営とかその他もろもろが」

(゚、゚;トソン「きょ、兄弟とかではありませんよね?」

<_プー゚;)フ「そうだな。違うよな。違うと言ってくれ」

(`・ω・´)「………従弟」

(゚、゚トソン「ですよねー」

<_プー゚)フ「だよなー」

(`;ω;´)「あれ、おかしいな。目から水があふれてくる」

笑う三人と、なぜかホッとした顔をしている二人。
ギルマスは一人涙を流していた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:03:38 ID:Am.mXpzk0<>
1.指揮を執る者と従う者と



(`・ω・´)「と、この前こんなことがあったんだ」

(;´・ω・`)「そ、そうなんだ」

43層ギルドN−Sのホーム。

層の北側に位置するその街の外れに、ギルドN−Sはホームを買っていた。
三階建ての一軒家を改造して、各々の個室のほかにキッチンと大きなのリビングを設置し、
更にハインこだわりのお風呂を造っていた。

(`・ω・´)「酷いと思わないか」

(;´・ω・`)「そうだねぇ」

今二人がいるのはギルマスの執務室。
と言う名のシャキンの趣味の部屋だった。

(`・ω・´)「なんだよ、おまえまであいつらの味方か?」

(;´・ω・`)「……僕になんて言ってほしいのさ」

(`・ω・´)「『酷いよねー』とか、『シャキンも頑張ってるのにさ』とか」

(;´・ω・`)「………『酷いよねー』…」

(*`・ω・´)「だよな!そうおもうよな!」

(;´-ω-`)「ああ…うん…」

ホームを作る時にショボンの部屋を羨ましがって執務室を作ったのだが、
ほぼその本来の使われ方はしていない。

高かった応接セットもこうやってショボンが来た時くらいしか使われておらず、
ソファーの周りには拾ってきたアイテムや衝動買いした家具が無造作に置かれていた。

(`・ω・´)「まったくあいつらは」

(´・ω・`)「(昔から自由な人だったけど、ここに来てから拍車がかかったような気がする)」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:04:59 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「ん?なんだ?俺の顔をじっと見て」

(´・ω・`)「なんでもない。っていうかさ、ぼくら従兄弟でもないよね」

(`・ω・´)「めんどくさいから良いんだよ。
だいたい血縁関係ぐっちゃぐちゃで簡単に説明しようと思ったら『一族』なんて言えるか。
おまえだっておれがブーンやドクオと初めて会った時は、
おれの事を『いとこのおにいちゃん』って説明してただろうが」

(´・ω・`)「いつの話を言ってるのさ。あの頃はそう思ってたんだからしょうがないでしょ」

(`・ω・´)「え?そうなの?」

(´・ω・`)「あの頃確か小学校の低学年だよね。二年か、三年か」

(`・ω・´)「お前の事だから、全部わかってるかと思った」

(;´・ω・`)「いくらなんでも…。
例の訳のわからない家系図も見せられたのも高校に入ってからだよ」

(`・ω・´)「ああ、あの血族ぐっちゃぐちゃの」

(´・ω・`)「そ、ぐっちゃぐちゃのこんがらがってるやつ」

(`・ω・´)「そっか。見てたのか。
あの家系図を見せられたってことは、おまえも晴れて後継者だな」

(´・ω・`)「最有力後継者候補のどっかの誰かさんが逃げ回ってるせいで、
こっちに回ってきただけだよ。
それに、まだ【予備候補】だし」

(`・ω・´)「逃げ回ってるとはけしからんな」

(´・ω・`)「顔が見たかったら鏡でも見るんだね」

(`・ω・´)「所詮地方の同族会社グループなんだから、適当にやっておきゃいいんだよ」

(´・ω・`)「それは同感だけど、地方とは言え石油、不動産、輸送、医療、食品と手広くやってるとね。
トップにはそれなりの人が立たないと」

(`・ω・´)「ならなおさらお前が一番適任だろ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:06:06 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「…やめてよ。シャキンの方が適任だったのに、逃げ出したくせして」

(`・ω・´)「おまえは自分が見えてないだけさ。
実世界でも、ここでもな」

(´・ω・`)「攻略組への参加、まだ言っているの?」

(`・ω・´)「ほんとに合流しないのか?」

(´・ω・`)「層が厚いとは言えないけど、
今の攻略組はそれはそれとしてよくできていると思うからね。
新興勢力として新たに参加しても、バランスを崩すだけさ。
結局は、チームワークだと思うし」

(`・ω・´)「おまえなら、指揮が執れるだろ」

(´・ω・`)「今の攻略組には指揮者がちゃんといるよ。
血盟の団長とか副団長とか。それに黒の騎士も。
その信頼や培ってきた経験を壊してまで僕が指揮を執るメリットなんてないよ」

(`・ω・´)「だが」

(´・ω・`)「逆に聞くよ。
なぜそこまで参加させたいの?」

(`・ω・´)「お前だって、分かっているんじゃないか?」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「最近の攻略組の状況はアルゴやエギルさんから聞いているだろ?
あと、エリアボスとの戦闘は見たこともあるはずだし、
ここ数回の攻略の進行度だってそうだ。
このままいけば、何かが起こる様な気がしてならない」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「大人の世界で、色々なものを見せられてきたおれ達だからわかるモノが、
今感じていないか?」

(´・ω・`)「ぼくは、仲間と生きていたい。
生きて、現実世界に戻りたい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:07:06 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「ショボン…」

(´・ω・`)「僕にできるのは、中堅層を厚くして、
上に何かあった時に対応できる下地を作ることぐらいだよ。
エギルさんのサポートとしてね」

(`・ω・´)「それでいいのか?」

(´・ω・`)「もし本当にぼくにそんな能力があるとしても、
ぼくにはそれを活かす度胸も根性も無いよ。
確かに今の攻略組は色々な部分で停滞し、澱んでいるようには感じる。
でも、それをそのままにしておく人達でもないと思う。
だから戦闘以外の部分で、支えていけたらいいなとは思ってるよ」

(`・ω・´)「…わかったよ」

(´・ω・`)「そっちこそ、……どうするの?攻略組に」

(`・ω・´)「お前たちが行かないのに、行くわけないだろ。
おれは今まで通り、おまえたちのそばにいる」

(´・ω・`)「……よかった。ありがとう」

(`・ω・´)「お前達と一緒にいると楽しいからな」

にやっと笑うシャキンと同時に叩かれるドア。
そして中からの応答を聞かないで開かれる。

<_プー゚)フ「ショボン!ショボン!」

(゚、゚トソン「こんにちは」

簡素な挨拶をしつつショボンのそばに駆け寄る二人。

(´・ω・`)「二人ともこんにちは。どうしたの?」

(`・ω・´)「おまえらノックしたのは褒めてやるが、」

<_プー゚)フ「今度朝霧の洞窟に一緒に行こう!お前の指揮で攻略してみたい!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:08:31 ID:Am.mXpzk0<>
(゚、゚トソン「ぜひお願いします」

(´・ω・`)「朝霧の洞窟か。…うん。分かったよ。明後日くらいでどうかな?」

即座にウインドウを開き、予定を確認しつつ返答するショボン。

(`・ω・´)「中からの応答を確認してから開けろと」

<_プー゚)フ「よっしゃ!」

(´・ω・`)「メンバーは二人以外はどうする?」

(゚、゚トソン「お任せしますが、ドクオさんが行かれるようならハインさんが行きたいって言ってました」

(´・ω・`)「分かった。じゃあメンバーは明日には連絡するから」

(`・ω・´)「何度言ったらわかるんだこの野郎ども」

(゚、゚トソン「よろしくお願いします」

<_プー゚)フ「強くなったおれを見せてやるぜ!」

肩をまわしながら部屋を出るエクスト。
トソンは部屋を出る前にお辞儀をし、ドアを閉めた。

(´・ω・`)「エクストは相変わらずだね。
トソンはこのギルドに染まってきたかな。
……って、何泣いてるのさ」

(`;ω;´)「良いんだ良いんだ。おれの話なんて誰も聞いてないんだ」

(´・ω・`)「そんなことも無いと思うけど。
二人だってシャキンの指揮に付いていけるように自分の力を高めたくて、
ぼくと行きたいってのもその訓練の一環だろうし。
うちのギコとしぃもシャキンの指揮で戦って以来、戦い方に幅が出てきたよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:09:27 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「そ、そうか!」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「いやー。おれもそうじゃないかと思ったんだけどよ。
自分で言うのってやっぱり憚れるじゃん」

(´・ω・`)「(嘘じゃないんだけど、なんかイラっとした)」

(`・ω・´)「それにしても、ハインは相変わらずだな」

(´・ω・`)「長いよね。諦めないし」

(`・ω・´)「しかし、ドクオはなんだってああ頑ななんだ?
ちょっと暴走気味だが、ハインは良い女だと思うが」

(´・ω・`)「……ドクオにも、思うところはあるみたいだね」

(`・ω・´)「おれにも言えないことか?」

(´・ω・`)「そんなことも無いけど、憶測だよ?」

(`・ω・´)「ああ。それでいい」

(´・ω・`)「うん。そうだね…。出会いは僕も聞いた限りだけど…」





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:10:32 ID:Am.mXpzk0<>
2.愛と誠と



2023年9月
ギルドN−Sの四人は、フィールドダンジョン『常世の森』を攻略していた。

(`・ω・´)「ふん!」

シャキンの両手剣が唸り、目の前の大型猿を一刀両断する。

(´・_ゝ・`)「やらせない!」

そのシャキンの背後を狙って跳びかかった小型猿をデミタスの片手剣が打ち払い、
更にミルナの槍が追撃した。

( ゚д゚ )「周りも気にしろ!」

(`・ω・´)「前以外は任せた!」

叫びながら大型猿を更に切り裂くシャキン。

その言葉にため息をつきつつも、湧いて出た二匹の小型猿をそれぞれに攻撃するデミタスとミルナ。

ため息をつきつつも、前を突き進むシャキンを頼もしく感じ、
更にその焦りも理解している二人は懸命にサポートをしている。

(´・_ゝ・`)「あいつの実力があれば大丈夫だとは思うが」

( ゚д゚ )「蜘蛛が嫌いだとは知らなかったな」

(`・ω・´)「こっちだ!」

大型猿を片付けたシャキンがウインドウを出して仲間の位置を特定する。
エリアにして後三つ。
レベルだけで言えば単独での攻略はギリギリ。
通常であれば何とかなると思うが、苦手なタイプのモンスターが出てしまうことを考えると、
今は無事に合流できれば……とだけ、三人は願っていた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:11:58 ID:Am.mXpzk0<>
从 ゚∀从「結構やばいな」

すらっとした体に革製の防具。細みの片手剣を構えたその姿は絵画のようだ。

実力も伴っており、この層の通常の敵であれば、一対一なら負けることは無い。

はずだった。

从;゚∀从「…クモは卑怯だろ」

人よりも大きな蜘蛛。

小型の蜘蛛型モンスターとは理性で戦えたが、自分よりも大きなこのサイズだと、
理性よりも感情で身体がこわばってしまう。
先程も仲間達と一緒に相対したのだが、威嚇された瞬間に逃げ出してしまった。

よく見ると剣の切先は細かく震えており、更に足も膝が笑っていた。

从;゚∀从「…ここで死ぬのかな…」

つい一週間前に仲間になったメンバーの事を思う。、
助けに来てくれる保証など、どこにもない。
メンバー募集を見て参加して、つまり知り合って一週間。
さらに戦場を放棄して逃げ出した知り合いを助けに奥まで来てくれるだろうか。

それは彼らが薄情とかそういう事ではなく、自分の命を大事だと考えた時に、
逃げ出した知り合いを自分の身を危なくさせてまで追うかということ。
ただこの一週間で知った彼らの人の好さを考慮すれば、助けに向かってきてくれていると思う。
けれど、彼らが来てくれた時に、自分が生きていられる保証などどこにもない。

巨大蜘蛛が、自分に気が付いた。

ソロとして隠密系のスキルは鍛えていたのに、
それを使って身を隠すのを忘れているほど混乱していた。

大きな体をゆっくりと動かし、自分を見る巨大蜘蛛。

八本の毛むくじゃらの足を動かして、自分に近寄る。

从;゚∀从「よ、よ、よよ、寄るなよ…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:13:09 ID:Am.mXpzk0<>
震えが大きくなる。
頭の中では逃げなきゃと思っても、それすらも出来ないほど体が固まる。

从 ;∀从「や、やだ……。助けて……」

涙なのか恐怖なのか、目の前がかすむ。
けれど自分を見る巨大蜘蛛が牙をもった口を開けて威嚇し、
左右一番前の足を上げたのは分かった。

从 ;∀从「!!!」

死を覚悟したその瞬間、大型蜘蛛の脳天から尻まで一直線に斬撃が走った。

从 ;∀从「え?」

更にすべての足を切り落とす様に刃が襲い、
身体が落ちる前にその醜い体にも幾筋も刃の線が走った。

目の前のモンスターがポリゴンに変わる。

何事か分からず、けれど自分が助かったことだけは分かり、膝をつく。

霞む視界のなかに、自分に近寄ってくる人影を見る。

緑色のカーソルと、決して高くは無い身長。
黒いコートと、武器は片手剣。

「倒したけど、良かったか?」

高くも無く低くも無い男の声。
自分よりは年下のようだが、落ち着いたその声に心が安らぐ。

「……良かったか?」

問いかけに、慌てて頷く。

「なら良いけどよ。……一人で無理そうなら、ダンジョンはいるなよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:14:09 ID:Am.mXpzk0<>
从 ;∀从「なか、まと…はぐれ…て…」

恐怖からの解放で口までうまく回らない。

「ああ、まあ、それなら……でも…」

「おっ、おっ、あんまり攻めちゃ可哀想だお」

「……ねえ、そのギルドマークって…」

後ろにも二つの影。

声の雰囲気から、一人は男、一人は女のようだ。

从 ;∀从「あ、あり…がと……」

涙をぬぐう。

「とりあえず立って装備整えろよ。仲間の位置が分かれば送ってやるから。ブーン、ショボンに連絡しといてくれ」

( ^ω^)「わかったお。ツン、警戒宜しくだお」

ξ゚听)ξ「ん。って、私の話聞いてる?この人のギルドマークって」

拭って立ち上がろうとすると、手が差し出された。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:15:05 ID:Am.mXpzk0<>



('A`)「立てるか?」




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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:15:50 ID:Am.mXpzk0<>



从*゚∀从「は、はい…」




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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:16:52 ID:Am.mXpzk0<>
その手を握り、立ち上がる。

从*゚∀从(…超カッコいい…)

('A`)(イケメンで背も高いとか、助けなけりゃよかった)

( ^ω^)「ショボンに連絡…っと…。
(ドクオの雰囲気が禍々しいお)」

ξ#゚听)ξ「そろそろ私の言葉に耳を傾けろ」

(;^ω^)「ご、ごめんなさいだお。で、彼のギルドマークだおね。
えっと……。あれ?あのマークって…」

ξ#゚听)ξ「やっと気づいたか」

('A`)(そろそろ手を離してくれないかな。男と手をつなぐ趣味ないんだが)

从*゚∀从(やだどうしよう。視線が重なってる。もしかして彼も私の事を?)

('A`)(見れば見るほどイケメンだなこの野郎。ケッ)

从*゚∀从「あ、あの…」

('A`)「はい?(早く手を離せ)」

从*゚∀从「お名前、聞いても良いですか?」

('A`)「ん?ああ、ドクオだけど(だから手を早くだな)」

从*゚∀从「ドクオさん…。あ、わ、私はハインリッヒって言います」

('A`)「ああ、そう。(名前までイケメンかよ。クソッ。しかも自分の事を『私』とか、どんだけだよ)」

从*゚∀从「そ、それでその…」

('A`)「はい?(なんでこいつは手を離さないんだ?)」

从*゚∀从「ま、まずはその…お友達から」

(;`・ω・´)「ハイン!無事か!!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:19:00 ID:Am.mXpzk0<>
どたばたとエリアに入ってきたシャキン。
その後にミルナとデミタスも続く。

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚听)ξ「ほら。やっぱり」

(`・ω・´)「ブーンとツン?ドクオも?!」

('A`)「シャキン?」

( ゚д゚ )「どういう状況だ?」

(´・_ゝ・`)「謎だな」

从 ゚∀从「三人とも!」

とりあえずハインに近寄るシャキン達三人。

ブーンとツンも近寄る。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:19:55 ID:Am.mXpzk0<>
( ゚д゚ )「で、これはどういう状況なんだ」

('A`)「どういう状況と聞かれても…」

全員がそれぞれに全員の顔を見る。
正確にはハインだけは彼の顔しか見ていなかったが、
誰もそれには気付かない。

( ^ω^)「おっ」

ウインドウを開くブーン。

( ^ω^)「ショボンからメッセージだお。
二つ先の安全エリアで落ち合えるか聞いてきてるけど」

(`・ω・´)「ショボンもいるのか。じゃああいつにまとめさせよう」

( ゚д゚ )「(ひでえ)」

(´・_ゝ・`)「(今ここにいない奴にまとめさせるとか)」

( ^ω^)「(さすがのシャキンさんだお)」

(`・ω・´)「行くぞ行くぞ」

先頭に立って歩き始めるシャキン。
その後ろをぞろぞろと続く六人。

('A`)(で、この手はいつになったら離してもらえるんだ?)

从*゚∀从(ドクオさん…ドクオさん…ドクオさん……どっくん……)

次のエリアで戦闘になるまで、ドクオの手は繋がれたままだった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:21:06 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「じゃあ、まとめると……」

( ゚д゚ )(なに!?)

(´・_ゝ・`)(まとめただと!?)

( ^ω^)(さすがのショボンだおね)

七人が安全エリアに入ると、そこにはショボンとクー、そして流石兄弟がいた。

(´・ω・`)「ハインリッヒさんが苦手な蜘蛛に驚いてシャキン達とはぐれた後、
巨大蜘蛛と鉢合わせしてしまい、そこに僕達と別行動をしていたドクオ達三人が通りかかったから、
間一髪助けることが出来た…と」

ショボンが拡げた絨毯の上に座るギルドN−Sの四人とショボン。
他の六人は周囲に立っている。

そこで各人から簡単に話を聞いた後、ショボンが状況をまとめていた。

(`・ω・´)「なるほど。そういうことか」

('A`)「蜘蛛が苦手ねぇ。(イケメンにも苦手なものがあるってか。
女はそんなところにもギャップを感じて、そこに惹かれるのー!ってか。ケッ)」

从 ゚∀从「面目ないです」

(`・ω・´)「蜘蛛が苦手だとはな」

从 ゚∀从「…すみません」

( ゚д゚ )「謝ることは無いが、言っておいてほしかったな」

(´・_ゝ・`)「ああ、誰にでも苦手なものはある。そこをフォローしあうのもの、仲間だ」

从 ゚∀从「は、はい!」

(`・ω・´)「他にも苦手なのはあるか?」

从 ゚∀从「あー。蜘蛛が一番ですけど、基本的に足の多い虫系の生き物がちょっと…。
ちいさいのはまだ良いんですが」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:22:04 ID:Am.mXpzk0<>
( ゚д゚ )「蟻とか百足とかは戦えてたよな」

从 ゚∀从「蟻は大丈夫でしたが、百足はちょっとやばかったです」

(´・_ゝ・`)「まじか。気付かなかった」

从 ゚∀从「蜘蛛は、あの毛むくじゃらなのもダメみたいで」

照れたように頭を掻くハインに、周囲に和やかな笑いが漏れた。

('A`)(イケメンは何をやっても様になるってか)

(´・ω・`)「まあ、そこら辺はまたゆっくり話し合ってよ。
新しくメンバーが増えたら、いろいろ話したり経験を積んで分かり合わないとね」

(`・ω・´)「ああ。そうだな」

大きく頷くシャキン。
そしてドクオ達三人を見る。

(`・ω・´)「三人とも、ありがとうな」

('A`)「あ、いや」

( ^ω^)「おっおっ」

ξ゚听)ξ「改まって何よ」

(`・ω・´)「大事な仲間を救ってくれたんだ。どれだけお礼を言っても足らない。
かといって、コルや品物では失礼だ。だから」

胡坐をかいていた足を正してきれいな正座をし、そして三人に向かって腰から頭を下げるシャキン。

ミルナとデミタスもそれに倣い、ハインも慌てて同じ様に頭を下げる。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:23:15 ID:Am.mXpzk0<>
('A`;)「い、いいってシャキン」

(;^ω^)「そうだお!当たり前のことをしただけだお!」

ξ;゚听)ξ「いつか逆の立場になる時だってあるかもだし、止めて!」

(´・ω・`)「ってことだから、止めてあげてくれる?四人とも」

慌てる三人を見て、ショボンが四人を促す。

(`・ω・´)「本当に、ありがとう」

真剣な表情なまま頭を上げるシャキン。
その気配を感じて三人も頭を上げた。

(´・ω・`)「この世界では、お互い様だからね。これくらいで良しにしておこうよ」

ショボンがさらっとまとめ、笑顔で四人を見た。

(`・ω・´)

まだ何か言いたそうなシャキンを見て、更に言葉を続けるショボン。

(´・ω・`)「でも四人目を入れたの知らなかったよ」

(`・ω・´)「ああ、まだ一週間だからな。今はお試し期間だが、うまくやれていると思う」

从 ゚∀从「!ありがとうございます。……でも」

( ゚д゚ )「どうした?デミタスが変態で気持ち悪いか?」

(´・_ゝ・`)「お前の間違いだろ」

从 ゚∀从「い、いえ、その…。なんか武器に違和感を持つことがあって」

(`・ω・´)「違和感?」

从 ゚∀从「ソロの時にはそんなに感じなかったんですけど、
スイッチの時とかちょっと武器の射程距離に違和感があって」

('A`)「ああ…」

ハインの言葉に首をかしげるメンバーの中、ドクオが何か思うことがあるかのような声を漏らす。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:24:20 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「ドクオ?」

('A`)「多分、ちょっと踏み込みが浅い。もしかして、リアルの体型と今の身体、合致してないとか」

从*゚∀从「は、はい。少しだけ身長が低いというか、サイズが違う感じです」
(まだ知り合って少しなのに、そんなに私の事を見ていてくれたなんて)

('A`)「足の長さとかはキャリブレーション設定の時に適当にやるとずれることもあるみたいだから」
(足が長いと大変だよねー。おれは一生分からないだろうけどよ)

(`・ω・´)「ほぉ…」

(´・ω・`)「なるほどね…。どうしたらいいと思う?」

('A`)「そこら辺はショボンも一回見てみろよ。どうせこの後一緒に外に向かうんだろ?」

(´・ω・`)「戦闘に関してはドクオ先生には敵わないよ」

('A`)「まったくこんな時だけ。…まあ一番楽なのは有効範囲に融通が利く武器に変えることだけど、
投擲系はショボンくらいマニアじゃないと無理だから、槍とかにしてみるとか…かな。
ただ扱い的には片手剣より人によって難しくなるから、範囲の広い片手剣を選ぶのも手だけど」

川 ゚ -゚)「槍は人を選ぶのか?」

('A`)「んー。最初から使ってるとか、使ったことがあるなら別だけど。
片手剣に慣れてると、武器の射程距離は勿論持ち味が全く違うからな」

( ´_ゝ`)「そうだな。片手持ちと両手持ちでは構え、攻撃、防御、変わってくる。
慣れれば使えるようになるだろうが、それまでは大変だろう。
今まで武器は片手剣だけなのか?」

武器の話となると割り込んできた兄者。
普段と違う真面目な雰囲気にも誰も突っ込むことなく話を聞き、ハインの顔を見る。

从 ゚∀从「他には細剣を少し。槍を使ったことは無いです」

( ´_ゝ`)「おれは彼女の戦い方を見ていないから何とも言えないが、
ドクオ、武器の変更と片手剣の種類を選ぶようになるのでは、どちらがいいと思う?」

兄者の言葉を聞き、何人かが微妙な表情をした。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:25:41 ID:Am.mXpzk0<>
( ´_ゝ`)「ん?どうした?」

(´<_` )「兄者よ、それはあんまりだぞ」

( ´_ゝ`)「え?武器の変更はかなり建設的な意見だと思うが」

(´<_` )「いやいや、そこじゃなくて、『彼女』って」

( ´_ゝ`)「え?だっておにゃのこだし」

(´<_` )「兄者…。ただのロリコンだと思っていたが、男にまで手をのばしはじめたのか?」

(`・ω・´)「兄者の変態に拍車がかかったか」

( ゚д゚ )「良かったなデミタス。仲間が出来て」

(´・_ゝ・`)「おれはショタコンだから、ハインくらいの年齢は管轄外だ」

( ^ω^)「それを胸張って言えるデミタスは凄いと思うお」

(´・_ゝ・`)「それに二次とNPC専門だしな」

ξ゚听)ξ「まったくこいつらは。
で、クーはさっきから何黙って彼の事見てるのよ。
美形すぎて見惚れてる…ってわけでもないでしょう?」

川 ゚ -゚)「あ、いや、ハインリッヒさんを何かで見た覚えがあるんだが…」

ξ゚听)ξ「イケメンだし、街ですれ違ったことでもあるんじゃないの?
…クーはそんなタイプじゃないか…」

川 ゚ -゚)「うむ…」

( ´_ゝ`)「お前らこそ何を言っているんだ?
どこをどう見てもおにゃのこだろ。
確かにハインリッヒってのは男名かもしれないが」

「いやいやいやいやいやいやいや…」

兄者の言葉に苦笑いを浮かべながら否定の言葉を口にするシャキン達。

あまりの否定に兄者も顔を曇らせるが、眉間に皺を寄せつつショボンの顔を見ると、
ショボンも不思議そうな顔をしていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:26:59 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「いや、なにみんな、どうしたの?
ハインリッヒさん、誠に失礼ですが、女性で間違っておりませんよね?」

そんな表情のままハインに語りかけるショボン。

そのセリフに驚き、ハインとショボンの顔を交互に見るシャキン達。

从 ゚∀从「あ、はい。女です。よく間違われますけど」

「「「「えーーーーーーーーー!!!!??!!!」」」」

異口同音の叫びする数人。

(´・ω・`)「みんな失礼だよ。特にシャキンとミルナとデミタス。
一週間も一緒にいて」

(;`・ω・´)「い、いやだって言わなかったし」

(´・ω・`)「普通言う?『私は女です』とか。
僕は自己紹介で男ですって言ったことないけど」

(; ゚д゚ )「い、いやしかし」

(;´・_ゝ・`)「な、なんかスマン。ハイン」

从 ゚∀从「あ、いえ、間違われているかなとは思っていたんですが、
その方が円滑にいくならそれで良いかなと思ってしまい。
慣れてきたころにばれればそれはそれで良いかと思っていました。
こちらこそすみません」

慌ててハインに向かって頭をぺこぺこと下げる三人。
そしてハインも三人に頭を下げた。

(;^ω^)「ブーンも男の人かと思ってたお。ごめんなさい」

(´<_`;)「おれもだ。すまんな」

ξ;゚听)ξ「私も。ごめんなさい」

川 ゚ -゚)「私もだ。すまなかった。
しかし女性となると…。もしやあなた」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:28:06 ID:Am.mXpzk0<>
从 ゚∀从

ハインがクーに向かって笑顔を見せる。
それを見て、クーは続きを言うのを止めた。

川 ゚ -゚)

(´<_`;)「しかし、気付いていたのはショボンと兄者だけか」

( ´_ゝ`)「…おれが言っても笑ってバカにしたくせに。
ショボンが言ったら全員驚くとか」

ξ゚听)ξ「しょうがないでしょ。兄者なんだから。諦めなさい」

( ´_ゝ`)

(´<_` )「まあ、仕方ないな」

川 ゚ -゚)「ドクオはどうだったんだ?」

('A`;)「え?お、おれか?もちろんわかってたぞ」
(女!?女!?女??!え!マジで!!???
え、さっきまで手をつないでたのが女!!??
小学生の時にかーちゃんとつないで以来だぞ!!??
かーーーー。離さなきゃよかった!!!)

从*゚∀从(気付いててくれたんだ!やっぱり私の運命の人!)

('A`)「分かるに決まってるだろ。こんなきれいな人に向かって男とか。みんな失礼だな。
ごめんな。ハインリッヒさん」
(お、おれ大丈夫?!気持ち悪がられてないか!?
あ、笑っちゃダメだった!気持ち悪いって言われる!)

从*゚∀从「い、いえ、大丈夫です」
(やだ、超紳士!超クール!やっぱり私の王子様!)

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:29:11 ID:Am.mXpzk0<>
('A`)(あーやばい。女だって知ったら緊張してきた。しゃべれねー。
マジイケメンだと思ってたけど、女だと思うと超きれいな人だった。
こんな人と話すことが出来るだなんて、SAOでなきゃ一生むりだったかも)

从*゚∀从(私、見つめられてる。もしかして彼を私の事を…。
何か喋ってほしいけど、寡黙なところも素敵!その目で見つめられたらもうだめ!)

('A`)(また手を繋いでくれたりしないかなー。無理だろうなー。
この世界は汚れないから手を洗う習慣とかなくてよかった。当分の間、手、洗わないでおこ)

从*゚∀从(そんなに見つめないで!でも見て!ああ!私おかしい!!)

('A`)(あれ?……なんでこの人おれの顔じっと見てるんだろ。
そっか。また変な顔とか気持ち悪いかとか思ってんのか。
こんなきれいな人から見たら、おれなんかモンスターレベルだよな…)

从*゚∀从(ダメ―!ダメ―!ドキドキしちゃう!)

('A`)(そうだよな…。おれなんか…)

短い会話の前後で色々な思惑が交差する二人。

(´・ω・`)(なんとなく、色々な思考が交差してる気がする)

( ´_ゝ`)「ドクオはどう思う?」

気を取り直して口を開く兄者。
ハインに向かって口々に謝罪の言葉を告げていた者も、兄者を見た。

('A`)「え?あ?え?なんですか?」
(先輩ナイス!何のことか分からないけど話を振ってくれてありがとう!)

(;´_ゝ`)「ドクオ…。彼女の武器の件だけどさ」

('A`;)「あ、ああ。片手剣で続けるか、槍に持ち直すかってことですよね。
一回槍を使ってもっと低層で戦闘してみて、それで決めてもいいかと思います」

(;´_ゝ`)「とりあえずそうだな。それでなんでお前は敬語復活してんだ?」

('A`;)「あ、いや、なんかその…。なんとなく」

从*゚∀从(礼儀正しいどっくんも素敵!)

ξ゚听)ξ(あれ?…もしかして彼女はドクオの事を…。いやいや無いか、そんなこと)

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:30:45 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「しかし、うちのメンバーでは一緒に戦えても教えたりアドバイスはちょっとな…」

ちらちらとショボンを見るシャキン。

あからさまなため息をつくショボン。

(´・ω・`)「じゃあみんなで行こうか。ドクオ、特に見てあげて」

('A`)「え?!お、おれ!?」
(ショボン!?おれがおにゃのこと!?何言ってんだこの眉毛!ナイス!)

从*゚∀从「よ、よろしくおねがいします!」
(どっくんが私を見てくれる!
しょぼくれ眉さんありがとうございます!)

(´・ω・`)「他にちゃんと見られる人いないでしょ。クーと兄者もサポートしてあげて。
あと、予備の槍の持ち合わせがあったら貸してあげて」
(なんとなくだけど、失礼なことを思われているような気がする)

川 ゚ -゚)「ああ、分かった」

( ´_ゝ`)「了解した」

(`・ω・´)「すまんなショボン」

(´・ω・`)「まったく。期待したくせに」

(`・ω・´)「はっはっはっは」

ショボンが促し、座っていた者が立ち上がって準備を始める。

ショボンのそばにはシャキンが近寄り打ち合わせを始めると、
自然に幾つかの集団が出来た。

その流れから外れたドクオとハイン。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:32:20 ID:Am.mXpzk0<>
('A`)(やばい!やばい!やばい!嬉しいけどやばい!やっぱり無理!
ショボンありがとう!でもしね!いやしんじゃだめだけどしね!
どどどどどどどどうしよう!)

从*゚∀从「よ、よろしくお願いしまふ!」
(やだ!かんじゃったはずかしい!)

('A`;)「あ、、ひや、こちらこしょよろしくおねがいしあす!」
(かんだーーーーーーーーーーーはずいーーーーーーーー)

从*゚∀从(同じように噛んでくれた!なんて優しい人!大好き!)

お辞儀をしたハインに慌ててお辞儀で返すドクオ。

ξ゚听)ξ(二人して噛んでる!突っ込みたい!でも!)

川 ゚ -゚)(いろいろ突っ込みたいが、今突っ込んだら後の楽しみが半減する気がする)

ξ゚听)ξ
 (ガマン!!)
川 ゚ -゚)

(;^ω^)「ツン?クー?」

それぞれの思いを抱えながら、準備を整えて歩き出す十一人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:34:57 ID:Am.mXpzk0<>
从*゚∀从「ドクオさんは、お強いんですね」

('A`)「いや、そんなことないですよ」

从*゚∀从「あんな大きな蜘蛛も一刀両断して」
(謙遜する姿も素敵)

('A`)「あれは…。まぁ、その…」
(あー。やっぱりなんか緊張する!)

从*゚∀从「片手剣であんなことできるんですね。すごくかっこよかったです!」
(言っちゃった!言っちゃった!やだどうしよう!)

('A`)「ははは。ありがとうございます」
(受け答え、間違ってないよな!大丈夫だよな!)

从*゚∀从「その後の剣捌きとかもすごくて、かっこよくて…」
(二回も言っちゃった!ばれちゃうかな!?好きになったのばれちゃうかな!?)

('A`)「ははは。剣技(ソードスキル)っすからね」
(そうだよなー。剣だけだよなー。この人も今から教わるから持ち上げてるんだろうな)

从*゚∀从「そんなことないですよ!流れるような剣でした!格好良かったです!」
(見た目もカッコいいけど、言われ慣れてるだろうからこっちで!

('A`)「ははは…」
(剣は…ね)

从*゚∀从「私も頑張ります!だから、いろいろ教えてください!」
(教えてもらえるときは会える!)

('A`)「そうですねー。VIPとN−Sは合同でクエストやったりもしますし」
(あーはいはい。教えてあげますよ。それくらいしか取りえないっすからね)

从*゚∀从「よろしくお願いします!ドクオさん!」
(やった!また会える!)

('A`)「…ハインリッヒさんは、なんでN−Sに入ったんですか?」
(なんか辛くなってきた。話変えよ)

从*゚∀从「あ、ドクオさん、良ければ『ハイン』って呼び捨てで呼んでください。
教えてもらってる時もその方が指示を貰えやすいと思いますし」
(今日の私は責める!彼女いるのかな。いるよね。でももしいなかった時のために!)

('A`)「ああ、じゃあハインって呼ばせてもらいますね」
(所詮ゲームネームじゃ、おれに呼び捨てにされても良いってか)

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:35:51 ID:Am.mXpzk0<>
从*゚∀从「はい!」
(やった!呼び捨てゲット!一緒にいた二人のどっちかが彼女かな。
ツインテールがそうかな。でもドックンを好きな気持ちではきっと負けない!
過ごした時間が足りないなら、これから頑張る!)

('A`)「じゃあ俺の事もドクオで良いっすよ」
(ゲームネームなら呼べるだろ。ケッ)

从*゚∀从「え!?そ、そんな…無理です……」
(むりむりむりむりむりむりむりむり…。呼び捨てなんて恥ずかしすぎる!
それに金髪ツインテールが名前で呼んでたし!同じじゃダメ!彼女と一緒とかダメ!)

('A`)「あーはい」
(ゲームネームでもおれの名前なんて呼びたくないってか!)

从*゚∀从「あ、あの、あだ名で呼んでも良いですか?」
(私だけの呼び方で新密度UP!)

('A`)「ああ、いいっすよ」
(…ゾウリムシとか言い出すのかな。もう何でもいいよ)

从*゚∀从「じゃ、じゃあ……どっくん」
(呼んじゃった!呼んじゃった!恥ずかしい!!!)

('A`;)「ふぇ!?」
(ふぇ!?)

「「「「「 ふぇ !!?? 」」」」」

照れるハイン。
変な返事をしてしまうドクオ。
聞き耳を立てていて、変な声を出してしまうメンバー。

先頭を歩くショボンは、小さくため息を吐いた。





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:36:58 ID:Am.mXpzk0<>
4.心の比重と揺れる心と



(`・ω・´)「あの後ドクオをドックンと呼ぶのが流行ったよな」

(´・ω・`)「ハインが本気でドクオとツンが付き合ってると思っていたことにはびっくりしたよ」

(`・ω・´)「……ツンの怒りが激しすぎて引いた覚えがある」

(´・ω・`)「あれはね……」

思わずお互いの顔を見て苦笑いを浮かべる二人。

(`・ω・´)「で、ドクオがそんなふうに感じていたのは分かったが、それはドクオから聞いたのか?」

(´・ω・`)「うん。ドクオがフリーなのを知ってハインが本気のアプローチをしてきて、
そのアプローチが本気だと知ったドクオが動揺しまくってね。
戦闘にも影響してたから聞き出した」

(`・ω・´)「あらら」

(´・ω・`)「ブーンもいたから、二人で付き合えば良いって言ったんだけど、無理だって」

(`・ω・´)「なんでだ?」

(´・ω・`)「美女と野獣過ぎてきついってさ」

(`・ω・´)「なんだそりゃ」

少しだけ不愉快そうに言葉を詰まらせるシャキン。

(`・ω・´)「いろいろと謎な部分はあるが、ハインは本気だぞ。
そんな見た目なことで断っているとは…。あいつを見損ないそうだ」

(´・ω・`)「もちろん、建前だよ」

(`・ω・´)「?」

(´・ω・`)「このゲームをクリアするまで、色恋とか考えられないんだと思う。
っていうか、僕達が現実世界に戻るまで…僕達を現実世界に戻すまで……ね」

(`・ω・´)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:38:37 ID:Am.mXpzk0<>
悲しそうに話すショボン。
シャキンはその表情と口にされた内容に、息をのんだ。

(`・ω・´)「そうか…」

(´・ω・`)「誘ったことを、まだ気にしているんだろうね。
この世界に来たのは、自分達の意思だっていうのに」

(`・ω・´)「おまえは、人のことは言えないだろ?」

(´・ω・`)「……今は良いじゃん、それはさ。
それに僕は、ドクオ程応用効かなくないよ」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「怖いんだとも思う。僕ら…。ブーン、ツン、クー、そして…僕。
自惚れじゃなく、ドクオにとってこの四人は一番大事な友達なんだよ。
もちろん他のメンバーも大事な友達だけど、やっぱりさ。
でも、ハインを好きになってきている自分がいて、そんな自分が怖いんだと思う。
いや、嫌い…なのかもしれない」

(`・ω・´)「どういう事だ?」

(´・ω・`)「ぼくら以上に好きな人を、大事な人を作ってしまうのが、怖いんじゃないかな。
そして、そんな自分が許せない。嫌い。
ドクオなら例え恋人が出来たって恋愛脳になる様なキャラじゃないから、大丈夫だと思うんだけど」

最後はおどけた様に肩をすくめて話す。
けれどその表情はやはり悲しげで、シャキンの心は痛んだ。

(´・ω・`)「でも、少しずつだけど折り合いをつけ始めているような気がするんだ。
二人でクエストとか採取に行ったりしているみたいだしね。
……大事なものが増えるのは、良いことだよ。きっと。
ドクオなら、その分慎重になってくれるはずだから」

(`・ω・´)「……この先に期待だな」

(´・ω・`)「うん。そうだね」

最後に心からの笑顔を見せるショボン。
シャキンは、それを見て心の中で安堵の吐息を漏らした。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:39:47 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)(こいつの方も色々とどうにかしてやりたいが……)

(´・ω・`)「どうしたの?じっと見て」

(`・ω・´)「いや、なんでもない」

(´・ω・`)?

