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(  ゚ ω ゚) Channelers

1 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 20:53:50 ID:hbexrCHs0
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 【 Channelers (ちゃねらーず) 】


 オリジナル ・ 長編 ・ ブーン系小説
 オリジナル分90% (残り一割:AA及び2ちゃんねる、ニュー速VIPネタetc.を含む)

 超能力 ・ 現代厨二もの ・ TS要素あり
 ※主人公が無効化能力ですが、禁書シリーズの影響は特に受けていません


 まとめサイト
 http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm  ブーン芸VIP様
 http://localboon.web.fc2.com/100/top.html  内藤エスカルゴ様(21話〜)
 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html  くるくる川 ゚ -゚)様 (1〜20話)
 http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html フェスティバロス様 (1〜10話)


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2 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 20:55:28 ID:hbexrCHs0
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 −−−−−−−−− あらすじ

 自堕落な生活を送るフリーター ・ 内藤ドクオは、ある朝目覚めると女の子になっていた。
 ようやく元に戻れた彼は、弟 ・ 内藤ホライゾンの行方を追って、夜の学校へ忍び込む。
 ドクオはそこで不思議な少女と出会い ── それは、非日常へと彼を誘う扉だった。

 
 −−−−−− 用語

 『 チャネラー/ねらー/2ちゃんねらー 』
 二つの “ 人格(Channel) ” を持つ “ 二重人格の超能力者 ” 。
 主人格と副人格、それぞれ別個の能力を持つのが特徴。


 『 超能力/PSI 』
 “ エスパー ” および “ チャネラー ” が有する、人知を超えた悪魔の力。
 物理法則をもねじ曲げ、不条理をまき散らす現代の災厄。

 ねらーの持つ超能力は、総じて “ 弱い ” と評される。
 危険な能力を有する者も、僅かながら存在する。

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3 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 20:58:23 ID:hbexrCHs0
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 ※ ようです検索の必要がないのでつけなかったら、なんだかシュール

 ※ 時間の関係上、30話は2〜3夜に分けて投下する。


 以下本文──
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4 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 20:59:49 ID:u4XTD2/c0
スレタイのAAがwww
支援

5 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:00:41 ID:hbexrCHs0
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【 トランプ 】


 − カードを使用した室内用の玩具。
    多種多様なゲームに用いられるほか、
    占いの道具としても、手品(マジック)の小道具としてもよく用いられる。 −

    ─── Wikipedia 『 トランプ 』
    (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97


 (補足)
 ダイヤ・クラブ・スペード・ハートの4種類のスート(マーク)があり、
 それぞれにランク(番号)が設定されている。
 ランクは、A(エース)と2〜8までの数札、 J、Q、Kの絵札、13種類となっている。

 カードの構成は、上の52枚に、
 ジョーカー1〜2枚を加えた、計53(54)枚が一般的。
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6 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:02:00 ID:hbexrCHs0
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【 勝負の前提 】


 内藤ドクオと内藤ホライゾンは、それぞれ個別に
 『 あるトランプゲーム 』 で、田中ポセイドンと勝負する。
 二人のうち一人でもポセイドンに勝てば、ギコは解放される。

 しかし。

 ポセイドンが勝つごとに、
 猫塚しぃは、予め刷り込まれた 『 暗示 』 の影響を、
 その身体に色濃く反映する事態となる。
                          ヒュプノシス
 これは、『 コトダマ 』 と総称される特殊な催眠能力の効力による。
 敗北という 『 条件(フラグ) 』 の成立によって、
 用意された 『 命令(オーダー) 』 が精神に刻まれるためである。

 内藤ホライゾンが負けた場合、しぃの “ 身体の自由 ” 。
 ドクオが負けた場合、彼女の “ 心 ” が、ポセイドンによって掌握される。


 催眠能力の究極形といわれる 『 マインド・コントロール 』 。

 二人が敗北した結果、猫塚しぃは上記能力の支配下と
 同じような状態に陥ることが予想される。
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7 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:03:56 ID:hbexrCHs0
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 〜 〜 〜


 ポセイドンの説明に、ところどころ茶々を入れるダイオード。
 彼らの話を要約すると、おおむねこのような内容だった。


(;'A`) (マジか……)


 すんなり理解できそうで、やっぱり喉にひっかかる。
 濃いめのカルピスを飲んだ時のような違和感が残った。


(-[]3[]) 「勝負に先だって、君たちにはこいつを着けてもらう」


 ポセイドンが告げると、後方の黒服がこちらに進み出た。
 差し出す両手には、細長い腕時計のような銀の蛇腹が、
 数本握られていた。


(;*゚−゚) 「なんですか? これ……」

(-[]3[]) 「僕たちは、『 ロッカー 』、
       または 『 PRS 』 と呼んでいる」
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8 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:06:10 ID:hbexrCHs0
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/ ゚、。 / 「ロッカーといっても収納ボックスではないケド。
       ましてや全面白塗りだったり赤いアルファベットが増えたりもしないケド」

(;'A`) (何言ってるのかわからん)


 ダイオードの言葉を無視してポセイドンは続けた。


(-[]3[]) 「正式名称 『 パーソナル ・ ロッキング ・ システム 』 。
      製品化の前段階であるため、正確には “ 仮称 ” だがね。
      …… 一言で言えば、ねらーの超能力を封じる機械さ」

(;'A`) 「はいィ!? それtt」 カチリ

Σ(;゚A゚) 「!!」


 口を挟む間もなく、俺の手首には “ それ ” が嵌められていた。
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9 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:10:09 ID:hbexrCHs0
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(-[]3[]) 「知っているかもしれないが。
      “ チャネラー ” が超能力を有する要因として、
      二重人格であることが、大きく関係していると考えられている」

(; ^ω^) 「お!? どういう意味g……」 カチリ

Σ(* ´ω`) 「あふん」


 黒服はよどみなく、ブーンにも “ ロッカー ” を装着させる。
 眼鏡のつるをクイっと上げ、少年の解説は続いた。


(-[]3[]) 「そのまんまの意味さ。
      チャネラーは二重人格者だからこそ、超能力者でもあるってこと」

(;*゚−゚) 「??」

(-[]3[]) 「説明しよう……。

      チャネルを “ 発症 ” した者たちの中には、
      人格統合に成功し、別人格(アナザー)の消滅に至ったケースが、
      ごく少数だが、ある。

      興味深いことに。
      別人格を失った “ チャネラー ” たちは、
      総じて “ PSI ” をも、喪失する傾向にあるらしい」
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10 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:12:19 ID:hbexrCHs0
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 つまりだ。
 別人格の存在そのものが、
 脳の一部に負荷をかけている……そう考えることはできないかい?

 得意気に言い放つと、ポセイドンは脚を組みかえた。


(-[]3[]) 「話は変わるが、“ PSIジャマー ” をご存じかな?
      我が社が極秘裏に開発し、
      高い評価を得ているジャミング装置だが……」

(;'A`) 「? ???」


 解説の着地点がわからない。
 疑問符いっぱいの俺に対し、タムラが言った。


爪 ゚〜゚) 「ウーハーに似た、でっけェ箱みたいな装置だ。
      設置ポイントから特殊な電磁場を形成し、
      いっさいの超能力を使えなくする機械だよ。

      ありゃー確か……対象範囲は半径5メートルほどだっけか」
..

11 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:12:27 ID:vg.3rD1Q0
ようですないと違和感あるな

12 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:13:41 ID:hbexrCHs0
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 ポセイドンは頷いて続ける。


(-[]3[]) 「対して、この “ ロッカー ” は小型で軽量。
      ジャマーに代わる超能力抑制装置として、
      これから広く普及してゆくことだろう」


 もちろん、一般社会にその存在が認知されるのは、
 まだまだ先のことだろうけどね。

 平和ボケの情弱市民ども。
 彼らは、“ ジャマー ” が既に実用化され、
 一部行政機関・司法機関の業務現場に導入されている──。


(-[]3[]) 「……という事実以前の問題で、
      超能力の存在すら、認識するに至っていないのだから」


 嫌味たらしくそう付け加えた上で。
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13 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:13:50 ID:p3XcecQ20
ほう

14 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:15:42 ID:hbexrCHs0
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(-[]3[]) 「僕のコネで、試作段階のブツを何本か横流ししてもらってね。
      何度か試してみたが、機能にはさほど問題ない。

      コイツの優れている点は、
      潜在チャネルとの感情伝達そのものを阻害することで、
      結果的に超能力を封じるという、そのPSI抑制原理にある。

      簡単に言えば、こいつを着けている間は、超能力が使えなくなる。
      さらに、別人格(アナザー)へのシフトはもちろん、
      意思疎通もできなくなるってことさ」

/ ゚、。 / 「ねらー限定で、えすぱーには効果がないらしいケド」

(-[]3[]) 「そう。 その事実こそ、
      ねらーにおける人格乖離現象と超能力の発生が
      相互作用であることの証明さ」


 さらに付け加えると “ ロッカー ” は、自己で能力を制御できない者……、
 いわゆる “ 超能力障害の発症者 ” には、期待する効果が得られない。
 “ 副人格(アナザー) ” との意思疎通が図れない者についても同様。

 医療的な意味での
 “ 多重人格解消 ” および “ 超能力抑制 ” 作用が認められていれば、
 マーケットは飛躍的に広がっていたのだろうけれど。

 そう言って、ポセイドンは鼻を鳴らした。
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15 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:18:13 ID:hbexrCHs0
.
(-[]3[]) 「それでもじゅうぶん画期的なアイテムだろう?
      可能性は無限大。 我が社の展望は明るいな。

      と、いうわけで。

      きみたち。
      勝負の最中は、常にこいつを着けていてもらう。
      いいね?」


 いいも悪いも事後承諾じゃないか。
 突っ込もうと思ったがやめておいた。


(-[]3[]) 「そうそう。
      精密機械だからね。取り扱いには注意してくれよ?
      まあ簡単には取り外せないと思うが……」


 ポセイドンの横に立つ黒服が右手を掲げる。
 板状の小さな銀色が数枚、重なり合って、鈴のような音色を奏でた。

 俺は反射的に手首へ視線を落とした。
 あった。
 “ ロッカー ” の外側部分に、細長い窪み。

 黒服のつまみ上げている金属板は、
 超能力を拘束する手錠の、合い鍵ってことか。
.

16 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:21:44 ID:hbexrCHs0
.
爪 ゚〜゚) 「そーいや、充電は?」

「ちゃんと確認しました。
 大丈夫です。 もう “ あんな事態 ” にはなりません」


 タムラと黒服がボソボソ話す声が聞こえた。
 これ、充電式なのか。
 ディスプレイを備え付けているでもなし、そう電気を食うとは思えないのだが。

 金属製のリストバンドのような “ パーソナル ・ ロッキング ・ システム ” 。

 一見するとうさん臭い健康グッズのようだが、
 充電を要するほどの電力が、絶えず人体に注がれているのだと考えると、
 どうにも体に悪そうである。


(;'A`) (しっかし……。
     超能力が使えないって、ホント、なのか……?)


 情報量が多かったせいか、俺の頭はいまいちついてってない。
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17 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:23:17 ID:hbexrCHs0
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 奴らの話を三行でまとめると、

 ・ “ ロッカー ” は
 ・ ねらーを一般ぴーぽーにしてしまう機械で
 ・ 外すためのカギは、黒服の手の中。

 ということだろう。
 ……あれ、八方ふさがりな状況に追い詰められてしまった感が。

 しかし、だ。
 こいつが肌に密着している今も、目立った違和感がないせいか、
 どうにも “ 能力が使えない ” という実感に乏しい。

 俺は小声でブーンに問いかける。


(;'A`) 「ブーン、どうだ? ロマネスクは……?」 ボソボソ

(; ^ω^) 「だ、だめだお。
       いくら話しかけても反応がないお」


 肉塊は目を白黒させながらそう答えた。
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18 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:25:45 ID:hx5SuXuwO
(´・ω・`) 長かった、あまりにも長すぎた……
ずっと待ってたよ

19 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:27:25 ID:hbexrCHs0
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(lll'A`) 「ってことは……やっぱり」


 当然、俺の能力も消えてしまっているだろう。

 とんだお笑い種だ。
 “ ねらー ” としての唯一のアイデンティティ。
 超能力を封じる超能力を、封じられちまった。


(-[]3[]) 「効果はばつぐんのようだね。
      さて、あとは……」


 ポセイドンの目配せで、黒服がしぃちゃんのもとへ回り込む。
 その右手には、彼女の怪力をも封じ込めてしまうであろう、
 銀色の拘束具が、きらり。


(*゚□゚) 「ちょっと待ってください!」


 一歩後ずさり、しぃちゃんは叫んだ。


(;*゚ο゚) 「機械のことはわかりました。
      でも、どうしてわたしはゲームに参加できないんですか?
      当事者なのに。 わたしはいったいどうしたら……」
.

20 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:28:41 ID:hbexrCHs0
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(-[]3[]) 「しぃちゃんには、ゲームのジャッジになってもらうのさ」

(;*゚△゚) 「ジャッジ?」

(-[]3[]) 「それもあとで説明する。
       まずは “ ロッカー ” を」

(;*゚−゚) 「う……で、でも」

(-[]3[]) 「いい子だから。 さあ。
      ……ギコがどうなってもいいのかな?」

(;* − ) 「────!」


 たじろいだしぃちゃんのもとへ、ふたたび黒服が近づく。


(* − ) 「……」 ボソ

(-[]3[]) 「くく……さあ。
      大人しくしててくれ、サイアミーズ」

(* ロ ) 「……だまって」


 逆サイドからは別の黒服がじりじり迫っていた。
.

21 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:30:22 ID:hbexrCHs0
.
 が、今にも捕まりそうなところで、


(* ∀ ) 「き────てリャ」

(-[]3[]) 「?」

(#*゚∀゚) 「よ゛ォ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」


 唐突に。
 彼女の口から発せられる、ドスの効いたデスヴォイス。

 いや。
 ……こいつはしぃちゃんじゃない。
 “ つー ” だ。


(*゚皿゚)9m 「カークーゴーしとけヨー?
        ギコを奪い返シタあとァ、オメーラなんて
        ギッタンギッタンのメッコメコにヘコませてやっかんナ!!」


 つーは、ポセイドン、タムラ、ダイオードを順繰りに指差し、
 宣戦布告した。

 さらに、近くのパイプ椅子を勢いよく片足で踏みつけ、
 パンクロッカーのように舌を出し、逆指を立てる。
 やりすぎだ。 パンツ見えそう。
.

22 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:33:05 ID:hbexrCHs0
  _, ,   そ
(*゚∀゚)l|pl|l  「おぼえトケッ!」
      `☆

 次の瞬間、数人の黒服がつーを取り囲む。
 彼女が怯む様子はない。
 唇を斜めに尖らせ、ズビシィと親指を振り下げた。

 容姿が整っているぶん、変顔にも謎の迫力がある。
 逆に周りの黒服たちのほうが気圧されている印象だ。
 パンツ見えそう。

 
(゚∀゚*)彡 「そーそー! どーくおっ!」

(;*'A`)そ 「?」


 椅子を踏んだ姿勢のまま、つーはこちらにジト眼を流し、
 「あひゃっ☆」 とウィンクする。
 白いのがチラッと見えた。

       ,☆
(*:::∀゚) l|凸|l 「わかってんだローナッ? 腹ァ括れヤッ!」

( 'A`)


 牙……もとい、八重歯だけど。 
.

23 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:34:42 ID:hbexrCHs0
  _,,
(*゚△゚)9m 「いいカー!?
       モシ負けタラ、テメーもついでに八つ裂きだかんナッ!」


 まぁ恐ろしい。
 ……色んな意味で、胃が痛くなってきた。

 その後もしばらく、描写すら憚られるような
 汚い罵倒がその場に飛び交っていたが。


/ ゚、。 / 「ほいっと」


 いつの間にか、ダイオードがつーの背後に立っていた。
 彼女の腕をつらまえたダイオードは、
 あくまで事務的に、その手首へ “ ロッカー ” を嵌める。


(* □ )そ 「ぁっ……!?」

(;*´−゚) 「……うぅ」


 主人格である “ しぃちゃん ” に戻ったのだろう。
 まさに “ 毒気を抜かれた ” という感じで、彼女はその場に膝を折った。
.

24 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:34:49 ID:rSaAu70k0
ちゃねらーとかまじか
嬉しすぎ

25 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:35:49 ID:hbexrCHs0
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爪;゚〜゚) 「かー! これがこのコの隠された本性ってやつかい!
      そのまま一生ジキル博士でいたほうがいいんでねーの?」

(-[]3[])


 これまでの流れを見ていたタムラが、頓狂な声を上げる。


爪 ゚〜゚) 「共同生活にゃあ “ ロッカー ” が必需品だな!
      エンゲージリング代わりにどっすか? ねェ、坊っちゃん……」

(-[]3[])

爪 ゚〜゚) 「坊っちゃん?」



(-[]3[])
.

26 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:36:50 ID:hbexrCHs0
.
(-[]3[]) 「あれが、しぃちゃんの別人格……」


爪 ゚〜゚)






(-[]3[]) 「……いい」 ボソッ


爪;゚〜゚) そ




 ── どうにも、一筋縄ではいかないモノを感じた。

.

27 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:38:05 ID:hbexrCHs0
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                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html


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28 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:40:30 ID:hbexrCHs0
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 四角四面に夜空を湛える倉庫の窓が、端からほのかに明るくなった。
 黄色い月が光彩を帯びてくる時分。


(-[]3[]) 「わざわざこのようなまどろっこしい手順を踏むのも、
      君たちが “ ねらー ” である以上、しょうがないコトなんだ。
      理解してくれるよね」

(; ^ω^) 「……ごたくはいいですお! さ、さっさと始めるお!」


 超能力の使えなくなった我々三人は、蛇に睨まれたカエル同然であり……。


(-[]3[]) 「よし。
      詳しいゲームの説明は、“ 中で ” 行うことにしよう」


 本来であれば、相手に従うしかない状況なのだが。


(;'A`)ノノ 「ま、待ってけ、くりぇ」

(^ω^ ;)彡 「?」


 いちかばちか、俺は足掻いてみることにした。
 立ち上がろうとするポセイドンを両手で止める。
.

29 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:43:26 ID:hbexrCHs0
.
(;'A`) 「頼む、どうにかしてギコの安全を、確認させてくれないか!?
     こ、声とか。 動画とか……あれば……。
     しぃちゃんも、ほら、心配してるし……」


 『 そう遠くない別の場所 』 ポセイドンは言っていた。

 その後の彼らの話しぶりからしても、
 ギコはこの倉庫の近くに監禁されているのだと、なんとなくわかる。
 少なくとも、VIP港のエリア内ではあるはずだ。

 ……希望的観測ではあるが。


(-[]3[]) 「それを知ってどうするんだい?」


 人質とは重要な取引材料である。
 身代金目的ではないにしろ、彼らが『 ギコを捕えている 』 ことについて、
 状況証拠しか提示しないというのは、いささか理不尽な感じがする。

   そ
(;'A`) 「どうするっていうか!
     その……ほら!
     し、心配で勝負に身が入らないし!」
.

30 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:44:09 ID:rC7UbJjEO
よく帰ってきたな おかえり

31 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:44:35 ID:hbexrCHs0
.
 勝負を持ちかけてきたのはポセイドンだ。
 当然ながら、相手は相当 『 ゲーム 』 に習熟しているはず。
 内容はまだわからないが、勝ちを得るのは容易ではないだろう。

 それに、たとえ勝てたところで、ギコの身の安全にはなんら保障がない。
 できることなら、相手の土俵での勝負は避けたい。
 それが無理でも、勝負開始はギリギリまで引き延ばすことが必要だと感じた。


(;li'∀`) 「 どどど、どうせ勝負するなら、お互いリラックスっていうかほら……
       ね? ね?」

                             オサム
 可能な限り情報を引き出し、外で待機している兄者に、ギコを助けてもらう。
 それ以外にこの状況を覆す手立てはない気がする。

 伝えられるか?
 ……いや、どうにかして伝えなければ。


(-[]3[]) 「やれやれ……仕方ないな。 おい」

爪 ゚〜゚) 「ちょい待ち」


 ギコのもとへ連絡をつけるよう、黒服に顎で指示しようとしたポセイドン。
 が、今度はタムラが彼をストップさせた。
.

32 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:46:37 ID:hbexrCHs0
.
爪 ゚〜゚) 「な〜んか引っかかるな。
      おまえら、他に仲間を連れてきてんじゃねえだろうな」


('A`)


('A`) 「えっ」


 タムラは、壁際で直立する黒服へ言った。


爪 ゚〜゚) 「そこのオッサン。
      コイツから没収した携帯を調べてみろ。
      で、2時間以内に、しぃとホライゾン以外の着発信が残ってれば……」

(;'A`) 「!?」


 彼の指示を受け、黒服はすぐさま俺の携帯に指をかける。
.

33 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:48:50 ID:hbexrCHs0
.
「 えー……。 ああ、ありました。 履歴。
 “ アホボケ流石くそオサム ” 、それから4時間前ですが “ クー ” 。
  ……二件ですね」

爪 ゚〜゚) 「うし。 貸しな」

Σ(;゚A゚) 「ちょっ! おい、やめっ」


 タムラは黒服から携帯を受け取ると、それを耳にあてた。


爪 ゚〜゚) 「……チッ。 留守か」


 数回のコール音を確認したあと、
 間髪いれずにもう一件の相手に電話をかける。


『 もしもし? 』

爪 ゚〜゚)】 「俺だよ俺!
       例の件なんだけど、じ、事情が変わった。
       とりあえずこっちはオーケーだから! 場所はわかるよな?
       すぐ来て、頼む!」

爪 ゚〜゚)】 ピッ


 一方的にまくし立てたあと、タムラは乱暴に電話を切る。
.

34 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:50:07 ID:hbexrCHs0
.
爪 ゚〜゚) 「あとは入口を固めておけば……おい!」


 タムラの指示で、数人の黒服たちがいっせいにシャッターのもとへ向かった。
 壁際の黒服──角刈りサングラスが、制御盤のスイッチへ手を伸ばす。


爪 ゚〜゚) 「さーて、蛇が出るかナニが出るか」

/ ゚、。 / 「楽しみだケド」

(-[]3[]) 「おい、お前らちゃんと対処は……」


 次の瞬間、けたたましい音響が庫内にこだました。


Σ(;-[]3[]);゚〜゚) 「!?」

「なっ……」

(゚A゚;)彡 「ええ!?」


 ──上がっていくシャッターとは逆側。
 後方の窓から、それも、破砕音が。
.

35 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:52:14 ID:hbexrCHs0
.
                  メ ェ ェ ェ イ ラ コ ゥ ゥ ゥ
【+  】ゞ゚) 「イィィィッツァ! Miiiiiiiiraccccccccle!!」


 ガラス片に続いて裸の窓枠が宙を舞い、ふいに床へ落ちる。
 ぽっかり空いたそこから飛び込んできたのは──。


【+  】_ゞ゚) 「はっ はっ はァ──────!
         天が呼ぶッ! 地が呼ぶッ!
         かよわきヒトの鼓動が呼び覚ますゥ───!」


 ぼさぼさ頭の、不就労中年厨二病男(ハイパー・サイコキネシスト)。

  _n
 ( l  
  \ \ ( ゚"_ゞ゚)  彡
   ヽ___ ̄ ̄  ) 彡
     /    /+  】

( ゚"_ゞ゚) 「アルティメェ──ッッツ!! ダァァァクヒィィロォォォォォオゥ!
       アイアム棺桶死(シュナイダー)オサムッッッッッ!!!」


 二つ名がありすぎてわからん。
.

36 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:54:02 ID:hbexrCHs0
.
( ゚"_ゞ゚)b 「しかと聞いたッ! 助けを求める声ッ!
        華麗にメーーーーーラコゥに今ここに推さ……」



                  ( ゚"_ゞ゚)b      (゚〜゚ 川ハ ([]ε[]-;) / ゚、。 /



(i|l'A`) (l|l*゚−゚)(  ゚ω゚)     d(゚'く_゙゚ )



( ゚"_ゞ゚)b


( ´_ゝ`)


( ´_ゝ`) 「えっ」


(lll A )


 ……ギコ奪還作戦、失敗(始める前から)。
 というか、思いっきり裏目に出てしまったのは、気のせいか。
.

37 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:54:51 ID:vg.3rD1Q0
オサムwwwww

38 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:57:20 ID:hbexrCHs0
.
 〜 〜 〜

●第三○話 『 E / P / F ── VS. ポセイドンD 』


∩( ´_ゝ`)∩ チーン


 ……数分後。
 状況は緩やかに、しかし確実に芳しくない方向へと流れていた。


爪;゚〜゚) 「……ダメ元だったんだが、本当に釣れるたぁ……」

(-[]3[]) 「やれやれ、いつになったら始められるのかな」


 威勢よく登場したオサムは今、
  『 ホールドアップ 』 の体勢で、黒服四人に取り囲まれている。


爪 ゚〜゚) 「どうしてくれましょうかね。
      ま、発信履歴に110番がなかっただけ、まだ許せないこともねぇが」

(-[]3[]) 「他に応援を呼んでないか、確かめる必要があるな」


 そう言うと、二人はダイオードのほうに視線を投げかける。
.

39 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 21:58:29 ID:hbexrCHs0
.
/ ゚、。 / 「んー。  “ ストック ” あんまりないんだケド。
       ……ま、仕方ないか」

∩( ´_ゝ`)∩ 「やめろー、それ以上近づくなー(棒)」


 わざとらしくかぶりを振る兄者を一瞥すると、
 ダイオードは、スーツの内ポケットに手を差し入れる。


爪 ゚〜゚) 「待ちな。 その前に」


 ゆらり、タムラが兄者のほうへ歩き出した。


  (;'A`)「!」 ((( 爪 ゚〜゚)    ∩( ´_ゝ`)∩


 彼が俺の前を横切る瞬間、何かイヤな予感が走った。


∩( ´_ゝ`)∩ 「きみたちー、ご両親が泣いているぞー(棒)
          これ以上罪を重ねるんじゃなーい(棒)」
.

40 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:01:05 ID:hbexrCHs0
.
爪::::〜゚) 「ちィと黙ってな」

∩( ´_ゝ`)∩゙ 「ん?」


 兄者の背後へ立つタムラ。
 途端。

          そ
Σ l|l∩(i|i ゚"_ゞ゚)∩l||i 「おぼぁ!?」 ビクッ


 兄者の体が跳ね、その背が大きく反り返った。


(;゚A゚) 「!? おさm……」


 爪:::〜゚)
        (( (lll◇_ゝ◇)


 (   _ゝ ) チーン


 目玉がぐるんと反転し、
 兄者はそのまま、膝からくずれ落ちた。
.

41 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:03:20 ID:hbexrCHs0
.
(;*゚□゚) そ 「兄者さん!?」


 駆け寄ろうとするしぃちゃん。
 が、二人の黒服が道をふさぐ。


/ ゚、。 / 「使ったのか? “ スタンピース ”」


 気絶した兄者を抱き起こしながら、ダイオードが尋ねた。


爪 ゚〜゚) 「念には念をだ。 相手はまさかの “ サイコキネシスト ” !
      こうでもしなきゃ、いつ何をされるかわかったもんじゃねーからな」

/ ゚、。 / 「ふーん。 臆病」

爪;゚〜゚) 「いちいち癪に障るヤツだなお前!」


 タムラは、今しがた兄者の背に押しつけたもの……。
 黒い何かを勢いざま床に叩きつけ、地団太を踏んだ。
.

42 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:04:32 ID:hbexrCHs0
.
 物体は床で数度跳ね、コロコロと俺の足元まで転がる。
 俺はそれを拾い上げた。
 黒光りする馬のオブジェ……コレは。


(;'A`) (チェスの、駒?)

(((;*゚□゚))) 「離して! あなたたち、兄者さんに何をしたの!?」

/ ゚、。 / 「気絶してるだけだケド。 たぶん」

(;*>−゚) そ 「たぶんって……! 痛っ」


 両腕を捕まれ、痛みにあえぐしぃちゃん。
 激しく抵抗するも、その手を振りほどけないでいる。
 やはり──、能力が、消えている。


/ ゚、。 / 「スタンガンみたいなモン。
       作ったのはスズキだケド」

(; ^ω^) 「つ、“ 作った ”?」


 ブーンの疑問に答えるかのごとく、
 ダイオードは胸ポケットから別のチェス駒を取り出す。
 摘み上げたそれは、黒い大駒。 ……クィーン。
.

43 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:08:52 ID:hbexrCHs0
.
 ぱしん。
 次の瞬間、細く青い光が、冠の先でスパークした。

               エ レ キ ネ シ ス ト 
/ ゚、。 / 「スズキは “ 電気系念動力者 ” だケド?」

/ ゚、。 / 「ぴかちゅー」


 最後のは聞かなかったことにしておく。


/ ゚、。 / 「と言っても、フツーに電気びりびり〜っじゃないケド」

爪 ゚〜゚) 「おい、お前……」

/ ゚、。 / 「電流を介して、他人の能力を、モノに保存する能力だケド」
                ~~~~~~~~~~~~
爪;゚〜゚) 「おいって! 勢い余って俺の能力までバラすんじゃねーぞ!」


 椅子にふんぞり返るポセイドンが、
 やれやれまた始まった、とため息をつく。


/ ゚、。 / 「ゲットしたちょーのーりょくは、使い捨て。
       保存媒体は主にICチップだケド。
       こいつは前使ってた磁気カードより勝手がいいのだ」
.

44 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:10:58 ID:hbexrCHs0
.
 言いながら、スーツの胸ポケットから次々と物を取り出し、
 簡易テーブルの上に並べてゆく。

 彼が取り出したアイテムは、ほとんどが玩具の類だった。
 トランプのカード、花札、──そして、チェス・ピース。
 話の流れからすると、あれらは全て、ICチップが搭載された特別製。


/ ゚、。 / 「ほい。 こいつは “ モノを回転させるのーりょく ” 。
       んでこっちは “ ゲップが止まらなくなるのーりょく ” ……。
       あ、“ パイロキネシス ” もあったんだっけ」


 青猫ロボを思わせるポケットのキャパシティ。
 あれもPSIの一種なのだろうか……と、そんなコトはどうでもいい。


(lll ^ω^) 「な、な……!?」

/ ゚、。 / 「わかったろ? スズキの、目的」


 それはおそらく、俺たち兄弟を呼び出した理由とも合致する。
.

45 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:13:33 ID:hbexrCHs0
.
/ ゚、。 / 「正々堂々、のーりょくを晒してやるケド。サムライだから。
       真っ正面から戦って……あ、もちろん勝つケド。

       勝ったら、オマエラの、のーりょく」


/ ゚、。 /+ 「イタダキだケド」

                  エ レ キ ネ シ ス ト
 鈴木ダイオード、変わり者の電気系能力者。
 彼が持つのは、
 くさぐさのおもちゃに “ 他人の超能力を ” 封じ込めるESP。


(lll A ) (つまり、それは……!)


/ ゚、。 / 「えっへん」

爪 ゚〜゚) 「褒めてねえ」


 ── コピー能力。
.

46 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:15:47 ID:hbexrCHs0
.
/ ゚、。 / 「おまけに今日は、サイコキネシスなんて激レア物も手に入りそうだケド。
       スズキとっても運がいいケド。
       わくわくするケド。 早く戦いたいケド」

爪 ゚〜゚) 「はっ。 俺ぁお鉢が回ってこねーよう願うばかりだがな」

(-[]3[]) 「二人とも、僕が負けるっていうのか?」

爪;゚〜゚)そ 「いやいやめっそーもない!」


 何もかもが向こうのペースだった。

 受け入れる他にない勝負。
 それは一手間違えるだけで、
 フールズ ・ メイトの危険性を充分にはらんでいた。
.

47 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:16:37 ID:hbexrCHs0
.
爪 ゚〜゚) 「ですからその……うまく行った時は……へへっ。
      報酬のほう、忘れねーでくださいよ、ダンナ!」


 ポセイドンは返事の代わりに “ やれやれ ” のジェスチャーで答える。
 そのうちおもむろに椅子から立ち上がり、
 倉庫の奥へ向かって歩きだした。


(-[]3[]) 「着いてきなよ。 案内しよう」


 『 我が、ギャンブル ・ ルームへ 』



.

48 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:18:03 ID:hbexrCHs0
.
 ※ 読んでくれてありがとう。 時間の関係で、残りは明日投下。
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49 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:43:54 ID:u4XTD2/c0
乙乙

50 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:45:34 ID:VOKFcLyc0
おかえりなさい!!核心に近づいててwktk

51 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 22:53:48 ID:Sm2.TcwM0
今数話読んできたけどなんか作者と物凄く気が合いそうだ
きっとtsf好きだな

52 名前:名も無きAAのようです:2012/08/13(月) 23:24:37 ID:9/3XAmjg0
おつ!
スレタイのブーンの表情がいったい何を示すのかが気になる

53 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 16:39:38 ID:9NTtO5Ko0
29話投下されてたのか・・・
乙! 待ってた

54 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 17:59:00 ID:Qv43s04Q0
.
 〜 〜 〜


 内装はシンプルそのものだった。

 床、天井部、壁。
 全て、グレー系の単色パターンで統一されている。
 どこか近未来的であり、また、無機質ともいえた。

 奥行きのある部屋の中央部。
 頑丈そうなガラス ・ パーテーションが、
 部屋を向こう側とこちら側に分断していた。


(-[]3[]) 「特注の強化アクリルだよ。
      その透過性はじつに92%以上」

(;'A`) 「は、はぁ……」

(-[]3[]) 「“ 写り込み ” はほとんどないといっていい。
      安心してくれたまえ」

('A`) 「?」


 その意味がわかるのは少し後のことだった。
.

55 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:00:28 ID:Qv43s04Q0
.
 部屋の中央には、白いテーブルがひとつ設置されている。
 パーテーションは台部分を避けるように構成されており、
 天板の上部数十センチが開いている。

 凹をさかさにしたような形で、
 空いた部分にテーブルが置かれている、
 と考えるとわかりやすいだろうか。

 声を聞き取りやすくするためか、
 パーテーションにはテーブル上部の隙間以外にも、
 数カ所、ぽこぽこ穴の空いた場所がある。


(^ω^ ;)彡 (面会室みたいだお……テレビに出てくる、拘置所とかの)


 俺の受けた印象を、ブーンが代弁してくれた。

 ゲームの進行は中央で行われるのだろう。
 テーブル上部の空間は、物のやり取りが可能な程度の隙間。
 人が通れるほどの大きさはない。
.

56 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:01:24 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「見てのとおり、
       この部屋は、3つのスペースに分けられている」


 透き通った壁の向こう側から、ポセイドンが言った。


(-[]3[]) 「僕と君たちがいる、それぞれのプレイングエリア。
      そして」


 彼の動きに倣って、こちらもテーブルの傍らに視線を向ける。

 黒服に連行されたしぃちゃんが、不安げにこちらを見返した。
 テーブルのちょうど真横あたりにある、独立 ・ 隔離されたスペースは。


(-[]3[]) 「ジャッジメント ・ ゾーン。
      ……彼女にはそこで、
      各ゲームの勝敗について判定してもらうわけだ」


 透明な壁で仕切られたその部分は、
 人ひとりが通行できる程度の、細長いエリアだった。

 両サイドに、カギ付きの簡素なドアがある。
 二つのプレイングエリアは、ジャッジメント ・ ゾーン(以下JZ)を介して、
 行き来できるようだ。
.

57 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:03:09 ID:Qv43s04Q0
.
(;'A`) 「しぃちゃん……」

(;*゚−゚) 「だ、大丈夫です、わたしは」


 ── 倉庫の奥に駐車されていた、巨大トレーラー。

 コンテナの内部がこのような内装になっているとは、
 想像だにできなかった。


(-[]3[]) 「どうだい。
      特別製の “ 移動可能な ” ギャンブル ・ ルームさ」


 入り口は三つ。
 俺たちがいるこちら側、ポセイドンのいるあちら側。
 向かって右側に設置されている。

 そして我々の左サイド、
 しぃちゃんがいるJZの中央に、一つ。

 テーブルの手前には、キャスター付きの椅子があった。
 こちらも、プレイングエリアにひとつずつと、JZひとつの計3つ。
 当然、社長椅子なんかではなくシンプルなものではあるが。
.

58 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:04:04 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「じゃあ、ルールを説明しよう」


 先に座ったポセイドンが、視線で着席を促した。
 しぃちゃんはこわごわと椅子の背に手をかける。
 こちらは椅子が一つしかないので、ブーンに譲ると見せかけてやっぱり俺が座った。

 テーブルの周囲に集った俺たち四人。
 さらにその周りには、ポセイドンの側に一人、
 しぃちゃんの側に二人、俺たちの後ろに二人と、計五人の黒服がついている。

 思ったより広いとはいえ、所詮はコンテナ。
 むさい黒服たちの存在に加え、内装のせいもあって、閉塞感が半端ない。
 透明の壁ごしに説明を受ける俺は、おそらく囚人のような顔をしていることだろう。


(-[]3[]) 「ホライゾンさん、そしてドクオさん。
      あなた達と僕は 『 あるゲーム 』 で、一人ずつ僕と勝負する。
      挑戦の順番はそちらで決めていい。

      どちらかが勝てば、ギコは無傷で解放する。
      ……まあ、無いだろうけどね。 僕が負けるなんて」


 ギコの名前が出た途端、しぃちゃんの表情が険しくなった。
 ポセイドンはそんな彼女を一瞥し、うすら笑いを浮かべたあと、
 説明を続けた。
.

59 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:06:23 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「各ゲームは数セットから十数セットを行うことになるだろう。
      それと、ゲームにはチップを使用する。

      チップは公平に50枚ずつ。
      賭けられるチップが無くなった時点で負けだ」
      ~~~~~~~~~~~~~~~~~
(;'A`) 「50枚……」


 この数字が多いのか少ないのかは、まだ判断できない。


(; ^ω^) 「肝心なのはゲームの内容だお!
       それがわからないことには、公平でもなんでもないお!」

(;*゚ο゚) 「そうだよ! 複雑なゲームだったら、
       最初からルールを知っているあなたのほうが有利なはず……」


 声を荒げる二人だったが、
 黒服が睨みをきかせたことで、しぶしぶ下がる。
.

60 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:07:13 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「そこは問題ないよ……くくっ。
      君たちの頭脳レヴェルに合わせて、簡単なゲームにしてある。
      一度プレイしてみれば、ルールくらいはすぐに飲み込めるだろう」

(;'A`) (何かと失礼なヤツですこと……)

(-[]3[]) 「コホン。
      さて、そのゲームだが、俗に言う──」


 ポセイドンは咳払いのあと、【 ゲームの名前 】 を口にした。


   そ
( ゚A゚) (なっ!?)


( 'A`)


('A`) (……なにそれ?) チーン


 初めて聞く名前だった。
.

61 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:08:04 ID:Qv43s04Q0
.
(; ^ω^)そ 「おっ? そ、そんなもんで勝負するのかお?」

Σ(;'A`) 「知っているのかブーン!?」

(; ^ω^) 「ち、中学の修学旅行でやったお……」


 ぽりぽりと頬を掻く肉塊。
 意外にも、ブーンは “ それ ” を知っているらしい。


(-[]3[]) 「ルールは単純。 しかし、これがなかなかどうして奥深い。
      究極のシンプルさを誇り、
      かつ、至高の心理戦が楽しめるゲームさ」


 そう言って、チップを片手に弄ぶ田中ポセイドン。
 パーテーションの向こうに見える、そのドヤ顔が憎たらしかった。
.

62 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:14:01 ID:Qv43s04Q0
.
 〜 〜 〜


 コンテナから出ると、
 今まさに、正面の柱に縛りつけられている、兄者の姿が目に入った。


(;*゚−゚) 「兄者さん!」

(; ^ω^) 「あ、あんまり手荒なことはしないで欲しいお……!」


 後ろ手なので確認できないが、
 おそらく、彼の手首にも “ ロッカー ” が装着されていることだろう。


(-[]3[]) 「彼は君たちと違って、ゲストでもなんでもないからね」

爪 ゚〜゚) 「 “ 招かざる客 ”
       ──呼んだのは、そっちだろ?」


 人質が増えてしまった。
 俺たちが勝負を避ける方法は、もう既になくなっていた。
.

63 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:18:26 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「応援か。 そうだったな。 おい」


 ポセイドンが顎で指図する。
 ダイオードが内ポケットに手を突っ込んだ。


/ ゚、。 / 「ほい」


 彼は胸元から丸いものを取り出し、簡易テーブルに置いた。


('A`)


(;'A`) 「これ、は?」



     (;;゚;;)

    みかん。


 楕円形で、ヘタがついてて、文字通りのオレンジ色。
.

64 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:19:41 ID:PRLpP2P.0
がんばれ

65 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:23:37 ID:cOLdoRxM0
支援

66 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:25:06 ID:Qv43s04Q0
.
          ,,  -  .,,   
       ., .´. : . .☆. . : .`ヽ
      . . : . . . : . . .  `. .
      i . . . : .  .: . . : i
       ヽ、. : . . .  . . ::::/
          ` ー  ' '`  

         み か ん 。



     ?
( ´ω`)つ 「差し入れですかお……いただきますお」

(;'A`) 「──いや、待て、なんか違う」


 よく見ると、みかんにしては妙に光沢がある。
 なんともツルッとした…… みかん型の、置物?


/ ゚、。 / 「持って。 ヘタのとこ」

(;'A`)つ○゙ 「はい? あ、ああ?」


 わけがわからないまま、指示通りにみかんの頂点へ触れる。
.

67 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:27:04 ID:Qv43s04Q0
.
 ダイオードは次に、一枚の紙を取り出した。


◇⊂/ ゚、。 / 「ほい、コレ」

(;'A`) 「え? な、なに?」

/ ゚、。 / 「読め」

(;'A`)つ□ 「はいィ!? え、ええと……」


 渡されたコピー用紙には、でっかい赤文字で何かつづってある。
 俺はその文章を口にした。


( 'A`)  「えーなになに……。
 □と)  『 もうちょっとの辛抱だ。他にも仲間は呼んであるから 』」


 次の瞬間。

       彡□
Σ(゚A`;)∩ 「 !? 」 
   ⊃

 ぼいん。
 触れていたみかんから強い反動を感じ、俺は真横に飛び退いた。
.

68 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:29:38 ID:Qv43s04Q0
.
 見ると、みかんは中央から上下真っ二つになっている。
 さらに、上半分のみかんを押し上げるようにして、
 白猫のおもちゃが顔を出していた。


/ ゚、。 /+ 「踊るちんぽっぽ人形だケド」


 どこかで聴いたメロディが電子音で流れ出す。
 上みかんをかぶった猫は、
 しっぽをくねらせ、悩ましげに左右に腰を振った。


(;'A`) 「な、なんだよコレ……!?」 ドキドキ

爪 ゚〜゚) 「 “ ポリグラフ ” だっけか?」


 タムラの言葉にポセイドンが頷く。
.

69 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:32:01 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「ダイオードのPSIで作り出した、いわば嘘発見器さ。
      スタンピースと違って、ダイオード本人にしか扱えないがね。

      嘘をつきながらスイッチに触れると、
      中のおもちゃが反応する仕掛けになっている」

/ ゚、。 / 「目も光るケド」 ビビビ

(* ^ω^) 「お、ホントだお」

/ ゚、。 / + 「かわいいだろ?」


 どうでもいい。
 とにかくびっくりした。


爪 ゚〜゚) 「さ、まだ尋問は終わってねぇぜ。
      ポリグラフに触れながら、質問に答えな。

      発信履歴にあった “ クー ” ってのは、
      おめーらの仲間じゃないのか?」
.

70 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:35:40 ID:Qv43s04Q0
.
(;'A`) 「仲間……じゃ、ない。 助けに来ないって意味では」


 タムラの問いに、つっかえつっかえそう返答する。
 さっきと違ってみかんは反応しなかった。


爪 ゚〜゚) 「じゃあ、他に仲間はやってこない、と」

(;'A`) 「……そうみたいだ。 残念ながら」


 やはり何も起きない。


爪 ゚〜゚) 「ヘッ。 どうやら、ホントみてえだな」


 ようやく納得したらしい。
 タムラは鼻で笑うと、俺の携帯を黒服に投げ渡した。
.

71 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:39:16 ID:Qv43s04Q0
.
(; ^ω^)η゙ (ニーチャン、クーさんは、その) ボソボソ

(;'A`) 「連絡したよ。 けど、あいつは来ない。
     おもっくそ断られた」


  『 何故私が貴様なんぞを助けねばならない 』
  『 加勢してほしけりゃ三億円よこせ 』
  『 そして死ね。木っ端微塵に弾けて死ね 』

  などと、そりゃーもーボロクソ言われた末にだった。


(  ´ω`) 「薄情な人だお……」

(;*゚−゚) 「……」


 しっかし。
 次から次に色んなことがあって、
 もう驚くようなことはないと思ってたのに。 毎回。
.

72 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:41:26 ID:Qv43s04Q0
.
/ ゚、。 / 「わりーと昔にゲットした能力だからな。
       あと4〜5回ってところだケド。 使えるの」


 ポセイドンやタムラが納得しているということは、
 このみかん型のおもちゃ、本当に嘘発見器なのだろう。


(-[]3[]) 「ゲームをはじめるにあたって、
      公正な勝負にするための保障が必要だからね。
      君たちの能力を封じさせてもらったのも、そのためだ」

(;'A`) (……はじめから、公正なんてものとは無縁だろうが)


 ポセイドンは勝手な理屈を並べ立ててゆく。


(-[]3[]) 「しぃちゃんはまあ、ともかくとして。

      ドクオさんはアンチサイの一種で、
      それも肌に触れなきゃ効果を発揮しない。
      ホライゾンさんに至っては、未だ超能力が発現してないらしいけどね」


 こめかみのあたりに汗が噴き出すのがわかった。
 やはりこいつらは、ねらーである俺たちのPSIまで調べ上げている。
.

73 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:44:33 ID:Qv43s04Q0
.
 しかし、


(;'A`) (なんか、どこか、不完全な情報だ)

(-[]3[]) 「まさに “ 人間ロッカー ”。  ……いやあ、実にくだらない能力だね。
      むしろ、我が社の “ ロッカー” のほうが優秀なんじゃないか。

      正直に言ってしまえば、
      ホライゾンさんが “ 別人格 ” にシフトしない限り、
      僕らにとっちゃ何ら恐れる事もないんだけどさ。

      ま、それでも万が一ということもある。
      一応超能力は封じさせてもらっとこう。 念のためね」


 挑発的な彼の物言いの中には、
 いくつか引っかかる部分があったが、あえて黙っておくことにした。


(; ^ω^) 「ちょっと待ってくれお!
       確かに僕らは何もできなくなったお。
       けど、あんた達だってちゃねらーなんだお?

       特にそっちの白服さんは、色んな超能力を使えるんだお?
       それじゃイカサマし放題じゃないかお!
       勝負にならないお!」
.

74 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:49:52 ID:Qv43s04Q0
.
/ ゚、。 / 「──イカサマ?」


 ブーンの異議申し立てに、いち早くダイオードが反応する。


/ ゚、。 / 「サムライである、スズキが?  イ カ サ マ ?」 ゴゴゴゴゴ

(l|l ´ω`)そ 「お! か、……可能性の話で……お」


 彼の醸し出す迫力に、ブーンの勢いはどんどんしぼんでゆく。
 抑揚のない声で言われるとちょっと怖い。


(-[]3[]) 「君の言うとおり、PSIによる不正は物理的に可能だろう。
      テレパシーであるとか、テレキネシス、それに、
      えーと……まあ、とにかく。

      勝負の最中は、鈴木兄弟にも “ ロッカー ” を装着してもらう。
      キーは黒服に持たせる。 これでいいだろ?」

/ ゚、。 / 「兄弟じゃないケド」
.

75 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:52:33 ID:Qv43s04Q0
.
/ ゚、。 / 「──イカサマ?」


 ブーンの異議申し立てに、いち早くダイオードが反応する。


/ ゚、。 / 「サムライである、スズキが?  イ カ サ マ ?」 ゴゴゴゴゴ

(l|l ´ω`)そ 「お! か、……可能性の話で……お」


 彼の醸し出す迫力に、ブーンの勢いはどんどんしぼんでゆく。
 抑揚のない声で言われるとちょっと怖い。


(-[]3[]) 「君の言うとおり、PSIによる不正は物理的に可能だろう。
      テレパシーであるとか、テレキネシス、それに、
      えーと……まあ、とにかく。

      勝負の最中は、鈴木兄弟にも “ ロッカー ” を装着してもらう。
      キーは黒服に持たせる。 これでいいだろ?」

/ ゚、。 / 「兄弟じゃないケド」
.

76 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:53:18 ID:Qv43s04Q0
.
(*゚−゚) 「あなたは? 田中くん」

(-[]3[]) 「僕は無理だ。
       君への実行権── “ ヒュプノシス ” が使えなくなってしまう。
       不公平だと思うかも知れないが……」

(; ^ω^) 「不公平以外の何物でもないお!」

 (-[]3[]) 「そこは安心してほしい。 おい、ダイオード」
゙ρ

 ポセイドンはちょんちょんとテーブルを指し示す。
 ダイオードがみかんに触れると、その横からポセイドンが腕を伸ばし、
 ヘタの部分に指を置いた。


/ ゚、。 / 「OKだケド。
       嘘ついたら、ぼいん、だケド」

(-[]3[]) 「コホン……それじゃ、よく聞いてくれ。
      今から話す事は、嘘偽りない真実だ」


 深呼吸ののち、ポセイドンは言った。
.

77 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 18:55:16 ID:Qv43s04Q0
>>75はミス。
  ちょっと飯落ち、七時半ころに戻る

78 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:12:34 ID:Z54fn/zM0
ひとまず乙
この時間から投下とか嬉しす

79 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:30:15 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「僕の持っている超能力は正真正銘、別人格と合わせて一つだけ。
      限定的な 『 催眠能力(ヒュプノシス) 』 。 つまり 『 コトダマ 』 以外にない。
      そしてこいつは、ゲームの結果を担保するため──、

      具体的には、しぃちゃんの心身拘束にのみ使い、
      トランプでの勝負、ひいてはイカサマなんかには一切用いない」


 全員がみかんを注視する。
 玩具は音一つ立てることなく、テーブル上に鎮座したままだった。


(-[]3[]) 「もちろん、コンテナ内──ギャンブル ・ ルームに、
      イカサマ用の仕掛けはこれっぽっちも存在しない。

      ああ、中での勝負が中継できるよう、
      音響装置のほうはあとで設定させてもらうがね」


 みかんは相変わらず、うんともすんとも言わなかった。
.

80 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:32:39 ID:Qv43s04Q0
.
( ^ω^) 「何も起きないお……」

(;'A`) 「ってことは」

(-[]3[]) 「な? 嘘じゃないだろ。
      安心してゲームを楽しむといい。 ……くくっ」


 小さく笑って、ポセイドンはゆっくりと指を離す。


(-[]3[]) 「さあ、最初はどっちが僕と勝負する?」


 俺たち三人は顔を見合わせる。
 が、先ほどギャンブル ・ ルームに案内されたとき、既にその結論は出ていた。


(; ^ω^) ノ 「ぼ、僕がいくお」

(-[]3[]) 「よし。
      じゃあゲームの段取りは、中で実際にプレイしながら覚えてくれ。

      中の音声は外部出力できるようにセッティングするから、
      ドクオさんはおおまかにルールを予習しておくといい」
.

81 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:33:55 ID:Qv43s04Q0
.
 そこからあれやこれやあったのち。

 ダイオードとタムラが、見せつけるように “ ロッカー ” を腕に回した。
 スナップ音が連続し、グリーンのランプが点灯する。
 これで、この場にPSIを使える者はポセイドン以外いなくなった。

 黒服に促され、ブーン達はトレーラーに向かって歩き出した。


(^ω^ ;) 「……ニーチャン」

(;'A`) 「ブーン。 しぃちゃんを、頼む」

(;*゚−゚)゙ 「……」


 ブーンが手前のドア、しぃちゃんが反対側のドアの前まで移動する。
 それぞれ、プレイングエリアと、ジャッジメントゾーン(JZ)に続く扉だ。


(;'A`) (勝ってくれよ、ブーン)


 黒服による簡単なチェックを経て、
 二人は鉄の箱に飲み込まれていった。
.

82 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:37:56 ID:Qv43s04Q0
.
 もう一つのプレイングエリアへ続くドアの前に立つと、
 ポセイドンは不意にこちらを振り返った。


(-[]3[]) 「── 正々堂々、だ」

(;'A`) 「?」

(-[]3[]) 「僕自身の力で、完膚なきまでに君たちをねじ伏せること」

(;'A`)

(-[]3[]) 「それを見せつける事が、
      しぃちゃんの心に 『 強い敗北感 』 を刻む、より効果的な方法。
      敗北感は段階を経て、『 屈服感 』 へと転じる」

( ゚A゚) 「!」


 愉しげに、ゲームの意図を語りだす。
.

83 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:40:18 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「暗示の楔を打ち込むために、このゲームは重要な作業なんだ。

      『 コトダマ 』 による、フラグ成立(ポセイドンに負けたら)。
       そして、実行オーダー(彼のものになる)。

      ── これらをより確実に作用させるためには、
      段階的な “ 関連付け作業 ” が、不可欠なのさ」


 一息に告げて、にまあ、と嗤う彼の横顔。

 _,,
(#'A`) 「お前は────」

(  -[])3 「期待してるよ、ドクオさん」


 『 あなたが、僕としぃちゃんの輝かしい未来における 』

 『 贄となってくれる事をね 』


 やはりそれは 【 公平 】【 公正 】 なんて言葉とは無縁の、
 醜悪な表情だった。
.

84 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:41:00 ID:Qv43s04Q0
.


                   Channelers ----- episode 30.


                   E l e c t r i c

                  P o k e r

                 F a c e .    / ゚ 。 /



              ── VS. Poseidon. phase - 5

.

85 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:44:32 ID:Qv43s04Q0
.
 〜 〜 〜


(;'A`)      チッ チッ チッ チッ チッ …


 時を刻む秒針の音が、ことさら不安を掻き立てる。

 しぃちゃんとブーンが連れられていってから、
 およそ30分が過ぎた。


爪 ゚〜゚) 「あ〜〜〜〜、ったく。 暇だな」


 内部の音声会話はコンテナ外に放送され、
 ゲームの経過が逐一わかるようにする……と、あらかじめ説明があった。

 だが実際は、スピーカーの音が小さくて、どちらかというと聞き取りづらい。
 実況はおろか、中の様子はよくわからない、というのが正直なところだ。


爪 ゚〜゚) 「音響の調整もできねーのか。
      かーっ! ほんと使えねー奴らだな」
.

86 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:48:32 ID:aRTrclGIO
おお、何年かぶりくらいに遭遇でけた。

にしても最初の方とは地の文が全k(ry

87 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:49:50 ID:Qv43s04Q0
.
 トレーラーの斜め方向に立つ角刈りが、タムラのほうを見た。
 サングラスのせいで視線はわからないが、おそらく睨みつけている。

 勝負がはじまって数十分。
 ずっと直立不動をキープしていることに、謎のプロ根性を感じた。
 ……なんというか、パーフェクト黒服としての威厳、とでもいうのか。


/ ゚、。 / 「早く終わらせて、サイコキネシストとドンパチ一戦交えたいケド」
   ,,
爪゚´〜`) 「ただ待っとくってのもつれぇわ……ふわ」


 タムラが十何回目かのあくびをした瞬間だった。

 がちゃり。
 コンテナ横のドアが、音をたてて開いた。


('A`) 「!」
.

88 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:50:56 ID:Qv43s04Q0
.
爪 ゚〜゚)゙ 「っと、お出ましだ」


 角刈りのパーフェクト黒服が見守る前で、
 闘いを終えた勇者が、威風堂々地に降り立つ。




      (  ω::::) ザッ



(;'A`) 「ブーン!  勝負は……!?」





      (  ω )

.

89 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:54:17 ID:Qv43s04Q0
.
      (  ω )






      (  ゚ ω ゚)  死ーん






( 'A`)




('A`)

.

90 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 19:57:57 ID:Qv43s04Q0
.
 ……半ば危惧していたとおり、ブーンはわずか5レスで敗北したようだ。


(-[]3[]) 「──さあ、次はドクオさんの番だよ?」


 向こう側のドアから、ポセイドンが顔を出す。
 しぃちゃんの姿はない。
 まだ中にいるのだろうが……不安は募る一方だった。


(;'A`) 「くそっ……!」

 :::(  ;ω;):::  …ゴメン…ゴメンオ…


 まさに背水の陣。
 心の準備が、なんて言ってる場合じゃない。

 消沈するブーンにゲームの内容について聞こうとしたが、
 すぐに黒服が立ちはだかり、会話を阻む。
.

91 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:00:55 ID:Qv43s04Q0
.
(;#゚A゚) 『 ブーンを倒したくらいでいい気になるなよ!
      こいつは四天王の中でも格下中の格下ッ! 』


 :::( ∩ω;):::  オウッ…ウォッ…


 なんて事は、フラグっぽいし可哀想だから言わないけど。


(-[]3[]) 「僕にとってもここからが本番さ。
       さ、始めようじゃないか。
      楽しい楽しい、ゲームをね」


(::::::A゚)

(;:::A゚) (────やるしか、ない!)


 挑発的な笑みを見た瞬間、俺の腹は決まった。

 意を決して、勾配のある入口スロープに右足を踏み出した。

.

92 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:04:12 ID:Qv43s04Q0
.
 〜 〜 〜

 黒服による簡単なチェック
  (ロッカーはきちんと装着されているか、等)が終わると、
 コンテナの内部、ギャンブル ・ ルームのプレイングエリアに進入する。

 先ほどと違うのは、
 センターテーブルの脇にボックスがセッティングされている事。
 チップが数枚、散らばっていること。

 そして。


(;*゚−゚) 「ど、くお……さん……!」

Σ(;゚A゚) 「しぃちゃん!」


 ジャッジメント ・ ゾーンに設置された席で、震えているしぃちゃんの姿。
 
 一目見て異常だと気付いた。
 顔をあげた彼女は、制服の上着を着ていない。

 それどころか、ワイシャツは肩から二の腕のあたりまではだけており、
 白い下着の吊りひもが、片方外れかかっている。
.

93 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:06:47 ID:Qv43s04Q0
.
 勝負の審判員であったはずの少女は、
 露わになった肩を隠すように、両腕を交差させ、小さな体をすくめていた。


(#゚A゚) 「ポセイドン!! お前っ……しぃちゃんに何をした!?」


 俺は激昂し、壁の向こうへ詰め寄る。


(-[]3[])∩∩ 「くくっ。 いやいや、別に何もしてないよ」

(#'A`) 「何も?! 現にこうやって彼女は……!」

(-[]3[]) 「くくっ。 ぷっくく……ははははは!!」


 何がおかしいのか、ポセイドンは大口を開けてけらけら笑いだした。


(-[]3[]) 「ははははは! ほら、しぃ! 立て!」

(;*゚−゚) 「!」


 突然の命令に、
 しぃちゃんはびくりと体を震わせ、大きく目を見開いた。
.

94 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:08:31 ID:jX0SmUMM0
一体何のゲームなんだ

95 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:08:34 ID:Qv43s04Q0
.
 次の瞬間、彼女は椅子から跳ねるようにその場に起立した。


(-[]3[]) 「くくくっ。 よくできました。
      じゃあ次に、その腕をどけるんだ」

(;*>−゚) 「…やっ……! こんな……の……」


 苦渋の表情で、徐々に両腕を下ろしてゆくしぃちゃん。
 胸元で支えていたワイシャツがずり下がり、
 腕の動きに合わせて、滑らかな白肌が少しづつ晒されてゆく。


(#'A`) 「やめろっ、おい! ポセイドン!」

(-[]3[]) 「ははははは! いい光景だね。
      どうだい? これが僕の催眠(ヒュプノシス)。
      ……ばっちりハマったみたいで何よりだ!」
.

96 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:11:10 ID:Qv43s04Q0
.
 :::(;*>−<):::


(-[]3[]) 「君のふとましい弟さんね。
      僕が彼に勝った事で、
      めでたく、しぃちゃんの “ 制動権 ” が手に入った。

      だから、記念にちょっと 『 試してみた 』 だけだよ。
      くくっ」

(;#'A`) 「お前……!」

(-[]3[]) 「……ま、このくらいにしておこうか。
      お楽しみは明日からいくらでも……。
      ね?  し ぃ ?」


 『 もういいぞ 』 というポセイドンの命令によって、
 彼女の動きははたと止まった。


(-[]3[]) 「ドーテーくんには、ちょっと刺激が強すぎたかな?」


 俺がこの中学生に抱く感情は、すっかり嫌悪感一色に染まっていた。


:::(# A ):::: 「……ンの、やろぉっ!」
.

97 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:14:08 ID:Qv43s04Q0
.
 未だパーテーションにかじりつく俺。
 仕切りの隙間から何かぶつけてやろうかとも思ったが、
 あいにく投げつけられそうな物は見当たらない。

  _,,
(;* − )


 その場に直立したまま、ポセイドンを睨みつけるしぃちゃん。
 気丈に振舞っているようで、
 その目にうっすらと涙がにじんでいることに、俺は気付いてしまった。


(#'A`) 「テーブルにつけっ! さあ、早く!!」


 この、おぞましい 『 ポーカー勝負 』。

 俺にとって、絶対に負けられない戦いとなった。

.

98 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:16:51 ID:Qv43s04Q0
.






             --─  インディアン ・ ポーカー  ─--







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99 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:20:01 ID:Qv43s04Q0
.
 簡単に説明すると、
 これは、52枚のカードを使ったパーティ ・ ゲームだ。

 ルールは単純明快。
 それぞれ一枚ずつカードを取り、数の大小で勝敗を競う。
 普通のポーカーのように役はなく、純粋にカードの強さのみで争うゲーム。

 カードの強さは、Aが最弱で、あとは順に2〜10と続く。
 その上が、J、Q、Kで、Kが最強のカードになる。
.

100 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:22:36 ID:Qv43s04Q0
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 ←弱い                       強い→
  [A] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [J] [Q] [K]


 数が同じ場合は、スート(マーク)で勝敗を決する場合もあるし、
 単純に引き分けとするルールもある。
 ジョーカーを混ぜるバリエーションもあるが、ここでは省略。

 『 ポーカー 』 の名を冠している以上、カードの強さを通じて賭けを行うわけだが、
 このゲームには、役もなければカード交換もない。
 ぶっちゃけ、これだけだと単なるくじ引きでしかない。

 インディアン ・ ポーカーを、いっぱしのパーティゲームたらしめている部分。

 このゲームにおける最大の特徴は、
 “ 自分の引いたカードが、わからない ” という点なのだ。
.

101 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:24:02 ID:Qv43s04Q0
.

                         [3]
           [K]⊂ヽ         (゚ー∩*)
       ( ´_ゝ`)ノ丿

      [A]⊂ヽ              ノつ[5] 
     ( 'A`)ノ丿               \ (^ω^ )
 

 そして、これこそが駆け引きの生まれる要素でもある。

 参加者は全員、配られたカードを “ 自分のひたいに持っていく ”。
 当たり前だが、この時自分のカードは絶対に見てはならない。
 
 インディアンの髪飾りのごとく提示されたカード。
 つまり、他人のカードが全て丸わかりの状態で、賭けを行うわけだ。
.

102 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:27:18 ID:Qv43s04Q0
.
 インディアン ・ ポーカー。


 これは、通常のポーカーにおける 『 ハッタリ 』 『 駆け引き 』 要素に加え、
 自分のカード情報を推察するための『 観察眼 』 が問われる、


         << 『 心理戦 』に特化したゲーム >>


 だと言える。
.

103 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:30:43 ID:Qv43s04Q0
.
 〜 〜 〜


 センターテーブルについた俺の前に、
 ポセイドンから、浅い箱が差し出された。


(-[]3[]) 「チップ50枚だ。
      赤いカードが一枚でチップ10枚分、
      黄色が5枚分、青が各1枚分のチップになる」


 チップもまた、丸いコイン型ではなくカード式。
 箱には、赤 ・ 黄 ・ 青それぞれのチップを立てかける溝がついており、
 枚数が見た目にわかりやすくなっている。 
.

104 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:33:43 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 『 だらだらゲームを続けると、緊張感に乏しい。
       かといって、すぐに終わってしまうのも
       なんだかなぁ……という感じだよね。

       だから、チップは奪い合いではなく完全な消耗戦。
       勝敗に応じて削られるのみで、
       自分の枚数にプラスすることはできない。

       テレビゲームのHPみたいなものだと考えてもらえればいい。
       これなら、ほどほどに楽しめて、長期戦も回避できるだろ? 』


 ……と、先だってポセイドンが言っていたとおり、
 チップはプレイヤー間を行き来することがない。

 消費したチップは、
 テーブル脇にセッティングされたボックスへ投げ込むと、
 デジタルカウント式のスコアボードに結果が表示される仕組みだ。


('A`) 「ハイテクだな。 無駄に」


 皮肉たっぷりに呟いたあと、JZのほうへと視線をうつす。
 不安げなしぃちゃんと目があった。
.

105 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:35:24 ID:Qv43s04Q0
.
 彼女は小さくて、うつむく姿はあどけない。
 未だ体の自由が効かないのだろうか。
 腕が震え、ワイシャツのボタンを正すのに難儀している。


(;*´−゚) 「ドクオさん、わ、わたしは大丈夫です。
      だから、落ち着いてゲーム、してください」


 ショートカットが揺れる。 最近散髪したのか、以前よりもさらに短い。
 秋口にデート……じゃなくて、ショッピング途中にデパートジャックに遭った、アレ。
 あの時のような、短いサイドテール?というかアホ束は、今は結えなさそうだ。

 それでも、しぃちゃんからはボーイッシュな印象をあまり受けない。
 透明度の高い容貌と、立ち居振る舞いがそうさせるのだろう。


(-[]3[]) 「くくっ。 君もしっかりジャッジしてくれよ?」


 こうやってポセイドンと並ぶと、
 彼が中学生で、しぃちゃんが高校生だなんてとても思えない。
 100人にアンケートをとれば、まず九割以上が逆だと答えるだろう。
.

