( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです
- 1 名前: ◆5rua49HN2.:2012/03/02(金) 22:57:57 ID:/qhQhP9c0
〜 ドクオの庵 〜
( ^ω^)「──という事があったんですお」
('A`)「うん」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
( ^ω^)「……それだけですかお?」
('A`)つ「うん? まあ、そうだな」(^皿^∪)
∩('A`)∩「俺からは特にない」(∪^ω^)
第十三話 静寂破るは叩扉の音
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 2 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 22:59:35 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「何ですかお、その素っ気無さは?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
('A`)「何ですかと言われてもだな、俺がそんな信心深いように見えるか?」
彼の名前はドクオさん。
巷では賢者と称される魔法使いで、僕の師匠に当たるが見た目は残念な人だ。
(∪^ω^)「わんわんお」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
( ^ω^)「そりゃ、ドクオさんは神に見放された容姿を持って生まれてらっしゃるけども……」
('A`)「うん、もう少しオブラートに包んで言おうな」
( ^ω^)「でも、結界に関してはスペシャリストですお?」
( ^ω^)「教会の結界がなくなってる事に気付かなかったんですかお?」
- 3 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:01:30 ID:/qhQhP9c0
僕は今、わんわんおと共にドクオさんの庵を訪ねていた。
先日の教会の件の話をするためだ。
しかしながらドクオさんの反応は極めて淡白なものだった。
本人が言う様に、教会とは関わりのない人だが、
結界に関しては本職なんだからもう少し興味を示してくれてもいいと思うのに。
('A`)「といってもなあ……、流石に結界の有る無しはある程度近付かねえとわかんねえし」
('A`)「あそこにあったのはごく普通の教会の結界だしで、わざわざ興味を持つほどでもなかったからなあ」
( ^ω^)「それはそうかもしれませんけど……」
一応、ドクオさんが言っている事は筋は通っているのだが、何だか素っ気無さ過ぎる気がする。
教会に興味はなくても、教会の結界の術式には興味を持ってくれると思っていたのだが、食い付きは悪い。
( ^ω^)「結界の術式は普通でしたけど、隠すのに教会の極秘事項な魔法使ってましたお?」
('A`)「ああ、あれだろ、柱に文字が浮かぶやつ」
( ^ω^)「お? 知ってたんですかお?」
- 4 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:03:00 ID:/qhQhP9c0
('A`)「まあな。一応、賢者と言われてるぐらいだからな」
ヒッキーさんは教会の極秘事項と言ってたのだが、それが使われている教会は各地にあり、
それなりの知識のある魔法使いなら知ってる人もいるらしい。
( ^ω^)「僕は初めて知りましたお」
('A`)「誰にでも気安く教えるような話でもないしな」
弟子の僕にぐらい教えてくれてもいいと思うのだが、ドクオさんが言わんとせん事もわかる。
一介の魔法使いが勝手に教会の結界を書き換える事はないだろうし、
もし書き換えの依頼があった場合でも、その際は教会の人間が付くだろうから知らなくても困らないだろう。
しかしながら、何となく腹立たしいような寂しいような気持ちになったので、わんわんおを放り投げておいた。
ガブリ
( ^ω^)ノ彡 (∪^皿^){゚A゚;) チョッ!?
- 5 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:03:29 ID:H/rPD9zU0
- 創作来たのか
- 6 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:04:21 ID:/qhQhP9c0
(;'A`)ヾ「お前なあ……」
( ^ω^)「それで、ドクオさんはどう思いますかお?」
つ∪^ω^)
恨みがましい目を向けてくるドクオさんの視線をスルーし、今回の事件に関するドクオさんの見解を聞く。
精霊の件は二次産物の様なものだが、結界が解除されていたのは確実に人為的な何かによって起こされた事件だ。
('A`)「知らん。物盗りか何かだろ」
( ^ω^)「何で教会なんかに泥棒入るんですかお。それに、中は全然荒らされてなかったんですお」
他の町の教会は知らないが、少なくともヴィップの町の教会は作りは質素だし、高価な物は何も見当たらない。
前の司祭様も私服を肥やすような人じゃなかったし、わざわざ教会に盗みに入る理由が思い付かない。
勿論、僕が知らない何かがあそこにあった可能性もあるのだが。
そもそも、何かが盗られたのかどうかもわかっていないのが現状だ。
ヒッキーさんは以前あそこに何があったのかは把握してないし、一見した所、教会の運営に必要な物はちゃんとあった。
('A`)「さてね。どこぞやの魔法使い見習いが結界解除の練習でもしたんじゃねえの?」
( ^ω^)「その理由、いくらなんでも適当過ぎませんかお?」
- 7 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:05:50 ID:/qhQhP9c0
明らかにこの話に気乗りがしていないドクオさん。
探究心を忘れた魔法使いなんて、薬草を売ってない道具屋みたいなものだ。
(;'A`)「その喩えがよくわからんが、俺に言わせれば逆にお前は首を突っ込み過ぎだ」
(;^ω^)「僕は別に好きで首突っ込んでるわけじゃないですお?」
僕としては依頼を受けただけで、その途中で色々な事に遭遇しているだけなのだ。
僕が何かやらかしたわけではない。
('A`)「とにかく、お前は本業をもっとがんばれよ」
(;^ω^)「そ、そっちもちゃんとがんばってますお?」
('A`)「結界の術式を一部消すくらい、誰だって出来るんだ。今の状況でいくら考えた所で真相はわからん」
(;^ω^)「それはそうですけども……」
('A`)「……この件は俺が調べておくから、お前は無闇に動き回るな。いいな?」
(;^ω^)「……ドクオさんが調べてくれるのなら、お任せしますお」
僕は完全には納得いってないものの、ドクオさんが関わってくれるのならと引き下がる事にした。
現状、漠然とし過ぎていて、僕では調査の方向を決め切れずにいたのでその方がいいのだろう。
- 8 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:07:20 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「じゃあ、もう1つの件ですけど」
('A`)「まだ何かあるのかよ……」
もう1つとは言ったが、先の教会の件に関連する事だ。
あの時あの場にいた女性、デレについての話である。
('A`)「それこそ全くわからんだろ」
( ^ω^)「あまりにもいいタイミングで来ましたし、あの子、何かしら知ってると思うんですおね」
あの時はしつこく詮索するのは諦めたが、彼女の素性や目的はやはり気になる。
未知の魔法を扱い、恐らくその実力も高いと思われる人だ。
ドクオさんなら少しは心当たりもあるのではなかろうか。
('A`)「旅の僧侶と名乗ったんだろ? 魔法使いならまだしも、教会関係にはあまり顔はきかねえよ」
( ^ω^)「おまけになかなかの美人でしたし、まかり間違ってもドクオさんの知り合いではないという事ですおね」
(;'A`)「うん、確かに知り合いじゃないんだが、そういう言い方する必要はないと思う」
ひとまずその件も記憶に止めておくとドクオさんが言うので、僕はこの辺でドクオさんの庵を辞する事にした。
- 9 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:07:20 ID:VFaDakY.0
- ようこそ支援
- 10 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:08:11 ID:axaovJpI0
- おお、こちらに!
- 11 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:08:38 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「じゃあ、今日はもう帰りますお。お騒がせしましたお」
('A`)「おう、気を付けて帰れよ」
(∪^ω^)「わんわんお」
('A`)つ「お前はもう少し俺に懐けよ」
(∪^皿^)
(;'A`)「うん、悪かった」
僕はドクオさんを威嚇するわんわんおを抱えて庵を後にした。
どうもドクオさんはここ最近の異変に対して楽観的というか、無関心に見えるのが気になるが、
実際に何かヴィップの町に危機が迫れば動いてはくれると信じている。
( ^ω^)「けど、竜騒動の時は気にしてたみたいだったのに、どうしてなのかおね?」
(∪^ω^)「わんおー?」
逆に考えれば、ドクオさんが無関心な内は大した危険はないのかもしれない。
それならばやはりこれは僕の杞憂なのだろうか。
- 12 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:09:52 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「……あれ? そういえば僕、結界が一部消されてたって話、ドクオさんにしたっけかお?」
消されたであっているのだが、僕は書き換えられたと説明した気もする。
どっちだったか思い出せないが、大差ないし多分僕が消されたと言ったのだろう。
( ^ω^)「まあいいお。さっさと帰って新商品の開発でもするお」
(∪^ω^)「わんおわんお!」
僕は天気もいいのでわんわんおの運動がてら、走ってヴィップの町に戻る事にした。
前は数時間の歩きでバテていたわんわんおだが、日課の僕のランニングに付き合う内に、
それなりの体力は付いた様だ。
正確には、取り戻したと言った方が正しいのかもしれないが。
それでも、時々ペース配分が出来なくてバテたりするのは相変わらずである。
( ^ω^)「よし、ペース上げるお! 付いて来れるかお?」
(∪*^ω^)「わんおわんお!」
僕達は穏やかな陽射しの下、走ったり休憩したりしながらヴィップの町へ帰り着いた。
- 13 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:10:39 ID:/qhQhP9c0
〜 魔法道具屋サンライズ 数日後 〜
( ^ω^)「これをこうして……そしてこう……」
川 ゚ -゚)つ⊂(^ω^∪)
( ^ω^)「で、ここをこうして……」
⊂川 ゚ -゚) (^ω^∪)つ
( ^ω^)「最後にここをこうして……完成だお!」
∩川 ゚ -゚)∩∩(^ω^∪)∩
( ^ω^)「……何やってんだお、バイト」
川 ゚ -゚)「仕事」
つ∪^ω^)
( ^ω^)「いや、明らかにサボってただろ?」
- 14 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:11:22 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「失敬な。では見せてやろう。私の仕事の成果を」
「お手」 「わんお!」
川 ゚ -゚)つ⊂(^ω^∪)
「おかわり」「わんお!」
⊂川 ゚ -゚) (^ω^∪)つ
∩川 ゚ -゚)∩「ちん( ^ω^)「それ以上やらんでよろしい」
これといって用事も何もない普通の日、僕はクーとわんわんおと共にサンライズにいた。
本来、僕が店にいる時はクーに店番を頼む必要もないのだが、今日は特別である。
ヒッキーさんから聖水を仕入れる事が出来たので、僕はその商品化に忙しいのだ。
しかしながらクーはいかにも暇そうにして全く仕事をしている様子はない。
川 ゚ -゚)「いや、客が来ないんだし仕事のしようもないだろ?」
( ^ω^)「掃除したり片付けたり商品の埃払ったり色々あるお?」
川 ゚ -゚)「それ、全部掃除だろ。掃除しかやる事ないのか」
- 15 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:12:36 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「だからって、わんわんおに芸を仕込むのは仕事じゃねえお」
川 ゚ -゚)「招き犬の愛想が良くなったら更に集客アップが望めるかもしれないだろ?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「ああ、もういいお。それよりこれ、目立つとこに並べてくれお」
川 ゚ -゚)つ[]「これが聖水か。ただの水にしか見えんな」
無造作に1本の瓶を掴み上げ、まじまじと中を覗くクー。
商品はもう少し丁寧に扱うようにして欲しいものだ。
( ^ω^)「見た目も匂いも味も普通の水と変わらんお。つーか、クーは聖水知ってるんだお?」
川 ゚ -゚)「儀式用のはな。こんな小瓶に詰めた物を間近で見た事はなかったからな」
川 ゚ -゚)「というか、聖水は飲めるのか?」
( ^ω^)「浄化用のは飲めるお。攻撃用に清めの力を強めた物はヤバいかもしないけど」
- 16 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:13:28 ID:/qhQhP9c0
クーは興味深げに頷きながら、聖水を棚に並べて行く。
用途に分けて何種類か違う瓶に詰めてあるので、値札をいくつか書いてクーに渡す。
川 ゚ -゚)「意外と安いんだな」
( ^ω^)「いくら便利でも、あんまり高いと消耗品は売れないお」
実際、高い道具は使う側に躊躇いが生まれる事があると前に冒険者の人から聞いた事がある。
その僅かな逡巡が生死を分けるかもしれないので、出来れば気軽に使って欲しいものだとは思う。
川 ゚ -゚)「その辺は道具屋が心配する話じゃないんじゃないか? 冒険者の自己責任の範囲だろ」
( ^ω^)「お客さんあってのお店だお」
( ^ω^)「なるべくならお安くお届けして、気軽に使ってまた買ってくれるのが望ましいお」
川 ゚ -゚)「高いもの買わせて、気軽に使ってもらって、また売って、私の時給を上げるのが理想的じゃないか」
( ^ω^)「お前、どうしようもねえな……」
(∪^ω^)「わんおー」
クーの意見は極端だが、商売人としては需要を見極め、可能な限り利益を高めるのは間違っていない。
その辺りは商売人の腕の見せ所と言ってもいいだろう。
しかしながら、僕はそこまでがめつく儲けたいわけじゃないので、真っ当に暮らしていけるだけの稼ぎがあればいいのだ。
- 17 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:15:07 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「派手に儲けて遊んで暮らそうとは思わないのか?」
( ^ω^)「魔法道具屋やってる事自体、僕にとっては道楽というか楽しい事だお」
多分、お金を稼ぎたいのなら魔法使いとしてどこかに仕官するか冒険者にでもなった方がいいだろう。
自分の実力を過大評価するつもりはないが、客観的に見ても2人の師のお陰で普通よりは魔法に長けていると思う。
川 ゚ -゚)「お前はいいとしても、私は早いとこお金稼いで借金返してまた旅に出たいんだが」
( ^ω^)「真面目に働けばすぐ返せるぐらいの額だお」
川 ゚ -゚)「いや、結構な額だろ、これ。全然お金たまらないし」
そうは言うが、僕が低賃金でクーをこき使っているわけではない。
僕もシャキンさんも、標準的な給金を渡している。
たまらないのは単にクーが使ってしまうからだ。
川 ゚ -゚)「そりゃ、生活費はかかるだろ」
( ^ω^)「かかるけども、はっきり言ってクーの場合はかかり過ぎてるお」
- 18 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:16:53 ID:/qhQhP9c0
クーはだいぶこのヴィップの町に馴染んで来たが、馴染んで来た故に人付き合いが増えている。
冒険者やツンのような友達とかと、お酒飲んだりお茶したり、交遊費的な遊びに使うお金も増えているのだ。
それでも普通に生活は出来るのだろうが、それから更に借金を返したいのならある程度は我慢すべきだろう。
川 ゚ -゚)「だって、楽しいじゃないか」
( ^ω^)「そりゃそうだろうけども……」
クーのこれまで生きてきた環境を思えば、自由に飲み食いし、
冒険者や友達と親交を深めるのはとても楽しいと感じるのはわかる。
だからといって無計画にお金を使ってたら、いつまで経っても借金は返せない。
いっそ給料から天引きした方がクーの為にはなるのかもしれない。
川 ゚ -゚)「時給上げてくれれば万事解決じゃないか」
( ^ω^)「……はぁ」
僕は大きな溜め息を吐き、この話を強制的に終わらせた。
自覚しない事にはいくら僕がお小言を言っても聞き流されるだけだろう。
( ^ω^)「それ貼り終わったら、あっちの棚の掃除しといてくれお」
- 19 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:18:23 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「結局掃除なんだな」
( ^ω^)「不服かお?」
川 ゚ -゚)「不服というかだな、こないだから掃除ばっかりじゃないか」
( ^ω^)「あれは教会の掃除だお? うちの掃除はまた別だお」
先日、ヒッキーさんと約束した掃除の手伝いに派遣するバイトはクーに頼んだ。
ツンの危惧も合ったので、ヒッキーさんとクーを引き合わせてみたのだが、
これといった反応はどちらにも見られなかった。
川 ゚ -゚)「あれは大変だったんだぞ。一生分の掃除はしたと思う」
( ^ω^)「そりゃ、クーが今までまともに掃除した事なかっただけだお」
( ^ω^)「そこまで汚れたり傷んだりしてるのはなかったお」
一応、僕も少し手伝いに行き、高い所の埃を払ったりとか魔法で手伝いをしたのだ。
作りはしっかりしている建物で、補修が必要な箇所もなかったので掃除は意外と早く終わらせる事が出来た。
- 20 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:19:54 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「とにかくあれは大変だった。故にあの分は特別手当が出てしかるべきだと思う」
( ^ω^)「次、あっちの棚も頼むお」
川 ゚ -゚)「聞けよ……」
ぶつぶつと文句を言いながらも、クーは言われた通りに棚の掃除を始めた。
掃除慣れしてないから仕方がないのかもしれないが、埃の落とし方や汚れの拭き方に少々甘い部分が見られる。
川 ゚ -゚)「終わったぞ。次はどこの掃除だ?」
( ^ω^)「掃除はもういいお。店番頼むお」
川 ゚ -゚)「やれやれ、客も来ないのに店番か」
( ^ω^)「その内来るから!」
僕は再びクーに店番を頼み、新商品の開発に取り組む事にする。
聖水も手に入ったし、これを絡めた新商品を考えてみるのもいいだろう。
( ^ω^)「……」
- 21 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:21:24 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「薬草聖水とか安易な発想は止めろよ?」
つ∪^ω^)「わんおー?」
(;^ω^)「あ、安易じゃねえお。つーか、人の心を読むなお」
考えてた事をずばり当てられて動揺したが、決して安易な考えではないと力説したい。
聖水に薬草を溶け込ませれば、喉越し爽やかで飲みやすい薬草が出来るのではなかろうか。
川 ゚ -゚)「聖水は無味なんだし、ただの苦い水にしかならないだろ」
(;^ω^)「何か甘みを足せば大丈夫だお」
そうすれば味の方はクリア出来るが、多少かさばるのが問題かもしれない。
聖水の効果を為すために、特殊な瓶に入れる必要もあるだろうし、少々コストがかさむ。
川 ゚ -゚)「それ、薬効が上がるならともかく、大差ないなら水でもいいだろ」
(;^ω^)「……段々突っ込み方がツンに似て来たおね」
なかなか厳しい所を指摘するクーだが、拳が飛んでこない分、ツンよりはマシかもしれない。
わざわざ薬草に聖水を使うメリットがほとんどないのは確かだ。
- 22 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:22:30 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「どっちかというと、聖水は武器に転用する方が可能性はあるんじゃないか?」
( ^ω^)「うん、モンスターに対する切れ味を高めるのは普通に出来るお」
それは本来の用途の1つなので、僕が加工するまでもなく出来る事だ。
武器を聖水に塗布すれば魔力を持つモンスターに対して効果が上がるのは前にも説明した。
( ^ω^)「ただ、僕は神聖魔法使えないから、効果を上げるのは難しいんだお」
これも前に話したことだが、僕がやってるのは効果の維持だ。
聖水自体の効果を高める事は出来ないと考えるべきである。
川 ゚ -゚)「効果を高めるのは無理としても、使いやすくは出来ないのか?」
液状のものを上手く武器の刃だけに塗布するのはなかなか難しいのではないかとクーは言う。
( ^ω^)「武器によってはそうかもしれないお」
どちらかといえばこの使い方の場合、前もって使っておくものなので、緊急時に使用する事は考えられてないが、
前もって使う場合でも、武器の形状によっては塗布し辛い物はあるだろう。
- 23 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:23:43 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「鞘の中で聖水に浸せるものとかどうだろうかお?」
川 ゚ -゚)「悪くないかもしれんが、それ、武器ごとにオーダーメイドになるんじゃないか?」
武器の鞘に聖水を注いで、武器を収めれば満遍なく聖水が武器に付着するので使い勝手はいいかもしれない。
問題はクーが言う様に、武器ごとに合う鞘から作るか、既存の鞘を改造する必要があるのでかなり手間はかかる。
川 ゚ -゚)「というか、そこまで行くと武器屋の仕事だろ」
(;^ω^)「それはそうかもしれんお」
(∪^ω^)「わんわんおー」
いいアイデアだと思ったが、確かにそれだと魔法道具屋の範疇を越えるかもしれない。
もう少し汎用的に扱える物を考えるべきか。
川 ゚ -゚)「武器に塗布するなら、液状ではない方が使いやすいかもしれないな」
( ^ω^)「ふむ……それは一理あるお」
大きなバケツみたいなものに聖水を入れて武器を浸すなら液状の方が早いだろうが、
クエストに携帯してキャンプ時に塗ったりするのなら、固形の方が使いやすいかもしれない。
武器によっては布に浸してから塗るものもあるぐらいだし。
- 24 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:25:54 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「いっそクリーム状とかの方が塗りやすいのかもしれんな」
( ^ω^)「聖水クリーム……手についたりするのを考えると良くなさそうだおね」
聖水は人体に害があるものではないが、濃度が高いものだと、特に魔力の高い人間は軽い痛みを感じる事もある。
魔法の発動中で高い魔力を放出している場合なら火傷位のケガはするかもしれない。
川 ゚ -゚)「それも武器の形状次第かな」
( ^ω^)「折角だから甘くして、食べられる聖水クリームにしたら売れるかもしれないお」
川;゚ -゚)「いや、武器に塗るものを食べるのはちょっと……」
1人で考えるよりは、誰かと意見を出し合いながらの方がアイデアが浮かぶ様だ。
まだ明確な商品としての形は決まっていないが、何か作れそうな気もする。
( ^ω^)「よし、ちょっと教会に行って来るお」
川 ゚ -゚)「ん? 何か用事か?」
( ^ω^)「ちょっと神聖魔法について聞いてくるお。聖水を有効に活用する手段を増やせないか相談も兼ねてだお」
- 25 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:27:10 ID:/qhQhP9c0
川 ゚ -゚)「店番はどうするんだ?」
( ^ω^)「いや、そのためにクーがいるお?」
_,
川 ゚ -゚)「この客が来ない店にわんわんお共にじっと篭ってろと?」
(;^ω^)「だから客はその内来るお!」
不服そうな顔をしながらも、バイトとしての立場はわきまえているのだろう。
クーは渋々ながらも僕を送り出す。
川 ゚ -゚)「お前が帰ってくるまで客ゼロだったら時給倍な」
つ∪^ω^);;
(;^ω^)「何でだお。暇ならむしろ下がるお」
無茶苦茶な事を言うクーをあしらい、店を出る。
今日も外はいい天気だ。
( ^ω^)「さて、行くかお」
ミ(∪^ω^)「わんわんお!」
- 26 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:28:12 ID:/qhQhP9c0
(;^ω^)「お? わんお、いつの間に外に出て来たお?」
どうやらわんわんおは僕について外に出て来たらしい。
飼い主思いで愛いやつだが、暇潰しの相手が消えたクーは今頃どんな顔をしてるだろうか。
( ^ω^)「お前はお留守番……まあ、いいお。一緒に行くお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
遠出をするわけではないが、店の中でじっとしているよりは外を歩いていた方がわんおも楽しいだろう。
僕はわんわんおを連れて教会に向かう。
グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「まだお散歩の時間じゃないからあんまり走らないでくれお」
のんびり歩く僕の周りを催促する様に走り回るわんわんお。
僕の方を見ながら走ってると、その内確実に転ぶ事が予想出来る。
グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「せめて前を見て──」
- 27 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:29:50 ID:/qhQhP9c0
(∪;^ω^)「わんお!?」
ズサーッ
o∩∩ (´´
∩ノ ノ (´⌒(´
((つ ノ⊃≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ ̄(´⌒(´⌒;;
(;^ω^)「あー、やっぱりかお……」
(∪TωT) キューンオ…
僕は勢いよく転んでしまったわんわんおを抱き上げ、再び歩き出す。
教会まではもうすぐそこだ。
(-_-)「やあ、ブーン君、それにわんわんお君もこんにちは」
( ^ω^)「こんにちはですお、ヒッキーさん」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
- 28 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:30:53 ID:/qhQhP9c0
ヒッキーさんは教会の外で草木に水やりをしていた。
庭と呼べるような囲いは存在していないが、教会の周囲には花壇などもいくつかある。
数日前までは雑草の生い茂ったひどい有様だったが、今は綺麗に抜き取られている。
(-_-)「どうしたんですか? 聖水に何か問題がありましたか?」
ヒッキーさんとは今朝方、聖水を届けてくれた時にも会った。
要らぬ心配をさせてしまったが、仕入れた聖水に問題はなかったと思う。
(-_-)「それは良かった。それで……」
( ^ω^)「ちょっとお話を聞きに来ただけですお」
僕は聖水について、それと神聖魔法についての話を聞きに来たと、
新商品を考えていた事も踏まえてヒッキーさんに説明する。
(-_-)「なるほど……。しかし、私は他人に教えられるほど詳しいわけではないですよ?」
( ^ω^)「一般的な事でかまいませんお。勿論、お時間があればですけど」
(-_-)「そのくらいで良いのなら、いくらでも聞いてください」
- 29 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:31:55 ID:/qhQhP9c0
僕はヒッキーさんに案内され、教会の東側に向かう。
教会内ではなく、外で話そうという事らしい。
その方がわんわんおにはいいんじゃないかという、ヒッキーさんらしい細やかな配慮だ。
( ^ω^)「あ、テーブルと椅子、外にもあったんですね」
(-_-)「天気のいい日はこうやって外でお茶を飲むのもいいかと思いまして」
お茶を用意するからと、教会の中に入って行くヒッキーさん。
僕は椅子に座り、わんわんおを地面に下ろした。
( ^ω^)「僕はちょっとヒッキーさんとお話してるから、この辺で遊んでてお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕の言葉を理解したのかどうかわからないが、わんわんおは全速力で教会の裏手に向かって駆け出して行った。
あまり離れ過ぎるのはよくないと思いかけたが、わんわんおは教会を一周して反対側から戻って来る。
( ^ω^)「おー、だいぶ速くなったおね」
ε三(∪^ω^)「わんわんお!」
- 30 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:33:05 ID:/qhQhP9c0
そのままノンストップで駆けて行くわんわんおを見送ると、ヒッキーさんが教会から出て来た。
お茶のカップ以外に器がある所を見ると、わんわんおの分のお水まで用意してくれた様だ。
(-_-)「随分と元気な子ですね」
( ^ω^)「元気なのが取り柄ですお。でも、すぐバテちゃったりしますけど」
体力はついて来たがペース配分が上手くないというか、少しお馬鹿なとこがあるので、
散歩の途中で歩けなくなる時もしばしばだ。
その姿は見てて面白かったりするので、それはそれで楽しくもあるのだが。
§
(-_-)つq■「粗茶ですが、どうぞ」
§
( ^ω^)q■「いい匂いですお。いただきますお」
僕はヒッキーさんが淹れてくれたお茶を飲み、まずは聖水について尋ねる。
お茶はヒッキーさんが元住んでいた地方の物だろうか。
飲み慣れない味だったが、なかなかに美味しかった。
(-_-)「聖水の作り方を聞きたいわけではないのですよね?」
( ^ω^)「そこは神聖魔法が使える前提ですから、僕が知っててもあんまり意味ないですおね」
- 31 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:34:22 ID:/qhQhP9c0
僕はいくつかの基本的な事と有効期限など、
これまで明確には理解していなかった事をヒッキーさんに教えてもらった。
昔の司祭様がいた頃は僕がまだ年若く、今ほど魔法道具屋として商品について考え切れなかった事もあり、
聞く機会を逃していたのだ。
( ^ω^)「なるほどですお。となると、活性化に精霊魔法を使うのもありですかおね」
(-_-)「それほど反発は起こらないと思いますが、精霊を止めておく手間はありますね」
先ほどは他人に教えられるほどは詳しくないと言ってたヒッキーさんだが、それは謙遜だった様だ。
神聖魔法以外の魔法の基本も理解されてるらしい。
( ^ω^)「小瓶に入れて飛び道具に──」
o(∪^ω^)
(_ u u
( ^ω^)「って、どうしたお?」
いつの間にか戻って来ていたわんわんおが、じっと座って一点を見詰めていた。
外では特に忙しないわんわんおにしては珍しい姿だ。
- 32 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:35:17 ID:/qhQhP9c0
リ(-_-)
( ^ω^)「……」
その視線の先にはヒッキーさんの姿がある。
別段変わった様子はない……と判断しようとした時、どこかに違和感を覚えた。
リ(-_-)「どうされました?」
( ^ω^)「ヒッキーさん……髪伸びてませんかお?」
スッ…
"(;-_-)∩「え、髪?」
僕の言葉に慌てて頭に手を伸ばすヒッキーさんだが、いつの間にか違和感は消えていた。
(;^ω^)「あれ? 気の所為だったようですお」
(;-_-川「そ、そうかい? それなら──」
(;゚ω゚)「って、気の所為じゃねええええッ!」
今度はヒッキーさんの顔の反対側に先ほどより大量の髪が伸びている。
明らかに見間違いと呼べるレベルを超えており、はっきりと見る事が出来た。
- 33 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:36:04 ID:/qhQhP9c0
(;-_-川「え、何?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(;-_-)三川д川 ヒャッ!?
(;^ω^)「あ……」
気付かぬうちにヒッキーさんの側まで近付いていたわんわんおが吠えると、ヒッキーさんから何かが飛び出す。
何事かと身構えようとしたが、よく見ると僕はその姿に見覚えがあった。
川д川
(;^ω^)「教会の精霊さんかお?」
ヒッキーさんから出て来たのは、先日悪霊を浄化して再び教会に憑いてるはずの精霊の姿だった。
何故そんな所から出て来るのかと思ったが、当のヒッキーさんはそれほど驚いた様子はない。
(-_-)「それがどうも彼女、僕に憑いちゃったみたいで……」川д川〜 ヾ(^ω^∪)
(;^ω^)「へ?」
どうやらあの最後の浄化の瞬間に触れていたのが原因ではないかとヒッキーさんは言う。
- 34 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:37:29 ID:/qhQhP9c0
(;^ω^)「それって、大丈夫なんですかお?」
川д川〜
(-_-)「今の所、これといった問題はないと思います」
質問してから思い出したが、精霊が人に憑く事はごく稀にある。
ある程度高位の精霊である場合が多いが、家系的なものだったり、単純に気に入られたり、その逆に呪われたりでだ。
〜川д川
(-_-)「呪われてはいないと思いますが……」
( ^ω^)「あの状況ならそうですおね。気に入られちゃったんでしょうね」
そんな単純な話でもないのだろうが、あの時、悪霊だけとはいえ浄化しようとした事で精霊の存在が薄くなり、
同時に教会との繋がりも薄くなったので憑く先が変わったのかもしれない。
川|;;;;;川
(|ii-_-)「時々、悪霊だった時の感覚が抜けてないのか、鬱な気分にさせられる時がありますが」
(;^ω^)「それ、若干呪われてませんかお?」
- 35 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:38:29 ID:/qhQhP9c0
- 〜川д川
(-_-)「僕としては、丁度よくもあるんですけどね」
( ^ω^)「お? どういう事ですかお?」
(-_-)「先日、僕が使ったスペシャルは覚えてますか?」
( ^ω^)「はい、あの光の壁みたいなやつですおね」
(-_-)「実は僕のスペシャルの手順って、感情なんですよ」
感情を手順とするスペシャルは、手順としてはそれなりにメジャーな部類に入る。
もっとも一般的な手順である精神統一も広義ではこれに当たる。
精神統一は一切の感情を消し、集中するものだが、それとは違い、
ある1つの感情だけを膨らます事で魔法の威力を上げるのだ。
怒り悲しみとか、その他にも漠然とした高揚であったりとかその種類は少なくない。
ただ、手順として容易な分、スペシャルとしての増幅力は控えめだったりする。
(-_-)「で、僕のスペシャルはネガティブな感情を元にしてます」
(;^ω^)「また微妙なとこをスペシャルにしてますおね」
- 36 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:39:30 ID:/qhQhP9c0
ヒッキーさんのは昔からマイナス思考過多な所があったのでそれを選んだらしい。
使う為には嫌な思いをしないといけなそうで、僕ならちょっと敬遠したいなと思う。
(-_-)「僕にはあってるみたいなんですけどね」
確かに、後手で回復させたり払ったりする魔法には向いてるかもしれないとは思う。
先日の件でも、僕が危機に陥ったから焦ったりしてマイナス方向の感情が強まったのだろうし。
( ^ω^)「まあでも、平時では明るく楽しく過ごして欲しいとは思いますお」
川д川〜
(-_-)∩「そうですね。僕もこの子に、そういう楽しい事を教えてあげたいと思いますよ」
精霊は微笑むヒッキーさんの中に吸い込まれるように消えていった。
何とも奇妙な関係だが、この様子なら危険はないだろうと思う。
( ^ω^)「何かあったら相談に乗りますお。精霊の話なら少しは知識ありますし」
(-_-)「その時はよろしくお願いしますよ」
( ^ω^)「しかし、まだあんまりその事は言いふらさない方がいいかもしれませんおね」
(;-_-)「そうですね。呪われた司祭と誤解されそうですし」
- 37 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:40:30 ID:/qhQhP9c0
憑いているのは精霊なのだが、見た目の雰囲気が少々暗過ぎる。
とはいえ、元は教会に憑いていた精霊だ。
色々あって荒んだのだろうが、時間が経てばまた変わって行くのかもしれない。
( ^ω^)「そういえばヒッキーさんはあの女性、デレって人について何か知ってますかお?」
(-_-)「あの時の女性ですね。残念ながら私は何も……」
( ^ω^)「やっぱ教会関係者って事以外はわからないですおね」
(-_-)「……いや、彼女は恐らく教会、ニューソク正教の人間ではないと思います」
( ^ω^)「お?」
ヒッキーさんの言葉に首を傾げてしまったが、よくよく考えれば神聖魔法を使う、
イコール教会関係者と決まったわけではない。
(-_-)「ニューソク大陸でもっとも広まっているのはニューソク正教ですが」
(-_-)「それ以外の宗教がないわけじゃないですからね」
信仰対象が神とは限らず、また神の場合でも別の神であったりと、宗教的な考え、団体はいくつも存在する。
ニューソク正教ほど大きな組織は他にないが、他の団体に所属する僧侶が神聖魔法を使っても不思議はない。
- 38 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:41:23 ID:/qhQhP9c0
(-_-)「そういう事です」
( ^ω^)「そうなると、彼女が何者か特定するのは難しそうですおね」
(-_-)「何をしにここに来たのかもわかってませんしね」
( ^ω^)「結局、何か無くなってた物とかあるかどうかもわからないんですおね?」
(-_-)「ええ。ただ、本部に報告は出しましたので、その内査察に来るかもしれませんが」
ドクオさんとも話したことだが、現状ではわからない事だらけで彼女の事を追うのは難しそうだ。
僕は、何かしら気付いた事があったら教えて欲しいとヒッキーさんに頼んでおいた。
(-_-)「わかりました。……僕としても、1つ気になってる事もありますので」
( ^ω^)「気になってることですかお? それは……」
(-_-)「ちょっとあやふやですし、恩人を無闇に詮索するのも気が引けるので、確証を得たらお話します」
気にはなったが、それ以上の追求はせずにヒッキーさんにお任せする事にして、僕は席を立った。
少々長くお邪魔し過ぎたかもしれない。
ヒッキーさんも教会の整備等、まだまだやる事があるだろうから、そろそろ辞する頃合であろう。
- 39 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:42:32 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「お話ありがとうございましたお。そろそろ帰りますお」
(-_-)「大したもてなしも出来なくてすみませんね」
( ^ω^)「いえいえ、お茶美味しかったですお」
(∪^ω^)「わんわんお」
(-_-)「また気軽にお越しください。お茶ぐらいならいつでもご馳走致しますので」川д川〜
( ^ω^)ノシ「またですお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕は一礼し、教会を後にした。
色々と役に立つ話も聞けたので、また新商品の開発に取り組めそうだ。
( ^ω^)「しっかし、あの精霊には驚いたおね」
(∪^ω^)「わんおー」
- 40 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:43:54 ID:/qhQhP9c0
( ^ω^)「わんおはよく気付いたおね。やっぱ犬だからそういうのに鋭いのかおね?」
(∪^ω^)「わんお」
( ^ω^)「でも、あれは悪い精霊じゃないから、追い回したりしたら駄目だお?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕はわんわんおと共にのんびりとサンライズまで歩いて帰った。
( ^ω^)ノ「ただいまーだお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
_, ,_
川 ゚ -゚)「……おかえり」
サンライズのドアをくぐると、出迎えてくれたのはこれまでにないほどの仏頂面をしたクーであった。
どうやら相当ご機嫌斜めのようである。
(;^ω^)「……えっと、ひょっとしてお客さん全く来なかったのかお?」
- 41 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:45:31 ID:/qhQhP9c0
- _, ,_
川 ゚ -゚)「……いや、来た」
(;^ω^)「そうかお。そりゃ良かったお」
_, ,_
川 ゚ -゚)「良くない。来たっていってもたった1人だぞ?」
(;^ω^)「まあ、ゼロよりは……」
_, ,_
川 ゚ -゚)「お前けに売れたのが薬草1つ」
(;^ω^)「何も売れないよりは……」
_, ,_
川 ゚ -゚)「客ゼロなら時給倍だったのに、よりにもよって1人かよ」
(;^ω^)「いや、その話は了承したわけじゃねえお」
_, ,_
川 ゚ -゚)「おまけにわんわんおまで私を見捨てて行くし」
(∪;^ω^)「わんわんおー……」
クーの怒りは収まる気配を見せず、矛先がわんわんおにまで向けられる。
正直な話、客がいなかったらのんびりしてもらっててかまわないのだが、きっと根が真面目なのだろう。
暇な時にやる仕事を探すが見付からず、フラストレーションが溜まっていったものと思われる。
- 42 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:46:51 ID:/qhQhP9c0
(;^ω^)「悪かったお。だから機嫌直してくれお」
(∪;^ω^)つ「わんおー……」
. _, ,_
(゚- ゚川 プィッ
取り付く島もないクーに、僕は諦めてカウンターに着く。
この後も店番を頼もうと思ったが、そんな空気ではなさそうである。
_, ,_
川 ゚ -゚)「そもそもこんなに客来ないなら、私も連れて行けよ」
(;^ω^)「だから、来ないわけじゃないお。現に1人来たんだお?」
_, ,_
川 ゚ -゚)「午前中からずっと店開けてて1人だぞ? 店としてそれでいいのか?」
(;^ω^)「聖水も並べたし、その内ドカーンとお客さん来るお!」
(∪^ω^)「わんお!」
_, ,_
川 ゚ -゚)「ドカーンとなんて来るわけ──」
- 43 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:48:31 ID:/qhQhP9c0
< ドカーン!
(;゚ω゚)「うぉッ!?」
突如鳴り響く轟音と共に、跡形もなく吹き飛ぶ店のドア。
僕は立ちこめる煙の中、状況の掴めぬままに杖を手に臨戦態勢を取った。
川 ゚ -゚)「……ホントにドカーンと来たな」
(;^ω^)「こういうドカーンは想定外だお。つーか危ないから下がってろお」
僕は足元で身構えていたわんわんおをクーに預け、今は亡きドアの方に向かう。
薄れて行く煙の先に見える何か、それは……
(~~{ ヽ
(;^ω^)「人……?」
そこには、フードを目深に被った1つの小さな人影があった。
第十三話 静寂破るは叩扉の音 終
- 44 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:49:57 ID:/qhQhP9c0
十三話は以上です
さる復活して面倒そうだし、のんびり投下したいのでこちらをお借りすることにしました
よろしくお願いします
次話は書けてるので最短で明日かなあと
支援とか感謝です
- 45 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:50:27 ID:H/rPD9zU0
- おっつ
- 46 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:51:31 ID:lCWe.bV20
- 乙ー
- 47 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:51:59 ID:VFaDakY.0
- 乙
- 48 名前:名も無きAAのようです:2012/03/02(金) 23:53:22 ID:Cvtn.o2gO
- おつでした!
- 49 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 00:31:00 ID:efR7AQkUO
- 移動したのね、乙です
- 50 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 01:23:04 ID:2JIjybPA0
- こっちきたのか
おつおつー
- 51 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 09:17:53 ID:6KmN6YLY0
- 乙乙。創作板に良作増えて探すのが楽だ
- 52 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 11:07:26 ID:IopaM2/cC
- 現行で一番好きなブーン系だ
乙です
- 53 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 21:47:22 ID:I5OLqIBk0
- 乙
しかしマンネリしてきたな
- 54 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:06:57 ID:7W2X0TnMO
- 乙
相変わらずわんわんおはかわいいなあ
- 55 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:11:34 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「えっと、どちら様ですかおね?」
(~~{ ヽ「……」
川 ゚ -゚)「知り合いか?」
( ^ω^)「いや、僕の知り合いに、ここまで力強くドア叩く人いないと思うお」
(~~{ ヽ「……………た」
( ^ω^)「お?」
(~~{ ヽ「見付けました、姫様!」
川 ゚ -゚)「……ヤベ」
( ^ω^)「おい、お前か? お前の知り合いだな?」
第十四話 忠義の剣は戦場に踊る
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 56 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:12:51 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「このドア結構高いんだお? クーの知り合いはなんつーことしてくれるんだお?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
(゚- ゚ 川「シリアイ? ナンノコトダ?」
彼女の名前はクー。
新米冒険者だが僕に借金がある為、普段はサンライズのアルバイトもやっている。
(∪^ω^)「わんおー」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
(~~{#ヽ「姫様から離れよ、下郎!」
この人は謎の襲撃者。
いきなりサンライズの店をぶち壊してくれた迷惑極まりないやつだが、どうやらクーの知り合いのようだ。
( ^ω^)「とぼけんなお。明らかにお前の事知ってる風じゃねえか」
- 57 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:14:56 ID:ErvSmjSo0
(゚- ゚ 川「知らんよ。大体、私は冒険者でアルバイトであって姫じゃない」
(~~{#ヽ「ちょっと、姫様から離れよと言っているのがわかりませんか?」
( ^ω^)「じゃあ、誰に向かって姫って言ってんだお?」
川 ゚ -゚)「それは……あれだ……ほら……」
川 ゚ -゚)「わんわんおにだろ?」
つ∪;^ω^)「わんお!?」
(;^ω^)「何でそうなるんだお」
川 ゚ -゚)「いや、かわいいじゃないか、わんわんお」
つ∪;^ω^)ノシ ジタバタ
(;^ω^)「かわいいけど、わんおは男の子だお」
(~~{ ヽ「あの、聞いてますか? ちょっと……」
川#゚ -゚)「うるさい! 少し待ってろ。それと、私の事はクーと呼べ! わかったな?」
- 58 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:16:52 ID:ErvSmjSo0
(~~{ ヽ「え!? しかし姫さ──」
川#゚ -゚)「クー!」
(~~{;ヽ「は、はい、クー様、あの……」
川#゚ -゚)σ「ちょっと向こうで座って待ってろ!」
クーに言われるまま、とぼとぼと店から遠ざかり、体育座りをする襲撃者。
その姿は何だか哀愁を誘う。
川 ゚ -゚)「で、話の続きだが、あいつは一体何者なんだろうな?」
(;^ω^)「いや、120%お前の知り合いじゃねえかお」
この期に及んでとぼけようとするクーだが、先のやり取りで知り合いである事は確定だ。
大方、クーを連れ戻しに来た人間といった所だろう。
そうなるといくつか疑問が浮かぶのだが、その最たるものが……
(;^ω^)(何でここがわかったんだお? ひょっとして解呪失敗してたのかお?)
- 59 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:17:47 ID:ErvSmjSo0
万が一そうならば非常にまずい事になる。
僕の腕とか店の信用問題とかもあるが、それよりも何よりも、
失敗した上で料金を請求してクーを働かせてた事になるのがまずい。
先のクーの仕事中の態度を鑑みれば、どれだけ切れられるかわかったものではない。
(;^ω^)(それはまずいお……。どうするかお? それとなく、クーに聞こえない様に聞いてみるかお?)
僕は尚も自分が姫ではないと力説するクーを無視し、それとなく襲撃者の方を伺う。
__(~~{ ヽ__
< ∩∩/)┣
 ̄  ̄
随分と小柄で子供の様にも見えるが、かなり頑丈だったサンライズのドアを吹き飛ばすほどの力は持っているのだ。
ひょっとしたら魔法使いか何かなのかもしれないが、マントに収まり切れていない、
背負う長大な獲物がその考えを否定する。
(;^ω^)(剣士……いや、騎士なのかおね)
先の言動とクーの立場から推察すれば、それが一番可能性が高い気もするが、
騎士が使う武器にしてはなんというか品がなさ過ぎる。
しゃがんでいる所為で背負う獲物がほぼ真横になっていて、その長さがよくわかるが、襲撃者の身の丈ほどはあるだろう。
襲撃者が小さい事を差し引いても、一般的な騎士の剣にしては大き過ぎる。
- 60 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:19:52 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「というわけで、わんわんおが……って、聞いてるのか?」
つ∪;TωT)ノシ ジタバタ
(;^ω^)「いや、だから、わんわんおが姫説は無理があるから……ってか、嫌がってるから離してやってお」
僕はクーからわんわんおを奪い取り、店の中に隠れてるよう言い付ける。
色々気になる事はあるのだが、取り敢えずは襲撃者の話を聞かない事には話が進まないだろう。
( ^ω^)「というわけで、話を聞くお」
川 ゚ -゚)「いや、聞く必要ないって。多分あいつ、道間違えただけだろ」
( ^ω^)「間違いで店のドアを跡形もなく壊すやついねえだろ」
川 ゚ -゚)「あれだ、ピンポンダッシュしようとして力入れ過ぎたとかだろ」
( ^ω^)「どんなワイルドないたずらっ子だお。いいから話聞くお」
僕は渋るクーを引きずり、襲撃者の方に向かう。
向こうを呼んだ方が早そうだったが、また暴れられて店を壊されるのも勘弁願いたい。
- 61 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:20:44 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「というわけで、ちょっとお話を聞かせてもらえないかお?」
(~~{ ヽ「貴様……姫さ──」
川#゚ -゚) ジロリ
(~~{;ヽ「く、クー様から離れなさい!」
( ^ω^)「と、その前に自己紹介しておくかお」
( ^ω^)「僕はブーン=ナイトウ、魔法道具屋サンライズの店長だお」
(~~{#ヽギリッ…
(;^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「私の名はクー=スナオ、クー=スナオだからな? 間違えるなよ? いいな?」
(~~{ ヽ「はい、姫さ川#゚ -゚)「クー=スナオ!」
(~~{;ヽ「は、はい、クー様」
- 62 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:22:08 ID:ErvSmjSo0
何ともわかりやすい反応を示してくれたお陰で、どうやら僕はこの襲撃者に恨まれてる事は想像が付いた。
正直、恨まれる覚えはないのだが、解呪の件があるので逆恨みされている可能性はないとはいえない。
( ^ω^)「で、そちらも名乗ってもらえると助かるんだけど」
(~~{ ヽ「……」
僕の言葉に反応し、クーの方をちらりと見る襲撃者。
クーが頷くと、襲撃者はゆっくりとフードを取った。
(゚、゚トソン「僕の名はトソン=トソン」
(゚、゚トソン「下郎に名乗る名前は持ち合わせていませんが、ひ──クー様のご命令とあらば止むを得ません」
フードの下には、幼い顔立ちだが随分と整った顔があった。
クーと同じく、無愛想さは垣間見えるものの、将来かなりの美形に育つのだろう。
( ^ω^)「それで、トソン君はうちに何の用なんだお? といっても、クー絡みなのはわかってるけど」
(゚、゚#トソン「クー様を呼び捨てにするな!」
( ^ω^)「本人がそう呼べって言ってんだお。話が進まないから理由を教えてくれお」
- 63 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:24:28 ID:ErvSmjSo0
今にも襲い掛からんばかりの目で睨み付けて来るトソン君。
クーも隣にいるし、いきなり斬りかかって来る事は流石にないと思いたいが用心はしておくべきか。
(゚、゚#トソン「理由ですと? ……貴様がブーン=ナイトウで間違いないのですね?」
( ^ω^)「名乗った通りだお」
(゚、゚#トソン「魔法道具屋サンライズの店主の」
( ^ω^)「そうだお。君がドア壊したお店がサンライズだお」
(゚、゚#トソン「そしてクー様を騙して無理矢理借金を負わせ、薄給でこき使ってる悪徳商人」
(;^ω^)「どこでそんな話聞いたんだお。著しく間違ってるお」
今の発言でトソン君の怒りの出所はわかった気がしたが、一体どこでどうしたらそんな話になったのか。
僕は正当な仕事の依頼の報酬を払ってもらうためクーに働いてもらっているし、給金も高くはないが普通に払っている。
(;^ω^)(……ひょっとして、やっぱ解呪失敗して、それで不当な借金を負わせてると思われてるのかお?)
最悪の想像が頭に浮かんだが、それにしては少々不自然な部分もある。
トソン君が何故クーが僕の店に解呪の依頼を持ち込んだ事を知っているのかという事がまず1つ。
クーの話しぶりでは、誰にも知らせず王宮を抜けて来たような口ぶりだったはずだ。
- 64 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:26:55 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)(あ、そういえば1人は知ってるみたいな話もあったおね……)
解呪の依頼の際、じいちゃんの名前を出せとクーにアドバイスした人がいたはずだが、それがトソン君なのだろうか。
(゚、゚#トソン「しかし現にクー様はここで働かされているのでしょう?」
(;^ω^)「どっちかというと、働かせてあげてるんだけど……」
僕の口をつく反論の言葉が弱々しい。
解呪失敗の可能性が頭をちらつき、強くは言い返せなくなってしまっている。
(゚、゚#トソン「働かせてあげてるとは何ですか! 働いてくださってると言いなさい!」
(;^ω^)「ええっと、その、トソン君はどこでクーがここにいる事を知ったんだお?」
(゚、゚#トソン「それを知ってどうするつもりですか? 証拠の隠滅ですか?」
(;^ω^)「いや、そういうんじゃなくてだおね……」
僕はクーの方に視線を向ける。
ここはひとまずクーに借金の正当性を示してもらえればトソン君の怒りは収まるのではないだろうか。
- 65 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:28:10 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「借金の話は誰から聞いたんだ?」
僕の意図を察してくれたのか、クーがトソン君に質問をする。
若干、僕が聞いて欲しかった事と違うのだが、それも一応は知りたい事だ。
(゚、゚*トソン「はい! ひ川#゚ -゚)「クー!」
(゚、゚;トソン「クー様を探してこの町に辿り着き、情報を集めるならば人が集まる場所だろうと」
(゚、゚トソン「向かった先、バーボンハウスという酒場で聞いた所」
(゚、゚トソン「ミセリさんという親切な御仁が、クー様が借金の形に無理矢理働かされていると教えてくださいました」
( ^ω^)「あの野郎……なに適当な事ぶっこいてんだお」
いくらミセリさんがいい加減で噂好きな人だとしても、これは流石にひどいのではなかろうか。
こんな調子で吹聴されてたら、僕がものすごく悪いやつだと色んな人に誤解されてしまう。
(;^ω^)「けど、何でミセリさん、そんな嘘っぱちを広めるんだお? あの人馬鹿だけど、そんなあくどい事は……」
(゚ -゚;川
(゚、゚トソン
- 66 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:32:53 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「……」
(゚- ゚;川「……」
( ^ω^)「……クー?」
(゚ -゚;川「……ナンダ?」
( ^ω^)「そういや最近、ミセリさんと仲良かったおね?」
(゚- ゚;川「そりゃバーボンハウスで働く同僚だからな」
( ^ω^)「一緒にお茶したり、お酒飲んだりしてたんだおね?」
(゚- ゚;川「そんな事もあったかな」
( ^ω^)「ミセリさんに、バイトしてる理由とかも話したのかお?」
(゚- ゚;川「どうだったかな? 話したような話さなかったような……」
( ^ω^)「借金の理由とか、何て話したんだお?」
(゚ -゚;川「ソ、ソンハナシマデハシテナイナー」
- 67 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:34:19 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「……」
(゚- ゚;川「……」
( ^ω^)「……お前だな?」
(゚ -゚;川「ハハハ、ナンノハナシダイ?」
(#゚ω゚)「てめええええ!!! 人の事極悪人みたいに仕立て上げてんじゃねえええええ!」
川#゚ -゚)「うるさい! 話が盛り上がっちゃってつい話を盛っちゃったんだ。そんなのよくある事だろ!」
(#゚ω゚)「よくあってたまるかお! 逆切れかお、この駄目バイト!!!」
川#゚ -゚)「なんだと? 元はと言えば私の給料が安いのがいけないんだ。もっと時給上げろ、ふくよか店長!」
(#゚ω゚)「誰がふくよか店長じゃあああいッ!!!」
(゚、゚;トソン「えっと……あの……」
川#゚ -゚)「もう堪忍袋の緒が切れた! やってしまえ、トソン! この守銭奴に正義の鉄槌を下すのだ!」
- 68 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:35:37 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚;トソン「え? あ、はい、その……」
(#゚ω゚)「ふざけんなお! そっちが悪だろうがお。お前らまとめてぶっ飛ばしてやるお!」
(゚、゚;トソン「えーっと……その、よく事態が飲み込めないのですが……」
( ^ω^)「……お」
(゚、゚トソン「クー様のご命令とあらば、一刀の元に叩き伏せてご覧に入れましょう」
トソン君が羽織っていたマントを脱ぎ捨てる。
マントの下にあったのは、白銀に輝く鎧。
(;^ω^)「って、それって聖騎士の──」
(゚、゚トソン「生命までは取りません。その行いを悔い改める機会は授けてあげましょう」
そして背負っていた大剣を鞘ごと外し、横にして眼前に掲げる。
アホらしい口ゲンカをしていたはずだが、どうにも雲行きが怪しい所ではない。
まあ、僕もぶっ飛ばすとか言っちゃったんだけど。
- 69 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:36:50 ID:6MhFuhFIO
- ふくよか店長www
久しぶりのバトルか
- 70 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:37:45 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「ちょ、タンマ! 僕は君と争う気は……」
(゚、゚#トソン「問答無用! この剣の錆となりたまえ!」
掲げていた剣を上段に振りかぶり、そのまま勢いよく振り下ろしてくるトソン君。
どこにそんな力があるのかと驚かされると共に、言葉通り手加減はしてくれてるのか、剣は鞘に納まったままである。
(;^ω^)「ぬおおおおッ!?」
後方に転がるように飛び退り、からくも攻撃をかわした。
騎士の剣技とは到底思えぬ荒々しい一撃で、僕が先ほどまで立ってた場所の地面が抉られている。
(;^ω^)「いや、これ鞘のままでも死ねるだろ」
(゚、゚トソン「かわしましたか。なかなかやりますね。……しかし!」
重心を落とし、切っ先をこちらに向けて構えるトソン君。
今にも突撃して来そうな鼻息だが、僕は片手を広げてトソン君に向ける。
(;^ω^)∩「ちょっと待ってくれお」
(゚、゚トソン「待ちません!」
- 71 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:39:05 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「いや、仮にも騎士ともあろう者が、丸腰の相手に一方的に斬りかかるのはどうなんですかお?」
(゚、゚トソン「む……それもそうですね。いいでしょう、武器をお持ちなさい」
(;^ω^)「どうもですお」
僕はダッシュで店の中に戻り、杖を手にし、滅多に身に着ける事なかった魔法使いのローブを纏う。
無用な戦いは避けるつもりであったが、今はどうにも話の通じる状況ではなさそうだ。
誤解を解くためにも、ここは一旦本気で立ち向かうしか打開策はないだろう。
(;^ω^)「全く……何でこんな事に」
(∪;^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「お、わんお、もう少しここに隠れてるお」
(∪;^ω^)「わんわんおー」
( ^ω^)「大丈夫だお。僕は負けないお」
心配そうな顔で僕に擦り寄ってくるわんわんおの頭を撫で、笑顔を向ける。
手強い相手だが、魔法を駆使すれば何とかなるのではないと思う。
- 72 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:40:06 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「いや、きっと勝つお」
( ω )「そして……」
(∪^ω^)「わんお?」
(#゚ω゚)「あの腐れバイトの根性叩き直してやるお」
(∪;^ω^)「わんおー……」
そもそも悪いのはバカクーとアホミセリで、トソン君は悪くないのだ。
トソン君には申し訳ないが、さっさと動きを封じてあのバカどもにちゃんと謝らせるのが筋だろう。
そう思うとこの理不尽な状況にまた怒りが込み上げて来た。
( ω )「待たせたおね」
僕は店を出て、ゆっくりとトソン君の方に向かう。
トソン君は仁王立ちで僕を待ち構えていた。
クーは少し離れた場所で寝っ転がって見物してやがる。
σ(゚ -゚ 川
- 73 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:41:12 ID:ErvSmjSo0
(# ω )「あの野郎……」
(゚、゚トソン「逃げずに来た事は褒めてあげましょう。ですが──」
(#゚ω゚)「先手必勝! ウインド・カッター! カッター! カッターッ!」
(゚、゚;トソン「ちょッ!?」
僕は近付く間に詠唱していた呪文を一気に解き放つ。
魔法使いの勝機は虚を突く事、そして──
( ^ω^)「戦略的撤退!」
(゚、゚;トソン「何!?」
僕の放った魔法をことごとくかわすトソン君の体裁きを見て僕は走り出す。
重装備のトソン君と真っ向から殴り合っても勝ち目はないし、今の動きを見る限り、
腕は確かな様なので距離を取って戦うのが肝要だ。
見た所トソン君の装備はあの大剣のみだろうから、攻撃手段を封じる事にも繋がる。
( ^ω^)「次はこれだお、ロック・スロー!」
- 74 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:41:56 ID:ErvSmjSo0
大地の精霊の力を借り、高速で石を飛ばす。
当たればかなり痛いが、トソン君は簡単には食らってくれないだろう。
(゚、゚トソン「きかぬ! 待て、逃げるか卑怯者!」
( ^ω^)「逃げてるわけじゃないのは君も気付いてるお? これが魔法使いの戦い方だお」
魔法使いは本来1対1の戦いには向いていない。
よほどの高速詠唱が出来るか、あらかじめ何か仕込んでおくなら別だが、斬撃が降り注ぐ中、
かわしながら呪文の詠唱は厳しいものがある。
おまけに相手は聖騎士だ。
幼く見えるトソン君だが、あの若さで聖騎士になれた事を考えると、その実力は容易に推し量れる。
ならば最初から、一方的に攻撃出来る距離を保てばいいというのが結論だ。
その手段として走って逃げるのは、スペシャルの為に常日頃走り込んでいる僕だから取れる方法ではあるが。
( ^ω^)「スネア・トラップ!」
(゚、゚;トソン「うぉっ!?」
再び大地に働きかけ、草を結び足を絡めるわっかを作り出す。
シンプルだが、頭に血が上っている相手には意外と効果的だったりする。
(x、x;トソン「へぶっ!?」
- 75 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:43:40 ID:ErvSmjSo0
草に足を引っ掛け、物の見事にすっ転ぶトソン君。
僕はチャンスとばかりに距離を詰め、次の魔法の詠唱を始める。
( ^ω^)「悪いけど、ふん縛らせてもらうお! マジック──」
(゚、゚#トソン「なめるなッ!」
倒れ込んだまま剣の鞘を外し、こちらに放り投げるトソン君。
そんな一か八かの攻撃を食らってあげるほど焦ってはいない。
僕は軽くそれをかわし、再び力ある言葉を解き放つ。
( ^ω^)「マジック──」
(゚、゚#トソン「うぉぉぉぉぉッ!!!」
何を考えてるのか、トソン君が膝立ちの姿勢で剣を大きく振りかぶる。
当然、僕は剣の攻撃範囲内にはいないし、また投げるのならかわせばいいだけだ。
そう考えた瞬間、僕は何だかわからない、身の毛の弥立つ殺気を感じ大きく横に飛んだ。
(゚、゚#トソン「ガリアン・ソォォォォォドッ!!!」
- 76 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:45:29 ID:ErvSmjSo0
次の瞬間、先ほどまで僕がいた場所を何かが通り過ぎたのがわかる。
それがトソン君の剣である事は漠然と理解出来たが、
身を起こした僕が目にしたのは剣を手に持ったままのトソン君の姿だ。
(;^ω^)「な、何だお、今の?」
(゚、゚トソン「ガリアン・ソード。かの武器職人、からくり・サースガ製の武器です」
(;^ω^)「からくりって……、ああ、あの胡散臭いとかいう……」
(゚、゚;トソン「今はあの人の胡散臭さはどうでもいい!」
(;^ω^)「否定しないって、どんだけ胡散臭い人なんだお……」
足から草を外し、立ち上がって剣をこちらに向けるトソン君。
僕はどうでもいい話をしながらも、あの武器の秘密を探る。
先の自分の感覚を信じるなら、あの位置から剣の一撃が届いたという事になる。
しかしながらどう見ても、あの剣の長さではここまで攻撃が届くとは思わない。
(゚、゚トソン「……この武器が気になりますか?」
(;^ω^)「そりゃまあ……気になるけど……」
- 77 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:47:29 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「まあ、見ればすぐわかると思いますし、タネがわかったところでどうという事はないですので……」
再び剣を構えるトソン君。
今度は振りかぶらず、重心を落として切っ先をこちらに向けた構えだ。
(゚、゚トソン「一応、貴方を相応の実力者と認めてこれを使います。死なない程度に食らってくださいね」
(;^ω^)「死なないし当たってあげるつもりもないお」
僕は軽口を返しながらも魔法を発動させる。
声を潜め、短縮詠唱で口を拭うふりをして使った。
(゚、゚#トソン「ならば! 避けてみなさい!」
すさまじい速さで剣を虚空に突き出すトソン君。
そこからは届きようもないはずの切っ先が、瞬く間に眼前に迫る。
(;^ω^)「糸!? いや、金属の──」
僕は寸前の所で突きをかわし、その正体を見極める。
詳しくはわからないが、どうやら刀身が分裂し、それぞれの刃を金属の紐で繋げている様だ。
- 78 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:48:25 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「む……速いですね……」
(;^ω^)「なるほど、蛇腹剣ってとこかおね」
こっそりと魔法で速度を上げていた僕は、再びトソン君と大きく距離を空ける。
トソン君が剣を引き戻すと、再び剣は元の形に戻った。
作り手の胡散臭さはさておき、あの剣は相当厄介な代物のようである。
剣としても使え、鞭のような使い方も出来、小柄なトソン君のリーチ不足を補って余りある武器だ。
(;^ω^)「今一つ、構造がわかんないとこあるけど興味湧いたお。1度そのサースガって人に会ってみたいおね」
(゚、゚トソン「随分と余裕ですね」
(;^ω^)「いやー、そうでもないお。割とギリギリなとこだお」
ギリギリだからこそ、こうやって間を作っていたりするのだ。
魔法の連発はしんどいし、次の手を考える時間も欲しい。
トソン君を多少走らせてみたが、全くの涼しい顔をしている。
流石騎士といった所である。
僕もそれなりに鍛えてはいるが、やはり騎士と魔法使いの体力勝負では分が悪い。
- 79 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:50:00 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「そうですか。では、一思いに貫いて差し上げましょう!」
トソン君がこちらに駆け寄って来る。
先ほどよりは遠くから攻撃を仕掛けてこられる事を考えると、
遠距離攻撃で対抗するならもっと距離を空ける必要があるだろう。
( ^ω^)(……と、トソン君は考えるだろうね)
剣の煌めきが眼前に迫る。
鞭の様にしなる一撃が届くより早く後方へ走り出した。
(゚、゚トソン「待ちなさい! 往生際が悪いですよ?」
逃げる僕をトソン君は追って来る。
距離が詰まると剣を振るい、僕を執拗に狙って来るが、僕はそれを回避する。
僕らはサンライズからだいぶ離れ、ヴィップの町中を疾走していた。
(゚、゚トソン「ちょこまかと! それでも男ですか! 逃げずに戦いなさい!」
( ^ω^)「これも勝利への布石だお。悔しかったら当ててみろお!」
- 80 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:51:02 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚#トソン「ならば食らいなさい! そして死になさい!」
(;^ω^)「っと、ヤベ!? つーかもうちょっと手加減しろお」
僕の背後で何かが崩れ落ちる。
それが見覚えのある畑にある物置であった気がするが、今はそんな事を気にしている余裕はない。
人的被害が出なければセーフという事にしておこう。
(゚、゚#トソン「いい加減ッ!」
( ^ω^)「当たらねえお!」
トソン君が剣を振るい、僕がそれをかわす。
無限に続くかに思える鬼ごっこは、いつの間にかある種のパターン化していた。
(゚、゚#トソン「今度こそ!」
( ^ω^)「はっずれーだお!」
そしてそれこそが、僕の狙いでもあった。
トソン君の攻撃が単調になりつつあるのを確認し、僕はこっそりと風の障壁を張る。
- 81 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:53:04 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚#トソン「いつまで逃げ続け──」
( ^ω^)「いや、もう鬼ごっこは終わりだお!」
(゚、゚トソン「!?」
既に何度も見て覚えたトソン君が振るう剣の軌跡をかわし、僕は最高速で一気に距離を詰める。
遠距離攻撃が魔法使いとしての戦い方の基本ではあるが、僕にはこれがある。
⊂二二二( ^ω^)二⊃「ksk! ブーン・クラァァァァッシュ!!!」
(゚、゚;トソン「しまっ──」
剣を突き出した姿勢のまま、驚愕に満ちた目だけを僕に向けてくるトソン君。
次の瞬間、鈍い音と共に、小柄なトソン君の身体が宙を舞った。
ヽ( ^ω^)ゝ「決め……って、やりすぎたかお?」
中間距離からであったので、そこまで速度は付いてなかった。
しかし、それでも人1人弾き飛ばすほどの威力はあったのだ。
聖騎士の鎧があるから大丈夫だろうと思って使ったのだが、骨折ぐらいさせてしまったかもしれない。
- 82 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:54:59 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「おお、ブーンが勝ったか。流石だな」
( ^ω^)「ちょっとヤバかったけどね……って、おい、お前、ちょっとそこに正座しろお」
もっと近くで戦えよと文句を付けながらも追いかけて来たクーに、僕は怒りを顕に詰め寄る。
川 ゚ -゚)「悪かったって。ほんの軽いお茶目だから」
(#^ω^)「お前、それで済むと思ってるのかお? 大体……」
( 、 トソン「姫様から離れなさい……」
(;^ω^)「お……」
川;゚ -゚)「……クーだってのに」
クーの背後に、ふらふらと立ち上がるトソン君の姿が見える。
どうやら骨折はしてないようだが、ダメージは深刻だろう。
(;^ω^)「トソン君、もう少し休んでた方がいいお。あれ、僕のスペシャルだから結構痛かったお?」
- 83 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:56:18 ID:ErvSmjSo0
( 、 トソン「スペシャル……そうですね、貴方は魔法使いでしたね。その存在を考慮すべきでした」
(゚、゚トソン「しかし、私も聖騎士です。そして──」
トソン君が剣を片手で逆手に持ち、反対の手を胸の前に挙げる。
(゚、゚トソン「私にもスペシャルがあります!」
(;^ω^)「!?」
すっかり失念していたが、聖騎士ならば魔法、それも神聖魔法が使えてしかるべきだ。
多分、今立ち上がって来れたのも回復系の神聖魔法を使ったのかもしれない。
そしてトソン君がいうスペシャル、ニューソク騎士団伝統の──
(゚、゚トソン「我が舞踊魔法、受けてみなさい!」
(;^ω^)「クッ!?」
慌てて杖を構え、対抗呪文を張る準備を整える。
- 84 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 22:58:02 ID:ErvSmjSo0
舞踊魔法は詠唱手順が舞踊、踊りである。
詠唱の邪魔を出来れば手っ取り早いが、踊りは踊りでも剣舞だ。
下手をすれば舞の段階で斬られる可能性もある。
遠距離攻撃も生半可なものでは容易にかわされてしまうだろう。
川 ゚ -゚)「勝負あったな……」
(;^ω^)「……」
淡々としたクーの言葉が耳に響く。
どんな強力な魔法を繰り出されるのか、この段階では想像も付かない。
また逃げの一手を打つ方がよかったのかもしれないが、判断が間に合わなかった。
(゚、゚トソン「いきます!」
(;^ω^)「!?」
川 - -)
- 85 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:00:04 ID:ErvSmjSo0
/ヽ フニフニ
| |
| |(゚、゚トソン
┳〜| |〜
(((( < ̄> ))))
ホヨホヨ
__
┫__>
人
(゚、゚トソン
| |
(((( < ̄> ))))
モッサモッサ
__
┫__>
(((o(゚、゚トソン
/ /o)))
< ̄>
/ヽイェイイェイ
| |
| |(゚、゚トソンo)))
(((┳oヽ ヽ
< ̄>
- 86 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:01:38 ID:6MhFuhFIO
- 何、このしょぼい踊り?www
- 87 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:02:08 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)
川 ゚ -゚)
(((o(゚、゚トソンo))) シェイク シェイク
( ^ω^)「……えっと」
トソン君の踊りは、その、控えめに言ってものすごく下手だった。
何というかたどたどしいステップでぎこちなく動き、時々間違ったのか同じ踊りをやり直したり、
一向に完成する気配がない。
川 ゚ -゚)「あいつさ……リズム感全くなくってな……」
( ^ω^)「ああ……」
┌
└(゚、゚トソン シェー ア、コレチガウ
┘
クーの言葉通り、勝負あったようだ。
僕は捕縛の魔法を尚も踊り続けるトソン君に向けて解き放った。
- 88 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:03:36 ID:ErvSmjSo0
- |
| プラーン
|
=
八
|≡|
(。´。 ト/vヽ ムネン…
僕は不本意ではあるが、トソン君を魔法の縄で縛り、近くの木に吊り下げた。
逆さにする必要はなかったかもしれないが、これで少しは怒りが納まってくれる事を願う。
川 ゚ -゚)「いや、逆さ吊りにされたら逆に怒るだろ。頭に血が上るし」
(;^ω^)「いいからちゃんと説明しろお。誤解が解けたら下ろしてやれるから」
クーも一応は反省してるのか、この町に来た経緯、そして解呪の依頼についてトソン君に説明する。
最初僕に言わされてるのではと疑っていたトソン君だが、
説得の間にバーボンハウスからあの時の依頼書の控えを借りて来て見せた事もあり、納得してくれた様だ。
(゚、゚トソン「ええっと、そうなるとつまり僕は……」
川 ゚ -゚)「うむ、無実の相手を死ねだの暴言吐きまくって追い回してた事になるな」
(;、;トソン「もおおおおおしわけえええええええええございませええええええん!!!」
- 89 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:04:41 ID:9GLw9PR6O
- ちょwwwwwwwww
- 90 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:05:01 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「いや、全部クーの所為だろうが。何トソン君の所為にしてんだお」
今回の事は、悪ふざけにしては少々度が過ぎていたと思う。
クーには反省してもらわないと、僕にもトソン君にも申し訳が立たない。
川 ゚ -゚)「……悪かった。すまない、トソン、そしてブーン」
(;、;トソン「ひめさまぁぁぁぁぁ! もったいなきお言葉ああああああああ!」
川#゚ -゚)┌┛「クーだって言ってんだろうが!」三Σ(;´; ト/vヽ アアン!