再び部屋がノックされる。

(`・ω・´)「誰だ―?」

( ゚д゚ )「おれだー」

(´・_ゝ・`)「いるー」

(`・ω・´)「いいぞー」

ドアが開き、ミルナとデミタスが中に入ってくる。

( ゚д゚ )「ショボンがいると聞いたんだが…」

(`・ω・´)「流石にお前たちはちゃんと返事を聞くな」

(´・_ゝ・`)「ショボンがいると聞いたからな」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「ミルナ、デミタス、こんにちは」

( ゚д゚ )「おう」

(´・_ゝ・`)「だな」

(´・ω・`)「ぼくに何か?」

(´・_ゝ・`)「エクストとトソンから朝霧の探索の件を依頼されたと思うんだが…」

(´・ω・`)「うん。OKしたけど不味かった?」

( ゚д゚ )「いや、それはありがたいんだが、いくらぐらいかかる?」

(´・ω・`)「へ?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:41:25 ID:Am.mXpzk0<>
( ゚д゚ )「こちらから依頼したんだから、費用が掛かるだろ?」

(´・ω・`)「ああ、他のギルドや個人から依頼されたら請求はするけど、
ここから取るつもりはないよ?」

(´・_ゝ・`)「いや、取ってくれないか」

(´・ω・`)「何故?」

( ゚д゚ )「おまえとシャキンが血縁ってことで最初から仲良くさせてもらってるし、
いろいろ便宜を図ってもらっているが、あの二人はそれに慣れ過ぎてしまったように思える」

(´・_ゝ・`)「VIPはサポートや教育を生業にしているところもある以上、
そこら辺の線引きはちゃんとしておいたほうが良いと思うんだ」

( ゚д゚ )「この前血縁だってことを知って以来、
ギルド同志が親密にしているのを普通の事だと思っている節もあるから、
そこら辺も一度締めておこうと思ってな」

(´・ω・`)「んーーー。出来ればみんなとはギルドの垣根無くいたいから、別に良いんだけど…」

(`・ω・´)「だが、一つのギルドではない」

(´・ω・`)「シャキン…」

(`・ω・´)「特に今回はお前に戦闘の指揮をしてもらいたいという明確な意思もあるからな。
一度あいつらにガツンとしておいたほうが良いか」

( ゚д゚ )「お前が言うなだが、おまえは言ってもいいのか」

(´・_ゝ・`)「一応このギルドのマスターだし、ショボンと血縁なのもこいつだし。
なんとなく納得は出来んが」

(`・ω・´)「……結構ちゃんとしたこと言ったつもりなんだけど」

( ゚д゚ )「へこむなへこむな。冗談だから」

(´・_ゝ・`)「おまえがギルマスだから、おれ達は集まってきたわけだしな」

(*`・ω・´)「そ、そうか?そうだよな。てへへへへっへへ」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:42:30 ID:Am.mXpzk0<>
( ゚д゚ )(うぜぇ…)

(´・_ゝ・`)(うざいな)

(´・ω・`)「……言いたいことと趣旨は分かったけど、やっぱやだ」

( ゚д゚ )「どうしてだ?」

(´・ω・`)「みんなとは、そういうの無しの繋がりでいたい。
確かにギルドは分かれているけど、みんなのことも大事だと思ってるから。
今までだってギルドの統合の話はあったけど、
その都度一つのギルドになることよりも二つのギルドでいる戦略性を
選ばせてもらったのは僕とシャキンだけど、
心の中では一つのギルドだと思ってるんだ。
二人にはぼくからも話すけど、今まで通り他のギルドや組織が絡まない時には、
そういうの無しでやりたい。
……だめかな?」

( ゚д゚ )「いや、分かった」

(´・_ゝ・`)「分かったか?二人とも」

ショボンの言葉を聞いてにやりと笑った二人。
そしてほんの少し開けておいたドアに向かって声をかける。

「「はい」」

返事と共に中に入るエクストとトソン。

(´・ω・`)「二人とも策士だね」

( ゚д゚ )「いや、おまえには負けるさ」

<_プー゚)フ「確かに甘えてました。すみませんっした」

(゚、゚トソン「そんなつもりはなかったのですが、気付かないうちに甘えていたと思います。
申し訳ありませんでした」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:44:03 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「いや気にしないで。
二人の事も、同じギルドのメンバーだと思ってるからさ。
僕にできる範疇の事なら、言ってほしい。
その分僕も無茶を言えるし、戦闘時の指揮も容赦なく出来るしね」

<_プー゚;)フ「き、気を付けます」

(゚、゚;トソン「お手柔らかにお願いします」

( ゚д゚ )「やっぱり一枚上手だったか」

(´・_ゝ・`)「そうだな」

にっこりほほ笑んだショボン。
冷や汗を垂らすトソンとエクスト。
ミルナとデミタスは少し悔しそうに笑い、シャキンはそんな五人を見て笑った。





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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:45:22 ID:Am.mXpzk0<>
5.嘘と誠と



(`・ω・´)「いろいろスマンな、うちの奴らが」

(´・ω・`)「ミルナとデミタスは色々と気を使ってくれていいよね」

(`・ω・´)「お前のところだって使ってくれてるだろ」

(´・ω・`)「まあねー。でもギルド運営とか戦闘パターンとか、そういうのは基本自由気ままだから。
ミルナとデミタスはそこら辺もサポートしてくれているんでしょ?」

(`・ω・´)「ああ。だがギルドの件はお前に任せておけば良いし、
戦闘もドクオと兄者が見てお前がまとめればそれが一番だからだろ」

(´・ω・`)「本当は色々意見も聞きたいんだけど…ってどうしたの。
変な顔して」

(`・ω・´)「ミルナとデミタスが色々言ってくれるのって、おれが頼りないからか?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:46:27 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:47:12 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:48:12 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:49:00 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)

(`・ω・´)

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:50:41 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「えっと……」

(`・ω・´)「慰めはいらない」

(´・ω・`)「はい」

(`;ω;´)「おれ、もっとがんばる」

(´・ω・`)「シャキンは今のままでいいと思うけどね。
もともと今のシャキンを知ってからギルドになったわけだし。
うちとはギルドが出来た経緯が違うんだからさ」

(`・ω・´)「そうか?そうだよな。うん、そうだ」

(´・ω・`)(このパターンも短い間に何回もやられると飽きるよね)

(`・ω・´)「しかし血縁と言えば、しぃちゃんに会った時は驚いたな」

(;´・ω・`)「いきなり話題を持ってくるよね。確かにあれは驚いたけど」

(`・ω・´)「いきなり『兄弟ですか?』だからな」

(´・ω・`)「ふつうこういうゲームの中では、
リアルの世界関連の事柄は言わぬが花ってところがあると思うんだけど。
思わずギルド外の人に言われた時用の『他人』『友達』ってのを強調しちゃったから、
あのあとこっそり血縁だってことを話して、注意はしておいたよ」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:51:48 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「知られてまずいことはないが、
どんな弊害が出るかは分からないからな」

(´・ω・`)「そういう割にはミルナ達に紹介してくれる時に最初っから血縁だって話してくれたよね」

(;`・ω・´)「あ、あれだな、あれ」

(´・ω・`)「あれ?」

(`・ω・´)「あの子の中では、この世界ももう現実世界と同じなんだろ」

(´・ω・`)「そう…だね」

(`・ω・´)「ああ」

(´・ω・`)「でも冷静にこの世界と現実世界を見つめているところもあるんだよ」

(`・ω・´)「そうなのか?」

(´・ω・`)「うん。実はさ…」




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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:53:43 ID:Am.mXpzk0<>
6.現実と事実と



2024年4月

ギルドVIP執務室。
ショボンが一人机に向かっている。

目の前にはいくつかのウインドウが開いているが、
どちらかと言う机の上の書類を中心に見ていた。

すると、ドアがノックされた。

(´・ω・`)「はい」

(*゚ー゚)「しぃです。今大丈夫ですか?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ」

(*゚ー゚)「お邪魔します。あ、すぐすみますからそのままで」

ドアが開かれる。
目の前のウインドウを消しつつ執務机の前から移動しようとしたショボンを止めるしぃ。
しぃの後ろにはギコも居た。

(,,゚Д゚)「お邪魔します」

(´・ω・`)「二人ともお疲れ様。しぃ、今日はお店の方はどうだった?」

(*゚ー゚)「順調です。今日から出してるメニューも好評でしたよ」

(´・ω・`)「それは良かった」

(*゚ー゚)「データは夜の分とまとめますね。今日のランチも持ってきました」

(´・ω・`)「!ありがとう。食べるの忘れてたよ」

しぃが籐で出来たようなバスケットを胸の位置で掲げるのを見て、嬉しそうにお礼を言うショボン。
そして書類を机の端に寄せた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:55:54 ID:Am.mXpzk0<>
机の上に置かれるバスケット。

(*゚ー゚)「どうぞ」

(´・ω・`)「うん。話の後でいただくよ。で?二人でどうしたの?」

(*゚ー゚)「あ、やっぱり話があるって分かります?」

(´・ω・`)「わざわざ二人で来られればねー。悪い話で無いのを祈るばかりだよ」

(*゚ー゚)「ちょっとめんどくさい話です」

(´・ω・`)「しぃがそう言うってことは本当になかなか手をこまねく内容なんだろうね。
聞くのが怖いなー」

(*゚ー゚)「ショボンさんなら大丈夫ですよ」

(;´・ω・`)「ほんとに怖いんだけど」

おびえるように眉をひそめたショボンを見て笑顔を見せるしぃ。
ギコはその後ろで挙動不審に目線を部屋のあちこちに飛ばしている。

(´・ω・`)「じゃ、なんだろう。身構えて聞こうかな」

(*゚ー゚)「はい、お願いします」

しぃがウインドウを開き操作すると、ショボンの視界の隅にメッセージ到着シグナルが現れた。

(´・ω・`)「ん?」

(*゚ー゚)「開けてください」

(;´・ω・`)「えっと…本気で怖いな」

ウインドウを出すショボン。そしてメッセージを開く。

(´・ω・`)「!え、これって…え?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:57:12 ID:Am.mXpzk0<>
(,,゚Д゚)「お、おれとしぃの本名と住んでるところだゴルァ」

(´・ω・`)「う、うん。二人の名前と、それぞれの住所が書いてある。…ね。
ど、どういうこと?」

(,,゚Д゚)「しぃと話し合ったんだゴルァ。
リアルに戻ってから、また会いたいからショボンに二人のデータを教えておこうって」

(´・ω・`)「ギコ……しぃ……」

(*゚ー゚)「重荷だと思いますが、よろしくお願いします」

(,,゚Д゚)「頼むぞゴルァ」

(´・ω・`)「頼むって言われても…」

真剣な顔のギコ。
柔和な笑顔を見せるしぃ。
そんな二人を交互に見ながら、珍しく本当に情けない顔を見せるショボン。
その表情は困惑と喜びから来たものだった。

(*゚ー゚)「ギルマスとして、リアルでもちゃんと呼んでくださいね」

(,,゚Д゚)「頼んだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「ショボンさんから連絡が来る前に私達が先にショボンさん達に連絡できたら、
ペナルティですよ」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」

(´・ω・`)「ぼくの本名も渡しておこうかな」

(*゚ー゚)「いえ、それは大丈夫です」

(;´・ω・`)「え?ここで拒絶!?」

(*゚ー゚)「だって教えてもらってたら、私達から連絡出来ちゃうじゃないですか。
ギルマスとして、探してきてください。逃げたりしませんから」

(,,゚Д゚)「でもこちらも探す努力はするから、おれらが先に見付けることが出来たら罰ゲームだぞ」

(´・ω・`)「……ひどいな。二人とも」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 20:58:11 ID:Am.mXpzk0<>
(*゚ー゚)「私達をこのギルドに入れた以上、これくらいしてもらわないと」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ」

(*゚ー゚)「後悔しました?」

(´・ω・`)「する分け無いよ。二人と仲間になれて良かった。
二人を誘った僕の目は間違ってなかったって、改めて思うよ」

(*゚ー゚)「物凄い自画自賛ですね。さすがショボンさんです」

(,,゚Д゚)「おれ達もこのギルドに入れて嬉しいぞゴラァ」

三人が、三様の笑顔を見せた。





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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:00:02 ID:Am.mXpzk0<>
7.見せかけと真意と



(`・ω・´)「それは……」

(´・ω・`)「すごいよね。二人とも。まさかそういった行動に出るとは思わなかったよ」

(`・ω・´)「すごいな、彼女は」

(´・ω・`)「で、二人がそれをしたのが広まって、
次の日のうちに全員から本名と所在地が送られてきた」

(`・ω・´)「ハハハハッハハ」

(´・ω・`)「しかも全員『ショボンの名前とかいらないから。ヨロシク』だって」

(`・ω・´)「さすがVIP、統制が取れてるな!」

(´・ω・`)「嬉しいけど大変だよまったく」

ため息を吐くショボン。
しかしその表情はどこか嬉しげで、けれどどこか寂しそうだった

(`・ω・´)「…ショボン?なにか引っかかってるのか?」

(´・ω・`)「うん…。しぃの、多分真意がね」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「彼女は、かなり聡明だよ。
多分ぼく達五人が…僕にはシャキンが、それに兄者と弟者もリアルで繋がっていることを知って、
自分が独りだってことを改めて感じたんだと思う」

(`・ω・´)「独り?いや、ギコも居るしお前達だって」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:01:30 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「うん。アインクラッドで彼女は一人じゃない。
でも、リアルの世界とのつながりは無いんだよ。
独りなんだ。
生きて帰れればいいけど、もしも死んでしまったら、それで終わり。
自分がこの世界で生きてきたことを、生き抜いたことを、リアルの誰にも知らせることは出来ない」

(`・ω・´)!

(´・ω・`)「もし僕が死んでもドクオやブーンが生き残ってくれれば、
その生きた証を父さんたちに伝えてくれると思う。
多分、彼女はそれを考えている。だから僕に依頼したんじゃないかな。
多分……だけどね」

(`・ω・´)「聡い子だな」

(´・ω・`)「うん。
おそらくだけど、モナーやクックル、モララーあたりはしぃの真意に気付いているだろうね。
そして自分達の事も教えてきたんだと思う」

(`・ω・´)「…おまえが、
自分の命に代えても自分達を守ろうとしてくれていることを、
分かっているんだな」

(´・ω・`)「………そんな良いもんじゃないけどね。
僕も、自分のエゴのために頑張っているだけだし。
それにそんな重いことはしたくないから、
絶対にみんなが生き残ることが出来るようにする。
ギルドの全員が生き残れるように。
僕はその為なら何でもやる。
…………そう。なんでもね。
その為なら泥水もすする。
僕一人なら手も染める。
………誰に後ろ指を指されても気にはしない」

(`・ω・´)「ショボン……」

(´・ω・`)「きっと、シャキンだって僕と同じ気持ちだと思うよ!
だから、シャキンの事を宜しく頼むね!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:03:10 ID:Am.mXpzk0<>
「……わかった」

「ん……」

どこから聞こえる二つの男の声。
そしてほんの少しだけずれていたドアが動き、カチャリと閉まる音がした。

(`・ω・´)「外で聞いてるやつがいるのにどこまで何を話すつもりなのかと思ったが、そういうことか」

(´・ω・`)「さっき入ってきたとき少し違和感を感じたんだ。
で、出て行ったあとドアがほんの少しだけ閉まっていなかった。
この部屋はうちと同じで完全防音仕様だけど、ドアが少しでも開いていたら外から聞けるからね」

(`・ω・´)「しかしなんだって盗み聞きなんてことをあいつらは…」

(´・ω・`)「珍しく長くぼくが居るから、心配だったのかな。
シャキンが独りで何かを抱え込むんじゃないかって」

(`・ω・´)「おれ、そんなに信用ないのか?」

(´・ω・`)「逆だよ。自分達を守るために一人で何かを抱え込んだりしてしまうんじゃないかって
思ったんじゃないかな」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「心配だったんだよ。シャキンの事が」

(`・ω・´)「だが、おまえを」

(´・ω・`)「ぼくの事も心配だったと思う。
……ぼくがシャキンにこんな話をしていることを知っているのは、二人だけだからね。
だから、シャキンが独走しないように、ぼくが迷走しないように、
知ろうとしてくれてるんじゃないかな」

(`・ω・´)「そうなら良いが…」

(´・ω・`)「あの二人とモナーとクックルは仲良いしね。
多分それなりに互いのギルドの情報交換はしていると思うよ」

(`・ω・´)「それは知ってるが」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:04:32 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「あと、気付いているでしょ?クックルの事」

(`・ω・´)「実はちゃんと喋れるってことか?」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「ま、そりゃ。気付くさ」

(´・ω・`)「でも、知らないふりをしていてくれる。
と言うよりも、彼を心配し、彼が声を出せないことを周囲に分かる様にしてくれている」

(`・ω・´)「お前が何か企んでるってことは分かるからな」

(´・ω・`)「あの二人もそうしてくれている。
頭が下がる思いだよ。
僕もあの二人をあの二人が思っている以上に信用し信頼しているけど、
いつかちゃんとお礼を言わなきゃだね」

(`・ω・´)「あの二人が照れながら慌てる姿が見られるってことだな」

笑う二人。
無邪気な笑顔はこの二人は本当によく似ていた。

(´・ω・`)「さて、そろそろ帰ろうかな」

ひとしきり笑った後、ショボンが大きく伸びをした。

(`・ω・´)「なんだ、もう帰るのか?夕飯作って行けよ」

(´・ω・`)「そこ、ふつう『夕飯食べて行けよ』じゃないの」

(`・ω・´)「だってお前が作った方がうまいし」

(´・ω・`)「まったく。だいたいこのギルドホームの台所って使ってるの?」

(`・ω・´)「たまにトソンが」

(´・ω・`)「トソンが入る前は」

(`・ω・´)「……」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:07:34 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「まったく」

(`・ω・´)「うちのギルドは生産系じゃないから良いんだよ」

(´・ω・`)「攻略組の中にも料理スキルを上げている人がいるって噂があるけどね」

(`・ω・´)「噂だろ、噂」

(´・ω・`)「まったくもう」

(`・ω・´)「作ってけよー。食材は買ってくるからさー」

(´・ω・`)「食べに来ればいいでしょ」

(`・ω・´)「えーー。だってさーー」

(´・ω・`)「食材は用意してくるようにね。
あと、店の方じゃなくてリビングの方で。
ついでに朝霧の洞窟の話もしよう」

(`・ω・´)「わかった。奴らに連絡しておく」

ウインドウを出してメッセージを打つシャキン。
ショボンはその姿をじっと見ている。

(`・ω・´)「ん?どうした?」

(´・ω・`)「なんでもない」

(`・ω・´)「変なやつだな…。よし、これでよしと。さて、夕食までまだ間があるから、まだいるだろ?」

(´・ω・`)「良いけど…なんか話でもあるの?」

ウインドウを消して真っすぐにショボンの目を見るシャキン。

(`・ω・´)「実はな、今日呼んだのはこれが本題と言っても良い」

真剣な顔でショボンを見るシャキン。
怪訝に思いショボンが口を開こうとしたその瞬間、
シャキンが言葉をつづけた。
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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:09:18 ID:Am.mXpzk0<>



(`・ω・´)「おまえは、いつまで殺人ギルドであるラフコフのやつらと接触しているつもりなんだ?」





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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:13:59 ID:Am.mXpzk0<>


(´・ω・`)



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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:15:57 ID:Am.mXpzk0<>
ストレートなシャキンの物言いに、思わず返答できないでいるショボン。
それは彼にとっては珍しいことだった。

(`・ω・´)「いつからかは聞かん。いつまでつながっているつもりだ?」

(´・ω・`)「何を…言っているの…と言いたいところだけど、無駄なんだろうね」

(`・ω・´)「何故かの見当はついている。だが、それにしても…」

(´・ω・`)「情報のソースはアルゴさんかな?でも、何故繋がっているかまで突き止めていたとは」

(`・ω・´)「彼女から聞いたのはお前がPoH達三人と接触していたことぐらいだ。
あとは経験からくる想像だが、間違っているとは思わん」

(´・ω・`)「間違っているかもよ?」

(`・ω・´)「報酬はギルドVIPとN−Sのメンバーの命。及び他のレッドギルドの情報ってところか。
対価は…ツンとブーンとクー。あとは兄者と弟者ってところか?」

(´・ω・`)「……すごいね」

(`・ω・´)「ラフコフには一度、4人で狩りに行った際に遭遇したことがある。
おそらくは首領のPoHとその他7人。
後から調べたら、その時近くのフィールドダンジョンで大量虐殺があったらしいから、
その流れだろうな」

(´・ω・`)「……効率の良い限定クエストの噂に騙された人達を殺しまくった…」

(`・ω・´)「ああ、それだ。
その時に居たのはハインまでの四人。
ちょうどハインがドクオに惚れた少し後の頃だな」

その事件を思い出し、顔を曇らせたショボン。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:17:54 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「おれ達を見て奴らは笑いながら武器を構えた。
おれは何とかして三人を逃がすことを考えた時、
奥にいたフードを被った奴が合図を出して、
そいつらは森の中に消えた。
あのフードが、首領のPoHだったんだろうな。
命が助かったことに、心底ホッとした。
三人も、身体がこわばっていた。
『人』から与えられる殺意がこれほどまでにキツイとは、思わなかった。
逃げるように街に戻り、近くの宿屋に入って、やっと落ち着いた。
そこで、思った。何故逃がしてもらえたのか。
その答えが、ついこの前、やっとわかったわけだ」

(´・ω・`)

(`・ω・´)「何故、ラフィン・コフィン、殺人ギルドと手を組んだ?」

(#´・ω・`)「手を組んでなどいない!」

(#`・ω・´)「だがそう思われても仕方ない状態じゃないのか!?」

(´・ω・`)「手なんか…組んでない…人を殺す手伝いなんて…していない…」

(`・ω・´)「人はそうは思わない。
…ラフコフの補給線。
なんだろ?」

(´ ω `)「……食事と、装備と服、POT関係。それらを時々渡しているだけだよ」

(`・ω・´)「…それを、手を組んでいると」

(#´・ω・`)「違う!僕たちの命を守るためだ!それしかなかったんだ!」

(`・ω・´)「おれはそれを信じられる。それが真実なんだろう。
おまえはおれに嘘は言わないから。
隠し事はあっても。
だが、他の者がそれを信じると思うのか?」

(´ ω `)「……さっき、…言ったよね。
何でもするって。
誰に後ろ指を指されても気にしないって」

(`・ω・´)「……ミルナやデミタス、ハインにも?」

(;´ ω `)!

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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:19:33 ID:Am.mXpzk0<>
膝の上で手を強く握って身体を固めていたショボン。
しかしシャキンの言葉に動揺して身体を震わせた。

(`・ω・´)「ギコやしぃは知っているのか?」

(´ ω `)「……話してはいない」

(`・ω・´)「モナー、クックル、モララー、フサギコ…」

(´ ω `)「話してはいないけど、多分知ってる…」

(`・ω・´)「良いのか?」

(´ ω `)「彼らが、みんなが生きていてくれるなら、僕はそれでいい。
その先で何が待ち受けていても、みんなが生きて、笑っていてくれるなら」

(`・ω・´)「ショボン……」

(´ ω `)「軽蔑…する?」

(`・ω・´)「いいや。しない。
でも、心から思うよ。
やっぱりお前がうちの会社を継ぐべきだって」

(´ ω `)「なにこんな時にそんなこと」

(`・ω・´)「祥大、気付いてないのか?
今のお前のが言っているのは、じいちゃんそっくりだって。
自分の手の中にいる者は命に代えても守るって、あれに」

(´ ω `)「似てなんかないよ」

(`・ω・´)「頑固なところもそっくりだ」

(´ ω `)「…ばかだな…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:20:23 ID:Am.mXpzk0<>
(`・ω・´)「で、話してみろ。なぜこうなったのかを」

(´・ω・`)「え?」

(`・ω・´)「話してみろ。いくらなんでもお前が自分からあいつらに関わったとは思えない」

(´・ω・`)「……志也兄さん……」

(`・ω・´)「話せ」

(´・ω・`)「!!」

(`・ω・´)「は、な、せ。」

(´・ω・`)「…………………あれは」





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◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:21:41 ID:Am.mXpzk0<>
8.死への誘いと生への渇望と



2023年7月

フィールドダンジョン『常夜の森』
鬱蒼と茂る木々。
空(実際は次のフロアの底なのだが、ほとんどの者は『空』と呼んだ)を隠す程に高くそびえ立ち、
横に広く葉を生い茂る木々。
鬱蒼と茂る草花は人の背の高さを超え、視界を邪魔している。

昼の時間さえ闇が支配するその森に、彼らはいた。

( ´_ゝ`)「弟者、逃げろ」

今流石兄弟は、オレンジプレーヤーを含む7人のプレーヤーに囲まれ、
その場を動けずにいた。

(´<_`;)「出来るわけないだろう!」

( ´_ゝ`)「何とかしておれが隙を作る。その間を縫え」

(´<_`;)「だから出来る訳がないと言っているだろう!
大体この状況でどうやって!」

( ´_ゝ`)「この前覚えたあの技を使う」

(´<_`;)「ば、馬鹿野郎!
あの技は確かに全方位に有効だが、
その後の硬直を考えれば今この場で使える訳が」

( ´_ゝ`)「だが、やらねば二人とも死ぬ。
おまえだけでも生き抜くんだ」

(´<_`;)「兄者…」

小声で周囲に聞こえない様に話す二人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:23:06 ID:Am.mXpzk0<>
兄者の声は緊張に満ち、表情は厳しい。
弟者は兄者の言葉に反発しつつも理性的な反論をすることが出来ず、
ただ感情的に言葉を荒げるだけだった。

(´<_`;)「みんなを待とう。それまで二人で戦えば」

( ´_ゝ`)「もうすでにおれ達のHPはイエローだ。
POTを飲む隙も与えてもらえない今、反撃しても結果は目に見ている。
おまえだってわかっているだろう?」

(XX)「なにを 話して、いる」

(JB)「同じ顔した二人。片方だけでも生かしてやる?」

(XX)「二人の 殺しあいを、みせてもらう か」

( ´_ゝ`)「ふっ。どうせその後で残った方を殺すんだろ」

(XX)「   ばれて るか」

(JB)「ね、ヘッド。もうやっていい?」

髑髏のマスクをつけた赤目の男と黒いマスクを被った男に詰め寄られ、
武器を構えながらも後ずさりする兄者と弟者。

しかし周囲を数人のマスクを被った男に囲われており、
それほど後ろには下がれない。

(XX)「もう、良い だろ?」

(  )

骸骨マスクと黒マスクが意識を向けた先にいる、フードの男。
大きなフードを深くかぶっているため顔は分からない。
おそらくは顔を隠すためにマスクも被っていると思われるが、
そんなことを考える余裕などなく、兄者と弟者は更に体を強張らせ、
それでも必死に武器を構えている。

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/09(日) 21:24:33 ID:Am.mXpzk0<>
(JB)「ヘッド、何考えてるの?」

集団の中では上位にいると思われる髑髏のマスクと黒いマスクの男。
その二人がさらに指示を仰ごうとするフードの男。

兄者と弟者の力量ならば、この輪を瞬間的に破ることはおそらくできる。
前に髑髏と黒マスクとフードの男の三人、
左右に一人ずつ、後ろに二人。
これくらいの人数ならば、隙間を作り逃げることが。
そしてそれは先ほど兄者が提案したような自らを犠牲にするようなやり方ではなく、
二人で逃げることを、生き続けることを選んだとしても。

だが二人はその行動を選ぶ気にはなれなかった。
髑髏のマスク、黒マスク、この二人は確かに強いと思われる。
でも本気で逃げようとすれば、戦えば隙を作ることは可能な様に思える。

しかしその後ろのフードの男。

こいつの手からは逃げられない。

そんな気がしてしまっていた。

特に兄者は初対面のはずのこの男の恐ろしさを、何故か知っているような気がした。

感じる圧力、前の二人や周囲から浴びせられる殺気とはまた違う、
恐ろしいほどのプレッシャー。
いつか、似たような何かを感じたことがあるような気がしていた。

弟者よりも冷静にこの場を観察できたのは、
弟者を守るという決意とともに、その経験によってなのかもしれない。

兄者自身はそこまで冷静に状況分析をしているわけではなかったが。

(´<_`;)「あ、兄者…」

( ´_ゝ`)「おれの言うとおりにしろ、弟者。
それに、死ぬと決まったわけじゃない。
あいつらがすぐ来るかもしれないしな」

前の三人を見据えたまま自嘲気味に笑う兄者。
口の端を少しだけ上げただけだったが、
弟者にはそれが『笑い』であると理解できた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:25:57 ID:Am.mXpzk0<>
自らの言葉がおそらくは実現しないであろうという嘲り。
そして弟者は分かってしまう。
自分の兄が、自分を守るために自分の命を捨てる覚悟をしたことを。
そして弟者は知っていた。
自分の兄が、一度決めたことをそう簡単に覆そうとはしないことを。

(´<_` )「兄者……」

おそらくは、自分が何をしても兄者はあの技を繰り出す。
自分を中心に衝撃波を生む剣技を。
その衝撃波によってできた隙を縫って、自分は外に飛び出す。
そして……。

(´<_` )「わかった」

( ´_ゝ`)「…おまえは、生きろ」

弟者の決意を感じ、構えを取る兄者。

剣技の発動には、所定の構えを取る必要がある。
何度も練習し、何度も実践に使えば技の発動までの時間を短縮することは出来るが、
覚えたばかりの技ではそうはいかない。

(XX)「技の 発動」

(JB)「ハンマー系は覚えてないや」

両手持ちのハンマーを頭上に掲げた兄者。
最初は淡い青色に発光しだしたが、すぐに濃い青に変わる。

(#´_ゝ`)「うりゃあああああああああ!!!!!」

それはまさに渾身の一撃。

叫びながら跳躍し、振りかざしたハンマーを落下の勢いのままに振り下ろす。

本来ならば敵に当ててHPを削りつつ周囲の敵に衝撃波を与える技だが、
今回は前にいる三人を狙うふりをしながら地面を叩きつけた。

それは剣技による相殺を避け、確実に衝撃波を相手に与えるための策。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:27:17 ID:Am.mXpzk0<>
だから視線はあくまでも敵に、今回はこの一団のボスであろう、フードの男に視線を向けて。

兄者の放った技はハンマー系武器の固有剣技。
個別の攻撃と共に周囲に衝撃波を放つことが出来る技である。
威力は高く、衝撃波を受けた敵は硬直を起こすため、
使い方次第では戦況を変えることの出来る重要な技であった。

だがその威力・能力の分剣技後の硬直も長めに設定されていた。
特に覚えたばかりで技の熟練度も低い今は硬直時間が最大であった。

それでも技をしっかりと当てることが出来れば敵に与えた硬直と相殺できる設定ではある。

そう、敵に当てることが出来れば。

(:´_ゝ`)「行け弟者!!!!」

地面を叩きつける数瞬前、兄者の視界から三人は消えていた。
それはこの技を予期していた証拠。
自分の企みが、すべて見抜かれていた証拠。
自分の技が見抜かれたこと、フードの男を狙っていないこと。
地面に当たった瞬間に輪の様に広がる衝撃波から逃れるための行動。
身体能力を高めている高位プレイヤーだからできる行動。
おそらくほんの少しの予備動作で、衝撃波の届かない空高く飛びあがっているであろう三人。

己の死を覚悟しつつ、今は術の発動と共に同じようにジャンプして逃げた最愛の弟を思う。

しかし耳に届いた唸り声に、深い悲しみを覚えた。

(´<_`#)「うりゃあああああああああ!!!!!」

困惑しつつ硬直時間でも動かせる首から上を最大限に動かして声のした方向を見る。

逃げたはずの弟が、斧を構えていた。

上空に飛んでいるフードの男と黒マスクの男を見ながら、斧を構える弟者。
斜め右下から左上に一撃目を放つ剣技を使い、飛んだ二人を一度に切るつもりなのだろう。

そう、「二人」を。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:28:29 ID:Am.mXpzk0<>
(XX)「残念」

七人のうち、雑魚の四人は衝撃波で飛ばした。
フードと黒マスクの二人はジャンプして避けた。
最後の一人、骸骨マスクは後方に飛んだあとに繰り出した剣技によって衝撃波を防御していた。

そしておそらくは防御後に一撃繰り出すことの出来るであろう剣技に沿って、
その細い剣を、細剣とはまた違う幅を狭くした細く薄い剣によって、
無防備な弟者の脇腹を突き刺していた。

(´<_`;)「っ!!」

技をキャンセルさせられた場合も硬直は起きる。
無防備な状態の弟者を更に追撃することなど、容易なはずだった。

しかし骸骨マスクはそうはしなかった。

(XX)「今のは 仕方ない。剣技の 流れ だから。それに まだ 殺してない」

攻撃を許可しなかったフードの男に言い訳じみたことを言っている。
しかしフードの男は返答しなかった。
それを許されたと判断した骸骨マスクの男。

そして三人が兄者と弟者の前にさっきと同じように立つ。

衝撃波を受けて倒れていた四人も復活し、苛立ちと殺気を隠そうともせず武器を構えている。

ただ一つ変わったのは、弟者のHP。
赤く変わったそれを、兄者は凝視した後弟者を見た。

(´<_`;)「逃げられるわけ、無いじゃないか」

弟者の狙いは分かった。
兄者の企みがうまくいった場合は、三人を通常の武器による追撃によってさらに大きな隙を作り、
兄者を抱えてでも逃げるつもりだったのであろう。
考えられた最悪の状況により三人が上空に逃げた場合は自分の剣技によって三人を追撃し、
できた小さな隙によって、けれど硬直から回復しているであろう兄者を連れて逃げるつもりだった。

だが実際は更に最悪な状況だった。
剣技による衝撃波の相殺と追撃による自身の負傷。

それは弟者の読みの浅さが招いた結果と言うには酷ではあるが、
そうとしか見えないのも事実であった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:29:42 ID:Am.mXpzk0<>
(´<_`;)「……すまない…兄者…」

( ´_ゝ`)「おれも想定外だった…」

とうとう八方塞を感じた兄者にとって、そうとしか言えない状況だった。

必死で逃げる方法を考えるが、暗闇の中だった。

唯一の光明は、何故かまだ自分達が生きていること。
本来ならばもう殺されていてもおかしくないのに、なぜか生きている。

光明ではあるが、理由が分からない以上すがることは出来ない。

兄者は、最近は仲間に、ギルマスに任せてしまっていることに、一歩踏み出した。

( ´_ゝ`)「で、何が目的なんだ?」

(XX)「殺したい だけ」

(JB)「もっと楽しみたいけど、これくらいで終わりかな」

( ´_ゝ`)「おまえらはそうでも、そいつは違うだろ」

『生きるために情報を引き出す』

自分よりも達者な者がいるならばそのものに任せてしまうという
兄者の悪い癖が出て最近はすべてショボンに任せているが、
兄者自身はこの作業は嫌いではなかった。
画面上、短いセンテンスの受け答えと相手の取った行動でその真意を測る。
MMORPGのプレイヤーとして行ってきたこと。
兄者はそれが苦手ではなかった。
得意であるとは言わないが、大きく外れたことは無かった。
ショボンの様に相手の顔色や仕草から読み取ることは苦手だが、
今の相手はマスクを着けていて顔が分からないから、画面と同じ。
そう思うことにより、口を開く。

( ´_ゝ`)「殺人ギルド、『Laughing Coffin』。
何が狙いだ」

兄者は変人だが、馬鹿ではない。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:31:10 ID:Am.mXpzk0<>
変態だが、考えることを放棄したりしない。

思考と観察力だけならば、ギルドでもトップクラスである。

ギルドの中でその事に正しく気付いているのは実の弟とギルドマスターだけだとしても。

( ´_ゝ`)「ギルドマスターの『PoH』!!
何とか言え!」

フードの男が笑ったような気がした。

( ´_ゝ`)?

(´<_` )?

