◆5rua49HN2.<><>2012/05/04(金) 21:36:43 ID:X6Chjt0Q0<>
第一話〜第二十七話までの三行あらすじ


  ニューソク大陸の片田舎、ヴィップの町で魔法道具屋を営む魔法使いの少年ブーン。
  店を営む傍ら、画期的な商品を開発したり、クエストに参加したりと忙しい毎日を送る。
  これは、そんな少年ブーンと仲間達のゆるいファンタジーなお話である。


                v
             /⌒ヽ {○}
           (_^ω^)}{   『( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです』
           〈:::::::\ /つ〉
    ヾ(∪^ω^) 〉::::::::|=| ||                               (O)
,.,.. ,...... (_ u u ,く:::::::::/__| ||,,,,.,.. ,...... ,.... ,,,.,.. ,.... ,,,.,.. ,.... ,,,.. ,.... ,,,.,.. ,.... ,,,.,...,.. .. ,.... ,M|M|iMiiii,从,,,
,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,, ,,,.. ,,,,.,  ̄,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,,,.. ,,,,.,.. ,.... ,.


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm

 前スレ
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1330696677/<>( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:38:18 ID:X6Chjt0Q0<>
 〜 ヴィップ南の街道 〜


( ^ω^)「天気は曇天、道行は順調、ここまではまずまずですおね」

(-_-)「もう少し進んだら休憩にしましょうか。この先に水場があるはずです」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「暑いからって泳いで遊んじゃ駄目だお? あくまで休憩だお」

(∪´ω`)「わんおー」

(-_-)「ハハハ、わんわんお君は少しぐらいならいいんじゃないですか、泳いでも」

(∪*^ω^)「わんわんお!」



     第二十八話 一路南へ曇天行路


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/04(金) 21:40:04 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「しかし、水場の位置知ってるって事は、ヒッキーさんはこの辺りに詳しいんですかお?」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(-_-)「ええ、まあ。元いた村がこの近くにありますので」

彼の名前はヒッキーさん。
ヴィップの町に新しく赴任してきた司祭で、少しおどおどした所があるが穏やかな人だ。

(∪^ω^)「わんわんお!」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

僕とわんわんお、それにツンとクーとトソン君はヒッキーさんが依頼したクエストを受けて、
ナカノヒトの町に向かう途中だ。
今の所旅は順調で、既に行程の半分は走破している。

現在、クーとトソン君が御者台にいて、ツンが後方の警戒中だ。
僕達3人は特にする事もなく、待機中といった所である。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/04(金) 21:42:08 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「って事は、ヒッキーさんはこの辺りの出身だったんですかお」

(-_-)「いや、そういうわけでもないのですよ」

( ^ω^)「お? じゃあ、別のとこから引っ越して来たんですかお?」

(-_-)「そうなりますね」

教会の司祭はよっぽどの例外でなければ、一旦はソクホウで修行しなければならない。
そこで司祭としての資格を得て、そのままソクホウで司祭をやるか、地方に派遣されたりする。
極めて稀にそこから冒険者や騎士になる人もいるが、ほとんどいないといってもいいくらい数は少ない。

だからヒッキーさんが別の町の生まれで、この辺りの村に赴任して来ていても不思議はない事になる。

( ^ω^)「それじゃあ、ヒッキーさんはどこの生まれなんですかお?」

(-_-)「正確な所はわかりません」

( ^ω^)「わからない?」

(∪^ω^)「わんおー?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:43:01 ID:FsXTWEdEO<>きたあぁぁ!

支援<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/04(金) 21:45:23 ID:X6Chjt0Q0<>
(-_-)「……私は孤児だったのです」

( ^ω^)「お……」

僕は余計な事を聞いてしまって謝ろうとしたが、ヒッキーさんは気にしないでと言ってくれた。
何でも、ヒッキーさんが生まれたばかりの頃に、ご両親はソクホウ近くで盗賊に襲われ、亡くなったという話だった。
それで身寄りのなくなったヒッキーさんはソクホウの孤児院で育ち、聖職者の道に進む事になったらしい。

(-_-)「両親はずっと旅をしていたらしいので、近隣に知り合いも見付かりませんでしたから」

( ^ω^)「それは……大変でしたおね」

僕は何と言っていいかわからず、視線を落とす。
そんな僕に、ヒッキーさんは逆に謝って来る。

(-_-)「つまらない話をしてしまいましたね。すみません」

( ^ω^)「いや、そんな……」

(-_-)「いえ、実際に少々重い話ですので、あまり他人にすべき物ではないと改めて思いましたよ」

(-_-)「自分はそれほど気にしてないと言うより、両親を覚えていないので、重い話でもないんですけどね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:47:37 ID:X6Chjt0Q0<>
そう言ってヒッキーさんは少し寂しそうに笑う。

こうしてヒッキーさんの身の上の話を聞くのは初めてだが、これまで苦労して来たのだという事はよくわかる。
覚えていないといっても、両親がいない事は変わらないわけだから、寂しい思いもしたはずだ。

境遇的には僕も似たような物だが、僕にはじいちゃんがいた。
あとドクオさんも、ツンやツンの両親、ショボンもいた。

( ^ω^)「お、そういえば……」

そこでふと思い出したのだが、ヴィップの町に元いた司祭様、あの人は確か……

(゚、゚トソン「前方、モンスターの群れが見えます」

馬車の前方の幌が開けられ、トソン君が顔を出すと同時にモンスターとの遭遇を告げる。
僕達は話を打ち切り、武器を手に馬車から身を乗り出して前方を確認する。


               。//。
          (\/) / 幽 >(ヽ/)<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:49:09 ID:X6Chjt0Q0<>
硬そうな甲羅に覆われた真っ赤な体躯に、2対の巨大な鋏。
複数の脚がその身を支え、感情を一切感じさせない真っ黒な目がこちらを見詰めている。

川 ゚ -゚)「何だ、あのデカいカニは?」

(゚、゚トソン「エビではないでしょうか?」

( ^ω^)「正確にはザリガニだお。多分、G(ジャイアント)ロブスターだお」

以前遭遇したGマンティスと同じタイプで、向こうがカマキリだったの対し、こちらはザリガニが巨大化したものだ。
性質も本来のザリガニと似たような物のはずだが、それにしては何故水辺を離れて街道まで来ているのだろうか。

(-_-)「この辺りであれほどの大きさのモンスターは初めて見ますね。どうしますか?」

馬車を止め、距離を取ったまま観察するも、Gロブスターは近付いても来なければ逃げもしない。

( ^ω^)「威嚇射撃でもして追い払いますかお?」

僕らの目的はモンスター討伐じゃないし、素材集めでもない。
無理に戦う必要はないのだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:51:55 ID:X6Chjt0Q0<>
Gロブスターにしたって、この街道を守っているわけではないだろう。
避けられる戦いなら避けるべきだ。

(;^ω^)「って、こういう時って真っ先に戦いを挑みに行くやつがいたお」

僕は慌ててツンの姿を探すが、意外にも馬車を降りてはいたものの、すぐ側に立っていた。
  _,
ξ゚听)ξ「何よ? 私だって、いつもいつも考えなしに戦いを吹っ掛けたりはしないわよ」

極めて説得力のない言葉を放ちながら僕の方を睨むツン。
僕は視線を逸らし、ヒッキーさんに方針の決定を促す。

今回のパーティーのリーダーはヒッキーさんだ。
今までは脳筋パーティーばっかりだったので、なし崩し的に僕が考えて決断する事が多かったが、
今回はその必要はないだろう。

意見は出すが、最終決定は任せる事に決めている。

(-_-)「そうですね、追い払えるならその方がいいでしょう」

川 ゚ -゚)「うむ、では殲滅戦といくか」

ξ゚听)ξ「そうね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:52:24 ID:gqITVMygO<>キタ――――(*‘ω‘ *)<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:54:59 ID:X6Chjt0Q0<>
(;^ω^)「いや、お前ら僕とヒッキーさんの話聞いてたかお?」

川 ゚ -゚)「追い払うんだろ? 戦って」

(;^ω^)「そうじゃねえお。戦いを避けるって言ってんだお」

僕は不満げな顔をする2人を無視し、魔法の詠唱を始めようとした。
しかしクーが僕の方に手を伸ばし、それを遮る。

川 ゚ -゚)「冗談だって。しかし、追い払うのにわざわざ魔法を使う必要もないだろ?」

そう言ってクーはトソン君の方を見る。
トソン君は察した様に頷き、大剣を鞘から抜き放った。

( ^ω^)「なるほど、あれで目の前の地面でも叩けば逃げて行くおね」

川 ゚ -゚)「そういう事だ。行け、トソン」

(゚、゚トソン「かしこまりました」

トソン君は大剣、ガリアン・ソードを上段に構え、気合の乗った掛け声と共にそれを振り下ろす。

(゚、゚#トソン「えいっ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 21:56:50 ID:X6Chjt0Q0<>
剣は孤を描きながら伸び、Gロブスターに迫る。

               ∧ ザクッ!
             x\|,,|/x
          (\/) / 幽 >(ヽ/)


(゚、゚;トソン「あ……」

(;^ω^)「ちょ!?」

しかし、手前の地面を打つはずの一撃は見事に1匹のGロブスターの頭を叩き割った。
避けろよという思いと、これで逃げてくれればという思いが交錯するも、残りのGロブスターは戦闘態勢に入り、
こちらに向かって来る。

(;^ω^)「結局こうなるのかお」

(∪;^ω^)「わんおー」

僕は馬車から飛び降り、杖を構える。
ヒッキーさんには馬車を戦場から遠ざけてもらうよう頼んだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:00:33 ID:X6Chjt0Q0<>
(>、<;トソン「すみません、すみません!」

川*゚一゚)「まあ、やってしまったものは仕方ないさ。ドンマイだ、トソン」

ξ*゚一゚)ξ「全く、しょうがないわねえ」

( ^ω^)「おい、お前ら、その笑みを堪えた面は何だお?」

クーはこうなる事を見越してトソン君に頼んだのかもしれないが、今はそれを問い質している時ではない。
残りGロブスターは3匹。
先のトソン君の一撃への反応を見る限り、それほど強いモンスターではないと思う。

( ^ω^)「たまには派手に行くかお」

既にツン達3人がそれぞれGロブスターと交戦している。
楽に倒せるかと思ったが、Gロブスターは正面からの攻撃には対応が早いらしく、
素早く後方に飛び跳ねて攻撃をかわしている。

川#゚ -゚)「このカニ野郎っ!」

(゚、゚トソン「ザリガニですよ、クー様」

ξ゚听)ξ「どっちでもいいわよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:02:43 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「天なる空を漂う雷の精霊よ、我が矛となりて全てを貫け……みんな、下がってくれお!」

僕の言葉に全員、その場から後方に飛び退いた。
それを見た僕は力ある言葉を解き放つ。

( ^ω^)「サンダー・ストォォォムッ!」

僕の言葉と共に上空からいくつもの雷が飛来し、Gロブスターを射抜く。
雷の精霊の力を借りた広範囲魔法サンダーストーム。
直撃を受けたGロブスターは3匹ともその場に崩れ落ちた。

ヽ( ^ω^)ゝ「見事に必殺って感じだお」

上機嫌でポーズを決める僕に向けられる不満そうな視線が2つ。
心配しなくても味方に落とすようなヘマはしないから安心して欲しいものだ。
  _,
川 ゚ -゚)「そうじゃなくてだな……」
  _,
ξ゚听)ξ「なに、瞬殺してくれちゃってんのよ?」

( ^ω^)「余計な戦闘は避けるって言ったお? さあ、いいから出発するお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:04:19 ID:X6Chjt0Q0<>
勿論、ツン達が何に対して不満げなのかは理解していた。
しかし僕は、そ知らぬ顔でそれを受け流す。

(-_-)「お疲れ様です」

(∪^ω^)「わんわんお!」
  _,
川 ゚ -゚)「全然疲れてませんが、嫌味ですか?」
  _,
ξ゚听)ξ「役に立たなくて申し訳ありませんねえ」

(;-_-)「え、いや、その……」

(;^ω^)「お前らヒッキーさんに当たるなお。悪かったお、次は補助に徹するから」

(゚、゚トソン「よしよし、皆無事でなによりですね」
つ∪^ω^)「わんお!」

僕はツン達を宥め、再び馬車を走らせる。
この近くの水場で休憩を取ろうと思ったが、水場にはGロブスターが他にもいる可能性があるので、
少し先まで馬車を進める事にした。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:06:57 ID:X6Chjt0Q0<>
ξ゚听)ξ「しかし、どうしてあんなのが街道まで出て来てたのかしらね?」

( ^ω^)「さあ? ここ最近暑いから、巣にしてた水場が干上がったのかもしれんお」

僕は一通り文句を並べ立てて機嫌の直ったらしいツンと共に御者台に座り、馬車を操る。
Gロブスターの生態はよく知らないので何とも言えないが、単に他の水場へ移動している最中だったのかもしれない。

ツンやクーが久しぶりのクエストで張り切ってて、腕試しをしたいのはわかるが、
襲ってこないモンスターまで倒す必要は無いと思う。

もっとも、あれが無害なモンスターだったかどうかなんてわかりようもないのだが。

ξ--)ξ「さっきのはちょっと反省してるわ。街道を外れて少し迂回してもよかったわね」

( ^ω^)「そうしたとしても、追い掛けて来た可能性もあるお」

結局、結果で判断するしかないので、被害の無い手段を選べたという事で満足しておこうと思う。
毎回行き当たりばったりでは困るが、考え過ぎて取れる手段が狭められるのもよろしくない。

( ^ω^)「ジョルジュさん達と組んでた時は、まず僕が動くより先に誰かしら動いてたから」

( ^ω^)「やる事が限られて、却って迷わず済んでたんだおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:08:44 ID:X6Chjt0Q0<>
ξ゚听)ξ「あの3人の実力も高かったから、自分の事に専念出来たのは楽だったわ」

今回のパーティーが弱いわけではないが、冒険者としての経験が少ない者ばかりなのは否めない。
とはいえクエスト目的から考えて、戦闘になったとしても人との戦いになるだろうからそこまで不安は無い。
クーはともかく、トソン君は対人戦闘は慣れているだろう。

ξ゚听)ξ「そうね。同じ未知の相手なら、モンスターより人間の方が言葉が通じる分少しはマシよね」

場合によっては今回のクエストではその戦闘すら回避出来るかもしれない。
目的は聖骸布の奪還なので、交渉で取り戻せる可能性もあるだろう。

ξ゚听)ξ「その辺は現地に行ってみないとわかんないんだっけ?」

( ^ω^)「らしいお。そこで教会の特殊任務に当たる人、通称、エージェントと合流するのが最初の目的だお」

ヒッキーさんに下された教会本部からの命令は、聖骸布の奪還の為、
腕の立つ冒険者を4、5人集めてナカノヒトの町に向かい、現地のエージェントと合流しろというものだ。

聖骸布を盗んだ者がそれを闇オークションに流そうとしているらしい事は書かれていたが、
その人物の名前とかそういう情報はなかったらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:10:29 ID:X6Chjt0Q0<>
ξ゚听)ξ「わざわざヒッキーさんに命令なんかしないで、自分達でやればいいのにね」

( ^ω^)「ナカノヒトは教会との仲が険悪だお。表立って動きたくなかったんだと思うお」

治安の悪いナカノヒトの町にも、過去に何度か教会を立ててニューソク正教を布教しようという動きはあったが、
悉く失敗したらしい。

富裕層にとってはニューソク正教の博愛や平等とかそういう概念が目障りで、
貧困層には一銭にならないものにかまけている時間はないとあしらわれた様だ。

ナカノヒト全体が貧しい町で、貧困層だけで構成されているならニューソク正教も受け入れられただろう。
そういう人達の、心の拠り所にもなれたかもしれない。
しかし、ナカノヒトは住民の格差がひどい町でもあるのだ。

( ^ω^)「まあ、何にせよ、行ってみないとよくわかんないけど、危ないから単独行動は厳禁だお」

ξ゚听)ξ「そうね。そこは気を付けさせないとね」

そう言ってツンは背後を盗み見る。
現状では実力的にも身分的にも、そして性格的にも一番危険なのはクーだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:12:09 ID:X6Chjt0Q0<>
(;^ω^)「冷静に考えると、クー連れて来たのは相当まずかったかもしれんお」

ξ゚听)ξ「仕方ないじゃないの、あいつが私達にこの話を持って来たんだし」

それに、クーが行く行くは大陸全土を旅するつもりなら、
保護者のいる内に1度見ておいた方がいい町ではあるとツンは言う。

( ^ω^)「保護者ってなんだお。でもまあ、確かに一理あるお」

僕は軽く笑ってツンに応じ、視線を街道に戻す。
ナカノヒトまでの距離は残り半分を切っているが、出立以来、空はずっと曇っている。
雨にならないだけマシだが、湿度の高い空気は暑さと相俟って気持ち良いものではない。

ξ゚听)ξ「そういえばブーンがあんな大規模な魔法使ったの、久しぶりに見た気がするわ」

( ^ω^)「まあ、そもそもがあんまり使う機会もないお」

僕は冒険者ではなく魔法道具屋が主で、近場の薬草採集程度じゃ強いモンスターとは遭遇しないし、
たまにクエストに出ても先の脳筋のパーティーですぐに乱戦になってるしで、使える場面が滅多にないのだ。

ξ゚听)ξ「あんたって、意外と強力な魔法使えるのよね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:13:45 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「攻撃魔法なら精霊魔法6種の基本と高威力、範囲魔法は使えるお」

意外というのは僕としては心外で、多少の得手不得手はあるが、基本的な魔法は一通り習得している上、
高位の魔法もいくつか覚えている。
精霊魔法以外も使えるし、数だけ言えばもっと多く使えるのだが、よく使うのはこの辺りである。

なんせ僕の師匠は賢者と大賢者だ。
魔法に関しては英才教育に近いものを受けている。

( ^ω^)「それにドクオさんの話だと、僕は結構魔力が高いらしいお。同世代の一般的な人に比べたらだけど」

ξ゚听)ξ「ふーん。流石は、ってとこ?」

( ^ω^)「やっぱそうなるのかおね。子供の頃はそれほどでもなかった気もするんだけど」

魔法に関しては持って生まれた素質に左右される部分が大きい。
後天的に修練で魔力を高める事も出来るが、そもそもの素質が無いと魔法を使う気にもならないだろう。

僕の場合は血筋のお陰で素質があり、かつ、師の的確な指導のお陰で後天的にも成長出来たという事だと思う。

ξ゚听)ξ「ドクオが的確な指導ねえ……」

( ^ω^)「基本的な魔法の事は、ほとんどドクオさんから学んでるお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:15:13 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「昔もちょっとひねたとこあったけど、今よりは素直で親身に教えてくれたんだお」

勿論、自分の師の手前という事もあったのだろうが、ドクオさんは僕にとって先生で、家族のような存在だった。
タイムカプセルの時の様に、子供の遊びにも付き合ってくれる事だってあったのだ。
もっとも、そんな事は言わなくても、いつも僕と一緒に遊んでいたツンはよく知っているんだろうけども。

ξ゚听)ξ「ブーンのおじいさんが亡くなってからよね、あいつが変わったの」

じいちゃんの死がドクオさんの心境にどんな変化をもたらしたのかは僕にはわからない。
子供であった僕には、当時そんな事は話してくれなかった。

しかしいつか僕は、あの頃の話をドクオさんに聞きたいと思う。
僕がもう少し大人になり、ドクオさんが話すに足る人物と思えるようになれた時に。

ξ゚听)ξ「まあでも、別に聞かなくてもいいんじゃない、どうせドクオだし」

ξ゚听)ξ「あんたがあんまりアレに影響されてもいい事ないわよ」

(;^ω^)「そんなばっさりと……」

僕とドクオさんの関係はじいちゃんが亡くなって少し変わったが、
ツンとドクオさんの関係はあまり変わってないように見える。
元々、一緒に住んでいたわけでもなく、適度に距離があったからだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:16:19 ID:X6Chjt0Q0<>
つい先日も、昔と変わらない2人のやり取りは目にした。
ツンが一方的にドクオさんをなじる、昔と変わらぬ微笑ましい光景を。

そういう所は、少しだけツンが羨ましくも思う。
昔と変わらぬ関係でいられるツンの事を。

ξ゚听)ξ「どうしたの?」

( ^ω^)「何でもないお。……さて、そろそろどこかで休憩するお」

ξ゚听)ξ「この先に川があるみたいだけど、その辺りにする?」

( ^ω^)「水辺はまた何か出そうな気もするけど、その方が色々と便がいいおね」

ξ゚听)ξ「暑い時期だしね」

( ^ω^)「ちょっとヒッキーさんに聞いてみてくれお。この辺の事なら何か知ってるかもしれないお」

ξ゚听)ξ「りょーうかい」

ツンが馬車内に入り、1人になった僕は考えるとは無く色々な事に思いを巡らせた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:17:49 ID:X6Chjt0Q0<>
 〜 ヴィップ南の街道 深夜 〜


草木も眠るとはよくいうが、この時期は夜も虫や蛙の声なんかで結構うるさかったりする。
おまけに湿気が多く、蒸し暑いのであまり眠るに適した環境とはいえない。

( ^ω^)「まあ、夜番なんで眠くならなくて助かるけども」

ナカノヒトまで街道沿いには町も無いので、必然的に野宿となる。
交代制で夜番をしているが、今は僕とヒッキーさんの担当だ。

(-_-)「どうしました?」

どうやら僕の独り言が聞こえたらしいヒッキーさんが尋ねてくる。
僕はこの暑さの事を考えていたら、思わず独り言が漏れていたと説明した。

(-_-)「そうですね。今年は随分と暑くなるのが早かった気がします」

( ^ω^)「いわゆる異常気象ですかおね」

(-_-)「かもしれませんね。何かの前触れでなければいいのですが……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:19:32 ID:X6Chjt0Q0<>
聖職者であるヒッキーさんは信心深い、イコール、こういった予兆めいた事を重く考える性質なのだろう。
実際、異常気象の時は過去に何かしら起こったりした事実もあるから、そう思うのもわかる話だ。
因果関係は明確にされて無いものであったとしても、記憶がそれを深く刻んでしまっていて印象深いのだろう。

それに僕の周辺でも最近は色々と気になる事が起こってもいた。
あまり信心深くない僕ですら、これから何か起こりそうな予感はしているのだ。

( ^ω^)「取り敢えず今の所は、寝苦しそうなのが一番の問題ですかおね」

僕の言葉にヒッキーさんは軽く笑う。
ツン達は場車内ではなく、外で眠っている。

風のない馬車内よりは外の方がいいと思ったのだろうが、残念ながら外も大差は無い。
時折寝苦しそうに唸る声が聞こえて来る事もある。

( ^ω^)「わんおも暑い時は人気ないおね」

(∪-ω-) zzz

これまでの旅の時は、誰かしらが抱いて寝ていたわんわんおだが、この暑さでは流石に躊躇われれるのだろう。
今は僕のすぐ近くで1人で眠っている。
ショボンやミルナさんがいたらこの暑い時でも抱いて眠ってそうだが。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:21:49 ID:X6Chjt0Q0<>
(-_-)「わんわんお君は本当にブーン君によく懐いてますね」

( ^ω^)「わんおは基本的に誰にでも懐きますお」

今の所、唯一の例外を除けばわんわんおが懐かなかった人はいない。
警戒心というものをまるで持ち合わせていないのはどうかと思いもしたが、
むしろ僕の周りには警戒しなくていい人ばかりなのを喜ぶべきかもしれない。

(-_-)「ヴィップの町はいい人ばかりですからね」

( ^ω^)「ヒッキーさんはもう、ヴィップには慣れましたかお?」

(-_-)「はい、お陰さまで」

僕が見た感じでも、言葉通りヒッキーさんはヴィップに馴染んでいるように見える。
これといった問題もなく、日に数人は教会に訪れる人もいる。
それはヴィップの気質のお陰だけでなく、ヒッキーさんの人柄に因る所もあると思う。

(-_-)「どうなんでしょうかね? 自分は前任者の方ほど、人格者ではないと思いますし」

( ^ω^)「お……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:22:32 ID:PW2zhHhg0<>支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:24:13 ID:X6Chjt0Q0<>
そう言って少し寂しそうに笑ったヒッキーさんの顔で、僕は昼の話が途中であった事を思い出した。
奇しくもそれは、その前任者の事で聞きたい話でもあった。

教会で精霊と遭遇した時にある程度の推測はついていたつもりだったが、
ヒッキーさんの身の上を聞くと話はそう簡単ではないのかもしれない。

( ^ω^)「昼に聞きそびれてたんですけど、前の司祭様はひょっとして……」

(-_-)「正確な所はわかりません。しかし……私の祖父かもしれないと考えていました」

( ^ω^)「かもしれない、ですかお?」

(-_-)「ええ、色々と複雑な理由がありまして、断言出来ないというか、今の所、希望的観測に近いです」

少し長い話になるとヒッキーさんは言うが、どうせ夜番の時間はまだまだあるのだ。
僕はヒッキーさんによければ話して欲しいと頼む。

(-_-)「前任の司祭、ハタライさんは私が教会に入門した時に最初に指導してくれた人でもありました」

教会では、入門者を指導する教官に当たる司祭がいるという事らしかった。
それは専任ではなく、ソクホウの教会の司祭や、その他の町の司祭が受け持つ事になっているらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:26:12 ID:X6Chjt0Q0<>
基本的に教会の司祭はソクホウで修行するから、前の司祭様も一時期ソクホウにいたのだろう。
前の司祭様はずっとヴィップにいたと思っていたが、いない時期もあったようだ。
僕は覚えていないが、ヒッキーさんの話だと僕がじいちゃんと暮らし始めた時期と同じ頃らしい。

(-_-)「人の良いおじいさんという感じでしたが、子供心にどこか他人のような気がしない事も感じていました」

教会は下は12歳ぐらいから、上は際限なく入門者を受け入れている。
単に教会の教えを受ける入信のみに止まる人もいれば、深く教義を学び、司祭となるべく修行する人もいる。
後者の場合は、全寮制の学校のような施設で学ぶらしい。

(-_-)「そういう環境でしたし、他に娯楽もありませんから、必然的に人と話す機会は多かったんです」

ヒッキーさんは前の司祭様とよく話すようになり、その身の上も聞いたらしかった。

(-_-)「自分は決して誇れるような人生を歩んで来てはいない」

(-_-)「だから、これはある種の訓戒だと思って聞いて欲しいと言われました」

前の司祭様は、元はあまり人様に言えるような仕事をしていなかったらしかった。
それでも妻子があり、家に帰れば普通の夫、親としても暮らしていたという。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:29:17 ID:X6Chjt0Q0<>
ところがある日、仕事上のトラブルから騒動になり、妻を亡くす事になってしまい、
前の司祭様はこれまでの生き方を激しく後悔したとの事だ。

そこで更なる災厄が我が子にまで及ぶのを避ける為、子を施設に預け、
財産を処分して自分は逃亡の旅の果てに教会に入門する事になったらしかった。

(-_-)「その後、預けられた子供はどこかに貰われていったらしかったのですが」

(-_-)「戦争で焼けて記録が残っていなかったようです」

( ^ω^)「なるほど……」

それで断言出来ないという事なのだろう。
もしヒッキーさんの父親が前の司祭さんの息子であったとしても、それを証明する手立てが一切ないのだ。
ヒッキーさんの父親の事も、ヒッキーさんはよく知らないのでそちらから追う事も出来ないのだろう。

辛うじて父親の名前だけはわかっているらしいが、名字はわからないという。
亡くなる直前に立ち寄った宿の主人が、夫婦の会話の中で呼ばれていた名前を覚えていたらしかった。

(-_-)「正直な所、可能性は低いかなとも思っています。子供の頃の憧れの延長線上のものかもしれないと」

今の話だけでは、ヒッキーさんのお父さんと前の司祭様が親子であった可能性の方が低いと判断せざるを得ないが、
ヒッキーさんは血が繋がっていなくても、自分の祖父の様に大切に思っていたという。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:31:07 ID:X6Chjt0Q0<>
(-_-)「私はあの方から色々な事を学びました」

(-_-)「教義だけではなく、人として大切にすべき事や、間違いを正す心も、やり直す強さも」

(-_-)「私が無理を言ってヴィップに転属願いを通したのは」

(-_-)「ここに来れば何かわかるかもしれないと思ったからでもあります」

何もわからなかったにしても、自分の敬愛する人が生きた場所を見たかったとヒッキーさんは続ける。

( ^ω^)「生前のご本人には聞かなかったのですかお?」

(-_-)「お子さんの話をする時はとても苦しそうだったので、結局聞けず仕舞でした」

今となっては少し後悔していると、ヒッキーさんはまた寂しそうに笑う。

( ^ω^)「何か力になれたら良かったんですけど、僕は前の司祭様の個人的な事をよく知らないんですおね……」

小さい頃、教会に遊びに行ってクッキーを貰った事は覚えている。
じいちゃんと一緒に聖水を受け取りに行った事もあった。
会えば気軽に話をする間柄であったが、どちらかといえば司祭様がこちらの近況とかを聞いてくれるばかりだった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:32:35 ID:X6Chjt0Q0<>
(-_-)「子供だったのですから、それが当然だと思います」

ヒッキーさんはヴィップの教会に残された前の司祭様の私物を整理して、
そこから何かしらわかればいいと考えているという。
子供の名前でも書かれたものがあれば、ヒッキーさんの父親と同じかどうかはわかるだろう。

施設に預けられ、別の家に引き取られても、名字は変わるだろうが名前は変わっていない可能性はある。

( ^ω^)「僕は前の司祭様の顔や雰囲気はよく覚えていますお」

( ^ω^)「僕が見ても、ヒッキーさんは前の司祭様によく似ていてると思いますお」

(-_-)「ありがとう、そう言ってもらえると何だか希望が湧きますよ」

ヒッキーさんは少し驚いた顔をした後、照れくさそうに笑った。
どんな結果であれ、自分はヴィップに来た事を後悔していないとヒッキーさんは言う。

( ^ω^)「子供だった僕は覚えてませんが、誰かしら司祭様と親しかった人は──」

   川д川〜 フヨン
(;^ω^)「うぉっ!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:34:59 ID:X6Chjt0Q0<>
(;-_-)「あ……」

突如髪の長い女性の顔が目の前に現れて驚いたが、よくよく見るとあの教会の精霊さんだった。
またヒッキーさんの中から出て来たらしい。

(;-_-)「す、すみません。どうも最近は私の感情が大きく揺れると私から離れる事があるようで……」

しばらく前まで悲しみの精霊的な存在であった所為か、その他の感情が大きい場所にはまだ馴れないのかもしれない。
害はないはずだが、この暗い中で突然出て来られると心臓に悪い。

     川д川〜 フワフワ
(-_-)∩「おいで、サダコ」

( ^ω^)「その子、サダコって名前付けたんですかお?」

(-_-)「ええ、それが母の名前だったらしいので、それを借りました」

サダコは再びヒッキーさんの中に戻る。
精霊憑きの人間で、そう頻繁に精霊が離れるのは珍しいタイプかもしれない。

(-_-)「そういうものなのですか?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:36:51 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「感情に憑くタイプの精霊は、ほぼその人と一体化するような感じのはずですお」

ただ、サダコは元は教会の精霊で、感情の精霊というわけでもないからその辺りの線引きは難しい所だ。
逆に、火や風の自然精霊と契約して纏わせる場合だと、体内に入り込むような事は無い。

(-_-)「そうですね、私の感情に影響を与えることもありますから、感情タイプの精霊に近いと思うのですが」

( ^ω^)「精霊の力が強いと、その感情に支配される可能性もあるから気を付けてくださいお」

ヒッキーさん達の場合はその心配は無いと思うが、精霊に感情を支配された例は過去に色々あったはずだ。
中にはそれを研究し、人間の強化手段として使おうとしたものもあった。
かなり非人道的な研究だったので、今は弾劾されて廃れているはずだ。

(-_-)「気を付けます。しかし、そんな研究もあったんですね」

( ^ω^)「ひどい研究だと思いますお」

この手の研究は兵器転用なんかも考えられるので、ひょっとしたらどこかで生き延びている可能性もある。
だとしたらあまり気分のいい話ではない。

( ^ω^)「……っと、さっき言いかけた話ですけど」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:38:51 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)「ひょっとしたらドクオさんなら何か知ってるかもしれませんお」

僕は話を前の司祭様の事に戻し、昔見た光景を説明する。
ドクオさんもたまに、じいちゃんの代わりに教会に聖水の受け取りに行っていたはずだ。
その時僕も一緒に行った事があり、ドクオさんが司祭様と何かを話している姿は目にした覚えがある。

(-_-)「東の賢者様ですか。未だお会いしておりませんが聡明な方なのでしょうね」

(;^ω^)「あの人、ヒッキーさんのとこに挨拶にも行ってないんですかお?」

今はヴィップに住んでいないとはいえ、ドクオさんも昔は教会にお世話になっただろうに。
礼儀を欠くにも程があるのではないだろうか。

(-_-)「いえいえ、むしろこちらがご挨拶に伺わなければならない身ですので」

( ^ω^)「ドクオさんの庵に行くのはめんどくさいと思うんで、教会に行ってくれるように頼んでおきますお」

僕は今ドクオさんが庵にいない事を説明し、戻って来たらその事を伝えておくと約束した。
いくら神を信じてないといっても、人助けぐらいはしてくれてもいいだろう。

( ^ω^)「どこからどう見てもひねくれた顔してますけど、あれで結構やさしいとこもあるんですお」

(;-_-)「まだお会いしていないので顔の事はよくわかりませんが、よろしくお願いします」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:40:35 ID:X6Chjt0Q0<>
そこで話を一旦終え、僕は周囲の見回りをする為に立ち上がった。
今の所モンスターの気配は一切感じない。

( ^ω^)「特に異常なしですお」

(-_-)「お疲れ様です」

周囲をぐるっと歩いて周り、再びヒッキーさんの隣に座る。
もうすぐ夜明けも近いので、そろそろ朝食の下ごしらえでもしておこうか。

( ^ω^)「そういえばもう1つ聞きたい事があったんですお」

(-_-)「何でしょう?」

再び立ち上がろうとした僕だが、その事を思い出して座り直した。
聞きたい事と話しておくべき事の両方があるのだが、どこまで話すべきかはまだ決めかねている。

( ^ω^)「聖骸布についてですお。ヒッキーさんはどういう風に聞いてるのですかお?」

(-_-)「特徴とかそういう話ですか?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:43:51 ID:X6Chjt0Q0<>
この反応だと、例の悪魔の衣に関しては全く聞かされてないのだろう。
もっとも、全く関係ない可能性の方が高いのだからそれも当然か。

そもそも神と悪魔、全く相反するような概念のものが同じものを指す事がおかしいので、
やはりドクオさんの思い過ごしかもしれない。

( ^ω^)「何かいわくありげだったりするんですかおね?」

(-_-)「どうなのでしょうかね……」

(-_-)「ブーン君から指摘があったように、伝承から考えるとあるはずのない道具である気もしますし」

ヒッキーさんの話によると、数百年前の教会の文献には存在している事から、それなりに由緒はあるのかもしれない。

(-_-)「それによると、外見は何の変哲もない貫頭衣のようでしたね」

ただ、前に言ったようにニューソク正教の主神アルァは現人神ではないから、遺体を包む衣はいらないはずなのだ。
言い伝えの中で実体を伴う事はあっても、死んだ事はないようだし、やはりおかしくはある。

( ^ω^)(これが千年以上前の文献に載ってたのなら、疑う必要もなかったかもしれないけど……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:46:17 ID:X6Chjt0Q0<>
数百年なら前の千年期の後に、魔王の衣に別の名前を付けて隠匿しようとした可能性もある。
その名を消す為に別の物として扱うというのは悪い手ではないと思う。

( ^ω^)(もしそうだとしたら、問題はこれを盗んだやつと教会がどこまで知っているかだおね)

(-_-)「どうしました?」

( ^ω^)「あ、いや、ちょっとぼうっとしちゃって……」

黙り込んだ僕に、ヒッキーさんが顔を覗き込むようにして尋ねる。
僕の答えに、ちょっと眠気が差したのだろうと、お茶を淹れましょうかと提案してくれる。

( ^ω^)「どの道、朝食の準備もありますし火を起しましょうかお」

思わず誤魔化しはしたが、魔王の衣の件は皆に話しておくべきかもしれない。
場合によっては想定外の厄介事が飛び込む可能性もある。
低い可能性だとしても、万が一に備えて心構えをしておけば有事の際に対応出来ると思う。

(-_-)「そうしましょうか」

火を起すといっても、魔法を使えば一発なので特に苦労はない。
こういう野営で魔法使いが一番重宝される瞬間でもある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:47:57 ID:X6Chjt0Q0<>
僕は夕飯前にトソン君が集めて来た木の枝を寄せ集め、それに火を点ける。
パンを焼いたりという大掛かりなものの準備はしていないが、ご飯を炊いておにぎりを握るくらいならこれで十分だ。

(-_-)「じゃあ、まずはお湯を沸かしますね」

( ^ω^)「よろしくですお」

僕はヒッキーさんに場所を譲り、馬車内に入る。
食料は十分備えて来たので、途中でどこかの村に立ち寄らなくても十分なくらいはある。

( ^ω^)「お米お米と……」

僕は全員分に足るだけのお米を取り出し、近くの川に向かおうとした。

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「お、もう起きたのかお。おはようだお」

(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「皆を起こしちゃうから、もう少し静かにするお」

僕はわんわんおを一緒に連れて川へ向かう。
わんわんおは元気よく走り回りながら僕について来る。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:49:10 ID:X6Chjt0Q0<>     グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」

( ^ω^)「朝から元気だおね」

(∪^ω^)「わんわんお!」

川の水で顔を洗い、お米を洗って、ついでにわんわんおが泳ぎたがっていたようなので、少し泳がせてあげた。

( ^ω^)つ 三 o「ほうれ、取って来いお」

彡(∪*^ω^)っ「わんわんお!」 ドボン!

(∪*^ω^)○「わんわんお!」

(;^ω^)「いや、誇らしげにしてるとこ悪いけど、僕が投げた石より明らかにデカいお?」

全然違う石を取って来るわんわんおに僕は苦笑する。
まあ、適当な石だったので投げた僕もどれだか判別出来ないのだが、それは明らかに違うと思う。

( ^ω^)つ|「じゃあ、この木の枝にするお。これなら水に浮かぶから見失わないお」

(∪^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:50:54 ID:X6Chjt0Q0<>
( ^ω^)つ 三 |「ほうれ、取って来いお」

彡(∪*^ω^)っ「わんわんお!」 ドボン!

(∪*^ω^)|o |「わんわんお!」

(;^ω^)「いや、だからデケえお。何で見えてるものまで違うのもって来るんだお」

再度別の木や石で挑戦するも、わんわんおは毎回違うものを持って来てしまう。
それも、僕が投げた物よりも大きい物ばかりだ。
僕は何となく意地になってしまい、成功するまで何度も石や木を投げ続けた。

ξ;゚听)ξ「戻って来ないと思ったら何やってんのよ?」

( ^ω^)「お、ツン、おはようだお。見ての通り、わんおの特訓だお」

(∪;´ω`)「わんおー」

ξ;゚听)ξ「もう、わんお疲れちゃってるじゃないの。馬鹿な事やってないでさっさとご飯の支度しなさい」
つ∪;´ω`)

(;^ω^)「お、ごめんお。つい夢中になっちゃって……」

僕はツンとわんわんおに謝り、馬車の所まで戻る。
しかしながら先の結果には納得いってないので、
このクエストが終わったらまたわんわんおに取って来いの練習をさせようと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:52:54 ID:X6Chjt0Q0<>
ξ゚听)ξ「最初はもっとわかりやすいのにしてあげなさいな」

( ^ω^)「そうだおね。もっとわかりやすい色の付いたのとかにしておけばよかったお」

ξ゚听)ξ「犬には色より匂いじゃないの? 何かあんたの匂いが付いたものとか」

(∪^ω^)「わんお」

( ^ω^)「匂いが付いてそうなものといえば……パンツとかかお?」
  _,
ξ゚听)ξ「ひょっとしなくてもあんた馬鹿でしょ?」

(;^ω^)「冗談だお。今度何か焼いたお肉の匂いがするボールとか作ってみるお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

それから手早く朝食の準備を済ませ、馬車を出発させる。
ナカノヒトまで残り数日、僕は多少の不安は感じつつも、まだ見ぬ新しい町に思いを馳せながら馬車を走らせた。



     第二十八話 一路南へ曇天行路 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:54:48 ID:c6FvTqo2O<>乙!<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 22:56:58 ID:X6Chjt0Q0<>
二十八話は以上です

このクエスト話は多分、これまでで一番長いかなあと思います
というか、次のクエスト話との継ぎ目がつけ辛くて

次話は一応書けてますので、またその内

支援とか感謝です



前スレで募集したじいちゃんAAは、得票数最多の @のミ `ω´) に決まりました
ご協力感謝です

まだ当分出てこないですけど<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 23:07:12 ID:W0WjNuS.O<>来てたのか

相変わらずペース早いな<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/04(金) 23:22:34 ID:d8quVADw0<>前スレから引用ですまないが

                 ____ ____  ____ 
                (\ ∞ ノ (\ ∞ ノ (\ ∞ ノ Г\
                彡ヽ)_ノ 彡ヽ)_ノ 彡ヽ)_ノ |8  )
                                  彡Lノ
                                ノ~ヽ 
                            ノ~ヽ(_∞_)
                        ノ~ヽ(_∞_)彡
                    ノ~ヽ(_∞_)彡
                ノ~ヽ(_∞_)彡
              彡(_∞_)彡               ミ/~|
               ____                ミ ( 8|
 へ∧_∧彡     (\  ∞ ノ____ ミ___ ミ___Г\_|
 し( ・∀・) 彡   彡\ヽ   /(\ ∞ ノ (\ ∞ ノ (\ ∞ ノ8  )
  /  _⊂ノ彡       ヽ)_ノ ヽ)_ノ  ヽ)_ノ  ヽ)_ノ Lノ
. / / し´
(_)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/05(土) 02:13:30 ID:Ts3.DxoEO<>焼いた肉の匂いのするパンツを投げよう<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/05(土) 02:45:51 ID:bohUe/vU0<>乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/05(土) 09:22:10 ID:graMRHD.0<>>>46
ドクオがパンツ履き替えてるところに遭遇してしまったツンが、そばにあった松明で…


乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/05(土) 12:26:32 ID:EAsHyXXg0<>相変わらずわんおが可愛い、おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/05(土) 21:13:20 ID:cN3xklIoO<>ブーンのが付いたツンのパンツを…<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:13:12 ID:TqLuedZw0<>
 〜 ナカノヒトの町 東門 〜


( ^ω^)「やって来ましたナカノヒトの町」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ξ゚听)ξ「思ったより普通の町って感じね。活気はないけど」

(-_-)「表側は静かな町のようですね」

川 ゚ -゚)「しかし、裏はそうでもない、と?」

(゚、゚トソン「何にせよ、警戒は怠らぬようにしておきましょう」



     第二十九話 月の綺麗な夜に


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:14:50 ID:TqLuedZw0<>
( ^ω^)「取り敢えず、宿泊場所を探すかお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

僕は今、ヴィップの町の司祭であるヒッキーさんのクエストの依頼を受け、ナカノヒトの町に来ている。
依頼者であるヒッキーさんも同行し、ツンとクー、それにトソン君とわんわんおも一緒だ。

ようやく辿り着いたナカノヒトの町は、一見すると普通の町だが、大陸一治安が悪いと言われている。
いくら治安が悪いといっても、理由もなく町中で襲われるような事は無いと思うが、警戒はしておくべきだろう。

ξ゚听)ξ「ヒッキーさん、そのエージェントって人との合流場所はわかってるんですか?」

(-_-)「はい。指定された宿屋で落ち合う事になっていますから、宿泊先もそこでいいと思います」

( ^ω^)「そりゃ探す手間が省けて助かりますお」

(∪^ω^)「わんお」

ただ問題は、その宿屋の名前はわかるがヒッキーさんはこの町の道は知らないという。
従って、その宿屋を探す必要はあるわけだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:15:57 ID:TqLuedZw0<>
(゚、゚トソン「町の中央辺りに行けば、案内板ぐらいありそうですが……」

川 ゚ -゚)「その辺りのやつに聞いてみればいいんじゃないか? そこの御仁、この宿屋の場所を知らないか?」

(´・_ゝ・`)「すまない、私も旅人なんでこの町には詳しくないんだ」

クーはいかにも、ここはナカノヒトの町ですとでも答えてくれそうな特徴のない人に話しかけたのだが、
まさかの旅人であった。

それ以前に治安が悪いというイメージで、道を聞くにもお金とか取られたり騙されたりしそうなの雰囲気があるので、
どこか公的な施設を探した方がいいかもしれない。

ξ゚听)ξ「それは警戒し過ぎな気もするけど、そうね、まずはトソンが言うように中央辺りを目指しましょうか」

僕達はツンの言葉に頷き、再び馬車の人となり、町中の道を行く。
ソクホウやメシューマに比べると道の舗装状況は悪く、道幅も狭い。

( ^ω^)「それでもヴィップよりはマシなんだけども」

ξ゚听)ξ「ヴィップは舗装すらされてないものね」

(゚、゚トソン「あれはあれで味があって良いと思われますが」

(∪^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:16:49 ID:TqLuedZw0<>
川 ゚ -゚)「雨の日にわんおと走ったら大変な事になった件」

(;^ω^)「あの茶色の毛玉を見た時、何事かと思ったお」

ξ;--)ξ「雨の日に走り回るのがおかしいんでしょうが」

別の町に来る度に思うが、ニューソク大陸の主要な町と呼ばれる6つのうち、
ヴィップはずば抜けて田舎なのだと感じる。
最南の町キマスタと最北の町イチサンは行った事ないが、それぞれ港町だし、ヴィップよりは発展していると思う。

ここナカノヒトも、少し山を登った場所にあるが、それなりにしっかりとした建物が並び、ヴィップよりは都会だ。

( ^ω^)「この辺りが中央っぽいおね」

川 ゚ -゚)「さしずめ、中央広場といったところか」

治安が悪い町とはいえ、町の運営を司る公的機関がないわけではない。
自治都市の体をなしているのだから、それが集権された施設はある。

本来なら先に町の情勢とかを酒場辺りで聞きたい所だが、その酒場がちゃんとした情報をくれるか怪しいので困り物だ。

ξ゚听)ξ「それならギルドで聞けばいいんじゃないの?」

( ^ω^)「ナカノヒトはギルドも勢力が弱いお。でも、情報ぐらいは聞けると思うから、行き詰ったら行ってみるお」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/07(月) 22:17:59 ID:No64i90UO<>投下中に会えたのは初めてだ!
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:20:20 ID:TqLuedZw0<>
僕とツンとわんわんおは馬車を降り、予想通り見付かった町の中央庁舎らしき場所へ向かう。
全員で行く必要も無いので、クー達には馬車番として残ってもらう事にした。

ξ゚听)ξ「わんおも連れてくの?」

( ^ω^)「人数配分を3対3にした結果だお」

(∪^ω^)「わんお!」

ξ゚听)ξ「庁舎内を走り回られても困りそうだけど」

( ^ω^)「それなら大丈夫だお」

そう言って僕は自分の背を指差す。
首を傾げたツンの視線の向く先には、これまでは付いていなかったフードがローブに縫い付けられている。

ξ゚听)ξ「ローブ、フード付けたんだ。でも、これが何なのよ?」

( ^ω^)「これはただのフードじゃないんだお。わんお、おいで」

(∪^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:21:58 ID:TqLuedZw0<>
僕はわんわんおを抱き上げ、肩越しにフードの中に押し込む。
少々入れ辛かったが、何とかわんわんおはフードの中に納まった。

(∪^ω^( ^ω^)「どうだお、これ?」

ξ゚听)ξ「え……あ、うん……そうね……妙に丸い親子?」

いささかコメントに困るツンの反応を頂いたが、要約すればしっくり行っているという事だろう。
ソクホウからヴィップに戻って以降、次の旅に備えて改造した甲斐があったというものだ。

ξ゚听)ξ「重くない? フードの重みで首絞まったりしないの?」

( ^ω^)「その辺は魔法で何とかしてるお。この首周りはかなり丈夫に作ってるお」

 / ̄\
 | ____ | < ワンワンオ!
./ { ^ω^)「こうして被る事も可能だお」

ξ;゚听)ξ「いや、何か上が不自然に大きいわよ?」

わんわんおがこれ以上大きくなったら厳しいが、こうやって隠す事も出来る。
なかなか機能的な作りになっていると我ながら思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:23:01 ID:TqLuedZw0<>
ξ゚听)ξ「まあ、あんたがそれでいいなら別にいいけど……」

ツンは少し呆れた様に首を振ると、さっさと庁舎の方に歩いて行く。
単独行動は止めて欲しいので、僕も慌ててそれを追いかけた。

庁舎内は薄暗く、お世辞にも明るい雰囲気とはいい難かったが、一応はちゃんと機能しているようだ。
特に問題もなく、宿の場所を知る事が出来た。

ξ゚听)ξ「愛想の欠片もないわね」

( ^ω^)「すんなりわかったから良しとするお」

僕はぼやくツンを宥めて庁舎を出る。
馬車に戻ると、何故かトソン君が抜き身の大剣を地面に突き立てて馬車の前に仁王立ちしていた。

(゚、゚トソン

(;^ω^)「何してんだお?」

川 ゚ -゚)「戻って来たか。なに、先ほどから胡散臭い物売りがうるさくてな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:24:05 ID:TqLuedZw0<>
質問の返事が馬車の上のクーから返ってくる。
どうやら待っている間に頻繁に物売りが声をかけて来るのに辟易したらしい。
あまり目立つ事はしないで欲しいが、下手に相手をするのも確かに面倒だろう。

(-_-)「場所はわかりましたか?」

ヒッキーさんが馬車の中から出て来て、申し訳なさそうな顔で尋ねてくる。
多分、クー達の行動を止められなかった事を申し訳なく思っているのだろうが、
僕がこの場にいたとしても止められなかったと思うから気にしないで欲しいと思う。

( ^ω^)「ええ、わかったので行きましょうかお」

早速馬車を走らせ、宿に向かう。
町の情報はこの宿の人か、待ち合わせの相手に聞く事にしようと思う。

(゚、゚トソン「待ち合わせの日時なんかは大丈夫なんですか?」

(-_-)「はい、今日の午後となってまして、向こうから接触してくれる手筈になっています」

川 ゚ -゚)「どんなやつなんだ、その待ち合わせの相手ってやつは?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:26:00 ID:TqLuedZw0<>
ヒッキーさんによると、教会の中でも主に悪魔祓いを専門とするエクソシストと呼ばれる立場の人らしい。
今回の件は本来ならそんな人が当たるような任務ではない気もするが、
その人は教会でも屈指の腕の立つ人らしいので、今回の件を任されたという話だ。

それはつまり、この件が教会側が重く捉えているという事なのだろう。
出来るなら、僕の不安が杞憂である事を願いたい。

ξ゚听)ξ「その人、何て名前なんですか?」

(-_-)「シブサワ=リナイオ、ニューソク教会最強のエクソシストです」

(゚、゚トソン「シブサワ……」

川 ゚ -゚)「ん? 聞いた事があるのか?」

(゚、゚トソン「噂なら少し聞いた事があります」

何でも、10数年ほど前にソクホウで起きた、貴族同士の諍いからソクホウ全体を巻き込んだ争いになりかけた事件を、
双方の貴族を討ち取る事で解決させた凄腕の人らしい。

ξ゚听)ξ「貴族同士の争いを教会の人間が治めたの?」

(゚、゚トソン「当事者の貴族が騎士側と教会側に分かれていたらしいですね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:26:45 ID:TqLuedZw0<>
川 ゚ -゚)「そいつは教会側なのに両方を討ったのか?」

ξ゚听)ξ「というかクー、10数年前ならあんたも記憶あるんじゃないの?」

川 ゚ -゚)「いや、さっぱりだ。その頃はまだ政治に興味なかったし」

(;^ω^)「なかったとしても、ソクホウ全体が騒がしかったんじゃないのかお?」

川 ゚ -゚)「うむ、まるで記憶にないな」

(゚、゚トソン「僕も何故両方を討ったかの理由は知りません。非は両方の貴族に等しくあったらしいですが」

教会側の人間も討ってしまって、教会側から処罰が下らなかった理由もわからないとトソン君は言う。
その教会の人間であるヒッキーさんに尋ねてみるも、知らないという答えであった。

川 ゚ -゚)「まあ、別にそれほど興味があるわけでもないからいいけど」

ξ゚听)ξ「そうね、気になるなら本人に聞いてみてもいいんじゃない?」

( ^ω^)「経歴からして怖そうな感じの人っぽいから、遠慮しておくべきかと思うお」

(∪^ω^)「わんおー」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:28:09 ID:TqLuedZw0<>
そこで僕はとある事に気付いた。
そのままにしておくのもまずそうなので、馬車の速度を落とし、路肩に停める。

ξ゚听)ξ「何で停めるのよ?」

( ^ω^)「ちょっと車輪の調子が……」

適当な事を言い、ツンに目配せをして一緒に馬車を降りる。
そして馬車の側面に回り、しゃがみ込んで小声でツンに説明する。

( ^ω^)「そのシブサワって人、クーの顔知ってるんじゃないかお?」

ξ゚听)ξ「そういえばそうね……失念してたわ」

教会の、それも上の方の人間ならその可能性は高いと思う。
シブサワって人がどのくらいの立場なのかはわからないが、下っ端って事はないだろう。

裏方しかやってなかったとしても、むしろその方が実力を考えれば要人の顔を知らないとは考え難い。
秘密裏に警護したりする為に、王族の顔を知っていると思うべきだろう。

今ここで、向こうがどういう態度を見せるか考えても仕方ないが、
こちらはこちらで1つどうするか考えなければいけない事がある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:29:04 ID:aUULqzuY0<>うひょ 来てた!


支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:29:14 ID:TqLuedZw0<>
( ^ω^)「ヒッキーさんにクーのこと話しちゃうかお?」

ξ゚听)ξ「そうね、向こうが知ってた場合、ややこしい事になりそうだし」

もし問題になった場合、ヒッキーさんがクーの身分を知らないで雇っていたで済まされるかは難しい所だ。
クーの事をちゃんと話し、その上でクーをパーティーメンバーに加えるかどうか決めてもらうべきかもしれない。

ξ;--)ξ「しかし、何でギリギリになってそんな大変な事に気付くのよ……」

(;^ω^)「仕方ないお、ツンだって気付かなかったお?」

ξ゚听)ξ「もう他に隠してる事ないわよね?」

(;^ω^)「別に隠してたわけじゃないお?」

ξ゚听)ξ「でも、千年紀の話もあるしねえ?」

(;^ω^)「あれも、隠してたわけじゃなくて、単に話す機会が……」

結局、ナカノヒトに着くまでに皆に千年紀の話はしておいた。
ドクオさんの危惧する魔王の衣の話も。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:30:22 ID:EyEvHmgIO<>早いな
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:30:34 ID:TqLuedZw0<>
その上で皆ここまで来ているのだから、心構えは出来ている。
もっとも、こんな所で言われても、今更止めて帰るわけにも行かないじゃないとツンには怒られたが。

川 ゚ -゚)「お前ら何やってんだ? まだ直らないのか?」

( ^ω^)「お、クー」

ξ゚听)ξ「ナイスタイミング」

なかなか戻って来ない僕達の様子を見に来たのであろうクーを同じようにしゃがませ、先ほど話していた事を説明する。
クーは神妙な顔で頷いていたが、途中で鼻で笑って僕の話を遮った。

川 ゚ -゚)「そんな事で悩んでいたのか」

( ^ω^)「そんな事って、大問題だお? 何かあったら主にヒッキーさんに迷惑かかるんだし」

川 ゚ -゚)「大丈夫だ。その可能性は考えて準備はしておいた」

ξ゚听)ξ「何の準備よ?」

僕達はついて来いと言うクーに従い、馬車に戻る。
クーは自分の手荷物の中から何かを取り出し、それを身に着けた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:31:40 ID:TqLuedZw0<>
ノリミ゚ -゚彡「どうだ、これで私が誰かよくわからんだろ?」

(;^ω^)「確かに誰かよくわからんけど……」

ξ;゚听)ξ「ものすごくダサく見えるけどいいの?」

クーは少し所じゃない派手な色合いの、蝶の様な形をしたアイマスクみたいな物を着けていた。
仮面舞踏会にでも出れそうな出立ちである。
確かにこれなら誰かわからないが、目の周りを隠すだけならここまで派手じゃなくても良かったんじゃないかと思う。

ノリミ゚ -゚彡「何を言う。なかなかイカスだろ? なあ?」

(;-_-)「え、あの、その……一体どうしてその様な奇天烈……個性的なマスクを?」

(゚、゚;トソン「えーっと、その、素敵です、はい、その、止め紐とか……」

ノリミ゚ -゚彡「そうだろう、そうだろう、素敵だろ?」

(∪*^ω^)「わんお!」

明らかに不評多数だが、クーは特に気にしてないらしい。
取り敢えずヒッキーさんには、顔を見られたくない相手と偶然出くわすかもしれないからと曖昧にぼかし、
これで押し切る事に決めた様だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:32:41 ID:TqLuedZw0<>
ノリミ゚ -゚彡「さあ、出発だ!」

(;^ω^)「出発するからクーは馬車に入っててくれお」

僕はクーを御者台から馬車内に押し込み、馬車を走らせる。
あんなのが御者台にいたら目立ってしょうがない。

( ^ω^)「お?」

走り出してすぐ、ここまでずっともっていた空が破れ、雨が降り出した。

(;^ω^)「とうとう降り出しちゃったかお。ツン、あとどのくらいかおね?」

ξ゚听)ξ「もうすぐよ。あの道を左折、それから2つ目の十字路を右折よ」

( ^ω^)「把握。急ぎたいけど町中だから安全運転で行くお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

それから程なくして、僕らは目的地である宿屋、灼爍の錫亭に辿り着いた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:33:39 ID:TqLuedZw0<>
 〜 灼爍の錫亭 入り口カウンター 〜

  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ようこそ、灼爍の錫亭へ。しかしすまない、客人。部屋は満室なんだ」

宿屋に入ると、やけにダンディで立派な顎の中年の男が煙草を片手に出迎えてくれた。
もっとも、出迎えられたというよりは門前払いという感じだが。

(-_-)「困りましたね。我々は夜の帳が降りる前に床に着かねばならないのですが」

僕が応答するよりも早く、ヒッキーさんが進み出てよくわからない答えを告げた。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「宵闇が世界を閉ざすのは思いの外早い」

(-_-)「しかし、日はまた昇るものです」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……ふむ、いいだろう。この奥だ」

宿屋の主人らしき人は、ヒッキーさんと何だかよくわからないやり取りをかわすと、僕らに奥に行くよう促した。
今のは何だったのかヒッキーさんに尋ねようとしたが、先にツンが耳打ちしてくれる。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/07(月) 22:33:45 ID:OQC.Au3w0<>適度な長さ、適度な面白さ、早い投下
これができる作者ってそうそう居ないよなぁ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:34:57 ID:TqLuedZw0<>
ξ゚听)ξ「多分、事前に決めておいた合言葉みたいな物でしょ」

( ^ω^)「そういう事かお」

ヒッキーさんが急に詩的になったので驚いたが、そういう事なら納得出来る。
僕達は宿の奥に進み、少し広めの部屋に入った。

そこには大きめのテーブルがあり、椅子がいくつもある所を見ると食堂か談話室みたいな場所だろうか。
少なくとも寝泊りする部屋には見えない。

僕達は適当な椅子に腰掛け、待つことにした。
  _、_
( ,_ノ` )「予定より早いな」

しばらくすると、先の宿屋の主人らしき男が部屋に入って来た。
返事は期待してなかったのか、空いていた席に座ると早速話を始める。
  _、_
( ,_ノ` )「あんたがヒッキーさんでいいんだな?」

(-_-)「はい、そうです。呼び捨てでかまいませんよ。貴方がシブサワさん、でよろしいんですよね?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:36:47 ID:TqLuedZw0<>  _、_
( ,_ノ` )「ああ、俺がシブサワだ」

どうやらただの宿屋の主人ではなく、この人が件のエージェントらしい。
確かに、宿屋の主人にしては顔付きが、良く言えば精悍過ぎると思う。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「呼び捨てでいい、といっても君らの年じゃ呼び難いだろうから好きに呼んでくれ」

そういってシブサワさんは煙草を取り出し、火を点ける。
煙草は嗜好品としてはありふれた物だが、僕の周りには吸う人がほとんどいないので、
その煙はあまり馴染みがなく、少し苦手かもしれない。

その後、今度は僕らが軽い自己紹介をし、本題に入ろうとする。
僕らの自己紹介の間、シブサワさんは値踏みをするような目で僕らを見ていたが、特に何も言われなかった。
歴戦の兵からすると、僕ら年若い冒険者では不安を感じるのではと危惧もしていたが、取り越し苦労だったか。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「俺達がやる事は理解しているかい?」

ξ゚听)ξ「聖骸布ってやつを盗人から取り返すんでしょ?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「グッドだ。やる事はいたってシンプルだ」

聖骸布を盗んだ人物を取り押さえて奪還する。
交渉の余地はなく、また、教会として盗人と交渉する気は無いという事だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:38:21 ID:TqLuedZw0<>
ノリミ゚ -゚彡「という事は、盗人の顔も潜伏先もわかってるのか?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……その通りだ。名前はボルジョア。その世界ではそれなりに有名なやつだ」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「潜伏先はわかってるわけではないが、必ず訪れる場所があるのでそこを狙う」

(゚、゚トソン「それはどちらでしょうか?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「オークション会場さ。品は前日に預ける事になってるからな」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「会場に入られる前にやつを抑える。やつの顔は俺が知っている」

こちらの質問に、1つ1つ具体的に答えてくれるシブサワさん。
ぱっと見、大雑把で怖そうな感じかと思ったが、意外と詳しく教えてくれる。

ただそれは、請け負ったクエストに関する必要な情報だからかもしれない。
僕としては、このクエストの背景にあるものを色々と聞いてみたいのだが、果たして答えてくれるだろうか。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「さっきの質問で気付いていると思うが、実行日オークションの前日、つまりは明後日だ」

一通り必要な情報は聞き終えた。
明日は特に予定はないが、町の地形なんかを把握する必要もあるだろうからのんびりは出来ない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:39:36 ID:TqLuedZw0<>  _、_
( ,_ノ` )y-・~「こんなもんか? 他に聞きたい事はあるか?」

(∪^ω^)「わんわんお!」
  _、_
( ,_ノ` )「ん? 何だ、ワン公? 何か聞きたい事があるのか?」

シブサワさんは短くなった煙草を灰皿に擦り付け、わんわんおに話しかける。
わんわんおに話しかけながらも、視線はこちらに向けている所からすると、
僕が聞くべきか迷っている事に気付いている風にも見える。

( ^ω^)「根本的な事を聞いてもいいですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )「何だ? 言ってみろ」

( ^ω^)「何で人手が必要だったんですかお?」

( ^ω^)「シブサワさんの経歴や仕入れた情報を聞く限り、お1人でも十分そうな気がしますお」

僕は意を決して、まずは軽めの質問からぶつける。
軽いといっても結構踏み込んだ質問だと思う。
何となく、全体から感じる不自然さの大元はここだと思う箇所だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:40:54 ID:TqLuedZw0<>
現在の状況では、盗人の顔を知っているのはシブサワさんだけなので、人手があっても分けて待ち伏せる事は出来ない。
仮に盗人の強さが相当なもので、人手がいったとしても、僕らではシブサワさんの足元にも及ばないのではなかろうか。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「なかなかいい質問だ。同時に難しくもあるが」

シブサワさんは再び煙草に火を点け、顎に手を当てて天井を見詰める。
不測の事態に備える為、という回答が一番それらしいが、本当の所は教会本部からの指示だという。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「教会本部の言い分では、他にも聖骸布を狙っているやつが現れるという事らしい」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そうなるといくら俺でも、取り逃がす、もしくは掻っ攫われる可能性は高まるからな」

( ^ω^)「それは……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「遠慮せずに聞いてくれてかまわないぜ? 多分、俺も君と同じ疑問を感じてるはずだからな」

自分は現場の人間だから上の考えている事はわからないが、推測なら聞かせられるとシブサワさんは言ってくれる。
今の所、シブサワさんはこちらを軽んじた様子はなく、むしろ好意的に見える。

腕の立つ事をかさに、相手を見下してくるような人ではないのだろう。
僕は、この人は信用出来る人だと判断してもいいかと考える。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:42:55 ID:TqLuedZw0<>
ξ゚听)ξ「何故教会本部がそれを知っているのか、知っているのなら相手の情報はあるのか、といった所ですかね」

僕が質問するより早く、僕が思ったことを先にツンが質問する。
ツンも僕と同じく、シブサワさんが信用出来ると考えたのだろう。
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「相手は本部に聞くまでもなく、推測は出来ている」
  _、_
( ,_ノ` )「ラウンジだ」

シブサワさんはまた短くなった煙草を灰皿に擦り付け、そう言い切る。

( ^ω^)「ラウンジって、ラウンジ教国ですかお? 一体なんで……」
  _、_
( ,_ノ` )「正しくはラウンジ教国ではなく、ラウンジ聖教だな」
  _、_
( ,_ノ` )「まあ、ラウンジ教国自体がラウンジ聖教と似たようなもんだが」

国家絡みではなく宗教絡みだと言いたいのだろう。
だったとしても、ラウンジ聖教がニューソク正教の聖骸布を狙う理由が全くわからない。
  _、_
( ,_ノ` )「簡単な話だ。聖骸布はラウンジ聖教にとっても聖骸布だってことさ」

(;^ω^)「はい?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:45:17 ID:TqLuedZw0<>
聖骸布、定義するなら神の遺体を包む布、いわゆる神具といってよいだろう。
そういった神具が各宗教にあるのは不思議ではない。

ニューソク正教に主神がいるように、ラウンジ聖教にも主神がいる。
故に、ラウンジ聖教にも聖骸布があってもおかしくはないが、
それがニューソク正教と同じものというのは有り得ないだろう。

( ^ω^)「大体、よく考えたらラウンジ聖教の主神ってあれですおね?」
  _、_
( ,_ノ` )「ああ、言いたい事はよくわかるぜ」

シブサワさんは僕の言葉に薄く笑みを浮かべる。
僕は納得いかない思いを抱えながら、ラウンジ聖教の主神の姿を頭に思い浮かべた。


   ラウンジ聖教主神 アロエリーナ

           (○)
           ヽ|〃<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:46:32 ID:TqLuedZw0<>
( ^ω^)「めっちゃ植物っぽい神様でしたおね?」

ラウンジ聖教はニューソク聖教よりも古代アミニズム的な精霊信仰が強い宗教だ。
あまり詳しくはないが、万物に霊が宿り、それに等しく感謝を捧げ、人は生きているのだとか何とかだったと思う。

それ故かどうかわからないが、ラウンジ聖教の神とされるものは人以外の形のものが多い。

(;^ω^)「聖骸布いらないだろ、これ」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「妄信的なのさ、宗教家ってやつは」

何となくそれらしい言葉でまとめ、煙草に火を点けるシブサワさん。
納得はいかないが、ラウンジ聖教の文献にも聖骸布が載っているのは確かで、
それが遥か昔に盗まれてニューソク大陸に運ばれたという伝承がある以上、向こうが動くのは理に適った話だという。

ξ--)ξ「確かに、納得はいきませんが、理屈はわかる話ですね」

ノリミ゚ -゚彡「問題は、何故ラウンジ聖教はそれが今度のオークションに出ると知ってるのかだな」

クーはマスクの奥で目を細め、シブサワさんを見詰める。
シブサワさんはそこまでは知らないと肩をすくめた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:48:26 ID:TqLuedZw0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「向こうさんも常にエージェントをニューソク大陸に送り込んでるからな」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そいつらの腕がいいんだろ」

相手が何であれ、自分の役割をこなすだけだというシブサワさん。
しかしながら、僕としては相手に悪意も非もないとなるとやり辛い。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、気持ちはわかる。なるべく事を構える前に奪還、撤退と行きたいとこだな」

(゚、゚トソン「ラウンジ聖教側はどのくらいの人数がいるのでしょうか?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「さてな。少なくとも、下っ端は何十人といるだろうな」

ノリミ゚ -゚彡「腕利きも来てるのか?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そうだな、しばらく前にラウンジの聖女がニューソク大陸に来てるって噂はあったが……」

( ^ω^)「ラウンジの聖女?」

(∪^ω^)「わんおー?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:49:47 ID:TqLuedZw0<>
聞き慣れない単語に首を傾げていると、シブサワさんが説明をしてくれる。
何でも、ラウンジ聖教の教えにある大切な日に生まれた、簡単にいえば救世主的な存在らしい。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ご大層な肩書きだが、これがまた実力も名前負けしてないって噂なんだな」

ξ゚听)ξ「つまり、強いってことですね?」

若干ツンの顔が嬉しそうに見えたが、無茶はしないで欲しいと切に願う。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ついでに言うと、ラウンジの聖女が来てるなら、その御付も来てるだろうな」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そいつらがまた強いって話だ。俺としても、こいつらとやりあうのは避けたいとこだな」

そう言いながらも笑みの浮かんでいるシブサワさんに、どちらが強いのか聞いてみたくもあったが、
どちらにしても僕らでは太刀打ち出来ないと思うので止めておいた。
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「他に聞きたい事はあるかい? なければ具体的な当日の配置を説明したいが」

( ^ω^)「もう1ついいですかお? これ、世間話レベルとして聞いて欲しいのですが」
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「世間話ね……。言ってみな?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:51:22 ID:TqLuedZw0<>
( ^ω^)「シブサワさんは魔王の衣って知ってますかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「名前はな。むしろ君らのような若い人間が知ってることの方が驚きだが、それが……」

そこでシブサワさんは、はたと口を閉じ、顎に手を当て考え込むような仕草をした。

( ^ω^)「あの……」
  _、_
( ,_ノ` )y・~「賢者に姫……そういう事か……いや、しかし……」

シブサワさんは口を開こうとした僕の方に手を伸ばし、ちょっと待ってくれというような仕草をする。
思わず漏れたらしい呟きの中には、少し気になる単語もあった。

とはいえ、これは今言うべきことなので、僕は制止にかまわず告げる事にした。

( ^ω^)「煙草、危な……」
  。、_
(;,_ノ゚ )「どあちゃッ!?」

どうやら少し遅かったようで、シブサワさんが持ったままだった煙草の火が手まで到達したようだ。
途中で気付かないものかと不思議に思うも、それだけ集中していたという事なのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:53:46 ID:TqLuedZw0<>  _、_
( ,_ノ` )「失礼、少々取り乱してしまったね」

(;^ω^)「大丈夫ですかお?」

慣れたものだと笑うシブサワさんに、僕も乾いた笑いを返す。
それより本題の質問の方はどうなったのか気になるので、途切れた答えの続きを聞いてみる事にした。
  _、_
( ,_ノ` )「……そうだな、何も答えられないと返すしかないのかな」

( ^ω^)「知らないとかではなく、答えられないですかお」

含みのある物言いに不満げな視線を向けるが、シブサワさんはただ、すまないとだけ答えた。
  _、_
( ,_ノ` )「すまんな、これは貸しにしておいてくれ」

( ^ω^)「ただの世間話ですし、そういうのはいいですお」

この件で心当たりがあるのなら、是非とも話して欲しい所だが、シブサワさんは僕達に話す義理もないだろう。
僕としては何か関係があるとわかっただけでも一応の進歩なので、ここで引き下がっておくことにする。
  _、_
( ,_ノ` )「重ねてすまんが、俺はちょっと行く所が出来た」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:54:54 ID:TqLuedZw0<>
部屋は空いてるので適当に使ってくれてかまわないと言い残し、シブサワさんは部屋を出て行った。

(;^ω^)「え、いや、適当にって言われても、それに配置の話とか……って、もういねえ」

慌てて後を追うも、部屋の外にはもうその姿はなく、宿を出てみてもやはり見付けられなかった。
仕方ないのでシブサワさんの言葉に従うしかないにしても、宿の営業の方はどうするのだろうと思ったが、
ドアにはいつの間にか休業の看板がぶら下げられていたので気にしなくてもよさそうだ。

ξ゚听)ξ「急に何だったのかしらね?」

( ^ω^)「わからんお」

(∪^ω^)「わんわんお」

先ほどの部屋に戻り、今後の事について皆と話し合う事にした。
シブサワさんの動向は気になるが、全くの不案内なこの町で探すのは不可能に近いだろう。
回答を拒否されたし、探って欲しくもないはずだ。

(;-_-)「どうやら相当な厄介事に巻き込んでしまったようですね。本当に申し訳ない」

ヒッキーさんが申し訳なさそうに謝って来るが、これはヒッキーさんの所為というわけではない。
僕達は取り敢えず、今後の事について話し合うことにした。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:56:18 ID:TqLuedZw0<>
ξ゚听)ξ「オークション会場周辺は見ておくべきでしょうね」

(゚、゚トソン「ですが、場所がわかりませんね」

宿屋の場合と違って、闇オークションの会場を庁舎で調べられるかは難しい所だ。
闇と付くぐらいだから、隠されていると思うべきだろう。

逆に、町外の人間である僕ですら闇オークションの存在は知っていたのだから、
意外と会場はオープンにされている可能性もある。

ノリミ゚ -゚彡「雨降ってるし、面倒だからシブサワが帰って来てからにしようぜ?」

(∪^ω^)「わんおー」

極めて駄目な意見を述べる蝶々仮面だが、まずは宿屋内を見てみてもいいかもしれない。
部屋の確保と、ひょっとしたらシブサワさんの仲間がいる可能性もあるから、いたら聞いてみればいいだろう。
状況から考えて、宿泊客がいるとすればそれはシブサワさんの仲間だと判断出来る。

ξ゚听)ξ「そうね、それが先でもいいわね」

ノリミ゚ -゚彡「その後は昼食にしよう。腹が減ったよ」

(∪^ω^)「わんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:57:38 ID:TqLuedZw0<>
宿屋の中と外も調べてみたが、残念ながら宿泊客はゼロだった。
部屋の数は3階建ての建物の中に少人数用の部屋が10以上あったので、1人1部屋使う事に決める。
馬車は建物の裏の厩舎に仕舞われていたので、そのままで問題ないだろう。

川 ゚ -゚)「じゃあ、飯食いにいくか」

誰もいないとわかったので、クーはマスクを取っていた。
しかし、ここを空けて全員で外に行くわけにも行かないので、二手に別れる事にする。

川 ゚ -゚)「私、トソン、ヒッキーさんが最初でいいんだな?」

ξ゚听)ξ「いいわよ。でも、気を付けなさいよね?」

(-_-)「私がずっと留守番していてもいいのですが……」

( ^ω^)「人間、誰だってお腹は空きますお。遠慮せずに行って来てくださいお」

僕達はヒッキーさん達を送り出し、さっきの部屋ではなく入り口カウンター付近に設けられていた談話スペースに座る。
長旅の疲れか、ちょっと眠気が差しているが、寝てしまうわけにもいかない。

ξ゚听)ξ「眠いなら寝ててもいいわよ?」

( ^ω^)「大丈夫だお。まあでも、今日は早めに寝る事にするけどね」

(∪^ω^)§「わんわんお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 22:59:13 ID:TqLuedZw0<>
僕とツンは適当に世間話をしていたが、話題は自然と先ほどのシブサワさんの反応にシフトして行った。
1度情報を整理しておいた方がいいと、お互い考えていたようだ。
  _,
ξ--)ξ「ややこしい事になってるわね」

( ^ω^)「聖骸布なのかそうでないのかわからないけど、どちらにしても簡単に終われそうもないおね」

今の所、わかってる他勢力はラウンジ聖教のみだが、他にも聖骸布、
もしくは魔王の衣として奪おうとしている勢力がある可能性はゼロではない。
そのくらい、いわくありげな品だと思う。

ξ゚听)ξ「真っ当な手段、と言っていいかわからないけど、オークションで落札しようとしている人もいるかもね」

( ^ω^)「シブサワさんの話だと、盗人は名の知れたやつらしいし」

( ^ω^)「狙われてる事が知られると、姿を見せない可能性もあるお」

ξ゚听)ξ「しかしあの人、クーのマスクは完全にスルーしてたわね」

( ^ω^)「関わらない方がいい人だと判断したんなら、その判断は正しいと思うお」

ここから事態がどう転ぶのか全く想像つかないが、取り敢えず僕らに出来る事は、
シブサワさんの指示に従って動く事ぐらいだ。
考えても仕方がない部分は多々ある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:00:27 ID:TqLuedZw0<>
ξ゚听)ξ「正直、嫌な関わり方してるわよね」

(;^ω^)「だおね。先行きが見えないにも程があるお」

(∪*^ω^)§「わふわふお」

僕は一心に骨っ好をかじるわんわんおの頭を撫でる。
僕達もわんわんおの様に、今は何も考えずにのんびり構えておく方がいいのかもしれない。

ξ゚听)ξ「ま、その方がいいのかもね」

ξ゚听)ξ「いざとなったら退く事も考えておきましょ」

( ^ω^)「考えるだけじゃなくて、ちゃんとその時は実行してくれお?」
つ∪*^ω^)§

ξ゚听)ξ「当たり前でしょ。この状況で無茶はしないわよ」

そう言うとツンは椅子に深く身を預け、目を瞑る。
眠りはしないつもりだが、眠ってしまったら起こしてくれと言い添えて。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:02:03 ID:TqLuedZw0<>
( ^ω^)「さて、どうしたものかおね」

それから間もなく、穏やかな寝息が聞こえて来たが、そのままにしておいた。
僕自身は眠らないよう、わんわんおを撫で回しながら取り留めないことを考える。

( ^ω^)(ナカノヒトの町には初めて来たけど、観光とかする気分じゃないおね)
つ∪^ω^)

何かを考えようとすると、自然とクエストの事に頭が行き、重い気持ちになる。
考え過ぎると動けなくなりそうなので、取り敢えずは割り切る事にしよう。

( ^ω^)(少なくとも、盗人を捕まえるのは悪い事じゃないお)
つ∪´ω`)

僕は、余計な事は気にせず、本来のクエストの目的に集中しようと決めた。
この後食事を取ったら、その為の準備に時間を当てよう。

僕は、盗人捕縛用にどんな道具が有効かを考えながらクー達の帰りを待った。

(∪´ω`) zzz<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:03:28 ID:TqLuedZw0<>
 〜 灼爍の錫亭 2階の部屋 深夜 〜


( -ω^)「お……」

ふと目が覚めた。
時間を確認すると、まだ寝ているべき時間である。

そう思ってまた眠ろうとするが、どうにも寝付けない。
何だか妙な違和感がある。
どうも少し早寝し過ぎたのかもしれない。

( -ω-)「いや、やっぱ何か変だお……何か……音?」

僕自身の体調の問題かと思ったが、どうも違う気がする。
何かしらの外的刺激があるようだ。

( ^ω^)「……何だお、この音?」

気の所為で済ませてしまえそうな微かな響きだが、僕の耳に何かが聞こえて来る。
しかし、その音は意識がはっきりするにつれて消えてしまった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:05:19 ID:TqLuedZw0<>
(∪´ω`) zzz

すぐ隣にいるわんわんおを見るも、何も聞こえてないのかぐっすりと眠っているようだ。
もっとも、聞こえていても起きない可能性はあるが。

僕は、わんわんおを起こさぬよう、そっと身を起こす。

( ^ω^)「雨は止んでるおね」

僕が眠りに付くまで激しく降っていた雨はいつの間にか止んでいた。
となると先ほど感じた音は雨音ではないのだろう。

( ^ω^)「行ってみるかお……」

この町でこんな時間に外に出たりすると後でツンに怒られそうだが、何だか気になる音だった。
僕1人ならヤバそうな人に絡まれても、魔法で逃げ切れそうだし、外に出る事に決めた。

( ^ω^)「ちょっと行って来るお」

(∪´ω`) zzz

僕は起こさない程度の小声でわんわんおに声をかけ、音を立てぬよう静かにドアを開いた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:06:50 ID:TqLuedZw0<>
( ^ω^)「雨上がりの夜は涼しいお」

外に出ると、ここ数日の暑さからは考えられないほどの冷たい風を感じた。
雨上がりな事と、この町が少し高所にある事が関係しているのかもしれない。

( ^ω^)「宿の場所がわかんなくなったら洒落にならんから、あまり遠くへは行かないようにするお」

取り敢えず音の出所の可能性として考えられる、部屋の窓があった方向へ向かう事を決め、歩き出す。
治安が悪いと聞いていたので外は真っ暗かと思いきや、魔法の灯りが道に備え付けられており、
歩くのに支障はなかった。

( ^ω^)「星がよく見えるお」

雨雲の去った空には満天の星が瞬いている。
雨上がりの夜空は、洗い立ての様で普段より澄んだ感じがした。

( ^ω^)「月も出てるお。綺麗だおね」

半分よりは丸い月が東の方の空に見える。
僕は見知らぬ町の見知らぬ空に見惚れて、しばし立ち尽くしていた。

( ^ω^)「お?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:08:14 ID:TqLuedZw0<>
ふと、また何かが聞こえてきた気がした。
部屋の中で聞こえた時よりは、幾分はっきりとしたものだ。

( ^ω^)「人の声……いや、これは……」

僕は音の聞こえて来る方へ小走りで向かう。
次第に建物はまばらになり、灯りの数も減って行く。
しかし近付くにつれ、それははっきりと僕の耳に届くようになって来た。

( ^ω^)「歌だお……」

それは消して大きな声ではない。
どう考えても、宿屋の部屋の中で眠っている僕の耳に届くような音量ではなかったはずだ。

しかしながら、僕にはそれが聞こえた。
月を背に、朽ちた建物の屋根の上で歌う、彼女の歌声が。


          ζ(-、-*ζ 〜♪



     第二十九話 月の綺麗な夜に 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:09:56 ID:TqLuedZw0<>
二十九話は以上です