106 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:39:17 ID:Qv43s04Q0
.
( 'A`) 「しぃちゃん」

(;*゚−゚) 「……はい」

( 'A`) 「俺さ、物事を断言……とかって、普段あんまりしないんだけどさ」


 しぃちゃんに出会ってから今まで、約半年の出来事を思い出してみる。

 彼女には、ぼったくり浄水器販売員や凶悪犯から助けてもらった。
 ハインさんと出会った時も色々気を使ってもらった。
 いくら感謝してもしきれない程のものを、たくさんもらってきた。


( 'A`) 「勝つから。 心配しないでくれ。
     頑張るとかじゃない。 勝つ。 だから」


 守ってあげたい。
 好きとかどうとかじゃなく、そう感じさせる、女の子だった。


(;*゚−゚) 「!」

(;*゚ー゚) 「……お願いします」
.

107 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:42:37 ID:Qv43s04Q0
.
 楽しいときは、ころころと可笑しそうに笑い。
 悲しいときは、長い睫毛をしゅんと下に向ける。

 そして怒ったときはグランドローラーを投げ、
 タイヤを投げ、消火器を投げ、おっさんを投げ、
 ピアノを投げショーケースを投げ椅子を投げバス停を

 ……あれ。


('A`)



(*゚ー゚) ?



('A`) チーン


 なんか放っといても大丈夫な気が……。
.

108 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:43:21 ID:Qv43s04Q0
.
(-[]3[]) 「さあ、じゃあそろそろ始めようか」


('A`)


(*゚−゚) 「……ドクオさん?」


('A`)


(;'A`)そ 「ふえっ!?  あ、ああ、望むところだッ!!」



 一人の少女の未来を賭けて。

 ゲームの幕が、いま、切って落とされた。



 (続く)
 
 
.

109 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:44:33 ID:Qv43s04Q0
.
 −−−−−− 用語


【 ロッカー (PRS) 】

 銀色のリストバンド。 手首に嵌めたチャネラーの超能力を封じる。
 また、別人格との意思疎通 ・ 切り替えも不可能になる。

 ロッカー自身もロックされるのでカギがないと外れない。
 腕時計に似ているが、ディスプレイや文字盤などは無い。
 効力を発している間は小さな緑色のランプが点灯する。 充電式。
.

110 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:47:14 ID:Qv43s04Q0
.
   コ ン デ ン ス
【 電磁式複写能力 】

 鈴木ダイオードのPSI。 電気系念能力(エレキネシス)の亜種。
 磁気カードやICチップに他人の超能力をコピーする。
 いわば超能力アイテムを作り出す能力。


 能力の種類によって、

 ・アイテムそれ自体がPSIの触媒となるもの
   (パイロキネシス: 投げたトランプが燃え上がる
     エレキネシス: チェス駒がスタンガンになる
        ポリグラフ: ちんぽっぽ人形が嘘発見器になる  etc....)

 ・アイテムにコピーした能力を、ダイオードが “ インストール ” することで、
  一定時間(または回数)、その超能力を使用できるようになるもの


 と、二通りの使い方に分かれる。
.

111 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:48:11 ID:Qv43s04Q0
.
【 スタンピース 】

 ICチップ搭載のチェス駒に
 『 エレキネシス 』 をコピーした、使い捨てのスタンガン。

 エレキネシス自体がダイオード自身の能力であるため、
 スタンピースはいくつでも生み出せるし、誰でも扱うことができる。


【 ちんぽっぽ人形 】

            ポ リ グ ラ フ
 ダイオードが 『 二律性超知覚 』 というESPをコピーした、みかん型の嘘発見器。
 対象者が嘘をつきながらスイッチを押すと、
 白猫が飛び出し、踊り、どこかで聴いたようなテーマソングが流れる。

 目も光る。 某病院のまねき猫並みに光る。
.

112 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:48:58 ID:Qv43s04Q0


 あらためて、ただいま。


 一年以上も投下しなかったにも関わらず、
 待ってた、とあたたかく迎えてくれることに、感謝の念を禁じえない。

 他のまとめさんが更新停止されたのち、拾い上げてくださった
 内藤エスカルゴさん、ブーン芸VIPさん両名。

 長期放置の挙句、何事もなかったかのように掲示板で修正依頼……などという
 図々しい私のお願いにも、快く応じてくださる姿。
 この場で恐縮ですが、本当にありがとうございます。

 30話続けてこれたのも、戻ってこれたのも、
 支援をくれて、乙をくれて、合いの手をくれて、まとめてくださる
 皆様のおかげです。


 本当に感謝してもしきれないです。 いまさらではありますが……。
.

113 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:50:12 ID:Qv43s04Q0
.
 30話という数字的な節目、一度くらいは胸の内を伝えておきたい。


 沈黙は金、雄弁は……ってことで 当初は投下マシーンを目指していたのが、
 質問や合いの手が嬉しくて、投下のたびについつい何かしら反応してしまう。

 支援絵にガッツポーズし、反応にニヤニヤして、
 やっぱり投下するのは楽しい。

 ぶっちゃけ、今回の話は一つの山場ではありますが、
 佳境ってわけじゃないです。
 まだ続くのかよ……と思われるかもしれないが、すまん。 まだ割と続きそう。


 こういった長々しいあとがきは、今後しばらく無いと思います。
 次回からは今までどおり、できる限りクールに投下していきます。
 Cooooooooooo川 ゚ -゚)oooooooooolに。


 色々とどうしようもないブーン系小説だけど、これからもよろしくお願いします。
 あ、質問などは答えられる範囲で答える。
 ではでは。

114 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 20:55:21 ID:jX0SmUMM0
お帰り!
ジャッジがしぃなのは少し不安だな

115 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 21:05:17 ID:Z54fn/zM0

あんまこういうの聞かないほうがいいのかもしれないけど、どのくらいのペースで投下できそう?

116 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 21:05:53 ID:jkkIO.Ek0
乙!ずっと待ってたんだからね、もう!
ところで次回はいつ頃の予定?

117 名前:名も無きAAのようです:2012/08/14(火) 21:22:46 ID:Qv43s04Q0
>>115-116
 三一話は……今月中の投下はちょっと厳しい。
 途中に区切りを入れるかんじで、九月に投下できるよう頑張る。

 今回の話(三○話)は量が多かったので時間もかかった。
 勝負の前提条件の説明、それから舞台装置の組み立てに
 だいぶ時間を割いてしまったので。
 せめて勝負がスタートするところまでは書かないとなーと思って。

 数レス程度のおまけ(30.5話)を、2〜3日中に投下する予定。
 本編に入れると長くなりすぎるので途中はしょった部分。

118 名前:名も無きAAのようです:2012/08/15(水) 10:18:53 ID:BEKauaxA0
おかえりひゃっほう!

119 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 01:32:51 ID:C.KKSZRA0
お帰りおつ!
ギコは長いこと捕まりっぱなしだなww
早く救済されることを願うよ

120 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 11:50:58 ID:Ic.i/QnA0
乙!
しぃちゃん絡みだといつもより主人公っぽくなるドクオさんに期待

121 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 17:14:16 ID:MxSC.TnU0
.

   おまけ : 30.5話

   >>81 『 あれやこれや 』 部分


 〜 〜 〜


('A`) 「あ、あのさ」

(-[]3[]) 「うん?」

(;'A`) 「このおもちゃ、本当に嘘発見器なのか?
     なんか最初の一回しか反応しなかったし、まだ信用できないっていうか」


爪 ゚〜゚)-[]3[])


爪 ゚〜゚)φ゙ サラサラ
    つ/

爪 ゚〜゚)つ□ 「読みな。ポリグラフに触れてからな」


(;'A`)っ□ 「あ、ああ? えっと……」
.

122 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 17:17:00 ID:MxSC.TnU0
.
( 'A`) 『 おれ?非童貞に決まってるじゃん。 週末はとっかえひっかえだろJK…… 』
 つ□



                    彡□
              Σ(゚A゚;)∩ 「 うおっ!?」 
\ぼぼぼぼぼぼいんっ/  ⊃


(; ^ω^)そ 「おおっ! 猫がすっごい腰振ってるお!」

/ ゚、。 / 「BGM……倍速……。 こんなこと初めてだケド」

('A`;) 「え? ええ? これtt」


爪*゚〜゚)σ 「思った通り! お前やっぱチェリーか!」

黒服A 「ちょwwwwwwwいくつだよお兄さんwwwwwwwww」

黒服B 「見た目通りwwwwwwww」

黒服C 「卒業させてやろうか?」


  ('A`)


 (((゚A゚)))  ウワアァァァァァァァァァァ
.

123 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 17:17:52 ID:MxSC.TnU0
.
爪*゚〜゚) 「え? なに? なに? ドクオさんいくつでしたっけwwwww?」

(*-[]3[]) 「成人して随分経っているように記憶していたが?www」

D 「童貞が許されるのは小学生までだなwwwww」

E 「ですよねwwwwwww」

C 「道具に興味あるか?」


  \ ドッ /  \ HAHAHA… /


;;('A`;);; 「ち、ちがッ! 週末にやってないだけで実際h」 ビビビビビ

/ ゚、。 / 「ダウト」

( ^ω^) 「おめめもめっちゃ点滅しているお!」


  \ wwwwwwwwwww /  \ コンドウチクルカ? /


 (l|l'A`) ウッ……ウウウゥ……
.

124 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 17:18:36 ID:MxSC.TnU0
.
 (;'A`)そ

 (゚A゚;)彡


(;*゚ー゚)そ 「ほえ!? あ、はいっ! でもそれはっ」


ヽ('A`;) (いや……俺まだ何も言ってない……)


(;*´−`) 「あ、あの、その……えと……」


(*//-/) 「……ぁぅ」


(;*   )));;;;


  ヽ('A::::) 「   」 チーン



A 「ちょwwwwwwwwノーコメントwwwwwwww」

E 「存在がセクハラwwwwwwwwww」

C 「バージンかどうかも教えてくれないか?」
.

125 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 17:19:19 ID:MxSC.TnU0
.
爪*゚〜゚) 「いやー笑った笑った!
      応援を呼んでたことはこれでチャラにしてやっからよ!wwwww」

(*-[]3[]) 「笑い死にさせないでくれよ、ドクオさん!
       受験前の大事な体なんだからさwwwwwwwwwwww」

/ ゚、。 / 「“ ポリグラフ ” のストックは少ないケド。
       くだらないコトに使わないで欲しいケド」


 ('A`)



( ^ω^) ドンマイ……


;(;*   )::::



 ('A`)



 ──世の中には、暴くべきでない真実も、星の数ほど存在する。



 ('A`) ゼッタイニ……ユルサナイ……




 おわり
.

126 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 18:39:30 ID:qlGTwQ7M0
ドクオカワイソス(´・ω・`)

127 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 19:19:08 ID:x4j/9c1I0
Cの暴走に気付けwwww

128 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 22:00:59 ID:t9uCRAGc0
女体化すれば処女だよ!希少価値だよ!ステイタスだよ!

129 名前:名も無きAAのようです:2012/08/16(木) 22:38:15 ID:Ic.i/QnA0
もうCさんに筆下ろししてもらえ

130 名前:名も無きAAのようです:2012/08/17(金) 12:26:35 ID:aiInX42M0
Cさん・・・つまりしぃさん!?

131 名前:<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
<^ω^;削除>

132 名前:名も無きAAのようです:2012/08/19(日) 19:29:02 ID:twsBawAcO
つまらん(キリッ
嫌なら読まなくて結構です
つか読まないで下さい

133 名前:名も無きAAのようです:2012/08/19(日) 20:12:22 ID:OU.7CB2Q0
俺はこの小説好きだけどさー
そういう否定的な感想にケチ付けてたら作者自身の為にもならないと思うよ
つまらんだけじゃなくてここが悪いって部分も言ってることだし

134 名前:<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
<^ω^;削除>

135 名前:<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
<^ω^;削除>

136 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 04:00:20 ID:C1NPsakA0
.
   l|ll
从 д リル 「なんか一年ぶんくらい馬鹿馬鹿言われた気がする……」

( ´_ゝ`) 「しゃーないんじゃね? 実際けっこう馬鹿だし」



  、 ,
从・x ・リル

( ´_ゝ`) 「なんだその表情」




ストーリーの矛盾点であるとか、文章表現の間違いに関する指摘なら
(揚げ足取りのレベルでない限り) 参考になるかな。

が、合う合わないについては無理して読むなとしか……。
修飾語の多寡などは文章の個性だし、歪に矯正をかけるつもりもない。
登場人物の脳レベルも、それを含めてキャラクターかなと。
悪いが、あまり細かな個人の好みには対応できそうにない。

あまり他人の精神衛生にダメージを与えるのも心苦しい。
読まない選択を強くお勧めする。 というか、それ以外に対処法はないかと。
粘着はご勘弁を。

137 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 04:08:17 ID:C1NPsakA0
あと、次話の投下は九月中旬までには……ど、どうにか。きっと。
ポーカーのベットラウンドって色々難しいな。

138 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 05:00:19 ID:sXt6UowMO
9月中旬か……。
分かった、待ってる。

139 名前:<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
<^ω^;削除>

140 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 06:39:03 ID:XhFAI4tI0
それもう粘着だから(笑)

141 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 09:05:52 ID:y1rL4syA0
某でやれ

142 名前:<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
<^ω^;削除>

143 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 09:11:44 ID:y9f4l9ag0
触るから嬉しくなって居座るんだろ
NGにぶち込んどけ

144 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 19:47:38 ID:JM7BwuS20
作者小説板戻ったら?
荒れてるし

145 名前:名も無きAAのようです:2012/08/20(月) 21:41:57 ID:89k5vMUg0
おー30.5話来てたのか
31話も待ってるぜ

146 名前:名も無きAAのようです:2012/08/21(火) 21:31:07 ID:Sou3gUR.0
おー消えとる

147 名前:名も無きAAのようです:2012/08/23(木) 00:01:14 ID:dscPB.H.O
今1話から読んできたけど、すげぇ面白かった。
続きが気になる。

148 名前:名も無きAAのようです:2012/08/25(土) 11:28:47 ID:EBVVdd9o0
そんな書き込みをもらえることが、>1にとってどれだけありがたいか。
どんなにモチベーションが上がるか。 布団でジタバタしているか。

くっそー……嬉しい。 どうもありがとう。


 [ Rate of progression ]
 ■■■■□□□□□□
  08/24    20 / 50KB


次話が書き上がって余裕があれば、29.5話も投下するかも。しないかも。
これも話が長くなりすぎるのでカットした場面。

149 名前:名も無きAAのようです:2012/08/26(日) 21:28:48 ID:Xvx61FA60
長くなったっていいんじゃないかな

待ってます

150 名前:名も無きAAのようです:2012/09/06(木) 23:45:36 ID:atPenWlc0
.
 [ Rate of progression ]
 ■■■■■■■■■■◇◇
  09/06    50 / 60KB



 9/9(土) or 9/10(日)  どっちかには投下できると思う
.

151 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 02:22:50 ID:V.v15WwYO
うぉぉ!!ついに来たか!!
こっそり予告しよって!!
待ってる!!

152 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 18:25:00 ID:38SVjSVA0
曜日が間違ってなきゃ今日くる可能性もある……?

153 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 22:55:45 ID:My/vEzLg0
.
 時は数十分前……、
 ブーン達の 『 ゲーム 』 開始直前まで遡る。

 センターテーブル前の椅子に腰かけると、
 ポセイドンは席に着くよう促した。


(-[]3[]) 「じゃあ、最初に一度だけ模擬戦をやろう。
      これでゲームの進行は八割方理解してもらえるだろうから」

(; ^ω^) 「お……お、わかったお」

(-[]3[]) 「わかっていると思うが、
       このゲームは “ 自分のカードを知ることができない ”
       という部分が最大のキモだ。

       もちろんそれはジャッジの人間も同様。
       しぃちゃんには、賭けのラウンドまで、目隠しをしてもらうことになる」
.

154 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 22:56:53 ID:My/vEzLg0
.
 ポセイドンはテーブル上を指差す。


(-[]3[]) 「着けてくれたまえ」


 アクリルパーテーションの隙間は、JZ方向にも存在している。
 テーブルはしぃからも手の届く範囲にあり、
 その端っこに、黒いアイマスクが置かれていた。


(*〓〓) 「これでいいですか?」

(-[]3[]) 「イイね。 このまま別のプレイに移行したいところだ……くくっ」

 li|!_, 
(; ^ω^) (……もっとマシなAAはなかったのかお?)

(-[]3[]) 「じゃあゲームをはじめようか。
      あまり何度も説明したくない。 よく聞いてくれよ……?」
.

155 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 22:58:53 ID:My/vEzLg0
.

            □ ■ □  ゲームの流れ  □ ■ □


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 内藤兄弟とポセイドンによる、インディアン ・ ポーカー勝負。

 このゲームは 『 セット 』 という単位で進行し、1セットごと勝敗がつく。
 1セットは以下のような流れで、@〜Aはゲームの予備作業。
 B〜Dの区切りは特に 『 ラウンド 』 と呼ぶ。

 @ カードのシャッフル ・ セレクト
 A セッティング&プットアップ
 B トーキング ・ タイム ・ ラウンド
 C ベット ・ ラウンド
 D ジャッジメント ・ ラウンド

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(-[]3[]) 「まずは僕が親をやろう」

( ^ω^) 「お? 親と子の違いってあるのかお?」

(-[]3[]) 「カードを引く順番、チップを賭ける順番などに多少影響するくらいだ。
      このゲームに親子の差は “ さほど ” ないといっていい」

(*〓〓) (うー……何やってるんだろ。 気になるなぁ)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 はじめにコイントスやじゃんけんなど、なんらかの方法で親を決める。
 以降、親は1セットずつ交代でおこなう。

 ジャッジとなるしぃは、@〜Cのラウンド間、アイマスクを着用する。
.

156 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 22:59:40 ID:38SVjSVA0
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

157 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:00:51 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「今回はダイヤにしておこうか」

( ^ω^) 「何がだお?」

(-[]3[]) 「使うカードのスートだよ。
       ま、別にどれでもいいんだけどさ」

┌──┐┌──┐┌──┐       ┌──┐┌──┐
│ ◇ ││ ◇ ││ ◇ │       │ ◇ ││ ◇ │
│. A . ││. 2 . ││. 3 . │       │. Q ││. K....│
└──┘└──┘└──┘ ・ ・ ・ ・ ・ └──┘└──┘

(; ^ω^) 「おおお? カード、これだけかお?」

(-[]3[]) 「残りのカードはこっち(サイドテーブル)に置いておく。
       紙のトランプだからね……折れたら別のスートを使うことにしよう」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 このゲームでは、同一スート(マーク)のカード一組、計13枚のみを用いる。
 A〜10と絵札のJ、Q、Kで、数字の大きさがそのままカードの強さになる。
 (ただし特別ルールとして、AはKに、2はAとQに勝つことができる。後述)

 各数字が一枚ずつの、13枚。  ジョーカーは使用しない。
 したがって、このゲームに同一ランク(数字)による引き分けは存在しない。
.

158 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:03:57 ID:My/vEzLg0
.
【 @ カード ・ セレクト ── 手札(ハンドカード) 】


(((-[]3[])) シャッシャッシャッ…
  つ[[[ ]ど


 (-[]3[])つ[[[[ ] 「僕のほうは切り終わった。
            ホライゾンさんも同じくシャッフルしてくれ」


 (; ^ω^))  「枚数が少ないから混ぜにくいお……」 シャカシャカ
  ((つ[[[[ ]ど


 ( ^ω^)つ[[[ ] 「お。 できたおー」


(-[]3[]) 「よし、カードを広げてくれ。 僕が選びやすいようにね」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 まず、親がカードをシャッフルし、束ごと子に渡す。
 子もカードをシャッフルし、親に差し出す。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
.

159 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:04:50 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[])つ□ミ 「はじめに僕が一枚引く。
          ……じゃ、これにしようか」 スッ

( ^ω^) 「お! 次は僕の番かお」

(-[]3[])つ 「ああ。 残ったカードから一枚選んでくれ」

    ?
(; ^ω^) 「お……ど、どれにしようかおっおっお」
  つ づ

(-[]3[]) 「しょせん模擬戦だ。 あまり迷う必要はないだろ。
      さっさと選んでくれないか」

(; ^ω^)つ□)) 「……確かにそうだお。 じゃ、これ」 スッ

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 子の持つカードの束から、親が任意の一枚を引く。
 親にカードの束を返し、同様に、子も一枚カードを引く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(-[]3[]) 「今引いたカードが、手札(ハンドカード)になる。
      ハンドは伏せたままテーブルに置いてくれ。
      当たり前だが、数字は見ないようにしてくれよ」

( ^ω^)   「お……! ここに置いていいのかお? (コースターがあるお)」
    つミ_ 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 束から引いた一枚のカードが、手札(ハンド)になる。 
 引いたカードは 『 絶対に確認せず 』、
 伏せたまま、テーブル上のコースターに置く。
.

160 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:06:16 ID:My/vEzLg0
.
【 山札(タロン) 】


(-[]3[]) 「残った11枚のカードはテーブル端に置いておく。
      これが、『 山札 』 」

( ^ω^) 「お」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 親は(この時点でもう一度シャッフルしてもよい)、
 テーブルの、なるべくジャッジとは逆の離れた位置に、カードの束を置く。
 (しぃがカードに触れる事を防ぐため)

 これが、山札(タロン)となる。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
.

161 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:07:07 ID:My/vEzLg0
.
【 台札(アップカード) 】


(-[]3[])つミ[4] 「次に、山札の一番上のカードをこうやって、めくる」 ペラリ

(; ^ω^) 「お? い、いいのかお? カード見えちゃって……」

(-[]3[]) 「この一枚が見えることで、カードの大小を巡る心理戦に深みが増すのさ。
      ゲームのスパイスってところかな。
      とにかくこれが 『 台札 』 だ」

( ´ω`) ~~~ ゚ (スパイスかお。 なんだかおなかが空いてきたお……) グー

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 続けて親は、山札の一番上のカードをめくって、場に提示する。
 これが、台札(アップカード)となる。

 タロンおよびアップカードは、特にゲームに用いられるわけではない。
 一枚だけオープン ・ カードとすることにより、
 心理戦における戦略決定 ・ 駆け引きの材料のひとつとなる。
.

162 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:09:13 ID:My/vEzLg0
.
【 A ゲームの開始 】


(-[]3[]) 「よし。じゃあ、もう一度手札を持ってくれ。
      表側をコースターに重ねたままね」

( ^ω^) 「お」
  つ[□


    (((([]ε[]- ) 「そうしたら次に、そのまま後ろのラインまで下がる」

( ^ω^)))) 「……お。 この辺かお?」
  つ[□


(-[]3[]) 「そう、そのあたりだな。 そこでいい。

      横にサイドテーブルが設置してあるだろ?
      重ねていたコースターをテーブルに置き、手札だけ持った状態にしてくれ。
      もちろん手札は表側を相手に向けたまま、決して見ないようにね」

( ^ω^) 「おっおー」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 それぞれが手札(ハンド)をコースターごと持ち、
 1〜2メートル後ろ、床のラインまで下がる。

 (ラインの脇にはサイドテーブルがあり、
  チェスクロックのようなタイマーが置いてある)

 所定の位置についたら、コースターをサイドテーブルに置き、手札だけを持つ。
.

163 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:11:13 ID:APnc/dbM0
きてたしえん

164 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:12:11 ID:My/vEzLg0
.
【 カードの提示 】


   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿ミ  「準備はいいかい? じゃ、“ アップ ” 」 ピッ

( ^ω^) 「お? アップ?」


   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「カードを見せるときの合図だよ。
         さあ、手札をひたいにあててくれ」

( ^ω^) 「お! そういうことかお」


   [?]⊂ヽ
( ^ω^)ノ丿ミ サッ


   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「この距離ならどうにかカードの数字もわかると思う。
         それでも見えづらければ、少し前に出てもらったり、
         腕を伸ばすよう相手に要求していい」

   [?]⊂ヽ
( ^ω^)ノ丿「おー……(ポセイドンのカードは6だお)」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 準備が整ったら、親が『 アップ 』 と掛け声をかける。
 合図に合わせ、二人がハンドを “ 額に当てて ” 公開する。
 同時に、親はもう片方の手で、タイマーのスイッチを押す。

 カードは相手によく見えるようにする。
 また、絶対に自分で自分のハンドカードを見てはならない。
.

165 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:13:23 ID:My/vEzLg0
.
【 B トーキング ・ タイム 】


   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「ここからが、このゲームのメイン ・ ラウンド。
        『 トーキング ・ タイム 』 のはじまりだ」

   [?]⊂ヽ
( ^ω^)ノ丿「? なんだおそれ?」

   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「難しく考えなくていい。
         自由に会話を楽しめばいいのさ。 もちろん手札はそのままでね。

         時間は一分間。
         互いに質疑応答があってもいいし、馬鹿正直に答える必要もない。
         だが、質問されたら、なんらかのリアクションは返すように」

   [?]⊂ヽ
( ^ω^)ノ丿「わかったおー」

   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「……それにしても、だ。
        模擬戦とはいえヒドいね。 なんだいその手札は。
        ホライゾンさんの運のなさを象徴しているな」

      [?]⊂ヽ
Σ(; ^ω^)ノ丿「お!? そ、そんなにかお!?」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 心理的な駆け引きを行うラウンド。
 嘘をつくもよし。 わざとらしい仕草で罠を仕掛けるもよし。
 話術と観察眼をもって、相手の動向を探る時間が設けられる。

 無理に話す必要はない。
 しかし、相手の質問にはできる範囲で答えなければならない。
 (まともな回答はしなくてもよいが、なんらかの返答をすること)
.

166 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:14:52 ID:My/vEzLg0
.
<ピピピ……

   [6]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「おっと、時間か」


    [?]⊂ヽ
(; ^ω^)ノ丿(あうあう……そんなに悪いカードなのかお?
         見えないから全然わからないお……) ドキドキ


(-[]3[]) 「サイドテーブル上のコースターに、もう一度手札をセットしてくれ。
      そうしたら、ふたたび中央に戻り、席につく。
      手札はコースターごとセンターテーブルに戻す」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 トーキング ・ タイムは一分間。
 タイマーのベルが鳴ったら終了。
 再びコースターをカードに当て、センターテーブルに戻る。
.

167 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:17:36 ID:My/vEzLg0
.
【 C ベット ・ ラウンド   ── 1ターン目 】


(-[]3[]) 「さぁて、ここからベット ・ ラウンドのスタートだ。
      まずはチップを3枚用意してくれ」

         @
( ^ω^)つ @@ 「これでいいのかお?」


(-[]3[]) 「最初に示すこの3枚が 『 アンティ 』。 いわゆる場代だ。

      では、子方であるホライゾンさんが先に選択してくれ。
      チップを賭けて勝負するなら 『 ベット 』 、
      降りるなら 『 フォルド 』 だ」

( つω^)つ 「しょっぱなから逃げるわけないお! 『 ベット 』 だお!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ハンドをコースターごとテーブルにセットしたら、賭けの始まり。

 初めに、子がアンティ(場代)として、チップ3枚を用意する。
 続けて 『 ベット(賭ける) 』 と 『 フォルド(降り) 』 いずれかを選択する。
 (このゲームに 『 チェック 』 のルールはない)
.

168 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:21:08 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「降りたほうが無難なケースは往々にしてあるんだがね……まあいい。
      では、チップを何枚賭けるか決めてくれ。
      ちなみに1セットにおけるベットの上限は、10枚とさせてもらう」

( ^ω^) 「お? さっき払った3枚じゃだめなのかお?」

(-[]3[]) 「そいつはアンティ、あくまで場代にすぎない。
      ゲームの参加料として必ず払わなければならないチップだ。
      正確には払わなくていい時もあるんだが、それはあとで説明する。

      とにかく。
      実際に賭けるチップは、アンティの他に枚数を提示しないとならない」

  _,
( ^ω^) (ベットする場合、最低4枚はチップがいるってことなのかお……?)
  つと

         @
( ^ω^)つ @ 「じゃあ、2枚賭けることにするお! 勝負だお!」

       @
(-[]3[])つ@@  「待て待て。 次は親である僕が選択する番だ。
            こちらもアンティを用意して……」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ベットする場合は、『 ベット 』 の掛け声のあと、枚数を提示する。

 親はそれを受け、
 『 コール(勝負を受ける) 』
 『 レイズ(賭け金の吊り上げ) 』
 『 フォルド(降り) 』 のうち、いずれかを選択。 アンティを用意する。
.

169 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:23:46 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[])つD 「僕は……そうだな、『 レイズ 』。
          5枚にしよう」

Σ(; ^ω^) 「お! ご、五枚!?」

(-[]3[]) 「そうだが何か?
      まあ、ホライゾンさんのあのハンドを見れば、ねえ。
      勝負に出ないわけにもいかないかなぁ」

 :::(; ^ω^)::: (そ、そんなに僕のカードの数字は悪いのかお……)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 勝負を受ける場合は 『 コール 』 、相手と同数のチップを提示する。
 賭け金を吊り上げたい場合は 『 レイズ 』 の掛け声に続き、枚数を提示。

 これにて、1ターン目のベット ・ ラウンドが終了。
 親が 『 コール 』 した場合、そのままショーダウンに移行する。

 子がフォルドした場合、子はアンティ3枚を支払って、1セット終了。
 親がフォルドした場合、親はアンティ3枚を支払って、1セット終了となる。
 (つまり、ここで相手を降ろしたプレイヤーはノーリスク。 後述)
.

170 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:27:24 ID:My/vEzLg0
.
 ・ 2ターン目


(-[]3[]) 「さあてどうする?
      チップ5枚賭けて勝負するか、ここで降りるか。
      決めてくれ」
  _,
(; ^ω^)づ 「し、勝負するお! 僕は降りないお!」


(-[]3[]) 「即決か。 ま、模擬戦だし失うものが無いからね。
      ちなみにここでさらに掛け金を上げることもできる。
      僕と同じく、レイズのかけ声に続いて枚数を提示すること」

  _, ,_
( ^ω^) 「うーん……なんかイヤな予感もするお。
  つと  無難に5枚のままでいくお」

(-[]3[]) (……本当に考えて選択してるのか?)


(-[]3[]) 「同じ枚数で勝負するなら、『 コール 』 してくれ。
      ここで初めて勝負が成立することになる」

( ^ω^)つD@ 「と見せかけて! レイズだお! 6枚!」

(-[]3[]) (うぜえ)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 第1ターンの、親の 『 コール 』 『 レイズ 』 を受け、
 子は 『 コール 』 『 レイズ 』 『 フォルド 』 を選択する。
.

171 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:28:13 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「ずいぶんと強気に出たね。
       じゃあ僕も、『 レイズ 』 しよう」

( ^ω^) 「お! 賭け金がまた上がるのかお……」


(-[]3[])つD@@@@   「その勇気に敬意を表し、9枚だ」

     て
(; ^ω^)そ 「9枚!?」


(-[]3[]) 「何か?」

(; ^ω^) 「お、おお……。
      (アンティも合わせると、この1ゲームだけでチップ12枚が動くことになるお。
       ベットの上限10枚とはいえ、展開次第では50枚のチップなんて
       すぐに消し飛んでしまいそうだお)」


(-[]3[]) 「そうあからさまに動揺されちゃ、駆け引きもへったくれもないな。
       ま、そう見せかけてるのなら大した策士だね」

(; ^ω^) (9枚賭けてもいいってことは……い、いや! きっとハッタリだお!
       僕のハンドはあいつより強いはずだお!)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 子が 『 レイズ 』 した場合、親も同様に選択する。

 ここで、子 ・ 親いずれかが 『 コール 』 した場合は勝負成立。
 ショーダウンに移行する。


※ 2ターン目のフォルドについて

 降りたプレイヤーは、それまでに賭けたチップ+アンティ3枚を支払う。
 もう片方は、アンティ1枚のみ支払う。 これで1セット終了。
.

172 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:29:31 ID:My/vEzLg0
.
 ・ 3ターン目(ファイナル ・ ターン)


(-[]3[]) 「3ターン目まで来たか。
      親の 『 レイズ 』 を受け、子が最後の選択をする番だ」

( ^ω^) 「お? 親はもう選択できないのかお?」

(-[]3[]) 「ああ、親の選択はさっきのターンで終わり。

      そしてここで子ができるのは、
      レイズされた賭け金のまま勝負を受ける(コール)、
      もしくは、今まで賭けた金額を払って勝負を降りる(フォルド)の選択だけだ。

      3ターン目にレイズはできない」


( ^ω^)つ 「そんなの! コールに決まってるお!」

(-[]3[]) 「ま、そう言うとは思ったけどね」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 2ターン目で親が 『 レイズ 』 した場合、子は 『 コール 』 『 フォルド 』 を選択。
 子が 『 コール 』 した場合、ショーダウンに移行する。

 言い換えると、親にはレイズの権利が2回、
  子にはフォルドの権利が3回与えられている、ともいえる。


※ 3ターン目のフォルドについて

 降りたプレイヤーは、それまでに賭けたチップ+アンティ3枚を支払う。
 もう片方は、アンティ2枚を支払う。 これで1セット終了。

 (つまり、2 ・ 3ターンでフォルドが発生した場合は、
  1ターン目と違って、両者ともアンティを支払うことになる。 後述)
.

173 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:32:24 ID:My/vEzLg0
.
【 D ジャッジメント ・ ラウンド  ── SHOW DOWN 】


(-[]3[]) 「さあ、いよいよ勝負のラウンドだ。
      しぃちゃん、目隠しを取って」

(*〓〓) 「わかりました」
  _,
(; ^ω^) (何度見てもこのAAはアレだお……改良案あればキボンヌ)


(;*゚−゚)っ〓〓 サッ

(*> 、<)っ〓〓  ←まぶしい


               ┃
               ┃
               ┃
               ┃         
  (.  ;^ω)つ..I@─┼─I@-.(]ε[]-  )
  (    ./ [?]@ __|___  @ [?] と   )
      /       |    .|       .\
     . ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.| ̄ ̄ ̄l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                ∧ ∧
               (*   )
           〓〓⊂   .(

.

174 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:34:01 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「見てのとおり、今回のベット枚数は9枚だ。
      アンティが3枚加算されているので、場にはそれぞれ12枚のチップ。
      ……わかるよね? 意味」

(*´−`) ~~~ ゚ 「は、はい」


 ( ;^ω^)つ[?]  (ポセイドンの手札は6だったお……つまり)


(-[]3[]) 「では、掛け声と同時に互いの手札をめくる。
      用意はいいかな?  『 オープン』 !」


 (((  >ω<)つ[?] ))  (7以上、7以上のカードが出れば勝ちだお……頼むお!!)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 勝負が成立した(3ターン目までにどちらもフォルドしなかった)場合、
 親の 『 オープン 』 の合図で、
 両者同時に、伏せられたハンドを表に向ける。
.

175 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:38:52 ID:My/vEzLg0
.
【 判定(ジャッジ) 】


(-[]3[])っミ[6] 「僕のカードは……6か」 ペラリ


 :::(# >ω<)っ[?]:::: (おおおおおっ!! きてくれお、7以上ぉぉぉっ!)


  (# `ω´)っミ[3] ペラッ


  (  ‘ω‘)っ[3]


(;*゚−゚)そ 「ああっ……!」


  (:::::: ゚ω゚)っ[3] チーン


(-[]3[]) 「ホライゾンさんの手札は、3。
      僕の勝ちだね」
.

176 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:42:42 ID:My/vEzLg0
.
(:::::: ゚ω゚) 「ま……負け……12枚の……負け……」

(-[]3[]) 「敗者は、場に出したチップ全てを横のボックスに流す
      ……ところだが、今回は模擬戦だからそのままだ。 くくっ」

(; ^ω^)= 3 「お、そうだったお! 助かったお」

(;*゚−゚) (えっと、9枚が二人の賭けたチップで、3枚が場代で……えっと……)
   ъ

(-[]3[]) 「しぃちゃんも見たよね? 今回の僕の勝利。
      そうそう。 賭けの結果をよぅく心に刻んでくれよ……くくっ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 数字の大きいほうが、そのセットの勝者となる。
 アイマスクを外したしぃも含め、賭けの結果を全員で確認する。

 負けプレイヤーは、賭けたチップとアンティを失う。
 勝ちプレイヤーはそのまま。 アンティも支払わなくてよい。
.

177 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:43:48 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「まったく、だからあれほど “ 弱いね ” って忠告したのに。
      ホライゾンさんは人を信用しないなあw」

(; ^ω^) 「も……模擬戦だからだお! 本番ではこうはいかないお!」

(;*゚ー゚)o゙ 「そ、そう。 その意気だよっ。
       内藤くん気にしないで! 次はがんばって!」

(; ^ω^)ノシシ 「お! まかせてくれお! 猫塚さんもリラックスしててくれお!」


(-[]3[]) (……くくっ。 この結果が、今後の展開を暗示していると思うがね)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 審判という立場ではあるが、実際にしぃは勝敗の判定は行わない。
 ゲームに自ら介入することはできず、あくまでも確認のみをおこなう。

 これには、『 負けてゆく 』 過程をその都度確認させることでフラグを刷り込み、
 『 負けの事実の成立 』 時に、オーダーの実行をよりスムーズにする
 ……というポセイドンの思惑が隠されている。
.

178 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:44:18 ID:3Le41mN20
おおきてる!しえしえ

179 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:44:43 ID:My/vEzLg0
.




                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html


.

180 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:45:23 ID:gx82Z4/M0
ブーンめちゃくちゃ頭悪そうだな…

支援

181 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:47:54 ID:My/vEzLg0
.
 〜 〜 〜
                                        

(-[]3[]) 「── と、以上がゲームの一連の流れだ。 やってみれば簡単だろ?」

(;'A`) 「ま、まあ大体……なっ」


 模擬戦を終え、俺はテーブルに両手をついた。

 説明を受けながらおこなった、初めてのインディアン ・ ポーカー勝負。
 結果は、5枚ベットのショーダウン。

 俺のハンドが<Q>、ポセイドンが<4>で、
 本来ならば8枚の勝ちだった。


(-[]3[]) 「いやあ、強いじゃないかドクオさん。 恐れ入ったよ。
      本番で使うべき運をこんなところで消耗していいのかい?」

(;'A`)+ 「う、運は消費するもんじゃにゃい……。
      勝って、相手から奪い取るもんなんだぴょ」

(-[]3[]) 「言ってくれるじゃないか。 ……噛み噛みだけど」


 賭けには勝ったものの、正直言って頭が爆発しそうだ。  Bomb A Headだ。
.

182 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:49:19 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「あ、そうそう。
      今の流れで説明できなかった “ 特別ルール ” が二つあるんだ」

   そ
(;'A`) 「……はぁ? ま、まだあるのか?!」

(-[]3[]) 「そうややこしい話じゃないから、聞いてくれ」


 しぃちゃんと顔を見合わせる。
 何か言いたそうな感じだったが、ポセイドンのダミ声がそれを阻んだ。
.

183 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:51:06 ID:My/vEzLg0
.
 ※ 特別ルール@   〜 ターンによるアンティの違い 〜


(-[]3[]) 「一つ目は、フォルド……勝負放棄についてだ。

      仮にフォルドが発生した場合、
      降りたプレイヤーはそれまでに賭けたチップとアンティ3枚。
      降りなかったほうは “ アンティのみ ” 支払って、1セット終了となる」

(;'A`) 「え。 相手を降ろした場合でも、場代を払わなきゃいけないのか?」

(-[]3[]) 「そう。 基本的にこのゲームでは、勝負に勝たない限り、
      毎回チップを徴収されるものだと考えてほしい。

      2ターン目にどちらかが降りた場合、もう片方はチップ1枚を。
      3ターン目に子が降りた場合は、親はチップ2枚を
      アンティとして支払う」

( 'A`) 「降りるタイミングで、枚数が違うんだ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 2〜3ターン目でフォルドした(降りた)プレイヤーは、
 それまでに賭けたチップと、アンティ3枚を失う。
 もう片方はアンティ1〜2枚のみ支払って、1セット終了となる。
.

184 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:53:38 ID:My/vEzLg0
.
(-[]3[]) 「……が、最初のターンだけは、
      フォルドしたプレイヤーのみアンティを支払い、
      もう片方は何も支払わず、1セット終了となる」
   ?
 ? 
   ?
(;'A`) (つ、つまり、どういうことだ……?)

(-[]3[]) 「こういうことだよ」


        << フォルド発生時の各プレイヤーの支払い枚数 >>


    .      │  フォルドした(降りた)側      │      勝った側   
   ─────┼──────────────┼─────────────
    1ターン目 |         3  .            |         0     
           |                      .|
    2ターン目 |  (3+1ターン目のベット枚数)  |         1
           |                      .|
    3ターン目 | (3+2ターンまでのベット枚数)  |         2      
           |                      .|


(-[]3[]) 「場面によって、即降りが有利なのか、ハッタリでも賭けるべきなのか。
      ま、それらはゲームを進める中で、
      ドクオさん自身で確かめてみることだね」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 最初のベット選択時のみ、
 片方が即フォルドすることで、もう片方はアンティを支払うことなく
 ゲームを終えることができる。
.

185 名前:名も無きAAのようです:2012/09/08(土) 23:56:40 ID:My/vEzLg0
.
 ※ 特別ルールA   〜 下剋上アタック 〜


(-[]3[]) 「もう一つのルールはわかりやすい。
      2のカード。 こいつはAだけじゃなくQにも勝てる。
      そしてさらに。 最弱のAは、最強のKに唯一勝てるカードとなる」

( 'A`) 「……へぇ」
                                        
(-[]3[]) 「夢のあるルールだろ?」


 `⌒´⌒´`⌒´⌒´`⌒´⌒´`⌒´⌒´`⌒´⌒´⌒´
  キャッキャ
   キャッキャッ (* ´_ゝ`) 从∀゚*从 ウフフウフフ

 `〜〜〜〜〜○〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
          O
            ゚ ( 'A`)


( 'A`) 「ブサメン(俺)がイケメンに勝つことも……」

(-[]3[]) 「それはない」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 2のハンドは、Aの他、Qにも勝つことができる。
 Aは最弱のカードだが、Kにのみ勝つことができる。

 仮にそのような組み合わせが起こった場合、
 ・ 2のハンドがQに勝った場合は、ベット枚数の2倍
 ・ AのハンドがKに勝った場合は、ベット枚数の4倍

 上記の枚数+アンティが、負けプレイヤーの支払い分となる。
.

186 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:00:48 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「何故こういったルールを設定したか、わかるよね?」

   そ
(;'A`) 「ま、まあなんとなくは、な」


 思わずそう返したものの、実は全然わかっていない。


(-[]3[]) 「相手のカードが強いからといって、
      簡単に捨てゲーできるルールじゃ、いささか興ざめだからさ。
      リスクを負って、ハッタリ ・ ベットする決断も、時には必要ってこと」

('A`) 「ああ……」

(-[]3[]) 「この2つは、普通のポーカーみたいな……。
      言ってみれば “ ベットによる駆け引き ” を促すためのルールだよ。

      ショーダウンの可能性を高めるという意味合いもある。
      そのほうがゲームとして面白いだろう?」

(;'A`) 「……」


 中央のカードを手繰り寄せ、ポセイドンは嗤う。


( A ) (……面白い、か)
.

187 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:04:10 ID:uz.aL2OA0
.
 ブーンはこうやってゲームをこなし、
 そして、負けた。

 _,
(;* − )


 眉根を寄せ、力なく俺の方を見上げるしぃちゃん。
 彼女の目の前で、負けた。

 _,
(#'A`) 「お、面白くなんてねぇよ。 こんな状況で……!」

(-[]3[]) 「おお、怖い怖い」


 おどけたようにそう言うと、
 ポセイドンは一枚のコインを取り出した。


(-[]3[]) 「──ここからが本番だ。
      さあ、はじめようじゃないか。 楽しいゲームをね」

( 'A`) 「……勝つ。 勝って」


 全部、取り戻す。

 捕らわれの身であるギコも。
 砕かれたブーンのプライドも。
 そしてしぃちゃんの自由も。

 どっかのドラ息子の戯れで、
 こいつらの未来が閉ざされることなど、あっちゃならない。

 くだらない野望なんざ、ぶっ潰してやる。
.

188 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:05:02 ID:uz.aL2OA0
.

   http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_009.jpg



               ,. -─=─- 、.
         ● ,. ‐' ´          `丶、  V
           /                 \  S
      第 /                    ヽ.  .
       /                       ヽ ポ
     B .l                          l.
       l                          l セ
      l      『  う そ つ き             .!
    @ .|                            | イ
      l          イ ン デ ィ ア ン  』     ! 
      .l.                          .l .ド
     話 l.                         /
       .ヽ                       / ン
        \                    /
          \                ./ E
           ゙丶、           ,. ィ
              ` 'ー-=====-‐'' ´
.

189 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:07:55 ID:uz.aL2OA0
※少し休憩、0:20より再開

190 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:08:44 ID:GduB1arg0
これってどんどんチップが減っていく方式ってことでいいんだよな?

191 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:11:56 ID:PK5s0wAk0
親がフォルドしても子はアンティを払うの?

192 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:26:07 ID:uz.aL2OA0
>>190
 Yes、完全に消耗戦。
 1ターン目で相手を降ろすか、ショーダウンで勝たない限りチップは減る。

>>191
 フローチャートがあればよかったかな。
 支払いは下の通り。 わかりにくくてすまん。



〜 各ターンの流れと支払い枚数  〜


1ターン目 @ 子ベット ……A(親の選択)へ
           フォルド…… 子3枚  親無傷

       A 親コール……E(ショーダウン)へ
           レイズ……B(2ターン目)へ
           フォルド…… 親3枚  子無傷


2ターン目 B 子コール……E(ショーダウン)へ
           レイズ……C(親の選択)へ
           フォルド…… 子ベット枚数+3枚  親1枚

       C 親コール……E(ショーダウン)へ
           レイズ……D(3ターン目)へ
           フォルド…… 親ベット枚数+3枚  子1枚


3ターン目 D 子コール……E(ショーダウン)へ
           フォルド…… 子ベット枚数+3枚  親2枚

  ------------------------------------------------

       Eショーダウン    負け…… ベット枚数+3
                    勝ち…… 無傷



 ますますわかりにくい。

193 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:31:36 ID:PK5s0wAk0
>>192
いやわかりやすいです
どうもありがとう

194 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:32:03 ID:Qqaq0j8M0
>>192
だいたいわかった

195 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:33:34 ID:uz.aL2OA0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第1セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 50           (-[]3[]) : 50          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 しぃちゃんのコイントスは、
 見ていて気の毒になるくらい弱々しかった。

 震えながら宙へ飛ばした硬貨は、
 案の定てのひらで受けきれず、床に転がった。

 示されたのは、裏。
 ポセイドンが最初の親となる。


(-[]3[]) 「……よし。 じゃあ、そっちもシャッフルしてくれ」


 数回カードを切ったあと。
 ポセイドンはそう言って、カードの束をテーブルに置いた。

 カードを選ばせる段になっても、必ずテーブルを介してやり取りし、
 決して手渡そうとしない。
.

196 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:37:09 ID:uz.aL2OA0
.
 嫌悪感を露わにする俺を、いちおうは警戒しているのだろう。
 直接的な接触は極力避けてゆくようだ。


(-[]3[]) 「ふんどしを締めてかからなきゃ、かな。
      少なくとも、ホライゾンさんよりは楽しませてくれそうだ」

(;'A`) (ブーン……)


        ., -―=''''''¨¨´ ̄ ̄ ̄ ̄"゛'''=―-、
 ―-=三        (ヽ´ω`)         三=-─
        .`‐―= ..,,,,______,,,,..=―‐´


 完全に意気消沈していたブーン。
 あいつは外に待機しているはずだが、大丈夫だろうか。

 先ほど、彼らの勝負終了を待っていた時の、
 外での会話が思い起こされる。


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


 爪 ゚〜゚) 『 ……はー。 早いトコ終わらねえかな 』

 / ゚、。 / 『 まったくだケド。
        目の前にエモノたーくさんなのに、おあずけなんてヒドいケド。
        その上こんなのまで着せられて、フラストレーションバリバリだケド 』
.

197 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:38:07 ID:uz.aL2OA0
.
 爪 ゚〜゚) 『 俺だってなあ! テメーとお揃いなんて反吐が出るってんだよ。
        けどまあこのくらい我慢しろよな。
        全ては金……じゃなかった、ごしじんサマのため、だろ? 』
                         ・ ・ ・ ・

 / ゚、。 / 『 スズキ? スズキは自分のためオンリーだケド? 』
σ


 爪;゚〜゚)

 黒服 『 少しは本音を隠せ…… 』


 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


 雇われどもに忠誠心は乏しい。 特にダイオード。
 よって、可能性は低いとは思うのだが……。

 もし仮に、奴らの手で無法な暴力が行使された場合、
 それに対する抑止力はない。

 『 ロッカー 』 を着けられたブーンは、飛べない豚で、ただの白豚だ。
 何事も起きていなければいいが。
.

198 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:40:43 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「……なに考えてるんだい? 早く移動してくれよ」

(;'A`)゙ 「えっ! あ、ああっ」


 気づけば既に、ポセイドンはハンド片手に椅子から立ち上がっていた。

 コースターへ手を伸ばし、小さく頭を振る。
 ブーンのことはもちろん気がかりだ。
 しかし、今は目の前の勝負に集中しなければ。

 見えないようにカードを持つと、ラインの場所まで摺り足で下がる。
 慌てていたせいで、サイドテーブルに尻をぶつけた。


Σ(;'A`) (……そうだ、台札は!?)


 俺はセンターテーブルへ視線を戻した。
 山札の一番上、めくれていたのは、[ J ] のカードだった。
.

199 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:43:20 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「そうそう。 これから “ トーキングタイム ” に入るが、
      カードの具体的な数字を言うことは禁止する。
      用意はいいね?  『 アップ 』」          ピッ


 タイマーのスイッチ音に合わせ、
 俺たちは互いのカードをひたいにあてた。


   [?]⊂ヽ
(-[]3[])ノ丿 「へーえぇ……なるほどね〜ぇ。
         運の強さはホライゾンさんとどっこいどっこいってところかな」


 カードの陰で、ポセイドンの眼鏡がイヤらしく光る。
 プレイングエリアを隔てる透明の壁。
 その先、かろうじて見えるポセイドンのハンドは、[ 10 ] だった。


(;'A`) (く……強い、な)


 動揺を隠すように、俺は小さく咳払いする。
.

200 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:44:40 ID:uz.aL2OA0
.
 このゲームには、同じ数字のカードがない。
 よって、引き分けがない。

 1〜13のうち、10というのは明らかに 【 強い 】 ハンドだ。
 さらにこのセットにおいては、その強さがより保証されている。

 台札が [ J ] だからだ。


                                   【 HIGH 】
                      ├────────────→
    [A] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [J] [Q] [K]
  .←──────────┤
  【 LOW 】


 仮に、全13枚の中で相対的に上位のカードを 『 ハイ ・ カード 』、
 弱いカードを 『 ロー ・ カード 』 と定義したとする。

 カードを引いていない状態では、7を中間として8以上が 『 ハイ ・ カード 』、
 6以下のカードが 『 ロー ・ カード 』 だ。
 7は50%の確率で勝ち、50%の確率で負ける、強くも弱くもないカード。

 その後、台札という名の “ 死にカード ” が決まると同時に、
 7という数字の上位 or 下位が確定する。
.

201 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:46:51 ID:uz.aL2OA0
.
 そこで、俺に与えられている情報を当てはめて考えると、以下のようになる。


                           (-[]3[])     【 HIGH 】
                    ├─────────────→
    [A] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] 【10】 [■] [Q] [K]
  .←──────────┤
  【 LOW 】


 ハイ ・ カードの [ J ] が台札として提示されている。
 (この時点で、7はハイ ・ カードに含まれる)

 そしてポセイドンのハンドは [ 10 ] 。

 つまり、俺のカードは、
 A 2 3 4 5 6 7 8 9 Q K   のいずれかだ。

 11種類の可能性のうち、ポセイドンの [ 10 ] に勝てるハンドは、
 [ Q ] と [ K ] の2つのみ。
 単純に考えれば、2/11= 18%。


( 'A`) (仮にショーダウンした場合……)


 82%の確率で、敗北する計算になる。
.

202 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:49:32 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「どうした? 何も言わないってことは、怖気づいてるな。
      はは〜ん、僕のハンドが強すぎて、ぐうの音も出ないわけか」

(;'A`) (うるせぇな……)

(-[]3[]) 「質問にはなんらかのリアクションを返すこと。
      ゲームのはじめに言ったよね?」

(;'A`)゙ 「は、反応しづらいんだよ、色々と」


 もちろん82%というのは何も考えずカードをめくった場合であり、
 実際のゲームでは、そう単純な確率どおりにはいかない。

 ポセイドンもいま、俺のハンドを見て思考を巡らせているはずだ。
 奴の目にはいったいどんな光景が見えているのだろうか。


(-[]3[]) 「勝負を回避する方法で頭がいっぱいなのかな?
       ふむふむ。 どうやら相当僕のハンドは強いみたいだね」
  _, ,
<(;'A`)> 「あーあーあーキコエナーイ」
.

203 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:52:21 ID:uz.aL2OA0
.
 インディアン ・ ポーカーは、言うまでもなく不完全情報ゲームだ。
 プレイヤーに等しく与えられる情報は、相手の 『 手札 』 と、
 センターテーブルに置かれた 『 台札 』 の二種類のみ。

 残りの判断材料は、己の力で手に入れる他ない。
 いくつかの駆け引きタームを通して、
 情報を探り、それらの取捨選択をおこなわねばならない。

 _,,
( 'A`) (言われっぱなしじゃどうしようもないな。
     俺もどうにかしてヤツに探りを) ピピピピピ…

(;゚A゚)そ 「あっ! えっ」

(-[]3[]) 「トーキング ・ タイム終了。
      カードをコースターに戻し、センターテーブルへ持ってくること」

(i|!'A`) (うそーん……)


 ……が。
 ぐずぐずしている間に、トーキング ・ タイムが終わってしまった。
.

204 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:55:24 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「ベット ・ ラウンドだ。 手順はさっきの通り……わかるね?」


 センターテーブルに戻ると、
 ポセイドンはオフィスチェアに斜め座りし、投げ出すように足を組んだ。
 段々見慣れてはきたものの、尊大な態度と余裕顔は相変わらず憎たらしい。

 ベットは子方からスタートする。
 俺は傍らの箱に手を伸ばし、“ 1$ ” のチップを4枚取り出した。


('A`) (ベット。 1枚)


 模擬戦の時よりスムーズに、勝負を宣言する。
 賭け金の1枚プラスアンティで、計4枚のチップがテーブルに並べられる。


(-[]3[]) 「……くくっ。 そうこなくちゃ」
                                        

 勝負相手から不敵な笑みが漏れた。
 両者の手札はコースターに鎮座し、オープンの時を静かに待っていた。
.

205 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:56:36 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「さて。 僕はどうしようか。
      さっきは出鼻をくじかれたことだし、
      ここはしっぺ返しをお見舞いしてあげたいな」


 独り言なのか挑発しているのか。 どちらにせよ揺さぶりの一種だろう。
 無表情 ・ 無言 ・ 無関心を貫き、メガネボーイのブツブツトークを跳ね返す。


(-[]3[]) 「どっちでもいいんだが……。
      よし。 『 コール 』 しておこうか」

(;'A`) 「えっ」


 ……あ。 声、出ちゃった。
 俺のポーカーフェイスが続いたのは、わずか5秒間だった。


(-[]3[]) 「ははっ。 いいねえその反応。
       さあ、ショー ・ ダウンといこう」
.

206 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:59:20 ID:RMOv.9Ls0
とことん気持ち悪くていいぞこのメガネ

207 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 00:59:46 ID:uz.aL2OA0
.
 『 サイアミーズ。 夢から覚める時間だ 』


 じんましんの出そうなことを平気で口にできるのも、
 こいつの特徴といえばそうなのか。

 アイマスクを外すと、しぃちゃんは眩しそうに目を細めた。
 まだ微かに手が震えている。
 “ 催眠能力(ヒュプノシス) ” は着実に、少女の身体を蝕んでいる。


(-[]3[]) 「しっかりジャッジしてくれよ、しぃちゃん?
      状況を言ってみてくれ」

(*´−゚) ~~~ ゚ 「……場代を合わせて4枚の勝負、ってことですよね?」

(-[]3[]) 「それでいい。 じゃあ……」


             『  オ ー プ ン  』


 合図に合わせ、俺たちはカードをめくった。
.

208 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:01:56 ID:uz.aL2OA0
 ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
 |        S H O W     D O W N          |
 |___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ┌───┐
                 │(⌒⌒)│
                 │ .\/ .│
          (-[]3[])  │  10  │
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │(⌒⌒)│  ('A`)
        │ .\/ .│
        │   8  │
        └───┘


(-[]3[]) 「楽勝、かな」


 掌の下に現れた俺のハンドは、[ 8 ] 。


Σ(;'A`) 「……!」

(;*゚□゚)そ 「ああっ……」


 しぃちゃんが口元を覆う。
.

209 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:03:41 ID:uz.aL2OA0
.
 ポセイドンのカードは、わかっていた通り、[ 10 ] 。
 俺の負けだ。


(-[]3[]) 「順調な滑り出しだね。
      このゲームはね、最初の一試合が肝心なんだよ」

(;'A`) (よく言うぜ……練習試合で負けたくせにさ)


 “ 1$チップ ” である青いカード4枚が、ボックスに吸い込まれた。
 合わせて、俺サイドにあるデジタル表示板の数値が減少する。

  l!|l
 (;*´ー`)o゙ 「ま、まだ一試合目ですから、だいじょうぶ。
         ドクオさん、ファイトです!」

('A`) 「ありがとう。 心配いらないから」


 力なく言うしぃちゃんは言う。
 間違いなく空元気だったが、
 そんな彼女の姿を見て、俺は逆に勝利への決意を新たにした。


(-[]3[]) 「……いつまで続くかなぁ? や ・ せ ・ 我 ・ 慢」
 _,,
(;'A`) 「……」


 ポセイドンの攻撃! 内藤ドクオは4のダメージを受けた。

 ── 残りライフ、46。
.

210 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:05:05 ID:uz.aL2OA0
.
 ポセイドンのカードは、わかっていた通り、[ 10 ] 。
 俺の負けだ。


(-[]3[]) 「順調な滑り出しだね。
      このゲームはね、最初の一試合が肝心なんだよ」

(;'A`) (よく言うぜ……練習試合で負けたくせにさ)


 “ 1$チップ ” である青いカード4枚が、ボックスに吸い込まれた。
 合わせて、俺サイドにあるデジタル表示板の数値が減少する。

  l!|l
 (;*´ー`)o゙ 「ま、まだ一試合目ですから、だいじょうぶ。
         ドクオさん、ファイトです!」

('A`) 「ありがとう。 心配いらないから」


 力なくしぃちゃんは言う。
 間違いなく空元気だったが、
 そんな彼女の姿を見て、俺は逆に勝利への決意を新たにした。


(-[]3[]) 「……いつまで続くかなぁ? や ・ せ ・ 我 ・ 慢」
 _,,
(;'A`) 「……」


 ポセイドンの攻撃! 内藤ドクオは4のダメージを受けた。

 ── 残りライフ、46。
.

211 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:07:16 ID:uz.aL2OA0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第2セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 46           (-[]3[]) : 50          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


('A`) 「えーと……このボタンを押すんだよな」


 カード選択を終え、サイドテーブルのある位置まで下がった俺は、
 傍らのタイマーに手を添えた。

 コースターごとハンドを持って、
 後ろに移動して、
 それからサイドテーブルにコースターを置いて……カードだけ持って、と。

 考える余裕ができるのはいいことだが、
 反面、わずらわしさを感じないでもない。
.

212 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:09:54 ID:uz.aL2OA0
.
( 'A`) 「一つ聞いていいか?」

(-[]3[]) 「どうぞ」

( 'A`) 「なんでわざわざ席を離れ、後ろに下がる必要があるんだ?
     カード、見えにくくなるのに」

┐(-[]3[])┌ 「は〜〜〜。 これだから凡人は……」


 ため息とともに、ポセイドンはやれやれのジェスチャーを作る。


(-[]3[]) 「いくら少ない可能性とはいってもね。
      センターテーブルの距離のままだと、
      手札がパーテーションに映り込む可能性があるじゃないか」

(;'A`) 「ああ、そういうことね」


 自分のハンドが見えるだけで、このゲームは成り立たなくなる。
 移動の際、カードの表面をいちいちコースターに添えるのも、
 万一の 『 反射 』 を考えてのことだろう。

 あ。
 光の位置によっては、ヤツのメガネに俺のカードが映るかも知れない。
 さすがにそれは無理か……いちおうあとで凝視してみるけど。
.

213 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:12:33 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「少し考えればわかるだろ。 さ、早く」


 俺はしどろもどろに手元のスイッチを押し、『 アップ 』 と声をかけた。


    [4]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿


   [?]⊂ヽ
 ( 'A`)ノ丿 (おっ!?)


 目に飛び込んできたカードの図柄は、[ 4 ] 。


( 'A`) (ローカード、か)


 センターテーブルの隅に視線を移す。
 今回の台札は [ 6 ] だ。
 残るカードは、  A 2 3 5 7 8 9 10 J Q K の11種類。
.

214 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:15:01 ID:uz.aL2OA0
.
           (-[]3[])
             │                    【 WIN !! 】
             ↓├────────────────→
    [A] [2] [3] 【4】 [5] [■] [7] [8] [9] [10] [J] [Q] [K]
  .←─────┤
  【 LOSE... 】


 [ 5 ] 以上のカードは、 5 7 8 9 10 J Q K  で8種。
 俺のカードがポセイドンの [ 4 ] より強い可能性は、
 8/11= 72.7  となり。

 単純な坊主めくりでいけば、73%俺が勝つ。


( 'A`) (……うっし。 行ける)


 俺は心の中でガッツポーズを作った。


(-[]3[]) 「わかりやすいねぇ、ドクオさんは。 台札と僕のハンドを交互に見て。
      少し考え込んだってことは、勝てる可能性が高いと踏んだ上、
      その確率を割り出してたってところかな?」

Σ(;'A`) 「はぁーぁ!? な、何を言って……」


 不意打ちだった。 思わず声が上ずる。
 俺は自身のメンタルの弱さを呪った。
.

215 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:19:08 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「図星のようだねぇ。 くくっ」

(;'A`) 「……お前。 本当に “ もうひとつの超能力 ” 持ってないんだろうな?
     その……こう、テレパシーとか……」

(-[]3[]) 「その返しは “ 考えを読まれた ” と告白してるようなもんだよね」

 ;;(;'A`);; 「うぐっ」

(-[]3[]) 「嘘発見器(ポリグラフ)で証明しただろう?
      ダイオードはアレで扱いづらいヤツだ。 外で話したことに偽りはないよ。
      僕が持つのは催眠能力(コトダマ)だけ……それにね」


 ポセイドンは余裕顔で解説を続ける。


(-[]3[]) 「催眠術そのものは、ただの技術だ。
      練習すれば誰だってできるようになる。

      あとは “ 被催眠性 ” 。
      暗示へかかりやすいか否か、という、個々人の耐性の問題だよ」

(;'A`) 「……」

(-[]3[]) 「僕の超能力なんて、その程度のモノ。
      他人に打ちこむ暗示が、つまようじか薪割り楔かってだけさ」


 それこそ最大の違いだろうが、と心の中で突っ込む。
.

216 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:20:53 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「ま、それはいいとして。
      さっき程度の推察を “ テレパシー ” なんて呼んでるようじゃあ、
      僕が勝ったも同然かな。

      このゲームは、対戦相手の微細な反応を見抜く
      “ 観察眼 ” こそが勝敗を分ける」

(;'A`) 「ぐぐっ……」


 手札を持つ左手が微かに震える。
 反応しちゃ駄目だ、そう思うほどに、体が言うことをきかなくなる。


(-[]3[]) 「出来て当然なんだよ。 PSIは関係ない。
      危険察知は、生物が生存のために本来持っている能力だ。

      神経を研ぎ澄ますことができるか、そして、
      汲み取ったそれを生かす知能があるかどうかってだけだ」
.

217 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:23:22 ID:uz.aL2OA0
.
<ピピピ……


(-[]3[]) 「くくっ。 両方持ってない人は大変だねえ」

(; A ) -3 「……ぷはっ」


 口を挟む余地もなく、無情な一分は過ぎ去った。
 結局何もわかりやしない。

 反面、トーキング ・ タイムの終了にホッとしているのも事実だった。


(;'A`) (くそっ。 敏感すぎだろ俺のグラスハート)


 眼前でニヤつく腐れボンボン ・ 田中ポセイドン。

 あいつはただのメガネ厨房じゃない。
 れっきとした “ 催眠能力者 ” なんだ。  忘れていた。
 あのまま話を聞いていたら、どんな心理的誘導をされていたことやら。

 タイマーを止め、センターテーブルの座席へ戻る。
 言いようのない “ 煙に巻かれた ” 感。
 俺は小さく唇をかんだ。
.

218 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:26:19 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「さあ、お楽しみのベット ・ ラウンドだ。
      ドクオさんのさっきの顔色からして、
      僕のハンドじゃ勝てる見込みは少ないかな?」


 2セット目なので、親は俺。  つまりベットはポセイドンから。
 ひとつ大きく深呼吸して、考える。

 _, ,
(;'A`) (読まれている──。
     しかし、これがカマかけである可能性も、否定できない)


 インディアン ・ ポーカー。
 これは、ルールの単純さ以上に、複雑な情報が絡み合うゲームだ。

 相手の動揺を見抜く “ 観察眼 ” が大きくものを言う。
 ハンドへ向けられる視線。 探りを入れた時の身体反応。 口調の変化。
.