そして弟者は兄には劣るものの思考能力を持ち、
更にそれを埋めて余りある誠実さと思慮深さ、
正しい方向への行動力を持っていた。

兄者が思いついたことに対する瞬発力だとすれば、
弟者は考え抜いたことに対する持久力。

兄者の言葉から何を考えているのかを見抜き、
おそらくは兄が見逃してしまうような全体の雰囲気に気を配っていた。

それにより、弟者は斧を再び振り上げた。

(´<_`#)「おりゃああああああああ!!!」

それは絶叫。
斧を振り上げたまま空間を震わせるような雄叫びをあげる。

(;´_ゝ`)「弟者!?」

隣にいる仲間の狼狽した声に触発され、
思わず全員が弟者を見た瞬間、青い突風が吹いた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:32:31 ID:Am.mXpzk0<>
(  )

(XX)!

(JB)!

反応できた三人は流石だろう。

トップスピードで突撃してきたブーンの片手剣を、PoHは極端に少ない動作で避け、
髑髏とマスクはその場で自分の武器を使ってはじいた。

もともとブーンには三人を傷付けるつもりはなかったため、そのまま兄弟の周囲を駆ける。

周囲にいた者を牽制するブーンの片手剣。
三人以外は後方に数歩避けた。

そして周囲の視線をブーンが引き寄せた時、髑髏と黒マスクにドクオの片手剣が襲い掛かる。
死角から放たれたその攻撃すらも二人は自らの武器で防御したが、
流石に今度は後方に飛んだ。

そしてそれを見逃すことなく、できた隙間に向かって走り出す兄者と弟者。
その後ろをブーンが追い、髑髏とマスクを動かすことに成功したドクオの横に立って武器を構えた。
兄者と弟者もその後ろで武器を構える。

( ^ω^)「間に合ってよかったお」

( ´_ゝ`)「すまない。二人とも」

(´<_` )「助かった」

('A`)「安心するのはこの場から離れた後だな」

ドクオの言葉に気を引き締める三人。

そのまま逃げることも出来たように思えるが、
背中を見せないほうが良いという指示により、
四体七での対峙という図式が出来上がった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:35:18 ID:Am.mXpzk0<>
(JB)「……よくもやってくれたね」

(XX)「二人がかりの 奇襲とは いえ 俺達を だしぬいた」

自分達の後ろに悠然と構えているPoHを感じつつ、
余裕を持ったふりをしながら武器を構える。

その前にブーンの威嚇で簡単に動いてしまっていた四人が立つ。

(XX)「邪魔。退け」

しかしすぐに髑髏マスクの男が左右に追い払った。

情報よりも強くしたたかだった同じ顔の二人。
情報以上に強いと思われる追加の二人。
確実に殺すためには、快楽を得るためには四人は邪魔だと考えていた。

もう一人、黒マスクの男は同じことを思いつつも、違うことに考えを向けていた。

(JB)「まだ、いるよね」

先に集めた情報から、突進してきた男が素早いことは理解している。
そしてもう一人の黒ずくめの男が、戦闘では飛びぬけている事も分かっている。
だが、もう一つのピースが、欠けていた。

(  )

それに他にも仲間はこの場にくるだろうと思い口にした言葉だったが、
それを聞いた、自分が崇拝する、
心酔していると言ってもよい男が、
笑ったように感じた。

(JB)?

その真意がつかめず、
振り返りたいが目の前の標的から目を離すことも出来ず、
ただ武器を構える黒マスクの男。

しかしその対峙は長く続かなかった。

醜態を見せてしまった四人が、
耐え切れずに剣を振り上げて突進した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:39:24 ID:Am.mXpzk0<>
(;^ω^)!

('A`;)!

(;´_ゝ`)!

(´<_`;)!

それはブーン達四人にとっても意外な行動であり、
反射的に武器を向ける。

(XX)

(JB)

そしてそれは骸骨と黒マスクの二人にとっては好機。
自分が彼らの意識から外れたのが分かった二人は、
武器を構えて一歩踏み出そうとした。

しかしそれは出来なかった。

いつの間にか視界の隅に映る右手。
それは自分達の支配者の手。
その手は自分達が動くことを望んでいないことが、
今までの経験から分かったから。

(XX)!

(JB)!

そして目の前に起きた出来事に、驚きを隠せなくなる。

獲物であるブーン達に向かって襲い掛かった四人の手下が突然倒れたのだ。

視線だけで状況を確認する骸骨と黒マスクの男。
その目には、四人の首に刺ささるナイフが映った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:40:26 ID:Am.mXpzk0<>
麻痺属性の毒を付加させてあったようで、
四人の黄色に変わったHPバーの上には黄色い稲妻のようなマークが点滅している。

獲物であるはずの四人は再び自分達に向かって武器を向けている。
前の二人が苦しそうな顔をしているように見えた。

(XX)「………何が 起きた」

(JB)「投擲?」

情報で読んだ投擲使いの存在。
今ここにに欠けていたそれを思い出し、黒マスクが呟く。

(´・ω・`)「これ以上、戦う意味は無いと思うけど。
今ならだれも死なないで済む」

四人の後ろから、頭の上に浮かぶカーソルをオレンジにしたショボンが現れた。

( ^ω^)「」

('A`)「」

( ´_ゝ`)「」

(´<_`;)「」

(´・ω・`)「僕達は、ここにいる誰一人として死ぬことは望まない」

そのまま仲間達の前に立つショボン。
倒れた四人を気にすることも無く、前にいる三人、
いや、フードの男をじっと見る。

再びフードの男が笑った気がした。

(JB)「ヘッド?」

(XX)?

フードと男がウインドウを出すが、数度操作をするとすぐに消し、踵を返す。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:41:53 ID:Am.mXpzk0<>
(JB)「ヘッド!?」

(XX)「殺らないのか!?」

立ち去ろうとするフードの男を追いかけるように振り返る二人。

その視線の先で男は立ち止まり、右手の親指だけを折り、指を振った。
指先は、地面に向けて。

(XX)「…チッ」

(JB)「分かった」

三人が視線を外したその数瞬の間に、ショボンの指示により四人は後ずさっていた。
しかし、ショボンはその位置を動かない。

再び振り返る髑髏と黒マスクの男。
その手の武器が、あやしく光ったような気がした。

(´・ω・`)「………」

髑髏の男がまず動く。

(;^ω^)「ショ!」

しかし髑髏の男の武器は地に倒れた仲間の身体を貫いた。

「!!!!」

麻痺状態は、意識がなくなるわけではない。
自分の身に何が起きたのかを認識し、
視界の隅の自分のヒットポイントバーの光が減るさまをただ見つめる。

一人の男が、薄いガラスが砕ける様な音と共にポリゴンと化した。

(´<_`;)「な!なにを!」

(;^ω^)「仲間を!?」

ショボンの周りを髑髏の男が更に走り、剣で地に倒れた男たちを切り刻む。

(´・ω・`)「……こいつらに、そんな意識があるもんか」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:43:33 ID:Am.mXpzk0<>
聞こえないほど小さな声で呟いたショボン。

そしてその言葉通りに、髑髏の男が三人を、黒マスクの男が一人をポリゴンと変えた。

( ´_ゝ`)「…………」

('A`)

(´<_`;)「……」

(#^ω^)「ひどいお…」

一歩踏み出そうとするブーンを止めるドクオと兄者の手。
怒りに我を忘れそうになったその思考を、ギリギリのところで踏み止まらせた。

('A`)「落ち着け」

( ´_ゝ`)「あいつの覚悟を無駄にするな」

拳を握る二人の震える手。
ブーンの前にはいつの間にか弟者が立ち、その手の斧は大地を突き刺していた。

(´<_`#)

震える肩が、その思いを物語るようだ

( ^ω^)「みんな…」

(XX)「…チッ」

(JB)「よく訓練されてる。六人も殺れるかと思ったのにな」

動かない五人をつまらなそうに一瞥してから後ろを向く二人。
そしてまるで散歩をするかのような軽い足取りで去って行った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:45:07 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)

('A`)

( ´_ゝ`)

(´<_`#)

(#^ω^)

黙ってその後ろ姿を見送っていた五人。
そして三人の姿が消え、頭上のカーソルも消えた。

すると茂みからクーが現れた。

川 ゚ -゚)「みんな、…大丈夫か?」

(´・ω・`)「うん。大丈夫だよ」

クーにしては珍しく。
といっても彼女をよく知っていなければわからない程度だが、
どこか怯えた様に声をかける。
それにショボンが返すと、四人の緊張も少しだけ緩くなった。

('A`)「クーが来てたんだな」

川 ゚ -゚)「ああ。ツンが追いかけようとしたがショボンが止めた。
それで私が来た。ツンはジョルジュ達と少し前の安全エリアにいるはずだ。
……来なくて正解だった。
ツンならあの瞬間飛び出していただろう」

武器を持たない左手で、自分の身体を抱くようなしぐさを見せるクー。
少し震えていた。

ここにいる六人は、見たことが無かったわけではない。

人が、ポリゴンに変わる瞬間を。

けれどそれはモンスターとの戦闘でのことで、
今見たような人同士の殺し合い、いや、虐殺ではなかった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:46:06 ID:Am.mXpzk0<>
クーが飛び出さなかったのはツンより正義感が劣るわけではない。
ただその瞬間を見た衝撃により、身体の前に心が凍ってしまっただけだった。

そして、彼女よりはショボンの背中を長く見ていたからだった。

川 ゚ -゚)「大丈夫か?ショボン」

(´・ω・`)「僕は、大丈夫」

いつもと変わらないその表情に、逆に違和感を感じつつ、口を開くのを止めてただ頷いた。

四人もそのやり取りを見て、自分の心を落ち着かせようとする。

(´・ω・`)「とりあえずみんなと合流しよう。
はぐれないように気を付けて進むよ。
ブーン、ドクオ、先頭を宜しく。
クーはその後ろで地図を開いて道案内を。待ってる皆には僕が連絡を入れておくよ。
続いて兄者と弟者。
しんがりは僕が務めるよ。
ドクオ、ブーン、あとでアライアンス回復用のクエスト、手伝って」

ショボンに頼まれ、ドクオとブーンが快諾する。
兄者と弟者もやると言い出し、
当たり前の様にクーがこの後の予定に自分を含めて組み込んだ。

いつも通りのショボンに安心しつつ、言われた通りの陣形で進み始める五人。

一歩遅れて歩き始めたショボンは、ツン達にメッセージを送りながら、
ついさっき届いたメッセージに目を通した。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:48:17 ID:Am.mXpzk0<>



二日後。
深夜。

真夜中でも、プレイヤーがいなくはならない。

同じ場所でも時間の経過で現れるモンスターが変わるため狩りに出るプレイヤーは多く、
またそのプレイヤー目当ての生産系職業を選択したプレイヤーも数多く活動している。

しかし最前線でもなく低層でもないフロアの特色の少ない街などには、
やはりプレイヤーの数は少なく、夜ともなれば静けさが街を包み込む。

(´・ω・`)

ホームでもないその街の公園に、ショボンはいた。

大きくも小さくも無く特徴も無い噴水を見ながら、
背凭れのあるベンチに座っている。

そして二つのタンブラーを取り出すと、一つを自分の右横に置き、手に持った一つに口を付けた。

三人は余裕をもって座れるベンチの中央に座っているショボン。

そしてもう一口啜ってから、横に置いたタンブラーと今持っていたタンブラーを交換した。

そして今手に持っているタンブラーに、口をつけた。

(  )「うまい」

それは闇から浮かび上がった人影。

ショボンの右斜め後方、背凭れに背を向けて、少しだけ寄りかかるように立っている。

その手には、いつの間にかベンチに置かれたタンブラーが持たれていた。

(´・ω・`)「……ありがとう」

褒められたことに対して形だけの謝辞を伝える。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:49:23 ID:Am.mXpzk0<>
(  )「自分で淹れたのか?」

(´・ω・`)「もちろん」

たわいもない会話。

こんな夜中にわざわざ待ち合わせてする必要もない他愛もない会話。

一見緊張感も無いだらだらとした会話。

そしてその空気を一変させたのは、ショボンだった。

(´・ω・`)「で、何の用?」

その一言で、空気が変わる。

(  )「わかっているだろう?」

二人とも口調は変わらない。
けれど空気は変わった。

(´・ω・`)「分かる訳が無い」

ショボンの言葉は、氷のように冷たい。

(´・ω・`)「だいたい、僕を目の前に引きずり出すためだけに、
メッセージを送るためだけにあんなことをする。
更に仲間を四人も簡単に殺すような奴の考えることなんて、
分かる訳がない。
…………分かりたくもない」

(  )「『ギルドV.I.P』のギルマスはモンスターの動きを読むと聞いた。
そして戦略家で、中小ギルドのギルマスでいさせるのは惜しいという噂だ」

そんな冷たさを全く意に反さず、軽く返したフードの男の声は重く響く。

(´・ω・`)「自分の事をモンスターと同列に扱うのは勝手だけど、
あいにくと僕の目は節穴らしくてね、プレイヤーにしか見えないよ。
少なくとも見た目は」

そしてショボンもその重さを受け流し、何とか自分のペースに持っていくための言葉を紡ぐ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:50:50 ID:Am.mXpzk0<>
(  )「お前の姿が人に見えている以上、俺の姿が人に見えるのは当然だな」

どこか面白そうに言葉を返すフードの男。

二人は視線を合わさない。
互いに百八十度逆側を見ている。

しかし意識はお互いと周囲に向けられていた。

(´・ω・`)「申し訳ないけど、僕は明日も早いんだ。
用があるのなら、さっさと言ってもらいたい」

まるで痺れを切らしたかのように、言葉早に話題を変えて返答を促すショボン。

(  )「切り替えの早さも想像以上だ」

(´・ω・`)「……早く言ったら」

(  )「ふっ…」

吐息のように一息吐き出すフードとの男。
それは笑ったようにも聞こえ、ほんの少しだがショボンの心に波を起こす。

(  )「おまえは、俺と同じ。こちら側の人間だ」

そして唐突に放たれた言葉。
それは先ほどほんの少しだけ揺らめいたショボンの心の水面を、
大きく波立たせた。

(  )「仲間を壁にしてナイフを敵に突き刺す冷酷さ。
剣を囮にして相手の油断を誘い、投擲のナイフを急所に突き立てる度胸と技能。
目の前で人が消えても表情一つ変えないその胆力。
自分が手を汚すことに躊躇しない豪胆さ。
すべてが物語っている」

(´ ω `)「………」

(  )「おまえは、守る側じゃない。殺す側だ」

フードの男の声はショボンに重く響く。
けして押し付けるような重さではなく、包み込むようなバリトンの音。
声は音と化し、ショボンを包む。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:52:44 ID:Am.mXpzk0<>
(  )「こちら側に来い。
おまえの本質は、そんな場所よりもこちらの方が活かされる」

それは悪魔の誘い。
言葉だけを理解し反応するのであれば一笑に付すことの出来る様な内容。

だがフードの男の声はそれを許さない。

心の奥を揺さぶり、思考の隙間を縫うように染み渡る。

自分でも感じていた自分の冷酷さ。
『敵』に対して、たとえ仲間を守るためとはいえどこまでも残酷になる自分。
『仲間』以外の『敵』が目の前でポリゴンに変わった時、
仲間が息を飲むのを背後で感じながらもまったく動じなかった自分の心への恐怖。

それらすべてをフードの男は知っていて、分かっていて、自分を認めてくれているという錯覚。

それは心を揺れ動かすには充分な錯覚だった。

しかしショボンはそこで踏み止まった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:53:38 ID:Am.mXpzk0<>



(´・ω・`)「僕は友達を守る」





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:54:44 ID:Am.mXpzk0<>
ブーンの顔が、
ドクオの顔が、
ツンとクーの顔が、
流石兄弟の顔が、
ジョルジュ、フサギコ、モナー、ビーグル、クックルの顔が、
心に浮かんでは消え、
自分の心を支えてくれるのが分かる。

(´・ω・`)「今の僕は、そのために生き、その為に考え、動いている」

心の中で澱んだフードの男の声を、洗い流す様に。

(´・ω・`)「『敵』を殺すために生きているんじゃない。
『人』を殺すことに喜びも感じていない」

ゆっくりと、確実に、自分を取り戻す。

(´・ω・`)「彼らと共に生きたい。ただ、それだけ。
確かにその為にならどんなこともするけれど、
その為以外の事で、誰かを殺すことなんてしたくない。
殺さずに済むのなら、殺さないで済ませたい」

立ち上がり、振り返るショボン。
鋭い視線で、フードの男の後ろ姿を見る。

(´・ω・`)「だから僕は、そっちにはいかない」




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:56:42 ID:Am.mXpzk0<>



フードとの男が動いたのは、どれくらい経ってからだろう。

ショボンの視線に射抜かれていることを感じつつ、
動かないでいた男。

数秒のような、数分のような、数十分の様な沈黙と止まった空気。

そして男は肩を震わせた。

(´・ω・`)?

(  )

声を立てずに笑う男。

それは傍から見て笑っていることが分かるように意識した肩と身体の揺れ。

その芝居がかった動きに一瞬心奪われるが、すぐに手の中に隠れるナイフを装備するショボン。

(  )「あの男ほどではないが、おまえも面白い」

身体の演技はそのままに、乾いた声で呟く男。

(  )「圏内で武器を構えても仕方ないだろう?」

(´・ω・`)

答えずに、ただナイフをいつでも投げられるようにする。

(  )「食料と、POT。あと武器と防具、装備もだ」

(´・ω・`)?

(  )「必要なものは、追って連絡させる」

(´・ω・`)「何を言って…」

(  )「断るのなら、おまえのギルドのメンバーを一人ずつ殺す」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 21:59:02 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)!

(  )「対価として、お前達ギルドは狙わない。殺さない。
だが断るのなら、一人ずつ殺していく。
おまえは殺さない」

(´・ω・`)「……対価はギルド『V.I.P』、およびギルド『N−S』全メンバーを狙わないという保証。
それはお前たちが手に入れた、他のレッドプレイヤーの情報も含まれる」

(  )!

(´・ω・`)「メンバーの誰かがプレイヤーに殺された時、
僕は君たちを疑う。
それは君にとっても本意ではないはず」

(  )

男の肩が揺れる。
それは先ほどの様な演技ではなかった。

(  )「本当に、おまえは面白い」

腕を振った男の前に現れたウインドウ。
そして数回操作をして、消した。

(  )「うまかった」

振り返ることなくタンブラーをベンチの上に戻し、歩き出す男。

ショボンは目の前に現れたウインドウに、軽く舌打ちした。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 22:00:13 ID:Am.mXpzk0<>


【「PoH」さんからフレンド申請が来ています】

【YES】 【NO】



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 22:02:23 ID:Am.mXpzk0<>
忌々しげにYESを触るショボン。

フードの男。
殺人ギルド『Laughing Coffin』ギルドマスター。
アインクラッド最強最悪のレッドプレイヤー。
『PoH』

その後ろ姿が、闇に溶けて消えた。









.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 22:05:40 ID:Am.mXpzk0<>
すみません。30分ほど席を外します。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/09(日) 22:10:02 ID:2L2DNo0g0<>支援
久々に更新連打して待つくらい楽しんだわ…
と思ったらまだ更新あるんですか!やったー!<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 22:57:30 ID:Am.mXpzk0<>支援ありがとうございます。

それでは、再開します。





焼肉食べたい。<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:01:22 ID:Am.mXpzk0<>
7.君とボクと



2024年5月

ギルドV.I.P.のホームで開かれた食事会は、二時間ほど前に終了していた。
二ギルド合同で行うことが決定した『朝霧の洞窟』の探索は、
パーティーを三つに分けて最終的にゲットしたアイテムの数とレア度で優劣を競うイベントとなり、
久し振りのお祭りイベントの決定に、メンバーも楽しげだった。

そしてここは人気のない公園。

40層のホームから転移門を使用して移動してきた彼は、
三人掛けのベンチに座った。

ストレージからタンブラーを二つ取り出すと、
一つを右横に置き、もう一つに口を付けた。

公園の暗がり。
街灯の陰から現れる一つの影。

フードを被って顔を隠したその影がベンチに近寄り、タンブラーを手に取る。

そしてそのままタンブラーの有った場所に座った。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:02:33 ID:Am.mXpzk0<>
('A`)「おせえよ。自分で指定しておいて」

(´・ω・`)「…時間通りだよね?」

('A`)「お前の事だから早く来ると思って、二十分も待っちまった」

(´・ω・`)「ちゃんと時間書いたのに」

( ^ω^)「おっおっお!ぎりぎりセーフだお!」

('A`)「アウトだボケ」

( ^ω^)「すまんこ、すまんこ。道に迷っちゃったんだお」

(´・ω・`)「転移門のある公園からまっすぐ一直線なのに」

( ^ω^)「おっおっお」

風のように駆けてきたブーンが逆側に座り、にこやかに話す。
彼が来ただけで場の空気が和むのは、昔からだった。

自然とドクオとショボンの顔も柔らかくなる。

ショボンから差し出されたタンブラーを手にするブーン。

口を付け、ニッコリと微笑んだ。

( ^ω^)「今日のも美味しいお」

(´・ω・`)「ありがと」

('A`)「まったくこいつは」

( ^ω^)「三人で話すのも久しぶりだおね」

('A`)「…そういや、そうか?ん?」

(´・ω・`)「そうだね。三人だけってのは久し振りかも」

ブーンの言葉に考え込む二人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:04:31 ID:Am.mXpzk0<>
('A`)「……へたすりゃ、一年以上前か?」

(´・ω・`)「そうだね。ここ一年は必ず他の人がいたかも」

( ^ω^)「学校帰りはいつも三人だったのに、懐かしいお」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「だなー。よくバーボンハウスに寄ったよな。
シャキンさんが謎のお菓子出してくれて」

( ^ω^)「今やバーボンハウスと言えばショボンやフサの店ってイメージだから、
すごく不思議な気分だお」

('A`)「店の名前をバーボンハウスにしたのは、
シャキンさんと会えるかもってことだったしな」

(´・ω・`)「うん。ギルド名は学校名。
店は兄さんの店の名前にして、
耳に入った時に、目にした時に近くに寄ってきてもらうためだから」

('A`)「学校の方は結局おれ達だけだったけど、
バーボンハウスの方は狙いが当たったな」

( ^ω^)「会えて良かったお」

(´・ω・`)「うん」

言葉少なげな友の顔を両サイドから訝しげに見るドクオとブーン。

その視線を感じつつ、ショボンが口を開く。

(´・ω・`)「今日さ、N−Sのホームで、兄さんに怒られちゃった」

('A`)「あー」

( ^ω^)「おー」

ショボンの言葉に、納得する二人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:05:40 ID:Am.mXpzk0<>
( ^ω^)「ショボンは昔からシャキンさんには弱かったおね」

('A`)「っていうかショボンをちゃんと叱れたのって、
小父さん小母さん以外だとシャキンさんくらいだったよな」

( ^ω^)「中学の時の真鍋先生」

('A`)「いたなー。重箱の隅をつつこうとして返り討ちにあったバカ。
新卒だったのにすぐ辞めちゃった」

( ^ω^)「小学校の音楽の…」

('A`)「雪下のババア!いたいた!」

( ^ω^)「ショボンにやり込められたのを見た時は胸がすっとしたお」

('A`)「あの腹黒ババアにはみんな辟易してたからな」

( ^ω^)「コンビニの店長とか」

('A`)「マルエイスーパーのクソおやじも」

( ^ω^)「ゲーセンで絡んできた大学生」

('A`)「最終的には涙目になってたな」

( ^ω^)「スクランブル交差点の角の駐在」

('A`)「映画見に行くときにのったバスの運転手」

( ^ω^)「駅前で話しかけてきた宗教の人」

('A`)「市営体育館の受付のじじい」

(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと二人とも」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「なんだお?」

(;´・ω・`)「僕、そんなになんかした?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:06:58 ID:Am.mXpzk0<>
('A`)「自覚無いとか」

( ^ω^)「大丈夫だお。だいたい理不尽なことを言い出した人に言い返していただけだお」

('A`)「ああ、そんな感じだな」

( ^ω^)「だいたい」

('A`)「だいたい」

(´・ω・`)「なんか釈然としない」

一瞬の沈黙の後、噴き出して笑いあう三人。

大声ではないが少し声を上げて、楽しそうな笑顔を見せる。

('A`)「というか、だいたいおれとかブーンが目を付けられてなんか言われて、
それに対してショボンが怒るって図式だな」

( ^ω^)「嬉しかったお」

('A`)「だいたいだけどな」

( ^ω^)「だいたいだお」

(´・ω・`)「だいたい『だいたい』って言いすぎだよ二人ともだいたい」

笑顔のまま、それでも少し困った様に眉を下げて止めようとするショボン。
それでまた笑う二人。

そして笑顔のままドクオが疑問を口にした

('A`)「で、なんで叱られたんだ?」

(´・ω・`)「…ラフコフの事がばれた」

/<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:08:06 ID:Am.mXpzk0<>
空気が止まり、慌てて周囲を見回すドクオとブーン。

(´・ω・`)「大丈夫だよ。周囲に人はいないから。二人だって、とも来る時に見てきたでしょ?」

('A`)「念には念をだ」

(;^ω^)「……」

ため息を吐くドクオ。
ブーンは緊張した面持ちでショボンの顔を見る。

(;^ω^)「ショボン…」

(´・ω・`)「うん。アルゴさん経由だって」

(;^ω^)「おー。僕のせいだおね」

(´・ω・`)「アルゴさんへのリークは僕がギルマスとして決めたことだよ。
少し早い気もするけど、シャキンに知られてしまうのも想定内だし」

(;^ω^)「おー。でも…」

('A`)「でもでも言っても仕方ない。
で、どうするんだ?」

(´・ω・`)「どうするって?」

('A`)「シャキンに叱られて、切るのか?」

(´・ω・`)「そんなことをしたら、全員を守る自信は無いよ」

('A`)「だが、俺達は強くなったぞ。仲間も増えた」

(´・ω・`)「僕達全員が生き残れる確信。
彼ら全員を殺すか牢獄へ送る自信。
そんなものが無い限り、そんなことはすべきではない。
そしてそんな確信も自身も僕は持てないよ」

('A`)「……」

( ^ω^)「じゃあ…」

(´・ω・`)「うん。とりあえずこのままでいこう」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:09:40 ID:Am.mXpzk0<>
('A`)「アルゴはどうする?
これ以上このことを外に触れ回るようでは…」

(´・ω・`)「アルゴさんにはこれまで通り僕達を疑い、見張ってもらう。
あと、別に情報を誰これ構わず売っているわけではないよ。彼女は。
シャキンに流したのは、おそらくシャキンが最初に何かを掴んで…なんだと思う」

('A`)「そっか…。
うん。そうだな。それが良いか。
あいつなら攻略組へのパイプも太いし、もしもの時には…」

( ^ω^)「エギルさんとは仲良くさせてもらってるお」

('A`)「ああ、斧使いで雑貨屋の。店やりながら攻略組、しかもタンクってすごいよな」

( ^ω^)「その上私財を使って中層プレーヤーの育成もしてるお」

(´・ω・`)「そうだね。僕達もそのお手伝いをさせてもらってるわけだし」

( ^ω^)「お、そうだったお。
ショボン、エギルさんが一回ゆっくり話したいって言ってたお」

(´・ω・`)「そうなの?じゃあ今度店に行ってみようかな」

( ^ω^)「昨日メッセージが来てて。
僕とは道具屋つながりで何度も会ってるけど、ショボンとも一度ちゃんと話をしてみたいって」

(´・ω・`)「そうだね。
ちゃんと話したのは育成の概略を決めた時で、それ以降は実務レベルの話ばかりだし。
っていうか、フレンド登録はしてるんだからメッセージで直接言ってくれればいいのに」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「え?なにその沈黙」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:10:42 ID:Am.mXpzk0<>
( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「ふたりとも?」

( ^ω^)「………」

('A`)「………」

(´・ω・`)「どうしたの?」

( ^ω^)「………そりゃあ」

('A`)「………やっぱり」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「………稀代の」

('A`)「………戦略家様だし」

( ^ω^)「敷居が…」ブフォッ

('A`)「高いんじゃ」グフッ

(;´・ω・`)「ここでそのネタ引っ張る!?
そして笑うなら言わないで!」

笑い出す二人。
そしてショボンも笑顔になり、三人を柔らかい空気が包んだ。





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:13:25 ID:Am.mXpzk0<>
8.キミと僕と



2023年7月

PoHが去った公園に、一人佇むショボン。

近くの木陰で、影が揺らめいた。

(´・ω・`)「追わなくて正解だよ。
君は『VIP』でも『N−S』でもないから、殺されていた」

ベンチの上のタンブラーをしまいつつショボンが呟く。

「そうみたいね。居ることには気付いていたみたいだし」

どこからか聞こえる声。

「でも、よかったの?」

(´・ω・`)「とりあえずは、あいつの口車に乗るよ。
実際僕は『脅された』わけだしね」

「いや、そうじゃなくて、これを見てたのがあたしだけだってこと」

(´・ω・`)「きみに、見ておいてほしかったんだ。
多分、この世界で、僕をよく知りつつ赤の他人である君にね。
何事にもとらわれない、客観的な立場で」

「赤の他人とか、酷いなー」

(´・ω・`)「実際そうでしょ。あの時から、あんなに引き留めたのに、独りで動いているんだから」

「それを言われると痛いけどねー」

(´・ω・`)「……皆とは、会ってる?」

「ブーンの店に買い物には行くよ。その時ツンとかクーとかには時々会うかな。
他人のふり、知らないふりをお互いしてるけど。
あ、アルルッカバー君にも時々会うよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:16:37 ID:Am.mXpzk0<>
(´・ω・`)「そうなんだ。顔をみて元気そうなのが分かればみんなも嬉しいよ」

「ショボン君も?」

(´・ω・`)「もちろん」

「うれしいなー」

(´・ω・`)「はいはい。……気を付けてね。
君が集めてきてくれる情報にはいつも助かっているけど、心配だよ」

「……ありがとう」

(´・ω・`)「まだ、ギルドに入る気にはなれない?」

「…………」

(´・ω・`)「また誘うよ」

「…………また、連絡するね」

独り言のような会話はそこで途切れ、ショボンは悲しげに周囲を見回した後、その場を去った。








第15話   終












.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:17:51 ID:Am.mXpzk0<>以上、本日の投下終了です。

いつもありがとうございます。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/11/09(日) 23:22:25 ID:Am.mXpzk0<>以下、年表です。

2022年
≪11月6日SAO(ソードアートオンライン)サービス開始≫
12月
2023年
01月
02月ジョルジュ加入「五話 ここでも雨は冷たいから」
03月流石兄弟加入「十四話 双頭の鷹の旗の下で」
04月フサギコ加入「九話 君への手紙」
05月モナー・ビーグル加入「三話 それから」  
06月クックル加入「四話 緑の手」 
07月ショボン、ラフコフ(PoH)から勧誘される。
   →断るが、脅されてギルドとしての関わりを余儀なくされる
08月
09月モララー加入「十三話 ダイヤモンドだね」
   ギルドN−Sにハインが加入。(下旬 ハインがドクオに惚れる)
10月
11月
12月ギコ・しぃ加入「一話 ギルド「V.I.P.」へようこそ」「二話 聖なる夜のキャロル」
2024年
01月「六話・七話 数え歌がきこえる」
02月「八話 それぞれのチカラ」
03月
04月「十話 迷走」「十一話 疾走」「十二話 錯走」
05月「十五話  表とウラと」

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/09(日) 23:26:39 ID:TVUP7IzY0<>乙!

つまりドクオは「俺、このゲームクリアしたらハインの気持ちに答えるんだ…」という死亡フラグが建ってるって事だな<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/09(日) 23:44:10 ID:g8/7tZPIO<>待ちまくってました!
今から読む!!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/09(日) 23:58:04 ID:FCMGHQBk0<>乙乙
面白かったです<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/09(日) 23:59:00 ID:.8BC25XA0<>おつ!
ひとつ胸のつかえが取れた。刺さりっぱではあるが……<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/10(月) 00:19:57 ID:bFBe/kfk0<>乙です。
不安が1つ解消されて、ホットしてます。
ショボンを疑ってしまってた自分が恥ずかしい。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/10(月) 00:36:28 ID:qvyZVGY.O<>ω・)乙。初期メンバーは知ってたんだな。しぃ、ギコが暴走していらんことしそう<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/10(月) 00:46:06 ID:.umvIYQY0<>来てた!
乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/10(月) 00:55:36 ID:75sOPTL.0<>乙 今回もじっくり楽しませてもらった
仕方ないとはいえきつい選択だな<> 12312<><>2014/11/10(月) 11:46:56 ID:mgEzbA9g0<>こんにちは
http://1su.net/dGQ8

http://1su.net/dGQA
http://1su.net/dGQC
http://1su.net/dGQF<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/11(火) 15:21:38 ID:Vhs3FMzk0<>おつ。
クーがアルゴに詰め寄られた時、クーはしらを切ってたってことか。
ラフコフの件をクーが知らないわけは無いだろうし…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/16(日) 21:10:38 ID:4Px/ALsI0<>乙
相変わらず雰囲気が好きだぜ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/17(月) 21:59:45 ID:xRG/rO3YO<>話忘れてたから久しぶりに1話から読んだけどやっぱ面白いな
後1回ぐらい年内投下あったら嬉しいね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/17(月) 22:21:56 ID:wo7KxYmgO<>乙
しかしこんなに風呂敷広げてしまって無事に畳めるのか読者ながら心配になってくるな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/18(火) 00:10:56 ID:I2asFtkw0<>キリト達がクリアすれば終わりだからいくら広げても時系列合わせれば速攻で回収出来るんやで<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/19(水) 11:06:20 ID:u9mUuf3U0<>ショボンをよく知りつつ赤の他人である人って誰の事だろうか?<> 名も無きAAのようです<><>2014/11/21(金) 10:51:24 ID:ZeMtWnSM0<>舞台は同じでもアナザーストーリーって手もあるからキリトクリアルートとは限らないかもよー?
何にせよ作者の思うように書いてほしい本当楽しい、楽しみにしてるよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/11/22(土) 13:02:38 ID:NMi5oEdk0<>ずっと待ってた!相変わらず面白い<> <削除><><削除><><削除><><削除><> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/12/22(月) 12:34:31 ID:boaKq3no0<>攻略組でギルメンを誰一人死なせてないのはクラインか
作戦の立案も出来るしショボンはあんな感じになりたいのな<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 13:50:45 ID:CsIsRGwE0<>それでは、今年最後の投下を始めます。

よろしくお願いします。<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:04:01 ID:CsIsRGwE0<>



第十六話 思いと決意





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:04:45 ID:CsIsRGwE0<>




0.見えたものと見えないモノ





.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 14:05:47 ID:81x0MGrgO<>きた!大晦日に来てくれるとは支援!<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:06:17 ID:CsIsRGwE0<>
西暦2024年6月下旬。
第52層 フィールドダンジョン 【ミクミエル草原】

【ミクミエル】と言う名の街を中心に置いたその草原は、
ミクミエルへはもちろん、周囲三つの街に行くにも必ず通らなければならない。
通常そういった『通行』を主な目的としたフィールドにはそれほど敵(質・量共に)は出ないのだが、
この草原は『フィールドダンジョン』扱いとなり、相応の数のモンスターがポップする。
しかし草原エリアということで視界が開けているのと、
一つ一つのエリアが広い為戦いやすいこともあり、
プレイヤーは特に気にかけてはいなかった。

だが戦いやすいと言ってもここは既に52層であり、
モンスターのレベルは相応である。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

狼男Aの顔面を踏んで空へ飛んだしぃがギコの名を呼ぶ。
呼ばれたギコは左手に持った盾で狼男Bが振り下ろした曲刀を受け流す。

二人の距離は5メートルほど。

ギコはしぃを見ることなく叫びながら狼男Bの脇腹に片手剣を一閃させ、そのHPを黄色に変えた。

(*゚ー゚)「ロク!」

狼男Aの真上で短刀を水色に輝かせるしぃ。
そしてそのまま落下のスピードに剣技の加速を乗せ、
顔を踏まれたことによりバランスを崩していた狼男Aを縦に一閃、切り裂いた。

既にHPを赤くしていた狼男AのHPは光を無くす。

しぃは地面にぶつかる寸前に短刀を持たない左手で大地を叩き、
まるでトランポリンの上にいるかのように跳ねる。
そして体重を感じさせない身のこなしで着地してすぐさま駆け出す。

その間にギコは狼男Bに追撃を二発与えて距離を取っていた。

自分の後方にしぃが駆け寄ってくるのを感じる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:07:55 ID:CsIsRGwE0<>
雄叫びをあげ、曲刀を振り上げた狼男B。

曲刀が、赤く光る。

(,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

振り下ろされた曲刀を受け止めるギコの盾。
剣技であるその一撃は相当の威力があったが、
ギコは難無く受け止めた。
そしてそのまま盾を水色に輝かせて曲刀を押し返す。

(,,゚Д゚)
 「スイッチ!」
(*゚ー゚)

しぃが叫んでからきっかり六秒後、二人の声が重なった。




二匹の狼男を難無く倒した後に、二つのエリアで戦闘を重ねた二人は安全エリアに辿り着いた。

(*゚ー゚)「この次の次のエリアで採取できたら、依頼された内容は終了だよ」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

そしてそのまま進もうとするギコの上着をしぃが掴む。

(,,゚Д゚)「どうした?」

(*゚ー゚)「休憩も大事。
思ったよりハイペースで来れたから、休憩しよ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

ニッコリと微笑んだしぃ。
ギコの服を掴んでいる逆の手には、既に地面に広げるための絨毯が持たれていた。




.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 14:09:06 ID:8zrksYqw0<>初遭遇だ支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:09:20 ID:CsIsRGwE0<>
畳二つ分の大きさを持ったその絨毯は、かなり座り心地が良い。
ゴザでもシートでもなく、『絨毯』と呼んでいるのはそのためである。

しかもその機能の割にかなり容量も軽いため、
持ち運ぶことによってストレージを圧迫することがほとんど無いという代物だった。

ツンとモララーが共同で作り上げたというそれの座り心地を噛み締めながら、
ギコは目の前に座っているしぃをみる。

もともと可愛かったが、最近更に可愛くなったと思う。

この世界には今のところ身体において【成長】も【老化】もない。
この世界に閉じ込めた男の拘りからか、
見た目の変化は髪型や瞳の色と言ったような、
ごく一部への自身の選択による変更のみだった。

けれど、可愛くなったと思う。

それはきっと、今の生活を楽しむことが出来ているから。

はにかんだ様な、どこか寂しげだったり泣くのをこらえるような笑顔じゃなく、
心の底からの笑顔をいつも見せてくれるようになったから。

それが自分の力だけで導けたのではないのが少しだけ悔しいけれど、
そんなことよりも、今の彼女の笑顔が嬉しい。

あの日、たまたま真横にいた彼女。
ゲームの世界に閉じ込められたことを知って泣き叫んだ彼女。
呆然としていて、実感がわかなくて、
なんとなく介抱して以来ずっと一緒にいる。
実感がうまれた時、もしそばに彼女が居なかったら、自分は今頃どうしていただろう。
考えたくない『もし』。
きっと自分は、彼女がいたから生きてこられた。

そんな彼女を、今が一番かわいく、心からいとおしいと思う。

そしてそんな思いは今よりも一秒後。
今日よりも明日。
明日よりも明後日。
少しずつ増えていくと感じていた。

(*゚ー゚)「どうしたの?じっと見て」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:10:44 ID:CsIsRGwE0<>
少しだけ頬を染めたしぃが、ギコの前にカップを差し出した。

このティーセットもモララー製で、
外に出る時はパーティーの誰かが必ず持っていると言っても過言ではない。
飲むとHPが少しだけ回復するお茶はクーとクックルの共同制作。
食べるとたまに幸運度判定ボーナスが付加されるクッキーやカップケーキは、
ショボンだったりふさだったり。

(,,゚Д゚)「ありがとうだゴルァ」

心を休ませつつ、POTを飲むには躊躇する程度のHPを回復させ、
ついでにうまくすれば自身にプラスとなる効果を付ける休憩。

初めてVIPの一員としてダンジョン探索に出た時はこの『休憩』に驚いたが、
今はその重要性を何度も実感していた。

回復のお茶やお菓子を作れるようになる前から『休憩』はしているらしいけれど。

(*゚ー゚)「それで、どうしたの?ボーっとして」

(,,゚Д゚)「何でもないぞゴルァ」

まさか今まで考えていたことなど言えるわけがなく、
笑顔で流そうとするギコ。

いつものしぃならばもう一回は踏み込んできそうだが、
今日は違った。

(*゚ー゚)「そっか…。
わたしはね。ちょっとあるんだ」

(,,゚Д゚)?

