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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:00:01 ID:0Wi70pZY0
0.アインクラッド


西暦2023年11月

緑濃い森の中、曲刀を持った二足歩行する爬虫類「リザードマン」に向けて、剣を構える。
つい先日手にした片手用直剣「オニキスライト」は今まで使っていた剣よりも少し軽く刀身も細くなったが、その分リーチは少し長くなっているし全てにおいてグレードアップしている。
それに合わせてオレの剣技(ソードスキル)があれば目の前の爬虫類は敵ではない。

思わず笑みを溢し、いざソードスキルを放つために構えを取った。

2 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:01:16 ID:0Wi70pZY0

「なに戦闘中に笑ってんのよ!」

細剣を光り輝かせて突進する一人の女。
「目にも留まらぬ速さ」とは言わないが、ある程度レベルを上げていなければ目で追う事も出来ない素早さで何発かの突きを当てる。
呆然と構えを解いてソードスキルをキャンセルすると、目の前のリザードマンは澄んだ金属音を奏でつつポリゴンとなって消えた。

「お前スイッチするときは声をかけるっていう基本的な」
「タイミングが遅い!あと笑い顔が気持ち悪い!」

3 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:02:29 ID:0Wi70pZY0
金髪・ツインテール・縦ロールの巻き髪。
生半可な容姿の人間がやったらただの痛いだけだが、それがさまになる美貌をもって冷たく言い放つ。

「どうせ『おれのソードスキルの敵じゃないぜ』とか思いながら戦ってたんでしょ。あー気持ち悪い」

あながち間違っていないため思わず口篭ると、それ見たことかと更に冷たい視線を突き刺してくる。

「おっおっ。そこら辺で許してやれお」
「もう、甘いんだから」

4 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:04:33 ID:0Wi70pZY0

別の一体をポリゴンにした男が、柔和な笑顔を浮かべながら片手用直剣を腰の鞘に収めつつやってくる
見た目は少しふくよかだが、全てがレベルと強化ポイントの割り振りで決まるこの世界において、こいつが本気を出した動きを目で追うことは、それなりにレベルを上げているオレでも難しいだろう。

「モンスター倒したし、先に進むお」
「そうね」
「ああ」

話題が変わったことにほっとしながら残りの仲間に視線を向けると、頭上から一つの影がオレ達三人に向かって飛び降りてきた。

「ちっ!」

防御が間に合わず、きらめく曲刀がオレに当たるその瞬間、水色の光を纏った円形の物が敵に当たった。

光に押しやられ吹き飛ばされるリザードマン。
さっきまでオレが戦っていた敵とはカラーリングと武器防具が異なっている。

5 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:05:22 ID:0Wi70pZY0

「油断大敵だよ。三人とも」

かなり離れた場所に立つ優男。もともと垂れ気味な眉を更に下げながら、弧を描きながら戻ってきた回転する武器を危なげなく手に取る。

「助かったお!」
「ありがと」
「サンキュ」

思い思いに感謝しつつ視線は倒れているリザードマンに向けて武器を向けるオレ達三人。

「悪いな。こいつは私の獲物だ」

6 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:07:05 ID:0Wi70pZY0

しかし走り寄る一人の女が薙刀を4回閃かせると、リザードマンはポリゴンとなった。
肩を超える長い黒髪を整えることも無く、すぐさま女は右手を振ってウインドウを出すと、アイテム欄を確認する。

「ちょっと…」
「おまえ…」
「おっ…おっ…」

その即物的行動に思わず呆れるオレ達の前で小さくガッツポーズ。
涼しげな美人だが、ガッツポーズをしても表情を変えないのはいただけない。

「よし、『クレハ草』ゲット。これで新しいPOT(ポーション)が作れる」
「まったく…」

7 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:07:48 ID:0Wi70pZY0
薙刀使いに近寄る細剣使い。
話し始める二人を見ていると、さっきオレ達を投擲武器で守ってくれた男が寄ってきた。

五人で顔を見合わせ、視線だけでお互いの無事を確認し、安堵する。
(´・ω・`)「さて先を急ごう。先行している皆が待ってるしね」
( ^ω^)「だおだお」
川 ゚ –゚)「暗くなる前にクエスト攻略して、はやく帰ってPOTを作りたい」
ξ゚听)ξ「今回のクエストの目的は、鉱石でしょ」
('A`)「新しい技を試したい」

8 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:08:35 ID:0Wi70pZY0

ナーヴギアを被り、この仮想世界
『アインクラッド』
にやってきて一年。

アバターの死が、ゲームの中での死が、現実になるこの
『ソード・アート・オンライン』
の中にやってきて一年。


オレ達は生き、そして生活をしていた。

9 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:09:34 ID:0Wi70pZY0



第一話 ギルド「V.I.P」へようこそ

10 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:11:03 ID:0Wi70pZY0
1.さがしものはなんですか


西暦2023年12月

50層主街区『アルゲート』
そのメインストリートから少し外れたところにある『雑貨屋Booon』。
木で出来た扉を開けると店内は意外に広く、壁やテーブルには見やすいように商品が並べられていた。

( ^ω^)「いらっしゃいませだお〜」

店主であろう男が接客をしつつ中に入ってきた少女に声をかける。
その声にひかれたように、各種POTは勿論のこと色とりどりな結晶に木や革の細工品、そして武器や防具には目もくれず、カウンターで買い物をしている男の後ろに少女が並んだ。

( ^ω^)「全部で500コルだお」

取引を成立させた男がカウンターを離れると、店主の顔を睨むように見つめつつ少女が近寄る。

( ^ω^)「いらっしゃいませだお。買い取りかお?」

(*゚ー゚)「……いえ、違います」

( ^ω^)「じゃあ何かさがしものかお?うちにあればよいけど…」

(*゚ー゚)「いえ、違います。……大きく言えば、違わないんですけど…」

(;^ω^)「?」

(*゚ー゚)「情報屋のラルゴさんに聞いてきました。ギルドVIPさんなら、ギコ君を見つけられるって」

( ^ω^)「ああ。そっちのお客さんなのかお」

11 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:12:35 ID:0Wi70pZY0



( ^ω^)「ギルド『V.I.P.』へようこそだお」

12 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:13:26 ID:0Wi70pZY0
特に表情に変化を見せず、ちょっとまってくれと言いながらウインドウを呼び出して、メールを送る。
数秒後にチャイムが鳴り、返信を見ていると眉をひそめた。

(;^ω^)「今話を聞けるのがちょっと出払ってて……」

(;゚ー゚)「一刻を争うんです!待ってる時間にギコ君が!」

(;^ω^)「そうは言われても…」

再び鳴るチャイム。
メールを読むと、少し安堵したように息を付く。

( ^ω^)「依頼は基本的には奥の部屋で聞きたいんだけど、今日はみんなの手がちょっと空いてないので、別のところに行ってくれるかお?」

(*゚ー゚)「どこに行けば?」

( ^ω^)「隣のレストラン、『バーボンハウス』に行って、カウンターに居るマスターに話してくださいだお」

13 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:14:08 ID:0Wi70pZY0
レストラン『バーボンハウス』
深く濃い色彩の木目調でそろえた店内は落ち着いた雰囲気を醸し出し、十席ある四人掛けのテーブルは半分ほど埋まっているがそれほど賑やかではなく、緩やかな空気が流れている。
八つほど高いイスが備えられたカウンターには少女が入ってきたときには誰も座っておらず、薦められて中央付近に腰をかけると淡い茶色の液体が入ったティーカップが置かれた。

(´・ω・`)「これはサービスだから、気にせずに飲んでほしい」

(*゚ー゚)「ありがとうございます」

白いシャツに黒いパンツとベスト、そして首に蝶ネクタイと付けて腰に長めの黒いエプロンをつけたウエイター然とした男が「ちょっと待ってもらえるかな」と言って入り口付近に立つNPC(ノンプレイヤーキャラクター)に話しかけてから、戻ってきた。

(´・ω・`)「ごめんね。まだ営業中だからバタバタしてて」

(*゚ー゚)「…いえ、こちらこそすみません」

(´・ω・`)「で、依頼ってことだけど……人探しかな?」

(*゚ー゚)「はい」

14 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:15:09 ID:0Wi70pZY0
湯気の立ち上るお茶を一口啜り、少女が口を開く。

(*゚ー゚)「私の名前は『しぃ』と言います。お願いします。ギコ君を探してください」

(´・ω・`)「『しぃ』さんですね。僕の名前は『ショボン』といいます。よろしく。で、そのギコ君というのは…」

(*゚ー゚)「私の恋人です。普段は30層にホームを借りていて、二人で狩りをしたりクエストの助っ人をしたりして暮らしていました」

(´・ω・`)「なるほど」

(*゚ー゚)「よほど危険なクエストやパーティーからの指定が無い限り基本二人一緒に動いていましたが、一昨日昼に彼が一人で出かけてから連絡がつかなくなって……」

(´・ω・`)「もちろんメッセージや位置確認も」

(*゚ー゚)「しましたが、メッセージは届かず、位置も不明です」

(´・ω・`)「その……」

(*゚ー゚)「黒鉄宮の碑も見てきました。…死んだことを示す線は入っていませんでした」

(´・ω・`)「それは良かった」

(*゚ー゚)「でも…」

(´・ω・`)「迷宮かどこかのトラップに引っかかってしまったのか…。一刻を争う状況に居なければいいけどね。位置が分からないってのが怖いな」

(*゚ー゚)「お願いします!ギコ君を探してください!助けて……」

15 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:15:56 ID:0Wi70pZY0
目に涙を浮かべて縋り付く様にショボンを見るしぃ。
視線を受け止め、ショボンはもともと垂れ気味の眉を困ったように垂れさせる。

(´・ω・`)「迷宮区や戦闘がかかわるから今すぐ決められることじゃないんだけど…」

そういいながら手早く開いたウインドウで聞いた内容をメッセージとして打ち込んでいくショボン。
しかし打ち込み終わる前にしぃの隣のイスが引かれた。

ξ゚听)ξ「その依頼、受けましょう」

(´・ω・`)「ツン」

ξ゚听)ξ「そういう状況なら、まずは動くのが先決。実際にパーティー組んで迷宮区なり森に入るなんてのは、その先の話よ」

話に突然割り込んできた少女の金髪を見ながら、思わず安堵の息をつくしぃ。

ξ゚听)ξ「ってことで、もっと詳しい話を聞かせて。どこに行ったかとか、何か手がかりは無いの?」

(*゚ー゚)「……はい。なにもありません。ただ、凄く嬉しそうに出て行ったので、何か良い儲け話か割の良いクエストにでも行くのかと思ったんですが…」

川 ゚ –゚)「その前に、話しておくことがあるだろう?ツン、ショボン」

16 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:16:57 ID:0Wi70pZY0
長い黒髪を無造作にかきあげつつツンとは反対側に座る少女。
そして一枚の紙をテーブルに置く。

ξ゚听)ξ「何よ。先に話すことって」

川 ゚ –゚)「生きていく上で大事なことだ」

しぃが紙を見ると、そこには項目が書かれ、その横には金額と思われる数字が書いてある。

川 ゚ –゚)「料金の話だ。

17 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:18:24 ID:0Wi70pZY0
基本成功報酬が10万コル
失敗の場合にはこの報酬は無し。
成功失敗を問わず各実費は請求する。
戦闘が必要な場合には一人1クエスト・ダンジョンで3000コルから。これは攻略ダンジョン・クエストのレベルで変動する。
情報屋に金を支払った場合はその実費。
POTやクリスタルを使った場合はギルドの雑貨屋で補充した金額。これはギルド内販売価格だな。
店で扱っていないアイテムを使用した場合は一般価格で。もしくは同じアイテムを供給してくれれば良い。
戦闘時は死なないことをまず基本とするからポーションやクリスタルの使用は各自の判断にゆだねさせてもらうし、パーティーメンバーの選定にはクエストやダンジョンのレベルに合わせてこちらで決めさせてもらう。
ただ命にかかわらない内容の出費、情報屋に支払う金額・交渉などに関しては君の意見を最優先させてもらおう。
クエストで得たコルは均等分配で必要経費とは別勘定。得たドロップ品は拾った者の物。宝箱はその時の状況で決めさせてもらうが、基本的には開いた者、トラップ解除を行った者の物とする。
あと、調査及び戦闘によって職業を持つ者が休業をした場合、その分の売り上げの補填も加算される。

18 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:20:25 ID:0Wi70pZY0
川 ゚ –゚)「以上で何か質問はあるかな?」

ξ;゚听)ξ「クー」

(;´・ω・`)「クー」

(*゚ー゚)「いえ、ありません」

川 ゚ –゚)「よろしい。それではこれからギコ氏の救出までよろしく。私の名前は『クー』だ」

(*゚ー゚)「よろしくお願いします」

川 ゚ –゚)「それでは話の続きといこう」

いきなり金の話を始めたクーに驚きつつも成り行きを見守っていた二人も気を取り直したように佇まいを直し、しぃの言葉を待つ。

19 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:21:36 ID:0Wi70pZY0
(*゚−゚)「それが…先程のようなことしか……。本当に黙って出て行ってしまったので…」

ξ゚听)ξ「嬉しそうにしていた…か。何か良いことがあったのかな」

川 ゚ –゚)「しかし、失礼だが30層をホームにしているレベルではそれほど「良い話」などなさそうだが」

ξ;゚听)ξ「ちょ。クー」

川 ゚ –゚)「なんだ?ツン」

ξ゚听)ξ「もうちょっと言葉を選びなさい」

(*゚ー゚)「いえ、事実ですから。生きること、生活することをメインにしてますからレベル上げはそれほど真剣にやっていませんでしたし」

(´・ω・`)「でも、クエストの助っ人なんかもやってるんだよね」

(*゚ー゚)「低層のドロップ品でレアアイテムを拾ったことがあって、そのお金で防具と武器は高度な物を揃えたんです。麻痺耐性なども高いので、ギコ君は前衛防御を出来ましたから…。ですのでギコ君のレベルはそれなりに高いです」

ξ゚听)ξ「なるほどね」

川 ゚ –゚)「そうか…過信からくる甘えがなければよいが」

(´・ω・`)「今回も助っ人に出た可能性は?」

(*゚ー゚)「あります。でも…」

ξ゚听)ξ「でも?」

(*゚ー゚)「なんとなく、誰かの助っ人というより自分がメインの何か嬉しいことがあったような雰囲気でいたので…。だからちゃんとしたら話してくれるかなと思って待っていたんですが」

(´・ω・`)「ギコさんがメインでパーティーを組んだかもね」

20 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:22:40 ID:0Wi70pZY0
ウインドウを開き、次々にメッセージを飛ばすショボン。
着信を知らせるチャイムが何度も聞こえ、それを読みつつ次のメッセージを作成して飛ばしていく。

ξ゚听)ξ「とりあえず情報収集からね」

(*゚ー゚)「あ、あの」

川 ゚ –゚)「まずはギコ氏がどこに行ったかを突き止めないとな」

(*゚ー゚)「でも、情報屋のアルゴさんに聞いても分からないって…」

(´・ω・`)「…なるほどね」

十数個のメッセージを飛ばしてからショボンがこちらを向く。
そしていつ入れたのか三人の前に湯気が立ち上るティーカップを置いた。

21 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:24:27 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「しぃさん、二つ確認するよ」

(*゚ー゚)「は、はい」

(´・ω・`)「ギコさんの名前は『GIKO』と書いてギコで良いんだよね」

(*゚ー゚)「はい!そうです!」

(´・ω・`)「あと、アルゴさんに支払う金額は交渉はするけど全部で3000コルを越えるかもしれないけど良いかな」

(*゚ー゚)「は、はい!それくらいなら!分かったんですか!ギコ君がどこに行ったのか」

(´・ω・`)「多分明日の朝までには連絡をもらえると思う」

(*゚ー゚)「ありがとうございます…でも、何で私には……」

(´・ω・`)「……向こうは海千山千の情報屋だからね。聞き方…というか、情報によっては売ってもらうために駆け引きみたいなものも必要な時があるんだよ」

(*゚ー゚)「そうなんですか」

22 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:25:17 ID:0Wi70pZY0
ξ゚听)ξ「今日はどうする?30層に帰る?」

(´・ω・`)「情報が入ったら、内容によってはすぐ来て貰う事になるけど。情報が入って方針が決まったらすぐにメッセージするよ」

(*゚ー゚)「…もしかしたらギコ君が帰ってくるかもしれませんから、一度30層に戻ります。彼も、連絡が取れる状態になったらすぐにメッセージを送ってくれるとは思いますけど…」

川 ゚ –゚)「そうか。じゃあ明日」

(*゚ー゚)「はい、よろしくお願いします!」

(´・ω・`)「ちょっとまって、ツン、クー、彼女とフレンド登録しておいて」

ξ゚听)ξ「オッケー。しぃさん」

(*゚ー゚)「はい」

ウインドウを出す女子三人。
それぞれにメッセージを飛ばして登録をしあう。

川 ゚ –゚)「ショボはしないのか?」

(´・ω・`)「…」

ξ゚听)ξ「クー、金勘定は忘れないのにこういったルールは忘れるわよね」

川 ゚ –゚)「なにかあったか?」

(´・ω・`)「ギルドあての女性のお客さんには女性、男の客には男が連絡窓口だろ」

川 ゚ –゚)「そういえばそんなルールがあったな」

ξ゚听)ξ「はぁ…」

(;゚ー゚)「あ、あの」

ξ゚听)ξ「あ、ごめんね」

席から立ち上がったしぃが腰から九十度のお辞儀をした。

ξ゚听)ξ「え?」

川 ゚ –゚)「ん?」

(´・ω・`)「…」


(*゚ー゚)「よろしくお願いします!」


そのまま叫ぶ彼女に、三者三様の顔を見せるギルドVIPの三人だった。

23 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:26:21 ID:0Wi70pZY0
2.情報は剣技より強し


( ^ω^)「それじゃあ、明日はクエスト攻略だおね」

(´・ω・`)「うん。問題なければ。メンバーはこの五人としぃさんで」

('A`)「彼氏を探して……ねぇ」

営業の終わったバーボンハウス。
カウンターに腰掛ける四人と、カウンターの中のショボン。
テーブルには食事が置かれており、それぞれに口にしている。

川 ゚ –゚)「この人数で大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「一応ジョルジュと弟者にも連絡はして待機にしてもらってあるけど、大丈夫だと思うよ」

('A`)「行く層が分かってる口振りだな」

(´・ω・`)「まあね」

( ^ω^)「どこだお?」

(´・ω・`)「37層。木枯らしの森」

24 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:27:10 ID:0Wi70pZY0
ξ゚听)ξ「ちょ、分かってるなら早く行きましょうよ。しぃさんにも連絡して」

(´・ω・`)「色々調べた結果ここが濃厚だし多分間違いないけど、まだ確証がない。それに…」

川 ゚ –゚)「それに?」

(´・ω・`)「ギコ君のレベルなら、『木枯らしの森』はそれほど難しいダンジョンじゃない。パーティーを募集した形跡もあったから、一人で行ったりもしていないだろうしね」

川 ゚ –゚)「でも、帰ってこない」

ξ゚听)ξ「ってことは…」

('A`)「トラップ?」

(´・ω・`)「普通で考えたらその可能性が高いよね」

25 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:27:54 ID:0Wi70pZY0
湯気の出ているカップを啜るショボン。

( ^ω^)「それ以外の可能性もあるのかお?」

(´・ω・`)「うん」

ξ゚听)ξ「勿体つけずに教えなさい。そういうところあるわよね。自分ばっかり分かっちゃってさ」

(´・ω・`)「違う、教えないんじゃない」

川 ゚ –゚)「どういうことだ?」

(´・ω・`)「教えたくても、僕だって分からないから教えようがないんだよ」

ほうけた顔をする四人の視線を受け止めつつ、垂れた眉をさらに下げる。

(´・ω・`)「分かっているなら対策とってすぐ行くよ。でも、分からないから対策の立てようが無い。どんな危険が待っているか全く分からない。そんな状況の場所に、行ける訳が無いだろ」

一見非情だが、自分達の命を考えていてくれることが分かるため何も言えず、ただ困ったように笑みを溢すショボンを見る四人。
そんな彼らに一人ずつ視線を向けながら、ショボンもカップに口をつけた。

(´・ω・`)「トラップにはまってるならよし。万が一推測の域を出ない幾つ物可能性の中の一つに囚われているようだったら、できるだけ簡単な部類であることを祈るよ」

26 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:28:38 ID:0Wi70pZY0
川 ゚ –゚)「『木枯らしの森』に行ったのは確定なのか?」

(´・ω・`)「うん。ギコさんがアルゴさんから買ってたクエストが、あの森のやつだったから」

('A`)「木枯らしの森にクエストなんかあったか?」

(´・ω・`)「最近見つかったやつなんだよ。攻略とか関係ないサブクエスト」

( ^ω^)「あ!あれかお!あの鉱石入手クエスト!」

ξ゚听)ξ「なによそれ」

(´・ω・`)「あの森に『アルグレスライト』って鉱石の入手のクエストがあるらしいんだよ」

川 ゚ –゚)「アルグレスライト?」

('A`)「時々宝箱から出てくるやつだよな。武器や防具には使えないけど、NPCの道具屋ならちょっと高い値段で買ってくれるやつ。でも、あれをそこまでして欲しいやつなんか居るのか?」

( ^ω^)「それは白く濁った小さな石で『アルグルスライト』だお。『アルグレスライト』は透き通った透明な硬い石で、凄く綺麗な石らしいお。まだ近くの村のNPCから出た情報だけで、それがどんな鉱石なのかは分からないらしいけど、道具屋としては一回見てみたいから、クエストやれるなら嬉しいお。流石兄弟も新しい武具がどうとか期待してたおね。確か」

27 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:29:52 ID:0Wi70pZY0
ξ゚听)ξ「新規クエストじゃ、情報も出揃ってないってことね」

(´・ω・`)「うん」

川 ゚ –゚)「しかし何に使えるか分からない石なんだろ?なんでギコ氏はそんな物を欲しがるんだ?」

(;^ω^)「『アルグルスライト』の上位鉱石らしいから、売ればそれなりの値段はすると思うけど」

('A`)「うまく防具に出来れば、前衛としてのパワーアップになるかもしれないとかか?」

(´・ω・`)「NPCによると、『その石は透き通るように透明で、光を集めたようにほのかに光る。思いを込めたその石は、永遠に輝くだろう』だって。」

いつの間にかウインドウを出したショボンが情報屋アルゴから買ったメッセージの一文を読み上げた。

(´・ω・`)「さっき連絡してみたら、最近モララーの工房に小さな石を使ったアクセサリーの作製が可能かどうかを聞きに来た男が居たらしい」

28 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:30:37 ID:0Wi70pZY0

(*^ω^)「おっおっおっ。ギコ君はそのつもりかお」

('A`)「リア充が……。もげろ」

ξ゚听)ξ「なにそれ。ただの綺麗な石ってこと?」

川 ゚ –゚)「待てツン、もしかしたら凄い付加能力を持ったアクセサリーが出来るのかもしれん」

29 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:31:20 ID:0Wi70pZY0



(´・ω・`)「反応が普通逆だよね」

30 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:32:28 ID:0Wi70pZY0


ξ゚听)ξ「?」

川 ゚ –゚)「?」

(*^ω^)「おっおっ」

('A`)「けっ」


不思議そうに顔を見合わせる女子二人をよそに妙に盛り上がる男一人とやさぐれる男一人。

31 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:33:19 ID:0Wi70pZY0
メッセージ到着音を聞き、そんな四人には構わず開いたままだったウインドウを操作するショボン。


(´・ω・`)「…これは…」

川 ゚ –゚)「どうした?」

(´・ω・`)「ツン、しぃさんにメッセージ。30層に迎えに行って、その後37層の主街区門前に戦闘装備で来てくれ」

ξ゚听)ξ「分かった」

突然指示を飛ばすショボンに何の問い掛けもせずにウインドウを操作し始めるツン。
他の三人もすぐに動けるように席を立つ。

32 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:34:42 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「ドクオ、ジョルジュと兄弟に連絡、前衛盾可能装備で37層主街区ゲート前に来るよう連絡してくれ」

('A`)「分かった」

(´・ω・`)「ブーン、POT類を準備。レベルはC…いや、Dで」

( ^ω^)「Dかお!?」

(´・ω・`)「本当はEを持って行きたいくらいだ」

( ^ω^)「…かき集めるお」

川 ゚ –゚)「うちにある在庫も出すぞ」

( ^ω^)「頼むお」

(´・ω・`)「二人とも頼む。さらに、クー」

川 ゚ –゚)「何を持ってくれば良い?」

33 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:35:30 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「後追い草か残り火の粉。あとヒカリ苔か光砂を」

川 ゚ –゚)「草と粉はあるが苔と砂は在庫が無いな…」

( ^ω^)「光砂ならこっちにあるお」

(´・ω・`)b「じゃあブーン頼む。クーはこの後全員の連絡統制も頼む」

川 ゚ –゚)「37層に全員集まったらメッセージを入れる」

(´・ω・`)「よろしく。みんなも連絡はクーへ。僕は先に行ってクエストのフラグ立てをする」

('A`)「一人で大丈夫か」

(´・ω・`)「手間はかかるけど、フラグ自体は危険なことは無いらしい。アルゴさんも手伝ってくれるから、さっさと終わらせるよ」

川 ゚ –゚)「アルゴと?二人で?」

(´・ω・`)「もちろんクエスト攻略の情報提供しなきゃだけどね」

('A`)「あの女は…」

ξ゚听)ξ「よし。ショボン、しぃはオーケーよ」

(´・ω・`)「じゃあ後は37層で」

ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ –゚)「「「「了解!」」」」('A`)

34 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:40:42 ID:0Wi70pZY0

3.木枯らしの吹く森


37層。
主街区近く迷宮『木枯らしの森』入り口前。
8人の男女がたむろするそこに、一組の男女が現れた。
男はショボン、女は頬にねずみのヒゲのような飾りを施した女性だった。

川 ゚ –゚)「ショボ!」

(´・ω・`)「遅れてすまない」

(アルゴ)「じゃあな、ショボ君。あとはよろしく」

(´・ω・`)「ありがとう」

二人に駆け寄るクーとブーン。
背を向けながら手をひらひらと振る女性をショボンが笑顔で見送る。

35 名前:名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 22:41:49 ID:Q1R2bXxs0
しえん

36 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:43:26 ID:0Wi70pZY0
川 ゚ –゚)「ショボ」

(´・ω・`)「フラグ立ては終了した」

( ^ω^)「ショボンの分だお」

ショボンの目の前にトレードウインドウが現れ、ブーンから各種POT、クリスタルが渡される。

(´・ω・`)「サンキュ」

( ^ω^)「なんとかレベルD確保したお。共通POTと草と砂はギルドの共通タブに入れてあるお」

(´・ω・`)「ありがと、ブーン」

( ^ω^)「おっおっ。倉庫が空っぽだお」

川 ゚ –゚)「ショボ、あの女は」

(´・ω・`)「アルゴさんなら帰ったよ。追加情報もサービスしてもらった。何か聞きたい事あったかな?」

川 ゚ –゚)「いや、そういうわけでは…」
 _
( ゚∀゚)「おい!ショボン!行こうぜっ!」

(´・ω・`)「うん!まずは簡単に流れを説明する!」

残りのメンバーの待つ場所に駆け寄るショボン。
その後ろからブーンとクーが駆け寄り、円陣を組んだ中心にショボンが立った。

(´・ω・`)「メッセージで送った内容は読んでくれたね?」
 _
( ゚∀゚)「ああ。読んだぜ」

両手剣を携えて重装備をした男が頷く。
それはどこか楽しそうで、戦闘を待ち望んでいるようにさえ見える。

37 名前:名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 22:44:50 ID:2qyWTkOE0
投下ラッシュだな
支援!!

38 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:44:51 ID:0Wi70pZY0

(´・ω・`)「ジョルジュが読んでるなら他の皆も読んでくれたね」
 _
(;゚∀゚)「おいこらショボン」

(´<_` )「クエストネーム『木枯らしに抱かれて』。目標アイテムは三叉の槍『アル・フィー』」

( ´_ゝ`)「弱くは無いけどそれほど欲しい武器じゃないな。それよりもランダムドロップの『アルグレスライト』の方が気になる」

(´<_` )「だな。どんな防具を作れるか楽しみだ」

( ´_ゝ`)「まずは武器だ」

(´<_` )「防具だ」

( ´_ゝ`)「武器だも〜ん。このまえのレア鉱石は弟者に譲ったから、今度は武器って約束だも〜ん」

(´<_` )「兄者…珍しく覚えていたか」

同じ顔をした二人の男。
先に喋りはじめた『弟者』こと『Tei』は両手斧に重装甲だが動きやすそうな防具を着込み、もう一人の『兄者』こと『KEI』は身の丈以上の両手鎚を軽々と肩にかけながら、腰を捻って運動をしていた。
どちらかと言えば弟者が落ち着いていて兄者が軽いように見えるが、会話を良く聞くとあまり変わらないのが分かる。

39 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:46:00 ID:0Wi70pZY0

('A`)「クエストボス『プリング』を倒して、奥にある巣にいるはずの『道に迷った少女』を助けて家に連れて帰ればクエスト終了」

右手に片手剣、左手に小型の手甲を付けて皮装備をメインにしたドクオ。

ξ゚听)ξ「ってことになってるけど、ボス戦のレベルが変わるトラップと」

細剣を腰に携え、身軽な革中心の装備にベージュのマントを付けたツン。

( ^ω^)「更にその後にイベントがあるかもしれないってことなんだおね?」

片手剣を背負い、革に所々金具で補強をした防具のブーン。

川 ゚ –゚)「クエストレベル、ボスレベル共にそれほど敵ではないが、トラップによっては苦戦を強いられる可能性もありと言ったところか」

先端が光り輝く刃になっている薙刀を携え、胴着に袴、胸当てといった和風な服装のクー。

(´・ω・`)「更に目印になるものが乏しい枯れ木ばかりの森。ランダムマッピングじゃないけど、迷路形式で地図があってもなかなか難しい迷宮だね。しぃさん、ギコさんの位置をマッピングしてみてください」

話しながら装備を整えたショボン。
防具は多少金属の部分が多いがブーンとほぼ同じものを着ている。しかし武器は全く違い、小型の盾ほどの大きさの手裏剣をそれこそ盾のように左手に備えている。

(*゚ー゚)「え?は、はい」

40 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:46:48 ID:0Wi70pZY0

軽装に金属の胸当てとガントレット。そしてオーソドックスな槍を携えたしぃがウインドウを開く。

(*゚ー゚)「ギコ君の位置の反応があります!森に居ます!なんで……」

('A`)「木枯らしの森は特殊迷宮だから、迷宮にいる間は同じ森に居る仲間と入り口付近に居る相手にしか位置マッピングができないんだ」

可視モードにしてもらった地図を見るドクオ。
眉間に少し皺が寄る。

('A`)「位置からして、おそらくボス戦中だな」

(*゚ー゚)「そんな迷宮が…」

(´・ω・`)「先行組はブーン、ドクオ、僕。即行で森の中のやらなきゃいけないフラグ立てをする。その後ろを確保組。ジョルジュ、ツン、クーの三人でよろしく。ボスの位置までの最短ルートの道の確保をしてくれ。弟者と兄者はしぃさんを連れて後部組を」

(*゚ー゚)「わ、私も先行します!」

フォーメーションを聞いてしぃが前に進み出るが、ショボンはそれを一蹴した。

41 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:48:45 ID:0Wi70pZY0

(´・ω・`)「君を守りつつフラグを立てるのは命の危険が上がってしまう。かかる時間も増えるだろうね。早く会いたいから先行組みに入りたい気持ちは分かるけど、ギコ君を早く助けたいのなら、こちらの指示に従ってくれ」

(*゚ー゚)「!」

(´・ω・`)「戦闘においても勝手に前には出ないように。加わって欲しい場合はこちらから指示を出すから。弟者、後部組はボス戦まで戦闘が無いようにした布陣だけど、もし敵と出会ったときは君が指示を出してくれ」

(´<_` )「了解した」

何も言えなくなってしまったしぃを尻目に、ウインドウを開くショボン。

(´・ω・`)「ブーンとツンは光砂を持って、後続が道に迷わないようにマーキングを。クーと弟者は後追い草を使って念のために前の組の位置をリアルタイムで追う準備を。クーと弟者には森の地図を渡す。ドクオ、ジョルジュ、兄者は出発のタイミングでPOT耐性強化を」

それぞれにウインドウを開き、アイテムを取り出して腰のポーチにつめる。
それを悔しそうに見つめるしぃだったが、その肩をぽんぽんと二回ほど軽く叩かれた。
上目遣いに振り返ると、困ったような笑顔の兄者。

42 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:49:31 ID:0Wi70pZY0
( ´_ゝ`)「関わった以上は目の前で誰も死なせたくなくって必死なんだよあいつも」
 _
( ゚∀゚)「普段はのんきで垂れ眉の癖に、作戦中は鬼だからな。ま、そのおかげで何度も生き残れたし、死線を潜り抜けてクエストやイベントをクリアすることが出来た。レベルも上がった」

(*゚ー゚)「……はい」

( ´_ゝ`)「POT耐性強化なんてのもあいつの発案なんだ。組分けしたときに、最低一人は耐毒や耐麻痺のPOTを飲んで、その手の異常に対応できるやつを作っておくんだ。攻略しつくされてどこからどんなモンスターが出るか分かっているような迷宮探索のときですら」

( ゚∀゚)「万が一、何か突発的なことが起きても、一人でもそれに対応できれば、クリスタルやPOTで仲間を回復させてやれるからな」

(*゚ー゚)「………」

その隣にジョルジュとドクオが立ち、しぃを見る。

43 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:50:16 ID:0Wi70pZY0
('A`)「だからまあ、とりあえずあいつを、おれ達を信用してくれ。引き受けた以上、最善の策を取るから」

(*゚ー゚)「…はい。……よろしくお願いします」

(´・ω・`)「よし。みんな!準備は良い!?」

( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)( ゚∀゚)( ´_ゝ`)「オー!」(´<_` )('A`)

(´・ω・`)「では出発!」

(*゚ー゚)「はい!」

44 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:53:48 ID:0Wi70pZY0

4.クエスト『木枯らしに抱かれて』


迷宮『木枯らしの森』
最深部に巣を構えるボスクラスモンスター【プリング】
クエスト『木枯らしに抱かれて』の必須攻略モンスターでもあるこの敵は、37層という階層から言えばレベルの高い強敵だったが、彼とパーティーメンバーのレベルを考えれば油断しなければ苦も無く倒せるはずだった。
いや、実際一回目のクエストは苦も無く倒し、クエストをクリアした。
だが欲しかったランダムアイテムがドロップせず、勢いに任せて二度目のクエストを始め、最深部に来た時に、様相は違っていた。

(;,,゚Д゚)「どうなってんだ…こりゃ…」

最初のクエストの時は一体だったクエストボスモンスターが、二体居る。
それだけでクエストクリアの確立は下がり、、死の確率は上がるのに、この二体は恐ろしい連携を行っていた。

45 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:54:29 ID:0Wi70pZY0
| ;^o^ |「こ、こんなの聞いてないですよ!」

( ;^Д^)「ギコ!どうすんだこれ!」

今彼らの目の前にいるモンスターは全身を赤い毛で覆った猿人。
そして後ろには青い毛で覆われた猿人が控えている。

( ;´ー`)「だ、駄目だーよ。何度試しても、戻ってくるだーよ」

T字路型の戦闘エリア。
横に二人並ぶのがやっとの道に立つ猿人。その攻撃を一人で受けて支えるギコの後ろで、三人のパーティーメンバーが悲鳴を上げている。
ギコのHPバーは辛うじて黄色だが、三人は既にレッドゾーンにかかっていた。

( ;´ー`)「なんで逃げようとするともう一つの道から戻ってきちまうんだーよ!こんなトラップ聞いたこと無いだーよ!」

|  ;^o^ |「もう回復POTも無いですよ!」

( ;^Д^)「こんなところで死にたくねー!」

46 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:55:20 ID:0Wi70pZY0
赤毛の猿人、【レッド・プリングス】が振り下ろす斧をはじき返し、ギコが距離を取る。

(;,,゚Д゚)「すまねえ。みんな。なんとしても、皆だけは…」

( ;´ー`)「どうやってだーよ」

( ;^Д^)「転移クリスタルは壊されちまったし、逃げようとして道を逆走してももう一方の道に戻ってきちまう」

|  ;^o^ |「回復アイテムはもうなくなってしまいました。逆にモンスターは何度も何度も回復してしまう!」

(;,,゚Д゚)「チクショウ!」

ギコが大ぶりの片手剣を構えると、剣が淡く青い光り始める。

( ;^Д^)「やめろ!ギコ!」

47 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:56:31 ID:0Wi70pZY0
上段から放ち、右上から左下に袈裟切りを放つ。そして流れるように左下から右下に向けて水平切り、更に喉元に向けて突きを放った。

(,,゚Д゚)「よし!」

全てが命中し、モンスターのHPを大きく削る。ブルーだったカラーがイエローになり、そしてレッドゾーンに変わった瞬間、猿人が吼えた。

(;,,゚Д゚)「ぐっ」

ソードスキルを放った後の硬直時間には攻撃は勿論防御をすることも出来ない。
ギコの体を覆う装備は防御姿勢さえとれればこのレベルの咆哮ならば1ドットもHPバーを減らさずに受け止めることが出来るが、無防備に受けてしまうとHPを減らしてしまう。
そして今回の一撃は、ギコのHPもレッドゾーンに突入させてしまった。

(;,,゚Д゚)「しまった!」

48 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:57:20 ID:0Wi70pZY0
そしてレッドの咆哮と共にジャンプをしたブルーがギコに向けて片手曲刀を振り下ろす。

(;,,゚Д゚)「これしき!」

硬直が溶けて盾を上に向ける。
ギリギリのタイミングで刃を防ぐが、体勢が整っていなかったため受け止めることは出来ず、流してしまった。

( ;^Д^)「ギコ!」

( ;´ー`)「だめだーよ!」

後方から駆け出した三人の目の前で曲刀がきらめき、下から切り上げる。

(#,,゚Д゚)「がふっ!」

体を浮かされはしなかったが、攻撃を直に受けて更にHPバーが減る。

|  ;^o^ |「ギコー!」

更にきらめく曲刀。
何も出来ずに下からそのきらめきを見つめるギコ。
後方から三人が駆け出しているが間に合うとは思えず、間に合ったとしても前衛盾装備でもなくHPバーをレッドゾーンにした三人に出来ることなど一緒に命を散らすことくらいであろう。

49 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:58:19 ID:0Wi70pZY0


(,,゚Д゚)「すまない……みんな……。……しぃ……」

50 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 22:59:23 ID:0Wi70pZY0
死を覚悟したその時、四人の目の前を影が通り過ぎた。

( ^ω^)「死なさないお」

振り下ろされた曲刀を弾くブーンの片手剣。
そこに居た四人の誰もが唖然とする中、その四人の誰も目で追うことの出来ないスピードで片手剣を閃かせ、モンスターを後退させる。

(,,゚Д゚)「お、お前は」

( ^Д^)「ブーン!」

|  ^o^ |「ブーンさん!」

呆け続けるギコと、歓喜に似た声でブーンの名前を呼ぶ二人。

( ´ー`)「た、助かったーよ」

座り込むシラネーヨの横を駆け抜ける新たな黒い影。

('A`)「俺も居るぜ」

硬直したブーンを襲う曲刀を更に弾くドクオの片手剣。
ソードスキルをソードスキルで相殺し、さらに自身のソードスキルの二連撃を確実に当てる。

51 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:00:39 ID:0Wi70pZY0
( ^ω^)「ギコさんだおね」

(,,゚Д゚)「そ、そうだ。あんたたちは?」

('A`)「あんたの恋人の依頼で助けに来た。後ろに下がって回復しろ」

(,,゚Д゚)「しぃの!?」

ギコを守るように前に立ち剣を構えるブーンとドクオ。
腰を抜かして座ってしまったギコの襟を、細い手が掴んだ。

ξ゚听)ξ「早く下がる!」

思いのほか強く引っ張られ、転げるように後ろにいた三人と合流し、共に座り込んでしまう。

( ^Д^)「助かった…」

(;,,゚Д゚)「お、おい、こいつら知ってるのか?」

既にのんきにくつろいでいる様にさえ見える三人に詰め寄るギコ。
そんな四人の頭の上に、ピンク色のクリスタルが添えられた。

「「「ヒール!」」」

52 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:01:55 ID:0Wi70pZY0

三様の声が微妙にずれて四回響く。そして声と共にクリスタルが次々に砕け、四人のHPが満タンに回復した。

川 ゚ –゚)「助けてもらっておいて『こいつら』は聞き捨てならないな」

(´・ω・`)「まぁまぁ。とにかく間に合ってよかった」
 _
( ゚∀゚)「よ!プギャーにシラネーヨに……なんだっけ」

| ; ^o^ |「ブームです!ブーム!いい加減覚えてくださいよ」
 _
( ゚∀゚)「わりぃわりぃ」

四人のHPゲージを確認し、軽口を聞いてからボスモンスターに向かって行く三人。

(;,,゚Д゚)「お、おい。こりゃいったい」

( ´ー`)「ギルド『V.I.P.』だーよ」

(,,゚Д゚)「ギルドブイアイピー?」

( ^Д^)「中層クラスではトップクラスのギルドで、依頼を受けてクエストやダンジョン攻略を行ったりしている集団だよ」

|  ^o^ |「私たちも何度が一緒にクエストをさせてもらったことがありますが、強さは本物ですよ」

( ´ー`)「それなりに金は取るけど、命にはかえられないだーよ」

(,,゚Д゚)「そんなギルドがあったのか」

|  ^o^ |「しかもほとんどのメンバーが職人クラスとして有名で、職人としてなら攻略組クラスとも言われるメンバーも居ます」

(;,,゚Д゚)「はぁ?」

53 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:02:41 ID:0Wi70pZY0
|  ^o^ |「最初に現れたのがブーンさん。道具屋さんで、品揃え豊富です。ギルドメンバーの作った物も売っていたりします」

( ´ー`)「金髪ツインテールの女がツンだーよ。裁縫師で、洋服和服下着から装備効果のある服までなんでもござれらしーよ」

( ^Д^)「垂れ眉でおれ等にクリスタルやってくれたのがショボン、レストラン「バーボンハウス」のオーナーで、ギルドのリーダーでもある」

|  ^o^ |「黒髪の女性がクーさんです。薬剤師で、回復POTから耐性POT、武器に塗る毒までつくれる方です。今日の武器には毒属性をつけていないみたいですね。狭い場所での戦いだからでしょうか」

(,,゚Д゚)「そんなやつらがいたのか」

呆然と前方で戦う五人を見るギコ。

(,,゚Д゚)「後の二人は…」

(´<_` )「あの二人は生粋の戦闘職だ」

( ´_ゝ`)「ジョルジュは釣師って噂もあるけどな」

(,,゚Д゚)「え?」

54 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:03:22 ID:0Wi70pZY0

いつの間にか隣に立つ兄者と弟者。
突然現れて自分の呟きに答えた同じ顔をした二人を見上げる。

(,,゚Д゚)「あ、あんた達は。あれ?」

( ´_ゝ`)「流石武具店美貌の武器マスター兄者と」

(´<_` )「流石武具店聡明なる防具マスター弟者」

( ´_ゝ`)「とはおれ達のことだ!」(´<_` )

(,,゚Д゚)「あ、ああ。名前と顔は知ってる」

( ´_ゝ`)「やはりな。おれの美貌は噂の的だな」

(´<_` )「馬鹿を言え、おれの作る防具の素晴らしさが世間に知れ渡っているだけだ」

( ´_ゝ`)「馬鹿を言うな」

(´<_` )「何を言っている」

(;,,゚Д゚)「い、いや、俺の武器と防具はあんた達の作ったやつだから、買ったときに見た顔を覚えていただけで」

( ´_ゝ`)「なんだつまらん」

(,,゚Д゚)「あんたたちが何でここに?…あんたたちもなのか?」

(´<_` )「ああ。おれ達もあいつらと同じ『V.I.P』だよ」

( ´_ゝ`)「で、彼女の護衛さ」

55 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:04:06 ID:0Wi70pZY0

(*゚ー゚)「ギコ君!」

二人の後ろで涙を浮かべて立っていたしぃが二人を押し避けて駆け寄り、ギコに抱きく。

(,,゚Д゚)「し、しぃ」

(*゚ー゚)「心配したんだからね!」

(*,,゚Д゚)「しぃ…」

(´<_` )「彼女が今回の依頼人だ」

( ´_ゝ`)「彼女が『V.I.P.』に依頼に来なければ、おれ達はここに来なかった」

( ´_ゝ`)「感謝するんだな!」(´<_` )

( ;^Д^)「なんで最後声を合わせてポーズとってんだあの二人」

( ;´ー`)「しらねーよ」

|  ;^o^ |「しかもあの立ち方は…」


戦闘不参加組は暢気に喋りモードに入っているが、戦闘組の戦いは佳境に入っていた。

56 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:05:10 ID:0Wi70pZY0

前衛の巨大猿人【プリングス】のHPバーを赤くすると、猿人は咆哮し、その音で一瞬硬直してしまう。
攻撃判定は防御姿勢さえとればダメージが無いレベルだが、その隙に後方に下がり、後衛にいた巨大猿人がジャンプして上空から襲い掛かる。
そして後ろに行くと隠してあった壷に手を突っ込み、中に入っている物を口にしてHPを回復させる。
通常の回復POTと同じで時間による回復だが、その時間は交代した猿人が作り出すため倒すことが出来ないでいた。

('A`)「おいショボン!きりが無いぞ!」
ξ゚听)ξ「タイミング早く!」

ジョルジュの両手剣が上空から襲い掛かってきた【ブルー・プリングス】の曲刀を弾き、後方に下がらせると同時に自分も下がる。
 _
(#゚∀゚)「もう防ぐのもあきたぞ!早くしろショボン!」

交代で飛び出たドクオの片手剣が一撃を浴びせ、返す一撃で光り始めた猿人の曲刀を弾く。

ξ゚听)ξ「スイッチ!」

ツンの掛け声で横に飛ぶと、自分のいた場所を駆け抜ける金髪が見える。

ξ゚听)ξ「とりゃああああああ!」

57 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:07:44 ID:0Wi70pZY0
女らしくない叫び声を上げながら突きの三連撃をお見舞いし、猿人のゲージをイエローに変える。

ξ゚听)ξ「ブーン!スイッチ!」

( ^ω^)「おー!」

しゃがんだツンの上を飛び越えるブーン。
そのまま後ずさりしながら防御の体勢をとろうとする猿人に迫り、ソードスキルを使わずに三回猿人を切り裂き、後ろに飛ぶ。

(´・ω・`)「ツン!ブーン!位置キープ!ドク!左!クー!ジョル!前衛防御スキル!」

突然飛んだショボンの声に何の疑いも無く即座に反応し位置移動をする五人。
クーとジョルジュは三人の前で自分の武器を回転させてソードスキルを発動させ始める。
その頭上を飛ぶ光。
ショボンの投擲武器、巨大手裏剣である。

(´・ω・`)「ツン!ドク!ブーン!追撃速攻!!」

巨大手裏剣が【ブルー・プリングス】の胸に当たり、HPバーを赤く変える。
大きく息を吸い、咆哮を放つ猿人。
しかしクーとジョルジュの起こしたソードスキルの風が盾となり防ぎ、硬直を免れたツンとドクオとブーンは後方に移動する猿人を追った。

58 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:08:28 ID:0Wi70pZY0
レッド・プリングス「ぐるぎゃわぎゃりゃ!!」

雄たけびを上げ、上空から斧を振り下ろし、ソードスキル発動後の硬直を起こしているジョルジュとクーを狙う猿人。
しかしその額に大型手裏剣が飛来し、命中した。

レッド・プリングス「ぎゃりゃー!」

バランスを崩し攻撃を中断させる猿人。
尻餅をついたそこに駆け寄るジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「ひっさぁーっつ!」

刀身を赤く煌かせた両手剣を上段に構え振り下ろす。
叫び声を上げる猿人を更に下から斜め上に追撃。
そして更に下に切り裂く。

満タンだったHPバーが、目に見えて大きく減った。

川 ゚ –゚)「スイッチ!」

剣技後の硬直状態のジョルジュを右にして走るクー。
既に薙刀の先の刃は水色に煌いている。

川 ゚ –゚)「っ!」

気合をこめて猿人の両足を横に一閃。
薙刀を振り回しつつ自身も一回転して同じ足下から斜め上に一閃。
咆哮をあげようとして息を吸い込んだ猿人の喉元を、頭の上でバトンの様に回された薙刀の刃が三回切りつけた。

猿人のHPバーが、緑から黄色に変わっていた。

59 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:09:18 ID:0Wi70pZY0
アバターゆえ呼吸はしていないがAIのモンスターも擬似呼吸は行っているようで、喉元を押さえて後ずさる。
 _
( ゚∀゚)「そこで俺だ!」

構えなおしたクーがその声で横に飛び、剣技を発動させたジョルジュがシステムによってアシストされたスピードで猿人を追撃する。

猿人「ぐわっ!」

緑色に光る大剣が眉間から股間までを一閃し、猿人が悲鳴を上げる。

そして猿人のHPバーが、赤に変わった。

先ほどまでならその瞬間に後方にいる仲間と交代するために咆哮を繰り出していたが、今回は行わなかった。
いや、行えかなった。
後方で回復しているはずの仲間の猿人【ブルー・プリングス】が、ブーンとドクオとツンによって、一度は回復したものの既にHPを赤くしてしまっていた。
全てがプログラムであり、条件が揃わなければ行動を起こすことが出来ないでいるのだ。

(´・ω・`)「ツン!クー!レベル6麻痺!カウント!」

腰につけていたスローイングナイフを構えるツンとクー。
そのナイフの刀身は黄色に染まっている。

60 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:10:12 ID:0Wi70pZY0
(´<_` )「よし、いくぞ」

( ´_ゝ`)「立て、ギコ」

(;,,゚Д゚)「おっおおっ!?」

双子に両手を引っ張られて立ち上がらせられるギコ。
慌てて剣を持つ間も惜しむスピードで、双子の後ろを猿人の前まで走る。

(´・ω・`)「3!2!1!ゴー!」

掛け声にあわせナイフを投げるツンとクー。
吸い込まれるように二匹の猿人の喉元にそれぞれ刺さると、猿人は一瞬硬直し、そしてしゃがんでしまった。

(;,,゚Д゚)「な、なんだ、これ」

(´・ω・`)「条件を重ねれば、モンスターをこんな状態にすることもできる」

(,,゚Д゚)「え?」

(´・ω・`)「挨拶は戦いが終わった後改めて。ラストアタック、どうぞ」

(,,゚Д゚)「おっ!い、いや。でも……いいのか?」

(´・ω・`)「これくらいはサービスしましょう」

61 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:11:04 ID:0Wi70pZY0
 _
( ゚∀゚)「やらないなら俺がやっちまうぞー!」

川 ゚ –゚)「麻痺にも効果時間があるしな」

ξ゚听)ξ「さっさとやりなさい!」

( ^ω^)「ドロップしたら見せてほしいお!」

(´<_` )「二つ取れたら一つはくれ」

( ´_ゝ`)「二つともくれてもいいぞ」

('A`)「リア充もげろ」

(´・ω・`)「さ、早く」

(*゚ー゚)「……ギコくん」

(,,゚Д゚)「ありがたくやらせてもらうぜゴラァ!」



二匹の猿人それぞれに、ギコのソードスキルが煌いた。

62 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:11:55 ID:0Wi70pZY0




川 ゚ –゚)「で、ドロップしなかったと」


(,,゚Д゚)「……………はい」

(*゚ー゚)「ギコくん、運悪いから」

(,,゚Д゚)「ゴラァ……」

63 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:15:45 ID:0Wi70pZY0

4.みつけにくいものですか?



クエストボス戦の行われた木枯らしの森最深部。
協力してもらい二匹の猿人にラストアタックを行ったギコであったが、ドロップしたボーナスアイテムに目当ての鉱石は入っていなかった。

(,,゚Д゚)「ゴラァ…」

うなだれて膝を付くギコの肩を抱くしぃ。
その運の悪さに呆れたようにギコを見る面々だったが、一人ショボンは腕を組んで考え込んでいた。

(´・ω・`)「ギコさん、プギャーさん、シラネーヨさん、えっと……お名前なん」

|  ;^o^ |「ブームです!ブーム!」

(´・ω・`)「冗談です。ブームさん。皆さんは一回は通常クエストはクリアしたんですよね?」

( ^Д^)「ああ、したぜ。奥の小屋にいる少女を助けて村の民家に連れて行った」

( ´ー`)「そしたら三叉の矛をくれたーよ」

|  ^o^ |「クエストのみのレア物のようですが、それほど威力はなさそうでした。耐久値は高そうなので、コストパフォーマンスは良さそうですが」

64 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:16:35 ID:0Wi70pZY0

(´・ω・`)「なるほど。……まずはクエストをクリアですね。ボス戦が変わったから、おそらく追加イベントがあるでしょう」

(,,゚Д゚)「追加イベント?」

(´・ω・`)「おそらくですけどね。あればもしかするとそこで手に入るかもしれないですよ」

(,,゚Д゚)「ほ、ホントか!?」



最深部の先にある小さな小屋。
小屋の周りは小さな花に覆われており、「木枯らしの森」には似つかわしくない。

( ;^Д^)「最初きた時、こんな花咲いてたか?」

|  ;^o^ |「い、いえ。咲いてなかったと思います」

( ;´ー`)「こんなのシラネーヨ」

(;,,゚Д゚)「ご、ゴラァ」

65 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:17:17 ID:0Wi70pZY0

(´・ω・`)「家に入れるのは二人か三人。フラグを立てをした僕とギコさんは入らないとまずいとして、もう一人は……ジョルジュ、頼む」
 _
( ゚∀゚)「ん?俺でいいのか?」

(´・ω・`)「ああ。部屋の規模から考えて、万が一戦闘になったときは盾以外で防御ができるやつがいた方がいいしね」

前方を見ていたショボンが振り返り、ジョルジュを呼ぶ。
そしてブーンたちを見た。

66 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:19:49 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「小屋の前の待機を、前衛にアニジャとオトジャ」

( ´_ゝ`)「おう」

(´<_` )「わかった」

(´・ω・`)「その後ろにツンとクー」

ξ゚听)ξ「わかった」

川 ゚ –゚)「了解した」

(´・ω・`)「最後にブーンとドクオ。いざとなったら特攻で」

( ^ω^)「わかってるお」

('A`)「ん。まかせろ」

(´・ω・`)「プギャーさん、シラネーヨさん、……ブームさん。お三人は、しぃさんを後ろにして後方で待機をお願いします。万が一の場合は援護をお願いするかもしれませんが」

( ^Д^)「ああ。わかった」

( ´ー`)「まかせるだよ」

|  ^o^ |「今また名前忘れてませんでしたか!?」

(*゚ー゚)「……わかりました」

67 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:21:01 ID:0Wi70pZY0
それぞれが位置に付いたのを確認してから、小屋の扉をそっと開けるショボン。

(´・ω・`)「こんにちは……」

(,,゚Д゚)「ごるぁ……」

声をかけつつ普通に入るショボンとギコとジョルジュ。
暗くて先が見えない部屋だったが、扉を閉めた途端に部屋が明るくなった。

三人の視線の先に見える、女性。
項垂れていて、こちらを見ていない。

( ゚-゚)

(,,゚Д゚)「だ、誰だ?」

(´・ω・`)「一回目にはいなかったんですか?」

(,,゚Д゚)「あの時は居たのはもっと小さな少女で名前は『キョンキョン』とか言ってたな。部屋が明るくなったとたん泣きながら抱きついてきた。迷子になって迷い込んだって言ってて、それで村まで連れて帰ったんだ」

(´・ω・`)「少女……ではありませんね。どうクエストが変化したのか」

68 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:21:56 ID:0Wi70pZY0

( ゚-゚)「だれ…?」

顔を上げ、こちらを見る女性。

( ゚-゚)「あの猿を、倒したの?」

(´・ω・`)「はい、倒しました」

( ゚-゚)「倒してくれたのね!ありがとう!」

涙を浮かべ、笑顔を見せる女性。

( ゚-゚)「病気の父に飲んでもらうための薬草を取りにきたら迷ってしまい、更にあの二匹の猿人と遭遇してしまったために逃げたところ、こんなところに迷い込んでしまいました。でも、これで助かる…帰る事が出来るんですね!」

(,,゚Д゚)「そ、そうだぞゴルァ。帰られるんだ」

( ゚-゚)「良かった…良かった…」
 _
( ゚∀゚)「…おい、ショボン」

(´・ω・`)「まだ分からないよ。警戒はしておいてくれ」
 _
( ゚∀゚)「わかった」

喜びの涙を流す女性を見て、困ったような笑顔を見せているギコ。
しかしショボンは表情を引き締めたままでおり、ジョルジュはそんなショボンを見て気を引き締めた。

69 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:22:48 ID:0Wi70pZY0

( ゚-゚)「そうだ!実は先ほどあれを見つけたんです」

笑顔で後ろを指差す女性。
その指の先には宝箱があった。

(,,゚Д゚)「宝箱!」

( ゚-゚)「はい。なにか逃げることが出来るようなものが無いかと思って部屋の中を探してしたんですが、蓋が重くて開けることが出来なかったんです。皆さんなら開けることが出来るかもしれません」

目を輝かせ、止める間も無く宝箱に駆け寄るギコ。

(´・ω・`)「ギコさん!」

( ゚-゚)「皆さんもさぁ」
 _
( ゚∀゚)「行くしかないようだぜ」

(´・ω・`)「しょうがないね」

警戒しつつ女性の横を通り宝箱に向かうショボンとジョルジュ。
自分たちを待つギコの元に寄る。

(,,゚Д゚)「開かねぇぞゴルァ」

(´・ω・`)「恐らくここにいる全員が力を入れないと駄目なトラップなんでしょう」

(;,,゚Д゚)「トラップ!?」
  _
( ;゚∀゚)「気付いてなかったのかよ」

70 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:23:42 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「ギコさんは一番奥に、ジョルジュは真ん中で手前は僕。力は三分の一程度で後ろに気を配りつつ開けてみましょう」
 _
( ゚∀゚)「よっしゃ!」

(;,,゚Д゚)「お、おう」

女性が見守る中、一番奥になる宝箱の側面にギコが立ち、正面にはジョルジュが立つ。ショボンは完全に女性に背を向けて、ギコとは反対側の側面に手を添えた。

(´・ω・`)「行くよ。いち、に、さん!」

力を込める三人。
蓋が上がり、箱との間に隙間が開いて、完全に開いた。

それと同時に三人に襲い掛かる細剣。

71 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:25:24 ID:0Wi70pZY0

 _
( ゚∀゚)「やっぱりそうきたか!」

ジョルジュの剣が細剣を弾く。
しかしもう一つの刃が上からギコを狙った。

(;´・ω・`)「あぶない!」

動けないでいるギコを飛びついたショボンが突き飛ばす。

(;´・ω・`)「くっ!」
  _
( ;゚∀゚)「ショボン!」

振り下ろされた片手剣によって、ショボンの左足首から下が切り落とされる。
一人目の細剣使いを防いだジョルジュが剣の腹を正面にして構え、二人目の片手剣使いに突進してその体を弾き飛ばした。
  _
( ;゚∀゚)「ショボン!大丈夫か?」

(;´・ω・`)「五分間の左足首欠損ペナルティ」

二人を庇うように剣を構えるジョルジュの後ろで回復POTを口にするショボン。
  _
( ;゚∀゚)「足じゃまずいな」

72 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:26:08 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「とりあえず片手剣のほうを頼む。レイピアの方はこちらで耐えるから」
 _
( ゚∀゚)「大丈夫か?」

(´・ω・`)「やるしかないよ。…ギコさん」

(,,゚Д゚)「お、おお」

(´・ω・`)「片手剣はジョルジュに任せて、レイピアの方を二人で対応しましょう。片手剣のレベルはいくつですか?」

(,,゚Д゚)「943だ」

(´・ω・`)「僕が指示を出すまでソードスキルは二連撃までしか使わないで下さい。相手は早いです。スイッチの出来ない状況で硬直の長い技は使わない方向で。ジョルジュ右!ギコさん前に出て!」

ショボンの言葉どおりに何の迷いもなく右に向かって両手剣を構えるジョルジュ。そこに片手剣が振り下ろされるが、鈍い音を響かせて弾かれた。

前に出たギコの目の前には細剣を構えた女性。

(;,,゚Д゚)「い、行くぞゴルァ」

(´・ω・`)「無理せず行きましょう」
 _
( ゚∀゚)「さっさと倒してそっちに行くからよ!」

(片手゚-゚)

(細剣゚-゚)

無表情にこちらを見る二匹の人型モンスター。
【キョン・ツー】
室内での戦いが、静かに始まった。

73 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:27:03 ID:0Wi70pZY0

小屋に入っていった三人を見つめる残った者たち。

(*゚ー゚)「ギコくん…」

川 ゚ –゚)「このクエストレベルなら、まぁ大丈夫だろう」

ξ゚听)ξ「それよりも…暇よね…」

( ^ω^)「みんなでソードスキルの反復練習でもするとかどうかお?」

( ´_ゝ`)「却下」

(´<_` )「一人でやってろ」

('A`)「まぁ、そんなことも言ってられないみたいだしな」

川 ゚ –゚)「そのようだな」

74 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:27:44 ID:0Wi70pZY0

( ^Д^)「?」

( ´ー`)「?」

|  ^o^ |「?」

(*゚ー゚)「?」

前を向いていたドクオが横を向いて構えを取る。
そしてそれを見たVIPの五人がそれぞれに別方向を向いて武器を構えた。

(*゚ー゚)「みなさん?」

川 ゚ –゚)「プギャー、シラネーヨ、ブーム、そちらには行かさないようにするが、漏れた場合は頼む。しぃさんを守ってくれ」

クーの言葉が終わるかどうかというタイミングで小屋の周りの花が吹っ飛び、地中から小さな猿が飛び出した。

('A`)「猿型モンスター『モンモ』だ。とにかく早いが動きは単純だし攻撃力・耐久力共に低い。だがまれに持ってるナイフに毒が塗られているからそこだけ気をつけろ」

75 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:28:28 ID:0Wi70pZY0
ξ゚听)ξ「分かってる」

('A`)「オレは一応だな」

ξ゚听)ξ「来るわよ」

('A`)「お前はホントに…」

( ^ω^)「ツンはこれで『ありがとう』って言ってるんだお」

ξ*゚听)ξ「ば、ばか」

(´<_` )「余裕だなお前ら」

( ´_ゝ`)「おれ等も余裕だがな」

川 ゚ –゚)「気を抜かず行くぞ!」

( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)「オー!」(´<_` )('A`)

76 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:29:12 ID:0Wi70pZY0
オトジャとアニジャ、そしてツンとクーはお互いを背にして正面からやってくるモンスターにのみ専念し武器を振るう。

パワー型とスピード型の違いはあれど、剣技を駆使したその剣は確実にモンスターを追い詰めていった。

( ^ω^)「おっおっこいつらは動きがすばやいから楽しいお」

('A`)「そう思うのはお前だけだばかたれ」

四人から離れたモンスターを追撃するのはブーンとドクオ。
二人ともすばやい動きで『モンモ』を追い、剣で切り裂いていく。

ドクオはそれでも所々に剣技を放ちシステムのアシストを使ってモンスターを追い詰め、ポリゴンへと変えていくが、ブーンは違っていた。

77 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:29:57 ID:0Wi70pZY0
('A`)「おまえもちゃんとソードスキル使えよ」

( ^ω^)「苦手なんだお。硬直時間嫌いだし」

ブーンが使う剣技は良くて二連撃。
ほとんどは基本の一撃のみ。
それも止めをさす最後の一撃やスイッチ前のタイミングばかりで、基本的にはシステムに頼らない戦闘を行っている。

川 ゚ –゚)「それであの強さなのだから、たまったもんじゃないがな」

ξ゚听)ξ「ほんとよね」

四人が疲労させたモンスターを次々とポリゴンに変えていくブーン。その数はドクオに負けておらず、戦場を風のように走り回っていた。

時折最初からドクオやブーンを狙ってくるモンスターもいるが、そういった敵にはクーたち四人のうちの誰かが投擲武器で攻撃することにより自分に狙いを向けさせ、ドクオとブーンが背後から襲われることを回避させていた。

78 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:30:43 ID:0Wi70pZY0
(*゚ー゚)「凄い…」

完全に外からその光景を見ていたしぃがポツリと呟く。

( ^Д^)「すげえよな」

|  ^o^ |「一人一人の力量もさることながら、集団での息の合わせ方は攻略組みのギルドにすらひけをとらないのではないでしょうか」

( ´ー`)「まえに一緒にクエストをやったときは、あそこまでじゃないけどおれ達三人もあの中で戦ったことがあるだーよ」

(*゚ー゚)「え!?あの中でですか!」

( ^Д^)「『あそこまでじゃない』けどな」

|  ^o^ |「ショボンさんの指示の通りに動いただけですが、自分の力が何倍にもなったように感じました」

( ´ー`)「あれは良い経験だったーよ」

(*゚ー゚)「わたしも…あんなふうに戦ってみたい」

憧れの眼差しで六人を見るしぃ。
プギャーたちも改めて六人の戦いに視線を向けた。

79 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:31:29 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「右!」

ギコが右に意識を向けると尻尾に握られた剣が自分に向かって振り下ろされようとしていた。

(;,,゚Д゚)「ゴラァ!」

それを剣で弾き返し、【キョン・ツー】を後退させる。
HPバーが半分くらいになったところで出してきた長い尻尾は戦闘を長引かせてはいたが、けっして苦戦しているわけではなかった。

(細剣゚-゚)

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

正眼の構えからソードスキルを放ち、キョンツーに一撃。
スキルそのものの威力は並だが、ギコの持つ能力の補正とキョンツーが防具らしい防具は付けていない事により、HPバーは目に見えて減少した。

(,,゚Д゚)「よし!」

(´・ω・`)「上!」

ショボンの声はギコを完全にサポートしていた。
何故見えていなかったことが分かるのかは分からないが、ショボンはギコが注意を払っていない場所を完全に把握しているとしか思えない正確さでギコの視界を補っていた。

80 名前:名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:32:06 ID:Q1R2bXxs0
しぇ

81 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:33:04 ID:0Wi70pZY0
(,,゚Д゚)「ふん!」

最初はそれに戸惑っていたギコもその正確性とタイミングにいつしか慣れ、今もショボンの声で見上げると同時に片手剣を簡単に弾き、横一閃に剣を振ってキョンツーを追撃した。

 _
( ゚∀゚)「けっこうやるじゃん」

(´・ω・`)「それなりに戦闘経験はつんでるみたいだね」

既に片手剣を操っていたキョンツーを倒したジョルジュがショボンの隣に立ち、ギコに聞こえない声で会話をする。
 _
( ゚∀゚)「これなら俺の出番は無いかな」

(´・ω・`)「多分大丈夫だと思うよ。 右下!」

投擲用の太い針を構えたままショボンが笑顔を見せる。
すでに左足は元に戻り、HPバーも完全回復して彼もいつでも戦える状態だった。
だがしかし手助けは行わず、じっと観察している。
 _
( ゚∀゚)「で?」

82 名前:名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:33:54 ID:2qyWTkOE0
しょっぱなから絶倫すぎわろた

83 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:34:45 ID:0Wi70pZY0
(´・ω・`)「ん?」
 _
( ゚∀゚)「スカウトするのか?」

(´・ω・`)「しぃさんは良いよね。調理スキルも高そうだし、何より可愛い女の子が給仕してくれたらお客さんも増えそうだし」
 _
( ゚∀゚)「今でも充分儲けてるだろうが」

(´・ω・`)「問題はギコさんだね。戦闘スキル一辺倒みたいだし。それでいてジョルジュにもドクオにも三歩くらい及ばないかな」

二人の視線の先でギコがソードスキルを繰り出す。
剣を青く光らせて二連撃を繰り出すが、二発目は空振りしてしまった。

(;,,゚Д゚)「ゴっ!」

ギコの硬直時間に合わせて剣を振り下ろすキョンツー。
しかしその手にショボンが放った針が刺さり、動きを止めた。
その隙にギコは後ろに移動して距離を取り、再び正眼の構えを取る。

(´・ω・`)「ね」
 _
( ゚∀゚)「まだまだだな」

(´・ω・`)「だから、悩み中」

84 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:36:14 ID:0Wi70pZY0

 _
( ゚∀゚)「女の方だけ入れればいいじゃねぇかよ」

(´・ω・`)「それも考えたけどさ……。育ててみるもの面白かななんてことも思ったりしてさ」
 _
(;゚∀゚)「お前…」

(´・ω・`)「ジョルジュは自分がVIPに入ったときのこと覚えてる?」
 _
(;゚∀゚)「忘れるわけねぇだろうが……まさかお前」

(´・ω・`)「ん〜」
 _
(;-∀-)「オレは入って良かったから良いけどよ。あんまり追い詰めてやるなよ」

(´・ω・`)「僕を何だと思ってるのさ」
 _
( ゚∀゚)「鬼?悪魔?」

(´・ω・`)「マジか」
 _
( ゚∀゚)「冗談だよ、冗談。俺やサスガの二人なんかは感謝してるさ。VIPに誘われたおかげで色々楽になったからな」

(´・ω・`)「なら嬉しいんだけどね。僕らこそ、みんなと友達になれて嬉しいから」
 _
(*゚∀゚)「そ、そうか」

(´・ω・`)「照れるな気持ち悪い」
 _
(#゚∀゚)「おまえ」

(´・ω・`)「冗談だよ、冗談。さっきのお返し」

ギコから視線を外し、ほんの少しだけ視線を合わせて笑顔を見せる二人。

(´・ω・`)「そんなことを話しているうちに、そろそろ終わりかな」

85 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:37:05 ID:0Wi70pZY0
細剣使いキョンツーのHPバーが赤く染まり、咆哮をあげる。
構えて防御をするギコには硬直も攻撃判定も付かず、咆哮後の硬直時間に合わせて剣技を放つための構えを取ろうとした。

(´・ω・`)「ラストアタック!重めの得意技!」

(,,゚Д゚)「おう!」

掛け声とほぼ同時に剣を赤く光らせて突進。
跳躍しつつ上段から真下に一閃し、返す刃で腰を捻りつつ斜め上に切り上げ、逆側に腰を捻りつつ半歩後ろに下がり、切っ先をキョンツーの胸の中央に向ける。

(#,,゚Д゚)「ゴルラアァァァ!」

気合と共に剣を突き出しながら突進。
キョンツーの胸に剣が突き刺さり、HPの赤いラインを全て消失させた。

(細剣゚听)「−−−−−!」

声にならない叫び声を上げ、ポリゴンと化すキョンツー。

(;,,゚Д゚)「やった……」

(´・ω・`)「どう、何点くらい?」
 _
( ゚∀゚)「まぁ50点くらいはやってもいいんじゃないか?」

後ろから聞こえる自分を評価する声を気にしつつも、今までにない充足感をもって大きく深呼吸をするギコ。
その目の前にある洋服箪笥の観音開きの扉が開き、一回目のクエストで出会った少女『キョンキョン』が泣きながら自分に抱きついてきた。

86 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:38:49 ID:0Wi70pZY0
ちょっと休憩。

しえんとかありがとうございます。

87 名前:名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:39:45 ID:2qyWTkOE0
乙乙
読み応えのあるものが今日多くておじさん嬉しいわ

88 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:52:05 ID:0Wi70pZY0


5.ギルド『V.I.P.』へようこそ

89 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:52:49 ID:0Wi70pZY0

 _
( ゚∀゚)('A`)
( ^ω^)ξ゚听)ξ
(´・ω・`)川 ゚ –゚)    「かんぱーい!」
( ´_ゝ`)(´<_` )
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)

90 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:53:50 ID:0Wi70pZY0

次の日のバーボンハウス。
店の営業は終了し、クエストに参加したギルドVIPの面子とギコとしぃがグラスを鳴らして約20時間前のクエストクリアを讃えあっていた。

(*゚ー゚)「みなさん、本当に有難うございました!」

頭を下げて感謝の言葉を紡ぐしぃの目には涙が浮かんでおり、横に立つギコは所在なさげに頭をかく。

(,,゚Д゚)「あ、ありがとうだゴラァ」

(*゚ー゚)「ギコくん!」

(;,,゚Д゚)「あ、ありがとうございました」

(*゚ー゚)「ホントに心配したんだからね!」

(,,゚Д゚)「それは……すまなかった」

91 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:54:38 ID:0Wi70pZY0

川 ゚ –゚)「まぁ生きて帰ってこれたし、幼女を送り届けたらお礼に目当ての鉱石も貰えたし、全て丸く収まって良かったじゃないか」

鋭い目つきでギコを睨むしぃ。
肩をすくめるギコだったが、クーの言葉で目を輝かせる。

(*,,゚Д゚)「まぁ…それは」

(*゚ー゚)「そういえば、なんでそんな鉱石を取りに行ったの?」

(;,,゚Д゚)「え!?そ、それはその……」

不思議そうに問いかけるしぃに答えられず、後ずさりしながら距離を取ろうとするギコ。
しかししぃも諦めずに部屋の隅に追い詰めていく。

92 名前:名も無きAAのようです:2013/02/17(日) 23:54:46 ID:Q1R2bXxs0
絶倫ですなぁ

93 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:55:33 ID:0Wi70pZY0

('A`)「おいショボン」

(´・ω・`)「なに?」

('A`)「クエスト話、彼女にも話したんだよな」

(´・ω・`)「話したよ。全部。クエストクリアのレアアイテム、『アルグレスライト』の特徴からなにから」

( ^ω^)「それで、あれかお?」
 _
( ゚∀゚)「分かってやってるんじゃないか?」

('A`)「そうは見えないが…どちらにしても…」

( ^ω^)「わかってやってるなら、かなり悪質だお。かわいそうなギコくん」

( ´_ゝ`)「おい、ツンとクーも一緒になって何故何故言い出したぞ」

(´<_` )「もしも彼女が分かってないってことは、あの二人と同じってことだよな……」
 _
(;゚∀゚)「おいおい、オレですら察しがついたんだぞ」

94 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:57:10 ID:0Wi70pZY0


 _
(;゚∀゚)(;´_ゝ`)(;^ω^)(;´・ω・`)「はぁ…」('A`;)(´<_`;)

95 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:58:22 ID:0Wi70pZY0
男達が溜息をついている間にも、女三人の問い詰めは続いている。

(*゚ー゚)「ギコくん?」

ξ゚听)ξ「あれ、どうするの?」

川 ゚ –゚)「もう換金したのか?」

(;,,゚Д゚)「そ、それはその……」

店の角に追い詰められたギコ。
しかしクーの言葉にしぃが何かを思い出したのか、体をクーに向けた。

(*゚ー゚)「あ、クーさん」

川 ゚ –゚)「なんだ?」

(*゚ー゚)「あの、今回の経費はいくらくらいになりましたか」

川 ゚ –゚)「そうだな。まずはそれを片付けるか」

ウインドウを出し、アイテム欄から『明細書』と書かれた欄をタップして実体化させる。

川 ゚ –゚)「これがそうだ。支払いはどうする?一括でいけるか?」

(;゚ー゚)「……え?」

明細書を受け取ったしぃが口をぽかんと開けて硬直する。
それを見てギコが明細書を覗き込み、同じように目を見開いて口を開けた。

(;,,゚Д゚)「ひゃ、百二十万コルだとゴラァ!」

96 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:59:09 ID:0Wi70pZY0
ξ゚听)ξ「あら、結構安くついたわね」

(;,,゚Д゚)「や、安い!?」

(´・ω・`)「今回は日数は二日足らずだからね。拘束時間が増えると各人の商売で儲けるはずだった金額もプラスするけど、今回は戦闘も夜だったからそこら辺はサービスしたよ」

川 ゚ –゚)「ほとんどは危険手当だな」

('A`)「クエストのレベルはそれほど高くなかったが、情報が少ない中でのイレギュラーなボス戦、追加イベントの攻略、モブの殲滅、結構頑張ったよな」

( ^ω^)「ものすごくダッシュで走ったから、あのあとちょっと頭が痛くなったお」

ξ゚听)ξ「命の値段…と考えたら、安い方だと思うけど」

(;,,゚Д゚)「そ、それはそう…だけど…」

(*゚ー゚)「70万は即金でお支払いします。残りは少しずつになってしまいますが、必ずお支払いします」

(,,゚Д゚)「!しぃ!そのお金はあの部屋を買うために貯めた!」

(*゚ー゚)「お金より、ギコ君が生きてくれていることの方が大事。そのために使ったお金だよ。お金なら、また貯めればいいじゃない。これからは私も積極的にクエストに行くよ。私もちゃんと戦いたいから」

(,,゚Д゚)「しぃ……」

見つめ合う二人。
そんな二人を見る五人。
そしてショボンの口元が、ほんの少しだけ笑った。

97 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/17(日) 23:59:50 ID:0Wi70pZY0
( ´_ゝ`)「はじまるな」

(´<_` )「おわったな」
 _
( ゚∀゚)「ギコ、かわいそうに」

反対側の隅からかすかに聞こえる男三人の会話を聞きつつ、目の前で視線だけで愛を語っている二人に一歩近寄るショボン。

98 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:02:48 ID:ecrl.ZLI0
(´・ω・`)「さて、そんなお二人に良いお話があります」

(;゚ー゚)「え?」

(;,,゚Д゚)「な、何だゴラァ」

周りを気にせず見詰め合っていた事に気付き、慌ててショボンを見る二人。
そんな状態では周囲に気を配ることも出来ず、五人の後ろで眉間に皺を寄せてこちらを見ている男三人には全く気付いていない。

(´・ω・`)「しぃさん、料理スキルはどれくらいですか?あと、料理の派生スキルは取ってますか?」

(*゚ー゚)「え?料理スキルですか?料理スキルなら、この前コンプリートしました。派生の調理関係のスキルもそれなりに取ってます。そちらはそれほどレベルアップしていないですけど」

ξ゚听)ξ「裁縫とかはどう?」

(*゚ー゚)「裁縫はそれほど…700位のはずです」

ショボンに頷くツン。
そしてショボンも頷き返す。

(´・ω・`)「しぃさん、あなたをギルド『V.I.P.』にスカウトします。このギルドに入りませんか?」

99 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:03:31 ID:ecrl.ZLI0
(*゚ー゚)「え?わ、私がですか?」

(´・ω・`)「はい。当分は僕とツンのサポートになりますが、ある程度スキルを上げたら店を任せたいです」

(*゚ー゚)「で、でも私の戦闘レベルであんな戦いは…」

(´・ω・`)「攻略組とは違うので、戦闘はしなくても構いません。今ここにはきていませんが、ほとんど戦闘に参加しないギルドメンバーもいますしね。勿論戦闘にも参加したいなら、その分のスキルノルマも追加しますが、このギルドは職業クラスであることを基本にしていますから、料理と裁縫を頑張ってもらえるなら、それほど重視はしません」

(*゚ー゚)「わたしが…このギルドに…」

(´・ω・`)「ギルメンの大事な人を助けたことになれば、今回のクエストも、いくらか割引出来ます。そうですね……90万くらいまでには」

(,,゚Д゚)「しぃ、お金のことは気にするなよ」

(*゚ー゚)「ギコくん。わたしね、昨日皆さんの戦いを見いて、あそこに参加したくなったの」

(;,,゚Д゚)「しぃ?」

(*゚ー゚)「ギコくんの後ろで槍でつつくだけじゃなくて、前に出て、ちゃんと戦いたくなったの。だから……いいかな?」

(,,゚Д゚)「……わかった」

(*゚ー゚)「ありがとう、ギコくん。ショボンさん、お願いします」

(´・ω・`)「決断してくれてありがとう。これからよろしく」

(,,゚Д゚)「しぃが入るならオレも入れてくれ!」

100 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:04:19 ID:ecrl.ZLI0
(´・ω・`)「残念だけど、今は戦闘職のみのギルメンは特に必要ではないんだ」

(,,゚Д゚)「そ、そこを何とか」

(´・ω・`)「そう言われてもね。よほど強いならともかく、戦闘もそれほど強くないわけだし」

(,,゚Д゚)「が、頑張るから」

川 ゚ –゚)「まぁ確かに、恋人同士が離れ離れってのもなぁ」

ξ゚听)ξ「彼女が別のギルドってのも嫌よね」

( ^ω^)「でも戦闘職だけってのは、うちのギルドでは特殊だおね。ね、ドクオ」

('A`)「俺とかジョルジュは血の滲むような特訓で、戦闘職だけでも必要とされているわけだが…」

(,,゚Д゚)「どんな特訓でもする!このギルドに相応しいスキルを身につける!だからしぃと一緒にいさせてくれ!」

(´・ω・`)「どんな特訓でも?」

(,,゚Д゚)「ああ!どんな特訓でも!」

(´・ω・`)「どんなスキルでも?」

(,,゚Д゚)「ああ!どんなスキルでも!……どんなスキルでも?」

(´・ω・`)「分かったよ。君の熱意に負けたよ。どんなスキルを身につけるためのどんな特訓でも受けてくれるのだから。それほどまでしぃさんと一緒にいたいのなら、ギルドに迎えよう」

101 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:05:08 ID:ecrl.ZLI0
(,,゚Д゚)「……あれ?おれ、もしかして……」

ニッコリと微笑んでいるショボンと四人。
しぃもそれに釣られてギコに向かって微笑みを向ける。
一人ギコは動揺しているが、なんとか平静を保とうとしている。

(,,゚Д゚)「いや、その…なんというか…言葉のあやっていうのも」

(´・ω・`)「仲間の命を救っただけだからね、今回の費用は各種実費だけでいいよ。後でもう一度ちゃんと計算するけど、多分30万くらいにできるんじゃないかな」

(,,゚Д゚)「それはありがたいが…いや、でも…」

(´・ω・`)「家とは行かないけど、ギルドで所有している建物がいくつかあるから、良ければその一つに住めば良いよ。あとでそれもピックアップするから、二人で選んでくれ」

(;,,゚Д゚)「は、話がうますぎねぇかゴラァ」

満面の笑みで話を続けるショボンと、汗をかき始めるギコ。

そんなギコの肩を叩く一つの手。

(,,゚Д゚)「え?」

102 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:05:52 ID:ecrl.ZLI0
いつの間にやら移動してたジョルジュと流石兄弟。
 _
( ゚∀゚)「ま、がんばれ」

(´<_` )「コツ位なら教えてやるよ」

( ´_ゝ`)「勿論ただでな」

(,,゚Д゚)「あ、あんたたちも?」
 _
( ゚∀゚)「最初キツイけど、その後は結構楽だぞ」

( ´_ゝ`)「生き残るために死ぬ思いをするだけだ」

(´<_` )「大丈夫、死にはしないから」

(;,,゚Д゚)「フォローになってねえぞゴラァ…」

ふと横を向くと、じっと自分を見ているしぃの笑顔。

(,,゚Д゚)「……がんばるしかねぇかゴルァ」

その一言で、ギコを除く全員が微笑んだ。

103 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:06:53 ID:ecrl.ZLI0
( ^ω^)「二人の入団を祝ってもう一度かんぱいだお!」

(´・ω・`)「そうだね。料理も出さないと」

('A`)「少しは戦闘で楽できるようになるな」

ξ゚听)ξ「あんた、レベル上げとソードスキルくらいしか楽しみ無いのになに言ってるのよ」

川 ゚ –゚)「ショボン、ロングテールカウのステーキはあるか?」
 _
( ゚∀゚)「俺はブラッドトリルの酒と、エルスフィッシュの姿煮が食いたい」

(´<_` )「そうだショボン、お前も『エルグレスライト』手に入れたんだよな?防具にさせてくれよ」

( ´_ゝ`)「何を言っている弟者!まずは武器の約束だろうが!」

わいわいと仲良さげにカウンターに向かう8人の背を見ながら、しぃがギコの腕に手を回す。

(*,,゚Д゚)「しぃ?」

(*゚ー゚)「ギコくん、わたし、今凄く楽しい」

(*,,゚Д゚)「……ああ、オレもだぞゴルァ」

八人の後を追って歩き出す二人、それと同時に八人が一斉にこちらを向いた。

(*゚ー゚)「!?」

(,,゚Д゚)「な、なんだゴルァ」

(´・ω・`)「ギコ、しぃ」

104 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:08:22 ID:ecrl.ZLI0


                      _
( ^ω^)ξ゚听)ξ(´・ω・`)川 ゚ –゚)( ゚∀゚)( ´_ゝ`)

    「ギルド『V.I.P.』へようこそ!」

                    ('A`)(´<_` )

105 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:09:24 ID:ecrl.ZLI0


第一話 終


(´・ω・`)「特訓、あしたからだから」

( ^ω^)「だおだお」

106 名前:名も無きAAのようです:2013/02/18(月) 00:11:28 ID:vgJSVzVc0

すげえな
楽しみが一つ増えたわ

107 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/18(月) 00:13:02 ID:ecrl.ZLI0
支援等、ありがとうございました。

初めての投稿でドキドキでしたが、とりあえず書いたものを載せてみました。

心が折れない程度で感想とかいただけると嬉しいです。


最後にジョルジュの眉毛がずれてしまった…。

108 名前:名も無きAAのようです:2013/02/18(月) 00:16:57 ID:oUwOalY6O
絶倫遅漏おつ

109 名前:名も無きAAのようです:2013/02/18(月) 00:19:16 ID:i5rOrbU20
乙カレー、マイペースにでもいいから最後まで走って頂きたい

110 名前:名も無きAAのようです:2013/02/18(月) 01:20:27 ID:W5RelXwgO
ω`;)面白いんだがブーンが半角なのが…

111 名前:名も無きAAのようです:2013/02/18(月) 15:32:41 ID:wKKaD0ps0

これはおもしろい

112 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 02:38:48 ID:vnIMwv6gO
乙ー

川 ゚ -゚)のAAが閲覧環境によっては文字化けしてるんで、テンプレからコピーして使った方がいいかもね

113 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 12:25:30 ID:t1xM5LpMO
一回で100レス超えとは絶倫だな

114 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 20:17:37 ID:ue1.mGjQ0
ご指摘ありがとうございます。

テンプレからコピペしてきて登録してみました。

( ^ω^)
川 ゚ –゚)

これで大丈夫かな。

115 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 20:58:49 ID:ue1.mGjQ0
せっかくなので、ちょっと投下します。

ほぼながらなのでまったりと。

116 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 20:59:40 ID:ue1.mGjQ0
ある日の雑貨屋Booon



( ^ω^)「ひまだお…」

ξ゚听)ξ「ひまね」

ある日の雑貨屋Booon。
カウンターに立つブーンと、その横の椅子に座るツン。

( ^ω^)「朝から誰も来ないって…」

ξ゚听)ξ「まだお昼にもなってないし、こんな日もあるでしょ」

( ^ω^)「夜、狩りを終えて帰ってきた人がドロップ品を売りに来ないなんて…」

ξ゚听)ξ「一眠りしてからくるんじゃない?」

( ^ω^)「朝、これから狩をしに行く人がPOTを買いに来ないなんて…」

ξ゚听)ξ「みんな昨日のうちに準備していたのよ」

( ^ω^)「……なのかお……」

ξ゚听)ξ「そうそう」

117 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 21:05:39 ID:ue1.mGjQ0
( ^ω^)「ツンは今日の仕事は良いのかお?」

ξ゚听)ξ「オーダーされてるのは全部終わったから。細かいのはしぃちゃんのスキルアップ用に回してるし」

( ^ω^)「二人が入ってから二週間。しぃちゃんは結構なれたおね」

ξ゚听)ξ「そうね〜。裁縫の方はまだまだだけど、料理の方はショボンが喜んでたし。すぐにでも店を任せたいって」

( ^ω^)「また店を増やすのか」

ξ゚听)ξ「レストランの方は今のままで、バーを開きたいって話してるみたい。クーがそんなこと言ってた」

( ^ω^)「…あの二人がたくらんでるってことは、また何か…」

ξ゚听)ξ「さすがに大丈夫でしょう。アインクラッドに酔っ払うお酒は無いからバーといってもcafeみたいなもんでしょうし」

( ^ω^)「言い切れるかお?」

ξ゚听)ξ「……むり」

( ^ω^)「だおね」

118 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 21:18:44 ID:ue1.mGjQ0
ξ゚听)ξ「…暇ね」

( ^ω^)「暇だお」

ξ゚听)ξ「きょうはギコは?」

( ^ω^)「朝在庫チェックの手伝いだけしてくれて、開店と同時に体術の修行に行ったお」

ξ゚听)ξ「そういえば、昨日の夕飯のときも顔にヒゲがあったもんね」

( ^ω^)「あれをあんまり恥ずかしいと思ってないのも問題だお」

ξ゚听)ξ「あの修行のときはご飯食べに町に戻るのが辛かったな…」

( ^ω^)「顔にヒゲが描かれているだけであんなに恥ずかしいってことを初めて知ったお」

ξ゚听)ξ「ギコは結構手間取ってるわよね。もう五日くらい?」

( ^ω^)「どうもあの修行には、ランダムで運要素が入ってるんじゃないかって噂らしいお」

ξ゚听)ξ「運?」

119 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 21:22:36 ID:vnIMwv6gO
今日もか
がんばるな支援


川 ゚ -゚)がまだおかしいな

120 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 21:26:42 ID:t1xM5LpMO
ほっこり具合がいいな 
支援

121 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 21:31:22 ID:ue1.mGjQ0

( ^ω^)「ツンはあれどれくらいでクリアした?」

ξ゚听)ξ「四日。しぃちゃんも四日だったし、確かクーもそれくらいだったはず」

( ^ω^)「僕とドクオが三日で、ショボンも四日。で、ジョルジュが二日。弟者も三日で、兄者が五日」

ξ゚听)ξ「え?兄者が?」

( ^ω^)「パラメーターの割り振りで言えば、ショボンの四日もかかりすぎだお」

ξ゚听)ξ「だから『運』か」

( ^ω^)「ギコは運悪いらしいから」

ξ゚听)ξ「しぃがそんなこと言ってたわね。そういえば」

( ^ω^)「クリスマスまでに間に合うといいおね」

ξ゚听)ξ「顔に猫のヒゲを描かれたままプロポーズするのも見てみたいけど」

( ^ω^)「それはさすがに可哀想だお。…って、やっと気付いたのかお?」

ξ゚听)ξ「なにを?」

( ^ω^)「ギコがプロポーズ用に『アルグレスライト』をゲットしようとしてたこと」

ξ゚听)ξ「失礼ね、最初から分かってたわよ」

( ^ω^)「またまた」

ξ゚听)ξ「わかってました〜。あれはわざとです〜」

( ^ω^)「そうだったのかお」

ξ゚听)ξ「そうです〜」

( ^ω^)「……」

122 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 21:35:59 ID:ue1.mGjQ0
お。まだおかしいですか?

川 ゚ -゚)
↑テンプレからコピペ

川 ゚ -゚)
↑それを辞書に登録して変換

どうでしょうか?

123 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 21:49:05 ID:ue1.mGjQ0

ξ゚听)ξ「のど渇いちゃった」

ウインドウを出して操作するツン。

( ^ω^)「?」

ξ゚听)ξ「…送信っと。……返信はやっ」

( ^ω^)「お茶でもいれるかお?」

ξ゚听)ξ「大丈夫大丈夫……はいこれ」

ウインドウをタップすると、カウンターにティーポットとケーキが現れた。

( ^ω^)「ん?」

ξ゚听)ξ「ショボンに店のお茶とケーキを共通タブに入れてもらったの。さ、お茶にしよう」

(; ^ω^)「なんちゅう使い方を」

ξ゚听)ξ「あら、結構皆やってるわよ」

(; ^ω^)「マジか」

ξ゚听)ξ「クーとか」

( ^ω^)「…他には?」

ξ゚听)ξ「……クーとか」

( ^ω^)「……暇だおね」

ξ゚听)ξ「お茶美味しい」

124 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:01:07 ID:ue1.mGjQ0

( ^ω^)「で?」

ξ゚听)ξ「ん?」

( ^ω^)「いつ知ったんだお?」

ξ゚听)ξ「…………昨日」

( ^ω^)「おそっ!」

ξ゚听)ξ「モララーの工房に顔出したら綺麗な指輪があったから、値段を聞いたらギコからのオーダー品だって言われて」

( ^ω^)「そこでモララーから聞いたと」

ξ゚听)ξ「うん。っていうか、普通気付かないでしょ」

( ^ω^)「男全員気付いてましたがなにか?」

ξ゚听)ξ「クーだって気付いてなかったし」

( ^ω^)「それも問題だお」

ξ゚听)ξ「人の色恋に気付いてもしょうがないじゃない」

( ^ω^)「当事者のしぃちゃんも気付いてないっぽかったおね」

ξ゚听)ξ「あ〜〜多分気付いてないわね」

( ^ω^)「ギコっち…」

ξ゚听)ξ「サプライズ出来るから良いんじゃない?」

( ^ω^)「頬に三本の線が書かれた猫のようなヒゲ面で」

ξ゚听)ξ「そ、ヒゲ面で」

125 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:14:03 ID:ue1.mGjQ0

( ^ω^)「にしてもお客さんが来ないお…」

ξ゚听)ξ「攻略組がフロアボス攻略してたりして」

( ^ω^)「それならショボンから情報が回ってくるはずだお」

ξ゚听)ξ「そうよね」

( ^ω^)「そういえば、ショボンとドクオとジョルジュのところにまた攻略組からスカウトが来たらしいお」

ξ゚听)ξ「今度はどこ?」

( ^ω^)「いろんなところ」

ξ゚听)ξ「懲りないわよね。まぁ気持ちは分かるけど」

( ^ω^)「ショボンのところにはギルドごと入らないかって言われたらしいお」

ξ゚听)ξ「…軍じゃないでしょうね」

( ^ω^)「まぁそこらへんはまたショボンから話があると思うお」

ξ゚听)ξ「はなし?」

( ^ω^)「ショボンがイライラしてたから、多分何かしらの連絡は来ると思うお」

ξ゚听)ξ「めんどくさいなぁ」

(; ^ω^)「まぁまぁ。ショボンがくい止めてくれてるし」

ξ゚听)ξ「攻略組が頑張ってくれてるからクリアに近付いてるのは分かるんだけどね」

( ^ω^)「だけど?」

ξ゚听)ξ「なかにはそれを前面に押し出してナンパしてくるバカもいるし」

( ^ω^)「そんなのがいるのかお」

ξ゚听)ξ「いるいる。私のほうは一応女性向けの衣服のみってことにしてるからよっぽどのバカじゃなきゃやってこないけど、クーの方には結構来るみたいよ」

( ^ω^)「あ〜。クーは中身知らなきゃ普通に美人さんだから」

ξ゚听)ξ「……わたしは?」

( ^ω^)「もちろんおきれいで」

ξ゚听)ξ「なんかむかつく」

126 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:26:52 ID:ue1.mGjQ0


( ^ω^)「男ものはあんまり種類が無いのかお?」

ξ゚听)ξ「種類?」

( ^ω^)「服の」

ξ゚听)ξ「基本的には一緒かな。専用のものはほとんど無くて、作るときに種類と一緒に男女を選ぶ感じ。初期レベルのものは男女別れてないのもあるくらいだし」

( ^ω^)「そうなのかお?」

ξ゚听)ξ「Tシャツとか、簡単なインナーはそうよ。レベルが上がると形に合わせて生地とか形とか色とか柄とか色々作れるようになるからユニセックスなものはあんまり作ってないけど」

( ^ω^)「いつも服をありがとうだお」

ξ゚听)ξ「どういたしまして。男物はギルドのメンバーのくらいしか作らないから、男女別れてたら面倒だったろうな。作ったこと無い専用のもあるけどね」

( ^ω^)「そんなのがあるのかお?」

ξ゚听)ξ「だいたい新しいのを覚えたら一回作ってみるんだけど、あれは…」

(; ^ω^)「どんな服なんだお?」

ξ゚听)ξ「作ってあげようか?褌とか男性用Tバックとか」

( ^ω^)「………………」

ξ゚听)ξ「?」

( ^ω^)「………………遠慮しておくお」

ξ゚听)ξ「一瞬悩んだその間がキモイ」

127 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:33:44 ID:ue1.mGjQ0

( ^ω^)「それにしてもお客さんが来ないお」

ξ゚听)ξ「もうお昼もまわったわね」

( ^ω^)「今日はなんという日でしょう」

ξ゚听)ξ「なにそのしゃべり」

( ^ω^)「いやなんとなく」

今日初めて外から店のドアが開かれ、ドアに取り付けられたベルが音を立てた。

( ^ω^)「いらっしゃいませだお!」
 _
( ゚∀゚)「なんだ、いるじゃねぇか」

( ^ω^)「なんだジョルジュか…」

ξ゚听)ξ「やっとお客さんだと思ったのに」

( ^ω^)「珍しいおね。昼間に店に来るのは」

ξ゚听)ξ「なんか足りなくなった?」
 _
( ゚∀゚)「いや、ショボンのところに魚を渡しに来て、そのまま飯を食べてきた帰りだけどよ、本日休業の札がかかってたからなにやってんのかと思って」

( ^ω^)「え?」

ξ゚听)ξ「え?」
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ^ω^)「『本日』?」

ξ゚听)ξ「『休業』?」

128 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:36:00 ID:ue1.mGjQ0

 _
( ゚∀゚)「ああ。かかってたぞ」

ξ゚听)ξ「ブーン、今日札をかけたのは誰?」

( ^ω^)「ギコが、修行に行くときに『(,,゚Д゚)「開店の札はかけとくぞゴルァ』って言ってくれたから頼んで…」

ξ゚听)ξ「あー」
 _
( ゚∀゚)「あー」

微妙な空気が流れる店内。
そこに勢いよく再びドアが開かれ、来店を告げる鈴が鳴った。

(*,,゚Д゚)「クリアしたぞゴルァ!」

ξ゚听)ξ「ギコ…」
 _
( ゚∀゚)「ギコ…」

(*,,゚Д゚)「エクストラスキル『体術』をゲットしたぞゴラァ!猫ヒゲともおさらばだ!」

小躍りしかねない勢いで喜んでいるギコ。
しかし漂う微妙な空気に気付き、三人の顔を見る。

(,,゚Д゚)「どうした?なんかあったのか?」

ξ゚听)ξ「う〜ん」
 _
( ゚∀゚)「あー。まぁ、うん」

( ^ω^)「おめでとうだお、ギコ」

(,,゚Д゚)「お、おう。ありがとうだゴルァ」

( ^ω^)「とりあえず、ギルメン必須スキル一つ目ゲットおめでとうだお」

(;,,゚Д゚)「あ、ああ。……ブーン?なんか笑顔が怖いぞ」

( ^ω^)「まさか五日もかかるとは思ってなかったから、他のスキルの習得はもっと早くできるように頑張らないとだお」

(;,,゚Д゚)「お、おい。言葉にトゲがねぇか?」

( ^ω^)「というわけで、稽古をつけてあげるお」

129 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:37:44 ID:ue1.mGjQ0


(,,゚Д゚)「え?」

ξ゚听)ξ「え?」
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ^ω^)「さ、行くお」

流れるようにカウンターから出てギコに近寄り、その手を掴む。
そして店の奥のドアに向かう。

(;,,゚Д゚)「え?え?え?」

( ^ω^)「ツン、ジョルジュ、店番を頼むお」

ξ゚听)ξ「了〜解」
 _
( ゚∀゚)「しょうがねぇなぁ」

(,,゚Д゚)「え?いや、あれ?ブーン……さん?あれ?」

( ^ω^)「大丈夫だお。中庭に行くだけだお」

(,,゚Д゚)「あ、いや、あれ?」

( ^ω^)「大丈夫だお。園内だから犯罪防止コードが働いて直接当たらないからHPは減らないお」

(,,゚Д゚)「お、おれなんかしたか?」

( ^ω^)「大丈夫、いつまでも一方的に僕の攻撃が続くだけだお」

(;,,゚Д゚)「いや、そんな」

( ^ω^)「その体に恐怖を植えつけてあげるだけだお」

(;,,゚Д゚)「いやーーーーー!」


終わり


ξ゚听)ξ「ギコ、三日は再起不能ね」
 _
( ゚∀゚)「まぁ今回の件は自業自得だな」

130 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:38:18 ID:x.j8qeio0
ひでえ

131 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/19(火) 22:40:26 ID:ue1.mGjQ0

しえん、ありがとうございます。

初ながら、これくらいが限度でしょうか。
もうちょっとサクサク書けるようになりたいです。

132 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 22:44:36 ID:6VfLMdRk0
( ^ω^)おもしろいお しえん

133 名前:名も無きAAのようです:2013/02/19(火) 23:20:39 ID:CQZWpIRA0
ギコwww

134 名前:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 08:53:08 ID:Ct088Nk6O
おもろい

135 名前:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 16:45:02 ID:jxtAuDc.0
これは面白い

136 名前:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 22:20:30 ID:9aoPXVUk0
続きが楽しみ

137 名前:名も無きAAのようです:2013/02/22(金) 17:42:43 ID:TkzMhAP20
乙!
次も楽しみ

138 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:34:43 ID:qvVRjSJI0
やっちまった…。

SAOを読み返していたら恐ろしい間違いを発見。

2023年12月の時点ではまだ50層に到達してなかった……。

ってことで、>>10は次のように頭の中で変更しておいてください。

すみません。

(´・ω・`)

139 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:35:26 ID:qvVRjSJI0
1.さがしものはなんですか


西暦2023年12月

第40層主街区
そのメインストリートから少し外れたところにある『雑貨屋Booon』。
木で出来た扉を開けると店内は意外に広く、壁やテーブルには見やすいように商品が並べられていた。

( ^ω^)「いらっしゃいませだお〜」

店主であろう男が接客をしつつ中に入ってきた少女に声をかける。
その声にひかれたように、各種POTは勿論のこと色とりどりな結晶に木や革の細工品、そして武器や防具には目もくれず、カウンターで買い物をしている男の後ろに少女が並んだ。

( ^ω^)「全部で500コルだお」

取引を成立させた男がカウンターを離れると、店主の顔を睨むように見つめつつ少女が近寄る。

( ^ω^)「いらっしゃいませだお。買い取りかお?」

(*゚ー゚)「……いえ、違います」

( ^ω^)「じゃあ何かさがしものかお?うちにあればよいけど…」

(*゚ー゚)「いえ、違います。……大きく言えば、違わないんですけど…」

(;^ω^)「?」

(*゚ー゚)「情報屋のラルゴさんに聞いてきました。ギルドVIPさんなら、ギコ君を見つけられるって」

( ^ω^)「ああ。そっちのお客さんなのかお」

140 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:37:40 ID:qvVRjSJI0
これだけなのもあれなので、投下行きます。

一応これでギコ・しぃ入団編は終了の予定。

141 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:39:39 ID:qvVRjSJI0

第二話 聖なる夜のキャロル


0.ゆるぎない歌


西暦2023年 12月中旬

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「珍しいじゃない。難しい顔しちゃって。買取価格決めるときぐらいでしょ、そんな顔するの」

( ^ω^)「あんまり褒めるなお」

ξ゚听)ξ「いや、褒めてない」

( ^ω^)「僕もそれくらいは分かってる」

ξ゚听)ξ「なら言うな」

( ^ω^)「いやなんとなく」

ξ゚听)ξ「あんたそれ多いわよね。で、なんなのよ」

( ^ω^)「いや、考えてみれば、そろそろ半分なんだおね」

ξ゚听)ξ「なにが?」

( ^ω^)「ここだお。百層から成る浮遊城、『アインクラッド』」

ξ゚听)ξ「そうね……。って、49層に来た時に散々盛り上がったじゃない。もうすぐ半分だって」

( ^ω^)「それはそれで」

ξ゚听)ξ「約一年で半分来れてるからね。うまくいけばあと一年くらいで開放されるかも」

( ^ω^)「だおね」

ξ゚听)ξ「それまで、なんとしても生き残らないとね」

( ^ω^)「だおだお」

(*゚ー゚)「あ、あの……」

ξ゚听)ξ「なに?しぃ」

(,,゚Д゚)「だったらもっと真剣に戦え!」

142 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:40:49 ID:qvVRjSJI0

それぞれに武器を振るうギルド『V.I.P.』の四人。
だがその姿勢は二種類に分かれていた。

(;*゚ー゚)「二人とも余裕過ぎます」

(#,,゚Д゚)「二人が強いのは知ってるが、そんなことじゃ足下すくわれるぞゴルァ」

ξ゚听)ξ「そんなこと言ってもさ」

( ^ω^)「おっおっ」

余裕のある二人と、いっぱいいっぱいの二人。
それが現実だった。

早朝の陽光の中、四人がいるのは第32層渓谷。
別名『さそりの谷』。
四方を土壁に囲まれたこの谷には、巨大なサソリ型モンスター【スクループ】が出現する。
両手の巨大な鋏と尾の先に付いた針で攻撃してくるプレイヤーよりも二まわりほど大きなモンスターだが、レベルはそれほど高くない。
更にこの谷の中には最大3匹しか出てこないため、ソロとしては辛いがパーティーで戦うには対処しやすく、ポップ数も多いため経験値稼ぎの人気スポットになっている。
そういった人気スポットは使用希望者の列が作られるのがほとんどで、紳士協定として各グループは一回最大一時間と決められていた。
ここは四方の土壁が階段のようになっているので見学もしやすく、早朝ゆえそれほどギャラリーは多く無いが、四人が戦う姿を見て野次を飛ばす者もいた。

143 名前:名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 22:41:10 ID:uSccs8Ic0
来たか絶倫野郎

144 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:41:44 ID:qvVRjSJI0

( ^ω^)「はっ」

ξ゚听)ξ「はっ」

その中で、ブーンとツンの戦い方は見ている者を感嘆させるものだった。
二人とも一人が一体を相手にしているがその戦いに危なげなど一切なく、緩急を混ぜてサソリを攻撃している。
鋏による攻撃を剣で受け流すことはあるが、頭上から来る尾の針による攻撃は完全に避けきっており、レベル差もあるとはいえまったくヒットポイントを減らさない戦い方はそう簡単には真似出来ないお手本といったところだろう。

そしてスイッチ。

交代である。

このスイッチには大きく二つのメリットがある。

一つには戦術。
一人が同じ武器で戦えばどうしても同じような戦いをしてしまい、簡易とはいえAIで戦っているモンスターに動きを読まれてしまうようになる。
しかし交代をすれば同じ武器でも違う相手が、更に違う武器なら尚更敵のAIを混乱させ、隙を突いた戦い方が出来るのだ。

145 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:42:31 ID:qvVRjSJI0

ブーンとツンは、恐ろしいほどのコンビネーションでのスイッチを見せていた。

同タイミングでの剣技。
属性は突進技。
自分の敵をノックバックさせつつ相手の敵を射程に捕らえる位置に移動し、自分の硬直が解けると同時にさっきまで相手が戦っていたモンスターを攻撃する。
位置取り、タイミング、ほんの少しでもずれれば出来ない舞うような動きにギャラリーからは感嘆の声も漏れていた。

そして先ほどまでとは全く違う剣の流れ二匹のサソリは翻弄されている。

スイッチのもう一つのメリットに、剣技後のフォローがある。
一人が剣技を放った後の硬直時に合わせれば、隙を無くすことが出来るからだ。

146 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:43:38 ID:qvVRjSJI0

(*゚ー゚)「はっ!」

小刀を赤く光らせて突進するしぃ。
死角を利用し、尚且つ剣技のサポートを使ってすばやく近寄る上手い接近だったが、三連撃の最後を外してしまう。

(;*゚ー゚)「あっ」

(,,゚Д゚)「しぃ!」

剣技後の硬直を起こしたしぃを狙うサソリの尾。
後ろでしぃの突撃を見ていたギコが慌てて走るが間に合いそうにもなく、尾の針が陽光を反射させた。

(;,,゚Д゚)「防御だ!」

ヒットポイントにも余裕があり、レベルから言えば会心の一撃を受けたとしても死ぬことは無いだろう。
だがやはり『攻撃を受ける』という行為は心に傷を負う。
防御の姿勢をとって相手の攻撃を受けるのならまだしも、無抵抗に攻撃を受けるのはどうしても恐怖を覚えてしまう。

(;*゚ー゚)「!」

息を呑み目を見開いて自分を襲う尾の針から視線を外せなかったしぃの目の前を覆う影。

( ^ω^)「ギコ!もっとよく見るんだお!」

尻尾を剣で一閃。
切り裂かれて部位破壊されるサソリの尾。

(*゚ー゚)「ブーンさん!」

(,,゚Д゚)「ブーン!」

そしてすぐに踵を返す。

( ^ω^)「しっかりやれお」

向かう先はツンが戦っていたサソリ。

147 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:44:39 ID:qvVRjSJI0

ブーンが戦っていたサソリは別方向へ走り出したブーンを追って行こうとした。
そのまま行けば三人が後方から襲われてしまうため、ツンは強引に自分前の敵をノックバックさせてから、ブーンを追おうと動き始めたサソリに渾身の一撃を放つ。
もちろん今度はツンが二匹に狙われてしまう上、さっきまで自分が戦っていたサソリには背を向けてしまった。

そこにブーンが戻り、ツンの背に自分の背を合わせて呼吸を整える。

ξ゚听)ξ「まだ向こうにいても良いのに」

( ^ω^)「ここで二匹も離される訳には行かないお」

ξ゚听)ξ「ちっ」

そして軽口を叩きつつ自分の前にいる敵をポリゴンに変える二人。

ξ゚听)ξ「さぁ次こい!あと15分!」

( ^ω^)「負けないお!」

148 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:45:41 ID:qvVRjSJI0

ギャラリーの歓声を聞きながら、それが自分たちに向けられているものでないことを実感しつつ何とか目の前の敵をポリゴンに変えるギコとしぃ。

アバターはしていないはずの呼吸を整えつつ、次のサソリが出現するであろう場所を見つめる。

(*゚ー゚)「ギコ君」

(,,゚Д゚)「何だゴルァ」

(*゚ー゚)「……がんばろう。あの二人を、ギルドの皆を目指して」

(,,゚Д゚)「もちろんだゴラァ!」

壁面の巣穴から現れたサソリに向かって剣を向ける二人だった。

149 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:51:58 ID:qvVRjSJI0

1.はじまりの歌



(´・ω・`)「早朝特訓お疲れさま」

バーボンハウスに戻ると、ショボンが朝食の準備をしているところだった。

ξ゚听)ξ「一回部屋に戻るけどすぐ来るから」

(*゚ー゚)「あ、私も一回戻って着替えてきます」

(´・ω・`)「二人ともいってらっしゃい。二人は良いの?」

奥のドアから自室に向かったツンとしぃを見送りながら武装のみ解除するブーン。
遅れてギコもウインドウを操作して武装を解除する。

( ^ω^)「汗をかいてるわけじゃないし、このままで良いお」

(,,゚Д゚)「お、俺も」

そう言いながらブーンはいつも座っている席に座った。
所在なさげに立つギコを見て少し笑みをこぼしながら視線でショボンが着席を促す。
それをうけて頭をかきながら座るギコ。

150 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 22:52:51 ID:qvVRjSJI0

(´・ω・`)「どうだった?」

( ^ω^)「今日も引き分けだお」

(´・ω・`)「二人の賭けなんか聞いてないよ。ギコとしぃの特訓はどうだったのかってこと」

( ^ω^)「まだスイッチのタイミングが甘いお。ギコは早すぎてしぃちゃんは遅い。あとしぃちゃんはまだダガーの扱いに慣れてないところがあるから、そこからだおね」

(,,゚Д゚)「お、おう。…あれじゃあ早いのか…」

( ^ω^)「早すぎって程じゃないお。でも相手や使うソードスキルによってはタイミングが悪くて当たらなかったり二人とも危険になる可能性もあるからもうちょっと良く見ることが大事だおね。そうすれば、あの時しぃが三連撃の最後を外したのを見て最良の対処がちゃんと出来たはずだお」

(,,゚Д゚)「…わかった。気をつけるぞゴラァ」

ξ゚听)ξ「しぃが遅れるのは観察しすぎて動くのが遅くなる感じね」

151 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 23:07:29 ID:qvVRjSJI0

着替えたツンが店内に戻り、席に着く。
ショボンがその前に湯気が立ち上るティーカップを置くと、お礼を言ってから口をつけた。

ξ゚听)ξ「美味しい」

(,,゚Д゚)「観察しすぎる?」

ξ゚听)ξ「うん。怖気づいてるとか恐怖からによる動きの遅さじゃなくて、敵とギコの動きを見すぎて動けてない感じ。もしかすると自分の判断に自信がもててないのかも。どう?しぃ」

(*゚ー゚)「正直自身は無いです」

遅れて戻ってきたしぃが戸惑いつつもギコの隣に座り、頷いた。

(*゚ー゚)「このタイミングで良いのかとか、この攻撃で良いのかとか。色々考えてしまって」

152 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 23:10:40 ID:qvVRjSJI0

ξ゚听)ξ「ダガーの扱いはだいぶ慣れてきてるみたいだから、そっちに自信が付けばどうにかなるのかなと思ったけど、やっぱり後は経験ね」

(*゚ー゚)「はい。頑張ります」

(´・ω・`)「そうか。そろそろ採取とか低層の素材クエストをやってもらおうかと思ったけど、まずしぃはダガーの訓練からだね。モララーかモナーに訓練を頼むかな」

(*゚ー゚)「あのお二人も短刀使いなんですか?」

(´・ω・`)「モララーはね。今は爪使いだけど、元は短刀使いだからいいんじゃないかな」

ξ゚听)ξ「モナーの方が良くない?本人は槍使いだけど、短刀使いを動かすの上手いし」

(´・ω・`)「技術はモララー。対モンスター用の実戦形式はモナーかな」

153 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 23:11:26 ID:qvVRjSJI0

(;^ω^)「モナーが短刀使いを動かすの上手いって…っていうかあれは短刀じゃなくて爪じゃ」

ξ゚听)ξ「モララーだって爪使いじゃない」

(;^ω^)「いや、だから、そういうもんじゃないんじゃないかと思うお」

三人の会話を不思議そうに聞いているギコとしぃに気付き、ショボンが首をかしげる。

(´・ω・`)「あれ?二人ともモララーもモナーもあったことあるよね」

(,,゚Д゚)「ああ、あるぞゴラァ」

(*゚ー゚)「入団したあとに皆さんに挨拶しにショボンさんに連れていってもらって、その後も何度か」

(,,゚Д゚)「喋ってはいるけどまだ戦ってるところは見たこと無いぞ」

(´・ω・`)「そっか。まぁ二人とも自分絡みの素材集めとクエストくらいしか出てこないからね。モララー辺りはそろそろ素材集めに行かないとだろうから、素材のレベルによっては一緒に行こう」

(,,゚Д゚)「おう!」

(*゚ー゚)「はい!」

154 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 23:12:15 ID:qvVRjSJI0

('A`)「おはよ〜。つかれた〜。めし〜」
 _
( ゚∀゚)「めしー!おはー!」

外に繋がる扉が開き、ドクオとジョルジュが入ってくる。
ドクオは疲労困憊しているように見え、逆にジョルジュは活力に溢れているようだ。
ふらふらと席に着くドクオと、どっかりと擬音をたてつつ座るジョルジュ。

(´・ω・`)「お帰り。首尾はどう?」
 _
( ゚∀゚)「とりあえず一つクリアして持ってきた」

('A`)「飯食って一眠りしたら細かいところを報告する。とりあえず飯をくれ、飯を」

(´・ω・`)「はいはい。あとはクーだけど、朝食の時間は過ぎてるし、先に食べようか」

( ^ω^)「おっおっ食べよう食べよう」

ξ゚听)ξ「意地汚いわねぇ」

('A`)「はやく〜」
 _
( ゚∀゚)o彡°「めーし!めーし!」

(*゚ー゚)「あはは」

(,,゚Д゚)「これでおれとは比べ物にならない強さなんだよな…」

ギコの呟きは隣にいるしぃにさえ聞こえず、ギルド『V.I.P.』の朝が今日も平和に始まった。

155 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/23(土) 23:17:06 ID:qvVRjSJI0
続く


今日はここまでで。
次回は書き溜めができたらきます。

支援とか面白いと描いてくださった皆さん。
本当にありがとうございます。

絶倫も褒め言葉としてもらって良いんですよね?