219 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:30:33 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「でもなあー。 やっぱり勝てそうな予感もするんだよなぁ。
       ドクオさんのハンドも大して怖くないし……どうしようかなあ」
 _,,
(;'A`) (くそっ、ここにきてもまーだ人間観察かよ。
     顔が近付いたぶん余計タチ悪いぜ)


 それら全てを、真実かブラフか見極めた上で、
 自分のカードを知る糧にしてゆく。


(;'A`) (危険察知なんて、出来て当然、か)


 ポセイドンの言うことは、たぶん半分くらい正しい。
 勝負の行く末に関わりそうな部分だけ、素直に受け取っておこうと思う。


(-[]3[])ノ@ 「まあ、最初はベットかな。 1枚」

( 'A`) (──ほらきた)


 幾層にも重なるブラフから、真実のみを抽出するゲーム。
.

220 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:36:54 ID:uz.aL2OA0
.
 だからこそ。
 俺みたいな素人は、逆に、シンプルな戦略を取るべきだ。


('A`) 「なら、俺は──」


 第一、俺はハッタリが得意じゃない。
 半端な小細工を態度に仕込もうとしても、すぐ見抜かれてしまうだろう。

 話術での化かし合いは、相手の土俵に立つということ。
 付き合うだけ損だ。


('A`) 「── レイズ。 3枚で行く」

(-[]3[]) 「!」


 俺は素早く、6枚のチップをテーブルに並べた。


(-[]3[]) 「くくっ……そうだよね」
.

221 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:37:39 ID:uz.aL2OA0
.
 意思決定の際、指標となるものが一つある。
 ハンドの “ ハイ ” と “ ロー ” 。
 この見極めが、ベットにおける最大のキモだ。

 相手のハンドがロー ・ カードなら 『 GO 』
 ハイ ・ カードなら 『 STOP 』 。


(::::A゚) (読まれていてもいい。
     ヤツのハンドが弱いという事実は揺るがない)


 敵が弱ければ厚く張り、強ければ速やかに降りる。
 これだけ。

 戦略とも呼べない、単純極まりない作戦。
 だが、今はこれがベストの選択だと信じよう。


( A ) (よって、ここはベット以外にない)


 人間観察力、カマかけなど、
 心理誘導というフィールドにおいて俺が不利なのは明らかだ。

 ポセイドンとの差を埋めるには、余計な情報を判断材料に入れず、
 カード運のみに身をゆだねるほうがいい。
 今は出来る限り、心理的な駆け引きを排除する方向で戦う。
.

222 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:40:24 ID:uz.aL2OA0
 _,
( 'A`)+ (ベットの選択に誤りはない。
      レイズの枚数が適正かどうかは別にして)


 それに。
 実は俺にはちょっとした切り札がある。

 ここぞという時にしか使うつもりはない──というより使えないが──。
 もし成功すれば、互角とは言わずとも、
 一矢報いるくらいは可能だと思う。

 とにかく。
 まともにやり合うためには、有効利用できる立場になるまで、
 ルールを深く理解する必要がある。

 特に、ベットのメリット ・ デメリットという部分について。
 アンティ含めた損益関係を、熟慮せねばならない。


(-[]3[]) 「そう言うと思ったよぉ。 くくっ。
       当然だよね。 僕のハンドを見れば、そりゃあねえ」

(;'A`) (……うぜー)
.

223 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:43:44 ID:uz.aL2OA0
.
 これは、複数人で行うパーティ ・ ゲームとしての
 『 インディアン ・ ポーカー 』 ではないのだ。

 タイマンでの勝負になった途端、
 このゲームは大きくその姿を変える。

 もし、このシンプル戦略を両者採用したと仮定すると、
 ショーダウンの際、大きなベット額が動くのは、
 両者ともに 『 ロー ・ カード 』 であるケースだ。


(;'A`) (ここでポセイドンがレイズしたら。
     俺のハンドも “ ロー ・ カード ” である可能性が、非常に高い)


 ドクン、ドクン。
 少しづつ鼓動が高く、速くなってゆくのがわかる。

 ──ハイ ・ カードであってくれ。
 いや、せめて [ 5 ] 以上。  それだけでいいんだ。
 念を込めながら、コースター上のカードを注視する。

 3枚ベット。 つまり、アンティ3枚を足して6枚。
 もし負けると──俺のチップは残り40枚となる。

 わずか2セットで、ポセイドンと10枚差。

 意識した瞬間、舌根から唾が湧きだした。
 飲み込むと音がしそうなので、しばらく我慢する。
.

224 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:45:42 ID:uz.aL2OA0
 _, ,
(; A ) 「……さあ、2ターン目。 お前はどうするんだ?」


 模擬戦から感じていたこと。 そして今、確信に変わった点がひとつ。

 このゲームは、アンティの比重が高い。
 ベットのミニマムが1枚なのに対し、アンティの3枚は、
 追加ダメージとしても相当な威力を発揮する。

 _, ,
(;'A`) (アンティはおまけじゃない。
     こいつの扱いを間違えると、あとあと致命傷になりそうだ)


 相手はこのルールに習熟している。
 50枚というライフゲージは、
 ゲームに慣れ、互角に戦うまでになるには、いささか少なすぎる。
.

225 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:47:17 ID:uz.aL2OA0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 そうだねえ」


 ボーっと待っている余裕はない。
 子方のベット番でも、脳をフル稼働だ。

   _, ,
 (;:::A゚)


 考えろ、内藤ドクオ。
 一秒でも早く、このゲームのコツを掴まなければ。


(-[]3[]) 「──決めた。 なら僕は──」




 本質を、見抜かなければ。




 (続く)

.

226 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:48:04 ID:.xpOq8bU0
ここでかよおおおおお

227 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:48:50 ID:PK5s0wAk0
眼鏡は自分のハンドがわかってる……?

228 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 01:49:02 ID:RMOv.9Ls0
ここで終わるのは酷いとおもいます!

229 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 04:16:13 ID:m3ZhvCBcO
ω・`)なんかイカサマしてるな

230 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 08:59:03 ID:6ozTVk/Y0
ただのゲームだけで終わるはずないよな

231 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 09:56:24 ID:PK5s0wAk0


232 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 11:37:45 ID:u0flYzts0

メガネ怪しいな

233 名前:名も無きAAのようです:2012/09/09(日) 17:56:35 ID:Lh/IOctU0


カードは相手が用意したもの
フィールドは相手が用意したもの
ゲームは相手が用意したもの

……受けるなよこんな勝負w

234 名前:名も無きAAのようです:2012/09/10(月) 00:08:50 ID:JubgeHLY0
カードはドクオ達が用意してたような

235 名前:名も無きAAのようです:2012/09/23(日) 03:16:17 ID:irLvkZl2O
まっだかな〜

236 名前:名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 02:07:49 ID:HIhNAapU0
    |┃
    |┃三    ,ィ, (fー--─‐- 、、
    |┃.    ,イ/〃        ヾ= 、
    |┃   N {                \
    |┃  ト.l ヽ               l
 ガラッ.|┃ 、ゝ丶         ,..ィ从    |
    |┃  \`.、_    _,. _彡'ノリ__,.ゝ、  |     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |┃三 `ゞf‐>n;ハ二r^ァnj< y=レヽ    <  話は聞かせてもらったぞ!
    |┃.    |fjl、 ` ̄リj^ヾ)  ̄´ ノ レ リ     |  人類滅亡しない限り今週中に投下する!
    |┃三  ヾl.`ー- べl,- ` ー-‐'  ,ン       \____________
    |┃      l     r─‐-、   /:|
    |┃三     ト、  `二¨´  ,.イ |
    |┃     _亅::ヽ、    ./ i :ト、
    |┃  -‐''「 F′::  `:ー '´  ,.'  フ >ー、
    |┃    ト、ヾ;、..__     , '_,./ /l


          [ Rate of progression ]
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           09/24    42 / 60KB


                  |┃┃
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           三 ∩∩ ..|┃┃
            .(    ). |┃┃ ピシャッ
            /   ⊃.|┃┃

237 名前:名も無きAAのようです:2012/09/24(月) 10:38:18 ID:9vpXYRpM0
おお、待ってる!

238 名前:名も無きAAのようです:2012/09/25(火) 08:13:51 ID:I35Ua3yA0
っひょー!

239 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:24:03 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「フォルド」


 ヤツの決断は早かった。


:::(;`A´)::: (頼むっ、ハイカード、ハイカ……)
 ::: 人:::

    
Σ(;'A`) 「あ、えっ?」
   人


 カードの背に念を送っていた俺。
 投げかけられた一言に、思わず顔を上げる。


(;'A`) 「降り……か?」
.

240 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:24:44 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「勝負をかけるべき地点は、ここじゃぁなさそうだからね。
       ……サイアミーズ!」


 ポセイドンの声が届くと、
 しぃちゃんは弾かれるようにアイマスクを外した。
 彼女の様子を確認したのち、ヤツはそちらへ左手をかざす。

 宙空に揺れる青色。
 眩しげに眉を顰め、しぃちゃんはそいつを視界にとらえる。

 時を置かず、ポセイドンはスッと指の力をゆるめた。
 突きつけられた青いカード4枚は、
 音もなく、ボックスの暗黒へと吸い込まれていった。


(-[]3[]) 「ドクオさん。 2ターン目のフォルドは……」

(;'A`) 「わかってる」


 しぃちゃんの視線がこちらへ向く。
 俺はチップを1枚取り出し、ボックスへ投入した。
.

241 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:26:14 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 ホッとするのは早いよ、ドクオさん。
      カードへ投げられる視線、口調、仕草。
      これら全ての反応が、僕の判断材料としてインプットされてゆく。
      ゲームを通して、あなたはどんどん自分の情報を晒しているんだ」
 _,,
(;'A`) (うっとおしいヤツだな)


 相手側のフォルド。
 直接対決ではなかったものの、実質上の勝利。


(-[]3[]) 「僕にとって、これは捨てゲームじゃない。
       意味のある勝負放棄だ。 そのことをお忘れなく」


 ヤツの言うことは真に受ける必要はなさそうだ。
 こっちだって、ゲームを通して様々な情報を受け取っている。

 このお坊っちゃん、負けず嫌いだな。
 それも相当の。
.

242 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:27:27 ID:ynzviyfM0
.
 ======== 【 STAGE 2 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 6 ]

            ('A`) : -1      (-[]3[]) : -4 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
          RAISE 2
    ..2nd                  FOLD

    Final

    Ante        1              3

   Hands       [ ? ]            [ 4 ]

 ============================


( 'A`) (1枚差、か)


 そしてヤツは残り46枚になった。
 俺の45枚とほぼ変わらない。

 もちろん、これでゲームが振り出しかというとそうではない。
 このポーカー勝負は消耗戦だ。
 両者のチップは減る一方で、増えることはあり得ない。
.

243 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:28:41 ID:ynzviyfM0
.
( 'A`) (ゼロになったら負け? ……いや、違う)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 チップは公平に50枚ずつ。
         賭けられるチップが無くなった時点で負けだ 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 こいつは確かそう言っていた。


(;'A`) (あれっ。
     てことはこのゲーム、アンティが払えなくなった時点で負けになるのか?
     敗北条件は3枚以下? 4枚以下? ちょうど0枚の扱いは???)


 正確なデッドラインの把握。  考えるまでもなく、これはとても重要な部分だ。
 今の今まで気付かなかった自分の愚かさを恥じる。
 俺は何気なーい装いでポセイドンに聞いた。


( 'A`)づ 「あーところでさ、負けの条件ってどういう……」

(-[]3[]) 「ストップ!」

( 'A`)づ 「?」


 コースターへ伸ばしかけていた手を止める。
.

244 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:29:27 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「いいかい、僕は勝負を降りたんだ。
      フォルドが発生したら、
      両者の支払いを審判とともに確認し、次のセットに移る。
      使わなかったハンドは決してめくらないように」

(;'A`)っ 「ダメ、なんだ」


 ダメと言われると余計気になる。
 センターテーブルに置かれた俺のハンド……。

 おそらくはハイ ・ カードだったのだろうが、
 相手の傾向を探る上でも、数字を確認しておきたいのに。


(-[]3[]) 「ショーダウンしない限り、
      互いの闇は暴かれることがない。 そういう決まりなのさ。
      ブラフか。 真実か。 戦わぬ者たちがそれを知る権利はない。

      そして次の親は僕だ。 シャッフルは親からだろ?
      カードにはそのまま触れないでくれ。
      もちろん、山札にも」
 _,,
(;'A`) 「あ、ああ……」
.

245 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:29:38 ID:MYQ0u1is0
きとるやないか!
支援

246 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:30:07 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 ドクオさんの不安な心、手に取るようにわかるよ。
      ……虚か。 実か」


 『 たった二つの見極めすらできぬ者に、女神は微笑まない。
   まして栄光は掴めない 』


 惑わされるな。
 あいつはこのセットを降りた。
 俺のカードに恐れをなして、勝負を放棄したのだ。


 『 これは、そういうゲームなのさ 』


 ヤツのハンドはローカード [ 4 ] 。
 そして俺のは、ハイ ・ カード。
 相手の “ 虚 ” をもねじ伏せる、力を宿したランク。

 事実は覆らない。
 冷たい光沢を放つ、メタル ・ コースター。
 ── その上に眠る、一枚のトランプカード同様に。
.

247 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:30:51 ID:ynzviyfM0
.



                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html


.

248 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:31:08 ID:KAgrORjE0
待ってた支援!

怖いな…

249 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:33:53 ID:ynzviyfM0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第3セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 45           (-[]3[]) : 46          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ポセイドンのフォルドにより、ほぼ同点となって迎えた3セット目。
 俺の脳内では、一つの考えがぐるぐる渦巻いていた。


(;'A`) (よくよく思い直してみると……)


 不利だ。

 そう気づいたのは、ハンドの選択を終え、
 ポセイドンに残りカードを差し出そうという段階だった。
.

250 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:34:39 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「どうしたんだいドクオさん? 顔色がよろしくないね。
      ははーん、さては……」


 メガネ小僧の言葉を遮るべく、
 カードの束を、目の前でテーブルに叩きつける。


('A`) 「五月蠅い」

(-[]3[]) 「……」


 相手は押し黙った。

 正直、ウザい。
 トーキング ・ タイムの開始前から、
 こうもいちいち探りを入れられるのはご免こうむりたい。


('A`) 「言っておきたいことがある。
    ゲームに熟達したお前と、初心者の俺では開きがある。
    フォルドの際はカードが確認できない……っていうのは、
    こちらにとって不公平だ」
.

251 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:35:40 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「経験不足を補う措置が欲しい。
      つまりハンデが欲しい、そう言いたいわけか」
 _, ,
(;'A`) 「……あ、ああ」


 認めるのは癪だが、万が一にも負けられない勝負だ。
 一時のプライドより、確実な利を得たい。


(-[]3[]) 「まったく。 僕は挑戦権を増やしてあげてるだろう?
      ホライゾンさんにドクオさん、
      どちらかが勝つだけで、ギコは解放するって言ってるじゃないか。

      僕のほうは1回負けると終わりなのに対し、
      あなたたちには2回のチャンスを与えているんだ。
      ハンデとしては充分だと思うけど?」
   _,、_
Σ(;'A`) 「ぐっ……で、でも」

(-[]3[])つ 「どうしてもって言うんなら、そこにいる彼女に
        “ ポーカーのコツ ” でも聞いてみたらどうだい?
        今のドクオさんよりは、このゲームに詳しいかもしれないよ?」


 透明の壁の向こう。 内股で椅子に座るしぃちゃんの顔を見た。
 彼女もまた、目隠しのままこちらを向く。
.

252 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:36:54 ID:ynzviyfM0
.
 確かに、しぃちゃんはブーン達の勝負を間近で体験してきた。
 彼女にこれまでの経過を教えてもらうことができれば、
 ゲームの攻略に必要な “ 何か ” が掴めるかも知れない。


(;'A`) 「しぃちゃん……あのさ」

(*〓〓) 「は、い」

( 'A`) 「これまでの勝負、“ ジャッジ ” してきてどうだった?
     何か気付いたことはない?
     あ、ブーンはどうやって負けたんだ?」

(;*〓〓) 「……ぁ……ぇ……」
 _,
(;'A`) 「……しぃちゃん?」


 様子がおかしい。
 彼女はぱくぱくと口を動かしている。
 が、そこから意味のある言葉が紡がれることはなかった。
.

253 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:37:34 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ああーそうそう!言い忘れてた!」


 突如、眼前より高笑いがあがった。


(-[]3[]) 「愛しの “ サイアミーズ ” には、勝負の最中余計な口を挟まないよう
      あらかじめ “ 命令(オーダー) ” をかけてたんだった!
      ははっ! そうだったそうだった!」
   _,、,
Σ(;゚A゚) 「なっ」

(-[]3[]) 「はい、タイムアップ」


 言いつつポセイドンは後方へ下がり、タイマーに手をかける。
 短いスイッチ音がコンテナ内に響いた。


(#'A`) 「てめぇ、この……!」

(-[]3[]) 「さあ、トーキング ・ タイム開始だ。
      所定の位置へどうぞ。 早くしないと負けにするよ?」


 舌打ちひとつ、コースターをふんだくる。
 既に山札はセットされていた。
 台札は [ K ] 。
.

254 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:39:17 ID:ynzviyfM0
.
 ハンドを乱暴にひたいへ当て、目を凝らす。
 奴のカードは……う、よく見えない。

 _,、_
(;'A`)⊂ (あれは…… [ 8 ] か [ 9 ] ?)


 この二つは数字も絵柄も似ているので、遠目に判別しづらい。
 さらに目を細めると、ヤツのハンドはどうやら [ 9 ] であるようだった。


                        (-[]3[])
                          │      【 WIN !! 】
                          ↓├───────→
    .[A] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] 【9】 [10] [J] [Q] [■]
  ←──────────────┤
  【 LOSE... 】


 こちらのハンドが10以上である確率…… 3/11 ≒ 27% 。

 ショーダウンした際の勝率は27%。
 2セット目と立場が逆のパターンか。
 勝負をかけるには厳しい数字だ。
.

255 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:40:48 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「焦るとどんどん心理が明るみになるよ?
      ほらほら、目が泳いでる」
 _,
(#'A`) 「っるせぇ!」

┐(-[]3[])┌ 「ははっ。 嫌われちゃったなぁ〜。
         そんなに頭に血がのぼってちゃぁ、
         ポーカーはおろか、どんな心理ゲームでも勝てやしないよ?」
 _,
(#'A`) 「余計なお世話だッ! そ、それより!」

(-[]3[]) 「?」
 _,
(#'A`) 「まずはひとつ、質問に答えろッ!
     ま、負けの定義についてだ!」

(-[]3[]) 「んっん〜? どういう事かな〜?」


 居丈高な対応がまた憎たらしい。
 憎たらしいが……忘れないうちに、これだけ確認しておかなければ。

 _,
(;'A`) 「“ 賭けられるチップがなくなったら負け ”
      っていうのは、一体ぜんたいどういう意味だ?
     アンティ込みで、総チップが4枚以下になると負けってことなのか?」

(-[]3[]) 「ああ、そのことね」
.

256 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:42:11 ID:ynzviyfM0
.
 ポセイドンは軽く咳払いして続ける。


(-[]3[]) 「言葉通り受け取って欲しかったんだがね。
      チップを賭けるには、場代を除いて1枚以上のチップ保有が必要だ。
      つまり、4枚がアウトライン」
 _,
(;'A`) 「3枚以下になったら負け。 そう考えていいんだな?」

(-[]3[]) 「……と、本来ならば言いたいところだが、ね。
      さっきのドクオさんの “ 不公平うんぬん ” って言い分を考慮して、
      チップ0枚を負けのライン、ということにしてあげるよ」

(;'A`) (恩着せがましい奴)


 ラッキー! と俺が小躍りするとでも思っているのだろうか。


(-[]3[]) 「これはつまり。 仮に残り枚数が2枚になったとしても、
      場代を考慮することなく、2枚まるまるベットに回せるって意味だよ。
      ドクオさん、そのうちそういう事態に陥りそうだからね。 くくっ」


 一瞬タイマーへ視線を落とし、ポセイドンは続ける。
.

257 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:43:53 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「また、相手から残り枚数以上のベットを持ちかけられた場合……」



       (;'A`)そ          レイズ、9枚> ([]ε[]- )
    (チップ残り6枚)


      ヽ('A`)ノ  <コール!!          ([]ε[]-;)そ
    (チップ残り6枚)



(-[]3[]) 「レイズはできないが、コールしていい。
      もちろん、ショーダウンで負けるとそのままゲーム敗北となるがね」

ヽ('A`)ノ 「……」


 ちょっと考えてみたが、そんな状況はあり得ない事に気づく。

 参加者二人のポーカー ・ ゲームなんだ。
 敵の残枚数以上ベットだなんて、
 んな無駄なことをわざわざするはずないだろう。
.

258 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:45:18 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「これだけ譲歩してあげたんだ。 そろそろ納得してもらえるかな?」
 _,
(#'A`) 「譲歩っておま……互いに条件は同じなんだろ?
     別に俺だけ有利になったわけじゃないし」

(-[]3[]) 「はは、あまり駄々をこねないでくれよ。
       ハンデハンデって、子供じゃないんだからさ」


 連続的な機械音が、くだらない二枚舌ご披露タイムの終焉を告げた。

 早足で部屋の中央へ。
 肩をいからせ、コースターをテーブルに叩きつける。

 そんな俺の姿を、アクリル壁の向こうからせせら嗤うポセイドン。
 醜悪な声が耳にこびりつく。


(-[]3[]) 「くくっ。 さあて、ベットは子方から……」

( A ) 「ちょっと待て」


 俺はテーブルに手をついたまま、大きく一つ深呼吸した。
 ひんやりとした空気が肺に染みる。

 あー、煙草吸いてえ。
 ボディチェックの際、ライターともども黒服に取り上げられたけどな。
 ── そういえば、ブーンは “ アレ ” をどこに隠したんだろう?
.

259 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:46:18 ID:ynzviyfM0
.
 やにわに両の頬を叩いた。 予想外にいい音がした。
 目隠しされたしぃちゃんが、びくりと体を震わせる。
 ……あ、ごめん。


( A ) 「────」

 _,
(;'A`) (ふぅ、落ち着いた)


 悔しいが、さっきヤツの言ったとおりだ。
 あくまで理性的に挑まなければ、この勝負には勝てない。


(-[]3[]) 「くくっ。 終わったかい? 時 ・ 間 ・ 稼 ・ ぎ」

('A`) 「……」


 トーキング ・ タイムは過ぎた。
 このラウンドにおいては、
 んーな嫌味にいちいちリアクションを返してやる必要はない。

 俺は無言で椅子にかけると、
 つとめて冷静に、チップの箱へ指を差し入れた。
.

260 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:47:29 ID:ynzviyfM0
.
( 'A`) (何をするかは決まってる。
     相手は [ 9 ] 、台札は [ K ] 。
     勝率27%の状況──つまり)


 ベットにおける駆け引き。

 子方で、相手のハンドがハイ ・ カードの場合。
 最初のターンで取るべき選択は、
 実は “ 降り ” ではない。


('A`) 「……ベット。1枚」


 俺は青いカード4枚をテーブルに並べた。

 おそらくこれが最善の選択だ。
 『 チェック 』 のルールがないこのポーカー勝負で、
 もっともそれに近い “ 勝負保留 ” の方法。
.

261 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:48:48 ID:ynzviyfM0
.
 即フォルドすると、一方的にアンティ3枚の負けとなってしまう。
 ……が。


(-[]3[]) 「レイズ。 2枚」

('A`) 「……」


 1枚賭けで様子を見ると、様々な展開が待っている。
 相手の動向を確認した上で、再度身の振り方を選択できるのだ。

 強気のレイズで攻められたなら、そこで初めてフォルドすればいい。
 こちらは4枚の負けになるが、
 2ターン目のフォルドは、相手もチップを1枚支払わねばならない。

 その場合、発生する点差は差し引き3枚で、
 これは1ターン目にフォルドするのとほぼ同じ結果なのだ。


('A`) 「えー……レイズ。
    1枚上乗せで、3枚」


 それに、1ターン目で相手が降りてくれれば、
 自分は1枚も失うことなく、相手に3枚のダメージを与えられる。
.

262 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:50:26 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「へえ。 じゃあ僕もレイズだ。 8枚」
 _,,
(;'A`) (チッ。 やっぱそう来るか……。
     しかも8枚ときたもんだ)


 コールされるとショーダウンになるが、
 1枚ベットをしぶしぶ呑む── つまりレイズしないということは、
 『 一応勝負は受けるけど、あまり自信はない 』 と告白しているようなもの。

 それすなわち、こちらのハンドがハイカードである可能性の示唆。
 数字次第でうっかり勝ててしまうこともあるだろう。

 仮に負けたとしても、こちらの損失は4枚。
 1ターン目フォルドの3枚と、ダメージ的にそう変わらない。


('A`) 「……フォルド」


 結果、俺は勝負から降りる選択をとった。
.

263 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:51:44 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 わかりやすいな〜ドクオさんは。
      ハッタリも中途半端だね。 全てお見通しだったよ?」

('A`) (あーうるせーうるせー)


 相手が何を引くかは運だ。
 敵のハンドが強ければ、とにかく機会を待つしかない。

 が、何もせずにただ降りるのは、はっきり言ってジリ貧。
 保留を続けているうち、高額なアンティに削り殺されてしまう。


( 'A`)ノ ⌒ 「ほらよ」
     

 しぃちゃんが目隠しを取ったのを確認し、
 5$チップ一枚と1$チップ、
 計6枚分のカードをボックスへ投入する。


(-[]3[])ノ゙l|l 「くくっ。 じりじり削っていこうって作戦かな?」


 3ターン目フォルドのため、ポセイドンも2枚のアンティを支払う。


( 'A`) (ここがミソだ。
     例え降ろされたとしても、
     2〜3ターン目は相手もダメージを負う)
.

264 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:53:06 ID:ynzviyfM0
.
 発生したチップ差は4枚。
 27%で11枚の打撃、73%で11枚支払う羽目になることを考慮すれば、
 ショーダウンの期待値は……ええと暗算めんどくさい。

 よくわからんけど、たぶんマイナス5枚くらい。
 フォルドを下回ってると思う。

 ともかく。
 70パー以上の高確率で、一方的に大ダメージを食らうことを考えると、
 ここでの勝負放棄は正しい選択だろう。

 目線? 口調? そんな不確かな情報は考慮に入れない。
 あくまでクールに、デジタルに。 合理的に、だ。

 そのとっかかりとして……。


( 'A`) (俺はいま、確信した)


 『 子方の1ターン目は、
   相手のハンドに関わらず、1枚以上ベットする 』


 これこそが最善の選択。
 最初のターンでの即フォルドだけは、絶対しちゃならないんだ。
.

265 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:54:23 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「そんな調子でいいのかな〜?
      弱気ばかりじゃぁ、生命線、先に尽きちゃうよ?」

(;*´−`) 「どく……ぉさ……」


 投げ出された勝負の大海原。
 拠るべき船も、進むべき灯台も未だ見えないが……。
 セオリーという名の、小さな板きれを掴んだ気がした。


( 'A`) 「────次のセット、行こうか」


 今はこれでいい。
 じっと耐えて、待つんだ。
 いずれ来るであろう機会を。


 ======== 【 STAGE 3 RESULT 】 ========

    Up Card : [ K ]

            ('A`) : -6      (-[]3[]) : -2 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  1
                         RAISE 2
      ..2nd   RAISE 3
                         RAISE 8
    Final    FOLD

    Ante        3              2

   Hands        [ ? ]            [ 9 ]

 ============================
.

266 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 00:59:12 ID:ynzviyfM0
.
●第三二話 『 夢幻回廊 ── VS. ポセイドンF 』


  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第4セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 39           (-[]3[]) : 44          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


(;'A`) (───きっっったぁぁぁぁあああああああ!)


 チャンスは想像以上に早くやってきた。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿


 声が出そうになるのを必死でこらえる。
.

267 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:00:23 ID:ynzviyfM0
.
    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「はー、なるほどねぇ」


 台札 [ J ] をめくって迎えたトーキング・タイム。
 ポセイドンの頭上、掲げられたハンドは、最弱の[ A ] だったのだ。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「しっかしドクオさんも、よくまあ連続してそんなカード引けるねえw
          日頃の行い良くないんじゃない?」

(;'A`) (言ってろ裸の大将! ばか! うんこ!)


 どんなに余裕ぶって煽っても、
 ひたいに最弱の[ A ] を貼りつけてるだけで、まぬけな絵面にしか思えない。
 ドヤ顔だからなおさらだ。

 おめーなんざぜんっっっっぜん怖くねえよ、そう突っ込んでやりたい。
 気を抜くとすぐに頬がゆるみそうになる。
 さっきまでとは別の意味で手が震える。

 ポーカーフェイスの重要性を痛感した。
.

268 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:02:20 ID:ynzviyfM0
.
<ピピピ……


(;'∀`) 「時間、かぁ」


 喜びを隠すことに気が行きすぎて、
 結局何を話したかもよくわからないうちに、トーキング ・ タイムは終了した。


(-[]3[]) 「じゃあ……」

('A`)+ 「ベットラウンドだな!」

(-[]3[]) 「やけに張り切ってるね」

Σ(;'A`) 「き、気のせいだろ」


 ああん、俺の馬鹿。
 はやる気持ちを抑えつつ、相手の選択を座して待つ。
.

269 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:03:16 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ベット。 1枚」


 そう言うと、ポセイドンは4枚のチップを提示した。


( 'A`) (1枚か……もうちょっと攻めてきて欲しかったんだが)


 セオリーに則って考えれば、俺のハンドはハイカードの可能性が高い。

 もちろん、俺を惑わす策である可能性も否定できないが、
 それを考え出すと思考の泥沼に陥ってしまう。
 知恵をしぼるのはもっと別の方面だ。


('A`) 「……」


 慎重に。 思考を巡らせる。
 ベットは確実におこなう。
 だが俺は、果たして何枚賭けるべきなんだ?
.

270 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:04:30 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ずいぶん迷っているねえw
      決断が遅いってことは、それなりに勝負になりそうな……」

('A`) 「レイズ」

(-[]3[]) 「おっと」

('A`) 「6枚」

(-[]3[]) 「!」


 ポセイドンの表情に、微かな動揺の色が浮かんだ。


('A`) (伸るか反るか、見ものだな)


 ヤツは1枚ベット──つまり 『 見 (けん) 』 を選択した。
 だからといって、こちらは簡単に保留するわけにはいかない。
 せっかくのチャンスなんだ。  ここで攻めなくてどうする。

 とはいえ、攻め方にも工夫がいる。
 ミニマム(1枚レイズ)で張ると、万が一コールされた時に困ってしまう。
 困るといっても、負けることはほぼない。 実入りが少なすぎるという意味だ。
.

271 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:05:32 ID:ynzviyfM0
.
 相手のハンドは最弱の [ A ] 。
 ショーダウンに持ち込めば、90%以上という高確率で勝ちが約束されている。
 4〜5枚ゲットで終わらすのはもったいない。


('A`) 「さあ……どうする?」

(-[]3[]) 「……」


 ベットの駆け引きに初めて面白味を感じた。
 負けは99%無い、という確信があるからこその話だが。

 理想は、できる限り賭け金を引き上げてのショーダウン、
 もしくは相手のフォルドだ。

 強気で行きすぎると、相手が降りる可能性が高くなる。
 こいつを勝負の場に引き出すためにはどうするべきか。
 かつ、コールされた時にそれなりのダメージを与えるには。

 考えた末、俺は6枚ベットという選択に至ったのだった。


(-[]3[]) 「楽しいねェ……ドクオさん。 そう思うだろう?」

('A`) 「は? いや、全然」
.

272 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:07:37 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「これまでのセット、ずっとドクオさんの反応を見せてもらった。 
      あなたの浅い考えなんて、もはや筒抜けさ」

(;'A`) (……落ち着け。 リアクションを返しちゃだめだ)


 さっきも思ったが、こうやって間近で反応をうかがうのはズルい。
 すぐにベットせず、俺の動きから何からじろじろチェックしやがる。

 トーキング ・ タイムと何が違うっていうんだ。
 距離が近い上、時間制限がないので余計にタチが悪い。


(;'A`) 「うるせぇな。 ごたくはいいから早く選べよ」

(-[]3[]) 「わかりやすい人だねぇ。
      おかげで僕も、非常に高い精度でハンドを読むことができる」

('A`) 「読みなんて……」


 ポセイドンは強い語調で俺の言葉を封じた。
.

273 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:11:55 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「フォルド」

Σ( 'A`) 「!」


 そして速やかにチップ4枚を取り、しぃちゃんを呼びつけた。


(;'A`) 「降り……か。 ふぅん」

(-[]3[]) 「なにか?」

( 'A`) 「いーえー。 べーつにー」


 2ターン目フォルドなので、俺のほうも1枚のアンティを用意する。
 至ってスムーズだ。
 これら一連の手順にも段々と慣れてきた。


(;'A`) (脅しすぎたかな……いや)


 この結果はほぼ想定内。
 最初から、ポセイドンは降りる可能性が高いと踏んでいた。

 様子見の 『 1枚ベット 』 を選択した時点で、
 こちらのハンドを警戒していたのは明らかだ。
.

274 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:12:45 ID:ynzviyfM0
.
 さらに俺の6枚賭けによって、
 自分のハンドでは勝ち目がないことを確信したのだろう。


( 'A`) (気にすることはない。 結果オーライだ)


 やりようによってはもう少し引っ張れた気もするが、
 悔いるほどじゃあない。

 “ 1ターン目の子方は1枚以上ベット ”
  という、マイセオリーの妥当性も確信できた。
 そちらのほうが大きな収穫だ。


(;*゚−゚)っ〓 「……」


 『 “ 1枚ベット ” は “ チェック ” の代わり 』


 ======== 【 STAGE 4 RESULT 】 ========

    Up Card : [ J ]

            ('A`) : -1      (-[]3[]) : -4 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
          RAISE 6
    ..2nd                  FOLD

    Final

    Ante        1              3

   Hands       [ ? ]            [ A ]

 ============================
.

275 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:15:20 ID:ynzviyfM0
.
 ボックスへチップを落としながら考える。

 なんだかんだと御託を並べたてるものの、
 ヤツが本当にこちらの反応を観察して、
 自分のハンドを推測しているのかは疑わしい。

 結局のところ、相手もこちらのハンドのハイ ・ ローに沿って
 乗るか降りるか選択しているに過ぎないのじゃないか。
 そう考えると、少し余裕が生まれてきた。


(-[]3[]) 「どうしたんだいドクオさん?
      なんだかやけに張り切っちゃってさ」

('A`) 「別に。 慣れてきただけだよ」

(-[]3[]) 「くくっ。 ハンデなんていらなかったようだね。
      少しは楽しめそうだ。
      次、行こうか」


 そこに巨大な落とし穴があるとも知らずに。
.

276 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:17:05 ID:ynzviyfM0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第5セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 38           (-[]3[]) : 40          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 続く5セット目。
 スイッチ音の直後、俺は我が目を疑った。


((;゚A゚)) (───まさかの展開きっっっとわぁぁぁぁあああああああ!)


 そして、自分の強運を神に感謝した。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿


 え、、マジ?  いいのか!?
 声とかアレとか、なんか色々出そうになるのを必死でこらえる。
.

277 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:18:47 ID:ynzviyfM0
.
    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「やけに静かだねえ。 あれ、冷や汗出てない?」

(;'A`) 「別に……もう5セット目かー、なんて思ってただけだ」


 よもやのビッグチャンス……!
 ポセイドンのハンド、二回連続の [ A ] ……!
 勝率90%超……! 圧倒的……! 圧倒的最弱……!

 奴隷は二度刺せっちゅう神の啓示か何かだろうか。


    [A]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿 「……ふうん。 なんていうか……面白いじゃないか」


 台札は [ 7 ] だが、もはや俺には関係ない。

 眉間に皺を寄せ、唇を噛んで、緊張の糸を切らないようにする。
 2〜4セットと、フォルドが続いたあとで迎えた、この第5セット。
 ヤツもそろそろ前に出たい頃合じゃないだろうか?
.

278 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:23:07 ID:ynzviyfM0
.
('A`) 「どうした? 口数が減ってきてないか?」

(-[]3[]) 「ふふっ。 言うようになったねえ〜?
      さっきまでは何をするにも必死で、上の空って感じだったのに」

('A`) 「お陰さまでだいぶ落ち着いてきたかな。
    こっから先が本番だ。
    さ、そんなことを言ってる間に……」


 体内時計が1分を告げると、ほぼ誤差なく機械音が鳴り響く。
 すぐさまタイマーを止める。  手の震えはない。
 俺は完全に余裕を取り戻していた。

 “ 勝てる ”
 その保証があるだけで、こうも視界が晴れやかになるものか。

 さてさて、こちらはどう立ち回ってやろうかな。
 ベット ・ ラウンドの対応が見ものだ。
 俺は心の中でほくそ笑んだ。

 センターテーブルに戻ると、
 ポセイドンは身を乗り出すようにして俺にささやきかけた。


(-[]3[]) 「お待ちどうさま。 楽しい楽しいベット ・ ラウンドだね」

('A`) 「そうだな……」
.

279 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:24:04 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「へぇ〜。 楽しいんだ。 さっきまでとは違うんだね?」

(;'A`) 「う、うるせぇよ」


 ダメだ。 おしゃべりに乗るとボロが出る。
 一度ひび割れると、メッキがはがれ落ちるのはあっと言う間だ。
 いい加減余計なリアクションは自重しなければ。


('A`) 「ベット。 2枚」


 俺はギリギリまで下げたベット額を提示した。
 同じ轍は踏まない。  なんとしても、こいつを勝負の舞台に乗せる。
 悩んだが、万が一の 『 即コール 』 を考え、1枚にまで削ぎ落とすことは避けた。

 今までの傾向を見ても、勝負が2ターン目以降に持ち越しになることは想像がつく。
 1ターン目でのフォルドはない。
 一方的に3枚ロストなんて、そんな選択、こいつがするはずはない。

 賭け金の引き上げは2ターン目でもできる。
 その上、子方の俺には3ターン目もある。
 最初から脅しをかけずとも、段階を経て徐々に追い詰めていけばいい。

 全ては、ポセイドンという大物を釣り上げるためだ。
.

280 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:25:17 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「へえ〜。 2枚ねえ」

('A`) 「どうした?」

(-[]3[]) 「なんだかさー、さっきまでと様子が違って見えるんだよねえ〜。
      僕のハンドが弱いのかな?
      ドクオさん嬉しいのかな? かな?」


 必死でしかめ面を作る。
 もう無駄口は叩かない。


(-[]3[]) 「まぁでも、ドクオさんのハンドだって吹けば飛ぶようなもんだし、
      ここは強気で1000枚くらいベットかなあ?
      ね、どう思う?」


 本気でうぜー。
 腕組みしてノーリアクションを貫く。
 絶対突っ込まんぞ。
.

281 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:27:51 ID:ynzviyfM0
.
('A`) (無。 無だ。 無無無無無無無無無)

(-[]3[]) 「う〜〜〜ん……」


 穴が空くほどこちらを覗いてくる。
 こんなヤツに見つめられても、嬉しいどころか虫唾が走るだけだ。
 そうやって、さらに30秒ほどが経過した。

('A`) 「ベットするのか、しないのか。 はっきりしろ」


 俺はなるべく “ イラついてないぞ ” という雰囲気を纏いつつ、
 ポセイドンをせっついた。


(-[]3[]) 「くくっ。
      そんなに勝負を焦っちゃあ、見え見えだよw」

(;'A`) 「は!? ど、どういう……」
.

282 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:30:00 ID:ynzviyfM0
.
 続く一言で、俺はその真意を知る。


(-[]3[]) 「─── フォルド」


  ( ゚A゚)


Σ(;'A`) 「!  い、いいのか!?
      何もせずに3枚捨てちゃって……」


 『 レイズ 』 『 コール 』

 それらの言葉を想定していた俺は、思わず大声で問い返していた。
 代わりにヤツの口から出たのは、速やかなる勝負放棄宣言。


(-[]3[]) 「フォルドはフォルドだよ。
      それとも何? レイズして欲しかった?」

(; A ) 「べっ、別にそんなことは……!
     へっ、も、儲けたー。 ラッキーラッキー……」


 完全な肩透かしだった。
 咄嗟に取り繕ってはみたものの、我ながら超しらじらしい。
.

283 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:35:57 ID:ynzviyfM0
.
 しぃちゃんが視界を取り戻したのち、
 ポセイドンは1$チップ3枚を摘み、ボックスの口へ手を伸ばした。


(-[]3[]) ニヤリ

(;l|l'A`) 「?」


 が、そこでぴたりと手を止める。
 俺のほうへ向きなおると、メガネを光らせ、


(-[]3[]) 「よほど嬉しかったんだねえ?
      僕のハンドを見た瞬間、目がらんらんと輝いてたよ。

      [ 3 ] かな? [ 2 ]?
      それともまさか……  [ A ]  だ っ た の か な ?」


 にんまり笑って、指を離した。

  _,
(#;'A`)そ 「うっ、ぐ……!」


 流石に歯ぎしりを抑えることができなかった。
.

284 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:46:04 ID:ynzviyfM0
.
 ハンド [ A ] での即フォルド。  チップの被ダメは3枚こっきり。
 考えられる限り最小の損害で切り抜けられてしまった。
 (こちらが [ K ] であるパターンを除く)

 ヤツは、自分のハンドがロー ・ カード、
 それも相当弱い、勝ち目のないランクであることに確信を抱いていた。
 ゆえにためらうことなく、降りる選択を取ったのだ。

 _, ,
(; A ) (くっそー……顔色を読まれたか!?)


 やはり一筋縄ではいかない。
 奴の 『 観察眼 』 とやらを舐めていた。
 このお坊っちゃんは紛れもなくゲームの熟練者だ。

 そして確かに、一人の 『 催眠能力者(ヒュプノ) 』 として、
 頭角を現そうとしている。

 _,
(;l|'A`) (マズい。
     このインディアン ・ ポーカー、思った以上に遊びゲームがない……!
     残り全てのセットで、最適なベット判断を貫いていかないと)


 負ける。
.

285 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:52:26 ID:MYQ0u1is0
どきどき支援

286 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:55:11 ID:ynzviyfM0
.
 ======== 【 STAGE 5 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 7 ]

            ('A`) :       (-[]3[]) : -3 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  1
                           FOLD
      ..2nd

    Final

    Ante        0              3

   Hands        [ ? ]            [ A ]

 ============================


(-[]3[]) 「あっはっは。 どうしたんだい。
      ドクオさんはこのセット、ノーダメージじゃないか。
      なんだか嬉しそうじゃないよ? むしろガックリきてない?」


 今回のようなチャンスはそうそう有るもんじゃない。
 逆に、これからポセイドンが強ハンドを引き続ける展開だって、
 充分有り得る話だ。
.

287 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:57:25 ID:ynzviyfM0
.
 耐え忍ぶべきケースが重なった際。
 たった一つの選択ミスが、致命傷となる。

 _,
(i|l'A`) 「るっせぇな……ガタガタがたがたと」

(-[]3[]) 「あーあー、残り37枚かぁ。 リードされちゃったなあー」
 _,
(l|l'A`) 「……」

(-[]3[]) 「ここは一発 【 下剋上 】 でも起こして、
      サイアミーズに見せつけてやりたいなあ。
      ね? どんな顔するかなあ、ドクオさん?」
 _,
(l|l'A`) (あるわけねぇだろ、そんなコト)


 そしてもう一つ。
 数セットのプレイを通して、確信できたことがある。
.

288 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:58:06 ID:ynzviyfM0
  _,
(i|l 'A`) (このゲームにおいて、
      [ A ] と [ K ] がぶつかるケースは、まず 無 い )


 最弱こそが、最強を打ち倒す唯一つの矛となる。
 [ 2 ] が [ Q ] に勝ち、 [ A ] が [ K ] に勝つという、
 【 下剋上ルール 】 の真意についてだ。

 奴隷の捨て身だけが王を討つってやつか。
 だがこれはおそらく……。

  _,,
(; A ) ( 罠 だ )


 一撃必殺を餌に、愚者を勝負の場へ引きずり出す。
 玉砕を促すべく設定されたルールだ。

 両者がカードの数字を知らない、
 ただ、運に任せて場に出されたカードをめくるだけの、
 くじ引き勝負なら話はわかる。

 しかしこれは、互いの手札が丸わかりの、インディアン ・ ポーカー。
 ゲームの性質を知れば知るほど、
  “ 下剋上 ” の組み合わせは起こりづらいことがわかってくる。

 相手のハンドが最強の [ K ] と知った上で、ショーダウンまでベットを続けるのは、
 鋼鉄、もしくは毛の生えた心臓を持つ者にしかできないギャンブルだ。
.

289 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 01:58:47 ID:ynzviyfM0
.
(;'A`) ( [ 2 ] と [ Q ] の組み合わせも同様。
     まあ、稀にならそのパターンもあるかも知れないけど……)


 ハッタリ ・ ベットから降りるタイミングを見失い、
 うっかり勝負になだれ込んだならば、下剋上が起こる可能性はある。
 しかしその場合も、そう大きなベットにはならないと思う。

 はっきり言って、割に合わないのだ。
 仮に相手の手札が [ K ] 、台札が [ A ] 以外のカードであった場合、
 見えない自分のハンドがAである確率は、単純計算で 1/11。

 9.1%。 倍率で考えると10倍以上。
 なのに相手の支払いチップは、賭けた枚数の4倍どまり。
 これは運命を委ねるに足る配当ではない。

 期待値うんぬんはよくわからないが、
 負うリスクに対し、リターンが大きく底を割っていることは間違いない。
.

290 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:00:40 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「さーて、5セット終了か。 全体からいうと半分くらいかな?
      思ったよりやるねぇ、ドクオさん。
      よくもってる方だと思うよ。 くくっ」


 単純なルールに潜んだ、いくつもの罠。
 言うまでもなく、これらを設定したのはポセイドンだ。

 38 対 37。
 ようやく1枚上回ることはできたが、
 こんなリード、いつまでも保てるもんじゃない。


(;'A`) 「半分……? チップは10枚しか減ってないのにか?」

(-[]3[]) 「そうだね。  でも、一度崩れ出すとこのゲームは早いよ?
      お互い気を引き締めてかからないとね……くっ。 くくくくっ」


 俺にはここぞという時の切り札がある。
 しかし “ そいつ ” は決定打にはなり得ない。

 ポセイドンをぎゃふんと言わせるには、
 強運に加えて、“ 何か ” もうひと押しが必要となる。
.

291 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:01:30 ID:ynzviyfM0
.
(;*゚−゚) 「……」


 なんだろう。 どこかに引っかかりを感じる。
 それが何なのかは、霞がかってわからないけど。


(;'A`) 「……カード、回収するぞ」

(-[]3[]) 「どうぞどうぞ」


 とにかくだ。

 複雑に絡まった糸を解き、
 勝ちに必要な “ 何か ” を、早く見つけ出さないと。
.

292 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:07:53 ID:ynzviyfM0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第6セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 38           (-[]3[]) : 37          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



 気の抜けたリアクションでお茶を濁し続けること一分。
 迎える6回目の───練習を含めると7回目ともなる、
 ベット ・ ラウンド。


(-[]3[]) 「─── 1枚」


 ベットはいつもの調子で行われた。
 もはやお決まりのパターンだ。

 ポセイドンのハンドは] [ 4 ] 。
 チップの総数も4。
 宣言に続き、扇状に並べられる。
.

293 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:08:36 ID:ynzviyfM0
.
(; A ) (まだだ、まだチャンスは続いている)


 台札 [ 8 ] を横目で再確認。
 俺のハンドの勝率がヤツを上回っているのは自明。


           (-[]3[])
            .│                    【 WIN !! 】
            .↓├────────────────→
    .[A] [2] [3] 【4】 [5] [6] [7] [■] [9] [10] [J] [Q] [K]
  ←─────┤
  【 LOSE... 】


 8/11 ≒ 73%。
 ショーダウンに持ち込めば、73%勝てる。
 2セット目とほぼ変わらない状況だった。

 ハンドの利はこちらにある。
 ならばやることは一つだ。
.

294 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:09:35 ID:ynzviyfM0
.
( 'A`) 「レイズ。 5枚」


 俺は8枚分のチップで応戦した。

 スマートに、淀み無い動作でチップをテーブルに広げる。
 オカルト的発想ではあるが、 “ 勢い ” を殺したくなかった。
 連続 [ A ] に続き、勝率7割超という状況。

 奴にはうまく立ち回られたとはいえ、
 フォルドの応酬で、チップも1枚ぶんリードしている。

 ここでの対応が、勝負の行く末を決めるといっても過言ではない。
 クールに。 適切に。
 一歩ずつ、着実に追いつめてやる。


(-[]3[]) 「くくっ……」

(;'A`) (ヤツのハンドは [ 4 ] 。 この目で確認できる唯一の真実。
     ベットの選択は絶対に正しい)


 それに奴は1枚賭けだ。
 若干抑え気味な声色からしても、俺のハンドはハイ ・ カードである可能性大。

 リスク ・ リターンを秤にかけ、
 俺は 『 そこそこ強気で行く 』 選択へ辿り着いた。
.

295 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:11:11 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ところでドクオさん、 “ 流れ ” って信じるかい?」


 ごたくはいい。
 どうせ降りるんだろうに、余計なカマかけはしないで欲しい。

 ルール説明の際、ポセイドンは
 『 ゲームのキモはトーキング ・ タイム 』 そう言っていた。
 俺も最初はそう思っていた。

 だが、数回のゲームを通してわかった。
 実際はこのトーキング ・ タイム、
 さして重要なラウンドではない。


(-[]3[]) 「返事なしかぁ。
      まあいいや、そのまま黙って聞いててよ」


 つまりこういうことだ。
 こいつは、ベット ・ ラウンドにおける余計なおしゃべりを、
 ルールで禁じていない。

 反応観察。 揺さぶり。 なんだってOK。
 互いにハンドを知った上、観察しやすい至近距離で。
.

296 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:15:36 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「勝つ流れ、負ける流れ。
      そういった “ 流れ ” ってね、あって当然なんだよ」


 トーキング ・ タイムに出来ることなど、素人の俺には限られている。
 余計な情報を与えないよう心がける。
 ただそれだけ。

 心理戦 “ らしい ” 時間を設けているのは 
 パフォーマンスにすぎない。
 “ 偽りの公平性を、演出 ” しているだけだ。


(-[]3[]) 「例えばコイントス。 表と裏は交互には出ない。
      表が出れば表が続き、裏が出ればその結果が連なる。
      それが当然なんだ」

( 'A`) 「いいからさっさと選べ。 賭けるか、降りか」


 最も重要なのは、このベット ・ ラウンドだ。
 チップこそが互いの心理を映す鏡。
 心血を注ぐべきは、このラウンドのみ。

 本当のさぐり合いはベットの駆け引きに潜んでおり、
 おそらく、ヤツもこの部分に最大の重点を置いている。
 だからこそ余計な情報は入れたくない。
.

297 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:16:47 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「くくっ。 そういうことなら……」


 こちらの提示した枚数は5枚。
 様子見を選択したこいつに、ベットを受ける気概などさらさらないだろう。
 負け犬のなんとやら。 俺の反応をみるために勝負を引き延ばしてるだけだ。

 ルールの盲点を自ら利用するポセイドン。 その狡猾さにいらつきを覚えた。
 降りる前の悪あがきだろうが、ごちゃごちゃうるさいヤツだ。
 意地でも反応してやんねーぞ。

 ……そう思っていた。
 たった今の今までは。


(-[]3[]) 「レイズ」

( ゚A゚) 「!」


 予想外の言葉だった。
 続いて発せられた言葉は、さらに想像の範疇を越えていた。


(-[]3[]) 「10枚」

Σ(;゚A゚) 「え!?」
.

298 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:17:59 ID:ynzviyfM0
.
 眼鏡のレンズが怪しい輝きを放つ。
 予想外も予想外、まさかのMAX BET宣言。


;;(;゚A゚);; (しまっ……俺のハンド、ロー ・ カードだったか!?)


 一瞬で思考がかき乱される。

 『 大きなベット額が動くのは、互いにロー ・ カードのケース 』

 よりによって、このタイミングでかよ。


(-[]3[]) 「どうするドクオさん?
      僕はどちらでもいいけどね……くくくっ」


 テーブルに投げ放たれた、赤と青のカードたち。
 13枚というチップの放つ、圧倒的威圧感。

 俺のフォルド狙いか?
 だが、ただのハッタリじゃあ10枚は賭けられない。
 とするとやはり、俺のハンドはロー……いや、しかし。
.

299 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:20:56 ID:ynzviyfM0
.
 というより、レイズした後なんだ。 降りられない。
 ここでフォルドすると、一方的に8枚のマイナスとなる。
 勝率70%以上なんだ、可能性を追わずに一方的な失点なんて……。

   _, ,
Σ(;゚A゚)ノ 「……こ、コール!!」


 堰を切るように。
 喉から勝負宣言が溢れだしていた。


(-[]3[]) 「くくっ。 こうも早く、関頭が訪れるとは思わなかったよ」
 _, _
(;'A`) 「……は? 何言ってやがんだ」


 互いに提示するチップ、13枚。
 赤カードが一枚と、青カード三枚の計四枚。
 13、四。  ……忌み数の並びに不吉な予感が走る。

 10$チップの存在によって、
 テーブルがチップで埋まるということはないが、
 囲むプレイヤーにとっては、筆舌に尽くしがたい重圧が伝えられる。
.

300 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:22:29 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「表のコインが裏返るポイントさ。
      見誤ったね。 子の1枚ベットに対する、親番での対応」


 こいつ……何を言ってるんだ。
 俺の選択に誤りなんて。


(-[]3[]) 「1枚ベットからフォルドの、一連の流れ。
      さんざっぱら繰り返してきたのはなんでだと思う?
      それが一番合理的だから? ……いや」

('A`)


(゚A゚) 「……あ」


 やっと気付かされた。

 “ 簡単に降りられない ” さっきの状況。
 実質、俺はフォルドの選択を封じられてしまっていた。

 5枚のベットには、3枚ものアンティががっちり食い込んでいる。
 フォルドにも、ショーダウンでの敗北にも。
 いわば、8枚のチップを穴の上へぶら下げていたに等しい。
.

301 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:23:47 ID:ynzviyfM0
.
( ゚A゚) (ひょっとしてこれ、マ ・ ズ ・ い ?)


 “ 子の1枚ベット = チェック = 引き気味であることの証 ”
 どこからだ、そう勘違いしていたのは。

 知らず相手を舐めてかかっていた。
 “ 1枚ベット” = “ どうせローカード ” その思い込みが、
 4枚の上乗せという “ 緩み ” を生み出した。

 選択を誤った。
 子番の1枚ベットが、選択肢をより多く残すためのセオリーだとしたら。


(-[]3[]) 「そう、撒き餌だよ。
      その甲斐あって、ドクオさんは見事針に食いついた。
      さあ、サイアミーズ!」

(;'A`) 「!」


 受ける親は、まず1枚レイズで応戦すべきだったんだ。
.

302 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:25:58 ID:ynzviyfM0
.
(;*゚−゚)っ〓〓

(-[]3[]) 「しっかり目に焼き付けてくれよ。 ……くくっ。 はははは!」


 暗黒から解放されたしぃちゃんの大きなまなこは。
 俺たちの戦いを、矯めつ眇めつ眺めやる。

 _, _
(l|l A ) (まだだ。 まだわからない!)


 俺は [ 5 ] 以上ならいいんだ。 それだけでいい。
 頼む、きてくれ、[ 5 ] 以上!

 その願いは───、



             『  オ ー プ ン  』
.

303 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:28:26 ID:ynzviyfM0
 ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
 |        S H O W     D O W N          |
 |___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ┌───┐
                 │(⌒⌒)│
                 │ .\/ .│
          (-[]3[])  │  4   │
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │(⌒⌒)│  ('A`)
        │ .\/ .│
        │   3  │
        └───┘



 次の瞬間、脆くも打ち砕かれた。

 露わになった俺のハンドは [ 3 ] 。
 1ランク差での、敗北。


Σ(l|l*゚△゚) 「ああっ!?」
.

304 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:29:46 ID:ynzviyfM0
.
(l|i゚A ) 「くっ!」


 思わず苦渋の声が漏れた。

 醜く口の端を歪めるポセイドン。
 放心する俺に、トントンと、人差し指でテーブルを小突いてみせる。

 俺は震えながらチップに指をかけた。
 滑るわ力が入らないわで、カードがなかなか掴めない。

 ようやくボックスに落とし込んだところで、
 後悔の念が大挙して押し寄せてきた。


(-[]3[]) 「くくっ。 ははははは!
      ひじょ────に大きな痛手だねェ、ドクオさん!」


( ゚A゚)


(l|l A )   (やっちまった───)


 冷静に考えると、俺はいくつもの間違いを犯していた。
 今さら気付くも、時すでに遅し。
.

305 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:31:21 ID:ynzviyfM0
.
 ハッタリであるケースを除き、
 大きなベット額が動くのは、相手のハンドがロー ・ カードである場合。

  ミ ニ マ ム           マ ッ ク ス
 『 1枚賭け 』 から一気に 『 10枚賭け 』 へ引き上げられ、
 選択を迫られていた2ターン目。

 “ ベット額インフレ = 互いにローカード ” そう仮定すると、
 先ほどの状況は、まるっきり違う表情を見せるのだ。


              (-[]3[])
                │
                │ 【 WIN !! 】
                ↓ ├───→
    .[ A ] [ 2 ] [ 3 ] 【 4 】 [ 5 ] [ 6 ]
  ←───────┤
  【 LOSE... 】


 台札 [ 8 ] が死んでいるので、[ 7 ] 〜 [ K ] の6枚がハイ ・ カードとなる。
 つまり [ 6 ] 以下の6枚が、ロー ・ カード。

 上の仮定においていえば、
 [ A ] [ 2 ] [ 3 ] [ 5 ] [ 6 ]という残りのロー ・ カードの中で、
 俺が勝てる可能性のあるハンドは、[ 5 ] ・ [ 6 ] の2種のみ。

 2/5= 40%。
 勝てる確率は、半々を下回っている。
.

306 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:32:25 ID:ynzviyfM0
.
 数値はあくまで机上のなんとやらに過ぎない。
 だが、先の形勢を表現するには、遠からずといったところだろう。

 “ 勝率70%超 ” という状況は、あくまでカードを引いた時点での話───。
 10枚レイズを提示された場面で、その前提は破棄すべきだったんだ。
 実際には、勝ちの目のほうが少ない勝負だったといえる。

 仮にローカード ・ ハイカードという考えを、
 ポセイドンが持っていなかったにしても。

 俺が [ J ] [ Q ] [ K ] という強力なハンドであれば、
 奴がそこまでベットを引き上げる道理はない。


 ::: (l|l 皿) ::: 「ぐっ、ぐぐ……」


 完全に、ミスによる失点だった。
 『 高確率で勝てる 』 という思いこみは。
 ベットに固執する理由として、お粗末すぎた。

 視界がぐらつく。
 頭の両端を掴まれ、左右に揺さぶられているようだ。
.

307 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:34:03 ID:ynzviyfM0
.
 ======== 【 STAGE 6 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 8 ]

            ('A`) : -13      (-[]3[]) : 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
          RAISE 5
    ..2nd                  RAISE 10
          CALL
    Final

    Ante        3              0

   Hands       [ 3 ]            [ 4 ]

 ============================


(-[]3[]) 「さっきの話の続きだけどね。
      機械による試行でも、短期的な偏りは必ず発生する。
      むしろそれが自然な姿だよ」


 MAX BETでの敗戦。
 失ったチップ、13枚。

 これが、選択を誤ったことの代償であるならば。
 あまりに重いカウンターパンチだった。
.

308 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:34:43 ID:MYQ0u1is0
やべーぞ支援

309 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:34:54 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「ましてや実際のコイントスは人間のやる事だ。
      潜在意識は電気信号に変換され、微細な筋肉の動きとして現れる。
      そしてそれが、大なり小なりゲームの結果に影響を及ぼす。

      精神の動きが絡むゲームに、完全な独立事象なんてものは無いんだ。
      人為的バイアスの発生は、神でもない限り、絶対に避けられない」


( A ) 「……何が言いたいんだ、さっきから」

(-[]3[]) 「聞きたいかい?」


 待ってました、とばかり、ポセイドンは体を乗り出した。
 テーブルに両手をつき、透明の壁すれすれにニキビ面を近づける。


(-[]3[]) 「“ 負けの流れ ” は続く。
      統計的な偏りとか、それだけの問題だけじゃない。

      13枚という今回の大敗は、
      ドクオさんの反応に、選択に、今後必ず影響を及ぼしてくる」


 大  敗  。
 最悪のリフレインに頭を抱えたくなる。
.

310 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:36:15 ID:ynzviyfM0
.
(-[]3[]) 「コインは裏返った。 選択を誤った者の敗北は必定。
      ドクオさんは、もう僕には勝てないよ」


 ぐはぁ、と舌を出すポセイドン。
 これまでで最も醜悪な笑みだった。


( A )


(;*><) 「大丈夫です!
      ドクオさん、気をしっかり持ってください!」


( ゚A゚)  ハッ


 思わずテーブルに伏してしまいそうだったが、
 しぃちゃんの言葉に、かろうじて己を引き上げた。

   i|l
Σ(*l| △ ) 「だ……ら、……て、……ぇ!」


 『 余計な口を挟めない 』 暗示だか命令だかの影響だろう。
 しぃちゃんの声は段々小さく、か細くなっていく。
.

311 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:37:13 ID:ynzviyfM0
.
(;'A`) 「ごめん、しぃちゃん! ありがとう。
     もう大丈夫。 だから、無理しないでくれ!」


 それでも。
 彼女が鳴らす鈴色の声援は、
 俺に、ふたたび奮い立つパワーをくれた。


(; A ) (残りチップは25枚───)


 まだだ、まだ半分ある。
 ここで奴の戯言に翻弄されてはマズい。


(-[]3[]) 「さあ、始めようか」


 『 残り半分の “ 消化試合 ” をね! 』


 なんとしても、突破口を探し出す。



 (続く)

312 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:38:03 ID:ynzviyfM0
※ 読んでくれてありがとう。次話は1〜2週間後に。

313 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:41:38 ID:MYQ0u1is0
おつ、ここからどうなるのか楽しみだ!

314 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:54:00 ID:dfXeMh5w0
乙!

315 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 02:55:41 ID:c4OR/G620
乙!
ポセイドンうぜええええwwww
しかも勝つビジョンが全く見えないからめちゃくちゃハラハラするわ

316 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 03:28:45 ID:s8Lru0Dw0
乙!! 逆転を期待したいがポセイドン強いなぁ

317 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 07:21:51 ID:1.qObwrg0

分かりやすいのがすごい助かる

318 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 08:37:54 ID:rV7A9JGo0
ただのトランプか

319 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 09:16:08 ID:0I8verCo0
乙!
心理戦はドクオ弱そうだしな…

320 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 09:37:36 ID:zmr9A2yU0
乙乙

321 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 10:50:49 ID:TcIwtfq60
乙 ポセイドン輝いてんな

322 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 12:19:26 ID:KAgrORjE0
乙 ワクワクが止まらないぜ

323 名前:名も無きAAのようです:2012/09/30(日) 13:45:01 ID:T/FuPYPw0
ドクオ勝ってくれよ

324 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:29:18 ID:YnUWvF4c0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第7セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 25           (-[]3[]) : 37          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 これ以上のミスは許されない。

 だが、いくら完璧に対応していったとしても。
 ミスしないこと = 負けに遠ざかる、であり、
 『 勝ち 』 そのものとイコールではない。

 12枚の差がついてしまった今、
 勝利を得るためには、どこかでヤツの裏をかく必要がある。
 そろそろ切り札を使うべきか……いや、まだだ。


(;'A`) (……)


 そんな思いに息を荒くし、迎えるトーキング・タイム。
.

325 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:30:08 ID:YnUWvF4c0
.
    [4]⊂ヽ
 (-[]3[])ノ丿


 ポセイドンの掲げたハンドは
 またしても [ 4 ] だった。

  _,
(;l|l'A`) (なんの試練だよこれ……)


 4〜5セットの、連続 [ A ] といい、
 こういった……流れ? 因果? 本当に連鎖するのだろうか。

 困惑すると同時、
 『 んなわけねー、偶然だ 』 そう冷静に諭す自分もいる。

 ひょっとしたら、
 フォルドが頻発したために確認できなかっただけで、
 俺が連続同ハンドを引いた展開だって、今までにあったかもしれない。

 それを見つめるポセイドンは、
 内心、俺のハンドにうんざりしている、
 そういう可能性も無くはない。


( A ) (かもしれない、かもしれない、か)


 カードを持つ手に力が籠もる。
.

326 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:31:06 ID:YnUWvF4c0
.
 どうせわかりゃしないのだ。
 この手を翻し、その数字を目に入れない限りは。
 確認できない過去の事に、気を揉んでもしょうがない。


( 'A`) (大事なのは、今だ)


 台札は [ 2 ] 。
 俺はすぐに勝率を計算する。
 もちろん、ベットの進行に併せ、修正していくことを前提に。



           (-[]3[])
             │                    【 WIN !! 】
             ↓├────────────────→
    .[A] [■] [3] 【4】 [5] [6] [7] [8] [9] [10] [J] [Q] [K]
   ←─────┤
  【 LOSE... 】


 9/11 = 約82% 。
 状況は俄然、俺の方が有利。
 問題は、あいつが俺のハンド── “ 何を ” 見ているか、ってことだ。
.

327 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:35:27 ID:YnUWvF4c0
.
 無論、ここで割り出した確率は現時点での目安にすぎない。
 互いのベット選択によって、
 勝負の様相はいかようにも変化していくことを、すでに俺は学習している。
 痛烈なダメージと引き替えに。


(-[]3[]) 「おや? さっきとは目の色が違うねぇ。
      尻に火がついたお陰かな?」
 _,,
( 'A`) 「……けっ」

(-[]3[]) 「真剣にプレイすることは素晴らしいと思うよ。
       ま、往々にして、そんな努力は徒労に終わるもんだけど」


 俺はこれまで避けていた、
 “ 相手の反応を読む ” 作業をこころみていた。

 ポセイドンの口調には癖がある。
 ヤツは人間観察の分野に長けているが、
 ポーカーフェイスを徹底できているかというと、そうではない。
.