(;^ω^)「ちょ、蹴るなお。すげえ揺れてるから」
僕はトソン君を下ろし、改めて僕からも謝罪する。
僕も被害者ではあるが、今回の件はクーが僕の店でのバイト中の出来事で、僕の監督不行き届きの部分もある。
( ^ω^)「クーも悪かったお。ちょっとクーを便利に使い過ぎてたと思うお」
川 ゚ -゚)「ブーン……」
思えばクーははっきりと仕事に対する不満を述べていたではないか。
その正当性は少々怪しいとこはあるが、確かに僕は配慮がなかったかもしれない。
今度からは店番をさせる時は、暇な時にやる仕事もちゃんと考えておこうと思う。
- 91 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:06:37 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「いや、それは……私のわがままで……」
( ^ω^)「でも、クーはバーボンハウスの仕事については不満言ってないお?」
( ^ω^)「やっぱりちょっと僕の仕事のさせ方が悪かった所あるお」
根は真面目なのだ。
だから、ちゃんと仕事の忙しいバーボンハウスでは不満も言わず働いている。
たまに愚痴る事ぐらいはあるだろうが、それでもちゃんとやっている姿は何度となく目にした。
サボってるように見えた、わんわんおに芸を教えてた事も、本人なりに真面目に考えていたのかもしれない。
( ^ω^)「今まで店番してくれるのツンぐらいで、ツンは言わなくても勝手に色々やっててくれてたから」
( ^ω^)「それに甘え過ぎてたお。これじゃ店長失格だおね」
川 ゚ -゚)「ブーン……本当にすまなかった」
( ^ω^)「いいんだお。それにひょっとしたらまだ謝らなきゃいけないことあるかもだし」
僕は改めてトソン君にどうやってヴィップの町に辿り着けたのかを尋ねる。
クーがどうしてヴィップの町にいるのがわかったのか、それ次第では僕はまた謝る必要があるのだ。
- 92 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:08:19 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「クー様が王宮を抜け出され、失意の底にあった僕はクー様を追い掛ける事を決意しました」
(゚、゚トソン「しかしながらクー様がどこへ向かわれたのか、誰も知る者はいません」
(゚、゚トソン「そこで僕は、これの存在を思い出したのです」
そう言ってトソン君が取り出したのは1枚の小さな鏡。
どうやら、僕の予感は当りそうな気配だ。
川 ゚ -゚)「それは、これの追跡用の鏡か?」
クーはペンダントを取り出し、トソン君に見せる。
トソン君は力強く頷き、予備ですがと補足する。
川 ゚ -゚)「……で、それに私の居場所が映ったのか?」
(゚、゚トソン「はい!」
( ^ω^)「……」
- 93 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:09:59 ID:ErvSmjSo0
(゚、゚トソン「一瞬だけですが」
川 ゚ -゚)「一瞬だけ? どういう事だ?」
(;^ω^)「さ、さあ……?」
トソン君の話では、鏡を頼りに追おうとしたが何も映らず、仕方なく勘で探し始めた所、
1度だけ鏡に反応があったとの事だ
川 ゚ -゚)「何だそれは?」
(゚、゚トソン「それは僕にもわかりませんが……。それ以降は1度も反応ありませんでしたし」
(;^ω^)「……あ、思い出した。恐らくあの時だお」
僕はトソン君の話でとある事を思い出していた。
解呪の時、失敗して一瞬だけ魔法を発動させてしまった事を。
(;^ω^)「多分、その時のだお」
川 ゚ -゚)「おいおい、ホントに一瞬だけだろうな?」
- 94 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:11:07 ID:ErvSmjSo0
その心配は僕もしてたが、トソン君の話を聞く限りではその可能性はなさそうである。
トソン君は常に鏡を見ながら追跡していたという話だ。
川 ゚ -゚)「では、解呪は成功と見ていいのだな」
(;^ω^)「ミスったのは悪かったお」
川 ゚ -゚)「まあ、その位なら──」
(゚、゚*トソン「いえ、ミスしてくださってありがとうございます! お陰で僕はクー様の元に辿り着く事が出来ました!」
川 ゚ -゚)「やっぱり許さん」
(;^ω^)「悪かったお、時給ちょっとだけ上げてやるから」
川*゚ -゚)「ならば良し」
色々と疲れたが、何とか一段落したようだ。
怪我の功名とでもいうべきか、解呪が成功してた事もわかったし、これでようやく一息つけそうである。
僕は、だが。
- 95 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:12:50 ID:ErvSmjSo0
( ^ω^)「それで、トソン君はどうするんだお?」
(゚、゚トソン「どうする、とは?」
( ^ω^)「遥々ヴィップまで追って来てクーを見付けたんだお? クーを連れて帰るのかお?」
川 ゚ -゚)「!?」
僕の言葉に、クーが身を固くし、トソン君から一歩離れる。
聖騎士であるトソン君の立場と目的を考えれば、必然的にそうなるはずだ。
(゚、゚トソン「……」
しかし、トソン君はその問いには答えず、無言でクーを見詰める。
( ^ω^)「トソン君?」
(゚、゚トソン「僕は……、いえ、クー様はこれからどうなさるおつもりですか?」
川 ゚ -゚)「ここで借金を返して、それから世界を見て回るよ。世間知らずでは、人の上に立つには相応しくないからな」
(゚、゚トソン「そうですか……では……」
- 96 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:14:38 ID:ErvSmjSo0
トソン君は近くに寝かせてあった剣を取り、クーの前に跪く。
そして両手でクーに剣を捧げた。
(-、-トソン「僕はクー様にこの剣を捧げます。僕はクー様を守るためにここに来ました」
川 ゚ -゚)「トソン……」
(゚、゚トソン「僕はクー様の騎士になります。何卒、この剣を、僕をお使いください」
川 ゚ -゚)「……お前の剣は重過ぎる」
クーはトソン君から剣を受け取ると、よろめきながらそれを地面に下ろす。
そして剣の代わりに、その手をトソン君の肩に置いた。
川 ゚ -゚)「私はただの冒険者だ。そしてたまにアルバイトだ」
川 ゚ -゚)「だから騎士はいらん。……だが、友達なら一緒に旅をするのもかまわないだろ?」
(゚、゚*トソン「クー様……ありがとうございます。誠心誠意、お仕えさせて頂きます」
川;゚ -゚)「いや、だからそういうのじゃなくってだな……まあ、いいや」
- 97 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:17:08 ID:ErvSmjSo0
川 ゚ -゚)「まずは借金返済だ。手伝ってくれるか、トソン」
(゚、゚*トソン「喜んで!」
どうやらクーの方も話はまとまりそうだ。
連れて帰ってくれてもかまわなかったのだが、店番要員がいなくなるのも残念なので、良かったという事にしてこう。
まあ、折角仲良くなれた友達なのに、これでお別れなのは少し残念だと思うしね。
川 ゚ -゚)「ていうかトソン、騎士団の方は良かったのか?」
(゚、゚トソン「はい! ……クー様は僕が何のために騎士になったのか、ご存知でしょう?」
川 ゚ -゚)「……そうだったな。ありがとう、トソン」
(-、-トソン「もったいなきお言葉」
( ^ω^)「ホントにいいのかお? その鏡、貸してくれたって事はクーを連れ戻せって事じゃなかったのかお?」
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。これは勝手に持ち出したものですから」
( ^ω^)「おい、ちょっと待て。どこからだ? どこから持ち出した?」
(゚、゚;トソン「ま、まあ、それはそれとしてですね……」
- 98 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:18:27 ID:ErvSmjSo0
(;^ω^)「ひょっとして君、すごくまずい事になってないかお?」
川 ゚ -゚)「まあ、大丈夫だろう」
( ^ω^)「何でそう言えるんだお?」
川 ゚ -゚)「多分、私の時と同じ……じゃないかと思ってる」
( ^ω^)「……」
以前クーから聞いた話を思い出し、僕は曖昧に頷く。
見逃されているという事なのだろうが、その理由が何なのかわかっていない以上、簡単には安心出来ないものもある。
クーにじいちゃんの件を言い添えたのもトソン君ではないらしい。
(゚、゚トソン「それで、ブーン店長、早速で申し訳ないのですが……」
( ^ω^)「店長って……君、既にうちで働く気満々だおね? うちはそんなには雇えねえお?」
(゚、゚トソン「まずはクー様の借金の額をお聞かせ願いたいのですが」
( ^ω^)「ああ、ちょっと待ってお」
- 99 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:20:36 ID:ErvSmjSo0
僕は2人にサンライズに戻ろうと提案し、自分だけ先に戻って借金の明細を準備する事にした。
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「店番ご苦労様だお。ってか、開けっ放しで不用心過ぎたお。何もなかったかお?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「それなら良かったお。あ、骨っ好食べるかお? 僕はちょっと書類書くからまた後でだお」
(∪*^ω^)§「わふわふお!」
僕は当初よりは少し減ったクーの借金の明細を持ち出し、そこに少し書き加える。
それから間もなくしてクー達が戻って来た。
( ^ω^)「はい、これだお」
(゚、゚トソン「ありがとうございます」
(゚、゚;トソン「……って、意外とありますね」
- 100 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:20:40 ID:9lUv8ZEwO
- 支援
- 101 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:22:47 ID:ErvSmjSo0
川;゚ -゚)「こ、これでも少しは返したんだぞ? ちょっと見せてみろ!」
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ! 2人で働いて返せばこんなのあっという間ですよ!」
川 ゚ -゚)「そうだな……って、ブーン! 何だこれ? 最初より金額増えてるじゃないか! どういう事だ?」
( ^ω^)σ「そりゃあ……」
詰め寄るクーに、僕はその背後を指差す。
その先にあるもの、いや、本来はあったはずのもの。
( ^ω^)「ドアの修理代だお。結構高いって言ったおね?」
川 ゚ -゚)
(゚、゚トソン
川 - )「……トソン」
(゚、゚;トソン「えーっと……その……」
- 102 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:24:41 ID:ErvSmjSo0
(^、^;トソン「だ、大丈夫ですよ! ふ、2人で働いて返せばこんなのあっという間ですよ!」
;;川 - );;「お前……」
怒りのためかその身を震わせるクー。
助けて欲しそうな目でトソン君が僕を見て来るが、残念ながら僕にはどうする事も出来ない。
僕に出来るのは、これから更に起こるであろう惨劇を少しでも和らげる事ぐらいだ。
ξ )ξ スッ…
いや、それも無理かもしれない。
一切表情の消えた顔で音もなく店に入ってくるツンを見て、僕に出来る事はもうないと判断した。
(゚、゚;トソン「え? こちらは、どちら様で……」
( ^ω^)「隣にある武術道場の娘で、僕の幼馴染のツンだお。クーの友達でもあるお」
ξ )ξ
(゚、゚;トソン「ど、どうもはじめまして、僕はトソン=トソンと申します。クー様の──」
( ^ω^)「そして、君がぶっ壊した畑の物置の所有者でもあるお」
(゚、゚;トソン「……え?」
- 103 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:27:22 ID:ErvSmjSo0
ξ^竸)ξ「あら、はじめましてトソンさん」
(゚、゚;トソン「えっと、その、あの……」
ξ#^竸)ξ∩;;「……それで、はじめましてでうちの畑を荒らすってどういう了見でしたのかしらね?」
(゚、゚;トソン「そ、それは、ふ、不可抗力で……」
ξ#゚听)ξ∩;;「歯を食いしばれええええッ!!!」
(;、;トソン「ひぃぃっ!? 姫様、助けてええええっ!」
川#゚ -゚)「クーだと言っとろうが、この駄目騎士!」
ξ#゚听)ξ∩;;「逃げるなああああッ!!!」
(;、;トソン彡「うわああああん!!!」
( ^ω^)「やれやれ、あの物置の見積もりも明細に足しておくかお」
(∪*^ω^)§「わふわふお!」
こうして、元聖騎士であるトソン君も、このヴィップの町で暮らす事になった。
第十四話 忠義の剣は戦場に踊る 終
- 104 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:29:16 ID:ErvSmjSo0
十四話は以上です
次話も書きあがってますが、投下は今の所未定です
せっかくスレが残るので、分割投下とかするかもしれません
支援とか感謝です
- 105 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:30:23 ID:9lUv8ZEwO
- 乙
トソンって頭良さそうなバカ多いよね
- 106 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:33:17 ID:a6jS867A0
- 乙
- 107 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:33:52 ID:6MhFuhFIO
- 乙
逆さ吊りAAいいな
- 108 名前:名も無きAAのようです:2012/03/03(土) 23:36:28 ID:3v11pXHMO
- おつおつ
- 109 名前:名も無きAAのようです:2012/03/04(日) 03:30:45 ID:7j1EW3DcC
- 乙ー相変わらずの面白さ
トソンが不憫だわw
- 110 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:47:34 ID:eSCkcEbY0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
( ^ω^)「……完成だお」
( ^ω^)□「薬草パスタ、お待ちどうさまだお」
ξ゚听)ξ「……見事に緑ね」
( ^ω^)「麺に練り込んであるお。あ、わんわんおのは麺の代わりにお肉だお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
第十五話 幼き夢は今も僕らに
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 111 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:48:36 ID:eSCkcEbY0
( ^ω^)「さあ、早速食べるお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「まあ、これは商品じゃないしね。……あら、案外いい匂いね」
彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
( ^ω^)「匂いもいいけど味もいいお。いただきますお」
時刻はお昼頃、いつも通りのサンライズで僕達はお昼ご飯を食べようとしていた。
いつぞや食べ損ねていた薬草パスタは、あれから更に改良を重ねて僕としては自信のある味に仕上がっている。
また無駄な部分に力を入れてるとツンに言われるかと思ったが、
これは商品じゃないし趣味の部分なので大目に見てくれているようだ。
- 112 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:50:19 ID:eSCkcEbY0
ξ*゚ー゚)ξ「あ、ホントだ。これ美味しいわね」
(*^ω^)「だお? 薬草のお陰で結構さっぱりするんだお」
僕は薬草パスタの出来栄えに満足し、麺をすする。
次回は具にもこだわりたい所だ。
( ^ω^)「ごちそうさまだお。ツンもお茶飲むかお?」
ξ゚听)ξ「相変わらず食べるの早いわね。頂くわ」
僕は沸かしておいたお湯で温かいお茶を淹れ、ツンに差し出す。
お腹いっぱいでお茶を飲み、くつろぐこの一時がこの上なく幸せである。
安い幸せだと言われるかもしれないが、人の幸せって案外そんなもんじゃないかなと思ってる。
ξ゚听)ξ「まあ、ここ最近騒がしかったから、こういうのもたまにはいいわね」
( ^ω^)「最近ってか、主にトソン君の件だけどね」
ξ#^竸)ξ「そうね。随分とやらかしてくれちゃって」
(;^ω^)「正直すまんかったお」
(∪;^ω^)「わんおー」
- 113 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:51:47 ID:eSCkcEbY0
トソン君がやらかしてくれた器物破損の件は、一応の対応は済んでいた。
ツンの家の畑の物置は大工さんに頼んで建ててもらったし、サンライズのドアは仮の物を付けている。
ただ、あくまで一応の処置で、仮のものだ。
物置に関してはちゃんとしたものを立て直してもらったが、その支払いは僕が立て替えている。
原因を追求した結果、責任の半分は僕にあるというツンの糾弾を受け、支払いの半分だけをクーの借金に乗せた。
多少の異議はなくもないが、確かに僕の逃げ方にも問題あったので、これは甘んじて受け入れる事にした。
ξ゚听)ξ「いくら相手が聖騎士だったとはいえ、もうちょっと周りを見て戦いなさいよね?」
(;^ω^)「返す言葉もございませんお」
トソン君は若いとはいえ聖騎士だ。
実戦経験は少ないらしいが、対人戦の訓練もしっかりとやっていたらしく、かなり手強い相手だった。
おまけにあの得体の知れない武器である。
ξ゚听)ξ「案外、聖騎士ってそういうの自由なのね」
( ^ω^)「むしろ普通の騎士より聖騎士の方が自由らしいお。強さ至上というか」
- 114 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:53:00 ID:eSCkcEbY0
僕の思っていたより、聖騎士というのは型にはまらず自由らしい。
型にこだわる人はとことんこだわるらしいが、基本的に強さと心意気がちゃんとしていれば、
武器や戦い方は各人の判断に任されるとの事だ。
もっとも、自分の様に奇を衒った武器を使うものは、
自分の力の無さを小細工で補っているようなものだとトソン君は言っていたが。
ξ゚听)ξ「強い人は普通の騎士剣と盾だけで十分って事ね」
( ^ω^)「そうみたいだおね。トソン君が弱いとは到底思えないけど」
トソン君の場合は、体格が小さいというハンデもあるためあの剣を使っているのだろう。
あの戦いの時は、トソン君も色々と驚いてたり混乱してたりと、浮き足立っていた部分もあったので勝てた様なものだ。
正式な場で1対1の戦いをしたなら、今度は僕が勝てるかどうかはわからない。
一応の殺さない程度の手加減もしてくれてたのだろうし。
ξ゚听)ξ「なかなかいいもの持ってるわよね。うちの門下生に欲しいぐらいだわ」
( ^ω^)「力有り余ってるおね。無駄に」
ξ゚听)ξ「ええ、無駄にね」
(∪^ω^)「わんおー」
- 115 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:54:28 ID:eSCkcEbY0
力の有り余っているトソン君に、うちやバーボンハウスでのバイトをやらせてみたが、はっきり言って向いてなかった。
皿を割ったり棚を壊したり、どうも細かい作業は向いてないらしい。
適材適所という言葉もあるので、今は教会やツンの畑の手伝いが主にこの町での仕事となった。
( ^ω^)「がんばってくれてるのはわかるんだけどね」
ξ--)ξ「何と言うか、不器用な子よね」
不器用で一途である。
とてもいい子だが、少々世間知らずな面があるのはその育ちを考えれば仕方がない事か。
( ^ω^)「折角聖騎士にまでなっておいて、簡単に辞めちゃうのはもったいない気もするお」
ξ゚听)ξ「そうね。でもまあ、本人がそうしたいのならいいんじゃないの?」
聖騎士ともなれば、将来は安泰のはずだ。
その道を容易く蹴るのはいかがなものかと僕は思うのだが、トソン君はクーの側にいる事を選んだ。
ξ゚听)ξ「あの2人、過去に何かあったみたいだしね」
- 116 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:55:47 ID:eSCkcEbY0
( ^ω^)「何でトソン君みたいないい子が、あの駄目人間クーを尊敬してるのかおね」
駄目人間扱いは少々ひどいかもしれないが、しばらく付き合う内に、
世間知らずという言葉では擁護出来ないクーの駄目さを少なからず目にして来た。
今回の件も僕にも責任の一端はあったとはいえ、無駄に騒ぎを大きくしたのは主にクーの所為である。
ξ^ー^)ξ∩「まあ、その件についてはしっかりと根性叩き直してあげたけどね」
(;^ω^)「8時間耐久組手は流石にやり過ぎだお」
物置を壊されてトソン君に対して怒っていたツンだが、事の次第を詳しく知ると、怒りの矛先はクーにも向いた。
友達のよしみで練習に付き合ってくれたら許してやるとツンはクーに提案したらしいが、
それが先ほど言った組み手である。
ξ゚听)ξ「怒る代わりに心身ともに鍛え直してやったのよ? 礼を言われてもいいくらいだわ」
( ^ω^)「だったら借金も帳消しにしてあげればいいのに……」
ξ゚听)ξ「それはそれよ」
(∪^ω^)「わんお」
- 117 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:57:07 ID:eSCkcEbY0
何ともドライな物言いだが、多分、ツンには別の意図もあるのだろう。
すぐに借金を返して別の町に旅立つ前に、2人とも世間知らずという状況は何とかしたいと考えているのだと思う。
借金を返しつつバイトをする事で、その辺りを緩和させるつもりなのだと踏んでいる。
( ^ω^)「まあ、クーにとってはトソン君が来て良かったおね」
ξ゚听)ξ「そうね。クー1人じゃこの先不安だったし」
普段の生活、バイト、そしてクエストと、1人でやるよりはトソン君がいた方が何かと安心だ。
同じ世間知らずながらも、楽観的なクーを慎重派なトソン君がブレーキをかけてくれるだろう。
若干、押し切られたり振り回されたりするトソン君が気の毒ではあるが。
ξ゚听)ξ「しかし、少し気になる事も出て来たわね」
( ^ω^)「だおね。クーの立場なら問答無用で連れ帰されてもおかしくないと思うお」
今回、トソン君が口にした事でこれまで敢えて触れずにいたクーの身分がはっきりした。
ニューソク王家に現在そう呼ばれる立場の人間は1人しかいないのだ。
前も少し考えた事だが、現在ニューソク王家にはクーの上に2人の兄がいるから、
王家の存続とかそういった話にはクーがいなくても影響はないはずだ。
- 118 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:58:12 ID:eSCkcEbY0
政略結婚とかそういった話も、単一国家状態であるニューソク王国には必要ないのだろう。
王宮内の派閥とか別の大陸、ラウンジとの関係とかを考えるとその限りではないのかもしれないが。
それにしたって全くの放置というこの状況は不自然なものがある。
だからトソン君が来たのかもしれないが、クーが王宮を出てからだいぶ間があった。
ξ゚听)ξ「ま、そこは考えたって私らにはわかりようはないと思うんだけどね」
( ^ω^)「でも、クーは……」
ξ゚听)ξ「友達だから、でしょ?」
( ^ω^)「お……」
ξ゚ー゚)ξ「わかってるわよ。私だってあいつの友達だから、何かあったら手を貸すわ」
( ^ω^)「ありがとう、心強いお」
本来ならこういう時一番頼りになるはずのドクオさんが、クー絡みの話に関しては頼れないので、
ツンの言葉は本当にありがたい。
別にニューソク王家に正面からケンカを吹っかける真似をしたいわけではないが、
何かしらの思惑でクーが問題を抱える羽目になるのなら、微力ながらも力を貸したいとは思っている。
- 119 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 22:59:42 ID:eSCkcEbY0
(∪^ω^)「わんわんお!」
ξ゚ー゚)ξ「わんおも力を貸してくれるって」
( ^ω^)「ありがとうだお。期待してるお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
僕はわんわんおの頭を撫で、食器を片付ける。
そろそろお昼休みを終えて、午後の業務を開始しよう。
ξ゚听)ξ「じゃあ、私も畑の方に行こうかしら」
( ^ω^)「今日はツン1人かお?」
ξ゚听)ξ「トソンは教会よ。また何か壊してなきゃいいけど」
( ^ω^)「大雑把で済むものとか神聖魔法絡みの仕事をさせてくれるようにヒッキーさんには頼んであるお」
ξ゚ー゚)ξ「それでも、何かやらかしそうなのがトソンなんだけどね」
( ^ω^)「……あとでちょっと様子見て来ようかおね」
- 120 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:00:56 ID:eSCkcEbY0
冗談だと言うツンだが、僕にはあながち冗談には聞こえない。
無理を言ってヒッキーさんに頼んでいるのに、更に迷惑をかける事になっては申し訳ない。
ξ゚听)ξ「流石にトソンもそこまで不器用じゃ……無いとも言い切れないかしら?」
(;^ω^)「そこは無いって言い切ってくれお」
ξ゚听)ξ「冗談だってば。それじゃあね……っと、そうだ」
ツンがドアに手をかけた状態で立ち止まり、こちらを振り向く。
ξ゚听)ξ「このドアはどうするのよ?」
( ^ω^)「お……」
現在、トソン君が粉々に打ち砕いたサンライズの入り口のドアは、適当な板に取っ手を付けた程度の簡易のものだ。
これだと流石に防犯の面から見てよろしくないので、出かける時は魔法を仕掛けて出るようにしている。
( ^ω^)「暇な時に作り直すつもりだお」
いちいち魔法をかけるも手間だし、作りもみすぼらしいので近い内に作り直すつもりはあった。
ここ数日はトソン君のバイトの斡旋とかで時間を取られていたので、その暇が無かったが、
もうそろそろ作り直してもいい頃だろう。
- 121 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:02:35 ID:eSCkcEbY0
ξ゚听)ξ「材料はどうするの?」
( ^ω^)「買うって手もあるけど、これ以上2人の借金を増やすのもかわいそうだから採って来るお」
クーの借金に上乗せした代金は仮のものだ。
店のドアは魔法がかかっていたし、色々と魔法鉱石なんかも使われていてて凝ったものだったので、
同じレベルのものを新調するとなると確実に金額は上がる。
故に、それなりに丈夫だったはずなのだが、それを爆散させるトソン君はやはり強いのだろう。
ξ゚听)ξ「手作りなの? 作れるの?」
( ^ω^)「多分。このドア自体も、じいちゃんが作ったものだったし、作れるはずだお」
ξ゚−゚)ξ「あ……」
( ^ω^)「大丈夫だお。形ある物はいつか壊れるんだし、気にしてないお」
ツンは気の毒そうな顔をするが、それほど気にしていないのは本当の事だ。
この建物自体、じいちゃんが作った、作らせたものだけど、破損した箇所もあれば、
僕が使いやすいように直した場所もある。
想い出は大切だけど、それに引きずられる様な事はしたくない。
- 122 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:04:30 ID:eSCkcEbY0
( ^ω^)「トソン君には言っちゃ駄目だお? 多分、またものすごく謝られるから」
ξ゚听)ξ「……このお店、居心地いいわよね」
( ^ω^)「だお。僕は大好きだお」
ξ゚ー゚)ξ「私もよ。これからも大事に使わなきゃね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ツンは笑顔で手を振り、店を出ていった。
僕も笑顔でそれを見送る。
( ^ω^)「さてと、それじゃあ午後の営業の前に、ドアについて書いた本ないか探しておくかお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「わんおはここにいて店番頼むお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 123 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:05:51 ID:eSCkcEbY0
僕は、わんわんおをカウンターの上に上がらせ、書庫に向かう。
ドアそのものの作り方について書いた本はないかもしれないが、板の強化や木の話なんかの記述くらいはあるだろう。
( ^ω^)「まあ、無かったらドクオさんのとこ行けば何とかなるおね」
ドクオさんの所にも蔵書はある。
結界魔法が得意なドクオさんが集めた本なら、似通った性質のドアの強化に必要な部分が載っている可能性が高い。
( ^ω^)「直接、ドクオさんが教えてくれれば話は早いんだけど……」
僕の魔法の師匠は、じいちゃんとその弟子であったドクオさんだ。
特殊なものはじいちゃんから習ったが、基本的な物はドクオさんから習ったのがほとんどだ。
しかし、ある時からドクオさんは僕に魔法を教えてくれなくなった。
その理由を聞いても、もっともらしい事を言って濁されただけであった。
( ^ω^)「もう教える事は無い……ってのは流石に嘘だおね」
僕の知らない魔法をドクオさんはまだまだいくつも知っている。
こないだの教会の魔法もそうだし、結界魔法に関しては僕は知識はあれどほとんど使えない。
- 124 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:06:47 ID:eSCkcEbY0
向き不向きもあり、それを見極め、自分で研鑽し、
新しいものを編み出して行くのが魔法使いの本分だとドクオさんは言った。
確かにそれは正しい。
しかし、僕はそこに不自然なものを感じてもいた。
( ^ω^)「師匠と呼ばせてもらえなくなったし……」
それについても理由がはっきりしない。
教える事がなくなったからだとドクオさんは言ったが、師弟関係なんてそんな簡単に切れるものじゃないと思う。
( ^ω^)「あの時は、ちょっと寂しかったおね」
じいちゃんとドクオさん、そして僕。
昔は3人で暮らしていた時もあった。
この魔法道具屋サンライズで一緒に暮らしていたのだ。
ドクオさんは仕入れとかでいない時も多々あったが、それでも僕らは一緒に暮らす家族であった。
しかし、じいちゃんが亡くなって、ドクオさんはここを出ていった。
その時にドクオさんに、もう師匠と呼ぶなと言われたのだ。
- 125 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:10:49 ID:eSCkcEbY0
( ^ω^)「でも、当初はちょくちょく様子見に来てくれたし、今でも昔と変わらない接し方はしてくれてるおね」
呼び方や住む場所は変わったが、僕とドクオさんの関係はさほど変わったわけでもない。
それでも少し寂しく思うのは何故だろうか。
( ^ω^)「わかってるお」
理由はきっとわかっている。
だから、それ以上は考えても仕方がないので考えない事にするのだ。
< ワンワンオ!
( ^ω^)「っと、お客さんだお」
わかってはいるし、僕には新しい家族も増えた。
今はそれを大事にして行こうと思う。
ツンとあんな話をしたから、僕はちょっとだけセンチメンタルな気分になってたのだろう。
( ^ω^)「さて、お仕事お仕事だお」
僕は急いでお店の方に戻る事にした。
- 126 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:13:15 ID:eSCkcEbY0
〜 バーボンハウス前 翌日 〜
( ^ω^)「というわけでショボン、ちょっと手伝ってくれお」
(´・ω・`)「君はいつも唐突だね……。まあ、かまわないけど」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(*´・ω・`)「よしよし、わんおちゃんも行くのなら、お弁当も用意しないとね」
翌日、僕は朝からバーボンハウスを訪れていた。
今日、ショボンが仕事を休みと聞いてドアの作成の手伝いを頼みに来たのだ。
(´・ω・`)「しかし、何でまた僕に」
つ∪^ω^)
( ^ω^)「ショボンが一番向いてるからだお」
(´・ω・`)「でも、木を切り出す所からやるんだよね? 力仕事なら僕より適役はいそうだけど」
( ^ω^)「いるにはいるけど、力加減の出来ないやつ多いんだお」
- 127 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:14:23 ID:eSCkcEbY0
ツンやトソン君なら、木を切り出す所までなら適役な気もするが、必要な部分までへし折ってしまいそうな危険性もある。
特にトソン君は、ドアの修理と聞いたら汚名返上とばかりに張り切り過ぎて、空回って更に名誉を返上しそうである。
ツンはそうでも無いのだが、別の理由で今日は来て欲しくなかったりするのだ。
(´・ω・`)「そういう事ならいいけど、今日は僕、教会に行くつもりだったんだけどなあ」
文句を言いつつも、手早く支度をしてバーボンハウスを出て来るショボン。
僕は再度礼を述べ、北東の森へ向かう。
( ^ω^)「神聖魔法に関して、こないだヒッキーさんからちょっと話聞いたんで、道すがらショボンにも教えるお」
(´・ω・`)「そりゃありがたいね。あとで僕のコモンマジックも見てもらっていいかな?」
( ^ω^)「任せろお。ついでにちょっと稽古に付き合ってやろうかお?」
(´・ω・`)「そのつもりで木剣も持って来てるよ」
相変わらずショボンは時間がある時は修行をしている。
多分、騎士学校に入れる程度の基本的な剣技は既に習得出来ているのではなかろうか。
- 128 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:15:32 ID:eSCkcEbY0
(´・ω・`)「入学試験自体はそれほど厳しくないらしいけどね。いきなり騎士団にとかならともかく、学校の方はね」
身元がはっきりしていて、一般的な身体能力があれば問題ないはずだとショボンは言う。
むしろ入ってからが大変で、その為に今の内に鍛えておく必要があると。
( ^ω^)「今度その辺もトソン君に聞いてみるといいお」
トソン君の素性はクーの事も含めると相当ややこしいので、一部の人にしか知らせていない。
もっとも聖騎士という言葉に食い付くであろうショボンには既に教えていた。
クーの素性は明かしていないし、トソン君の事も元聖騎士という曖昧な紹介だけだが。
(´・ω・`)「あー……、いや、それはもう聞いたんだけど……」
( ^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんお?」
(´・ω・`)「あの人、騎士学校行ってないらしくってさ」
( ^ω^)「おー、それはそれは……」
- 129 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:17:00 ID:eSCkcEbY0
騎士学校に行かずに騎士になるなら、相応の実力と、冒険者としての実績が必要だ。
トソン君は冒険者にはなった事はないらしいから、実力はともかく実績はないはずである。
となると考えられるのは、家柄であろう。
例外的に、高い家柄の人間なら騎士学校に行かずに騎士になった可能性はある。
もっとも、その場合は学校に行かずとも騎士としての常識や振る舞いを既に身に着けている事が前提ではあるが。
つまりトソン君は、子供の頃から騎士になるべく育てられて来たという所であろう。
(´・ω・`)「学校の雰囲気とか聞きたかったんだけど、まあ仕方ないかな」
学校の事は聞けなくとも、騎士自体の事はいくらでも聞けるだろう。
スペシャルはあれだったが、神聖魔法の事も僕よりは何倍も詳しい。
聖騎士を目指すショボンにとって、トソン君との出会いはこの上もなく幸運な事のはずだ。
グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「こら、ここは町の外なんだから、あんまり離れちゃ駄目だお」
相変わらずわんわんおは元気いっぱい走り回っている。
話しながら歩く僕らがまどろっこしいのか、催促するようにこちらに吠えては走り出す真似をする。
- 130 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:18:50 ID:eSCkcEbY0
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「これから作業しなきゃなんないんだから、今から疲れたくは……」
(*´・ω・`)「よーし、わんおちゃん、競争だね? 行くぞー!」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「……ないんだけどなあ」
全てを言い終えるよりも早く、ショボンはわんわんおを追って走って行く。
目的地は告げているからはぐれる事はないだろうけど、後でちゃんと手伝ってくれるか若干不安である。
( ^ω^)「やれやれ……」
< ワンワンオ! マテー! アハハ!
( ^ω^)「……走りで僕に勝とうとは、100年早いお!」
僕は、わんわんおとショボンを追い、全速力で森を駆け抜けた。
- 131 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:20:15 ID:eSCkcEbY0
- 分割投下前半
続きは明日か明後日の時間の取れる時にでも
- 132 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:27:28 ID:nG/1Taco0
- 乙ですす
- 133 名前:名も無きAAのようです:2012/03/05(月) 23:41:41 ID:nWqwtqbsO
- 乙乙
筆早いな
- 134 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 00:29:24 ID:O3kWPx3QO
- 乙!後が楽しみだ
- 135 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 08:07:45 ID:Dav2Z9DYO
- 来てたのか!
いつも楽しみにしてるよー
- 136 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 10:48:28 ID:sHa49WnwC
- わんお相変わらず可愛いなあ…
- 137 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:04:58 ID:D9XkAUpo0
( ^ω^)「とーうちゃーく、だお!」
そんなこんなで、僕達は目的地である北東の森の東の奥に辿り着いた。
こちらは薬草採集ではあまり来る事はないが、モンスターもほとんど出てこないので、
ショボンはいつもこの近くで修行をしている。
(;´・ω・`)「君ってさ、基本的に大人気ないよね……」
額に汗を浮かべつつ、息の上がったショボンが姿を見せる。
僕に走りで勝負を挑むからそうなるのだ。
身の程というものを知れ。
(;´・ω・`)「いや、君、途中で明らかに魔法使ってたじゃん」
( ^ω^)「ええ、魔法使いですからね!」
僕は爽やかに敗者のクレームを聞き流す。
魔法使いが魔法を使わずして何の魔法使いというのだろうか。
むしろ、騎士がこの程度で根を上げていてはどうしようもないと思う。
聖騎士であるトソン君はずっと僕について来れたというのに。
- 138 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:07:08 ID:D9XkAUpo0
(;´・ω・`)「そう言われちゃうと、返す言葉もないけどさ」
〜(∪;´ω`)「わんわんおー……」
それから更に遅れて、ふらふらになりながらわんわんおが追い付いて来た。
飼い主を置いて行くからこういう事になるのだと言おうとしたが、我ながら少々やり過ぎたと思う。
( ^ω^)「がんばったおね。ほら、お水だお」
ゴクゴクオ __
(∪;´ω`)\_/
僕は水を飲むわんわんおの横に腰を下ろし、しばしの休憩を取る。
ショボンは既に地面に寝っ転がっていた。
(´-ω-`)「あー、風が気持ちいいなあ……」
( ^ω^)「これから作業あるって事忘れんなお?」
(´-ω-`)「わかってるさ。少し休憩するだけだから」
( ^ω^)「ま、今日も天気はいいし、確かにこうやってると気持ちいおね」
- 139 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:08:18 ID:D9XkAUpo0
僕はショボンに倣い、地面に寝転がる。
わずかに吹く穏やかな風が汗ばむ身体に心地良い。
(´-ω-`)「ここはいい所だよね」
( ^ω^)「ヴィップは暮らすにはいい町だと思うお」
つ∪^ω^)
水を飲み終えて寄って来るわんわんおを撫でながら、僕はショボンの方を見ずに答える。
森の木々を縫って差す陽の光が程よく僕らを照らす。
(´-ω-`)「最近ちょっと考えるんだ……」
( ^ω^)「お?」
(´-ω-`)「騎士になる事」
ヒッキーさんが来てトソン君が来て、色々未知の事だらけだった騎士になる為の必要な話を聞けて、
これなら行けそうだという自信もだいぶ湧いて来たとショボンは言う。
騎士学校の入学試験はもうすぐだが、入る為のお金もずっと昔から貯めていて金銭的にも問題はない。
年齢的にはもう1年余裕はあるが、受けようと思えば今年受ける事も可能だ。
騎士になる事は夢物語ではなく、もう現実の延長線上にあるのだと感じていると。
- 140 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:09:20 ID:D9XkAUpo0
( ^ω^)「いい事じゃないかお。それはお前ががんばった結果だお」
つ∪*´ω`)「わんお〜……」
(´-ω-`)「ありがとう」
いつもの様な軽口は帰って来ず、神妙な言葉だけがショボンから紡がれる。
それの意味する所に、僕は何となく気付いていた。
( ^ω^)「怖いのかお? それとも……」
(´-ω-`)「……寂しいのか? そうだね、どっちも……、いや、寂しい気持ちの方が強いのかな?」
騎士の道を選んだ時にきっと浮かぶであろう、漠然とした将来の不安、そしてここを離れるという寂しさ。
ショボンはその2つの想い、特に後者を上手く処理出来ずにいるのだろう。
( ^ω^)「そういう気持ちになるのは当たり前だと思うお」
(´-ω-`)「うん、それに、今更な話だよね、わかってた事だし」
そう、今更の話だ。
けれど、つい最近まで現実感のない、ずっと先の話の様に捉えていた事が一気に現実味を帯びたのだ。
ショボンが戸惑う気持ちもわかる。
- 141 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:11:02 ID:D9XkAUpo0
僕が何か言うまでもなく、ショボンは既に何度も自問自答し、答えを出そうとしたのだろう。
それでもまだショボンは決め切れずにいる。
だからショボンは、どちらにでもいいから誰かに背中を押して欲しがってるんじゃないかと思う。
( ^ω^)「どっちを選ぼうが、僕は応援するっていつも言ってるお?」
(´-ω-`)「……どっちがいいと思う?」
( ^ω^)「それは聞いちゃ駄目だと思うお?」
しかし僕は、直接的に背中を押すような事はしないでおこうと思う。
相談には乗るが、最終的な決断は自分でやるべきだ。
自分の人生なんだし、なるべく後悔のないようにして欲しい。
(´-ω-`)「だよねえ……」
(´-ω-`)「ごめん、馬鹿な事聞いたね。ちょっとナーバスになってるのかな」
(∪^ω^)「わんお!」
- 142 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:12:14 ID:D9XkAUpo0
( ^ω^)「気にすんなって、わんおも言ってるお」
(´・ω・`)「フフ……、ありがとう、わんおちゃん。ブーンもね」
うつぶせに体勢を変え、上体を起こしてわんわんおの方に手を伸ばすショボン。
僕はわんわんおをショボンの方に軽く押しやった。
(*´・ω・`)「ここを離れるとなると、わんおちゃんとお別れになるのがなあ……」
つ∪^ω^)
( ^ω^)「騎士になると、自分で犬飼えるかもしれないお?」
(´・ω・`)「そういう問題じゃないんだけど……あ、その時はわんおちゃんを僕にくれる?」
( ^ω^)「家族を渡せるわけないお」
(´・ω・`)「冗談だよ。いや、気持ちは本気だけどさ」
( ^ω^)「まあ、もしお前が王都に行くなら、遊びに行く時はわんおも連れて行くお」
(´・ω・`)「うん、よろしく頼むよ」
- 143 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:13:36 ID:D9XkAUpo0
ショボンは立ち上がり、作業を始めようと提案してくる。
僕も立ち上がり、頷こうとしたが、ショボンがまだ迷っている様なので、
その前にあちらの方を先に済ませておこうと思う。
( ^ω^)「その前にショボン、覚えてるかお?」
(´・ω・`)「何をだい?」
(∪^ω^)「わんお?」
( ^ω^)「子供の頃、僕らとツンと3人でこの辺までよく遊びに来たおね」
(´・ω・`)「ああ、勿論覚えてるよ。覚えてたからこの辺が安全って事でここで修行してるんだし」
( ^ω^)b「じゃあ、あれも覚えてるかお?」
(´・ω・`)「あれ?」
( ^ω^)σ「あの木だお」
ショボンは僕が指差す先、一際大きな木の方に目を向ける。
僕らが子供の頃は、よくあの木の周りで遊んでいた。
- 144 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:15:24 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「遊んだねえ。あの木に登ってブーンが落ちたり、紐でブランコ作ったらブーンの時に紐が切れたり」
(;^ω^)「そんな事あったっけかお? つーか、よくそんな変な事まで覚えてるおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
(´・ω・`)「君が少し忘れ過ぎな気はするけどね。しかし、また1つ思い出したよ。君が言いたい事はあれだろ?」
そういってショボンは木の根元を指差す。
どうやらショボンも覚えていたらしい。
昔あの木の根元にタイムカプセルを埋めた事を。
(´・ω・`)「懐かしいな。あれ、誰が言い出したんだっけ?」
( ^ω^)「あんまり覚えてないけど、そういう話を誰かに聞かされて僕達もやってみようってなったような」
(´・ω・`)「そんな感じだったかな?」
( ^ω^)「というわけで、あれ掘り出してみないかお?」
(´・ω・`)「何で急に? ……そういえばあれ、いつ掘り出すって決めてなかった気がするな」
( ^ω^)「何でって、ショボンにとって丁度いい機会じゃないかお?」
- 145 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:16:58 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「僕にとって?」
ショボンは僕の言葉に首を傾げて考え込む。
どうやらタイムカプセルに何を入れたか思い出さないようだ。
僕もあんまり覚えていないのだが、1つだけ入れたものを覚えていた。
( ^ω^)「あの時、将来何になりたいかを紙に書いて入れたお?」
(´・ω・`)「ああ……そういえば……」
それが何で自分に関係あるのかと言いたげだったショボンだが、すぐに僕の意図を察してくれた様だ。
自分が何を書いたかすら覚えていないが、だからこそ自分の気持ちを見詰め直すいい機会じゃないだろうか。
(´・ω・`)「君にしてはいい考えかもしれないね」
( ^ω^)「これで全然違うこと書いてたら笑うしかないけど、まあ、見てみても損はないお」
(´・ω・`)「そうだね。しかし、それならツンも誘うべきだったんじゃない?」
( ^ω^)「……ツンは多分、自分のは素直に見せてくれないと思うんだおね」
- 146 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:17:06 ID:7G/YVTQoO
- AA的にはブーンに耳付いただけのわんわんおがどうしてこんな可愛いんだろう支援
- 147 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:18:08 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「まあ、ツンなら有り得るね。……書いてる事があの事なら確実に」
( ^ω^)「あの事?」
(´・ω・`)「ああ、気にしないで。で、何でツンに内緒でツンの将来の夢を知りたいのかな?」
僕はショボンに、ニゲット山へ向かう馬車の中でツンと話をした事を説明する。
ツンが本当になりたいものを押し隠し、今の生活をしているのではないかという危惧も含めて。
(´・ω・`)「うーん……それはどうだろうな」
( ^ω^)「でもツン、クエスト中はすごく生き生きしてるんだお? きっと冒険者になりたいと思うんだおね」
(´・ω・`)「いや、それは……まあ、君ならそう思ってもしょうがないか」
( ^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんお?」
(´・ω・`)「うん、わかった掘ってみようか」
( ^ω^)「そう来なくっちゃだお!」
- 148 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:20:39 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「ただし、ツンのを勝手に読んだら確実に殴られる事は覚悟しておかないと」
( ^ω^)「元より2、3発は殴られる覚悟だお!」
(´・ω・`)「まあ、僕はブーンが無理矢理……って言い訳するけどさ」
(;^ω^)「友達甲斐のないやつだお」
僕達は大木の根元に向かい、生めた場所の大体の見当を付ける。
所詮は子供の遊びだ。
それほど深くは掘っていないだろう。
( ^ω^)「確か、鉄の箱に入れたはずだから、魔法で探査も出来るはずだお」
(´・ω・`)「僕もそんな記憶あるよ」
( ^ω^)つ\「というわけで、恐らくこの辺だお」
゚''
(∪*^ω^)「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「おー、ここ掘れわんわんおだお」
- 149 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:21:45 ID:D9XkAUpo0
僕達が掘り出すと、わんわんおが一緒に掘り始めた。
流石犬というべきか、なかなかの速さである。
(*´・ω・`)「よーし負けないぞー。わんおちゃんが危ないからこっちの小さなスコップで掘ろうか」
( ^ω^)「穴掘りブーンと呼ばれた僕に敵うと思ってるのかお?」
(;´・ω・`)「いや、そんな風に呼ばれた事ないでしょ?」
(∪*^ω^)「わんわんお! わんわんお!」
( ^ω^)「掘って掘って掘りまくるお!」
それから3人で座ってひたすら穴を掘り続けた。
(∪*^ω^)「わんわんお! わんわんお!」
(*´・ω・`)「よっ、はっ、とっ」
( ^ω^)「おっおっお」
- 150 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:23:05 ID:D9XkAUpo0
ひたすら穴を掘り続ける。
(∪^ω^)「わんわんお! わんわんお!」
(´・ω・`)「よっ、はっ、とっ」
( ^ω^)「おっおっお」
ひたすら穴を掘り続ける。
(∪;^ω^)「わんわんお わんわんお」
(;´・ω・`)「よっ、はっ、とっ……」
(;^ω^)「おっおっお……」
ひたすら穴を……
(∪;^ω^)「わんわんお……わんわんお……」
(;´・ω・`)「よっ……、はっ……、とっ……」
(;^ω^)「おっおっ……って、いや、流石に深すぎないかお?」
- 151 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:24:27 ID:D9XkAUpo0
そう思って再度探査魔法をかけてみるも、未だに地中を指し続けている。
場所が間違っていないという事は、更に深い位置にあるという事になる。
ひょっとしたら、この下に巨大な鉱石が眠っていて、そっちを指している可能性もあるが、
この辺りで鉱石が採れるという話は聞いた事がない。
(∪;´ω`)「わんわんお……わんわんお……」
(;^ω^)「何で……こんなに……深いんだっけかお?」
(;´・ω・`)「そんなの……僕に……言われても……あ……」
(;^ω^)「お?」
(;´・ω・`)「穴が深い理由思い出した。ツンだよ」
ショボンの話では、張り切り過ぎたツンがものすごくは深い穴を掘った覚えがあるという。
そう言われればそんな事もあったような気がするが、これを埋めた当時僕らはまだ7つぐらいだった。
そんな子供にこれほど深い穴が掘れたのかと疑問はあるが、現に深いのだからしょうがない。
(;´・ω・`)「覚えてない? いざ、埋めようって時に深過ぎてどうしようって話になってさ」
- 152 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:25:57 ID:D9XkAUpo0
(;´・ω・`)「君が穴に落ちて、タイムカプセル置いたはいいものの、上がれなくなって……」
(;^ω^)「ああ、何かうっすらと思い出して来たお。主にあの時の恐怖を」
確かツンが段階的に埋めてって、少しずつ上がってくればいいじゃないとか言い出して、
ものすごい勢いで土を穴に放り込み始めて僕が埋められかけたのだ。
最終的に僕らの帰りが遅いと探しに来たドクオさんに助けてもらって事無きを得たのだが、
あの時は本当に出られないんじゃないかと思って怖かった。
(∪;´ω`)「わんわんお……わんわんお……」
(;´・ω・`)「あの頃のツンって、ものすごくやんちゃだったよね」
(;^ω^)「だったおね。今も結構やんちゃだけど」
(∪;´ω`)「わんわんお……わんわんお……」
(;´・ω・`)「君の側ではそうかもしれないけど、普段は結構……って、わんおちゃん、もういいから!」
ひたすら無心で掘り続けるわんわんおだが、最初の勢いはもうどこにもない。
よくがんばってくれたが、流石に限界だろう。
- 153 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:27:11 ID:D9XkAUpo0
(;^ω^)「わんお、もう休んでるお。つーか、この掘り方止めて大きなスコップと魔法使って……」
コツン
(∪;´ω`)「わんわんお……わんわん……お?」
(;^ω^)「お?」
(∪;^ω^)「わんわんお! わんわんお!」
急に元気になり、掘るスピードを上げるわんわんお。
何事かと考えるより早く、わんわんおが何かを掘り出した。
(∪*^ω^)□「わんわんお!」
(*^ω^)「それだお! でかしたお、わんお!」
(*´・ω・`)「わんおちゃん、偉い!」
僕達は穴から出て、わんわんおに水を与えて休ませる。
よほど疲れていたのか、わんわんおは水を飲むとすぐに眠ってしまった。
(∪*´ω`) zzz
(´・ω・`)「さて、それじゃあ……」
( ^ω^)「開けてみるかおね」
- 154 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:29:19 ID:D9XkAUpo0
タイムカプセルは10年ほど埋まっていた割には損傷も見られず、錆などもない。
あの時は深く考えなかったが、箱を用意してくれたドクオさんが何かしら魔法を施してくれていたのだろうか。
( ^ω^)「中も綺麗な……何だお、この乾燥した葉っぱは?」
(´・ω・`)「君が入れた薬草じゃないかな?」
(;^ω^)「そんなの入れたっけかお?」
そんなものを入れた覚えはなかったが、ショボンが言うのならきっとそうなのだろう。
それ以外にもよくわからない石ころや金属片、得体の知れない真っ黒な何かなど、
いかにも子供の発想らしいものがいくつも入れられていた。
(;^ω^)「何だろうかおね、この黒いの?」
(;´・ω・`)「何だっけかなあ……」
しばらく考えてみるも、思い出したキーワードが、ツン、料理、悶絶というような、
何か思い出してはいけないものな気がして来たので思い出すのは諦めた。
( ^ω^)「それよりも本題だお。どこかに手紙らしきものはないかお?」
- 155 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:31:26 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「それなら多分、これだろうね」
いつの間にかショボンの手の中に、3つの折り畳まれた紙が握られていた。
ショボンはその内の1枚を開いて目を通す。
(;^ω^)「ちょ、自分ばっか先に見るなお。それ誰んだお?」
(´・ω・`)「ふむ……ああ、はいはい……」
(;^ω^)「気になるお。僕にも見せて──」
ビリッ
(´・ω・`)「あ……」
(;^ω^)「ちょ、何やってんだお? 破くなお! 大事に扱えお!」
(´・ω・`)「大丈夫だよ。端っこの方がちょっと破れただけだし」
(´・ω・`)「それよりこれ、ツンのだよ。見たいんだろ?」
そういってショボンは僕に紙を手渡す。
言葉通り、破れたのは紙の下の方の一部だけのようだ。
- 156 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:32:58 ID:D9XkAUpo0
(*^ω^)「さてさて、ツンの夢は何だったっけかお」
(´・ω・`)「……君、勝手に見る罪悪感とか一切ないんだね」
(;^ω^)「お、お前も見たじゃねえかお。それに、これはツンの為を思って……」
(´・ω・`)「冗談だよ」
嫌なタイミングで見辛くなる事を言うショボンだが、実際これはツンの為でもある。
ツンが何かしら自分を押し殺し、夢を諦めているのだったら相談に乗るぐらいはしてあげたい。
その為にも昔のツンの夢を僕は知っておきたいのだ。
決して面白い事が書いてあるのを期待して、それをネタに弱みを握ろうというわけではない。
断じてない。
(´・ω・`)「何でもいいから早く読みなよ」
(;^ω^)「わかってるお。別に疾しい気持ちはこれっぽっちもないお」
僕は、意地の悪い笑みを浮かべるショボンから視線を外し、紙に目を落とす。
- 157 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:34:45 ID:D9XkAUpo0
_ _ _
─┼─ / / |─| |─| ─┬─
/|\ メ | ̄  ̄ | -┼-
| ノ \ | 豆寸. | │
| 口 | | -─┴─-
|
人
/ \
| |
ξ*゚ー゚)ξノ⌒).(^ω^) | ← さんどばっぐ
わたし → と と /`´⊂ ⊃
) / バキッ!. |
( / | |
(,,ノ  ̄ ̄ ̄ ̄
( ^ω^)「……え?」
- 158 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:35:59 ID:D9XkAUpo0
- ゴシゴシ
( ∩ω∩)"「あれ、何か予想と全然違う変な文字が見えたような……」
( ^ω^)「多分、見間違いだおね。女の子の夢が格闘王とかあるわけないお。どれどれ……」
再び紙に目を落とすも、そこにはやはり子供らしい下手な文字で大きく書かれた格闘王の文字がある。
ご丁寧に恐らくツンであろう女の子がサンドバッグに蹴りを入れているイラストまで描かれている。
何故かサンドバッグが毎朝見ている誰かに似ている気がするのだが、それも気の所為だと思いたい。
(;^ω^)「いや、格闘王ってあんた……それ、小さな女の子の夢じゃないだろ」
(;^ω^)「てか、よく格闘王なんて難しい漢字知ってたおね」
だからといって冒険者というのもどうかと思うが、格闘王はあんまりだと思う。
いくら武術道場の娘とはいえ、あまりにこれは小さな女の子の夢とは思い難い。
(;^ω^)「あっれー? これ、僕はどうすればいいんだお?」
(´・ω・`)「いや、知らんがな」
予想を遥かに越える事態に、僕は混乱し切っていた。
取り敢えずわかった事は、ツンは別に夢を諦めたわけでもなければ変えたわけでもないのだろうという事ぐらいだ。
格闘王はともかくとしても、ツンは日々強くなる為に修行をしているのだし。
- 159 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:37:25 ID:D9XkAUpo0
(;^ω^)「えーっと、じゃあ、僕はツンに対して出来る事はないって事かおね?」
(´・ω・`)「うん、まあ、そうかもしれないけど……」
ξ )ξ ユラリ…
(;´・ω・`)「サンドバッグにはなれるんじゃない?」
(;^ω^)「へ?」
ポンッ
ξ^竸)ξつ(;^ω^)!?