156 名前:名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 23:43:49 ID:uSccs8Ic0
書きためのタネなし野郎でひぃひぃ言ってる奴ばっかだぜ言わせんな恥ずかしい

157 名前:名も無きAAのようです:2013/02/23(土) 23:59:37 ID:MrjWIhd.O
ω・)ショボンだけなんか別格な感じがイイネ!!

158 名前:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 13:20:22 ID:UW4Jrt/.0
面白い、続き楽しみ

ところで40層で片手スキル940って少し高すぎね?たしか上限1000だったような

159 名前:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 13:20:22 ID:UW4Jrt/.0
面白い、続き楽しみ

ところで40層で片手スキル940って少し高すぎね?たしか上限1000だったような

160 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:12:01 ID:yoNxKQgo0
こんばんはです。

読んでもらえて感謝です。
(`・ω・´)

>>158
ご指摘ありがとうございます。

一応2023年12月で最前線は49層
キリトがレベル69〜70で、片手剣スキルレベルが950越えはしてるみたいなので、ショボンに聞かれて多少ギコさん盛ってる可能性はありますが、武器を片手剣しか鍛えてなく、かつまじめに戦闘してれば900は越えていても良いかなと。
ちなみにこの時点でクラインが10離されているようなので、レベルは58〜60くらい、さらに風林火山の皆さんはその下なので50越え56以下くらいとして、そこからショボン達は48〜55くらい、ギコ45前後、しぃ40くらいの設定です。
*『赤鼻のトナカイ』から設定

161 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:19:04 ID:yoNxKQgo0
って感じで、もうちょっとしたら少しだけ投下します。

3月14日までにこの話だけでも終わらせないと。

162 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:24:37 ID:yoNxKQgo0

2.こんとんの歌


レストラン『バーボンハウス』の二階にある部屋。
主に会議に使われるこの部屋はギルドメンバーなら誰でも入ることが出来る。
そしていま、中央に置かれた長机の端には四人の男女がいた。

川 ゚ -゚)「なるほどな」

目の前に置かれた野草を突付きながらクーが呟いた。
四人の視線が野草に集中し、漂う雰囲気も決して明るくは無い。

川 ゚ -゚)「これが季節によるものなのか、そうではないのか…」

('A`)「クックルも気にしてた」

川 ゚ -゚)「農園がやられたら大惨事だからな」
 _
( ゚∀゚)「魚の釣れる難易度は変わってないけどよ、なんとなく違和感はあるな」

('A`)「モナーの方の牧場は大丈夫みたいだ。ただ餌の牧草が足りなくなったら困るとはいってたな」

(´・ω・`)「なんにせよ、調査続行だね。アルゴさんや信頼できる情報屋には連絡を入れて、情報の共有化をするよ」

('A`)「それがいいだろうな」

163 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:25:37 ID:yoNxKQgo0

(´・ω・`)「さて、もう一つの件だけど、どう?なんか情報は集まった?」

('A`)「そっちは何も無い」

話題が変わった途端に雰囲気が変わり、和やかになった。

('A`)「っていうか、本当にあるのかよ」

(´・ω・`)「あると思うよ。『クリスマス限定クエスト』」

川 ゚ -゚)「だが、あれはあるんだろ?あれはやらないのか?」
 _
( ゚∀゚)「あれ?」

(´・ω・`)「『背教者ニコラス』のことだよね」

川 ゚ -゚)「ああ」

('A`)「蘇生アイテムをドロップしてくれるとかいう」
 _
( ゚∀゚)「…眉唾もんだな」

(´・ω・`)「これだけほとんどの層で話が出ている以上、イベント自体はあるんだろうけどね。蘇生アイテムはさ…」

川 ゚ -゚)「それを抜きにしても、年に一回のイベントならそれ相応のドロップ品が出るんじゃないか?」

(´・ω・`)「命の危険が高い戦いに赴くほど魅力的ではないよ」

('A`)「だな」
 _
( ゚∀゚)「どこに出るかも分からないんだろ?」

(´・ω・`)「うん。それこそアルゴさんの方から情報を求めた連絡が来たくらいだから、色々錯綜してるんじゃないかな」

('A`)「もみの木ねぇ…」

164 名前:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 22:26:25 ID:WmMbEBsI0
なんという絶倫
これは支援!

165 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:26:47 ID:yoNxKQgo0

(´・ω・`)「でも、サンタクロースがニコラス一人だけだとしたら、確かに他のイベントは無いかもね」
 _
( ゚∀゚)「サンタクロース?」

(´・ω・`)「ニコラスってのは、サンタクロースの……別名?元の名前?ニコラスって聖人が、サンタクロースの元…とでもいうのかな」
 _
( ゚∀゚)「……サンタってほんとにいたんだ」

ジョルジュの漏らした言葉に顔をこわばらせる三人。

('A`;)「じょ、ジョルジュ?」

川 ;゚ -゚)「おい、ジョルジュ?」

(;´・ω・`)「あれ?地雷踏んじゃった?もしかして」
  _
( *゚∀゚)「そっか、いたんだ」

166 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:28:47 ID:yoNxKQgo0

顔を上気させるジョルジュ。
変わりに三人の顔が青白くなる。

川 ;゚ -゚)「…ショボン、説明は任せたぞ」

('A`;)「ちゃんと説明してやれよ」

ジョルジュの言葉に慌てて席を立つドクオとクー。

(;´・ω・`)「あ、いや、二人とも、ちょっと待ってよ」
  _
(*゚∀゚)「なあなあショボン、そういことだろ?」

(;´・ω・`)「い、いやそうというか違うというか…」

('A`)「じゃ、おれは調査を続けるから」

川 ゚ -゚)「私はブーンに頼まれた薬の在庫作りがあるから。後は任せたぞ。ショボン」

そそくさと部屋を出て行く二人。

(;´・ω・`)「いやいやいやいや二人とも?」
  _
(*゚∀゚)「そっかぁ。サンタクロースってほんとにいたんだな。いや、もちろん空飛ぶそりとかもう信じてないけどよ。そっかぁ。いるんだ。そうなんだよな、な、ショボン。そういうことだろ?ちゃんと教えろよショボン。な、な」

(´・ω・`)「どうしよう……これ」

部屋を出た二人を恨めしげに見つつ、頭を抱えるショボンだった。

.

167 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:31:28 ID:yoNxKQgo0

26層主街区
メインストリートの片隅にある小さなレストラン『バーボンハウス26層店』
昔のギルド『V.I.P.』の本拠地であり、今はショボンが名ばかりの店長を務めつつ、副店長であるギルメンの一人が切り盛りしていた。

(*゚ー゚)「こんにちは、フサさん」

ミ,,゚Д゚彡「こんにちは。しぃちゃん。あれ?今日は手伝いの日だっけ」

しぃが扉を開けたときは昼時もだいぶ過ぎており、店内にお客は一組しかおらず、カウンターではフサと呼ばれたウエイター姿の男がウインドウを弄っているところだった。

(*゚ー゚)「いえ、モララーさんの工房に行ってきた帰りなんですけど、ちょっと時間が出来たのでよっちゃいました」

ミ,,゚Д゚彡「そっかそっか。なんか飲む?」

(*゚ー゚)「はい。ありがとうございます」

ウインドウを消し、カウンターに座るしぃの前に湯飲みを置いて、急須から水色の液体を注ぐ。

(*゚ー゚)「これは?」

ミ,,゚Д゚彡「緑茶っぽい飲物」

(;*゚ー゚)「大丈夫ですか?この前いただいたの、凄く美味しく無かったですよ」

ミ;,,゚Д゚彡「だいじょうぶだから!それはちゃんと味見したから!」

(*゚ー゚)「『それは』?」

ミ,,゚Д゚彡「あっ」

(#゚ー゚)「…確か新作はまず自分で味見がルールですよね。あとでショボンさんに報告しておきますね」

ミ;,,゚Д゚彡「だめだから!それだけはゆるしてほしいから!」

(#゚ー゚)「……」

ミ;,,゚Д゚彡「……」

右手を振ってウインドウを出すしぃ。

ミ;,,゚Д゚彡「く、クルタ豆を使った新作スイーツでいかがでしょうか」

再度右手を振ってウインドウを消すしぃ

(*゚ー゚)「ごちそうさまです」

満面の笑顔に情けない笑顔で返すフサギコだった。

.

168 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:32:55 ID:yoNxKQgo0

(*゚ー゚)「おいしい!」

ミ*,,゚Д゚彡「それは良かった」

湯飲みのお茶を飲みつつ丸いケーキにフォークを刺すしぃ。
白く柔らかい生地の中に黒い豆が詰まっており、更に刺すと中から黄色いクリームが零れる。

(*゚ー゚)「これ、フサさんのオリジナルですよね」

ミ*,,゚Д゚彡「今度の新作会議でショボンに見てもらうつもりだから」

自分の作った物を褒められ、顔を上気させて喜ぶフサギコ。
更に切り取って、口に運ぶ。
もっちりとしたスポンジ生地と、小豆に似た味のする豆。そしてカスタードクリームと生クリームが混ざったような味のするクリームが合わさり、口の中にやわらかい甘みが広がる。

(*゚ー゚)「ほんとに美味しいです。これ、名物になりますよ!フサギコさん、凄いです!」

ミ*,,゚Д゚彡「あんまり褒められると照れちゃうから」

(A)「マスターごちそう様」

(凵j「美味しかったよ」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから!あとあの話、なんか続報出たら教えてほしいから!」

(A)「分かった」

(凵j「報酬は夕飯一食な」

挨拶をして出て行く一組の客。
フサギコはそれを確認してからドアに向かい、『準備中』の札を扉にかけて戻ってきた。

169 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:34:55 ID:yoNxKQgo0

(*゚ー゚)「情報って何かあったんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「今からショボンに送るから」

ウインドウを出したフサギコが、メールを打ち始める。

ミ,,゚Д゚彡「『18層主街区外れの豪邸にて、クリスマス絡みと思われるイベントフラグらしき現象の情報あり。現在情報集積中』…と。これでいいかな。送信」

(*゚ー゚)「クリスマスイベントですか」

ミ,,゚Д゚彡「『背教者ニコラス』以外で何か無いのか探してるから」

(*゚ー゚)「…みたいですよね。モララーさんもお客さんに聞いてました。でもなんか、ショボンさんのイメージじゃないですよね。ショボンさん、あんまり限定イベントとか興味なさそうなのに」

ミ,,゚Д゚彡「……いろいろあるから」

(*゚ー゚)「探してるアイテムとかですか?」

ミ,,゚Д゚彡「そ、そうそう。そうらしいから」

(*゚ー゚)「ふーん。あ、でもフサギコさんが聞かれたのは18層なんですよね。もしそれがクエストだったら私達も参加できるかな」

ミ,,゚Д゚彡「た、多分」

(*゚ー゚)「じゃあ連れて行ってもらえるように頑張らないとですね」

ケーキを食べ終わりお茶を飲み干すと、手を合わせてごちそうさまと言って席を立つ。

(*゚ー゚)「これからモナーさんのところで特訓なので、行ってきます」

ミ,,゚Д゚彡「いってらっしゃい」

店を飛び出していくしぃを見送ったフサギコは、再びウインドウを呼び出してメッセージを打ち始めた。

.

170 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:38:52 ID:yoNxKQgo0

( ・∀・)「いらっしゃいませ!って、なんだギコか」

同じく26層主街区。
バーボンハウスと同じくメインストリート上にはあるが、逆の方向にあるモララーの細工工房。

(,,゚Д゚)「何だとは何だゴラァ」

( ・∀・)「ちゃんと客として扱って欲しかったら、指輪の代金耳そろえて払いやがれ」

(;,,゚Д゚)「もうちょっと待ってくれ」

( ・∀・)「まったく」

それほど広くは無いが、壁に据え付けられた棚には革小物、木工小物、金属小物、硝子小物が並べられており、カップルのお客が二組ほどいる。
モララーの工房は低層にあるがこの品揃えから人気が高く、普段は下りてこない攻略組の中にも上得意が存在していた。

( ・∀・)「そんなんでクリスマスに間に合うのか?今は特訓で低層での戦闘ばかりなんだろ?」

(,,゚Д゚)「な、なんとかする」

カウンターに立つギコの前に、音を立てて置かれる小さな箱。

( ・∀・)「もってっていいぞ。金は後で良いから」

(,,゚Д゚)「いや、それは駄目だゴラァ」

( ・∀・)「なんでだよ。別にただでやろうって訳じゃないんだぜ」

(,,゚Д゚)「ちゃんと金を払った後じゃなければ真実おれの物じゃない。そんなものを貰っても、しぃは喜ばない」

(: ・∀・)「変なところでまじめだな」

(,,゚Д゚)「変じゃないぞゴラァ。指輪は預かっていてくれ」

( ・∀・)「はいはい」

カウンターの上の指輪を取り、店に備えられた倉庫のタグに放り込む。

171 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:44:05 ID:yoNxKQgo0

( ・∀・)「で?今日はどうしたよ?」

(,,゚Д゚)「ショボンにこれを持って行ってくれって頼まれたぞゴラァ」

( ・∀・)「?手紙?ショボンから?メッセージ飛ばせば良いだろうに」

ギコが差し出した巻物を受け取るモララー。
そのまま読み始めてから、ちらちらとギコの顔を見る。

(;,,゚Д゚)「何だゴラァ」

( ・∀・)「うちのギルドマスターは細かいことにも気が付くねぇ」

巻物をしまいつつ自分の右手の甲をギコに見せるモララー。

( ・∀・)「これ、なんだか分かるか?」

(,,゚Д゚)「右手」

(# ・∀・)「じゃなくて指輪だ指輪!見えてんだろう」

(,,゚Д゚)「ああ、あるな」

( ・∀・)「まったく。これはギルド全員付けてる指輪なんだよ」

(,,゚Д゚)「え?」

( ・∀・)「やっぱり気付いてなかったか。しぃは気付いて聞いてきたぞ」

(;,,゚Д゚)「アクセサリーはつけないから」

( ・∀・)「まぁいいけどよ。で、今お前達の分も作ってるところなんだけどよ、どうするよ」

(,,゚Д゚)「なにがだ?」

( ・∀・)「SAOじゃ片手に一つずつしか指輪が付けられないだろ」

(,,゚Д゚)「そうなのか!?」

(; ・∀・)「知らないのかよ」

(,,゚Д゚)「だから」

( ・∀・)「アクセサリーはつけなくても、装備に関しては知っておけ」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

172 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:44:53 ID:yoNxKQgo0

( ・∀・)「で、うちの気が利くギルドマスターさんは、ギコがしぃにあげる指輪が婚約指輪なのか、結婚指輪なのかを気にしていらっしゃるってわけ。婚約指輪なら、結婚指輪もあげるんだろ。ならギルメンの指輪は付けられなくなるかもしれないからな。それならそれで、何か他にギルドの証的な装身具を考えようかって連絡をしてきたわけだ。で、ギコの意向も聞いておけってさ。分かったか」

(,,゚Д゚)「そ、そんなことまで気にしてくれるのか?しかも入ったばかりのおれ達のことで」

(: ・∀・)「ひとつだけ忠告しておく。うちのギルドマスターを甘く見ちゃ駄目だぞ。色々と」

(;,,゚Д゚)「あ、ああ」

やる気のなさそうな表情で説明していたモララーだったが、最後にショボンについて語るときは表情が引き締まったため、その変化に釣られてギコも表情を引き締めた。
しかしモララーはすぐに表情を緩め、気だるそうに問いかける。

( ・∀・)「それで、どうする?」

(,,゚Д゚)「いや、気にしなくていいぞ。それは結婚指輪のつもりだし、右手にギルドのリングを付けても、左手は空いているし」

( ・∀・)「OK。ショボンにも伝えておく」

(;,,゚Д゚)「……」

( ・∀・)「…どうした?」

何かを思い出したかように一瞬悩むよな表情を見せたギコ。しかしそのすぐ後にあからさまに呆然とした表情をしたため、モララーも眉間に皺を寄せつつ問いかけた。

(,,゚Д゚)「おれ、モララーには指輪のオーダーしたときに結婚指輪だからって話したけど、他のやつには一言も言ってない」

(; -∀-)「あーまぁ、それがショボンってことだ(ツンにはなした事は黙っておこう)」

(;,,゚Д゚)「い、色々と気をつけるぞゴルァ」

それぞれにショボンの顔を思い出しつつ、男二人は黙り込んだ。

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173 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:49:13 ID:yoNxKQgo0
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3.こうしんの歌


西暦2023年12月 クリスマスイブ前日。


( ´∀`)「だいぶ短刀にも慣れてきたもなね」

▼・ェ・▼「キャンキャン!」

第22層草原。
朝焼けが眩しいその一画で、しぃが短刀を振るう。
そしてその後ろには指示を出す長身の男がいた。
長い三叉の矛を持っていつでも援護できるように気を張りつつも、悠然とした風体で見守っている。
その足下には青みがかった銀色の毛並みをした子犬がくるくると男の周囲を走り回っていた。

( ´∀`)「ビーグル!伏せ!」

▼・ェ・▼「くぅ〜ん」

男の声によってうずくまる子犬。

(*゚ー゚)「モナーさん!」

巨大な蛾をポリゴンに変えたしぃが駆け寄ってくる。

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

(*゚ー゚)「ビーグル君!」

飛びついてきた子犬を抱き締めながら、上気した顔で男を見るしぃ。

( ´∀`)「合格もなよ。飛ぶ敵相手に的確に短刀を当てれるようになれば、だいたいの敵への距離感が掴める様になっている筈だからもなね」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

174 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:50:47 ID:yoNxKQgo0

男の名はモナー。
牧場主で色々な動物を飼育しており、レストラン『バーボンハウス』への畜産物の供給を行っているギルドメンバーである。
そして彼は『ビーストテイマー』と呼ばれることもある。

▼・ェ・▼「ぐぅるりゅるぅるぅ〜」

突然威嚇音を鳴らす子犬。
何も無い方向を睨むが、その視線の先の空に、ポリゴンが集まり始めた。

( ´∀`)「しぃ!もう一本!」

(*゚ー゚)「はい!」

姿を現した蛾に向かって短刀を構えて走るしぃ。

子犬の名はビーグル。
子犬のような姿をしているがれっきとしたモンスターであり、しかもクラスとしてはレアに属している。
モナーが呼ばれる『ビーストテイマー』とはこういったモンスターを使役しているプレイヤーを指す言葉であり、ほぼ運とされる使役の条件をクリアした者に対する、その幸運をやっかみつつも賞賛した呼び名である。

175 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:52:53 ID:yoNxKQgo0

ちなみにビーグルは分類的には狼種の『シルブリュールフ』という名なのだが、モナーによって『ビーグル』という名が付けられているためか、ギルメン全員に子犬扱いされていた。
しかしモンスターであるビーグルは特殊能力をいくつか有しており、今行った敵の察知などは最たるものであるが、それ以外にもランダムでモナーへのヒーリングや敵への麻痺攻撃などを戦闘中に行うことがあった。

モナーとビーグルの見守る先で短刀を閃かせるしぃ。
その安定した戦いぶりに頬を綻ばせていると、メッセージの到着を知らせるチャイムがモナーの耳にだけ届く。

( ´∀`)「誰もなね〜」

右手を振ってウインドウを出すモナー。

( ´∀`)「もなもな…」

しぃに気を配りつつメッセージを読む。

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

( ´∀`)「ギコの方も仕上がったみたいモナよ」

しぃが再び巨大蛾をポリゴンに変えると同時に、モナーが撤収を告げた。

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176 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:54:05 ID:yoNxKQgo0

第35層迷いの森

早朝の朝靄が白く染める森の中を歩く三人の男。

(,,゚Д゚)「よし、次!」

先頭を歩くのはギコ。
片手剣を構えて周囲に気を配りつつ次のエリアに向かう。

('A`)「あんまり気負いすぎるなよ〜」

その後ろにドクオ。
片手剣を持ち備えてはいるが、どこかのんびりとしている。

( ゚∋゚)「……」

そのドクオの横を歩く大男。
名はクックル。
その高い身長よりも更に長い鍬を肩に担ぎ、悠然と歩く。

('A`)「そうだな。もともとスキルレベルは高かったから、後は戦い方だけだったから」

( ゚∋゚)「………」

('A`)「んなことはねぇって。あいつの努力の賜物だよ」

( ゚∋゚)「…」

('A`)「そうだなぁ。ま、ある程度実践積んだらクックルの農場の手伝いももっと行ける様になるだろうから、適当に栽培スキルでも覚えさせてやってくれよ」

( ゚∋゚)「………」

('A`)「そう言うなって」

あまりにも声が小さくドクオにしか聞こえていないがちゃんと喋っているようだ。
決してドクオが独りで喋っている訳ではないので誤解してはいけない。

177 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:56:21 ID:yoNxKQgo0

クックルはモナーの牧場の隣で農場を拓いており、レストランで使う野菜は勿論のこと、POTなどに使用する薬草なども栽培している。
ドクオやジョルジュといった戦闘職のみのギルメンは牧場や農場の手伝いに行くこともあるため、その仲間にギコが加わるのは好ましいことだった。
もちろん栽培スキルや飼育スキルを持たない者がやれることといえば、物の運搬や雑用だけなのだが。

三人が隣のエリアに移ると、同時にモンスターがポップした。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

索敵スキルで感知したギコは小さく気合を入れて、構えながら様子を伺う。

('A`)「よし、ちゃんと突進しなくなったな」

その後ろでギコよりも先に二個のカーソルを確認するドクオ。

( ゚∋゚)「……」

('A`)「分かってるって」

遅れてギコも確認し、まずは自分に近いモンスターに狙いを定めた。

(,,゚Д゚)「ドクオ、クックル、行くぞ」

('A`)「おう」

( ゚∋゚)「 」

駆け出す三人。

手前にいた猿人がギコに気付く前に、ギコの片手剣が胴体を切る。
防御も何もないその一撃で大きくHPを減らす猿人。
反撃で曲刀を振り上げた猿人を見て、バックステップで距離を取る。
振り下ろされた曲刀を確認してからの追撃。
今度は刀身を赤く光らせ、剣技のサポートを受けて素早く間を詰めて流れるような三連撃。

(,,゚Д゚)「スイッチ!」

178 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 22:58:53 ID:yoNxKQgo0

硬直を起こしたギコをサポートするようにドクオが距離を詰め、重い一撃で猿人をノックバックさせた。

クックルは二人が手前の猿人の相手をしている隙に横を回った。後ろにいるもう一匹の猿人に剣技を使わない一撃を浴びせ、自分を狙わせてから距離を取る。
守りを主とした攻撃により自分を狙わせて仲間を守り、尚且つ少しずつ猿人のHPを削っていく。

手前の猿人が曲刀を青く光らせて剣技を発動させる。
それに合わせてドクオも剣技を発動させた。

('A`)「はっ!」

出足はドクオの方が早く、猿人の持つ曲刀の柄を狙う。
袈裟懸けに振り下ろされた曲刀はドクオの剣技によって相殺され、衝撃でうしろにあとずさる。

(,,゚Д゚)「スイッチ!」

姿勢を崩したドクオがそのまま横にずれるとギコが流れるようにその場に到着し、煌かせた剣によって猿人に三連撃を与えた。
ポリゴンと化す猿人には目もくれず、クックルが戦っている猿人に目を向けるギコ。
剣技後の硬直が終わると同時に剣を構えつつ、クックルの動きと猿人の動きを観察する。

(,,゚Д゚)「スイッチ!」

絶妙なタイミングでギコが叫び、走り出す。

('A`)「…特訓は終了かな」

クックルと共に猿人を追い詰めるギコ。
それを見つつドクオはウインドウを開き、メールを打ち始めた。

.

179 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 23:00:23 ID:yoNxKQgo0

第40層ギルド『V.I.P』本部(バーボンハウス二階)

(´・ω・`)
( ^ω^)
ξ゚听)ξ
('A`)
川 ゚ -゚)
 _
( ゚∀゚)

( ´_ゝ`)
(´<_` )

( ´∀`)
▼・ェ・▼

( ゚∋゚)

( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡

(*゚ー゚)
(,,゚Д゚)


夕食を済まし、バーボンハウスの二階に集合したギルメンたち。

(´・ω・`)「みんなお疲れ様」

180 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 23:01:35 ID:yoNxKQgo0

ショボンの言葉にそれぞれに返事をする。

(´・ω・`)「定例会じゃないけど集まってもらったのは、二つ報告があるからです」

全員がショボンに注目し、その言葉を待つ。

(´・ω・`)「まずはギコとしぃ、起立」

(,,゚Д゚)「おう!」

(*゚ー゚)「はい!」

(´・ω・`)「もう皆知ってると思うけど、二人が新たにギルドに入りました。拍手!」

「おー!」
誰ともなしに歓声が上がり、拍手が鳴る。

(´・ω・`)「挨拶〜」

(,,゚Д゚)「よろしくだゴラァ!」

(*゚ー゚)「よろしくお願いします」

181 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 23:02:36 ID:yoNxKQgo0

(´・ω・`)「ギコは戦闘職としてドクオとジョルジュの下についてクエストや採取関係をしつつモナーとクックルのサポートを中心に。しぃは料理スキルと裁縫スキルを活かしてバーボンハウスとツンの手伝いをしてもらって、ゆくゆくは店長を目指してもらう予定です。バーボンハウスに関しては、フサとしぃと僕で回しつつクーに時々サポートで入ってもらう形で当分行くので、フサ、しぃ、クー、後でまたローテーションや担当に関しては相談します」

ミ,,゚Д゚彡「了解だから」

(*゚ー゚)「はい」

川 ゚ -゚)「分かった」

('A`)「こっちはどうすればよい?」

(´・ω・`)「…どうしよっか」
  _
(; ゚∀゚)「おいこら」

( ´∀`)「手伝いがほしいときは三人にメッセージを送るモナよ」

▼・ェ・▼「キャンキャン!」

(´・ω・`)「クックルもそれでよいかな?」

( ゚∋゚)「  」
  _
(; ゚∀゚)「おいおいクックル、そりゃないって」

('A`)「それはないわ〜」

(;,,゚Д゚)(聞こえない…)

(;*゚ー゚)(聞こえない…でも皆笑ってる)

(;,,゚Д゚)(もっと仲良くなれば聞こえるのか…)

(;*゚ー゚)(もっとがんばろう)

182 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 23:03:40 ID:yoNxKQgo0

(´・ω・`)「じゃあそこら辺は五人で話して」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ごめんごめん、六人で話し合ってだね」

▼*・ェ・*▼「きゃん!」

(´・ω・`)「さて、もう一つですが」

再び静まり返る室内。

(´・ω・`)「明日、未知のクエストに挑戦します」

どよめく室内。
  _
(; ゚∀゚)「お、おいショボン」

(; ´_ゝ`)「まさか『背教者ニコラス』か!?」

(; ・∀・)「違うよな?あれは話を聞くだけでもやばいぞ」

(´<_` ;)「どちらにせよ未知のクエストをやるなんて、お前らしくないが」

(;´・ω・`)「もちろんあんなのはやらないよ」

部屋の全員が息をつく。

183 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 23:04:58 ID:yoNxKQgo0

(; ^ω^)「じゃあどんなのだお?」

ξ;゚听)ξ「あんたのことだから、少しは情報集めてあるんでしょ」

(´・ω・`)「多少はね」

川 ゚ -゚)「情報を集めてたクリスマス限定クエストか?」

(´・ω・`)「うん」

もう一度どよめきが起こり、そして静かになってショボンの言葉を待つ。

(´・ω・`)「スタート位置は18層主街区外れ、クエストボスは無しのお使いクエスト」

概要を聞いて安心の笑いを漏らすギルメン達。

(´・ω・`)「でも結構シビアみたいだから、本気出していくよ」

歓声を上げるメンバー。

(´・ω・`)「今回チャレンジするのはクリスマス限定クエストで、クエスト名は『聖なる夜のキャロル』!目標クエストクリアアイテムは、ギルドアイテム『サンタの袋』!頑張ろう!」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ -゚)
( ´_ゝ`)( ´∀`)▼・ェ・▼
( ・∀・)ミ,,゚Д゚彡( ゚∋゚)
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)

          「おー!!」

                ('A`)(´<_` )

184 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/02/24(日) 23:07:07 ID:yoNxKQgo0
支援ありがとうございます。

ってことで、本日の投下終了します。

次の投下は未定ですが、とりあえず3月14日までにはこの話だけでも終わらせる予定です。

ではでは。

185 名前:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 23:08:38 ID:WmMbEBsI0
尾も白い

186 名前:名も無きAAのようです:2013/02/25(月) 00:52:13 ID:.TJxhWM.0
乙!

187 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:09:12 ID:9HKi61YI0
うをーーー!

ブン芸さんにまとめてもらえました!

感激です(´;ω;`)

ありがとうございます。

ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/aincrad.htm

ってことで、ちょっと浮かれつつ誤字脱字チェックしながら投下していきます。

188 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:11:03 ID:9HKi61YI0
4、せいなるよるの歌


西暦2023年12月 クリスマスイブ。

PM3:45

18層主街区外れ。
森に囲まれた街の外れにある大きな敷地の中にぽつんと立つ屋敷。
いままでは固く閉ざされていた門の錠前が外されており、まだ開いてはいないが、数組のパーティーが周りをけん制しつつ中を覗いている。

(,,゚Д゚)「四時頃にスタートなのかゴラァ」

('A`)「みたいだな」

(*゚ー゚)「『ゆうやみせまる かげぼうし』でしたっけ。クエストを告げる歌の文句って。今の時期はそれくらいの時間に暗くなる設定ですよね」

しぃがウインドウを開き、ショボンから貰ったメッセージを見る。

ξ゚听)ξ「今も微かに聞こえてきてるこれでしょ。クリスマスっぽいといえば、クリスマスっぽいのかな」

川 ゚ -゚)「少し賛美歌のような曲調だな」
 _
( ゚∀゚)「とりあえずおれ達だけで進めていいんだろ」

('A`)「ああ。他の面子は遅れて登場だからな。とりあえず4時になったら、並んでた他のパーティーに続いてフラグ立てに行こうぜ」

VIPのメンバーは6人。戦闘職の三人と、店を持たない三人である。

(´・ω・`)『先発は6人で。フラグ立てと設定よろしく。18層だしお使いクエストみたいだから大丈夫だと思うけど、もし迷宮や他の町に行くとかで戦闘の可能性があるときは一回連絡入れてね。街の中の圏内イベントはサクサク進めちゃって。他のメンバーは自分の仕事が終わり次第随時合流ってことで。情報の取りまとめはクーよろしく。多分僕とフサが一番遅くなると思うけど、気にせず進めちゃってよいから』

昼過ぎにショボンから送られた一斉送信のメールを読むクー。

('A`)「18層ならそれほど難しくもないだろうしな」
 _
( ゚∀゚)「戦闘も無いだろうし、他のやつらが来る前に終わらせちまおうぜ」

川 ゚ -゚)「そううまく進めばよいがな」

ξ゚听)ξ「そろそろ始まるみたいよ。門が少しずつ開いてる」

少しずつ開かれる門。
どよめきが牽制しあっていた者達から起こり、人が一人通れるほどの広さに開くと、最初に並んでいた男達が我先ににと中に入っていく。

('A`)「おれ達も行こうぜ」

それが、クリスマスイブの始まりだった。

.

189 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:13:15 ID:9HKi61YI0

PM4:40

クエストスタート地『郊外に一人住む孤独な老人 エベネ・ルージ』邸宅の門内敷地の片隅で車座になってミーティングをする六人。

川 ゚ -゚)「まずは整理しよう。クエストフラグはこの屋敷の主人、『エベネ・ルージ』氏。クエスト内容はお使いだな。依頼は四つ」


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190 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:14:46 ID:9HKi61YI0

クエストネーム:『聖なる夜のキャロル』
クエスト開始:18層 外れにあるエベネ・ルージ邸宅で老主人エベネ氏に話しかけることでスタート。
エベネ氏より渡されたイベントコルや物品を渡すお使いイベント。
制限時間:本日中

依頼内容
18層:主街区逆側外れ『クラリ』家の病気の子供にヒールクリスタルを使ってパラメーターを回復させる
18層:主街区で黒パンを買い、隣の村の路上に寝ているNPC8人にそのパンを渡す。
18層:主街区隣の少迷宮『夕闇の墓地』にてジェコブの墓を探し、花を供える。
18層:主街区のどこかにいる『マレイ氏』を探し出し、エベネ氏からの手紙を渡す。

.

191 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:18:04 ID:9HKi61YI0

川 ゚ -゚)「一つ一つはたいしたことないが、さすがに四つは辛いな」

('A`)「順番も考えてやらないとかなり無駄足を踏みそうな気配もあるが…」
 _
( ゚∀゚)「とにかく上からやってみようぜ」

ξ゚听)ξ「そうね。考えていてもしょうがないし」

(*゚ー゚)「……」

(,,゚Д゚)「どうかしたのか。しぃ」

(*゚ー゚)「うん……ううん。なんでもない」

川 ゚ -゚)「ショボンから返信が来た。まずは上二つを進めてほしいそうだ。割り振りはどうする?全員で動くか?」
 _
( ゚∀゚)「ここから次の村は結構近いし、レベル的にも問題ないから分かれて大丈夫だろ」

('A`)「そうだな。おれとジョルジュとギコで隣の町に行って来るよ」

(,,゚Д゚)「おう!」

川 ゚ -゚)「それが良いかな。私たちは『マレイ氏』の情報を集めつつクラリさんの家を探して少年を助けてこよう」

ξ゚听)ξ「おっけい。ヒールクリスタルはさっき預かった袋の中?」

川 ゚ -゚)「ああ、そうだ。ギルドタブに入れておく。黒パンを買うときもこの中のコルを使うようにしてくれ」

('A`)「りょーかい」

192 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:19:42 ID:9HKi61YI0

ξ゚听)ξ「じゃ行こうかクー、しぃ」

(*゚ー゚)「あ、あの」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

(*゚ー゚)「ちょっと気になることがあるので、屋敷を調査したいです」

(;,,゚Д゚)「お、おい、しぃ」

川 ゚ -゚)「そうか。わかった。じゃあしぃは屋敷の調査をしてくれ」

(,,゚Д゚)「え?」

ξ゚听)ξ「何かあったらすぐ連絡。私たちは終わったらここに戻ってくるから、それまではメッセージで連絡取り合う前に動かないようにしてね」

(*゚ー゚)「わかりました」

(,,゚Д゚)「個人行動していいのかゴラァ」

('A`)「圏内だからな。ダンジョンと違って犯罪防止コードに守られて身の危険は無いはずだ」
 _
( ゚∀゚)「なんでもかんでも団体行動ってわけじゃないんだぞ」

川 ゚ -゚)「クエスト実行時は、ちょっとしたことが近道や攻略に繋がるからな。もっと屋敷の中を探せばマレイ氏の居所のヒントがあるかもしれん」

ξ゚听)ξ「話は終了!さ、いこいこ!頑張って終わらせよう!」
 _
( ゚∀゚)川 ゚ -゚)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「おー!」('A`)


.

193 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:22:18 ID:9HKi61YI0

PM7:30

(´・ω・`)「で、ゲットしたのがこの『サンタのズタ袋』ってわけ?」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚听)ξ「ちゃんと依頼はクリアしたのよ」

(´・ω・`)「これだけ…かぁ。事前情報のアイテムと、効果も違ってるんだよね」

(´<_` )「どんな風に違うんだ?」

(´・ω・`)「事前だと、『サンタの袋』自体にはギルドタブの容量をメンバー数に応じて広げる機能があって、さらに貰って時にはランダムでアイテムが中にいくつか入っているって話だったんだよ」

( ´∀`)「それはお得もなね」

( ´_ゝ`)「で?それは?」

(´・ω・`)「使用してから三日間だけ容量拡張だって。しかも中には何も入ってない」

('A`)「全部お使い終わらせて、エベネ氏に会って、話をした。でも、くれたのはそれだけだったぜ」
 _
( ゚∀゚)「クリア報酬のアイテム名が違ってただけじゃないのか?」

.

194 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:23:24 ID:9HKi61YI0

川 ゚ -゚)「周辺のNPCから貰う情報があやふやだったか」

ギルドメンバーが全員揃い、敷地内の芝生の上で状況確認をしていた。
既に日は落ち暗闇が周囲を支配していたが、屋敷から零れるひかりが敷地を照らしており、充分にメンバーの顔を見つつミーティングが出来ている。

(´・ω・`)「そうなのかなぁ」

ウインドウを出し、一つのメッセージを表示させるショボン。

( ・∀・)「?」

可視状態にして少し自分から離すと、隣に座っていたモララーが覗き込んだ。

( ・∀・)「昼に送ってきたやつだよな。それ」

(´・ω・`)「ああ、ここから流れ出ている歌の歌詞らしい。聞こえてきたのを起こしたから、多少間違いがあるかもしれないって話だけどね」



.

195 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:24:28 ID:9HKi61YI0

せいなるよるに みるゆめは
きぼうのひかりに みちている
ようせいつむぐ みちしるべ
ひかれるわたし ゆめをみる

ゆうやみせまる かげぼうし
あなたがくるのを まっている
おもいのたけを はなせたら
みっつのねがい ときはなつ

わたしのねがい かなうとき
おもいのこころ わたすとき
せいなるよるに ゆめわたす
ようせいみたび やってくる

ようせいがもつ そのこころ
あなたのこころ ひろげよう
こころのなかに もつゆめは
あすのひかりに なるでしょう

せいなるよるに みるゆめは
きぼうのひかりに みちている
あなたのゆめを かなえるは
こころのひかりを しるひとぞ

.

196 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:26:07 ID:9HKi61YI0

( ´_ゝ`)「今も流れてるこれだろ?」

(´<_` )「賛美歌とか言われたら信じそうな曲調だよな。声小さすぎでなに歌ってんのか聞こえないけど」

( ^ω^)「この声をよく聞き取れたおね」

( ・∀・)「で?これが?」

(´・ω・`)「今回のクエストのヒントのはずなんだけどね」

何人かがウインドウを出し、同じようにメッセージを読み始め、他の面子はそれを覗き込んで放し始めた。

▼*・ェ・*▼「きゃん!」

(*´∀`)「ビーグル!待つもなよ!」

(*゚∋゚)「  」

芝生を走り始めたビーグル。それを追ってモナーが腰を上げ、更に後ろをクックルが続く。

('A`)「にげたな」

( ´_ゝ`)「にげたな」

(,,゚Д゚)「いいのかゴラァ」

同じように腰を上げようとした三人だったが、

(´・ω・`)「逃げるの出遅れたんだから、ちゃんと考えるように」

ショボンの一言で座りなおした。

( ´_ゝ`)(,,゚Д゚)「はい」('A`)

.

197 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:27:25 ID:9HKi61YI0

(´<_` )「しかしショボンが考えて分からないのに、おれ達が考えて分かるとは思えんが」

川 ゚ -゚)「突拍子もないことは普段ものを考えてないような奴の方が出てくる可能性があるからな。期待するぞ、兄者、ギコ、ジョルジュ」

(;´_ゝ`)「うわ…ひどい言われよう」
 _
(;゚∀゚)「ひでえなおい」

(,,゚Д゚)「頑張るぞゴラァ」

ξ;゚听)ξ「一人は普通に受けてるし」

(´<_` )「あれ?しぃは?ギコネタならいつもここで彼女の突っ込みという名の追い討ちが入るのに」

川 ゚ -゚)「屋敷を調べてる。何か気になることがあるそうだ」

( ^ω^)「さっきツンと見に行ったら、浴槽の前でじっと何かを見ていたからそっとしておいたお」

ξ゚听)ξ「あのこも結構不思議ちゃんよね」

.

198 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:29:41 ID:9HKi61YI0

( ´_ゝ`)「……おまえがいうな」

(´<_` )「……おまえがいうか」

( ・∀・)「いやまて二人とも。別にツンは不思議ちゃんじゃない。傍若無人なだけだ」

ξ#゚听)ξ「よし分かったそこの三人。決闘ならいつでも受けるぞ。方法はどれにする、おい」

( ^ω^)「まあまあ」

(,,゚Д゚)「ふさはどうしたんだゴラァ」

(´・ω・`)「両方の店の片づけをしてもらってる。今日は忙しかったよ。クリスマスメニューも作ったしね」

川 ゚ -゚)「気になるといえば、ここだな『みっつのねがい』。実際は四件のお使いがあったわけだし。……あの四つのうち、実は三つだけやればいいということか?」

(´<_` )「あとはクエストの始まる時間帯と、もらえるアイテムのことだよな。この『ようせいがもつこのこころ』が袋で、『あなたのこころひろげよう』が容量アップってことか」

( ・∀・)「『ようせいみたびあいにくる』ってのはなんだ?おれ達が三回会いに行けば良いのか?」

(;´・ω・`)「う〜ん」

.

199 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:31:11 ID:9HKi61YI0

川 ゚ -゚)「他にもクエストをやってるパーティーがいただろ?そいつらはどうだったんだ」

(´・ω・`)「さっき連絡したら、アルゴさんの所にもズタ袋ゲットの話しか来ていないって。向こうも調査中らしい。なにか…決定的に何か足りていないような…」

( ´∀`)「ところでジョルジュはなんでそんな格好もな?」
 _
(*゚∀゚)「おっ」

ξ゚听)ξ「あー」

川 ゚ -゚)「モナー…」

さんざん走り回った二人と一匹が戻ってきて芝生に座り、たまたまジョルジュのそばに座ったモナーが何の気なしになく口にした

(;´・ω・`)「言っちゃった」

( ´∀`)「もなもな?」
 _
(*゚∀゚)「似合うだろ!」

.

200 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:32:13 ID:9HKi61YI0

全身をサンタの格好で決めたジョルジュ。
誰もが突っ込みたかったが、突っ込んだが最後調子に乗ることは目に見えていたので突っ込まなかったその姿。

( ´∀`)「サンタさんもな」
 _
(*゚∀゚)「なっ!なっ!実在すると知ったからにはやっぱりこの時期はこの格好をするべき他と思うわけさ、おれは」

('A`;)「ショボン?」

川;゚ -゚)「いったいどんな説明をしたんだおまえは」

(;´-ω-`)「ごめん」

一人盛り上がるジョルジュとそれを見守るギルメン。モナーだけは笑顔で喋っているが、他の面子はあからさまにひいている。
 _
(*゚∀゚)「みんなこの格好良さが分からないんだよ。せっかく外に出てた露天で買ったのに、誰も何も言わないし」

( ´∀`)「妖精さんも来るもな」

(´・ω・`)「え?」

.

201 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:33:32 ID:9HKi61YI0

川 ゚ -゚)「モナー。どういうことだ?」

( ´∀`)「サンタさんがおもちゃを作ったり配達をしたりするときにお手伝いをするのは妖精さんもなよ。だからサンタさんの格好をしていれば、妖精さんが寄って来るかもしれないもな。あと、サンタさんの住む村も妖精の世界にあるという話もあるもなね」

(´・ω・`)「サンタが…ようせい…」

考え込む頭脳班をよそにまだ喋り続けるジョルジュ。
さすがのモナーも顔をこわばらせ始めた頃、ギルメンたちの名前を呼ぶ声が聞こえた。

(;*゚ー゚)「みな…さん……、しょぼん……さん」

息絶え絶えに駆け寄ってくるしぃ。
よほど必死に走ったのか、アバターはしていないはずの呼吸を大きくして、肩を上下させている。

(;,,゚Д゚)「しぃ!」

ξ;゚听)ξ「大丈夫?どうしたの急いで」

川 ゚ -゚)「何か見つけたのか?」

(;*゚ー゚)「歌が、変わってます」

(´・ω・`)「え?」

(*゚ー゚)「流れてる歌が、前と歌詞が変わってるんです!」


.

202 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:35:17 ID:9HKi61YI0

PM8:20

(*゚ー゚)「クエストが始まったときに、曲は一緒だし歌っている人の声も同じなんですが、なんとなく歌詞が違うような気がしたので、屋敷の中で聞いていたんです」

しぃから送られる一斉メッセージ。
各自が開き、読み始める。

( ・∀・)「なんだこりゃ」

(;^ω^)「ぜんぜん違うお」

川 ゚ -゚)「よく気付いたな」

(,,゚Д゚)「すごいぞしぃ」

(*゚ー゚)「えへへ」

ξ゚听)ξ「屋敷の風呂でずっと一つの場所を見ていたのは」

(;*゚ー゚)「あ、みられちゃいました。あそこが一番よく聞こえたのでずっとあそこにいたんです」


.

203 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:36:37 ID:9HKi61YI0

せいなるよるに みるゆめは
あすのひかりに みちている
ようせいつむぐ みちしるべ
ひかれるわたし ゆめをみる

ひとりのようせい かこをみる
かがやくゆめを みたかこを
あなたはわたし わたしはあなた
かがみのまえで なみだする

ひとりのようせい いまをしる
かがやくゆめを みるゆめを
あなたはあなた ひとりだけ
じぶんのあしで ゆめをみる

ひとりのようせい あすをみる
ゆめみるあすを ゆめとしる
あなたがいない あのゆめを
かえるだれかを まっている

せいなるよるに みるゆめは
きぼうのひかりに みちている
あなたのゆめを かなえるは
きぼうのすずを ならすひと
こころのひかりを しるひとぞ

.

204 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:39:17 ID:9HKi61YI0

(*゚ー゚)「あと、思ったんですけど、この歌もこのクエストも、『クリスマス・キャロル』によく似てませんか」

ξ゚听)ξ「ああ!」

川 ゚ -゚)「なるほど」

( ´∀`)「似てるもなね」

( ゚∋゚)「   」

( ・∀・)「そういや、そうだな」

(´・ω・`)「そうだね。よく似ている」

( ^ω^)「なんだお?それ」

( ´_ゝ`)「クリスマスキャロル?」

(´<_` )「家の本棚にあっただろうが」
 _
( ゚∀゚)「歌のことだろ?」

('A`)「聞いた覚えはあるけどよくはしらねえ」

.

205 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:40:48 ID:9HKi61YI0

(´・ω・`)「『クリスマス・キャロル』自体はクリスマスの歌、賛美歌とかそういった歌や曲をさすんだけど、僕らが言っているのは物語のことなんだ」

(,,゚Д゚)「ものがたり?」

(´・ω・`)「ああ。クリスマスの奇跡…とでもいうのかな。簡単に話すと、強欲で他人のことなど何も考えないで生きてきた老人が、クリスマスイブに現れた三人の妖精と一人の幽霊によって人の心を取り戻し、その後の人生を本当に豊かなものとした……ていう感じの話」
 _
(*゚∀゚)「へー。おもしろいな。で、サンタはどこに出て来るんだ?」

(;´・ω・`)「いや、出てこないけどね」
 _
(#゚∀゚)「クリスマスの話なのに?」

(;´・ω・`)「いや、うん。クリスマスの話といえば話だけどね」

川 ゚ -゚)「だが、だとしても」

( ^ω^)「それが関係してるのかお?やってることは、さっきやった依頼と同じなんだおね?」

(´・ω・`)「思いついたことはある。制限時間まであと少しだ。まずは中に入ろう」


.

206 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:41:58 ID:9HKi61YI0

PM8:40

木製の玄関を大きく開けると、扉に付けられた鈴が鳴った。
老人はロッキングチェアに座っており、そばの暖炉では赤々と炎が燃えている。
ギルド全員が中に入ると扉が自動的に閉まり、もう一度鈴が鳴る。
すると部屋の奥に座る老人がこちらを見た。

(´・ω・`)「ジョルジュ。彼に話しかけてくれ」
 _
( ゚∀゚)「わかった」

老人に近寄るサンタの衣装を着たジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「おう、爺さん」

エベネ「おまえさんは……?」
 _
( ゚∀゚)「おれは」

エベネ「わしはわしの人生を後悔などしておらん。負け犬にも興味は無い。だが、もしそれで傷ついた者がいるというのなら、償いはしてやろう」
 _
( ゚∀゚)「……じじいのツンデレ?」

.

207 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:43:02 ID:9HKi61YI0

(´<_`;)「ジョルジュ…」

ジョルジュがエベネに話しかけると同時に周囲を観察し始めるショボン。

川 ゚ -゚)「どうしたショボン?」

(;´・ω・`)「あれ?ない?」

( ´_ゝ`)「あの武器いいなぁ。貰えないかなぁ。多分鉱石に戻したらサクラルストーンだと思うんだよな」

(,,゚Д゚)「あの盾もよさげだぞゴラァ」

( ´_ゝ`)「あれは木だからいらない」

( ´∀`)「何か探し物もな?」

キョロキョロと周囲を見るショボンに釣られて同じように周囲を見回す。

ξ゚听)ξ「広いし高そうなものばかりだけど、品はないはね。ザ・成金っていうところかしら」

( ^ω^)「あれ?あの暖炉のそばの置物ってカルム鉱石じゃないかお?」

(´<_`;)「なに?あの希少石か!?」

(;´・ω・`)「鏡が無い…だと」

.

208 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:44:24 ID:9HKi61YI0

エベネ「さあ、この紙を受け取るがいい。そこにやるべきことが書いてある。必要なものはこの袋の中だ」
 _
( ゚∀゚)「ショボン、フラグ立ったぞ!貰えば良いのか?」

(´・ω・`)「だめ!鏡を見せないと!」

('A`)「鏡なんか無いぞ。この部屋」

(;´・ω・`)「おかしい。さっき屋敷の中を見たときに、自分の姿を見たような気がしたんだけど」

( ゚∋゚)「  」

(;´・ω・`)「そうかもしれない。もう暗かったから、窓ガラスに映る自分を見て……。ツン!クー!しぃ!誰か!鏡持ってない?!」

ショボンの問い掛けに顔を見合わせるギルメンたち。
しかし誰も鏡は持っておらず、手を振ったり顔を横に振ったりしている。

(;´・ω・`)「モララー!」

( ・∀・)「なんだよ」

(;´・ω・`)「今持ってる工具と材料で鏡作れないかな?」

( ・∀・)「ちょっとまて」

.

209 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:45:30 ID:9HKi61YI0

ウインドウを出して持ち物を確認するモララー。
そしていくつかの欄をタップして、目の前に工具と数個の材料を出現させる。

( ・∀・)「手鏡なら出来るな」

(´・ω・`)「作ってくれ!」

( ・∀・)「了解」

数種の材料を迷いの無い手さばきでタップすると全てがまとまった一つの塊になった。そして右手に持った工具でリズミカルに材料を数回叩く。すると澄んだ金属音が最後に一回響き、光り輝いたかと思うと手鏡が現れた。

( ・∀・)「出来たぞ」

(´・ω・`)「ジョルジュ!これでエベネさんの顔を映すんだ」
 _
( ゚∀゚)「わかった」

受け取ったジョルジュが鏡を差し出すと、エベネが覗き込む。

エベネ「これが……わしの顔か……。なんと醜い。自分のことしか考えん、しわくちゃで、汚い顔だ…。ああ……なんという……」
 _
( ゚∀゚)「おっ!進んだぞショボン!どうすればいい!」

(´・ω・`)「服脱いで!」
 _
(*゚∀゚)「えっ」

.

210 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:47:39 ID:9HKi61YI0

(´・ω・`)「妖精が三人必要だから、服を切り替えるんだよ」
 _
( ゚∀゚)「わかった……あれ?」

ウインドウを出して操作するジョルジュだが、何度タップしても着替えのメニューが反応しない。

(´・ω・`)「どうした?」
 _
(;゚∀゚)「反応しない。着替えのメニューが何一つ動かねえぞ」

(;´・ω・`)「服の固定!?」

着替えのために出していた自分のウインドウを操作しようとするショボン。しかし自分のウインドウは反応をした。

(´・ω・`)「僕は大丈夫だ。みんなはどう?」

全員が確認すると、動かせないのはジョルジュだけだった。

(,,゚Д゚)「こんなクエストもあるんだなゴルァ」

川 ゚ -゚)「お祭りクエストだが、結構シビアのようだ」
 _
(;゚∀゚)「おい、ショボン、どうすりゃあいいんだ?」

.

211 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:49:23 ID:9HKi61YI0

(;´・ω・`)「………フラグを立て終わるかクエストキャンセルをしないと扉は開かないだろうし……!ツン!」

ξ゚听)ξ「そうくると思って持ち物を確認中。二着できればいいのよね………なんとかできそう。ちょっと待って」

(´・ω・`)「頼む」

ウインドウを次々にタップして布や携帯用ソーイングセットを実体化させていくツン。

ξ゚听)ξ「しぃ、あなたも針を準備しておいて」

(*゚ー゚)「はい!」

しぃが裁縫道具を出しているうちにもツンのタップは止まらず、足下には白色の反物と白いファーが山積になる。

(´<_` )「白い布しかないようだが」

ξ゚听)ξ「裁縫スキルの派生スキルにはね、こんなのもあるのよ」

白い反物を左手に持つ。そしてそれに重ねるように右手に持った筆のようなものを一振りすると、白い反物が赤くなった。

( ´∀`)「すごいもな!」

▼*・ェ・▼「っきゃん!」

(´<_` )「ほぉ。凄いな。防具もこれくらいの色変えとかあればいいのに」

ξ゚听)ξ「しぃ、これと足下のファーを使ってサンタの三角帽子を作って!今ジョルジュがかぶってるみたいなやつ!二つね!」

(*゚ー゚)「はい!」

.

212 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:50:59 ID:9HKi61YI0

そこからのツンは早かった。
こちらもモララーと同じく迷うことなく間違えることなく部材をタップしていき、あっという間に上下組のサンタ衣装を作ってしまう。
そしてそれに続くようにしぃも帽子を完成させた。

(;*゚ー゚)「ツンさん、早すぎですよ」

ξ゚听)ξ「慣れよ慣れ。ショボン、誰が着るの?」

(´・ω・`)「一着は僕が着るよ。もう一着はドクオかギコ…。ギコ、着ておいてくれ」

(,,゚Д゚)「お、おう!」

ツンから渡された衣装に着替えるショボンとギコ。
着替えといっても受け取った服を自分のアイテムにしてからコマンド操作をするだけなのだが、一度はインナー姿になるため普段なら躊躇する場面だが、今日はそんなことをいっている余裕も無いため気にしないで着替え終わった。

川*゚ -゚)「なるほど」

ξ;゚听)ξ「え?なにが?」

.

213 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:52:26 ID:9HKi61YI0

(´・ω・`)「エベネさん、後悔していますね?」

着替えると同時にエベネに離しかけるショボン。
ただ泣いていたエベネが泣くのを止め、ゆっくりとショボンを見る。

エベネ「……はい」

(´・ω・`)「では、あなた自身の手で後悔を消しましょう」

エベネ「私自身の手で?」

(´・ω・`)「そうです。あなた自身の手で人々を助けましょう。そして、これからの未来を豊かなものにしましょう」

エベネ「未来を…」

(´・ω・`)「さあ、行きましょう」

エベネ「……はい」

(´・ω・`)「残り時間、あとどれくらい!?」

(*゚ー゚)「もうすぐ10時です!」

('A`)「あと二時間!」

(;´_ゝ`)「間に合うのか?」

川 ゚ -゚)「まずはやるだけだ!」

(´・ω・`)「行きましょうエベネさん!」

立ち上がるエベネを追い立てるように部屋を出るショボンたち。
時計はまもなくPM10:00になろうとしていた。

.

214 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:54:19 ID:9HKi61YI0

PM10:10

18層街外れ『クラリ家』
ベッドに横たわるこの家の子供ティムに跪き、その手を握るエベネ。

(;´・ω・`)「ヒールクリスタルが効かない」

川;゚ -゚)「さっき私が来たときには効いたぞ」

部屋に入っているのはエベネ老人とショボンとクーとジョルジュ。他のメンバーは外で待機をしている。

エベネ「私が無茶な仕事をさせたばっかりに…こんな子供に毒の沼地に落ちた宝石を探させるなんてことをさせるんじゃなかった」

泣き崩れるエベネ。

川 ゚ -゚)「毒か!」

ウインドウを出して毒消しPOTを取り出すクー。

川 ゚ -゚)「これを」

( ´∀`)「クー、待つもなよ」

,

215 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:56:08 ID:9HKi61YI0

(´・ω・`)「モナー?」

( ´∀`)「外でその子の友達がいたから話を聞いたもな。どうもその子は沼でクツツク虫に咬まれたらしいもな」
 _
( ゚∀゚)「クツツク虫ってあれだろ?魚の餌に使う」

( ´∀`)「家畜に付く害虫でもあるもな。そして、クツツク虫に咬まれてほっておくと、麻痺して死んじゃうもな。顔についてる四角形の赤い点が、咬まれた証拠もな」

川 ゚ -゚)「麻痺も起きているということか!」

( ´∀`)「もちろんその時に麻痺除去薬も飲んだし、毒消し薬も使ったって言っていたもな。だからおそらく、二つが交じり合って薬が単独では効かないもな」

川 ゚ -゚)「治すには同時に治す混合薬が必要ということか。……成功率は低いが、おもしろい。作ってみせる」

再びウインドウを開いたクーが空瓶と麻痺除去POTと回復POTを取り出す。

川 ゚ -゚)「毒消しと麻痺除去を直接混ぜるのはかなり難しいが、各薬をレベルの大会ものにして、回復を媒体にすればおそらく……」

空瓶に回復POTを半分ほど入れ、その上から同じタイミング同じ流量で毒消しPOTと麻痺除去POTを注ぎ、溢れるギリギリの高さまで注いだ。
三種の液体が瓶の中で混じり始め、一瞬ぼんやり光ると完全に混ざりきる。

川 ゚ -゚)「よし」

216 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:57:19 ID:9HKi61YI0

そして自分の作った薬をタップして情報を読み、思わず微笑む。

川 ゚ -゚)「ショボン、出来たぞ」

(´・ω・`)「ありがとう!」

ショボンが瓶を受け取り、それをエベネに渡す。

(´・ω・`)「さ、それを彼に飲ませてあげてください」

エベネ「ありがとうございます」

エベネが薬を受け取り、上半身を持ち上げた少年に薬を飲ませる。
すると見る見るうちに少年の顔色がよくなり、呼吸も緩やかになった。

母「ティム!」

父「ティム!」

母「ありがとうございます!ありがとうございます!」

子供を抱きかかえつつエベネに感謝の言葉を繰り返す母親と父親。
エベネの表情が、少しだけ和らいだ。


.

217 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:59:13 ID:9HKi61YI0

PM10:40
18層 主街区の隣の村

(;´・ω・`)「え?」

('A`;)「黒パンがどこにも売ってない!」

(;,,゚Д゚)「さっきはそこの露天でも売ってたぞ!」

(´<_` )「おい、もうすぐパンを渡すやつらを集め終わるぞ」

( ´_ゝ`)「黒パンは結構旨いからな。売り切れることもあるさ」

ξ;゚听)ξ「そういうことじゃない」

( ^ω^)「ショボンが作れば良いお」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(;´・ω・`)「むりむりむりむり!包丁とか調味料は持ってるけど、刺身とかならともかくパンは窯の設備がないと焼けないって」

(;´∀`)「どうするもな?」

(;´・ω・`)「今からバーボンハウスに戻ってパンを焼いて…」

.

218 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 19:59:57 ID:9HKi61YI0

ピロリン

メッセージ音に反応し、無意識にウインドウを開くショボン。

(;´・ω・`)「あーもう、こんなときに誰だよ」

『ミ,,゚Д゚彡「片付け終わったから。18層に向かうから」』

(*´・ω・`)「ふさーーー!!!」

▼;・ェ・▼「きゃんっ」

(;゚∋゚)「!」

川;゚ -゚)「いきなり叫ぶな、ショボン」

( ´_ゝ`)「おお、そういえば」

(´<_` )「まだバーボンハウスにいるんだろ。あいつ」

(*´・ω・`)「『至急黒パンを10個作ってギルドタブに入れてくれ』っと。送信!」
 _
( ゚∀゚)「こういうショボンも珍しいな」

(*゚ー゚)「初めて見ました。こんなテンションのショボンさん」

(;´・ω・`)「ふーさー。はーやーくー」

自分のことを言われていることに気付かず、ただウインドウを見つめるショボン。

.

219 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:04:51 ID:9HKi61YI0

( ^ω^)「ショボンは面白いやつだお」

('A`)「ギルマスになってからは冷戦沈着に見られがちだけどな」

( ´∀`)「時々ビーグルと遊ぶために牧場に遊びに来るもな」

( ゚∋゚)「    」

(;・∀・)「本当かよ」

( ´∀`)「本当もなよ。泥だらけになって遊んだりしてるもな」

(*゚ー゚)「…うわぁ」

川 ゚ -゚)「よく視察とか仕入れとか言って出かけてると思ったら」

ピロリン

『ミ,,゚Д゚彡「焼けたから」』

(*´・ω・`)「キター!ふさ偉い!」

ウインドウをタップして黒パンの入った袋を出し、エベネに渡す。

(´・ω・`)「さ、これをあの方たちに渡しましょう」

エベネ「ああ、分かった」

220 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:06:56 ID:9HKi61YI0

路上に座り込んでいるみすぼらしい格好のNPC達に黒パンを一つずつ渡していくエベネ。
NPCは渡されると感謝の言葉を継げ、涙を流して喜ぶものもいる。

ξ゚听)ξ「この村、攻略の時には素通りで特にこれといった店も無かったよね。確か」

( ^ω^)「みんなパンをもらえて嬉しそうだお」

(;,,゚Д゚)「なんか人増えてないか?」

川 ゚ -゚)「袋の大きさからみて、フサがいっぱい作って送ったみたいだから、いいんじゃないか」

('A`)「小さい村だしなぁ」

( ・∀・)「なんか名産品があれば良いけど、この地域じゃあ難しそうだな」

( ´_ゝ`)「すぐそばが岩山だから、鉱石でも出れば鍛冶屋が来そうだが」

(´<_` )「あの山でレア鉱石の噂は聞かないな」

( ゚∋゚)「   」

( ´∀`)「そうもなね。土地もやせていて、野菜も牧草も栽培は難しそうもな」

メンバーが話している間もエベネは袋の中の黒パンを分け与え、少しずつ表情を明るくさせた。

.

221 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:08:07 ID:9HKi61YI0

PM:11:25
18層『夕闇の墓地』ジェコブの墓の前

エベネ「すまなかった…ジェコブ」

墓の前で懺悔するかのように膝を付き祈りを捧げるエベネ。
そして一つの花束を墓の前に置く。

エベネ「すまないな。お前の好きだったライララライラの花を持ってくることが出来なかった。せめて、種だけでもここに置いておく。そっちで咲かせてくれ」

(;´・ω・`)「エベネさん、その種貰いますよ。クックル!」

ウインドウを出したクックルが左手に土の入った植木鉢を取り出し、種を受け取る。
数粒を植木鉢に蒔き、取り出した青い象さんじょうろで水をかけると芽が出た。
そして今度は黄色いひまわりじょうろで水をかけるとみるみるうちに成長して紫色の花を咲かせる。

(,,゚Д゚)「おお!」

(*゚ー゚)「凄い!」

( ´∀`)「いつみても見事もなね」

(*゚∋゚)「   」

モララーに植木鉢を差し出すクックル。

( ・∀・)「りょうかい」

植木鉢を足下におき、既に取り出しておいた小さい鋏で花をタップすると切花が現れる。
その花を、鋏と一緒に取り出しておいた紙束とリボンの上に重ねて置き、その上からタップすると花束となった。

.

222 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:09:28 ID:9HKi61YI0

( ・∀・)「ショボン!」

(´・ω・`)「二人ともありがと!」

モララーから受け取った花束をエベネに渡す。

エベネ「これはライララライラの花束!ジェコブが喜びます。ありがとう!」

エベネが墓前に花束を置き、再び膝を付く。
一筋涙を流したが、その表情は穏やかで安らぎに満ちていた。


.

223 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:11:26 ID:9HKi61YI0

PM11:45
エベネ邸 門前

川 ゚ -゚)「これで真のクエストは終了か?」

(´・ω・`)「依頼リストは三つで空欄とかも無いから増えたりはしないと思うけど」

エベネを先頭に門をぬけ、屋敷に向かうメンバー。
途中で合流したフサギコもおり、ギルドメンバーが全員でぞろぞろと歩いていた。

( ・∀・)「歌の歌詞もこれで終わりか?」

(´・ω・`)「一つ終わってない。三人目の妖精のくだりがまだ未消化だと思う」

( ^ω^)「残り時間はあと10分ちょっとだお」

ξ゚听)ξ「まずは一回屋敷に戻ってからね」

屋敷の扉を開け、全員が中に入る。
扉を閉めるとエベネは再び暖炉の前のロッキングチェアに座った。

エベネ「妖精よ。私はあなたに感謝をしてもしきれない。一つだけ心残りはあるが、最後に人の役に立てたことを誇りに思う。さぁ、私を死の世界に連れて行ってくれ」

(´・ω・`)「え?」
 _
( ゚∀゚)「え?」

▼・ェ・▼「きゃんっ」

エベネの言葉に絶句するメンバー。

224 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:12:23 ID:9HKi61YI0

(;´・ω・`)「いやいやいやいや違うって。そうじゃなくて、エベネさん?」

エベネ「最後に幸せなクリスマスを迎えて幸せだった」
 _
(;゚∀゚)「おいおいじいさん、それは違うんじゃ」

(,,゚Д゚)「物語の『クリスマス・キャロル』だと、死ぬのか?」

(;*゚ー゚)「死なないよ。死ぬ運命を回避して、充実した老後を送る設定」

川 ゚ -゚)「何が足りないんだ」

ξ゚听)ξ「歌の歌詞にヒントがあるのよね。あとは最後のところ…」

エベネ「さあ、二人目の妖精よ、三人目の妖精を呼んでくれ」

(;´・ω・`)「え〜〜。か、考えろ、考えるんだ、ショボン。みんな!なんか思いつかない!?」

('A`)「こっちに振るの早くないか?」

(;´・ω・`)「そういうのはいいから!」

ミ,,゚Д゚彡「状況があんまりよく分かってないから!」

ξ゚听)ξ「フサはしょうがないわよ。来たばっかりだし」

川 ゚ -゚)「でも、さっきのパンは見事だったな。よくあれだけの短時間でいっぱいの黒パンを作ってくれた」

ミ*,,゚Д゚彡「照れるから」

(#´・ω・`)「だーかーらー」

225 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:13:30 ID:9HKi61YI0

( ・∀・)「残ってるのは三人目の妖精なんだろ、サンタコスしたギコがなんかやりゃいいんじゃないのか?」

(´・ω・`)「何だと思う?」

( ・∀・)「しらん」

(#´・ω・`)

(;*゚ー゚)「の、残ってるのは『かえるあなた』とか、『きぼうのすず』とかのくだりですよね」

( ^ω^)「鈴かお?」

( ´∀`)「鈴を鳴らせばよいもなか?」

(´<_` )「じゃあどの鈴かってことか?」

( ´_ゝ`)「この部屋にある鈴といえば…」

▼・ェ・▼「きゃんっ!」

全員が扉の上部に付いている鈴を見る。

川 ゚ -゚)「そういえばさっきこの部屋に入った時は鳴らなかったような」

(´・ω・`)「それだ!ギコ!あの鈴を鳴らすんだ!」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴラァ!」

扉に向かい、扉を開けようとするがびくともしない。
諦めてジャンプするが全く届かない。
というよりも、ジャンプが出来ていない。

(;,,゚Д゚)「あ、あれ?跳べないぞゴルァ」

(;^ω^)「クエスト中の補正が働いているのかお?」

(;´・ω・`)「武器は出せる?みんなも試してみて」

(;,,゚Д゚)「だせねぇ」

('A`)「おれもだめだ」

ξ;゚听)ξ「みんな駄目みたいね」

(;´・ω・`)「な、なにか長い棒とかない?」

226 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:15:41 ID:9HKi61YI0

自分のアイテム欄や部屋の中を見回すメンバー。
ひとり兄者だけがウインドウをタップし、鍛治用のハンマーとシートを取り出して足下に置く。

( ´_ゝ`)「ふむ。これはだせるのか。弟者!」

(´<_` )「なんだ?兄者も探せよ」

( ´_ゝ`)「あれ、木に戻せるか?」

兄者が指差した方向にあるのは木の盾。

(´<_` )「?戻せるが……なるほど。流石だな」

兄者が盾を取る間に弟者は自分用のハンマーとシートを出してコマンド操作をしている。
流石兄弟二人以外が何をしているのかと凝視する中、兄者が盾を弟者のシートの上に置くと、弟者は躊躇なくハンマーを振り下ろした。

輝く盾。
そして形が変わり、丸太になった。

そして今度はそれを兄者は自分のシートに置き、既にコマンド操作を終わらせていたのか愛用のハンマーを振り下ろす。

川 ゚ -゚)「残り5分だぞ!」

227 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:17:10 ID:9HKi61YI0

五回ハンマーを振り下ろすと形が変わり始め、一本の長い棒に姿を変えた。

( ´_ゝ`)「一番簡単な棍だ。ほれ、ギコ、これを使え」

そして自分の作った棍を放り投げてギコに渡す。

(*´・ω・`)「兄者ナイス!」

( ´_ゝ`)「流石だろ!」

(´<_` )「おれ達!」
 _
(;゚∀゚)「いちいち決めポーズするなよ」

川 ゚ -゚)「残り二分!」

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

棍を受け取ったギコがドアに取り付けられた鈴を鳴らした。


.

228 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:18:16 ID:9HKi61YI0

.
.
.
.
.
.

229 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:19:41 ID:9HKi61YI0

……
………

( ゚∋゚)「    」

( ・∀・)「ああ。なにも起こらないな」

(;´・ω・`)「え?」

全員が硬直し、ショボンを見る。

(;´・ω・`)「マジで?」

川 ゚ -゚)「十二時だ」

非情にクーが呟くと、12時を告げる大きな鐘の音が響き渡る。

(´・ω・`)「しっぱい?」

(;^ω^)「っぽいおね」

('A`)「疲れた」

(;´∀`)「もなもな」

(;,,゚Д゚)「え?おれのせい?」

(;*゚ー゚)「違うと思うけど…」

全員が溜息を漏らそうとした瞬間扉が開き、来客を告げる鈴が鳴った。

(;,,゚Д゚)「おっと。……あれ?あんたは最初のクエストの最後に手紙を渡した…」

扉の前でしゃがみこんでいたギコが慌てて退くと、一人のNPCが入ってくる。

(,,゚Д゚)「マレイ?だよなゴルァ」


.

230 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:20:31 ID:9HKi61YI0

マレイ「……父さん」

エベネ「マレイ!マレイなのか!」

柔らかい微笑を浮かべた青年『マレイ』がエベネに近付き、そっとしわくちゃの手を握る。

エベネ「おまえ……今までどこに」

マレイ「この街と、近隣の村を渡り歩いていたんだ」

エベネ「何故…」

マレイ「僕は、父さんの行動が許せなかった。商売のためなら何でもして、他の人の人生や心など全く気にしない父さんが、許せなかったんだ」

エベネ「……そうか」

マレイ「僕は、この街や隣の村みんなで幸せになりたいと思った。だから最初は頑張って商売をしたり農地開拓をしようとした。でも、こんな寂れた土地には何も出来ないんじゃないかって…思ってしまったんだ。だから、ここ数年は色んな街を彷徨っていた」

エベネ「マレイ」

マレイ「そんな時、父さんを見かけた。子供を助け、町の人にパンをあげている父さんを。そして、……ジェコブおじさんのお墓の前で泣いている父さんを」

ぽろぽろと涙を流すマレイ。
そのまま自分の父親を見つめながら、膝を折る。

マレイ「僕が何も知らなかっただけなんだね。ごめんなさい。僕、これから父さんの力になりたい。教えてほしいんだ。色んなことを。父さんみたいな、立派な人になりたいから」

エベネ「違うんだ、マレイ。わたしは…わたしは…」

エベネも大粒の涙を瞳から溢れさせ、息子であるマレイの手を強く握る。

エベネ「わたしも、やっと分かったんだ。金だけが全てじゃない、本当の豊かさを。心の、豊かさを。マレイ、思えばお前は小さい頃から優しい子だった。わたしこそ、教えてもらいたい。心の豊かさを、本当の、優しさを」

マレイ「父さん…」

抱き合い、涙する二人。

エベネ「力を貸してくれ、マレイ。この街を、あの村を、豊かにするために」

マレイ「うん。父さん。僕、頑張るよ」

.

231 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:21:52 ID:9HKi61YI0

ミ,,;Д;彡「良い話だから」

(*;ー;)「泣けちゃいますね」

ξ゚听)ξ「お、お話よ、クエストのイベントだし」

( ;ω;)「ツンも無理しないで泣くと良いんだお。目、真っ赤だお」

( ´∀`)「家族の雪解けもなね」

▼*・ェ・▼「くぅ〜ん」
 _
( ;∀;)「ちくしょう、良い話だ」

( ・∀・)「みんな涙もろいねぇ。ね、ショボン。……ショボン?」

親子を見て涙する何人かのメンバー。
しかしショボンは視線を斜め上にして硬直していた。

(´<_` )「どうした?ショボン」

(*´・ω・`)「クエストクリア!」

親子が抱き合うとほぼ同時に、全員の視界の上部に現れた『QUEST CLEAR』の文字。
一人ショボンはそれをかみ締め、そして叫び、ガッツポーズをする。

(*´・ω・`)「おっけーーー!!!」

川;゚ -゚)「うわぁ」

(; ´_ゝ`)「…流石のおれも、今のお前にはひく」

(; ゚∋゚)「    」

('A`;)「こいつはこういうところがあるんだよな」

(;,,゚Д゚)「…ゴルァ」

抱き合い涙する親子の周りで三様の姿を見せるギルド『V.I.P.』メンバーだった。


.

232 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 20:23:00 ID:9HKi61YI0
ちょっと休憩します。

また後ほどお願いします。

233 名前:名も無きAAのようです:2013/03/03(日) 20:23:17 ID:HQ6iPvlc0
乙!

234 名前:名も無きAAのようです:2013/03/03(日) 20:41:58 ID:zw0yaPNs0
面白い!!

235 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:21:59 ID:b6yq5RR.0
投下再開します。

乙と感想ありがとうございます。

236 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:23:24 ID:b6yq5RR.0

5.かんきの歌


(´・ω・`)「さっきはお見苦しいところをお見せしました」

エベネ邸前。
扉の外側でミーティングを始めるメンバー。

('A`)「そんなことより目当てのものはもらえたのか?」

(´・ω・`)「うん。さっきエベネさんがくれた袋が『サンタの袋』だったよ。中には鉱石とかPOTとかクリスタルとか色々入ってた。とりあえず今リストを送るから、欲しい物があるか調べておいて。物はギルドタブに入れておくけど、次の定例会で分配するまで勝手に出さないようにね。効果とかを調べたかったらタップはしてくれていいよ」

ショボンがウインドウを操作すると、全員にメッセージ到着を知らせるチャイムが鳴り、各自が確認を始めた。

(´・ω・`)「『サンタの袋』はこの状態で保管しても仕方が無いので、使っちゃいます」

中身を空にした白い袋をタップして、ギルドタブにスライドさせる。

(*´・ω・`)「よし、容量アップ!」

.

237 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:26:42 ID:b6yq5RR.0

川 ゚ -゚)「それでは夜も遅いし、解散だな」

(´・ω・`)「いや、もう一つあるんだ。報酬」

( ^ω^)「これ以外に?」

(´・ω・`)「これ以外に」

紙を一枚取り出すショボン。
 _
( ゚∀゚)「とっとと帰ろうぜ。何か知らないけど、さっさと分配しちまおう」

(´・ω・`)「これは今日一日の期間限定、分配不可アイテムなんだ。だから使ってしまうつもりなんだけど、良いかな?」

( ´_ゝ`)「いいんじゃないのか?」

(´<_` )「お前がやることなら間違いは無いだろうし」

( ・∀・)「さっさと済ませて帰ろうぜ」

ミ,,゚Д゚彡「明日もレストラン早いから」

(´・ω・`)「……多分これを使うと帰れなくなると思うんだけどね」

(,,゚Д゚)「え? どういうこと」

みんなの顔を見て反対者がいないのを確認し、ぼそりと呟いてから紙をタップして実行した。

.

238 名前:名も無きAAのようです:2013/03/03(日) 22:28:27 ID:ypk1CmJI0
サンタになるとか?

239 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:29:03 ID:b6yq5RR.0

その瞬間、光り輝くエネベ邸の敷地。
クリスマスイルミネーションである。
邸宅もひかりに彩られ、大きく聳え立つ一本の樹や周囲の植木、そして外界と遮断する門や壁までがライトで彩られた。

(*゚ー゚)「凄い」

(* ´∀`)「キレイもな」

▼*・ェ・*▼「きゃんきゃんっ」

(* ゚∋゚)「!」

走り出すビーグルとそれを追うモナーとクックル。ジョルジュやフサギコも周囲を見ながら歩き出す。

川*゚ -゚)「ショボン、これは?」

(*´・ω・`)「庭をクリスマスイルミネーションで装飾して、クエストクリアしたギルドに今日いっぱい貸し出すっていうアイテムなんだけど、思っていたより凄いしキレイだ」

(* ・∀・)「おい、これも演出か?」

(* ´_ゝ`)「雪まで降るとは」

(´<_` *)「ホワイトクリスマスだな」

川* ゚ -゚)「ビーグルが更に喜んで駆け回ってるぞ」

ミ*,,゚Д゚彡「凄いキレイだから」

(*´・ω・`)「ね。帰れなくなるでしょ」

(*,,゚Д゚)「凄いぞゴラァ」

それぞれに動き出し、庭を楽しむメンバー。
.

240 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:30:05 ID:b6yq5RR.0

(* ^ω^)「きれいだおね」

ξ*゚听)ξ「うん。きれい」

(* ^ω^)「寒くないかお?雪まで降ってきたし」

ξ*゚听)ξ「……こうしてれば、大丈夫。……あったかい」

手を繋ぐ二人。
そっと近くにより、肩が触れ合う。

(* ^ω^)「おっおっ」

.

241 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:32:39 ID:b6yq5RR.0

大きな樅ノ木。
雪とイルミネーションに彩られ、淡く優しく輝いている。

(*゚ー゚)「きれい…」

ミ*,,゚Д゚彡「凄くきれいだから」

見上げてうっとりとしているしぃとフサギコ。
その後ろにギコが立ち、イルミネーションのひかりで光り輝いているしぃを見ている。

そんな彼の肩を叩く男。

(,,゚Д゚)「モララー」

( ・∀・)「ほらよ」

指輪を差し出すモララー。

(,,゚Д゚)「な、なんだ」

( ・∀・)「プロポーズしちまえよ。良いシチュエーションだろ」

(,,゚Д゚)「お、おう。だが指輪は…」

(# ・∀・)「まだそんなこと言ってるのか!」

242 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:34:14 ID:b6yq5RR.0

( ´_ゝ`)「金なら貸してやるぞ。勿論無利子で」

(´<_` )「一ヶ月くらい頑張れば返せる額だろ」

(,,゚Д゚)「そういう問題じゃねぇんだゴルァ。これは男としての」

(# ・∀・)「プライドで飯が食えるか!女を幸せに出来るのか!?」

(;,,゚Д゚)「ゴ…ゴルァ」

川 ゚ -゚)「つまりは、正当な金ならば良いわけだな」

(,,゚Д゚)「あ、ああ。勿論だゴルァ」

川 ゚ -゚)「この前サソリ谷で特訓したんだろ?大サソリの毒針はドロップしなかったか?あるなら一本50コルで買おう。あれは毒にも毒消しにも使えるからな」

(´<_` )「サソリならこっちも買えるものがあるぞ。赤サソリの甲殻とサソリの大爪ならそれぞれ30コルで帰う。二つとも強化用アイテムとしてはレベルがそれなりにあるからな」

( ´_ゝ`)「あの谷に一時間いたなら、一回くらいコープ石はドロップしなかったか?あの石なら100まで出すぞ」

( ・∀・)「赤サソリの眼、大サソリの薄膜があるならおれも買う。あの谷で特訓したなら早く言えよ」

(,,゚Д゚)「みんな……ありがとうだゴルァ」

川 ゚ -゚)「まじめにあるなら売って欲しいから、あるなら早く出してくれ」

(;,,゚Д゚)「お、おう」

ギコ達が金の話をしているとは露知らず、ぼんやりと樅ノ木を見上げてうっとりとしているしぃ。
いつしかフサギコもその場を離れ、ひとり佇む

,

243 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:36:10 ID:b6yq5RR.0

(,,゚Д゚)「し、しぃ」

(*゚ー゚)「ギコ君」

後ろから声をかけ、振り返って微笑むしぃを見ながら隣に立ち、樅ノ木を見上げる。
それを見て、再び見上げるしぃ。

(,,゚Д゚)「きれいだな」

(*゚ー゚)「ね」

(,,゚Д゚)「しぃ、お前もきれいだ」

(*゚ー゚)「やだ、なに言ってるのよギコ君」

思いもよらぬ言葉を受け、照れてギコを見るしぃ。
その視線の先には真剣な顔で自分を見るギコの顔。
そして差し出された右手に、小さな箱を持っていた。

(*゚ー゚)「ギコ君?」

(,,゚Д゚)「プレゼントだ。貰ってくれ」

(*゚ー゚)「あ、ありがとう」

箱を受け取って、蓋を開けるしぃ。
すると中にはぼんやりと輝く小さな透明な石を使った指輪が入っていた。

(*゚ー゚)「ギコ君…これ…」



244 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:37:21 ID:b6yq5RR.0

(,,゚Д゚)「しぃ、結婚してくれ」

(*゚ー゚)「!」

(,,゚Д゚)「お前が好きだ。一生、そばに居たい」

(*゚ー゚)「…ギコ君」

呆然とギコの顔を見るしぃ。
そしてギコの真剣な眼差しをみて、自分の瞳を潤ませる。

(*゚ー;)「ありがとう、ギコ君。わたし、嬉しいよ」

大粒の涙を左目からこぼしながら、受け取った小箱を両手で大事に持って、胸に当てる。

(*,,゚Д゚)「じゃあ、しぃ、おれと」

(*゚ー゚)「凄く嬉しいよ!私もギコ君のこと大好き!」

(*,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(*,,゚Д゚)「しぃ!!」

.

245 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:38:40 ID:b6yq5RR.0




(*゚ー゚)「でも結婚は出来ない」




.

246 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:40:35 ID:b6yq5RR.0




(,,゚Д゚)「…………え?」




.

247 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:41:40 ID:b6yq5RR.0

(*゚ー゚)「だって私達まだ半人前もいいところだよ。二人で支えあうとか聞こえはいいけど、下手したら共倒れだよ」

(,,゚Д゚)「……え?」

(*゚ー゚)「だから、ちゃんと自分の足で立てるようになるまで、結婚とかは出来ない。ギコ君のことは大好きだし、ずっとそばにいたいけど、その前にまずは一人で歩けるようにならないといけないって思うの。だから、ごめんなさい」

(,,゚Д゚)「………ゴルァ」

(*゚ー゚)「でも、嬉しいから婚約ってことで指輪は貰うね。ありがとうギコ君。大好きだよ」

(,,゚Д゚)「…………はい」

(*゚ー゚)「じゃあイルミネーション一緒に見よっ。きれいだよ」

ギコの腕に自分の手を回し、壁や植木のイルミネーションを指差すしぃ。
ギコはただ頷くことしか出来なかった。

.

248 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:43:22 ID:b6yq5RR.0

少し離れた植木の裏。

(; ・∀・)「……」

(; ´_ゝ`)「……」

(´<_` ;)「……」

川; ゚ -゚)「……。私たちがやったことは、間違ってないよな」

(; ・∀・)「た、多分」

(´<_` ;)「だ、大丈夫だ。間違ってない」

(; ´_ゝ`)「しぃちゃんすげえな」

植木の後ろから移動して、息を付く四人。

川; ゚ -゚)「ギコが甘かったということで」

(; ・∀・)「結婚指輪は安くしてやろう」

(´<_` ;)「ああ、そうしてやってくれ」

(; ´_ゝ`)「今度ただで武器の強化をしてやるか」

(´・ω・`)「ギコのプロポーズは終わった?」

( ´_ゝ`)「ああ終わったけど……って、なんだお前らそれ」

.

249 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:44:29 ID:b6yq5RR.0

ミ,,゚Д゚彡「屋台だから!」

あまりの出来事にこちらもギコほどではなくても呆然としていた四人だったが、ショボンとフサギコを見て違う意味で言葉を無くす。

川 ゚ -゚)「いや、そういう意味ではなく」

(´・ω・`)「屋台『バーボンハウス』一号店」

ミ,,゚Д゚彡「屋台『バーボンハウス』二号店」

川 ゚ -゚)「いやだから、昔使っていたのは覚えているが、何故それが今ここにあるんのかを聞きたい」

(´<_` )「あーなるほどな」

( ´_ゝ`)「そういうことか」

川 ゚ -゚)「ん?」

(´<_` )「門のほうを見てみろよ、クー」

弟者の指差す門を見ると、他のプレイヤーたちが大挙として押し寄せていた。

川; ゚ -゚)「なんだあれは?」

.

250 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:46:56 ID:b6yq5RR.0

( ´∀`)「これだけきれいなら、みんな寄って来るもなよ」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

( ゚∋゚)「   」

ξ゚听)ξ「ほんとね、凄い人の数。この層にこんなに人がいるとも思えないし、わざわざ聞きつけて来たのかしら」

ばらばらに見ていたメンバーだったが、異変を感じて集まってくる。

( ^ω^)「中に入れてあげてみんなで見るお」

(; ・∀・)「おいおい、ショボン、もしかして」

(´・ω・`)「入場料とかは取らないから、安心して。せっかくだから、みんなで楽しまないとね。で、楽しむためには食事や飲物があるともっと良いと思うんだ」

川; ゚ -゚)「なるほどな」

ミ,,゚Д゚彡「皆がクエストやってる間、準備を頑張ったから!」

.

251 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:48:26 ID:b6yq5RR.0

(´・ω・`)「しぃ、クー、屋台の方は任せるよ。僕とふさはバーボンハウスに戻って調理に専念するから」

('A`)「それでどうするんだ?」

(´・ω・`)「ギルドタブに料理を入れていくから、料理はそこから出して売ってくれ。それなら各自で売れるからね。サンタの袋を使って拡張したからいっぱい入るよ」

(; ・∀・)「もしかして」

(´<_` ;)「お前最初から」

(´・ω・`)「出来たらいいなとは思っていたけど、こんなに上手くいくとは思わなかったよ」

ミ*,,゚Д゚彡「それじゃあお願いだから!」

(´・ω・`)「みんな!頼むね!ギルドの金庫を潤すために!がんばっていこう!」

テレポートクリスタルを使ってそれぞれのバーボンハウスのある層に帰る二人。

あとに残されるは呆然と立ち尽くす残りのメンバー。

.

252 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:50:43 ID:b6yq5RR.0

( ・∀・)「これ、絶対最初から企んでたよな」

( ´∀`)「さすがショボンもなね」

▼・ェ・▼「きゃんっっっ!」

('A`)「しゃーない。やるか」

ξ゚听)ξ「ブーン、ジョルジュ、門を開けてきてよ」
 _
( ゚∀゚)「おう」

( ^ω^)「おっおっ。わかったお」

( ´_ゝ`)「かわいいこ来ないかな」

(´<_` )「セクハラして牢獄に送られないように注意しろよ」

(,,゚Д゚)「おれもやるのか」

(*゚ー゚)「お客さんに怒鳴ったりしちゃ駄目だよ、ギコ君」

川 ゚ -゚)「今のうちに多めに飲物を作っておくか」

呆れながらも楽しそうに準備を始めるメンバーたち。


たとえ仮想空間でも、彼らはここで生き、生活をしていた。
そして、仲間を作り、大事な人を作り、守りたいと、共に生きたいと願った。

『ソードアートオンライン』

ゲームだが遊びではなくなってしまったこの世界で、生きる者達の物語。
主人公ではない、日々を生きる者達の物語。



.

253 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:52:38 ID:b6yq5RR.0



( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。



第二話 終了


( ゚∋゚)「    」

▼*・ェ・*▼「きゃんっ」



.

254 名前:名も無きAAのようです:2013/03/03(日) 22:52:47 ID:ypk1CmJI0
4と5で1話ってことね

255 名前:名も無きAAのようです:2013/03/03(日) 22:54:21 ID:SwVM5cbs0


256 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/03(日) 22:57:08 ID:b6yq5RR.0
ということで、第二話終了です。

読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

なんか最終回みたいな終わり方ですが、とりあえずまだ書きたいネタがあるのでまだ続く予定です。

257 名前:名も無きAAのようです:2013/03/03(日) 22:58:44 ID:HQ6iPvlc0
乙乙
とても面白い

258 名前:名も無きAAのようです:2013/03/06(水) 20:57:58 ID:MnO4/oxY0
乙!
面白い!
いつかクックルの言ってる事わかるといいなー

259 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:30:01 ID:EjoqH.6c0
こっそり投下開始します。

今日は短め第三話です。

.

260 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:32:00 ID:EjoqH.6c0


0.いま から


西暦2024年1月

『V.I.P.牧場』

牧場入り口の柵にはそんな看板がかけられていた。

ここは百層から成る架空世界の空中城砦アインクラッドの低層階にあるギルド『V.I.P.』が持つ牧場。
一人の男が何の障害もなしに入っていくと、厩舎の前に一人の長身の男が立っていた。

( ´∀`)「!弟者!ここにくるのは久し振りもなね」

(´<_` )「よう、モナー。牧場の調子はどうだ?」

軽く手を上げて挨拶をする弟者。
そのままハイタッチをして互いの無事を確認し、笑顔をかわす。

( ´∀`)「順調もなよ。なかなかレア種を誕生されられないけど、少しだけコツが分かってきた気がするもな」

(´<_` )「この前食わしてもらったAクラスの肉は旨かったからな。またよろしく頼むよ」

( ´∀`)「頑張るもな。今日は店は良いもなか?」

.

261 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:33:03 ID:EjoqH.6c0

弟者が厩舎の横の道に進み始めたため、モナーもその横について歩き始める。

(´<_` )「オーダー品の作製と納品が一段楽したからな。たまにはのんびりしようと思ったんだがこことクックルの植物園くらいしか思いつかなかった」

( ´∀`)「思い出してくれて嬉しいもなよ。のんびりしていくといいもな」

(´<_` )「ああ、ここは静かで良いな……って、そういえばビーグルはどうした?普段ならまとわり付いてくるのに」

( ´∀`)「先客と遊んでいるもなよ」

(´<_` )「先客?」

厩舎を通り越した先に一面に広がる牧場地。
柵がはるか彼方に見え、牛に似た動物や羊に似た動物など色々な家畜が点在している。
そしてモナーが指差した先には『先客』と遊ぶビーグルがいた。

(´<_`;)「………」

( ´∀`)「どうしたもな?」

(´<_`;)「       ショボン」

.

262 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:34:21 ID:EjoqH.6c0

(*´・ω・`*)「ビーグル!」

▼*・ェ・*▼「きゃん!」

モナーと弟者の視線の先で、こちらに全く気付かずに走り回り、抱き合い、転げまわる一人と一匹。

(´<_`;)「見たくなかった」

両膝と両手の平を地に付いて四つんばいになる弟者。
緑の芝生が手に気持ちよい。

( ´∀`)「ビーグルと遊んでくれているおかげで作業がはかどるもな」

(´<_`;)「まあ、うん、いや、いいなら、いいんだ。ああ。別に何が変わるわけじゃないしな。うん。そうだ。息抜きは必要だしな。そうそう、大事大事。大丈夫だ。がんばれ、おれ」

( ´∀`)「もな?」

一人自分に言い聞かせる弟者。
それを不思議そうに見るモナーだった。


.

263 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:35:24 ID:EjoqH.6c0

気を取り直した弟者とモナーは、普段モナーが生活している家に入った。
一階のリビングでお茶をすすりながらソファーに座る。
座ると目の前の壁一面が数枚の大きなガラス戸で作られており、牧場を一望できた。
眼の端に移る一人と一匹を意識しないようにしながら、弟者が口を開く。

(´<_` )「そういえば、まだここの名前って『V.I.P.』のままなのな。そろそろ『モナー牧場』とかにしたらどうだ?」

( ´∀`)「このままで良いもなよ。それに、ここはギルドの持ち物もな」

(´<_` )「別に気にしなくていいのに。クックルの所もそうだけど、おれ等やブーン所みたいに自分の名前つけたほうが愛着わくだろうしさ」

( ´∀`)「モナーはこのギルドにいられることが嬉しいからこれで良いもなよ」

(´<_` )「まぁそれなら……そうだ、いっそのこと『ビーグル牧場』とか」

( ´∀`)「それは良いかもなね。ビーグルと一緒にだからVIPにも入れたもなから、出会えたことに感謝の気持ちを込めるのも」

(´<_` )「?」

( ´∀`)「どうしたもな?」

(´<_` )「……モナーと会ったのは…そうか、あの時か」

( ´∀`)「?」

(´<_` )「確かに出会いがあれだし、ギルマスもあれだからそう思っちまうかもしれないな。だけどな、モナー」

(;´∀`)「な、なにもな?」

(´<_` )「それ、ショボンやツンやブーンやクーやドクオやジョルジュや兄貴の前で言わない方が良いぞ」

(;´∀`)「え?」

(´<_` )「本気で怒るから。で、おれもちょっと今怒ってるから詳しく話を聞かせてもらおうかな。今日の仕事はもう終わったんだろ?」

(;´∀`)「終わったもなけど」

(´<_` )「じゃあ少し、昔話でもしようか。といっても考えてみれば一年も昔の話じゃないんだな…」



.

264 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:36:14 ID:EjoqH.6c0


三話 「 それ から 」



.

265 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:37:08 ID:EjoqH.6c0

1.そこ から


西暦2023年5月

(#´∀`)「やめるもな!」

▼;ェ・▼「きゃんっ!」

ビーグルが切り付けられ、そのヒットポイントバーを大きく減らす。
そのビーグルを守るように立つモナーのヒットポイントも、既にイエローになり、あと少しでレッドゾーンになる量である。

(A)「別にいいだろ、モンスターなんだからよ」

(凵j「しかもレアモンだぜ」

(ー)「シルブリュールフって、倒せば高確率で高く売れる毛皮落とすんだろ」

小さな村と小さな村の間にある森。
出現するモンスターは低層階のためレベルはあまり高くなく、また村と村を繋ぐ意味合いが強いため、ポップ数もそれほど多くは無い。
そしてすでに攻略されて久しいフロアな上、特にレアアイテムの出る宝箱やドロップすることの出来るモンスターも出ないため、他のプレイヤーもほとんどいなかった。

▼#・ェ・▼「ぐるりゅrぅyrぅるrぅ」

(へ)「けっ!いっちょまえに威嚇しやがる」

(θ)「さっさとやっちまって、金にしようよ」

(Ω)「そうだな。はやいとこやっちまおう」

(#´∀`)「さいしょからそのつもりでパーティーに誘ったもなね!」

(θ)「正解!」

(凵j「でもちょっと気付くのが遅かったね」

.

266 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:37:49 ID:EjoqH.6c0

ビーグルを抱きかかえ、男たちを睨むモナー。

(#´∀`)「モナーはビーグルを離さないもな!だからビーグルを殺そうとすればモナーも傷付けてレッドプレイヤーになっちゃうもなよ!」

(へ)「まぁ、一人殺すのも二人殺すのも三人殺すのもおなじだからなぁ。な、おまえら」

(A)「まあね」

(ー)「うーんと、とくに良いかな。どっちでも」

(Ω)「その狼をはやく殺させてくれたらモナー君とはここで解散の予定だったけど、このままだとモナー君がここでおわりになるかもね」

(;´∀`)「おまえら!まさかすでに殺したことがあるもなか!」

▼#・ェ・▼「うーーーー」

(Ω)「さあ、どうだろうね」

数刻前、モナーは素材集めのために声をかけてきた男たちとパーティーを組んだ。
普段なら初めて会うプレイヤー達とは遠出はしないのだが、声をかけてきた三人のうち一人が以前に一度組んだことがあるのと、欲しい素材がそれほど需要のあるものではなく、しかも高確率でゲット出来る森に行くのは一人では心もとなかったため誘いに乗ってしまった。
目的の森に行くには転移門のある村からまずは二つ先の村へ行かなくてはならず、その道中にパーティーメンバーに刃を向けられていた。

.

267 名前:名も無きAAのようです:2013/03/10(日) 00:38:30 ID:spBQ5lo20
しえん

268 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:38:53 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「まさか、あんたまでオレンジギルドの仲間だったなんて。前にパーティーを組んだときも、そうだったもなか」

(Δ)「…」

アインクラッドにおいて、プレイヤーの上には通常グリーンのカーソルが浮かんでいる。友人や仲間ならそこから名前や状態などをしるすべもあるが、見ず知らずの相手では原則的には『そこにプレイヤーがいる』程度のことしかわからない。
だが一つ、決定的に分かることがある。

それは色による識別。

通常はグリーンであるカーソルが、オレンジの者がいる。
これはその者が『犯罪者』であることを意味していた。
そしてここでいう『犯罪』とはシステム上の犯罪を指すのだが、ほとんどが現実社会でも犯罪である盗みや傷害、そして殺人のことであった。
そこから、彼らオレンジカーソルのものは『犯罪者』を表す『オレンジプレイヤー』と呼ばれ、そういった者達の集団である『犯罪者組織』は『オレンジギルド』と呼ばれている。

▼#・ェ・▼「う〜〜わん!わん!」

(θ)「吼えてる吼えてる、怖い怖い」

嘲笑したように笑うオレンジプレイヤー。

.