口ごもるしぃ。

そのまま周囲を伺ってから、ギコを見た。

(*゚ー゚)「部屋で話そうかと思ってたんだけど、ここなら良いかな。
隠れるところないから近くにはいないだろうし」

隠蔽スキルを持つ者は、自らの身体を周囲に隠すことが出来る。
しかしそれは隠すことが出来るオブジェクトがあるからできる行為であり、
草原エリアなどで木や背の高い植物などのオブジェクトが無い場所では、
隠れて忍び寄ることは不可能だった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:12:20 ID:CsIsRGwE0<>
もちろん相応のアイテムを付ければ地面に隠れることも可能であろうが、
隠れたままエリア移動し来るのは不可能であろう。

(*゚ー゚)「……50層以上を二人で探索するの、初めてでしょ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「確かに許されてるのは草原エリアだけだし、
内容も採取だけだし、
クエストとかはまだやらせてもらえないけどさ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「うん。そうだよね。
それでもショボンさん達に認めてもらえたってことだし、
戦力に成れて嬉しい」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「本当、そうだよね。
やっと、一人前になれたのかなって、思うんだ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「本当に、嬉しかった。
それで、昨日ツンさんの部屋に行って、
クーさんも来て、三人で喋ってたんだけど……」

喋るのを止めるしぃ。
口を開くのをためらっているように見える。

視線はギコから外され、手に持ったカップをじっと見ていた。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(*゚ー゚)「うん…」

ギコに促され、ふせていた視線を再びギコに向ける。

(*゚ー゚)「手袋がね、あったの。
濃い灰色の、男物くらいのサイズ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:14:33 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「ゴラァ」

(*゚ー゚)「ブーンさんのか、他の誰かのか、
でも普段から手袋をつけてる人いないから、誰のかなって思ってちょっとじっと見てたら……」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「ギコ君、ラフィンコフィンって知ってるよね」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

(*゚ー゚)「このギルドに入った時に、座学で教えてもらった。
ラフィンコフィンのマーク。
全員が付けてる、棺桶の図……」

(,,゚Д゚)「ゴ……ゴルァ…」

(*゚ー゚)「手袋に、その図が……描いてあったの」

(,,゚Д゚)!!!!「ゴルァ!!」

(*゚ー゚)「もちろん、VIPの皆が殺人ギルドだなんて、思わない。
でも、ツンさんがそれを持ってた…。
ツンさんが作ったのか、
誰かが置き忘れたのか、
何かのサンプルなのか……。
私、わかんなくなっちゃって」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ……」

(*゚ー゚)「ギコ君……」

見詰め合う二人。

(*゚ー゚)「ギコ君、」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*゚ー゚)「いくら私相手でもゴルァとゴラァだけで会話するのは止めよう」

(;,,゚Д゚)「す、すまなかったゴルァ…」

はっとしてお茶をすすったギコを見て、
しぃの表情にも笑みが戻った。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:15:52 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「実はおれも、ブーンの店の倉庫で見たんだ」

(*゚ー゚)「!手袋を!?」

(,,゚Д゚)「ああ。数十個のPOTと一緒に保管してあった」

(*゚ー゚)「そんな……」

(,,゚Д゚)(けれど、なんとなく違和感を感じた。
わざと見せられたような…)

(*゚ー゚)「……やっぱり、そうなのかな…。
でも、みんなに限ってそんなこと。
でも、関係者で無ければそんなものが…」

(,,゚Д゚)「まずは採取だぞ、ゴルァ」

(*゚ー゚)「え?」

(,,゚Д゚)「そんなことよりも、まずはやるべきことをやるんだゴルァ」

立ち上がったギコ。
そして武器と装備を再確認し始める。
視線の先はしぃではなく、エリアの向こう。

(*゚ー゚)「ギコ君……」

そんなギコを見上げていたしぃだったが、ニッコリと微笑んで立ち上がった。

(*゚ー゚)「うん、そうだね!行こう!」

出していた休憩道具を片付けるしぃ。
そして装備を確認し、ギコにうなずく。

(,,゚Д゚)「行くぞゴルァ!」

歩き始めるギコ。
その背中はしぃが見続けていた彼との生活の中で、一番頼もしく感じた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:16:53 ID:CsIsRGwE0<>
(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「それで、終わったら聞きに行くぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「まずは採取だゴルァ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「どうしたしぃ!行くぞゴルァ!」

(*゚ー゚)「次のエリア、そっちじゃなくてこっちだよ」

ギコが進もうとした出口とは別の方向を向いているしぃ。

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

振り向いて正しい道に向かって歩き始めたギコの背中は、
少しだけ昔に戻っていた。






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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:18:29 ID:CsIsRGwE0<>


1.突きつけられた現実




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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:19:52 ID:CsIsRGwE0<>
流石武具店
質の良い武器と防具をそろえ、
オーダーにも十分に対応できる武器・防具店として人気の店である。

この『武器と防具』と言うのが人気店の秘密でもある。
武器を作るスキルと防具を作るスキルは別であるため、
通常プレイヤーの営業する一つの店ですべてをそろえることは難しい。
しかしこの店では一度にすべてを揃えることが出来る。

低層のプレイヤーはそこまで意識することは出来ないが、
上層になると武器防具の能力は勿論その見た目にこだわる者も少なくないため、
全てを同時に試着できるこの店は、
能力値だけでなく見た目にこだわるプレイヤーにも好まれていた。

また武器や防具への装飾もすることが出来るため、
一部では「コルがいくらあっても足りない武具屋」などとも言われている。

しかし攻略組の和風装備や装飾した剣なども手掛けている事実からも、
その実力は折り紙つきであった。

難があるとすれば店を営む兄弟の片方が変人だということくらいだった。

( ´_ゝ`)「………めんどくさいなー」

思わず呟いてしまった兄者の首元に突きつけられる細剣の先。

ξ゚听)ξ「ん?」

( ´_ゝ`)「……いえ、なんでもございません」

(´<_` )「あきらめろ兄者」

( ´_ゝ`)「むーーーー」

武具店の奥。
所謂『工房』と呼ばれる部屋には兄者とツンがおり、
弟者が部屋のドアを開けたところだった。

ξ゚听)ξ「あら弟者。店は大丈夫なの?」

突きつけた細剣を外しながら、
部屋に入ってきた弟者に声をかける。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:21:12 ID:CsIsRGwE0<>
(´<_` )「ひと段落したから『マリアンナ』に任せてきた。
折角だから、それを見たいからな」

弟者の視線の先は、兄者の目の前の作業台の上。

ξ゚听)ξ「これ、そんなに珍しいの?」

(´<_` )「いや、何度か使ってオーダーの盾を作ったことがあるし、
兄者がブーンの剣を作っているのは何度も見てる」

ξ゚听)ξ「?」

(´<_` )「でも、そんなにいっぱい並んでいるのは見たことない。
良く手に入れたな」

台の上には十数個の原石素材が無造作に置かれている。

ξ゚听)ξ「ふさの作ったフォーチュンクッキー食べまくったわよ」

ツンの呟きに噴き出した弟者。
特にそれをとがめることも無く、ツンが疲れた様に首を振る。
腰に手を当ててしたその姿は非常に絵になった。

(´<_` )「こんど素材の発掘に行くときにはおれも持っていくかな」

ξ゚听)ξ「そうしたほうが良いわよ。
あの効果、結構効くから。
もんだいは大きさよね…。味も私にはちょっと甘すぎるし」

(´<_` )「でかいんだよな。あれ」

苦笑いの浮かべて会話する二人。
そのてもと、作業台の上では横にある炉から洩れる明かりを反射させて鉱石が輝いている。
基本的には赤や青に光っているが、中には紫やピンク色の物もあった。

(´<_` )「色だけ見れば、質もよさそうだな」

ξ゚听)ξ「だと良いんだけどね」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:22:23 ID:CsIsRGwE0<>
鉱石の名は『コランダムオール』
色は違うが、すべて同じ種類である。

当初はその大きさと美しさとアイテムの説明文から装飾用と思われていたが、
高いスキルレベルを持った酔狂な武器鍛冶屋が武器への添加素材に使用してみたところ、
ランダムではあるがさまざまな効果を武器に追加することが出来た。
そして攻略が45層を超えた頃、各層の採取ポイントから大きな鉱石も発見されるようになった。
アイテムをクリックしたときに現れる説明文は同じであるため大きく注目はされなかったが、
再び前述の酔狂な武器鍛冶屋が試してみたところ、
一定のサイズ以上のコランダムオール単体からの武器精製が可能なことを発見した。

( ´_ゝ`)「めんどくさいんだよな」

ξ゚听)ξ「ブーンの方はもう全部終わらせてるから」

( ´_ゝ`)「はぁ…」

通常武器に精製できる鉱石は、スピードタイプやパワータイプ、
あるいは標準タイプといったように種類ごとにタイプが分かれている。
そしてスピードタイプの鉱石から出来上がる剣は軽く切れ味が鋭いが脆かったり、
パワータイプの鉱石から出来上がる剣は威力があり耐久値も高いが重すぎたり、
といったように出来上がる武器の特性に絡んでくる。

しかしこのコランダムオールは出来上がるまでどんな武器が出来るのか分からないため、
自分に必要な武器をよく理解しているプレイヤーは、
コランダムオールから武器を作ることはほとんどしない。
鉱石を自分で持ち込んだとしても作るのが鍛冶屋である以上、
それなりの金額を取られるのだから当然と言えば当然だろう。

( ´_ゝ`)「……やるか」

ため息を吐きつつ、一番近い鉱石を手に取る兄者。
そしてクリックをして鉱石のウインドウを出し、説明文を確認する。

いつの間にか出したのか、空いた片方にはボードが持たれていた。

( ´_ゝ`)「これは……多分スピードAタイプだな…。使えるっと…」

アイテムの説明文とボードに書かれた文章を交互に見ながら呟く。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:23:48 ID:CsIsRGwE0<>
そして鉱石の説明文をコピーし、台の上に山積みにした紙束の一番上の紙に写す。
その紙を鉱石に貼ると、鉱石を台の隅に置いた。

( ´_ゝ`)「めんどくさいーーーーー。いや、うん、ちゃんとやるぞ」

首に刺さった細剣の感触を感じつつ、次の鉱石を手に取る兄者。

( ´_ゝ`)「なんで圏内なのに刺さるんだよ……。HPは減らないとはいえ」

ぼやきながらも作業をすすめる。

切っ掛けは偶然だった。

アイテム鑑定スキルレベルの高い道具屋が試しにコランダムオールを鑑定したところ、
通常とは違う説明文を読むことが出来た。
今までスキルレベルに伴いアイテム鑑定の是非や、
知ることの出来る情報量の違いは確認できていたので特に驚きは無かったが、
問題はその後だった。

道具屋が鑑定した後の鉱石を鍛冶屋が鑑定したところ、
最初に鍛冶屋が見た文章と微妙に異なる部分があったのである。

ただそれは改行の位置や句読点の位置などであったため、
鍛冶屋が気付いたのは見事だが、ただそれだけだと思われた。

しかし鍛冶屋と道具屋が所属するギルドのギルマスが、
そこに注目した。

『現実世界ならいざ知らず、ここデジタルの世界では、
基本的に偶然ってのはあり得ないと思うんだよね。
出現はランダムでも、何かしらの法則はあると思うんだ。
その文章の違いは、もしかするとその法則の尻尾なのかもしれない』

そんな思いつきですべての鉱石をまず道具屋が鑑定し、
その後鍛冶屋が鑑定した後武器を精製し、
そしてどんな武器が出来たのかをギルマスが整理をした。

その数は200を超える。

.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/12/31(水) 14:24:59 ID:qlnrKJKM0<>初リアルタイム遭遇だ!!!
支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:25:09 ID:CsIsRGwE0<>
『多分こんな感じだと思うよ。
これを基に基本鉱石にするか添加材に使うか装飾品に回すか決めてみて。
あ、もちろん装飾品にする場合はそっちでもまずは鑑定して説明文をコピーしてね。
あと、精度を上げていくためにもサンプルはもっと必要だから、
これからコランダムオールを使って武器を造る時は毎回作業宜しく』

データを整理して作成した細かいチェックリスト。
それでも分かりやすくチャート図にして判別できるようにしたそのリストを鍛冶屋に渡しながら、
ギルマスが笑顔で言った。
それを聞いた鍛冶屋は今までの作業を思い出して心の底から疲れを感じたという。

それでもそのリストを作るのが、
自分の行う作業よりもよっぽど大変であることは鍛冶屋にも分かっていたため、
言いつけ通りコランダムオールを使って武器を造る際は先の様な作業をこなしていた。

そしてギルマスは言う。

『まだもれとかありそうだよね。これ。
アルゴさんに情報を流すのは更にサンプルをいっぱい使って精度を上げてからかな。
……それまで必要な量の武器やコランダムオールを集めるのはしょうがないってことで。
今はほら、何が出来るか分からないから市場でも安いし。
装飾品を作る細工工房があるうちのギルドが集めていても不思議がられないし。
うん。そういう事で、みんなよろしく』

鍛冶屋と道具屋とギルマスが誰かと言うのは、
…まあ、そういう事である。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:26:28 ID:CsIsRGwE0<>
( ´_ゝ`)「…これはパワーのBか」

ξ゚听)ξ「基本的にはブーンの剣に、使えないのはあげるから好きに使っちゃって」

( ´_ゝ`)「んー」

黙々と作業を続ける兄者。
文句は言うが、作業を始めると速くて正確なのは弟者もツンもよく知っていた。

ξ゚听)ξ「弟者には、これをあげる」

作業する兄者を邪魔しない様に弟者の横に移動するツン。
そして封筒を一通、弟者に差し出した。

(´<_` )「ん?なんだ?」

ξ゚听)ξ「クーから。例の件よ」

(´<_` )「ああ、ギコとしぃに…か……」

ξ゚听)ξ「そ。全てはサブマスターであるクーの独断であるっていう証拠。
なにかあった場合はそれを出して責任の所在を明らかにしろだって。
まったく……」

(´<_` )「心配することは無いと思うがな」

ξ゚听)ξ「私もそう思う。
でも、クーの気持ちも分かるから。
……あいつは一人で背負い過ぎるから、周りは大変よね。ほんと」

(´<_` )「んー。それはおれも同感だ。
あいつのそんなところに救われたおれが言うのもなんだが。
ま、これはとりあえず受け取っておくよ」

ξ゚听)ξ「よろしく」

小声で二人が会話していると、弟者が視線を左上に向けた。

(´<_` )「あ、悪い。呼んでるから店の方に行ってくる」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:27:53 ID:CsIsRGwE0<>
ξ゚听)ξ「頑張って稼いでね。
私はあれが終わるまではここにいるから」

(´<_`;)「見張らなくてもちゃんとやると思うぞ?」

ξ#゚听)ξ「めんどくさいこと頼んでるから、終わるまで付き合ってあげるだけよ」

(´<_` )「おお、そうだったか。すまんすまん」

ξ゚听)ξ「まったく私の事をどう思ってるのかしら」

( ´_ゝ`)「(そういう風に)」(´<_` )

ツンの言葉に聞き耳を立てていた兄者と部屋を出ようとする弟者が全く同じ言葉を心で呟いたのを、
三人とも知らない。



弟者が店に戻ると、一人の客がカウンターにいた。

(´<_` )「お待たせしました。
武器の研磨でしたよね。
こちらへどうぞ」

長い黄色の髪をアップにしたメイド服の女性にカウンターを任せたまま、
弟者は店の隅に設置された小さな炉の前に客を誘導した。

(マリアンヌ)「お願いします。弟者さん」

笑顔で客と弟者に会釈をする女性。

NPC、ノンプレイヤーキャラクターである彼女【マリアンヌ】を、
店番として兄者と弟者は雇っていた。

/ ゚、。 /「…頼む」

すらっとした長身の男。
現実世界ならば全く力の無い、強い風が吹けば吹き飛ばされそうな細さだが、
この世界ではパラメーターが全てであるためその強さは未知数だ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:29:01 ID:CsIsRGwE0<>
(´<_` )「それでは、お預かりします」

片手で差し出された長柄の鎌を両手で受け取る弟者。

受け取った瞬間、両手にかかる重さを確認し、目の前の男のパラメーターを少しだけ推察する。

(´<_` )「基本設定を確認します」

武器をクリックし、ウインドウを出す。
基本の鑑定だけならば、武器であっても弟者は兄者と同レベルで行うことが出来る。

そこで情報を読み、
少しだけ武器作製スキルを上げてある弟者がメンテナンス出来る武器ならば、
そのまま横の炉でメンテナンスを行う。

武器にはそれぞれ耐久値が設定されている。
使用すれば、帯刀したり、モンスターを切ったり、プレイヤーを切れば耐久値が減り、
ゼロになると武器は壊れ、ポリゴンとなって消える。
それは防具や各種装備アイテムも同じで、
プレイヤーは自分の身に着けている武器や防具の耐久値を常に気にしていなければならない。

そして武器や防具の耐久値を最大値まで戻すことが出来るのは、
それぞれの武器と防具の作製スキルを持っている者だけである。

その耐久値を基に戻す作業をメンテナンス、あるいは研磨などと呼んでいた。

(´<_` )「あ、これは…」

メンテナンスは、基本的には失敗はしない。
この失敗というのは武器破壊や能力のレベルダウンを指す。
しかし高レベルの武器や防具をメンテナンスするのは、
やはり高レベルのスキル保持者の方が良いという流れがあった。

因みに武器のレベル、レア度の確認だけではなく、
武器によってメンテナンスの仕方も変わるためまずは基本情報を確認するのが通例である。

(´<_` )「これ、プレイヤーメイドですよね。
すみません、うちの店、原則メンテナンスはモンスタードロップ品かNPC店売り品、
そしてうちの店で売った物にしかやらないことにしてるんですよ」

情報ウインドウを見ながら残念そうに断りを告げる弟者。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:30:50 ID:CsIsRGwE0<>
これは全ての鍛冶屋が行っているわけではないが、
弟者と兄者、そして鍛冶屋としての横のつながりで親しくしている何件かの店は導入していた。

勿論至急の場合や例外はあるが、今回は知り合いが作った品であったため、
弟者もすぐに対応する。

(´<_` )「買われたならご存知だと思いますが、グレンさんの店なら45層の」

/ ゚、。 /「…ない」

(´<_` )「え?」

/ ゚、。 /「さっき行ったら、空き家になってた」

(´<_`;)「え?無かったですか?移転したとか聞いてない…」

メッセージを送るため、慌てて自分のフレンドリストを呼び出す弟者。
そして目当ての名前が変色しているのを見付ける。

(´<_`;)「そんな……」

/ ゚、。 /「だからこっちに来たんだが、ダメか?」

(´<_` )「あ、いや、…こういうことであれば、やらせていただきます。
ただ自分ではレベルが低いため担当が変わるのと、
この炉のレベルもそれほど高くないので奥の工房でさせていただきますがよろしいですか」

/ ゚、。 /「構わない。どれくらいかかる?」

(´<_` )「…十分ほどで。よろしければ店内をご覧になっていてください。
マリアンヌ、こちらの方にお飲み物を」

(マリアンヌ)「かしこまりました」

/ ゚、。 /「分かった。待ってるからよろしく」

(マリアンヌ)「こちらからお好きなものをお選びください」

飲み物のメニューが四つほど書かれたプレートを指さすマリアンヌ。

客が店内の商談用応接セットに腰掛けるのを見届けてから、
弟者は工房へのドアを開けた。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:32:15 ID:CsIsRGwE0<>


ξ゚听)ξ「あら弟者。店は大丈夫なの?」

( ´_ゝ`)「つーかーれーたー」

作業台の上の鉱石の鑑定は粗方終わったようで、
説明文をコピーした紙が貼っていないのは二つだけになっていた。

(´<_` )「兄者、研磨を頼む。
ツン、すまん、ちょっと中断させてくれ」

ξ゚听)ξ「もちろん良いわよ。っていうか弟者、顔色悪いけど…大丈夫?」

( ´_ゝ`)「この鎌がどうかしたのか」

両手で差し出された鎌を両手で受け取る兄者。

( ´_ゝ`)「ふむ。見た目より少し重いな。
基本重い方がレベルが高い風潮だが、どんなもんか。
まぁ重けりゃいいってわけでもないが」

さっと片付けた作業台の上に鎌を置く兄者。
そして鎌をクリックし、情報ウインドウを出す。

( ´_ゝ`)「おい弟者、これグレンさんの作った奴じゃないか」

(´<_` )「店が、空き家になっていたらしい」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「メッセージを送ろうと思ったら、送れなかった」

青白い顔で無表情に話す弟者。
それを聞いた兄者とツンは顔を強張らせる。

そして兄者は自分のフレンドリストを開いた。

( ´_ゝ`)「……」

色の変わった名前を触るが、何も反応が無い。

( ´_ゝ`)「……弟者…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:33:42 ID:CsIsRGwE0<>
(´<_` )「兄者、すまん、店の方も頼む。店の方と…黒鉄宮を見てくる」

( ´_ゝ`)「ああ、わかった。ツン、すまんが付いていって」

(´<_` )「いや、一人で大丈夫だ。フィールドに出る訳でもないし。
ツン、悪いが店の方を頼む。
兄者の研磨と鑑定が終わるまでちょっと見ていてくれ」

ξ゚听)ξ「え、あ、うん。それは構わないけど、大丈夫なの?」

(´<_` )「悪いな、ツン。
じゃあ少し出てくる。
兄者、リズやアルたちへの連絡は、黒鉄宮を見た後におれがやるから。
もし先に聞かれたら、おれに回してくれ。
悪い………店の方は頼んだ」

青白い顔で入ってきたドアとは違うドアから出ていく弟者。

ξ゚听)ξ「……最近無かったから、この感じ、忘れてた……」

呟いたツンを意識せず、兄者はメッセージウインドウを開いた。

( ´_ゝ`)「ツン、今日プギャー達三人空いてるか知ってるか?」

ξ゚听)ξ「え?今日はギコしぃのサポートっていうか、
もしもの時用に後ろを付いていってるはずだけど」

( ´_ゝ`)「ってことは無理か…」

ξ゚听)ξ「弟者、見張っておいたほうが良いの?」

( ´_ゝ`)「…グレンさんってのは、鍛冶屋仲間では一番古い付き合いなんだ。
それこそ、お前達と合流する前の一ヵ月の間、鍛冶屋について色々教えてくれた。
気の良い親父で……。
お前たちと別れて少し不安定になっていた弟者を、おれと一緒に支えてくれた」

視線を伏せ、少しだけ肩を震わせながら話す兄者。

そんな兄者から視線を外し、ツンは既にいくつかのメッセージを飛ばしていた。

ξ゚听)ξ「フィールドに出ないなら、ぃょぅ君でも良いわね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:34:57 ID:CsIsRGwE0<>
( ´_ゝ`)「あ、ああ。いよう君って、ふさがメインで面倒見てる…」

ξ゚听)ξ「ええ。隠蔽スキル系だけなら既にドクオ以上よ。
あのマントを使えばプギャーたち同様に、
草原ですら溶け込めるらしいしそのまま移動も出来るっていうから、
今の弟者なら見破れないはず。
影から見守るだけなら彼でも…」

( ´_ゝ`)「頼む」

ξ゚听)ξ「弟者はそのグレンさんって人の店に向かったのよね。
位置情報送って」

( ´_ゝ`)「………。今送った」

ξ゚听)ξ「……ん。きた。ここね。
とりあえず見張るのと、圏外に向かいそうになったら連絡入れてもらうようにする」

( ´_ゝ`)「ああ、それで良い。」

一息つき、作業台に向き合う兄者。

そして目の前の鎌に優しく触れる。

( ´_ゝ`)「グレンさんの作った武器。
あの人らしい、実直で、芯の強い武器だな」

ξ゚听)ξ「その人、ギルドには?」

( ´_ゝ`)「入ってない。
おれらは合流して以降、自分達は勿論みんなが集めてきてくれた
高レベルの鉱石を使ってたから順調にスキルレベルを上げられたけど、
一人だったグレンさんは地道にやっていた。
……実は一回、ショボンにも相談して、ギルドに誘ったんだ。
でも断られた。
ゲームの中でくらい、自由気ままにやりたいって笑っていたな。
それからもよくしてもらって、鍛冶屋をやっている知り合いでグレンさんにお世話になってない奴は
いないんじゃないかってくらい、顔も広くて」

ξ゚听)ξ「さっき弟者が言ってた人は?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:36:02 ID:CsIsRGwE0<>
( ´_ゝ`)「リズベット、アルカン、ズモー、ずぎぞう…。
おれ達の知ってる一線級の鍛冶屋達みんな、グレンさんに世話になっているはずだ」

喋りながら、兄者の手が動く。

取り出したアイテムで、鎌の刃を撫で、炉の炎を操る。

( ´_ゝ`)「最近は、自分で採取も行けないくらい店が忙しいって言ってたんだけどな」

炎が揺れ、赤い光りの奔流に、ツンは顔をそむけた。

( ´_ゝ`)「……ゆっくり眠ってくれ」

澄んだ金属音が工房の中を響き渡る。

兄者の呟きと共に零れ落ちた白い輝きが、炎に巻き込まれて消えた。





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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:37:52 ID:CsIsRGwE0<>



3.からむ糸とほどく針





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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:39:10 ID:CsIsRGwE0<>
40層『バーボンハウス』

カウンターには二人の美女がいた。
だが外から見るとカップルに見えるため、やってきた客はどちらにも声をかけない。
そして悲しそうにカウンターの中の女性に会釈をしながら、店を出る男性一人客が数多くいた。

从 ゚∀从「……なあクー」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

从 ゚∀从「もしかして私は男避けに呼ばれたのか?」

川 ゚ -゚)「もしかしなくてもそうだ」

从 ゚∀从「………」

カウンターの中に立つのは黒髪の清楚な美女。
カウンターの外で座っているのは男装の麗人。

VIPのクーと、NSのハインリッヒである。

从 ゚∀从「呼ばれたからなんだと思えば」

川 ゚ -゚)「ショボンに急に店番変わってくれって言われてな、
私が作れるのは簡単なものだけだから居ても居なくても別に良いかと思ったんだが、
今日はアレが来る日だったから」

从 ゚∀从「ああ、さっきのアレ?」

川 ゚ -゚)「そう。アレだ」

从 ゚∀从「少し話には聞いていたが、凄かったな」

川 ゚ -゚)「だろ?」

从 ゚∀从「テンション高かった」

川 ゚ -゚)「疲れるんだ。相手すると」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:40:44 ID:CsIsRGwE0<>
从 ゚∀从「魚置きに来ただけなのに、三十分くらい居座ってたな」

川 ゚ -゚)「うざいんだ」

从 ゚∀从「断れよ」

川 ゚ -゚)「そんなことをしたら、毎日のように押しかけてくる」

从 ゚∀从「…マジで?」

川 ゚ -゚)「マジで」

从 ゚∀从「それはきついな」

川 ゚ -゚)「ああ、きついんだ」

从 ゚∀从「で、私もそれにつき合わされたわけだが…」

川 ゚ -゚)「好きな物食べて良いぞ」

从 ゚∀从「好きな物って言ってもな」

川 ゚ -゚)「あと、ショボンはドクオと上の層の街に行ったから、多分二人ともここに戻ってくる」

从*゚∀从「好きなモノ…」

川 ゚ -゚)「それは本人同士の合意の上で好きな様にしてくれ」

从*゚∀从「さっき好きなモノを食べ良いって言ったのにー」

川 ゚ -゚)「私が言ったのは『物』であって『者』じゃない」

从 ゚∀从「ちぇー」

つまらなそうに目の前のグラスの中身をストローで飲み干す。
するとすぐに新しいグラスが差し出され、古いグラスが片付けられた。

从 ゚∀从「ありがと」

川 ゚ -゚)「どういたしまして」

从 ゚∀从「……いいなー」

川 ゚ -゚)「ん?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:42:13 ID:CsIsRGwE0<>
从 ゚∀从「あれ」

もともと小さな声で会話をしていた二人だが、
更に小さく、囁くような声でハインが呟き、
店の奥に視線を走らせた。

川 ゚ -゚)「…………え?」

从 ゚∀从「いいよな、ああいうの」

川 ゚ -゚)「…ああ、…うん」

視線の先には一組の男女。

ミセ*゚ー゚)リ「はい、フィレフィレ」

(‘_L’)「……ん……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、あーん」

(‘_L’)「あ、あーん」

ミセ*゚ー゚)リ「もっと大きな口開けてくれないと、入らないぞ」

(‘_L’)「ああーーーーん」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。よくできました」

女はフォークの先に肉の塊を刺して男に差し出す。
男は口を極限まで開けてその肉を口に入れる。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ次はねー」

(‘_L’)「も、もう許して…」

ミセ*゚ー゚)リ「ダメだよー。
目の前にこんなにかわいい子がいるのに他の女をチラチラ見たりしたんだから。
これはそのバツでーす」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:44:22 ID:CsIsRGwE0<>
(‘_L’)「ご、ごかいだー」

ミセ*゚ー゚)リ「まあカウンターにいる人達もきれいだけどね。
でもでも、フィレフィレは私だけ見てなきゃだめなの」

(‘_L’)「ミセミセ…」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレフィレだーいすきだよ」

(‘_L’)「私もですよ」

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ次はこのハンバーグを丸ごとー」

(;‘_L’)「誤解です!
あれはあの時カウンターで話をしていた男の人達がうるさいなと思って見ただけで、
カウンターの女性を見たわけでは!」

ミセ*゚ー゚)リ「え?!そうなの!?」

(‘_L’)「そうです!
分かってくれましたか」

ミセ*゚ー゚)リ「フィレフィレが、男の人にも興味があるなんて…」

(;‘_L’)「そ、そうではなくて!」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫、私がこっちの世界に戻してあげるから!」

(;‘_L’)「で、ですから!」

ミセ*゚ー゚)リ「これはその第一歩!はい、あーんして!」

(;‘_L’)「許して下さい―」

ミセ*゚ー゚)リ「はい、あーんしてね。フィレフィレ」

川 ゚ -゚)「……」

从*゚∀从「……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:45:39 ID:CsIsRGwE0<>
どうやら男性の方は、
先ほどカウンターに魚を置きに来た二名をうるさいなと思って様子をうかがっていたらしい。
それを女性はクーとハインを見ていいたと誤解し、色々と責めているようだ。

川 ゚ -゚)「ハインは、アレが良いのか?」

从 ゚∀从「良いよな。カップルって感じで」

川 ゚ -゚)「……ドクオと、ああいう事をしたいのか?」

从*゚∀从「えー。そんなはっきり言わなくてもー。クーったらもう」

川 ゚ -゚)「……前から一度真剣に聞きたかったんだが良いか?」

从 ゚∀从「え?なにを?」

川 ゚ -゚)「ドクオのどこが良いんだ?」

从*゚∀从「え!?」

川 ゚ -゚)「いや、ドクオは確かによいやつだ。
アホだしコミュ障だし変態だが、基本的には真面目で誠実で、その行動には好感が持てる。
だが、恋愛と言うと…その……。なぁ。
それにハインはほら、いままでレベルの高い人に囲まれてきたわけだし。
もちろんハインが本気なのは分かるんだが、その……」

从 ゚∀从「カッコいいところ」

川 ゚ -゚)「…………え?」

从*゚∀从「一目ぼれだったんだ。
今でもあの姿は忘れない。
キラキラしてて、かっこよかった」

川 ゚ -゚)「ドクオが……キラキラだと?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:47:01 ID:CsIsRGwE0<>
从*゚∀从「そのあと話したら真面目で優しくて、
私のことを真剣に考えてくれて」

川 ゚ -゚)「ドクオが、……キラキラ?」

从*゚∀从「武器の扱いとか優しく教えてくれて。
躓いたら助けてくれて」

川 ゚ -゚)「キラキラ…。え?キラキラ?え?だれが?え?ドクオが?キラキラ?」

从*゚∀从「私が好きって言うと照れて何も言えなくなっちゃって。
そんな可愛いところも大好きだ」

川 ゚ -゚)「キラキラ…。キラキラ…。キラキラ…」

从 ゚∀从「クー?聞いてるのか?」

川 ゚ -゚)「え?あ?いや、聞いてるぞ。うん。聞いてる」

从 ゚∀从「なら良いけど、恥ずかしいから二回は言わないぞ」

川 ゚ -゚)「質問なんだが……」

从 ゚∀从「なんだ?」

川 ゚ -゚)「モララーとかジョルジュはイケメンだと思うか?」

从 ゚∀从「ああ、思うぞ。顔は整ってるな。ドクオには負けるけど」

川 ゚ -゚)「……さっぱりもってわからん」

从 ゚∀从?

川 ゚ -゚)「一般的な審美眼とは別の感情的な審美眼。
やはり日常的にきれいなものを見る生活をしていると、
色々と我々とは違う感覚を身につけるのだろうか…。
いや、しかし……。
まあ中身は勿論見た目も好きになったのであれば私が心配することも無いのだが、
いやしかしそうだな…うむ………」

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 14:47:10 ID:8zrksYqw0<>キラキラだと?<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:49:58 ID:CsIsRGwE0<>
少し悩んだクーが少しして考えることを放棄するのとほぼ同時に、店のドアが開いた。

('A`)「腹減った―」

从*゚∀从「どっくん!」

川 ゚ -゚)「噂をすればなんとやらだな」

('A`)「ハイン来てたんだ」

从*゚∀从「どっくんに会いに来た!」

('A`)「はいはい」

カウンター、ハインの横に座るドクオ。
ハインの前に置かれている物と同じグラスがドクオの前にも差し出される。

('A`)「サンキュー。で、今日のランチ残ってる?」

川 ゚ -゚)「ああ、大丈夫だ」

カウンターのパネルで準備を始めるクー。

从*゚∀从「どっくん、今日はどこ行ってたの?」

('A`)「ショボンと一緒に一番上の層の迷宮区」

川 ゚ -゚)「は?迷宮区?」

出来上がったワンプレートランチをドクオの前に出す。

川 ゚ -゚)「聞いてないぞ?……って、おい…」

('A`)「最初は手前のフィールドダンジョンでの採取と街での買い物で良い予定だったんだよ。
サンキュー。いただきます」

川 ゚ -゚)「あ、ああ。そう聞いてる」

プレートの上のサイコロステーキにフォークを突き立てるドクオ。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:51:33 ID:CsIsRGwE0<>
('A`)「で、行ってみたら前線だけあって情報がこんがらがってたらしくてさ、
迷宮区って言ってもフロア三つ分くらい先のエリアで採取できるらしかったから、
行ってきた」

川 ゚ -゚)「行ってきたって…二人で?」

ステーキを口に運び、美味しそうに口を動かす。
そして隣のサラダに視線を移す。

('A`)「まさか。ジョルジュとブーンも呼び出したよ。
あ、ラドスの実だ。おれこれ苦手なんだよな」

緑入りの野菜の陰に隠れた、ミニトマトの様な野菜を見付けて眉間に皺を寄せた。

从*゚∀从「どっくん苦手だよなそれ。
おいしいのに」

川 ゚ -゚)「そうか…まあその四人なら、なんとかなるか」

('A`)「まあなー。ショボンが敵の情報は仕入れていたし。
初見のダンジョンでもショボンが居ればってやつだな。
ハインはこれすきだったよな。ほれ」

赤い実をフォークで刺し、ハインに向けて差し出す。

从*゚∀从「あーん」

口を大きく開いて実を食べるハイン。
満面の笑みだ。

川 ゚ -゚)「そうか…。で、ショボンはどうしたんだ?」

('A`)「ショボンとジョルジュは兄者のところに。
ブーンは店の前で別れたから、店にいるはず。
もう少ししたら腹減ったメッセージが来るんじゃねーかな」

川 ゚ -゚)「そうか…」

ミセ*゚ー゚)リ「ごちそうさまでしたー!」

(‘_L’)「いつもごちそうさまです」

ミセ*゚ー゚)リ「またきますねー!今度はマラガスのケーキも食べます!!」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:52:59 ID:CsIsRGwE0<>
いつの間にか奥のカップルがカウンターの横まで来ており、そのまま外に出て行った。

('A`)「元気だなー」

川 ゚ -゚)「……ドクオ…」

('A`)「ああ、分かってる。大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「そうか。ならばいい」

从 ゚∀从?