(;゚ω゚)「ツ……、いや、違うお! これは、その、あの……」
ξ#^竸)ξ∩「あら、こんな所にいいサンドバッグが」
(;゚ω゚)「NOOOOOOOOOOOO!!!」
いつの間にか背後に立っていたツンから、逃げる間もなく電光石火の一撃をボディに食らい、その場に崩れ落ちる。
弁明しようと口を開こうとするが、今の一撃で呼吸が苦しく、言葉を発する事が出来ない。
- 160 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:39:02 ID:D9XkAUpo0
ξ#゚听)ξ「全く……なに勝手なことしてくれてんのよ……」
(;゚ω゚) パクパク……
(´・ω・`)「その位にしてあげてよ。一応、ブーンもツンの為を思ってした事なんだから」
ξ#゚听)ξ「何言ってんのよ? あんたも同罪よ、ショボン? 大体……」
(´・ω・`)「はい、これ」
ξ゚听)ξ「何よ、これ? 紙? 何の……」
ξ///)ξ「!?」
(;゚ω゚)「?」
ショボンがツンに何かを手渡すと、ツンの動きがピタリと止まった。
鈍痛で意識朦朧の僕には何が起こっているのか全く理解できない。
ξ///)ξ「あ、あんたこれ……」
(´・ω・`)「大丈夫。見てないよ、僕しかね」
- 161 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:40:04 ID:D9XkAUpo0
ξ;゚−゚)ξ「そ、そう……それじゃあ……」
(´・ω・`)「取り敢えず、この辺で許してくれるかな? 僕も、ブーンも」
ξ;゚听)ξ「クッ……ま、まあ、いいわ。ただしこの事は……」
(´・ω・`)「わかってるよ。サンドバッグのおyξ#゚听)ξ「それ以上言ったら記憶がなくなるまで殴るわよ?」
∩(´・ω・`)∩「やれやれ……了解了解」
何だかよくわからないが、ショボンがツンの怒りを静めてくれたようだ。
これ以上のお咎めはないらしい。
( ^ω^)「それで、ショボンのは何て書いてあったんだお?」
ようやく呼吸の整った僕は身を起こし、ショボンに尋ねる。
本当は今の流れの事を尋ねたかったが、ツンの無言の圧力でそれは断念した。
(´・ω・`)「これから読むよ」
そう言ってショボンは1枚の紙を開き、それに目を落とす。
僕もツンも、何も言わずにそれを見守った。
- 162 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:41:57 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「……フフッ、なるほどね」
( ^ω^)「何て書いてあったんだお?」
(´・ω・`)「それは内緒かな」
ショボンは紙を大事そうに再び折り畳み、自分の懐に仕舞った。
ξ゚听)ξ「何よそれ? 他人の勝手に見て、自分のは内緒って」
(´・ω・`)「まあ、いいじゃないか。それほど面白い事は書いてなかったし」
そう言うショボンだが、先ほどは明らかに笑っていた。
しかし、何だか少し晴れやかな顔をしているショボンを見て、僕はそれ以上聞くのは止めにした。
( ^ω^)「少しは役に立ったかお?」
(´・ω・`)「うん、ありがとう、ブーン。それにツンもね。勿論、わんおちゃんも」
ξ゚听)ξ「私は何もしてないわよ?」
(∪*´ω`) zzz
- 163 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:43:26 ID:D9XkAUpo0
(´・ω・`)「君達はいてくれるだけでいいのさ。僕にとっては、それだけで……」
(´・ω・`)「ここが僕の居場所で、帰る場所で……」
( ^ω^)「ショボン……」
ショボンは僕らに背を向け、大木を見上げる。
その表情は窺い知れないが、その背は紛れもなく僕が知るショボンの姿だ。
幼い頃から見続けて来た、僕の親友であるショボンの。
( )「だから僕は、どこにでも行ける」
( )「ブーン、ツン、僕は騎士になろうと思う」
( ^ω^)「お……」
ξ゚听)ξ「いいの、それで?」
( ´・ω)「うん、決めたよ。それが僕の夢の一部だから」
振り向いたショボンの顔は、晴れやかな笑顔が浮かんでいた。
一点の曇りもない、無邪気な子供の様な笑みだった。
- 164 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:45:22 ID:D9XkAUpo0
ξ--)ξ「そう。それなら私からは何も言う事はないわ。がんばりなさいよ」
( ^ω^)「ショボンがそうすると決めたなら僕は応援するお。がんばれお」
(´・ω・`)「ありがとう。今日にでも父さんに話してみるよ」
僕らはショボンの決断を受け入れ、素直にそれを歓迎した。
それから僕らは日が暮れるまで、子供の頃の思い出を語ったりして時を過ごした。
(´・ω・`)「さて、そろそろ帰らないとね」
ξ゚听)ξ「もうだいぶ日が落ちて来たわね」
( ^ω^)「何だか子供の頃に戻ったみたいで楽しかったお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
その代わりに全くドアの製作作業に取りかかれなかったが、それはまた今度にしようと思う。
こうやって皆で話せる機会も今後は減るのだろうし。
ξ゚听)ξ「そういえばあんたの夢って何が書かれてたのよ?」
- 165 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:47:44 ID:D9XkAUpo0
(;^ω^)「お、そういえばすっかり忘れてたお。ショボン」
(´・ω・`)「うん、僕も忘れてた。はい、これ。こっちは僕もまだ見てないよ」
僕はショボンから紙を受け取り、恐る恐るそれを開く。
正直、何と書いたか全く覚えがない。
ξ゚听)ξ「まあ、魔法使いか魔法道具屋かでしょ」
(´・ω・`)「どうかな? ブーンの事だし、もっと変な事書かれてるかもね」
ξ゚听)ξ「あり得るわね」
(∪^ω^)「わんおー」
ξ゚听)ξ「でも、いくら変な事っていっても、薬草なんてベタな事書かれてたら取り敢えず殴ろうかと思う」
(;^ω^)「そこ、うるさいお! てか、いくら子供でもそんな変な事書かないお」
僕は馬鹿にした視線を向けてくるツンを無視し、開いた紙に目を落とす。
そこに書かれていたのは……
- 166 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:49:24 ID:D9XkAUpo0
─┼─ | \__ ヽヽ | |
| ヽ | ──  ̄ \_ レ |
/ | ̄ ̄\ |  ̄ \ |
\ | / レ ── ヽ__ ノ
/⌒ヽ
(*^ω^*)
o o
し--J
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「ブーン?」
(´・ω・`)「何て書いてあったんだい?」
(∪^ω^)「わんおー?」
ツンとショボンは、僕の返事を待たずに僕の手元の紙を覗き込む。
2人は顔を上げると、何ともかわいそうなものを見る目で僕の方へ視線を向けた。
- 167 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:52:09 ID:D9XkAUpo0
ξ゚听)ξ「まあ、人の夢なんて好き好きだから……」
(´・ω・`)「うん、そういう夢もありなんじゃないかな……」
( ^ω^)「……何で僕、こんな事書いたんだおね?」
ξ゚听)ξ「……お腹でも空いてたんじゃない?」
(´・ω・`)「……ブーンはおにぎり好きだったよね」
( ^ω^)「うん、おにぎり美味いおね……」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕は、何とも言えないやるせない気持ちで2人の言葉に頷き、紙を折り畳んで懐に仕舞う。
幼きあの日に見た夢が何であったのか、僕にはまるで覚えはないが、
取り敢えず今日の晩ご飯はおにぎりにしようと心に誓った。
第十五話 幼き夢は今も僕らに 終
- 168 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:54:01 ID:D9XkAUpo0
十五話は以上です
これで書き溜めは全部消費したので、またしばらく間が空くと思います
その間スレも残っているので、質問等あれば答えられる範囲で(∪^ω^)が答えます
支援とか感謝です
- 169 名前:名も無きAAのようです:2012/03/06(火) 23:55:30 ID:gFYqmKmE0
- ▼・ェ・▼わふん、わふわふわん?
- 170 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:00:39 ID:eT24nWCA0
- 乙
ほのぼので面白いです
- 171 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:07:15 ID:LDKgLn.Q0
- わんわんお大好き
- 172 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:12:37 ID:uh6UB86gO
- 乙です。
- 173 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:18:43 ID:6171umOE0
- おにぎりww似合うww乙!
- 174 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:21:48 ID:Gr23YJCgO
- 乙
(∪^ω^)が答えますって、質問に答える気ないだろwww
それとも、天空竜の時みたいに直接脳内に答えてくれるの?
- 175 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:30:48 ID:rjc64w.U0
- >>174
(∪^ω^)(わんわんお!)
- 176 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 00:42:33 ID:Gr23YJCgO
- こいつ直接脳内に・・・!
- 177 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 12:55:36 ID:Qz54EJ6k0
- 乙!
ドアの木材はどうなったんだろう
- 178 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 13:32:24 ID:RDhWu.eA0
- 乙お
ペースも速いし面白いな
- 179 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 14:30:19 ID:5FnYD9oU0
- トソでも、いっしょの作者?
- 180 名前:名も無きAAのようです:2012/03/07(水) 14:35:25 ID:L7rGCJ7U0
- おにぎりワロタwww
- 181 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:20:56 ID:Aka3RU3A0
〜 バーボンハウス 深夜 〜
( ^ω^)「シャキンさん……」
(`・ω・´)「……薄々、そんな気はしてたんだ」
(`・ω・´)「あいつが、何か別のものになりたがってるんじゃないかって」
(`・ω・´)「それが騎士とは思いもしなかったけどな」
( ^ω^)「僕は……」
(`・ω・´)「わかってる。お前の事だ。ショボンが自分から言い出すまで黙ってたんだろ?」
(`・ω・´)「俺とあいつがちゃんと話し合って決めるべき事だから、ってな」
第十六話 宇宙を砕く螺旋の拳
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 182 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:23:13 ID:Aka3RU3A0
( ^ω^)「それでも、知ってて黙ってたのは申し訳なく思ってますお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
(`・ω・´)「気にするな。むしろ感謝しているさ」
彼の名前はシャキンさん。
バーボンハウスという酒場を営んでおり、僕の親友であるショボンの父親でもある。
( ^ω^)「感謝……、ですかお?」
タイムカプセルを掘り出した翌日、僕は客もだいぶ少なくなっているであろう深夜のバーボンハウスを訪ねていた。
ショボンがシャキンさんに騎士になる事を話し、了承も得たという事はショボンから既に聞いていた。
僕はずっとショボンの気持ちを知っていながら黙っていたのを謝罪しようと思ってここに来たのだが、
シャキンさんからは意外な言葉が帰って来る。
(`・ω・´)「先にその話を聞いてたら、恐らく俺は色々と余計な事をしてただろうしな」
(`・ω・´)「少なくとも、不自然な態度を取ったりしてしまっていたと思う」
- 183 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:24:27 ID:Aka3RU3A0
驚いたし、混乱もしたが、まっすぐにショボンと向き合って話す事が出来たので、
結果的に良かったとシャキンさんは言う。
(`・ω・´)「それにな、あいつが言い出さなくても、俺はあいつに1度旅に出る事を勧めるつもりだった」
( ^ω^)「旅にですかお?」
(`・ω・´)「世界は広い」
シャキンさんは店の天井を見上げ、呟くように言葉を続ける。
(`・ω・´)「そんな広い世界を知らず、ヴィップの町で見たものだけで自分の道を決めてしまうのは勿体無いからな」
シャキンさんの言葉は、僕にというよりはどこか自分に言い聞かせてるようにも聞こえた。
僕はただ、黙ってそれを聞いていた。
(`・ω・´)「しかしあいつはそんな狭い世界にいながらも、ちゃんと広い世界を見ていたんだな」
(`・ω・´)「その為に身体を鍛え、金を貯めて、それでいて店の手伝いも愚痴1つこぼさずにやってくれていた」
( ^ω^)「僕には時々愚痴ってましたけどね」
(`・ω・´)「まあ、そうだろうな」
- 184 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:26:34 ID:Aka3RU3A0
僕の冗談交じりの言葉に、シャキンさんも笑う。
愚痴を聞いてくれる友達がいる事はいいことだと。
(`・ω・´)「愚痴に限らず、ずっと相談相手になってくれてたんだろ?」
(`・ω・´)「ありがとう。あいつの親としてブーン、お前にはとても感謝している」
( ^ω^)「ショボンとは友達ですから当たり前ですお。ショボンも僕の愚痴や相談を聞いてくれましたしね」
シャキンさんは満足げに頷き、僕に優しい視線を向ける。
それはきっと親が子に向けるそれと同じ様なものだったのかもしれない。
(`・ω・´)「まあ、とにかく、俺はショボンの決断を受け入れるし、嬉しくも思っている」
(`・ω・´)「あいつ自身が自分で決めた道だ。親としては当然の事だ」
僕は無言で頷く。
シャキンさんの言葉は、きっと本心から出ていると僕には思えた。
(`・ω・´)「……けどなあ、わかってるんだけど、何だろうな、この……寂しさは」
( ^ω^)「お……」
- 185 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:28:19 ID:Aka3RU3A0
(`・ω・´)「ショボンの夢は応援している。バーボンハウスはあいつが継がなくてもどうとでもなる」
(`・ω・´)「子はいつまでも親の元にいるより、自分で自分の道を歩むべきだ」
(`・ω・´)「俺はそう思っている。心からな」
(`・ω・´)「でも、何でこんなに寂しく思うんだろうな……」
シャキンさんはうめく様に思いを吐露する。
また天井を見上げるその姿は、涙がこぼれ落ちない様に、必死に堪えているようにも見えた。
( ^ω^)「それはきっと、シャキンさんがショボンの親だからですお」
(`・ω・´)「親……」
( ^ω^)「親が子と別れる事を寂しく思うのは当たり前の事ですお」
( ^ω^)「親として子を愛しているから、そう思うんですお」
(`・ω・´)「……」
シャキンさんは何も言わず、僕に背を向け、カウンターの奥に引っ込む。
僕はそれを目で追いながら、漠然とじいちゃんの事を思い出していた。
- 186 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:32:27 ID:Aka3RU3A0
(`・ω・´)つUU「……付き合ってくれるか」
戻って来たシャキンさんは僕にグラスを手渡す。
反対の手には、普段のお店では見たことのないお酒の瓶が握られていた。
( ^ω^)つU「頂きますお」
僕はグラスを傾け、お酒を注いでもらう。
そして酒瓶を受け取り、シャキンさんのグラスにも注いだ。
(`・ω・´)「何に乾杯すべきかな?」
( ^ω^)つU「そりゃ勿論……」
(`・ω・´)つU「そうだな、ショボンの前途に……」
( ^ω^)つU「乾杯」
僕はシャキンさんとグラスを合わせ、お酒を勢いよく呷る。
お酒をそれほど嗜んでいない僕だが、いいお酒のようで随分美味しく感じた。
- 187 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:34:40 ID:Aka3RU3A0
(`・ω・´)「寂しくて当たり前か……」
( ^ω^)「僕だって、友達が遠くに行くのは寂しく思いますお。それも当たり前の事ですお」
(`・ω・´)「そうだな。うん、そうだよな……」
( ^ω^)「そうそう、僕はショボンを王都まで送ろうかと思ってますお」
(`・ω・´)「それは流石にやり過ぎじゃないか? 俺としては有り難いが……」
( ^ω^)「いえ、僕も1度王都に行ってみたかったんで、丁度良い機会かなと」
(`・ω・´)「そうか……。それじゃあ、よろしく頼むかな」
あくまでついでの事だと主張したが、シャキンさんは多分、それが僕の照れ隠しだと思われたのかもしれない。
実際、いい機会だと思うので、ついでというのはあながち嘘でもないのだが。
(*`・ω・´)「よし、じゃあ、その間うちでわんおちゃんは預かろう」
( ^ω^)「いえ、わんおも一緒に連れて行きますお?」
(´・ω・`) ショボーン
やっぱり親子だなあと、僕は微笑ましい気持ちでグラスに残っていたお酒を一息に飲み干した。
- 188 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:36:11 ID:Aka3RU3A0
〜 魔法道具屋サンライズ 数日後 〜
( ^ω^)「これはこうして……この辺はそのままでいいかおね……」
(∪^ω^)「わんおー」
ショボンを王都に送る日を1週間後に控え、僕はお店の在庫の整理を行っていた。
随分と急な話になったが、この機を逃せば騎士学校の入学試験はまた1年後だ。
決めたのなら行動は早い方がいいと、ショボンもシャキンさんも今年の試験を受けるべきだという考えに至った。
王都まで馬車で約6日、滞在期間や途中でメシューマに寄る事も考えると、
少なく見積もっても2週間以上は店を空ける事になるだろう。
これほど長期間店を閉めるのは、僕が店長になってからは初めての事だ。
( ^ω^)「これはそのままでもつから、これでいいおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
流石にそれはヴィップの町でのクエストの方に影響が出るからという事で、
普段閉める時よりはかなり多めにシャキンさんの所に薬草等を置いて行く予定ではある。
- 189 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:38:27 ID:Aka3RU3A0
今回の旅には同行しない、クーが代わりに店を開けると主張しているが、
まだ1人で任せるには厳しいものがあるので、どうするかは検討中である。
トソン君もいる事だし、僕としてはやらせてもいいかとは考えてもいる。
仕事をきっちり分担し、解呪などの難しい依頼は受けなければ何とかなるのではなかろうか。
( ^ω^)「トソン君に細かい仕事をやらせないで、金銭管理をクーにやらせなければ大丈夫だおね」
(∪^ω^)「わんお!」
問題は商品の供給が一切出来ないので、あらかじめ大量に薬草とか作っておく必要がある事だ。
これに関しては店を開けない場合でも必要ではあるので、これから1週間、忙しくなりそうである。
( ^ω^)「まあ、最近のヴィップの町の感じなら、そんなにいらないとは思うけど」
(∪^ω^)「わんおー」
最近のヴィップの町は静かなものである。
ジョルジュさん達がいなくなってからは、クエストの受注の数も減っているとシャキンさんは言っていた。
ジョルジュさん達はヴィップに長くいたわけではないが、実力もあり、目立つ存在であった。
残った冒険者の人達も、競い合う相手がいないとやる気が出なかったりするのだろうか。
- 190 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:41:03 ID:Aka3RU3A0
とはいえ、生きるためには稼がねばならないだろうから、皆その内またクエストには向かうのだろう。
つい先日、バーボンハウスに行った際にも薬草とかの大量注文をしてくれた冒険者の人もいる。
( ^ω^)「で、その受け渡しが今日なんだおね。昼頃って話だけど、まだ来ないおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
時刻は既に昼は過ぎたが、今日は別段予定もないので特に問題はない。
受け渡しの準備は既に出来ており、あとは品物を渡し、代金を貰うだけだ。
そんな事を考えているとベルが鳴り、店のドアが開かれる。
( ^ω^)「いらっしゃいませー……って、トソン君かお」
(゚、゚トソン「こんにちは、ブーン店長」
(∪^ω^)「わんわんお!」
店を訪れたのは待っていた冒険者ではなく、トソン君であった。
今日はツンの手伝いで畑仕事のはずだが、何の用事だろうか。
- 191 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:44:20 ID:Aka3RU3A0
(゚、゚トソン「あれ? クー様はいらっしゃらないのですか?」
( ^ω^)「臨時でバーボンハウスの方に入ったお」
クーは今日はサンライズのバイトの予定だったが、
急遽シャキンさんに頼まれてバーボンハウスの方に回る事になった。
バーボンハウスもショボンが抜ける事で色んな仕事の引継ぎが発生し、今はバタバタしている。
(゚、゚トソン「そうですか……では……」
( ^ω^)「ちょっと待ってくれお。トソン君、今日は畑の方はどうしたんだお?」
クーがいないと知るとすぐにバーボンハウスに向かおうとしたトソン君を引き止め、質問をする。
クーならともかくトソン君がサボったとは思わないが、ツンの方に何かあったのか気になる所だ。
(゚、゚トソン「臨時でお休みになりましたので」
( ^ω^)「休み? ツンに何かあったのかお?」
トソン君の様子から、緊急を要する何かがあった様な雰囲気ではないのはわかるが、
急に畑仕事を休みにする原因は何なのだろうか。
- 192 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:46:47 ID:Aka3RU3A0
(゚、゚トソン「はい、何でも道場破りの方がお見えになりましたので」
(;^ω^)「道場破り?」
軽い調子で言うトソン君だが、何かあった所の騒ぎではない気がする。
しかも今日はツンの両親がいないらしく、ツンがそれを受けたという。
(;^ω^)「それ、大丈夫なのかお?」
(゚、゚トソン「はい、ツンさんは余裕だけど、ちょっとは時間かかるだろうからって畑の方は休みになりました」
本人がそう言うのならと、トソン君は素直に従ったらしいが、僕としては少し気になる。
ツンの性格上、弱音は絶対吐かないだろうし、立会人も無しで戦うのはどうなのだろうか。
( ^ω^)「トソン君、ちょっと頼みがあるんだけど」
(゚、゚トソン「はい、何でしょう?」
( ^ω^)「ツンの様子見て来たいんで、店番頼めないかお?」
僕は今日、この後商品の受け渡しあるので店を閉められないことを説明し、トソン君に店番を頼む。
- 193 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:49:30 ID:Aka3RU3A0
(゚、゚;トソン「えー……でも、僕は今からクー様の働きぶりを見届けるという使命が……」
(;^ω^)「いや、それ特に用事ないのと同じだおね? そこを何とか頼むお」
(-、-;トソン「うーん……でも、クー様が働いてるのを見守りながらお茶を飲むのは至福の時なんですよね」
( ^ω^)「あ、そうだ、この試作品の薬草キャンディあげるから」
(゚、゚*トソン「キャンディですか? うーん……でも薬草って苦そうな……」
( ^ω^)「いや、これは薬草だけど甘いんだお。ただ、甘み強くし過ぎて、薬草としての効果が薄れちゃったけど」
(゚、゚*トソン「甘いんですか? それなら……いや、でもクー様……キャンディ……クー様……キャンディ……キャンディ」
浮かない表情のトソン君だが、借りが山積みな僕の頼みは断り辛いのか、渋々頷いてくれる。
(゚、゚トソン「仕方ありません。他ならぬブーン店長の頼みですからね。しかし……」
( ^ω^)「しかし、何だお?」
ヽ(゚、゚トソン「その、彼も一緒ですか?」
彼と、トソン君が指差す先にはカウンターで丸くなっているわんわんおがいる。
- 194 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:52:14 ID:Aka3RU3A0
( ^ω^)「そのつもりだけど、何か問題あるかお?」
(∪^ω^)「わんおー」
(゚、゚;トソン「その……僕、動物とか苦手というか……何というか……」
( ^ω^)「お?」
トソン君が言うには、自分は動物が苦手、というよりは動物が自分を苦手としている様で、懐かれる事が全くないらしい。
トソン君は動物が嫌いなわけでもないのだが、嫌われるので近寄るのは自重しているという。
言われてみれば、前にサンライズでバイトした時トソン君はわんわんおに近寄っていなかった気がする。
( ^ω^)「わんおなら大丈夫だお。すっごく人懐っこいお」
僕はわんわんおに目配せをする。
それを察してくれたのか、わんわんおはトソン君に擦り寄って行く。
(∪^ω^)「わんわんお!」
(゚、゚*トソン「わ、わんお君、君は逃げないでくれるのかい?」
(∪^ω^)「わんお!」
- 195 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:55:26 ID:Aka3RU3A0
(゚、゚*トソン「フフフ……よしよし……」
つ∪^ω^)
( ^ω^)「じゃあ、そういう事で……」
( 、 *トソン「フフ……よしよしよし……フフフフ……よしよしよしよしよしよし……フフ……ウフフ……」
つ∪;^ω^)っ"
恍惚の表情でひたすらわんわんおを撫でまくるトソン君の姿は若干怖いものがあったが、まあ、問題はないだろう。
わんわんおが何となく助けて欲しそうな顔をしていたが、少しの間なので仲良くしていて欲しい。
( ^ω^)ノシ「それじゃ、あとは頼むお。品物はそこに置いてあるやつだから」
( 、 *トソン「フフフ……よしよしよし……いってらっしゃーい……フフ……ウフフ……よしよしよしよしよしよし……」
つ∪;^ω^)ノシ 「わんわんおー!?」
僕はサンライズを飛び出し、ツンのいる道場の方へ走る。
既に試合は始まっている可能性が高いので、急ぐ必要があるだろう。
( ^ω^)「お? ツン?」
- 196 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:57:16 ID:wyHgdm.s0
- もふもふをもみもみするトソンが
- 197 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 22:57:46 ID:Aka3RU3A0
そう思って急いでいたが、道場の遥か先、町の外に続く道の方にツンの姿が見えた。
まさかもう終わってしまったのだろうか。
ξ゚听)ξ「あら、ブーンじゃない。どうしたの、こんなとこで?」
( ^ω^)「どうしたの、はこっちの台詞だお。道場破りはどうなったんだお?」
ξ゚听)ξ「今からよ。場所を変えてやろうって話になってね」
ツンの話では道場ではなく、町の外れの広場で戦う事になったらしい。
何でそんな話になったのか気になる所だったが、道場が壊されるのは勘弁願いたいからだとツンは言う。
(;^ω^)「そんなに強い相手なのかお?」
ξ゚听)ξ「多分ね。ほら、前に話したでしょ、鉄をも砕くとか言われてる道場破りの話」
( ^ω^)「ああ、何か魔法使うとかいう……」
以前、ツンからそんな話を聞いた覚えはあった。
超短時間で詠唱出来るのか、詠唱をそれと気付かせないのかわからないが、魔法を使う道場破りがいると。
- 198 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:04:26 ID:Aka3RU3A0
ξ゚听)ξ「あれから、名前だけは風の噂で聞いてたのよ」
ξ゚听)ξ「で、今日来たやつがその名を名乗り、見た感じ結構やるようだったから場所を変える事にしたの」
( ^ω^)「なるほど、把握」
であるなら丁度良いタイミングで僕は来た様だ。
その道場破りが使う魔法とやらがどんなものか見極めたいと思っていたし。
( ^ω^)「で、その肝心の道場破りはどこだお?」
ξ゚听)ξ「場所教えたら全力で走って行ったわ。何だか忙しないやつだわ」
( ^ω^)「それはまた……」
僕らはのんびりと話しながら町外れに向う。
ツンはこれから闘うというのに随分と落ち着いたものだった。
( ^ω^)「ここだおね。お……あれかお」
ξ゚听)ξ「待たせたわね」
- 199 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:07:09 ID:Aka3RU3A0
ノパ听)「遅い!!!」
広場の真ん中に仁王立ちする人影が1つ。
真っ赤な胴着を纏い、真っ赤な髪の道場破りは意外な事に女性であった。
それも僕やツンとそう変わらないであろう年頃の。
( ^ω^)「あれが道場破りなのかお?」
ξ゚听)ξ「そうよ。ヒート=オネスティー、それがあいつの名前よ」
ツンは僕に向かってそう説明すると、道場破り、ヒートさんの方へ1人向かう。
ξ゚听)ξ「あんたが急ぎ過ぎなのよ。常に平常心を保つ。武の基本でしょ?」
ノパ听)「知らん! 私はただ闘いたいだけだ! ……で、そいつは何だ?」
そいつと、ヒートさんは僕の方を指差す。
僕は自分の名と見学兼立会人として来た事を告げ、勝負の邪魔はしないと答えた。
ノパ听)「わかった。けど邪魔だけはすんなよ! 邪魔したらぶっ飛ばすからな?」
- 200 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:08:37 ID:Aka3RU3A0
( ^ω^)「しませんお。それに、邪魔したらヒートさんの前にツンからぶっ飛ばされますお」
ξ゚ー゚)ξ「よくわかってるじゃないの」
ツンは微笑み、拳をヒートさんに向ける。
ξ゚听)ξ「さあ、それじゃあ、始めましょうか」
ノパ听)「応!」
ツンの拳にヒートさんも拳を合わせ、2人同時に後方に飛ぶ。
どうやら今のが開始の合図らしい。
ノパ听)「破!」
まずはヒートさんが先制攻撃とばかりに跳躍して一気に距離を詰め、拳を打ち下ろす。
力が入り過ぎたのか、空を切った攻撃は大地に刺さり、土を巻き上げる。
(;^ω^)「なんちゅう威力だお……」
そのまま連撃に転ずるヒートさんの攻撃を、ツンは受ける事無く回避に専念した。
- 201 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:10:50 ID:Aka3RU3A0
噂が本当なら、鉄をも砕く拳だ。
今の地面への一撃を見る限りでも、まともに防御するのは得策ではないだろう。
ξ゚听)ξ「せいッ!」
何発目かの拳をかわした辺りでツンが攻撃に転じる。
足元目掛けて放ったローキックは見事にヒットする。
ノパ听)「お?」
ξ゚听)ξ「はッ!」
足が止まるヒートさんに、今度は顔面目掛けて拳を振りぬくツン。
攻撃は綺麗に決まり、ヒートさんは後方に吹っ飛んだ。
( ^ω^)「容赦ねえな……」
ξ゚听)ξ「真剣勝負に手加減する方が失礼でしょ?」
思わず漏れてしまった言葉に、ツンが耳聡く反応する。
こちらに注意を向ける余裕があるくらい、楽勝という事か。
- 202 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:12:40 ID:Aka3RU3A0
ξ゚听)ξ「そうでもないんだけどね……」
( ^ω^)「お……」
ノパ听)ヾ「あたたた、なかなかやるな、お前!」
ツンの拳をまともに食らったはずのヒートさんだが、
全くダメージがあるようには見えない素振りで立ち上がって来る。
その顔には、笑みらしきものまで浮かんでいる。
ノパー゚)「久々に全力でやれそうだ!」
ξ゚听)ξ「最初から全力で来なさいよ。負けた時の言い訳ぐらい後で考えてあげるから」
ノパ听)「応、よろしく頼む! 行くぞッ!」
ξ゚听)ξ「皮肉が通じないとか……。まあ、いいけど」
2人ともほぼ同時に前方に踏み込み、距離を無くす。
至近距離で肉迫した2人だが、ヒートさんがその場にどっしりと腰を沈めた構えに対し、
ツンは軽快にステップを踏む。
- 203 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:15:12 ID:Aka3RU3A0
ノパ听)「破! 破! 破ッ!!!」
ξ゚听)ξ「遅い!」
素人目には何が何だかわからない速さでの攻防が繰り広げられているが、
1つわかるのはツンが優勢という事だ。
ヒートさんの重そうな一撃は空を切り、ツンのシャープな一撃は的確にヒートさんを捉えている。
( ^ω^)(こりゃ心配するまでもなかったおね……)
この分ならツンの勝ちは揺ぎ無いだろう。
破壊力勝負ならわからないが、体捌きや技術の面でツンは圧倒的に優位だ。
噂の道場破りにここまでの差を見せ付けるとは、格闘王の夢もあながち冗談じゃないのかもしれない。
その際にはサンドバッグになる事だけはぜひとも避けねばなるまい。
( ^ω^)(あ、でも、まだ魔法を使って来てないおね)
先ほどから見ている限りでは、ヒートさんは魔法の類は一切使っていないと思う。
魔法の発動時には必ず魔力を感じ取れるはずだから、それは間違いない。
温存しているのか、それとも噂が間違いなのかと考えていると、またもヒートさんが後方に吹き飛ばされる。
- 204 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:17:32 ID:Aka3RU3A0
ξ;゚听)ξ「ふぅ……」
( ^ω^)「勝負あったかお?」
カウンター気味の拳がまたも顔面を捉えた。
これは流石に立ち上がれないのではないだろうか。
ノハメ゚听)「おおう……こりゃすごい。速いな、お前!」
ξ;゚听)ξ「お褒めに預かりどうも」
殴られた箇所こそ赤く腫れているものの、さしたるダメージはないような元気さで立ち上がるヒートさん。
むしろ攻撃をかわし続けていたツンの方が呼吸は荒い。
これは少しヒートさんのタフさを侮っていたかもしれない。
このまま長引けば、ツンの方が徐々に体力的に不利になる可能性もある。
ノハメ゚听)「すまん! 今度こそ本気の本気で行く!」
ξ;゚听)ξ「言い訳は……」
- 205 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:18:49 ID:isFWesnQO
- 主人公がすっかり解説役に
支援
- 206 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:20:12 ID:Aka3RU3A0
ヽノハメ゚听)ノ「宇宙魔法・発動!!!」
ξ;゚听)ξ「宇宙!?」
(;^ω^)「魔法!?」
ヒートさんは両手を天に向け、突如謎の言葉を叫ぶ。
魔法と聞こえたが、それが何なのか見極めるより早くヒートさんはツンに飛び掛っていた。
ノハメ゚听)「食らえッ!!! 守兵主散打ァァァァッ!!!」
目にも留まらぬ高速の突きを放ちながら空中から襲い掛かるヒートさん。
かわし切れないと悟ったのか、ツンは途中から防御に転じた。
ξ;゚听)ξ「クッ……」
ヽノハメ゚听)ノ「止めたか! ならば!」
ノハメ゚听)「打武流ゥッ覇亜ァァァァ拳ッ!!!」
両手を握り合わせ、思いっきり振りかぶって叩き付けるヒートさん。
辛くもその場から飛び退るツン。
その場にはヒートさんが叩き付けた地面から巻き上がる土埃に包まれた。
- 207 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:22:22 ID:Aka3RU3A0
(;^ω^)「今の……」
ノハメ゚听)「そこか! 氾獣力凄投ォォォォ武ッ!!!」
様子を見ようと1歩動いた僕の元に、何かがものすごい勢いで飛んで来る。
それがヒートさんが放った技だと考えるより早く、僕はその場に伏せる。
(;゚ω゚)「ちょ、こっちじゃねえお!」
ノハメ゚听)「うぉッ!? すまん! だが、邪魔すんなよ!」
どうやら砂埃の中、動く気配に向けて適当に放ったらしい。
僕に非があるかは微妙なとこだが、邪魔するつもりはなかったので勘弁して欲しい。
(;^ω^)「つーか今の何だお?」
ノハメ゚听)「魔法だ!」
(;^ω^)「え? 魔法? いや、でも……」
即答するヒートさんだが、今のが魔法かどうかと言われたら、多分違うのではないだろうか。
少なくとも、今の攻撃から魔力は感じ取れなかった。
- 208 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:23:36 ID:Aka3RU3A0
ξ゚听)ξ「どこ見てんのよ。相手は私よ」
ノハメ゚听)「む、そこか! 行ッくぞォォォォッ!」
僕との会話で隙だらけだったヒートさんにいきなり殴りかかるような事はせず、ツンはヒートさんの注意を惹く。
2人は再び攻防を開始するが、ヒートさんの言う魔法で形勢はかなりツンが不利だ。
原理はどうあれ、ヒートさんの攻撃は鋭さを増し、ツンも全てはかわし切れなくなっている。
素人目に見ても、このままではジリ貧であると判断せざるを得ない。
ヽノハメ゚听)ノ「もういっちょ! 打武流覇亜けェェェェんッ!!!」
( ^ω^)(つーかあれ、魔法でも何でもないおね……)
魔法だと即答したヒートさんだが、何度見てもヒートさんから魔力の放出は一切感じられない。
あれが魔法なら、僕が知ってる魔法は何だというのだろうか。
( ^ω^)(大体、宇宙魔法って何だお、宇宙って)
概念的にいえば、空の上にある世界とされる場所で、その定義とかはよくわかっていない。
その宇宙から力を借りるために両手を挙げてるのかもしれないが、色々と無理がある。
- 209 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:24:39 ID:Aka3RU3A0
理解の及ばないものから力を借りるなど、魔法使いからしてみれば狂気の沙汰だ。
神よりなおアバウトな概念だ。
そうなると、この魔法の正体として考えられるのは……
( ^ω^)(思い込み……?)
すごく馬鹿馬鹿しい結論になってしまうが、現状、考えられるのはそれしかない。
思い込みと言ってしまえば軽いが、自己暗示と言い換えると少しはそれらしくなるか。
( ^ω^)(すっごく馬鹿らしい答えだけど、実際それで強くなってるっぽいしなあ……)
自分は強いと思い込み、この一撃は速いと思えば加速し、この攻撃はきかないと思えば立ち上がれる。
勿論、基礎となる能力高いから出来る事なのであろうが、それにしたって正直これは無茶苦茶だ。
多分、ヒートさんはものすごく根が単純で、信じやすい人なのではなかろうか。
(;^ω^)(しっかし、これ、からくりがわかったとして、どうやって倒せばいいんだお?)
思い込むにも限界があるだろうから、何度も何度も倒せば勝てるのかもしれないが、現状、
それは厳しいかもしれない。
- 210 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:26:35 ID:Aka3RU3A0
ξメ゚听)ξ「クッ……」
ノハメ゚听)「どうしたッ! 動きが鈍いぞ!」
ヒートさんの攻撃を受け、後方に吹き飛ぶツン。
まともに受けたかと思いきや、防御には成功していた様だ。
しかし、ヒートさんの攻撃の勢いを殺せず、防戦一方だ。
(;^ω^)(力の出所が思い込みなら、その心を折る……思いで凌駕出来るなら、あるいは……)
対抗手段がないわけではない。
すごく馬鹿らしい発想だが、理には適っているかもしれない。
問題はそれをツンに伝えたとして、それに乗ってくれるかどうかだが。
ヽノハメ゚听)ノ「これで決める! 凄駆竜暗射亜ァァァァ拳ッ!!!」
ξ;メ゚听)ξ「しまッ──」
避け切れず、ガードしようとしたツンの腕を弾き、ヒートさんの拳がツンの胸を打つ。
ツンは派手に地面を転がった。
- 211 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:28:28 ID:Aka3RU3A0
(;^ω^)「ツンッ!!!」
ξメ-听)ξ「1対1の勝負よ。それ以上近寄らないで……、つッ……」
慌てて駆け寄る僕を、ツンは強い言葉で制す。
もう止めるべきかもしれないが、ツンの目は未だ強い光を放っており、全く諦めた気配はない。
( ^ω^)「あの宇宙魔法ってやつのからくりがわかったお」
ξメ-听)ξ「そう……流石ね……」
( ^ω^)「でも、正直それをどうにかするのは無理っぽいんだおね」
ξメ゚听)ξ「元から、自分で何とかするつもり……」
( ^ω^)「……けど、1つだけ、僕を信じてくれるなら、手があるかもしれないお」
ξメ゚听)ξ「?」
僕は、自分が思い付いた手段をツンに告げた。
ツンは鳩が豆鉄砲を食らったようなぽかんとした顔をした後、眉をひそめて僕を睨む。
- 212 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:30:23 ID:Aka3RU3A0
- _,
ξメ゚听)ξ「何よ、その馬鹿馬鹿しい話は?」
(;^ω^)「いや、まあ、僕も馬鹿馬鹿しいのは重々承知だお」
( ^ω^)「でも、多分それで何とかなるんじゃないかなあと」
_,
ξメ゚听)ξ「……」
訝しげな視線を僕に向けていたツンだが、大きく息を吐くと勢いよくその場に立ち上がった。
ξメ゚听)ξ「ま、考えとくわ……」
そのままゆっくりとヒートさんの方に向かい歩いて行く。
ヒートさんも立ち上がって来るのは想定済みだったのか、嬉しそうな目をツンに向ける。
ノハメ゚ー゚)「楽しいなあ! お前、すごくいいな!」
ξメ゚ー゚)ξ「殴られて楽しくはないけど、まあ、あんたと闘うのは面白いわね」
ツンとヒートさんは最初の様に拳を合わせ、再び闘い始める。
一進一退の攻防に、見ている僕も思わず拳を握り締めていた。
- 213 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:31:56 ID:klguzVUoO
- 偽りと掛け持ちで支援
- 214 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:32:18 ID:Aka3RU3A0
ノハメ゚听)「楽しい時間だが、そろそろ終わりにさせてもらう!」
ξ;メ )ξ「!?」
ヒートさんの攻撃を捌き切れず、よろめいたツンの隙を突き、ヒートさんが数歩距離を取る。
両手を挙げ、宇宙魔法を唱え、ヒートさんは一気に踏み込んだ。
ノハメ゚听)「凄駆竜暗射亜ァァァァッ──」
ξメ 听)ξ「かかった!!!」
(;^ω^)「!?」
どうやらよろめいたの様に見えたのは、ツンの誘いだったらしい。
覚束ないように見えた足取りはしっかりと地面を掴み、重心を低く落として構えを保つ。
狙いは恐らくカウンター。
しかし、これまでと同じならこの一撃で倒すのは難しいかもしれない。
ξメ 听)ξ「必殺!!!」
ノハ;メ゚听)「!?」
- 215 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:34:52 ID:Aka3RU3A0
「ドリルパンチッ!!!」 「なん……だと……!?」
ξメ゚听)ξ三///つ#)д゚)ハ
捩り込む様に放ったツンの一撃が綺麗にヒートさんの顔面を捉える。
ヒートさんは宙を舞い、後方に倒れ込んだ。
ξ;メ゚听)ξ∩「手応えは……あったわ……。けど……」
恐ろしいまでのタフさでこれまで何度も立ち上がって来たヒートさんだ。
ツンは構えを解く事無く、倒れ込んだヒートさんを睨み付ける。
そんなツンを余所に、僕はヒートさんの方に駆け寄る。
僕の考えが当たっていれば、恐らくは……
( ^ω^)「……」
- 216 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:36:16 ID:Aka3RU3A0
ノハ;x凅) キュゥ……
( ^ω^)× バッ!
ξ;メ゚听)ξ「え……?」
( ^ω^)ノ「死亡確認! じゃなかった、戦闘不能確認! 勝者、ツン!」
ヒートさんは今の一撃で完全に意識を失っている様で、立ち上がる事は不可能だ。
よってこの勝負はツンの勝ちである。
ξ;メ゚听)ξ「へ……? 嘘……ホントにあれで……?」
どこか納得のいかないといった風な顔を見せるツンに、僕は親指を挙げて見せる。
( ^ω^)b
ツンは少し首を捻った後、苦笑いを浮かべながらもそれに答えてくれた。
ξメ゚ー゚)ξb
- 217 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:39:23 ID:Aka3RU3A0
ξ゚听)ξ「で、どういう事なのか説明してもらえるかしら?」
傷の手当てをし、一息吐いた所でツンが僕に尋ねる。
ヒートさんはまだ目を覚ましていない。
( ^ω^)「順を追って説明するお」
僕はヒートさんが言う宇宙魔法が思い込みの産物である事をツンに説明する。
ツンは呆れた顔をしていたが、一応は納得してくれた様だ。
ξ;゚听)ξ「しっかし、そんなんで強くなれるものなのかしらね……」
( ^ω^)「信じる物は救われるというか、アホの一念岩をも通すというかだお」
馬鹿馬鹿しい話だが、実際に闘ったツンがその効果は身を持ってわかっているはずだ。
それに、あの魔法の効果は実は自己暗示だけというわけでもない。
ξ゚听)ξ「どういう事?」
( ^ω^)「あれでツンも少なからず動揺したお?」
- 218 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:41:15 ID:Aka3RU3A0
( ^ω^)「威力や速さも、実際より上がってると錯覚した部分もあると思うんだおね」
ξ゚听)ξ「……それはそうかもしれないわね」
ヒートさんがそこまで考えていたとは思えないが、何にせよ、ツンはそれに惑わされた部分もある。
そしてそれこそが僕のアドバイスの根拠ともなる所だ。
( ^ω^)「まあ、至極単純な話なんだけど」
( ^ω^)「思い込みで攻撃を耐え切れてるのなら、その攻撃を耐え切れない攻撃だと思わせればいいんだお」
それ故の必殺技である。
思い込み易いヒートさんの性質を逆手に取ったのだ。
ξ゚听)ξ「ホントに単純ね。しかも馬鹿馬鹿しい」
( ^ω^)「でも、実際きいたお?」
勿論、ツンのカウンターのタイミングとか、これまでにないほどの強烈な一撃だったのもあるが、
あの掛け声でヒートさんが動揺し、耐え切れる自信が揺らいだのも勝因の1つだと思う。
- 219 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:42:45 ID:Aka3RU3A0
( ^ω^)「それに前にも言ったけど、必殺技は声に出した方が気合が乗るお」
ξ--)ξヾ「まあ、それで倒せたんだし、文句を付けるつもりはないけどね」
ξ゚ー゚)ξ「アドバイスありがとう、助かったわ」
ツンは頬を掻き、肩をすくめながらも僕に礼を述べる。
僕の手を借りた事は不本意かもしれないが、アドバイスぐらいならセーフという事にしといて欲しい。
( ^ω^)「ツンも格好良かったお、ドリルパンチ……」
;;(* ω );;「でも、ドリルパンチって……ホントに言うとは……ドリル……ブフォッ」
ξ゚ー゚)ξ
ハヲクイシバレー!!! ドリルパーンチ!!!
ξ#゚听)ξ三///つ(#)゚ω゚).・。 ’
- 220 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:44:33 ID:isFWesnQO
- ブーンwwww
- 221 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:44:38 ID:Aka3RU3A0
- ガバッ
ノハ;゚听)「宇宙・スペース・ナンバーワン!?」
ξ゚听)ξ「あ、目が覚めたみたいね」
ヒートさんは勢いよく立ち上がり、状況が掴めないのか周りをきょろきょろと見回す。
そして視線がツンの顔で止まり、不意にポンと手を打ち合わせた。
ノパ听)「そっか、負けたんだな、私」
ξ゚听)ξ「ええ、私の勝ちよ。紙一重だったけどね」
ツンの言葉にヒートさんは悔しさなどは一切感じさせない、清々しい表情で大きく頷いていた。
ノパ听)「強いなー、お前。恐れ入ったぞ」
ξ゚听)ξ「あんたもね。もうちょっと攻撃に無駄をなくせば、次はどうなるかわからないわ」
先ほどまで拳を交えていた相手だが、そこに遺恨などは全く感じさせない。
苦しい闘いだったはずだが、2人とも闘ってる最中は楽しそうでもあった。
お互い納得のいく闘いだったのだろう。
- 222 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:46:34 ID:Aka3RU3A0
( ^ω^)「ところで、ヒートさんは何で道場破りなんかしてるんだお?」
ノパ听)「道場破り? 何だそれ? 私はただ、強いやつと闘いたいだけだぞ?」
ノパ听)「強いやつがいそうな道場に勝負しに回ってるだけだ」
ξ゚听)ξ「それを道場破りと言うのよ」
多少、認識に齟齬があるようだが、道場破りといってもヒートさんは負けた道場の看板を持っていったり、
ましてや潰したりはしていないらしい。
どうやら噂に勝手に尾ひれが付いて広まっただけのようだ。
ノパぺ)「むぅ、しかし世界は広いな! 私もまだまだ修行が足りんようだ」
ξ゚听)ξ「そうね。それは私にも言える話だけどね」
ノパ听)「それにしても最後のあの技はすごかった! ドリルパンチ! 私は生涯あの技を忘れないぞ!」
ξ゚听)ξ「それは今すぐ忘れろ」
;;(* ω );; ドリ……プッ…グホォッ
ξ#゚听)ξ
- 223 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:47:58 ID:Aka3RU3A0
ノハ;゚听)「と、取り敢えず私はこれで失礼する」
ξ゚听)ξ「精進しなさいよ」
(#)^ω^)「まだダメージ残ってるはずだから、あんまり無理しちゃ駄目だお」
ノハ;゚听)「お前、丈夫だなあ……」
(#)^ω^)「慣れてますから」
ヒートさんは改まった態度で、勉強になりましたとツンに大きく頭を下げる。
ツンも軽く一礼をし、拳を前に突き出す。
ξ゚ー゚)ξ「またいつか、あんたとは闘いたいわ」
ノパー゚)「望む所だ! 次は大座亜流の奥義を極めてから、改めて勝負を挑みに来るぞ!」
ヒートさんも拳を突き出し、2人はまた拳を軽く合わせる。
再戦を誓い、ヒートさんは去って行った。
- 224 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:51:40 ID:Aka3RU3A0
ξ゚听)ξ「さて、私も帰ろうかしら。流石にちょっと疲れたしね」
( ^ω^)「ツンも結構殴られたし、ゆっくり休んだ方がいいお」
ξ゚听)ξ「このくらい大した事ないわよ。それよりブーン、お店の方はいいの?」
( ^ω^)「トソン君に頼んであるから大丈夫だお」
ξ゚听)ξ「本当に?」
( ^ω^)「まあ、頼んであるからこそ大丈夫じゃないかもしれないけど」
店番だけしか頼んでないので、物が壊されるような心配はないと思うが、
トソン君が気を利かせて掃除とかやってたりすると、惨劇が繰り広げられたりしてる可能性がないとは言い難い。
( ^ω^)「早めにお店に戻るかお」
ξ゚听)ξ「それがいいんじゃない?」
( ^ω^)「でもそれは、ツンを家まで送ってからだお」
ξ゚听)ξ「別に私は大丈夫だって……」
- 225 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:54:13 ID:Aka3RU3A0
早く店に戻れと言うツンの言葉を聞き流し、僕はツンの隣を歩く。
いつも通りの風景だ。
ξ゚听)ξ「そういえば、1つ気になった事があるんだけど」
( ^ω^)「何だお?」
ξ゚听)ξ「ヒート、自分の流派名乗ってたわよね?」
( ^ω^)「名乗ってたおね。大座亜流とか何とか」
ξ゚听)ξ「って事は、ヒートにも師匠とかいるのかしらね」
( ^ω^)「自分で立ち上げた流派じゃなきゃいるんじゃないかお?」
ξ゚听)ξ「となると、あのアホな魔法教えたやつがいるのよね」
( ^ω^)「そうなるおね。だいぶアホな人がいるって事になるお」
ξ゚听)ξ「うちはまともな流派で良かった……」
心から安堵した様子で言うツンに、僕は思わず噴き出してしまった。
アホだとは思うけど、あれはあれでヒートさんには合っていたと思う。
アホだと思うけど。
- 226 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:57:22 ID:Aka3RU3A0
ξ゚听)ξ「私も再戦に備えて、また鍛え直さないとね」
( ^ω^)「新しい必殺技を編み出せばいいお」
ξ#゚听)ξ「その話はもういい!」
( ^ω^)「ツン・ウルトラ・スーパー・デラックス・ドリルパンチとか」
ξ#゚听)ξ「長いわ! 戦闘中にそんなの叫んでたら舌噛むわよ!」
( ^ω^)「魔法の詠唱はもっと長いお?」
ξ#゚听)ξ「そういう問題じゃないわよ」
僕達はくだらない話をしながらツンの家に向かった。
いつも通りの自分達でいられるのは、もうすぐこの町を出るショボンを思えばすごく掛替えのない事なのだと感じる。
ξ#゚听)ξ「大体、何でドリルなのよ?」
( ^ω^)ノ「そりゃ、この髪の毛の巻き具合は見事にドリルだお」
ξ#゚听)ξ三///つ「ふざけんな!」
僕は、この穏やかな時がずっと続く事を、大地を背に青く澄み渡る空を見ながら願った。
第十六話 宇宙を砕く螺旋の拳 終
- 227 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:58:28 ID:s95g0W0s0
- どりるぱんち乙!
- 228 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:58:49 ID:isFWesnQO
- 乙ー
仲良しだなあ
- 229 名前:名も無きAAのようです:2012/03/10(土) 23:59:12 ID:45HN2kgY0
- 乙
- 230 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 00:06:08 ID:8I8hU9EY0
十六話は以上です
短めなエピソードの連続はここで一旦終わり、次からは少し違った感じになると思います
次回は未定
書き溜めは一応ほぼ書き上がってはいますが、しばらく書き溜めるかもしれません
支援とか感謝です
- 231 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 00:11:33 ID:ZomfGiLoO
- 乙です
面白く読めたのだけどヒートの技名の漢字が読めない
時間がある時によみを教えてくれるとありがたい
- 232 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 00:18:26 ID:x22JodkAO
- テラグレンダイザーwwwww
乙っしたwww
- 233 名前: ◆5rua49HN2.:2012/03/11(日) 00:34:24 ID:8I8hU9EY0
- >>231
守兵主散打(スペースサンダー)
打武流覇亜拳(ダブルハーケン)
氾獣力凄投武(ハンジュウリョクストーム)
凄駆竜暗射亜拳(スクリュークラッシャーパンツ)
元ネタは>>232の通りです
- 234 名前: ◆5rua49HN2.:2012/03/11(日) 00:35:51 ID:8I8hU9EY0
- 間違えたああああ
×凄駆竜暗射亜拳(スクリュークラッシャーパンツ)
○凄駆竜暗射亜拳(スクリュークラッシャーパンチ)
ですよおおおお
- 235 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 00:36:37 ID:xuYFhA3k0
- 素で間違えたのかwwwwwww
- 236 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 00:48:32 ID:gGpacVDs0
- モンキーパンツ
- 237 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 11:11:16 ID:MFtgZZH.O
- パンツ乙w
- 238 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 12:49:02 ID:oIxujdZE0
- パンツwww乙
面白かった
つまりヒートはパンツで攻げk(ry
- 239 名前:名も無きAAのようです:2012/03/11(日) 22:55:38 ID:m66ov05E0
- >>233
スペースサンダー以外は読めたww
パンツさん乙でした
- 240 名前:名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 08:21:32 ID:h14e7rBw0
- お前らパンツパンツいうな。パンツさんにも失敗はあるだろ
- 241 名前:名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 18:18:39 ID:ha.mi8gI0
- ( ^ω^)つ▽「新商品【薬草パンツ】だお」
( ^ω^) 「パンツ生地に薬草を練り込んだお」
( ^ω^) 「股間から体力を回復してくれるお」
- 242 名前:名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 20:20:40 ID:.E3gt4ksO
- >241
薬草の種類を滋養強壮系にすれば大人の玩具屋さんで大ヒットしそうだな
ツンにバレたら良くてミンチに、悪くて分子レベルに分解されるだろうけど
- 243 名前:名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 22:15:09 ID:PNm8y8yA0
- つまりツンとパンツが融合してパンツになるわけだな
- 244 名前:名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 22:29:55 ID:nmubSI2QO
- ξ゚) (゚)ξ パンツン
- 245 名前:名も無きAAのようです:2012/03/12(月) 22:48:03 ID:fK10Zi6o0
- パッツンパッツンだな
- 246 名前:名も無きAAのようです:2012/03/14(水) 13:15:01 ID:UtbYUqG.0
- パンツパンツうるせえ!
お前らはパンツ村の住民か!
- 247 名前:名も無きAAのようです:2012/03/14(水) 15:39:35 ID:oV9FbiI.O
- こんな会話してる時点でおまえらがツンに顔をパンパンにされるな…合掌
しかしパンツさんは何故グレンダイザーをチョイスしたのか
おかげで師匠(がいればだが)の予想はついたけど
- 248 名前:名も無きAAのようです:2012/03/14(水) 18:18:41 ID:ehHtPp66O
- 戦国魔神のネタが紛れ込んでるぞ
- 249 名前:名も無きAAのようです:2012/03/16(金) 23:19:37 ID:B655sBmc0
- /|
/ l
l ヽ、 ___ , ィ ,イ
ト 丶 、 r'´_ヽ二´ Y_ノz、
ヽ l \  ̄´ヘ::::::::ヽ! ヽ r―ァヽ
l ! 丶、 _ /::::::::::::| l  ̄/l |_ /|
|__'、  ̄´゙Y:::::< ̄\ゝ- '_/イ  ̄ ̄ l パンツパンツうるせえんですよ!
|::::::::\ }::::::::::: ̄´::::K二>j / i と u の打ち間違えなんてよくある事じゃないですかー!
. |:::::::::::::::>- 、 /:::::::::::/ ̄ ̄ハ:::::/------ イ
:: |::::::::::::::/ >ー{::::::::::/----/、 l:/ /
:: |:::::::::::::l/´ 丶、\::/ / /___,. - '|
l:: |::::::::::::::ヽ > \---'、 _/:::::::::::ヽ l
|:: l:::::::::::::::::ヽ / 7 Tイ:::::::::::::::::| |
l:: l::::::::::::::::::::::\ / l/:::::::::::::::::::/ ∧
|:: /\::::::::::::::::::::::≧- 、 / イ:::::::::::::::::::/ /::::ヽ
第17話は多分明日投下します
- 250 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 01:01:02 ID:02NzWR8cO
- ごめんだパンツ
投下期待してる
- 251 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 03:01:22 ID:mdXr7xE60
- ( ^ω^)はパンツ屋さんのようです
- 252 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 16:13:20 ID:Uo6ziMaoO
- 今夜投下かな?楽しみ!