本当は昨日投下したかったのですが、色々あって断念

次話はまだ数レスしか書けてないので、間が空くでしょう
いつもの様に当てにならない発言ですが

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:10:17 ID:4muMMjkA0<>乙

シブサワ=リナイオ
オイナリ・・・<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/07(月) 23:17:04 ID:EyEvHmgIO<>乙
ひっくり返すとかっこいいな、リナイオ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/07(月) 23:27:04 ID:OQC.Au3w0<>オイナリ気付かなかったわ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/08(火) 00:07:51 ID:2W4gKVwA0<>デミタスがまた出てくるとは思わなんだ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/08(火) 00:47:43 ID:Ofc1gf/2C<>わんお可愛いよわんお
乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/08(火) 01:24:22 ID:iWKVQhLo0<>アロエリーナなんて久し振りに名前聞いたww聞いてアロエリーナ♪乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/08(火) 01:26:56 ID:Wu.pHVNIO<>デレちゃんキターー<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/08(火) 09:48:31 ID:joUL/.hkO<>国歌はアロエリーナの歌ですね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/08(火) 10:39:48 ID:2W4gKVwA0<>まったく関係ないけどカラテリーナ思い出した<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/09(水) 13:23:19 ID:LNDa5qGE0<>安定して面白いな
乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/09(水) 20:01:27 ID:JYo9r5vM0<>ブーン 地の文 ブーン 地の文 ブーン 地のブーン<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/09(水) 21:28:16 ID:sbHmO0Z6C<>全ては魔法道具屋!魔法道具屋から始まる!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/09(水) 23:57:20 ID:rnFW.Ftw0<>最近は魔法道具屋してないけどね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/11(金) 21:15:14 ID:Vg8S87vYO<>今回のクエストが終わったらそろそろまともな新商品出してほしいなぁ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/11(金) 21:18:19 ID:5jKKNVAg0<>ゲームか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/12(土) 02:12:15 ID:5njf9puY0<>薬草トランクス

効能?そりゃおめぇ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/12(土) 08:33:15 ID:mSTq3TL6C<>薬草トイレットペーパー<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/12(土) 19:59:20 ID:QjHruji.O<>薬草サングラス<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/12(土) 20:34:18 ID:3U.BTJgkO<>カ■リーメイトみたいな固形の携帯食に薬草を練り込むとか<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/12(土) 21:25:26 ID:IpT189js0<>聖水ローションとかどうよ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/12(土) 21:49:38 ID:NUez2nsgO<>渋沢出て来たし薬草煙草なんてどーよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/12(土) 23:33:55 ID:xmwkXYoo0<>身体にいいのか悪いのか分からんな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/13(日) 00:16:24 ID:g8OKDKF6O<>携帯食なら薬草飴とかどうだ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/13(日) 00:55:26 ID:JNRGH8pI0<>真面目に商品会議が行われてるなw

薬草中敷
「長旅に不慣れな足を豆から守る!
出来てから薬を塗るのはもう古い、これからは作らせない時代!」<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/05/13(日) 01:25:26 ID:04w2iFys0<>
ぼくがかんがえたしんしょうひん

  やくそうアーマー

     WWW
    ,,( ^ω^),,    全体的に緑
   ⊂WWWWW⊃   地球に優しい天然素材
     "W,W,W"     お腹が空いたら食べられる
    .彡V'v'Vミ
       ∪∪    






次話は書きあがったので、次々話の展開の目処が立ったら投下すると思います
遅くとも、来週末までには<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/13(日) 01:34:12 ID:PQEiBjTo0<>これは薬草に魅入られた住人と

米の復権を目論む作者の物語である<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/13(日) 02:03:26 ID:6RPKNXYwO<>葉っぱ一枚あればいいー!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/13(日) 02:51:34 ID:hv8ag32Y0<>一枚だと防御力が<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/13(日) 12:32:41 ID:GFeX2TW60<>薬☆草☆王カードゲーム<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/13(日) 21:28:08 ID:gsPjxKHUC<>薬草手袋

肌に良い!<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/13(日) 23:44:37 ID:hKDt7sEYO<>薬草ソード

敵にやさしい<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/14(月) 00:41:32 ID:RodyQB2Q0<>サタナチア思い出した<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/14(月) 00:54:37 ID:tKZxbybAO<>キタキタ草の装備<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/14(月) 18:43:59 ID:6HUAYM7wO<>おにぎりパンってのがあってだな<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 07:10:22 ID:If0F7ibQ0<>風来のトルネコみたいな感じか<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:10:56 ID:HVM3QHaY0<>
 〜 ナカノヒトの町 北東の外れ 〜


( ^ω^)「あれは……」

ζ(-、-*ζ 〜♪

( ^ω^)「デレ?」

ζ(゚、-*ζ「ん?」

( ^ω^)「こんばんはだお」

ζ(゚ー゚*ζ「おや、御機嫌よう」



     第三十話 1つ屋根の上で


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:12:28 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「何でこんなとこに……」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

ζ(゚ー゚*ζ「それはこちらのセリフですぜ、ヴィップの町の魔法道具屋さん?」

彼女の名前はデレ。
自称旅の僧侶だが、色々と謎の多い人だ。

聞こえてきた音に導かれ、夜のナカノヒトの町を徘徊して辿り着いたのは町の外れの方の廃屋だった。
その屋根の上に、何故かヴィップ、そしてメシューマで出会ったデレが座って歌っていた。

( ^ω^)「自分は旅人だから、どこにいても不思議はないって言いたいのかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そういう事だねー」

それに対し、魔法道具屋店長である僕がこの町にいる方が不自然だとデレは言いたいのだろう。
しかしながら今の僕は魔法道具屋店長ではなく、一介の冒険者の様なものだ。

( ^ω^)「そこ、登っても大丈夫かお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:13:19 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(゚ー゚*ζ「どうだろね。体重的にヤバいかも」

(;^ω^)「僕はそんなに太ってないお」

そうは言ったものの、デレがこの廃屋にどうやって上ったのか見当も付かない。
建物の中には入れそうもないので、裏手に梯子か何かあるのかもしれない。

ζ(゚ー゚*ζ「梯子はないね」

( ^ω^)「じゃあ、どうやって登ったんだお?」

ζ(゚、゚*ζ「努力と根性?」

( ^ω^)「具体的な手段だお」

デレは肩をすくめ、屋根の反対側にあった大きな木を指差す。
なるほど、あれを登って枝を伝って屋根に降りたのだろう。

ζ(゚、゚*ζ「というか、何で登って来るの?」

( ^ω^)「ここはデレの家かお?」

ζ(゚ー゚*ζ「ううん、知らない家。誰も住んでないみたいだけど」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:13:49 ID:kN4JykUUO<>キター!<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:14:54 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「じゃあ、僕が登っても問題ないお?」

ζ(゚、゚*ζ「そういうんじゃなくて、どうして君がそうするのかを聞きたかったんだけどなあ」

僕はデレの言葉を聞き流し、木に登る。
大きいが分かれた枝も多く、登りやすい形状だったので、それほどの苦もなく屋根に辿り着いた。

( ^ω^)「月が綺麗な夜だおね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだねー」

僕はデレの隣に座る。
デレは視線を空に向けており、僕もそれに倣った。

( ^ω^)「何でこんなとこで歌ってたんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ……、月が綺麗だったからかな?」

( ^ω^)「そうかお」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだよ」

それっきり、デレは口をつぐみ、空を見続ける。
聞きたい事は色々とあったが、僕も何故か同じように無言で空を見続けた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:16:19 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(゚ー゚*ζ「……」

( ^ω^)「……」

そのまま、ただずっと空を見上げていた。
実際には5分も満たない時間だったはずだが、それは何だかひどく長い時間のように感じた。

ζ(゚ー゚*ζ「空が好きなの?」

( ^ω^)「好きだお。でも、昼の青い空の方が好きだったお」

しかし、こんな月や星の綺麗な夜空も悪くないと僕は考えを改めた。

( ^ω^)「真っ暗な空は、昔は何だか怖かったんだおね」

昔見た空も、晴れていた時は月や星の輝きはあったはずだ。
けれど、世界を暗くしてしまう夜の空が、子供の頃の僕は好きじゃなかった。

ζ(゚ー゚*ζ「暗いのが怖いのはわかるなあ」

暗いと何だか気分が落ち込むからとデレは言う。
しかし、月や星のある夜空は十分に明るく、楽しい気分になれるとも言った。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:17:59 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「つまり、楽しいから歌ってたのかお?」

ζ(^ー^*ζ「そういうことだねー」

にこやかに笑うデレ。
よくわからない、繋がっていないような会話だが、僕は何となく楽しい気分になれた。
きっと彼女の笑顔がそうさせてくれるのだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「で、どうだった?」

( ^ω^)「何がだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「私の歌を聞いた感想は」

( ^ω^)「お……そうだおね……」

彼女の歌を聞いたのはこれが初めてではない。
ヴィップの町の教会でも聞いた。

ただ、あの時は魔法的な何かも含んでいたと思うが、それでも綺麗な声だと感心した覚えがある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:19:18 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「結構声大きいおね」

ζ(゚、゚*ζ「そこは上手いとか、素敵な歌だとか、もっと色々褒めるとこあると思うな」

僕の冗談めかした感想に、デレは口を尖らせる。
しかし実際、かなり大きな声だったとも思う。
なんせ寝てる僕を起こすぐらいなのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「そんな大声じゃなかったと思うけどねー」

( ^ω^)「まあ、普通に考えれば窓閉めてたし、距離あったしで聞こえるわけないんだおね」

多分、聞こえたのは僕の気の所為で、実際に聞こえたのはこの近くに来てからなのだろうと思う。
宿を出た辺りでは聞こえなかったのだし、寝ぼけでもしてたのだろう。
そうでなければ説明が付かない。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、聞こえたことは嬉しいと思うよ」

( ^ω^)「お? どうしてだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「私が歌ってたのはね、幸せを願う歌なんだよ」

( ^ω^)「幸せを願う歌?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:21:03 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(゚ー゚*ζ「そう、幸せを願う歌」

ζ(^ー^*ζ「全ての人がほんの少しだけでも今より幸せになれるように、ってね」

( ^ω^)「それ、前にも言ってたおね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだっけ? まあ、いつでも言ってますけどね、それが私の願いなんで」

( ^ω^)「願いねえ……。何だか漠然としてる願いだおね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうかな? わかりやすいと思うけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「確かに、君みたいに痩せますようにとか具体的な願いじゃあないですけどねえ」

(;^ω^)「誰もそんなこと願ってねえし。そもそも、僕は標準体型ちょこっとプラスぐらいだお」

ζ(^ー^*ζ「冗談だよ、じょ−だん」

そう言ってデレはまた笑う。
何だか今日は機嫌がいいのか、よく笑顔を見せてくれる気がする。

しかしながら、僕はそれほど太っていないと思うので、そんな願いは持っていない。
どうせ願うなら、商売繁盛とかを願うと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:22:19 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(゚ー゚*ζ「それもまた、幸せの1つじゃないかな?」

( ^ω^)「確かに、商売繁盛したら幸せだお」

他人の幸せを願うのはデレが聖職者だからなのか、それとも彼女がそういう人だからなのか、
僕にはよくわからないが、どちらにしろいい願いだと思う。

ζ(゚ー゚*ζ「だから、幸せを願う歌が多くの人に届いたのなら、私としては嬉しいんだよ」

( ^ω^)「なるほど。でも、僕には届いたけど、一緒に寝てたわんおには届かなかったみたいだお」

ζ(゚、゚*ζ「おや、それは残念ですなあ」

ζ(^ー^*ζ「でもきっと、あのわんこ君はもう十分幸せだから届かなかったのかもね」

我ながらちょっと意地悪な回答をしたと思ったが、デレはそれを意に介さず、また笑顔を見せる。
その笑顔を正面から見てしまった僕は、自然と笑みが浮かんで来て、からかい続けるのを断念せざるを得なかった。

( ^ω^)「そうかもしれんお。毎日沢山のご飯あげて、いっぱい遊んであげてるし」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、ご飯で思い出したけど、約束の品プリーズ」

そう言って両手を差し出すデレ。
何の事かと思いきや、そういえば約束してた事があったのを思い出した。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:24:05 ID:HVM3QHaY0<>
(;^ω^)「あ、あれは今度ヴィップに来た時にって約束じゃなかったかお?」

ζ(゚、゚*ζ「そうだっけ? ……私、お腹空いてるんだけどなー」

(;^ω^)「そう言われても今は薬草パン持ってないし、何も……あ、骨っ好ならあるお」

ζ(゚、゚*ζ「骨っ好? それ何?」

(;^ω^)「わんおのおやつだお」

ζ(゚ぺ*ζ「うーん、わんこ君のご飯は流石にねえ……」

ひょっとしたら食べられるかもと手を伸ばすデレだが、それは止める事にした。
成分的には食べても問題はないとしても、わんわんお用にだいぶ硬く作ってある。

ζ(゚皿゚*ζ「歯並びには自信あるんだけどな」

(;^ω^)「そういう問題じゃねえお」

その言葉通り、綺麗に並んだ白い歯を見せるデレ。
だからといって、犬のご飯を食べるのは違うだろうと。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:25:16 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「てか、さっきの話だけど、何で少しだけ幸せを願うんだお?」

僕は無理矢理話を変えようと、先の話で感じていた疑問を口にする。
どうせ願うなら、すごく幸せになれるように願えばいいのではと思う。

ζ(゚ー゚*ζ「最初っから幸せ全開になっちゃったら、後がつまんないじゃない?」

今より少しだけ幸せになって、それでがんばろうという気になれるくらいが丁度いいとデレは言う。
高望みをし過ぎるのも良くないし、少しだけならまた何度でも幸せになれるだろうからと。

( ^ω^)「うーん、わかるようなわからんような……」

ζ(゚ー゚*ζ「人間、そんな何でも出来るわけじゃないからね」

ζ(゚ー゚*ζ「私の身の丈に合う願いは、そのくらいなんじゃないかなあって思うんだねえ」

少しおどけた調子でデレは言う。
しかしながら、その目は真面目そのものだ。
きっと心からそう思っているのだろう。

( ^ω^)「どっちにしても、悪い願いではないと思うお」

ζ(^ー^*ζ「そりゃあ、どうも」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:27:00 ID:yepSQ14UO<>きたか支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:27:05 ID:HVM3QHaY0<>
デレの笑顔に僕も笑みを返す。
他にもっと色々聞きたい事があるのだが、この笑顔の前には何だか切り出しにくく感じてしまう。
多分それは、僕がこの笑顔をもっと見ていたいからなのかもしれない。

ζ(-、-*ζ 〜♪

そんなことを考えていると、デレはまた歌い出した。
先ほどと同じ歌みたいだから、幸せを願う歌なのだろう。

( -ω-)

僕は目を閉じ、デレの歌に聴き入った。
こうやって腰を据えてじっくり聴くのは初めてだが、やはり上手いと思う。
聴いていると何となく心が安らぐ気がする。

ζ(-、-*ζ 〜♪

( -ω-)

デレの声と少しの風の音だけが、星空の下に舞い踊る。
僕はそのまま、デレが歌い終えるまでただ黙って聴いていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:28:42 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(゚ー゚*ζ「……ご清聴ありがとねー」

( ^ω^)
  つ) パチパチパチ

いつかと同じく、歌い終えたデレは大袈裟なお辞儀をする。
僕はその姿に素直に拍手を送りたい気分になった。

( ^ω^)「上手いおね、歌」

ζ(゚ー゚*ζ「おや、やけに素直に褒めてくださいますねえ?」

( ^ω^)「デレは変な人だけど、歌だけは初めて会った時から認めてるお」

ζ(゚、゚*ζ「本人を目の前にして変な人って……。君はひどいなあ」

口を尖らせ、膨れっ面をして見せるデレに僕は肩をすくめておどけて返した。
どう考えても、その行動を見る限りデレが変な人なのは揺ぎ無いと思う。

ζ(゚ー゚*ζ「私は私でちゃんとポリシーに則って行動してるんですがねえ」

( ^ω^)「それじゃあ、今回もそのポリシーに則ってここにいるのかお?」

( ^ω^)「ヴィップの教会に来た時と同じように」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:31:51 ID:HVM3QHaY0<>
このままだらだらと取り留めない会話を続けて、デレの歌を聴いていたいという気持ちも強くあったが、
僕は本題を切り出す事にした。
これまで聞きたかったことを聞くにはいい機会でもあるのだ。

ζ(-、-*ζ「おやおや、そう来ましたか」

今度はデレが肩をすくめ、ゆっくりと首を振る。
毎度のごとく、正直に話してはくれなさそうではある。

しかしながら、僕達がここにいるのは、ヴィップの教会絡みの延長だ。
同じくその場にいたデレが、偶然このナカノヒトにいるというのも出来過ぎている。

( ^ω^)「ひょっとしてデレも……」

ζ(゚ー゚*ζ「残念ながらそれに答えてあげる事は出来ませんなあ」

デレは片手を挙げ、僕の言葉を制す。
だが、僕もそれで簡単には引き下がるつもりはないので、再び口を開こうとした。

ζ(゚、゚*ζ「どうやらそんな状況でもなくなっちゃったみたいだからねえ」

( ^ω^)「お……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:33:22 ID:HVM3QHaY0<>
デレの言葉で、周囲に注意を向けると、いつの間にか人の気配がある事に気付く。
それも複数の気配に囲まれている気がする。

( ^ω^)「いつの間に……」

ζ(゚ー゚*ζ「随分と数がいらっしゃるみたいですなあ」

( ^ω^)「みたいだおね。……でも、何か変だお」

人にしては不自然なほどはっきりと魔力を感じられる。
既に呪文を詠唱中なのか、それとも人ではない何かなのか、どちらにしろ、あまり好ましい状況とは言えなさそうだ。

相手の意図をどうこう考えるより、まずは場所を変えた方がいいだろう。
足場が悪く、遮蔽物の全くないこの場所は守るには向かないと思う。

( ^ω^)「まあ、とにかくここは離れるべきだお」

ζ(゚、゚*ζ「……」

僕はデレの返事を待たず、身を低くして屋根の縁に向かい、そこから下を覗き込んだ。
暗くてよく見えないので、弱めの灯りの魔法を灯し、光を下に向ける。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:35:03 ID:HVM3QHaY0<>
  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)


(;^ω^)「うおっ!?」

光に照らされた先には、予想通り複数の人間がいたが、その全てが同じ仮面を被っているという奇妙な光景だった。
それも虚ろな笑顔の仮面で、暗闇に佇むその姿は何だか薄ら寒い物を感じる。

(;^ω^)「何だお、あれ? 人間……だおね?」

見た所、魔法を使っている様子もないが、やはり魔力の感じがおかしい。
具体的に説明するのは難しいが、強いて言うなら人より精霊に近い感じがしないでもない。

( ^ω^)「さて、向こうさんが何の用事かわからんけど、取り敢えず逃げるお」

ζ(゚、゚*ζ「……」

そう言って僕はデレの方を見るも、デレは未だ座ったままで逃げようという気配はない。
僕はデレの方に近付こうとしたが、にわかに周りの動きが騒がしくなったので再度視線を下に戻す。

    オワオワ    オワオワ    オワオワ    オワオワ    オワオワ    オワオワ    オワオワ
 \(^o^) \(^o^) \(^o^)//(^o^)\ (^o^)/ (^o^)/\(^o^)//(^o^)\\(^o^)  (^o^)/
     \    \            /    /                    \/<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:36:42 ID:HVM3QHaY0<>
(;^ω^)「って、登って来ようとしてんのかお?」

一斉に家の壁にへばりつき、よじ登ろうとしている仮面の集団。
僕らが登った様に、木を使うという発想はないらしい。
やはり簡単には登れず、壁からずり落ちるが、今度は他のやつがその落ちたやつを踏み台にして登って来る。

(;^ω^)「何か気持ち悪いお。でも、皆この家に近付いてる今ならあの背後に……」

飛び越して降りれば逃げられる、そう言おうとした矢先、何かが上空から降って来た。


           ( ゚∋゚)


(;゚ω゚)「なっ!?」

突如現れた、鶏の頭を模した仮面を被った半裸の男。
それは降って来たと言うような生易しいものではなく、屋根をぶち抜かんかのごとく重々しい轟音を響かせて降り立った。
実際、その重量に廃屋が耐え切れなかったのか、足が屋根にめり込んでいる。

( ゚∋゚)

(;゚ω゚)「……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:38:03 ID:HVM3QHaY0<>
先の笑い顔の集団と同じく仮面の男ではあるが、こちらはまた別の意味で異様な雰囲気を醸し出している。
仮面とは言ったが、顔全体を覆うような形状からして覆面と言った方が正しい鶏の面は、
どことなくユーモラスに見えるも、体格とのアンバランスさでむしろ怖さが増す。

剥き出しの上半身からわかる鍛え上げられた肉体は、
あのクノッソスの遺跡で戦ったミノタウロスに引けを取らないかもしれない。
両腕の手首から肘にかけて丸い円形の金属が取り付けられているが、あれは盾の一種だろうか。

ただ1つわかるのは、近接戦闘を強いられるこの狭い足場で戦うのは圧倒的に不利であろうという事だ。

ζ(゚ー゚*ζ「おや、ク──」

(;゚ω゚)「逃げるお!」

ζ(゚、゚;ζ「え? ちょ!?」

僕はエア・シューズの魔法を唱え、デレの方に走る。
そのままデレを肩に担ぎ、一気に屋根を飛び降りた。

ζ(゚д゚;ζ「うひょあ!?」

(;^ω^)「舌噛むから黙っててお! ウインド・バリア!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:40:18 ID:HVM3QHaY0<>
空中で風の障壁を纏い、着地の衝撃を軽減させる。
若干速度が足りず、魔法の強度が低かったのか少し足にきたが許容範囲だ。
僕はそのまま笑いと鶏の仮面集団を背にして、この囲みを突破する事に成功した。

ζ(゚ー゚;ζ「ちょっとちょっと! 私は大丈夫だから降ろ──んむ!?」

(;^ω^)「だから舌噛むって行ったお? 取り敢えずこの場から離れるお!」

ζ(=、=;ζ「あへはへひははいっへばー」

(;^ω^)「何言ってるかわからんお」

包囲網は突破出来たが、まだ逃げ切れたわけではない。
後を見ると笑い仮面の方がぞろぞろと追って来ているのがわかる。

僕はデレを担いだまま、町の中を疾走する。
どこへ逃げればいいかなんて、思い付く場所は1つしかない。

(;^ω^)「取り敢えず僕が泊まってた宿に逃げるお。話はそれからだお」

ζ(=、=;ζ「ほろひてー!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:41:48 ID:HVM3QHaY0<>
(;^ω^)「確かこっちだったおね……」

僕は何となく見覚えのある道を走り、角を曲がり宿を目指す。
しかしながら走り続けていると、段々と見覚えのない景色になっていった。

(;^ω^)「あれ? さっきの角逆に曲がるんだっけかお?」

(;^ω^)「引き返して……」

速度を緩める事無く、道の端から端に大きく孤を描いて方向転換する。

  オワオワ  オワオワ  オワオワ
  (^o^)  (^o^)  (^o^)

(;^ω^)「って、もう追い付いて来たのかお?」

だいぶ引き離したと思ったが、いつの間にか正面に笑い仮面が数人立ち塞がっていた。
僕はそのまま中央の笑い仮面に向かって、デレを担いでいない方の肩を前に向けて体当たりを仕掛ける。

ζ(=、=;ζ( ^ω^)>「必殺! ブーン・ショルダークラッシュ!」

(^o^) オワー!<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:42:52 ID:Ob3AFNuQO<>支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:43:36 ID:HVM3QHaY0<>
意外にあっさりと笑い仮面を吹き飛ばす事が出来、僕は再び逃走する。
そのまま先ほど間違えたと思しき角を曲がり、一路宿を目指すも、どうもこの道も違う気がする。

(;^ω^)「これは迷ったかもしれんお」

ζ(゚、゚;ζ「おーい、そろそろ降ろしてってばー」

(;^ω^)「まだ止まるわけにもいかんから我慢してくれお」

舌の痛みは取れたのか、ようやくデレが認識できる言葉で語りかけてくるが、まだ状況は安全とは言えない。
とはいえこのまま全力で走り続けるのも限界に近いので、少々厳しい状況だ。

ζ(゚、゚;ζ「せめて逆に担いでくれませんかねえ。前見えないし、流れる景色が超怖いんですけど」

(;^ω^)「もうちょっと我慢してくれお」

デレの苦情をスルーし、そのまましばらく走り続けたが限界が来たようだ。
笑い仮面の姿もないようだし、僕は足を止め、デレを肩から下ろした。

(;´ω`)「もう……ゼエゼエ……限界……ハァハァ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:45:10 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(゚ー゚*ζ「お疲れさーん。お水飲む? そこに水溜りあるけど」

(;´ω`)「飲めるかお……ハァハァ……」

中腰で息を整えている間に周りの風景を確認したが、全く見覚えのない通りだ。
逃げ切れはしたが、ここから宿に戻るのは大変かもしれない。

ζ(゚、゚*ζ「後先考えてないにも程があるねえ」

(;^ω^)「あの状況なら仕方ないお? つーかあれ、何だったんだお?」

ζ(゚、゚*ζ「……」

( ^ω^)「デレはあれが何だか知ってるかお?」

∂ζ(゚、゚*ζ「うーん……取り敢えず話は後にするべきかな」

そういってデレが指を差した先には、いくつかの人影が蠢いていた。

  オワオワ  オワオワ  オワオワ オワオワ
  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:46:35 ID:HVM3QHaY0<>
(;^ω^)「追い付かれたのかお?」

僕はすぐさま身構え、呪文の詠唱を始める。
散々走り回って疲れているので、強力な魔法を使うのは少し厳しい。
せめて杖を持って来るべきだったが、ない物ねだりをしても仕方がない。

          オワオワ  
  オワオワ    (^o^) オワオワ
  (^o^) オワオワ   (^o^)
     (^o^)  


こちらに考える時間は与えてくれないようで、笑い仮面は全員こちらに向かって走って来る。
その動きは緩慢で統率が取れてるとは言い難く、各自がバラバラに襲い掛かって来た。

( ^ω^)「距離を取って各個撃破といくかお! ウインド・カッター!」

デレを下がらせ、一番先頭を走っていた笑い仮面に風の魔法をぶつける。
襲撃者とはいえ、恐らく人間なので殺傷能力の高い魔法は使わない事にした。

風の魔法を食らった笑い仮面は、先の体当たりの時と同じくあっさりとその場に崩れ落ちた。

( ^ω^)「こいつら……弱い?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:48:34 ID:HVM3QHaY0<>
異様な雰囲気に後込みしてしまったが、どうもこの笑い仮面はあまり強くなさそうだ。
あの鶏仮面がいなかったら、逃げずに戦っても何とか出来たかもしれない。

          オワオワ  
  オワオワ    (^o^) オワオワ
  (^o^)      (^o^)

(;^ω^)「けど、こいつら全くひるまないお」

倒れた仲間を意に介さず、速度を緩める事無く向かってくる残りの笑い仮面達。
仮面越しだから当然といえば当然なのだが、一切の感情を感じさせずに向かってくる姿は薄気味が悪い。

僕は下がりつつ風の魔法を連続して放ち、残りの笑い仮面達を打ち倒した。

(;^ω^)「ふぅ……。これで片付いたかお?」

近くに笑い仮面の姿はもうないようだが、あの時廃屋を囲んでいた笑い仮面はもっと数が多かった。
のんびりしているとまた襲われかねないので、早急にこの場を離れるべきかもしれない。

( ^ω^)「ひとまずここを離れるお。話はそれからに……」

言い掛けた僕の言葉を掻き消す、大きく重々しい音が辺りに響く。
背後からの聞き覚えのある音に恐る恐る振り返ると、そこには予想通りの姿があった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:50:07 ID:HVM3QHaY0<>
           ( ゚∋゚)


(;^ω^)「あいつも追い付いて来たのかお!?」

僕はデレの前に立ち塞がるように身構える。
まともにやり合ったら勝てそうにもないので、仕掛けて来る前に強力な魔法で一気に片付けたいとこだが、
現状のコンディションでは無理そうだ。

(;^ω^)「デレ、先に逃げてくれお!」

僕は着地した姿勢のまま蹲る鶏仮面から目を離さずに、背後にいるはずのデレに声を掛ける。
ここは逃げるべきだと思うのでそうするつもりだが、またデレを抱えて逃げるのは無理だと判断する。

ζ(゚ー゚*ζ「ん? ああ、大丈夫だよ」

(;^ω^)「大丈夫って何がだお? いいから逃げるんだお!」

思わず振り返り、デレの肩を掴んで揺さぶる。
その瞬間、鶏仮面が動き出した。

( ゚∋゚)

(;^ω^)「くっ!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:51:13 ID:HVM3QHaY0<>
跳躍し、一気にこちらに迫って来る鶏仮面。
僕はデレを押し倒す様にして飛んで距離を空け、その攻撃を回避する。
そしてすぐ様立ち上がり、背後を確認すると、鶏仮面は先ほどまで僕が立っていた場所に拳を突き立てていた。

ζ(゚、゚;ζ「ちょっと、いきなり何をするのかなあ、君は?」

水溜りで服が汚れたと怒るデレを引き起こし、再び身構える。
あの体格では鈍重かと思ったが、先の動きを見る限りは思いの他身は軽いようだ。
この分だと逃げるのにも苦労しそうだ。

(;^ω^)「仕方ないお。ここは腹を括るしかなさそうだお」

僕は鶏仮面を睨み付け、呪文の詠唱を開始した。
鶏仮面は警戒する様子もなく、無造作に近寄って来る。

( ゚∋゚)

(;^ω^)(余裕綽々って感じだおね……さて、どうするかお)

使う魔法は既に決めている。
広範囲魔法を使うには距離が近過ぎるので、単体用の高威力の魔法しかない。
そもそも町中なので、有効範囲が広過ぎる魔法は使うわけにも行かないのだが。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:52:52 ID:HVM3QHaY0<>
(;^ω^)(詠唱間に合うかお……てか、間に合っても当たるかどうか……)

様々な不安が頭を過ぎるも、やるしかない事はわかっている。
僕はやたらと大きく聞こえる自分の鼓動の音を聞きながら、その時を待った。
 スッ
∩( ゚∋゚)

間近まで迫った鶏仮面が右手を振り上げた。
この攻撃をかわし、魔法をぶち当てる。
やる事は至ってシンプルだ。

問題は攻撃をかわせるかと、この魔法で倒せるかだが、今更そこで悩んでも仕方がない。
僕は鶏仮面を注視し、いつでも動けるよう膝を曲げ、ほんのわずかに姿勢を低くした。

ζ(゚ー゚*ζ「クックル、ストップ!」

(;^ω^)「え……?」

唐突に背後から声がする。
その声の主も、掛けられた相手が誰なのかも瞬時に理解したが、それが何を意味するのかすぐには繋がらなかった。
そして混乱が僕の動きを止めた次の瞬間、僕の頭上を何かが越えて行った。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:54:14 ID:HVM3QHaY0<>
( ゚∋゚)「!?」
  _、_
( ,_ノ` )「全く……これは一体どういう状況なんだ、少年?」

(;^ω^)「シブサワさん!?」

飛来した何か、シブサワさんはそのまま鶏仮面に空中から蹴りを放ったようだが、鶏仮面はそれを苦もなく受け止めた。
シブサワさんは受け止めた鶏仮面の腕を蹴り、僕の隣に降り立つと煙草に火を点ける。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「こんな夜中にこの町をうろつくとは、馬鹿なんだか度胸があるんだか……」

(;^ω^)「すみませんお。色々と想定外の事がありまして……」

煙草を片手に余裕のある態度を見せながらも、シブサワさんの注意ははっきりと鶏仮面の方に向けられている。
少なくとも、侮ってはいないのだろう。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「俺としてはやり合うの避けたいと言ったはずだが……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「出来ればこの状況の説明をしてもらえるとありがたいんだがね」

そう言われた所で、説明したいのは山々だが僕としても状況はよくわかっていない。
何となく外に出たら知り合いにあって、よくわからない集団と大男に襲われたとしか説明出来ないのだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:55:57 ID:HVM3QHaY0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「やれやれ……。という事は、この状況は全くの偶然の産物という事か」

(;^ω^)「そうなりますお。僕もわけわかめですお」

僕らの会話の間、何故か鶏仮面は襲い掛かって来る事はなかった。
それどころか直立不動の姿勢でこちらを見守っているようですらある。

いや、正しくはこちらではなく、僕らの更に奥であろう。

ζ(゚ー゚*ζ

僕は未だ維持していた魔法を解除し、デレの方を向く。

( ^ω^)「デレ、君はあの鶏仮面と知り合いなのかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「おいおい、お前さん、そんな事も知らずにあいつとやり合おうとしてたのかい?」

(;^ω^)「お?」

僕は視線をシブサワさん、デレ、鶏仮面の方へ順に向ける。
シブサワさんとデレはどちらも肩をすくめ、鶏仮面は相変わらずの直立不動で微動だにしない。

どうやら状況をわかっていないのは僕だけらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:57:35 ID:HVM3QHaY0<>
(;^ω^)「デレ、君は一体……」

ζ(゚ー゚*ζ「私はただの旅の僧侶ですぜ、ヴィップの町の魔法道具屋さん」

この中では一番見知った相手であるデレに質問するも、おどけた態度で相変わらずの答えしか引き出せない。
僕は再度デレに尋ねようとするが、それよりも早く答えは隣から返って来た。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ただの旅の僧侶じゃないだろ? なあ、ラウンジの聖女さん」

(;^ω^)「え?」

ζ(-、-*ζ「そういうご大層な名前は好みじゃないんですがねえ」

ζ(^ー^*ζ「そう呼ぶ人もいますなあ」

そう言ってデレは、あの屋根の上で見せたのと同じ笑顔を見せる。
そんなデレの答えで、僕の中でいくつかの事象の答えが生まれ、新たな問題が生成されて行く。

(;^ω^)「ラウンジの聖女って……それはつまり……」

ζ(゚ー゚*ζ「つまり?」

(;^ω^)「僕達の敵……なのかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 22:59:04 ID:HVM3QHaY0<>
僕の口を吐いた答えに、デレはまたも笑顔を浮かべる。
こんな時だというのに、僕は思わずその笑顔に見惚れてしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「それは……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「俺達次第、か?」

ζ(^ー^*ζ「そうなりますかねえ」

お互いの目的次第では敵になる可能性もあるが、率先して争う理由もない。
昼のシブサワさんの話とデレの態度から考えるにそんな所だろう。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「あんたらの目的はどっちだ? 神具か? それとも……」

ζ(゚ー゚*ζ「どっちも……と言いたい所だけど、私達は別件だね。どっちがそっちの本件かは知らないけど」

ζ(゚、゚*ζ「今のニューソクにあれは置いておけないというのが、こちらの見解ですなあ」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そいつは残念だ。俺達はあんたらの敵の様だ」

敵、つまりはデレ達の狙いも聖骸布という事らしい。
状況理解の乏しさから、率先して会話には加われない僕は、2人の会話から得られる情報を分析する事に努めた。
ひどくもどかしい事だと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:01:09 ID:HVM3QHaY0<>
ζ(-、-*ζ「おやおや、それはまた残念な事で」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……なら、今ここで潰すかい?」

(;^ω^)「……」

お互い身構える事もなく、物騒なやり取りを交わしている。
今の会話の流れからすれば、自ずと戦う事になるのは理解出来るが、正直な所僕はデレとは戦いたくない。

デレにはヴィップの教会で助けられているし、メシューマで薬草パンをご馳走する約束もした。
少なくとも彼女が悪い人だとは思えないし、僕としてはもう友達のような気でさっきまで話をしていたのだ。
それが僕の一方的な思いであったとしても。

ζ(゚ー゚*ζ「それはご勘弁願いたいですなあ」

答えを告げる直前、ほんの一瞬デレが僕の方を見た気がする。
その仕草の意味する所が僕と同じ気持ちであれば嬉しい事だが、本当の所はわからない。
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「ではこの場は退かせてもらおうかね」

ζ(゚ー゚*ζ「ご自由にどうぞ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:02:55 ID:HVM3QHaY0<>
デレはまた恭しくお辞儀をし、鶏仮面、クックルと呼ばれた男の方に向かう。
僕はデレとクックルの間に立っていたので、必然的にデレは僕の方に向かって歩いて来る事になる。

( ^ω^)「デレ、君は……」

ζ(゚ー゚*ζ「私は、全ての人がほんの少しだけでも今より幸せになれるように願ってるよ」

( ^ω^)「うん、知ってるお」

ζ(゚ー゚*ζ「漠然としてる上に、小さいようで大きい願いだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「それをいい願いだと言ってくれた君とは争いたくないと思ってる」

( ^ω^)「うん、僕もだお」

僕の言葉にデレは笑顔を見せ、僕の横を通り過ぎて行く。
僕はそれを追う事はせず、シブサワさんの方へ視線を向けた。
  _、_
( ,_ノ` )「さて、宿に帰るか」

( ^ω^)「はいですお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:05:33 ID:HVM3QHaY0<>
僕達はそのまま、デレとは反対の方向に向かって歩き出す。
道がわからない僕は、シブサワさんに従って歩くしかない。
他に道を知らない以上、そちらが僕の進む道だっただけだ。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「何から聞くべきかねえ……」

( ^ω^)「僕に答えられる事なら何でも聞いてくださいお。その代わり……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「俺が答えられる範囲なら答えてやるさ」

しばらく無言で歩いていたが、おもむろにシブサワさんが煙草を取り出し、火を点けた。
それを皮切りにシブサワさんは今日の事を聞いて来る。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「お前さんとラウンジの聖女の関係は何だ?」

( ^ω^)「顔見知りですお。僕は友達ぐらいの感覚でしたけど」

僕はヴィップでの事、メシューマでの事、そして今夜の事を順を追って説明する。
別段隠しておくような事はないので、ありのままを告げた。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「なるほどね。お前さんにとっては全くの偶然でしかないわけだな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:07:33 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「はいですお。でも、向こうもそうなのかはわかりませんお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「だろうな。意図的に接触して来た可能性もあるわけだからな」

ただの可能性の話なので、もし仮にそうだとしても彼女がそうする理由は僕にはわかりようもないのだ。
しかし、彼女と話した内容やその行動から察するに、それはないかなとも思う。
ほとんど世間話しかしていないし、会っても質問するのは専ら僕で、彼女の方から探りを入れて来る事は無かった。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「もし目的があったとしたら、お前さん自身に会ってみたかったという所だろうな」

( ^ω^)「僕自身にですかお?」

あくまで仮の話だがとシブサワさんは続ける。
僕自身、この場合はきっと大賢者の孫という意味だろう。
そしてこの推論を立てられるシブサワさんも、それを知っているという事に繋がる。

( ^ω^)「シブサワさんは僕の事……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「一応、中央の裏方は長くやってるんでな、お前さんの出自は知ってるよ」

( ^ω^)「そうですかお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:09:18 ID:HVM3QHaY0<>
そこからしばらく沈黙が続いた。
まだ聞きたい事は山ほどあったが、何となくこちらから口を開くのが躊躇われてしまった。

そのまま歩き続け、ようやく見覚えのある場所に辿り着いたが、シブサワさんはもう少し歩かないかと提案して来た。
僕が頷くと、シブサワさんは軽く礼の言葉を口にした。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「今回の件には関わった理由はなんだい?」

( ^ω^)「それも偶然ですお、多分」

ヒッキーさんが依頼したクエストは、僕達を名指しで依頼されたわけじゃない。
僕達以外の冒険者が受ける可能性だってあった事を考えると、偶然と考えた方が筋は通る。

当然、そうじゃない可能性もないわけじゃない。
その場合はまずヒッキーさんの事を疑うのが一番容易い手段だ。
考えたくはない手段ではあるけども。

( ^ω^)「シブサワさんは僕の事、疑ってますかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「その質問には意味が無いと思うぜ?」

答えはイエスでもありノーでもあるとシブサワさんは言う。
疑うのが仕事のような物だから、何でもまず疑ってかかるのは当たり前だが、
疑っていたとしてもそれを馬鹿正直に本人に告げないとも。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:11:36 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「今、馬鹿正直に告げてくれてるじゃないですかお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「答えになってない答えを告げた所で、どうにもなりはしないさ」

( ^ω^)「まあ、そうですおね。馬鹿な質問でしたお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「いいさ。……ただ、個人的にはお前さんの事は嫌いじゃないぜ」

( ^ω^)「そりゃどうもですお」

それから僕達はデレの事、ラウンジ聖教の事を話し合った。
彼女達の狙いが聖骸布であるならば、今後ぶつかるのは避けられないのだ。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「向こうが2人なら何とかなるとは思うんだがな」

ラウンジの聖女は強いとはいっても肉弾戦に長けてるわけではないらしい。
その御付、クックルをシブサワさんが抑えれば数で押せると。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「こっちには聖騎士までいるからな」

( ^ω^)「やっぱりトソン君の事も知ってるんですおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:13:37 ID:HVM3QHaY0<>
トソン君は今は聖騎士の鎧は着けておらず、自己紹介でも聖騎士の事には触れていない。
そうなるとクーの事もばれていると見る方がいいのだろう。

何でシブサワさんがそれを不問にしているのか聞いてみたくもあるが、
こちらからクーの事を話すのもどうかと思うので、聞くならこの件が片付いてからにしようと思う。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ただ、それは御付が1人の場合だ」

(;^ω^)「お……、ひょっとして、あのクックルって人みたいなマッチョがまだいるんですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、いるぞ。マッチョではないがマッチョより凶悪なのがな」

ラウンジの聖女の御付は、本来2人いるとシブサワさんは言う。
結局、クックルとはまともに戦ってはいないが、あれが強いだろうというのはその身に纏う空気でわかる。
そのクックルより凶悪というのだから、どんな相手なのか考えたくもない。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、見た目はただの優男らしいがな」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「……ん? そうか、お前さんは知ってるかもしれんな」

( ^ω^)「お? 僕が知ってる人ですかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:15:32 ID:HVM3QHaY0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「西の賢者だよ」

( ^ω^)「西の……あ、ドクオさんのライバルって人……確か名前はモララーとかいう……」

正しくは、御付というよりは後見人のようなものらしいとシブサワさんは言う。

(;^ω^)「確かに、ドクオさんレベルの人が出て来たら、僕らでは相手になりませんお」
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「更にいえば、聖女の言う所の本件に関わっている連中が手を貸さないとも限らないしな」

そちらはそれほどの手練はいないが、数はそれなりにいるという話だ。
そうなると数でも負ける事になり、敗色は濃厚だろう。
どうやらだいぶ分の悪い状況になって来ているらしい。
  _、_
( ,_ノ` )「まあ、こっちも別件、向こうの言う所の本件だが……ってややこしいな」
  _、_
( ,_ノ` )「とにかく、こちらも俺達とは別の件で来る連中の手を借りる事も出来なくはない」

問題はまだその人達が到着していないことだがと続け、シブサワさんは再び煙草を取り出す。

( ^ω^)「その本件とか別件とか、気になってたんですけど聞いてもいいですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「当然気になるよなあ……。俺としては、聞かない方がいいと思うんだが」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:16:54 ID:HVM3QHaY0<>
聞けばどうしても余計な事を考えてしまうだろうし、自分としては聖骸布奪還に集中して欲しいと思っているが、
知らないと知らないで万が一の場合に対処出来ないだろうから悩み所だとシブサワさんは複雑な表情をする。

( ^ω^)「どうせなら、ちゃんと知った上で行動したいんでお願いしますお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「やれやれ……何にでも首を突っ込むのは感心しないが……」

(;^ω^)「耳の痛い言葉ですお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そういえばお前さん、変な仮面と会わなかったか?」

( ^ω^)「一番変だったのはあの鶏仮面だったと思いますけど、それ以外にも笑い顔の仮面の集団に会いましたお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「既にばっちりと関わってるってわけか……。仕方ない、話してやるよ」

( ^ω^)「シブサワさんはあの仮面の正体を知ってるんですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、知っている。あれがさっき言った別件の話だ」

( ^ω^)「何なんですかお、あれ? 人間にしてはすごく不自然な感じがしましたお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「人間だ。正しくは、強制的に精霊を憑依させられた人間兵器の試作品ってとこか」

(;^ω^)「それって……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:18:56 ID:HVM3QHaY0<>
奇しくもそれは、ナカノヒトに来る途中でヒッキーさんとの話の中で考えたことだ。
精霊を人に憑かせる研究、そして兵器転用。
廃れたはずの研究が生き残っているという事か。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「概ねそんな所だ。理解が早くて助かる」

10年以上前にここ、ナカノヒトの町でそういった研究が行われていたらしい。
研究材料と称して子供をさらっては非道な研究が繰り返されていた。

当然、国もそれを看過する事はせず、騎士団や教会の手によって止めさせる事は出来たが、
研究を行っていた魔法使いは取り逃がしてしまったようだ。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「その後、そいつはラウンジに渡って同じ研究をやっていた事がわかっている」

そして再びこの地に戻って来た事が最近発覚したらしい。

つまりはその研究を止めさせ、魔法使いを捕らえる事が別件の話で、
ニューソクもラウンジも同じ目的で動いてるとの事だ。

( ^ω^)「同じ目的なら協力すればいいような気もしますお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「効率を考えればそうだが、それぞれに面子もあるからな」

事がそう簡単ではないのはわかっている。
同じ研究をラウンジで行っていたのなら、ラウンジでも過去のニューソクと同じような被害が出ているはずだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:20:50 ID:HVM3QHaY0<>
ラウンジがそれを捕まえたがる理由もわかるし、状況から考えるに、
ラウンジは外交をすっ飛ばして裏で動いてるのだろうからそういうわけにも行かないのだろう。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「こっちは俺達の仕事じゃないから説明はこの位にしておく」

( ^ω^)「あ、1個だけ質問いいですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、いいぜ」

( ^ω^)「質問というか、気になったことなんですけど」

( ^ω^)「あの笑い仮面、不気味は不気味でしたけど、えらい弱かったですお」

あれが研究の成果なら、人道的な問題だけで研究自体の脅威はないと思う。
当然、需要もないだろうから、研究を続けるメリットもないのではないだろうか。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「試作品だからな。失敗作と言い換えてもいい」

あの笑い仮面は精霊の憑依には成功したが、思うように効果をなさず、感情を極端に抑制し、
自我をなくしてしまったものらしい。

本来なら感情の抑制と増幅の切り替えが出来、
人間が本来持つ能力の制限を解除出来るのが成功例だとシブサワさんは説明する。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:23:19 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「その成功例っているんですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「何人かはいるらしいが、よくわかっていないな」

普通の人間の戦闘能力を軽く凌駕する従順な兵士。
もし成功例がいたとすれば、きっとどこでも重宝されるだろう。
あくまで裏の世界での話だが。

( ^ω^)「嫌な研究ですおね……」
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「ああ、胸糞悪い話だ」

そう吐き捨てるように呟くと、シブサワさんは短くなった煙草をいつの間にか取り出していた灰皿に擦り付けた。

シブサワさんの話で色々と理解は出来た。
しかし、まだまだわからない事も多々ある。
空気的にそろそろ話はお仕舞いなりそうだったが、僕は駄目元でもう1つ質問をぶつける事にする。

( ^ω^)「そういえば何で僕やデレが狙われてたんですかおね?」
  _、_
( ,_ノ` )「質問は1つじゃなかったのか?」

( ^ω^)「そこを何とか、もう1声お願いしますお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:25:17 ID:HVM3QHaY0<>  _、_
( ,_ノ` )「……その件に付いては想像はつくが、そもそも逆の可能性もある」

( ^ω^)「逆?」
  _、_
( ,_ノ` )「聖女があいつらをおびき寄せてた可能性さ」

シブサワさんの推測では、ラウンジとしてはあくまで本件はその研究の主犯を捕まえる事で、
聖骸布の方は本腰を入れてないのではないかという事だ。
  _、_
( ,_ノ` )「俺が調べた限りだと、聖女達だけが聖骸布奪還に当たっている節があるからな」

ラウンジ聖教自体は、聖骸布をそれほど重要視していないとシブサワさんは考えているようだ。
そちらの方はむしろデレ達の独断で、その行動を許す代わりに研究の主犯を捕まえる件も手伝っていると。

( ^ω^)「つまりは囮だったわけですかお」
  _、_
( ,_ノ` )「その可能性はある」

( ^ω^)「でも、デレが囮だったとして、釣れるとは……いや、釣れるのかお」

ラウンジの聖女ともなれば、捕まえればいくらでも交渉の材料として使えるだろう。
逃亡の為の手段や、身代金の獲得など、色々と有益なはずだ。
聖女が1人でいるという状況で動かないはずがない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:28:16 ID:HVM3QHaY0<>
( ^ω^)「となると、僕は見事にそれを邪魔したわけですかお……」
  _、_
( ,_ノ` )「あくまで推測だ。仮にその通りだったとしても、お前さんが気に病む話でもないさ」

そう言ってシブサワさんは僕の肩をぽんぽんと軽く叩く。
手に染み付いた煙草の臭いがはっきりとわかった。
  _、_
( ,_ノ` )「さて、そろそろ帰るか。流石に明日に、いや、もう今日だな、響くだろ」

(;^ω^)「響く所か、もう東の方の空が明るくなって来てますお」

幸いと言っていいのか、クエスト本番は明日だ。
休息は取れるだろう。
今日知った情報を皆にも伝えないといけないので、あまりのんびりもしていられないが。
  _、_
( ,_ノ` )「まあ、今話した事は他の連中に伝えてもかまわない。あまり大っぴらに話されても困るが」

( ^ω^)「わかってますお。世間話の種にするには重いと思いますし」

僕らは踵を返し、来た道を逆に進む。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:31:36 ID:HVM3QHaY0<>  _、_
( ,_ノ` )「おっと、忘れてた」

( ^ω^)「お?」
  _、_
( ,_ノ` )「これで貸し借りはなしだな」

( ^ω^)「お……、あれは世間話だから別に……」

(;^ω^)「むしろ、助けてもらった分と話してもらった分でこちらが借りてますお」
  _、_
( ,_ノ` )「それもそうか。じゃあ、そいつは貸しとくさ」

そう言ってシブサワさんはにやりと笑みを浮かべ、また煙草を取り出す。
煙草の煙が朝焼けの空に薄く棚引いた。



     第三十話 1つ屋根の上で 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:34:01 ID:HVM3QHaY0<>
三十話は以上です

次話は多分戦闘に入るかなあ
次々話は戦闘メインのはず
戦闘に入ると書く速度が落ちる気がしてます

次回は未定で

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/15(火) 23:34:20 ID:6qhqy3tE0<>ちょっとずつ重い話になってきたのかな、引き込まれるね
乙!!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/15(火) 23:34:42 ID:wMlzh/Zc0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/15(火) 23:50:55 ID:yepSQ14UO<>乙
ようやくデレが何者かわかったな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/15(火) 23:50:58 ID:G79LXuaM0<>乙

一つ屋根の上…の次は「白いクスリ」かな?<> 三十話までの登場人物<><>2012/05/16(水) 00:16:46 ID:7LqvtEQw0<>
【登場人物紹介】

( ^ω^) ブーン=ナイトウ(ブーン=ホライゾン)
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営んでいる少年。現在はクエストでナカノヒトに滞在中。
祖父は伝説の大賢者であるバーン=ホライゾンだが、その事を知るものは少ないはず。

ξ゚听)ξ ツン=ディレード
武術道場の娘でブーンの幼馴染。武術の腕は確かで、道場で師範代を任されている。
勝ち気だが根はやさしく、実は寂しがり屋。現在はブーンと共にナカノヒトに滞在中。

(∪^ω^) わんわんお
ブーンのペット兼使い魔。子犬の姿だが、本当は竜の中でも最強の力を誇る天空竜の転生したものである。
無邪気で人懐っこいが少々お馬鹿。現在はブーンと共にナカノヒトに滞在中。

('A`) ドクオ=ボッテューツ
ヴィップの町の南東の方にある庵に住む残念な容姿の賢者。結界魔法を得意とする。
ブーンの祖父の弟子でブーンの師匠に当たるが、本人は師匠と呼ばれるのを嫌っている。

川 ゚ -゚) クー=スナオ(???=???)
サンライズにペンダントの解呪の依頼を持ち込んだ新米冒険者。ニューソク王家関係者と推測される。
今は借金を返すために冒険者として活動し、ブーンと共にナカノヒトに滞在中。 世間知らずだが意外としたたか。<> 三十話までの登場人物<><>2012/05/16(水) 00:17:31 ID:7LqvtEQw0<>
(`・ω・´) シャキン=バールボー
酒場バーボンハウスのマスター。からっとした性格だが、意外と子煩悩でもある。
バーボンハウスはギルドからのクエストの斡旋もしており、冒険者達の溜まり場となっている。

(´・ω・`) ショボン=バールボー
シャキンの息子でブーンの幼馴染。飄々とした性格だが、友達思いの心配性でもある。
聖騎士を目指す事を決意し、ソクホウで騎士学校に入学した。
  _
( ゚∀゚) ジョルジュ=ナガオカ
ヴィップの町を拠点としていた冒険者。長柄の両手斧を武器とし、ハイン、ミルナとパーティーを組んでいる。
豪放磊落。武器の強化と、灰衣の魔法使いを探す為にソクホウに滞在中。

( ゚д゚) ミルナ=コッチオ
ヴィップの町を拠点としていた冒険者。モーニングスターを武器とし、ジョルジュ、ハインとパーティーを組んでいる。
質実剛健。武器の強化と、灰衣の魔法使いを探す為にソクホウに滞在中。

从 ゚∀从 ハインリッヒ=タカオカ
ヴィップの町を拠点としていた冒険者。2振りの蛮刀を武器とし、ジョルジュ、ミルナとパーティーを組んでいる。
見敵必殺。武器の強化と、灰衣の魔法使いを探す為にソクホウに滞在中。

(゚、゚トソン トソン=トソン
元聖騎士。見た目は小さな子供だが、怪力の持ち主で巨大な蛇腹剣を使う。性格は真面目だが、そそっかしい。
クーを追ってヴィップに辿り着き、借金返済に奔走中。現在はクーと共にナカノヒトに滞在中。 一応、妙齢の女性。<> 三十話までの登場人物<><>2012/05/16(水) 00:18:24 ID:7LqvtEQw0<>
( ´_ゝ`) アニジャ=サースガ
ソクホウの町の武器職人。機工と呼ばれる技術、からくりを用いて武器に様々なギミックを付けるのを得意とする。
胡散臭いが腕は確か。からくり・サースガとして名を馳せる。明るい性格だが気は弱い。

(´<_` ) オトジャ=サースガ
ソクホウの町のでトレジャーハンターを生業としているアニジャの弟。ペンネームは冒険野郎・サスガイバー。
爽やかな態度と物言いで人当たりは良いが空気が読めない。トラップに引っかかりやすいが運の良さで回避する。

(-_-) ヒッキー=コーモーリ
ヴィップの町に赴任してきた司祭。神聖魔法、その中でも守護の魔法が得意。
教会に憑いていた精霊川д川に憑かれている。真面目でお人好しな性格。現在はブーンと共にナカノヒトに滞在中。

(‘_L’) フィレンクト=ドレイク
ニューソク騎士団長。長身で一見温和な雰囲気があるが、意外とやり手との話も。
現場からの叩き上げで、実力も人望も高い。腕はラス2。現在、騎士団を襲った灰衣の魔法使いを探している。

( ∵) ビコーズ=バラナゼナ
ニューソク国宮廷魔術師で、バーン=ホライゾンの最初の弟子であった。
無表情で感情の機微がほとんど見受けられないが、国の事を真摯に考える真面目な人だと思われる。<> 三十話までの登場人物<><>2012/05/16(水) 00:19:20 ID:7LqvtEQw0<>
ζ(゚ー゚*ζ デレ(???=???)
ヴィップの町の教会に訪れた謎の女性。その正体はラウンジ聖教の重鎮、ラウンジの聖女。
神聖魔法と歌を手順としたスペシャルを使うが、その強さは不明。

( ゚∋゚) クックル=クックドゥー
デレの護衛
鳥を模した仮面(覆面)を着けた寡黙な男。ラウンジの聖女であるデレの御付。
その強さは未知数だが、そのマッチョな体型にそぐわず、意外と身は軽いようだ。両手に盾を装備している。
  _、_  
( ,_ノ` ) シブサワ=リナイオ
教会のエージェントで、教会最強のエクソシスト。ダンディな物腰と立派な顎が特徴。
現在はナカノヒトでブーンたちと共に行動中。その見た目から一部で顎のエクソシストと呼ばれたり呼ばれなかったり。

ノパ听) ヒート=オネスティー
旅の武術家。単純な性格で、宇宙魔法という、魔法でも何でもないが本人は魔法と言い張る技を使う。
自分より強い相手と闘う為に各地を転々としている。

lw´‐ _‐ノv シュー=パールライス
ヴィップの町を訪れた旅の魔法使い。正体は悪魔だが、人間に害を及ぼす気はない。
農業が好きで、特に米が大好き。極めてマイペースな性格。現在はヴィップでサンライズの店番中。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/16(水) 00:26:52 ID:CGA9qdl6O<>おつおつー<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/16(水) 02:26:02 ID:6MSMctYgO<>おもしろくなってきた<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/16(水) 13:20:40 ID:V/xxTI0Y0<>乙乙
わんお大怪獣化はいつだろうか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/17(木) 16:56:26 ID:EvMnTptUC<>わんお可愛いよわんおってわんおでてなかったわ

しかし相変わらず面白い
乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/17(木) 22:02:04 ID:aWRtfrbcO<>相変わらず安定の面白さ
週1前後ぐらいで定期的に更新してくれるのもなおよし<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/19(土) 01:56:57 ID:dY9fyKd20<>・魂を刈り取るように草の根を刈り取る『死神の草刈り鎌』
・ひとたび断ち切れば如何なる回復も成長も許さない『冥府の高枝切り鋏』

こんな魔法農具が欲しい<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/19(土) 11:05:43 ID:0wCunVOA0<>魔法農具屋では農薬売らないのかしら。
聖水を使用して雑草を生えにくくするとか。
ブーンとシューのコラボ製品なんて素敵やん?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/19(土) 12:56:09 ID:hSJNND8.O<>薬草おにぎりと魔法農薬のコラボか……<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/19(土) 14:46:38 ID:PF./ad.U0<>>>193
雑草が生えないと食物育たんだろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/19(土) 18:31:19 ID:EDqAKoWUO<>魔法農具で育てた米と薬草で作った薬草おにぎり<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/20(日) 02:49:09 ID:Mt/7zaZwO<>を使ったパン<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/20(日) 05:26:57 ID:.rzyerHgO<>を使った農具<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/21(月) 09:10:12 ID:X/btQCUw0<>薬草大福なんてどうだろうかね

・保存がきく
・薬草有り
・工夫可能: 米部分にするか餡部分に薬草を練り込むか
・何より味も甘くて美味しいだろう。女にも好評だろうし、男にはさっぱり


完璧じゃね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/21(月) 09:11:01 ID:X/btQCUw0<>さっぱりした甘み<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/21(月) 12:26:02 ID:chT6A1dk0<>よもぎぇ…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/21(月) 14:24:41 ID:GIvEnlzIO<>新潟の笹団子っぽいのもよくね

どんどん魔法道具屋から離れていくのも考え物だし、魔法調理具とか魔法工具とか魔釣具とかどうだろう、もはや魔法ホームセンターだけど
釣具なんか水中モンスター探索したりをつり上げることが出来そう

僕の考える最強の魔法道具屋になってる罠<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/05/21(月) 23:05:37 ID:.0ooTa..0<>
ξ゚听)ξ(誰1人クエストに携帯することを考えてやがらねえ……)




次話書けて、次々話も30レスぐらい書けてますが、時間がないのと気力がないのとで、
投下はもうしばらく後になると思います<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/21(月) 23:07:04 ID:6sUYiV3A0<>待ってるよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 09:44:01 ID:6mU9/wIM0<>そもそも薬草は食べないとダメなのか、薬草の汁を塗るだけでいいのか
後者であれば、薬草爆弾とかどうだろうか

ピンチの仲間のところに、薬草爆弾をぶん投げる → 汁が飛び散る → 回復!

欠点:
・相手にも当たれば回復する
・運悪く(良く)外れた味方は回復しない
・汁まみれ ※性格には霧みたいなしぶきのため、しめっぽい<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/22(火) 10:23:29 ID:11D2nbh20<>>>205
爆弾というものは大なり小なり火薬を使ったもので、いくら中身が薬草であろうと衝撃や飛び散るもので怪我を負う

ちなみに爆発音で耳もやられる



踏んだり蹴ったりな品物で( ^ω^)がξ゚⊿゚)ξ
にフルボッコにされるのが目に浮かぶ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 10:32:23 ID:6mU9/wIM0<>>>206
そこはブーンの魔法の見せ所じゃねw

で、結局結果的にξ゚⊿゚)ξにフルボッコされるw<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 11:24:23 ID:JCpxDYVoO<>薬草を入れると汁を絞り出して噴霧する道具とか携帯出来るし便利じゃね、喘息のシュコッてやるやつみたいなの
直接吸ったり患部に吹きかけたり、聖水も使える
しかし魔法っぽくなかった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 11:33:10 ID:L0LMa/0Q0<>つ救急スプレー<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/22(火) 12:10:10 ID:PlXK.jo.0<>この際だから聖水爆弾でいいや<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/22(火) 12:41:32 ID:IiPnvcwEO<>・携帯できて
・日持ちして
・すぐ飲めて
・苦くない
 
これ全部満たさないといけないのか、難しいな
もうオブラートにでも包んだほうが早いな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 12:45:47 ID:6mU9/wIM0<>>>211
薬草大福それ完備じゃね
・携帯できて
・日持ちして
・すぐ食べれて(サイズによっては喉につまる
・あまい<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/22(火) 13:10:16 ID:0Xq.J7WQ0<>薬草乾パンは?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 18:22:52 ID:JCpxDYVoO<>大福って日持ちすんの?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 18:49:35 ID:ngwE4p660<>点滴でおk
量を調整しながら使えば戦闘と回復が両立できる<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/22(火) 19:09:34 ID:sPFWHodAO<>商品会議が盛り上がりすぎw皆好きだなぁ〜<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 19:29:52 ID:WHbxvggU0<>厨二がどれだけ多いかわかるだろう?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/22(火) 19:35:27 ID:pfAmhtM.0<>うん。一名だな<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/22(火) 23:59:04 ID:udBgk7vI0<>>>214
市販の防腐剤入りは結構もつ

手作りとかは早くカビる

もちはカビやすい<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/05/23(水) 01:33:39 ID:Ar7IFfRQ0<>
( ^ω^)(1つ、次話で出てくる商品未満のやつに近いアイデアのがあるお……)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/23(水) 08:25:56 ID:JctWAJPIO<>基本、防腐は薬草で何とかするより、多量の糖分か塩分で賄う
包み紙に薬草を用いて防腐作用の補助をさせる

つまり、薬草を練り込んだ薬草飴を作れば無問題
糖分と薬草で持続的な体力補給
薬草で包んでるから汚れないし、飴だから防腐作用もある程度ある
包み紙の薬草も普通の使用法で消費可で無駄がない
塩味の薬草飴も作れば汗で失う塩分補給にも<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/23(水) 13:16:45 ID:Xzrpk0s.0<>ブーンとツンの合体攻撃は薬草螺旋とかになるのかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/23(水) 21:41:41 ID:ftf/2GHo0<>薬草酒が最強だろ
日持ちするし美味しいし傷口殺菌効果あるし

ツンなんか飲んだら強くなるかもしれん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/23(水) 22:07:20 ID:P3GjqvSg0<>傷口に口で吹きかけるんだな
沁みそうだ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/23(水) 23:01:36 ID:qvSXOjR.0<>白熱した議論で汗蒸れになってきたから、わんおちゃんの鼻が曲がる前に会議は中断しようか。

「臭い」のを嫌う人もいるだろうし<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/23(水) 23:27:35 ID:BHIbnR7A0<>薬草デオドラントか…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/24(木) 07:39:59 ID:sxAPRjvQO<>薬草○○ばかりだけど、一応は魔法道具屋だろ
道具って具体的にはどんなのよ
消費アイテムはちらほら出てたけど<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/24(木) 08:55:09 ID:g/rr6aFI0<>薬草の筆
・・・筆先の毛に薬草が練りこまれている
この筆で塗り塗りすれば薬草の効果が現れる。
使われたものはくすぐったくて悶絶する。

薬草の剣
・・・鞘から抜くと剣先から汁が常に溢れ出す
なぜか斬りつけても怪我をしない。
切られたものは、怪我がなおる

魔法で加工すれば余裕<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/24(木) 10:07:54 ID:w9HaQZhQ0<>なるほど、ウインドカッターを弱くして薬草の抽出液を味方にぶつけると。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:21:41 ID:kNximWss0<>
 〜 ナカノヒトの町 闇オークション会場付近 早朝 〜


( ^ω^)「朝っぱら過ぎやしませんかお?」(∪´ω`) zzz
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「すまんな、時間帯の絞り込みが出来なかったんでな」

ξ゚听)ξ「その、ボルジョアという男が姿を見せるまで持ち場で待機って事でいいんですね?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、だがいつでも動けるように身体は温めておいてくれよ」

ノリミ゚ -゚彡「この季節に暖める必要もなかろう」

(゚、゚トソン「では、我々は所定の位置に着きますね」

(-_-)「緊急時の連絡は、ブーン君が作ってくれた護符の魔法を打ち上げる事で取るんですね」



     第三十一話 動乱のナカノヒト


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:22:54 ID:kNximWss0<>
( ^ω^)「赤が緊急招集、青が発見、黄色が想定外で手の空いた者が向かうでお願いしますお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

僕は今、ヒッキーさんから請け負ったクエストで、ツン達と共にナカノヒトの町に来ている。
今日はクエスト本番、闇オークションの開催前日だ。
ここで聖骸布を盗んだ犯人、ボルジョアという男を捕まえるのが僕らの仕事である。

ξ゚听)ξ「冴えない顔してるわよね」

           【 ( ・3・) 】

そう言ってツンは1枚の紙をひらひらと振る。
その紙には男の顔が描かれており、それがボルジョアの人相書きだ。

何でも、魔法を使ってその人の姿を紙に写したもので、写真というらしい。
多少ぼやけてはいるが、これなら僕達も、どれがボルジョアか判別は出来るだろう。

初めて聞く技術だが、なかなか面白いのでヴィップに帰ったら調べてみようと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:24:36 ID:kNximWss0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、しょぼい面だが、逃げ足だけは一級品だからな、油断するなよ」

シブサワさんの言葉に頷き、僕らはあらかじめ決めていた所定の場所に移動する。
闇オークション会場は思ったよりも開けた場所にあり、劇場の地下で行われるようだ。
開けた場所故にこの場所に繋がる道は多く、配置を分散する必要があった。

まずシブサワさんは会場全体を見渡せるような高所に陣取り、全体を警戒する。
ツンとトソン君、それにヒッキーさんはそれぞれ1人で別の大きな通り周辺を見張る予定だ。

最後に僕とクーとわんわんおが、万が一逃走された場合の為に馬車を準備した上で、
商売をするふりをしながら残された大通りを見張る手筈になっている。

それ以外にも何人かシブサワさんの部下がいるらしいが、そちらは連絡や情報収集に当たっており、
;直接の見張りは行っていないらしい。

川 ゚ -゚)「さて、それでは店を開けるか?」

(;^ω^)「まだ朝早過ぎるお。のんびり準備しながら見張ってるお」

急遽そういう運びになってしまったので、昨日慌てて商売を出来る準備はした。
短い準備期間出来るものといったら、薬草パンかおにぎりぐらいしか思いつかなかったので、薬草パンを売る予定だ。
万が一の場合は取る物も取らずに追い掛ける必要もあるから、なるべく使い捨てられるものを集めている。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:25:55 ID:kNximWss0<>
川 ゚ -゚)「よし、じゃあたまには私がパンを焼こうか」

( ^ω^)「だが断るお」

川;゚ -゚)「なん……だと……?」

( ^ω^)「サンライズのパン焼き窯でも失敗するのに、この即席窯で焼けるわけないお?」

現在、サンライズでは薬草パンと薬草おにぎりを売っているので、当然毎日その仕込みをする必要がある。
基本的にそれは僕の仕事で、何度かバイトに入ったクーやトソン君に練習がてらにやらせてみたが、
結果は惨憺たるものであった。

残念ながら商品として出すには程遠い物しか焼けないクーに、
サンライズ及び薬草パンの知名度も何もないここで売る物の仕込みを任せる事は出来ない。

川 ゚ -゚)「むう、でも最近はそれなりに食べられるものが焼けるようになって来ただろ?」

( ^ω^)「まあ、素人が朝食に食べるくらいならあれで十分だけど、商品として売るならまだまだだお」

ひとまず、生地をこねる作業とちぎって丸める作業は手伝ってもらうとして、計量と焼くのは僕がやる事に決めた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:27:58 ID:kNximWss0<>
( ^ω^)「パン焼きの準備の間、軽く馬車の周りを掃除しといてくれお」

川;゚ -゚)「やれやれ、結局私がやる事はナカノヒトに来てまで掃除か……」

舗装も悪い上に、あまり綺麗な道路とは言い難いので、
食料品をを売るならせめて馬車の周りだけでも綺麗にしておきたいと思う。

川;゚ -゚)「いや、綺麗じゃないと言うか、ホントに汚いな、ここ」

( ^ω^)「治安の悪さはこういうとこに如実に出るんだお」

クーは文句を言いながらも、何ヶ月か前よりはだいぶ手際良く掃除をする。
うちやバーボンハウスで鍛えられた経験は無駄ではないのだろう。

川 ゚ -゚)「これ以上は無理だ。後は水撒いて終わりでいいな?」

( ^ω^)つ呂「そうだおね。水撒いた後に、仕上げにこれ撒いといてくれお」

川 ゚ -゚)つ呂「何だこれ?」

( ^ω^)「匂い消しみたいなもんだお。芳香剤と言うべきかおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:30:43 ID:kNximWss0<>
僕は薬草をブレンドして消臭力を高めた液体をクーに渡す。
臭い消しというよりは、臭いをより強い別の臭いで上書きするようなものだが。

川 ゚ -゚)「ふーん、こんなものもあったんだな」

( ^ω^)「ヴィップじゃ使うこともなかったんだけど、一応持って来といて良かったお」
   クンクン
川 ゚ -゚)呂「どれどれ……」

川;゚ -゚)「うお? 随分と青臭いな……」

(;^ω^)「そりゃ、容器から直接嗅げばそう思うお。撒けば薄まるから大丈夫だお」

クーは半信半疑の顔をしながらも、水を撒いた後に薬草芳香剤を地面に撒布する。
程なくして、青草のような清々しい匂いがほのかに漂って来た。

川 ゚ -゚)「おお、ホントだ。この位なら許容範囲だな」

( ^ω^)「だお? 悪くないお?」

川 ゚ -゚)「というか、この町ならこれを商品にした方が需要あったんじゃないか?」

(;^ω^)「そう言われるとそうかもしれんお……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:32:20 ID:kNximWss0<>
ヴィップでは使う機会がなかったので、その発想には至らなかったが確かにクーの言う事は一理あるかもしれない。
所変われば品変わるともいうし、こうして違う町に来ると色々と気付かされる事があって有意義だと思う。

( ^ω^)呂「まあ、準備期間が1日じゃこれは量産出来ないお」

( ^ω^)「でも、時間があればナカノヒトじゃどんなものが需要あるか調べたいお」

川 ゚ -゚)「観光には向きそうもない町だが、私も色々と見て回りたいな」

( ^ω^)「いいけど、1人で行動はすんなお?」

川 ゚ -゚)「わかってるって」

今回、クーが僕と組んでるのはこの町の治安の悪さの所為もある。
日中とはいえ、1人で道路を見張っているのは危なっかしいと思ったのだ。
それはツンやトソン君も同意見だったようで、このような配置に落ち着く事になった。

僕としては、聖騎士であったトソン君はともかく、ツンも1人じゃ危なっかしく思っていたのだが、
大丈夫だと押し切られてしまった。
ツンなら要領がいいから大丈夫だとは思うが、少し心配だ。

川 ゚ -゚)「材料は計り終えたのか?」

( ^ω^)「終わってるお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:33:45 ID:kNximWss0<>
川 ゚ -゚)「よし、じゃあこねて丸めるのは任せてもらおうか」

( ^ω^)「頼むお。僕は窯の準備とかやってるから。道路の方の監視も忘れんなお」

僕はクーにこの場を任せて、窯の準備に取り掛かる。
窯といっても大した物ではないので、それほどの時間はかからないだろう。

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「お、わんお、起きたのかお。おはようだお」

(∪^ω^)「わんお!」

先ほどまでぐっすり眠っていたわんわんおがいつの間にか起きていた。
いつもより起きる時間が早いのは、少し周りが騒がしかった所為かもしれない。

( ^ω^)「朝ご飯はもう少し待っててくれお。焼き立てのパンをあげるお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

わんわんおに少し離れているように言い付け、窯の準備を始める。
今日は普段よりはだいぶ少なく焼くので、窯も小さめだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:36:46 ID:kNximWss0<>
( ^ω^)「こんなもんかお。それじゃあ、点火してと……」

それから程なくして窯の準備は終わったのでクーの所に向かう。
分量的にもう終わってる頃だが、これでまだ終わってなければクーは要修行という事になる。

( ^ω^)「出来たかお?」

川 ゚ -゚)「ああ、ばっちり出来てるぞ」

テーブルを見ると、程よい形に丸められたパン生地が歪に並んでいる。
並べ方はともかく、形の方は様になっているのでこれなら合格点だろう。

(∪^ω^)                                (・uu・∪)

( ^ω^)「手際良くなったおね」

川 ゚ -゚)「ブーン店長に鍛えられたからな。これならいいパン屋になれそうだ」

( ^ω^)「技術はあって損はないお」

冗談めかして言うクーに僕は真顔で答える。
今後クーが冒険者として活動するにしろ、王宮に戻るにしろ、出来る事が増えるのは悪い事ではないと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:37:56 ID:kNximWss0<>
川 ゚ -゚)「まあ、そうだな。見聞を広める為にも、私は色々な事を経験すべきだと思うし」

少なくとも、パンをこねるのに必要な力と、粉でくしゃみが出そうになるのを我慢する苦労を知れば、
無闇に穀物の税金を上げようとは思わなくなるとクーは言う。

(∪^ω^)                (・uu・∪)

川 ゚ -゚)「以前よりは食べ物に感謝する気持ちは強まったと思うな」

( ^ω^)「好き嫌いは減ったおね。ピーマンだけはまだ駄目だけど」

川;゚ -゚)「む……、いつか平然と食べられるようになって見せるさ」

( ^ω^)σ「いい心掛けだお。……ところで、さっきから気になってたんだけど、あれは何だお?」

僕はそう言って、パンが乗るテーブルの端の方を指差す。

(∪^ω^)        (・uu・∪)

先ほどからわんわんおがじっと見詰めるその先には、何だか得体の知れない巨大な何かが鎮座している。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:39:40 ID:kNximWss0<>
川 ゚ -゚)「ああ、あれか。折角だから新商品を考えたんだ」

( ^ω^)「新商品?」

川 ゚ -゚)「といっても、形を変えただけだがな」

            (・uu・∪)
            ⊂ x ⊂)
           ⊂__⊂_)て

川 ゚ -゚)「名付けて、パンパンお! 見ての通り、うちのマスコットを模した形だ」

(;^ω^)「センスねえ名前だお……微妙に似てないし」

(∪^ω^)「わんおー」

どうやらわんわんおを模して作ったパンらしい。
パンを使ったにしてはがんばった方だとは思うが、どことなく造形がおかしい上、無駄に巨大だ。

川 ゚ -゚)「何を言う? そっくりじゃないか。なあ、わんお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:42:30 ID:kNximWss0<>
(^ω^∪) プイッ

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「更に言うと、焼けば膨れたりでちょっと形変わるから、もっと似なくなると思うお」

川 ゚ -゚)「……まあ、焼けばわかるさ、この素晴らしさが」

( ^ω^)「……作っちゃったものはしょうがないけど、窯に入るかおね」

(∪^ω^)「わんおー」

中板を外して、1つだけ入れれば焼けるだろう。
クーが作ったものの出来はともかく、形を凝るというのも、
新商品のアイデアとしては悪くないので試してみたい気持ちはある。

( ^ω^)「取り敢えず普通のから焼いて開店準備するお」

川 ゚ -゚)「よし、がんばるぞー!」

(∪^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:44:46 ID:kNximWss0<>
          (∪^ω^)    ((')W(')∪)
          /     |     C )( C)
        c( ,,O_UU_つ   <__<_))-


(;^ω^)「で、取り敢えずパンパンおも焼いてみたけど……」

(∪^ω^)「……」((')W(')∪)

川 ゚ -゚)「……」

(;^ω^)「予想以上に似なくなったおね……」

川 ゚ -゚)「……」

(;^ω^)「これ、店頭に並べるかお?」

川;゚ -゚)「……うん、ごめん。これ、私が責任もって食べるよ」

(;^ω^)「そうしてもらえると助かるお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:46:23 ID:kNximWss0<>
川 ´ -`)「正直すまなかった」

(;^ω^)「ま、まあ、失敗は成功のパパとも言うし、気にすんなお。前向きの失敗ならおkだお」

予想以上の出来栄えの残念さに、ひどく落ち込むクー。
想定内といえば想定内だし、新商品の方向性として僕も試してみたい気持ちもあったので、
そこまで責任を感じなくてもいいのだが。

( ^ω^)「味は美味いはずだから、あんまり落ち込むなお。取り敢えず朝食にするお」

川 ゚ -゚)「……うむ、そうしようか」

川 ゚ -゚)「そうだ、わんお、これ食べるか?」

(∪^ω^) ((')W(')∪)

(;^ω^)「何かすごく嫌そうにしてるんで、顔のとこは止めてあげてお」

僕達は道路を見ながら朝食を取る。
人通りはほとんどないが、一応この時間帯でも警戒は緩められない。
闇オークションの受付けは既に始まっているらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:48:18 ID:kNximWss0<>
川 ゚ -゚)「姿を見せるかね、ボルジョアってやつ」

( ^ω^)「わからんお」

( ^ω^)「昨日の段階では、まだ逃亡はしてないらしいって報告はシブサワさんの方に上がってたらしいけど」

川 ゚ -゚)「奪還の動きも悟られてはいないという話だったが……どうなることやら」

(∪^ω^)「わんわんおー」

道路を見ても、人通りはまばら所か先ほどから全く誰も通っていない。
シブサワさんの説明だと、今日闇オークションに品物を持ち込むのはバックのいない、飛び込みの客がほとんどらしい。

今回はナカノヒトに居を構える組織の資金集めに近いオークションだから、
そういう人間はあまりいないらしいことも聞いている。

( ^ω^)「大体、聖骸布が盗まれてから、結構な時間が経ったのに」

( ^ω^)「今頃飛び込みでオークションに出品ってのもおかしいおね」

川 ゚ -゚)「本来の処分先が使えなくなったか、依頼人と交渉決裂したか」

川 ゚ -゚)「いずれにしろ、何かしらの不測の事態にでも見舞われたのだろうな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:49:39 ID:kNximWss0<>
僕らは朝食を食べ終え、少し早いがお店の営業を開始する事にした。
監視がメインなので、客が来なくても問題はない。

ノリミ゚ -゚彡「で、私はどうすればいい? 客引きか?」

( ^ω^)「そんな感じで僕の目の届く範囲でうろうろしててくれお」

シブサワさんの目もあるので、クーは例のマスクを着けるようだ。
今更意味が無いと思うし、客引きにしては怪しい格好なのでどうかと思うのだが、
クーはこのマスクが気に入ってるらしい。

ノリミ゚ -゚彡「こういう怪しい町に来てるんだし、ミステリアスな雰囲気があった方がそれっぽいだろ?」

( ^ω^)「ミステリアスねえ……」

ノリミ゚ -゚彡「これで露出大目の艶っぽい格好すれば、更にそれらしくなるだろ?」

(;^ω^)「それ、違う職種の客引きっぽくなるから止めろお」

妙に楽しそうに冗談を言うクー。
クエスト本番で張り切っているのだろう。
やる気があるのはいいことだが、色々と不穏な空気でもあるので油断はしないで欲しいものだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:51:10 ID:kNximWss0<>
ノリミ゚ -゚彡「来るのか、ラウンジの聖女とやらは?」

( ^ω^)「わからんお。パン焼いてれば食べに来るかと思ったけど姿見せないし、来ないかもしれないお」

そんな単純には釣れないだろうが、僕の知るあのデレならそのくらいはしそうである。
しかし、姿を見せない現状、今は僕の知らないラウンジの聖女としてこの場に臨んでいるのかもしれない。

( ^ω^)「どっちにしろ、僕らがやるのはボルジョアを捕まえて聖骸布を取り返すことだお」

( ^ω^)「ラウンジの人達と戦うことじゃないお」

ノリミ゚ -゚彡「そうだな……」

僕は自分に言い聞かせるように思いを口にする。
迷って動けなくなるのは避けたいと思う。

(∪^ω^)「わんわんお」

( ^ω^)「お、いらっしゃいませですお」

それから数人の客が店を訪れて来た。
ほとんど売れないと予想していたのだが、焼き立てパンの匂いはなかなか強烈だったらしい。
物珍しさも手伝ったのか、思ったよりは売れた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:52:27 ID:kNximWss0<>
ただ、ほとんどの客の人相が悪かったので、闇オークションの関係者とかそんな感じだろう。
わんわんおを撫でる客もいたり、強面でも平素は案外気さくな人達が多いようだ。