269 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:39:54 ID:EjoqH.6c0

オレンジプレイヤーになると、犯罪防止コードで守られた街や村には入ることが出来なくなる。
そのためオレンジギルドのメンバーには街や村で諜報や補給を担当するグリーンプレイヤーが居る事が常だった。

今回モナーはそのグリーンプレイヤーに誘われたのである。

(Δ)「………狼を置いて、逃げればいい。所詮、ただのモンスターだ」

(;´∀`)「!」

▼#・ェ・▼「ぐりゅるうyぅりゅgyる」

(Δ)「それに、また捕まえることが出来るさ。一度捕まえられたんだから。ビーストテイマーのモナーさん」

『ビーストテイマー』
それは、システム上で規定とされた称号やスキルではなく、通称である。
一部のモンスターと遭遇した時に友好的な態度を示され、更にこちらからのアクションもそのモンスターにとって良好なものであればそのモンスターを飼い馴らす事が出来る。
そうやって『使い魔』として使役できればプレイヤーを助ける様々な行動を取ってくれるようになるのだ。
そういった『幸運』を掴んだものの事を、やっかみを込めてそう呼んでいた。

(Δ)「しかしまあ、モンスターと自分の命、秤にかけることがそもそも間違っていると俺は思うがな」

.

270 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:40:49 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「おまえ…」

(Δ)「?」

(#´Д`)「違うもな!ビーグルはモンスターなんかじゃないもな!ビーグルはビーグルもな!」

(Δ)「へっ。じゃあ一緒に死ね」

グリーンカーソルの男が手を上げると、オレンジカーソルの男達が武器を構え、切っ先をモナーに向ける。
それを受けて槍を構えるモナー。足下のビーグルも威嚇の唸りをあげる。

(Δ)「やれ」

男が手を振り下ろそうとした瞬間、後ろから顔のすぐ横を光る何かが通り過ぎた。

.

271 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:41:56 ID:EjoqH.6c0

(;Δ)「!」

モナーの後方にある木に刺さる一本の針。

(;Δ)「な!」

男が驚きで振り向こうとすると同時に、数本の『線』がオレンジプレイヤー達の目前を掠める。
木々に刺さる数本の針。

武器を構えたまま顔だけで周囲を伺おうとするオレンジプレイヤーの周囲を黒い風が吹き荒れた。

ガシャン

.

272 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:43:04 ID:EjoqH.6c0

(Ω)「!」

(;θ)「な、なんだよこれ」

オレンジプレイヤー達の手が切り落とされ、武器が音を立てて地に落ちる。

モナーの横に佇む一人の男。

( ^ω^)「大丈夫かお?」

モナーを見ることはせず、オレンジプレイヤー達に視線を向けたまま話しかけるブーン。

(;´∀`)「!い、今のはあんたがやったもな?!」

▼;・ェ・▼「うゎん!」

それには答えず、自分が腕を切り落とした男たちを冷たい視線で見回すブーン。
するとグリーンプレイヤー達が我を取り戻し、ブーンに向けて武器を構える。

(;Δ)「な、何だお前は!モナーの仲間か!?」

( ^ω^)「正義の味方だお」

(:−)「ふ、ふざけるな!あっ…?」

(;Ω)「!うっ」

次々に倒れていく腕を切り落とされたオレンジプレーヤー達。

.

273 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:44:06 ID:EjoqH.6c0

(;Δ)「お、おい!どうした!」

(´・ω・`)「レベル3、麻痺毒。これが効くってことは、たいした麻痺対策はやっていないみたいだね」

グリープレイヤーの後方から聞こえる冷静な口調。
ダーツのように針を構え持ったショボンが後ろから声をかけた。

(;Δ)「なに!?」

更なる乱入者を知り振り向いたグリーンプレイヤー達の喉元に、短刀の切っ先が突きつけられる。

(へ)「うっ!」

(´<_` )「とりあえず、動くな」
 _
( ゚∀゚)「動くと切っちまうかも」

(´<_` )「大人しくして、武器を手から離せ」

(´・ω・`)「それにはレベル5の麻痺毒が塗ってあるから、わざと相手に切らせるってのは良い作戦ではないよ」

.

274 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:45:02 ID:EjoqH.6c0

HPが命の全てであるアインクラッドにおいては、個人の力量もしくは相手の武器と自分の防具との間に余程のレベル差がなければ即死はありえない。
現実世界なら喉を切られたり心臓を刺されれば即死することもあるが、この世界ではHPがなくならない限り、その一撃で死ぬことはない。
先ほど腕を切り落とされたオレンジプレイヤーも、HPは減るし腕も欠損したが、ステータス的には死ぬほどではなく、腕も部位欠損ペナルティによって10分前後は腕が無い状態だが、その後は元に戻る。
よって喉元に短刀を突きつけられたグリーンプレイヤー達は、自分のHPが満タンであることを考えれば喉を切られても死ぬことはないのだからそのまま振り切って逃げてもよいのだが、ショボンの言葉を聞き動くことが出来なくなってしまった。

麻痺毒

その名の通り麻痺を起こす毒であり、武器に塗ることでモンスターに状態異常を起こさせることも出来る。
レベルによって効果時間が変わるこの毒は、モンスターが使ってくることもあるためかなり注意が必要である。
勿論対応策はある。対麻痺効力の付いた武具を装備したり対麻痺スキルを身につければそのレベルの麻痺までは異常をおこさなくなるし、効果期限はあるが対麻痺POT等を飲むことによって対抗することも出来る。
だが対応する武具やPOTが高価であることや、ソロプレイ時やボスクラスの攻略時でもない限り麻痺毒イコール死と直結して考える者は多くなく、対応をおろそかにしている者が多いのも事実だった。

.

275 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:46:06 ID:EjoqH.6c0

(´・ω・`)「低レベルとはいえ、モンスターの闊歩する森に麻痺状態で放置されたくは無いよね?オレンジギルドの君等でもさ」

(;Δ)「……分かった」

武器を手から離すグリーンプレイヤー達。

ξ゚听)ξ「大丈夫だった?」

自分の周囲で突然起こった数々のことと、命の危険が少なくとも去ったことに安心し、ビーグルを抱いて座り込んでいるモナー。
そんなモナーの頭上に、どこからか現れたツンがピンク色のクリスタルをかざした。

ξ゚听)ξ「ヒール!」

クリスタルが砕け、モナーのHPを全快させる。

( ´∀`)「ありがとうもな。でも、あなたたちは一体」

モナーの問い掛けに微笑みで返し、今度はビーグルの頭上にもクリスタルをかざした。

ξ゚听)ξ「ヒール」

(;´∀`)「こ、高価なクリスタルをそんな何度も簡単に」

( ^ω^)「命にはかえられないお」

オレンジプレイヤー達を警戒して構えを解かないブーンが、二人を見ないで呟く。
それをうけてツンがモナーを見ながら頷き、ビーグルの頭を撫でた。

.

276 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:47:37 ID:EjoqH.6c0

('A`)「とりあえず回りに潜んでいる仲間はいなかったぞ」

木々の間から出てくるドクオ。

(´・ω・`)「ありがと」

(Δ)「おれ達をどうするつもりだ」

(´・ω・`)「どうしてほしい?」

(#Δ)「ふざけるな!」

('A`)「オレンジギルドのお前らにそんなことを言われたくないな」

片手剣の切っ先を男に向けるドクオ。

(;Δ)「やれるならやってみろよ。オレンジのあいつらを傷付けたのとは違って、グリーンの俺を傷付けたらその時点でお前もオレンジの仲間入りだ」

(´・ω・`)「殺るなら僕が殺るさ。でもね」

ショボンが男に近付き、いつの間にか持ち替えた太目の針を男の目玉に近づける。

(;Δ)「な、何をするつもりだ」

(´・ω・`)「剣で切るなんて、簡単なことはしない」

揺れることなく目の前に突きつけられる針。
銀色に鈍く光る先端。時折鈍い緑色に光るのが、毒が塗られている証拠だろう。

(´・ω・`)「まずは眼をつぶしてあげるよ」

(;Δ)「ひっ」

.

277 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:48:58 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「もういいもな!」

ξ゚听)ξ「いいの?あなたとこのこを殺そうとしたやつらだよ」

(;´∀`)「怖かったもな。でも、そんなやつを傷付けて、あんたがオレンジプレイヤーになっちゃったら駄目もな。それに…」

( ^ω^)「それに?」

(;´Д`)「たとえオレンジプレイヤーでも、もう、誰も死んでほしくないもな」

(´・ω・`)
 _
( ゚∀゚)

('A`)

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

( ´∀`)「ど、どうしたもな?」

(´・ω・`)「いや、……そうですね。…あなたの言う通りだ」

男の目前から針を外すショボン。
まだ喉元にナイフは突きつけられているが、あからさまにホッとした表情をする男。

(´・ω・`)「それでは行きましょう。立てますか?」

ξ゚听)ξ「はい、立って」

ツンが差し出した手を掴み、立ち上がるモナー。

( ´∀`)「ありがとうもな」

.

278 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:50:26 ID:EjoqH.6c0

( ^ω^)「これからどうするんだお?」

(´・ω・`)「とりあえず一回近くの村に行こう。それで良いですか?」

最後の言葉が自分に向けられていることに気付き、慌てて頷くモナー。
 _
( ゚∀゚)「おい、こいつらどうすんだよ」

(´<_` )「とりあえず麻痺でも」

(´・ω・`)「それはこいつらだけでいいよ」

ショボンは言いながら腰に付けている数本の筒の一つからまた違った針を取り出し、空中に投げる。
無造作に見えるが剣技によって投げられた針は弧を描いてオレンジプレイヤーに刺さった。
それぞれに呻き声を上げるオレンジプレイヤー達。

(´・ω・`)「今のはレベル5麻痺。さっきの効果が切れた頃だから、追加させてもらったよ。彼らの毒が消えてから僕らを追うなりどこかに逃げるなりすればいい。でも、追ってきたらそのときは容赦しない。今の君らはそのビーストテイマーの彼の言葉によって生きながらえているってことを、肝に銘じるんだね」

ξ゚听)ξ「あと、これ」

ツンが正四面体の小さなクリスタルを手にしている。

ξ゚听)ξ「この記録結晶に貴方達全員の顔と行動は記録したから」

.

279 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:51:23 ID:EjoqH.6c0

(;Δ)「なっ!」

('A`)「二度と俺達やそこの彼の前に現れるな」

(´<_` )「現れたら、その記録結晶の中身をアインクラッド全域に流す」

(;Δ)「そ、そんなこと出来るわけが」
 _
( ゚∀゚)「はぁ?方法なら色々あるだろうが」

(´・ω・`)「情報屋と有志で作っている新聞に情報をまわす。オレンジプレーヤーはもちろん、グリーンの君らのこともね。オレンジの彼らの名前は分からないけど、グリーンの君らのことなら、パーティーを組んでいたビーストテイマーの彼が知っているんじゃないかな?」

(;Δ)!

(´・ω・`)「返事は聞かない。じゃ、さよなら。お互いのために二度と会わないことを願うよ」

呆然と立つグリーンプレイヤー達から短刀を外し、彼らの動きを警戒しつつ村へと向かって歩くVIPのメンバーとモナーとビーグル。

残ったオレンジギルドのメンバーは、麻痺が切れてもしばらくの間その場所を動くことが出来なかった。


.

280 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:52:32 ID:EjoqH.6c0

2.ここ から


西暦2024年1月

( ´∀`)「正直あの時はみんなも怖かったもな」

そう言って微笑みながらお茶を啜るモナー。

(´<_` )「そうか」

( ´∀`)「そうもなよ。あの後、あの頃のギルドホームに連れていかれて兄者やクーにも出会ったけど、なんとなくみんなピリピリしていたもな。あ、ふさだけは最初からのんびりさんな雰囲気だったもなね。ふさは一緒にはいたけどギルドには入っていなかったからかもしれないもなけど、なんか皆と雰囲気が違ったもな」

(´<_` )「…最近はどうだ?」

( ´∀`)「あった頃だけもな!本当にこのギルドに入れてよかったもなよ。全部ビーグルのおかげもな」

(´<_` )「はぁ…」

(;´Д`)「あっ」

(´<_` )「……あのあと、ホームに戻って…。あの頃のホームは道具屋兼武具屋で、ショボンのバーボンハウスは屋台だった」

( ´∀`)「そうだったもなね。この前のクリスマスで久し振りに見れて懐かしかったもな」

(´<_` )「落ち着いてから色々話して、連続してパーティー組んでクエストやったりして」

( ´∀`)「結局欲しかった部材採取も一緒に行ってもらったもな」

(´<_` )「ビーグルが俺等のなかでアイドルみたいになって、モナーが飼育スキルを上げていたことや、牧場をやってみたいなんてことを聞いて」

( ´∀`)「ギルドが持っていたここを紹介されて、最初はNPCに管理させていたけど飼育スキルをもったプレイヤーがやった方が効率も良いからってことで、ギルドに入ったもな!」

(´<_` )「それ、実は逆なんだ」

( ´∀`)「もな?」

(´<_` )「モナーがいたから、モナーをギルドに誘うために、牧場を買ったんだ」

(;´∀`)「もな!?」

(´<_` )「あれは、モナーと知り合って少ししてからだったな」


.

281 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:54:20 ID:EjoqH.6c0

西暦2023年5月

ギルド『V.I.P.』ホーム。
道具屋兼武具屋の集会所に、ショボンによって集められていた。
 _
( ゚∀゚)「なんだよ、相談って」

(´・ω・`)「モナーをギルドに誘おうかと思ってるんだけど、皆はどう思う?」

ショボンの言葉を受け、不思議そうな顔をしながらもそれぞれに意見を言う。

(´<_` )「いいんじゃないか?何度かクエストも行って、息もあってるし」

('A`)「俺も賛成」

( ^ω^)「僕も賛成だお。モナーといると楽しいお」

ξ゚听)ξ「いいんじゃない。賛成」
 _
( ゚∀゚)「特に反対する理由はないな。賛成ってことで」

( ´_ゝ`)「もんだいない」

川 ゚ -゚)「私も良いと思うが、いきなりどうした?皆がこう言う事くらい分かっていただろう。それにギルメンを増やすのは基本的にショボンに一任しているわけだし」

全員が感じていたことを率直に口にするクー。
ショボンが少し困ったように口をゆがめた後、理由を口にした。

282 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:55:22 ID:EjoqH.6c0

(´・ω・`)「問題は、モナーがギルドに入ってくれるかってことなんだけどね」

('A`)「結構仲良くやれていると思うが?」

(´・ω・`)「今はね。でもさ、ほら、出会いが出会いだから」

(´<_` )「あ〜なるほど」

(;^ω^)「それは…」

ξ゚听)ξ「無いとは言えないわね」

(´・ω・`)「ね」

川 ゚ -゚)「なんだ、やっぱりあの時は、また暴走したのか」

(;´・ω・`)「いや、暴走って程では」

('A`)「一番酷い時の二割程度か?」

( ´_ゝ`)「ってことは、怯えられても仕方ないレベルってことか」
 _
( ゚∀゚)「『まずは眼をつぶしてあげるよ』って言いながら毒針を眼に刺そうとした時はちょっと怖かった」

川;゚ -゚)「それは」

(;´_ゝ`)「初対面でそれか」

(;´・ω・`)「ほら、ちょっと怒りでね、我を忘れたというか何と言うかなんというか」

('A`)「でもまぁ大丈夫だとは思うけどな。モナーなら、分かってくれてるだろうし」

(´<_` )「だな」

(´・ω・`)「うん。だと良いんだけどね。で、一つ提案があってさ。兄者と弟者には申し訳ないんだけど」

( ´_ゝ`)「オレ達が?」

(´<_` )「何だいったい」

283 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:56:27 ID:EjoqH.6c0

(´・ω・`)「モナーが飼育スキルを上げていて、牧場に興味があるみたいなんだ。だからギルドで用意して、そこを使ってもらおうかと思うんだど」

( ´_ゝ`)「なるほど。で?オレ達がなんなんだ?」

(´・ω・`)「お金がさすがにね。今はブーンの道具屋だけだけど、次は二人の武具屋を買おうと思っていたから、牧場を買っちゃうとそれが遅くなるなと」

(´<_` )「いやいや、次に買うのはお前のバーボンハウスじゃなかったのか?」

(´・ω・`)「当分は屋台があるから大丈夫だよ。ふさもいるから二つ稼動できる日もあるし」

( ^ω^)「そういえば、ふさはギルドに入れないのかお?」

(´・ω・`)「何度か誘ってるんだけど、断られちゃうんだよね。
『ミ,,゚Д゚彡「俺がメンバーとかおこがましいから!』
とか言って。ホームに寝泊りしてくれればいいのに、いつも宿屋に泊まっているし。まぁそれもあって、モナーを誘うのが怖かったりもするんだよ」

('A`)「モナーなら大丈夫だと思うけどな」

( ´_ゝ`)「とにかく武具屋の店は気にしなくていいぞ。当分はブーンの店を間借り出来ればいい。その方が気軽だし」

(´<_` )「店を持つのはもう少しスキルレベルが上がってからの法がいい。それに上の階層にいい物件があるかもしれないからな」

ξ゚听)ξ「でも、牧場買ってから誘って、断られたらどうするの?」

(´・ω・`)「……それは、まぁ。どうにかするよ」

川 ゚ -゚)「私的にはおまえのそのセリフの方が怖いけどな」

(´・ω・`)「そう?」


.

284 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:58:28 ID:EjoqH.6c0


西暦2024年1月


(;´∀`)「そうだったもなか…」

(´<_` )「そういうことだ。だからこの牧場はもともとお前のもんなんだよ」

(;´Д`)「で、でも、どうしてそこまでモナーを」

(´<_` )「みんな、モナーのそばにいたかったんだよ」

(;´Д`)「もな?」

(´<_` )「モナーがそばに居てくれたら、人でいられる気がしたんだ」

(;´Д`)「?みんな、ひともなよ?」

不思議そうに呟くモナーを見て、自嘲気味に笑う弟者。

(´<_` )「モナーに会った頃、何度かオレンジプレイヤーやギルドに襲われていた人を助けたりしていたんだ」

(´<_` )「助けることもできたし、助けられなかったこともあった」

(;´Д`)「!」

(´<_` )「そのうちに、少しずつ麻痺していたんだな。オレンジプレイヤーと戦うことに。『人』と戦うことに」

(;´Д`)「…」

(´<_` )「それに、襲われていたやつは大体こう言うんだ『そんなやつら殺してくれ!』ってね。勿論殺したことは無い。ギリギリまでHPを減らしたことはあったけど。そして、多分、どこかで『オレンジプレーヤー』の事を人とは思えなくなっていたんだろうな。酷い現実を見てきて」

(´<_` )「あの時、モナーが止めなければもしかするとショボンは…」

285 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 00:59:20 ID:EjoqH.6c0

( ´Д`)「ショボンは…みんなはそんな事しないもな」

(´<_` )「…」

断言するモナーに泣きそうな笑顔を見せる弟者。

(´<_` )「モナーは、今まで助けた誰とも違った。自分が襲われたのに、襲った相手の命を心配できた。あの時、おれ達も人間に戻れたような気がしたんだ。モナーの優しさに触れて、救われたんだ」

( ´Д`)「モナーはそんな良い奴じゃないもな」

(´<_` )「そんなモナーが、みんな好きなんだよ。だから、ギルドに誘った」

( ´Д`)「もなもな…」

(´<_` )「だから、ビーグルのおまけみたいな事は言わないでくれよ」

( ´Д`)「……分かったもな」

(´<_` )「ありがと」

( ´∀`)「お礼を言うのはこっちもな」

笑いあう二人。
冷めたお茶を、二人とも飲み干した。


.

286 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:00:37 ID:EjoqH.6c0


3.これ から

(´<_` )「しかしあれ、いつまで続くんだ?」

( ´∀`)「あれ?」

(´<_`;)「あれだよあれ」

弟者の指差した先で駆け回るショボンとビーグル。

( ´∀`)「今日は時間があるって言っていたもなから、多分30分くらいは」

(´<_`;)「あのギルマスを見てれば、そんな風に思っても仕方が無いよな」

(;´∀`)「それは……まぁ」

モナーの苦笑いを見て何故かウインドウを出す弟者。

(´<_` )「なんか頭にきた」

( ´∀`)「なにをするもな?」

(´<_` )「皆を呼んでやる」



.

287 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:01:38 ID:EjoqH.6c0

30分後


 _
(;゚∀゚)「…」

川;゚ -゚)「…」

( ´_ゝ`)「…」

('A`;)「…」

(;・∀・)「…」

(;,,゚Д゚)「…」

(;*゚ー゚)「…」

(;゚∋゚)「…」

(;´∀`)「みんなどうしたもなか?」

(´<_` )「そりゃまぁ絶句するよな」

ξ゚听)ξ「じー」

(´<_` )「ツンはなにやってんだ?」

ξ゚听)ξ「記録結晶に保存。ブーンとフサは店でこられないし、あとでショボンにも見せてあげようかと」

(;・∀・)「(鬼だ…)」

(;´_ゝ`)「(ここに鬼がいる)」

ξ゚听)ξ「なんか文句あるなら後で決闘する?」

( -∀-)「なんのことでしょう」

( ´_ゝ`)「いや、良いんじゃないかな。うん」

.

288 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:03:44 ID:EjoqH.6c0

('A`)「あ、こっちに気付いたぞ。表情がくるくる変わってる。さ、帰るか」
 _
( ゚∀゚)「そうだな!釣りの続きをしないと」

(´<_` )「俺もそろそろ戻るか」

( ´_ゝ`)「オーダーの続きをやらないと」

(;*゚ー゚)「わ、私もふささんの手伝いに」

(;,,゚Д゚)「おれも戻るぞゴラァ」

( ・∀・)「工房もそんなに長くあけられないし」

ξ゚听)ξ「これくらい撮れれば良いか」

川 ゚ -゚)「私も新作の調合の続きを…」
 _
( ゚∀゚)「ってことでモナー、」

川 ゚ -゚)ξ゚听)ξ( ・∀・)( ´_ゝ`)
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「あとはよろしく(お願いします)」('A`)(´<_` )

.

289 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:04:45 ID:EjoqH.6c0

(;´∀`)「え?」

( ゚∋゚)「   」

(;´∀`)「クックルまでもなか!」

風が通り過ぎたように部屋から消えるメンバーたち。
そして変わりにやってくるショボンとビーグル。

(;´・ω・`)「み、みんなは」

▼*・ェ・▼「きゃんっ」

(;´∀`)「さっき来て、今帰ったもな」

(#´・ω・`)「…モナー?」

(;´∀`)「ち、違うもなよ、皆を呼んだのはモナーじゃないもな」

(#´・ω・`)「モナ〜?」

(;´∀`)「違うもな!モナーじゃないもな!みんな!戻ってくるもな!」

▼*・ェ・*▼「きゃんきゃんっ」

その日『V.I.P.牧場』に夜遅くまでショボンの呟きが聞こえたのは、また別の話。

.

290 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:05:34 ID:EjoqH.6c0


第三話 終了


(#´・ω・`)「ツン、記録結晶は?」

ξ゚听)ξ「はい、あげる(もう複製作ったしね)」


.

291 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/10(日) 01:09:23 ID:EjoqH.6c0
こんな感じで三話終了です。

しえん、ありがとうございます。

今回はちょっと短めで、色々言葉を出してみました。

次はクックルかジョルジュの話の予定ですが、予定は未定で。
(;´・ω・`)

読んでいただいて、ありがとうございます。

ではまた。

292 名前:名も無きAAのようです:2013/03/10(日) 01:20:16 ID:J6QAdj8kO


293 名前:名も無きAAのようです:2013/03/10(日) 01:54:45 ID:wo4vxHSg0
乙!

294 名前:名も無きAAのようです:2013/03/10(日) 15:51:03 ID:XHcwfoTY0
乙です!

295 名前:名も無きAAのようです:2013/03/10(日) 17:57:11 ID:o8Bifixk0
ビーグルhshs!!

296 名前:名も無きAAのようです:2013/03/12(火) 22:50:13 ID:zfhX.8o.0
おつおつおつ(^ω^)

297 名前:名も無きAAのようです:2013/03/17(日) 01:40:05 ID:grdEB/Rk0
期待してる

298 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:47:28 ID:S5Fgy2l20
どーも作者です。

ってことで、第四話の投下いきます!

299 名前:名も無きAAのようです:2013/03/17(日) 20:48:54 ID:nQWKCXuQ0
ktkr

300 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:52:41 ID:S5Fgy2l20

第四話 緑の手


0.花壇


西暦2023年6月

迷宮区そばの村。
既に攻略されたフロアではあるが最前線がまだ三つ上のため、小さな村のここも冒険者で賑わっていた。
 _
( ゚∀゚)「次は何を飼うんだ?」

( ´∀`)「鶏がいて牛と豚が手に入ったから、次は羊か馬もなかね。でも繁殖にも力を入れないといけないもな」

ξ゚听)ξ「アインクラッドの羊も毛は取れるの?」

(´・ω・`)「確か取れたはずだよ。服のジャンルに羊毛があった筈だし」

川 ゚ -゚)「馬肉もいいな」

(;´_ゝ`)「最初から肉を付けるあたりがさすがだな」

(´<_` )「乗馬も出来るんだよな。羊の次は馬が良いな。サラブレッドとか乗らせてくれよ」

( ^ω^)「ジンギスカンも桜肉も好きだお」

('A`)「おまえら牧場にだって大きさの上限はあるんだぞ」

( ´∀`)「まだまだ余裕はあるから良いもなよ。でも買うより捕まえた個体の方が繁殖力が強いしレア種が生まれる可能性も高いらしいもなから、捕獲の狩りとクエストをよろしく頼むもな」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)川 ゚ -゚)
     「ショボン、情報収集はよろしく」
                   ('A`)(´<_` )

(;´-ω-`)「はいはい」

( ´∀`)「よろしくもな」

▼*・ェ・▼「きゃんっ」

.

301 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:53:45 ID:S5Fgy2l20

ぞろぞろと連れ立って歩く、ギルド「V.I.P.」の9人と1匹。
足並みは軽く、軽口を言い合っているその姿はまるで学校帰りの学生のようだが、つい先程まで迷宮区でモンスター相手に死闘を繰り広げていた。
しかし今、その姿には戦闘での疲れを感じさせない。
それはもしかすると、心と体の疲労を上回る今生きていることへの感謝の心と、仲間たちが傍に居る事への安心感があるからなのかもしれない。

('A`)「なんか向こうが騒がしいな」

( ^ω^)「だおね。人が集まってるみたいだお」

(´・ω・`)「…向こうの広場では、ふさが屋台を出してるはずだけど」

ショボンの言葉を聞くか聞かないかのうちに駆け出す9人と1匹。
といってもそれほど距離は無いためすぐに人ごみにたどり着く。

ξ゚听)ξ「ケンカ?」

川 ゚ -゚)「圏内でそれは無いんじゃないか。犯罪防止コードが働くだろう」

('A`)「違う、決闘だ」
 _
(;゚∀゚)「おい、あれもしかして『初撃決着モード』じゃなくないか?やられてるほう、HPバーもう半分以下っぽく見えるぞ」

(;^ω^)「え?」

.

302 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:54:33 ID:S5Fgy2l20

デジタル世界であるこのアインクラッドでは、通常街や村は犯罪防止コードで守られており、武器は勿論素手での攻撃も見えざる壁によって阻まれる。
その守られている範囲をプレイヤー達は『圏内』と呼んでいた。
しかしその圏内でも攻撃が当たりHPが減る状況が存在する。

それが『決闘(デュエル)』である。

申請し、相手が承諾することによって始まるその決闘の間は、相手の攻撃によってのみ自分のHPが減り、自分の攻撃によってのみ相手のHPを減らせることが出来るようになる。

人ごみの向こう、広場の隅にある花壇の中で体を丸める男と、その男に曲刀を振るう男。
曲刀の男は奇妙な仮面をつけており、同じく似たような仮面をつけた仲間が二人、すぐ傍で囃し立てていた。

(;´_ゝ`)「まさか」

(´<_`;)「さすがにそれはないだろう」

(´・ω・`)「いや、多分ジョルジュの言う通りだよ。あれは初撃モードじゃない。……どちらかのHPがなくなるまで戦う『完全決着モード』か、制限時間の間戦ってどちらが多くHPを減らすかを競う『制限時間モード』か…」

ξ゚听)ξ「それって…ほんとに殺すつもりってこと?」

(;´_ゝ`)「どちらにせよ降伏すれば終われるはずだ。花壇の男がさっさとすれば良いんだよ」

(´<_`;)「ああ、そうだな。……花壇の男、意識失ってたりしてないよな」
 _
(;゚∀゚)「微妙に動いてるから大丈夫だと思うけどよ」

('A`;)「何で反撃するなり逃げるなり降参するなりしないんだ?」

笑いながら花壇で丸くなる男を切りつける男。
曲刀の切っ先で掠る様に切り裂いているため一度に多量のHPは減らないが、手数は少なくないため徐々にレッドゾーンに近付いている。

.

303 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:56:23 ID:S5Fgy2l20

曲刀を振るう男の仮面は目の部分が広めに露出しており、血走ったような目で花壇の男を凝視しているのが良く見えた。

最初は物珍しさに集まっていた野次馬たちも徐々に決闘のモードに気付くものが現れ始め、ざわつき始める。

(<>)「おら!武器を持てよ!人間とそんな花の価値が同じなんだろ!だったら戦えよ!」

花を蹴散らそうとする曲刀男の足の前に体を持っていく花壇男。

(<>)「そんなことしてる暇があったら少しは俺達に役立つことしてみろっていうんだよ!」

(も)「ボス戦に出ないやつが俺達にたてついてんじゃねえよ!」

(り)「やっちまえ!」

一方的に攻撃を仕掛ける曲刀の男。

周囲のざわめきは徐々に大きくなり、制止をするよう声をあげるものもいるが、曲刀男の仲間が武器を向けて睨むと声を抑えてしまう。

ξ#゚听)ξ「なにあいつら。攻略組なの?」
 _
(#゚∀゚)「だから何だってんだよ」

(;^ω^)「二人とも落ち着くお。まさか命まではとらないだろうし」

今にも剣を抜いて駆け出しそうなツンとジョルジュを抑えるブーン。
そういうブーンもいつでも駆け出せるように視線は花壇男のHPバーを凝視している。

川 ゚ -゚)「お前たち、決闘に割り込むような真似はするなよ」

.

304 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:57:50 ID:S5Fgy2l20

ξ#゚听)ξ「クーはむかつかないの!?」

川#゚ -゚)「むかつかないわけが無いだろうが!だが感情のみの行動でギルドが目を付けられて無用な争いに巻き込まれる可能性があることを考えろ」

('A`;)「?どうしたモナー?さっきから黙り込んでいるが」

(;´∀`)「……やっぱりもな……」

(;^ω^)「モナー?」

(´<_`;)「お、おい!」

制止するまもなく駆け出すモナー。
その後をビーグルが追う。

(;´∀`)「クックル!」

花壇の中に入り、うずくまっている男の肩に手をかけるモナー。
そして顔を上げる男。

(〆;∋゚)「   」

(;´∀`)「やっぱりクックルもな」

(#<>)「決闘の邪魔すんじゃねえよ!」

突然の乱入者に呆気に取られ剣をひいていた男が荒げた声を放つ。

(;´∀`)「こんなのは決闘じゃないもな!ただの人殺しもな!」

▼#・ェ・▼「ぐるryぅぅrぅぅrryぅぅう」

( ´∀`)「クックル、早く降参するもな。こんなのに付き合う必要ないもな」

(((〆;∋゚)))

黙って首を振り、再び顔を伏せるクックル。

(;´∀`)「ど、どうしたもな!」

(<>)「その兄ちゃんはまだ決闘を続けるってよ。とっとと退け!神聖な決闘をじゃますんな!それともなんだ、お前が変わるのか?ビーストテイマーの兄ちゃんよ!攻略組にかなうつもりならやってやるぜ!」

(;´∀`)「!」

▼#・ェ・▼「うぅぅぅぅぅぅううぅぅぅうぅぅぅ」

(´・ω・`)「『神聖な決闘』ねぇ」

.

305 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 20:59:04 ID:S5Fgy2l20

石畳の通路を、わざと音を立てて歩き、ゆっくりと近寄るショボン。

川;゚ -゚)「ショボン!?」

( ´_ゝ`)「あ〜あ」
 _
(#゚∀゚)「先を越された」

(#<>)「次から次へとなんだ!おまえも死にたいのか!」

(´・ω・`)「本当に『神聖な決闘』なら、せめて顔くらい出すんだね。それとも、人に見せられないような不細工な顔なのかな」

そのまま仮面の男達を通り過ぎてから、振り返る。
腕を組み、斜に構え、微笑を浮かべながら憐れむ様な視線で仮面の男たちを見た。

(#<>)「なっ!」

(#も)「貴様!」

(#り)「俺達をだれだと!」

(´・ω・`)「『プレイヤーが育てることの出来る花壇に水をやっていたその彼。そこに「花なんか育ててるんじゃねぇ!攻略もしないやつが前線の町に出てくるんじゃねえよ!」とわめきながら花壇に入って花を蹴散らす仮面の男達。止めに入った彼を口汚く罵り、花を蹴散らし続ける。育てていた花を守ろうと体を張った彼に、決闘を誘う。「受けなければ、お前がいなくなった後に花を全て潰してやる」と言い、更に「制限時間の間俺の攻撃を受け続けられたらもうやらないでやるよ」…そして、決闘スタート』…なるほどね。これはすごい『神聖な決闘』だ」

いつの間にか開いたウインドウでメッセージを開き、読み上げるショボン。
その声は大きくは感じないがよく響く声で、固唾を飲んで見守っていたVIPのギルドメンバーは勿論、野次馬にも届いていた。
そして非難の言葉を口々に言いながらざわめき始める。

.

306 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:00:40 ID:S5Fgy2l20

(;<>)「だ、誰がそんなものを」

(´・ω・`)「こんな広場でそんなことをやれば、見ていた人だっているさ」

花壇のそば、屋台『バーボンハウス』にいるフサが、表情は真剣だが下げた手で小さくピースサインをし、自分を見ている何人かのVIPの面々にアピールした。

(;^ω^)「ふさ…」

(´<_` )「あいつ、まわりにNPCだと思われてないか」

ξ;゚听)ξ「あいつはもう…」

(´・ω・`)「顔がぶさいくだと、やることなすことぶさいくで良いね」

(#<>)「貴様……攻略組にたてついていいと思っているのか!」

(#も)「そうだ!俺達がいなければこの層にも来る事が出来なかったんだぞ!」

(#り)「このゲームから解放されたいのなら俺達を敬え!言うことを聞け!」

(´・ω・`)「本音が出たね。心が汚いから姿が不細工なのか、姿が不細工だから心が汚くなったのか。…両方かな」

仮面をつけているため表情は見えないが、口調は勿論体全体から怒気を放つ仮面の男達。
既にクックルとモナーには目もくれず、ショボン一人だけを睨んでいる

(#<>)「だが事実だ!俺達がいなければクリアはありえない!解放されない!それに考えてみろ!ここで花を育てる暇があったら外に出てモンスターを倒して攻略に参加する方が攻略に繋がるはずだ!」

.

307 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:01:57 ID:S5Fgy2l20

曲刀の男の言葉に、周囲のざわめきが止まる。
思うところは少しずつ全員があるのだろう、目をそらす者、唇を噛む者、頷く者、色々である。

(#<>)「ボス戦に出ないやつに、俺達にたてつく資格など無い!」

(´・ω・`)「それは、全ての生産職と情報屋を敵に回す発言だね」

(#<>)「今のこのゲームでそんな職を選ぶ奴は戦うことから逃げているだけだ!」

(´・ω・`)「……下司の極みだね」

(#<>)「なんだと」

(´・ω・`)「今のこの世界だからこそ、生産職は必要なんだ。攻略のためはもちろん、生きる為、『生き続ける為』にね。それが本当に分からないのなら、分かるまで人前に出ない方が良い」

(#<>)「!」

(´・ω・`)「不細工な顔を人前に晒さないためにもさ」

ファンファーレ。
決闘の勝敗が決し、曲刀の男の頭上に『WINNER』の文字が浮かぶ。

(´・ω・`)「約束は守りなよ」

(#<>)「なんだと!?」

(´・ω・`)「制限時間の間、彼は花を守り続けた。君達が出した条件だろ?『神聖な決闘』をするために交わした誓いだ。破るわけないよね」

(#<>)「くっ…」

(も)「この決闘は無効だ!」

(り)「そうだ!邪魔が入ったんだから当然だろう!」

(#<>)「そ、そうだ!神聖な決闘に邪魔が入ったんだ!無効に決まってる!」

.

308 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:03:41 ID:S5Fgy2l20

(´・ω・`)「名は体を現すというけど、顔は心をあらわすってのもあるよね。不細工な顔をした奴は、不細工な心の持ち主だよ」

(#<>)「うるさい!今度はお前が相手だ!」

ウインドウを出し、操作する曲刀の男。
するとショボンの前にウインドウが現れる。

(<>)「お前が勝ったらさっきの約束は守ってやる。だが、俺が勝ったらお前は俺の奴隷だ」

(´・ω・`)「…良いだろう」

('A`)「おい!」

(´・ω・`)「おや。大丈夫。安心して」

('A`)「心配なんかしてねぇよ。めんどうになるから、勝ちすぎるなよって言いに来ただけだ」

(´・ω・`)「なんだ…って言うか、そんなこと言うために出てきたの君」

.

309 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:05:00 ID:S5Fgy2l20

近寄ってきたドクオ。
それに気付いてモナーの傍に駆け寄るクーとブーン。
ツンとジョルジュはドクオに近寄り、対決を見守る。
兄者と弟者は呆れた顔をしながらのんびりと歩いてきた。

(;´・ω・`)「みんな…出てきたら僕一人が矢面に立った意味がさ……って、もう遅いか。まぁ大人しくしてろって言う方が無理なメンバーだよね。……で、モードはどれにする?」

ギルドメンバーの動きを見た後、曲刀の男に向き直す。

(#<>)「『初撃』でいい」

(´・ω・`)「それで良いの?」

(#<>)「殺しちまったらお前を奴隷に出来ないからな」

『初撃決着モード』
クリティカルに値する一撃か、ある程度のダメージの蓄積を最初に与えた方が勝利となるモードである。

それを選択して決闘を承認するショボン。

すると開始までをカウントする60の文字が視界の端に浮かび、カウントしていく。

(#<>)「どうせお前も生産職なんだろう。攻略組との格の違いを教えてやる!」

曲刀を構える男。

.

310 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:06:09 ID:S5Fgy2l20

男に対し、10メートルほど離れた位置に立ったショボンはウインドウを操作して片手直剣と手甲を装備し、手甲を前にして剣を後ろに下げて構えを取る。

( ^ω^)「モナー、大丈夫かお?」

(;´∀`)「もなは大丈夫だけど、ショボンが」

川 ゚ -゚)「あいつなら大丈夫だ。もう完全にショボンのペースだからな。完全に手の中で躍らせている。相手が可哀想なくらいだ。それよりもモナー、彼にヒールクリスタルを」

(;´∀`)「でも、これは今日の迷宮探索用に渡された…」

( ^ω^)「共有タグじゃなくて、個人に渡されたものはいつ何に使っても問題ないお」

川 ゚ -゚)「ホームに帰った時に使わなかったら回収してギルドの倉庫に戻すが、まだ帰ってないから問題ない」

( ´∀`)「ありがとうもな!ヒール!」

取り出したクリスタルをクックルに使う。

( ´∀`)「クックル!大丈夫もなか?」

( ゚∋゚)「    」

( ´∀`)「よかったもな!」

顔を上げたクックルに笑顔を向けるモナー。

ちょうどその時、ショボン視界に浮かぶカウントが0となった。

.

311 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:07:08 ID:S5Fgy2l20

剣技の加速を使って突進する曲刀使いの仮面の男。
視界の中のショボンが武器を落としたのを見て勝利を確信する。
しかしその直後目の前が暗くなり、顔と頭に痛みが走る。

(;<>)「ぐわっ!」

剣技は中断され、ショボンまであと2メートルほどの位置で立ち止まって目を押さえる仮面の男。
両目に刺さった太い針が、指の隙間から飛び出している。

そして剣技キャンセルによる硬直をした男の体に次々に突き刺さる針。

(´・ω・`)「本当、初撃決着モードでよかったよ」

攻撃判定は低いが『急所』と呼ばれる場所に突き刺さる針は、痛みと共に思考を麻痺させた。

少しずつ削られるHP。

(´・ω・`)「僕が君を殺さないですんだ」

二十数本の銀色の線が男の体を通り過ぎた後、目に刺さった物と同じ太い針が仮面の男の喉元に刺さる。その数秒後、ショボンの頭上に『WINNER』の文字が浮かんだ。


.

312 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:10:52 ID:S5Fgy2l20



1.花影



.

313 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:11:50 ID:S5Fgy2l20

一瞬の静寂。
あまりの出来事に周囲で見ていた者達も声を出すことが出来ず、ただ呆然とのた打ち回る仮面の男を見ていた。

「すげぇ」

しかし一人が声を漏らすと、小さなどよめきが生まれ、それは次第に大きな歓声となった。

口々に今の技を賛美する野次馬たち。

「あ、あれって投擲スキルだよな」
「片手直剣使いと思わせて、その剣を離して針に持ち替えるなんて普通考えてもやらねぇよ」
「なんだあいつ」
「おい、あいつ誰だ」
「しらねぇよ」
「投擲スキルもカッコいいなぁ」
「あいつ、どこかで見たことあるような…」
「どんだけ命中上げればあんなに精密に当てることが出来るんだよ」
「すげえ!すげえよ!」

曲刀使いの男に近寄り、無造作に太い針を抜くショボン。

(´・ω・`)「ぼくの勝ちだ。今度こそ約束は守ってもらうよ」

.

314 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:12:53 ID:S5Fgy2l20

(;<>)「あっ……あっ……」

声にならない嗚咽を漏らす曲刀使い。

(´・ω・`)「そこの二人!」

ショボンが何も出来ずに立ちすくむ残りの仮面の男達に声をかける。それでやっと我に返ったのか慌ててのた打ち回る男に駆け寄ってくる。

(´・ω・`)「両目の部位欠損ペナルティ。目だからすぐ治ると思うけどね。回復するまで付いていてあげるといい」

(;<>)「殺す!お前を殺す!二人とも!こいつを殺せ!」

(;も)「……」

(;り)「……」

(´・ω・`)「……今から完全決着モードで決闘するかい?」

(((;も)))

(((;り)))

(;<>)「おい!どうした二人とも!?」

黙って首を振る二人に苛立ったように声をかける曲刀使いの男。

(;<>)「おい!」
 _
( ゚∀゚)「次の相手は俺だよ」

.

315 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:14:14 ID:S5Fgy2l20

男の首筋に当てられる剣の切っ先。
もちろん攻撃は当たらないが、ただ乗せられただけならばその刃物の感触と冷たさは伝わる。

ξ゚听)ξ「いいえ、私よ」

喉仏に当たる細剣の先。
まるで肉に食い込むように当てられ、アバターなのだから気にすることは無いのだが、何故か喋るのをためらってしまう。

(;<>)「!」

(´・ω・`)「二人とも…」

ショボンの後方にはドクオが片手直剣を無造作に肩に担ぎながらこちらを見ている。

視界が快復した曲刀使いの男は自分を囲む三人の殺気を含んだ瞳に勢いをそがれ、ただ息を飲んだ。

(´・ω・`)「『彼が育てた花を、花壇の花を悪戯に蹴散らすような真似はしない』。約束してもらえますね」

(;<>)「……分かった」
 _
(;゚∀゚)「わかっちまったよ。つまんねぇ」

ξ゚听)ξ「別に良いわよ。こんなのと戦っても得るものなんて無いし。でも、私としてはもう一つ約束してほしいけな。二度と私達の前に姿を現さないって」

(;´・ω・`)「二人ともさぁ」

ξ゚听)ξ「ね、約束してくれないかな」

持った細剣にほんの少しだけ力を込めるツン。

.

316 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:15:19 ID:S5Fgy2l20

(;<>)「お、お前たち、俺達攻略組にこんな事をしていいと思っているのか」

(´・ω・`)「攻略組ね…。ギルドはどこ?」

(;<>)「そ、それは…ソロだ、俺達はソロで攻略している。群れなければ何も出来ない奴とは違うんだ!」

(´・ω・`)「君も三人で行動しているように僕には見えるけどね」

(;<>)「…」

(´・ω・`)「それに、例え本当に攻略組だとしても、君達がやったことは許されるべきことではない……と、僕は思う」

(;<>)「!」

(´・ω・`)「君達がこれからも今の心のままでこのアインクラッドを生き、攻略をするのは君たちの自由だし、それは僕や僕の仲間の感知するところではない。けれど、次に僕の仲間に害が及ぶような真似をしたら、容赦はしない」

語りかけるショボンのどこからも殺気や憎しみは現れていない。
ただ、淡々と言葉を紡いでいるだけだった。
けれど、それが仮面の男達には恐ろしかった。

(;<>)「……わかった。約束は守る」

(´・ω・`)「よろしく頼むよ」

衆人環視のなか、仲間の手を借りて立ち上がる曲刀使いの仮面の男。
そして疲労困憊の様相を見せながら、周囲に悪態をつきつつ立ち去っていった。

.

317 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:16:26 ID:S5Fgy2l20

彼らの姿が視界から消えるのを確認し、モナーに近寄るショボン達。
花壇から出てクックルを介抱していたクーとブーンが立ち上がり、スペースを作る。

(´・ω・`)「モナー」

( ´∀`)「ショボン、ありがとうもな!」

(´・ω・`)「ありがとうじゃ無いよまったく……心配かけないでよほんとにさぁ。急に走り出したのを見たときはどうしようかと思ったよ」

(;´∀`)「ご、ごめんなさいもな」

(´・ω・`)「まずは無事でよかった。で、彼は?」

立ち上がり、お辞儀をするクックル。
大きな体だが、縮こまるように体を丸めてお辞儀をする。

( ´∀`)「彼はクックルもな。…昔、パーティーをくんでいたもな」

( ゚∋゚)「   」

( ´Д`)「まだ大きな声は出ないもなね」

(;´・ω・`)「え?」
 _
(;゚∀゚)「今喋ったのか?」

ξ゚听)ξ「うそ」

( ゚∋゚)「   」

( ´Д`)「『ありがとう。こんな声でごめんなさい』って言ってるもな」

(;´・ω・`)「いや、こちらこそすみません。失礼な態度を」

ショボンの言葉に笑顔を見せながら顔を横に振るクックル。

.

318 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:17:24 ID:S5Fgy2l20

( ´Д`)「『気にしないで下さい』っていってるもな」

そして花壇に向かってしゃがみこむと、花を二本摘み取った。

( ´Д`)「クックル?」

それをツンとクーに一本ずつ渡す。
見たことの無い淡い暖かい色をしたその花は、二人の手の中で風にそよぐように揺れた。

再び大きくお辞儀をするクックル。
そして何度かお辞儀を繰り返しながら、立ち去ろうとする。

( ´∀`)「クックル!またフレンド登録をするもな!」

モナーの言葉を聞き、悲しそうに首を振るクックル。

( ´Д`)「クックル…」

もう一度大きくお辞儀をしてから、逃げるように駆け出すクックル。

( ´Д`)「!クックル!」

人ごみに紛れるクックル。
追おうとするモナーだが、ショボンに腕を掴まれてしまった。

.

319 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:18:27 ID:S5Fgy2l20

( ´Д`)「ショボン?」

((´・ω・`))

黙ってモナーの瞳を見る。そして首を振った。

( ´Д`)「いなくなったのは、クックルの意志もなね……。モナも、それは分かってるもな……」

(´・ω・`)「何があったのかを知らない僕が言うべきことではないかもしれないけど」

( ´Д`)「ううん。ありがとうだもな。これ以上、クックルを苦しめたらだめもな」

▼・ェ・▼「くぅ〜ん」

( ´∀`)「ありがとう、ビーグル」

モナーの足に体を擦り付けるビーグル。
そんなビーグルを抱き上げて、胸に抱く。

( ´∀`)「モナーは、大丈夫もなよ。ビーグルも、皆もいるから。…だから、クックルにもそういう人がいてほしいもな」

川 ゚ -゚)「話しているところすまん。ショボン、来てくれ」

ビーグルを抱くモナーを複雑な表情で見つめていたショボンだったが、クーに呼ばれ花壇に近寄った。

.

320 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:20:59 ID:S5Fgy2l20

(´・ω・`)「どうしたの?」

(´<_` )「さっき貰った花だが、レア種だそうだ」

(´・ω・`)「え?」

川 ゚ -゚)「見たことが無かったからタップして情報を出したんだが、私のレベルでは判別が出来なかった」

( ´_ゝ`)「花に見えても属性は違う可能性があるから俺達も調べてみたんだが、出てこないんだ」

ξ゚听)ξ「こっちも。私も駄目だし、」

( ^ω^)「僕でも名前しか出なかったお」

川 ゚ -゚)「なんて名前だ?」

( ^ω^)「えっと……『アルムマリネの花』だお」

川;゚ -゚)「アルムマリネだと?」
 _
( ゚∀゚)「ん?なんか聞き覚えがあるな」

川;゚ -゚)「前に採取クエストを手伝ってもらったやつだ。それは『アルムマリネ』という薬草だったが」

( ´_ゝ`)「花も咲くんだな」

川;゚ -゚)「聞いたことが無い。花の咲く薬草など」

(´<_` )「どういうことだ?」

川;゚ -゚)「……わからん」

.

321 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:21:53 ID:S5Fgy2l20

( ^ω^)「新しいPOTとか、何かを作れるようになる可能性もあるおね。新しい物が見つかったってことは」

(´<_` )「情報屋にも情報を流して…」

川;゚ -゚)「とりあえずは待て、まずはこちらで調べて整理する。薬草系なら調合のフォルダも調べないとならんしな」

ξ゚听)ξ「染色とかでもうれしいな。きれいな花の色してるし。この色で春物のブラウスとかスカート作ってみたい」
 _
( ゚∀゚)「それ、さっきの男が栽培した花なんだよな」

( ´_ゝ`)「そうだろうな。ずっと守ってたみたいだし」

(´<_` )「ってことだ。どうするショボン」

(´・ω・`)「……」

黙ってメンバーの会話を聞いていたショボンがモナーを見る。

(´・ω・`)「モナー」

( ´∀`)「なにもな?」

(´・ω・`)「なにはともあれ、さっきの行動にはペナルティを与えさせてもらうよ」

.

322 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:23:25 ID:S5Fgy2l20

ξ゚听)ξ「ちょっ」

(;^ω^)「ショボン!?」

(´<_` )「おいおい」
 _
(;゚∀゚)「まじか」

(´・ω・`)「……洗いざらい、彼のことを話してほしい。おそらくはモナーにとって思い出したくない過去も含まれていると思うけれど」

( ´Д`)「もな…」

川 ゚ -゚)「ショボン」

( ´_ゝ`)「なるほどな」

(´・ω・`)「彼の私的な部分のことも、君が知っていることを全部。これはギルドマスターとして、メンバーに対する命令だよ」

ξ゚听)ξ「ショボン…」

( ^ω^)「ショボン…」

(´<_` )「さすがだな」
 _
( ゚∀゚)「?」

( ´Д`)「わかったもな…」

抱いていたビーグルをおろすモナー。
ビーグルが心配そうに体を摺り寄せ、モナーを見上げる。

▼・ェ・▼「くぅ〜ん」

( ´∀`)「ショボン、ありがとうもな。でも、話すのは命令だからじゃないもな。皆にモナーの事を知っていてほしいからもな。そして…」

口淀むモナー。
躊躇し、そして思い切ったように口を開く。

( ´∀`)「クックルを、助けたいからもな」

みんなの顔を見回すモナー。
みんなの笑顔を見て、ニッコリと微笑む。

▼*・ェ・▼「きゃんっ!」

.

323 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:25:50 ID:S5Fgy2l20



---「2.」へ続く---


.

324 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/17(日) 21:28:31 ID:S5Fgy2l20
ということで、短いですが本日はここまでです。

今回は思った以上に長くなりそうです。
(;´・ω・`)
しかも作者PSPのアインクラッドを冒険しているためテンポは遅くなりますが、お付き合いいただければ嬉しいです。

325 名前:名も無きAAのようです:2013/03/17(日) 21:45:11 ID:YlSGi63g0
乙!

326 名前:名も無きAAのようです:2013/03/17(日) 21:45:20 ID:nQWKCXuQ0


327 名前:名も無きAAのようです:2013/03/17(日) 22:50:13 ID:cw.8SVGc0
乙!

328 名前:名も無きAAのようです:2013/03/17(日) 23:34:20 ID:ArVA4u9Y0
乙!

これはいいものだ

329 名前:名も無きAAのようです:2013/03/18(月) 21:27:59 ID:Bs/F67Gg0
PSPのゲーム面白い?
買おうかデリヘル呼ぶかで迷ってるんだが

330 名前:名も無きAAのようです:2013/03/18(月) 21:46:59 ID:Zxywg8Ro0
>>329
キャラゲーのくせにガチっぽいらしい
でも終盤になると失速感がすごいとか…

331 名前:名も無きAAのようです:2013/03/20(水) 12:56:27 ID:gPmyzZJ.O
追いついた!
乙、続きwktk!!

332 名前:名も無きAAのようです:2013/03/20(水) 16:24:52 ID:os5aUgXI0
追いついた!
面白いなこれ

333 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:17:09 ID:W8XyU8Gk0
どーも作者です。

乙と感想ありがとうございます!
かなり嬉しいです!

アインクラッドはまだ80層をウロウロしています。
とりあえずレベル上げをちゃんとやればクリアできるので、僕でも出来ました。
アスナとシノンとリズが可愛いです。
とりあえず一回目はアスナエンドを目指す予定です。

原作とアニメの両方が好きなら楽しめるゲームではないかと。

では投下いきます!

334 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:18:24 ID:W8XyU8Gk0



2.弔花



.

335 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:19:33 ID:W8XyU8Gk0

ギルドVIPホーム。
雑貨屋Boon二階のリビングにて思い思い椅子に座り、モナーを見ている。

ウインドウを開いていたショボンがメッセージを打ち終わり、皆を見た。

(´・ω・`)「ごめんごめん。さ、話といこうか」

ξ゚听)ξ「まだ全員揃ってないけどいいの?というかあいつはどこに行った訳?いつのまにか姿が見えなかったけど」

(´・ω・`)「ドクオにはぼくから伝えるよ。今はちょっと用事をお願いしてる」

( ^ω^)「メッセージの方はもう大丈夫なのかお?」

(´・ω・`)「とりあえず大手と親密に取引してるギルドとは終わったから、残りは後で処理するよ。あ、でもウインドウはちょっと出したままにしておくけど気にしないで」

(´<_` )「スカウトか?」

(´・ω・`)「まあね。僕個人と、ギルド全体の吸収と、各メンバーに向けてと…ちゃんと断ってるのになぁ」

ミ,,゚Д゚彡「あれを見たらしょうがないから」

川 ゚ -゚)「最前線に近い分、まともな攻略組もいただろうしな」

( ´_ゝ`)「このギルドは戦力としても財源としても魅力的だからしょうがないだろ」

(´・ω・`)「みんなのおかげでね。常連も得意客も増えてきたし。みんなも個別にスカウト来る事があると思うけど、突然辞めるのだけはやめてね」
.

336 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:20:46 ID:W8XyU8Gk0
 _
( ゚∀゚)「抜けないし」

ξ゚听)ξ「同じく」

川 ゚ -゚)「当然」

( ^ω^)「おっおっ」

( ´_ゝ`)「ここは居心地がいいんだよ」

(´<_` )「だな」

( ´∀`)「やめないもな」

▼*・ェ・▼「きゃんっ」

ミ,,゚Д゚彡「やめるわけないから」

(*´・ω・`)「…ありがと。みんな」

(´・ω・`)「でもフサギコは誘っても誘っても入ってくれなかったよね」

ミ;,,゚Д゚彡「そ、それはおれに入る資格が無かっただけだから。本当はずっと入りたかったから。いまだって戦闘無しの約束だから入ったから」

慌てるフサギコを見て笑いが起こる。
そしてその波が収まるのを見計らい、モナーが口を開いた。

( ´∀`)「みんな、今日はありがとうもな。クックルを、助けてくれて」
 _
( ゚∀゚)「ショボンが良いかっこしただけだけどな」

(´・ω・`)「ジョルジュ?」
 _
( ゚∀゚)「事実じゃねぇか。俺もデュエルしたかった」

(´・ω・`)「まったく」

ξ゚听)ξ「まったくはこっちセリフ!話がそれてるわよ!」
 _
(;゚∀゚)(;´・ω・`)「ごめんなさい」
.

337 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:21:59 ID:W8XyU8Gk0

( ´∀`)「もなもな。いいもなよ」

座る位置を直し、背筋を伸ばすモナー。
足下で不安そうにビーグルが体を寄せている。

( ´∀`)「あの始まりの日から数日後、モナーはクックルとあと二人の男とパーティーを組んだもな。まだビーグルには出会えてなくて、友達とかもいなくて、ソロプレイをしていた頃もな」

( ´∀`)「モナーは槍、クックルは両手棍、他の二人は片手直剣と曲刀で、バランスはそれなりに良かったもな」

( ´∀`)「四人で動くようになってからは活動範囲も広がって、次の村は勿論、周辺の村にも行ける様になっていたもな」

( ´∀`)「攻略は進み、もう二層まで攻略が終わって三層が最前線になった頃、モナ達はまだ一層の中頃に居たもな。二層に行くのは、一層の最後の村に自力でたどり着いてからって決めていたもなからね…」

その頃のことを思い出しながら順調に話していたモナーだったが、ここに来て口を止める。
ほんの少しだけ表情が曇り、そして引き締めて、口を開く。

( ´∀`)「【スワップコボルト・トラッパー】。武器屋に置いてあった、無料で手に入れた攻略本に注意が載っていた敵もな」

(´<_` )「武器落とし属性攻撃の使い手…」

( ´_ゝ`)「ディスアーム使いってやつだな」

( ´∀`)「もな……。出現エリアに踏み込む前に全員で確認したもな。注意しようって…。でも、いざ本当にその時になると…ダメだったもな…」

.

338 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:23:13 ID:W8XyU8Gk0

ξ゚听)ξ「私も、あそこは苦労した」

川 ゚ -゚)「ギルド全員少してこずったな。あそこは」

( ^ω^)「思わず取ろうとしゃがんだときには、後ろで待機していた仲間がピックとかを投擲して攻撃を牽制したおね」

(´・ω・`)「したね。後は無理やりスイッチして攻撃を相殺したり」

( ´∀`)「最初はモナ達も、そんな風に攻略していたもな。でもある時、四匹のモンスターに、三方向から襲われたもな」
 _
(;゚∀゚)「それは」

( ´Д`)「それぞれ一人一匹ずつ相手をしたもな。レベル的には安全マージンをちゃんと取ってあったけど、やっぱり緊張したもな」

( ´Д`)「そんな時、一人がディスアームを仕掛けられて武器を落としてしまったもな。思わず拾おうとした彼に、視界の端でそれを見たクックルが大きな声で名前を呼んだもな。彼は、その声で驚いてしまったのか、自分の行動に驚いたのか、硬直してしまったみたいもな」

ξ゚听)ξ「…」

( ´ω`)「…」

(´・ω・`)「…」

( ´_ゝ`)「…」
 _
( ゚∀゚)「…」

ミ,,゚Д゚彡「…」

(´<_` )「…」

( ´Д`)「モナ達の目の前で、彼は死んだもな」
.

339 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:24:24 ID:W8XyU8Gk0

( ´Д`)「それからもな。クックルの声が小さくなったのは。クックルは、きっと自分が殺したと思ってるもな…自分が、あの時声をかけたからって…」

静まり返る部屋。
誰も何も話さず、モナーを見ている。
足下のビーグルが体をモナーに擦り付けている。

( ´∀`)「モナの話は、これでおわりもな」

(´・ω・`)「…話してくれてありがとう」

(( ´∀`))

首を横に振るモナー。
飛び上がって膝に乗ったビーグルを、抱き締める。

( ´∀`)「聞いてくれてありがとうもな。…あの頃のアインクラッドでは、残念ながらよくあったこともなけど、モナにとっては忘れられない…忘れてはいけないことだと思っているもな」

( ´∀`)「辛かったもな……。でもモナーはビーグルに出会えて、そして皆にも出会えたもな。だから、今は大丈夫もな」
 _
( ゚∀゚)「モナー」

( ´_ゝ`)「…モナー。ああ、そうだな」

(´<_` )「……」

ミ,,゚Д゚彡「…」

静かになる室内。
それぞれに思うことがあるのか、沈痛な面持ちの者もいれば、優しげにモナーを見ている者もいる。
そしてそんな空気を破るのはやはりこの人だった。

.

340 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:25:55 ID:W8XyU8Gk0

ξ゚听)ξ「で、どうするのよ。ショボン」

(;´_ゝ`)「さすがのエアデストロイヤー」

ξ#゚听)ξ「なによそれ」

(´<_`;)「空気ぶち壊し」

ξ;゚听)ξ「知らないわよそんなの。ここでダラダラしててもしょうがないでしょ」

(;´・ω・`)「その通りなんだけどね」

( ^ω^)「そこがツンの良いところだお」

ξ*゚听)ξ「なに言ってるのよ、ばか」
 _
( ゚∀゚)「あついあつい」

川 ゚ –゚)「リア充もげろ」

ミ;,,゚Д゚彡「クー?」

川 ゚ –゚)「言うやつがいないから言ってみた」

( ´∀`)「お約束は大事もな」

ξ゚听)ξ「だから話が進まない!ショボン!」

(´・ω・`)「そこまで言うなら自分が進めれば良いのに」

ξ゚听)ξ「それはあんたの役目でしょ」

(;´・ω・`)「はいはい」

ξ゚听)ξ「ハイは、一回!」

(´・ω・`)「はい」

開いていたウインドウを何回かタップするショボン。
正六面体の小さいクリスタルを物質化する。

( ^ω^)「記録結晶だおね」

(´・ω・`)「ドクオが撮ったやつだよ。共通フォルダに入れて、メッセージも送ってきた」

クリスタルをタップすると、ホログラフが浮かび上がった。
.

341 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:27:00 ID:W8XyU8Gk0

(;´∀`)「クックル!?」

花壇に水をやるクックルの姿。
ショボンがタップするたびに画面が変わるが、全て花壇に水をやるクックルの姿だった。

(´<_` )「なんだこれ?」

( ´_ゝ`)「おんなじ写真ばかり」

川;゚ –゚)「いや、花の種類や背景が違う」

(´・ω・`)「ドクオが彼の後を付けていったんだけど、あのあと色々な層の色々な街を回って手入れできる花壇に水を上げていたらしい」

ミ,,゚Д゚彡「すごいから…」

(´・ω・`)「…そこからよく咲いた花を少しずつとって…」

結晶をタップするショボン。

森の中、一つの樹の根元に花束を置くクックル。

(;´∀`)「!」

(´・ω・`)「モナーは見覚えがあるみたいだね」

(;´∀`)「…ここで…死んだもな」

(´・ω・`)「この後、周囲にポップした【スワップコボルト・トラッパー】を殲滅して、宿に戻ったらしい」

( ´_ゝ`)「殲滅…」

ξ;゚听)ξ「あそこ、確かポップ多かったわよね」

(;^ω^)「時間湧きポップだったけど次から次に出てきてうんざりしたような」

('A`)「何かにとり憑かれた様に両手棍を振り回してたぞ」

.

342 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:28:31 ID:W8XyU8Gk0

(´<_` )「おう、お帰りドクオ」

部屋に入ってきたドクオが弟者に片手を上げて挨拶をしつつ、ショボンの隣のイスに腰掛ける。

('A`)「疲れた」

(´・ω・`)「お疲れ様。大丈夫だった?」

('A`)「戦闘エリアに足を踏み入れたのは一層だけで、後は全部転移門のある街を渡ってから戦闘はそれほどやってないけどな。しかし、強いな。彼。レベル差があるとはいえ、複数のコボルトをあんな簡単に倒すとは」
 _
( ゚∀゚)「それは凄いな。見てみたい」

('A`)「でも」

( ´∀`)「?」

('A`)「あんな戦い方じゃあ、いつ死んでもおかしくない。あそこならレベル差がある戦いだからなんとかなってるが、防御や回避があありにもお粗末だ。それに、倒し方もオーバーキル過ぎる」

( ´Д`)「もな……それはきっと……」

('A`)「ショボンからのメッセージで概略は教えてもらった。確かにそういう事情なら、あの戦い方も意味は分かる。けれど、それとこれとは別だ。あの戦い方は危険すぎる」

( ´Д`)「そうもなね……クックル……」

川 ゚ –゚)「ショボン」

(´・ω・`)「ん?」

川 ゚ –゚)「どうするつもりだ?」

クーの問い掛けに、全員がショボンを見る。

川 ゚ –゚)「考えはあるんだろ?」

(´・ω・`)「まあね。でも…」

川 ゚ –゚)「でも?」

(´・ω・`)「正直、今僕が考えているプランで彼が立ち直れるかは分からない。それに、彼にとって僕らがそんなことをするのは、良いことなんだろうか」
 _
( ゚∀゚)「そりゃいいんじゃないか?ドクオの見た感じじゃちょっとヤバいんだから」

( ´_ゝ`)「だが、彼自身がそれを求めているかどうか…ということか?」

(´・ω・`)「そうだね」

.

343 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:30:01 ID:W8XyU8Gk0

(´<_` )「確かにそれはそうだな。花を育てているというのも、人と触れ合うことを怖がっているようにも思える」

ξ゚听)ξ「でも、死んだらダメよ」

('A`)「いくら一層でも、あの戦い方は危険だ」

川 ゚ –゚)「しかし、声が聞こえないというのは不思議だな。しかもモナーには聞こえるんだろ?」

( ´∀`)「聞こえるもな。けして大きくは無いけど」
 _
( ゚∀゚)「俺達にはまったく聞こえなかった」

ミ,,゚Д゚彡「あいつらに因縁つけられたときも黙って花を守ってたみたいだから」

川 ゚ –゚)「そもそも、声が聞こえないなんてありえるのか?というか、この世界の『声』がどうやって聞こえているのか分からないが」

(´<_` )「テレパシーみたいなもんだな」

( ´_ゝ`)「頭で『伝えたい』と考えたことを相手に伝えつつ、システムが周囲にいるやつの耳に、聞こえていると錯覚させている」

ξ;゚听)ξ「え?」

川;゚ –゚)「その系統の話は苦手なんだが」

( ^ω^)「僕がツンやクーに『おなかすいたお』って伝えようとすると、システムが届けてくれて、尚且つそばに居る人にも僕が二人に話した内容が広められてるってことだお」

川;゚ –゚)「分かったような、分からないような」

('A`)「ま、現実世界で言うところの『音波』みたいな『デジタル波』を飛ばしているとでも考えときゃいいさ」

ξ゚听)ξ「それなら分かる」

.

344 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:31:45 ID:W8XyU8Gk0

川 ゚ –゚)「ではクックル氏は?」

(´<_` )「おそらくは、伝えようという思いよりも、伝える怖さが先立って自分で無意識のうちにセーブしているんじゃないかと思う。それで、知り合いであるモナーには辛うじて言葉が届いているけど、俺達初めての相手には届かないのではないかな」

ξ゚听)ξ「そんなことが可能なの?」

( ´_ゝ`)「わからん」

ミ;,,゚Д゚彡「そんな」

( ´_ゝ`)「理論的には可能だと思うし、あってもおかしくは無い。だがこのアインクラッドを動かしているシステムがそれをよしとしているかどうかだな」

川 ゚ –゚)「?」

(´<_` )「考えてみろ、『伝えたい』と『伝えたくない』だったら簡単なプラスとマイナスと考えられるが、『伝えたい』と『伝えることが怖い』は単純な計算に出来ると思うか?」

川 ゚ –゚)「無理だろうな」

('A`)「確かにアインクラッドを動かしているシステムは世界最高峰のシステムらしいが、何千人といるプレイヤーのそんな細かい心の勘定までサポートしているとは考えにくい」

( ^ω^)「でも、クックルさんが『そう』な以上、サポートしてくれていると考える方が当然じゃないのかお?」

( ´_ゝ`)「まあ、そうだな」

(´<_` )「そうなると、全員に聞こえないなら完全に閉ざしているが、モナーには聞こえているのならば、人との触れ合いを完全に諦めているわけではないのかもしれない」

( ´∀`)「そうもなよ!きっとそうもな!」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃんっ!」

嬉しそうに声をあげたモナーに釣られ、今まで大人しくしていたビーグルが嬉しそうに声をあげる。

沸き起こる笑い。

ひとしきり笑った後、再びショボンを見るメンバー。

川 ゚ –゚)「ということだ、ショボン」

.

345 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:32:55 ID:W8XyU8Gk0

(´・ω・`)「分かったよ」

ウインドウをタップして全員にメッセージを飛ばす。

着信音を聞いて全員がウインドウを出してショボンからのメッセージを開いた。

(´・ω・`)「クエスト名『おじいちゃんの花壇をきれいにして』。少女の願いにより、村を囲む森の中の四箇所の花壇に種を植えて花を咲かせるクエスト。クエスト発動には栽培スキルが100以上のメンバーが必要。クリア条件は四箇所の花壇に花を咲かせること。クエストボスは無し。ただし、森にはモンスターが出る。しかも…」

一気にメッセージの内容を話すショボンだったが、一拍置いて呼吸を整える。

(´・ω・`)「…しかも、この森にはディスアーム(武器落し技)使い及びスナッチアーム(武器奪い技)使いが出る」

( ´Д`)「!」

ウインドウを見つつショボンの話を聞いていたメンバー全員が息を呑む。

ミ;,,゚Д゚彡「れ、レベルは」

(´・ω・`)「安全マージン…レベル的にはソロで戦っても問題なく勝てるレベル差だよ。戦い方さえ間違えなければね」
 _
( ゚∀゚)「…逆にいいんじゃないか?その方が」

ξ゚听)ξ「そうね」

川 ゚ –゚)「乗り越えられるチャンスは多い方が良い」

(´・ω・`)「それじゃあ、詳しい情報は各自読んでおいて。あとは、彼を誘うわけだけど…」

全員を見回していたショボンだったが、視線をモナーで止める。

(´・ω・`)「誘うのは僕がするつもりだけど、それでいいかな?」

( ´∀`)「お願いするもな」

(´・ω・`)「じゃあ、頑張るよ」

ニッコリ微笑んだショボンの顔を見た数名が、何故か心の中で冷や汗を垂らした。
.

346 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:40:23 ID:W8XyU8Gk0



3.風花



.

347 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:41:34 ID:W8XyU8Gk0

三日後。低層階郊外。
コードで守られてはいるが転移門が無い村の外れにある果樹園。そのオーナーであるNPC夫婦が住む農家の二階を、クックルは常駐の宿に借りていた。

(´・ω・`)「すみません、突然」

(( ゚∋゚))

手振りによって勧められ、備え付けと思われるソファーに座るショボン。
クックルがその前にお茶を置き、ウインドウを開く。
ショボンの耳に届くメッセージの着信音。

『( ゚∋゚)「このまえはたすけてくれてありがとう」』

目の前にいるクックルからのメッセージである。

(´・ω・`)「いえ、こちらこそ出すぎた真似をしてしまいました。申し訳ありません。あの後彼らから嫌がらせなどはありませんか?」

(( ゚∋゚))

(´・ω・`)「それは良かった」

首を横に振るクックルに、安堵した笑顔を見せるショボン。

(´・ω・`)「それで、今日お伺いした理由なんですが、一つお願いがあって参りました」

( ゚∋゚)「 」

自分で自分を指差すクックルに頷くショボン。

(´・ω・`)「はい。クックルさんに」

.

348 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:42:51 ID:W8XyU8Gk0

『( ゚∋゚)「おれになにを?」』

(´・ω・`)「ぼくは『V.I.P.』という名前のギルドのマスターをしています。生産職メインのギルドで、各メンバーはほとんどが何かしらの職業を持っています。その一環で欲しいアイテムがあるのですが、それを得る為のクエストに栽培スキルを持っている方が必要なんです」

( ゚∋゚)「  」

(´・ω・`)「クエスト自体に討伐必須モンスターはいないのですが、クエストをクリアするためにはモンスターの出る森に行く必要があり、栽培スキルを持っていて、尚且つ戦える方を探していたのですが、なかなか見つからず…」

( ゚∋゚)「  」

(´・ω・`)「あ、もちろん先頭に立って戦うのはギルドのメンバーが行います。ただ、何かしらの不慮の問題が発生した際に、自分の身を自分で守れる強さを持った方を探していたので」

(( ゚∋゚))

『( ゚∋゚)「おれではむりだ。つよくない」』

首を横に振ってからメッセージを飛ばすクックル。
それを読んだショボンが更に口を開く。

(´・ω・`)「モナーは、今はぼくと同じギルドで育成スキルを使って牧場主をしています」

( ゚∋゚)

(´・ω・`)「彼から、あなたが戦えていたことは聞いています。また、失礼ですがクックルさんを探していたときに仲間の一人がお見かけして後を追わせていただきました。それでこの常駐の宿も知ったわけですが、そのときの戦いぶりを聞き、今回のお願いをさせていただいたわけです」

( -∋-)

目を閉じて黙り込むクックル。
それを見てメッセージを書くショボン。

.

349 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:43:54 ID:W8XyU8Gk0

(´・ω・`)「こちらが今回のクエストの概要と、クエストクリア時の成功報酬等諸々の条件です」

( ゚∋゚)「  」

何かを言おうと目を開けたクックルに合わせてメッセージを送るショボン。

(;゚∋゚)

(´・ω・`)「クリア報酬は少し高めにさせていただいています。ただ今回の目的はクエストクリア時のクリア報酬アイテムなので、それをクックルさんが手にした場合は、こちらに渡してください」

立ち上がるショボン。
慌てて同じように立ち上がるクックル。

(´・ω・`)「すぐには決められないと思います。ただこちらも少々急いでおりまして、申し訳ありませんが本日中にご返答をおねがいします」

(;゚∋゚)「   」

(´・ω・`)「それでは、失礼します」

(;゚∋゚)!

お辞儀をして部屋を出るショボン。
ただそれを見送ったクックルは、もう一度ソファーに深く腰をかけた。



.

350 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:44:50 ID:W8XyU8Gk0

雑貨屋Boon店内

( ^ω^)「お帰りだお」

(´・ω・`)「ただいま」

(´<_` )「首尾はどうだ?」

(´・ω・`)「どうだろうね…」

ブーンが店の入り口が開くとなる鈴が鳴ったのでそちらを見ると、ショボンが入ってきたところだった
カウンターの中で在庫のチェックをしていた居たブーンだったが声をかけながら途中で止め、棚に自分の作った商品を並べていた弟者が手を休めて寄って来る。

(´・ω・`)「みんなは?」

( ^ω^)「ふさは屋台だお。ツンとクーは奥で仕事してるはずだお」

(´<_` )「残りはモナーの牧場に行ってる。なんでも牛が産まれそうらしい」

.

351 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:46:44 ID:W8XyU8Gk0

(´・ω・`)「そっか。とりあえず問題無しで通常営業だね」

(´<_` )「疲れてるな」

( ^ω^)「だおね。説得疲れかお?」

(´・ω・`)「いや」

カウンターの横に備え付けられているベンチに腰掛けるショボン。

(´・ω・`)「クックルさんの住んでる村から転移門のある一番近い街まで歩いたんだけど、途中で敵にも出くわしたし、結構疲れたよ」

一回大きく息をつき、たっている二人に軽く肩をすくめる。

(;^ω^)「クリスタル使わなかったのかお!?」

(´<_`;)「お前、おれ等にはソロプレイするなってあれだけ言っているくせして」

(´・ω・`)「それは謝るよ。ただ、クックルさんが毎回移動でクリスタルを使ってるとも思えないから、ちょっとやってみたくなってさ。もちろんレベルも問題ないし、周囲の敵も特に気にするようなのは出てこないみたいだからやってみたんだけどね。ちゃんと転移クリスタルはすぐ出せるようにして」

( ^ω^)「ソロプレイは凄いと思うお」

(´<_` )「そうだな。店にも時々ソロプレイヤーが来てるが、やはりおれらとは何かが違う感じだ。買う量も思い切りもパーティープレイヤーとは違うから、個人としてみれば良い客だが」

( ^ω^)「攻略組のソロプレイヤーとか化け物だお」

(´・ω・`)「ジョルとかドクならやれそうだけどね」

.

352 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:47:58 ID:W8XyU8Gk0

(´<_` )「無理だな」

( ^ω^)「無理だおね」

(;´・ω・`)「そう?ドクオはともかくジョルジュは会ったときはソロプレイヤーだったし、二人とも充分強いと思うけど。レベルも遜色ないし。今はギルドにあわせたスキル構成してるけど、構成を作り直せば」

(´<_` )「そういう問題じゃないさ」

( ^ω^)「だおね」

顔を見合わせてニヤニヤと笑う弟者とブーン。
めずらしく状況が分からずショボンが視線を泳がせる。

(;´・ω・`)「え?なにどうしたの?二人だけ分かった感じで」

(´<_` )「俺達が分かってるんじゃなくて、お前が分からないだけだな。多分、お前以外の全員が分かってる」

( ^ω^)「だから気にしなくて良いお」

(;´・ω・`)「いやいや、もっと気になるでしょそれ」

立ち上がったショボンだったが、自分宛に送られてきたメッセージ音を聞いて再び座る。

(´・ω・`)「クックルさんからだ。早いな」

( ^ω^)「おっ」

(´<_` )「返事はなんだって?」

(´・ω・`)「受けてくれたよ」

( ^ω^)「おっおっ」

(´<_` )「第一関門はクリアだな」

(´・ω・`)「あとは、クエスト中に上手く話をもっていけるかと…」

(´<_` )「と?」

(´・ω・`)「クックルさんが、ぼく達のことを信用してくれるようになるか…かな」

表情を引き締める三人。
ショボンはそのままメンバーに連絡するためのメッセージを打ち始めた。
.

353 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:49:34 ID:W8XyU8Gk0

二日後。

(´・ω・`)「フラグ立ててきたよ」

小さな村の小さな家。
ショボンが木の扉を開けて外に出ると、村の入り口横で固まっているメンバーを見つけて声をかけた。

( ´_ゝ`)「ずいぶん長かったな」

(´・ω・`)「身の上話がね…。ユリエンヌちゃんの好きな食べ物から、おじいちゃんの吸っていた葉巻の銘柄まで…」

ξ゚听)ξ「おつ」

('A`)「おつ」

( ´_ゝ`)「ユリエンヌちゃんはどんな食べ物が好きなんだ?」

川 ゚ –゚)「ロリおつ」

(´<_` )「ロリおつ」

( ´_ゝ`)「いや、おれは純粋な興味でだな」
 _
( ゚∀゚)「フラグ立てやりたいって言ってたのはそういうことか」

(;´∀`)「ひくもな」

▼・ェ・▼

( ´_ゝ`)「ビーグルまでそんな目でおれを…」

(´・ω・`)「NPCにセクハラして黒鉄宮に飛ばされるような真似はしないでね」

.

354 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:50:42 ID:W8XyU8Gk0

ショボンの周りに集まったメンバーが軽口を叩き合う。
一歩離れてその輪を見ているクックル。

( ^ω^)「今からショボンが流れを説明するから、クックルさんももっと寄ると良いお」

その隣にブーンが立ち、少し見上げるようにクックルの顔を見ながら促す。

( ゚∋゚)「  」

( ^ω^)「クエストの概要はもう貰ってるけど、フラグ立ての時に新しい情報が出る場合もあるし、移動の際の隊列に関しても指示が出るお。だからほらっ」

クックルの後ろに回り、背中を両手で押すブーン。

(;゚∋゚)「  」

戸惑いながらも一歩メンバーの作る輪に寄るクックル。

川 ゚ –゚)「適材適所だな」

それを横目で見つつ、クーが隣にいるツンに話しかける。

ξ゚听)ξ「まあね。ブーンなら喋らない相手でも会話が続くだろうし。ショボンがクックルの傍付きをブーンにした時は不思議だったけど、考えてみると他にいないわよね」

( ´∀`)「モナがいなくても大丈夫見たいもな」

川 ゚ –゚)「長いことツンの傍に居れば、言葉の裏腹を感じ取れるようになるだろうから、表情や発する雰囲気でなんとなく会話が成立するんだろうな」

ξ;゚听)ξ「ちょっ。クー、なによそれ」

川 ゚ –゚)「言葉の通りだが?」

( ´∀`)「なるほどもな」

ξ;゚听)ξ「モナーもなんで納得してるのよ!」

(´・ω・`)「はいはい、雑談はそれくらいでね。それじゃあ説明するよ。大部分はメールで送ってるけど、ちゃんと確認してね」
.

355 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:51:38 ID:W8XyU8Gk0

クエスト名は『おじいちゃんの花壇をきれいにして』。
イグル村の少女ユリエンヌのお願いで、村を囲む森の中にある四つの花壇に花を咲かせるのがクエスト内容。
ちなみに花はユリエンヌちゃんから種を預かっているので、それを埋めて、栽培スキルが100以上のキャラクターが、これまたユリエンヌちゃんから渡されたじょうろでお水をあげると、花が咲くはず。
クリア報酬は十種類の薬草の中からランダムで四種類。それとクリア時のタイムや花の咲き具合で追加アイテムがあるらしい。
制限時間は五時間。
越えると自動的にクエスト失敗になって、渡された種とじょうろは没収になるので、持ち逃げは出来ないから。

周囲の森にはレベル的にはそれほど強くないけど特異な業を使うモンスターが出るので、注意すること。
特に『ディスアーム』と『スナッチアーム』を使う敵が出たときは注意。

チームは今回は二班に分けます。
《先行班》は、ドクオ、ジョルジュ、クー、ツン、モナー、ビーグル。指揮はクーよろしく。
《作業班》はクックルさん、ブーン、兄者、弟者、ぼくで、指揮はぼくで。
まあ、班といっても森自体は迷路タイプじゃないので、基本的にはエリア移動する際に先行班が先に行って敵を発見して戦闘開始。作業班は花を咲かせる役目のあるクックルさんを守りつつその後ろを付いて移動と、後ろから出てくる敵の排除がメインって感じで。
《先行班》は、後ろを見て必ず一回一つのエリアに全員が集まってから次に移動するようにね。クー、そこら辺の所は必須でよろしく。

POT、クリスタル系は先に渡した分で足りると思うけど、もし足りなくなったら随時ギルド共有フォルダから取り出しておくこと。
クックルさんはギルドフォルダは使えないのでちょっと多めに渡していますが、危なくなったらクリスタルで脱出してください。
時間制限はありますがその間別の層に行かない限りはクエストは続行されているので、この村に飛んでもらえれば仕切りなおしがしやすいので、よろしくお願いします。
.

356 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:53:12 ID:W8XyU8Gk0

(´・ω・`)「これくらいかな。さて、何か質問は?」

集まった仲間たちの顔を見回すショボン。
ギルドメンバーは笑顔で余裕があり問題はなさそうだが、一人クックルは表情を強張らせている。

(´・ω・`)「なにかありますか?クックルさん」

(((;゚∋゚)))

名前を呼ばれ、小さく首を横に振るクックル。

( ´∀`)「だいじょうぶもなよ、クックル。みんなが傍にいるもな」

(;゚∋゚)

声をかけてきたモナーをじっと見るクックル。
そんな瞳に柔らかな笑顔で返すモナー。

小さくクックルが頷いた。

(´・ω・`)「それでは、出発!」
 _
( ゚∀゚)川 ゚ –゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)( ´_ゝ`)( ´∀`)
      「おー!!!!!」
            ▼・ェ・▼('A`)(´<_` )



.

357 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:54:20 ID:W8XyU8Gk0

『イグルの森』
村の名前が付けられたその森は特にこれといった特徴があるわけではなく、近隣の街や迷宮に繋がっている道への通路なだけである。
宝箱すら落ちていないが、村の中心から見て東西南北にモンスターが出ない安全エリアがあるため休憩がしやすく、また出現するモンスターがそれなりに良い経験値を持っていることとモンスターが特異な技を使う為、訓練として訪れるプレイヤーが時々いた。

(´・ω・`)「そういえば『スナッチアーム』の対策で練習しに来たことあったよね、ここ」

( ^ω^)「なつかしいお」

前を歩く《先行班》の後姿を見ながら歩く《作業班》の五人。
クックルを中心に、前をブーンとショボン。後ろを流石兄弟で四角形に囲んでいる。

( ´_ゝ`)「練習で来たことなんかあったか?」

(´<_` )「俺達が入る前の話だろ」

(;´・ω・`)「いやいや、いたよそのとき君ら」

(;^ω^)「だお。兄者と一緒に倒した覚えがあるお」

( ´_ゝ`)「しらん」

(´<_` )「しらん」

(´・ω・`)「しらんって…しかも弟者まで」

( ´_ゝ`)「え?おれは忘れててもいいの?」

.

358 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:56:10 ID:W8XyU8Gk0

雑談をして笑っているものの、四人は周囲を警戒することを忘れていなかった。
《先行班》が前から出てくる敵は倒しているため数は多くないが、横から来るモンスターにはショボンの投げナイフとブーンの片手直剣がうなり、後方からポップした敵には兄者の鎚と弟者の斧が空気と共に切り裂いた。

(´<_` )「このポップ数の多さはなんとなく覚えている気がする」

(´・ω・`)「ほんとに忘れたのかと思ってビックリしたよ」

( ´_ゝ`)「え?おれは?おれは?」

( ^ω^)「クックルさんはここは来た事あるのかお?」

(;゚∋゚)))

頷くクックル。

( ^ω^)「モナー達と解散してからはずっとソロなんだおね?凄いお」

((;゚∋゚))

( ^ω^)「謙遜しなくても良いお。そういえばずっと武器は両手棍なのかお?両手持ちだと『ディスアーム』も『スナッチアーム』もあんまり効かないって噂があるけどどうかお?」

((;゚∋゚))

( ^ω^)「そっか、ずっと両手棍なら他のとの違いがわからないおね。おっおっ」

.

359 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:57:05 ID:W8XyU8Gk0

(´・ω・`)「(すごいな…なんとなく会話になってる)」

( ´_ゝ`)「(ブーンすげえ。改めて色々スゲェ)」

(´<_` )「(ただ者じゃないとは思っていたが)」

( ´_ゝ`)「(ただのにやけ顔じゃなかった)」(´<_` )

( ^ω^)「………どこかでバカにされた気がする」

(((;゚∋゚)))

( ^ω^)「おっおっ。クックルさんが言ったとは思って無いお」

(´・ω・`)「(ブーンには彼の声が聞こえてるなんてことは無いよね)」

( ^ω^)「そろそろ一つ目の花壇だおね」

暗い道を抜けると、小さな花壇のある安全エリアに到着した。


.

360 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 22:58:20 ID:W8XyU8Gk0

4.花嵐


    に続く。
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361 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/24(日) 23:01:10 ID:W8XyU8Gk0
ということで本日の投下終了です。

呼んでくださった皆さん、ありがとうございます。

結構書いたつもりでしたが、投下するとなんか短いですね。
(´・ω・`)

次回の投下で何とかクックル編は終わりたいところですが、どうなることやらです。
(;´・ω・`)

いつも乙と感想ありがとうございます!

ではではまた。

362 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 23:01:48 ID:sVrIkgFAO
リアルタイム遭遇に歓喜なんだが4時起きには辛い…明日改めて読ませて貰うよ

363 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 23:02:50 ID:sVrIkgFAO
って終わってた。乙

364 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 23:15:23 ID:8z62MP7I0
うわー続きが気になるわー

とりあえず乙です

次回楽しみにしてます

365 名前:名も無きAAのようです:2013/03/24(日) 23:47:01 ID:PratOmus0


366 名前:名も無きAAのようです:2013/03/25(月) 13:29:06 ID:c3C6k3M.0
乙!

367 名前:名も無きAAのようです:2013/03/25(月) 19:29:04 ID:Bb77z/A20
乙ー

368 名前:名も無きAAのようです:2013/03/25(月) 23:56:47 ID:u3H9MfU.0
乙ってうとうとしたらおむつって打ってしまった
疲れてんな乙

369 名前:名も無きAAのようです:2013/03/28(木) 22:09:57 ID:e9LKWv.oO
個人的に、今期待してるブーン系はこの作品と魔法道具だけ
作者がきちんと完結させてくれるのを望んでいます

370 名前:名も無きAAのようです:2013/03/28(木) 23:48:48 ID:z3skxX5YO
>>369

371 名前:名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 00:03:00 ID:pYjzn7CQ0
>>370
言葉のあやだろ許してやれよ

372 名前:名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 00:43:11 ID:sHuZJHEUO
火種を蒔くなって言いたいんじゃない?

373 名前:名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 04:30:14 ID:ADCcrMVs0
昔からのメジャーAAがこれだけの数レギュラーで仲間として出てくるのって随分懐かしい気がする
扱ってるネタこそ新しいけど、こういう王道もの大好きです

374 名前:名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 15:01:55 ID:JUAH032o0
週末に来るかな?
楽しみにしてるよー

375 名前:369:2013/03/29(金) 22:29:28 ID:I4cnWRpMO
表現悪かった
すまん

376 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 22:58:18 ID:r.am2grM0
どーも作者です。

乙とおむつと感想ありがとうございます!!
一つ一つが励みになります!(´;ω;`)

なんとか進んだクックル編。
それでは投下いきます!

377 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 22:59:17 ID:r.am2grM0


4.花嵐



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378 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:00:07 ID:r.am2grM0

クックルが直径1メートルほどの円形の花壇にじょうろで水をやると瞬く間に芽が出て草が生え、花で溢れた。

「おーーーー!!!」

(*゚∋゚)

本日三回目の歓声が上がり、クックルの表情も少しだけ緩む。

『イグルの森』
三つ目の安全エリアも先の二つと形は変わらず円形をしていた。広さも同じくちょっとした教室ほどあり、ギルドのメンバーが全員集まってもスペースに余裕がある。
クエストである種を植える花壇はその中央にあり、赤茶けたレンガで周囲を囲んだだけの質素なそれは、平時は何も植物が生えていないため、このクエストを知らないプレイヤーは下手をすると花壇とすら思わなかったかもしれない。
かと言って、花壇以外の何かに使えそうということも無いのだが。

( ゚∋゚)

何も植えられていない花壇の片隅にクックルが種を埋め、上からじょうろで水をやる。
たったそれだけで芽が出て緑が生まれ、花が咲く。

『アインクラッド』という《デジタルの世界》だから出来ることであり、そこには『生物の命』など無い。
だがクックルはこの芽が出る瞬間が好きだった。

.

379 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:01:04 ID:r.am2grM0

クックルは、そこに『命』を感じていた。

今回はクエストであるため通常の『栽培』よりも更に簡素化されていてあっという間に花となった。それでも芽が出る瞬間を見る時は、普段と変わらず心弾んでいた

ξ*゚听)ξ「きれい」

川*゚ –゚)「そうだな」

(*´・ω・`)「何度見ても感動するね」

(*^ω^)「すごいお!」

加えて今は周囲に人がいる。
今まで一人で見ていたものを、一緒に見て、同じように感じ、自分以上に感動してくれている。
一番最初のときは戸惑いの方が大きかったが三回目になると少しは慣れ、分かち合える感情に喜びを感じていた。
周囲で湧く歓声が心地よく、笑顔になれる。

それは、久し振りの感情だった。
それは、決して一人でいては味わうことの出来ない感情だった。
それは、逃げていた状況だった。
それは、もう自分は求めてはいけないと思っている幸せだった。

( ゚∋゚)

意識することなく自分に科した戒め。
緩んだ表情を引き締めて、じょうろをアイテム欄にしまった。
.

380 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:02:09 ID:r.am2grM0

 _
(*゚∀゚)「なあなあ、栽培スキルって凄いのな。いつもあんな感じで芽が出て花が咲くのか?」

((( ゚∋゚)))
 _
(*゚∀゚)「違うのか!でも芽は出るし、花を咲かせることも出来るんだよな。いいな、こういうのも。モナーの牧場で牛が産まれるのを見たときも思ったけど、命の誕生って…こう…くるよな!」

( ´∀`)「ジョルジュは感動して泣いてたもな」
 _
(*゚∀゚)「うるせぇ。なんか凄かったんだよ!また見学させてくれよな」

(´<_` )「今度はおれも見たいな。この前はいけなかったし」

('A`)「凄かったぞ。色々と」

( ´_ゝ`)「花壇の花も色々植えれるんだろ?種とか売ってるんだよな?」

( ゚∋゚)))

( ´_ゝ`)「おれも育ててみようかな。女の子って花好きだよな。どれくらいで花束とか作れるくらい育てられるようになるんだ?」

川 ゚ –゚)「ロリおつ」

ξ゚听)ξ「ロリおつ」

( ´_ゝ`)「なぜに?」

('A`)「兄者の言う『女の子』って何歳くらいまでのことなんだ?」

( ´_ゝ`)「………」

( ^ω^)「ロリおつ」

( ´∀`)「ほらビーグル、ロリおつって言ってあげるもな」

▼・ェ・▼

(;´_ゝ`)「モナーやめてくれ!ビーグルに見られるのは心にくるから!おれが泣くから!」

(;゚∋゚)

逃げるようにクックルの背に隠れる兄者。
沸き起こる笑い。
.

381 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:03:20 ID:r.am2grM0

クックルが戸惑うのも当然だろう。
自分の声が届かなくなってから、会う人間はほとんど自分を奇異な目で見、離れていった。
もしくは腫れ物に触るように扱い、『障害を持つ者』に対する『慈愛』に溢れた行動をされた。

だが、彼らは違う。

もちろん彼らの『普段』など知らないクックルだが、そこに感じるのは『普通』な『普段』だった。
戦い、笑い、遊び、そして前を見る。
村を出発してから三つ目の花壇までの間、徐々に全員が話してきて、聞こえていないはずの声が聞こえているかのように会話が成立し始め、思わず頬が緩んでしまう。
もちろん時折は会話が繋がらないこともあるが、それが気にならない楽しさが心に芽生える。

しかし水をやってはいけない芽を静かに摘み、このクエストの間だけ、つかの間の夢を楽しむことも自分には許されないことなのだと気を引き締め、彼らを見た。

(´・ω・`)「さて、じゃあ次に向かいたいんだけど、ちょっと気になる情報があったので作戦タイムにしまーす」

('A`)「ん?めずらしいな。途中でなんて」

ショボンが声をかけると一気に雑談を止め、表情を引き締めて彼を見るメンバー達。
クックルが戸惑うのは、こんな瞬間もだった。

(´・ω・`)「いや、最初から不確定要素としてはピックアップしてあったんだけど、ちょっと気になってね」

出したウインドウを一回見た後、自分を見るメンバーを見回す。

( ^ω^)「どうしたんだお?」

(´・ω・`)「覚えていない兄者を除いて全員この森は経験者だから覚えていると思うんだけど」

( ´_ゝ`)「まだひっぱるかそれ」

(´・ω・`)「村から見て北東にある村の出入り口を出て時計回りに回りに東、南、ときてここが西の花壇、安全エリアになるのは分かってるよね」

川 ゚ –゚)「そうだな」

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382 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:05:15 ID:r.am2grM0

(´・ω・`)「で、いまから北の花壇、《安全エリア》に向かうわけだけど、北の安全エリアは通路から道を外れて行き止まりにあるんだよね」

ξ゚听)ξ「今までのは通路の途中に安全エリアがある感じだったけど、北は違うってわけね」

( ^ω^)「そういえばそうだったような」

(´・ω・`)「で、その一つ前のエリアは今いる安全エリアと同じくらいの広さがあって、結構敵が出てくるんだよ」

(´<_` )「相当数なスナッチアーム使いがポップしてて乱戦になった覚えが」

( ´_ゝ`)「おれと弟者の範囲攻撃スキルが唸りまくったエリアだな」
 _
( ゚∀゚)「おれあの時鍛えた剣獲られて発狂した」

川 ゚ –゚)「あったあった。全員で追いかけたな」

( ´_ゝ`)「あれ?覚えててもスルー?ほらほら、おれ覚えてたよ」

('A`)「そこを気をつけろってことか?」

383 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:06:01 ID:r.am2grM0

(´・ω・`)「それもあるんだけど…。このクエストを実行中に、何回か謎な敵が目撃されてるんだ」

( ´∀`)「謎な敵もな?」

(´・ω・`)「そう。この森は基本的にはスナッチアームとディスアームを使うコボルトが中心で、それ以外は蜘蛛とか蜂の敵ばかりなんだけど、そこのエリアでは巨大な花の敵が出てきたことがあるらしいんだ」

ξ゚听)ξ「花?」

川;゚ –゚)「巨大な花というと…いたなぁ。なんか触手がうにゅうにゅ出てる大きな花のモンスターが。でも確か層が違うような」

(´・ω・`)「うん。この層じゃないところでは出てる。ただ毎回出てるわけでもないし、出てきても同じ敵が出てるようではないみたいなんだよね」

('A`)「なんだそりゃ」

( ´∀`)「ランダムでポップするイベント専用モンスターってこともな?」

(´・ω・`)「もしかするとね。で、前はそうでもなかったんだけど最近のクエスト経験者のレポで多いんだ」

(´<_` )「なんだそりゃ」

(;^ω^)「クエストの難易度が上がったってことなのかお?」

(´・ω・`)「絶対数が少ないから、まだ確証が得られてないんだよね。だから今回のクエストをやるって決めた時にアルゴさんに情報が入ったら優先的に回してもらえるようにお願いをしてて」

川 ゚ –゚)

(´・ω・`)「さっきメッセージが来たんだけど、昨日このクエストをチャレンジしたパーティーは、そこの敵にかなわなくて撤退したらしい。幸い死者は出なかったけど、結構ギリギリだったみたいだ」

.

384 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:08:02 ID:r.am2grM0

ショボンの言葉に息を呑む何人かのメンバー。
それ以外の者も、表情を引き締める。

(´・ω・`)「出現に関する要素としては、クエストの攻略スピードとかクエストをはじめた時間、あるいは栽培スキルのコンプリート率とかが考えられるけど、まだ何かは分かっていない」

ショボンがチラッとクックルを見る。
目が合うが、クックルがゆっくりと視線をそらした。

(´・ω・`)「……まあ、今回も出るかどうか分からないけど、気は引き締めていこう。状況によっては一度撤退するから、転移クリスタルはすぐ出せるところに入れてあるか確認しておいて」

再びメンバーを見回すショボン。
ほとんどの者が腰のポーチや巾着に手を入れて、クリスタルの感触を確かめている。

(´・ω・`)「それじゃあ、出発しようか。先発組、よろしく」



.

385 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:08:56 ID:r.am2grM0

深い緑の森。
先ほどのショボンの話を聞き植物系の敵が出ると聞いたせいか、心なしか進むたびに緑が濃くなっているように思えてくる。

( ^ω^)「でも、この低層だしお使いクエストなんだからそこまで凄い敵は出てこないおね」

(´・ω・`)「レベル的には大丈夫だと思うよ。ただ攻撃力は弱くてもHPが桁違いだったり、特殊技を使う敵ってことも考えられる。花…植物系なら毒を使ってくる場合もあるしね」

(;^ω^)「そうだおね」

(´<_` )「こっちの班はブーンとクックルさんが対毒POT飲んでたよな。先発組は誰が飲んでるんだ?」

(´・ω・`)「ドクオ。あとさっきクーにも飲むように指示を出しておいた」

( ´_ゝ`)「植物系なら麻痺使いの可能性は低いか」

(´・ω・`)「油断は出来ないけどね。もしもの時は対麻痺POT飲んでるドクオとブーンに頑張ってもらわないと」

( ^ω^)「おっおっ」

(´<_` )「クックルさん、危なくなったらこちらが指示しなくても逃げてください」

( ^ω^)「おっ!そうだお!」

(;゚∋゚)

( ´_ゝ`)「こっちの依頼で来てもらって、あんまり危ない目にあわせるのも悪いしな」

(´・ω・`)「そうして下さい」

(;゚∋゚)

クックルはただ頷くことしか出来なかった。


.

386 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:09:48 ID:r.am2grM0

北の安全エリア、最後の花壇に向かう分かれ道の前で、一度集合をした。

(´・ω・`)「ここからは班を止めて全員で移動にしよう。ただ通常の盾可能装備を最前にするのではなく、回避の上手いブーンとドクオを先頭に、二列目に索敵を期待してビーグルとモナー、その次を僕とジョルジュ。その後ろにクックルさんを中央にしてツン、クー、兄者、弟者で」

戸惑うクックルに構わず場所を移動して隊列を組むメンバー。

▼・ェ・▼「きゃん!」

(;´∀`)「何か居るもな?」

ξ゚听)ξ「もう!?」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

( ^ω^)「楽しんでるみたいに見えるお」

( ´∀`)「警戒ではないもなね…。どちらかというと、知ってる人とか自分を可愛がってくれる人がいるのを見つけた時の泣き声みたいもな」

(´・ω・`)「この先に誰かいるってこと?」
 _
( ゚∀゚)「とりあえず進んでみようぜ。他のプレイヤーが居るのかもしれないしよ」

('A`)「だな。ショボン?」

(´・ω・`)「……うん、進もう」

ショボンの決断のもと、警戒しつつ動き始めた。



.

387 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:11:14 ID:r.am2grM0

メンバーの中では索敵能力を意識的に上げているドクオが先陣を切りエリアに入る。

('A`)「とりあえずは何もいない…と」

( ^ω^)「大丈夫みたいだおね」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´∀`)「ビーグルも感じないみたいもな」

後ろを続くメンバー達。
それぞれに左右上下を警戒しながらエリアの中央に向かう。
 _
( ゚∀゚)「なんだ、いないのかよ」

(´・ω・`)「クックルさんは入り口付近にいてください。四人はクックルさんを」

ξ゚听)ξ「了解」

川 ゚ –゚)「分かった」

(´<_` )「ん」

( ´_ゝ`)「おーけー」

(;゚∋゚)

先のメンバーがエリアの中央に向かうのを、入り口にかたまって見守る五人。
ドクオが中心に到着する。

▼#・ェ・▼「ぎゃん!」

.

388 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:12:19 ID:r.am2grM0

('A`;)「下!?」

飛びのくドクオとブーン。
土が盛り上がる。植物の蔦が十数本、土を弾け飛ばしながら生え、ジャンプしたドクオとブーンを狙った。
 _
( ゚∀゚)「ちっ」

(´・ω・`)「!ブーン!これ!」

蔦が出た地面、その根元を切り裂くために走りこんだジョルジュ。
ショボンは左手に備えた円盤を右手に持って構え、淡く光ったのを確認して投げた。そしてそのまま腰につけたピックを掴み、跳んだ二人を追う蔦を牽制する。
 _
(#゚∀゚)「そいや!」

ジョルジュの両手剣が唸り全ての蔦を切り裂くが、同時に別の場所から生えた蔦がジョルジュを狙う。

(#^ω^)「させないお!」

上空、ショボンが投げた円盤を蹴るブーン。
地面に向かって加速し、着地しつつ片手剣を一閃。
自分を狙う蔦を回避しつつ、ブーンが断ち切った蔦を狙って走るジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「たすかった!」

( ^ω^)「おっおっ」

.

389 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:13:29 ID:r.am2grM0

('A`)「おれも仕事しないとな」

ジョルジュを追う蔦を攻撃しながら三人と合流するドクオ。

(´・ω・`)「三人とも大丈夫!?」

( ^ω^)「さっきのはありがとうだお」
 _
( ゚∀゚)「これが言ってたやつか」

('A`)「ここまでとはな」

円盤を回収しつつ近寄ってくるショボン。
蔦を警戒しつつ四人が集まると、後ろからモナーとビーグルが駆け寄った。

▼#・ェ・▼「ぐlるrぅるううllるlるううぅぅぅ」

(;´∀`)「だいじょうぶもなか!?」

投擲武器を構えたショボンを中心に、扇状に立って武器を構える四人。
その前に躍り出たビーグルが唸り声を上げ、全員がその方向を見た。

.

390 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:14:12 ID:r.am2grM0

(;゚∋゚)

川 ゚ –゚)「大丈夫か?」

前を向いたまま自分を気遣う言葉をかけるクーに戸惑うクックル。
正直今の状況を眼前にして、自分は全く動けなかった。
しかし、あの状況を見て咄嗟に動くことが出来る能力を持っているであろう仲間の彼ら、自分を囲む四人の男女はピクリとも動かず、ただその背中を見つめていた。
しかも自分を気遣う言葉を吐く。
どう考えても自分よりも目の前で戦う彼らの仲間の方が大丈夫ではない状態のはずなのに。

ξ゚听)ξ「あなたは私たちが守るから心配しないで。って言っても無理か」

(´<_` )「ま、あの程度ならあいつらは大丈夫だから問題ない」

( ´_ゝ`)「相変わらずのショボンの采配と、あいつらの反射神経だな」

涼しい顔で会話する彼らを見て一つ分かる。
それは、仲間への『信頼』。
しかも、実績と経験に基づいた確信なのだろう。

そこで思い出してしまう一人の男の顔。
自分のかつての仲間の顔。

自分は、彼のことを彼らのように信頼していたのだろうか。

そんな思いが心をよぎり、表情を暗くした。


.

391 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:15:51 ID:r.am2grM0

戦う五人と一匹の目の前の大地が大きく盛り上がる。

▼#・ェ・▼「ぎゃんっ!」

('A`)「来るぞ!」

大地がはじけとび、巻き起こる土煙。

(´・ω・`)「ジョル!」
 _
( ゚∀゚)「やってるよ!」

両手剣を振り回すジョルジュ。
既に緑色に光り輝くそれは、前方に気流を生み風の壁を作る。
その後ろに避難する四人と一匹。

('A`)「来るぞ!」

土煙の中から飛び出る数十本の蔦。
ジョルジュの放つ風の壁にほとんどが弾かれるが、それをかいくぐった蔦が襲いくる。

(#´∀`)「ふんっ!」

モナーの振るった槍が襲い来る蔦を全て絡め取る。
そして刃を大地に突き刺し、蔦の動きを封じた。

('A`)「ナイス!」

(#´∀`)「いまのうちもな!」

.

392 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:17:03 ID:r.am2grM0

蔦の繰り出された先に向かって駆け出そうとするブーンとドクオ。
大ぶりのナイフを構えたショボン。
しかしその時周囲に女性のような甲高い叫び声が響き、彼らは動きを止めた。
 _
(;゚∀゚)「おい!なんだよ今の声は!」

ブーンとドクオが後方のツンとクーを見るが異常はなく、むしろそちらも困惑したように首を振る。

(;´・ω・`)「誰かいるのか?」
 _
(;゚∀゚)「おい、終わるぞ!」

('A`)「分かった」

( ^ω^)「了解だお」

剣技後の硬直を起こすジョルジョに変わり前に立つために、タイミングを計る二人。

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

(;´∀`)「ビーグル?」

ジョルジュの起す風が一段と吹き荒れ、剣技が終了する。
前に躍り出る二人だが襲い掛かる蔦は無く、前方では徐々に土煙が薄くなっていった。

「助けて!」

(;´・ω・`)「……その声は!」

土煙が消え始め、大きな花を中心に何十本もの蔦を触手のようにうねうねと蠢かせるモンスターのシルエットが浮かび上がる。

('A`;)「ショボン!知ってるやつの声か!?」

(;^ω^)「誰だお!?」

巨大な花の下、触手に絡められた小さな人のシルエットが浮かぶ。

(;´・ω・`)「ユリエンヌちゃんっ!?」
 _
( ゚∀゚)「なんだって!?……て、誰だそれ」

.