最近ちょくちょく投下してくれてうれしいけどパンツさんあまり無理すんなよ
- 253 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 20:58:59 ID:UxquQQm6O
- 期待
- 254 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:22:35 ID:.GRteUcU0
〜 メシューマ近郊の街道 〜
( ^ω^)「火はこれで良しと」
( ^ω^)「即席だけど、これで何とかなるおね」
( ^ω^)「よし、早速焼くお!」
ξう-)ξ「うるさいわね……朝っぱらから何やってんのよ?」
( ^ω^)「お、ツン、起きたのかお。おはようだお」
( ^ω^)「何って、見ての通りだお」
ξ゚听)ξ「見ての通りって、何か窯みたいなのが出来てるわね……」
第十七話 再会のメシューマ
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 255 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:23:48 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「この窯で今からパンを焼くんだお!」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「パンって……私達、今街道沿いで野宿してる最中よね?」
彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
( ^ω^)「そうだけど、早めに出発すればもう朝のうちにメシューマに着くお」
僕達は今、騎士になる為に王都へ向かうショボンを送っている最中だ。
旅は既に4日目の早朝である。
騎士学校の入学試験に間に合うように時間的には余裕を見て出発したので、
馬車の旅だがここまでのんびりとしたペースで進んでいる。
普通のペースなら、先日の夜半頃にはメシューマの町に着いているはずだが、馬車もあるし、
宿代節約も兼ねてメシューマの近くで野宿をしていた。
- 256 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:25:16 ID:.GRteUcU0
ξ゚听)ξ「まあ、今から出発すれば着くでしょうけど、それがどうパンと繋がるのよ?」
( ^ω^)「今から焼くのはただのパンじゃないお。薬草パンだお」
ξ゚听)ξ「うん、それで?」
( ^ω^)「ヴィップ名物薬草パンという名目で売り出して、路銀を稼ぐんだお!」
折角馬車を使って遠出をするのだから、2点間貿易みたいな事をやりたかったのだが、
ヴィップからメシューマに持って行く特産品が思い浮かばず、代わりに薬草パンを売る事を思い付いたのだ。
薬草としては失敗作だったが、単にその場で食べるパンとしては薬草パンは物珍しく、
商品として成り立つのではないだろうか。
ξ゚听)ξ「なるほどね。魔法道具屋っぽくはないけど」
( ^ω^)「背に腹は変えられんお」
別に路銀が足りないわけでもないのだが、ただ観光だけというのも僕としては物足りないものがある。
色々と商品の可能性を試したり、僕自身の商売人としての修行にもなるから丁度いい。
ついでにサンライズの宣伝にもなるはずだ。
- 257 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:27:47 ID:.GRteUcU0
ξ゚听)ξ「まあ、いいんじゃないの。何か手伝う?」
( ^ω^)「あとは焼くだけだから大丈夫だお。それよりそろそろショボン達起こしといてくれお」
現在、この馬車には僕とツン、それにショボンとわんわんおが乗っている。
比較的安全な道なので、護衛は雇っていない。
万が一モンスターと遭遇しても、僕らだけでもそれなりに戦える。
ξ゚听)ξ「わかったわ。あんたは寝なくて大丈夫なの?」
( ^ω^)「今日はメシューマで1泊の予定だし、1日ぐらい大丈夫だお」
基本は野宿なので、夜は交代で見張りをしながら休息を取っている。
パンを焼くためにも昨夜は僕が順番の最後になるように調整していたから、全く寝てないわけでもない。
( ^ω^)「さて、焼きあがりはどうかお?」
僕は岩を積んで魔法で固定して作った即席の窯からパンを取り出す。
端の方に並べたものには多少の焼きむらがありそうだが、全体的には色艶良い、
美味しそうなパンが焼き上がった。
- 258 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:29:48 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「おはよう、やけに香ばしい匂いがするね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「おはようだお。2人とも、朝ご飯は出来てるから顔洗って来いお」
僕は焼き上がったばかりの薬草パンを木製のバスケットに盛り、ツンに手渡す。
( ^ω^)「焼き立ては美味いお」
ξ゚听)ξ「これ、売り物じゃなかったの?」
( ^ω^)「ちょっと焦げたりしたやつだお。商品用はどんどん焼くから心配いらないお」
ξ゚听)ξ「形も何種類かあるのね」
( ^ω^)「今回のは薬草用途を度外視だから、甘いクリーム入りとチーズ入りも焼いたお」
ξ*゚听)ξ「そうなの? どれがクリーム?」
( ^ω^)「そっちの楕円のやつだお。尖ったのがチーズだお」
- 259 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:32:51 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「じゃあ、僕はプレーンなのを。わんおちゃんはチーズかな?」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「わんおには骨っ好も用意してるけど、パンでもいいかお」
顔を洗って戻って来たショボン達も加え、皆で朝食を取る。
焼き立ての薬草パンは、外の香ばしい、パリっとした食感と、
中のふっくらした食感が調和して満足の行く焼き上がりだった。
ξ*゚听)ξ「美味しいわね」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
(´・ω・`)「ブーンは魔法道具屋よりパン屋にでもなった方が良かったかもね」
( ^ω^)「褒め言葉として受け取っておくお。まだあるから遠慮せず食えお」
僕達は朝食を食べながら、今日の予定について話し合う。
( ^ω^)「メシューマに着いたら、まずは商売の許可取ってパンを売るお」
- 260 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:35:56 ID:.GRteUcU0
メシューマには市場の一角に露店を広げられるスペースがあり、営業許可証込みで格安で借りられる。
メシューマはニューソク大陸の中央にあり、陸の交通の要所とも言える町で人の行き来は大陸随一だ。
地方から出て来た商売人がスペースを借りて店を広げるのは日常的なことである。
( ^ω^)「ぶっちゃけ、種類も少ないし大量に売るわけじゃないから僕1人でいいんだおね」
手伝うと言ってくれた2人に、折角だから観光して来ればいいと僕は勧める。
上手くいけば昼過ぎには薬草パンも売り捌けるだろうから、午後からは一緒に僕も観光に回ろうかと思う。
上手くいかなかったら売るのを諦めて自棄食いするから、どっちにせよ午後は時間が空く予定だ。
ξ゚听)ξ「いいの? 私は別に午後からでも……」
( ^ω^)「メシューマなんて滅多に来ないんだから、色々見てくればいいお」
( ^ω^)「それに、ショボン1人観光に行かせるのも何だか寂しいお?」
(´・ω・`)「別に僕も手伝ってもいいんだけど……まあ、確かに、しばらくは来られないだろうからね」
そうさせてもらうとショボンが言うと、ツンも納得してくれた様だ。
どうしても僕1人でやりたいわけでもないのだが、それほど忙しくならないと思うし、
むしろものすごく暇だった場合を考えると1人の方がいいかと思う。
- 261 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:38:09 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「あ、わんおには手伝ってもらおうかお」
(∪^ω^)「わんお!」
予定がまとまった所で、僕らは朝食の後片付けをし、メシューマの町を目指して馬車を走らせた。
目論見通り、朝の早いうちにメシューマに到着し、商工会の本部で露店の場所も借りられた。
( ^ω^)「朝から人が結構並んでたおね」
(´・ω・`)「そりゃメシューマの市場っていったら、常時人で賑わうとこだからね」
(´・ω・`)「露店スペース借りるのも、結構な倍率のはずだよ」
ξ゚听)ξ「さっきちょっと商工会の人に聞いたけど、南から来る予定だった商人の一団が来られなくなって」
ξ゚听)ξ「それでたまたま今日、スペースがかなり空いちゃったって話みたいね」
( ^ω^)「そりゃ運が良かったお。幸先いいお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 262 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:40:23 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「僕としては、その辺の事情とか調べてなかった君の迂闊さに頭を抱えるけどね」
ξ゚听)ξ「ホントね。スペース借りられなかったら、この大量のパンはどうするつもりだったのよ」
(;^ω^)「ま、まあ、結果オーライだお。早速市場に行ってみるお!」
僕達は馬車を引いて市場へ向かう。
与えられたスペースに馬車を止めると、早速開店準備を始める。
馬は商工会の厩舎に一時的に預ける事にした。
ξ゚听)ξ「馬預けるのも無料なのね。ここってホント、商売人の町って感じよね」
( ^ω^)「色々と商売しやすくなる様に整えられてるおね」
メシューマは商人の町と言ってもいいくらい、商工会の力が強い。
今の商工会の議長が町長も兼ねていたはずだ。
(´・ω・`)「そんなとこでホントに1人で大丈夫? そういう町なら客の目も肥えてると思うよ?」
( ^ω^)「売るのはパンで、難しい商品を扱うわけでもないから平気だお」
( ^ω^)「それに、わんおもいるから1人じゃないお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 263 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:41:12 ID:UxquQQm6O
- きてた支援
- 264 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:41:26 ID:02NzWR8cO
- 来てたか
支援
- 265 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:42:46 ID:.GRteUcU0
少し心配げな顔をしていた2人を笑顔で観光に送り出し、僕はわんわんおと開店準備を続ける。
( ^ω^)「ここは人通りも多いし、知らないとこだからわんおはこの上でおとなしくしてるお?」
(∪^ω^)「わんお!」
積んだ木箱に布を敷き、その上にわんわんおを乗せる。
首には薬草パンの宣伝文句を書いたプレートを提げさせた。
(∪^ω^)
/つ└┘|
c( ,,O|ウマイ.|つ
 ̄ ̄
( ^ω^)「これ、見えるように座っててお。でも、苦しかったら外してもいいお」
(∪^ω^)「わんお!」
大丈夫とでも言うかの様にわんわんおは元気良く吠え、プレートを立てて座る。
僕はわんわんおが寄り掛れる様に、背後にも木箱を積んだ。
( ^ω^)「広告塔はこれでいいおね。さあ、商品を並べるお」
- 266 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:44:02 ID:.GRteUcU0
ヴィップ名物薬草パンと大きく書いた布を馬車に張り、テーブルの上にディスプレイ用としてパンを並べる。
選ぶほどの種類はないから、全て並べる必要はないだろう。
(゜д゜@「あらやだ、薬草パン? そんなの初めて聞いたわ」
( ^ω^)「お、いらっしゃいませですお。美味しいですお、お1ついかがですかお?」
さあ開店だと呼び込みを開始しようかと思ったら、観光客とは思えない、
近所のおばちゃんが早速興味を持ってくれた様だ。
僕は早速薬草パンの売込みを始める。
(゜д゜@「あらやだ、ヴィップでこれ、流行ってるの?」
( ^ω^)「残念ながらまだ流行ってませんお。これから流行らす予定なんで」
(゜д゜@「あらやだ、じゃあ、新製品? 美味しいのかしら?」
( ^ω^)「味は太鼓判を押しますお。そうだ、ちょっと味見してみませんかお?」
僕はテーブルにおいてあった薬草パンを手早くナイフで小さく切り、木串をさして勧める。
おばちゃんはそれを受け取り、口に運ぶ。
(゜д゜@「あらやだ、これ、なかなかいいわね。甘みの中にほのかに苦味があって」
- 267 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:45:59 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「お姉さん、舌が肥えてますおね。その僅かな苦味が薬草パンの特徴ですお」
( ^ω^)「そこに気付くとはお目が高いですお」
(゜д゜@「あらやだ、そうかしら? まあ、伊達にここで20年も飯屋やってないわ」
( ^ω^)「ちなみに、もっと甘みが欲しい方用のクリーム入りや、ボリューム満点のチーズ入りもありますお」
(゜д゜@「あらやだ、良さそうね。それじゃあ、それ、3種類とも2つずつ頂こうかしら」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(゜д゜@「あらやだ、何、この子? 店員さん?」
( ^ω^)「うちの看板息子ですお。撫でると幸せになると評判ですお」
(゜д゜@「あらやだ、よしよし」
(∪^ω^)「わんお」
- 268 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:47:37 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「お待たせしましたお。こちら商品ですお」
(゜д゜@「あらやだ、はい、これ、お代ね」
( ^ω^)「ありがとうございましたお。ヴィップにお越しの際は、魔法道具屋サンライズをよろしくですお」
あれよという間に最初のお客さんの来訪、最初の販売に成功した。
しかも妙に声の大きいおばちゃんだった事が幸いしてか、
今のやり取りを耳にしていた人達が興味深げに店に寄って来てくれた。
(客)「兄ちゃん、俺も貰おうか。普通のやつくれ」
( ^ω^)「ありがとうございますお!」
(客)「クリームのやつ3つくれ」
( ^ω^)「はい、少々お待ちくださいお」
(客)「試食してみたけど美味いね。全種類5つずつくださいな」
( ^ω^)「ありがとうございますお。少々お待ちお」
- 269 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:49:08 ID:.GRteUcU0
驚く事に薬草パンは予想以上の売れ行きを誇り、1人で客を捌くのにてんてこ舞いであった。
こんな事ならツン達に手伝ってもらえばよかったと若干の後悔が浮かぶ。
しかし、客の中にはサンライズの事を知っている人もいたり、
昔ヴィップに冒険者として滞在していたという人も来てくれたりと、
僕がこれまでして来た事が少なからず生きている事を知り、嬉しく思えた。
(;^ω^)「ありがとうございましたおー。魔法道具屋サンライズをよろしくですお」
(∪;^ω^)「わんおー」
ひっきりなしに訪れる客を何とか捌き切り、一区切り付いた頃にはパンはほぼ売り切れていた。
僕も疲れたし、多くの人に撫で回されたわんわんおも疲れていたので、この辺で店を閉めようかと考える。
(;^ω^)「これだけ売れれば十分過ぎるお。サンライズの宣伝も出来たし、少し早いけど店仕舞いするかお」
(∪;^ω^)「わんわんお」
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、もうお店閉めちゃうの?」
( ^ω^)「お、商品がもうなくなって……って、デレちゃん?」
- 270 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:51:23 ID:.GRteUcU0
背後からの声に振り向いた僕の前にいたのは、ヴィップの教会で出会った自称旅の僧侶ことデレであった。
意外な再会に戸惑う僕は思わずその顔を凝視してしまうが、デレの視線は僕の右後方に向けられていた。
ζ(゚、゚*ζ「そこにまだパンがあるのは気の所為で御座いますかねえ?」
( ^ω^)「これはディスプレイ用に置いてたものだから売るのは……」
それじゃあ、とばかりに両手を揃えて突き出してくるデレ。
僕はその手とパンを見比べ、しばらく考慮した後、パンをデレの手の中に落とす。
ζ(´ー`*ζ「うわーい、3日ぶりのまともなご飯だー」
( ^ω^)「お金は……って、3日ぶり!? どんだけ貧しい暮らししてんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「冗談ですよー。それじゃ、いただきますねー」
相変わらずのマイペースに惑わされながらも、僕はデレを改めて観察する。
以前出会った時と変わらぬ旅装束で、武器らしきものは持っているようには見えない。
旅をしている割には無用心だと思うし、小奇麗な格好だと思う。
ζ(゚〜゚*ζ「ムグムグ……ばびびべんべふば?」
(;^ω^)「いや、食べながら話すなお。何言ってるかわからんお」
- 271 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:53:03 ID:.GRteUcU0
いつもはされる側の注意をデレにし、僕は店の片付けに取り掛かる。
売るものがないこの状況で客に来られると困るので、取り敢えず看板だけでも降ろすことにした。
( ^ω^)「おっと、わんおもこれ、外していいお。お疲れ様だお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
ζ(゚ー゚*ζ「ふーむ……随分変わった子だねー」
(;^ω^)「うおっ、もう食べたのかお?」
いつの間にか至近距離までデレが近付いており、わんわんおの顔を眺めていた。
片方の手はわんわんおの頭に伸ばされ、もう片方の手は残りのディスプレイ用パンに伸ばされる。
( ^ω^)「さり気なくパン取ろうとすんなお」
ζ(゚、゚*ζ「ぶー、ケチー」
( ^ω^)「美味かったかお?」
ζ(゚ー゚*ζ「お腹空いてると何でも美味しいね」
( ^ω^)「……まあ、そうだろうけど」
- 272 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:54:35 ID:.GRteUcU0
ζ(゚ー゚*ζ「冗談冗談。すごく美味しいと思うよ。焼き加減も絶妙」
僕はデレの手に残っていたパンを乗せる。
どうせ後で僕が食べるつもりだったし、喜んでもらえるならあげてもいいだろう。
(∪^ω^)「わんわんおー」
ζ(゚ー゚*ζ「ん? 君も食べたいのかい?」
(∪^ω^)「わんお!」
({⊂ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、少しちぎってあげ……」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
パクッ
ζ(^ー^*ζ「ない!」
(∪^ω^)
(;^ω^)「わんおをいじめんなお」
- 273 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:56:56 ID:.GRteUcU0
({⊂ζ(゚ー゚*ζ「ごめんごめん、はい、どうぞ」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
結局、残っていたパンは全てデレとわんわんおのお腹に収まることになった。
僕は食べ損ねたが、自分が作ったものを美味しいと言って食べてもらえるなら満足だ。
( ^ω^)「それで、何の用だお?」
ζ(゚ー゚*ζ「用?」
僕はデレが何かしらの目的があって来たのかと思ったが、反応を見る限りどうも偶然らしい。
ζ(゚ー゚*ζ「私は旅の僧侶ですぜー? 偶然通りかかったら、見知った顔があったから挨拶しただけだよ」
( ^ω^)「挨拶しただけって、あれだけパン食べといてよく言うお」
ζ(゚ー゚*ζ「ご馳走様でした。それじゃ、私は行くね」
(;^ω^)「ちょっと待ってくれお。もう少し話を聞かせてくれお」
- 274 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 22:58:42 ID:.GRteUcU0
ζ(゚、゚*ζ「話? 何の? 趣味ならアリの行列の方向を微妙にずらすことかな?」
( ^ω^)「そんな話じゃなくて……って、何か若干陰湿な趣味だおね」
ζ(゚ー゚*ζ「進行方向に障害物置いたりするとずらせるよ。登り難いものに限るけど」
僕はアリの話を遮り、先日の教会の件、それとデレ自身の目的を尋ねる。
しかしながらデレはあの時話したことが全てだからと、答えるつもりはないようだ。
ζ(^ー^*ζ「私は、全ての人がほんの少しだけでも今より幸せになれるといいなーって思ってますよー」
( ^ω^)「そんな漠然とした話じゃなくて、せめて目的、あの時何をしに教会に行ったのか教えてくれお」
ζ(゚、゚*ζ「うーん……教える理由もないんだけど……」
( ^ω^)「パンあげたお?」
ζ(゚、゚*ζ「足りないなあ。せめてあと10個は欲しいな」
(;^ω^)「まだ食うのかお。つか、あれで全部だお。もう1個も残ってないお」
僕は食い下がり、後日サンライズに来てくれれば必ずご馳走するからと頼み込む。
- 275 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:00:52 ID:.GRteUcU0
ζ(゚、゚*ζ「うーん……じゃあ、後払いね」
( ^ω^)「その時は10個でも20個でも」
ζ(゚ー゚*ζ「あの教会にある物を見に行っただけだよ」
( ^ω^)「ある物?」
ζ(゚ー゚*ζ「もうなかったみたいだけどね」
それはつまり、やはり教会から何か盗まれたという事なのだろうか。
気になる所だが、デレはそのある物が何かは教えてくれる気はないらしい。
ζ(゚ー゚*ζ「君には関係ない話だからねー」
( ^ω^)「ヴィップで起きた事なら、後々関係して来たりする可能性があるお」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、危険なものとかじゃないから。今は、だけど」
(;^ω^)「その発言で安心出来ると思うのかお?」
ζ(゚、゚*ζ「うーん……そうだねえ……」
- 276 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:02:16 ID:.GRteUcU0
デレは両腕を組み、顔を空に向け、何事かを考えるような仕草をする。
そして不意に顔を正面に戻し、僕の方へ詰め寄る。
(;^ω^)「お……?」
ζ(゚ー゚*ζ「君は自分を信じて、自分が思う通りに動けばいいよ。私が言えるのはこれだけかな」
(;^ω^)「?」
デレ僕の瞳を下から覗き込む様にして意味深なことを告げ、踵を返す。
そして軽く放心状態な僕に手を振り、通りに向かって歩いて行く。
ヾζ(゚ー゚*ζ「それでは、ご縁があればまた会いましょうぜー」
(;^ω^)ノ「え、あ……ちょ……」
まだ話は終っていないと追いすがろうとしたが、デレはもう人込みの中に姿を消していた。
相変わらずつかみ所のない人だ。
< ア、フラレタナ オシガヨエエ チッチッチッチ…
( ^ω^)「でも、何となく悪い人じゃない感じはするんだおね……」
- 277 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:05:00 ID:.GRteUcU0
見た目に騙されているわけではないつもりだが、敵意らしきものは一切感じないし、
あの教会での出来事を思えば悪い人ではないと思う。
< オワネエノカヨ ソンナコンジョウネーダロ チッチッチッチッチッチッチ…
( ^ω^)「あれだけ美味しそうに薬草パン食べてくれたしね」
一緒に食事をすれば、その人がどんな人か多少はわかるものだ。
あんなに笑顔でご飯を食べられる人が、悪い人とは思えない。
< ナカナカビジンダッタナ C、イヤDカ! オイデオイデオイデ…
( ^ω^)「気になる事も聞けたし、帰ったらヒッキーさんに……って、そこ!」
僕は先ほどからひそひそと聞こえて来る声の方にビシりと指を突きつける。
聞き覚えのある声だと思っていたが、案の定、出て来た3人は見覚えのある顔だった。
_
从 ゚∀从 ( ゚∀゚) ( ゚д゚)
- 278 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:07:05 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「何してんですかお、3人とも?」
_
( ゚∀゚)「むしろお前が何してんだと聞きてえんだがな、ブーンよ」
从 ゚∀从「何でメシューマなんかでナンパしてんの? しかも失敗」
(* ゚д゚)「よーしよしよし、元気にしてたかい」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「色々あって、というかナンパはしてませんお!」
現れた3人は、しばらく前に武器の強化にメシューマに来ていた冒険者のジョルジュさん達であった。
確かに彼らがここにいるのは自然で、僕がここにいる方が不自然であろう。
僕はショボンの事と、それを送って行く最中であった事などをジョルジュさん達に説明した。
_
( ゚∀゚)「へえ、ショボンがねえ」
从 ゚∀从「意外だな」
( ゚д゚)「そうか、とうとう決めたのか」
- 279 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:08:15 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「あれ? ミルナ知ってたの?」
( ゚д゚)「以前、少しだけそういう話をしたことがあってな」
_
( ゚∀゚)「何でお前だけ?」
( ^ω^)「多分、口が固そうだからだと思いますお」
_
( ゚∀゚)「なるほど」
从 ゚∀从「それで納得するんだ……」
次いで僕はデレの事、ヴィップの教会で起こったことも説明する。
ナンパしてたなどと妙な誤解を受けるのは心外なので、なるべく事細かに話した。
_
( ゚∀゚)「謎の僧侶ね……」
从 ゚∀从「クソ怪しいにも程があるな」
( ^ω^)「現状はさっぱりポンですから、あんまり探るなとドクオさんには言われてるんですけどね」
- 280 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:10:18 ID:TvuhXg8Q0
- 初のリアルタイム遭遇だ
- 281 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:12:26 ID:.GRteUcU0
とはいえ偶然出会ってしまった物は仕方がない。
欲を言えばもう少し情報を引き出したかったが、
こんなに早く再会するとは思っていなかったので動揺してしまった部分もある。
_
( ゚∀゚)「大きかったからな。お前が動揺するのも無理はない」
(;^ω^)「何の話ですかお。それより、ジョルジュさん達の方はどうなんですかお?」
ミルナさんの話では、ハインさんの武器の修繕は終わったが、全員の武器強化の目処は立っていないという。
素材も足りなければ、これと思う武器職人とも出会えていないらしい。
仕方がないのでここしばらくはクエストをこなして資金を稼いでいたとの事だ。
( ^ω^)「武器職人といえば、例のからくり武器職人の武器を見る機会がありましたお」
从 ゚∀从「ああ、何か胡散臭いとかいう奴か」
( ^ω^)「胡散臭いとこだけはみんな覚えてますおね……」
僕はトソン君とその武器の事も説明する。
ついでにこのあと王都に行った際にその武器職人に会う事も教えた。
- 282 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:14:31 ID:.GRteUcU0
( ゚д゚)「ほう、なかなか興味深い話だな」
_
( ゚∀゚)「そのトソンってやつ、強いんなら1度手合わせ願いたいもんだ」
从 ゚∀从「んじゃ、お前ら王都行ったらその武器職人に会うのか」
( ^ω^)「その予定ですお。トソン君に紹介状も書いてもらってるんですお」
(;^ω^)「何故か、かなり渋られましたけど」
恩のある僕の頼みだから紹介状は書くが、
決して自分が彼と仲がいいわけではない事は間違わないで欲しいとトソン君には念押しされてしまった。
先方にもその辺は誤解しないで欲しいと言い添えてくれと。
从 ゚∀从「つまり友達と思われたくないんだな」
(;^ω^)「そういう事になるんでしょうね。ぶっちゃけ、そういう反応だと会うべきなのか迷いますけど」
腕は確かなのだし、折角王都まで行くのだから会ってみるぐらいはしてもいいと思うのだが、
あのトソン君があそこまで顔をしかめて交友関係を否定する相手だ。
一抹の不安は感じてしまう。
- 283 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:16:51 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「これ、お前らの馬車? 3人旅の割には大きいな」」
( ゚д゚)「4人だぞ、ジョルジュ」
つ∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「そうですお。一応、商売もしつつ行こうと考えてたので少し大きめですお」
ジョルジュさんは馬車の方に向かい、しげしげと観察している。
馬車はレンタルだが、シャキンさんのギルド絡みのつてで安価でいいものが借りられた。
_
( ゚∀゚)「なあ、ブーン、物は相談なんだが」
( ^ω^)「何ですかお?」
_
( ゚∀゚)「俺達も乗せてくんねえか?」
( ^ω^)「お?」
ジョルジュさん達の話では、メシューマでは目ぼしい成果は上がらなかったから、
ソクホウへ行く事も考え始めていた矢先に僕達が来たとの事だ。
別に僕に頼らなくても王都に行くのは難しくないだろうが、
武器職人にも会うならジョルジュさん達にとっては好都合だろう。
- 284 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:19:01 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「無論、護衛は引き受けるぜ、無料でな。飯も自分持ちでかまわねえ」
( ^ω^)「僕は別に構いませんお。護衛は助かりますし、料金払ってもいいくらいですお」
( ゚д゚)「王都への街道は3人も護衛はいらんだろう。金目のものを積んでるわけでもないしな」
从 ゚∀从「最近はちと物騒な噂もあるんで、用心はしといた方がいいだろうがな」
( ゚д゚)「むしろこちらが運賃を払ってもいいくらいだ。わんわんおと旅が出来るしな」
結局、護衛料も運賃もいらないという話で落ち着いた。
お互い知らない仲ではないし、旅は道連れ、人数が多い方が楽しくもある。
( ^ω^)「一応、ツン達にも聞きますが、多分断らないと思いますお」
_
( ゚∀゚)「送ってくれて、武器職人に合わせてくれればいいからさ。帰りは邪魔しないから」
( ^ω^)「お? 帰り?」
ジョルジュさん達はしばらくソクホウに留まるつもりらしい。
そうなると帰りは僕とツンとわんわんおの3人だ。
むしろ人数の減る帰りの方が護衛が欲しいかもしれないが、仕方がないか。
- 285 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:20:21 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「よし、それじゃあ早速ツン達に会いに行くか。あいつらどこにいんの?」
( ^ω^)「観光中ですお。お昼頃、もうすぐ戻って来ると……お、噂をすればですお」
通りの方に視線を向けると、人込みの中を見慣れた顔がこちらに歩いて来る。
ξ゚听)ξ「ハインじゃない。それにジョルジュさん達も。どうしたの?」
从 ゚∀从「市場の方で、ヴィップの町の名物を売りに来てるって丸っこいのがいるって話聞いたから」
从 ゚∀从「見に来たらブーンだった」
( ^ω^)「お、宣伝効果ちゃんと出てたのかお、って、丸っこいのって……」
丸っこいが何を指すか甚だ気になる所だが、僕は広い目で見て標準体型だと思う。
顔が丸っこいのは認めざるを得ないが。
(´・ω・`)「それで、パンの方は売れたの?」
( ^ω^)b「完売だお!」
ξ;゚听)ξ「嘘、まだ午前中じゃない? 売れないから諦めて自分で食べ尽くしたんじゃないの?」
- 286 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:22:29 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「んなわけねえお。大繁盛だったお。そうだおね?」
(∪^ω^)「わんわんお!」
信じられないといった表情をしていたツンとショボンだったが、売上金を見せると納得してくれた様だ。
( ^ω^)「つーか、美味いのは2人とも知ってたお? 売れても不思議はないお」
(´・ω・`)「見知らぬ土地で宣伝も無しにいきなりだったからね。こんな早く売り切れるとは信じられなくて」
( ^ω^)「試食も用意したし、最初のお客さんが声の大きい人でいい感じに宣伝っぽくなったんだお」
从 ゚∀从「あれ、そうなると俺らヴィップ名物とやらは食べられないの?」
ハインさん達は冷やかしではなく、買うつもりで来ていたらしい。
それは申し訳ないことをしてしまったが、3人は薬草パンを1度食べただろうし、それほど珍しくもないと思う。
( ゚д゚)「薬草パン? いや、食べた覚えはないが……」
( ^ω^)「あれ? 結構前の話ですけど、試作した時にジョルジュさんにみんな分渡したんですけど……」
- 287 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:24:01 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「……ジョルジュ?」
_
( ゚∀゚)「……ああ、思い出した。竜の調査の時だな。そういえば貰ったな」
从 ゚∀从「それで、貰ってどうした?」
_
( ゚∀゚)「1つ食ってみたら美味かったんで、全部食った」
从#゚∀从「てめえ……」
薬草パンを巡り、一触即発の空気だったが、また後日焼いた時に食べさせるという事でこの場は収まった。
げに恐ろしきは食べ物の恨みである。
僕としては、ジョルジュさんが薬草パンを気に入ってくれた事自体は嬉しいのだが。
( ^ω^)「それでツン、ショボン、ジョルジュさん達なんだけども……」
僕は2人にジョルジュさん達も同行したがってる事を説明する。
2人は特に断る理由もないからと、快く了承してくれた。
从*゚∀从「サンキュー、ツン。助かるぜ」
ξ゚听)ξ「礼を言われるほどの事じゃないわよ。そもそも私もおまけみたいなもんだし」
- 288 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:25:12 ID:.GRteUcU0
( ゚д゚)「旅の間、わんおちゃんのお世話は引き受けよう」
(´・ω・`)「それは間に合ってます」
( ゚д゚ )「……」
(´・ω・`)「……」
( ゚д゚)「一緒にやろうか」
(´・ω・`)「そうですね」
(∪^ω^)「わんおー」
_
( ゚∀゚)「出発はいつの予定だ?」
( ^ω^)「明日の朝には出るつもりですお」
僕はこの後の予定を改めて皆に説明する。
と言っても、宿を決め、馬車を預けて観光するぐらいしか予定はないのだが。
- 289 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:26:11 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「というわけでまずは宿の確保に行くお」
馬車も停められるような商人向けの宿は商工会から大体の場所は聞いていた。
僕は良さそうな宿と交渉し、宿泊場所を決め、次いで商工会の本部で露店の使用が終わったことも報告する。
どうやら商工会にも僕のお店が賑わってた噂は耳に届いていた様で、また是非借りに来てくれという言葉も頂いた。
(*^ω^)「僕の商売人としての腕も捨てたものじゃないおね」
サンライズの宣伝もしたし、ソクホウでも薬草パンの販売と宣伝をすれば、サンライズを訪れる客はきっと増えるだろう。
ξ゚听)ξ「……でもそれって、パン屋として有名になってくだけじゃないの?」
( ^ω^)「え……?」
( ^ω^)「いや、ちゃんとパン渡す時に魔法道具屋サンライズをよろしくって宣伝したし、それはないお」
(´・ω・`)「でも、馬車には薬草パンの宣伝しかしてなかったみたいだよね」
( ^ω^)「そうだけど……いや、でも……」
2人の物言いに不安になって、ジョルジュさん達の方を見る。
そういえば3人はサンライズの名前を聞いて来たわけじゃなかった。
- 290 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:28:05 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「何でも美味いもの売ってるらしいとしか聞いてねえな」
_
( ゚∀゚)「商品名も店名も聞かなかったな」
( ^ω^)「そうですかお……」
( ゚д゚)「そう落ち込むな。広まるのはこの後だろ。食べた人が噂をしてくれるさ」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ^ω^)「だといいですおね……」
僕は頷きつつも、次からはもう少し店構えや包装等を工夫した方がいいかもしれないと考えていた。
ついでに護符なんかも並べて、魔法道具屋であることをアピールするとかも行うべきか。
_
( ゚∀゚)「おい、ブーン。そっちには行くな」
( ^ω^)「お?」
考え事をしながら歩いていたら、皆から離れて1人別の通りに入ろうとしていた。
ジョルジュさんがこっちに来いと手招きしている。
- 291 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:31:46 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「あっちは裏通りだ。あんまり無闇に足を踏み入れる場所じゃねえ」
( ^ω^)「お、そうなんですかお」
メシューマの裏通り、噂に聞く物騒な通りだ。
しかしながら一見すると普通の通りとそう変わらぬように見えて、人通りも多い。
僕のイメージしていた裏通りとはだいぶかけ離れていた。
从 ゚∀从「どんなのを想像してたんだよ?」
( ^ω^)b「人通りなくて、店が軒並み閉まってて、店に入る為には秘密の合言葉が必要だったり」
そんな身を潜めて営業してる感じだったのが、随分とオープンに店を開けているものだ。
あんなに賑わっていると、ちょっと覗いてみたいと思ってしまう。
_
( ゚∀゚)「俺らも魔法鉱石が出てねえか、ちょっとは見て来たんだがな」
_
( ゚∀゚)「スリや強盗紛いの連中もいて、めんどくせえとこだった」
( ゚д゚)「品は真っ当な物から、ご禁制の物まで色々だったな」
( ゚д゚)「魔法鉱石もあったが、かなり高価な値がついていた」
- 292 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:33:49 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「異常に安いのもあったが、どうも怪しくてな」
_
( ゚∀゚)「俺らには鑑定出来ないし、それは避ける事にした」
( ^ω^)「それが正解だと思いますお」
僕達はそんな話をしながらメシューマの町を歩き回る。
これといった目的もなかったが、数々の品々や商売のやり方は見ていてとても勉強になった。
それに何より、賑やかな雰囲気が自然と楽しい気分にさせてくれる。
ξ゚听)ξ「流石に歩き疲れたわ。どこかで休まない?」
( ゚д゚)「この近くに果物ジュースの美味い店がある」
つ∪^ω^)「わんおー?」
意外な事に、メシューマの町、特に食べ物関連の店に一番詳しいのはミルナさんだった。
まめな性格らしいし、ミルナさん達のパーティーで宿の手配とかは全てミルナさんが受け持っている事を考えれば、
意外でも何でもないのかもしれないが。
从 ゚∀从「あいつ、結構な甘党だしな」
( ^ω^)「そうなんですかお?」
僕達はミルナさんのオススメのお店でジュースを買い、近くの公園で飲んだ。
確かに少し甘かったが、果物の瑞々しさは損なわれておらず美味しかった。
- 293 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:35:50 ID:.GRteUcU0
( ^ω^)「美味いお。やっぱり薬草ジュースの開発も視野に入れるべきだおね」
ξ゚听)ξ「もう、クエストに携帯する事とか度外視で言ってない?」
すかさず入るツンのツッコミを聞き流し、視線を余所に向ける。
そんな時、向けた先にあった掲示板が僕の目に入った。
( ^ω^)「お? 何だお、これ?」
掲示板にはその区域の連絡事項的なものとは別に、何かを告知した1枚のポスターが貼られていた。
ポスターには大きく闘技大会の文字が書かれている。
_
( ゚∀゚)「ここで大規模な闘技大会が開かれるらしいぜ」
まだ先の話だがと前置きし、ジョルジュさんが説明してくれる。
商工会設立何周年かの記念イベントの目玉として開催されるらしい。
6人以内のチームの集団戦形式で、武器も魔法もありという話だ。
( ^ω^)「危険な大会になりそうですおね」
( ゚д゚)「一応、相手を殺してしまったら失格になるから、そこまでひどくはならないと思うがな」
- 294 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:37:13 ID:.GRteUcU0
从 ゚∀从「ガチンコの大会なら、その気はなくても殺しちまう可能性はあるだろうけどな」
ジョルジュさん達は、参加も視野に入れているらしい。
腕試しが目的だが、優勝商品が手に入れば武器の強化とか余裕で出来るだろうから狙う価値はあると。
(´・ω・`)「でも、優勝する為には武器の強化も必要そうですよね」
( ゚д゚)「まあな。結局そうなるのが何とも頭の痛い所だ」
最悪、今の装備で出るつもりらしいが、その為には人数も集めないと厳しいだろうとミルナさんは言う。
从 ゚∀从「お前らならいい線行きそうだが、流石に危ねえ大会だしな」
ξ゚听)ξ「別に、クエストでモンスターと対峙するのとそう変わらないでしょ?」
( ^ω^)「まあ、僕らは遠慮しときますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
これ以上この話を続ければ、ツンが参加するとか言いそうな気配だったので強引に話を打ち切る。
モンスターと人では戦い方は大きく異なるし、個人戦や雑魚相手ならともかくツンは集団戦には慣れていないはずだ。
あまり不用意に危険な戦いに参加して欲しくないと僕は思う。
- 295 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:39:13 ID:.GRteUcU0
(´・ω・`)「ちなみに、優勝商品って何なんですか?」
( ゚д゚)「魔王の朱玉と呼ばれる宝石だ」
( ^ω^)「何かご大層な名前ですおね」
从 ゚∀从「あれ、その様子だとどんなものか知らねえの、魔法道具屋店長さん?」
( ^ω^)「聞いたことないですお。有名なんですかお?」
从 ゚∀从「いや、知らね。だから後でブーンにどのくらい価値があるか聞こうと思ってたんだけどさ」
残念ながら聞き覚えのない名前である。
そんな仰々しい名前で有名なものなら職業柄、1度くらい耳にしていてもおかしくないが僕は知らない。
つまりはそれほど有名ではないのかもしれない。
( ^ω^)「けど、商工会主催なら価値のないものを賞品にするわけないですし、それなりには高いはずですお」
_
( ゚∀゚)「だよな。じゃなきゃ参加者集まらねえだろうし」
僕の言葉に皆、納得した様に頷き、この話はおしまいになった。
宝石の事はヴィップに戻った時にドクオさんに聞いてみようと思う。
- 296 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:41:16 ID:.GRteUcU0
- _
( ゚∀゚)「で、これからどうするよ?」
ξ゚听)ξ「私は疲れたし、宿に戻りたいですね。まだ町を見て来たい人は別行動でもいいんじゃないですか?」
(´・ω・`)「じゃあ、僕も宿に帰ろうかな」
( ^ω^)「僕もそうしますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
_
( ゚∀゚)o彡゚「あれ? お前ら皆帰るの? ブーン達を色々お楽しみなお店に案内してやろうかと思ってたのに」
从 ゚∀从「どうせろくでもない店だから聞く耳持つなよ。馬鹿は置いて帰るぞ」
(* ゚д゚)「わんおちゃんは晩ご飯何が食べたい?」
(∪^ω^)「わんおー」
僕らは何か力説しているジョルジュさんを1人残し、宿に戻る。
今日はやわらかな布団でゆっくりと眠れる事に感謝しながら明日からの馬車の旅に備えよう。
_
(;゚∀゚)o「いや、ホントに置いて行くなよ……」
第十七話 再会のメシューマ 終
- 297 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:44:47 ID:UxquQQm6O
- 乙パンツ
- 298 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:46:16 ID:.GRteUcU0
十七話は以上です
しばらくは旅編が続く予定
次話と次々話は書けてますが、投下時期は未定
もう少し先の展開を決めて、その先の話も書いてから投下するかもしれません
今回、パンをパンツと打ち間違えてないかは念を入れて確認しましたので大丈夫なはずです
支援とか感謝です
- 299 名前:名も無きAAのようです:2012/03/17(土) 23:48:07 ID:/ygJddS6O
- 乙でしたパンツ
- 300 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 00:01:29 ID:7x49dquc0
- 乙!
毎回凄く楽しみにしてる。
- 301 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 00:02:52 ID:GGy2KPzkO
- 乙 DA・PANTU
- 302 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 00:03:07 ID:zJ5CJsHMO
- パン乙
- 303 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 00:22:11 ID:DlOQEgXo0
- やくそおつパンつん
- 304 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 00:28:56 ID:O1ajWOsQ0
- パン売れまくったな。パンツだけに
- 305 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 02:28:37 ID:O/pmsL9E0
- 乙だパンツ
- 306 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 02:49:16 ID:v35RDDjwO
- ぱんつくったのかーおいしそうだな!乙おつ
- 307 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 03:56:18 ID:YBkxNiMo0
- ブーン パン ツクッタ
- 308 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 06:55:00 ID:O/pmsL9E0
- もうパンツくる仕事を生業にしたらええやん
- 309 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 09:49:56 ID:Bt906pJ20
- あらやだ、次も楽しみなのよ
- 310 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 12:40:33 ID:nEfVJHHwC
- 次のパンツも楽しみだぜ
- 311 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 14:02:28 ID:N4d9w3zs0
- お前らパンツばっかだなwww
乙。次回も期待してるよ
- 312 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 20:24:02 ID:cCqAKosE0
( ^ω^)「思うに、僕は魔法道具屋としてはそこそこ活躍してるけど、魔法使いとしてはあんまり出番ないんだおね」
(゚、゚トソン「はあ……」
( ^ω^)「あんまり魔法使いの格好もしないんだお。既存の改造で全身AAも作ってるというのに」
v
/⌒ヽ.{○}
(_^ω^)}{
〈:::::::\ /つ〉
〉::::::::|=| ||
く:::::::::/__| ||
 ̄
( ^ω^)「後世に薬草の賢者と称される予定の僕らしく、緑のローブ装備だお」
( ^ω^)「本編で明確に装備したって表記があったのたった1回だけという」
(゚、゚トソン「僕との戦闘の時ですね」
( ^ω^)「しかし、これ、最近気付いたんだけど魔法使いとして足りないものがあるんだお」
(゚、゚トソン「足りないものですか?」
- 313 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 20:25:46 ID:cCqAKosE0
( ^ω^)「気付かないかお? 一般的な魔法使いのイメージにはこれに三角帽子がつくんだお」
(゚、゚トソン「ああ、そういえば確かに。魔法使いの人はとんがり帽子とか被っておられますね」
( ^ω^)「そうだお。というわけで三角帽子をどこかで手に入れるお」
〜 そして 〜
_ v
∠ ∞\{○}
(_^ω^)}{
〈:::::::\ /つ〉
〉::::::::|=| ||
く:::::::::/__| ||
 ̄
( ^ω^)「トソン君?
(゚、゚トソン「丁度緑で三角の布が干してあったので、丁度良いかと」
( ^ω^)「うん、緑で三角だけど、これ、ツンのパンツだおね。被ってから言うのもなんだけど」
ξ )ξ ユラリ
( ^ω^)「あ、これ、僕フルボッコにされるパターンだおね」
( ^ω^)は魔法パンツ屋さんのようです つづかない
- 314 名前: ◆5rua49HN2.:2012/03/18(日) 20:29:46 ID:cCqAKosE0
- ぱっと思いついたので
んー、とりあえず書いてみました
つーか、これはまとめないでくださいね
- 315 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 20:32:56 ID:b1cPamgsO
- パンツ乙ww
- 316 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 20:54:44 ID:GGy2KPzkO
- パンツwwww
全身AA良い感じ
- 317 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 21:19:21 ID:SZR5tG7Q0
- 縦読みまでパンツはやめれwww
- 318 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 21:35:19 ID:v35RDDjwO
- パンツさん何してんすか乙
- 319 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 21:40:40 ID:2okkIFR60
- ジャスティス
パンツは正義
- 320 名前:名も無きAAのようです:2012/03/18(日) 22:24:20 ID:5Shu1dq60
- 『正義』は勝つ!
- 321 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 00:33:43 ID:gq8IquFIO
- まとめないでとか言うとやばいよ!
特に芸さんはドSだからきっと赤字リンクで※必読まで付けてまとめてくれるよ!!やったねパンツさん!!!
- 322 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 01:20:41 ID:zpeYqLNU0
- もう作者の通称は「パンツの人」で確定だな
- 323 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 13:29:21 ID:qTWAMDiI0
- もう酉をpantsにしろよ
- 324 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 13:44:21 ID:pBYGGPQU0
- お前ら落ち着け
- 325 名前: ◆PantsNSwzI:2012/03/19(月) 15:47:03 ID:ZBaARM9o0
- 特に意味はないがお前等の為に酉をつくってみた。作者ではない
#p6シFoK18
- 326 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 17:56:06 ID:aMt57EyIO
- これだけ見事なパンツスレ化したのに、登場キャラのパンチラ絵の一枚もないとは由々しき事態ですぞ?
- 327 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 18:57:08 ID:g91EbmPMO
- 言い出しっぺの法則って知ってる?
- 328 名前: ◆PantsNSwzI:2012/03/19(月) 21:31:13 ID:pOxVQJsE0
- ほおら、パンチラだよ〜
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_283.png
明日が祝日と気付いたんで、今日中に18話の投下始めようと思います
- 329 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 22:24:52 ID:aMt57EyIO
- やったー! パンチラだー!!!
投下wktk
- 330 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:10:10 ID:pOxVQJsE0
〜 メシューマ・ソクホウ間の街道 〜
( ^ω^)「お? 前方に隊商の馬車が停車中……あ、何かヤバげな感じですお」
( ゚д゚)「どうやら襲われているようだな」
(∪^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「どうしますか……」
ダッ
ミ从 ゚∀从
スタッ
ミξ゚听)ξ
( ^ω^)「まあ、助けるんだけども、せめて足並み揃えてくれお」
第十八話 王都への道
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 331 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:10:24 ID:wWof3nsM0
- 綺麗な縞パンだな…ゴクリ…
- 332 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:11:40 ID:pOxVQJsE0
( ^ω^)「全く、出るなら役割分担ぐらい決めてからにして欲しいお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
( ゚д゚)「相手は盗賊のようだな。まさか王都への街道であんな馬鹿な事をやらかすとは恐れ入る」
彼の名前はミルナさん。
僕の顔馴染みの冒険者で、生真面目で強面だが、意外と小さくてかわいいものが好きだったりする人だ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
僕達は騎士学校に入学するショボンを送ってソクホウに向かう最中だ。
途中で寄ったメシューマの町で偶然再会したミルナさん達3人の冒険者を乗せ、現在は7人旅である。
( ゚д゚)「ともかく、俺も助けに行こう」
( ゚д゚)「守りは頼むぞ、ブーン。それと寝ているジョルジュ達も起こしてくれ」
- 333 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:13:41 ID:pOxVQJsE0
( ^ω^)「わかりましたお。わんお、馬車に入ってるお」
(∪^ω^)「わんお!」
僕は馬車を止め、御者台から馬車内に入り、先日の夜番で未だ就寝中だったジョルジュさん達を起こし、状況を説明する。
_
( ゚∀゚)「チッ、出遅れたか。まあ、いいや。あいつらなら大丈夫だろ」
(´・ω・`)「僕もここで馬車番という事だね」
( ^ω^)「僕はちょっと状況見に行って来ますんで、よろしくお願いしますお」
ミルナさんからは馬車の番を頼まれたが、ジョルジュさんがいるなら僕はいなくても大丈夫だろう。
ミルナさん達の方もその辺の盗賊相手なら問題はないと思うが、数はいるだろうし、念の為援護に回る。
( ^ω^)「おー、ばったばったとなぎ倒されてるおね」
死んではいない様だが、数人の盗賊が既に倒されていた。
ツンとハインさんが縦横無尽に駆け回り、瞬く間に盗賊を打ち倒して行く。
ミルナさんは隊商の馬車前に陣取り、盗賊が近付くのを的確に防いでいる。
( ^ω^)「相変わらず集団戦になると空気だおね、僕。魔法の持ち腐れだお」
- 334 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:15:02 ID:pOxVQJsE0
僕は魔法の縄で倒れている盗賊を縛り、一箇所に集める。
やがて盗賊達は勝ち目がないと悟ったのか、算を乱して逃げ出していった。
( ^ω^)「大丈夫でしたかお?」
(;´W`)「ありがとうございます、助かりました」
僕は隊商の中で一番身なりの良かった人に話しかける。
多分、この人が隊商を率いる人だろう。
(;´W`)「私はシラヒーゲと申します。貴方方には何とお礼を申し上げればよいのか」
未だ青い顔をしていたが、シラヒーゲさんは深々と頭を下げて感謝の意を示してくれる。
( ^ω^)「ヴィップで魔法道具屋をやってるブーンですお。商売人同士、困った時はお互い様ですお」
( ^ω^)「でも、この隊商の規模ならもうちょっとマシな護衛は雇うべきでしたおね」
一応、護衛はいたようだが腕の方は大した事なかったらしく、多勢に無勢の状況を覆すほどの力はなかったのだろう。
自分の身を守るのに精一杯だったようである。
- 335 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:16:23 ID:pOxVQJsE0
(;´W`)「仰る通りです。面目ない。まさかこの街道で襲われる事はないと油断していました」
( ^ω^)「お気持ちはわかりますお。この街道みたいな王家のお膝元で盗賊が跋扈してるなんて思わないですおね」
最初にミルナさんも言った事だが、ここは王都ソクホウへの続く道で、
当然何かあれば王都から騎士団が出張って来るような場所だ。
そんな所で盗賊行為なんて、捕まえてくれと言っている様なものだ。
从::゚∀:从「いんや、そうとばかりも限らんぜ?」
(;´W`) ヒッ…
( ^ω^)「どういう……って、ハインさん、ちょっと顔洗って来てくださいお」
抜身の蛮刀をぶら提げたハインさんの顔は赤く染まっていた。
自身は傷を負っていないのだろうが、軽くスプラッタな光景である。
从う∀:从「ん……、ああ、すまん」
手で拭っても何の解決にもならないと思うが、ハインさんはそのまま話を続ける。
何でも、最近街道で隊商を襲う盗賊が横行している話をメシューマで聞いたとの事だ。
- 336 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:18:09 ID:pOxVQJsE0
从=゚∀:从「で、そいつらが出没した場所は一定じゃないらしい」
( ^ω^)「ん? 規模の大きい盗賊団って事ですかお?」
从=゚∀:从「いや、それがどうやら違うみてえだな」
ハインさんの話では、その盗賊団はそれほど大きくはないが、
アジトを持たず場所を移動しながら盗賊行為を繰り返していると噂されているらしい。
( ^ω^)「なるほど、一所に止まらないから、討伐が難しいという事ですおね」
从=゚∀:从「そういうこった。俺らみたいに偶然ぶち当たってその場で倒しちまえばいいんだろうがな」
シラヒーゲさんも盗賊の噂は聞いていたらしいが、
盗賊の出没情報は全てメシューマの南の街道だったから油断していたという。
となると最近この街道を狙うようになったのか、もしくは噂とは別の盗賊団なのかもしれない。
どっちにせよ、なかなか調子に乗ってる盗賊団だ。
王都に続く街道なら、その内確実に騎士団が何かしらの対策を打って来るだろうに。
騎士団に遭遇しなくても、これだけ派手にやれば隊商も腕利きの護衛を雇うようになるだろうから、
いずれにせよ、こんな無茶な簒奪行為が続けられるはずはない。
ひょっとしたら、捕まる前に稼ぐだけ稼いで短期間で盗賊団自体を解散させるつもりなのかもしれない。
- 337 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:19:07 ID:FiBl0TH6O
- あれ…?