川 ゚ -゚)「ところで二人とも」

('A`)「ん?」

从 ゚∀从「なんだ?クー」

川 ゚ -゚)「実はもう付き合っているんだろ?」

('A`;)「な、な、な、な、んなわけねーだろ!!!!」

从*゚∀从「私はいつでもオッケーだぞ、どっくん」

('A`;)「おまえもバカなことを言ってるな!!」

从*゚∀从「こんなに好きなのにー。
さっきも間接キスしたし」

('A`;)「間接キス!!??」

从*゚∀从「さっきのフォーク」

('A`;)「あれは前にそうしないと飯を食べないって駄々をこねるから仕方なくやってやったのを!」

从*゚∀从「わたしそんなにこどもじゃないよー」

('A`;)「おいこら!」

カウンターでガタガタと音を立て小声のつもりだが騒いでいる二人。
店の客が何事かとチラチラとこちらを見ている。

川 ゚ -゚)「……もう勝手にしてくれ」

疲れた様に呟いたクーだった。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:54:10 ID:CsIsRGwE0<>



4.振り上げた拳の先に





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:55:28 ID:CsIsRGwE0<>
モララー細工工房

カウンターの中、簡易作業台の前にはモララーがいた。
作業台の前ではあるが、作業はしていない。
目の前に座る人物に対し、接客をしていた。

ζ(゚ー゚*ζ「えー。モララーさんってそうなんですか?
ほんとにー?」

( ・∀・)「いやいやほんとほんと。
結構身持ち硬いんだよ。おれ」

この会話を接客と呼ぶのであれば、だが。

( ・∀・)「奥手だから、声とかかけられなくってさ。
彼女ない歴=年齢なんだよ」

ζ(゚―゚*ζ「絶対嘘ですよー。
あ、いままで付き合った人全員にそう言っているんじゃないですか。
君が初めての彼女だって」

( ・∀・)「そんなことないって。
えー。おれそんな風に見えるのか、ショックだー」

ζ(゚―゚*ζ「だってモララーさんカッコいいですもん。
彼女とか途切れたことなさそー」

( ・∀・)「すごいイメージだな、それ。
でもデレさんにカッコいいとか言われると照れちゃうな」

ζ(゚―゚*ζ「またまた。そんな事ばっかり。
だめですよー。彼女さんに怒られますよ」

( ・∀・)「だからいないって言ってるのになー」

ζ(゚―゚*ζ「はいはい。そういう事にしておきましょうか。
でも私は騙されませんよー」

( ・∀・)「嘘じゃないのにー」

二人の間にある台の上には二つ鉱石が乗っていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:56:36 ID:CsIsRGwE0<>
一つは黄色、一つは水色。
共に武器や防具の強化に使える素材アイテムだが、
単独でアクセサリーにすることも出来た。

ζ(゚―゚*ζ「さ、モララーさん、お仕事の話に戻しましょ」

( ・∀・)「もっとデレさんのこと知りたいのにな」

ζ(゚―゚*ζ「はいはい。また今度」

( ・∀・)「ブー」

すねた様に唇を尖らせるモララー。
ドクオがやったら一大事だが、モララーがやるとそれすらもさまになっている。

そんな顔をしながらも手元のアイテム、黄色い鉱石をタップするモララー。
ウインドウを出し、内容を確認する。
見ただけで見当は付けていた名前がそこにあった。

( ・∀・)「サシトリン。パワー系の強化アイテムだね。こっちは…」

今度は水色の鉱石を叩く。

( ・∀・)「アルパタイト。スピード系の強化アイテムだね。
でも…たしか、情報が追加されてたような。
他の鉱石と同時に使うことで、パワー系の強化アイテムにかわるとかなんとか…」

ζ(゚―゚*ζ「そうなんですか?知らなかった!」

( ・∀・)「両方ともレアってわけじゃないけど、結構人気だから売れば高額で買ってもらえるはず」

ζ(゚―゚*ζ「へー」

( ・∀・)「もしくは自分の武器の強化に使った方が良くないかな?」

ζ(゚―゚*ζ「上の階の狩りも行かないから、あんまり興味ないんですよ。
きれいな石だからブローチとかネックレスにできたら素敵だなって思って」

( ・∀・)「あーそうなんだ」

ζ(゚―゚*ζ「はい」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 14:59:14 ID:CsIsRGwE0<>
( ・∀・)「でも、武器を強化しておくのは良いことだともうけど」

ζ(゚―゚*ζ「んー。私パワー系の武器じゃないからなー」

横に立てかけた両手棍を見るデレ。
細長く、ピンクに塗られたそれは一見武器とは思えないほど装飾されていた。

( ・∀・)「みたいだねー」

ζ(゚―゚*ζ「二つとも、この前ツンさんに作ってもらった服と帽子に合いそうだなって思って」

( ・∀・)「そうなんだ!じゃあこれで何を作るにしても、服を着ているところを見てみないと。
良ければ奥の部屋で」

ζ(゚―゚*ζ「はい!今度着てきますね!」

( ・∀・)「着替えて……う、あ、うん、そうだね…」

ζ(゚―゚*ζ「じゃあこれ、モララーさんのところでも加工できるんですね」

( ・∀・)「うん、出来るよ。じゃあその打ち合わせもかねて食」

音を立てて開かれるドア。

(*゚ー゚)「こんにちはー」

(,,゚Д゚)「こんにちはだゴルァ」

ζ(゚―゚*ζ「お客さん来たみたいなので、またデザイン考えたら来ますね」

( ・∀・)「事でも……。うん。そうだね。あ、いやこいつらは客じゃ」

(*゚ー゚)「突然すみません。お忙しいならまた後できます」

( ・∀・)「!わるいなしぃ!それじゃあ」

ζ(゚―゚*ζ「私はもう帰るから大丈夫ですよ!
それではモララーさん、また宜しくお願いしますね」

流れるような所作で台の上の鉱石を自分のストレージに戻すデレ。
そして可愛らしくお辞儀をする。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:00:24 ID:CsIsRGwE0<>
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ失礼します」

( ・∀・)「で、デレさん!」

ζ(゚―゚*ζ「はい?」

可愛らしい両手棍を片手に持って店を出ようとするデレに声をかけるモララー。
振り向いたデレの顔をじっと見る。

ζ(゚ー゚*ζ「モララーさん?」

見惚れているかのようなモララーの視線に、
デレは小首をかしげながら不思議そうに彼の名を呼ぶ。

( ・∀・)「あ、いやその、そ、そう!その鉱石、どこで手に入れたのかなって。
確か採取できるのは結構上の階層だからさ。
デレさんの行ってる階じゃなさそうだから」

ζ(゚ー゚*ζ「ああ、これですか。
公園で店を出してたプレイヤーさんから買ったんです。
ちょっとお話したらお安くしてくれて、すごく良い方だったんですよ。
だからそんなアイテムだったなんて知らなくって、びっくりしちゃいました」

( ・∀・)「あ、そ、そうなんだ。
良かったね」

ζ(゚ー゚*ζ「はい!ではまた来ますね」

モララーには笑顔で手を振り、
軽く会釈をしながらしぃとギコの横を通り過ぎて店を出て行った。

(*゚ー゚)「ギコ君、可愛い人にお辞儀されてニヤニヤしないの」

(;,,゚Д゚)「し、してないぞゴルァ」

(*゚ー゚)「すみませんモララーさん、お邪魔しちゃって」

( ・∀・)「お、おう。ほんとだぞおい。今日こそは落とせそうだったのに」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:01:55 ID:CsIsRGwE0<>
真剣な瞳でデレの後ろ姿を見送っていたモララーだったが、
しぃに声をかけられると普段の砕けた調子に戻った。

(*゚ー゚)「……それは申し訳ありませんでした」

(,,゚Д゚)「とてもうそういう風な相手には見えなかったぞゴルァ」

(;*゚ー゚)「ちょ!ギコ君!ホントの事でも言っちゃダメ!」

( ・∀・)「………お前ら二人とも出てけ」

(*゚ー゚)「あ!ご、!ごめんなさい!ほら、ギコ君も!」

(;,,゚Д゚)「す、すまなかった!」

( ・∀・)「なんだろう。謝られると更にムカつくこの感じ」

その後モララーの機嫌を直すのに、三十分の時が過ぎた。





( ・∀・)「で、なんだよ」

その三十分の間に二組の客もあり、
それなりに売り上げもあったためモララーの機嫌はある程度まで回復していた。

だが少し冷たさを残しているのは、
慌てたしぃとギコを見るのが面白いと思ったモララーの人の悪さである。

そしてそれはゆったりと来客用のソファーに腰かけているモララーと、
その横で直立不動で立っているしぃとギコという状況も作り上げていた。

(;*゚ー゚)「はい…」

(;,,゚Д゚)「ゴルァ…」

( ・∀・)「なんだ、言い辛いことなのか?
とりあえず言ってみろよ」

口を濁す二人を見て少し遊び過ぎたかと反省したモララーは笑顔で声をかけるが、
二人は互いの顔を見ながら言い出せないでいた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:04:01 ID:CsIsRGwE0<>
( ・∀・)「どうした?
……なんかミスでもしたのか?」

(*゚ー゚)「一つ、知っていたら教えてほしいことがあります」

意を決したように口を開くしぃ。
その真剣なまなざしに、モララーも座ったままだが背筋を伸ばした。

( ・∀・)「…なんだ?」

(*゚ー゚)「…VIPとラフィンコフィンは、どういった協力関係なんですか?」

それは、しぃにとって一世一代の賭けだった。
今しぃが持っている情報から質問をするのならば、
『VIPとラフィンコフィンは繋がりがあるんですか?』
と聞くのが正しいのであろう。
だがしぃはあえて既に繋がりがあるという前提をもち、
更に自分がそれを知っているというミスリードを出来るような質問を必死に考えたのだ。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

知識は、武器になる。
知らないという事実を隠し、
知っているという嘘を武器にしたしぃ。
それは全て会話の主導権を握り、自分の知りたい情報を、真実を手にするため。

そしてギコはそれに追随し、
自分らしくモララーに詰め寄った。

( ・∀・)「ラフィンコフィン…ね……」

しかしモララーはその言葉に慌てることは無かった。
落ち着いて素早く入り口のドアを見る。
続いてその横の飾り窓も観察。
こちらを伺う人影が無いのを自動発動したスキルを使って確認し、
一息ついた。

( ・∀・)「少なくとも、こんな外から覗かれまくり盗聴し放題の場所で聞くことじゃないな」

(*゚ー゚)!

(,,゚Д゚)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:06:14 ID:CsIsRGwE0<>
腰に携えた武器を触れながら先ほどモララーが気にした方に身体を向ける二人。

( ・∀・)「大丈夫だ。ドアは閉まっているし、
ショボンの趣味でこの店の盗聴防止レベルは高めだからな。
お前らが話があるって時点で、レベルも上げてある。
今確認した限りじゃ、外で聞き耳を立てていたやつも覗いていたやつもいない」

モララーの言葉に緊張を緩める二人。

( ・∀・)「だが自分の言葉には責任を持て。
たった一言で、ギルドのメンバー全員が周りから非難され、
殺される可能性だってある」

声も無く、身体を強張らせる二人。

そんな二人を横目に店のドアを開け、閉店の表示を出すモララー。
そしてドアを閉めると鍵をかけ、操作パネルを出す。
外から中が伺える飾り窓が、不可視モードに変わった。

(*゚ー゚)「…すみません」

( ・∀・)「謝られても仕方ない。
今回はそんなことにはならなかった。
事実はそれだけだ」

改めてソファーに座るモララー。

背凭れに身体を預けてゆったりと腰かける。
足を組み、端正な顔を歪め、汚物を見るような視線を二人に向ける。

非難もフォローもしない。
事実をただ淡々と告げるだけ。

(*゚ー゚)「……」

(,,゚Д゚)「……」

そして何も言えないでいる二人をゆっくりと見る。

( ・∀・)「(………)」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:07:36 ID:CsIsRGwE0<>
モララーは、会話の主導権を握ることに成功した。

実のところ、しぃとギコがこの件に関して聞きに来る可能性があることを、
クーからの連絡で予想していた。

そこで幾つかの質問内容と状況のシミュレーションをしておいたのだ。

( ・∀・)「(……だが)」

この状況下でしぃが発した質問は、そのシミュレーションの中でも最低レベル。
モララーにとっては胸ぐらを掴んで殴りたいレベルであった。

( ・∀・)「(最悪のケースだな)」

自分の容姿が整っていることを認識しているモララーは、欠点もよく分かっていた。

それは、威圧感が無いこと。
整ってはいるがどこか中性的な自分の顔が、
凄みや迫力には欠けることをよく知っていた。

だから激情に任せて怒っても、怒鳴っても、
どこかただのヒステリーの様にみられてしまうことがあることを理解していた。

そしてそれはいつも人の顔色を伺っていた今までの生活の影響だということも。

( ・∀・)「(予想してなかったら、危なかったな)」

だからシミュレーションし、
人から敵意を向けられない様にいつも見せている笑顔を封印し、
怒っているように見える姿を工夫した。

だが、今回はその必要は無かった。

彼は、本気で怒っていた。

憤怒と言ってもよい。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:08:36 ID:CsIsRGwE0<>
ショボンが、仲間が、自分が、必死で守っているこのギルドを、仲間を、
ほんの少しでも脅かす可能性のあることをしたこの二人に対し、
憎しみと言っても良い憤怒の気持ちを全く隠すことなく、
二人に向けて放出しているのだ。

失敗は誰にでもある。
仲間の事を、ギルドの事を思っていても、
空回りしてしまうことはある。
それは仕方ない。

だけどこの女は違う。

ギルドの事なんて、仲間の事なんて考えていない。
考えていたら、こんな場所で、こんなふうに、あんな質問を出来る訳がない。

自分の事と、隣にいる男の事しか考えていない。

そんなやつを、仲間だなんて認めることは出来ない。

そんな思いが、モララーの頭の中をぐるぐるとまわった。

( ・∀・)「お前を仲間だと認めない」

おもわず口にした言葉。

はっとした顔でモララーを見る二人。

モララー自身、その言葉に驚いていた。

だが一度口にしてしまった以上、その責任は取らなければならない。

( ・∀・)「このギルドとラフィンコフィンの関係…ねぇ。
関係があることは、もう確定なんだな、お前の中で」

(*゚ー゚)「そ、それは」

( ・∀・)「推測だけで、殺人ギルドとこのギルドが協力関係にあるだなんて、確定したのか?」

(*゚ー゚)「………」

( ・∀・)「自分の好奇心だけで、あんな質問をしたのか?」

(*゚ー゚)「違います!私はただ事実を知りたくて!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:14:53 ID:CsIsRGwE0<>
( ・∀・)「知って、どうするつもりだった?」

(*゚ー゚)「え?」

( ・∀・)「おれ達が、ラフコフと繋がっている。
万が一それが事実だった時、お前はどうするつもりだった?」

(*゚ー゚)「そ、それは…その…」

( ・∀・)「色々考えられるよな。
ギルドを辞めて、告発して、ヒーロー・ヒロインにでもなる気だったか?
それともおれ達を倒すつもりだったのか?
もしくは仲間になってPKしまくるつもりだったのか?」

(*゚ー゚)「そんなこと!」

( ・∀・)「じゃあ何をするつもりだったんだ!」

モララーの言葉が、鋭利な刃物となってしぃを切り刻む。

( ・∀・)「さっきお前の不用意な一言がこのギルドを壊滅させる可能性があった様に、
お前の行動がギルドを窮地に追い込んでしまうかもしれない。
そんなことを微塵も考えずに言った言葉だ。
余程高尚で意義も意味のある質問だったんだろう。
悪いが俺には想像もつかないから、教えてもらえるかな」

口にすることによる怒りの増長。
そこまで思っていなくとも、口にした一言一言に怒りが増していくの感じた。

(*  )「わたし…そんな……」

硬直し、顔を真っ青にして震えているしぃ。
その横で、ギコがしゃがんだ。

(,,゚Д゚)「すみませんでした!」

土下座するギコ。
しぃが何も言えずにその姿を見る。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:16:04 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「おれが止められなかった!
傍にいたのに、注意できなかった!
二人の責任です!
許してください!」

(*  )「ぎ、ギコ君…」

同じように座ろうとするしぃ。

( ・∀・)「土下座っていうのは、」

そこに響くモララーの声。
二人が硬直し、恐る恐る次の言葉を待つ。

( ・∀・)「価値のある奴がするから意味があるんだ。
お前達は、自分にそれだけの価値があると思っているんだな」

(*  )「……モララーさん…」

(,, Д )「………」

モララーの冷たい言葉に何もできなくなる二人。

それを見たモララーが小さくため息を吐いた。

( ・∀・)「目障りだから、とりあえずそこに座れ」

(*  )「………」

(,, Д )「………」

( ・∀・)「座れ。そんな事も出来ないのか」

慌ててモララーが指定した目の前のソファーに座る。
だがもちろん背凭れに寄りかかることなどできず、
二人並んで姿勢正しく浅く腰掛ける。

( ・∀・)「おまえらにはちゃんと話したことなかったな。
おれがこのギルドに入った経緯を。
……教えてやるよ、おれがどれだけこのギルドが大事なのかを」

一瞬遠い目をして壁の棚、その一番上に置いてある数個のクリスタルを見てから、
モララーは口を開いた。




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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:18:42 ID:CsIsRGwE0<>



5.見守る者





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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:20:28 ID:CsIsRGwE0<>
『雑貨屋BOOOON』

色々な用事を駈足で済ませたブーンが倉庫から出てくると、
店にはジョルジュがいた。
 _
( ゚∀゚)「よっ」

( ^ω^)「おっお。さっきはお疲れ様だお」
 _
( ゚∀゚)「ほんとだよな。急に呼び出されて最前線の迷宮区とか」

( ^ω^)「ジョルジュは楽しそうだったおね」
 _
( ゚∀゚)「否定はしないけどよ、それはブーンもだろ?」

( ^ω^)「おっおっお。
ユキカゼさん、お茶をお願いするお」

カウンターをNPCの【ユキカゼ】に任せたまま、商談用のソファーに座るブーン。
同時にウインドウを出し、いくつか操作をした。
そしてジョルジュがローテーブルを挟んだ前に座る。

( ^ω^)「ショボンはどうしたんだお?」

ウインドウを消したブーンが尋ねる。
 _
( ゚∀゚)「ああ、あのあと兄者の所に行ったら弟者がいなくってよ。
なんでも鍛冶屋の知り合いがいなくなったみたいで、
それの情報集めでどこかに行った」

( ^ω^)「鍛冶屋の知り合い…」
 _
( ゚∀゚)「たしか、グレンとか…」

(;^ω^)「グレンさんかお!」
 _
( ゚∀゚)「なんだ、ブーンも知り合いなのか」

(;^ω^)「直接会ったのは下の店で武器と防具を置いてた時に数回だけだお。
でも、兄者と弟者がすごくお世話になったってのは聞いてるから二人が…」
 _
( ゚∀゚)「兄者は普通にしてたけどな。
そっちはツンがサポートしてた。
で、弟者の方にショボンが向かった」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:21:45 ID:CsIsRGwE0<>
( ^ω^)「そうかお。
二人がそれぞれついていてくれるなら、安心だおね」
 _
( ゚∀゚)「そうだな」

白シャツに黒ベスト、黒パンツというウエイターの様な姿の【ユキカゼ】が二人の前にカップを置いた。

( ^ω^)「ありがとうだお」
 _
( ゚∀゚)「さんきゅー」

ニッコリと微笑んだ後お辞儀をし、カウンターに戻る【ユキカゼ】
 _
( ゚∀゚)「……ツンの趣味か?」

( ^ω^)「女の子はダメ!って……」
 _
( ゚∀゚)「なるほど」

( ^ω^)「別に良いと思うんだけど」
 _
( ゚∀゚)「最近はあいつも外に出ることが多いみたいだから、
ブーンが店で女の子と二人っきりとか嫌なんじゃないか?」

( ^ω^)「NPCなのに?」
 _
( ゚∀゚)「NPCでも、だろうな。
と言うかブーン、おれより鈍感とかやばいだろ」

( ^ω^)「おっお。気を付けるお」
 _
( ゚∀゚)「まったく。ツンも大変だな」

( ^ω^)「ツンが言ってたお」
 _
( ゚∀゚)「なにを?」

ξ ゚ω゚)ξ「『うちの男共は自分の事には鈍感すぎる!』って」
 _
( ゚∀゚)「顔が酷い」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:23:24 ID:CsIsRGwE0<>
( ^ω^)「おー。けっこうよくできた真似だと思ったんだけど、だめかお?」
 _
( ゚∀゚)「殴られたくなければツンの前ではやらない方が良いと思う」

(;^ω^)「肝にめいじるお」

顔を強張らせながらカップのお茶をすするブーン。
ジョルジュも同じように啜る。

お茶の種類はよくショボンやクーが淹れる物と同じはずなのに、
どこか味が違う気がした。
 _
( ゚∀゚)「なあ、ブーン…」

( ^ω^)「お?」
 _
( ゚∀゚)「あー、いや、その…な…」

( ^ω^)「盗聴防止レベルは最大。
ドアの開閉は、ドアに誰かが触った時点で中にベルが鳴る様にしてあるお。
窓は可視レベルを調整して中にいる人を見えないようにしてあるお。
あと、ユキカゼさんは中の事を誰かに話したりすることは無いお」
 _
( ゚∀゚)「自分の事には鈍感…。仲間のことはよく見てるってか」

( ^ω^)「おっおっお」
 _
( ゚∀゚)「……ギコとしぃ、どうなると思う?」

(;^ω^)「おーーー。あの二人なら大丈夫…だと思いたいおね」
 _
( ゚∀゚)「そうだよな…」

( ^ω^)「それよりも」
 _
( ゚∀゚)「ん?」

( ^ω^)「みんながあのことを知っていたことを知った時に、ショボンがどう動くかが心配だお」
 _
(;゚∀゚)「あー。そっちな」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:25:44 ID:CsIsRGwE0<>
( ^ω^)「完全に予想外だと」
 _
( ゚∀゚)「そっか?」

( ^ω^)「『もしかしたら知っているかも』『何かに気付いているかも』くらいは思っていると思うけど、
丸々全部知っているとは思ってないと思うんだおね」
 _
( ゚∀゚)「あいつが?」

( ^ω^)「ショボンだって万能じゃないお」
 _
( ゚∀゚)「そりゃあそうだけどよ」

( ^ω^)「だから、僕達がそばにいるんだお」

ニッコリと微笑むブーン。
それをみてジョルジュは『やっぱりこいつらの仲は凄いな』などと思いながら、
もう一度カップに口を付けた。

( ^ω^)「だからそのあとショボンが何かしてしまわないかが心配だお」
 _
( ゚∀゚)「んーー」

腕を組んで悩むポーズをするジョルジュ。
しかしすぐに腕を解く。
 _
( ゚∀゚)「あいつが何を考えてるかなんて、おれが分かる訳ないか」

( ^ω^)「おっおっおっ」

お互いに相手の顔を見ながら、同じように笑う二人。
 _
( ゚∀゚)「…でもやっぱりおれはあの二人の方が心配だ」

( ^ω^)「ぎこしぃかお?」
 _
( ゚∀゚)「こういったらなんだが、
あいつらはおれ達ほどこのギルドに執着していないだろうからな。
口外したりはしないだろうけど、辞めちまうかもなギルドを。
それは、寂しいよな」

( ^ω^)「そうかお?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:28:27 ID:CsIsRGwE0<>
 _
( ゚∀゚)「…びっくりだ」

( ^ω^)「お?」
 _
( ゚∀゚)「お前の方がさみしがるかと思った」

( ^ω^)「同じギルドじゃなくても会えるし話せるし」
 _
( ゚∀゚)「あーまあそりゃそうなんだけどよ」

( ^ω^)「それに…」
 _
( ゚∀゚)「それに?」

( ^ω^)「たとえギルドは違っても、もうギコとしぃはずっと仲間だお」
 _
( ゚∀゚)「…そうだな。そうだった。それこそが、この【VIP】。
おれ達なんだよな」

( ^ω^)「だおだお」

にんまりと笑ったジョルジュがカップに残ったお茶を飲み干し、
勢いよく立ち上がる。

( ^ω^)「お?」
 _
( ゚∀゚)「誰か誘って、ひと狩り行ってくる!」

( ^ω^)「気を付けて行ってらっしゃいだお!」

笑顔で店を出るジョルジュ。

ブーンはそれを見送り、店のモードを通常に切り替える。

外からの明かりが入って、店の中が明るくなったように感じた。

( ^ω^)「………ギルド……か」

そして一言つぶやいて、カウンターの中に戻った。





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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:31:13 ID:CsIsRGwE0<>




6.共に戦うということ






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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:32:44 ID:CsIsRGwE0<>
VIP牧場。

中心部の開けた場所に、三人の男が立っている。

一人は長身の身体にポンチョの様な防具を纏い、
その背よりも長い棍棒を携えている。

一人は和服。
濃い青灰色の袴をひらめかせ、刀を携えている。

十メートルほど離れた二人。
互いを真剣な表情で見つめる二人を見守る一人の男。
柔和な顔をしているが、その視線は鋭く二人を見守っている。
その足元にいる小狼型モンスターも、大人しく寄り添っていた。

そして二人の間に浮かんでいたカウンターが10の文字に変わったと同時に、
二人が武器を互いに向けて構えた。

袴の男の刀が青白く光る。

横で見るとその光と刀の角度が分かるが、
前に立つ長身の男からは、袴に隠れて見えていないことだろう。

そして長身の男の持つ棍棒は輝きを放ってはいない。
つまりは剣技を発動するつもりがないことを示している。

二人の間に浮かぶ数字が、一つずつ減っていく。

緊張と言う名の空気が三人を包む。

そして、数字がゼロになった。

何も言わずただ駆け出す刀の男。
刀を出来る限り後ろに回した奇妙な走り方なのだが、
そのスピードは瞬きをすることすら許さない。

そして長柄物である武器を手にした相手の懐に即座に踏み込むために、
自身の走り以上のスピードを生む突進の剣技を発動した瞬間、
目の前に棍棒が現れた。

ミ,,゚Д゚彡「か!?」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:33:56 ID:CsIsRGwE0<>
勿論相手から目を逸らしてなどいない。
相手はその場に立ったま棍棒を斜め上から振り下ろす様に構えを変えようとしていたはず。

しかし現実に棍棒はすぐ目の前にまで迫ってきている。
そして止まっても避けることは叶わないと判断した。
更に避けるために体勢が変われば剣技のキャンセルがおこり、
その後の硬直が起きてしまう。

ミ,,゚Д゚彡「はっ!」

光り輝く刀を斜め上に振りぬく。
上空に回転しながら飛ぶ棍棒。
そのまま連続技につなげるイメージを持とうとするが、
思っていたよりも当てた衝撃が少なかったために力が余り、体勢がぶれた。

ミ,,゚Д゚彡「えっ?」

何とか次の技に繋げられる構えを取りつつ相手を見ると、
余裕でこちらに棍棒で突きを放とうとしていた。

ミ,,゚Д゚彡「早いから!」

相手がクイックチェンジをここまで極めていたことに驚きつつも、
更にその棍棒を上からたたき落とすかのように刀を振る。

澄んだ金属音が響く。

ミ,,゚Д゚彡「くっ」

繋げられる連続技は無い。
そのまま剣技後の硬直を起こす。
しかし刀により相手の武器も封じているから追撃は無いはず。

( ゚∋゚)「終わりだ」

武器を放したクックルが、
落ちてくる棍棒をジャンプして掴み、
そのままフサギコの左肩に一撃を与えた。



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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:35:26 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「クックルの勝ちもな!」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

決闘モードが終了し、
頭に勝利のアイコンを出したクックルの足元にビーグルが駆け寄り絡みつく。

( ゚∋゚)「大丈夫か?ふさ」

ミ,,゚Д゚彡「……まけたから…」

片膝をついて項垂れているフサギコ。

ビーグルを抱き上げたクックルが片手を差し出すと、
素直にその手を掴んで立ち上がった。

ミ,,゚Д゚彡「今のは…剣技?」

( ゚∋゚)「いや、剣技は使っていない。
全部通常技だ」

ミ,,゚Д゚彡「……」

呆然としたフサギコの肩に、近寄ってきたモナーが手を乗せた。

( ´∀`)「説明が必要もなね。
ふさは何が起こったのかよく分かってないもな」

ミ;,,゚Д゚彡「おしえてほしいから!」

( ゚∋゚)「もちろんだ」

( ´∀`)「じゃあ部屋に戻って、お茶でも飲みながら話すもなよ」

( ゚∋゚)「そうだな」

ミ,,゚Д゚彡「あ、で、でも」

建物に向かう二人と、それを見て躊躇するフサギコ。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:37:07 ID:CsIsRGwE0<>
( ゚∋゚)「今回の敗因に対しての対処策は、
身体を動かすよりもまず考えることが必要だと思う。
だからまずは一息入れよう」

ミ,,゚Д゚彡「分かったから!」

クックルの言葉に素直にうなずいて後を追うフサギコだった。




部屋に入り、モナーが用意したお茶を飲む三人。
フサギコとクックルは装備も解除しており、ラフな姿だ。

そしてクックルが口を開いた。

( ゚∋゚)「棍棒を投げたんだ」

ミ,,゚Д゚彡「武器投擲スキル!」

( ゚∋゚)「いや、本当にただ投げただけだ」

ミ,,゚Д゚彡?

( ´∀`)「最初に投げたのは攻撃としての投擲ではなく、
ただの目くらまし、ふさの動きを止める為だったってこともな」

ミ,,゚Д゚彡!

テーブルを挟んで多人数掛けのソファーに一人ずつ座るクックルとフサギコ。
そしてテーブルの側面に置かれた一人用のソファーにモナーが座っている。

三人が三人とも、真剣な顔をしている。

▼-ェ-▼「きゅーん」

そんな空気の中、モナーの膝の上ではビーグルが気持ちよさそうに撫でられていた。

( ゚∋゚)「そういう事だ。
フサギコは剣を隠すために相手に対してほぼ直線の動きしかしないから、
前後のタイミングをずらすことはあっても左右に揺れることはやらない」

ミ,,゚Д゚彡「で、でも」

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:38:35 ID:CsIsRGwE0<>
( ゚∋゚)「ああ。ショボンの使う投擲武器は細めや小さめが多いし、
でかくても細剣や片手剣だろう。
大きい物でも槍や棍棒を投擲スキルを使って投げれば刺さるように飛ぶわけだから、
避けながら進むことが出来る。
回転して飛ばす斧やハンマータイプでも、
軌道は読めるからお前の実力なら避けられるだろうな」

ミ,,゚Д゚彡「……から…」

( ゚∋゚)「だが、投擲スキルを使わないでただ投げた時、
システムのアシストを受けない分その動きはランダムだ。
現実世界よりは動きは規則性が出来ていると思うがな。
さらに決まった投げ方しかできない剣技と違い、どんな投げ方もできる」

ミ,,゚Д゚彡!

( ゚∋゚)「そう。今回は武器を構える動きを利用して、武器を投げた。
投げたというよりわざと手を緩めて、すっぽ抜けるように飛ばした。
方向は決められるが、どんな風に飛ぶかはこちらにも制御できない」

( ´∀`)「今回はうまくふさの視界と動きを誘導できたもなね」

( ゚∋゚)「ああ。剣技を使わせてその場に止まらせる。
それが出来ればあれは成功だった。
その間におれは落ち着いてクイックチェンジを使って新しい棍棒を手にし、
攻撃をおこなった」

ミ,,゚Д゚彡「……」

( ゚∋゚)「そしてその一撃を防御することで剣技後の硬直を起こさせる。
今回はおれの棍棒も封じられたが、それも見越していたから、すぐに次の手に移行できた」

ミ,,゚Д゚彡「最初に飛ばした」

( ゚∋゚)「そう。最初に上空に飛ばされた棍棒の動きにも意識していた。
だから落ちてくる動きに合わせることが出来た」

ミ,,゚Д゚彡「………すごいから……」

呆然とクックルを見るフサギコ。
その視線を感じ、苦笑しながらモナーを見るクックル。
モナーは笑顔でそれに頷くと、何かに気付いたかのようにウインドウを開いた。

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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:40:06 ID:CsIsRGwE0<>
クックルはフサギコに視線を戻す。

( ゚∋゚)「こんなふうにふさの弱点、弱い部分を指摘する為に、おれも必死に頑張ったんだがな」

引き締めていた表情を崩し、楽しそうな笑顔をフサギコに向けた。

ミ,,゚Д゚彡「え?」

( ゚∋゚)「ギルド内大会でもここの所負け無しだし、
戦い方に幅が無くなってきているようだったからな」

ミ,,゚Д゚彡!

( ゚∋゚)「得意な技を極めるのも大事だけど、
弱点をフォローする想像力も必要。
必勝パターンが破られることも想像しないといけない。
慣れた相手にも思考を固定してはいけない。
相手が思いもよらない手を繰り出すこともあるかもしれないから。
『もしかして』に囚われることなく、
『もしも』の動きに対応できる柔軟さを意識することが大事」

ミ,,゚Д゚彡「………あれ?」

( ゚∋゚)「気付いたか。
これはおれじゃなくて、ショボンから言われたんだ。
指揮の練習の時にな。
ついでに言うと、今回のこれもショボンに頼まれたんだ」

ミ,,゚Д゚彡!

( ´∀`)「でもやり方はクックルが考えたもなよ。
ショボンが教えてくれたのは、フサギコの付け入る隙だけもな。
クックルが一杯考えて、練習も一杯したもなね」

( ゚∋゚)「モナーも一緒に考えてくれたし、練習に付き合ってくれただろ」

( ´∀`)「もなもな。
メインで考えたのはクックルだし、練習もモナーはちょっと手伝っただけもな」

ミ,,゚Д゚彡「みんな……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:43:04 ID:CsIsRGwE0<>
瞳に涙を浮かべて二人を見るフサギコ。

( ゚∋゚)「おれ達はお前に勝つために色々工夫しているが、
お前はそこまで色々な手を試さなくてもおれ達に勝てるからな。
たまにはこういうのも良いだろ?」

ニヤッと笑ったクックルに、フサギコも笑顔を返す。

ミ,,゚Д゚彡「ふ、ふさも色々練習するから!
次は負けないから!」

( ゚∋゚)「練習したのはこれだけじゃないからな」

ミ,,゚Д゚彡「!が、頑張るから!」

( ´∀`)「あと、兄者には内緒にしないともなね」

( ゚∋゚)?

ミ,,゚Д゚彡?

( ´∀`)「ふさに勝てる手があるのに、
大会以外でそれをやるなんて!!!!
って、絶対に怒るもな」

モナーの言葉に顔を引きつらせる二人。

(;゚∋゚)「そ、そうだな」

ミ;,,゚Д゚彡「内緒にするから」

顔を見合わせて頷きあう二人を見て笑うモナー。

すると視界の隅にメッセージが届いたことを知らせるアイコンが点いた。

( ´∀`)「失礼するもな」

ウインドウを出すモナー。

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 15:44:20 ID:Lwwnx60Y0<>うおおお!まさかの大晦日投下 支援しえん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/12/31(水) 15:52:50 ID:Ey.uQYCs0<>年内に来てくれるとは思ってなかった
支援支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:58:32 ID:CsIsRGwE0<>
( ゚∋゚)「今日は店はどうしてるんだ?
しぃはギコと狩りだろ?」

ミ,,゚Д゚彡「今日はNPCの【マーガレット】さんと【ダリア】さんに任せてきたから」

( ゚∋゚)「珍しいな」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンから、たまにはNPCの人に任せてみて、
自分やしぃが居る時との客の違いを見たほうが良いって言われたから」

( ゚∋゚)「あー。中にはプレイヤーのやってる店が嫌いってやつもいるみたいだしな」

ミ,,゚Д゚彡「…かなしいから」

( ゚∋゚)「色々なやつがいるって事さ。
飲食関係は攻略に直接関係ない分、ただのコル集めだって言ってるやつもいるみたいだし」

ミ#,,゚Д゚彡「……」

( ゚∋゚)「美味しい物を食べれば心が休まるし、
活力も湧くと思うけどな」

ミ*,,゚Д゚彡「!」

( ´∀`)「二人ともいいもな?」

( ゚∋゚)「どうした?」

ミ,,゚Д゚彡?