(∪*^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「ありがとうございましたお」

ノリミ゚ -゚彡「意外と売れちゃったな」

( ^ω^)「意外だお。で、そっちの方はどうだお?」

ノリミ゚ -゚彡「外れだな。まあ、客は全員不審者っぽかったが、お目当てのやつはいなかったな」

ノリミ゚ -゚彡「少し捜索範囲を広げるか?」

( ^ω^)「他のルートかもしれんお。大人しく魔法が上がるのを待った方がいいかもだお」

元々僕らの担当は追跡、及び脱出も兼ねてもっとも大きな通りに陣取ってるので、
ボルジョアが通る確率は低いと見ている。
盗品を捌くという日陰の人間の心理的に、もっと目立たない通りを選ぶのではなかろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:54:40 ID:kNximWss0<>
ノリミ゚ -゚彡「そうかもしれんな。我々はここで現状維持に務めるべきか」

( ^ω^)「だお」

ノリミ゚ -゚彡「正直、少し退屈して来たが……っと、また客か。仮面付きとは随分と変わってる」

( ^ω^)「お前が言うなお……って、仮面?」

(^o^) オワオワ

(;^ω^)「こいつは!?」

見覚えのある笑い顔の仮面が、僕の前に現れる。
例の精霊研究の失敗作、シブサワさんの話ではオワタ兵と呼ばれているという事らしかった。

ノリミ゚ -゚彡「敵か?」

(;^ω^)「まさかパンを買いに来たってわけでもないおね」

僕はわんわんおをフードに押し込み、杖を構える。
クーも剣を抜き、オワタ兵に向かって身構える。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 22:57:12 ID:kNximWss0<>
(^o^) オワオワ

( ^ω^)「……仕掛けて来ないのかお?」

ノリミ゚ -゚彡「どうする? こちらから行くか?」

本来なら僕らが襲われる理由はないはずだ。
彼らと関わり合うつもりは今の所ないし、件の魔法使いを捕まえようとしてここにいるわけではない。
一昨日の夜の事を向こうが根に持っていなければだが。

(∪^ω^)「わんわんお!」

わんわんおが僕の背中を叩き、空に向かって吠える。
視線をそちらに向けると、向かいの建物の屋根に複数のオワタ兵の姿が見える。

ノリミ゚ -゚彡「こいつは陽動で、向こうが本隊ってとこか?」

( ^ω^)「僕らが狙われる意味がわからんけど、どうもそんな感じだおね」

ふとある事に気付き、僕は前に飛び出して背後の建物屋根の上を見る。
思った通り、そちらにもオワタ兵の姿があった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:00:14 ID:kNximWss0<>
( ^ω^)「馬車を出すお。挟撃は勘弁だお。それと、黄色の魔法を……」

黄色の魔法を打ち上げ、想定外の事態を皆に告げる、そう言い掛けた矢先、その黄色の魔法が空に輝く。
それが誰のものか確認するよりも早く、さらに2つの黄色の魔法が打ち上げられた。

(;^ω^)「全員襲われたくせえお」

ノリミ;゚ -゚彡「どういう状況なんだ?」

僕達は馬車に飛び乗り、急発進させる。
その背後に、次々とオワタ兵が飛び降りて来るのが視界の端に見えた。

ノリミ゚ -゚彡「どうする?」

( ^ω^)「あいつらは弱いお。でも、倒すのは簡単だけど、その目的がわからないから難しいとこだおね」

ひとまず全員と合流する方がいいと判断し、馬車を走らせる。
仮面の集団に溢れたこの状況なら、ボルジョアがこの道を通ろうとは思わないだろう。
  _、_
( ,_ノ` )「いい判断だ」

( ^ω^)「シブサワさん!」
-<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:01:53 ID:kNximWss0<>
しばらく馬車を走らせた所で、どこからともなく現れたシブサワさんが馬車に飛び乗って来た。
シブサワさんの話だと、僕らの予想通りツン達もオワタ兵に襲われているらしい。

ノリミ゚ -゚彡「どういう状況だ? お前、何かやらかしたのか?」
  _、_
( ,_ノ` )「何もしてねえさ。もしやらかしたならラウンジのやつらだろう」
  _、_
( ,_ノ` )「あのオワタ兵共、この辺りにいる人間を無差別に襲ってるようだ」

例の研究をしている魔法使いが反撃に転じたらしいとシブサワさんは言う。

( ^ω^)「それで、僕らは全員と合流するとして、その後はどう動くつもりですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )「この騒ぎじゃ、ボルジョアの野郎も簡単には姿を見せないだろうからな」
  _、_
( ,_ノ` )「まずは騒ぎを収めるしかあるまい」

ノリミ゚ -゚彡「当然、別料金だよな?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、仕方ないな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:02:56 ID:kNximWss0<>
馬車は一旦闇オークション会場から離れ、オワタ兵のいない辺りまで来てから曲がり、別の大通りに入る。
そしてまた会場方向に向かうと、オワタ兵と戦っている冒険者風の人間を数人見かける。

(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「あれがラウンジの人ですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「その様だな。聖女達とは別の一団だろう」

ノリミ゚ -゚彡「いたぞ、ツンだ」

ξ゚听)ξ「!?」

襲い掛かるオワタ兵を次々と打ち倒すツンの姿が馬車の進路の先に見えた。
ツンもこちらの存在に気付いたようで、馬車を止めようとした僕に手でそのまま進むように指示して来た。

( ^ω^)「ツン!」

ξ゚听)ξ「ええ!」

ツンは少し速度を緩めた馬車に飛び乗り、僕達と合流を果たす。
シブサワさんがツンに現状の説明をする間、僕は次の通りへ向かって馬車を走らせる。

そのまま順調にヒッキーさん、トソン君を回収し、会場から少し離れた場所に馬車を停車させた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:04:25 ID:kNximWss0<>
ノリミ゚ -゚彡「で、この騒ぎの元の魔法使いはどこにいる?」
  _、_
( ,_ノ` )「残念ながらそいつは不明だ」

馬車を止めると、少し待てと言葉を残してシブサワさんが物陰に消える。
そしてすぐに戻って来ると、現状の説明を始める。

どうやら先の短い時間で情報を仕入れて来たらしい。
多分、部下の人を忍ばせていたのだろう。
  _、_
( ,_ノ` )「ラウンジが例の魔法使いの隠れ家を襲撃したらしいが、空振りに終わったようだ」
  _、_
( ,_ノ` )「どこからか情報が漏れていたようだな。で、現在その反撃にあってこの様だ」

ξ゚听)ξ「それにしてもオワタ兵でしたっけ? あれ、無差別に襲い過ぎてません?」

(-_-)「ラウンジは元より、我々や関係ない近隣の住民まで襲われているようですね」
  _、_
( ,_ノ` )「混乱を起こすだけ起こして逃亡を図るつもりかもしれんな」
モグモグ
({(゚、゚トソン「厄介ですね。一般人が襲われているのを黙って見ているわけにもいきませんし」

( ^ω^)「トソン君? 何勝手に薬草パン食ってるんだお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:06:02 ID:kNximWss0<>
ξ゚听)ξ「私が渡したのよ。どうせ商売どころじゃないんだからいいでしょ?」

そういうツンの手にも薬草パンが握られている。
別にかまわないが、これから戦闘になるというのによく食べられるものだ。

ノリミ゚ -゚彡「本来の目的の方はどうだ?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「鋭意捜索中、要するに行方はわからないってとこだ」

( ^ω^)「ラウンジの聖女、もしくは鶏仮面は誰か見てないかお?」

(-_-)「こちらは見かけてませんね」

デレ達の姿はまだ目撃されていないようだ。
僕としては、このまま出会わずに済めばいいと思うが、そう簡単には終わらないのだろう。

ξ゚听)ξ「とにかく、私達は私達で方針を決めない事にはどうしようもないわ」

ツンはシブサワさんの方に視線を向ける。
現状の僕らは雇われ冒険者なのだから、方針の決定はシブサワさんに委ねるしかない。
それに黙って従うかどうかはまた別の話だが。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:08:02 ID:kNximWss0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「俺達の目的を考えれば、宿に引き返して休むってのが正しいんだろうが……」

この状況なら、明日、闇オークションが開催されるか怪しい所で、
ボルジョアを見付けられる可能性も低いだろうからとシブサワさんは言う。

(゚、゚トソン「しかし──」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「ああ、わかってる。こう見えても一応、俺も聖職者だからな」

たとえ教徒でなくとも、罪無き人々が襲われているのを放っておくわけにもいかないとシブサワさんは続ける。

ノリミ゚ -゚彡「そう言えばそうだったな。見た目がアレなんですっかり忘れてた」

ξ゚听)ξ「お世辞にも聖職者には見えないもんね」

(∪^ω^)「わんおー」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「お手柔らかに頼むぜ。こう見えてもおじさんは傷付きやすいお年頃なんだ」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「見知らぬ子供に口が臭いと言われてからは、日に5回歯磨きを欠かさないくらいなんだぞ?」

(;^ω^)「意外とメンタル弱いおね……」

(゚、゚;トソン「恐らく原因であろう、煙草を止めればよろしいのではないかと」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:09:41 ID:kNximWss0<>
(;-_-)「と、とにかく、首謀者を探すという事で、何人かは馬車の守りとして……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「いや、そんな悠長な事は言ってられなくなったようだな」


  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)


ξ゚听)ξ「来たわね」

距離は空けたつもりだったが、いつの間にかこちらにもオワタ兵達が向かって来る。
こいつらに負ける事は考えられないが、馬車は守る必要があるだろう。

( ^ω^)「取り敢えずここは……って魔力反応!? それも大きいお!」

ひとまず馬車の守備と周辺調査の二手に別れる事を提案しようとした時、一際大きな魔力を感知した。
恐らく攻撃魔法の詠唱によるものだ。
僕は魔力を感じる方向に視線を向ける。

(;^ω^)σ「あの路地だお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:14:17 ID:kNximWss0<>
僕の指差す先にツンが向かおうとするが、もう遅かった。
僕はツンの腕を掴み、自分の方へ引き寄せる。

ξ;゚听)ξ「なっ!?」

(;^ω^)「向こうの魔法が完成したお。防御魔法を張るから離れないでくれお」

だが、今から詠唱しても全員を防御するだけの広範囲の守備魔法は間に合わないだろう。
向こうの魔力にもよるが、この感じだと決して弱くは無いから簡単な魔法では防げない。

(;-_-)「ホーリー・サークル!」
  _、_
( ,_ノ` )「ホーリー・ウォール!」

そんな僕の心配を余所に、2人の聖職者が防御魔法を唱える。
ヒッキーさんのスペシャルは僕らを広く包み、シブサワさんの恐らく神聖魔法と思われるものは前面に白い壁を作った。
それから一瞬遅れて、僕らと馬車は炎に包まれる。

( ^^ω)「ホーマホマホマホマ。たわいない連中ホマ」

炎に包まれる僕達の前に、醜悪な顔の太り気味の中年男がおかしな笑い声とともに路地から歩み寄って来る。
この男が、先ほどの炎の魔法を唱えた魔法使いなのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:16:01 ID:kNximWss0<>
魔力は大したものだが、頭はあまりよろしくないようだ。
僕らが今の魔法を防いだ事に気付いてないらしい。

ξ゚听)ξ「セイッ!」

(;^^ω)「ホマッ!?」

ツンが炎の中から飛び出し、魔法使いに攻撃を仕掛ける。
魔法使いは驚愕しながらも、オワタ兵を盾にしてそれを回避した。

(;^^ω)「何で今の魔法を食らって平気ホマ?」
  _、_
( ,_ノ` )「食らってねえからだよ、ホマ野郎」

(゚、゚#トソン「でええええりゃぁぁぁぁッ!!!」

ヒッキーさんが守備魔法を解除すると同時に僕らの周囲にあった火を吹き飛ばし、
シブサワさんとトソン君が魔法使いに襲い掛かる。

トソン君の剣が魔法使いの前に密集していたオワタ兵を薙ぎ倒し、
シブサワさんがそれを飛び越えて魔法使い目掛けて跳び蹴りを放った。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:17:02 ID:kNximWss0<>
(;^^ω)「ホマァァァァッ!?」
  _、_
( ,_ノ` )「チッ、避けやがったか。体型の割には案外素早いな」

辛くも回避した魔法使いだが、右手で抑えているその左腕を見るとローブの袖が切り裂かれている。
よく見るとシブサワさんのブーツに刃物が光っていた。
僕を助ける時も飛び蹴りだったし、あの武器からもシブサワさんは足技が得意なのだろう。

( ^ω^)「お前、何者だお? 何で僕らを狙ったお?」

( ^^ω)「ホマホマホマ。調子に乗るなホマ。たまたまお前らが目に付いたから攻撃しただけホマ」

( ^^ω)「我が名はマルタスニム=ハーセガー。偉大なる魔法使いにして最高の研究者ホマ」

( ^^ω)「私の邪魔をする者は皆殺しホマ」

( ^ω^)「マルタスニム……こいつが……」
  _、_
( ,_ノ` )「例の精霊兵器研究者だ。俺も姿は初めて見るが」

僕はマルタスニムと名乗った男を睨み付ける。
精霊を使った研究とも呼べない非道な人体実験を繰り返す、魔法使いの風上にも置けない男。
常に薄ら笑いを浮かべたその顔は、醜悪極まりない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:19:00 ID:kNximWss0<>
( ^^ω)「ほほう、それを知っているという事は、単なる一般人じゃないホマね?」

( ^^ω)「お前らもあの無能なラウンジ聖教の信徒ホマ?」
  _、_
( ,_ノ` )「ま、そんなとこさ。それより、引き篭もりで逃げ回るばかりだったあんたが」
  _、_
( ,_ノ` )「こうも簡単に姿を見せてくれるとはどういう風の吹き回しだ?」

( ^^ω)「フン、言ってくれるホマね。簡単な話ホマ、もう隠れている必要もなくなったホマよ」
  _、_
( ,_ノ` )「そいつはどういう意味だ?」

( ^^ω)「ハッ、律儀にそれを教えてやる理由も無いホマ」

マルタスニムが右手を挙げると、それまで待機していたオワタ兵が一斉にこちらを向く。
自我は無くとも命令には忠実に従うらしい。
弱いとは言え、これだけ数がいると厄介だ。
  _、_
( ,_ノ` )「ならば……」

ノリミ゚ -゚彡「力ずくで聞きだしてやろう」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:20:57 ID:kNximWss0<>
ξ゚听)ξ∩「あんたのその歪んだ面を張り飛ばしてね」

(∪^ω^)「わんわんお!」
  _、_
( ,_ノ` )「……うん」

( ^ω^)「お前ら、シブサワさんのセリフ取るなお。おっさんちょっといじけてるお」

僕はツン達に目配せをして、さり気なく後方に下がりながらシブサワさんの方を顎で示す。
実際、シブサワさんはちょっと俯き気味で肩が落ちている様に見える。
  _、_
(;,_ノ` )「おっさん言うなよ。いじけてねえし」

( ^^ω)「随分と余裕ホマね。遺言はそれでいいホマか?」

ノリミ゚ -゚彡「ああ、そんなものは必要ないからな」

ξ゚听)ξ「遺言がいるのはあんたの方よ。今のうちにお祈りでも済ませておきなさいな」

( ^^ω)「ホマホマホマ。神などという馬鹿馬鹿しいものに祈る趣味は無いホマ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:23:07 ID:kNximWss0<>
( ^^ω)「それに、神ならば人知を超えた研究を為し得た私が呼ばれるのに相応しい言葉ホマ」

(゚、゚#トソン「思い上がりも甚だしい悪党め。この僕が成敗してくれる」

( ^^ω)「ホーマホマホマ、やれるものならやってみろホマ!」

( ^ω^)「じゃあ、そうさせてもらうお。ksk!」

僕の言葉に、ツン達3人は一斉に横に飛ぶ。
あらかじめ距離を取っていた、僕は速度を上げ一気にマルタスニムに迫る。

(;^^ω)「ホマ!? お、オワタ兵!」

  オワオワ  オワオワ  オワオワ  オワオワ
  (^o^)  (^o^)  (^o^)  (^o^)

(;^^ω)「私を守れホマ!」

    オワー    オワー    オワー    オワー
 Σ\(^o^)/ \(^o^)/ \(^o^)/ \(^o^)/そ
                     三⊂二二二( ^ω^)二⊃「悪いけど、どいてくれお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:25:30 ID:kNximWss0<>
集まってくるオワタ兵を弾き飛ばし、マルタスニムに向かい、一直線で突き進む。
こうなってくると逆にオワタ兵が密集している所為で、マルタスニムは大きく回避する事は出来ないだろう。
対抗呪文を唱える時間も与えない。

( ^ω^)「食らえお! ブーン・クラァァァァッシュ!!!」

            スッ…
           (^o^)

マルタスニムにぶつかる直前、少し小柄な1人のオワタ兵がその前に進み出る。
今更1人増えた所で、僕の必殺技が止められるはずはない。
そう判断し、僕はそのまままっすぐに突き進む。

(;^^ω)「ホマァァァァァッ!?」

(^o^)「……」

鈍い音がした。
人と人がぶつかる音。
スペシャルを使った際に聞こえる、僕にとっては聞き慣れた音でもある

ただ、いつもと違ったのは、スペシャルをぶち当てた相手が、
よろけながらも吹き飛ばされずに耐え切っていた事だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:27:31 ID:kNximWss0<>
(;^ω^)「何で……」
 .,,
(^o^)「……」

僕の一撃を受け止めたオワタ兵は、ただその場に立ち尽くしていた。
受け止める姿勢を取ったわけでもなく、ただ僕の前に立っていただけだ。

だのに、よろけはしたものの全くダメージがない様子で僕の攻撃を防ぎ切った。
 .,,
(^o^)「……」

いや、全くダメージがなかったわけではないらしく、その仮面にはひびが入っていた。
仮面の方はその身体ほど丈夫じゃなかったらしい。

(;^ω^)「クッ……、これはちょっとまずったお」

必殺技を失敗してしまった驚愕から立ち直った僕は、その身が置かれている状況の悪さを理解する。
敵陣のど真ん中で1人立ち往生、オワタ兵ばかりとはいえ、一斉に襲い掛かられたら少々まずい。

( ^^ω)「ホーマホマホマ! 馬鹿め! これで──」
  _、_
( ,_ノ` )「まだだ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:29:06 ID:kNximWss0<>
いつの間にか僕の背後に潜んでいたらしいシブサワさんが僕の肩に手を掛け、それを支点に中空に身を躍らせる。
僕の方に魔法を撃とうとしていたマルタスニムは、突如現れたシブサワさんの動きには付いていけず、
ただ驚愕の目を向けるだけしか出来なかった。
 .,,
(^o^) スッ…
  _、_
( ,_ノ` )「チッ、またお前か」

しかし、先のオワタ兵がいち早く反応し、シブサワさんの攻撃も防ぐ。
これまでのオワタ兵の動きからすると、考えられない素早さと力強さだ。
  _、_
( ,_ノ` )「俺の蹴りも余裕で受け止めやがる……。おい、動けるか?」

( ^ω^)「大丈夫ですお。……明らかに普通のオワタ兵とは違いますおね」

どう考えても、その他大勢のオワタ兵とは別物にしか見えない。
雰囲気はさほど変わらないが、強さは段違いである。

そして別物ならば、考えられる可能性は1つだけ思い当たる。

( ^ω^)「精霊憑依研究の完成型かお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:32:13 ID:kNximWss0<>
僕の言葉にシブサワさんがゆっくりと頷く。
完成型と思しきオワタ兵は、マルタスニムの命令を待っているのか襲って来る事はない。

            .,,
           (^o^)


( ^^ω)「なかなかいい勘してるホマね。その通りホマ」、
  _、_
( ,_ノ` )「チッ……完成してやがったか」

この完成型が話に聞く通りの強さならば、相当厄介な相手だ。
しかも、本を正せばこの完成型も研究の被害者なのだ。
やり辛い事この上ないが、だからといって手を抜ける状況でもない。

( ^^ω)「どうしたホマ? かかって来ないホマ?」

(;^ω^)「……」

パチパチと何かが燃える音がする。
馬車は燃えるのを免れたが、いくつかの建物に火が付いてしまっている。
遠くの方でも煙が見える所からするに、恐らくここに来るまでにマルタスニムが無差別に攻撃して回ったのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:34:15 ID:kNximWss0<>  _、_
( ,_ノ` )「あの完成型は俺がやる」

シブサワさんが僕の方に身を寄せ、小声でそう告げる。
僕が頷くより早く、後は任せるとの言葉を残し、シブサワさんは駆け出した。
 .,,
(^o^)「……」
  _、_
( ,_ノ` )「お前に恨みはないが、しばらく大人しくしててもらうぜ!」

シブサワさんが放った首への上段蹴りを、避ける事無くまともに食らう完成型。
よろめきもせず、蹴り足を掴もうと手を伸ばすが、その時には既にシブサワさんは宙を舞っていた。

( ^ω^)「見惚れてる場合じゃなおいね」

その隙に僕は後方へ下がり、ツン達と合流を果たす。
数多くのオワタ兵に囲まれた状況で呪文の詠唱が出来るほど体捌きには自信がないし、
魔法を使わずに戦い抜くことも難しい。

(゚、゚トソン「参ります!」

代わりにトソン君が走り出し、僕とすれ違うように前に出た。
その後方をツンとクーも追い、オワタ兵を打ち倒してトソン君の援護を図る。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:36:36 ID:kNximWss0<>
トソン君はガリアン・ソードを振り回し、オワタ兵を薙ぎ倒しながらマルタスニムの元へ向かう。
オワタ兵に対して手加減をしているか心配な所だが、
ガリアン・ソードを斬るというよりは殴るという使い方をしている様だ。

何度か戦ってわかったが、オワタ兵は常人に比べてかなり頑丈な様で、
殴り飛ばす程度ならすぐに戦闘復帰してくる事もしばしばだ。
それ故、弱い割には面倒な相手だが、逆に少々強く攻撃しても死にはしないだろう。

( ^^ω)「小癪なガキホマ」

マルタスニムの持つ杖に魔力が込められていく。
どうやらオワタ兵を巻き込むことを厭わず、強力な広範囲魔法を使うつもりらしい。

( ^ω^)「させるかお!」

僕は下がりつつ唱えていた魔法を先に解き放ち、マルタスニムを狙う。

( ^ω^)「サンダー・フォール!」

力ある言葉と共に、天から一筋の雷が落ちて来る。
以前使ったサンダー・ストームの変化版で、範囲は狭いが狙いを定め易い魔法だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:38:13 ID:kNximWss0<>
(;^^ω)「ホマッ!? 味な真似を!」

マルタスニムは唱えていた魔法を解き放ち、雷と相殺させる。
思ったより戦闘慣れしているらしく、僕の力ある言葉から状況を判断して、咄嗟に防御に転じてみせた。

(゚、゚トソン「隙あり!」

その隙を逃さず大上段からトソン君が斬り掛かる。

( ^^ω)「甘いホマッ!」

マルタスニムの合図と共に、後方のオワタ兵が一気に雪崩れ込んで来てマルタスニムの姿を隠す。

(゚、゚;トソン「クッ、卑怯な!」

( ^^ω)「戦いに卑怯もへったくれもないホマ、この甘ちゃん共め!」

「全くその通りだな」

(;^^ω)「ホマッ!?」

頭上から聞こえた野太い声と同時に、何かがオワタ兵の集団の中に突き刺さる。
上空から蹴り飛ばされた何か、完成型はオワタ兵を薙ぎ倒しながらマルタスニムの足元で止まった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:40:51 ID:kNximWss0<>  _、_
( ,_ノ` )「これ以上馬鹿げた研究を続けさせない為にも、今ここでお前を捕らえる」
  _、_
( ,_ノ` )「その方が結果的に犠牲は減るからな」

だから、自分はオワタ兵の生命を殺めるのも厭わない。
シブサワさんはそう宣言し、マルタスニム目掛けて跳躍する。

(;^^ω)「ええい、何をしているホマ! 早くあいつをぶち殺すホマよ!」

マルタスニムの命令に従い、オワタ兵は次々とシブサワさんに襲い掛かるが、
シブサワさんはそれを物ともせず突き進む。
 .,,
(^o^)「……」
  _、_
( ,_ノ` )「またお前か。もうしばらく寝てろ!」

再び立ち上がった完成型の顔面にシブサワさんの足が突き刺さる。
完成型の仮面が音も無く割れ、束ねていたらしい髪が無造作に広がった。

川:::::::::::)「ゥ……ァァ……」
  _、_
( ,_ノ` )「邪魔だ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:42:41 ID:kNximWss0<>
そのまま足で引っ掛けるようにして後方に飛ばす。
シブサワさんは恐らくそうしようとしたのだと思う。
  _、_
(;,_ノ` )「!?」

しかし、飛ばされたのはシブサワさんの方だった。

(;^ω^)「え?」

川 々 )「ヴァァァァァァァッ!」

完成型は突然咆哮を上げ、恐ろしい力でシブサワさんの足を掴んで放り投げた。
そしてすぐに自分もその後を追い、上空を舞う。

川 ゚ 々゚)「ヴァッ!」

その手には、いつの間にか2振りの短い刃物が握られていた。

(;゚ω゚)「シブサワさん!!!」

僕は慌てて、その後を追おうとするが、オワタ兵に囲まれて儘ならない。
オワタ兵を打ち倒しつつ上空を見ると、シブサワさんは高高度に達し、
後は落ちて行くだけの状況で体勢を立て直そうとしている。

何とか姿勢を制御し、正面を向く事に成功したその時には既に、目の前に完成型が迫っていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:46:41 ID:kNximWss0<>
川 ゚ 々゚)「グルァァァァァッ!」
  、_
(;,_ノ )「グッ……」

凄まじい速さで滅茶苦茶に振るわれる鋭利なナイフが、防御もままならないシブサワさんを斬り刻む。
空に赤い鮮血が舞った。

川 ゚ 々゚)「グヴァッ!」
  、_
(;,_ノ )「かはっ……」

一際力強く振り下ろされた一撃が、シブサワさんを地面に叩き落す。
そのあまりの速さに、落下の衝撃を和らげる為の魔法を唱える暇もなかった。

(;゚ω゚)「シブサワさんっ!!!」

ようやくオワタ兵の囲みを抜け、僕はシブサワさんの元に辿り着いた。
同じく囲みを抜けられたのか、ツンの姿も見える。

ξ;゚听)ξ「息はあるわ。でも……」

(;^ω^)「出血がひどいお。どこかで手当てしなきゃ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:48:10 ID:kNximWss0<>
( ^^ω)「ホーマホマホマ! やっと目覚めてくれたホマね。全く、冷や冷やさせられたホマ」

ノリミ゚ -゚彡「目覚めた? どういう事だ?」

クーとトソン君も僕達に合流し、シブサワさんの治療をする僕をかばうように前に出る。
今がどうすべき状況かわかっているのだろう。
マルタスニムに話しかけ、治療の時間を稼ごうとしてくれる。

( ^^ω)「お前達はそいつを完成型だと思ったようだが、実は違ったホマよ」

川 =々=)「グァ……ウァ……」

マルタスニムは自分の目の前に背を丸めて立つ、僕達が完成型だと思ったオワタ兵を顎で示す。
先ほどは急に暴れ出したかのように見えたが、これもオワタ兵ならマルタスニムの命令は聞くのだろう。

ノリミ゚ -゚彡「そいつは完成型じゃないのか?」

( ^^ω)「被験体名『kru』、正しくは、準完成型といった所ホマ」

マルタスニムは状況が有利になった事に気を良くしているのか、上機嫌でクーの質問に答えてくれる。
この分なら後方で馬車を守り、
退路を確保しているヒッキーさんの所までシブサワさんを担いで逃げられるかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:51:14 ID:kNximWss0<>
よくよく見ると、思ったよりシブサワさんの傷は深くなかった。
空中だった事が幸いしたのか、踏ん張りがきかなかったので防御も甘かったが、攻撃も同じく浅くなったのだろう。
今は恐らく落下の衝撃で気を失ってるのだと思う。

( ^^ω)「能力は通常のオワタ兵を軽く凌駕していたホマが、肝心の感情の増幅が上手くいってなかったホマ」

その所為で、生命力は高いが攻撃力の乏しい木偶坊だったとマルタスニムは言う。

( ^^ω)「それがお前達のお陰で、上手く精霊の力を引き出せたホマ」

ノリミ゚ -゚彡「私達のお陰だと?」

( ^^ω)「そうホマ。そいつに憑いていたのは恐怖の精霊シェイドホマ」

( ^^ω)「しかし、感情が抑制されている所為で、恐怖を感じる事もなく」

( --ω)「結果的に増幅どころか精霊とのアクセスすら出来ず仕舞いだったホマ」

よほど機嫌がいいのか、聞かれてもいないことをぺらぺらとしゃべってくれるマルタスニム。
わからない点も多々あるが、何となく原理のような物はわかる。
要は精霊を憑依させても、それを全く使えてなかったのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:54:05 ID:kNximWss0<>
( --ω)「それがお前達が痛めつけてくれたお陰で、感情のないこいつにも」

( --ω)「本能的な恐怖、死の恐怖を感じる事が出来たホマ!」

( --ω)「そして恐怖は増幅され、狂気に変わる」

( --ω)「ここに精霊兵器は完成したホマ!」

( --ω)「お前達には礼を言わねばならないホマね! ホーマホマホマ」

川 ゚ 々゚)「ヴァヴァ……ヴェイァ……」

醜悪な顔を歪めて高笑うマルタスニムと、どこを見ているのかわからない虚ろな目で佇む完成型。
狂った研究者と狂った研究の結果が僕達の前に立ち塞がる。

( --ω)「さあ、被験体名『kru』、いや、我が研究の成果、精霊兵クルゥよ」

( ^^ω)「やつらを皆殺しに……」

(;^^ω)「って、いねええええええっ!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:57:31 ID:kNximWss0<>
ようやくマルタスニムが気付いた時には、僕らは既に馬車の近くまで後退していた。
途中で悦に入り過ぎて全くこっちを見ていないようだったので、こっそり逃げ出したのだ。

ξ゚听)ξ「全く馬鹿で助かったわね」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「けど、状況は最悪だお。ぶっちゃけ、逃げるしか手が無いと思うお」

ノリミ;゚ -゚彡「あのような犯罪者を前にして腹立たしいが、今はそれしかないか……」

(-_-)「シブサワさんは大丈夫です。ただ、戦えるような状況ではない事には変わりありませんが」

(゚、゚トソン「あの愚か者が近付いて来てます。すぐに撤退すべきかと──」

突如、背後で大きな爆発音が鳴り響いた。
同時に吹き荒れる熱風、立ち上る黒煙、そして崩れ落ちる家屋。
すぐにそれが魔法による攻撃だと理解は出来た。

ξ;゚听)ξ「無茶苦茶やってくれるわね、あの潰れ饅頭顔」

ノリミ;゚ -゚彡「トソン、お前も馬を宥めてくれ! 今逃げ出されたら洒落にならん」

(;-_-)「とにかく、退路を立たれる前にすぐに脱出を……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/24(木) 23:59:38 ID:kNximWss0<>
(;^ω^)「違うお……」

ξ;゚听)ξ「何が違うのよ? あの馬鹿の無差別攻撃に巻き込まれる前に逃げるべきでしょ?」

(;^ω^)「違う、そうじゃないお……」

今の魔法を唱えたのは、マルタスニムではない。

( ゚゚ω)

その証拠に、マルタスニムも足を止め、驚愕の表情で僕らの背後を凝視している。

ξ;゚听)ξ「じゃ、じゃあ今のは……」

誰が唱えたかわからないが、少なくともマルタスニムではないのは確かだ。
加えて、マルタスニムの様子からもそれはマルタスニムの仲間ではないのだろう。

かといって町を攻撃するような魔法使いが僕達の仲間であるとは思えない。
更にもう一点、僕はある事に気付いていた。

(;^ω^)「今の魔法、全然魔力を感じなかったお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/25(金) 00:01:38 ID:lg7cxnlEO<>来てたか
読んで来る支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/25(金) 00:02:28 ID:/6DQO7oY0<>
ノリミ゚ -゚彡「魔力を感じなかった? それがどうかしたのか?」

正しくは詠唱している気配を感じなかったのである。
建物を倒壊させるだけの高威力の魔法であるのに関わらずだ。
普通なら有り得ない話である。

しかし、その有り得ない話に僕らは聞き覚えがあった。

ξ;゚听)ξ「それって……」

(;^ω^)「灰衣の……魔法使い……」

その結論に達した僕らの言葉を掻き消すように、家屋から音を立てて一層大きな炎が上がる。
天高く燃え上がる炎は、ナカノヒトの町の全てを飲み込まんとせんかのごとく、その勢いを激しくした。



     第三十一話 動乱のナカノヒト 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/25(金) 00:07:45 ID:/6DQO7oY0<>
三十一話は以上です

この辺りはプロットをほとんど書き出してないとこなので、後々に響くミスが怖いかなあと
次話は完成してますので、多分早めに来ると思います

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/25(金) 00:11:39 ID:YO309U1sO<>乙
相変わらず筆が速いな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/25(金) 00:18:00 ID:6Ar7WD.Q0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/25(金) 00:24:47 ID:3FAA09PI0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/25(金) 00:25:26 ID:tfW3/5sYC<>わんお可愛いよわんお
あへ顔パンには笑ったw
それと戦闘も疾走感があっていいね!<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/25(金) 00:30:18 ID:lg7cxnlEO<>乙だ
次回も期待<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/25(金) 08:44:54 ID:FuF56xUo0<>ナイスパン屋<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 01:20:36 ID:GLvYbgqsO<>アヘ顔パンツ屋とは卑猥な…<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 09:45:12 ID:tdA/J4c60<>\ ⊂[J( 'ー`)し
  \/ (⌒マ´
  (⌒ヽrヘJつ
    > _)、
    し' \_) ヽヾ\
          丶_n.__
          (U^ω^)
              ̄   (⌒
            ⌒Y⌒<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 13:31:12 ID:Ep50QYEo0<> (・uu・∪)
      \        rっ
   \ \ \∨(.   ||
    \ l\  (.  |.ハ,,ハ   
      ) |_\⌒  ('A` )  
      ⌒)   \ \  〉   _二二二つ
       ⌒  \ \   /
               \_ノ
                 \\
                  \\
                      レ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 16:41:27 ID:5wxdATsg0<>>>289
このAAいつみてもドクオに耳があることに違和感を感じるのは俺だけか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 16:57:53 ID:C.JtCp6s0<>ちょっと五回歯磨きしてくる<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 21:48:01 ID:IJqwRvZQ0<> \ ⊂[J( 'ー`)し
  \/ (⌒マ´
  (⌒ヽrヘJつ
    > _)、
    し' \_) ヽヾ\
          丶_
         (\ ∞ ノ
        彡ヽ)_ノ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 21:59:04 ID:X.jAL76sO<>灰衣の魔法使いって何だったっけ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 22:02:06 ID:Pzz2dPCUO<>騎士団の一部隊?を倒したやつじゃなかったかな。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 22:09:31 ID:dTidizaE0<>(・uu・∪)
      \        rっ
   \ \ \∨(.   ||
    \ l\  (.  |/∞\   
      ) |_\⌒  ('A` )  
      ⌒)   \ \  〉   _二二二つ
       ⌒  \ \   /
               \_ノ
                 \\
                  \\
                      レ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:43:20 ID:hkY0cu1Q0<>
 〜 ナカノヒトの町 北部中央通り 〜


(;^ω^)「どうしますかお、ヒッキーさん?」

(;-_-)「え? わ、私ですか?」

ξ;゚听)ξ「シブサワさんが動けないんですから、決断するのはヒッキーさんの役目ですよ!」

(;-_-)「そ、そうですね。し、しかし、今動いて大丈夫でしょうか?」

(゚、゚;トソン「派手に動くと正体不明の敵に狙われる可能性はありますが……」

ノリミ;゚ -゚彡「動かなければマルタスニムと火の手が襲ってくる、か……」

(∪;^ω^)「わんおー」



     第三十二話 戦火の逃走劇


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:45:07 ID:hkY0cu1Q0<>
(;^ω^)「とにかく、ここに留まるわけにもいきませんお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

僕達は今、苦しい状況に立たされている。
ナカノヒトの町で盗人ボルジョアを捕まえるべく待ち伏せていたはずが、
精霊兵器の研究者であるマルタスニムという男に急襲され、シブサワさんが負傷してしまった。

しかも正体不明の敵、恐らくは灰衣の魔法使いではないかと思しき者の影まで見え、状況は最悪だ。

(;-_-)「そうですね。火の回り方次第では、私達も焼け死んでしまいます」

(;-_-)「ここは私が馬車に防御魔法を張りつつ、後退するしかないでしょう」

ノリミ゚ -゚彡「そんな事してヒッキーさんの魔力がもつのか?」

(;-_-)「もたせるしかないでしょう? やらなければ死ぬだけです」

いつになく強い調子でヒッキーさんはクーに答える。
年長者として聖職者として、僕らを守ろうと必死なのだろうと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:46:35 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)「僕も風の結界を張りますお。それで何とかなればいいんですが……」

ξ゚听)ξ「……そんなのんびりした事言ってられなくなって来たわよ?」

ツンが僕達を守るように1人前に出る。
その視線の先には、こちらに走り寄る1つの影がある。

川 ゚ 々゚)

ノリミ゚ -゚彡「厄介な奴が真っ先に来たか」

(゚、゚トソン「ここは僕が引き受けます。皆さんはお逃げください」

トソン君はツンの横に並ぼうとしたクーの更に前に進み出る。
現状、あの精霊兵器完成型ことクルゥに勝てる可能性が一番高いのはトソン君である事は確かだ。

しかし、不意を突かれたとはいえ、歴戦の勇士であるシブサワさんをも倒した相手である。
勝てる可能性そのものがかなり低いと考えざるを得ない状況で、トソン君をクルゥに挑ませるわけにはいかない。

d(゚、゚トソン「大丈夫です。あいつを倒してすぐに追い付きますから、先に行っててください」

ノリミ;゚ -゚彡「いや、それは駄目だ。逃げる事を最優先に考えるんだ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:48:03 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)「クーの言う通りだお。逃げるなら全員で逃げるお」

ξ゚听)ξ「……と言っても、逃げる準備が整うまで、足止めは必要でしょ?」

そう言うとツンは、僕の返事を待つ事無く、クルゥの方に走り出す。

(;^ω^)「ツン、無茶だお!」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ、あくまで足止めに努めるから、その間に逃げる算段をね!」

川 ゚ 々゚)「グオァァァァァッ!」

ξ゚听)ξ「ハッ!」

止める暇もなく、ツンは既にクルゥと交戦状態に入る。
手数を減らし、防御に徹する事で言葉通り足止めに終始している様だ。
ツンを援護すべく、トソン君もそれに参戦する。

( ^ω^)「ヒッキーさん!」

(-_-)「はい、すぐに防御魔法を張りますよ」

ツンの思いを無駄にせぬ様、すぐに逃げる準備に取り掛かる。
勿論ツンを置いて行くつもりはなく、逃げる時には無理矢理にでも引っ張って行く事も辞さない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:50:07 ID:hkY0cu1Q0<>
ノリミ゚ -゚彡「マルタスニムはこちらに来る気はないらしいな」

( ^ω^)「きっとさっきのでビビったんだお。こっちとしてはラッキーだお」

恐らく正体不明の襲撃者の事を警戒しているのだろう。
マルタスニムの援護が加わればクルゥの足止めすら難しくなるだろうから、本当に助かったと思う。

(-_-)「準備は整いました」

( ^ω^)「ツン!」

ξ゚听)ξ「わかったわ!」

川 ゚ 々゚)「グルォァァァァッ!」

ξ#゚听)ξ「このッ!」

クルゥの凶刃が煌めき、鮮血が舞う。
ツンは左腕を薄く切り裂かれながらも、カウンターで右の拳をクルゥのボディに食らわせた。

川 ゚ 々゚)「グォッ!?」

ツンの一撃でよろめくクルゥだが、その表情は一切変わらない。
普通の人間なら悶絶もののボディブローでこれなのだから、恐るべきタフさだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:51:16 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)「食らえお! ウインド・ブロウ」

川 ゚ 々゚)「グルォォッ!?」

ツンがクルゥから離れる隙を作る為、僕は突風を起こす魔法を唱える。
殺傷力はほぼゼロの、相手を吹き飛ばす為の魔法だ。

既によろめいていた所為もあってか、クルゥは踏ん張る事が出来ずに後方に吹き飛ばされていく。
ついでに後方のオワタ兵も巻き込んだので、マルタスニムの視界も奪えただろう。

ξ゚听)ξ「乗ったわ!」

ノリミ゚ -゚彡「よし、トソン! 馬車を!」

(゚、゚トソン「はい!」

トソン君が馬に鞭を入れ、馬車を急発進させる。
僕達は何とかこの場を切り抜ける事が出来たが、まだ安心は出来ない。

町の至る所で火が上がり、所々道が塞がれている。
元々よく知らない町で、道も不案内だ。
逃げ切れるかどうかはわからない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:53:07 ID:hkY0cu1Q0<>
ξ゚听)ξ「取り敢えず東へ向かいましょう」

少しでも知っている場所へ向かうべきだとツンは主張し、
僕達がこの町に来た時に使った東門の方へ向かう事を提案する。

現在僕らがいる場所は、町の北部中央辺りに位置する。
町の北門もあるが、北は山の中に続く道で馬車向きではないからツンの意見に賛成した。

(;-_-)「今の所、正体不明の襲撃者が攻撃を仕掛けてくる気配はありませんね」

(;^ω^)「油断は出来ませんお。そもそも、その気配を感じさせずに攻撃してくるんですし」

僕とヒッキーさんは防御魔法の維持に務めており、周辺を警戒する余裕はない。
このまま魔法を維持しっぱなしは辛いが、あの威力を考えると緩めるわけにもいかないのだ。

( ^ω^)「ツン、さっき受けた傷は大丈夫かお?」

ξ゚听)ξ「かすり傷だから平気よ」

ツンはそう言ったが、未だ出血は続いている様で、押さえていた布を赤く染めている。
僕はクーに止血用の薬草をツンに塗ってくれる様に頼んだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:54:38 ID:hkY0cu1Q0<>
(;-_-)「すみません、本来なら私が止血の魔法を使えばよいのですが……」

ξ゚ー゚)ξ「大丈夫ですよ。防御魔法で手一杯でしょうし、気にしないでください」

トソン君が馬車の御者を務め、僕とヒッキーさんは魔法で馬車を防御している。
シブサワさんは気を失っており、ツンとクーは馬車内で治療、わんわんおは大人しく馬車内に座っているので、
現状、周辺の警戒に当たれるものがいない。

ξ゚听)ξ「軽くでいいからね。すぐに終わらせて、後方の監視に付かないと……」

ノリミ゚ -゚彡「ああ、わかった。だが、監視は私がやるからツンは休んでろ」

一瞬、抗議しようとする素振りを見せたツンだが、クーの有無を言わせぬ視線に渋々頷く。
クーは手早く治療を終え、馬車の後部に向かった。

( ^ω^)「あんまり無茶しないでくれお」

ξ゚听)ξ「してないわよ……と言いたいとこだけど、さっきのはちょっとヤバかったわ」

攻撃を捨てて防御に徹したことで何とか対峙する事は出来たが、
まともに戦っても勝てる相手ではないと肌で感じたとツンは言う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:56:12 ID:hkY0cu1Q0<>
ξ--)ξ「やり辛いのよね。人間、ううん、生き物と戦ってる感じがしなくて」

単純に力や速さもすごいが、呼吸に始まり、体の動かし方や痛みに対する反応など、
どれも普通の人間とは思えない相手だったらしい。

( ^ω^)「それって、精霊によって無理矢理動かされてるって感じかお?」

ξ゚听)ξ「そうそう、そんな感じかもね。精霊かどうかはわからなかったけど」

それからしばらく馬車を走らせたが、何者に襲撃される事もなく、もう間もなくして門に辿り着こうとしていた。

ξ゚听)ξ「……このまま逃げ切れればいいけどね」

( ^ω^)「状況が状況だし、このまま逃げていいのかってのもあるおね」

現在、ナカノヒトの町は至るとこで火災が起きており、ひどい有様だ。
途中で逃げ惑う人々も数多く目にしたが、逃げ切れてない住民もいるだろう。

自分達の生命も危うい状況では、そんな事を考える余裕もなかったが、こうして落ち着いてくると、
本当にこれで良かったのか気になってしまう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:57:31 ID:hkY0cu1Q0<>
(-_-)「……」

特に聖職者であるヒッキーさんは、その事が気になっているのだろう。
先ほどからずっと苦しげな表情を浮かべて、時折小さく首を振る仕草が見て取れる。

( -ω-)「でも、戻った所で何が出来るのかってのもあるお」

ξ゚听)ξ「……」

(-_-)「……」

僕の言葉に2人は表情を曇らせ、黙り込む。
想定外の襲撃だったとはいえ、今回僕らは後手後手に回り過ぎた。
1つ1つの対応も最上の手が取れたとは言い難かったと思う。

最終的に負傷者2名で退却という、ひどい結果に終わったのだ。

( ^ω^)「シブサワさんが言ってたように、僕らは甘かったのかおね……」
  _、_
( ,_ノ` )「……そうでもねえさ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 22:59:33 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)「シブサワさん! 気が付いたんですかお? 傷は痛みませんかお?」

(∪^ω^)「わんわんお!」
  _、_
( ,_ノ` )「ああ、大丈夫だ。すまんな、迷惑を掛けた」

シブサワさんは身を起こし、馬車の端に背を預けて胡坐をかく。
途中、傷が痛むのか辛そうな表情を見せることもあった。
  _、_
( ,_ノ` )「やれやれ、もう年かね。ああも無様に負けちまうとはな」

ξ゚听)ξ「不意打ちでしたし、仕方ない部分もあると思いますよ」
  _、_
( ,_ノ` )「ありがとう。だが、そろそろ引退を考える時期かもな」

シブサワさんは自嘲気味に笑みを浮かべ煙草を取り出す。
立場上、失敗は許されない仕事が多い状況で、この様ではどうしようもないと吐き捨てる様にシブサワさんは言う。
失敗がそのまま死に繋がるような仕事なのだからと。
  _、_
( ,_ノ` )「お前さん達に助けられちまったな。感謝するぜ」

( ^ω^)「クエストの仲間なんですから、当然ですお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:01:26 ID:hkY0cu1Q0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「おっと、愚痴が長くなっちまったな。現状の説明を頼む」

僕はシブサワさんが気を失ってからの事を説明する。
それほど時間が経ったわけでもないので、大きく状況は変化していないから説明は短くて済んだ。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ何だ、その状況を切り抜けられたお前らが甘いなんて事はないさ」

( ^ω^)「お……、さっきの話ですかお?」

( ^ω^)「でも、僕はオワタ兵を殺すのを躊躇って、全力で戦えませんでしたお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「それが普通さ。今回は相手が悪かっただけだ」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「本来ならああいう例外の相手をする為に、俺みたいな裏の人間がいるんだ」

普通の冒険者が相手をする様な奴じゃないとシブサワさんは言う。

ξ゚听)ξ「でも、今後もああいう相手と遭遇するかもしれませんし」

ξ゚听)ξ「その時は相手が悪かったですまない事も出て来るかもしれません」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「かもな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:03:48 ID:hkY0cu1Q0<>
ξ゚听)ξ「それなら……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「だからと言って、そう簡単に割り切れるものじゃないだろ?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「答えはこれから時間を掛けて考えるもんさ」

ξ--)ξ「言いたい事は何となくわかりますけど、今時間を掛けてられる状況ですかね?」

ツンはシブサワさんの言葉に納得がいかないようで、皮肉を交えて答える。
僕も正直納得いかないが、今後皆の身が危うい状況に陥ったら、殺すのも辞さない覚悟で魔法を撃つと心に決めた。
実際に撃てるかは、その時になってみないとわからないが、みすみす大切な人達を失うわけにはいかない。

( ^ω^)(じいちゃんはどんな気持ちで魔法を撃ってたのかおね……)

ふと僕の中に、そんな疑問が湧いて来た。
竜との戦争だけでなく、人間同士の戦争を終わらせる為に戦いに介入したじいちゃん。
撃てば人が死ぬとわかっている魔法を、戦争を終わらせる為に使って来たのだ。

それに比べれば、僕の葛藤なんてささやかなものかもしれない。
けれど、本質的な物は同じかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:05:44 ID:hkY0cu1Q0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「まあ、確かに、時間がなさそうだな……」

(;^ω^)「!?」

シブサワさんの言葉で僕は1つの不自然な気配に気付いた。
どうやら追い付かれたらしい。

( ^ω^)「クルゥ、精霊兵器完成型が追い付いて来てるみたいですお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「この分だと直に追い付かれるか……」

( ^ω^)「恐らくは」

(;-_-)「今張っているのは対魔法障壁ですので、物理攻撃を仕掛けて来られると防げませんね」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「馬でも攻撃されて馬車が横転したらちょっとまずいか」

ξ゚听)ξ「止めて迎撃するしかなさそうですね」

僕達は東門まであと少しという所で、馬車を止めざるを得なくなった。
他のオワタ兵やマルタスニムの姿はなく、クルゥ1人の様だ。
ならばさっさと足止めして再び逃げるべきだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:08:05 ID:hkY0cu1Q0<>
クルゥがわざわざ追って来た事からするに、マルタスニムは僕らを標的としたのだろう。
もたもたしていると他のオワタ兵も追い付いてくる可能性は高い。

ノリミ゚ -゚彡「向こうは1人だ。仕留められるならここで……」
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「どうだろうな。行けると思うか?」

シブサワさんは自分と同じくクルゥの相手をしたツンに話を振る。
ツンからはいつものような強気な回答は返って来ず、無言で首を振るだけだった。
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「だよなあ。このケガじゃおじさんは役立たずだしな」

( ^ω^)「じゃあ、足止めの方向で。僕が何とかしますかお」

川 ゚ 々゚)「ァァ……ウォァ……」

進み出た僕の前に、クルゥが少し離れた建物の上から降って来る。
相変わらず見ているのいないのかわからない目付きなので、目潰しの類はきかなさそうだ。
  _、_
( ,_ノ` )y-・~「いっそ、おじさんに任せて逃げるって手もあるぞ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:10:40 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)「役立たずは大人しく馬車の中に引っ込んでてくださいお」

シブサワさんの魅力的な申し出を丁重にお断りし、クルゥの方に向かう。
武器での近接戦闘では絶対に勝てないのはわかっているので、打ち合うつもりはない。
それはトソン君に任せると決め、道を空けるべく横にずれる。

(゚、゚トソン「いざ、尋常に勝負!」

川 ゚ 々゚)「グルァ……」

先ほどよりはだいぶ緩慢な動きでクルゥはトソン君の斬撃を受け止める。
力強さは変わっていないが、速度はかなり落ちている。
ここまで走って来たので疲れたなんて事は無いと思うが、これはチャンスかもしれない。

(゚、゚#トソン「せいっ! やあっ! とうっ!」

川 ゚ 々゚)「グォ……」

防御されるのもかまわず、トソン君は立て続けに打ち込む。
一見無駄の様に見えるが、恐らくトソン君の狙いはクルゥの持つ得物の方だと考えられる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:12:36 ID:hkY0cu1Q0<>
(゚、゚#トソン「チェストーッ!」

川 ゚ 々゚)「グルォ!?」

力強く振り下ろされた一撃に、クルゥの持つナイフの様な得物の片方が破壊される。
続けて放たれるトソン君の攻撃を、クルゥは残った片方の得物で防ごうとした。

( ^ω^)「ここだお!」

僕は防御姿勢で動きの止まっているクルゥの元に走り、唱えていた魔法を解き放つ。
片方の手は空いているが、迎撃されても素手ならそう怖くはない。

(#^ω^)「サンダァァァァ・ブレェェェェイクッ!」

雷の精霊の力を借り、自らの手に雷を宿す上位魔法サンダー・ブレイク。
僕の使える数少ない超接近戦用魔法だ。
僕は光り輝く掌をクルゥの胸に打ち付けた。

川 ゚ 々゚)「グォォォォォォォォッ!!」

短い破裂音がして、クルゥの身体が痙攣しながら後方によろめく。
如何に丈夫なクルゥとて、心臓に電気ショックを与えられたらしばらくは動けないはずだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:15:28 ID:hkY0cu1Q0<>
(;^ω^)「というか、普通死ぬおね……」

下手をすれば殺しかねない威力のある魔法だったが、案外すんなり撃つ事が出来た。
複雑な思いはあるものの、もしそうなっても後悔はしないつもりだ。

ノリミ゚ -゚彡「今なら捕獲出来るんじゃないか?」

(;^ω^)「あいつを押さえ付けてられる縄とか思い付かないお」

(゚、゚トソン「僕を縛って自由を奪った魔法の縄があるじゃないですか?」

( ^ω^)「うん、その発言は誤解を招きそうだから止めてくれお」

(;^ω^)「つーか魔力切れだお。これだけ魔法使えば流石にもたないお」

戦闘でそれほど魔法を使ったわけでもないが、逃げる際にはずっと防御魔法を維持していたのだ。
今はまともに魔法が使える状態じゃない。

かといって止めを刺すかといわれれば、それは躊躇ってしまう。
結局、シブサワさんが言ったように時間を掛けて考えてしまっている自分がいるのだ。
一旦は覚悟したのに、これではやはり甘いと言われても仕方がない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:17:37 ID:hkY0cu1Q0<>
ξ゚听)ξ「今はあれは放って置くしかないわね。すぐ逃げましょう」

( ^ω^)「そうするお。皆馬車に……って、あれ? シブサワさんは?」

ふと気付くと、シブサワさんの姿がない。
一刻を争う時に何をしているのかと思ったら、程なくしてすぐ側の路地から出て来た。
  _、_
( ,_ノ` )「すまない、ちょっと情報をな……」

ノリミ゚ -゚彡「何かわかったのか?」
  _、_
( ,_ノ` )「ああ、悪い知らせと悪い知らせ、それに悪い知らせがあるがどれから聞く?」

(;^ω^)「全部同じじゃないですかお。どれでもいいですお」

ξ゚听)ξ「それよりもまず逃げる方が先よ。とにかく乗って!」

「そうはさせんホマ!」

背後から聞こえて来た声は、振り向かずとも察せられる粘着質で厭らしい響きがあった。
これが1つ目の悪い知らせだと、シブサワさんの溜め息交じりの呟きが聞こえる。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 23:18:59 ID:KdBAknY20<>僕もクルウちゃんの胸をパンチしたいです<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:19:09 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^^ω)「私の邪魔をしたお前達を逃がすわけには行かないホマ」

ξ゚听)ξ「あら、てっきり物陰に隠れて縮こまってるものだと思ったら、お早いお着きね」

( ^^ω)「フン、あれがお前達の仲間じゃないなら恐れるに足らんホマ」

マルタスニムは厭らしい笑みを浮かべ、僕達の前、門へ続く道に立ち塞がる。
僕達が防御魔法を張って逃げた事で、あの攻撃が僕達の仲間のものではないと察したのかもしれない。
先回りして待ち構えられるとは、マルタスニムの事を侮り過ぎていた。

ノリミ゚ -゚彡「だがお前の切り札はあそこでお寝んねしてるぞ?」

( ^^ω)「ほほう、なかなかやるホマね」

( ^^ω)「やはり私から離れ過ぎると命令が曖昧になって良くない様だホマ」

( ^^ω)「クルゥ、いつまで寝てるホマ。さっさと立つホマよ」

ヽ川 ゚ 々゚)ノ「グァァァ」

(;^ω^)「なっ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:20:59 ID:hkY0cu1Q0<>
マルタスニムが声を掛けると、クルゥは何事もなかったかの様にぴょこんと起き上がった。
いくらなんでも痺れが取れるのが早過ぎる。

( ^^ω)「私はそんな所で寝てろと命令してないホマ。こいつらを全員殺せと命令したはずホマ」

川 ゚ 々゚)「グルァ……」

クルゥはその言葉に従う様に、僕らの方へ向かって来る。
若干動きがぎこちないのは、先の魔法の影響がまだ残っているからかもしれない。
同時に背後のマルタスニムの周囲にはオワタ兵が集まって来て、僕達は囲まれる形になってしまった。
  _、_
( ,_ノ` )「どうやらあいつにとって命令は絶対らしいな」

(;^ω^)「起きろと言われたから起きたって事ですかお? 無茶苦茶過ぎますお」

命令を理解しても、身体が動かなければ遂行出来ないはずだ。
それでも動けてしまう精霊兵器の恐ろしさを、僕は改めて実感する。

ξ゚听)ξ「で、どっちを突破する? こうなったら馬車を捨てて各自散り散りに逃げるしかないと思うわよ?」

(゚、゚トソン「無念ですがそれしかなさそうです。私が片方を惹き付けますので……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:23:52 ID:hkY0cu1Q0<>  _、_
( ,_ノ` )「残念ながらそれは却下だ」

(;^ω^)「お?」
  _、_
( ,_ノ` )「お前らには馬車で逃げてもらわねばならない理由があってだな。それが2つ目の悪い話なんだが」
  _、_
( ,_ノ` )「まあ、説明は後だ。ひとまず凌ぐぞ。その後直接マルタスニムを狙う」

どう考えても、この状況ではツンの示した方針の方が上策だと思う。
このまま囲まれた状況で凌いでも、援軍の当てがない以上、ジリ貧だと判断するしかない。
となればシブサワさんが示した後者の策を狙うしかないだろう。

( ^^ω)「この状況で逃げないとは、なかなか肝の据わった連中ホマね」

( ^^ω)「よし、お前達若い連中は殺さず捕まえて新たな研究材料にしてやるホマ!」

ノリミ゚ -゚彡「慎んでお断りさせてもらう」

僕らは円陣を組み、互いの背を守るように位置取って戦う。
どちらかと言えば戦場を駆け回って戦う方が得意なツンやシブサワさんだが、今は守りに徹してもらう。

(;^ω^)「つーかそもそもシブサワさん、戦えるのかお?」
  _、_
( ,_ノ` )「まだ杖は無用のお年頃さ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:25:34 ID:hkY0cu1Q0<>
(゚、゚トソン「足が小刻みに震えてますけど大丈夫ですか?」
  _、_
( ,_ノ` )「なに、ちょっと身体が冷えただけだ」

止めても無駄だと判断して、僕はこれ以上何も言わない事にした。
誰かを守りながら戦うのは苦しい状況でもある。

(;^ω^)「ヤバくなったらお前だけでも逃げるお?」

(∪;^ω^)「わんわんお……」

僕はフードの中のわんわんおに小声で話しかける。
今更だが万が一わんわんおに何かあったら、それは竜と人間の関係に今後とてつもなく大きな禍根を残してしまうので、
それだけは避けねばならない。

川 ゚ 々゚)「グルゥァァァァァ!」

ξ゚听)ξ「あんたの相手は私がしてあげるわ!」

ツンはクーをかばうように位置を交代し、クルゥの攻撃を受け止める。
ケガもあるし、ツンもそう長いことクルゥの相手は出来ないだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:27:13 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^^ω)「ホマホマホマ! 足掻けホマ! その顔が絶望に染まる様を私に見せるホマ!」

(゚、゚#トソン「黙れ! この顔面福笑い!」

(#^^ω)「ホマッ! このガキ! 誰が顔面福笑いホマ!」

ノリミ゚ -゚彡「いや、福笑いは顔面しかないんだし、福笑いだけでいいだろ?」

(;^ω^)「そういう話じゃねえお」

(゚、゚トソン「それもそうですね。よし、じゃあ、この福笑い野郎!」

(#^^ω)「このクソガキ……人が大人しくしてれば調子に乗りやがってホマ」

トソン君の挑発が癪に障ったのか、マルタスニムは足を止めて呪文の詠唱を始める。
現状、固まっている僕らは遠距離から強力な魔法で一網打尽にされる恐れがあり、それは避けねばならない事態だ。
しかしながら魔法の詠唱は大きな隙を生むのも確かで、この場を突破するにはそこに賭けるしかないと僕は判断していた。

( ^ω^)「今だお!」

僕は自分とトソン君になけなしの魔力でエア・シューズの魔法を掛け、マルタスニムの元に走る。
オワタ兵を薙ぎ倒し、呪文が完成する前にマルタスニムを倒すべく距離を詰める。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:29:08 ID:hkY0cu1Q0<>
(;^^ω)「ホマッ!? オワタ兵、私を守れホマ!」

よほど慌てたのか、詠唱を続けながらオワタ兵に指示を出すマルタスニム。
詠唱を止め、下がればいい話なのだが、そこまで頭が回らないのだろう。

( ^ω^)「トソン君!」

(゚、゚#トソン「くらえぇぇぇぇッ!」

オワタ兵を防いだ僕の背を踏み台にトソン君が跳躍する。
トソン君に踏まれない様に、フードを被ってわんわんおは退避させておいた。
そのままトソン君は、上空から渾身の一撃をマルタスニム目掛けて叩き付ける。

(;^^ω)「ホマァァァァッ……」

( ^^ω)「なーんちゃって。ウインド・ブロウ!」

(;^ω^)「なっ!?」

(゚、゚;トソン「うわっ!?」

マルタスニムは上空のトソン君目掛けて風の魔法、先ほど僕が使ったのと同じ突風を起こす魔法を放つ。
空中で防ぐ手立てのないトソン君は大きく後方に吹き飛ばされる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:31:15 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^^ω)「あまりなめるなホマ。お前らの考える事なんてお見通しホマ」

(;^ω^)「クッ……ここまでかお……」

奇襲に失敗し、分断されてしまった僕らがこれ以上攻撃を凌ぐのは厳しい状況だ。
あとは逃げの一手しかないが、それすらも難しいかもしれない。

( ^^ω)「そう悲しそうな顔をするなホマ。若い割にはよくやったホマ。最後にお前の名を聞いて……」

 オワー
(#)^o^))゚゚ω)「ホマァァァァッ!?」

(;^ω^)「え……?」

突如後方から飛んで来たオワタ兵がマルタスニムの横っ面に激突し、マルタスニムはもんどり打って倒れる。
気付けば嘶きと鬨の声が前方から聞こえていた。

(;^ω^)「馬……? って、これって……」

見覚えのある紋章の付いた旗を掲げた騎馬隊が、次々とオワタ兵を打ち倒して行く。
転倒していたマルタスニムは慌てて起き上がり、脇の路地に向かって逃げて行った。

(;^ω^)「ニューソク騎士団!? どうして……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:33:38 ID:hkY0cu1Q0<>  _
(#゚∀゚)「邪魔だァァァッ! 道を空けやがれ!」

(;^ω^)「ジョ、ジョルジュさん!?」
  _
(#゚∀゚)「あ?」
 _
(;゚∀゚)「って、ブーン!? 何でお前がここに?」

駆っていた馬を急停止させ、僕の前に立つ人は、紛れもなくソクホウにいるはずのジョルジュさんであった。
僕らは驚きながらも、後続の馬に跳ね飛ばされぬ様道の端に移動する。

(;^ω^)「それはこっちのセリフですお? 何でジョルジュさんがここにいるんですかお?」

そう言ってから僕は1つ思い当たる事があるのに気付いた。
ジョルジュさん達が追っていた相手、灰衣の魔法使いの影がこの町で感じられた事に。
  _
( ゚∀゚)「って事は当たりか。わざわざソクホウから馬かっ飛ばして来た甲斐あったぜ」

( ^ω^)「そういう事ですかお。しかし、何ですかお、この状況は? 何でニューソク騎士団と一緒に?」
  _
( ゚∀゚)「ギブアンドテイクってやつさ。フィレンクトのおっさんとちょっとな……」

詳しい事はまた後でと、ジョルジュさんは馬に跨る。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:36:29 ID:Hp6BMsIQO<>ジョルジュ久しぶりだな
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:36:35 ID:hkY0cu1Q0<>  _
( ゚∀゚)「すまねえ。やつを追いかけなきゃならねえからな」

( ^ω^)「いえ、正直あのタイミングで来てくれて助かりましたから、十分ですお。ありがとうですお」
  _
( ゚∀゚)「そうか? それなら良かったが。それじゃあ、また後でな」

( ^ω^)「はいですお。灰衣の魔法使いには気を付けてくださいお」
  _
( ゚∀゚)「おう。……ちなみに、俺以外も来てるからな」

( ^ω^)「お……」

そう言い残し、ジョルジュさんは馬を駆り、一瞬にして視界から消えて行った。

周りを見ると既に立っているオワタ兵の姿はない。
粗方ニューソク騎士団によって倒された様だ。
マルタスニムもクルゥの姿もないが、マルタスニムが逃げたのは目にしたし、クルゥも恐らくは逃げたのだろう。

从 ゚∀从ノシ「ブーン!」

( ^ω^)「お、ハインさん!」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/26(土) 23:37:38 ID:CZLT3F2gO<>はやっ、なんという投下ペース! 
 
今から読む、がんばれ支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:40:28 ID:hkY0cu1Q0<>
ジョルジュさんが残した俺以外という言葉の意味を考えるまでもなく、
ハインさんがこちらに手を振って近付いて来ているのに気付く。
ツン達と一緒にいた所からするに、また1から状況を説明する必要もないだろう。

从 ゚∀从「大変だったみたいだな」

(;^ω^)「割と本気で洒落になってませんでしたお」

从 ゚∀从「そうか。……よくがんばったな、偉いぞ」

思い掛けず慣れ親しんだ顔を見た安堵からか、つい素直に弱音を吐いた僕をハインさんががっしりと抱き締める。
突然の事に驚いたが、それよりも先に緊張の糸が緩んだらしく、力が抜けて倒れそうになってしまった。

从;゚∀从「おいおい、ホントに大丈夫か?」

(;^ω^)「す、すみません。ちょっと魔力を使い過ぎたみたいで……」

从;゚∀从「ちょっとまずいかこれは。おい、ミルナ!」

ハインさんが僕を支えたまま後方に声を掛ける。
それに気付いたミルナさんが僕の方へ走って来た。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:42:24 ID:hkY0cu1Q0<>
( ゚д゚)「久しぶりだな、ブーン」

(;^ω^)「お久しぶりですお、ミルナさん」

从;゚∀从「挨拶はいいから、馬車まで運んでやってくれ」

( ゚д゚)「ああ、すまんな。どれ……」

(;^ω^)「お手数かけますお」

( ゚д゚)「よいしょっと」
つ∪^ω^)

(;^ω^)「……」

从 ゚∀从「……」

(* ゚д゚) ヨシヨシ
つ∪^ω^)「わんわんお!」
  _,
从 ゚∀从「……オーケィ、ミルナ。まずはわんすけを地面に降ろせ。話はそれからだ」

(; ゚д゚)「いや、すまん……つい、な……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:44:54 ID:hkY0cu1Q0<>
僕はミルナさんに支えられ、馬車の所まで戻る。
皆無事のようだが、ヒッキーさんの姿が見えない。
  _、_
( ,_ノ` )「町の住民の救助に向かったよ」

( ^ω^)「お、それでいないんですかお」

ようやく戦闘が終わったばかりで疲れているはずなのに、頭の下がる思いだ。
逃走中も随分と気にしてたようだったし、本来戦闘なんかより、人助けの方がヒッキーさんにはあっていると思う。
  _、_
( ,_ノ` )「1人抜けるのは痛いが、4人でがんばってもらうしかないか」

( ^ω^)「お? 何をがんばるんですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )「言っただろ? お前らには馬車で逃げてもらわねばならない理由があるって」

( ^ω^)「聞きましたけど、もう逃げる理由はないですお?」
  _、_
( ,_ノ` )「そうだな、じゃあ言い方を変えよう」
  _、_
( ,_ノ` )「お前らには馬車で追い掛けてもらいたい」

( ^ω^)「誰をですかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:46:10 ID:hkY0cu1Q0<>  _、_
( ,_ノ` )y━・~「なあ、ブーンよ、お前、俺達の本来の目的忘れてねえか?」

シブサワさんは呆れた様に肩をすくめ、煙草に火を点ける。
僕は本来の目的という言葉で、やっとシブサワさんが何を言いたいのか理解出来た。

(;^ω^)「あ、ボルジョア?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「あいつ、この騒ぎでヤバいと思ったのか、南へ逃げたらしい」

( ^ω^)「南というと……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「キマスタの町だ。そこからラウンジにでも渡るつもりだろうな」

なるほど、この騒ぎですっかり忘れかけていたが、僕らの本来の目的はボルジョアから聖骸布を取り戻すことだ。
そのボルジョアが逃げたのなら、それを追うのは道理である
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「キマスタまでは馬車でここから約5日、向こうも馬らしいから急ぐ必要がある」

( ^ω^)「把握。すぐに行きますかお」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「頼む。申し訳ないが、俺はここに残らねばならん」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:49:04 ID:hkY0cu1Q0<>
この状況の後始末をしなければならないからと、シブサワさんは辺りを見回す。
未だ町の中では、煙が上がっている箇所がいくつも見られる。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「この傷じゃ、足手纏いになるというのもある」

( ^ω^)「寝てなくて大丈夫なんですかお?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「そんな暇はないさ。騎士団との折衝もあるしな。やれやれ、面倒な事だ」

それからすぐに僕達は馬車の準備をした。
シブサワさんが交渉したらしく、馬は騎士団の所有する良い馬を借りられたので、多少は速度が上がるだろう。

( ゚д゚)「俺達も手伝えれば良かったんだが……」

ξ゚听)ξ「準備を手伝ってくれただけで十分ですよ」

ノリミ゚ -゚彡「ジョルジュ達を追わなくていいのか?」

从 ゚∀从「この後追うから気にするな。つーかお前、ダサい仮面着けてるよな」

(゚、゚;トソン「すみません、もう少しオブラートに包んだ発言をお願いします」

ハインさん達とは初対面のトソン君の紹介も既に済んでいるようだ。
親しげに話している様子が見て取れる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:51:25 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)「マルタスニムは逃げたんですかおね?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「恐らくな。まだ町中にいるかもしれないが、それも騎士団には説明しておくさ」

从 ゚∀从「……」

ξ゚听)ξ「どうしたのよ、ぼうっとして?」

从 ゚∀从「あ……? いや別に……あのおっさん、口臭ひっでえなって」

ξ゚听)ξ「止めなさいよ。そういうのは思ってても口にしないのがマナーよ。聞こえるとあのおっさん凹むから」
  _、_
( ,..ノ` )y━・~「……デダ、マダミカクニンナンダガ」

(;^ω^)「ちゃんと口開けてしゃべってくださいお。口臭は気になりませんから!」

僕達は馬車に乗り込み、出発に備える。
比較的元気なクーが御者台に付くが、疲れてる事には変わらないのでこまめに交代すべきだろう。
  _、_
( ,_ノ` )「おっと、言い忘れてた、ブーン」

( ^ω^)「何ですかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:53:42 ID:hkY0cu1Q0<>  _、_
( ,_ノ` )「今日の騒動中に姿を見せなかった、ラウンジの聖女達がボルジョアを追っているらしいって話だ」

( ^ω^)「お……」

散々な1日だったが、デレ達と事を構えずに済んだ事は安堵していたのに、それは気が早かったらしい。
今日の騒ぎを避け、既に追っているとなると先にボルジョアに追い付かれる可能性が高い。
  _、_
( ,_ノ` )「聖女達は2人組だったらしいから、恐らく鶏野郎も一緒だろう」

( ^ω^)「出来れば、デレ達に追い付かれる前にボルジョアに接触したいですおね」
  _、_
( ,_ノ` )「その方が賢明だろう。幸い、向こうは聖女にあのデカブツだ」
  _、_
( ,_ノ` )「馬術に長けてるとは思い難いから、何とかなるかもしれん」

ノリミ゚ -゚彡b「馬の扱いなら任せろ。これでも馬術は得意な方なんだ。目一杯飛ばして行く」

(;^ω^)「馬を潰さないようにお願いするお」
  _、_
( ,_ノ` )「任せたぜ。それと最後に1つ……」

( ^ω^)「言い残し多いですおね。手早くまとめてくださいお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:55:56 ID:hkY0cu1Q0<>  _、_
( ,_ノ` )「まあ、そう言うな。……聖骸布を確保したら、宮廷魔術師殿に届けてくれ」

( ^ω^)「お? ビコーズさんにですかお? 教会ではなく?」
  _、_
( ,_ノ` )「そうだ。頼んだぜ」

( ^ω^)「いいですけど、理由を教えてくださいお」
  _、_
( ,_ノ` )「残念、時間がない。また今度な」

(;^ω^)「ちょ、そのくらいすぐ言えるでしょうお?」
  _、_
( ,_ノ` )「こないだの貸しをチャラにしてやるから」

( ^ω^)「それは今日助けた分で返しましたお」
  _、_
( ,_ノ` )「それもそうか。じゃあ、1つ貸しておいてくれ」

極めて軽い口調だが、目は真剣そのもののシブサワさんに、僕は渋々頷いて返す。
気になる話だが、届け先がビコーズさんならそのビコーズさんから理由を聞けるかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:58:15 ID:hkY0cu1Q0<>
ノリミ゚ -゚彡「話は終わったか? 出すぞ?」
  _、_
( ,_ノ` )「ああ、やってくれ。気を付けてな」

( ^ω^)「シブサワさんも無理し過ぎないでくださいお」
  _、_
( ,_ノ` )「わかってるさ。それじゃあな」

( ^ω^)ノシ「またですお」

( ゚д゚)ノシ「元気でね、わんおちゃん」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕達はシブサワさん達に別れを告げ、再び馬車を走らせる。
色々あり過ぎた1日はようやく終わりそうだが、クエストに関しては何1つ終わらせられていない。

( ^ω^)(……負けたおね、僕達は)

マルタスニムは想定外の相手で、それもかなりの使い手だった。
だったとしても、僕達が負けた事には変わりはない。
負けた事も自体、あんな非道な奴を捕まえられなかった事も悔しくてたまらない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:59:49 ID:hkY0cu1Q0<>
( ^ω^)(また戦う機会は来るだろうかお……)

このままシブサワさんなり騎士団なりによって、マルタスニム捕まえられればそれが一番良い。
けれど心のどこかで、再戦の機会を望んでいる自分もいる。

( ^ω^)(でも、今のままじゃ勝てないおね……)

ノリミ゚ -゚彡「どうした? 中で休んでなくていいのか?」

隣で黙り込んで座っていた僕にクーが声を掛けてくる。
大丈夫だと答えようとしたが、それよりも速く再度クーが口を開いた。

ノリミ゚ -゚彡「まだ終わっていないさ」

( ^ω^)「お?」

ノリミ゚ -゚彡「今回は私達の完敗だったが、クエストはまだ失敗じゃない」

( ^ω^)「お……」

ノリミ゚ -゚彡「だから、そんな顔するなよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/26(土) 23:59:59 ID:nyh7gtOoO<>支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/27(日) 00:01:19 ID:4tN.ZBj20<>
どうやらクーに僕の思いは見透かされていたらしい。
一番何も出来なかったのは自分なのだと、クーは悔しそうな顔をする。

川=゚ -゚)「だが、落ち込んでばかりもいられない。私たちにはまだ出来る事がある!」

クーはそう力強く宣言すると、着けていた仮面を外し、馬車の中に放り投げた。

川=゚ -゚)「絶対に聖骸布は私達が取り返すぞ!」

( ^ω^)(……仮面の跡ついてるお。ダセえ)

川=゚ -゚)「おい、返事はどうした?」

( ^ω^)ノ「お、おー、絶対取り返すお!」

川=゚ー゚)「うむ、それで良い」

クーは仮面の跡をつけたまま、にこやかな笑みを向けて来る。
僕はそれがおかしくて、ようやく笑顔を見せる事が出来た。



     第三十二話 戦火の逃走劇 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 00:02:42 ID:6uKAriiE0<>おつ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/27(日) 00:03:19 ID:4tN.ZBj20<>
三十二話は以上です
長いシリーズになりつつありますが、想定内です

次回はぼちぼちは書けてますので、まあ、その内に

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 00:03:46 ID:.2l/J31M0<>おつ
福笑いが意外と強かった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 00:04:55 ID:mQgC/v3AO<>追いついたらちょうどエンドクレジットだった<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/27(日) 00:05:54 ID:lPl2xFvoO<>乙
安定のミルナさん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 00:08:16 ID:PVirsirk0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 01:52:50 ID:fpRxo2NI0<>オツ コレカラモガンバッテクレヨナ<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/27(日) 02:26:47 ID:qJ5XK3lcO<>おパンつ

>>345うわっ君口臭いなぁー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 02:38:26 ID:YdfYAdCA0<>乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/05/27(日) 12:14:12 ID:lie9pLasO<>乙!クーはなんだかんだでいい王さまになれる素質ありそう<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/27(日) 13:25:32 ID:cNkqPt8g0<>そういやこのスレにわんわんおだけどわんわんおのくせにわんわんおのフリをしたわんわんおが居たような…<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/27(日) 17:35:45 ID:kZmpYQHIC<>わんお可愛いよわんおやっぱりミルナ達はいいわあ、ほんといいキャラしとる
それと福笑いと口くっさいおっさんには笑わせていただきました
乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/28(月) 00:28:29 ID:Gmo9WNIIO<>乙。いつも楽しみにしてます。どうか無理の無いペースで<> 名も無きAAのようです<><>2012/05/30(水) 13:43:30 ID:SVXtnw/U0<>半年いかずに三十話だもんなあ
相当なペースだよな<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/03(日) 22:09:06 ID:HYShd72MO<>しばらく来てかないから、もうそろそろ来る頃だと思って見たら、前回の投下からまだ一週間しかたってなかった…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/03(日) 22:14:54 ID:cvNo/jyU0<>楽しみ過ぎて毎日更新されてないか見にきてしまう…<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/06/04(月) 02:06:29 ID:X8lnhX/20<>次話は一応書けてますが、まだ見直しが終わってないのと、ちょっと投下時間が取れないなあと
あんまり間が空きそうなら、2回か3回に分けて投下するかもしれません<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/05(火) 01:17:15 ID:YsHd/32EO<>気長に待ってるよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/05(火) 12:48:16 ID:/NO5bROg0<>舞ってる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/05(火) 12:50:12 ID:tE7bLg0Y0<>ユックリデイイカラ ガンバッテクレヨナ<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/06(水) 14:03:48 ID:F1hNqbtM0<>期待して待ってるぜ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/06(水) 18:03:40 ID:q.65aSJo0<>と、煽る…<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:46:24 ID:MdioEx2c0<>
 〜 キマスタの町 北門 〜


( ^ω^)「やって来ましたキマスタの町」

(゚、゚トソン「港町だけあって、潮の香りが強いですね」

川 ゚ -゚)「どことなく、国籍不明な感じの町だな」

ξ゚听)ξ「何だかニューソクの町っぽくないわね」

(∪*^ω^)「わんわんおー」

( ^ω^)「どこからか魚の焼けるいい匂いがするお!」



     第三十三話 聖骸布争奪戦


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:47:40 ID:MdioEx2c0<>
( ^ω^)「……などと、のんびりしてられる場合でもないんだおね」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

僕とツン、クーとトソン君、それにわんわんおはニューソク大陸最南端の町、キマスタに来ている。
ヴィップからはかなり遠い場所で、ここに来るのは全員初めてなので少々浮かれているかもしれない。

しかしながら僕らはここに観光に来ているわけではなく、聖骸布を盗んだボルジョアを捕まえる為に来ている。
結局道中では追い付けず、ここキマスタの町まで辿り着いてしまったので、
あとは既にボルジョアが船で逃亡していない事を祈るばかりだ。

(゚、゚トソン「さて、まずは港でしょうかね」

川 ゚ -゚)「だな。しかし、全員で行くのも効率が悪いし、二手に別れるか」

クーの提案に乗り、僕とツンとわんわんおは港へ、クーとトソン君は宿場街を調べる事に決めた。

( ^ω^)「港は南西側だから、ここに集合だと遠いお」

ξ゚听)ξ「まずは全員で中央に向かって、集合場所を決めましょうか」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:48:54 ID:MdioEx2c0<>
川 ゚ -゚)「それがいいだろうな」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ひとまず全員で町の中央に向かって歩く。
馬車は既に入り口近くの預かり所に預けてある。
場合によってはまた馬車で追い掛ける必要が出て来るかもしれないから、町中に停めるのは避けた。

 キョロキョロ
(((゚、゚トソン))「かなり活気のある町ですね」

おのぼりさんよろしく、トソン君がきょろきょろと回りに目を奪われながら歩いている。
気付けば僕やツン達も、視線をあちこちに飛ばしていた。

無論、ボルジョアを探す為にそうしているのだが、気を付けないと町の景色に目を奪われたりしていて、
ボルジョアの事が頭から消えている時がある。

( ^ω^)「メシューマとはまた違った感じの活気だおね」

メシューマもここも商売人が元気なのは変わりないが、こちらは海産物やラウンジからの輸入品であろう物が多々見られ、
明らかにメシューマとは雰囲気が違う。
店の人も漁師を兼ねている人が多いのか、どことなく海の男的な荒っぽい印象を受ける。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:50:32 ID:MdioEx2c0<>
川*゚ -゚)「門の辺りでも結構匂って来てたが、近付くと更に強烈だな」

(∪*^ω^)「わんお!」

ξ゚听)ξ「まずは情報収集が先よ? 食べるのはあとあと!」

( ^ω^)b「あ、この貝串ってやつを5本──」

          イッタソバカラァァァッ!!!   ココデカワネバ オトコガスタルオ!
           ξ#゚听)ξ三///つ(#)゚ω゚).・。 ’

殴られながらも何とかツンを宥め、このあたりの特産らしい珍しい貝の身の串焼きを購入する。
散々文句を言っていたツンだが、食欲を著しく刺激する香ばしい匂いには抗えなかったようだ。

川*゚〜゚)「これは美味いな。ソクホウやヴィップにはない味だ」

ξ゚〜゚)ξ「味付けが独特ね。あ、でもどこかで……」

( ^ω^)「前にシャキンさんが使ってた香辛料の味に近いお。あれ、南の方のだったのかもしれんお」

(゚、゚*トソン「美味しいです」

(∪*^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:51:42 ID:MdioEx2c0<>
買ってすぐ歩きながら食べるのは、元聖騎士であるトソン君に咎められるかと思ったが、特に気にしてないようだった。
ヴィップでそういう暮らしに馴染んだとかではなく、元々ソクホウにいた頃も、
クーに引っ張り回されて買い食いする事はあったらしい。