パンツが見えないのは俺の心がヨコシマだからか…
- 338 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:19:25 ID:pOxVQJsE0
- _
( ゚∀゚)「って事は、今が討伐のチャンスじゃね?」
( ^ω^)「お、ジョルジュさん、どういう事ですかお?」
( ゚д゚)「いくらアジトを持たないといっても、今盗んだものを保管しておく場所や」
( ゚д゚)「それがなくとも集合場所ぐらいは決めているはずだ」
要するに、今なら追撃してその盗賊団とやらを殲滅すればいいという事らしい。
なるほど、理には適ってるがそれは僕らの役割ではないような気がする。
_
( ゚∀゚)「なら、ブーン、お前は放っておいて、また商人が襲われる可能性をそのまま残しておくのか?」
(;^ω^)「それはよくないと思いますけど、僕らだけで行くのは危険……でもないのか」
先の戦いを見れば、多分それほど強い盗賊団ではない。
やり方が小狡く、危険を避けて簒奪行為を繰り返してたのだろう。
たまたま運が良かっただけとも言える。
从 ゚∀从「ジョルジュにしてはいいアイデアじゃねえか」
- 339 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:20:40 ID:pOxVQJsE0
いつの間にかツンから渡された水で顔を洗って来たハインさんも賛成する。
全員の顔を見渡すも、皆やる気のようである。
_
( ゚∀゚)「捕まえたら賞金も出るだろうからな」
既に何度か犯行を重ね、噂もになってる盗賊団かもしれないのだ。
確かに賞金が掛かっていてもおかしくはない。
冒険者がそれ目当てで行動するのは不純だとは思わないし、ある意味当然の労働報酬と危険手当だ。
( ^ω^)「まあ、まだ騎士学校の入学試験に間に合いはしますけど……」
(´・ω・`)「僕としても、騎士になるならここは行くべきだと思うから気にしないで」
(´・ω・`)「これで遅れても悔いはないし、悪事を見過ごす方がよっぽど悔いが残るよ」
( ^ω^)「お前にそう言われたら行くしかないじゃないかお」
从 ゚∀从「よし、行くぜ。急がねえと逃げられちまう」
( ^ω^)「けど、大体の方向はわかりますけど、適当に追って見付けられますかおね」
( ^ω^)「あと、馬車どうするとかの話もありますお」
- 340 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:22:13 ID:pOxVQJsE0
( ゚д゚)「それなら心配はいらん」
ξ゚听)ξ「捕まえたやつの1人の口を割らせたから」
( ^ω^)「いつの間に……。つか、どうやったんだお? こういうの、大体そう簡単には口割ってくれないお?」
ξ゚ー゚)ξ「ヒ・ミ・ツ」
( ゚д゚)「ヒントを出すならあそこで砕けてる岩だな」
( ^ω^)「おk、深くは聞きませんお」
馬車の方は、手当てや修繕でしばらく留まる必要が出来てしまったシラヒーゲさんが見てくれると言う。
王都に使いも出したらしいので、騎士団も遠からず来るだろうから安心出来る。
( ´W`) 「捕まえて頂いた賊の引渡しもやっておきます」
( ^ω^)「お願いしますお。それじゃあ、行きましょうかお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(;^ω^)「あ、わんおどうしよう……まあ、いいかお。一緒に行くお」
- 341 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:23:58 ID:pOxVQJsE0
僕はわんわんおを抱え、盗賊が逃げた方、街道から少し離れた森に向かって走り出す。
既にハインさんとツンがかなり先を走っている。
(;^ω^)「いや、だから足並み揃えましょうってば」
从 ゚∀从「今回は迅速な行動が必要だからな。先行するぜ!」
正論といえば正論だが、流石に何の考えもなく2人だけを先行させるのはよろしくないのではと思う。
万が一、待ち伏せにでも会ったら洒落にならない。
(;^ω^)「じゃあ、僕も行きますお」
僕は魔法を唱え、速度を上げた。
二手に別れ、ジョルジュさん達には後詰めに回ってもらおう。
そのまま走り続けること10数分、途中に血痕が付いてたり、人の通った跡があったりと、思ったより追跡は楽だった。
それがカムフラージュや囮の可能性も考えたが、それほど頭の回る盗賊団ではなかったらしい。
僕達4人は待ち伏せされる事もなく、あっさりと森の中で追い付いてしまった。
(;盗)「な……、てめえら何で!?」
- 342 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:25:25 ID:aMt57EyIO
- 来てたか
読んで来る支援
- 343 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:25:56 ID:pOxVQJsE0
(;^ω^)「どうもこの人達、今まで相当運が良かっただけっぽいおね」
ξ゚听)ξ「同感ね」
(∪^ω^)「わんおー」
从 ゚一从「何でもいいや。さっきの続きだ、遊ぼうぜ?」
笑顔で蛮刀を抜き放ち、盗賊達の答えを待つ事もなく斬り掛かるハインさん。
この期に及んでまだ座ったままで身構えてすらいない者がいる時点で、この盗賊団の強さは底が知れる。
( ^ω^)「こりゃまた出番なさそうだおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
盗賊団の人数は残り約20人ほど。
先ほど捕まえた10人程度と合わせてみると盗賊団としてはそれなりに多い方かもしれないが、
この程度の腕なら僕らを相手にするには少ないと見るべきだろう。
_
( ゚∀゚)「先に始めるんじゃねえよ。俺にもちっとは戦わせろっての」
( ゚д゚)「烏合の衆が……死にたくなければ武器を置け」
(´・ω・`)「人のものを盗ったら駄目ってお母さんに教わらなかったのかい?」
- 344 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:27:16 ID:pOxVQJsE0
それほど距離が空いてなかったのか、すぐにジョルジュさん達3人も合流し、益々僕の出番はなくなった。
わんわんおも抱いてる事だし、後方支援に徹しようと思う。
( ^ω^)「はいそこ、スネア・トラップ」
つ∪^ω^)つ「わんおー」
(;盗)「うおっ!?」
ショボンの背後からこっそり近付こうとしていた盗賊の足元に魔法を唱え、転ばせる。
実戦経験のほとんどないショボンが一番援護が必要だろう。
(´・ω・`)「ありがとね……っと」
(;盗)「ぐわぁぁぁッ!!!」
ショボンは対峙していた盗賊を叩き伏せ、僕が転ばせた盗賊の腕を刺す。
落ち着いたその様子からするに、心配するまでもなく背後からの接近に気付いていたらしい。
騎士になる為に鍛えていた時間はちゃんとショボンの糧になっている様だ。
( ^ω^)「んじゃ、バイン・バインド」
つ∪^ω^)つ「わんおー」
精霊に働きかけ、森の木々に絡まっていた蔦を操り、倒れた盗賊を縛る。
最近縛ってばっかりな気はするが、殺さずに手っ取り早く行動不能にするならそれが一番だ。
こう敵味方が密集した状態では効果範囲の広い魔法は使い難い。
- 345 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:29:47 ID:pOxVQJsE0
从 ゚∀从「手ごたえねえなあ」
(;盗)(;盗)「ぐわぁぁぁッ!!!」
_
( ゚∀゚)「お前ら、それでよく馬車襲う気になれたな」
(;盗)「ぬわぁぁぁッ!!!」
( ゚д゚)「全くだ」
(;盗)「ぐふっ……」
競い合うように盗賊達を打ち倒して行くジョルジュさん達。
盗賊達とは個々人の実力もそうだが、連携という部分でも圧倒的な差がある。
(;盗)「ぐわぁぁぁッ!!!」
( ^ω^)「お?」
つ∪^ω^)「わんお?」
ジョルジュさん達が倒した盗賊も捕縛しようと魔法を唱えていたら、僕の背後の方で盗賊の悲鳴が上がる。
- 346 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:31:36 ID:pOxVQJsE0
ξ゚听)ξ∩「いくら相手が弱いからって、油断し過ぎじゃない?」
( ^ω^)「ツンがそっちに向かう姿見えたんで、任せただけだお」
言い訳ではなく、ツンが僕の背後から近付く盗賊に向かっている姿は視界の端にちゃんと捉えていた。
万が一近付かれても何とかなるという自信もあったが、それを油断というのかもしれない。
ξ゚听)ξ「そういう事にしといてあげるわ。あ、そいつも縛っといてね」
( ^ω^)「はいはい、仰せのままにだお」
結局、その後は僕が捕縛魔法に終始している間に戦闘は終わってしまった。
いくらなんでも弱過ぎだと思うが、弱過ぎだからこそ引っかかる部分がある。
何でこんなのが盗賊なんかやってるのかとか、これで成功してるならどれだけ運が良かったのかとか。
もっとも、運が良かっただけではなく、何かしら別の理由があった可能性はあるのだが。
( ^ω^)(考えられるのはよっぽど精度のいい情報を仕入れてたかだおね……)
ただ、それだと今回の襲撃は少し腑に落ちない点もある。
僕らは急遽この街道を進むことを決めたわけではなく、メシューマから普通に道なりに来たのだ。
情報の精度が確かなら、僕らとの遭遇を考えずにあの隊商を襲うはずがない。
- 347 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:33:28 ID:pOxVQJsE0
( ^ω^)(今回に限って情報の精度が落ちたのか、情報を得てないのか、僕らの強さが計算外だったのか……)
思いつく可能性はいくつもあり、そもそもが仮定の話なので正しい答えはわからない。
僕は、捕まえた盗賊団のボスに話を聞こうかと思い立った。
( ^ω^)「けど、どいつもこいつも雑魚面で、どれがボスなのかわからんおね」
つ∪^ω^)「わんおー」
_
( ゚∀゚)「ブーン!」
( ^ω^)「お?」
突然ジョルジュさんが僕の名を呼びながら斬りかかって来る。
それが何を意味するのか、僕は背後からの殺気で瞬時に理解した。
(=゚д゚)「ラギッ!」
_
( ゚∀゚)「でりゃッ!」
僕は斜め前方に転がるように避け、その場から離れる。
代わりにジョルジュさんが僕の元いた場所に踏み込み、斬撃を受け止めた。
- 348 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:34:55 ID:pOxVQJsE0
- _
( ゚∀゚)「まだいやがったか」
(=゚д゚)「賊の割にはやるラギね」
(´・ω・`)「あれ? ちょっと、ブーン?」
( ^ω^)「うん、止めないとまずいっぽいお」
斬り合いを始めたジョルジュさんと襲撃者だが、この戦いは止めなければならない。
襲撃者の格好を見れば、彼が何者なのかは察することが出来る。
( ^ω^)「ジョルジュさん、ストップ! そっちの騎士さんも止めてくださいお!」
( ^ω^)「僕らは盗賊じゃありませんお!」
_
( ゚∀゚)「あ? 騎士? そういやそんな鎧だな……」
(=゚д゚)「ラギ? どういう……」
騎士が何かを言い掛けた時、その背後から更に同じ鎧を着けた一団が一斉に現れる。
更にまずい展開になる前に誤解されないよう呼びかけようとしたが、
1人の長身の騎士が進み出て、最初に襲ってきた騎士の前に出る。
- 349 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:36:27 ID:pOxVQJsE0
(‘_L’)「止めるんだ、トラギコ。彼らは賊ではない」
(=゚д゚)「団長!」
団長と呼ばれた騎士は、ジョルジュさんに広げた手を向け、武器を下ろしてくれるように頼む。
ジョルジュさんは警戒しながら数歩下がり、斧の刃を下げた。
襲って来た騎士の方も慌てて剣を納め、直立不動の姿勢を取る。
(‘_L’)「大変失礼しました。私はニューソク騎士団長、フィレンクト=ドレイクです」
( ^ω^)「ヴィップの町で魔法道具屋をやってます、ブーン=ナイトウですお」
( ^ω^)「彼らは旅の仲間ですお」
つ∪^ω^)「わんお!」
皆の視線が集まるのを感じ、僕が代表して名乗る。
交渉ごとは僕の役目という事なのだろう。
僕は、自分達がここにいた経緯と盗賊団の事を説明する。
それを聞いたフィレンクトさんは、改めて謝罪をし、騎士団がここに来た経緯を説明してくれる。
(‘_L’)「野外演習をしていた時に、商人からの王都への救援願いの使いと遭遇しましてね」
- 350 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:38:07 ID:pOxVQJsE0
使いを出したとはいえ、いくらなんでも早過ぎる到着だと思ったが、
幸運な事に騎士団がたまたま近くにいたらしい。
(‘_L’)「それで急いで駆けつけたのですが、まさかこの少人数で既に盗賊団を壊滅させているとは」
僕達が討伐に向かった事はシラヒーゲさんから聞いていたらしいが、この状況は想定外だったようだ。
腕前に感嘆すると同時に、部下の軽率な行動を心から謝罪するとフィレンクトさんは頭を下げる。
(;^ω^)「頭を上げてくださいお。ニューソクの騎士団長さんにそんなことをされるのは恐れ多いですお」
僕は必死に頭を上げてもらうように頼み、何とか聞き入れてもらった。
その後、現状を説明し、盗賊達を引き渡した。
(‘_L’)「ご協力ありがとうございました」
(‘_L’)「それで1つお尋ねしたいのですが、ブーン殿のこの後のご予定はどのようになっておられますか?」
( ^ω^)σ「ソクホウに向かう予定ですお。彼が騎士学校に入学する予定なんで、送って行きますお」
(;´・ω・`)「ちょ、それは今言わなくてもいいでしょ!?」
(‘_L’)「それはそれは……」
フィレンクトさんは僕の言葉に僅かに笑みを浮かべ、ショボンの方を見る。
ショボンは自分が目指す先にいる人に予期せぬ出会いをし、緊張しているのか顔が強張っている。
- 351 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:40:31 ID:pOxVQJsE0
(‘_L’)「いい目だ。君と共に銜を並べる時が来る事を楽しみにしてるよ」
(*´・ω・`)「ありがとうございます!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
差し出された手を握り返し、ショボンは頬を紅潮させて礼を述べる。
その目には羨望の思いが溢れているようにも見えた。
(‘_L’)「ブーン殿、ソクホウにお着きになられましたら、1度騎士団の詰所にお越しくださいませんか」
もう少し詳しい話を聞きたいのと、今回の件の礼金を出すからとフィレンクトさんは言う。
僕もこの盗賊団については少し気に掛かる点もあるし、少し迷ったが了解した。
(‘_L’)「それでは、我々はこれで」
(=゚д゚)「そこのあんた、悪かったラギね」
_
( ゚∀゚)「気にすんな。それより今度手合わせしてくれよ」
僕達はニューソク騎士団一行を見送り、馬車を停めた所へ戻る。
シラヒーゲさん達は未だ馬車の修理中だったが、何人かの騎士が護衛として留まってくれる様だ。
場合によっては馬車が直るまで僕らも留まるべきかと考えていたのだが、その必要はないらしい。
- 352 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:42:08 ID:pOxVQJsE0
( ´W`)「お気遣いありがとうございます。こちらの事はお気になさらず出発なさってください」
是非お礼を受け取ってくれと言ってくれたシラヒーゲさんだったが、騎士団から礼金が貰えるし、
その上で困っている人から貰うのも申し訳ないので辞退させてもらった。
ジョルジュさん達も同じ考えのようで、礼金はいらないと断る。
しかし、それでは自分の気が済まないと言うシラヒーゲさんに納得してもらう為、
積荷にあった果物を少しだけ譲ってもらう事で話は収まった。
( ´W`)「本当にこんなものでよろしいのですか?」
( ^ω^)「最初にも言いましたお? 困った時はお互い様ですおって」
( ^ω^)「それに、こんな美味しそうな果物もらえれば十分ですお」
( ゚д゚)「お心遣いだけはありがたく頂きます」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕達は何度も頭を下げるシラヒーゲさんに手を振り、馬車を出発させた。
少し時間を取られてしまったが、特に旅に支障はない。
- 353 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:44:08 ID:pOxVQJsE0
- シャクシャク
ξ*゚〜゚)ξ「この果物、甘いわね。初めて食べるけど美味しい」
シャクシャク
( ^ω^)「見たことないやつだおね。色合いからして南方のものかおね?」
_ シャクシャク
( ゚〜゚)「俺にはちーっとばっかし甘過ぎるな。瑞々しくてうめえが」
シャクシャク
( ゚д゚)「そうか? いい塩梅だと思うが」
グリグリ
从 ゚∀从「ほら、食え? ん? 食わないの? 美味いぞ?」
つ)∪;^ω^)ノシ 「わんおー」
(;´・ω・`)「ハインさん、わんおちゃんに柑橘類は止めてあげてください」
(; ゚д゚)「止めろハイン。それと、お前のわんおちゃんの持ち方はおかしい。離せ」
ξ゚听)ξ「南方っていえば、ひょっとして露店に空きが出来たのって、あの盗賊団の所為だったのかしら?」
ツンの言葉で思い出したが、確かメシューマの商工会で南方からの商人が来られなくなったという話があった気がする。
ハインさんが聞いていた噂と合わせて考えると、その可能性はあると思う。
あいつらのお陰で場所が借りられたと思うと複雑だが、そういうのは巡り合わせだと割り切るしかないか。
- 354 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:46:11 ID:pOxVQJsE0
从 ゚∀从「しっかし、あいつら何なんだ? 弱過ぎるにも程があるだろ」
わんわんおを取り上げられて退屈そうなハインさんが馬車から御者台に上がって来る。
ツンが少し僕の方に身を寄せ、スペースを空けた。
( ^ω^)「色々と腑に落ちない点がいっはいなんですおね」
僕は戦闘中に考えていたことをツンとハインさんに説明する。
馬車内に繋がる幌は上げてあったので、ジョルジュさん達にも聞こえたかもしれない。
ξ゚听)ξ「弱いといっても、商人に負けるほど弱くはないでしょうから」
ξ゚听)ξ「護衛の少ない隊商とかの詳しい情報があれば成功はするでしょうね」
( ^ω^)「でも、メシューマ南方の時は、そこそこはちゃんとした護衛もいたはずなんだおね」
その辺りの話は盗賊団を捕まえる事が出来たので、
後で事情徴収をするであろうフィレンクトさんに聞いてみてもいいだろう。
ξ゚听)ξ「そんなの一般人に教えてくれるかしら?」
( ^ω^)「その時はその時だお。聞いてみるのはタダだし」
- 355 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:48:13 ID:pOxVQJsE0
从 ゚∀从「あいつはやっぱ強いんだろうな」
( ^ω^)「でしょうね。いかにも騎士然とした方でしたおね」
フィレンクトさんの印象は真面目で礼儀正しい人という感じだった。
背が高く、年は30代半ばぐらいだろうか。
ニューソク騎士団長を勤めるぐらいだから、その強さはかなりのものだろう。
ξ゚听)ξ「でも、思ったより騎士団って人数少ないのね」
( ^ω^)「いや、あれで全部なわけないお」
ニューソク騎士団は10の師団からなる。
全ての師団が出払って王都を空にするはずはないから、あれはほんの一部なのだろう。
各師団にはそれぞれ師団長がおり、それらを束ねるのが騎士団長だ。
だからあのフィレンクトさんは相当偉い事になる。
ξ゚听)ξ「聖騎士団もその師団の中の1つなの?」
( ^ω^)「聖騎士団は完全に別物だお」
- 356 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:50:09 ID:pOxVQJsE0
聖騎士団は聖騎士団で独自に団長がいる。
騎士団長と位的にはどっちが上なのかは知らないが、強さは聖騎士団の方が上だろう。
数では騎士団の方が圧倒的に多いが。
从 ゚∀从「ふーん。なるほどねえ」
ハインさんは感心した様に頷き、馬車内に入っていった。
今日はもう少し進んだら馬車を停めて野宿の準備をしようと思う。
( ^ω^)「この先、水場が街道から近いのってどの辺りだお?」
ξ゚听)ξ「そうねえ……この辺かな?」
僕はツンが指し示してくれる地図を確認し、到着までの時間を計算する。
日が落ちる前に着きたいから、少しだけ馬車の速度を上げた。
( ^ω^)「水場といえば、明日には大陸一の湖、マツー湖が見られるかもしれんお」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「どうしたお?」
ξ゚听)ξ「ん? 別に、初めて見る景色だから少し見とれていただけよ」
ツンも僕も王都に行くのは初めてだ。
この辺りのごく当たり前の街道沿いの景色も、ヴィップの周りとはどことなく趣が違うのでツンが見とれるのもわかる。
- 357 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:52:11 ID:pOxVQJsE0
( ^ω^)「たまには旅もいいもんだおね」
ξ゚听)ξ「たまにはね」
ずっと旅ばかりだとその内飽きると言うツンだが、
場所ごとに違う景色が見れるのなら飽きないのではないかと僕は思う。
ξ゚听)ξ「どうだかねえ。あんたもその内自分の部屋の布団が恋しくなるわよ」
( ^ω^)「それはあるかもしれんおね。野宿は寝床が固いのが難点だお」
それから、僕らはたわいもない話をしつつ馬車を走らせた。
見知らぬ山に沈む夕日が綺麗だったのがすごく印象的だった。
長く旅を続ければ、綺麗な景色もそうでない景色も沢山目にする事になるのかもしれないが、
どちらにしろ、何かしらの感慨を与えてくれるのだろう。
でも、出来れば綺麗な景色だけを見ていたいと願うのは自然な事だと思う。
僕はこの時、少しだけ旅に対する憧れの気持ちが湧いていた事に気付いていた。
そこからの旅は特に何も起きず順調に進み、翌々日の朝、僕達は王都ソクホウへ辿り着いた。
- 358 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:54:40 ID:pOxVQJsE0
〜 王都ソクホウ 東の入り口付近 〜
( ^ω^)「おー、流石王都、道が全部綺麗に舗装されてるお!」
(∪^ω^)「わんおー」
ξ;゚听)ξ「それほど驚くとこ?」
( ^ω^)「ヴィップなんて、ほとんど地面剥き出しじゃないかお」
ξ゚听)ξ「そうだけど、メシューマだってほとんど舗装されてたじゃないの」
( ^ω^)「あそこのはここほど綺麗じゃなかったお? ここのは石も揃ってるし、しっかり作られてるお」
ξ゚听)ξ「そうね。でも、わんおを散歩させるならヴィップの道の方が良さそうだけど」
( ^ω^)「それはそうかもしれんお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 359 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:56:28 ID:pOxVQJsE0
(´・ω・`)「ここがソクホウか……」
从 ゚∀从「何だ? 緊張してんのか?」
(´・ω・`)「それなりには。でも、ここまで来たという感動の方が強いかもしれませんね」
( ゚д゚)「流石に、大きな町だな」
_
( ゚∀゚)「こりゃ確実に道に迷いそうだわ」
それぞれが思い思いの感想を述べるが、共通しているのは皆がソクホウに来るのは初めてという事である。
僕達はほとんどヴィップから出た事がなかったし、ジョルジュさんとミルナさんはメシューマの近郊で育ち、
その周辺とヴィップでしか活動していないという話だ。
_
( ゚∀゚)「で、まずはどうする?」
当面の僕達の目的は3つ。
ショボンを騎士学校に送る事、騎士団の詰所に向かう事、武器職人と会うことだ。
例外的に僕だけは4つ目の目的があり、薬草パンの販売があるが今日はまだ準備していないので後日の予定だ。
( ゚д゚)「まずはショボンを送るべきだろう。試験に備えて準備もしたいだろうからな」
- 360 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:57:48 ID:pOxVQJsE0
(´・ω・`)「ここまで来れば歩いて行けますし、送ってもらわなくても大丈夫ですよ」
( ^ω^)「少ないとはいえ荷物もあるし、ちゃんと送るお」
从 ゚∀从「騎士団に寄って、金貰ってからの方がいいんじゃね? ショボンにも分け前渡さねえと」
(´・ω・`)「いや、僕は報酬はいらないですよ。あんまり働いてないし」
_
( ゚∀゚)「お前も生命を危険に晒して戦ったんだ。こういうのは遠慮せず貰っとけよ」
( ゚д゚)「そうだぞ、ショボン。それにこれからここで1人で暮らすんだし、何かと入り用になるかもしれん」
(´・ω・`)「お気持ちは有り難いですけど、それなら送ってくれたブーンに運賃として受け取って欲しいです」
頑なに固辞するショボンに、報酬の代わりに皆で少しずつ出し合ったお金を渡す事にした。
友人からの餞別という名目で渡されたそれは、ショボンも流石に拒否する事は出来なかったようだ。
(´・ω・`)「すみません。気を使わせてしまって」
从 ゚∀从「受け取っとけよ。どうせ俺らは騎士団からそれ以上貰う予定だからな」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 361 名前:名も無きAAのようです:2012/03/19(月) 23:59:19 ID:pOxVQJsE0
僕達は再び馬車を走らせ、騎士学校へと向かう。
騎士学校はソクホウの町の北東部にあり、ここからそれほど遠くなかった。
( ^ω^)「多分ここだおね。それっぽい広い運動場みたいなのあるし」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(´・ω・`)「だね。その辺でいいよ。ありがとう、ブーン、ここまで送ってくれて」
( ^ω^)「礼はいらんお。送ったのはソクホウ観光のついでだお」
(´・ω・`)「フフ、そういえばそうだったね。まあ、何にせよ、助かったよ」
馬車を停め、地面に降りる。
これでショボンとはしばらくお別れだ。
再び会うのはいつになるのかわからない。
寂しくないと言えば嘘になるが、多分僕よりも見知らぬ地に1人残るショボンの方がもっと寂しいのだ。
それがわかった上で騎士になることを選んだショボンの為にも、ここは笑顔で送り出してあげねばならない。
ショボンは自分の荷物を持ち、居並ぶ僕らの前に立った。
- 362 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:00:47 ID:h9WJkvxs0
(´・ω・`)「色々ありがとうございました。またバーボンハウスにも顔を出して貰えると父が喜びます」
_
( ゚∀゚)「立派な騎士になれよ。お前ならきっとなれる。それと、バーボンハウスには必ず行くぜ、安心しろ」
( ゚д゚)「背中を預けられるような強い男になれよ。またいつか会おう」
从 ゚∀从「お前の淹れたコーヒー好きだったぜ。器用なお前の事だ。俺は何も心配してねえ。がんばれよ」
(´・ω・`)「はい、がんばります!」
ξ゚听)ξ「これでしばらく会えないわね」
(´・ω・`)「うん、騎士になったらなったで、ソクホウに留まる事になるだろうからね」
ξ゚听)ξ「そっか。寂しいけど、それがショボンの決めた道だもんね」
(´・ω・`)「ソクホウに遊びに来てくれれば、いつだって会えるさ」
( ^ω^)「そうだお、ツン。別にこれが今生の別れってわけでもないんだお」
(´・ω・`)「そうそう。また会えた時は3人で馬鹿な話でもして盛り上がろうじゃないか」
- 363 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:02:25 ID:h9WJkvxs0
(∪^ω^)「わんお!」
(´・ω・`)「ああ、ごめんね、わんおちゃん。4人で、だね」
ξ゚ー゚)ξ「フフ、そうね。また4人でくだらない話でもしましょうね」
( ^ω^)「ちゃんとコーヒーの淹れ方も修行しとけお?」
(´・ω・`)「勿論。父さんより美味いコーヒーをご馳走するよ」
話し出せばずっと話し続けられそうな僕らだが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
僕は言葉を切り、ショボンをまっすぐに見詰めた。
ショボンはすぐに僕の意図を察し、1つ頷く。
(´・ω・`)「じゃあ、僕は行くよ」
( ^ω^)「おう」
ξ゚听)ξ「負けんじゃないわよ」
(´・ω・`)「うん、ありがとう、ツン。ブーンの事よろしくね。これからも色々馬鹿やらかすだろうからさ」
- 364 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:05:16 ID:l40k37zc0
- 遭遇支援
- 365 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:06:02 ID:h9WJkvxs0
ξ゚ー゚)ξ「そうね。ちゃんと見張ってるから安心して」
( ^ω^)「失礼な。僕はむしろ見張る側だお?」
(´・ω・`)「はいはい、そういう事にしておこうか」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(´・ω・`)「わんおちゃんとのお別れは寂しいけど、元気でね。ご主人様の事を助けてあげてね」
つ∪^ω^)「わんお!」
(´・ω・`)ノ「それじゃあ、元気で。みんな、また会おうね」
( ^ω^)ノ「まただお。お前も元気でやれお」
つ∪^ω^)つ"
僕達に背を向け、歩き出すショボン。
僕達は手を振り続けながら、それを見送る。
自分の道を歩き出したショボンの背は、ほんの少しだけ大きく見えた。
- 366 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:07:51 ID:h9WJkvxs0
( ゚д゚)「行ってしまったな……」
从 ゚∀从「お前ら泣くと思ったのに……」
ξ゚听)ξ「こんなんで泣くわけないでしょ」
ξ--)ξ「それに、ショボンが自分で決めたことなんだし、悲しむ理由がないわよ」
从 ゚∀从「そうかもしんねえけど、お前らずっと幼馴染だったんだろ?」
( ^ω^)「そうですけど、そうだからこそ、ショボンが僕らにどうして欲しいかはわかってるつもりですお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
从 ゚∀从「そういうもんなのかねえ……」
( ^ω^)「それにもし、僕がほんの少しでも涙を見せようものなら、ショボンは全力でからかいに来ますお」
( ゚д゚)「ハハ、付き合いの短い俺でも、その姿は簡単に想像出来るな」
( ^ω^)「あいつには弱みを見せちゃ駄目なんですお」
- 367 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:09:10 ID:h9WJkvxs0
- _
( ゚∀゚)「しかし、これで試験に落ちでもしたら大爆笑だな」
从;゚∀从「お前……空気読めてねえにも程があるぞ。今そんな事言うなよ」
( ^ω^)「その時は思う存分大爆笑してやればいいんですお」
ξ゚ー゚)ξ「一生からかえるネタになるわね」
从;゚∀从「容赦ねえな、幼馴染共」
( ^ω^)「でも、まあ……」
ξ゚听)ξ「落ちないでしょうけどね、ショボンなら」
( ^ω^)「昔から要領だけはいいやつだったおね」
ξ゚听)ξ「抜け目ないもんね」
( ^ω^)「皆で出かける時とか、僕が忘れそうなものはあらかじめ余分に持ってたり」
ξ゚听)ξ「何気なく言った事を、覚えてて後で調べてくれてたり」
- 368 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:10:40 ID:h9WJkvxs0
( ^ω^)「いつの間にか僕好みの味のコーヒーを淹れられるようになってたり」
ξ゚听)ξ「ブーンの無茶振りに、不満を言いながらも最良の方法を考えてくれたり」
( ^ω^)「いや、無茶振りするのは大体ツンだったお?」
从 ゚ー从「そっか。お前らよくわかってんだな、ショボンの事」
( ^ω^)「幼馴染ですからね」
( ゚д゚)「いいものだな」
( ^ω^)「はい」
(∪^ω^)「わんお!」
僕達はひとしきり笑い、馬車に戻る。
少しだけ軽くなった馬車の速度を上げ過ぎないように気を付け、僕は馬車を走らせる。
( ^ω^)「……」
- 369 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:12:44 ID:h9WJkvxs0
僕は、見知らぬ町並みを見るとはなしに見ながら考える。
誰しもが自分の道を選び、また選ばずともどこかへ向かって進んで行く。
今の僕は好きで魔法道具屋をやっているが、発端はなし崩し的だった事は否めない。
じいちゃんが魔法道具屋をやっていたから、そのじいちゃんが亡くなったから。
( ^ω^)(選ぼうと思えば、今からでも新しい道は選べるんだおね……)
しかし、僕は自分が別の道を歩きたがってるとは思えない。
僕はヴィップでの暮らしが気に入っている。
旅に対する憧れも浮かんだが、それはツンが言う様に、時々だからこそ楽しいのかもしれない。
( ^ω^)(ショボンがいなくなったことで、少しセンチメンタルになってるだけだおね……)
近しい人との別れなんて、そう何度も経験したわけじゃない。
だから僕は少し、戸惑っているのだろう。
_
( ゚∀゚)「ブーン」
( ^ω^)「お、ジョルジュさん」
馬車内からジョルジュさんが出て来て僕の隣に座る。
その顔はいつになく真剣だ。
- 370 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:16:31 ID:h9WJkvxs0
- _
( ゚∀゚)「1つ聞きてえんだが」
( ^ω^)「何でしょうかお?」
_
( ゚∀゚)「あのバイン・バインドって魔法、名前的に女の子に使ったらバインバインになったりしねえの?」
( ^ω^)「なるわけねえお」
何だか色々と台無しにしてくれたジョルジュさんに、僕は思わず敬語を忘れて突っ込む。
一瞬、僕の沈んだ様子を察して、心配して声をかけてくれたのかと思ってしまった事が非常に腹立たしい。
_
( ゚∀゚)「そっかー、残念だ。もしバインバインになるなら、ツンに使ってあげればいいと思ったのにな」
(;^ω^)「えーっと、ジョルジュさん……自力で追いついてくださいね」
_
ξ )ξ( ゚∀゚)「え? 何──」
ハヲクイシバレー!!! ヒデブッ!!!
ξ#^竸)ξ三///つ(#)゚∀゚).・。 ’
僕は、馬車から転がり落ちるジョルジュさんに心の中で敬礼を捧げ、馬車を止める事無く走らせ続けた。
第十八話 王都への道 終
- 371 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:20:44 ID:h9WJkvxs0
十八話は以上です
大体話の筋がまとまって来たので、書き溜め分消化しようかと思ってます
あと1話分あるので、近い内に投下するかと
話の切り所が難しく、今の旅編(ソクホウ編)が少し長くなりそうな感じです
支援とか感謝です
- 372 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:22:33 ID:RfJnv3qA0
- 乙
- 373 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:24:53 ID:UdWIOZxkO
- 乙乙
またペース上げて来たな
- 374 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 00:26:45 ID:umED.E1s0
- あらやだ、乙なのよ
- 375 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 03:38:38 ID:VQFSwLOwO
- びっくりした
もう来てたの…
良い縞パンでした。ごちそうさまです
- 376 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 08:30:22 ID:l40k37zc0
- おつー
- 377 名前:名も無きAAのようです:2012/03/20(火) 12:53:17 ID:HTxU5nx.0
- 乙パンツー
- 378 名前:名も無きAAのようです:2012/03/21(水) 00:57:21 ID:HWnGATtEO
- パンツでした乙
- 379 名前:名も無きAAのようです:2012/03/21(水) 13:24:40 ID:jI2Vcw7M0
- 乙ー
ショボン抜けるのか
- 380 名前:名も無きAAのようです:2012/03/22(木) 20:21:18 ID:NXNXlnag0
- 乙ー
- 381 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:43:20 ID:NMBuM8D.0
〜 王都ソクホウ 中央広場 〜
( ^ω^)「さて、こっちも宿探さないとだおね」
ξ゚听)ξ「というか、全く当てがないのに適当に馬車走らせてんじゃないわよ」
( ^ω^)「何かノリで……」
( ゚д゚)「まあ、宿ぐらいなら少し探せばすぐ見付かるだろう」
从 ゚∀从「腹も減ったし、早いとこ見付けて昼飯にしようぜ」
(∪^ω^)「わんわんお!」
第十九話 栄えし美しきニューソクの都
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 382 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:44:26 ID:NMBuM8D.0
( ^ω^)「それじゃあまず、その辺の現地人に聞いてみるかお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
今僕は、ソクホウに友人のショボンを送り届け、今宵の宿を探している真っ最中である。
幼馴染のツン、ペットのわんわんお、馴染みの冒険者であるハインさん、ミルナさんと一緒だ。
1人足りない気もするが、彼は星になったとだけ述べておこう。
僕は馬車から降り、道を歩いていた人に話しかける。
( ^ω^)「すみません、この辺でいい宿ご存じないですかお?」
(´・_ゝ・`)「すまない、私も旅人なんでこの町には詳しくないんだ」
いかにも、ここはソクホウの町ですとでも答えてくれそうな特徴のない人に話しかけたのだが、まさかの旅人であった。
気を取り直し、別の人に尋ねるが、町の南西部に宿泊施設が集まってる区域があるらしいので、
取り敢えずそこを目指せばいいと教えてもらった。
( ^ω^)「んじゃ、行ってみますかお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 383 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:47:04 ID:NMBuM8D.0
僕達は再び馬車に乗り込み、町の南西部に向かう。
道路自体はどこも同じように整備されているが、立ち並ぶ建物の感じは地区ごとに差があるようだ。
( ゚д゚)「王宮のある北の方が大きく、立派な建物が多いようだな」
( ^ω^)「今目指してる南西部は商業区域っぽいですおね」
ソクホウはヴィップの町の数倍大きな町だ。
周囲は壁に囲まれ、城塞都市の体をなしている。
町はいくつかの地区に分けられており、それぞれ住む人々の層が違うようだ。
正確な所は把握していないが、王宮の位置を考えれば北側が貴族や富裕層、教会関連、
騎士関連の住む場所や施設という事になるだろう。
ショボンが行った騎士学校も北部東側にあった。
ξ゚听)ξ「ソクホウって海も結構近いけど、港は町から離れてるのね」
( ^ω^)「みたいだおね」
ソクホウはニューソク大陸の中央部西に位置し、北と西には海がある。
西側に港があるが、あまり漁業なんかは盛んではないようだ。
軍港として作られたという歴史があるからかもしれない。
- 384 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:50:03 ID:NMBuM8D.0
( ^ω^)「お、それっぽい建物が並ぶ通りに出たお」
気付けば通りの左右には宿屋が立ち並んでいる。
僕は馬車を停め、宿探しに慣れているミルナさんと共に良さそうな宿を何軒か回り、
その内の1つを宿所に決めた。
('(゚∀゚∩「ナオルヨ亭にようこそだよ!」
( ゚д゚)「5人で。泊数は未定だが、後払いでいいのか?」
( ^ω^)「ミルナさん、5人と1匹ですお。ジョルジュさん忘れてますお」
('(゚∀゚∩「大丈夫だよ! かわいいわんちゃんだよ! その子は無料でいいよ!」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
店主のナオルヨさんは気さくで話しやすい人だったので、この町の事を色々聞くことにした。
その後、僕らは2部屋取った内の男部屋に集まり、今後の予定について再度話し合う。
从 ゚∀从「飯」
( ^ω^)「ですおね。それはまあ、この後外に出て適当な店に入るとして……」
- 385 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:52:29 ID:NMBuM8D.0
ξ゚听)ξ「その後はやっぱり騎士団の詰所かしらね」
( ^ω^)「だおね。でもそれ、僕1人で行ってきてもいいお? 大人数で行くようなものでもないし」
礼金を受け取り、盗賊団について話を聞いたり聞かれたりするだけだ。
人数は必要ないだろう。
皆も僕が礼金を誤魔化す心配なんてしていないだろうし、
来ても退屈するだけなら別行動でかまわないと僕は考えている。
若干、それ以外の理由もあるのだが、ツン以外には話せないのでそれは口にはしない。
( ゚д゚)「ふむ、しかし、どうせ他に行く当てもないし、俺もついて行こうかと思う」
( ^ω^)「紹介状渡しますんで、武器職人に会いに行くってのもありますお?」
从 ゚∀从「後でいいから飯。とにかく飯」
ξ゚听)ξつ(∪^ω^)「はいはい、すぐご飯だから少し黙ってて」
从 ゚¬从「……ジュルリ」
つ∪;^ω^)
- 386 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:54:51 ID:NMBuM8D.0
( ゚д゚)「武器職人に会うのはブーンもいてくれた方がいい」
( ゚д゚)「俺達は紹介者を知らないし、武器についてブーンの意見も聞きたいからな」
話の種に騎士団の詰所を見ておくのも面白いんじゃないと言うツンの言葉もあり、
僕達は皆で騎士団の詰所に向かう事に決めた。
( ^ω^)「じゃあ、まずは食事にしましょうかお」
ξ゚听)ξ「そうね、わんおがハインに食べられる前に行きましょうか」
(; ゚д゚)「ハイン、わんおちゃんをこっちに寄越せ、今すぐにだ!」
わんわんおを無言でじっと見詰めるハインさんから引き剥がし、宿屋を出る。
ソクホウにはこれといった名物はないらしいが、料理の水準は高く、味は良かった。
( ^ω^)「というわけでやって来ましたニューソク騎士団詰所」
つ∪^ω^)「わんおー」
騎士団の詰所は王宮の城壁に併設するような形で立っていた。
東側が騎士団、西側が教会と施設が分けられているようだ。
- 387 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:56:26 ID:NMBuM8D.0
話はちゃんと通ってたのか、名前と用件を告げると特に怪しまれる事もなく中に通される。
武器は預ける事になったが、わんわんおは一緒に通してもらった。
通された先の部屋で待っていたのが騎士団長のフィレンクトさんだったのは少し意外だ。
もっと下っ端の人が応対するかと思ってたのだが、騎士団長直々とは恐れ入る。
(‘_L’)「わざわざご足労ありがとうございます。本来ならこちらが出向くべき話なのでしょうが……」
( ^ω^)「いえいえ、こっちは宿も決めてなかったし、所在のはっきりしない身でしたから当然の事ですお」
相変わらず腰の低いフィレンクトさんに恐縮しながら勧められた椅子に腰を下ろす。
まずはと、フィレンクトさんは礼金の入った袋を僕に手渡す。
(‘_L’)「どうぞ、お確かめください」
(;^ω^)「えっと、相場よりかなり多い気がしますが……」
(‘_L’)「調べた結果、数件の盗賊行為を繰り返していたようですからね」
(‘_L’)「メシューマでも賞金がかけられていましたので」
- 388 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 22:58:44 ID:NMBuM8D.0
メシューマから出る賞金も先払いとして含んでおいたとフィレンクトさんは言う。
こういう場合、片方からしかもらえないのが一般的な気がするのだが、
そこら辺は盗賊団の処遇をどちらの主導で行うかなど、政治的な要素が絡んでいるらしい。
その辺りを詮索しないで貰うための口止め料込みだからと、真面目な顔でフィレンクトさんは言う。
正直な物言いだが、若干脅しも含まれてると見るべきかもしれない。
从 ゚∀从「多い分には文句ねえから貰っとこうぜ」
( ゚д゚)「ハイン、お前は口を挟むな」
(‘_L’)「ええ、是非受け取ってください」
( ^ω^)「わかりました。有り難く受け取っておきますお」
詮索はするなと言われたが、そんな意味有り気な事を言われて仕舞うと否が応にも考えてしまう。
本来ならばメシューマはニューソク王国の1都市であり、
ニューソク王国の警護を司るニューソク騎士団が捕まえた犯罪者についてとやかく言う権利はないはずだ。
自治都市化が著しいとしても、それならそれで他国とも言えるニューソクの管轄に口を出すのはどうなのか。
- 389 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:01:42 ID:NMBuM8D.0
( ^ω^)(それが口出せるって事は、メシューマの権力が……)
等と考えていると、こちらを笑顔で見詰めるフィレンクトさんと目が合ってしまう。
(^_L^)
(;^ω^)
(^_L^)「……深読みはしないで頂けると助かります」
(;^ω^)「はい、わかっておりますお」
(;^ω^)(笑顔こええ……)
僕はその件について一旦考えるのを止め、盗賊団について気になっていた事を駄目元で聞いてみた。
また詮索はしないで欲しいと言われるのかと思ったが、その件についてはこちらの意見も聞きたがっていたようだ。
(‘_L’)「実際、彼らと戦って見てどう思われましたか?」
从 ゚∀从「クソよええ」
ξ゚听)ξ「ハイン、もう少し上品な言葉でね」
- 390 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:03:58 ID:NMBuM8D.0
(‘_L’)「お気になさらず。率直な感想でかまいませんよ」
( ゚д゚)「正直な所、あの程度の腕で盗賊団が勤まるのか疑問だったな」
( ゚д゚)「言葉通り、盗むだけならまだしも、隊商を襲ってとなると遠からず壊滅させられただろう」
ミルナさんの言葉に、フィレンクトさんは納得した様に頷く。
自分達の見解も、ほぼミルナさんと同じだとフィレンクトさんは言う。
(‘_L’)「なかなか口が固く、詳細はわかっておりませんが、背後に何かあるのは間違いないでしょうね」
口が固い事が逆に何かあることの証明だとフィレンクトさんは言う。
下っ端の誰1人ですら吐かないのは、裏に何かあると見るべきだろう。
ツンは簡単に吐かせてたが、あれは集合場所の事だけだったから吐いたのかもしれない。
僕達の方で、盗賊団との戦闘中や追い掛けている時に何か気付いた事はないかとフィレンクトさんが聞いてくる。
( ^ω^)「盗賊団自体からは何も。推測した事ならいくつかは」
別段隠しておくような事もないので、僕はツン達に話した推測をフィレンクトさんにも話す。
その位は既に考えられてる可能性もあるが、僕らがあの場にいた経緯は知らないだろう。
- 391 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:05:59 ID:NMBuM8D.0
(‘_L’)「なるほど。貴方方は急遽そこに向かったわけでもないのですね」
( ^ω^)「一定のペースで進んでましたから、あの日シラヒーゲさん達とすれ違うのは必然だったと思いますお」
フィレンクトさんは顎に手を当て、何かを考えるような仕草をする。
その目が値踏みをするかような感じで僕らの間を彷徨っていた。
ξ゚听)ξ「……ひょっとして、私達が盗賊団とグルって可能性も考えておられますか?」
(;^ω^)「ちょ、それは……」
ないと言おうとした僕だが、否定出来る明確な材料がない事に気付いた。
その場合の目的が何なのかすぐには思い付かないが、少なくとも現状、
こうやって騎士団長と面と向かって話す機会を得ている事は目的の1つと取れなくもない。
(‘_L’)「無論、可能性の1つとは考えてはいましたが……」
(;^ω^)「お……」
从 ゚∀从「考えていて、あんたは1人で俺らと会ってんの? それはちょっと軽率じゃねえか?」
- 392 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:06:56 ID:NMBuM8D.0
フィレンクトさんの言葉に気分を害したのか、ハインさんが挑発気味に尋ねる。
加速度的に悪くなる空気に、僕はいつでもハインさんを止められる様に身構えた。
(‘_L’)「そう思われますか?」
从 ゚∀从「素手の相手に負けるわけないってか?」
( ゚д゚)「……止めておけ、ハイン。フィレンクトさんも、少々悪ふざけが過ぎませんか?」
(‘_L’)「……失礼、冗談が過ぎました」
(‘_L’)「どうも生きの良い若い者を見ると、試したくなってしまうのが悪い癖でして」
ξ゚听)ξ「あまりいいご趣味ではありませんね」
(∪^ω^)「わんお」
(‘_L’)「面目ない。貴方方の身元は保証されております。ブーン殿のお陰でね」
( ^ω^)「……そう言えば最初に名乗りましたおね、ヴィップの魔法道具屋って」
- 393 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:09:23 ID:NMBuM8D.0
若干含みのあるフィレンクトさんの物言いを、気付かぬふりをして流す。
よくよく考えれば僕の身分は証明するでもなく、ソクホウなら知っている人は知っているのだ。
僕がバーン=ホライゾンの孫である事を。
僕が1人でここに来たがった理由の1つはそれである。
正直、王宮方面に来るのはあまり好ましくない展開も有り得るので、避けるべきだったかもしれない。
フィレンクトさんが最初から僕の事を知っていたかどうかわからないが、知っていてもおかしくない身分だ。
(‘_L’)「冒険者のお三方はなかなかご優秀なようですね」
(‘_L’)「どうです、騎士団に入られませんか? その気があられるならば歓迎いたしますが」
从 ゚∀从「興味ねえ」
( ゚д゚)「ハイン」
ミルナさんは明らかに不機嫌なハインさんを窘め、評価は有り難いが、
まだ冒険者としてやることがあるからと丁重にお断りを入れる。
(‘_L’)「そうですか。貴方方ならばすぐにでも師団長を務められるくらいにはなれると思うのですが残念です」
( ゚д゚)「世辞は結構だ。天下のニューソク騎士団なら我々程度の腕前の者はいくらでもいるだろう?」
- 394 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:11:01 ID:NMBuM8D.0
(‘_L’)「お世辞というわけではないのですがね……」
(‘_L’)「最近は世が平和な事もあり、実戦経験の少ない者が多いので、冒険者としての経験は大きいのですよ」
勿論、平和なのは良い事なのですがとフィレンクトさんは言い添える。
有事に備えるには、訓練だけでは十分ではないと危惧されているようだ。
(‘_L’)「だから、いざ実戦となると舞い上がって仕舞ったりする」
(‘_L’)「この間の様に、いきなり斬りかかるような愚行を犯してしまう場合もあったりとね」
あの時はすみませんでしたとまた頭を下げるフィレンクトさんに、僕は気にしてませんからと答える。
想定外の事だったのだろうし、誤解しても仕方がなかった面もあると思う。
( ^ω^)「騎士って、戦う時に必ず名乗りを上げるわけではないんですおね」
(^_L^)「流石に実戦でそんな悠長な事はやりませんよ。一騎打ち等、名を示す必要がある場合は名乗りますが」
それから僕らは世間話程度に少し話をし、フィレンクトさんの部屋を辞する事にした。
(‘_L’)「そうそう、忘れておりました」
( ^ω^)「お?」
- 395 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:12:35 ID:NMBuM8D.0
(‘_L’)「ブーン殿のお仲間の……ジョルジュさんでしたか。あの方が訓練場の方にいらしております」
(;^ω^)「は? いや、何で……」
そういえば馬車から落っことした時、追い付いて来てとは言ったが、追い付くも何も目的地は告げていなかった。
だからジョルジュさんは、恐らく僕らが必ず来るであろうここにお邪魔する事にしたのだろう。
ジョルジュさんにしては冴えていると思う。
ξ゚听)ξ「じゃあ、帰りましょうか」
(;^ω^)「いや、流石に迎えに行ってあげるお?」
つ∪^ω^)「わんおー」
僕は渋るツンを宥め、訓練場の方に向かう。
案内は他の騎士の人がしてくれた。
武器も既に返却済みなのは、信用されているのだと考えていいのだろう。
_
(#゚∀゚)「どぉぉぉりゃッ!」
(;=゚д゚)「ぐっ……」
- 396 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:14:04 ID:NMBuM8D.0
案内されたのは屋外訓練場のようで、そこで見覚えのある顔同士が闘っていた。
丁度決着が付いた所らしく、ジョルジュさんが倒れている騎士の方に手を伸ばす。
_
( ゚∀゚)「足技はまずかったか?」
(;=゚д゚)「いや、実戦に卑怯も何もないラギ。勉強になったラギ」
从 ゚∀从「次、俺な。誰かやろうぜー」
(;^ω^)「ちょ、ハインさん。いつの間に混ざってんですかお」
どういう状況なのかを聞く暇もなく、いつの間にがハインさんが訓練場に降り、戦闘準備を始めている。
当然、訓練場にいた騎士達は何事かと身構えるが、ジョルジュさんが自分の連れだと説明すると、
騎士達は警戒を解き、手合わせに応じてくれる。
_
( ゚∀゚)「おう、やっと来たか」
( ^ω^)「何か既にえらく馴染んでますおね」
_
( ゚∀゚)「まあな。騎士ってもっとお堅いかと思ってたけど、案外気さくでいいやつらだよ」
- 397 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:15:54 ID:NMBuM8D.0
先のような経緯で詰所を訪れたジョルジュさんが、運良く最初に出会ったのが僕に斬りかかって来た騎士、
トラギコさんだったらしく、これ幸いとばかりに約束の手合わせを始めたという。
_
( ゚∀゚)「まあ、俺の全勝だったけど」
(=゚д゚)「悔しいが力及ばなかったラギ。やはり実戦経験の差は大きいと痛感したラギよ」
ジョルジュさんはトラギコさんだけでなく、他の騎士とも手合わせをし、その力を存分に示したらしい。
勝っても驕らず、さらっとした態度のジョルジュさんは騎士達にも尊敬に値すると一目置かれているようだ。
( ゚д゚)「そういう事なら俺も1勝負願いたい所だが……」
(=゚д゚)「あんたも相当やりそうラギね。こちらとしても願ったり叶ったりラギよ」
( ゚д゚)σ「その前にあれを止めるべきかな」
(=゚д゚)「ラギ?」
从 ゚∀从「おら、次来い、次。あ? もう十分? 俺がまだ十分じゃねえんだよ。いいから来い」
(;=゚д゚)「お願いするラギ……」
- 398 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:18:38 ID:NMBuM8D.0
ξ゚听)ξ「あれは私が相手するわ。向こう半分場所借りますね」
瞬く間に数人の騎士を打ち倒していたハインさんの元にツンが向かう。
久しぶりの手合わせに、2人とも嬉々として打ち合い始めた。
(;=゚д゚)「どっちもかなり速いラギね。お前達って、ひょっとして有名なパーティーラギか?」
_
( ゚∀゚)「いや、しがない一冒険者だぜ。ツンに至っては冒険者ですらないけど」
(;=゚д゚)「そうラギか。世界は広いラギね……。俺ももっと訓練しないとラギよ……」
_
( ゚∀゚)「んじゃ、もう一勝負と行くか?」
( ^ω^)「……何だろうね、この流れ。僕、またやることなくて空気だおね」
(∪^ω^)「わんおー」
何故か皆で騎士団と共に訓練する流れになっていたが、魔法使いの僕は加わる事も出来ず、
盛り上がっているのに水を差すのも無粋なので、わんわんおと共におとなしく座って見学する事にした。
( ^ω^)「加わってもいいけど、僕の戦い方じゃあんま向こうの訓練にはならなそうだしね」
- 399 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:20:37 ID:ayPggR52O
- 来てたか
支援
- 400 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:21:28 ID:NMBuM8D.0
休憩中の騎士の人に話を聞いたが、彼らは各師団の若い騎士達らしく、
まだまだ未熟な自分達が弱いだけで騎士全体が弱いのではないと少し悔しそうであった。
それはあながち嘘でもないのだろう。
多分、もっと実戦経験を積んだ騎士ならジョルジュさん達もそう簡単には勝てないはずだ。
とはいえ、訓練の相手をしてもらえるのは有り難いし、ジョルジュさん達の強さには敬意を払うとも言っていた。
( ^ω^)「ジョルジュさんじゃないけど、僕も騎士ってもう少し偉そうに構えてる人ばっかだと思ってたお」
(∪^ω^)「わんお」
ジョルジュさん達のお陰で、何故か僕までかなりの敬意を払われている様で、
いつの間にか僕の前にはお茶とお菓子が出されていた。
( ^ω^)「おー、これはパイかおね。ヴィップじゃあんまり見ない香りで、つーか、デケえな、これ」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「オレンジパイみたいだから、わんおには合わないと思うお。美味いけど、ちょっと甘酸っぱいお」
(∪´ω`)「わんおー」
- 401 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:23:15 ID:NMBuM8D.0
( ^ω^)「骨っ好あげるから、これで我慢するお」
(∪*^ω^)§「わふわふお!」
( ^ω^)「お、騎士さんの手作りなんですかお? 騎士さんでも料理するんですおね」
( ^ω^)「ああ、配給の食事じゃ足りないんですおね。わかりますお」
僕は騎士さん達と世間話をし、退屈する事無く訓練が終わるまで時間を潰す事が出来た。
騎士とは到底縁がないような料理の話で盛り上がれたのは意外な事であった。
( ^ω^)「近い内に薬草パン売りに出す予定ですんで、良かったら買いに来てくださいお」
ξ゚听)ξ「それじゃあ、お邪魔しました。場所貸していただいてありがとうございます」
(*=゚д゚)「い、いえ、見事なお手前でしたラギ。今度是非、個人指導お願いしますラギ」
从 ゚∀从「おう、いいぜ。血反吐を吐くまで付き合ってやるよ」
(;=゚д゚)「いや、あんたじゃなくて……」
- 402 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:26:19 ID:NMBuM8D.0
- _
( ゚∀゚)「またな。1度酒でも飲もうぜ」
( ゚д゚)「互いに精進しよう」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕達は騎士団の詰所を後にし、宿へ戻る。
予定外の事であったが、皆楽しそうにしていたので良かったと思う。
_
( ゚∀゚)「あー、疲れた。腹も減ったが、まずは一っ風呂浴びてえな」
从 ゚∀从「暴れ足りねえ。やっぱあのフィレンクトってやつを引っ張り出すべきだったか」
ξ゚听)ξ「止めときなさいよ、あれ、一応お偉いさんなだから」
( ゚д゚)「やつは少々腹の読めない相手だったな」
从 ゚∀从「俺は気に入らねえな。何考えてやがんのやら」
( ^ω^)「人望はあるみたいですお。若い騎士達からの評判は良かったですお」
- 403 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:28:30 ID:NMBuM8D.0
あの時、盗賊団を殲滅しに現れたフィレンクトさんは、特定の師団を率いてたわけではなく、
各師団の若い騎士を集めて野外演習をしていたらしい。
単に飾りに収まらず、現場に出て共に汗を流す姿は若い騎士達の良き手本となっているようだ。
ξ゚听)ξ「現場からの叩き上げで上り詰めたってとこかしらね」
( ^ω^)「腰の低い丁寧な人だけど、貴族っぽくはなかったおね」
お飾りの団長なら、王族や貴族が付く事もあるのかもしれないが、フィレンクトさんはそんな雰囲気ではなかった。
騎士団はこの国の武を司る集団だ。
やはり実力が伴わないと務まらないだろう。
僕達はソクホウの町並みに目を向けながら宿屋まで歩いて帰った。
('(゚∀゚∩「おかえりなさいだよ。この人が5人目だね、把握したよ」
僕はナオルヨさんに先ほどはいなかったジョルジュさんを紹介し、部屋に戻る。
その後しばらく休憩してから、外に食事に出た。
( ^ω^)つU「長旅お疲れ様でしたお! 乾杯!」
_
( ゚∀゚)U( ゚д゚)U从 ゚∀从Uξ゚听)ξU「乾杯! お疲れー」
- 404 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:31:10 ID:NMBuM8D.0
僕達は食事を取りながら明日以降の事について話し合う。
ひとまず確定なのは武器職人の所に向かう事だが、それ以降は全く予定がない。
(* ゚д゚)「武器職人に会ったら、すぐにヴィップに戻るつもりなのか?」
(*^ω^)「いえ、1日ぐらいは観光とかパン売りとかやってみたいですお」
(∪^ω^)「わんお!」
ξ*゚听)ξ「ミルナさん達はどうされます?」
(* ゚д゚)「武器職人と会っても進展がない可能性もあるからな。しばらくは滞在するつもりだ」
_
( ゚∀゚)「丁度良い訓練相手も出来たしな。退屈はしなそうだ」
从*゚∀从「留まるんなら、ギルドにも顔出さねえとな」
(* ゚д゚)「そうだな。滞在期間を考えると、クエストに出て金も稼がないと」
_
( ゚∀゚)「太っ腹な騎士団長のお陰で、しばらくは大丈夫じゃね?」
- 405 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:32:51 ID:NMBuM8D.0
僕達は食事を取りながら明日以降の事について話し合う。
ひとまず確定なのは武器職人の所に向かう事だが、それ以降は全く予定がない。
(* ゚д゚)「武器職人に会ったら、すぐにヴィップに戻るつもりなのか?」
(*^ω^)「いえ、1日ぐらいは観光とかパン売りとかやってみたいですお」
(∪^ω^)「わんお!」
ξ*゚听)ξ「ミルナさん達はどうされます?」
(* ゚д゚)「武器職人と会っても進展がない可能性もあるからな。しばらくは滞在するつもりだ」
_
( ゚∀゚)「丁度良い訓練相手も出来たしな。退屈はしなそうだ」
从*゚∀从「留まるんなら、ギルドにも顔出さねえとな」
(* ゚д゚)「そうだな。滞在期間を考えると、クエストに出て金も稼がないと」
_
( ゚∀゚)「太っ腹な騎士団長のお陰で、しばらくは大丈夫じゃね?」
- 406 名前:>>405はミス:2012/03/23(金) 23:33:42 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)「いや、あの分は武器の強化に回したいからな。生活費は稼がないといかん」
_
( ゚∀゚)「えー、お小遣いは無し? 折角おっぱ──」
_ ヘブッ!?
(゚∀゚(#UU三
ξ*゚听)ξつ从*゚∀从つ「悪い、手が滑った」
(*^ω^)「その、サースガって武器職人の腕が良かったら、そこで強化依頼するんですかお?」
(*^ω^)「もれなく変なギミック付きそうですけど」
(* ゚д゚)「そうだなあ……。あまり変なのは付けて貰っても困るからな」
(* ゚д゚)「手入れが大変だったり、強度が落ちてたりして実戦に耐えられないのは問題外だ」
(*^ω^)「トソン君の武器見た限りでは、滅茶苦茶振り回してましたし強度の方は問題なさそうでしたお」
ξ*゚听)ξ「手入れもあの大雑把なトソンが出来るくらいだから、難しくなさそうですね」
从*゚∀从「俺は斬れ味と耐久力さえ上げてもらえれば余計なもんはいらねえ」
- 407 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:35:32 ID:NMBuM8D.0
- _
( ゚∀゚)「ここで掘り出し物を探すって手もあるしな」
(* ゚д゚)「うむ、明日は武器職人に会った後に商業区域を回ってみるか」
(*^ω^)「騎士団の施設周辺の方が武器職人はいるかもしれないですけどね」
_
( ゚∀゚)「あ、騎士団長に紹介してもらえばよかったんじゃね?」
(* ゚д゚)「そこまで親しくもないのに図々し過ぎるだろ」
从*゚∀从「騎士団の下っ端にでも聞いとけば良かったな」
ξ*゚听)ξ「あら? そういえばブーン、あんた結構騎士の人と話盛り上がってたじゃない?」
(*^ω^)「盛り上がってたけど、主に料理の話だお」
ξ;゚听)ξ「何でわざわざあんなとこで料理の話なのよ……」
(*^ω^)「お茶請けに出されたパイが独特で美味しかったんだお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 408 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:37:03 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)「わんおちゃんには、この程よく焼けたお肉をあげよう」
つ∪*^ω^)「わんわんお!」
(*^ω^)「あ、そうだ、ツン。今日はわんお、ツンの方で預かってお」
ξ*゚听)ξ「え? どうして?」
(*^ω^)「今日はこの後、男同士で部屋で飲み直すからわんおが寝れなくてかわいそうだと思うお」
_
( ゚∀゚)「おろ? 初耳なんだけど? いや、嬉しい誘いだから断らねえけどさ」
(* ゚д゚)「わんおちゃんはいてもいいんじゃないか?」
ξ*゚听)ξ「ハインがいいなら私はかまわないけど」
从*゚∀从「いいぜ、俺は。わんすけをもっふもふにしてやろう」
(∪;^ω^)「わんおー」
(* ゚д゚)「わんおちゃんはいてもいいんじゃないか?」
- 409 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:38:07 ID:NMBuM8D.0
(*^ω^)「じゃあ、頼むお」
ξ*゚听)ξ「うん」
_
( ゚∀゚)「お前も成長したな、ブーンよ……」
(*^ω^)「いきなり何ですかお?」
_
( ゚∀゚)「男同士でしか話せないような話をしたいんだな。わかってるさ、ドンと来いだ」
ξ*゚−゚)ξ「……」
(*^ω^)「……まあ、そんなとこですお」
ξ*゚д゚)ξ「……」
(* ゚д゚)「わんおちゃんはいてもいいんじゃないか?」
僕達は食事を終え、部屋に戻ると宣言通り飲み直すことにした。
帰り際に酒とつまみは買っておいたから、準備は万端だ。
飲み初めてしばらくは取留めのない話に終始していたが、ミルナさんは僕の突発的な行動を気にしているのか、
話を切り出すタイミングを窺っている様にも見えた。
- 410 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:39:05 ID:JbYLK5IM0
- ミルナwwww
- 411 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:39:50 ID:NMBuM8D.0
( ^ω^)「そりゃ、気になりますおね、急にこんな事して」
( ゚д゚)「まあな。ブーンの事だ。何かしら考えがあっての事だとは思うが、理由は聞いてもいいのか?」
_
( ゚∀゚)「あれ? 猥談したかっただけじゃねえの?」
( ^ω^)「簡単に言えば、理由はツンですお」
( ゚д゚)「ツン? どういう事だ?」
( ^ω^)「今日はすっごく落ち込んでると思うんですおね、ショボンの事で」
一見、何でもないように振舞っていたツンだが、内心はかなり落ち込んでいると思う。
昔から、ツンは寂しがりな所があったのだ。
( ^ω^)「口ではああ言ってましたけど、実際はかなり堪えてると思うんですおね」
僕でさえ、ショボンの事を考えると漠然とした寂しさに襲われるくらいだ。
必然的に1人になり、色々考えてしまう事の多い寝る時なんかは耐え切れないかもしれない。
あの時ショボンを笑って見送ったのは虚勢ではないし、ショボンがそうして欲しいだろうと考えたのも本当の事だ。
けれども、表に出さずとも寂しいものは寂しいものである。
- 412 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:41:02 ID:NMBuM8D.0
( ゚д゚)「それでわんおちゃんをツンに渡したのか」
( ^ω^)「そういう事ですお。少しでも気が紛れればと思ったんですお」
僕の説明に、ミルナさんは納得してくれたようだ。
散々わんわんおをこっちの部屋に置く事を主張されてたのに、無視して申し訳なかったと思う。
( ゚д゚)「そういう事なら仕方ないだろう。しかし、お前は大丈夫なのか?」
( ^ω^)「お? 僕ですかお?」
( ^ω^)「僕は案外ドライなんで、大丈夫ですお」
_
( ゚∀゚)「寂しくて眠れないなら俺を抱き枕にして寝てもいいぞ?」
( ^ω^)「慎んでお断りさせていただきますお」
本当は少し寂しいし、色々と考えて眠れなくなりそうな気はしてるが、男としては強がっておくべきだろう。
何も考えずに寝れるように今夜は飲み過ぎようと思ってたりもする。
_
( ゚∀゚)「けどさあ、俺にはツンが落ち込んでたようには全然見えなかったんだけどな」
- 413 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:42:14 ID:NMBuM8D.0
- _
( ゚∀゚)「からかったらいつも通りの反応だったじゃん?」
( ^ω^)「あれ、いつも通りなら肋骨何本か持ってかれてますお」
_
(;゚∀゚)「マジで? 不用意にからかうの止めとこうかな」
( ゚д゚)「まあ、とにかく、良い機会だからもう少し飲もうか」
( ^ω^)「お付き合いしますお」
_
( ゚∀゚)「よし、朝まで飲むぞ」
(;^ω^)「流石にそれは……」
( ゚д゚)「明日は武器職人に会わねばならんしな。酒が残らん程度に切り上げよう」
( ^ω^)「そんな感じでお願いしますお」
_
( ゚∀゚)「しょっぺえなあ。仕方ねえ、それで我慢してやるか」
( ゚д゚)「お前は酒だけは強いからな」
- 414 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:43:59 ID:NMBuM8D.0
- _
( ゚∀゚)「だけとは何だ、だけとは。腕もあっちの方も俺は強いぜ?」
( ゚д゚)「子供に悪い影響を与えるような品のない発言は止せ」
_
( ゚∀゚)「何だよ、ブーンも俺らの酒に付き合えるくらいでガキじゃないんだぜ?」
_
( ゚∀゚)「で、ブーンはツンとどうなの? どこまで行ってんの?」
( ^ω^)「お? ツンも一緒にソクホウに来てますお?」
_
( ゚∀゚)「そういうテンプレートなボケはいいから」
完全に酔っ払い親父モードで絡んでくるジョルジュさん。
一見すると酔っている様に見えない顔だが、飲むペースは早いし、僕らの中で一番飲んでいるはずだ。
_
( ゚∀゚)「そういうんじゃなくてさ、あるじゃん、ほら、AとかBとかCとかDとかEとか」
( ゚д゚)「どこまで行くつもりだ。お前は子供か」
いつの間にか矛先が僕から逸れ、ジョルジュさんとミルナさんは言い合いを始める。
最終的にジョッキの角でミルナさんがジョルジュさんを沈めて決着が付いたが、
僕はそれを仲が良いなと微笑ましい気持ちで眺めていた。
- 415 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:45:15 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)「ブーンも結構酔ってる様だな」
(*^ω^)「みたいですおね。かなり飲んだ気がしますお」
今日は多分、人生で一番の量を飲んだ気がする。
意外と飲める事がわかったが、そろそろ限界なのだろう。
思考が上手く繋がらない。
(* ゚д゚)「しかし、ジョルジュではないがブーンはツンと恋仲ではないのか?」
(*^ω^)「違いますお」
(* ゚д゚)「そうか? 見てると微笑ましいぐらい仲が良いと思うのだが」
(*^ω^)「ツンは家族みたいなものですお」
(*^ω^)「小さい頃からいつも一緒にいるし、言わなくても何でも理解してくれるし、頼りになりますお」
(* ゚д゚)「うーむ……そうか……お前はやはりまだ子供なのだな」
(*^ω^)「お?」
- 416 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:46:49 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)「いや、何でもない。家族なら大切にしないとな。ずっと側にいてやれよ」
(*^ω^)「お? 勿論ですお」
(* ゚д゚)「しかし、幼馴染か。一応、俺とジョルジュも幼馴染なのだが、お前達とは全然違うな」
(*^ω^)「そうだったんですかお?」
(* ゚д゚)「ああ、同じ村の出身だ。と言っても、それほど仲が良かったわけじゃなかったんだがな」
村にいた頃は競い合うを通り越して争う仲だったとミルナさんは言う。
(* ゚д゚)「当時は知らなかったんだが、ジョルジュは幼い頃から冒険者になりたかったらしくてな」
(* ゚д゚)「俺はその頃、そんな事は全く考えてなかったが、腕っ節だけは強くて」
(* ゚д゚)「それを知ったジョルジュが、強くなる為の特訓と称して俺にケンカを挑んで来たんだ」
(*^ω^)「何となく想像出来る姿ですおね」
(* ゚д゚)「しかし、ジョルジュは今でこそガタイはいいが、幼い頃はかなり身体が小さくてな」
(* ゚д゚)「毎度毎度、俺が完膚無きまでに叩き伏せてた」
- 417 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:48:06 ID:NMBuM8D.0
それでもジョルジュさんは懲りずに何度も何度も、事あるごとに挑んで来たらしい。
(* ゚д゚)「正直、修行と言われても何がしたいのかよくわからなかったし、煩わしくて仕方がなかった」
それでもミルナさんの真面目かつ強気な性格上、断る事もわざと負ける事も良しとしなかったのだろう。
そんな関係を何年も続け、ジョルジュさんにも成長期が訪れてミルナさんより背も大きくなり、
修行の成果もあったのか、ようやくジョルジュさんが勝つ日が来たという。
(* ゚д゚)「流石にその頃にもなると、日常茶飯事だし慣れていたので煩わしさはなくなっていてな」
(* ゚д゚)「むしろ、心のどこかで日増しに強くなるジョルジュと闘うのを楽しみにしていた」
(* ゚д゚)「いつか負ける日が来たら、今度は俺が挑んでやろうかと思っていたくらいだ」
しかしジョルジュさんはミルナさんに勝ったその日、これまで修行に付き合ってくれた礼を述べ、
自分が冒険者になりたいと思っている事を教えてくれたという。
(* ゚д゚)「その時は、だからどうしたと反射的に思ったよ」
(* ゚д゚)「自分の一方的な理由を押し付けて、修行と称して俺にケンカを吹っかけてたんだからな」
- 418 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:49:40 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)「しかしその一方、幼い頃から夢を持ち、ひたすら打ち込んで来たジョルジュが羨ましくもあった」
(* ゚д゚)「そう思った時、俺はあいつに尋ねていた」
(* ゚д゚)「俺も冒険者になれるだろうか、ってな」
それから2人は打ち解け、共に冒険者になる事を目指して切磋琢磨したという。
その後もしょっちゅうケンカしたが、共に村を出て、何とかここまでやって来れたとミルナさんは話を結ぶ。
(*^ω^)「人に歴史ありですおね」
(* ゚д゚)「そんな大層なものではないがな。まあ、時に想い出を語るのも悪くないものだな」
ミルナさんは少し照れくさそうに木製のジョッキに残っていた酒を一気に飲み干す。
僕は酒瓶を手に、ミルナさんのジョッキにおかわりを注ぐ。
(*^ω^)「そういえば、ハインさんは同じ村の人じゃないんですかお?」
(* ゚д゚)「あいつは……違う、数年前からちょっとした縁で行動を共にしている」
(*^ω^)「へー、ハインさんはどの辺の出身なんですかおね」
- 419 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:51:13 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)「南の方だな……」
(*^ω^)「おー、そうだったんですかお」
(* ゚д゚)「……ブーン、ハインにはあまり昔の事は聞いてやらんでくれ」
(*^ω^)「お?」
(* ゚д゚)「あいつは色々あったらしくてな。あまり昔の事は語りたがらないんだ」
(*^ω^)「お……」
そういえば、ソクホウに着いた時、ハインさんはソクホウに来たのは初めてらしいが、
自分がどの辺りの出身かとかの話は一切していなかった気がする。
過去を語りたがらない冒険者はそう珍しいわけでもないから、軽く流すべき話だったのだろうが、
ミルナさんの真剣な表情が少し気にかかった。
_
(*>∀<)つU「うおらぁッ、ミルナッ! もう1勝負行くぞ!」
(;^ω^)「お!?」
突如ジョルジュさんが跳ね起き、ミルナさんの方に勢いよくジョッキを向ける。
どうやら1勝負というのは飲み競べの事らしい。
- 420 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:53:34 ID:NMBuM8D.0
(* ゚д゚)つU「ふん、良かろう。ブーン、合図を頼む」
_
(*゚∀゚)つU「負けた方が今から女子部屋潜入な」
(;^ω^)「それは竜の巣穴に飛び込む様なものですお」
(* ゚д゚)つU「いいだろう。負けたらお前、女子部屋からわんおちゃんをそっと回収して来い」
(;^ω^)「予想外に乗り気!? いや、絶対バレるから止めときましょうお」
それから僕達は買い込んだ酒を飲み尽くしてしまうまで酒盛りを続けた。
朝まではかからなかったが、それでも結構な夜更かしをしてしまった。
酒の力もあってか思ったより話が盛り上がり、色々と馬鹿な話で楽しい時間を過ごせた。
本当はもう少し真面目な話もしようかと思ってたのだが、こういうのもいいものだと思う。
_
(*-∀-)(*-ω-)(* -д-) zzz
お陰で僕は、寂しく思う暇もなく安らかに眠る事が出来た。
第十九話 栄えし美しきニューソクの都 終
- 421 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:54:33 ID:NeHDLqYY0
- 乙
今回も面白かったです
- 422 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:54:54 ID:5MVykXjso
- 乙!