328 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:36:33 ID:YnUWvF4c0
.
(-[]3[])σ 「くくっ。 ダメだよぉ? ちゃんと返答してくれなきゃさあ」


 それが証拠に、ヤツは笑う。
 フォルドの際はいちいち負け惜しみを言う。
 喜怒哀楽を隠し切れていない。

 個々の勝負結果について……、
 特に “ 喜び ” については、露骨に態度であらわしている。

 そういう部分だけは、年相応の未熟さを感じることがある。
 可愛げはまっっっっっっっっっっったく無いが。


( 'A`) 「うるせーな……」


 1枚ベットのセオリーが崩壊したわけではない。
 むしろ、さっきのターンのポセイドンの台詞で、
 揺るぎ無い確信を得た。

 “ 1枚ベット = チェック ” は、正しいと。

 が、同時に気付かされた。 それだけでは足りない。
 ベット判断を違えなければ、そこそこの勝負ができる──。
 そう考えていた己の甘さに、心中で舌打ちする。
.

329 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:37:34 ID:YnUWvF4c0
.
 無数に転がる情報。 これらを生かす努力をしなければ、負ける。
 新たな “ 作戦の基盤 ” を作ろうと、必死だった。

 チップ半減からの再スタート。
 暗中模索の第7フェイズ。

 この迷走自体、ヤツの術中にはまっているってことなのでは?

 ……その事実については考えないことにした。


( 'A`) 「ベット。 2枚」


 ベット ・ ラウンドに移行したあと。
 開口一番、俺は宣言した。


(-[]3[]) 「……へぇ」


 それから、目の前のあばた顔を穴の開くほど凝視する。
 本当に穴が開けばさぞかし愉快だろう。

 ── しぃちゃん達の両親を手に掛けた、殺人チャネラー。
 脳裏によぎるが、すぐに振り払う。
 今は目の前の勝負に集中しなければ。
.

330 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:38:42 ID:YnUWvF4c0
.
 さあ、ポセイドンはどんな反応を示すのか。
 口を開けばどうせ強がりか皮肉しか出てこないのだろうが。
 視線が、仕草が、その胸中を物語ってくれることに期待して。


(-[]3[]) 「2枚かあ。 なんか中途半端だね」

( 'A`) 「どうでもいい。 お前のベット番だ」


 ハッタリ ・ ベットを戦術として採用しない以上、
 相手がハイ ・ カードを引くと、こちらは防戦一方になる。
 容赦なくアンティが食い込み、チップは着実に減っていく。

 とすれば、さすがにここでの即フォルドは無い。
 せっかく相手がロー ・ ハンドなんだ。
 前を向いて進まないと、道は拓けない。


(-[]3[]) 「それってつまり、僕のハンドも中間くらいって意味かなぁ?
      ね? ね? どうだいそこんとこ?」
 _,,
(;'A`) 「……」


 ……が。

 6セット目の展開により、
 俺は “ 1枚でのベット ” に、
 得も言われぬ気持ち悪さを感じていた。
.

331 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:40:58 ID:YnUWvF4c0
.
 その結果が、2枚でのベット。
 ポセイドンの言うとおり、中途半端だろうか。
 果たしてこの1枚は “ 無駄な贅肉 ” なのか。

 ……まあいい。
 考える余裕はある。

 それより。
 迅速にベットを突きつけたのは、それに対するヤツの反応を観察するためだ。


( ゚A゚) クワッ


 目を皿にして、相手の動作に神経を集中した。


(-[]3[]) 「レイズ。 5枚」

  _,、_
(#'゚A゚') 「……」


Σ(; ゚A゚) 「あ、ああ……え!? 5枚!?」


 ……が。
 意表を突くことにかけては、ポセイドンのほうが一枚上手だった。
.

332 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:43:33 ID:YnUWvF4c0
.
 今まで同様の中身のない会話から、突拍子もなくレイズ宣言。
 迅速に8$ぶんのチップを用意する。


(-[]3[]) 「さ、どうするかな?」

(;゚A゚) (あ……えっと……)


 再び選択を突きつけられた。
 観察する側からされる側へ逆戻りだ。


(;'A`) (……ぶっちゃけ、なんもわからん) チーン


 結局、付け焼き刃が通用するはずもなく。

 このターンの “ 観察 ” でわかったことといえば、
 ベットを提示されたポセイドンが、
 眉間にしわを寄せた “ ような気がする ” だけだ。
.

333 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:45:06 ID:YnUWvF4c0
.
(;'A`) 「なら、せめて」


 考える余裕だけは、たっぷりいただこう。


<( 'A`)ゞ 「うりゃ」

(-[]3[]) 「!」


 俺は両耳に人差し指を差し込んだ。
 ポセイドンがなんか文句を言ってる気もする。
 でも聞こえなーい。  聞こえないからわかんなーい。

 “ ベットラウンドで、耳を塞いではダメ ” なんてルールはない。
 さらに時間制限もない。
 ポセイドンの舌打ちする様子がわかったが、関係ありませーん。

 目を閉じるのはさすがにマズいので(カードに何をされるかわからない)、
 台札へ視線を移し、そちらの一点を見つめる。
 意識を集中させた。
.

334 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:45:49 ID:YnUWvF4c0
.
<('A`::)> (5枚のベットを突きつけられた。
      俺はこのターン、どうするべきなんだ?)


 簡単に降りてるようじゃジリ貧。
 そのうちアンティに喰い殺される。

 俺の2枚ベットは、勝算を感じた上での選択だ。
 対してヤツの5枚レイズ。
 もちろん勝つ見込みはあるのだろうが、それはそれで半端な印象だ。

 さっきの10枚レイズは、
 俺が逃れられない状況を作り上げるためだった。

 だがそれ以上に、
 俺のハンドが [ 3 ] という、貧弱極まりないものだったから。


(#-[]3[]) 「──!  ────!」


 今回の5枚レイズは、根本的に意味合いが違う。
 半分は “ 勝てる ” という自信からだろう。
 だがもう半分は、チップが上回ったことによる余裕からなのでは?

 それは、俺がさっきのターンでやらかしたのと、
 同質の “ 緩み ”なのではないか?
.

335 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:47:49 ID:YnUWvF4c0
.
 そしてもう一つ。
 この第7ターンには、6ターン目と大きな相違点がある。
 台札が [ 2 ]  ── ロー ・ カードだということだ。


               (-[]3[])
                 │
                 │      【 WIN !! 】
                 ↓ ├──────→
    .[ A ] [ ■ ] [ 3 ] 【 4 】 [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ]
  ←───────┤
  【 LOSE... 】


 ローハンドという括りの中で、
 俺の勝てるカードは [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ] 3種。
 つまり、3/5 = 60%。

 ここが第6ターンと大きく違う。
 “ 勝てるハンドが2種 ” と “ 3種 ” では、
 勝率は天と地の差だ。

 リスクはもちろんある。  が──。
 さっきとは大いに状況が異なっているんだ。
 ヤツの余裕面に、なんとなく、つけ入る隙が感じられる。
.

336 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:50:54 ID:mBazalwU0
ドクオ…人の話は聞いたほうが…
支援

337 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:50:55 ID:e.CGn2Ag0
来たか!

338 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:54:06 ID:YnUWvF4c0
  _,
<( 'A`)> (ここは──)


 流石にレイズすべきだろう。
 このまま耳栓して唸ってたところで、思考の沼に埋没していく一方だ。

 何よりも、 “ 機会 ” を失うことになる。
 せっかくのローハンド同士(たぶん)の対決。
 勝率も上回っている、  ──そう、今回の状況は俺の方が有利なわけで。

 さっきのポセイドンと立場が逆のパターンだ。
 勝負の場にヤツを引きずり出すには、うってつけじゃないか。
 ヤツの判断を地でなぞれば、勝てる確率は非常に高いはず。

  _, ,
<(::'A`)> (そうだ、ヤツを出し抜くチャンスは今しかない。
      勇気を出さなきゃ。
      ここで勝負せずに、いつ勝負するっていうんだ)


 11回のうち9回勝てるような状況で、ひよってちゃお話にならない。
.

339 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:54:47 ID:YnUWvF4c0
.
 何枚でいく?
 ヤツがやったみたいに、MAXの10枚で勝負をかける?
 ……いや。

 7枚だ。
 うん。
 7枚レイズでいこう。

 俺もヤツも、このセットでレイズできるのはあと一回。
 レイズへの反応によっちゃ、ヤツも馬脚をあらわすかもだ。

 降りられたなら降りられたでいいじゃないか。
 その時は、5+3、計8枚の打撃を与えることができるんだから。

 俺は耳から指を抜くと、
 勢いざま、チップの箱に手を伸ばした。


( 'A`)ノ 「レ ───」


 あれ?

 ─── ちょっと、待て。

.

340 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:55:41 ID:YnUWvF4c0
.
( ゚A゚)ノ 「!」


    そ
(; ゚A゚) て  「こ、コール!」


 反射的に叫んでいた。


(-[]3[]) 「……へぇ。 そうくるかぁ。
      面白い展開になってきた」

(l|l ゚A゚) 「……!」

(-[]3[]) 「いいのかい?
      なんか、『 レイズ 』 って言いかけてた気がするけど」

(; ゚A゚) そ 「い、いいんだよ! それで!」


 それは。
 まさに宣言しようとしたところで、
 “ ある重要な事実 ” に気付いたためだった。
.

341 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:57:02 ID:YnUWvF4c0
.
(l|l ゚A ) (マズい。 いや……今回がどうとかじゃなく、ヤバい)


 高揚していた気分が一気にしぼんでゆく。
 靄の立ちこめる林へ迷い込んだような、胸のざわめき。

 むしろずっと気付かないままでいたほうが良かったのかも───。
 いや、それはそれで危険な予感がする。

 脳内で警鐘が鳴り響く。
 このミスは、あとあと致命的になり得る。
 こんなにも単純な事実を、見落としていたなんて。

 考えたくはない。
 ……ないのだが、渦巻く負の連想は止まらなかった。


(-[]3[]) 「さあサイアミーズ、ジャッジメント ・ タイムの到来だ」

(;'A`) (……だ、大丈夫だ。
     レイズは自重したが ─── どちらにしろ勝てば問題ない!)


 ─── どこからだろうか。

 先入観 ・ 固定観念に背中を押され、
 無意識に前のめりになっていたのは。
.

342 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:58:10 ID:YnUWvF4c0
.
 本人がそれを自覚するのは難しい。
 それでも俺は、気付くべきだった。


(;*゚−゚)っ〓〓


(; A ) (ヤツもこの 『 コール 』 は予想外のはず。
     頼む……きてくれ!
     ヤツを倒す裁きの雷!  [ 5 ] 以上!!)


 はじめ “ 推察 ” “ 理論 ”  だと呼んでいたそれは、
 いつの間にか “ 偏見 ” に取って代わられ、

 最後には。


             『  オ ー プ ン  』


 ただの “ 希望的観測 ” へ、すり替わっていたことに。

.

343 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 20:58:58 ID:YnUWvF4c0
.



                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html


.

344 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:00:41 ID:YnUWvF4c0
.
 ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
 |        S H O W     D O W N          |
 |___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ┌───┐
                 │(⌒⌒)│
                 │ .\/ .│
          (-[]3[])  │  4   │
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │(⌒⌒)│  ('A`)
        │ .\/ .│
        │  A   │
        └───┘


    て
(;*゚□゚)そ 「───っ!」

( ゚A゚) 「なっ」


 絶句。

 5枚ベットのショーダウン。
 ポセイドンの [ 4 ] を倒すべく、翻った俺のハンド。
.

345 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:01:55 ID:YnUWvF4c0
.
 その数値は…… [ A ] 。


(*-[]3[]) 「くはっ。 はははははは!!」


 高笑いが、部屋の壁を震わせる。


(;* □ ) 「ぁ、ぁぅぅ」

(;l|l ゚'A) 「う……そだ……」


 なんだ、これ。
 ふざけんじゃねーよ。
 ……有ってたまるかよ、こんなこと。

 アンラッキーなんて一言じゃ済まされない。
 ロー ・ カード同士のぶつかり合いで。
 よりによって、[ A ] 。


(l|l A ) 「かっ……はッ……!」


 完全に勝率は上回っていた。
 選択は正しかった……はずなのに。
.

346 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:04:16 ID:YnUWvF4c0
.
 蓋を開けてみれば。
 無常、無慈悲、理不尽まみれの現実が待ち受けていた。

 考えうる最小の可能性が、目の前にある。
 ぽたりと落ちた一滴の血、ハートのエース。

 2 連 続 、 敗 北 。


(*-[]3[]) 「ははははははは!
       どうだい! 僕の言った通りになったろう!」


 もはや強がりも出なかった。
 ただ、何かを懇願するように、しぃちゃんの方を見た。

 彼女は口を開けたまま、蒼い顔で俺のカードを見ていた。
 その肩はわなないていた。

 耐えきれず、そいつを拾い上げる。
 紛れもなく [ A ] 。
 決定的敗北へと俺を誘う、悪魔の最弱ハンド。

 中央にひとつのハートをあしらったカードは、
 ポセイドンと一緒に俺をあざ笑っているように思えた。
.

347 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:05:37 ID:YnUWvF4c0
.
(-[]3[]) 「もう止まらないよ、負けの連鎖は。
      ようこそ、地獄へ続く急行列車へ」


 『 まずは運賃をお支払いください 』


 皮肉の意味を解するのに数秒を要した。



 ======== 【 STAGE 7 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 2 ]

            ('A`) : -8       (-[]3[]) :  
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  2
                        RAISE  5
      ..2nd   CALL

    Final

    Ante        3              0

   Hands        [ A ]            [ 4 ]

 ============================
.

348 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:09:13 ID:YnUWvF4c0
.
(l|l A ) (いや、違う……良かった。
     レイズしなかっただけ。 思いとどまって、正解だった。
     まだだ、まだいける。 まだ、まだ……)


 無情にカウントを減らすデジタルボード。
 赤いスコアに向かって、呪詛さながら繰り返す。

 俺のレイズに辛うじて歯止めをかけた、一つの懸案事項。

 それは “ 残チップの価値 ” という、
 無視できない、そして避けようのない問題についてだった。

  i|l!
 (; A ) (あ、あああああッ……!!)


 痛恨の認識不足だった。
 気付いた時には既に、箱の中身は1/3近く消え失せていた。
.

349 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:10:28 ID:YnUWvF4c0
.
 チップ50枚からはじまる “ 消耗戦 ” 。
 デッドラインは0枚で、
 減り続けるチップは、テレビゲームのHPみたいなもの──。

 そう言われるとなんとなく、
 50枚から0枚の “ 均一な幅 ” を考えてしまう。

 たとえ持ち枚数が一ケタ ─── 7枚、6枚、5枚と減っても、
 スレスレの勝負ができるような、ぎりぎり粘っていけるような、
 そんな錯覚に陥ってしまう。

 赤信号が灯るのは、
 せいぜい、ベットのミニマム1枚にアンティ3枚を加味した、
 実質上のアウトライン ── “ チップ4枚 ” からだと考えがちだ。


Σ(;* △ ) 「ドクオさん、あきらめちゃ……!
       ら……ぁ、ぅぁ!」


 実態はまるで違う。

 チップが減る。
 それは取りも直さず “ 負けが近づく ” ことに相違ないが、
 同時に “ ベット枚数の選択肢が減る ”ということ。

 これは、チップを巡る駆け引きにおいて、
 圧倒的不利な要素なんだ。
.

350 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:12:37 ID:YnUWvF4c0
.
 << “ 13枚 ” の壁  >>

                 リ ミ ッ ト
 14枚以上チップが無いと、最高額でのベット時に
 一撃で勝負終了の可能性──。

        MAX BET
 相手の “ 10枚賭け ” に圧殺される危険が生まれてくるのだ。


(-[]3[]) 「けなげだねェ。
      こんな状況でもまだ、しぃはあんたに何かを伝えようとしている。
      現実が見えてない、とも言うけど」

(l|l A ) 「……」

(-[]3[]) 「もはや反論する気力もなしか。 ははは、愉快愉快!」


 さらに進んで10枚を割ると、
 こちらからMAX BETを仕掛けることが不可能になる。
 8枚なら8枚しか賭けられないし、3枚なら3枚だけ。
.

351 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:14:20 ID:YnUWvF4c0
.
 残り1枚ともなれば、
 毎回1枚しか賭けられない = 相手に与えられる損害は最高4枚 となり、
 これは実質虫の息、死んでいるも同然の状態だ。

 チップはライフゲージであると同時に、
 かけがえのない “ 攻撃力 ” でもあったんだ。

 数ターン前の、ヤツの言葉が思い起こされる。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 また、相手から残り枚数以上のベットを持ちかけられた場合。
         レイズはできないが、コールしていい。
         もちろん、ショーダウンで負けるとそのまま…… 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 残りチップは17枚。
 あと4枚減ると、MAX BETに一撃で殺される “ レッドゾーン ” へ突入してしまう。
 常に敗北を意識しながらベット選択を行わなければならない。

 まして10枚以下ともなれば、もはやまともに戦うことは出来ないだろう。
 攻撃力という意味でも、精神的な側面においても。
.

352 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:15:30 ID:YnUWvF4c0
.
(; A ) 「ううっ……ぐっ……!」


 肩の上でずっと鎌首をもたげていた “ そいつ ” 。
 一度大口を開けると、俺の体を呑みこむのはあっと言う間だった。
 不安の消化液は全身を蝕み、いびつな心の器をどす黒い汚水で満たしてゆく。

 “ 敗 北 ”
 その2文字が、脳内をぐるぐる回る。

 これは単純なシーソーゲームじゃない。
 チップの減少。
 13枚の壁を崩された者は、物理的な選択肢だけではなく、
 心理的にも、著しく不利な立場に叩き落とされる。

 今だってそうだ。
 壁が迫っていると認識しただけで。
 腕が、足が、震えて止まらない。

 まともな思考ができない。
 間違いなく、今の俺は “ 敗北 ” にリーチがかかっている。
.

353 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:16:21 ID:YnUWvF4c0
  _,
(;*><) 「ど……く……さ……!」

(l|l ゚A::) 「……だいじょう、ぶ。 次で挽回する」


 告げた言葉の、空虚なこと。
 しぃちゃんに届く声量ではあるが、その実、自分に言い含めている。

  _,
(l|l*>−) 「……」


 それが証拠に。
 もはや俺は、見守る彼女の顔を直視できなくなっていた。

  l|l
 ( ゚A゚) 「……」


 17 対 37 。
 大差で迎える、8回目の戦場。


(-[]3[]) 「くくっ。 さあ、続けようか!」


 突きつけられていた。
 こめかみに、氷の銃口が。
.

354 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:21:36 ID:YnUWvF4c0
.
●第三三話 『 Wall of DEATH. ── VS. ポセイドンG 』

 
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第8セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 17           (-[]3[]) : 37          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 戦意というものが、戦場を翔るための翼だとしたら。
 すでにその大半をもがれてしまったような心地だった。

 カードをシャッフルする間も。
 テーブル上に広げられたそれに、手を伸ばす間も。
 戦っている実感そのものが、乏しくなっていた。


(;i|l A ) 「ううっ……」


 未だ37枚を残すポセイドン。 とうとう17枚となった俺。 
 その差20。 絶望的、大差。
.

355 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:22:16 ID:YnUWvF4c0
.
 揺れる視界。 宙で惑う二本の指は、小刻みに震えている。
 これまでは深く考えることもなく選んでいた、
 そのたった一枚を、俺は決めあぐねていた。

 俺はまたここで、 [ A ] を引いてしまうのではないか。
 カードの呪いに吸い寄せられるように。


(-[]3[]) 「どうしたんだい? さあ、早く選んでくれよ」


 これまでのゲーム、7セット。
 数回のフォルドを挟んだおかげで、相手も無傷というわけではない。

 だが、俺の受けた傷はそれ以上に深かった。
 33枚という枚数もそうだが、
 この劣勢は、一つの、認めがたい事実の上に存在する。

 3度あったショーダウンで、 全 敗 。


(l|l A ) (あり得るのかよ、こんな事)


 いくら相手が駆け引きに長けているといっても、
 これだけの不運が、一度のゲームで起こりうるものなのか。
.

356 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:24:11 ID:YnUWvF4c0
.
 嘘だ。
 夢に違いない。
 そうでなきゃ、あいつが何かイカサマを……。


(; ゚A゚) 「!」


 イカサマ!
 その考えに行き着いたところで、視界がぱっと開けた。

 可能性は大いにある。
 なにせこのゲーム、本当にやろうと決めたなら、
 他のゲームに比べてイカサマは遙かに容易なのだ。

 ポーカーみたいに複数枚ではなく、1枚。
 自分がこれみよがしに相手に示す、
 そのたった一枚を知ることができればいい。
.

357 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:24:51 ID:YnUWvF4c0
.
Σ(-[]3[]) 「あっ、何を……」
   _,
 三(;゚A゚) 「ちょっと黙ってろ!」


 俺はテーブル上のカードをかき集めた。
 手元で一枚ずつチェックする。

 裏、それから表。 どこか変わったところはないか。
 折り目、汚れ、傷などついていないか。
 目で確認したあとは、もちろん指触りも確かめる。


(-[]3[])= 3 「やれやれ。 古典的なことを。
        下手に細工なんてしたら、バレた時、逆に利用されかねないだろう。
        それに、こいつは」


 その先は言わずともわかる。 が、あえて無視した。
 このカードは俺たちが買ってきたもの。
 我々の目の前でヤツが封を切ったもの。

 そして、


┐(-[]3[])┌ 「最初にちゃんとチェックしただろう?」


 ゲームの開始直前、二人で改めたものだ。
.

358 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:25:34 ID:YnUWvF4c0
.
(;'A`) (ゲームの最中に、ガン……印をつけていった可能性もある)


 少しでも確認しやすいよう、俺は椅子から立ち上がった。
 より照明に近づくためだ。

 だが……。
 ひとしきり眺め回したものの、それらしき印は見あたらなかった。


(-[]3[]) 「満足したかい? 第一、外で……」

(;#'A`) 「まだだ!」


 語調を強め、ポセイドンの反論を遮った。
 カードに細工はなかったが、
 俺は未だイカサマの可能性を捨てきれないでいる。
.

359 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:27:52 ID:YnUWvF4c0
.
(; A ) (不可解な点はあった。
     たとえば第6セット。 13枚の敗けを喫した屈辱のフェイズ……)


 あの勝負は紙一重だった。
 俺のハンドが [ 3 ] で、ポセイドンは [ 4 ] 。

 そのベット ・ ラウンド、2ターン目でのことだ。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 「そう、撒き餌だよ。
        その甲斐あって、ドクオさんは見事針に食いついた。
        さあ、サイアミーズ!」

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ベットが終わると、ハンドをオープンする前から、
 ヤツは “ 撒き餌の効果が出た ” と大層喜んでいた。

 自信たっぷりなのは結構だが、
 ヤツがそう言い出したのは、俺がコールしたすぐ後。
 勝負がつく直前のことだ。
.

360 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:28:49 ID:YnUWvF4c0
.
 ヤツは、俺のハンドが [ 3 ] であることを知っている。
 貧弱ハンドの俺が、まんまとレイズに乗ったことで、
 はやる気持ちを抑えきれなかったのだろう。

 だがあの時点では、
 ヤツが負ける可能性だって、わずかながら残っていたはず。


(# 'A`) (今考えても、あれはどこかおかしかった)


 もし自分のハンドが [ 2 ]や [ A ] だったら、
 どう申し開きしてたつもりなんだ?

 あれだけつらつら講釈を垂れておきながら、
 蓋を開けてみて “ はい負けました ” じゃあ、間抜けなこと極まりない。
 揺さぶり目的のトークとしては、完全に逆効果となる。

 それを含めてのギャンブルなのかもしれないが、
 どこか不自然な感じがする。


( 'A`) (その中でも特に……)


 『 針に食いついた 』 という一言。

 これは、 “ 自分のハンドが相手を上回っている ” 。
 その自信があるからこそ、繰り出せる言葉だ。
.

361 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:29:34 ID:YnUWvF4c0
.
(;'A`) (俺の態度から、反応から、自分のハンドを読んだ?)


 そりゃあ俺はポーカーフェイスから程遠い男だ。

 ヤツの観察眼をもってすれば、
 “ ははぁ、こいつが見ている俺のハンドは強いな ”
 または “ 弱いな ” ……程度は読めるものなのかも知れない。

 それにしたって、わかるのはせいぜい
 <ハイカード> <ローカード> の区別くらいじゃないのか。


 あるいは [ 3 ] なんかに負けるはずがない、
 という自惚れもあったのかも知れない。

 経験上、9/11もの勝率で負けることはそうあることではなく、
 揺さぶりのチャンスだ、ということで、
 ここぞとばかりに余裕を見せつけていたのかも知れない。
.

362 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:30:18 ID:YnUWvF4c0
.
 しかし、それにしてもやはり引っかかる。
 実際にカードをめくってみると、ポセイドンのハンドは [ 4 ] だった。

 わずか1ランク差。 辛勝だ。
 なのにヤツはギリギリの結果に対し、
 ホッとするような、胸をなで下ろすような様子は一切見られなかった。

 これでは、まるで。


( A ) (ヤツが、
     “ 予め、自分のハンドを知っていた ” みたいじゃないか)


 いちど萌芽した疑惑は、胸の中でどんどん膨れ上がる。

 _,
( 'A`) 「ポセイドン!」

(-[]3[]) 「うん?」

(;'A`)σ⇒ 「そっちの部屋をチェックさせてくれ!」


 ─── この一言が発端で、ゲームは一時中断する。

 俺はイカサマの証拠を探すため、
 ヤツは身の潔白を証明するために。


 〜 〜 〜
.

363 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:39:17 ID:YnUWvF4c0
.
 当然渋い顔はされたものの、
 思ったよりすんなり、その提案は受け入れられた。

 このトランプ遊びは、勝敗にしぃちゃんの進退を乗せている。

 が、単にそれだけのギャンブルじゃない。
 ゲームの過程そのものが
 “ 催眠状態 ”へ彼女を誘う “ 暗示 ” 植え付け作業なのだ。

 すべては、ポセイドンがしぃちゃんを手に入れるために必要な儀式。
 表面だけでも 『 正々堂々と 』 『 勝利する 』 その経過を、
 彼女に見せつける必要があるのだろう。


(-[]3[]) 「余計なチャチャで、勝ちの流れを切りたくない。
      5分だ。 5分だけやる」


 そう言うとヤツは、
 ポケットから携帯を取り出し、誰かに指図した。
 ほどなくこちらのドアが開き、サングラスの黒服が顔を覗かせる。

 パーテーションで分かたれた各プレイング ・ エリア。
 ふたつの空間は、しぃちゃんのいるジャッジメント ・ ゾーンを通じて、
 いちおう行き来できるようにはなっている。

 が、そちらの通行はポセイドンが許さなかった。
 仕切りの向こう側には、一度コンテナから出て、
 相手側のドアより進入することとなる。
.

364 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:39:57 ID:YnUWvF4c0
.
 (((;'A`) (失礼しますよ、と)


 ポセイドンサイドへ入室すると、
 サングラスとは別の黒服、金髪の男が護衛についてきた。
 ゲームにおけるそれとは違った緊張が走る。

 ポセイドンは部屋の一番奥でふんぞり返っている。
 しぃちゃんは目隠しのまま、J ・ Zの椅子で不安そうにしていた。
 ルーム内のチェックを許されたのは、あくまで俺ひとりだった。


('A`;≡;'A`) (あるはずだ。 きっと、どこかに……)


 5分に設定されたタイマーが、もはや聞きなれたスイッチ音を響かせる。
 すぐさま俺は周囲を見回した。

 一見しておかしなところはない。
 俺サイドからパーテーションを通して見えていた空間が
 そのまま広がっているだけだ。
.

365 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:40:40 ID:YnUWvF4c0
.
(;'A`)彡 (あっちは……?) チラッ


 ずっと考えていたのは、
 パーテーションがマジックミラーである可能性。

 俺サイドからは透け透けで、
 ポセイドンサイドからは鏡という、魔の二重構造。
 身を堅くしてそちらを注視する。

 ……主の消えた俺サイドの空間が、よく見渡せる。


(-[]3[]) 「やれやれ。 何もおかしいところなんて……」
 _,
(;'A`) 「ま、まだ時間はあるだろっ」


 そうだ。
 このゲームでイカサマするにあたって、
 複雑な仕掛けなど必要ない。
.

366 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:41:23 ID:YnUWvF4c0
.
 インディアン ・ ポーカーの公平性は、
 そこにたった一枚の鏡があるだけで、たやすく崩壊するのだ。


(; A ) 「ど、どこかにきっと……」


 タイマー、ボックス、テーブル。
 目に付く機材 ・ 装置を片っ端から調べ上げる。
 チップ入れ、スコアボード、もちろんコースターも。

 だがそれらは、俺サイドにあったものとほとんど変わらない。
 どれも光を反射するような材質ではなかった。

 _,
(; A ) (くそっ……)


 壁、床、天井。  一見して怪しいところはない。

 じゃあ、どうする。
 他に何か、俺の部屋と違う部分はないのか。
.

367 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:42:05 ID:YnUWvF4c0
.
 置いてるモノが同じだとしたら、異なるのは…… 人?


( ゚A゚) 「!」


 ひょっとしたら、しぃちゃんか?
 彼女の着けているアイマスクは実は反射材つきで、
 ポセイドンサイドの一定の角度から見ると……!


(*〓〓) 「?」


 ……さすがにそんなことは無かった。
.

368 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:42:52 ID:YnUWvF4c0
.
(-[]3[]) 「だーかーら。 最初に言っただろう?」


 困惑する俺を、ポセイドンがせせら笑った。
 ゲーム開始前の発言を復唱する。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 もちろん、コンテナ内──ギャンブル ・ ルームに、
         イカサマ用の仕掛けはこれっぽっちも存在しない。

         ああ、中での勝負が中継できるよう、
         音響装置のほうはあとで設定させてもらうがね 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


(-[]3[]) 「何度も言うように、無いんだよ。 そんなものは」


 調べても無駄なのだろうか。
 タイマーの表示は残り半分ほど。
 焦燥感がこみ上げる。

 あとは、なんだ。
 他に調べておかなきゃいけない点は。
.

369 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:43:34 ID:YnUWvF4c0
.
 俺サイドからは確認できないもの。
 あっちに無くて、こちらには存在する、何か。


(;'A`) 「!」


 あった。 ひとつだけ。
 ─── それは、ポセイドン本人。


(#'A`)σ 「そうだ!
      よくよく考えたら、お前はボディチェックを受けてない!」


 俺は糾弾するように言った。


(-[]3[]) 「はぁ? だから?」
 _, ,
(;'A`) 「あの時点では、
     部屋に“ イカサマできる道具 ” はなかったかも知れない。
     だけどそのあとで、お前が何か持ち込んだ可能性だってあるじゃないか!」

(-[]3[]) 「何かって……何を?」

Σ(;'A`) 「な、何かその、怪しい機械なんかを……」
.

370 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:44:35 ID:YnUWvF4c0
.
(-[]3[]) 「機械なら持ってるよ」
   _,
Σ( ゚A゚) 「!?」

(-[]3[]) -3 「ったく……」


 ため息ひとつつくと、
 ポセイドンはズボンのポケットに手を差し入れ、
 先ほどの携帯を取り出した。


(-[]3[])っ】 「外部との連絡用。
        ゲーム中、逆上した落伍者に襲われでもしちゃたまらないからね。
        今のドクオさんみたいにさ」

( ゚A゚) 「じゃ、じゃあそれだ!」  喰ってかかる俺。

(-[]3[]) 「なんだよ。 じゃあ、って」
  _, ,
(; ゚A゚) 「電気を流すことで、
     透明状態と鏡状態を切り替えるマジックミラーがある!
     き、きっとそいつを操作すれば、こっちのパーテーションが……」
.

371 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:45:20 ID:YnUWvF4c0
.
 やれやれのジェスチャーとともに、ポセイドンは頭を振る。

   _, 、_
┐(-[]3[])┌ 「そんな仕掛け、ギャンブル・ルームには無いって言ってるだろ。
         それに僕は、今までずっとこいつをポケットに仕舞っていた。

         ゲームの間は、操作はもちろんのこと、取り出してもいない。
         というより、僕は一度もポケットに手を入れてすらいない。
         ……違うかい?」


 俺の無言を肯定と受け取ったのだろう。
 「さ、もういいだろ」
 そう言って、ヤツはメガネをくいっと上げてみせた。


( ◎A◎) 「!」


 メガネ……メガネ!?

           て
  ≡三 (; ◎A◎)そ  「メガネを見せろ! そのレンズに秘密が……ぐえ!?」


 思わず手を伸ばしかけたところで、強い力に引き戻された。
 黒い袖が二本、俺の両脇からにゅっと生える。
 どうやら金髪男に羽交い締めされたようだった。
.

372 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:46:15 ID:YnUWvF4c0
.
(-[]3[]) 「……まったく。
      いつもの事とはいえ、
      敗北の決まったプレイヤーは実に醜く足掻くねえw
      哀れだ。 そしてとても、滑稽だ」


 身動きを封じられた俺に、ポセイドンは指をつきつける。


(-[]3[])9m 「いい加減にしてくれるかな。
        僕がイカサマできないのはポリグラフで確認済み。

        外の奴らにも、手出しできないよう、
        『 ロッカー 』 による処置を施している。
        全て、その目と耳で確認しただろう?」


 さすがに耐えかねたのだろう。
 笑みは消えている。


(-[]3[]) 「ドクオさん。
      あなたはそれら全てを受け入れた上で、ゲームに挑んだはずだ。
      これ以上、難癖をつけてゲームの進行を妨げるようなら、
      ペナルティを課させてもらうよ?」

Σ(;'A`) 「そ、そんな……」
.

373 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:48:59 ID:YnUWvF4c0
.
(∵゜3゜)つ┌[]-[]  「女々しいものだね。 ほら」


 これで最後だ、との一言で、メガネをテーブルに置く。
 同時に拘束が解かれ、俺はそいつに飛びついた。

 レンズを通して周囲を見る。 度がキツい。 世界が歪む。
 高価そうなフレームには、怪しいスイッチも、赤外線受信装置もない。

 頭脳は大人の少年探偵よろしく、横にツマミでも……と思ったが、
 やはりそんなものは見あたらない。

 ……レンズの分厚い、ただのメガネだ。
 (あとなんか油っぽい)

 顔を上げたところで、後方のタイマーがけたたましく鳴り出した。
 ポセイドンはひったくるようにしてメガネを回収し、言った。

  _, ,_
(∵゜3゜) 「僕のほうこそ警戒しているんだぞ。
[]-[]┐と  ゲームの最中、僕はドクオさんだけでなく、
       しぃの動きにも重々注意を払う必要があるんだ。

       邪魔できないよう万全を期しているつもりだが、
       まだ彼女は完全に僕のものになったわけじゃないからね」
.

374 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:52:01 ID:YnUWvF4c0
.
 警戒、という意味では、奴の言う通りだった。
 カードシャッフル時、ヤツは俺と直接接触しないよう注意しているし、
 ゲームの最中、しぃちゃんの方にちらちら視線を配る様子もあった。


 『 部屋にはイカサマ用の仕掛けはなく、それを使うつもりもない 』

 『 僕の持っている超能力は正真正銘、別人格と合わせて一つだけ。
  そしてこいつは、しぃちゃんの心身拘束にのみ使い、
  トランプでの勝負、ひいてはイカサマなんかには一切用いない」


            ポ リ グ ラ フ
 これらの言動は、嘘発見器によって保証されている。


(;'A`) (あと疑うとすれば、ポリグラフの信憑性だが……)


 このメガネボーイは甚だ信用できない。 しかし、ダイオードは別だ。
 ヤツは自分やポセイドンの超能力に関して、
 驚くほど惜しみなく、手の内を晒してきた。

 ああいった行動が全て、俺の不信感をぬぐい去るための下準備───、
 つまり、演技である可能性は、否定できない。
.

375 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:53:11 ID:YnUWvF4c0
.
        ., -―=''''''¨¨´ ̄ ̄ ̄ ̄"゛'''=―-、
 ―-=三        / ゚、。 /         三=-─
        .`‐―= ..,,,,______,,,,..=―‐´


 だが俺は、ダイオードの言うことに偽りはない気がしていた。

 加えて、疑惑を決定づける証拠が何もなく。
 ゲームを拒否する手だてもなく。
 ─── ゆえに。


(-[]3[]) 「ゲームを再開する。
      プレイヤーは速やかに自分の席へ戻ること。
      異論は認めない」

(;'A`) 「……わかった」


 それ以上、挟む言葉はなかった。


 〜 〜 〜
.

376 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:55:11 ID:YnUWvF4c0
.
(-[]3[]) 「ベット。 1枚」


 ゲームが再開するも、俺はどこか上の空だった。
 へらへらと挑発を繰り返すポセイドンに対し、
 どういうリアクションをしたのかすら、よく覚えていない。

 気づけばセンターテーブルに戻され、
 もはや嫌悪感すら覚える、その駆け引きの渦中にいた。


(l|l'A`) 「……うぅ」


 ポセイドンの施した事前策により、イカサマの入る余地はなし。
 これまでの結果は、正真正銘、ヤツの実力によるものだった。

 分厚い仕切りの向こう、さらに分厚いメガネの奥から、
 濁った目玉がぎょろぎょろと、こちらの動向を伺っている。
 俺は思わず目を逸らした。
.

377 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:55:56 ID:YnUWvF4c0
.
 ヤツの観察眼は、判断力は、怪物じみている。
 ただの緊張ではない。
 俺ははじめて、“ 恐怖 ” で身を強ばらせていることを自覚した。


  (-[]3[])


 勝てるのか、こんなヤツに。

 台札は [ 10 ] 。
 ヤツのハンドは [ 7 ] 。
 どっちだっけ。 ええと……。


                  (-[]3[])
                    │            【 WIN !! 】
                    ↓├───────────→
    .[A] [2] [3] [4] [5] [6] 【7】 [8] [9] [■] [J] [Q] [K]
   ←──────────┤
  【 LOSE... 】


 ああ、ハイカードだ。
 そんな事もわからなくなるくらい動揺しているのか。
.

378 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:57:08 ID:YnUWvF4c0
.
 勝率は5/11で……あああ、正確な数字がわからない。
 40パーセント台には間違いない。
 たぶん。 いや、きっと。

 [ 6 ] [ 7 ] [ 8 ] あたりは、ただでさえ判断に迷うハンドだ。
 こういう微妙なケースを目の当たりにした時こそ、
 プレイヤーの個性が問われる部分だと思う。

 ハッタリ ・ ベットに代表されるベットの駆け引き。
 トーキング ・ タイムでの卓外戦術。 トリックの応酬。 

 繰り出されるフェイクと付随する情報戦によって、
 勝敗は右に左に、多様な姿を見せゆくのだろう。

 ─── 通常ならば。


(l|l A ) (勝率半分以下、勝率半分以下、勝率半分以下───!)


 しかし。
 その時にはもう、追い込まれた俺の精神は、
 後退へ向け舵を切る手を躊躇わなかった。
.

379 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:58:03 ID:YnUWvF4c0
.
 勝率50%未満。
 勝てる確率半分以下。
 負ける可能性、確率以上。


 ::(l|l A ):: (う、ぐ……!)


 まともにやりあえば、負ける。
 負けてしまう。
 ならば選択は一つしかない。

 逃げなきゃ。
 降りなきゃ。
 負けを回避しなければ。

 この状態では、方法はそれしか……。


(l|l::A ) (フォルド。 言うんだ、その一言を)


 『 フォ 』 まで喉から出かかった ─── そこで、チップの箱に目が留まる。
 箱の蓋は上開き。 鼠色の天井に向けて、だらしなく口をあけている。
 これじゃあ中身がどんどん出ていくのも仕方がない。

 ほら。
 現にもう、中のチップは17枚。
 1/3にまで減ってしまった。
.

380 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:58:58 ID:YnUWvF4c0
.
(l|l'A`) 「こッ」

(-[]3[]) 「え?」


 なのに。
 まるでチップの箱に逃げ道を塞がれてしまったかのように。
 逃げろ! と叫ぶ胸中の何者かに反抗するかのように。


(l|l'A`) 「こッ、けッ、コ!?」

(-[]3[])

(;'A`) 「……コー、ル?」


 口をついて出た宣言は 『 コール 』 だった。
.

381 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 21:59:39 ID:YnUWvF4c0
.
 降りたい。 けど、降りたくない。
 レイズまではできない。 今にも負けそうなのに、とんでもない。
 ……でも、一方的にチップを減らす選択も、したくない。

 気の小ささが。
 愚かさが。
 優柔不断さが。


 :::<(; A )>::: (あああ……)


 俺の弱さが、その一言に集約されていた。
 思考停止─── それも、一つの逃げの形だった。


<(;゚A゚)>  ハッ

(-[]3[]) 「……ふーん、そう」


   て
(;゚A゚) そ (……違う! 何やってんだ俺!
       ここは “ 1枚レイズで様子見 ” がセオリーだったろ!)
.

382 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:01:02 ID:YnUWvF4c0
.
 何を選んでも、後悔ばかりが渦を巻く。
 子方1枚ベットに対する、親番の、セオリー。
 ……が。 今となってはその信憑性も疑わしい。

 よしんば判断を先延ばししたところで、
 より多くのチップを持っていかれるだけだ。

 1枚レイズすれば、
 ハイ ・ ハンドのポセイドンは、待ってました、とばかり、
 ベットの枚数を吊り上げてくるに決まっている。

 俺の迷いを、弱さを。 全て見透かしたような余裕面で。


(;*゚−゚)っ〓〓


 しぃちゃんがアイマスクを外す。
 黒目がちの潤んだまなこ。 投げかけられる視線。

 いつもは吸い込まれそうになる、澄んだその瞳の色が、
 今はとても辛い。

 ああ、怖い。 そんな目で俺を見ないでくれ。
 カードをめくる瞬間など見たくもない。
 俺も厚手の布で両目を覆ってしまいたい。
.

383 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:01:54 ID:YnUWvF4c0
.
((l|l A )) 「……う、くっ」


 素人だからしょうがない。
 ハイハンド相手だからしょうがない。
 ジリ貧だからしょうがない。
 壁が近づいてるからしょうがない。

 既に俺は、勝つための方法ではなく、負けた時の理由を探していた。
 逃げ道を求め、都合のいい言い訳にすがろうとしていた。

 マズい、これじゃ、もう……。



             『  オ ー プ ン  』



 負けを覚悟し、俺は歯を食いしばった。



 (続く)
.

384 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:03:55 ID:YnUWvF4c0
※いくつかミスの訂正。


●三二話
  >>246 冷たい光沢を放つ、メタル ・ コースター。
     → 台上に鎮座するシリコン ・ コースター。

      ※光沢放ったらあかん。 近づけたらカードの図柄が映るやんけ。


  >>286 ドクオ1ターン目……『 BET 1 』
     → 『 BET 2 』


●三一話
  まとめページ http://boonsoldier.web.fc2.com/channel31.htm の>>209 →削除


芸さんへ。
お手数おかけしますが、ご覧になられましたら修正お願いできますでしょうか。
すみませんです。


次話は短い。 その代わり早い。

385 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:05:20 ID:e.CGn2Ag0


386 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:06:04 ID:49pBgZu6O


387 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:14:20 ID:mBazalwU0
乙!がんばれドクオ…

388 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:15:21 ID:TlrzG4ww0
いつまでやってんだろうこれ

389 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:16:40 ID:edda0jusC
乙です!

390 名前:名も無きAAのようです:2012/10/11(木) 22:44:59 ID:4YbCAvoQ0
続き気になるー!

391 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 10:39:19 ID:vm3dq2LM0
乙乙

392 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:11:48 ID:DP4dOSEo0
※ 芸さんへ。 
迅速な対応&まとめありがとうございました!

393 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:16:05 ID:DP4dOSEo0
.
 ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
 |        S H O W     D O W N          |
 |___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ┌───┐
                 │(⌒⌒)│
                 │ .\/ .│
          (-[]3[])  │  7   │
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │(⌒⌒)│  ('A`)
        │ .\/ .│
        │  9   │
        └───┘



(;*゚ワ゚) 「あっ───!」

(;'A`) 「!!」


 だが、その予測はまたもや裏切られる。
.

394 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:17:08 ID:DP4dOSEo0
.
 手元に翻るは、─── まさかまさかの [ 9 ] 。


(;゚A゚) (……か、勝った……?)


 信じがたいことに。
 俺のハンドのランクは、ポセイドンを上回っていた。
 ショーダウンにおける初めての勝利だった。


Σ(*>△<) 「どく……ぅ、けほっ」

(; A ) (助かった……) ハァ

(-[]3[]) 「おめでとう。 ほら、4枚だ」


 だが、感慨と呼べるものはほとんど得られなかった。


(;'A`) 「え? あ、ああ」


 それは、考え抜いた戦略による勝利ではなかったから。
 ベットを選択する限り起こりうる、
 偶発的事象のひとつに過ぎなかったからだ。
.

395 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:18:47 ID:DP4dOSEo0
.
 むしろ “ 1枚レイズで応戦 ” というマイセオリーを
 簡単に放棄した、己の馬鹿さ加減に失望する。
 もはやそいつはベットの指標になりえない。


(-[]3[]) 「よかったねェドクオさん。
      ゲーム中断した効果、あったんじゃないか?w」


 加えて、最小に近い損害で済ませてみせる
 ─── どんな状況でもけして選択を誤らない、
 ポセイドンの実力に、恐々とするばかりだった。


(-[]3[]) 「ま、僕のほうも大───いに助かったけどね。
      レイズする絶好のチャンスを、
      ドクオさんが自らふいにしてくれてさ」

(;'A`) 「……」


 諸手を挙げて喜べない、いっときの勝利。
.

396 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:20:45 ID:DP4dOSEo0
.
 ======== 【 STAGE 8 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 10 ]

            ('A`) :        (-[]3[]) : -4 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  1
            CALL
    ..2nd

    Final

    Ante        0              3

   Hands       [ 9 ]            [ 7 ]

 ============================


 どうしよう。 どうしたらいい。
 このままじゃ負ける。 運だけじゃあ、この差は覆せない。
 なにか見つけなければいけない、なのに!
.
 明確な負けのイメージをさんざ刷り込まれてしまったせいだろうか。
 迷宮に惑う俺の心は、突き進もうとする気概を半ば失いつつある。
.

397 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:21:30 ID:DP4dOSEo0
.
 とにかくここから出たい……もうやめたい……。
 そういった感情が胸中を蝕んでいる。

 それが。
 セオリーという “ 紙のしるべ ” すら失った俺の、現実。


( A ) (勝てるのか? 本当に、俺は)

(;*><) 「ど……く、さ……!」


 ただほんの少し、猶予が出来たに過ぎない。
 残りチップは17枚。  敵のチップ、その2倍。


 敗北へのカウントダウンは、既にはじまっていた。
.

398 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:23:32 ID:DP4dOSEo0
.
●第三四話 『 wHo wAs tHe fiRst liAr ? ── VS. ポセイドンH 』



  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第9セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 17           (-[]3[]) : 33          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 行くべき道が見えない。
 頼れるものがない。
 気を抜くと、不安に押しつぶされそうになる。

 13枚の壁まであと4枚。
 1枚ベット→フォルドが発生するだけで、そいつはすぐに訪れる。
 壁が崩壊すれば、以降は常に、一撃死の危険に脅えることとなる。
.

399 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:29:34 ID:DP4dOSEo0
.
(-[]3[]) 「はは、どうしたんだい。 ドクオさん顔が真っ青だよ。
      ようやく勝てたんじゃん? 渾身の 1 枚 ベットでさw
      ここで弾みをつけなきゃ、ねェ?」

(;l|l 皿) 「よく、口が、回るな……」


 ラウンドを経るごと強くなる重圧は、かりそめの勝利のあとも、
 けして俺の背中を離してはくれなかった。

 緊張感がMAXに近づいている。 喉はからから、足の震えは止まらない。
 そのセットのトーキング ・ タイムは長かった。
 拷問のような体感時間だった。

 俺から漂う憔悴の色を、
 ポセイドンはとっくに気づいているだろう。


 :::(;*〓〓)::: 「……!」


 口を真一文字に結び、姿勢良く椅子にかけるしぃちゃん。
 俺がショーダウンで勝った瞬間を間近で見たせいだろうか。
 心なしか、頬に赤みがさしているように思える。

 俺が勝利することで、彼女は呪縛から解き放たれる。
 もしくは俺のせいで─── 彼女の人生が、未来が、閉ざされる。
.

400 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:31:16 ID:DP4dOSEo0
.
        ., -―=''''''¨¨´ ̄ ̄ ̄ ̄"゛'''=―-、
 ―-=三       :::(;*> 、 <):::         三=-─
        .`‐―= ..,,,,______,,,,..=―‐´


(;'A`) (しぃちゃん……!)


 今後の選択が、彼女の運命を左右する。

 もしも俺がゲームに負けたら。
 彼女はいったいどうなるんだ?

 そんなの、いまさら。 想像に難くない。
 ポセイドンのものになるということは、
 必然、ヤツの─── じょ、じょ、情婦? みたいなアレにさせられちゃう的系?

 といっても、何もそんな、死ぬわけじゃない。
 ひょっとしたら今より幸せな未来が───。


   (-[]3[])


 いやいやねーよ。 絶対それはない。 断言できる。
.

401 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:34:47 ID:DP4dOSEo0
.
:::<(l|l'A`)>::: (ああああああ! もおおおおお!)


 段々と逃げを打ちはじめた。
 脆い自分の精神に、心底嫌気がさす。


<(; A )> (しぃちゃんが、ヤツのものになる?)


 それは、彼女にとってどういう意味を持つんだ。

 彼女の全てはポセイドンに掌握される。今更だが掌握ってなんだろう。
 認めたくないが、あいつのカノジョにされてしまうのだろうなあ。
 いやいやそれこそ希望的観測ってやつだ。まっこと甘い考えだ。ストロングスウィーティだ。
 シロップとハチミツと粉砂糖と水飴と1ばんと2ばんのふくろをよーく混ぜテーレッテレー!
 すなわちポセイドンとの蜜月を……あっやばい俺ちょっとうまい事言った気がする。

 俺が言うのもなんだが、ポセイドンはほどよくぶさいくだ。見るからにヘンタイっぽい。
 オーラが、ソウルが、パーソノーが、全てにおいてヘンタイ性に満ちあふれている。
 あの黒いメガネのフレームは異常性欲のメタファーでもある。

 ブサメンすぎてこの世を呪いたくなることもしばしばだろう。 俺も覚えがある。
 ヘンタイ欲求を発散できず身悶える夜もあるだろう。 俺も覚えがある。
 家に帰れば自室には何に使うのかわからない謎の器具が一通り揃っているに違いない。
 毒々しい色の蝋燭! 高速回転するベッド! 電池で揺れるジャパニーズ工芸品!!
 で、その用途。 何に、はわからないが、誰に、は想像できる。
 言うまでもない。目の前で柳眉をハの字に曲げる白肌美少女に対してだ。
.

402 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:37:19 ID:DP4dOSEo0
.
 そう。美少女。しぃちゃんはびっくりするほどかわいい。俺が一緒にいるのが不思議なくらい。
 あまり美少女美少女言うのもどうかと思うけどさ、彼女を表現するにはつまるところその3文字よ。
 悔しいけど。何に対する悔しさかよくわからんけど。器量よし。道行く人が振り返る程度には。
 ありふれた表現だけど輝きがある。せっけんの匂いとは別に、肌からほのかに甘い香りもする。
 出会ってから半年と少し程度ではあるが、人当たりはいいし、笑顔はあったかい。天然の癒し系。
 それでいて彼女の横顔からはときどきぞくっとするような色艶を感じることがある。
 妖精の清らかさ、子悪魔の魅惑性。ふざけるな完璧超人。性別を越えてジェラシーすら感じる。
 相反する性質が同居するほんわか元気ガール。それが彼女。それが猫塚しぃ16歳。なんかAVタイトルっぽい。


<(;'A`)> (しぃちゃんが、いなくなる?)


 そんなしぃちゃん16歳が、あのクソメガネニキビモンスター15歳に手込めにされていいのか?
 答えはノーだ。そんなはずがない。あってはならない。お父さんが許さない。
 幸せに今後の学園生活を送り、幸せに卒業し、進学し、就職し───。
 いずれは素晴らしい男性に巡り会い、幸せにシアワセを掴まなければならない。
 結婚式には呼んでもらえるのだろうか。仲人とか友人代表みたいの頼まれるかなあ。
 緊張しすぎて失神したり吐いたり漏らしたりしないようにしなきゃ。ああ今から胃が痛くなってきた。
 ギコが、ブーンが、御両親の代わりに出席したイサム先生がぼろぼろ涙を流して……、いや、ちょっと。

 結婚? 出産? 待て待て。 いくらなんでもそれは。 ははははは。 先走りすぎた。
 どう見てもローティーンにしか見えない、あのあどけない容貌を見ろ。輝く制服を見ろ。
 出会い。告白。ハグ。相撲。キス。ペッ、セッ……そそそれは流石に犯罪ではないだろうか。いや犯罪だ。

 だが……だがそうとも限らない。適齢期を迎えるころには超美人に変貌を遂げているかも知れない。
 女ってヤツはほんとどう変わっちまうかわからない生き物だ。夏休みを堺に少女は女になる。
 一夏のアバンチュール。蛹が蝶に。もしくは蛾に。変態する。変態とのヘンタイを経て変態する。
 今は肩にギリギリ届くくらいのショートだけど、そのうちさらさらのロングになるかもしれない。、
 背も20センチくらい伸びてる可能性あるし、スタイル抜群かもしれない。爆乳にはたぶんならない。
.

403 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:40:46 ID:DP4dOSEo0
.
<(:::゚A゚)> (しぃちゃんが、……消える?)


 さておき彼女は優しい。気遣いもできる。かわいい。胸はちょっと小さい。けど少しある。
 怒ると消火器を投げることを除けば、案外いいロリ……ごほん、奥さんになるんじゃないか。
 あ、そういえばしぃちゃんって料理できるのかな。 なんかできそうな気もするな。
 得意料理はなんだろう。顔の倍くらいあるフライパンと格闘する姿が浮かぶ。

 真剣な顔で向かうしぃちゃん。淡い暖色のパッチワークエプロンがよく似合っている。
 夜なべして縫った手作りで、なれない針仕事に三回くらい指を刺しちゃって。絆創膏だらけで。
 彼女は背がちっちゃいから冷蔵庫の一番上を使うときは当然踏み台を使うだろうなあ。
 うんしょと背伸びして、それでも届かないときは旦那がしぃちゃんをひょいと抱えあげるわけ。
 でもタイミングってもんがあるじゃん。 いきなりだとやっぱ彼女もびっくりするわけじゃん。
 抱えられた瞬間「あっ」て叫んでバランスを崩して。二人一緒に踏み台から落っこちて。
 もつれあって。うっかり肌が触れ合って。はっとして。互いに顔を赤らめて。急いで起きあがって。

 んで料理再開。ベーコンエッグを作る。いやいや違った。ベーコンエッグは俺の好物だった。
 俺じゃない旦那が、俺のいないキッチンリビングで待ってましたと手を合わせてるわけね。
 しぃちゃんもその向かいにかけて……まて、しぃちゃん家では目玉焼きに何をかけるんだ?
 俺は醤油一択なんだけど、彼女がソース派、塩党、果てはマヨラーである可能性も考慮せねばなるまい。
 口へ運ぶ俺……じゃなくて。俺じゃない旦那を、ぐりぐり動く大きな目で見てる。めっさ見てる。
 控えめな胸に丸いお盆を押しつけるようにして、白い頬を真っ赤に染めて、上目遣いで、
 「はわわどうしよう砂糖と塩とパラジクロロベンゼン間違 (#゚A゚) 「うだらあああああああ!!!」


 妄想の世界から這いだした。
.

404 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:40:56 ID:dtDNND0c0
余裕があるんだかないんだか

405 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:41:27 ID:VWs0rorw0
ドクオwww

406 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:41:46 ID:DP4dOSEo0
.
(;*〓〓)

(;-[]3[])


(# A ) (あんな娘がポセイドンみたいなヤツに……?
     んなこと、あってたまっか!)


 彼女には未来があるんだ。
 人をさらって監禁するような醜悪デブガキ腐れ御曹司が、
 カードゲームの慰みに弄んでいいような娘じゃないんだ。

 絶対に負けられない。


(;'A`) (でも……)


 負けられないからこそ、
 負けた時の、彼女の失望の目が、怖い。

 ポセイドンのハンドは [ 3 ] 。 台札は [ K ] 。
 当然のチャンスだ。 考えるまでもない。
 9/11。 勝率82%。 普通にやればまず負けない。

 この機会を逃したら、あとは…… 一直線。
 転がり落ちる様がわかりきっている。
.

407 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:44:16 ID:DP4dOSEo0
.
(;'皿`) (ベットだ。 やるしかない)


 俺はチップの箱に手を突っ込む。
 黄色1枚。 青2枚。 手をすぼめるようにして、引き出した。


(#'A`) 「ベット……よ、よんッ! 4枚!!」


 ある意味当然の決断だった。
 4枚。 完全に “ 13枚の壁 ” を意識した選択。

 17−4 = 13。
 つまり4枚ベットなら、仮に負けても13枚は残るわけで……。


( 'A`) (ん?)

(-[]3[]) 「?」


( ゚A゚)
.

408 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:45:00 ID:DP4dOSEo0
.
Σ(;l|l゚A゚) (あああああああ!!)


 ちがっ。 ばっ、俺のばかやろう!
 一撃死を回避するための壁が 【 13枚 】 じゃねえか。
 じゃあ4枚賭けちゃダメじゃん! 負けたら残り13枚じゃん! ちょうど死亡ゾーンじゃん!

 徳俵のつもりなら、14枚残るように調整しなきゃならんだろうが。
 13枚じゃあ次の10枚ベットで追いつめられるだろうが。 死ぬだろうが。
 ここでベットすべきは、4枚じゃなく3枚だろう!
.

409 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:46:20 ID:DP4dOSEo0
.
三(; ゚A゚)ノ 「あっちょっと待って! それ! ちょっ!」


(-[]3[]) 「フォルド」

(; ゚A゚)ノ 「え?」


(-[]3[]) 「フォ ・ ル ・ ド!」


 慌ててベット額変更を申し出ようとした矢先。

 ポセイドンの突きつけた答えは、
 本日2回目の 『 即フォルド 』 だった。


(;'A`)ノ (え? え? あ……マジ?)

(-[]3[]) 「悪運が強いねぇ。 勝負は次セットまでお預けといこう」

(;'A`)ノ 「……あ、ああ」
.

410 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:47:13 ID:DP4dOSEo0
.
 しぃちゃんがあたふたとアイマスクを外した。
 驚く間も、安堵する間もなく、このセットは終わりを告げる。


┐(-[]3[])┌  「やれやれ。
          イカサマだなんだケチをつけられたことで、本当に流れを切ったかな。
          ……ま、そう言いつつ、次あたり爆発しそうだけどね」


 口調とは裏腹に、表情は余裕を保っている。
 失うことに何の未練もなさそうに、
 3枚のチップをボックスへ落とすポセイドン。

 アンティは情け容赦なく、そして二人に平等だ。
 最小ダメージで済まそうにも、降りればチップは確実に減る。
.

411 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:47:19 ID:bVi8h7UIO
パラジクロロベンゼン摂取したら死ぬなww

412 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:48:05 ID:DP4dOSEo0
.
(; A ) (た、た、助かった……)


 もちろん、安心なんて片時もできそうにない。 

 次のセットでアンティが “ すくう ” のは、
 俺の足下かも知れないのだから。



 ======== 【 STAGE 9 RESULT 】 ========

    Up Card : [ K ]

            ('A`) :         (-[]3[]) : -3 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  4
                           FOLD
      ..2nd

    Final

    Ante        0              3

   Hands        [ ? ]            [ 3 ]

 ============================
.

413 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:48:21 ID:o8Q8/kOs0
>>411防虫剤だもんなwww

414 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:50:33 ID:DP4dOSEo0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第10セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 17           (-[]3[]) : 30          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 10回目ともなると、置かれた状況のハードさが身にしみてわかる。
 ヤツは残りチップ半分超。  対する俺は、壁へ手の届きそうな17枚。
 枚数差は13だが、精神状態を含めるとそれ以上の溝ができてしまったといえる。

 最初は40枚のライン。 次は半分のライン。
 13枚の壁を意識すると、20枚のライン───。

 そうやってチップが減り、『 ライン 』 を割る段階ごと、
 正常な思考力がどんどん失われていくのがわかる。

 右は近道。
 左は回り道。
 真っ直ぐ行ったらけもの道。

 どれを選んでも結局、行き着く先は崖である気がしてならない。
.

415 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:51:42 ID:DP4dOSEo0
.
(;l|l'A`) -3 -3 「くっ……はぁ、うぅ……」


 状況は依然芳しくない。
 眼前暗黒感っつうのか、視野が少しづつ狭窄しているのがわかる。

 もともとメンタルが強いわけではなかったが、いよいよもって限界を感じた。
 一日を通して磨耗しきった精神は、針を振り切ろうとしていた。

 ポセイドンが何か言ったようだが、よくわからない。
 聞き逃してしまったようだ。
 答えの代わりに曖昧に頷き返す。 胃が絞られるようにきりきり痛む。

 なんだかハンドが見づらい。 動悸が収まってくれない。
 胸に圧迫感が。 苦しい。 ああどうしよう。
 はやく、はやくハンドを確認しなきゃ。 見ないとヤバい。 見ないと!


(l|l゚A゚) 「あ……」


 ポセイドンが一瞬視線を下げた。 下。 ロー。 ローカード。
 そうか、これは暗号じゃないか?  俺が掲げているのはきっとローハンドだ。
 ヤツの声がいつもより半音くらい高かった気もするし、間違いないだろう。

 ローだ。 ロー。 ろー。
.

416 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:53:28 ID:DP4dOSEo0
.
 左下からの連続音が、鋭く鼓膜に突き刺さった。
 手元のタイマーを取り落としそうになる。 その脇のコースターも。

 やべえ。 タイマーはともかくコースターを落とすとまずい。
 ハンドが見えてしまう。ローハンドを見られて、見てしまっちゃまずい。
 まずい。 まずい。

 タイマーのスイッチを慌てて押さえる。
 両手のひらに、じっとり汗をかいているのがわかった。


(-[]3[]) 「くくっ……相当のプレッシャーを感じているご様子で」


 テーブル。 真ん中のテーブル。 戻った。
 白いテーブル。 長方形の台上へ。 戻らされた。


   ベットは子方から。
    ベットは子方から。
     ベットは子方から。


 ヤツのハンドは [ 2 ] だ。 ハートが2個だった。
 3個じゃない。 2個だ。 負けるわけがない。 普通なら負けない。
.

417 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:56:05 ID:DP4dOSEo0
.
 でも俺はローハンドだ。 ヤツが鼻頭を掻いた。 ふんと息を鳴らした。
 じゃあやはり間違いない。 ロー。 ローハンドだ。

 特殊だ。 罠だ。 怪しい。 危険だ。 怖い。 逃げたい。 負けたくない。


:::(l|l A )ノ::: 「す、少し、時間を……くれ……」


 なにか、おかしい。
 せいしんが、ふつうじゃない。
 ささえていたいとが、ねもとから、ぷっつりいっちまったみたいだ。


 台札は [ 5 ] 。 まただ。 また。 またローハンド同士の対決。
 奇数はマズい。 奇数は割り切れない。 だから良くない。 せめて偶数なら。
 また予想を裏切られる。 また負ける。 またチップが減る───。

 ヤツはまた、弱いハンドと見せかけて、俺の裏をかくつもりでいる。
.

418 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:57:34 ID:DP4dOSEo0
.
(-[]3[]) 「わかった。 じゃあベット。 1枚」

      て
 (l|l゚A )ノ そ 「うぐっ」


(-[]3[])つ 「ほら早く! ドクオさんの番だよ! ほら!」


(((l|l A ))) 「あ、ああああああ!!」


 おちつけ、おちつけ、おちつけっ!
 ヤツは [ 2 ] 。 最弱同然のどうしようもないハンドだ。
 まず負けない。 でも今回はヤバい。 [ 2 ] は偶数だから余らないから───。


(-[]3[]) 「急げ! 負けるぞ! 早く選んで!」


 負けたくない!

 でもダメなんだ、あいつ、即フォルドしなかった。
 罠なんだ。 俺が賭けたら、引き上げられるんだ。
 レイズが待ちかまえてるんだぞ! おい! 責任取れるのかよおい!
.

419 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 21:58:56 ID:DP4dOSEo0
.
 逃げられなくなってしまう。
 今なら間に合う。 今なら。
 怖い。 逃げないと。 取り返しがつかなくなってしまう!


              (l|l゚A )


 なぜなら!  [ 2 ] は強いんだ、 [ 3 ] より。
 どちらも勝てるハンドは二種類。
 だけど、[ Q ] に勝てるのは [ K ] と [ 2 ] だけ。


             (((l|l A )))


 下克上の可能性がある! だから強いんだ!
 [ 2 ] は [ 3 ] より強い!
 俺は正しい! 間違ってない!


          (( <<((l|l AAA ))> ))


 だから危険だ! [ 2 ] !  [ 2 ] はデンジャラスハンド!

 赤信号! CAUTION! エマージェンシー! デッドオアアライブ!!

 黄色と黒のストライプが! WARNINGの文字が飛び交う! 回転式サイレンが鳴り響く!
.