393 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:18:13 ID:r.am2grM0

(;´∀`)「今回のクエストの依頼人もなよ!」

▼;・ェ・▼「きゃんっ!」

巨大な花のモンスターに囚われた少女。
ショボンをみて表情を明るくし、そして暗くする。

(;´・ω・`)「なんでここに!?」

ユリエンヌ「ごめんなさい!」

(;^ω^)「依頼人!?」

('A`;)「捕まってるのかよ」

驚いているのは先の者たちだけではなく、クックルを含めた五人もだった。

ξ;゚听)ξ「どういうこと?彼女が依頼人?」

川;゚ –゚)「なにかのイベントが始まるのか?」

(*´_ゝ`)「ユリエンヌちゃん……かわいい……触手……」

(´<_`;)「よし分かった兄者、ぶれないのはさすがだが、少しの間黙ってろ」

(;゚∋゚)「   」

クックルが驚いたのが目の前の事象ではなく自分の両横にいる二人の言葉にだとしたら、思わず呟いた聞こえなかった言葉は想像が出来る。

394 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:19:13 ID:r.am2grM0

('A`;)「おいショボン!?」

(;´・ω・`)「追加イベント?でも情報は無かったよ?」

ユリエンヌ「ごめんなさい!わたしも花を咲かせようと思って何度か来た事がある北の花壇に向かっていたら突然このモンスターが現れて…」

(;^ω^)「ど、どうすれば良いんだお?」

(;´∀`)「もなっ」

▼;・ェ・▼「きゃきゃんっ」

力比べに負け、地に刺した槍を抜き取られてしまうモナー。
 _
( ゚∀゚)「ほいさっ」

上段切りで一閃。
ジョルジュが蔦を切り、槍が落ちる。

( ´∀`)「ありがとうもな!」
 _
( ゚∀゚)「へへっ」

.

395 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:20:05 ID:r.am2grM0

戸惑いつつも武器を構える五人。
再びショボンを要に扇状に陣を敷く。

ユリエンヌ「早く逃げて!そして北の花壇に花を!」

(;´・ω・`)「しかし、君をこのままには!」

ユリエンヌ「私のことは気にしないで!おじいちゃんが死んでしまって、私が死んでも悲しむ人なんかいないから!せめて、おじいちゃんの花壇をきれいにしたかったけど、私にはそんな力も無くて…」
 _
( ゚∀゚)「!?」

ユリエンヌ「だから皆さんに依頼したんです!おじいちゃんの花壇にもう一度花が咲かせることが出来たら私も頑張ることが出来るかもって!でも、やっぱり私はダメなんです!だから!」

('A`;)「…」

(;^ω^)「…」

ユリエンヌ「おじいちゃんが死んだのだって、私のせいなんです!私がこの森に住むモンスターに襲われて、その時に私を守ろうとして……。私があの時おじいちゃんって叫ばなければ、おじいちゃんの気をそらさなかったら……おじいちゃんは……」

( ゚∋゚)

ユリエンヌ「だから!わたしのことは気にしないで!」

.

396 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:21:53 ID:r.am2grM0

(#´_ゝ`)「ダメだ!」

突然叫ぶ兄者に思わず全員が振り返る。

(#´_ゝ`)「君のような可憐な少女を見捨てることなど出来るわけが無い!」

兄者を除く全員が目を見開き、口をあけて呆然とする。

ユリエンヌ「でも、こんな世の中で私なんかが生きていても、また誰かを危険な目に…」

(#´_ゝ`)「おれが守る!」

ユリエンヌ「そんな…お兄さんみたいな戦士さんに守ってもらうなんて…。それに、私がそばにいたらお兄さんも危険な目に…」

(#´_ゝ`)「おれは死なない!」

ユリエンヌ「えっ!?」

全員「え?!?」

(#´_ゝ`)「おれはそばに居ても死なない!君はそこにいればいい!君が出来ることをすればいい!」

ユリエンヌ「お兄さん…」

(#´_ゝ`)「頼ればいい!時々甘えてくれればそれでいい!朝おはようって言ってくれればそれでいい!夜お休みって言ってくれればそれでいい!」

ユリエンヌ「私なんかのために…」

(*´_ゝ`)「あとお風呂で背中を流してくれたり、汚れるから薄着でエプロンつけておれのために料理をしてくれたり、ときどきおれの子守唄なんかで寝」

(´<_`;)「兄者っ!」

呆然と兄者の叫びを聞いていたメンバーだったが、突然弟者が更に大きな声で叫んだ。

(*´_ゝ`)「どうした弟者?突然大きな声を出して」

(´<_`;)「オーケー落ち着け。まずは落ち着いて喋るな。そして周りを見ろ」

(*´_ゝ`)「ん?」

自分を見るメンバーの顔を見る。

(;´_ゝ`)「……あれ?」

その冷たい視線で緩んでいた頬が元に戻る。

(;´_ゝ`)「いや、その…あれ?」

.

397 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:23:05 ID:r.am2grM0

冷や汗を垂らした兄者を全員が見るなか、一人が口を開いた。
 _
( ゚∀゚)「まぁ間違っては無いよな」

視線を外し、巨大花に向けた剣を構えなおすジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「おじいちゃんがあんたを守ったのは、あんたが大事だったからだ。だからそれを誇りこそすれ、悔やむべきじゃねぇ。それはおじいちゃんを侮辱してると同じだ。死んだのは残念だが、自分の命を危険に晒しても、あんたを守りたいってくらい、あんたの事を大事に思ってたんだろうよ。…声をかけて動きがとまったなんてのは、よくあることだ。それで攻撃を受けるのは弱いからだし、甘かったからだ。でもそれを悔やむのはあんたの勝手だ。でも、悔やむから自分の命が無くなれば良いなんてのは間違ってる。悔やむのならば、今度はあんたが誰かを守れ。大事な何かを守れ!誰かとかかわれば、その誰かに迷惑をかけるかもしれない。それならその分返せばいい。その分その人を、誰かを、何かを守れ!大事にしろ!それが生きている俺達の役目だ!だからそれを投げ出すのは許せねぇ!」

にやっと笑い、両手剣を片手で持って肩に乗せる
 _
( ゚∀゚)「だから助けてやるよ。おれはあいつと違ってロリじゃないけどよ」

ジョルジュの言葉を黙って聞いていたメンバーが思わず噴き出し、そして気を取り直したように武器を構え直し始める。

.

398 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:24:29 ID:r.am2grM0

('A`)「そうだな。ここで見殺しにするのは趣味じゃないし、後悔しそうだ。だから戦おう。…おれもロリじゃないから勘違いするなよ」

( ^ω^)「おっおっ。だおね。見捨てるくらいならさっさと逃げてるだろうし、ぼくも戦うお。ロリじゃないけど」

( ´∀`)「モナも、このギルドに入って分かったことがあるもな。やらないでする後悔なら、やってやるもな!そして笑うもな!だから戦うもな!戦うけどその理由は兄者とはちがうもな!ロリじゃないもな!」

▼・ェ・▼「きゃん!」

ξ゚听)ξ「逃げるのは性に合わないのよね。それに、このメンバーで戦うなら負けないし。死なないし。勿論私もロリじゃないけど」

川 ゚ –゚)「同じく。ロリと同じ意見なのは癪にさわるが、間違ってはいないから良いだろう。NPCの命だろうが、命は命。守れるなら守るし、守る努力をするのは当然だ。…言っておくが私もロリでは勿論ない」

(´<_` )「色々間違っている兄だが前半言っていたことは正解だから、ここは助けるために戦うさ。…言っておくが同じ顔だからって一緒にするなよ。あー顔変えたい」

(´・ω・`)「一人を除いてロリじゃなくて良かったよ。あ、僕も違うよ。意見は一緒だから、君を助ける努力はするけどね」

(;´_ゝ`)「何も全員で…」

ユリエンヌ「私なんかのために……」

('A`)「『私なんか』のためじゃない、『ユリエンヌ』という人のために俺達は戦うんだ」

( ´_ゝ`)「そうだそうだ!」

(´<_` )「兄者はちょっと黙ってろ」

.

399 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:28:16 ID:r.am2grM0


(´・ω・`)「じゃあいこう!ドク!ブン!ツン!クー!速攻で自分の前の蔦を各個撃破!ジョルと僕が四人のサポ!モナとクックルは範囲技を敵の足下で交互に!ビーグルにはサポートを命令!兄弟は二人のサポートをしつつ重単発技!」

駆け出す四人、追うジョルジュ。
ショボンは走りながら位置取りをしつつ既に何本かのナイフを牽制として閃かせ、左手の円盤に右手を添える。

( ´∀`)「行くもなよ、クックル」

( ゚∋゚)「おう!」

その後ろを走るモナーとクックル。二人の間をビーグルが駆ける。

(´<_` )「おら、行くぞ兄者。助けるんだろ」

(*´_ゝ`)「おおっ」

流石兄弟が駆け出したとき、ブーンの片手剣が蔦を切り裂いた。


まずは飛び込んだ四人が蔦を切り裂く。
後ろは気にせず動き回る四人。
ブーンの片手剣が風となって突破口を作り、ツンの細剣が蔦を刺し、ドクオの片手剣がとどめの一撃を与え、クーの槍が薙ぎ払う。
ジョルジュの両手剣は周囲から直線的に攻撃することで束となって四人を襲おうとする蔦を時に邪魔し、時に砕き、ショボンの投げナイフが上から狙う蔦を裂き、下から狙う蔦はピックで地面に刺し止める。
遅れて中に入ったモナーが地面と垂直に出来るだけ低い位置で範囲攻撃を行うと、巨大花がバランスを崩した。

(´・ω・`)「!」

.

400 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:29:51 ID:r.am2grM0

顔を上げるユリエンヌ。
ぼそっと呟いたクックルを見上げた。

( ゚∋゚)「自分のために、誰かが死んだ。自分がしでかした過ちのせいで、人が死に、自分が生き残る。…俺達は、生きるしかないんだ」

ユリエンヌ「…」

( ゚∋゚)「誰も自分に関わっちゃいけない、自分は他人と関わってはいけない、一人でいれば周りで誰も死なない。死ぬところを見たくない。おれも、そう考えていた。……でも、無理だ」

ユリエンヌと視線をあわせ、ぎこちなく笑顔を見せた。

( ゚∋゚)「俺は、人が好きだから。花や動物も好きだけど、それ以上に人が好きだから。関わっていたいんだ。そして出来るなら、友達がほしい。仲間がほしい。…君は違うか?」

ユリエンヌ「…」

小さく首を横に振るユリエンヌ。

( ゚∋゚)「花を見て、一緒に笑ってくれる友達を、仲間を作ろう。そうすれば、きっと何かが変わる。そして、…強くなろう」

クックルが前を見たとき、巨大花がポリゴンに変わった。


.

401 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:32:21 ID:r.am2grM0



5.花園


   に続く

.

402 名前:名も無きAAのようです:2013/03/31(日) 23:33:59 ID:sj8olhpY0
今回でクックル編完結すると思ってたのに・・・

403 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:35:49 ID:r.am2grM0
ということで、本日の投下終了です。

クックル編終了予定でしたが、終わりませんでした。
(;´・ω・`)

それでも次回までには何とか。
(´・ω・`;)

読んでくださり、乙とか感想とかありがとうございます。

それではありがとうございました。

404 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/03/31(日) 23:38:27 ID:r.am2grM0
あうあう…。

ごめんなさい……。

デザインあ展とか本屋迷宮とか行っていたら時間が無くなった&思っていたより長くなってしまったので。
(´・ω・`)

やっぱり全部書き上げてから投下に変更しようかなぁ。

次回が終わったら、投下方法も考えます。

405 名前:名も無きAAのようです:2013/03/31(日) 23:42:37 ID:iOlgy.U.0


406 名前:名も無きAAのようです:2013/04/01(月) 02:00:34 ID:0pwZCsAk0
乙ー

407 名前:名も無きAAのようです:2013/04/01(月) 08:52:13 ID:FjlN.iaY0
生存報告さえしてくれればいつまでも待つよ


408 名前:名も無きAAのようです:2013/04/01(月) 12:20:16 ID:gEkxgkDY0
俺は短くてもちょいちょい投下してくれた方が嬉しい!
でも作者の好きなようにすれば良いと思う

409 名前:名も無きAAのようです:2013/04/01(月) 15:13:36 ID:q4oZzjxk0
乙!

410 名前:名も無きAAのようです:2013/04/01(月) 20:06:31 ID:rzJp9HlI0
おむつ!

411 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:43:25 ID:.xI1J6ZE0
あうあう…。

どーも作者です。
読み直したら抜け落ち発見……。
(´・ω・`)

>399
の後からは、この下のにつなげてください。
(´・ω・`)

412 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:46:30 ID:.xI1J6ZE0

円盤を投げるショボン。
弧を描いて飛ぶそれは、ユリエンヌを捕らえている蔦を全て切り裂いた。

ユリエンヌ「!キャー!」

(´・ω・`)「クックルさん!」

( ゚∋゚)「わかった!」

落ちてきた少女を抱きとめるクックル。

( ゚∋゚)「大丈夫か?」

ユリエンヌ「…はい…ありがとうございます」

( ´∀`)「一度離れるもな!」

( ゚∋゚)「分かった!」

抱きとめたまま外に向かって走り出すクックル。
その後ろをモナーが走り、追って迫る蔦を切り落とす。

.

413 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:47:23 ID:.xI1J6ZE0

(´<_` )「あとはまかせろ!」

( ´_ゝ`)「クックル!俺と変われ!」

(((;゚∋゚)))

( ´_ゝ`)「何故その役目が俺ではないんだ!」

光り輝く二人の武器。
斧と鎚が唸りを上げ、一撃で数十本の蔦を粉砕する。

目に見えて動きを悪くする巨大花に、更に攻撃を加える8人。

( ゚∋゚)「大丈夫か?」

ユリエンヌ「……はい」

( ´∀`)「もう安心していいもなよ」

▼・ェ・▼「きゃん」

ユリエンヌ「はい…」

( ´∀`)「どこか怪我したりしてないもなか?」

ユリエンヌ「大丈夫です」

下されたユリエンヌはずっと下を向いており、二人を見ようとしない。

(;´∀`)「もなもな」

( ゚∋゚)「……それでも、生きるしかないんだ」

ユリエンヌ「え?」

.

414 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:48:06 ID:.xI1J6ZE0

顔を上げるユリエンヌ。
ぼそっと呟いたクックルを見上げた。

( ゚∋゚)「自分のために、誰かが死んだ。自分がしでかした過ちのせいで、人が死に、自分が生き残る。…俺達は、生きるしかないんだ」

ユリエンヌ「…」

( ゚∋゚)「誰も自分に関わっちゃいけない、自分は他人と関わってはいけない、一人でいれば周りで誰も死なない。死ぬところを見たくない。おれも、そう考えていた。……でも、無理だ」

ユリエンヌと視線をあわせ、ぎこちなく笑顔を見せた。

( ゚∋゚)「俺は、人が好きだから。花や動物も好きだけど、それ以上に人が好きだから。関わっていたいんだ。そして出来るなら、友達がほしい。仲間がほしい。…君は違うか?」

ユリエンヌ「…」

小さく首を横に振るユリエンヌ。

( ゚∋゚)「花を見て、一緒に笑ってくれる友達を、仲間を作ろう。そうすれば、きっと何かが変わる。そして、…強くなろう」

クックルが前を見たとき、巨大花がポリゴンに変わった。

.

415 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:49:03 ID:.xI1J6ZE0


5.花園



.

416 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:49:49 ID:.xI1J6ZE0

(*´・ω・`)「クエストクリア!お疲れ様でした!」


 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)( ´∀`)( ゚∋゚)
   「おつかれさまでした!!」
          ▼・ェ・▼('A`)(´<_` )

ミ,,゚Д゚彡「みんなお疲れ様だから!腕によりをかけたから、いっぱい食べてほしいから!」

( ´_ゝ`)「で、俺の手首を縛るロープはいつ外してくれるのかな?」


ギルドホームのリビング。
一人を除いて思い思いにグラスを掲げるメンバーたち。

('A`)「大きな被害無し、金も手に入ったし、そしてなにより」

川*゚ –゚)「レア薬草5種ゲット!」

(´・ω・`)「レアアイテムも貰えたよ。栽培用アイテム《ぞうさんじょうろ》。発動条件は不明だけど、イベントの件はアルゴさん達情報屋に渡しておかないとだね」

川 ゚ –゚)

ξ;゚听)ξ「クー、また顔が凍ってるわよ」

川 ゚ –゚)「ん?そうか?何故だろうな」

( ´_ゝ`)「安定のスルー能力。流石だな」

.

417 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:50:35 ID:.xI1J6ZE0

思い思いにテーブルの上の食べ物をつまみながら飲物を飲む。
 _
( ゚∀゚)「しかし、あの巨大な花はグロだったな」

(;´∀`)「緑の蔦はともかく、花の部分の色彩がかなりのものだったもな」

(´<_` )「気持ち悪さは今まで戦った敵の中でもトップクラスだったな」

( ´_ゝ`)「おーい、弟者くん。そろそろきみだけでもどうだろうか。気付いてみないか?お兄ちゃんも食べたり飲んだりしたいな」

( ^ω^)「クックルさんの声も聞けたし、万々歳だお」

(;゚∋゚)「いや、そんな」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃんも良かったって言ってるよ」

( ´_ゝ`)「おーいショボン、そろそろ外してみないか?これはギルマスのみ使用可能なギルド内アイテムだよな?」

.

418 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:51:28 ID:.xI1J6ZE0

ξ゚听)ξ「クーはその薬草どうするの?新しいPOT用?」

川 ゚ –゚)「まずは自分のレベル上げだな。幸い中に入れておけば劣化はしないようだしタイプのようだし、これを扱える力量を手に入れるのが先だ。定期的に手に入るようになれば色々試してみたいが、まずはレベルと情報で成功率を上げないと」

ξ゚听)ξ「なるほどね」

ミ,,゚Д゚彡「ほら、いっぱい食べるといいから」

( ゚∋゚)「ありがとう。美味しい」

ミ*,,゚Д゚彡「もっともっといっぱい食べるといいから!」

(;゚∋゚)「い、いやさすがにそんなには」

クックルの持つ皿に次々に料理をのせてニコニコと笑っているフサギコ。
クックルも困りながらも箸をつけ、一つ一つに感想を言っていた。

.

419 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:52:45 ID:.xI1J6ZE0

( ´∀`)「モナはこれが好きもな」
 _
( ゚∀゚)「この魚!おれが釣ってきたやつだよな?」

ミ,,゚Д゚彡「そう、それはこの前釣ってきてくれた魚だから。大きくておいしそうで調理のしがいがあったから、今日までとっといたから」
 _
( ゚∀゚)「フサえらい!クックル!これも食べてみろ!」

( ゚∋゚)「分かった分かった」

▼*・ェ・▼「きゃんっ!」
 _
(*゚∀゚)「ビーグルも食べるか!食え食え!」

( ´_ゝ`)「おれも食べたいな〜」

(´<_` )「本当に反省しているのか?」

( ´_ゝ`)「してるしてる」

クックルを中心に輪を作るメンバーたち。
そしてそれを視界の端で見ながら食事を続ける男が三人。

.

420 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:53:39 ID:.xI1J6ZE0

( ^ω^)「どうだお?」

(´・ω・`)「何が?」

('A`)「クックルだよ」

(´・ω・`)「だから何が?」

( ^ω^)「……クエスト条件はどこまで分かってたんだお?」

(´・ω・`)「…ばれてた?」

('A`)「お前の考えそうなことだからな」

(´・ω・`)「クエストの発動条件は、栽培スキルが500以上のプレイヤーが花を咲かせることだと思われたんだ。だから一か八かだったけどね」

( ^ω^)「……クックルの栽培スキルが500以上あるのはどこで知ったんだお?」

(´・ω・`)「………」

('A`)「ショボン?」

(´・ω・`)「花壇で咲かせていた花を検索したら、中層階では高レベルな栽培スキル保持者が育てないと咲かない花らしかったから」

('A`)「まったく」

.

421 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:54:25 ID:.xI1J6ZE0

川 ゚ –゚)「でも、あの巨大花が私たちの敵ではないことは分かっていたんだろ?」

(´・ω・`)「もちろん。最悪逃げることも視野に入れたけど、あの層のイベントモンスターなら敵ではない事くらいはね。一人ならともかく、パーティーでなら敵じゃないよ」

ξ゚听)ξ「まあ実際瞬殺だったわけだし、それに関しては文句は言わないけど」

川 ゚ –゚)「お前が私たちをそこまで危険な目にあわせないことは分かっているしな」

川 ゚ –゚)ξ゚听)ξ「でもちょっとむかつく」

(´・ω・`)「ごめんなさい」

こそこそと喋っていた三人の後ろに立つツンとクー。

ξ゚听)ξ「で?クックルは仲間にするの?」

(´・ω・`)「入ってくれたら良いよね」

川 ゚ –゚)「入れるつもりなんだろ?」

(´・ω・`)「入ってほしいよね」

( ^ω^)「口淀むなんてめずらしいおね」

('A`)「めずらしく自信なさげだな」

川 ゚ –゚)「どうした?いつものふてぶてしさが無いぞ?」

ξ゚听)ξ「いつもの詐欺師スマイルはどうしたのよ」

(´・ω・`)「あれ?やっぱりみんな怒ってる?」

ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)( ^ω^)「いーやべつに」('A`)

(;´・ω・`)「なら良いんだけどさ」

.

422 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:55:24 ID:.xI1J6ZE0

自分を見る四人の冷たい視線を受け止めながら立ち上がるショボン。
そして一回手を叩いた。

(´・ω・`)「さて、盛り上がってるけど、先に事務的なことをやっちゃおうか」
 _
( ゚∀゚)「ん?なんだ?」

そのままの位置で全員がショボンを見る。

(´・ω・`)「まずはクックルさん、今日はありがとうございました。おかげでクエストクリアすることが出来ました」
 _
( ゚∀゚)「なんだよ、あらたまっちゃって」

(´・ω・`)「ゲストだからね。危ないめにもあわせちゃったし」

( ゚∋゚)「…」

(´・ω・`)「本当にありがとうございました。まずは、約束の報酬です」

( ゚∋゚)「あ、ああ」

ウインドウを出すショボン。
トレード画面で約束の金額を入力し、クックルに提示する。

(´・ω・`)「確認してくれたら了承してください」

( ゚∋゚)「……」

(´・ω・`)「クックルさん?」

.

423 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:56:27 ID:.xI1J6ZE0

自分の目の前に現れたウインドウ。
約束の金額が示されたそれを了承すれば、自分のストレージに大量のコルが入り、欲しかった武具を買うことが出来る。
だが、押せなかった。

( ゚∋゚)「これを押したら、多量の金が手に入る」

(´・ω・`)「そういう契約ですから」

( ゚∋゚)「俺は、いまこうやって喋っていることが信じられないんだ。自分がまた、こうやって大人数と喋ることが出来る日が来るなんて…」

( ´∀`)「クックル…」

( ゚∋゚)「みんなと一緒に行動して、苦しかった。死んだ仲間のことを考えて、苦しくなった。おれが声をかけたばっかりに死んでしまったあいつ……。今楽しいと感じている自分を殺したくなった。けれど、それを越えて……楽しかった」

クックルの目から流れる涙。

( ;∋゚)「一人は…辛いんだ。この世界で一人でいるのは、本当に苦しいんだ。けれど、あいつのことを思うと…おれは…おれは…」

袖で涙を拭い、まっすぐにショボンを見る。

( ゚∋゚)「この金を受け取れば、契約が終わる。また、一人に戻る。それが苦しいんだ。…すまん」
.

424 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:57:40 ID:.xI1J6ZE0

 _
(#゚∀゚)「別に金を受け取ったからっておれらともう会えなくなるわけじゃないだろ!また一緒にクエストとか迷宮に行けばいいじゃねぇか!」

( ´∀`)「そうもな!またフレンド登録して、一緒に行けばいいもな!」

( ゚∋゚)「二人とも…」
 _
( ゚∀゚)「っていうかショボン!クックルをギルドに入れろ!」

( ´_ゝ`)「ジョル…」

(´<_` )「…」

ミ,,゚Д゚彡「ジョルジュ…」
 _
( ゚∀゚)「なんだよ、おまえらだってそう思うだろ」

( ゚∋゚)「ありがとう、でも、良いんだ」
 _
( ゚∀゚)「なんでだよ!ショボン!おい!」

( ゚∋゚)「それだけで充分だ」

ξ゚听)ξ「ショボン、何とか言いなさいよ」

('A`)「ギルドのメンバー加入はお前に任せてある」

( ^ω^)「メンバー加入に関しては、ショボンの一存で決めていいお」

川 ゚ –゚)「どうするんだ?」

(´・ω・`)「……」

.

425 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 00:59:07 ID:.xI1J6ZE0

全員の視線を集めるショボン。
しかし彼はそれを気にすることもなく、クックルを見る。

(´・ω・`)「正直なところ、最初は加入を誘いたいと思っていました」
 _
( ゚∀゚)「だよな!……って、『思っていた』って言ったか?」

(´・ω・`)「モナーから話を聞いて、一緒にクエストを行って、クックルさんを知り、仲間になりたいとも思いました。…森の中でユリエンヌちゃんに話していたこと、心に響きました」

(;゚∋゚)「き、聞こえていたのか」

(´・ω・`)「立ち聞きしてすみません。そして、だからこそ、仲間にしたいと思うと同時に、躊躇しました」

(;´∀`)「どういうこともな?」

(´・ω・`)「このギルドに入るのならば、自分の命と仲間の命は対等と考えて欲しい」

( ゚∋゚)「もちろんだ!」

(´・ω・`)「いいえ、あなたは違います。あなたには自分の命にかえても他人の命を守ろうとする。それではダメなんです。ちゃんと、自分の命を大事に出来る人でないと」

( ゚∋゚)「!」

(´・ω・`)「このギルドに欲しいのは、自分を守ってくれる盾ではなく、横に立って戦ってくれる、背中を任せあえることが出来るメンバーです」

.

426 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:00:14 ID:.xI1J6ZE0

静まり返る室内。

( -∋-)「……確かにおれにはそういうところがあるかもしれない。憎くて、苦しくて、あいつを殺したコボルトたちを何度倒しにいったか覚えていない……死んでも良いと思っていた。こんどこそ誰かを守りたいと考えていた。……けれど」

( ゚∋゚)「許されるのなら、変わりたい。このギルドで、みんなと共に戦って、変わりたい。まだ、ダメかもしれない。けれど、変わる。変わってみせる。だから、おれを、このギルドに入れてほしい」

一つ一つの言葉をかみ締めるように言うクックル。
沈痛な面持ちで二人の会話を黙って聞いていたメンバーたちも、クックルの言葉が進むたびに笑顔になった。

そして、ニッコリと微笑むショボン。

(´・ω・`)「ようこそ。ギルド『V.I.P.』へ。これからよろしく。クックル」

今日一番の歓声が部屋を埋め尽くした。

.

427 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:02:05 ID:.xI1J6ZE0

数日後。
雑貨屋Boon店内。

( ^ω^)「今日はどこに行ってるんだお?」

(´・ω・`)「採取クエストだよ。低層階だけど、ランダムで出るレアアイテムがなかなかおいしいやつ」

カウンターの中のブーンと、カウンターの横のイスに腰掛けたショボン。
ショボンはウインドウをいじっている。

( ^ω^)「クックル以外の面子は?」

(´・ω・`)「ドクオとモナーとふさ」

(;^ω^)「ふさ!?大丈夫かお?」

(´・ω・`)「ドクオがいるし、レベル的にはふさでも安全圏な所だから。それに、ふさはスキルを選べば化けると思うんだよね」

(;^ω^)「ショボンがそういうなら…」

.

428 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:03:42 ID:.xI1J6ZE0

( ^ω^)「で、さっきからなにしてるんだお?」

(´・ω・`)「クックルに渡さなかったコルがあれば牧場の隣に農場を買えそうだから、資産計画」

( ^ω^)「おまえはなにものだ」

(´・ω・`)「きみの友達で、ギルドマスター」

( ^ω^)「そー返されーると、なーにも言ーえない、いーえないぼーくがいる」

(;´・ω・`)「なにそれ」

( ^ω^)「おっおっおっ」

(´・ω・`)「僕のほうこそ、時々君が分からなくなるよ」

( ^ω^)「おっおっおっ」

(;´・ω・`)「まったく。」

ウインドウを閉じ、立ち上がって大きく伸びをするショボン。

(´・ω・`)「さて」

( ^ω^)「?」

(´・ω・`)「あの程度のクエストならもう帰ってくるだろうから、昼ごはんの準備でも使用かな。午後はクックルと農場の打ち合わせしたいし」

( ^ω^)「きょうはなんだお?」

(´・ω・`)「ジョルジュが釣ってくる魚次第」

( ^ω^)「それは楽しみだお」

穏やかに流れる時間。
すると店のドアが開き、鈴が鳴った。

視線を扉に向ける二人。
中に入ってくる長身の男。

( ^ω^)「おかえりだお」

(´・ω・`)「おかえり」

二人の声を聞き、微笑む長身の男。
そして、口を開いた。

( ゚∋゚)「ただいま」
.

429 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:04:28 ID:.xI1J6ZE0



第四話 終了。



.

430 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/02(火) 01:08:46 ID:.xI1J6ZE0
ってことで、クックル編終了までいってみました。

乙とおむつと感想ありがとうございます!
(*´・ω・`)

次の話はまだ書き始めてもいないのでどうなるか分かりませんが、投下の仕方も考えつつまたやってまいりますので、また読んでいただけると嬉しいです。

とりあえずは残りのメンバーの話でまた暗い話wwか、クエストメインの話ってところでしょうか。

ではまた

431 名前:名も無きAAのようです:2013/04/02(火) 01:08:49 ID:0U0Ul3gE0
乙ー

432 名前:名も無きAAのようです:2013/04/02(火) 14:40:02 ID:0KwxNIeI0
乙―

433 名前:名も無きAAのようです:2013/04/02(火) 17:13:14 ID:2WHCrE5w0
おむつー

434 名前:名も無きAAのようです:2013/04/03(水) 22:18:28 ID:7JN0GMp60
乙!

435 名前:名も無きAAのようです:2013/04/06(土) 22:26:36 ID:.LX0A5TYO
おつ〜

436 名前:名も無きAAのようです:2013/04/17(水) 07:09:35 ID:UWWq3egUO
wktk

437 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:02:25 ID:zAqSi8zI0
どーも作者です。

おつとおむつとwktkをありがとうございます。

GW祭りにwktkしつつ、やっと出来上がった話を投下しに参りました。

誤字脱字チェックをしながらなのでちょっと遅めですがいきます!

438 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:07:47 ID:zAqSi8zI0




第5話 ここでも雨は冷たいから




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439 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:08:31 ID:zAqSi8zI0


0.頬を濡らす霧雨。




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440 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:09:55 ID:zAqSi8zI0

2023年1月某日

その日、アインクラッド第一層の外れにある湖は霧に包まれていた。
『アマネ湖』と名付けられているその湖は五日に一度は霧に包まれており、霧の日は視界が悪くなるため来る者はほとんどいない。
たまに霧の日限定イベントが無いかと探しにくる酔狂な者もいるが見つかったという報告はいまだなく、安全圏ではないがモンスターもポップしない為狩りに訪れるものもいない。
しかもフロアボスが攻略されて二層が解放されたため、この湖などはまったく相手にされなくなってしまっていた。

そんな湖の畔。
浮かぶ船など無いのに設置されている木製の桟橋に、一つの人影があった。

その影は桟橋の端に胡坐をかいて座っており、そして釣竿を持ち、湖面に糸を垂らしてウキを浮かべていた。

伸ばした手の先も白く霞む様な霧の中、そんな人影があるだけで肝を冷やしてしまいそうなものだが、更に一つの人影が桟橋を歩いていた。

.

441 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:11:17 ID:zAqSi8zI0

やってきた男「釣れているであるか?」

座っていた男は完全に油断していたためかなり驚いたのだが、なんとかそれを気付かせないことに成功し、上目遣いにやってきた男を見た。

やってきた男「釣れているであるか?」

座っていた男の表情はかなり険しく、現実世界ならばあまりそばに寄りたくない風貌であった。
しかしやってきた男は全く気にすることなく同じ事を聞いた。

視線をもどし、黙ってウキを見る目つきの悪い男。

目つきの悪い男「おまえ、おれが怖くないのか?」

やってきた男「怖い?」

目つきの悪い男「…俺は、オレンジだ」

目つきの悪い男の頭の上に浮かぶカーソルはオレンジ色。
それは、犯罪者の烙印。
プレイヤーを攻撃し傷付けたことがあるという印。

やってきた男はカーソルに視線を向け、色を確認してからもう一度目つきの悪い男を見た。

やってきた男「オレンジであるな。それで?」

目つきの悪い男「…知らないのか?」

やってきた男「何をであるか?」

目つきの悪い男「カーソルがオレンジなのはプレイヤーを攻撃して傷つけたことがある証拠だ」

やってきた男「であるな」

あっさりと肯定した男に驚き、こんどはそれを隠そうとせずに横を向くと、何の躊躇も無く男が隣に座っていた。

.

442 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:12:31 ID:zAqSi8zI0

目つきの悪い男「おまえ!」

やってきた男「おまえは私を攻撃するのであるか?」

目つきの悪い男「は!?」

やってきた男「攻撃するのであるか?」

目つきの悪い男「……しねぇけどよ」

やってきた男「ならば怖がることは何も無い」

呆れたように断言した後、ウインドウを操作して自分の釣竿をとりだす。そして釣り糸の先の針に芋虫のような餌をつけ、湖に垂らした。
それを見つつ、目つきの悪い男も湖面に浮かぶ自分のウキを見る。

目つきの悪い男「変なおっさんだな……だけど、そんなだといつか殺されるぞ」

やってきた男「おっさんとはなんだ。おっさんとは。まあお主とは20近く離れておるだろうが」

顔をしかめるやってきた男。
しかしその表情がゆっくりと緩む。

やってきた男「お主は優しいのだな」

目つきの悪い男「は、はぁ!?」

思いもかけないことを言われ、慌てたように再び横を向く目つきの悪い男。

やってきた男「そうであろう。私を心配してくれたのだろ?初めて会ったこの私を」

目つきの悪い男「べ、別にそんなつもりじゃ」

やってきた男「そんなつもりは無くともそうやって人を気遣える者のことを、『優しい』というんだと思うがな」

.

443 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:13:37 ID:zAqSi8zI0

目つきの悪い男「…本当に、へんなおっさんだな……。ここは釣れねぇよ。晴れの日は知らねぇけど、霧の日は釣れたためしがねぇ」

やってきた男「…そうであるか?」

湖面に浮かぶウキが一つ沈み、やってきた男の釣竿がしなる。
そしてタイミングを合わせて竿を引くと、銀色に輝く一匹の魚が釣れた。

目つきの悪い男の切れ長の目が、大きく開かれてまん丸になる。

目つきの悪い男「へ?」

やってきた男「この湖は晴れた日は簡単に釣れるが、霧の日は難易度が上がって釣りスキルが150ないと釣ることができないのである」

慣れた手つきで魚を自分のストレージにしまう男。

目つきの悪い男「なんだよそれ」

やってきた男「しかも釣れるのはこの種類だけである。スキルが更に上がれば他の種類も釣れるのかもしれないが、今のところはこいつだけである」

立ち上がり、釣竿をしまう男。
そしてそのままウインドウを操作すると、桟橋の上に銀色の鱗をもった魚が十数匹現れ、ピチピチと跳ねた。

目つきの悪い男「お、おい」

やってきた男「おぬしにその魚をやろう。腹が減っておるのであろう?こんな日に魚釣りにくるくらいであるからな」

目つきの悪い男「別に…」

やってきた男「だが、その魚を調理するときは気をつけたほうが良い。生でも食えるがそれほど美味しくは無い。焼くのは固体ごとの設定を見抜かないと美味く焼くことが出来ぬ。わしも何度失敗したことか」

目つきの悪い男「そんな魚を」

.

444 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:14:35 ID:zAqSi8zI0

やってきた男「だが、上手く焼けるとかなり美味い」

目つきの悪い男の抗議の言葉をさえぎるように喋るやってきた男。
美味いという言葉を聞いて抗議を止めた男を見てにやりと笑う。

やってきた男「これだけの数があれば、一匹か二匹は上手く焼けるであろう。それに、生焼けや焦げてしまっても食べられなくはないから腹の足しにはなるであろうしな」

目つきの悪い男「……貰っておいてやるよ」

桟橋の上で跳ねている魚を自分のストレージに移動し始める目つきの悪い男。
それを優しい表情で見守るやってきた男が、魚があらかた保存されたのを見て口を開いた。

やってきた男「わしの名はロマネスク。お主、名前は?」

目つきの悪い男「……」

ウインドウを操作する手を止め、見上げる目つきの悪い男。

( ФωФ)「次に会った時、なんと呼べばよい?若造とでも呼べばよいのか?」

目つきの悪い男「……また会うつもりかよ」

( ФωФ)「会わないつもりか?魚の礼は魚で返してもらいたいものなのだが」

目つきの悪い男「……本当に変なおっさんだな。……ジョルジュだ」

( ФωФ)「ん?」
 _
( ゚∀゚)「おれの名前はジョルジュだ。おっさん、耳遠いんじゃないのか?」

( ФωФ)「はっは。ではジョルジュ、またな。魚を上手く焼ける様頑張るがよい」
 _
( ゚∀゚)「うるせえ」

笑いながら桟橋を岸に向かって歩いていくロマネスク。
後に残されたジョルジュも魚を全部ストレージにしまうと、そのまま釣り道具も片付け、桟橋を戻り始めた。

霧は、まだ湖を包んでいた。


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445 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:15:30 ID:zAqSi8zI0


1.豪雨を防ぐにはその傘は小さすぎる。


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446 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:16:18 ID:zAqSi8zI0

オレンジプレーヤー。
それは他のプレーヤーを傷付けてしまい通常青色のカーソルをオレンジ色にしてしまった者。
この者は圏内、つまりシステムに守られた街に入ることが出来なくなる。
森に時々現れるNPCの道具屋や、モンスターを倒したときにドロップするアイテムなどで補給はそこそこ出来るものの、やはり『安全な場所』で休むことが出来ないのは精神を病む原因にもなる。

この『安全な場所』というものが曲者で、『モンスターが出ない・攻撃してこない』という意味での『安全な場所』はダンジョンの中にも存在する。しかしそこは圏内ではないため、攻撃されればHPは減るし死ぬこともある。

モンスターが出ないのに攻撃される。

つまり、モンスターには襲われることはなくともプレイヤーがプレイヤーを、人が人を殺すことが出来てしまう場所、それがダンジョン内にある『安全エリア』だった。

モンスターのみを警戒するのならば安全エリアで休めばよい。
だがしかし、すぐそばをモンスターが闊歩しているという恐怖は感じてしまう。
そして他のプレイヤーは絶対に警戒しなければならない。
そんな場所で心から休むことなど出来るわけがなく、疲労は蓄積し、心はすさんでいく。

また、やはりオレンジプレーヤーは周囲に忌避され、白い目で見られる。
それは当然のことで、人を攻撃したことがあるということは、もしかすると殺しているのかもしれないし、更にもしかすると自分を攻撃してくる可能性もあるかもしれないのだから。

自ら選んでオレンジになったものならばまた違うかもしれないが、思いもかけずオレンジになってしまったものならば、この状況は苦しむだけであろう。

そして、ここにるジョルジュも自分にとっては不慮の事故によりオレンジになってしまっていた。
 _
(;゚∀゚)「ちくしょう…」

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447 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:17:46 ID:zAqSi8zI0

使うごとに磨耗する剣の耐久値は限界に近付きつつあり、たいしたものも食べられず、POTも底をつきつつあった。
 _
(;゚∀゚)「おっさんに貰った魚も食っちまったし、POTもなくなりそうだし、何より剣がもうやべぇ………」

どんよりと曇った空の下、森の中を隠れるように進んでいたジョルジュ。
体の疲れと心の磨耗。手持ちのアイテムの減少が心を荒ませ、正常な判断が出来なくなっていく。

そんな彼の目に、一組のパーティーが映った。

楽しそうに、それこそ遊びに行くかのように談笑しながら歩く五人。
三人の男のうち二人は片手剣使い。一人は貧相で一人は少し丸い。もう一人は槍使いで中肉中背だが垂れた眉の顔はとても強そうには見えない。
二人の女は細剣使いと槍使い。二人とも美人でなんでこんなゲームにいるのか分からないが、少なくとも強そうには見えない。

既に三層が開放されたのにまだこの一層にいるということは、実際にも強くはないのであろう。

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448 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:18:37 ID:zAqSi8zI0

少し傷付けるだけ

いや、ダメだ。

どうせオレンジなんだから。

ダメだ

殺さなければいいだろ

……ダメだ

おれが、生き残るためだ

……

おどかすだけ。ちょっと傷付けるだけ。殺しやしないl。



多分な。

.

449 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:19:38 ID:zAqSi8zI0

心の中で二つの思いが渦を巻き、結果が出てしまいそうになったその時、貧相な男がこちらを向いて剣に手をかけた。

('A`)「オレンジプレーヤーだ!」

何も考えずに瞬間的に飛び出してしまったジョルジョに対して武器を構えるドクオとショボン。
反応できずにいた三人を後ろにして守るようにする。
 _
(#゚∀゚)「    」

片手剣を構えるジョルジョと。
ドクオとショボンの後ろにいる三人も慌てて武器を構える。

(;^ω^)「オレンジプレーヤー?」

ξ;゚听)ξ「カーソルがオレンジでしょ!よく見なさい!」

(;^ω^)「あ、ほんとだ」

川;゚ –゚)「実物を見るのは初めてだが、オレンジという事は…」

出足こそ遅れたものの武器を構えたその姿はさまになっており、一筋縄ではいかない強さを感じられた。
 _
(#゚∀゚)「ちっ」

『しくじった』と、心で呟くジョルジュ。
弱そうに見えたからこそ飛び出してしまったのであって、本当に戦いたいわけではない。傷付けたいわけではない。
だが程ほどに強いのならば脅しただけではPOTや食料を渡したりはしないだろう。
そして、例えオレンジプレーヤーを傷付けても通常ブルーのカーソルがオレンジに変わることはない。
オレンジプレーヤーは、犯罪者は襲われてもしょうがないといわんばかりのこのシステム上において、彼らが自分の命とその持ち物を守るために自分を攻撃してきても、彼らには何のペナルティーも起きない。
そう、例えジョルジュを殺したとしても。
 _
(;゚∀゚)「くっ」

.

450 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:20:49 ID:zAqSi8zI0

逃げるか、襲うか。
生きるか、死ぬか。
生き残るか、殺すか。

次の行動を躊躇した瞬間、ショボンが意外な行動に出た。

('A`)「え?」

ξ゚听)ξ「え?」

川;゚ –゚)「おい」

(;^ω^)「ちょっ」
 _
(;゚∀゚)「な、なにを」

槍を地面に突き刺し、両掌をジョルジュに見せながら二歩前に出たショボン。
 _
(;゚∀゚)「な、なにをして…」

(´・ω・`)「望みは?」
 _
(;゚∀゚)「え?」

(´・ω・`)「僕らは五人いる。おそらくは君と戦えば君を倒すことが出来る」
 _
(;゚∀゚)「たいした自信だな」

(´・ω・`)「事実を述べただけだよ」

ジョルジュから視線を逸らさずに小首をかしげるように後ろにいる四人に意識を向けるショボン。
それにあわせて四人が武器を構える。

たとえ隙を突いてショボンを攻撃したとしても、その次の瞬間には四人の武器がジョルジュの体を切り刻むであろう。

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451 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:21:47 ID:zAqSi8zI0

(´・ω・`)「けれど、僕たちも無傷ではすまないだろう。たとえ死なないとしても、死へと繋がる可能性は少ない方が良い。だから、まずは望みを言え。僕らで対応できることならば取引をする」
 _
( ゚∀゚)「取引?」

(´・ω・`)「すぐ襲ってこないところをみると、殺人したいわけではないみたいだからね。食べ物かPOTか…武器か。街に入ることが出来ないから補給をしたいじゃないかと思ったんだけど」

('A`)「おい!」

(´・ω・`)「今ここで彼とする戦闘に意味はない。多少の食料やPOTで回避できるなら安いものだよ」

川 ゚ –゚)「そういう意味じゃない!こいつは!こいつは!」

(´・ω・`)「まだそうと決まったわけじゃないよ」
 _
( ゚∀゚)「………あまちゃんだな」

ξ#゚听)ξ「はぁ?」

ジョルジュの吐き捨てるような呟きに反応する四人。
特にツンは怒りをあらわにして細剣を向けた。

ξ#゚听)ξ「なにがあまちゃんなのよ」

(;^ω^)「ツン!」

そのまま立ち向かおうとするツンを後ろから羽交い絞めにするブーン。
怒りをあからさまにあらわにしたツンを見て、逆に冷静になるドクオとクー。

('A`;)「まあ、あれは置いておいて」

川;゚ –゚)「なにがあまちゃんなのかは私も知りたいところだ」
 _
( ゚∀゚)「………おれは、人を殺した」

452 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:22:43 ID:zAqSi8zI0

(´・ω・`)「!」

ジョルジュの告白に息を呑む五人。
 _
( ゚∀゚)「だから、あまちゃんだって言ったんだ」

五人の衝撃をあらわすかのように鳴り響いた雷鳴。
どんよりと曇っていた空を貫く一筋の雷。
大粒の雨が、降り注ぎ始める。
 _
( ゚∀゚)「俺は、人を殺した。この手で、殺した。このオレンジは、その証。だから、おれに関わるな。対等に扱うな。恐れろ、逃げろ、寄るな……触るな……」

剣を構えつつも嗚咽を漏らしながら呟き続けるジョルジュ。
呆気に取られたようにそれを見つめる五人。
 _
(   )「……誰か……おれを……」

降り続ける雨。
戦意をなくしたように武器を下げる四人。
ショボンは地に突き刺した槍を引き抜いた。

(´・ω・`)「確かさっき通った安全地帯に大きな木があったよね。あそこで雨宿りしよう。……あなたもきませんか?よければ話をしたいです」



.

453 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:23:39 ID:zAqSi8zI0



強く降る雨。
雨に濡れる緑深い森は、視覚だけで現実世界で嗅いだ事がある木々の匂いを思い出させる。

安全エリアの端にそびえる巨木。
上のフロアに向かってそびえ立ち枝を広げるその木は、根元にたどり着いた六人を雨から守った。

('A`)「凄い雨だな」

(;^ω^)「だおね。びしょぬれだお」

ξ;゚听)ξ「この世界でも濡れると服がはりつくとか…。そんなところまで再現しなくていいのに」

川;゚ –゚)「パラメーター異常ではないが、動きが阻害されるだろ。これ」

('A`;)「っていうかおまえら、もうちょっと恥じらいをもて」

ξ゚听)ξ「あんたあいてに?」

川 ゚ –゚)「その発想ひくわ〜」

('A`)「なあブーン。おれなんかしたか?」

(;^ω^)「とりあえずノーコメントで」

和気藹々と話し始める四人を尻目に離れた場所に一人座るジョルジュ。
しかし耐久値が限界になりつつある剣はしまわず、右手に握ったままだ。

(´・ω・`)「大丈夫ですか?」

.

454 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:24:48 ID:zAqSi8zI0

武器を持たず近寄ってくるショボン。
 _
( ゚∀゚)「……」

少し歩いたせいか落ち着いたらしいが、ここまで一緒に歩いてきたことを考えるとまだ動揺もしているのであろう。
ショボンの言葉に素直に答えることはせず、自分を見下ろすショボンの顔をじっと見た。

(´・ω・`)「なにか?」
 _
( ゚∀゚)「なんでおれにかまう」

(´・ω・`)「…僕は、こういったゲームをするのは初めてといっても良いです。だから、いろいろ知りたい。ただそれだけです」
 _
( ゚∀゚)「人の殺し方も知りたいのか?」

(´・ω・`)「色々な死に方を知れば、そうならないための対策を考えることが出来る。あなたが本当に誰かを殺したのならば、あなたが殺したやり方で殺されないための対策を練ることが出来る。生きるための知識を得たいんです」
 _
( ゚∀゚)「……ほんとうに、あまちゃんだな。あたまでっかちな」

(´・ω・`)「それに、知りたいのは死に方だけではない」
 _
( ゚∀゚)「ん?」

(´・ω・`)「僕は、この世界の全てを知りたい。基本ルールも、裏ルールも、正道も、裏道も、抜け道も、全て」
 _
( ゚∀゚)「……おまえ」

(´・ω・`)「僕は、僕と仲間を生かすためなら何でもします。でも、出来るならば誰も傷付けたくはない。光の当たる正道も歩きたい。だから、そのために全てを知りたいんです」
 _
( ゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「教えてくれませんか?貴方が何をしたのか。そして、何があったのかを」

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455 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:25:37 ID:zAqSi8zI0

いつの間にかショボンの後ろに立つ残りの四人。
四人とも武器を手にはしているが誰もジョルジュに対して構えてはおらず、もちろん友好的な態度ではないが、冷静にジョルジュを見ている。
 _
( ゚∀゚)「……わかった。おしえてやるよ。おれが何をしたのかを」




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456 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:26:20 ID:zAqSi8zI0



3.雷雨が過ぎた後、残ったのはこの折れた木、一つ。



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457 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:27:22 ID:zAqSi8zI0

一層のとある村で受けることの出来るクエストのクリア報酬として手に入れた片手剣を手に、ジョルジュは快調にモンスターを倒していた。
 _
( ゚∀゚)「こりゃあいい!頑張って手に入れてよかった!」

ジョルジュはその時、第一層の迷宮区に程近い村に拠点を置き、周囲の森や草原で順調に経験を積んでいた。
一度入った迷宮区ではたまたま近くにいたソロプレーヤーに助けてもらえたから良かったものの、レベルはともかく経験不足を痛感し、まずは色々な敵と戦うために足を伸ばしているところだった。

その一つとして情報にも目を向け、通り過ぎた村に使える武器があると知って舞い戻って手に入れたのが二日前。
その日からその武器を片手に順調に経験を積み、更に強化にも成功していた。
 _
( ゚∀゚)「よし!あと一匹狩ったらもどるか」

この森には低確率で麻痺毒攻撃を行うモンスターが出現するため、ソロで狩りをしているジョルジュはあまり無理をせず戻ることを決めていた。
初めて麻痺攻撃を受けたときはかなり混乱してしまい、満タンだったヒットポイントを半分以下まで減らしてしまったことも、その決まりを作った理由だった。
 _
( ゚∀゚)「ん?」

次の敵を探しつつ宿に戻る方向を進み始めたとき、視界の端に戦闘エフェクトが映った。
 _
( ゚∀゚)「ここで人に会うのは珍しいな」

剣技はもちろん通常の戦闘でも効果音や光が発せられるこのデジタル世界では、多少距離があっても視界さえ開けていればそれらによって戦闘が行われていることが確認できる。
通常ならばポップした敵の横取りはマナー違反なこともありそばに寄るようなことはしないが、その戦闘が行われているのが自分の進みたい先である以上近寄るのは仕方なく、またもし相手が危機的状況だった場合は助けに入ることもあるため、ジョルジュは注意して歩みを進めた。

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458 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:28:46 ID:zAqSi8zI0

(の)「はっ!」

(て)「とう!」

(る)「っと!あぶねぇ!」

見れば三人組。
どちらかというと危ない手つきで、なんとか致命傷をおうこともなく、だがしかし与えることも出来ず、二体のモンスターと戦っている。
 _
( ゚∀゚)「あ〜……まあ、大丈夫か…」

ソロであれば手を貸すために近寄ったかもしれないが、パーティーであったため、そのまま森の端を通って戦闘の邪魔にならないように通り過ぎようとする。
しかし敵の姿をしっかりと確認したとき、動きを止めた。
 _
( ゚∀゚)「あのモンスターはマヒ毒を出すやつだよな。……ま、パーティーなら大丈夫だろ」

見るからに毒々しい色をした人ほどの大きさのキノコ型モンスター。
二匹とも興奮状態にあり、頭の先端と開いた笠から胞子を溢している。

それに気付く様子もなく剣技を繰り出す三人。剣に胞子が付くと攻撃力ダウンしてしまうのだが、気にする様子が三人にはない。
興奮状態にあるキノコ型モンスターは更に胞子を撒き散らしていく。
 _
( ゚∀゚)「おいおい、大丈夫か」

念のため、すぐ飛び出せるように近くによりつつ剣を構えようとすると、二匹のキノコが攻撃に目を回したのか千鳥足になる。

(る)「いまだ!」

(て)「よし!」

それにあわせて更に剣技を繰り出そうとする二人。
 _
(#゚∀゚)「バカヤロウ下がれ!」

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459 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:30:09 ID:zAqSi8zI0

三人の後方から叫びながら飛び出すジョルジュ。
驚いて動きを止める三人の前に倒れこむ二匹のキノコ。
すると倒れた拍子に三人に向けられた頭の先から黄色い胞子が飛び出した。

(て)「うをっ」

(の)「わっ」

(#る)「なんだてめえ!ジャマするな!」
 _
(#゚∀゚)「その胞子はマヒ毒だ!にげろ!」

慌ててバックステップを踏む三人。
辛うじて胞子の煙を避け、息を呑む。
 _
( ゚∀゚)「あのモーションはマヒ毒を出すときのうごきだ。確率はひくいが三人ともマヒってたかもしれねぇぞ。街で配ってる攻略本をよく読め!」

(の)「あ、ありがとうございます」

(て)「……」

(る)「……けっ。お前がでかい声を出さなきゃオレとこいつであんな技を出させなかった」

(て)「そ、そうだそうだ!」

(の)「二人とも!」
 _
( ゚∀゚)「くるぞ!」

ジョルジュに抗議するために振り返った二人を守るように、キノコに向かって突進するジョルジュ。
二匹の間を走り抜けながら左右に剣を振るう。
致命傷までは与えられないが、一撃で確実にヒットポイントを減らした。

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460 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:31:16 ID:zAqSi8zI0

(の)「すごい!」

(る)「お、…オレだってあの武器があれば」

(て)「あれ、『アニールブレード』だよな。あいつ、あのクエストクリアしたんだ」

(の)「あれが!?」

(る)「そうか!あいつはベータテスターだ!だからきっとなんか簡単にクリアできる裏技を知ってやがって、手に入れたんだ」

(の)「そ、そんな」

(て)「ああ、そうだよな。裏技でもなきゃ、あの武器を手に入れられねぇよ」

(る)「そうだ。あいつはベータテスターだ。このデスゲームが始まった瞬間に自分達が生き残ることだけを考えやがった最低な奴だ。今だって俺達を助けるふりをして経験値とドロップ品を奪うつもりなんだ」

(の)「そんな!きまったわけじゃ、」

(て)「ちくしょう!」

三人が勝手な推測をする中、一人剣を振るうジョルジュ。
勿論ジョルジュは三人を助けたいだけだった。
自分が助けられたように、自分も目の前の『仲間』を、このデスゲームを共にクリアを目指す『仲間』を助けたいだけだった。

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461 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:32:15 ID:zAqSi8zI0

そして、ジョルジュは『ベータテスター』でもない。

β(ベータ)テスター。
ゲームのバグや不具合を検出するために、正式稼動する前に希望者を募ってテストをすることが多々ある。
その際のゲームをβ版と呼び、テストプレーヤーのことをβテスターと呼ぶ。
この『SA0(ソード・アート・オンライン)』においてもβ版は存在し、一般に向かって希望者を募ったテストプレーヤーは総数千人。応募者が十万人であったことを考えると、その注目度と倍率の高さが伺われる。

βテスターという事は、正式サービス前にこのアインクラッドに訪れているわけで、たった二ヶ月間の間だけだがこの世界を生き、そして攻略した経験を持っている。
もちろん正式サービスのタイミングで変更されている点はあるはずだが、それでも全く初めての者に比べれば大きなアドバンテージを持っていると言って良いだろう。

このデスゲームにおいて、それは大きな武器だった。

たった二ヶ月。
百層になるアインクラッドというこの浮遊城をβテスト期間二ヶ月で到達できたのはたった十層。
けれど、正式サービス後のスタートダッシュにおいてその知識と経験は大きな武器となった。

生きるか死ぬかの世界。

その世界で、自分が生きるために自分の持つ知識を使うことを誰も攻めることは出来ないはずだ。
だが、それは外から見る者達の冷静な視線であり、実際に死の隣り合わせのこの世界で、その情報を独り占めしている、と思われているβテスター達をよく思わない者達は数多くいた。
さらにゲームが始まって一月ほどで二千人が死んだことが拍車をかけ、本来の恨み辛みをぶつける者が近くにいないこの世界で、憎しみを向ける絶好の的となっていた。

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462 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:33:13 ID:zAqSi8zI0

(#る)「ベータテスターめが」
 _
( ゚∀゚)「はっ!」

憎憎しげに自分を見る二人の視線に気付かず剣を振るうジョルジュ。
二体の巨大キノコのHPバーは赤く染まり、あと数発当てれば倒すことが出来るだろう。

(#る)「経験値を盗られてたまるか!いくぞ二人とも!」

(#て)「おう!」

(;の)「う、うん」

駆け出す二人とそれに続く一人。
 _
( ゚∀゚)「お、きたきた。もう大丈夫かな」

その姿を確認し、バックステップでキノコから距離を取るジョルジュ。
その横を駆け抜ける二人。

二人はそれぞれに片手剣を青と赤に光らせて巨大キノコを切り付ける。
その斬撃は順調にヒットポイントを減らし、彼らの攻撃力ならばあと二撃ほど与えれば撃破出来るだろう。
 _
( ゚∀゚)「お前は良いのか?行かないで」

(;の)「は、はい!いきます!」

剣を構えつつも走り出せずにいた三人目に声をかけたジョルジュ。
それに反応して怯えたように剣技を繰り出そうとする三人目。
しかしその一撃はキノコの一匹を掠ることに成功しただけで、目に見えるほどのダメージを与えることは出来なかった。
 _
(;゚∀゚)「あちゃ〜」

あとは三人に任せて去るつもりだったが、一人がその調子のため念のため武器を構えるジョルジュ。
先の二人も気合が空回りして、思うように追撃を出来ないでいた。

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463 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:34:46 ID:zAqSi8zI0

(#て)「何で当たんないんだよ!」

(#る)「ちくしょう!当たれ!」

(;の)「あれ?あれ?」
 _
(;゚∀゚)「おいおい、大丈夫かよ」

あまりの状況ことに再び剣技を繰り出そうとするジョルジュの目に映る、笠を大きく膨らませた二匹の巨大キノコ。
 _
( ゚∀゚)「!下がれ!」

(#る)「おれが倒すんだ!」

(#て)「チクショウ!チクショウ!当たれ!」

(;の)「え?え?」
 _
(;゚∀゚)「またマヒが来る!下がれ!」

既にヒットポイントを減らしている三人。
攻撃力の強い敵ではないとはいえ、麻痺状態で無防備な体に会心の一撃が与えられれば死なないまでも、死への恐怖は計り知れないだろう。
そして恐怖は正常な判断を鈍らせて混乱させてしまう。

それを一瞬のうちに考えたジョルジュは再び駆け出した。

最近覚えた重三連撃。
あれなら一撃ずつでキノコを倒せる。
あのモーションで噴き出すマヒの胞子は一回上空に噴火のように飛んで、その後降って来るからタイムラグがある。
その隙に倒してしまえば、数秒のマヒをくらうだけですむはずだ。

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464 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:36:10 ID:zAqSi8zI0



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( ゚∀゚)「いけーーーー!!」



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465 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:37:11 ID:zAqSi8zI0

ジョルジュが考えたとおり、突進した後の最初の一撃で目の前にいたキノコをポリゴンに変えた。
そのまま流れるように、システムのサポートに任せて二撃目をその後ろにいたキノコに浴びせる。
予定では二撃目はそれほど攻撃力が無いはずなので三撃目で倒すはずだったが、予想外にキノコのHPが減っていたため倒すことが出来た。
胞子はまだ自分達に降り注いでおらず、マヒもしていない。
安堵した心。
そして体は、システムが最後の一撃を繰り出した。

二匹目のキノコの後ろに居た、三人目の男に。





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466 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:38:02 ID:zAqSi8zI0



4.白雨だと知っているのなら、他人の家の軒先で待つのは罪ではない。




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467 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:39:16 ID:zAqSi8zI0

 _
( ;∀゚)「おれは、男を切りつけたときに気を失ってしまった。目を覚ましたときには、二人しか居なかった」

(´・ω・`)「……でも、一撃しか当てていないんですよね」
 _
( ゚∀;)「胴体を一閃。+3強化した…鋭さを2、丈夫さを1上げたアニールブレードだった。あいつは、キノコにやられてヒットポイントを減らしていた」

('A`)「………」

( ´ω`)「でも、事故だお」
 _
(#゚∀゚)「でも、おれは人を殺した!命を奪ったんだ!このオレンジカーソルがその証明だ!」

声を荒げるジョルジュを見て息を呑む五人。
その苦しさに、目に涙を浮かべるツンとクー。
 _
( ゚∀゚)「これが、人殺しの告白だ。そこの垂れ眉!参考になったか?」

(´・ω・`)「……」

('A`)「…アニールブレードはどうした?今使ってるのはドロップ品に見えるが」

何かを考えるように眉をひそめるショボンに変わりドクオが口を開く。
 _
( ゚∀゚)「……あの後おれは逃げた。二人の目が怖くて。人を切った剣を放り出して、逃げた。おれは、人殺しで、ひきょう者だ」

('A`)「なるほどな…」

思いつめたようにそっと下がるドクオ。
ショボンがその表情に気付き追おうとするとその場所にツンが進み、更にクーが近寄る。

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468 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:40:27 ID:zAqSi8zI0

ξ゚听)ξ「あなたは人を殺してしまったのかもしれない。でも、事故じゃない」
 _
(#゚∀゚)「だから」

川 ゚ –゚)「事故だろうがなんだろうが、人を殺した。それは分かった。で、だからお前は何をしているんだ?」
 _
(#゚∀゚)「あ?」

川 ゚ –゚)「今、お前は何をしているんだ?一人殺したから、二人殺すのも一緒か?」
 _
(#゚∀゚)「ふざけるな!そんなわけねぇだろうが!」

川 ゚ –゚)「では、なにをしてるんだ?」
 _
( ゚∀゚)「な、なにをって…」

川 ゚ –゚)「罪を償うために何かをしているのか?」

ξ゚听)ξ「ちょ、あんた」

川 ゚ –゚)「私たちの前に現れた時にお前は剣を向けた。あの剣で、私たちに何をするつもりだったんだ?」

ξ;゚听)ξ「ちょ、何を」
 _
(;゚∀゚)「あの時…おれは…」

川 ゚ –゚)「私たちを、殺すつもりだったのか?」
 _
(;゚∀゚)「そこまでは!」

川 ゚ –゚)「考えていなかったか。でも、脅す目的で剣を向けていた。その剣で、私たちを傷付けることは考えなかったのか?」
 _
(;゚∀゚)「おれは…おれは…」

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469 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:42:21 ID:zAqSi8zI0

ξ#゚听)ξ「そこまで!ストップ!いい加減にしなさい!」

項垂れるジョルジュ。
表情を変えることなくじっとジョルジュを見つめるクー。
その二人の間に割り込んだツン。

ξ#゚听)ξ「追い詰めてどうするのよ。あんただって分かってるでしょ」

川 ゚ –゚)「私やお前が分かっていることが、真実だとは限らない。それを確かめたかっただけだ」

ξ#゚听)ξ「だーかーらー」
 _
(;゚∀゚)「おれは…おれは…」

ξ#゚听)ξ「私たちに剣を向けたときのあのへっぴり腰!あんなんで私たちを殺せるわけないでしょ!人を傷付ける覚悟なんか一欠けらもないへたれの構えよあれは!」
 _
( ゚∀゚)「……え?」

(;^ω^)「あ〜」

川#゚ –゚)「そんなこと分からないだろ!ああいうへたれに見せて私たちの油断を誘う手かもしれないだろうが!腰が引けてたのはもしかするとダッシュするための構えかもしれないし、震えていた剣先もリズムを取っていたのかもしれないし」
 _
(;゚∀゚)「え?」

(;^ω^)「うわ…」

ξ#゚听)ξ「そんなわけないでしょ!ねぇ!?」

突然振り返るツン。
思わず頷くジョルジュ。
 _
(;゚∀゚)「あ、はい」

ξ#゚听)ξ「ほらみなさい」

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470 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:43:54 ID:zAqSi8zI0

川#゚ –゚)「私もそうだとは思ったが、可能性はゼロじゃないだろうが!」

ξ#゚听)ξ「ゼロよゼロ!あの構えのどこにそんな覚悟が見えたっていうのよ!ふしあななんじゃないの?あんたの目」

川#゚ –゚)「私たちの知らない何かの可能性もあるだろうが!おまえの狭い見聞で仲間を危険に晒すつもりか!」

ξ#゚听)ξ「へっ!あんなへっぴり腰から繰り出される技なんか、一蹴してやるわよ。あんたには無理かもしれないけどね」

川#゚ –゚)「はっ。覚悟がなくてもほんのちょっとの勢いでシステムのアシストがあれば強い攻撃が繰り出されることがまだ分かってないのか。まったく相変わらず考えが浅いな」

ξ#゚听)ξ「わかってるわよそんなこと!だいたいあんたが最初にこのへっぴり腰を追い詰めるようなこと言い出したから止めてあげたんでしょうが!弱いネズミだって追い詰められたらなにしでかすか分かんないんだから気をつけなさいよ!」

川#゚ –゚)「へたれの繰り出す攻撃なんか一蹴するんじゃなかったのか!?」

ξ#゚听)ξ「へなちょこな攻撃すらくらっちゃいそうなあんたを守るのがめんどくさいって言ってるのよ!」

川#゚ –゚)「はっ!」

ξ#゚听)ξ「へっ!」

(;^ω^)「二人とも二人とも」

ξ#゚听)ξ「なに!?」

川 #゚ –゚)「なんだ!?」

(;^ω^)「それくらいで許してあげて」

ξ#゚听)ξ「はぁ!?」

川 #゚ –゚)「なにを!?」

(;^ω^)「彼を」
 _
( ゚∀゚)「     」

ξ゚听)ξ「あ」

川 ゚ –゚)「あ」

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471 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:45:23 ID:zAqSi8zI0

膝を抱えてうずくまるジョルジュ。
力なくか細い声で笑っていたかと思うと、何かを呟き始めた。
 _
( ゚∀゚)「けっこうれべるもたかくなったしせんとうけいけんもつんだしめいきゅうこうりゃくなんかもがんばったけどまだそんなひょうかなんだなおれでもしょうがねえじゃんばーちゃるげーむはじめてだしこつをつかむまでじかんかかったしひところしちゃったしやっぱりおれなんていないほうがいいんだよはははははははははふはははははははははははは」

ξ;゚听)ξ「あ、あの」

川;゚ –゚)「なんかすまん」

('A`;)「なにやってんだおまえら」

(´・ω・`;)「どういう状況?こっちがちょっと話し込んでる間に新展開?」

(;^ω^)「新展開というかなんと言うか」

ξ;゚听)ξ「ちょっと盛り上がっちゃって」

川;゚ –゚)「そしたら彼を色々追い詰めてしまった」

ξ゚听)ξ「ねえ」

川 ゚ –゚)「なあ」

(;^ω^)「なんで僕の顔を見るんだお!追い詰めたのは二人だお!」
 _
( ゚∀゚)「はははははははそうだよな〜ははははははははおれなんてさ〜ははははははははは」

('A`;)「おい、大丈夫か?」

(´・ω・`;)「聞きたいことがあるんだけど」
 _
( ゚∀゚)「いいんだおれなんてやっぱりどんなにがんばってもよわいままなんだまけいぬなんだがんばったけどだめなんだしかもひとまでころしておれはやっぱりだめなやつなんだりあるでもともだちいないしみんなさけるしぼっちだし」

('A`;)「……ひきこまれそうだ」

(´・ω・`)「しょうがないなぁ……まだ雨も降ってるし、お茶でも飲んで一回落ち着こうか」


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472 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:47:48 ID:zAqSi8zI0


一時間後
 _
( ゚∀゚)「……迷惑をかけたな」

(´・ω・`)「いや、こちらこそ仲間が失礼しました」

座ったままやっと落ち着いたジョルジュの手には湯気の立ち上るカップが持たれている。
 _
( ゚∀゚)「…これ、うまいな」

(´・ω・`)「気に入ってもらえてよかった。2種類のお茶のブレンドなんですけど、オリジナルだから褒めてもらえると嬉しいです」

同じように座り、同じようにカップを持っているショボン。
 _
( ゚∀゚)「………」

だまって啜るジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「ほんとうに……うまい」

(´・ω・`)「ありがとう」

ジョルジュとショボンのいる場所と大樹をはさんで反対側にいる四人。

('A`)「まったくおまえらは」

ξ゚听)ξ「結果おーらいよ。彼も毒気が抜けたみたいだし。ね、ブーン」

川 ゚ –゚)「そうだな。わざとでもがっつり興奮させればその後落ち着くもんだ。な、ブーン」

(;^ω^)「だからなんでいちいち僕の名前をだすんだお!」

('A`)「ブーン?」

(;^ω^)「違うお!濡れ衣だお!」

わいわいと騒ぐ四人を視界の端に見て、息を吐くジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「仲が良いんだな」

(´・ω・`)「…それなりに」
 _
( ゚∀゚)「……そうか」

(´・ω・`)「はい」
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473 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:48:59 ID:zAqSi8zI0

 _
( ゚∀゚)「聞きたいこと、まだあるんだろ?」

(´・ω・`)「もう大丈夫ですか」
 _
( ゚∀゚)「ああ、茶、うまかったしな。ごちそうさま」

カップをショボンに差し出すジョルジュ。

(´・ω・`)「おかわりは良いですか?」
 _
( ゚∀゚)「ああ。もう、充分だ」

カップを受け取り、自分のものと合わせてストレージにしまう。

(´・ω・`)「……亡くなった方は、なんてお名前なんですか?」
 _
( ゚∀゚)「…知らない。それすらも知る前に、殺してしまった」

(´・ω・`)「残った方の名前は?」
 _
( ゚∀゚)「……知らない。聞こうともせず、おれは逃げ出した」

(´・ω・`)「そうですか……」

黙り込む二人。
ショボンは何かを考えているようにも見えるが、ジョルジュはそれに気付かず俯いている。
 _
( ゚∀゚)「もう、いいか?」

そのままどれほど経っただろうか。
ゆっくりとジョルジュが顔を上げた。

(´・ω・`)「このあと、どうなさるんですか?」
 _
( ゚∀゚)「生きられるところまで生きて、死ぬさ」

(´・ω・`)「そう…ですか」

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474 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:50:20 ID:zAqSi8zI0

じっとジョルジュを見ながら立ち上がるショボン。
ウインドウを出し、タップすると右手に愛用の槍が現れる。
そしてそのまま切っ先をジョルジュに向ける。

(´・ω・`)「死ぬ、つもりですね?」
 _
( ゚∀゚)「……殺して、くれるのか?」

(´・ω・`)「ならばその命、僕が預からせてください。一週間。その間にあなたの気持ちが変わらなければ、責任を持って僕が貴方を殺します。けれど、一週間は僕の言う通りにしてください」
 _
( ゚∀゚)「どういうことだ?」

(´・ω・`)「確かめたいことがいくつかあります。それを確かめ終わるまで、生きていてください」
 _
( ゚∀゚)「……本当に。殺してくれるのか?」

(´・ω・`)「はい。その時、貴方が死にたければ」
 _
( ゚∀゚)「………分かった。この命、預けよう」

どこか冷めたように笑うジョルジュに、ニッコリと微笑んだショボン。

(´・ω・`)「といっても、一週間もいらないと思いますけどね」
 _
( ゚∀゚)「へ?」

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475 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:52:29 ID:zAqSi8zI0

('A`)「アルゴから情報着たぞ。この量で絞るって凄いなこいつ」

いつの間にか寄ってきていた四人。
ドクオがウインドウをタップすると、ショボンにメッセージが来たことを告げるチャイムが聞こえた。
 _
( ゚∀゚)「お、おい」

(´・ω・`)「実は先ほど話を伺った時点で情報屋さんに情報の買取を連絡しました。少々値が張りましたが、見つけてくださったようです。接触はしていないようですが、近くまでは行って確認してくれたようですね」
 _
( ゚∀゚)「え?え?」

ウインドウを出すショボン。
槍をしまい、ドクオが送ってくれたメッセージを読む。

(´・ω・`)「鋭さを+2丈夫さを+1上げた強いアニールブレードを持つ片手剣士を含む、片手剣士のみの二人もしくは三人のパーティー。なおかつそのアニールブレードは最近手に入れたと思われる、初心者丸出しのパーティー。これだけの情報で、何組かに絞って送ってくれました。そのなかに、辺境の森アグデモニル、例の巨大キノコが出る森に通うパーティーが一組ありました。ですので、行ってみましょう。……知るために」

自分を見るショボンの真剣な表情。
そしてその後ろに立った四人の男女も同じように自分を見る。
そこに侮蔑や恐怖はなく、そこからはただたら本気であることだけが感じられる。
 _
( ゚∀゚)「わかった」

そう言って、ジョルジュも立ち上がった。


.

476 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:53:27 ID:zAqSi8zI0

アグデモニルの森。
ジョルジュにとっては苦しみの地だが、他の者にとってはただの森である。多少難易度は高いが特に重要なクエストがあるわけでもなく、先に進むためには通り抜けないといけないわけでもない。
ただ経験を積むだけのための森。
そのせいであまり人気はないのだが、ジョルジュたちが足を踏み入れたとき、彼らの目に数エリア先で行われている戦闘エフェクトが見えた。

(る)「やっぱレア武器は違うな」

快調にアニールブレードを振る男。

(て)「もうけもんだよな。その剣であいつを殺したんだって言ったら放り出して逃げやがった」

(る)「ベータ野郎でも、ここでPKはしたくねえんだな」

仲間の男は街売りの剣だが、こちらも調子よく剣を振るう。
そしてアニールブレードほどではないが順調に巨大キノコのHPを減らした。

(て)「なんつっても、殺人野郎だからな」

大声で笑う二人。

(る)「お前もそう思うだろ?」

(て)「なぁ」

(の)「え?あ…うん…」

(て)「なんだよのり悪いなぁ。どっか調子悪いのか?」

(の)「そんなことないけど…」

(る)「最近元気ないよな。後でこの剣貸してやるからさ、使ってみろよ。切れ味とか爽快だぜ」

最後の一撃を与え、巨大キノコをポリゴンへと変える。
ハイタッチをして喜ぶ二人。
それに戸惑いながらも同じように手を上げた残りの一人。

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477 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:54:29 ID:zAqSi8zI0

(る)「ほんとに大丈夫か?」

(の)「う、うん」

俯き加減の仲間に対し、顔を覗き込むように問いかける男。

(て)「きつかったらちゃんと言えよ」

(の)「あ、あのさぁ」

(る)「ん?」

(の)「あの人、あのあとどうしたのかな」

(て)「あの人って?」

(る)「あのベータテスターのことか?」

(の)「ま、まだベータテスターって決まったわけじゃないし」

(て)「でもお前を傷付けただろ」

(の)「あれは事故だよ。ぼくがあそこの場所にいちゃったから。…剣が僕に当たるとき、凄い驚いた表情をしてたから、当てるつもりなんかなかったんじゃないかな」

(る)「そんなのは関係ない。あのベータテスターはお前を傷付けた。それが事実だ」

(て)「そうそう。で、頭にきたからちょっと脅かしてやっただけだよ。『お前が殺した』ってね。そしたら剣を放り出してにげてったってだけさ」

(る)「どうせ卑怯なベータテスターなんだから、今頃はアライメント回復させてのうのうと暮らしてるさ。気にすることねえよ」

(の)「そう…かなぁ」

(て)「そうそう」

ξ#゚听)ξ「ねえ、なんかものすごい勝手なこと言ってるけど、こいつらで良いのよね」

.

478 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:55:36 ID:zAqSi8zI0

川#゚ –゚)「一回頭開いて脳味噌洗った方が良いな。こいつら」

次のエリアに進もうとした三人の後ろに立つ怒りをあらわにしたツンとクー。
その後ろに疲れた顔をしたドクオとブーンが続き、そしてショボンが現れた。

(;る)「な、なんだおまえらは」

ξ#゚听)ξ「あんたらに教えるような名前なんかないわよ!」

川#゚ –゚)「このゲーム内でそんなカスなことをするようなやつが居るとはな!」

(;て)「な、何を言って」

('A`)「そいつが持ってるアニールブレード、彼のものだろ?」

ドクオがチラッと振り返ると、ショボンの後ろからジョルジュが現れた。

(る)「げっ」

(て)「お、お前」

(の)「あっ!」
 _
( ゚∀゚)「おまえ…生きていたのか!」

ふらふらと前に進み出るジョルジュ。

(の)「あっあっ」

(;る)「おい!逃げるぞ!」

(;て)「げっ」

ジョルジュの顔を見てホッとした顔をしている男の肩を叩いて走り出そうとするが、すでに周囲を五人が囲んでおり、逃げる隙などなかった。

.

479 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:57:00 ID:zAqSi8zI0

 _
( ゚∀゚)「生きていたのか」

(の)「あ、ご、ごめんな」
 _
( ;∀;)「よかったー!」

頭を下げようとした男の言葉をさえぎるように抱きつき、両目から大粒の涙を流しながら男を抱き締め、肩を掴んで顔を見て涙し、そしてまた抱きつく。
 _
( ;∀;)「生きてた!生きてた!生きてた!死んでなかった!良かった!良かった!生きてればこのゲームをクリアできる!一緒にクリアしよう!良かった!生きてる!生きてれば何とかなる!」

(;の;)「あっあっぁつ、ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
 _
( ;∀;)「生きてた!生きてた!良かった!良かった!頑張ろう!がんばってクリアしよう!そこまで生きよう!良かった!生きてる!生きてれば何とかなる!」

(;の;)「ご〜め〜ん〜な〜ざ〜い〜」

泣き出す男。
そしてジョルジュに抱きつき、お互いに声を出して大泣きする。

ξ;゚听)ξ「あ〜やばい」

川;゚ –゚)「いやいやいやいや」

('A`)「さすがにこれは…」

ξ;凵G)ξ「私も泣く」

川 ; –;)「おなじく」

('A`)「えーーーー」

.

480 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:57:58 ID:zAqSi8zI0

( ^ω^)「この二人が仲良いのはこういうところの息が合うからなんだおね」

(;る)「なんだよ、お前ら一体」

(;て)「俺達が何したって言うんだ」

(;´・ω・`)「充分したと思うんだけど、君ら本気で言ってるの?」

ショボンとドクオの監視の下、男二人が不貞腐れたように呟く。

(#る)「おれらはベータテスターに復讐しただけだ」

(´・ω・`)「だれがベータテスターなの?」

(#て)「あの男だよ!」

('A`)「多分違うと思うぞ」

(#る)「そんなわけあるか!ベータテスターでもない限り、アニールブレードを持って」

('A`)「根気よくやればとれるぞ。クエストレベル高くないし。今は欲しいやつが多いから激戦だけど、タイミングがあって運が良ければ二・三日でとれるんじゃないか?悪くても一週間もあればとれるだろうし」

(#て)「俺達が戦っているところに割り込んで経験値を奪おうとした!」

(´・ω・`)「キノコとの戦いだよね?麻痺胞子対策がちゃんと出来てなかったっていう。目の前に戦いなれしてなくてやられそうなプレイヤーがいて、自分に助ける能力があれば余程のことが無い限り助けに出ると思うけど」

(;る)「そ、それは」

('A`)「ちゃんと街で配ってる攻略本読んでるか?」

(;て)「そ、そりゃあ」

(´・ω・`)「ほんとに?ちら見じゃなく熟読してる?このそばに出現するディスアーム使いと戦うときの注意点言える?」

(;る)「そ、それはその…」

('A`)「おまえらよく今まで生き残ってこれたな」

.

481 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/29(月) 23:58:58 ID:zAqSi8zI0

(;る)「   」

(;て)「   」

('A`;)「ああ、まあ、うん。あんまり落ち込まれても困るんだけど」

(;´・ω・`)「とりあえず、あっちが落ち着いたら話し合おうか」

いまだに抱き合って泣いている男二人ともらい泣きしている女二人をみつつ、提案したショボンだった。





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482 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:00:14 ID:zmGafc8U0


号泣する四人をなだめつつ安全エリアに移動した9人。
ショボンに座ってと促されて自然と正座した四人を囲むように立つ五人。
まだ涙を浮かべているツンとクーはすこし下がり気味で立ち、男三人が座る四人の目の前に立つ。
そしてそれぞれにショボンが話を聞いていた。

それを見ていたドクオがブーンに囁く。

('A`;)「なあ、なんで被害者のあいつまで正座してるんだ?」

(;^ω^)「さ、さあ。…なんとなく、流れで?」

('A`;)「なんというか、かんというか」

(´・ω・`)「とりあえず、話を整理しましょうか」

全員から話を聞き終わったショボンが正座している四人を見回しながら話しはじめた。

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483 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:01:06 ID:zmGafc8U0


まず、三人がキノコと戦闘開始。
キノコは麻痺胞子を操るレア種だったが、三人は気付かず。
対策が不十分だったため麻痺をくらいそうになり、それを助けるために彼が乱入。
彼の持つ武器と戦い方をみて、勝手に彼をベータテスターと思った三人。
とどめは自分達が与えようとした三人だったが、やはり詰めがあまく再び麻痺胞子をあびそうになる。
それに気付いた彼がキノコを一撃ずつで倒すために最近覚えた重三連撃の剣技を発動。
一撃ずつでキノコを倒した後、気を抜いた瞬間にシステムアシストで自動的に動いた三連撃目が一人を攻撃。
胴体を一閃する一撃だったが、ドットを一つ減らすにとどまった。
けれど人を切ったショックにキノコが最後に噴出した麻痺胞子によって、彼は気を失ってしまった。
先に回復した三人はオレンジカラーに変わった彼のカーソルを見て、悪戯を思いつく。
切られた一人を先に街に戻し、彼が起きるのを待ち、彼が一人を殺したと思い込ませた。
彼は自分の犯した過ちに驚愕・恐怖し、殺した武器であると信じた手の中のアニールブレードが恐ろしくなり、放り出して逃走。
残った二人はベータテスターへの報復に成功したと喜び、戦利品のアニールブレードを拾い、自分達のものに。
彼は自分の犯した過ちに苦しみつつ放浪。
三人は町で合流し、アニールブレードを片手に強くなった気分で、彼はここには現れないだろうとこの森でレベル上げ。


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484 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:02:12 ID:zmGafc8U0

(´・ω・`)「こんなかんじかな。訂正するところありますか?」

黙って首を横に振る四人。

('A`#)「改めて聞くと本当にくそだな」

(#^ω^)「こんな嘘がつけるなんて、信じられないお」

ξ#゚听)ξ「ほんとよ」

川#゚ –゚)「まったくだ」
 _
(;゚∀゚)「すまん」

ξ;゚听)ξ「なんであんたが謝るのよ」

('A`;)「つーかなんで一緒になって正座してるんだ」
 _
(;゚∀゚)「でも、おれが調子に乗って戦闘に割り込んだからごかいしちゃったんだろ?」

(;の)「違います!全部僕たちが勝手に間違えたんです!いけないのは僕たちなんです!」

(;る)「……すまなかった……」

三人組のリーダーと思われる男がポツリと呟く。

(;る;)「すまなかった…」

正座のままジョルジュに対して体を向けたかと思うと、そのまま頭を下して土下座をした。

(;る;)「すまなかった」

(て)「おれも、謝る。……ごめんなさい」

リーダーの横に移動し、同じように土下座をする男。

(;の;)「ぼ、ぼくも!」

川;゚ –゚)「うわ」

(;る;)(て)(;の;)「すみませんでした!」

三人の男が土下座してしまい、何もいえない六人。

.

485 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:03:16 ID:zmGafc8U0

(る)「許してくれとは言えない。だけど、せめて謝らせてください」
 _
(;゚∀゚)「い、いやさっきも言ったけどおれが乱入したからなんだろ?」

(て)「あんたは俺達を助けてくれた。俺達は、それを素直に受け取ることが出来なかった。……あんたは悪くない。間違ったことをしたのは、俺達だ」

(;の;)「ごめんなさい!」
 _
(;゚∀゚)「あ〜いや、うん、その」

(´・ω・`)「許すか許さないか、決めてあげたらどうですか」
 _
( ゚∀゚)「え?」

(´・ω・`)「三人は、自分の非を認め、謝っています。だから、決めてあげたらどうですか。許すか許さないか」
 _
( ゚∀゚)「許すに決まってるだろ!」

(´・ω・`)「だそうですよ。良かったですね」

(;る;)「ありがとうございます!」

(;て;)「ありがとうございます!」

(;の;)「ありがとうございます!」

土下座したまま顔を上げずに感謝の言葉を繰り返す三人に困ったような顔をするジョルジュ。
近寄り、肩を叩き、顔を上げさせていく。

ξ゚听)ξ「納得は出来ないけど、本人が良いならしょうがないか」

川 ゚ –゚)「そうだな」

( ^ω^)「一件落着だお」

('A`)「まあ、誰も死んでなかったし」

(´・ω・`)「そうだね。土下座したくらいで許してもらえて罪悪感まで払拭してもらえたんだから良かったよね」

486 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:04:11 ID:zmGafc8U0

(;^ω^)「え?」

ξ;゚听)ξ「え?」

川;゚ –゚)「おまっ」

(;る;)「あっ」

(て)「あっ」

(;の;)「えっ?」
 _
( ゚∀゚)「?」

('A`;)「……最初からかなりむかついてたからなぁ。こいつ」

良い雰囲気のまま終わりそうだった空気が一瞬で凍りつき、誰もなにも言えずにショボンの顔を見る。

(´・ω・`)「とりあえず、ぼくからも一言いいかな?」

誰も異議を唱えないのを確認した後、右手に装備していた槍を一振りして土下座組みの視界の先に切っ先を掠らせる。
思わず仰け反る三人を確認し、ニッコリと微笑んだ後口を開いた。




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487 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:05:46 ID:zmGafc8U0
 _
(;゚∀゚)「色々お世話になりました」

重箱の隅をつつくように精神的に負荷のかかるショボンの説教はあれから一時間続き、先に開放された三人がジョルジュに対して本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

('A`;)「おつかれさま」

(;^ω^)「おつかれさまだお」

川;゚ –゚)「おつかれさまだったな」

ξ;゚听)ξ「ご愁傷様」

(´・ω・`)「なんかみんなの受け答えおかしくない?」

川;゚ –゚)「そうか?そうでもないと思うが」

疲労困憊で立ち上がったジョルジュに労わりの言葉をかける四人。

(´・ω・`)「まぁいいけどさ」

('A`)「これからどうするんだ?」
 _
( ゚∀゚)「どちらにせよオレンジじゃ街に入れないし、何とかして生きていくつもりだ」

('A`)「?アライメント回復クエストやりにいかないのか?」
 _
( ゚∀゚)「なんだそれ?」

('A`)「え?」
 _
( ゚∀゚)「え?」

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488 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:07:24 ID:zmGafc8U0

(´・ω・`)「『アライメント回復クエスト』。オレンジになってしまったカーソルをグリーンに戻すために引き受けるクエストだよ。第一層ではこことは逆の端にある小屋にいるNPCから引き受ける、かなり面倒臭いお使いクエストだったはず。制限や細かい制約がかなりあるんだよね。確か」
 _
(*゚∀゚)「そんなのがあるのか!ありがとう!やってくる!」

今にも駆け出そうとするジョルジュの前に差し出されるショボンの槍。

(´・ω・`)「なに言ってるの?」
 _
( ゚∀゚)「いや、そのアラなんだかクエストを」

(´・ω・`)「君の命は、僕が預かったはずだよ。最低でも一週間、僕の言うとおりにするってね」
 _
(;゚∀゚)「あ」

('A`)「あ」

川 ゚ –゚)「あ」

( ^ω^)「あ」

ξ゚听)ξ「あ」

ショボンの言葉に異口同音で呟く五人。
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489 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:09:01 ID:zmGafc8U0

 _
( ゚∀゚)「いや、その」

(´・ω・`)「とりあえず今日はミルムの森まで移動して、安全エリアで休もうか。食事は途中の街で買ってくるか、溜まってるドロップ品を調理するよ」
 _
( ゚∀゚)「え?」

( ^ω^)「おっおっ」

ξ゚听)ξ「なるほどね」

川 ゚ –゚)「いいんじゃないか」

('A`)「戦力の補強もしたかったしな」

ショボンの言葉に状況がつかめないで居るジョルジュ。
他の四人は真意を掴み、ニヤニヤしながら出発の準備を始めた。

(´・ω・`)「明日は朝からクエスト開始するから気合入れていくよ。だらだらやったら二日かかるみたいだけど、目標日没まで」
 _
(;゚∀゚)「え、あ?」

( ^ω^)「わかったお!」

ξ゚听)ξ「攻略本読まないと」

川 ゚ –゚)「復習しておく」

('A`)「一日か〜。まぁ六人がかりなら大丈夫か」

490 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:10:09 ID:zmGafc8U0

(´・ω・`)「アライメント回復したら、お人よしがあげちゃったアニールブレードをゲットしにクエスト開始。これは目標五日でいくよ。状況によっては夜間戦闘もやるから」

( ^ω^)「おっおっ!また病気の子のために花を取りに行けるお!」

ξ゚听)ξ「あんた達はどれくらいで取ったの?」

( ^ω^)「あの時は最初の方だったから、二日で取れたお」

('A`)「今なら一週間かかるという話もあるみたいだな」
 _
( ゚∀゚)「おまえら…」

川 ゚ –゚)「しかし、そろそろこの喋り方もキツイな。そろそろ良いんじゃないか?」

(´・ω・`)「それもそうだね」

ウインドウを出すショボン。

(´・ω・`)「この操作をするのも、五回目だけど久し振りだね」

ジョルジュの視界の端に点滅する赤いランプ。
メッセージが来た事を知らせるものだ。
 _
( ゚∀゚)「!」

慌てて自分のウインドウを開くジョルジュ。

.

491 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:10:52 ID:zmGafc8U0


『Shobonさんからパーティーに誘われています』

        『YES』  『NO』


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492 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:11:57 ID:zmGafc8U0

(´・ω・`)「僕の名前はショボン。まずはお試しでパーティーを組んでみませんか?」

('A`)「おれの名前はドクオ」

( ^ω^)「ブーンだお」

ξ゚听)ξ「ツンよ」

川 ゚ –゚)「クーだ」
 _
( ゚∀゚)「お、おれと?」

(´・ω・`)「アライメント回復クエストは一度やってみたかったで、よろしくお願いします。あと、今回の対応を見てあまりにもお人好しすぎるので、心配になりまして。少しは僕たちと行動して、腹黒くなった方が良いですよ」

ξ゚听)ξ「ぼく…」

川 ゚ –゚)「たち?」

( ^ω^)「まあまあ」

('A`)「周りはともかく自分のことはよく分かってるってことで良いんじゃないか」

(´・ω・`)「外野うるさいよ。あと、……それ以上に、そのお人好しっぷりに、惹かれたんですよ。全員ね。一緒に行動したいって。だから、まずは一週間僕らと行動してみませんか?」
 _
( ゚∀゚)「あ、ああ。ああ、ああ!ああ!」

ジョルジュの右手の人差し指が、震えながら『YES』をクリックした。



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493 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:13:03 ID:zmGafc8U0


5.明日また雨だとしても、今日は青空の下で。


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494 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:14:37 ID:zmGafc8U0

霧のアマネ湖。

視界が白く煙る湖の中心。
桟橋の先に座る一人の人影。
その人影は、湖面に釣り糸を垂らしていた。

そして、それに近付く一人の人影。
 _
( ゚∀゚)「久し振りだな、おっさん」

( ФωФ)「!久し振りだな」

自分が声をかける前に気付かれたことに驚いたロマネスクだったが、表には出さずににやりと笑うにとどめた。

( ФωФ)「カーソルをグリーンに戻したのだな」
 _
( ゚∀゚)「ああ。アライメント回復クエストなんてのをやってよ」

( ФωФ)「ほう。やったのか」
 _
( ゚∀゚)「ああ。……おせっかいな、仲間が出来てよ」

照れくさそうに、けれどどこか誇らしげにニヤニヤと笑うジョルジュ。
それを見てロマネスクが優しげに微笑んだ。

( ФωФ)「良い仲間が出来たのだな」
 _
( ゚∀゚)「まあ…な…っと」

湖面に浮かぶうきが沈み、タイミングを合わせて釣竿を上げるジョルジュ。
糸の先にはしっかりと魚が付いていた。

( ФωФ)「ほう」
 _
( ゚∀゚)「ちゃんと、釣れる様になったぜ」

( ФωФ)「釣りも頑張ったのだな」
 _
( ゚∀゚)「今の仲間がよ、特技っちゅうか、職業を持ってるやつが多いんだよ。おれも、釣りなら役に立てそうだからよ」

照れくさそうに呟きながら、釣った魚をストレージにしまうジョルジュ。
そして一つの箱を取り出す。
.

495 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:15:49 ID:zmGafc8U0

 _
( ゚∀゚)「これ、やるよ」

( ФωФ)「なんであるか?」

受け取り、箱を開ける。

( ФωФ)「…ハンバーガーであるか?」
 _
( ゚∀゚)「フィッシュサンドだよ。おれが釣った魚を、仲間に調理してもらったんだ」

釣竿をしまい、立ち上がるジョルジュ。
座っているロマネスクを見下ろすが、その表情は凛々しい。
 _
( ゚∀゚)「俺はまだ、あまちゃんだ。レベルも低いし、経験も足りない。でも、生き続ける。生きて、このゲームをクリアしたい。あいつらと一緒に。そのために、頑張ろうと思ってる」

( ФωФ)「…そうであるか」
 _
( ゚∀゚)「ああ」

( ФωФ)「………」
 _
( ゚∀゚)「………」

( ФωФ)「………で?」
 _
( ゚∀゚)「ん?」

(;ФωФ)「いや、このフィッシュバーガーはなんであるか?」
 _
( ゚∀゚)「あ、そうそう、で、まだおれは経験もすくないし、何も出来ないも一緒で、魚も、上手く焼けない。おっさんに、あのときの魚を貰った恩返しも出来ねぇ、けど、魚は釣れるようになった。それを上手いこと調理してくれる仲間も出来た。だから、まずはそれを利子としてもらってくれ。で、上手く焼けるようになったら、それを貰ってくれ」

( ФωФ)「なるほど。そういうことであるか」
 _
( ゚∀゚)「ああ!」

( ФωФ)「……楽しみにしてるである。美味い魚を食わせてくれる日を」
 _
(*゚∀゚)「ああ!まってろ!」

ロマネスクに一礼し、駆け出すジョルジュ。
桟橋を一目散に駆け抜け、仲間が待つ場所へと走っていった。

ロマネスクはそれを見送ると、箱の中からフィッシュバーガーを取り出し、一齧りした。

( ФωФ)「楽しみにしているであるよ。美味いサカナが食える日を」
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496 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:16:45 ID:zmGafc8U0




第5話  終


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497 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/04/30(火) 00:18:03 ID:zmGafc8U0
以上、第5話でした。

読んでいただけた皆さん、本当にありがとうございます。

498 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 00:23:51 ID:WYcBz2s.0
乙!
クーとツンが泣き出しちゃったのいいなww

499 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 00:27:34 ID:nlGeo3nQO
今回レス数多かったな 
 
キンタ祭りも期待

500 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 00:29:22 ID:A6Nc5IGg0


501 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 00:32:07 ID:EpAdWwQcO
乙ー何回も読み返してるよー

502 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 10:57:45 ID:5Awi6ACQ0
長台詞が多いから噛まないか心配

503 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 22:29:32 ID:oHJZLgeA0

案の定いい雰囲気だ

504 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 23:07:12 ID:aLFjxbtc0
オムツ

こういう感じの好きだわ

505 名前:名も無きAAのようです:2013/04/30(火) 23:18:19 ID:IbxzP9W20
ロマもいい感じだなぁ。
原作の釣り好きのニシダさんみたいなキャラなのかな?

506 名前:名も無きAAのようです:2013/05/05(日) 21:35:22 ID:xnHZzWDgO
やっぱり良いな。乙

507 名前:名も無きAAのようです:2013/05/16(木) 14:05:00 ID:rIsJHBpI0
最後のロマネスクの言葉気になるな
サカナってところが

508 名前:名も無きAAのようです:2013/05/18(土) 22:14:09 ID:W4A4CbF2O
>>507
現実の世界の本物の「魚」って意味だと思ったけど違うかな…

509 名前:名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 18:31:11 ID:uMouxXkA0
肴かとおもいました

510 名前:名も無きAAのようです:2013/05/28(火) 19:05:10 ID:zlFB/DYQ0
更新ないな

511 名前:名も無きAAのようです:2013/05/29(水) 00:43:05 ID:p9TfJkTg0
まだ一月しか経ってないじゃない

512 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/05/31(金) 23:07:04 ID:iHxYvSII0
どうも作者です。

おつとおむつと感想と検証、本当にありがとうございます!
モチベーション上がりまくりです!

でも五月中に投下できなかった…。

キンタ祭りに二本投下したら軽く燃えつきました。

次回は近日中に、メンバーの過去編はちょっとおいて、新シリーズに入る予定です。
ちょっと長くなりそうなので、もしかしたら前後編にしてしまうかも。

ではではまた。

513 名前:名も無きAAのようです:2013/06/01(土) 00:42:38 ID:/aGpIyv.O
>>512
報告どうもー
気長に待ってます

514 名前:名も無きAAのようです:2013/06/01(土) 04:29:21 ID:mXYgP4dc0
>>512
全然待つよ!!
楽しみにしてるよ!!

515 名前:名も無きAAのようです:2013/06/01(土) 20:45:32 ID:xRvESSck0
期待

516 名前:名も無きAAのようです:2013/06/02(日) 16:05:49 ID:iqYY9L6.0
ビーグルって雌なん?
>>417でショボンがビーグルちゃんって呼んでるし
特に決めてないんなら別に良いんだけど

517 名前:名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 08:11:07 ID:LRSBOBmE0
>>516
ペットを〇〇君って呼んでるヤツの方が希少だと思うんだが

518 名前:名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 16:18:51 ID:GpkfPzCoO
え?
内の周りは○○君が多いんだが…

519 名前:名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 18:39:46 ID:6Jgug4V60
>>512
更新期待してる

でもごめん…
確かアインクラッドじゃ
軽犯罪なら3犯までは時間回復
4犯目はクエスト回復
5犯目から復帰不能
となってたと思うんだ

自分でも面白いから細けーこたーなんで思ってるけど

520 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/04(火) 20:19:40 ID:vj4MwTUI0
>>516
男の子です。
SAOのモンスターに性別設定があるのかが謎ですが(^_^;)

>>519
すみません。その設定って何巻のどのあのたりで分かりますか(汗)

すっかり読み落としてました。(´д`)

圏内事件でもキリトがアスナに対してオレンジになったらアライメント回復クエストを付き合うみたいなことを言っていたのでオレンジになっても回復クエストをやればオレンジに戻れると思ってました(-_-;)

521 名前:名も無きAAのようです:2013/06/06(木) 09:42:49 ID:3e0lAxkM0
>>520
落ち着け
オレンジがオレンジのままになってるぞ

522 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/06(木) 19:57:05 ID:PnNPxLVE0
>>521

思いのほか動揺しているようです。

設定どこに出てくるんだろう。

523 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 06:55:29 ID:3FSlzdgE0
そろそろ

524 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 14:59:53 ID:j/oEcZ8U0
どーも作者です。

↑自分で作者とか言うのおこがましいな〜と思いつつ、他にいい言葉が思いつかない今日この頃。

そんなことを思いつつ、誤字脱字チェックもしつつ、第六話の投下を始めます。

525 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:01:52 ID:j/oEcZ8U0



0.零の証人



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526 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:03:22 ID:j/oEcZ8U0

西暦2024年1月末 某日早朝

(アルゴ)「直接依頼したいというから来てみたら」

(   )「売れる情報ならなんでも売ると聞いたから呼んでみたら」

(アルゴ)「情報屋であって、探偵じゃないんだけどね」

(   )「では、引き受けてもらえないと?」

(アルゴ)「…いや、引き受けるよ。ただびっくりしただけさ」

(   )「びっくり?」

(アルゴ)「あんた達は一枚板だと思っていたからね」

(   )「   」

(アルゴ)?

(   )「これからも、そう思っていてくれると嬉しいですよ」

(アルゴ)?(笑顔…ねぇ。なにかある…か)

(   )「そうそう、一つお願いがあるんですが」

(アルゴ)「ん?なんだい?」

(   )「この依頼の件は、だれにも売らないでほしいんです」

(アルゴ)「それは出来ないね。わたしの主義に反する」

アルゴの目の前に現れるトレードウインドウ。
困惑気味に内容を確認するアルゴの瞳が大きく見開かれる。

(   )「探しているって聞いたけど、いりませんか?」

(アルゴ)「……どこから聞いた?」

(   )「アルゴさんは情報のソースは簡単に明かす人だったかな」

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527 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:05:00 ID:j/oEcZ8U0

(アルゴ)「…わかった。その条件で引き受けよう」

(   )「ありがとうございます。絶対に誰にも…ですよ。例えばあなたが懇意にしている攻略組のビーター、黒の騎士さんにももちろん」

(アルゴ)「何故今その名前を出すのかわからないけどね」

(   )「世間話ですよ。攻略組にも内緒ですよってことです。攻略組トップギルドの血盟騎士団の方などにももちろん、言わないでくださいね」

トレードウインドウから品物を受け取るアルゴ。

(アルゴ)「肝に銘じていくよ。しかし、よく、手に入れられたね。これを」

(   )「蛇の道は蛇、ですよ。情報屋には情報屋の、道具屋には道具屋の道があるってことです」

(アルゴ)「…これから欲しいものがあったら、エギルの次にあんたん所に行くことにするよ」

(*   )「それは光栄だ」

(アルゴ)「それじゃあ、依頼の確認だ。これから一か月の間、ギルドVIPのギルマスであるショボンの動向を調査させてもらうよ」

(   )「基本、調べるのは夜9時から朝5時までの分で構わないです」

(アルゴ)「やると決まれば、ちゃんとやるよ。日中とはいえ君たちのあずかり知らぬ瞬間もあるだろう。報告はどうする?」

(   )「基本は三日に一度くらいでいいです。ただ、アルゴさんの目で緊急を要するものがあったらすぐ連絡を入れてください。あと、追跡中に見失った時も」

(アルゴ)「?まったく変な依頼だね」

(   )「こんなことはアルゴさんにしか頼めないですよ」

(アルゴ)「まったく…報酬は」

528 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:07:37 ID:j/oEcZ8U0

アルゴの言葉を遮るように現れるトレードウインドウ。
いくつかのアイテムとともにコル(アインクラッドの通貨)が提示される。

(アルゴ)「…順当な金額だね。あとは…回復POT、対毒・対麻痺POT、回復結晶、転移結晶に、回廊結晶!?しかもこの金額は!?」

(   )「POTは使用したら補充します。結晶はもしもの時に。回廊結晶は行き先をこの街に設定してありますから、使用した際はすぐに呼んでください。コルは装備の強化に使っていただいて結構です」

(アルゴ)「……わかった」

(   )「もしも人を使うようならその方たちの分も用意します。ですが、依頼内容は調査です。危険を感じた場合は撤収してくださって問題ありません。ただ、」

(アルゴ)「すぐに連絡するよ。…情報屋アルゴの名に懸けて、受けた依頼を投げ出すことはしないさ。ひとりでやるしね。知っている者も少ない方がいいんだろう?……ああでも一つ言っておこう」

(   )?