- 423 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:55:10 ID:NMBuM8D.0
十九話は以上です
次話までは書けてるので、日曜ぐらいには投下しようかと
今回の話タイトルは某RPGの王城の音楽風
支援とか感謝です
- 424 名前:名も無きAAのようです:2012/03/23(金) 23:55:59 ID:ayPggR52O
- 乙お
いい仲間だ
- 425 名前:名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 08:29:34 ID:Aqj0E.xQO
- 昨晩来てたのかー乙パンツ
- 426 名前:名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 09:12:12 ID:FfR1Oue6O
- おパンつ
ミルナかわいいよミルナ
- 427 名前:名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 12:21:08 ID:UZ61w1pwO
- >( ^ω^)「ミルナさん、5人と1匹ですお。ジョルジュさん忘れてますお」
くそわろた 乙乙
- 428 名前:名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 12:25:25 ID:JdAnRXloC
- オパンツァー(乙)
ミルナのわんお好きは半端じゃないな
- 429 名前:名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 22:45:30 ID:dDJNDoB20
- ____ ____ ____
(\ ∞ ノ (\ ∞ ノ (\ ∞ ノ Г\
彡ヽ)_ノ 彡ヽ)_ノ 彡ヽ)_ノ |8 )
彡Lノ
ノ~ヽ
ノ~ヽ(_∞_)
ノ~ヽ(_∞_)彡
ノ~ヽ(_∞_)彡
ノ~ヽ(_∞_)彡
彡(_∞_)彡 ミ/~|
____ ミ ( 8|
へ∧_∧彡 (\ ∞ ノ____ ミ___ ミ___Г\_|
し( ・∀・) 彡 彡\ヽ /(\ ∞ ノ (\ ∞ ノ (\ ∞ ノ8 )
/ _⊂ノ彡 ヽ)_ノ ヽ)_ノ ヽ)_ノ ヽ)_ノ Lノ
. / / し´
(_)
- 430 名前:名も無きAAのようです:2012/03/24(土) 23:04:35 ID:am0yB0JQ0
- >>429
素晴らしい
- 431 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 00:07:16 ID:HebgvCNEO
- >>429
すげぇ
- 432 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 09:52:00 ID:guqraM4QO
- >>429
鬼才あらわる
- 433 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:13:34 ID:wqpTzt9k0
〜 王都ソクホウ ナオルヨ亭前 〜
(|ii´ω`)「うおっぷ……ぐえおあお……」
从 ゚∀从「完全に二日酔いだな」
ξ゚听)ξ「馬鹿ねえ……」
(; ゚д゚)「面目ない。少し飲み過ぎたな……」
_
( ゚∀゚)「だらしねえなあ」
(∪^ω^)「わんおー」
第二十話 奇人の憂いは機を招く
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 434 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:14:38 ID:wqpTzt9k0
(|ii´ω`)「おかしいお……昨夜はあんなに気分が良かったのに」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
从 ゚∀从「酒ってのはそういうもんだ。これに懲りたら自分の限界はちゃんと覚えとけよ」
彼女の名前はハインさん。
僕の顔馴染みの冒険者で、男勝りで大雑把だが、意外とやさしいとこもある人だ。
王都ソクホウ滞在2日目、僕は昨夜の酒が祟ってひどい二日酔いに悩まされていた。
僕だけではなく、共に飲んでいたミルナさんも二日酔い気味だが、
一番飲んでいたはずのジョルジュさんがピンピンしているのは納得がいかない。
_
( ゚∀゚)「言っただろ、俺は酒は強いって?」
(|ii´ω`)「聞きましたけどね、何だか理不尽に思いますお」
僕は恨みがましい目でジョルジュさんを見る。
ジョルジュさんはさも愉快そうに笑っていた。
- 435 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:19:17 ID:wqpTzt9k0
ξ゚听)ξ「で、どうするの? 今日は体調不良って事で武器職人のとこに行くのは延期する?」
(|ii´ω`)「いや、行くお」
僕の都合で延期するのも悪い。
武器職人宅への訪問は、どちらかといえば僕がメインというわけでもないので、最悪僕抜きでもかまわないのだ。
それに二日酔いは時間が経てば少しは軽くなるものだと認識している。
从 ゚∀从「ま、案外足取りはしっかりしてるしな。少しすれば気分もマシになるだろ」
ξ゚听)ξ「いつもみたく、薬草で都合よく二日酔いの薬作ってたりしないの?」
(|ii´ω`)「二日酔いになる事なんて想定外だったし、そんなもの考えた事も無かったお」
(∪^ω^)「わんわんお」
僕はミルナさんから二日酔いの薬を貰い、武器職人の家に向けて歩き出した。
武器職人の家は町の南西の外れにあるらしく、ここから少し歩く必要がある。
本来なら馬車で行くつもりだったが、今馬車に揺らされたら僕が色々とヤバい。
徒歩も大概辛いが、その内気分がマシになる事を信じて歩こうと思う。
- 436 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:24:33 ID:wqpTzt9k0
ξ゚听)ξ「場所はわかってるの?」
(|ii´ω`)「ナオルヨさんに教えてもらったお」
それなりに有名なのか、宿屋の店主であるナオルヨさんは武器職人サースガの事を知っていた。
詳しい場所は知らなくとも、近くまで行けば建物の胡散臭さですぐにわかるそうだ。
从 ゚∀从「建物まで胡散臭いのかよ」
(|ii´ω`)「だいぶ特徴的らしいですお」
( ゚д゚)「アポ無しで押し掛けても大丈夫なのか?」
(|ii´ω`)「ほとんど家から出ない人らしいから、大丈夫みたいですお」
グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」
(|ii´ω`)「ごめんお、今日は走るのは勘弁だおっつーか無理だお」
_
( ゚∀゚)「うし、じゃあ俺と走るか!」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
从;゚∀从「何かお前ら迷子になりそうだから止めろ」
- 437 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:26:46 ID:wqpTzt9k0
そんなこんなで僕らは町の南西の外れ、1軒の建物の前に辿り着いた
____|_ _ /i
了┼┼┼┼ | /二二仁二二/
i .┼┼┼┼ | /二二仁二二/ , -‐、
|..┼┼┼┼.」 ./二二仁二二/ / ,,, \ /`、 ※図はイメージです
 ̄ ̄壷二´、 /二二仁二二/ { ;;;;; ヽ {ヾ゚}
i || \ ./二二仁二二/ .! ;;;; ,' ゝ´
.|| .ヽ ./二二仁二二/ ヽ ;;;;; ノ
.|ト ===== X __侭 ______\_ ∠_ _
.|| / \!┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼ i
.|| 〆 __ ! ̄ ̄ ̄ ! ̄\  ̄ ̄ ̄√8888 ̄´
.|| / / AI !:::::::::.\ /
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V |X| ! ./:::::.i
8888===ル、 |]| .!::::::::::::::! ヘー-- 、 ≡勹≡≡<l
ii ` ̄ | !:::::::::::::.!:::::::ヽー、 \ A £
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- 438 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:28:28 ID:wqpTzt9k0
从 ゚∀从「見るからに胡散臭い建物だな」
ξ゚听)ξ「周りからの浮きっぷりが半端ないわね」
(|ii^ω^)「十中八九これっぽいおね」
(∪^ω^)「わんおー」
( ゚д゚)「少しは体調マシになったか?」
(|ii^ω^)「何とか。死にそうな感じは無くなりましたお」
_
( ゚∀゚)「じゃあ、入ってみるか」
(∪^ω^)「わんわんお!」
この怪しげな建物に入るのは若干の抵抗はあるものの、ここまで来て帰るのもなんだし、腹を括って門扉をくぐった。
ドアに付いていたボタンを押すと、来客を告げる音が邸内に鳴っているのが漏れ聞こえる。
試しにドアを引いてみると、鍵は掛かってない様だったのでそのままドアを開いて家人が出て来るのを待つ。
- 439 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:30:57 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「ん? どちら様かな? 悪いが押し売りなら間に合ってるよ」
つ▽
. _, _, _, _
( ^ω^)ξ゚听)ξ从 ゚∀从(∪^ω^)( ゚д゚ )( ゚∀゚)
奥から出て来たのはどこかで見覚えのある姿をした長身痩躯の男であった。
年の頃はジョルジュさん達よりも少し上ぐらいだろうか。
その顔に見覚えはないが、バスローブを羽織り、ワイングラスを持った姿にはデジャビュを覚える。
( ´_ゝ`)「ん? どうした? ああ、俺のあまりにダンディな姿にk──」
ξ#゚听)ξ「セイッ!」
;・。( ゚_ゝ゚) ウワラバッ!?
ξ#゚听)ξ三⊃#) )つ
その後の展開も予想出来たのだが、僕の身体はツンを止めようとはせず、
あの時と同じく宙を舞うワイングラスを拾うに止まった。
( ^ω^)つ▽「セーフ!」
(∪^ω^)「わんお!」
- 440 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:34:44 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「ん? どちら様かな? 悪いが押し売りなら間に合ってるよ」
つ▽
. _, _, _, _
( ^ω^)ξ゚听)ξ从 ゚∀从(∪^ω^)( ゚д゚ )( ゚∀゚)
奥から出て来たのはどこかで見覚えのある姿をした長身痩躯の男であった。
年の頃はジョルジュさん達よりも少し上ぐらいだろうか。
その顔に見覚えはないが、バスローブを羽織り、ワイングラスを持った姿にはデジャビュを覚える。
( ´_ゝ`)「ん? どうした? ああ、俺のあまりにダンディな姿にk──」
ξ#゚听)ξ「セイッ!」
;・。( ゚_ゝ゚) ウワラバッ!?
ξ#゚听)ξ三⊃#) )つ
その後の展開も予想出来たのだが、僕の身体はツンを止めようとはせず、
あの時と同じく宙を舞うワイングラスを拾うに止まった。
( ^ω^)つ▽「セーフ!」
(∪^ω^)「わんお!」
- 441 名前:>>440 はミス:2012/03/25(日) 22:35:48 ID:wqpTzt9k0
;;(;゚_ゝ゚);;「え……ちょ……何で俺、いきなり殴られたの……?」
ξ゚听)ξ「キモかったんでつい……」
从 ゚∀从「それならしょうがない」
( ゚д゚)「うむ、しょうがないな」
(∪^ω^)「わんおー」
;;(;゚_ゝ゚);;「え……いや……何で……つーか誰?」
僕は尚も悶絶する男に訪問の目的を告げ、上がってよいかを尋ねる。
ぶっちゃけ、門前払いされても仕方がない様な気がする状況だが、
男はそれならばと僕らをすんなり部屋に通してくれた。
( ´_ゝ`)「えっと……自己紹介はすべきかな?」
白衣に着替えて茶を乗せたお盆を手に男は戻って来た。
状況から察するに彼が件の武器職人の様だが、一応自己紹介をお願いする。
- 442 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:37:21 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「アニジャ=サースガ、既にご存知のようだが、ここで武器職人をやっている」
( ^ω^)「ヴィップの町で魔法道具屋をやってる、ブーン=ナイトウですお」
僕らはそれぞれ自己紹介をし、まずはトソン君の紹介状を渡した。
ここまで上げてもらったのなら紹介状はいらないかもしれないが、見せた方が依頼する場合はしやすいだろうと思う。
( ´_ゝ`)「うん? 君達はトソンちゃんの知り合いなのか」
アニジャさんはトソン君の名前を聞くと少し驚いた素振りを見せ、紹介状を開く。
(*´_ゝ`)「フフ……、トソンちゃんは相変わらずのツンデレさんだなあ」
紹介状を読むアニジャさんが何事かを呟いた気がしたが、聞かなかったことにした。
トソン君から言い含められていた事もあったので、書いてある内容は何となく推察出来る。
( ´_ゝ`)「それで、具体的な用件は何だ?」
( ^ω^)「武器を作って欲しい、ってのが最終目的なんですけど、その前にどんな風なのか見てみたいですお」
僕は、ジョルジュさん達が武器の強化をしてくれる武器職人を探している事を説明した。
- 443 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:39:53 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「まあ、武器職人である俺の所に来るわけだから、当然目的はそこだよな」
( ´_ゝ`)「しかし君達は俺がどんな武器を作るのか知っているのか?」
( ^ω^)「知ってますお。僕とツンは実際にトソン君の武器を見てますし」
( ´_ゝ`)「そうか。とはいえ、見せるのはともかく、作るのはこちらにも条件がある」
( ^ω^)「お? 条件ですかお」
( ´_ゝ`)「俺は気に入った人間にしか作らない主義だ」
もう1つ付け加えれば、強いやつにしか作りたくないとアニジャさんは続ける。
从 ゚∀从「ん? じゃあ、今からお前をボコればいいのか?」
ξ;゚听)ξ「何でそうなるのよ。少し黙ってなさい」
(∪^ω^)「わんおー」
__
ソファー|ゝ`)「フフフ、元気の良いお嬢さんだ」
__
ソファー|´_ゝ`)「しかし、このアニジャ=サースガをただの武器職人と思ってもらっては困る」
(;^ω^)「いや、ソファーに隠れながら言われても説得力ないですお」
- 444 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:42:31 ID:wqpTzt9k0
ハインさんに怯えるアニジャさんを引っ張り出し、話を続ける。
武器職人というぐらいだからそれなりに腕力や体力はあるだろうが、戦えるかどうかは別問題だ。
( ´_ゝ`)「そういえば、トソンちゃんとはどうして知りあったんだ?」
( ^ω^)「それは……」
トソン君の事を正直に説明すると、クーの事まで話さなければならなくなってしまう。
ソクホウでクーの事がどう発表されているか調べたわけではないが、
ナオルヨさんと話した感じではクーの失踪は隠されてる可能性が高いと思う。
そうなると無闇にクーの事は話せないので、僕は話をぼかして説明する事にした。
そもそも、まだジョルジュさん達にもクーの事はちゃんと説明してないので、この場ではそうするしかないのだが。
( ^ω^)「ちょっとした誤解が重なってしまって、トソン君と勝負する事になっちゃったんですお」
( ´_ゝ`)「あー、トソンちゃん少しそそっかしい所あるからなあ」
( ^ω^)「それで何とか僕が勝って、誤解を解くのに成功して仲良くなりましたお」
( ´_ゝ`)「ほう、君はあのトソンちゃんに勝ったのか」
( ^ω^)「かなりギリギリでしたけど何とか」
- 445 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:44:15 ID:wqpTzt9k0
- _
( ゚∀゚)「ブーンの魔法使いとしての実力はなかなかのもんだぜ」
( ´_ゝ`)「そうか。となると強さに関しては問題……ん? 君は魔法使いなのか?」
( ^ω^)「そうですお。魔法道具屋兼、魔法使いですお」
現在の僕の服装は普通の服装なので、見た目から僕が魔法使いとわからなくても仕方がない。
魔法道具屋と名乗った時点で魔法が使えるのは確定なのだが、そういう発想に至らなかったのだろうか。
( ´_ゝ`)「驚いたな。魔法使いがここを訪ねてくるとは」
( ゚д゚)「どういう事だ?」
( ´_ゝ`)「君達は俺が何と呼ばれているのか知っているかい?」
从 ゚∀从「胡散kξ゚听)ξ「からくり・サースガでしたっけ?」
( ´_ゝ`)「そう、からくりだ。からくりについてはどんなものか知っているのかな?」
( ^ω^)「金属とかを組み合わせて色々な効果を生み出す機工と呼ばれる技術の1つですおね?」
( ´_ゝ`)「大雑把に言えばそうだな。本当は動力に関しても定義があるのだが、今は関係ないので割愛する」
- 446 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:46:32 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「からくりとは機工の中でも鋼線、ワイヤーと呼ばれる鉄の紐を使った技術に特化したものだ」
( ^ω^)「トソン君の武器がまさにそれでしたおね。すごい面白い仕組みでしたお」
( ´_ゝ`)「……ブーンだったかな? 君は機工に対して偏見はないのかね?」
( ^ω^)「お? 偏見? いや、そういうのは……お……」
アニジャさんが何を言いたいのか、僕はようやく理解出来た。
というより、機工に関する魔法使いの間での認識を思い出したというべきか。
( ´_ゝ`)「機工は魔力を使わず、魔法と同等の事を実現しようとして考えられた技術だ」
( ´_ゝ`)「しかしながら現在の所、その機能は魔法のそれに比べると及ぶべくもない質の低いものだ」
( ゚д゚)「聞く所にはまだ新しい技術なのだろう? それも仕方がないんじゃないか?」
( ´_ゝ`)「だが、現実問題、魔法に取って代わる力はない」
( ´_ゝ`)「トソン君の武器、ガリアンソードは魔法で再現する事も出来るだろ?」
( ^ω^)「出来ますお。刃は作ってもらう必要ありますが、魔法の紐で固定すれば恐らくは」
- 447 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:48:33 ID:wqpTzt9k0
機工に魔法を超える性能はなく、結果、中途半端で使えない技術として認識されている。
更に言えば、機工の技術が洗練され、使える技術となった場合は魔法の価値を著しく落としてしまうはずだ。
故に魔法使いは特に機工という技術を嫌い、蔑む傾向にあるという。
( ^ω^)「そんな話をドクオさん、僕の師に当たる人から聞いた覚えがありましたお」
ドクオさんは別に蔑んでいたわけではなかったが、かなり昔にそんな話を聞いた。
僕自身もその事を忘れてたくらいだし、特に偏見はない。
魔法も使えない人も魔法に近い恩恵を受けられるなら、それはそれで素敵な技術だと思う。
( ´_ゝ`)「……そう言って貰えるのは素直に嬉しく思う」
( ´_ゝ`)「勿論、君がこの場を取り繕ろうとしているとは思っていない。少し驚いてはいるがね」
( ^ω^)「人の暮らしが便利になるのは良い事ですお」
(∪^ω^)「わんお!」
暖めたり冷やしたり、明るくしたり暗くしたり、魔法を使えば簡単に出来る事だが、
その魔法は万人が簡単に出来るものではないのが現状だ。
皆がそれを出来るようになれば、人の暮らしはもっと楽になるだろう。
- 448 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:51:46 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「そうだ。それが機工が目指す先なんだ」
( ^ω^)「ただ、若干の危惧はしますけど」
( ´_ゝ`)「危惧?」
技術の発展が、必ずしも全てにプラスに繋がるわけではない事も僕は知っている。
誰でにも使える魔法としての機工技術が広まれば、
恐らく僕が攻撃用の道具を作るのを避けているのと同じ理由の問題が起きる可能性がある。
( ^ω^)「誰にでも使える攻撃魔法は危険なんですお」
( ´_ゝ`)「……そうだな。発展に因る弊害、それは永遠に答えの出ない問題かもしれないな」
プラスの量とマイナスの量、単純な大きさでは割り切れない問題がそこにはある。
それは機工に限らず、他の技術や魔法に関しても同じ事が言えるのだ。
( ´_ゝ`)「ふむ……」
アニジャさんは何事かを思案するかの様な態度で、左手を顎に当て僕の方を見詰める。
僕はただ、黙ってその目を見詰め返した。
- 449 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:52:03 ID:vjN9/NcEO
- おう、来たか
支援
- 450 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 22:52:57 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「ブーン、どうやら俺はお前が気に入ったようだ。腕も確かだし、お前からの依頼は受けよう」
( ´_ゝ`)「無論、お前の仲間からのもな」
( ^ω^)「ありがとうございますお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
_
( ゚∀゚)「話が纏まり掛けたとこで悪いが、ちょっと依頼は待ってくれねえかな」
( ^ω^)「お?」
_
( ゚∀゚)「こちらの腕はわかってもらえたのはありがたいとしてだ」
_
( ゚∀゚)「俺達はあんたの腕をまだよく知らねえんだ。そのトソンってやつの武器も見てねえしな」
( ゚д゚)「依頼をする側として不遜な態度なのは申し訳ないが、まずは武器を見せてもらえないか?」
( ´_ゝ`)「うむ、もっともな話だな」
アニジャさんは特に気分を害した様子も見せず、僕達、正確には僕達の背後に立てかけてあった武器に視線を向ける。
- 451 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:01:43 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「どれか1つ君達の武器を見せてくれないか?」
( ゚д゚)「ああ、俺のでいいか?」
ミルナさんが立ち上がり、愛用のモーニングスターをアニジャさんに手渡す。
( ´_ゝ`)「これはまた、随分と珍しい武器を使ってるもんだな。使いこなすのはかなり慣れがいるだろ?」
( ゚д゚)「そうか? 案外単純な武器なんだがな」
モーニングスターは柄付きの鎖鉄球という形状だが、割と古くからある武器だ。
しかし、多少癖があるため、使い手はあまり多くないのは確かである。
( ´_ゝ`)「ふむ……かなり使い込んでるな。それ故に傷みも見られる」
( ゚д゚)「だろうな。しかし、手入れは怠っていないし、単純な作りだから多少傷があろうが問題なく使えてるぞ」
( ´_ゝ`)「これを少し預からせてもらっていいか?」
( ゚д゚)「何をするつもりだ?」
( ´_ゝ`)「修繕する。それで俺の腕はわかってもらえると思うからな」
- 452 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:02:59 ID:wqpTzt9k0
ミルナさんはどうするとでも訪ねるかのように僕の方を見る。
ミルナさんの武器だし、僕が決めるような話でもないのでミルナさんにお任せしますと答えた。
( ´_ゝ`)「なに、時間は2時間ほどで十分だ。勿論、金も取らんよ」
その間、ここで寛いでくれていてもいいし、一旦帰ってまた来てもらってもかまわないとアニジャさんは言う。
( ゚д゚)「預けるのはかまわない。よろしくお願いする」
僕達は戻るのも大変、主に二日酔いの僕がという事で、ここで待たせてもらう事にした。
だいぶ気分的には楽になっているので、お昼頃には食事を取れるくらいに回復しているとありがたいのだが。
( ^ω^)「でも、いいんですかお? よく知らない人間を部屋に置いておいて……」
( ´_ゝ`)「大丈夫さ。この部屋には大した物は置いてない。それに、俺は君が気に入ったしな」
( ´_ゝ`)「そこの金属の筒にお湯が入ってるから。上のボタンを押すと出るんで、勝手にお茶淹れて飲んでくれ」
そう言うとアニジャさんはモーニングスターを抱え、部屋から出ていった。
( ゚д゚)「どう思う?」
- 453 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:06:47 ID:wqpTzt9k0
从 ゚∀从「思ったより胡散臭くねえな」
ξ゚听)ξ「最初があれだったから、どうしようもないけどね」
( ^ω^)「そこはどうでもいいお。考え方はまともっぽいおね」
_
( ゚∀゚)「あとは腕か」
( ゚д゚)「それと、料金だな」
从 ゚∀从「まあ、取り敢えずお手並み拝見と行こうぜ。それよりこれ、何なんだ?」
ハインさんはアニジャさんがお湯の出る金属の筒と言っていた物体を弄繰り回している。
ボタン付きの保温ポットという所なのだろうか。
ξ゚听)ξ「何か線が出てるわね。これじゃ持ち運びに不便そうだけど」
从 ゚∀从「ボタン押すんだっけ? ポチっとな」
(;^ω^)「ちょ、カップ用意してから押しましょうお」
(∪^ω^)「わんおー」
- 454 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:07:49 ID:wqpTzt9k0
案の定、筒の出張った部分からお湯が漏れ出し、机の上に広がる。
他人様の家であまり粗相はしないで欲しい。
_
( ゚∀゚)「かなり熱いな。これ、魔法で燃やしてるわけじゃないんだよな?」
( ^ω^)「魔力の類は一切感じませんから、多分機工なんでしょうね」
この筒はアニジャさんが部屋に入ってきた時持って来たものだから、それなりに時間は経っている。
それでいてこの熱さという事は、結構な保温性能を持っているのだろう。
从 ゚∀从「へー。他に何か面白もんねーかな?」
ξ゚听)ξ「こら、他人様の家を勝手に漁らないの」
口では止める素振りを見せたツンだが、ハインさんと共に部屋の隅にあった机を漁っている。
机の上には何冊かの本があったので、興味が湧いた僕もそれに加わる事にした。
( ^ω^)「ほー、これが機工の本かお。さっぱりわからんけど、興味深いお」
僕は本のページをパラパラとめくり、斜め読みをする。
表紙によるとこれは入門書らしいが、専門外の分野の事は難しい。
ただ、面白くはあるので1度じっくり読んでみたいと思う。
- 455 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:09:02 ID:wqpTzt9k0
( ^ω^)「作業自体も見せてもらえばよかったお」
从 ゚∀从「お、変な本発見。えーっと、月刊……モテモテ通信……? 何だこりゃ?」
_,
ξ゚听)ξ「あの格好だったし、やっぱりこれあるのね……」
从 ゚∀从「およ? ツンはこれ知ってんの?」
_,
ξ゚听)ξ「非常に不本意ながら知ってるわ」
ドクオさんの庵で見かけた本が机の上に何冊も置かれている。
モテない人が書いたモテない人の為のモテる為の本というぐらいだから、アニジャさんもモテないのだろう。
あの格好で出てきたのだからあるとは思っていたが、ドクオさん以上に持っていそうだ。
从 ゚∀从「んー? 何でこんなにあるんだ?」
ξ゚听)ξ「月刊って書いてあるし、毎月出るからでしょ」
从 ゚∀从「違う違う。同じ本が何冊もあるぞ」
ξ゚听)ξ「へ? 何でまたこんなキモい本を何冊も……」
- 456 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:10:35 ID:wqpTzt9k0
( ^ω^)「お? ホントだ、何冊もあるおね」
同じ号をざっと見比べてみたが、どこにも差はない。
つまりは全く同じ本という事だが、その理由は謎だ。
よっぽどこの本のファンなのであろうか。
( ´_ゝ`)「待たせたな」
それからしばらくして、約束の2時間よりは少し早いぐらいでアニジャさんは戻って来た。
その手にあるモーニングスターは綺麗な光沢を放っていた。
( ゚д゚)「随分と綺麗になったな。この補修だけでも良い塩梅だ」
( ´_ゝ`)「それだけじゃないぞ。取り敢えず振ってみてくれ」
僕達はアニジャさんに案内され、武器を振るために庭に出る。
ミルナさんは何度かモーニングスターの握りを確かめ、武器を構えた。
( ゚д゚)「ふむ……、握った感じが少し違うのは補修の所為か?」
( ´_ゝ`)「振ってみればわかるさ」
- 457 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:13:59 ID:wqpTzt9k0
ミルナさんはそれならばとモーニンスグスターを軽く前後に振り、手首を利かせて鎖を跳ね上げた。
そのまま柄を回し、頭上で鎖鉄球を回転させる。
( ゚д゚)「ほう、前より安定するようになったな」
傍目には普段とそう変わらないように見えるのだが、使っているミルナさんには違いがわかるらしい。
回転を大きくしたり小さくしたり、早くしたり遅くしたりと色々試している。
( ´_ゝ`)「柄が少し歪んで来てたから、それをまっすぐに打ち直したんだ」
( ゚д゚)「なるほど。この回し易さはそのお陰か。ジョルジュ、頼む」
ミルナさんはジョルジュさんに攻撃を受けて貰うため、庭の反対側に立つよう頼む。
ジョルジュさんは了承し、斧を両手で構えた。
( ゚д゚)「行くぞ」
_
( ゚∀゚)「おう、来いや!」
( ゚д゚)「フンッ!」
気合の乗った声と共に、ミルナさんの腕が前方に振り下ろされた。
その動きに連動し、鎖鉄球がジョルジュさん目掛けてまっすぐに飛翔する。
- 458 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:17:28 ID:wqpTzt9k0
- _
( ゚∀゚)「せいッ!」 ポヨンッ!
( ^ω^)「へ?」
斧と鉄球がぶつかり合った瞬間、聞こえてきたのは重い金属音ではなく、何とも気の抜ける音であった。
受け止めたジョルジュさんの身体が少し後にずれた事からも、
鉄球の威力は結構なものだったはずだがどういう事なのだろうか。
_
(;゚∀゚)「何だ、今の気の抜けた音は?」
从 ゚∀从「おいおい、威力下がってんじゃねえか?」
( ゚д゚)「いや、手応えは悪くなかった。確実に前より威力は上がっていると思う」
ミルナさんの言葉にジョルジュさんも頷く。
それを見ていたアニジャさんは満足げに頷き、口を開く。
( ´_ゝ`)「これぞサースガ式スペシャルギミック・静かにしま show on 君だ!」
(;^ω^)「えーっと……」
- 459 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:19:13 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)b「説明しよう! 静かにしま show on 君とは武器の接撃面に薄い膜を張り」
( ´_ゝ`)b「コーティングすると同時に消音機能を実現したものだ!」
( ´_ゝ`)b「これで部屋の中で戦っても、戦闘の音がうるさいと怒られる事もなくなるぞ!」
( ´_ゝ`)b「ちなみに、オプションで音を消す変わりに別の音を鳴らすことも出来るぞ!」
( ´_ゝ`)b「今の音はやわらかマシュマロホイップ音だ!」
人差し指を立て、胸を張って一気にまくし立てるアニジャさん。
取り敢えず理解したのは、すごく無駄な機能だという事だ。
_,
ξ--)ξ「何かすごく無駄な事に力入れてる感じよね」
(;^ω^)「技術的にはかなりすごいと思うお。無駄だけど」
(∪^ω^)「わんおー」
( ´_ゝ`)「どうだ、面白いだろ?」
- 460 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:21:40 ID:wqpTzt9k0
- _
( ゚∀゚)「面白いかどうかで言えば、ちょっと面白かったが、戦闘中にあれはねえな」
从 ゚∀从「だな。馬鹿にしてんのかって音だ」
( ´_ゝ`)「うーむ……気に入ってもらえんか……」
( ´_ゝ`)「トソンちゃんにもすぐに外せって真顔で拒否られたしな……あの子に合うと思ったのに」
あんな気の抜けた音で地面をえぐる様な攻撃打たれてたら、それはそれで嫌な光景だったので、
外してくれていてありがたかったと思う。
( ゚д゚)「おい……」
(;´_ゝ`)「ああ、すまん。すぐに外すよ。時間はそんなに──」
(* ゚д゚)「その音、この子の鳴き声に出来ないか?」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
(*´_ゝ`)「おお、気に入ってもらえたか! うむ、そうだな、多分出来ると思うぞ」
_
(;゚∀゚)「止めろ、ミルナ! 早まるんじゃねえ!」
从;゚∀从「ふざけんな! そんな振り回すたびにわんわん鳴くような武器持ちと組みたくねえ!」
- 461 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:23:00 ID:wqpTzt9k0
ジョルジュさんとハインさんの必死の説得で、ミルナさんはギミックの取り付けを何とか思い止まってくれた。
すごく残念そうな顔をしていたアニジャさんだったが、その腕前は理解出来たので部屋に戻る事を提案する。
( ´_ゝ`)「それは良かった。じゃあ、ちょっと部屋で話そうか」
部屋に戻ると、アニジャさんがお茶を淹れ直してくれたので、それを頂きながら話をする。
まずはこちらの要望にあった改造が出来るかどうか相談しなければならない。
( ´_ゝ`)「3人の武器を見せてもらったが、どれも作りはしっかりしているから、強化は出来ると思う」
( ´_ゝ`)「ただ、ジョルジュの斧は威力の底上げと重量を考えると、作り直した方が格段に良くなる」
_
( ゚∀゚)「そうしたいのは山々だが、そうなると結構な金がかかるだろ?」
( ´_ゝ`)「そうだな。全員の強化でこれくらい……で、こっちが斧を作り直した場合だ」
( ^ω^)「おー、これはなかなか……」
( ゚д゚)「相場的にはこれくらいしても不思議はないな」
- 462 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:26:05 ID:wqpTzt9k0
从 ゚∀从「俺らの予算的にはどうなの?」
( ゚д゚)「強化でも少々足りんな」
_
( ゚∀゚)「ありゃりゃ、こりゃしばらくクエスト三昧かねえ」
こちらの手持ちの魔法鉱石の話もしたが、そもそもアニジャさんの作業にはあまり魔法鉱石は使わないらしい。
独自の製法で鉄を精錬して強度を高めたものを使うという事だ。
ξ゚听)ξ「それって、魔法鉱石より強度は上なんですか?」
( ´_ゝ`)「上だ……と言いたいところだが、純度の高い魔法鉱石には負けるだろうな」
( ´_ゝ`)「ミスリルやオリハルコンほどの強度はないと思う」
そう言ってアニジャさんは1枚の金属片をポケットから取り出して机の上に置く。
僕はそれを手に取り、ルーペで詳しく見てみた。
( ^ω○)、■「ほうほう……なるほど、ただの鉄ってわけじゃないみたいですおね」
( ´_ゝ`)「ダマスカス鋼、機工ではそう呼ばれている素材だ」
- 463 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:28:03 ID:wqpTzt9k0
( ^ω^)「なるほど、勉強になりましたお」
僕はダマスカス鋼をアニジャさんに返し、ジョルジュさん達の方を見る。
このまま彼に依頼する方向で話を進めて良さそうな雰囲気だが、問題は料金であろう。
ここは商売人として値引き交渉をしてみるべきかと考えていると、アニジャさんが先に口を開いた。
( ´_ゝ`)「君達は、腕前からするにそれなりに経験を積んだ冒険者なんだよな?」
从 ゚∀从「名は売れてねえが、モンスター相手なら場数は踏んでると思うぜ?」
( ´_ゝ`)「ほう、それは丁度良い」
从 ゚∀从「あ? 丁度良い?」
アニジャさんは立ち上がり、先ほど僕達が漁っていた机に向かう。
そこから何かを取り出し、こちらに戻って来た。
( ´_ゝ`)「これを見てもらえないか?」
从 ゚∀从「何だこりゃ? 季刊……遺跡通信?」
- 464 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:29:48 ID:wqpTzt9k0
アニジャさんは1冊の本を机の上に置いた。
ハインさんが表紙を確認し、広げる事無く僕に渡す。
( ^ω^)「何か見覚えある感じの本ですおね。あのモテモテ通信と似てますお」
( ´_ゝ`)「ブーンはモテモテ通信を知っているのか?」
( ^ω^)「愛読者を知ってますお」
(*´_ゝ`)「マジで!? その人、今度紹介してくれ!」
ξ゚听)ξ「今はモテナイ通信の話はいいから、これが何なのか説明してもらえません?」
(;´_ゝ`)「モテモテ通信ね、モテナイじゃなくって」
アニジャさんの説明によると、この遺跡通信という本は遺跡や洞窟なんかを探索して財宝を探す冒険者、
トレジャーハンターとも呼ばれる人達が書いた調査報告や手記などを本にしたものらしい。
モテモテ通信に比べると随分まともな本だが、季刊という事はそれほど記事が集まらないのかもしれない。
从 ゚∀从「こういう既に調査済みの遺跡の話って、あんまり役に立たねえんじゃね?」
- 465 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:33:50 ID:wqpTzt9k0
( ゚д゚)「あいつらは特に情報が命の職業な所があるからな。あまり大っぴらには公開したがらないだろうな」
( ´_ゝ`)「うむ、既に調べ尽くされた遺跡の話や、時に信憑性を疑う記事も多々あるのは否めないな」
( ´_ゝ`)「取り敢えずここを見てくれないか?」
僕はアニジャさんに言われ、折り目の付いたページを開く。
そこは小さな島にある遺跡について書かれたページだった。
( ^ω^)「何々、ソクホウの西に浮かぶ小さな島……」
記事によるとそこは昔はもっと大きな島で、1つの文明が形成されていたらしい。
( ´_ゝ`)「文明があった事は比較的知られていて、古くから調査もされている」
从 ゚∀从「だったら、やっぱもう調べ尽くされた遺跡じゃねえの?」
( ´_ゝ`)「そうだな。町があったとされる場所は調べ尽くされている、が……」
_
( ゚∀゚)「が?」
(∪^ω^)「わんお?」
- 466 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:35:20 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「君達はヴィップの人間だったな」
( ´_ゝ`)「知らないかもしれないが、1ヶ月ほど前にこの辺りで地震があったんだ」
( ´_ゝ`)「震源は海底。場所はこの島の付近で、それによって島の地形が一部変化した」
( ゚д゚)「ほう、それで?」
( ´_ゝ`)「この記事の著者は大地が割れ、断層が出来たその場所に入り口らしき物を見付けたんだ」
( ^ω^)「それはつまり……」
( ´_ゝ`)「そう、まだ手付かずの未踏の遺跡だ」
既に調べ尽くされた島の地下に、まだ隠された遺跡があった。
本当ならそれはすごい発見で、何かしら有益なものが見付かる可能性があり、魅力的な場所だ。
ξ゚听)ξ「その入り口から中に入ったんですか? すぐに行き止まりとか、小さな部屋じゃないですよね?」
勿論、遺跡の規模や使用目的によっては何もない可能性もある。
アニジャさんの話では、用途はわかっていないらしいが、広さはかなりあるはずだと言う。
- 467 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:36:29 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「この記事の著者から直接聞いた話だ」
( ´_ゝ`)「少し入ってみたが、本格的に調べるなら準備がいると引き返したらしい」
( ^ω^)「何となく話が読めて来ましたお」
( ´_ゝ`)「そうか、察しが良くて助かる」
( ゚д゚)「俺達にその調査の護衛をやれという事だな?」
( ´_ゝ`)「ご名答。依頼主はこの記事の著者だ」
アニジャさんはこの依頼を引き受けてくれたら、武器の強化費用を半額にまけてくれるという。
金額にすればクエスト報酬としてかなりの高額だ。
その上遺跡内で使えそうな武器が見付かった場合、それも優先的に譲ってくれるとの事だ。
( ´_ゝ`)「どうだ? 悪くない条件だろ?」
_
( ゚∀゚)「悪くねえな。悪くなさ過ぎて、裏を疑うくらいだ」
( ゚д゚)「裏は言い過ぎだが、これほどの条件を出すという事は、難易度も高いという事だな?」
- 468 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:40:10 ID:wqpTzt9k0
从 ゚∀从「いいじゃねえか。強いやつがいるんだろ?」
( ^ω^)「これ書いた人、信用の置ける人なんですかお?」
ξ゚听)ξ「発見されたのは1ヶ月前なんですよね?」
ξ゚听)ξ「本にもなってるって事は、既に誰か調査に向かったんじゃないですか?」
それぞれが思った事を矢継ぎ早に質問する。
アニジャさんは順番に答えると、皆を制した。
( ´_ゝ`)「まずツンちゃんの質問だが、この本はまだ発売前で、この事を知っているやつは少ない」
ξ゚听)ξ「発売前の本が何でここに?」
( ´_ゝ`)「簡単な話だ。俺が作っているからだ」
正確には、製本を自分の家でやっているからだとアニジャさんは言う。
聞く所によると、機構の技術を使い、製本を請け負っているらしい。
从 ゚∀从「ん? じゃあ、あのモテナイ通信もここで作ってんのか?」
- 469 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:42:32 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「モテモテ通信だ。そうだ、あれは俺が書いてここで作ってる」
_,
ξ゚听)ξ「お前が書いてんのかよ……」
なるほど、あの机の上にあった同じモテナイ通信はそういう事か。
となると、あのどうしようもないセンスはこの人のものだったという事になる。
目の前のこの人は、だいぶ報われない人生を送って来たのだろう。
(;´_ゝ`)「あの、何でそんなかわいそうなものを見る目でこっちを見てるの?」
( ^ω^)「気にしないでくださいお」
(∪^ω^)「わんお」
( ´_ゝ`)「そ、そうか? で、次に遺跡自体の話だが、まあ、ぶっちゃけ危険だろう」
( ´_ゝ`)「遺跡内部は深く調査したわけではないが、強力なモンスターの気配は感じたらしい」
( ´_ゝ`)「それ以前に、ツンちゃんへの回答にもかかるんだが、その島へ行くのも大変なんだ」
- 470 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:45:00 ID:wqpTzt9k0
アニジャさんの話によると、地震のせいで海底の地形も変わったのか、
島周辺に見慣れぬモンスターが出没するようになったらしい。
(;^ω^)「僕ら陸の人間なんで、なるべく船上の戦闘は避けたいですお」
ξ゚听)ξ「船上で一番戦えるの、魔法が使えるあんたなんだから、しっかりしなさいよ」
( ゚д゚)「相手次第だな。船を壊されるレベルのモンスターなら勝負にならん」
( ´_ゝ`)「シーサーペントって知ってるか?」
(;^ω^)「知ってますお。つーかさっきミルナさんが言った勝負にならないタイプのモンスターじゃねえかお」
亜竜シーサーペント、簡単に言えば竜に似た顔をした大きな蛇である。
深い海に住むはずなので、こんな大陸近くで目撃されるのは稀だろう。
从 ゚∀从「ブーンの魔法でドギャーンと一発で仕留めたり出来ねえの?」
(;^ω^)「海のモンスターですから、雷の魔法がきくと思いますけど、多分一撃じゃ無理ですお」
長期戦なら勝機はどこかで見出せるかもしれないが、そうなると確実に船が沈むだろうから実質は倒せないと思う。
大人しく逃げる、もしくは出会わないのが最善だ。
- 471 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:47:36 ID:zfCS/IUEo
- 書いてんのお前かww
- 472 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:48:49 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「そいつがいるから、誰も近付かないって寸法だ」
ξ゚听)ξ「この記事の著者の人、よく帰って来れましたね」
( ´_ゝ`)「運だけはいいからな、あいつ」
( ´_ゝ`)「だから、今回もあいつの運に賭けて、出会わないこと前提でいけるんじゃないかなーと」
( ゚д゚)「いささかリスクの高い賭けだな」
_
( ゚∀゚)「だがその分見返りも大きい」
遺跡調査とはいえ、その遺跡に必ずしも価値があるわけではなく、有益な物も見付からない可能性はある。
しかし、今回のケースなら、遺跡に何も見付からなくても僕達は十分な報酬は得られるのだ。
また依頼主のトレジャーハンターにしろ、何も見付からなくても遺跡の謎を解明したとして名声は得る事が出来る。
行く価値は十分にあるクエストだ。
勿論、その分かなりリスクも高いわけだが。
( ´_ゝ`)「おっと、そちらの2人の報酬について決めてなかったな」
アニジャさんは僕とツンに話しかけるが、ミルナさんがそれを制した。
- 473 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:51:16 ID:wqpTzt9k0
( ゚д゚)「ブーン、ツン、俺達は依頼を受ける方向で考えている。しかし、お前達は冒険者ではない」
( ゚д゚)「かなり危険なクエストだ。お前達は無理に受けなくてもいいと思う」
( ´_ゝ`)「そういう事なら、あと数人他に見繕う事も考えようか」
僕はツンの方を窺うが、ツンはこちらには目を向けない。
恐らく僕が何を言うか理解しているのだろう。
そして僕が何を言おうとどうするかもきっと決めている。
( ^ω^)「僕も行きますお」
ξ゚听)ξ「え? あ……、私も行くわ」
だから僕はツンより先に参加を表明する。
どうせ僕が行かないと言っても、ツンは行くのだろうから。
_
( ゚∀゚)「いいのか? 俺らとしてはお前らが来てくれるのは非常に助かるんだが」
( ^ω^)「遺跡には興味ありますし、こういうクエストは魔法使いが1人いたほうが成功率はだいぶ上がりますお」
( ゚д゚)「確かにな。危険なクエストだが来て欲しいというのが本音だ。勿論、ツンにもな」
- 474 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:52:32 ID:wqpTzt9k0
ツンが意外そうな顔でこちらを見てくるが、僕は素知らぬ顔で受け流した。
危険なクエストだが、危険だからこそ皆の力になりたいと思う。
( ´_ゝ`)「じゃあ、5人で大丈夫かな? これ以上増やすと却って動き辛いか?」
_
( ゚∀゚)「ま、そうだな。よっぽど腕のあるやつならあと1人ぐらいいてもいいが」
( ^ω^)「そういえば護衛対象の人って、一応冒険者なんですおね?」
( ´_ゝ`)「ああ、だが戦闘の腕は期待するな。基本は逃げ専門だ」
ξ゚听)ξ「戦闘にでしゃばられるよりはその方がいいですから」
从 ゚∀从「何てやつなんだ?」
( ^ω^)「あ、この記事に名前載ってますおね」
僕達は記事の最後、著者の名前を探す。
そこに書かれていたのは……
( ^ω^)「冒険野郎・サスガイバー……サスガ? ひょっとして……」
- 475 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:56:20 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「ああ、俺の弟だ。それはペンネームだがな。故に信頼の置ける情報ってわけだ」
_,
ξ゚听)ξ「兄弟揃ってどういうセンスなのよ……」
からくり・サースガに冒険野郎サスガイバー。
確かに兄弟揃って変な名前だが、アニジャさんの方はそう呼ばれているだけで名乗ったわけではなかったような。
( ´_ゝ`)「俺のからくり・サースガって通り名も弟が考えてくれたんだ。いいセンスだろ?」
( ^ω^)「いいえ」
(;´_ゝ`)「いや、そこはお世辞でも『はい』って言おうよ。少しは躊躇えよ」
(∪^ω^)「わんおー」
反射的に正直に答えてしまったが後悔はしていない。
センスのなさはひとまず置いておいて、僕達はクエストの日程について話し合った。
( ´_ゝ`)「じゃあ、明日出発って事で異存はないな?」
从 ゚∀从「オーケィだ。早いに越した事はねえ」
- 476 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:57:58 ID:wqpTzt9k0
( ^ω^)「明日には僕の体調も戻るでしょうし、今日の午後で必要な道具とか用意しますお」
( ´_ゝ`)「薬草なんかの携帯品の代金も俺につけてくれていい……と言うのも魔法道具屋に失礼か?」
( ^ω^)「手持ちの道具で足りない分だけはお願いしますお」
( ゚д゚)「明日の昼に港に集合、半日で島へ到着、その後1泊してクエストという流れでいいんだな」
( ´_ゝ`)「ああ、それでいい。風と潮流の関係上、明日を逃すとまた少し間が空くからな」
( ´_ゝ`)「船は俺が操縦する。そのまま島で船の番もする。戦闘は出来んが、船を守るくらいは任せろ」
( ^ω^)「船にこの子も置いて貰っていいですかお?」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
( ´_ゝ`)つ「ああ、いいぞ。よしよし」
( ^ω^)「あ、ヤバ……」
( ´_ゝ`)
つ∪*^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「あれ?」
- 477 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:59:02 ID:zl6th2G6O
- サスガイバーw
考えて考えて周囲にあるものを上手く使う弟者か・・・
- 478 名前:名も無きAAのようです:2012/03/25(日) 23:59:33 ID:wqpTzt9k0
( ´_ゝ`)「ん? どうした?」
( ^ω^)「いえ、てっきりわんおが噛み付くかと思って」
(:´_ゝ`)「え、この子そんなにワイルドな子なの?」
( ^ω^)「温厚ですけど、不審者には厳しいんですお」
(:´_ゝ`)「いや、俺不審者じゃないから。その心配いらないだろ」
ドクオさんの例があったからアニジャさんも噛み付かれるかと思ったが、わんわんおは普段通りのいい子だった。
やはりドクオさんは並々ならぬ不審者という事なのだろうか。
( ´_ゝ`)「そうそう、馬車は俺の家に置いておいてもかまわないぞ。知り合いに番を頼むから」
( ´_ゝ`)「何なら、宿を引き払ってこっちに泊まって貰ってもかまわないが。部屋は余っている」
_
( ゚∀゚)「そりゃありがてえな」
ξ゚听)ξ「クエスト間の滞在費用も考えると、そうさせてもらうべきかしらね」
( ^ω^)「ヴィップに手紙も出しとかないとまずいかおね。少し帰りが遅れるって」
- 479 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:01:27 ID:mGSFIZH.0
急にやる事が増え、忙しくなった僕達は早速行動する事にした。
分量的に僕が一番やる事が多いので、馬車の件や宿屋の引き払いはミルナさんにお願いする。
僕は薬草を煎じ、護符も用意し、午後の時間を目一杯使ってクエストの準備をした。
( ´_ゝ`)「急な話で悪かったな」
( ^ω^)「かまいませんお。こっちにも十分に利がある話ですし」
部屋を借り、道具の準備をしていた僕の元へアニジャさんがお茶を淹れて持って来てくれた。
港で船の点検をして戻って来た所だとアニジャさんは言う。
( ^ω^)「弟さん思いなんですね」
( ´_ゝ`)「ん? まあ……それだけってわけでもないんだがな」
アニジャさんによると、弟さんはアニジャさんの機工技術で作った道具を使ってトレジャーハンターをしているらしい。
故に弟さんの成功は、自分の技術の証明にもなるからお互い様なのだとアニジャさんは言う。
( ^ω^)「いい兄弟ですお」
( ´_ゝ`)ヾ「そんなまっすぐな目で改めて言われると照れるが、そうだな、大切な弟だよ」
- 480 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:03:49 ID:mGSFIZH.0
そう言える家族がいる事は羨ましく思う。
僕は2人の為にもこのクエストは成功させたいと強く願った。
( ´_ゝ`)「何かいる物はあるか?」
( ^ω^)「大丈夫ですお。準備も直に終わりますお」
何かあったら呼んでくれというアニジャさんに礼を述べ、僕は再び準備に取り掛かる。
あとは少し攻撃用の道具でも作っておきたい所だが、何が有効だろうか。
( ^ω^)「ま、何とかなるおね」
本格的なクエストに参加するのはニゲット山に行った時以来だ。
クエスト前の程よく感じる高揚感は悪くない。
それは、僕が冒険者としての仕事も嫌いじゃないという事でもある。
( ^ω^)「だからといって、魔法道具屋である事を否定するわけじゃないお」
ショボンの事があって以降、自分の道について考える事も増えたが、ひとまずその事は置いておこう。
今はただ、クエストの成功に全力を尽くそうと思う。
第二十話 奇人の憂いは機を招く 終
- 481 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:05:30 ID:jTpqNq6E0
- おつ
- 482 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:05:52 ID:mGSFIZH.0
二十話は以上です
既に二十話とは、予定外に話が長くなったなあという感じです
書きたいとこ、拾わないといけない伏線とか考えると、まだ半分には到達してないかなと
かなりアバウトなプロットにも満たない予定しかないんで、短くまとめる可能性もありますが
視点は主人公視点から基本的には変えないつもりなので、
サブキャラクターの本編に絡まない裏話的な物は出す場所がなさそうです
次話の投下は未定
今月はかなり早いペースで投下して書き溜め消化したので、少し書き溜めたいかなと思ってます
支援とか感謝です
このあとちょっとここまでの登場人物一覧を貼ります
- 483 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:08:50 ID:ydRH9ixQO
- 乙
一話の分量がそこそこあって二十話越えた現行って久しぶりだな
焦らずマイペースでがんばって
- 484 名前:二十話までの登場人物:2012/03/26(月) 00:09:27 ID:mGSFIZH.0
【登場人物紹介】
( ^ω^) ブーン=ナイトウ(ブーン=ホライゾン)
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営んでいる少年。現在はソクホウに旅行兼商売中。
祖父は伝説の大賢者であるバーン=ホライゾンだが、その事を知るものは少ない。
ξ゚听)ξ ツン=ディレード
武術道場の娘でブーンの幼馴染。武術の腕は確かで、道場で師範代を任されている。
勝ち気だが根はやさしく、実は寂しがり屋。現在はブーンと共にソクホウに滞在中。
(∪^ω^) わんわんお
ブーンのペット兼使い魔。子犬の姿だが、本当は竜の中でも最強の力を誇る天空竜の転生したものである。
無邪気で人懐っこいが少々お馬鹿。現在はブーンと共にソクホウに滞在中。
('A`) ドクオ=ボッテューツ
ヴィップの町の南東の方にある庵に住む残念な容姿の賢者。結界魔法を得意とする。
ブーンの祖父の弟子でブーンの師匠に当たるが、本人は師匠と呼ばれるのを嫌っている。
川 ゚ -゚) クー=スナオ(???=???)
サンライズにペンダントの解呪の依頼を持ち込んだ新米冒険者。ニューソク王家関係者と推測される。
今はブーンに借金を返すためにヴィップの町に滞在中。世間知らずだが意外としたたか。
- 485 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:09:53 ID:5C/BMZvYo
- 乙
楽しみにまつわ
- 486 名前:二十話までの登場人物:2012/03/26(月) 00:10:40 ID:mGSFIZH.0
(`・ω・´) シャキン=バールボー
酒場バーボンハウスのマスター。からっとした性格だが、意外と子煩悩でもある。
バーボンハウスはギルドからのクエストの斡旋もしており、冒険者達の溜まり場となっている。
(´・ω・`) ショボン=バールボー
シャキンの息子でブーンの幼馴染。飄々とした性格だが、友達思いの心配性でもある。
聖騎士を目指す事を決意し、ソクホウで騎士学校に入学した。
_
( ゚∀゚) ジョルジュ=ナガオカ
ヴィップの町を拠点としていた冒険者。長柄の両手斧を武器とし、ハイン、ミルナとパーティーを組んでいる。
豪放磊落。武器の強化の為にメシューマの町にいたが、現在はブーンと共にソクホウに滞在中。
( ゚д゚) ミルナ=コッチオ
ヴィップの町を拠点としていた冒険者。モーニングスターを武器とし、ジョルジュ、ハインとパーティーを組んでいる。
質実剛健。武器の強化の為にメシューマの町にいたが、現在はブーンと共にソクホウに滞在中。
从 ゚∀从 ハインリッヒ=タカオカ
ヴィップの町を拠点としていた冒険者。2振りの蛮刀を武器とし、ジョルジュ、ミルナとパーティーを組んでいる。
見敵必殺。武器の強化の為にメシューマの町にいたが、現在はブーンと共にソクホウに滞在中。
(゚、゚トソン トソン=トソン
元聖騎士。見た目は小さな子供だが、怪力の持ち主で巨大な蛇腹剣を使う。性格は真面目だが、そそっかしい。
クーを追ってヴィップの町に辿り着き、現在はクーと共に借金返済に奔走中。
- 487 名前:二十話までの登場人物:2012/03/26(月) 00:11:58 ID:mGSFIZH.0
( ´_ゝ`) アニジャ=サースガ
ソクホウの町の武器職人。機工と呼ばれる技術、からくりを用いて武器に様々なギミックを付けるのを得意とする。
胡散臭いが腕は確か。からくり・サースガとして名を馳せる。明るい性格だが気は弱い。
(-_-) ヒッキー=コーモーリ
ヴィップの町に赴任してきた司祭。神聖魔法、その中でも守護の魔法が得意。
現在、教会に憑いていた精霊川д川に憑かれている。真面目でお人好しな性格。
ζ(゚ー゚*ζ デレ(???=???)
ヴィップの町の教会に訪れた謎の女性。
神聖魔法を使うが、それ以外は色々と謎な人物。
ノパ听) ヒート=オネスティー
旅の武術家。単純な性格で、宇宙魔法という、魔法でも何でもないが本人は魔法と言い張る技を使う。
自分より強い相手と闘う為に各地を転々としている。
(‘_L’) フィレンクト=ドレイク
ニューソク騎士団長。長身で一見温和な雰囲気があるが、意外とやり手との話も。
現場からの叩き上げで、実力も人望も高い。腕はラス2。
- 488 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:12:28 ID:Lo5wREXc0
- 夜遅くまで乙
続き待ってるからな
- 489 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:16:48 ID:jRMBVEyc0
- おつ
もはや竜云々の設定を忘れちまいそうだw
- 490 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:19:41 ID:yRepgiD.o
- 腕はラス2…?
- 491 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:23:47 ID:1Rfq7hnw0
- 乙
- 492 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 00:32:00 ID:GAmjoerg0
- >>490
斬られても生え替わる腕だけど、残りあと二本しかないよ…
- 493 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 01:11:51 ID:fcPgO41Y0
- 両腕あるってことじゃね
- 494 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 01:13:06 ID:/I9wBCVcO
- >>490
ちんこはラス1
- 495 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 01:29:52 ID:ZzzrnZtcO
- ちんこはちゃんと残機1残ってるのか?ww
- 496 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 13:10:35 ID:OhovrfAoO
- フィレンクトからどんどんパーツが減っていく…
- 497 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 19:26:31 ID:gTohDy8o0
- フィレンクトもう腕2本しかないのか…
- 498 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 20:49:23 ID:RDamu1fc0
- 次はパンツがなくなりそうだな
- 499 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 22:09:00 ID:tu/fFEj60
- トソンって男?女?男の娘?
一般的なブーン系では女だけど、この話では力持ちで騎士だし
で、兄者はトソンちゃんともトソン君とも呼んでるし
- 500 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 23:14:18 ID:uZIXwmhAC
- 最近ドクオが実は敵に思えてならない。
- 501 名前:名も無きAAのようです:2012/03/26(月) 23:24:28 ID:72aQ3WyUO
- >>498
パンツにもってこうとするなwww
- 502 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 10:32:06 ID:qI6F2WJU0
- >>501
もうこの人はパンツしか考えられないんだよ
- 503 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 12:46:01 ID:ePtTpNMYO
- マジかよパンツラス1だぞ…
- 504 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 12:52:13 ID:/Zm2cvSYO
- 昔の高貴な人は履いてなかったんだから、パンツ0になっても大丈夫さ
- 505 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 18:24:36 ID:dP2D8BSwO
- >>498
⊃はい
http://imepic.jp/20120327/659830
- 506 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 18:43:07 ID:MUSsgaVY0
- >>505
薬草パンツ・・・だと?
- 507 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 20:08:18 ID:jo5.Ax7MO
- >>505
あらやだ可愛い
- 508 名前: ◆5rua49HN2.:2012/03/27(火) 21:10:00 ID:qBIvU9hk0
>>490
(U^ω^)「わんおー」
/ つ つ
c(,, O__⊃
>>499
(U^ω^)「わんお」
/⊂ つ
c(,, O__⊃
>>500
(U^皿^)「わんわんお」
/ つ⊂)
c(,, O__⊃
>>505
(∪*^ω^)「わんわんお!」
. / |
ヾ( ,,O_UU_つ
1つだけ真面目に訂正すると
×( ´_ゝ`)「トソン君の武器、ガリアンソードは魔法で再現する事も出来るだろ?」
○( ´_ゝ`)「トソンちゃんの武器、ガリアンソードは魔法で再現する事も出来るだろ?」
ハァハァ
(嘘)(*´_ゝ`)「トソンちゃんのパンツは魔法で再現する事も出来るだろ?」
- 509 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 21:16:03 ID:MUSsgaVY0
- >>508
おまわりさん!この変態野郎です!
- 510 名前:名も無きAAのようです:2012/03/27(火) 22:57:09 ID:CNB1vYrIO
- >>508
やっぱ女の子か
怪力のドジッ子の美少女騎士…
…ふぅ…
- 511 名前:名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 08:33:15 ID:x7wGZ1p.0
- おい読んでるからな!頑張れよ
- 512 名前:名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 13:21:39 ID:svGvC78.0
- 乙
三月はかなり投下したな
- 513 名前:名も無きAAのようです:2012/03/28(水) 15:20:15 ID:jgGwBNC20
- まとめから来ました
支援
- 514 名前:名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 02:46:57 ID:AIFpr6vYO
- 次はいつだろね
- 515 名前:名も無きAAのようです:2012/03/31(土) 12:51:01 ID:eXoZHYpk0
- からくり・サーガスとサスガリバーだと思っていたが違った
乙、続きが待ち遠しい
- 516 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 11:14:41 ID:FX63Oaiw0
- ,.. -y=======┐、
/:::::::/ ヽ::\
/:::::::::ノ  ̄ ̄ ̄ \::ヽ
┏┓ ┏━━┓ /__/ ∞ \',_ ┏┓┏┓
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/:::r -、_|l:::||ヽ、ヽ、 __ ,.. イ:::::/
. /::/ 、:|ゝ、` ̄7:::L、/::::/
- 517 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 18:28:25 ID:GoEZb8r6O
- パンツネタ飽きた
- 518 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 22:52:17 ID:nF.oKsD60
〜 王都ソクホウ西部 ソレイ港 〜
( ^ω^)「案外小さな港なんだおね」
( ´_ゝ`)「軍港が主とはいえ、ニューソクは水軍をほとんど持ってないからな」
( ゚д゚)「それはラウンジとの関係が良好と見ていいのか」
( ´_ゝ`)「どっちかというと、海はモンスターから不意に襲われることがあるし防ぎ辛いから」
( ´_ゝ`)「海じゃ戦いたくないってのが本音じゃないか?」
_
( ゚∀゚)「そんな大海原に俺らは今から漕ぎ出すわけですが」
(∪^ω^)「わんお」
第二十一話 仄暗き地の底で
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 519 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 22:53:32 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「まあ、襲われたら逃げの一手で行きましょうお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
( ´_ゝ`)「うむ、それがいいだろうな」
彼の名前はアニジャさん。
王都ソクホウで武器職人をやっていて、からくり・サースガの異名を持つ人だ。
現在僕達はクエストに向かう為、アニジャさんの所有する船の前に集合した所だ。
船はさほど大きくはないが、10人ぐらいなら楽に乗れるだろう。
从 ゚∀从「で、護衛対象のお前の弟ってやつはまだ来てねえのか?」
( ´_ゝ`)「いや、もう来てるよ。船で準備をしてる。おい、オトジャ」
(´<_` )「何だい、アニジャ?」
アニジャさんが呼び掛けると、船からアニジャさんそっくりの男が降りて来た。
確認するまでもなく、このオトジャと呼ばれた人がアニジャさんの弟なのだろう。
- 520 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 22:53:54 ID:4tXdrrhwO
- きたこれ支援!