420 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:00:51 ID:DP4dOSEo0
.
(;l|l゚A゚) 「レイズ! れ、れ、いちっ」

(-[]3[]) 「え? なに?」

(;l|l゚皿゚) 「1枚レイズだ! ちがっ、2枚! これで文句ないだろうが!」


 紛糾極まった。 最後は叫び声になっていた。
 けらけらと笑うポセイドンの横で、しぃちゃんが何事かと眉をひそめる。
 彼女は、くそっ。 そうだ。 また不安がらせてしまった。 ごめんよ。


(;l|l A ) ハァハァ


(-[]3[]) 「見てられないな。
       じゃ、レイズしてあげよう。 7枚ねwww」


        て
l|l (;l|l゚A゚) l|l  そ  「!! 7……枚っ!?」


(-[]3[]) 「さあ決めてくれ。 今すぐにね!
      乗るか降りるか。 ほらほら、勝負どころだよ?」


 あああああ!
 逃げたと思ったのに、また!
 選択が。 悪魔が。 忍び寄ってくる!
.

421 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:05:36 ID:DP4dOSEo0
.
 しぃちゃんの表情が著しく曇った。 アイマスクを着けていてもわかる。
 そんな顔をしないでくれよ、なあ。
 お願いだ。 怖いんだ。 俺は。


:::(l|l A )::: (決めたく……ない……)


 俺のせいで、君が地獄に突き落とされてしまうことが。

 俺の肩に、君の命運がのし掛かっている、この状況そのものが。


(;*〓〓) 「……」


 そいつが重い。 限りなく、押しつぶされそうに。
 情けない。 でも震えが止まらないんだ。
 助けてよ。 なあ、手を差し伸べてよ、しぃちゃん。

 なに落ち着き払ってるんだよ!
 俺は、俺は君のためにこんな思いをしてるんだぞ! なあ!
.

422 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:05:37 ID:o8Q8/kOs0
今回なんかすごいな

423 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:09:07 ID:DP4dOSEo0
.
 なにを考えている……落ち着け。 本当に落ち着けよ俺。
 おかしい。 なんか変だぞ。 なんだってここまで動揺してるんだ。
 さっきから、俺が俺じゃないみたいだ。

 ヤツの能力か? ズルい。 卑怯だ。
 イカサマだ!!  くそ!!! このクソガキ!!

 ふざけんな!!!  しね!!!!  ぶっ潰すぞ!!!!!!!!!

  _, ,
(l|l A ) (俺は────!)


 ……でも、きっと。
 ……違うだろ、俺のバカ野郎!


 ::: (l|*〓〓) :::


 彼女の感じているプレッシャーは、俺なんかの比じゃない。
 しぃちゃんは、このギャンブルで不利益を被る当人だ。

 負けたら体の自由が奪われる。 明日が閉ざされる。
 心が、記憶が、生きてきた刻印が、失われる。

 何をされても文句すら言えない、
 従順な操り人形にされてしまうのだ。
.

424 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:10:36 ID:DP4dOSEo0
.
( A ) (あ……れ……?)


 それは死と同義ではないのか。
 俺の選択が、彼女を死に追いやってしまうのか。


  ( ゚A゚)


l|l <(l|l゚A )> l|l (─── いやだ!)


 あああああ。 怖い、震えが止まらない。
 強迫観念でがんじがらめでめちゃくちゃでぼろぼろだ。
 こんなの。 ずっと最後まで気付かなければ良かったんだ。

 13枚の壁なんて。
 敗北にともなう、しいちゃんの処遇なんて。

 軽く考えすぎていた。
 おとぎ話の世界だけだ。
 さらわれたお姫さまが、何をされるでもなく牢屋の中で助けを待てるのは。
.

425 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:11:51 ID:DP4dOSEo0
.
 幸せ? 救い? そんなのあるはずがない。
 それが証拠に、俺は何度も何度も見てきたじゃないか。
 聞いてきたじゃないか。 感じてきたじゃないか!


 心を冒された者達の煩悶を。


     涙を。

        呻きを。

           狂態を。



        ., -―=''''''¨¨´ ̄ ̄ ̄ ̄"゛'''=―-、
 ―-=三       ::: (* ;−::) :::        三=-─
        .`‐―= ..,,,,______,,,,..=―‐´


 そして何より、目の前にいる少女の、悲しみを。
 目元を腫らして。 顔をぐしゃぐしゃにして……。
 夜の校舎、窓際で涙を流す彼女を。

 心を土足で踏み荒らされ。 悲痛な叫び声をあげながら。
 水の中でもがき、のた打ち回る、しぃちゃんのあの姿。
.

426 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:13:46 ID:DP4dOSEo0
.
(( <(l|l A )> )) (どうすりゃいいんだよっ!! くそっ!)


 7枚へのレイズ。
 ハッタリじゃない。
 ポセイドンは確実に潰しにきている。

 ヤツがベットを引き上げたゲームでは、俺は一度たりとも勝てていない。
 追い立てるがごとく選択を促す様に、悪辣な意図をひしひしと感じる。

 乗るのか? レイズに。
 あからさまに罠なのに。 地獄から手招きしているのに。
 俺はローハンドだ、そこは間違いない。 間違いないんだよ!


 7枚のショーダウンは、実質10枚の勝負となる。
 ここで負けると残りは7枚。
 そうなってしまうと、はっきり言ってもう勝てない。

 ベットの自由が利かなくなることは、
 駆け引きの権利の大半を失うということだ。
 イニシアチブを完全に握られるということなんだ!


 わかってんのかよ!!  おい!!!!
.

427 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:16:17 ID:DP4dOSEo0
.
 ここでコールして、負けて、残り7枚になる。
 すると、以降のベット ・ ラウンドは、実質ヤツの支配下におかれる。

 俺にできるのは、ゲームの体をなさない機械的なベット。
 7枚の紙くずをいかに長く持たせるかという、ただそれだけ。

 滅びの瞬間をただ待つのみじゃねーか!!!
 ばーか!! そんなこともわかんねーのか!!!


(; A ) (だからこそ、ここ、ここで勝たなきゃだろ!?)


 目の前が暗くなる。 現実感が遠のいてゆく。


 マーブルグレーのスクリーンに、おぼろなビジョンが映し出された。
.

428 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:21:50 ID:DP4dOSEo0
.


 ─── ぼろぼろの服。

      肌は傷だらけで、床にその矮躯を力なく横たえるしぃちゃん。


      暗い双眸が、立ちすくむ俺をうつろにとらえ。

      消え入りそうな声が、けれどはっきりと、俺の耳に届く。




               『 ……信じていたのに 』

.

429 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:23:45 ID:DP4dOSEo0
.
 気付けば、喉が裂けんばかりに叫んでいた。



       て
(;-[]3[]⊂ そ  「ひ!?」


Σ(l|l*〓〓) 「ドく………さ!?」




 両手で机を叩き、
 恫喝さながら眼前の醜面へ怒鳴りつける。




      て
(l|i-[]3[]) そ  「─── なっ!?」
.

430 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:25:13 ID:DP4dOSEo0
.
(;-[]3[]) 「……あ、ああ、コホン」


( A ) 「……」


(;-[]3[]) 「……そ、その選択でいいのかい?」


 俺は無言で何度も頷いた。
 これ以上聞き返されたくなかった。

 重なったからだ。
 想像の中で生気を失っていたしぃちゃんの。
 濁った視線が、絶望をたっぷり含んだ声色が、あまりにも。

 そっくりだったのだ。
 何度も夢に出てくる、屋上の女の子に。


 ぼくの目の前で。 何度も。 何度も何度も何度も。

 幾度となく転落死する少女、トモミに。
.

431 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:29:50 ID:DP4dOSEo0
.
(-[]3[]) 「そ、そうか。 それでいいんだな……」


 プレッシャーに、負けた。

 逃げ出した。
 あっさりと。
 目の前の勝負から。

 笑われ、なじられる用意はしていた。
 が、実際には嘲りの言葉をかけられることもなく。

 あまりに極端な俺の変化に、面食らったのだろうか。
 淡々と話すポセイドンの口調からは、
 むしろ、愉悦の色は薄くなったように感じられた。


(-[]3[]) 「チッ。 息の根を止めてやろうと思ったのに」


 ぼそりと吐き捨てる声が聞こえた。
 しぃちゃんが目隠しを解く。
 彼女と視線を合わせることはできなかった。
.

432 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:30:55 ID:DP4dOSEo0
.
 苦悩の果てに俺がつかみ上げたのは、
 最悪としか言いようのない選択肢だった。


               『 ─── 救えないよ、誰も 』


 本当に、救いようがない。


 [ 2 ] のハンドを前にして、フォルド。


 冷静に考えれば、勝負以外にないのに。
 またとないチャンスなのに。

 それなのに、俺は。
 怖かった。
 7枚レイズの真意がはかれなかった。

 そしてそれ以上に、
 少女を奈落へ突き落とすことになるかも知れないという、
 その重圧に耐えきれなかった。
.

433 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:31:57 ID:DP4dOSEo0
.
        ( A )


 またチップが減った。
 レイズしていた分の2枚と、アンティ3枚。
 計、5枚。


(((l|l A ))) 「あああああ……」


 後悔がどっと押し寄せる。
 さっきまでのが荒波なら、今は津波。
 俺の全てを呑みこみ、押し流そうとしている。


               『 君には、救えないよ 』


 当たり前だ。 先延ばしにしただけだ。
 目の前の選択から逃げて。
 勝ち得るチャンスをふいにして。

 力が抜け、俺はテーブルに突っ伏した。
.

434 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:32:56 ID:DP4dOSEo0
.
 ======== 【 STAGE 10 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 5 ]

            ('A`) : -5      (-[]3[]) : -1 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                   BET  1
           RAISE  2
    ..2nd                  RAISE  7
           FOLD
    Final

    Ante          3             1

   Hands         [ ? ]          [ 2 ]

 ============================


(-[]3[]) 「……相当参ってるようだねえw
      さあ、早いところ済ませてしまおうか。
      もう決着はついたようなもんだけどさぁ」


 ヤツの言う通りだ。
 俺は戦意を喪失していたも同然だった。
.

435 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:34:40 ID:DP4dOSEo0
.
 次のゲームなんてやりたくない。
 が、それ以上に、この空気に耐えられそうにない。

 心配げなしぃちゃんの視線が、
 今はもう、俺を非難しているようにしか思えないのだ。


 『 どうして勝負から逃げ出したんですか? 』

 『 わたしのことなんて、どうでもいいんですか 』


 そう言っているようで。 怖い。


 『 ───  人 殺 し  』


 やめてくれ!

 さっさと次のゲームへ移ろう。
 そうすれば、彼女の両目はふたたび闇に覆われる。
 冷たい、咎めるような眼差しを、視界に入れなくてすむ。
.

436 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:36:09 ID:DP4dOSEo0
.
(-[]3[]) 「情けないねぇ。 もうちょっと骨のある人かと思ったけどwww
      見なよサイアミーズ。 これが君の信頼していた人の末路だ」


 うるさい、早く次にいってくれ!
 しぃちゃんの視線を、存在を、封じ込めてくれ!


 (-[]3[])⊃ 「くっ。 くくくっ……」


 逃れたい一心から、
 俺は知らず知らずコースターに手を伸ばしていた。


 ::: (l|l A )⊃::: 「……」


 ……

 その時だった。
 本当に偶然の出来事だったのだ。


 「「 あっ 」」
.

437 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:38:06 ID:DP4dOSEo0
.
 テーブル上でそれは起きた。
 払いのけようとした俺の手と、回収すべく伸ばされたポセイドンの手が、
 両端から同時に力を加え。

 指に引っかかったそれ ─── さっきまで俺のハンドだった一枚のカードは、
 しなやかに湾曲し、コースターから跳ね上がる。


(;'A`)⊃ 「───ッ?」


 宙で一度翻ったあと、ス……と着地し、


(;-[]3[]) 「!」

(;*゚ο゚) 「ぁ……ぅ?」


 三つの視線の中央に、その素顔が露わになった。
.

438 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:41:03 ID:DP4dOSEo0
.
 『 !!! 』


 絵柄が目に入ったのは、ほんの一瞬だった。

 壁の向こうのポセイドンが、その体躯に似つかわしくない俊敏な動きで
 カードを手元へ引き寄せたかと思うと、次の瞬間には裏返していたからだ。

 息が荒い。
 すぐさま他のカードと混ぜ合わせ、鬼のような形相をこちらに向ける。


(#-[]3[]) 「触れるなって言っただろう!」

Σ(; ゚A゚) 「あ、ああ……」

(((#-[]3[]))) 「次の親は僕だ! ルールは守れよルールは!」

(;'A`⊂ヽ ))) 「わ、悪い」
.

439 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:42:28 ID:DP4dOSEo0
.
 何がこいつの逆鱗に触れたのか、すぐにはわからなかった。

  _,
(;*゚ -゚)


 アイマスクを握りしめたしぃちゃんが、ぽつりと漏らす。


 『 くぃーん……? 』


 そうだ。
 今この目で確認した、前回の俺のハンドは、 [ Q ] 。

  _, ,_
(#-[]3[]) 「どうでもいい! 次だ、次のセットだ!!」


(;'A`) 「……」


( ゚A ) 「!」


 一瞬遅れて、彼女の言いたいことを理解した。
.

440 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:43:36 ID:DP4dOSEo0
.
( ゚A゚) ( [ クィーン ] !? いや、それって)


 ふたたび早鐘を打つ心臓。
 じゃあ、もし、さっきのベットラウンドで降りてなかったら。


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

                 ┌───┐
                 │(⌒⌒)│
                 │ .\/ .│
          (-[]3[])  │  2   │
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │(⌒⌒)│  ('A`)
        │ .\/ .│
        │  Q   │
        └───┘

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
.

441 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:47:39 ID:DP4dOSEo0
.
(:::::゚A::) (  [ Q ] VS [ 2 ] !
        負けていたのか! 俺は!)


 下克上の組み合わせ。
 愚行に等しいフォルドは、結果的に正解だったのだ。

 もしもレイズしていたら。
 いや、コールでも同じことだ。

 レヴォリューション ・ アタックは、ベットの倍額。
 7枚レイズに乗っていたら、14枚。
 アンティ3枚を加えて、総額17枚のロスト。


 ─── 1 7 枚 ! ?


Σ(; ゚A) (終わっていた、一撃で!)


 九死に一生とはこのことだ。
 一瞬の気の迷いで、紙一重で、俺は生き長らえたのだ。
.

442 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:51:02 ID:DP4dOSEo0
.
 が。

 安堵する間もなく、新たな疑問がわき起こる。


(  A゚) ( ────── !?)


 ショックをバネにして、俺の脳は正常に動き始めていた。

 ちょっと、待て。
 ヤツは、俺のハンド [ Q ] を目の当たりにしながら、
 7枚ものレイズをふっかけてきたっていうのか。

 なんていう心臓だ。
 自分のハンドに相当の自信がないと、
 そんな大それたギャンブルは。


(;; A゚) (できるわけが、ない)


 確信していたのか?
 俺の態度から、目線から、言動から。
 自分のハンドが、最強の [ K ] であることを。

 それとも ───。
.

443 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:52:33 ID:DP4dOSEo0
.


              << 最初から、知っていたのか >>



 コースターに伏せられたハンド。
 おのれの懐刀が。
 [ Q ] を倒せる、数少ないランクであると。



              << 一撃必殺の [ 2 ] であると >>



(;l|l A゚) (まさか、それは)


 瞬間、ポセイドンの漏らした呟きがよみがえる。


 『 チッ。 息の根を止めてやろうと思ったのに…… 』
.

444 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:53:50 ID:DP4dOSEo0
.
    て
(;l|l A) そ  (レイズに乗れば、俺がこのセットでゲーム終了することを知っていた?)


 偶然とは思えぬ符号。
 奴はやっぱり何かやっていたのか。


                  << イ カ サ マ >>


   ::::(;;゚'A゚)::::


 でも俺は、外で言質を取ったはず。
 中でもしっかり確認した。
 己の目で、指で。


 『 ギャンブルルームの中に、イカサマ用の仕掛けはない 』


 ポ リ グ ラ フ
 嘘発見器を使用した際に、
 『 イカサマしない 』 そう言わせなかったことが悔やまれる。
.

445 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:55:02 ID:DP4dOSEo0
.
 だが。 どうやって?
 ルーム内に目立った仕掛けがないのは確かだ。
 自分のハンドを知るために、ゲームを通して何を仕込めるっていうんだ?


 間仕切り。 天井。 壁。 ドア。 カギ。 椅子。 タイマー。 ポセイドン。

 カード。 ボックス。 テーブル。 チップ。 アイマスク。 コースター。 しぃちゃん。


 他に何がある?
 このルーム内に、どんな見落としがあったっていうんだ?


 『 僕の超能力は、勝負には用いない 』


 わからない。

 ポリグラフが本物だという前提が覆らない限り、
 イカサマなんて、できるわけが───。

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446 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:56:08 ID:DP4dOSEo0
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                       ! ?
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. (゚A゚)
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447 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:56:55 ID:DP4dOSEo0
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 脳天に稲妻が走った。
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448 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:58:55 ID:DP4dOSEo0
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. (゚A゚)   ・ ・ ・ ・ ・ ぜ っ
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449 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 22:59:51 ID:DP4dOSEo0
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                   前    提    が
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                   覆    る    ?
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450 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:00:34 ID:DP4dOSEo0
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                       ( ゚ A ゚ )
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451 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:01:17 ID:DP4dOSEo0
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.
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          あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! 
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452 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:02:46 ID:DP4dOSEo0
.
 その考えを核として。
 ばらばらだった疑問のパーツが、ひとつずつ枠にはまってゆく。

 感じた違和。
 抱いた疑問。
 不自然な現実。

 それら全てが、トリックを形作るパズルの1ピースだったとばかりに。
 ぴたり、ぴたりと。


 (;:::::A゚)


 ほぼわかった。 わかったんだと思う。
 奴が今まで何をしていたのか。


(;::::A ) (『 嘘 』 はあった! 確実に!)


 すべてはあの時の一言が発端だった。
 ヤツが用意した数々の種は、
 俺たちの “ 認識を狂わす ” ことを最大の目的として、蒔かれていたのだ!
.

453 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:04:20 ID:DP4dOSEo0
.
 わかるはずがない、こんなこと。
 が───それでも。
 可能性のひとつとしては、頭の片隅にあったはずだ。

 ひとつひとつの出来事が、その考えを排除するように仕向けられていた。
 都合のいい “ 先入観 ” を構築するべく、これらは用意されていたんだ。


::::(;; A ):::


 俺の考えに間違いがなければ、それは───。


 その時だった。


      て
 ((;;゚゚A゚゚)) そ 「「 !? 」」


 にわかに場がざわめき立つ。

 コンテナの壁を通してもわかる、轟音。
.

454 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:05:01 ID:DP4dOSEo0
.
 続けて響いた恫喝の声に、俺たちは身を固くする。


ミ(;*゚□゚) 「な……に? そ……」

([]3[]-;)彡 「なんだ? おい、いったい何が……」


 外で、何かが起きている。


( A゚) 「!」


 続けて目に飛び込んできた “ 不可解な行動 ” に、
 俺は疑惑への確信を深めた。


 ここで、この人物が、こうする理由はひとつしかない。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

455 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:05:45 ID:DP4dOSEo0
.
 だが、のべつ追い立てる現実は、
 我々に悠揚たる思考を許してはくれない。


(;'A`) (これは……シャッターの開閉音?)


 俺たちの預かり知らぬところで。

 歯車は、回り始めていた。



.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 12           (-[]3[]) : 29          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 (続く)
.

456 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:10:22 ID:bVi8h7UIO
おつんつん

457 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:17:25 ID:dVVF8.QkC
乙!

458 名前:名も無きAAのようです:2012/10/12(金) 23:18:33 ID:o8Q8/kOs0
乙!次回がすごく気になる!

459 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 00:58:45 ID:wKxSuSjw0

ついに決着かな?

460 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 02:03:53 ID:K52a.wBQ0
乙!クライマックスか!?
ドクオの緊張感に読んでるこっちまで引きずられる

461 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 03:49:42 ID:SARND0eo0
乙!! 濃厚な心理描写が凄まじい
相変わらず気になるところで止めやがってw

462 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 10:12:00 ID:XFISi6Y60
おつ
緊張感で胃がキリキリする

463 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 10:44:25 ID:I3y9z3KA0
乙!
「嘘」って何だろう…

464 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 15:38:58 ID:gMTdv4860
賭博黙示録ドクオ

465 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 17:54:54 ID:LKS.rNSE0
※一か所訂正。

>>439
  × 一瞬遅れて、彼女の言いたいことを理解した。
→○ 一瞬遅れて、事の重大さを理解した。


>>463
ポセイドン編に出てきたキャラクターのセリフのうち、
『 この一言 』 が否定されるだけで、ゲームの公平性が根底から崩壊するものが一つあります。
嘘発見器での保証がないセリフです。 というより、嘘発見器の抜け道。
暇なら予想しててくれれば幸い。

トリックは予想できるようなモノではないので多分わからないと思います。
相当柔軟な発想と、インディアン・ポーカーというゲームの特性を考えるとわかる……かも?
いちおう伏線は数か所仕込んでます。

466 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 20:21:50 ID:AabMRoVU0
「部屋にイカサマの仕掛けは無いし使わない」
「自身の超能力をイカサマに使わない」
とはいってもイカサマはしないとは言ってないんだよな
部屋の外側にいる奴が何かしらの手段を用いれば出来るよなぁ

ダイオードの能力は外部保存出来て、他の人間にも扱えるなら
ロッカーつけてても超能力自体は使えるってことになるんじゃないかなー
読心術的な超能力とテレパシーの超能力があれば両者のカードを知って
ポセイドンに指示を出すことは出来そうだ

467 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 21:29:03 ID:n683l1R20
そういうことか

468 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 22:50:51 ID:LKS.rNSE0
.
(;'A`) 「>>466 ダイオードがイカサマの加担者なら、
     懇切丁寧に自分の能力を解説しないんじゃないかな?
     どんな能力でも使えるよーと公言するメリットはないわけだし」


('A`) 「答えはもうちょいシンプル。
     “ ある人物の、ある一言 ” に誘導されて、
    誰もが “ 虚偽の事実 ” を信じ込まされている。
    ポセイドンが準備した “ ある物 ” も、その思い込みを植え付けるのに一役買っている。

    その人物の言動 ・ 行動だけを注意深く追っていけば、
    イカサマの正体もなんとなーくわかるかも?」



※迅速な対応ありがとうございます! >ブーン芸VIPさん


 次話はなるべく今月中……難しかったら来月頭くらいかな。
 読んでくれてありがとう。

469 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 23:04:27 ID:oJu3zKZQO
駄目だ……。偏差値58の俺には理解できねぇ……。

470 名前:名も無きAAのようです:2012/10/13(土) 23:05:27 ID:oJu3zKZQO
理解出来ない×
想像つかない○

471 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 00:38:42 ID:F28OUouk0
そうやって謎解き風に言ってるけど予想書くわけにもいかないから次くるまで悶々としてないといけないんだよな・・・

472 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 01:03:32 ID:vxRRelLE0
能力が使えなくなっていないとか

そういえばインディアンポーカー最近やってねえな
イカサマして姉にブチギレられてから誰も相手にしてくれない

473 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 05:37:48 ID:VRyvnh4A0
ギコの居場所云々かなあ、いや待てそれより
黒服Cを俺はいつの間にかゲイと信じていたがまさか……!

474 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 06:42:12 ID:Diru1Kwg0
割と最初っから思ってたんだけど部屋にイカサマの仕掛けは無いんだよな

475 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 11:09:30 ID:YBIagCZg0
またこんないいとこで終わりやがって……
今回は読んでてずっとはらはらし通しで、凄く面白かった
次が楽しみでどうしようもない

476 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 11:33:13 ID:qiL7F7M20

今回はドクオさんのヘタレっぷりがプラスに働いたな

477 名前:名も無きAAのようです:2012/10/14(日) 19:45:29 ID:zDfcvMGoC


478 名前:名も無きAAのようです:2012/10/15(月) 09:13:35 ID:GEzhzB02O
しいは本当に洗脳されていないのか

479 名前:名も無きAAのようです:2012/10/19(金) 00:03:17 ID:U9k86UKs0
>>188
これって去年作ったのか?

480 名前:名も無きAAのようです:2012/10/19(金) 00:22:03 ID:U9k86UKs0
すみません、上のはムシでお願いします

481 名前:名も無きAAのようです:2012/11/12(月) 21:39:26 ID:P.z6oMpM0
.
 [ Rate of progression ]
 ■■■■■■□□□□
  11/12    30 / 50KB


 11月頭に投下すると言ったのに……スマンありゃウソだった。
 ( ・3・)もう少し待ってくれYO

482 名前:名も無きAAのようです:2012/11/12(月) 21:40:53 ID:BFP1ZfJ60
待ってる

483 名前:名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 05:59:12 ID:P0ojnPsg0
全裸待機が厳しい季節になってきました

484 名前:名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 13:27:34 ID:U6V.mZ.I0
wktkwktk

485 名前:名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 04:48:54 ID:C5p9/k4EO
楽しみにしてるぜ

486 名前:名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 18:10:48 ID:UlXZmAUU0
待ってます

487 名前:名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 15:21:09 ID:fQbfN4HI0
生きてるか?

488 名前:名も無きAAのようです:2012/11/26(月) 19:55:20 ID:LHbbExH.0
早漏すぎワロタ

489 名前:名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 19:00:30 ID:NeVOhC.60
早いもんで、もう12月になるのか
下半身が凍えそうだが、まだ耐えれるさ・・・

490 名前:名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 22:55:50 ID:FIDmpF.Q0
 [ Rate of progression ]
 ■■■■■■■■■■□□
  11/30    50 / 60KB


 も、もーちょい……

491 名前:名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 13:15:00 ID:IVLXkvYA0
がんばれ!

492 名前:名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 22:08:03 ID:HGTe/afo0
待ってる!

493 名前:名も無きAAのようです:2012/12/06(木) 09:08:02 ID:6jLw0exsO
愛してる!

494 名前:名も無きAAのようです:2012/12/06(木) 14:33:40 ID:fGlcUr5I0
結婚して!

495 名前:名も無きAAのようです:2012/12/06(木) 20:09:54 ID:1jKOwHtg0
合体して!

496 名前:名も無きAAのようです:2012/12/06(木) 21:53:40 ID:LwW/M9oM0
責任とって!!

497 名前:名も無きAAのようです:2012/12/06(木) 23:05:27 ID:liMZNxHk0
もう一度愛を私に囁いて!

498 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 00:06:26 ID:jeJ3yYjo0
そしてこう言って!

499 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 01:24:59 ID:0zasH/0I0
∀@) <ちくわ大明神


彡 サッ



 [ Rate of progression ]
 ■■■■■■■■■■■□
  12/06    55 / 60KB


 あと3時間あれば書き上がる。
 問題はその3時間を捻出できない点だ。

500 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 01:36:26 ID:9e5My5/wO
12月だものなあ

501 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 08:20:29 ID:rDBKnUCI0
誰だ今の

502 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 11:16:19 ID:lCU43T1M0
本物!ミスユニバースファイナリストがAVデビュー!
http://yorutomo1.blog77.fc2.com/blog-entry-1765.html

503 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 18:00:19 ID:Wm1SRybgO
じゃあ俺の三時間をあげよう

504 名前:名も無きAAのようです:2012/12/07(金) 23:35:53 ID:Ok.bc91QO
ちくわワロタwwww

505 名前:名も無きAAのようです:2012/12/08(土) 01:41:20 ID:681.4pxwO
今さらだが一話から読みはじめてやっと追いついたよ 
続きはよ!

506 名前:名も無きAAのようです:2012/12/09(日) 11:58:15 ID:y5urpMXc0
キテナ━━━━(・A・)━━━━イ !!!!!

507 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 00:01:55 ID:Wbtxos..0
なんだそれ。
そういう事言われるとめっちゃ嬉しい。 超ありがとう。


 [ Rate of progression ]
 ■■■■■■■■■■■■
  12/10    60 / 60KB


書き上がったものの、あいにくまとまった時間が取れるかどうか。
今週の夜、数日かけて小分けに投下予定。 時間は未定。
待たせてごめん。

508 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 01:17:45 ID:BlfxV.w2O
待ってる

509 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 01:28:12 ID:5XghHJd2O
待ってるわよ!

510 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 07:04:56 ID:qgokljuM0
ホー! ホァー! ホァアア!!

511 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 15:33:52 ID:wy8xj6R20
よっしゃあ!
結局謎わかんなかったぜ…

512 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 16:55:43 ID:2ggGx/PQ0
無理はしないでいいからね
でも頑張って 待ってますよ

513 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 19:45:42 ID:jPVCZPFkO
全裸で待ってます

514 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:02:46 ID:Wbtxos..0
22:30より、20〜30レスほど投下。

515 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:04:15 ID:3qg89jYo0
舞ってる

516 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:46:25 ID:Wbtxos..0
.
 不可解な光景だった。

 音は俺たちから見てJZ(ジャッジメントゾーン)方向より聞こえてきた。
 現にしいちゃんも、自分のいるエリアの壁に向かって、不安そうな顔を向けている。

 だがポセイドンは、
 音が聞こえたのと逆、ドア側へと視線を向けているのだ。


(::::::A ) (そちらの壁の向こうには───)


(; ゚A゚) 「!!」


 しかしそこで。
 思考を遮る、男の叫び声。


(;'A`) (ブーン、まさか!?)


 不安が胸を包む。

 ルーム外で、何かが起こっている。
.

517 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:47:26 ID:Wbtxos..0
1レス目から間違えた。訂正

518 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:47:34 ID:Oy5Xoxis0
きたか

519 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:47:41 ID:3qg89jYo0
よし来た支援!

520 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:48:54 ID:Wbtxos..0
.
 不可解な光景だった。

 音は俺たちから見てJZ(ジャッジメントゾーン)方向より聞こえてきた。
 現にしぃちゃんも、自分のいるエリアの壁に向かって、不安そうな顔を向けている。

 だがポセイドンは、
 音が聞こえたのと逆、ドア側へと視線を向けているのだ。


(::::::A ) (そちらの壁の向こうには───)


(; ゚A゚) 「!!」


 しかしそこで。
 思考を遮る、男の叫び声。


(;'A`) (ブーン、まさか!?)


 不安が胸を包む。

 ルーム外で、何かが起こっている。
.

521 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:49:53 ID:Wbtxos..0
.
 〜 〜 〜


「うわああああ!」


 悲鳴が轟いた。

 声の主は黒服の一人だ。
 ドレッドの頭髪をかきむしるように、両手で頭を抱え込む。

 隣にもう一人の黒服。
 血走った目を落ち着きなくぎょろぎょろ動かしている。
 そのうち口の端から泡までこぼれ出した。


 二人は何かにおびえるように身体を竦ませる。
 続けざま、絶望の不協和音が倉庫内に木霊した。

 男たちの狂態は、
 衆目の喉から言葉を奪うに十分たるものだった。
.

522 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:53:08 ID:Wbtxos..0
.
「な、何をした、貴様ァ!」


 我に返ったのだろう、別の黒服が恫喝した。
 視線の集中する先。
 苦悶にあえぐ黒スーツ達の、中心に立つ人物へ。


『 手を出したのは……そっち 』


 割れた窓──割ったのはオサムだが──をバックに、
 “ 彼女 ” は泰然と振り向く。


川:::::::::川


 吹き込む風を受け、ゆらり揺らめく影ひとつ。
 柳のように枝垂れるは、月光やどす、絹の黒髪。
.

523 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:54:34 ID:Oy5Xoxis0
sdkさん!

524 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:54:43 ID:fd45epTk0
チャネラーきたー!

525 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:55:21 ID:Wbtxos..0
.
川д川 「……内藤……くん」


 周囲と同じく、目を丸くして見守る同級生へ。
 長い髪の少女は静かに呼びかけた。


(; ^ω^) 「サダちゃん! どうしてここにいるお!?」


 ブーンの問いに、井戸中サダコはマイペースに答える。


川д川 「私……つけて……きた」

(; ^ω^) 「つけて? え? 僕たちを?」

川д川 「詳しいことは……あとで。
      ただ……一つ、言っておかなきゃならないことが……」

(; ^ω^) 「な、何だお!?」

川д川 「……内藤くん。 ごめんなさい」 


 ── 『 あなたを助けたい 』
 ── 『 ひどい事をする、周りの奴らが許せない 』

 ── そう考えていたら、ね?
.

526 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 22:57:31 ID:Wbtxos..0
.                            パ ラ ノ イ ド
川∀川 「……戻っちゃった……みたい。 “ わたしの超能力 ” 」


 前髪の隙間より、面妖なる笑みが覗き。

 彼女に触れてしまった黒服たち──。
 精神汚染の犠牲者の絶叫が、月光の下、重なった。 


爪;゚〜゚) 「くそが! だから簡単に近づくなって……!」


 タムラが苦々しげに吐き捨てる。
 退屈な見張り業務だったはずが、
 闖入者の出現によって、事態は一転、二転。


/ ゚、。 / 「そっちもいいケド。 あれ」


 ダイオードはそう告げて、入口側を顎で示した。
 黒服よりプレートを受け取り、手首のバンドに通す。
 緑のランプが赤く変化する。

 シャッターはすでに上がりきっていた。
 それは、コンテナ内のカード勝負を外で待っていた彼らにとって、
 あまりに急で、不可解な出来事だったのだ。
.

527 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:00:13 ID:Wbtxos..0
.
 いきなり上がり始めた倉庫の入口シャッター……。
 半分ほど開いたそこから現れたのは間違いなくサダコで、
 黒服たちの狂態も彼女が引き起こしたものだ。

 だが。

 壁の配電盤に取り付き、
 開閉スイッチを押し下げたのは、彼女ではない。


「な、なんだ!?」


 初めにその存在に気付いたのは、金髪の黒服だった。
 壁から落ちたボール状の “ それ ” は、
 いちど地面で跳ねると、勢いよく彼のもとへ飛来する。


「もッ!? もがが!?」


 巨大なあぶくのような、水の球体。
 わずかに飛沫をあげながら、金髪の顔面へダイレクトヒット。
 透明のデスマスクとなって貼りつく。


/ ゚、。 / 「ねずみ出現だケド」

爪;゚〜゚) 「かーっ! もう一匹かよ!」
.

528 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:02:23 ID:Wbtxos..0
.
 割れた窓から、さらに二つの水球が飛び込んでくる。

 反対側の壁でバウンドしたそれは、
 物理法則を無視した動きで高く飛び上がり、
 入口サイドの天井蛍光灯へ突っ込んだ。

 けたたましい破砕音が続き。
 顔を、頭を覆う黒服たち。
 降り注ぐガラスの雨。

 その、奥に。


(  ゚ω゚) 「! あれは……!?」


 空間が凍り付く。

 薄闇へ浮かび上がるシルエットに、全員が息を飲んだ。


『 ! ! 』


 倉庫入口。
 黒塗りのキャンバスに描かれし人物は。
.

529 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:03:50 ID:Wbtxos..0
.
 切れ長の目。

 凛と結ばれた唇。


 そして、
 闇夜に靡く、射干玉(ぬばたま)の黒髪。


           川::::::::::)


 夜の港湾、街路灯のぼやけた光を背にして。
 ライダースーツに身を包んだ、一人の女が佇んでいる。



           川::::::- )



 夜風に沿って流れる、豊かなロングヘアーが。
 締まったボディラインを包むレザーのジャケットが。
 艶やかな光沢を放ち。
.

530 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:06:56 ID:Wbtxos..0
.

           川::::::-゚)



 女は挑発的に、つい、と顎を上げる。
 小脇のフルフェイス ・ メットを抱え直すようにして。


 爪;゚〜゚)

 / ゚、。 /


 そして、逆の手には───。


 (; ^ω^)

 川д川



 川 ゚ -゚)  チーン


 極太マジックで “ くーちゃんの ” と書かれた、
 赤いポリタンクを持って。
.

531 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:07:32 ID:f1RjckkY0
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

532 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:07:41 ID:Wbtxos..0
.



                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html


.

533 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:09:29 ID:Oy5Xoxis0
お水の人だー!

534 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:10:56 ID:Wbtxos..0
.
 〜 〜 〜


ノリ, ^ー^)li 「───誰?」


 薄暗い室内に、女の声が響いた。
 返答はない。
 代わりに、こつ、こつと、遠慮知らずなブーツの音が近づいてきた。


川 ゚ -゚)ノ 「よっ」

ノリ, ^ー^)li 「……なによその馴れ馴れしさ。 ムカつくわね」


 十数分前のことだ。

 ドクオ達がゲームをおこなっている第三倉庫。
 そこから南方へ数軒分隔てたところにある、別の倉庫でそれは起きた。
.

535 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:13:50 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「いちおう言っとくけど、関係者以外立ち入り禁……」

川 ゚ -゚) 「ふーん。 で?」
   _,
ノリ,#^ー^)li 「……チッ」


 ここ第六倉庫の見張り番である島野ジャンヌの前に現れたのは、
 全身黒づくめの女だった。

 ポセイドンの手下──黒服の一人かと最初は思った。
 だが、スーツの種類が異なる上、謎の赤いポリタンクを右手に持っている。

 ガソリンか。 まさか、撒くつもりなのか。
 猜疑心と嫌悪感が同時に芽生え、ジャンヌは叫んでいた。


ノリ, ^ー^)li 「ちょっとお! 誰か! 侵入者……っ!」

川 ゚ -゚) 「他の奴らは全員おねんねタイムだ。
      それは幸せな夢を見ていることだろう。
      眠る直前に、今世紀最高美女の御尊顔を目に焼き付けたのだから」

ノリ, ^ー^)li 「はぁ───!?
        使えないヤツらだねー……っとに!」
.

536 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:16:44 ID:Wbtxos..0
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 入口からそのまま広い室内へ続く第三倉庫とは違って、
 こちらは、二つの倉庫が廊下を中継するつくりになっている。

 第六倉庫の別棟──このフロアへ辿り着くためには、
 黒服三人が見張っている、入り口側の本館棟を通過してこないとならない。


ノリ, ^ー^)li 「ねらーだよね、アンタ? あいつらの仲間?」


 ジャンヌは心底退屈していた。
 ガキをさらって、人を集めてお膳立てして。
 さあこれからどんなパーティがはじまるの!
 ……そう一人テンションを上げていたというのに。

 彼女に割り振られた仕事は、拉致した高校生の見張り番。
 それも、別の倉庫でただぶらぶら待つというだけ。

 ガキは 『 ねらー 』 には違いないが、
 超能力は当然のごとく封じられており、眠っているので話し相手にもならない。
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537 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:18:10 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「ね、そうなんでしょ?
        お仲間さん、冴えない男ばーっかよね〜〜〜」

川 ゚ -゚) 「……」


 そんな折に現れた、一人の女。
 正義の味方気取りか。
 ジャンヌは内心ほくそ笑んだ。

 本館棟には黒服三人が配備されていた。
 彼らを撃破してきたという、ライダースーツの 『 ちゃねらー 』 。
 ポリタンクの重さを苦にする様子もなく、悠然とたたずんでいる。

 こいつはきっと、私の退屈を埋めてくれる存在だ。
 有り難いと思った。  が、それは彼女に対する感謝ではなかった。


ノリ, ^ー^)li 「なーんか言いなさいよぉ」


 ああ、ようやく好き放題暴れられる。
 侵入者 ─── それもいけ好かないクソ女を、
 能力でボコボコにしてやれる。


川 ゚ -゚) 「だったらなんだ? 自己紹介すれば金でもくれるのか?」

ノリ,#^ー^)li 「だーれが! ばっかじゃないの!」
.

538 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:19:28 ID:5XghHJd2O
おぉ……、ジャンヌよ……

539 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:19:38 ID:Wbtxos..0
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川 ゚ -゚) 「ま、見るからに金無さそうだからなぁ〜〜。
      だからそんなだっせぇスーツなんだ?
      センスの欠片もねえ貧乏小娘が」


  ノリ, ^ー^)li ピクッ


ノリ, ^ー^)li 「……その減らず口、今すぐにでも利けなくしてやるわよ?
        崩れたツラをさらにぐちゃぐちゃにされたいのかしらねえ。
        ファンデも乗らねえクソババアが」


   川 ゚ -゚) ピクッ



     ノリ,#^ー^)li  「「 …… コ ロ ス  」」  (゚- ゚#川



 どちらともなく近づき、間合いをはかる。
 もはや会話は不要だった。
 暫時ののち、二つの影は一斉に駆けだした。

 白いレディススーツと、黒いライダースーツ。
 二人の女が繰り出すハイキック ・ シルエットが。
 薄暗い庫内に、しなやかなクロスを描き。

 それが戦いの合図となった。


 ──
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540 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:24:03 ID:Wbtxos..0
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●第三伍話 『 Red JOKER × Blue JOKER ── VS. ジャンヌ 』


ノリ, ^ー^)li 「シッ!」


 膝の衝撃を反動に、両者後方へ飛びすさる。

 初撃は威嚇のつもりだった。
 互いに頭部を狙うわけなので、
 普通はハイキック同士が交差することはない。


ノリ, ^ー^)li 「なかなかやりそうだね、アンタ!」

川 ゚ -゚) 「お前よりはな」

ノリ, ^ー^)li 「きゃははは! 楽しめそうじゃん!」

川 ゚ -゚) 「私は全く楽しくない」


 ちなみにこのレスから、
 主となる視点人物がライダースーツの女に移る。
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541 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:25:50 ID:Wbtxos..0
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 漆黒の侵入者─── クーは右手を水平に薙ぐ。
 傍らのポリタンクが小さく揺れ、
 口からぐにゃぐにゃうごめく “ 何か ” が飛び出した。

  _,   そ     ハ イ ド ロ キ ネ シ ス ト
ノリ;^ー^)li て 「 “ 流体操作系念動力者 ” !?」


 小刻みなステップを繰り返していたジャンヌだったが、
 そこで足を止める。

 放たれた水の大蛇。
 うねりながら飛来するそれを、彼女は避けるでもなく、真正面から迎え撃つ。


川 ゚ -゚) (終わったな)

ノリ, ^ー^)li 「うっと─────しぃわね!!」


 次の瞬間、彼女は袖口からタクトのようなものを取り出した。
 ナイフを構えるがごとく逆手に持ち、軽く腰を落とすと、
 大蛇めがけて駆ける。


ノリ, ^ー^)li 「らああぁぁぁああぁぁ────ッ!!」

川 ゚ -゚) 「!?」
.

542 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:26:51 ID:Wbtxos..0
.
 クーは驚愕に目を見開いた。              ハイドラ
 すぐにしなって、相手の胴を拘束するはずだった “ 水蛇 ” を。
 スーツの女が、 “ 切り裂きながら ” 走り迫ってくるのだ。


ノリ, ^ー^)li 「きゃははははは! そォら、覚悟し──」


 縦に割かれた水蛇は、
 ジャンヌの後方で白いしぶきと化し、散開。
 駆けよりざま、彼女はクーめがけてタクトを振りかぶった。


川 ゚ -゚) 「お疲れ。 チェックメイトだ」

ノリ, ^ー^)li 「!」


 が、その右手が届くことはない。
 彼女の先には、巨大な水のボールが待ちかまえていた。


ノリ#^ー^)li 「しゃらくせえッ!」


 ジャンヌは立ち止まり、脚を思い切り振り上げる。
.

543 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:27:39 ID:Wbtxos..0
.
Σ川 ゚ -゚) 「!?」


 パンプスのつま先が突き刺さった刹那。
 ボールは風船が割れるように破裂、爆散した。


川 ゚ -゚) 「ちっ……」

ノリ, ^ー^)li 「きゃはッ! ハイドロキネシストとは一度闘(や)りあったことあるからね!
        可能(でき)んのよ!  “ 散らす ” くらいはなァ!」
  _,
川 ゚ -゚) 「! 私はハイドロキネシ───」

ノリ, ^ー^)li 「ジャジャ〜〜〜ン! 油断禁物ぅ!」


 クーが何かを呟こうとしたときには、ジャンヌは既に側方へ。


ノリ, ^ー^)li 「<< メ ル テ ィ >>────」


 空気を掻くように右手を払う。
 すると、その軌跡が青い光となって薄く宙に残った。

 幻惑的な光帯。
 クーが一瞬目を奪われた、途端。
.

544 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:29:20 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< バ ニ ラ >> ッッ!!」


Σ川 ゚ -゚) 「!?」


 ブルーの筋はまばゆい白に染まり。
 前方へ、光が扇状に放出された。


     て
川; - ) そ 「ぐあ!?」


 ステップが間に合わず、クーは仰け反る。
 とっさに両手でガードしたつもりだったが、
 熱線は肘を撫で、焦がし、鮮烈な痛みを脳に伝える。


ノリ, ^ー^)li 「こんがり焼いてやるからねェ!」


 体勢を整えつつ、クーは追撃用に備えていた水球を呼び戻す。
 燃える袖口を瞬時に消火するも、
 水球はしぶきとともに、かさを半分ほど減らした。
.

545 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:30:49 ID:BKVmJE9.C
おお…。支援

546 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:30:53 ID:Wbtxos..0
.
           パ イ ロ キ ネ シ ス ト
川;゚ -゚) 「貴様、“ 発火系念動力者 ”───」

ノリ, ^ー^)li 「<< クリスピーミント >>!!」


 死角より、連撃。
 腰を落とした彼女の袖口から、バーナーのように炎が噴き出す。


川 ゚ -゚) 「!!」


 回避不能。
 瞬時に悟ったクーは、せめて顔への直撃を避けるべく上体を反転させる。
 背中を焙られ、短い悲鳴をあげて前方へ転がった。

  _,
川; - ) 「ちっ!」


 抉られるような痛みの中。
 さらなる追撃を避けるべく、無我夢中で腕を振るう。

 動きに合わせ、水のボールが宙を滑走する。
 ジャンヌは急ブレーキでそれをやり過ごす。
.

547 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:33:23 ID:Wbtxos..0
.
 彼女の進行をくい止めることには成功したが、
 ボールの軌道は大きく外れ、後方の壁で破裂。
 直下の床を黒く濡らした。


ノリ, ^ー^)li 「きゃはははははっ!! いいザマぁ〜〜〜〜♪」

川;゚ -゚) 「……」
                                        
                            パ イ ロ キ ネ シ ス ト
 クーは顔を顰め、前方で高笑いをあげる 『 発火系念動力者 』 を睨みつける。
 息が荒い。 ダメージの差は明らかだった。

 彼女の様子に、ジャンヌは愉悦の色を深くした。
 タクトを人差し指でくるくる弄ぶと、


ノリ, ^ー^)li 「ほいさッ」


 顔の前で構え、ポーズを決める。


川 ゚ -゚) 「! それは……」
.

548 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:34:37 ID:Wbtxos..0
.
 クーは小さく息を呑んだ。
 黒いノズル、つやのあるグリップ。
 中心に引き金を模した点火スイッチ。

 得物の正体は、細長いライターだった。
 俗に言うチャッカマ……は商標登録された商品名なので、
 ここではユーティリティライターと呼称する。

 ジャンヌはそのノズル部分を持ち、警棒のように振るっていたのだった。


川 ゚ -゚) 「……間抜けな絵ヅラだな。 焼き芋でも始めるつもりか?」

ノリ, ^ー^)li 「へぇ〜〜? アンタ、イモだったんだぁ!」

川 ゚ -゚) 「……サーカスに戻れよ、白塗り腐れピエロ」

ノリ, ^ー^)li 「そっちこそぉ、じゃぶじゃぶ水遊びは終わったぁ?
        あいにくねェ……」


 少しづつ間合いを詰める白スーツの女。
 ジャキン、とでも音のしそうな勢いで、クーに銃口(ノズル)を向け。


         トリガー
  『 アタシの撃鉄に、チャイルド ・ ロックなんて無いよ! 』


 床を蹴る。
 同時に、袖からもう一本のチャッk……ユーティリティライターが飛びだした。
.

549 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:39:00 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< ブレイヴトルテ >>!!」


 ひときわ大きなモーション。
 フィギュアスケートさながらの三回転ジャンプ。
 着地の勢いに乗せ、体全体を捻りつつライターを振るう。

 二本の軌跡は青い筋となり、つむじを巻くように数メートル前方で集束。
 螺旋に編まれたブルーのオブジェから、
 熱を帯びた閃光が次々に撒き散らされる。

    _,
Σ川;゚ -゚) (かわせない!)


 広範囲攻撃。 想定以上だ。

 が、クーも対処を怠っていたわけではない。
 会話の最中、彼女はポリタンクから数リットルぶんの水を、
 足元へ呼び寄せていた。
.

550 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:41:16 ID:Wbtxos..0
.
 左手を強く引く。
 低空飛行していた水の塊へ、一挙に圧が加えられる。
 水は延び、裾を広げながら、地曳網のようにクーの手元へ飛来する。

    _,
Σノリ, ^ー^)li 「!」

川;゚ -゚) 「くっ!」


 間に合った。
 水のテーブルクロスが熱線を中和。

 攻撃を受け止めた部分が掻き消され。
 張力を欠いた水の幕はいびつに変形、剥がれ、こぼれ落ちた。


川 ゚ -゚) 「ぬ!?」


 同時に。
 脇に積まれた荷のひとつから、火の手があがった。
 流れ弾によるものだろう。
.

551 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:42:06 ID:Wbtxos..0
.
 揺らめく緋に照らされ、ジャンヌは高笑いをあげた。


ノリ, ^ー^)li 「きゃはははッ!! << クリスピーミント >>!!」


 両手を交差。
 二本のライターを新体操の棍棒のように回転させ、クーに迫る。
 掛け声を合図に、両のノズルから一文字に炎が噴き出した。


川 ゚ -゚) 「クレイジー……!」


 大道芸人か。
 嫌味を飛ばす余裕はなかった。
 ジャンヌの斬撃がそれ以上のスピードで迫っていたからだ。

 袈裟懸けに斬り下ろされる炎のサーベル。
 クーの目鼻の先で、楕円状の水のバリアに “ 消火 ” される。


ノリ, ^ー^)li 「!!」

川 ゚ -゚) 「無駄な足掻きだったな」
.

552 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:43:19 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「そうかしらァ?」

Σ川; -゚) 「うがッ!?」


 対処が一瞬遅れた。
 隙を突いて、ジャンヌのシャープなローキックが襲う。
 腿にクリーンヒット。 クーはたまらずバランスを崩す。


川;゚ -゚) 「!!」


 急いで顔を上げると。
 視界を覆うは、透き通ったターコイズブルー。
 薄く輝く、神秘的な残光。


川;゚ -゚) (マズい────!)

ノリ, ^ー^)li 「<< メルティバニラ >>!!」


 放射された熱線を転がり避ける。
 閃光が床をほとばしり、焦げ臭い煙が立ち上った。
.

553 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:45:35 ID:Wbtxos..0
.
ノリ, ^ー^)li 「もらったッ!!」


 仰向けになったクーの鳩尾目掛け、ジャンヌの肘鉄が打ち落とされた。

 が、クーはすでに、追撃回避の予備行動を済ませていた。
 彼女のジャケットのバックポケットには、ペットボトルがひとつ差してあった。
 そこから勢いよく水が飛び出し、後方の窓へ一直線に伸びてゆく。


ノリ, ^ー^)li 「!!」

川;゚ -゚) 「おおおおッ!」


 水はロープのように窓の格子へ巻きつき、彼女の体を引っ張った。
 必然的に床から跳ね上がり、攻撃を回避する形となる。


ノリ;^ー^)li 「やばッ……!」


 ジャンヌの肘鉄は床へ誤爆。
 苦しそうに顔を歪ませるも、すぐに立ち上がり、ステップで距離を取る。
.

554 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:47:59 ID:Wbtxos..0
.
ノリ;^ー^)li 「いっっっった〜〜〜! 何してくれんのよこいつ!」

川 ゚ -゚) 「自業自得ってヤツだな」

ノリ, ^ー^)li 「これほど他人に言われて腹の立つ言葉ってないわね」

川 ゚ -゚) 「腹をどうしようが勝手だが……」


 クーは周囲に視線を流す。
 息を荒げる二人の周囲では、すでに赤々とした炎が燃え広がっていた。


川 ゚ -゚) 「このままここで戦っていいのか?
      冬の寒空の下、炎に包まれ焼け落ちる倉庫───。
      悪くないシチュエーションだが」

ノリ, ^ー^)li 「あとからアンタの焼死体が発見されるわけね。
        ま、残念ながら無いわよそんなパターン」

川 ゚ -゚) 「ほう?」
.

555 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:49:05 ID:Wbtxos..0
.
 ジャンヌはぱちんと指を鳴らす。
 すると、右手側の炎が魔法のように掻き消えた。

 続けざま、おどけた調子の投げキッス。
 左手側の炎が力を失い、周囲は完全に鎮火。

 あとには黒焦げの段ボールの残骸。
 それから、鼻をつく煙の臭いだけが残った。


ノリ, ^ー^)li 「見てのとおり、私は私の炎をいつでも消せるし〜〜」

川 ゚ -゚) 「奇遇だな。 私もお前の炎を消せるぞ。 いつでもな」

ノリ,#^ー^)li 「言ってくれんじゃない……!」


 鉄格子から水のロープが離れ、ペットボトルへするする舞い戻る。
 クーはボトルを抱えなおすと、
 親指を口部分に突っ込み、中の水へ直接触れた。

 半分ほどの長さにはなったものの、
 そこには再び力を与えられ、しなる水のムチが完成していた。
.

556 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:50:20 ID:Wbtxos..0
.
川 ゚ -゚) 「知ってるか?
      ほのおタイプは、みずタイプにはぜってー勝てないんだぞ」

ノリ, ^ー^)li 「……何のハナシよ」

川 ゚ -゚) 「ゲーム」

ノリ, ^ー^)li 「きもっ! オタクなの、アンタ!」

川 ゚ -゚) 「お前の理解できるレベルに合わせてやったまでだ」

ノリ,#^ー^)li 「いちいちあっっっったまくる女ね!
        脳天から火柱おっ立ててやるわ! ローソクみたいにさあ!」


 ジャンヌはライターを突き出し激昂する。
 対するクーも、アクア ・ ウィップを前方に構え、挑発的にポーズを決める。


川 ゚ -゚) 「女王様にでもなるつもりか?」

ノリ,#^ー^)li 「アンタにだきゃぁ言われたくないわよ!」


 鞭先が床を跳ねた。
 クラック音の代わりに、ぱしゃんと涼しげな水音。

 地を蹴るジャンヌの靴音がそれに続く。
 戦闘再開を告げるホイッスルだった。
.

557 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:51:19 ID:Wbtxos..0
※明日もしくは明後日に続く。

558 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:52:00 ID:n3H/lqvg0
かつてないガチの能力バトルだったなw
乙!

559 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:52:44 ID:4p7XHL/k0
乙!
正統派超能力バトルやってて驚いたわ

560 名前:名も無きAAのようです:2012/12/10(月) 23:53:51 ID:Q3Y9PBvIC
乙、戦闘要因のバトルは半端ねえな。

561 名前:名も無きAAのようです:2012/12/11(火) 09:29:54 ID:SOg17oEA0
乙乙
ドアが一体なんだってんだ

562 名前:名も無きAAのようです:2012/12/11(火) 11:48:14 ID:ZxJxw0WY0
乙!! アラウンド30△

563 名前:名も無きAAのようです:2012/12/11(火) 17:06:55 ID:xmfSSJds0
おつ
クーのガチ戦闘って久々じゃないか?

564 名前:名も無きAAのようです:2012/12/11(火) 20:29:22 ID:ky.dGO2kO
水がなければ何もできない無能力者めっ!

565 名前:名も無きAAのようです:2012/12/11(火) 20:39:50 ID:2KncQ97E0
乙 クーかっけぇ
さながら囚われの姫を助けに向かう白馬の王子のよう

566 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 17:42:48 ID:8Tx8gZ7E0
今追いついた乙
クーが自分の能力について何か言いかけてたのが気になる

567 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 19:56:03 ID:PIItuZt.0
マダキテナ━━━━(・A・)━━━━イ !!!!!

568 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:00:08 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ#^ー^)li 「<< クリスピー >>……」

川 ゚ -゚) (またそれか。 次は近づく直前に掻き消してやる)


 クーは手元に水球を呼び寄せ──変化。
 水の盾を左手に纏う。

 今から繰り出されるであろう攻撃は、バーナーのような強烈な炎。
 チャッカマ……ではなく、ユーティリティライターのノズルから噴出されるはず。

 必殺技ごっこなのか知らないが、叫ぶのは完全に逆効果だ。
 何が飛び出すかわかっていれば、対策を練る余裕はじゅうぶんある。

 ライトセーバーのような形状と威力には驚かされた。
 しかし、自分の水にそれを掻き消す力があることは実証済み。


ノリ, ^ー^)li 「<< ミ ン ト >>!!」


 細長い炎のサーベルが出現する。
 彼女の左手元に標準を合わせ、クーはウィップを打ち振るった。
.

569 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:01:49 ID:BIQzPL7E0
キター支援

570 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:02:27 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「!!」


 が、次の瞬間。


ノリ, ^ー^)li 「っっっしゃあッ!!」


 ジャンヌはそれを、投げた。


川;゚ -゚) 「なっ!?」


 タイミングを狂わされた。
 防ぐ体勢を取れない。
 完全に近接武器だと思い込んでいた。

 火の粉を散らしながら襲い来る火柱。
 勢いは衰えない。
 それは言わば、巨大な回転花火。

 オモチャ
 玩具との違いは、
 ちょっとの火傷じゃ済まないであろう、狂おしきその火力だ。
.

571 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:04:25 ID:OnAIv4bY0
.
川;゚ -゚) 「くっ!」


 上体を大きく曲げ、辛うじて回避に成功。
 それでもなお、ほんの少し掠めた肩の部分が、勢いよく燃え上がった。


川;゚皿゚) 「あづッ!?」

ノリ, ^ー^)li 「きゃ───ッはははははッ!!!」

Σ川;゚ -゚) 「!!」


 そしてジャンヌはすでに、クーの懐に飛び込んでいた。


ノリ, ^ー^)li 「ほらほらァ! 下がお留守よ〜〜〜!?」

Σ川l|l Д ) 「がッッッはァ!?」


 低い姿勢から半回転。
 裏拳のような体勢で、右手に握ったライターを繰り出す。
 固いグリップ部が無防備なクーのわき腹に突き刺さった。
.

572 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:06:06 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< メ ル テ ィ >>……!!」

川; - ) 「うぐおおおお!!」

ノリ, ^ー^)li 「<< バ ニ ラ >> !!」


  チャッkユーティリティライター
 魔 法 の ス テ ッ キは、青い光の弧を描く。
 続けて降り注ぐ灼熱の洗礼。

 クーは水の盾を繰り出し、かろうじてそれを防ぐ。
 同時に肩口の炎を消火。

 勢いのまま横に跳ぶ。
 追撃から逃れた──つもりだった。
 だが、膝立ちに着地したところで、彼女の目に恐るべき光景が飛び込んでくる。


ノリ, ^ー^)li 「きゃははははははは!! 害虫駆除にはこいつが一番♪!」

Σ川;゚ -゚) 「!?」


 片手のボトルを取り落としそうになった。

 いつの間に投げ放ったのか。
 無数の浮遊物が、彼女の周囲に滞空している。
.

573 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:07:44 ID:OnAIv4bY0
.
 目に悪い原色の数々。
 円筒形は、花火の類か。
 それらに混じって、いくつものチャッカm……小型ユーティリティライター。


 『 << ノ イ ジ ィ >> ─── 』


 総数、ざっと20本以上。


川;゚ -゚) ( ま  さ  か )


 悪い予感は、即座に現実へ。


ノリ, ^ー^)li 「<< メ ラ ン ジ ェ >> !!」


 一 斉 点 火。
 ジャンヌが左手を振るった途端、ノズルから一挙に火柱が放出された。
.

574 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:09:53 ID:OnAIv4bY0
.
 ライターはロケットのように。
 円筒形の噴出花火は小型ミサイルさながらに。

 あるものは直線軌道で。
 またあるものは回転運動のもとに。
 推進力を与えられ、奇妙なバランスを保ちながら──。

 全てが、クーめがけて発射されていた。


  l|l     て
  川;゚ -゚) そ 「うおおおおおおおお!?」


 対策も何もない。
 がむしゃらにウィップを振るった。
 一振りで数個、返す鞭先でさらに数個を叩き落とす。

 が、それでも。
 炎を撒き散らすおもちゃのミサイル群は、
 数を最大の武器として、クーに牙を剥いた。


川;゚ -゚) 「うあっ!?」


 肩口に一発。
.

575 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:11:13 ID:mOoCKaU60
きたああああああああ支援

576 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:14:19 ID:OnAIv4bY0
.
川;> -゚) 「づぁ!?」


 右脚に二発。


     そ
川; - ) て 「あッッッッぢゃあぁあっっっ!!」


 次々に被弾。
 たまらずウィップを変形、消火のために呼び寄せる。

 タンクから追加した水もあわせ、手元にてバリアを展開。
 必死にガードするが、そのたび、周囲の水も消耗してゆく。

 ひときわ激しいネズミ花火を払い落としたとき。
 火の雨を抜け、正面が開けた。


川;゚ -゚) 「!!」


 が、そこに敵の姿はなく。


川;゚ -゚) (──── 上!)
.

577 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:15:11 ID:OnAIv4bY0
.
 顔を上げた。
 クーの双眸が捉えたのは、回転しながら舞う一本のライターと、


ノリ, ^ー^)li 「きゃはははははははッ!!」


 そいつを空中でキャッチする、女のシルエット。

 抗う水(すべ)が足りない。
 後ずさる。


Σ川;゚ -゚) 「!?」


 が、背中が何かにぶつかり、止まる。

  ノ イ ジィ ・ メ ラ ン ジェ
 “ 火柱の散弾攻撃 ” によって、
 クーはいつの間にか、壁際に追いつめられていたのだった。


ノリ, ^ー^)li 「<< メ ル テ ィ >>」

Σ川;゚ -゚) (─── な、に!?)


 たじろぐ彼女の眼前、
.

578 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:16:40 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「<< バ ニ ラ >> !!」


 無慈悲なる、一閃。


川;゚ -゚) 「うおおおおおお!!」


 チェレンコフ放射を思わせる青い輝き。
 クーは後方の壁を蹴り、半月状に展開する光めがけて飛び込んだ。

      そ 
ノリ, ^ー^)li  「!?」


 ジャンヌの脇を転がり抜ける。
 次の瞬間、壁に沿って幅2メートルほどの範囲─── 。
 たった今までクーのいた場所から火の手があがった。

 熱線放出までのタイムラグ。
 加えて、ライターの大振りな軌道が幸いした。
 左右どちらに避けてもかわしきれなかっただろう。

  _,
ノリ, ^ー^)li 「すばしっこいゴキブリね!!」

川;゚ -゚) (こいつ、今─── ?)
.

579 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:18:16 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「でもっ! それもここで終〜〜わりッ!」


 ジャンヌはそう言って、目の前の物体を思い切り蹴り出した。


川 ゚ -゚) 「!!」


 赤い塊がゆるい放物線を描く。
 クーは身を低くしてそれをかわす。

 がらん。
 文字通り、間の抜けた音を立てて。
 ポリタンクが後方の床に転がった。


ノリ, ^ー^)li 「ジャジャ〜〜〜〜〜ン!
        アンタの水はぁ! 打っち止め〜〜〜♪!!」

川 ゚ -゚) 「……ふん」
.

580 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:19:27 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「そろそろ潰れなっ、ゴキブリ女っ!
        ジメジメをふっ飛ばさなきゃぁねェ!」


 ジャンヌは床のライターを蹴りあげ、左手でキャッチする。


川 ゚ -゚) 「!」

ノリ, ^ー^)li 「いくらでも炎を生み出せるアタシと、水のストックが切れたアンタ」


 ノズルでゆっくりとクーを指さし、


ノリ, ^ー^)li 「勝負は決まったようなもんねェ!」


 喉をかっ切るアクション。


川 ゚ -゚) (───やはりそうか)


 それを見たクーは、身を翻し、入り口に向かって駆けだした。
.

581 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:21:01 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「あらあらぁ? 流し台にでも逃げるのかしら〜ッ♪!」


 すぐさま追うジャンヌ。
 位置関係的に、クーが追いつかれるのは時間の問題だった。


ノリ, ^ー^)li 「ほ〜らッ! << クリスp」


 ジャンヌがライターを構えると同時。

 逃げるクーが、つっかけるようにして、
 床の一部に溜まった水を、右手で掻きだした。


ノリ, ^ー^)li 「!」


 水はふわりと空中で纏まり、半球状の塊になって飛翔する。
.

582 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:24:00 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ#^ー^)li 「無駄だっつってんのよぉ!」


 が、いかんせん量が少なすぎた。
 ライターを真横に打ちふるう。
 空飛ぶクラゲは弾け散り、ジャンヌの疾走を止めるに至らない。

 一方。
 入り口まで逃げ仰せたかに見えたクーは、


Σ川;゚ -゚) 「うおっ!?」


 濡れた床に足をとられ、バランスを崩したところだった。
.

583 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:24:42 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「もらったァ!」


 たった一瞬。
 それが勝敗を分けた。


 『 << ク リ ス ピ ー >> 』


 深い踏み込み。 瓦礫を踏み切り台に、超人的跳躍。
 資材からあがる白煙の中、ジャンヌは宙でライターを振りかぶり───、


 『 << ミ ン ト >> ッッ!! 』


 とどめの斬撃。
 爆炎が、広がった。
.

584 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:28:26 ID:OnAIv4bY0
.







 『 ────なっ!? 』






.

585 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:29:56 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「────いッ!? あッ」


 ─── 彼女の。
 ジャンヌの、眼前にて。


       そ
ノリ,;^ー^)li て 「きゃあぁぁあああ!?」


 インパクトの寸前にそれは起きた。

 突然の衝撃波にたたらを踏む。
 続けて、赤い炎が右腕を駆け上がる。


Σ ノリ,l|l^ー^)li 「なにッ!? 何なのぉぉぉおぉ!?」


 ジャンヌは混乱に驚きわめいた。
 ノズルから吹き出し、クーの全身へ浴びせかけられるはずの、炎。
 そいつが “ 自分に向かって ” 牙を剥いたのだから。
.