( ´∀`)「モララーから連絡が来たもな。
ラフコフの件で、ギコとしぃはモララーの所に行ったもな。
それでこれから、こちらに来るように言ったってこともな」

クックルとフサギコの顔に緊張が走る。

( ゚∋゚)「……クーが言っていた通りになったな」

ミ,,゚Д゚彡「だから……」

( ´∀`)「二人がどうするかは、二人の気持ち次第もな。
ただ、モララーがやっちまったようもな」

ミ,,゚Д゚彡「?」

(;゚∋゚)「やっちまった?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 15:59:32 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「クックルには今から説明するもなけど、
ふさはモララーのところに行ってあげてほしいもな。
モララーからのメッセージを転送するけど、詳しい話はモララーから聞いてほしいもな。
あと、クーからあの二人が今日の採取業務でやらかしたことも来ていたもなから、
それも転送するから読んで欲しいもな」

ミ;,,゚Д゚彡「わ、わかったから」

立ち上がるフサギコ。
モナーから放たれているオーラを感じて慌ててはいるが、
しっかりとクックルとモナーとビーグルに挨拶をしてから部屋を出て行った。

(;゚∋゚)「モナー、『やっちまった』っていうのは?」

( ´∀`)「二人がアホなことをしたのでぶちぎれたみたいもな」

(;゚∋゚)「……モナー?もしかして…」

(#´∀`)「今から説明するけど、モララーがぶちぎれても仕方ない様もな」

(;゚∋゚)「(………なにしでかしたんだ、あの二人)」

(#´∀`)「しかも採取中もやらかしていたもな」

モナーの膝の上。
いつの間にか目を覚ましていたビーグルが、
恐る恐る一声鳴いた。






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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:00:36 ID:CsIsRGwE0<>



7.事実と思惑





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◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:02:07 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「正直に言うもな。
モナーは、二人の加入は心配だったもな」

にこやかなモナーの言葉が、目の前のソファーに座ったギコとしぃに突き刺さる。

( ´∀`)「あ、反対はしなかったもなよ。
ギルマスの、ショボンの決めたことだったもなからね。
このギルドに置いては、メンバーの加入はショボンに一任されているもなから、
モナー達がとやかくいう事ではないもな」

モナーの持つ人柄からか、
VIP牧場にあるこのリビングはいつも暖かく、安らぐことが出来た。

だが、今日は違った。

( ´∀`)「だから、加入が決まった時は特に何も思わなかったもな。
紹介されたときも、心から歓迎したもな。
けれど、加入の経緯を聞いた時に、心配になったもな」

どこか寒々しく、心の芯が冷たさを感じていた。

ビーグルも、部屋の隅で丸まっている。

(,,゚Д゚)「ど、どういう事だゴルァ」

モナーの斜め後方に立っているクックルが、じっとギコを見つめた。

(,,゚Д゚)「どう、どういうことですか」

(*゚―゚)「何故…ですか」

( ´∀`)「モナー達とは、加入の経緯が違うからもな」

(,,゚Д゚)「加入の」

(*゚―゚)「経緯?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:04:24 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「そうもな。
モナ達は…。
そう、
モナだけじゃないもな。
ジョルジュも、
弟者も、
兄者も、
フサギコも、
クックルも、
モララーも、
みんな、形は違えど苦しみや心の傷を癒してくれた、
何も言わず隣に立って支えてくれたVIPの皆に惹かれて、
このギルドに入ったもな」

(*゚―゚)「みんな…」

( ´∀`)「二人は、違うもなよね」

(,,゚Д゚)「で、でも最初の五人は」

( ´∀`)「VIPの中心は、あの五人もな。
あの五人の繋がりは、詳しくは聞いていないもなけど、
五人が五人を支えあっているのはよく分かるもな。
最近は色々なつながりが出来て、五人でいることも少なくなったもなけど。
でも、このギルドがあたたかいのは、あの五人が中心にいるからもなよ」

( ゚∋゚)「二人には、おれの入った経緯は話したことがあったな。
他には誰のを知っている?」

(*゚―゚)「さっきモララーさんにお聞きしました。
詳しくお聞きしたのはお二人だけです」

(,,゚Д゚)「お、おれもだぞゴルァ」

( ゚∋゚)「……そうか…」

( ´∀`)「別に、苦しみや傷から立ち直ったから偉いとか言うつもりはないもなよ。
けれど、モナ達の行動は、きっとそこから来ているもな」

(,,゚Д゚)?

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:05:28 ID:CsIsRGwE0<>
(*゚―゚)「行動?」

( ´∀`)「自分とギルドを同等に扱い、同等に大事にすること」

(*゚―゚)「それはわたしも」

( ´∀`)「一緒じゃないもな」

(*゚―゚)!

(,,゚Д゚)「そんなことないぞゴルァ!しぃはいつもみんなの事を気にして」

( ´∀`)「そう、気にしてはいるもなね。
つまり、『意識して気にしなければ表に出てこない』もなよ」

(*゚―゚)!

(,,゚Д゚)!

( ´∀`)「二人は、まずお互いや自分が出て、その後にVIPの皆が出てくるもな」

(,,゚Д゚)「あ…う…」

(*゚―゚)「そ、そんな……」

モナーの言葉を受け止めきれない二人。
なんとか反論をしようとするが、次の言葉が続かない。

( ´∀`)「責めてはいないもな。
ギコとしぃはずっと二人で支えあっていたもなから、当然のこともな。
でも、それが二人と他のメンバーとの違いもな。
そして、今回の事で大きなずれとなったもな」

(,,゚Д゚)「ずれ…」

( ´∀`)「『このギルドがラフコフと繋がっているかもしれない』
その可能性を感じた時、きっと二人はまず相手の事を思ったんじゃないかもな?
ギコはしぃを、しぃはギコを、互いに互いを守ることを」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:06:26 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「!……ごるぁ」

(*゚ー゚)「そう、かも…しれません……」

( ´∀`)「モナーがそれを知った時、まず考えたのは、
ショボンがそれによってギルドの何を守ろうとしているのかだったもな。
クックルはどうもな?」

( ゚∋゚)「おれは、またおれ達のために何をしようとしているんだ…だった。
ま、一緒だな」

(,,゚Д゚)!

(*゚―゚)!

( ´∀`)「ショボンの行動は、いつもギルドの為もな。
クーはギルドの事を第一に考えてしまうショボン個人をフォローしつつ、
副団長としてギルドを守ろう、支えようとしているもな。
ツンだって、ブーンの事だけを考えているように見えて、実は周りをいつも見ているもな。
ドクオがハインの思いに答えないのは、
ギルドの事を第一に考えている自分では、
彼女の思いにちゃんと答えることが出来ないと思っているからだと思うもな。
ブーンはそんな四人をいつも支え、皆の心の拠所になっているもな」

(*゚―゚)!

(,,゚Д゚)!

( ´∀`)「モナーは、そんな五人に出会えたことを、嬉しく思っているもな。
そして、その仲間でいられる自分を誇りに思っているもな。
それはきっと、クックルも、モララーも、皆が一緒もな。
……今の話で、モララーがなぜ怒ったのかは、分かってくれたもな?」

(,,゚Д゚)!

(*゚―゚)!

( ´∀`)「分かってくれたもな?」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(*゚―゚)「はい…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:07:35 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「そして、モナーもクックルも、怒っていることも」

(,,゚Д゚)!

(*゚―゚)「!……は、はい…」

( ゚∋゚)「少し、行動が迂闊すぎたな。
自分のキャパ以上の事をしようとはしないことだ」

(,,゚Д゚)「…はい」

(*゚―゚)「ギコ君は悪くないんです!全部私が」

(,,゚Д゚)「おれも止めなかったから同罪だゴルァ」

( ´∀`)「反省するのはこの後でもな。
今から、大事な話をするもなよ」

(,,゚Д゚)?

(*゚―゚)「大事な話、ですか?」

( ´∀`)「二人が知りたいのなら、
モナーとクックルが知る限りの、
ラフコフとの関係を教えてあげるもな。
そして、ショボンが何を考えているのかを」

(,,゚Д゚)!

(*゚―゚)!

( ゚∋゚)「聞きたくなければ、すぐ帰れ。
そして、自分達の事を考えて、これからの事を決めればいい」

(,,゚Д゚)「教えてください」

(*゚―゚)!

( ´∀`)!

( ゚∋゚)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:08:43 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「おれ達は、知らなかった。
知らなかったことも、知らなかった。
気付いていなかった。
気付こうともしなかった。
だから、それを許してもらえるのならば、
教えてもらえることは、教えてください。
お願いします」

立ち上がり、頭を下げるギコ。

その姿を呆然と見ていたしぃも慌てて立ち上がり、
同じように頭を下げる。

( ゚∋゚)「……」

少し驚いた顔をしたクックルがモナーに視線を移すと、
自分を見ている瞳とぶつかった。

心からの優しい笑顔を見せたモナーにそっと頷くクックル。

モナーも頷き、視線をギコとしぃに戻す。

( ´∀`)「少し長くなるから、ちゃんと座るもな」

ビーグルが部屋の隅から駆け寄り、モナーの膝の上に飛び乗った。







フサギコが裏口からモララーの店に入ると、
店の応接セットで一人モララーが頭を抱えていた。

ミ,,゚Д゚彡「も、モララー?」

(;・∀・)「フサギコ!!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:09:35 ID:CsIsRGwE0<>
フサギコが声をかけると、目に見えて驚いて顔を上げた。

室内の照明は落ちているが、その顔が青ざめているのは分かる。

( ・∀・)「ど、どうした」

しかしすぐに平静を装う。
彼なりのプライドなのだろう。

ミ,,゚Д゚彡「モナーに言われてきたから」

( ・∀・)「モナーに?
あー、いや、大丈夫だ。
ふさもギコしぃの方にいってやってくれ」

ミ,,゚Д゚彡「ダメだから」

( ・∀・)「え?」

ミ,,゚Д゚彡「ばれてるから、仲間の前で無理しちゃだめだから」

( ・∀・)「……ああ、そう、だな」

自分を見るフサギコの視線を感じながら、
再び頭を抱え込むモララー。

( ・∀・)「…どうしよう、フサギコ。
おれ、あの二人に酷いこと言っちまった」

ミ,,゚Д゚彡「……」

( ・∀・)「あの二人は、大事な仲間だ。
一緒に生き抜きたい、大事な仲間だ。
友達なんだ。
でも、さっき、おれは……。
嫌われちまったかな……」

ミ,,゚Д゚彡「仕方ないから」

( ・∀・)!

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:10:58 ID:CsIsRGwE0<>
目の前のソファー。
さっきまでギコが座っていた場所に腰掛けたフサギコを、
驚きをもって見るモララー。

( ・∀・)「フサギコ?」

ミ,,゚Д゚彡「モララーが怒るのは、仕方ないから。
あの二人とモララーとは、VIPに対する思いが違って当然だから」

( ・∀・)「ふさ……」

ミ,,゚Д゚彡「でも、あの二人がVIPを大事に思っていないわけじゃないから」

( ・∀・)!

ミ,,゚Д゚彡「二人は二人なりに、このギルドが好きで、大事に思っているはずだから」

( ・∀・)「……そうだよ…な」

ミ;,,゚Д゚彡「…たぶん」

( ・∀・)「あ、多分なんだ」

ミ;,,゚Д゚彡「きっと…」

( ・∀・)「いや、そこは断言してやれよ」

ミ;,,゚Д゚彡「おそらく…」

(;・∀・)「え?フサギコ実はあのふたりを信用してないとか?」

ミ;,,゚Д゚彡「そ、そんなことはないから!」

モララーの一言に慌てて否定するフサギコ。

そして少しの沈黙の後、二人とも噴き出した。

( ・∀・)「ありがとうな、ふさ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:11:47 ID:CsIsRGwE0<>
笑いながら感謝の言葉を口にするモララー。
それにフサギコは笑顔で答える。

( ・∀・)「うん。あの二人なら大丈夫だ。
次にあったら謝ってくるだろうから、おれも謝ってやろう。
いや、ギコには頭を一発殴るくらいしてやらないとかな」

ひとしきり笑った後に、にやりと笑いながらモララーが呟いた。




.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:13:15 ID:CsIsRGwE0<>


(* − )「私達は…ラフコフには殺されない」

( ´∀`)「そうもな。
ショボンはそれと引き換えに、
食事やPOT、装備などを提供しているもな」

(,,゚Д゚)「そんな…」

( ゚∋゚)「信じたくない気持ちは分かる。
だが事実だ。
活動している殺人ギルドはラフコフだけではないだろうが、
最悪最強の殺人ギルドに命が狙われないというのは、
警戒を他に向けることが出来る。
良くも悪くも、VIPはそれなりに知られたギルドだしな」

(* −)「そんな…」

モララーからモララーの入った経緯を、
そして他のメンバーの事を少しだけ教えてもらった後に、
話は本題へと入っていた。

殺人ギルド『ラフィンコフィン』のギルドマスター【Poh】と交わされた密約。

ショボンが交わされた、Pohとの協定。

そんな方向からも、自分達が守られていたという現実。

(* −)「ショボンさん…」

(,,゚Д゚)「ショボン…」

.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 16:14:58 ID:Lwwnx60Y0<>緊張感がスゲえな 支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:17:38 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「そしてショボンは、その関係が白日の下に晒された時、
その全ての責任は自分だけにあるという流れを作るつもりもな」

(* −)!

(,,゚Д゚)!

( ゚∋゚)「おれ達に話さないのもそのためだ。
その件に関して、おれ達は関わっていないことになっている。
知らないことになっている。
ショボンは、VIPのギルマスとしてではなく、ショボン個人として勝手に行っている。
おれ達がアイテムの提供によって命を守られていることを、隠そうとしている」

(* −)「でも…誰かに知られたらショボンさんがギルマスである以上…」

( ´∀`)「わざとリークしてあるもなよ。
【ショボンがラフコフと関わっている】
【ショボンに近い一部ギルメンもショボンを疑っている】
この二つの情報を流すことによって、
ショボンが独断で行っているってことになるようにしているもな。
きっとショボンの事だから、
ツンや兄者達に無理やり武器や装備を作らせたことになるようにしてあるはずもな」

(,,゚Д゚)「な!そんなことどうやって!」

(*゚―゚)「!そんな都合の良い情報!」

( ´∀`)「一人だけいるもな。
その人の流す情報には信頼のある人が。
その人がそう信じていてくれるなら、何かがあった時にさっき言った情報が回るもな。
そしてその人は、不用意に、迂闊に、そんな情報を流す人ではない人もな」

(*゚ー゚)「情報屋の…」

(,,゚Д゚)「アルゴ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:18:57 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「そうもな。
あの人なら、その情報を真実として流すことが出来るもな」

( ゚∋゚)「騙すのは、リークするのはあの人だけで良い。
もちろん彼女を騙すのは他の誰を騙すより、百人を騙すより大変かもしれないが、
ショボンなら……やりとげるだろう」

沈黙。

ギコとしぃは何もしゃべることが出来ず、
モナーとクックルはそんな二人をやさしく見つめている。

モナーの膝の上ではビーグルが不安げに身体を丸めていた。

そして数分経ったのちに、一人が口を開いた。

(,,゚Д゚)「なんでおれ達に話したんだゴルァ」

(*゚―゚)「え?ギコ君?」

(,,゚Д゚)「おれがブーンのところで手袋を見たのも、
しぃがツンのところで手袋を見たのも、
全部わざと…じゃないのかゴルァ」

( ´∀`)「そうもな」

(*゚―゚)「え!?」

( ´∀`)「実のところ、モナーもそこら辺の事はよく分かっていないもな。
何故二人に話したのか。
何故このタイミングで話したのか。
何故こんなやり方で教えたのか。
その本当の目的は分からないもな。
でも……」

ウインドウを開くモナー。
そして一つの封筒を取り出す。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:21:04 ID:CsIsRGwE0<>
(*゚―゚)「それは」

( ´∀`)「クーからの手紙、いや、指令書もなね」

(,,゚Д゚)「指令書?」

( ゚∋゚)「クーから…。
サブマスターからの指令書だ。
おれ達が、命令されていたという物的証拠だ」

(*゚―゚)「ど、どういう!」

( ´∀`)「もし、周囲にばれて、ショボンが糾弾されて、
その余波がショボン個人だけでなくギルドとしてみんなにも押し寄せようとした時、
ギルドの皆も命を盾に脅されていた、
全ては、ギルドマスターのショボンと、
サブマスターのクーがやったことである。
それを証明する為の指令書もな。
ショボンとクー、そしてギコとしぃ以外の全員に渡されたもな」

(* −)「クーさん…」

( ゚∋゚)「もちろんショボンはこのことを知らない。
と言うよりも、おれ達がここまで詳しく知っていることも知らないはずだ」

(,,゚Д゚)「な!」

( ´∀`)「クーが話してくれたもなよ。
モナ達がちゃんと知らないのはまずいって言っていたもな。
そして、知ったうえでどうするか決めてほしいって言っていたもな。
そしてモナ達は、今までと変わらないギルドの運営を選んだもな」

( ゚∋゚)「きっと、お前達に気付かせたのも、その為だろうな」

(*゚―゚)「でも、それならこんな回りくどい方法じゃなくても…」

( ´∀`)「推測もなけど、クーは、二人にいろいろ考えてほしかったんじゃないかと思うもな」

(,,゚Д゚)「考える?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:21:53 ID:CsIsRGwE0<>
( ´∀`)「モナは二人が入るきっかけになった事件を直接知らないもなから、
想像にすぎないもな」

( ゚∋゚)「おれもだ。
だから、後は直接聞くと良い」

(*゚―゚)「ちょくせつ?」

( ´∀`)「そうもなね。
直接聞くのがいちばんもな。
今回二人にばらすことを、
二人にいろいろ考える時間を作ることを計画した、
クーに」

外は既に、夜の帳が落ちていた。





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:22:46 ID:CsIsRGwE0<>




8.彼女の思い





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:23:53 ID:CsIsRGwE0<>
ギルドVIPホーム。

ギコとしぃがショボンのいる執務室のある二階に行く為に階段を下りていると、
踊り場に、クーが立っていた。

川 ゚ -゚)「やあ二人とも。
私をこんなところに呼び出すとは、偉くなったものだな」

(;,,゚Д゚)「え?」

(;*゚ー゚)「え、そ、そんな」

川 ゚ -゚)「冗談だ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ…」

(*゚ー゚)「クーさん…」

二人からメッセージが来た時に、
ここを指定したのはクーなのだからまったくの言い掛かりなのだが、
何故か二人は動揺した。

そんな二人を見て、
優しく微笑んだクー。

川 ゚ -゚)「さて、本題に入ろう」

(*゚ー゚)「ここでですか!?」

川 ゚ -゚)「どうせこの後ショボンの所にも行くつもりだろう?
ならば簡単に済ませよう」

(;,,゚Д゚)「ゴルァ…」

踊り場には大きなガラス窓がある。
採光用で開かないその窓に、クーはもたれかかった。

外から差し込む柔らかい夜の光が、クーの表情を陰で隠す。

川 ゚ -゚)「おめでとう。今日の鉱物採取で、借金は完済だ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:24:55 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「ゴルァ?」

(*゚ー゚)「え?」

川 ゚ -゚)「なんだ二人とも、嬉しくないのか?」

(,,゚Д゚)「借金?」

(*゚ー゚)「!あ!ギコ君を助けた時の経費!」

川 ゚ -゚)「…自分達がした借金を忘れていたとはなかなか豪胆だな」

(;*゚ー゚)「あははは」

(,,゚Д゚)「(すっかり忘れてたぞゴルァ)」

川 ゚ -゚)「こちらから指示の有ったクエストや店・牧場・農場の手伝いの給金から、
金額に応じて10から35パーセント徴収していたんだが…」

(*゚ー゚)「あー。そういえばそうでしたね」

(,,゚Д゚)「(そうだったのか…)」

川;゚ -゚)「毎月明細渡していたと思うんだが」

(*゚ー゚)「もちろん見てました。
でもあんまりそこの金額は意識していなかったというか…」

(,,゚Д゚)「(まったく見てなかった…)」

川 ゚ -゚)「ま、いいか。
で、今回指示した鉱物採取の給金で、完済となった。
おめでとう」

(*゚ー゚)「あ、はい。ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:25:55 ID:CsIsRGwE0<>
川 ゚ -゚)「今までは、借金を返すためにこのギルドに入って、
働いていたという名目を表に出すことが出来た。
だが、これからは違う。
全ての面から自分の意思でこのギルドにいることとなる」

(*゚ー゚)!

(,,゚Д゚)「も、もとからおれ達は」

川 ゚ -゚)「もちろん二人がこのギルドを好きでいてくれること。
望んで一緒に頑張ってきてくれたと私は信じている。
だが、これは周囲から見た時のことだ。
今までは『借金返済の為』ということを言えたが、
これからは言えなくなる。
このギルドが何かをした時、その責が二人にも圧し掛かってくるだろう」

(,,゚Д゚)!

(*゚ー゚)「!クーさん…」

川 ゚ -゚)「二人には、このギルドがどんなギルドなのか。
何を知らせていなかったのか。
メンバーが何を考えてこのギルドで過ごしているか。
それを今までの間、そう今日一日かけて知ってもらえたと思う」

(*゚ー゚)「そのために、こんな回りくどいやり方を…」

川 ゚ -゚)「話すのは簡単だ。
でも、自分で、知ってほしかった。
考えながら、気付いてほしかった。
そして、考えてほしかった。
自分達が何を選ぶのか」

(,,゚Д゚)「クー」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:28:43 ID:CsIsRGwE0<>
川 ゚ -゚)「恩を感じる必要はない。
今は、この瞬間は、自分達の事を考えろ。
ギルドの事じゃなく、自分達の事を考えるんだ。
そして、これからの事を決めてほしい」

(*゚ー゚)「…それは、今すぐじゃなきゃいけないんですか」

川 ゚ -゚)「状況は流転している気がする。
この先、何かが起こるような気がしている。
その時に、覚悟が無いままこのギルドに居て、
渦にのみこまれることが無いようにしてもらいたい」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

川 ゚ -゚)「もちろん今決めたことをずっと続ける必要はない。
何かが変われば、その時にもう一度考えても良い。
何かが無くても、明日考えを変えても良い。
明後日その考えを覆しても良い。
けれど、まず一回目の選択は、今日、今、この瞬間にしてほしい。
明日何かが起きた時に、覚悟する為に」

差し込まれた光が動き、クーの顔に明かりが射す。
その瞳は真摯で、二人の心に深く重く入り込んだ。

(*゚―゚)「一つ、聞いても良いですか?」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

(*゚―゚)「なぜ、ラフコフの事を皆さんに話したんですか?
話さなければ、本当に知らないで済んだはずです。
それが、ショボンさんの願いだったはずです」

(,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「ショボンさんの思惑を、クーさんは」

川 ゚ -゚)「ああ。破壊した」

しぃの問い掛けにすんなりと肯定するクー。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:30:10 ID:CsIsRGwE0<>
川 ゚ -゚)「言い訳をするならば、まずはジョルジュとモナーが気付いた。
ショボンが隠していることを。苦しんでいることを。
その影に、あのギルドが関わっていることを。
ジョルジュは偶然だが、モナーは流石だったな。
だから、二人には話した。
二人に話して、他の皆に話さないのは公平ではないと思い、
ツンやドクオ、モナーと相談して、他の皆にも話した。
そして、選んで欲しいとも言った。
このギルドに居続けるか、辞めるか」

(*゚―゚)「そしてみなさん…」

川 ゚ -゚)「ああ。残ることを選んだ。
二人が入る、少し前の事だ」

(,,゚Д゚)「ゴラァ…」

(*゚―゚)「そうだったんですか…」

川 ゚ -゚)「だが、それは本当に言い訳だ。
私はもともとみんなに話すつもりでいたからな」

(,,゚Д゚)!

(*゚―゚)「何故ですか?」

川 ゚ -゚)「ショボンが思っている以上に、私達はショボンの事を好きだと思ったからだよ」

(,,゚Д゚)?

(*゚―゚)?

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:31:16 ID:CsIsRGwE0<>
川 ゚ -゚)「何かが起きて、糾弾されて、ショボンがそれを一人で背負って…。
それを皆が知った時、絶対に苦しむと思ったんだ。
そして悲しむと思った。
ショボンが自分達を守るためにした事とは言え、
そんなことをしていたことに気付かなかったことに。
そして、ショボン一人で背負っていたことに。
私達は、ただ守られるだけの子供じゃない。
そして、仲間だ。
だから、話した」

(,,゚Д゚)「クー」

(*゚―゚)「クーさん」

川 ゚ -゚)「でも、これも言い訳だな。
私はきっと、頑張ってるショボンを知ってやってほしかったんだ。
そして何かが起きた時、このギルドの仲間だけでも、
すべてを知ったうえで味方でいてやってほしかった」

じっと二人を見ていたクーが、そっと俯く。
長い髪が、顔を隠した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:31:56 ID:CsIsRGwE0<>





川   )「きっと、ただ、それだけだったんだ」






.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:32:49 ID:CsIsRGwE0<>
(,,゚Д゚)「……」

(*゚―゚)「………」

自分を見つめる二人の視線を感じ、
ゆっくりと顔を上げるクー。

そこにはいつも通りの、冷静な彼女がいた。

川 ゚ -゚)「これですべてだ。
後は、二人で決めてくれ」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(*゚ー゚)「……はい」

互いの顔を見るギコとしぃ。

そして、小さく頷く。

(,,゚Д゚)「もう、決めてるぞゴルァ」

(*゚ー゚)「これから、ショボンさんの所に行きます」

川 ゚ -゚)「ああ」

(*゚ー゚)「クーさんも、来てくれますか?」

川 ゚ -゚)「私もか?
構わないが…」

(,,゚Д゚)「じゃあ行くぞゴルァ!」

階段を下りはじめるギコ。
その後にしぃが続き、クーがその後ろを歩く。

そして執務室のドアの前に二人が並んで立った。

(*゚ー゚)「ギコ君」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

川 ゚ -゚)「……」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:33:42 ID:CsIsRGwE0<>
再び互いを見て頷きあった後、ドアをノックするギコ。

『はーい。開いてるよー』

(,,゚Д゚)「ギコだ!」

(*゚ー゚)「しぃです」

ドアを開けるギコ。

(´・ω・`)

執務席にショボンが座っており、
机の上の書類から目を離してこちらを見た。





.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:34:30 ID:CsIsRGwE0<>



9.決意。そして決断。




.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 16:35:31 ID:Lwwnx60Y0<>相変わらず引き込まれる 
支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:35:32 ID:CsIsRGwE0<>



次の日の朝、ギコとしぃがギルドを抜けたことを知らせるメッセージが全員に届いた。






第十六話






.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:37:20 ID:CsIsRGwE0<>
以上、第十六話、および、本年の投下終了です。

支援、本当にありがとうございます。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2014/12/31(水) 16:41:08 ID:CsIsRGwE0<>
ごあいさつ

昨年から引き続き、本年も読んでいただけまして、誠にありがとうございます。

来年こそは完結できるように頑張りますので、また投下できた時にはよろしくお願いします。


次回は閑話の予定ですが、話の進む十七話になるかもしれません。

これを書いている時点でまだ一行もかけていないので、どうなるか分かりませんが。

閑話なら一月中に、十七話なら二月中に投下できるよう頑張ります。



最後に。

いつも乙や感想ありがとうございます。
色々と推測もしていただけて、とても嬉しいです。
良ければまた一言いただけるとありがたく、とても励みになります。

今年一年、本当にありがとうございました。
また来年、よろしくお願い申し上げます。

それでは、みなさま、良いお年を。


ではではまたー。



.<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 16:41:16 ID:Lwwnx60Y0<>抜けた・・・だと?
続きが気になりすぎるだろ
年末にまさかの投下ありがとうございました 次の投下も楽しみに待ってます 
良いお年を

乙でした<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/12/31(水) 16:45:14 ID:qlnrKJKM0<>うそ…
続きが気になりすぎる…

おつです<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 16:47:23 ID:8zrksYqw0<>うわああああか気になる乙乙<> 名も無きAAのようです<><>2014/12/31(水) 16:48:06 ID:81x0MGrgO<>年の最後になんちゅう終わり方をしやがるんだ…
次の投下までに3回位は読み直しておくよ乙ー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/12/31(水) 20:46:47 ID:6OyZnqsU0<>乙乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2014/12/31(水) 22:02:19 ID:Ey.uQYCs0<>乙乙 2人はどんな理由で抜けたんかな、続きが楽しみだ<> 名も無きAAのようです<><>2015/01/01(木) 20:44:02 ID:MpBlUiMU0<>うおおお乙。
相変わらず吸い込まれる様な緊張感。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/01/02(金) 03:45:54 ID:DJqoaa/MO<>ω・)やはりギコしぃが引き金か。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/01/02(金) 11:19:03 ID:wEHSDGSsO<>来てたのか
しかし今回作者が召喚した妖怪『気になる』が手強い…
早く続きが見たいおー!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/01/15(木) 17:18:29 ID:IpJ1BpmMO<>乙
十六話上がってることに今気づいた
ここまで読んだらギコしぃが何らかの思惑があって抜けたのは解るがそれでも気になる
しぃはもとよりギコがだんだんキーパーソンになりつつあるな
愚者故の実直さがみんなの心を少しずつ動かしているような<> 名も無きAAのようです<><>2015/01/16(金) 19:23:46 ID:WFTQjofMO<>これはクーのやり方が悪いよ
ただ手袋だけ見せられて何の疑いも持つなという方がおかしいだろう
普通はしぃのような反応するよな
それでモララーと新参二人の間に溝を作っておいてすまんの一言もないのはちょっと自分勝手だな

モララーとモナーの怒り様はいくら過去に救われた事実があるとはいえ沸点低すぎ
それを当たり前のように語るあたりショボンを唯一神のように盲信しているように見えてちょっとギルドメンバーが気味悪かったな今回
ギコとしぃが抜けた理由も何となく想像ついたけど予想は書かない方がいいよな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/01/16(金) 20:31:11 ID:B2f8C5H60<>予想はよそうぜ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/01/17(土) 18:04:22 ID:RG4FKYng0<>審議拒否<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:36:46 ID:qCAusiyY0<>どーも作者です。

一月投下が間に合いませんでしたが、閑話の投下をさせていただきます。

今日もよろしく願します。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:39:07 ID:qCAusiyY0<>第G話 閑話 おにたいじ





ξ#゚⊿゚)ξ「あーもう!こいつらムカつく!」

ツンが細剣を閃かせながら叫んだのは『シズオル』と言う名の街のそば。
フィールドダンジョン『迷宮の森』の奥地。

( ^ω^)「でも、強さ的には倒せない敵じゃないお」

ξ#゚⊿゚)ξ「でも倒せてないでしょ!」

十四人(ショボンの言うところの十五人)体制となって二ヶ月が過ぎたギルドVIP。
彼ら彼女らは、あるクエストにチャレンジしていた。

今彼らの目の前には巨大な人型のモンスター、『鬼』がいる。
身の丈は6メートルほど。
そして頭にはそれぞれ角があった。

『鬼』は2体。

右に赤鬼。
角は一本で、額中央から斜め上に突き出している。
武器は片手ハンマーに属するモーニングスター。
手元から先端に向けて膨らんでおり、先端側には四方に無数の刺が飛び出していた。

左に青鬼。
角は二本で、額の左右、こめかみの上側から生え、
曲がりながら真上に向かってのびている。
武器は両手棍に属する錫杖。
六角柱の金棒、その片側に円状の飾りがひとつ付いており、
その輪には更に輪が八個ほど付いていた。
その輪が当たっても攻撃が当たったことになってしまうため、注意が必要だった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:40:23 ID:qCAusiyY0<>
角、肌の色、武器以外は全く一緒の姿であり、
筋骨隆々の体を唯一包むのは俗に言われる「鬼のパンツ」だけであった。
ちなみにパンツのデザインと色は二体とも同じで、
色も金地に黒い縞模様である。

( ´∀`)「気持ちはわかるもなけど、
このままいくとまたタイムアップもなよ」

('A`)マンドクセ

川 ゚ -゚)「うむ…」

( ゚∋゚)「タイムアップで死ぬことはないのは良いが、
これ以上何度も戦うのはごめんこうむりたいな」

( ・∀・)「一体も倒せてないから経験値も入ってこないしな」

ミ,,゚Д゚彡「でも、全然強くないから!」

(*゚ー゚)「そこら辺が不思議ですよね。
倒されないけど、倒せない」

(,,゚Д゚)「そしてまたタイムアップだぞゴルァ」

その二体を囲むように立つVIPの面々。
全員の視界には、普段はないカウント表示が右上にされていた。
今の数字は、43:59。
戦える時間は、45分を切っていた。

(´<_` )「とりあえず、二人がなにか掴むまで、戦っておくか」

▼・ェ・▼「きゃん!」

振り下ろされた金棒を、余裕を持って避けるモナーとビーグル。
通常技のはずだが動きを止めた鬼に対して攻撃を繰り出すツンとクー。

懐に飛び込み、脚の間をくぐりながら、
ツンの細剣とクーの薙刀が、赤鬼の巨大な股間の膨らみを切り裂く。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:42:27 ID:qCAusiyY0<>
ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、セクハラな姿よね」

川 ゚ -゚)「ああ、黒鉄宮に送ってしまいたいな」

ξ゚⊿゚)ξ「雄型のモンスターは股間のモノを共通の弱点設定にするべきだと思う」

川 ゚ -゚)「その通りだな。しぃもそう思うだろ」

(*゚ー゚)「私に振らないでください!」

川 ゚ -゚)「え?この前ツンの部屋で騒いだ時に話していたじゃないか」

(*゚ー゚)「話してません!」

ξ゚⊿゚)ξ「ダメよ、クー。
あの日にあったことは内緒なんだから」

川 ゚ -゚)「!そうだった。すまんしぃ」

(*゚ー゚)「言ってませんし話してません!
もう、変なこと言うのやめてください二人とも!」

女性三人の会話を様々な顔で受け止める男性陣。
困惑している者、
顔を赤らめる者、
普段と変わらない者、
聴いてないふりをしている者。
ただ全員の思いは、
『もしそんな弱点設定があったとしても、狙うのはなー。
同じ男してちょっとなー』
と、共通していた。
  _
( ゚∀゚)「とにかくもう少し頑張るぜ!」

気を取り直したように両手剣を振りかざして突っ込むジョルジュ。

水色に輝いた剣は重二連擊であり、見本にもなるようなほど綺麗に決まったが、
青鬼のHPバーは全く減ったように見えない。
  _
( ゚∀゚)「あー!もうどうしろってんだよ!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:43:39 ID:qCAusiyY0<>
ξ゚⊿゚)ξ「今回のクエストはあんたがやりたいって言ったんでしょ!
なんか情報集めてないの!?」

( ^ω^)「またジョルジュにそんなむちゃぶリを」

('A`)「集めてるとは思えないよな」
  _
( ゚∀゚)「俺が集めるより、
ショボンが集めた方が早いし正確だし確実だろ」

ミ,,゚Д゚彡「開き直りは良くないから」
  _
(;゚∀゚)「うっさい」

思わぬところからツッコミをされて少しだけテンションが下がるジョルジュ。
しかしすぐに気分を直し、赤鬼に向かって両手剣を振り降ろしている。

川 ゚ -゚)「とはいえ、やはりこのままではジリ貧だな」

( ´∀`)「よほどHPが高いもな?」

( ゚∋゚)「もしくは、防御力が高いか…」

( ・∀・)「あるいは、どっか弱点があってそこしかダメとかか?」

三人の言葉を聞きながら攻撃を繰り返すメンバー達。
しかし思うように減らすことはできず、
それどころか何もしていないのに回復しているようにさえ見えた。

川 ゚ -゚)「弱点か。可能性としてはあるな。
だが股間でない以上、…角が一番それっぽいが…」

後ろを気にするクー。

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンがいないんじゃ、あの高さは狙えないわよね。
ドクオ、ソードスキルで飛べないの?」

('A`)「確実弱点ならともかく、違ったら空中で殺されるからいやだ」

( ´∀`)「二匹いるのも、相手が弱点を狙われたときに対応するためかもしれないもなね」

▼・ェ・▼「くぅーん」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:45:42 ID:qCAusiyY0<>
喋りながらも全員が攻撃を加えているが、目に見えてHPが減ってはいない。

(’A`)「…もしくは、武器指定とか」

ドクオがポツリとつぶやくと同時に、後ろからショボンが声をかけた。

(´・ω・`)「その通りだった!」

後方から駆け寄ったショボンがいつも使っているチャクラムを投げる。

('A`)「おうショボン。何か分かったのか」

チャクラムは弧を描いて赤鬼の角に命中した。
身体を震わせて怒りを顕にする赤鬼。
投げたショボンを見下ろす。
その瞳は、怒りに染まっていた。

(´・ω・`)「タゲは僕が引き受けるから、その間に装備を変えて!」

( ´_ゝ`)「受け取れー」

ショボンの後ろからやってきた兄者がのんきに声をかけ、
自分のウインドウを操作する。
するとショボンを除く全員にトレードウインドウが現れた。

ξ゚⊿゚)ξ「なにこれ」

(´・ω・`)「イベント専用、対赤鬼青鬼武器!」

ショボンの指示で全員が武器の変更を始める。

('A`)「『桃木の剣』?」

ミ,,゚Д゚彡「『神刀【鬼払い】』だから!」

( ^ω^)「同じく『桃木の剣』だお」

( ・∀・)「『桃木の爪』」

( ´∀`)「『鬼封じの槍』もな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:47:08 ID:qCAusiyY0<>
( ゚∋゚)「『鬼退治の棍』か」

川 ゚ -゚)「『鬼祓い』。属性は薙刀だ」
 _
( ゚∀゚)「『桃木の大剣』」

(*゚ー゚)「『桃木の小刀』です」

(´<_` )「…『桃木の斧』。
なるほど、金属のイメージが強い武器は『桃木』を冠する武器で、
木から出来ているイメージのあるものは『鬼』に関する名前が付いているってことか?」

ミ,,゚Д゚彡「刀があるから!」

(´<_` )「お、そういやそうか」

( ´_ゝ`)「今回作れたのがそれだけだったってだけで、
関係ないだろ。多分。
イベントクエスト内限定ってことで、珍しくお遊び武器もあったし」

( ^ω^)「お遊び?」

('A`)「武器?」

兄者の発言に、ゲーマー気質のある二人が反応する。

( ´_ゝ`)「な、ギコ」

(,,゚Д゚)「…ゴルァ……」

(*゚ー゚)「ギコ君?」

(,,゚Д゚)「『桃太郎ののぼり』」

(*゚ー゚)「え?」

('A`)「のぼり…」

( ^ω^)「だと?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:49:10 ID:qCAusiyY0<>
全員が見つめる中、武器を実体化させるギコ。
それは誰が見ても間違いなく『のぼり』だった。

(,,゚Д゚)「何でこれが片手剣なんだゴルァ…」

片手でつかめる程度の細長い棒。
先端にはさらに細い棒が九十度に刺さっており、
その二本の棒を支柱として、長い布がはためいている。

(,,゚Д゚)「棍棒じゃあ…」

布の色は桃色。
そして布には、毛筆で『桃太郎参上』と書かれている。

(;゚∋゚)b「いや、どう見ても片手剣だぞ、ギコ」

( ´_ゝ`)「まあそう言うなギコ、
見た目はアレだが基礎能力は今回作った中で三本の指にはいる」

(,,゚Д゚)「ならいいぞゴルァ」

兄者の言葉に気を取り直して武器を変え、
右手に持って構えるギコ。

(,,゚Д゚)「……かっこよくはない」

( ´_ゝ`)「大丈夫だギコ。俺も仲間だ」

ニヤリと笑った兄者が自分用の武器を出す。

(;´∀`)「もな…」

川 ゚ -゚)「え?」
 _
( ゚∀゚)「それ、飲めないんだよな?」

(´<_` )「本気か兄者?」

全員が見守る中、酒瓶をかついだ兄者。
その楽しげで誇らしげな笑顔がムカつく。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:51:10 ID:qCAusiyY0<>
( ´_ゝ`)「いやーはずかしいなー」