- 521 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 22:54:58 ID:nF.oKsD60
( ´_ゝ`)「彼らがクエストを受けてくれた冒険者の人達だ。挨拶しろよ」
(´<_` )「これはこれは失礼した。僕の名はオトジャ=サースガ」
+(´<_` )「冒険野郎・サスガイバーと言った方がご存知かもしれないね」
(;^ω^)「えーっと……」
(´<_` )ノ「クエストを受けてくれて感謝する。まだ見ぬ遺跡の真実を目指して共にがんばろう!」
( ^ω^)「はい、よろしくですお」
やけに爽やかな口調でポーズを決めて挨拶をするオトジャさん。
感じの良さそうな人ではあるが、妙なはりきり具合からするに何だか面倒臭そうな人でもありそうだ。
( ^ω^)「しかし、何と言うか……ちょっと変わった船ですおね」
船には馴染みがなく、詳しいわけではないが、それでもこの船に違和感があるのはわかる。
どことなくフォルムが歪で、カラーリングが奇抜である。
( ´_ゝ`)「いい船だろ?」
+(´<_` )「これが僕達の船、マリン・サースガ号さ」
- 522 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 22:56:54 ID:nF.oKsD60
いいかどうかで言われれば、微妙と返したくなる程度には返答に困る。
アニジャさんの説明では、独自の研究で水の抵抗や風の影響等を考えての形らしい。
それにしては明らかに邪魔になりそうな突起物とか、何に使うのかわからないものが多数見受けられる。
ξ;゚听)ξ「カラーリングが何か目に痛いわね」
(∪^ω^)「わんおー」
从 ゚∀从「海の色に合ってねえな」
( ゚д゚)「衝突回避のため、目立つようにしてるのか?」
_
( ゚∀゚)「むしろ不審船として襲撃されそうだな」
若干の不安を感じつつも、僕達は軽い自己紹介を終えて早速船に乗り込む。
海で船に乗る事すら初めての僕達は、操船に関しては完全に門外漢なので、
アニジャさん達の邪魔にならないよう作業を見守る事にした。
( ´_ゝ`)「よし、準備完了。出航するが各人、問題はないな?」
_
( ゚∀゚)「ねえよ。出してくれ」
- 523 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 22:59:59 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「僕らは何かやる事ありますかお?」
( ´_ゝ`)「そうだな。目視での警戒ぐらいかな」
船は一応帆船の体をなしているが、櫂も取り付けられており、風がない時に漕いで進める事も可能なようだ。
乗ってる人数を考えると、あまり用いたくない手段ではあるが。
まあ、僕という魔法使いがいるんだし、風がないなら風を作ればいいのである。
( ´_ゝ`)「大丈夫だ。風向きを考えて今日のこの時間に出航したんだ。それに、いざという時の秘密兵器もある」
ξ゚听)ξ「秘密兵器?」
この船はアニジャさんの船らしく、機工技術で改造されているらしい。
短い時間であるが、蓄積してある電気を使って風向き関係なく進む事も出来るという。
( ^ω^)「何かすごそうですお」
( ´_ゝ`)「機工では電気を動力に変える研究が盛んだからな。その応用さ」
(´<_` )「それじゃあアニジャ、出航と行こうか」
( ´_ゝ`)「うむ、出発進行」
(´<_` )「ヨーソロー」
- 524 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:01:32 ID:nF.oKsD60
アニジャさんの宣言とオトジャさんの爽やかな掛け声を受けて、船は滑るように緩やかに進み出す。
僕は初めての経験に、ドキドキしながら離れ行く港を眺めていた。
( ´_ゝ`)「どんなに早く着いても半日はかかるだろう。ゆっくりしていてくれ」
ヽ(´<_` )「前方よーし! 後方よーし! 風よーし!」
基本は風任せという事で、特にやる事もないのか座り込むアニジャさんと、
対照的に忙しなく船内を走り回るオトジャさん。
多分アニジャさんに従うべきなのだろうが、オトジャさんが視界の端々に引っかかって落ち着かない。
( ^ω^)「おー、底が見えないお」
つ∪^ω^)「わんおー」
仕方なく、船べりに座って海の方に視線を向けるが、透明度の低い深い青の水面は何だか少し怖く感じる。
比較的波は穏やかのようだが、それでも結構船は揺れるので落ちないように気を付けねばならない。
( ^ω^)「わんお、絶対走り回っちゃ駄目だお?」
つ∪^ω^)「わんお!」
ξ゚听)ξ「何だか不思議な感じね」
- 525 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:02:27 ID:nF.oKsD60
気付くといつの間にか隣にツンが座っていた。
先ほどまで船全体の様子を確認していたはずだが、大きくない船だしもう見終わったのだろう。
( ^ω^)「海で船に乗るのは初めてだから、変な感じだお」
ボートぐらいなら昔、ヴィップの近くのモオト湖で乗った事がある。
波も穏やかで、水底も見えるぐらいの所だったから、今とは全く違う感じの揺れ方だった覚えがあった。
(´<_` )「君達は海は初めてかい? あまり海面ばかり見てると酔いやすいから気を付けるんだよ?」
( ^ω^)「そうなんですかお?」
相変わらずの爽やかな口調でオトジャさんが話し掛けてくる。
これからクエストで共に行動するわけだから、少し話をしてどんな人か把握しておいた方がいいかもしれない。
(´<_` )「うん、だからちょっと気分が悪いかなと思ったら、動きの少ない遠くの海を見るといい」
( ^ω^)「覚えておきますお。ありがとうございますお」
(´<_` )「それにしても、よくこの依頼を引き受けてくれたね。本当に感謝しているよ」
- 526 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:03:18 ID:nF.oKsD60
ξ゚听)ξ「ひょっとして、ギルドの方にも依頼を出されてたんですか?」
(´<_` )「うん、出してたね。しかしながら、詳細を聞くと皆、難色を示してね」
ソクホウは騎士や聖職者の数が多く、必然的にそこに住む人間はそちらを目指す事が多くなり、
冒険者の活動はあまり活発ではないらしい。
僕はフィレンクトさんがミルナさん達を騎士に誘った時の事を思い出していた。
(´<_` )「そうだね、ソクホウではモンスター討伐なんかはギルドより騎士に頼む方が一般的だろうね」
(´<_` )「だから、あまり腕の立つ冒険者はいないし、冒険者自体が積極的には寄り付かないんだろうね」
( ^ω^)「明確な目的があるならともかく、冒険者として稼ぐなら他の町が良いって事ですかお」
話してみるとオトジャさんは頭の回転が早く、加えて博識である事がわかった。
オトジャさんは主に遺跡の調査を生業としてるらしい。
(´<_` )「僕は未知という言葉が大好きでね」
(´<_` )「兄もそうなんだが、僕は兄とは違った分野で未知の物を追っているんだ」
- 527 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:04:29 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「知らない事を知るのはわくわくしますおね」
(´<_`*)「だろ? 未開の地に足を踏み入れる瞬間がたまらなく素敵なんだ」
僕も魔法使いで、研究者の側面も持っているからオトジャさんの気持ちはよくわかる。
新たなものを見出すためには探究心はなくてはならないものだ。
そうやって僕らは話したり休んだりしながら時間を潰し、船の旅は比較的順調に進んでいた。
当初、船の見た目で不安も感じたが、いらぬ心配だったようである。
( ´_ゝ`)「さて、残り1時間ほどで到着だが、警戒はしててくれよ」
アニジャさんによると、シーサーペントが出るならこの辺りからだという。
遭遇したら逃げるしかないので、いつでも風の魔法を使う準備はしておこう。
_
( ゚∀゚)「警戒っつっても、何を警戒すればいいんだ? 出現の兆候でもあるのか?」
( ´_ゝ`)「不自然にデカい波とか、水中からの気泡とか、わかりやすい渦とかだな」
从 ゚∀从σ「渦ってーと、あんなのか?」
( ´_ゝ`)「どれどれ? そうそう、あんな──」
(;゚_ゝ゚)「渦ぅぅぅぅっ!?」
- 528 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:07:23 ID:nF.oKsD60
ハインさんが指す方向、船の進路の遥か先、右前方にこの船よりかなり大きな渦が出現しているようだ。
僕には目視ではよく見えないのだが、アニジャさんから遠眼鏡を借りて見た所、確かに渦が巻いている。
(;´_ゝ`)「進路急速変更! 取舵いっぱい!」
(´<_`;)「取舵いっぱーい!」
シーサーペントは感覚器はそれほど発達しておらず、あまり遠くまで判別出来る能力はないらしい。
距離を空ければ気付かれないで済むかもしれないと、船の進路を大きく左にずらす。
ξ゚听)ξ「あれがシーサーペント確定ってわけじゃないんですよね」
(;´_ゝ`)「ああ、だがあのサイズの渦を作るモンスターなんてそうはいないからな」
僕達は一応戦闘態勢を取り、有事に備える。
船上で重装備は万が一海に落ちた時にヤバいので、ミルナさん達も軽装で間に合わせている。
(´<_`;)「渦の方に動きあり! 出るぞ!」
オトジャさんの声に僕らは渦の方を注視する。
大量の水泡が水面に弾け、何かが海中から飛び出した。
- 529 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:08:55 ID:nF.oKsD60
//////
E/ `v-v,)
E/ / ̄
(;^ω^)「シーサーペント!」
かなり離れた位置からでもその竜の如き顔がはっきりわかるほど巨大なそれは、紛れもなくシーサーペントである。
まだこちらに気付いた様子はなく、ゆっくりと首を左右に動かしている。
(; ゚д゚)「かなり大きいな」
从 ゚∀从「んー、あれはちょいと無理そうだな。船が持ちそうもねえな」
普段なら強いモンスターに真っ先に向かっていこうとするハインさんだが、流石に今回は諦めてくれる様だ。
前もって言い含めていた上、足場の問題もあるので条件が悪いと理解してくれたのだろう。
(;´_ゝ`)「このままやり過ごすぞ。全員、姿勢を低くして口を開くなよ」
このまま動かなければ流木か何かと認識されて、やり過ごせる可能性があるというアニジャさんは言う。
逆に言えば、感覚器の優れていないシーサーペントでも、明らかに異質な動きを感じれば襲って来るだろう。
ただ、この色合いで流木と思ってくれるか一抹の不安は感じるが、この距離なら色はよくわからないかもしれない。
_
( ゚∀゚)「匂いとかでばれんじゃねえか?」
(´<_`;)「大丈夫、やつは潮の匂いで気付かないはずだ。いいか、静かにするんだぞ」
- 530 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:10:07 ID:nF.oKsD60
//////
E/ `v-v,)
E/ / ̄
_
(;´_ゝ`)( ゚−゚)从 ゚−从( ゚−゚)(;^ω^)(∪^ω^)ξ゚−゚)ξ(´<_`;)
僕らは息を殺し、船が風に流れる任せてシーサーペントをやり過ごす。
いつこちらに気付かれるかもしれないという恐怖が、僕の動悸を激しくする。
(;^ω^)(ヤバ……くしゃみ出そう)
緊張の所為なのかはわからないが、急に鼻がむずむずし、思いっきりくしゃみがしたくなった。
我慢すべき時だが、こういうのは一旦意識してしまうと気になって仕方がなくなる。
しかし、くしゃみで気付かれるなんてベタな事をやるわけにはいかない。
(;^ω^)(いや、くしゃみぐらいなら波音で聞こえないお……でも、聞こえたらどうしようかお……)
そんな葛藤の最中、視線を感じたのでその方向を見ると、ツンがこちらに険しい顔を向けている。
どうやら僕の置かれている状況に気付いたのか、険しい顔のまま首を振ってみせる。
- 531 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:11:24 ID:nF.oKsD60
- _,
((ξ゚听)ξ)) フルフル
(;^ω^)"(わかってるお。我慢するお)
僕は頷いてみせ、くしゃみを堪える為に視線を下げる。
;;(∪^ω^);;
(;^ω^)(ちょ、わんお、お前もかお!)
;;(∪´ω`)";;
ゆっくりと頭を前後させ、今にもくしゃみをしそうなわんわんお。
僕はその口を押さえ、我慢するように声を潜めて言い聞かせる。
(;^ω^)「今くしゃみしたら駄目だお。静かにしてるお」
つ∪^⊂ フガフガ……
少し苦しそうな顔をしたわんわんおだったが、何とかくしゃみは抑える事が出来た。
申し訳ないがもう少しだけ我慢して欲しい。
あと少しでこの場を乗り切れるはずだ。
- 532 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:13:08 ID:nF.oKsD60
’。・ .(`<_´ )「ぶぇっくしょいッ!」
(;゚ω゚)「お前がやるんかい!!!」
//////
E/`v-v´)
E/ /
(;^ω^)「あ、ヤベ……」
思わず大声で突っ込んでしまった僕は、すぐに自分の失態に気付いた。
シーサペントの視線がこちらに向いているのを感じる。
(;^ω^)「クッ……、こうなったら……」
(;´_ゝ`)「いや、待て!」
(;^ω^)「お?」
- 533 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:16:14 ID:nF.oKsD60
//////
E/ `v-v,)
'''''''''''’'’'’'’'’'’'’''''''''''
シーサーペントはこちらに向かってくる事はなく、そのまま海中に消えていった。
(;^ω^)「助かった……のかお?」
(; ゚д゚)「どうやら気付かれずに済んだようだな……」
_
(;゚∀゚)「流石にちょっと肝が冷えたぜ」
ξ;゚听)ξ「何やってんのよ、あんたは」
(;^ω^)「正直すまんかったお」
+(´<_` )「まあでも、常識的に考えて、この距離でくしゃみ程度の音に気付くわけないよね」
_, _, _, _, _,
( ゚−゚)从 ゚−从( ゚−゚)( ^ω^)(∪^ω^)ξ゚−゚)ξ
(;´_ゝ`)「うん、オトジャよ、空気は読もうな」
- 534 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:18:02 ID:nF.oKsD60
僕らを代表してツンがオトジャさんのボディに一発を食らわせ、何とかこの場を凌ぎ切る事が出来た。
逸れてしまった進路を取り直し、僕らは島へ向けて船を走らせる。
( ´_ゝ`)「島が見えて来たぞ」
( ^ω^)「おー」
つ∪^ω^)「わんおー」
水平線の先にぽつんと深い緑の何かが見える。
この位置からでは島というよりはただの点にしか見えないが、近付くにつれ、
その姿ははっきりと認識出来るようになっていった。
( ´_ゝ`)「よし、この辺かな。オトジャ、頼む」
(´<_` )「おk、アニジャ、頼まれた」
オトジャさんは船の先端に立ち、腰のベルトに手を当てて構える。
次の瞬間、乾いた音と共にオトジャさんの腰からロープのようなものが飛び出した。
(´<_` )「よし、ヒット」
飛んでいったロープは、島の砂浜の奥にある大木に届き、絡まる。
結構な距離があったが、かなりの飛距離が出た所を見るに、これも機工技術の産物なのだろう。
- 535 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:19:46 ID:nF.oKsD60
(´<_` )「固定完了」
オトジャさんはロープを腰から切り離し、船に繋げる。
よくみるとそのロープはただのロープではなく、例の鉄の紐のようであった。
確かワイヤーとかいうやつだったか。
( ´_ゝ`)「浅瀬に乗り上げるわけにはいかないからな。船はこの位置に停泊だ」
アニジャさんは帆を畳み、錨を降ろして船を停めた。
どうやって陸に渡るのかと思ったら、あのワイヤーに滑車を通して渡るらしい。
(´<_` )「大した距離もないから泳いでもかまわないけどね」
まずオトジャさんが滑車を使って島に降り立ち、僕らが降りるのを補佐をしてくれる様だ。
今回は大して荷物はないが、大きな荷物送る場合も滑車が使えるようである。
从 ゚∀从「行っくぜー」
僕らの中からはいつも通りハインさんが先陣を切り、滑車に掴まり島へ向かう。
そして抱き止めようとしたオトジャさんを蹴り飛ばし、危なげなく砂浜に降り立った。
- 536 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:22:23 ID:nF.oKsD60
( ゚д゚)「わんおちゃんはどうする?」
次々と砂浜に降り立ち、あとは僕とわんわんおとミルナさん、それにアニジャさんがまだ船上に残っている。
アニジャさんとわんわんおは船で番をする予定だが、今日は島で一泊するので全員降りる事になる。
(∪^ω^)
(三∩( ^ω^)「魔法の紐で固定して頭に乗せて降りますお」
僕が浮遊の魔法とか使えれば楽なのだが、自分を浮かせるのはかなり高度な魔法なのだ。
物とか浮かせるのは出来るので、わんわんおを魔法で降ろす事も出来るが、もう縛っちゃったし、
一緒に降りようと思う。
(∪^ω^)「わんおー」
(三∩( ^ω^)∩「というわけでしゅっぱーつ!」
滑車は快調に滑り、瞬く間に砂浜に辿り着く。
僕は皆に倣って、抱き止めようとしたオトジャさんをクッションに砂浜に降り立つ。
(´<_`;)「みんな初めてなのに着地が上手いね」
何だか寂しそうに言うオトジャさんだったが、すぐに立ち直りまた張り切ってワイヤーの側に立った。
何でこの人はこんなに元気なのだろうかと少し感心する。
- 537 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:23:18 ID:EP/yvAWoO
- 来てたか
支援さ
- 538 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:24:05 ID:nF.oKsD60
それから野営の準備をし、食事、就寝と滞りなく進む。
島自体は既に調査済みで、モンスターはごく僅か、それも弱いものしか目撃されていないらしいが、
遺跡から新たなモンスターが湧き出している可能性もあるので、アニジャさんとオトジャさんが交代で夜番を勤めた。
そして翌日、僕達はわんわんおをアニジャさんに預け、遺跡に向かう。
(´<_` )「ここだ」
_
( ゚∀゚)「入り口って言うか、ただの横穴だな」
オトジャさんが発見した遺跡の入り口は正式な入り口ではないようで、
遺跡の一部が破損して入れる様になった場所らしい。
遺跡の用途にもよるが、正式な入り口以外から入るのは危険は増すと考えるべきだろう。
( ^ω^)「全体把握、用途把握、色んなものすっ飛ばしていきなり中に入るわけですからね」
( ゚д゚)「入った瞬間トラップ部屋とか笑えないにも程があるからな」
一応、オトジャさんが1度進入した場所なので、いきなり危険に見舞われる事はないが、
それが遺跡のどの辺りに位置するのかわからないのは厳しいものがある。
- 539 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:32:10 ID:nF.oKsD60
ξ゚听)ξ「島の文明の調査は終わってるんですよね? 遺跡の用途のはそこからわかってないんですか?」
+(´<_` )「いい所に気付いたね。結論から言うと、この遺跡に関する記述は一切なかった」
( ^ω^)「一切なし? 名前すらも? 何か不自然過ぎますおね」
(´<_` )「だから今まで見付かってなかった面もあるんだけどね」
(´<_` )「しかし、確かに不自然だ」
(´<_` )「だから僕は、最初小部屋ぐらいの広さだと思ったんだけど、思いの他長い通路があってね」
オトジャさんはそこでこのまま進むのは準備不足だと感じ、引き返したらしいが、話が本当なら不自然所の話ではない。
この地下施設が何らかの目的によって作られ、使用されていたのなら何かしら記述はあるはずなのだ。
( ゚д゚)「文明の調査はされているとはいえ、記録が全て残っているわけはないだろうからな」
_
( ゚∀゚)「記録がなくてもおかしくはない、か」
ミルナさんの言う通り、古い文明の跡だ。
記録が欠けている可能性も考えられはする。
- 540 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:33:16 ID:nF.oKsD60
何にせよ、入ってみて調べるのが僕らの目的だ。
ここで議論をしていても何も始まらないので、僕らは遺跡に入る事にした。
。
||ヽ(´<_` )「おっと、まずは……サースガ式ライトー!」
爽やかな掛け声と共に、オトジャさんが何か棒状のものを取り出し、頭上に掲げる。
どうやら松明らしいが、金属製で火を灯して使うものではないらしい。
これもアニジャさんの発明なのだろう。
。
||⊂(´<_` )「これでいい、行こうか」
ξ;゚听)ξ「いや、ちょっと光弱くないですか?」
オトジャさんの持つ松明は発光しているが、通常の松明の光より少し弱く見える。
それでは足りないと感じたのか、ツンが僕に視線を向け、促す。
{○}
( ^ω^)つ}{「ライティング」
僕は呪文を唱え、杖に少し強めの光を灯す。
長丁場になる事も考えると、なるべく魔力の温存はしたいが明かりは必須だから仕方がない。
それを見てオトジャさんが寂しそうに松明を仕舞っていたが、全体の安全を考えるとこちらの方がいい。
- 541 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:34:26 ID:nF.oKsD60
- _
( ゚∀゚)「で、右と左どっちだ?」
中は石造りの壁があり、左右に道が伸びている。
多分ここは通路なのだろう。
幅はそれなりに広く、僕らが横一列に並べるくらいはあり、天井もかなり高い。
(´<_` )「右だ。以前もそっちに向かい、行き止まりでない事は確認しているからな」
最終的にはどちらにも進む必要があるかもしれないが、ひとまずこちらに向かうとオトジャさんが先導する。
護衛対象が先頭なのはどうなのかと思うが、モンスター以外にもトラップ等も怖いので、
慣れているオトジャさんが先頭を行くと主張した。
ξ゚听)ξ「随分としっかりした作りよね」
( ^ω^)「うん、穴掘って終わりじゃなくて、ちゃんと石壁にしてるお」
+(´<_` )「うんうん、君達は目の付け所がいいね。そこからこの施設の目的を絞る事が出来るかもしれないね」
ξ゚听)ξ「土壁じゃ目的に対して不十分だったって事ですか?」
(´<_` )「そういう事。まあ、単にこの辺りの地盤が弱かっただけの可能性もあるけどね。でも……」
- 542 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:35:47 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「それなら最初から地下に施設なんか作らない」
+d(´<_` )「グゥレイト、その通りだ」
他に考えられる理由として、権力の誇示の為にわざわざ石壁にした事も考えられるが、それにしては装飾が少ないし、
記録もない事からその可能性は低いだろうとオトジャさんは言う。
流石トレジャーハンターというべきか、細かい所をよく見てちゃんと考察している。
僕達は通路を歩き続け、角を曲がる。
それから少し通路を進むと十字路に出た。
_
( ゚∀゚)「今度は3方向か。どっちに進むんだ?」
オトジャさんはここから先はまだ未調査らしく、少し考える素振りをし、それぞれの道を調べ始める。
左右はこれまでと似たような通路が続いているが、正面は少し傾斜のきつめの下り坂になっている。
ξ゚听)ξ「どっちが中央なのかわからないのが厳しいとこね」
( ^ω^)「入ってきた場所が外壁だとすると、この正面の道っぽいおね」
( ゚д゚)「1つだけ作りが違うな。地盤沈下で下り坂になったわけでもなさそうだ」
- 543 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:37:20 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「中央を目指すか、先に入り口を目指して情報収集するか迷うとこですおね」
从 -∀从「めんどくせーなー。どうせ全部回るんなら適当でいいだろ?」
そう言うとハインさんは正面の道に向かう。
確かにその通りだが、単独行動は控えて欲しいと思う。
( ^ω^)「ハインさん、トラップが有る可能性もあるのであんまり1人で先に行かないで下さいお」
从 ゚∀从「わかってるよ。そんなヘマはしねえさ。これでも足元には気を付けてる」
僕はハインさんの方に歩み寄り、坂の下に視線を向ける。
かなり長い通路らしく、明かりの届く範囲だけでは先が見通せない。
(´<_` )「そうそう、こういう何度も通りそうな場所にはトラップが仕掛けられてる可能性があるからね」
+(´<_` )「逆に言えば、トラップが仕掛けられてるなら、何かしら貴重なものがある可能性もあるんだけどね」
そう言ってオトジャさんも僕とハインさんの方へ歩み寄る。
- 544 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:38:55 ID:nF.oKsD60
(´<_` )「でも大丈夫、この冒険野郎・サスガイバー、そう簡単にトラップに──」 カチッ
. _, _,
( ^ω^)从 ゚∀从「あ……」
乾いた音がしたと思った瞬間、轟音と共に石の壁がものすごい速さで降りて来て通路を塞いだ。
まずい事に僕とハインさん、オトジャさんはツン達と石壁を隔てて分断されてしまった。
从#゚∀从「お前……何やってんだよ!」
(´<_`;)「ま、まあ、僕らの上に落ちてこなかっただけマシだった──」
オトジャさんが全てを言い終えるより早く、再び轟音が響く。
僕らと壁の間に、通路の幅いっぱいはある巨大な丸い岩が落ちて来た。
(;^ω^)「坂道に巨大な丸い岩……そこから導き出される今後の展開は……」
从;゚∀从「ヤバい、走れ!」
落ちて来た岩は坂道の下方、つまりは僕達の方にゆっくりと転がり出す。
慌てて僕達は坂道を全力で駆け下り出した。
- 545 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:40:00 ID:nF.oKsD60
(;^ω^)「なんちゅうベタな」
从;゚∀从「いいから走れ!」
+(´<_`;)「ハッハッハ、この程度のトラップ、このサスガイバーにかかれば……」
从;゚∀从「うるせえ! 黙って走れ!」
岩が動き出す前なら魔法で壊すという手も使えた可能性もあるが、今となっては詠唱が間に合わない。
何かしらの詠唱の短い魔法であの岩の勢いを止めるのは無理がある。
ここは逃げるしか道はないが、この先が行き止まりなら最悪だ。
(;^ω^)「取り敢えずksk、ksk、ksk!」
エア・シューズの魔法を全員にかけ、速度を上げる。
オトジャさんが不慣れな魔法の所為で転ばないか心配だったが、使わないわけにもいかない。
(´<_`;)「ちょ、何、これ、うお!?」
(;^ω^)「僕の手に掴まって、バランス崩さないように気をつけて走ってくださいお」
(<_` ;)「岩! ちょ、岩! もう、すぐそこに!!!」
(;^ω^)「前見て走ってくださいお!」
- 546 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:40:47 ID:EP/yvAWoO
- 王道展開だな
- 547 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:41:04 ID:nF.oKsD60
(;^ω^)「ハインさん! 通路の横、やり過ごせそうな場所ありませんかお?」
目のいいハインさんなら早い段階で気付けるかもしれない。
終点が行き止まりという危険を避けるためにも、やり過ごせるならその方がいい。
从;゚∀从「あった、左だ!」
(;^ω^)「あそこに入りますお!」
(´<_`;)「把握!」
从;゚∀从「そこだ! 跳べ!!!」
僕達はハインさんの指す方向に跳び、雪崩れ込むように脇道に入る。
その背後を大岩が通り過ぎて行くのを感じた瞬間、謎の浮揚感に包まれた。
从;゚∀从(;^ω^)(´<_`;)「げっ!?」
それが自分達の足元がなくなった所為だと気付いた時には既に、僕達は真っ逆さまに落ちていた。
避けた先に落とし穴のトラップとは、何とも用意周到な事だと感心する。
- 548 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:42:09 ID:nF.oKsD60
(;^ω^)「なんて冷静に分析してる場合じゃないお。ウインド・バリア!」
僕は重なり合うように落ちていた2人の身体を抱き寄せ、風の障壁を張る。
その次の瞬間には、身体に衝撃を感じ、鈍い音が耳に響いた。
地面着いたはずの身体は、更にゆっくりと沈んで行く。
(;^ω^)(何かこの感覚には覚えが……)
どうやら下は地下湖か何かのようで、僕達は地面に叩きつけられて死亡という最悪の展開は避けられたらしい。
風の障壁を解除し、岸を目指して泳ぎ出す。
(;^ω^)「ふひー、何とか助かったみたいですお」
从;゚∀从「みてえだな。魔法ありがとな、ブーン」
+(´<_`;)「ここここの程度のトラップ、このサスガイバーにかかれば……」
从#゚∀从「お前は黙ってろ!」
何とか岸に辿り着いた僕達は、しばらくそのまま地面に寝転がって休んだ。
周囲の状況も把握せずにそうするのはかなり迂闊だが、展開がハードすぎて起き上がれなかったのだから仕方がない。
- 549 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:43:24 ID:nF.oKsD60
从;-∀从「モンスターの気配はねえ。ここ、どこだろな?」
(;-ω-)「魔力は感じませんお。どこでしょうかおね?」
(-<_-;)「先の遺跡とは作りが違うね。地面が剥き出しの岩だ」
僕はどさくさで消えてしまっていた明かりの魔法を点け直し、寝転んだまま周囲を見る。
見た感じ、天然の洞窟の様であった。
( ^ω^)「遺跡からは出ちゃったみたいですおね」
(´<_` )「その様だね。少し調べてみるよ」
オトジャさんは立ち上がり、周囲の探索を始めた。
護衛としては付き従う必要があるので僕も立ち上がろうとするが、ハインさんが僕はもう少し休めとそれを制した。
从 ゚∀从「いきなり魔法連発しただろ? この後もお前の魔法は必要になるから、休める時に休んでてくれ」
( ^ω^)「ここはお言葉に甘えておきますお」
それを言うならハインさんの戦闘力もこの先必要になるのだが、今は素直に従っておく。
まず合流を第一に考えるなら、色々と魔法を駆使する必要が出て来そうである。
- 550 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:45:38 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「ツンに探査出来る何かを持たせておけば良かったお……」
パーティーが分断される可能性を考えておかなかったのは迂闊だった。
ヴィップに戻ったらクーのペンダントを参考に、探査用のアイテムを作ろうかと考える。
( ^ω^)「あ、これ意外と需要ある商品になるんじゃないかお?」
道具として使うなら使い捨てか、多くても数回しか使えないかもしれないが、それでも現在位置把握には有用だ。
遺跡や洞窟探索をメインにしている冒険者には結構な需要があるのではなかろうか。
( ^ω^)「でも、携帯性と魔法の定着を考えると……うーん……」
思考が完全にそれ、頭の中で新商品開発を試行錯誤していると2人が戻って来た。
ひとまず洞窟の奥に進み、遺跡に戻れないか調べようという事になったらしい。
从 ゚∀从「落ちて来た穴に戻るのは難しそうだからな」
(´<_` )「僕のサースガ式ワイヤーを使えばいけるかもしれないけど、全員を上げるのは難しいかもしれない」
( ^ω^)「あの通路に戻った所で、また岩が落ちてきたら嫌ですしね」
- 551 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:47:50 ID:nF.oKsD60
僕達は方位磁石に従い、進む方角を決める。
直線的に落ちて来たのだから、現在地はまだ遺跡の下にあるのは確かだろう。
( ^ω^)「最悪、一旦地上に出るってのもありですお」
(´<_` )「むしろそっちの方がいいかもしれないね」
合流を考えるなら地上に出る方がいいのかもしれないが、ともかく道次第という事で僕達は先に進む。
从 ゚∀从「ブーンの魔法でズバーンと一気に外まで道作ったり出来ねえの?」
(;^ω^)「出来ないと言うか、下手に壁壊そうとして洞窟崩れたら嫌ですお?」
トラップで石壁が落ちて来た時も、大岩が落ちて来なければあれを壊して合流すると言う手は使えたかもしれない。
しかし、下手な事をして遺跡が崩れ、生き埋めになる危険性を考えるとあまりやりたくない手だ。
それに遺跡の保護とかそういう観点からすると、乱暴な手を使うのはよろしくない。
そうも言ってられない自体に陥った時なら止むを得ないが、なるべくなら遺跡自体への攻撃はするべきではないだろう。
(´<_` )「トレジャーハンターの世界でも、遺跡を傷つけて進むようなやつは三流扱いだよ」
- 552 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:50:33 ID:nF.oKsD60
从 ゚∀从「簡単にトラップに引っかかるのも三流だよな」
+(´<_` )「引っかかっても無事なら引っかかった内に入らないさ」
从:-∀从「んなわけねーだろ……」
概ねハインさんに同意だが、確かに僕らは無傷で、ある意味トラップを回避出来ている。
知識量や落ち着き具合からしても、オトジャさんがへっぽこトレジャーハンターというわけでもないとは思う。
若干、頼りなさを感じるのは否定出来ないが。
そういえばアニジャさんは、オトジャさんの事を運だけはいいと言っていた。
今なら何となくその意味がわかる気もする。
(´<_` )「む、行き止まりか?」
道なりに進んだ先は道が途切れ、切り立った崖の様になっていた。
下を除くと真っ暗で底が見えず、吸い込まれそうな闇だけが広がっている。
从 ゚∀从「向こう側に道はあるみたいだぜ?」
ハインさんの言葉通り、崖を越えた先には道が続いているようだ。
向こう側も切り立った崖で、一箇所大きな横穴があり、そこから更に奥に進めそうだ。
しかしながら向こう側に渡れるような道もなく、この距離では飛び越えるのも不可能だろう。
- 553 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:52:07 ID:nF.oKsD60
从 ゚∀从「魔法で自分以外なら浮かせる事も出来るんだったよな?」
从 ゚∀从「まあ、ブーンだけ置いて行くわけにはいかねえからその手は使えねえが」
( ^ω^)「そもそも重量的に厳しいと思いますお」
ギリギリ
从#^∀从「重量的に、なんだって?」
;;つ};^ω^{⊂;; 「ぼ、僕の魔力的に力不足なだけですお。決して体重の問題じゃ……」
何とかハインさんのぐりぐり攻撃を外し、引き返して別の道を探す方が現実的だと提案する。
もしくは、オトジャさんのワイヤーを使って崖下に降りるかだが、
これ以上遺跡からも地上からも遠ざかるのはどうだろうか。
+d(´<_` )「そう、こんな時こそサースガ式ワイヤーだ!」
( ^ω^)「お?」
(´<_` )「これで対岸へ渡ろうじゃないか」
上陸時に船から島へ撃ったようにワイヤーを使うとオトジャさんは言う。
確かにあれなら、距離は十分に届くだろう。
从 ゚∀从「対岸のどこに巻き付けんだよ? 木は勿論、使えそうな柱もねえぞ?」
- 554 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:54:33 ID:nF.oKsD60
( ^ω^)「岩ですし、撃ち込むのも無理ですおね?」
(´<_` )「フフフ、あれを見たまえ」
そう言ってオトジャさんが指を差す先、洞窟の天井にはいくつもの石柱が上から横からと様々な方向から伸びている。
+(´<_` )「あれにワイヤーを巻き付け、振子の要領で向こう側に飛ぶんだ」
その後、向こう側に着地したオトジャさんが再度こちらにワイヤーを撃ち込み、僕らの背後にある石柱に巻き付け、
反対側は更に奥に進んだ先にある石柱に巻き付けるか、自分がしゃがんで踏ん張れば何とかなるとオトジャさんは言う。
从 ゚∀从「確かに、こっちには石柱あるな」
( ^ω^)「行けそうな案ではありますが……」
僕はちらりとオトジャさんの顔を盗み見た。
その顔は自信に満ち溢れているが、あっさりトラップに引っかかった腕前を思うと何となく不安は感じてしまう。
この場合は身のこなしの一番優れているハインさんがやった方がいいような気もする。
(´<_` )「大丈夫、天井の柱も頑丈そうだし、僕1人を支えるくらいわけないさ」
- 555 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:55:55 ID:nF.oKsD60
そう言ってオトジャさんはワイヤーを天井目掛けて発射する。
ワイヤーはうまい具合に横から伸びていた柱に絡み付き、しっかりと固定されたようだ。
从 ゚∀从「この張り具合なら途中で外れるって事はなさそうか」
+(´<_` )「それじゃあ、君達はこちらで僕の華麗なる飛翔を見守ってくれたまえ」
( ^ω^)「気を付けてくださいお」
オトジャさんは親指を立て、爽やかな笑顔をこちらに向ける。
そして躊躇う事無く、中空に身を躍らせた。
\
\ 彡
`ヽ
(´<_` )-┐ とうっ!
┗-ヽ ノ
┏┘
- 556 名前:名も無きAAのようです:2012/04/01(日) 23:57:58 ID:nF.oKsD60
最初のジャンプの勢いを殺す事無く、オトジャさんは崖を跳び越えて向こう側を目指す。
僕達は固唾を飲んでその様を見守った。
( ^ω^)「お、これなら──」
| 岩 / ミ |
| ビターン / ミ |
| \、_,ノ 、_/ |
| _,ノ ( |
| `)ヽ( )ノ ___──
| ┗-ヽ ノ  ̄ ̄ ̄
| ┏┘  ̄ ̄ ̄──
| '⌒) (` |
| /' '^\ |
从;゚∀从(;^ω^)「ちょ……!」
向こう側に到達間際、勢いが足りなかったのか、ワイヤーを結ぶ位置が近過ぎたのか、
オトジャさんは崖の横穴の少し下の岩壁に激突した。
更に悪い事に、既にワイヤーは切り離されていたようで、オトジャさんはそのまま垂直に落下して行く。
从;゚∀从(;゚ω゚)「オトジャさぁぁぁぁぁんっ!!!」
- 557 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:01:22 ID:8y5aHBRQ0
| 岩 |
| |
| | | | |
| |
| ヽ( )ノ ドスンッ.|
| ┗-ヽ ノ-┛ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
从;゚∀从(;^ω^)「セーフ!!!」
運のいい事に崖に出っ張りがあり、オトジャさんはそれに引っかかって落下は免れた。
肝を冷やしたが、あのくらいの高さなら横穴まで登る事も出来るだろう。
(;^ω^)「オトジャさーん、大丈夫ですかおー?」
+d(´<_`(#)「だ、大丈夫、計算通りさ」
从;゚∀从(;^ω^)「ウソつけぇぇぇぇぇッ!!!」
膝をがくがくと震わせながらもオトジャさんは立ち上がり、こちらに笑顔向ける。
明らかに強がっているとしか思えないが、その位の元気があれば大丈夫だろう。
無事で何よりだ。
- 558 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:02:12 ID:8y5aHBRQ0
その後、横穴に辿り着いたオトジャさんがワイヤーをこちらに飛ばし、手はず通りにワイヤーを張り、
向こう側へ渡った。
魔法のロープで命綱を張ったとはいえ、崖を渡るのはかなり怖かった。
躊躇なく飛べたオトジャさんを少し尊敬する。
从 ゚∀从「さて、そろそろ先に行くか。この崖っ縁に止まるのはモンスターと遭遇した場合、よろしくねえしな」
( ^ω^)「もう少し進んだら、1度休憩した方がいいかもしれませんね」
(´<_` )「そうだね。そろそろ何かお腹に入れておいた方がいい時間だ」
さっきの崖渡りでオトジャさんが疲れているだろうと思い、僕は休憩を提案する。
僕も少しお腹も空いて来た。
从 ゚∀从「何か食えそうな生き物でもいねえかね」
( ^ω^)「携帯食料で我慢しましょうお」
僕達は洞窟を道なりに進む。
横道がないのは迷わなくて済む代わりに、行き止まりの不安が常にある。
- 559 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:04:05 ID:8y5aHBRQ0
( ^ω^)「これで行き止まりだったらまた崖ダイブですお」
+(´<_` )「何度だって華麗に羽ばたいてみせるから安心していいよ」
从;゚∀从「お前を見てると心臓に悪いから次は俺がやる」
しばらく歩くと僕の不安は幸いにも外れ、少し広い空間に出た。
ざっと見回すと、いくつかの道があるようだ。
( ^ω^)「これはこれでどこにいくか迷いますお」
从 ゚∀从σ「いや、その必要はなさそうだぜ」
( ^ω^)「お?」
ハインさんが指差す先を見ると、壁か天井でも崩れたのか、積みあがった石の山が出来ていた。
よく観察してみると、その上方に人口的な石壁が見える。
(´<_` )「どうやらあそこから遺跡に戻れそうだね」
石壁の一部も破損しており、オトジャさんの言葉通り遺跡に戻れそうである。
またワイヤーを使えばあそこまで登れそうだ。
- 560 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:05:06 ID:8y5aHBRQ0
( ^ω^)「それじゃあ、ひとまずここで休憩を……お?」
从 ゚∀从「気付いたか?」
ハインさんが蛮刀を抜き放ち、僕達の前に進み出る。
どうやらここには先客がいたようだ。
耳を澄ませば、キチキチと耳障りな音が響いて来る。
(´<_`;)「何の音だい?」
(;^ω^)「わかりませんお。けど、ヤバそうなんでオトジャさんは下がっててくださいお」
从 ゚∀从「……来るぞ」
キチキチと耳障りな音にカサカサという音が加わり、何かが近付いて来る。
それから間もなく、広間の横道の1つからそれは姿を現した。
─┐┌─
○・ ・○
\/
(;^ω^)「巨大なカマキリ……?」
- 561 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:06:24 ID:8y5aHBRQ0
褐色の体躯に4本の足、そして特徴的な2本の鎌。
その顔は僕の知るカマキリにそっくりではあるが、大きさは僕達より二回りほど大きい。
从 ゚∀从「へえ、デケえ虫だな」
恐らく、G(ジャイアント)マンティスと呼ばれるモンスターであろう。
見た目も性質もカマキリで、その突然変異と考えて差し支えないはずだ。
Gマンティスは僕達の姿を視認すると、接近速度を緩め、様子を窺うようにゆっくりと近付いて来る。
( ^ω^)「あれがバッタとかなら、その辺の草食べて満足してくれそうなんですけどね」
从 ゚∀从「カマキリなら肉食なんだろうな」
( ^ω^)「取り敢えず先手必勝! ウインド・カッター!」
まずは様子見と風の魔法をGマンティスに放つ。
杖に灯していた明かりの魔法は上空に飛ばし、固定させている。
こうすると一定時間で切れてしまうが、戦場全体を照らすならこの方がいい。
○・ ・○ キチキチ
\/
( ^ω^)「意外と素早いお」
- 562 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:07:49 ID:8y5aHBRQ0
Gマンティスはウインド・カッターを右に大きく跳んでかわした。
この手の昆虫らしく、機動力は高く、危険察知能力も高い様だ。
( ^ω^)「んじゃ、別の魔法を、と」
从 ゚∀从「俺には当てんなよ」
ハインさんはGマンティスに向かって走って行く。
ハインさんが近付くと、Gマンティスはリーチの差で先にその鎌を振り下ろした。
从 ゚∀从「いい振りしてんじゃねえかよ、っと」
Gマンティスの鎌をかわし、肉薄したハインさんは右の蛮刀を横に薙ぐ。
しかしその一撃は、Gマンティスのもう一方の鎌に防がれる。
続けざまに放った左の蛮刀の一撃も、先ほど空振りした鎌を戻し、防いだ。
从 ゚∀从「二刀対決ってわけだな。いいだろう、その鎌へし折ってやるぜ」
ハインさんは受け止められた蛮刀をそのまま押し込もうとするが、力比べでは分が悪いようだ。
それを察したハインさんは、二刀を軸にGマンティスの胴体に蹴りを放ち、その反動で距離を取る。
- 563 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:09:06 ID:8y5aHBRQ0
( ^ω^)「そこに僕のエナジー・ボルト!」
普段あまり使う事のない、コモンマジックの攻撃魔法。
精霊の力を借りないので、威力は純粋に自分の魔力だけに因る事になるが、
この魔法の特徴は速度が遅い代わりに制御がしやすいのだ。
素早く避けてもどこまでも追い掛ける事が出来る。
案の定、横に飛んで避けるGマンティスを僕は魔法を制御して追い掛けさせる。
( ^ω^)「どこまでも追ってやるから逃げても無駄だお」
ハインさんもエナジー・ボルトの性質を理解した様で、右から追うエナジー・ボルトの反対側に回り、
Gマンティスを挟み込む様に位置する。
恐らく、跳んで避けた後の着地を狙うつもりだろう。
( ^ω^)「これで──」
エナジー・ボルトが当たろうとする瞬間、Gマンティスは跳んだ。
(;^ω^)「!?」
前方に大きく、僕の方を目掛けて。
- 564 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:10:11 ID:8y5aHBRQ0
____ ─┐┌─
/ \ ○・ ・○ キチキチ
|/~~~~~~~|=| \/
从;゚∀从「チッ! 避けろ、ブーン!」
(;^ω^)「速──」
宙を羽ばたき、瞬く間に僕の眼前に迫るGマンティス。
感情を一切感じさせない無機質な目が僕を見下ろす。
エナジー・ボルトの制御を断念し、別の魔法を詠唱するにも間に合わない。
一瞬の迷いが僕の動きを鈍らせ、僕が避けるより早く、空中から巨大な鎌が振り下ろされた。
第二十一話 仄暗き地の底で 終
- 565 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:14:34 ID:fcZntX1s0
- 乙
- 566 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:16:32 ID:1HKXGURo0
- うむ、気になる引きだ
乙
- 567 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:17:20 ID:8y5aHBRQ0
二十一話は以上です
最初、話タイトル案は『がんばれサースガからくり道中』だったのですが、
最後の雰囲気を壊しすぎるので止めました
次話の投下は未定です
書き上がってるので、時間が取れた時にでも
支援とか感謝です
- 568 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 00:19:49 ID:snH4kAjMO
- ここで引くか
乙
- 569 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 01:18:19 ID:KhEKQtec0
- 乙
次の話が楽しみだ
- 570 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 07:36:36 ID:Dwdx75jkC
- おつおつ、本当毎回楽しみだよ
次回も期待してるよ
- 571 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 11:07:19 ID:fH8RK0pMO
- 乙
フォーチュンクエスト的なわくわく感だ
- 572 名前:名も無きAAのようです:2012/04/02(月) 12:31:25 ID:U1eVBrhM0
- >>571
+(´<_` )「なるほど、俺がパステル的ポジションなわけか。」
- 573 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 13:24:44 ID:k6vUkDqw0
- 乙乙
続きが楽しみだ
- 574 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:29:20 ID:1JxBObwQ0
〜 ソクホウ西の小島 地下洞窟 〜
(;^ω^)「クッ……」
从;゚∀从「ブーン!!!」
○・ ・○ キチキチ
\/
+(´<_` )「サースガ式ワイヤー!」
;;○・ ・○;; ギッ!?
\/
第二十二話 激震の地下迷宮
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 575 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:30:07 ID:1JxBObwQ0
(;^ω^)「オトジャさん!? た、助かりました」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
(´<_` )「無事で何よりだ。それより気を付けて、多分今の一撃でのダメージは無いに等しいからね」
彼の名前はオトジャさん。
アニジャさんの弟で、トレジャーハンターをやっていて、冒険野郎サスガイバーの異名を持つ人だ。
僕達は、オトジャさんの護衛としてソクホウの西にある小島の地下遺跡調査のクエストに来ている。
ちょっとしたアクシデントで僕とハインさんとオトジャさんはツン達と分断され、
遺跡から更に地下洞窟に落ちてしまった。
現在はそこで遭遇したモンスター、Gマンティスと戦闘中だ。
僕は危うくGマンティスの鎌の一撃を食らうとこだったが、
隠れていたはずのオトジャさんが飛ばしたワイヤーがそれを阻んでくれた。
从 ゚∀从「ここは俺が抑える。お前ら一旦下がれ」
こちらに駆け戻り、Gマンティスに斬り掛かるハインさん。
Gマンティスはそれを避けず、鎌で受け止める。
- 576 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:31:13 ID:1JxBObwQ0
(;^ω^)「頼みますお。オトジャさん」
(´<_` )「うん、距離を取ろうか」
僕達は部屋の入り口付近まで下がり、態勢を整える。
( ^ω^)「思った以上に機動力ありますおね。魔法を当てられる気がしないですお」
(´<_` )「僕が当てたみたいに攻撃の最中を狙うか、今みたいに斬りあってる最中を狙うかだね」
前者は自分の身を危険に晒す事になり、後者は誤射が怖い。
選ぶなら前者だが、魔法を維持しつつ相手をおびき寄せるのは中々に骨が折れる。
後者の場合は、うまく体勢を崩せた時を狙えればいいのだが、Gマンティスは伊達に4本足ではないのだろう。
ハインさんとの打ち合いの最中でも全く体勢がぶれていない。
( ^ω^)「いっそ、2人とも横穴に隠れてもらって広範囲魔法ぶちかましますかお」
そうすれば如何に回避能力の高いGマンティスでも逃げ切れるものではない。
それが一番確実そうだが、問題もある。
- 577 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:32:05 ID:1JxBObwQ0
(;^ω^)「でも、それやったらここ崩れそうですおね」
(´<_` )「その可能性は高いね。所々壁が剥落しているのが目立つからね」
来た道とは別の横穴に入り、最悪ここを崩す覚悟で魔法を撃つという手もあるが、
折角遺跡に戻れそうな道を見付けたのに、それも潰すのはどうだろうか。
入った先の道が行き止まりの場合も考えると、やはり避けるべき手と考えた方がいいだろう。
从#゚∀从「この野郎ッ!」
○・ ・○ キチキチ
\/
ハインさんの攻撃は、悉くGマンティスに防がれている。
状況はハインさんが押しているようにも見えるが、あの守りの堅さでは戦いは長引くだろう。
サイズの大きい、リーチで負けるモンスター相手に前面で戦う人間が1人というのは厳しいものがある。
( ^ω^)「やっぱ近距離魔法狙いで、僕も接近戦を仕掛けるしかないかおね」
僕は杖を両手で持ち、Gマンティスへ向かう。
僕の杖は木製にしてはかなり丈夫に作られているが、あの鎌の攻撃を防げるかはわからない。
正面から受け止めるのは避けたい所だ。
- 578 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:33:10 ID:1JxBObwQ0
(´<_` )「ブーン君!」
( ^ω^)「お?」
ハインさんの援護に向かおうとしていた僕をオトジャさんが呼び止める。
そして、1つ考えがあると僕に手招きをした。
∂(´<_` )「あそこの壁を見てくれないか?」
オトジャさんが指差す先は、一見何の変哲の無い壁であった。
しかしよく見ると、壁にひびが目立ち、下の方にはいくつか落下した岩が見える。
(´<_` )「僕があそこにトラップを仕掛ける。準備が出来たら、あいつをあの下に誘き寄せてくれないか?」
( ^ω^)「なるほど、落石させるつもりですね?」
(´<_` )「そういう事だ。ちょっと落石を促すための仕掛けに時間かかりそうだけど何とかしよう」、
( ^ω^)「それならこれ使ってくださいお」
(´<_` )「これは?」
- 579 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:34:28 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「爆発する魔法が込められた護符ですお。1度発動させた後、衝撃を与えると爆発しますお」
(´<_` )「なるほど、これは使えそうだね」
( ^ω^)「こいつを直接あいつに踏ませることも考えましたけど」
( ^ω^)「誤爆が怖いのと、避けられそうなのであんまり効果的じゃないかと思ったんですお」
(´<_` )「うん、僕も同意見だね。それじゃあ、誘導頼めるかい?」
( ^ω^)「把握しましたお」
僕は頷き、ハインさんの元へ走る。
そしてGマンティスから距離を取って仕切り直しているハインさんの隣に並び、オトジャさんの策を説明した。
从 ゚∀从「この程度、俺が斬り刻んでやる……と言いたいとこだが、オーケィ、把握した」
从;゚∀从「正直、こいつと正面から斬り合うと武器がヤベえ」
そう言ってハインさんは、右手を持ち上げ、蛮刀の1本を僕に見せる。
その刃は所々刃こぼれしていた。
- 580 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:36:13 ID:1JxBObwQ0
从;゚∀从「ったく、折角修理したってのによ」
(;^ω^)「僕の杖で受けるのは無理そうですおね。取り敢えず……」
僕はGマンティスの動きを警戒しつつ呪文を詠唱する。
Gマンティスも同様に、こちらの動きを警戒しているように見え、お互い睨み合う様な形になった。
( ^ω^)「その身を包め! エンチャンテッド・ウエポン!」
完成した魔法をハインさんの2本の蛮刀に向けて解き放つ。
魔法の効果で蛮刀が薄い緑色に光りだした。
从 ゚∀从「何だこりゃ?」
( ^ω^)「簡単に言えば魔法による武器のコーティングですお」
( ^ω^)「切れ味はそんなに変わりませんが、耐久力はこれでかなり高まると思いますお」
从 ゚∀从「へー、そりゃ助かる」
( ^ω^)b「ちなみに、色はある程度自由に決められますお」
从;゚∀从「いや、色はどうでもいいけどさ」
- 581 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:37:56 ID:1JxBObwQ0
从 ゚∀从「つか、そんな便利な魔法あるならもっと早く使ってくれよ」
(;^ω^)「使う暇がなかったというか、あんな固いとは思わなかったというか……」
理由を突き詰めれば、僕が未熟であったというだけという事になってしまう。
僕はそれなりに使える魔法を覚えているので、使う魔法の選択肢も数がある。
その中で最適なものを選び出せるかどうかは、僕の実力、経験に左右されるのだ。
僕は今回攻撃魔法でGマンティスを倒すつもりで魔法の組み立てをしたが、
ハインさんの補助に徹した魔法の組み立てをした方が戦闘を優位に進められたかもしれない。
あくまで結果論の話だけども。
从 ゚∀从「初見の敵相手ならしゃーねーだろ。人数の少ないパーティーなら全員が前衛の気でいねーとな」
そう言ってハインさんは回りこむように接近し、Gマンティスを壁際に追い込むような動きをする。
僕もそれに合わせ、Gマンティスが大きく跳ばない様な位置取りをした。
从 ゚∀从「刃こぼれの心配は無くなったんだ。遠慮なく全力で振り回させてもらうぜ!」
ハインさんはあわよくば自分で仕留めるつもりなのだろう。
牽制というには力の入った攻撃を繰り出している。
- 582 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:38:27 ID:JjHp3aoI0
- きてたか支援
- 583 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:39:05 ID:1JxBObwQ0
○・ ・○ キチキチ
\/
( ^ω^)「ロック・スロー!」
魔法で飛ばした岩は簡単に避けられるが、この魔法の良いとこは岩なので飛ばした後の制御が全くいらない点だ。
従って術後の隙がかなり小さい。
牽制としては十分である。
(´<_` )「2人とも、準備は出来たよ!」
背後からオトジャさんの声が聞こえて来た。
僕はオトジャさんの位置を確認し、ハインさんと連携してGマンティスを誘導する。
( ^ω^)「足止めは必要ですかお?」
(´<_` )「大丈夫、あの場所まで誘導してくれればいい」
うまく誘導したとしても、岩が落ちる間に逃げられそうな気がするのだが、
オトジャさんはそれも含めて何か仕掛けているようだ。
- 584 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:40:09 ID:1JxBObwQ0
从#゚∀从「オラッ、跳んでみろよ!」
○・ ・○ キチキチ
\/
ハインさんの果敢な攻めに防戦一方のGマンティスは、ぴょんぴょんと跳んで逃げ回る。
それを僕が逃げ道を塞いで逃げる先を誘導し、その工程を繰り返してトラップの上まで誘導した。
从#゚∀从「このッ!」
○・ ・○ キチキチ
\/
( ^ω^)「今だ、オトジャさんッ!」
+q(´<_` )「サースガ式ワイヤートラップ発動!」
Gマンティスがその場に着地した瞬間、地面から2本のワイヤーが飛び出し、Gマンティスの身体を打ち、ひるませた。
更にその上からいくつもの岩が降り注ぐ。
,,,,,,,,
◇・ ・○ ギッ!?