川 ゚ -゚)「この町はしばらく滞在したくなる食べ物の美味さだな」

僕に借金を返し終わったら、しばらくこのあたりに滞在しようかとクーは言う。
以前の話だと、北の方に行きたいと言っていた気もするが、
歴史的な意義が食べ物にあっさり負ける辺りはクーらしいとも思う。

ξ゚听)ξ「さあ、この辺りでいいでしょ。ここからは真面目に情報収集よ」

中央広場と書かれた公園のようなスペースに辿り着いた僕らは、海の神様を象ったらしい銅像の前を集合場所に決め、
二手に別れる。

ξ゚听)ξ「クー、買い食いばっかりしてないでちゃんと探すのよ?」

川;゚ -゚)「か、買い食いなんてしないさ! ホントだぞ!」

( ^ω^)「トソン君、しっかり頼むお」

(゚、゚トソン「はい、任せてください。何かありましたら、またあの魔法を打ち上げるという事で」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:52:58 ID:MdioEx2c0<>
クー達と別れ、僕達は町の南西側に向かう。
それなりに混み合う通りを抜けると、海からの潮風が強く感じられるようになって来た。

ξ゚听)ξ「ホント、港町って感じね」

(;^ω^)「これ、あとで乾くとべたつきそうだおね」

(∪^ω^)「わんおー」

情報収集しながら港内を進むも、手がかりは得られず、僕らは船が係留してある埠頭に辿り着く。
そこでもボルジョアの写真を見せたり話を聞いてみたが、目撃証言はない。

( ^ω^)「来てないのかおね?」

ξ゚听)ξ「まだ到着してない可能性もあるわね」

ナカノヒトの町からキマスタの町まで、通常、馬車の旅なら5日ほどかかる。
しかし、僕達はクーの巧みな馬術により、4日ほどで到着出来ていた。

ξ;--)ξ「巧みというか無謀というかね……」

( ^ω^)「正直、最初はちょっと生きた心地がしなかったおね」

(∪;^ω^)「わんわんお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:54:01 ID:MdioEx2c0<>
自己申告で得意と言っていたクーの馬術の腕は、確かになかなか巧みなものだったと思う。
しかし同時に、かなり飛ばし過ぎていたのも事実だ。

ξ゚听)ξ「直線が多い街道でよかったわよね」

( ^ω^)「慣れると結構楽しかったお」

ただ、飛ばし過ぎに見えながらも、馬を潰さぬよう適度に加減していたのは感心させられた。
それ以外にも交代制で夜通し走る日も設けたので、かなり時間の短縮が出来た。
しかし、無理をし過ぎて体調を壊したりしては本末転倒なので、そこは気を付けている。

( ^ω^)「傷はもう大丈夫かお?」

ξ゚听)ξ「何とかね。あんたも体調はもういいの?」

( ^ω^)「魔力はばっちり回復してるお」

4日もあれば若い僕なら魔力は完全に回復する。
いくら急いで追って来たといっても、その間に馬車内で十分に休めたのだ。

( ^ω^)「しっかし、ソクホウの港に比べるとすごい船の数だおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:55:31 ID:MdioEx2c0<>
ξ゚听)ξ「港の規模じゃニューソク大陸一なんでしょ?」

(∪^ω^)「わんわんお」

漁業は勿論の事、ラウンジとの交易も盛んなキマスタの港は、
これまで見た事もないような色んな船が何隻も停泊していた。
と言っても、船自体がそんなに馴染みがあるわけでもないので、どれも珍しく見えるのは当たり前かもしれない。

ξ゚听)ξ「でもこうして並んでるのを見ると、どれも大体の作りは同じよね」

( ^ω^)「まあ、そうだおね。規模と動力の違いぐらいで、フォルムは似てるお」

ξ゚听)ξ「それに比べると、私達が乗った唯一の船って、随分変わってたんだと今更ながら気付かされたわ」

( ^ω^)「あれはだいぶ特殊な例だおね」

僕達が唯一乗った事のある船、アニジャさんの船はここにあるどれとも一線を画した形状をしていた。
機工技術の賜物という話ではあったが、それを差し引いても何というか変であったと思う。

ξ゚听)ξ「特に色とかね」

( ^ω^)「あれは技術関係なく変だおね」

(∪^ω^)「わんお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:57:51 ID:MdioEx2c0<>
そんなことを話しながら歩いていると、ひしめき合うように並んでいた船から少し離れた、
というより離されたように見える場所に、どこかで見覚えのある船の姿があった。

ξ;゚听)ξ「ねえ、ブーン、あそこにある船……」

(;^ω^)「うん、あの他の船が近付くのを避けてるように見える船の事だおね?」

(∪^ω^)「わんおー」

まさかと思って目を擦ってみるも、やはりその船はそこにある。
見間違いようもないくらい特殊な船なので、これはやはりそういう事なのだろうか。

(;^ω^)「アニジャさんの船だおね?」

そう思って近付いてみるが、船に人気はない。
となると、船の持ち主であるアニジャさんないし、オトジャさんは町中の方にいるのかもしれない。

ξ゚听)ξ「ま、今は用もないし放っておきましょ」

あったら挨拶ぐらいはするが、それよりも先に僕達にはやる事がある。
僕達はアニジャさんの船の側を離れ、再び聞き込みを開始した。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 00:59:30 ID:MdioEx2c0<>
ξ;゚听)ξ「駄目ね。全く情報がないわ」

(;^ω^)「やっぱりまだ来てないのか、それとも既に出航しちゃったのか……」

後者の方なら、何かしら情報があってもおかしくないが、
シブサワさんの話ではボルジョアは逃げ足は一級品という事だったし、上手く隠れて船に乗ったのかもしれない。

( ^ω^)「さて、どうしたもんかおね」

ここ、キマスタの町に知り合いはいない。
ギルドや今回の依頼主でもある教会に情報を仕入れに行く事も考えられるが、この町で騒ぎを起こしたわけでもない、
一介の旅人と変わらないボルジョアの情報があるかは難しい所だ。

ξ゚听)ξ「いつからいるかはわからないけど、駄目元でアニジャさん達を探してみる?」

( ^ω^)「うーん、可能性としてはギルドの方が高そうだけど」

( ^ω^)「犯罪者ってことで、一応情報を押さえてる可能性も……お!?」

そんな事を考えながら歩いていると、曲がり角を飛び出て来た人にぶつかってしまった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:01:22 ID:MdioEx2c0<>
(;^ω^)「っと、すみませんお」

向こうは走って来たし、向こうが悪いような気もするが、僕にぶつかってその人は転倒してしまったので、
ひとまず僕が謝る事にした。

(;・3・)「何やってんだYO! 気をつけろYO!」

(;^ω^)「あ、いや、でも……って!?」

いきなり怒り出した男は、勢いよく立ち上がった所為で深く被っていたフードが脱げ、その顔を顕にした。
それを見た瞬間、どこかで見たことがある顔だなと漠然と考えていたが、
すぐにそれが捜し求めていた男の顔だという事に気付いた。

(;゚ω゚)「ボルジョアアアアアッ!?」

(;・3・)「な、何で俺の名前を知ってんだYO!? も、もしや奴らの仲m──」

ξ#゚听)ξ「ハッ!」

(;゚3゚)「グボァッ!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:03:03 ID:MdioEx2c0<>
事実確認や状況把握や交渉など色々な手順をすっ飛ばして、ツンのボディブローがボルジョアに突き刺さる。
そしてツンは、前のめりに倒れるボルジョアの背にあった円筒形の背負い袋の中を漁りだした。

ξ゚听)ξつ□「これかしらね?」

(;^ω^)「うん、それっぽいけど僕はツンに色々言いたい事あるお」

思わぬ幸運からいともあっさりと目的を達せられてしまったが、何だか少し納得がいかない。
色々とボルジョアから聞きたいこともあったし、聖骸布を取り戻そうと意気込んでいた僕も気持ちの向け所とか、
不完全燃焼感が半端ない。

ξ゚听)ξ「じゃあ、どうすれば良かったのよ?」

(;^ω^)「どうすればとかいう話じゃなくてだおね、もう少し、何かこう、ね?」

(;^ω^)「それっぽく取り返したかったんですお」

(∪^ω^)「わんお」
  _,
ξ゚听)ξ「面倒臭いわねえ……。よし、わかった」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:05:01 ID:MdioEx2c0<>
ツンは聖骸布を綺麗に畳み、僕に恭しく差し出す。
何だかよくわからないが、僕はそれを受け取った。

ξ゚听)ξ「ジャーン! 勇者ブーンは聖骸布を手に入れた!」

(;^ω^)「いや、そういうんじゃなくてだおね……」

ξ゚听)ξ「あ、そうか」

ξ゚听)ξ「ジャーン! 魔法使いブーンは聖骸布を手に入れた!」

(;^ω^)「そこが気に入らないわけじゃないお」

僕はツンにもういいからと謝罪し、受け取った聖骸布を脇に挟む。
ひとまずクエストは成功という事で、納得しようと思う。

( ^ω^)「しかし、何であんなに慌ててたのかおね、ボルジョア。盗んだ経緯とかも色々気になるお」

ξ゚听)ξ「話はこいつが起きたら聞けばいいでしょ? それよりほら、こいつをいつものように縛ってよ」

(;^ω^)「僕が常日頃から縛ってるように聞こえる言い方は止めてくれお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:06:26 ID:MdioEx2c0<>
そう言いながらも、言われるままにボルジョアを魔法のロープで縛る。
そういえばボルジョアをどうするか聞いてなかったが、教会にでも預ければいいのだろうか。

(;^ω^)「お?」

ふと気付くと、周りの人たちから奇異の視線を向けられている。
それもそうだろう。
いきなり通行人を殴り倒し、その荷物を漁る僕らは明らかに不審者どころの騒ぎではない。

ξ゚听)ξ「あー、こいつ盗人だから。私達は悪くないわよ? 仕事よ、し・ご・と」

ξ゚听)ξ「文句があるならヴィップの魔法道具屋サンライズまでどうぞ」

(;^ω^)「そういう名前の広め方すんなお」

そんなツンの言葉に、ざわついていた声は更に高まったが、多分、見た目の印象とかで納得してくれたのだろう。
冒険者スタイルの僕らと、ボロ布のような、いかにも隠れる為の服を着たボルジョアとでは、怪しさの度合いが違う。
特に咎められる事もなく、周囲にいた人は1人、また1人とその場を離れて行った。

単に関わり合いたくなかっただけかもしれないが、どちらにしろ助かったと思う。

ξ゚听)ξ「さあ、クー達に合流しましょうか」

( ^ω^)「そうするかお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:08:19 ID:MdioEx2c0<>
ボルジョアは馬車を持って来るなりトソン君に手伝ってもらうなりして後で運ぶ事にして、
適当な柱に結び付け、僕達は集合場所まで戻ろうとした。

しかし、歩き出した僕らの前に、今一番会いたくなかった人がいつの間にか立ち塞がっていた。


           ζ(゚ー゚*ζ


( ^ω^)「デレ……」

ζ(^ー^*ζ「やっほー、お久しぶり、ブーン君。といっても数日振りぐらいだねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「それと、そっちの子は、はじめましてだね」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ζ(゚ー゚*ζ「わんお君も久しぶり。元気だった?」

(∪^ω^)「わんお!」

ξ゚听)ξ「……ツン=ディレードよ。あんたがラウンジの聖女さん?」

ζ(゚ー゚*ζ「その呼ばれ方は好きじゃないんで、気軽にデレちゃんって呼んでくれると嬉しいね、ツンちゃん」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:09:44 ID:MdioEx2c0<>
いつも通りのにこやかな笑みを浮かべて僕らの前に立つデレ。
僕は何と言うべきかわからずに、ただ黙ってその顔を見詰めていた。

ξ゚听)ξ「それで、どういったご用件でしょうか、デレさん?」

ζ(゚、゚*ζ「それは聞かなくてもわかっておられるのではございませんかねえ?」

そう言ってデレは僕の手にあった聖骸布に目を向ける。
確かに聞くまでもなくわかり切っていた話ではある。
しかし僕は、それでも一縷の可能性にかけたい気持ちであった。

( ^ω^)「これは僕達が先に取り返したものだお。だから……」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、大人しく帰れ、と?」

ξ゚听)ξ「それが筋ってもんでしょ? どうせ所有権はあやふやなんだし」

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、所有権に関してはそうかもね」

ζ(゚、゚*ζ「うちの神さんがあんな布必要としてたとは思わないし」

( ^ω^)「自分とこの主神を奥さんみたい言うなお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:12:14 ID:MdioEx2c0<>
ξ゚听)ξノ「じゃあ、その神さんがいらないならそういう事で」

( ^ω^)ノ「ばいぶー」

自身の正当性を主張し、そのままさり気なくデレの横を通り過ぎようとしたが、
デレは再度僕らの前に立ち塞がった。

ξ゚听)ξ「まだ何か?」

⊂ζ(゚ー゚*ζ「あるんですねえ、それが」

当然でしょうとでも言わんばかりの態度で、デレは右手をこちらに向ける。

  「わんお!」
(∪^ω^)つ⊂ζ(゚ー゚*ζ

ζ(゚、゚;ζ「いや、わんお君じゃなくってだねえ」

わんわんおを抱き上げてデレに向けてみたが、やはりこれでは駄目らしい。
誤魔化せそうにもないならば、腹を括って話し合うべきか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:13:43 ID:MdioEx2c0<>
ζ(゚、゚*ζ「ようやく追い詰めたのに、うまーく漁夫の利を攫われちゃったのよね」

デレの話し振りからするに、ボルジョアが言い掛けた『奴らの仲間』という言葉の『奴ら』は、
デレ達の事だったのだろう。
確かに僕らは運良くボルジョアを捕まえただけに過ぎないが、それでも捕まえたという事実は変わらない。

( ^ω^)「港町だけに漁夫の利、と」

ζ(´ー`*ζ「アハハー、あんまり巧くないねえ」

ξ゚听)ξ「それで? どうしたいのよ、あんたは?」

ζ(゚ー゚*ζ「当然、それを渡して欲しいって話ですな」

( ^ω^)「それって、聖骸布の事かお?」

ζ(゚ー゚*ζ「それ以外に何があるのでしょうかねえ」

( ^ω^)「……デレが欲しいのは、聖骸布なのかお?」

ζ(゚、゚*ζ「おやおや、含みのある言い方ですな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:15:52 ID:MdioEx2c0<>
実際、含ませた感じで言ったのだが、それがわかるという事は、デレもこれのもう1つの顔を知っているのだろう。
ただの聖骸布として、ラウンジ聖教の為に取り返すつもりだったのなら譲るという道も取れたかもしれない。
しかしながら、これを魔王の衣として欲するなら、簡単には渡せない。

( ^ω^)「これをどうするつもりだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「ナカノヒトでも言ったと思うけど、これをこっちに置いておくわけにはいかないんですよねえ」

( ^ω^)「こっちって、どっちだお?」

qζ(゚ー゚*ζ「こっち、ニューソク大陸だよ」

デレは足元を指差し、そう答える。
裏を返せば、ラウンジ大陸には置いておけるという事なのか。

( ^ω^)「どうしてニューソク大陸には置いておけないんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ。簡単に言えば、信用ならないから、かな?」

珍しくまともに質問に答えてくれるが、今1つ飲み込めない部分が多々ある。
ただ、どうもデレはこれを魔王を復活させるために集めているようには見えないと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:18:20 ID:MdioEx2c0<>
ξ゚听)ξ「つまりあんたは、ニューソク大陸の人間が千年紀の王ってやつを復活させるって思ってるわけ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ずばりその通りですな」

( ^ω^)「どうしてそう断言出来るんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「だって実際に集めてらっしゃるじゃあございませんか」

ξ゚听)ξ「それはちょっと短絡的過ぎじゃない?」

(∪^ω^)「わんわんお」

デレの言葉通り、僕らは聖骸布を集めているが、それが魔王を復活させる為だとは聞いていない。
もし魔王を復活させる為だったとしても、それを馬鹿正直に伝えはしないだろうが、依頼元は教会からだったし、
それは有り得ないのではと思う。

( ^ω^)(……いや、今の状態でこの依頼が教会からだと言っていいのかおね?)

最初は教会の依頼としてヒッキーさんから請け負ったクエストだが、そのヒッキーさんへの指示は現地のエージエント、
つまりはシブサワさんの指示に従う様にとの事だった。
そしてそのシブサワさんは、僕に聖骸布を宮廷魔術師に届けてくれと頼んだのだ。

そうなると、依頼主は宮廷魔術師、ビコーズさんという事になるのだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:21:52 ID:MdioEx2c0<>
( ^ω^)(断言は出来ないおね。それがシブサワさんの独断の場合も考えると)

何らかの理由で、シブサワさんが教会へ届けるのを良しとせず、届け先を変えた可能性もある。
シブサワさんが教会所属のエージェントだという事を考慮すればおかしな話だが。

( ^ω^)(そもそも、僕達はただの雇われ冒険者で、何でこれを取り返そうとしたかとかわかってないんだお)

そういう状態でこちらの正当性を主張するのは難しいと思う。
出来るのは仕事だからと言い張る事ぐらいだろう。

( ^ω^)「正直な話、そこを議論しても無駄だと思うんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「うーん、まあ、そうなんだよねえー」

デレが僕達、ニューソクの人間を信用出来ないと言うのと同じく、僕達もデレ達、
ラウンジの人間を無条件に信用する事は出来ない。

ニューソクとかラウンジとか国の違いは関係なく、お互い相手側の人間を知らないから判断出来ないという事だ。
どちらが持った方が正しく管理出来るかとか、水掛け論に終わるだろう。

( ^ω^)「特にこっちはただの代行者だから、取り返す理由すら説明出来ないお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:23:08 ID:MdioEx2c0<>
ξ゚听)ξ「そんなのは、こっちの施設から盗まれたからで十分でしょ?」

ζ(゚ー゚*ζ「それを言うと、もっと前にこっちの施設から盗まれたものでもあるからねえ」

( ^ω^)「まあ、そう主張するおね。だから水掛け論なんだお」

ζ(゚、゚*ζ「残念ながらそうなっちゃうね。でも……」

( ^ω^)「でも?」

ζ(゚ー゚*ζ「そっちは自分達の意図を説明できなくても、こちらは出来ますぜ?」

そういえばシブサワさんの話では、ラウンジで聖骸布を取り戻そうとしている人達の中心はデレだという事だった。
僕らとは違い、請け負いの仕事として来ているわけではないのだろう。

ξ゚听)ξ「だから何? 自分達の正当性を主張したいの?」

ζ(゚ー゚*ζ「その判断はお任せするとして」

ζ(゚ー゚*ζ「私達は、千年紀の王の復活を阻止する為に聖骸布、魔王の衣を取り返そうとしてたんだねえ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:24:08 ID:rGnEV2r.O<>来てるじゃないか
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:24:36 ID:MdioEx2c0<>
( ^ω^)「具体的にはどうやって阻止するつもりなんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「1ヵ所に集めなきゃ大丈夫じゃない?」

( ^ω^)「適当だおね。そもそも、疑問系って事は、よくわかってないのかお?」

千年紀の王の復活を阻止すると明言した割には、アバウトな方針だと思う。
そんな簡単な事で阻止出来るなら、これまでも復活する事はなかったのではなかろうか。

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、それはおいおい考えるとして」

ζ(゚ー゚*ζ「ひとまず私達は他の誰かにそれを悪用されない為、集める事にしたんだよ」

ξ゚听)ξ「……はっきり言って、説明になってないわね」

( ^ω^)「申し訳ないけど、僕もツンに同意だお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ζ(゚ー゚*ζ「おや、交渉決裂ですか」

ξ゚听)ξ「いくら何でも理由が適当過ぎるでしょ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:26:24 ID:MdioEx2c0<>
ξ゚听)ξ「本気で説得したいなら、もう少しそれっぽい理由付けなさいよ」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、理由としては間違ってないと思いますぜ?」

ξ゚听)ξ「そうね。それが人としては当たり前の事なんでしょうけど。ただ……」

ξ゚听)ξ「それに納得する為には、あなたの事をもう少し知らないと頷けないのよね」

ζ(゚ー゚*ζ「平たく言えば、信用出来ないと」

ξ--)ξ「そういう事よ」

僕も概ねツンの意見に賛成だが、多少はデレの事を信用していいかとは考えていた。
肩書きからも、実際に話した経験からも、デレが僕らを騙そうとしているとは思えない。

対して、僕達の依頼主が信用出来るのかと問われれば、はっきり出来ると明言できない。
未だよくわからない事がいくつもあり、どういう経緯でこれを集める事になったのさえも知らない。

そんな僕の迷いを見透かしたかのように、デレはこちらに視線を向ける。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、君は信用してくれるんじゃないかな、私の事を?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:28:53 ID:MdioEx2c0<>
( ^ω^)「……デレはいい人だと思うお」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「僕達を騙そうとか、世界を滅ぼす為に魔王を復活させようとか、思ってもいないと信じてるお」

( ^ω^)「君が語った、夢は本当だと思うんだお」

ξ゚听)ξ「夢?」

ζ(゚ー゚*ζ「全ての人がほんの少しだけでも今より幸せになれるように、っていうのが私の夢だよ」

デレはナカノヒトの町で話したような内容をツンに伝える。
ツンはそれを黙って聞いていた。

ξ゚听)ξ「ふーん。いい夢じゃない」

ツンは馬鹿にするでもなく、素直に感心したように頷いた。
デレはそれに笑顔で応える。

ζ(^ー^*ζ「ありがとう」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:30:31 ID:MdioEx2c0<>
( ^ω^)「でも、今これを君に渡す気はないお」

( ^ω^)「状況がよくわからないからって、他人に押し付けて済ますのは主義じゃないんだお」

( ^ω^)「ちゃんと自分で調べてから答えを決めるお」

ζ(^ー^*ζ「うん、そうだと思った」

デレは笑顔のまま、両手を組んで上に向け、大きく伸びをする。

ζ(-、-*ζ「それじゃまあ、気が進みませんが……」

ξ゚听)ξ∩「あんたに恨みはないけど、これも仕事なのよね」

ツンは拳を固め、デレを睨み付ける。
出来れば避けたい事態だったが、このまま何もせずに引いてくれというのは虫が良過ぎる話だ。
ラウンジの聖女の実力は未知数でも、2対1なら何とかなるだろう。

( ^ω^)(問題は姿を見せていない鶏頭の男だけど……どこかに隠れているのかお?)<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/06/09(土) 01:32:43 ID:MdioEx2c0<>続きはまた今夜に
今日みたいに深夜になるかもしれませんが<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/09(土) 01:33:44 ID:3UeU2Tjk0<>ここで切るっすかーーー


乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 01:44:31 ID:rGnEV2r.O<>ここでか
一旦乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/09(土) 01:51:32 ID:B0fDczNY0<>きてたー!
乙!!
続き楽しみにしてるよ!<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/09(土) 08:11:35 ID:CVwipQe60<>乙1<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/09(土) 12:34:47 ID:1Dk.lQZA0<>おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/09(土) 14:20:49 ID:Sa2SJ2aE0<>読んだ
続き楽しみに待ってます<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/09(土) 22:51:57 ID:tiS/Yq5c0<>乙
デレの実力とは<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:26:28 ID:qeSzdZss0<>
ζ(゚、゚*ζ「せえのっと!」

伸びをしていた体勢から、デレは両腕を一気に振り下ろした。
それに対し、咄嗟に防御姿勢を取ったが、武器は勿論、魔法も何も飛んでくる事はなかった。

ζ(゚口゚*ζ「〜♪」

ξ;゚听)ξ「な……!?」

その代わりに飛んで来たのは声、それも相当大きな声だ。

(;^ω^)「ツン!」

僕は咄嗟にツンを突き飛ばす。
そのまま自分もこの場から離れようと思ったが、手足が動かず、声も出せなくなってしまった。

(;^ω^)(何で……)

言わずもがな、これがデレの攻撃だというのはわかる。
僕の知る魔法ではないが魔力を感じるこの声、いや歌というべきか。
ただの大声だったそれが、いつの間にか旋律を奏で、綺麗な歌に変化していた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:28:06 ID:qeSzdZss0<>
ζ(゚口゚*ζ「あ〜ら〜ら〜♪ ひ〜とり〜に〜がし〜ちゃった〜ね〜♪」

(;^ω^)(歌にしては歌詞はだいぶ変だけど、やっぱ歌なんだおね)

過去にデレはヴィップの町の教会で、歌うことで教会の精霊を浄化したのだ。
この歌にも何らかの効果があると見るべきで、それが僕の動きを封じているのだろう。

身動きが取れないという効果から考えるに、呪歌と呼ばれる呪いの系統の物かもしれない。
ラウンジの聖女が使うにしては、いささか不似合いな響きだが。

(;^ω^)(いきなり大ピンチだけど、この歌にもどこかに穴はあるおね」

かろうじて視界に映る範囲からわかる事は、恐らくのこの歌は聞こえる範囲全体に及ぼしているわけではないと思う。
デレの背後に見える、そう遠くない位置にいる町の人は普通に動けている。

ξ;゚听)ξ「ブーン!」

首を回し、確認すると、やはりツンも動けている様だ。
このデレの歌はごく狭い範囲にしか効果をなさないのだろう。
   フルフル
(((;^ω^)))<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:29:39 ID:qeSzdZss0<>
僕は無言のまま首を振り、ツンにこちらに近付かない様に示唆する。
ツンさえ無事ならこの状況は何とかなる。

ξ゚听)ξ「これがラウンジの聖女の力ってわけ?」

ツンは状況を理解したのか、頷き返すとデレを睨み付けながら僕から距離を取る。
デレの歌の性質にも気付いてくれたのだろう。
ツンはデレの背後に回り込んだ。

ζ(゚口゚*ζ「そ〜のよ〜ばれ〜か〜た〜は〜♪ す〜き〜じゃな〜い〜って〜い〜ったよ〜♪」

デレはツンの方を向かず、質問に答える。
歌の効果範囲を考えると、きっと向かないのではなく、向けないのだろう。
デレの顔、正確には声の出所である口が向いている方向にしか効果を及ぼさないと見た。

ξ゚听)ξ「随分と余裕ね。先制攻撃には失敗したんだから、その歌止めて仕切り直すの方がいいんじゃないの?」

僕達2人共がデレの歌に捕まっていたら、有効な手段だったのかもしれない。
デレにも仲間はいるんだし、それまで動きを封じていればいくらでも聖骸布を取り返す手はあるだろう。

ただ、僕達にも仲間はいる上、1人しか捕まっていない状態で歌を続けるメリットは無いと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:31:56 ID:qeSzdZss0<>
ζ(゚口゚*ζ「そ〜で〜すな〜♪ でも〜な〜んか〜わ〜すれ〜て〜ません〜か〜♪」

ξ゚听)ξ「!?」

咄嗟に後方に飛び退いたツンの元居た場所に、重々しい音を立てて何かが降り立つ。
そこには鶏の仮面を被り、上半身裸で両腕に盾を着けた男が蹲っていた。

( ゚∋゚)

降り立った屈強な筋肉の塊、クックルは僕やツンの方を見ることもせず、ただデレの方を見詰める。
ナカノヒトでもそうだったが、御付であるクックルはデレの指示に忠実に従って動く様だ。
となるとこの場に現れたのも、予め決めておいたか、先の会話のどこかで合図を送っていたからかもしれない。

ζ(゚口゚*ζ「そ〜っち〜お〜ねが〜いね〜く〜っくる〜♪」

( ゚∋゚)" コクッ

デレの言葉に、クックルはデレの背後を守るように立ち、ツンに対峙する。
今の僕にはそれを止める事や手助けする事どころか、助言すら挟めない状況だ。

ツンの強さは知っているが、向こうもラウンジの聖女の御付というぐらいだから弱いという事はないだろうし、
体格差的にも勝ち目は薄いのではなかろうか。

(;^ω^)(クッ……、まずはこっちを何とかしないとだお)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 00:32:36 ID:p8302246O<>ω・`;)…現行…だと…<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:33:20 ID:qeSzdZss0<>
ξ゚听)ξ「話には聞いていたわ。ラウンジの聖女の御付の戦士ね?」

( ゚∋゚)

ξ゚听)ξ∩「1つお手合わせ願おうかしら」

( ゚∋゚)∩ スッ…

僕の心配を余所に、ツンとクックルの戦いの火蓋は切って落とされた。
まずは様子見とばかりにツンはクックルを中心に据えて、その周りを軽いステップで半円を描く。
隙あらばいつでも仕掛けられる体勢だ。

(;^ω^)(のんびり見てる場合じゃないお。これ、どうやったら外れるんだお?)

何とか身体を動かそうとするが、相変わらず動くのは首ぐらいだ。
首を振り、デレに言いたいことを伝えようとしてみるも、首だけでは自分でも何をしたいのかよくわからない。
ただ滅茶苦茶に頭を振り回しているだけだ。
  ,,    ,,
"(((;^ω^)))" フルフル

ζ(゚口゚*ζ「あ〜む〜り〜む〜り〜♪ う〜た〜う〜のや〜めな〜いか〜ぎり〜ぬ〜けら〜れ〜ない〜ね〜♪」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:35:25 ID:qeSzdZss0<>  ,,,      ,,,
".'(((゚ω゚三゚ω゚))))'." ブンブン!

ζ(゚口゚*ζ「お〜ちついて〜♪」

ζ(゚口゚*ζ「う〜ご〜き〜と〜めた〜あと〜♪ ね〜むらせ〜るだけだ〜から〜♪ が〜いは〜な〜いよ〜♪」

(∪´ω`) zz

(;^ω^)(お……わんお……)

なるほど、いつの間にか背中のフードの中にいたわんわんおが眠っていたのはその所為なのだろう。
どうやら案外平和的な攻撃の様で安心したが、抜けられない事には変わりない。

(;^ω^)(いくらなんでもずっと歌い続ける事は出来ないだろうから、いつかは外れるだろうけど……)

恐らくその前に僕も眠らされてしまうのだろう。
そうなる前に抜け出したいが、身体を動かせず、言葉も発せられない状況では、魔法の1つも唱える事は出来ない。

ξ゚听)ξ「ハッ!」

( ゚∋゚)∩ スッ…<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:36:37 ID:qeSzdZss0<>
そんな僕の葛藤を余所に、ツンとクックルの戦いは徐々に激しさを増している様だ。
と言っても、ツンが一方的に仕掛け、クックルはそれを防いでるだけらしい。

何か狙いがあるのか、それともただツンの動きに付いていけないだけなのかはわからないが、
まだクックルは1度も攻撃に転じていない様だ。

(;^ω^)(だからと言って、ツン有利とは言えないかもしれんお……)

ξ゚听)ξ「セヤッ!」

( ゚∋゚)∩ スッ…

クックルの左側方に高速で回り込み、そこから側頭部目掛けて蹴りを放つツン。
しかしクックルはそれを落ち着いて左腕の盾で防ぐ。

ξ゚听)ξ「守りの堅さは相当のものね……」

( ゚∋゚)

すぐさま距離を取り、呼吸を整えるツン。
先ほどから何度も鋭い踏み込みからの高速の攻撃を仕掛けてはいるが、全て先の様にクックルに防がれている。
この状況では、ツンが優勢と楽観視する事は出来ない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:38:26 ID:qeSzdZss0<>
ξ゚听)ξ「しかもやり辛い場所に立たれてるし」

クックルはデレの背を守るように立っているので、ツンはクックルの背後に回る事が出来ないでいる。
回り込もうとしてデレの歌の効果範囲に入ってしまえばそこで終わってしまうのだ。

先にデレを倒すという手もあるだろうが、それをクックルが易々と許すとは思えない。

ξ゚听)ξ「さて、どうしますかね……」

大きく息を吐き、ツンはゆっくりとクックルの周囲を回りだす。
正直な所、ツン1人の攻撃ではクックルの鉄壁の守りを崩す事は出来ないんじゃないかと思う。

恐らくツンは速度重視の戦い方をしているのだろうけど、先の一撃だって決して軽く撃ったわけじゃないはずだ。
それがああも簡単に防がれるとなると、例え防御を掻い潜ったとしても大したダメージは与えられないかもしれない。
  ,,,      ,,,
".'(((゚ω゚三゚ω゚))))'." (だから何とかこれから抜け出して! ツンの援護をしないとだお!)

ζ(゚口゚*ζ「あ〜きら〜めま〜しょ〜お〜♪ あきら〜めま〜しょ〜お〜♪」

ξ゚听)ξ「……ま、ブーンも助けなきゃいけないし、のんびりはしてられないか」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:40:46 ID:qeSzdZss0<>
再びツンが速度を上げ、クックルを中心に半円を描く。
しかし今度は、ただ速度を上げただけではなく、時折り速度を緩め、緩急を付けて惑わすように動いている。

ξ゚听)ξ「あんまり得意じゃないんだけど……行ってみますかねッ!」

( ゚∋゚)

突如、ツンがこれまでよりも更に速度を上げ、クックルに迫る。
しかしクックルも、惑わされずしっかりとツンの動きに対応して来る。

ξ゚听)ξ三つ「ハッ!」

( ゚∋゚)∩ スッ…

ツンの放った右の拳は音も無く、クックルによって簡単に防がれてしまう。

(;^ω^)(いや、今のは……)

ξ゚一゚)ξ「なんてね」

( ゚∋゚)「!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:42:44 ID:qeSzdZss0<>
ツンはにやりと笑みを浮かべると、クックルに肉薄した状態で更に歩を進め、姿勢を低くして脇に潜り込む。
先の一撃はフェイントで、ツンは最初から弱めに打撃を放っていた様だ。

すぐさま引き剥がそうとクックルが手を伸ばすが、ツンは裂帛の気合と共に、
クックルの脇腹に押し当てていた拳をいち早く押し込む。

ξ#゚听)ξ「はあああああああああッ!」

( ゚∋゚)「!?」

これまでの攻撃では全くダメージを受けた様子のなかったクックルの身体が、
ツンの一撃で大きく後に滑るようにずらされる。
そのままデレにぶつかるかと思ったが、寸での所で止めたようだ。

ξ゚听)ξ「惜しい、もうちょっとだったわね」

(;^ω^)(今の何やったんだお? あの重量を動かすなんて……)

ξ゚听)ξ∩「前に説明した事あったでしょ? 柔の拳ってやつよ」

(;^ω^)(ああ、なるほど。……って、何で僕の考えてたことわかったんだお)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:44:44 ID:qeSzdZss0<>
それほどわかりやすい顔をしていたのだろうか。
ツンは僕が疑問に思っていた事に答えてくれる。

(;^ω^)(柔の拳、そういえば前にそんな話聞いたおね)

確か気を使った攻撃で、相手の装甲関係なく、直接身体の内部にダメージを与える技だったはずだ。
ツンも使えるとは言っていたが、まさかこれほどの力があるとは思わなかった。

ただ、若干技の系統が違う気もするが、今は深く追求している場合ではないし、そもそも聞く事が出来ない。

ξ゚听)ξ「ちなみに今のは応用技で、身体の内部に打撃を通すのではなく、相手を動かす事に特化したものだから」

(;^ω^)(だから人の心を読むなお……。けど、これで何とかなるかお?)

余裕たっぷりの表情を見せているツンだが、柔の拳、気を使った攻撃は体力の消耗も激しいと言っていたはずだ。
拳を当てて行う物が大半なので、相手に密接する必要もあるのでリスクも大きいとも。

ζ(゚口゚*ζ「ゆ〜だん〜た〜いて〜き♪ ほ〜ん〜き〜で〜い〜こ〜う〜♪」

( ゚∋゚)" コクッ

クックルはデレの言葉に頷くと、未だ無表情を保ったままツンの方に向かう。
そして先ほど立っていた位置を通り過ぎ、これまでよりはかなりデレから離れてしまった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:46:11 ID:qeSzdZss0<>
ξ゚一゚)ξ「ま、そうしてくれた方が私は戦いやすいけどね」

挑発めいた笑みを向け、ツンはクックルの動きを見守る。
今の内にデレの歌の邪魔をして欲しいなと思うも、多分ツンはそんな戦いが興醒めしそうな事はしないのだろう。
クックルもそう思ったからこそ、デレから離れたのかもしれない。

ζ(゚口゚*ζ「そ〜れじゃ〜♪ こ〜ち〜ら〜も〜♪」

何故かデレが歌いながらこちらに近付いて来る。
そして僕の横を通り過ぎると、その背後に止まった。

ζ(゚口゚*ζ「と〜く〜と〜せき〜♪」

(;^ω^)(戦いが見える位置に移動したのかお)

随分と余裕を見せてくれるものだが、2人の戦いの邪魔をしないという意思表示でもあるのだろう。
そうしてる内にツンと正面から向き合っていたクックルは、ツンに向けて突然軽く頭を下げた。

( ゚∋゚)" ペコッ

ξ゚听)ξ「……見くびっていてすまなかったとでも言いたいわけ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:47:37 ID:qeSzdZss0<>
( ゚∋゚)⊃ スッ…

ξ゚ー゚)ξ「語るのは拳でってわけね、上等!」

ツンは速度を上げ、一気に間合いを詰める。
今度は場が広く取れることもあり、そこから身を翻させ、クックルの後方に回り込む。
  ,,,      ,,,
".'(((゚ω゚三゚ω゚))))'." (ツン! がんばれおっ!)

ζ(゚口゚*ζ「な〜か〜な〜か〜♪ し〜ぶと〜いね〜♪」

ξ#゚听)ξ「ハッ!」

( ゚∋゚)∩ ガシッ

ξ#゚听)ξ「せやッ!」

( ゚∋゚)∩ ガシッ

ξ#゚听)ξ「でええええりゃぁぁぁぁッ!」

( ゚∋゚)∩ ガシッ<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:49:36 ID:qeSzdZss0<>
場所は変わっても先ほどと展開は同じ様に、ツンが一方的に攻撃を仕掛けている様だ。
クックルが守りに徹するつもりは無くとも、ツンの速さにそうせざるを得ないのかもしれない。
   ,,,      ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (そうなるとっ! ツンの狙いはっ! 気の一撃っ!)

ζ(゚口゚*ζ「ゆ〜れ〜す〜ぎじゃ〜な〜い♪ ちょ〜っと〜こ〜わ〜い〜♪」

ξ;゚听)ξ「全く、防御の技術は見事なものね……」

( ゚∋゚)

ξ゚听)ξ「あんたみたいな大男は、力任せに来るのがお約束ってやつなのにね」

ξ゚ー゚)ξ「ちゃんと修練を積んでるのがよくわかるわ」

( ゚∋゚)⊃ スッ…

ツンはどこか嬉しそうにクックルに語り掛ける。
クックルはそれに言葉で答える事は無かったが、拳で答えるつもりらしい。
初めて攻撃に転じたクックルを、ツンはその場で待ち構えた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:51:02 ID:qeSzdZss0<>
∩( ゚∋゚)∩ グワッ

ξ゚听)ξ「……」

両腕を頭上で組み、力任せに振り下ろすクックル。
当たったらひとたまりもなさそうだが、あんな見え見えの攻撃に当たるツンではない。
カウンターを狙うべく、攻撃を引き付ける。
   ,,,      ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (でもっ! クックルだってっ! それはわかってるはずだおっ!)

そうなると考えられるのは、カウンターを更にカウンターで返す事だ。
しかし、速度では圧倒的に劣ってるクックルがそれを実行できるとは到底思えない。

ξ゚听)ξ「セイッ!」

クックルの攻撃をギリギリでかわし、ツンの拳が低い位置にあったクックルの顔面に突き刺さる。
だがクックルは、わずかに首をよじるだけでそれに耐え切った。

ξ゚听)ξ「!?」

( ゚∋゚)⊃ バッ!<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:53:01 ID:qeSzdZss0<>
クックルは振り下ろした両腕を開き、ツンに掴みかかる。
最初からそれが狙いだったのだろう。
   ,,,      ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (けどっ! ツンのスピードならっ! 捕まらずに逃げ切るおっ!)

そう確信していたが、あろう事かツンは自分からその腕の中に飛び込む様に踏み込んだ。

ξ#゚听)ξ「ここで決めるッ!」

( ゚∋゚)「!?」

クックルに捕まったかの様に見えたツンは、滑らすように身体をクックルの懐に潜り込ませ、脇に抜ける。
その間ずっと拳はクックルの脇腹に押し当てられていた。
   ,,,      ,,,
".'(((((゚ω゚三゚ω゚))))))'." (行けっ! ツンっ! ドリルパンチだおっ!)

ζ(゚口゚*ζ「きみ〜♪ まほ〜て〜いこ〜た〜か〜す〜ぎ〜じゃな〜い♪」

ξ#゚听)ξ三///つ「だぁりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

気合一閃、押し当てた拳を捻り込む用にクックルに押し込むツン。
風船が割れたような乾いた音と共にクックルの身体がくの字に曲がり、
大きく後方に吹き飛ばされ、うつ伏せに倒れた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:53:55 ID:KBCLPS8kO<>来てるじゃないのさ支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:55:43 ID:qeSzdZss0<>   ,,,        ,,,
".'(((((゚ω゚*三*゚ω゚))))))'." (ツーンっ! ナイスドリルだおっ!)

ξ--)ξ「……」

(;^ω^)(お……?)

体力を激しく消耗したのか、ツンの動きが止まる。

ξ;--)ξ「やってくれるじゃないのよ……」

攻撃を当てたはずのツンが何故かその場に膝を付いた。
何事かとクックルの方を見やるも、クックルは未だ倒れたままである。
その手はツンを掴もうとするかの様に、ツンの方に伸ばされたまま。

(;^ω^)(あれ?)

よく見なくとも、クックルの手から金属の鎖のようなものが伸びている事に気付く。
鎖を辿るとツンの足元まで伸び、そこには丸い何かが落ちていた。

(;^ω^)(クックルの盾かお!?)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:57:24 ID:qeSzdZss0<>
腹部を押さえて蹲るツンの様子から察するに、クックルは攻撃を食らって吹き飛ばされながらも、
あの盾を投げて反撃をしたのだろう。
全力の一撃を放ったばかりのツンに、それをかわすのは無理だ。

(;^ω^)(何てタフさだお……)

クックルは自分の攻撃が当たらない事を理解した上で、最初からツンの攻撃の隙を狙おうと考えていたのかもしれない。
しかしそれを実行しようにも、自身が吹き飛ばされるほどの強力な一撃も食らっているのだ。
そんな中で反撃してくるとは、信じられない打たれ強さである。

(;^ω^)(つーか、それならひょっとして、まだ立ち上がってくるんじゃ……)

(,, ゚∋゚) ムクッ…

僕の嫌な予感はすぐに的中する事となり、クックルはゆっくりとその身を起こし、立ち上がる。
流石にノーダメージとはいかなかった様だが、軽く身体を動かして状態を確認すると、伸ばしていた鎖を引き戻し、
盾をその手に持った。

ζ(゚口゚*ζ「が〜んば〜ったけ〜ど〜♪ く〜っくる〜は〜ら〜うんじ〜い〜ちのぶ〜♪」

ζ(゚口゚*ζ「そ〜う〜か〜んた〜んに〜は〜♪ た〜おれな〜いよ〜♪」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 00:58:44 ID:qeSzdZss0<>   ,,,       ,,,
".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (クッ! 動け!_動けお! 僕の身体!)

ξ;--)ξ「へえ……あんたラウンジで一番強いんだ。それなら……」

ξ;゚ー゚)ξ「簡単に倒れてちゃもったいないわね」

( ゚∋゚)「!」

ツンは腹部を押さえたまま、その場に立ち上がり構えを取る。
思ったより足取りはしっかりしているが、その表情は少し引きつっている。
先ほどの攻撃で、骨ぐらいは折れているのかもしれない。

".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (ツン! 僕の事はいいから逃げるんだお!)

ξ;゚ー゚)ξ「何よ? 逃げろとでも言いたそうな顔して?」

".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (そうだお! 逃げるんだお! 相手が悪過ぎるお!)

ξ;゚ー゚)ξ「大丈夫よ、私はまだ戦えるわ。幸い、骨も折れてないみたいだしね、多分」

ξ゚听)ξ「あんたはそこで、どっしりと構えて私の勝利を見守ってなさいな!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:01:36 ID:qeSzdZss0<>
ツンは気合を入れる様に手甲を付けた拳を打ち合わせると、再びクックルに向かって走り出す。
確かに、先ほどまでと比べても遜色ない速さで動けているが、あの顔は相当無理をしていると思う。
付き合いの長い僕には、ツンが意地を張ってることなんてわかっている。

( ゚∋゚)⊃ ブンッ!

ツンを迎え撃つクックルは先ほどまでとは違い、まだツンとの距離が遠いうちから先に攻撃を仕掛けてきた。
鎖付きの盾を巧みに操り、様々な方向からツンを狙う。

ξ#゚听)ξ「なかなかやるじゃないの、よッ!」

盾をひたすらかわし続けていたツンだが、その間に軌道を見極めていたのだろう。
右方から飛来した盾にタイミング良く拳を合わせ、大きく空へ弾き飛ばした。

ξ#゚听)ξ「隙ありッ!」

すぐさま大きく踏み込み、クックルに肉薄しようとするツン。
だがその眼前に再び盾が迫る。

".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (ツゥゥゥゥゥンッ!!!)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:02:59 ID:yR1vsoxQ0<>デレ可愛いな支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:03:58 ID:qeSzdZss0<>
ξ;゚听)ξ「チッ!」

ツンは背を反らせ、後方に飛ぶ。
そのまま後転しつつ距離を取った。

⊂( ゚∋゚)⊃

ξ゚听)ξ「ま、そうよね。片方だけしか使わない理由はないもんね」

今の一撃は、ツンが空へ弾いた物とは反対側の盾を使った攻撃だったらしい。
クックルが両の盾とも同じように扱えるのなら、状況は更に厳しい。

⊂( ゚∋゚)⊃ ブンッ!

ξ;゚听)ξ「っと……」

段々とクックルにペースを握られて来ているのは傍目にもわかる。
クックルが攻撃を仕掛ける場面が圧倒的に増えて来た。

(;^ω^)(異変に気付いてトソン君たちが来てくれれば……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:05:36 ID:qeSzdZss0<>
集合時間まではまだ時間がある。
何かの際には護符の魔法を打ち上げる手はずになっているので、その魔法を打ち上げられない以上、
トソン君たちの救援に期待するのは難しい。

港にいた人達は、最初は結構近くでこちらを眺めている人もいたが、
クックルが現れて以降はかなり距離を取った様だ。
好き好んであれに近付きたくない気持ちはわかるが、これではイレギュラーな出来事にも期待出来ない。

".'(((((゚ω゚;三;゚ω゚))))))'." (どうするお? どうするお、僕? 考えるんだお!)

ζ(゚口゚;ζ「ちょぉ〜っと♪ し〜ぶとす〜ぎ〜じゃな〜い〜か〜なぁ〜♪」

ξ;-听)ξ「まいったわね……。近付くのに一苦労だわ」

軽口を叩いてはいるが、ツンからは明らかに疲労の色が見て取れる。
この状況で1つも直撃を貰わないのは見事だが、あまり長くは持たないだろう。
そして僕もそろそろヤバいかもしれない。
  ,,       ,,
"(((´ω`三´ω`)))" (お……、お……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:07:04 ID:qeSzdZss0<>
じわじわとと眠気が襲って来た。
唯一動かせていた首も段々と動かなくなって来た。

(((´ω`三´ω`)))(万事休すかお……)

ξ;-听)ξ 「……」

⊂( ゚∋゚)⊃ スッ…

ζ(゚口゚*ζ「さ〜あ〜お〜や〜す〜み〜な〜さ〜い〜♪ よ〜い〜ゆ〜め〜を〜♪」

( ´ω`)(お……)

ξ;--)ξ「フゥ……」


< 「フハハハハ! どうした? だらしがないぞ、我が好敵手ッ!!!」

.<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:09:49 ID:qeSzdZss0<>
(((;^ω^)))(お……何だお、今の?)

((ξ;゚听)ξ))「な、何? 今の馬鹿デカい声は?」

港中に響くかと思えるほどの大きな声が、どこからとも無く聞こえて来た。
僕は眠気を堪え、首を回してその声の主を探すも見付ける事が出来ない。

< 「どこを見ている! こっちだ! こっち!」

ξ゚听)ξ「こっちってどっちよ?」

(;^ω^)(お……あれって……)

再び聞こえて来た大声で、飛んで来る音の方向に気付いた僕は顔を上に向ける。
それに釣られる様に、ツンも視線を空に向けた。

ξ゚听)ξ「ったく、どこのどいつが……」

(;^ω^)(おー……)

ξ;゚д゚)ξ「ゲッ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:12:43 ID:qeSzdZss0<>
  「フハハハハッ! 天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶッ!

     お前を倒せと拳が叫ぶッ! 聞いて驚け見て笑えッ!

      大座亜流正統継承者ヒート=オネスティー、ここに見参!!!」

           シャキーン!

          へノパ听)ヘ
            ヽ ノへ
            /   ┗
           ┗__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...:.::/\
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::./. :.:. : .\
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:/..:..:..:□:..:..:...\



ξ;゚ -゚)ξ      ( ゚∋゚)      (^ω^;)      ζ(゚口゚*ζ


僕達の視線の先には、建物の屋根の上で奇怪なポーズを決める赤毛の少女、ヒートさんの姿があった。



     第三十三話 聖骸布争奪戦 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 01:13:10 ID:MkOBNTsQ0<>ともちゃん支援<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 01:14:06 ID:MkOBNTsQ0<>オワタwww<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:19:19 ID:a0LHIPK2O<>乙
なんかもうこのアホの子好きだわ<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:23:37 ID:qeSzdZss0<>
三十三話は以上です

1話で戦い終わらせる予定だったのが長引きました
まだ書き終わってませんが、更に伸びるのは避けたいなあ


最近ちょっと忙しさが半端ないので、次話は未定も未定です
一応、20レスぐらいは書けてはいますが

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 01:49:50 ID:nIGfBH4A0<>ライバルが助けに来る展開!これは熱い・・・熱い?<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 01:50:07 ID:KBCLPS8kO<>乙
まさかのヒート再登場だと……?<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/10(日) 06:21:07 ID:TQ/RfRBw0<>∩(  ゚∋゚)∩テーレッテー
支援<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 09:07:38 ID:49SjTG7s0<>あれ?ツン主役じゃね?<> 名も無きAAのようです<>sage sage<>2012/06/10(日) 11:23:40 ID:ucJ0ssG6C<>わんお可愛いよわんお
首振りまくりながら心の中で喋ってるブーンも可愛いwクックルとのバトル中なのに和むわw
ツンの柔の拳って聞くとトキ思い浮かべたわ、この動きはトキ…!
次も熱い展開が繰り広げられそうだね!乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 17:02:59 ID:r3nByICAO<>>∩ξ゚听)ξ∩<<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/10(日) 17:25:52 ID:rpds5fZY0<>⊂( ゚∋゚)⊃ バッ!<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/11(月) 13:00:18 ID:u1KJs2BUO<>いいねぇ
いいねぇ
もうコレ最高だわ<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/11(月) 22:51:09 ID:ezSBOhfEO<>安定の面白さだなぁ
次回も楽しみすぐる<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/13(水) 13:30:34 ID:LgLH.hmw0<>面白いなあ
続きが待ち遠しい<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 00:07:42 ID:6ZaUGXK20<>VIPで見て以来続きを読み損ねて悔しがってたらしたらばにいたとは。ようやく追いつけてよかった。
ってかブーン系小説で泣きそうになったの始めてだわ。
続き楽しみでしょうがないよ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:29:04 ID:uF/6QhHc0<>
 〜 キマスタの港 埠頭付近 〜


(;^ω^)(何でヒートさんがこんなとこに……?)

ノパ∀゚)「フハハハハッ! ツン! 何だその様は! それでも我が好敵手か!」

ξ;゚听)ξ「うるさいわね、私はあんたのライバルになった覚えはないわよ」

ノハ;゚听)「なんだとー? お前は師匠以外で私に唯一土を付けた人間だ。それをライバルと呼ばず何と呼ぶ!」

ξ゚听)ξ「何で私が自分より弱いやつをライバル認定しなきゃいけないのよ」

ノハ;゚听)「冷たい! 私達は再戦を誓い合った仲じゃないか、ツン=ザ=ドリルパンチ!」

ξ#゚听)ξ「人を変な名前で呼ぶんじゃないわよ!」



     第三十四話 激闘の果てに


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:31:10 ID:uF/6QhHc0<>
( ^ω^)(よくわからんけど、このイレギュラーはチャンスじゃないかお?)

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

ξ#゚听)ξ「今忙しいんだから、あんたの相手してる暇ないのよ!」

彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。

ノハ;T儺)「お前、久しぶりに会ったライバルに対してつれなさ過ぎるぞおおおおっ!」

彼女の名前はヒートさん。
旅の武術家で、かつてツンと勝負に破れたが、その強さはツンとほぼ互角だろう。

( ^ω^)(これで状況が動けば、ここから逃げられるかもしれんお)

僕達は今、聖骸布奪還のクエストでニューソク大陸最南端のキマスタの町へ来ていた。
そこで運良く聖骸布を盗んだ犯人、ボルジョアを捕まえて聖骸布を取り戻す事は出来たが、
同じく聖骸布を追うラウンジの聖女こと、デレ達一行に見付かり、戦いになってしまった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:32:50 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(゚口゚*ζ「な〜んだ〜か〜♪ に〜ぎや〜か〜に〜な〜ってき〜たね〜え〜♪」

( ゚∋゚)

戦いは僕達の方が旗色は悪く、僕はデレの歌によって身動きが取れず、
ツンは善戦しているが、クックルの猛攻の前に防戦一方だ。

ξ゚听)ξ「だからライバルって呼ばないでってば。恥ずかしいから」

ノハ;゚听)「何故だ! ライバルの存在はお互いの腕を高めあう素敵なものだぞ? 何も恥ずかしい事はない!」

そこに突如として現れたヒートさん。
屋根の上で両手を上げ、片足立ちで立つ姿は確かに恥ずかしいが、その腕はなかなかのものである。
僕達に協力してくれるならこの上ない戦力になるはずだ。

ξ゚听)ξ「あんたの存在自体が恥ずかしいのよ。あんたの相手は後でしてあげるから、そこで大人しく見ていなさい」

ノパ听)「いや、待たん! お前、あの鶏に負けそうじゃないか!」

ξ#゚听)ξ「うるさいわね! 誰があんなのに負けるってのよ!」

( ゚∋゚)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:34:39 ID:uF/6QhHc0<>
(;^ω^)(ツンも状況の不利さはわかってるお? 挑発してないでヒートさんを仲間に引き込んでくれお!)

心の中でそう思っても、今の僕にはそれをツンに伝える手段はない。
このままでは巴戦になるか、最悪、向こうが共闘する形の変則的な1対2の戦いになってしまう。

(;^ω^)(つーか、クックルは何で律儀に待ってくれてるんだおね……)

( ゚∋゚)

ノパ听)「ツンを倒すのは私だ! だから先にやらせろっ! 勝負だ、とうっ!」

そう叫ぶや否や、ヒートさんは3階建てはあろうかという建物の屋根から飛び降りる。
このままヒートさんが参戦する方向は避けられないらしい。


          ドリャァァァァッ!      グハァッ!?
        三ヽξ#゚听)ξ┌┛ハ(#)听).・。 ’


(;^ω^)(ちょ!?)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:36:04 ID:uF/6QhHc0<>
などと考えていると、ツンが突然猛ダッシュでヒートさんの着地点に駆け寄り、
着地寸前のヒートさんを思いっきり蹴り飛ばした。

ヒートさんは錐揉み状に飛んで行き、そのまま港の端に積んであった木箱に激突する。

ξ゚听)ξ「ふぅ……。これで邪魔者は消えたわね」

(;^ω^)(ひでえ……)

ζ(゚口゚*ζ「わ〜い〜る〜ど〜だね〜え〜♪」

僕らの心中を察する事もなく、ツンは涼しい顔でこちらに戻って来る。
悪びれた様子は一切なく、むしろ一仕事終えた満足感すら垣間見えるほどだ。

ξ゚听)ξ「待たせて悪かったわね。さあ、続きをやりましょうか」

( ゚∋゚)⊃ スッ…

ξ゚听)ξ「ん?」

クックルはツンの後方を指差す。
それが何を意味するか、説明されずとも何となく察しは付いていた気がする。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:36:34 ID:XKO1aOTI0<>おいwww<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:37:37 ID:uF/6QhHc0<>
ヽノハ#゚听)/「やったなーっ!」

ξ゚听)ξ「……相変わらずタフさだけはとんでもないわね」

身体の上に積み重なっていた木箱を吹き飛ばし、ヒートさんが勢いよく飛び出して来る。
ツンが言うように、そのタフさは相当なもので、クックルに引けを取らないかもしれない。

ξ--)ξ「ったく、揃いも揃って倒せないとか……。ちょっと自信なくしそうよ」

ツンは疲れたように溜め息をつき、額を押さえる。
クックルもヒートさんも、どちらも倒せなくても仕方のないタフさだとは思うが、
そういう事は関係なく、ツンはかなり疲れていのだろう。

クックルに受けた腹部へのダメージも気になる。
出来れば、早いとこ戦いを切り上げて治療をしてあげたいと思う。

ノパー゚)「そう簡単に私を倒せると思うなよ!」

ξ゚听)ξ「はいはい、わかったからちょっとどいてないさいよ」

ノパ听)「何故だ? 今から私と戦うんだろ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:39:17 ID:uF/6QhHc0<>
ξ゚听)ξ「物には順序ってものがあるのよ。先客がいるんだから、そっちが先よ」

ノパ听)つ「だが断る。さあ、やるぞ! かかって来い!」

ξ#゚听)ξ「人の話を聞け!」

( ゚∋゚)

(;^ω^)(まだ待ってるお……。ひょっとして時間稼ぎしたいのかお?)

トソン君達という援軍の当てがある僕達の方が、時間を稼げば有利になると考えていたが、
ひょっとしてデレ達の方にも援軍が来るのだろうか。

(;^ω^)(来るとしたら、もしかしなくても西の賢者だったりするのかお?)

もしこの場に西の賢者が参戦する事になったら、僕達の勝ち目はゼロに等しくなると思う。
西の賢者の事はあまりよく知らないが、ドクオさんと同等の力はあるらしいので、
はっきり言って僕なんかの魔法では、きっと太刀打ち出来ない。

ヘノパ听)ヘ「さあ来い! ほら来い! よし来い!」

ξ#゚听)ξ「うるさいッ! 何なのよ、その奇妙な構えは!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:40:15 ID:uF/6QhHc0<>  ,,    ,,
"(((;^ω^)))" (ツン、遊んでないで早いとこ何とかしてくれお!)

ζ(゚口゚*ζ「な〜ん〜か〜ま〜た〜♪ め〜が〜さ〜めちゃ〜った〜みたい〜だ〜よ〜ね〜♪」

尚もヒートさんと言い争いを続けるツンに、気付いてもらおうと思い、注意を惹こうとしてみるが、
全くこちらを見る気配はない。
見た所で、僕の言いたい事が伝わるかはまた別問題なのだけど。

ξ#゚听)ξ「とにかく、あんたは引っ込んでろっての!」

ノハ#゚听)「嫌だ! いいから私と闘え!」

ξ#゚听)ξ「あとでいくらでも戦ってあげるって言ってるでしょ?」

ツンはヒートさんを無視し、クックルの方へ向き直る。
これ以上は口で言っても無駄だと考えたのだろう。

ξ゚听)ξ「待たせたわね。さあ、続きをやりましょうか」

ノハ#T儺)「無視すんなよおおおおッ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:41:29 ID:uF/6QhHc0<>
( ゚∋゚)∩"

ノパ听)ξ゚听)ξ「?」

ツン達に向け、クックルが無言で手招きをした。
無表情だがその仕草は幾分挑発的にも見える。

ζ(゚口゚*ζ「ま〜と〜め〜て〜かかっ〜て〜こ〜い♪ と〜い〜って〜る〜よ〜♪」

(;^ω^)(これは……こっちにとってはラッキーだけど、ツンはきっとこの申し出は断るおね)

ξ゚听)ξ「お気遣いどうも。けど、こんなのと組むのもご免だし、舐められるのもはもっとご免だわ」

ノパ听)「調子に乗るな、デカブツ! お前なんか私1人で十分だっ!」

(;^ω^)(やっぱりかお……)

元々一騎打ちのような形ではじまった戦いだ。
そう簡単に受け入れるツンではないだろう。
だが現実を考えれば、共闘して欲しいとも思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:43:01 ID:uF/6QhHc0<>
デレ曰く、クックルはラウンジ一の武との事らしいし、それに見合った強さも見せ付けてくれた。
クエストの成功を最優先に考えるなら、勝てる確率の高い方を選ぶべきだ。

┐( ゚∋゚)┌

ノパ听)ξ゚听)ξ「!」

ζ(゚口゚*ζ「ざ〜こが〜な〜んに〜ん〜たば〜に〜な〜ろ〜と♪ か〜わら〜ない〜♪」

ζ(゚口゚*ζ「み〜の〜ほ〜ど〜を〜しれ〜♪ お〜の〜が〜も〜くて〜きを〜わ〜す〜れ〜るな〜♪」

大袈裟に肩をすくめるクックルと、派手に挑発の歌を歌うデレ。
本当にクックルがそう思ってるかはさておき、多分これも逆効果で、
ツンはますます意固地になって一騎打ちにこだわるのではなかろうか。

ξ ゚ -゚)ξ「……」

ノハ#゚听)「何だと、この鶏頭! 唐揚げにしてやるっ!」

しかし、更に激昂するヒートさんとは裏腹に、ツンは神妙な顔でクックルの方を見ていた。
その後、視線が僕の方へ向く。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:44:05 ID:uF/6QhHc0<>
ξ ゚ -゚)ξ

(;^ω^)(ツン……)

僕は何かを言ってあげるべきなのだろう。
それが、ツンなら勝てるという激励の言葉であったら良かったのだが、今言うべきはそうではない。

どちらにしろ、言葉を伝えられない僕は目を閉じて頷き、ツンに全ての判断を任せる事にした。

( -ω-)" コクッ

ξ゚听)ξ「……そうね、わかったわ」

ツンは僕に聞こえないくらいくらいの言葉で小さく呟くと、
クックルに罵詈雑言を浴びせているヒートさんの前に進み出た。

  モガッ
ノパ -(⊂ξ゚听)ξ「……あんたの言うとおりかもね」

( ゚∋゚)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:45:40 ID:uF/6QhHc0<>
ξ゚听)ξ「1対1の果し合いなら、きっと今の私はあんたに勝てないわ」

ξ゚听)ξ「勿論、こっちのヒートもね」

ノハ#゚听)「なんだ──」
  モガッ
ノパ<(⊂ξ゚听)ξ「お言葉に甘えて、2人掛かりでやらせてもらうわ」

( ゚∋゚)" コクッ

ツンはそう言うと、ヒートさんの首に腕を回し、後に引っ張っていく。
今の提案を納得させるつもりなのだろうが、果たしてヒートさんが受け入れてくるかどうか。

ζ(゚口゚*ζ「ふ〜ん〜♪」

(;^ω^)(ツン……)

ζ(゚、゚*ζ「ふう……」

(;^ω^)「……おっ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:47:01 ID:uF/6QhHc0<>
不意にデレの歌が止み、僕は解放された。
理由はわからないが、とにかくチャンスだと思ってその場を離れようとしたが、身体が思う様に動かず、転んでしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「ああ、無理無理。歌の効果が抜けるまではしばらくかかると思うよ」

なるほど、どうやらデレの言っている事に嘘はないらしく、思った通りには身体に力が入らない。
それを見越してデレは歌を止めたのだろうが、何とか素早く回復してこの場を離れねば。
その為に僕は時間を稼ぐべく、デレに話しかける。

(;^ω^)「……何で歌を止めたんだお?」

ζ(゚、゚*ζ「君がなかなか眠ってくれないからだねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「歌いっぱなしも疲れるんですよ。もう、喉からっからですぜ」

(;^ω^)「まあ、そりゃそうだおね」

ζ(゚ー゚*ζ「お水持ってない?」

( ^ω^)「海に行けばいくらでもあるお」

ζ(゚、゚*ζ「海水は飲めないねえ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:48:38 ID:uF/6QhHc0<>
僕は話しながら身体の状態をこっそり確かめる。
だるさは残るがそろそろ起き上がるくらいは出来そうだ。

ζ(゚ー゚*ζ「もう逃げられそう?」

( ^ω^)「まだ全然無理っぽいお!」

僕はさもだるそうに首を振り、まだ動けない風を装う。
そんな僕にデレは笑顔を浮かべた。

ζ(^ー^*ζ「嘘が下手だねえ」

( ^ω^)「嘘じゃないお。まだ身体は全然動かないお!」

そう主張する僕に、デレは人差し指を突き付ける。
そしてその指を僕の左に向け、下に下げた。

  ブルブルブル
(((∪>ω<)))

(;^ω^)「お……わんお……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:50:01 ID:uF/6QhHc0<>
いつの間にか起きていたわんわんおが僕の足元で身体を奮わせ、身体を伸ばしていた。
この状況では、僕が動けないと言っても説得力はない。

ζ(゚、゚*ζ「わんお君、わんちゃんにしては回復早すぎだと思うけどね」

( ^ω^)「わんおは元気さが取り得だお」

ζ(゚ー゚*ζ「で、もう身体動く?」

∩( ^ω^)∩「割と」

僕は観念し、正直に今の状況を伝えた。
しかしながら一行にデレの歌は再開されない。

ζ(゚ー゚*ζ「邪魔はしないんでしょ?」

( ^ω^)「お? 何のだお?」

僕の言葉にデレは再び僕の方を指差す。
正確には僕の背後、クックル達の方であろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:51:59 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(゚ー゚*ζ「クックル強いから、ラウンジじゃまず戦いを挑んでくる人はいないんだよね」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、今日はちょっと楽しそうに見えるねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「クックルが殴り合いで倒れるの、随分久しぶりに見た気がしますなあ」

( ^ω^)「……デレの歌から抜けられたら、すぐに助けに入るつもりだったけど」

( ^ω^)「ツンがプライドを曲げてヒートさんと共闘すると決めた今、魔法で援護するのは野暮だおね」

(∪^ω^)「わんお!」

ζ(^ー^*ζ「そういう事だね」

僕に向けられる屈託のない笑みに、複雑な思いが浮かぶ。
ツン達の邪魔はしないと決めたものの、僕とデレが敵同士なのは変わらない。
こちらはこちらで決着を付けなければならないのだ。

( ^ω^)「デレは何で千年紀の王の復活を止めたいんだお?」

ζ(゚ー゚*ζ「君は止めたくないの?」

( ^ω^)「いや、それは当然止めたいお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:53:34 ID:uF/6QhHc0<>
人として平和に暮らすためには、そういう物騒なものの復活を止めたいと思うのは当然だろう。
僕が聞きたいのは、具体的に誰かが復活させようとしているという話もない今に、
わざわざ率先してそれを回収に当たっている理由だ。

ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ。わかりやすいから、かな?」

( ^ω^)「わかりやすい?」

(∪^ω^)「わんお?」

dζ(゚ー゚*ζ「ほら、私の夢ってなんだか漠然としてるじゃないですか」

こういう具体的な何かをなせば、即、人々の幸せに繋がる事はなくとも、不幸にはしないだろうとデレは言う。
自分がラウンジの聖女として与えられる幸せなんて限られているから、
それならば人々が普通の暮らしを送れる世界を守れば、後は皆ががんばって幸せになれるだろうと。

( ^ω^)「そんな簡単な話じゃないと思うけど、間違ってはいないと思うお」

理想論だとは思うが、世が平和なら不条理に生命を奪われる機会も減るだろう。
ごく当たり前の暮らしが出来れば、そこからどう生きるかは自分達で選ぶことも出来る。

ζ(゚ー゚*ζ「あんまり警戒しなくても、私の話に賛同するなら聖骸布を渡せなんて言わないから安心してよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:54:48 ID:uF/6QhHc0<>
( ^ω^)「それとこれとはまた別の話だから、渡す気はないお」

冗談交じりに言うデレに、僕は肩をすくめて見せる。
僕がこれをビコーズさんに届けたからといって、千年紀の王が復活するわけでもないのだ。
デレが正しいとしても、僕やビコーズさんをはじめニューソクの人々が間違った道を進むとは決まっていない。

ζ(-、-*ζ「まあ、その通りですな」

( ^ω^)「迷ってたけど、僕はこれをビコーズさんが、ニューソク王家がどうするつもりかを見極める為にも」

( ^ω^)「これを届ける事に決めたお」

僕は聖骸布を掲げ、デレにそう宣言する。
デレは少し困った様に笑い、今度はデレが肩をすくめた。

ζ(゚ー゚*ζ「それがいい、なんて立場上言っちゃ駄目なんだけど、知ろうとする意思は尊重したいね」

( ^ω^)「じゃあ、ここは引いてくれるかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「……出来れば戦いたくはないと今でも思ってるんだけどねえ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:57:42 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(゚ー゚*ζ「君に限らず、誰とだって」

ζ(-、-*ζ「ただ、そうも言ってられない時だってあるのはわかってるんだけどね」

だから、そう言える時ぐらいはそう言いたいとデレは言う。
戦いたくないと。

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、そう簡単には行かないでしょうし」

ヽζ(゚ー゚*ζ「取り敢えずはそうだねえ……、向こうの結果次第ですかね」

ξ;--)ξノパー゚)

( ゚∋゚)

いつの間にかツン達とクックルの戦いは再開されていた。
やけに上機嫌なヒートさんと、妙に疲れた顔をしたツンの対比が、話し合いの行く末を理解させる。
ヒートさんの説得にはだいぶ苦労したみたいだが、どうやら共闘の道は取れた様だ。

ノハ#゚听)「だらっしゃああああっ!」

大気を震わす大声を上げ、ヒートさんが跳躍する。
そのまま一直線にクックル目掛けて降下していくが、クックルはそれを落ち着いて盾で迎撃しようとした。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 21:59:53 ID:uF/6QhHc0<>
ノパ听)「甘いっ!!! 守兵主散打ァァァァッ!!!」

ヒートさんは高速で連続突きを放ち、四方から襲い来る盾を弾く。
そのままクックルに一撃を食らわせようとしたが、クックルはそれを掻い潜って攻撃をかわした。

ξ゚听)ξ「ハッ!」

( ゚∋゚)∩ ガシッ

前進したクックルを、待ち構えていたかのようにツンが蹴りを放つ。
クックルはそれを生身の腕で受け止め、すぐ様距離を取ったツンに反対側の盾を飛ばした。

ξ゚听)ξ「どこ狙ってんのよ」

それを簡単にかわすツン。
しかし、かわしたはずの盾はクックルが鎖を操る事で急激に方向を変え、ツンから離れて行く。

ノハ;゚听)∩「うわっと!? 危なかった……」

どうやら最初から狙いはヒートさんだった様で、クックルの死角を突こうとしていたヒートさんに綺麗にぶち当たった。
ヒートさんは辛くもそれを両腕で防御して耐える。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:01:58 ID:uF/6QhHc0<>
( ^ω^)「白熱してるおね。つーか、クックル強いお」

ζ(゚ー゚*ζ「そりゃ伊達にラウンジ最強の武なんて讃えられてませんぜ?」

むしろ2人掛かりとはいえ、よくあのクックル相手に善戦してるものだとデレはツン達を褒める。

ζ(゚ー゚*ζ「大体殴って終わりってのが多いんだよねえ。あの盾をあそこまで使ってるのは久しぶりに見たね」

( ^ω^)「あれ、魔法使いとしてはだいぶ嫌な武器だお」

(∪^ω^)「わんおー」

距離を取って戦うのが基本の魔法使いにとっては、あの鎖付きの盾みたいに遠距離攻撃も可能とする武器は厄介だ。
トソン君の時と同じような戦い方をすれば何とかなるかもしれないが、
あのタフガイと追いかけっこはしたくないものである。

ζ(゚ー゚*ζ「そう? 先生は余裕で捌いてたけどね」

( ^ω^)「先生? ひょっとして西の賢者さんかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「そうそう、モララー先生」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:04:00 ID:uF/6QhHc0<>
ラウンジの聖女の後見人の西の賢者。
デレは先生と呼んでいるらしい。

師匠と呼ばないのは実際に魔法なんかを教えてもらっているわけでもなく、
師弟関係というものとは少し違うからとの事だった。

東も西も師匠と呼ばれるのは嫌いなのかと思ったら、こちらとはまた事情が違うようだ。

ζ(゚ー゚*ζ「クックルも強いけど、先生はそれ以上に強いからね」

(;^ω^)「クックルがラウンジ最強じゃなかったのかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「クックルはラウンジ最強の武だよ。殴り合いとか近接戦闘の最強」

ζ(゚ー゚*ζ「先生はただ単に最強だね」

( ^ω^)「要するにオールマイティに強いんだおね。まあ、わからなくはないお」

ζ(゚ー゚*ζ「なんせ先生のお師匠様は大賢者バーン=ホライゾンだからねえ」

( ^ω^)「知ってるお。僕の師匠は西の賢者だし、それに……」

ζ(゚、゚*ζ「そういえばそうでしたなあ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:06:07 ID:uF/6QhHc0<>
( ^ω^)「やっぱりデレも僕の事は知ってたんだおね」

ζ(゚ー゚*ζ「名前は先生から聞いてたからね。ヴィップで会ったのもメシューマで会ったのも偶然だけど」

( ^ω^)「そうだったのかお」

流石に僕の事を調べに来たと考えるのは、自意識過剰というものであろう。
色んな意味で僕には力がないのだし。

ζ(゚ー゚*ζ「その名が嫌い?」

( ^ω^)「そんな事は無いお。じいちゃんの事は好きだし」

僕自身は、ホライゾンの名を名乗る事に抵抗はない。
それによる弊害がある事はわかっているが、僕はこの名が、じいちゃんの事が好きなのだ。

( ^ω^)「ナイトウの名も、じいちゃんが付けた名前だし、好きなんだけどね」

じいちゃんがヴィップの町に隠居した時、現在のドクオさんの庵に住んでいる事にしていたが、
実際は名を変えて僕とドクオさんと共にサンライズで暮らしていた。
その時名乗っていたのがナイトウの姓である。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:09:15 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(゚ー゚*ζ「そりゃあ良かった」

(∪^ω^)「わんわんお」

( ^ω^)「そういうデレは、ラウンジの聖女の名があんまり気に入ってないみたいだおね」

ζ(゚、゚*ζ「別に嫌いなわけじゃないんですがねえ」

ζ(゚ー゚*ζ「何だか仰々しくていけませんなあ」

ラウンジの聖女の名がラウンジでどれほどの力を持つのか僕にはわからない。
ただ、デレの話し振りからするに、かなり敬われているのは確かだろう。

ζ(゚、゚*ζ「色々と面倒なんですよ。こっちとしては、もう少し地域密着型の活動をしたいんだけど」

ζ(゚、゚*ζ「やれ政治だ説法だとねえ、何だか遠いんですよ、国民との距離が」

( ^ω^)「ラウンジの聖女ってやつが、すげえ偉そうな立場なのはわかったお」

( ^ω^)「てか、地域密着型とか言って、その地域出ちゃってるのはどうなんだお?」

ζ(゚、゚*ζ「まあ、それはそれとして……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:11:31 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(゚ー゚*ζ「折角クックルと2人で先生撒いて得た自由だし」

ζ(゚ー゚*ζ「ラウンジの聖女じゃなくて、ただのデレとして色々見てみたいんですよ」

( ^ω^)「何かどっかで聞いた話だけど、それはともかく西の賢者置いてけぼりかお」

ζ(゚ー゚*ζ「そろそろ追い付かれるかもしれないけどね」

デレの考えは、クーが僕に話したそれとどこか似ていると思う。
王族とかそういった立場の人間になると、考える事は似通って来るのだろうか。

ただ、西の賢者がいないのはラッキーだ。
もっとも、この様子だと僕はデレと戦わなくても済むかもしれないが。

( ^ω^)「西の賢者さんって、厳格で怖い人なのかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「厳格は厳格だけど、どちらかと言えば物静かな人かな?」

ζ(゚、゚*ζ「ただ、怒らせると怖いねえ。滅多に怒るような人じゃないけど」

( ^ω^)「ふーん……って、ひょっとして置いてけぼり食らわせた事で、すごい怒ってるかもしれなくないかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:15:19 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(´ー`;ζ「うーん、その可能性はあるかもねー」

そしたらまた逃げようと、デレは口の端を吊り上げて笑ってみせる。

( ^ω^)「その時に僕らを囮にするのは止めてくれお」

ζ(゚一゚*ζ「おお、その手があったね」

冗談交じりに言うデレに、僕は笑い返す。
先ほどから向こうの方で打撃音と共に、何だか殺気混じりの視線を感じるのは多分気の所為だろう。

ξ#゚听)ξ「こっちが必死こいて戦ってんのに、何であいつら長閑に談笑してるわけ?」

( ゚∋゚)

ξ#゚听)ξ「あんたはそれでいいの?」

( ゚∋゚)

ξ#゚听)ξ「何とか言ええええっ!」

ヒートさんと見間違わんばかりの雄叫びを上げ、ツンが真正面からクックルに拳を放つ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:16:34 ID:uF/6QhHc0<>
気の一撃ではなく、単なる打撃の様だが、
戦い始めた当初より随分と力が籠っているように見えるのは気の所為ではないだろう。
ツンの拳を両腕で防いだクックルの身体が後退る。

ヽノハ#゚听)ノ「次は私だ! 宇宙魔法!」

ノハ#゚听)「守兵座亜ァァァァッ!」

ツンと入れ替わるように走り込んで来たヒートさんが跳ぶ。
しかし、その跳躍は低く、地を這うように空中を滑り、クックルの脚目掛けてヒートさんは両足で蹴りを放った。

( ゚∋゚)"

ノハ#゚听)「クッ、これでも倒れないかっ!」

クックルはヒートさんの攻撃を耐え切り、目の前に着地したヒートさん目掛けて拳を振り下ろす。
ヒートさんはしゃがんだままの体勢で、両腕を挙げてそれを防ぐ。

ノハ#゚听)「ぬッ!」

辛くも防御には成功したが、その衝撃で更に体勢を崩すヒートさんに、クックルは続けて反対の拳を放つ。
そのまま防御をお構い無しに放たれ続けるクックルの拳に、ヒートさんの顔が歪む。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:17:51 ID:uF/6QhHc0<>
ξ#゚听)ξ「やらせない!」

今度はツンが走り込んで来て、先のヒートさんと同じく低空の飛び蹴りを放つ。
攻撃態勢にあった所為か、クックルは今度はわずかにバランスを崩し、その隙にヒートさんはその場から離脱した。
ツンも着地と同時に横に飛び、距離を取ってヒートさんと合流する。

ξ゚听)ξ「考え無しに突っ込まないの。隙の大きい技は厳禁! 常に動き続けるぐらいの気でいなさい!」

ノパ听)「知らんッ! 細かい事は気にするな! とにかくあいつを殴り倒せば済む話だ!」

ξ#゚听)ξ「そう簡単に行くわけないでしょうが! ちょっとは頭使えっての!」

ノパ听)「おうっ! 今度は必殺の頭突きを食らわせてやるっ!」

ξ#゚听)ξ「そういう意味じゃねええええッ!!!」

どうやら即席の連携はあまり上手く行っていないようだ。
強さにさほど差はなくとも、ツンとヒートさんの戦い方には結構な差があるという事か。

ξ゚听)ξ「極力攻撃は食らわない戦い方をしなきゃ、すぐに戦闘不能よ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:19:44 ID:uF/6QhHc0<>
ノパ听)「だがなツンよ、そんなちまちました戦い方であいつが倒せると思うか?」

ξ゚听)ξ「それは……」

( ゚∋゚)

ξ゚听)ξ「倒せないとしたら、あんたはどうするつもりなのよ?」

ノパ听)∩「そんなの真っ向から殴り合うに決まってるだろ?」

ξ;゚听)ξ「だからそれじゃ、こっちがもたないんだってば……」

ノパ听)「ならば殴られる前に倒す!」

ξ;--)ξ「それが出来れば苦労しないわよ……」

ノパ听)「やってみなきゃわからんだろ?」

ξ;゚听)ξ「散々やった結果がこの状況でしょうが……」

ξ;--)ξヽ「もういいわよ、あんたと話してると頭痛くなってくるわ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:21:23 ID:uF/6QhHc0<>
ノパー゚)「よし、じゃあ、作戦はやられる前にやれ! これで行くぞ!」

ξ;゚听)ξ「何でそうなるのよ! って、待ちなさい!」

ツンの静止も虚しく、ヒートさんはクックル目掛けて走り出す。
その行動に頭を抱えながらも、ツンはヒートさんの後を追う。

ノハ#゚听)「どりゃあああああッ!」

( ゚∋゚)⊃ ブンッ

全く小細工抜きで真正面から殴りかかるヒートさん。
クックルは盾を投げ、近付かれる前に迎撃する。

ノハ#゚听)∩○「くぬっ!」

( ゚∋゚) !?