(アルゴ)「君は普段のしゃべり方のほうが良いね。いつもの特徴的な。その方が、きっと君らしい」

(   )「……おっおっおっ。よろしく頼むお」

(アルゴ)「じゃあ、またね。ブーン君」

( ^ω^)「よろしくだお。アルゴさん」




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529 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:08:52 ID:j/oEcZ8U0




第六話  数え歌がきこえる 前編 〜あんたがたどこさ〜




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530 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:09:42 ID:j/oEcZ8U0



1.一輪の百合。二つのグラス。



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531 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:11:17 ID:j/oEcZ8U0

同日午後三時。

ドアベルが音を立て、準備中と書かれたプレートのかかった木目調の扉が開かれた。
今は二件あるレストランカフェ『バーボンハウス』は、二件とも木目調の落ち着いた雰囲気だが、特に二号店としてオープンしたこの40層にある『バーボンハウス』は調度品にもかなりの手とお金をかけられており、落ち着いた雰囲気をかもし出している。

(*゚ー゚)「もどりました〜」

少し語尾を延ばしてカウンターの中にいるはずのショボンに声をかけて入ってきたのはしぃ。
右手と胸で紙袋を抱えている。

(*゚ー゚)「帰り道の露天で美味しそうな果物があったので、買っちゃいました。あっ」

(´・ω・`)「おかえり、しぃ」

視線の先には笑顔で帰りを迎えるショボン。
そして彼のいるカウンターの前には、一人の客がいた。

(;*゚ー゚)「すみません」

細身の体に白衣のような白いコートを纏った人物に頭を下げ、奥に行こうとするしぃ。
しかしそれをその人物は引き止めた。

从 ゚∀从「そんな逃げるように奥に行くなんて、傷付くな」

肩にかかるかかからないかのワンレングスの薄茶色の髪をかき上げながら、しぃに向かってにっこりと微笑む。

(*゚ー゚)「い、いえ、お客さんに気づかなかったので、申し訳ありません」

从 ゚∀从「そんなに存在感ないかな?」

(*゚ー゚)「い、いえそんなことないです!」

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532 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:12:32 ID:j/oEcZ8U0

座っていてもわかる、革の装備に包まれたしなやかな体。
背も高く、ショボンと同じくらいだろうか。
そして整った顔に微笑みかけられ、思わず頬を赤くするしぃ。

(*゚ー゚)「存在感がないなんてそんな…それどころか…」

(´・ω・`)「ハイン…きみ…」

从 ゚∀从「おっと、自己紹介が遅れたね。私の名はハインリッヒ。皆にはハインと呼ばれている。ショボンとは馴染みでね、今日はちょっと依頼できているんだが……そうか、君が噂の新人だね?」

椅子を下り、しぃの目の前に立つハイン。

从 ゚∀从「よろしく」

(*゚ー゚)「こ、こちらこそよろしくお願いします」

差し出された右手を握り、握手をするしぃ。
にっこりと微笑んだハインの瞳を見て、更に頬を染めた。

从 ゚∀从「かわいいお嬢さん、名前を聞いても良いかな?」

(*゚ー゚)「す、すみません。私の名前はしぃと言います!」

从 ゚∀从「しぃか、君に似合った可愛い名前だね。名は体を現すとは、よく言ったものだと思うよ」

(**゚ー゚)「そんな…ハインさんこそかっこいいです」

(´-ω-`)「ハイン…君って人はまったく…」

从 ゚∀从「ん?どうかしたかい?」

(´・ω・`)「しぃ、それ、女だから騙されちゃだめだよ」

(*゚ー゚)「………え?」

从 ゚∀从「ばらすのが早いよ、ショボン」

(;*゚ー゚)「えー!!!???」

从 ゚∀从「……自分でやっといてなんだけど、そこまで驚かれるとちょっと傷付くね」


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533 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:16:49 ID:j/oEcZ8U0



(;*゚ー゚)「すみませんでした」

散々驚いたあとカウンターに座るよう促され、ショボンの淹れたお茶を飲んで一息ついたしぃが、隣に座るハインリッヒに向かって頭を下げた。

从 ゚∀从「良いって良いって。私が悪乗りしたのが最初だからね」

(´・ω・`)「ほんとだよ。うちの新人をあんまりからかわないでほしいね」

从 ゚∀从「ははは」

改めてカウンターに座るハインリッヒ。
同じくショボンの出した背の高いグラスに入った褐色の液体に口を付け、一啜りする。
グラスの中で氷が音を立てた。

从 ゚∀从「これは?」

(´・ω・`)「カラムラ茶のアイスティーだよ。飲みやすくするために少しだけ甘くしてあるけど、君でも飲める甘さだろ?」

从 ゚∀从「甘味を足してあるのか。気付かなかったよ。食事も美味しいし、お茶も美味しい。いつか君の入れた酒が飲みたいね」

(´・ω・`)「いつかね」

ギルドのメンバーと居る時とはまた違った顔と口調を見せるショボン。
手は忙しくグラスや皿を磨いているが。
それを不思議な気持ちで見るしぃ。

(´・ω・`)「どうかした?しぃ」

(*゚ー゚)「い、いえ。なんでもないです」

从 ゚∀从「しかしVIPのニューフェイスがこんなに可愛い女の子だとはね。一人は女だと聞いてはいたが。驚いた」

(*゚ー゚)「あの、さっきも気になったんですけど、噂って?」

从 ゚∀从「ん?中層階をメインにしているギルドやパーティーの中ではちょっとした噂だよ。『ギルドV.I.P.に新人が二人も入った』ってね」

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534 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:19:20 ID:j/oEcZ8U0

(;*゚ー゚)「え!?なんでですか!?」

从 ゚∀从「それだけこのギルドが中層では有名だってことさ。強さも職業も攻略組レベルと言われているこのギルドだけど、少数精鋭でここまでやってきたからな。なあショボン、私が知り合ってからは初だろ?」

(´・ω・`)「どうだったかな。その頃モララーは居た?」

从 ゚∀从「いたいた」

(´・ω・`)「じゃあそうだね」

从 ゚∀从「そういえば、人材補強して、満を持して攻略組と合流なんて噂も流れてたな」

(´-ω-`)「まったく困った噂だよ」

ため息をつきながら、あきれたように首を振るショボン。
それでも両手はグラスを磨いている。

(;*゚ー゚)「そうだったんですか」

从 ゚∀从「それに、VIPに入りたいってやつも今までに結構居たから、大変なんじゃないか?」

(´・ω・`)「まあね」

(;*゚ー゚)「そうなんですか!?」

ショボンとハイン、二人の顔を交互に見るしぃに困ったような顔を見せるショボンといたずらっ子のような笑顔を見せるハイン。

(´・ω・`)「ありがたいことに、また希望者の問い合わせが増えたよ」

从 ゚∀从「だろうね」

(;*゚ー゚)「そうなんですか」

(´・ω・`)「募集とかはしてないんだけどね」

从 ゚∀从「基本はショボンのスカウトだろ?」

(´・ω・`)「別にそういうわけじゃないよ。独断で声をかけたりはしないし。基本、みんなの総意さ」

从 ゚∀从「でも、最初に目をつけるのはおまえだろ?」

(´・ω・‘)「まぁ…今のところはそうかな」

从 ゚∀从「そのショボンのお眼鏡にかない、あまたのライバルを蹴落としてVIPに入った新人二人。そりゃあ注目されるよ。どんなやつらだってね」

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535 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:23:44 ID:j/oEcZ8U0

(;*゚ー゚)「そ、そんな」

(´・ω・`)「ハイン、あんまり変なプレッシャーかけるのは止めてくれよ」

从 ゚∀从「事実を事実として教えてあげただけなんだけどね。元からのメンバーには勝てなくても、新人には勝てるかもって勝負を挑んでくるバカもいないとは限らないし」

肩をすくめながらしぃを見るハインだったが、視線の先に居る彼女は既に冷や汗を垂らしながら顔をこわばらせていた。

(;*゚ー゚)「あ、あの、私」

从; ゚∀从「ごめん、ごめん。そんなに気にするとは思わなかったよ。今までの面子は『受けて立ってやるぜ』ってタイプだからさ。ツンとかクーとか。だからしぃちゃんも大人しそうに見えて実はそういうタイプかと」

(´・ω・`)「あの二人や君と一緒にしたら駄目だよ」

从; ゚∀从「いや、このギルドに入るにはアレくらいのキャラじゃないと駄目なんじゃないかと…って、いま私も入れたか?」

(´・ω・`)「もちろん」

从 ゚∀从「いくらなんでもあの二人ほどじゃないと思うんだが」

(´・ω・`)「あんまり変わらないよ」

从 -∀从「……これからもうちょっと大人しくしておこう」

(;*゚ー゚)「ふふ」

自分が注目されていることを知り動揺していたしぃだったが、二人の会話を聞いているうちに少しだけ余裕が生まれ、思わず笑みを漏らす。

从 ゚∀从「笑った」

しぃの手をとり、そっと両手で包みながらじっと彼女の瞳を見るハイン。

(**゚ー゚)「あ、あの」

再び頬を染めるしぃ。

从 ゚∀从「ごめんね。しぃちゃん。驚かせちゃって」

(**゚ー゚)「そ、そんな。ハインさんは私を気づかってくださったんですよね」

从 ゚∀从「でも、驚かせちゃったから」

椅子からおり、照れて顔を伏せようとするしぃの顔を下から覗き込むハイン。

从 ゚∀从「ごめんね。しぃちゃん」

(**゚ー゚)「は、ハインさん。気にしないで下さい」

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536 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:25:58 ID:j/oEcZ8U0

从 ゚∀从「許してくれる?」

(**゚ー゚)「そんな、許すとか許さないとか」

从 ゚∀从「許して……くれないよね」

(*゚ー゚)「許します」

从 ゚∀从「良かった!ありがとうしぃちゃん。しぃちゃんに嫌われたくないから」

(*゚ー゚)「ハインさん」

しぃの手をぎゅっと握って満面の笑顔を向けるハイン。
釣られて笑顔を見せるしぃ。

从 ゚∀从「今日はこの後暇?」

(*゚ー゚)「え?」

从 ゚∀从「きれいな夕焼けが見れる湖を知ってるんだ。良ければ一緒に…どうかな。その後食事とか」

(**゚ー゚)「そ、そんな」

(´-ω-`)「はーいーん。いい加減にしようか」

从 ゚∀从「なんだよショボン。別に女同士食事くらい」

(´・ω・`)「しぃには彼氏いるよ。しかも婚約してる」

从 ゚∀从「え?そうなの?」

(*゚ー゚)「は、はい。私にはギコ君が」

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537 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:28:06 ID:j/oEcZ8U0

ぱっと手を離し、椅子に座りなおすハイン。

从 ゚∀从「なんだもう決まった人がいるんだ。それならそうと早く言ってくれないと」

(;´・ω・`)「まったく君って人は」

从 ゚∀从「しぃちゃん、その彼とお幸せに」

(;*゚ー゚)「は、はい」

从 ゚∀从「で、ショボン。依頼は受けてくれるのか?」

(´・ω・`)「明日連絡するよ。在庫のチェックもしたいし」

从 ゚∀从「分かった。出来るだけ早く頼むな」

(´・ω・`)「うん。分かったよ」

グラスに残っていたアイスティーを一気に飲み干し、椅子からおりるハイン。

从 ゚∀从「じゃ、よりよい返事を待ってる」

(´・ω・`)「はいはい」

从 ゚∀从「しぃちゃんもまた!」

(;*゚ー゚)「は、はい!」

从 ゚∀从「それじゃ!」

笑顔で二人に軽く手を振った後店を出て行くハイン。

(´・ω・`)「まったく…」


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538 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:29:13 ID:j/oEcZ8U0

一息ついたショボンと呆然としているしぃ。

(;´・ω・`)「大丈夫?」

(;*゚ー゚)「はい……あの……彼女はいったい」

(´-ω-`)「……彼女から依頼を受けた件もあるから、とりあえずは夜に話すよ。まずはお店を開けないとね。どうする?休んでもいいけど」

(*゚ー゚)「いえ、大丈夫です!」

(´・ω・`)「そう?じゃあ特急で開店準備をしよう」

(*゚ー゚)「はい!」

慌しく動き始めるショボンとしぃ。
既に扉の前には待っている人たちが数組いるのだが、まだ気付いていなかった。



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539 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:31:13 ID:j/oEcZ8U0




2.二人静、三人寄ればかしましい。




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540 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:32:17 ID:j/oEcZ8U0

同日午後2時

V.I.P.農場
クックルが管理しているこの農場は、バーボンハウスに卸す野菜だけではなく、クーが薬や毒を作るのに使う薬草や、モララーが工芸品を作るのに使う植物なども栽培している。そして最近では隣のV.I.P.牧場にいる家畜たちに食べさせる牧草などにも手を広げ始めていた。
またクックルの趣味で花畑もあるため、それなりに広大な土地を保有しているのだがそろそろ手狭と感じるほどになってきていた。

この電子の世界アインクラッドでは現実の世界ほど手をかけなくても植物を栽培できるためクックル一人でもどうにかなっているが、それでも収穫などには人手がある方がありがたいため、職業を持たないドクオ・ジョルジュ・ギコの三人は頻繁に手伝いに来ていた。

今日は収穫はないのだが、広い農地を眺めることの出来る東屋に、ギコが一人座ってお茶を啜っている。

(,,゚Д゚)「あ〜お茶が美味い」

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541 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:33:42 ID:j/oEcZ8U0

(;゚∋゚)「ギコ、お前こんなところで油を売っていて良いのか?」

(,,゚Д゚)「おおクックル。飲むか?」

木製の長椅子の中央に座っているギコが、自分の隣をぺしぺしと叩く。

( ゚∋゚)「まったく」

呆れたように、それでも少し笑顔でそこに座るクックル。
ギコはストレージから湯飲みを取り出すと、反対側に置いていた水筒からお茶を注ぎ、クックルに差し出した。

( ゚∋゚)「ありがとう」

(,,゚Д゚)「朝ショボンが淹れてくれたやつだから、美味いぞ」

( ゚∋゚)「……うん。美味い」

同じ方向を見ながらお茶を啜る男二人。
もしもこの二人を知らない者がこの光景を見たら、首をかしげるような風景である。

( ゚∋゚)「いいのか?こんなところにいて?」

(,,゚Д゚)「午前中にドクオとジョルジュとモララーと四人で採取しながら戦闘してきたぞゴルァ」

( ゚∋゚)「そうか。どうだった?」

(,,゚Д゚)「オレはまだまだだゴルァ」

( ゚∋゚)「それが分かっているのなら、良いだろう。だが、訓練にいかないのか?」

(,,゚Д゚)「オレはまだショボンからソロで戦闘の許しが出てないから。ドクオもジョルジュも野暮用とか言って、午後は付き合えないって言われてよ。他の皆には店があるし」

( ゚∋゚)「そうか」

(,,゚Д゚)「ああ」

( ゚∋゚)「……言わないのか?」

(,,゚Д゚)「?」

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542 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:34:57 ID:j/oEcZ8U0

( ゚∋゚)「戦闘訓練の誘いに来たのかと思っていた」

(,,゚Д゚)「ん〜〜。来る時まではそのつもりだったけど、働いてるクックルを見て、こういう職業を頑張るのもありなのかな…とか思ってよ」

( ゚∋゚)「栽培スキル、あげてみるか?」

(,,゚Д゚)「みんなは、その職業が好きでやってるんだろ?オレは、そういうのじゃないから悪い気がする。この世界はスキルを上げればある程度の物は作れたり出来るけど、やっぱり好きでやってるやつとは違うと思うんだ。オレには花や草木に水をあげるときのクックルみたいな優しい表情は出来ない」

( ゚∋゚)「……お前、変わったな」

(,,゚Д゚)「そうか?」

( ゚∋゚)「ああ」

(,,゚Д゚)「そうか。クックルの声も聞こえるようになったしな」

( ゚∋゚)「ははは」

ギコがポツリと最後にした呟きに笑うクックル。
それをじろっと睨むギコ。

(,,゚Д゚)「笑い事じゃないぞゴルァ」

( ゚∋゚)「すまんすまん」

(,,゚Д゚)「しぃと二人、いつになったらクックルと喋られるようになるかひやひやしてたからな」

(*゚∋゚)「なんだ、そんなにおれと話したかったのか?」

ほんのり頬を染めてギコを見るクックル。

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543 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:36:03 ID:j/oEcZ8U0

(;,,゚Д゚)「べ、別にそういう意味じゃないぞ!せっかくギルドに入ったんだから仲良くなりたいなと」

(*゚∋゚)「分かった分かった」

照れたようにもじもじするクックルをみて、慌てて立ち上がるギコ。

(;,,゚Д゚)「く、クックル!」

( ゚∋゚)「冗談だ」

すっと真顔に戻り、口をあんぐりと開けたギコを見て、にやっと笑う。

(,,゚Д゚)「……悪趣味だぞ、ゴラァ」

疲れたようにもう一度長椅子に座るギコを見て、面白そうに笑うクックル。

(,,゚Д゚)「クックルは、そういう冗談も言えるんだな」

( ゚∋゚)「もっと堅物かと思ったか?」

(,,゚Д゚)「そうだな…ゴラァ」

( ゚∋゚)「おれも自分がこんな冗談を言う日が来るとは思ってなかった。生きてきて、初めてだ」

その言葉に感ずる物があり、じっとクックルを見るギコ。
その視線を感じ、照れくさそうに頭をかくクックル。

( ゚∋゚)「おれは堅物というか、面白みがないやつだったと思う。この世界では………特にな。だけど、このギルドに入ってあいつらと話していたら、いつの間にかこんな風なことを自然にするようになっていた。自分でも不思議だ。ギコ、お前もそうじゃないのか?」

(,,゚Д゚)「ああ……そうだなゴラァ。今までは自分としぃのことしか考えてなかったし、ただ生き続けるためだけに動いていた。けれど、今はどう生きるかを少し考えているような気がするぞゴラァ」

( ゚∋゚)「不思議なやつらだ」

(,,゚Д゚)「ああ。不思議なやつらだ」

顔を見合わせてニヤニヤと笑う二人。
そこにチャイムが鳴り、クックルが立ち上がる。

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544 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:38:06 ID:j/oEcZ8U0

(,,゚Д゚)「何だ今の音?」

( ゚∋゚)「来客だよ。ここはギルドのメンバー以外は出入りできないようにしてあるからな。用事のある者は門にあるチャイムを鳴らすんだ」

(,,゚Д゚)「そんなのあったか?」

(; ゚∋゚)「流石にもう少し注意力を持て」

(;,,゚Д゚)「…ショボンやドクオにもよく言われるぞゴルァ」

門に向かって歩き始めたクックルの後を追うギコ。

( ゚∋゚)「どうした?」

(,,゚Д゚)「せっかくだから見に行く」

( ゚∋゚)「別に良いが、邪魔するなよ」

(,,゚Д゚)「しないぞゴルァ」

門に近付くと人影が見えた。
そして向こうもこちらに気付くき、頭を下げているのが分かる。

( ><)「こんにちはなんです!」

( ゚∋゚)《こんにちは》

ストレージから出したボードにペンを走らせるクックル。
門の外に立つ少年はお辞儀をした後にボードに書かれた文字を読み、ニッコリ微笑んだ。

(,,゚Д゚)?

それを見て不思議そうな顔をしたギコを視界の端に捕らえ、口の端を少し上げたクックル。

( ゚∋゚)『しゃべるなよ。俺の声はギルドのメンバーにしか聞こえないから、見えないやつと会話する変なやつに見える』

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545 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:40:14 ID:j/oEcZ8U0

(,,゚Д゚)!

( ><)「どうしたんですか!?」

( ゚∋゚)《なんでもない。きょうも花かな?》

( ><)「ハイなんです!」

( ゚∋゚)《自分でえらぶかい?》

( ><)「このまえ自分で選んだのはセンスがないって笑われたんです!だから今日はお願いします!ピンク色の花で花束を作って欲しいんです!」

( ゚∋゚)《わかった。まっててくれ》

笑顔とボードで答え、街路沿いにある花壇に向かうクックル。
それを見て、街路沿いについてくる少年。

(,,゚Д゚)「口も開かないんだな」

( ゚∋゚)『腹話術みたいなもんだな』

(,,゚Д゚)「すげぇもんだ」

こそこそと囁くように話す二人。
街路沿いだが境界はあるため少年は中に入ってこれないが、音は多少漏れるためギコの声が聞こえないようにしていた。

(,,゚Д゚)「そういえば、花束なんか作れるのか?」

( ゚∋゚)『モララーとツンから包装に使う紙やリボンは買ってるから、後はスキルを上げてるところだ』

(,,゚Д゚)「……色々やってるんだな」

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546 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:41:29 ID:j/oEcZ8U0

花壇に着くと、走ったのか先に着いていた少年が目を輝かせながら花壇を見ていた。

(,,゚Д゚)「花が好きなんだなゴラァ」

( ><)「はい!好きなんです!さいしょはぽっぽちゃんにあげる為に買いに来たんですが、今は僕も部屋に飾ったりしているんです!」

(,,゚Д゚)「おお!」

( ><)「お兄さんも花を育ててるんですか!?」

(,,゚Д゚)「おれはこいつの友達なだけだ」

( ><)「そうなんですか!」

ギコと少年が話をしている間に花束を作るクックル。
濃いピンク色の花を中心に、薄いピンクと淡い水色の花を回りにあわせ、それを白地に緑の蔦をあしらった紙で巻いてから、ピンクのリボンで根元を留める。
そしてそれをギコと楽しそうに話をしている少年に見せようとしたときに、こちらに向かってやってくる二人に気付き、動きを止めた。

( ゚∋゚)?

(,,゚Д゚)「ん?どうした?」

花を扱うときに見せる優しい笑顔を消したクックルに気付き、その視線の先を見るギコ。
少年も不思議そうにそちらに眼を向けると、誰にでも分かるレベルで顔を強張らせた。

(;><)「ち、ちがうんです!」

( <●><●>)「何も違わないのは分かってます」

(*‘ω‘ *)「もう嘘はやめるっぽ」

(;><)「ち、ちがうんです…」

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547 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:43:10 ID:j/oEcZ8U0

(,,゚Д゚)「おい、知り合いか?」

花を買いに来た少年よりも頭ひとつ分くらい背の高い青年と、すこしぽっちゃりとした少女が少年を挟むように立ち、怒っているのか強い口調で詰め寄る。

( <●><●>)「ビロードがここに来ていることは分かっていました」

(;><)「知ってたんですか!?」

(*‘ω‘ *)「急に花とか買ってくるからなんだと思ったっぽ」

(;><)「それは…」

パーティーでも組んでいるのか、会話からどうも親しい間柄らしいことが分かり、とりあえず静観する事に決めたクックルとギコだったが、背の高い青年がちらちらとこちらを見ているため身構えてはいた。

( <●><●>)「ぽっぽちゃん……いえ、私たちがギルドV.I.P.に入ることが悲願だとはいえ、一人で」

(;><)「え?ギルドVIP?」

(*‘ω‘ *)「この農園はギルドVIPが経営してる農園だから顔を売るために来てるんだっぽ?」

(;><)「え!?ここはそうなんですか!?」

.

548 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:46:28 ID:j/oEcZ8U0

(;<●><●>)「ビロード?」

(*‘ω‘ *;)「もしかして、知らなかったっぽ?」

(;><)「知らなかったんです!なんでワカッテマス君とぽっぽちゃんは知ってるんですか!?」

(*‘ω‘ *)「なぜって…」

(;<●><●>)「農園の名前を見れば一目瞭然なのは分かってます」

(;><)「農園の名前なんてどこに書いてあるんですか!???」

(;<●><●>)「ビロード…」

(*‘ω‘ *;)「ビロード…」

(;,,゚Д゚)「……おれより注意力散漫なやつがいた」

(;゚∋゚)))

思わず頷いたクックルを尻目に、とりあえず三人に声をかけたギコだった。



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549 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:47:08 ID:j/oEcZ8U0



3.三人模様、四面楚歌



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550 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:49:21 ID:j/oEcZ8U0

同日午後四時

モララー細工工房
今モララーが経営する細工工房は、昔はブーンが雑貨屋を開いていた店である。
薬から武具まで扱っていたその時は手狭に感じたが、今は店頭に置くのは小物が主なため、少し広々とスペースを使っていた。

( ・∀・)「さて客もいなくなったし、続きをやるか」

カウンターの奥に作った作業台に向かうモララー。
通常の細工品を作るにはまず素材を準備する。そしてスキルを持っている者が素材をタップすると、作製メニューが現れ、そこから作りたい物を選び、更に使用する工具を選んで作製していく。
更に添加素材を使用する場合もあるが、基本的には大まかなジャンル分け以外はランダムに出来上がる。

しかしある程度スキルを上げ、派生スキルも習得すると武器防具以外はデザインを決めることが出来るようになる。
更に武器防具にも、一度出来上がったものを細工することが出来るようになる。

既にモララーの作製スキルは更にその域を超えており、ほぼ自分の思い通りに装身具や小物を作り上げていた。

( ・∀・)「でっきるかな、でっきるっかな」

紙に作りたいものの絵を描き、それをもとにイメージを固め、素材を細工していくのが最近のモララーのスタイルだった。
今日もデザインを描いた紙を見ながらストレージや店の倉庫にある素材を確認していると、ドアベルが鳴った。

( ・∀・)「いらっしゃい!って、なんだ」

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551 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:51:58 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「なんだとは何よ」

ツインテールにした柔らかく光る金色の髪を揺らしながら店に入ってきたのは、同じギルドのツンだった。

( ・∀・)「こんな時間にめずらしいな?自分の店は?」

ξ゚听)ξ「納品は終わり。予約も入ってないから今日は終了」

慌ててしまおうとした紙を作業台の上に戻し、作業台からカウンターに戻るモララー。

( ・∀・)「で?今日はなんだ?」

ξ゚听)ξ「ん?」

( ・∀・)「どうせまた無茶な依頼だろ?」

ξ゚听)ξ「失礼ね。頼まれていたレースと刺繍、あとリボンを持ってきてあげたっていうのに」

ツンもカウンターに近付き、ウインドウを操作してストレージから品物をいくつか取り出す。
カウンターに並べられる可憐なレースや華やかなリボン。

( ・∀・)「おお!早かったな。助かるよ」

ξ゚听)ξ「感謝しなさい。で、かわりと言ったらなんなんだけどさぁ」

( ・∀・)「…やっぱり無茶な依頼じゃねえか。とりあえず先にいくらだよ。これ全部で」

ξ゚听)ξ「あら、良いわよ。同じギルドの仲間じゃない。モララーには更にこれからお世話になるし」

(;・∀・)「マジで金払うからやめてくれ」

ξ゚听)ξ「そんなこと言わないの。で、これなんだけどさ」

モララーが片付けたカウンターの上に紙を広げるツン。
気が乗らないのが見てわかるモララーだが、とりあえず覗き込んだ。

( ・∀・)「……こんなもん、何に使うんだ?」

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552 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:53:02 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「もちろん、これで服を作るのよ」

( ・∀・)「できるのか?」

ξ゚听)ξ「わからない。だからチャレンジしてみるの」

( ・∀・)「…防御力のアップか」

ξ゚听)ξ「それが基本的に欲しい能力よね。更に今私がランダムで付与できているプラス性能をある程度コントロールできるようになれば、防具だけじゃなく衣服に意味を持たせることができるようになるかもしれない」

( ・∀・)「……わかった。だが多分時間がかかるぞ」

ξ゚听)ξ「よろしく。サンプルはまずどれくらいでできる?」

(;・∀・)「お前今のおれのセリフ聞いてたか?」

ξ゚听)ξ「とりあえずのサンプルでいいのよ。まず作れるかどうかやってみたいから」

(;・∀・)「まったく…」

ため息をつきつつ自分のストレージと店の在庫を確認するモララー。

( ・∀・)「……素材で強度は低いけど細工で失敗したことがないのが残ってるからまずはそれで作ってみる。ただ作り方を工夫しないとだから…明後日の昼には持っていくようにする」

ξ゚听)ξ「わかった。明日の夕飯の時ね」

(;-∀-)「はいはい、頑張りますよ」

ξ゚听)ξ「…ほかのメンバーには内緒でね」

( ・∀・)?

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553 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:54:30 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「これ、前からやってみたいと思ってはいたんだけど、今回のは……ショボンオーダーなのよ」

( ・∀・)「わかった。至急であたりをつける」

ξ゚听)ξ「ごめんね。お願い」

( ・∀・)「理由は聞いたのか?」

ξ゚听)ξ「詳しくは聞いてない。ブーンやドクオにも話してないみたいだから」

( ・∀・)「もしかして、カン…か?」

ξ゚听)ξ「多分ね。ちゃんとした理由があれば聞く前に言うだろうから。全部話すかは別として」

(;・∀・)「おいおい、ショボンのカンは当たるだろ。しかも悪いことは特に。そしてかなりの確率で斜め上に悪い方向へ」

ξ;゚听)ξ「やめてよ怖いこと言うの」

顔を見合わせて大きくため息をつく二人。

(;・∀・)「…とりあえずやってみる」

ξ;゚听)ξ「よろしく」

ツンが踵を返そうとするとドアが開いた。

ζ(゚―゚*ζ「こんにちはー」

(*・∀・)「いらっしゃい!」

ξ゚听)ξ!

ギルドのメンバーの中ではどちらかというと落ち着いた言動をするモララーの元気な大声を聞いて思わずびっくりするツン。
そして入口のほうを見ると、可愛らしい女性がいた。

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554 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:55:55 ID:j/oEcZ8U0

ζ(゚―゚*ζ「あ、すみません。待ってますね」

(*・∀・)「いいよいいよ。もうこれ帰るから」

ξ#゚听)ξ「これ?」

ζ(゚―゚;ζ「え?でも」

(*・∀・)「頼まれていたイヤリングだよね。出来てるよ」

カウンターの下から小さな箱を取り出すモララー。
そしてツンを見て追い払うように手を振る。

( ・∀・)「ほら、お客さん来たから」

ξ#゚听)ξ「あんたねぇ」

ζ(゚―゚;ζ「あ、あの…」

ξ#゚听)ξ「もう一つ用事思い出した」

(#・∀・)「はぁ?」

ξ#゚听)ξ「終わるまで待ってるから」

(#・∀・)「一度帰れ」

ξ#゚听)ξ「終、わ、る、ま、で、こ、こ、で、待ってるから」

(#・∀・)「おまえ」

ξ#゚听)ξ「なに、なんか問題あるの?」

ζ(゚―゚;ζ「あの…」

火花を散らす二人を怖がりつつカウンターに近寄る少女。
この世界では珍しいレースやフリルがたくさん付いたふんわりとした服を着た可愛らしい少女に、モララーはもちろんツンも思わず見惚れてしまうが、ツンはすぐに正気を取り戻してにっこりとほほ笑む。

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555 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:57:25 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「注文した品の受け取りに来たのよね。ちょっと待っててくれるかな」

ζ(゚―゚*ζ「は、はい」

ξ#゚听)ξ「ほら、はやくしなさい。お客さんをお待たせしないの」

(#・∀・)「ちくしょう」

カウンターに出していた小箱のふたを開け、中を少女に見せる。

( ・∀・)「話した通りのデザインにしたつもりだけど、どうかな」

更にカウンターに近寄り、小箱を覗き込む少女。

ζ(゚―゚*ζ「すごい!私の想像よりも可愛くてきれいです!ありがとうございます!」

(*・∀・)「そう!良かった」

小さなピンクの意思を中心に、花弁のような金と銀の細かい細工が施され、さらにそこから零れ落ちたような小さなしずく型の透明な石が、華奢な銀の鎖によって繋がれていた。

(*・∀・)「これくらいの鎖の長さなら戦闘にもギリギリ邪魔にならないだろうし、デレさんなら着こなせると思ったから、ちょっと長めにしてみたよ」

ζ(゚―゚*ζ「本当に素敵です!ありがとうございます!」

(*・∀・)「いやいや、おれも作り甲斐があったよ」

横からイヤリングを覗き込むツン。
それはツンの目から見ても可愛く美しく儚げで、思わず見惚れてしまう。

ξ;゚听)ξ「まったく…性格はともかく腕は確かよね」

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556 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 15:59:30 ID:j/oEcZ8U0

ζ(゚―゚;ζ「でも、こんなにきれいで素晴らしいのに、本当に先にお渡ししたあの金額でいいんですか?」

( ・∀・)「メインの石と素材はデレさんの持ち込みだし、デザインも基本はデレさんだしね。多少は在庫の素材も使ったけど、それよりなによりこういうデザインのものを作れることが分かったのがかなりの収穫なんだよ。だから今回はあのお値段で大丈夫です」

ζ(゚―゚;ζ「そうですか?ありがとうございます」

(*・∀・)「でも、次の時はもう少しちゃんとしたお値段になると思いますから覚悟してくださいね。もちろんサービスもしますけど」

ζ(゚―゚*ζ「はい。その時はお願いします。またきれいな石を見付けたり良いモチーフを思いついたときは飛んできますね」

(*・∀・)「楽しみにしてますよ。今回のもので俺のレベルも上がったので、良ければ店も覗きに来てください」

ζ(゚―゚*ζ「はい。寄らせていただきますね」

ξ゚听)ξ「なるほど。こうやって次に繋げてるわけか」

(#・∀・)「おまえはさっきからうるさいよ」

ξ#゚听)ξ「はいはい」

ζ(゚―゚;ζ「あの…」

(*・∀・)「はい!」

ζ(゚―゚*ζ「あ、いえ。モララーさんじゃなくて、あの…」

モララーと掛け合いを繰り広げていたツンに声をかけるデレと呼ばれた少女。

ξ゚听)ξ「私?」

ζ(゚―゚*ζ「はい。間違ってたら申し訳ありません。もしかして、裁縫師のツンさんですか?」

ξ゚听)ξ「!?た、確かに私はツンだけど、どうして」

ζ(゚―゚*ζ「!初めまして!私はデレといいます!ツンさんの作った帽子は宝物です!」

ξ゚听)ξ「え!?」

ウインドウを出してストレージから帽子を実体化させるデレ。
そして白とピンクのレースとフリルで彩られた小さめのベレー帽を大事そうに持つ。

ξ゚听)ξ「これ…私がブーンの店に品をちゃんと置いてた頃の…中期の頃の作品だ」

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557 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:01:21 ID:j/oEcZ8U0

ζ(゚―゚*ζ「そうなんです!その頃一回お見かけしたことがあって、でもお店がなくなってしまってて」

ξ゚听)ξ「そういえば、上の店に移転するちょっと前に売れたような…」

ζ(゚―゚*ζ「今は上層階にお店を出されてるんですか!?」

ξ゚听)ξ「自分の店じゃないのよ。あの頃と同じ雑貨屋においてもらったり。でも今はほとんどオーダー物かな。上に行くと女の子の数がそれほど多くないしね」

ζ(゚―゚*ζ「あ、あの、お店の場所を教えてもらってもいいですか?今度行きます!」

ξ゚听)ξ「そう?……どうせなら、今から一緒に行こうか?わたしもう戻るし。説明するにはちょっと入り組んでるのよね。場所。一回行けば覚えると思うから。良ければオーダーの話もするし。時間は大丈夫?」

ζ(゚―゚*ζ「本当ですか!?はい!時間なら大丈夫です!!うれしいです!!ありがとうございます!!」

( ・∀・)「……あれ?」

ツンとの会話で見せるデレの満面の笑顔をみながら会話を聞き、頭がついていけなくなっているモララー。

ζ(゚―゚*ζ「じゃあモララーさん、本当にありがとうございました」

カウンターの上の小箱を大事そうに受け取り、ストレージにしまうデレ。
先ほど出した帽子を大事そうに抱えながら。

ζ(゚―゚*ζ「ツンさん、お願いします!」

ぺこりと頭を下げるデレを見て、笑みをこぼすツン。
身長も体格もそれほど違っておらず、おそらく年齢もほとんど変わらないように見えるが、その仕草や行動からデレのほうが幾分か年下に見える。

更に言うと瞳や髪の感じがよく似ているため、姉妹といえば信じる人もいるかもしれない。

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558 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:02:08 ID:j/oEcZ8U0

ξ*゚听)ξ「じゃあ行きましょうか。デレさん」

ζ(゚―゚*ζ「呼び捨てでいいですよ」

ξ*゚听)ξ「じゃあデレちゃん、いこっか」

ζ(゚―゚*ζ「はい、ツンさん」

ξ*゚听)ξ「私も呼び捨てでいいけど…」

ζ(゚―゚*ζ「じゃあ私も……ツンちゃん、つれてって」

二人してキャーキャーと嬌声をだす。
それを呆然と見るモララー。

ξ*゚听)ξ「じゃあね、モララー。また連絡する」

ζ(゚―゚*ζ「モララーさん!ありがとうございました!」

はしゃぎながら店を出ていくツンとデレ。
モララーはそんな二人の背中を呆然と見送った。

( ・∀・)「………………あれ?」

モララーがポツリと呟くと、ツンが持ってきた仕様書が、ひらひらと床に落ちた。




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559 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:06:38 ID:j/oEcZ8U0




4.四の五の言わずに言うことを聞け



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560 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:07:35 ID:j/oEcZ8U0

同日午前11時


流石兄弟の武具店は、38層の街にある。

街の入口から街を囲む壁沿いに、街外れの墓地に向かって進んだ途中にあるその店は、開店当初は立地の悪さから知る人ぞ知る店であり、最初はブーンの雑貨屋からの付き合いの常連と迷宮での戦闘などで知り合った者達が来店するくらいだった。だが口コミでその存在が広がると、わざわざやってくるものが増えて展示品の販売からオーダー品の作製までかなりの繁盛を見せいている。

兄者の「やだやだやだやだここがいい〜。ここじゃなきゃやだ〜」という我儘で全員のため息とともに決まった店だったが、広さ、設備共に兄弟二人で武器屋と防具屋をするには最適であった。

店のオープンは10時頃。
オーナーである二人を知る者は、よほどのことがない限りこの時間の前には来ないし、急いでいても遅めに来るようにしていた。

( ´∀`)「こんにちはもなー」

▼・ェ・▼「きゃん!」

つまり11時を少し過ぎた頃に店のドアを開けたモナーの判断は正しいもだが、今日は日が悪かった。

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561 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:08:41 ID:j/oEcZ8U0

ミセ*゚ー゚)リ「これ、かわいくない!」

(‘_L’)「この武器はなぜこんな形をしているのでしょう。槍…ですよね」

/ ゚、。 /「もっと射程の長い武器が欲しい。ここに来ればあるかもしれないと聞いた」

<_プー゚)フ「おいおい、物はいっぱいあるけど俺に似合うのがないぞ!もっとかっこいいのは置いてないのか?」

(゚、゚トソン「この防具は質は良さそうですが少々お高いですね。このスペックならもう少し安くてもよいと思うのですが」

ミセ*゚ー゚)リ「この武器も可愛くない!もっとラブリーなやつないの!?せっかく可愛い服を着てもこれじゃあ台無しだよ!もっと可愛いのほしい!」

/ ゚、。 /「この鎌、もっと柄を長くしてほしい。もしくはこの槍、柄か刃の部分をもっと長く」

(゚、゚トソン「これとこれとこれでこんなにするのですか…。もう少し安くなりませんか。たとえばこれ位」

<_プー゚)フ「わかった!隠してるんだな!だーせ!だーせ!だーせ!勿体つけるな!」

(‘_L’)「この剣のこの突起は一体何の為に?この槍のこれもそうです。そしてこの盾のこのレリーフには意味があるのですか?」

<_プー゚)フ「店主!」

ミセ*゚ー゚)リ「店主さん!」

/ ゚、。 /「…店主」

(゚、゚トソン「店主」

(‘_L’)「店主殿」

(;´∀`)

▼;・ェ・▼

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562 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:09:48 ID:j/oEcZ8U0

店内の騒々しさに呆然とするモナーとビーグル。
そして中に入らずにそのまま扉を閉めようとした。

(;´_ゝ`)「やあモナー君、いらっしゃい」

(´<_`;)「どうしたんだい、早く中にお入りよ」

しかしそれは許されず、二人の同じ顔が扉に手をかけ、汗をかきながらこちらをみてにやっと笑った。

(;´∀`)「お、お忙しそうだから帰るもな。武器の受け取りはまた今度」

▼;・ェ・▼「く、くぅ〜ん」

(´<_` )「いやいや」

( ´_ゝ`)「帰さないよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと店主さん!あ!可愛い犬!」

<_プー゚)フ「おい!早くもっとかっこいいの持ってきてくれ!こうダーッとしてガーッときてボワッとするようなグッとくるやつをさぁ」

( ´_ゝ`)「お前ら少しは静かにしろ!」

(´<_`;)「モナー頼む、手伝ってくれ」

(;´∀`)「そ、そんなことを言われても」

(゚、゚トソン「お客相手にその物言いはないと思われます。確かに騒がしいですし、お客様は神様ですなどというつもりも毛頭ございませんが、それでもやはり店のオーナーが客に向かって怒鳴りつけるのはいかがなものかと。ここはやはり多少の値引きなどでそのことに対する贖罪せねばならないと思います」

/ ゚、。 /「別に気にしない。欲しい武具が欲しいだけ。出来るの?出来ないの?あるの?ないの?それが知りたいだけ」

(#´_ゝ`)「一度に話しかけるな!まずはカウンターに並べ!」

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563 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:11:12 ID:j/oEcZ8U0

(‘_L’)「しかしながら店主よ、並べてある武具は店主が持って渡してくれないと手に取ることができない。置いてある状態でもステータスの確認はできるようにしてくれてあるが、やはり持った感じは大事ではなかろうか。特にこの突起が持った際にどのような位置にくるとかを確かめないことには」

ミセ*゚3゚)リ「ワンちゃんワンちゃんワンちゃん、ちっちっちっ」

四人の男女が思い思いに兄者と弟者に詰め寄り、一人の少女は唇をすぼめて舌を鳴らしながらビーグルに向かってくる。

怖がってモナーの後ろに隠れるビーグル。

▼;・ェ・▼「くぅ〜ん」

(#´_ゝ`)「いいから並べ!!!!」

(´<_`;)「とりあえずビーグルを奥の部屋に連れてってから、カウンターの中を頼む」

(;´∀`)「も、モナーが!?」

(;´_ゝ`)「頼むモナー。売るだけなら店番のNPCでも出来るが、細かい商品の説明は無理だ」

(;´∀`)「モナにも無理もなよ」

(´<_`;)「ショボンの座学を受けてるだろ。あの地獄のテストで得た知識があれば、大体のことは答えられるから。店の商品はギルメンならある程度まで情報出るよう設定変えておくし」

(;´_ゝ`)「頼むモナー」

いつも飄々としている流石兄弟の必死さを感じる哀願にしょうがなく頷くモナー。

(*´_ゝ`)「ありがとうモナー」

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564 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:13:49 ID:j/oEcZ8U0

( ´∀`)「ビーグル、奥の部屋に行ってるもな。大人しくしてるもなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

ミセ*゚3゚)リ「わんちゃん行っちゃった」

(´<_` )「この馬鹿五人は俺らで片を付けるようにするが、会計の時は頼む。流れてきたのは適当に流すか俺たちに戻してくれ。あとこいつら以外のまともな客の接客も頼むな」

( ´_ゝ`)「オーダー品の受け取りの客が来たら、奥の工房に保管してあるから。武器は地下のおれの工房、防具は一階の弟者の工房にある」

<_プー゚)フ「早く出せよ〜」

(#´_ゝ`)「ちょっと黙って待ってろ!」

(゚、゚トソン「だからその言い方は客に対する物言いではないと。やはりここは値引きで誠意を見せていただかないと」

(´<_`#)「うちの店は値引きはしない!絶対だ!」

/ ゚、。 /「柄が長いか刃が長ければ相応の値段で買う」

ミセ*゚ー゚)リ「可愛いのがあったら買うよ!」

(‘_L’)「まずはこの突起の必要性からご説明を」

(#´_ゝ`)「俺たちが話しかけるまで喋るな!!!並んで棚の品でも見てろ!!!」

(;´∀`)「兄者が…」

(´<_`;)「わるい、モナー。よろしく頼む」

(;´∀`)「分かったもな」

モナーがカウンターに入り、兄者と弟者はカウンターの前に並ぶ五人のそばに寄った。

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565 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:14:51 ID:j/oEcZ8U0

<_プー゚)フ「おそいぞー」

(#´_ゝ`)「うるさい!で、どんな武器が欲しいんだ!」

<_プー゚)フ「かっこいいやつが欲しい!」

(#´_ゝ`)「はぁ?」

<_プー゚)フ「もっとこう俺に似合う派手なやつが欲しいんだよ。もっとこうガーッときてダーッときてグッときてズバッて感じの」

(#´_ゝ`)「分かるかそんな説明で!!」

<_プー゚)フ「お前ほんとに武器の鍛冶職人か?客のイメージをわからないでどうすんだよ」

(#´_ゝ`)「てめぇ…」

一触即発の雰囲気で睨み合う兄者と男。
慌ててモナーが割って入った。

(;´∀`)「と、とにかく派手なのが欲しいもな?」

<_プー゚)フ「ん〜まぁそうっていえばそうだな」

( ´∀`)「種類は何が良いもな?あと形にこだわりとかはないもなか?」

<_プー゚)フ「おれは両手剣使いだからよ。やっぱ両刃の両手剣だな。厚くてごついのが好きだ」

( ´_ゝ`)「モナー?」

( ´∀`)「なら、そういう両手剣を買って、モララーのところで飾りをつけてもらえばいいもな」

( ´_ゝ`)「ああ。なるほど」

<_プー゚)フ「!そんなことができるのか!?」

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566 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:16:12 ID:j/oEcZ8U0

( ´_ゝ`)「出来るはずだ。刀身に装飾や彫とかを入れると基本耐久値が落ちたりすることがあるけど、攻撃値が落ちるなんてことは聞かないな」

<_プー゚)フ「それやる!」

( ´∀`)「じゃあまず、自分に合った両手剣を選ぶもな」

<_プー゚)フ「おう!店主、両手剣はどこだ!?」

( ´_ゝ`)「こっちだ!っておまえ、さっき見ていただろうが」

<_プー゚)フ「忘れた!」

( ´_ゝ`)「ハァ…」

<_プー゚)フ「はやくはやく!」

( ´_ゝ`)「こっちだよ」

カウンターから離れた棚の前に移動する兄者と、それに続く青年。
ほっと息をついたモナーの耳に届く弟者と女性の声

(´<_`#)「だから、値引きはしないんだよ!」

(゚、゚トソン「ですが、この防具がこの値段で、その下位モデルがこの値段なら、上位モデルであるこれはこれくらいの値段でないとおかしくありませんか」

(´<_`#)「値段はそんな機械的に決まるわけじゃない。能力、使った素材、希少性、すべてを考慮してきめているんだ」

(゚、゚トソン「ですが」

(´<_`#)「値引きはしない!」

(゚、゚トソン「先ほどの暴言は」

(´<_`#)「あれはあっちの武器担当が言ったことだからな。武器がほしければあっちに値引き交渉するんだな。防具の担当はおれだ!」

(゚、゚トソン「強情な人ですね。客をなくしますよ」

(´<_`#)「客は神様なんかじゃないんでね」

(;´∀`)「その防具は、希少性の高い鉱物で出来てるもな?」

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567 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:18:27 ID:j/oEcZ8U0

珍しく感情的になっている弟者を見て冷や汗を垂らしながら割って入るモナー。
冷静なその質問で自分を取り戻したのか、いつもの飄々とした表情に戻って受け答える。

(´<_` )「ん?いや、希少性は高くないが必要量が多いのと、種類が必要なんだ」

( ´∀`)「その鉱石があれば、高い確率で作れるもな?」

(´<_` )「添加材も必要だが…まぁそうだな。今までにも何度か作ってる」

( ´∀`)「お嬢さんがその鉱石と添加材をもっていたら、その分くらいは安くできるもな?」

(´<_` )「……まあ、多少は。仕入れに使う値段そのままとはいかないが」

(゚、゚トソン「!教えてください!」

(´<_` )「ああ、ええと…」

カウンターの上に置かれた紙に幾つかの鉱石と添加材を書いていく。

(゚、゚トソン「これとこれとこれは持ってます!」

(´<_` )「なに!おい、これは持ってないか?」

(゚、゚トソン「少しで良ければ」

(´<_` )「これだけをその量貰えるなら半額、いや、三分の一でいい!」

(゚、゚トソン「あげます!」

(´<_` )「よし売った!」

トレードウインドウを出す二人。
すると両手剣を選ぶ男をそのままにして兄者が戻ってきた。

( ´_ゝ`)「助かったよモナー」

( ´∀`)「よかったもな。次をよろしくもな。他のお客さんも入ってきたもなよ」

( ´_ゝ`)「ああ。モナーも頼む」

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568 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:19:49 ID:j/oEcZ8U0

戻ってきた兄者に近寄る、並んでいた長身の青年。

/ ゚、。 /「この鎌か槍のもっと長いのが欲しいのだが」

( ´_ゝ`)「あることはあるが、能力はこれより劣るぞ」

/ ゚、。 /「それは困る。同レベルではないのか?」

( ´_ゝ`)「在庫は無いな。オーダーで作ることも可能だが、今は素材がないかもしれん。自分で持ってくるか?」

/ ゚、。 /「ふむ…。何が必要なんだ?」

( ´_ゝ`)「こっちにこい。説明する」

奥に置かれた商談用のテーブルに促す兄者。
頷いた青年が後に続いた。

( ´∀`)「何とかなりそうもなね」

(‘_L’)「次は私だが、武器は今商談をしているあちらの青年が担当のようですね」

( ´∀`)「すみませんもな。武器担当が戻るまでもう少々お待ちくださいもな」

(‘_L’)「はい、待たせてもらいます」

ミセ*゚ー゚)リ「ねぇねぇお兄さん、可愛い防具ってないのかな?」

( ´∀`)「可愛い防具もな…。防具に絵をかいたりとかじゃだめもな?」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうのじゃなくって、防具が可愛いのがいいの!あ、もちろん武器も!」

(;´∀`)「可愛い武器と防具もなか…」

(´<_` )「大きさをある程度抑えて、色や形をモララーに細工させて、あとはコーディネートでどうにかできないのか?」

戻ってきた弟者が口をはさむ。

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569 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:20:52 ID:j/oEcZ8U0

ミセ*゚ー゚)リ「あたしそういうの苦手なの」

(;´∀`)「そうもなか」

(´<_`;)「なるほどな」

少女の言葉を聞いて、少女の姿をまじまじと見る二人。
確かに一つ一つのアイテムは男の二人から見ても可愛いに分類されるものだと思うが、それが重ねられることによって何故か野暮ったく感じる。

ミセ*゚ー゚)リ「だから可愛い防具と武器が欲しいの!」

モナーがウインドウを出し、メッセージをうち始める。

(´<_` )「なにをするんだ?」

( ´∀`)「そういうのが得意な人に聞いてみるもな!」

(´<_` )「……ああ、そういえばあいつはそれが本業みたいなもんか」

ミセ*゚ー゚)リ「?」

( ´∀`)「もなもな!モナはモナーって名前だけど、名前を聞いていいもなか?」

ミセ*゚ー゚)リ「もなもなもなもはもなー?」

(´<_`;)「いやいや。彼の名前はモナー。俺の名前はテイ。鍛冶屋としては弟者と呼んでくれ」

ミセ*゚ー゚)リ「モナーと弟者ね。わたしはミセリ」

( ´∀`)「ミセリさんは明日は暇もな?仲間に服飾系の専門家がいるもなよ。今連絡してみたら、明日の午前中なら時間が取れるそうもな」

ミセ*゚ー゚)リ「!行く!暇!お金もそれなりにあるから大丈夫!」

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570 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:22:00 ID:j/oEcZ8U0

( ´∀`)「じゃあ連絡するもな。武器と防具は能力としては問題ないもな?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん〜〜。もうちょっと良いのが欲しいかな」

( ´∀`)「弟者、ツンから直接メッセージを入れてもらうから、まず防具を選ぶ手伝いをしてあげてほしいもな」

(´<_` )「わかった。じゃあ見てみるか」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。よろしく!」

防具の棚に少女とともに向かう弟者。
その背中を見送っていると、男に声をかけられた。

(‘_L’)「いろいろ知り合いがいるようですね」

( ´∀`)「おかげさまでもな!」

(‘_L’)「そういうのはよいですね。お互いが得意分野で支えあう。この世界を生き抜いてクリアするには、そういうことが大事なんだと思います」

(;´∀`)「そうもなね」

(‘_L’)「突然すみません。あなたの采配を見ていたらそんなことを考えまして。突然失礼ですが、どちらかのギルドなどには入られていらっしゃるのですか?お知り合いもギルドの仲間なのでしょうか」

(;´∀`)「もな?」

(‘_L’)「そういえば、さきほどは犬のようなモンスターを連れていらっしゃいましたよね。ビーストテイマーさんに初めてお会いしました。あのモンスターはどういった種類の」

( ´_ゝ`)「待たせたな。武器の仕様についてだったか?」

.

571 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:23:23 ID:j/oEcZ8U0

込み入った話をさらっと聞いてくる男に困惑するモナー。
そこに兄者が戻り、声をかけた。

(‘_L’)「ああはい。この突起なんですが」

( ´_ゝ`)「それはその武器の基本仕様だからな。気に入らなければ使わなければよい。デザインに関してはこのゲームの武器デザイン担当者に聞いてくれ」

(‘_L’)「……なにか棘を感じる言いようですね」

(´<_` )「ここは武器と防具の店なんでね。それ以外の質問に関しては控えていただけますか」

(‘_L’)「おや、防具担当者さんもですか」

カウンターの中のモナーに向かって話していた男を囲うように立つ兄者と弟者。

(‘_L’)「それは失礼しました」

お辞儀をする男。
その動きはどこか芝居じみていて、心を感じさせない。

(‘_L’)「武器を見たかったのですが、今日は止めた方が良いようですね」

( ´_ゝ`)「見て行く分には構わない。売るかどうかは別の話だがな」

(´<_` )「悪いね。うちの店は、そういう店なんだ」

(;´∀`)「もな?二人ともどうしたもな?」

(‘_L’)「そうですか」

モナーの声は聞こえぬかのように踵を返して出口に向かう男。
その少しばかり異様な光景に、店内の者たちが不躾な視線を向ける。
先ほどまで騒いでいた者達も、戸惑ったようにその光景を見ていた。

.

572 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:24:23 ID:j/oEcZ8U0

(‘_L’)「また武器を拝見しにまいります」

( ´_ゝ`)「どうぞどうぞ」

(´<_` )「お待ち申し上げております」

( ´_ゝ`)「売るかどうかはわかりませんが」(´<_` )

店を出る男。
扉が閉まると、兄者が大きく伸びをした。

( ´_ゝ`)「あ〜真面目な顔をすると疲れる」

(;´∀`)「二人ともどうしたもな?」

(´<_` )「今日の夕飯はショボンの所に行くのか?」

(;´∀`)「え?そ、そのつもりもなけど」

( ´_ゝ`)「じゃあその時に話す」

(´<_` )「今日は助かったよ。あとは大丈夫だ。悪かったな」

(;´∀`)「そうもなか…」

カウンターを出るモナー。
にこやかに笑う二人を見て、店の雰囲気も戻ったのを感じた。

( ´_ゝ`)「武器は工房に置いてあるから、持って行ってくれ。代金は今日のバイト代でチャラってことで」

( ´∀`)「?いいもなか?結構高くなるって話だったもなけど」

( ´_ゝ`)「なかなかの会心の出来だ。あれはいいぞ」

( ´∀`)「たのしみもな!ありがとうもな!」

(´<_` )「おれからのバイト代だ」

.

573 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:25:28 ID:j/oEcZ8U0

モナーの目の前に現れるトレードウインドウ。
そこには転移結晶の文字があった。

( ´∀`)「弟者?」

(´<_` )「工房から直接40層に行ってくれ。この店の出入口は使わない方がいい」

( ´∀`)「……わかったもな」

ウインドウから転移結晶を取り出すモナー。
両手に余る大きさのそれをぎゅっと握り、二人に向かって笑顔を見せる。

( ´∀`)「夜にまたもな」

そう二人に告げてビーグルの待つ奥の部屋に入るモナー。
それを見送った流石兄弟は、一度目配せをした後に
残っている客の接客に戻った。
窓の外からこちらを覗く目を気にしつつ。




.

574 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:26:25 ID:j/oEcZ8U0




5.五叉路の再会。六種の野草。




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575 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:27:27 ID:j/oEcZ8U0

同日 午後二時

48層。
迷宮区にほど近い森。
5本の道が交差する少し開けたエリアに、二人はいた。
 _
( ゚∀゚)「で、どうなんだ?」

両手剣を肩に担いだジョルジュが周囲をうかがいながらしゃがんでいるクーに声をかけた。

川 ゚ –゚)「ここにも無いな。本来ならこのエリアで二つくらい採れるはずなんだが」
 _
( ゚∀゚)「採取された後じゃないのか?」

川 ゚ –゚)「この森で採れる六種類はそれほど利用価値のある草じゃないし売価も安い。価値を知るものでないとストレージを埋めるだけのようなものだから、そうそう採取もされないと思うし、確か採取された後の次のポップも早かったはずだ」

立ち上がり、振り返るクー。
その表情は曇っている。
 _
( ゚∀゚)「この前から疑問だったんだけどよ、そんなに問題なのか?」

川 ゚ –゚)「季節的な変化とかなら問題ないんだがな。もしくは一定の期間で採取場所が変化する設定とか」

('A`)「マニュアルにない裏設定なら、それはそれで調べておいて損はないだろ」

先行して一本の道を調べていたドクオが合流する。

川 ゚ –゚)「そっちはどうだ?」

('A`)「同じく…だな。全部じゃないが、見つからないものも多い」
 _
( ゚∀゚)「ふーん」

.

576 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:28:29 ID:j/oEcZ8U0

のんきなジョルジュの呟きに、がっくりと肩を落とす二人。

('A`;)「まったくお前は」

川;゚ –゚)「まぁあんまり深刻にとらえても仕方ない面もあるからいいだろ。まずは状況を調べるだけだ」
 _
( ゚∀゚)「ショボンも気にしてたよな」

川 ゚ –゚)「気付いたのは私とブーンだが、体系付けて調査を始めたのはショボンの指示だな。ついでに採取もできるし戦闘訓練にもなるってのもあると思うが」
 _
( ゚∀゚)「ギコか」

('A`)「だな」
 _
( ゚∀゚)「ふさの成長にもびっくりしたけど、ギコも強くなりそうだよな」

('A`)「出会った時点で片手剣900越えとかしてたからな。ポテンシャルは高いのに使いきれてなかった良い例だよ」

川 ゚ –゚)「しぃもあれでいて思い切りの良い戦いをするしな」

('A`)「彼女も強くなる。ギコはともかく彼女の方は嬉しい誤算だな」

川 ゚ –゚)「スカウトしたのはショボンだぞ?ドクオ」
 _
( ゚∀゚)「ふさをスカウトした時も最初は戦闘メンバーには入れてなかったよな」

('A`;)「でもいくらなんでも彼女は……。でもショボンだしなぁ」

苦笑いをしながら腕を組むドクオを見てにやにやと笑うジョルジュとクー。
「いや」「でも」「しかし」「しょぼんか…」という呟きを何度か繰り返していたドクオだったが、急に視線を鋭くさせて一本の道を見る。

('A`)「二人くる」

.

577 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:30:03 ID:j/oEcZ8U0

ドクオの見る道に向かって態勢を整える二人。
あからさまな構えではないが、それぞれにすぐ対応できるような構えを取る。

じっと見ていると影が見え、そしてその姿が視界に映った
 _
( ゚∀゚)「!」

( ФωФ)「!」
 _
( ゚∀゚)「ロマネスクのおっさん!」

( ФωФ)「ジョルジュであるか!?」

木々の小道を抜けたロマネスクと連れの青年。
そこに駆け寄るジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「おっさん元気してたか!」

( ФωФ)「久しぶりであるな。ジョルジュ。二か月…いや、三か月ぶりくらいか」

和気あいあいと話す二人を驚いた顔で見ている三人。
周りを気にせず話し続ける二人にしびれを切らし、声をかけたのはロマネスクの連れの青年だった。

(-_-)「ねえ、ロマ」

( ФωФ)「おお、すまんなヒッキー。紹介しよう、こいつがジョルジュだ。ジョルジュ、彼はヒッキーである」
 _
( ゚∀゚)「おう、ジョルジュだ」

(-_-)「は、初めまして。ヒッキーといいます」

青年と少年の間くらいに見えるヒッキーの手をつかんで握手をするジョルジュ。

.

578 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:31:06 ID:j/oEcZ8U0

(-_-)「お噂はかねがねロマネスクさんよりお聞きしておりました」
 _
(;゚∀゚)「なんだよおっさん、おれの噂話なんかしてるのか」

( ФωФ)「はっはっは。釣り仲間にこういう面白いやつがいるという話をしていただけである。あとはいつ美味い魚を食わしてくれるか楽しみであるということも話したであるな」
 _
(;゚∀゚)「そんなことまで話してるのかよ」

( ФωФ)「はっはっは」

(-_-)「とても強いとお聞きしました」
 _
(*゚∀゚)「なんだよおっさん。変なこと教えるなって」

( ФωФ)「強いのは事実である。わしは事実を話しただけである」
 _
(*゚∀゚)「しょうがねぇなぁ」

( ФωФ)「ところでジョルジュ」

少し離れた位置で自分達を見ている二人に視線を向けるロマネスク。

( ФωФ)「あちらのお二人はお仲間であるか?」
 _
( ゚∀゚)「ああそうだ!紹介するよ!ドクオ!クー!」

手招きするジョルジュ。
それを受けて一度顔を見合わせた二人だったが、ジョルジュにせかされてそばまでやってきた。
 _
( ゚∀゚)「二人とも俺の所属するギルドの仲間だ。こいつがドクオで、こっちがクー。で、このおっさんがロマネスクで、その隣がヒッキー。前にちょっと話したことあるよな。魚釣りの時に一緒になるおっさんがいるって」

川 ゚ –゚)「初めまして。クーと申します」

('A`)「ドクオです」

.

579 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:32:12 ID:j/oEcZ8U0

( ФωФ)「わしはロマネスクである。ジョルジュとは魚釣りの時に一緒する間柄である」

(-_-)「……ヒッキーです」

川 ゚ –゚)「ロマネスクさんのことは何度かジョルジュからお聞きしました。ジョルジュの釣りの師匠だそうで」

(*ФωФ)「そんなことをこいつは言っているのであるか」
 _
(;゚∀゚)「おい!クー!」

川 ゚ –゚)「前にそう言っていたではないか」

(*ФωФ)「はっはっは。そんなたいそうなものではないが、そう思ってもらえているのは嬉しいであるな」
 _
(;゚∀゚)「きにするな!忘れろ!」

(*ФωФ)「はっはっは」

(-_-)「ねぇロマ、そろそろ行かないと」

( ФωФ)「おお、そうであるな」
 _
( ゚∀゚)「わるい、用事があったか。引き止めちまったかな」

( ФωФ)「実はギルドを作ったであるよ。といっても釣り好き仲間でギルドに入ってない者が情報の共有化で集まっただけであるがな。吾輩が一番年上であるため、便宜上ギルドマスターなるものをやっているのである。今日は午後から近くの湖に集まって釣りをする話があるのである」
 _
( ゚∀゚)「へー。いいな!」

( ФωФ)「また今度釣りで会えたら仲間を紹介するである。釣り好きならギルドメンバー以外にも情報の公開はしていく予定であるしな。ジョルジュも何か情報があったら教えてほしいである」
 _
( ゚∀゚)「おう!分かった。何かあったらメッセージを送るぜ」

.

580 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:35:25 ID:j/oEcZ8U0

( ФωФ)「頼むである。ちなみにギルドの名前は《ANGLER》というである」
 _
( ゚∀゚)「あんぐらー?」

川 ゚ –゚)「ANGLER。確か釣り人とか釣師とかだったような意味だったと思いますが」

( ФωФ)「その通りである!」

('A`)「フィッシャーマンとかじゃないんだな」

川 ゚ –゚)「確か、釣りで生活している人、漁師の方のことなどをfishermanで、趣味の釣り人のことをanglerだったような」

( ФωФ)「そうであるそうである。よく知っているであるな」

川 ゚ –゚)「昔、英語の宿題で色々な職業の人を調べたことがありまして。それで」

( ФωФ)「そうであるか。何事も積み重ねなのであるな」

川 ゚ –゚)「はい。そうですね」

('A`)「英語は苦手だ」
 _
( ゚∀゚)「同じく」

(-_-)「……右に続きます」

いつの間にか五人で輪になって話していた。

見るからに大人しそうなヒッキーや基本初対面の者とは会話しないドクオや基本無表情で誤解されがちなクーがそんな風にしていられるのは、ロマネスクの持つ雰囲気の賜物であろう。

.

581 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:37:03 ID:j/oEcZ8U0

( ФωФ)「さてさて、楽しくてもっと話したいがそろそろいかないとであるな」

(-_-)「そうだね。時間的に皆も集まるころだよ。 !」

('A`)「モンスターだ!」

ドクオの掛け声のもと武器を構える五人。
視界に現れたポリゴンが実体化し、三匹のオオカミ型モンスターになる。

('A`)「ガルバウルフ。たいして強くないが一匹でも残っていると短時間で仲間がポップしてくる集団戦が得意なやっかいなモンスターだ。一気に行くぞ!」
 _
( ゚∀゚)「分かった!」

川 ゚ –゚)「了解した。私が中央、右をドクオ、左をジョルジュで」
 _
(#゚∀゚)「おりゃあ!」

('A`)「!」

川 ゚ –゚)「ふん!」

それぞれに気合を込めてモンスターと距離を詰める三人。
ドクオの片手剣が四閃し、ジョルジュの両手剣が三閃し、クーの薙刀が三閃した後に大きく下から掬い上げるように一閃した。

( ФωФ)「見事であるな」

(-_-)「ロマが強いと言っていたのが分かるよ」

( ФωФ)「そうであろう」

(-_-)「上層階にも行けそうな強さだね」

( ФωФ)「うまいサカナを、くわせてくれそうであろう」

(-_-)「食べさせてもらえると良いね」

( ФωФ)「気が向いたらおすそ分けをしてやるである」

(-_-)「楽しみにしてるよ」

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582 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:38:44 ID:j/oEcZ8U0

ポリゴンに変わるモンスター達。
戻ってきた三人は疲れを見せることもなく、改めて挨拶をしてロマネスクとヒッキーは目的の場所に向かって行った。



 _
( ゚∀゚)「面白いおっさんだろ」

次のエリアに向かう三人。
道すがら薬草や鉱石の採取場所を確認している。

('A`)「そうだな」
 _
( ゚∀゚)「?なんだよ、なんかしかめっ面だな」

('A`)「いや。……あいつ、強いなと思って」
 _
( ゚∀゚)「おっさんが?」

('A`)「あの人はどうかわからないが、ヒッキーって方がさ。……おれより先に、モンスターの出現に気付いていた」
 _
( ゚∀゚)「!?ドクオより!?」

('A`)「ああ。声に出したのはおれの方が先だけど、先に反応してた」
 _
( ゚∀゚)「それはすごいな」

('A`)「まぁソロでやってたなら索敵関係のスキルは上げてるだろうし、強いのは別に良いんだけど、気付いていたのにそれを口にしなかったのが気になってな」
 _
( ゚∀゚)「内気そうだったから、声とかだせなかったんじゃないか」

('A`)「そうかもな。それに声に出さずとも反応して剣を構えれば周りもそれに倣うし。ここのフロアを二人で歩けるなら、ロマネスクさんの方も強いだろうしな。で、クーはさっきから何を悩んでるんだ?」

周囲の調査をしながら歩く三人だったが、クーはそれ以外の会話には参加せず、二人の後をぶつぶつ呟きながら歩いていた。

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583 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 16:38:47 ID:n3.VUWeQ0
話が進んで面白くなってきたなぁ

584 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:39:47 ID:j/oEcZ8U0

川 ゚ –゚)「いや、さっきのギルド名なんだが、確かもう一つ意味があったような気がして」
 _
( ゚∀゚)「さっきのって、アングラーか?」

川 ゚ –゚)「ANGLERな。確か魚の名前かなんか、海に関係するような意味だったような…」
 _
( ゚∀゚)「魚…ねぇ」

('A`)「戻ったらあいつに聞いてみたらどうだ?」

川 ゚ –゚)「それが早いか。……いや、だめだ気になる。メールしておこう」

ウインドウを出してメッセージをうち始めるクー。
それを呆れた顔で見る二人だった。




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585 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 16:40:35 ID:.pWTwbhE0
まさかこんな時間帯に遭遇出来るとは 

支援

586 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:41:14 ID:j/oEcZ8U0




6.六つの品と七つ目の言葉




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587 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:42:20 ID:j/oEcZ8U0

同日 午前八時過ぎ

バーボンハウス一号店の扉の前に、一人の少年がいた。
扉には準備中と書かれた札がかけられているが、少年は気にせず扉を人差し指でタップする。
もちろんそれで開くわけがないのだが、そのまま少しの間待っているとドアが開いた。

ミ,,゚Д゚彡「おはようだから」

(=゚ω゚)「おはようだよう」

そのまま中に入る少年。

(=゚ω゚)「ご依頼のものを持ってきたよう」

ミ,,゚Д゚彡「ありがとう!助かったから!」

カウンターの中に入るフサギコと、その前に立つ少年。
少年が自分のウインドウを出してタップしていくと、カウンターの上に野菜や袋がいくつも現れる。

(=゚ω゚)「夜もやってる販売店を探して一軒一軒回るのが大変だったよう」

ミ,,゚Д゚彡「本当にありがとうだから!」

カウンターに並べられた六つ目の品物を一つ一つチェックしていくフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「確認するから待っていてほしいから」

(=゚ω゚)「わかったよう」

カウンターの椅子に座る少年。
体が小さいためカウンターの前の高い椅子には体のサイズが合わず、足をぶらぶらさせている。

そんな少年の前に湯気が立つカップを出すフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「サービスだから」

(=゚ω゚)「ありがとうだよう」

引き続き一つ一つ丁寧にチェックしているフサギコを見ながらカップに口をつける少年。

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588 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:44:43 ID:j/oEcZ8U0

(=゚ω゚)「美味しいよう」

ミ*,,゚Д゚彡「ありがとうだから」

賛辞を受けて照れるフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「いつもお買い物ありがとうだから」

(=゚ω゚)「こちらこそありがとうだよう。安全なお使いでこんなに割の良いのは滅多にないからもっとお願いしたいくらいだよう」

ミ,,゚Д゚彡「本当は毎日お願いしたいくらいだから。でも自分でいかないと新しい食材やメニューのヒントに出会えないから」

(=゚ω゚)「…そっかよう」

ミ,,゚Д゚彡「お買い物の時に見たことないお野菜とかあったら教えてくれるとうれしいから」

(=゚ω゚)「!今度から気を付けて見るようにするよう!」

ミ,,゚Д゚彡「一つ15コル、全部で300コルまでなら実費で買い取るから。新メニューに使えるものだったら、別にお礼も用意するから。あと頼んだもの以外でもいつもより安く売ってるのを見付けたら、メッセージをくれてもいいから。安売りの利益がある範囲内で、その分報酬も追加するから」

(=*゚ω゚)「わかったよう。頑張るよう」

ミ,,゚Д゚彡「ぃょぅが選んできてくれた品は自分で選ぶより良いものが手にはいるから、これからも宜しくだから」

(=*゚ω゚)「うれしいよう」

にこにこと笑いあう二人。
ここがデスゲームの中だとは思えない穏やかな空気が流れる。

ミ,,゚Д゚彡「ぜんぶオーケーだから」

フサギコがウインドウを操作すると、ぃょぅの目の前にトレードウインドウが現れ、コルが提示される。

(=゚ω゚)「!予定より多いよう!」

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589 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:45:54 ID:j/oEcZ8U0

ミ,,゚Д゚彡「今回の報酬と実費と次に頼みたい買い物の準備金だから。あと、ぃょぅはもう朝ご飯は食べたのか知りたいから」

(=゚ω゚)「これからだよう」

ミ,,゚Д゚彡「じゃあ食べていくと良いから!その間に次の依頼の内容をまとめるから!」

(=゚ω゚)「うれしいよう!でも」

ミ,,゚Д゚彡「お弁当も作るから、持って帰ると良いから!今度は一緒に来ればよいから!」

(=゚ω゚)「!…あ、ありがとうだよう…」

ミ,,゚Д゚彡「フサギコとぃょぅの仲だから!遠慮しなくてよいから!」

笑いながらぃょぅの前にワンプレートの食事を出すフサギコ。
その横に今度は氷の入ったグラスを置き、ティーポットからお茶を注いだ。

(=゚ω゚)「いただきますだよう!」

ミ,,゚Д゚彡「おかわりもあるから!」

ぃょぅがプレートの上の野菜を食べ始めたのを見届けてから品物をしまっていくフサギコ。
そしてメッセージウインドウを出し、ぃょぅに依頼する内容を打ち始めた。

(=゚ω゚)「……そういえばだよう」

プレートの上を半分ほどたいらげた頃であろうか、ぃょぅが顔をあげた。

ミ,,゚Д゚彡「?」

(=゚ω゚)「さっき、ふさと同じギルドの人を見たよう。たしか雑貨屋さんをやってる」

ミ,,゚Д゚彡「雑貨屋ならブーンだから」

(=゚ω゚)「そう、ブーンさんだよう。情報屋のアルゴさんと話していたよう」

ミ,,゚Д゚彡「!?」

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590 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:47:22 ID:j/oEcZ8U0

(=゚ω゚)「?」

ミ,,゚Д゚彡「ど、どこで見たのか知りたいから」

(=゚ω゚)「40層の街外れだよう。奥の店で買い物してから転移門に向かって移動してるときにちらっと見かけただけだよう」

ミ,,゚Д゚彡「……ブーンと…情報屋……」

動きを止めてぶつぶつと呟くフサギコを不思議そうに見るぃょぅ。

(=゚ω゚)「どうかしたのかよう」

ミ,,゚Д゚彡「だ!大丈夫だから!」

(=゚ω゚)「?」

慌てて続きのメッセージを打ちはじめるフサギコ。そして数瞬動きを止めた後、自分のストレージからいくつかのアイテムをトレードウインドウに移動させる。

(=゚ω゚)「ごちそうさまだよう!すごくおいしかったよう!」

ミ*,,゚Д゚彡「良かったから!」

ぃょぅの前に再び現れるトレードウインドウ。
一番上から三つは[お弁当]と書かれた品があり、その下にはいくつかのアイテムがあった。

(=゚ω゚)「お弁当をありがとうだよう!……このアイテムは?回復POT
、対麻痺POT、回復結晶、毒消結晶、転移結晶!回廊結晶!!???は、初めて見たよう。で、でもなんで」

ミ,,゚Д゚彡「ぃょぅに何かあったらヘリカルちゃんが悲しむから。それに、一つ依頼もあるから」

(=゚ω゚)「?」

ミ,,゚Д゚彡「もしアルゴさんが危険な目にあっていたら、逃げる手伝いをしてあげてほしいから。転移結晶じゃあ間に合わない敵と戦っていたら、回廊結晶でこの層までの道をつないで、二人で逃げてきてほしいから」

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591 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:48:46 ID:j/oEcZ8U0

(=゚ω゚)「転移結晶も回廊結晶も使ったことないよう」

ミ,,゚Д゚彡「転移結晶は持って、転移門のある街を叫べば飛ばしてくれるから。でも叫んでから飛ぶまで時間がかかるから。その間に攻撃されると移動がキャンセルされて、大変なことになっちゃうから。回廊結晶は先に決めてある場所にしか行けないけど、一度開けは時間内なら転移門みたいに何人も移動できるし、飛び込んだ後はすぐ移動できるから攻撃されないから」

(=゚ω゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「開くときは手に持って『開け!』って言えばいいから。その回廊結晶の行き先は40層になってるけど、転移門のそばに飛ぶからすぐ行きたい層に行けるから」

(=゚ω゚)「……使えないよう…」

ミ,,゚Д゚彡「もしもの時に、自分の命を守るために使えば良いから。でも、お使いや移動の際にさっき言ったみたいな状況を見かけたら、助けてあげてほしいから。それはきっと、ぃょぅの命を守ることだから。ヘリカルちゃんを悲しませないためだから」

(=゚ω゚)「……わかったよう」

ミ,,゚Д゚彡「もしもの時のアイテムだから!使わないように気を付けるのが一番だけど、もしものためだから!」

それでも気が乗っていないのがよくわかる表情でトレードウインドウを操作して自分のストレージにしまうぃょぅ。

その姿を見守るフサギコの表情は、鋭く、優しく、厳しかった。


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592 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 16:49:11 ID:.pWTwbhE0
元ネタ読んでないのに引き込まれる不思議 支援しえん

593 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:49:59 ID:j/oEcZ8U0




7.七回も転ばない。一回だって転ばない。




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594 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:52:43 ID:j/oEcZ8U0

同日午後八時過ぎ。

40層にあるバーボンハウスも客の波が過ぎ、数組の常連がショボンの料理よりも、今日の生を感謝しつつ明日へ狩りに思いを向けながら、目の前の友と話すことに楽しみを感じる時間となっていた。

(´・ω・`)「しぃ、今日はこの辺にして先に戻ってくれるかな」

(*゚―゚)「まだ片付け途中ですけど」

(´・ω・`)「今日はみんな来るからね。ふさは店があるから遅くなると思うけど、他の皆はもう待ってるんじゃないかな。夕飯」

(*゚―゚)「ですね」

笑いあう二人。

(´・ω・`)「今日はそのあとミーティングしたいから、僕を待たずに食事も先にしてていいよ。メインに使う肉は用意しておいたけど、ジョルジュが人数に回る魚を釣ってきてたらそっちを使ってあげて。付け合せとかは倉庫から適当によろしく」

(*゚―゚)「はい」

しぃが持っていたお皿をカウンターに置き、それをショボンが手に取ろうとした時にドアベルが鳴った。

(*゚―゚)「いらっしゃいませ」

(´・ω・`)「いらっしゃい」

(`・ω・´)「よう!ひさしぶり!」

カツカツと一直線にカウンターに近寄る男。
雰囲気はとてもショボンに良く似ているが、優しさよりも凛々しさを感じ、背格好も似ているのだが男の方が見るだけでパワータイプに見えた。

(*゚―゚)「あ、あの」

(´・ω・`)「久しぶり。シャキン」

(`・ω・´)「よう、ショボン」

.

595 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 16:56:12 ID:j/oEcZ8U0

(*゚―゚)「あ、あれ?」

(´・ω・`)「ああ、知り合いだから」

(`・ω・´)「お、噂の新人ちゃんかな」

(*゚―゚)「しょぼんさん、兄弟いらしたんですか?」

(´・ω・`)「     」

(`・ω・´)「     」

一瞬の間。
硬直する二人の顔。

(´-ω-`)「しぃ…」

(;*゚―゚)「え、あ、秘密とか…でも、そんなそっくりで」

(`・ω・´)「流石噂の新人ちゃんだな!聞きにくいことをズバッと聞いてくる!」

大笑いしながらカウンターを叩くシャキンと呼ばれた男。
そしてそのまま椅子に座ると、ショボンがすっとグラスに入れた水を出した。

(`・ω・´)「いやー二人そろってる時に直接聞かれたのは初めてだ。どうだショボン、ここらで兄弟の杯でもかわすか」

(´-ω-`)「何をばかなことを」

(;*゚―゚)「え?え?」

大きくため息をついた後、グラスに注いだアイスティーを一杯飲みほすショボン。

(´・ω・`)「彼はギルド『N−S(North-South)』のギルドマスターのシャキン。僕とは他人だよ」

(`・ω・´)「なんだよ、つれないな。友達だろ」

(´・ω・`)「友達だよ。友達だけどさ……まったく」

今日何度目かのため息をこぼすショボンと、それを見て笑うシャキン。
そしてそれを見て目を白黒させるしぃ。

.

596 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:00:44 ID:j/oEcZ8U0

(`・ω・´)「ギルド名は『エヌエス』で通ってるな。『V.I.P.(ヴイアイピー)』が『ヴィップ』って呼ばれることがあるみたいに」

(´・ω・`)「ギルドN−Sは中層ではトップクラスの攻略ギルドでね。攻略組が取りこぼしたクエストやダンジョンを積極的に攻略しているんだ。人数はうちより少ないけど、それだけに小回りの利く素晴らしいギルドだよ」

(*`・ω・´)「照れるな」

(´・ω・`)「ギルマスの人格は別としてね」

(#`・ω・´)「お前に言われたくないけどな」

(´・ω・`)「今日来たハインもN−Sのメンバーだよ」

(*゚―゚)「そうなんですか!?」

(`・ω・´)「え?この子もハインの毒牙にかかっちゃった?」

(´・ω・`)「かるくね」

(`・ω・´)「まったくあいつは」

(´・ω・`)「彼女はすごいよね」

(*゚―゚)「???」

眉間にしわを寄せたシャキン。
呆れたように肩をすくめるショボンだったが、しぃに声をかけた。

.

597 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:01:56 ID:j/oEcZ8U0

(´・ω・`)「それじゃあしぃ、さっき言った感じでよろしく頼むよ。みんなお腹すかせてるだろうし」

(;*゚―゚)「え?あ!はい!」

慌てたようにシャキンにお辞儀をして奥に向かうしぃ。
手を振るシャキンに気付かずに、扉の向こうに消えた。

(`・ω・´)「おもしろいな、あの子」

(´・ω・`)「でも、強くなるよ。彼女は」

(`・ω・´)「とうとう攻略組に殴り込みか?」

(´・ω・`)「なにそれ」

(`・ω・´)「噂だよ、噂。俺は信じちゃいないがな」

(´・ω・`)「煙がないところにも立つよね。噂って」

(`・ω・´)「まあな」

(´・ω・`)「それで?」

問いかけをしながら頼まれていないグラスを差し出すショボン。
そしてそれを何も言わずに受け取り、一気に半分ほど飲み干すシャキン。

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「どうしたの?ここに来るなんて珍しい」

(`・ω・´)「いや、ハインが依頼に来たと聞いてな。あいつのことだから変な気をまわしたかもしれないし、とりあえず話を聞きに来たほうが良いかなと」

(´・ω・`)「一時期は一つのギルドかと思うほど合同でクエストとかダンジョン攻略してたのに、ここ数か月はさっぱりだからね。僕と君が喧嘩でもしたのかと思っちゃったのかな」

(`・ω・´)「あいつのことだからな。まぁ彼に会えなくてフラストレーションも溜まってるだろうし」

.

598 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:02:43 ID:j/oEcZ8U0

(´・ω・`)「   」

(`・ω・´)「どうした?」

(´・ω・`)「その趣味もすごいよね」

(`・ω・´)「何気にお前もひどいことを言うな」

(´・ω・`)「そう?」

シャキンの飲み干したグラスをさげ、同じ色の飲み物の入ったグラスを出すショボン。

(`・ω・´)「それで、依頼は受けてくれるのか?」

(´・ω・`)「一応そのつもりだけど、この後のミーティング次第かな」

(`・ω・´)「なんだ、多数決か?」

(´・ω・`)「いや、普段より高層階でのクエストだからね。レベル的には問題ないけど一応自由参加にしないと。で、参加人数が少なかったら止めるかもってこと」

(`・ω・´)「なるほどな」

(´・ω・`)「とはいっても、うちのメンバーだったらほぼ全員参加だろうけどさ」

(`・ω・´)「ノリ良いしな」

(´・ω・`)「良すぎで困るよ」

今日何度目か数えることも忘れてしまいそうなため息。
それにを見てまた笑うシャキン。
そうこうしていると、奥のドアが開いた。

.

599 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:04:57 ID:j/oEcZ8U0

ξ゚听)ξ「あ、ほんとにいた!」
 _
( ゚∀゚)「ひさしぶりだな!」

ツンとジョルジュがドアから駆け足で出てくる。

(`・ω・´)「久しぶりだな!」

ξ゚听)ξ「ホントよ。生きててびっくり」

(`・ω・´)「ひでぇなぁ、おい」
 _
( ゚∀゚)「クエストか!?採取か!?ダンジョン攻略か!!?」

(`・ω・´)「詳しい話はこのあとのミーティングで話すそうだ」

ξ゚听)ξ「じゃあ奥に来なさいよ。ご飯食べてそのままミーティングに出れば」
 _
( ゚∀゚)「そうだそうだ!」

ξ゚听)ξ「別に良いわよね。ショボン」

(´・ω・`)「うん、構わないよ」

(`・ω・´)「ギルマスのオーケーも出たし、なら行くか」

ξ゚听)ξ「ほら早く来なさい」
 _
( ゚∀゚)「行くぞ!」

(`・ω・´)「分かった分かった」

ツンを先頭に奥に消える三人。
そんな様子を笑みを浮かべながら見送るショボン。

シャキンが飲み干した二杯目のグラスの中で、氷が音を立てた。






.

600 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:06:18 ID:j/oEcZ8U0




次回 第七話 数え歌がきこえる 後編 に続く




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601 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/08(土) 17:12:32 ID:j/oEcZ8U0
ということで、今回の投下終了です。

読んでいただいて、ありがとうございます。
そして感想と支援、ありがとうございます。

これで八割がた出したいキャラは出たところでしょうか。

パソコン新しくして変換が微妙になってしまい、顔がおかしかったらすみません。

キャラが増えた分、まだ作り終えてないキャラの設定整えないと。

オレンジの設定に関しては、検索しても出てこないのと原作者ツイートでも誰でも回復できるのを認めてる発言があったので、とりあえずこのままいきます。

それでは今日はこの辺で。

ありがとうございました。

602 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 17:12:44 ID:z6SrAXRU0
うおお!!続きが気になる!

603 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 17:19:45 ID:.pWTwbhE0
ここで切られると続きが気になるなあw
顔とか細けーこたぁどうでもいいよ 補って余りある面白さだ

次を首を長くして待ってます 乙でした

604 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 17:37:19 ID:n3.VUWeQ0
おつおつ

605 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 17:49:09 ID:rOqKiXmw0


606 名前:名も無きAAのようです:2013/06/08(土) 21:33:50 ID:3WiexzLg0
おつー!

607 名前:名も無きAAのようです:2013/06/09(日) 01:40:05 ID:FAjEg/iU0
おつおつー
相変わらず面白いわ

608 名前:名も無きAAのようです:2013/06/09(日) 01:48:26 ID:J5A/Fug.0
おつー!

609 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:47:29 ID:DtHDfjCw0
どーも作者です。

乙と感想ありがとうございます!

次もよろしくお願いします。


……で、なんなんですが、投下していたものを読み返していたら抜けを発見。
しかもかなり大事な場面。
やっちまったぁ感でいっぱいですが、いかに投下します。

第四話「緑の手」 
>>398
と、
>>399
の間に入ります。

.

610 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:48:53 ID:DtHDfjCw0

全員が武器を構えつつ後退し、入り口付近で全員が合流する。
 _
( ゚∀゚)「で、どうするよ、ショボン」

(´・ω・`)「…クックルさん、クリスタルで一度村に戻ってください。あの敵に不安を残さず戦うには全員の力が必要なので、クックルさんを守ることができなくなります。倒した後に迎えにいきますから、待機していてください。お願いします」

( ゚∋゚)

(´・ω・`)「さ、クックルさん」

((( ゚∋゚)))

ショボンの言葉に、黙って首を振るクックル。

(;´・ω・`)「クックルさん?」

黙って棍を構えるクックル。

(;´∀`)「クックル!?」

.

611 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:50:06 ID:DtHDfjCw0

( ゚∋゚)「俺も、戦う。俺も、変わりたいから。…一緒に、戦う。頼む、戦わせてくれ」
 _
( ゚∀゚)「なんだ、低音でいい声してるじゃん」

(;´・ω・`)「え!?言うことまずそれ!?」

( ´∀`)「みんなにも聞こえたもな!?」

耳に届いたクックルの声。
それぞれに聞こえたことに驚き、ジョルジュの言葉で脱力し、肩の力を抜いてもう一度武器を構える。

(´・ω・`)「…わかりました。でも、戦うのなら僕の指示には従ってもらいますよ」

( ゚∋゚))

一度、大きく頷くクックル。

(´・ω・`)「では、」

( ゚∋゚)「あ!一つだけ」

(´・ω・`)「なんですか?」

( ゚∋゚)「俺もロリじゃないから」

瞬間全員が硬直し、そして噴き出す。

(´・ω・`)「兄者みたいじゃなくて、安心しましたよ」

( ´_ゝ`)「え?今回おれってそんな役回り?」

ξ゚听)ξ「別に今回だけじゃないでしょ」

..

612 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:52:55 ID:DtHDfjCw0
以上、よろしくお願いします。

芸さんにも修正をお願いしにいかなければ。

さて、これだけではなんなので、閑話の投下に続けます。

613 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:54:55 ID:DtHDfjCw0

第A話 閑話  ビーグルの性別は?



ある晴れた日の午後。
V.I.P.牧場では、ギルドメンバーによるバーベキューが行われていた。

(*´・ω・`*)「ビーグルちゃん!」

▼*・ェ・*▼「きゃん!」

転げまわるショボンとビーグル。
肉と野菜を頬張るメンバーたちの前であられもない逢瀬を見せていた。

.

614 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:55:42 ID:DtHDfjCw0

ξ゚听)ξ「あれ以来隠すのをやめたわよね」

川 ゚ –゚)「なんかもう、どうでも良くなるな。色々と」

( ^ω^)「楽しそうで何よりだお」

('A`)「一部ではあいつを神格化してるやつもいるんだよな…」
 _
( ゚∀゚)「ほかには見せられない姿だよな」

( ´_ゝ`)「………」

(´<_` )「幼女とあんなことをしたいな…とか思ってたら殺す」

( ´∀`)「兄者はあとでビーグルとにらめっこするもな」

ミ,,゚Д゚彡「直で見るのは初めてだから。……きついから」

( ゚∋゚)「趣味は人それぞれだが……普段が普段なだけにほんとにきついな」

( ・∀・)「聞いても記録結晶で見ても信じられないよな。普通」

(*゚―゚)「何度見ても慣れません」

(,,゚Д゚)「…………ゴルァ」

.

615 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 14:57:46 ID:DtHDfjCw0

ギルメンの冷たい視線をもろともせずに転げまわるショボン。
自分たちのギルドマスターのそんな姿を見せられた彼ら彼女らの心中は計り知れないが、次第に慣れたのか相手にせず食事と会話に盛り上がり始めた。

ξ゚听)ξ「……」

そんななか、ツンはチラチラとショボンとビーグルを見ていた。

( ^ω^)「ツンはまだ気になるようだおね」

(´<_` )「気にはなるよな」

ξ゚听)ξ「いや、ショボンはもうどうでもいいんだけど……いや、よくはないんだけど」

('A`)「どっちだよ」

(*゚―゚)「ビーグルの方ってことですか?」

ξ゚听)ξ「……うん」

川 ゚ –゚)「珍しく歯切れが悪いな」

( ´_ゝ`)「言い辛いことなのか?」

ξ゚听)ξ「…ってわけでもないんだけど」

( ゚∋゚)「どうした?」

焼き場の前にいるフサギコとモナーをちらりと見てから、意を決したように口を開くツン。

.

616 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:00:00 ID:DtHDfjCw0

ξ゚听)ξ「ビーグルって、雄なの?雌なの?」
 _
( ゚∀゚)「…え?雄だろ?」

(,,゚Д゚)「おれも雄だと思ってたぞゴラァ」

ξ゚听)ξ「だれか確かめたことある?」

それぞれに互いの顔を見回すが、誰もが顔を横に振った。

( ´_ゝ`)「まあ、調べたりはしてないよな」

(´<_` )「でも、それがどうかしたのか?」

ξ゚听)ξ「特に意味はない。ちょっと気になっただけ」

(*゚ー゚)「一度思いつくと、気にはなりますよね」

ξ゚听)ξ「そう!そうなのよ!特に意味もないし取るに足らないことなんだけど、一回気になるともうダメ!」

(;^ω^)「ツン…」

持っていた串を放り出し、しゃがみこんで頭を抱え、いやいやをするように頭を振るツン。
それを見たほぼ全員が絶句するが、心の中にある「あーあるあるそういうの。そうなるともうそれしか考えられなかったりするよな」という思いを抱き、何も言えかかった。
ただ全員が「でもここまで酷くない」とも思っていた。

('A`;)「そんなに気になるなら調べりゃいいだろ」

空気を読んでみんなの気持ちを代弁したドクオ。

ξ゚听)ξ「………」

その言葉にぴたっと動きを止め、ツンが顔を上げて目の前のドクオを見る。

ξ゚听)ξ「…………どうするのよ」

('A`)「?」

.

617 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:01:26 ID:DtHDfjCw0




ξ///)ξ「男だったらどうするのよ」



.

618 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:03:32 ID:DtHDfjCw0

そして今度はほぼではなく完全に全員が「うわぁ……」と思って何も言えなくなった。

ミ,,゚Д゚彡「どうしたんだから?」

その固まった空気を破ってくれたのは、その場にいなかったフサギコだった。

ミ,,゚Д゚彡「みんなもっといっぱい食べると良いから」

お皿に程よく焼けた肉や野菜をたんまり乗せて歩いてきたフサギコが、仕上げで焼くバーベキュー用網の上に皿の上の食材を乗せていく。
 _
(;゚∀゚)「お、おう、食べよう食べよう」

(;,,゚Д゚)「それが良いぞゴルァ」

(;*゚ー゚)「あ。このお野菜最近市場に出始めたお野菜なんですよ」

(;・∀・)「へー。一年経ってるのにまだこれから出てくるのとかあるんだな」

(;゚∋゚)「育てられるのか、気になるな」

(;・∀・)「新しい素材とか心躍るよな」

(;゚∋゚)「育てるのも心躍るぞ」

(;´_ゝ`)「新しい素材は良いな。鉱石ももっと新しいのが見つかればいいのに」

(´<_`;)「添加材もいいな。レベルの低い鉱石に新しい力を与えられるかもしれん」

しぃの出した話題にこれ幸いと乗って会話を始める生産職組。
そして戦闘職組は黙々と口に食べ物を運ぶ。
しかし視線はどうしてもちらちらとツンを見てしまう。

ミ,,゚Д゚彡「?」

.

619 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:05:18 ID:DtHDfjCw0

川;゚ -゚)「ツン、それはさすがに」

(;^ω^)「じゃあ、ぼくが確認」

ξ#゚听)ξ「女だったらどうするのよ」

('A`)「うわぁ」

(;^ω^)「ツン、それはさすがに」

川 ゚ -゚)「というか、聞けばいいんじゃないのか?」

ξ゚听)ξ「誰によ」

川;゚ -゚)「誰にってそりゃ…」

( ´∀`)「お肉は足りてるもなか〜」

更に肉の串を皿に盛ったモナーがやってきた。

( ^ω^)「ああ」

('A`)「そうだな」

川;゚ –゚)「今までその結論にたどり着いてないことに衝撃なんだが」

(;^ω^)「いやなんか」

('A`)「ツンの勢いに押されて」

ξ゚听)ξ「……だめなのよ」

川 ゚ -゚)「ん?」

.

620 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:07:14 ID:DtHDfjCw0



ξ;゚听)ξ「だめなのよー!!!!!!!!!」



.

621 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:08:57 ID:DtHDfjCw0

川;゚ -゚)「!?」

(;^ω^)「!?」

('A`;)「!?」
 _
(;゚∀゚)「!?」

(;´_ゝ`)「!?」

(´<_`;)「!?」

(;´∀`)「!?」

ミ;,,゚Д゚彡「!?」

(;゚∋゚)「!?」

(;・∀・)「!?」

(;*゚―゚)「!?」

(;,,゚Д゚)「!?」

叫んで再び頭を抱え込むツン。
全員の動きが止まり、食事と会話に逃げていたメンバーも恐る恐るツンを見た。

.

622 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:10:12 ID:DtHDfjCw0

(;´∀`)「ツ、ツンはどうしたもな?」

川;゚ -゚)「いや、今ビーグルの性別について話をしていたんだが」

( ´∀`)「ツンはまだそんな話をしているもなか」

('A`)「ん?ツンに聞かれたのか?」

( ´∀`)「聞かれたもな」

( ^ω^)「なんて答えたんだお?」

( ´∀`「モナは気にしたことないし、雄でも雌でもビーグルはビーグルだから関係ないもな」

川 ゚ -゚)「ああ」

('A`)「ああ」

( ^ω^)「ああ」

( ´∀`)「?」

ξ; ;)ξ「それじゃだめなのよーーーーー!!!!」

川;゚ -゚)「さすがにもう」

.

623 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:12:14 ID:DtHDfjCw0

いい加減疲れはじめたメンバー。
もうどうでもいいよと思い始めたその時に、彼らのギルマスがやってきた。

(#´・ω・`)「さっきから騒いでいると思ったら!!!!!!!!」

(*゚ー゚)「……さらなる混沌の予感」

ぼそっとつぶやいたしぃを思わず見る串焼きに逃亡犯の面々。
その言葉はツンの周りにいた数人には聞こえていないはずだが、その心には同じような内容が芽生えていたことだろう。

(#´・ω・`)「ツン!ビーグルちゃんはビーグルちゃんだ!」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」

やってきたショボン。
胸に抱えられたビーグルが無邪気に鳴く。

(#´・ω・`)「おまえはギコが女だったとしたら態度が変わるのか!!!!」

(,,゚Д゚)「え。おれ?」

.

624 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:14:38 ID:DtHDfjCw0

ξ゚听)ξ「そういう問題じゃないでしょ!」

(#´・ω・`)「そういうことを聞いているんじゃない!もしもの話だ!」

ξ゚听)ξ「普通あれで女だったら恥ずかしくて外に出ないわよ!」

(,,゚Д゚)「   」

(#´・ω・`)「だからそういうことを聞いているんじゃない!差別するのか!?」

ξ゚听)ξ「あれで女だったら可哀想すぎて逆にやさしくするわよ!」

(,,゚Д゚)「     」

( ・∀・)「最近の流れ弾はギコが引き受けてくれるから楽でいいな」

(*゚―゚)「流れ弾は前からですか?」

( ゚∋゚)「前は拡散していたな」

(*゚ー゚)「ギコ君が役に立ってよかったです」

(´<_` )「しぃちゃんは付き合い長くなるとイメージ変わるね」

(*゚ー゚)「そうですか?」

( ´_ゝ`)「自覚無しがまたすごい」

(*゚ー゚)「?」

.

625 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:16:39 ID:DtHDfjCw0

ξ#゚听)ξ「それで結局あんたは何が言いたいのよ!!」

(#´・ω・`)「ビーグルちゃんはビーグルちゃんだ!!俺たちの天使だ!!!性別なんて関係ない!!!!」

ξ゚听)ξ「     」

(#´・ω・`)「天使に性別なんていらない!ビーグルちゃんはビーグルちゃんだ!!気にする必要がない!!!!」

ξ゚听)ξ「ああ……うん………」

(*´・ω・`)「ねービーグルちゃん」

▼*・ェ・▼「きゃんっ!」

そしてまたビーグルを胸に抱き、芝生を歩いていくショボン。

ξ゚听)ξ「    」

川 ゚ -゚)「どうした?」

ξ゚听)ξ「なんか、どうでもよくなった」

('A`)「それが良い」

ξ゚听)ξ「うん」

.

626 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:17:52 ID:DtHDfjCw0

川 ゚ -゚)「ちなみにさっきまでのツンは、今見たショボンのテンションと大差なかったからな」

ξ゚听)ξ「!?」

横に立つクーを、大きく目を開いて見るツン。

ξ゚听)ξ「き、気を付ける」

川 ゚ -゚)「それが良いと思う」

数瞬の間の後、何事もなかったようにバーベキューは再開され、メンバーはその時間を楽しく過ごし、一日を終えた。

そして何故か次の日からV.I.P.牧場にメンバーが次々に現れ、ビーグルを抱き上げたのは、ショボンには内緒の話。





.

627 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/06/09(日) 15:22:34 ID:DtHDfjCw0
>>516

を読んだときに思い付いたネタでした。
これはメインとは完全に関係のない閑話ってことで。

それでは投下終了します。

ではではまた。

.

628 名前:名も無きAAのようです:2013/06/09(日) 16:43:36 ID:TZ7vPuCI0
otuotu
俺のレスが元でオマケが……

*     +    巛 ヽ
            〒 !   +    。     +    。     *     。
      +    。  |  |
   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
       ∧_∧ / /
      (´∀` / / +    。     +    。   *     。
      ,-     f
      / ュヘ    | *     +    。     +   。 +
     〈_} )   |
        /    ! +    。     +    +     *
       ./  ,ヘ  |
 ガタン ||| j  / |  | |||
――――――――――――

629 名前:名も無きAAのようです:2013/06/09(日) 23:38:58 ID:QCuL4Jqk0
乙でした
ツンwwwwwwwww

630 名前:名も無きAAのようです:2013/06/11(火) 01:53:56 ID:r9p93lLw0
乙!
あぁ、ブーンがかなり不穏な雰囲気出してて不安だ・・・

631 名前:名も無きAAのようです:2013/06/11(火) 15:08:45 ID:L7uiEs/M0
ブーンがシリアスなんてできるわけないお!

632 名前:名も無きAAのようです:2013/06/11(火) 19:02:36 ID:1fyAHfhU0
ちょうど科学捜査班見てたらアングラーでたな

ニュアンス的には普通に漁夫の利を狙う人でいいんだろうか

633 名前:名も無きAAのようです:2013/06/11(火) 19:25:57 ID:kWnC.LyU0
>>632
いいや チョウチンアンコウの方だろ
( ФωФ)がアンコウに変身する

634 名前:名も無きAAのようです:2013/06/11(火) 21:09:37 ID:AA7aEquE0
>>633
提灯アンコウ・・・つまり釣り師
詐欺とかって方向?

635 名前:名も無きAAのようです:2013/06/11(火) 22:08:28 ID:kWnC.LyU0
>>634
素直に魚のアンコウって受け取ってくれよwww

636 名前:名も無きAAのようです:2013/06/12(水) 19:18:43 ID:Y4jrN.x60
面白くて一気読みした!
続き楽しみ


637 名前:名も無きAAのようです:2013/06/18(火) 16:30:23 ID:bihnv8cY0
次の更新は来月あたりかな

638 名前:名も無きAAのようです:2013/06/18(火) 23:00:03 ID:acJ6bb2QO
能力値の上限とかあるのかな

639 名前:名も無きAAのようです:2013/06/19(水) 23:20:14 ID:RuCbUDF.0
無いこたぁないだろ

640 名前:名も無きAAのようです:2013/06/24(月) 01:00:51 ID:6AKer0lU0
待ってるよー

641 名前:名も無きAAのようです:2013/06/26(水) 13:26:37 ID:oyGNXuak0
月1更新位になってるな

642 名前:名も無きAAのようです:2013/06/28(金) 12:46:12 ID:3WoIqXJU0
作者乙!

643 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/07/14(日) 13:35:51 ID:NRSZePdU0
どうも作者です。

ちょっとまだかかりそうなので、ひとまず生存報告を。

何とか今月中には投下したいと思っていますが未定です。

ではではまた。

644 名前:名も無きAAのようです:2013/07/14(日) 15:00:28 ID:5CQZ55Mc0
待ってます

645 名前:名も無きAAのようです:2013/07/14(日) 15:14:02 ID:OcQMuSA.O
待ってるよー

646 名前:名も無きAAのようです:2013/07/14(日) 19:05:55 ID:PVGVxLtw0
待っとる!

647 名前:名も無きAAのようです:2013/07/18(木) 04:48:35 ID:ClsgGabI0
終わった?

648 名前:名も無きAAのようです:2013/07/18(木) 09:03:02 ID:53swzTP20
>>647
貴様期待したじゃねぇか!!

649 名前:名も無きAAのようです:2013/07/23(火) 18:48:59 ID:0zCaGlms0
こーんげつこーんげつ

650 名前:名も無きAAのようです:2013/08/01(木) 18:15:24 ID:DXlkq4zo0
!?

651 名前:名も無きAAのようです:2013/08/01(木) 23:03:12 ID:pn5jfvPg0
>>650
期待したのに・・・

652 名前:名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 20:50:13 ID:BAfWtcEk0
いつになることやら

653 名前:名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 21:49:40 ID:8yt0nH5.0
上がってて期待したらこれだ・・・

654 名前:名も無きAAのようです:2013/08/06(火) 03:43:23 ID:6jmKBEDs0
>>653
勝手に期待してるんだからお前さんの問題だろ?
上がる=更新 って思い込んでることが異常なんだよ

655 名前:名も無きAAのようです:2013/08/06(火) 04:16:50 ID:otaJPMC6O
上がってたから見てみたら〜

にマジレスする奴初めて見た…

656 名前:名も無きAAのようです:2013/08/06(火) 04:53:28 ID:3oXtNKXIO
ほら、夏だから…

657 名前:名も無きAAのようです:2013/08/06(火) 20:21:07 ID:6jmKBEDs0
何か急に末尾Oが出てきてワロタw

658 名前:名も無きAAのようです:2013/08/08(木) 02:41:47 ID:Xg30xqCI0
作者様待ってます

659 名前:名も無きAAのようです:2013/08/08(木) 06:14:32 ID:UTAV6Lak0
>>654みたいの見ると夏を感じる

660 名前:名も無きAAのようです:2013/08/08(木) 14:20:08 ID:POgKrgPQ0
>>659

そのまま返すわいちいち書き込むなよ

661 名前:名も無きAAのようです:2013/08/08(木) 22:18:45 ID:glJM9p7YO
そろそろやめな

作者も嫌気さしちゃうよ

662 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 00:45:18 ID:HooL7W7QO
ω・`)ソウダソウダー

663 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 05:55:08 ID:xRLy4QsM0
次はいつ更新すんだろう

664 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/09(金) 22:21:31 ID:7mNj/BJY0
できた…。

でもこれから誤字脱字チェックと内容整理して、祭に重ならないようにすると、水曜か木曜くらいには投下出来ると思います。

待ってると言ってもらえてはげみになりました(`・ω・´)

出来るだけちゃんとしてから投下したいので、よろしくお願いします。

ではでは。

665 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 22:25:11 ID:xRLy4QsM0
一週間後か
待ってる

666 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 22:29:12 ID:6sD7cPCw0
おおー乙!
楽しみに待ってるよ

667 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 22:48:02 ID:VRSH/CIg0
パンツ脱いだ

668 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 23:04:07 ID:s1j5BhYMO
>>667 
履けよ、風邪ひくぞ

669 名前:名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 23:25:20 ID:HooL7W7QO
ω・;)機体していいんだよな…

670 名前:名も無きAAのようです:2013/08/10(土) 01:25:20 ID:9MBpagno0
あああぁぁ
待ってたぁ
もうパンツなんて履いてられない

671 名前:名も無きAAのようです:2013/08/10(土) 10:32:55 ID:nTMX1gLE0
来週か・・・生きてるかな

672 名前:名も無きAAのようです:2013/08/10(土) 22:23:51 ID:R6mQElEA0
魔法道具屋が音沙汰なくなってこれくらいしか見てないわ・・・
楽しみに待つ

673 名前:名も無きAAのようです:2013/08/13(火) 14:12:12 ID:udAdI20E0
明日か明後日か…楽しみだ…
キャラの髪形や服装ってか容姿とか装備ってイメージある?
ギコとかしぃとかネコミミついてんの?
ロマやシャキンやハインも含めた皆のスペックすげー気になってるんで暇があったら答えてくれると嬉しい

674 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/13(火) 21:51:41 ID:jrIPHNIY0
どーも作者です。
ちょっと顔の確認をさせてください。

 _
( ゚∀゚)「
(´・ω・`)「
('A`)「
( ^ω^)「
ξ゚听)ξ「
川 ゚ -゚)「
( ´_ゝ`)「
(´<_` )「
ミ,,゚Д゚彡「
( ´∀`)
( ・∀・)
(,,゚Д゚)「
(*゚ー゚)「

(`・ω・´)
<_プー゚)フ
(゚、゚トソン

これが大丈夫なら、予定通り投下できそうです。

>>673
キャラの外見スペックについて

キャラの外見は一応決めてあります。
VIPのメンバーに関しては、次か次々か次々次くらいで出す予定があるので、そのあとぐらいに全員のスペック表を出せたらなと思いますので、お待ちいただければ嬉しいです。

ネコミミは追加装備になると思うので、基本はついてないです。(;><)

675 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 00:28:46 ID:oqfujZXQO
ω・`)乙。スペックか。そういえば誰が1番強いとか気になるな。

676 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:08:41 ID:l1O.OzB20

     |∧∧
     |・ω・)    ダレモイナイ...
     |⊂     トウカスルルナラ イマノウチ...
     |

どうも作者です。

というわけで、投下行きます。

677 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:10:14 ID:l1O.OzB20



第七話 数え歌がきこえる 後編    〜かごめかごめ〜



.

678 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:11:16 ID:l1O.OzB20



1.十人目の男



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679 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:12:39 ID:l1O.OzB20
西暦2024年1月末某日

ギルドV.I.P.のホームは40層にある。
一階にはショボンのバーボンハウスとブーンの雑貨屋。その他に二件分の作業部屋とツンとクーの作業部屋がそれぞれにあり、裏庭などもあった。
二階にはミーティングルーム兼大食堂とリビング、ギルマス用の執務室(ショボンの部屋)。三階と四階は個人の部屋になっており、今はブーン、ツン、クー、ドクオ、ジョルジュ、ギコとしぃが使っているが、まだ部屋は余っている。。
この中にある大食堂で、ギルドメンバーが食事をすることは週に一度の定例会以外では滅多にない。
といっても全員が集まることが少ないのではなく、実は週四回は全員で食事をしているし、それ以外の日も二・三人少ない状態で集まって食事をすることがほとんどだった。

では何故この大食堂で食事をとることが少ないのか。

それはこの食堂の形状に答えがあった。

(`・ω・´)「相変わらず、ここは喋り辛いな」

.