一升瓶の何倍の大きさであろうか。
いつも使っている巨大鎚と同等のサイズである。

(*´_ゝ`)「『鬼殺し』。
おれもこんなのもつの恥ずかしいけどさー。
一見棍棒属性っぽいのにこれでハンマーだっつーから、
運営もわかってる…、いや、わかってないよなー。
これでも基礎能力は総合で三本の指にはいるから」

全く説得力のない言葉に呆れかえるメンバー。

(;゚∋゚)(良かった…棍棒じゃなくて本当に良かった)

酒瓶に貼られた『鬼ごろし』というラベル確認し、
クックルは一人安堵していた。

( ´_ゝ`)「で、ツンはどうした?」

兄者の言葉に何人かがハッとして周囲を見回すと、
かなり不機嫌そうな顔をしたツンがいた。

川 ゚ -゚)「ツン、おまえの武器は?」

ξ゚⊿゚)ξ「見せたくない」

( ´∀`)「早くしないと戦う時間が無くなるもなよ」

ξ゚⊿゚)ξ「戦わなくていい」

後ろ手に武器を隠しているツン。
隠れるということは、ツンの使う細剣属性においてもそれほど大きくはないだろう。

( ^ω^)「またそんなことを」

ξ゚⊿゚)ξ「帰る」

( ゚∋゚)「ツン?」

(*゚ー゚)「そんなに変な武器なんですか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:52:15 ID:qCAusiyY0<>
ξ゚⊿゚)ξ「別に」

(,,゚Д゚)「それでもコレほどじゃないだろゴルァ」

ξ゚⊿゚)ξ「別に」
 _
( ゚∀゚)「どうしたツン」

ξ゚⊿゚)ξ「別に」

( ^ω^)「ツン?」

隣にいたブーンが、何の気なしにちらっとツンの後ろを見たとたん、吹き出した。

(*^ω^)「ツン」

笑いながらツンの名を呼ぶ。

ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン!」

怒るために横を向いた拍子に、武器が何人かの目に入った。

川*゚ -゚)「ツン」

( ´∀`)「なるほどもな」

( ゚∋゚)「棍棒じゃなくて良かった」

ξ#゚⊿゚)ξ「クックル!」

(;゚∋゚)「す、すまん。つい本音が」

(*゚ー゚)「クックルさん、フォローになってないですよ」

思わずクックルに向かって武器を構えてまうツン。

その手に握られているのは、巨大な爪楊枝だった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:54:10 ID:qCAusiyY0<>
( ´_ゝ`)「名前は『Peach Tree FIZZ』。
はじける桃の木ってところか」

クックルに向けていた爪楊枝の先を、兄者に向けるツン。

ξ゚⊿゚)ξ「兄者、あんたわざとじゃないでしょうね!」

( ´_ゝ`)「見損なうな!
狙って作れるなら全員分おもしろ武器を作ってる!」

ξ゚⊿゚)ξ「……それもそうね」

胸を張る兄者と納得するツン。

(*゚ー゚)「……もう、なにがなんやら」

(,,゚Д゚)「ゴルァ。そろそろ戦わないとショボンは大丈夫か?」

川 ゚ -゚)「あ」

(;´・ω・`)「思い出してもらえて嬉しいよ!」

駆け寄ってきたショボン。
呼吸は荒く、肩を大きく上下させている。

川 ゚ -゚)「すまんすまん」

ξ゚⊿゚)ξ「ショボン!あんたの武器はなに!
なんでいつものチャクラム使ってるのよ!」

(;´・ω・`)「へ?タゲ取るだけならいたずらにHP削らない方がいいかなと思って。
HP削りすぎると攻撃パターンが変わることあるから。
名前は『桃木のブーメラン』だけどどうした?」

ξ゚⊿゚)ξチッ

(;´・ω・`)「何で舌打ち?
とりあえず、この二匹はみんなに任せるよ」

ショボンを追って迫り来る赤鬼と青鬼。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:55:37 ID:qCAusiyY0<>
すでにブーンとドクオが駆け出していた。

川 ゚ -゚)「行くぞ!」

ショボンがいない場合、特別な場合以外はクーが指揮を執る。

薙刀を構えて走り出したクーに続くメンバー。
クーはブーンとドクオの動きを見ながら後に続くメンバーに指示を出していく。

ξ゚⊿゚)ξ「あーもう!さっさと終わらせる!」

最後にツンが続いた。

(;´・ω・`)「この後にも戦闘あるかもしれないから、
速攻でよろしくー!」

「「「「「了解!」」」」」

全員の武器が様々な色に光り輝いた。







.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:57:20 ID:qCAusiyY0<>
攻撃が効くようになると、結果はすぐにでた。

('A`)「ラスト!」
 _
( ゚∀゚)「こっちも終わりだ!」

赤鬼に向かって飛んだドクオと、青鬼に向かって突撃したジョルジュ。

二人の剣がそれぞれの鬼を切り裂くと、
二匹の鬼がポリゴンとなって砕け散った。

ξ゚⊿゚)ξ「よし終わった」

巨大爪楊枝をストレージに収納しようとするツン。
しかしショボンに止められた。

(´・ω・`)「ツン、爪楊枝しまうのちょっと待って」

ξ#゚⊿゚)ξ「爪楊枝って言うな」
 _
( ゚∀゚)「どうした?ショボン」

後方から寄ってきたショボン。
全員が集まり、ギルマスの指示を待つ。

(´・ω・`)「経験値とか、倒した結果が入ってこない」

('A`)「だな。まだ終わってないってことか?」

( ^ω^)「おっお。でもポリゴンになってたおね?」

川 ゚ -゚)「イベント終了と同時に入るんじゃないのか?
前にも最後に報告しに行ったときに一気に入ってきたクエストがあったはずだが」

( ´∀`)「今回のは、依頼があったクエストだから、
その可能性が高いもなね」

(´・ω・`)「そう、村にやってくる鬼を倒してくれっていうのが今回のクエスト。
長老さんに聞いた内容、覚えてる?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 19:58:55 ID:qCAusiyY0<>
( ゚∋゚)「確か…

(´艸`)『この村を助けてほしいのでござる。
毎年この時期になると数多くの鬼がやってくるのでござる。
ほとんどは村を守る壁によって入って来られないでござるが、
何匹か乗り越えて入ってきてしまうことがあるのでござる。
それに怖くて外に出られないし、行商人も来なくなるので、
食べ物にも困ってしまうのでござる。』

だったか?」

(,,゚Д゚)「二匹は数多くって言わないか」

(*゚ー゚)「そうだね。とういうことは…」

( ^ω^)「あと、あの村の壁って、そんなに高くなかったおね」

( ・∀・)「ああ、多分二メートルくらい。いや、そんなにないかもな」

川 ゚ -゚)「今の鬼なら簡単に乗り越える、またいで村に入れるだろうな」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ。じゃあまだいるってこと」

(´<_` )「おそらく、今のより小さいやつが。
小さいといってもあの壁というか柵を乗り越えてくる奴がいるってことは、
それなりの大きさはあるだろうが」

( ´_ゝ`)「しかも、おそらく、いっぱい。数多く。
このクエストの参加上限が十八人設定なのも、
その敵に戦う為だろう」
 _
( ゚∀゚)「でも、そいつ等を倒さないとクエストクリアにはならない」

('A`)「鬼を倒した経験値とかも手に入らない。
どうするよ、ショボン」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:02:46 ID:qCAusiyY0<>
(´・ω・`)「今の二匹が時間制限制だったのも気になるんだよね。
情報によるとまだクリアしたグループもいないみたいだし。
何組かチャレンジはしてるみたいだけど、
おそらく今の二体を倒すところまでいってない。
カウントがスタートしてからでないと得られない情報とかアイテムとか、
反則だよ。まったく。
だからこの先もどんな罠があるかわからないから、
ここで撤退してもいいかなと思うけど…」

全員の顔を見回すショボン。

(´・ω・`)「納得しないよね。みんな。
ここまでがんばったし、
ちゃんとクリアしたいのは僕も同じだけどさ」

苦笑しながらつぶやいたショボン。
全員が笑顔を見せた。

(´・ω・`)「まあタイムアップがあるのは変わらないみたいだから、
危なくなったらぎりぎりまで逃げ回るのも選択肢に入れて次の手を考えようか」

制限時間を示す時計を気にするショボン。
視界の角に浮かぶその数字は、二体の巨大鬼を倒すと同時に三十分加算され、
しかもカウントを止めていた。

ふと何かを思い出したようにウインドウを開くショボン。

(´・ω・`)「そうだった。渡しておくよ。
さっき森の外に情報を集めに戻ったとき、
桃の木を分けてくれたおじさんが、
一緒にくれたんだ。
人数伝えたら、ちゃんと全員分くれたから、一人一つずつ持ってて」

再び全員の目の前にトレードウインドウが浮かぶ。

ξ゚⊿゚)ξ「?『鬼除けのお守り』?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:04:17 ID:qCAusiyY0<>
(´・ω・`)「うん。僕と兄者が調べた限りでは特に特徴は無かったから、
訳の分からないものを渡すのもって思ってさっきは渡さなかったんだ。
フレーバーテキストも鬼除けって書いてあるだけだしね。
タゲ取ってる最中、持ってた僕が普通に攻撃されてたから、
鬼の攻撃回避や防御力のアップも無いみたいだし。
そうだブーン、一応調べてもらえる?」

( ^ω^)「任せてだお」

ウインドウからお守りを取り出すブーン。

( ^ω^)「おー。形は良くあるお守りだおね。
家内安全とか書いてありそうだお」

青い小さな袋を手にするブーン。
それは確かに現実世界でもっていた、
初詣でいった神社で年に一回くらい購入する、
高校受験の時に親が買ってきてくれたお守りによく似ていた。

( ^ω^)「どれどれ」

前後左右を観察してからタップするブーン。

( ^ω^)「僕がみても特に変化はないみたいだお」

(´・ω・`)「うーん。
この後の戦闘で何か使うのかと思ったけど、
違うのかな。
それかクリアした後に何かあるか」

( ^ω^)「だおねー。
そう言えばコレ、
フレーバーテキストのアイテム名は『鬼除けのお守り』なのに、
アイテムには『鬼退治』って書いてあるおね。
なんで『鬼除け』じゃ」

(´・ω・`)「え?僕がさっきみたのは『鬼除け』だったはず」

あわてて自分の分のアイテムを取り出すショボン。
そして書かれている文字を確認する。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:05:35 ID:qCAusiyY0<>
(´・ω・`)「うん。『鬼除け』だ。
みんなはどう?」

二人の会話を聞いていたメンバーはすでに実体化させており、
それぞれになにが書いてあるかを告げた。

(´・ω・`)「『鬼除け』が六つ、『鬼退治』が四つ、『鬼払い』が三つだね。
コレの違いは何か」

( ^ω^)「みた限り、ステータスに違いはないんだおね」

( ´_ゝ`)「武器ではないし、
一緒に貰った【桃木】と違って武器を作ることは出来ないな」

(´<_` )「防具でもないし、添加用のアイテムってこともないなこりゃ」

( ・∀・)「アクセサリーでもない。
身につけるものじゃないってことか」

(´・ω・`)「どこかで必要になるのかな。
全員で分散して持ってて良いか分からないけど、
人数分くれたってことは、何かあるんだろうから…」

( ゚∋゚)「ショボン」

(´・ω・`)「なに?クックル」

( ゚∋゚)「おれの持ってるのは『鬼退治』なんだが、
これ、種だ」

(´・ω・`)「へ?」

( ゚∋゚)「おれが調べると、フレーバーテキストの最後に
『肥えた土に埋め、【鬼祓いの水】をそそぎ、鬼を退治するための宝を待て』
って続く。
栽培スキルを鍛えてある者が見ると、変わるのかもしれないな」

(´・ω・`)「種!?
他の二つも見てみて!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:07:55 ID:qCAusiyY0<>
( ゚∋゚)「ああ」

( ^ω^)「クックル、どうぞだお」

ブーンが、渡されていたうちの『鬼除け』と『鬼払い』を渡す。

( ゚∋゚)「………いや、こちらの二つは種ではないな。
少なくともおれのスキルでは何もできないようだ。
あと【鬼祓いの水】というのがあると思うんだが」

首を振りながら二つをブーンにもどす。

( ^ω^)「だめかお」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、私にも貸して」

川 ゚ -゚)「一応私達も見てみよう」

( ^ω^)「たのむお!」

ツンとクーの手元に三種類の【お守り】が手渡された。

川 ゚ -゚)「ふむ…。
クックル、【鬼払い】も変化なかったか?」

( ゚∋゚)「さっき見た時は特に何も書いてなかったが」

(´・ω・`)「クーが見ると何かあるの?」

川 ゚ -゚)「ああ。
【鬼払い】のお守りだ。
『【鬼酔袈の器】にて搾りし時、【鬼祓いの水】となる。』
と書いてある。
だから薬草の様なもので、ポーション的な物を作れるんだと思う。
ただクックルが見ても変わりないなら、栽培は出来ないという事か。
となるとそれほどの量は作れないかもな。
それに器となると…」

クーの言葉を受けて全員がモララーを見た。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:09:09 ID:qCAusiyY0<>
( ・∀・)「でも、さっき見た時は3種類とも追加のテキストは無かったぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。私が読むと追加テキスト出た」

(;・∀・)「なら何故ツンまでおれを見るかな」

ξ゚⊿゚)ξ「なんとなくよ。なんとなく」

( ^ω^)「ツンのにはなんて書いてあるんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「えっとね…。
『糸に還し、【祓いの袈裟】を織れ。
【祓いの袈裟】を三枚重ねれば、【鬼酔袈の器】を縫える。』
だって。
やっていい?」

(´・ω・`)「うん。やってみて」

ツンがアイテムを取り出し、『鬼除け』と書かれたお守りをタップする。
すると一瞬光り輝くと、白色の糸玉に変わった。

ξ゚⊿゚)ξ「それで…と」

アイテムを持ち替えて続けてタップするツン。
もう一度光り輝き、今度は紫色をした帯の様な物が現れた。

ξ゚⊿゚)ξ「これが『祓いの袈裟』だって。
もう2つやるわよ」

(´・ω・`)「よろしく」
 _
( ゚∀゚)「袈裟って坊さんが着てるやつだろ?
なんで長方形の布なんだ?」

(´・ω・`)「着てるのは法衣。
その上から肩から斜め掛けをしているのが袈裟なんだよ」

(´<_` )「ん?斜め掛けの布?
なんか胸から足元まである様な奴を着てないか?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:11:50 ID:qCAusiyY0<>
( ´∀`)「もともとはただの布だったみたいもなよ。
『袈裟懸け』なんて言葉もあるもなね。
でも今宗派によって色々あるみたいもなから、
ジョルジュや弟者が不思議に思っても仕方ないもな」

「「「「へー」」」」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

モナーの言葉に全員が頷くと、ビーグルが誇らしげに一声鳴いた。

ξ゚⊿゚)ξ「で、ショボンのしったかとモナーのうんちくの間に三枚完成」

ツンの手に持たれた三枚の布。
紫色が二枚に、赤色が一枚。
鮮やかな色と言うよりは、落ち着いた深い色をしている。

(´・ω・`)「それが【袈裟】なら、三枚で【器】が出来るはずだね。
【鬼除け】のお守りは六つあったから、失敗してももう一回はチャレンジできる」

ξ゚⊿゚)ξ

ショボンを冷たい視線で見るツン。

(;´・ω・`)「え?僕なんか変なこと言った?」

ξ゚⊿゚)ξ「あのね、ショボン」

ツンがさらにアイテムを持ち替え、三枚の【袈裟】をまとめてタップする。

ξ゚⊿゚)ξ「私が失敗するなら」

強く光り輝くアイテム。
その光を気にすることなく続けてアイテムを振る。

ξ゚⊿゚)ξ「今のアインクラッドにこれを作れる人はいないわよ」

光が収まり、ツンの手の中に薄いベージュの様な色をした大きな袋が現れた。

ξ゚⊿゚)ξ「…多分ね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:12:48 ID:qCAusiyY0<>
慌てて袋をタップするツン。

ξ゚⊿゚)ξ「うん。【鬼酔袈の器】よ」

どこか安心しているように見えるが、それを言える猛者がここにはいなかった。

川 ゚ -゚)「一瞬失敗したと思っただろ」

いや、一人いた。

ξ;゚⊿゚)ξ「うるさい。あまりに素朴な色になったからちょっと心配になっただけよ」

( ´∀`)「それが【器】もなか…」

ξ゚⊿゚)ξ「操作自体はスキルレベル400くらいでやれる作業だけど、
多分成功判定はシビアね。
800くらいないと厳しいかも」

川 ゚ -゚)「ならこちらもそれくらいか、あるいはもっと高くないとか。
ま、成功させるがな」

不敵な笑みを浮かべながら、ツンから袋を受け取るクー。

川 ゚ -゚)「ショボン、続けて作って」

(;´∀`)「ま、まつもな」

川 ゚ -゚)「ん?どうした?モナー」

( ´∀`)「先に埋める準備をしておいたほうが良いと思うもな」

(´・ω・`)「それもそうだね。
このタイマーが何のタイミングで再び動き出すか分からないし」

ショボンが視界の片隅のカウントを気にしながら言った。
頷く数人。

( ´∀`)「クックル、どこに埋めるもな?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:15:42 ID:qCAusiyY0<>
( ゚∋゚)「緊急用の植木鉢は持ってきているが、
『肥えた土』というくだりがな。
あたりを付けたところはあるが…」

(,,゚Д゚)「あれは違うのかゴルァ」

クックルが向けた視線の先とは逆方向、
エリアの入り口方面を指さすギコ。

( ゚∋゚)「ん?」

(,,゚Д゚)「あそこの地面に何か埋まってるぞ」

( ゚∋゚)「!」

ギコが先導し、クックルが続く。

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

辿り着いた先、草に埋もれて見えないレベルで煉瓦が埋められていた。
それは一メートル四方程度の正方形を作っている。

( ゚∋゚)「気付かなかった」

正方形の中の土をタップするクックル。
すると草が消え去り、土の表面が現れた。

('A`)「おお」

後ろから見ていたメンバーも声を漏らす。

( ゚∋゚)「…すごいな。今まで見た中で最高クラスの土だ。
持って帰りたいくらいだ」

出したウインドウで情報を読み取るクックル。

( ゚∋゚)「すごいなギコ。
こんなところによく気付いた」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:16:54 ID:qCAusiyY0<>
(*,,゚Д゚)「べ、べつに」

(*゚ー゚)「ギコ君凄い!」

ξ゚⊿゚)ξ「へー。やるじゃない」

(´<_` )「うむ。これはよほど注意力が無いと」

(´・ω・`)「うん。すごいね」

(*,,゚Д゚)「たまたま入った時に躓いただけだぞゴルァ」

照れたように頭を掻くギコ。

((((言わなくていいのに…))))

(;*゚ー゚)「しょうじきものなんです。ギコ君」

( ゚∋゚)「さて、それでは埋める場所はここにしよう」

( ´_ゝ`)「クックルが見つけた方は確認しないのか?」

( ゚∋゚)「実は戦闘前に隠れて確認しといた。
良い土だったら採取しようかと思ったが、
農場の土と同レベルだし採取対象にもならなかった」

( ´_ゝ`)b「さすがだな」

( ゚∋゚)b

( ^ω^)「農場主の鏡だおね」

ξ゚⊿゚)ξ「戦闘前に何してんのよ」

(´・ω・`)「さてそれじゃあ埋める場所も決まったし、
クーに作業を始めてもらおうか。
クックルも準備を」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:18:02 ID:qCAusiyY0<>
川 ゚ -゚)「ああ」

( ゚∋゚)「分かった」

クーが花壇に近寄り、素材と作成用のアイテムを取り出す。
クックルは花壇を挟んで反対側にしゃがんだ。
その手にはお守りと栽培用のアイテムが持たれている。

川 ゚ -゚)?

クーの左側に立つモナー。

川 ゚ -゚)「どうしたモナー?」

( ´∀`)「見学もな」

川 ゚ -゚)「まあいいが」

首をかしげながらも袋とお守りを手にするクー。
左手で持ったそれを右手に持った指揮棒のようなアイテムでタップする。

川 ゚ -゚)「本来ならどこかに置いた方が良いが、
地面に置くのもな」

そう言いながら現れたウインドウを操作すると、
まばゆい光が素材とした二つのアイテムから発せられた。

川 ゚ -゚)「うむ……うをっ!」

満足げに頷いていたクーであったが、突然大声を出した。

( ´∀`)「クー!」

モナーが光の中に両手を差し入れ、生成されたアイテムを両手でつかんだ。

川;゚ -゚)「すまないモナー。突然かなり重たくなって驚いた」

( ´∀`)「クックル!埋めるもな!きっとすぐに水が出てくるもな!」

(;゚∋゚)「お、おう」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:19:53 ID:qCAusiyY0<>
すぐそばでその情景を見て驚いていたクックルだったが、
モナーに促されてお守りと地面を素早くタップした。

モナーが両手で持った布袋、クーが生成したそれから液体が滴り始めたのは、
クックルが地面にお守りを植えることが出来た直後だった。

川 ゚ -゚)「これはもしや…」

( ´∀`)「お酒、日本酒もなね」
 _
(*゚∀゚)「旨そうな香りだな」

( ´∀`)「飲んだらダメもなよ」
 _
( ゚∀゚)「ひとなめ」

( ´∀`)「どれくらいの量が出来るか分からないからダメもなよ」

川 ゚ -゚)「そうだな。
徐々に滲み出す量は増えているようだが、いつまで続くのか」

( ´∀`)「文面に『しぼる』ってあったもなから、
力を加えてみるのもいいかもなね」

(´・ω・`)「モナーは分かってたの?こうなるって」

( ´∀`)「文面が『しぼる』だったのと、
出来た袋が酒袋に似ていたもなから、
もしかしてと思ったもなよ
それに日本酒はお神酒として扱われることもあるから、
【祓いの水】としての素質はあるのかもとも思ったもな」

ニコニコとしているモナーを尊敬のまなざしで見るメンバー達。

( ´∀`)「さて、これで後はクックルが植えた種を育ててくれればよいもなね」

(´・ω・`)「警戒!カウントが始まった!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:22:52 ID:qCAusiyY0<>
ショボンが張り詰めた声で指示を出すと、
その声に反応し、
ドクオ、ブーン、ツン、ジョルジュ、兄者、弟者、モララー、フサギコが、
武器を構えてあたりを警戒する。
それを見て、慌てて武器を構えるギコとしぃ。

('A`)「といってもカウンターが回り始めただけなのか…」

( ^ω^)「それはそれで時間が短くなって嫌だおね」

(´・ω・`)「え…なにこれ」

ショボンが狼狽えたように漏らす。

それに驚いたメンバーだったが、すぐにその言葉の意味を悟った。

(´<_`;)「これは…」

( ´_ゝ`)「多いにもほどがあるだろう」

(;・∀・)「これ全部倒すのか?マジで?」

エリアの中央からポップする大きさは自分達とそれほど変わらない赤鬼と青鬼。
そして周囲の木々の間からもわらわらと現れる。

(;^ω^)「と、とりあえずやってみるかお?」

(´・ω・`)「クックルは引き続き花壇で栽培!
クー、モナーは参戦!
クックルを扇のかなめにして、
左からしぃ、ギコ、兄者、ドクオ、モナー、モララー、ジョルジュ、クー、フサ、弟者、ブーン、ツン!
僕は後ろから投擲と指示を出す!
前には出ないでやってきた敵を潰すことだけを考えればいい!
いざとなったら撤退するからその時は即行で逃げるよ!」

「「「了解!」」」

ショボンの指示通りに半円状に描きながら並ぶ12人。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:23:58 ID:qCAusiyY0<>
その間も全体を見て敵の数を数えていたショボンだったが、
あまりの数に数えることをあきらめかけた時、
赤鬼が棍棒を振り上げてギコに襲い掛かった。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

棍棒を片手剣ではじく。
そして流れるように二閃。
鬼の身体に二つの線が走り、
HPを大幅に削る。

のぼりのような剣は、確かに強かった。

(,,゚Д゚)「…結構良いぞ」

(*゚ー゚)「ギコ君……」

ギルドに入って二ヶ月の二人も、
戦闘中に無駄口を叩くというこのギルドの悪癖に馴染んできていた。

しかし敵側にはそんなことに付き合う筋合いは無く、
容赦なく襲いかかる。

(*゚ー゚)「はっ!」

青鬼の錫杖を避け、その懐に入るしぃ。
そしてそのまま短剣を縦横無尽に振るう。

青鬼「ぐわああああああ!」

雄叫びをあげて硬直した敵を放置してバックステップで離脱。
更にギコを狙っていた赤鬼に一撃を与えた。

( ´_ゝ`)「二人とも強くなってきているな」

('A`)「まだまだこれからだけどな」

( ´_ゝ`)「どっくんは厳しいなぁ」

('A`)「どっくん言うな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:26:20 ID:qCAusiyY0<>
(´・ω・`)「青鬼は赤鬼に比べてHPを大きく削れていない!
動きを止めるだけだから気を付けて!」

比率的に赤鬼の方が多かったのと、
波状攻撃を仕掛けてくる敵への対応によって、
前線にいる十人は最初の数撃では明確に気付けていなかったが、
後ろで状況を読んでいたショボンが気付いた。

(´・ω・`)「通常武器による攻撃を試す!」

ショボンの投げたナイフが青鬼の眉間を貫く。
大きく減るHP。

('A`)「どうするんだ!」

(´・ω・`)「確認終了!
攻撃力がそれほど高くない桃木シリーズを使っている、
ドクオ、ブーン、ジョルジュ、弟者、モララー、しぃは通常の武器に変更して!
カウント5で兄者とモナーとクーはスキルで波状攻撃!
同タイミングでチャクラムの全方位攻撃を繰り出すから、
そのタイミングで該当者は下がって武器変更!
スキル後の硬直は3未満で抑えること!
武器変更も同じく!
残った面子は範囲技の後のフォローを!
行くよ!
5!」

ギコとしぃの顔に緊張が走る。

何度か練習はしているが、緊迫した実践の場では初めてのコンビネーション。

(´・ω・`)「4!」

( ´_ゝ`)「しぃ!下がれ!ギコは前に出て溜めの長いおれのフォロー!
技は使うな!攻撃より弾くことメインにするんだ!」

(,,゚Д゚)「ご、ゴルァ!」

(*゚ー゚)「は、はい!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:27:34 ID:qCAusiyY0<>
(´・ω・`)「3!」

普段からは考えられない鋭い兄者の指示に戸惑いながらも体が動く二人。

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

(´・ω・`)「2!」

兄者の【鬼殺し】が青白く光る。

(´・ω・`)「1!」

モナーとクーの武器もそれぞれに光る。

(´・ω・`)「ゴー!」
( ´_ゝ`)「どりゃああああ!」
( ´∀`)「モナあああああ!」
川 ゚ -゚)「はっ!」

ショボンの掛け声と同時に繰り出されるそれぞれの範囲攻撃技。

三人の特殊武器による攻撃は赤鬼のHPを削り、青鬼の動きを止める。
ショボンの通常武器による範囲攻撃は青鬼のHPを削り、
赤鬼の動きを止めることに成功した。

(´・ω・`)「やっぱりか…」

武器が手元に戻ってきてからの長い硬直に身構えつつ、
それでも全員の動きを視界にとらえながらショボンが叫んだ。

(´・ω・`)「通用武器は青を削って赤を止める!
専用は逆!
僕は六秒の硬直を起こすからその間は頼む!」

「「「了解!」」」

全員の声を聴きながらショボンが帰ってきたチャクラムを掴む。
固まるからだ。
その歯痒さにはやる心を抑えるために、
全員を見渡せる位置で、
顔を上げて武器を戻していた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:28:55 ID:qCAusiyY0<>
元からのメンバーはもとより、
ギコとしぃも武器による特性を意識した戦いをしていることに安堵する。
傍にいる兄者が時折指示を出しているとはいえ、
入った頃の動きを思えば格段に進歩をしていることが分かる。

(´・ω・`)「でも…数が多すぎる」

視界の隅のカウントに目をやり、
全員がポリゴンに変えていく敵の数を見て逆算。

(´・ω・`)「ぎりぎりか…むりか…」

( ゚∋゚)「ショボン!」

もう一度全方位攻撃をしようかと武器を構えようとした時に、
クックルに声をかけられた。

(´・ω・`)「クックル!何か生えた!?」

( ゚∋゚)「これだ!」

(´・ω・`)「……へ?」

クックルから渡されたのは、枡。
木製の、正月に酒などが注がれる木製の四角い器である。

(´・ω・`)「…これができたの?」

( ゚∋゚)「ああ。
小さな木が生えてきたと思ったら、これが生った。
なかなかの風景だった」

そして中には、豆がぎっしりと詰まっている。

(´・ω・`)「これって…もしかして…」

( ゚∋゚)「おそらく」

(´・ω・`)「だよね。
いくつあるの?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:31:12 ID:qCAusiyY0<>
( ゚∋゚)b「全員分ある」

(´・ω・`)「あ、そう。
……そっか。二月か。
節分か…。なるほどねー。
鬼だし桃太郎とか一寸法師だから御伽草子系かと思いきや、
節分か」

疲れたように呟くショボン。

(´・ω・`)「…完全にお祭りイベントだったってことなのか」

( ゚∋゚)?

(´・ω・`)「なら、楽しまないとだね」

一瞬眉間に皺を寄せた後、満面の笑みを見せるショボン。

(´・ω・`)「クックル!みんなに配るよ!」

枡を片手に走り出すショボン。

( ゚∋゚)「お!おう!」

(´・ω・`)「おにはそと!!!」

片手一杯に握りしめた豆を思いっきり投げるショボン。

( ゚∋゚)「ふくはうち!」

その横で間髪を入れずにクックルが投げる。

突然のギルマスの狂行におどろくが、
豆を受けた鬼が数発の豆を受けただけで消えていく様を見て、
状況を察する。
 _
( ゚∀゚)「おれの豆は!?」

( ゚∋゚)「全員分あるから一人一つずつ持って戦え!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:32:39 ID:qCAusiyY0<>
(´<_` )「よっしゃ!」

(*´_ゝ`)「こういうイベントもあるのか!」

ミ,,゚Д゚彡「たのしいから!」

( ・∀・)「まったくさっきまでのシリアスはなんだったんだ」

( ´∀`)「こういうのもいいもな。
ビーグルも楽しいもなね」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

('A`)「久しぶりのクエストがこれか…」

川*゚ -゚)「そうか?いいじゃないか」

ξ*゚⊿゚)ξ「実はあんたこういうの好きなのよね」

( ^ω^)「おっおっお。ツンも好きだおね」

それぞれに枡を手にして豆を投げ始めるメンバー達。
鬼の数はそう減らないが、武器で倒すよりは効率が良いのは誰が見ても明らかだった。

(,,゚Д゚)「ゴルァ…」

(*゚ー゚)「ギコ君?」

(*,,゚Д゚)「おれ達も行くぞしぃ!」

(*゚ー゚)「うん!やろう!」

後方に下がりメンバーの行動を呆然と見ていた二人だったが、
笑いながら楽しそうに豆を投げている彼らを見て、
笑顔で枡を持って戦線に参加した。



残り時間は、10分。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:34:13 ID:qCAusiyY0<>
 _
( ゚∀゚)「よし、そろそろ終わるかな」

ξ*゚⊿゚)ξ「おりゃあ!しね!」

('A`)「あらかた終わったな」

川*゚ -゚)「うりゃ!うりゃ!消えろこら!」

( ・∀・)「…ブーン」

( ^ω^)「お?」

( ´∀`)「……ショボン…」

(´・ω・`)「なに?モナー」

( ・∀・)「ツンとクー、ちょっとストレスとか溜まってないか?」

( ´∀`)「解消させてあげなきゃだめもなよ」

( ^ω^)「お??」

(´・ω・`)「ブーンにツンの事を頼むのはともかくとしても、
あの二人は前からあれが普通だよね?ブーン」

( ^ω^)「そうだおね」

(;・∀・)「あ、そうなんだ」

(;´∀`)「そうもなか」

一部の追いつめるメンバーと、それを後ろから見守るメンバー。

残り時間が、6分を切ろうとした。



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:35:13 ID:qCAusiyY0<>
突然揺れる大地。
森の影から現れる大きな影。
その大きさは先に戦った二匹よりも一回り程大きい。

(´・ω・`)「まずは鬼を掃討!
残りは武器装備!
豆も試すよ!」

まだエリア内に入ってこないその影を確認した瞬間に走るショボンの指示。
楽しそうに鬼を追い詰めていた二人と数名も真剣な顔になり、
十匹ほど残っていた鬼を一気に消しはじめる。
それ以外のメンバーはそれぞれ武器を二つ実体化させ、
どちらでも対応できるよう準備を始めた。

残りの鬼をすべて消した時、巨大な影がしっかりと姿を現した。

川 ゚ -゚)「マーブル模様?」

ξ゚⊿゚)ξ「美的センスが無さすぎる」

遠目で見るとまだらな紫。
よく見ると赤と青が絡まった肌の色。
三本の角をもった鬼が、両手を空にあげて威嚇した。

(;,,゚Д゚)「ゴルァ」

(;*゚ー゚)「こ、これは…」

('A`)「んじゃまあおれから」

息を飲む二人をよそに、
いつの間にか足元に移動していたドクオが桃木の剣で片足を一閃。
しかしそれほどHPは減らない。

( ^ω^)「じゃあこっちかお!」

風の様に飛んだブーンもドクオが切ったのと同じ足を通常の武器で一閃。
しかし減ったHPは同じくらいだった。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:36:06 ID:qCAusiyY0<>
ミ,,゚Д゚彡「だったらこれだから!」

ブーンの後ろから続いて走ってきたフサギコがイベント用武器で一閃。
先程よりも減らしたようだが、格別というわけではない。

ξ#゚⊿゚)ξ「あーもうまったく!」

更にその後ろから走りこんだツンが爪楊枝で一閃。
フサギコよりも更に少しだけ減らす量が多かったが、それでも微々たる違いだった。

一撃離脱を持って距離を置く四人。
 _
( ゚∀゚)「げっ」

( ´_ゝ`)「この武器でも無理か」

( ´∀`)「他にもあるもなか?」

( ゚∋゚)「そしたらこれだ!」

豆を投げるクックル。

紫鬼「ぐりゅああああ!」

布が巻かれた両手を振り下ろして豆を薙ぎ払う紫鬼。

(´<_` )「結局豆か!」

武器による攻撃は全く防御態勢を取らなかった紫鬼であったが、
豆による攻撃には当たる前に対応した。

それをみて全員が豆を構える。

(´・ω・`)「やるよみんな!」

「「「「「おーーーー!!!!」」」」」

紫鬼を囲んで豆を投げるメンバー。

流石に全方位からの攻撃によって豆を体に受けてしまい、
HPを徐々に減らしていく。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:37:21 ID:qCAusiyY0<>
(,,゚Д゚)「でもなかなか減らないぞゴルァ!」

(´・ω・`)「さっきの子鬼よりは耐久値が高いみたいだね」

残りの時間はまもなく2分。

( ^ω^)「あと一本だお!」

三本あったHPバーを、残り一本まで減らした。
勢いに乗って更に攻撃を加える。
そして最後のバーが赤く変わった。

紫鬼「ぎゃりゅあああああああ!!」

その瞬間、雄叫びと共にジャンプする紫鬼。

(´・ω・`)「散開!各自防御!」

攻撃としての跳躍には見えなかったが、まずは距離を取って防御をする。

その読みは当たり、紫鬼はただジャンプしただけであり、
着地は飛んだのと同じ場所であり、
武器も何も持っていないため地響きを上げただけだった。

いや、土煙が上がり、割れた大地も空に巻き上がった。

(;´・ω・`)「防御!」

土を飛ばすことによる攻撃。
土煙による視界を塞がれること。
それによる死角からの攻撃。

それを危惧して防御をするが、土も煙も自分達には向かってこない。

(´・ω・`)「ん?」

('A`)「なんもこない…だと?」

(,,゚Д゚)「ご、ゴルァ。こ、これはなんだ?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:39:02 ID:qCAusiyY0<>
土煙が紫鬼を包んでいる。
風がギコの後ろから吹き、
そのためギコが一番最初にその姿を目にした。

(*゚ー゚)「え?」

( ´_ゝ`)「ん?」

そして全員の目に映る鬼の姿。
鬼は、土によって身体を包んでいた。

( ゚∋゚)「とう!」

とりあえずクックルが豆を投げるが、土によって防がれてしまう。

('A`)「なら!」

即座に剣を手にしたドクオとブーン。

死角から、風の様に紫鬼に近寄り、
土に包まれた足を狙う。

('A`;)「くっ」

(;^ω^)「おっ?」

攻撃を与えることは出来るものの土を落とすことは出来ず、
尚且つ攻撃事態も先ほどどうようたいしたダメージを与えることは出来ない。

ミ,,゚Д゚彡「ふさもやるから!」

刀を緑色に輝かせたフサギコが紫鬼に近寄り連撃を与える。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:41:22 ID:qCAusiyY0<>
(´<_` )「あれでもだめか」

( ´_ゝ`)「あの隙間を狙えば行けるんじゃないか?」
 _
( ゚∀゚)「おっ。土がついてねぇ。
って、胸とか頭とかじゃねえかよ。
流石にあれは届かないし、スキルでジャンプしたら狙い撃ちされるんじゃね」

( ´_ゝ`)「ああ、だから」

( ゚∋゚)!