ヒートさんはクックルの盾をかわさず、しっかりと受け止める。
そしてその場で急制動を掛け、鎖を思いっきり引っ張った。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:23:37 ID:uF/6QhHc0<>
ノハ#゚д゚)「んぎぎぎぎ……」

しかし、いかにヒートさんとて、単純な力比べではクックルには及ばないようだ。
逆に引っ張られ、徐々に引き寄せられる。

ξ゚听)ξ「何やってんのよ!」

追い付いたツンが跳躍し、ヒートさんとクックルの間に張られた鎖を足場に更に跳ねる。
それによって更に前に引っ張られたヒートさんは、つんのめりながらも盾を放り投げ、
数回の前転の後、大地を蹴った。

ξ#゚听)ξ「はああああッ!」

高高度に達したツンは、クックルに狙いを定め、急降下の飛び蹴りを放つ。
ほぼ同じタイミングで、地を這うような低空を飛んだヒートさんも飛び蹴りの体勢を取った。

∩( ゚∋゚)⊃ スッ…

クックルは冷静に両方の着弾点に盾を構える。
このままではクックルにダメージは通らないだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:27:50 ID:uF/6QhHc0<>
ノハ#゚听)「ならばっ!」

ヒートさんが吠え、飛び蹴りの体勢のまま身体を捻らせる。
捻りは回転になり、その身を一筋の螺旋の矢とした。

ξ#゚听)ξ「はああああああッ!」

それを見ていたのか、それとも最初からそのつもりだったのか、同じくツンもその身を捻り、螺旋を描く。

ノハ#゚听)「怒竜流ッ! 守兵座亜ァァァァッ!」

ξ#゚听)ξ「でえええええりゃあああああッ!」

重々しい金属音が鳴り響き、2本の螺旋の矢を受け止めたクックルの身体が後方に押される。
しかしクックルは耐え切り、盾ごと受け止めた2人を地面に叩き付けようとする。

ξ#゚听)ξ「まだよッ!」

ノハ#゚听)「やられる前にッ!」

ノハ#゚听)ξ#゚听)ξ「やれええええッ!!!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:29:41 ID:uF/6QhHc0<>
地面に叩きつけられた様に見えた2人は、きっちりと受身を取っており、すぐ様反撃に転じる。
仰向けの体勢で倒立するように身体を前に丸め、引き絞った脚を同時にクックルに突き出し、その身を跳ね上げた。

( ゚∋゚) !?

クックルの巨体がふわりと宙に浮く。
決して高くはないが、脚が地面から離れたことで、更に下から襲い来るツンの追撃を耐える事は出来なかった。

ξ#゚听)ξ「飛んでけええええッ!」

先の跳ね上げた蹴りの着地の瞬間、すぐ様次の蹴りを放っていたツン。
その一撃が更にクックルの身を高く浮かせる。

ヽノハ#゚听)ノ「宇宙魔法ッ!」

∩ノハ#゚听)∩「打武流ゥッ! 覇亜ケェェェェンッ!!!」

いつの間にかクックルよりも更に高く跳躍していたヒートさんが、両手を握り合わせ、
大上段から振り下ろす渾身の一撃を放つ。
クックルは不安定な体勢ながらも身をよじり、それを盾で辛くも防ぐ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:31:16 ID:uF/6QhHc0<>
ノハ#゚皿゚)「んがあああ! しぶといッ!」

( ゚∋゚)⊃ バッ

クックルはそのまま距離が狭まったヒートさんの身体を掴もうとうする。
しかしそれは下から飛んで来たツンの蹴りに阻まれる。

ξ#゚听)ξ「油断すんじゃないわよ!」

ノハ#゚听)「おうっ!」

そのまま2人の間を通り過ぎ、更に高高度に達したツンは空中で反転し、上空からクックルに襲い掛かる。
ほぼ同時ヒートさんが必殺の一撃の溜めを作るべく、拳を引いた。

ξ#゚听)ξ///⊃「おりゃあああああああああッ!!!」

ノハ#゚听)///⊃「凄駆竜暗射亜ァァァァ──!!!」

(;゚∋゚) !!!

その刹那、3つの閃光が煌いた。
上空に2つ、そして……<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:35:05 ID:j1sLUZLMO<>もう投下来たのか
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:35:20 ID:uF/6QhHc0<>
僕の目の前に1つ。

(;゚ω゚)「んなッ!?」

咄嗟に僕は魔法でも何でもない魔力を放出し、閃光、僕目掛けて飛んで来た光弾を持っていた杖で防ぐ。
魔力の放出による魔法防御は、魔法に対する防御方法としては最も原始的で、効率の悪い手段だが、
その人の魔力の強さによっては十分防御魔法としての効果は為す。

(;^ω^)「クッ!」

(∪;^ω^)「わんお!?」

何とか光弾を防ぐ事は出来たが、僕の愛用の杖は乾いた音を立てて砕けてしまった。
僕は役に立たなくなった杖の残骸を投げ捨て、デレの前に立ち、すぐ様防御魔法を張る。

攻撃を仕掛けて来た相手の姿を探すが、今の一撃で周囲に発生した煙の所為で見付けられない。
2つの光弾が襲ったツン達の方の様子も、同じく煙でよく見えない。

「ほう……、あれを防いだか」

(;^ω^)「誰だお!?」

徐々に晴れていく煙の先に、1人の男の姿が見える。
その身に纏うローブは青。
帽子は被らず、代わりに小さめの眼鏡を鼻に乗せた眉目秀麗な顔が無表情でこちらを見詰めている。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:37:32 ID:uF/6QhHc0<>
( ・∀・)「誰だ、か。やれやれ、この国の人間はこの俺の顔も知らないのか」

(;^ω^)「知らないお。つーか誰だお、あんた?」

ζ(゚、゚*ζ「あらら、先生、お早いお着きで」

(;^ω^)「え? 先生って、ひょっとしてあれが……」

デレの言葉で僕は全てを瞬時に察することが出来た。
なるほど、西の賢者ならば今の一撃の速さも頷けるというものだ。
あの光の魔法は、発動は察知出来たが、出来た時には既に目の前にあったのだ。

(#・∀・)「ええ、貴女の先生様ですよ、デレ? そちらのお子様には西の賢者モララー様と名乗っておこうか」

ζ(゚ー゚;ζ「あははは、お元気でしたか、先生?」

(#・∀・)「お陰様ですこぶる体調は良好だよ。長い船旅が良い気分転換になったんでね」

(;^ω^)(うわちゃー……、何かすげえ怒ってらっしゃるおね……)

(∪^ω^)「わんおー」

デレ曰く、西の賢者は厳格だが物静かな人という事であった。
しかしそれは怒らせなければの話らしい。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 22:40:30 ID:kByLTM5Y0<>師匠の孫としても普通に攻撃してくんのかな<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:41:10 ID:uF/6QhHc0<>
今の西の賢者、モララーはどう見ても怒っていることからするに、相当ヤバい状況であろう。
物静かな人がいきなり攻撃を仕掛けて来るとか有り得ない話だ。

(#・∀・)「それで、デレ、君には色々と聞かねばならない事があるが……」

(#・∀・)「お前にも色々と聞く必要があるんだよな……」

(;^ω^)「お……」

そう言ってモララーは視線をデレから外し、僕ではなくクックルの方に向ける。
いつの間にか煙は晴れ、そこには3人の姿が見えていた。

ξ;゚听)ξ( ゚∋゚)ノハ;゚听)

(;^ω^)「ツン! ヒートさん! 無事だったのかお!」

ξ;゚听)ξ「う、うん、無事というか……」

(;^ω^)「お……?」

ツンはどこか信じられないものを見た様な顔で、クックルの方に視線を向ける。
見た所、ツンもヒートさんもケガはしてない様だが、先ほどの魔法はどうやってかわしたのだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:43:15 ID:uF/6QhHc0<>
(#・∀・)「なあ、クックル? お前、何やってんの?」

( ゚∋゚)

そんな僕の疑問を余所に、モララーのクックルに対する詰問が始まる。
と言っても、一方的にモララーがしゃべってるだけで、クックルは相変わらず無言だ。

しかしデレはそれでもクックルの言っている事がわかっているようだったから、
ひょっとしたらラウンジには一見無言に見えるクックルと意思疎通を図る方法があるのかもしれない。

(#・∀・)「お前はデレの護衛だ。抜け出そうとしたデレを止めなかった事は置いておくとして」

(#・∀・)「デレにずっと付いて、守っていた事は認めよう」

( ゚∋゚)

(#・∀・)「しかし何だ、今の戦いは? ラウンジ最強の武がたかだか小娘2人に負けそうになってんじゃねえよ」

( ゚∋゚)

(#・∀・)「あまつさえ、何で俺の魔法からその2人をかばってんだよ?」

(;^ω^)「お、どういう事だお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:45:37 ID:uF/6QhHc0<>
何の事かと思い、ツンの方を見ると、ツンは僕に頷いて返す。
つまりはモララーの言う事が正しいという意味だろう。

( ゚∋゚)

確かによく見るとクックルの両盾は黒ずんでいた。
恐らくモララーの魔法を盾で受けたのだろう。

となると、本来防ぐはずだったツンとヒートさんの攻撃はどうなったのだろうか。

(#・∀・)「何とか言いやがれ!」

┐( ゚∋゚)┌

(#・∀・)「何言ってんのかわかんねえよ! おい、デレ!」

(;^ω^)(あ、わかってなかったんだ……)

ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、なんざんしょ?」

(#・∀・)「あいつは何て言ってんだ?」

( ゚∋゚)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:47:50 ID:uF/6QhHc0<>
ζ(゚ー゚*ζ「戦いに年は関係ない。彼女達は立派な戦士だ。自分はその拳に応えたに過ぎない、だって」

(;^ω^)(今の短い間でそんなにしゃべってたのかお?)

(#・∀・)「はっ、ご立派な言い分だが、それが負けていいって理由には繋がらねえぞ?」

( ゚∋゚)

ζ(゚一゚*ζ「自分だって小娘に撒かれて置いてけぼり食らったくせに、ハハッ、ワロス、だって」

(#・∀・)「何だと、コラァァァァッ!」

(((;゚∋゚))) ブンブンブン

(;^ω^)「今のホントにそう言ったのかお? 何かすげえ否定してるように見えるんだけど?」

ζ(゚、゚*ζ「お前はいつもいちいち細かいんだよ、根暗眼鏡、だって」

(#゚∀゚)「おいコラ、てめえ、クックルゥゥゥゥゥッ!!!」

((((;゚∋゚)))) ブンブンブンッ!!!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 22:51:03 ID:24MM5l9I0<>ジョルジュになっちゃうwwwww<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:51:19 ID:uF/6QhHc0<>
(;^ω^)「いや、これ絶対デレが捏造してるだろ。何か別の人みたいになってるから落ち着いてくれお」

(∪^ω^)「わんわんお」

(#・∀・)「あ? つーかお前誰だよ、さっきからうちの聖女に馴れ馴れしくしやがって」

(;^ω^)「お……、いや、僕は……」

なんと答えるべきなのだろうか。
現状を正しく答えるなら、僕はデレの敵なのだが、それを馬鹿正直に言うと瞬時に消されそうで怖いものがある。

ζ(゚ー゚*ζ「ただのお友達ですよー」

(#・∀・)「友達ぃ?」

(;^ω^)" コクコク

助け船を出してくれたデレの言葉に乗っかるも、モララーの射抜くような視線が僕に突き刺さる。
これは絶対信用してない眼だと感じるが、デレは嘘は言っていないと思う。

(#・∀・)「友達ねえ……。付き合い始めたばかりの男女は皆大体そう言うよなあ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:53:13 ID:uF/6QhHc0<>
(;^ω^)「いや、そういうんじゃないですお、ホントに」

ζ(゚一゚*ζ「うん、違うよー、……まだね」

(;^ω^)「ちょ!?」

(#・∀・)「ほう……てめえ、ラウンジの聖女に手を出すというのがどういう事かわかってんだろうな?」

(;^ω^)「いや、だから違うし、わかってませんお」

(#・∀・)「そのくらい知っとけ、無学なクソガキ」

(;^ω^)「他の国の事情なんて知りませんお」

(#・∀・)「今回だってなあ、デレがすっぽかしたお陰で俺がどれだけ苦労したか」

それこそ知ったこっちゃない事だが、モララーの有無を言わせぬ迫力に僕は口をつぐむ。
下手な事を言うといきなり攻撃されそうな気がしてならない。

(#・∀・)「北部中を回って、お偉いさんの嫌味を聞いて来たんだぞ?」

(;^ω^)「そりゃご苦労様ですお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:56:30 ID:uF/6QhHc0<>
(#・∀・)「ああ、ご苦労なことだよ。その辺わかってるのか、デレ?」

ζ(゚、゚*ζ「だってー、北の方の偉い人達は私の話なんかなくっても、毎日に普通に暮らしていけるでしょ?」

デレの話によると、デレはラウンジ大陸北部に多い富裕層の町を回って説法をするよりも、
南の貧困層の多い町を回って助けになりたかったらしい。

(#・∀・)「うむ、流石デレ。ラウンジの聖女に相応しい、誠実な答えだ」

(;^ω^)(何でこの人、怒りながら褒めてんだお?)

(#・∀・)「だがね、デレ、その君が救いたい貧困層に対する支援を引き出す為にも」

(#・∀・)「君は北部の嫌味ったらしい貴族の所を回る必要があった」

(#・∀・)「君もそういった政治的な判断がわからないわけじゃないだろ?」

ζ(¬、¬*ζ「むー……」

モララーの言葉に目を逸らし、反論出来ないでいるデレ。
そのことをわかった上で、自分の我を通してしまった負い目がデレにはあるのかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 22:59:57 ID:uF/6QhHc0<>
(#-∀-)「まあ、君の気持ちもわかるし、僕も鬼じゃない」

(#・∀・)「この件はこれで不問にしようと思う。……が」

ζ(゚、゚*ζ「が?」

(#・∀・)「何故君はニューソク大陸まで来たんだね?」

(#・∀・)「ラウンジ南部を回っているだけなら許したが、流石にこれは見過ごせないね」

ζ(゚、゚*ζ「それは……」

反射的に僕の方を見ようとしたのか、デレの顔がわずかに揺れる。
思い止まったはずのその仕草で、モララーは何かを察したのか僕の方を凝視する。

( ・∀・)「なるほど、そういう事かね」

モララーは少しずり下がって来ていた眼鏡を直し、再びデレの方へ視線を向ける。

( ・∀・)「千年紀の王か」

ζ(゚ー゚;ζ「あはは……、相変わらず鋭いですなあ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:01:40 ID:uF/6QhHc0<>
ヽ( ・∀・)>やれやれ、関わるなと言っておいたはずだが、見付けてしまったならしょうがない」

(;^ω^)「お?」

モララーはそう言いながら、何だかよくわからないカッコいいポーズを取り始める。
片手を自分の頭に絡ませるように挙げ、もう片方の手を胸の前で曲げたその体勢に、
僕はわからないながらも不穏なものを感じ、再度防御魔法の準備をする。

ヽ( ・∀・)>「さっさとそれを頂戴してラウンジに帰るぞ、デレ」

急激に高まるモララーの魔力に、それがモララーのスペシャルなのだと僕は判断した。
恐らくは舞踊魔法の一種で、特定の型に構える事で発動するものだと。

(・∀・#)「だから邪魔すんなよ、っと!」

いきなりモララーは振り向き様、後方に魔法を放つ。

ξ;゚听)ξ(;゚∋゚)ノハ;゚听) !?

放たれたのは風の魔法。
不意を突こうとしていたツン達3人は大きく空に舞い上がり、海に落ちた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:03:01 ID:uF/6QhHc0<>
(;^ω^)「ツン! ヒートさん! あと、クックル!?」

何故クックルもツン達に加担しようとしていたのかわからないが、
その重量のあるクックルさえもあんなに吹き飛ばすとは恐ろしい威力だ。
殺すつもりはなかったのだろうが、結構遠くまで飛ばされたので助けないとまずいかもしれない。

ζ(゚ー゚;ζ「聞いて!」

(;^ω^)「お?」

思わず飛び出しそうになった僕の手をデレが掴み、小声で耳打ちをして来る。

ζ(゚ー゚;ζ「何とか私が先生の足を止めるから、君達は逃げて」

(;^ω^)「……いいのかお?」

ζ(゚ー゚;ζ「このままだと君達、先生に消されちゃいそうだしね」

(;^ω^)「まあ、正直勝てる気はしないお」

(;^ω^)「でも、いいのかお、これ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:04:12 ID:uF/6QhHc0<>
僕は小脇に挟んでいた聖骸布を差す。
これをモララーに素直に渡してしまえば、戦いは避けられそうな気もするが、
それはそれで納得は出来ないものがある。

ζ(゚ー゚*ζ「確かめるんでしょ、それ?」

( ^ω^)「そのつもりだお」

ζ(゚ー゚*ζ「だったら、君を信じて預けるよ」

( ^ω^)「ありがとうだお。決して悪い事には使わせないって約束するお」

デレとの会話終え、モララーの方に視線を戻す。
モララーは既に次の魔法の体勢に入ってるようで、先程とは違うカッコいいポーズを決めていた。
     ヽ
ノ( ・∀・)「さて、大人しくそれを渡せば見逃してやるがどうするかね?」

( ^ω^)「だが断るお。こっちも仕事なんだお」
     ヽ
ノ( ・∀・)「勤勉さは美徳だが、時と場合を考えた方が良いんじゃないか?」

( ^ω^)「冒険者も魔法道具屋も、信用が第一なんだお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:05:39 ID:uF/6QhHc0<>
モララーがどんな魔法を使ってくるか、現段階では予測は出来ない。
しかしながら僕の隣にデレがいる事を考えると、あまり強力な魔法は使って来ないと思う。
本意ではないが、ここはデレを利用させてもらう他に道はない。
     ヽ
ノ( ・∀・)「ふむ、言うじゃないか。骨のある若者は嫌いではないが、今の所、俺は君が嫌いだね」

( ^ω^)「僕はそうでもないんですけどね。貴方の師匠のお話とか聞きたいですし」
     ヽ
ノ( ・∀・)「ん? 君は……っと!」

モララーが魔法を解き放つ。
対象は僕ではなく、自分自身に。

( ・∀・)「まだ仲間がいたのか」

モララーの周囲の空気がわずかに歪んで見える。
恐らく、モララーの張った防御魔法だろう。

そしてその魔法に遮られ、見覚えのある金属の板が空中に留まっていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:07:24 ID:uF/6QhHc0<>
(゚、゚;トソン「物理防御結界!? いや、高密度の空気ですか!?」

( ・∀・)「随分と変わった武器を使うねえ。いい太刀筋だ」

気付けば集合時間は過ぎていた。
時間になっても現れない僕らを不審に思い、トソン君達は港に駆け付けて来てくれたのだろう。

川#゚ -゚)「ハッ!」

更に脇からクーが躍り出て、モララーに剣を向ける。
しかし、モララーが右手を一薙ぎすると、クーの剣はまるで空中に壁があるように止められてしまう。

( ・∀・)「こちらはまだまだ踏み込みが甘いな」

川#゚ -゚)「クッ……」

( ・∀・)「ああ、君、すぐに剣を捨てた方がいいぞ?」

川#゚ -゚)「何を……」

(;^ω^)「クー! 剣を捨てるお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:09:23 ID:uF/6QhHc0<>
川;゚ -゚)「え? あ……」

僕の叫びに咄嗟に剣を離すクー。
次の瞬間、空中に浮かんでいたクーの剣はぐにゃりと捻じ曲がり、ただの鉄屑と化した。

(;^ω^)(とんでもねえ強さだお……)

やはりまともに戦っても敵う相手ではない。
デレの提案に従い、逃げるしかないだろう。

トソン君達の奇襲は失敗したが、その時間で周囲の確認が出来た。
心配だったツン達も、見覚えのある船に救助される姿が見えた。

(;^ω^)(退路はやっぱあそこかおね……)

僕は船上の人物がこちらを見ている事を確認し、何かを放り投げる仕草をして見せた。
その後、わんわんおをフードに押し込み、聖骸布を懐に入れて魔法の詠唱の準備をする。
逃げる為にはもう1手必要だと思うが、それはデレに任せられるだろうか。

( ・∀・)「年長者の言うことは素直に聞くものだよ、お嬢さん」

川;゚ -゚)「……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:12:34 ID:uF/6QhHc0<>
そうこうしている間に、モララーがクーに手を向けている。
あまりのんびり構えている時間はない。

( ^ω^)「ここで行くしかないかお。ksk!」

僕はエア・シューズの魔法を唱え、一直線に走る。

( ・∀・)「何だね、それは? 無謀にも程があるだろ」

モララーの手がクーから僕に向け直される。
最初に見た光の弾が各指に浮かぶ。

(;^ω^)「ぬおっ!?」

( ・∀・)「サービスだ」

更に反対側の手も向けられ、計10の光弾が飛んで来る。
このままモララーの元に向かえば直撃は避けられないが、僕の狙いは最初からモララーではない。

(;^ω^)「だあああああッ!」

川;゚ -゚)「!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:14:46 ID:uF/6QhHc0<>
僕は進行方向を変え、クーの元へ向かう。
その僕のすぐ後ろを光弾が通り過ぎて行く。

(;^ω^)「クー!」

僕はクーの横を通り過ぎつつ抱き上げ、そのまま走り去ると見せかける。
モララーが再び僕に向けて魔法を放とうとしているのがわかるが、
それより早くモララーの背後にデレが飛び出した。

ζ(゚口゚*ζ「あ〜♪」

( ・∀・)「どういうつもりだね?」

モララーは跳躍し、デレの歌の効果範囲から逃れる。
その隙に僕は、再び進行方向を変え、今度はトソン君の元へ走った。

ζ(゚ー゚*ζ「いやね、内輪揉めは内輪でやるべきじゃないかあと」

( ・∀・)「君はあの布を取りに来たんじゃなかったのかな?」

dζ(゚ー゚*ζ「それは彼、ブーン君に任せる事に決めましたのさ」

( ・∀・)「ブーン? ……チッ、お前まで邪魔をするのか」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:16:04 ID:uF/6QhHc0<>
( ゚∋゚) グワッ

宙に浮いたモララーより更に上から、海水を身体から滴らせたクックルが襲い掛かる。

( ・∀・)「もう1回頭を冷やして来い」

( ゚∋゚) !?

モララーから放たれた光弾を防御したクックルは、その勢いを殺せず再度海まで飛ばされる。
僕はそれを横目に見ながら、空いていた反対の手でトソン君を抱き上げる。

(;^ω^)「トソン君、剣を!」

(゚、゚;トソン「え? あ、はい!?」

事態を理解せぬまま、トソン君は右手の剣を空に掲げる。
後は向こうが気付いてくれなければ手詰まりだが、その心配は要らなかった様だ。

<「サースガ式ワイヤー!」

(゚、゚;トソン「なんと!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:17:47 ID:uF/6QhHc0<>
海上から聞こえて来た大声と共に、飛んで来たワイヤーがガリアン・ソードに絡み付いた。

(´<_`;)「今だっ!」

ξ#゚听)ξノハ#゚听)「うぉぉぉりゃぁぁぁぁッ!」

物凄い勢いで引っ張られるワイヤーに、僕ら4人は宙を舞い、海にダイブする。

(∪;゚ω゚)(;゚ω゚)「ごぼべばぼぼぶッ!?」川;゚д゚)(゚д゚;トソン

そのまま僕らが水を飲むのもかまわず、引っ張り続けられるワイヤー。
かなり乱暴な手段だったが、これで全員モララーから離れる事が出来ただろう。

(;^ω^)(いや、まだだお!)

僕らが港から離れるよりも速いスピードで膨れ上がる嫌な気配。
波に翻弄されながらも背後を覗くと、そこには一際カッコいいポーズを取ったモララーの姿が見える。


          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ(#・∀・)
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:19:29 ID:uF/6QhHc0<>
(;^ω^)(ちょ、船ごと沈める気かお!?)

これまでよりは明らかに大きな魔力を感じる。
この魔力なら、このサイズの船の1艘や2艘は確実に破壊出来るだろう。

(;^ω^)(オトジャさんに船の速度を上げるように伝えなきゃだお!)

しかし、未だ海面を引っ張られている僕の声は船上の人間には届かない。
万事休すかと、観念した瞬間、突如僕の身体が宙を舞った。

ξ#゚听)ξノハ#゚听)「大漁おおおおッ!!!」

(∪;゚ω゚)(;゚ω゚)「うひょおおおおッ!?」川;゚д゚)(゚д゚;トソン

一気に引き上げられ、宙を舞った僕らは甲板に折り重なるように着地する。
すぐに僕はそこから抜け出し、オトジャさんに声を掛ける。

(;^ω^)「オトジャさん、 緊急発進だお! デカい魔法が来るお!」

(´<_`;)「り、了解! ジェットブースト、オン!」

操舵室に飛び込み、オトジャさんが何かを操作すると船は急激に速度を上げる。
以前話には聞いていた、機工技術で加速する仕組みの様だ。
そのまましばらく進んだが、一行に魔法が放たれる気配はない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:22:48 ID:uF/6QhHc0<>
(;^ω^)(あれ? 魔法の気配消えてね?)

(´<_`;)「ブーン、ジェットブーストはもうすぐ燃料切れだがどうする?」

(;^ω^)「あ、何か大丈夫みたいなんで、通常航行に切り替えてもらっても良さそうですお」

既に港は遥か遠くにある。
いくら西の賢者とはいえ、これほど距離の離れた船に強力な魔法をぶち当てるのは不可能だろう。

(;^ω^)「……逃げ切ったみたいだおね」

(゚、゚;トソン「その様ですね……」

(´<_`;)「あー、ブーンよ。取り敢えず色々聞きたい事があるんだが」

(;^ω^)「ええ、わかってますお。オトジャさんには礼を言っても言い足りないぐらいなんで」

+(´<_` )「困った時はお互い様さ。友の危機とあらば、この身を投げ打ってでも助けるのが男というものだよ」

( ^ω^)「ありがとうございますお。ついでにこのままソクホウに向かってもらえると助かりますお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:24:51 ID:uF/6QhHc0<>
(´<_` )「ああ、それはかまわないさ。僕も帰る所だったしね。だからその、色々と話をだね……」

( ^ω^)「ええ、勿論ですお。でも……」

(´<_` )「でも?」

( ´ω`)「ちょっと休んでからでいいいですかおね……」

そう言うと僕は、甲板にひっくり返る様に倒れ込む。
何とか窮地を切り抜けはしたが、全員身も心もくたくたの様で、皆同じように甲板に寝転んでいた。

( ´ω`)ノ□「取り敢えず、クエスト成功だお……」

(∪´ω`)ノξ´凵M)ξノノハ´凵M)ノ川 ´ -`)ノヽ(´、`トソン

懐から聖骸布を取り出し、弱々しく掲げると皆も寝転んだまま手を挙げる。
長い旅路と戦いの連続だったが、何とか僕達は目的を達成する事が出来た。



     第三十四話 激闘の果てに 終……?<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:31:20 ID:uF/6QhHc0<>
 〜 キマスタの港 埠頭付近 〜


( ・∀・)「……」

ζ(゚、゚;ζ「……」

( ・∀・)「何のつもりだ?」

「何のつもりも何も、少し頭を冷やせ。そんなもん撃ったら全員死ぬぞ?」

( ・∀・)「……うるさいなあ、ちゃんと外すつもりだったさ」

「どうだかな。……まあ、いいや。それよりお前に用があるんだよ」

( ・∀・)「用だと? お前が俺にか? どうせ碌な用事じゃないんだろ?」

「そうだな。用というよりは頼みだからな」

( ・∀・)「ハッ、お前が俺に頼み事か。そりゃ途轍もなく碌な物じゃないな」

「違いないな」

( ・∀・)「まあ、いいだろう、話を聞こうか……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:32:37 ID:uF/6QhHc0<>

( ・∀・)「……東の賢者殿」


('A`)「ああ、聞いてもらおうか、西の賢者殿」




     第三十四話 激闘の果てに 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 23:35:58 ID:uF/6QhHc0<>
三十四話は以上です

思ったより長くなりましたが、思ったよりさらっと書けたかなとも思います

ようやく話が1区切りという所でお仕舞い
次回は今回のクエストの総括やら次の話への繋ぎになるでしょう
ほとんど書けてませんし、投下時期は未定で

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 23:36:29 ID:FlrhpGug0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:36:47 ID:Bx4uPpLw0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 23:37:43 ID:Gn9rMqOY0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/15(金) 23:40:20 ID:j1sLUZLMO<>乙!
ドクオさんが動いたか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/15(金) 23:58:41 ID:JUY0jif60<>ドクオ キタカ ツギモキタイシテルゾ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/16(土) 00:05:34 ID:YDDErmcA0<>乙

          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ(#・∀・)
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓


まさかこの賢者…
読者か……?<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/16(土) 00:07:33 ID:0nFL3jeUO<>来てたのか
今から読もうっと

乙です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/16(土) 01:18:33 ID:SML6I1MU0<>乙
ただ細かいけどブーンの師匠が西の賢者になっとる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/16(土) 01:54:35 ID:pNvv0AEcO<>ドクオさん来た!wktk!<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/16(土) 02:16:00 ID:ZaI9am2s0<>相変わらずかっけぇ(*´д`*)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/16(土) 06:34:42 ID:YhMnMJnc0<>ドクオさんかっけえ!
ブサイクなのにかっけえ!!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/16(土) 07:55:51 ID:Qi5sJMUY0<>やべぇドクオさん一番好きだわこれ<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/06/16(土) 21:56:31 ID:F7oyn7JA0<>>>510

( ^ω^)「無意識に願望が出ましたお」


というのは冗談で

>>461

×( ^ω^)「知ってるお。僕の師匠は西の賢者だし、それに……」

○( ^ω^)「知ってるお。僕の師匠は東の賢者だし、それに……」

ですね
ご指摘ありがとうございます<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/17(日) 02:27:29 ID:CtvoMmBsC<>わんお可愛いよわんお
和やかムードとバトルの熱さが絶妙にコラボしてますな
危機に現れる助っ人もカッコイイ!(不細工だとしてもw)
現行で一番好きです
乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/17(日) 14:54:37 ID:lvFh9J.I0<>笑える、泣ける、熱くなれる
最高だわマジで<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/17(日) 15:32:34 ID:Lv3hOeSgO<>おお来てたのか
光魔法かっこいいポーズ!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/17(日) 21:21:35 ID:ieONM9Ys0<>


          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ ('∀`)
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/17(日) 22:25:55 ID:CYgQ6/fs0<>かっこよさが たりない!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/17(日) 22:47:18 ID:C2e2zSKM0<>かっこよさが ない!<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/17(日) 23:45:23 ID:oqyVbvi20<>あらやだ…ドックンかっちょいい…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/18(月) 00:26:27 ID:USn0WEys0<>このポーズ、モテモテ通信に載ってんじゃないだろうな…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/18(月) 12:07:45 ID:dgNGW9VYO<>トソンく…さんとモララーが魔法同時に使ったらさぞかし珍妙な光景になるんだろうなぁ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/18(月) 19:37:22 ID:LvCADXbgO<>絶対に笑ってはいけない魔法道具屋<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/18(月) 23:09:12 ID:oX9JT3R.O<>
('A`)「よ……


\デデーン♪ 全員、アウトー/

('A`)「……え?」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/19(火) 07:57:28 ID:5YkdkZrAO<>ほんとにすごいっていうか
こんなん書ける作者は普通に執筆で飯食えそうだよなーって真面目に思う<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/20(水) 13:29:04 ID:X.EMe.AY0<>続きが待ち遠しいぜ
次回はいつかな<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:49:29 ID:.iP4EDXc0<>
 〜 ソクホウ西部 ソレイ港 マリン・サースガ号内 〜


( ^ω^)「ソクホウに着いたのはいいけど、どうするかおね」

ξ゚听)ξ「流石にラウンジの一行が陸路で先回り出来たとは思えないけど……」

川 ゚ -゚)「だが相手は西の賢者だからな。そのくらい出来ても不思議はない」

ノパ听)「おーい、降りないのかー? 早いとこ飯にしようぜー!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(´<_`;)「こ、ここは慎重に慎重を期してだね、顔の割れていない僕がまず様子を……」

(゚、゚トソン「無理をしないで下さい。顔がこれ以上ないくらい引きつってますよ?」



     第三十五話 敗者の凱旋


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:51:59 ID:.iP4EDXc0<>
( ^ω^)「オトジャさんにこれ以上迷惑かけられませんから、しばらく船に隠れててくださいお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

+d(´<_`;)「だ、大丈夫だよ。彼の西の賢者とて、この僕にかかればやり過ごす事も訳無いさ」

彼の名前はオトジャさん。
アニジャさんの弟で、トレジャーハンターをやっていて、冒険野郎サスガイバーの異名を持つ人だ。

ヴィップの町の教会から盗まれた聖骸布の奪還というクエストを請け負った僕らは、
色々と想定外の事態に会いながらも、偶然通りかかったオトジャさんの助けも借りて無事目的を達成する事が出来た。

正確には、まだ聖骸布を届け終えていないので達成したわけではないのだが、
目的地であるソクホウの王宮はここからさほど遠くない。

川 ゚ -゚)「どちらにしろ、我々はソクホウを気軽にうろつくわけにはいかないんだがな」

(゚、゚トソン「ですねえ。知り合いに見られたら事ですし」

クーとトソン君はソクホウから抜け出し、旅に出ている身だ。
見付かると色々と問題が発生するのは確実である。
途中でどこかに下ろすという手もあったのだが、状況を考えると寄り道も戦力を減らすのも避けたかったのだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:53:22 ID:.iP4EDXc0<>
( ^ω^)「取り敢えずは色んな意味で身の軽い、僕とツンが様子見に行って来るかおね」

ξ゚听)ξ「それがいいわね。あんたはあんまり軽いわけでもないけど」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「わんおも一緒に行くかお?」

ツンの嫌味を聞き流し、そう結論付けて船から降りようと身を起こす。
船は既に接岸しており、そこで全員甲板に伏せて会話しているという少し間抜けな状況だったが、
幸いにも懸念していた襲撃は一切無かった。

( ^ω^)つ□「取り敢えず、その辺見回って来るから、これは預けておくお」

<「その必要はありませんよ」

(;^ω^)「お……?」

僕が携帯したままだった聖骸布を渡そうとしていると、突然背後から声を掛けられる。
嫌な予感満載で、恐る恐る振り向くと、そこには想定外の顔があった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:54:19 ID:.iP4EDXc0<>
( ∵)「お疲れ様です、ブーン様。クエスト達成、お見事です」

(;^ω^)「ビコーズさん!? 何でここに……」

(゚、゚;トソン川;゚ -゚)「ゲッ……」

慌てて隠れるクーとトソン君だが時は既に遅い。
少なくとも聖骸布を受け取ろうと立ち上がっていたクーの姿は、ばっちりと確認されただろう。

しかしながらビコーズさんは素知らぬ顔で僕に話し掛けて来る。

( ∵)「なに、連絡は受けていましたのでね。ブーン様がクエストを成功させ、海路でお戻りという話を」

それでお迎えに上がりましたと、ビコーズさんは恭しく頭を下げる。
何だかよくわからない部分もあるが、取り敢えずこれで本当にこのクエストは終了らしい。
僕は聖骸布をビコーズさんに差し出した。

( ∵)「それはそのままお持ちください」

(;^ω^)「お?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:55:50 ID:.iP4EDXc0<>
( ∵)「私は貴方様をお迎えに上がったのですよ」

ビコーズさんは僕に付いて来て欲しいと頼む。
ビコーズさんには聞きたい事が沢山あるし、こちらに対する害意は無いだろうから付いて行くのはかまわないが、
行き先ぐらいは聞いておきたい。

(;^ω^)「えっと、どちらまでですかお?」

( ∵)「勿論、王宮にですよ」

それは何となくわかっていたが、王宮のどこに案内されるのかが問題だ。
さり気なくぼかされる物言いに、どうにも嫌な予感が拭えない。

( ∵)「あ、ご希望なさる方はご同行して頂いてかまいませんよ?」

多分笑顔なのだろうと思われる普段と変わらぬ表情で、ビコーズさんは船上に声を掛ける。
しかし、誰もその言葉に反応はしない。

ξ゚听)ξ「それじゃあ、私が行ってもいいですか?」

( ∵)「ええ、勿論ですよ、ツン=ディレード様」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:56:57 ID:.iP4EDXc0<>
ξ゚听)ξ「……貴方の様なご高名な方に、名をお覚え頂いて光栄ですわ」

( ∵)「幾度と無くブーン様の御身を守護して頂いたのです。勿論、存じ上げておりますとも」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ^ω^)「お、わんおは悪いけどお留守番だお」

(∪´ω`)「わんおー」

( ∵)「ハハハ、折角ですから、わんわんお君もご一緒されてはいかがでしょうか」

( ^ω^)「お? いいんですかお?」

( ∵)「以前もご一緒なされたじゃないですか。こちらは一向にかまいませんよ」

それから僕はオトジャさんに後を頼み、ビコーズさんが用意した馬車に乗る。
他の皆はこれからオトジャさんの家に向かうという事で、後ほどそこで合流する事にした。

( ∵)「それでは参りましょうか」

( ^ω^)「お願いしますお」

(∪^ω^)「わんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:58:11 ID:.iP4EDXc0<>
相変わらずの高級感溢れる馬車に乗り、僕達は王宮を目指す。
ともすれば旅の疲れから思わず眠りそうになってしまうが、流石にそれは無作法なので何とか耐え切った。

( ^ω^)「お? 今回は入る場所が違うんですかお?」

( ∵)「ええ。重大なクエストを達成して帰還した優秀な冒険者が、裏口から入る理由もないでしょう」

その言葉通り、馬車は王宮に向かってまっすぐに進み、僕らは正面の入り口の前に降ろされた。
すぐ様周りを兵士に取り囲まれるが、勿論僕らを捕らえる為とかではなく、護衛に付く様に周りに立っている。

彼らを引き連れて歩くビコーズさんに従って僕らも歩き始めるも、
何だか途轍もなく嫌な予感を感じ、僕はツンの方を見た。

ξ;゚−゚)ξ

ツンも僕と同じ気持ちなのか、難しい顔をしていた。
僕の視線に気付くと、ここまで来たら腹を括れとでも言いたげな神妙な顔をしてみせる。

(;^ω^)「あの、ビコーズさん? これからどこへ……?」

( ∵)「勿論、謁見の間ですよ」

(;^ω^)「ああ、謁見の間ですかお。なるほどなるほど……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 20:59:41 ID:.iP4EDXc0<>
謁見の間、言葉通り考えれば、目上の人に面会する為の部屋だ。
この場合、面会するのは僕達であろう。
そして目上の人というのは……

(;^ω^)「ひょっとして、これから僕達が会うのは……」

( ∵)「はい、現ニューソク王国国王、モナー=ニューソク様です」

(;^ω^)「……やっぱりですかお」

(∪^ω^)「わんおー」

何となく予測はしていた展開ではある。
ビコーズさんの物言いや、この物々しい警護から察する事が出来た。

(;^ω^)「その、王様に会うのに、こんな格好でいいんですかおね?」

馬車を置いて着の身着のままの船旅で、僕らの格好はだいぶみすぼらしく見える。
船で水を浴びるぐらいは出来たので、長旅の後にしてはかなりマシな方だと思うが、
それでも王に謁見していい格好だとは思えない。

( ∵)「かまいませんよ。それも激闘を潜り抜けた勲章のようなものです」

( ∵)「誇れるものでこそあれど、貶められるものではありません」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:00:57 ID:.iP4EDXc0<>
そう言ってくれるビコーズさんだが、何だか礼儀を欠くようで申し訳ない。
僕はそう思ったのだが、ツンは自分達は冒険者として呼ばれているのだし、
これが正装だから気にしてもしょうがないと割り切った事を言う。

( ∵)「ツン様の言う通りですよ。堂々と胸を張っておられれば良いのですよ」

ξ;゚听)ξ「その、ツン様というのは止めて頂けませんか? 私はそう呼ばれるような身の上では……」

( ∵)「まあまあ、お気になさらずに。貴女の実力は敬意を払われて然るべき物ですよ」

これ以上言っても無駄だと悟ったのか、ツンは恐縮ですと短く答え、口をつぐむ。
そうこうしている内に、僕達は一際立派な大きな扉の前に辿り着いた。

( ∵)「それでは、参りましょうか」

意外に軽い音を響かせながら開けられる扉に、何の躊躇いなく向かうビコーズさん。
既に僕達は武器も預けており、特に止められる事もなかったのでビコーズさんに続いて部屋に入る。

(;^ω^)

腹は括ったつもりだったが、きっと僕の表情はだいぶ強張っていたと思う。
開けた視界の先には、静まった豪奢な造りの謁見の間と、そこに並び立つ身なりのいい人達が見えた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:03:26 ID:.iP4EDXc0<>
( ´∀`)

部屋の奥、僕達の正面にただ1人座っている柔和な顔の男は、王宮の事に詳しくない僕でも顔は知っている。
現ニューソク国王モナー=ニューソク、僕達を呼んだ張本人だ。

( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)( 貴)    (貴 )(貴 )(貴 )(貴 )(貴 )(貴 )(貴 )

部屋の左右にずらりと並ぶ身なりのいい人達は、この国の貴族階級の人達だろう。
物珍しげな眼を僕達の方に向けて来る。

中には露骨に顔をしかめている人もいたが、
多分僕らの格好がみすぼらしいのを場違いだとでも思っているのではなかろうか。
わんわんおまでいるのだし、場違い感は満載だと自分でも思う。

(,,゚Д゚)

( <●><●>)

( ><)

その中に、こちらとは若干違う意味で場違いだと思える顔も見えた。
1人は随分と強面の男で、貴族というより武人いった方がしっくり来る面構えだ。
多分、騎士団の要職に付く人だろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:06:01 ID:.iP4EDXc0<>
そういえばフィレンクトさんの姿が見えないが、
ひょっとしたらジョルジュさん達と一緒にナカノヒトの町に出向いていたのだろうか。

そして更に見た目からして、周囲と比べてだいぶ年若いと思われる人が2人。
この場にいることを考えると、きっとこの2人がこの国の王子、つまりはクーの兄なのだろう。
1人は僕より年下かもしれないと思える幼い顔立ちだったが、クーの兄なら僕より年上のはずだ。

2人はギョロ目と細目の違いはあるが、顔立ちはよく似ている。
ただ、クーとは全然似てないと感じた。

それを言うなら父親であるモナー王は、どの子ともあまり似てなく見えるのだが。

( ´∀`)「この度の働き、大儀であったモナ」

(;^ω^)「あ、どうも……」

王の言葉に、思わず素で返した僕の脛をツンが蹴り、その背を押す。
かなり不遜な態度であった事に気付いた僕は、ツンに押されるまま膝を突き、頭を下げる。
わんわんおも空気を読んで、僕の側で大人しく座っていた。

( ´∀`)「そんなにかしこまらなくて良いモナ。まだ全然状況が飲み込めてないモナ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:08:05 ID:.iP4EDXc0<>
(;^ω^)「ええ、その通りですお。教会から受けたクエストだったのがどうしてこんな事になってるのか……」

( ´∀`)「うむ、正直でよろしいモナ。いきなり呼び出してすまなかったモナね」

馬鹿正直に答えてしまった僕に、モナー王は笑みを浮かべてそう言ってくれる。
このよくわからない状況で、こちらの事情を察してくれてるのは助かると思う。

( ∵)「申し訳ありません陛下、全ては私の不手際です。ですから……」

( ´∀`)「皆まで言わなくていいモナ。私がお前に任せたんだモナ」

( ´∀`)「彼らに非があるなんてこれっぽっちも思ってないから心配するなモナ」

意外に気さくな物言いをしてくるモナー王に、ビコーズさんは大袈裟に頭を下げる。
そして説明が足りなかったと僕達にも謝罪した。

( ∵)「色々と知らせずに依頼して申し訳ありませんでした」

(;^ω^)「いや、まあ……悪事でなければ別に……依頼主の意図がわからないクエストはたまにありますし」

もう言葉遣いとか考えず、素で返してしまっている事には気付いていたが、今更修正がきかないので諦めた。
言葉遣いは普段の客商売で慣れてるつもりだったのに、緊張のし過ぎで色々と吹っ飛んでしまった気がする。
こんな事ならもう少し礼儀作法も学んでおくべきだったと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:08:52 ID:.iP4EDXc0<>
僕は取り敢えず改めて聖骸布をビコーズさんに渡そうとしたが、ビコーズさんは受け取る事はせず、
恭しく前方を指し示す。
直接モナー王に渡せという事なのだろうが、それは無用心過ぎるのではなかろうか。

(;^ω^)つ□「ど、どうぞ……」

結局断る事も出来ずに僕は王の前まで進み、聖骸布を手渡す。
どう考えても渡し方がぞんざいだったと思うが、特に咎められる事もなかった。

( ´∀`)つ□「うむ、確かに受け取ったモナ」

( ´∀`)「改めてそなたの働きに感謝するモナ」

(;^ω^)「もったいないお言葉で……」

一連の僕の適当な作法に、嫌な顔をする貴族の人の顔も目に入ったが、僕としても正直いっぱいいっぱいなので、
本当はどうすれば良かったのかなんてわかりようがない。

僕は王の前から下がり、再びツンの横で膝を突く。

( ´∀`)つ□「ふーむ……一見するとただのボロ布モナね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:13:24 ID:.iP4EDXc0<>
( ∵)「ええ、単体では何も感じないでしょうな。ですが品に間違いはございません」

( ´∀`)「わかってるモナ。そこは疑ってないモナよ」

モナー王は聖骸布を広げ、怪訝な顔をしたがビコーズさんの言葉に笑って返す。
今の話し振りからも、モナー王もこれがただの神具等ではないとわかっているのだと思う。

( ´∀`)「さて、ここに集まった諸君も、それから取り返してくれた本人達も」

( ´∀`)「完全に事情を理解しているものは少ないと思うモナよ」

王の言葉に、周りの多数の貴族達が頷く。
どうやら僕達以上に事情をわかっていない人の方が多いようだ。

( ´∀`)つ□「まずここにあるこの布、聖骸布と呼ばれてるモナ」

( ´∀`)「それは教会側の人間はよく知ってるモナね?」

王の問い掛けに、王の右手側の人達が一様に頷いた。
今気付いたが、この左右に別れた貴族達は騎士側と教会側に分かれているらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:15:05 ID:KYil.By2O<>来てるじゃないか
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:15:45 ID:.iP4EDXc0<>
( ´∀`)「保管されていたヴィップの教会から盗まれた聖骸布を取り返すというのが」

( ´∀`)「彼らに教会から依頼されたクエストだったモナ」

(∪^ω^)「わんお!」

(;^ω^) " コクッ

次に王の視線がこちらに向けられる。
僕が答えるより早く、わんわんおが元気よく返事をする。
王は軽い笑みを浮かべ、話を続けた。

( ´∀`)「本来はこれだけの事だったモナよ。……しかし、実際は違ったモナ」

( ´∀`)「聖骸布というのは過去の賢人が付けた仮の名前」

( ´∀`)「本当の名は……魔王の衣」

( ´∀`)「千年紀の王を蘇らせる為の魔具モナ」

(;^ω^)(わかってはいたけど、やっぱりそれで確定なんだおね……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:18:33 ID:.iP4EDXc0<>
それからモナー王はつらつらと事の経緯を話し続ける。
当初はその事は知らなかったが、ビコーズさんの進言で知り得た事。
この件を教会から王直々の預かりに変えた事。

そして、それを集める事に決めた理由をモナー王は語る。

( ´∀`)「こんなものが世に出回っていては、いつこの国の、いやこの世界の平和が脅かされるかわからないモナ」

( ´∀`)「故に、これはニューソク王家の名の下に管理し、千年紀の王の復活は断固として阻止するモナ!」

モナー王は立ち上がり、力強くそう宣言した。
周囲からは自然と拍手が起こり、皆口々に王を讃える。

そして僕も王の言葉に安堵していた。
これでデレとの約束は守れそうだ。

( ^ω^)(王家が管理してくれるなら、大事にならずに済みそうだおね……)

( ´∀`)「冒険者ブーンよ」

(;^ω^)「は、はいですお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:19:19 ID:.iP4EDXc0<>
油断していた所に突然声を掛けられ、声が裏返ってしまった。
視界の端に額を押さえるツンの姿が見える。

( ´∀`)「今回のそなた達の働き、誠に素晴らしきものであった」

(;^ω^)「恐縮ですお」

( ´∀`)「聞けば彼の凶悪な犯罪者である精霊兵器の研究者を倒し」

( ´∀`)「更にはラウンジの聖女に、西の賢者さえも退けたそうモナ?」

(;^ω^)「え、いや、倒したとか退けたとかではなく、運良く逃げられたというのが正確な所で……」

(;^ω^)「僕はマルタスニムにもラウンジの聖女にも、西の賢者にも勝てなかったんですお」

( ´∀`)「……」

思わず馬鹿正直に反論してしまったが、一国の王に対して不遜だったのではと思ってしまう。
今の言葉で周りの貴族達がざわついているし、王も口を閉ざしてしまった。

(;^ω^)(これはやらかしちゃったかお……)

ξ゚−゚)ξ<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:20:51 ID:.iP4EDXc0<>
そう思いつつツンの方を見ると、ツンは目を伏せ、唇を噛み締めていた。
その姿は僕に対して怒っているとかではなく、自分の行いを後悔しているようにも見えた。

( ∵)「ブーン様」

( ´∀`)「ビコーズ、よいモナ。下がっているモナ」

( ∵)「はっ……」

(;^ω^)「えっと……」

( ´∀`)「冒険者ブーンよ。そなたは確かに此度のクエストで己の力のなさを痛感したのかも知れぬモナ」

( ´∀`)「力は及ばず、知恵は足りず、絶望の中、戦いに身を置いたのかも知れぬモナ」

(;^ω^)「……」

( ´∀`)「しかしそなたは、その様な状況下においてもクエストを達成したモナ」

( ´∀`)「最終的に魔王の衣を手に入れたのはそなたモナ」

( ´∀`)「冒険者ブーンよ、そなたがどう思おうと、そなたが今回の戦いの勝利者なのは間違いないモナよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:23:26 ID:.iP4EDXc0<>
(; ω )「……もったいないお言葉ですお」

僕はその言葉に、救われる思いはあった。
しかし同時に、やはり悔しい思いもあった。

僕は負けたのだ。
聖骸布を手に入れられたのは、運が良かっただけに過ぎない。

( ´∀`)「さて、ブーンよ。今回のそなたの働きを見込んで、新たに依頼したい事があるモナ」

(;^ω^)「……はい?」

どうやらわざわざ王に謁見する事になったのは、単に労いの言葉だけでなく、この話があったからの様だ。
むしろこちらの話が本題らしい。
僕は思わずツンと顔を見合わせる。

( ´∀`)「なに、至ってシンプルな依頼モナ」

(;^ω^)「えっと、どのような……」

( ´∀`)「魔王の頭骨を探してきて欲しいモナ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:25:32 ID:pjv8NzQI0<>‥‥黒幕?<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:26:58 ID:.iP4EDXc0<>
さらりと言い放つモナー王に、僕は呆けてしまって返事が出来なかった。

千年紀の王を復活させない為に、魔王の衣をニューソク王家が管理するとなれば、
当然、他の2つの魔具も集めようとするのはわかる。

しかしそれが何故僕に依頼されるのだろうか。

( 貴)「お待ちください、陛下」

僕が返事をせずに固まったままでいると、1人の貴族が進み出て王に進言する。
その貴族は何故僕に依頼をするのかという、僕も聞きたかった疑問を口にした。

( ´∀`)「そりゃ魔王の衣も取り返してくれたし、うってつけの人材モナ?」

( 貴)「ですが先ほど本人の言にもあった様に、彼らでは実力が足りてないのではないかと思われます」

( 貴)「わざわざ冒険者風情に頼まずとも、聖騎士団に任せれば済む話ではないですか」

(,,゚Д゚)

そう言って貴族が指し示した先には、先ほど僕が場違いだと思った男の姿があった。
恐らくあれが聖騎士団長なのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:28:08 ID:.iP4EDXc0<>
その貴族の言葉を皮切りに、次々と僕に依頼する事に対して異を唱える者が出て、場は騒然とし出した。
前に進み出る者、それを抑える者、わんわんおに向かって指を振って呼びかける者もいて、収拾が付かなくなって来る。

( 貴)「誇り高きニューソク王家が、斯様な重大な任を軽々しくその辺りの冒険者に与えるのは如何なものでしょうか」

どうも話を聞いていると、貴族の言葉の端々に冒険者を見下しているのが感じられた。
多分、最初に僕らを見た時に顔をしかめてた人達だろう。

あまりいい気はしないが、確かにこんな重大なクエストは、
もっと信用の置ける上に実力のある人にやらせるべきだとは思う。

( ∵)「皆様、お静まり下さい」

静かで低い声だが、よく通るビコーズさんの声が届いた。
ぴたりと静まり返る場が、ビコーズさんのこの国での立場をよくわからせてくれる。

( ´∀`)「ちょっと落ち着くモナ。諸君らの考えもわかるが、まず聖騎士団はそう簡単には動かせないモナ」

( ´∀`)「更に言うと、適材適所モナよ」

( ´∀`)「聖騎士団の精鋭達が、市井の中に入って行って情報集め出来ると思うモナ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:31:04 ID:.iP4EDXc0<>
王の言葉に、居並ぶ貴族達は僕と聖騎士団長と思しき人の顔を見比べる。
妙に納得した顔で頷かれるのも引っかかるが、確かにあの強面な人よりは上手く情報を集められる自信はある。

( 貴)「し、しかしですね、やはりこのような冒険者に頼るなどというのは……」

未だに食い下がって来るのは、一番最初に異を唱えた貴族の人だ。
よっぽど僕の事が気に入らないらしいが、僕としても応援したい気持ちはある。
どうしようもなく力不足を感じている今の僕に、ニューソク王から直々の依頼は重過ぎる。

( ´∀`)「貴公がニューソク王家の事を思い、進言しているのはよくわかっているモナ」

( ´∀`)「しかし、もし彼らの身分をもって不適格と判断しているなら慎むモナ」

(;貴)「は……? それはどういう……」

モナー王の目が僕に向けられる。
僕は本日最大の嫌な予感を感じながらも、目をそらすことも出来ずにその目を見詰め返した。

( ´∀`)「冒険者ブーン=ナイトウ……それは仮の名前モナ」

(;貴)「え?」

( ^ω^)<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:32:17 ID:.iP4EDXc0<>
( ´∀`)「彼の真の名は、ブーン=ホライゾン。彼の大賢者バーン=ホライゾンの末裔モナ」

躊躇いなく言い放った王の言葉に、一旦は静まった場がまた大きな喧騒に包まれる。
最初から知っていた者も一部いるようだが、どうやら知らなかった者が大半らしい。

( ^ω^)

僕は自分に向けられる数多くの視線は無視し、まっすぐにモナー王を見詰め続けた。

( ∵)「では再度問いましょう。冒険者ブーン=ナイトウに依頼する事に反対の者はいますか?」

ビコーズさんの言葉に、急速に喧騒は収まり、誰一人口を開く者はいなかった。
反対者はゼロ、これで僕の意思とは無関係にこの依頼は受ける事になりそうだ。

( ´∀`)「ブーンよ、改めて今回の件、頼まれてくれるモナか?」

( ^ω^)「慎んでお受けいたしますお」

僕は恭しく頭を下げ、ようやくこの場に相応しい態度を取れたと漠然と考えていた。
今は一刻も早くこの場を離れたい気持ちでいっぱいだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:35:32 ID:.iP4EDXc0<>
( ´∀`)「貴公の決断に感謝するモナ。詳しい話は後ほどビコーズにさせるモナ」

僕はその言葉を機に立ち上がり、再び頭を下げてからわんわんおを抱き上げて謁見の間を退出する。
その背後で、モナー王が今回の話は全て内密にせよと言っているのが聞こえたので、
僕の事が公になるのは避けられるらしい。

( ^ω^)

ξ゚听)ξ

(∪^ω^)

早足で歩く僕に、ツンは何も言わずに付いて来てくれる。
僕自身、どこに向かっているのかよくわかっていなかったが、今は足を止めたくなかった。

( ^ω^)「ごめんお」

ξ゚听)ξ「何で謝るのよ」

( ^ω^)「勝手にクエスト受けちゃって」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:38:03 ID:.iP4EDXc0<>
ξ゚听)ξ「そっちの件なら仕方ないでしょ? あの状況じゃ断れないわよ」

( ^ω^)「だおね。でも……」

ξ゚听)ξ「もし、もう一方の件も謝るのなら……」

( ^ω^)「謝るなら?」

ξ゚ー゚)ξ∩「あんたの顔が物凄く歪む事になるわよ?」

( ^ω^)「……それは勘弁だお」

僕は足を止め、ツンに笑いかける。
じいちゃんの事で謝りでもしていたら、きっと僕は殴られていたのだろう。

( ^ω^)「さて、どうするかおね」

ξ゚听)ξ「どうするも何も、ビコーズって人と話すしかないんじゃない?」

(∪^ω^)「わんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:39:38 ID:.iP4EDXc0<>
( ^ω^)「だおねー」

それはわかっているのだが、問題はどこに行けばビコーズさんに会えるのかだ。
謁見の間に戻るのも何だか間抜けだし、かといって執務室に行ってもいつ戻って来るかわからない。

そんなことを考えると、後から息を荒げて誰かが走って来ているのに気付いた。

(;貴)「ハァハァ……お待ちを……お待ちください……ブーン様……ハァハァ……」

(;^ω^)「お……」

誰かと思いきや、先ほど僕に依頼するのを反対していた貴族の人だった。
僕に追いつくや否や、ひたすら頭を下げ謝罪をしてくる。

僕は別に気分も害していなかったし、むしろ応援していたのだが、その貴族の顔を見ると悲しい気持ちになった。
そこに浮かぶのは恐れの色。
大賢者バーン=ホライゾンの名は、未だもって恐ろしく力を持つのだと改めて実感する。

( ^ω^)「僕は全く気にしてませんので、謝らないでくださいお」

ひたすら繰り返される謝罪を聞き届け、僕が怒っていない事を伝える。
怒っていたとしても、僕に大した事は出来ないのだが彼にはそれがわからないのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:40:54 ID:.iP4EDXc0<>
何とか貴族の人に納得してもらい、僕達はこの場を離れる。
止まっていては似たような人達が沢山来そうなので、今日は一旦帰った方がいいかもしれない。

ξ゚听)ξ「出直した方がいいかもね」

(∪^ω^)「わんおー」

( ^ω^)「そうしようかお」

(,,゚Д゚)

(;^ω^)「お……」

出直す事を決め、歩き出そうとした僕達の前に1人の男が立ち塞がる。
射抜く様な鋭い眼光に、思わず身がすくむ思いだ。

(,,゚Д゚)「ニューソク王国聖騎士団団長、ギコ=ニャーハン。以後お見知りおきを願う」

(;^ω^)「ブーン=ナイトウですお」

( ^ω^)「モナー王様の言葉にもあったと思いますが、出来れば普通に接していただけると助かりますお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:45:41 ID:.iP4EDXc0<>
(,,゚Д゚)「そうだな。ならばそうさせてもらおう」

聖騎士団長ギコさんは、がらりと口調を変え、僕の方を見詰める。
その目には先の貴族の様な恐れの色は一切見られない。

(,,゚Д゚)「大賢者の末裔ブーン=ホライゾン。お前は何を望むのだ?」

(;^ω^)「はい?」

唐突過ぎる質問に、僕は間の抜けた返事をすることしか出来なかった。
質問の意味をよく考えても、この場で答えるべき言葉が思い付かない。
強いて言うなら商売繁盛とかだが、それを流石に違う気がする。

(,,゚Д゚)「答えられぬか?」

(;^ω^)「えーっと……、正直に言うと、何を問われているのかよくわかってませんお」

(,,゚Д゚)「……」

(;^ω^)「……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:47:03 ID:.iP4EDXc0<>
無言の圧力が僕を襲うが、思い付かないものは思い付かない。
そもそもこの質問の意味がよくわからないし、わざわざ聖騎士団長が僕に尋ねる意図がわからない。

(,,゚Д゚)「自身の名の重さを、お前は理解しているのか?」

(;^ω^)「それは……」

(,,゚Д゚)「お前が望むとも望まざるとも、その力はこの国に波紋を広げる」

ξ゚听)ξ「それはブーンの所為じゃ……」

(,,゚Д゚)「もしお前が、王に仇為す存在となるのなら……」

ギコさんは強い口調でツンの言葉を遮り、途中で言葉を切って僕を睨むと、軽く一礼して僕の前から去って行く。
そんな事は言われずともわかっていたつもりだったが、改めて言われると何だかもやもやとした気持ちが湧いて来る。

ξ#゚听)ξ「何よあれ……」

( ^ω^)「まあ、聖騎士団長ともなれば仕方ないんじゃないかお?」

聖騎士団は騎士団と教会の両方共に属さず、独自の行動決定権を持つが、王直属の部隊という位置付けでもある。
バーン=ホライゾンの名だけであそこまでどよめいた謁見の間を見たら、僕の事を危険視するのもわかる話だ。
ともすれば王の立場さえ脅かすかもしれないと考えたのだろう。

僕にその気も力もなくても、その名は危険なのだと。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:50:42 ID:.iP4EDXc0<>
ξ゚听)ξ「何でそんな他人事風なのよ」

( ^ω^)「他人が勝手にそう思ってるんだし、僕にはどうにも出来ないお?」

むしろ今まで好意的な人が多かった事の方が出来過ぎていたのかもしれない。
弟子であったビコーズさんはともかくとして、フィレンクトさんやシブサワさんの方が例外なのだろう。

僕は尚も不服そうに口を尖らせるツンを宥め、出口に向かおうと提案する。

( ^ω^)「さあ、わんおも……お?」

(∪^ω^)

先ほどから妙に静かだったわんわんおの方を見ると、何やら一点を凝視している。
廊下の奥の方で、何かがちらちらと動いているのが見える。

( ><)っ" チッチッチッチッチ

ξ゚听)ξ「あれ、謁見の間にもいたわよね?」

( ^ω^)「ツンも気付いてたかお? さっき騒ぎになった時も、ああやってわんお呼んでたお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:52:10 ID:.iP4EDXc0<>
多分クーの兄なんじゃないかという僕の見解は、ツンと一致していた。
一心にわんわんおの気を惹こうとしている姿は、どちらかと言えば弟に見えるのだが。

( ^ω^)「いくらわんおでも、僕の前で全く知らない人のとこには行かないお」

( ><)っ□" サッ…

(∪^ω^)" ピクッ…

( ^ω^)「何か取り出したおね。何だお? 赤い……」

ξ゚听)ξ「多分、肉じゃない? 生の」

( ^ω^)「何でそんなもん持ち歩いてんだお……。あいつ、アホなのかお?」

しかし、生肉程度で釣られるわんわんおではない。
むしろわんわんおはちゃんと調理したお肉の方が好きなのだ。

三(∪^ω^)「わんお!」

(;^ω^)「お? わんお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:56:34 ID:.iP4EDXc0<>
わんわんおは一声吠えると、廊下の奥の方へ走って行く。
まさか生肉に釣られるとは思ってもいなかった。

(;><)「わ、わ!? こっちに来たんです!」

呼んでいたのに、いざ来られると萎縮したのか後ろに下がろうとする名も知らぬ男。
わんわんおはその男目掛けて跳躍する。

彡(∪*^ω^)っ「わんわんお!」

(*><)つ「おいでおいでなんです!」

踏み止まり、嬉しそうにわんわんおの方に手を伸ばす男。
しかし突然、男の身体が前のめりに倒れる。

(#)><)「へぶしっ!?」

(*´・ω・`)「やあ、わんおちゃん、久しぶり。元気だったかい?」
つ∪*^ω^)「わんわんお!」

ξ゚听)ξ( ^ω^)「ショボン!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:57:38 ID:.iP4EDXc0<>
目の前の男を蹴り倒し、わんわんおを抱き止めたのは、ここソクホウで騎士学校に入学したショボンであった。
なるほど、それならばわんわんおが走って行ったのも納得がいく。

(´・ω・`)ノ「君らも久しぶり。元気だった……は聞くまでもないかな」

走り寄る僕らに片手を挙げて応じるショボン。

( ^ω^)「何やってんだお? ここ王宮だお? 何でショボンがここにいるんだお?」

(´・ω・`)「まあ、色々あってね。一応ちゃんと騎士学校に入ってるけど、時々要人警護の仕事もやってるのさ」

ξ゚听)ξ「警護? 誰の?」

(´・ω・`)「ビロード=ニューソク、この国の第二王子さ」

何でそんな大層な話になってるのかと聞いてみると、簡単には説明し辛いとショボンは答える。
それでも短くまとめると、ある時たまたま助けた人がビロード王子その人で、フィレンクトさんの推薦もあり、
年も近いという事でその任に付く事になったという話の様だ。

要するにショボンは、かつてのトソン君と似た様な位置にいるという事だろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 21:58:49 ID:.iP4EDXc0<>
( ^ω^)「ほー、なかなか上手くやったおね」

(´・ω・`)「何言ってんの。半分はブーンの所為だよ」

(´・ω・`)「君があの時、僕の事をあんな風にフィレンクトさんに紹介しなきゃ」

(´・ω・`)「僕の名前なんて覚えてもらえてなかったさ」

溜め息混じりに言うショボンだが、結果を考えればそれも悪くはなかったけどと言い添える。

ξ゚听)ξ「ふーん。それで、そのビロード王子ってのは?」

(;><)「ここにいるんです! いい加減どいて欲しいんです!」

不意に足元から声が聞こえて来たと思ったら、先のわんわんおを呼んでいた男が顔を上に向けて必死で抗議していた。
その背の上にはショボンの足がある。

(´・ω・`)「おや失敬。まさかそんなとこにおられたとは露知らず」

(;><)「絶対嘘なんです! ていうかショボン、明らかに後から蹴っただろ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:00:16 ID:.iP4EDXc0<>
ショボンは大袈裟に肩をすくめ、ゆっくりとビロード王子の背から降りた。
その様で、2人の関係がどんなものかは窺い知れる。

( ^ω^)「それで、ええっと……」

(;><)「は、はじめましてなんです、ブーン=ホ──」

(#)><)「あふん!?」

(´・ω・`)∩「おっと失礼、手が滑りました」

(´・ω・`)「ビロード王子、こちらは僕の同郷の友人でもあるブーン=ナイトウです」

(´・ω・`)「いいですか? ブーン=ナイトウです。お間違いのなきよう」

(;><)「わ、わかってるんです。ブーン=ナイトウ殿、僕はビロード=ニューソクなんです」

( ^ω^)「ブーンでいいですお、ビロード王子。こっちはツン=ディレードにわんわんおですお」

ξ゚听)ξ「はじめまして、ビロード王子」

(∪^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:01:18 ID:.iP4EDXc0<>
僕達は挨拶を交わし、軽く世間話をする。
ビロード王子は随分と気さくというか、見た目通り子供っぽい人の様だ。
先ほどショボンは年は近いみたいな事は言っていたが、おおよそ5つぐらいは上らしい。

恐らく精神年齢的意味で近いと言っていたのだろう。
それでも、ショボンの方がだいぶ上に感じるが。

見ているとショボンの王子に対する態度が随分と不遜に感じるが、仲は良さそうなので黙認されているのだろう。
ひょっとしたらある種の教育係的な立ち位置なのかもしれない。

( ^ω^)「それで、ビロード王子は僕に何の用だったんですかお?」

(;><)「そ、それはその……」

(´・ω・`)「王子、この子はブーンの家族ですから、お城では飼えませんよ?」
つ∪^ω^)

羨ましそうにわんわんおを見るビロード王子を余所に、ショボンはわんわんおをしっかりと抱いている。
少しぐらい抱かせてあげればいいのに、ショボンは伸ばされるビロード王子の手を全てかわしていた。

(´・ω・`)「王子如きがわんおちゃんに触れようなどと百年早いですよ」

(;><)「ひどいんです!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:03:30 ID:.iP4EDXc0<>
(´・ω・`)「そんなことより王子、そろそろ行かなくてよろしいのですか?」

(;><)「そ、そういえば兄ちゃんに呼ばれてたんです! 行かないとまずいんです!」

(´・ω・`)「わかっているなら急ぎましょう、王子」
つ∪^ω^)つ

つ)*><)「は、はいなんです!」

ショボンはわんわんおの手をビロード王子に頬に押し付けた後、僕の方にわんわんお手渡す。

(´・ω・`)「というわけなんですまないね。話はまた今度ゆっくりと」

( ^ω^)「おう。また今度だお。僕らはしばらくサースガって武器職人のとこにいると思うお」

(´・ω・`)「うん、時間が取れたら行かせて貰うよ」

ξ゚听)ξ「がんばって騎士になりなさいよ」

(´・ω・`)「そっちこそ、クエストがんばってね。あんまり無茶もして欲しくないけど」

ショボンも先の謁見の間での話は知っていたようだ。
姿は見かけなかったので、ビロード王子にでも聞いたのかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:04:34 ID:.iP4EDXc0<>
( ^ω^)「わかってるお。じゃあ、まただお。ビロード王子もお元気で」

( ><)「お疲れ様なんです。またお会いしたいんです」

(∪^ω^)「わんわんお!」

別れの挨拶を交わし、僕達は出口に向かおうとした。
しかしすぐにショボンが僕達を呼び止める。

(´・ω・`)「ごめん、忘れてた。ビコーズさんからの伝言」

( ^ω^)「お?」

ショボンの話によると、正面入り口に馬車があるからそれでお帰り下さいとの事だった。
今後の話に付いては、翌々日にまた迎えに上がりますからと。

(´・ω・`)「今回の報酬も馬車に積んで置きましたってさ」

(;^ω^)「そういえば報酬の件、すっかり忘れてたお」

(;´・ω・`)「冒険者にあるまじき行いだよね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:06:10 ID:.iP4EDXc0<>
( ><)「というかショボン、それ、僕が伝えてくれって言付かった話じゃないんですか?」

(´・ω・`)「ええ、ですがビロード王子は完全にお伝えするの忘れていたでしょう?」

(;><)「あうあう……」

(´・ω・`)「それを見越して、ビコーズさんは私にも聞こえるような声で話されていたんですよ」

わんわんおに釣られ過ぎだと窘めるショボンだが、そのショボン自身もわんわんおに釣られて、
本来の目的を告げるのを忘れていたのではなかろうか。

(´・ω・`)ノ「じゃあ、そういう事だから。あと、正面入り口はこっちだよ」

( ^ω^)ノシ「助かるお。それじゃあ、改めてバイバイだお」

僕らはショボンに教えられた通路を行き、無事正面入り口に辿り着いた。
外に出るとすぐに兵士の人達が迎えに来てくれて、馬車まで案内してくれた。

( ^ω^)「ありがとですお」

若干来た時より丁重さが増した様に感じるのは、上から色々お達しがあったのかもしれない。
僕の素性は知れ渡ってなくとも、先ほどの貴族の人達が何かしら命じた可能性はある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:07:27 ID:.iP4EDXc0<>
(;^ω^)「で、この大きな袋は何だおね?」

ξ;゚听)ξ「考えられるのは1つしかないでしょ?」

僕は座席に鎮座していた背負うには少し大きいだろうと思われる皮袋の中を恐る恐る覗き込む。
そこには予想通り、金貨がびっしりと詰まっていた。

(;^ω^)「予想以上に多いお! 後でお釣り返さないとだお!」

ξ;゚听)ξ「そんなの受け取ってもらえるわけないでしょ」

(∪^ω^)「わんおー」

当初ヒッキーさんから受けた依頼で、報酬に関しては足が出なければいいとぐらいしか考えていなかった。
その後依頼の規模が拡大し、後で別途交渉する必要があるとは思っていたが、
そんな事をする必要ないくらい十分過ぎる報酬を貰ってしまった。

ξ゚听)ξ「まあ、事の重大さを考えれば、このくらい貰ってもおかしくはないんだけど……」

(;^ω^)「追加の旅費に壊された武器もあるけど、それにしたって多いと思うお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:09:37 ID:.iP4EDXc0<>
色々と考慮した結果、次のクエストの準備資金込みなのだろうという事で無理矢理納得した。
大体、報酬が多いことで悩む冒険者なんて馬鹿みたいだとは思うが、
今回の結果ではあまり誇れないと思っている自分達がいるのもある。

ξ゚听)ξ「色々聞かないとね。ヒッキーさん達がどうなったのかとか、マルタスニムの事とか」

( ^ω^)「キマスタにおいてきた馬車の事とか。服とかあるし」

馬車には大した物は積んでなかったし、それらを全部買い直してもこの報酬で余裕で事足りそうだが、
その辺りは庶民の性とでもいうべき所だ。

ξ--)ξ「ま、取り敢えずはゆっくり休みましょうか」

明後日ビコーズさんと次のクエストの話をした所で、流石にすぐ出発という話にはならないだろうとツンは言う。
そうであってくれれば助かるが、場合によってはすぐ出発する可能性も考えてはおくべきだろう。

( ^ω^)「そうだおね。今日は久しぶりに揺れない地面の上で寝れるんだしね」

(∪^ω^)「わんわんお!」

それから程なくして、僕らはサースガ邸へ帰り着いた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:10:47 ID:.iP4EDXc0<>
 〜 王都ソクホウ 約束された勝利の軒 〜


(´<_` )「えー、それでは、ブーン君達のクエストの成功を祝して」

Uヽ(´<_` )「乾杯!」

(*´_ゝ`)ノU「乾杯!」

ノパ听)ノU「乾ぱぁぁぁぁいっ!」

( ^ω^)Uξ゚听)ξU川 ゚ -゚)UU(゚、゚トソン

(∪^ω^)「わんお!」

サースガ邸に帰った僕らは、しばらく身体を休めた後、オトジャさんの行き付けだという酒場に来ていた。
今回のクエストの祝勝会を開こうとアニジャさんが提案してくれたのだ。
ここならば顔がきくし、クー達の事も内緒にしてくれるという。

しかしながら、祝勝会は明らかに参加者のテンションが二分されていた。
疲れているという事を差し引いても僕やツン達は、祝勝会という言葉を素直に受け入れられなかったのだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:12:39 ID:.iP4EDXc0<>
(*´_ゝ`)「おいおいどうした? 折角のお前達の祝勝会なのに暗いじゃないか」

ξ--)ξ「申し訳ないですけど、お世辞にも勝ったとは言えないクエストでしたので」

( -ω-)「心遣いはありがたいんですが、馬鹿騒ぎ出来そうな気分じゃないですお」

更に言えば、僕は王宮での出来事も重く圧し掛かっている。
わかっていたつもりの自分の名の重さが、ここまでのものだったと改めて思い知らされたのだ。

川 ゚ -゚)「だな。結局私達は負け続けただけだったしな」

(゚、゚トソン「己が身の不甲斐なさに、浮かれられる気分ではありませんね。アニジャさんもいますし」

(;´_ゝ`)「最後の関係なくないかな、トソンちゃん?」

ノハ*゚听)ノU「おかわり!」

ξ゚听)ξ「というかヒート、何であんたまだいるのよ?」

ノハ;゚听)「何だよー、いちゃいけないのかよ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:13:53 ID:.iP4EDXc0<>
( ^ω^)「いいじゃないかお、ヒートのお陰で助かった部分もあるし。どんどん飲んでくれお」

ノハ*゚听)「おお、ブーン! 話がわかるやつだなー、お前は!」

ヒートとは帰りの船内で色々話したし、年が同じだった事もあって結構仲良くなれていた。
今回、オトジャさんやヒートがいなければクエスト自体が失敗に終わった可能性もあるので、
今日は存分に飲み食いして欲しいと思う。

ξ゚听)ξ「その分ちゃんと報酬は渡したんだし、さっさと追っ払えばいじゃない」

ノハ;T儺)「お前、ライバルに対して冷たすぎるだろー」

(∪^ω^)「わんおー」

(´<_` )「僕は燃料代だけで良かったんだけどね」

( ^ω^)「オトジャさんはある意味今回最大の功労者ですから、少ないですけど受け取って下さいお」

なんせ報酬は十分過ぎるほど貰ったのだ。
僕やクーの武器を新調しても、まだまだお金はある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:16:13 ID:.iP4EDXc0<>
+(´<_` )「それなら今は暇だから、次のクエストが遠方だった場合、サースガ号で送ってあげようか」

( ^ω^)「それは助かりますお。けど……」

川 ´ -`)「次のクエストかー……」

クーが呻く様に言うと、そのまま盛大にテーブルに突っ伏した。
どちらかと言えば自信家であったクーだが、今回のクエストはだいぶ堪えたらしい。

川 ´ -`)「そりゃ凹みもするさ」

川 ´ -`)「今回1度でも私が戦闘の役に立ったか?」

(゚、゚;トソン「あまり深刻に考えなくとも良いと思いますよ? 相手が相手でしたし……」

川 ´ -`)「いいや、考えるよ、あの負け方じゃ」

川 ´ -`)「西の賢者に至っては一瞬だぞ? どこの次鋒だよってくらい見事な瞬殺だ」

ナカノヒトの町では凹んでいた僕を慰めてくれたクーだが、今はそんな余裕は見られない。
トソン君が言うように、相手が悪過ぎただけなのだが、
それを自分に置き換えて考えると納得出来ない気持ちもわかる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:20:33 ID:.iP4EDXc0<>
川 ´ -`)「この状態で次のクエストって言われてもなあ……」

川 ´ -`)「しかも、千年紀の王絡みなんだろ? またあんなのが出て来るわけだ」

ξ゚听)ξ「別に、あんたは無理して来なくてもいいのよ?」

川 ´ -`)「それはそれで癪じゃないか」

ξ゚听)ξ「わがままねえ……」

(゚、゚;トソン「クー様も全く役に立たなかったわけじゃないんですし、そんなに落ち込まなくとも……」

川 ´ -`)「じゃあさ、トソン、今回私が役立ったとこってどこだ? 言ってみ?」

(゚、゚;トソン「えっと……あ、馬車の運転は上手かったかと」

( ^ω^)「パンこねるのは上手くなってたお」

ξ゚听)ξ「ヒッキーさんの出したクエストに気付いて、いち早く受けたとことか?」

川 ´ -`)「うん、やっぱり役立ってないな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:24:32 ID:.iP4EDXc0<>
完全にテーブルに顔を埋め、これ以上ないくらい落ち込むクー。
それを必死に慰めるトソン君を見ながら、僕はお酒のコップを傾ける。

( ^ω^)「クーの気持ちはよくわかるお。正直な話、僕も今すごく力不足を感じてるし

( ^ω^)「だから、次のクエストは無理に手伝わなくていいお」

( ^ω^)「パーティーメンバーは取り敢えず僕が何とかするお」

ξ゚听)ξ「私は行くわよ?」

( ^ω^)「そう言うと思ったお。どうせ断り切れないし、いてくれた方が助かるから頼むお」

ノパ听)ノ「私も行くぞ!」

ξ゚听)ξ「あんたはうちのパーティーじゃないでしょうが」

ノハ;゚听)「冷たい! ライバル超冷たい!」

ξ゚听)ξ「だから、ライバルって呼ぶなと」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:26:16 ID:.iP4EDXc0<>
面白そうだから参加させろと言うヒートさん。
実力的に考えて断る理由もないが、ツンが猛反対しているので悩み所だ。
それほど仲が悪い様には見えないけど、一緒に行くとツンの気苦労が増えそうだとは思う。

(゚、゚トソン「その、僕は……」

( ^ω^)「トソン君はクーに付いていてあげるといいお。クーが心配だお?」

トソン君は僕の顔と突っ伏したクーを見比べる。
悩んでいるみたいだが、今のクーにはトソン君が側にいてあげるべきだろう。

川 ゚ -゚)「私の事はいいから行け、トソン」

川 ゚ -゚)「……と言ってもお前は行かないだろうから、やはり私も行こうか」

( ^ω^)「お? どういう心境の変化だお」

突如がばりと起き上がったクーが、先ほどまでとは正反対の言葉を口にした。
僕は無理はするなとクーに言う。

川 ゚ -゚)「役立たずの足手纏いになるのは論外だが、かといって何もしないのもな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:28:49 ID:.iP4EDXc0<>
川 ゚ -゚)「失敗を糧に、次に繋げるべきだと考えたのさ」

( ^ω^)「前向きだおね」

川 ゚ -゚)「ここで萎縮していたら、何の為に王宮を出たのかわからないだろ?」

川;゚ -゚)「まあ、本当に足を引っ張る様な事態になりそうなら、どこかに隠れておく事にするさ」

( ^ω^)「自棄になって無茶をしないなら、来てくれる分には歓迎するお」

(゚、゚トソン「それでは僕もお供します。もしもの場合、僕がクー様の分まで働きますので」

( ^ω^)「助かるお。でも、クーの分は皆でカバーするお」

川;゚ -゚)「お荷物前提で言われるのは少々引っかかるが、頼むよ、2人とも」

ばつの悪そうに言うクーに僕もトソン君も笑みを浮かべ、酒のコップを掲げる。
クーも自分のコップを手に取り、僕らのコップに打ち合わせた。

結局、次のクエストもこのパーティーで挑む事になりそうだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:31:07 ID:.iP4EDXc0<>
(´<_` )「話が纏まりそうで良かったよ。若い内は挑戦あるのみだよ、クーさん」

( ´_ゝ`)「よし、俺が健気なクーちゃんの為に、スペシャルな武器をこしらえてあげよう」

川 ゚ -゚)「そりゃありがたいが、お前の武器はそんな簡単には作れないだろ?」

(´<_` )「そうだね。まだジョルジュ君達の武器も完成してないしね」

( ´_ゝ`)「まあ、そうなんだが……そんなあっさりと水を差さなくてもいいんじゃない?」

(゚、゚トソン「そうですよ。アニジャさんならこれから1、2週間ぐらい寝ずに働けばきっと作れますよ」

(;´_ゝ`)「それ、フォローなの? それともホントに寝ずに作れと?」

(∪^ω^)「わんわんお」

ようやく皆に笑顔が戻り、酒宴の場は少し活気が出て来た。
しかし僕の隣にいるツンだけが、未だ暗い表情のままだ。

( ^ω^)「今回、ツンの方が僕の数倍役立ってたお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:33:07 ID:.iP4EDXc0<>
ξ--)ξ「……だったとしても、負けは負けよ」

難しい顔で木製のコップを傾けるツン。
随分と美味しくなさそうな酒に見える。

( ^ω^)「謁見の間ではああ言ったけど、クエスト成功には変わりないお」

( ^ω^)「僕らはまた次があるお。次で挽回すればいいお」

ξ゚听)ξ「……そうね。切り替えていかないとね」

ツンは曖昧に頷き、コップに口をつける。
今回の事や今後の事で色々と話したいこともあったが、日を改めた方が良さそうだ。

ノパ听)「しけた面してんなあ。そんな顔でお酒飲んで美味いか?」

ξ゚听)ξ「うっさいわねえ。大体、あんたもボロ負けしてんのに、何でそんなケロっとしてんのよ?」

ノパ听)「何を言う。私は負けてないぞ!」

ξ゚听)ξ「どこがよ。何回私がフォローしたと思ってんのよ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:35:02 ID:.iP4EDXc0<>
ノパ听)「私が負けたと思わない限り負けじゃない!」