680 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:13:43 ID:l1O.OzB20

白い壁の大きな長方形の部屋の中心に、真っ白い大きなテーブル。
短辺は三人ほどがゆったりと座れ、長辺には六人がゆったりと座れる。
椅子は固定ではないので動かせるのだが、何故かなんとなく動かす気になる者はおらず、等間隔に座っている。

('A`)「そうなんだよ」

( ^ω^)「ショボンの狙いらしいお」
 _
( ゚∀゚)「前のホームの時は『会議の時くらい私語は慎め!』ってショボンがよく怒鳴ってたからな」

(`・ω・´)「お前ららしいよ」

面白そうに笑顔を見せるシャキン。
それを受けて眉をひそめつつ笑う三人だったが、その話し声はその両隣にはあまり聞こえない。

つまり、雑談がし辛い為あまりこの食堂は使われていなかった。逆に言うとこの食堂が使われるということは、誰かが〜今のところ100%ショボンだが〜真面目な話をするということだった。

ちなみに声が聞こえ辛いというようなことではなく、全員に向かって話しかけるには特に違和感がないのだが、何故か近場の数人と会話をしようとすると声の音量が難しく、ひそひそ話や知られたくない話がし辛い部屋だった。

.

681 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:14:40 ID:l1O.OzB20

( ´_ゝ`)「食事は隣ですればいいんじゃないのか」

既に全員の目の前には夕食が置かれており、それぞれに口をつけている。

( ´∀`)「そうもなね〜。ショボンとふさもいないし」

(´<_` )「店の稼ぎ時だからな」

▼*・ェ・▼「きゃきゃん!」

( ´_ゝ`)「……今のはショボンの名前が出たからか?」

( ´∀`)「ビーグルとショボンは仲良しさんもな」

(´<_` )「まぁ……うん……いやしかし、今日は疲れたな」

( ´_ゝ`)「そうだな。あの朝の客はきつかった」

( ´∀`)「あれは大変だったもなね。そうそう、貰った武器、牧場で振ってみたもなけど、すごい良かったもな!すぐに手に馴染んだもな!」

( ´_ゝ`)「それは良かった。そういってもらえると、作り甲斐がある」

武器の作製に関してはどんな時も真剣になる兄者の言葉を受けて笑顔になるモナーと弟者。
周囲が笑顔で一人真顔の兄者というのは、なかなか見られない姿だろう。

.

682 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:15:36 ID:l1O.OzB20

( ・∀・)「ギコより粗忽者がいるとはビックリだな」

( ゚∋゚)「おれもビックリした」

(,,゚Д゚)「そこまで言うなゴルァ」

( ・∀・)「このまえの」

( ゚∋゚)「採取で」

(,,゚Д゚)「ごめんなさい」

( ゚∋゚)「モラの方は今日は何かあったか?」

( ・∀・)「………聞くな」

(;゚∋゚)「なんか悪かった」

(,,゚Д゚)「?何があったんだゴラァ?」

(#・∀・)「空気を読めよこのやろう」

(,,゚Д゚)「?」

(;゚∋゚)「ギコ…」

殺気を含んだモララーの睨みを軽く受け止めるギコに驚くクックルだったが、今までの鈍感さを考えれば特に驚くことでもないことに気付き、眉間にしわを寄せて通じない嫌味をぶつけてくるモララーに戸惑うギコを見て、思わず笑みを漏らした。

.

683 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:17:44 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ハインに会ったんだ」

(*゚ー゚)「はい」

川 ゚ -゚)「口説かれただろ」

(**゚ー゚)「口説かれたとか…そこまでは…」

全員に食事を配り終り席についたしぃ。

ξ゚听)ξ「本気にしちゃだめよ。ハインはあいつに夢中だから」

(*゚ー゚)「?」

川 ゚ -゚)「ハインは好きなやつがいるんだが、そいつに群がるかもしれない女を自分に夢中にさせて、あいつとくっつかないようにしているんだ」

(*゚ー゚)「え!?」

照れたようにフォークで目の前のプレートに乗った肉をつついていたしぃだったが、クーの言葉で動きを止めた。

(*゚ー゚)「え?」

.

684 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:18:37 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ま、無理ないわよね」

川 ゚ -゚)「ツンも少しその気になってたよな。ブーンとの関係を知られるまで口説かれてたし」

ξ゚听)ξ「うるさい。……そういえばあんたは口説かれなかったわよね。なんで?」

川 ゚ -゚)「知らん。おそらく私はあの程度では落ちないということが分かっていたのだろう」

ξ゚听)ξ「ホントむかつくわね」

(*゚ー゚)「あ…あの…」

川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」

(*゚ー゚)「ハインさんの好きな人って…」

ξ゚听)ξ「誰だと思う?」

川 ゚ -゚)「しぃも知っている奴だぞ」

しぃの質問を聞き、面白そうにニヤニヤと笑いながら顔を覗き込むようにする二人。

(*゚ー゚)「ジョルジュさん?」

ξ゚听)ξ「違う〜。まぁそう思っても仕方ないわよね。並んで見栄えがしそうだし」

(*゚ー゚)「モララーさん?」

川 ゚ -゚)「そっちに来たか。違うぞ」

(*゚ー゚)「ショボンさん?」

ξ゚听)ξ「まぁあってもおかしくないわよね。違うけど」

(*゚ー゚)「兄者さんはないとして、弟者さん?」

川 ゚ -゚)「両方なかった」

.

685 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:19:29 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「どうした兄者?」

( ´_ゝ`)「何故か誰かに馬鹿にされた気がした」

(´<_` )「されてるだろ、いつも誰かに」

( ´_ゝ`)「え?おれってそうだったの?」

( ´∀`)「気にしないのが一番もなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」

( ´_ゝ`)「え?モナーとビーグルまで否定してくれないの!?」


.

686 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:20:55 ID:l1O.OzB20

(*゚ー゚)「じゃあモナーさんかクックルさん?」

ξ゚听)ξ「選定の順番が気になるところだけど、それも違う」

(*゚ー゚)「ってことはふささん!」

川 ゚ -゚)「ブー。違います」

(*゚ー゚)「え?だってブーンさんってことはなくて、ギコ君な訳もないし」

ξ#゚听)ξ「しぃちゃん、それはどういう意味かな?」

(;*゚ー゚)「え、あ、いや、ブーンさんが対象外というわけじゃなく、さっきツンさんがブーンさんのことを好きって知られてからはハインさんに口説かれなくなったって言っていたので、もしハインさんが好きなのがブーンさんなら、逆にもっと激しく口説かれそうですから、だからです!」

ξ゚听)ξ「ああ、そういうことね。って、誰が誰を好きだっていうのよ!」

川 ゚ -゚)「ツン、そこでツンデレ属性発生させると話が進まないから」

ξ;゚听)ξ「でもクー」

川 ゚ -゚)「クリスマスのイルミネーション、手をつないで…」

ξ*゚听)ξ「わかった!わかった!ごめん!なし!」

川 ゚ -゚)「まったく」

ξ*゚听)ξ「だいたいあれだってあいつが」

川 ゚ -゚)「記録結晶見るか?」

ξ゚听)ξ「撮ってたの!?」

川 ゚ -゚)「ああ。ショボンに頼まれてたからな」

ξ#゚听)ξ「あの男……。あとでコピーちょうだい」

川 ゚ -゚)「わかった」

(*゚ー゚)「あれ?でもこれでギルド内なら全員ですよね。あと誰が…」

.

687 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:22:44 ID:l1O.OzB20
困惑していたしぃをよそに盛り上がっていたクーとツンだったが、しぃの呟きを聞いて喋るのを止め、ゆっくりとしぃを見る。

(*゚ー゚)「?どうかしましたか?」

ξ;゚听)ξ「えっと…しぃちゃん?まだ全員じゃ」

川 ゚ -゚)「気持ちがわかるがさすがにそれは」

(;*゚ー゚)「え?でも、ジョルジュさん、モララーさん、ショボンさん、兄者さん弟者さん、モナーさん、クックルさん、フサギコさん。…ハインさんが好きになりそうな人で私が知っている人って……あ!シャキンさん!でもハインさんに会った時点では、私はまだシャキンさんにお会いしてなかったですけど」

ξ;゚听)ξ「えっと…」

川;゚ -゚)「もしかして本気でなのか?」

(*゚ー゚)「?」

顔をこわばらせるツンとクー。
アインクラッドでは浮かばないはずの冷や汗がこめかみと頬を伝っているように錯覚する。

ξ゚听)ξ「う、うちのギルド全員の名前は言えるわよね?」

(*゚ー゚)「もちろんですよ?」

川 ゚ -゚)「言ってみてくれないか?」

(*゚ー゚)「は、はい。ギルマスのショボンさん、サブマスターのクーさん、ツンさん、ブーンさん、ドクオさん、ジョルジュさん、兄者さん、弟者さん、フサさん、モナーさん、ビーグルちゃん、クックルさん、モララーさん、ギコ君と私です」

川 ゚ -゚)「ちゃんと言えたな」

(*゚ー゚)「当然ですよ?どうしたんですかいったい」

ξ゚听)ξ「うん、まあ、そうなんだけどね」

自分を見るツンとクーの表情に違和感を感じ、不安になるしぃ。
そんなしぃをみて、どうしようか本気で悩むツンとクー。

(;*゚ー゚)「あ、あの?」

川 ゚ -゚)「ハインの片思いの相手だが、このギルドの中にいるんだ。そしてハインは女や動物には恋心は抱かない」

(;*゚ー゚)「はい」

ξ;゚听)ξ「で、さっきしぃが確認していった中に、ギルドのメンバーが一人抜けてたのよ」

(;*゚ー゚)「え!?全員言ったつもりなんですけど」

川;゚ -゚)「うわぁ」

ξ;゚听)ξ「うわぁ」
.

688 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:23:38 ID:l1O.OzB20


('A`)ウツダシノウ


.

689 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:29:44 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「いきなりどうしたドクオ?」

( ^ω^)「いつものことだお」

(`・ω・´)「それは知ってるが、さすがに唐突じゃないか?」
 _
( ゚∀゚)「突然ネガティブ電波を受信するよな」

('A`)「どうでもいいことだけど、かなり悲しい気がした」

(;^ω^)「なんだおいったい」

('A`)「わからん」


.

690 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:30:46 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「とりあえずしぃ、私とツンとしぃ、ビーグルとギコを覗いたメンバーは何人だ?」

(*゚ー゚)「10人ですよね」

ξ゚听)ξ「じゃあこんどは、ハインの片思いの相手を想像しながら、さっきの順番で指折りしながら数えてみて」

(*゚ー゚)「は、はい。…ジョルジュさん、モララーさん、ショボンさん」

言われた通りに指折り数えながらゆっくりと名前を言うしぃ。
それを二人が固唾を飲んで見守っている。

(*゚ー゚)「兄者さん弟者さん、モナーさん、クックルさん、フサギコさん……ブーンさん……」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)!

(;*゚ー゚)「あれ?9人しかいない。なんでだろう」

.

691 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:31:32 ID:l1O.OzB20


('A`)ヤッパリウツダシノウ


.

692 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:32:20 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おいおいおいおい、さすがにスパンが短くないか」

(;^ω^)「だおね。ドクオ、どうしたんだお?」
 _
(;゚∀゚)「どこかで誰かに呪われてるとか」

('A`)「わからん。かなりどうでもいいことで、ものすごく悲しい気分になった気がした」

(`・ω・´)?

(;^ω^)?
 _
(;゚∀゚)?


.

693 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:33:27 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ダメか」

川 ゚ -゚)「どうしたもんだろうな」

(;*゚ー゚)「あれ?あれ?あ……れ………」

ξ゚听)ξ!

川 ゚ -゚)「!何か引っかかった」

(;*゚ー゚)「あれ?でも、けど、だって、そんな、でも、あれ、うそ、そんな、でも、やだ、あれ?え?え?やだ、え?あれ?そんな」

川 ゚ -゚)「もうちょっとだ!いけ!」

ξ゚听)ξ「すべての可能性を排除したら、どんなに奇妙であろうとも残ったものが真実なのよ!」

川 ゚ -゚)「たとそれが受け入れがたい事実でも!うけとめるんだ!」

ξ゚听)ξ「がんばれしぃ!」

川 ゚ -゚)「がんばれ!しぃ!」

(*  )「そう……か……ドク…オ…さんなん…ですね」

ξ;凵G)ξ「たどりついたのね、しぃ」

川 ; -;)「そうだ、そうなんだ。しぃ」

(*  )「まさか…そんな…」

ξ;凵G)ξ「がんばったね」

川 ; -;)「よく耐えたぞ」

(*  )「はい…はい…」


.

694 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:34:21 ID:l1O.OzB20



('A`)ドウデモイイケドウツデシノウ



.

695 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:35:17 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「ブーン、このまえは急に納品頼んで悪かったな」

( ^ω^)「こちらこそ、いつもありがとうだお。もうちょっと早めに言ってくれると慌てなくていいからうれしいけど」

(`・ω・´)「いつもすまんな」
 _
( ゚∀゚)「なんだ、二人は結構会ってるのか」

( ^ω^)「お得意様だお」

(`・ω・´)「大量注文も対応してくれるからな」

('A`)「あれ?スルー?」

(`・ω・´)「飽きた」

( ^ω^)「もういいお」
 _
( ゚∀゚)「なんか言ってたのもあいつらだろ多分」

ちらっと女子三人を見る四人だったが、その状況を見て全員の表情が固まった。


.

696 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:36:23 ID:l1O.OzB20

( ´∀`)「向こうはなんか盛り上がってるみたいもなね」

( ´_ゝ`)「あれは盛り上がってる…のか?」

(´<_` )「どうせまた、ツンとクーがあほなことを言ってるんだろ」

( ´∀`)「もしくはしぃの天然が爆発してるもなね」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(´<_` )「最近はその確率が高いのが怖いな」

( ´_ゝ`)「そういえば、結局ギコとの」

(´<_` )「みなまで言うな」

( ´∀`)「聞かないであげるのが優しさもなよ」

( ´_ゝ`)「おれに言われたくないだろうが、あいつも不憫なやつだな」

ギコを見てからしぃを見て眉をひそめる三人。
モナーの膝の上に乗るビーグルが、小さく鳴いた。

.

697 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:37:26 ID:l1O.OzB20

(#・∀・)「だいたいあいつは空気を読めっていうんだよ。おれたちがどれだけブーンとの仲を心配してやったか」

( ゚∋゚)「心配する必要がないくらいの仲良さだった気もするが」

(#・∀・)「大体なんでこんなにカッコいいおれに彼女ができないで、ブーンやギコに可愛い彼女がいるんだよ」

(,,゚Д゚)「少なくともおれはそんな事を口にしたことはないぞゴラァ」

(#・∀・)「可愛い小物や小さいアクセサリーとか作れば女の客が増えて出会いがあるかと思えばやってくるのは付加性能目当てのムサイ男が大半だし」

(;゚∋゚)「おまえ、そんな理由で職人になったのか?もしかして」

(,,゚Д゚)「モララーのアクセサリーは戦士仲間の中で評判高いぞ」

(#・∀・)「だいたいなんで気合い入れて可愛いの作るとほぼ全部防御力アップとか攻撃力アップの付加価値が付くんだよ」

(;゚∋゚)「それは確かに気の毒な気もするが、おまえのアクセサリー作成能力が高いというかなんというか」

(,,゚Д゚)「おれもギルドに入る前から一つ持ってたし、しぃにもプレゼントしたぞ。そういえばごつい戦士が可愛い飾りを胸とかつけてたなゴルァ」

(#・∀・)「ああもうなんだっていうんだよまったくよう。やっと可愛くておれに興味がありそうな客が来たと思ったらあいつにもってかれるし、だいたいあいつ……」

苦々しげに眉間にしわ寄せつつツンたちを見たモララーの表情が固まり、ゆっくりと眉間のしわがとれた。が、変わりに怒りではない理由で眉間にしわが寄った。
その表情の変化を見ていたクックルとギコが不審に思ってモララーの視線の先にいる三人を見ると、二人も表情が固まった。

.

698 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:39:00 ID:l1O.OzB20

女子三人をみて男全員が呆然と表情が固まる。
という珍妙な状況の中に入ってきた彼ら二人の心情はどれほどだったであろう。

ミ,,゚Д゚彡「おそくなったから!ごめんなさいだから!」

(´・ω・`)「ごめんね。遅くなって。食事はもう終わったかな?」

扉を開けて入ってくる二人。
ショボンはいつもの席に、フサギコはあいている席に向かうが、途中で異様な雰囲気に気付き、メンバーを見回す。

ミ,,゚Д゚彡「どうしたんだから?」

(´・ω・`)「どうしたのみんな?」

その二人の視線も、女子三人で止まる。

表情をなくし、呆然と焦点の定まっていない瞳で斜め上の天井を見つめるしぃ。
席を立ち、そのしぃを両側から抱いてしくしくと涙を流すツンとクー。

ミ;,,゚Д゚彡「しぃ…ちゃん?だいじょうぶ?」

(´・ω・`)「えっと、なにがあったのかな?そこの三人」

三人に近寄る二人。
声をかけられ、機械仕掛けのように首を動かしてフサギコを見るしぃ。

ミ;,,゚Д゚彡「しぃちゃん?」

(*  )「…ふさぎこ……さん……」

ミ;,,゚Д゚彡「ど、どうしたんだから?なにがあったから?」

(*  )「わたし……しんじ……られ…なくて…」

(´・ω・`)「しぃ?どしたのいったい」

(*  )「ショボン……さん………。ハインさんが……好きなのって」

(´・ω・`)「ああ、なんだ。知ったんだ」

ミ,,゚Д゚彡「それは確かに驚くから」
.

699 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:39:49 ID:l1O.OzB20


('A`)………


.

700 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:40:47 ID:l1O.OzB20

納得したのか、大きく頷くショボン。
フサギコはしぃの肩に手を置き、肯定するように小さく何回か頷く。

そしてショボンが柏手を打った。

部屋に響く音によって、二人を除く全員の目が覚める。

(*゚ー゚)「しょ、ショボンさん」

(´・ω・`)「了解、それについてはまた今度説明するよ。まぁ多分納得してくれると思うから」

(*゚ー゚)「は、はい!」

(´・ω・`)「それじゃあミーティングを始めるよ!食事はそのまま続けてくれていいけど、目は資料、耳は僕の声に向けてね」

しぃの目の前に紙の束を置き、「ごめん、みんなに配ってもらえるかな」と言って自分の席に向かうショボン。
フサギコも自分の席に座り、持ってきた夕食を出す。
席に着いたショボンも自分の夕飯のサンドイッチとタンブラーを置き、自分用の資料を目の前に広げた。

(`・ω・´)「お、なんだそのサンドイッチは」

(´・ω・`)「ぼくの夕飯だよ」

( ^ω^)「味はなんだお?」

(´・ω・`)「BLTとツナとチーズチキン]

(`・ω・´)「おれも食べたい」

.

701 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:42:07 ID:l1O.OzB20

( ^ω^)「あ、シャキンばっかりずるいお」

('A`)「ならおれも食べる」
 _
( ゚∀゚)「もちろんおれも」

(´・ω・`)「君たちもう一人前分食べたんじゃないの?」

(*゚ー゚)「…あの、私も食べたいです」

(´・ω・`)「しぃまで!?」

資料を配って回ってきたしぃがおずおずと、けれどはっきりと口をはさむ。

(*゚ー゚)「いや、私の場合は最近ショボンさんの料理食べてないので味わいたいなと」

(`・ω・´)「おれもだぞ。今日店に行ったのは久しぶりにお前の料理を食べようと思ったからだからな」

(´・ω・`)「久しぶりって……まぁこうなるだろうとは思ったけどさ」

ウインドウを出してストレージを操作するショボン。

(´・ω・`)「ぼくの作ったサンドイッチ食べたい奴は挙手!」

一斉に上がる全員の手。

(´・ω・`)「はいはい…って、ふさまで」

立ち上がり、一人一人の目の前にサンドイッチの入ったボックスを置いて歩くショボン。
貰ったメンバーは「ありがとう」と言いつつ受け取ると箱を開け、ほくほくとどれから食べるか選び始めた。

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702 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:43:05 ID:l1O.OzB20

ミ,,゚Д゚彡「ありがとうだから。ショボンの作ったサンドイッチは自分の作ったのよりおいしいから」

(´・ω・`)「まったくもう……じゃあふさの持ってきてるやつはぼくに食べさせてよ」

ミ;,,゚Д゚彡「そ、それはだめだから!」

(´・ω・`)「みとめません。はいぼっしゅー。久しぶりの味チェックだね」

フサギコの目の前の箱を取り上げ、自分のサンドイッチを置くショボン。

ミ;,,゚Д゚彡「あうあう」

(´・ω・`)「デザートはみんなが食べ終わったころによろしく」

ミ,,゚Д゚彡「…………わかったから…」

うなだれるフサギコをよそに、サンドイッチを配り終わって席に戻るショボン。

('A`)「ちゃんと全員分作ってきたんだな」

(´・ω・`)「まあね。こんなことになるかもしれないって思ってさ。ならなくても、どうせミーティングの後は隣の部屋で喋るんだろうから、夜食にすればいいやと思って」

( ^ω^)「流石ショボンだお」

(`・ω・´)「あいかわらずだな」

(´・ω・`)「はいはい。それじゃあ改めてミーティングを始めるよ!資料の一ページ目を見て」

ショボンの言葉を受け、口を動かしながらも目は真剣に資料を見るメンバー達。

それを確認したショボンが、口を開いた。


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703 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:44:12 ID:l1O.OzB20

今回の議題は、ギルド『N−S』より依頼のあった第49層でのクエスト攻略です。
まだクリアは一度もされていないクエストを3件、同時に攻略します。

質問は後で受けるからまずは静かに聞いてねー。

クエスト攻略による依頼アイテムは無しで、途中のモンスター討伐で得たアイテムはもちろん、クエスト攻略で得たアイテムも基本ギルドで管理します。
つまり、いつものごとくドロップした者の持ち物ってことです。
必要ないアイテムは不明アイテムはできるだけギルドストレージに移して、必要者もしくは鑑定できる者が使える形にするようにしてください。
ただし、途中で採取できる『ゲルマライムの木の実』はN−Sからの依頼品でもあるので、必ず採取して、さらにミッション終了後に集めてN−Sに渡します。もしドロップ品でもとれたらそれも渡します。

はい、クーうるさい。
あとであとで。

地図は資料の次のページにあります。
見てもらうとわかるけど、大きい街で依頼を受けて、周囲の森を走り回るクエストです。
途中までは成功しているので資料に載せてますが、以降は分かりません。
その理由は時間制限。日の出の後朝9時から夕暮れの午後6時まで、9時間以内にクリアしなければいけない計算であり、それが一番の問題点とされています。
一つ一つのクエストの細かい設定を考えると、とてもじゃないけどその時間内では無理だと思われます。ただ、動線と攻略内容を考えた結果、三つを同時に進行、攻略すればクリアできるのではないかと推測できるため、今回の依頼がうちに回ってきました。

まあ、ここまで言うばわかると思うけど、この依頼はギルド『N−S』からきましたが、その上には情報屋がいて、おそらくその上には攻略組がいると思われます。

今の最前線は51層。
51層の攻略がメインだけど、49層に残っているクエストも気になる。
皆も知っていると思うけど、50層ボス攻略ではかなりの死傷者が出て、攻略組は動揺しています。
だから情報は今まで以上に必要で欲しい。
けれど最前線の攻略以外に攻略組の人員をまわすのは色々と厳しい。
そこで……。

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704 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:45:23 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「って感じでぼくは思っていますが、どうでしょう?ギルド『N−S』のギルドマスターさん」

隣に座るシャキンに話を振るショボン。
特に驚いた様子もなくシャキンはにやっと笑い、全員の視線を感じつつも臆することなく口を開く。

(`・ω・´)「直接うちに話を持ってきたやつの名前は伏せるが、まぁそんな感じだと思ってくれていいだろう。基本的には攻略組からのクエスト攻略依頼。つまり一番欲しいのは『アインクラッドの攻略に関する情報』だ。今回のクエスト三種のうち一つは50層を攻略中に発見されていたが、二つは50層が攻略された後に発見されたクエストだ。そしてさっきの話の通り、見つかっていた一つもクリアは出来なかった。攻略していなくても、50層のボスクエに対する攻略への対応には関係なかったと思われるが、もしかすると以降の上層階をクリアするのに有効な情報やスキルの追加などがあるかもしれない…と、攻略組が考えたとしても不思議じゃない」

('A`)「なるほどな」

( ´_ゝ`)「だが、そんなことがあるのか?」

(´<_` )「前例はないはずだが」

( ・∀・)「実際の攻略情報ではないかもしれないけど、いままでもクエスト攻略によって解禁になる素材とかはあったよな」

川 ゚ -゚)「薬はそれが多いな。強い薬や今までNPCショップでしか手に入れられなかった薬が作れるようになったりする。そのたびに派生のスキルが増えたりして大変だが」

( ´_ゝ`)「新しい武器や防具も有り得るか」

( ^ω^)「純粋に情報が出たこともあったはずだお。たしか十何層で、二つくらい上に出てくるモンスターの弱点が判明したことがあったはずだお。ボスではなかったはずだけど」

ミ,,゚Д゚彡「この前街で売り出された野菜も、何かのクエスト攻略がキーになっていたのかもしれないから!」

(*゚ー゚)「あ!あの野菜!急に売りに出されましたよね」

( ´∀`)「そういえば、低層の牛型モンスターが最近飼育できるようになったって噂があるもな」

( ゚∋゚)「      」

(,,゚Д゚)「クックルも気になる点があるらしいぞゴラァ!」

( ゚∋゚)《ある時急に、一部の薬草に花が咲くようになったことがある。特に能力や効能に変化は無かったようだが》

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705 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:46:32 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「なんだ、クックルはまだ喋れないのか。難儀だな」

((( ゚∋゚)))

少しだけ困ったように、けれど笑顔で首を横に振るクックル。

(`・ω・´)「ま、こいつらなら大丈夫か」

( ゚∋゚)))

今度はにっこりとほほ笑んで頷くクックルを見て笑顔を見せるシャキン。

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706 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:47:43 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「花が咲くことにより、薬草に付加価値や能力アップなどの可能性はあるな。それに、その花を利用したレシピがこれから解禁される可能性もある」

ウインドウを出し、自分のスキルスロットを見始めるクー。

川 ゚ -゚)「まだ増えてないか」

ξ゚听)ξ「裁縫、装飾系は特に変化なしかな。素材が増えるか、デザインが増えるかくらいあると良いんだけど」

同じくウインドウを開いていたツンが視線を外す。

ξ゚听)ξ「で?クエストやるのは分かったけど、続きは?」

(´・ω・`)「うん。この三つのクエストには、人数制限があるんだ。各クエストともに、最大7人。それ以上だとクエストのスタートができないし、一つのクエストは少ない人数でもクエストフラグが立たなくなっているらしい。難易度的には特に変わらないけど、色々と隠し要素がありそうなんだ」

('A`)「この世界は、そんなに簡単なゲームじゃないからな」

(´・ω・`)「だね。人数が多いから簡単なのか、さらに難しく危険度が増すのか。…上層階だし、未クリアクエストだし、油断はできないよ」
 _
( ゚∀゚)「でもやるんだろ?」

(´・ω・`)「それなんだけどね」

全員の顔を見回すショボン。
不思議そうな顔をするもの、笑顔の者、表情が分からない者、色々いるが全員とも不信感を表す者はいない。

(´・ω・`)「今回は、クエストのレベルを考慮して、一部メンバー以外は不参加を認めます。かろうじて全員フロア数に対して最低で5以上高いけど、レベル的に不安がある人や自信がない人は、今不参加表明してください」

( ・∀・)「あ、おれ」

(´・ω・`)「モララーは強制。だいたいレベル的にも経験的にも問題ないでしょ」

( ・∀・)「なんでだよ」

(´・ω・`)「中層クラスでも、戦闘力だけならうちより高いギルドもパーティーもソロプレイヤーもいないわけじゃないよ。でも、この話はうちのギルドに来た。さてここで問題です。何故だと思う?」

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707 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:48:46 ID:l1O.OzB20

( ・∀・)「…職業スキルが必要ってことか」

(´・ω・`)「そういうこと。それもこのクエストが攻略できていない理由の一つだと思うよ。そういうことで、モララーとクー、クックル、ブーンは悪いけど必須でよろしく」

( ・∀・)「まったく」

ξ゚听)ξ「あれ?あたしとかモナーは大丈夫なの?」

いまだにウインドウを出したまま操作をしていたツンが口をはさむ。

(´・ω・`)「スキル的にはね。あと僕とふさとしぃの料理スキルもとくには必要なさそうだから、二人はよく考えて」

ミ,,゚Д゚彡「やるから!」

(*゚ー゚)「やります!」

(,,゚Д゚)「もちろん俺もだゴラァ!」

間髪入れずにフサギコとしぃが答え、それに続いて何故かギコも参加表明をした。

(´・ω・`)「あ、うん、わかったよ、ギコ」

おそらくは一番レベルの低いしぃのことを気にしていたであろうショボンだったが、あまりのギコの勢いに押されてそこに話を戻せなかった。

(´・ω・`)「えっと…ほかのみんなは?」

視線を一蹴させるショボンにあわせて参加肯定のピースや頷きを見せるメンバー達。

(´・ω・`)「了解。全員参加だね」

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708 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:50:04 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「ショボン、うちのギルドだけじゃ人数が足りなくないか?」

にっこりとほほ笑んだショボンに向けられるクーの言葉。
ギコやふさは見回して指折り数えている。

(´・ω・`)「今回は『N−S』との合同クエストなんだ。クエストの内容と規定人数、攻守のバランスを考慮してシャッフルさせてもらうよ」

( ^ω^)「ギルド以外のメンバーと組むのも久しぶりだおね」

('A`)「そういえばそうだな。しぃとギコが入るまでは、けっこうやってたけど」

(*゚ー゚)「そうなんですか?」

(´<_` )「プギャーやシラネーヨとは結構やってたぞ」

( ´∀`)「向こうから依頼されたこともあるけど、クエストにあわせて助っ人を頼んだことも多かったもなね」

(,,゚Д゚)「おれもあの二人とは何度か一緒にクエストやら採取やらをしたことがあるぞゴラァ。でもあいつらがこのギルドとそんなにクエストをやっていたとは初耳だぞゴラァ」

(´<_` )「ま、普通は言わないだろうな。基本的に他者のスキルや強さに関して部外者にペラペラ喋るのはマナー違反だし」

( ´_ゝ`)「でもあいつら、最初の時に俺らのことべらべら喋ってたぞ」

( ´∀`)「命が助かった喜びで、しかも助けてくれたのがみんなで嬉しくて、思わずべらべら喋ってしまったって後悔していたもなよ」

(´<_` )「?なんでそんなことを知ってるんだ?モナー」

( ´∀`)「三人で農場にやってきたもな。謝りたいけどショボンの所に直接行くのは恐いから、間を取り持ってほしいって言っていたもなよ」

ξ゚听)ξ「モナーを窓口にするとは、わかっているわね。あいつらも」

川 ゚ -゚)「だな。モナーが窓口だとショボンも怒れない」

(;´∀`)「そんなこともなかったもなよ」

('A`)「そういえば、あのあと何日かしてからショボンの部屋から三人分の悲鳴が…」

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709 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:51:23 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「ちょ、ちょっと、ドクオ。なに人聞きの悪いこと言ってるの。悲鳴の出るようなことはしてないよ。ちょっと採取や情報集めでお願いをしたくらいで」

ミ,,゚Д゚彡「お願い…」

( ^ω^)「お願い…」

( ´∀`)「お願い…」
 _
( ゚∀゚)「お願い…」

(,,゚Д゚)「お願い…」

( ・∀・)「という名前の?」

( ゚∋゚)《命令or脅迫》

(;´・ω・`)「く、クックル?なんでそんなボードの用意がしてあるの!?」

何人かが表情がなく反復した言葉をモララーがまとめ、クックルが真実に変えると、ドッと笑いが起きた。

(`・ω・´)「ホントにお前らは面白いな」

(´・ω・`)「まったく。だいたい命令なんてできるわけないでしょ。ギルメンにすらそんなことしたことないのに」

ξ゚听)ξ「ないんだ」

川 ゚ -゚)「ないらしいぞ」

( ´_ゝ`)「ないみたいだな」

(´<_` )「ないようだ」

(*゚ー゚)「ないんですか」

('A`)「…脅迫は否定しないんだな」

(´・ω・`)「話が進まないから!」

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710 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:52:15 ID:l1O.OzB20


 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ –゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「はーい」
('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《はーい》

▼・ェ・▼「きゃん!」


.

711 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:53:42 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「漫才やコントのスキルとかあるのか?」

(#´・ω・`)「ないよ!」

(`・ω・´)「隠すということはユニークスキルか」

(;´・ω・`)「ないから!」

一連の流れを見ていたシャキンは最初こそ腹を抱えて笑っていただけだったが、最後には真剣に見ており、ぼそっとつぶやいていた。

(´・ω・`)「まったく……なんでこんなことに」

ξ゚听)ξ「で、結局全員参加で良いのよね。シャキンの所を入れれば人数は足りるの?あんたの所も人数四人だから、足りなくない?」

川 ゚ -゚)「『少数精鋭だ!』とか言って増やさなかったんだよな」

(`・ω・´)「ほとんどお前らと合同だったからな。実は最近二人いれたんだ。一人はちょっとおかしいが強いし、もう一人はちょっと変だが強いぞ」

( ´∀`)「つまり『N−S』のメンバーは全員変人ってこともなね」

(`・ω・´)「お前らにだけは言われたくないがな」

.

712 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:54:38 ID:l1O.OzB20


 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ –゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「なぜ?」
(´・ω・`)('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《なぜ?》

▼・ェ・▼「きゃん?」


.

713 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:55:49 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「数の暴力ひどいなおい。それとショボンだけでも認めろ」

(´・ω・`)「もちろん、うちも大概だとは思うけど、シャキンの所には負けるというかなんというか」

(`・ω・´)「え!?俺達ってそんな風に思われてたの!?」

ξ゚听)ξ「何をいまさら」

(`・ω・´)「こちらもキャラが濃いのは認めるが、お前らほどではないだろ」
 _
( ゚∀゚)「ハインの趣味と行動は酷いよな」

('A`)

(`・ω・´)「あいつはしょうがない」

( ´∀`)「ミルナも初めて会った時とのキャラの違いがびっくりしたもな」

(`・ω・´)「そうだな。あいつもなかなかだな」

( ´_ゝ`)「デミタスはいいのかあれで?俺が言うのもなんだが」

(`・ω・´)「デミタスはなぁ。腕は確かなんだけど、ちょっとな」

(´<_` )「兄者に言われて反論できないのは厳しいぞ」

(`・ω・´)「だが!今度入ったやつらは」

ξ゚听)ξ「おかしいやつと変なやつなんでしょ?」

(`・ω・´)「……なんだよな」

( ^ω^)「会えるのを楽しみにしてるお」

(´・ω・`)「まだなんかある?」

(`・ω・´)「……とりあえず話を進めよう」

(´・ω・`)「…わかった」

(`・ω・´)「お互いメンバーがメンバーだと苦労するな」

(´・ω・`)「ほんとだよね」

.

714 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:56:59 ID:l1O.OzB20

( ^ω^)「うちもシャキンのとこも、ギルドの中で一番おかしいのはギルマスだお」

(´・ω・`)「またまたご冗談を」(`・ω・´)

ξ゚听)ξ「何故冗談だと思えるかが謎なんだけど」

(´・ω・`)「え?本気で?」(`・ω・´)

川 ゚ -゚)「いい加減話が進まないな」

ぼそっとクーが呟く。
全員が「ほんとだよ」と思ってはいるが、全員が自分が原因だとは思っていない。

(´・ω・`)「さっきから何度か言ってるんだけど」

ξ゚听)ξ「話が長いのよね」

(´・ω・`)「雑談には触れないんだ」
 _
( ゚∀゚)「確かに話が長いよな。もうちょっとサクサク進めてくれないと、頭に入らない」

( ´_ゝ`)「そうだな」

('A`)「結局やるんだから」

(#´・ω・`)「雑談しているのはだれかと小一時間説明する必要があるのかな」

川 ゚ -゚)「そんな話をしている時間がもったいないだろう。ショボン。時々周りが見えなくなるくせはどうにかした方が良いぞ」

(#´・ω・`)

(`・ω・´)「ショボン、落ち着け」

(#´・ω・`)「ん?落ち着いてるよ?なんかへんかな?」

(`・ω・´)「い、いや、落ち着いてるならいいんだ」

隣に座るショボンの目が座ったのを見て、シャキンが恐る恐る声をかける。
その雰囲気に何人かが気付き、さすがに雑談が過ぎたかと姿勢を正しくするが、気付かなかった何人かはそのまま雑談を続けた。

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715 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:58:56 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「そういうところあるわよね。ショボンって」

( ´_ゝ`)「時々周りが見えなくなることがある」
 _
( ゚∀゚)「目の前のことしか見えなくなるんだよな」

川 ゚ -゚)「まぁそういうな。その集中力で脱した困難も数多い。一人で分かった気になっててイラつくときもあるが、それもまた特性だ」

ξ゚听)ξ「それにしても問題よ。ビーグルと遊ぶ時といい、もうちょっと周りを気にしたほうが良いと思う」

( ´_ゝ`)「あれは面白いからいいだろ」
 _
( ゚∀゚)「あとクエストの時のテンパり具合も問題あると思うぞ」

川 ゚ -゚)「あれは確かにひどいな」

( ´_ゝ`)「クリスマスの時のショボンは」

ξ゚听)ξ「笑ったわよね」

笑う四人。
硬直する残りメンバーと、完全に表情をなくしているショボン。

(;`・ω・´)「しょ、ショボン?」


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716 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 11:59:53 ID:l1O.OzB20



(#´   )「       」



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717 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:01:48 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「お、おちつけ。なぁ」

(#´   )「 だいじょうぶ。 おちついてるよ 」

('A`)「シャキンがいて良かった」

(#´   )「ふさ、今日のデザートはたしかA級食品を使ったあれだよね」

よく通るショボンの声が部屋に響き、笑っていた四人も含めて全員が『A級』に反応してフサギコを見た。

ミ;,,゚Д゚彡「か、カルボーヌの実が手に入ったから、それでベギルカウのミルククリームたっぷりのケーキと、ミンテリア草とクラベリの実と合わせたクラッシュゼリーを作ったから」

ξ゚听)ξ「クリームたっぷりのケーキ…」

川 ゚ -゚)「カルボーヌの実…だと…」

(#´   )「それ、今日の議題があと30分で終わらなかったら全部シャキンにあげていいから。それ以上時間かかったら、もうデザートとか食べてる時間なくなるしね」

川 ゚ -゚)「さ、議題を進めるぞ。ショボン。あとは何を決めればいいんだ?」

(#´   )「   ?   」

ξ゚听)ξ「資料は次で最後のページよね。なになに。あーなるほど。これは大変そうなクエストね。でも、それほどシビアには感じないから、実際動いてみたらいろいろあるんでしょうね」

(#´   )「   まったく…食べ物に目がくらんで   」

ブツブツと呟くショボン。
気付かないふりをして会議を進めようとするクーとツンを筆頭としたショボン以外の全員だったが、基本的に会議の内容はショボンの頭の中のため、しっかりとした進行ができなかった。

(´<_` )「だがショボン、結局人は足りなくないか?うちが14人、シャキンの所が6人で合計20人。マックスで21人必要なんだろ?ビーグルを一人として数えてくれるなら21人になるが、残念だがシステム上ビーグルはモナーの従属扱いだろうし」

(´・ω・`)「そうなんだよね。ビーグルちゃんも一人として扱ってくれればいいんだけど」

弟者の一言にすっと表情を戻して会話を返すショボン。
そのままモナーも巻き込み、ビーグル絡みの話をいくつか繰り広げる。

弟者とショボン以外の全員が心の中で弟者に賛辞を贈った。

(´・ω・`)「人数に関してはパワーバランスとクエストの設定を考えて、班分け時に検討するよ。それこそ誰か声をかけてもいいしね。さて、ではいくつか確認をしつつまとめるよ。資料に書いてあることとその補足説明もするからよく聞いてね」

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718 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:02:48 ID:l1O.OzB20

クエスト実行日は明後日。
明日は各人準備のこと。
特にブーンとクー、モララーは持っていくPOTやクリスタル、アイテムの確保とメンテナンスを頼むよ。クックルも協力してやってくれ。
レベルはDで、人数は念のため21人分。
兄者と弟者は、明日の夕方から全員分の武器防具のメンテナンスを頼むことになるから、申し訳ないけど店を早めに閉めてくれ。
各人とも、明日の自分の予定を組んだらメンテナンス希望時間を弟者に連絡を。
弟者はスケジュールを組んで、明日中に全員の武器・防具のメンテナンスが終わるようにしてくれ。
兄者、メンテナンス業務嫌いなのは知ってるけど、ここは頼むよ。

もしあと少しでレベルもが上がりそうなら、積極的に明日の夕方まで外に出てレベルを上げてほしい。もちろんソロじゃなく、パーティーでね。
ドクオ、ジョルジュ、皆のサポートも頼む。

スキルの方は新しいものを覚えてもすぐには使いこなせないだろうから、それよりも今使っているスキルの精度を上げるように。もちろん使えるスキルを覚えたら、どんどん使ってくれて構わないけどね。
モナーとモララーは最近戦闘に行ってないと思うから、出来れば45層以上で肩慣らしをしておいてくれると嬉しい。
ふさ、しぃ。これは僕にも言えることだけど、明日は店よりも自分のパラメーターによってはレベル上げを最優先させてほしい。

クエストのパーティーは明日の夜には連絡するようにするけど、クエスト内容、地図は三つとも頭に入れておくこと。
自分たちの行動がほかの二つに影響を及ぼす可能性があることを思考に入れておいてほしい。


以上、他に質問はあるかな?


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719 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:03:58 ID:l1O.OzB20

全員の顔を見回すショボン。
すっと弟者が手を挙げた。

(´・ω・`)「なに?弟者」

(´<_` )「メンテナンスはシャキンの所もするのか?」

(`・ω・´)「頼みたいところだが、20人分はさすがにつらいだろ。各人に懇意にしているとこもあるだろうから、それぞれにどうにかするよう言っておく」

(´<_` )「わかった。だがもしこっちに来るようなら早めに連絡をくれ」

(`・ω・´)「了解した。俺の分は午前中には連絡する」

( ´_ゝ`)「お前は頼むのか」

(´・ω・`)「他にはー?」

再度全員の顔を見回すショボン。
全員と視線を交わすが、とくに聞くことはないようで誰も何も行動をしない。

(´・ω・`)「じゃあ終わりかな。何かあったら個別に聞くかメッセージでも飛ばして」

手に持っていた資料をテーブルに置き、一回大きく柏手を打つショボン。

その音で姿勢を正すメンバー。

(´・ω・`)「それでは終了します。お疲れ様でした」

 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ –゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「おつかれさまでした!」
('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《おつかれさま》

▼・ェ・▼「きゃん!」

(`・ω・´)「おつかれさま!」


.

720 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:05:17 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「よっしゃ!ふさ!デザートよろしく!」

川 ゚ -゚)「待てツン、その前に隣に移動だ!」

(*゚ー゚)「ケーキにあうお茶を淹れますね」

席を立つ三人。
連れだって部屋を出て隣に向かう。

( ^ω^)「デザートたのしみだお」

('A`)「この世界じゃ太らなくてよかったな」

( ^ω^)「ツンとクーが睨んでるお。ドクオ」

('A`;)「お、おれはブーンに言ったのであってお前たちに言ったわけでは…って、ブーンあいつらもういないじゃねぇか」

( ^ω^)「おっおっおっ」
 _
( ゚∀゚)「ドクオはもうちょっと太りたいところだな」

('A`)「言うな。でもおれはこれで良いんだよ」
 _
( ゚∀゚)「身長も…」

('A`)「言うなこのやろう」

( ^ω^)「おっおっおっ。痩せることもできないからつまらないおね」

('A`)「冗談は体だけにしておけ」

(#^ω^)「ぼくだって痩せたことくらいあるお!」
 _
( ゚∀゚)「どれくらい落としたんだ?」

('A`)「ジョルジュ、相手にするだけ時間の無駄だから」

.

721 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:07:53 ID:l1O.OzB20

(#^ω^)「二キロ!」
  _
( ゚∀゚)「ホントに無駄だった」

('A`)「だろ」

(#^ω^)「ぼくが二キロ痩せるのに、どれほど厳しい毎日を」

('A`)「ハイハイ分かったから」
  _
( ゚∀゚)「はやく隣の部屋に行こうぜ」

( ´_ゝ`)「あー長かった」

(´<_` )「その責任の一端が兄者もあるだろう」

( ´_ゝ`)「おれに?」

(´<_` )「ダメだこの男。はやくなんとかしないと」

( ´∀`)「弟者は、なんで仕事用のハンマーを今取り出しているもなか?」

▼・ェ・▼「くぅ〜ん」

(,,゚Д゚)「ビーグルはもう眠たいみたいだぞゴラァ」

( ´∀`)「いつもならそろそろ眠る時間もなからね。向こうの部屋で、ちょっと寝かしてあげるもなよ」

( ゚∋゚)《しょぼんにじゃまされないとよいな》

(;,,゚Д゚)「それはさすがにだぞゴラァ」

それに続き、それぞれに席を立って隣の部屋に向かうメンバー達。

.

722 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:09:51 ID:l1O.OzB20

ミ,,゚Д゚彡「シャキン、シャキン」

(`・ω・´)「お、どうした?」

ミ,,゚Д゚彡「お土産は別に用意してあるから、持って帰るとよいから」

シャキンの目の前に浮かぶトレードウインドウ。
そこにはケーキとゼリーの名前があり、それぞれ六つ入っていた。

(`・ω・´)「!いいのか?A級食材なんだろ」

ミ,,゚Д゚彡「多量に手に入ったから、サンプルでいろいろいっぱい作ったから。クエストの日に感想を聞きたいから」

(`・ω・´)「分かった。感想を提出させるよ。フサギコの作る料理も美味しいが、特に甘いものは別格だからな。食べるのが楽しみだ。ありがとうな」

ミ*,,゚Д゚彡「照れくさいから!」

シャキンを呼び止めるフサギコ。
仲良さそうに連れだって部屋を出ていく。

その後ろをウインドウを開いたモララーが続く。

『ξ゚听)ξ「しょうがないから、サンプルは明々後日まで待ってあげる」』

(#・∀・)「アホか!」

思わず叫んだモララー。
びっくりしたように前にいたシャキンとフサギコが立ち止まって振り向くが、ウインドウに向かって悪態をついているモララーを見て苦笑しながら隣のリビングに向かう。

モララーの耳に届く、さらなるメッセージ着信音。

『ξ゚听)ξ「嘘よ。さすがにそこまで鬼じゃないって。もし明日までに作ってくれても、明後日のクエストには間に合わないだろうから、そこまで急がなくていいわ。でも出来れば四日後までにお願い。追加報酬は、デレのオーダー品の受け渡しをあんたの店でしてあげるってことでどうよ』

( ・∀・)「『了解した』っと」

メッセージをすぐさま返すモララー。
受け取ったツンが馬鹿にしたように笑うのが容易に想像できるが、そんなことは気にしていられない。
彼は愛に生きる男なのである。

ウインドウを閉じ、にこやかに部屋を出るモララー。

それを見守って、最後に部屋を出るショボン。
扉の横にあるコンソールを操作すると、部屋の電気がすべて消える。

(´・ω・`)「疲れた……」

思わず漏れた深いため息は、夜の静けさに溶けて行った。

.

723 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:10:44 ID:l1O.OzB20
少し休憩。

724 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:39:01 ID:l1O.OzB20
再開。

725 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:40:12 ID:l1O.OzB20



2.一人歩く、白夜の道を




.

726 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:41:11 ID:l1O.OzB20

二日後早朝。
第49層主街区。転移門前。

大きな街に備え付けてある転移門からは、どの層のその街の転移門へもテレポートすることができる。
もちろんそれは、解放された層の、解放された街の、解放された転移門同士の話ではあるが。
つまりたとえレベル1の初心者でも、転移門さえあれば最前線の街に行くことが可能なのである。

上の層の街ならレベルの高い武器や防具、そしてアイテムなどが手に入るため店目当てでやってくる者も多数いるが、それよりなにより新たな層の新たな街にやってきたいと思うものが数多くいるため、最前線に近い街は賑わうのが常だった。

何故人が集まるのか。

当然といえば当然なのかもしれない。
このソードアートオンラインというデスゲームは全百層になる浮遊城アインクラッドにおいて行われている。第一層、一番下の層から始まったこのゲームにおいて、上の層ということはそれだけクリアに近付いている証拠なのである。

その喜びを、新たな景色を見ることができる喜びを噛み締める為に、プレイヤーは新しい街にこぞってやってくるのであろう。

攻略組が心と命をすり減らしながら戦ってくれた結果であるそのことを、真剣に感謝しているものがどれほどいるのかは分からないが。

普段なら人の行き来の激しい転移門広場だが、今は早朝ということもありまだ人影もまばらだった。
その中に二つの集団が見える。

ギルドVIPとギルドNSである。

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727 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:43:07 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「ギルドVIP、全員居るね」
 _
( ゚∀゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)川 ゚ –゚)( ・∀・)
ミ,,゚Д゚彡( ´_ゝ`)( ´∀`)(,,゚Д゚)(*゚―゚)
         「はーい!」
('A`)(´<_` )

( ゚∋゚)《はい》

▼・ェ・▼「きゃん!」

(`・ω・´)「ギルドNS!全員居るな!」

( ゚д゚ )「点呼なんて今までやったことないだろう?」

(´・_ゝ・`)「どうした?いったい」

(゚、゚トソン「そうなんですか?」

<_プー゚)フ「いるぞ!おれはいるぞ!」

从*゚∀从「ドクオ…かっこいい……」

(`・ω・´)「やってみたかったんだよ!…ほんとにうちの方が変人だらけなのかな」

それでもまとまって全員の顔をチェックしているVIPのメンバーに比べ、半数以下なのにそれぞれ勝手なことをしているN−Sのメンバー。

うなだれるシャキンのそばにやってくるショボン。

(´・ω・`)「シャキン、こっちは全員そろったけど」

(`;ω;´)「いい気になるなよ!点呼くらいで!」

(´・ω・`)「え?なに?どうしたの?」

涙目でこちらを見るシャキンに戸惑うショボン。
助けを求めるように、一番近くにいたN−Sのメンバーに声をかける。

.

728 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:44:23 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「久しぶりだね、ミルナ。これ、一体どうなってるのかな?」

( ゚д゚ )「気にしないでくれ。いつも通りおかしいだけだ」

(´・_ゝ・`)「VIPみたく声掛けをしてみたかったようだが、うちのギルド、しかもこのメンバーでやれるわけがなくてな。で、いじけたんだ」

(´・ω・`)「なるほどね。説明ありがとう。デミタスも久しぶり」

( ゚д゚ )「久しぶりだな、ショボン」

(´・_ゝ・`)「数か月ぶりか?」

(´・ω・`)「二人ともまた会えて嬉しいよ」

( ゚д゚ )「お前の所も相変わらずのようだな」

(´・ω・`)「二人増えたけどね」

(´・_ゝ・`)「知ってる。今日のクエストが楽しみだ」

( ゚д゚ )「おれたちと同じパーティーにしてくれたのは、顔見せ力見せってことだろ?」

(´・ω・`)「クエスト内容とバランスで分けたつもりだけどね。意識はしたけれど。それに、君たちの所の新人さんの力も見せてもらうよ」

笑顔でうなずきあう三人。
そこにやっと涙を拭いたシャキンが割り込んだ。

(`・ω;´)「グズ…グズ…うちの…新人も……強いぞ……」

(´・ω・`)「あ、うん、とりあえず鼻も拭いて」

(;゚д゚ )「まったくうちのギルマスは…」

(;´・_ゝ・`)「ほんとだよ」

(`;ω・´)「この…グズ…ギルドで……グズ…点呼…やりたかった…」

( ゚д゚ )「泣くな。今度やってやるから」

729 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:45:25 ID:l1O.OzB20

(`;ω;´)「ほんとか…?」

(´・_ゝ・`)「ほんとほんと。ちゃんと点呼の練習もしような」

(`・ω・´)「ぜったいだからな!」

(´・ω・`)「復活はや!」

( ゚д゚ )「いつものことだ」

(´・_ゝ・`)「はぁ…」

(゚、゚トソン「あの…」

ハインほどではないが長身の女性が近寄ってきた。
柔らかいベージュの長い髪をひとまとめにしており、細い銀縁の眼鏡をかけている。

( ゚д゚ )「どうした?トソン」

(゚、゚トソン「そちらがギルド『V.I.P.』のギルマスの方ですか?」

(´・_ゝ・`)「ショボン、これがうちの新人の一人、トソンだ」

(´・ω・`)「初めまして。V.I.P.でギルマスをやっているショボンです」

(゚、゚トソン「初めまして。トソンと申します。以後宜しくお願いいたします」

(´・ω・`)「こちらこそ。よろしく」

ショボンが手を差し出し、握手をする二人。

(´・ω・`)「このギルドにしてはまともなメンバーが入ったね」

横にいるミルナとデミタスに向けて驚いたように話す。

( ゚д゚ )「……」

(´・_ゝ・`)「一見な」

(´・ω・`)「?」

.

730 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:46:33 ID:l1O.OzB20

(゚、゚トソン「ところでショボンさん、この二つのギルド、VIPとNSはとても懇意にさせていただいていると聞き及んでおります。一時は一つのギルドではないかと思われるほどに一緒に行動していたとか」

(´・ω・`)「ああ、そうだね。お互いのギルドの足りないところを補うというか…」

(゚、゚トソン「それでは是非我々にもギルドの恩恵をいただけないでしょうか」

(´・ω・`)「恩恵?」

(゚、゚トソン「バーボンハウス、雑貨屋booon、流石武具店、モララー細工工房、VIP農場と牧場での買い物を、是非ギルド価格で!」

(´・ω・`)「へ?」

(゚、゚トソン「他にもありますね、表には出てませんが裁縫師ツンさんの作る衣服のオーダーも是非!」

(´・ω・`)「いや、その…」

(゚、゚トソン「ダメですか?良いじゃないですか。仲の良いギルドで一緒にクエスト攻略を行う仲なんです!仲の良いギルドが全滅してもいいんですか?クリスタル一つ、POT一つ買えなかったせいで死んでしまうかもしれないんですよ?ショボンさんはその結果に耐えられるんですか!?」

(´・ω・`)「ええ……」

(゚、゚トソン「そうですか。ダメですか。私たちが死ぬ思いをしてもいいんですね。そうですか。そうですよね。所詮自分のギルドだけが裕福ならいいんですよね。わかりました。仕入れ単価とは言いません。3割引き、いや、しょうがない、2割引きではどうですか?」

(´・ω・`)「……トソンさん」

(゚、゚トソン「その気になっていただけましたか!?」

(´・ω・`)「君もやっぱりこのギルドのメンバーなんだね」

(゚、゚トソン「?ちょっと言っている意味が分かりませんが、どうでしょう、よくお考えいただけませんか?」

.

731 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:48:09 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「はいはいトソン、とりあえずそれくらいにしておこうか」

(゚、゚トソン「シャキンさん!ですがこういったことは早めに」

(`・ω・´)「クエストの時間が差し迫ってるからね。今日はクエスト優先。その辺の話は僕からも相談しておくから。」

(゚、゚トソン「…はい…わかりました」

一礼し、けれどぶつぶつ言いながら恨めしそうにこちらを見る。

<_プー゚)フ「シャキン!戦闘はまだか!?」

(`・ω・´)「エクスト、お前もちょっとこっちにこい」

<_プー゚)フ「なんだなんだ!」

真っ赤に染め上げた大ぶりの両手剣ぶんぶん振り回しながらシャキンに声をかけた青年を呼ぶ。

(`・ω・´)「こいつがもう一人の新人、エクストだ。エクスト、こちらがギルドV.I.P.のギルマス、ショボンだ」

<_プー゚)フ「おれがエクストだ!」

(´・ω・`)「ショボンです。よろしく」

ショボンが差し出した手を掴んでぶんぶんと振るエクスト。
肩に担いだ両手剣が動きにあわせて揺れて周囲の人間に当たりそうになるが、NSのメンバーは慣れているのか器用によけている

<_プー゚)フ「お前あれだろ、お前と戦うと自分の力が何倍にもなるんだろ?おれ、今日の戦闘が超楽しみだからな!」

(´・ω・`)「いや、そんなことは」

<_プー゚)フ「みなまで言うな!みんな言ってる!さあ戦闘だ!」

駆け出してまた素振りを始めるエクスト。
心の底から嬉しそうな笑顔で両手剣を振り回している。

(´・ω・`)「彼はこういうキャラなんだ。……しかしこのギルドのメンバーはもう…」

(`・ω・´)「すまんなショボン」

( ゚д゚ )「まさかこんな奴らだとは思わなくてな」

(´・_ゝ・`)「腕は確かなんだ。腕は。性格は……だがな」

既に疲れたように肩を落とすショボンに声をかけながら三様にため息をつく三人。

.

732 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:48:53 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)
「しかしこのギルドでまともなのはおれだけだな」

.

733 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:49:47 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おいおい」

( ゚д゚ )「何を言っているんだ二人とも」

(´・_ゝ・`)「もう少し自らを省みたほうが良いぞ」

(#`・ω・´)

(# ゚д゚ )

(#´・_ゝ・`)

(´・ω・`)「まったくこのギルドは…」

从*゚∀从「どっくんカッコいい……」

(´・ω・`)「……まったく」

あからさまに疲れた様子を見せるショボン。
そんなギルマスの様子を見て、VIPのメンバーが近寄ってきた。



.

734 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:51:35 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「それでは、昨日送った班ごとに分かれてください」

「はーい!」《はい》「きゃん!」
  _
( ゚∀゚)( ・∀・)ミ,,゚Д゚彡<_プー゚)フ(゚、゚トソン

(,,゚Д゚)(*゚ー゚)('A`)从 ゚∀从( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)

川 ゚ -゚)( ゚∋゚)( ´∀`)▼・ェ・▼( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)(´<_` )

(`;ω;´)「なんでみんなショボンの号令だとちゃんと返事をするんだ」

(´・ω・`)「まぁまぁ」

自分の隣に立つシャキンを慰めつつ三組に分かれたメンバーを見回すショボン。
VIPだけで固まった班が一つあるが、残りの二つは混合パーティーのためそれぞれに会釈をしたり挨拶をしていた。

(´・ω・`)「ちょっと心配だったけど何とかなりそうだね」

(`;ω・´)「お前の所だけ人数少ないけど大丈夫か?」

(´・ω・`)「とりあえず涙を拭こうよ。本当はもう一人いるとよかったんだけどね。各クエストの攻略内容と戦力と機動性のバランスを考えると、この班分けがベストだから」

(`・ω・´)「そうか。機動性か。なるほどな」

涙を拭いたシャキンが三つの班を見て頷く。

(´・ω・`)「うちのギコとしぃ、そっちのエクストとトソンは新規で未知数だけどね。ドクオも付けたから、そっちは大丈夫でしょ」

(`・ω・´)「うちの二人も大丈夫だ。存分に使ってやってくれ」

('A`)ノ「はい!」

.

735 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:52:21 ID:l1O.OzB20

从*゚∀从「なに?どっくん」

('A`)「おまえじゃない。いや、お前はとりあえずおれの左手に絡めた手を外せ」

从*゚∀从「えー。やだー」

(`・ω・´)「ハイン…」

(´・ω・`)「どうしたの?ドクオ」

パーティーごとに分かれた真ん中にいるドクオ。
その横にはぴったりと寄り添ったハイン。
身長差があるため手の位置があっていないが、ドクオの左手は器用にハインの右手が絡んでいる。

(;*゚ー゚)「ホントに本当なんだ…」

(,,゚Д゚)!?

ギコとともにその後ろに立つしぃが、ぼそっと呟く。

('A`)「パーティーの組み直しを要求します」

(´・ω・`)「却下します。ではスケジュールを確認しまーす」

('A`)キノウメッセージガトドイタジテンデヘンコウヲタノンダノニムシシヤガッテショボンノヤロウ

从*゚∀从「どっくん、私に愛をささやくならクエストが終わった後でが良いな。それとも今から二人でどこかに」

('∀`)「さあクエスト頑張るか!」

从*゚∀从「笑顔も素敵だ」

新人四人はさすがにびっくりしたように二人を見ているが、他のメンバーは慣れたもので全く気にしていなかった。
一見いろいろな意味で不似合いな二人だが、慣れてくるとこれはこれでありだとも思えてくるから不思議だとメンバーのほとんどが思っているのはドクオには誰も言わず、ハインには含みを込めて「お似合いだよ」と言っていた。

.

736 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:53:27 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「パーティーはABCの三つ。Aのリーダーは僕ことショボン、副リーダーはモララー。あとはジョルジュ、フサギコとエクストとトソンの6人。Bのリーダーはシャキン、副リーダーはミルナ、あとはハインとデミタス、ドクオ、ギコ、しぃの7人。Cのリーダーはクー、副リーダーはクックル、モナー、ブーン、ツン、兄者と弟者の7人とビーグル。クエスト内容からこの班分けをしましたが、ドクオ以外で意見のある人いますかー」

ぶつぶつと呟くドクオをよそに、問題なしとうなずいたりサムズアップをするメンバー達。

(´・ω・`)「大丈夫そうだね。じゃあリーダーは各人をパーティーに誘ってください。」

そう言いながら自らもウインドウを出すショボン。
シャキンとクーもウインドウを出し、そばにいるメンバーからパーティー申請を行っていく。

(´・ω・`)「POT類はVIPのメンバーにはもう配ってあるけど、NSの皆には今送るから、確認してください。パーティー用のPOTは、パーティー用の共通タグを作ってそこに保存するかするように」

(゚、゚トソン「!こんなにいっぱい!でもこの費用は」

(´・ω・`)「使わなかった分は返してもらって、使った分は原価で買い取りか、クエストの報酬の割合をこちらを増やしてもらうことで相殺します」

(゚、゚トソン「原価!素晴らしい!」

川 ゚ -゚)「原価といっても作ったの私達だから、ほとんどが言い値だけどな」

目を輝かせたトソンを見て呟くクー。
幸いなことにトソンを始めNSのメンバーには聞こえていなかったため、特に問題は起きなかった。

(´・ω・`)「準備は終わったかな?」

(`・ω・´)「ああ、大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「こちらも問題ない」

(´・ω・`)「それでは改めて。今回の3クエスト同時クリアを統括指揮するショボンです。よろしく」

湧き上がる拍手。

(`・ω・´)「副統括のシャキンだ!」

VIPのメンバーから拍手が湧く、NSのメンバーからブーイングが湧く。

(`・ω・´)「いいもん、負けないもん」

.

737 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:54:39 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「統括指揮といっても全体スケジュールを組んだくらいで、現場では各パーティーのリーダーが指揮を執ります。全体のスケジュールも昨日のうちに送ったので全員読んで理解し、頭にいれておいてくれていると思いますが…」

全員の顔を見るように視線を走らせるショボン。
目をそらすジョルジュ、エクスト、兄者、ギコ、そしてシャキン。

(´・ω・`)「え?ちょ?シャキン?」

(`・ω・´)「ウソウソジョーダン、昨日のミーティングでやったこともちゃんと覚えてるし、理解してる」

(´・ω・`)「……ミルナ、デミタス、シャキンのサポート頼むよ」

( ゚д゚ )「心得た」

(´・_ゝ・`)「いつものことだ」

(`・ω・´)「ちょっとした茶目っ気なのにな」

(´・ω・`)「今回は三つのパーティー、A班B班C班でそれぞれ別のクエストを攻略します。そしてそれぞれの行動が他の違う二つの班の攻略をしやすくしたり大変にしたりと、かなり干渉しあうと思われます。効率良く行うためにはタイムスケジュールが重要です。各リーダーは時間に注意しつつ、副リーダーはリーダーのサポートを、メンバーはリーダーの言うことを聞いて余分な動きは出来るだけ排除し、クエストクリアを目指してください。また、班によってクエストクリアに必要な素材も違うので、自分の班に必要のない素材に関しては、採取時に場所及び種類を充分注意してください。ポイントとなるエリアは全部で9つ。便宜上名前を付けてあります。クエストの始まるこの【街1】、それを中心に東にある花を採取する【花畑】、実を採取する北の【大樹】、薬草を採取する東の【叢1】と東南の【叢2】、南の【湖】では水を採取、北東の【村】では追加クエスト、【村】の北にある【山】では討伐対象との戦闘、北北西の先にも追加クエストの発生する【街2】。班によっては行かない場所もありますが、位置の確認は全員がしてください。以上のポイント以外の場所での採取は基本自由です。また、今回のクエストは未クリアクエストです。攻略組が途中まで攻略した情報をもとにスケジュールを立てましたが、追加クエストや追加採取がないとも限りません。その場合はリーダーの権限で続行・中止を決定。情報はメッセージで他の二班のリーダーと副リーダーに送ってください」

ショボンの言葉をうけ、全員が真剣な目でうなずく。

(´・ω・`)「クエストフラグは原則としてリーダーが立ててください。POT強化は今回は二人設定で。リーダーともう一人、これは副リーダーでなくてかまいません。リーダーとのポジショニングの関係をみて、パーティーごとに相談して設定してください」

.

738 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:55:49 ID:l1O.OzB20

聞きなれない言葉を聞いて不思議そうな顔をするエクストとトソン。
それを見たモララーがそっとそばによる。

( ・∀・)「POT強化についてはあとで教えてやる。今は聞いとけ」

<_プー゚)フ「わかったぞ」

(゚、゚トソン「お願いします」

モララーの行動を視界の端で確認しつつショボンが話を続ける。

(´・ω・`)「C班が回るルートには毒を使うモンスターが多数出るので、対毒POTは必要に応じて全員使ってください。B班も一部重なるので、対毒及び毒消し系を多めに支給してあります。ここらへんは臨機応変に。今回は最前線にも近いフロアです。出てくるモンスターも一筋縄でいかないモノも出てくるでしょう。準備は確実に行ってください。あとフラグを立てる時間にも注意を。クエスト自体は三つとも9時からフラグ立てを出来ますが、出発時間は予定通りにスタートしてください」

そこで一息つき、全員の顔を見るショボン。
それぞれに黙って聞いていたり自分のウインドウを開いてもらっている資料を読んでいたメンバーが、不思議そうにショボンの顔を見る。

(´・ω・`)「いろいろ言いましたが、今回はあくまでもクエスト攻略がメインです。出来る限りの力をかけてクエスト攻略を目指しますが、命の危険は出来るだけ避け、安全にことを進めましょう。コルもPOTもクリスタルもこの先頑張ればどうにかなりますが、命には代えられません。時には逃げる英断を、クエストを途中で放棄することもいとわない様に。特にリーダーはすべてのタイミングを逃さないように細心の注意と決断をしてください」

真剣に語るショボンの言葉を真剣に受け止めるメンバー。
それを感じ、ショボンがにっこりとほほ笑む。

.

739 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:56:47 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「以上!」

(`・ω・´)「目標3クエストの攻略!夜には全員生きてこの場に集合だ!」

「おーーーーー!!!!」
            _
(´・ω・`)( ・∀・)( ゚∀゚)ミ,,゚Д゚彡<_プー゚)フ(゚、゚トソン
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)('A`)从 ゚∀从( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)
川 ゚ -゚)( ゚∋゚)( ´∀`)▼・ェ・▼( ^ω^)ξ゚听)ξ( ´_ゝ`)(´<_` )

シャキンの号令で雄叫びを上げるメンバー達。

早朝とはいえちらほらと歩いているプレイヤー達が何事かとこちらを見る。

(`;ω;´)「よかった。今度はみんな答えてくれた」

時間は、朝八時を過ぎたところだった。


.

740 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 12:59:38 ID:l1O.OzB20

A.ショボン班:【街1】



(゚、゚トソン「!なるほど。そのシステムは良いですね」

<_プー゚)フ「戦いに余裕ができるな」

ミ,,゚Д゚彡「実際そのおかげで危機に陥らなかったこともあるから」

(゚、゚トソン「ですがやはり、そのシステムができるのはメンバーに道具屋や薬剤師がいるからであって…」

モララーからPOT強化システムの説明を受けたトソンとエクスト。
二人とも納得して感心しているが、トソンの目が怪しく光る。

(゚、゚トソン「やはりショボンさん、先ほどの話ですが」

(´・ω・`)「あれ、メッセージだ。ごめんモララー、フラグ立てる家まで先頭を頼むよ」

( ・∀・)「はいはい」

先頭を歩いていたショボンに駆け寄ろうとしたトソンだったが、ショボンがウインドウを出したため舌打ちをしながら歩行を緩める。
モララーがかわりに先頭に立ち、フサギコがその横に駆け寄った。

( ・∀・)「どうした?」

ミ,,゚Д゚彡「一緒にパーティー組むの久しぶりだから」

( ・∀・)「そういやそうだな。俺ら盾無しアタッカーは振り分けられること多いからな。っていうか、今回のメンバー誰も盾持ってないけど振り分けこれで良いのか。おい、ジョル!」
  _
( ゚∀゚)「ん?なんだ?」

ショボンの隣をだらだら歩いていたジョルジュがフサギコの横に足を進めた。

( ・∀・)「お前今日盾装備じゃないの?」
  _
( ゚∀゚)「ショボンから指定来てないからいつも通りの両手剣だ」

.

741 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:01:50 ID:l1O.OzB20

ミ,,゚Д゚彡「両手剣なら盾代わりもできるから」

( ・∀・)「代わりってのは語弊があるだろ」
 _
( ゚∀゚)「もともとうちのギルドは盾スキル活用している奴少ないからな。代わりに防御系のスキルは鍛えさせられるけど」

( ・∀・)「えっと…エクスト!トソン!ちょっといいか!」

ショボンの後ろを歩いていた二人に声をかける。

<_プー゚)フ「なんだなんだ!」

(゚、゚トソン「なんでしょう」

走り出すエクストを見て後を追うトソン。

( ・∀・)「エクストの両手剣はこの前カラーリングと装飾をする時に散々見たしさっきも振り回してたからいいとして、トソンのメイン武器はなんだ?」

(゚、゚トソン「そういうあなたは?」

( ・∀・)「え、なに、おれのことがそんなに気になる?」

(゚、゚;トソン「そ、そういうことではなくてですね。…はぁ、わたしは両手槍です」
 _
( ゚∀゚)「ってことは、こいつも盾無しか」

ミ,,゚Д゚彡「結局盾使いが誰もいないから!」

(゚、゚トソン「そうなんですか?」

( ・∀・)「おれが爪」

ミ,,゚Д゚彡「刀だから」
 _
( ゚∀゚)「両手剣」

( ・∀・)「ショボンは投擲系武器」

.

742 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 13:02:13 ID:KAsRhNaAO
しえん

743 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:02:50 ID:l1O.OzB20

(゚、゚;トソン「投擲?」

<_プー゚)フ「なんだそりゃ。あれって役に立つのか?」

ミ,,゚Д゚彡「戦いを楽しみにすると良いから!」

投擲という言葉を聞いて困惑した二人を見て、フサギコが少し怒ったように、けれど誇らしく胸を張る。

(゚、゚トソン「はぁ…」

<_プー゚)フ「まぁ別に良いか!モンスターはおれが全部倒せば済むことだ!」

( ・∀・)「しかし、そうなると今回のフォーメーションは…」

(´・ω・`)「トップにジョルジュとエクスト。二列目にモララーとフサ。三列目にトソンと僕。これで行こうと思ってる」

いつの間にかウインドウを消していたショボンが後ろから声をかけた。

そしてすっと前にいた五人に近寄ると、自然とショボンを囲むように歩きはじめる。

(´・ω・`)「特攻の一列目。二人とも両手剣で威力が高いから敵がノックバックして固まる可能性が高い。追撃は近接のモララーか連撃のフサ。取りこぼし及び多方向からの追撃をトソンの槍と僕で対処。で、行けるかなと思ってるんだけどね」

(゚、゚トソン「…なるほど。効率が良い戦いのように思えますね。紙の上でなら安心して戦えそうな」

ミ#,,゚Д゚彡「……ショボンが考えたフォーメーションだから」

(´・ω・`)「それは、みんなの動き次第だよ。それにこの班は時間通りに所定の敵を倒すことが一番大事だから、それ以外の敵に関しては時間を見て戦うか決めるから、そこらへんも考慮してよろしく頼むよ」

にっこりほほ笑んだショボンに軽く会釈で返すトソンとエクスト。
その微笑みを見て心の中で冷や汗を流すジョルジュとモララー。
何故か得意げに胸を張るフサギコ。

(´・ω・`)「さ、クエスト受理の民家に着いたみたいだね。中に入って、クエスト開始と行こうか」



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744 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:04:10 ID:l1O.OzB20

B.シャキン班:【街1】



(`・ω・´)「ってことで、おれ達のやるのは北東にある【村】のさらに北にある【山】にいる狼型のモンスターを倒すことだ」

街の中心にある大きな教会で、北東の村からきた使いからクエスト受けたシャキン達が、教会前の広場で打ち合わせをしていた。

( ゚д゚ )「そして、そのためにはこの街の南にある【湖】でイベントアイテムの水をくむことが必要と」

ミルナが右手の人差し指と親指でつまんだ小瓶を目の高さでゆらゆらと振る。

(´・_ゝ・`)「更に途中でこの街の東にある【花畑】で青い花を摘んでいくと」

(*゚ー゚)「この二つが狼を出現させるためのイベントアイテムってことですね」

(´・_ゝ・`)「おそらく」

( ゚д゚ )「ただ、直接山に向かうのではなくその前に【村】に寄らなければならないらしいから、その際にこの二つを使う可能性はあるな」

('A`)「狼型モンスターを、村でどう扱っているかにもよるな。ただの邪魔物なのか、神聖視しているか」

从 ゚∀从「さすがドックン目の付け所が素敵だ。そういえばさっきの男は『山の主』としか言っていなかったな」

('A`)「いい加減手を離さない?」

从 ゚∀从「やだ。久しぶりだもん。もうちょっと」

('A`)「……はぁ」

(,,゚Д゚)「それによって戦い方の違いはあるのかゴラァ」

(`・ω・´)「基本的にはないよ。ただ神聖視されている場合付加的能力を持っていることが多いな」

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745 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:05:15 ID:l1O.OzB20

(*゚ー゚)「付加的能力?」

( ゚д゚ )「基本ボスキャラだから弱いわけがない。もちろんフロアボスとは比べ物にならないだろうが。だが毒・麻痺系の属性攻撃は通常のモンスターより確率が高いし威力もある」

(´・_ゝ・`)「あと火を吐いたり電撃のような攻撃をしてくる敵もいる。神聖視されている場合はそういった通常攻撃以上に付加的能力が脅威になることが多いような気がする」

(`・ω・´)「戦闘時の対麻痺・対毒POTは散策時とは別のをショボンから預かっている。村での情報によっては戦闘前から飲むことになるだろうな」

デレデレとしたハイン以外の全員が真剣な面持ちで頷く。
そのハインもドクオに睨まれて表情を引き締めた。

(`・ω・´)「村に入る前には他の班との兼ね合いで実の採れる【大樹】エリアでの戦闘もある。すべての戦いにおいてだが、気を引き締めていくぞ!」

頷きあうメンバー。

(`・ω・´)「…今度は掛け声とかしてくれないんだ…」

( ゚д゚ )「そろそろ出発時間だな。行くか」

シャキンの呟きをスルーして出発用の門に向かうメンバー。
一人取り残されるシャキン。

(`;ω;´)「うっ…」

ある程度離れた後、ハインに耳打ちされたしぃがシャキンのもとに駆けて戻ってくる。

(`;ω;´)「しぃちゃん、しぃちゃんだけだよ気にしてくれるのは」

(*゚ー゚)「シャキンさん」

(`;ω;´)「ありがとう、しぃちゃん」

(*゚ー゚)「いい加減めんどくさいんだボケ。さっさと行くぞゴルァ」

(`・ω・´)「…え?」

(*゚ー゚)「って、ハインさんから言付です。それじゃあ、先に行ってますね」

(`・ω・´)

ぺこりとお辞儀をして、止まって待っていたメンバーの元に走って戻るしぃ。

(`・ω・´)「ああ、うん、待ってくれるかな」

慌てて走り出すシャキン。

既に歩き出していたメンバーと合流できたのは、出発の門の手前だった。
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746 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:06:42 ID:l1O.OzB20

C.クー班:【叢1】



川 ゚ -゚)「ブーン右!」

クーの指示によって右を見たブーンの目前、タヌキのような顔をした人型モンスターが曲刀を振り上げていた。

( ^ω^)「当たらないお!」

間合いを測るように手のひらを敵に向けて右手を伸ばし、振り下ろされた曲刀をほんの少しだけ左にステップを踏むことで避け、左手で持った片手剣を光らせながら左下から右上に一閃し、そのまま真下に振り下ろして敵の刀を持つ手を切り落とし、更に右下から左上に手首を返しながら剣を振り上げる。

モンスターの体に大きく刻まれるバツの文字。

川 ゚ –゚)「ツンスイッチ!」

クーの言葉の前にブーンの右下に低い姿勢で剣を構えたツンが駆け込み、そのまま水色に光らせた例ピアをモンスターの顎に一突きした。

ξ゚听)ξ「どうだ!」

剣技の流れのまま二つ目の突きを打とうとするツンの視界の中で敵のHPバーの赤いドットがすべて消え、モンスターがポリゴンと化した。

ξ゚听)ξ「よし!」

二発目をキャンセルしたツンが細剣を払いながら周囲を見ると、それぞれに戦っていたメンバーは、それぞれに対していたモンスターをポリゴンと変えていた。

川 ゚ -゚)「これでこのエリアの敵は一掃できたな」

薬草を採取するエリア【叢1】での戦いを終了させたメンバー達が、中央に立つクーのもとに近寄る。

( ´∀`)「けっこう手間取ったもなね」

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747 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:08:18 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「時間は大丈夫か?」

( ゚∋゚)「大丈夫だな。予定よりは数分余裕がある。」

( ´_ゝ`)「ホントにギリギリのスケジュール組んだんだな。ショボンは」

ξ゚听)ξ「私たちの戦闘力と情報から全部計算してるんだから、いつもの事とは言え感心するわよ」

川 ゚ -゚)「とはいえ余裕はないな。採取を終わらせて先に進もう」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

淡く光る薬草の前にお座りをしてモナーを呼ぶビーグル。

( ´∀`)「ビーグルが見つけたもなよ」

川 ゚ -゚)「良いぞビーグル」

駆け寄り、ビーグルの頭をひと撫でしてから薬草を採取するクー。
その後ろからきたモナーがビーグルを抱き上げる。

( ´∀`)「えらいもな」

▼*・ェ・▼「くーん」

( ´_ゝ`)「次はどこだ?」

( ^ω^)「【村】だおね。今とった薬草を村の道具屋に届けるんだお」

(´<_` )「そこで次のクエストか」

ξ゚听)ξ「次っていうより、追加?最初のクエストがまだ終わらないし」

川 ゚ -゚)「採取終了!」

採取をしていたクーの周囲を警戒しつつも呑気に喋っているメンバー達。
立ち上がったクーが振り返り、にやっと笑う。

川*゚ -゚)「限度いっぱい採れた」

ξ゚听)ξ「はいはい、おめでとう」

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748 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:09:22 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「じゃあ次に行こう。兄者、弟者」

( ´_ゝ`)「了解した」

(´<_` )「おう」

一番前に立つ兄者と弟者。
その次にブーンとツンが続き、モナーとビーグルがその後ろを進む。
そしてクックルが続こうとすると、隣にクーが並んで歩き始めた。

川 ゚ –゚)「クックル」

( ゚∋゚)「なんだ?」

川 ゚ -゚)「村を出た後は、戦闘指揮は任せたぞ」

( ゚∋゚)「……分かった。分かったが…ほんとにやるのか」

川 ゚ –゚)「人数も増えたし、指揮を執れる人間も増えないとだからな。モララーと兄者、弟者もこれから練習させる予定らしい」

( ゚∋゚)「しかし、ショボンの考えだしこれからを見据えた指示だとは思うが、おれに指揮が執れるとは思えないんだが」

川 ゚ –゚)「まぁそう言うな。ショボンから講習も受けたんだろ?」

(;-∋-)「言うな…思い出したくない」

川;゚ -゚)「悪かった」

( -∋-)「まったく。なんでおれなんだ」

川 ゚ -゚)「うちのメンバーは前に出る特攻好きが多いからな、後方支援系のクックルには指揮もできるようになってもらいたいんだろ」

(;-∋-)「はあ…」

クックルのため息とともに、時間通りに次のエリアへと向かうC班の面々だった。



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749 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:11:18 ID:l1O.OzB20

A.ショボン班:【叢1】と【叢2】の間のエリア



街を出たショボン班はまず【花畑】に向かい、一戦を済ませている。
50層に近くなりりモンスターは強力だったが、レベルはもちろんのこと戦いに慣れたメンバーにとってはそれほど強敵ではなく、予定通りにエリア内のモンスターを殲滅し、必要なアイテムだけを採取して次のエリアに向かった。

(´・ω・`)「エクスト左!」

<_プー゚)フ「おう!」

(´・ω・`)「トソン右後ろ下!前に出過ぎ!」

(゚、゚;トソン「は、はい!」

大型の蜂型モンスターを倒して一息つこうとしたエクストに飛ぶショボンの指示。
最後の一撃を通常攻撃にしていたことからすぐさま反応でき、左側で既に攻撃態勢を取っていた蜂型モンスターに両手剣を向ける。
更にスイッチと援護のためにと前に出ようとしていたトソンに向けて飛ぶ声。

トソンが前に出るのを止め、右後ろ斜め下を見ながら槍を構えようとすると地面の一部が吹き飛び緑色の蔦が襲い掛かった。

(゚、゚;トソン!

思わず槍を掴んで防御姿勢を取ったトソン。
しかし目前で蔦の動きが止まったため、慌ててバックステップで距離を取った。

そのトソンの瞳に映る、蔦に刺さった数本の針。
それは今日何度か見ているショボンの投擲武器であった。

(´・ω・`)「トソン止まらずに切る!」

(゚、゚トソン「!はい!」

根元を削ぐ様に槍を一閃し、蔦を切り裂いた。
しかしそれは敵モンスターの一部にすぎず、切り裂かれたことに怒った本体が大地を揺らして数十本の蔦を繰り出した。

(゚、゚トソン!

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750 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:12:46 ID:l1O.OzB20

<_プー゚)フ「うりゃあ!」

両手剣を振り回して駆け回るエクスト。
一振りでけん制し、一振りで蔦を裂く。

(゚、゚トソン「エクスト!」

<_プー゚)フ「やるぜやるぜやるぜやるぜ!」

周りから見るとただ闇雲に振り回しているようにしか見えないその剣の軌道はかなり不安だが、蔦を切り裂くという結果は出ているので本人は多少は考えているのであろう。

<_プー゚)フ「あっ」

空振り一閃。

逃れた蔦がエクストの頭上から降り注ぐ。

(゚、゚トソン「エクスト!!」
 _
( ゚∀゚)「あんまり突っ込むなよ」

エクストの頭上、自分の位置から斜め上空に向けて剣技を繰り出すジョルジュ。
駆け出した加速とともに空を飛ぶようジャンプする。そして大きく両手剣を一閃した。

(゚、゚トソン「すごい!」

<_プー゚)フ「うを!」

バラバラと地面に落ちながらポリゴンと化し消えていく蔦。
それを背後に着地したジョルジュ。
剣技後の硬直を起こすその体を狙おうと地面から顔を出した触手。
それを端からことごとく潰していくモララーとフサギコ。

( ・∀・)「ジョルジュに突っ込むなって注意を受けるって」

ミ,,゚Д゚彡「もうすこし視野を広くすると良いから」

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751 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:14:03 ID:l1O.OzB20

二人はギルド内では特にスピードに力を入れているわけではないが、その速さと一撃で蔦を撃破していく姿はトソンとエクストを驚嘆させた。

( ・∀・)「ふさ、刈る数競争な」

ミ,,゚Д゚彡「今度は負けないから!」

しかも雑談しつつ。
 _
( ゚∀゚)「おれもやりたいが、おれはこっちだな!」

硬直が解け両手剣を構えなおしたジョルジュだが、視界の隅に走った光の線がショボンの投げたナイフだと気付き、視界をそちらに向けた。
そして大地に突き刺さったナイフを見て、その位置向かって駆け寄り渾身の単発重撃の剣技を放つ。

(゚、゚トソン「なっ!なにをして!」

<_プー゚)フ「おいおい」

地面深く突き刺さるジョルジュの両手剣。
同時にあたり一面に響くモンスターの叫び声。

( ・∀・)「おっしゃ」

ミ,,゚Д゚彡「いけるから!」

蠢く蔦を刈っていたモララーとフサギコがジョルジュが剣を突き立てた場所に駆け寄り、構えを取る。
呆然とそれを見るエクストとトソン。

硬直の溶けたジョルジュが剣を抜きながら後方にバックステップするとその前に移動するモララーとフサギコ。

(´・ω・`)「フサギコから3!2!1!くる!」

ショボンのカウントと共に地表が吹き飛ぶと、幾本もの太い蔦を体にし、巨大な花を顔のようにした植物型モンスターが現れた。
HPゲージは三本。しかし既に二本まで減っている。

ミ,,゚Д゚彡「!!」

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752 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:15:11 ID:l1O.OzB20

モンスターが態勢を整える前、今だ土埃が舞う中を駆けるフサギコ。
無言で刀用剣技を放つ。

(゚、゚トソン「!あの技は!」

小型モンスターならば体を浮かせてしまう一撃。
しかし今戦っている植物モンスターはフサギコとくらべ三倍ほどの高さと4倍ほどの横幅があるため浮かせることは出来なかった。

<_プー゚)フ「さすがにむりか」

だが相手を硬直させることには成功し、危なげなくそのまま連撃につなげる。

(゚、゚トソン「刀用ソードスキルの連続攻撃」

フサギコの持つ刀が青く光り、赤く光り、水色に光り、そのたびに光の線をモンスターに叩き込む。その一つ一つがHPゲージを減らし、残り一本となった。

(´・ω・‘)「もら!カウント3!2!1!ゴー!」

いまだフサギコが剣をふるう背中に向かって駆け出すモララー。
その右手にはめられた爪の武器はすでに赤色に光っている。

<_プー゚)フ「はやいだろおい!」

(゚、゚トソン「タイミングが!」

外野の声など全く気にせずフサギコの背に向かってジャンプするモララー。

( ・∀・)「ふさ!」

ミ,,゚Д゚彡「モララー!」

ミ,,゚Д゚彡「スイッチ!」(・∀・ )

連撃の最後の一撃を放ったフサギコの肩に足をかけて更に高く飛ぶモララー。
苦悶の雄叫びをあげるその巨大な花を右上から左下に爪で裂く。
そしてそのまま空中で5連撃を放ち、その全てを命中させた。

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753 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:16:35 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「ジョル!最後二発で撃破!エクスト!トソン!遊んでないで左後方上空に蜂!二人で叩け!」

<_プー゚)フ「お、おう!」

(゚、゚トソン「は、はい!」

呆然とその姿を見ていたエクストとトソンに対して飛ぶ指示。
慌てて左側を見る二人の目の前に、ポリゴンから蜂型に体を完成させようとする二匹のモンスター。

<_プー゚)フ「トソン!初撃で手前のを半分まで削るからそのあとは頼む!おれはそのまま後ろのを叩く!」

(゚、゚トソン「!わ、わかりました!手前を倒したら援護に回ります!」

トソンの言葉を最後まで聞かず、先にモンスターの形に成った手前の蜂に対して単発重撃加速移動剣技を叩き込むエクスト。
加速移動という言葉はだてではなく、二匹目の蜂が完全に成形する前にその目の前に移動していた。

(゚、゚トソン「は!」

長槍で突き、払う。
エクストの一撃で半分まで減っていたHPゲージをさらに減らし、続けて剣技に頼らぬ攻撃を二発。
そしてモンスターが硬直したと思い剣技を出すために構えを取ったその時に動き始めた蜂。

(゚、゚;トソン(まずい!)

尻尾の針をこちらに向けた蜂を切り裂く二本の針。

(゚、゚トソン!(ありがとうございます!)

ショボンの作ってくれた隙をついて剣技を放つトソン。
それによってかろうじて手前の蜂を倒す。

(゚、゚;トソン「はあ……はあ……」

肩で息をして呼吸を整えるが、すぐに思い直し先にいるエクストを見ると、ちょうど後方の蜂をポリゴンに変えていた。

<_プー゚;)フ「た、倒した…」

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754 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:17:40 ID:l1O.OzB20

自分と同じように肩で息をするエクストを見て、膝をついてしまうトソン。

(゚、゚;トソン「良かった…」

(´・ω・`)「モララー、予定との時間差見てもらえる?」

そんな二人をよそにエリア内に落ちている自分の投げたナイフや針を回収しているショボン。モララー達三人も手伝っていたが、ショボンの質問でウインドウを出す。

( ・∀・)「次が【叢2】のエリアだけど、このままだと5分くらい早いな。どうする?」

(´・ω・`)「2分…いや3分休憩しようか。それくらいなら次のモンスターポップもしないだろうし。カウント頼んでいいかな」

( ・∀・)「分かった」

<_プー゚;)フ「なんだこいつら…」

(゚、゚;トソン「疲れないんですか?」

ミ,,゚Д゚彡「無駄打ちや空振りがないから。必要最低限の攻撃しかしてないから」

( ・∀・)「二人は無駄な動きが多いよな。特にエクストは」

<_プー゚;)フ「そんなこと言われてもよ」

針を拾っていたフサギコが動けないでいる二人に声をかけると、ウインドウを開いたまま時間とスケジュールのチェックをしているモララーも話に参加した。

( ・∀・)「とりあえず両手剣を振り回すな」

ミ,,゚Д゚彡「トソンはもう少し相手との距離感をつかまないとだめだから」

<_プー゚)フ「でもよう」

(゚、゚トソン「……はい」

ワイワイと話し始める四人を見て、口元に笑みを浮かべるショボン。
 _
( ゚∀゚)「まーたいろいろ企んでやがるし」

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755 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:18:47 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「人聞きが悪いな。別に企んでないよ」
 _
( ゚∀゚)「でも、予定通りの状況だろ?ほら、ナイフと針」

ショボンのそばにやってきたジョルジュが差し出した右手には、二本のナイフと十数本の針が握られていた。

(´・ω・`)「ありがと。助かるよ。……まあね。あの二人は僕の指示に慣れてもしょうがないから、ちょっと厳しめに指示は出してるけどさ」
 _
( ゚∀゚)「そっちもそうだけど、モラとふさのほうだよ」

(´・ω・`)「ん?なんの話かな?」
 _
(;゚∀゚)「…はいはい。何もないってことなんだな」

にっこりとほほ笑むショボンを見て、本日二度目の冷や汗を流すジョルジュだった。



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756 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:19:59 ID:l1O.OzB20

B.シャキン班:【山】の麓



(`・ω・´)「うをーーー!!!」

目の前に現れた五体の狼男。
真っ先に突っ込んでいったシャキンの後を追うミルナとデミタス。
その後ろにドクオとハイン、そしてギコとしぃが続く。

(`・ω・´)「っ!」

左手に持った盾で先頭にいた[狼男1]にぶつかり、その勢いのまま後方に押す。
雄叫びをあげて抵抗する狼男だったがシャキンの勢いに負け、何も出来ぬまま吹き飛ばされてしまった。
シャキンは更に突進し、二匹目の[狼男2]に向かって片手剣を構え、剣技を放った。

(`・ω・´)「くらえやおら!」

単発重攻撃。
更に相手をノックバックさせるその攻撃は二匹目の狼男も後方に吹き飛ばし、三体目が最前列になった。

しかしそれには目もくれず、ノックバックを起こした[狼男2]を追撃するためにはしるシャキン。
しかしそれを黙って見逃すことはなく、[狼男3]が剣を振り上げた。

( ゚д゚ )「悪いな。それでもうちのギルマスなんでな」

シャキンを追って背を向けた[狼男3]。
その後頭部から背骨に沿って振り下ろされるミルナの斧。
もともと攻撃力のある斧による単発重攻撃は[狼男3]のHPを半分以上削り、カラーをイエローにした。

(´・_ゝ・`)「で、おれの出番と」

勢い余って地面に斧を突き立ててしまったまま硬直したミルナの横にデミタスが飛び出し、舞うように曲刀を振るう。

(´・_ゝ・`)「うらうらうらうらうらうらうらうら!」

剣技を使わずに振るわれた曲刀は[狼男3]を幾重にも切り裂き、その体をポリゴンに変えた。

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757 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:21:00 ID:l1O.OzB20

その二人を横に走り抜けるドクオとハイン。
[狼男2]に追撃の一閃を与えたながら駆け抜けるシャキンの後ろから飛び出し、右からドクオが片手剣で、左からハインが長柄の鎌で攻撃を放つ。

('A`)「ハイン!」

从*゚∀从「ドクオ!」

('A`)「ハイン!」

从*゚∀从「ドクオ!」

一撃目をドクオが放ち、普通ならそのまま返す刀で二撃目を放つところをほんの少しだけ動きを遅くすることにより、ハインが攻撃をした。
そしてハインも同じように動きを遅くすることによりドクオが攻撃を行う。
通常なら互いの動きを邪魔してしまう攻撃方法であり、汎用性は低くやる者はいない。しかし、小回りを利かすドクオと中距離からの攻撃を精密に行うハインの特性、そして武器を持つ手が逆なこともあり攻撃を可能とし、更にその個人スキルの高さから高い攻撃能力を持っていた。

('A`)「ハイン!」

从*゚∀从「ドクオ!」

流石に剣技は使えないが、そのかわりにタイミングさえ合えば永遠に続けることの出来る二人の剣の舞は幾重にも重ねられ、[狼男2]をポリゴンへと変える。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

シャキンを追い、四人が戦う背中を見ながら走り抜けるしぃとギコ。

シャキンが[狼男1]に三発目の斬撃を加えた時にやっとたどり着き、武器を構えた。

(`・ω・´)「二人とも遅いぞ!次でスイッチ!」

(;*゚ー゚)「はい!」

(;,,゚Д゚)「おう!」

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758 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:22:04 ID:l1O.OzB20

シャキンが繰り出した剣技によって後退する[狼男1]。その隙を縫ってさらに奥に進むシャキン。
シャキンを敵と認識しているためその背中を追おうとした[狼男1]の懐に小さい体をさらに小さくさせてもぐりこんだしぃが、自分から見て斜め上、狼男ののどもと目掛けて探検を突き刺した。

(*゚ー゚)「はあ!」

一撃目をきれいに決め、そのまま二撃三撃と剣技を狼男に浴びせる。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「ゴルァア!」

四撃目をわざと外して横に抜けたしぃの代わりにギコが狼男の正面に立ち、しぃを掴もうと伸ばした狼男の手を切り落とす。

狼男1「ぐうをおおぅををををおおお!」

雄叫びをあげる狼男に怯むことなくさらに剣を振るうギコ。
視界の隅でしぃが再び構えたのを確認し、タイミングを見計らって剣技を放つ。

(,,゚Д゚)「ゴラァァアアァァア!」

目の前に三角形を描くように剣を振るい、狼男のHPバーを赤にしてしぃとスイッチした。

(*゚ー゚)「!」

気合い一閃、覚えている剣技の中で一番強力な連撃技を繰り出すしぃ。
短剣が最後の一撃を放つと、[狼男1]がポリゴンと化した。



(`・ω・´)「まあこんなもんか」

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759 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:23:15 ID:l1O.OzB20

残りの二体は五人で倒し、肩で息をしているしぃとギコのもとにシャキンがやってきた。

(;*゚ー゚)「タイミングが遅くて、申し訳ありません」

(;,,゚Д゚)「すまなかった」

(`・ω・´)「遅いといっても対応できる遅さだからまだよかったがな、このフォーメーションでは前の四人を信じてもう少し前に出てきておいていいぞ」

(;*゚ー゚)「はい」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

(`・ω・´)「頼むぞ」

シャキンは二人の頭を大きな手でわしわしと撫でた後、ミルナの名を呼びながら周囲を調べているミルナ達の方に向かった。

(,,゚Д゚)「戦闘前とはまるで別人だなゴルァ」

(*゚ー゚)「すごいよね。シャキンさんも、ミルナさん達も。これで中層クラスなんだから、攻略組とかどんなに強いんだろ」

(,,゚Д゚)「……想像したくないぞ」

(*゚ー゚)「『想像できない』でしょ、本音は」

(,,゚Д゚)「……」

(*゚ー゚)「私もそうだよ。VIPに入ってひと月ちょっと、戦闘力も戦い方も上がったつもりだけど、もっともっと頑張らなきゃだね」

(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」

エリアの端で顔を見合わせて笑う二人に、中央からシャキンが声をかけた。



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760 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:24:20 ID:l1O.OzB20

C.クー班:【花畑】



村で追加のクエスト受理したクー班は、村を出て【大樹】にて実を採取し、【街2】へと向かった。そこで更に追加クエストを受理し、次の採取エリア【花畑】へと向かった。

その道中で何回かモンスターに遭遇したが、それは数も少なく一種類のみだったため、指示を出すクックルも迷わずに済み、問題なく撃破していった。
本来ならば【大樹】エリアには強力なモンスターがいたはずなのだが、C班が到着する前にB班が通って退治していたため、一度倒された後再度ポップする時間の関係でC班は戦わずに実を採取しすることができていた。

そしてこのエリア【花畑】にて初めて同時に三種類の敵と数多くの敵に相対し、クックルは何回か間違えて指示を出してしまい、メンバーが攻撃を受けてしまった。

致命傷ではもちろんなく、HPバーのドットを一つ減らす程度の傷ではあったがクックルが平常心をなくすには充分な出来事であったため、飛ばす指示は逆に全員の戦闘を邪魔してしまうこともあった。

(;゚∋゚)「み、みんな」

( ^ω^)「クックル!おちつくんだお!」

攻撃を受けたブーンが頭より高く飛ぶ蜂と悪戦苦闘しつつ、クックルに声をかけた。

(;゚∋゚)「ブーン!傷は!」

( ^ω^)「別に部位欠損ペナルティが入ったわけでもなく、ただちょっとHPが減っただけだお!気にしなくていいお!」

ξ゚听)ξ「そうそう!それよりも深呼吸して!」

同じく蜂相手に苦戦するツンが声をかける。

ξ゚听)ξ「まずは落ち着くの!」

( ´∀`)「そうもなよ!おちつくもな!」

ゴリラ型モンスターと対峙するモナー。
動きは遅いがパワーがあり、更に固い体毛が軽い攻撃は弾くことがあるためうかつに近寄れず、クーと共に距離を取って細かい攻撃を仕掛けている。

.

761 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:25:25 ID:l1O.OzB20

( ´∀`)「ビーグル!たのむもな!」

▼*・ェ・▼「きゃんきゃん!」

モナーの合図を受けて身震いするビーグル。
すると体の産毛が抜けて空中を漂い、メンバーの体に絡みつく。
するとHPを減らしていたメンバーのゲージが1〜2目盛回復した。

( ^ω^)「ビーグルありがとうだお!」

( ´_ゝ`)「サンキュービーグル!」

(´<_` )「いいぞビーグル!」

すばしっこいタヌキの群れに翻弄される兄者と弟者。
攻撃力はほとんどないが動きが早いため、二人は攻撃を当てることができずにいた。

(´<_` )「クックル!自分を信じるんだ!俺らはおまえを信じてる!」

( ´_ゝ`)「この程度ならまだまだ耐えられる!慌てず騒がず考えろ!」

( ゚∋゚)「みんな……」

川 ゚ -゚)「そうだクックル!私たちを見ろ!おのずと出す指示が浮かぶはずだ!」

モナーと共にゴリラに一撃を与えたクーが叫ぶ。

それらを聞いて、大きく深呼吸するクックル。
一回ギュッと目をつむり、そしてすぐに大きく見開いて戦う仲間たちを見た。

( ゚∋゚)「よし」

小さく、けれど力強く呟いてから、大きく息を吸った。

.

762 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:26:32 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「クーは挑発して注意をひきつつ後退!モナー!ブーン!チェンジ!」

川 ゚ -゚)「了解した」

( ´∀`)「わかったもな!」

( ^ω^)「了解だお!」

薙刀を腋に挟んで大きく手を叩くクー。
その音に反応し、ゴリラがクーに向かう。

それを見逃さずブーンの場所に向かうモナー。ビーグルが後ろを続く。

( ´∀`)「もなもな、もな!」

三つ又の槍を振るい、ブーンとモンスターの間に躍り出るモナー。
驚いたように後ろ向きに飛びつつ態勢を整えようとした蜂に向かって槍を突き刺すモナー。

( ´∀`)「ブーンの剣よりリーチはあるもなよ」

突き刺された大型蜂のHPゲージが目に見えて減った。

( ゚∋゚)「ブーンはゴリラの背中に一撃後兄者とチェンジ!兄者はクーの代わりに挑発!クーは兄者が来たらツンと交代!ツン!クーとチェンジ!」

( ^ω^)「!」

( ´_ゝ`)「!」

川 ゚ -゚)「!分かった!」

走りを加速させたブーンがクーに襲い掛からんと両手を上げたゴリラ型モンスターの背中に深く一撃を入れ、そのまま通り過ぎて兄者の横に滑り込む。
そしてそのままタヌキの群れに飛び込み、タヌキを超えるスピードで片手剣を振るった。

( ´_ゝ`)「やれブーン!」

一声かけてゴリラに向かう兄者。

.

763 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:28:35 ID:l1O.OzB20

ブーンの一撃で一度動きを止めたもののすぐに戦闘態勢に戻ったゴリラに鎚による単発重撃の剣技を放った。

( ´_ゝ`)「大人しくしてろ!」

叫び声をあげて後退するゴリラ。
重い一発を与えることでモンスターを硬直させたが自分も剣技後の硬直で動けなくなる兄者。
しかし瞳を動かしてクーを見る。
その視線に頷いてから駆け出すクー。

( ゚∋゚)「ツン!クーとチェンジしたらそのまま弟者とチェンジ!」

ξ゚听)ξ「了解!」

川 ゚ -゚)「とりゃあ!」

ツンが細剣を蜂の頭めがけて繰り出すと、予想していたかのように避けられる。
しかしその避けた先にクーが現れ、薙刀で攻撃を与えた。

川 ゚ -゚)「ツンナイス!」

ξ゚听)ξ「あと宜しく!」

敵を見据えたまま言葉を交わした後走り出すツン。
最短距離で弟者のそばにたどり着くと、走り回るタヌキに対して細剣の先を的確に当て始めた。

ξ゚听)ξ「ここは任せて!」

(´<_` )「任せた!」

既に硬直を終わらせて対峙している兄者とゴリラのもとに向かう弟者。

.

764 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:29:43 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「…よし。全員そのまま撃破!」

ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)( ´_ゝ`)「了解!」(^ω^ )(´∀` )(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

走り回るタヌキに対してそれ以上のスピードで確実に攻撃を与えるブーンとツン。

飛ぶ敵にも慌てることなくそのリーチを活かしてダメージを与えるモナーとクー。
巨大蜂がバランスを崩して低空飛行に変えると、そこにビーグルが爪による攻撃を仕掛けていた。

そしてパワーにはパワーで対抗する兄者と弟者はどちらかが対峙して防御をすると、横からもう一人が確実に重い一撃を当てることでゴリラのHPを削った。

三つの戦いを見ながらいつでもフォローに入れるように場所取りをしつつ、それ以外の周囲を見回すクックル。

その全てを見通すような瞳は、ショボンがするそれと非常によく似ていた。



.

765 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:31:17 ID:l1O.OzB20

A.ショボン班:【大樹】



上の層の底まで届きそうな大樹の下。
何匹かのモンスターを倒して、周囲を伺うA班のメンバー達。

(´・ω・`)「大丈夫みたいだね。情報よりポップ数が二体多かったけど、ぎりぎり誤差範囲かな」

ショボンの声で緊張を解く五人。
特にエクストとトソンは目に見えて疲れており、大きく吐息を吐きながら座ってしまった。

( ・∀・)「お疲れさん」

(´・ω・`)「ちょっと疲れたかな?戦えそうだったから予定よりも戦闘を増やしたけど、セーブするかい?」

<_プー゚;)フ「だ、大丈夫だ!まだいける」

モララーに渡された飲み物を飲むエクストとトソン。

(゚、゚;トソン「わ、私も大丈夫です」

座ったままショボンと話す二人。
モララーはウインドウを出して状況の整理を始め、ジョルジュとフサギコは自分のストレージから出した回復POTを出して飲みながら周囲の採取物を探し始めた。

( ・∀・)「ここを出たら次の目的地は【村】。そこまでは森の中だから、モンスターは出まくりだな。BとCの先行もからも時間が外れるから、次がポップしてるだろうし」

(´・ω・`)「回避して進むことも可能だろうから、出来るだけ回避で行こうか」
 _
( ゚∀゚)「おれの負担をもっと増やしてもいいぞ。余裕あるし」

ミ,,゚Д゚彡「ふさもだいじょうぶだから!」

めぼしいものを採取したジョルジュとフサギコもやってきて、周囲を観察しながら話に加わった。

.

766 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:32:22 ID:l1O.OzB20

<_プー゚;)フ「あんたたちは、かなり余裕があるな」

(゚、゚;トソン「なにか、新しい薬でも…」

(;・∀・)「ねーよそんなもん。危ない発想だなおい」
 _
( ゚∀゚)「二人は攻撃力は高いけど、無駄な動きが多いから疲れやすいんだよ。とどめを決める時もオーバーキルが多いし。二人とも、自分の攻撃力で相手にどれだけのダメージを与えられるかをわかってないだろ」

<_プー゚;)フ「……」

(゚、゚;トソン「……」

ミ,,゚Д゚彡「通常攻撃はもちろん、ソードスキルもよく使うやつや使い勝手の良いやつは、攻撃した時にどれくらいダメージを与えられたのかを瞬時に判断しなきゃだめだから。そしてそれ以外の技だとどれくらい攻撃を与えられるのかをすぐに計算しなきゃだめだから」

( ・∀・)「シャキンの所は特攻と速攻がメインだからわかり辛いけど、四人ともそれが出来てるぞ。よく見ればわかるはずだ」

ミ,,゚Д゚彡「きっとミルナやデミタスの方が二人の戦闘力を冷静に分析してわかってると思うから、一度聞いてみると良いから」

<_プー゚;)フ「……」

(゚、゚;トソン「……」

自分たちの欠点を指摘され、何も言えなくなってしまう二人。
二人とも攻略組ではないものの、ソロでここまで戦い生きて生きた自負があり、同じ中層クラスならトップクラスであるという自信があった。
しかしギルドN−Sに入り自分より強い者の存在を肌で感じ、V.I.P.のメンバーと共闘することによってそのことを完全に理解し、動けなくなってしまった。

(´・ω・`)(あ……ちょっとやばいかな)

.

767 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:33:32 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「……ま、そうはいっても出来ないものは仕方ないね。シャキンがうちの新人は強い強い言うから期待して今回の戦闘を組んだけど、ちょっと厳しかったかな。この後は規定エリア以外の戦闘は避ける方向で行こうか。僕の設定は机上の空論だったね。ごめんね、二人とも」

柔らかいほほえみで二人を見降ろすショボン。

<_プー゚;)フ!