( ´∀`)「そうもなね。ここはひとつ…」

全員が、戻ってきたドクオ達三人も含めて全員が、
ある一人を見る。

(    )「そう!この場はこの僕!」

枡から一粒の豆を取り出し、空高く掲げる。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:42:07 ID:qCAusiyY0<>


(´・ω・`)「このショボンさま



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:43:00 ID:qCAusiyY0<>


ξ#゚⊿゚)ξ「さっさとやりなさい!」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:46:11 ID:qCAusiyY0<>(´・ω・`)「におま……はーい。
最後まで言わせてくれてもいいのに…」

川 ゚ -゚)「またタイムアップしたら恨まれるぞ」

(´・ω・`)「ちゃんとやってるって」

摘まんだ豆を一つずつ、けれど物凄い速さで飛ばすショボン。
豆はまるで吸い込まれるようにひとつ残らず紫鬼を覆う土の割れ目に入っていく。

その都度苦痛のうめきを上げる紫鬼。

(*゚ー゚)「……」

(,,゚Д゚)「……」

( ´∀`)「どうしたもな?」

(*゚ー゚)「あ…いえ…」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(´<_` )「まあ、とまどうよな」

(*゚ー゚)「あ…いえ…」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

( ゚∋゚)「シュールな絵だしな」

(*゚ー゚)「え…あ…はい…」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

( ´∀`)「すぐ慣れるもなよ」

(´<_` )「日常だからな」

( ゚∋゚)「うむ」

(*゚ー゚)「はあ…」

(,,゚Д゚)「ゴルァ…」

周りで喋っている間に、
13秒を残して紫鬼を倒すことに成功した。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:47:07 ID:qCAusiyY0<>



「「「「「かんぱーい!」」」」」





.<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/02(月) 20:47:44 ID:PbZaRC6E0<>おいショボンw<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:48:28 ID:qCAusiyY0<>
VIPのホームでは、完勝会が行われていた。

(*´・ω・`)「みんなおつかれさま」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

ホクホク顔のショボンが、ビーグルを抱きかかえたままグラスを傾ける。

川 ゚ -゚)「そんなに良かったのか?」

(´・ω・`)「うん。サンタの袋ほどじゃないけど、容量また増えたよ」

( ´∀`)「それはよかったもなね」

ξ゚⊿゚)ξ「そういえば、ちゃんと聞いてなかったけどなんで今回のクエストやったの?
あんたにしちゃ終りの情報が無い戦闘有りのクエストに参加するなんて、
良く決めたわよね。いくらあのバカがやりたいってわがまま言ったからって」

(´・ω・`)「なんかね、凄くやりたがってたんだよ。
で、調べたらタイムアップありだし閉じ込められ系でも無いから、
いざとなったら逃げられるだろうと思ってさ。
それに、ギコやしぃにチーム戦を教えるにはちょうど良いかなとも思って」

( ^ω^)「ジョルジュは何でやりたがったんだお?」

(´・ω・`)「よく分からないんだけどね。
まあやりたいって言った責任ってことで、
獲得アイテムを着させているから、そろそろ来るんじゃないかな」

川 ゚ -゚)「獲得アイテム?」

(´・ω・`)「うん。ドクオとふさに付き添いと言う名の見張りを頼んでるから、
逃げ出したりはしないと思うけど」

ξ゚⊿゚)ξ「見張り?」

クーとツンが不思議そうな顔をする中、
ドアが開いた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:49:50 ID:qCAusiyY0<>
('A`)「鬼がでたぞー」

入ってきたドクオが棒読みで言うと、
後ろから入ってきたフサギコが続ける。

ミ,,゚Д゚彡「お、おにがきたぞー」

ドクオが呆れ顔なのに対し、フサギコは笑顔だ。

そして部屋の中にいたメンバーが不思議そうに見つめる中、
ドアから鬼が現れた。
∧_ ∧
( ゚∀゚)「わ、わるいこはいねがー」

頭には角が付いたヘアバンド。
手には棘が付いた金棒。
そして体は虎縞パンツ一枚。

そんな姿のジョルジュが、現れた。

そして訪れたのは静寂。
誰も何も言わず、呆然とジョルジュを見つめる。






ξ゚⊿゚)ξ「さむっ」

ツンの一言で、やっと笑いが起きた。

川 ゚ -゚)「女性の前でなんという格好をしているんだ。
本当にセクハラだぞ」
∧_ ∧
( ゚∀゚)「お、鬼装備って言うレアアイテムだったんだよ!」

川 ゚ -゚)「というか、今ジョルジュが言ったのはなまはげで、鬼じゃないんじゃないか?」
∧_ ∧
( ゚∀゚)「え?そうなの?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:50:45 ID:qCAusiyY0<>
( ´∀`)「なまはげも鬼の一種もなけど、節分で豆を投げられる鬼とはちょっと違うもなね。
言われているのは節分の鬼は地獄からの使いや住人で、
なまはげは髪からの使いとか言われたりするもな」

モナーの知識に本日二度目の感嘆の声が上がる。
∧_ ∧
( ゚∀゚)「えっと…」

( ゚∋゚)「とりあえず、豆まきはしておくか?」

(´・ω・`)「そうだねー」
∧_ ∧
( ゚∀゚)「え?」

クックルが枡を持つ。
そしてそれぞれにテーブルに置かれていた枡を手にする。

(*゚ー゚)「…そのために置いてあったんですね」

( ´∀`)「ほら、しぃとギコも持つもなよ」

(,,゚Д゚)「やるぞゴルァ」

(*゚ー゚)「はい!」
∧_ ∧
( ゚∀゚)「え?こういうのってもうギコの役目になるんじゃ」

( ´_ゝ`)「あきらめろ」

にやりと笑った兄者がすぐ横で構えた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:51:36 ID:qCAusiyY0<>


「「「「「「おにはーそと!
     ふくはーうち!」」」」」



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 20:53:01 ID:qCAusiyY0<>


期間限定クエスト【鬼から街を守れ】無事終了。







.<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/02(月) 20:58:27 ID:PbZaRC6E0<>本筋も待ちどうしいけど、やっぱりこういう日常編もいいな
それにしてもジョルジュの扱いが哀れすぎるw

乙おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/02(月) 20:59:40 ID:37srnAxU0<>おっつおつ<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/02(月) 21:06:36 ID:qCAusiyY0<>
以上、なんとか節分前に投下できてほっとした閑話でした。

ネタ自体は去年にできていたのでもっと早く投下できればよかったのですが、
ギリギリになってしまって後悔です。


さて、昨年の話及びラストに関しては色々と感想をいただけまして、
本当にありがとうございます。

次の話は勿論ラストまでの道筋は決めてありますが、
書いていただいた感想に対しての答えは話の中に織り込むことが出来ればなと思っております。

出来るかどうかわかりませんが。


感想とおつ、本当にありがとうございます。
物凄く励みになります。


次回は本編の予定でしたが、
埋める分を閑話にするかもしれないです。

そこら辺はネタの出具合で。

今回も読んでいただけまして、ありがとうございました。
また宜しくお願いいたします。

ではではまたー。


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/02(月) 22:16:18 ID:TIQIfTZo0<>ギリ遭遇できなかった!
これから読むぜ、乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/02(月) 22:40:26 ID:oxali96g0<>閑話おもろいわーw
>>954の髪の使いは神の使いの誤字ですかね?
おつです<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/03(火) 01:28:54 ID:/dsUQYpk0<>まさかここでショボン様にやられるとはwww
もうショボンに豆を投げられたい<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/03(火) 01:52:11 ID:3ySGUkn20<>前回のシリアスから一転、かわいい雰囲気に和まされました。<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/03(火) 18:25:13 ID:mtkRmbZw0<>>>951
そその通りです!
髪と神を間違えました。

ご指摘ありがとうございます。

乙と感想、本当にありがとうございます。
次も早めに投下できるようがんばります!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/03(火) 19:01:02 ID:oAdyRioo0<>           |
            |  彡⌒ミ
           \ (´・ω・`)また髪の話してる
             (|   |)::::
              (γ /:::::::
               し \:::
                  \<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:45:53 ID:U2vsBxiI0<>
第H話 閑話 ちょこのどれい




モンスターの出る森を、彼女たちは歩いていた。

(*゚ー゚)「トソンさんの加入はそんな経緯だったんですね」

(゚、゚トソン「お恥ずかしながら」

从 ゚∀从「うをりゃあああああ!」

(*゚ー゚)「いえいえ、ぜんぜん恥ずかしくなんてないですよ。
恥ずかしさで言うなら、私達の方がよっぽど」

ξ゚⊿゚)ξ「はっ!」

(゚、゚トソン「あ!聞いてますよ。
大変だったらしいですね」

从 ゚∀从「とりゃ!」

(*゚ー゚)「えー。誰に聞いたんですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「とうっ!」

(*゚ー゚)「恥ずかしいな」

从 ゚∀从「逃がすか!」

(゚、゚トソン「デミタスさんですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「逃げるなコラッ!」

(*゚ー゚)「ということは、デミタスさんに話した人がいるってことですよね」

从 ゚∀从「とりゃ!」

(゚、゚トソン「うちのギルメンは全員知っているかと思いますよ」

ξ゚⊿゚)ξ「覚悟!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:46:56 ID:U2vsBxiI0<>
(*゚ー゚)「もー。
仲良いですから仕方ないですけど」

从 ゚∀从「ツン!そっちだ!」

(゚、゚トソン「ですね」

ξ゚⊿゚)ξ「りょうかい!」

(*゚ー゚)「えへへへへへ」(゚、゚*トソン

从 ゚∀从「よし!」

ξ゚⊿゚)ξ「倒した!」

川 ゚ -゚)「しぃ、トソン…」

(*゚ー゚)「何ですか?」

(゚、゚トソン「はい」

川 ゚ -゚)「警戒を怠ってはいないようだが、
たまには参加してみたらどうだ?」

(*゚ー゚)「え…」

(゚、゚トソン「ですが…」

从 ゚∀从「どうだツン?」

ξ゚⊿゚)ξ「ダメ。ドロップしてない」

从 ゚∀从「やっぱりもっと奥で採取なのか」

ξ゚⊿゚)ξ「そうみたいね」

後ろからクーに話しかけられたしぃとトソン。
フィールドダンジョンの中であるため警戒はしているが、
会話自体は続けられていた。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:48:23 ID:U2vsBxiI0<>
(*゚ー゚)「私達」

ハインが長手の鎌を一振りすると、
モンスターがポリゴンへと変わった。

(゚、゚トソン「必要だったんでしょうか」

ツンが細剣を構えて突撃すると、
モンスターがポリゴンに変わった。

川 ゚ -゚)「あー。うん。いや、まあなんだ、その」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんもそう思う?」

▼*・ェ・▼「きゃん!」

( ´∀`)「ビーグルはみんなとお出かけが楽しいもなよ」

川 ゚ -゚)「モナーまでお出かけとか」

ため息混じりでクーが呟くと、
三人が困ったような笑顔を見せた。



時は一時間ほど前にさかのぼる。



(*゚ー゚)「『コカオの実』ですか?」

ここは低層と中層の境目ほどのフロア。
『バン・アレン』と呼ばれる街の入口。
転移門の無い街であるため、最寄りの街から歩いて移動してきた。

从*゚∀从「ああ、意中の相手に食べさせれば二人は一生共にいられるらしい。
NPCの間で噂されているだけで、まだ手にした奴はいないらしいけど」

ξ*゚⊿゚)ξ「だからまだ情報屋のデータベースにも載っていなけどね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:49:26 ID:U2vsBxiI0<>
从*゚∀从「だが話自体は去年もあったらしい。
定期的に流れるということは、
おそらくはそういったイベントがあるんだろう」

ξ*゚⊿゚)ξ「バレンタインデーイベントってやつね」

(*゚ー゚)「はあ…」

ξ*゚⊿゚)ξ「反応薄いわね」

从#゚∀从「両思いの相手がいる奴はコレだから」

ξ#゚⊿゚)ξ

(;*゚ー゚)「え、いや、そう言うわけでは…。
って言いますか、ハインさんに怒られるのはまだ納得できるんですけど、
何故ツンさんにも睨まれないといけないのかが」

ξ#゚⊿゚)ξ「別に睨んでなんか無いわよ」

(;*゚ー゚)「は、はい(怖いですって)」

地図を広げてなにやら話し始めた二人から、そっと距離をとるしぃ。

川 ゚ -゚)「ツンは片思いだと思ってるからな」

(*゚ー゚)「…はい?」

背後からクーに話しかけられるが、
そのことよりも言われた内容で変な声を出してしまった。

(*゚ー゚)「で、でも手を繋いで歩いたりとかしたって」

川 ゚ -゚)「ちゃんとした告白は二人ともしてないらしくてな、
ツンにとってはそれがないから恋人じゃないらしい」

(*゚ー゚)「はあ…」

(゚、゚トソン「お相手はブーンさんですよね?」

川 ゚ -゚)「ああ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:50:28 ID:U2vsBxiI0<>
(゚、゚トソン「とても懐の広い良い方だと思いますが、
そう言ったロマンチックな乙女の機微には疎そうな方のように見えますね」

川 ゚ -゚)「なかなか洞察力があるな」

(゚、゚トソン「いえいえ、そんなことは」

( ´∀`)「男は照れ屋さんもなよ」

川 ゚ -゚)「ブーンはただの鈍い男だがな」

(;´∀`)「もなもな」

(゚、゚トソン「そういえば、ハインさんから誘いという名の命令を受けたとこに、
女性だけで行くと聞いたんですが…」

ちらっとモナーを見るトソン。

( ´∀`)「モナーは男もな」

そのままビーグルに視線を移す。

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´∀`)「ビーグルはビーグルもな」

(゚、゚トソン「?」

川 ゚ -゚)「ショボンに今回の実の採取について報告したら、
レベル的には女だけで問題ないけど、
一応モナーとビーグルに同行してもらうよう言われたんだ」

( ´∀`)「ショボンから頼まれたもなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*゚ー゚)「心強いですが、どうしてでしょうね」

川 ゚ -゚)「うむ。
ハインの暴走とかツンがぶち切れ、
ドクオの命とか物騒なことを呟いた後だったから、
思うところはあるんだろうな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:51:45 ID:U2vsBxiI0<>
(;´∀`)「もな?」

(;*゚ー゚)「え?」

(゚、゚;トソン「そ、それはどういう」

川 ゚ -゚)「戦闘として危険ならジョルジュあたりも付けるだろうし、
それに戦闘として本当に危険なら止めるだろうから、
危惧したのは精神的な方で、命の危険は大丈夫だろう。
しかし二人が発狂した時用のスケープゴートならモララーやシャキンを呼ぶだろうから、
何故モナーだけに頼んだのか…。
うむ。わからんな」

(;*゚ー゚)「精神的…ある意味そちらの方が…」

ξ゚⊿゚)ξ「よし!
ルート確認終了!」

从 ゚∀从「一番奥のエリアにランダムで生えているらしい。
ただ途中の敵からドロップできるという情報もある」

ξ゚⊿゚)ξ「採取、ドロップとも取った人の所有物ルール」

从 ゚∀从「負けないけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「隊列は、私とハインのツートップ、
後ろのトソンとしぃ。
最後にクーとモナーでよろしく。
これはレベルとして機動性の結果で、
他意はないからね」

从 ゚∀从「その通りだ」

川 ゚ -゚)

(*゚ー゚)

(゚、゚トソン

( ´∀`)

▼・ェ・▼

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:53:11 ID:U2vsBxiI0<>
ξ;゚⊿゚)ξ「な、無いわよ?
ねえハイン」

从;゚∀从「ああ、もちろん」

川 ゚ -゚)「別に私達は何も言ってないが」

ξ゚⊿゚)ξ「と、とにかく出発するわよ!
クー、地図送ったからルート確認と指示をよろしく」

川 ゚ -゚)「はいはい」

从 ゚∀从「よし、出発だ!」

ξ゚⊿゚)ξ「おーー!!!」

(*゚ー゚)「お、おーー」

(゚、゚トソン「…おーー」

川 ゚ -゚)「はいはい」

( ´∀`)「がんばるもなね」

▼・ェ・▼「きゃん!」

意気揚々と歩き出した二人。
その後ろをしぃ達が続いた。



そして今。
彼女たちは目的の最深エリアに到達する少し前にいた

(*゚ー゚)「万が一私達がドロップさせちゃったらそれはそれで問題が」

(゚、゚トソン「ですね」

川;゚ -゚)「そこまで大人げなくは無いと思いたいが」

( ´∀`)「可能性は高いもなね」

川 ゚ -゚)「モナーまでそんなことを」

( ´∀`)「もなもな」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:54:13 ID:U2vsBxiI0<>
从 ゚∀从「終わりだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「消えろー!」

(゚、゚トソン「順調に倒してますね」

(*゚ー゚)「ですね」

川 ゚ -゚)「…ま、いいか」

( ´∀`)「もなもな」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

その後も二人の攻撃はさえ渡り、
レベルを考慮しても恐ろしいほどのスピードで進んでいった。



从* ゚∀从「到着!」

ξ*゚⊿゚)ξ「よし!採取だ!」

目的のエリアに到着し、
我先にと周囲の木を調査し始める二人。

(゚、゚トソン「結局一回も戦いませんでした」

(*゚ー゚)「レベル差があるとはいえ、
二人とも凄すぎです」

川 ゚ -゚)「これほどとはな」

その後ろから続いて入ってくる4人とビーグル。

( ´∀`)「三人と色々話せて楽しかったもな」

▼*・ェ・▼「きゃん!……?」

( ´∀`)「どうしたもな?」

▼・ェ・▼「きゃん!」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:55:28 ID:U2vsBxiI0<>
ビーグルが周囲を見回し、
一本の木の根本に駆け寄った。

( ´∀`)「ビーグル?」

その後をモナーが追う。

(*゚ー゚)?

(゚、゚トソン?

川 ゚ -゚)?

从 ゚∀从「ダメだ、見つからない!」

ξ゚⊿゚)ξ「こっちにもない!」

エリアはそれなりに広いのだが、
採取が出来そうなポイントはそれほど多くはないため、
ハインとツンはその頃にはだいたい調べ尽くしていた。

从 ゚∀从「やっぱりここに来るまでに戦うモンスターからドロップするのか」

ξ゚⊿゚)ξ「もう少し探してみて見つからなかったら、
戻ってみましょう」

頷きあう二人。
その二人を、残りの女性三人がげんなりとした表情で見つめた。

▼*・ェ・▼「きゃん!」

木の根本を掘っていたビーグルが、
何かを見つけ、嬉しそうに振り返った。

( ´∀`)「良いもの見つけたもな?」

モナーが土の中を見ると、
そこにはピンポン球位の大きさをした茶色い玉が5つ埋まっていた。

( ´∀`)「もしかして」

モナーが1つ叩いてウィンドウを出すと、
そこには『コカオの実』と書かれていた。


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/09(月) 22:55:55 ID:TTb2mglw0<>っしゃ!支援<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:57:39 ID:U2vsBxiI0<>
从*゚∀从「ビーグルえらい!」

ξ*゚⊿゚)ξ「ビーグル最高!」

ビーグルを褒め称える二人。
しかし視線はビーグルを見ておらず、
受け取った『コカオの実』をじっと見つめている。

川 ゚ -゚)「まったく。
二人とももっとちゃんとビーグルに感謝しろよ」

从*゚∀从「これでどっくんと」

ξ*゚⊿゚)ξ「これでブーンと」

(*゚ー゚)「聞いてませんね」

川 ー -ー)「まったく…」

(*゚ー゚)「クーさんもショボンさんにそれで何か作ってあげるんですか?」

川 ゚ -゚)「私が?ショボンに?何故?」

(*゚ー゚)「え?だ、だって、その」

川 ゚ -゚)「?何故だ?」

(*゚ー゚)「なんでもありません」

川 ゚ -゚)「時々しぃは変なことを言うな」

(゚、゚トソン「作ると言えば、
ハインさんは料理関係のスキルを持ってましたか?」

(*゚ー゚)「あ!そういえばツンさんは持って…」

从 ゚∀从「持ってない」

ξ゚⊿゚)ξ「持ってない」

(゚、゚トソン「ではどうやって…!
ま、まさかそれをそのまま口に押し込むつもりですか!?」

从 ゚∀从「いや、さすがにそこまではしないけど」

(*゚ー゚)「トソンさんもけっこう怖いことを言いますね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 22:58:55 ID:U2vsBxiI0<>
(゚、゚トソン「『トライアのティーポット』?」

(*゚ー゚)「この前モララーさんが作ったアイテムです。
茶葉のアイテムを入れると、
スキルを持っていなくてもお茶を入れることが出来る優れもので」

(゚、゚トソン「ほー。それは凄い」

(*゚ー゚)「でも、あれは一部のアイテム専用じゃなかったですか?」

川 ゚ -゚)「この前試してみたら、
食用のアイテムなら、
トルネア草と一緒に入れればお茶に出来ることが分かったんだ」

(*゚ー゚)「そうなんですか!
トルネア草のお茶は癖のない薄味のお茶でしたから、
混ぜれば色々な味が楽しめますね!」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(゚、゚トソン「つまり、
それを使ってドクオさんとブーンさんに食べさせる、
正確には飲んでいただくわけですね」

从*゚∀从「どっくんと…」

ξ*゚⊿゚)ξ「ブーンと…」

実を大事そうに両手で包み、
グフグフと笑う二人。

( ´∀`)「二人とも、ちゃんと読まなきゃダメもなよ」

▼・ェ・▼「くぅ~ん」

从 ゚∀从「え?」

ξ゚⊿゚)ξ「なにを?」

( ´∀`)「タップして、テキストをちゃんと読むもなよ」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:00:32 ID:U2vsBxiI0<>
ビーグルの前でしゃがんでいるモナー。
ビーグルの前には『コカオの実』が転がっている。

川 ゚ -゚)「ん?」

慌ててウィンドウを開くハイン、ツン、クー。
しぃも開き、隣のトソンが読めるように可視モードを切り替えた。

(゚、゚トソン「ありがとうございます」

(*゚ー゚)「いえいえ」

川 ゚ -゚)「なんだと…」

(*゚ー゚)「えっと…アイテム名は、
『コカオの実』で…」


『コカオの実』
意中のものに食べさせることが出来れば、
通常のアイテムよりも高確率で連れ帰ることが出来る。

ただし、使い魔とする事が出来るのは使い魔となる属性を持つ
モンスターだけであることは変わりない。

既に使い魔としたモンスターに与えれば、
親密度を上げることが出来る。


(*゚―゚)「……」

(゚、゚トソン「……」

川 ゚ -゚)「…………」

ξ ⊿ )ξ

从 ∀从

(*゚ー゚)「えっと…その……」

(゚、゚トソン「なんといえばいいのか…」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:01:41 ID:U2vsBxiI0<>
( ´∀`)「一つもらうもなねー。
ビーグル、食べて良いもなよ」

▼*・ェ・*▼「きゃん!」

目の前の実を口に含むビーグル。
美味しそうに頬張るその姿に、モナーが表情を綻ばせる。

川   - )「………」

(゚、゚トソン「…クーさん?」

(*゚ー゚)「…やっぱりショボンさんに」

川 -)「クックックックックック」

(;*゚ー゚)「違った。笑ってた」

(゚、゚;トソン「え、ちょ、クーさん?」

川 ゚ -゚)「すまんすまん。
そっかショボンはこれを推測したんだな」

(*゚ー゚)「え?」

川 ゚ -゚)「何故その結論に至ったかは分からないが、
モナーを、と言うよりビーグルを連れてきたのはその為だろう。
ビーグルがいないと見つからなかったわけだし。
今までの常識からいえば、あんな場所は調べないだろう?」

(*゚ー゚)「確かにそうですね。
通常のポイントからは外れてました」

川 ゚ -゚)「実際、今まで誰も【コカオの実】を見付けていなかったわけだしな」

(゚、゚トソン「ですが、なぜこの時期なのでしょう」

川 ゚ -゚)「ん?どういうことだ?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:02:55 ID:U2vsBxiI0<>
(゚、゚トソン「いえ、こんなバレンタインデーの時期にあんなうわさが流れれば、
ハインさんの様な勘違いをする人が出るのはしょうがないと思います。
情報屋さんも関わっているわりには、
使い魔に関わっているという明確な情報も流れていないわけですし」

(*゚ー゚)「そうですね」

(゚、゚トソン「何故、この時期にこんなイベントが」

川 ゚ -゚)「運営がモテない奴だけで、
リア充許すべからずとか思ってたんじゃないか?」

(;*゚ー゚)「クーさん」

(゚、゚トソン「その可能性も高いですが、
何か理由も用意してあるような気もします。
運営もそんな嫉妬心を非難されたくないでしょうし」

(;*゚ー゚)「トソンさんも否定しないし、結構辛辣だし」

川 ゚ -゚)「ふむ」

(゚、゚トソン「ショボンさんは他に何か呟かれていなかったですか?」

川 ゚ -゚)「ショボンがか?
……あとはビーグルとかニャンとかワンとか。
だがあいつのビーグル狂いは今に始まったことじゃないから流したが」

(゚、゚トソン「ビーグル…ニャン…ワン…」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんが『にゃん』って言うの聞いたことないですけど」

川 ゚ -゚)「私も無い」

(゚、゚トソン「前にも噂が流れたと言っておられましたけど、
去年のこの時期ですか?」

川 ゚ -゚)「いや、たしか違うはずだ。
だいたい去年のこの時期はこのフロアは解放されていなかったし」

(*゚ー゚)「そういえばそうですね」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:04:07 ID:U2vsBxiI0<>
(゚、゚トソン「では別の時期に…。
……やっぱりバレンタインデーは関係ないわけですね。
よく調べてちょっと考えればわかりそうな……」

(;*゚ー゚)「言わないであげてください」

川 ゚ -゚)「前の時はもっと期間が短くて…。
そうだ、10月の終わりくらいだな。
11月の中ごろまで聞いた気がする」

(゚、゚トソン「10月…11月…2月…。
ビーグル…ニャン…ワン…コカオの実……。
11月……ワン……?ニャン………2月!!」

川 ゚ -゚)「!そういうことか!」

(゚、゚トソン「ですね。おそらく」

(*゚ー゚)「え?な、なんですか?」

(゚、゚トソン「2月22日はニャンニャンニャンで猫の日なんです」

川 ゚ -゚)「11月1日がワンワンワンで犬の日!」

(*゚ー゚)「え?え?え?」

(゚、゚トソン「おそらくペット絡みの日に合わせて、
噂が流れるように設定されているのではないかと言う事です」

(*゚ー゚)「でもそんなこと…」

川 ゚ -゚)「ま、バカ運営のクソお遊びと言うか」

(゚、゚トソン「ゲーム内でまで恋愛にうつつを抜かすなという嫉妬か」

(;*゚ー゚)「クーさん、トソンさん」

川 ゚ -゚)b「トソン、辛辣で良い」

d(゚、゚トソン「いえいえ、クーさんこそ」

(;*゚ー゚)「この二人…」

.<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/09(月) 23:04:59 ID:mir2DQyk0<>そういうことかwwwwしえん<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:05:19 ID:U2vsBxiI0<>
ξ゚⊿゚)ξ「ま、こんなことだろうと思ったわ」

川 ゚ -゚)「お、先にツンが持ち直したか」

ξ゚⊿゚)ξ「別に期待なんてしてなかったし」

川 ゚ -゚)「そういう事にしておくか」

ξ゚⊿゚)ξ「事実だし」

川 ゚ -゚)「はいはい」

ξ゚⊿゚)ξ「本当だし」

川 ゚ -゚)「ハインはどうした?」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ止まってる」

从 ∀从

川 ゚ -゚)「まだダメか…」

(*゚ー゚)「…あれ?でも…」

(゚、゚トソン「口が動いてますね」

川 ゚ -゚)「…動いているな」

傍による四人。

从 ∀从「どっくんにあげちゃだめかな…
でも…
ふたりでのめば…
おなかこわす…
でも…
どっくんに…」

川;゚ -゚)「思考がループしてるな」

(;*゚ー゚)「ドクオさんもさっさと付き合っちゃえばいいのに」

(゚、゚;トソン「本当ですよ。こんな一途に思われてて、何が不満なんでしょう」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:06:58 ID:U2vsBxiI0<>
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオになら飲ませてもいいんじゃない?
見た目はモンスターみたいなもんだし」

川;゚ -゚)「ツン、流石にそれは…」

从 ゚∀从「良いよな!そうだよな!」

(;*゚ー゚)「うわ」

(゚、゚;トソン「それで良いんですね」

从 ゚∀从「一緒に飲む!そうと決まれば帰るぞ!」

(゚、゚;トソン「結局飲むんですね」

(;*゚ー゚)「ああもうほんとにこの人は」

川 ゚ -゚)「死ぬことは無いだろう」

ξ゚⊿゚)ξ「帰ろう帰ろう…。
?モナーは何しているのよ」

( ´∀`)「もな?」

しゃがんでいたモナーに声をかけたツン。
振り向きながら立ち上がったモナー。
その足元には、ビーグルともう一匹モンスターがいた。



ξ ⊿ )ξ    ゚ ゚



▼*・ェ・▼(^ω^U)



.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:08:04 ID:U2vsBxiI0<>
ξ ⊿ )ξ「も、モナーさん、そこにいらっしゃるのは?」

( ´∀`)「(さん?いらっしゃる?)
さっき寄ってきたモンスターもなよ。
名前は『ワン=ワン=オー』もなね。
テイミングが成功すれば使い魔にできるはずもなけど、
今まで成功したプレイヤーはいないらしいもな」

青銀色の毛並みをしたビーグルと、
真っ白いほわほわとした毛並みのワンワンオーがじゃれついて転げまわっていた。

ξ ⊿ )ξ「そう、使い魔に…」

(^ω^U)わんわんお

▼*・ェ・▼きゃんきゃん

(*゚ー゚)「どうしたんですか?あ!」

(゚、゚トソン「おや。楽しそうですね」

川 ゚ -゚)「ほほう。ビーグルに新しいお友達が出来たか」

从 ゚∀从「へー。モンスターにこんなのがいるんだな」

(^ω^U)わんわんお

固まっているツン以外の四人が駆け寄り、
その白いほわほわの毛並みをなでる。

(**゚ー゚)「もふもふ!」(あれ…このこ)

(゚、゚*トソン「もふもふですね」(…にてますね)

川*゚ –゚)「もふもふだな」(にてるな)

从*゚∀从「もふもふだ」(ブーンにそっくりだ)

( ´∀`)「この子も可愛いもなね」

▼*・ェ・▼きゅわん!

(^ω^*U)わんわんお!

.<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/09(月) 23:09:16 ID:mir2DQyk0<>ここでわんわんおwwww<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:09:28 ID:U2vsBxiI0<>
和気藹々としている輪を目指し、ふらふらと近寄る人影。

ξ ⊿ )ξ「わんわんお…
つかいま…
わんわん…お…
つかいま…
いっしょ…
かたときもそばに…
………ン……に…そっくり………
ぐふっ……ぐふっ………ぐふふっふふうふふふふうふふふふうふふふふふうふううふふうふぐふうふううううふふふふふっふ」

(;´∀`)!

川;゚ –゚)!

从;゚∀从!

(;*゚ー゚)!

(゚、゚;トソン!

▼;・ェ・▼!

(^ω^;U)!

ξ ⊿ )ξ「わんわんおちゃーん。
こっちにもおいでー」

(((^ω^;U)お…おん…

じりじりとにじり寄るツン。
すでにビーグルを除くメンバーは立ち上がって道を開けている。

ξ ⊿ )ξ「さあ…これをおたべ…」

(((((((^ω^;U)おおおおお……

コカオの実を突き出したまま近寄るツン。

あとずさりするワン=ワン=オー。

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:10:41 ID:U2vsBxiI0<>
ξ ⊿ )ξ「おたべなさい」

((((((((((((((((U;^ω^)おん!

コカオの実をワンワンオーの口に近付けようとした瞬間、
くるっと反転したワンワンオーが風のように駆け去った。

(;´∀`)「あっ!」

川;゚ –゚)「あっ!」

从;゚∀从「あっ!」

(;*゚ー゚)「あっ!」

(゚、゚;トソン「あっ!」

▼;・ェ・▼「きゃんっ!」

ξ ⊿ )ξ!

一陣の風が吹き、
何もない空間が残る。

(*゚ー゚)「居なくなっちゃいました…ね…」

ξ ⊿ )ξ「……なん……で……」

(((((…怖かったんだと思う)))))

全員が言葉を飲み込んだ。

ξ゚⊿゚)ξ「ま、べつにいいんだけど」

(((((あ、もちなおした)))))

ξ゚⊿゚)ξ「で、モナー。
どうして押さえてなかったのかしら?」

(;´∀`)「も、もな?」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしてかしら?」

((((飛び火している))))

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:11:53 ID:U2vsBxiI0<>
(;´∀`)「モナーにはビーグルがいるもなから、
他にパートナーをつくるつもりはないもなよ?」

ξ ⊿ )ξテメーニテイミングシロトカイッテネエダロウガ チッ ツカエネエ

(;´∀`)「も、もな?」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ビーグルに友達が出来るのはいいことよね」

(;´∀`)「そ、それは」

ξ゚⊿゚)ξ「ビーグルも友達と一緒に居られたらうれしいわよね」

▼;・ェ・▼「くぅーん」

ξ゚⊿゚)ξ「ビーストテイマーになるのは大変だし、
なった後もパートナーへの責任もあるわけだから大変だけど、
そういう事なら私がなってあげてもいいわよ」

(;´∀`)「い、いや別にどうしても必要もなとは」

ξ゚⊿゚)ξ「なってあげてもいいわよ」

(;´∀`)「え、いや、もな」

ξ゚⊿゚)ξ「なって、あげても、いいわよ」

(;´∀`)「………」

ξ゚⊿゚)ξ「あ げ て も い い わ よ」

(;´Д`)「……ありがとうもな」

▼;・Д・▼「!……くぅーん」

((((負けた……))))

ξ*゚⊿゚)ξ「じゃ、がんばろっか。
ここに居れば寄ってくるのよね」

(;´∀`)「!い、いまからもな!?」

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:13:01 ID:U2vsBxiI0<>
ξ*゚⊿゚)ξ「善は急げって言うじゃない」

川 ゚ -゚)「じゃ、じゃあ私達は先に戻るとするかな。
ここは安全エリアだから攻撃を加えるモンスターは出ないはずだし。
二人は、帰りは転移結晶で戻ってくれ」

从 ゚∀从「そうだな。そうだな。それがいい」

(゚、゚トソン「それでは、お先に」

(;*゚ー゚)「お、おつかれさまでした」

(;´Д`)「!な、何の影響でワン=ワン=オーが出てきたのか分からないもなから!
さっきと同じ環境にしたほうが良いと思うもな!」

川;゚ –゚)!

从;゚∀从!

(;*゚ー゚)!

(゚、゚;トソン!

ξ゚⊿゚)ξ「それもそうね。
皆も残ってくれるでしょ。
何と言ってもビーグルの友達の為だし」

川;゚ –゚)「……ああ」

从;゚∀从「……そうだな」

(;*゚ー゚)「……もちろんです」

(゚、゚;トソン「……はい」

ξ*゚⊿゚)ξ「じゃ、まずはさっきと同じ位置に立ってみよっか」

川#゚ –゚)(モナー!)

从#゚∀从(モナー!てめー!)

(;´Д`)(モナー達だけ置いて帰るとか酷いもな!)

.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:14:09 ID:U2vsBxiI0<>
(;*゚ー゚)(それはそうですが…)

(゚、゚;トソン(これ…今日中に帰れるんでしょうか)

ξ*゚⊿゚)ξ「はやくはやくー」

「「「「「…はーい」」」」」



ξ ⊿ )ξ「ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっ
早く出てこないかな
ワンワンオーちゃん
ふふふふふふふふふっふうふふふふふふふふふふふふふふ」



木陰

(^ω^;U)わんわんお……

((((((U;^ω^)おっおっおっ




ξ#゚⊿゚)ξ「どうしてでてこないんじゃーーーーー!!!!!」



(((((あんたが怖いからだー!!!!!)))))

(きゃん!!!!)








.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:15:37 ID:U2vsBxiI0<>
後日

ξ゚⊿゚)ξ「モナー、今日暇?」

( ´∀`)「ワン=ワン=オー探しなら行かないもなよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そ、そんなんじゃないし」

ξ ⊿ )ξチッ ドコマデモツカエネーヤツ

(;´∀`)「な、なんと言われても行かないもなよ」

▼;・ェ・▼「きゃ、きゃん!」



また後日

从*゚∀从「どっくん、はい、お茶どうぞ」

('A`)「ああ、ありがと」

('A`)ズズッ

('A`)

('A`)

从*゚∀从「どっくん?」

('A`)

从;゚∀从「気を失ってる…」

从 ゚∀从「!」

从*゚∀从「起きたらずっと一緒!?」






.<>
◆dKWWLKB7io<><>2015/02/09(月) 23:23:00 ID:U2vsBxiI0<>
以上、バレンタインデーネタ(?)でした。

14日になる前に投下できてよかったです。

支援、乙、ありがとうございます。

次は新しくして本筋の予定です。
ですのでちょっと時間がかかるかもですが、
また読んでいただけると嬉しいです。


ではではまたー。


.<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/09(月) 23:23:39 ID:mir2DQyk0<>乙
季節ネタいいね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/09(月) 23:35:53 ID:qeNKpv4w0<>乙乙<> 名も無きAAのようです<><>2015/02/10(火) 01:09:52 ID:WzM9z0VA0<>二連閑話でほんわかした後、
「これは、これ以上のシリアスが次にくるための、謂わば溜めなのだろうか」
という思考が巡り、やや肝を冷やす。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/02/17(火) 00:46:51 ID:cHL95peM0<>クリスマスイベントを運営はどんな思いで見てたんだろうなw<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/03/23(月) 20:47:27 ID:FF6JWiYsO<>3スレ目待ってます!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/04/18(土) 01:11:02 ID:v6sEDbRA0<>あれ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2015/04/18(土) 01:11:44 ID:v6sEDbRA0<>埋め<>