ξ;゚听)ξ「何言ってんのよ? 私たち2人掛かりであいつに敵わなかったのに」

ノパ听)σ「次やったら私が勝つ! 勿論、お前にもだ、ツン!」

何の根拠もない言葉だが、こう堂々と言い張られるとホントに勝ちそうな気がして来る。
その目は自信に満ち溢れ、何かをやってくれそうだと思わせてくれる。

ξ;--)ξ「はいはい、寝言は寝て言いなさいな」

ノパー゚)「ふふん、少なくとも、私はもうツンには勝ってるぞ!」

そう言ってヒートは自分のテーブルの前を指し示す。
そこには空になった食器とコップが大量に置かれている。

(;^ω^)「てか、いつの間にそんなに食ったんだお」

ノパー゚)「どうだ、我がライバルよ! お前にこれだけ食べられるか?」

ξ--)ξ「アホらし……でも、まあ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:38:36 ID:.iP4EDXc0<>
ξ゚ー゚)ξU「あんたに負けるのは気に入らないわ。店員さーん、こっち、おかわり持って来てくれる?」

ノパー゚)U「よし、勝負だ! おーい、こっちもおかわりだ!」

なんだかんだでヒートのお陰でツンの顔にも笑顔が戻った。
物凄い勢いで傾けられていくお酒のコップに若干の不安は抱いたが、
今回の事は酒で洗い流して酔い潰れて忘れてしまうのもいいかもしれない。

また新たな気持ちで旅立つ為にも。

( ^ω^)U「まあ、なんにせよ、お疲れ様だお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

長く厳しかった戦いを終え、無事クエストを成功させた僕らは、心行くまで美味しいお酒と料理を堪能し、
ぐっすりと眠る事が出来た。



     第三十五話 敗者の凱旋 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:40:54 ID:.iP4EDXc0<>
三十五話は以上です

聖骸布編は一応ここまでで、次回からはまた別の話
と言っても、すぐこの続きの話になるのですが

魔法道具屋屋から少し遠ざかりつつあるのは、まあ、一応想定通りの流れではありますが
次回は未定で
書き溜めはぼちぼち

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/23(土) 22:42:23 ID:tXJYw03A0<>乙<> 名も無きAAのようです<>hage<>2012/06/23(土) 22:42:58 ID:Wb.NscPk0<>          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ ('∀`)乙!
             (  (\
             <  \<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/23(土) 22:55:19 ID:KYil.By2O<>乙っス
すぐまたクエストなのか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/23(土) 23:12:51 ID:xWbucbPM0<>おつおつ
一方そのころシュールは…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/23(土) 23:51:35 ID:Cx5thsrM0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/24(日) 01:07:23 ID:928m2xxk0<>なんだか色々と疑問な点が増えてきたな
怪しいというべきか

次も楽しみにしてますー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/24(日) 01:15:17 ID:TAZLjFis0<>乙ー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/24(日) 01:36:50 ID:1KGRi2wA0<>オツカレ シブサワノカツヤク キタイシテルゾ<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/24(日) 15:37:58 ID:Ag8.3pV.0<>新作乙
何か不安げな怪しい雰囲気になって来たなぁ。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/24(日) 19:30:32 ID:TQtLxtd2C<>わんお可愛いよわんお
わんおは生肉にも釣られちゃうのか…
しかしまあショボンは相変わらずで安心したw
何やら王家の動きが気になるね
クエストの件といい何を考えているのだか…
次のクエストも大変なんだろうなあ
次回も気になってしょうがないっす
乙です<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/24(日) 20:23:15 ID:q4WJ6F6k0<>>>594

肉持ったビロード通り越したろ
肉じゃなくてショボンについていったんだよ。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/24(日) 23:04:10 ID:5HxiqJ/YC<>>>595
!!
御指摘どうもー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/25(月) 00:52:25 ID:bljmeebE0<>ドクオさんは王家嫌いなんだよな……<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/25(月) 02:12:18 ID:8kAu8iKYO<>予想はよそでここではよそう<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/25(月) 12:54:03 ID:uzwjeswk0<>ブーンパーティー女しかいないんだなそいえば<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/25(月) 13:18:45 ID:oGUAKLD2O<>(∪^ω^)・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/25(月) 15:44:57 ID:8kAu8iKYO<>体型的にh<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/25(月) 17:07:05 ID:V2.C2XoQ0<>性別不明<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/25(月) 18:27:23 ID:ErX2tUtg0<>ブーンがkskでランスチャージやったら馬より威力ありそう

女の子を盾に魔法を撃つだけじゃダメよっ<> !ninja<><>2012/06/25(月) 22:58:35 ID:w/8enO3AO<>( ^ω^)「道具なんか売ってる場合じゃねぇ修業するぞ修業するぞ修業するぞ修業するぞ修業するぞ!!」

ξ゚听)ξ「……」

ブーンは修業するとサティアンという街に行って以来変わりました<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/26(火) 02:08:00 ID:pAyAogBcO<>次鋒って何かとおもったら、大肉体チームのあれかwww<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/26(火) 11:10:35 ID:uzEae5roO<>ツン、トソン、ヒート…作者はちっぱい派か<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/26(火) 18:08:52 ID:n1FLMHxMC<>>>606
実はきょにうかも…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/26(火) 19:57:26 ID:Jf4nmUMA0<>クーはCかDだってジョルジュが言ってた!
あとブーンが女性らしいライン云々って言ってたかな

オッパイに関する表記を探すために過去部分読み返したけど
クーが今のはっちゃけ具合と全然違った大人しさでなんか面白い<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/26(火) 20:54:37 ID:9may0Meg0<>もしかしたら、わんわんおはドラゴンなんじゃ・・・まさかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/26(火) 22:31:03 ID:lPyFA01cO<>今のところ骨っこ大好きな犬だけどな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/27(水) 00:06:17 ID:TTI3H6H2O<>水着回で

(゚、゚トソン ひのきの棒

ξ゚听)ξ ひのきの棒+1

と評されてたな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/27(水) 00:56:55 ID:dTgd/lH60<>破壊の鉄球は!?
破壊の鉄球はいらっしゃるんですか!?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/27(水) 13:32:24 ID:Ip7//jyo0<>( ゚∋゚) 破壊の鉄球<> 名も無きAAのようです<><>2012/06/28(木) 13:50:13 ID:7/FLO13g0<>シューがわんおにかけた魔法とやらが気になる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/06/29(金) 22:19:24 ID:7FQrFhAs0<>>>614
こめにしきになる魔法だろ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:08:47 ID:WzvZEXpI0<>
 〜 ニューソク王宮 宮廷魔術師執務室 〜


( ^ω^)「それじゃあ、早速ですけどクエストの詳細を……」

( ∵)「はい、ですがお茶をお淹れ致しますので少々お待ちを」

ξ゚听)ξ「お構いなく」

(∪^ω^)「わんわんお」

( ´∀`)「モナの分も茶くれモナ」

(;^ω^)「って、何でモナー王様がここに!?」



     第三十六話 互い思う、思い違う


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:10:27 ID:WzvZEXpI0<>
(;^ω^)「ほ、本日はお日柄も良く……」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

( ´∀`)「今日はあんまりいい天気じゃないモナ。そう硬くならなくても良いモナよ」

彼の名前はモナー王。
ここニューソク国の国王で、とっても偉い人である。

( ∵)「と言いますか陛下、政務はどうされたのですか?」

彼の名前はビコーズさん。
ニューソク国の宮廷魔術師で、かつて僕のじいちゃんの弟子でもあった人だ。

僕とツンとわんわんおは、クエストの詳細を聞きにビコーズさんの執務室にお邪魔していたが、
何故かそこにモナー王までいた。

( ´∀`)「ちょっと休憩モナよ。茶ぁ飲みに来ただけモナ」

( ∵)「それなら侍従に用意させればよろしいでしょうに」

( ´∀`)「久しぶりにお前が淹れた茶が飲みたくなったんだモナ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:12:42 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「わかりました。しかし私はこれからブーン様とお話がありますので……」

( ´∀`)「わかってるモナ。邪魔はしないモナよ」

そう言うとモナー王はビコーズさんの執務机の方の椅子に座る。
こちらの話に加わる気はないという意思表示なのだろう。
ただ、こちらの方をちらちらと見ている王の様子を見る限り、話したがってるのだろうなとは思う。

それにしても2人の話し振りは言葉遣いは硬くとも、臣と臣下というよりは友達のような気軽さが感じられる。

( ∵)「気になりますか?」

(;^ω^)「え? いや、まあ……」

ビコーズさんは僕の考えを察した様に、お茶を淹れながらモナー王の方を顎で指し示す。
僕は曖昧に頷き、モナー王の方を見る。

( ´∀`)「茶はまだモナ?」

( ∵)「今淹れてますからお待ち下さい」

ビコーズさんはまず僕達の方にお茶を差し出し、その後、モナー王の方に湯飲みを持って行く。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:14:55 ID:WzvZEXpI0<>
( ´∀`)「茶菓子はないモナか?」

( ∵)「用意しておりませんが……お二方は御必要ですか?」

ビコーズさんは僕達の方に茶菓子が必要か聞いて来る。
僕は必要ないのだが、モナー王が欲しがってるのにいらないと言うのも気が引ける。
そもそも僕達に聞かずとも、王が欲しがってるのだから用意させれば良さそうなものだが。

(;^ω^)「そ、そうですおね……ええっと……」

(∪^ω^)「わんわんお!」

( ´∀`)「ほら、わんこも欲しいって言ってるモナ」

( ∵)「仕方ありませんね。少々お待ち下さい」

そう言ってビコーズさんは執務室を出て行く。
多分、お茶菓子を取りに行ったのだろうが、王と共に残された僕らはどうすればいいのだろうか。
謁見の時も思ったが、王の事を無防備にし過ぎだと思う。

( ´∀`)「あいつとは、昔馴染みの友達だモナ」

ξ゚听)ξ「そうなんですか?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:15:49 ID:WzvZEXpI0<>
あいつとはビコーズさんの事だろう。
モナー王はお茶を片手に僕達の前のソファーに座った。

( ´∀`)「モナも一時期君のおじいさんの所で修行した事があったモナ」

( ^ω^)「モナー王様がですかお? それは初めて聞きましたお」

( ´∀`)「ほんの短い期間だったけど、色々と教えてもらったモナよ」

( ´д`)「しかし残念ながら、モナには魔法の才能は一切なかったモナ……」

( ´∀`)「けど、教えてもらった事は今も役立ってるようなことばかりモナ」

じいちゃんにはすごく世話になったと、モナー王は昔を懐かしむ様に言う。

(;´∀`)「ただ、その代わり滅茶苦茶厳しかったモナ」

(;^ω^)「ああ……、じいちゃんの事知ってる人は、皆そう言いますお」

(∪^ω^)「わんおー」

僕の記憶では、魔法を教える時以外はそうでもなかったのだが、大体の人がそう言うので恐らくそうだったのだろう。
それも未だに畏怖されている原因の1つかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:16:57 ID:WzvZEXpI0<>
( ´∀`)「それにしても、流石と言うべきモナかね」

( ^ω^)「お?」

( ´∀`)「ブーンの事モナ。よくもまあ、ラウンジの聖女や西の賢者を出し抜いてクエスト成功させたモナよ」

大賢者の孫だけはあるとモナー王は言うが、僕は複雑な表情でそれに応じた。
僕は、そんな大層なものではないと控え目に訂正する。

( ´∀`)「負けた事をまだ気にしてるモナか? こないだも言ったけど、勝ったのはブーンモナよ」

( ´∀`)「少なくとも、モナにとってもニューソク国にとってもそれが事実モナ」

( ´∀`)「如何に戦いに勝とうとも、目的を達成できなければ負けモナ」

( ^ω^)「そうですおね……でも、ここで喜んでちゃ強くなれないと思いますので……」

( ´∀`)「良い心掛けモナ。今回も成功を期待するモナけど、ヤバそうならちゃんと引き返すモナよ?」

ξ;゚听)ξ「えっと、王としては、そこは生命に賭けても成功させろと言うべき所ではないのですか?」

( ´∀`)「死んだらつまらんモナ。生きていれば、また次の機会もあるモナ」

(∪^ω^)「わんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:19:32 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「……私のいない間に話を進めないで欲しいのですが」

お盆に大量のクッキーの入った皿を乗せたビコーズさんが戻って来て、王の隣に座る。
モナー王はまだ世間話しかしていないと弁解し、早速クッキーをつまむ。

( ´∀`)「ブーンがすごいって話してただけモナ。うちの子も見習って欲しいとこモナよ」

( ∵)「ええ、ブーン様は才気溢れる方ですよ。しかし、王子達もそれぞれがんばっておられますよ?」

( ∵)「おっと、ブーン様達もどうぞ、お召し上がり下さい。わんわんお君にはこれを」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

砂糖を使っていないビスケットだと、ビコーズさんはわんわんおの前に小皿を置く。
ご丁寧に間にはハムらしきものが挟まっている。

( ´∀`)「それが一番美味そうモナね」

( ∵)「茶菓子には向きませんよ。だからその手は引っ込めて下さい」

( ^ω^)(そういえばクーもよく、わんおの食べてるものを取ろうとするおね。親子だお……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:21:29 ID:WzvZEXpI0<>
僕達はビコーズさんの言葉に従い、クッキーを口に運ぶ。
さっくりとした上品な口当たりで、ほのかに甘くて美味しかった。

( ´∀`)「もうちょっと歯応えが欲しいモナよね」

( ∵)「これはそういうお菓子ですよ。1人で全部食べないで下さい。お茶のおかわりは?」

( ´∀`)「貰うモナ」

僕は、実に仲の良い2人だと微笑ましい気持ちで見ていた。
ツンも同じ気持ちだったのか、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

( ´∀`)「で、うちの子の話モナ」

( ∵)「我々はクエストの話をしたいのですが……」

ビコーズさんの呟きを聞こえなかったふりをして、モナー王は話を続ける。
長男であるワカッテマス王子は頭は良いのだが、知識を偏重し過ぎて頭でっかちな部分があるという。

( ´∀`)「あいつは書物の知識だけで満足せず、もっと実践すべきなんだモナ」

( ∵)「確かにそういう所があられますね。ただ、実際やってみれば何でもそつ無くこなされますよ?」

( ´∀`)「平素はそうモナけど、緊急時や精神状態が普通でいられない時はかなり脆いモナ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:24:59 ID:WzvZEXpI0<>
2人の王子に対する人物評がなされているが、王子の事をよく知らない僕らは口を挟む余地がない。
2人の人物評をまとめると、長男のワカッテマス王子は頭はいいが、文人肌でプレッシャーに弱く、
次男のビロード王子は心やさしいが頭も力も並以下という所らしい。

( ´∀`)「どっちもまだまだ王の器にはなり得てないのが頭の痛い所モナ」

( ∵)「まだお2人ともこれからですよ」

( ´∀`)「そうだといいモナね。むしろ今ならクレアの方が王に相応しいのかもしれんモナ」

( ∵)「クーレリア様ですか。確かに気質は一番王たる物を備えてそうですね」

( ^ω^)(クレア、クーレリア……あ、きっとクーのことだおね)

モナー王が言うには、まだ世間知らずな所はあるが一番資質はあるだろうとのことだ。
言葉では説明し辛いが、人を率いて前に立てる、
言うなればカリスマ性の様なものが自分の子供達の中では一番感じられると。

( ´∀`)「女でなければ迷わず跡継ぎにしたモナよ」

(;^ω^)(てか、こういう話、僕達が聞いててもいい話なのかお?)

大体において、跡継ぎ問題というものはかなりデリケートな話だ。
それで争いが起き、国が傾くというような話は過去にいくつも例がある。
既にこの王宮内に、各王子達の派閥があったとしてもおかしくはないぐらいだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:26:10 ID:WzvZEXpI0<>
( ´∀`)「おっと、当然この事は他言無用モナよ?」

(;^ω^)「それはもう」

ξ;゚听)ξ「勿論です」

(∪^ω^)「わんお!」

思わず僕もツンも姿勢を改め、かしこまって答える。
吹聴して回る気はないが、それならそれで聞かれて問題になりそうな事は言わないで欲しくも思う。

( ∵)「まだ陛下がご健在なのですから、跡継ぎの話はそうお急ぎにならずともいいでしょう」

( ´∀`)「そうモナけど、早めに自覚はしといて欲しいとも思うモナよ」

そう言うと、モナー王はビコーズさんの方に湯飲みを突き出す。
ビコーズさんは無言でそれを受け取り、お茶を注ぐ。

( ∵)「クーレリア様が婿を取って、その方にお任せするという手もありますね」

( ´∀`)「上の2人が頼りにならんようなら、それもいいモナね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:27:20 ID:WzvZEXpI0<>
ビコーズさんは何故か僕の方を見ながらモナー王にお茶を差し出す。
モナー王はお茶を受け取り、茶菓子に手を伸ばした。

( ´∀`)「そういえばクーレリアはどうしたモナ?」

(;^ω^)「お……」

( ∵)「北の離宮に御出でですよ」

( ´∀`)「まだ引き篭もってるモナ?」

( ^ω^)(あれ……?)

( ∵)「しばらく勉強をしたいという事でしたから」

( ´∀`)「ふーむ……まあ、いいモナ。その内ブーンにも会わせるモナよ」

(;^ω^)「あ、はい……是非……」

どうやらモナー王はクーが王宮を出ている事を知らないらしい。
ビコーズさんは当然知っているし、恐らく意図的に王に知らせないようにしているのもビコーズさんだろう。
どういう事なのか気になるが、それは今聞くべきではなさそうだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:29:07 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「では、この辺りでクエストの話を……」

( ´∀`)「茶菓子なくなったモナ」

( ∵)「……そろそろ政務にお戻りになられた方がよろしいのでは?」

やんわりと窘めるビコーズさんを、モナー王は悲しげな目で見る。
ビコーズさんは首を振り、片手を出口の方に向けた。

( ´∀`)「しょうがないモナ。そろそろ働くモナかね」

( ∵)「お茶と茶菓子のおかわりはあとで届けさせますので」

( ´∀`)「頼むモナ。それじゃあ、ブーン、お前達に期待してるモナよ」

( ^ω^)「ご期待に応えるべく、がんばりますお」

( ´∀`)「兵が必要なら言ってくれモナ。多少は出せると思うモナ」

(;^ω^)「あ、いや、情報収集もありますし、最初は少人数の方が動き易いと思いますので……」

( ´∀`)「そうモナか?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:30:23 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「ブーン様にはツン様以外にも頼りになるお仲間がいらっしゃるので大丈夫ですよ」

(;^ω^)「え、ええ、そうですお」

意味ありげにこちらを見るビコーズさんに僕は頷いて返す。

( ´∀`)ノシ「わかったモナ。そなた達の帰還を楽しみに待ってるモナ」

立ち上がり、自らドアを開けて出て行くモナー王に、僕達も慌てて立ち上がって見送る。
そうかしこまらなくてもとモナー王は苦笑していたが、公の場ではないとはいえ、だいぶ不作法だったと思う。

( ∵)「さて、これでようやくクエストの話が出来ますね」

王を見送り、ソファーに座った僕達にビコーズさんが早速切り出して来る。
しかし僕はその前に1つ聞きたい事があった。

( ^ω^)「その前にビコーズさん、どうしてクー……クーレリア姫の事をモナー王に内緒にしているのですかお?」

ξ゚听)ξ「それ以前に、どうしてお連れ戻しにならないのですか?」

ツンが僕の質問に言葉を付け足す。
確かに、本来はそちらが問題視されるべき事だろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:31:49 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「そうですね……一言で言えば、この国の為ですよ」

( ^ω^)「この国の為?」

( ∵)「先ほど、モナー王の話にもありましたが、王はクーレリア様、クー様に期待しておられます」

しかしそのクーにも足りない部分があり、
それを補う為にもクーは1度王宮以外の生活も知るべきだったとビコーズさんは言う。
そしてその事は、モナー王も理解していたと。

ξ゚听)ξ「それならば、内緒にせずともモナー王様にそうお伝えすればよろしかったのでは?」

( ∵)「仰る通りですね。しかし、王とはいえモナー王も人の親です」

( ∵)「我が子を一人旅立だせるのは躊躇われたでしょう」

かと言って、多数の警護をつけての旅であれば、旅立たせる意味がない。
故に王には内緒で、クーが王宮を抜け出す手筈を整えたと言う。

( ∵)「旅立たせてしばらくは監視も付けておりましたし、危険があれば即連れ帰るつもりではありましたが」

幸い無事にヴィップに辿り着き、色々と経験する事が出来て良かったとビコーズさんは言う。
今は時々様子を見に行かせるくらいで、四六時中の監視はしていないらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:33:13 ID:WzvZEXpI0<>
ξ゚听)ξ「貴方がクーレリア姫をヴィップに辿り着くように仕向けたのですか?」

( ∵)「結論を言えばそうなりますね」

( ∵)「各種条件を考えた結果、ヴィップが一番クー様が活動するのに適していましたから」

まだ何か聞きたそうだったツンだが、わかりましたと引き下がった。
筋は通っている気はするが、引っかかる部分も多少はある。

( ^ω^)「それじゃあ、トソン君の事もビコーズさんが?」

( ∵)「そうです。元々、1人ぐらいは護衛もいていいだろうとは思っていましたし、丁度良いと思いまして」

どうやらトソン君がヴィップに向かわなければ、それとなく行き先を教えるつもりだったらしい。
探索用の鏡の件も不問にしてあるし、聖騎士団に籍も残してあるとの事だ。

( ∵)「結果的に、ブーン様方にクー様の事を色々と押し付けた様で申し訳なく思っております」

( ^ω^)「いや、僕達は単に友達として自主的に付き合ってるだけで、押し付けられたとは思ってませんお」

深々と頭を下げるビコーズさんに、僕は気にしていない事を告げる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:34:05 ID:WzvZEXpI0<>
ビコーズさんにそういう思惑があったにしても、僕がクーと付き合ってるのは気が合ったからで、
友達として一緒にいて楽しいからだ。
借金の兼ね合いもあるが、強制されているつもりはない。

( ∵)「そう言ってもらえると助かります。クー様に色々と経験を積ませてあげて下さい」

ξ゚听)ξ「ええ、今後も友達として付き合って行くつもりです。王宮とは関係なく」

(∪^ω^)「わんわんお!」

若干強い調子でツンがビコーズさんの言葉に応じる。
どうも少し不機嫌そうに見えるが、僕にはその理由がわからなかった。

( ∵)「そうですか。それではそろそろクエストの話を致しましょうか」

ようやく僕らは本来の目的について話し始めた。
今回依頼されたクエスト、魔王の頭骨の捜索についてだ。

( ^ω^)「具体的な場所はわかってるんですかお?」

一言で探せと言われても、ニューソク大陸も狭いわけではない。
漫然と探すならかなりの時間がかかる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:35:23 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「北の地にあるという噂は聞き及んでおります」

( ^ω^)「北というと、イチサンですかお?」

ニューソク大陸最北の町、イチサン。
過去に竜との戦いで町の大半を焼失し、多くの人や竜が亡くなった地でもある。

( ∵)「はい、当面の目的地はそこになります」

( ∵)「そこから先は、ブーン様の手腕に御期待するとしか言えずに申し訳ありませんが……」

まずはイチサンの町で情報を集めてくれという事だろう。
南の騒動、聖骸布の件やマルタスニムの件で、今まで調査にほとんど人員を裂けなかったらしい。

( ^ω^)「じゃあ、そこで色々と調べてみますお」

( ∵)「よろしくお願致します。それと、これをお持ち下さい」

ビコーズさんは僕に封書を差し出す。
封書には王家の印が押されており、重要書類っぽい雰囲気だ。

( ∵)「イチサンの長老への紹介状です。これをお持ちになれば話は早いでしょう」

物が物だけに出来るだけ目立たぬよう探して欲しいが、何の協力者も無しでは大変でしょうとビコーズさんは言う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:36:48 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「助かりますお」

(∪^ω^)「わんわんお」

受け取った封書を仕舞い、その後いくつかの質問をして聞きたい事は一通り聞き終えた。
ナカノヒトやキマスタ絡みの事も、既に一通り手配してくれていた様だった。
出発の時期はこちらに任せるという事なので、それは帰ってから皆と相談しようと思う。

( ∵)「こんな所でしょうか」

( ^ω^)「ですおね。……その、今回のクエストとは直接関係ないんですけど、1つ聞いてもいいですかお?」

( ∵)「何なりと」

( ^ω^)「これらの集めた魔具をどうするつもりなんですかお?」

( ∵)「それは先日の王の言葉にもあったと思いますが、ニューソク王家が責任をもって管理致します」

( ^ω^)「出来るんですかお? その、集める事自体ヤバかったりしませんかお?」

同じく、千年紀の王を復活させる魔具を集めようとしていたデレは、まだ具体的な方法を見付けてはいなかった。
管理するといっても、そう簡単ではないのではと危惧する。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:38:38 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「確かに、下手に扱えば藪蛇になりかねませんが、既に対策は練ってあります」

ビコーズさんの話によると、ここソクホウの町には古くから聖域とされる場所があり、
邪悪な力を抑えるに適した場所があるという。
どこかで聞き覚えのある場所だと思ったら、多分トソン君の昔話で出て来た場所であろう。

( ∵)「そこで個別に封印し、千年紀の王が2度と蘇らぬよう管理していくつもりです」

( ^ω^)「そこまで考えておられるなら安心ですお。失礼な事を聞いてすみませんでしたお」

( ∵)「いえいえ、ブーン様が御心配なさるのも当然ですので。お爺様からお聞きになられていたのでしょう?」

( ^ω^)「お? いや、その事は特には……」

( ∵)「そうでしたか。千年紀の王の事は、師が自分の亡き後起こりうる問題として」

( ∵)「気にしておられた事の1つでしたので、聞き及んでおられたのかと思いまして」

じいちゃんが自分の死後の事で気にしていたのは、千年紀の王と竜との関係だったらしい。
そのどちらも僕は聞いてはいなかったが、その両方と関わる事になるとは因果なものだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:40:08 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「竜の方は今の所、これといった動きはありませんので大丈夫でしょう」

( ^ω^)(あれ……?)

( ∵)「残ったもう1つ、千年紀の王の事は我が身命を賭しても果たさねばなりません」

(∪^ω^)「わんお!」

この様子だとビコーズさんはわんわんお、天空竜の事を知らないのだろうか。
てっきりその事を知ってるからこそ、わんわんおを王宮に連れて来るのを許可したのだと思っていた。

わんわんおを見て気付かないのは、封印が上手くいっているからだと安心も出来るが、
恐らくドクオさん経由で話が行ってるのだろうと予測していたので、ちょっと意外だった。

( ^ω^)「えっと、その、天空……」

ξ゚听)ξ「それでは、この辺でお暇致しましょうか」

ツンが僕の言葉を遮る用に立ち上がり、僕の肩に手を置く。
一通り話したい事は話したので、確かに頃合だが、何だか少し不自然な行動だと感じた。
しかし僕はツンに従い、立ち上がってビコーズさんに暇を告げる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:41:33 ID:WzvZEXpI0<>
( ∵)「そうですか。それでは……おっと、失礼、もう1つ渡すものがあるのを忘れておりました」

ビコーズさんも立ち上がり、執務机の方に行くと何か重そうな袋を持って戻って来た。

( ∵)「こちらで旅の準備を整えて下さい」

(;^ω^)「あれ? 準備資金はこないだ報酬と一緒に頂きましたお?」

あれは報酬だけだと言うビコーズさんに、そんなには必要ないと袋をそっと押し返す。
しかし、そういうわけにも行かないと譲らないビコーズさんに、最終的に押し負けてしまった。

( ∵)「遠慮なさらずとも、クエストの難度を考えれば適正な準備金だと思いますが」

( ^ω^)「あんまり多過ぎると気が引けますお。使った分の明細は出しますので、余った分は返却しますお」

( ∵)「そこまで仰るならお受け取りしますが……まあ、その分報酬に上乗せするだけですけど」

(;^ω^)「それじゃ返す意味ないですお」

ひとまずそれで納得し、僕達はビコーズさんの執務室を出る。
だいぶ王宮にも慣れたので、もう送って貰わずとも帰れそうだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:43:25 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「今日はちょっと町の方に寄って帰りますので、送って頂かなくて結構ですお」

( ∵)「わかりました。ではここで。ブーン様方のクエストの成功を祈っております」

( ^ω^)「がんばりますお」

ξ゚听)ξ「では、失礼致します」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ビコーズさんと別れ、僕達は王宮を出る。
時間的には少し早いが、昼食を取ってから帰ろうと思う。

( ^ω^)「どこか行きたい店あるかお?」

ξ゚听)ξ「そんな事聞かれても、別にソクホウにある店なんてよく知らないわよ」

( ^ω^)「まあ、僕も知らないけど。じゃあ、食べたいもので何かないかお?」

ξ゚听)ξ「そうねえ……甘いものかな? デザートが付くような料理がいいわね」

( ^ω^)「ツンにしては珍しいおね。じゃあ、デザートがありそうなお店に行くお!」

(∪^ω^)「わんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:45:13 ID:WzvZEXpI0<>
折角だから商業区ではなく、王宮周辺の通りで店を探してみた。
この辺りは場所が場所だけに、高級そうな上品な感じの店が多い。

( ^ω^)「ここが良さそうだお」

ξ゚听)ξ「どこも似たような店だからどこでもいいけど、どうしてここなの?」

( ^ω^)「ここが一番コーヒーのいい匂いがしたお!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

コーヒーが美味い店は甘いものもきっと美味いという僕の根拠のない理論に呆れながらも、
ツンも特に異議はないようでこのお店に入る事にした。

問題はわんわんおも入れてくれるかだが、
いわゆるオープンテラスの席ならかまわないという事だったのでそこにしてもらった。
まだまだ暑い盛りだが、木陰になっていて案外涼しくていい席だ。

( ^ω^)「さて、何がいいかおね」

メニューを見ると、やはり僕らが普段使うような店よりは結構お高めの値段設定になっている。
とはいえ法外な値段というわけでもないので、僕らはデザートも付くランチのコースを頼む事にした。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:47:05 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「案外融通きくんだおね。わんおの分の焼いた肉も頼めたお」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

ξ゚听)ξ「そうね、ちょっとお高そうで近寄り辛い雰囲気だったけど、いい店選んだかもね」

僕らは席に座ると、ひとまず今日ビコーズさんから聞いた事について話す事にした。
テラス席には天気も時間帯も中途半端なこともあってか、僕ら以外に客はいない。

( ^ω^)「結局、マルタスニムも灰衣の男も捕まえられなかったって言ってたおね」

ξ゚听)ξ「まだ捜索は続いてるって話だけど、もうとっくに逃げてると見る方が懸命よね」

ビコーズさんの話によると騎士団は、マルタスニムに精霊兵器クルゥ、
それに灰衣の男の誰も見付けられなかったらしい。

マルタスニムについては、現地で後からシブサワさんが騎士団に捕まえるように頼んだ様だ。
騎士団は、あくまで灰衣の男を捕まえる為だけにナカノヒトに向かっていたので、
あの時僕らを助けたのは暴徒の鎮圧程度に考えていたらしい。

最初から捕まえる予定だったらタイミング的に捕まえられた気もするので、惜しいことをしたと思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:48:46 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「ヒッキーさんはしばらくナカノヒトに止まる予定で……」

ξ゚听)ξ「シブサワさんも同じくって話だったわね」

( ^ω^)「ジョルジュさん達もまだナカノヒトにいるらしいけど、騎士団の方針次第みたいだおね」

ξ゚听)ξ「ハイン達なら心配いらないと思うけど、相手が相手だけに気を付けて欲しいわね」

( ^ω^)「で、キマスタではデレ達一行の姿はもうなかったらしいし」

( ^ω^)「馬車は向こうの教会の人が対処してくれたらしいから、その内僕らの荷物は届くらしいお」

ξ゚听)ξ「まあ、聖女達一行は、いても捕まえるわけにはいかなかったでしょうけど……」

(∪^ω^)「わんおー」

デレ達が千年紀の王の魔具を狙っているなら、今後また争う事になる可能性が高い。
正直避けたい事態だが、デレが僕に告げた言葉を信用すれば、この件は僕に任せてくれるかもしれない。

ξ゚听)ξ「だとしても、西の賢者がこのままおとなしく引き下がってくれるかはわからないけど」

ξ゚听)ξ「プライドは高そうだったから、ラウンジの聖女をたぶらかしたあんたを仕留めに来るかもね」

(;^ω^)「人聞きの悪い事言うなお。デレとは単に友達になっただけだし、モララーさんとも色々と話したいお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:51:06 ID:WzvZEXpI0<>
西の賢者ことモララーさんとは問答無用で戦う事になったが、じいちゃんのお弟子さんだし、
僕としては話したい事が沢山あった。

ビコーズさんも僕とモララーさんが戦う事になるのは避けたいらしいので、書簡を送るとは言っていたが、
モララーさんがラウンジに戻っていないなら届かないだろう。

それに、モララーさんはじいちゃんからラウンジの事を託され、自身の判断で動くように厳命されていたらしい。
いかに兄弟子とはいえ、ニューソクが間違っていると思うなら安易に従うなと。

故に書簡が届いたとしても、モララーさんが兄弟子であるビコーズさんの言葉に素直に従わない可能性の方が高いと、
ビコーズさんはすまなそうな顔をしていた。

( ^ω^)「とにかく、もしまた会ったら戦いは避ける方向で動くお」

(∪^ω^)「わんお」

ξ゚听)ξ「私はあのクックルにリベンジしたいとこだけどね」

(;^ω^)「お……」

ξ--)ξ「まあ、今の段階では厳しいのはわかってるから、なるべく戦闘は避ける事にするわ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:52:24 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「頼むお。僕もあのカッコいいポーズ魔法に勝てる気しないし」

ξ;゚听)ξ「いや、あれ、かなりダサかったでしょ?」

( ^ω^)「そんなことねえお! 僕のブーン・クラッシュに匹敵するナイスポーズだったお!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ξ;--)ξヽ「そう……。ひょっとしたらあんたの一門はああいうセンスなのかもね……」

それから僕らはたわいもない話をしながら料理を存分に堪能した。
料理の味は高いだけはあると納得の出来る物で、たまにはこういうのもいいと思わせてくれた。

ξ*゚〜゚)ξ「このケーキ美味しいわね」

( ^ω^)「うーむ、この甘みに薬草を……」

ξ;゚听)ξ「あんたまた薬草ケーキとか安易な新商品考えてない?」

( ^ω^)「それだと携帯には向かないから、薬草パンケーキはどうだろうかおね?」

ξ;゚听)ξ「どっちにしろ、日持ちはしないんでしょ?」

(∪^ω^)「わんおー」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:54:10 ID:WzvZEXpI0<>
食後のデザートとコーヒーを頂きながら、僕はツンの顔を盗み見る。
だいぶ機嫌は直ったようなので、今なら聞いても大丈夫だろうか。

( ^ω^)「ねえツン、何で今日は機嫌悪かったんだお?」

ξ゚听)ξ「え……? ああ……そうね……」

誤魔化されるかと思ったら、ツンは自分が機嫌が悪かった事はすんなり認めた。
ただ、その理由を話していいのか迷っているようだ。

ξ゚听)ξ「あんたは、今回のクエストの話どう思ってるの?」

( ^ω^)「そうだおね……わかる部分とわからない部分があるおね」

モナー王が魔王の頭骨を捜索する理由には納得がいった。
その際、僕達に頼む理由も一応は筋は通っていると思う。
この町にはあまり冒険者自体が多くないし、聖騎士団を動かしたくないという理由も理解出来る。

( ^ω^)「わからない部分はまず、謁見自体だおね」

何故わざわざ、ああいった大掛かりな謁見をしたのかという事だ。
事の重さを考えれば、ああいった場を設けること自体には納得いく。
現状を知らしめる為、王としての方針を示す為には効果的な場面だったとは思う。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:57:25 ID:WzvZEXpI0<>
ただ、僕に頼む事で貴族達の反発にあうのは予測出来たのではないだろうか。
それなら事前に僕等にも貴族達にも話し、方針を伝えるなりして根回しをすればもっとスムーズに行ったと思う。
あの場で僕の出自をばらす必要性も生まれなかったはずだ。

( ^ω^)「ただこれ、逆だったら疑問はなくなるんだおね」

ξ゚听)ξ「最初から、あんたの出自を話すのが目的だったらってわけね」

どうやらツンも僕と同じ考えに到達していたらしい。
魔王の衣を奪還したという功績と、大賢者の末裔という血筋のお陰で、
僕は一躍王宮内で一目置かれる存在となったはずだ。

( ^ω^)「本当の理由はわからないけど、パフォーマンスとしてのインパクトは大きかったと思うお」

ξ--)ξ「一部の貴族は真っ青になってたしね」

モナー王がそんな事をした理由はわからない。
想像でならいくつか思い付くが、どれも正しい様で正しくない様に思える。

単純に臣として僕の、じいちゃんの名が欲しかっただけならそれほど身構えなくても良いと思うが、
それ以上の何かがあるなら僕はどうすべきだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:59:15 ID:cQtDwgGkO<>支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 00:59:21 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「でも、モナー王に悪意があるようには見えなかったんだおね」

ξ゚听)ξ「そうね。でも、私達みたいなガキに簡単に見透かされるほど馬鹿でもないと思うけどね」

謁見の間で話しただけならモナー王の真意を疑ったが、今日、ビコーズさんの執務室で話した事で、
僕の中ではモナー王を信用する気持ちが生まれていた。

( ^ω^)「多分、ビコーズさんと友達として話す王ではない、人としての部分を見たからだと思うお」

ξ゚听)ξ「まあ、そこは私も認めるわ。けど……」

( ^ω^)「けど?」

(∪^ω^)「わんお?」

言うべきか言わざるべきか迷っている。
ツンの今の顔を評すればそんな所だろう。

( ^ω^)「多分、僕に言い辛い事なんだおね? 僕が聞くと嫌な気分になるとかそういう」

ξ゚听)ξ「それは……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:01:24 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「僕はツンの事を一番信用してるお。ドクオさんとショボンと同じくらい信用してるお」

( ^ω^)「だから、何か気になる事があったら話して欲しいと思うお」

ξ゚听)ξ「ブーン……」

ξ゚ー゚)ξ「一番が3人いるの?」

(;^ω^)「あ、いや、まあ、いるけど一番には変わりないわけで……」

(∪´ω`)っ"「わんわんおー?」

(;^ω^)「あ、わんおの事も信用してるお!」

ξ゚ー゚)ξ「あらあら、一番が更に増えちゃったわね」

必死に弁解する僕と、僕の足を突付くわんわんおをツンはさもおかしそうに見ていた。
そして1つ大きく息を吐くと、真面目な顔で僕を見詰める。

ξ゚听)ξ「私はね、あのビコーズって人が今一つ信用出来ないって感じたの」

( ^ω^)「お……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:03:01 ID:WzvZEXpI0<>
ξ゚听)ξ「あんたも多少は気になってたかもしれないけど」

ξ゚听)ξ「多分おじいさんのお弟子さんって事で、深く考えなかった部分もあるんじゃないかと思ってる」

確かに、ツンが言うようにビコーズさんについて多少は引っ掛かってる部分はあった。
そしてこれもツンが言った通り、じいちゃんの弟子だからと、それを流していた部分もあると思う。

ξ゚听)ξ「あの人、色々知ってるわよね」

( ^ω^)「独自の情報網を持ってて、情報戦に長けているみたいな話はクーが言ってたお」

ξ゚听)ξ「王に魔王の衣の話を伝えたのも、あの人だって謁見の時に言ってたわよね」

あらゆる事について、ビコーズさん主導で話が決められているのではないかとツンは考えているらしい。
モナー王は乗せられているのではないかと。

確かにその可能性も考えられるが、ビコーズさんから明確な悪意でも感じない限りは、
単に優秀なだけで、国思いなだけとも考えられる。

ξ゚听)ξ「そこなのよね……。あの人、私が今まで会った人の中で一番感情の機微が読めない人だし」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:04:45 ID:WzvZEXpI0<>
ξ゚听)ξ「意図もよくわからないし、最終的には女の勘でそう思うとしか言えないから」

ξ--)ξ「あんたに言うべきか迷ってたのよ……」

( ^ω^)「……」

ツンの言う事がまるきり根拠のない、適当な妄言だとは思わない。
確かに、ビコーズさんの行動には、よくわからない部分もある。

しかし僕は、ツンが知らないビコーズさんも知っている。
じいちゃんの話をした時のビコーズさんは、感情が読めないながらもすごく楽しそうだったと感じられた。
あの時僕が感じた気持ちも間違っていないと思う。

ξ゚听)ξ「そうね、あの人、ブーンのおじいさんの事は心から尊敬している様に感じられたわ」

ξ゚听)ξ「そしてあんたにも、敬意はあれど悪意を持っている様には見えないのよね……」

ξ--)ξ「ごめん、やっぱ忘れて。軽々しく人を疑うもんじゃないわね」

( ^ω^)「……いや、一応その事は頭の隅にでも留めておく事にするお。ありがとうだお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:07:23 ID:WzvZEXpI0<>
僕はツンに礼を述べ、コーヒーのおかわりを頼みに行く。
ビコーズさんの事は疑いたくいないが、ツンが僕の事を心配して言ってくれているのもわかっている。
単に取り越し苦労ならそれはそれで笑って済む話なので、この事は覚えておく事にしようと思う。

( ^ω^)「しかし、今度は北かお。南から戻って来たばっかだってのに、何だか忙しないおね」

席に戻った僕は、話を変える事にした。
ツンもその方がいいと思っていたのか、僕の話に乗ってくれる。

ξ゚听)ξ「ホントにね。でも、今の季節なら、北は過ごしやすいかもね」

僕もツンも、北のイチサンの町には行った事がない。
降雪量の多い地域だと認識しているが、流石にこの暑い時期に雪は降らないだろう。

( ^ω^)「シューに手紙出さないとだお。戻るのが遅くなるって」

ξ゚听)ξ「帰ったらまた別の店になってるかもね」

(;^ω^)「それは……ないとは言い切れないけど、僕はシューを信用してるお」

(∪^ω^)「わんおー」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:09:22 ID:WzvZEXpI0<>
店番を頼んでいるシューには申し訳ないが、今更クエストを断るわけにもいかない。
何とか店番の延長をしてくれるよう頼もうと思う。

ξ゚听)ξ「まあ、ヴィップでも商売は出来るでしょうから、引き受けてくれるわよ」

( ^ω^)「だおね。ツンもすまんおね。また長旅に引っ張り出す事になっちゃって」

ξ゚听)ξ「え? まあ、私は別に……」

前にソクホウに来た時、ツンは長旅はあまり好きではない様子であった。
ヴィップの道場や畑の事もあるし、当初の予定以上にクエストに引っ張り回すのは申し訳なく感じる。

ξ--)ξ「旅が嫌ってわけじゃないし、状況はわかってるから気にしないの」

ヴィップの事は両親もいるし、今回の話に関しては自分も当事者の1人だからとツンは言う。

ξ゚听)ξ「私は自分の意思でこのクエストに参加するんだから」

ξ*゚ぺ)ξ「別にあんたの事が心配だとか、そういうんじゃないからね?」

( ^ω^)「わかってるお。でも、いつも助かるお。ありがとだお」

ξ*゚听)ξ「わ、わかってればいいのよ。一応助けてあげるから、安心しなさい」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:10:51 ID:WzvZEXpI0<>
テーブルの上に注文していたコーヒーが置かれる。
心なしか、運んできた若い女の店員さんが微笑んでいた様に見えたのは気の所為だろうか。

( ^ω^)「ツンはやっぱり将来的には道場を継ぐのかお?」

ξ゚听)ξ「え? うーん……そうね、多分そんな感じでヴィップにいると思うわ」

( ^ω^)「ヒートみたいに武者修行に出ようとは思わないのかお?」

ξ゚听)ξ「そうねえ……あれ見てると楽しそうとは思う事もあるけど、そこまでして戦いたいわけでもないしね」

いつも真っ先に敵に向かうツンの姿を知る僕からすると、少々意外な意見だ。
でも多分そのことを口にすると拳が飛んで来そうなので、僕は曖昧に笑って流す。

ξ゚听)ξ「そういうあんたはどうなの? だいぶ旅に興味を惹かれてるみたいだけど?」

(;^ω^)「お? 何でそう思うんだお?」

確かに、そう思っている自分がいるのには気付いていたが、ツンに明確にそうしたいという様な話をした事はない。
それでも気付かれてしまうとは、よほど僕はわかりやすい態度を取っていたのだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:12:49 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「魔法道具屋を止めたいわけでも、冒険者になりたいわけでもないんだけど」

( ^ω^)「やっぱり知らない場所に行ってみるのは楽しいと思うお」

その位の事は前にもツンには言ったと思う。
単に趣味レベルの興味で、今後の生き方を変えるほどでもないくらいのものだ。

旅先で美味いものを食べ、素晴らしい景色を眺め、知らない人と会話するのは楽しい事だと思う。

ξ゚听)ξ「その位の興味なら、私にもあるけどね」

( ^ω^)「まあ、よっぽどの無精者でなければ、ない人は少ないおね」

ただ、その位の興味で旅をしたいと思うだけなので、
今回の様に難度の高いクエストで旅に出るのはあまり本意ではない所もある。

ξ--)ξ「のんびり観光ってわけにはいかないもんね」

(;´ω`)「今回、折角南に行ったのに美味いもん食べそびれたのは甚だ遺憾だお」

(∪´ω`)「わんおー」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:14:48 ID:WzvZEXpI0<>
ξ゚听)ξ「千年紀絡みの話が一段落したら、また行ってみればいいじゃない」

ξ゚听)ξ「その時は、私も付き合ってあげるからさ」

( ^ω^)「そりゃいい考えだお。けど、無理しなくていいお?」

ξ゚ -゚)ξ「別に無理とかそういうのはないわよ」

ξ*--)ξ「あんたとわんおだけで旅させるのは、ちょっと頼りないしね」

私が護衛してあげるとツンは言う。
僕は素直にそれに礼を述べる。

( ^ω^)「わんおと2人旅も乙なものかもしれないけど、やっぱ人数多い方が旅は楽しそうだお」

ξ゚听)ξ「……ま、そうね」

ツンは軽く肩をすくめ、コーヒーを口に運ぶ。
ツンの口がコーヒーカップに隠れる瞬間、ツンの口が動いた様に見えたが僕には何も聞こえなかった。
こっそり文句でも言われたのだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:16:33 ID:WzvZEXpI0<>
( ^ω^)「さて、これ飲んだら帰って出発の準備するかお」

ξ゚听)ξ「出発はいつにするつもり?」

( ^ω^)「準備が出来次第、と思ってるけど、まあ、皆の意見を聞いてからだお」

ξ゚听)ξ「それじゃあ、私は出発まで馬鹿ヒートと稽古でもしてますかね」

( ^ω^)「ああ、僕も杖新調しないと。この辺にいい木が採れる山あるかおね」

(∪^ω^)「わんわんお」

ξ゚听)ξ「アニジャさんに作って貰ったら?」

( ^ω^)「んー、でも忙しいだろうし、あのダマスカス鋼は魔法使い向きじゃなさそうなんだおね」

( ^ω^)「重いし魔法伝導率も良くないって話もあるし。アニジャさんが開発中の新素材なら話は別だけど」

ξ゚听)ξ「アニジャさん、そんなの作ってたの?」

( ^ω^)「あれ、聞いてなかったかお、ビキニアーマーの話?」
  _,
ξ゚听)ξ「うん、聞いてなかったけど、その名前だけで聞く価値がないって判断したわ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:19:05 ID:WzvZEXpI0<>
僕達は立ち上がり、お勘定を済ませる。
料理の味には十分満足がいったので、今回のクエストが終わってソクホウに戻ってきた時にまた来たいと思った。
今度は他の皆も誘って。

( ^ω^)「スペシャルもどうにかしたいんだおね。スペシャル自体は変えられないけど、新たな必殺技が欲しいお」

( ^ω^)「今の必殺技は、やっぱ個人戦用か逃走用になっちゃうんだおね」

ξ゚听)ξ「あんたのスペシャルはだいぶ変わってるからね。難しいとこね」

ヽ( ^ω^)ゝ「それに伴い、新たなカッコいいポーズも編み出さないとだお。西の賢者には負けてられないお!」

ξ;--)ξ「心底どうでもいいわ……」

(∪^ω^)「わんおー」

僕らは曇り空のソクホウの町をのんびりと歩き、サースガ邸へ帰り着いた。



     第三十六話 互い思う、思い違う 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/01(日) 01:21:09 ID:WzvZEXpI0<>
三十六話は以上です

導入回的な
次回は未定で
書き溜めはぼちぼち

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/01(日) 01:21:17 ID:EL0eucEoO<>おつー
いまからよまさせていただきまうす<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:22:50 ID:f4ugwd/2O<>おつおつ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 01:29:29 ID:cQtDwgGkO<>乙っした<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/01(日) 02:18:19 ID:ZY9BaR5c0<>乙んつん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/01(日) 07:13:21 ID:AnKn5Hcg0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/01(日) 08:10:39 ID:mShloYr2C<>わんお可愛いよわんお
案外ツンの不安は的中してそうな…
ラスボスみたいなのは身近にいるやつだったりするもんな…
それにしてもブーンの鈍さは誰から引き継がれてるのかな?w
じいちゃんか?
色恋には無縁って感じの会話すなあ
それでは今回も乙です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/01(日) 12:11:35 ID:UFd4a7sI0<>          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ ( ∵ )
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓



















          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ ( ∵ )heyタクシー
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/01(日) 22:12:19 ID:Ur2QVBZg0<>いろんな意味でドクオさんが気になるぞぉぉぉぉぉ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/02(月) 17:47:39 ID:2c0bE/7cC<>話は毎回面白いしメリハリもあって読み応えもある
次回に期待させられるような話の展開作りがうまい
量も適度にボリュームあって投下スピードも安定している
何よりわんおが可愛い
主天才じゃね?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/03(火) 20:55:58 ID:jH8mWnncO<>>>666
主とかキモいから半年ROMってろよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/03(火) 21:09:54 ID:emAS7pSo0<>説得力ねぇぇ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/03(火) 21:34:10 ID:LJHxanvQ0<>ニコ厨が多いのは仕方がないこと
諦めろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/03(火) 22:14:25 ID:pAKn6/uoO<>鈍感っ!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/04(水) 13:47:28 ID:lMOhw0S2C<>>>667
お、すまん
レスしたあとに気付いてたんだがやはり指摘されたか
あと半年ROMってろて言葉懐かしいな
もう死語かと思ってたよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/04(水) 17:31:37 ID:6TudOqm20<>半世紀ROMってろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/04(水) 17:53:37 ID:3FHVRZ6YO<>〜半世紀後〜

671「カーチャンさん、主はまだかのぅ…」
J( 'ー`)し「お義父さん、昨日も言ったでしょう?魔法道具屋さんは半年前に完結したんですよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/04(水) 19:37:20 ID:FsDva35s0<>>>671
49年も続くのか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/04(水) 20:08:28 ID:NpLv9MToO<>半年で30話のペースを考えると、最終話は3000話ぐらいか…
胸熱<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/04(水) 20:29:37 ID:th/kFhmgO<>最初わんおが出てきた時はえ?と思ったけど馴染むもんだね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/04(水) 23:21:44 ID:7T7luJ560<>          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ ( ∵ )
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓



















          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ ( ∵ )hey!yo!
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/07/05(木) 01:13:43 ID:WkBg7bIc0<>
     ∩
  (U^ω^)
  / ⊃ /
c(  __つ 三「書きためがいつの間にか二話分たまってたので、週末にでも投下するつもりです」
  し´<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/05(木) 11:01:10 ID:x.5n7vOU0<>ktkr! wktk<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 11:04:36 ID:bQN3COMQ0<>やったー
しかし筆早いってレヴェルじゃねーぞ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 11:58:34 ID:siYp8EKY0<>ブーン系としては早すぎるほど早いが
読んでる方からしてみたらハヨオという気持ちもあって
何も言えないぜ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 13:33:06 ID:snN6m2AwC<>>>674
アンカー対象ちげえw
ROMらんけどお前らもネチネチしつこいねー
それにしても本当早いね、週末も楽しみだぜ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 15:55:02 ID:zzfNZOc.O<>阿呆かよ。ネタがでたから便乗しただけだろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 16:08:29 ID:unzbFzmg0<>荒れるから触れないほうがいいと思う<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 17:04:26 ID:7A7/eYFYO<>KYはスルーに限る<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 17:42:02 ID:V7AyBLK60<>末尾Cがうぜぇ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 20:01:40 ID:odBOmv6U0<>末尾Cってなんなの?
コンピュータ?カラーテレビ?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 20:12:54 ID:k4LSc73kO<>紙コップ
糸電話だよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 22:23:10 ID:dLxTLsV.0<>むしろオーバーテクノロジーじゃねーかw<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/05(木) 23:00:59 ID:TY4Az.9c0<>からあげだよ。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 00:28:26 ID:9J/9NRr2C<>末尾Cにワロタ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/06(金) 08:22:43 ID:WVcwc8Mc0<>末尾C気持ち悪いな<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/06(金) 08:23:42 ID:WVcwc8Mc0<>末尾C気持ち悪いな<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/06(金) 09:11:41 ID:LFwF43dA0<>>>690
*(‘‘)* 兄ちゃん、末尾Cって何?

( ・∀・)唐揚げの別称だよ。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 11:16:16 ID:WmNwyZd20<>ようせい社のからあげか、はたま未来テクノロジーのからあげか
ザンギかもしれん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 12:33:09 ID:kSVuObOUO<>おいお前らもうやめてやれよ
ググりゃすぐ分かるが末尾Cは……<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 12:36:48 ID:Qxv.BwWw0<>ワールドカップのときのコリアのC<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 14:25:31 ID:LD4TLqS.0<>>>686
一世紀ROMってろ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/06(金) 17:31:37 ID:/Dqqc9Q.O<>薬草ってどんな苦さなんだろ
漢方の生薬みたいなもんかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 17:38:44 ID:ycj/kCuE0<>きっとイソジンくらい苦いんだよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 18:29:17 ID:Qxv.BwWw0<>>>698
チョンコロ乙www<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/06(金) 21:34:52 ID:CWCPzdNM0<>今週のビックリドッキリ薬草はっ?!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/07(土) 07:27:41 ID:tYPE6v1w0<>薬草末尾C<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/07(土) 10:13:32 ID:eVRaARVI0<>薬草のクローン栽培か<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 18:00:11 ID:pFte2rzM0<>まだかなまだかな<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:12:36 ID:Cu3pgnGE0<>
 〜 イチサンの町南西の海 マリン・サースガ号内 〜


;;(;^ω^);;「……」

;;ξ|ii゚听)ξ;;「……」

;;(|ii´_ゝ`);;「北は今の時期過ごしやすいって言ってたの誰だよ……」

;;(;^ω^);;「誰だったでしょうかおねえ……」

;;+(´<_`iil);;「ハハハ、見事な雪景色だねえ……」

(∪^ω^)「わんわんお!」



     第三十七話 雪に染まりし最北の町


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:15:51 ID:Cu3pgnGE0<>
(;^ω^)「この季節に雪とか有り得ないお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(;´_ゝ`)「最近、異常気象が各地で頻発しているのは聞いていたが、ここまでとはな……」

彼の名前はアニジャさん。
王都ソクホウで武器職人をやっていて、からくり・サースガの異名を持つ人だ。

(´<_`;)「イチサンについたらまずは防寒具を揃えないとまずそうだね」

彼の名前はオトジャさん。
アニジャさんの弟で、トレジャーハンターをやっていて、冒険野郎サスガイバーの異名を持つ人だ。

僕とツン、わんわんお、クー、トソン君、ヒート、そしてアニジャさんとオトジャさんはアニジャさん達の船で、
ニューソク大陸最北の町、イチサンに向かっている最中だ。
ニューソク国の王であるモナー王から直々に承ったクエスト、魔王の頭骨を探す為である。

ξ;゚听)ξ「あとどのくらいで到着ですか?」

(´<_` )「1時間ぐらいで着くと思う。ツンさんもクーさん達の様に船内に入っていた方がいいよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:20:22 ID:Cu3pgnGE0<>
さほど大きい船ではないが、ボートというわけではないので船内に部屋はある。
甲板にいるよりは船内にいた方が暖かいのは確実だ。
先ほど覗いた時、クーなんかは寒いので毛布を頭から被っていた。

僕はローブで多少の温度調節が出来るから少しはマシなのだが、それでもちょっと寒いと思う。

ξ゚听)ξ「ですけど、監視は必要なんでしょ?」

( ^ω^)「それは僕達がやるから大丈夫だお」

ただ寒いだけならまだいいのだが、それによって海面に流氷なんかが存在する可能性もある。
それをいち早く発見し、回避、もしくは破壊する為に監視が必要なのだ。

( ^ω^)「この場合、破壊するのは僕の魔法が一番適役だし」

(´<_` )「で、僕とアニジャが遠眼鏡で監視と船の操作をすると」

(;´_ゝ`)「俺も船内に入ってたいんだけどな……」

アニジャさんの呟きは無視し、ツンを船内に入らせる。
ツンは申し訳なさそうな顔をしていたが、既に役割分担は出来ているので気にしないで欲しい。

( ^ω^)「まあ、それほど大きい流氷は来ないでしょうしね」

(´<_` )「まだこのくらいの寒さでは海面が完全に結氷することもないだろうね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:23:51 ID:Cu3pgnGE0<>
この船は砕氷船ではないので、海面が凍っていた場合は進めなくなってしまう。
その場合は僕が魔法で溶かす事になるだろうけど、このくらいの寒さならそこまでの事態にはならないだろう。

     グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」

( ´_ゝ`)「流石わんこだ。雪の中でも元気だな」

( ^ω^)「雪は初めてのはずですけど、寒さには強いみたいですお」

僕は舞い落ちる雪の中を嬉しそうに走り回るわんわんおを捕まえる。
元気なのは良い事だが、船上を走り回られるのはちょっと怖い。

( ^ω^)「もうすぐ陸地に着くからおとなしくしてるお」
つ∪^ω^);;

僕がわんわんおを抱いていると、アニジャさんが自分にも抱かせてくれと言って来る。
この寒さで、もふもふなわんわんおは大人気である。

(*´_ゝ`)「フフフ、愛いやつめ」
つ∪^ω^);;<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:25:51 ID:Cu3pgnGE0<>
わんわんおが不審者オーラ全開のアニジャさんに噛み付かないか心配だったが、大丈夫だった様だ。
やはりわんわんおが噛み付くのはドクオさんだけらしい。

( ^ω^)「しかし、アニジャさんにはホント申し訳なかったですお」

( ´_ゝ`)「ん? ああ、気にするなって。この寒さは想定外だったが、たまには旅もいいもんさ」

現在、このクエストに参加する予定がなかったアニジャさんがこの船に乗っているのは偏に僕の所為である。
アニジャさんはああ言ってくれるが、本当に申し訳なかったと思う。

(´<_` )「ブーン君が悪いわけじゃないよ。アニジャの事なら気にしないで」

( ´_ゝ`)「そうそう。オトジャの言う通りだぞ」

( ´_ゝ`)「それでも気になるってのなら、イチサンに着いたら飯おごれ。それで勘弁してやる」

( ^ω^)「ありがとうございますお」

僕は2人の言葉に頭を下げ、海上の監視に戻る。
アニジャさんが船に乗る事になったのは、サースガ邸に貴族が訪ねて来る様になったからだ。
どこで聞いたのか、サースガ邸に逗留している僕に会う為だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:28:13 ID:Cu3pgnGE0<>
一応、尋ねて来た貴族の人達は王の言葉を守り、
僕の事を公にしない為にアニジャさんの武器を見に来た体で来てくれはしていた。

しかしながら、日に何人も来られるとアニジャさんはその応対で作業が中断するし、
僕としてもあまり会いたいわけではなかったので、早めに出発してソクホウを離れる事にしたのだ。

その際、アニジャさん達や今まで伝えていなかったトソン君達にも僕の出自の話をした。
何故こうなったかの理由はちゃんと説明しておかないと申し訳ないと思ったのだ。
約1名以外は皆驚いてはいたが、それで何かが変わるわけでもないからとすんなりと受け入れてくれた。

その驚かなかった1名、ヒートはじいちゃんの事をよく知らないようだった。
取り敢えず僕が悪いわけではないならどうでもいいと言ってくれた。

(´<_` )「そろそろイチサンの港が見えるはずだ」

( ´_ゝ`)「はーるばる来たぜイチサンへー、っと」
つ∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「このまま問題なく行けそうですおね」

僕の予想通り、そこからは特に問題も起こらず、無事イチサンの港に入港する事が出来た。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:29:11 ID:Cu3pgnGE0<>
 〜 イチサンの町 西部 〜


(゚、゚トソン「あれ? アニジャさんは船に残られるのではなかったのですか? 何でいるんです?」

(:´_ゝ`)「上陸して開口一番がそれ? 俺が来ちゃ駄目なの?」

僕達はイチサンに入港し、船を停泊させて町へ向かう。
トソン君が言ったように、アニジャさんは船内で武器作りの作業をするという名目で来ているが、
折角来たのだから観光もしたいのだろう。

;;川lii゚ -゚);;「取り敢えずは服屋を探そうか。海上よりはマシだが、寒くてかなわん」

(´<_` )「そうだね。まずは防寒具を揃えようか」

僕等はクーの提案を受け入れ、服屋を探す。
幸い、港に近い場所に防寒具を扱っている店があったので、それぞれ厚手の毛皮の上着や手袋などを買った。

∩ξ゚听)ξ∩「ちょっと動き辛いわね……」

( ^ω^)「まあ、しょうがないお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:30:09 ID:Cu3pgnGE0<>
戦闘になりそうな場合も考えて、なるべく動きやすい物を選びたかったが、そんな都合のいい防寒具はなかった。
精々、厚手のインナーとかサポーターみたいな部分的に着けるものぐらいだろう。

ξ゚听)ξ「外に探索にいく場合はそっちにするしかないかな」

ノパ听)⊃「この程度の寒さで情けないぞ、我がライバル!」

ξ゚听)ξ「クー、あんたちょっと着込み過ぎでしょ。何枚ズボン履いてんのよ」

ヽノハT儺)ノ「無視すんなよー」

ξ゚听)ξ「うるさい、近付くな」

この程度の寒さは問題ないと言い切るヒートさんは、普段通りの胴着のままだ。
見ているこっちが寒くなりそうな格好で、明らかに僕らや現地の人と比べても浮いている。

ξ゚听)ξ「あんたの所為でこっちまで変な目で見られそうなのよ。せめて上着くらい羽織ってなさい」

ノパ听)∩"「心頭滅却すれば火もまた涼しという言葉を知らんのか? そんなものは心の持ち様で何とかなる!」

ξ゚听)ξ「逆よ、馬鹿」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:31:21 ID:Cu3pgnGE0<>
川*゚ -゚)「よし、これで何とかなるな」
つ∪^ω^)「わんわんお!」

完全防寒仕様で、ちゃっかりわんわんおまで抱いたクーが先に立って歩き始める。
ひとまず目的地は長老の家という事で、そこを探す事にした。

( ´_ゝ`)「ま、適当に現地の人に聞いてみれば知ってるだろうな」

(´<_` )「失礼、そこの人。この町の長老の家というのはどこにあるのかご存じないかい?」

(´・_ゝ・`)「すまない、私も旅人なんでこの町には詳しくないんだ」

オトジャさんはいかにも、ここはイチサンの町ですとでも答えてくれそうな特徴のない人に話しかけたのだが、
まさかの旅人であった。

その後の、別の人に尋ねると今度は現地の人だったようで、場所を教えて貰うことが出来た。

( ^ω^)「古いようで新しい町って印象だお」

歩きながら見る町の景色は、積もった雪の所為で今一つわかり辛い所もあったが、比較的新しい建物が多い様だ。
戦争で焼失している箇所も多いのだから、建物は新しくて当然である。
しかし、何となく町全体から昔ながらの町の様な雰囲気を感じる。

( ^ω^)(そして僕にとっては、色々と考えさせられる町なんだおね……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:33:10 ID:Cu3pgnGE0<>
(´<_` )「古くからのしきたりや慣習が色濃く残っている町だからね」

町から感じる新旧織り交ざった感じは、1度壊れ、
復興する際に人々が拠り所とした物がそういった慣習や地縁であったからだとオトジャさんが説明してくれる。

戦後の混乱で、王都からの援助もままならぬ中での復興作業を行った結果、
古い村社会の様な形態が自然と形成されたという。

川 ゚ -゚)「だから町長ではなく、長老と呼ばれているのか」

(´<_` )「正式な役職名は町長なんだけどね。慣習的にそう呼ばれてる事もあるようだね」

港近辺や商業区域などは近代的な作りになっているが、町の多くは地縁社会だと、
オトジャさんは歴史家のような知識を披露してくれる。

(´<_` )「なに、トレジャーハンターの嗜みだよ。歴史を知っていれば、遺跡や財宝の発見の助けになるからね」

(゚、゚トソン「なるほど、勉強になります」

ξ゚听)ξ「そういう歴史的な背景も気になりますけど、独特の建物の造りは気候の影響が大きいんですよね」

(´<_` )「そうだね。降雪量の多い地域だから、屋根が荷重に強い造りになってたりするね」

( ^ω^)「この辺じゃ、このくらい雪が積もるのは珍しくもなんともないでしょうおね」

(´<_` )「だろうね。ただ、この時期でこの積雪は流石に珍しいだろうけどね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:34:45 ID:Cu3pgnGE0<>
ノハ*゚听)「よーし、見てろよ、わんお!」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

∩ノハ*゚听)∩「必殺! でんぐり返しスペシャル!」

(∪*^ω^)「わんお!」

何やら騒がしい声がすると思ったら、ヒートとわんわんおが雪上をはしゃいで転げ回っていた。
気付けば既に2人とも雪塗れだ。

ξ;゚听)ξ「止めなさい! ここ、普通の通りなんだから、ほら、通行人の邪魔になってるでしょ!」

現地の人であろう道行く人々は、はしゃぐヒート達を見て笑っていた。
悪感情は持たれていないようだが、流石にちょっと恥ずかしいと思う。

ノハ*゚听)「だが断る! 食らえ、大座亜轟ッ!」

ξ#゚听)ξ「当たるか、このアホ!」

(#)´_ゝ`)「グボァッ!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:36:12 ID:Cu3pgnGE0<>
回転しながら突進して来るヒートをひらりとかわすツン。
ヒートはツンの背後にいたアニジャさんを薙ぎ倒し、回転を止めて起き上がる。

ノハ*゚听)「やるな、流石は我がライバル!」

ξ#゚听)ξ「だからライバルって呼ぶな! あんたと同類に思われたくないのよ!」

( ^ω^)「2人とも、遊んでないで先に行くお」

∩(∪*^ω^)∩「わんお!」

僕の呼びかけにヒートの真似をして転がるわんわんお。
なかなか上手いが、ヒートの様に連続して転がる事は出来ないらしい。

( ^ω^)「あとでたっぷり遊ばせてあげるから、ひとまず長老さんの家に行くお」
つ∪*^ω^)「わんわんお!」

(´<_` )「ほら、アニジャも遊んでないで行こうか」

(#)´_ゝ`)「いや、俺は遊んでたわけじゃ……」

そんなこんなで僕達は、イチサンの町中を歩き、長老の家に辿り着いた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:37:35 ID:Cu3pgnGE0<>
 〜 イチサンの町 長老宅 〜


長老宅はそれほど大きな建物ではないが、全焼を免れたらしく、古い造りが残る部分が目立つ。
ヴィップと同じく、町の運営は庁舎ではなく個人宅をそのまま使っているらしい。

受付でビコーズさんからの書簡を渡すと、程なくして長老と面会する事が出来た。

( ^ω^)「お忙しい中、時間を取って頂いてありがとうございますお」

(*゚ー゚)「ようこそ、イチサンの町へ。私は町長のシィ=ダンヴォールです」

通された部屋には長老というにはだいぶ若い女性が待ち受けていた。
どうやらこの人がイチサンの町の長老らしい。
僕らは出された温かいお茶を頂きつつ、それぞれ軽く自己紹介をした。

(*゚ー゚)「ソクホウからの長旅でお疲れでしょう。必要なら、宿所の手配をさせますが」

( ^ω^)「いえいえ、そんな事でわざわざ長老さんのお手を煩わせるつもりはありませんお」

(*^ー^)「そうですか? では、本日はどういった御用向きで、この 町 長 宅にお目見えで?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:38:42 ID:Cu3pgnGE0<>
( ^ω^)「いくつか長老さんに聞きたい事があるんですお。勿論、わかる範囲で答えて頂ければ結構ですお」
 _,
(*^ー^)「わかりました。この 町 長 にわかることであれば、いくらでもお聞き下さい」

( ^ω^)「助かりますお。長──」

突然、質問をしようとした僕の脇腹に軽い衝撃が走る。
何事かと思えば、何故かツンが僕に肘鉄を食らわせていた。

(;^ω^)「急に何だお?」

ξ;゚听)ξ「いい加減に察しなさい、馬鹿」

ツンが僕の耳を引っ張り、こっそりと長老さんの方を指差して耳打ちをする。
心なしか長老さんの顔が引きつっているように見えるのは気の所為だろうか。

(;^ω^)「えっと……長──」
 _,
(#^ー^)「はい、 町 長 がお答え致しますので、御質問をどうぞ」

そこでようやく僕は、長老がやけに自分のことを町長と強調して言っている事に気付いた。
ひょっとして自分が長老と呼ばれることを気に入ってないのだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:40:33 ID:Cu3pgnGE0<> _,
(#^ー^)「前町長が高齢だった事もあり、その跡を継いだ私も慣習的な呼び名で呼ばれる事はありますが」
 _,
(#^ー^)「正式な役職は町長ですので、出来ればそう呼んで頂きたいですね」

(;^ω^)「そ、そうですおね、失礼致しました」

(∪^ω^)「わんおー」
 _,
(#^ー^)「いえいえ、お気になさらず」

そう言ってくれる長老……町長さんだが、その顔はどう見ても怒っていて、気にしないわけにはいかない。
交渉の最初から大きく躓いたのは明らかに僕のミスだ。
こういう場合はさり気なくお世辞を混ぜて、挽回せねば商売人の名が廃る。

( ^ω^)「お綺麗ですし、明らかに老なんてお年に見えませんお」

(*^ー^)「あら、お上手ですね。お世辞は結構ですよ」

( ^ω^)「いえいえ、ホントにお若く見えますお」

(*^ー^)「いくつに見えます?」

( ^ω^)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:41:32 ID:Cu3pgnGE0<>
町長から浴びせられる質問に僕は思わず固まってしまう。
何の気なしに出された質問の様に聞こえるが、これは答えを誤るととんでもない事になる。
町長の様に、年齢の事を気にしている妙齢の女性に対しては特にだ。

この場合、気を悪くさせない様に、明らかにお世辞とわかるほどの若い年齢を答えるのが一番無難な回答だ。
しかし、露骨なお世辞を嫌う人もいるから絶対ではない。

逆に一番よろしくないのは、実年齢にかなり近い数値で、少しだけ上の回答だろう。
妙にリアリティがあり、実年齢より老けて見えるのだと落ち込ませてしまう。
それならいっそ大幅に上に外して冗談にしてしまう方がまだいい。

( ^ω^)(考えろ……、考えるんだ、僕。町長さんはいくつに見えるかお?)

10代は当然有り得ないとして、20代前半も恐らくないだろう。
20代前半ならまだ余裕や自信に溢れ、ここまで年齢の事は気にしないはずだ。

( ^ω^)(ならば30……いや、40……駄目だお、ここは慎重に……)

(*^ー^)

熟考するほどの時間はない中、僕はこれまで培って来た商売人としての経験や眼力を総動員し、
1つの回答に辿り着く。
誤れば今回のクエストに対し、大幅に影響する可能性のある回答を、僕は極めて自然な調子で口にする。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:43:10 ID:Cu3pgnGE0<>
( ^ω^)「3……いや、28ってとこですかお?」

(*^ー^)

( ^ω^)(外したかお!? いや、外すのは前提! 問題は上か下か、差はいくつかだお……)

僕は町長の一挙手一投足に注視し、返答を待つ。
握る手の平に汗が滲むのを感じた。

(*゚ー゚)「あー、惜しいですね。そこまで若くないですよ」

( ^ω^)「お? そうでしたかお?」

外した。
しかしこれは想定内。
問題はその差分だ。

(*^ー^)「でも、かなりいい線いってましたよ。流石、商売をやっておられるだけはありますね」

( ^ω^)(Yes!)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:44:35 ID:Cu3pgnGE0<>
先ほどまでとは違う、穏やかな微笑み。
どうやら僕は彼女が望む、お世辞とはわからぬ程度に近い範囲の下の回答を導き出せたようだ。
リアリティを感じられる範囲で、年齢より若く見られたと上機嫌にさせる事が出来た。

(*^ー^)「正解は32でしたー」

少しおどけた調子で正解を発表する町長。
だいぶ機嫌を直してくれたようなので、これでこの後の話はスムーズに行きそうだ。

( ´_ゝ`)「ん? 十分長老って年じゃね?」

(*^ー^) ピキッ

( ゚ω゚)

アニジャさんの一言で、極寒の地の空気が更に冷たさを増し、瞬時に凍り付く。
笑顔のままの町長の顔が、心なしか震えて見えるのが寒さの所為であれば良かったのに。

(´<_`;)「馬鹿! アニジャ、レディに対して失礼な事を言うんじゃない!」

( ´_ゝ`)「んー? 俺、何か悪い事言ったか?」

(´<_`;)「いくらホントの事でも言って良い事と悪い事があるだろ? いいからアニジャは黙って──」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:46:07 ID:Cu3pgnGE0<>
ξ#^竸)ξ///⊃「はい、ドーン!」

神速の踏み込みからのツンの両の拳がアニジャさんとオトジャさんの腹に突き刺さる。
2人は断末魔の悲鳴を上げる事もなく、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。

(;^ω^)「えーっと……その……大変お見苦しい所をお見せして……」
 _,  ,_
(#^ー^)「いえ、お気になさらず。どうぞ、この 長 老 に御質問下さい」

(;゚ω゚)(滅茶苦茶怒ってらっしゃるぅぅぅぅっ!!!)