(゚、゚;トソン!

そして三人にだけわかるように怒りを含んだ視線を向けた。
 _
(;゚∀゚)!

(;・∀・)!

ミ;,,゚Д゚彡!
 _
(;゚∀゚)「で、でも手数の多さでそれを補って余りあるよな。エクストは。おれより多いんじゃないか」

<_プー゚;)フ「え、あ、そ、そうか?」

(;・∀・)「トソンの正確さも捨てたもんじゃないぞ。うちでいえばツンが得意だけど、匹敵するんじゃないか?」

(゚、゚;トソン「あ、ありがとうございます」

ミ;,,゚Д゚彡「それに今までソロでいたならオーバーキルも仕方ないから!確実に倒すために慎重になってしまうのは仕方ないから!」
 _
(;゚∀゚)「そ、そうだよな。そりゃそうだ」

(;・∀・)「計算間違えは恐いからな。どうしてもそうなるだろ」

(´・ω・`)「なにみんな、いきなり甘くなっちゃって」
 
.

768 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:34:59 ID:l1O.OzB20

 _
(;゚∀゚)「い、いや別に甘いわけじゃないぞ。よく考えたらそうだってだけで。」

(;・∀・)「そうそう、ソロとパーティーなら戦い方も違うし。おれもVIPとNSくらいしか知らねえけど、この二つは戦い方は特殊だろ。多分」

ミ;,,゚Д゚彡「そうだから!しょうがないから!」

(´・ω・`)「ふーん。さて、それじゃあどうしようか」

三人に向けていた怒りの視線を解除したショボン。
受けていた三人はあからさまにほっとした表情をしたが、座っている二人は気付いていない。

(´・ω・`)「そろそろ出発しないとだけど……」

ショボンが腰をさげ、しゃがみ、座る二人と目線を合わせた。

(´・ω・`)「どうする?やれる?」

<_プー゚)フ!

(゚、゚トソン!

(´・ω・`)「二人がやれるなら、このままいく。けれど、今までのペースではきついというのなら、戦闘は必要最低限にした作戦に変更する。フォーメーションも二人の負荷を軽減させる。」

<_プー゚;)フ「……」

(゚、゚;トソン「……」

(´・ω・`)「けれど、これは断言できる。僕は二人に無理な指示は出してない。出来ないことを求めたりはしていない。実際、戦闘自体は問題なかったからね。あとは戦い方と、意識の向け方の問題だけだと思っている」

<_プー゚)フ!

(゚、゚トソン!

(´・ω・`)「そして僕は、君たち二人がその【戦い方】と【意識の使い方】を掴む手助けができると思っている。…いまのこのクエストでの戦闘を通してね」

.

769 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:35:59 ID:l1O.OzB20

<_プー゚)フ

(゚、゚トソン

(´・ω・`)「もう一度だけ聞こう。どうする?やれるかい?」

<_プー゚)フ「やる」

(゚、゚トソン「やります」

(´・ω・`)「モララー!時間は!?」

立ち上がり、そのまま振り返って鋭い瞳でモララーをみるショボン。
ピンと伸びた背筋、それほど大きくないその体が、座る二人にはとても大きく見えた。

( ・∀・)「あと5分は余裕がある」

(´・ω・`)「3分で出発する」
 _
( ゚∀゚)「オッケー」

ミ,,゚Д゚彡「分かったから!」

ウインドウを出して準備を始める三人。
装備に変更は無いしHPもすでに満タンにしてあるが、POTの持ち数と必要な時にすぐ使えるようにいくつかのPOTやクリスタルを実体化させて腰につけたポーチに入れた。

(´・ω・`)「二人も……大丈夫みたいだね」

振り返ったショボンの視線の先には、すでに立ち上がり準備を整えたエクストとトソン。

ミ,,゚Д゚彡「準備完了だから!」
 _
( ゚∀゚)「いけるぜ」

( ・∀・)「準備万端」

<_プー゚)フ「いくぜいくぜいくぜいくぜ!」

(゚、゚トソン「宜しくお願いします」

5人を見て、にっこりとほほ笑むショボン。

(´・ω・`)「よし、まだ2分しかたってないけど、いこうか」



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770 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:37:09 ID:l1O.OzB20

B.シャキン班:【山】



鬱蒼と茂った木々のエリア。
野球場ほどの大きさの芝生だが空を隠すようにドームを作る木々が外からの光を遮っている
そしてその薄闇の中、中央でこちらを睨む巨大な狼が、体全体からうすぼんやりと銀色の輝きを放っていた。

(;`・ω・´)「さすがに強いな」

(; ゚д゚ )「予想以上だ」

(;´・_ゝ・`)「俺らの班だけ早めに終わりそうな時間設定だったが、こういうことか」

盾を装備したシャキンとデミタス。両手斧を装備したミルナが盾役で隊列の一番前にいる。

('A`;)「おい、下がってPOT飲んどけ」

从;゚∀从「大丈夫、…と言いたいが甘える。ギコ、しぃ、いけるか?」

二列目にいた距離攻撃の出来るハインと速攻ができるドクオ。
HPバーが黄色に近くなったため、ハインが回復POTをポーチから出しながら後退する。

(,,゚Д゚)「オウだゴルァ!」

(*゚ー゚)「はい!いきます!」

メインの五人のうちの誰かが回復POTを飲むために下がった時に穴を埋め、更に全員攻撃時は一番外から中に入って剣技を放つギコとしぃがドクオの隣に立つ。

視線は中央の巨大狼にむけたまま、口を開くドクオ。

('A`)「二人とも大丈夫か」

(,,゚Д゚)「全然大丈夫だゴラァ!」

(*゚ー゚)「…ドクオさん、あれ、もしかして【シルブリュールフ】ですか?」

六人の武器と視線の先に立つ、ぼんやりと光る巨大な銀色の狼。
低く嘶くような唸り声が、耳に届く。

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771 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:38:18 ID:l1O.OzB20

(,,゚Д゚)「それって確か」

('A`)「ああ、多分そうだ」

(,,゚Д゚)「!ってことはビーグルも育つとああなるってことか!?」

ギコの驚きの声に反応したかのように雄叫びをあげる巨大狼。

(`・ω・´)「衝撃波!」

狼のモーションにあわせて盾を構えたシャキンとデミタス。
その後ろに隠れるミルナと三人。

('A`)「雄叫びによる衝撃波、爪による攻撃、手足及び尻尾での薙ぎ払い、直訳した後の体当たりによる薙ぎ倒し。共通点は多いな。なにより見た目がそっくりだ」

(,,゚Д゚)「マジか」

('A`)「いっておくが、ビーグルはあの大きさから成長しないから」

(,,゚Д゚)「なんだ……よかったような、残念なような」

(; ゚д゚ )「こんな時に雑談とは余裕だな、ドクオ」

('A`)「状況がどんな時でも冷静に分析。うちのギルマスに叩き込まれてるからな」

(´・_ゝ・`)「うちの特攻野郎とは大違いだな」

(`・ω・´)「デミタス、ちゃんと前を見ろ」

(*゚ー゚)「咆哮の後は高い確率で尻尾による薙ぎ払いですよね」

ぼそっと呟いたしぃの言葉を受けて、はっと前を見る五人。

(`・ω・´)「しぃちゃんそういうのはもっと早く!」

雄叫びを止めた狼が視線をこちらに向け、跳躍しようとする姿勢を取った。

(*゚ー゚)「あ、薙ぎ倒しの方だ」

(;´・_ゝ・`)「なんでこの娘この状態でこんなに冷静!?」

.

772 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:39:26 ID:l1O.OzB20

慌てて下がろうとする盾役三人に対し、逆に武器を構える残りの三人。

(; ゚д゚ )「おい!」

ミルナがしぃの首根っこを持とうとしたその瞬間、叫び声が薄闇を切り裂いた。

从#゚∀从「ドクオに何しようとしてくれてんだこの野郎!!!!!」

長柄の鎌を構えたハインが武器を黄色に光らせながら突進し、跳躍モーションになって無防備になった狼の右足に向けて跳ぶ。

从#゚∀从「死にさらせ!」

振るわれた鎌。

右足の根元から首や肩に向かって幾数もの光の線を放つ。

从 ゚∀从「へっ」

('A`)「ナイスタイミングだ。ハイン」

从*゚∀从「どっくん!」

跳躍をキャンセルさせられて硬直した狼。そこに襲い掛かるドクオの片手剣。
その横からギコとしぃも突進する。

体の巨大な敵に同時に何人かが攻撃するのはあることだが、それが出来るサイズの敵はフロアボスであることがほとんどで、クエストボス程度ではほとんどお目にかからない。
通常のダンジョンやクエストに出てくる『巨大』と呼ばれるサイズは人の数倍程度の大きさがほとんどで、一度に攻撃を当てることが出来るのは一人もしくは二人くらいが限度である。
今目前にそびえたつ大きさの敵と戦ったことはドクオも片手が余るほどだし、ギコとしぃは初めてだった。
しかし、ドクオはもちろんギコとしぃも臆することなく剣を振るっていた。

(`・ω・´)「さすがショボンに鍛えられただけのことはあるな」

感心したように、けれどどこか呆れたように呟いたシャキン。
ミルナとデミタスは大きく頷いた。

.

773 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:40:41 ID:l1O.OzB20

('A`)「次の攻撃が来る!」

剣技を放った後の硬直も解け、その場を離れる四人。
慌てて盾役の三人がそれぞれに防御の構えを取る。

しかしその目の前で狼が体を震わせた。

(*゚ー゚)「!これは!」

水に濡れた体を乾かすかのように体を振るわせる狼。
銀色の体毛が空中に漂うと、三本まであるHPバーの二本目の真ん中まで減っていたゲージが、一本目の1ドット分まで回復した。

( ゚д゚ )「反則だろおい」

(*゚ー゚)「ビーグルちゃんと同じ……」

(,,゚Д゚)「おれ達のHPは回復してくれないんだな」

ギコの呟きに心の中で『あたりまえだろ』と突っ込みを入れつつも改めて戦闘態勢を取る六人。
各々に回復POTを口にしつつ、そのまま決めているフォーメーションの位置に着く。

(*゚ー゚)「ギコ君、刀身を青く光らせる剣技で3連撃以上の長いやつか突進系ってある?」

(,,゚Д゚)「?突然なんだゴルァ」

(*゚ー゚)「いいから」

(,,゚Д゚)「昨日レベル上げしてる時に覚えたのがたしか青かったぞゴルァ。突進からの3連撃だ。でもまだうまく使えないぞゴルァ」

(*゚ー゚)「流石ギコ君いいタイミングで覚えてる!」

横を向いてにっこりとほほ笑むしぃ。
そしてすぐさま前を向き、シャキンのいる場所に向けて走り出す。

(*゚ー゚)「ギコ君も来て!」

(,,゚Д゚)「お、おう!」

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774 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:42:02 ID:l1O.OzB20

('A`)「しぃ!?ギコ!?」

自分の横を走り抜けたしぃとギコに驚くドクオ。

(*゚ー゚)「シャキンさん!」

(`・ω・´)「なんだ!?すぐ攻撃が来るぞ!さがれ!」

(*゚ー゚)「あの狼が【シルブリュールフ】なら、もしもビーグルちゃんと同じ特性を持っているなら注意をひけるかもしれません。やらせてください」

(`・ω・´)「なんだって!?」

(*゚ー゚)「ギコ君、失敗した時のフォローと、成功した時の追撃をお願い」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴラァ」

(´・_ゝ・`)「お、おいお前ら」

(*゚ー゚)「もうすぐ攻撃が来ます。そのタイミングで出ます!」

三人の前に躍り出るしぃ。
それにギコが続き、しぃを視界の中心に置いて剣を構えた。

巨大狼「グルァアアアアアァアアアァアア!」

雄叫びをあげ、前足を上げようとした狼。
その瞬間しぃが駆け出し、刀身を青く光らせた短刀を前に突き出して跳躍した。

巨大狼の目前を、右下から左上に跳ぶしぃ。
しかし距離は遠く、狼に当たることなくただ4回の斬撃に繋がる剣技を繰り出した。

.

775 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:43:01 ID:l1O.OzB20



青い光をまとい。
下から上に走る流星のように。



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776 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:44:06 ID:l1O.OzB20

すると巨大狼は、動きを止めてゆっくりとそのしぃの動きを視線で追いはじめた。

(,,゚Д゚)「!前にしぃが言ってたぞゴルァ!モナーに短刀の使い方の特訓を受けた時に、ある剣技をするとビーグルがすごく喜んでいたって。それが、青い光かゴラァ!」

自分の後ろの五人が驚きの声をあげるなか、しぃが最後の空振りをしたのを見て駆け出すギコ。
それはしぃを助ける為ではなく、自らも剣技を繰り出すためだった。

(#,,゚Д゚)「ゴルァアアアァアアアアア!」

しぃの作った青い光の線と交差するように剣技を打つギコ。

青く光り輝く片手剣。
自然界ではあまり存在しない鮮明な青い光が線を作り、さきにしぃが作った光の残像と交差して大きなバツの字を空中に作り描く。

その足元を駆ける黒い影。

('A`)「このチャンスを無駄にしたら、この二人にもう偉そうなことは言えないな!」

叩きつけるようなドクオの一撃が巨大狼の足を襲い、巨大狼の一本目のバーの明かりをすべて消した。

思わず下を見る巨大狼の目前を、再びしぃが青い光を纏って跳ぶ。

それに目を奪われる巨大狼。

(`・ω・´)「!二人のソードスキルにあわせて速攻!連撃よりも重攻撃!モーションとタメが遅くても、2人に合わせろ!一回の攻撃で出来るだけ大きく削れ!!おれ達の攻撃のタイミングも合わせるんだ!」

(# ゚д゚ )
(#´・_ゝ・`)「おう!」
从#゚∀从

走り出したシャキンの後を追う残りの三人。

その間も、巨大狼の目前、青い光を纏って空を舞うしぃとギコ。
それに合わせて着実に確実に巨大狼のHPを削っていく五人。

この時点で、勝敗はすでについていた。



.

777 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:45:13 ID:l1O.OzB20

C.クー班:【街1】



クー班が追加クエストと派生クエストをすべて終わらせて、更に指定のアイテムを持って最初にクエストフラグを立てた【街1】に戻った時、すでに空は赤くなりかけていた。

川 ゚ -゚)「何とか間に合いそうだな」

ウインドウを出して、渡すアイテムをチェックしているクーを先頭に、クエストの依頼人がいる家に向かう7人。

( ´∀`)「良かったもな」

疲れて眠ってしまったビーグルを背負ったモナー。

( ´_ゝ`)「思ったより手間取ったな」

早速武器をしまい、採取した鉱石をチェックしている兄者。

(´<_` ;)「細かい蟻の大群がきつかった」

思い出したのか、顔をしかめる弟者。

ξ゚听)ξ「あれよりも切っても切っても立ち上がってくるゴーレム系がいやだったな」

忌々しげに眉間にしわを寄せるツン。

(;^ω^)「土人形の体力ははんばないからキツイお」

自分の剣だけでは倒せなかっただろうことを思い出し、冷や汗を流すブーン。

( ゚∋゚)「……」

そして、自分が指示を出す戦闘が終わってホッとした顔をしたクックル。
だが、何故かすぐに表情を引き締めた

川 ゚ -゚)「どうした?」

.

778 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:46:15 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「いや、スピードのブーンとツン。パワーの兄弟。中距離のクーとモナーとおれ。バランスのよい配置だったんだなと、改めて思った。」

川 ゚ -゚)「そうだな。更にモナーとクックルはパワー寄り、私がスピード寄り。流石の二人はポジション的な盾装備で先頭に立てるし、速攻のブーンもいるし。まぁバランスはいいだろ。今回の3班では一番バランスが良かったんじゃないか?」

( ´∀`)「そう思うもな」

(´<_` )「戦闘力特化のシャキンの所もそれなりだけど、ショボンの所は大丈夫だったのか。どうやらショボン以外はほぼ近接先頭で、盾装備もいなようだったが」

川 ゚ -゚)「ショボンとシャキンからクエストクリアの報告は来てたぞ。まぁショボン班はショボンがうまく回しただろ」

(;´_ゝ`)「シャキンの所の新人二人が潰れてなきゃいいが」

(´<_`;)「そんなことはしないだろ。潰さないギリギリのところで育てたんじゃないか?」

( ^ω^)「多分そうだお。潰すようなまねはしないはずだお。それよりもっと酷いことはしたかもしれないけど」

ξ゚听)ξ「否定できないところが辛いわね。まぁ後の打ち上げで色々聞きましょう」

(;´∀`)「誰もフォローできないもなね。モナも出来ないもなけど」

(;゚∋゚)「まあ、強くはなってるだろうから良いんじゃないだろうか」

川 ゚ -゚)「それで良いのかうちのギルマス」

.

779 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:47:18 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「でも、」

( ´_ゝ`)「まあ、」

( ´∀`)「そんなショボンが好きもなよ」

ξ゚听)ξ「そのおかげで生きてこられたしね」

( ^ω^)「そうだおね。ショボンがいなかったらとか考えたくないお」

自嘲気味にぼそっと呟くブーン。
そんな滅多に見せない表情を見て、ツンとモナーが不思議そうな顔をした。

川 ゚ -゚)「私やツンは普通にいる中層クラスの戦士に成れたかもわからないな」

( ^ω^)「ブーンもスピードに特化だけし続けて、途中でダメになってたかもだお」

(´<_` )「なんだ、三人は最初からショボンに色々指導されてたのか?」

ξ゚听)ξ「私とクーはこういうゲーム初めてだしね。あの日から二か月くらいはドクオの知識とショボンの判断に完全に任せてたわよ。正直、最初は何も考えられなかったし」

( ´Д`)「そうだったもなか」

川 ゚ -゚)「さすがにな。そういえば初めてだな。こんな話するの。…まあ、あの最初の日のことを口にするのは、さすがに辛かったからか」

( ´_ゝ`)「……そうだな。どうしてもあの日のことを思い出さなければいけなくなってしまうし」

( ゚∋゚)「あの日のことを思い出すのは……な……」

それぞれに思い出すことや考えることがあり、黙ってしまう7人。

夕焼けに赤く染まる道。
赤茶けた大地に、7人の影がを黒く伸びる。
それはまるで現実のようで、仮想現実だと思えなくて、今ちょうどあのはじまりの日のことを話していたこともあり、夢から覚めた夢のようなこの今の現実を前に、誰も何も話せなくなってしまった。

.

780 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:48:27 ID:l1O.OzB20

( ゚∋゚)「……でも……」

川 ゚ -゚)「クックル?」

小さく、自分に対して呟いた一言。
しかしそれは全員の耳に届き、クーがクックルの顔を見るとほぼ同時に6人がクックルを見た。

( ゚∋゚)「なんだろう。おれは、悲観に暮れてない。帰れると、元の世界に帰られると信じているんだろうな。きっと。そして、そう思えたのは、多分、みんなと一緒にいるからなんだと思う」

ξ゚听)ξ「クックル…」

( ´∀`)「そうもなよ!戻れるもな!」

( ´_ゝ`)「こんだけ頑張ってるんだからな。帰られなきゃ嘘だ」

(´<_` )「兄者はもっと頑張ったほうが良いと思うけどな」

( ´_ゝ`)「弟者はもう少し気楽にしないとダメだな」

(´<_` )「兄者のようになれと?」

( ´_ゝ`)「お手本にしていいんだぞ」

(´<_` )「絶対に嫌だ」

ξ゚听)ξ「そうね。戻れるわ。ううん。絶対に戻ってみせる」

川 ゚ -゚)「ああ、絶対にだ」

( ^ω^)「そうだお。絶対にだお」

7人の顔に笑顔が戻った頃、目的の家に7人は辿り着いた。



.

781 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 13:49:31 ID:l1O.OzB20
もう一度休憩。

三分の二くらいは投下終了。

ふぅ…。

782 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:15:59 ID:l1O.OzB20
再開!

甘いものは正義!

783 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:16:41 ID:l1O.OzB20



3.幾千の夜を超えて



.

784 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:18:06 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「それでは!3クエストの攻略と全員の無事な生還を祝いまして!乾杯!」

 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)( ´∀`)ミ,,゚Д゚彡
( ・∀・)(*゚―゚)(,,゚Д゚)
( ゚д゚ )(´・_ゝ・`)<_プー゚)フ

「かんぱーい!」

(´・ω・`)(´<_` )(゚、゚トソン

从*゚∀从('A`)「かんぱーい」

( ゚∋゚)《乾杯!》

▼*・ェ・▼「きゃん!」

(`;ω;´)「良かったみんなちゃんと乾杯してくれた」

,

785 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:19:00 ID:l1O.OzB20

当日の夜。
モナーの管理するVIP農場に、ギルドV.I.PとギルドN−Sの全員が集まっていた。

3クエストは無事にすべてクリアし、クエストクリアの情報は通常通り情報屋に渡し、シャキンは別に依頼者にその情報を送って仕事は終了した。
そして今回の合同クエスト攻略の無事の成功を祝い、祝賀会を始めたところだった。

まだ日の光がほんの少しだけ残る夕闇の中、周囲を明るくする松明を燃やし、テーブルにはごちそうをフサギコとしぃが並べる。
炭を燃やした火の上にはモナーとクックルが用意した肉と野菜が刺さった串が並べられ、かぐわしい香りを周囲に漂わせている。

最初は全員で、その後はクエストをクリアした班に分かれて、途中からは入り乱れて話し、笑い、共感し、怒り、許し、そしてまた笑い、ギルドの垣根を越えた親睦を深めていった。

.

786 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:20:00 ID:l1O.OzB20

(゚、゚トソン「本当にショボンさんはすごいです!」

ξ゚听)ξ「はいはい」

<_プー゚)フ「いやマジですごいって!なんだあの的確な指示はよ。でも、それよりなによりあの采配に振り回されないで戦っていられるあんた達は、本当に強くてすごいんだな!」

( ´_ゝ`)「俺らのすごさが分かったか」

( ゚∋゚)《ショボンのしじにこたえられたなら、ふたりもじゅうぶんつよい》

<_プー゚)フ「いや、正直井の中の蛙だった」

(゚、゚トソン「私はそこまで自分に自信はなかったのですが、逆にショボンさんの導きによって、自分があんなに戦えるってことを知りました」

ξ゚听)ξ「導きとか言っちゃってるし」

(;゚∋゚)《まあまあ》

<_プー゚)フ「だけど、おれは更に強くなる!」

( ´_ゝ`)「あ、やっぱりそういうキャラか」

<_プー゚)フ「そしてこの赤い剣が金色になってもその派手さに負けない強さを身に着ける!」

ξ゚听)ξ「趣味悪いな〜」

(;゚∋゚)《ツン、ひとことおおい》

ξ゚听)ξ「じゃあクックルは趣味が良いとでもいうの?」

(;゚∋゚)

ξ゚听)ξ「ほらみなさい」

(゚、゚トソン「ですが、その強さの根底に流れるものの一つに、やはり良質な薬や道具、武具を安価に手に入れられるというのがあると思うのです」

( ´_ゝ`)「なにこのこ。目の色が変わった。値切ってた時とおんなじ目だ」

(゚、゚トソン「どうでしょう、兄者さん。兄者さんからもショボンさんにギルドNSにもVIPと同じように供給していただけるようお口添えを」

(;´_ゝ`)「やだ、何この子怖い」

.

787 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:22:35 ID:l1O.OzB20


(*゚д゚ )「今回のクエストは眼福だった!」

( ^ω^)「今度はどこで会ったんだお」

(*゚д゚ )「村のおかみさんが肉感的な姿でな!あれはいい!しかしどうして熟女のCPがいないんだろうな」

(*゚ー゚)「?????」

( ・∀・)「ミルナは熟女好きなんだよ。プレイヤーで熟女に出会ったことがないから、新しい街に行くとプレイヤーはもちろん、NPCのキャラまで熟女探しをしているんだ」

(;*゚ー゚)「は、はあ…」

(´・_ゝ・`)「まったく変なやつだよな。これがなければいいやつなのに」

( ´∀`)「デミタスも人のことは言えないもなよ」

(,,゚Д゚)「デミタスは何が変なんだゴルァ」

川 ゚ -゚)「ショタコンなんだ」

(,,゚Д゚)「         へ?」

(´・_ゝ・`)「少年は至高だ。異議は認めない」

( ^ω^)「うわぁ」

.

788 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:23:33 ID:l1O.OzB20

( ゚д゚ )「おれのことを変とかいうな。おれは年齢が高いだけでノーマルだ」

(´・_ゝ・`)「少年の美しさ、儚さ、神秘さが分からないとは可哀想なやつめ」

川 ゚ -゚)「デミタスの場合は逆にNPCにしか興味ないし、遠くから見ているのが好きなだけだから、害はないな」

( ・∀・)「害が無ければ良いとか悪いとかというレベルの話ではないという気もしないでもないが」

( ´∀`)「まえに二十何層かの村で水遊びしている少年たちを木陰からこっそり覗いているのを見たときは、さすがにどうにかしなきゃダメだと思ったもな」

▼;・ェ・▼「くぅ〜ん」

(´・_ゝ・`)「ま、おれもそれに気付いたのはこの世界に来てからだからな。分からないのも仕方ない。今度ゆっくりレクチャーしてやるよ」

( ゚д゚ )「いらん」

( ・∀・)「必要ない」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

( ´∀`)「遠慮するもなよ」

( ^ω^)「いらないお」

(**゚ー゚)「ちょっと興味あるかもしれないです」

川*゚ -゚)「………同じく」

( ・∀・)(,,゚Д゚)( ´∀`)( ゚д゚ )( ^ω^)「え!?」

(*´・_ゝ・`)「じゃあ今度な」


.

789 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:24:56 ID:l1O.OzB20

(´<_` )「そういえばドクオ。聞いたぞ。また二人で息の合った剣さばきを見せたって」

('A`)「……」

从*゚∀从「なんだ、聞いたのか。私たちの愛の剣の舞のことを」

('A`)「愛なんかねー」

ミ,,゚Д゚彡「すごかったって聞いたから」

(´<_` )「そろそろみとめたらどうだ?」

('A`)「なにをだ!」

ξ*゚听)ξ「なになに、とうとう付き合うの」

川*゚ -゚)「やっとドクオが素直になったのか?」

('A`)「またうるさいのが寄ってきた」

(*゚ー゚)「素直になりましょうよドクオさん!」

('A`)「一人増えてた」

从*゚∀从「なんだ、しぃちゃんも応援してくれるのか。嬉しいよ。ありがとう」
 _
( ゚∀゚)「こりゃもうドクオの負けだな」

('A`)「ジョルジュうるさい。いい加減もう許してくれよ」

.

790 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:25:51 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「っていうか、何が不満なのよ」

川 ゚ -゚)「それは私も気になるな。ちょっと思い込みは激しいが、ハインの何が気に入らないんだ?」

('A`)「……うっせーよ」

从 ゚∀从「ドクオ…」

(´<_` )「あ〜、まあ男にも色々あるから。許してやれよ。それくらいで」

ξ゚听)ξ「む〜〜」

川 ゚ -゚)「う〜〜」

(*゚ー゚)「ぐ〜〜」

('A`)「お前ら絶対遊んでるだけだよな」

川 ゚ -゚)「そういえばハイン、『ゲルマライムの木の実』は何に使うんだ?あれも薬作成スキルが無いと使わないようなアイテムだが。もし必要数以上あるなら、こちらに売ってもらいたいんだが」

从*゚∀从「あ…あれはその…」

川 ゚ -゚)「ん?どうした?」



.

791 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:26:57 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おつかれさん」

(´・ω・`)「お疲れ様」

ワイワイと騒ぐメンバー達と離れ、全員を見渡せる場所で椅子に座ってウインドウを開いていたショボン。
そこにシャキンが椅子を引きずりながら近寄ってきた。

(´・ω・`)「みんなはいいの?」

(`・ω・´)「とくにいいだろ。エクストとトソンも慣れたみたいだしな」

ショボンの隣に椅子を置き、音を立てて腰かける。
そして同じようにウインドウを出すと、しまっておいた飲み物と食べ物をいくつか実体化させてショボンの前の小さなテーブルに置く。
そしてカップを一つ取って口をつけた。

(`・ω・´)「お前は何やってるんだ?」

(´・ω・`)「今日のクエストの整理だよ。クーとドクオから話とデータももらったから、三つまとめてね」

(`・ω・´)「毎度のことだがまめなこった」

(´・ω・`)「あとで送るよ」

(`・ω・´)「いつも悪いな」

(´・ω・`)「別に。情報屋にも渡して、データベースに入れてもらってるしね」

(`・ω・´)「……まめなこったよ」

(´・ω・`)「ん?どうした?」

(`・ω・´)「いや……二人はどうだった?」

(´・ω・`)「エクストとトソン?まだちょっと粗削りだけど、注意力を鍛えればいい戦士になりそうだね。シャキン達の戦い方に合いそうだ」

(`・ω・´)「ショボンがそういってくれるなら安心だ」

(´・ω・`)「ちゃんと育ててあげなよ」

.

792 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:28:01 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「……二人を一か月くらいVIPで預かってみるとか」

(´・ω・`)「何をばかなことを」

(`・ω・´)「だよね」

(´・ω・`)「まったく……で?話したいことはそんな事じゃないんでしょ?」

(`・ω・´)「そうだな」

喋るのを止め、カップの中の飲み物を一息にあおる。
そして、そのままの姿勢で上を見るシャキン。

(´・ω・`)「シャキン?」

(`・ω・´)「なあ、ショボン」

(´・ω・`)「なにさ」

(`・ω・´)「いまのままで、本当にこのゲームをクリアすることが出来ると思うか?」

(´・ω・`)「何を突然言い出すやら」

(`・ω・´)「やっと50層、とうとう50層、まだ50層」

(´・ω・`)「いろいろ言ってるよね。特に下に行くほど。攻略組にも一部鼻につくのがいるけど、下で文句しか言わない奴らよりはやってることをやってる分だけましだと思うよ」

(`・ω・´)「この先60層、75層、80層、90層……おれは、今の攻略組では行けるとは思えない」

(´・ω・`)「シャキン。……でも、ぼくらがそんなことを」

(`・ω・´)「そう、言える立場じゃない。おれ達だって攻略組じゃないからな。でも、おれにもわかる。それくらいは。今のままの攻略組では本当の統制は取れていないことくらい。今は血盟騎士団の団長のカリスマ性でもっているが、彼が崩れたら終わりだ。その状態で、この先のボス戦をクリアできるとは思えない。ショボン、おれがわかるくらいだから、お前はよくわかっているんじゃないのか?」

限りある空、上の層の底をを見つめていたシャキンがゆっくりとショボンを見る。

.

793 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:29:28 ID:l1O.OzB20

(`・ω・´)「おれ達も、攻略組に行かないか?おれ達なら、もっと本気になれば参加できるはずだ。そして、おまえなら今の攻略組に新しい風をいれることが出来るはずだ。ショボン。いや、…しょ」

(´・ω・`)「シャキン!」

小さい声。
けれど凛とした、どこか鬼気迫る、張り詰めた、冷たい声

(`・ω・´)「……すまん。だが、」

(´・ω・`)「シャキン、ギルドN−Sが攻略組になろうと努力するのは止めない。おそらく、それだけの力を持つこともできると思うよ。けれど、僕たちを、ギルドV.I.P.を巻き込まないでくれ」

(`・ω・´)「……ショボン。そう……だな。悪かった」

(´・ω・`)「いや……分かってもらえればいいよ。……すぐに攻略組に合流できるよう目指すの?」

(`・ω・´)「いいや。人数も増えたし、まずは地道にレベルを上げてからだ。あいつらが今の話にのるかどうかも分からないしな」

(´・ω・`)「そう」

(`・ω・´)「ああ」

やってきた沈黙。
それから逃げるように、テーブルの上の食べ物に手を伸ばすシャキン。
ショボンも開いたままのウインドウに視線を戻す。

(`・ω・´)「ん?メッセージだ」

視界の端に点滅した、メッセージが着たことを知らせるランプ。

(`・ω・´)「誰だこんな時間に」

沈黙を埋めるように独り言を呟きながらウインドウを開くシャキン。
メッセージを開くと同時に眉間にしわが寄った。

.

794 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:32:00 ID:l1O.OzB20
(´・ω・`)?

隣で気付かれないように気にしていたショボンがそのしわに気付くが、気にしたまま気付いていないふりを装いつつ気を向ける。

(`・ω・´)「ショボン」

(´・ω・`)「なに?」

(`・ω・´)「いま、暇?」

(´・ω・`)「何言ってんの?」

(`・ω・´)「今のメール、今回の依頼者からの連絡だったんだ。今回のクエストの話を直接聞かせてほしいって」

(´・ω・`)「だから?」

(`・ω・´)「おれがそんな説明できると思うか?」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「………」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「分かったよ」

(`・ω・´)「頼む。話の内容によっては追加の報酬もあるらしい」

(´・ω・`)「わかった。行こうか」

(`・ω・´)「現金だなおい」

立ち上がったショボンを見て、笑いながら立ち上がるシャキン。

(`・ω・´)「ミルナを連れていくが、そっちはどうする?」

(´・ω・`)「一人ずつついてきて貰うかな」

ウインドウを消しながら歩き始めたショボンだった。
.

795 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:33:25 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「おまじない……だと?」

从*゚∀从「ああ」

川 ゚ -゚)「      とりあえずどんなことをするのか言ってみろ」

从*゚∀从「42層の西の村で噂になってるんだ。『ゲルマライムの木の実』を夕焼けを見ながら口に含んで好きな人の名前を言って、そのあと口から出さないで食べきると恋がかなうって」

川 ゚ -゚)「そんなことのために『ゲルマライムの木の実』を?」

从*゚∀从「毎日やろうかなって思って」

もじもじと照れているハインと、彼女に腕を掴まれてげんなりとしているドクオ。
そして表情を強張らせたクー。

その三人を一歩引いて見守るメンバー達。

川 ゚ -゚)「ドクオ」

('A`)「……なんだよ」

川 ゚ -゚)「さっさとハインと付き合え」

('A`)「だから…」

川 ゚ -゚)「『ゲルマライムの木の実』がそんなことに使われるのを黙って見ていられるか!!!」

('A`)「あ、そっち」

川 ゚ -゚)「あのアイテムがあれば色々な薬の素が作れるんだぞ!!!!在庫に残ってるあれやそれと組み合わせれば強力なアイテムが!!!!!」

从 ゚∀从「あの木の実ってそんなアイテムなんだ」

川 ゚ -゚)「それすらも知らない奴にあのアイテムがそんな使い方をされてしまうなんて!!!!!」

握り拳を作って熱く力説するクーに一歩どころでなく数歩距離を置くメンバー達。
ドクオはもちろんハインも後ずさるが、それに合わせてクーが距離を詰めるため、うまく逃げられない。

从;゚∀从「なんかごめん」

.

796 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:34:33 ID:l1O.OzB20

川 ゚ -゚)「そう思うのならば!」

从*゚∀从「でもおまじないしたいし」

川#゚ –゚)「ドクオー!!!!!」

('A`)「もう終わろうよ」

(´・ω・`)「またおかしなことをしてるし」

川 ゚ -゚)「ショボン!良いところに来た!お前からも言ってくれ!」

(´・ω・`)「はいはい、あとでね。ドクオ、弟者、悪いけどちょっと付き合ってもらえるかな。今回のクエストの経過説明で依頼者の所に行くことになったんだ」

三人を中心にできていた輪の中に入ってきたショボンとシャキン。

('A`)「なんでおれ?もう今日は疲れた」

(´<_` )「おれはいいが、おれで良いのか?」

(´・ω・`)「弟者ありがとう。戦闘の話を冷静に聞きたいし話してほしいから、適任じゃないかな。で、ドクオがまだここにいたいならだれ」

('A`)「さあ行こうかショボン。悪いなハイン。クー。仕事だ仕事」

(´・ω・`)「かあの班のメンバーでVIPの人というとしぃかなと思ったけど、行ってくれるみたいだね」

ハインの手をそっと外してショボンに駆け寄るドクオ。

('A`)「さあ行こうか」

苦笑しながら弟者もショボンのそばに寄ってきた。

(´<_` )「もう行くか?」

从 ゚∀从「どっくん!」

川 ゚ -゚)「待てドクオ!」

.

797 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:35:39 ID:l1O.OzB20

手を離されて淋しそうなハインと話の途中だと声をかけるクー。
しかしドクオがにやにや笑いながら片手をあげて制する。

('A`)「まあまて二人とも。クエスト絡みだぞ。何が大事か考えろ」

从 ゚∀从「そりゃあそうだけど」

川 ゚ -゚)「弟者の代わりに私が行く!」

(´・ω・`)「クーはこの後ここの片付けを頼むよ。まだまだ時間はいいけど、日付が変わる前には解散して片付けも終わるよう、宜しく。サブリーダーさん」

川 ゚ -゚)「む」

从 ゚∀从「なら私も一緒に」

(`・ω・´)「ミルナに行ってもらうから大丈夫だ。ミルナ、頼む」

( ゚д゚ )「分かった」

从 ゚∀从「むー」

(`・ω・´)「だいたいおまえ、ずっとドクオの横にいて他のメンバーとあんまり喋ってないだろ。ちょっと交流しとけ」

从 ゚∀从「はーい」

しぶしぶながらも納得したクーとハイン。
ショボンは更にいくつかクーとフサギコに指示を出し、四人は牧場を後にした。

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798 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:36:35 ID:l1O.OzB20

ξ゚听)ξ「ショボン、なんだって?」

ミ,,゚Д゚彡「ショボンの作ったデザートを渡されたから!」

川 ゚ -゚)「あとは薬とアイテムの在庫チェックとかだな。ブーンとモララーにも頼まないと」
 _
( ゚∀゚)「まだいていいんだろ?」

川 ゚ -゚)「ああ。大丈夫だ」

<_プー゚)フ「おれの剣を見せてやるぜ!」
 _
( ゚∀゚)「おれの両手剣だってなかなかのもんだぞ」

(゚、゚トソン「あ、あのモララーさん

( ・∀・)「なに?」

(゚、゚*トソン「あの、……装備アイテムの事なんですが」

( ・∀・)「値引きはしないからな!」

( ´_ゝ`)「がんばれモララー」

結局この馬鹿騒ぎは、日付が変わっても続いた。



.

799 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:37:23 ID:l1O.OzB20



4.万の言の葉よりも伝わるもの。




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800 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:38:26 ID:l1O.OzB20

次の日の40層バーボンハス。
昼の喧騒もおわり、そろそろ休憩しようかと思いつつ大きな欠伸をしたショボン。
すると扉が開いた。

(´・ω・`)「いらっしゃい……って、なんだジョルジュか」
 _
( ゚∀゚)「なんだってことはないだろ」

笑いながらNPCのスタッフが席に案内しようとするのを片手をあげて拒否し、当たり前のようにショボンの前のカウンターに座った。

(´・ω・`)「今日の昼はクックルの所で食べるっていうから、お弁当を送っておいたけど?」
 _
( ゚∀゚)「ああ、うまかった。サンキューな」

何も言わずに出されたグラスを口につけ、一気に飲み干す。

(´・ω・`)「まったく、ちゃんと味わってほしいな」

呆れたように口にするが、すぐに同じグラスを差し出す。
今度はちょっとだけ飲んだ後、カウンターに戻した。
 _
( ゚∀゚)「なあ、ショボン」

(´・ω・`)「なに?」
 _
( ゚∀゚)「おれ達は、良いぜ」

(´・ω・`)「?なにを?」
 _
( ゚∀゚)「攻略組目指しても」

(´・ω・`)「!」

軽い世間話のようにさらっと告げたジョルジュに対し、あからさまに動揺を見せるショボン。
グラスを磨いていいた手を止め、ジョルジュの顔を凝視する。

.

801 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:39:28 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)「何を言って」
 _
( ゚∀゚)「昨日の夜馬鹿騒ぎを抜けて行ったの、会ってたんじゃないのか?攻略組と」

(´・ω・`)「あ、ああ。そっち」
 _
( ゚∀゚)「他にあるのか?」

(´・ω・`)「いや、なんでもない。ああ、……うん、会ってきたよ。勢揃い…ってわけじゃないけど血盟騎士団と聖竜連合の上層部が来てた。もともとあのクエスト攻略の依頼が攻略組から来ていたとは思ったけど、結構壮観だったよ」
 _
( ゚∀゚)「血盟の団長とか副団長が来たのか!」

興奮して立ち上がったジョルジュ。
ショボンはそれに驚きつつも先ほどよりも更に呆れたような顔を見せるが、わかりやすくため息をついて口を開いた。

(´・ω・`)「さすがにそこまでの面子は来てなかったよ」
 _
( ゚∀゚)「なんだつまらん」

口をとがらせながら座るジョルジュ。
つまらなそうにグラスをあける。

(´・ω・`)「まったく。でもそんなに会いたいんだ?」
 _
( ゚∀゚)「いや別に」

(´・ω・`)「なんだそりゃ」
 _
( ゚∀゚)「いや、レアモンスターなみに会わないっていうからよ。特に団長の方は」

(´・ω・`)「ああ、そう聞くよね。騎士団に入っても滅多に見ないとか、実はいないとか噂が流れてた」
 _
( ゚∀゚)「だから」

(´・ω・`)「なるほどね」
 _
( ゚∀゚)「で、話は戻すけどよ」

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802 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:40:31 ID:l1O.OzB20

(´・ω・`)チッ
 _
( ゚∀゚)「今舌打ちしなかったか?」

(´・ω・`)「してないよ」

じっと自分の顔を見るジョルジュの視線を難なく受け止めてにっこりとほほ笑むショボン。
 _
( ゚∀゚)「なら良いけどよ」

(´・ω・`)「気にしない気にしない」
 _
( ゚∀゚)「で、ほんとのところ、ショボンはどう思ってるんだ?おれたちが攻略組に参加するってのは」

(´・ω・`)「現実問題として無理だよ。まぁ頑張れば細かい迷宮クエストの攻略あたりは手伝えるかもしれないけど、とてもじゃないけどボス戦は無理だね」
 _
( ゚∀゚)「本当に?」

(´・ω・`)「ああ。本当に。馬鹿なことは考えない方が良い」
 _
( ゚∀゚)「おれやドクオも?」

(´・ω・`)「下っ端の下っ端くらいにはなれるかもね。でも、二人はソロならともかく団体戦は無理でしょ」
 _
( ゚∀゚)「……ま、そうだな」

(´・ω・`)「だから、馬鹿なことは考えない方が良い。だいたい、なんでそんなことを考え付いたの?」

訝しげにジョルジュの顔を見るショボン。
今度はジョルジュがその視線を難無く受け止め、にやっと笑った。
 _
( ゚∀゚)「ショボンたちが出た後、2期メン3期メン、あとデミタスで話したんだよ」

(;´・ω・`)「ちょ、ちょとまって」
 _
( ゚∀゚)「ん?なんだ?」

(;´・ω・`)「なにその2期とか3期とか」

.

803 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:41:40 ID:l1O.OzB20

 _
( ゚∀゚)「初期メンが5人、2期がおれと流石兄弟とふさ、3期がモナーとクックルとモララー、4期がギコとしぃ」

(;´・ω・`)「はあ?なにそれ。今までそんな分け方したことないよね?」
 _
( ゚∀゚)「前にふさの店でたまたま2期と3期の七人が集まったことがあってよ、なんかの流れで入団時期の話になって、んで話をしてたらそんな感じだよなって話になって」

(´・ω・`)「わけわからないことを」
 _
( ゚∀゚)「そうか?結構カラーが出てるって話になってるんだけどな。入団の経緯とか色々」

(´・ω・`)「んーーーー。まぁそう言われればそうかもだけど、別にオーディションしてるわけでもないし、出会ったのも友達になったのもたまたまだからなぁ」

苦虫をかみつぶしたような微妙な表情をしつつ、考えを巡らせるショボン。
 _
( ゚∀゚)「で、この7人と、デミタスで話してたんだよ。どうもシャキンは攻略組入りを狙っているんじゃないかって」

(´・ω・`)
 _
( ゚∀゚)「で、ショボンを誘ってるんじゃないかってな」

(´・ω・`)「はあ」
 _
( ゚∀゚)「で、更に話題になったんだよ。ショボンは攻略組入りを考えてないのかって」

(´・ω・`)「それで?」
 _
( ゚∀゚)「満場一致で『考えてない』になった」

(´・ω・`)「ならそれで終わりでしょ」
 _
( ゚∀゚)「でも、うちのギルマスの一番の目標が何かって話になると、全員口淀んだ」

(´・ω・`)「……君たちがぼくのことをギルマスって呼ぶときは、だいたいしょうもないことを考えた時か、無理なお願いをしてくる時だよね。あとはからかう時か」
 
.

804 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:42:42 ID:l1O.OzB20

 _
( ゚∀゚)「うちのギルマスの一番の目標は、ギルメンが全員生きてこのゲームから脱出すること。でも、このゲームがクリアされなければその目標は達成されない。クリアするには、死線を乗り越えていく者達が必要。今は攻略組がいるからいいけど、このまえあったボス戦みたいに死者が出て行けば、攻略組だって人数は減る。攻略組がいなくなれば、ゲームはクリアされない。ゲームがクリアされなければ、おれ達はこのゲームから生きて抜け出すことはできない。生きて抜け出すためには、ゲームをクリアするしかない。ゲームをクリアするには、ボスを倒し続けていくしかない………」

(´・ω・`)「だから、僕がゲームクリアを目指すために攻略組に参加するって?馬鹿げてるよ」
 _
( ゚∀゚)「おれ達が一番むかつくのは、お前が一人で攻略組に参加することさ。おれ達を危険な目に合わせないためにな」

(´・ω・`)「僕は、そんなに良いやつじゃないよ」
 _
( ゚∀゚)「そうだな」

(;´・ω・`)「え?そこ、肯定しちゃうところ?」
 _
( ゚∀゚)「腹黒いし、睨むと怖いし、怒ると酷いし、何考えてるかわからないし」

(;´・ω・`)「えっと……え?」
 _
( ゚∀゚)「でもおれ達は、そんなお前を信じてるし、好きなんだよ。お前の指示を信じて、命を懸けて戦うことが出来る。お前がおれ達のことを好きみだって知ってるし、なにより大事な友達だからな」

(´・ω・`)「ジョルジュ……」

にやにやと笑みをこぼすジョルジュと、困惑したように、でもどこか泣きそうな、けれど笑みを含んだ複雑な表情のショボン。
珍しくショボンが根負けし、視線をそらす。
 _
( ゚∀゚)「だから、お前が決めるならおれ達もちゃんと考えるし、本気で鍛えるってことさ。レベルを300くらい上げて真面目に戦い方を決めれば、今の最前線のボスだって倒せるだろ」

(´・ω・`)「ジョルジュ」

.

805 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:43:30 ID:l1O.OzB20

軽く笑ったジョルジュに笑みで返すショボン。
少し張りつめていた空気が、ほんの少しだけ和らぐ。
 _
( ゚∀゚)「今日はそれを伝えに来た!」

(´・ω・`)「……ありがとう」

音を立てて立ち上がるジョルジュ。
そしてもう一度にやっと笑い、手のひらをショボンに差し出す。

それを見て、少し躊躇して、けれど同じようににやっと笑って、その手のひらをショボンが音を立てて叩いた。




.

806 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:45:04 ID:l1O.OzB20



0.ゼロとイチの世界




.

807 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:46:48 ID:l1O.OzB20


夜の帳が下り、時計の針は12時を回っていた。

夜の狩りに出掛けるものはすでに外に出ており、日中の狩りに出掛けるものは床に着く時間。

そんな時間の街外れは更に人影がなく、静寂が支配していた。

煉瓦の壁に寄りかかり全く動かない彼は、一瞬見ただけではプレイヤーに見えず、かといってノンプレイヤーキャラクターでもなく、像か、絵の様に見えた。

( ^ω^)「そろそろ時間かお」

ぼそっと呟いた彼、ブーン。

その影に背後から忍び寄る一つの影。

( ^ω^)「来たかお」

振り返った彼は飛んできた影に胸ぐらを掴まれ、壁に背中を押しつけられた。

( ^ω^)「手荒いご挨拶だお」

(アルゴ)「おい、どういうことだ」

( ^ω^)「なんのことだお」

(アルゴ)「分かっていたんだろ」

女性の力とは思えない力で、いや、隠密系スキルをメインとしているとは思えない力でブーンを壁に押し付けるアルゴ。

ブーンの目の前には圏内での犯罪行為を防止するための警報が出ており、ほんの少し操作すればアルゴを監獄に送ることが出来る状態だった。

( ^ω^)「何を見たんだお?」

(アルゴ)「……おまえ」

あくまでもにこやかな表情でアルゴと話すブーン。

しかし、その細められた目の奥にある瞳の思いは分からず、アルゴは困惑する。

壁に押し付ける力が、ほんの少しだけ緩んだ。

.

808 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:47:51 ID:l1O.OzB20

(アルゴ)「…なぜ、あいつは……ショボンはあいつらと会っているんだ。あんな、恐ろしい…」

出来るだけ冷静に、けれど嫌悪感を露わにした、そして怒気を含んだ声でブーンを詰問する。

( ^ω^)

それでも表情を崩さないブーン。

(アルゴ)「……知っていることをすべて言え」

( ^ω^)「情報屋さんにしては、力尽くだおね」

(アルゴ)「なに?」

( ^ω^)「もう少し緻密に、綿密に、静かに、冷静に、情報を集めるのかと思ったお」

大きく目を見開くアルゴ。

手の力が抜け、ブーンの胸元から手を放した。

(アルゴ)「……なにを、企んでいる」

( ^ω^)「僕が頼んだのは、ショボンの動向だけだお。でも、これで僕の知りたいことは知れたから、依頼は終了するお。頼んでいた日数はまだあるけど、その分が成功報酬でちょうどくらいじゃないかお」

にこやかに、飄々と、夜の少し冷たい、けれど気持ちもよい風のように言葉を紡ぐブーン。

(アルゴ)「……」

その姿を、どこか異質なモノを見るような少しだけ警戒した瞳でアルゴは見る。

(アルゴ)「(わからない…真意が)」

( ^ω^)「どうしたんだお?」

(アルゴ)「……わかった。依頼はこれで終了する」

( ^ω^)「今までありがとうだお。詳細な報告書は後日で良いお」

(アルゴ)「悪いね。明日中には送るよ」

.

809 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:48:53 ID:l1O.OzB20

( ^ω^)「急がなくていいお」

(アルゴ)「いや、仕事だから、やることはやるさ」

踵を返し、まっすぐ前を見て歩き出すアルゴ。

(アルゴ)「じゃあね」

( ^ω^)「また宜しくだお」

振り返らずに、別れを告げ、背中でブーンの声を聴く。

(アルゴ)「(情報屋として、調べてやるよ。全部ね)」

少し離れた後、風のように駆け出すアルゴ。

砂埃が舞い、その場からいなくなる。

それを静かに、いつまでもにこやかに見続けたブーン。

どれほどそうしていただろうか、ふと表情を消すと、自分の家に向かって歩き出した。

街路樹の影が、人の影のように蠢く道を進む。

そして、ポツリと呟いた。

.

810 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:50:17 ID:l1O.OzB20




( ^ω^)「安心していいお。その時が来たら、ぼくがショボンを………」




.

811 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:51:00 ID:l1O.OzB20


言葉の最後は、吹き抜ける風に掻き消えた。







.

812 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 14:52:38 ID:4/ufg6eo0

おもしろい

813 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 14:54:06 ID:3oaIoDzEO
ブーンは何を企んでるんだろうか…

814 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 14:54:38 ID:l1O.OzB20
以上、第7話終了でございます。

しえんと乙、いつもありがとうございます。

しかし長かった…。

待ってくださった方、ありがとうございます。

次はもう少し短めで、なるべく早めに投下できたらなぁと考えております。

815 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 14:57:30 ID:Ifpu.QAQ0
乙乙、今回も面白かった!
ショボンもブーンも何する気なんだ…すげーはらはらする…
次回もスペック公開も楽しみだ

816 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 15:14:58 ID:9cGOdbII0


817 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 15:20:35 ID:TK7EIo4c0
もう服は着ていい?

818 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/14(水) 15:56:25 ID:CMV2lDPY0
乙と感想ありがとうございます(≧∀≦)!

パンツ穿いて服も着て下さい。

そして自分は投下するまで封印していた13巻を読みます。

ではではまた。

819 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 16:21:29 ID:TK7EIo4c0
靴下履いた
乙でした

820 名前:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 20:47:31 ID:bKMy4KSI0
おつ!

821 名前:名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 00:57:22 ID:X.QGY/yo0

ブーンの動向とハインの恋路が気になる

822 名前:名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 01:14:49 ID:c95d2iAYO
ω・)乙。ショボンにも秘密があるんだな…

823 名前:名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 18:31:02 ID:d9to53RA0
ドクオ爆発四散しろ

824 名前:名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 23:16:40 ID:YcJgssZ.0
otu

825 名前:名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 21:35:55 ID:pP8Gz2GU0
なんか話が進展してきたな乙

826 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 02:27:19 ID:gGyOqaKcO
ブーンが企んでいるのかショボンが企んでいるのか

827 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 12:18:46 ID:7jAk06ME0
普通にブーンとショボンは繋がってると思う

828 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 13:43:19 ID:I.eSN74w0


829 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 19:02:15 ID:cKO8S8FI0
原作を知りたくなったんだけど、マンガ?ゲーム?小説?

830 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 19:44:45 ID:Q.e27rJI0
ソードアート・オンラインってラノベ
アニメしか見たことないんだけど小説面白い?

831 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 20:45:52 ID:LNdXCp9MO
面白いよ

832 名前:名も無きAAのようです:2013/08/17(土) 20:47:24 ID:LZrPa48E0
じっくり見るならラノベ盤
障りだけ把握するならアニメ
ゲームはしらん

833 名前:名も無きAAのようです:2013/08/18(日) 01:49:50 ID:vfYw2zho0
アニメ二話だけ見てきた…
つ…つまんねぇ…
好みじゃなかっただけとは思うが
この作品の原作とは思えないぜ…

834 名前:名も無きAAのようです:2013/08/18(日) 04:46:12 ID:XRPi0BpE0
好みは置いといてアニメ見ながらこれ読むの楽しいぜ
こう動いてんのかなーって想像しやすいし

835 名前:名も無きAAのようです:2013/08/18(日) 06:56:59 ID:43gvyYrM0
たぶんこの話の内容からだと一巻読めば分かるし
小説に慣れてれば1〜2時間で読めるから原作読んでもいいんじゃないか

836 名前:名も無きAAのようです:2013/08/18(日) 09:23:02 ID:vfYw2zho0
ありがとう、小説の方とりあえず一巻買って読んでみる

837 名前:名も無きAAのようです:2013/08/18(日) 12:25:35 ID:FxvkpkPg0


838 名前:名も無きAAのようです:2013/08/21(水) 11:06:22 ID:Az.QOGGs0
続きは1ヵ月後かな

839 名前:名も無きAAのようです:2013/08/21(水) 11:47:50 ID:53ZtK8h20
アバターの顔は実物をデフォルメしたかんじなのかな

840 名前:名も無きAAのようです:2013/08/31(土) 00:13:16 ID:QGUK15KY0
次はいつかなー

841 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/08/31(土) 11:24:50 ID:qB1A.aeU0
次はいつになるのかな〜

842 名前:名も無きAAのようです:2013/08/31(土) 12:56:12 ID:IqBzjlew0
>>841
おう あくしろよ

843 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 02:59:43 ID:IockDrlc0

どうも作者です。

本編が終わらないので生存報告まで。

短い話なのにな…。
描写って難しい…。


これだけではなんなので、閑話一本いっておきます。

844 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:00:55 ID:IockDrlc0

第B話 閑話  スキルと能力値



ギルドのホームにあるショボンの部屋は、ギルドの執務室でもある。
と言っても彼自身がほとんどの時間自らのレストランであるバーボンハウスにいることが多いため、あまり『執務室』として使われることはない。

とはいってもギルドマスターとしての仕事をする時、事務的な仕事やギルドとして人と会う時などには使用していた。

今日は店をしぃに任せ、彼は溜まっていた事務仕事をしている。

('A`)「いるかー」

(´・ω・`)「だからとりあえず一回ノックをしろと」

.

845 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:02:06 ID:IockDrlc0

データ整理をひと段落させ、伸びをしつつ首をまわしていると開くドア。
当たり前のようにドアを開けて入ってきたドクオに呆れつつも、それ以上注意はせずに苦笑いで流す。

('A`)「こっちは良いだろ?別に」

疲れたように、ドアを開けたすぐの部屋の中央に置かれた簡素なソファーセットに腰掛けるドクオ。
見た目は簡素だが質は良いようで、程よい硬さと柔らかさでドクオの体を支えた。

('A`)「そっちの寝室開ける時にはノックしてるし」

隣に続くドアに視線を向けてから、いつものようにつまらなそうな顔で肩をすくめた。

('A`)「いつも思うけど、これ座り心地良いよな」

そしてその座り心地を確かめるように、身体を上下させる。

(´・ω・`)「子供じゃないんだから」

開いていたウインドウを閉じるショボン。
扉の正面にソファーセットを挟んで置かれた大きめで重厚な執務机から離れ、ドクオの正面に座る。

(´・ω・`)「どうしたの?」

.

846 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:03:24 ID:IockDrlc0

再びウインドウを出し、低いテーブルの上にティーセットを二つ実体化させると、まずはドクオのカップに注いだ。

('A`)「ん?ああ、ほらこれ、この前頼まれたクエストの調査と結果報告書」

(´・ω・`)「ああ、ありがと。早いね」

('A`)「ジョルジュとモララーと行ってきたからな。でもそんな低層階のクエストどうするんだ?」

(´・ω・`)「とりあえずギコとしぃの練習には良いかなと思ってさ。今までに攻略したクエストだとなんとなくイメージが合わなかったから、最近見つかったクエストとかで良いやつがないかなと思って」

自分のカップにもお茶を注いだ後、雑に置かれた報告書を受け取る。
置き方は雑だが内容が正確で緻密なのは分かっているため、最初からじっくりと目を通していく。

(´・ω・`)「クエストデータだけだと詳細が分からないところがあるからね」

書類を置いた手でそのままカップを取ったドクオは、まず一口啜った。

('A`)「ギコとしぃねぇ」

.

847 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:04:23 ID:IockDrlc0

(´・ω・`)「とりあえずしぃはバーボンハウス両方の手伝いから始めてもらってるけど、ギコの方は体術スキルが終わったら戦闘の付き合いを頼むよ。あとモナーとクックルの手伝いと」

('A`)マンドクセ

(´・ω・`)「そんなこと言わないでさ」

('A`)「そういや、スキルはどうなんだ?片手剣のスキルを結構あげてたって聞いたけど」

(´・ω・`)「自己申告は943」

('A`)「そりゃすごい。……で、本当は?」

(´・ω・`)「934」

('A`)「……マジで?」

(´・ω・`)「マジで」

('A`)「おれと20も変わらないのかよ」

(´・ω・`)「クエスト中に聞いたときに答えた数字は、見栄を張ったわけでなく素で間違えただけみたいだね。まあそれもどうかと思うけど」

('A`)「でもよお」

ギコの自己申告数値を聞いて大きく伸びをするドクオ。
そのまま背凭れに体を預け、背筋をそらす。

('A`)「おれ、結構頑張って鍛えたんだけど」

(´・ω・`)「はい、これ」

自分のカップに口をつけながら、一枚の紙をテーブルに置くショボン。

.

848 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:05:33 ID:IockDrlc0

('A`)「今度はなんだよ」

(´・ω・`)「ギコがそこまで鍛えることが出来た理由」

('A`)?

姿勢を戻し、紙を手に取るドクオ。

('A`)「うわ…………なんだこりゃ。片手剣以外最低ランクっつーか、このレベルじゃ20層くらいでもう意味ないだろ。……これ、ギコのなのか?」

(´・ω・`)「うん」

('A`;)「つまり片手剣だけ鍛えまくってきたわけか。あいつ、よく今まで生き残ってこれたな」

(´・ω・`)「その謎の答えがここに」

更に一枚の紙を置くショボン。
ドクオは恐る恐る受け取り、覗き込む。

('A`)「…………ああ、まあこれなら攻撃スキルがちょいと低すぎるから倒すのは難しそうだが、敵に合わないように避けて、エンカウントしたら逃げて逃げて逃げ切ることは出来そうだな。……とは言っても30層くらいがギリギリっぽいけど」

(´・ω・`)「それ、誰のかわかる?」

('A`)「………もしかして、しぃのか?」

(´・ω・`)「ご名答」

('A`)「……。なるほどな。二人で一人か」

.

849 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:06:32 ID:IockDrlc0

二枚の紙の両手で持ち、交互に見比べるドクオ。

('A`)「これなら頷ける。一人でこのスペックなら中層なら問題ないな。つまり、しぃが頭脳でギコが体ってことか」

(´・ω・`)「二人はそんな風には思ってなさそうだけどね。あとはしぃも言ってたけど、弟者のとこで買った防具の力もあるんじゃないかな」

('A`)「なるほどな」

持っていた紙をテーブルに戻し、再びソファーに体を預けるドクオ。

('A`)「で、どう育てるんだ?」

(´・ω・`)「……楽しみだよね」

('A`;)「ショボン、顔が怖い」

こらえきれずに笑みを漏らすショボン。
それを見て、ドクオが自分の体を抱えて震えた。

(´・ω・`)「でもどんなスキルも覚えるって言ってたしー」

('A`;)「語尾を伸ばすな気持ち悪い」

ソファーの上で膝を抱えて身体を震わせるドクオ。
背凭れに体を預け、小動物のように。

(´・ω・`)「今の自分の姿とどっちが気持ち悪いと思う?」

('A`)「……」

(´・ω・`)「……」

('A`)「……まあ、あれだな」

足を下し、背筋を伸ばして座りなおす。

('A`)「少しは加減してやれよ」

.

850 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:07:29 ID:IockDrlc0

(´・ω・`)「そんな、人をなんだと思ってるんだか」

('A`;)「マジにいろいろやりそうで怖いんだよ。お前は」

(´・ω・`)ショボーン

('A`)「まったく」

座りなおしてカップに手を伸ばすドクオ。

(´・ω・`)「『片手剣』も950過ぎたあたりから上昇率が悪いよね」

('A`)「なんとなくな。上限1000ってことを考えると、そこら辺で何か仕掛けがしてあってもおかしくはない。でも『片手剣』は最初に覚えられる基本スキルだからそこまで酷い設定はされてないだろ」

一口啜り、カップをテーブルに戻そうとする。

(´・ω・`)「そういえば、ちゃんと『バトルヒーリング』のスキルレベル上げしてる?」

('A`;)!

戻そうとしたカップが指から離れ、音を立ててテーブルに当たる。
それを見てショボンの表情がなくなり、じっとドクオを見た。

.

851 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:08:55 ID:IockDrlc0

(´・ω・`)「やってないんだ」

('A`;)「あ、いや、やってるぞ」

(´・ω・`)「やってないんだ」

('A`;)「いや、だからな」

(´・ω・`)「やってないんだ」

('A`;)「……はい。ごめんなさい。やってません」

座ったまま頭を下げるドクオ。
そしてちらっと顔をあげてショボンの顔を見た。

(´・ω・`)「まったく」

('A`;)「へへへへへへ」

じっとドクオを見ていたショボンの視線が柔らかくなり、呆れたように肩をすくめる。

(´・ω・`)「とはいっても、調べれば調べるほど、あのスキルって熟練度上げるのが大変なのが分かってくるからな……。やっぱりあれは一人で鍛えるもんじゃないのかな」

('A`)「なあショボン、あのバトル中に自動的にHPが回復するっていうある意味チートスキルがかなり使えるのは分かるけどさ、やめねえ?鍛えるの辛いんだよ。あれ。結構ギリギリのHPをキープしないといけないし」

眉間にしわを寄せ、疲れたようにじっとショボンの顔を見るドクオ。
それに対してにっこりとほほ笑むショボン。

.

852 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:10:27 ID:IockDrlc0

(´・ω・`)「だめ」

('A`)「やっぱり」

(´・ω・`)「さすがに『体術』と『投擲』みたいに必須スキルにするつもりはないけど、戦闘において速攻とか特攻をすることの多いドクオとブーンとジョルジュにはぜひ習得してある程度までは熟練度を上げておいてほしいんだよね。せっかく覚えることが出来たんだしさ」

('A`)「便利なスキルだけどよ…」

(´・ω・`)「突っ込んでいった上に自分のHPあんまり省みないで攻撃を続けるような奴らじゃなければ別に良いんだけどさ」

('A`;)「……すみません」

(´・ω・`)「ってことで、今度パーティー作って熟練度上げ目的の採取に行こうね」

('A`)「まーじーでー」

(´・ω・`)「回復要員でツンとクーにサポート頼んで、ブーンとジョルジュはスキル覚えられるようにメイン以外のスキル上げして、POTもクリスタルもがっつり持って、いや、楽しみだね」

('A`)「はーい」

にこにこと、心底楽しそうなショボンに対し、心底いやそうなドクオ。
座ったまま自分の膝に肘をつき、両手で顔を覆うドクオ。

('A`)マンドクセ

それを見て、更ににこやかな笑顔をみせるショボン。

部屋の窓から差し込む夕焼けが、ショボンとドクオの影を部屋に作った。






.

853 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/09/08(日) 03:11:31 ID:IockDrlc0

以上、終了です。

今回の話は以前ギコのスキルレベルの高さの話を書いてくださった方と、スキルの上限について書いていてくださった方の内容を読んで思いついたネタでした。

本編に入れようかと思ったんですが、この話題が出るかわからなかったので、とりあえず閑話として。

いつも感想やひとこと、ありがとうございます。


それでは本編を進める作業に戻ります。


ではではまた。



.

854 名前:名も無きAAのようです:2013/09/08(日) 03:13:14 ID:b9c3luH.0
おつおつ、よくもこんな時間に

855 名前:名も無きAAのようです:2013/09/08(日) 03:25:23 ID:TImMWlKE0
おつおつ、こういう閑話休題みたいな投下は嬉しいな
のんびり待ってますねー

856 名前:名も無きAAのようです:2013/09/08(日) 09:57:34 ID:4vMGyWw20
本編気長に待ってる

857 名前:名も無きAAのようです:2013/09/08(日) 13:11:45 ID:/MepaA9o0
それにしても原作特有の緊張感というか、悲壮感がないな
これが最前線と中堅のレベルの差ってやつか

858 名前:名も無きAAのようです:2013/09/08(日) 17:34:32 ID:hJ4bXHCs0
乙 こういう日常が覗ける短編好きだわー
本編も楽しみにしてる

859 名前:名も無きAAのようです:2013/10/03(木) 07:55:56 ID:C1Dtroes0
更新ないなー

860 名前:名も無きAAのようです:2013/10/03(木) 21:10:13 ID:TN4YmNbo0
ないねー

861 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/04(金) 17:45:23 ID:d4LJasNs0
ねー。

862 名前:名も無きAAのようです:2013/10/04(金) 17:50:14 ID:H9iyDiU20
ねー。
じゃねえぞ!!

863 名前:名も無きAAのようです:2013/10/04(金) 18:10:51 ID:7LWCERR.0
ワロタww

864 名前:名も無きAAのようです:2013/10/04(金) 18:15:52 ID:uStIx9yM0
>>861
何をしれっとwww

865 名前:名も無きAAのようです:2013/10/04(金) 18:22:19 ID:H/2RrTSk0
>>861
クソワロタwwww

866 名前:名も無きAAのようです:2013/10/05(土) 01:09:46 ID:dl9df78UO
>>861
ω・)∩バンバン、はよ

867 名前:名も無きAAのようです:2013/10/05(土) 05:11:54 ID:ynJuRf8s0
おいこらさみしかったんだぞ!
はよはよはよ

868 名前:名も無きAAのようです:2013/10/05(土) 16:45:13 ID:dl9df78UO
いまさらだがこれ主人公誰になるんだ?

869 名前:名も無きAAのようです:2013/10/06(日) 10:31:47 ID:4mfyJIv60
これ見てSAOとアクセルワールド読み出した
面白くてすっかりハマってしまったじゃないか、どうしてくれるんだ

870 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/06(日) 15:27:14 ID:hSMT3YFQ0
どーも作者です。

とりあえず終わりは見えたので、今週、来週のうちには投下できそうです。

宜しくお願いします。

>>869
ステマって素晴らしいww

因みに自分はアクセルワールドは読んでないんですけどね。

871 名前:名も無きAAのようです:2013/10/07(月) 22:37:57 ID:96FyOPJAC
ω・)ソードアート?

872 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 19:19:04 ID:/52bT4Go0
・ω・)オンライン?

873 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 19:38:35 ID:17SzM.YM0
>>872
はよ!
最近は全裸だと寒いんだよ

874 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:40:26 ID:/YGMmJyM0
どーも作者です。

ということで、投下行きます。

誤字脱字チェックしつつ、内容確認しつつなので、ちょっとのんびりと。

ではではよろしくお願いします。

875 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:42:44 ID:/YGMmJyM0



第8話 それぞれのチカラ



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876 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:43:57 ID:/YGMmJyM0



0.ギルドの証



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877 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:46:03 ID:/YGMmJyM0

2024年2月 中旬

モララー細工工房の作業台の前には、モララーが一人いた。

工房の外は青い闇が支配しており、日中の喧騒が嘘のように静かで冷たい空気が流れている。

そんな外界から隔離された部屋の中で、自分が作った成功率が少しだけ上がる片眼鏡を左目につけ、目にかかる髪を時折かき上げながら、いくつかの鉱石と素材を添加しつつ、三種のノミと二種の鎚を使って金属を打つ澄んだ音を響かせていた。

( ・∀○)「でっきるっかなでっきるっかな…。っていうか、そろそろ出来てくれないと困るんだけどさ」

作業机の上で光る二つの塊。

システム上は規定の鉱石に何を作るかを指定し、既定の回数打つことによって自動的にアイテムが生成される。
素となる鉱石や添加材、作れるアイテムの種類と使用できるノミと鎚の種類はスキルの熟練度によって違うが、アイテムの生成方法は初心者も熟練者も変わりがない。
また、大まかな種類は指定できるが詳細な種類を指定することはできない。
武器でいうのならば、『片手直剣』を指定して作ることは出来ても、Aという名前の片手直剣が出来るか、Bという名前の片手直剣が出来るかは分からない。また更に言うのならば、同じAでも初期攻撃力が10の物が出来るか12の物ができるかは、システム上は完全にランダムで運とされている。

しかし、こういった職人達の中では信じられていることがある。

それは、作り手の思いが制作物に反映されるということ。

ただ無機質に機械的に腕を振り鎚で打つのではなく、一回一回に思いを込め、自分の力を信じ、使う者のことを思い、腕を振り、鎚で打つ。
それによって宝箱や敵から奪うドロップアイテムには無い強さやレア度を持った武器やアイテムを作ることが出来ると、信じられていた。

そしてそれが職人の手製(プレイヤーメイド)の強みであり、素晴らしさであると。

また、これは職人たちの横のつながりで噂が広がり信じられているわけではなく、職人として武器やアイテムを作る者達が、実感していることである。

モララーにおいてもそれは同じで、店に並べる通常品はもちろん、オーダー品は特に思いを込めて一振り一振りを打っていた。

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878 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:47:38 ID:/YGMmJyM0

( ・∀○)「でっきるっかなでっきるっかな」

打っていた。

( ・∀○)「でっきるっかなでっきるっかな。でっきるっかなでっきるっかな」

多分、打っていた。

( ・∀○)「おっ。きたっ」

規定回数を打った瞬間、一つの塊が大きく輝く。
それ見た瞬間流れるような手さばきで持っていた鎚をテーブルの上の槌と持ち替え、もう一つの塊を叩く。

( ・∀○)「こっちも来た!」

一つ目の塊と呼応するようにもう一つの塊も大きく輝く。

( ・∀・)「でっきるっかなでっきるかな」

片眼鏡を外し、作成用アイテムをテーブルに置き、踊り始めるモララー。

( ・∀・)「でっきるっかな、でっきるっかな、」

歌を口ずさみつつ、ツイストと呼ばれるステップを踏みながら腰をひねり、手を振りつつ作業台の上で光る鉱石をじっと見つめる。

( ・∀・)「でっっきるっっかなっでっっきるっっかなっ」

心を込めて踊るモララーの目の前で、光が収束していく。

( ・∀・)「でっっっきるっっっかなっっでっっっきるっっっかなっっ」

最後に一度大きく光る二つの塊。
そして光が収束すると、そこには二つの指輪があった。

( ・∀・)「どれどれどれどれ」

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879 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:48:59 ID:/YGMmJyM0

まずはモララーから見て左側、先に大きな光を放った指輪を指先でタップする。
現れるステイタス画面。

( ・∀・)「!いいじゃんいいじゃん!一個完成!」

太めの銀の指輪のステイタス画面はそのままに、自分のウインドウも出してメッセージ作成画面を開く。
そして今見ている指輪のステイタスをメッセージにコピーした。

( ・∀・)「もう一個はどうかな」

今度は右側の細めの銀に光沢のあるオレンジの線が混じった指輪をタップする。
ポップするステイタス画面。

( ・∀・)「!…まじか」

思わず顔を近づけるモララー。

(;・∀・)「今までで作った中ではトップクラスだぞこれ。あいつらにやるのもったいないな…とも言ってられないか」

同じくコピーし、メッセージを作成する。

( ・∀・)「あとはギルマスに任せて…といっても返答は予想つくけどさ。はい、送信っと」

自分のウインドウは出したまま指輪のステイタス画面を二つとも消し、使っていたアイテムを自分のストレージに戻す。
そして新たにいくつかのアイテムを机の上に出した。

視界の端に浮かぶメッセージの着信を知らせる文字。

( ・∀・)「はやいねーうちのギルマスさんは」

ショボンから送られてきたメッセージを開く。

『(´・ω・`)「まかせるー」』

( ・∀・)「だと思ったよ!」

悪態を吐きつつもにやにやと笑いながら次に使用するアイテムを準備する。

( ・∀・)「まったくうちのギルマスはギルドのメンバーを信用しすぎるよ」

表情を引き締めて、片方の指輪の内側に針のようなアイテムで指輪の表面を彫り始めたモララーだった。

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880 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:51:09 ID:/YGMmJyM0



1.ギルドの秘め事



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881 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:52:24 ID:/YGMmJyM0

VIP牧場とVIP農場は隣接しており、ギルドのメンバーであれば外に出ずとも行き来することが出来る。
ちなみにこの二つには管理をするための建物はそれぞれあり、そこでは簡単な食事や休憩をすることは出来るが、個室は牧場にある建物にしかない。
よってモナーはもちろんだがクックルの個室も牧場にある建物の中にあった。

これは牧場を手に入れた時に資金が足りなくて最低限の設備しかつけられなかったせいだが、余裕が出来た今もこれは変わっていない。

( ゚∋゚)「モナー、良いか?」

( ´∀`)「いいもなよ」

ノックの後聞こえたクックルの声に返答するモナー。
それを受けて入ってきたクックル。

( ´∀`)「今日もお疲れさまもな」

モナーに促されてベッドに腰掛けるクックル。
備え付けの椅子に座っていたモナーは棚にしまってある茶器を取り出し、指先で軽くタップしてから同時に出していた二つのカップに琥珀色の液体を注いだ。

( ゚∋゚)「はあ……」

(;´∀`)「ほんとうにおつかれもなね」

クックルはベッドで眠るビーグルを撫でていたが、差し出されたカップを受け取ると両手で持ち、肩を落とし項垂れた。
モナーは自分のカップを持ちつつベッド横の机に備え付けられた椅子を動かし、クックルの目の前に腰掛けた。

( ´∀`)「今日の指揮はどうだったもなか?」

( ゚∋゚)「……ショボンとクーはすごいと思うよ。おれには無理だ」

( ´∀`)「ショボンとクーがすごいと思うのは同感するもなけど、クックルが無理ってのは違うと思うもなよ」

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882 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:54:12 ID:/YGMmJyM0

( ゚∋゚)「指揮そのものは少しは出来るようになってきたと思うが、疲労が半端ないからな。今はショボンかクーが同行して交代でやってるが、1クエスト全部やれとか言われたら脳味噌がどうかなっちまうよ」

自嘲気味に笑いながら目の前でにこやかにほほ笑んでいるモナーを見る。

( ´∀`)「そんなことないもなよ。最初はそうかもしれないけど、慣れてきたら大丈夫もな」

( ゚∋゚)「お前はそう言うが」

( ´∀`)「…きっとまだ、クックルはあの時のことを引きずっているもな」

( ゚∋゚)!

にこやかに「あのこと」に触れたモナーに驚くクックル。
大きく目を見開き、目の前の仲間を凝視する。

( ´∀`)「モナーもまだひきずっているもな。でも、乗り越えることが、出来るような気がしているもな。クックルは、どうもな?」

( ゚∋゚)「お、おれは」

自分を見るまっすぐな視線にたじろぐクックル。
それを見て、更にモナーの瞳が垂れ下がる。

( ´∀`)「きっと、本当に乗り越えた時にわかるもなよ。ショボンが何故クックルに指揮をさせているかが」

( ゚∋゚)「……そう、なんだろうか」

( ´∀`)「モナーはそう思うもな」

カップに口をつけるモナー。
その様子を見つつ、ほんの少しだけ笑顔を見せて、クックルもカップに口をつけた。

( ´∀`)「……今日のパーティーにはブーンはいたもなか?」

( ゚∋゚)「ああ。今日はあのカップルとギコしぃ、あとクーとおれの六人だった」

(;´∀`)「うちのギルドらしいといえばうちらしいもなけど、六人パーティーのうち四人が…」

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883 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:56:07 ID:/YGMmJyM0

(;゚∋゚)「まあやりやすいといえばやりやすいがな」

顔を見合わせて苦笑する二人。

( ゚∋゚)「ギルドとして格闘と投擲は必須だけど、メイン武器は自由だからな。……で、なんでブーンなんだ?前にも聞いたよな。確か」

( ´∀`)「………」

( ゚∋゚)「言えないことなら聞かないが」

( ´∀`)「……この前、ちょっとだけ違和感を感じたもな。何がどうってわけじゃないもなけど、なんとなく」

( ゚∋゚)「そうか。特に変わった様子は見られなかったが」

( ´∀`)「それならいいもな。モナのきのせいもなね」

( ゚∋゚)「今度パーティー組んだときは、ちょっと注意してみる」

「さて」と呟きながら立ち上がるクックル。
お礼を言いながらカップを机の上に置く。

( ´∀`)「もういいもなか?」

( ゚∋゚)「ああ。明日もあるしな」

( ´∀`)「久しぶりもなね。あの二人が入ってから初めてもな」

( ゚∋゚)「そうだな。久しぶりに思いっきり武器を振るってみるか」

(;´∀`)「お手柔らかに頼むもなよ」

( ゚∋゚)「それはおれのセリフだな」

顔を見合わせて一度にやりと笑う二人。

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884 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 22:58:42 ID:/YGMmJyM0

そしてクックルは「おやすみ」と声をかけながらモナーの部屋を出た。

カップを片付けてから自分のベッドに腰掛けるモナー。
気持ちよさそうに眠るビーグルの頭をなでる。

▼-ェ-▼「くぅーん」

( ´∀`)「よく眠ってるもな」

柔らかいほほえみを浮かべたまま、就寝の準備を始める。
最後に部屋の電気を消すと、そとからの星の明かりが部屋を包んだ。

目を細めながら外を見るモナー。

( ´∀`)「………本当に気のせいならいいもなけど」

呟いてからビーグルの横に潜り込む。
ビーグルがそれに気付いて体を摺り寄せてくる。

今日も一日が、無事に終わった。




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885 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:00:19 ID:/YGMmJyM0

次の日。
時計の針が9時を指した時、VIP牧場にはギルドV.I.P.の全員が揃っていた。

(´・ω・`)「みんないるねー」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「おー!」
          ('A`)(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

(,,゚Д゚)「お、おお!」

(*゚ー゚)「います…けど」

人が五人くらい乗れそうな台に乗っているショボン。
そこを中心に扇形に立つ9人。
そしてその後ろに立つギコとしぃ。

これは別に弾かれているのではなく、なんとなく気後れしてその中に二人が入れていなかったからだ。

(*゚ー゚)「ぎ、ギコ君、今日の事って何か聞いてる?」

(,,゚Д゚)「聞いてないぞゴラァ。今日は朝から牧場で全員で作業って連絡しか来てない」

(*゚ー゚)「私もそれしか聞いてない。ショボンさんが伝達忘れってことはないと思うけど、でも…」

(´・ω・`)「はい、おしゃべりは止めてねー」

こそこそと話すギコとしぃを注意するショボン。
慌てて少し離れて姿勢を正すが、やはり落ち着かずショボンと自分たちの前にいる仲間たちを見回す二人。

(´・ω・`)「と、いっても気になるよね。これは」

(*゚ー゚)「は、はい」

(,,゚Д゚)「みんなどうしたんだゴラァ。気合いの入った装備して」

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886 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:01:31 ID:/YGMmJyM0

ギコの言葉を受けて、にやにやと笑う10人。
しかしいやな笑いではなく、どこか楽しげでこの後を期待させる。

(´・ω・`)「ま、そうだよね。ぼくもフル装備するのは久しぶりだし、防具系はツン、弟者、モラが頑張ってくれたから、最近新調してだいたいみんな初お披露目なんじゃないかな」

そう言って9人を見るショボン。
 _
( ゚∀゚)「どうすんだ?まずは全員の装備チェックでもするか?」

そう言って肩に担いだ両手剣を振り回すジョルジュ。
一番端にいたため空いている側を中心に振り回したが、それでも隣のドクオが顔をしかめた。

その振り回した剣こそ見慣れた剣だったが、その他の装備は初めてだった。
大きめのガッチリとした体を守るのは、深い青をメインにした鎧。それはさらりと見ただけでその装備能力の高さを想像させる出来だった。
しかし体全身を覆っているのではなく、背中と胸を覆うパーツ以外要所要所を覆うだけで、それらは細い鎖や紐で繋がれていた。
それ以外の服装はこの世界では一般的と思われるパンツとVネックのシャツだが、ところどころに服と一体化した金属のパーツが見え、防御能力を持つことを暗示させている。
また嫌味のない光沢のある黒のシャツと深い渋みを持つこげ茶色のパンツは鎧の青をさらに鮮やかに見せていた。

('A`)「剣を振り回すな剣を」

苦笑しながらジョルジュの両手剣を避けるドクオ。

細いその体を包む装備は漆黒と銀。
銀の縁取りと一部に同じく銀の細いプレートが埋め込まれた漆黒のコートは足首まである。
愛用の片手剣は身体というよりはそのコートに取り付けられた鞘に納められており、その黒の深さによく見ないと剣の存在が分からないほどコートに同化していた。
そして中に着ている服も黒一色で、要所要所に使われている銀の金具だけが、時折光を反射していた。
黒い革のブーツの踵の高さは動きを阻害しないギリギリの高さである。

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887 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:02:46 ID:/YGMmJyM0

ξ゚听)ξ「ま、振り回したくなるくらいその服が気に入っているなら許してあげてもいいけど」

('A`)「剣振り回すのに防具関係ないし被害受けてるのおれだし」

ξ゚听)ξ「気にしない気にしない。だいたい、あんたの服も弟者とモララーと協力して、時間かかったのよ」

( ^ω^)「ツンもその服おニューだおね。よく似合ってて可愛いお」

ξ*゚听)ξ「な、何言ってんのよ突然!このバカ!」

ドクオの横にいるブーン、その隣にツン。

ブーンの少しふくよかな体を包むのは薄い空色を基調とした服と防具。
鎧というより防具と呼ぶ程度の装備だが、要所要所はしっかりと守っている。
ラフな服装で動きやすさを一番にしているようで、華美な印象は受けない。
防具の一つ一つは空色の金属の上を透明な被膜が覆っており、日の光を受けて柔らかな輝きを放っている。
腰につけた細い片手剣も白と空色が基調の剣であった。
その下に着る服は形こそジョルジュやドクオと似たようなシャツとパンツだが、その質感はどこか高級感があった。シャツは純白、パンツは落ち着いた群青色。清潔感と爽やかさを兼ね備えた取り合わせである。

そして横にいるツンは全くの逆といってもいいだろう。

細めの身体を包む黒と赤のレースを多量に使ったゴスロリパンクの姿はとてもじゃないが防具には見えない。だが光を受けて乱反射するパーツは金属でできており、レースに交じってベスト型の防具を着ているようだ。
下は黒レースのパニエで広がったミニスカートと真っ黒のニーソックス。エナメルの様な光沢を放つ少しごつい靴もドクオの靴の踵と同じくらいの高さがある。
金の髪をツインテールに結ぶ黒い豪奢なレースのリボン。両手には黒いレースの手袋。
身体を飾る金の装身具。
動くとスカートのフレア部分から見え隠れする白いレースは小さなティアラの様に頭を飾る帽子と同じレースのようだ。
腰に付けた細剣は、刀身こそ黒曜石の様な深い落ち着いた輝きなのだが、それを納める鞘と鍔と持ち手は、黒のレースと細い金で彩られている。

しかし何故かその姿は、ブーンの隣にいて違和感を感じなかった。

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888 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:03:56 ID:/YGMmJyM0

川 ゚ -゚)「私の方はもう少し地味でもよかったがな」

ξ゚听)ξ「そんなこと言わないの。少しは明るい色も着なきゃだめなんだから」

ツンの隣に立つクーはうって変わって和装。

女性としては高めの身長と男性を魅了するその体を包むのは淡桃色と薄紅色のグラデーションを施された着物と胸の下で締める濃い紫色の女袴。着物には桜の花びらが舞っており、袴の帯は深い真紅の色で、リボンのように前で締められている。
右手には身長よりも長い薙刀。柄は漆塗りのような光沢をもつ黒い芯を囲む様に編んだ籐で作られており、ところどころに金の飾りと赤い組紐が結ばれている。
胸には黒い胸当て。両手には手のひらを覆わない肘までの長さの茶色い革の籠手。白い襷で袂をくくり、長い黒髪も白い細めの鉢巻きで一纏めに結んでいた。
足元はこげ茶色のショートブーツなため、和服ではあるが着こなし方も含めて洋装の雰囲気も醸し出していた。

ξ゚听)ξ「普段は青系が多いから、ちょっと渋めの暖色で桜の花と大正浪漫をイメージしてみた」

( ´_ゝ`)「おれらのイメージはなんだんだ?ツン」

(´<_` )「それ、ほんとに聞きたいのか?」

隣に立つは兄者と弟者。

兄者はいつもの巨大金鎚を軽々と肩に担いでいる。
その身体を守るはオレンジに近い黄金色の鎧。上半身は両手の動きを阻害しない程度に厚めに身体を覆っており、その堅牢さを誇示している。しかし下半身は腰を守るプレートがベルトから数枚ぶら下がっているばかりで、あとはひざ下までを覆う鎧と同系色のプレートを埋め込まれた茶色のブーツだった。
中に着るは前の男三人と似た感じのシャツとパンツ。
色も鎧を引き立てるように黒色であり、裾や襟といった場所を彩る金の刺繍が製作者のこだわりとあがきを感じさせる。

ξ゚听)ξ「男の服は基本つまらないけど、なんとかその中で楽しみを見つけてる。でもあんた達のはほんとにつまらない!もうちょっと防具に遊び心を加えるとか、なんか出しなさいよ!要望聞いてもシンプルでとしか言わないし。悔しいから完全にシンプルでお揃いにいしてやったけど」

(´<_` )「うわ…とばっちり?」

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889 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:05:18 ID:/YGMmJyM0

顔をしかめた弟者が持つのは巨大両手斧。
その体を守る鎧は形はほとんど兄者と同じだが、色は光沢のないアンティーク調の銀色をメインにしている。それ以外によくわかる違いは腰に付けたプレートの長さと量が違うくらいで、それ以外はほとんど兄者の纏う防具と一緒だった。
中に着るものもほぼ兄者と同じで、刺繍の形と色が銀色であるのが目に見えてわかる違いだった。

ξ゚听)ξ「防具の形もほぼ一緒だし、ホント仲良いわよね」

(´<_` )「別にお揃いにしたかったつもりはないが、お前らみたいに形にこだわらなければこんな感じになっちまうんだよ。それにおれと兄者は武器も打撃と斬撃の違いはあれど、大きさや実際攻撃する時の構えの形は似てるからな」

( ´_ゝ`)「弟者は俺のことが大好きだからな」

(´<_` )「ツン、次に防具を新しくするときには形から色から何から何まで相談するからコーディネイトしてくれ。兄者の防具とは形を変えるから」

( ´_ゝ`)「お兄ちゃん悲しい」

ミ,,゚Д゚彡「でもツンにお任せするのは良いから!」

弟者の横にはフサギコ。
こちらもクーと同じく和風だが、更に和風のイメージが濃くなっていた。

ミ,,゚Д゚彡「こんなにかっこよくてすごくうれしいから!」

その姿は侍。
銀糸の混じった淡い灰色の着物とに、黒と間違えそうなほど深く暗い灰色の袴。帯も同系色だが、下帯の鮮やかな群青色が見え隠れしている。着物にはよく見ると柄も施されているが、それは生地を手に持ってみないと分からないレベルの淡く細かなものだった。
防具らしい防具はつけていない様に見えるが、よく見ると着物の衿や帯、袴のひだには同じ色のプレートが確認できる。おそらくは数値的にはそれが防御力をあげているのであろう。
足元は白い足袋と草履といった装備だが、おそらくはこちらも防御力は高く、動きを阻害することはないと思われる。
腰には一振りの刀と小太刀。
両方とも黒い鞘に納めれており、同形状の鍔と柄をしているが、柄頭の金具の色だけが金と銀に色分けされていた。

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890 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:07:12 ID:/YGMmJyM0

ξ゚听)ξ「…あんたのが一番大変だった」

(((´<_` )

( ・∀・)))

ポツリとつぶやいたツンの一言に、黙って頷く弟者とモララー。
余程大変だったのか、普段ならそれに関して喋りまくるツンとモララーが顔を見合わせるに終わり、それを見て周りが苦笑いを浮かべた。

ミ;,,゚Д゚彡「ほ、ほんとに感謝してるから!ありがとうだから!」

ξ゚听)ξ「ま、その分出来には満足してるけどね」

( ´∀`)「ふさがアクセサリーをつけるのも珍しいもなね」

フサギコの左耳に鈍く光る一つ石のピアスを見てモナーが聞く。

ミ,,゚Д゚彡「防御力と各種能力値アップのピアスだから!」

( ・∀・)「手とか胸には付けたくないとかわがまま言うから、苦肉の策でレア物の鉱石使ってやっとだよ」

ミ,,゚Д゚彡「ほんとうにありがとうだから!」

( ´∀`)「それは良いもなね。モナも頼もうかなもな」

フサギコの隣に立つのはギルドで一番の長身のモナー。
右手に持つのは身長より長い三又の鉾。つい先日新調したばかりだったが、本人曰く「このまま牧草をすくのに使いたいもな」と言うほど気に入っていた。
その体を守るのは流石兄弟と似た形の防具。色は深緑。形の違いは下半身を守るプレートが腰からぶら下がっているのではなく茶色のパンツに埋め込まれた形状をしていることぐらいであろうか。
両手には同じく茶色の革製のグローブ。これは手首まで覆う長さだが、手の甲には同色のプレートが仕組まれており、さらに手首の部分にも小さなプレートが何枚も縫い付けられていて、手首を守っている。
そして一番の違いといえば、縁を若草色の糸で刺繍をされた、深い茶色の革製マントであろう。
両肩に付けた金具に備え付けられたマントは、背中を守るのではなくモナーの左側を覆うようになっており、その長さは足元ギリギリまであった。
武器を右手に持っているから左側を覆うようになっているのは分かるが、何故そのような防具を纏っているのかというと、その答えは足元にあった。

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891 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:08:39 ID:/YGMmJyM0

▼*・ェ・▼「くぅーん」

マントの内側から顔を出すビーグル。
どこか嬉しそうに、肌触りの良いマントの内側を頬でこすりながら、周囲を伺っている。

( ´∀`)「ビーグルも気に入っているみたいもな。ありがとうもな」

(´<_` )「ビーグル用の武具が作れなかったからな。小さな盾も考えたが、それだと機動性が悪くなるからこれが一番いいだろ」

( ´∀`)「モナがビーグルをちゃんと守るもな」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

( ´∀`)「そうもなね、モナーとみんなをビーグルが守ってくれるもな」

抗議の声を上げたビーグルの頭を撫でるモナー。
それを見るメンバー全員の顔が優しさでほころぶ。

ξ゚听)ξ「マントの方はホントはもっと派手な色にしたかったんだけど」

(´<_`;)「それじゃあ隠蔽の能力値が落ちるだろうが」

ξ゚听)ξ「って言われたから仕方なくその色。生地はレア物で隠蔽能力高いから。あと緑の刺繍は木々の中に隠れるには効果アップのはずだから、意地でいれた」

(;´∀`)「ありがとうもな」

( ゚∋゚)「おれの方もその意地が働いたのか?」

ξ゚听)ξ「当り前よ」

どや顔で無い胸を張るツンに苦笑で返すクックル。

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892 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:09:53 ID:/YGMmJyM0

クックルが右手に持つは両手棍。クックルは槍も使うが、最近は棍の方が使いやすく感じていた。
紫檀のような赤みを帯びた色をもち、両端と随所に金と銀の金具をつけた棍は一見攻撃力が高そうに見えないが、実は最近兄者が作った傑作品であった。
身体を守る防具はまた特殊だった。
一枚の長方形の布の真ん中に頭を出す穴をあけ、それを体の前後にたらすように被った姿、と言えばその姿を伝えることが出来るだろうか。
生地の色はモナーのマントと同じ深い茶色。しかしマントと違ってその半分以上を緑色の刺繍と当て布によって大地の上に生きる植物をイメージした紋様が占めている。

( ゚∋゚)「これは派手じゃないのか?」

ξ゚听)ξ「あら、スキル値でいうとそんなに変わらないようにしたのよ?色も生地も糸も吟味したし」

(´<_` )「でも、プレートの色はツン指定だよな」

( ・∀・)「その色出すのに苦労したぞおい」

ξ゚听)ξ「イメージは大地に咲く一輪の花よ」

(;゚∋゚)「本気か!?」

布の前後には大きなプレートが二枚ずつ縫い付けられている。防御力の要となるそれは普段は濃いオレンジ色だが、光の加減によっては明るい赤に見えることもあった。

ξ゚听)ξ「モナーに続いての長身だし、やせ気味だから肩パットも入れてちょっと威圧感を出しつつヒマワリのような華やかさも演出してみました」

得意げにこちらを見るツンに強張った笑顔を返しつつ、自分の姿を省みるクックル。
茶色のパンツに薄いオレンジのシャツ。膝を隠すこげ茶色のブーツと同じ色の皮手袋。
色合いも姿も気に入っていただけに、イメージが自分自身と違いすぎて頭を抱えて悶えたくなるのをこらえるのに必死だった。

( ・∀・)「ああ、なるほどな」

隣でモララーが呟いて、思わずその顔を見る。

(;゚∋゚)「モララー?」

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893 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:11:12 ID:/YGMmJyM0

( ・∀・)「いや、大地と草は分かってたけど、オレンジは太陽かなとか思ってたからさ。花だと聞いて納得。でも最初から言っておいてくれればもっと花っぽい雰囲気にしたのに」

(´<_` )「だな」

ξ゚听)ξ「あら、それじゃあ次はもっと」

(;゚∋゚)「それは許してくれ」

疲れたように頭を下げるクックルを見て笑うメンバー。

特にクックルの横に立つモララーはクックルの姿を見ながらにやにやと笑っている。

(;゚∋゚)「ホントにかんべんしてくれよ、モララー」

( ・∀・)「それはツンに言ってくれ。おれらは裁縫師様に従うだけだからさ」

笑顔のモララーにがっくりと肩を落とすクックル。

そんなモララーの姿はこの中では異彩を放っていた。

黄緑色のフード付きのトレーナーに焦げ茶のベスト型鎧。革に似た表面は光沢が全くなく、金属らしさを感じさせない。
大きなポケットが付いた大き目なカーキ色のパンツは脛の真ん中まで捲られており、明るい茶色のショートブーツが存在感を示している。
腰には太いベルトと下に垂らしたサスペンダー。ベルトは普通の皮のようだが、サスペンダーが小さいプレートが縫い付けてあり、防御力をあげていた。

( ´∀`)「モララーは動きやすそうなかっこうもなね」

( ・∀・)「かっこかわいい系を目指してみた」

ξ゚听)ξ「はいはい」

胸を張るモララーと、呆れたように相槌を打つツン。

武器は右側の腰には形の違う二つの爪がぶら下がり、左側には短剣と鞭が備えられている。

.

894 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:11:45 ID:VYoKsxoAO
きてた!

895 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:12:51 ID:/YGMmJyM0

( ゚∋゚)「また短剣も使い始めたのか?」

( ・∀・)「しぃが使ってるのを見てちょっと懐かしくなったからな」

ξ゚听)ξ「ただの飾りよ」

( ´_ゝ`)「それ、おれが冗談で作った攻撃力は最低ランクのやつだよな」

( ・∀・)「言うな」

( ^ω^)「ああ、兄者の所からただでもらったっていう」

( ・∀・)「言うな」

(´・ω・`)「メインの武器はあんまりころころ変えないでほしいけど、まあ爪と短剣ならそう変わらないか」

ずっと全員の装備を見ながらウインドウを開いて何かをしていたショボンが口を挟む。

(´・ω・`)「ギルドの固定カラーとか決めてないし服装も自由だけど、うちは皆個性的だよね」

('A`)「今日一番の『お前が言うな』だな」
 _
(;゚∀゚)「ショボンのそれはなんなんだ?っていうか戦えるのかそれで」

ξ゚听)ξ「元の私のイメージは指揮者だったのよ。前に着てたロングコートに合う感じで。でも今回はショボンの指定でインバネスコートにしたからちょっと雰囲気変わっちゃった」

川 ゚ -゚)「探偵ルックだな」

( ´∀`)「シルクハットとパイプは持たないもなか」

(´・ω・`)「……」

台の上に立つショボンの姿は、また特徴的だった。
白のウイングカラーのシャツにシルバーグレーのアスコットタイをループで留め、その上に黒のベスト。下半身は折り目のしっかりと付いた黒いスラックスと黒い皮靴。そしてその上に黒地に灰色と銀を裾や縫い目にあしらったインバネスコートを羽織っている。
コートの裾には白、赤、桃、紫、橙、金、銀、緑、茶、藍、青、群青、空色の糸で刺繍がされていた。

(´・ω・`)「ところでこの刺繍も」

.

896 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:14:25 ID:/YGMmJyM0

ξ゚听)ξ「意地よ。あんたも黒とか灰色とか銀指定なんだもん」

(´・ω・`)「……次には気を付けるよ」

コートの左腰には片手剣の中では一番短く細い剣が鞘に入って備え付けられ、右側にはリング型の武器が留められている。
普段はかけていない銀縁のスクエアタイプの眼鏡を触りながら、ギコとしぃに視線を向けた。

(´・ω・`)「じゃあはじめようか。お二人さん。前にどうぞ」

(,,゚Д゚)「!?お、おう」

(*゚ー゚)「は、はい」

道を作ってくれた九人の前に出てくる二人。
そしてショボンに無言で促されて台の上に上った。

(*゚ー゚)「あの、いったい?」

(,,゚Д゚)「何が始まるんだゴラァ?」

戸惑ってはいるが、特に不安そうな様子は見せずにショボンに問いかける二人。

(´・ω・`)「まずは、はいこれ」

開いたままのウインドウを操作して、両手に一つずつ小さな箱を実体化させる。

そしてそのまま二人に差し出した。

(´・ω・`)「はい、これ」

ギコの前には黒い箱。
しぃの前には白い箱。

(,,゚Д゚)「?」

(*゚ー゚)「?」

(´・ω・`)「ほら、早くとって」

(*゚ー゚)「は、はい」

(,,゚Д゚)「なんだ?」

首をかしげながら受け取り、ふたを開ける二人。
中には指輪が一つ入っていた。

.

897 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:15:52 ID:/YGMmJyM0

(*゚ー゚)!

(,,゚Д゚)「なんだこれ?」

目を見開いてショボンの顔を見るしぃと、さらに首をかしげるギコ。

(´・ω・`)「遅くなってごめんね。なかなか良いものが出来なくて。でも待たせた分だけ良いものをモララーが作ってくれたから」

( ・∀・)「両方とも傑作だぞ」

(*゚ー゚)「ありがとうございます!」

(,,゚Д゚)「?????」

箱から取り出し、目に近付けてじっくりとみるしぃ。
その隣でまだ不思議そうな顔をしているギコ。

( ゚∋゚)「ギコ…」

(´<_` )「ギコ…」
 _
( ゚∀゚)「ギコ!これだこれ!」

ジョルジュが自分の左手見せ、似たような指輪が中指にはまっているのをギコに示す。
それにならって全員が指輪をはめた手をギコに見せる。

(,,゚Д゚)「……!」

(´・ω・`)「ギルドの証、ギルドリングだよ。といっても、ステータスアップが出来るリングにギルドマークと名前を彫っただけだけどね」

( ・∀・)「ショボンお前、そのリングを作るのにどんなに頑張ったか」

(´・ω・`)「ごめんごめん」

笑うメンバーを気にせず、慌ててリングを取り出してしぃと同じようにじっくりと見るギコ。
そして外側に掘られたギルドマークと内側に掘られた自分の名前を見て満面の笑みを見せた。

.

898 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:17:17 ID:/YGMmJyM0

(,,゚Д゚)「ありがとうだぞゴラァ!」

(*゚ー゚)「ありがとうございます!」

ほんの少しだけ涙声で叫ぶように礼を言う二人。

(*゚ー゚)「いつくれるのかなってちょっと不安に思ってて…」

(,,゚Д゚)「二人で話してたんだぞゴルァ!」

(´・ω・`)「ごめんごめん。早くあげたかったんだけど、せっかくだから納得の出来るものあげたいねってモララーと話してたら遅くなっちゃって」

頭を掻きながら言うショボンを見てから互いの顔を見るギコとしぃ。
そして頷きあうと、二人とも右手の中指に指輪をはめた。

(´・ω・`)「おっ」

(*゚ー゚)「貰ったらここにはめようって二人で決めてたんです。」

(,,゚Д゚)「左は婚約指輪だゴラァ」

いつの日からか、ギコの左手薬指にも指輪がはめられていた。

(,,゚Д゚)「しぃに貰った!」

嬉しそうに両手をひらひらとさせるギコ。
しぃとも話し、貰ってこれだけ嬉しそうにしているのに渡された時にはピンとこないで不思議そうにしていたのがギコがギコとしてギコらしく、今や全員にほほえましく思われている点であろう。

ξ゚听)ξ「ショボン!」

(´・ω・`)「そうだね。次に行こうか」

ツンに声をかけられて、台から降りるショボン。
不思議そうにそれをみる二人を気にせず、兄者と弟者に視線を向ける。

( ´_ゝ`)「おれ達の」

(´<_` )「出番だな」

.

899 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:18:37 ID:/YGMmJyM0

台に上らずにウインドウを出す二人。
そして操作を始めると、ギコとしぃの目の前にウインドウが表示された。

そこに表示される武器と防具たち。

(*゚ー゚)「これは!?」

( ´_ゝ`)「この前一緒にレア鉱石のクエストと採取に行っただろ。それで作った武器だ」

(,,゚Д゚)「防具も!」

(´<_` )「武器を存分に振るうには、それ相応の防具もないとな」

ξ゚听)ξ「あら、服も大事よ」

いつの間にかツンもウインドウを出しており、新たなアイテムが二人のトレードウインドウにならぶ。

( ・∀・)「もちろん装飾もな。あげられるステータスは上げて強化した方が良い」

モララーからも渡されるアイテムたち。

( ・∀・)「服や武器・防具より底上げ度は低いけど、その分持ち歩ける量は多いしその時強化したいステイタスにあわせて付け替えしやすいから、その時々に対して考えて装備しろよ」

(*゚ー゚)「あ、ありがとうございます!」

(,,゚Д゚)「すごいぞゴラァ!」

(´・ω・`)「まずはギルド支給の装備一式だよ。以降は自分の好きな形でそれぞれに発注するようにね。自分のレベルとステイタス・スキルに合った装備をすれば戦いやすい。そして自分好みの恰好が出来れば、気持ちも楽しくなるしね」

(,,゚Д゚)「おう!」

(*゚ー゚)「はい!」

(´・ω・`)「じゃあ折角だから着替えてきなよ。みんなも見たいだろうし」

にっこりとほほ笑んだショボンに促されて牧場の建物に向かうギコとしぃ。

それを見送るメンバー達。
全員がにやりと笑った。

.

900 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:19:53 ID:/YGMmJyM0


(*゚ー゚)「あの…これ…」

(,,゚Д゚)「!」

先に着替えて戻ってきたギコ。
幾つかのパーツを組み合わせた青銅のような鎧は胸と背中、肩を覆っている。
腰には同じ素材のプレートが左右に一枚、前後に二枚ずつ付けられており、合計6枚のプレートで腰回りを守っている。
ギコはブーツも同じ材質で出来ており、向う脛まで覆うそれは鈍い光沢を放っていた。
インナーは白いシャツにデニムのような藍色をしたパンツ。パンツの縁にはかろうじて銀色の金具による縁取りが多少されているが、目に見える装飾はほとんどされていない。
肩に取り付けられたショートマントも焦げ茶色で、裾にかろうじてギルドネームをあしらった刺繍がされているが目立つほどではなかった。

( ´∀`)「なんでギコの服は装飾が少ないもな?」

ξ゚听)ξ「しぃにそれとなく好きな異性の服装を聞いたらあんな感じだったのよ。それに合わせると、隠蔽用のマントもあんまり遊べなかったから、ちょっとつまらなかったのよね」

じっとギコの服を見る男性陣のうちの何人かは、心底羨ましそうだった。

ギコの左の腰には片手剣を入れる藍色の鞘。
新しい武器に慣れるため、建物から出てきたときから右手で先ほど貰った片手剣を握っていた。

(,,゚Д゚)「……」

そして軽く素振りをしていたギコだったが、先ほどから動きがとまり、固まっている。

(**゚ー゚)「やだなあギコ君、そんなに見ないでよ」

(,,゚Д゚)「しぃ……」

ξ゚听)ξ「よし!やっぱりよく似合う!」

少しだけ恥ずかしそうに歩いてくるしぃ。

.