586 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:34:37 ID:mOoCKaU60
ガソリンとか?

587 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:38:21 ID:OnAIv4bY0
.
 振り降ろす直前。
 ライターのグリップが、爆ぜた。
 銃の暴発さながらに。

 燃え上がる袖口。
 爆風による熱、痛み。

 自己の炎を制御できる彼女にとって、
 これら一連の現象はすべて “ あり得ないこと ” だった。


ノリ,l|l^ー^)li 「!!」



 『 ───火気厳禁 』


 凛とした声が、倉庫内に木霊する。
.

588 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:40:20 ID:OnAIv4bY0
.

  ノハ::::::-゚) 


 ジャンヌは瞠目する。
 “ 追い詰められたネズミ ” の様子が、先ほどまでと大きく異なっていた。

 声の主であるクー。
 彼女の艶やかな黒髪は、空間でふわふわとたなびいていた。
 まるで見えない風が吹いているかのように。

 輪郭は、うっすら、赤い輝きを帯びている。


ノリ;^ー^)li 「こ、これッ! あんた!? 何をしたァ!?」

 ノ川 ゚ -゚)゙ 「……ふむ」


 風がやむ。
 全身の輝きも、ゆるやかにおさまってゆく。
.

589 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:41:49 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「残念ながら、私の相方は “ 発火系能力者 ” でな」

Σ ノリ,l|l^ー^)li 「はァ!?  何それェ!?
          ハイドロキネシストでパイロキネシストだなんて───!」

川 ゚ -゚) 「あるんだな、それが」


 クーはぶっきらぼうに答えた。

 一瞬だけ “ 出てきてもらった ” 。
 かけ声のあと、ジャンヌのライターから炎柱が吹き出す、
 その瞬間に合わせて。
.

590 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:47:42 ID:mOoCKaU60
おー久しぶりだ

591 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:48:11 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「───まぁ、正確にはそうではなく───」

ノリ,#^ー^)li 「っざっっけんなッ!!」


 続く言葉は怒声に阻まれる。
 声の主はもちろん、
 髪を振り乱し、燃える上着を脱ぎ捨てようともがく、一人の “ パイロキネシスト ” 。


川 ゚ -゚) 「……まあいい。
     優しい私が、お前にひとつ教えてやろう」


 彼女の狂態を見下げながら、クーは言った。


川 ゚ -゚) 「お前の能力は底が割れている。
     次に何が来るか知っていれば、対策など簡単だ」
  _,
ノリ;^ー^)li 「はァ!? どういう事よ、それ!?」

川 ゚ -゚) 「ふっ……」
.

592 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:50:27 ID:OnAIv4bY0
.
 ロングの黒髪をさぁっとかき上げ、クーは続ける。


川 ゚ -゚) 「愚かな奴め。
      まず、お前のヒッサツワザ(笑)は2つのパターンに大別される。
      熱線を放射する中距離攻撃。
      火柱を発生させる近〜遠距離攻撃」

ノリ;^ー^)li 「ッ!?」


 指摘されたジャンヌは、その身を固くし。


川 ゚ -゚) 「そして2つのパターンは、“ 例外なく ” 交互に繰り出される。
      いや、“ 交互にしか、出せない ”。 ……そうなんだろう?」

ノリ;l|i^ー^)li 「な、何を……言って……!」


 震え声で反論する。
 明らかに動揺していた。
.

593 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:51:50 ID:m2dxIEh20
ユーティリティーライター密かにツボだったのに…
支援

594 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:53:49 ID:OnAIv4bY0

川 ゚ -゚) 「熱線攻撃は、発生までにタイムラグがある。
      中距離での牽制には有効だが、
      至近距離で発動するには火柱攻撃のほうが適している。
      ……なのに、だ」


 床に散るライターの一つを拾い上げ、クーはさらに続けた。


川 ゚ -゚) 「近距離での追撃をおこなう際、
      避けにくい火柱ではなく、熱線攻撃をセレクトする場面が見受けられた。
      なぜか? 二回連続で同じワザを出せないからだ」

ノリ,;^ー^)li 「……そんな、コトッ」
.

595 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:55:48 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「正直言って、危ないと思ったタイミングは何度もあったのだがな。
      熱線と火柱を “ 交互にしか発動できない ” お前の弱点が、
      私を救ったと言ってもいい。
      ……そして」


 ぱし、と音をたて、ライターを右手から左手に持ち変える。


川 ゚ -゚) 「私は気づいていた。
      ワザを出すたび、チャッカマンを扱う “ 利き手 ” が、
      入れ替わっていることに」

Σ ノリ,l|l д )li 「!!」

川 ゚ -゚) 「 “ ワザの名前を叫ぶ ” 行為。
      これは、炎を出す前動作であると同時に、人格交代のスイッチなのだ。
      つまり」
.

596 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 22:57:36 ID:OnAIv4bY0
.
 クーは畳みかけるように言った。


川 ゚ -゚) 9m 「ワザを出すたび “ 主(メイン) ” と “ 副(アナザー) ” が切り替わる。
        右利きの人格Aが熱線攻撃。 もう一人の人格Bは、火柱。

        それがお前のPSIの全て。
        裏も表も “ ほのおタイプ ”。 この他の超能力は存在しない」


ノリ,l|l Μ )li 「う……があっ、ああぁぁぁぁあ!」


 慟哭は、クーの推測の正しさを証明していた。


ノリ,#^ー^)li 「だまれぇぇえぇえ!
        だッ! だから何だってんのよぉ!
        アンタに関係ないだろぉぉぉおおぉがッッッ!!」

川 ゚ -゚) 「ずいぶんな慌てようだな」
.

597 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:00:16 ID:OnAIv4bY0
.
 解説を終えたクー。
 長い睫毛に彩られた彼女の目が、一瞬伏せられ。


 『 ……さて 』


 大きく見開かれた時には、


 『 今度はこっちのターンだ 』


 その瞳は、玉虫色の輝きを宿していた。
.

598 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:01:16 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「!!」


 ぺろ、と舌を出し、クーはライターを投げ放った。
 虚を突かれたジャンヌは、それを慌てて受け止める。
 僅かな一瞬で、クーは女の眼前まで間合いを詰めていた。


川 ゚ -゚) 「くらうがいい……。 必殺 << スパイラルマロン >> !!」

Σノリ;^ー^)li 「くっ!?」


 叫び、右フック。
 ジャンヌはライターを繰り出し、すんでのところでそれをいなす。
.

599 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:02:30 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「まだまだ! << スパイラルマロン >> !!」

Σノリ;^ー^)li 「何度も同じ手は……いっだぁ!?」


 拳は動かず。
 代わりに、ブーツの踵がジャンヌの膝を刈っていた。


川 ゚ -゚) 「間違えた」

ノリ,#^ー^)li 「ひっっきょおものおおぉぉぉおぉッ!」




 【 厨二バトル的タブーその@ 】
 ・ 技名を叫んで、違う技を出す
.

600 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:05:17 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「油断大敵ッ!
      << シード ・ オブ ・ プルシメン(柿の種)>> !!」

ノリ, ^ー^)li⊂ ゙ 「ち、ちィっ!」


 次にクーは、両腕を交差し、奇妙なポーズをとった。
 ジャンヌはとっさに防御の体勢へ。


ヽ川 ゚ -゚)ノ  〜〜♪

ノリ,;^ー^)li⊂ 「……え?」


 ……が、何も起きない。


ノリ;^ー^)li 「しまっ!? フェインt────!?」


 左右へ素早く視線を走らせた、その直後。
.

601 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:07:37 ID:OnAIv4bY0
.
 がごん。


Σノリ, д )li 「ぶッ」


 赤いポリタンクが、頭上で跳ねた。




川 ゚ -゚) 「いい音だなぁ〜〜。 なんせからっぽだからなぁ〜〜〜」


川 ゚ -゚) 「どっちも」 ボソッ



:::: ノリ,##ー )li:::: 「……クソ、ア、マぁぁあぁ……!!」




 【 タブーそのA 】
 ・ 技名を叫んで、出さない
.

602 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:11:04 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ,#^ー^)li 「っっざっっけんじゃねぇっぇえぇえ!!!」


 コケた姿勢のまま、ジャンヌはポリタンクを拳で弾き飛ばした。
 クーは余裕面で襟を正し、告げる。


川 ゚ -゚) 「私が最も警戒していたのは、
      お前の副人格(アナザー)と、その超能力」

ノリ,;^ー^)li 「……!」

川 ゚ -゚) 「ところが、だ。
      いざ蓋を開けてみれば、お前は最初から “ 二人で ” 戦っていた。
      奥の手がないとわかった以上、もはや恐るるに足らん」

ノリ,;^ー^)li そ 「は、はァ!?」


 ── ここで少し、ジャンヌという女について触れておく。

 彼女は 『 ねらー 』 の中でも特異な女だった。
 彼女の中には確かに二人の人格がいる。
 だが、どちらかが主人格で副人格、といった区別は、彼女にはない。
.

603 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:13:30 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「所詮お前はファイアーダンスを踊る曲芸士にすぎん。
      究極の美貌とスタイルを誇る、この私が負ける道理はないな」

ノリ,#^ー^)li 「言わせて……おけばぁッ!!」


 いや、正確には。

 どちらがメインでどちらがアナザーなのか、
 彼女自身にもわからなくなっていたのだ。


===
==



 制服が似合う年の頃だった。
 少女の前に、“ 憧れの先輩 ” が現れたのは。

 出会いはその脳裏に、鮮明に刻まれている。
 それは、瓶底眼鏡の少女が培ってきた人生観を、粉々に打ち砕き。
 全て置き換えるほどの、刺激的で、魅力に溢れるものだったから。
.

604 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:16:16 ID:OnAIv4bY0
.
 甘い煙草の味も。
 自分に似合う髪の色も。
 夜のネオン街を行く高揚感も。

 すべて、先輩が教えてくれた。
 退屈だった毎日が、とりどりに彩られた。
 彼女の青春は、先輩の影を追う毎日だったと言っていい。

 あらかたの遊びは先輩に教わった。
 朝陽きらめく海岸沿いをバイクで流すとき、
 後ろは少女の特等席だった。


 強く、美しく、大人びており。
 少女の理想、憧れの存在。

 後ろをついていくだけで精いっぱいだった。
 たくさん背伸びした。
 少しでも同じ位置で、並んで歩けるように。
.

605 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:18:04 ID:OnAIv4bY0
.
 そんな先輩が、口癖のように言っていたことがある。


 『 あたしはさ。 ジャンヌ ・ ダルクになるんだ 』


 その言葉の持つ神秘性。 反社会性。
 先輩はただ、 “ 格好いい女 ” を表現すべく、
 比喩的に、抽象的に用いていたに過ぎないのだろう。

 だが、その言葉は。
 思春期の少女の中で、特別な意味を与えられることとなった。


 憧れの先輩が追い求める存在、『 ジャンヌ 』。
 先輩と少女を結ぶ直線上。
 その遙か先に、『 ジャンヌ 』 がある。

 革命の象徴。 少女の憧れの究極形。
 気高く美しい “ 完璧な女 ” の偶像として、
 『 ジャンヌ 』 は深く、強く、少女の精神に根を張った。
.

606 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:20:31 ID:OnAIv4bY0
.
 『 アタシもジャンヌになりたい 』

 『 ジャンヌは最高にカッコいい女 』

 『 ジャンヌは先公に頭を下げない 』

 『 それから……ジャンヌは、クソみたいな女とはツルまない 』


 いつしか 『 ジャンヌ 』 は。
 少女の求める偶像から、“ マイルール ” のようなものへとすり替わり、
 彼女の行動を徐々に束縛 ・ 支配してゆく。


 『 ジャンヌは髪を右からすく 』

 『 ジャンヌは右手に煙草を挟まない 』

 『 ジャンヌの愛撫は左耳から 』

 『 ジャンヌのセックスは週二回 』

 『 ただし、二人の男と一回ずつ 』


 都合のいいルール。 どうでもいいルール。 実現困難なルール。
 さまざまな “ 縛り ” と “ 設定 ” がいびつに組み合わせられ、
 粘土細工の “ ジャンヌ ” が無軌道に修正されてゆく。
.

607 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:22:44 ID:OnAIv4bY0
.
 『 ジャンヌは白い下着しか履かない。 でも、ダサいのは論外 』

 『 ジャンヌの恋人は小悪党でいい。 口では媚びるけど、心は揺るがない 』

 『 ジャンヌは──── 』


 おそらくは、そのころだった。
 少女が “ 自分の中の、もう一人 ” に気づいたのは。


 『 ジャンヌは右利き 』

 『 ジャンヌは左利き 』

 『 何言ってるの。 ジャンヌを包んだのは、青い灼熱 』

 『 違う。 ジャンヌを焼いたのは、情熱的な赤い火柱 』 
.

608 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:23:57 ID:OnAIv4bY0
.

 “ 二人 ” による競り合いは、上級生の卒業式。
 憧れだった先輩の、最後の制服姿。


 焼身自殺。

 炎を纏いながらの、屋上からの、転落死。


 凄惨にして異常性の高い、
 ひとつの変死事件を契機に、加速する。

.

609 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:25:22 ID:OnAIv4bY0
.
 『 ジャンヌは犬派 』

 『 ジャンヌの朝は200kcal以下 』

 『 ジャンヌのリップはピンクベージュ 』

 『 ジャンヌはウルトラマリンが嫌い。 つけてる奴は、男女関係なくボコる 』

 『 ジャンヌは 』
 『 ジャンヌは 』
 『 ジャンヌは 』
 『 ジャンヌは 』 ─────。



 『 アタシだけが 』

 『 何言ってんの。 アタシこそが 』




 『 ただ一人の << ジャンヌ >> 』

.

610 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:27:13 ID:OnAIv4bY0
.

==
===


 いつしか “ 彼女たち ” は、自分の名前すらも思い出せなくなっていた。

 かろうじて記憶の隅にあった姓は『 島野 』。
 他は必要ない。
 年齢、血液型、出身地、名付け親の顔。 すべて忘却の彼方。

 ここにいるのは、
 先を争って 『 ジャンヌ 』であろうとする、二人の女たち。


 性格も同じ、能力も同じ。 顔も髪も体も共有。
 そんな二人が、だがしかし確固たる二つの人格として、
 境界線を保っているのは。

 “ 二人 ” であることを、譲ろうとしないのは。


ノリ,#^ー^)li 「えらっっっそうに!!」


 “ 彼女たち ” が、常識外の負けず嫌いであるからだった。
.

611 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:29:07 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ, ^ー^)li 「ここにあるのはぁ!!」


ノリ,#^ー^)li 「アンタの水が “ もう無い ” という事実ッ!!
        それだけよぉぉおぉお!!」


 焦げたスーツのジャケットを蹴飛ばし。
 『 ジャンヌ 』 は駆けだした。

 二本のライターが踊り狂う。
 飛び散る紅い飛沫。
 上半身を大きくひねり、腰を落とす。


ノリ,#^ー^)li 「おおおおおおおおッ!!」


 踏み込みは万全。
 怒りは頂点。
 サイキック ・ エネルギーは臨界点。

                    ブ レ イ ヴ ト ル テ
 辺り構わず熱線をまき散らす、裁きの渦潮攻撃。
 この大技が完成すれば、水を失ったクーにかわす手段はない。
.

612 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:33:51 ID:OnAIv4bY0
.
ノリ,#^ー^)li 「燃やし尽くしたらぁあぁあぁぁッ!!
        << ブ レ イ ヴ >> ───」


 川 ゚ -゚)


 なのに。
 ネズミ同然の相手は、逃げるでもなく動揺するでもなく。
 無防備にその身をさらしており。


川 ゚ -゚) 「もう、遅い」


 ぽつり、呟くのだ。


ノリ,#^ー^)li (はぁ!? 何が───)


 回転すべく、宙空にて身を捩るジャンヌ。
 脳をよぎる疑問の答えは、すぐに示された。


 『 << ト ル t >> 』
.

613 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:34:35 ID:OnAIv4bY0
.





 ───オブジェが、完成した。






.

614 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:35:43 ID:OnAIv4bY0
.
Σノリl|l ゚Д゚)li 「ぐげッ!?」


 ジャンヌ自身の、肉体のモニュメントが。


 宙を舞う彼女の体は、そのまま中空で固定された。
 青い軌跡を描こうとしていたライターごと、
 “ それ ” に取り込まれ。

 間髪いれずに襲いくる圧迫感。
 筋肉への締め付け。
 きしむような関節の痛み。


 『 ごぼ……ぶがぁぁぁああぁぁ!? 』


 悲鳴を包んだあぶくが浮かび上がる。
.

615 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:37:13 ID:OnAIv4bY0
.
 天井から飛来した、太巻きの “ 水の触手群 ” が。
 襲いかかろうとしていたジャンヌの体を、首を、顔を。
 その全身を、がっちりと捉えていたのだ。


ノリ,;l|l Д )li 「ごぼッ!? み、ず!? うぞ!?」

川 ゚ -゚) 「バカな女だ。 何が出てくるかもわからん敵の本拠地に、
      私がポリタンク一つでのこのこ現れるとでも?」


 想定外の方向からの不意打ちだった。
 暴れるジャンヌの体は、だがしかし、確実に宙へ吊り上げられていく。


川 ゚ -゚) 「備えあれば……ってな。
      あらかじめ用意しておいたのだ。
      見つからないよう、入口の上空に」

::: ノリ,;l|l Д )li:::: 「ぞ……ん、ごぼぼぼっ! なッ!?」

川 ゚ -゚) 「おかげでニブい戦いしかできなかったわけだが」
.

616 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:39:44 ID:OnAIv4bY0
.
 クーは腕組みし、苦しむ女に氷の視線を浴びせかける。

 いかにもな赤いポリタンクは、
 “ リミット ” を示して油断させるための、おとり。
 本当の隠し玉は、入口の外に滞空させていた “ 特別製 ” 数十リットル。

 倉庫へ進入したときから、天井を這うように移動させていた。
 偵察用として。 不意打ち用として。 仕上げ用として。


川 ゚ -゚) + 「こいつは良い夢を見せてくれるぞ?
       たとえそれが、黒スーツの屈強な男たちだろうと」


 ─── 無礼で、無様で、小便くせえクソ小娘だろうと、だ。


(( ノリl|l Д )li)) 「あがァッ!
          は、は……なせこ……ぐボごッ!!」

川 ゚ -゚) 「そいつは特別製だ。 簡単には外せんし、散らすこともできん。
      何より私が触手の端に触れている──よって、制御を失うことはない」


  テ ン タ ク ル ス
 “ 溺 没 絞 首 刑 ” 。

.

617 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:41:34 ID:OnAIv4bY0
.
川 ゚ -゚) 「おねんねにはまだ早い。
      貴様にはギコの居場所を吐いてもらわなきゃならん」

         て
(( ノリl|l Д゚)li)) そ 「ぷはッ!?
             だ、だまrッ!! おボゴごぶはッ!?」


 水は移動し、ジャンヌの首回りがいっとき解放される。
 クーの言葉に反応して、
 ジャンヌの視線がほんの一瞬、事務室らしき奥のドアへと向けられた。

 目ざとくその変化に気付いたクーは、小さく頷く。


川 ゚ -゚) 「充分だ」


 足をばたつかせ、もがく女の前で。
 クーは半身をひねり、右手に力を溜めてゆく。
.

618 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:43:04 ID:OnAIv4bY0
.
川::::::-゚) 「もう一度言ってやろう。 ほのおタイプが──」




      ─── みずタイプ様に、勝てるわけねーだろーが ───



                         パ イ ロ キ ネ シ ス ツ
 水の絞首台に固定された “ 名も無き発火系能力者たち ” の鳩尾めがけ。


 侵入者の鉄拳が、勢いよく撃ち放たれた。



 〜 〜 〜

.

619 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:44:03 ID:OnAIv4bY0
※10分ほど小休止

620 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:45:40 ID:ZDtje5iU0
クーさんかっけぇ
でも厨二としては外道

621 名前:名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 23:53:41 ID:mOoCKaU60
かっこいいぞこのアラサー

622 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:04:16 ID:AdzHJhxs0
.
 居合わせた黒服の一人は、後に述懐する。


 『 ハナコさんがきた 』


 さらに、別の黒服はこう答えたという。


 『 フジコちゃんがきた 』


爪;゚〜゚) 「ダイオードぉぉッ!! てめえ、どういうことだこれは!!」

/ ゚、。 / 「ポリグラフのことか? 正常だケド」

爪;゚〜゚) 「だ、だがよぉ!
      あいつ(ドクオ)は “ 仲間はいない ” って……」

/ ゚、。 / 「ほんなら答えはひとつだケド」


 ─── ウソじゃあなくて、

 『 想 ・ 定 ・ 外 』 。
.

623 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:05:15 ID:AdzHJhxs0
.
Σ爪l|l 〜 ) 「──────!」


 ── そして話は現在に戻る。

 混乱の渦中、第三倉庫にて。
 シャッターから現れた女、クーは無表情でメットを投げ放つ。
 こちらもまた無表情でキャッチすると、


/ ゚、。 / 「面白そうなことになってきたケド」


 ダイオードはそう呟いた。


爪;゚〜゚) 「と、止まれ! 止まらねえと……」

川 ゚ -゚) 「どうするんだ?」


 タムラの制止を聞き入れることなく、庫内へずかずか進入する似非ふじこ。
 ブーン達のもとへやって来た途端、


川 ゚ -゚) 「おらっ」


 引きずっていた男を、乱暴に投げ捨てた。
.

624 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:07:31 ID:AdzHJhxs0
.
(;,,#)Д<) 「ってて……!」


      て
(  ゚ω゚) そ 「ギコ!?」


 ブーンが駆け寄る。
 床で目を回していたのは、
 後ろ手に縛られ、頬を腫らしたギコだった。


(;,,#)Д゚) 「助けてくれたのはいいけど!
       せめて縄は解いてから連れてきてくれよッ!? ゴルぁー!」

川 ゚ -゚) 「おお、忘れとったわ」


 わざとらしく返答し。
 それからクーは、窓のほうへと視線を送る。
.

625 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:09:04 ID:gJ5OhLMQ0
ギコさんスゲー久しぶり

626 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:10:04 ID:AdzHJhxs0
.
川д川 「……」


 サダコと、クー。
 対照的な二人の黒髪ロングは、
 うずくまる黒服たちを一瞥したあと、互いに目配せした。


川 ゚ -゚) 「上出来だ」

川д川 「……ど、どうも」


 見回りの黒服に見つかったものの、
 突如蘇った “ 感染能力 ” によって、彼らを退けたサダコ。

 ドクオに対してはにべもなく断る素振りを見せつつ、
 その実、こっそりとしぃに連絡を取り、単身港までやってきていたクー。

 彼女たちが倉庫の外でばったり出会ったのは。
 無論、偶然ではない。
.

627 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:12:33 ID:AdzHJhxs0
.
 サダコの能力を通じて、
 ギコの捕らわれている場所が第六倉庫であると知ったクーは、
 先にそちらへ向かい──現在に至る。


(;,,#)Д゚) 「……ったくよォ」


 手繰り寄せられし “ 必然の糸 ” に救われた少年。
 腫れた頬を肩でさすりつつ、ため息をついた。

 当然ながら、彼の無事とは、ジャンヌの敗北を意味する。
 その事を悟ったタムラは、ドスの効いた声色で叫んだ。


爪#゚〜゚) 「好き勝手やってんじゃねェ!!
      忘れたのか!? こっちには人質が……!」

「ぐわっ」


 が。
 彼の恫喝を遮るように、後方から野太い悲鳴があがる。
.

628 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:14:48 ID:AdzHJhxs0
.
(#´_ゝ`) 「マキシマムダイナミックチャージ(体当たり)!!」


 声の主は、こちらもやはり一人の黒服。
 “ 人質 ” のタックルで、床に吹っ飛んだところだった。


/ ゚、。 / 「!」

     そ
爪;l|l゚〜゚) て 「な、何だとぉぉおっ!?」


 兄者はそのまま小走りでブーンたちのほうへ合流する。
 柱に括りつけられていたはずの彼だが、すでに縄は解かれていた。


爪;゚〜゚) 「てめぇッ! どうやって!?」

( ´_ゝ`) 「こいつが自由(フリーダム)をもたらしたのさ……(意味深なポーズ)」


 不敵に笑みをこぼし、前方へ肘を曲げる。
 人差し指と中指の間に銀色の刃物。
 月明かりを受け、ぎらり煌めいた。


Σ爪;゚〜゚) 「それはッ」
.

629 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:16:40 ID:AdzHJhxs0
.
 没収を食らったのち、簡易テーブルに放置されていた、つーの医療用メス。
 テーブルを見張っていた黒服の “ 感染 ” をこれ幸いと、
 クーの水球が、こっそり掠め取っていたのだ。

 兄者を解放した水のボールは、
 そのままギコのほうへ飛来し、上空すれすれを滑空する。
 一本のメスを “ 掴んだ ” まま。


(;,,#)Д゚) 「!」 ザシュッ

( ^ω^) 「お?」

        ∩
 l|! (*,,#)Д゚)ノ i|l 「うおっしゃぁぁぁああ!」


 乾いた音とともにロープが緩み、ギコはその場に跳ね上がった。
.

630 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:17:28 ID:LSzGUlD20
誰か!大型AAを!

631 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:19:47 ID:AdzHJhxs0
.


     / ゚、。 / 爪l|l゚〜゚)        (´く_`(^ω^ (゚Д(,#,,川д 川 (゚- ゚ 川



 白服二人、黒服若干名。
 そしてブーンの回りに四人。
 横倒しの簡易椅子を挟んで、ここに 7人の Channelers ──異能力者が対峙する。


 形勢は、覆っていた。


 〜 〜 〜

.

632 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:20:12 ID:Ohuo1TBY0
サダちゃああああああん俺だああああああああアラサーに負けない活躍を見せてくれえええええ

633 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:21:18 ID:AdzHJhxs0
.
 ふたたび “ ギャンブルルーム ” 内。


(#-[]3[]) 「ちっ!」

(;'A`) 「……?」


 舌打ちひとつ、ポセイドンは乱暴に携帯を切った。
 相手は黒服かタムラだろう。  が、出ない。
 外で何らかの 『 異常な事態 』 が起こっているのは間違いない。


(-[]3[]) 「おいっ! おまえら、何をしているんだ……!」


 そう言って、奴は外へ続くドアに手をかける。
.

634 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:22:04 ID:AdzHJhxs0
.
( ゚A゚) (!)


 この瞬間。
 俺の脳裏には、ある 『 一人の人物 』 の顔が浮かんでいた。

 このインディアン ・ ポーカー勝負において、
 『 最大の嘘つき 』 である、“ 協力者 ” の顔が。


Σ(;'A`) 「ちょ、おい、待て!」


 パーテーションへかじりつく。
 ポセイドンは、そんな俺の叫びも聞こえない素振りで、
 今にも外へ出て行かんとしているところだ。

 しぃちゃんの顔を一目見やると、俺はドアに向かってダッシュした。


 〜 〜 〜

.

635 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:23:20 ID:AdzHJhxs0
.
 舞台はまたもコンテナ外へ。

 誘拐犯たちとのにらみ合いの最中、
 クーはブーンたちにささやいた。


川 ゚ -゚) 「残った黒服も入れると、人数はほぼ同じだな。
      ま、こっちは全員ねらーだ。 どうにかなるだろう」

(; ^ω^) 「いや、それがですね……お」


 ブーンは手首を示し、
 ロッカーの性能と、PSIを封じられている自分たちの状態について、
 簡単に説明した。


川 ゚ -゚) 「そんなの、ぶっ壊せばいいだろうが」

(,,#)Д゚) 「そうしたいのは山々だけどさ。 これ、見た目以上に頑丈なんだよ」

(´く_`* 三 *´_ゝ`) 「おれなんて既に諦めちゃってるもんねー。
            で? これなに? 今どーゆー状況?」


 割って入った兄者がきょろきょろ辺りを見回した。
 気絶していたせいか、いまいち事態を把握できていないらしい。
.

636 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:26:24 ID:AdzHJhxs0
.
川 ゚ -゚) 「なんだお前は。 死ね」

(; ´_ゝ`) 「なんてシンプルな罵倒!」

         チ カ ラ
川д川 「……超能力を使えるのは……、
      実質わたしと……クーさん、だけ」


 サダコがぽつりと漏らす。
 爪を噛む仕草が引き金となり、感染者(黒服)から一層高い雄叫びが発せられた。


川 ゚ -゚) 「ま、まあ、私一人でも楽勝だろうが……」

(,,#)Д゚) 「舐めてかかんねェほうがいいぜ」


 ギコが口を挟む。


(,,#)Д゚) 「昼過ぎくらいだったかな。 一度 “ ロッカー ” の電池が切れたんだわ。
      さんざ暴れてやったけど。 なさけねーコトに、結局このザマだよ。
      あいつらはつえーぜ。 特に背のでっけーほうな」


 皆の視線が、ダイオードに集中した。
.

637 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:29:27 ID:AdzHJhxs0
.
(,,#)Д゚) 「それと、だ」

川 ゚ -゚) 「あん?」

(,,#)Д゚) 「“ のーりょく ” が戻ったときに、ひとつわかったことがあるんだ」


 怪訝な顔を向けるクーたちに、ギコは告げた。


 〜 〜 〜


(#'A`) 「ま、待てぇっ!」


 ポセイドンのあとを追って、こちらサイドのドアに飛びついた。
 ノブを捻る際、施錠済みである可能性に考えが至り、一瞬ためらいを覚える。
.

638 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:32:25 ID:AdzHJhxs0
.
(;>A<) 「!」 バンッ


 幸い、その心配は杞憂に終わった。


( ゚A゚) 「────!!」


 十数分ぶりに臨む外界の様子は、ゲームの前といちじるしく異なっており。

 状況を飲み込むのに、しばし時間を要した。
 結論からいえば、それは俺にとって願ってもない事態であったわけだが。

 俺と同じく、事態の把握に脳をフル稼働させているのだろう。
 ポセイドンはスロープから降りることなく、コンテナの傍で身を硬直させている。

 そして、


(;'A`) 「!!」


 いた。
 ヤツの逆側。
 俺から見て、斜め向かい方向。
.

639 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:33:50 ID:AdzHJhxs0
.
(; A ) ( ─── “ 協力者 ” !)