ものすごく聞き辛い空気の中、僕は引きつった笑顔で質問を催促する町長さんに、事の経緯を説明する。
この状態で話を聞いてくれるのはビコーズさんの紹介状があるからだろう。
王家の印がなければ、即刻追い出されていてもおかしくはなかったと思う。
 _,  ,_
(#^ー^)「なるほど、お話はわかりました……」

(;^ω^)「そ、そういうわけでして、その、何か知っている事があれば、教えて頂ければと……」

極めて低姿勢からの僕のお願いに、引きつっていた顔を真顔に戻し、町長はしばし考え込む。
そのものずばりの答えを期待しているわけではないが、何らかの探索の指針になる情報は入手したい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:47:48 ID:Cu3pgnGE0<>
(*- -)「難しい所ですね……御存知の様に、ここは竜との戦争で町の多くが消失し」

(*- -)「過去の記録もだいぶ焼けてしまってますので」

( ^ω^)「はい、……話には聞いておりますお。ですから、口伝とかそういった物に期待するしかないのかと」

( ^ω^)「そう思って、町長さんの所を訪ねたというのもありますお」

(*゚ー゚)「シィで結構ですよ。……そもそも役職で呼ばれるから、こういう空気になったんですし」

(;^ω^)「ホントすみませんお。そう呼ばせてもらいますお」

(*゚ー゚)「はっきり申してしまえば、その様な魔具についての伝承は聞いた事はありません」

(;^ω^)「そうですか。では、他を当たるべきですかおね」

(*゚ー゚)「ただ、1つ気になる事はあります」

(;^ω^)「お?」

(*゚ー゚)「どうして皆さんはそれがここにあると思ったんです?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:49:29 ID:Cu3pgnGE0<>
( ^ω^)「それは、そういう噂があると……」

川 ゚ -゚)「なるほど、確かに不自然だな」

(*゚ー゚)「お気付きになられましたか?」

僕が何の事か考えていると、いち早く気付いたらしいクーが話に割って入った。
そして未だ理解していない僕に、どういう事か説明してくれる。

川 ゚ -゚)「ソクホウにまで知れ渡っている噂が、何故この町の町長であるシィさんが知らないのかって話さ」

クーの言葉に、シィさんが頷く。
なるほど、そう言われると確かに不自然だ。

(*゚ー゚)「町長といえど、町も歩けば日常的に買い物などもしています」

(*゚ー゚)「その際に買い物帰りの奥様方と、世間話に興じる事もあるのですよ」

噂話に疎いわけではないという事だろう。
となると、どういう事かになるのか、何となく僕にも見えて来た。

( ^ω^)(そういう噂はなかったって事かお?)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:51:22 ID:Cu3pgnGE0<>
少なくとも、大々的な噂にはなっていないと考るべきだろう。
だとすれば、信憑性についてはかなり薄い事になってしまう。

それなのに、僕らを北に行かせたという事は、確証があったかそれとも無駄足を踏ませたかったかのどちらかだ。

( ^ω^)(これはちょっと出直した方がいいかもしれんお)

北にある事を疑いもせずにここまで来たが、裏付けは全く取っていない。
取るまでもなく信用出来る相手だと考えていたのだ。

僕は思わずツンの方に視線を向ける。

(*゚ー゚)「あ、お茶のおかわりをお持ちしますね。どうぞご寛ぎ下さい」

シィさんはかなり空気が読める人らしく、いいタイミングで席を外してくれる。
お茶は口実で、僕らに話す時間をくれたのだと思う。

( ^ω^)「助かりますお」

僕はシィさんに頭を下げ、シィさんが部屋を出るとすぐに皆と相談を始めた。
まずは先ほど僕が考えていた事を話すと、すぐにクーが自分の考えを示してくれる<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:53:22 ID:Cu3pgnGE0<>
川 ゚ -゚)「恐らく信憑性はあったのだと思うぞ」

( ^ω^)「僕もどっちかと言えばそう思ってるお。けど、それだと……」

川 ゚ -゚)「何故皆まで言わなかったか、だろ?」

( ^ω^)" コクッ

ビコーズさんが北にあると確信していたのだとすると、その理由や、
ひょっとしたらどこにあるかまで把握していた可能性もある。
だとしたら、何故それをあの時に僕達に教えなかったかがわからない。

(゚、゚トソン「僕はその理由が何となくわかる気がします」

川 ゚ -゚)「ああ、私も何となくそうじゃないかなと思ってる」

ξ゚听)ξ「教えなかった明確な理由があるの?」

(゚、゚トソン「明確な理由といいますか、あの方ならやりそうかなと」

川 ゚ -゚)「あれだな、あの人から物を習う時は大体そんな感じなんだよな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:54:16 ID:KnRmgZcg0<>しええええん<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:56:02 ID:Cu3pgnGE0<>
2人の言い分によると、ビコーズさんは大体において全て答えを教えてくれる事は稀で、
ある程度は自分で考えさせるように仕向けてくるのが常だったという。

( ^ω^)「なるほど。けどそれって、勉強とかそういう話の場合だおね?」

(;^ω^)「割と重要なクエストの際にそういう情報を渋るのはどうかと思うお」

ξ゚听)ξ「……だから、勉強なんじゃないの?」

(;^ω^)「お? どういう……」

ツンに聞き返そうとしたが、その視線の向き、クーの方を見ている視線で僕は言葉の意味を察する事が出来た。
すぐに魔王の頭骨を見付けて帰るだけなら、クーに経験を積ませる機会は減るだろう。

(;^ω^)「納得がいくようないかないような……」

川 ゚ -゚)「そういう所がある人だ。諦めろ」

他人事の様に言うクーだが、試されているのが自分だと知ればどういう顔をするだろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:57:13 ID:Cu3pgnGE0<>
ξ゚听)ξ「噂について詳しく聞かなかった私達のミスよ。ここまで来たんだし、信じて乗るしかないわ」

(;^ω^)「ツン……」

ツンはビコーズさんが今一つ信用出来ないと言っていた。
てっきりこの流れだと、腹を立てて一旦ソクホウに帰るとでも言い出すと思っていたので少し意外だった。

ξ゚听)ξ「ま、それで納得したとして、今度どうするべきかよね」

ノパ听)「腹が減ったから昼飯にしようぜ!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ξ゚听)ξ「ヒートは黙ってなさい。わんおもね、もうちょっと我慢してて」

ビコーズさんの思惑に乗るとして、この後シィさんから何を聞き出すべきか。
考え付くのはまず、この町で現在起こっている異変だろう。

川 ゚ -゚)「それは聞くまでもなく、この異常気象と言われそうだがな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:58:31 ID:Cu3pgnGE0<>
ξ゚听)ξ「そうね。そもそもこの異常気象の原因は何なのかしら?」

( ^ω^)「原因がわからないから異常気象なんじゃないかお?」

ξ゚听)ξ「わからないだけで、ないわけじゃないでしょ?」

(゚、゚トソン「となると、それを探すべきなのでしょうかね」

ξ゚听)ξ「全く関係ない可能性も考えると、他に何かおかしなことが起こってないかも聞くべきでしょうね」

率先して話を主導していくツン。
聞いていると的確に感じるし、僕は助かるが少し珍しいかもしれない。

僕達は現在町で起こっている事を色々と聞いてみるという事でひとまず方針を定め、シィさんが戻るのを待った。

(*゚ー゚)「お待たせしてすみません」

それから程なくして戻って来たシィさんは何人かの女性を従え、お茶とお菓子の乗った皿を僕達の前に並べる。

ノハ*゚听)「おお、美味そうだ!」

(*^ー^)「どうぞ召し上がれ。私の手作りですが、お口に合えば幸いです」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 22:59:52 ID:Cu3pgnGE0<>
シィさんに勧められるままに、あまり馴染みのない形をした焼き菓子を手に取る。
独特の風味があり、人によっては苦手と思うかもしれないが、僕はそれなりに美味しいと感じた。

ξ゚听)ξ「早速ですが、いくつかこの町の事でお聞きしてもよろしいでしょうか?」

(*゚ー゚)「はい、私に答えられる事であれば何なりと」

まず異常気象についてだが、予想通り原因はわからないらしかった。
過去にそういった例があるか聞いた所、かなり難しい顔をされてしまう。

(*゚ -゚)「あるにはあったらしいのですが、もし今回の理由もそれが原因なら、かなりの大事になりますね」

( ^ω^)「具体的に聞いてもよろしいですかお?」

(*゚ -゚)「これはまだ未確認なので、口外しないよう願います」

ξ゚听)ξ「はい、お約束します」

(*゚ -゚)「過去にこの時期に雪が降った時は、氷竜が飛来した所為だと言われております」

(;^ω^)「氷竜って、あの?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:01:48 ID:Cu3pgnGE0<>
氷竜、天空竜と同じく古代竜の1匹で、その力は強大だ。
もしこの雪が氷竜が原因だとすれば、盟約を破って氷竜がこの地に来ているのかもしれない。
だとすれば、かなりの大問題である。

ξ゚听)ξ「なるほど、ではそちらは私達が追っている件とは関係なさそうですね」

(;^ω^)「お? どういう……あ……」

ξ゚听)ξ
σ∪^ω^)

そういえばビコーズさんは、今の所、竜に動きはないと言っていたはずだ。
それが間違いであれ正解であれ、氷竜の事を知らなかった時点で今回の件とは関係ないと判断出来る。

どちらにしろ僕としては、万が一の事を考えるとわんわんおを連れて古代竜には会いたくないので、
別方向から探すべきだろう。

(*゚ー゚)「その他で最近噂になっている事といえば、幽霊船でしょうかね」

川;゚ -゚)「幽霊船? 随分と不気味な噂だな……」

シィさんの話によると、イチサンの北の海に最近海難事故が頻発している場所があるという。
軽いものでは船体が破損したり、マストが破けたり、
ひどいものになると船体に穴が開いて船が沈んだケースもあるらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:03:24 ID:Cu3pgnGE0<>
(*゚ -゚)「その時に決まって濃い霧が立ちこめ、不審な船の目撃情報があるのですが……」

その船には人気がなく、現在も運用されているとは思えないくらい朽ちた見た目をしていたという。

(゚、゚トソン「それで幽霊船ですか……」

僕達はしばし考える。
この手の幽霊、亡霊話は、何かしらのモンスターか、もしくは魔法ないし魔法道具が原因とされる事が多い。

そう考えると、魔王の頭骨という魔具はこの条件に当てはまる。
調べてみるのも有りかもしれない。

+(´<_`*)「幽霊船! 浪漫溢れる響きだね!」

( ^ω^)「あ、オトジャさん起きたのかお」

僕はもう1回眠らせようと拳を握るツンを押し止め、オトジャさんに見解を聞く。
トレジャーハンターはこういった怪現象にも詳しかったりするのだ。

(´<_` )「そうだね、極めてシンプルに考えるなら、千年紀を迎えて力を取り戻した魔王の頭骨が」

(´<_` )「沈んだ船に力を与えている可能性はゼロじゃないと思う」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:06:00 ID:Cu3pgnGE0<>
過去にそれと知らず魔王の頭骨を積んだ船が沈み、
今になって蘇ったという浪漫溢れる話じゃないかとオトジャさんは予想する。

そこに浪漫があるかどうかはともかく、その説明だと1つ気になる事もあった。

( ^ω^)「確か3つの魔具って、単体じゃ力を持たないんじゃなかったんですかお?」

魔王の衣をモナー王に渡した時、ビコーズさんがそんな事を言っていたのを覚えている。
しかし、オトジャさんの話によると、それは正しくないという事だ。

(´<_` )「ソクホウに戻ってから色々と調べたんだが、それは魔王の衣に限った話だね」

(´<_` )「魔王に近付くに連れてその力は増すようだよ」

簡単に言えば、魔王の朱玉、魔王の頭骨、魔王の衣の順で強い力を持つらしい。
特に魔王の朱玉は、単体でもかなりの魔力の増幅効果を持つとか。

( ^ω^)「よくそんなの短期間で調べられましたおね」

+(´<_` )「まあ、僕にかかればこの位はね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:08:07 ID:Cu3pgnGE0<>
川 ゚ -゚)「頭骨はわかるが、朱玉は何なんだ? 何でそれほどの力があるんだ?」

(´<_` )「朱玉の別名は、魔王の心臓とも呼ばれているからね。そう考えれば納得いくだろ?」

オトジャさんのお陰で今の疑問は氷解したが、代わりに気になる事も出て来た。
魔王の朱玉はメシューマの闘技大会の賞品にされている。
それほど力のあるものを賞品にするとは、客寄せにしては少々物騒だ。

ξ゚听)ξ「今はその話は後回しでいいでしょ」

(゚、゚トソン「在り処がわかっているのなら、王家の方で直接交渉するでしょうしね」

川 ゚ -゚)「だな。じゃあ、この幽霊船を調査してみるって方向でいいのか?」

クーの言葉に僕は全員の顔を見渡す。
その他の噂話もシィさんに聞くとしても、皆特に反対はない様だし、この件は追ってみてもいいだろう。

+(´<_` )「というわけで町長さん、その幽霊船が出る海域とやらを詳しく教えてくれませんか?」

(*^ー^)「お断りします」

(´<_`;)「え?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:11:04 ID:Cu3pgnGE0<>
(*゚ー゚)「この件は住民との協議の結果、今の所極秘で私が預かっております」

(*゚ー゚)「私としては教えてあげたい所ですが……」

(*^ー^)「長 老 としての立場では、その腕に信の置けないものに無闇に話すのは憚られますので……」

(;^ω^)(うわあ……根に持たれてるお……)

にこやかに微笑みながら、先ほどの意趣返しとばかりにきっぱりとオトジャさんに言い放つ長……シィさん。
失言した1人であるオトジャさんに話させたのはまずかったかもしれない。
もっともらしい言い分だが、その顔を見る限り、先ほどの意趣返しなのだろうなと思わざるを得ない。

ξ゚听)ξ「それなら、腕が確かならいいという事ですか?」

(*゚ー゚)「そうですね。何でも聞いて下さいと言っておきながら、無下に断るのも理不尽ですし……」

< カタン

( ^ω^)「お?」

(∪^ω^)" ピクッ

不意にドアの方で小さな音が鳴った。
視線をそちらに向けると、ドアが開いたわけではない様だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:14:43 ID:pFte2rzM0<>続きキタ━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━!!<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:16:10 ID:Cu3pgnGE0<>
(;^ω^)(まさか幽霊だなんてタイムリーな事はないおね……)

視線を下げると、わんわんおがゆっくりとドアの方へ向かう姿が見えた。
そしてその先にも、わんわんおより少し小さめの影が1つ。

. ∧∧
.(*゚∀゚)「なー」

川 ゚ -゚)「何だ、猫か」

(*゚ー゚)「ああ、私の飼い猫のつーです」

部屋に入って来たのは真っ黒い猫であった。
名前はつーというらしい。
よく見ると、ドアに小さな猫用の回転ドアがついていた。

. ∧∧
.(*゚∀゚)          (^ω^∪)


( ^ω^)「お、わんお、ケンカしちゃ駄目だお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:17:36 ID:Cu3pgnGE0<>
気付けばわんわんおはつーの少し手前で立ち止まり、じっとその様子を観察している。

過去に他の犬と遊ばせた事はあったが、猫と遊ばせた事はない。
ほとんどの猫は、嬉しそうに吠えながら近付くわんわんおに警戒心を抱いて逃げてしまう。

いきなり走って行かない所を見ると、わんわんおも少しは学習したのだろうか。

. ∧∧
.(*゚∀゚) (^ω^∪)...

そのままじりじりと近付き、わんわんおはつーの目の前まで辿り着く。
つーの方は微動だにせずそれを見詰めていた。

ξ゚听)ξ「犬から逃げないんですね」

(*゚ー゚)「やんちゃな子ですので、怖がらないんだと思います」

川 ゚ -゚)「肝の据わった猫だな」

話そっちのけで僕達は2人の様子を見守る。
動物同士が戯れる姿は、見ていて心が和むものだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:19:23 ID:Cu3pgnGE0<>
. ∧∧ナッ バキッ
.(*゚∀゚) (#)ω<∪)そ
  ⊂彡

(;^ω^)「あ……」

(;*゚ー゚)「あらら……」

どうやらファーストコンタクトには失敗したようだ。
つーはわんわんおの横っ面を叩くと、そのままシィさんの所へ走る。

(;*゚ー゚)「すみません、うちのつーが……」
つ*゚∀゚)「なー」

(;^ω^)「いや、まあ、犬と猫ですしね。そう簡単には仲良くなれないでしょうお」
つ)´ω`∪)

申し訳なそうにするシィさんがだつーが悪いというわけでもない。
種族の違いという壁はなかなか高いものであろう。
猫が子猫で犬が成犬とか、子供同士なら仲良くなることもあると思うが、見た所、つーは大人の猫に見える。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:22:03 ID:Cu3pgnGE0<>
(´<_` )「そうそう、動物同士のケンカはよくある事ですよ。お気になさらずに」

+(´<_` )「さて、シィさん、先ほどの話ですが……」

(*^ー^)「お断りします」

ξ゚听)ξ「あの、シィさん、先ほどの腕を示すという件ですが……」   ノ(´<_`iil)\ ズーン……

(*゚ー゚)「はい、そうでしたね。えーっと……あ……」

何かを思い付いたのか、少々お待ちくださいとの言葉を残し、シィさんはつーを抱いたまま部屋を出ていった。
それからさほどの時間をおかず、シィさんは戻って来る。

(*゚ー゚)「お待たせしました。ちょっと失礼」
つ*゚∀゚)

(゚、゚トソン「あ、はい」

シィさんは椅子には座らず、部屋の奥、窓の方に向かう。

(*゚ー゚)「こちら、お見えになりますか?」
つ*゚∀゚)

そう言ってシィさんは、つーを両手で抱いて僕らの方に見せ付ける。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:24:43 ID:Cu3pgnGE0<>
( ^ω^)「見えますけど、かわいい猫ですおねとしか言えないですお」

(*゚ー゚)「どうもありがとう。ですが、見て欲しいのはこの首輪です」
つ*゚∀゚)「なー」

つーの首には飼い猫らしく、首輪が付いている。
ごく普通の首輪に見えるが、正面に何か大きめの丸いものが付いていた。

(*゚ー゚)「ここに先ほどの幽霊船が出る海域の情報書き記したものが入れてあります」

( ^ω^)「お……」

(*゚ー゚)「ここは1つ、ゲームでもしましょうか」

川 ゚ -゚)「ゲーム?」

(*゚ー゚)「さあ、つー」
  ∧∧
彡(*゚∀゚)っ「なー」

つーは一声鳴くと、シィさんが開けた窓から外に飛び出していった。
これはつまり、情報が欲しければつーを捕まえろという事であろうか。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:27:15 ID:Cu3pgnGE0<>
(*^ー^)「その通りです。あ、町の人から海域の情報を聞こうとしても無駄ですよ?」

(*゚ー゚)b「先ほど緘口令を敷きましたから」

ξ;--)ξ「用意周到な事ですね……」

ツンはそう言って肩をすくめたが、この状況ではシィさんの言うゲームに付き合うしかなさそうだ。

( ^ω^)「まあ、そういう事ならちゃちゃっと捕まえて……」

(*゚ー゚)「そうそう、武器や魔法の使用は禁止でお願いしますね」

(;^ω^)「お、武器はわかるとして、魔法もですかお?」

(*゚ー゚)「あくまで皆さんの腕試しですので、あんまり簡単に終わっては試せないでしょ?」

川 ゚ -゚)「仕方ない、乗ってやろうじゃないか。なに、猫ぐらい簡単に捕まえて見せるさ」

d(゚、゚トソン「はい、猫の1匹や2匹、我々にかかれば軽く一捻りですよ!」

(;^ω^)「捻るなお。あんまり無茶はやめてくれお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:28:32 ID:Cu3pgnGE0<>
(*^ー^)「言い忘れてましたけど、つーは町の皆さんにも人気がありますので」

(*^ー^)「つーの手助けをするために貴方達の妨害をしてくる人もいますけど、上手く退けて下さいね」

ξ;゚听)ξ「なるべく手加減しますけど、そちらもあんまり無茶させないで下さいね?」

何だか思ったより大袈裟な状況になって来ているが、今更後には引けない。
こちらには身の軽いツンやヒートもいる事だし、何とかなるだろう。

( ^ω^)「って、あれ? そういえばヒートは?」

先ほどから随分と静かだなと思ってヒートの姿を探してみると、その姿が見当たらない。

q(゚、゚トソン「こちらに」

ノハ--) zzz...

(;^ω^)「寝てやがるお……」

トソン君が指差す先にヒートの姿はあったが、完全に熟睡状態だった。
それを僕が起こすより早く、ツンが揺り起こす。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:30:29 ID:Cu3pgnGE0<>
ノハう-)「んあ……? 昼飯か?」

ξ#゚听)ξ「その前に一仕事。猫を捕まえるのよ! お昼ご飯はその後!」

ノパ听)「よしわかった! 猫だな! 行くぞ!」

そう言うなりヒートは開いていた窓から飛び出して行った。
この調子なら簡単に捕まえてくれそうだと期待出来るが、問題も1つある。

(;^ω^)「ヒート、つーの姿見たっけかお?」

ξ;--)ξ「……戻って来た時に教えましょ」

(*^ー^)「それじゃあ、皆さん方も準備はよろしいですか?」

(*^ー^)つ「第8回、チキチキつーちゃん捕獲大作戦、スタート!」

(;^ω^)「第8回って、今までにも同じ事やって来たのかお?」

(*゚ー゚)「皆さん達の様に、何かしらの情報を求めて来た冒険者相手にやった事ありますよ」

(;^ω^)「何となくそんな気はしてましたお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:34:11 ID:Cu3pgnGE0<>
ξ゚听)ξ「じゃあ、私も行きましょうかね」

(*゚ー゚)「さて、実況席の準備しないと。あ、よろしければそちらから解説を1人お借りしたいのですが」

(;^ω^)(この人、滅茶苦茶楽しんでるおね……)

何でこんな事になったのかと頭を抱えつつも、こうなったらやるしかない。
とはいえ魔法が使えない状況では、僕に出来る事はだいぶ限られて来る。

( ^ω^)「ここは1つ、わんおにがんばって貰おうかお」

(∪*^ω^)=3「わんわんお!」

( ^ω^)「お、随分と気合入ってるおね。頼むお!」

彡(∪*^ω^)っ「わんお!」

僕は窓から飛び出していくわんわんおを見送り、自分も窓から外に出る。
真っ白なわんわんおの姿は、雪に紛れて既によく見えない。

( ^ω^)「がんばれお、わんお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:35:48 ID:pFte2rzM0<>わんおまた張り倒されるw<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:35:51 ID:Cu3pgnGE0<>
( ^ω^)「あ、解説はそこで寝てるアニジャさんで」

(*^ー^)「お断りします」

( ^ω^)「ですおねー」

僕は実況席を作ると言うシィさんを手伝う。
この流れだと、僕が解説をしないといけないのだろうか。

(*゚ー゚)「ギルドの方に手伝って貰って、遠視の魔法道具、通称カメラも設置しますのでここは特等席ですよ?」

(;^ω^)「本格的過ぎるお」

(*゚ー゚)「それを媒介に魔法で指示を出すのも許可しますが?」

( ^ω^)「おk、そうさせて貰いますお」

僕は用意した席に着き、目の前の水晶を眺める。
これを媒介にしろという事だろう。

更にここに映る映像を、向かいの家の壁に投影する様だ。
中々に高度な技術を使っているが、用途がだいぶ残念な気もする。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:37:51 ID:Cu3pgnGE0<>
( ^ω^)「何か祭りみたいな雰囲気になって来ましたおね」

気付けば町の人がぞろぞろと町長宅前に集まって来ていた。
更に屋台を引っ張って来て、商売をしている人もいる。
思わず僕も混ざりたくなってしまうが、残念ながらそういうわけにもいかない。

(*゚ー゚)「娯楽が多い町ではないですので、何かにつけて騒ぎたがる所があるんですよ」

( ^ω^)「なるほど……」

( ^ω^)(でもきっと、町の人じゃなくてあんたが一番騒ぎたがってるだろと思うお……)

(*゚ー゚)b「それじゃあ、勝負ですね、ブーン君!」

( ^ω^)b「負けませんお、シィさん!」

こうして、幽霊船の情報を得る為の、僕達のくだらなくも激しい戦いの火蓋が切って落とされる事になった。



     第三十七話 雪に染まりし最北の町 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/07(土) 23:39:24 ID:igkOqfJY0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:39:36 ID:Cu3pgnGE0<>
三十七話は以上です

次回は近日中に
書き溜めは完了してますので、最短は明日にでも
次回は少々変則的な感じになってますが、多分こういうのは1度きりだと思います

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:41:30 ID:pFte2rzM0<>>>753
乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/07(土) 23:42:45 ID:KnRmgZcg0<>おっつおっつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 02:55:26 ID:VpJnwt9gO<>ω・`)乙。魔王とか世界バランスを変えるくらい重要な事のわりに平和的な展開だな。作風かな。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 05:03:31 ID:/BcJ2uvo0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 08:08:04 ID:yQUYz5KM0<>>>1さんも八頭身も出てこないかー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 10:05:29 ID:EtB1xjtQ0<>乙ー
またでた特徴のない旅人は同じ人なのかね?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 14:09:19 ID:0w1.9cxc0<>あの旅人は何かの伏線のような気もするし
ただのネタのような気もする<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:26:23 ID:UrlmOsCg0<>
 〜 イチサンの町 町長宅前 〜


( ^ω^)「さあ、始まりました、第8回、チキチキつーちゃん捕獲大作戦」

(*゚ー゚)「それ、私のセリフですよ、ブーン君。実況は私、イチサン町長シィ=ダンヴォールと」

( ^ω^)「解説は僕、ヴィップの魔法道具屋サンライズ店長、ブーン=ナイトウでお送りしますお」

【ξ;゚听)ξ】「何であんたらそんなにノリノリなのよ?」

【川;゚ -゚)】「つーかうるさい! この実況とやらは切れないのか?」

【(゚、゚トソン】「恐らくこの僕達の周りに浮遊している球体が発しているのでしょうね」

【ノパ听)】「うおおおおっ! 猫どこだああああっ!」



     第三十八話 白銀の黒を追え


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:29:47 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「さあ、誰が一番最初につーちゃんを発見するかが見物ですお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(*゚ー゚)「つーちゃんはやんちゃですからね。むしろ隠れずに出て来てからかったりしそうですよ」

彼女の名前はシィさん。
イチサンの町で町長をしている、年齢の話に少し敏感な人だ。

僕達は魔王の頭骨を探すというクエストで、ニューソク大陸最北の町、イチサンに来ている。
まずは情報集めと長老、もとい町長の家に向かったのだが、何故か情報を得るために町長であるシィさんの飼い猫、
つーを捕まえなければならなくなった。

(*゚ー゚)「さて、解説のブーンさん。ここで簡単に選手の紹介をして頂きたいのですが」

( ^ω^)「了解ですお。まずは優勝候補筆頭、ツン=ディレード選手ですお!」

【ξ;゚听)ξ】「いや、選手って、あんたまで悪ノリしてんじゃないわよ!」

(*゚ー゚)「彼女はどういった選手なのでしょうか?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:30:23 ID:/mXtsYh2O<>キター!(゜∀゜)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:32:10 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「彼女は武術家で、その身体能力は高く、身の軽さはパーティー1ですお」

(*゚ー゚)「なるほど、それでこの武器も魔法も使えない状況では、必然的に優勝候補になるわけですね」

( ^ω^)「加えて頭も良いですからね。少々短気なのが玉に瑕ですが、彼女ならやってくれると思いますお」

(*゚ー゚)「これは期待の選手です! それでは、次の選手をお願いします」

( ^ω^)「はい、そのツン選手の対抗馬になり得るのが、ヒート=オネスティー選手ですお!」

【ノパ听)】「ねええええこおおおおっ!」

(*゚ー゚)「元気溢れる選手ですね。あの格好で寒くないのでしょうか」

( ^ω^)「彼女も武術家で、その実力はツン選手と互角ですお。速度では少し劣るものの、腕力は勝っていますお」

( ^ω^)「しかしながら、彼女が今回優勝するのは少し厳しいかと思ってますお」

(*゚ー゚)「それはどういう事でしょうか?」

( ^ω^)「まず大雑把で、考えて行動するのを苦手としてますお」

(*゚ー゚)「つまりは馬鹿なんですね?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:36:02 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「更に言えば、ヒート選手はつーちゃんがどんな猫がまだ知りませんお」

(*゚ー゚)「これは何とも大きなハンデですね。というか、その状況でヒート選手は何を追いかけてるのでしょうか」

( ^ω^)「さて次の選手ですが、この人が僕の中ではツン選手の対抗馬になるかと思っていますお」

( ^ω^)「トソン=トソン選手、体力自慢のタフガイですお!」

【(゚、゚トソン】「不肖、このトソン、全力でがんばらせて頂きます」

(*゚ー゚)「小柄なのでリーチの面で多少の不利がありそうですが、やる気は十分ですね」

( ^ω^)「ただ、怪力な上、多少そそっかしいとこがありますので」

( ^ω^)「壊されたくないものがあったら、ちゃんと家の中にしまっておいて欲しいですお」

(*゚ー゚)「だそうですよ、町の皆さん、気をつけて下さいねー」

( ^ω^)「さて次の選手ですが、まあ、この人にはあまり期待できないでしょう、クー=スナオ選手です」

【川;゚ -゚)】「何だとー? 私だってやる時はやるぞ?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:38:43 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「寒さが苦手な上に、身体能力は先の3人に劣りますので」

( ^ω^)「如何に頭を使って立ち回れるかが勝利の鍵ですが……」

( ^ω^)「きっとどこかでサボると思いますお」

【川;゚ -゚)】「サボるって決め付けんな!」

(*゚ー゚)「おっと、クー選手の背後に映る建物は、イチサンの町でも有名な温かいスープが美味しいお店ですね」

( ^ω^)「既にサボる気十分のようですお」

【川;゚- ゚)】「いや、これはたまたま……」

( ^ω^)「さて次はこの人、オトジャ=サースガ選手ですお!」

【+(´<_` )】「探し物は大得意、冒険野郎サスガイバーの実力をお見せしようじゃないか」

(*゚ー゚)「おおっと、オトジャ選手自信に満ち溢れた発言だーシネ!」

【(´<_`;)】「あれ? 今最後に何か不穏な言葉が聞こえた気がするんだけど?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:40:22 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「さて、この人も本命といえば本命です。なんせ本職のトレジャーハンターですからね」

( ^ω^)「しかも武器ではない道具、ワイヤーを持ってますので、高低差を無視した移動も可能ですお」

(*゚ー゚)「なるほど、これは期待が持てそうですねーデモシネ!」

【(´<_`;)】「いや、だから何か不穏な言葉が……」

( ^ω^)「さて、次はアニジャ=サースガ選手ですが……」

【(  _ゝ )】 チーン

( ^ω^)「未だ気を失ってるので放っておきましょう。起きてもどうせ戦力外ですお」

(*゚ー゚)「これは手厳しい。では彼は賭けから外しておきましょう」

【ξ;゚听)ξ】「お前ら、賭けまでやってんのかよ……」

( ^ω^)「ちなみに、現在はツン選手が一番人気ですお」

【ξ*゚听)ξ】「え、そうなの? じゃ、じゃあ、ちょっとがんばろっかな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:44:50 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「ツン選手、現金ですねー。私的には穴が来てくれた方が現金になるのですが」

【川;゚ -゚)】「お前が胴元かよ……」

( ^ω^)「さあ、選手紹介も最後となりましたお」

( ^ω^)「最後はこの人、わんわんお選手ですお!」

【(∪^ω^)】「わんわんお!」

( ^ω^)「元気良く走るわんわんお選手ですが、優勝は若干厳しいでしょうかお」

( ^ω^)「体力はそこそこつきましたし、足もそこそこ速くなりましたが、如何せん猪突猛進過ぎますお」

( ^ω^)「でも、個人的には今大会のダークホースだと思ってますので、がんばって欲しいですお!」

【(∪*^ω^)】「わんお!」

(*゚ー゚)「さあ、選手紹介も終わりました所で、肝心のつーちゃんの様子ですが……」

【(*゚∀゚)】<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:46:00 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「おおっと、ツーちゃんカメラの視界に1人の選手が見えました! これは……」

【ξ゚听)ξ】「みーっけ、と」

( ^ω^)「ツン選手ですお! 流石優勝候補、早くも勝負を決めるか!」

【(*゚∀゚)】「なー」

【ξ゚听)ξ】「取り敢えず……足を止めますか!」

(*゚д゚)「ツン選手、大きく跳躍し拳を固め……え? 拳!?」

【ξ゚听)ξ⊃】「でえええりゃああああっ!」

(;^ω^)「そのまま上空からつーちゃん目掛けて容赦なく殴りかかるうううっ!」

【(*゚∀゚)】「なっ!」

【ξ゚听)ξ】「チッ、外したか……」

(;*゚ー゚)「いや、外したかじゃなくて、何で殴りかかってんのよ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:48:53 ID:UrlmOsCg0<>
【ξ゚听)ξ】「動きを止める為よ。勿論、手加減はするわよ」

(;*゚ー゚)「猫相手に何てことすんのよ!」

【ξ゚听)ξ】「武器、魔法は禁止だけど、攻撃は禁止じゃないんでしょ?」

(;*゚ー゚)「禁止禁止! そんなことする人今までいなかったから明言しなかったけど、普通わかるでしょ!」

【ξ゚听)ξ】「面倒ねえ……。まあ、いいわ。次は拳を固めずに行くから」

(;*゚ー゚)「全然わかってない!? チッ、こうなったら……」

( ^ω^)「あれ、実況のシィさんの姿が消えましたが……まあ、いいですお」

( ^ω^)「逃げたつーちゃんはどうなってますかおね」

【(*゚∀゚)】

( ^ω^)「これはどこかの屋根の上のようですお。さて、ここから一番近いのは……オトジャ選手のようです」

【(´<_` )】「僕か。ブーン君、お転婆なレディはどこかな?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:49:58 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「オトジャさんの右前方、三階建ての建物の上ですお」

【(´<_` )】「オーライ、把握した。それじゃあ、行こうか」

( ^ω^)「オトジャ選手、ワイヤーを使い、華麗に建物を登って行きますお!」

【(´<_` )】「見付けたよ、レディ」

【(*゚∀゚)】「なー」

( ^ω^)「おおっとつーちゃん、オトジャ選手の姿を確認すると別の建物に向かって跳躍、逃げ出しましたお!」

【+(´<_` )】「逃がさないよ」

( ^ω^)「オトジャ選手、巧みにワイヤーを駆使し、同じように跳躍して追い掛ける!」

【(*゚∀゚)】「なー」

( ^ω^)「つーちゃんも必死に逃げますが、徐々に距離は詰まって行きますお。これは捕まったか!?」

【+(´<_` )】「フフ、この僕の華麗なるワイヤーワークからは逃れ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:52:29 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「ああっと! ワイヤーを引っ掛けた建物が倒れてくる! これはーっ!」

【(´<_`;)】「え!? ちょ、ま──」


     | 壁          / ミ |
     |      ビターン   / ミ   |
     |     \、_,ノ     、_/  |
     |     _,ノ       (   |
     |     `)ヽ(   )ノ  ___──
     |     ┗-ヽ ノ        ̄ ̄ ̄
     |       ┏┘   ̄ ̄ ̄──
     |    '⌒)     (`    |
     |    /'        '^\   |


( ^ω^)「何とこれは建物に見せかけたハリボテでしたお! まさかのトラップ!」

(*゚ー゚)「町の皆さんが一丸となってがんばってくれました」

( ^ω^)「ここで実況のシィさんがお戻りですお。シィさん、どちらへ?」

(*゚ー゚)「ちょっとお花を……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:55:00 ID:1ETFprUM0<>ふむふむ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:56:05 ID:UrlmOsCg0<>
(* ー )「摘むための根回しに」

( ^ω^)「はい、聞かなかった事にしましょう。さて、ここで他の選手の様子ですが……」

【****】

(;^ω^)「えっと、これはなんでしょうかお? 白いもさもさの……えっとこれは誰の映像でしょうかお?」

(*'ω(*'ω(*'ω(*'ω(*'ω')*'ω')*'ω')*'ω')
  (*'ω(*'ω(*'ω(*'ω(*'ω')*'ω')*'ω')
    (*'ω(*'ω(∪´ω(*'ω(*'ω')
      (*'ω(*'ω(*'ω(*'ω')
        三ヽノパ听)ノ「ねこおおおおっ!」


(;^ω^)「ああっと、ヒート選手! 大量の猫を捕獲して戻って来たあああっ!」

ノパ听)「どうだ! 捕まえて来たぞ! 猫っ!」

(*゚ー゚)「これはすごい! ヒート選手、恐ろしいまでの身体能力の高さです!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:58:22 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「問題はこの中につーちゃんがいるかどうか……ああっと、今審判団による判定が終わりましたお!」

(*゚д゚)「残念! つーちゃんはいませんでした! というか、黒猫が1匹たりともいません!」

ノパ听)「お? この猫じゃ駄目なのか?」

( ^ω^)「つーちゃんは黒い猫だお、せめて色ぐらいは知っててくれお」

ノパ听)「よし、わかった、黒いやつだな! 行っくぞおおおっ!」

( ^ω^)「さあ、ヒート選手、再びつーちゃん捕獲に走りますお」

(*゚ー゚)「この間に、間違って捕まえられた猫さん達は解放しましょうか」

ニャー   ニャー   ニャー   ニャー   ニャー    ニャー   ニャー   ニャー   ニャー   ニャー
('ω'*)三('ω'*)三('ω'*)三('ω'*)三('ω'*)三(*'ω')三(*'ω')三(*'ω')三(*'ω')三(*'ω')


                      (∪´ω`)


(;^ω^)「ああっと! 解放された猫さん達の中からわんわんお選手の姿が!」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 20:58:27 ID:Os1AR7o60<>いっぴきなんかまざっとるw<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 20:59:58 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「どうやら間違えて捕獲されたようですねー。捕まえるのはせめて猫だけにして欲しいものです」

(;^ω^)「てか、大丈夫かお、わんお?」

(∪´ω`)ノ「わんおー」

(;^ω^)「あんまり無理しなくていいお? わんおはつーちゃんと遊ぶつもりで楽しむお?」

(∪´ω`)
  ブルブルブル
(((∪>ω<)))

(∪^ω^)「わんお!」

(*゚ー゚)「さあ、わんわんお選手、再び元気よく走り出しました!」

( ^ω^)「がんばれお、わんお!」

【(∪^ω^)】「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:02:19 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「勝負は未だ続いております。他の選手の動きはどうなってるでしょうか」

【川*゚ -゚)U】「ふぅ……。おやっさん、おかわりくれ」

( ^ω^)「大方の予想通り、完全にサボりに入っているクー選手!」

【(>、<;トソン】「すみません! すみません!」

( ^ω^)「こちらも予想通り、いや、予想以上というべきか、建物自体を破壊して謝るトソン選手」

【ξ#゚听)ξ】「あ? 何よ、やろうっての?」

( ^ω^)「どこからともなく現れたガラの悪い一団に絡まれているツン選手」

( ^ω^)「多分、僕の隣でほくそえんでる方の根回しでしょうが……」

(*^ー^)

( ^ω^)「虎の尾は踏まないようにして欲しいものですお」

【ξ#゚听)ξ///⊃】「邪魔よ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:03:41 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「さて、惨劇から目を背ける事にして、現在つーちゃんに一番近いのは……」


【(*゚∀゚)】         【(´<_` )】


( ^ω^)「ああっと、先ほど壁に当たって轟沈したと思われたオトジャ選手ですお!」

【+(´<_` )】「あの程度、このサスガイバーにかかればなんて事はないさ」

(*゚ー゚)「まだ若干顔を赤く晴らしたままでは説得力はありませんが、今度は慎重に行くようです」

(*゚ー゚)「ゆっくりと屋根の上から、建物の前にいるつーちゃんに近付いて行きます」

【+(´<_` )】「オーケィ、レディ。そのままじっとしててね」

( ^ω^)「じりじりと近付くオトジャ選手。おおっと、ここでつーちゃん目掛けて飛んだー!」

【(*゚∀゚)】!?

【+(´<_` )】「貰っ──」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:05:22 ID:UrlmOsCg0<>
           ∩∩ クマッ!
           (・(エ)・)
            ⊂彡#)<_゚;) ヘブオッ!?


(*゚д゚)「ああっと、オトジャ選手! どこからともなく現れたクマに吹っ飛ばされたああああっ!」

(:^ω^)「ちょ、オトジャさああああんっ!」

(*゚ー゚)「ちなみにノースニューソクシロクマのクマーちゃんは、三丁目のナカジマさんのペットです」

(*゚ー゚)「シロクマなのに色が黒いという珍しいクマーちゃんは、つーちゃんとは大の仲良しなんですよー」

(:^ω^)「あれもあんたの仕込みかお」

(*>ー<)ヾ テヘッ

(:^ω^)「さ、さあ、気を取り直してつーちゃんの姿を追いましょうお」


【(*゚∀゚)】       【(^ω^∪)】<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:07:05 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「おおっと、オトジャ選手から逃げたつーちゃんの目の前にわんわんお選手の姿がありますお!」

(*゚ー゚)「わんわんお選手、これは絶好のチャンスだ!」

【(*゚∀゚)】  【(^ω^∪)三】 「わんわんお!」

      【彡(*゚∀゚)】 ヒラリッ
【(^ω^∪)三】 !?

( ^ω^)「ああっと、つーちゃん、わんわんお選手の突進をひらりとかわしたーっ!」

【Σ(>ω<∪)】 ゴチンッ!

(;^ω^)「わんわんお選手、そのまま家屋の壁に激突。その上に雪が落ちてくるというお約束の展開に!」

【(*゚∀゚)=3】「なー」

(*゚ー゚)「つーちゃん、雪に埋もれてしまったわんわんお選手を嘲笑うかのように近付いて行きます」
  バッ!
【彡(∪^ω^)っ】「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:08:18 ID:UrlmOsCg0<>
【(;*゚∀゚)】「なっ!?」

( ^ω^)「おおっとわんわんお選手、雪の中から勢いよく飛び出し、つーちゃんに向かってダイブ!」

(*゚д゚)「辛くもそれをかわすつーちゃん! そして2人の追いかけっこが始まるー!」

【三(∪^ω^)】「わんわんお!」   【三(*゚∀゚)】「なー!」

( ^ω^)「白熱するデッドヒート! わんわんお選手追いつけるかーっ!」

(*゚ー゚)「2人の微笑ましい追いかけっこに、町の皆さんも大喜びです!」


        (・(エ)・)(#)<_(# )
        三ヽノパ听)ノ「黒いの捕まえたぞおおおっ!」


(;^ω^)「ちょ、色しかあってねえお!」

(*゚д゚)「ああっと、ヒート選手、再び戻って来ましたが、何とクマーちゃんを捕まえてしまったーっ!」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 21:09:18 ID:Dc1q2JZE0<>弟者ああああ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:09:36 ID:4a.hnloM0<>オトジャwww<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:10:43 ID:UrlmOsCg0<>
(;^ω^)「ていうか、オトジャさああああんっ! 生きてますかおーっ!」

(*゚ー゚)「さあ、その間にもつーちゃんとわんわんお選手の追いかけっこは続いておりますが……」

 【三(∪^ω^)】「わんわんお!」  【ミ(*゚∀゚)】「なー!」

(*゚ー゚)「おおっと、勝負の舞台は屋根の上に移行しております」

(*゚ー゚)「猫であるつーちゃんはともかく、わんわんお選手、大丈夫か!?」

       【彡(∪^ω^)っ】「わんお!」

(*゚д゚)「わんわんお選手、飛んだー! 届くのか、これは!?」

( ^ω^)「わんお! がんばれお!」


       【彡(∪;^ω^)ノシ】「わんおー!?」
    【(*゚∀゚)】

(*゚д゚)「ああっと、飛ぶには飛んだがこれは、飛び過ぎたか!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:12:11 ID:UrlmOsCg0<>
(;^ω^)「ちょ、下に落ちるお!」

【ε三ヾ(^ω^∪)】 キキーッ

(*゚д゚)「ギリギリの所で踏み止まったわんわんお選手! そして!」

【∩(^ω^∪)∩】「わんお!」

(*゚д゚)「そのまま反転してつーちゃんの方に転がったああああっ!」

( ^ω^)「あれはまさかの、ヒート選手の必殺技、でんぐり返しスペシャルだあああっ!」

【(;*゚∀゚)】「なっ!?」【(^ω^∪)⌒Y⌒Y⌒ 三】ゴロゴロ

(*゚д゚)「予想外の展開につーちゃん逃げ遅れたーっ! そのまま両者激突ーっ!」

(;^ω^)「ちょ、2人とも落ちるお!」

(;*゚ー゚)「つーちゃん!」

【(;*x∀x)】【(xωx;∪)】 ヒュー<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:12:57 ID:paWeuPOkO<>支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:13:51 ID:UrlmOsCg0<>
【川*゚ -゚)U】「ああ、雪見酒というのも乙なもんだな。おやっさん、つまみが切れたんで……」

【(;*x∀x)】 ドスンッ!
【(xωx;∪)】 ドスンッ!
【川;゚ -゚)U】「ぬおっ!?」

【(*-∀-)⊂川*゚ -゚)⊃(∪´ω`)】「わんおに猫じゃないか? どこから落ちて来た?」

( ^ω^)「ああっと、わんわんお選手とつーちゃん、屋外のテーブル席で飲んでいたクー選手の上に落下!」

(*゚ー゚)「そしてクー選手、つーちゃんを捕まえたーっ!」

(;^ω^)「優勝はまさかのクー選手です! てか、こいつずっとサボってやがったお」

(*゚д゚)「何という劇的な幕切れ! クー選手、おめでとうございます!」

【ヾ川*゚ -゚)U】「何だかよくわからんがありがとう! おやっさん、つまみの追加ねー?」

(*゚ー゚)「というわけで、以上を持ちまして第8回、チキチキつーちゃん捕獲大作戦を終了致します」

(*゚ー゚)ノシ「実況は私、シィ=ダンヴォールと」

( ^ω^)ノシ「解説、ブーン=ナイトウでお送りしました。皆さんお疲れ様でしたおー」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:16:18 ID:UrlmOsCg0<>
 〜 イチサンの町 町長宅前 夕刻 〜


(;^ω^)「色んな意味で疲れたお……」

お祭り騒ぎが終わると、そのまま町をあげての大宴会という更なるお祭り騒ぎが行われた。
ある意味祭りの主役だったツン達は町の人達にしこたま飲まされ、今は町長宅で眠っている。
わんわんおも一緒に遊んだお陰で仲良くなったのか、つーと一緒に眠っていた。

( ^ω^)「でも、流石雪国だおね。外で眠ってる人が1人もいないお」

少し前まで宴会で酔い潰れた人達が、そこかしこで眠りこけていたはずだが、今は誰一人見かけない。
外で眠るとヤバいのはよくわかっているのだろう。

( ^ω^)「ま、取り敢えず幽霊船が出る海域の情報は入手したからよしとするお」

あの後、約束通り情報は教えて貰えたので、幽霊船捜索に出発する事は出来るようになったが、
この状況なら明日に出発するのは無理かもしれない。
誰か1人、2人は二日酔いになってそうだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:18:25 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「折角だから、数日滞在してみるのもいいおね」

この短い時間で色んな人と仲良くなれた。
気候的には寒い町だが、人々の繋がりが深く、暖かい町だと思う。

( ^ω^)「ここはいい町だお」

(*゚ー゚)「そう言って貰えると、町長としては嬉しい限りね」

( ^ω^)「お、シィさん」

(*゚ー゚)つU~「はい、これ。陽が落ちると急に冷えるから、そろそろ家の中に入った方がいいわよ?」

( ^ω^)つU~「ありがとうございますお」

僕はシィさんから暖かいコーヒーが入ったカップを受け取り、礼を述べる。
シィさんもだいぶ飲んでたはずだが、全く平気そうな顔をしていた。

(*゚ー゚)「色々とごめんね」

( ^ω^)「お?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:21:00 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「お祭り騒ぎに付き合わせちゃって、ごめんなさいって話」

( ^ω^)「ああ、いや、別にまあ、こっちも楽しかったといえば楽しかったですお」

追いかけっこだけならともかく、その後散々ただで飲み食い出来たのだし、うちのパーティーの皆は不満もないだろう。
結構ひどい目にあったオトジャさんですら、かなり楽しんでいた様に見えた。

(*゚ー゚)「それなら良かったけど。ホント言うと、今回のこれはあなた達を出汁にしたようなものだったの」

( ^ω^)「お、それはどういう事ですかお?」

シィさんの話によると、元々近々祭りが行われる予定だったらしい。
しかし、この異常気象の影響で、計画していた祭りのメインイベントの変更を余儀なくされていたようだ。

代わりに何をやるか決めかねていた時にちょうど僕らが来たので、
これ幸いと祭りを今日開催する事に決めたという。

( ^ω^)「だからあの遠視の魔法とかハリボテとか、準備が良かったんですおね」

(*゚ー゚)「そういう事。付き合わせちゃって申し訳なかったわね」

( ^ω^)「かまいませんお。そもそも僕は楽してましたし」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:24:11 ID:UrlmOsCg0<>
僕がそう言って笑うと、シィさんもそれもそうかと快活に笑う。
町長業務を離れているからか、それとも酔っ払っているからか、シィさんは随分と砕けた口調で話してくれる。

( ^ω^)「しかし、予め準備はしていたとしても、急遽日程を繰り上げたのによくこれだけ集まりましたおね」

(*゚ー゚)「娯楽が少ない町だからね」

( ^ω^)「それもあるのかもしれませんけど、町の人の一体感が他の町よりだいぶ高いと思いますお」

(*゚ー゚)「そうかもね。まあ、この町も色々あったから……」

少し言葉を濁したシィさんだが、オトジャさんの解説や予備知識で何の事かはわかっている。
住民が一丸となって町を復興させてきた結果なのだろう。

( ^ω^)「シィさんも、竜との戦争は実際見たんですおね」

(*゚ー゚)「そうね。見たと言っても年が年だし、ほとんど覚えてないけどね」

(*゚ー゚)「おばあちゃん……前町長からは色々と聞いたから、町の歴史的な事なら大体知ってるわ」

何か聞きたい事があるのかと問い掛けてくるシィさんに、僕はすぐには答えられなかった。
あるにはあるのだが、それを聞いてもいいのか僕は迷っていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:25:54 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「ブーン君も魔法使いだから、やっぱり大賢者や竜の話が聞きたいのかな?」

( ^ω^)「そういう話を聞きに来る人は多いのですかお?」

(*゚ー゚)「たまにいるわ。魔法使いが聞きに来た場合は、ほとんどその質問もしていくけどね」

大賢者が使った魔法や竜の生態について聞きたいのだろうが、流石にそんな詳細はわからないんで、
期待には応えられないんだけどとシィさんは苦笑する。

確かに同じく魔法使いである僕も、大賢者や竜の事は聞きたいが、質問の内容は大きく異なる。

( ^ω^)「やっぱりこの町では、大賢者バーン=ホライゾンは多くの人に恨まれてるんですかおね?」

結局僕は聞くか迷っていた質問を口にした。
この町は竜との戦争時に戦場になった場所だ。
町を壊したのは竜だけでなく、それと戦ったじいちゃんもだと聞いている。

守る為の戦いであったと僕は信じているが、巻き込まれた人達がどう思っているのかはわからない。

(*゚ー゚)「そうねえ、昔は少しはいたかもしれないけど、多分今はもう、ほとんどいないんじゃないかな?」

( ^ω^)「そうなんですかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:27:46 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「元々、大賢者様が悪いわけじゃないしね。恨んでたとしても、八つ当たりに近いものだったはずよ」

シィさんの言葉に、僕はほっと胸を撫で下ろす。
何となく、胸の痞えが取れた気がした。

(*゚ー゚)「本当だったら一番恨んでいたかもしれない人が、大賢者様に弟子入りしたしね」

(*゚ー゚)「それなのに、他の人がいつまでも引き摺ってたらおかしいって空気にもなったみたいね」

(;^ω^)「え? それってどういう事ですかお?」

予期せぬシィさんの言葉に、僕は思わず持っていたカップを取り落としそうになってしまう。
僕は何とかカップを掴み直し、シィさんに詳細を聞いた。

(;^ω^)「その、一番恨んでいたかもしれない人って、誰の事ですかお?」

(*゚ー゚)「ブーン君はヴィップの魔法道具屋さんだったよね?」

(*゚ー゚)「だったら知ってるんじゃないかな、今はあの辺に住んでいるって聞いてるし」

(;^ω^)「東の賢者……ドクオさんですかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:30:29 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「そう、ドクオさん。彼はこの町の出身なのよ」

(;^ω^)「そうだったんですかお?」

ドクオさんがイチサンの出身という話は聞いた事がなかった。
そもそも、ドクオさん自身の昔の話はほとんど聞いた事がない。
聞いても教えてくれなかったのだ。

(;^ω^)「その、恨んでてもおかしくない話って、何があったんですかお?」

(*゚ -゚)「本当はあんまり話していい話じゃないだろうから、人に話す事は稀なんだけど……」

僕は自分の出自は隠しながらも、ドクオさんに魔法の師事を仰いだ事や、色々とお世話になっている事を説明し、
何とかシィさんに話して貰えないか頼み込んだ。

シィさんも何となくそこにあるただならぬ僕の思いを感じ取ってくれたのか、僕の頼みを了承してくれた。

(*゚ー゚)「本来、竜との戦場はもう少し離れた場所で、この町に戦火が及ぶ事はほとんどなかったの」

(*゚ー゚)「当時戦時下ではあったけども、この町では平素と変わらぬ平和な日々が送られていたと聞くわ」

戦況は一進一退の様相を呈し、長引くと思われていたけど、大賢者と天空竜の活躍で人側が優勢になりかけた時に、
その事件は起きたらしい。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:32:49 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「当時の竜側に、古代竜とは別に強力な竜がいたらしいの」

名はファブニル。
その狡猾な性格から邪竜と恐れられ、古代竜に力は劣るがそれを補って余りある能力を備えていたという。

(*゚ー゚)「ファブニルは姿と魔力を完全に消す事が出来たらしいわ」

ファブニルはその能力を使い、神出鬼没に現れては兵を襲っていたらしい。
その存在に人側は苦戦を強いられたが、一計を案じ、大賢者の力で深手を負わせる事が出来た。

(*゚ -゚)「深手を負ったファブニルは、姿を消しつつこの町まで逃げて来たの」

そしてファブニルは、この町の何軒かの家を囲む様に降り、自身の子飼いの竜を呼び寄せ警護に当たらせて、
そこで傷を癒し始めたという。

当然、町の人間は逃げ惑い、中には追い払おうと戦いを挑むものもいたが、徒に生命を失うだけであった。
如何に手負いとはいえ、普通の人間が竜に敵うわけがない。
戦える者は兵として出払っており、なす術がなかった。

(*゚ -゚)「そこで当時の町長だったおばあちゃんは、町の放棄を決意」

(*゚ -゚)「住民を引き連れ、国軍兵士の駐屯地を目指す事にしたらしいの」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:36:41 ID:UrlmOsCg0<>
全員で逃げ出したかったが、逃げる事も出来ずに取り残された人もいたらしい。
ファブニルが取り囲んだ家の中にいた住民だ。

(*゚ -゚)「それでも少数の為に全てを犠牲にするわけにはいかないから、脱出を決意したらしいわ」

逃げる途中、いち早くファブニルを追って来た大賢者と遭遇した町長は、状況を説明したらしい。
それならばと、取り残された住民を助けに行こうとした大賢者を町長は呼び止めたという。

(*゚ -゚)「貴方が行けば、恐らくファブニルは残った住民を皆殺しにし、姿を消して逃げるでしょうと」

だからと言って遠距離から強力な魔法で攻撃すれば、ファブニルは倒せても取り残された住民も一緒に殺してしまう。
それがわかっていて狡猾なファブニルはあの位置を選んだのだと。

姿を消し、飛び回っていれば滅多な事ではやられないファブニルだが、手傷を追った今、
治療に専念出来る場所が欲しい。
だがその際足を止めれば、遠距離からの強力な魔法でやられる恐れもある。

(*゚ -゚)「ファブニルは竜側にも疎まれていたらしいから、ファブニルとしても苦しい選択だったのでしょうね」

ファブニルはシベリアに逃げ帰る事も出来なかったのだろうと。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:39:00 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ -゚)「大賢者様はそれでも住民を見捨てるわけにはいかないだろうと、何とか手を尽くそうとしたらしいわ」

しかし、悠長に構えていてはファブニルが回復してしまう。
取り残された住民の生命も、いつまで安全かはわからない。

(*゚ -゚)「そんな中、町長は、町の住民は1つの決断を下したの」

(*゚ -゚)「それは町から逃げる事を決めた時に、既に決まっていたかもしれない答えだったわ」

小を捨て、大を生かす。
ここでファブニルを逃せば、また多くの兵や町の住民に被害が出、戦争を長引かせる可能性が高い。
それならばここでと、大賢者に魔法による遠距離攻撃でファブニルを倒す事を提案したらしい。

(*゚ -゚)「大賢者様はそれを受け入れ、ファブニルを倒したわ」

(*゚ -゚)「町の一部と、何十人かの住民を犠牲にして」

それから、ファブニルを失った竜側の戦力は下がり、最終的に炎竜が倒された事で戦争は終結したという。
しかし、終結間際は一時的に戦線が拡大し、イチサンも何度となく戦火に晒される事になった。

(*゚ー゚)「それでも人々は往き続け、町はここまで復興された」

そう言ってシィさんは右手を左から右にゆっくりと動かし、眼前に広がる町を指し示す。
陽はすっかり落ち、町には夜の帳が下りていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:40:25 ID:UrlmOsCg0<>
(*゚ー゚)「私の話はこんなとこよ」

( ^ω^)「そんなことがあったんですかお……」

僕は話してくれたシィさんに礼を述べ、今の話を反芻するように頭の中で考える。
確かにそれなら、じいちゃんの事を恨んでいた人はいたかもしれない。
じいちゃんに絶対的な否はなくとも、直接的に手を下したのならそう思われても仕方がない部分もある。

(;^ω^)「って、ドクオさんの話はどうなったんですかお?」

じいちゃんの話ですっかり忘れていたが、本来はドクオさんの話であったはずだ。
今の話の中にはドクオさんは出て来なかった。

(*゚ー゚)「ああ、そういえばそうだったね。でも、何となくわかってるんじゃない?」

( ^ω^)「それは……」

(*゚ -゚)「ドクオさんはね、あの時取り残された人の中で唯一生き残った人なの」

( ^ω^)「お……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:42:33 ID:UrlmOsCg0<>
そろそろ部屋に戻ると言うシィさんを見送り、僕は1人立ち尽くしていた。
ドクオさんとじいちゃんに、そんな因縁があったとは全く知らなかった。

( ^ω^)「因縁なんて言葉で済ませられるものじゃないおね……」

その時取り残された人達の中には、ドクオさんの両親もいたという話だ。
それはつまり……

( ^ω^)「じいちゃんがドクオさんの両親を殺したのかお……」

口に出してみると、それはひどく重い響きを持っていた。
言うなればじいちゃんは、ドクオさんにとって両親の仇だ。

( ^ω^)「でも、そんな素振りは一切なかったおね……」

僕の記憶を思い返してみても、決して会話が多い間柄ではなかったが、
じいちゃんとドクオさんの間には険悪な雰囲気は一切なかった。

とはいえ所詮は子供の目だ。
僕の気付かぬ所で、本当は何かあった可能性もある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:46:55 ID:UrlmOsCg0<>
( ^ω^)「ドクオさんは、本当にじいちゃんの事を恨んでなかったのかお?」

そんな簡単に忘れられるような事だろうか。
そういった疑問も浮かぶが、両親の顔を最初から知らない僕には答えられない。

( ^ω^)「もし、ドクオさんがまだ……」

一瞬、僕の中にどす黒い、最悪の想像が浮かんでしまった。
僕は慌てて頭を振り、それを振り払う。

( ^ω^)「そんな事ないお。ドクオさんはきっと、そんな人じゃないお」

僕はドクオさんの事を信頼している。
ツンにも言ったが、一番信じているのだ。

でも、ドクオさんが僕の事をどう思っているのかはわからない。

じいちゃんが亡くなって、少し距離が空いた様になってしまったドクオさん。
師匠と呼ばせて貰えなくなった事も、僕の中では不安を掻き立てる材料となっている。

( ^ω^)「……止めるお、そんな事考えるなお」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 21:48:28 ID:yQUYz5KM0<>フラグ立てやがったなこいつ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:50:52 ID:UrlmOsCg0<>
僕は自分に言い聞かせる様に口に出し、気持ちを落ち着かせる。
過去にそういう事実があったとしても、ドクオさんは思慮深く、やさしい人だ。
だからこそ、じいちゃんに弟子入りし、再びそんな戦いが起こらぬよう力を付けたのだろう。

( ^ω^)「僕はドクオさんを信じてるお」

再び口に出し、自分の中の揺れを抑える。
どちらにしても、今考えても仕方のないことだ。

( ^ω^)「ヴィップに帰ったら、ドクオさんに今日の話をすればいいんだお」

( ^ω^)「そうすれば、きっとちゃんと話してくれて、心配し過ぎだって笑い飛ばしてくれるお」

僕は大袈裟な身振りでくるりと向きを変え、町長宅へ向かう。
今は目の前のクエストに集中する。

僕はそう結論付け、今日はもう眠ってしまおうと心に決めた。



     第三十八話 白銀の黒を追え 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:54:17 ID:UrlmOsCg0<>
三十八話は以上です

前半後半の落差がひどい回
次回は未定で
書き溜めはぼちぼち
またちょっと忙しくなって来ましたが、何とかなるでしょう

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 21:54:53 ID:ZbfOjU/w0<>乙。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 21:57:03 ID:/mXtsYh2O<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 22:01:46 ID:Ue1hXVXc0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 22:12:59 ID:Os1AR7o60<>お (*゚∀゚)かれちゃん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 22:13:49 ID:Lt5n6nDU0<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 22:15:13 ID:Dc1q2JZE0<>乙
ドクオとブーンの間に不穏なフラグが見える……<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/08(日) 23:18:30 ID:On9y4a7k0<>乙
ちょっとキツい話だなぁ

( ^ω^)「残念な顔ですお」
(;'A`)「お前たまに容赦ねぇよな」

はもう見れないのかなぁ・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/08(日) 23:32:17 ID:0o8sKarI0<>おつ
今後の展開に大きく絡みそうな回だった<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/09(月) 00:18:55 ID:lmjvcsXE0<>唯一わんおが警戒したり灰衣のいたキマスタにいたり
ちょっと臭ってたけど、魔力を消せる龍がでてきたり一気に腐臭レベルまできたな…
なんか逆にドクオさんは安心<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/09(月) 00:22:16 ID:YD1l2KvY0<>ブーンさん地味にラノベのやれやれ系主人公並に対女耐性持ってるよな・・・
ツンにクーにデレにしぃ、まったくうらやましいぜ!
いつかドクオさんにボッコボコにされればいい<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/09(月) 01:13:08 ID:CYDkqcb60<>何故しぃの名前をあげてヒートとトソンを忘れるのか<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/09(月) 02:29:15 ID:YD1l2KvY0<>ヒートは分類で言えばわんおと一緒みたいなもんだろ?
トソンは男のこだし

え?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/09(月) 08:24:01 ID:zy34NqZ6O<>女耐性があるんじゃなくてこのメンツに女を感じないのではなかろうか…
仲間と言う意識が強いのもあるだろうし、何より灰汁が強いというか癖がありすぎるというか

じーちゃんが嘯竅ヘでなくドクオさんを選んだ理由が気になる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/09(月) 19:23:27 ID:JiYZToM6O<>ヒロインはわんおちゃんだろ?<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/09(月) 19:32:21 ID:AwJFeZmE0<>わんおって♀だったんだ・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/09(月) 19:36:08 ID:GLkA1OPw0<>(∪^ω^)まんま○お


コラッ!<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/09(月) 21:44:13 ID:j9diQpLcO<>おもしれー
次回もwktkが止まらんぜ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/09(月) 22:45:13 ID:M3L7mzMM0<>ドクオのかおが不細工なのはそのときの後遺症かもな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/10(火) 00:26:46 ID:948vFk7U0<>>>822
それだと俺にも壮大な過去があるみたいじゃないか<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/10(火) 02:30:43 ID:lMUIO2r2O<>('A`)「床にかかと落としをすれば飯が出てくる生活を壊した荒巻は許せない」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/10(火) 03:45:47 ID:CHhn5XJEO<>荒巻とばっちり<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/10(火) 18:50:03 ID:zW02urp.0<>
( ^ω^)「最後はこの人、わんわんお選手ですお!」

【(∪^ω^)】「わんわんお!」





人…?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/11(水) 13:36:10 ID:Ov4g8tgQ0<>>>826

(´・ω・`)「どこもおかしくないじゃないか」

( ゚д゚)「うむ、間違っておらんな」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/11(水) 17:16:04 ID:oScj.EvsO<>>>826
犬が屋根の上走り回ったりでんぐり返ししたりするわけないだろ!<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/14(土) 20:28:55 ID:5nvsTXNsO<>週末になると期待する<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/14(土) 20:59:54 ID:d.r3YICgO<>早いなぁもうすぐ40話だもんなぁ<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/07/16(月) 02:07:21 ID:Ybpt1kK60<>次話はもう書き上がってますが、いつ投下するかは未定です

ちょっと3DSの方で魔法道具屋が忙しいので……
ttp://upup.bz/j/my60381LtkYtPHtJfwHpE1Y.png



多分週末には投下しますお(^ω^)<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/16(月) 08:40:14 ID:PyJbPRysO<>>>831
世界樹Wかwwww
同士よ……<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/16(月) 10:54:58 ID:COj5AmzI0<>>>831
そのコード貰うよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/16(月) 14:09:03 ID:fGS12nok0<>わんわんお、こんな凶悪そうな外見をしていたのか……<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/16(月) 21:56:37 ID:D86svGSg0<>まぁ龍だし<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/16(月) 22:11:57 ID:IyjLacsg0<>  理想
       ヘゝ__\_Y \\,.-、
       彡\、/ニ二ニゝレヘ\__
       巛巛ヽ彡三三く\メXy,=ミ:、
       巛巛ヾヽミ三三ゝゝゝ ゞ-'゙ヽ 
       ニ‐ニ彡ヾ三三く>/⌒ヾミゝゝゝ`ー--、
        -_,.彡ヘヘ三=ヾf;:,,   \ ,-=〒'__ヾ}
       _ -'´~77∧ゝミ-_ゝ ...._〃'^^<klXN
          /Xレ公ゞー三=三彡ヘー--、_ソ
         /ヘ//へへヘヘィ'了`7ー-<
        /ヘ//ヘヘヘ/'"レ_ノ_ノ  ノ ゙ヾ:、
        /ソ//ヘヘヘ//レ´  ̄`ー、-''´ _,.ノヾ':,
        //ヘヘヘ/|/      ヾ''´ __,,.ノヘ
       ヘヘヘヘヘ/Y        `}´   ||

  \____________________/

  現実             ○
                 ο
                 o
.            ,, --──-- 、._
        ,.-''"´           \
      /|               | ヽ、
     /.  |   /\     /\  ヽ  ヽ
      l  | , , ,                 ヽ  l
     .|  |      (_人__丿  """    ヽ_|
      l__/                    l
     ` 、  /⌒⌒i   /⌒ヽ        /
       `/    |   |    \    /<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/16(月) 22:13:45 ID:iSqCAym60<>カワイイ、けどホントに竜だもんなぁ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:12:51 ID:7gnB2v7k0<>
 〜 イチサンの町北東の海域 マリン・サースガ号内 〜


( ^ω^)「もうすぐ目標の海域ですおね」

ξ゚听)ξ「何の変哲もない、穏やかな海よね」

川 ゚ -゚)「雪が止んだのは幸いだったな」

( ´_ゝ`)「で、これからどうするつもりだ?」

+(´<_` )「勿論、幽霊船を探すに決まってる」

( ´_ゝ`)「うん、俺としてはどうやって探すのかを聞きたいんだけどな……」



     第三十九話 蒙霧に浮かぶ幽霊船


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/19(木) 23:13:25 ID:koY.79hU0<>キタワァ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:14:04 ID:7gnB2v7k0<>
( ^ω^)「探すと言っても、わかってるのは幽霊船が出る時に霧が出る事ぐらいなんですおね」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

ξ゚听)ξ「その霧を探すってもの難しいと言うか、よくわからないわね」

彼女の名はツン。
サンライズの隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。

(∪^ω^)「わんわんおー」

この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。

僕達は魔王の頭骨を探すクエスト受け、イチサンの町へ向かい、
そこで聞いた幽霊船の情報が魔王の頭骨に関係あるのではないかと推測し、海に出ていた。

(´<_` )「ひとまずこの辺りに船を止めて、しばらく待つしかないんじゃないかな?」

川 ゚ -゚)「情報によると、単に通っただけだったり、漁の最中であったりと出現状況は一定じゃないようだしな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:16:01 ID:7gnB2v7k0<>
(゚、゚トソン「では、しばし待機という事ですね」

川 ゚ -゚)「休憩だ休憩。私は部屋で寝てるから、何かあったら起こしてくれ」

そう言うとクーは船内に入っていった。
トソン君はこのまま甲板で待機しているつもりらしい。

ノパ听)「よし、わんお! 競争するぞ!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

ξ;゚听)ξ「甲板を走るのは止めなさい! あんたら絶対落ちるから」

走り出すヒートとわんわんおを追い、自分も走り出すツン。
3人まとめて海へ転落という事態は避けて欲しいものだ。

( ´_ゝ`)「じゃあ、俺も中で武器の仕上げ作業にかかるかな。何かあったら呼んでくれよ」

+d(´<_` )「ああ、こちらは僕に任せて存分に作業に専念してくれ」

( ^ω^)「じゃあ僕はと……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:17:46 ID:7gnB2v7k0<>
僕はアニジャさんに続いて船内に戻る。
と言っても、道具を取りに行くだけだ。

||ヽ( ^ω^)ゝ「よし、準備万端だお!」

(´<_` )「おや、それは釣竿じゃないか。いつの間にそんなもの用意してたんだい?」

( ^ω^)「祭りの時仲良くなった漁師さんに格安で譲ってもらったんですお」

( ^ω^)「前々から1度海釣りに挑戦してみたかったんですおね」

ξ゚听)ξ「海釣りって難しいって聞くわよ? 湖であれなのに、大丈夫?」

( ^ω^)「何事もやってみなくちゃわからんお。それに、海釣りの方が僕にあってる可能性もあるかもしれないお」

(´<_` )「ハハ、まあ、どうせ待つ間は暇なんだし、存分にやってみるといいんじゃないか?」

( ^ω^)「勿論、警戒は怠らないようにしながら釣りますお」

今回のクエストも千年紀の王絡みだ。
いつ誰に襲われるかはわからない。
現在は海上なので見晴らしは良いが、また西の賢者が襲って来る可能性もあるので油断は禁物だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:19:26 ID:7gnB2v7k0<>
ξ゚听)ξ「来るのかしらね、あいつら?」

( ^ω^)「どうだろうかおね。僕らもここに魔王の頭骨があるって確信があって幽霊船を探してるわけでもないし」

(゚、゚トソン「来る可能性は低いと見るべきですかね」

( ^ω^)「まあ、だとしてもいつ襲撃されてもいいように迎撃の準備はしておくお」

西の賢者が前回みたいな強力な魔法を撃って来るならお手上げだが、その時はいっそ接近戦を仕掛けるべきか。
西の賢者は倒せなくともその船を壊すのは可能だろうから、前よりは勝機はある。

( ^ω^)「多分来ないとは思うけど」

そう言いながら僕は釣竿を上段に構える。
デレは僕に任せると言ったのだ。
僕はその言葉を信じたいと思う。

(´<_` )「だといいね。それはともかくブーン君、お昼ご飯用に何か釣ってくれるのを期待してるよ」

( ^ω^)「任せて下さいお! そんじゃ……っと、ツン、わんおを捕まえておいてくれお」

ξ゚听)ξ「はいはい、流石に海に飛び込まれるのは勘弁して欲しいからね」
つ∪^ω^)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:21:05 ID:7gnB2v7k0<>
ξ;゚听)ξ「あんたも、泳いで魚捕まえてこようとか考えるんじゃないわよ?」

∩ノパ听)∩「ん? 何でだ? 駄目なのか?」

ツンは今にも海に飛び込まんとしていたヒートを取り抑える。
雪は止んだとはいえ、まだまだ海は冷たいはずだ。
深さも相当なものだし、潜って魚を取るのは流石に無理がある。

||⊂( ^ω^)「それじゃ……」

(゚、゚トソン「……」

||⊂( ^ω^)「……トソン君も釣りたいのかお?」

(゚、゚*トソン「あ、いえ、その……」

否定はするが、その目は明らかに釣りたいと訴えて来ている。
しかし、自分でもまた釣竿を投げる危険性があるのを危惧しているらしい。

(゚、゚;トソン「また誰かの服に引っ掛けてしまう可能性もありますしね」

(;^ω^)「うん、今回は見送って貰おうかお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:22:41 ID:7gnB2v7k0<>
僕は改めて釣竿を構え、勢いよく海に投げ入れる。
格好だけは様になっているというツンの褒め言葉なんだか嫌味なんだかわからない言葉を聞き流し、
釣りに集中する事にした。

( ^ω^)//「……」

ξ゚听)ξ「この海域はモンスターはいないんですかね?」

(´<_` )「そこまで陸から離れてるわけでもないから、本来ならそんなにはいないはずだけど」

(´<_` )「竜の大陸に近い所為か、たまに見かけるという話はイチサンで聞いたよ」

( ^ω^)//「……」

ξ゚听)ξ「シーサーペントみたいなヤバいやつですか?」

(´<_` )「ピンキリらしいけど、すごくヤバいのもいるらしいね」

( ^ω^)//「……」

(´<_` )「古代の伝承にある様な、伝説クラスのモンスターの名前もあった」

ξ゚听)ξ「それは相当なものですね。例えばどんなのです?」

( ^ω^)//「……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:24:37 ID:7gnB2v7k0<>
(´<_` )「そうだね、聞いた中で一番恐ろしいのはクラーケンかな」

ξ゚听)ξ「それって、どんなモンスターなんですか?」

( ^ω^)//「……」

(´<_` )「巨大なイカの様なタコの様な姿と伝わっているけど、詳細は不明だね」

(´<_` )「大体において、巨大な足ぐらいしか目にする事はないらしいし」

(´<_` )「足1本でこの船ぐらい軽く沈められるほどの大きさだとか」

ξ;゚听)ξ「それはちょっと洒落になってませんね」

( ^ω^)//「……」

(´<_`;)「ま、あくまで伝承の類だけど、そんなのがホントに出て来たら逃げる以外に手はないだろうね」

ξ;゚听)ξ「ですよね。陸で戦っても勝てるかわからない大きさなのに、船上じゃまず勝てませんよね」

( ^ω^)//「……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:26:33 ID:7gnB2v7k0<>
(´<_` )「見てみたいという気持ちは大きいけど、出会わないのを祈るべきかな」

ξ゚听)ξ「シーサーペントみたいに出現の兆候とかないんですか? それがわかれば逃げられるような」

(´<_` )「いくつかはあったね。大渦が巻くとか、高波が起こるとか」

(´<_` )「確認してからじゃ逃げるの間に合わないくらいの」

ξ;゚听)ξ「それ、兆候じゃなくて、ばっちり遭遇しちゃってますよね」

( ^ω^)//「……」

(´<_` )「面白い所では、釣り糸にかかったなんて話もあるね」

(´<_` )「やけに重い魚だと思ったら、クラーケンの足だったとか」

ξ;゚听)ξ「それは流石に嘘じゃないですか?」

( ^ω^)//「……」
  チラッ
(´<_` )「まあ、嘘だとは思うけど……」
  チラッ
ξ゚听)ξ「ホントにかかったら洒落になりませんね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:28:55 ID:7gnB2v7k0<>
||( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「あら? 釣り止めちゃうの?」

(;^ω^)「間近でそんな話されて続けられるほど図太い神経してないお」

僕は釣り糸を巻き上げ、釣竿を足元に置く。
尾ひれが付いた噂話だと思いたいが、万が一の可能性を考えると怖いものがある。

ξ゚听)ξ「ここで止めちゃったらまた釣果0じゃないの」

(;^ω^)「またって言うなお」

それなら自分にちょっとやらせてくれと言うツンに釣竿を渡す。
僕がやった限りでは全然引きがなかったし、ここは場所が悪いから釣れないのではないかと思う。

(´<_` )「余計な事を言った様で悪かったね」

( ^ω^)「いえ、どうせ全然引きがなかったし、頃合でしたお」

ξ゚听)ξ//「……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:30:43 ID:7gnB2v7k0<>
( ^ω^)「しかし、オトジャさん、今回はどうして手伝ってくれるんですかお?」

( ^ω^)「手伝ってくれるのは勿論ありがたいんですけど、当初は送って貰うだけの予定でしたお?」

(´<_` )「そうだね、単純に面白そうだったからというのが一番の理由かな」

ξ゚听)ξ//" ググッ…

( ^ω^)「面白そうですかお」

(´<_` )「友達を助けたいってのもあるけど、興味を惹かれているっていうのが本音だね」

ξ゚听)ξつ(゚|< )<| ピチピチ

( ^ω^)「でも、結構危険ですお? さっきの話じゃないですけど、伝説クラスのモンスターの話とか」

(´<_` )「確かにね。でも、そういったものを見てみたいという気持ちもあるんだよね」

ξ゚听)ξ//" ググッ…<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:33:19 ID:7gnB2v7k0<>
(´<_` )「僕はトレジャーハンターだけど、歴史家でもあると思ってるからね」

(´<_` )「モンスターの生息域から見る歴史も、調査対象の1つなんだよ」

( ^ω^)「なるほど」

ξ゚听)ξつ<゚ |フ:::: ><| ピチピチ

(´<_` )「北は特にね、竜の大陸に近い所為で、色々と変わったモンスターが集まってるとも聞くしね」

( ^ω^)「竜の魔力に惹かれてって事なんですかおね?」

ξ゚听)ξつ(゚|< )<| ピチピチ

(´<_` )「そう見るのが一般的だけど、実際の所は不明だね」

(´<_` )「それだと説明がつかないものもあるからね」

( ^ω^)「ええ、それだとシベリアに上陸せずにこの辺りにいるのはおかしいですおね」

ξ゚听)ξつΣ゚二二二二二二二二> ピチピチ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:34:52 ID:ZWrLtvnYO<>ツンwww<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:34:56 ID:7gnB2v7k0<>
( うω;)「……そろそろ泣いていいですかおね?」

ξ゚听)ξ「え?」(゚|< )<| (゚|< )<| (゚|< )<| (゚|< )<| (゚|< )<| ピチピチ

(´<_`;)「う、うん、その、たまたまだと思うよ、たまたま。何と言うか……、ドンマイ」

僕がオトジャさんと話し込んでいる間に、ツンは次々と魚を釣っていく。
これが涙せずにいられようか。

ξ゚听)ξ「いつもの事じゃないの、気にしなさんな」

( うω;)「うるせえお! いつか絶対釣り勝負でツンに勝ってやるお!」

時間も良い頃合だったので、ツンが釣った魚を調理して昼食にする。
釣りたての魚はとても美味しかった。

( ;ω;)「刺身うめえー! フライうめえー! ご飯うめえー!」

川;゚ -゚)「何でこいつ、泣きながら魚食ってんの?」

(゚、゚;トソン「そっとしておいてあげましょう」

ノハ*゚听)「うめえなー!」

(∪*^ω^)「わんわんお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:36:47 ID:7gnB2v7k0<>
その日は結局霧は出ず、僕らは海の上で一夜を過ごした。
その翌日も何も起こらなかったが、海に出て3日目にそれは突然現れた。

ノパ听)σ「おーい、何かあっちの方に妙なものがあるぞー?」

(∪^ω^)「わんわんおー」

( ^ω^)「あれは……オトジャさん?」

(´<_` )「うん、今遠眼鏡で見たけど、どうも当たりっぽいね」

当たり、つまりは霧が発生しているという事だろう。
僕達は霧の方へ向かって船を走らせる。

(゚、゚トソン「このまま突っ込むつもりですか?」

川 ゚ -゚)「それしかないだろ? 虎穴に入らずんばというやつさ」

無論、警戒はするがクーの言う通りここまで来て足を止めるつもりはない。
僕達は船を霧の中に進ませる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:39:10 ID:7gnB2v7k0<>
ξ゚听)ξ「視界が悪いわね」

(´<_` )「船の速度を落とすよ。衝突が怖いからね」

ノパ听)「これ、ブーンの魔法でどばーっと吹っ飛ばせないのか?」

( ^ω^)「多少は飛ばせるだろうけど、これだけ霧が濃いと焼け石に水だお」

船はゆっくりと前進していく。
視界が悪いのを差し引いても、自分達以外に生物がいないのではと錯覚するほどの静けさだ。
船が立てる波の音以外は何も聞こえない。

( ´_ゝ`)「何か不気味だな……」

(゚、゚トソン「そうですね、不気味ですね」

(;´_ゝ`)「何でこっちをまっすぐ見詰めて言ったの?」

川 ゚ -゚)「なんだか不自然なぐらい静かだな。出そうな感じといった所か」

(∪^ω^)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:41:09 ID:7gnB2v7k0<>
( ^ω^)「わんおも妙におとなしいおね。何か一点をずっと見詰めてるお」

ξ;゚听)ξ「それ、そこに何かいるんじゃないの?」

川;゚ -゚)「怖い事言うなよ」

(∪^ω^)

(´<_` )「ふむ、ここはわんお君の野生の勘に頼ってみようか」

そう言うとオトジャさんは、船の進路ををわんわんおが向いていた方に変える。
それに伴い、わんわんおの視線が徐々に正面を向く。

(゚、゚トソン「わんお君、何か見えてるっぽいですね」

( ´_ゝ`)「野性味全く感じないのに、流石は動物ってとこか」

( ^ω^)「何が見えるんだお、わんお?」

(∪^ω^)"

黙って見てろと言わんばかりに、わんわんおは軽く頭を振り、前方を示す。
僕達は警戒をしつつ前方に注視した。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:42:40 ID:7gnB2v7k0<>
程なくして前方に黒い影が浮かぶ。
はっきりとしない形ではあるが、大きさはかなりのものだ。

(;´_ゝ`)「これ、モンスターって事はないよな?」

( ^ω^)「まあ、危険なモンスターならもう攻撃されててもおかしくない距離ですお」

(´<_` )「正面は避けるか。側面に回ろう」

一際濃い霧の中を進み、影の方へ近付く。

ξ゚听)ξ「船が見えるわ!」

ノパ听)「おんぼろのでっかい船だ!」

( ^ω^)「どうやらこれっぽいですおね」

(´<_` )「ああ、これが幽霊船のようだね」

話に聞いていた通り、未だに運用されているとは到底思えない朽ちた木製の船が僕達の眼前にその姿を現した。
人の気配は一切感じず、僅かな波音だけが耳に届く。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:45:03 ID:7gnB2v7k0<>
川 ゚ -゚)「想像より大きいな」

(´<_` )「いつの時代の船かわからないけど、かなり大きな船だね」

( ^ω^)「じゃあ、取り敢えず乗り込みますかお」

船を幽霊船の船首近くに並走させ、オトジャさんがワイヤーを飛ばす。
協議の結果、船には操船出来るアニジャさんと護衛としてヒートが残る事になった。

ノハ;゚听)「何で私が留守番なんだ?」

ξ゚听)ξ「脆そうな船だし、あんたに下手に暴れられて壊されるのは嫌なのよ」

納得がいかないとごねるヒートをツンが物理的に黙らせ、僕達はワイヤーを登る。
先のツンの理屈で言えば、トソン君も少々危険があるのだが、一応神聖魔法が使えるし、
この手の話に付き物の霊的な敵に対しては有効な対抗手段になり得る。

まあ、上手く発動させられればだが。

( ^ω^)つ□「これ、緊急時用の魔法の護符ですお

( ´_ゝ`)「うん? 2枚あるな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:47:19 ID:7gnB2v7k0<>
( ^ω^)「こっちが発光して、こっちは音が鳴りますお」

( ^ω^)「僕等らが幽霊船内にいた場合、光だと伝わらない可能性もありますので」

( ´_ゝ`)「なるほど」

( ^ω^)「その逆の可能性もあると思うので、使う時は両方使って下さいお」

( ´_ゝ`)「把握した」

僕は後の事をアニジャさんに頼み、ワイヤーに手をかける。
万が一を考えて、逃げ足に自信があり、飛び降りても魔法で何とかなる僕が先陣を切る事にした。

( ^ω^)「いっちばーん、だお!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

上船した僕は周囲の様子を観察する。
荒れ果ててはいるが、荒れているだけで特に不審な物はない。
何かに壊されたとかそういった雰囲気ではなく、長い年月を経たといった感じだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:49:06 ID:7gnB2v7k0<>
( ^ω^)「海の底に沈んでたって感じじゃないおね」

特に危険はなさそうなので、僕は皆に上がって来るように伝える。

ξ゚听)ξ「まずは甲板かしらね?」

川;゚ -゚)「そうだな。固まって行動した方が良さそうだし、順に見ていこう」

皆少し緊張した表情をしていたが、特にクーは若干青ざめた様な顔をしていた。
この手の幽霊話はあまり得意ではないのだろう。

モンスターや精霊といった存在がいるのはわかっていても、何となく得体の知れない感じや、
この雰囲気が不気味で不安を掻き立てられる気持ちはわからなくもない。

(゚、゚トソン「何となく嫌な空気ですが、殺気や敵意のような物は感じられませんね」

(´<_` )「うーん、でも町の人の話によると自分達の船に被害があったみたいだから」

(´<_` )「何かしらはあると思うんだけどね」

( ^ω^)「とにかく、色々と調べて見ましょうかお」

僕達はゆっくりと甲板を右回りで調べていく。
マストはボロボロで、帆は布らしき物の残骸がわずかに付着するのみだ。
かなり高いマストだが、上空は霧が濃くて先端までは見えない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:53:25 ID:7gnB2v7k0<>
ξ゚听)ξ「縄梯子があるわね。登る?」

川;゚ -゚)「確実に千切れそうだぞ?」

いくつか船内への入り口らしきドアもあったので、試しにドアを開けてみると鍵は掛かってないようだ。
ひとまずそれらは放っておく事にし、甲板を進む。

( ^ω^)「脱出艇みたいなのはないおね。この規模の船ならボートの1艘や2艘あってもおかしくないお」

ξ゚听)ξ「幽霊船だし、この船が1度沈んだのなら、もう使われちゃったんじゃないの?」

そのまま甲板を1周してみたが、これといって目に付くものはなかった。
目的の魔王の頭骨は元より、この船の正体がわかるものも見当たらない。

( ^ω^)「やっぱり船内に入るしかなさそうですおね」

(´<_` )「そうだね。ちょっとアニジャにそう伝えて来るよ」

オトジャさんは船の舳先に行き、ワイヤーで繋がれたままのサースガ号にいるアニジャさんへ話しかけている。
幽霊船がいつまで出現しているかもわからないし、脱出に時間が掛かりそうな船内に進むのは危険を伴うだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:53:29 ID:ByntjxZU0<>きてた<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:54:59 ID:7gnB2v7k0<>
ξ゚听)ξ「でも、ここまで来たら行くしかないでしょ?」

( ^ω^)「まあ、そうだおね」

川 ゚ -゚)「オトジャの推測を踏まえるなら、品は貨物室とかそんなとこにありそうだしな」

この船が魔王の頭骨を積んでいたのなら多分クーの言う通りだろう。
美術品か何かと考えられていたのならその可能性が高い。

ただ、僕らは実際の魔王の頭骨の大きさや形状を知らない。
場合によっては個人が所有していた可能性もある。

川 ゚ -゚)「そもそも、魔王のっていうぐらいだから巨大なのかもしれないんだよな?」

川 ゚ -゚)「その場合はどうやって持って帰るつもりだ?」

( ^ω^)「衣があの大きさだったし、それはないと踏んでるお」

なんにせよ、船内を探して魔王の頭骨そのものか、この船に積んでいたかどうかの記録を探す必要がある。
中の状態は未知数だが、ここで帰っては捜索が進まない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:57:17 ID:7gnB2v7k0<>
(゚、゚トソン「安全性を考えるなら、この船全体を浄化してみましょうか?」

( ^ω^)「出来るのかお?」

(゚、゚トソン「一応、僕が浄化の魔法を使えますし、範囲が広いですがスペシャルで増幅すればなんとか……」

川 ゚ -゚)「じゃあ、出来ないと同義じゃないか」

(゚、゚;トソン「何故に!?」

何故も何も、お前が最後まで躍り切れるわけがないと言うクーに、トソン君はこれでもかというほど落ち込む。
僕もクーに同意するが、もう少し言い方を考えてあげられなかったのか。