901 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:21:32 ID:/YGMmJyM0

白のノースリーブに薄い茶色の皮のショートパンツ。その服装は男性を煽情させる肢体を如実に外に示しており、しぃが恥ずかしそうにしているのはそのせいであろう。
両肩を通ってショートパンツに繋がる太めのサスペンダーは淡いピンク色で、縫い付けられた同色のプレートが、モララーの付けていたサスペンダーと同じく防御力を想像させる。
ショートパンツよりも少しだけ濃い茶色のブーツは編み上げのショートタイプで、細い足を更に細く見せていた。紐と飾りがピンク色で、シンプルな中にサスペンダーと合わせて女性らしい可愛らしさを魅せていた。
腰にはブーツと同じ茶色の太いベルトが緩く装着されていて、先ほど貰った短剣を後ろ側に横向きに納める鞘が付いている。おそらくはこれにも防御力を上げるプレートなどが仕込まれているのだろう。
左手の肘まで覆う茶色のグローブは手甲の役目を持ち、普段右で武器を扱うため右のグローブは動きを阻害しないために手の甲と手首付近を守るようなデザインとなっていた。

川 ゚ -゚)「良く似合ってるぞ、しぃ」

(*゚ー゚)「ありがとうございます」

(,,゚Д゚)「しぃ……」

ツンとクーのもとに駆け寄るしぃ。
それを目で追いつつ、体の向きを変え、けれど固まったままのギコ。

('A`)「ギコ、そろそろ目を覚ませ」

(,,゚Д゚)「え、あ、う、」

( ´_ゝ`)「まぁ、気持ちは分かるがな」

( ・∀・)「しぃちゃんもともと可愛いけど、ツンの作った服は卑怯だ」

(´<_` )「でも、ちゃんと防御力はレア防具クラスまで上げてあるぞ。もちろん全員そのレベルまで上げてあるが」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

そして固まったままのギコに寄ってきた四人がギコをからかっていると、再びショボンが台の上に上った。

(´・ω・`)「さて、全員フル装備になったところで今日のメインイベントを始めて行こうか」

よく通るショボンの声で、ギコとしぃを除く全員が姿勢を正してショボンを見る。
慌ててそれに倣う二人。

(´・ω・`)「ギルド『V.I.P.』恒例!『チキチキ決闘大会』!始めるよ!」

.

902 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:23:03 ID:/YGMmJyM0



2.ギルドの練習



.

903 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:24:17 ID:/YGMmJyM0

ショボンの言葉を受けて盛り上がるメンバーを見ても、何のことか分からず呆然とする二人。
眉間にしわを寄せてショボンを見るギコに近寄るしぃ。

(*゚ー゚)「ぎ、ギコ君」

(,,゚Д゚)「し、しぃかゴルァ」

(*゚ー゚)「今、ショボンさん決闘とか言ってたよね」

(,,゚Д゚)「ああ、言ってたなゴラァ」

(´・ω・`)「各人の能力を肌で感じ、スキルをじっくりと見て、パーティーを組んだ時誰とでも最高のコンビネーションを行うために、みんな頑張ろう!」

雄叫び、というよりは和気藹々とした歓声あげるメンバー達。
それぞれに装備の確認を始めていく。

(´・ω・`)「だけど、今日は午前中はギコとしぃがメインだからね」

(,,゚Д゚)!?

(*゚ー゚)「え?」

ショボンの言葉に構わず準備を続けるメンバー。
ショボンもそれを気にすることなく、自分を見る二人に話を続ける。

(´・ω・`)「実は、VIPでは各々の技量を全員が認識してコンビネーションに活かすためにギルド内模擬戦大会を行ってるんだ。模擬戦といっても初撃決着モードの決闘だけどね。戦闘中はなかなかソードスキルをじっくり見ることはないし、かといって安全に戦うために低層階でモンスターを狩るのはマナー違反だからね。最初は圏内で守られた状態や的に向かってスキルを観察したりとかしてたんだけど、やっぱりやるにも見るにもなんか調子が出なくてね」

困ったように笑い、頭を掻いて一呼吸置く。

(´・ω・`)「それになにより、つまらないんだよ。楽しくない」

(;,,゚Д゚)「……」

(;*゚ー゚)「……」

.

904 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:26:17 ID:/YGMmJyM0

(´・ω・`)「で、始めたのが決闘形式の大会。実力も分かるし、真剣になるしね。もちろん優勝者には商品もあるよ」

(;*゚ー゚)「でも…決闘なんて……」

(´・ω・`)「人を……しかも仲間に武器を向けるのは抵抗あるよね。でも、悲しいことだけどこの世界で武器を持ってフィールドやダンジョンに出るということは、自分や仲間を守るために人に武器を向ける日が来てしまうかもしれないんだ」

(,,゚Д゚)「!……それは」

(*゚ー゚)「!オレンジプレーヤー……。『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』のような、殺人ギルド」

(´・ω・`)「そう。悲しいことだけど、この世界では悪意や敵意を持って自分や仲間に武器を向ける相手に出会う可能性がゼロではないんだ。その時に自分や仲間を死なせないために、そして何より自分に武器を向けて攻撃してきた相手を殺さないために、知っていてほしいんだ。人に武器を向ける恐さとその覚悟、そして守るための技術を」

(,,゚Д゚)「………」

(*゚ー゚)「………」

(´・ω・`)「分かってくれるかな」

(,,゚Д゚)「ああ。分かったぞゴルァ」

(*゚ー゚)「はい…がんばります」

(´・ω・`)「よかった」

一瞬切なそうに笑ったショボンだったが、一呼吸置くとすぐにいたずらっ子のような笑みを見せる。

(*゚ー゚)!

(,,゚Д゚)?

.

905 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:27:30 ID:/YGMmJyM0

(*゚ー゚)「あ、で、でもショ」

(´・ω・`)「二人も納得してくれたところで、まずは今日のスケジュールを言うね」

(*゚ー゚)「ボンさん、あの」

台の上からニッコリとほほ笑んで周りを見回すショボン。

(´・ω・`)「午前中はギコとしぃの訓練タイム!」

(*゚ー゚)「あああああああ。やっぱりなんかあった!」

(,,゚Д゚)!?
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「いえーい!」
          ('A`)(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

(;*゚ー゚)「しかもみんなまでグルだった!」

(,,゚Д゚)??

(´・ω・`)「ギコとしぃは各々全員と最低1回初撃決闘!各人最高5回までチャレンジ可能!全部で60回!その回数の中で一回で良いから誰かに勝つこと。もし勝てなかったら罰ゲーム!」

 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「いえーい!」
          ('A`)(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*゚ー゚)「え!え!!え!!!?」

(,,゚Д゚)「?????な、え?」

.

906 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:29:03 ID:/YGMmJyM0

(*゚ー゚)「あ、で、でもショ」

(´・ω・`)「二人も納得してくれたところで、まずは今日のスケジュールを言うね」

(*゚ー゚)「ボンさん、あの」

台の上からニッコリとほほ笑んで周りを見回すショボン。

(´・ω・`)「午前中はギコとしぃの訓練タイム!」

(*゚ー゚)「あああああああ。やっぱりなんかあった!」

(,,゚Д゚)!?
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「いえーい!」
          ('A`)(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

(;*゚ー゚)「しかもみんなまでグルだった!」

(,,゚Д゚)??

(´・ω・`)「ギコとしぃは各々全員と最低1回初撃決闘!各人最高5回までチャレンジ可能!全部で60回!その回数の中で一回で良いから誰かに勝つこと。もし勝てなかったら罰ゲーム!」

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( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「いえーい!」
          ('A`)(´<_` )

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*゚ー゚)「え!え!!え!!!?」

(,,゚Д゚)「?????な、え?」

.

907 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:30:20 ID:/YGMmJyM0

罰ゲームを聞いて気を引き締めなおすギコとしぃ。

(´・ω・`)「やる気になってくれて嬉しいよ」

そしてほほ笑むショボンをじとっとした目で見つめる。

(´・ω・`)「あまりにも勝てそうになかったら、ちゃんとハンデも設定するしね」

さらににこやかに話すショボンだが、二人の恨めしそうな視線は変わらない。
その視線をもろともせずに、残りのメンバーに視線を向ける。

(´・ω・`)「さて、二人にペナルティがある以上、僕らにもペナルティがないとね」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「え!?」
          ('A`)(´<_` )

(´・ω・`)「僕を含めた十二人は、一回目の戦闘でギコもしくはしぃに負けたら、罰ゲームと行こうか」

先ほどまでにこやかに話していたメンバーの顔がこわばる。

('A`)「…内容は?」

(´・ω・`)「ギコとしぃと同じ内容で良いんじゃないかな」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「え!?」
          ('A`)(´<_` )

(´・ω・`)「それじゃあつまらないか…。何かほかに」
 _
(;゚∀゚)(;^ω^)ξ;゚听)ξ川;゚ –゚)
(;´_ゝ`)ミ;,,゚Д゚彡(;・∀・)
(;´∀`)(;゚∋゚)
「いや、それでいいです」
          ('A`;)(´<_`;)

.

908 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:32:17 ID:/YGMmJyM0

(´・ω・`)「そう?」
 _
(;゚∀゚)(;^ω^)ξ;゚听)ξ川;゚ –゚)
(;´_ゝ`)ミ;,,゚Д゚彡(;・∀・)
(;´∀`)(;゚∋゚)
「はい!(絶対もっとひどいペナルティにされるから!)」
          ('A`;)(´<_`;)

(´・ω・`)「ん〜。つまらないけどまあいいか。まさか一回目で負けるメンバーもいないだろうしね」
 _
(;゚∀゚)(;^ω^)ξ;゚听)ξ川;゚ –゚)
(;´_ゝ`)ミ;,,゚Д゚彡(;・∀・)
(;´∀`)(;゚∋゚)
「(プレッシャーひどい)」
          ('A`;)(´<_`;)

▼・ェ・▼「くぅ〜ん」

(*´・ω・`)「もちろんビーグルちゃんは罰ゲームとかないからね」

▼*・ェ・▼「きゃん!」
 _
(;゚∀゚)(;^ω^)ξ;゚听)ξ川;゚ –゚)
(;´_ゝ`)ミ;,,゚Д゚彡(;・∀・)(;゚∋゚)
「(ビーグルめ!)」
          ('A`;)(´<_`;)

▼*・ェ・▼「きゃん!きゃん!」

( ´∀`)「(ビーグルはやっぱりお利口さんもなね)」

(´・ω・`)「さて、詳しいルールは特に無しだけど、とりあえず二人は交互に休憩を取りつつ、残りは連戦にならない様に順番に気を付けて、始めようか」

表情を引き締め、ギコとしぃを見るショボン。

その表情は今までの柔らかさが全くない、冷徹なものだった。

思わず背筋を伸ばして姿勢を正し、気を引き締める二人。
他のメンバーも和やかな笑顔を消して三人を見る。

.

909 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:33:48 ID:/YGMmJyM0

(´・ω・`)「まずは僕とギコかな。ギコ、いける?」

(,,゚Д゚)「ゴ、ゴルァ!いくぞ!」

(´・ω・`)「よし、じゃあ行こうか」

片手剣をぎゅっと握るギコ。
ショボンの顔に、不敵な笑みが走った。



川 ゚ -゚)「モナー」

( ´∀`)「なにもな?」

川 ゚ -゚)「一応確認だが、不可視モードにはしてあるよな?」

( ´∀`)「大丈夫もなよ。今日は朝起きた時からしてあるもな」

念のため牧場の管理者専用画面を開くモナー。
項目がちゃんと選択されているのを確認する。

( ´∀`)「大丈夫もな」

(´<_` )「この連戦を見られていたら、うちのギルドは丸裸だからな」

('A`)「まったくだ」

通常牧場と農場は敷地の外からも中を見られるようになっている。
外観的な要因もあるが、何より『商売』という前提がある場合は開かれた環境が必要だというのがショボンの信念の一つであったからだ。
しかし今日は外から中を覗いてみることが出来ない様にしてあった。
それは、『戦闘』をギルド外の人間に見せないためである。

(´・ω・`)「モードは初撃。先に相手にしっかりとした一撃を与えるか、HPをレッドにした方が勝ち。いいね」

ギコの前に、ウインドウが浮かぶ。

【Shobonさんから決闘が申し込まれました】

(,,゚Д゚)「了解だゴルァ!」

モードを選択し、

【YES】

の、ボタンを触った。

.

910 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:35:31 ID:/YGMmJyM0

≪ギコ vs ショボン≫


空中に浮かぶカウントダウン。
ゼロになった瞬間に決闘が始まる。

(,,゚Д゚)「(ショボンが構えている武器は細剣に見えるが片手剣。つまり剣技は俺と同じ。でもあのタイプは投剣に使い勝手が良いって勉強会で言っていたタイプの剣。しかも相手はショボン。直線的に動くのはダメ。ブーンに教えてもらったステップで近寄って速攻!)」

カウントがゼロになった瞬間、多少ぎこちなさが残るものの舞うようなステップを踏んで左右に跳びながら近寄ろうとするギコ。
その視線の先でショボンが剣を投げるのが見える。

(,,゚Д゚)「(よし!)」

しかしその瞬間、無数の銀の線がギコを襲う。

(,,゚Д゚)「な!」

慌てて回避行動をとるが、バランスを崩してしまい転んでしまう。

(;,,゚Д゚)「ゴラァ!」

慌てて立ち上がろうと地面に手を着いたギコの視線の先には、大地に刺さるショボンの剣。

(,,゚Д゚)「?」

それが引き抜かれ、剣の切先で肩を突かれる。

(,,゚Д゚)「え?」

(´・ω・`)「はい、終了」

ファンファーレが鳴り、ショボンの頭の上には【WINNER】の文字が浮かぶ。
呆然と見上げた視線の先にはショボン。
ニッコリとほほ笑んでいるが、優しさよりも強者の余裕を感じる。
そして纏っているコートの内側に数えきれないほどの針や投擲剣が張り付けられているのが見えた。

(,,゚Д゚)「………」

(;゚∋゚)「コートの内側あんなことになってるのか」

ξ゚听)ξ「装備を出来るだけ軽くして内側に死ぬほど装備できるようにしてくれって言うからさ。あの形のコートなら前のコートよりいっぱい取り付けられるからね」

装備の制作にかかわったツン、モララー、弟者、兄者以外のメンバーが驚いたように見つめる中、決闘は終了した。

.

911 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:37:02 ID:/YGMmJyM0

≪しぃ vs クー≫


川 ゚ -゚)「ギルマスが出たから、次は副の私が出ないとな」

ウインドウでの操作が終わり、カウントダウンが始まる。

短剣を構え、まっすぐにクーを見つめるしぃ。

(*゚ー゚)「(リーチでは完全に負ける。でも中に入れば勝機はある。クーさんの薙刀は直線よりも円の動きに特化されているはず。突きもできるけど剣技として突きを多用するのは薙刀の特性を活かしてないって言ってた。でも円の動きをしているクーさんの中に入るのは難しい。だから何とかして突きをしてもらって、フェイントで中に入れれば。それには…)

カウントがゼロになった瞬間駆け出すしぃ。

(*゚ー゚)「(緩急をつけた踏み足でタイミングを取らせない直線的な攻撃。これなら突きの攻撃を誘えるかもしれない)」

川 ゚ -゚)「 」

下段に薙刀を構えたクーが口元に笑みをこぼしながら前に進む。

(*゚ー゚)「(よし!)」

タイミングを見計らって横に跳ぶために踏み出したしぃの左足。
しかしその足を払うようにクーの薙刀が襲い掛かる。

(*゚ー゚)!

それを避けるために充分なためを行わずに宙を舞うしぃ。
そのために高さが低くバランスを崩してしまうが、何とか短剣を構えて空中で剣技を放とうとする。

しかしその前に胴体に打ち込まれる薙刀。

跳んだ高さが足りなかったために刃の部分ではなく柄の部分ではあったが、その代わりに大地に打ち付けられてしまう。

何とか反応して体を丸めて防御はしたものの、落ちてバウンドしたと同時に大きく減るHP。
そしてレッドになり、ファンファーレが鳴り響いた。

川 ゚ -゚)「だ、大丈夫か!?」

頭の上に【WINNER】の文字を浮かべたクーが手を差し出す。

それを掴んで立ち上がりながら、

(*゚ー゚)「あと四回のうちに一回は勝ちます!」

と宣言し、クーが笑顔を見せた。

.

912 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:38:23 ID:/YGMmJyM0

≪ギコ vs 兄者≫


(,,゚Д゚)「(パワータイプの大金鎚。一発でも当たったらアウト。でもその分小回りができない。振り回すにも隙があるはず。まずは一発打たせて何とか避ける!)」

( ´_ゝ`)「いろいろ考えすぎるとお前の良さがなくなるぞー」

走り出したギコだったがそのスピードは先ほどよりは遅い。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

半分ほど進んでから加速する。

( ´_ゝ`)「なるほどな」

加速しながら弧を描くように兄者に向かう。
希望では自分に対して正面を向いてほしかったが、兄者は視線で追うだけで動こうとはしない。

(,,゚Д゚)「!ならば!」

そのままさらに加速し、兄者の左斜め後方から剣技を放つ。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!!!」

( ´_ゝ`)「単発重攻撃…ねぇ」

肩に担いでいた大金鎚を片手で軽々と持上げたかと思うと、そのまま手首を返してギコのやってくる方向に振り下ろした。

(,,゚Д゚)「!」

驚いたものの自分に当たる距離ではなく、にやりと笑って攻撃を与えようとした。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

片手剣を振り下ろすと同時に下から突き上げられた大金鎚。
兄者が手首のみで振り上げたのだった。

(,,゚Д゚)「がっ!」

剣が弾かれ、反動で尻餅をつくギコ。
その頭上から振り下ろされようとする大金鎚。

( ´_ゝ`)「武器の特性の差は見極めと判断を誤るとこうなる。覚えておけよー」

自分の正面に立つ兄者の言葉。
次の瞬間ギコの左肩に衝撃が走った。
.

913 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:40:17 ID:/YGMmJyM0

≪しぃ vs 弟者≫


(´<_` )「しぃちゃんとか〜。女の子と戦うのは緊張するな。ちゃんと攻撃できるかな」

ξ゚听)ξ「私は前回の大会であいつの斧に手を切断されそうになったのを忘れない」

川 ゚ -゚)「奇遇だな、ツン。私もだ」

(´<_`;)「さ、さあ本気でやるよ、しぃちゃん」

(*゚ー゚)「(弟者さんの斧も兄者さんほどじゃないにせよ巨大。クーさんよりは動きは遅くなる。さっきのギコ君の戦いを参考にして、まずは場をかき回す!)」

カウントゼロと共に駆け出すしぃ。

(´<_` )「おっ」

槍から変更してからまだ二ヶ月ほどではあるが、短剣を主武器にしてからはその特性を活かすためにスピードを重点的にあげてレベルアップを繰り返した。
その経験を存分に活かしてフェイントを織り交ぜて舞うように跳躍するしぃ。

(´<_` )「おおっ」

弟者が感心したように呟く。
それは周囲のメンバーも同じで、まだ洗練はされていないが充分に見応えと強さを感じさせるしぃの跳躍に歓声が上がった。

(*゚ー゚)「(まだ!)」

その声が聞こえているのかいないのか、更に加速するしぃの跳躍と駈足と短剣の振り。
フェイントとはいえ弟者の肌をかする一撃もあり、ほんの少しだが弟者のHPバーが減った。

(´<_` )「やばいなぁ。負けちゃうかも」

けれどおどけた様に呟く弟者。

.

914 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:41:20 ID:/YGMmJyM0

(*゚ー゚)!

その呟きを聞いて更に加速しようとしたしぃ。
しかし目前に振り下ろされた斧の側面が映り、回避できずにぶつかってしまった

(´<_` )「でも、まだ動きが甘いね」

顔を覆ってうずくまるしぃ。HPバーが少しだけ減った。

(´<_` )「おれに剣を当てることの出来た動線に頼ってしまっていたから、ここぞという時の動きが読めてしまった。せっかくのスピードが活かしきれてない感じだな」

しぃに振り下ろされる斧。
側面で叩きつけられて、HPをレッドにされてしまった。

頭上に【WINNER】の文字を浮かばせた弟者がしぃのそばにしゃがむ。

(´<_` )「だいじょうぶ?」

(*゚ー゚)「は、はい。でもなんで側面で」

(´<_` )「ん〜。やっぱり女の子を斧で切断するとかなかなか厳しいかと…」

川 ゚ -゚)「私は前回の大会であいつの斧に胴体を切断されそうになったのを忘れない」

ξ゚听)ξ「奇遇ね、クー。私もよ」

(´<_`;)「せっかくの機動性も動きを読まれたら半減というより弱点になるからね。勝ちにあせらずフェイントも織り交ぜて動きをかき回したほうが良いかな」

(*゚ー゚)「はい!」


.

915 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:42:51 ID:/YGMmJyM0

≪ギコ vs クックル≫


両手棍を下段に構えたクックルに対し、右手に持った片手剣を前に半身で構えるギコ。

(,,゚Д゚)「(まず注意するのはそのリーチ。あの両手棍ならおそらくメンバー1.まともに直線でいっては餌食になるが、見える動きをしても円の動きで防御されるし飛ばされる。かといって待っていても価値を想像できない。なら…)

カウントがゼロになると同時にまっすぐに駆け出すギコ。

( ゚∋゚)「…ほう」

少しだけ驚くも慌てることなく両手棍の先を少しだけ持ち上げ、タイミングを合わせてほんの少しだけ下から掬い上げるように攻撃をする。

(,,゚Д゚)「よし!」

受ける瞬間自分の人中線より少しだけ右に両手棍が動くのを見極め、左下側に向かってスライディングするギコ。
そしてそのまま、両手棍を打つために踏み出したクックルの右足を狙って剣を振るう。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

だがしかし、そこにクックルの足は無かった。

(,,゚Д゚)「え!?」

( ゚∋゚)「甘いな」

両手棍を打つと同時にそのまま逆の足を前に出し、その足と棍を使って跳びあがっていたクックル。

(,,゚Д゚)「え?」

上から聞こえた声におもわず顔をあげると、目前に両手棍が迫っていた。

(,,゚Д゚)「ゴラァ!」

顔を思いっきり叩かれるとヒットポイントバーが赤になるまで減り、ギコの耳に負けを告げる音楽が聞こえた。

( ゚∋゚)「発想は良いが動きが読まれるな。あと、わざと人中線より左側、お前から見て右側を狙うように棍を突き出したのは分かってるか?」

(,,゚Д゚)「!」

( ゚∋゚)「フェイントだけじゃなく、ミスをしたように見せかけて相手を自分の思い通りに動かすやり方もある。相手の力量を過不足なく推し量るのは戦闘の基本だぞ」

(,,゚Д゚)「ゴルァ…」
.

916 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:45:06 ID:/YGMmJyM0

≪しぃ vs モナー≫


( ´∀`)「ビーグルはショボンの所にいるもな」

▼・ェ・▼「きゃん!」

(*´・ω・`)「ビーグルちゃん!こっちだよ!」

カウントダウンが始まってからビーグルをショボンのもとに走らせるモナー。

その間も必死に思考を続けるしぃ。

(*゚ー゚)「(相手との間の取り方、選ぶ攻撃の種類、位置取り、短刀での基本的な動き方はモナーさんに教わったと言ってもいい。つまり、動きはすべて読まれて当然。まだ私にはその上の動きが出来るとは思えない。でも、スピードとステップはブーンさんとツンさんから教わった。だから、これで闘う!)」

カウントゼロと共に助走なしに跳躍するしぃ。

( ´∀`)「もな?」

もちろんそんな跳躍では対して跳ぶことは出来ず、モナーが構える三又の槍の射程範囲に入りはしない。

( ´∀`)「!」

着地と同時に右側に走るしぃ。
しかし数歩走ったと思うとすぐに跳躍する。

基本は周囲を走りまわって跳ぶだけだが、跳ぶ方向が円状だったり直線状だったりとランダムであり、また時には離れたりする場合もあるためモナーは動きが読めないでいた」

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917 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:48:40 ID:/YGMmJyM0

( ´∀`)「ブーンに教わった動きを使って、弟者に教わったことを活かそうととしているもなね」

にこやかにしぃの動きを分析するモナー。

( ´∀`)「でも、こうされたらどうするもな?」

下段に構え、剣技を発動するモナー。

( ´∀`)「はっ!」

赤い光を纏った槍を両手を使って振り回す、全方位技。
すべて当たれば5連撃となるが、この技の使い勝手の良さはそれではない。

(*゚ー゚)「くっ」

通常自分に対して水平に回すのが槍での「全方位」技なのだが、この技においては上空に切っ先を向けて槍を振り回す動きが一回あるため、位置とタイミングさえ合わせれば本来ならば届かない場所にいる飛ぶ敵にも一撃を与えることが出来ていた。

しぃの跳躍に合わせてその槍の振りを合わせたモナーの読みは経験に裏付けられたものであった。

(*゚ー゚)「きゃっ!」

三又の側面で叩きつけられて地面に落ちるしぃ。

( ´∀`)「しぃ、この短期間で完全に短剣の扱いを自分の物にしたもなね。すごいもなよ。でも、まだまだ上達出来るもな」

短剣を持つ右手に突き刺さる三又の中央の切先。

しぃのHPバーがレッドに変わった。

.

918 名前:名も無きAAのようです:2013/10/08(火) 23:51:03 ID:/YGMmJyM0

≪ギコ vs フサギコ≫


一定の距離を置いて立つギコとフサギコ。
すでにカウントは始まっている。

(,,゚Д゚)「(ふさの剣は刀。刀の特性は剣技による連続技。この世界では唯一といってもいい同じ武器での剣技から剣技への連続技。しかも最初の居合技数種とつながる剣技の組み合わせは数十通り。まずは構えた刀の角度と剣技を放つときの色で最初の一手を相打ちして連続技を封じる!)」

片手剣を両手で持つように正眼の構えを取るギコ。
 _
( ゚∀゚)「あ、こりゃ一発で決まるな」

(*゚ー゚)「え?で、でもあの構えならフサギコさんの一撃目を防御し易くないですか?」

( ´_ゝ`)「ん〜わかればね」

(´<_` )「ふさは刀スキルをメインにしてから色は変われどずっとあの形の装備だからな」

(*゚ー゚)「?」

カウントゼロになると同時に走り出すフサギコ。

(,,゚Д゚)「(見極める!……え?)」

剣技の射程圏内に入った途端にフサギコは技を発動。

そして硬直したギコの横を風のように通り過ぎ、刀によって腹部を切った。

(,,゚Д゚)「え?」

呆然と立ち尽くすギコのHPバーがレッドに変わる。

ミ,,゚Д゚彡「まだ敵じゃないから」

刀を鞘に納め、振り返るフサギコ。
それと同時にギコが膝をついた。

(;*゚―゚)「え?え?え?」

.

919 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:52:55 ID:/YGMmJyM0

( ´∀`)「横から見ると分かるもなけど、正面から見ると着物の袂や裾が広がって剣の向きや角度、剣技を放つ時の光の色が見えなくなるもなよ」

( ・∀・)「姿勢も半身気味にして、しかもそれほど大きくない身体を屈めるように走るから、手元も見えにくい」

( ゚∋゚)「それに左手で右手を隠すようにしているしな」

( ^ω^)「スピードも速いおね。僕ほどじゃないけどドクオくらいはあるんじゃないのかお?今は抑えていたみたいだからそれほど速く見えなかったけど」

ξ゚听)ξ「『武器と戦い方に合わせた服』。私の理想だし自分で作っておいてなんだけど、あれはチートと言えばチートよね。これからも作るけどさ」

川 ゚ -゚)「私の場合は薙刀に合わせただけで特に意味はないが、ふさは刀の強さを何倍にもしているな」

呆然と見るしぃ。
そしてまだ愕然と膝をついた姿勢で固まっているギコ。

ミ;,,゚Д゚彡「だ、だいじょうぶだから!ちゃんと手加減したから!」

('A`)「あ、追い打ちした」

四つん這いになり首を垂れるギコに慌てて駆け寄るフサギコ。

(´・ω・`)「さすが歴代チャンピオンだよね」

(;*゚ー゚)「?」

(´・ω・`)「今まで四回、トーナメント形式を三回と、総当たりを一回やっているんだけど、そのうち三回ふさが優勝したんだよ」

(;*゚ー゚)「えええええええ!?」

('A`)「あ、因みに残りの一回はおれね」
 _
( ゚∀゚)「最初の一回だけだろうが」

( ´∀`)「確かふさが刀にコンバートしたばかりの頃もな」

('A`)「それでも優勝しているんだからいいんだよ!」

呆然とするギコとしぃ、おろおろとするフサギコ以外の面々が、楽しそうに笑った。

.

920 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:55:02 ID:/YGMmJyM0

≪しぃ vs  モララー≫


( ・∀・)「それじゃあやろうか」

今まで対戦した相手の中では一番軽く言ったモララーだが、しぃには緊張を加速する要因だった。

(;*゚ー゚)「(モララーさんの武器は爪。今までは自分よりリーチの長い相手に潜り込むことを目指してやってきたけれど、爪は同じくらいかあちらの方が短い。威力もそれほど強くないから回数当てるか剣技を命中させなければ一発での終了はない…はず。スピードとフェイント、読みでは多分勝てないけど、アクロバティックな動きを混ぜればかく乱できるかもしれない!)」

カウントがゼロになった瞬間走り出すしぃ。
そして同じくモララーも走り出していた。

(*゚ー゚)!

今までのメンバーが自分の攻撃を受けてから流してくれていたため今回もそのつもりで走り出していたしぃにとって、その行動は想定外で一瞬動きを迷ってしまった。
しかしすぐに気を取り直して予定より早くステップを踏んで回避しようとする。

( ・∀・)「遅い」

だが剣技により加速したモララーは既にしぃの目の前にいた。

(;*゚ー゚)!

防御しようとするしぃの動きをあざ笑うかのように、隙間を縫って爪の先がしぃの身体を裂く。

.

921 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:56:17 ID:/YGMmJyM0

(*゚ー゚)!

少しずつHPを減らされ、とうとうHPバーの色が赤くなった。

( ・∀・)「はい、終了」

(;*゚ー゚)「はぁ…」

笑顔で攻撃を止め、武器を腰に戻すモララー。
荒い息を吐きながら膝をつくしぃ。
結局しぃはモララーに対しては一撃も攻撃を与えることが出来ず、試合は終了した。

( ・∀・)「ギコやジョル、ブーンみたいに本能で闘ってるやつらと違って、おれ達は理性で闘ってるから想定外のことをされた場合に瞬間思考が止まることがある。一対一での闘いでは致命的な隙になることがあるから、まずはそうならない戦い方をしないと」

カウントが始まってからの真剣な瞳は消え、普段の飄々とした雰囲気を纏う。

(*゚ー゚)「どうすれば…」

( ・∀・)「それは自分のスタイルだ。自分で自分のスタイルを見付けるしかない。まぁでも参考にはなるだろうから、ショボン以外に色々聞いてみればいいよ」

(*゚ー゚)「なんでショボンさん以外なんですか?」

モララーが手を差し出し、しぃはその手を借りて立ち上がった。

( ・∀・)「俺ら全員の行動と敵の動きを瞬時に計算して指示を出す思考能力と同等のことが出来る自信があるなら止めないけど」

(;*゚ー゚)「……止めておきます」

( ・∀・)「参考程度に聞くのなら良いと思うぞ」


.

922 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:57:38 ID:/YGMmJyM0

≪ギコ vs ツン≫


ξ゚听)ξ「さっさとやるわよ」

金色のツインテールをなびかせながら颯爽と歩いてやってきたツンが、ギコの前で細剣を構えた。

(,,゚Д゚)「おう!」

はじまるカウントダウン。

(,,゚Д゚)「(細剣は突きがメインの武器。だがツンが好むのは薙ぎ払いもできるタイプ。今構えている剣もそのタイプ。早さ、正確さ、読みでは負けるが剣の重さと強さなら勝機があるはず。パワーで攻める!)」

ξ゚听)ξ「(とか考えてるわよね。多分)」

身体の右側側面をギコに向け、そのまま右手で持った細剣の切先をギコに向けるツン。
細剣使いの基本的な戦闘スタイルなのだが、その服装のせいもあってまったく強さを感じさせない。

ξ゚听)ξ「(ま、それも経験よね)」

カウントゼロと同時に走り出すギコ。
すでに刀身は赤く輝いている。

ξ゚听)ξ「真っ向勝負は私も嫌いじゃない!」

(,,゚Д゚)「ごるあっぁっぁあああああ!」

右斜め上から渾身の力を込めて切り下したギコの片手剣を、細剣のかなり細い刀身の中央付近で軽々と受けるツン。

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923 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/08(火) 23:58:31 ID:/YGMmJyM0

(,,゚Д゚)「が!」

ξ゚听)ξ「重三連撃の初手。これで私の体勢を崩して二手目と三手目のどちらかだけでも当てることが出来れば勝てるとでも思った?」

(;,,゚Д゚)「細剣でこれをこんな簡単に!」

ξ゚听)ξ「レベル差もあるけど、細剣にだって色々あるのよ。片手剣にだって、細い太い重い軽い長い短い色々あるでしょ。見た目だけでわかるなんて思わないこと。それに個人のスキルが重なれば、すべてを初撃で見極めるなんて無理に等しい!」

そしてそのまま片手でギコを剣ごと跳ね返す。

(;,,゚Д゚)「ごっ!」

剣を跳ね上げられて防御もままならない態勢となり、更に剣技をキャンセルさせられたことによる硬直を起こすギコ。

ξ゚听)ξ「はい、終了。対人戦において力量を推し量るのは、装備だけじゃダメ。相手の性格を読むのよ」

ギコの腹に吸い込まれるように突き刺さるツンの細剣。
ギコのHPバーが赤に変わった。


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924 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:00:06 ID:3eA4AcvU0

≪しぃ vs ジョルジュ≫


(;*゚ー゚)「(ジョルジュさん…か…)」
 _
( ゚∀゚)「やっと出番だ!」

(;*゚ー゚)「(まったく勝てる気がしないんですけど)」
 _
( ゚∀゚)「うらうらうらうらうらうらうら!」

(;*゚ー゚)「(いろんな意味で)」

まだカウントダウンも始まっていない状態で両手剣を振り回して体をほぐしているジョルジュ。

(´・ω・`)「ジョルジュー。決闘申請しないと始まらないからねー」
 _
( ゚∀゚)「うらうらうらうらうらうらうら!」

( ^ω^)「聞こえちゃいないお」

('A`)「まったくあいつは」

カウントダウンが始まっていないのは当然で、まだジョルジュはしぃに決闘申請を送っていなかった。

川 ゚ -゚)「私たちの方から申請するって決めただろうが」

( ゚∋゚)「すっかり忘れてるな」

呆れるメンバー達に気付かないで剣を振り回し続けるジョルジュ。

(´・ω・`)「鬱憤でもたまってるのかな」

コートの中から細い針を一本取り出し、ジョルジュに投げるショボン。
圏内コードに守られているため当たることはないが、大きな衝撃がジョルジュを襲った。
 _
(;゚∀゚)「うを!」

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925 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:01:48 ID:3eA4AcvU0

(´・ω・`)「早く決闘申請しろ」
 _
( ゚∀゚)「ああ、悪い悪い。しぃ、ごめんな」

(*゚ー゚)「あ、いえ大丈夫です」

ジョルジュが慌ててウインドウを操作し、しぃに対して決闘の申請をする。
 _
( ゚∀゚)「こい!」

(*゚ー゚)「よろしくおねがいします!」

始まるカウントダウン。

(*゚ー゚)「(どうしよう。やっぱりさっぱりなんにも思いつかない。…両手剣に対する戦闘の基本はやっぱりいかに懐に入るかだけど、ジョルジュさん相手じゃ…。しかもジョルジュさんの性格と今の意気込みからして多分突っ込んでくる。いやーーーーむりむりむりむり。って投げ出すわけにもいかないし。あーもういいや、私らしい戦法なんてまだわかんないし、兎に角私も突っ込もう!)」

カウントがゼロになると同時に互いに向かって走り出すしぃとジョルジュ。
 _
( ゚∀゚)「うりゃあああああ!」

(*゚ー゚)「いけーーーーー!!!」

振り下ろされる両手剣を避けて斜め前に跳ぶしぃ。
ジョルジュの右側に人ひとり分空けて左足で着地し、右足で踏み込む前に腰をひねって向きを変え、ジョルジュの頭の上に向かって跳躍する。
上空で短刀を振るおうとするが、自分を見ずに気配のみで振り上げられた両手剣が向かってくるのをジョルジュの頭と肩の動きで察知する。
考える間もなく身体を丸め、自分に向かって弧を描こうとした両手剣の腹を両足で蹴った。
 _
(;゚∀゚)「おうっ」

バランスを崩して前に転びそうになるジョルジュ。
逆に上空での二段ジャンプに成功したしぃは空で態勢を整え、剣技を繰り出そうと短剣を構えた。

(*゚ー゚)「は!」

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926 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:02:57 ID:3eA4AcvU0

上空から斜め下にいるジョルジュの背中に向かって加速。
足場がない為剣技によるサポートのみの加速だが、短剣はもともとスピードを主体とした技の多く、刀身を青く光らせたこの技も十分な加速を見せた。

ギャラリーから歓声が沸く。
 _
( ゚∀゚)「でも甘い!」

前に転びそうになったジョルジュだったが踏み出した右足で持ちこたえており、逆に背中で刀身を隠しながら剣技に備えていた。

(*゚ー゚)「!?」
 _
( ゚∀゚)「とりゃあ!」

振り向きながらの一閃。

背を向けていたはずなのに完全にタイミングを合わせられ、しぃは驚愕しつつも連撃の初手をその両手剣の一撃に合わる。
 _
( ゚∀゚)「でも残念!」

だがしかしそこは両手剣と片手剣。
しかも両手剣側はしっかりと地面を踏みこんでおり、片手剣側は空中。

(;*゚ー゚)「きゃあああ!」

結果、大きく吹き飛ばされるしぃ。

大地にぶつかり、一度大きく跳ねてから、土煙を上げながら転がる。
ゆっくりと減っていくHPバー。
そして赤く変わった。
 _
(;゚∀゚)「だ、大丈夫か。でも強くなったな……ちょっとやばかった」

倒れているしぃに駆け寄るジョルジュの呟き。
それが聞こえ、ほんの少しだけ笑顔を見せながら、しぃが手を着いて上半身を持ち上げた。

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927 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:04:24 ID:3eA4AcvU0

≪ギコ vs ドクオ≫


('A`)「やっとだー」

(,,゚Д゚)「よろしく頼むぞゴラァ!」

('A`)「まだ負けねーよ」

始まるカウントダウン

(,,゚Д゚)「(同じ片手剣。でもスキルレベル、経験、洞察力、その他諸々どれにも勝ててない!でも勝つ!勝つ!勝つには行き当たりばったりじゃだめだ!考えろ!考えろ!…何を考える!?唯一同格と言えるのは多分剣のレア度。あとドクオは重さよりもスピードと切れ味重視のはず。重さと硬さなら勝ててるけど、それは考えるな!あとドクオは剣技が結構好きだから、多分使うはず。合わせれば勝てるかもしれない!単発重撃よりも三発以上の連撃が好き!だからそこら辺の技で来るはず!)」

カウントがゼロになると同時に駆け出す二人。
ドクオは低い姿勢で黒いコートをなびかせつつ地を這うように走る。

(,,゚Д゚)「(あの角度ならあれだ!)」

ドクオが右手に持った剣が水色に光った瞬間、ギコが右手で持ち肩に載せていた剣が赤く輝く。

('A`)「(ギコに読まれた!?)」

掬い上げるように振り上げられたドクオの剣と、上から振り下ろされたギコの剣がぶつかり合う。
それは互いに跳ね返されることはなく、互いに一歩も譲らず力を込める。

('A`)「よく読めたな!」

(,,゚Д゚)「頑張って考えたんだゴラァ!」

('A`)「それに免じて褒美をやるよ!」

半歩身体をひねりながら退くことで剣を流すドクオ。
しかし互いの剣技は続いており、続いて舞うドクオの剣に合わせてギコの剣も踊り、はじける剣のエフェクトが三度日の光よりも明るく輝く。

(,,゚Д゚)「よし!」

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928 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:05:30 ID:3eA4AcvU0

('A`)「これが褒美だよ!」

通常ならばこのまま二人とも硬直して仕切り直しとなるはずだったが、ギコの視界の片隅に光るドクオの左手こぶしが映った。

(;,,゚Д゚)「ご、ゴルァ!」

三度に剣がぶつかり合った瞬間、ドクオの左手はある構えを取っていたのだ。

(;,,゚Д゚)「そ、それは!」

('A`)「はっ!」

突き出されるドクオの左手。
それは俗に言う正拳突きで、体術の中でも基本技に分類されるそれはそれほど威力が高いわけではないが、剣技の応酬で少しずつ減っていた互いのHPバーを赤くするには充分な威力であった。

(,,゚Д゚)「そんなことが出来るのかゴルァ」

('A`)「体術スキルを必須にしてるのは、伊達や酔狂じゃないんだな、これが。剣技から剣技は無理でも、体術スキルの技にならつなげることが出来るんだ。練習するなら付き合うぞ」

(,,゚Д゚)「頼むぞゴルァ」

ギコのHPバーが赤く変わった。

.

929 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:06:47 ID:3eA4AcvU0

≪しぃ VS ブーン≫


(*゚ー゚)「宜しくお願いします!」

( ^ω^)「さっきはジョルジュ相手にすごかったおね。僕も負けないように頑張らないとだお」

(*゚ー゚)「お手柔らかにお願いしますね」

( ^ω^)「罰ゲーム嫌だから本気でやるお」

(;*゚ー゚)「お手柔らかにー」

始まるカウントダウン。

(*゚ー゚)「ブーンさんの持ち味はそのスピード。パワーはそれほどじゃないけど切れ味の鋭い武器で四方八方から切り裂く舞うような攻撃。その容姿に惑わされて最初の一手を受けてしまったらもう最後。体型に惑わされず、まずは」

ξ゚听)ξ「毎回色々考えてると思っていたけど、とうとう口に出しやがった」

(;´∀`)「しぃー!!口に出してるもなよ!!」

(;*゚ー゚)「え!あ!す、すみません!」

(#^ω^)「大丈夫、気にしてないお」

(;*゚ー゚)「……」

カウントゼロになると同時に走り出すブーン。

(;*゚ー゚)「早い!」

スタートは出遅れたものの同じように走り出すしぃ。
ブーンは直線的に。
しぃは直線にステップに緩急を織り交ぜてタイミングをずらす様に。

( ^ω^)「教えた動きをマスターしてるおね」

(*゚ー゚)「いきます!」

.

930 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:07:49 ID:3eA4AcvU0

( ^ω^)「ちゃんと自分のものとして動けてるお」

ブーンの右手に持たれた白い片手剣が閃く前に、しぃが右手に持った短剣がブーンの肩を狙って突き出される。

(*゚ー゚)「はっ!」

動き、姿勢、向き。致命傷を与えることは出来なくてもどこかを掠るか片手剣によって防がれるはずだった短剣が、むなしく何もない空間を突いた。

(;*゚ー゚)「え?」

( ^ω^)「でも僕の方が早いんだおね」

急激な加速によりしぃの目前から消えたブーン。
片手剣の先でまずしぃの左の脇腹を切り裂き、次に驚いて左側を向いたしぃの右の脇腹を切り裂く。

しぃは、まるで二人の人間が鏡面動作をしたかのような攻撃にまったく反応できないでいた。

(*゚ー゚)「……参りました」

しぃのHPバーの色が、赤に変わった。


.

931 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:09:20 ID:3eA4AcvU0



その後互いが戦っていた相手と一回ずつ戦ったギコとしぃは、疲れて座り込んでしまった。

(´・ω・`)「十二戦、お疲れ様」

二人に大き目のカップを渡すショボン。
中には冷たい飲み物が入れられており、二人は飲みながら一息をつく。

(´・ω・`)「予想以上に戦えて、ビックリだよ」

(*゚ー゚)「でも、勝てませんでした」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(´・ω・`)「まぁ僕も含めてみんなにもまだ負けられないっていうプライドみたいなもんがあるしね」

ちらっと後ろを意識するショボン。
ギコとしぃがその方向を見ると、同じようなカップを片手にこちらを見ているメンバーがいた。

(´・ω・`)「でもまぁみんなも本気になりすぎだよね。もうちょっと加減してあげるのかと思いきや、本気も本気だし」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)
「おいちょっとまて」
          ('A`)(´<_` )

('A`)「またもやお前が言うなだぞ、おい」

(´・ω・`)「そう?」

不思議そうに全員を見回すショボン。

.

932 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:11:40 ID:3eA4AcvU0

ξ゚听)ξ「あんたの針使いも十分えぐかったでしょうが」

川 ゚ -゚)「片手剣もいつの間にかレベル上げてあったな」

( ´_ゝ`)「珍しく片手剣が欲しいとか言い出したと思ったら」
 _
( ゚∀゚)「だよな!久しぶりに使ってるの見たのに、いつの間に鍛えたんだよ」

(´・ω・`)「ま、本気でやらないと訓練にならないんだけどね」

( ・∀・)「うわ、しれっと言いやがった」

(´<_` )「こいつは最初からこういうやつだ」

ミ,,゚Д゚彡「それでこそショボンだから」

( ´∀`)「ふさはショボンに甘すぎるもな」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

( ゚∋゚)「ビーグルもそう言ってるぞ」

(´・ω・`)ショボーン

メンバーの変わらない喧騒を苦笑いで見るギコとしぃ。
そして顔を見合わせて立ち上がる。

(,,゚Д゚)「ショボン、次行くぞ」

(´・ω・`)「え?」

(*゚ー゚)「誰とやるかは選んで大丈夫ですか?」

(´・ω・`)「なにやるの?」

(,,゚Д゚)「いや、次の試合」

(´・ω・`)「ああ、60回で一回勝つってやつね。あれ、今日中に達成しろってわけじゃないけど、いまからやるの?」

(,,゚Д゚)「は?」

(*゚ー゚)「え?」
.

933 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:13:45 ID:3eA4AcvU0

(´・ω・`)「今日中って言ったかな」

(*゚ー゚)「言ってませんけど……。わざと……ですよね」

(´・ω・`)「ん?何のこと?」

ニッコリと微笑んだショボンの後ろであからさまに不自然に視線を外すメンバー達。

(*゚ー゚)「ホントに全くこの人達は…」

呆れたように、でもどこか楽しそうに、そして諦めたように深呼吸をするしぃ。

(*゚ー゚)「ギコ君!」

(,,゚Д゚)「お、おう!」

(*゚ー゚)「一か月以内に課題クリアしよう!誰かに一回じゃなくて、みんなに一回ずつ勝とう!」

(,,゚Д゚)「!!おっ!おうっ!!」

(´・ω・`)「自分たちでハードル…」

(*゚ー゚)「これは自分で決めた目標なので、ショボンさんの出した課題とは別勘定です!」

(´・ω・`)「…上げたわけじゃないのですね」

後ろから話しかけたショボンに振り向きざまに指を突き付けつつ宣言するしぃ。
少しだけ誇らしげなその表情を見て、笑みをこぼしながらショボンが頷いた。

(´・ω・`)「了解しました」

(*゚ー゚)「宜しくお願いします」

( ´∀`)「実は今VIPを陰で牛耳っているのはしぃかもしれないもなね」

▼・ェ・▼「きゃんきゃん!」

沸き起こる笑いに目を白黒させるしぃ。
聞こえていたショボンは肩をすくめ、呆然としぃとショボンの掛け合いを見ていたギコの肩を軽くたたいた。


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934 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:14:43 ID:3eA4AcvU0



3.ギルドの試合



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935 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:16:07 ID:3eA4AcvU0

その後、既に昼を回っていたためまずは食事をし、休憩を取ってから再び台の周りに集合した。

朝と同じようにショボンが台の上に立つ。
そして今度はギコとしぃも他の皆と同列に立ち、ショボンを見た。

(´・ω・`)「さて、休憩も済んだところで大会を開始しようか
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)
「おーー!!」
          ('A`)(´<_` )

川 ゚ –゚)「今回は勝ち残りと総当たり、どちらにするんだ?」

(´・ω・`)「勝ち残りで行こうか。それなら夕飯の時間に間に合うでしょ」
 _
( ゚∀゚)「今度こそ優勝する!」

('A`)「……」

( ´∀`)「ドクオも虎視眈々と狙っているもなよ」

( ゚∋゚)「モナーは狙わないのか?」

( ´∀`)「もちろん頑張って優勝したいもな。ショボン、今回の優勝賞品はいつもと同じもなか?」

(´・ω・`)「そのつもりだけど、なにか他に案でもある?」

( ´∀`)「ないもな。それならいいもなよ。頑張るもな」

(*゚ー゚)「優勝したら何かもらえるんですか?」

(´<_` )「全員に一つだけ命令できる権利」

(,,゚Д゚)「おっ!?」

ξ゚听)ξ「もちろん命の危険が伴わないとか制限はあるけどね」

川 ゚ -゚)「まぁ欲しいアイテムや、やりたいクエストへのギルドでのチャレンジなんかなら承認するだろうけどな」

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936 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:17:18 ID:3eA4AcvU0

('A`)「おれの時はまだその商品無かったからつまらん」

(*゚ー゚)「ということは、今までは全部ふささんが」

ミ,,゚Д゚彡「今回も優勝ねらうから!」

(,,゚Д゚)「ふさがやるきだ」

( ´_ゝ`)「他の誰が優勝してもいいが、ふさは阻止しないとな」

( ・∀・)「……またあれをやらなきゃいけなくなるかもなのか」

( ^ω^)「誰かが勝てばいいんだお。勝てば」

ξ゚听)ξ「僕が勝つとは言わないのね」

(^ω^ )

ξ゚听)ξ「こっちむけやこら」

(*゚ー゚)「ふささんはなにを?」

(´<_` )「……大丈夫、総当たりの時もふさは全勝したわけじゃないから」

(;*゚ー゚)「え?あ、いや、そういうことじゃなく」

(,,゚Д゚)「ふさは何を命令したんだゴラァ」

( ´∀`)「みんなで勝つもな」

(;*゚ー゚)?

(;,,゚Д゚)?

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937 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:18:20 ID:3eA4AcvU0

(´・ω・`)「はいじゃあ雑談止めて、抽選のくじ引きはじめるよ」

台の上に座り、棒の入った筒をメンバーに差し出すショボン。

(´・ω・`)「棒の先に1から7まで番号が書いてあるから、同じ番号同士が早い数字の組みで決闘開始。文字が赤い方が申請するようにね」

わらわらと集まり、手を伸ばして各々が一本ずつ棒を持つ。

(´・ω・`)「みんなもったかな」

空いた手で残りの一本をショボンが掴む。

(´・ω・`)「じゃあいくよ。せーの!」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ´_ゝ`)ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)
( ´∀`)( ゚∋゚)(,,゚Д゚)(*゚ー゚)
「はい!!!!」
          ('A`)(´<_` )

タイミングを合わせて全員が筒から抜いた。


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938 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:19:30 ID:3eA4AcvU0

≪第一試合 1グループ:ジョルジュ vs ショボン≫


銀の針が無数に襲うが、その全てを両手剣ではじき、身を守り、ステップで避けているジョルジュ。

(´・ω・`)「ちっ」
 _
( ゚∀゚)「今日は勝つぞ!」

あまりの量に近付くことは出来ないがこの攻撃ではHPバーは全く減らないため持久戦となりそうだった。

( ゚∋゚)「投擲武器はよほどの質量の物を投げないと、守られた場合衝撃だけでは減らすことは出来ないからな」

(*゚ー゚)「なるほど」

(´<_` )「とはいえ、視界の隙間を縫うショボンの針をすべて弾くか避けるかできるのはすごいな」

川 ゚ -゚)「本能か、計算か」

( ´∀`)「本能もなね」

( ´_ゝ`)「本能だな」

ξ゚听)ξ「本能でしょ」

川 ゚ -゚)「本能だろうな」

( ・∀・)「一回戦でショボンが消えてくれるのはありがたいな」

(,,゚Д゚)?

ξ゚听)ξ「前のコートより1.5倍は針とか仕込めるようにしたけど、限りはあるもの。どこかで腰に付けた片手剣かチャクラムに変えなきゃね」

( ・∀・)「で、ジョル相手にその武器じゃ」

片手剣に持ち替えて剣技を発動させたショボンを襲うジョルジュの両手剣。
技を合わせて片手剣で迎え撃つが、パワーの違いにより片膝をつくショボン。
本来ならばこの体制で剣を持たないもう片方の手で何かを仕掛けるのがショボンの戦法だが、今意識を別に向けたら簡単に吹き飛ばされると考え、もう片方の手も剣に添えてジョルジュの放つ剣圧と戦っている。

( ・∀・)「ああなっちまう」

( ´∀`)「ショボンのメイン武器はあくまで投擲武器もな。片手剣の扱いや体捌きはまだこれからもなね。きっと知識に体が付いて行ってないもなよ」

( ´_ゝ`)「そろそろ終わりだな」

剣圧によってショボンのヒットポイントバーがじりじりと減り、赤く変わった。
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939 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:20:44 ID:3eA4AcvU0

≪第二試合 2グループ:ツン vs 弟者≫


(´<_` )「その細剣、この前兄者が作り上げた奴だよな」

ξ゚听)ξ「そうだけど?」

(´<_` )「ってことは、そういうことか」

ξ゚听)ξ「…やっぱり仲良いんじゃない」

(´<_` )「残念ながら兄弟だからな」

( ´_ゝ`)「お兄ちゃん嬉しい」

ξ゚听)ξ「割り込むな!」(´<_` )

兄者が二人の間から移動した瞬間にカウントがゼロになり、走り出す二人。

ξ゚听)ξ「あんたも大変よね」

ツンの細剣が弟者の急所を狙って舞い、

(´<_` )「わかってくれるか」

弟者の斧が空間を裂いて唸る。

ξ゚听)ξ「でも仲良くてなにより」

(´<_` )「そうか?」

ξ゚听)ξ「負けても慰めてもらえるじゃない!」

轟音をあげながら自分の胴体を切り裂こうとする斧を飛び上がって避け、着地した瞬間に剣技によって加速した突きの五連撃を放つ。

(´<_`;)「うわっ!」

最初の二つは避けたものの、その際にバランスを崩して残りの三つを受けてしまった弟者

彼のHPバーが赤く染まった。

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940 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:22:13 ID:3eA4AcvU0

≪第三試合 3グループ:ブーン vs ギコ≫


( ^ω^)「さ、やるお」

(,,゚Д゚)「(やべぇ。あのにやけ目がやっぱり怖い)」

カウントゼロと共に走り出す二人。
既にギコの剣は青く光り輝いている。

( ^ω^)「おっ。今度はしょっぱなから発動かお」

(,,゚Д゚)「スキルでも使わないとスピードについていけないからな!」

叫んだ瞬間に発動。
加速したギコの身体がブーンの目の前に移動し、まずは水平に一閃。

しかしその一撃はブーンの片手剣が軽々と受け止める。

(,,゚Д゚)「次!」

手首をひねって無理やり最初の一撃を放ち、次に繋げようとする。

( ^ω^)「!さっきは出来なかったのに!」

次は左から右側に切り上げる一撃。
ブーンの頭を狙ったその剣は、今度は空振りをしてしまう。

( ^ω^)「剣を返す位置が高すぎたからちょっとしゃがめば避けられたお」

喋りながら下から剣を振り上げて目の前の相手を狙うブーン。
ギコは一歩退きながら上から下に振り下ろす三撃目で相殺しようとする。

( ^ω^)「この剣も剣技じゃないんだおね」

その言葉のとおり簡単に途中で軌道修正して横に跳ぶブーン。

(;,,゚Д゚)!!!!

誰もいない何もない空間に剣を振り下ろすギコ。

そして横から襲い掛かってきた剣が自分の腹を裂いた。

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941 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:23:34 ID:3eA4AcvU0

≪第四試合 4グループ:モナー vs モララー≫


( ´∀`)「モララーともなか」

( ・∀・)「モナーとか」

モララーの爪による攻撃を、器用に三叉槍で捌くモナー。
更に返す動きでモララーに攻撃も与えるが、すべて避けられ掠ることすらない。

(*゚ー゚)「すごい」

( ゚∋゚)「短刀使いなら、二人の動きは参考になるはずだ。次にモララーがどう動くか、次にモナーがどう受けるから、考えながら見ると自分の力になる」

(*゚ー゚)「はい!」

上級者通しの戦いはその互いの呼吸が合い始め無駄のない動きとなるが、それでも疲労が溜まり少しずつミスが生まれる。

(;´∀`)「もな!」

(;・∀・)「くっ」

受けるタイミングがコンマ以下のレベルでずれ、受ける武器の位置や角度が少しずつ変わり、避けるタイミングが遅くなり、動く量が少なくなる。

じりじりと減っていく二人のHPバー。

( ゚∋゚)「そろそろか」

(*゚ー゚)「え?」

( ゚∋゚)「このまま少しずつHPを減らして決着がつくよりも、しっかりとした攻撃技で決着をつけたいと、あの二人なら思うだろう」

(*゚ー゚)「!……なるほど」

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942 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:24:33 ID:3eA4AcvU0

大きく一度互いの武器をぶつけ、距離を取る二人。

( ・∀・)「じり貧で決着がつくよりも」

( ´∀`)「決め技で勝敗を決めたいもなね」

( ・∀・)「行くぞ!」

( ´∀`)「もな!!」

爪を真っ赤に光らせて突進するモララー。

対して青く光らせた三叉槍をバトンのように回転させながら振り回すモナー。

( ・∀・)「え?」

槍で作りだした青い壁にぶち当たるモララー。
態勢を崩したその体に上から振り下ろされる槍の先に近い柄の部分。

( ・∀・)「ええ?」

( ´∀`)「モナの勝ちもな」

モララーの無防備な肩に衝撃が走り、HPバーが赤く染まった。

(;*゚ー゚)「……クックルさん。いまのモナーさんの技って防御技ですよね。ああいうのって、ありなんですか?って、いない!クックルさん!?」

横を向いたしぃの視界のなかに、さっきまで横にいたはずのクックルがいなかった。

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943 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:25:55 ID:3eA4AcvU0

≪第五試合 5グループ:しぃ vs 兄者≫


(#*゚ー゚)「宜しくお願いします」

(;´_ゝ`)「あれ?なんか怒ってる?」

(#*゚ー゚)「いえ、別に」

( ´_ゝ`)「ああ。うん。…さっきはちょっとだけ不覚を取ったから、今度はちゃんとやるよ。ふさの優勝は阻止しないとだし」

(*゚ー゚)「私だってさっきより頑張りますよ!」

( ´_ゝ`)「……挑戦者の方が楽だよね」

(*゚ー゚)?

ゼロの合図とともに走り出すしぃ。
兄者も大金鎚の先を地面すれすれに浮かせながら走り出したため少し驚いたが、先ほどのように隙を作ることはなく縮まる間合いを計りながらステップを踏んだ。

(*゚ー゚)「はぁ!」

緩急を混ぜて左右に足を踏み出しながらタイミングをずらして低い位置から走り寄ろうとする。

(;*゚ー゚)!

だが目前に現れる金鎚の丸い打撃面。

ガードして直撃は避けたものの激しい衝撃が体全体を襲う。

しぃが我に返った時には体は大地に横たわり、そばには兄者が立っていた。

( ´_ゝ`)「悪いな、ちょっと本気になっちまった」

(;*゚ー゚)「い、いえ」

( ´_ゝ`)「思わず本気になっちまうくらいには強くなったんだな。正直驚いた。まだ甘いけど、良いフェイントだった」

(*゚ー゚)「!ありがとうございます!」

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944 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:27:14 ID:3eA4AcvU0

≪第六試合 6グループ:クー vs クックル≫


川 ゚ –゚)「はっはっはっ!ここで会ったが百年目!積年の恨み!晴らさせてもらうぞ!」

( ゚∋゚)「     」

川 ゚ -゚)「なんかすまん」

( ゚∋゚)「どうした」

川 ゚ -゚)「いや、さっきの兄者がシリアスだったからつい」

始まるカウントダウン。

川 ゚ -゚)「でも、少しは付き合ってくれてもいいと思うんだが」

( ゚∋゚)「なんとなくグダグダになりそうな予感がした」

川 ゚ -゚)「わかった。今度はちゃんとシナリオ作るから」

( ゚∋゚)「……」

川 ゚ -゚)「よろしく」

( ゚∋゚)「…クーが勝ったらな」

川 ゚ -゚)「俄然やる気が出てきた」

( ゚∋゚)「絶対勝つ」

カウントゼロと共に駆け寄る二人。
薙刀と棍がぶつかり、衝撃のエフェクトで光と音が乱舞する。

(*゚ー゚)「すごいですね」

( ・∀・)「武器も同系列だし実力も似てるから長引くかもな」

( ´∀`)「そうもなね。二人とも楽しそうもな」

( ・∀・)「あ、モナー。てめぇさっきのはなんだこら」

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945 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:28:51 ID:3eA4AcvU0

( ´∀`)「もなもな」

( ・∀・)「もなもなじゃねぇぞ、こら」

にこやかに自分の横に立ったモナーに、少しだけ怒ったようににじり寄るモララー。

しぃが困ったようにそれを見るが、クーとクックルの試合に視線を戻した。

それを目の端で確認しながら更にモナーににじり寄るモララー。

( ・∀・)「で?なんであんな勝ち方をしたんだよ」

後ずさるモナーを誘導して少し離れた位置まで行き、モララーが呟く。

( ´∀`)「勝ちたかっただけもなよ」

モララーが表情を引き締め、声を潜めた。

( ・∀・)「ブーンか?」

( ´∀`)「   」

( ・∀・)「最近、時々変だよな。なんか隠してるっていうか」

じっとモナーを見るモララー。
そして口の端でにやりと笑う。

( ・∀・)「剣をかわせば、分かるかもな。…あとで教えてくれよ」

( ´∀`)「……わかったもな」

頭一つ下の位置から自分を見る鋭いモララーの視線をうけ、ほんの少しだけ悲しそうに笑うモナー。

その視界の端で、クックルの突きがクーの肩にヒットしたのが見えた。


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946 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:30:23 ID:3eA4AcvU0

≪第七試合 7グループ:フサギコ vs ドクオ≫


('A`)「今日は勝つ!」

ミ,,゚Д゚彡「負けないから!」

全員が注目する中でカウントダウンが始まり、ゼロとなる。

同時に駆け出す二人。

先にフサギコの持つ刀が剣技の発動により光りはじめたが、おそらくドクオには気付かれていない。

('A`)「はっ!」

ドクオが片手剣を目にもとまらぬ速さで振ろうとした瞬間、更に加速するフサギコ。
そして低い姿勢でドクオの真横を駆け抜ける。

ドクオの刀が空を切った。

('A`)「…まじか」

ドクオの腹に浮かぶ一筋の光。

そしてヒットポイントバーが赤に変わり、フサギコの頭上に勝利をあらわす文字が浮かんだ。

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947 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:32:35 ID:3eA4AcvU0

≪第八試合 1:ジョルジュ vs 2:ツン≫


 _
( ゚∀゚)「ツンかよ…」

ξ゚听)ξ「何よ」
 _
(;゚∀゚)「いや、両手剣と細剣だとさ」

ξ゚听)ξ「あら、そんなもの技でカバーしてあげるわよ」
 _
(;゚∀゚)「武器破壊しちまっても文句言うなよ」

ξ゚听)ξ「   」

ジョルジュが申請し、始まるカウントダウン。

充分に離れた二人はそれぞれに武器に似合った構えを取っている。
 _
( ゚∀゚)「いくぞ!」

両手剣を右肩に担ぐように構えているジョルジュ。

ξ゚听)ξ「ふふふ」

右手に持った細剣を前にして、半身で構えるツン。

( ´_ゝ`)「相変わらず誘導がうまいな。ツンは」

(´<_` )「何本くらい作った?ツンのオーダー」

(;´_ゝ`)「思い出したくない。っていうか、あれもまだ納得いってないらしい」

(´<_`;)「おつかれ」

カウントがゼロになると同時に駆け出すジョルジュ。
 _
(#゚∀゚)「どりゃああああああ!」

武器の違いはあれどツンの実力は良く知っているため、全力で走り始める。

ξ゚听)ξ

にやりと笑ってそのままの場所で構えるツン。

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948 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:33:44 ID:3eA4AcvU0

剣技を発動させて振り下ろされる両手剣。

ツンができるのは避けるか弾くか。

流石兄弟以外のギャラリーはその二つだけだと思っていたが、ツンの行動は違った。

ξ゚听)ξ「!」

気合いを込めて、けれど流れるように足を踏み出し、ジョルジュの振り下ろす両手剣の正面に構えを合わせ、細剣で突く。
 _
( ゚∀゚)!?

ξ゚听)ξ

振り下ろされる両手剣の刃の部分に、身長差を利用して直角の角度でぶつけられたツンの細剣の切先。
 _
( ゚∀゚)「…マジ?」

ξ゚听)ξ「マジ」

ぶつかった場所から閃光が放たれ、その場所から両手剣が、折れた。

そしてそのまま持っていた剣がポリゴンと化すのを呆然と見つめるジョルジュ。

兄者とツン、ジョルジュ以外が感嘆の声を上げる中、ジョルジュは大地に膝をつく。

ξ゚听)ξ「出し惜しみするからそうなるのよ。その剣、今持ってる武器の中の『一番』じゃないでしょ」
 _
( ゚∀゚)「…モンスターからのドロップ品だけど、レアだったんだぞ」

ξ゚听)ξ「このまえ兄者に作ってもらったの使えば良いのに」
 _
( ゚∀゚)「愛着湧いてたんだよ。でもまあ、仕方ないか」

ξ゚听)ξ「どうする?仕切り直しで闘う?」
 _
( ゚∀゚)「……いや、いいや。気がなくなった」

ウインドウを出し、負けを宣言するジョルジュ。

ツンの頭上に勝利の文字が浮かんだ。


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949 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:34:49 ID:3eA4AcvU0

(;,,゚Д゚)「武器破壊とか、初めて見たぞゴルァ」

(;*゚ー゚)「私も。武器レベルも必要だけど、タイミングとかその剣の弱い部分を正確に突かなければ出来ないんだよね。確か」

(;,,゚Д゚)「……ゴルァ」

(´・ω・`)「今うちのギルドで狙ってあれが出来るのはツンとクックルくらいかな」

呆然とその光景を見つつ言葉を交わしていたギコとしぃの間に割り込むショボン。

(*゚ー゚)「ショボンさん」

(,,゚Д゚)「ドクオとかジョルジュは出来ないのか?」

(´・ω・`)「ジョルはパワーはあるけど、細かく狙いを定めてってのは苦手だから、狙わないだろうね。ドクオは出来ないわけじゃないと思うけど、なにより剣技を放つのが好きだからまた違った意味で狙わないでしょ」

(*゚ー゚)「ショボンさんは?」

(´・ω・`)「ぼく?んー。格下レベルのB級武器相手ならできるかもだけど、難しいかな。特にやりたいとも思わないし」

(,,゚Д゚)「……」

(´・ω・`)「あんなのを目標に頑張るより、格闘スキルでも上げた方が役に立つと思うよ。ギコ」

(,,゚Д゚)「……ゴルァ」

少し憧れたギコに笑いながら釘を刺すショボンだった。

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950 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:35:58 ID:3eA4AcvU0

≪第九試合 3:ブーン vs 4:モナー≫


( ^ω^)「おっおっおっ。モナーと戦うのは久しぶりだおね」

( ´∀`)「そうもなね。前回のトーナメントの時には当たらなかったもなし」

笑顔で会話する二人。
既にカウントダウンは始まっており、その笑顔が逆に緊張感を増しているようにも思える。

( ´∀`)「モナに勝つとツンと戦うことになるもなから、負けたほうが良いんじゃないもな?」

(;^ω^)「正直考えたお」

ξ゚听)ξ「それはどういう意味かなお二人さん」

( ´∀`)「特に意味は無いもな」

(;^ω^)「ぼ、僕もないお」

いつもの雑談。
しかしブーンの言葉が言い終わると同時にカウントがゼロになると、二人は駆けだした。

( ^ω^)「とりあえず勝ってから考えるお!」

( ´∀`)「もなもな!」

まずはブーンが切りつける。

モナーは右上から振り下ろされた剣を三叉槍の又で受け、手首を返して下に向け、大地を刺して剣を封じる。

( ^ω^)!

( ´∀`)「もな!」

槍の先で大地を刺したまま柄を持つ手を持ち替え、槍の根元を棍のように使ってブーンの左肩を狙う。

肩を打たれる前に剣を放して後方へ飛ぶブーン。

着地した瞬間にウインドウを操作し、違う片手剣を右手に持った。

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951 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:37:30 ID:3eA4AcvU0

( ^ω^)「そんな戦い方、初めて見たお」

( ´∀`)「成功したのは初めてもなよ」

大地に突き刺さった片手剣はそのままに、三叉槍をしっかりと構えるモナー。

ブーンもそれに合わせて片手剣を構えた。

( ´∀`)「その構えも初めて見るもなね」

( ^ω^)「日々精進だお」

再び駆け出す二人。

今度はモナーの突きが先にブーンを襲うが、それは危なげないステップで避けられる。
返してダッシュと軽い跳躍を組み合わせた攻撃を繰り出すが、それはすべてモナーの体に触れることなく三叉槍に防がれてしまった。

繰り返される攻防。

片手剣と槍がぶつかり、そのたびに閃光と爆音が乱舞する。

(,,゚Д゚)「モナーって、こんなに強かったんだな」

( ・∀・)「あの穏やかな顔からは想像できないけど、強いぞ。基本生真面目な性格だから、レベル上げや剣技の練習もまじめにやってるしな」

モナーの攻撃をほとんどかわすブーン。
ブーンの攻撃をすべて防いでいるモナー。

それは互角のように見えるが、身体にではなく武器にではあるが攻撃を受けているモナーのHPは徐々に減っていた。

( ´∀`)「このままじゃだめもなね」

( ^ω^)「どうするんだお?」

( ´∀`)「こうするもな!」

左上から振り下ろされたブーンの剣。
それを柄の先を持った槍で突いて弾く。

.

952 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:38:32 ID:3eA4AcvU0

弾いた瞬間に柄を持つ手の力を少し緩めると、手の中で滑り落ちてくる槍。ブーンが態勢を整えきれていないのを確認しつつ標準的な位置で再び柄を握りしめ、そのまま剣技を発動。

( ^ω^)!?

剣技による加速に、意識的に身体を動かすことによって更に速度を早くすることに成功したその動きはブーンやフサギコに引けを取らないスピードで、ブーンを襲う。

( ^ω^)!

だが、それすらも避けるスピードを持つものがブーンであった。

( ´∀`)「別に良いもなよ」

完全に避けたと誰もが思った瞬間、モナーが再び柄を持つ手の力を緩めると、槍が今度は前に跳ぶ。

( ^ω^)「おっ!」

身体をひねって更にそれを避けようとするが、モナーの狙いは違った。

( ´∀`)「もな!!」

柄をもつ手の力を緩める瞬間に手首を返すことによって槍を回転させており、それによって弾かれた片手剣が回転しながら宙を舞う。

ギャラリーのすべてが、モナーですら勝利を確信した瞬間に目に映ったのは、左手に剣を持つブーンの姿。

試合の最初に大地に刺していた片手剣をいつの間にか拾っていたのだ。

( ^ω^)

ブーンの片手剣が、無防備なモナーの腹を切った。

.

953 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:39:49 ID:3eA4AcvU0

≪第十試合 5:兄者 vs 6:クックル≫


( ´_ゝ`)「クックルは、ふさの味方か?」

(;゚∋゚)「?味方?」

( ´_ゝ`)「ふさの命令だよ」

( ゚∋゚)「ああ。めんどくさいがそれほど苦ではない…と言ったところか」

( ´_ゝ`)「おれの敵だ。だから俺が勝つ!」

(;゚∋゚)「兄者は苦手なんだな」

珍しく厚く叫ぶ兄者に困惑するクックル。

(´<_`;)「まったくあの愚兄は」

川 ゚ -゚)「あんなに戦いに力を入れる兄者は一年ぶりぐらいじゃないか?」

(´<_` )「一年……。そう…だな。それくらい経つか」

川 ゚ -゚)「あの頃よりは洗練された戦い方が出来ているな」

(´<_` )「……確かに」

笑いあう弟者とクーの目の前で既に試合を始めている兄者とクックル。

大金鎚対両手棍。

クックルが突きを放ち、兄者がそれを弾きながら反撃。
真横からだるま落としのように自分を狙って振りぬかれた大金鎚を避け、その後ろから棍で叩きつける。
それを金鎚の持ち手で防ぎ、横に体を回転させながら移動。
回転に合わせて金鎚もふるため、クックルもなかなか攻撃を繰り出すことが出来ないでいる。

互いに武器による攻撃を武器を防ぎ、弾き返しながら攻撃を繰り出す一進一退の戦い。

(;´_ゝ`)「なかなかやるな。クックル」

.

954 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:40:48 ID:3eA4AcvU0

(;゚∋゚)「こんなに戦闘に真剣な兄者も久しぶりだ。そんなに嫌か?」

至近距離、振り下ろされようとした大金鎚を止めるクックルの両手棍。

(#´_ゝ`)「ああ!いやだ!おれはフサギコの優勝を阻止するんだ!」

吠えるように叫び、そしてそのまま再び大きく大金鎚を両手で振り上げる兄者。

(;゚∋゚)「…兄者…」

無防備な人中線に、クックルの突きが三発入った。

川;゚ -゚)「…弟者…」

(´<_`;)「…何も言わないでくれ」

あまりにあほらしい幕切れに、頭を抱えてしまう弟者。

呆然とする兄者。

勝利の文字が、クックルの頭の上に現れた。

.

955 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:42:08 ID:3eA4AcvU0

≪第十一試合 2:ツン vs 3:ブーン≫


ξ゚听)ξ「ブーンとか…」

(;^ω^)「ツンとかお…」

とりあえずカウントはゼロになっているが、構えたまま動けずにいる二人。
 _
( ゚∀゚)「とっととやれー!」

( ^ω^)「うるさいお!戦法を考えてるんだお!」

('A`)「あそんでんじゃねーぞー」

ξ゚听)ξ「あんたは一回戦で負けたから暇よね!」

('A`)ウツダシノウ

(,,゚Д゚)「なんだあの二人」

(*゚ー゚)「まあ難しいですよね。あの二人だと」

( ・∀・)「ってわけでもないだろ」

(*゚ー゚)「?」

(´・ω・`)「あの二人は互いの足りないところを補う二人である分、お互いが天敵なんだよ」

( ・∀・)「速攻と数うちゃ当たるブーンとカウンターと一発必中のツン」

( ´∀`)「ツンも特攻はするけど速攻はそれほど得意じゃないもなよ」

(,,゚Д゚)「はぁ……」

(*゚ー゚)「そうなんですか…」

( ゚∋゚)「動けば一瞬で決まるだろうな」

(*゚ー゚)「……」

隣に立った、自分より頭一つ以上背の高いクックルの顔をじっと見るしぃ。

( ゚∋゚)「どうした?」

.

956 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:44:39 ID:3eA4AcvU0

(*゚ー゚)「今度は本当ですか?」

(;゚∋゚)「た、多分」

さらにじっと見るしぃの視線を避けるように空を見るクックル。
それでもその場所を動かないのがクックルの誠意なのだろうか。

ミ,,゚Д゚彡「二人とも頑張るんだから!」

( ;_ゝ;)「ブーン頑張れー」

(´<_` )「泣くなみっともない」

( ;_ゝ;)「だってだって」

川;゚ -゚)「さっきまでのシリアスモードが嘘のようだな」

分かりやすい緊迫感が流れていないため周囲もどこかのんびりしている。

( ^ω^)「(さてどうしよう。多分勝てるけど、勝ったら……と言うか切ったら後で絶対何か言われるおね。この前欲しがってた素材の狩りにつき合わされるぐらいならいいけれど)」

ξ゚听)ξ「(普通にやったら負けるわよね。別に優勝目指してるわけじゃないから良いんだけど、ただ負けるのも趣味じゃないし。かといって足掻くのもな……。とりあえず新しい色を試す用の素材集めには突き合わせるとして)」

( ^ω^)「(あ、そういえばこの前50層の店で見たA級素材の毛皮が欲しいとか言っていたような気が…)」

.

957 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:45:46 ID:3eA4AcvU0

ξ゚听)ξ「(!あの毛皮!よし、あれも買わせよう!)」

(;^ω^)「(どどどどどどどどどどうしよう。あれ結構なお値段だったおね)」

ξ゚听)ξ「(よし!派手に負けるぞ!)」

いきなり駆け出すツン。

ブーンが慌てて構えを取る。
 _
( ゚∀゚)「お。ツンが先に出るとは」

川 ゚ -゚)「何を買ってもらうかが決まったんだろうな」
 _
( ゚∀゚)「へ?」

ξ゚听)ξ「たあ!」

気合いを無理やり入れたような気が抜けた掛け声をあげつつ剣技を放つツン。

剣技によって加速した動きそのもののその剣は、ある意味お手本のような綺麗さなのだが低レベルのモンスターならともかくブーンに通用するはずもなく、ブーンも思わず何も考えずに体が動いた。

(;^ω^)「あ」

ξ゚听)ξ「(よし!腹を切られた!)」

流れるように振りぬいたブーンの片手剣がツンの腹部を切り裂く。

派手に地面に転がるツン。

しかしその顔は、ブーンにしか見えない様ににやりと笑った。

.

958 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:47:25 ID:3eA4AcvU0

≪第十二試合 6:クックル vs 7:フサギコ≫


ミ,,゚Д゚彡「やっと二回目の試合だから!」

( ゚∋゚)「7は最初の一回を勝てばほとんどシードみたいなもんだからな」

いつものように半身で構えを取るフサギコと、両手棍を構えるクックル。

カウントダウンはすでに始まっており、残りが30ほどになった。

( ゚∋゚)「(やってみるか」」

長い棍の中央を両手で持ち、ゆっくりと左右に振りながらバトンのように回していくクックル。

ミ,,゚Д゚彡「!?」

自分を中心に扇状に棍をまわす。

(´・ω・`)「クックル、面白いことするなぁ。賭けに出たね」

(,,゚Д゚)「なんだありゃ」

(´・ω・`)「防御技だよ。しかも振り回してる状態が剣技前の待ち状態だから、相手の技に合わせて発動できる。ブレス系の技なら最長で10秒間、斬撃・打撃系の技ならレベルが合えば最大5発まで防御できる」

(*゚ー゚)「結構最強じゃないですか?それ」

(´・ω・`)「でもタイミング合わせるのが難しいし、なにより発動後の硬直が長いからあんまり使い勝手が良くないんだよね。それに防御自体も全方位じゃないから後ろからは弱いし」

(,,゚Д゚)「でも、フサギコとの試合になら」

(´・ω・`)「だね。基本はモンスターのブレス攻撃に対応する用だと思うけど、このタイプの決闘用剣技と言ってもいいくらいなんじゃないかと思うよ」

(*゚ー゚)「じゃあ!」

(´・ω・`)「でも、ふさも負けてないよ」

.

959 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:48:43 ID:3eA4AcvU0

カウントがゼロになると同時に走り始めるフサギコ。

今までと同じように直線で走る。

(,,゚Д゚)「速攻!?」

(´・ω・`)「足をよく見て」

(,,゚Д゚)?

(*゚ー゚)「!タイミングをずらしてる!」

踏み込みの位置と角度、そして踏み出す際の膝の曲げを変えることで一見同じ動きでタイミングを変えて走るフサギコ。

そして一撃目を発動した。

ミ,,゚Д゚彡「はっ!」

水色に輝いた刀を鞘から抜くフサギコ。

( ゚∋゚)「ふんっ!」

完全にタイミングを合わせて防御技を発動させるクックル。
緑色に輝く両手棍が、振りぬかれるであろう刀身に合わせて弧を描きながら舞う。

( ゚∋゚)!?

一発目にタイミングを合わせたことを確信したクックルの目が大きく見開かれる。

ミ,,゚Д゚彡「こうだから!」

鞘から引き抜いた刀を手首を返さないままに持ち、柄の先をクックルの棍に当てた。

(;゚∋゚)!?

弾かれる棍。
あまりの衝撃にバランスを崩して後退するクックル。
その上剣技を途中で中断した為の硬直が起こり、無防備に胴体をさらけ出す。

ミ,,゚Д゚彡「これで決めなきゃだから」

フサギコは先の第一撃に続き、身体を回転させながら手首を返して二撃目を放ち、クックルの身体を切り裂いた。


.

960 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:50:17 ID:3eA4AcvU0

≪休憩≫

 _
(;゚∀゚)「なんだあれ」

(´・ω・`)「刀だけじゃなく体術スキルも上げてあると覚えることが出来る技みたい。ジョルジュもそういう技覚えてるよね」

('A`)「おれも覚えてるけど、反則だろあれは」

( ;_ゝ;)「頼むブーン勝ってくれ」

(´<_` )「いい加減泣き止め」

(,,゚Д゚)「ふさが命令するのはそんなにキツイことなのか」

( ・∀・)「兄者とかお前はきつそうだな」

(;,,゚Д゚)!?

(*゚ー゚)「私はどうですか?」

川 ゚ -゚)「しぃは大丈夫だろ」

ξ゚听)ξ「っていうか、苦手なのってあとジョルジュとブーンと…それくらい?」

( ´∀`)「実はクックルも苦手もなよ」

▼・ェ・▼「くぅーん」

(;゚∋゚)「苦手ではないぞ。それほど得意でもないが」

( ´∀`)「でも、時間はかかってたもな」

(,,゚Д゚)?

(*゚ー゚)?


.

961 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:52:52 ID:3eA4AcvU0

≪最終戦 3:ブーン vs 7:フサギコ≫


緊迫した空気の中、距離を取って互いを見る二人。

( ^ω^)「……」

ミ,,゚Д゚彡「……」

ブーンが黙ってウインドウを操作すると、フサギコの前にウインドウが現れる。
フサギコも黙ってそのウインドウを操作すると、二人の間にカウントダウンを告げる数字が浮かんだ。

(*゚ー゚)「さすがに緊張しますね」

( ・∀・)「スピード対スピード。決着は一瞬だろうな」

( ´∀`)「ブーンは純粋な反応速度によるスピードもなね」

( ゚∋゚)「対してフサギコは技巧を駆使した剣技のスピード」
 _
( ゚∀゚)「どちらが勝つのか楽しみだな」

( ;_ゝ;)「頼むブーン!勝ってくれ!」

誰も泣いている兄者の相手をせず、ただ二人をしっかりと見守る。

そして、カウントがゼロになった。

.

962 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:54:10 ID:3eA4AcvU0

無言で互いに向かって駆け出す二人。

二人とも前傾姿勢でまっすぐに。

ブーンは右手に片手剣をひらめかし、フサギコは鞘に入れた刀を体で隠しながら。

そして半分ほど距離が縮まった時、フサギコが仕掛けた。

ミ,,゚Д゚彡!

気合いを入れ、剣技を発動。
横から見ているギャラリーには、刀が青白く光っているのが分かる。

( ^ω^)!

光は見えないもののフサギコが何かを仕掛けてきたのを感じブーンが一回右にステップを踏んでタイミングをずらそうとするが、フサギコは迷わずにまっすぐブーンに向かって走る。

(#^ω^)!!

まるで怒ったような引き締まった表情でフサギコの一挙一動を見るブーン。
そして刀を抜こうとする動きに反応し、自分も片手剣を振る。

ミ,,゚Д゚彡!

( ^ω^)

驚いたかのフサギコと、それを見てにやりと笑うブーン。

片手剣と刀が当たろうとした時、剣技の発動が止まらないギリギリのモーションでフサギコが肘を更に折り、手首を曲げ、刀を出来るだけ身体に引き寄せる。

(;^ω^)!?

今度はブーンが驚く番だった。
自分の片手剣の軌道からすり抜けるフサギコの刀と身体。

そして空を切る自分の片手剣を見た時、腹部をフサギコの刀が切り裂いたのを感じた。


.

963 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:56:29 ID:3eA4AcvU0



4.ギルドの宴



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964 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:57:11 ID:3eA4AcvU0

(´・ω・`)「優勝!フサギコ!」
 _
( ゚∀゚)( ^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
( ・∀・)( ´∀`)( ゚∋゚)(*゚―゚)(,,゚Д゚)
「おめでとー!」
          ('A`)(´<_` )

ミ*,,゚Д゚彡「ありがとうだから!」

夕闇に染まる空の下、台の上に立つフサギコとショボン。
ショボンがフサギコの片手を掴んで空高く上げながら優勝を祝福すると、メンバー達も拍手と歓声と共に祝福する。

一名を除いて。

( ;_ゝ;)「ブーンのバカー!」

(´<_`;)「おまえもちゃんと祝福しろよ」

( ;_ゝ;)「うぅ……フサギコおめでとう」

ミ;,,゚Д゚彡「あ、ありがとうだから」

( ;_ゝ;)「おれの命令は別にするか軽くしてくれ」

ミ,,゚Д゚彡「それは別の話だから」

( ;_ゝ;)「うわぁーん!!」

(´<_`;)「いい加減諦めろ」

(*゚ー゚)「で、結局何なんですか?フサギコさんが出す命令って」

しぃの言葉にフサギコを見る全員。

(´・ω・`)「今までと一緒?」

ミ,,゚Д゚彡「そうだから!!」

.

965 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:58:21 ID:3eA4AcvU0

(´・ω・`)「じゃあ、準備しようか」

台を降り、既に準備しておいた食事の隣にもう一つ立食用のテーブルを出すショボン。

そしてフサギコがそのテーブルの上に自分の作った料理を出し始めた。

ミ,,゚Д゚彡「全部新作だから!」

基本は得意のデザート系がメインで、小さなグラスに入ったプリンのようなものやゼリーのようなもや、白いクリームと赤や桃色の果実がいっぱい乗ったホールケーキに一口サイズの茶色いケーキなど、多種多様色鮮やかな料理が並べられる。
テーブルの端には豆を使ったご飯で作ったおにぎりや、野菜をふんだんに使ったオープンサンドイッチも並んでいた。

(*,,゚Д゚)「おお!」

(:*゚ー゚)「すごい美味しそう!」

ミ,,゚Д゚彡「今回の感想文は、1000文字以上!料理名と料理の描写は除く!句読点も除く!誤字脱字不可!漢字は程よく!それが今回の命令だから!」
 _
(;゚∀゚)(;^ω^)ξ゚听)ξ川 ゚ –゚)
(´・ω・`)( ;_ゝ;)( ・∀・)
「文字数が増えた!?」
          ('A`;)(´<_`;)

(,,゚Д゚)「!?」

(*゚ー゚)「!?」

ミ,,゚Д゚彡「前回より料理の数も増えてるから!」

顔をこわばらせる数名とあきれ顔の数名と意味が分かっていない2名と泣いている1名。

( ;_ゝ;)「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ」

ξ゚听)ξ「いい加減諦めなさいよ」

(´<_` )「まったく」

.

966 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 00:59:23 ID:3eA4AcvU0

( ;_ゝ;)「美味しいもんは美味しいで良いだろ!感想とか作文とかいやだ!」

ミ,,゚Д゚彡「優勝の副賞だから」

(´・ω・`)「出さなかったらペナルティ何か考えるからねー」

( ;_ゝ;)「弟者――――!!!」

(´<_` )「自分でやれ」

( ;_ゝ;)「うわぁーーーーーん!」

( ^ω^)「食べないと感想書けないお」

既に食事に手を付けている兄者以外のメンバー達。
よくわかっていないギコと、なんとなく理解したしぃも美味しそうに食べ始めている。

( ;_ゝ;)!

ミ,,゚Д゚彡「今日食べられなかったら、また後日作るから。今日出せなかった新作も出せたら、文字数も増えるから」

( ;_ゝ;)「フサギコのおたんこなす!ドエス!」

慌てて泣きながら食べ始める兄者。
涙を流しながら、うまいうまいと色々な料理に手を付ける。

ミ*,,゚Д゚彡「みんなの感想を活かして新しいメニューを作るから」

その様子を嬉しそうに見るフサギコ。

ギルド恒例の催しは、いつもと同じように美味しくて楽しい食事で終わりを迎えた。


.

967 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 01:00:13 ID:3eA4AcvU0



ミ,,゚Д゚彡「もちろん感想文のやり直しもあるから」



.

968 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 01:01:16 ID:3eA4AcvU0



兄者とギコが3回ダメ出しをくらって書き直しをしたのは、また別のお話。



.

969 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 01:02:32 ID:3eA4AcvU0

深夜。

片付けも終わり、それぞれに自分の部屋に戻ったギルドのメンバー達。

全員を送り出したモナーも自室に戻り、一日の日記をつけていた。

ベッドの上ではビーグルが既に丸くなって寝息を立てている。

( ´∀`)「『優勝は大方の予想通りフサギコでした』……もな」

大会の結果まで書いたところで、メッセージが来たことを告げるチャイムが鳴った。

( ´∀`)「もなもな?」

ウインドウを操作し、メッセージウインドウを開くとそれはモララーからだった。

『( ・∀・)「今日はお疲れ様。久しぶりに戦ったけど、やっぱり強いな。次は負けないけどよ。ところでブーンと戦った感じはどうだった?何か感じたか?』

( ´∀`)「……モララー…」

ぼそりと友人の名を呟き、返信用のウインドウを開く。

( ´∀`)「『お疲れさまもな。モナが勝てたのは不意を突けたからで、ちゃんと真っ向から闘ってたら勝てたかどうかわからないもなよ。ブーンとの試合は緊張したもな。闘った感じは』」

そこで一度ウインドウを操作するのを止め、じっと自分の書いている文面を見る。
数瞬の間そうしたあと、再び指をウインドウの上を走らせる。

( ´∀`)「『特に何も感じなかったもな。』」

そしてもう一度全文を読み、送信ボタンを押す。

( ´∀`)「……ふぅ」

メッセージウインドウを閉じて日記の続きを書こうとすると、再び鳴るメッセージ着信音。

.

970 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 01:04:27 ID:3eA4AcvU0

( ´∀`)?

もう一度メッセージウインドウを開くと、再びモララーからのメッセージだった。

(;´∀`)「早いもなね」

『( ・∀・)「そっか、何もないならよかった。ま、ブーンだからな。ツン絡みでなんか企んでるのかもな。了解。ありがとう。じゃあお休み。』」

( ´∀`)「………『おやすみもな。』」

就寝の挨拶を入力し、送る。

そのままじっと画面を見た後、ゆっくりとウインドウを消した。

大きくため息のような深呼吸をして、闇に染まった窓の外を見る。

( ´∀`)「モナは、何も感じなかったもな…」

呟きは、ビーグルの耳にも届かなかった。







.

971 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 01:12:25 ID:3eA4AcvU0
以上、第八話終了となります。

話が進まなかった割に長い文になりました。

次回は進むのか!それとも誰かの過去話か!
両方とも話の準備はしてありますが、どちらになるかは未定です。

基本月1回、本編か閑話の投下ができればよいなと考えております。


登場済キャラの背格好的なビジュアル的な設定は、また後日。
ここか、新しくたてて投下します。


ではではまた。

972 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 01:16:29 ID:gznLk7vo0
乙です

973 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 01:35:31 ID:yS7/sb5A0


974 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 01:42:53 ID:MyUR8J9.O
ふぅー、今回は1レスの文章量が多くいままでで一番読みごたえがあった 
王道展開のなかに( ^ω^)の不穏な動きを匂わせてるとこはいいね

975 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 03:24:05 ID:d2N0JTvoO
ω・)乙。ショボン弱いんだなぁ。

976 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 05:25:20 ID:9OoUjPqs0
フサ…いろんな意味で最強

977 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 05:34:51 ID:K7H918MI0
フサ好きだ!乙!

978 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 08:06:02 ID:vphiJ9LU0
乙!

実力が拮抗してるから相性がつよくでるんじゃね?

979 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 22:44:45 ID:rNWJ39U20
あうあう…。

投下ミスと純粋ミスを発見……。

以下修正お願いします。

980 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 22:46:48 ID:rNWJ39U20
>>906


ξ゚听)ξ「ちなみにしぃの罰ゲームはこれよ」

衣装を一つ実体化させるツン。
その手に持たれるのはフリルたっぷりのピンクのメイド服。

ξ゚听)ξ「今はシンプルなギャルソン服でバーボンハウスに出てるけど、勝てなかったら当分の間この服で給仕をしてもらいます」

(*゚ー゚)「む!むりです!」

川 ゚ -゚)「ではこちらか」

何故かクーが実体化させると、その手にはツンが手に持つ物よりはレースが少ないが、その分体の線を出し、更に胸を強調する形のエプロンをつけた超ミニスカートの服。

(;*゚ー゚)「も、もっとむりです!」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ、これはミニスカートに見えるが実はショートパンツで」

スカートのように見える部分をめくるクー。

(;*゚ー゚)「そういう問題じゃありません!」

(´・ω・`)「ま、60回のうち1回誰かに勝てればいいから」

(*゚ー゚)「うーーーー」

(,,゚Д゚)「お、おれの罰ゲームは」

( ^ω^)「安全圏で僕の攻撃を20分受け続けてもらうお」

(,,゚Д゚)「!」
 _
( ゚∀゚)「ブーンがいやならおれで」

('A`)「おれでもいいぞ」

(;,,゚Д゚)「しぃ!頑張って勝つぞゴルァ!」

(;*゚ー゚)「うん!がんばろう!ギコ君!」

.

981 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/09(水) 22:52:28 ID:rNWJ39U20
>>926


上空から斜め下にいるジョルジュの背中に向かって加速。
足場がない為剣技によるサポートのみの加速だが、短剣はもともとスピードを主体とした技の多く、刀身を青く光らせたこの技も十分な加速を見せた。

ギャラリーから歓声が沸く。
 _
( ゚∀゚)「でも甘い!」

前に転びそうになったジョルジュだったが踏み出した右足で持ちこたえており、逆に背中で刀身を隠しながら剣技に備えていた。

(*゚ー゚)「!?」
 _
( ゚∀゚)「とりゃあ!」

振り向きながらの一閃。

背を向けていたはずなのに完全にタイミングを合わせられ、しぃは驚愕しつつも連撃の初手をその両手剣の一撃に合わる。
 _
( ゚∀゚)「でも残念!」

だがしかしそこは両手剣と短剣。
しかも両手剣側はしっかりと地面を踏みこんでおり、短剣側は空中。

(;*゚ー゚)「きゃあああ!」

結果、大きく吹き飛ばされるしぃ。

大地にぶつかり、一度大きく跳ねてから、土煙を上げながら転がる。
ゆっくりと減っていくHPバー。
そして赤く変わった。
 _
(;゚∀゚)「だ、大丈夫か。でも強くなったな……ちょっとやばかった」

倒れているしぃに駆け寄るジョルジュの呟き。
それが聞こえ、ほんの少しだけ笑顔を見せながら、しぃが手を着いて上半身を持ち上げた。

.

982 名前:名も無きAAのようです:2013/10/09(水) 22:53:56 ID:rNWJ39U20
以上、失礼いたしました。

罰ゲームは公表してないし、しぃは片手剣使ってるし…。

ではではまた。

983 名前:名も無きAAのようです:2013/10/10(木) 02:53:45 ID:3O72Uo7Y0
お、投下来てたのか―乙
ブーンの不穏な動きがフラグはどんどんたってくけど敵意があるのかって言われると違う気がする―
楽しみに待ってるよー

984 名前:名も無きAAのようです:2013/10/10(木) 04:36:53 ID:ZN6VzDYM0
乙!今回もすげー面白かった!
装備や服装の詳細も見れて嬉しかったな。容姿の設定が来たら描きたいね
ったく来月が待ち遠しいよ!

985 名前:名も無きAAのようです:2013/10/10(木) 20:46:06 ID:X4/Ewc7cO
ω・)タノシミー

986 名前:名も無きAAのようです:2013/10/16(水) 11:20:21 ID:mDWBmrOw0
次回はまた1〜2ヶ月先かな

987 名前:名も無きAAのようです:2013/10/16(水) 11:31:25 ID:KAwL0VjgO
下手な絵でも感謝しなきゃいけないのが面倒だな

988 名前:名も無きAAのようです:2013/10/16(水) 11:46:52 ID:2EQ3ZLoQ0
>>987
そういう言い方はやめようぜ!仲良くやろうや

989 名前:名も無きAAのようです:2013/10/16(水) 18:17:20 ID:WE5/.u3gO
>>988
ω・)ウンウン

990 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:11:10 ID:AbKyzT5c0
どーも作者です。

残りを埋めるぞ的な閑話の投下行きます!

991 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:18:12 ID:AbKyzT5c0

第C話 閑話 ガールズルール 1



(*゚ー゚)「こんばんはー」

ξ゚听)ξ「お、きたきた」

川 ゚ -゚)「待ってたぞー」

ツンの部屋がノックされ、しぃが声をかけるとドアが開かれた。

(*゚ー゚)「おじゃまします」

ξ゚听)ξ「そんなの良いから良いから、さ、はやく座って」

VIPのギルドホームであるこの建物の個人部屋は、備え付けのベッドがある大き目のワンルームになっており、奥にあるドアはお風呂場と洗面所への入り口となっている。

この建物、外側は元からあったものだが中身はほぼ全て改装されていた。
そして、3・4階にある個人の部屋を作る際に、部屋に風呂を作ることは少しだけもめた経緯がある。

電子の世界であるアインクラッドでは身体を汚す的な意味合いで汗をかくことはないし、身体が汚れることはない。
戦闘時に状態異常として『汚れ』的なものが体に付着することはあるが、それは水で洗い流せば取れるというわけでもないため、ドクオやジョルジュなどは『風呂なんていらないだろ』と言ってしまったのだ。

そしてもちろん。

ξ゚听)ξ「汚い。心も体も精神的な意味で」

川 ゚ -゚)「一日の終わりを湯船につかって終わりたいという情緒も理解できない屑どもが」

といった女性二人からの冷たい口撃を複数受け、「ごめんなさい」をし、めでたくギルドの個人部屋には一つ一つ風呂が備え付けられた。

(*゚ー゚)「やっぱりお風呂っていいですよね」

しぃがギルドに入って一番最初に一番の笑顔を見せたのは、部屋に風呂があるのを知った時かもしれない。

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992 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:19:29 ID:AbKyzT5c0

ワンルームの方はベッドが置かれているだけであり、あとは自分でカスタマイズしていた。

今三人がいるのはツンの部屋なのだが…。

(*゚ー゚)「改まってちゃんと入ったのは初めてですけど…」

ダブルのベッドにアンティーク調の飾りが付いたタンス。部屋の隅には女性型と男性型のトルソーが一体ずつ。大き目の姿見が三つと裁縫師というツンの職業スキルを考えればまぁなんとなく納得できるものがある程度で女性らしい可愛い部屋に仕上げてあるのだが。

川 ゚ -゚)「これでも片付いたんだぞ」

ベッドから床から、数多くの布や服、リボンといった装飾物が散乱していた。

ξ゚听)ξ「仕方ないでしょ。さっきまで仕事してたんだから。片付けてるから、座って喋っててよ」

(;*゚ー゚)「はい…」

散乱はしているように見えるが、すべての物は重なることなく上から見ればすべての色や柄や形が分かるようになっているところを見ると、仕事に使っていたのは確かなのだろう。
そこでふとしぃは疑問に思ったことを口にした。

(*゚ー゚)「下の作業部屋で作らないんですか?」

ξ゚听)ξ「オーダーとかで色柄が決まってるのはあっちで作るけどね。メンバー用の服とか自分で色々決める奴はここでやった方がはかどるのよ」

川 ゚ –゚)「散乱した生地の中でベッドの上に仁王立ちして頭の中で服をデザインしている姿は結構面白いぞ」

ξ゚听)ξ「いいでしょ!その方がイメージしやすいのよ」

部屋の中央、あからさまに急ごしらえに作られたのが分かるスペース小さなテーブルが置かれ、それを囲うように身体をうずめることが出来るサイズのクッションが三つ置かれていた。
その一つにクーが座っている。

川 ゚ -゚)「ま、片付けしながらでも話せるしな。しぃ、とりあえず座っておけ」

(*゚ー゚)「はい」

ξ゚听)ξ「私の部屋なんだけどな」

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993 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:21:29 ID:AbKyzT5c0

散乱…いや、部屋中に置かれた素材を一つ一つ手に取りながら決まった収納場所に保存する作業を繰り返すツンを横目に、空いているクッションの一つに座るしぃ。

(*゚ー゚)「これ、座り心地良いですね!肌触りもすごく良いし」

ξ゚听)ξ「でしょでしょ!中身は買ってきたけど、カバーは自分で作ったのよ」

川 ゚ -゚)「しかもひどいぞツンは、買ったその足でわざわざモララーの店に行って見せびらかして、更に『あんたにはこんなのは作れないわよね』などと言い放ったからな」

(*゚ー゚)「ツンさん…」

ξ゚听)ξ「中身、結構高いのよ。あいつが作れるようになれば安く手に入るわよ」

(*゚ー゚)「がんばれモララーさん」

川 ゚ -゚)「しぃまでか」

顔を見合わせて笑う三人。

(*゚ー゚)「モララーさんの店に並んだら、私も買おうかな。ツンさん、お茶とお菓子、ここに置きますね」

ξ゚听)ξ「んー。ありがと」

テーブルの上に三つのカップと一口大のケーキを十数個乗せた皿を準備しつつ、ツンに声をかける。

すでにケーキを一つ口に運ぶクー。

川 ゚ -゚)「ん、うまい。腕を上げたな。しぃのおかげで私がバーボンハウスに出ることが少なくなってありがたいよ」

(*゚ー゚)「たまに出ると男のお客さん、すごいじゃないですか」

川 ゚ -゚)「なんだろうな、あいつらは」

ξ゚听)ξ「あんたも人気あるからね。しぃだってすごいって聞いたけど?」

(*゚ー゚)「クーさんに比べれば全然ですよ」

ξ゚听)ξ「さりげなく否定はしないところがさすがね」

慌てて否定するしぃをからかうツンとクー。
それはしぃが頬を膨らませてテーブルの上のケーキをしまおうとするまで続いた。

.

994 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:23:58 ID:AbKyzT5c0

(*゚ー゚)「もう…」

川 ゚ -゚)「わるいわるい」

ξ゚听)ξ「可愛くて面白かった」

(*゚ー゚)「もう!からかわないでください!」

川 ゚ -゚)「いやしかし、本気だぞ。しぃは私たちにとって妹みたいなもんだからな」

(*゚ー゚)「え?」

ξ゚听)ξ「今までハインとか女の知り合いは何人かできたけど、これくらい上の層に来ちゃうと自分より小さいことかレベルの低いことかに会う機会がそれほどないのよ。知り合っても、親しくならなかったりね」

川 ゚ -゚)「このギルドは規模を大きくしようとか考えてないから、人もほとんど入れないしな」

ξ゚听)ξ「だから、ギコはともかくしぃが入ったのは嬉しかったの。女の友達が出来るなって。ね。クー」

川 ゚ –゚)「ああ。しかも家庭的スキルをちゃんと持っていて、更に可愛いときたらもう」

(*゚ー゚)「あ、ありがとうございます」

ξ゚听)ξ「しかも自己主張もできるし」

川 ゚ -゚)「突っ込みスキルも高いと来た」

(*゚ー゚)「…え?」

ξ゚听)ξ「ギコを手のひらで転がす手腕」

川 ゚ -゚)「ショボンを筆頭に、誰に対しても物怖じしないで突っ込みや主張できる押しの強さ」

ξ゚听)ξ「笑顔で毒舌」

川 ゚ -゚)「接客中に口説かれた時の受け流しもすごいと聞いた」

(;*゚ー゚)「最後の方は絶対ほめてない!」

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995 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:25:58 ID:AbKyzT5c0

噴出したクー。
それを受けてツンも笑い出し、ふてくされていたしぃも笑顔を見せた。

ξ゚听)ξ「ごめんごめん」

川 ゚ -゚)「途中から面白くなってた」

(*゚ー゚)「酷いですよ、二人とも」

片付けが終わっていなかったが、ツンもクッションに座り、カップを手に取った。

川 ゚ -゚)「でも、最初に言ったのは本当だぞ」

(*゚ー゚)「え?」

ξ゚听)ξ「妹みたいってやつ」

川 ゚ -゚)「正確には家族だがな。あいつらを兄とか弟とか思うと虫唾が走るが、しぃは大事な姉妹みたいだ」

ξ゚听)ξ「同じく!」

(**゚ー゚)「…嬉しいです」

.

996 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:26:59 ID:AbKyzT5c0

川 ゚ -゚)「私たちのことをお姉ちゃんと呼んでくれてもいいんだぞ」

(*゚ー゚)「え?」

ξ゚听)ξ「あ!わたしもわたしも!」

(;*゚ー゚)「え、いや、それは別に」

川 ゚ -゚)「まあ遠慮せずに」

ξ゚听)ξ「さあさあ」

(;*゚ー゚)「え、あ、いやその」

川 ゚ -゚)「そうか。しぃはそんな風には感じてくれていなかったんだな」

ξ゚听)ξ「嬉しいって言ってくれたのに」

川 ゚ -゚)「家族のように大事な存在だと思っていたのは私達だけだけだったか。さみしいな。ツン」

ξ゚听)ξ「そうね。クー。こういう片思いもあるのね」

(*゚ー゚)「い、いえ私も皆さんが大事です!家族のようだと言ってもらえてうれしいです!」

川 ゚ -゚)「ならば」

ξ゚听)ξ「ねぇ」

(;*゚ー゚)「う…」

川 ゚ -゚)「さあさあ」

ξ゚听)ξ「ほらほら」

(;*゚ー゚)「お…お姉ちゃん」

川 ゚ -゚)「どっちのことだ?私はクーだぞ」

ξ゚听)ξ「私はツンよ」

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997 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:28:13 ID:AbKyzT5c0



(**゚ー゚)「く、クーお姉ちゃん、ツンお姉ちゃん…」



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998 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:28:56 ID:AbKyzT5c0

川*゚ –゚)

ξ*゚听)ξ

川*゚ –゚)「こ、これはやばいな」

ξ*゚听)ξ「ええ、やばいわね」

川*゚ –゚)「予想外すぎた。『ほんとに言ったぞ、ひくわ〜』とか言うつもりだったのに」

ξ*゚听)ξ「違う意味で記録結晶に録っておいて良かった」

(;*゚ー゚)「え!?ちょ!なにしてるんですか!」

ξ*゚听)ξ「破壊力デカすぎる」

川*゚ –゚)「あとでコピーしてくれ」

ξ*゚听)ξ「了解」

(;*゚ー゚)「ちょっと二人とも!?」

ξ*゚听)ξ「良い物見たわ〜」

川*゚ –゚)「これをおかずにご飯三杯はいけるな」

ξ*゚听)ξ「四杯はいける」

(;*゚ー゚)「もうやだこの人達!」

外はまだ夕闇に染まりかけ。
三人の会話は、まだ始まったばかりだ。





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999 名前: ◆dKWWLKB7io:2013/10/28(月) 00:34:22 ID:AbKyzT5c0
ということで、閑話の投下終了です。

第九話はあと誤字脱字チェックをするだけなので、近日中に新しいところに投下します。
あと見た目の設定みたいなものも。


いつも感想と乙、ありがとうございます。
すべての書き込みが続けるエネルギーになってます!

投下も遅いし拙い文ですが、少しでも楽しんでもらえたらすごく嬉しいです。

ではではまた!
.

1000 名前:名も無きAAのようです:2013/10/28(月) 01:12:06 ID:JOy2VOlc0
乙!


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