 位置関係からしても、さして矛盾はない。


 ポ リ グ ラ フ
 嘘発見器で確認していない 『 ひとつの嘘 』 。

 あいつは、あらかじめ撒いていたんだ。
 ~~~~~~
 この勝負のために。


(;::::A゚) (薄暮れの中、あいつは確かにこう言った)


 港に来てからの一連の出来事が、フラッシュバックする。
.

640 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:35:59 ID:AdzHJhxs0
.
『 妙なことは考えるなよ?
  なにせ我々は、“ か弱い ”一般人だ。
  お前らに超能力を使われた日には、ひとたまりもないだろうが── 』


 さりげない念押し。
 これこそ、事実誤認を招くための布石だったのだ。


 その後、倉庫に辿り着いてみれば、中には白服の超能力者が二人いた。
 そして黒幕であるポセイドン。 ……は、ともかくとして。

 没個性的な佇まいの黒服たちに対し、個性的すぎる白服の二人。
 彼らの様子から、俺たちは無意識に、一つの可能性を排除していた。
 確認も取っていない <偽の事実> を、すんなり受け入れてしまっていた。
.

641 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:37:41 ID:AdzHJhxs0
.
(;'A`) (俺が大きく違和感を抱いたのは、あの時だった)


 シーンが進み。
 脳内のムービーは、ブーン達のゲーム開始時点まで早送りされる。
 コンテナ外における、白スーツ達の会話の内容が思い起こされた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 / ゚、。 / 『 目の前にエモノたーくさんなのに、おあずけなんてヒドいケド。
        その上こんなのまで着せられて、フラストレーションバリバリだケド 』
         ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 爪 ゚〜゚) 『 俺だってなあ! テメーとお揃いなんて反吐が出るってんだよ 』
                  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 そう。
 鈴木兄弟が、黒服たちと対照的な 『 白いスーツ 』 を着ていたのは、
 自分たちの意志ではなかった。 (悔しいことに、似合ってるけど)
.

642 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:39:55 ID:AdzHJhxs0
.
( A ) (じゃあ、誰がそれを望んだ?)


 考えるまでもない。
 ポセイドンの指示だろう。

 雇われチャネラーどもに、ポセイドンがわざわざ白いスーツを着せた理由。


( A ) (それは。
     俺たちに、動かし難い先入観を抱かせるためだ)


             <<< 白服が超能力者で、黒服は一般人 >>>


 確認するまでもない、『 見ればわかる事実 』 。
 そう刷り込むことが、ポセイドンの目的だったのだ。

 ポセイドンが、“ 俺たちのイカサマを封じた上で ”、
 かつ “ 自分だけイカサマを行う ” ためには、
 嘘発見器(ポリグラフ)という障害を、クリアする必要があったから。
.

643 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:40:54 ID:ysHrJFJk0
なるほど
完璧に騙されてた

644 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:41:51 ID:AdzHJhxs0
.
( A ) (ポリグラフによる確認を取らせぬよう、心理的に誘導してきたわけだ)


 様々な布石を打ち、言辞を弄して。
 “ 偽り ” を “ 周知の事実 ” に仕立てあげた。

 すべては、俺たちが納得ずくで勝負に乗るように。
 正々堂々、イカサマなしのガチンコだと “ 見せかける ” ために。


 〜 〜 〜


川 ゚ -゚) 「は?」

( ´_ゝ`) 「マジで?」

(,,#)Д゚) 「ああ、間違いねえ」


 ギコは告発する。
 彼の特技のひとつ。
 “ 近くのチャネラーを感じ取る ” 能力が、導き出した真実に沿って。

 超能力をあやつる、雇われ白スーツ3人衆。
 別の倉庫でギコを見張っていた、島野ジャンヌ。
 目の前にいる鈴木ダイオード、そして鈴木タムラ。


(,,#)Д゚) 「あいつらだけじゃねぇッ!
      “ ちゃねらー ” は……」


 ポセイドンを含め、全部で < 5 人 > !


 〜 〜 〜
.

645 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:43:34 ID:fnT/3TzYO
なるほど…全然わからんかった

646 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:43:41 ID:Ohuo1TBY0
そういうことかああああ

647 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:44:13 ID:AdzHJhxs0
.
( A ) スゥゥゥゥ


 スロープ上より、ドアのノブを掴んだまま。
 俺はめいっぱい息を吸い込んだ。

 そして。
 室内の一角へ集う仲間たちに向かって。
 あらん限りの声で呼びかけた。


(;'A`) 「ブーン!!」

Σ(^ω^ ;)彡 「に、ニーチャン!?」


(;'A`) 「聞け! 俺たちは、騙されていたんだ!」

(,,#)Д゚) 「騙されるな! いいか……!?」


 ほぼ同時の出来事だった。
 一団から飛び出したギコが、前方を指差し、声を張り上げる。
.

648 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:45:02 ID:AdzHJhxs0
.
(#,,#)Д゚) 「そいつはッ!」


(#'A`) 「グラサンはッ!」



               「「 チ ャ ネ ラ ー だ ッ !! 」」



 俺たちの叫びが重なったのは。
 まさに今、黒髪ライダー女の使役する “ 水の大蛇 ” によって。

                 ク レ ア ボ ヤ ン ス
 逃げ出そうとしていた “ 透視能力者の男 ”


 ── 角刈りの黒服が、床に組み敷かれる瞬間だった。



 (続く)


.

649 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:46:05 ID:ysHrJFJk0
おおお盛り上がってきた!
そろそろ決着になるのか?
乙!

650 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:47:21 ID:Ohuo1TBY0
待っててよかったよ……本当によかったよ……乙

651 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:51:23 ID:fnT/3TzYO
かっけぇ終わり方だ…
本当に乙!!

652 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:52:24 ID:AdzHJhxs0
.
※ジャンヌの使うヒッサツワザ名のうちいくつかは、
  別所にて……具体的に言うと一人配信(ラジオ)にて募集し、採用させてもらったものです。
  改めてありがとうございました。

  以下、寄せられたワザ名案を全て載せておきます。
  お題は 【 なんとなく厨二ぽい単語+スイーツぽい単語 】 でした。
  よくこんなの思いつくなって単語がたくさん。
.

653 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:52:33 ID:rq/hno3k0
乙乙

654 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 00:53:13 ID:AdzHJhxs0
グッドモーニング・ロリポップ
エレメンタルまかろん
ファイナルスイートポテトッ!!!!
グローリー・パフューム
シャイニング・ぱふぇ
スパイシー・シュガー
ノーヴェンバー・レモネード
ジェネシス・パルフェ
レギンレイヴ・モイスチャー
ブレイブ・ミルキー
エレメンタル・キャンディ
ゴッド・ぷりん
カオティックサイダー
シード・オブ・プルシメン(柿の種)!!
エクス・トレハロース
マルクス・ブルボン
ルナ・アップル
ゴッテス・ショコラーテ
マッド・パウダー
エゴ・キャラメリーゼ
マカロニ・サラダ!!
グリード・パンナコッタ
ハイパー・シュー
ミラージュ・ローズ
イデア・クリーム
アイギス・クラッカー
パラケルスス・アイシー
グラン・トルテ
コロネ・リベリオン
イレイサー・タルト
オリオン・ドロップ
エクスキュート・モンブラン
ノイジーメランジェ
インフィニティ・バナナ
ジャスティス・メローネ
ゴシック・カラメル!

655 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 01:06:16 ID:LSzGUlD20


656 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 01:15:22 ID:DjTw5RTwO

なるほど、他のチャネラーがイカサマ加担してた訳か……全然気付かなかったわ
確かに、考えてみれば単純な答えだな

657 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 02:17:04 ID:ywPtWwzU0
クーさんマジかっけぇっす


658 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 04:40:58 ID:3uAqRRjg0
乙乙。アラサークーさん輝いてたぜ
ギコさんお久しぶりですお元気そうで何より安心した

659 名前:名も無きAAのようです:2012/12/13(木) 07:43:14 ID:0QjSuf/I0
乙! クーと兄者は何気に初対面なのか

660 名前:名も無きAAのようです:2012/12/14(金) 21:52:17 ID:myZoZQQI0
ダイオードが取り出した超能力を一般人(黒服)が使ってるのかと思ったけど他にも超能力者がいたのか

661 名前:名も無きAAのようです:2012/12/16(日) 01:25:40 ID:3UsfC8R20
おつ
これでイカサマ発覚でゲーム終了なのかな?

662 名前:名も無きAAのようです:2012/12/16(日) 10:32:49 ID:b/VtCte.0
どっちにしろゲームには勝たないとポセイドンの支配からは解放されないだろう

663 名前:名も無きAAのようです:2012/12/21(金) 11:32:40 ID:u0UnwuZsO
wktk

664 名前:名も無きAAのようです:2012/12/24(月) 01:34:05 ID:8MLGkKXYO
次はいつ頃になるのかしら

665 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 23:00:02 ID:3xDvTefI0
.
くぅ〜疲れましたw これにて35話完結です!
実は、嘘喰い読んでたらイカサマとかの話を思いついたのが始まりでした
本当は能力バトルを挟むつもりなかったのですが←
キャラを無駄にするわけには行かないので全裸で書き溜めに挑んでみた所存ですw
以下、ドクオ達のみんなへのメッセジをどぞ


('A`) 「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと剛毛なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

(,,゚Д゚) 「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

( ^ω^) 「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

(-[]3[]) 「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

( ´_ゝ`) 「・・・ありがと」ボロン

では、

( '∀`) (,,゚Д゚) ( ^ω^)(-[]3[])( ´_ゝ`) ( ∪)「皆さんありがとうございました!」



(;'A`) (;,,゚Д゚) (; ^ω^)(;-[]3[])(; ´_ゝ`) 「って、なんでマラくんが!?」  (∪*)



改めまして、ありがとうございました!

本当の本当に続く


 [ Rate of progression ]
 ■■■■□□□□□□□□□□□□
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.

666 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 23:02:10 ID:9ZmikUQU0
>>665
くっそwwwwそのコピペは卑怯だwww

待ってるぞ

667 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 23:28:01 ID:hCvsMA1c0
よし、頑張れば今年中にまた投下できるな待ってるぞ

668 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 23:34:42 ID:HkPTmBg20
>>665
ウザすぎワラタ
wktk

669 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 11:58:27 ID:5wgk4G9E0
>>665
ssのウザいコピペ流行ってんのかw
今年中にもう一話期待

670 名前:名も無きAAのようです:2013/01/29(火) 16:22:04 ID:0LL8p4mYO
作者死亡説

671 名前:名も無きAAのようです:2013/01/29(火) 19:59:37 ID:6ywUPBFg0
たった一ヶ月で何言ってんだコイツ

672 名前:名も無きAAのようです:2013/02/11(月) 08:42:08 ID:i7x5B/460
頑張って下さい

673 名前:名も無きAAのようです:2013/03/07(木) 13:09:26 ID:lLw5cRrAO
チラッ←早漏

674 名前:名も無きAAのようです:2013/03/18(月) 14:58:35 ID:nebT5PmA0
期待age

675 名前:名も無きAAのようです:2013/04/17(水) 11:28:12 ID:bqzha0s20
待ってるよ

676 名前:名も無きAAのようです:2013/05/04(土) 23:27:58 ID:RGL/w5HYO
生存報告だけ頼むよ…
すげぇ好きなんだよ。

677 名前:名も無きAAのようです:2013/05/15(水) 16:57:16 ID:V7ByI9g2O
来年までには更新されてて欲しいな〜

678 名前:名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 12:35:09 ID:oLG3C3/A0
続きマダー?

679 名前:名も無きAAのようです:2013/05/19(日) 14:25:23 ID:wD72RVbw0
前は一年待ったんだ。まだまだ余裕だぜ

680 名前:名も無きAAのようです:2013/06/14(金) 21:43:04 ID:.YyCHrHQ0
やっとおいついたー

681 名前:名も無きAAのようです:2013/06/21(金) 12:54:59 ID:XSSkzc3s0
6月も後半か・・・
全裸待機しやすい季節になってきたな

682 名前:名も無きAAのようです:2013/07/24(水) 16:34:50 ID:FksWKB7QO
再開マダー?

683 名前:名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 20:41:43 ID:WgdVb3RcO
〜作者死亡説〜

684 名前:名も無きAAのようです:2013/09/17(火) 01:01:01 ID:XHrsI4BQ0
元気そうだが

685 名前:名も無きAAのようです:2013/09/18(水) 02:29:29 ID:x.P2.Lr60
めっちゃ元気だろw

686 名前:名も無きAAのようです:2013/11/29(金) 15:49:49 ID:etbMwa/k0
待つよ

687 名前:名も無きAAのようです:2013/11/29(金) 23:07:16 ID:4KLF4ELw0
全裸待機してたら風邪ひいた件

688 名前:名も無きAAのようです:2013/12/31(火) 10:11:39 ID:MZgdvxGgO
まだ〜?

689 名前:名も無きAAのようです:2014/01/24(金) 18:38:50 ID:hKzasn3g0
あれ、気付いたら一年以上経ってる‥

690 名前:名も無きAAのようです:2014/01/25(土) 21:50:04 ID:2j4jfIfIC
うわ まじやん

691 名前:名も無きAAのようです:2014/02/08(土) 12:05:29 ID:IpjyKj8oO
もう全裸待機じゃ限界です><

692 名前:名も無きAAのようです:2014/02/08(土) 12:31:51 ID:4iCrQDbA0
雪の日くらい服着て待機したってバチ当たるまいよ…

693 名前:名も無きAAのようです:2014/02/08(土) 12:44:17 ID:1QuSeYSg0
>>692
バチが当たって一年延長な

694 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:41:52 ID:xbjSrQMM0
. 






 ── どいつもこいつも、バカで助かった。



 カードをぎこちなくシャッフルしながら、田中ポセイドンは内心そう毒づいた。





.

695 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:43:29 ID:xbjSrQMM0
 _,
(::::A )

  _,
(;-[]3[])


 白いテーブルを挟んで、二人の男が対峙する。
 傍らでは一人の少女が身を固くしている。

 _,
( 'A`)

(*〓〓)
  _,
(;-[]3[]) 「……」 シャッ シャッ…


 グレーの壁に囲まれた室内(ギャンブル ・ ルーム)。
 透明のバリアは無機質に三者を分かつ。

 ポーカー勝負は、再開された。
.

696 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:44:24 ID:xbjSrQMM0
.
 ある意味では当然の成り行きだった。

 ポセイドンは 『 催眠能力の支配下へ、しぃを完全に堕とす 』
 ドクオは 『 しぃを呪縛から解放する 』 。
 今もって、互いにその目的を果たせていないのだから。

 閉ざされた空間には濃密な空気が満ちていた。
 仕切りの向こう──不健康そうな顔つきの、痩せた男。
 内藤ドクオは神妙な顔つきで、ポセイドンのほうを見つめていた。


(;*〓〓) 「……」


 猫塚しぃ。
 渦中の少女。 儚げな雰囲気をまとう高校生。
 端正な顔はアイマスクで覆われ、うつむく姿はポセイドンの嗜虐性をくすぐる。

 彼女は辛うじてその意思を保っているが、もはや傀儡も同然だ。
            コ ト ダ マ
 ポセイドンによる催眠能力の楔は、すでに半分打ち込まれている。
.

697 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:44:28 ID:ZOikuMuI0
ふぁっ!?
しえん

698 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:45:43 ID:xbjSrQMM0
.
 黒髪の女──クーたちの倉庫内への進入を許してしまったことで、
 人質であったギコを奪還され、さらにはサイコキネシスト(兄者)も解放されてしまった。

 だが最終的に、しぃが人質として機能している限り、ドクオ達も迂闊にこちらへ手出しできない。
 未だアドバンテージは自分にある。
 彼女をめぐる争いは、
 結局のところ “ ゲーム ” を通じてでしか、解決されないのだから。


('A`) 「……いつまでシャッフルし続けるつもりだ? イカサマ野郎」


 しびれを切らしたのか、眼前の相手が吐き捨てた。
 ポセイドンは唇を噛むと、
 テーブル上で腕組みするドクオに、カードの束を突きつけた。
.

699 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:47:04 ID:xbjSrQMM0
.
(-[]3[]) 「……」


 透視能力者の黒服 ── 滝沢は、彼らによってその身を拘束された。

 ゲーム中、見張りの一人として外に立つ滝沢が、コンテナ内を “ 透視 ”。
 ポセイドンのカードを確認し、手の内の発信機を操作する。
 ポセイドン側は胸ポケットの携帯でそれを受信。

 手札(ハンド)のランク1〜13を、携帯のバイブレーション ・ パターンで “ 通す ” のが、
 彼のおこなってきたイカサマの、一連の手口だった。

  _
(;-[]3[]) (……ちっ! あいつらさえ来なければ……)


 ポセイドンは先ほどまでの騒動を回想する。
 黒服のチャネラー……滝沢が、水の大蛇に引き倒されたシーンを。


===
==

.

700 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:48:55 ID:xbjSrQMM0
.
『 や、やめろっ! 離せ! 』

(#,,#)Д゚) 『 いまだ、つかまえろッ! 』

(;'A`) 『 グラサン! グラサン野郎のグラサンを取れ! 』

(; ^ω^) 『 おおおおっ! よ、よくわかんないおー! 』


   川 ゚ -゚) 『 おらっ 』 ヒョコ
 ■■ヘと 彡


『 !! 』

  _,
(; ゚ω゚) 『!? 眼がっ……』

川 ゚ -゚) 『! 碧い、な 』

( ´_ゝ`) 『 ガイジンか? 』

(; ^ω^) 『 お……でも、さっきまではめんたまに色なんてなかったお。
       フツーの角刈りのおっさんだったお! 』


(,,#)Д゚) 『 オッドアイ、ってやつかぁ? 』

川 ゚ -゚) 『 なんだと……角刈りのくせに…… 』

(* ´_ゝ`) 『 なんだかハートがうずくぜ 』

川д川 『 こ……これも……超能力の一種……ですか? 』

川 ゚ -゚) ( 角刈りが……?)
.

701 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:51:42 ID:xbjSrQMM0
 _,
(;'A`) 『 ずっとおかしいと思ってたんだ。
     倉庫内は外より明るいとはいえ、夜だぞ。
     サングラスをかけるほどの照度じゃない。つまりこれは…… 』

( ´_ゝ`) 『 透視能力か 』

( 'A`) 『 そう、目の色を隠すためだったんだよ。 あと視線の方向も 』

( ^ω^) 『 ニーチャンが急に頭良くなったお! 』

(:::'A`)+ ( まあ今思いついたんだけど )


(,,#)Д゚) 『 おい見ろ! なんか手に持ってやがんぞ! 』

『 や、やめt 川 ゚ -゚) 『 おら 』 ぎゃああああ!! 』 ギリギリ

川 ゚ -゚) 『 なんだこりゃ? リモコン……? 』


                           そ
( n´_ゝ`)η 『 どかーん!! 』   l||! 川l|l゚ -゚) l|l ビクビクッ

702 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:53:21 ID:xbjSrQMM0
.
川д川 『 でも……よく気付きましたね……ドクオさん 』

(;'A`) 『 現にさ、他の黒服は、誰もグラサンなんて着けてないだろ?
     威嚇が目的なら最初からかけとくだろうし、
     倉庫に入ってから急に着けるってのはちょっと変だと思ったんだ 』

( ^ω^) 『 そういえばこのオッサン……ボディチェックの時、
       やたらジロジロ猫塚さんを見てた気がするお 』

(;゚A゚) 『 なにぃ!? こ、こいつどさくさに紛れてしぃちゃんの白パンを透視してたのか!? 』

(;,,#)Д゚) 『 ……なんで色とかわかるんだよ 』

(#)_ゝ(#)b 『 見えちゃったからな! 偶然! 今日!
         まあ今日っつっても27話の107レス目だから投下日時で言ったら3年前で…… 』

Σ(;,,#)Д゚) 『 3年前!? って、なんでせんせーがここにーッ!? 』

(;'A`)ノノ゙ 『 あーとりあえずストップ! あとで説明する! ていうか収拾つかなくなる! 』

川;д川 『 …… 』 オロオロ

( ^ω^) 『 ククク……黒の魅力がわからんとは皆まだまだ甘ちゃんだお…… 』

川 ゚ -゚) 『 こいつらまとめて消し去りてえ…… 』



==
===

703 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:54:37 ID:xbjSrQMM0
.
 透視能力の発動中、滝沢は瞳の色が変化する。
 やっかいなことに、直接瞳を覆うと能力が使えなくなるらしい。
 つまりカラーコンタクトの着用は不可。

 『 ならばサングラスで隠せばいいじゃないか。
  たかが黒服一人の動向に、
  文字通り “ 目の色を変え ” る者など、ここには居やしないさ 』

 そう指示を出していたが、結果的にその油断が仇となった。

  _, ,
(;-[]3[]) (チッ。 ただのバカどもじゃなかったってことか)


 援軍チャネラーの乱入、そしてイカサマの露見。
 想定外に次ぐ想定外の騒動を経て、積み上げてきたゲームの流れは崩壊し、
 あとは超能力者たちのガチンコバトル突入必至かと腹を括った。

 ところが現在。
 構築されし秩序は、肉を削がれ皮を切られつつも、
 危ういバランスのまま、その骨組みを保っている。
 ゲームのルールはほとんど変わることなく、ポセイドンは再び四角いテーブルに着いている。

 全てはダイオードの鶴の一言が原因だった。




 〜 〜 〜

.

704 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 21:55:22 ID:xbjSrQMM0
.
※三六話さわり部分&生存報告。
  遅くなってすまん。えーと、まあいつもの事なので許してください。
  書き溜め中なのでもうしばらくかかる。

705 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 22:06:41 ID:9vyyMa8U0
待ってて良かった
また続きが見れることが嬉しいよ
乙乙

706 名前:名も無きAAのようです:2014/03/22(土) 22:41:21 ID:8OrizqgM0
生きてて嬉しいよ
期待して待ってる

707 名前:名も無きAAのようです:2014/03/23(日) 01:16:45 ID:mbwa.w5Q0
びっくりして声が出たくらい嬉しい
また気長に待つ
おつ

708 名前:名も無きAAのようです:2014/03/23(日) 10:45:01 ID:ZgicMsLs0
うおおおおおおおお!!おっおおおおお!!!

709 名前:名も無きAAのようです:2014/03/23(日) 12:18:30 ID:OBzuoB5.0
久しぶり!!

まじ乙

710 名前:名も無きAAのようです:2014/03/23(日) 13:46:57 ID:uIU3zLak0
待ってたぞ!!

711 名前:名も無きAAのようです:2014/03/24(月) 09:00:57 ID:mJH34X.g0
声でたわ

712 名前:名も無きAAのようです:2014/03/25(火) 22:53:24 ID:2biUJj420
生きてるってわかっただけで嬉しい
待ってるぜ!

713 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:44:24 ID:LqW4SQPE0
※「カイジや嘘食いみたいなギャンブル編を本編でやりたい」
  そう思ってはじめたものの、いつの間にか時間ばかりが過ぎた。
  そのうちカイジでワン・ポーカーなるものが始まってニヤニヤした。

※36話はほぼ完成、推敲中。
  少しだけ続きを投下。

714 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:46:50 ID:LqW4SQPE0
.
 『 ────で、ポーカーはどうするん?
   早いトコ終わらせて欲しいケド 』


 この物言いには、侵入者たちだけでなく、ポセイドン自身も驚かされた。

 こちらの陣営には、黒服数名に加えて、タムラ、ダイオードがいる。
 ドクオ側は今や七人ものチャネラーを擁する異能集団だが、
 そのほとんどが “ ロッカー ” によって超能力を封じられている。
 単純な戦力は互角程度ではないかとポセイドンは踏んでいた。


 とはいえ流れのままに超能力バトルへ突入するのは本意ではない。
 ポセイドンは弱い。 蛮族どもの乱闘に巻き込まれるなんてまっぴら御免だ。

 そしてなにより。
 ポセイドンがしぃの 『 精神 』 を手中におさめるためには、
 ゲームという一連の儀式を介し、勝利のフラグを完全に成立させる必要がある。

 相手にとっても同じことだ。
 しぃに掛けられた呪縛を解くには、ドクオはこのゲームに勝たなければならない。

 それがわかっていたからこそ、
 ドクオたちはポーカー勝負の続行を承諾せざるを得なかった。
 綱渡りのバランスで、互いの利害が一致した。
.

715 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:49:18 ID:LqW4SQPE0
.
 ゲーム再開。


 では、ルールはどう設定し直すべきなのか?
 滝沢の存在が明るみになった以上、今までどおりとはいかないだろう。
 その点についても、いち早く采配を振ったのはダイオードだった。


 『 イカサマは、確かにあった 』


 今後、滝沢はドクオたちの手によって無力化される。
 当然の処置であり、ポセイドンサイドとしてもこの程度の要求は呑まざるを得ない。
.

716 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:51:54 ID:LqW4SQPE0
.
 『 ……つっても、見抜けなかったほうにも責任があるケド 』


 ダイオードは続けた。

 つまり。
 ポセイドンサイドは、発覚した不正に対し、一切のペナルティなし。
 勝った時の褒賞─── しぃへの “ コトダマ ” 行使も変わらず。

 リスタートではなく、コンティニュー。
 ゲーム中断前と変わらないチップ状況のまま、勝負を再開する。


 もちろんドクオが勝てば、最初の約束通り、しぃを解放する。
 その点は変わらない。

 一触即発の雰囲気の中、こんな提案をしたダイオードの図太さにも驚かされたが。
.

717 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:53:26 ID:LqW4SQPE0
.
(-[]3[]) (ま、まさか……)


 この条件を、すんなり呑む馬鹿→('A`) がいようとは!


(;-[]3[]) (チップ50枚からのやり直しくらいは覚悟していたが……)


 正直言って、未だに信じられない。
 だがそれは、
 イニシアチブを握っているのが依然ポセイドン側だという事実の証明でもあった。
.

718 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:54:46 ID:LqW4SQPE0
.
 中断前とほぼ同じ状態でゲーム再開……とはいえ、まったく同じとはいかない。
 黒服数名が気絶中。 滝沢はクーにボコられ、能力も封じられた。
 ポセイドンサイドの戦力はいちじるしく低下している。

 ドクオサイドで “ ロッカー ” を嵌めているのは、ドクオ、ブーン、兄者、ギコ、しぃの5人。
 クーとサダコはロッカー装着を拒否。
 イカサマ露呈で分の悪いポセイドンに、そこまでの強制権は残っていなかった。


 その代わり、以降はタムラもロッカーを装着しない。
 ダイオードもプレートを手元にたずさえ、いつでも解錠できる状態とする。

 ポセイドンとタムラ、サダコにクー。
 両サイド2人ずつ能力フリー状態ということで双方合意。
.

719 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:56:54 ID:LqW4SQPE0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第11セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

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   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 12           (-[]3[]) : 29          ┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ──かくして。

 破綻寸前と思われたギャンブル ・ ゲームは、
 衆目監視の箱の中、仕切り直しとなった。


('A`) 「……そのカードでいいんだな?」

(-[]3[]) 「あ? あ、ああ」


 両者カードを引き終わり、席を立つ。
 トーキング ・ タイム移行。
 めくった台札は─── [ 2 ] 。
.

720 名前:名も無きAAのようです:2014/03/30(日) 23:59:32 ID:LqW4SQPE0
.
(-[]3[]) 「……」


 後方へ移動してからも、ポセイドンはタイマーに手をかけたまま動けずにいた。
 『 アップ 』 の声すら躊躇われる。
 落ち着きなく周囲を見回しつつ、現状分析を試みる。


(-[]3[]) (懸念材料は山ほどある。 まず……)


 ダイオードの真意がはかれないこと。

 彼は頼れるチャネラーだ。
 再びカード勝負に持ち込めたのは、ほぼ彼の功績といっていい。
 だが決して従順な手下というわけではない。


(-[]3[]) (“ サムライソウル ” だかなんだか知らないが)


 正々堂々を信条とする彼は、
 当初、ギコの誘拐計画にも難色を示していた。
.

721 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 00:01:06 ID:J/69G0AQ0
.
 こうやってポセイドンとの主従関係が保てているのは、
 ダイオードにダイオードなりの目的があるからだ。


 『 オマエラののーりょく、イタダキだケド 』


 彼はより多くのチャネラーと接触したがっており、
 ポセイドンをその手段として利用しているに過ぎない。
 信条と目的を天秤にかけ、後者がより重かったから、そうしているだけ。

 前金は渡してあるものの、成功報酬に対する執着はなさそうだ。
 このあたりが、金に尻尾を振るタムラ ・ ジャンヌと異なる点だ。


(-[]3[]) (扱いづらいヤツだ。 本当に)


 ダイオードの能力のひとつ、“ 嘘発見器(ポリグラフ) ” 。
 敵の戦力を封じる有用な手段であると同時に、
 ポセイドンにとってもクリアすべきハードルだった。
.

722 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 00:02:58 ID:J/69G0AQ0
.
 イカサマのことは、ダイオードの性格を考えた結果、彼には伝えていなかった。
 ゲーム再開に関わるゴタゴタの中でも、
 ダイオードの口調にはわずかに、こちらの不正を咎めるような含みがあった。

 状況は刻々と変化している。
  “ 通し ” のカラクリは露見した。
 ダイオードの心中、少なからず 『 騙された 』 と感じている部分があるのではないか。

 かりそめの主従関係に、歪みを感じる。
 はたして今のヤツをどこまで信頼していいものか。


('A`) 「……早くしろよ」

(-[]3[]) 「……フン」


 そしてこの男、ドクオ。
 圧倒的不利な状況だというのに、何故こうも落ち着いていられるのだ?
.

723 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 00:04:41 ID:J/69G0AQ0
.
 事態に翻弄されているだけのバカかと思えば、ちゃっかり援軍を潜ませていた。
 思った以上に抜け目ない。

 そんな男が、『 ペナルティなし 』 などという条件を提示されて、
 何の策もなくほいほい勝負に乗るだろうか?

  _,
(;-[]3[]) (いや、やはりそれは)


 あり得ない。

 ポセイドンのチップ29枚に対し、ドクオのチップは残り12枚。
 いくらイカサマを封じられたとはいっても、二人の間には17枚という巨大な壁がある。

 ハンデなんてものじゃない。
 このゲームは消耗戦。 そしてチップの残数は攻撃力という側面を備えている。
 17の差は絶対的で、絶望的だ。

 なのにそのまま勝負を続行した、その狙いはなんだ。
 何か逆転の秘策でもあるというのか。
.

724 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 00:05:50 ID:J/69G0AQ0
.
(-[]3[]) (あるいは……)


('A`)


 既に勝敗そのものにこだわっていないのか。
 どうやって勝つかではなく、
 負けたあとでどう立ち回る、という算段に入っているのか。

 勝負の直前、ドクオたちは仲間たちとひそひそ話をしていた。

 サダコ……とかいったか。
 あの “ 精神汚染能力者 ” がいるせいで誰も近づけず、
 会話の内容は聞き取れずじまいだ。

 なにか企てているのは疑うべくもない。
 
  _,
(;-[]3[]) (くそっ! こいつ、こいつぅっ!!)


 タイマーのスイッチを押す。
 トーキング ・ タイム、スタート。
.

725 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 00:10:28 ID:J/69G0AQ0
※続きは今週中に。

726 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 00:19:13 ID:cpWc2NA.0
んほおおおおお
まっててよかったああああ

727 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 01:51:26 ID:StcC1//M0
うひょおおおおおつ

728 名前:名も無きAAのようです:2014/03/31(月) 03:28:03 ID:ojssh77k0
やったあああああハイペース嬉しい!!!

729 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 17:52:51 ID:Zzmc8YPk0
やっほー

730 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 18:00:03 ID:s7AMjt7E0
たのしみすぎるうううう

731 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 18:23:23 ID:27i8/Vxg0
つづきはよ

732 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:05:35 ID:5qjpsl7U0
※ありがとう。20:30より投下

733 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:30:54 ID:5qjpsl7U0
.
('A`) 「……どうだ。 翼をもがれた気分は。 ハリボテの翼だったみたいだけどな」

(#-[]3[]) 「……何を言ってるんだい? 負けすぎてとうとうヤキが回ったのかな?」


 冷静をつくろうポセイドンだったが、むろん心中穏やかではなかった。

 ひたすらに考える。
 ポーカーの勝敗についてではない。
 勝ちはほぼ決まっている。 問題はその後だ。
 数手先に思考をめぐらす必要があった。


(-[]3[]) (こいつがゲームの続行を決めたのは、おそらく)


 時間稼ぎか。

 コンテナの外は、未だ緊迫した雰囲気に包まれていることだろう。
 かりに能力者たちの力関係をイーブンだとしよう。
 となると、奴らはさらなる援軍の到着を待っているのかも知れない。

 それだけは避けたいが、今のダイオード達にその予防策まで期待するのは難しい。
 ガードマンとしての役割すら怪しいものだ。
.

734 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:33:33 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) (ホールド ・ アップしてやるつもりはさらさらないが……)


 いたずらに勝負を長引かせたくない。

 勝負後、やつらとの激突はまぬがれない。
 となれば。
 従順な “ コイビト ” と化したサイアミーズ。
 彼女のチャネルを開放し、戦いに投入する以外に道はない。


(-[]3[]) (内藤ドクオ。
      もはやこの勝負の結果には固執していないのかも知れないが……)


 “ しぃが手に入る ” という事実は、奴らが考えているよりずっと重い。
 しぃのすべてを掌握するということは、
 彼女の持つ並外れた戦闘能力すらも手中におさめるということ。
 むろん盾としても十分活用できる。
.

735 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:35:12 ID:5qjpsl7U0
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 幸い “ ロッカー ” の鍵はこちらにある。
 勝負の行方がどうあれ、二度とわたすつもりはない。

 あれの破壊は容易ではない。
 奴らが解錠に手間取っているうちにしぃのチカラを解放し、
 従順な駒として投入できれば、戦局は完全に覆る。


(-[]3[]) (それにしても、だ)


 ポセイドンは対面するドクオをしげしげと眺めた。

 正確には彼ではなく。
 そのひたいに張り付いている……ロー ・ カード。


   [4]⊂ヽ
 ( 'A`)ノ丿


(-[]3[]) (勝負はすぐにつきそうだ。
       落ち着き払っている姿がいっそう滑稽だよ、ドクオさん)
.

736 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:37:12 ID:5qjpsl7U0
.
 続けてポセイドンは、ちらりと横を見た。
 彼のずっと手に入れたかったものが、透明の壁の向こうにある。

 チェックのスカートから伸びた細い足。
 肩口より覗く、なめらかな絹の肌。 
 唇をきゅっと結び、両腕を膝に伸ばして、姿勢よく着席している。

 が、その肩は小刻みに震えている。
 毅然とした装いでいて、不安を隠し切れていない。


(-[]3[]) (君を見ていると、希望がわいて来るよ。 くっ、くくく……)


 もうすぐだよ、サイアミーズ。
 絶対に手に入れる。
 この勝負を制し、僕と君は、晴れて恋人同士となる。

 こんな殺風景な箱の中じゃないさ。
 広く明るいプライベート ・ ルームで。
 存分に愛してあげる。
 美しく飾りつけてあげるからね。
.

737 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:40:58 ID:5qjpsl7U0
.
 その肩に、うなじに、唇に。
 甘く柔らかい肌に……はやく。
 たっぷりと、ボクのシルシをキザミツケタイ。


(;*〓〓)


 ああ、たまらない。
 たまらないよ、しぃちゃん。


 僕こそが、白馬の王子様だ。


.

738 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:41:52 ID:5qjpsl7U0
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                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
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739 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:44:22 ID:5qjpsl7U0
.
 〜 〜 〜


 11セット目。
 運命のベット ・ ラウンド。


('A`) 「───ベットだ。 1枚」


 言い放ち、ドクオは青のチップを4枚、扇状に広げて示す。


(-[]3[]) 「ふん。 いいのかい? 降りなくて」

('A`) 「イカサマできないお前なんて怖くはないね。
    流れは完全に変わった。
    これからの俺はとことんまでいく」

(-[]3[]) (はん。 何言ってんだこいつ)


 考えるまでもない。 ハッタリだ。
 残り12枚のドクオにとって、ここでのフォルドはジリ貧。
 前のめりになる以外、選択肢など無いのだ。
.

740 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:46:44 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) (となれば、やる事は簡単だ)


 ドクオのハンドはローカード [ 4 ] 。
 台札として [ 2 ] が提示されているため、ポセイドンの勝率は9/11=81.8%。
 いちじるしく高い。

 ぎし、と椅子をきしませ、彼はテーブルにチップを撒いた。


(-[]3[]) 「レイズ。 5枚といこうか」

(;'A`) 「……!」


 ほぼ負けはない。
 ならばいっそ、9枚張り=アンティ込み12枚で、根こそぎライフを奪ってやるのも面白い。
 心の中でほくそ笑んだポセイドンだったが、万一を考え、ベット枚数はほどほどに抑えた。


(-[]3[]) (まだこいつの真意が読めないからな。 
       ポーカー勝負そのものに策を弄している可能性も捨てきれない)
.

741 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:48:57 ID:5qjpsl7U0
.
(;'A`) 「5枚……なるほどな」


 とたんに脂汗が吹き出す。 わかり易い男だ。
 口調は平静を装っているが、態度が、表情が、その動揺を物語っている。

 テーブルに賭け金を投げはなったポセイドン。
 彼と対照的に、ドクオは青チップを握り締めたまま、いまだテーブルに置こうとしない。

 しかもその左手は小刻みに震えている。
 生命線であるそれを手放すことがよほど恐ろしいのだろうか、
.

742 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:51:02 ID:5qjpsl7U0
.
 『 何がなるほどなのかなあ? 』
 嫌味を言う間もなく、ドクオは小さく首を横に振った。


(;'A`) 「フォルド」

(-[]3[]) 「! ……降り、だって」


 勝負は一瞬だった。


(;'A`) 「降りて、ねーよ。 戦略的撤退だ」


 しぃが青い顔でアイマスクを外す。
 震える左手を動かし、ドクオはぎこちなくチップをボックスに投入する。


('A`) 「どうやら、勝負をかけるタイミングはまだ先のようだからな」


 青チップ1枚をつまみ上げながら、ポセイドンはいま一度ドクオの瞳を覗き込んだ。
 いまにも大粒の涙をこぼしそうな、潤んだ目でドクオを見つめるしぃ。
 ドクオはしらじらしい咳払いでそれらの視線をあしらう。
.

743 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:52:34 ID:5qjpsl7U0
.
 ======== 【 STAGE 11 RESULT 】 ========

    Up Card : [ 2 ]

            ('A`) : -4      (-[]3[]) : -1 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st    BET  1
                         RAISE 5
      ..2nd   FOLD

    Final

    Ante        3              1

   Hands        [ 4 ]            [ ? ]

 ============================


('A`) 「流れは俺。 こっからが俺のターンだ。 覚悟してな」


 何か仕掛けるつもりなら、タイミングはここしかなかったはず。
 ポセイドンはメガネのつるを押し上げた。


(-[]3[]) (杞憂か……?)


 やはりポーカーそのものについては無策。
 狙いは別にあるのか。

 もやのように湧く疑心は、着地点をもとめてさまよい続けていた。
.

744 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:54:33 ID:5qjpsl7U0
.
●第三六話 『 Black dagger ── VS. ポセイドンI 』


(-[]3[]) 「そろそろおしまいかな。
      消化試合もはなはだしいが……残りのゲーム、せいぜい楽しむといいさ」


 デジタルボードが数字を減らし、しぃは再び暗黒に幽閉される。
 ポセイドンの28枚に対し、ドクオのチップは残り8枚。


(-[]3[]) 「ずいぶん寂しくなったもんだねえ」


 ポセイドンはドクオのチップケースをあごで指した。
 その差20。 もはや負けはない。
 その気になれば、数セット消費し、アンティだけで削り殺すこともできる。

 死のカウントダウンははじまっている。
 勝負が終わった瞬間、しぃは自分の操り人形だ。
 しかしそれは同時に、バトル突入への合図でもある。

 残念だが、勝利の愉悦に浸る暇はなさそうだ。
 ロッカーの鍵はポケットの中。
 すぐさま取りだせるよう準備しておかねばなるまい。
.

745 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:56:59 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) 「……?」


 しかし。
 ドクオはカードを持ったまま、いっこうにシャッフルしない。


( ::A`) 「……」

(-[]3[]) 「どうした? 何をしている。 早くカードを……」

(::::A::) 「───タネは、割れてる」

(-[]3[]) 「は?」


(#'A`) 「とぼけんじゃねえっ!!」


 怒号がこだまする。
 次の瞬間、ドクオは後ろ手にカードを放り投げた。


(-[]3[]) 「なっ!? なにをして」
.

746 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 20:59:17 ID:5qjpsl7U0
.
Σ(;-[]3[]) ⊂≡「!!」


 そのまま。
 仰天するポセイドンの鼻先へ、指を突きつける。


m9('A`#) 「いいか、聞け!」


 雪のごとく舞い散るトランプカードをバックに、ドクオは言った。


m9('A`) 「ブーンとの勝負で、お前はダイヤのカード群を使っていたよな?」

(;-[]3[]) 「そ、それが、どうした」

('A`) 「で、俺との勝負ではハートマークのカードを使っている。
    なぜだ?」

(;-[]3[]) 「なぜって、それは、イカサマ防止の」


 言いよどむポセイドンの弁解を、ドクオは強い口調でさえぎる。
.

747 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:01:13 ID:5qjpsl7U0
.
('A`#) 「防止じゃねえ! “ イカサマするため ” だろうが!」

煤i;-[]3[]) 「はあ? お前、何を言って……」


('A`) 「俺が言いたいのは、カードを替えたことじゃない。
    俺との勝負で “ ハートを使い続けてる ” ことについてだよ。
    
     途中、俺がイカサマを疑って勝負中断したことがあったよな?
     その時お前は、カードのチェックを禁止しなかった。
     にも関わらず、 “ じゃあ、カードを換えよう ” とは言いださなかった。

     結果、傷や汚れ ・ 折れ目などがあってもおかしくない、
     ハートのカードのまま勝負を継続した。

     普通ならカードチェンジを申し出るはずだ。 ストックはあるんだから」


(;-[]3[]) 「な……?」
.

748 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:04:32 ID:5qjpsl7U0
.
 パーテーションを人差し指でぐりぐり押さえつけ。
 ドクオは続けた。


('A`) 「理由はおおかた想像がつく。
    透視能力者である黒服にとって、
    赤いカードのほうが “ 見やすい ” とか、どうせそういうトコだろ。

    ブーンとの勝負でダイヤを使用したから、残るスートはスペードとクラブ。
    お前はできることなら黒いカードを使いたくなかった。
    どうだ?」

煤i;-[]3[]) 「……う、ち、ちがっ」


 一気にまくし立てると、返答も待たず、ドクオはきびすを返す。


('A`) 「とにかくだ。 ……よいしょっと。
    赤いカードは……もう、使わない」


 散らばったカードを拾い上げ。


('A`) 「ほらよ」


 席に戻ったドクオは、カードの束をテーブルへ放った。
.

749 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:08:28 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) (時間稼ぎか)


 ドクオの指摘は確かに当たっている。
 だがその内容は、半ばクレームに近い。

 ハートを使うのが嫌だというのなら、
 11セットの開始前にカードを替えようと提案するはず。
 この土壇場になって言い出すことではない。

 単なる負け犬のあがきだ。 怒って見せたのもポーズに過ぎない。
 内容に深い意味はない。 “ たまたま ” 図星だったという、それだけ。
 勝負を長引かせることが目的に違いない。


(#-[]3[]) (そんな手に乗るか、バカが!)


 ポセイドンはカードを引っつかむと、早歩きでテーブルに戻った。
.

750 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:10:10 ID:5qjpsl7U0
>>748>>749の間に以下のレスが抜けてた。修正。

751 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:10:52 ID:5qjpsl7U0
.
('A`) 「まだ他に協力者がいないとも限らないからな」

(;-[]3[]) 「あ、あんたがそれを言うか……」

( 'A`)σ 「そっちに置いている予備のカードを寄越せ。
       残りの勝負はすべて、黒のカードでおこなう」

(((;-[]3[]))) 「くっ……いけしゃあしゃあと……好きにしろ!」


 ポセイドンの歯軋りに、しぃの体が小さく反応した。
 それでもドクオから目を切らぬよう、後ずさりでサイドテーブルへ向かう。


('A`) 「下手な動きはするなよ。 静かにこっちへ持ってきな」

(;-[]3[]) (いや、やはり)


 カードの束に手を伸ばしつつ、ポセイドンは確信した。
.

752 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:14:11 ID:5qjpsl7U0
.
  《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉 《〉  <<  第12セット  >>  〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》 〈》

.    _______________________________
   |┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓|
   |┃                                              ┃|
   |┃          ('A`) : 8            (-[]3[]) : 28          .┃|
   |┃                                              ┃|
   |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 それぞれにカードを改めたのち、
 ドクオはおぼつかない手つきで、新しいカードを切り始めた。


(-[]3[]) 「いくら難癖をつけたところで、この局面は覆らない。
      何が目的だい?」

('A`) 「難癖だと?」


 が。
 ポセイドンの一言に、ぴたりとシャッフルの手を止める。


('A`) 「ふざけるなよ。
    イカサマという目的のために、お前はいくつもの策を巡らせていた。
    トーキング ・ タイムだってその一つだ」
.

753 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:19:11 ID:5qjpsl7U0
.
 せっかく再開ムードになったのに。
 軽く探りを入れるつもりが、いらぬおしゃべりの引き金となった。
 ポセイドンは心中で舌打ちしたが、時すでに遅し。


('A`) 「インディアンポーカー “ らしい ” 演出に見せかけて、
    その実態は、全力でイカサマするためのお膳立てだったのさ。

    わざわざ “ 後ろに下がる ” ことにも理由もあった。
    パーテーションへのカードの映り込みがどうとかお前は言っていたが、
    本当の目的は別。

    テーブルを挟む至近距離、かつ対面した状態では、なにかと不都合だったからだ」


 反応を確かめるように、ドクオはポセイドンのほうをしげしげ眺めた。
 のんびりと手を動かし、続ける。


(;-[]3[]) 「くっ、うるさいぞ、いい加減に……」
.

754 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:22:28 ID:5qjpsl7U0
.
('A`) 「しぃちゃんもよく聞きな。

    トーキング ・ タイムと称して “ 席から離れる ”。
    そして “ 絶えずしゃべりまくる ” 。
    これらの行動には、カムフラージュの意味がこめられていたんだ」


(;*〓〓) 「──?」

煤i;-[]3[]) 「!!」


 ポセイドンの心臓が跳ね上がった。
 なおもドクオの口は止まらない。


('A`) 「受信機である携帯のバイブレーションと、そこに生じるわずかな衣擦れ。
    そう、こいつは隠したかったのさ。 ポケットから発生する “ 音 ” をな。
    トーキング ・ タイムなんて名前だけ。 その実態はイカサマタイム……」

(#-[]3[]) 「ご、ごたくはいい! 寄越せッ!」


 緩慢にシャッフルを続けるドクオの手から、ぶんどるようにしてカードを引く。
 ドクオがテーブルに乗り出し、パーテーションの空洞と近い位置にいたことが幸いした。
.

755 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:33:58 ID:5qjpsl7U0
.
 数回のカットを経て、ポセイドンは乱暴にカードをテーブルへ広げる。
 ドクオがそこから1枚引き、
 じつに12回目ともなるギャンブル・ゲームが幕を開けた。


(;-[]3[]) (この男、次から次にべらべらと!)


 台札 [ K ] を確認すると、互いに後方へ下がる。
 息を荒げるポセイドンに対し、
 タイマーのスイッチに手をかけたまま、ドクオは言った。


('A`) 「あ、そうそう」

(;-[]3[]) 「!?」

('A`) 「こうやって席を離したのにはもう一つ理由があるよな。
    見えにくかったからじゃないか? カードが」

(#-[]3[]) (まだ言うか! こ、こいつ……!)


('A`) 「もちろん見せる相手は俺じゃないぜ。
    斜め向かいに立つ、ゲームのもう一人の参加者──
    壁の向こうの黒服野郎にさ」
.

756 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:40:06 ID:5qjpsl7U0
.
 ポセイドンは焦りに身を震わせた。

 滝沢の超能力 “ 透過式遠隔視(イントロスコピー) ” には大きな欠点があった。
 生体を透過することができないのだ。

 “ 透視 ” を発動している間、
 彼は対象物以外の全ての無機物を “ 透過 ” して見ることができる。
 だが人体だけは、黒い影となって視界に残り、“ 透過 ” の進行を阻む。

 (女性の裸はもちろん、
  下着姿ですら黒いマネキンのように見えて、色気も何もあったもんじゃない。
  ほんッッッと使えない能力ッスよ!! ─────とは本人の弁である)


(((#-[]3[]))) (クソッ、くっそお! なんでここまでわかる!?)


 カードをこちらに向ける通常のポーカーだと、
 プレイヤーの体が遮蔽物となり、手札がうまく見えないのである。

 それでなくともポーカーというゲームは、カードをテーブルに伏せる場面が多い。
 離れた位置からは角度的に確認が困難なのだ。

 そんな折、ポセイドンは知る。
 『 インディアンポーカー 』 というゲームの存在を。
.

757 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:42:27 ID:5qjpsl7U0
.
('A`) 「一枚のカードを、相手に向けてずっと晒し続ける。
    そういう意味じゃ、インディアン ・ ポーカーは
     “ 透視 ” にもっとも適したゲームだった」


 使用カードはたったの一枚。
 そいつを地面から見て垂直方向に。
 自分でなく、相手に向かってよーく見えるように。
 ひたいに添え、じっと提示し続ける。

 そんなパーティゲーム。


(#-[]3[]) 「うるさい! うるさい五月蝿いウルサイ!!
       おしゃべりを続けたければタイマーを押せ!
       早くしないと負けにするぞ!!」

('A`) 「焦りはツキを落とすぜ、おぼっちゃんよ」


(((#-[]3[]))) 「だまれッ! この……!」  ピッ>


 こみ上げる怒声を、鋭い機械音がさえぎった。


('A`) 「トーキング ・ タイム、スタートだな。
    いい反応を見せてくれよ」
.

758 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:51:57 ID:5qjpsl7U0
.
(((#-[]3[]))) (許さない! ユルサナイゆるさない許さない!
          覚えていろドクオ!
          勝負が終わったら、しぃのチカラでギッタギタにのしてやる!)


 震える手でコースターからハンドを掴み上げる。
 カードを取り落としそうになりながら、対面するドクオへ怒りの視線を向けた。


(#-[]3[]) 「────!」


 が、次の瞬間。


( -[]3[])


( -[]3[]) (えっ)


 ポセイドンは顔面からすっと血の気が引くのを感じた。
.

759 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 21:56:14 ID:5qjpsl7U0
.
(;-[]3[]) (こ、こいつ───!)


 ドクオのやつ。
 この正念場。
 生きるか死ぬかの分岐点で。

 そいつを、そのハンドを、引き当てやがった。


   [A]⊂ヽ
 ( 'A`)ノ丿


 ひたいに張り付くローカード── [ A ] を。


(-[]3[]) (ふ、ふは、ふはははは!!)


 自然、口角がつり上がる。
 とんだお笑い種だ。
 あれだけの講釈を垂れておきながら、たぐり寄せたカードは、最 弱 。
.

760 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:00:47 ID:5qjpsl7U0
.
 今にも笑い出しそうになるポセイドンだったが。


煤i-[]3[]) 「────!」



          ヾ
         //
         \ヽ、
         / /
        /  /
        ヾ  \
        /   丶 
        /     /
       ./      \    『 ! ? 』
      / (−[]:3::::) .\


 その脳裏に、さらなる雷鳴が轟いた。
.

761 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:02:23 ID:5qjpsl7U0
.
(- []3:::) 「────こ、こっ」


(;-[]3[]) (こ、れ、は ……!)


 ポセイドンはドクオに悟られないよう、ちらちらと周りを見るようなそぶりで、
 テーブルのほうへ視線をおくった。

 あった。
 きちんと整えられた山札の最上段。
 一枚だけ、仰向けに肌をさらすそれ。

 勝負に使われることのない
 【 死にカード 】 。


(;;-[]3[]) (─── まさか!)


               タロン
 テーブルに鎮座する 【 台札 】 。

 その絵柄は、

 [ K ] 。
.

762 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:03:38 ID:5qjpsl7U0
.
(;;-[]3[]) (あ、ああ、あ)


 [ A ] が唯一殺せる相手── [ K ] が。
 台上にその身を横たえている。


 死んでいる。


(;;-[]3[]) (あああ、う、おおおおおおおおおおお!?)


   [A]⊂ヽ
 ( 'A`)ノ丿 「どうした? やけにおとなしくなっちまったじゃないか」


 ポセイドンはその事実に身を震わせた。

 イカサマが封じられた今、ポセイドンはヒラでの勝負を余儀なくされている。
 彼のひたいに掲げるカードは、もはや彼自身にはわからない。

 が、確かなことが一つある。
 ポセイドンのハンドは [ A ] ではない。
 そして。
.

763 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:05:32 ID:5qjpsl7U0
.
( -[]3[]) ( [ K ] でもない! これは、つまり!)


 [ 2 ] 〜[ Q ] のいずれかであることは間違いない。
 その全てが [ A ] を凌ぐ、必殺必中の上位カード。


 台札 [ K ] 。

 敵の手札 [ A ] 。

 それは、このゲームにおいて、唯一。


『  き  た  っ  ……!  』


 100%。

 必勝。

 絶対に負けない、奇跡の組み合わせ。
.

764 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:08:33 ID:5qjpsl7U0
.
   [A]⊂ヽ
 ( 'A`)ノ丿 「思えば、この勝負は最初からおかしいことだらけだった」


 そんなポセイドンの興奮も知らず。
 ドクオは淡々と語りだした。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   (-[]3[]) 『 話は変わるが、“ PSIジャマー ” をご存じかな?
          我が社が極秘裏に開発し、
          高い評価を得ているジャミング装置だが…… 』

   爪 ゚〜゚) 『 ウーハーに似た、でっけェ箱みたいな装置だ。
         設置ポイントから特殊な電磁場を形成し、
         いっさいの超能力を使えなくする機械だよ。
         ありゃー確か……対象範囲は半径5メートルほどだっけか 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


('A`) 「話によれば、
    いちどロッカーの充電が切れてギコが大暴れしたそうじゃないか。
    さっきそれを聞いたんだが、俺はどこか引っかかるものを感じた」


 ドクオのさえずりなど、もはや耳に入らない。
 高揚を見抜かれぬよう、表情を抑えるのに苦労した。
 一分という時間が限りなく長く感じられる。
.

765 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:11:21 ID:5qjpsl7U0
.
('A`) 「完成された【 PSIジャマー 】 ではなく、
    あくまで試作品の【 ロッカー 】をゴリ押しした理由。

    ジャマーを使うと、黒服が巻き込まれる可能性があるからだろ?
    イカサマの性質上、お前は角刈り野郎をコンテナ(ギャンブルルーム)のそばに
    配置せざるを得なかったもんな」


 生返事を繰り返しながら、ポセイドンは精神の沈静につとめた。


('A`) 「不正で塗り固めたお前の城。
    城壁が崩れ去ったいま、
    天守閣が落ちるのは時間の問題だ」
.

766 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:13:45 ID:5qjpsl7U0
.
 自信たっぷりにドクオが告げる。
 同時に、タイマーが機械的なリズムを奏でた。


('A`) 「さあ、お楽しみのベット ・ ラウンドだ」


 それはこっちの台詞だ! バカめ!
 言い返したい気持ちをぐっとこらえ、ポセイドンはハンドをコースターに伏せた。

 願わくば、向かって来い。
 返り討ちになったお前のバカ面、楽しみにしているぞ。


 〜 〜 〜
.

767 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:15:45 ID:5qjpsl7U0
※小休止

768 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:45:26 ID:SY/SN3ls0
支援なんだぜ?

769 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:59:52 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) 「ベットだ。 5枚」


 テーブルに戻るや、ポセイドンは強い口調で言い放った。

 今までのように 【 1枚ベット 】 などと悠長なことをしていては、
 1枚レイズでのらりくらりかわされるのが目に見えている。

 相手の目的が時間稼ぎだとしても、次ターン持ち越しはさせない。
 勝負に乗らないのであれば、
 ドクオはこのターン、即フォルドする以外に道は無い。


(-[]3[]) (もしそうではなく、ドクオが玉砕覚悟で攻めるつもりなら……)


 5枚ベットはアンティ込みで実質8枚の勝負となる。
 そしてドクオの残チップ数も8。


(-[]3:::) (ショーダウンに持ち込めば、この一撃で、確実に殺せる)


 5枚ベット。
 それはポセイドンが導き出した最適解だった。
.

770 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 22:59:53 ID:u1m2qTdk0
再会待ちどおしいんだぜ?

771 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:01:32 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) (……とはいえ、そううまくはいかないだろうな)


 ポセイドンにとって、ここで即フォルドされる展開が一番ダルい。
 しかもその可能性は高い。
 テーブルを包む緊張の中、ポセイドンは冷静さを取り戻しつつあった。


('A`) 「確認しておくが……。
    デッドラインは0。
    賭ける枚数にはアンティ3枚を考慮しなくていいんだったよな?」

(-[]3[]) 「! ……そうだけど? 」


 胸がざわめく。
 一時落ち着いたテンションが、ふたたびMAXまで跳ね上がる。


『 ならば 』


 ポセイドンの期待を後押しするように。
 ドクオはボックスごと掴み上げ、高らかに叫んだ。
.

772 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:04:05 ID:5qjpsl7U0
.
(#'A`) 「レイズ、8枚!

     オ ー ル イ ン だ !」


 しぃがぎょっとした様子で体をふるわせる。


(-[]3[])


(#'A`)


::(-[]3[]):: 「ぶ、ぶぶっ」


(#'A`) 「?」


(*-[]3[]) 「ぶ、ぶぁ、ぶわ───っはっはっはははッ!」


 こみ上げる笑いをこらえ切れず、ポセイドンは甲高い声をあげた。
 これが落ち着いていられるか。
 まさに理想の展開。

 やはり、こいつ、バカだ。
 大バカ野郎だ!
.

773 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:06:05 ID:5qjpsl7U0
.
 僕の頭上に、果たしてどんな希望の光(ローカード)を見たのやら。
 [ 4 ] か [ 5 ] ?
 はたまた [ 2 ] [ 3 ] ?


( -[]3:::) (そんなもの、砂上の楼閣さ)


 残念だったな。
 内藤ドクオ、今のお前は丸裸だ。
 怖くもなんともないんだよ。


(*-[]3[]) 「ぶぁひゃひゃひゃ! はは! 面白い!
       ドクオさん、そんなに玉砕したいのなら乗ってやるよ!」


 なぜかって?

 お前のカードは、最弱の [ A ] !
 唯一勝てる [ K ] すらいない、正真正銘の必敗ハンド。
.

774 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:07:36 ID:5qjpsl7U0
.
(*-[]3[]) 「コール!! コールだよ! 当然だ!
       なんなら10枚にレイズしてやってもいいぞ! フォルドしないのならなァ!」

('A`) 「当然乗るさ。 コール!!」


 あまりのおかしさに我を忘れてしまいそうだ。
 ウェルカム、ドクオ。
 白く四角い死刑台へ。


(*-[]3[]) (とんだオーバーキルだ。 自らのハンドに絶望しな、ドクオ!)


 狂乱の中、しぃがおずおずとアイマスクを外す。
 役者は出揃った。
 最高のショーのはじまりだ。
.

775 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:11:32 ID:WqdPyhIE0
支援

776 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:12:13 ID:5qjpsl7U0
.
     <<  S H O W    D O W N   >>



(l|l*゚−゚) 「ぁ、ぅ、ぁ」

(-[]3[]) 「サイアミーズ!
       いいかっ! しっかり目に焼き付けるんだ!」


 もはや昂りを隠そうともせず。
 ポセイドンはテーブルの中央に手を伸ばした。


(*-[]3[]) 「最強 ・ 最上 ・ 最愛の! 王子様の凱旋シーンをなァっ!」


 手札を摘み、力を込める。


(#-[]3[]) 「うおおおおおおおおおお!!」
.

777 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:15:12 ID:5qjpsl7U0
.
.
!llll||| (-[]3[]) |||llli!


 ─── が、その途端。


煤i;-[]3[]) 「!?」


 催眠能力者の勘、とでも表現するべきだろうか。


(;l|l-[]3[]) (な、なっ!?)


 高揚した気分が一転。
 水浸しのカーテンに包まれるがごとく、
 ポセイドンの全身に悪寒がほとばしった。


::::(l|l-[]3[]):::: (なんだ!? こ、この言いようもない不安は……)


('A`) 「さあ、勝負だ」


 おかしい、どういうことだ、こいつの落ち着き様は。
 この一回で終わる可能性が高いというのに、あの自信たっぷりの表情。
.

778 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:16:49 ID:5qjpsl7U0
     そ
(l|l-[]3::) て (まさか、すり替え!?
         ヤツのハンドは、既に別の……!?)


 一瞬溜めて、ドクオも手札に指をかける。



(#'A`) 「  受  け  取  れ  え  ぇ  ぇ  ぇ  ッ  !  !」



煤il|l-[]3[]) 「や、やめッ……!」


 制止する間もなく。
 ドクオはハンドをつかみ上げ、なめらかに手を返した。

.

779 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:18:11 ID:5qjpsl7U0
.



                           o
                                  ゚
                              ・
                              ・.          ゚
                               。゚
                              ゚         。    ・
                                             ・
                             /\
                  ゚          。   /   \
                    o 。゚      /      \      。
                         /             \      ゚   .
                   。       \              \    ゚  。
               o            \              \
                                \             / ゚
                           。・       \      /       ゚
                                   \   /    。
                                    \/  。o


.

780 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:19:00 ID:5qjpsl7U0
.






 鼠色のステージに降るは───






.

781 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:21:12 ID:5qjpsl7U0
.

   r'⌒ヽ.
  (´    `)          (⌒'´ ̄`ヽ
  ゝ,___,ノ´          (       )
        ┌────┐ `ー/ /ー
        │A      │
        │  /\  │
        │ (__, 、__) .│
        │   .Δ.   │
        │      A│
        └────┘
                r'⌒ヽ.
               (´    `)
               ゝ,___,ノ´


 巨大にして、孤独。
 黒いシンボルがひとつだけ描かれた、最弱のカード。

 トーキング ・ タイムで、ポセイドンが眺め続けたハンド。


煤il|l-[]3[]) 「!!」


    て
(*゚□゚) そ


 スペードの [ A ] 。
.

782 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:22:18 ID:5qjpsl7U0
.
(-[]3[]) 「くっ……」



(-[]3[]) 「は、ははは」


l|il
(;*゚□゚) 「そ、ん、な……」


(*-[]3[]) 「くは、ぶあっはっはっはっは!!」


 やはり思い過ごしだった。
 不安の黒雲は四散し、晴れやかな光が目の前に広がる。
.

783 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:23:26 ID:5qjpsl7U0
.
(*-[]3[]) 「これでしぃは僕のものだ!
        とくと見るがいい! そして……」


 ポセイドンはハンドを掴み上げると、頭上高く振り上げ。


(#-[]3[]) 「 絶 望 し ろ お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ お ぉ ォォォ!!」


                 l||l l||l
                l||ll||ll l||l
               l||l 从人 l||l
              -一'''''''ー-、
             (⌒_(⌒)⌒)⌒))
                    ̄   (⌒
             ⌒Y⌒⌒Y⌒⌒Y⌒


 勢いよく、台上に叩き付けた。
.

784 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:24:46 ID:5qjpsl7U0
.

                 (
                   )  )
                  ( ::(
                   ) ::)
                   //
                  ノ´
                .__
                /::::::::/
                 ̄ ̄



     _                       /:.:.:.:
   /:::: :::::\                     、 /::.:.:.:.
       ::::::ヽ                  |:.:.:..:.    \
        .::ノ                  ヽ;.;..:.:    ..:.:)
      ‐<                   __て:.:.:__/
      ...::::::)                         ヽ
   , -=   ::::ヽ                 (:.:.::::   _ノ
  (:::::::::::   :::::ノ                   ..:.:.::_,)
   >::::      ::j                ..: :.::_
  (_::::     :::::r'         /\     (_)
     ̄ (_::::ノ       /:::::::::: \
         Ο     /::::::::::::::::::::: \
           。  / ::::::::::::::::::::::::: /
              \ ::::::::::::::::: /
                \ :::::::: /
                 \/


.

785 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:26:17 ID:5qjpsl7U0
.





 6つの視線が、その一点に注がれる。



 ポセイドンの手の下から現れたカード。



 それは。




.

786 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:26:59 ID:pCy2mt5.0
カイジだな
支援

787 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:27:46 ID:5qjpsl7U0
.
          \\\               | |         //         //
                \\\               | |           //       //
                \\           |          /           /
                  \           |       /        /


                   ┌──────────┐
                   │  K             .│
                   │ /\               │
                   │ (__, 、__)            . |
                   │  .Δ             │
                   │      lVVVVl      |
                   │       |____|      .|
                   │      ( ・∀・)       |
                   │     /( ___)      .|
                   │     / |___┬__|     ..│
                   │     ~~ (__)_)     │
                   │             /\.....│
                   │           (__, 、__)..│
                   │            .Δ .....│
                   │               .K ......│
                   └──────────┘

                                |              \
                         /         |                    \
                     /       |                   \\
              /       /           | |                    \\
.           /         /         | |                    \
.

788 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:29:38 ID:5qjpsl7U0
.

(*-[]3[])


(-[]3[])



(l|*>−<)


(;*>−゚)



([]ε[]-)


(-[] 3[])


(-[] 3 []-)



(*゚ο゚)


(*゚□゚)
.

789 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:31:21 ID:5qjpsl7U0
.
((((;;-[[]]3[[]]))) 「 な に い い い い ぃ ぃ ぃ い ぃ い い い ぃ っ っ っ っ ! ?」


 にごった叫びが灰色の部屋を揺らした。


('A`) 「俺の、勝ちだ」


 無理もない。
 台上にひるがえったそのカードは──


:::(;;;-[◎]3[◎])::: 「ば っ !  ば か な っ !!

             そんなはずはっ……!」


 [ K ] だったのだから。

.

790 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:32:15 ID:3Itf6evw0
熱い展開だ

791 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:32:32 ID:5qjpsl7U0
.
(;*゚ワ゚) 「ど、ク……さん!!」


 しぃがぱっと顔を輝かせる。
 

('A`) 「見てのとおりだよ、しぃちゃん」


:::(;;;-[ ]3[ ])::: 「え、な、えぐっ、がっ」


(;*>ワ<) 「やったぁ!」


:::(;l|l-[ ]3[ ])::: (違う! ありえないあり得るはずがないッ!!
            だって [ K ] は!
            死んで! 台札にィッ!)


         て
(;l|l-[◎]3[◎])そ (そウだ、台ふダッ!!)


 その事実に気づくや、ポセイドンは焦りの形相で振り向く。


(;-[◎]3[◎]-;)彡  「 ! ! ! 」


 彼から見て右手、しぃからすると反対側。
 山札の積んである部分。
 そこには。
.

792 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:33:15 ID:5qjpsl7U0
.
      ┌──────────┐
      │  Q              .│
      │ /\               │
      │ (__, 、__)            . |
      │  .Δ             │
      │      ,λ、、λ     . |
      │      彡*゚ー゚ミ     .....|
      │     ..彡''.~゚~ミ      ..|
      │     ,;;彡,,,i,,ii,i,ミ       |
      │             /\.....│
      │           (__, 、__)..│
      │            .Δ .....│
      │               .Q ......│
      └──────────┘


         クィーン
 黒い衣装の女王が、ものものしく台座に腰を据えていた。

.

793 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:34:35 ID:5qjpsl7U0
.
 ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
 |        S H O W     D O W N          |
 |___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ ___ __.|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 ┌───┐
                 │ /\ │
                 │ (__,、.__)│
          (-[]3[])  │  .Δ.K│
                 └───┘
       \_人_人∧从_人_∧_人_从_//
       )                  >
      <       V  S       >
       <                 (
       /^Y ̄∨ ̄∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
        ┌───┐
        │ /\ │  ('A`)
        │ (__,、.__)│
        │  .Δ.A│
        └───┘


    レ ヴォ リ ュ ー シ ョ ン
('A`) 「 下  克  上 ア タ ッ ク だ !

                 ,,iill!  ,,ill゙゙゙゙llii,、
                .,ll゙llll|  .illl′ 'llli、
              .,,il゙` llll  .llll   llll 
             ,,ill,,,,,,,llll,,,,, llll、  llll
             ゙    llll  ゙lll,  .,lll゜
    1 0枚ベットは   ,,iilllllllii,, .゙゙!lllllll゙゙  枚! 」



(((;l|ll-[◎]3[◎])))::: 「ふがあぁぁああぁあっ!?」


 ポセイドンは椅子から転げ落ちた。
.

794 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:37:05 ID:5qjpsl7U0
.
 見間違えた!? 台札を!?
 [ K ] だと思っていたのは、実は[ Q ] で……!

 違う、イカサマだ!!
 叫ぼうとするポセイドンだったが、息が詰まってうまく声にならない。


(((;l|ll-[ ]3[ ]))) 「 ふ が 、 ふ ざ 、 ふ ぎ ゃ 」


 必死で這い上がろうとする彼の眼前。


('A`) 「お前の手持ちは28……28枚ぽっちか。
    ま、いいや」


 ドクオは親指をぐっと突き上げる。







('∀`) 「アンティ3枚はおまけしといてやるぜ」

.

795 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:38:12 ID:5qjpsl7U0
.



『 ふ、ふっ、ふざっ 』




 断末魔とどろく、白い壇上で。




『 ふ っ っ じ ゃ け る な ぎ ゃ ぁ あ ぁ あ ぁ ぁ あ あ ! ! !  』




            キング
 漆黒の懐剣が、“ 海王”の心臓を刺し貫いた。
 




 (続く)


.

796 名前:名も無きAAのようです:2014/04/01(火) 23:44:55 ID:SY/SN3ls0
おつ!

797 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 00:02:44 ID:ImwHp1RY0
乙乙

798 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 01:02:47 ID:EXX6mBVwO
来た!
でもまだ終わらないのなw

799 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 01:11:07 ID:YxRs9kV60
おもしれーじゃねーか!

800 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 01:18:31 ID:bnY/CM2oO
ω・)微妙

801 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 02:26:08 ID:zT2IHcYs0
乙!
何が起こったのか気になるが種明かしは次回か

802 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 03:15:18 ID:cUpcxXrQ0
続き期待

803 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 05:53:02 ID:ZjeVRAmA0
また気になる所で終わったな
次回も楽しみにしてるよ
乙でした

804 名前:名も無きAAのようです:2014/04/02(水) 23:17:46 ID:cAB0h6/E0
待ってた!乙!

805 名前:名も無きAAのようです:2014/04/03(木) 22:39:14 ID:duZhdpZ60
そろそろドクミちゃんにも会いたい

806 名前:名も無きAAのようです:2014/04/10(木) 15:32:53 ID:orCg5QIs0
投下きてたのか
遅くなるんならちょくちょく生存報告してくれると助かる

807 名前:名も無きAAのようです:2014/04/10(木) 16:45:52 ID:qGNbSkbg0
お前なんぞ助けたくはないでござる

808 名前:名も無きAAのようです:2014/04/18(金) 12:35:07 ID:y2lojL4Q0
面白かった

809 名前:名も無きAAのようです:2014/04/18(金) 19:54:43 ID:663hLsvk0
>>806
りょーかい

 ■■□□□□□□□□
  10 / 50KB

GW中に一回は投下できると思う

810 名前:名も無きAAのようです:2014/04/29(火) 23:19:01 ID:0BtxAYRw0

 [ Rate of progression ]
 ■■■■■■■■□□
  40 / 50KB

811 名前:名も無きAAのようです:2014/04/30(水) 00:22:18 ID:icpYly0Q0
本当に来そうで嬉しい待ってる

812 名前:名も無きAAのようです:2014/05/01(木) 22:54:17 ID:34x1BW1Q0
もうすぐじゃー!!

813 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:35:40 ID:BRQmFMAo0
.
(((;l|ll-[ ]3[ ]))) 「ふ っ っ じ ゃ け る な ぎ ゃ ぁ あ ぁ あ ぁ ぁ あ あ ! ! !」


 怒号が反響する。

    _, ,_
::(#-[ ]3[ ])σ:: 「イカサマだッ!
            み、みみみ認めないぞ僕はァ!!」


 起き上がるなり、ポセイドンは机に乗り出し叫んだ。


('A`) 「はぁ? なにが?」


 やれやれと肩をすくめるドクオ。
 挑発的なジェスチャーがさらにポセイドンの神経を逆撫でする。


::(;-[ ]3[ ])σ:: 「こっ、こけっ、くき……」


 二の句が継げず、ポセイドンは空を指差し、小さくあえいだ。
.

814 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:38:33 ID:BRQmFMAo0
.
┓('A`)┏ 「見てのとおり、俺の勝ちじゃん。
       [ A ] は [ K ] を倒す。 チップは4倍。 何もおかしいとこなんk」
    _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) 「違ぁあぁぁぎゃあああ! そっ、それッ! 台ふだぁぁぁあ!
           ぼくがッ![ K ] なんて! ぁあぁあありえないッ!
           ありえるわきゃないんでぃあァあ!!」


 ポセイドンは顔を真っ赤にして騒ぎ立てた。
 ──この男!
 澄ました顔して、何も知らないふりして、とんでもない事をしやがった。 


('A`) 「はぁ。 往生際悪ぃ……」
    _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) 「あああああ!! 違う違う違うチガウ!!
           しぃ! 見てただろ、おい!」

(;*゚ο゚)そ 「ほえ?」


 勝ちの目の薄いポーカー勝負を続行したのも。
 残りチップをここで投げ打ったのも。
 全てがこのイカサマのため! 誰が見ても明白だ。
.

815 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:40:23 ID:BRQmFMAo0
.
(((#-[]3[])))σ 「だ、だだっ、台札だッ!
           さっきまで! それッ! [ K ] だっただろーが!
           すり替えたんだよ! こいつが! ドクオがぁぁあぁ!!」

(((;*゚−゚) 「えぇ? えー……っと……」


 きょとん、と。
 しぃは要領を得ない表情で、台札と、ドクオのほうへ交互に視線を送る。

   _,,  て
(#;-[]3[])そ 「!?」

('A`) ニヤリ


 ───このバカ、台札を見てなかったのか。
.

816 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:41:44 ID:BRQmFMAo0
.
(;*゚−゚) 「ぁ……それは……その……」
 σ

 当然といえば当然だった。
 彼女にとって “ ジャッジ ” という肩書きなど、お飾りに過ぎないのだから。

 というより、ポセイドン自身、しぃにそこまでの役割を求めていなかった。
 もし判定を下す権限が彼女にあれば、
 滝沢の存在が明るみになった時点で、ポセイドンの負けもありえただろう。

 しぃにできるのは、認識することだけ。
 “ 勝負の結果 ” を見届ける。
 それだけのために、彼女はそこにいる。


(;*´−`) 「……ぁぅ」


 ドクオが敗北するシーンを──
 自らを傀儡へと貶める “ フラグ成立 ” の瞬間を。
.

817 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:43:31 ID:BRQmFMAo0
.
(#-[]3[]) (あぁぁあぁぁぁ!! くそっ!! 使えねぇえぇえ!!)


 ただでさえこれまでの勝負で、しぃは精神をすり減らしている。
 アイマスクを外してからのわずかな時間で確認できたのは、
 ショーダウンが行われるという事実、そして二人のベット枚数程度だ。

 台札の数字は勝敗に直接からまない。
 ましてこれは、雌雄を決する大一番。

 テーブル中央を注視していた彼女は、
 逆サイドに置いてある台札のことなど、まったく気に留めていなかったのだ。

 むろんそれは──台札のほうに気を払っていなかったのは、ポセイドンも同じであり。


('A`) 「ま、とにかく。 俺が勝ったのは間違いないよな」


 どうやったのかは知らないが、この男(ドクオ)は。
 視線が中央に集中するショーダウンの間隙を縫って。
 テーブル端の台札 [ K ] と、ポセイドンの手札を、


('A`) 「約束どおり、しぃちゃんは返してもらうぜ」


 すり替えたのだ。
.

818 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:45:41 ID:BRQmFMAo0
.   _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) 「っ っ っ ざ け ん な ぁ ぁ あ ぁ !
          認めない、ぼ、ぼぼ僕は認めないぞッ!」


 ポセイドンは目を白黒させながら叫んだ。
 しぃの認識次第では、
 せっかく手に入れた “ 肉体の制動権 ” を奪還されてしまう。

 目の前で起こったことが、イカサマの結果であることは疑いようのない事実。
 自分は敗北などしていない。
 彼女にそれをはっきりと認識させなければ。

    _, ,_
(((#-[ ]3[ ]))) (っっっざけやがって!
           イカサマっ! こ、こんなことでぇッ!)


 激昂しながらも、どうにか思考をめぐらせる。
 台札 [ K ] がポセイドンのハンドとすり替えられたのは疑うべくもない。
 が、もともとあったはずの手札は、いったいどこへ行ったのか。

 普通であれば、新たに出現した [ Q ] が本当のポセイドンのハンドで、
 台札の [ K ] と入れ替わったと考えるのが自然だろう。
.

819 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:46:16 ID:rN2Zsiww0
よっしゃ支援

820 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:47:06 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ]) (しかしッ! テーブル中央が絶えず衆目に晒されていたこともまた事実!)


 場を緊迫感が支配していたショーダウン直前。
 ポセイドンが視線を切る瞬間は確かにあった。
 それでも、あのわずかな時間で両方のカードを入れ替えるのは至難の業だ。

       て
(;#-[ ]3[ ]) そ (あの [ Q ] 、ヤツがどこかに隠していたカードでは!?)


 この現象が 『 仕込み 』 の結果ならば、
 山札の枚数、もしくは残ったカードの種類に不整合があるはず。

 結論に思い至ったところで、
 ポセイドンは椅子を跳ね飛ばしながらその場に立ち上がった。
.

821 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:48:53 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ]) 「おいッ!」

(;*゚−゚) 「あ、ぅ?」

三(#-[ ]3[ ]) 「いいかッ! ぼ、ぼくは負けてないッ!
          見てろ、しぃ! 見ろ、見ろぉおおッ!」


 叫びつつ、テーブルの端に飛びついた。
 パーテーションの空洞から、山札に向かって勢いよく手を伸ばす。


三(;#-[ ]3[ ])≡つ (イカサマッ! すり替えの証拠は……そこにッ!)


.

822 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:50:13 ID:BRQmFMAo0
.






                           『 待ってたぜ、この瞬間を 』






.

823 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:51:03 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ])つ 「!!」


(*゚○゚) 「!!」


 ポセイドンは大きく目を見開いた。


( A ) 「……」


 山札へ伸ばされた彼の右腕を。
 ドクオの左手が、しっかりとつらまえていたからだ。
.

824 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:51:47 ID:BRQmFMAo0
.
(;#-[ ]3[ ]) 「は、離せッ!」


 強引にその手をふりほどく。
 勢いざまカードが後方に散らばった。
 が、そこで。


煤i;-[]3[]) 「 ! ? 」


 ふいに視界がゆらめいた。


(;-[]3[]) (な、なんだこれは?!)


 変化はそれだけにとどまらない。
 はっきり知覚する違和感。

 ろうそくの炎のごとく世界が揺らぐ。
 しかしそれも長びくことはなく、万物はにわかに元の像を結ぶ。

 すぅっと、圧から解き放たれる。
 たとえるならば、手綱がすっぽ抜けるような感覚。
.

825 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:52:57 ID:BRQmFMAo0
.
『 ───ぷはっ 』


([]ε[]-;)彡 「!!」


 同時に響いた声に、ポセイドンは振り向く。


(;*゚ο゚) 「────あ、わたし、あれっ?」


 きょろきょろ辺りを見回しているのは、少女──猫塚しぃ。

 なんだか様子がおかしい。
 瞼をしぱたかせつつ、両手を握って離す動作を繰り返している。
 その感覚を確かめるように、二度、三度。


( A::) 「……」


 ────まさか。
.

826 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:54:41 ID:BRQmFMAo0
.
(;-[]3[]) 「しぃッ! こっちだ! 僕のほうに来いッ!」

(*゚−゚) 「!」


 ジャッジメント ・ ゾーン側の仕切りにかじりつき、ポセイドンは叫んだ。


(;-[]3[]) 「早くッ! カギなら渡す、こっちだッ!」


 が、何度呼んでも、しぃは “ 命令(オーダー) ” に反応しない。


(;*゚ο゚) 「わ、た、し……」


(l|l;-[ ]3:::) (は? なんだこれ、おい、おいッ)
.

827 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:55:29 ID:BRQmFMAo0
.
(*゚−゚) 「……な」


(*゚ワ゚) 「……なんとも、ない?」


      _,    ,_   て
(;l | l; -[◎] 3 [◎])  そ  「 @ ☆ p l y h r / : * ? ! ? ! ? 」



  コ ト ダ マ
 催 眠 能 力 の 効 力 が 、 消 え て い る 。 






『 気づいたかぁ? 呑気なおぼっちゃんよ 』


 こわごわとそちらへ向き直る。
 そこに立つ男は。
 振り払われた時のままの姿勢から、左腕をゆっくりと曲げ、ポセイドン側へ示す。
.

828 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:56:49 ID:BRQmFMAo0
.
(;l|l-[ ]3[ ]) 「 な っ …… な っ 」



 (::::A::) ∩



 そして、ポセイドンは見た。


:::(;l|l-[ ]3[ ])::: 「 何 を し た っ !? 」