(゚、。トソン「ウフフ……僕ってまるで役立たずですよね……肝心なとこで姫様のお役に立てず……」

川;゚ -゚)「いや、そこまで落ち込まなくてもいいだろ。私は事実を……」

クーの言葉がよっぽど堪えたのか、虚ろな目で膝を抱えるトソン君。
クーの事を姫様と呼ぶのを久しぶりに聞いた気がする。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/19(木) 23:59:11 ID:7gnB2v7k0<>
結局、宥めすかした結果、僕らが船内を捜索している間にトソン君がここで浄化の魔法を使う事になった。
トソン君1人を甲板に残す事に対する心配はあるが、いざとなったら船に逃げればいいし大丈夫だろう。

(;^ω^)「それじゃあ、僕らは先に行くお」

(^、^*トソン「はい、僕もすぐ魔法を唱えて追い付きますのでご安心下さい!」

川 ゚ -゚)「きっと追い付けな──」
       ドスッ
ξ;^竸)ξ⊃「慌てなくていいから確実に頼むわね」Σ川;゚ -゚) イテッ
ビシッ!
ノ(^、^*トソン「はい、それでは後ほど!」
     ビシッ!
(∪^ω^)∩「わんわんお!」

やけに上機嫌になったトソン君を置いて、僕達は船首に一番近いドアから船内に入る。
出来れば捜索が終わるまでにトソン君の魔法が完成して欲しい所だが、期待はしていない。

川 ゚ -゚)「暗いな……」

||ヽ(´<_` )「それならサースガ式……」

      {○}
( ^ω^)つ}{「ライティング」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:00:58 ID:6HuDzCTE0<>
僕は呪文を唱え、杖に光を灯す。
それを見てオトジャさんが寂しそうに松明を仕舞っていたが、あれの光量を考えるとこちらの方がいいだろう。
今回はそれほど探索は長くならないだろうから、魔法も使いやすい。

僕達が侵入した所は通路に繋がっていた。
上に登る階段と下に降りる階段がある以外は、外に出る別のドアがあるぐらいだ。

ξ゚听)ξ「まずは操舵室かしらね?」

(´<_` )「そうだね。そこにいけば色々とわかることもあるだろう」

( ^ω^)「そうなると上かお」

(∪^ω^)「わんお」

僕達はオトジャさんとツンを先頭に階段を登る。
状況を考えるとトラップ等はないと思うが、何かしらモンスターの類はいる可能性はあるので、
警戒はしておかなければならない。

ξ゚听)ξ「あんたらならモンスターの気配は、ある程度魔力でわかるんじゃないの?」

( ^ω^)「この嫌な空気の所為でさっぱりポンだお」

恐らくのこの船自体が何らかの大きな魔力を帯びているのか、そこかしこにモンスターがいると錯覚してしまう。
この淀んだようなどこか嫌な空気はその所為かもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:02:58 ID:6HuDzCTE0<>
(´<_` )「位置的にここが操舵室だと思うんだけど」

階段を登った先も通路で、その少し先にドアがあった。
更に先から船の後部側に伸びた通路もあるが、構造を考えるとオトジャさんの言う様に操舵室はそちらではないと思う。

( ^ω^)「じゃあ、行きますかお」

僕は返事を待つ事無くドアを開ける。
通路より部屋の中の方が淀んだ空気が濃いような気がした。

川;゚ -゚)「おいおい、そんな躊躇なくいきなり開けるなよ」

( ^ω^)「一応、防御魔法は張ってから開けたお」

トラップの類はなくとも、ドアを開けた瞬間モンスターが襲って来る事も想定はしていた。
しかしながらそんな事もなく、静かなものだ。

ξ゚听)ξ「予想はしてたけど無人ね……」

(´<_` )「となると、この船は流されるままに動いてるって事になるのかな」

( ^ω^)「それだと別の海域に到達しそうですおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:05:17 ID:6HuDzCTE0<>
潮の流れが回っているのか、魔法ないし呪い的なもので転移させられているのかはわからないが、
目撃情報からするとこの船はこの辺りの海域にしか出現していない。

ξ゚听)ξ「何かこの船の事情がわかるものがないか探しましょうか」

( ^ω^)「そうするお」

それほど広い部屋ではないので捜索するのにさほど時間はかからなかった。
残念ながら目ぼしい物はほとんどなく、わかった事は少なかった。

(´<_` )「この朽ちかけた海図からすると、大陸は今の形のままなので何千年も昔の船って事はなさそうだね」

( ^ω^)「千年、前回の千年紀の王復活以降ならここに魔王の頭骨がある可能性はありますおね」

(´<_` )「そうだね。地名からすると……うん、ニューソク王国があるし、千年以内なのは間違いないね」

(∪^ω^)「わんわんお」

確か現ニューソク王国は建国して300年ほどだったはずだから、計算上はそうなる。
つまりはここに魔王の頭骨がある可能性はゼロではないという事だ。

川 ゚ -゚)「他には目ぼしい物はないようだな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:07:03 ID:6HuDzCTE0<>
ξ゚听)ξ「何枚かのメモっぽい紙はあるけど、読める状態じゃないわね」

( ^ω^)「海図ほど丈夫な紙に書かれてないし、外に近いからしけったりしたんだろうおね」

(´<_` )「もっと保存状態の良い記録を探したいとこだね」

( ^ω^)「どこかに航海日誌とかあるといいんですけど」

操舵室を出て、僕らは階段を降りる。
船体の中ほどにある船室なら、もう少し保存状態の良い何かがあるかもしれない。

( ^ω^)「割と通路が広いお」

ξ゚听)ξ「所々穴が開いてるけど、浸水してない所をみると、穴は深くないんでしょうね」

(∪^ω^( ^ω^)「でも、落ちても嫌なんで、わんおはフードに入ってるお」

川;゚ -゚)「何か出そうな雰囲気が増したな……」

クーが言う様に、少しだけ嫌な空気が増した気もするが、ずっとこんな感じなので大差はないと思う。
いつ何時、何が出て来てもおかしくはない感じではある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:09:22 ID:6HuDzCTE0<>
(´<_` )「遺跡なんかとは違って、侵入者を排除する仕掛けはないはずだから」

(´<_` )「こちらを排除しようとするモンスターはいないと思うけどね」

川 ゚ -゚)「だが、何かが住み着いたりしていたら別だろ?」

( ^ω^)「まあ、そういう事も……」

ξ゚听)ξ「……あったみたいね」

いつもは大雑把な感じなのに、今日はやけに心配性なクーの不安は残念ながら当たってしまったようだ。
通路の奥の暗がりから、何者かがガシャガシャと音を立てて近付いて来る。

         
           (●. .●)
            ヽ曲ソ


( ^ω^)「骸骨だおね……」

ξ゚听)ξ「ばっちり動いちゃってるけど、骸骨ね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:10:52 ID:6HuDzCTE0<>
(●. .●) カタカタカタ
 ヽ曲ソ

小刻みに震え、歯を鳴らす骸骨。
軽装だが鎧らしき物を身に着け、短めの曲刀と小振りの盾を持っている。

(´<_` )「格好からして、船員の成れの果てといったところかな」

川;゚ -゚)「骸骨戦士とでもいった所か。薄気味悪いな……」

軽装なのは海上での戦いを想定をしているからだろう。
数体の骸骨戦士が無造作にこちらに近付いて来る。

( ^ω^)「この人自体の怨念か、何かに操られてるのか、どっちだろうかおね?」

ξ゚听)ξ「どっちも同じようなもんでしょ?」

( ^ω^)「若干違うけど、まあ、やる事は変わらんお」

前者の場合、強力な負の感情を起因とすることもあり、時に恐ろしいほどの力を持つ場合もある。
後者の場合は、単に操られているだけなので、そこに意思はなく、あまり力はないが、
操っている者が強力ならそれに比例して力が増す。

ただ、どっちにしろ襲って来る以上、倒さねばならない事には変わりないが。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:12:37 ID:6HuDzCTE0<>
( ^ω^)「それじゃあ、先制攻撃……」

ξ゚听)ξ三///⊃「ハッ!」

僕が呪文を撃つより早く、ツンが先頭を行く骸骨戦士に攻撃を仕掛ける。
緩慢な動きでそれを防ごうとした骸骨戦士だが、防御は間に合わない。
そのまま後方に吹っ飛び、バラバラに崩れ落ちた。

( ^ω^)「弱っ!」

川 ゚ -゚)「よし、ここは私に任せろ!」

敵が弱いとわかった途端、妙に張り切りだすクー。
ここの所負け続けだったし、気持ちはわからなくない。

そのままツンとクーに任せ、戦闘は呆気なく終わった。

(´<_` )「……うーん、これと言ってわかる事はないな」

バラバラになった骸骨戦士を調べていたオトジャさんだが、特に得られる物はなかったらしい。
僕達は再び船内の捜索に戻る。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:15:01 ID:6HuDzCTE0<>
( ^ω^)「と言っても、まずはどこから調べようかおね」

(∪^ω^)「わんおー」

(´<_` )「船長の部屋ないし、航海士の部屋か、もしくは貨物室みたいな場所があればそこからだけど……」

川 ゚ -゚)「ドアを見る限りでは、どこも変わらないように見えるな」

ξ゚听)ξ「手当たり次第見て行くしかなさそうね」

( ^ω^)「しかないかお。まあ、入り組んでないのが幸いだけど」

そう方針を決めると、僕達はまず手近にあった向かい合ったドアの右側の方を開ける。


           (●. .●)
            ヽ曲ソ


(;^ω^)「うおっ!? 近っ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:17:48 ID:6HuDzCTE0<>
ドアを開けると目の前に骸骨戦士の顔があった。
骸骨戦士は手に持った得物を無造作にこちらに突き出して来る。

(;^ω^)「危ね!」

すぐ様後方に飛び退り、攻撃をかわす。
骸骨戦士の攻撃速度が遅かった事もあり、僕は切られる事無く距離を取れた。
そして僕と入れ替わるようにして前に出たツンが骸骨戦士を打ち倒す。

(´<_` )「大丈夫かい?」

(;^ω^)「何とか……」

(∪^ω^)「わんお」

ξ゚听)ξ「弱いけど、これが部屋ごとにいたら面倒そうね」

室内には三段ベッドが部屋の両脇にあり、中央奥に棚のようなものが1つあるだけの簡素な造りだった。
恐らくは船員が寝泊りする部屋なのだろう。

(´<_` )「ここもこれといって気になる物はないね」

川 ゚ -゚)「骸骨戦士も1体だけのようだな」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:19:15 ID:6HuDzCTE0<>
それからいくつかの部屋を見て回ったがどれも似たような構造で、
部屋ごとに数体の骸骨戦士がいたりいなかったりと差はあったものの、捜索に進展は見られなかった。

川 ゚ -゚)σ「埒が明かんな。別のフロアに行った方が良くないか?」

そう言ってクーが指差す先には、更に下に降りる階段があるらしい。
先ほど後何部屋あるか見て来たそうだ。
通路の奥の方なので、手前から部屋を全て見て行くと、降りるのはもう少し先になるだろう。

( ^ω^)「船の構造を考えると、積荷はそっちの方にありそうだけど……」

クエストの結果だけを優先すればそうした方が良さそうだが、オトジャさんは部屋を1つ1つ調べたがっていると思う。
正確には、この幽霊船がどういった船だったのかとか、そういった事がわかるものを捜したいのだろう。
職業柄とでも言うべきか、この船の素性を知りたがっている。

川 ゚ -゚)「それならばどうせ敵も弱いし、二手に別れるか?」

今の所は二手に別れたところで、大して危険はないと思うが、
万が一骸骨戦士以外にもモンスターがいるかもしれないので考え物だ。

とはいえ、あとどのくらいの時間調査出来るかわからないので、僕達は二手に別れる事を決めた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:21:14 ID:6HuDzCTE0<>
( ^ω^)「戦力基準で考えれば、僕が組むのはオトジャさんかおね」

ξ゚听)ξ「……そうならざるを得ないわね」

ツンが若干不満げな顔をしたが、この場合はこれがベストだろう。
僕は階段を下りて貨物室を探すと言う2人に、無理をしないよう言い含める。

川 ゚ -゚)「心配するな。自慢じゃないが逃げ足だけはだいぶ鍛えられたからな」

ξ;--)ξ「ホントに自慢じゃないわね……。まあ、何かあったらすぐ合流するわ」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕とオトジャさんとわんわんおは2人を見送り、この階の部屋の調査に戻る。
2体の骸骨戦士を倒し、部屋の中を調べたが収穫はなかった。

( ^ω^)「乗員の数、骸骨戦士が乗員の成れの果てだった場合ですが、結構いますおね」

(´<_` )「船の規模はなかなかのものだからね。いても不思議はないさ」

僕達はそんな事を話しながら部屋を出て通路に戻る。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:23:57 ID:6HuDzCTE0<>
           (●. .●)
            ヽ曲ソ


( ^ω^)「って、いつの間に?」

通路の手前、最初に僕達が降りて来た方から数体の骸骨戦士が近付いて来ていた。
一体どこから湧いて来たのか。

(´<_` )「どこかに抜け道でもあったのかな?」

( ^ω^)「隠し扉とかですかお?」

未だ骸骨戦士との距離はあったので、僕達はそれを落ち着いて遠距離攻撃で打ち倒す。
骸骨戦士は呆気なくバラバラになった。

(´<_` )「少し戻ってみるかい?」

( ^ω^)「そうしましょうかお」

(∪^ω^)「わんお!」

念の為、次に調べようとしていた部屋の近くに魔法で光を灯しておいた。
僕らは壁や床の穴を調べつつ、通路を逆戻りする。
しかしながらどこかに隠された入り口がありそうな感じはしない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:26:09 ID:6HuDzCTE0<>
(;^ω^)「うーん……、ひょっとして上から降りて来ただけですかおね?」

(´<_` )「その可能性もあるけど……1つ気になる事が……」

オトジャさんは何かを言いかけ、考え込む様に黙り込んでしまう。
その視線は床の方に向けられている。

( ^ω^)「何か落ちてますかお?」

ミ(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「お、わんお、フードから出るのはいいけど、穴には気を付けるお?」

僕の言葉をちゃんと聞いていたのか、わんわんおは床の穴を避けつつ走り、通路を少し進んだ辺りで止まる。

(∪^ω^)「わんわんお!」
  ∪,,∪,, トントン

( ^ω^)「お?」

わんわんおは床に座り、前足で床をトントンと叩いた。
何の事かと近付こうとした時、黙り込んでいたオトジャさんが不意に口を開く。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:28:17 ID:6HuDzCTE0<>
(´<_` )「そうだよ、そこにあったはずの骨がないんだ!」

(∪^ω^)「わんお!」

( ^ω^)「あ……」

なるほど、そう言われれば確かに、僕等が最初降りて来た時に倒した骸骨戦士の骨が無くなっていた。
あれは今わんわんおがいる辺りに散らばっていたはずだ。

( ^ω^)「けど、どこにいったのかお?」

(∪^ω^)「わんおー」

流石にそこまではわからないのか、わんわんおは首を傾げる。

( ^ω^)「あんまり捜索に関係なさそうですけど、ちょっと気になりますおね」

(´<_` )「単に風化して消えたってのはちょっと不自然かな」

( ^ω^)「何らかの魔法で強制的に具現化されてたのならその可能性も……」

そう言いかけた僕の視線の先に、何か動くものがあった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:30:20 ID:6HuDzCTE0<>
            (:●. .●;) カチャッ、カチャッ
             ::曲::


(;^ω^)「そういう事かお……」

(´<_`;)「再生してるのか……」

(∪^ω^)「わんおー」

そこには、1度倒したはずの骸骨が再び組みあがって行き、ゆっくりと立ち上がる姿があった。
これは思ったより厄介な相手だったようだ。

( ^ω^)「って事は、1度見た部屋の中のもまた元に戻ってそうですおね」

(´<_` )「そうなるだろうね」

幸い、1度調べた部屋にもう1度入る必要はなさそうなので、
もし部屋の中の骸骨戦士が復活していても捜索に影響はない。
これまで調べた感じからすると、骸骨戦士が自分でドアを開けて来る事もなかったので大丈夫だろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:32:21 ID:6HuDzCTE0<>
(´<_` )「粉々に砕いてしまえば二度と復活しなかったりするのかな?」

( ^ω^)「それは手間がかかりそうですし、ちょっと心情的に躊躇われますお」

襲って来るモンスターとはいえ、元は誰かの死体だ。
この感じだとその人の意思というよりは、誰かに操られているだけの様に見える。

本当なら火葬にでもしてあげれば良さそうだが、それをここでやると船に引火しそうである。
幽霊船が燃えるかどうかはわからないが。

( ^ω^)「ま、復活して来た所で弱いのは変わらないですお」

(´<_` )「そうだね。取り敢えずしばらく眠っていてもらおうか」

そう結論付け、僕達は骸骨戦士を見る。
もう入り口周辺を調べる必要もなくなったので、先ほど調査を中断した部屋の方に向かった。

(´<_` )「武器だけでも破壊しておけばいいんじゃないかな?」

( ^ω^)「ああ、そうですおね。破壊まで行かなくても、どこか適当な部屋に放り込んでけば安全ですお」

( ^ω^)「じゃあ、ささっと魔法で……って!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:33:52 ID:6HuDzCTE0<>
ミ (●. .●) ガシャン!
   ヽ曲ソ

(´<_`;)「何だ? いきなり勝手にバラバラになったよ?」

(∪^ω^)「わんお?」

僕が魔法を唱えるよりも早く、骸骨戦士は1体残らず崩れ落ちた。
背後に誰かいるという事もなく、ツン達が戻って来たわけではなさそうだ。

(´<_`;)「いったい何が……?」

( ^ω^)「あ……、これ、ひょっとして……」

僕は、船を包む空気に変化が生じている事に気付く。
それが意味する所は、恐らく……

( ^ω^)「1度甲板へ戻りますお」

(´<_`;)「え? 何で……?」

僕は、顔に疑問符が浮かんだままのオトジャさんの手を引き、階段の方へ向かった。



     第三十九話 蒙霧に浮かぶ幽霊船 終<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:37:10 ID:6HuDzCTE0<>
三十九話は以上です

今回のクエスト話は多分短めにまとまる予定
元々、大筋のプロットにはなくて、新しく追加したものなので

次回はほぼ書きあがってるのでそう遠からず
支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:52:19 ID:.NK0GcKsO<>乙乙
次回も期待してる<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:53:22 ID:0BZwzLDs0<>乙
すっげぇ続き気になる<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 00:54:24 ID:MQ0V0Amo0<>( ゚ω^ )ゝ 乙であります!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/20(金) 02:29:05 ID:7QfpeN6Q0<>乙!
わんおは言葉通じてるっぽいのかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/20(金) 06:38:26 ID:PDOWsiWc0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 07:58:12 ID:YIE2eAR2O<>乙
トソンがやってくれたのかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/20(金) 08:17:45 ID:3jxly2fU0<>          ゴゴゴゴゴ…

          ヽ (゚、゚トソン
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓



















          

          ヽ (゚、゚トソン乙乙
             (  (\
             <  \
             ┛   ┓<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 15:56:45 ID:/Y96IzMs0<>ツンとブーンの釣りの補正がwww<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/20(金) 16:59:32 ID:nJ/R2occ0<>俺も釣られるなら美少女がいい<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 21:26:58 ID:dE/BeuE.0<>そしてまな板で即調理されたいと<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/20(金) 23:52:56 ID:t5/ipslw0<>ツンの胸がまな板とか言ってやるなよ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 07:06:08 ID:5Q.qZ2Ao0<>ツンさんには胸筋があるんだし洗濯板
まっ平らじゃないお!<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:25:40 ID:Dn379DoI0<>
 〜 イチサンの町北東の海域 幽霊船甲板 〜


( ^ω^)「やっぱり霧が薄くなってますお」

(´<_`;)「急に甲板に戻るって言い出した理由はこれかい? どうしてわかったの? 薄くなった理由は?」

( ^ω^)σ「あれだと思いますお」

(´<_` )「あれ? あれって……」

( 、 ;トソン「ウフフフフフ……ハァハァ……やりましたよ、クー様……ハァハァ……」

(´<_`;)「……ひょっとして、あれからずっと踊ってたのかな?」

(∪^ω^)「わんおー」



     第四十話 大海の波瀾


 まとめさん
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
 ブーン芸VIPさん
 ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:27:30 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「でしょうおね。それで浄化が成功して、骸骨が崩れたんだと思いますお」

僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。

(´<_` )「なるほどね。そういう事だったのか」

彼の名前はオトジャさん。
アニジャさんの弟で、トレジャーハンターをやっていて、冒険野郎サスガイバーの異名を持つ人だ。

( 、 ;トソン「ハァハァ……やりましたよ、クー様……ハァハァ……僕は……ハァハァ……僕は……」

彼女の名前はトソン君。
元聖騎士だったが現在はヴィップの町で冒険者兼アルバイトをやっている、腕は立つが少々不器用な人だ。

僕達は魔王の頭骨を探すクエスト受け、イチサンの町の北東の海域に出現するという幽霊船に乗り込んでいた。
現在僕らは何人かずつでバラバラに行動し、魔王の頭骨を捜索している真っ最中だ。

(;^ω^)「えーっと、トソン君?」

(゚、゚;トソン「ブーン店長!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:29:47 ID:Dn379DoI0<>
(゚、゚*トソン「僕はやりましたよ! ちゃんと踊り切って! スペシャルを! 浄化を!」

(;^ω^)「わかってるから、ちょっと落ち着くお。はい、お水だお」

(゚、゚*トソン「ありがとうございます! 頂きます!」

長時間踊り続けた疲れからか、それとも成功させた高揚からか、異常な興奮状態にあるトソン君を落ち着かせるべく、
僕は持っていた水を渡す。
トソン君はそれを一気に飲み干すと、大きく息を吐いた。

( ^ω^)「少しは落ち着いたかお?」

(゚、゚トソン「あ、はい、えっと……」

( ^ω^)「お疲れ様だお。こっちはまだ目的の物は見付けてないけど、これで捜索が楽になりそうだお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(゚、゚*トソン「そ、そうですか? お役に立てて幸いです」

トソン君はにっこりと微笑み、その場に座り込む。
流石にこれだけ長い時間踊り続けたので疲れたのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:32:09 ID:Dn379DoI0<>
(´<_` )「何だか嫌な気配も薄まってるように感じるね」

( ^ω^)「実際、薄まってると思いますお」

そう言って僕は周囲を見回す。
濃かった霧は薄まり、だいぶ視界が開けていた。

( ^ω^)(上の方はまだ霧が濃いけど、結構な広範囲を浄化したおね……)

(∪*^ω^((゚、゚*トソン

僕は上機嫌でわんわんおに頬擦りをするトソン君を見る。
技術は下手だが、潜在的な魔力は高いのだろう。
聖騎士団に伝わる舞踊魔法の増幅力が高いのもあるのかもしれない。

( ^ω^)(これが実戦で使えるようになったら相当のもんだお)

あのリズム感では前途は多難だが、修練を積めばいい所まで行くかもしれない。

(´<_` )「アニジャには状況を説明して来たから、また船内に戻るよ」

( ^ω^)「僕も行きますお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:34:17 ID:Dn379DoI0<>
(゚、゚トソン「それでは僕もクー様の所へ向かいますね」

( ^ω^)「まだ休んでなくて大丈夫かお?」

ヽ(゚、゚トソン「はい、もう元気いっぱいですよ!」

そう言ってトソン君は勢いよく立ち上がり、剣を担ぐ。
今の状況なら危険は少ないだろうし、好きにさせてあげるべきだろう。

僕らは船内に入り、階段を降りる。
僕とオトジャさんとわんわんおはトソン君と別れ、再び船室の調査に戻った。

(´<_` )「お、この部屋は個室のようだね」

( ^ω^)「他とは明らかに違って、物も多いですお」

調査を再開して数部屋目で、これまでとは造りが違う部屋を見付けた。
ここも船員の部屋だとすると、明らかに上の待遇の人の部屋だろう。

(´<_` )「ここなら何か見付かりそうだね」

( ^ω^)「それじゃあ、探しましょうかお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:37:20 ID:Dn379DoI0<>
僕らは二手に別れて室内を探っていく。
程なくして手際良く机の辺りを物色していたオトジャさんが何か見つけたようだ。

+d(´<_` )「おk、航海日誌ゲット」

( ^ω^)b+「流石ですお」

早速僕らは机の上に日誌を広げ、中を確認する。
日誌は半分ぐらいまで書かれているようだ。

(´<_` )「この船は豪商の持ち物だったようだね」

( ^ω^)「商船、貿易用ですかおね」

(´<_` )「その様だね。ただ、扱うのは嗜好品が多かったみたいだ」

(´<_` )「工芸品がメインで、一部値の張る美術品なんかも運んでいたようだ」

(´<_` )「この船の持ち主は結構な好事家だった様だね。美術品は商売目的じゃなかったらしい」

( ^ω^)「しかし、この船が美術品とか、珍しいものを扱ってたとすると……」

(´<_` )「うん、魔王の頭骨も積んでいた可能性はある」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/21(土) 21:37:35 ID:U1diOASYO<>もう、来たのか早いな 
(゚、゚トソン役にたってよかった<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:39:49 ID:Dn379DoI0<>
全部読んでいる時間は無いと思うので、僕らはこの船がどんなものだったかの把握を終えると、
日記の最後の方のページから読む事にした。

(´<_` )「この辺りからが最後の航海の日誌みたいだね。なになに……」

最後の航海は目的も航路も、普段とそう変わらない旅であったようだ。
ラウンジ大陸の工芸品をニューソク大陸に持ち帰るといった具合の航海だったらしい。

(´<_` )「ただ、珍しい美術品も積んでいたようだね」

( ^ω^)「日誌には魔除けの兜とありますおね」

魔除けの兜と魔王の頭骨、どちらも頭に関係するが用途は正反対な気がする。
僕らはその正体を知るべく、日誌を読み進める。

(´<_` )「ええっと、その魔除けの兜について書いてあるのは……」

何でも、この船の持ち主である豪商、ブルジョア=アルェが直々に出向き、
ラウンジの奥地の村で祀られていた物を買い取ったらしい。

( ^ω^)「微妙に聞き覚えがあるような名前だお」

(∪^ω^)「わんおー」

(´<_` )「有名な商人なら、今に名が伝わっていてもおかしくはないさ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:42:38 ID:Dn379DoI0<>
その線も考えられるが、僕としてはオトジャさんが言ったような類の耳にし方ではなく、
結構最近にそれっぽい名前をどこで見たような気がしたのだ。

まあ、今はどうでもいいような事なので、ひとまず気にしないでおく。

(´<_` )「とにかく、それなりに由緒というか曰くがあった物みたいだね」

日誌には、一目見ようとしたが厳重に封をされ、貨物室に保管されていたので、
見る事が適わなかったという船員の嘆きも記載されていた。

(´<_` )「で、その後の話だね」

往路は順調だった航海だが、日誌によると復路はかなり荒れたようだ。
嵐に会うはモンスターに会うはと、散々だった様子が見て取れる。

( ^ω^)「で、この普段とは違う状況に、船員達の中で不満や疑いの気持ちが溜まっていくわけですね」

(´<_` )「その矛先は魔除けの兜に向くと」

曰く、あれは魔除けの兜ではなく魔寄せの兜だった。
いや、住民を騙してあくどい方法で入手したから呪われたのだとか、様々な憶測が船員の間に広まっていった様だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:43:25 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「でも、もしこの魔除けの兜が魔王の頭骨だったとしても、当時は力は失ってたはずですおね?」

(´<_` )「時期的にはそうなるだろうね。でも、結局最終的にはこの魔除けの兜の所為だったかもしれないね」

( ^ω^)「それはどういう事ですかお?」

(∪^ω^)「わんお?」

船員達が言うように、あくどい手段で手に入れて呪われた可能性もあるだろうが、魔除けの兜という、
普段の航海とは違う物があった所為で、ただの偶然で済ませられた物が作為性を帯びてしまったとオトジャさんは言う。

(´<_` )「本来なら何でもないはずの事が、魔除けの兜という具体的な物があるお陰で」

(´<_` )「船員達に不安と恐怖を植え付けるのを助長した可能性はあると思う」

( ^ω^)「なるほど。この日誌見ても、明らかに後半は恐れてる風ではありますお」

そうして読み進めて行くと、日誌の最後のページに辿り着いた。
どうやら事件は丁度日誌を書いてる最中に起こったらしく、最後の方だけ殴り書きの様にになっている。

(´<_` )「この段階では状況がよくわかってないようだね。天候が悪かった事は記述されているけど」

( ^ω^)「すごく船が揺れ出したとありますし、この海域で何かあったんでしょうおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:45:11 ID:Dn379DoI0<>
船員が書いたの最後の記述は、船から逃げる、しかし助からないかもしれないという悲壮なものであった。
具体的に何があったのかはわからないが、この日誌を置いていった事からも、かなりの緊急性を要し、
かつ持ち出せるものも限られたのだろう。

(´<_` )「脱出艇がなかったのはその所為かもね」

( ^ω^)「助かった事を願いたいですお」

現実問題、多数の骸骨戦士が見られる事からも、助からなかった人がその数いるのはわかっている。
それでも、出来るだけ多くの人に助かっていて欲しいと願うのは人間として普通の事なのだと思う。

(´<_` )「さて、結論から言うと、ここには魔王の頭骨と称される物はなかったようだけど……」

( ^ω^)「魔除けの兜があり、それが魔王の頭骨だった可能性はあるわけですおね」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(´<_` )「となると僕らもクーさん達を追うべきかな?」

( ^ω^)「貨物室に行きますかお」

そう結論付け、部屋を出ようとした僕達だが、突然船が大きく揺れたので、思わずその場で身を低くした。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:47:14 ID:Dn379DoI0<>
(´<_`;)「高波かな? だとしたら、問題は何でそんな波が起きたのかという事だけど……」

(;^ω^)「甲板に向かいましょうお」

揺れは収まらないが、このままここに止まっているのは得策ではないので、何とか立ち上がり、部屋を出る。
一応、航海日誌だけは持って行く事にした。

通路に出た僕達の視界の端に、僕達と同じように壁に手を当ててバランスを取りつつ、
階段の所から出て来るツン達の姿が見える。

ξ゚听)ξ「この揺れは?」

( ^ω^)「わからんお。だから、今から甲板に戻るところだお」

川 ゚ -゚)「こちらも理由はわからんし、奥の方から何かミシミシと船体が軋む嫌な音がしたから上がって来た」

ツン達の方も僕達と状況はそう変わらないようだ。
やはり甲板に出てみるしかない。

そう考えていると、不意に船外で大きな音が鳴り響いた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:49:26 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「アニジャさんからの合図だお」

ξ゚听)ξ「どうやら急いで戻らないとまずそうね」

(´<_` )「お三方、貨物室には辿り着けたかい?」

(゚、゚トソン「はい、それらしき部屋には入りました。ですが、魔王の頭骨らしき物は見付かっておりません」

( ^ω^)「この航海日誌によると、魔除けの兜って言われてるそれっぽいのが貨物室にあったらしいお」

ξ゚听)ξ「残念ながら、兜も頭の骨もなかったわよ。モンスターも無し」

(´<_` )「価値がありそうな物も皆無だったのかな?」

川*゚ -゚)「良さそうな剣は貰っておいた」

(;^ω^)「迂闊に抜くなお? 呪われてる可能性もあるお」

僕達は合流し、揃って甲板の方へ向かう。
その間も揺れが収まる事はなく、むしろひどくなっている気配がある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:50:55 ID:Dn379DoI0<>
川 ゚ -゚)「結局、この船は外れか」

(´<_` )「かもしれないね。ただ、まだ見付かってないだけで、どこかに隠されている可能性もあるけど」

(゚、゚;トソン「その場合、もしこの船が沈んで二度と出て来なくなったらどうなるんでしょう」

( ^ω^)「魔王の頭骨が二度と人目に触れないならそれでいいお。本来の目的を考えれば問題ないお」

ξ--)ξ「それだと、ちゃんと確証を取らない限り私らが一生このクエスト終えられないでしょうが」

(∪^ω^)「わんおー」

川 ゚ -゚)「幽霊船ならまた出て来るんじゃないか? 原因は何の解決もされてないんだし」

( ^ω^)「まあ、それは……」

僕は階段を登りつつ、ちらりとトソン君の方を盗み見る。
クーが言う様に、この幽霊船現象の根本を解決しない限りまた出て来る事は考えられるが、
先のトソン君の魔法で原因が浄化されてしまった可能性もある。

その場合はもう、この船は幽霊船ではなく、ただの難破船が浮かんでいるだけという事になり、直に沈む可能性もある。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/21(土) 21:51:14 ID:jDqC3om.0<>しえ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:52:21 ID:Dn379DoI0<>
階段を登り切った僕らは、ドアを開け、甲板に出る。
霧はほとんどなくなっていたが、風が強く、遠くの空には黒い雲が見える。

(´<_`;)「嵐の前という感じだね」

ξ゚听)ξ「急に天候が変わりましたね。この場を急いで離れた方が良さそうですね」

川 ゚ -゚)「そうしようか。よし急ぐ──」

突如船が大きく傾いた。
船尾の方が海に沈み込み、甲板は急勾配の坂に変わる。

(;^ω^)「ちょ、わんお、フードに!」

(∪;^ω^)「わんお!」

慌ててわんわんおを掴み、フードに押し込む。
そして甲板に伏せ、転がり落ちない様に踏み止まった。

川;゚ -゚)「何だこれは? おい、一体全体どうなってる」

ξ;゚听)ξ「わかんないわよ! けど、風で揺れたにしては不自然過ぎるわ……」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:53:46 ID:Dn379DoI0<>
同じ様に甲板に伏せたツンとクーが怒鳴り合う。
状況はよくわからないが、早いとこアニジャさんの船に戻るべきだろう。

川;゚ -゚)「戻ると言っても我々の船は船首の方だぞ? この坂を登るのか?」

(;^ω^)「それしかないんじゃないかお? アニジャさんが気をきかせて側面に回ってくれると助かるけど」

(゚、゚トソン「空気の読めなさには定評ある人ですから、それは難しいかと」

(´<_`;)「それに、いったんワイヤーを外すと、この揺れでは再度固定するのは難しいだろうしね」

ξ゚听)ξ「そもそも、船首にワイヤー繋ぎっ放しだったんなら、こっちの船自体がまずい事になってません?」

(´<_`;)「そこはアニジャがワイヤーを緩めて対処してくれたと信じるしかないね」

(;^ω^)「とにかく、船首まで行くしかないお」

川;゚ -゚)「行くったって、さっきより傾斜が急になってないか?」

こうして話している間にも、船はどんどんと傾いていく。
これ以上傾くと、甲板に伏せている程度じゃ耐え切れないかもしれない。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:55:15 ID:Dn379DoI0<>
(∪^ω^)「わんわんお!」

(゚、゚トソン「船の揺れが止まりました! 今がチャンスかもしれません」

(´<_` )「よし、今の内に登って……」

(;^ω^)「いや、これは……」

船の傾きは固定されたが、船自体は小刻みに震えている。
何というか、耐えているが決壊寸前といった風に見え、とてつもなく悪い予感がする。

ξ;゚听)ξ「これ、ひょっとして……」

(;^ω^)「ウインド・バリア!」

僕は全員に風の結界を張り、次に来るであろうその瞬間に備える。
そう身構えた矢先、不意に足元がなくなるような感覚を覚えた。

川;゚ -゚)「んな!?」

(;^ω^)「船が落ちるお! 何かに掴まってろお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:56:58 ID:Dn379DoI0<>
落ちる、そう叫んだが正しくは元に戻るであろう。
沈み込んでいた船尾に掛かる力が外れ、その結果傾いていた船が元の水平な状態に戻ろうとしているのだ。

(゚、゚;トソン「わわわ!?」

当然、高く上がっていた反動で、今度は船首の方が一時的とはいえ海に沈みこむ事になる。
甲板の傾斜が逆になり、僕らは頭を下にした体勢で甲板から落ちないように掴まっていなければならない。

(´<_`;)「サースガ式ワイヤー! 皆、掴まって!」

ξ;゚听)ξ「いっそここで滑り降りるべきじゃない?」

(;^ω^)「船首で止まれるならそうしてくれお」

ツンの言う手段は僕も考えたからこそ、全員に風の結界を張ったのだ。
このまま滑り降りて、船首の内壁にぶつかって止まるのも有りだと。

しかし、勢いが付き過ぎて海に放り出される可能性もあるので、全員にそれを勧めるのは無謀かもしれない。

ξ゚听)ξ「わかったわ、先行して私達の船の様子を見て来るわ」

(;^ω^)「頼むお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:58:28 ID:Dn379DoI0<>
ツンは急勾配の甲板に立ち上がり、船首に向かって走り出す。
こんな時だが見事なバランス感覚だと感心する。

(;^ω^)「さて、こっちはどうするかおね。そもそもこの原因は何なんだお?」

(∪;^ω^)「わんおー」

僕は徐々にまた逆に傾いて行く船上で後方を見やる。
このまま船が水平に戻ってくれれば御の字だが、あまり揺れがひどいと今度は横転しかねない。

川;゚ -゚)「水平になったら、全員で走るぞ」

(;^ω^)「だおね。全員にエア・シューズの魔法を……」

(´<_`;)「おいおい、何の冗談だい?」

前後に揺れていた船だったが、また船尾の方が海の中に沈み込んでいく。
横転は避けられたとしても、これでは船首に向かうのは難しい。

(;^ω^)「ツン! 大丈夫かお!」

ξ;゚听)ξb「大丈夫よ! ワイヤーも繋がったまま! アニジャさんが上手く操船してくれてるみたい」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 21:59:57 ID:Dn379DoI0<>
ツンは既に船首に辿り着いていた。
サースガ号もワイヤーを緩めてこの船から距離を取り、待ってくれているようだ。

(;^ω^)「またこの船傾くっぽいお! ツン、先に戻ってろお!」

ξ;゚听)ξ「そういうわけにもいかないわよ。大丈夫、落ちたりしないから!」

ツンの運動神経なら、またこの船がさっきくらい傾いても落ちずに掴まっていられそうだが、問題は船が落ちる時だ。
船の中ほどにいる僕らより、舳先にいるツンの方がその影響を受けるだろう。
落下の勢いで宙に放り出されないとも限らない。

(´<_`;)「こちらも各自踏ん張ってくれた方が良さそうだね」

(゚、゚;トソン「ワイヤーに掴まったまま身を任せていると、振り回されそうですね」

オトジャさんはワイヤーをメインマストに引っ掛けていて、オトジャさんとクーとトソン君はそれに掴まっている。
交互に傾くなら、ただ掴まっているだけだと逆に危険かもしれない。

(;^ω^)「なんて人の心配ばっかりしてられる状況じゃないおね」

(∪;^ω^)「わんお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:02:01 ID:Dn379DoI0<>
現状を打破する為には、素早く脱出するか、この揺れの原因を突き止めるかだ。
霧がだいぶ晴れたお陰で船の周囲の見晴らしはよくなっているが、未だマストの頂点付近は霧が残っている。

(;^ω^)「まだ雨雲は距離があるし、風とか嵐の所為で揺れてるとは考え難いお」

その他地震とか、局所的な自然災害の所為も考え辛い。
それにしてはあまりにも揺れ方が不自然だ。

(;^ω^)「何かに引っ張られてるってのが、一番それっぽいおね……」

何か、などと濁した言い方をしたが、この場合考えられるのは1つしかない。
恐らくはモンスターの仕業であろう。

( ^ω^)「仕方ないお。オトジャさん!」

(´<_`;)「うん? なんだい?」

( ^ω^)「これ、お願いしますお」

僕は魔法でロープを作り、オトジャさんに投げ渡す。
そしてそれをワイヤーに結び付けてもらい、船尾の方にゆっくりと滑り降りる。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:02:56 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「ちょっと様子見てきますお」

(´<_`;)「大丈夫かい?」

( ^ω^)「少し近付くだけですお。無茶はしませんお」

僕は少し甲板を滑り降りた辺りで止まり、船尾に向けて目を凝らす。
船尾はまた海の中に沈み込んでいるが、その中央辺りに何か盛り上がった白っぽいものが見える気がする。

( =ω=)「何だお、あれ?」

(∪=ω=)「わんおー?」

多分あれが船尾を引っ張っているのだと思うのだが、それが何なのかはわからない。
船の大きさを考えると、結構な大きさだ。

( =ω=)「盛り上がって……いや、その先にも繋がってるおね。白っぽい……腕?」

その腕が持ち上がり、船から離れる。
持ち上がった腕には、びっしりと丸い突起が付いていた。

腕といっても人のそれではない。
ただ、この形状のものも腕と呼ぶし、正式な名称だと触腕とかいったはずだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:06:50 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「タコ……いや、あの形状はイカだおね」

勿論、あの大きさだ。
ただのイカではないだろう。

(;^ω^)「巨大なイカのモンスター……嫌な予感しかしねえお」

僕は再び逆に傾く甲板の上で考えをまとめる。
やはりこの揺れは自然現象ではなく、別の要因、あのイカの腕によってもたらされたものだ。
その理由まではわからないが、あのイカはこの船を沈めようとしているのだろうか。

( ^ω^)「それにしては中途半端だお」

船を沈めたいなら、あんな端を掴んで揺らすのではなく、船を壊すなり全体に絡みつくなり手段は他にあるはずだ。

( ^ω^)「仮に、それが出来ないとしたら理由は何だお?」

(∪^ω^)「わんおー」

イカがこの船を襲う理由、端の方しか掴めない理由、どちらも推測の範囲でしかわからないし、
考えても仕方のない事かもしれない。
しかし、僕の中ではある仮説が組み上がっていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:09:36 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「……魔除けの兜?」

魔除けの兜があるから、あんな風に端の方にしか近付けないのかもしれない。

( ^ω^)「もしそうなら、魔除けの兜を手に入れれば追い払えるのかもしれないお」

ただ、残念ながら魔除けの兜がこの船のどこにあるのかわからない。
先の僕の仮説が正しければ、まだこの船のどこかに存在はするのだろう。

( ^ω^)「近づけない理由は魔除けの兜として、そもそもあのイカが近付いて来る理由は何だお?」

(∪^ω^)「わんわんおー」

これも推測だが、1つ思い当たる物はある。
この船内にあり、モンスターが好むような魔力を放出するもの。

( ^ω^)「魔王の頭骨かおね」

船内にあるのは確定ではないが、もしあるとすれば、僕の推測は正しいかもしれない。

( ^ω^)「けど、それだと問題もあるお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:11:43 ID:Dn379DoI0<>
僕やオトジャさんの推測では、魔除けの兜が魔王の頭骨ではないかと考えていたのだ。
その推測をこれに当てはめると、魔を呼び寄せつつ魔を避けるという、矛盾したものになってしまう。

( ^ω^)「ま、今は考えてても仕方ないお。取り敢えず……」

僕は伏せたままで呪文の詠唱を始める。
まだわからない事は多々あるが、少なくとも船が揺れている原因はわかったのだから、それは排除しよう。

( ^ω^)「サンダー・フォール!」

僕は力ある言葉を唱え、天から一筋の雷を落とす。
狙いは寸分違わず船の船尾を掴むイカの腕に直撃した。

( ^ω^)「当たり、っと!?」

イカの腕は弾かれた様に船を放して高く上がり、海中に水没していった。
中途半端な高さまで上がっていた船の船首は、そこから下降を始める。

( ^ω^)「みんな、今の内に船首へ走るお!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:13:47 ID:Dn379DoI0<>
これまでよりは傾きも勢いも小さいので、船首まで行くのは可能だろう。
僕達は慎重に足を運びつつ、急いで船首の方へ向かう。

川;゚ -゚)「っとと!?」

(;^ω^)「慌てるなお、慎重にかつ大胆に、ゆっくりと急げお!」

(゚、゚;トソン「それ、どうすればいいのかさっぱりですよ?」

僕は足がもつれて転げ落ちそうになったクーの腕を掴む。
そのまま引っ張られて僕も転びそうになったが、何とか踏ん張った。

川;゚ -゚)「すまん……ん?」

(;^ω^)「大丈夫かお?」

僕は倒れたクーを引き起こそうとしたが、クーは四つん這いのまま、上空をじっと眺めている。
釣られて僕も首を捻り、同じ方向を凝視した。

( ^ω^)「マストがどうかしたかお?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:16:31 ID:Dn379DoI0<>
川 ゚ -゚)「いや、あの周りだけまだ霧が濃いなって」

( ^ω^)「多分、トソン君の魔法の効果範囲外だったんだお」

( ^ω^)「マストの上の方とか、船底辺りには届いてないんじゃないかお?」

川 ゚ -゚)「かもしれないが、それにしては不自然じゃないか?」

( ^ω^)「お?」

そう言われて再度凝視するも、マストの周りに霧がかかっているだけで特に不自然な点はない。
相変わらずマストの先は見えなくなっている。

川 ゚ -゚)「それだよ! 何で先が見えないんだよ? これだけ傾いてるのに、何であそこだけ霧が晴れない?」

( ^ω^)「あ……」

そうだ、船が傾いているのだから、必然的にマストも傾いている。
しかしあの霧はずっとマストに付いて回っている様に見え、マストの先が見えないのだ。

(;^ω^)「ひょっとして、あそこにあるのかお?」

(∪^ω^)「わんおー」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:18:02 ID:Dn379DoI0<>
探していた魔除けの兜、もしくは魔王の頭骨は、どうやらマストの上にあるらしい。
どちらかといえば、霧の発生原因であろうことを考えると魔王の頭骨である可能性が高い。

川 ゚ -゚)「かもしれないな。まさかあんな所にあったとは」

( ^ω^)「どっちにしろ、行くしかないかお」

+(´<_` )「それじゃあ、僕の出番かな?」

そう言ってオトジャさんはワイヤーを構える。
確かに、オトジャさんのワイヤーがマストを登るには最適だが、僕は少し待って貰うように頼んだ。

( ^ω^)「未だ霧に包まれてる所を見るに、結構な魔力を放出してる可能性がありますお」

解呪ないし、魔力を抑える必要がある可能性もあるので、ここは僕が行くべきだと主張する。

(´<_` )「しかし、危険だよ?」

( ^ω^)「誰が行っても危険は変わらないと思いますお」

( ^ω^)「それなら一番危険を抑えられる可能性のある僕が行きますお」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:19:30 ID:Dn379DoI0<>
心配そうな顔で僕を見詰めるオトジャさん。
実際の所は、たぶんマストを登るのはオトジャさんが一番上手く登れると思うので、
総合的な危険度は五分五分だと思う。

しかし、今回のクエストは僕が引き受けたものなので、五分五分なら僕が行くのが筋だ。

( ^ω^)「ワイヤーを貸してもらえますか?」

(´<_` )「……わかった。気を付けるんだよ? 無理だと思ったら早めに見切りをつけて逃げるんだ」

+d(´<_` )「トレジジャーハントは引き際が肝心だからね」

( ^ω^)「把握ですお。ありがとうございますお」

僕はオトジャさんから借りたワイヤーを腰に巻く。
そしてフードの中のわんわんおをオトジャさんに渡した。

( ^ω^)「先にサースガ号に戻ってて下さいお」

(´<_` )「ああ。ブーン君の帰りを待ってるよ」
つ∪^ω^)「わんお!」

船首に向かうオトジャさん達を背に、僕はマスト目掛けてワイヤーを飛ばす。
一気に登るのは無理だから、帆をかける横柱を段階的に登るつもりだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:20:42 ID:Dn379DoI0<>
(;^ω^)「腐ってて折れるのだけは勘弁してくれお」

僕はワイヤーを巻き上げ、自分の身体を引っ張り上げる。
幸いにも横柱が折れる事はなく、順調に登って行けた。

(;^ω^)「天辺に近付くにつれて、またあの嫌な空気が充満して来たおね」

なれない浮揚感とこの空気で少し気分が悪くなって来たが、あまりのんびりもしていられない。
またあのイカが出て来ないとも限らないのだ。
さっきみたいに船を揺らされると、登るのも降りるのも一気に難度が増す。

( ^ω^)「とにかく、行ってみるしかないお」

僕は再びワイヤーを飛ばし、マストを登って行く。
なるべく下は見ない方が精神衛生上は良さそうだ。

( ^ω^)「ラスト!」

僕はマストの天辺付近、濃い霧の中にかろうじて見える檣楼らしき場所にワイヤーを引っ掛ける。
霧の濃度からも、恐らくここにあるのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:23:35 ID:Dn379DoI0<>
(;^ω^)「到着、って、危ね!?」

何かが壊れる音がしたと思ったら、先ほどまで僕が乗っていた横柱が折れて甲板に落下して行くのが見えた。
あと十数秒遅かったら危なかった。

( ^ω^)「それはさておきと……」

僕は檣楼に乗り込み、身をかがめる。
ここまで来れば、この目で見ずともそれがどこにあるかははっきりと感じられる。

( ^ω^)「そこまで強力な魔力ってわけでもなさそうだけど、何だか嫌な感じだおね」

僕はゆっくりと霧の中心にある物に手を伸ばす。
魔力の放出は感じるが、それ自体が攻撃的な性質を持っているわけではなそうだ。

( ^ω^)「白い……骨? 兜の様にも見えるけど、結局どっちだお?」

人間のそれよりは一回り大きい、左右に2本の角が生えた頭骨。
恐らくこれが魔王の頭骨なのだろう。
ただ、大きいし中は空洞のようになっているので、被る事も出来そうだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:24:46 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「ひとまずこの霧をどうにかするべきだおね」

頭骨から放出された魔力が、大気中で拡散して霧になっているらしい。
どういう原理かはよくわからないが、魔力の放出自体を抑えればどうにかなるだろう。

( ^ω^)「最初にクーのペンダントに施してあった護符の応用で行けそうだお」

僕は何枚かの羊皮紙を取り出し、手早く術式を記述し、魔力を込める。
応急的なものなので長くはもたないが、イチサンに戻るぐらいまでは大丈夫だろう。

( ^ω^)「これでよし、と。……完全に遮断は出来てないけど、このくらいなら許容範囲だお」

僕は頭骨をフードに仕舞い、口を閉める。
わんわんおが落ちないように改造してた甲斐があった。

( ^ω^)「それじゃ、早いとこ降りますかお」

僕はワイヤーを入って来た方とは反対側のマストの横柱にワイヤーを引っ掛ける。
そして檣楼から飛び出そうとした瞬間、突如船が大きく揺れた。

(;^ω^)「うおっ!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:26:13 ID:Dn379DoI0<>
船尾が沈み、船が斜めになるのは同じだが、今回の揺れはこれまでと違い、一気に船が傾いた。
その理由を考えるより早く、振り向いた僕の目にその原因が飛び込んで来る。

            __          __
          /○○\      /○○\
          |○ ○ ○|        |○ ○ ○|
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          |○ ○ ○|        |○ ○ ○|
          \○○/      \○○/
           |   |           |   |


(;^ω^)「ちょ、ちけえっ!」

今まで船尾の端辺りを掴んでいただけだったイカの腕が、マストのすぐ近くまで迫っていた。
しかも1本ではなく、2本もだ。

(;^ω^)「あ、他の短い腕、足? も来てるお。これ、ひょっとして大ピンチじゃね?」

何故急にとのんびり理由を考えている暇もないが、1つだけ思い当たる事がある。
先ほど魔王の頭骨からの魔力の放出を抑えた事だ。
これにより、船の端までしか近づけなかったイカが、遮るものがなくなってもっと近くに来れた可能性はある。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:28:20 ID:Dn379DoI0<>
(;^ω^)「今更解呪するわけにも行かないし、ここはさっさとずらかるお」

僕はワイヤーの張りを確認し、檣楼から飛び降りる。
その次の瞬間、何かが折れるような大きな音が僕の耳に届く。
嫌な予感がして首を後方に捻ると、たった今離れたはずの檣楼が僕を追いかけるようにして近付いて来る。

(;゚ω゚)「マスト折りやがったああああっ!」

気付いた所で既に空中にいる僕にはどうしようもない。
ワイヤーを巻いていた横柱も、ぽっきりと折れてマストから離れ、たただの棒と化している。

(;^ω^)「このまま落下はちょっと厳しいお」

役に立たなくなったワイヤーを横柱から外し、風の結界を張る。
近くにあったまだマストに繋がっていた別の横柱にワイヤーを飛ばし、巻き上げて落下速度を落としつつ、
倒れてくるマストやその他諸々に潰されない位置を目指して跳んだ。

(;^ω^)「だああああっ!!!」

何とか甲板に着地し、痺れる足を必死で動かし、マストの崩落地点から離れる。
しかし、そんな僕の背後にイカの手足が迫っていた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:31:03 ID:o4a2xC6oO<>もう来てたよ
支援<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:33:39 ID:Dn379DoI0<>
(;^ω^)「こっち追って来てね? やっぱこの頭骨狙いかお?」

マストを倒したのも、僕というよりは魔王の頭骨を落とす為にやったのだろう。
最初に船を揺らしていたのも、近付けないながらもマストから落とす為に揺らしていたのかもしれない。

(;^ω^)「なんにせよ、逃げるお!」

(;゚ω゚)「って、危ねええええっ!」

船首に向かい走る僕の背後に叩き付けられるイカの足。
そして前方には背後から飛来したマストの破片が落ちて来る。
どうやらイカの腕が器用に破片を掴んで投げているようだ。

(;^ω^)「急がないと退路を塞がれてしまうお!」

エア・シューズの魔法を重ね掛けし、船首に向かって全力疾走する。
いくら大きい船とはいえ、甲板が膨大に広いわけではない。
僕は何とか船首に辿り着いた。

(;^ω^)「よし、後はワイヤーに……いっ!?」

真上から振り下ろされるイカの足を横に転がってかわす。
あと少しという所で完全に追い付かれてしまった。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:35:11 ID:Dn379DoI0<>             __          __
           /○○\      /○○\
           |○ ○ ○|        |○ ○ ○|
    ∧     |○ ○ ○|        |○ ○ ○|    ∧
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    | |       |   |           |   |      | |


(;^ω^)「あとちょっとの所で……」

身を起こし、背後を睨む。
巨大なイカの手足が天高く振り上げられ、今にも叩き付けられ様としている姿が見えた。

(;^ω^)「あれを防ぐのは無理っぽいおね……」

今から攻撃魔法を詠唱し、破壊するのは無理だろう。
ただ、サンダー・フォールの魔法にはダメージを受けていた様だったから、僕の魔法がきかないわけでも無いと思う。

(;^ω^)「まずは全部かわしてから、一撃食らわせて離脱するお」

僕は雪崩の様に振り下ろされるイカの手足を待ち構える。
1本目の足をかわし、2本目3本目と順調に着弾点を見切って足を運んだ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:37:28 ID:Dn379DoI0<>
(;^ω^)「次は左! そんで右っ!」

次々と落ちて来るイカの手足。
僕はそれを1つ1つ確実にかわし、甲板を走り回る。

こいつがイカなら手足は10本しかないはずだ。
直にこの猛攻も収まるだろう。

(;^ω^)「すぐに次の攻撃に移られてエンドレスってのは止めてくれお」

僕は最後であるはずの10撃目をかわし、呪文の詠唱を始ようと足を止めた。
しかし、先ほど避けた攻撃はどうやら足の一撃ではなかったらしい。

(;^ω^)「マスト!? チッ、もう1撃来るかお」

更に落下してくるマストの破片。
1撃どころではなく、多数の破片がそこかしこに降って来る。

(;^ω^)「避け……切れねえええええっ!」

かわすのを諦め、防御魔法を張るべく身構える。
風の結界で重量的にマストの破片は防げると思うが、イカの足は難しい所だ。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:39:44 ID:Rws8.6UE0<>しえん<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:40:01 ID:Dn379DoI0<>
<「伏せなさい!」

(;^ω^)「お!?」

後方から聞こえて来た声に、思わず振り向きつつその場に伏せる。
そんな僕の目に、ワイヤーの上から飛び立つ、1人の姿が見えた。

三ヽξ#゚听)ξ┌┛ 「でえええりゃあああッ!!!」

ワイヤーの上から跳躍したツンは、そのまま僕の上空まで飛び、マストの破片を次々と蹴り落としていく。

(;^ω^)「ツン! 助かったお! ありがとだお!」

ξ#゚听)ξ「そういうのはあと! 今の内に逃げて!」

(;^ω^)「けど、ツンだけ置いていくわけには……」

ξ゚听)ξ「私も逃げるから心配しなさんな。それに、私1人じゃないわよ?」

(;^ω^)「お?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:42:20 ID:Dn379DoI0<>
ツンの言葉の意味を理解するより早く、後方から大音声が響き渡る。

ノハ#゚听)「どいてろ、ツンッ!」

ツンよりは少し不安定ながらもワイヤーの上を走って来たヒートは、ツンと同じくワイヤーから飛び立ち、宙を舞う。
その手には見慣れぬ金色の大斧を抱えていた。

ノハ#゚听)「いっくぞおおおッ! イグニッション!」

ヒートが叫ぶと金色の斧の刃が赤く染まる。
ヒートは斧を両手で持ち、高々と振り上げた。

ノハ#゚听)「ヒィィィトォォォッエンドオオオオッ!」

上段から振り下ろされた斧がマストの破片に触れると、破片は砕け、炎を上げる。
どうやらあの斧は高熱を放っているらしい。

(;^ω^)「派手な武器だおね」

ξ゚听)ξ「完成したジョルジュさん依頼の武器らしいわよ。その試運転がてらってとこみたいね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:44:10 ID:Dn379DoI0<>
付けておいたギミックが役立ちそうな場面だったので、アニジャさんがヒートに持たせたらしい。
ヒートだと武器自体を使い慣れてないだろうが、適当に振り回しても効果は出るから問題ないと。

( ^ω^)「なるほど。ヒートの力なら、振り回すだけなら問題なさそうだおね」

体勢を整え、ツンと共にワイヤーの方に後退する。
その間に甲板に着地したヒートは滅茶苦茶に斧を振り回している。

ノハ;゚听)「おろ?」

ξ;゚听)ξ「調子に乗りすぎよ、馬鹿! あんたも下がりなさい」

振り回し過ぎて甲板に刃が突き刺さり、斧が抜けなくなったらしいヒートをツンが援護する。
その間にイカの攻撃範囲から外れた僕は、呪文の詠唱を始めた。

( ^ω^)「天なる空を漂う雷の精霊よ、我が矛となりて全てを貫け」

完成した呪文を維持し、2人に下がるように告げる。
2人ががりで何とか斧を引き抜き、ツン達はこちらに走って来る。

( ^ω^)「2人とも、ワイヤーに! サンダー・ストームッ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:46:44 ID:Dn379DoI0<>
落雷の魔法を解き放ち、すぐ様ワイヤーをに滑車をかけ、掴まって船から跳ぶ。
ツンは僕に掴まり、ヒートは斧をワイヤーに乗せ、両手で持って滑車代わりにして滑って行く。

( ^ω^)「何とか逃げ切ったお!」

ξ;゚听)ξ「まだよ!」

(;^ω^)「お!?」

急にがくんと身体が揺れる。
何かに引っ張られた様に感じたが、僕自身がイカに掴まれたわけではない。

(;^ω^)「げっ!? とうとうぶっ壊されたのかお?」

どうやら船首部分がイカによって破壊されたらしい。
ワイヤーを繋いでた部分が海に落下していくのが見える。
僕の魔法ではわずかに動きを止めるくらいしか出来なかった様だ。

ξ;゚听)ξ「船まで届く?」

(;^ω^)「ギリギリだおね」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:48:41 ID:Dn379DoI0<>
徐々に滑走速度は下がっていく。
このままではサースガ号までは届かず、海に落ちる事必至だ。

それでも手を離さなければ引き上げてもらえるだろうが、着水の衝撃に耐え切れるかわからない。

ノハ;゚听)「斧、海に落としたら怒られそうだよなー」

(;^ω^)「ならば……」

僕は急いで呪文の詠唱を始める。
届かないなら無理矢理にでも届かせればいい事だ。

(;^ω^)「ツン、しっかり掴まってるお! ヒートも斧から手を離すなお!」

ξ;゚听)ξ「ええ!」

ノハ;゚听)「おお!」

( ^ω^)「ウインド──」

片手を海面に向け、魔法を解き放とうとした瞬間、水中から何かが飛び出して来る。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:53:08 ID:Dn379DoI0<>            __ 
          /○○\ ザパァッ!
          |○ ○ ○|
          |○ ○ ○|
          |○ ○ ○|
          \○○/
           |   |
       '''''''''''’'’'’'’'’'’''''''''''

飛び出して来たイカの腕が、僕達目掛けて迫って来る。
しかしながらもう、魔法の発動に入ってしまっている僕は、そのまま言葉を紡ぐ他に手はない。

ξ;゚听)ξ「ブーン!」

(;^ω^)「──ブロウッ!」

僕の手から放たれた突風が、ワイヤーごと僕達の身を浮かす。
どうやら僕の試みは上手くいったようで、これでサースガ号まで届くだろう。

だが、そんな僕達に、風の魔法にも怯まなかったイカの腕が襲い掛かる。

(;^ω^)「もう1度雷の魔法を──」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:53:09 ID:Rws8.6UE0<>しえん<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:54:34 ID:Dn379DoI0<>
再び呪文の詠唱に入ろうとしたが、如何せん時間がなさ過ぎる。
イカの腕はもう目の前まで迫っていた。

            __ 
          /○○\ グワッ!
          |○ ○ ○|
          |○ ○ ○|
          |○ ○ ○|
          \○○/
           |   |


ノハ;゚д゚)ξ;゚д゚)ξ(;゚ω゚)「だああああああっ! 間に合えお!!!」

無我夢中で詠唱も完成し切ってない内に左手を突き出す。
その瞬間、雷鳴が轟いた。

(;^ω^)「へ……?」

びくりと震え、海中に沈んでいくイカの腕。
どうやら雷が当たったらしいが、腕には当たったようには見えなかったので、イカ本体に当たったのだろう。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:57:22 ID:Dn379DoI0<>
ノハ;゚听)「ナイスだ、ブゥゥゥゥンッ!!!」

(;^ω^)「え、いや? 今のは──」

ξ;゚听)ξ「着くわよ!」

(;^ω^)「え? あ──」

(;゚ω゚)「うぼあッ!?」

いつの間にか僕達はサースガ号に辿り着いていたようだ。
着地の間際、ちゃっかり甲板に飛び降りたツンとは違い、
呆けていた僕はそのままワイヤーが結ばれていたマストに激突する。

風の結界を張っていなければ骨の何本かは折れていただろう衝撃に、僕はその場に倒れ込んだ。

(;゚ω゚)「いってえお……」

(゚、゚;トソン「大丈夫ですか!?」

ξ;゚听)ξ「何やってんのよ!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:58:38 ID:Dn379DoI0<>
僕は慌てて駆け寄って来る皆を制し、立ち上がってアニジャさんに向かって叫ぶ。

(;゚ω゚)「アニジャさん、急速離脱! 頼みますお!」

(;´_ゝ`)「了解! オトジャ!」

(´<_`;)「ああ! ジェットブースト、オン!」

オトジャさんの掛け声と共に急発進するサースガ号。
そのすぐ後に、先ほどまでサースガ号がいた位置にイカの足が浮上して来た。

川;゚ -゚)「まだ生きてたのか?」

(∪;^ω^)「わんわんおー」

(;^ω^)「とんでもないタフさだおね……」

ξ;゚听)ξ「逃げ切れる?」

(;´_ゝ`)b「安心しろ、こんな事もあろうかとジェットブーストの燃料は満タンにしておいた」

d(´<_`;)「流石だな、アニジャ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 22:59:45 ID:Dn379DoI0<>
それでもあのイカがずっと追い掛けて来るようなら安心は出来ないが、イカならそこまで早くは泳げないだろう。
オトジャさんの計算によると、限界までジェットブーストを使い、
その後通常航行で逃げ切れるのではないかという話だった。

川 ゚ -゚)「ってことは、これでクエスト達成か。終わってみれば案外呆気なかったな」

(;^ω^)「こっちはガチで何度か死に掛けてんだお。呆気なくねえお」

ξ゚听)ξ「回収出来たの?」

( ^ω^)「出来たけど、これが魔王の頭骨かどうかはわからんお」

( ^ω^)「モンスターを引き寄せたり、遠ざけたりする力はあるみたいだけど、よくわからんお」

(∪^ω^)「わんお」

(゚、゚トソン「あの様子では、幽霊船も沈んだんでしょうね」

(´<_` )「もう少しあの船について知りたかったけど、仕方ないか」

( ´_ゝ`)「持ち主はわかったんだろ? なら調べられる事もあるさ」

(´<_` )「そうだね。ソクホウに帰ったら調べてみるよ」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:01:44 ID:Dn379DoI0<>
ノパ听)「それより腹減ったぞー」

(∪^ω^)「わんわんお!」

(;´_ゝ`)「おい、ヒート? お前これ、どんな使い方をしたんだ? 柄の部分に小さな傷がびっしりだ」

各自思い思い勝手な事を述べる中、僕は甲板に横たわって考える。
これが魔王の頭骨かどうかはわからないが、1度これを持ってソクホウに帰るべきだろう。
こちらには鑑定手段がないので、ここは依頼主の判断を仰ぐべきだ。

( ^ω^)(てか、これ、どういった基準でモンスターを引き寄せてんのかおね?)

ひょっとしたら無差別で引き寄せてるだけかもしれないが、それならそれで帰り道に支障が出そうではある。
ソクホウに移送する前に、完全に魔力を遮断する処置を施した方がいいかもしれない。

( ^ω^)(そしてさっきの雷だお)

当然、僕が放ったものではないし、自然現象にしてはあまりにタイミングが良過ぎた。
誰かが助けてくれたと考える方が筋は通るが、あんな海のど真ん中で誰が助けてくれたのだろうか。

( ^ω^)(状況が状況だったから魔力感知出来てなかったけど、何か色々と不自然だったお……)<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:03:32 ID:Dn379DoI0<>
気になる事は多々あるが、現状では答えは出そうにもない。
今は助かった事を素直に喜んでおく事にする。

( ^ω^)「おっと、これ、取り出しておくかおね」

僕は手に入れた頭骨をフードから取り出し、甲板に置く。
先ほどマストにぶつかってしまったが、背中はぶつけていないので破損はしていない。

やはり完璧には魔力を遮断し切れていないのか、周辺にうっすらと黒い霧が発生している。

(´<_`*)「これが魔王の頭骨かい?」

( ´_ゝ`)「何かすごいな。妙に禍々しく見える」

川 ゚ -゚)「やっぱり小さかったんだな」

(゚、゚トソン「角がありますね。本物の骨なんですか?」

ノパ听)「わんお、被ってみるか?」

(((∪:^ω^)))「わんわんお!」

ξ;゚听)ξ「止めなさい!」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:05:35 ID:Dn379DoI0<>
( ^ω^)「曰く付きなのは間違いないから、無闇に触らない方がいいお」

僕は頭骨を取り返し、船内に持ち込む。
取り敢えずは船内に安置しておく事にした。

ξ゚听)ξ「ま、何にせよこれで一段落かしら?」

( ^ω^)「そうだおね。ちょっと疲れたから一休みしたいお」

例のジェットブーストとやらは既に切れ、船は通常航行に移行している。
陸地までもうしばらく時間はあるから、一眠りぐらいは出来るだろう。

川 ゚ -゚)「うむ、後は我々に任せてしばらく休むといい」

( ´_ゝ`)「そうそう、大船に乗ったつもりでのんびり……」

不意にアニジャさんの声を遮るような大きな音がした。
高く上がる水飛沫がその音の発生源で、何かがこちらに向かって飛来する。

          _____/|_____   _ ザパーン!
          \  。             \//
            vvvv ─────── /\\
             /  >       /   \|
              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

川;゚ -゚)(;゚_ゝ゚)「ちょ、何かデカい魚来た!?」<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:07:12 ID:Dn379DoI0<>
海上に飛び出した巨大なサメに似た魚は、サースガ号の上空を飛び越え、反対側の海中に沈んでいった。
よく見ると海面にいくつも似たような背びれが見え隠れしている。

(;^ω^)「ひょっとして、これも頭骨が呼び寄せたモンスターかもしれんお。すげえ効果だお」

ξ;゚听)ξ「なんて感心してる場合じゃないでしょ? オトジャさん!」

+(´<_`;)「残念ながらジェットエンジンは燃料切れだね。何とか凌いで貰うしかなさそうだ」

(゚、゚トソン「仕方ありませんね。守りながら逃げましょう」

川;゚ -゚)「船にダイレクトアタックされたらどうすんだよ?」

ノパ听)「大船に乗ってるから大丈夫じゃないのかー?」

川;゚ -゚)「いや、こんな小船、あの大きさの魚に何度も体当たりされたら沈むだろ」

(;^ω^)「やれやれ、まだ休めそうにないかお……」

(∪^ω^)「わんおー」

僕は風の魔法を唱え、帆に風を送る。
僕達はそれから何度も訪れたモンスターの襲撃を防ぎながら、辛くもイチサンの港へ帰り着いた。



     第四十話 大海の波瀾 終<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/21(土) 23:09:25 ID:OSmquiw.0<>乙<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:10:03 ID:Dn379DoI0<>
四十話は以上です

今の所、次話の書きためはほとんどないので次回は未定で
少し間が空くかもしれません

支援とか感謝です<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:12:47 ID:3NG1yYYsO<>乙!面白かった!<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:14:00 ID:Rws8.6UE0<>(^ω^ ≡ ^ω^)おっおっおっ<> 四十話までの登場人物<><>2012/07/21(土) 23:14:21 ID:Dn379DoI0<>【登場人物紹介・簡易版】

■ヴィップの町の人々                            ■ニューソク王家の人々   
 ( ^ω^)ブーン=ナイトウ                         ( ´∀`)モナー=ニューソク
       主人公。魔法道具屋兼魔法使い               ニューソク国王
 ξ゚听)ξツン=ディレード   (´・ω・`)ショボン=バールボー    ( <●><●>)ワカッテマス=ニューソク
       幼馴染の武術家  騎士を目指す幼馴染          ニューソク国第一王子
 (∪^ω^)わんわんお                            ( ><)ビロード=ニューソク
       ブーンのペットで元竜                      ニューソク国第二王子
                        _
 川 ゚ -゚)クー=スナオ       ( ゚∀゚)ジョルジュ=ナガオカ     ( ∵)ビコーズ=バラナゼナ
 ニューソク王国第一王女     ( ゚д゚)ミルナ=コッチオ       ニューソク王国宮廷魔術師
 (゚、゚トソントソン=トソン       从 ゚∀从ハインリッヒ=タカオカ    (‘_L’)フィレンクト=ドレイク
 元聖騎士でクーの友人      ヴィップを拠点とする冒険者     ニューソク王国騎士団長
                                           (,,゚Д゚)ギコ=ニャーハン
 (`・ω・´)シャキン=バールボー  (-_-)ヒッキー=コーモーリ    ニューソク王国聖騎士団長
 酒場バーボンハウスのマスター   ヴィップの教会の司祭        _、_
                                           ( ,_ノ` )シブサワ=リナイオ
 ('A`)ドクオ=ボッテューツ                          ニューソク王国所属エージェント
 ブーンの師匠で東の賢者

■その他                                      ■ラウンジ教国の人々
 ( ´_ゝ`)アニジャ=サースガ   (*゚ー゚)シィ=ダンヴォール       ζ(゚ー゚*ζデレ
 ソクホウの町の武器職人     イチサンの町長             ラウンジの聖女
 (´<_` )オトジャ=サースガ    ( ^^ω)マルタスニム=ハーセガー ( ・∀・)モララー=トスリラモ
 トレジャーハンター         精霊兵器研究者             デレの先生で西の賢者
 ノパ听)ヒート=オネスティー    lw´‐ _‐ノvシュー=パールライス    ( ゚∋゚)クックル=クックドゥー
 武術家で自称ツンのライバル   魔法農具屋。正体は悪魔        デレの御付の戦士
 ミセリ                  (???)
 ミセリ                 灰衣の魔法使い<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/21(土) 23:21:52 ID:aAQ2XBK60<>おつ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:32:36 ID:o4a2xC6oO<>乙

……ミセリ?<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/21(土) 23:34:01 ID:qe3tMJ4U0<>乙!
息つく間も無かったな。

しかし登場人物増えたなぁ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 01:20:33 ID:nhioAswc0<>おつおつ うぽつ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/22(日) 03:01:34 ID:2HxNmfWwO<>おパンつ

GETした剣で役立たzゲフンゲフンクーが強化されますように<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 04:52:59 ID:DTEUolhAO<>ツンとヒートかっこいいな!
鮫、きっとでかくて恐ろしいモンスターなんだろうけどAAが可愛いwww
ミセリ…名前出てたっけ?ネタバレ?それにしても意外だ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 04:55:23 ID:DTEUolhAO<>ごめん携帯から見たから見方間違えた
灰の魔術師=ミセリかと思ったんだ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 09:04:59 ID:peKW64zIO<>ヒートエンドでGガンしか思い付かん<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 12:44:59 ID:QOMA469M0<>乙
助けてくれたのは誰なんだ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 12:47:18 ID:7.2orIZE0<>>>963が粛清されました。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 15:24:02 ID:aMcD1uzA0<>ミセリはシャキンのお店の店員さん!!
まだAAでは出てないよね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/22(日) 16:46:15 ID:/LQvL6wc0<>ミセリ出てなかったっけ?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 08:07:15 ID:rMKDNAB.0<>                     , ‐ '  ̄ ー 、
                    /        \
                  /          ヽ
                  / /ヽ   /ヽ    l
                 ⊂⊃     ⊂⊃  l  いつまでも一緒だお♪
                  ヽ  (__人__)    ノ
                   ヽ、       , '
                    /`ー-ー ''"´ ゙i
      わんわんお♪   /        、 |
.                 /   ノ      l |
         _ -ー-、   (  ,イ        | l
     , -'l´     "'-   ヽノ |       |ノ
    /  l  /ヽ  /ヽ l    |        l
    l   l   (__人__) ,'    |    ,   l
    ヽ__/       ノ     l   ノ、   ゙、
   /⌒ヽ、     -'´    /   / ヽ、  ヽ
   l    )      ノ.    ノ   ノ   ゙i  ´ ⌒)
   `ヽ, ー'     `l )   (    ヽ,   ヽ、__,,-ー'
     ゙ー-、__(  ノ´     `ー--ー'<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 10:50:32 ID:pECf14B.0<>>>892
ツン盛りしてくれるなら是非<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 13:44:45 ID:Ibisdp3YO<>次回はこのスレ内に収まり切れなさそうだね
次スレに行くのかな<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/23(月) 17:09:37 ID:JaZWJGKI0<>>>967
いつか竜にならなきゃならんのかと思うとツライお<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 17:23:56 ID:Ne4ZQQpcO<>>>967 
このAA、精神病を思いだす<> sage<>sage<>2012/07/23(月) 19:42:54 ID:8vL.L9y.0<>おもろいわー<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/07/23(月) 21:58:22 ID:UpP2Bwqg0<>確かに、このスレ内には次話は収まらないと思うので、埋めてから次話投下しますかね
といってもまだ書きあがってないし、特にネタもないので、何か質問でもあれば適当に書いて頂ければ
答えたり答えなかったりします

ネタバレや答えない方が面白いものは(U^ω^)の出番ということで


あと残り10レスぐらいになったら前スレみたいなことやると思います<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/23(月) 22:30:11 ID:5wY9YPhwO<>(´・_ゝ・`)「3回(19・27・37話)も顔出ししてるのに、キャラ紹介ハブられた。正直ミセリとか言う奴が憎い」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 23:30:00 ID:7NZbVwh20<>>>974
お前・・・とんでもない黒幕だから仕方ないだろ・・・もうちょっと我慢してろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 23:34:46 ID:JjGhjkKk0<>デミタスデミタスルルルルルー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/23(月) 23:44:10 ID:EoXoTvlMO<>一人が複数のスペシャル持つことってないの?<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/23(月) 23:53:04 ID:zpVJtgDY0<>現在の道具屋。
もとい、村の様子を。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 00:44:38 ID:toMIQ4xo0<>そもそも魔力ってどんなんでしょうか
この世界では魔法が使える人はごく少数?<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/07/24(火) 01:02:24 ID:7TLaL2sc0<>
>>977

( ^ω^)「基本的には1つしか習得出来ない事になってるお」

( ^ω^)「習得出来ない理由は考えてな(∪^ω^)「わんわんお!」」

>>978

( ^ω^)「どうなってるんだおね? だいぶお店空けちゃってシューには悪い事してるお」

( ^ω^)「恐らく暇そうにしてるであろうミセリさんにでも聞いてみるお」

∩( ^ω^)∩「遠隔通話の魔法!」※本編では使えません

( ^ω^)「というわけで、ヴィップの様子はどうだお?」

【リ(’e’)】「おや、ブーンじゃないか。なに、こっちは相変わらず平和そのものじゃよ」

【リ(`・ω・´)】「バーボンハウスもぼちぼちだな。派手なクエストはないが、皆堅実にこなして活気はそこそこだ」

【リ(`・ω・´)】「司祭さんもまだ戻って来てないが、もうすぐ帰って来るって連絡はあったよ」

【リlw´‐ _‐ノvllw´‐ _‐ノv】「サンライズの方は無問題、我々がちゃんと店番してる。農具はまだ売れてないがね」

( ^ω^)「なるほど。特に問題なさそうだおね。ありがとだお。多分あと二話で帰るお」

( ^ω^)「あとヴィップは村じゃなくて町だお」

( ^ω^)「ド田舎だけどNE!」

>>979

( ^ω^)「魔力は体内にある精神エネルギーみたいな物だお。今考え(∪^ω^)「わんわんお!」」

( ^ω^)「強弱はあれど大体みんな持ってるお。魔法はごく一般的な概念だお」

( ^ω^)「でも、弱いと効果も期待出来ないから別の道を選ぶ人がほとんどだお。その辺は第二話参照だお」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 01:11:15 ID:r3U.kl/o0<>ヴィップの位置関係示した図ってあったっけ?
大陸の位置関係の図は見た覚えあるが<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 05:13:42 ID:NX1G8xAQO<>薬草パンとか薬草ラーメンとか薬草おにぎりとか出たけど文化的には和洋中ごっちゃなんだろうか。食事は見た感じ洋寄りな感じだけど、米(笑)はやっぱマイナーなんですかね?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 08:33:55 ID:JZp1057g0<>lw´‐ _‐ノv「ほう、米を馬鹿にするとは良い度胸だな。死で償え」<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 08:38:33 ID:1Cp6MGbYO<>この世界に銃ってあったっけ?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 12:36:30 ID:1zMlcn2o0<>ニゲット山のコボルドの死体はちゃんと片づけたの?<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/24(火) 16:12:59 ID:te7ZLaa2O<>次話まで少し間が空くなら、これを機会に最初から読み直そうかなー<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/24(火) 16:16:05 ID:tKg9srOY0<>>>985
ジャバウォックとかが片してくれていそう<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 17:24:15 ID:uqaDBFUc0<>ツンはAAカップなの?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 18:21:31 ID:x8WWPt4UO<>ツンの胸に成長の余地はもう無いの?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 19:13:20 ID:J3SH6H/U0<>>>989
着々と胸筋が発達しとるがな<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/07/24(火) 21:18:15 ID:bs/frpsU0<>
>>981

( ^ω^)「ヴィップの町の見取り図はないお」

( ^ω^)「ちょこちょこ位置関係表記してるけど、図に起こすと矛盾が起きそ(∪^ω^)「わんわんお!」」

( ^ω^)「取り敢えずサンライズが町の北よりの最東にあるお」

>>982

( ^ω^)「食事は洋寄りのイメージだおね」

( ^ω^)「個人的に、ファンタジーといったら西欧なイメージなので」

( ^ω^)「その割にはご飯やラーメンとか出るのは、イメージはあくまでイメージで適当(∪^ω^)「わんお!」」

>>984

( ^ω^)「銃はないお。多分、これから機工技術が発達すると、そこに行き着くお」

( ^ω^)「明らかにアニジャさんの技術がオーバースペック気味なのに、そこに行き着かないのは」

( ^ω^)「あの人の発想が残念だからだお」<>
◆5rua49HN2.<>sage<>2012/07/24(火) 21:20:49 ID:bs/frpsU0<>
>>985

( ^ω^)「片付けたお、多分、他のモンスターがむしゃむしゃと。>>987な感じだお」

( ^ω^)「基本的に町の近くとかでない限りは放置だお」

>>988-989

ξ( ^ω^)「そ──」

ξ ー )ξ(;^ω^)(これ以上口を開くときっと殺されるお……)






残りは質問というか、この後の話で使うと思う( ^ω^)が開発する新商品のアイデア(もしくは商品名)を募集します
お題的なものと捉えてもらえれば幸いです

  (∪^ω^)
  /     |
c( ,,O_UU_つ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/24(火) 21:29:36 ID:UIgFqD3I0<>>>992
揚げ薬草ピザ、バジルを薬草に置き換えて半分に折りたたんで揚げる
その日に食べるなら大丈夫そう<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 21:51:17 ID:J3SH6H/U0<>薬草タルト
薬草ビール<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 21:51:26 ID:JZp1057g0<>薬草アイスキャンデー
支えの棒にひんやりする魔法的なものが施してある
これからの夏には嬉しい一品<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/24(火) 22:10:05 ID:d3Kl3qzs0<>薬草餅
よもぎ餅みたいな感じで。

薬草モヒート
酒を飲みながら回復<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 22:22:51 ID:UHZLxJqcO<>薬草入浴剤
入れて浸かるとスッキリ爽やか体力回復。
あえて食べ物にこだわらないでみた。<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/24(火) 22:24:39 ID:U34.qs6o0<>薬草水
薬草の出汁を何らかの方法で苦みを消した水

何らかの方法は濾過かな?でも効果まで消えそうだな・・・<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/07/24(火) 22:46:31 ID:mMxAx6T.O<>(∪^ω^)っぽいぬいぐるみ

綿に薬草の匂いを染み込ませた可愛いぬいぐるみ
モンスターに投げると必ず逃げれるぞ<> 名も無きAAのようです<><>2012/07/24(火) 22:49:02 ID:1RQt5QSgO<>999<>