 銀の蛇腹は、ちゃんと獲物の手首に巻きついていた。
 しかし。
 その効力を示す緑色のランプが。



 (::::∀::)∩



 完全に、消灯している。
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
.

829 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:58:06 ID:BRQmFMAo0
.





 『 貴 様 あ ぁ あ ぁ ぁ あ あ あ っ ! ! 』





    ロ  ッ  カ  ー
 “ 超能力封印装置 ” は、死んでいた。



.

830 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 19:59:17 ID:BRQmFMAo0
.





                                   http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
                         http://localboon.web.fc2.com/100/top.html


                                       纏 


                 http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
         http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html






.

831 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:00:53 ID:BRQmFMAo0
.
 〜 〜 〜


(((;l|l-[ ]3[ ]))) 「わああああぁぁあ! ぎゃぁあぁぁああ!!」


 狂ったようにわめき散らす、目の前の肉団子。
 耳障りではあるが、実に気分爽快だ。

 ポセイドンは、豆鉄砲やら水鉄砲やら
 なんか色々食らったようなアレで俺のほうを見ている。


:::(;l|l-[ ]3[ ])σ:: 「ああああなんだそれっ!? なんだそれぇえぇ!?
            そっ、それっ!  そんの腕ェえッ!?」


 気づいたようだ。
 俺の袖からしたたり落ちる、雫の存在に。


('A`) 「お前には感謝してるよ。
    当たってるかどうかは知らないけど。
    さっき指摘したアレ、本気だったんだ」

(;l|l-[ ]3[ ]) 「はぁあ?! なにっ!? なにがだっ!!」
.

832 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:04:09 ID:BRQmFMAo0
.
('A`) 「お前が “ PSIジャマー ” を使わなかった理由についてだよ。
    ……いや、別にいいんだぜ。
    もしジャマーとやらを使われてたら、
    こんな結末は訪れなかっただろうからな」


 傍らへ移動する。
 これでヤツにも確認できただろう。
 パーテーションに張り付くまぬけ面がそれを証明している。

 勝負の前、おまえは念押ししてたもんな。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 そうそう。
         精密機械だからね。取り扱いには注意してくれよ?
         まあ簡単には取り外せないと思うが…… 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


('∀`) 「精密機械の弱点って、なーんだ?」


 疑問の答えはすぐそこにあった。
 腰のあたりでふわふわ漂う、ハンドボール大の水の球。
.

833 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:05:31 ID:BRQmFMAo0
.
(;l | l; -[◎] 3 [◎])    「  あ    あ    あ   」



('∀`) 「ロッカーを使ってくれて、ありがとう。
     ……みんな、うまくいったぜ!」


 俺の言葉を合図に、水は力を失って落下する。
 ほぼ同じタイミングで、しぃちゃんの眼前にもうひとつ別の水球が出現した。


(*゚ワ゚) ゙ !


 彼女はちょっと面食らった様子だったが、
 すぐにやるべき事を察知し、制服の袖をまくり上げる。

             て
(;l | l; -[◎] 3 [◎]) そ 「おいっ!? やめろ! やめろぉぉおぉ!!」


 ポセイドンの懇願空しく、しぃちゃんは手首をそこへ差し入れ。
 細かなあぶくが吹き出し、ランプはやがて消灯した。
.

834 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:07:00 ID:BRQmFMAo0
.
(*^ー^) 「ばっちりです! ドクオさん!」


 しぃちゃんはひさびさに満面の笑みをみせた。
 そしてすぐに振り向くと、ポセイドンへ向け、ちょっと困ったような視線を投げかける。

 笑顔のはずなのに、どこか妖艶な、ぞくぞくさせる表情だ。
 なぜか俺まで肌があわ立つ。


( 'A`) b そ グッ


 色々と不安要素はあったが、結果的に作戦は大成功。
 俺の声も、意図も、ばっちり “ あいつら ” に伝わってるみたいだ。


( '∀`)∩ 「御社ご自慢の新製品らしーけど。
       もーちょいしっかり、防水加工、な?」

(((;l|l-[ ]3[ ]))) 「あああああ! ふざっけんな! しねえええええ!!!」


 試作品の実地テストに協力し、
 果ては改良点の洗い出しにまで貢献してやったんだ。


( 'A`) (感謝して欲しいくらいだぜ)
.

835 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:12:34 ID:BRQmFMAo0
.
 回想する。
 ダイオードがポーカー再開を提案する直前。

 サダコちゃんによるバリケード(感染した黒服たちだけど)のおかげで、
 俺はブーン達と合流することができた。

 そこで得た情報は、まさに値千金。
 しぃちゃん奪還への作戦が動き始めたのは、この時からだった。


===
==



(,,゚Д゚) (ドクオさん、ちょっと)

( 'A`) (え?)

(,,゚Д゚)∩゙ (ほら。 これこれ) クイクイ

    て
(;'A`) そ 『 え!? こ、これって 』

川 ゚ -゚) 『 くくく……御名答 』
.

836 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:13:28 ID:BRQmFMAo0
.
(; ^ω^) 『 いったい何が!? てか、どうしてランプが消えてるんだお? 』

(,,;゚Д゚) 『 しーッ! ばか、ヤツらに聞かれたらどーすんだよっ! 』


川 ゚ -゚) 『 精密機械の天敵って、なーんだ? 』


  ('A`)  ・ ・ ・ 。


??(;゚A゚) 『!? まさか、え、そんなことで!?』

川 ゚ -゚) 『 やってみるもんだな 』

(; ^ω^) 『 じゃあ、ひょっとしてギコ、超能力は 』

(,,゚Д゚) 『 ごめーとー。 既に戻ってるぜ 』

川д川 (顔も元に戻ってる……)
.

837 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:14:58 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 『 いいかブーン、ゆっくり手を後ろに回せ。
      ヤツらにバレないよう、私の水で…… 』


( ^ω^) 『 お? おっお…… 』





il|(  ゚ ω ゚) l|l 『 おおう!!』 チャプン



 (* ´ω`) ・・・あふん



川#゚ -゚) 『 声出すなっつってんだろバカ! 』



==
===
.

838 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:16:23 ID:BRQmFMAo0
.
 そう。
 俺が勝負再開を決めたのはこの時だ。


( 'A`) (クー達が助けに来てくれたのはいいけど、
     あのどさくさでポセイドンに逃げられちゃあ、元も子もないからな)


 イカサマを仕掛けたのには理由があった。
 むろん勝敗に拘っていなかったわけではないが、
 勝利という結果は、その先にある 『 本当の目的 』 を成す第一歩にすぎない。

 仮に俺が勝ったとしても、ポセイドンがすんなりしぃちゃんを解放するかは、
 端から疑わしいものがあったからな。


( 'A`) (俺の一番の目的は)


 ヤツの正気を失わせること。
 カード一枚の手渡しすら避ける、強固な警戒心を、取り払うこと。

 度重なる挑発によって冷静さを奪い。
 不用意にこちらへ近づくよう仕向け、
 その肉体に、触れる。
.

839 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:17:55 ID:BRQmFMAo0
.
( 'A`) (ルールに則った勝利より、もっと確実で、信頼のおける方法)


 『 接触による能力解除 』

       チカラ
 俺は俺の能力を、誰よりよく知っている。

 わざわざポーカー勝負を再開した理由は、ただひとつ。
 鈴木兄弟の邪魔が入らない閉鎖空間にて、ヤツと接触するため。
 しぃちゃんにかけられた呪いを、この手で打ち砕くため。


(;l|l-[ ]3[ ]) 「あああああああ! ふじゃぶぐ!!
         ぶおっ! ぶほほっ! げっほごっほ!」

( '∀`) (目論見は大成功)


 ここまで綺麗にハマってくれると気持ちいいものがある。
.

840 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:19:10 ID:BRQmFMAo0
.
 ギャンブル ・ ルーム再入室にあたっては、
 ダイオードによるボディチェックを通過しなければならなかった。
 よって、あらかじめロッカーを壊して入室するわけにはいかない。

 ロッカーの機能停止は、勝負の最中に行う必要があった。

 幸いダイオードのチェックは黒服より甘く、
 嘘発見器(ポリグラフ)をふたたび使われることもなかった。
 イカサマする気満々だったので、妙な質問をされるのは極力避けたかったからな。


( 'A`) (このトリックは、皆の協力がなければぜったいに成し得なかった)


 ──無論、ここで言う協力とは、彼らの持つ超能力のことだ。
.

841 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:23:48 ID:BRQmFMAo0
.

                      川д川  サダコちゃんが、敵の接近を “ 阻み ”



             川 ゚ -゚)  アラサーが、皆のロッカーをこっそりと “ 壊し ”



                                (,,-Д-)  ギコがルーム内の様子を “ 聴き ”



           ( ^ω^) 彼の合図に合わせて、ブーンがカードを “ 送って ” “ 消し ”



                         川 ゚ -゚)  最後にお水レディが、水の塊を “ 作り出し ”



                  ( ^ω^) 豚の力で、ルーム内に “ 転送する ”

.

842 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:24:43 ID:BRQmFMAo0
.
 〜 〜 〜


( ´_ゝ`) (そしておれが応援する! 心の中で!!)




(* ´_ゝ`) (がんばるんだみんな! ファイトー! いえいいえーい!)





   _,
(((;,,-Д-))) (やめてくれ偽せんせー! 気が散る!)

川 ゚ -゚) 「ウザい。 主に顔面が」 

(; ´_ゝ`) (ひどいな君ら! そしておれ弟のパチモンじゃないから! むしろ兄こそオリジナルだから!)

.

843 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:25:42 ID:BRQmFMAo0
.
●第三七話 『 マジシャンズ ・ セレクト ── VS. ポセイドンJ 』


 〜 〜 〜

 ポセイドンはカードを踏みつけ、よくわからない言語でわめき散らしている。
 台札 [ K ] のすり替えトリック。
 こいつにとっては、完全に “ 理外の手 ” だっただろう。


( 'A`) (もともとヤツの持つ情報には誤りがあった)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (-[]3[]) 『 ドクオさんはアンチサイの一種で、
         それも肌に触れなきゃ効果を発揮しない。
         ホライゾンさんに至っては、未だ超能力が発現してないらしいけどね 』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 この一言で、そのソースの大部分はギコだろうと予測できた。
 拉致された時点でギコの知らなかった事実は、ポセイドンも知りえなかったのだ。
.

844 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:27:09 ID:BRQmFMAo0
.
 ヤツの言葉に抜け落ちている、ひとつの情報。
 すなわち、ブーンに新たに芽生えた能力 『 物体転送(アポーツ) 』 のことだ。


 〜 〜 〜


( ^ω^)づ□


 ここで少し 『 アポーツ 』 について補足する。

 ブーンの能力は、物体を転送する→再転送、という2つの動作でワンセットになる。
 転送した時点で、そのアイテムは “ アクティブ ” となり、任意のタイミングで再転送できる。


( ^ω^)つ l||i           i| □ |l


 転送を開始するにあたって、対象物に “ 直接触れる ” ことが重要なファクターとなる。
 ノン ・ アクティブの物体を引き寄せることには未だ成功していない。
 能力が暴発して、なんだかよくわからないものを持ってきてしまうだけだ。
.

845 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:28:34 ID:BRQmFMAo0
.
( ^ω^)                ■
                   [Active]


 ブーンが “ アクティブ ” にしておける物体は3つまで。
 アクティブ状態のアイテムは、1回目より正確な位置へ再転送できる。

 手元に “ 呼び戻す ” 動作が一番簡単らしく、
 後ろに回した手の中へこっそり、ということも可能。

 ──が、精密性が保証されるのは “ 呼び戻す ” 動作に限ってのこと。
 いくらギコがバックアップしていたとはいえ、
 コンテナの内部、見えない場所の正確な位置に、
 カードを “ 送り込める ” 確証はなかった。


 〜 〜 〜 

        て
(;l|l-[ ]3[ ]) そ 「!!」


 地団太を踏んでいたポセイドンが、ふいにしゃがみ、カードを1枚拾い上げた。
 どす、どす、と小走りで、接近するなり、薄汚れたそれを俺に突きつける。
.

846 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:32:55 ID:BRQmFMAo0
.
(#-[ ]3[ ]) 「見ろおおぉぉお! やっぱりイカサマだった!」

('A`) 「は?」


:::(#-[ ]3[ ])つ[ A ]::: 「 [ A ]だ! 山札の中に、もう一枚 [ A ] があった!
               そこッ! お前の手札も [ A ] !
               お前はッ! いつの間にか別の [ A ] を持ち込んで……」


('A`) 「だから?」


(l | l - [  ] 3 [  ] )  「       」


 怒りが臨界点を超えたのだろう。
 ポセイドンは目を剥き、口の端から泡を吹いた。

 なんにせよ、お前の言うことは間違いだけどな。
.

847 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:34:57 ID:BRQmFMAo0
.
 持ち込んでねーよ。
 “ 送り込んで ” もらったんだから。

 誰から?
 ブーンから。

 どこから?
 コンテナの外。

 そう。


(::::A`) (はじめから、カードは二組存在していたのさ)


 こいつがウェブページに記していた一文を思い出す。
.

848 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:35:42 ID:BRQmFMAo0
.
===
==



 『 なお、上記場所へ来る際、新品のトランプを一組、買ってくること 』


 この文章を読んで、
 誘拐犯はトランプを身代金として望んでいるんだ、なんて考えるヤツがいるだろうか。

 俺だってバカじゃない。
 トランプは何らかの決め事に用いられるのだろう、
 ひょっとしたらゲームというふざけた目的に……と、ここまでは想像ができていた。

 “ ゲームの道具を俺たちに用意させる ”
 ポセイドンはただ、偽りの公平感を演出するため、そうさせたに過ぎないのだろう。
 ────だが同時に、こいつは付け入る隙を与えてしまった。
.

849 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:37:01 ID:BRQmFMAo0
.
 俺はみんなに提案した。
 カードはあらかじめ二組購入しておこうと。


 ('A`) 『 VIPモールにおもちゃ屋があったよな 』

 ( ´ω`) 『 わざわざ寄るのかお? トランプなんてコンビニに売ってるお? 』

 ('A`) 『 ……ダメなんだよ、それじゃあ 』

 (*゚−゚) 『 ? 』


 備えあればなんとやら。 いざという時に役に立つかも知れないから、と。
 ついでに言えば、マジシャンご用達、紙製のトランプを選んだ上で。


 (::::A`) (プラスチック製だと、“ イタズラ ” やりにくいからな)


 二組のカードのうち片方は封を切り、
 輪ゴムで束ねた状態でブーンに隠し持たせていた。
 港に来たあとは、未開封のカードのみを黒服に渡したというわけだ。
.

850 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:39:17 ID:BRQmFMAo0
.
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 <ひゃんっ!?
 <ふぁっ、やぁっ……
 <あっ、ちょっ、そこは
 <んっ、う……ぁ?!
 <らめぇ


  『 なんだあいつは…… 』
  『 気持ち悪ぃ 』
  『 弟の方は嫌に大人しいな。 あっちじゃなくて良かったわ 』


               ∩( ‘ω‘)∩

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 倉庫へ移動したあとのこと。
 タムラ達による最初のボディ ・ チェックの時点で、
 ブーンはカードを “ 転送し ” 、近くの積荷の裏へ隠したらしい。
 (以降、この一組を “ カードB ” と称する)

 おそらくは “ 透視 ” による身体チェックも行われたのだろうが、
 アポーツ発動は、角刈り野郎がサングラスを着ける直前のこと。
 ギリギリのタイミングで、透視による発見を免れたようだ。
.

851 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:40:34 ID:BRQmFMAo0
.
 Σ(* ´ω`) アフン


 だがその後、ブーンがロッカーを嵌められた時点で、
 アポーツは封じられ、カードBもすべてノン ・ アクティブとなった。
 つまり、ブーンはカードB一式を “ 呼び戻す ” ことができなくなってしまった。

 当然ながらルーム内の勝負に使用することはできないし、
 うかつに回収へ向かおうものなら、タムラ達にその存在がバレてしまう。
 この時点でカードBの利用価値は失われてしまったも同然だった。

 しかし。


 (゚A゚) 『 ─────! 』


 クー達が来てくれたことで、ロッカーの破壊方法が見つかったことで。
 舞い降りたのだ。
 このカードBを最大限活用し、完全勝利をおさめる、天啓のひらめきが。
.

852 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:43:27 ID:BRQmFMAo0
.
 さし当たっての問題は、
 物陰にあるカードをどうやって回収するか、だったが。

  _,
爪;゚〜゚)


 幸いなことに、超能力さえ戻ってしまえば。
 そして場所さえわかっていれば。


( ゚"_ゞ゚) ・ ・ ・
  _,
爪;゚〜゚)  ? ? ?

(; ´_ゝ`) 『 あ〜〜、なんかアレだな〜〜。 喉渇いてきちゃったな〜〜 』 コソコソ


 ───こいつがいる。

 サダコちゃんが “ 感染させた ” 黒服でバリケードをつくり。
 兄者がサイコキネシスを発動。
.

853 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:44:49 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) (……どうだ?)

(; ^ω^) (……お。 オッケーだお。 戻ってきたお)

(,,-Д゚) (うし。 じゃあそろそろ……)


 カードはふたたびブーンの手元へ戻る、と。
 こういう算段だ。




==
===
.

854 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:48:55 ID:BRQmFMAo0
.
:::(((#-[ ]3[ ])))::: ピクピク


('∀`) 「いまさら何言ってんのー?。
     イカサマなんて、最初からする気満々だったスィー↑」


 俺の一言で、ポセイドンの口からさらに奇声じみた雄叫びがあがる。
 しぃちゃんは透明のドアにくっつき、目を輝かせた。


(*^ー^) 「ドクオさんすごいですっ! いったいどうやったんですか?」

('A`) + 「ふっ。 まあ話せば長くなるけど……」

(*゚ー゚) 「あ、じゃあいいです」

('A`)


 ポセイドンが嘘発見器(ポリグラフ)をクリアしたのと同様、
 俺もこのトリックを仕掛けるにあたって、いくつものハードルを越える必要があった。
.

855 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:50:27 ID:BRQmFMAo0
.
===
==


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  (#'A`) 『 とぼけんじゃねえっ!!』 バッ

 Σ(;-[]3[]) ⊂≡ 『 !! 』

 m9('A`#) 『 いいか、聞け!』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 12セット目に入ったときのこと。
 俺がポセイドンの言葉にぶち切れた……ふりをしたのには、3つの狙いがあった。

 ひとつには 『 カードを送ってほしい 』 という、ギコたちに向けた合図。

 あと、ゲームに使用するスートをスペードに変えたかった、というのがひとつ。
 ブーンの持つカードBの束は、スペードのAから順に、数字どおり並んでいる。
.

856 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:51:50 ID:BRQmFMAo0
.

   / ゚、。 / 爪;゚〜゚)         川д川(´く_` ) (゚- ゚ 川 ((^ω^ ;))(-Д-,,)


 俺たちの勝負を待つ間、コンテナの外はにらみ合いの状態になっている。
 黒服の数は減ったとはいえ、ダイオードとタムラがきっちり目を光らせている。

 サダコちゃんが相手を牽制し、一定の距離を保ってくれてはいるが、
 それでもブーンが堂々と目の前でカードを扱うわけにはいかない。

 ポケットに潜ませるにしろ後ろ手に持つにしろ、
 ブーンは手探りでカードB群の選別をしなければならない。

 こっそり “ 転送させる ” カードは、なるべく束の上にあるスート。
 スペードがもっとも都合が良かったのだ。
 当然ながら、52枚すべてを送ってもらうわけにもいかないからな。
.

857 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:53:33 ID:BRQmFMAo0
.
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 (;-[]3[]) 『 …… 』

 ('A`) 『 とにかくだ。 ……よいしょっと。
      赤いカードは……もう、使わない』

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 カードを床に散らしたのにも理由がある。
 正確な場所ではないが、間違いなく俺サイドのタイマー付近に出現するカードBたちを、
 舞台に “ 紛れ込ませる ” ためだ。

 俺の手元へ正確に転送してくれれば良かったのだが、
 あいにくブーンの能力ではそれが難しい。


(;'A`) (かといって、ここ一番っつータイミングで
     テーブルにカードがひらひら落ちてきても興醒めだからな)


 このとき転送してもらったカードBは
 [ A ] [ K ] の計2枚。
 (もともとのカードと区別するため、それぞれ [ B-A ] [ B-K ] と表現する)

 俺はタイマーテーブル付近に散らしたハートのカードを拾いに行き、
 中に紛れ込んだ、スペードの [ B-A ] [ B-K ] を回収する。
 この2枚は袖なり手の甲なりを駆使して隠し持つ。

 その後の手順はこうだ。
.

858 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 20:54:46 ID:BRQmFMAo0
※酒を持ってくるので小休止

859 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:20:23 ID:BRQmFMAo0
.
1、手札選択(子番)


 カードはチェンジされ、スペードの13枚にて勝負再開。
 俺はカードチェックの際に [ K ] を選別して、シャッフルを開始した。

 このくらいは朝飯前だ。
 問題はいかにして、この [ K ] を相手に引かせるか。

 こればかりは超能力も頼りにできない。
 俺が用いたのは、正真正銘、ガチンコの力技だった。


('A`) (久々だったけど、どうにかなるもんだな、実際)


 “ クラシック ・ フォース ”

 手品のトリックのひとつ。
 自由選択に見せ掛けつつ、
 マジシャンの思い通りのカードを相手に引かせるテクニックだ。
.

860 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:22:09 ID:BRQmFMAo0
.
 最後に披露したのはハインさん相手だったか。
 数ある “ フォース ” の中でも、このテクニックは特に難易度が高い。
 失敗もあるしバレやすいので、使うのはここ一番のみと決めていた。

 俺はあの時、必要以上にのんびりシャッフルを続けることで、
 ポセイドンがこらえきれなくなる展開を待った。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 ('A`) 『 受信機である携帯のバイブレーションと、そこに生じるわずかな衣擦れ。
      そう、こいつは隠したかったのさ。 ポケットから発生する “ 音 ” をな。
      トーキング ・ タイムなんて名前だけ。 その実態はイカサマタイム……』

 (#-[]3[]) 『 ご、ごたくはいい! 寄越せッ!』 バッ
  ◇と彡

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 俺の思惑通り、ポセイドンは俺がテーブルにカードを置くまで待てず、
 パーテーションの隙間から強引に引ったくろうとした。
 その焦りこそ、フォース成功へ向けて蒔かれた種だとも知らずに。

 ヤツがカードを取ろうとした瞬間、
 俺は隠し持っていた [ K ] を差し出し、引かせたのだ。
 [ B-A ] に刺される業を背負った、裸の王様を。
.

861 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:24:17 ID:BRQmFMAo0
.
 残念ながら、この時点ではヤツの手をつかまえることができない。
 シャッフルは両手を使う必要があるので、
 見られないように片手を水の塊に突っ込む→ ロッカー破壊 という、
 事前準備ができなかったのだ。

 だが、この時の接触で確信できた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

                ('A`) 『 …… 』 ニヤリ

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 もっと焦らせれば、我を忘れさせれば、こいつはふたたび手を伸ばしてくると。
 猜疑心という、透明の仕切りの隙間から。
.

862 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:25:17 ID:BRQmFMAo0
.
2、 手札選択(親番)


 フォースという壁を越えた俺にとって、ここが最大の正念場だったかも知れない。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   (;'A`) 『 ……(頼むっ! アレは、アレだけは引くな……!)』 スッ

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 危険な橋。
 1/12の黒ひげ危機一髪。 

 ここで俺は [ A ] 以外を引く必要があった。
 理由はあとで説明する。

 俺は祈るような思いで、テーブルに並べられたカードから一枚を選択した。
 そしてそのカードを “ コースターに置くことなく ” 、
 代わりに、隠し持っていた[ B-A ] を、手札としてセット。
.

863 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:26:56 ID:BRQmFMAo0
.
3、 台札提示


 残ったカード束……11枚の山札のうち、一番上が台札となる。
 俺は山の一番上をめくるように見せかけて、
 さきほど引いたカードと、[ B-K ] の二枚を、表向きに重ねて置いた。

 このとき、二枚目のカードの端がちらっと見えた。
 絵札。 つまり [ A ] ではない。
 内心かなり安堵したのは言うまでもない。

 もうおわかりだろう。
 これが [ Q ] 。 つまり、最後の最後で台札として現れるカードだ。
.

864 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:31:50 ID:BRQmFMAo0
.
        ┌───┐
        │ /\ │
        │ (__,、.__)│
        │  .Δ . │
        └───┘


 カード選択の段階で、俺が [ A ] を引いてしまうと、
 最後に現れる台札が [ A ] になってしまう。

 俺の手札は[ B-A ]。 台札も [ A ] 。
 これじゃあ誰の目にもイカサマはバレバレ。
 しぃちゃんが俺の勝ちを認識してくれるとは思えない。

 勝負が仕切り直されるかはわからないが、
 警戒したポセイドンは二度と近づいて来ないだろう。
 すべての目論見は御破算だ。
.

865 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:32:39 ID:BRQmFMAo0
.
      ┌──────────┐
      │  Q              .│
      │ /\               │
      │ (__, 、__)            . |
      │  .Δ             │
      │      ,λ、、λ     . |
      │      彡*゚ー゚ミ     .....|
      │     ..彡''.~゚~ミ      ..|
      │     ,;;彡,,,i,,ii,i,ミ       |
      │             /\.....│
      │           (__, 、__)..│
      │            .Δ .....│
      │               .Q ......│
      └──────────┘


 本当は [ B-Q ] も送ってもらえば、この作戦はより完璧だった。

 だがそうなると、ポセイドンのカード選択時に、
 俺は [ K ] [ B-Q ] [ B-K ] [ B-A ] と、4枚ものカードを隠し持つ必要がある。
 いくら俺でも、シャッフルしながら隠せるのは3枚が限界だった。

 台札をめくるのは親の役目だ。
 したがって、このトリックは親番でなければ使えない。

 ゲーム再開時、つまり11セット目は子番。
 俺は種を蒔き続けた。
 親番となるこのセット───12セット目へ、望みを託して。
.

866 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:33:46 ID:BRQmFMAo0
.
4、ショーダウン


 あとの流れはご存知のとおり。
 俺の手札 [ B-A ] 、台札 [ B-K ] を見たポセイドンは、まんまと勝負に乗ってきた。
 己のハンドが [ K ] であることも知らずに。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    (#'A`) 「レイズ、8枚!
         オ ー ル イ ン だ !」

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ショーダウンの際の保険として、
 俺はチップをボックスごと持ち、テーブル端の台札 [ B-K ] を隠していた。

 台札はしぃちゃんの位置からは見えづらいことも、
 そもそも彼女が台札をほとんど見ていないことも、わかっていたからな。

 チップを持ちながらのプレイングを、ポセイドンが咎めることはなかった。
 11セット目で確認済みだ。
.

867 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:35:04 ID:BRQmFMAo0
.
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


   (#'A`) 『  受  け  取  れ  え  ぇ  ぇ  ぇ  ッ  !  !』


  〜 〜 〜


  (,,-Д-) (……いまだ!)

  川 ゚ -゚) (うっし)

  (; `ω´) (お!)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 台札 [ B-K ] は、転送してもらったカードだ。
 つまり “ アクティブ ” 。 再転送の待機状態ともいえる。
.

868 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:35:47 ID:BRQmFMAo0
.
 俺の合図で、[ B-K ] は 舞台から消え去り。
 台札には、上向きの [ Q ] が残る。

 入れ替わりにテーブル下へ出現する水の球。
 手探りでそれを見つけ、ロッカーを浸け込めば、準備はOK。
 能力が戻る瞬間は感覚でわかった。

 あとは錯乱したポセイドンが、
 俺の手札か、山札に手を伸ばす一瞬をつかまえるだけだ。
.

869 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:37:18 ID:BRQmFMAo0
.

==
===


 これが、俺の仕掛けた作戦の全容であり。


(*^ー^) 「さ、て、とっ」


 戦利品は、目の前に咲いた満面の笑顔。
 その輝かしさといったらもう。
 ポセイドンが顔面蒼白で後ずさってゆくほどだ。


(*:::ー゚) 「覚悟、できてるん……」


 しぃちゃんはそう言いつつ、スカートの中に両手を差し入れる。
 布地が持ち上がり、白い脚がめいっぱい露出したが。
.

870 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:38:04 ID:BRQmFMAo0
.
(*:::∀゚) + 「だ──よ──なァ───?」


 そこから謎の光モノが現れた途端、ポセイドンは尻餅をつく。、
 つーはそれ──小さな携帯用爪切りを、
 顔の横でかちんかちんと鳴らしてみせた。


(;l|l-[ ]3[ ]) 「う、うわあぁぁぁあぁぁ!!」


 ポセイドンは狼狽しながら一目散にドアに向かい。
 そこから勢いよく飛び出していった。


(;'A`) (どーやってボディチェックを掻い潜ったんだ。
     つーかいったいどこにそんなモノを……)

(*゚∀゚) 「ヒミチュ」


 心を読まれた。 ジャッジにまで。

 つーは小さく目配せする。
 頷き合うと、俺たちはそれぞれのドアへダッシュした。


 〜 〜 〜
.

871 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:45:27 ID:BRQmFMAo0
.
(l|l-[]3[]) 「何やってるんだお前らぁッ!!
       中の様子はわかってただろーが!?」

('A`) 「!」


 外へ出るや、ポセイドンが鼻息荒く
 黒服に食ってかかるシーンが目に飛び込んできた。


:::(l|l-[]3[])::: 「なのに! なぜっ!
         ぼ、ぼぼ僕のことを助けに来ないッ!?」


 俺もその点は疑問だった。
 ルーム内で異常事態が起きれば、
 すぐさま黒服たちが飛び込んでくるもんだと思っていたから。
.

872 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:46:13 ID:BRQmFMAo0
.
 ルーム内には音響設備があり、中の様子は “ 中継 ” されていたはずだ。
 ボリュームに難があるのはわかっていたので、
 合図を送るため、ギコに “ 聴いて ” もらってはいたが。

 イカサマ発覚後、ポセイドンがご大層な叫び声をあげたのは、二度や三度ではない。
 痛快だったが、いつ邪魔が入るかとヒヤヒヤしていたのもまた事実だ。


「そ、それが……」


 言いよどむ黒服の横から、ダイオードがしれっと答える。


/ ゚、。 / 「スズキが止めさせたケド。
       この状況で、ルーム内の様子を実況する必要なんてないケド」

     て
(l|l-[]3[])そ 「はぁあ!? お前ッ!
         中で僕の身に何かあったらどう責任‘@6:・。、/*^−p」

/ ゚、。 / 「あくまでイカサマ防止のため、だケド?
       ま、どーゆー結果になったかくらい想像はつくケド……」
.

873 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:46:18 ID:7cyqfOgg0
しえんしえん

874 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 21:48:22 ID:BRQmFMAo0
.
(l|l-[]3[]) 「ふっ、ふざっ、ふざけるなあああぁあぁ!!
       怠慢だッ! 護衛失格!
       おい、タムラッ!!」

爪;゚〜゚)】 そ 「あ、坊ちゃん……へへへ」


 眉間に皺を寄せ、携帯を耳にあてていたタムラ。
 ポセイドンの視線に気づくと、あわててそれを閉じた。


(l|l-[]3[]) 「聞いてるのか!? おい! まさかお前も裏切ったのかああ!?」

爪;゚〜゚) 「なーに言ってんスか! 俺ぁいつでも坊ちゃんの味方ですぜ!」

(l|l-[]3[]) 「じゃあなんで能力で僕を助け@6:・。、/*^−!!」


 発狂するポセイドンの肩を、ポン、とダイオードが叩き。


/ ゚、。 / 「せーせーどーどー、な?」


 油を注いだ。

.

875 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:01:04 ID:BRQmFMAo0
.
((#l|l-[ ] 3[ ])) 「うるせぇぇぁあぁあ!! な、なにが正々堂々だああ!
            あいつらっ! いいいイカサマしやがったんだぞ!
            ハイドロキネシスト! や、ヤツが! ののの能力でッ!!」

 (( 川 ゚ -゚) )) ピクッ


/ ゚、。 / 「……ま、なんかコソコソしてるのはわかってたケド」

(l|l-[]3[]) 「バカか! バカ! お前らの目は節穴かぁあ!?!」

/ ゚、。 / 「ごしじんは、このじょーきょーを承知で、勝負の舞台に戻った。
       つまり」


 ダイオードの視線を受け、ブーン達が一歩前に躍り出る。


( ^ω^) 「見抜けなかったほうにも」


(,,゚Д゚) 「責任がある」


( ´_ゝ`) 「ケド!」


 ポセイドンの雄たけびは、もはや言語といえない何かになっていた。
.

876 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:01:52 ID:BRQmFMAo0
.
『 ───さて、コントはそのくらいにしておこうか 』


爪;゚〜゚)】 そ


 肉団子の発する雑音を切り裂くように。
 冷たい、透き通るような声が駆け抜ける。

 ふたたび携帯をいじっていたタムラの目が、驚きに見開かれた。

 そりゃそうだ。
 もうみんなの能力は解放されているんだから。
 ロッカーなんて、ただのブレスレットに成り下がってるんだから。


川д川 「!」

( ^ω^) 「!!」


 俺としぃちゃん(今は多分つー)が無事にドアから出てきた時点で。
 ゴングは鳴らされていたらしい。
.

877 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:03:16 ID:BRQmFMAo0
.
 つーが飛びかかるより早く。
 黒服たちが身構えるより早く。


/ ゚、。 / 「!」

爪;゚〜゚) 「なっ!?」


 割れた窓から飛び込んできた、水の大蛇が。
 飛び上がって駆け出す、ポセイドンの背を追っていた。

     て
(l|l-[]3[])そ 「ひいいぃぃいいいぃいっ!!」


川::::::-゚)


 ギャンブル ・ ルームを積んだトレーラーを周回すると、
 ポセイドンは、倉庫の外へ向かって一目散に走る。

 巨大なチューイングガムさながら延びていた水の触手は。
 トレーラーの助手席付近でいったん収縮し、
 反動をつけて、ふたたびポセイドンのほうへ延びる。
.

878 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:04:20 ID:BRQmFMAo0
.
 三 (((l|l;-[]3[]))) 「お前らあぁぁあぁっ!?
              こ、このハイドロキネシストをなんとかしろッ!!」

  _,
川 ゚ -゚) 「──また、そう呼んだな」


 長い黒髪をさっと撫でつけ、クーは床を蹴った。

 遮ろうとする黒服の行く手を、さらに “ 感染者 ” が阻む。
 黒服たちが一様にたじろいだ。
 触れれば一発アウトなのは、やつらもよーくわかっているみたいだ。


川 ゚ -゚) 「あのクソ女も私のことをそう呼んでいたな。
      まったく、誤解してもらっちゃ困る」


 ポセイドンを追う者はいなかった。
 ただ一人、レザースーツの女を除いては。
.

879 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:05:37 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 「私は “ ハイドロキネシストでは、ない ”」

                 て
      三 (((l|l;-[]3[]))) そ 「うがっ!?」


 疾走も空しく、触手の先端がポセイドンの首根っこを捕らえた。
 送り込まれる水量は半端なかった。


(;'A`) 「!」

(*゚∀゚) 「!」


 それもそのはず、水蛇の片方は倉庫の正面──海へと繋がっていた。
 もがくポセイドンの体は、襟首から持ち上がってゆく。


川 ゚ -゚) 「ハイドロ、はいどろ、どーろどろ……。
     んな野暮ったいネーミング、私は一度もした覚えがない。
     名乗った覚えもない」

 (((l|l;-[ ]3[ ])) 「うわあああああ! は、離せっ!!」


 黒光りする水は、生き物のようにうねり、奇妙に形を変えてゆく。
.

880 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:07:27 ID:BRQmFMAo0
.
 つーを追って俺がシャッターを越えたときには、
 一つの巨大なオブジェが完成しようとしていた。

 首をおさえ、足をばたばた振って暴れるポセイドン。
 ヤツをつらまえた水の触手は伸びに伸び、とうとう海上へ。
 海面より十数メートル。  巨体がぶらり、中空に晒される。

 たとえるならば、水の絞首台。

 ふいにその幹から、枝のように分かれた水の触手が一本、クーのもとへ伸びた。
 彼女は投げ出されたロープを掴むように、その先端をキャッチする。


(゚- ゚ 川 彡


 そしてやにわに振り返り。


(゚- ゚ 川 「 【 アクアキネシス 】 」


 片ひざをつき、肩越しに水の縄を引いた。
 昔の時代劇に出てきた殺し屋のポーズだ。
.

881 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:08:45 ID:BRQmFMAo0
.

( - ::::川 「 アクアキネシスの、クー様だ」


 一言呟いて。
 縄の先端を、ぴん、とはじく。


『 私のことは、そう呼べ 』


 瞬間。

 全ての水が力を失い、崩れ散った。


.

882 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:09:55 ID:BRQmFMAo0
.


『 う わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! 』



 漆黒の海面に、ひとつの巨大な水柱があがった。




 ======== 【 STAGE 12 RESULT 】 ========

    Up Card : [ Q ]

            ('A`) :          (-[]3[]) : -40 
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     1st                  BET  5
           RAISE  8
    ..2nd                  RAISE 10 (×4)
            CALL
    Final

    Ante        0              0 (3)

   Hands       [ A ]            [ K ]


       The game is over !!        Winner : ('A`)

 ============================

.

883 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:11:23 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 「……ふん」


 立ち上がって髪を後ろに流すクーの輪郭は、
 月明かりに淡くにじみ、一種の怪しい美しさがあった。
 水浸しの地面を歩み寄り、俺は彼女に感謝の言葉をかけた。


('A`) 「ありがとな。 アンタが来てくれなきゃ、俺は負けてた」

川 ゚ -゚) 「そう思うなら、まずは私に有り金全部……」

(*゚ー゚) 「ありがとうございました!」


 つー……いや、しぃちゃんが、ちょこんと頭を下げる。


川 ゚ -゚) 「……ま、礼には及ばん。 大した仕事じゃなかった」

('A`) (なにこの扱いの差……)
.

884 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:12:43 ID:BRQmFMAo0
.
 いつの間にやら横にいたギコが、こめかみを掻きながら言う。


(,,゚Д゚) 「ぶっちゃけ、あいつらの監視もザルだったからな」

( ´_ゝ`) 「黒服たちは、“ 感染 ” しないよう必死で、
       ろくに俺たちのほうを見てなかったし」

( ^ω^) 「タムラってヤツも、気にしてるのは自分の携帯ばっかだったお」

('A`) 「そっか」


 夜の埠頭に、助けを求める醜い悲鳴と、水音が響く。
 寒波は去ったとはいえ、季節は冬、12月。


(*゚ー゚) 「水、冷たそうですね」

('A`) 「……さぞかしいいダイエットになるだろうよ」  ♪ ♪


 脳内でGet Wildのイントロが流れてきた。

.

885 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:19:46 ID:BRQmFMAo0
.
川д川 「……でも」

('A`) 「え?」

川д川 「……背の高い人……ずっと……見てた。 内藤くんを……」

( ^ω^) 「……たぶん、気づいてたけど何も言わなかったんじゃないかお」

('A`) 「……」

           ♪
('A`) (……鈴木ダイオード。             ♪
    よくわかんないが、そこまで悪いヤツじゃないのかも)  ♪
  ♪

 そんなことを考えてしまう。
 ふっ。 俺もヤキが回ったかな。


('A`) (♪アスファルト タイy)


『 きゃぁあ─────ッはっはっはァ─────ッ!! 』


ミ(;'A`) 「!?」


 けたたましいクラクションが、それをかき消した。
.

886 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:21:59 ID:BRQmFMAo0
.
ノリ, #)ー^)li 「オラオラぁぁあぁあ──ッ! 轢ッッッきコロスわよ───ッ!」


 そりゃそーだ。
 まだぜんっぜん終わっちゃいねえ。

 数軒先の倉庫の角から突如現れたスポーツセダン。
 車種はわからないが、よくわからないものは全部スカイラインにしておこう。

 スカイラインはドリフトで旋回し、
 方向転換すると、一直線にこちらへ向かってくる。


(,,;゚Д゚) 「! あいつ!」

川 ゚ -゚) 「もうお目覚めか。 タフな小娘が」


 助手席から半身を乗り出す女に、ギコとクーは見覚えがあるらしい。
.

887 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:25:51 ID:BRQmFMAo0
.
ノリ, #)ー^)li 「迎えにきたわよ────! クライド─────んッ!」


爪*゚〜゚) 「ボニぃいいー! こっちだッ!」


 タムラが倉庫の入り口から声を張り上げる。
 連絡してた相手はあいつか。

 黒服の運転する車は、あっという間に倉庫へと迫った。
 ギコ達がダッシュしたが、間に合いそうにない。

 大仰に手を差し出す白スーツの女。
 芝居じみた動きで、それに応えるタムラ。

 女を乗せたスカイラインは、愛しのロミオの眼前に来ると、


   ≡≡≡≡≡ ノリ, #)ー^)li
   三三三三三三三三 ∪
                    ⊂二(〜゚ 川爪


.

888 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:27:08 ID:BRQmFMAo0
.

 
                             ≡≡≡≡≡ ノリ, #)ー^)li
                             三三三三三三三三 ∪
                    ⊂二(〜゚ 川爪




     (〜゚ 川爪 「「 あ 」」 ノリ, #)ー^)li



 止まることなく、港湾バースを駆け抜ける。
.



ノリ,;#)ー^)li 「くそバカッ! 何やってんだよ!!」

「ぐえ!?」


 タムラのオンナらしき女が、運転席の黒服の首を絞め上げ。
 甲高いブレーキ音をけたてて、スカイラインは方向を変える。
.

889 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:29:28 ID:BRQmFMAo0
.
 だがその転回した先には、


 川:::::-゚) オ オ オ オ オ オ


 赤いポリタンクから、そして海面方向から。
 二つの尾を持つ水の大蛇が、宙でとぐろを巻いて待ち構えていた。


 ノリ,;#)ー^)li ・ ・ ・


 スカイラインはさらに向きを変え、


ノリ,;#)ー^)li∩ 「だ────り─────んッ! あとでまた連絡してね────ッ!」


 そのまま沿岸コーナーを曲がり、走り去ってゆく。


 l|i   て 
爪; 〜 ) そ 「そりゃないぜハニぃいぃいぃぃいいいい!!」


 タムラの絶叫が、マフラーの爆音と重なった。
.

890 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:30:54 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 「ちっ……」


 いち早く動き出したのはクーだった。
 彼女の舌打ちと同時に、水の大蛇は崩壊し、ばしゃばしゃと地面を濡らしてゆく。
 俺たちは慌ててそれをかわす。

 彼女の向かう先には一台のバイクが停めてあった。
 車もそうだが、バイクの知識もないから描写できない。 調べるのも面倒くさい。
 なんかデカくてスマートでかっこええバイクだ。

 息をつく間もなく、クーはそいつにひらりと跨って、言った。


川 ゚ -゚) 「私はヤツを追う。 さぁ!」


 引っ掛けてあったジャケットと、フルフェイスを投げ放ち。
 もう一つ別のハーフヘルメットを被りながら、クーは顎で指図する。


(*゚−゚) 「!」
.

891 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:32:22 ID:BRQmFMAo0
.
川 ゚ -゚) 「乗れ。 早く!」

(;*゚ο゚) 「は、はい!」


 メットをキャッチすると、しぃちゃんはあたふたとシャッター脇へ駆け寄った。


(,,;゚Д゚) 「待ってくれ! 俺も……!」

川 ゚ -゚) 「定員オーバーだ。 お前はそっちのヤツらと遊んでろ」


 それだけ告げて、クーはバイクは急発進させる。
 あとには空のポリタンクだけが残された。

    て
(,,;゚Д゚) そ 「くそっ! ……ん?」


 『 ──ピーッ ピーッ 』


('A`;)彡 「!?」


 のんびりその背を見送る時間はなかった。
 後方から聞こえた奇妙な音に、残された全員が反応する。
.

892 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:40:10 ID:BRQmFMAo0
.
 『 ──バックします♪  ピーッ  ピーッ バックします♪── 』


 倉庫内に戻ると、発信源はすぐにわかった。


    て
(,,;゚Д゚) そ 「ああっ!?」


 さっきまで俺たちが戦っていた、ギャンブル ・ ルーム。
 そいつを積んだトレーラーが、バックランプを点灯させており。


(;'A`) 「あいつ──角刈り野郎!」


 いつの間に縄を解かれのか、
 透視能力者の黒服が、運転席でハンドルにかじりついている。

 タムラはそちらに駆け寄ると、開いていた助手席側に飛び乗った。


爪;゚〜゚) 「よーしよし! ナイスだぜぇ滝沢ちゃんよォッ!」
.

893 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:41:37 ID:BRQmFMAo0
.
(,,#゚Д゚) 「うおおおおおおらああああッ!!」


 飛びつくギコを撥ね付けるべく、タムラは勢いよくドアを閉じる。


爪 ゚〜゚) 「わっはははははは!
      悪いなギコ太! こいつは二人用でなー!」

「くっ、頭が……」

爪;゚〜゚) 「わー! よく見て運転しろバカ!」


 トレーラーは尻を振りながら後退する。
 簡易テーブルが、ダンボールが、次々に跳ね飛ばされる。


つ<;,,>Д<) 「うわっ!?」.

(; ´_ゝ`)つ 「ばか、無茶すんな!」


 なおもコンテナに飛び掛ろうとしていたギコ。
 オサムが彼の袖を引っぱった。
 蛇行する鉄の塊が、ギコの鼻先を滑走した。
.

894 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:44:15 ID:BRQmFMAo0
.
 ギコはバタバタと手足を動かすが、
 見えない壁に遮られるがごとく、前進できずにいる。
 オサムが能力で抑え付けているのだろう。

 入り口付近の積み荷を次々崩しながら、
 タムラ達の乗るトレーラーはとうとう、倉庫からその巨体を脱し。

       ,☆
爪 ゚〜゚) l|凸|l 「あばよ!」


 昔風の捨て台詞を残して、港湾入り口方向へ加速していった。


(,,#゚Д゚) 「離せっ! 離せぇっ! ちっくしょおおおおおお!」

(; ´_ゝ`) 「落ち着けって! お前の怒りはわかるけど……」

( ´_ゝ`)+ 「去る者は追わず、だ」

(,,#>Д<) 「違うッ! あいつ今、持ってた! とーちゃんの形見を!」

     て
(; ´_ゝ`) そ 「え? あ、マジ?」


 能力による拘束は解かれたらしい。
 制止を振り切ったギコは、勢いよくグリーンの床を蹴る。
.

895 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:47:54 ID:BRQmFMAo0
.
     三 (,,#゚Д゚) 「追うぞブーン! ぜってェ取り返してやる!」

   三 (; ^ω^) 「お、おおおおー!」

 三 川;д川 「内藤くん……待って……!」


 高校生三人は揃って走り出した。

 サダコちゃんが倉庫を出て行った途端、
 感染した黒服たちが、どさ、どさ、とその場に倒れる。

 残った黒服もすでに散り散りとなっていた。
 ポセイドンの救出に向かったのだろう。


(;'A`) 「兄者、俺たちも────」 シュッ


 そう言いかけた俺の眼前を、何かが駆け抜けた。


(;゚A゚) 「!?」
.

896 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:55:11 ID:BRQmFMAo0
.
 直後。
 破裂音に振り返る。

 見ればそこには、火花を撒き散らすスチールラックがあり。
 その隣──ダンボール箱がひとつ、中空に跳ね上がっている。


(;'A`)と 「うわっ!?」


 間一髪、飛びのいて難を逃れる。
 資材はゆるい放物線を描くと、俺の前方へ落下し、ぐしゃりと潰れた。


( ´_ゝ`) 「何だ……何を投げた?」


 オサムはすかさずそちらへ手をかざす。
 ダンボールの側面に刺さっていた一枚の紙片が、ぐらぐら動き。
 宙へ浮かび上がった。
.

897 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 22:59:46 ID:BRQmFMAo0
.

( ゚"_ゞ゚) 「同時に3つか! やりおるなッ!」


 続けざま、ラックの足元から、後方の壁から。
 茶色い長方形が、次々と浮かび上がってくる。
 三枚の紙片は漂いながら、やがてオサムのほうへ集合し、


(;'A`) 「! これ……!」

( ´_ゞ`) 「マツ、キリ、ボンズってか」


 ぽとぽとと落下した。

 俺たちは二人同時に、
 長方形が発射された方向、倉庫の奥へと向き直った。

 現れる人影。
 まさに自分の所作だと強調したいのか、
 今しがた投擲した “ それ ” を、わざとらしく前方へかざして見せる。
.

898 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:00:39 ID:BRQmFMAo0
.
/ ゚、。 / 「さ───て、待ち望んだばとぅーだケド。 楽しみだケド」


 五指に挟むは、とりどりの 【 花札 】 。
 扇状に広げ、雅やかな構えをとる。


 札同士を橋渡しするように、閃光一筋、ほとばしり。


 その横顔を、青白く照らした。



(続く)
.

899 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:06:01 ID:7cyqfOgg0
おつ!
久々のバトル期待

900 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:34:00 ID:rN2Zsiww0

息つく間もなくバトルとは、期待期待

901 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:50:10 ID:BRQmFMAo0
※読んでくれてありがとう。

  モノは相談だが、/ ゚、。 / のアナザーにふさわしいAAってないだろうか?
  別人格の正確と能力は決まっているが、それっぽいAAがどうも。
  表情差分でもいいけど。

  エクストは配役が決まってるので、それ以外で。

902 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:50:46 ID:tdTQWRgA0
乙!

903 名前:名も無きAAのようです:2014/05/02(金) 23:54:16 ID:bGGwQ.l20
おつー
長らくギャンブルだったから今回のでバトル作品であることを思い出したよ

>>901
£°ゞ°)
これは総合で大人気のAAです

904 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 00:15:03 ID:DylI943g0
顔の輪郭的に
/^o^\ |(●),  、(●)、| /▽▽はどうだろうか

個人的には電気王

905 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 02:15:22 ID:snZcmYmo0
乙!
lw´‐ _‐ノv 〈::゚−゚〉 ヽiリ,,゚ヮ゚ノi i!iiリ゚ ヮ゚ノル イ从゚ ー゚ノi、 リi、゚ー ゚イ`!
この辺かな、既出キャラにいたらスマン

906 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 03:06:45 ID:gCthaRI2O
>>901
トソンとかどう?

907 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 03:51:07 ID:Qn15dlcE0
荒巻

908 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 04:10:29 ID:8u6mgCJ20
乙!
ブーンの能力めっちゃ便利だな…

909 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 12:50:55 ID:a5UWl1W.0
乙!
ばとうー!すきー!

910 名前:名も無きAAのようです:2014/05/03(土) 23:19:25 ID:fEVXT3wk0
斜めしぃorギコとかどうだろうか

911 名前:名も無きAAのようです:2014/05/04(日) 05:16:01 ID:PERikXlY0
鈴木の性別どっちだっけ

912 名前:名も無きAAのようです:2014/05/04(日) 14:19:20 ID:iwvGnXO20
乙!
ブーンの能力とか忘れてたわ

913 名前:名も無きAAのようです:2014/05/04(日) 21:16:26 ID:aw.eVTYc0
ボニーとクライドって実在した強盗殺人犯カップルの名前なんだな
すごい愛称使ってんなこいつら

914 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 16:49:29 ID:SqOq1m.c0
ブーンの能力がイマイチわからん

915 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 17:36:47 ID:f5RPLxWA0
※ありがとう。おかげで別人格のAAは決まった。

>>914
※触れた物体を任意の場所にテレポートさせる能力。
・ 物体の質量・距離による制限あり。
・ 触れないと転送できない。
・ ただし、一度転送した物体は “ アクティブ ” となり、触れることなくもう一回転送することが可能。
 アクティブ状態をキープできるのは3つまで。

※どうしても一つ思いつかないので読者さんの厨二力を貸してくれ。
  『 物質の性質 』 や 『 物体の挙動 』 を変化させる系で、なんか面白そうな能力を考えてくれんかね。
  シンプルなのを。
  ちなみに37話ラストでダンボールが飛んだのは 『 吹き飛ばす能力 』 。

916 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 18:37:59 ID:Cqn0sxgA0
くっつける能力とか
指定した二つの物体が接着剤でくっ付けたみたいになる

917 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 18:49:04 ID:HQqgSQko0
物質の変化系で
・電気を水のように容器に溜めることができる
とかはどうだろうか…
もし期待してた系統じゃなかったらごめん

918 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 18:58:10 ID:LrwOdcTI0
物質の性質を真逆にする能力とか・・・

919 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 19:18:17 ID:Msrl0n2A0
柔らかくしたり硬くしたりとか

920 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 19:29:23 ID:qDER1vKo0
回転力をキープ出来たりする力

921 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 19:35:22 ID:HPPlllW.0
分解する能力とか
原子として連結していない部分、連結していても他の部位よりも脆い部分を強制的に引き剥がしたりバラバラにする

例として組み上げられたプラモデルなら、全部のパーツシールがバラバラに
衣服なら糸で繋がれた生地の境目が破けたり、織られた生地が糸までほつれたり
人体なら傷口が開いたり、毛が抜けたり爪が剥がれたり

922 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 19:46:51 ID:ZiAtjoPo0
『跳ねる』能力とか?
硬さを変え、柔軟性を高めることで石ころをゴムマリみたいに跳ねさせたり、鉄棒を竹竿みたいにしならせたり出来る能力

923 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 20:21:44 ID:yvJwV2.20
某パワポケにあったけど『重力のかかる方向』を変えるとか

924 名前:名も無きAAのようです:2014/05/05(月) 21:29:19 ID:eT06CKso0
物体を圧縮する能力

925 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 01:59:07 ID:fw9wcASo0
物が見えなくなる空間に固定される手のひらサイズになる

926 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 02:28:32 ID:5M0A7F9.0
作品の雰囲気を壊さない感じにするとなかなか難しいね
「接触している間、任意で個体として保持出来る」とかどうだろうか
水で剣作ったり

927 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 05:07:29 ID:MVbB4Y120
物質の硬さを奪う

928 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 10:10:54 ID:NHmR8RWk0
たまにカーチャンの肩を揉む能力

929 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 16:38:44 ID:tNs98RUsO
A.土、石、砂等を操る能力

B.物質を液状化させる能力

930 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 17:24:18 ID:.Og/UvuA0
物体AとBの動きを同期させる
小さい石を少し動かす→大きい岩が速く動く
みたいな

931 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 19:09:25 ID:NBhv7u2k0
振れた物体を任意で状態変化させる 固体→液体→気体→固体みたいな感じで

932 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 19:44:42 ID:NRL/7ImM0
犬のウンコを投げると光の速さで飛んでいく能力

933 名前:930:2014/05/06(火) 20:57:08 ID:a4EwHZdQ0
例え方がわかりにくかった…
5cmの石を10cm動かす→50cmの石が100cm動く

小さい動きで周りの家具や車を飛ばしてくるエスパー

934 名前:名も無きAAのようです:2014/05/06(火) 21:57:56 ID:0.8tFoDE0
任意の物体にはたらく重力加速度の大きさを±1倍以内で変化させる

935 名前:名も無きAAのようです:2014/05/07(水) 01:55:14 ID:qXqQ1Q1s0
シンプルに加速させる能力とか

936 名前:名も無きAAのようです:2014/05/07(水) 04:07:53 ID:OxINDyaE0
物質を取り込んで鎧か武器にする

937 名前:名も無きAAのようです:2014/05/07(水) 13:43:24 ID:gBc7Pt5s0
大きさに制限はあるけど生物以外の物体の状態変化(固体液体気体)を任意に操作できる能力

938 名前:名も無きAAのようです:2014/05/07(水) 23:25:29 ID:yEg29h8A0
※ありがたい。 遠慮なくアイデアいただきます。

※拝借するのは1〜2個だけど、
  今回採用されなかった能力も、後の話で使うと思う。

※こんなたくさん集まるとは思わなんだ。
  皆さんも是非妄想を形にしてくだせえ。


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 展開次第でちょっと量多くなりそう。

939 名前:名も無きAAのようです:2014/05/09(金) 14:21:55 ID:ZjBMsl8g0
更新乙
ずっと楽しみにしてたぜ。また気長に待ってる

ところで作者は他に作品書いたことある?もしあった読みたいんだが

940 名前:名も無きAAのようです:2014/05/09(金) 16:00:25 ID:YLknX4HE0
俺も読みたい

941 名前:名も無きAAのようです:2014/05/09(金) 20:55:39 ID:RiR5nVY20

 http://vipmain.sakura.ne.jp/end/275-top.html
 http://sogomatome.blog104.fc2.com/blog-entry-952.html
 http://boooooonovel.web.fc2.com/majang2/majang20.html
 http://vipmain.sakura.ne.jp/end/345-top.html
 http://gyokutonoyume.blog116.fc2.com/blog-entry-3059.html


※他は勘弁してくれ……色々と

942 名前:名も無きAAのようです:2014/05/09(金) 21:56:00 ID:8tGGLYcY0
Vは昔読んだわ
こんなん書いてたのか…

943 名前:名も無きAAのようです:2014/05/09(金) 21:58:43 ID:f9GULmQg0
Vだと… 
今と全然違う

944 名前:名も無きAAのようです:2014/05/15(木) 18:34:54 ID:1JS7ocag0
うおおお
ありがとうう

945 名前:名も無きAAのようです:2014/05/22(木) 00:16:34 ID:ARbrmRAA0
Vってホラーのやつだっけ

946 名前:名も無きAAのようです:2014/05/22(木) 01:03:05 ID:s85Rn2v2O
>>945 
 
11:名も無きAAのようです
14/05/17(土) 04:25:54 ID:SODl48ZM0


( ^ω^)「俺は今! お前が書いた作品と同じくホラーの名作を思い出している!」

ξ゚?听)ξ「なんですって!」


( ^ω^)「同ジャンルにおける過去の名作を思い返すことで、お前の作品のインパクトが薄れたのさ」

(´・ω・`) (ディフェンステクニックか。作者のメンタリズムを守る常套手段……)

・参考
V(のようです)
http://vipmain.sakura.ne.jp/end/345-top.html
※新しく登場したいい作品に作者としてショックを受けそうなときはこういう名作を思い出そう!!

947 名前:幕間@:2014/05/30(金) 23:41:50 ID:u5AX64gE0
.
(; ^ω^) 「ところでサダちゃん、僕らが港に来たことをどーやって知ったんだお?
       誰かに教えてもらったのかお?」

川д川 「え? う……ううん……」

('A`) (確かに、俺が連絡したのはクーだけだったはずだが)


( ^ω^) 「お? じゃあどうしてだお?」

川д川 「……その……わたし……」

( ^ω^) 「うん」



川д川 「着けて……きた……」


 ('A`) ピクッ


( ^ω^)
.



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※もうちょい待って
.

948 名前:幕間@:2014/06/02(月) 00:07:19 ID:scoobDwo0
.
( ^ω^) 「……誰を?」


川д川 「……内藤……くんを……」


 ('A`)


 (;'A`)


(; ^ω^) 「えええ? なんで!? いつから!?!?!?!?」

川д川 「……あの……それは……」


川д川 「………………家のそばから」


( ^ω^)


( A )



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.

949 名前:名も無きAAのようです:2014/06/02(月) 00:34:31 ID:Ayfvzot.0
wktk

950 名前:名も無きAAのようです:2014/06/08(日) 22:23:35 ID:ALo6CjQw0
いつのまに半分も!!

951 名前:名も無きAAのようです:2014/06/09(月) 22:01:06 ID:oOYK5dwM0
クーかっけぇ

952 名前:名も無きAAのようです:2014/06/21(土) 09:01:09 ID:iTD/N9WE0
まだかなぁ

953 名前:幕間B (948は幕間A):2014/06/21(土) 17:18:33 ID:OHjb/Oj.0
.
(; ^ω^) 「ちょまっ、な、なんで!?!?
       そ、それに僕たちはバスで来たんだお!?
       どうしてここで降りるってわかったんだお!?」

川д川 「……え……その……」


川д川 「わたしも……バスで……」


( ^ω^)


( ^ω^) 「えっ」


川д川 「……同じ便で……」





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※仕事が忙しい。ごめん。

※今月中には投下(投下とは言ってない)

954 名前:名も無きAAのようです:2014/06/21(土) 19:28:25 ID:gH50S3CU0
期待

955 名前:名も無きAAのようです:2014/06/21(土) 21:43:58 ID:5wdQ23as0
>投下(投下とは言っていない)

ん?

956 名前:名も無きAAのようです:2014/06/21(土) 22:10:19 ID:MUw07mIM0
貞子が怖いよぅ…

957 名前:名も無きAAのようです:2014/06/23(月) 13:09:09 ID:OpkvnT7A0
スレ足りるか?

958 名前:名も無きAAのようです:2014/06/26(木) 18:34:04 ID:32gdOmPA0
新スレたててやるんじゃね

959 名前:名も無きAAのようです:2014/07/01(火) 02:51:02 ID:e2WmYw7w0

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.
※すまんありゃ嘘だった。


※まあ、なんだ。 近況はこちらで。
 http://twitter.com/Ps_Dilemma


 気軽にフォローしてね。 特にメリットはないけど。

960 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:17:19 ID:sEkU70qU0
※なかなか書きあがらないので一部だけ投下。

961 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:19:38 ID:sEkU70qU0
.
 〜 〜 〜
 

 庫内を静寂が支配した。

 ふと気づいた。
 可視領域が狭まっている。
 奥に行くにつれ、蛍光灯の光量が減っている気がする。

 空間を包む緊迫感ゆえか、
 それとも、彼の持つ特異性が、関係しているのか。


/ ゚、。 / 「しょーぶの前に、言っておくことがあるケド」


 ゆらり、揺らめく人影。
 幽霊のように現れた “ 電気系念動力者(エレキネシスト) ” は、
 指先に花札を弄びつつ、言った。


(;'A`) 「な、なんだ?」

/ ゚、。 / 「わかると思うケド、これ」


 細い毛糸のような、しかし鮮やかなる閃光が、札の間を駆ける。


/ ゚、。 / 「一部の札には、ちょーのーりょくが封じ込めてあるケド」
.

962 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:19:41 ID:Spa3nOKQ0
やったぜ

963 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:21:20 ID:sEkU70qU0
.
( 'A`) 「!」

( ´_ゝ`) 「やっぱそーか」


 先ほど投擲された三枚について思い返す。
 俺の記憶が正しければ、“ 松に鶴 ”、“ 桐に鳳凰 ”、“ 芒に月 ”。

 これらはつまり、奴の操る玩具──超能力アイテムだということらしい。


/ ゚、。 / 「のーりょくを閉じ込めた札は10種。
       “ 鶴 ” “ 鶯 ” “ 桜 ” “ 蝶 ” “ 猪 ”
       “ 月 ” “ 杯 ” “ 鹿 ” “ 柳 ” “ 鳳凰 ”」


 無表情だが、おしゃべりな “ ねらー ” 、
 ダイオードは悠然と続ける。


/ ゚、。 / 「のーりょくはそれぞれ、
       “ リプロデュース ” “ グリントキネシス ” “ パイロキネシス ”……」
     て
(; ´_ゝ`)そ 「はぁ? な、なんだって?」
.

964 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:24:27 ID:sEkU70qU0
.
 驚いた兄者が聞き返すも、お構いなしだ。


/ ゚、。 / 「“ テレポート ” “ リフレクス ” “ エレキネシス ” “ ツイスター ”
       “ マグネティクス ” “ シンクロノス ” ……“ ブローフ ” 」

(;'A`) 「多っ! てか覚えきれねー!」

/ ゚、。 / 「簡単だケド。

       −−−(中略)−−−

       そして……」

(;'A`) 「そ、そして?」

/ ゚、。 / 「“ ブローフ ” は “ 吹き飛ばす能力 ” 」


 そう言って、
 さきほど跳ね上がったひとつの段ボールを、札で指し示した。
.

965 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:25:48 ID:sEkU70qU0
.
(; A ) 「……どんだけだよ」


 身構えつつ、俺は辺りを見回した。

 数えるほどのパレットラック、パイプ椅子、プレジデントチェア、
 横倒しになった簡易テーブル……。
 あとは入り口脇に、ダンボール箱が数個、崩れ落ちている。

 こうしてみるとモノはけっこう散乱しているのだが、
 もともと積み荷そのものが少なく、
 奥に陣取っていたトレーラーも、すでにいない。


( ´_ゝ`) 「能力のバーゲンセールだな」


 庫内はがらんとした印象だ。
 超能力者同士の戦闘には、おあつらえ向きのステージかも知れない。


/ ゚、。 / 「ウリモノじゃないケド」


 スーツのポケットに手を差し入れ、花札の束を取り出すダイオード。
 最低でもワンセット分のストックはあると考えていいだろう。
 冷や汗が出る思いだ。
.

966 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:27:13 ID:sEkU70qU0
.
 ヤツは左手から右手へぱらぱらと札を繰る。
 後ずさる俺の代わりに、兄者が半歩前に出た。


( ´_ゞ`) 「さて……」

/ ゚、。 / 「お手並み拝見だケド」


 ヒーロー男とサムライ野郎。
 二人の長身は、簡易テーブルを隔てて対峙する。
 唾を飲む瞬間、放たれた言葉は。


/ ゚、。 / 『 ─── “ リレイト ” 』


 小さく、しかしはっきりと、庫内に残響した。

.

967 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:30:42 ID:sEkU70qU0
.
●第三八話 『 CHASE!! ── VS. タムラ&ダイオード@ 』


 動いたのはほぼ同時だった。
 兄者の右手が空を薙ぐ。
 対して、ダイオードはバックステップで距離をとる。

 兄者の挙動がサイコキネシスによる攻撃動作だとわかったのは、
 側方のスチールラックから、硬質な打音が奏でられた瞬間だった。
 ダイオードは壁近くまで離れると、腕を交差させ、澄んだ声で言う。


/ ゚、。 / 「 “ 表菅原 ” 」


 両の手それぞれの指先。  摘まれるは計3枚の札。
 一瞬溜めたあと、ヤツはそれを手裏剣のように投げ放った。


( ´_ゝ`) 「!」

(;'A`) 「!!」
.

968 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:33:46 ID:sEkU70qU0
.
〜〜〜


(;'A`) 「な、なんだ!?」


 花札が爆発した。 おそらくこれは “ パイロキネシス ”。
 単純な話だ。 が、理解に納得が追いついていない。

 爆発は “ 右側 ” で起こったはず。
 なのに、灼熱が襲ってきたのは、“ 左後方から ”。

 俺はその場によろめいた。

 幸い炎は上体を撫で付ける程度で済んだが、
 発生源に近かった兄者のほうは、服の左肩部分から焦げ臭い煙が上がっている。
 兄者はたまらず上着を脱ぎ捨てる。


(; ´_ゝ`) 「な、なにが……?」

/ ゚、。 / 「 “ リプロデュース ”  ──(中略)のーりょく。
       “ グリントキネシス ” ──(中略)のーりょく」


 無表情。 そして無機質な返答。
 交差する腕の先、さらに二枚の札が、指先で翻る。

               リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「 ふたつを “ 関連付けた ” 」
.

969 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:36:59 ID:sEkU70qU0
.
〜〜〜


/ ゚、。 / 「右手に “ 月見酒 ” 左手に “ 花見酒 ” 」


 ダイオードは両手を広げ、その先に2枚ずつ札を示す。
 サイコキネシスのダメージすら感じさせない。


(; ´_ゝ`) 「ぐっ……!」

/ ゚、。 / 「かわせる?」


 手首のスナップと、わずかな肘の動きだけで。
 4枚の紙片は同時にベクトルを与えられた。


(l|l'A`) 「!」


 マズい。
 兄者のサイコキネシスはその性質からして、
 四方から飛来する札をいっぺんに叩き落とすのは難しい。
.

970 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 22:39:24 ID:sEkU70qU0
.
(; ´_ゝ`) 「よけろっ!」


 それぞれに超常現象を蓄えた、悪夢の長方形。

 先ほどとは挙動が違っていた。
 ゆるい弧を何度も描く不可思議な軌道で、
 しかし確実に俺たちのほうへ迫りくる。


(;'A`) 「ひぃ!?」

(; ´_ゝ`) 「わぁお!」


 着弾。
 点火。
 右手方向の床から、炎の渦が巻き起こった。
.

971 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 23:04:23 ID:sEkU70qU0
.
 〜 〜 〜


( ´_ゝ`) 「……概念的な話になると難しいな」

/ ゚、。 / 「操るといっても、方向は制御できないケド。
       −−−(中略)−−−」

 鈴木タムラ……あいつにそんな超能力があったとは。


 〜 〜 〜


(((l|l*´−゚))) 「でも、なんで!?」

 国道へ抜けた。
 沿岸道路をかっ飛ばす二人に、
 きらめくハーバー ・ イルミネーションの遠景を楽しむ余裕はない。

川 ゚ -゚) 「何がだ」

(((;*゚−゚))) 「あの人を追いかける理由です! ……さ、むいぃっ」

川 ゚ -゚) 「愚問だな」

 エンジン音が鋭さを増した。
 鮮やかなライディングで、車線を斜めに突っ切る。

川 ゚ -゚) 「手がかりが欲しいんだろ? 両親の」

(* − ) 「────!」

 信号をすっ飛ばし、二人はビルの隙間へ吸い込まれてゆく。


 〜 〜 〜
.

972 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 23:06:23 ID:sEkU70qU0
.
 〜 〜 〜


(,,;-Д-) 「────廃ビルか!」


 叫びつつ、ギコはぱっと顔を上げた。


(,,-Д゚) 「ソーサク1丁目だッ!
     奴らはそこに向かってる!」


 耳に届く声は徐々に小さくなり、やがて途切れる。
 トラックが “ ロックオン ” の有効範囲を脱したらしい。


(,,#゚Д゚) 「うっし、すぐに行こうぜ! 回り込んでやらあ!」
.

 〜 〜 〜


     て
(l|l; ゚_ゝ゚) そ 「がはっ!?」


 その瞬間。
 兄者の体がくの字に折れた。

           サイコリフレクション
/ ゚、。 / 「……“ 念 動 力 反 射 ” 。
       どう? 自分ののーりょく、味わった感想は」


 目を凝らして、何が起こっているかようやくわかった。

 無秩序に撒かれる札に混ざって。
 実に不可解な “ 現象 ” が、兄者に牙を剥いていた──。


 〜 〜 〜
.

973 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 23:08:49 ID:sEkU70qU0
.


                『 ねらーの超能力は、弱い 』

                『 ───でも 』

                『 人は、注射器一本で死ぬ 』



 『 ここにあるのは10本の工具 』

 『 全てが全て、取るに足らないシロモノで 』

 『 それぞれに 』

 『 人を殺す力を備えている 』



        『 ───おれは。  正々堂々、闘って 』


        『 勝ったことは、 ────ない 』



 〜 〜 〜


※あ、なんかバトルっぽい。

※38話 『 CHASE!! 』 書いてるのでもうちょい待って。

※VIPに投下するかも。 創作のスレは新しく立て直すと思う。

.

974 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 23:36:12 ID:q.vBvq/Q0
待ってるぜ

975 名前:名も無きAAのようです:2014/07/03(木) 23:59:44 ID:KJqr0pAA0
乙 待ってます

976 名前:名も無きAAのようです:2014/07/04(金) 05:09:54 ID:D9TL9BQs0
10レス目でやっと飛び飛びになってることに気づいた

大分書き溜め進んでるっぽいね待ってる

977 名前:幕間C (終):2014/07/28(月) 00:21:12 ID:4KLpAeXA0
.
===
==



  (*゚ο゚) 「内藤くん汗かいてるけど大丈夫? 緊張してるの?」

  (; ^ω^)ゞ 「いや単純にあっついだけだお。 ここ暖房効き過ぎじゃないかお?」

  (;*゚ー゚) 「そ、そっかぁ。 わたしはそうでもないかも……」


     川д川    ( 'A`)(*゚ー゚)(;^ω^)?
              ∞


==
===
.

978 名前:幕間C (終):2014/07/28(月) 00:22:32 ID:4KLpAeXA0
.
(  ゚ω゚)σ 「おお───! 後ろの席に居たのかお! どーりでなんかあっついと思ったお!」

川д川 「……う、うん……へへ」



川 ゚ -゚) 「……ふつう寒気じゃないのか?」

(;'A`) (伏線だったんだ……無駄に……)




※無駄に。



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 34 / 55KB

※少々構成を変えた。
  残業続きでなかなか書けない。待たせて申し訳ない。
.

979 名前:名も無きAAのようです:2014/07/29(火) 17:40:47 ID:qa1eHyjI0
昨日兄者スレタイで新スレが立ってる夢を見たぜ待ってるぜ

980 名前:名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:52:50 ID:Mc7yqxBk0
久しぶりに覗いたら凄く進んでて凄く嬉しいぜ
しぃにメットを放るクーは絵になるんだろうなぁ
ブーンとギコの組み合わせも見てて楽しい
続きも楽しみにしてるよ!

981 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:27:12 ID:UmD./vg60
.
※スレ埋めるネタがもうない。

※超能力の設定なんてものを晒すのは、冷静に考えて恥ずかしい。
  読んだらそっと心にしまってください。

※名称を考えるのが苦手だ。そのうちまた募集するかも。
.

982 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:28:51 ID:UmD./vg60
.
 【 シーリング(仮) 】
 アンチサイの一種。
 肌が触れている間、他人の超能力を封じる。

 ※ 超能力による “ 現象 ” そのものを打ち消すことはできない。
 ※ 継続的に効果を発動するタイプの能力の場合、
   ドクオが Channeler に触れた時点で、対象の能力がリセットされる。


 【 イミテーション 】
 コピー能力の一種。
 目で見た ・ 体験した他人の超能力をトレースする。
 ただし、トレースした超能力は、オリジナルに比べて劣る。
 相手の肌に触れることで、再現できる可能性が高まる。
.

983 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:30:47 ID:UmD./vg60
.
 【 アポーツ 】
 触れた物体を別座標へ転送する。
 転送対象物の質量に制限があり、重いものは転送できない。
 また、距離に比例して精度が落ちる。

 一度転送した物体は “ アクティブ ” となり、さらにもう一度転送できる。
 精度もアップする。
 二回目の転送をおこなった時点で、アクティブ状態は解除される。

 転送先に十分な空間がないと発動しない。
 (いわゆる “ いしのなかにいる ” 状態にはならない)
 触れていない物体を転送しようとすると、能力が暴発する。

 自身を転送しようとすると、能力の暴発により超加速。
 絶対不可視 ・ 不可避の体当たりが発動する。
 普通に大ダメージを被るため実用的ではない。


 【 イージス 】(仮)
 耐久性の向上。
.

984 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:33:39 ID:UmD./vg60
.
 【 ハーキュリアン 】
 重力操作系の能力。 触れた物体を持ち上げる。
 ただ物体を “ 軽くする ” ことで持ち上げているわけではなく、
 実際にはしぃ自身の腕力も向上しているらしい。


 【 エクスセンシズ 】(仮)
 視覚、嗅覚、聴力など、五感を高める能力。


 【 名称なし 】(仮)
 身体能力の向上。
.

985 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:34:48 ID:UmD./vg60
.
 【 アクアキネシス 】
 水を操るテレキネシス。 操る対象の水に触れることが条件。
 本人曰く “ ハイドロキネシスとは別物 ” 。
 
 “ 特別製 ” と呼ばれる水を介して、位置情報を把握することもできる。
 特別製の水には、ドクオの能力によるリセット効果も作用しない。
 精製法は内緒。 そのうち本編にて描写。


 【 ヒュプノシス 】
 催眠系能力の総称。


 【 スライダー 】
 滑らせる能力。
.

986 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:36:15 ID:UmD./vg60
.
 【 パラノイド 】
 ヒュプノシスの一種。
 触れることで感染する。


 【 コトダマ 】
 ヒュプノシスの一種。
 暗示という予備動作を経て、条件(フラグ)が成立すると、
 相手の行動を縛ることができる。


 【 パイロキネシス 】
 炎、爆発など、高熱に関係するテレキネシスの総称。
.

987 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:37:35 ID:UmD./vg60
.
 【 エレキネシス 】
 同じく電気に関するテレキネシスの総称。


 【 コンデンス 】
 エレキネシスの亜種。 かつ、コピー能力。
 ICカードに他人の超能力をコピーし活用できる。
 ただし能力は使い捨て。


 【 ポリグラフ 】
 嘘を発見する能力。
.





 [ Rate of progression ]
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 50 / 55KB

※どんなに遅くともお盆には。
.

988 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 01:50:42 ID:PmStTE6Q0
いよいよか期待してるよ

989 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 02:17:45 ID:mgIZGEP20
期待

990 名前:名も無きAAのようです:2014/08/07(木) 20:04:24 ID:Y./nPC3o0
期待ついでに埋め

991 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:53:21 ID:Qw2rhcGg0
.
 ─── それからの出来事は、語るほどのこともない。

 俺たちはダイオードをデコピンで倒し、タムラから箱を取り戻した。

 戦いの後、兄者は死んだ。
 死因はバナナの皮。 打ち所が悪かったらしい。


 =
 ==
 ===


 と、そんなことはどうでもいい。
 数日後、俺はしぃちゃんに、VIP市郊外にある崖に呼び出された。

(*゚−゚)

 そういえば先日、俺はブーンの勧めで生命保険に4つほど加入した。
 しぃちゃんの真剣な眼差しを見ると、
 必然的に、これはなんらかの重要な前振りであることが察知できた。

 しぃちゃんは俺の目をじっと見つめる。
 真剣な表情だ。 目力にたじろぐ。 思わず胸が高鳴る。

 彼女の容姿は今まで何度も描写してきたとおり。
 淡雪のような輝きを放つ、妖精みたいな娘だ。
 それ以上は面倒くさいので省略する。
.

992 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:54:10 ID:Qw2rhcGg0
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 こないだはありがとうございました、という当たり障りのないあいさつからはじまり、
 ごめんなさい、としぃちゃんは続けた。


('A`) 「え? なにが?」


 くすりと笑って、しぃちゃんは続ける。


(*゚ー゚) 「ごめんなさい、……ハインさん」

('A`) 「へ?」


 聞き間違いだろうか。
 唐突に、想い人の名を呼ばれた気がした……が。


『 10秒だけ 』


 しぃちゃんが近付いた。
 かと思うと、その腕が俺の背に回されて。

 続く言葉で、
 俺はさっきのセリフが聞き間違いではなかったことを悟った。


『 ドクオさんをお借りします 』


 ぎゅっ。
 少女の体が、ぴったりと、押し当てられた。
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993 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:55:18 ID:Qw2rhcGg0
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●第三八話(最終話) 『 Channelers. 』


(;゚A゚) 「 っ っ っ ! 」

 俺は完全に硬直した。
 シャンプー? 柔軟剤?
 どっちだかわからないが、ふわりと香る花の匂い。

 この世のものとは思えないような柔らかさ。
 制服を通して伝わるぬくもり。 
 ……体を押し返す、確かな弾力。

:::(i|i*A )::: (ほわぁぁっぁぁぁぁぁぁああぁぁあ!?)

 しぃちゃんが、俺を抱きしめ……え、ええ!?

(*∩ー^) 「……へへぇ♪」

 しかもなんか笑ってる。
 ゆ……夢? 悪夢の見過ぎで反動がきたのか?

(*´ー`) 「最初に会った夜、ドクオさん、私に抱きついたでしょう?」

 しぃちゃんは、俺の上着の襟元に鼻から下を埋める。
 潤んだ上目遣い。 視線が合うと、ふたたび三日月状に細くなる。

(*゚ー゚)b゙ 「仕返しです」

 そう言うと彼女は、俺の胸にひたいを押しつけ、
 絡めた腕の力をいっそう強くした。

 ぎゅ、と。
 それはもう、むぎゅうぅぅ、と。

Σ(;゚A゚) 「おっ……!!」


   う お お お お お お お お お お お お ・ ・ ・ !


 な、なんじゃこりゃ。
 一体ぜんたいどういうアレなんだ、この状況は。
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994 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:56:21 ID:Qw2rhcGg0
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 いかん、やだ、そんなっ。 だめっ。
 身をよじるたび、抱き締める力はぎゅうと強くなり、離れない。
 いいの? というくらいに完全密着してる。

 ふと、ハインさんの笑顔が脳裏にチラついた。

((;*A )) (俺にはハインさんが俺にはハインさんが俺にはハインさんが
      俺にはハインさんが俺にはハインさんが俺にはハインさんが
      俺にはハインさんが俺にはハインさんが俺にはハああああおおお)

 い、いや別にハインさんと俺はまだ何の関係もないけど。
 一方的に憧れてるだけだけど。
 こんな時に限って現れるのは、ズルいと思います。

 『 ドクオさん、……あの日、本当は、わたし 』

 香料のそれに混じって、微かに香るほの甘い体臭。
 この匂い、覚えがある。
 それは確かに、俺があの夜、抱きしめた時の──。

 『 怖かったです 』

 しぃちゃんは、俺の胸に顔をうずめたまま、声を詰まらせた。
 小さな体躯は、震えていた。


(; ゚A゚) 「……」
  (*   )゙


 これだけ心臓が脈打ってれば、彼女もおそらく感じているだろう。

 すっごいドキドキする。
 すっごいドキドキする。
 すっっっっっっごぉぉぉぉいドキドキしまくりなんだけど、

(; 'A`)

(;'A`) (ま……いっか……) ポリポリ
 б゙

 俺は長い長い10秒を堪能することにした。

 恥ずかしいので、目の前にある頭をそっと撫でてやる……とかは無理だったが。

 押し当てられた顔は熱く、抱きしめた肩からは、彼女の気持ちが流れ込んでくるようだった。

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995 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:57:11 ID:Qw2rhcGg0
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『 ぐすっ。 ドクオさん……わたしね 』

(;'A`) 「えっ」

『 こんな……ぐじゅ。 能力だから 』

(;'A`) 「あ、う、うん」

『 思いっきり抱きしめられる相手は、ひょっとしたら
 ………く…おさん、しか 』

(;゚A゚) 「!?」

 なんか危険なことを言いだしている。
 ちょっと、まずっ、やだ、これ以上はっ

(*∩-;) 「あっ」

(; A ) 「えっ?」

 そして、これまた唐突に。

(*///) そ 「ひゃぁ!」

 叫ぶが早いか、
 しぃちゃんは俺の体を押しのけるようにして、ぱっと離れた。

(;*゚ο゚) 「ご、ごめんなさいっ! わたし……」

(;'A`)ノシシ 「い、いやぁ! 気にしないで!
       そのっ、えっと、ハインさんは別にその……俺としても……」

(;*゚△゚) 「鼻水つけちゃった!」

(;'A`) 「そっちかい」

 胸元は全体的に湿ってる。
 見れば、ああ、確かにその一部がキラキラと。

 別にそんなの気にしなくていいのに。
 ……もう少し抱きついててくれても良かったのに。

 混乱極まったのか、袖で俺の胸元を拭こうとする彼女を慌てて止める。
 そんなしぃちゃんは、やっぱりいつものしぃちゃんだった。

 −−−−
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996 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:57:59 ID:Qw2rhcGg0
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 =
 ==
 ===


 あれから10年の歳月が過ぎた。



 10年後の俺は、残念ながら定職にすらついていない。
 世間によくある、いち引きこもりにすぎない。

 しぃちゃんとは一回だけ酒の勢いでチューしたが、
 そこからお互いなんとなく気まずくなり、
 彼女が合コンで知り合ったイケメンと付き合いはじめると、連絡することもなくなった。

 ブーンはサダコちゃんと付き合うや、みるみるうちに激痩せしてイケメンの仲間入りを遂げた。
 W大に入学して以降は、俺のことを露骨に憎み、邪険に扱うようになった。
 5年ほど前までは、ツインテールの金髪娘と付き合っていたらしい。
 らしい、というのは、それ以来なんの連絡も取っていないからだ。

 ギコはキューちゃんとできちゃった結婚して高校をやめた。
 三人の子供を設けたあと、痴情のもつれやなんやで全身を20箇所以上刺され、いまだ植物状態だ。

 クーは性転換手術を受けると行ってモロッコへ飛んだが、
 三年前に届いたエアメールの消印はシンガポールのものだった。
..

997 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 22:59:47 ID:Qw2rhcGg0
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 そして俺は、引きこもっている。


 超能力の氾濫によって秩序が壊滅し、文明の崩壊したこの国。


 VIP市だった地域の、学園だった場所の一角に存在する、一つのシェルターに。


 ここから全ては始まり、ここで俺れの戦いは終わろうとしている。


 床に転がる消火器に、一人の少女の姿を重ね合わせる。


 最後の一つのカップ麺を、汁まですする。


 また、銃声が聞こえた。




                     『 Channelers のようです 』  −The End.−



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998 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 23:01:31 ID:Qw2rhcGg0
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 ※あとがき

  くぅ……疲れました……。
  ここまでくるのに5年を要しましたが、逃亡期間が2年半くらいあるので実質2年だと思っています。
  どうにかこの1スレのうちに完結することができました!

  完結できたのは読んでくれた人たちと、まとめさんのおかげです。
  感想スレで感想を見つけたときは空に叫びました。
  絵の投下があると全裸になって駆け回りました。
  両方なかったときは酒を飲んでふて寝しました。

  他にも色々言いたいことはあります! けど、まあ別にいっか。
  ブーン系に幸あれ!(笑)



      ('A`)   .,、
       ノヽノ) (i,)
       くく   |_|


     .      (
      ('A`)   )
       ノヽノ) =3i  フッ
       くく   |_|



`〜〜○〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
     O
       ゚ ('∀` )      ..,、
       (⊃⌒:*⌒⊂).  (i,)
         /__ノωヽ__)   |_|

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999 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 23:03:40 ID:Qw2rhcGg0
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                               ヽ`
                              ´
                               ´.
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
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                                      ,、二二二二二_、
                                     〈__  _  __〉
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 [ Rate of progression ]
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 58 / 60KB
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1000 名前:名も無きAAのようです:2014/08/10(日) 23:18:17 ID:C.s0cn920
ひっどいオチを見たwwww
まだ続くんだよな、なぁ?!


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