\/
- 585 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:41:49 ID:1JxBObwQ0
脚や胴体の上に岩が乗るが、それでもGマンティスは生きており、必死に抜け出そうともがく。
虫型のモンスターは普通の虫と同様、生命力が高い。
色々な器官や手足がもげようが、それを切り捨てて生き延びたり出来る。
从 ゚∀从「くたばれ、虫ケラ野郎ッ!」
それを理解しているのであろうハインさんは、身動きが取れなくなったGマンティスの首を斬り飛ばした。
如何に生命力の高い虫でも首を斬られてはもう、生きてはいないだろう。
( ^ω^)「やりましたお! お見事ですお、オトジャさん!」
+(´<_` )「ハハハ、何の何の、このサスガイバーにかかればこのくらい朝飯前さ」
僕達は勝利の余韻に浸る間もなく、すぐさま遺跡へ向かう為に岩壁を登る事にする。
Gマンティスが1匹だけとは限らないので、この場に留まるのは得策ではない。
从 ゚∀从「でもこいつの鎌、持って帰りてえな。武器の素材に使えそうだ」
( ^ω^)「ああ、確かに。でも、ちょっとデカいですおね」
可能ならあとで取りに来るという事で妥協し、ひとまず鎌を1本だけ剥ぎ取り、遺跡の通路に運んで置いた。
まだ探索を続ける必要があるので、持って回るには少々邪魔だ。
アニジャさんに依頼する武器の強化は、素材もアニジャさんが用意してくれるので、無理して持って帰る必要もない。
- 586 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:43:55 ID:1JxBObwQ0
从 ゚へ从「良い値で売れそうなんだがなあ……」
( ^ω^)「そうですおね。これなら色々な用途に使えそうですお」
後ろ髪惹かれつつも鎌を置いて僕達は先に進む。
そのまましばらく通路を進み、一旦休憩を取る事にした。
从 -∀从「ふぅ……」
( ^ω^)「大丈夫ですかお?」
从 ゚∀从「ん……ああ、ちょっと疲れただけだ。心配すんな、まだまだ行けるぜ」
ハインさんはそう言うが、疲労の色が濃いのは傍目にもわかる。
戦闘スタイル的に分けると、現在の僕らはハインさんだけが前衛で、バランスが良いとは言えない。
更に1人は護衛対象だし、心労も含めてハインさんの負担は大きくなっている。
ここは僕が何とかしなければならない場面だろう。
(;^ω^)(護衛対象に助けられてる僕が言ってもなんだけど……)
多くの魔法が使え、モンスターに関する知識があっても、圧倒的に経験が足りていない事を痛感する。
冒険者としての僕はまだまだ未熟なのだと自覚せねばならない。
- 587 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:44:48 ID:3ksgD8mEO
- 冒険野郎支援
- 588 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:45:15 ID:1JxBObwQ0
それから軽く食事を取り、少しの時間休んで僕達は再び探索を始めた。
モンスターと遭遇する事は無かったが、遺跡は広く、迷路の様に入り組んでいて探索は難航した。
(´<_` )「うーん、何だろうね、この遺跡は。目的がさっぱりだ」
( ^ω^)「完全に迷路ですおね。迷宮というべきですかお?」
(´<_` )「そうだねえ。やはり装飾が少ないのが気になるが、迷宮といった感じだね」
大半が通路で、部屋のような物はほとんど無い。
その通路も通ると岩の格子戸が降りて来て道を塞いだり、迷った挙句戻って来ると開いていたりと、
よくわからない仕掛けが満載だ。
所々壊れた部分もあるが、例の地震の影響だけとは限らないようだ。
明らかにかなり昔に崩れた様な壁もある。
それが自然に崩れたのか、何かによって崩されたのかは難しい所だが、警戒は緩めずに行かねばならない。
(´<_` )「ジョルジュ君達ともなかなか出会えないね。彼らは無事だろうか……」
从 ゚∀从「道に迷ってるという意味では無事ではないかもしれんが、俺らよりは戦力的に大丈夫だろ」
- 589 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:46:36 ID:ECKmSTJI0
- 迷宮+カマキリ=トラウマ
- 590 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:47:08 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「あの3人ならよっぽどの事があっても大丈夫な気がしますお」
(´<_` )「仲間を信頼してるんだね。良いパーティーだ」
オトジャさんは人好きのする顔で笑いかける。
楽観視しているわけでもないのだが、あまりマイナスに考え過ぎても仕方がない。
僕もオトジャさんに笑顔を返した。
从 ゚∀从「また分かれ道か。ここ、さっきも来たっけ?」
(´<_` )「さっきは左に進んだね」
( ^ω^)「そしたら戻って来たんですおね」
オトジャさんは進んだ道を記録、いわゆるマッピングをしてくれている。
本職だけあって手馴れたもので、歩いた歩数で大体の距離も記録しているようだ。
从 ゚∀从「じゃあ、右だな」
そのまま通路を道なりに進むと、石造りの扉の前に出た。
その扉はこれまでとは少し趣が異なっているように見える。
- 591 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:48:56 ID:1JxBObwQ0
从 ゚∀从「まあ、進むしかないわけだがな」
(´<_` )「まずトラップの確認をしようか」
特に何も仕掛けられている様子はなく、僕達は扉を開ける。
重い扉であったが、3人がかりで開く事が出来た。
(;^ω^)「お……通路じゃなくて部屋みたいですおね」
(´<_`;)「結構広いね……ん?」
オトジャさんが急に部屋の奥に向かって走り出した。
何事かと驚きつつも、僕達はそれを追う。
从 ゚∀从「おいおい、単独行動すんじゃねえよ」
(´<_` )「すまない、少々舞い上がってしまってね」
( ^ω^)「これは……壁画ですかお? それに、古代文字」
(´<_`*)「うん、それもこの遺跡の歴史、作られた経緯みたいだね」
- 592 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:50:43 ID:1JxBObwQ0
ここに来てようやくこの遺跡に関する資料が見付かったらしい。
オトジャさんが興奮するのも無理の無い事かもしれない。
( ^ω^)「この壁画が描かれた壁、ルーン石ですおね。再加工すれば武器に使えそうですお」
(´<_`;)「止めてくれ。貴重な歴史資料だ」
从 ゚∀从「何て書かれてるんだ?」
(´<_` )「解読するから少し時間をくれないか。取り敢えずこの遺跡の名はクノッソスというみたいだね」
僕も少しは古代文字は読めるが、この文明独自の表現も多々入って難解なので、ここは専門家に任せるべきだろう。
僕とハインさんは周囲を警戒しつつ、その場に座って休む事にした。
(´<_` )「うん、大体読めたよ」
从 ゚∀从「で、ここは何なんだ?」
(´<_` )「そうだね、簡単に言うと牢獄かな」
( ^ω^)「牢獄? この迷路みたいなのがですかお?」
(´<_` )「元は少し違ったみたいだけど……いや、ある意味最初から牢獄なのかな?」
オトジャさんの説明によると、ここはあるモンスターを閉じ込める為に作られた施設らしい。
今いるこの場所は、丁度施設の中心部に当たる場所のようだ。
- 593 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:51:39 ID:1JxBObwQ0
从 ゚∀从「何でモンスターなんか閉じ込める必要があんだ? 倒しちまえばいいだろうに」
(´<_` )「倒せない理由があったみたいだね」
从 ゚∀从「そんだけ強かったって事か?」
(´<_` )「いや、そのモンスターは元々この文明の王族の1人だったらしい」
詳しい経緯は書かれていないが、王族に生まれた子供が牛の頭をしたモンスターだったらしく、
当時跡継ぎのいなかった王はその子を殺すに殺せず、この中に閉じ込めたらしい。
(´<_` )「王がその子をどうするつもりだったかはわからないが」
(´<_` )「その後、罪人もこの迷宮に放り込むようになったみたいだね」
王が何をしたかったのかわからないが、その結果は何となく察しがつくとオトジャさんは言う。
恐らくそのモンスターは、その罪人を食料として生き延びたのではないかと。
( ^ω^)「記録が無かったわけは、その事実を知られたくなかったからという事ですかお」
(´<_` )「恐らくね。王が結局その子をどうしたかったのかはわからないけど、事実はそんなとこだろう」
- 594 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:53:21 ID:1JxBObwQ0
从 ゚∀从「ふーん……じゃあ、ここは大した物は無さそうか」
(´<_` )「そうだね。宝という意味では外れだろうね。歴史資料としては十分興味深いけど」
つまりこの時点で僕達は目的を達成したといえる。
遺跡の謎はひとまず解明出来た。
从 ゚∀从「しかし、何でこんな部屋があるんだ?」
(´<_` )「それはわからないけど、知られたくない事とはいえ何かしらの言い訳はしたかったのかもしれないね」
从 ゚∀从「何に対する言い訳だよ?」
(´<_` )「後世の歴史家とか、僕らみたいなトレジャーハンターに対するかな?」
从 ゚∀从「何だそりゃ」
(´<_` )「権力者って、結構自分の死後の事まで考えてたりするんだよ」
(´<_` )「だから、自分のした事に間違いがなかった事をここに記そうとしたのかもしれない」
今一つオトジャさんの言う事がよくわからないが、権力者の自己顕示欲のようなものだと僕は理解した。
何にせよ、記録を残してくれていた事お陰で助かったのは確かだ。
- 595 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:56:28 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「それじゃあ、ツン達を探して一旦外に出ますかお?」
(´<_` )「そうしようか。持ち帰れる資料も探したいけど、ひとまずは目的がわかっただけで十分かな」
僕達は再び石の扉を開け、通路に出る。
心なしか空気が重く感じるのは気の所為だろうか。
从 ゚∀从「……そのモンスターって、文明が滅んだ後はどうなったんだろうな?」
(´<_` )「何百年単位もの昔だからね。恐らくは……」
( ^ω^)「でも、ひょっとしたらその後もここを見付けて入り込んだ人もいたかもしれませんおね」
(´<_` )「あるいはね。……それでそのままここから帰れず、って可能性の話かい?」
(´<_` )「だからこの遺跡の話が広まっていない、と」
( ^ω^)「あくまで可能性の話ですけど……うん、可能性の話だったら良かったなあ……」
从 -∀从「全くだ」
- 596 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:57:43 ID:1JxBObwQ0
空気の淀みが更に深まる。
感じるのは魔力、モンスターの気配。
ここに何かがいるのは確かだ。
それも、こちらに近付いて来る。
( ^ω^)「エンチャンテッド・ウエポン」
从 ゚∀从「さて、何が出るのやらね」
先の反省も踏まえ、ハインさんが構えた蛮刀にすかさず魔法をかける。
ここから先の分かれ道までは一本道だ。
このまま進めばこの先の通路で鉢合わせる事になるだろう。
僕らの後ろはさっきの部屋があり、実質行き止まりだ。
ここを突破するためには確実に一戦交える必要がある。
( ^ω^)「来ますお」
通路の奥、闇の中からそれはゆっくりと姿を現した。
┗(`・・´)┛
- 597 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 22:59:02 ID:1JxBObwQ0
大きな2本の角のある、雄牛の頭をした人型のモンスター。
その背丈は僕の2倍はあるだろう。
頭を除く上半身はまるで人間のようだが、かなりの筋肉質で、下半身は体毛に覆われた蹄のある牛の脚だ。
(´<_`;)「あれがミノタウロス……生きていてたのか……」
ミノタウロスというのがその王子、いや、モンスターの名前らしい。
人との間に生まれたとはいうが、言葉は通じず、凶暴なモンスターそのものの様だ。
从 ゚∀从「んじゃ、倒しちまっていいわけだな」
(´<_`;)「ああ、あれを人間と思わない方がいい。というか、ここは逃げるべきだと思うが」
(;^ω^)「つーか、閉じ込められてたのに武器持ってるって……」
ミノタウロスはその身の丈には少し小さい長柄の斧を持っていた。
小さいといっても、ジョルジュさんの斧よりは大きいかもしれない。
(´<_`;)「過去に侵入した冒険者の遺品かもしれないね」
( ^ω^)「道具を使えるくらいの頭はあるというわけですおね」
- 598 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:01:31 ID:1JxBObwQ0
対峙して思うのは、正面切って戦うのは避けたいという事だが、相手のサイズと地形を考えるに、
横を走り抜けるのは無理がある。
僕1人ならスペシャルで突破出来る可能性もあるが、厳しい状況だ。
┗(`・・´)┛「ブモォォォッ」
考えている間にも大斧を振り上げ、こちらに襲い掛かってくるミノタウロス。
こうなれば腹を括るしかない。
( ^ω^)「ウインド・カッター!」
ミノタウロスの一撃をハインさんは背後に大きく跳んでかわす。
僕は攻撃を空振りしたミノタウロス目掛けて風の魔法を放った。
┗(`・・´)┛「ブモッ」
( ^ω^)「ヒット、でも、きいてないっぽいお」
ウインド・カッターはミノタウロスの胸に着弾したが、その皮膚を僅かに切り裂くだけで、出血すらさせられない。
魔法は使えなさそうな顔だが、その身に宿す魔力は高いのだろう。
- 599 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:03:17 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「ハインさん、オトジャさん、一旦下がってこいつから距離を取ってくださいお」
从 ゚∀从「どうするんだよ?」
( ^ω^)「こうしますお」
尋ねながらも素直に下がるハインさんを尻目に、爆破の護符を地面に置く。
既に発動させてあるからミノタウロスが踏めば爆発するはずだ。
(´<_`;)「通路は崩さないでくれよ?」
( ^ω^)「最悪、崩れても倒せればおkですお!」
僕は護符の方にミノタウロスをおびき寄せながら後ろに下がる。
ミノタウロスは全く警戒する素振りも見せずにずんずんと近寄って来た。
┗(`・・´)┛「ブモッ」
護符を踏み、爆発の衝撃がミノタウロスを襲う。
1つの爆破が連鎖的に次の爆破を生み、辺り一面轟音と煙に包まれた。
- 600 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:04:38 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「ついでにこれも食らっとけお、ファイヤー・アロー!」
火の精霊の力を借りた魔法を唱え、ミノタウロス目掛けて解き放つ。
魔法は煙の中のミノタウロスに直撃し、爆ぜた。
( ^ω^)「やったかお?」
残りの爆破の護符全てと火の魔法を当てたのだ。
並のモンスターならこれで倒せないはずが無い。
┗(#`・・´)┛「ブモォォォッ」
(;^ω^)「クッ、伊達に長生きしてないってわけだおね」
煙の中からくぐもった牛のような鳴き声と共に大斧が振り下ろされる。
僕は後方に飛び退きつつ向こうのダメージを確認するが、脚部に黒い焦げは目立つものの足取りはしっかりしている。
残念ながら僅かな足止め位にしかならなかったらしい。
从#゚∀从「この野郎がッ!」
下がった僕の代わりに、今度はハインさんがミノタウロスの攻撃の空振りを狙って飛び掛かる。
その隙に僕は次の魔法の詠唱を始めた。
- 601 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:05:41 ID:3ksgD8mEO
- ファンタジーの序盤ボスの定番だよな、ミノタウロス
支援
- 602 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:05:47 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「ハインさん!」
从 ゚∀从「あいよ、っと」
僕の合図にハインさんが再び後方に下がる。
僕はミノタウロス目掛けて唱えていた魔法を解き放った。
( ^ω^)「サンダー・ボール!」
雷の球体がミノタウロスに直撃する。
ミノタウロスは身体を震わせ、後方によろけた。
( ^ω^)「きいたかお?」
从 ゚∀从「ナイスだ! 次は俺が行く!」
ハインさんは一気に間合いを詰め、よろけたミノタウロスの首目掛けて斬り掛かる。
刃がミノタウロスを斬り刻み、血飛沫を上げるが、その身の深くには届いていないようだ。
┗(`・・´)┛「ブモッ」
从;゚∀从「こいつ、地肌剥き出しの癖に固いにも程があるぞ」
- 603 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:07:52 ID:1JxBObwQ0
再びハインさんがミノタウロスの攻撃をかわしつつ下がり、僕が魔法を唱える。
そしてまたハインさんが斬りかかるという連携で、僕達はミノタウロスに挑む。
しかしながら決定打となるようなダメージは与えられず、僕達は徐々に通路を後退していた。
(´<_` )「さっきの部屋に一旦閉じ篭ってやり過ごすかい?」
( ^ω^)「その手もありですおね」
篭ってやり過ごせるかどうかは難しい所だが、人数では勝ってるので部屋の中で戦う方が戦いやすいと思う。
ただ、ミノタウロスの背丈では入り口の扉はくぐれなさそうである。
しかし、途中で見かけた遺跡の破損がこのミノタウロスの仕業なら、入り口を壊して入って来るかもしれない。
(´<_`;)「僕としては、あの中で戦って貴重な資料が壊されるのは勘弁願いたいけどね」
从 ゚∀从「守るのも隠れるのも性に合わねえ。ブーン、一点集中だ!」
( ^ω^)「お……」
ハインさんがミノタウロスの首を指差し、そこを狙えと怒鳴る。
よく見ると、これまでの攻撃で首元に他と比べて大き目の傷が付いている。
- 604 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:08:57 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「把握! んじゃ、これで仕留めるつもりで、デカいの行きますお!」
( ^ω^)「これまでよりちょいと詠唱に時間かかるんで、それまで頼みますお」
从 ゚∀从「オーケィ、頼まれたぜ!」
僕は集中し、呪文の詠唱を始める。
本当はスペシャルで威力を高めたい所だが、走りながらピンポイントで首を狙うのは骨が折れる。
かと言ってブーン・クラッシュだと狙いが大雑把過ぎるので使えない。
そもそも、この通路でのパーティ戦で僕のスペシャルは使える間がないと思う。
こういった所は不便で仕方がないスペシャルだ。
元々、個人戦用のスペシャルである側面が強い。
┗(`・・´)┛「ブモォォォッ」
从;゚∀从「ちっとは疲れる素振りぐらい見せやがれ」
ハインさんは大上段から振り下ろされる斧の一撃をかわし、付かず離れずの距離を保つ。
今は回避に専念し、僕の魔法に合わせて攻撃するつもりだろう。
- 605 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:09:49 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「此の地に宿る風の精霊よ、我が刃となりて全てを切り裂け……ハインさん!」
詠唱を終え、完成した魔法を維持し、ハインさんに呼び掛けた。
察したハインさんが飛び退いた瞬間、僕は魔法をミノタウロス目掛けて解き放つ。
( ^ω^)「ウインド・ブラストォッ!!!」
突き出した右の手から空気を切り裂く轟音と共にいくつもの風の刃が密集して出現し、
螺旋状に旋回しながら高速で直進する。
┗(`・・´)┛「ブモォォォッ!?」
魔法は僕の狙いと寸分違わずミノタウロスの首を抉り、その身を大きく仰け反らせる。
从#゚∀从「うぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁッ!!!」
そこにすかさず飛び込んだハインさんの蛮刀が薙ぐ。
バットスイングの要領で振るわれた2振りの蛮刀は、どちらもミノタウロスの首を深く切り裂いた。
┗(`・・´)┛「ブモォッ……」
从 ゚∀从「手応えあり──」
- 606 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:11:15 ID:1JxBObwQ0
┗(#`・・´)┛「ブモッ!」
从; д从「ぐッ……」
(;^ω^)「ハインさんッ!」
驚くべき事にミノタウロスは、2本の蛮刀が首の半ばまで食い込んだ状態のまま反撃をして来た。
蛮刀に手をかけたままだったハインさんは、至近距離で打ち込まれた左の拳をかわせず、
腹部にまともに食らって吹き飛ばされて壁に激突した。
┗(#`・・´)┛「ブモォォォッ!」
(;^ω^)「くっ……」
今の一撃でハインさんは負傷しただろう。
あの勢いなら肋骨ぐらいは折れてるだろうし、後頭部も打った様だ。
戦闘復帰は難しい所か、打ち所によってはその生命も危険かもしれない。
(;^ω^)「何とかしなきゃだけど、自分の方も人の心配ばかりしてられる状況じゃないお」
滅茶苦茶に振り回される斧の攻撃を転がるようにしてかわし、態勢を整える。
決めるつもりで魔法を撃った直後だ。
その反動で身体の動きが鈍くなっていて、疲労が激しい。
- 607 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:13:07 ID:1JxBObwQ0
┗(#`・・´)┛「ブモォォォオォォォッ!?」
1つだけ幸いなのは、向こうも決してダメージは軽くないという事だ。
首は半ば千切れかけてるし、攻撃も未だ鋭くはあるが、狙いが滅茶苦茶で、恐慌状態にあるのだろう。
もう一撃、強力な魔法を首に当てられれば倒せると踏んでいる。
(;^ω^)「でも、詠唱の間が取れねえお」
何にせよ、まずはこいつを僕の方に引き付けてハインさんをオトジャさんに救出してもらわなければならない。
いっそ反対側に抜けて、追いかけさせて引き離す方べきか。
(;^ω^)「オトジャさん、ハインさんを!」
+d(´<_`;)「あ、ああ、任せるんだ、こ、この冒険野郎・サスガイバーに!」
僕はハインさんがいる方の壁と反対側の壁にへばりつく様に回り込んでミノタウロスの気を惹く。
┗(#`・・´)┛「ブモォォォッ!」
(;゚ω゚)「危ねッ!?」
上手く釣る事は出来たが、思いの他鋭く的確な攻撃が僕を襲う。
寸での所でかわしはしたが、向こうは既に恐慌状態から立ち直りつつあるのかもしれない。
- 608 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:14:09 ID:1JxBObwQ0
(;^ω^)「かわしつつ大技……いや、今らな距離取ってスペシャルで……」
またも振り上げられる大斧。
僕はミノタウロスを倒す手段を考えながらも、大斧を持つその手の動きにはしっかり注視していた。
しかし、注視していたが、それには気付けなかった。
┗(#`・・´)┛「ブモッ!」
(;^ω^)「えっ……?」
突如、大地が揺れた。
それが振り下ろされたミノタウロスの脚が生み出した振動だと気付いた時には足がもつれ、僕は通路に無様に転んでいた。
(;゚ω゚)「しまッ──」
┗(#`・・´)┛「ブモォォォッ!」
そこに振り下ろされる巨大な斧。
対抗魔法を唱える所か避ける事もままならぬ僕は、無駄と知りつつもその一撃を受け止めようと杖を頭上にかざした。
┗(#`・・´)┛「ブモォォォォォォッ!」
(;゚ω゚)「うわぁぁぁぁぁッ!!!」
- 609 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:15:16 ID:1JxBObwQ0
┗(:`・・´)┛「ブモッ!?」
(;^ω^)「え!?」
突然、ミノタウロスが僕の視界から消える。
それが何かに殴り飛ばされたのだと気付いた次の瞬間、彼女は僕の視界に飛び込んで来た。
ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」
(;^ω^)「ハ、ハインさん!?」
ボサボサの髪は逆立ち、前傾姿勢で低い唸り声を上げる人物。
それは紛れも無く僕の知るハインさんではあるが、明らかに様子がおかしい。
目の焦点は合っておらず、呼びかけても応答が無い。
(;^ω^)「助かりましたお! でも、ハインさん、傷は……」
ノ从д゚从ト「ルォァッ!」
(;゚ω゚)「ちょ!?」
- 610 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:16:54 ID:1JxBObwQ0
突如として僕に殴りかかってくるハインさん。
僕はそれを必死でかわし、状況を整理しようとするもよくわからない。
ハインさんが何かしらヤバい状態にあるのはわかるが、それが何で何故なのかさっぱりだ。
┗(#`・・´)┛「ブモォォォッ!」
(;^ω^)「ああ、もう、この忙しい時に!」
ハインさんの攻撃をかわしはしたが、位置取りを間違えた様だ。
僕はハインさんとミノタウロスに挟まれる格好になってしまった。
はっきり言って絶体絶命のピンチである。
┗(#`・・´)┛「ブモォォォッ!」
ノ从∀ 从ト「ルォァッ!」
(;^ω^)「ああ、もう、迷ってる時間すらねえお!」
僕は反射的に前進し、ハインさんの拳をかわしつつ腰にタックルをして押し倒した。
何とかハインさんを正気に戻す、出来なくとも動きを封じて戦場から離脱させたい。
- 611 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:20:24 ID:1JxBObwQ0
(;^ω^)「ハインさん! 正気に戻ってくださいお! ハインさんッ!!!」
ノ从∀ 从ト「ルォォォォォォォォォォォォ……」
(;゚ω゚)「え、ちょ……」
ハインさんは倒れたまま、信じられないほどの力で僕を引き剥がし、壁に放り投げた。
突然の事に、僕は受身も取れずに壁にしこたま背中をぶつける。
軽く意識の飛び掛けた僕が次に見たのは、倒れているハインさん目掛けて振り下ろされるミノタウロスの大斧だった。
(;゚ω゚)「ハインさんッ!!!」
(# ゚д゚)「させぬッ!!!」
┗(;`・・´)┛「ブモッ!?」
聞き覚えのある大音声と共に、何かがミノタウロスの背を打つ。
それがミルナさんのモーニングスターだと理解する間もなく、
僕はハインさんを守るべく飛び込んでその身に覆いかぶさった。
- 612 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:22:01 ID:KGizGcMIC
- ガシューに似てて吹いたwwww
- 613 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:22:47 ID:1JxBObwQ0
(;^ω^)「ハインさんッ!」
ノ从∀ 从ト「……」
_
(#゚∀゚)「くたばりやがれぇぇぇぇッ!」
┗(`・・´)┛「ブモォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
意識を失っている様に見えるハインさんを助け起こし、その場から離れようとしたが、
それよりも早くジョルジュさんの斧がミノタウロスの首を跳ね飛ばし、長かった戦いは思いの他あっさりと終了した。
あそこまで弱っていれば、ジョルジュさん達の敵ではなかったのだろう。
ξ;゚听)ξ「大丈夫、ブーン、ハイン!」
(;^ω^)「ぼ、僕は何とか。でも、ハインさんが……」
僕は駆け付けてくれたツン達にこの場で起こった事の説明をする。
その間にミルナさんがハインさんの様子を見てくれていたが、気を失っているだけとの事だった。
(;^ω^)「気を失ってるだけって……で、でも、何か変でしたし、ケガもしてると思いますし……」
( ゚д゚)「……」
_
( ゚∀゚)「……」
(;^ω^)「お?」
- 614 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:24:53 ID:1JxBObwQ0
ジョルジュさんとミルナさんは無言で目を合わせ、頷き合った。
それが何を意味するのかわからなかった僕は、どういう事なのか聞こうとしたが、後で話すとはぐらかされてしまった。
( ゚д゚)「ひとまずここを出よう。話は後だ」
_
( ゚∀゚)「ハインは俺が運ぶ。なに、大丈夫だ。こいつがそう簡単にくたばるわけはねえから安心しろ」
(;^ω^)「……そうですおね。まずは外に出ましょうかお」
ξ゚听)ξ「……そういえば、オトジャさんは?」
(;^ω^)「あ……」
予期せぬ事態にすっかりその存在を忘れていたが、オトジャさんの姿が見えない。
元々、ハインさんの側にいたはずなのだが、あの状態のハインさんといたとなると悪い予感が頭を過ぎる。
+(´<_`(#)「僕ならここさ。全然無事だから安心したまえ」
(;^ω^)「えーっと……」
無事と言う割には顔にひどく殴られた跡がある気がするのだが、多分ハインさんに殴られたのだろう。
まあ、無事といえば無事なので、遺跡を出る事を優先した。
- 615 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:26:14 ID:1JxBObwQ0
( ^ω^)「道はわかるんですかお?」
_
( ゚∀゚)「途中にパンくず撒いて来たから大丈夫だ」
(;^ω^)「いや、それ、全く大丈夫な気がしないですお」
ジョルジュさんはともかくとして、ミルナさんがちゃんと道順を記録してたみたいなので脱出は出来そうである。
途中、落とし穴などのトラップに引っかからなかったのは幸いだ。
_
( ゚∀゚)「しっかし、ようやく追い付いたと思ったら、調査は終了な上、遺跡のボスは既に満身創痍だもんなー」
( ^ω^)「その分こっちは大変だったんですお」
遺跡内部には他のモンスターの姿は見受けられなかったようだ。
外壁の壊れた部分から入り込んだりしたモンスターがいたの可能性もあるが、
軒並みミノタウロスに倒されたのかもしれない。
+(´<_` )「どんな困難があろうと、このサスガイバーにかかればなんて事は無いさ!」
( ^ω^)「そもそも、誰の所為で分断される事になったのか忘れないでくださいお?」
あれだけ苦労させられたのだ。
助けられた部分もあったとはいえ、少しぐらい愚痴ってもいいだろうと思う。
結果論で言えば調査は完了し、クエストは成功なのだがハインさんの負傷もあるし、手放しには喜べない。
- 616 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:28:25 ID:1JxBObwQ0
ξ゚听)ξ「何だかよくわからない遺跡ね。結局あのミノタウロスってやつ、何で殺さなかったんでしょうね」
(´<_` )「親心ってやつじゃないのかな」
(´<_` )「王としては殺さねばならないとわかっていても、親としては直接手を下す事は出来なかった」
オトジャさんはそう言うが、あまり納得出来る話ではないと感じるのは、僕が人の親になった事がないからだろうか。
それならいっそ、ちゃんと自分の子として育てれば良かったのではないかと思う。
王としての立場や人の目を考えればそれが難しかったのはわかるが、
その方が自分として納得出来たのではないだろうか。
(´<_` )「難しい話だね。本当の所はどうだったのか、結局の所、本人に聞くしかないのかもしれない」
それが出来れば苦労はないが、出来ないからこそこうやって遺跡の調査をしているのだとオトジャさんは言う。
( ^ω^)「ちょっと興味も湧きましたし、何かわかったら教えてくださいお」
(´<_` )「ああ、いいとも。その時は君達の所に遺跡通信を送ってあげよう」
( ^ω^)「是非お願いしますお」
- 617 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:31:23 ID:1JxBObwQ0
( ゚д゚)「もうすぐだな」
ξ゚听)ξ「あら、ここってブーン達が閉じ込められた所よね?」
( ^ω^)「お、岩扉が開いてるお」
_
( ゚∀゚)「あの後調べたんだが、こちら側から開ける手段は見付からなかったのにな」
(´<_` )「この遺跡は所々、トラップを自動的に戻す機能があるようだね。なかなか高度だ。興味深いよ」
(;^ω^)「また引っかからないでくださいお?」
+(´<_` )「ハハハ、この冒険野郎・サスガイバー、同じ過ちを繰り返すほど愚かでは──」カチッ
_, _, _, _,
从;;( ゚∀゚)( ゚д゚)ξ゚听)ξ( ^ω^)「あ……」(´<_`;)
結局、僕達が全員揃って無事に遺跡を脱出出来たのは、それから更に数時間後の事であった。
第二十二話 激震の地下迷宮 終
- 618 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:37:33 ID:1JxBObwQ0
二十二話は以上です
次話の投下は未定です
書き溜めは次話の半分ほどかな
支援とか感謝です
- 619 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:44:05 ID:3ksgD8mEO
- 乙
そういえばハインはわけあり風だったな
- 620 名前:名も無きAAのようです:2012/04/04(水) 23:50:25 ID:HgHLuOZU0
- 乙乙乙
- 621 名前:名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 00:19:23 ID:2346GJsE0
- 乙
- 622 名前:名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 00:40:47 ID:9BteMAeI0
- ウリィィィィィィ
- 623 名前:名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 11:35:35 ID:R34U9Q/wO
- 乙ガイバー
- 624 名前:名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 13:21:55 ID:GZqcbubI0
- 乙!
- 625 名前:名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 14:37:00 ID:hLsmK5xU0
- 乙!
- 626 名前:名も無きAAのようです:2012/04/05(木) 16:26:30 ID:DsrM4apAC
- おつー次回はわんおでるかなぁ
- 627 名前:名も無きAAのようです:2012/04/06(金) 14:58:30 ID:TEr/aYMYO
- いと もった?
- 628 名前:名も無きAAのようです:2012/04/06(金) 17:18:41 ID:OmMIzDME0
- >>627
f.o.eに通路に追いつめられて持って無いんですね
- 629 名前:名も無きAAのようです:2012/04/07(土) 02:28:31 ID:coKOHH5M0
- 赤いのに追われてるんですね
- 630 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 22:56:52 ID:kTvu3mL.0
〜 ソクホウ西部 市場北通り 〜
( ^ω^)「はい、薬草パン5つですお。ありがとうございましたお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(客)「この、クリームのやつ3つくれないか」
( ^ω^)「はい、少々お待ちくださいお」
(客)「チーズ1つ」
( ^ω^)「はい、少々お待ちくださいお。クリーム3つのお客様ー」
第二十三話 帰する空は灰色に
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 631 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 22:58:26 ID:kTvu3mL.0
( ^ω^)「ありがとうございましたお、魔法道具屋サンライズをよろしくですお!」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
地下遺跡調査のクエストを終えてソクホウに帰った僕は、丸一日休養に当てた翌日の朝、
かねてからの予定であった薬草パンの販売をしている。
幸いな事にハインさんの傷もそれほど深くはなく、意識も昨日の内に戻っていた。
そのお陰で何の気がかりもなくなった僕は、こうやって薬草パンの販売に精を出す事が出来ている。
メシューマに比べると市場の活気は少し劣り、どこかしら穏やかな雰囲気に満ちた通りだが、
物珍しさもあってか薬草パンの売れ行きはそこそこのものだ。
( ^ω^)「お昼の食事時にまた売れてくれれば、今回も完売出来るかもしれんお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 632 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 22:59:49 ID:kTvu3mL.0
今回もパン売りは僕とわんわんおだけで行っている。
ジョルジュさんとミルナさんはアニジャさんと武器の強化の話を相談した後、また騎士団の詰所に顔を出す予定らしい。
クエスト直後なのに元気な事だと思うが、今回のクエストはほとんど出番が無かったからだと、
少し不満気な顔をされてしまった。
ツンはハインさんの看病という名目でアニジャさんの家にいる。
ハインさんは意外と元気で、寝てれば直ると言うのだが、ハインさんと仲の良いツンは念の為、
今日は一緒にいるつもりとの事だ。
( ^ω^)「まあ、何はともあれ無事にクエストを終えられて良かったお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
色々あったがクエストは成功させる事が出来た。
再度オトジャさんを迎えに遺跡の奥へ逆戻りする事になった時はどうしたものかと思ったが、
そのついでにGマンティスの鎌やミノタウロスの角なんかも回収したので結果オーライだ。
一応、オトジャさんも無事だった事は付け加えておく。
( ^ω^)「さて、がんばって薬草パンを売るお!」
(∪^ω^)「わんお!」
- 633 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:00:56 ID:kTvu3mL.0
しかしその後は中途半端な時間の所為もあってか、ぽつぽつとしか売れず、暇な時間が多くなってしまった。
昼頃まではしばらくこんな調子だろう。
( ^ω^)「ま、休み休みのんびりやるお」
(∪^ω^)「わんおー」
暇になると自然に考え事が浮かび、その内容はやはり先日のクエストの事が中心になる。
クエストは成功したが、僕自身の行動を振り返ると反省点が多く目に付いてしまう。
( ^ω^)「もう少し、うまく魔法が使えてたら良かったおね……」
(∪^ω^)「わんお?」
魔法1つ1つの精度や効力に関しては、多分問題はなかったと思う。
しかしながら、その選択については必ずしも最良であったとは言えない。
手段を多々擁していても、効果的に使えなければ意味が無いのだ。
クエスト中にも思ったが、経験不足は否めない。
難易度の高いクエストにそれほど参加したわけでもないのだから、当たり前といえば当たり前なのだが。
( ^ω^)「でも、僕は冒険者ではないけど、魔法使いなんだお」
- 634 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:03:18 ID:kTvu3mL.0
魔法使いはもっとクレーバーに立ち回らなければならない。
全体を見通し、敵を知り、その都度最良の手段を提示出来る存在でありたいと思う。
( ^ω^)「咄嗟の判断力をもっと……」
(∪^ω^)「わんわんお!」
_
/ {||||} 「……」
( ^ω^)「お、いらっしゃいませですお!」
考え事をしていたら、お客さんが来ているのに気付けなかった。
すぐ様応対をしようとするが、客は突然、恭しく深々と頭を下げる。
(;^ω^)「お? あの……」
僕はわけがわからず、客の方を改めて観察してみるが、これまでの客とはかなり異質な感じを受ける。
フード付きの深い紺色のローブを纏った姿は恐らく魔法使いであろう。
しかしローブの作りは上質で、かなり清潔感溢れる感じだ。
見慣れた某賢者のくたびれたそれと比較すると、ものすごく気品溢れて見える。
- 635 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:04:53 ID:kTvu3mL.0
- _
/ {||||} 「失礼、今はお分かりにならないんでしたね」
(;^ω^)「お?」
( ∵)「私はビコーズと申します。貴方の御祖父様に縁ある者と申せばお分かり頂けるでしょうか」
男はフードを取り、はっきりと素顔を見せる。
細身で背は低く、無表情で厳格そうというのが僕の第一印象だ。
その顔に見覚えはないが、御祖父様という言葉で大体の事情は察せられる。
( ^ω^)「なるほど……はじめましてですお、僕は……」
( ∵)「存じ上げております。よろしければ、場所を変えてお話をしたいのですが」
ビコーズさんは申し訳なさそうに僕の言葉を遮り、そう提案して来る。
確かに、じいちゃんの話はこんな往来でしたくはない話なので、その申し出は受けるべきだろう。
( ∵)「ご心配なく。残りの商品はこちらでお買い上げ致しますので。馬車も宿泊先に運ばせます」
( ∵)「勿論、帰りもお送り致しますのでご心配なく」
- 636 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:06:17 ID:kTvu3mL.0
よく見るとビコーズさんの背後、少し離れた位置に騎士らしい人達が数人直立不動で並んでいる。
こちらの話が聞こえない距離で待機しているのだろう。
色々と言いたい事はあるが、ここは従うしかなさそうだ。
( ^ω^)「よろしくお願いしますお。でも、パンはそのままでいいですお。あとでこっちで処分しますんで」
( ∵)「いえいえ、ご安心を。ちゃんと食べる為に買うのですから、食べ物を粗末にすることはしませんよ」
私も後ほど頂きますと、全く笑っている様には見えないが、
多分本人は笑っているつもりなのだろうという顔で恭しく一礼をするビコーズさん。
それならばここでパンを売っている僕に断る理由は無い事になる。
( ^ω^)「わかりましたお。それじゃあ……っと、この子も一緒でかまいませんかお?」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ∵)「ええ、勿論ですとも。それでは、参りましょうか」
ビコーズさんが振り向いて後方に合図を送ると馬車が1台やって来た。
僕らが使っている馬車と比べると装飾過多で、明らかに高級そうな雰囲気がある。
僕達はその馬車に乗り込み座席に座った。
すぐに馬車はどこかへ向けて走り出したが、行き先は聞かずとも大体の予測はついている。
- 637 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:09:24 ID:kTvu3mL.0
( ^ω^)「……」
つ∪^ω^)
( ∵)「……」
車内では特に話す事は無く、馬車に揺られる事十分ほど、僕達は王宮の門をくぐっていた。
( ∵)「こちらへどうぞ」
馬車を降り、案内されるままに王宮の東側から中に入り、王宮内を進む。
王宮内は思ったよりは質素な作りだと感じたが、清潔感は保たれており、よく掃除が行き届いているようだった。
ただ、王宮内の廊下を忙しなく人が行き来しており、どこと無く切迫した様子が感じられる。
( ^ω^)「何かあったんですかお?」
( ∵)「ええ、騎士団の方で少々問題が起こったようでしてね」
といっても、国家全体に関わるような話ではないから気にしないで下さいとビコーズさんは言う。
取り敢えず今僕が呼ばれた事とは一切関係がない様だ。
( ∵)「そちらへおかけください」
通された部屋は執務室であろうか。
ビコーズさんはしばらくお待ちくださいと一旦部屋を出ていった。
- 638 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:11:03 ID:kTvu3mL.0
僕はソファーに座り室内を見回す。
向かいのソファーの後ろの机の上に書類が山積みにされてはいるが、綺麗に整頓されていて、
それがビコーズさんの人柄を表しているように思える。
( ^ω^)「うちの師匠も少しは見習って欲しい部屋だおね」
(∪^ω^)「わんお」
少々堅苦しい雰囲気も感じるが、王宮内の執務室ならこのくらいが妥当であろう。
( ∵)「お待たせしてしまって申し訳ありません」
戻って来たビコーズさんの手にはティーポットとカップが乗ったお盆があった。
そんな気を使わなくてもとか、誰かにやらせればとかの言葉が浮かんだが、
これまでの経緯を考えれば、返って来る答えに予測がつくので口はつぐんでおいた。
( ∵)「さて、色々とお聞きしたい事はあられるでしょうが、まずは改めて自己紹介をいたしましょう」
ビコーズさんは意外と手馴れた手付きでお茶を淹れ、ソファーに座った所で話を始めた。
多分、この詳しい自己紹介で僕の聞きたい事はある程度わかるはずだ。
- 639 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:12:09 ID:bJq3cybkO
- 来たな支援
- 640 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:12:57 ID:kTvu3mL.0
( ∵)「私の名前はビコーズ=バラナゼナ、いわゆる宮廷魔術師を勤めさせてもらっております」
( ∵)「ブーン=ホライゾン様、貴方の祖父であらせられるバーン=ホライゾン様の最初の弟子でもありました」
ビコーズさんは年は40ぐらいで、じいちゃんの最初の弟子、つまりはドクオさんの兄弟子に当たる事になる。
それに対して僕の方は、名乗る必要もないらしい。
僕がヴィップの町で魔法道具屋をやっている事までビコーズさんは知っているようだ。
しかし、宮廷魔術師は予想外だった。
宮廷魔術師は単にお城に仕えている魔法使いでは無く、王直属の魔法使いでその相談役としての役割を持つ。
要するに相当偉いという事になる。
立場的には多分、騎士団長のフィレンクトさんよりも上だろう。
そんな人が僕に接触して来た事も驚くし、じいちゃんの弟子であった事にも驚いた。
(;^ω^)「その、いくらじいちゃんの弟子だったとはいえ、僕にまでそんな敬語とか使わないで下さいお」
( ∵)「何を仰る。私にとっては貴方は十分に敬うべきお方なのですよ。それに……」
( ^ω^)「それに?」
- 641 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:14:34 ID:kTvu3mL.0
( ∵)「いえ、失礼しました。時が来れば理由は自ずとはっきりお分かりになると思いますので、今は……」
( ^ω^)「?」
(∪^ω^)「わんお?」
何だか意味深な物言いだが、今は教えてくれそうに無いらしい。
過去にじいちゃんと僕の事で何か約束でもしていたのだろうか。
( ∵)「しかしバーン様の、御祖父様の弟子については聞き及んでおられませんでしたか?」
( ^ω^)「流石にドクオさんだけではないとは思ってましたが、具体的な事は何も」
過去にドクオさんに聞いた時には、爺ちゃんは多くは弟子を取らなかったと聞いている。
その眼鏡に適うほどの人物が滅多にいなかったからだと。
( ∵)「ええ、あのお方は大変お厳しい方でしたからね」
昔を懐かしむような口調で言うビコーズさんだが、僕はそれほど厳しかったというイメージは持っていない。
確かに、魔法の修行に関しては厳しかったような気もするが、平素は普通のおじいちゃんだったと思う。
- 642 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:15:45 ID:kTvu3mL.0
( ∵)「現在、御祖父様の弟子であった者は3人います」
( ^ω^)「というと、ビコーズさんとドクオさんの他にも、もう1人いらっしゃるのですかお?」
( ∵)「ええ、今はラウンジの方にいますが、ドクオ君と同時期に弟子入りしたモララー君という者がおります」
ビコーズさんが言うには2人とも東の賢者、西の賢者と並び称される実力者らしいが、
僕としてはその知ってる方の東の賢者があれなので、西の賢者の方の実力というか人柄も少し疑ってしまう。
( ∵)「彼らは良きライバルでしたよ」
( ∵)「要領の良さでモララー君の方が認められることが多かったですが、実力に差はなかったと思います」
( ^ω^)「見た目で損しそうな人ですしね」
(∪^ω^)「わんおー」
( ∵)「そうですね。しかし、実力を認められていたからこそ、最後までお祖父様の側に置いてもらえたのでしょう」
( ∵)「全く、羨ましい限りでした」
ビコーズさんの話では、じいちゃんが隠居する時にビコーズさんやモララーさんも共に行く事を希望したらしいのだが、
じいちゃんはドクオさんだけを連れていったという。
ビコーズさんにはニューソクの事を、モララーさんにはラウンジの事を頼むと後事を託したらしい。
- 643 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:18:05 ID:kTvu3mL.0
その割り振りだと、ドクオさんでは頼りないからそうしたような印象も受けるが、
弟子としては尊敬する師の側にいられる事は何より嬉しいのかもしれない。
少なくともビコーズさんの言い様は、当時のドクオさんを心から羨んでるように聞こえる。
( ∵)「彼は芯の通ったまっすぐな男でしたから。御祖父様が側に置きたがった事には納得いきます」
( ^ω^)「僕としては、顔も含めて所々歪に曲がってる印象なんですけどね、ドクオさん」
( ∵)「ハハ、見た目はそうかもしれませんが、あれで根は責任感の強い男ですよ」
( ^ω^)(見た目は否定しないんだ……)
( ∵)「ですから、託された事を忠実にやってのけています」
( ^ω^)「あんまり働いてる印象無いんですけどね」
( ^ω^)「まあ、ヴィップ近辺は平和ですから、知らないとこでちゃんとやってくれてるんでしょうけど」
( ∵)「ええ、それはもう」
やけにドクオさんの肩を持つビコーズさんだが、僕には若干気になる事がある。
僕はドクオさんの王族嫌いは、じいちゃんの事に起因する物だとばかり思っていた。
しかし、同じじいちゃんの弟子であるビコーズさんはこうやって王宮に仕えており、ドクオさんにも好意的だ。
- 644 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:21:23 ID:kTvu3mL.0
その辺の所も聞いてみたいが、そろそろ本題に入って欲しくもある。
結局まだ、僕が何故ここに呼ばれたかわかっていない。
( ∵)「正直な所を申しますと、実の所、これと言って用事はないのです」
(;^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんお?」
( ∵)「敬愛する我が師の忘れ形見であらせられるブーン様が、このソクホウにお越しと聞き」
( ∵)「それならば一目お会いしておきたいと思いましてご足労願ったわけです」
( ∵)「私のわがままにお付き合い頂く事になって真に申し訳ありません」
( ^ω^)「いえ、謝られるような事では……。それに僕も、じいちゃんの話が聞けて嬉しかったですお」
最初は身構えてしまったが、そういう事なら納得は出来る。
僕の事を色々調べていたようだし、弟子として師の亡き後の事まで色々心配してくれていたのだろうか。
そう考えると頭の下がる思いだ。
- 645 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:23:12 ID:kTvu3mL.0
( ^ω^)「余計な気を使わせてすみませんお」
( ∵)「いえ、こちらが勝手にやった事です。咎められこそすれ、感謝されるのは恐れ多い事ですよ」
( ∵)「勿論、貴方の出自が明らかになる様な不手際は起こしておりませんので、ご安心ください」
それからしばらくはじいちゃんの事や魔法の事、ここ最近のクエストの事など色々な話をした。
( ∵)「なかなか無茶をしておられますね。くれぐれもご無理はなさらぬように願います」
( ^ω^)「若い内に色々と経験は積んでおきたいと思いますお。最近、経験不足を痛感してばかりですし」
( ∵)「良き心がけだと思います。まだお若いのですし、焦らずじっくりと経験をお積みになられるのが良いかと」
ビコーズさんは終始低姿勢ではあったが、魔法に関してはかなり詳しいアドバイスもしてくれた。
無表情なビコーズさんだが、魔法に関する知識は流石に素晴らしく、僕はかなり有意義な時間を過ごす事が出来た。
(;^ω^)「すみません、少々長居し過ぎましたおね」
( ∵)「いえ、こちらがお呼び立てしたのですから、お気になさらないで下さい」
- 646 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:24:22 ID:kTvu3mL.0
( ∵)「しかしそうですね、そろそろお話し疲れもあるでしょうし、頃合いでしょうかね」
ビコーズさんに案内され、僕は部屋を出て馬車に向かう。
僕は最後まで慇懃な姿勢を崩さなかったビコーズさんに礼を述べる。
( ^ω^)「今日は色々とお話聞かせて頂いてありがとうございましたお」
( ∵)「いえいえ、礼を述べるのはこちらの方です。お付き合い頂いて感謝しております」
またソクホウに来た際はいつでも気軽にお越しくださいと言うビコーズさん。
僕は再度感謝の言葉を述べ、別れの挨拶をした。
( ^ω^)「それではまた。お元気でですお」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ∵)「はい、またお会い致しましょう。ブーン様のご健勝をお祈り申し上げます」
僕は深々と一礼し、馬車に乗ろうとした。
( ∵)「おっと、忘れておりました」
( ^ω^)「お?」
- 647 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:25:46 ID:kTvu3mL.0
( ∵)「クー様をよろしくお願いしますね」
( ^ω^)「……」
ビコーズさんは僕を呼び止め、近付くとそっと耳打ちをした。
僕はビコーズさんの目を見詰め、その真意を測ろうとしたが、相変わらずの無表情で何も読み取れる気がしない。
何を言うべきか定まらぬ僕は、促されるまま馬車に乗る。
その後、僕はアニジャさんの家まで送ってもらい、馬車を降りた。
( ^ω^)「ふぅ……。ちょっと緊張したけど、楽しかったお」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ^ω^)「わんおはだいぶ大人しかったおね。わんおも緊張したのかお?」
(∪^ω^)「わんおー」
今思えば、わんわんおの事もビコーズさんに打ち明けておけば良かったかもしれない。
多分、わんわんおが天空竜だと気付いてなかったと思う。
ひょっとしたらドクオさん経由で話が言ってる可能性もあるので、僕はまた今度でいいかと結論付けた。
- 648 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:27:01 ID:kTvu3mL.0
( ^ω^)「しかし、最後の最後であれとは……」
(∪^ω^)「わんお」
すっかり失念していたが、僕の事を調べていたのならクーの事も知っていておかしくない。
それに、ビコーズさんはクーの事を本名ではなく、今名乗っている偽名で呼んだのだ。
知っていると見て間違いはないだろう。
その上であの発言だ。
正直な所、僕にはビコーズさんの意図が全くわからない。
( ^ω^)「知っていてクーの事を連れ戻さないって、どういう事なんだおね?」
(∪^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「……そういえばクーにペンダントの事でアドバイスしたの、ビ何とかさんだったおね」
( ^ω^)「それがビコーズさんだった可能性は高いお。ていうか確定だと思うお」
(∪^ω^)「わんお」
- 649 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:27:10 ID:BcMZ9mUE0
- しえん
- 650 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:28:43 ID:HK2uubfo0
- ビロードくるかと思ってた
- 651 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:30:34 ID:kTvu3mL.0
その辺りの事はヴィップに戻ってからクーに聞いてみようと思う。
じいちゃんの弟子であった事や魔法使いである事を考えれば、聞くまでもなく正解だとは思うが、
何かしらの情報は得られるかもしれない。
直接ビコーズさんに聞くと言う手もあるが、教えてくれるかどうかはわからないし、向こうは忙しい身の上だ。
悪いと思うし、じいちゃんの名前に頼って行動するのは本意ではない。
( ^ω^)「ま、取り敢えず帰るかお」
(∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「ただいまーだお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕は既に滞在数日目にして勝手知ったるアニジャさんの家に入る。
まず自分の部屋に荷物を下ろし、それからハインさんの部屋に向かった。
( ^ω^)「お? 返事がないお?」
ハインさんの部屋のドアをノックするが反応がない。
鍵は開いていたので静かにドアを開けて中を覗いてみると、ハインさんは眠っており、
看病していたツンもベッドの側の椅子で眠っていた。
- 652 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:33:10 ID:kTvu3mL.0
わざわざ起こす理由もないので、僕はそっとドアを閉め、リビングへ向かう。
リビングではアニジャさんがお茶を飲んでいた。
( ´_ゝ`)「おかえり。売れ行きはどうだった?」
( ^ω^)「ただいまですお。まあまあ、ってとこですお」
実際には完売したのだが、最後のあれは参考にはならないので濁しておく。
次に売るときは自分の力で完売したいものだ。
( ´_ゝ`)「それで、えーと……聞いてもいいのかな?」
( ^ω^)「お? 何をですかお?」
少々歯切れの悪い口調のアニジャさんだったが、
騎士が僕の馬車をこちらに届けた理由を聞いてもいいものか迷っているらしい。
僕は皆まで説明する事は出来ないので、昔、僕の祖父にお世話になった人に招待されたと曖昧に説明した。
( ´_ゝ`)「ふーん。お偉いさんに知り合いがいるって事か」
( ^ω^)「そんなとこですお。今日まで全然知らなかったですけど」
- 653 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:35:28 ID:kTvu3mL.0
( ^ω^)「そういえば、武器の強化プランはどうなったんですかお?」
これ以上この話を詳しくしたくはないので、僕は話を変えようとする。
アニジャさんもそれほどこの話に興味はなかったのか、すぐに乗ってくれた。
( ´_ゝ`)「ああ、いい感じにプランが纏まったぞ。久しぶりにやり甲斐のある仕事になりそうだ」
回収した素材もあるし、料金も半額になったから単に強化に止まらず、根本的に作り直す事に決めたらしい。
ジョルジュさん達と納得いくまで話し合ったとアニジャさんは言う。
( ^ω^)「そりゃ大仕事になりそうですお」
( ´_ゝ`)「ああ、俺の持つ技術の粋を集めた大仕事だ」
細かい話を聞いていると、大変所の騒ぎではない気もするが、アニジャさんは随分と張り切っている。
きっと武器職人としての、機工技師としての仕事が大好きなのだろう。
( ´_ゝ`)「まあ、それもあるにはあるが……」
( ^ω^)「お? 他にも理由があるんですかお?」
- 654 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:39:48 ID:kJjJB7.Q0
- 初遭遇!
支援
- 655 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:39:49 ID:kTvu3mL.0
( ´_ゝ`)「オトジャの為にあれだけがんばってくれたんだ。今度はこっちがそれに応える番だろ?」
極めて当たり前の事の様に言うアニジャさんだが、あれは正規のクエストの依頼でこちらにも利のある物だった。
故に冒険者として、プロとして仕事を遂行しただけなのだ。
アニジャさんがそこまで恩義を感じる必要はない。
必要はないが、そういう風に考えられるアニジャさんの事は好ましくも思う。
( ^ω^)「アニジャさんって、意外といい人ですおね。見た目はちょっと胡散臭いですけど」
(;´_ゝ`)「な、何だ急に? いや、そりゃ俺はナイスガイだよ? あと見た目もエレガントだろ」
(∪^ω^)「わんおー」
(;´_ゝ`)「何か否定されたような鳴き方だった気がするんだが……」
(∪^ω^)「わんおー」
(;´_ゝ`)「うん、全く同じ音調で鳴かないで。少し凹みそうになるから」
( ^ω^)「そういえばジョルジュさん達は騎士団の詰所ですかお?」
( ´_ゝ`)「ああ、丁度ブーンと入れ違いぐらいのタイミングで出ていったぞ」
- 656 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:40:55 ID:kTvu3mL.0
どうやらすれ違ったらしい。
この後の予定は特になかったので、一緒に付いて行こうかとも考えていたのに残念だ。
( ´_ゝ`)「観光とかは行かないのか? 全然この街は見てないだろ?」
( ^ω^)「これといって見たいものは……あ、1つありましたお」
( ´_ゝ`)「何だ? わかり辛い場所ならオトジャに案内させるが」
( ^ω^)「アニジャさんの、というか機工技術での作業風景とかですお」
( ´_ゝ`)「ほほう……そう来たか」
嬉しそうに頬を緩めるアニジャさんに、僕はその作業風景を見せて貰えるか頼む。
泊めてもらっている社交辞令とかではなく、純粋に興味はある。
( ^ω^)「あのオトジャさんが使ってた、ワイヤーのやつはかなり役立ちましたしね」
(*´_ゝ`)「あれは俺の自信作だよ」
一見簡単そうな作りに見えるが、中はだいぶ凝った物らしい。
それはそうだろう。あの大きさで相当の長さのワイヤーを仕込んであるのだ。
内部がどうなっているか非常に興味はある。
- 657 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:42:52 ID:kTvu3mL.0
( ^ω^)「アニジャさんからすれば邪道と思われるでしょうけど」
( ^ω^)「あれと魔法を組み合わせれば更にいい道具になりそうですお」
( ´_ゝ`)「邪道とまでは思わないが、その分扱える人間が限られてくるだろうな」
( ´_ゝ`)「しかし、使いこなせればかなり有用な道具になりそうだ」
保留にしてた僕の報酬として、あれを譲って欲しいと考えていたが、
あれは今の所オトジャさん用のあの1つしかないらしい。
( ^ω^)「正直、買いたいぐらいなんですけどね」
( ´_ゝ`)「そこまで言ってもらえるなら、俺も期待に応えたい所だな」
アニジャさんはジョルジュさん達の武器改造の後になるだろうけど、
新しくあのサースガ式ワイヤーを作ってくれるという。
( ^ω^)「それは是非ともお願いしたいですお」
( ^ω^)「出来た時は、またソクホウに遊びに来ますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
( ´_ゝ`)「ああ、待ってるよ」
- 658 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:45:06 ID:kTvu3mL.0
( ´_ゝ`)「……ん、そうか、ブーンはもうすぐヴィップに帰るんだな。いつ頃の予定なんだ?」
( ^ω^)「数日中には、と考えてますお」
(;^ω^)「そろそろ帰らないと、だいぶお店を放置してますしね」
当初の予定からすれば、かなりの長い滞在となっている。
作り置きして来た薬草とかの道具はまだ足りると思うが、そろそろ帰らないとまずいだろう。
( ´_ゝ`)「そうか、寂しくなるな」
( ^ω^)「今度はアニジャさん達がヴィップに遊びに来てくださいお。歓迎しますお」
( ´_ゝ`)「それもいいな。考えとくよ。例のブーンのお師匠さんにも是非会ってみたいしな」
その時は是非とも紹介してくれとアニジャさんは言うが、会うとがっかりするんじゃないかという不安もある。
まあ、モテモテ通信の事を思えば趣味は合いそうではあるのだが。
( ´_ゝ`)「そういえば、モテモテ通信の新刊がもう出来るんだが、1冊持っていくか?」
( ^ω^)「結構ですお」
- 659 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:46:29 ID:kTvu3mL.0
(;´_ゝ`)「そこは社交辞令的に貰っておこうとか思わない? まだ発売前の本ってなかなか見れないよ?」
( ^ω^)「荷物になりますんで」
(∪^ω^)「わんお」
(;´_ゝ`)「いや、こんなに薄いよ? 馬車にまだ何冊も乗るよ?」
( ^ω^)「それはともかくとして、アニジャさんは何で武器職人、機工技師をやってるんですかお?」
僕は強引に押し付けられるモテモテ通信を脇に避け、露骨に話題を変える。
未知の物を追う為という様な答えはオトジャさんから聞いてはいたが、
アニジャさん本人の答えも聞いてみたいというのもあった。
( ´_ゝ`)「そうだな……それに加えて、誰も見た事のない様な発明で皆を驚かせたいといった所かな」
単純に自分が面白いと感じるからその道に進んだという理由もあるが、
それで他人が驚くのを見るのが何より楽しかったから、あまり知られていない機工技術の習得を志したという。
( ´_ゝ`)「まあ、単純に俺に魔法の才能がなかったからってのもあるんだけどね」
- 660 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:47:57 ID:kTvu3mL.0
( ´_ゝ`)「機工技術みたいにマイナーな方が、知ってる人が少なくて驚かせやすいかなって思ったのもある」
( ´_ゝ`)「武器や防具をメインに作ってるのは、それが一番需要があるからだな」
( ^ω^)「なるほど」
アニジャさん本人はそれほど深く考えてこの道を選んだわけではないと言うが、
聞いた限りではそれなりに納得の行く答えだった。
使える使えないはさておき、実際にアニジャさんの発明には驚かされている。
( ^ω^)「ちなみに、今のアニジャさんの目標とか目的とか何か目指してるものはありますかお?」
( ´_ゝ`)「ああ、あるぞ。今は新素材の開発が一番の目的だ」
アニジャさんは従来のと同等の硬度、もしくはそれを凌駕しつつ、薄くて軽量な素材の開発を目指しているという。
素材と聞くと地味に聞こえるかもしれないが、実際に開発出来れば武器に防具にと需要はいくらでもあり、
かなり有用なものになると思う。
( ^ω^)「そういう技術が確立されれば、色々と面白いものが作れそうですおね」
- 661 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:48:40 ID:kTvu3mL.0
( ´_ゝ`)「うん、それが出来れば俺の長年の夢に一歩近付けるんだ」
( ^ω^)「お? 夢ですかお?」
聞けば新素材の開発はそれ自体が目的ではなく、本来の目的の為の手段という事らしい。
( ^ω^)「それってどんな夢ですかお?」
(*´_ゝ`)「聞きたいか? どうしよっかなー? 教えようかなー? 秘密にしとこうかなー?」
( ^ω^)「いや、無理には聞かなくていいですけど」
(∪^ω^)「わんお」
(;´_ゝ`)「そこはもう少し食い下がってよ! 俺の人生に興味持ってよ!」
アニジャさんはその素材を使ってある物を作るのが夢らしい。
僕は気は進まないが、勿体付けるそのある物とやらが何かを聞く事にした。
( ^ω^)「そのある物って何ですかお?」
(*´_ゝ`)「フッフッフ、それはだな……」
- 662 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:51:34 ID:kTvu3mL.0
(*´_ゝ`)b「ずばり、ビキニアーマーだ!」
. _,
( ^ω^)「ビキニ……? 何ですかお、それ?」
(*´_ゝ`)「知らないかい、ビキニアーマー?」
アニジャさんの説明によると、ビキニアーマーというのは古代の文献に載っている防具の一種らしい。
その名の通りビキニ、いわゆる女性用の水着のような外見をしているとの事だ。
( ´_ゝ`)「普通に考えれば、そんな薄く防御面積も少ない防具なんて役に立たないだろ?」
( ^ω^)「クソ役に立ちませんお」
( ´_ゝ`)「だが文献にあるそのビキニアーマーは違ったんだ」
( ´_ゝ`)「斬撃を弾き、打撃を通さず、果ては魔法の威力さえも軽減させたらしい」
( ^ω^)「それって多分、魔法の防具ですおね。何でそんな形状なのかはともかく」
そう考えれば有り得ない話ではない。
その場合は防具というよりは、魔法を発動させる為だけの媒体と考えるべきだろう。
- 663 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:53:05 ID:kTvu3mL.0
ただ、その形状である必要性は皆無だが。
軽さや動き易さを追求したとしても、そこまで防具面積を小さくする必要はないし、
魔法の定着や汎用性から見ても効率が悪い。
(*´_ゝ`)「そこは男の浪漫の話だろ、常考」
( ^ω^)「まあ、仮にそれを再現するとして、それだと魔法が必須なんじゃないですかお?」
( ´_ゝ`)「現状ではそうなるよな」
( ´_ゝ`)「だから、極限まで薄く、そして透過性のある素材にして再現するんだ」
何となくプランの全容は掴めたが、かなり難しいと思う。
魔法を使った防具で再現するにしたって、定着や魔力の供給を考えると相当高度なものだ。
一番手っ取り早いのは魔法使いが装備して魔力の供給はある程度自前でやる事だが、
それだと防具として無駄が多く、着けてないのとそう変わらない。
( ´_ゝ`)b「大変だからこそ、目指す価値がある夢なんじゃないか」
( ^ω^)「言ってる事は立派ですけど、目標考えると馬鹿らしく感じるのは気の所為ですかおね」
(∪^ω^)「わんおー」
- 664 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:55:24 ID:kTvu3mL.0
僕はアニジャさんの熱弁を制し、作業を見せてもらう為にアニジャさんの作業場へ向かおうとした。
しかし、玄関のドアが開く音がしたので僕達はまず玄関に向かった。
( ´_ゝ`)「誰か来たのか……って、お前達か」
_
( ゚∀゚)
( ゚д゚)
玄関には騎士団の詰所に向かったはずのジョルジュさんとミルナさんが立っていた。
2人は無言でこちらを見詰めていて、どこか様子が変だ。
( ^ω^)「何かあったんですかお」
_
( ゚∀゚)「ああ……」
( ゚д゚)「説明は道すがら話す。ブーン、一緒に来てもらえないか。出来ればツンも一緒に」
( ^ω^)「お……」
僕は2人のただならぬ雰囲気に、自然と首を縦に振っていた。
- 665 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:57:18 ID:kTvu3mL.0
〜 ニューソク正教会 第3礼拝堂 〜
普段は椅子と机が置いてあるのであろう場所に整然と並ぶ黒の棺。
その数は20近くにもなる。
棺桶の蓋は全て閉じられ、中は見えないようになっている。
死者の尊厳を保つ為にも、見えない方がいいと考えざるを得ないほど死体の損壊は激しいらしい。
( ^ω^)「何で……」
ξ゚听)ξ「……」
思わず漏れた言葉に誰も反応しない。
静寂だけがこの場を支配している。
死者の家族はまだ呼ばれてないらしい。
ここにいるのは教会の関係者と騎士達だけだ。
どちらも悲痛な表情は見せても、泣く事はしない。
騎士という職業を志した時点で誰しもある種の覚悟は持っていた。
そんな言葉で抑えられるほどに、悲しみは軽くはないと思う。
- 666 名前:名も無きAAのようです:2012/04/09(月) 23:58:52 ID:kTvu3mL.0
(‘_L’)「ご足労頂きまして相すみません」
( ^ω^)「フィレンクトさん……」
僕達を呼んだ本人、フィレンクトさんが僕達の方に来て深々と頭を下げる。
僕は軽く首を振り、フィレンクトさんに案内されて別室に移った。
(‘_L’)「もうジョルジュさん達からお聞きのこととは思いますが、整理する為に簡単に状況を説明致します」
つい先日、第8騎士団の護衛の元に件の盗賊団をメシューマに移送している最中、何者かの襲撃にあい、
護衛の騎士16名、魔法使い1名、及び盗賊団28名、その全てが殺されたという事だ。
(‘_L’)「それも、恐らく1人の魔法使いの手によって」
( ^ω^)「1人の……」
魔法使いなら不可能な事ではないと思う。
強力な広範囲魔法を使えば、馬車ごと人を殺す事は出来る。
しかし、護衛に付いていたのはその辺の冒険者ではなく騎士団で、魔法使いまでいた。
強力な魔法を使えば、発動前に確実に騎士団側の魔法使いに魔力を感知されただろう。
それを1人で全滅させるなんて、とんでもない強さだ。
- 667 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:01:22 ID:1tAp3y.k0
ξ゚听)ξ「全滅したのに、どうして1人だとわかったのですか?」
(‘_L’)「駆け付けた時、まだかろうじて息のある者がいました」
(‘_L’)「その者によると、相手は灰色のローブを纏った魔法使いただ1人」
(‘_L’)「顔も見たとの事ですが、見覚えは無く、特徴のない壮年の男という事ぐらいしかわかっておりません」
この条件ではあまりに漠然とし過ぎていて、それが誰なのか特定するのは難しいだろう。
実力の面から考えると、そんな事が出来そうなのは僕の知り合いでは1人ぐらいしか思い当たらない。
いや、今日増えた知り合いも実力的には可能かもしれない。
ただ、どちらもそんな事をするとは思い難い。
(‘_L’)「この条件で考えろというのは難しいと思いますが……」
( ^ω^)「ええ、流石にちょっと……」
そこまで期待されてたわけではないのだろう。
フィレンクトさんはさほど落胆した様子はなかった。
それ以前に、これ以上落胆しようもないくらい内心は落ち込んでいるのかもしれない。
- 668 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:03:31 ID:1tAp3y.k0
( ^ω^)「宮廷魔術師の方にもお聞きになられたのですか?」
(‘_L’)「ええ、ですが心当たりはないと。調査の協力はしてくれるようですが」
( ^ω^)「僕もヴィップに戻ったら師に聞いてみますお」
(‘_L’)「ブーン殿の師は東の賢者殿でしたね。出来ればよろしくお願いします」
ドクオさんがニューソク王国絡みの事に答えてくれるかは疑問だが、今回の件は僕も関わっている。
殺された騎士の人達の為にも知っている事があるなら何としても聞き出したい。
ξ゚听)ξ「その魔法使いというのが、あの盗賊団の裏なんでしょうかね?」
(‘_L’)「そう考えるべきなのでしょうな」
(‘_L’)「ただ、そうなると腑に落ちない点も多々あるのですが」
捕まえた盗賊団が口を割らなかったのは、口を割れば殺されるという事がわかっていたからかもしれない。
割らなくても殺されてしまったわけだが、恐怖心が盗賊団の口を固くした可能性は高い。
盗賊団が詳しい事は知らなかったとしても、何らかの関係はきっとあるだろう。
フィレンクトさんの話によると、盗られた物は何も無く、ただ皆殺しにされただけだ。
そもそも、罪人を護送している馬車だと見た目でわかったはずだ。
それを襲ったとなると、目的はやはり盗賊団と見るべきで、関係があると考えるべきだろう。
- 669 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:04:58 ID:1tAp3y.k0
ただ、これだと辻褄は合うがよくわからない点もある。
その際たるものは、これだけの力がありながら、何故盗賊団を使ったかだ。
(‘_L’)「そうですね。考えられるのは、複数の盗賊団を使っていた可能性ですが……」
いくら強くても、広範囲に渡って盗賊活動をするのは無理があるので、複数の盗賊団を従え、
何かしらの目的の為、盗賊行為を行っていた。
そう考えると一応筋は通る。
ξ゚听)ξ「その場合だと、まだその魔法使いの息のかかった盗賊団が現れる可能性がありますね」
(‘_L’)「ええ、やつの目的が達成されてないならばその可能性もありますね」
(‘_L’)「ただ、今回の失敗で活動を控えてほとぼりを冷ます事も考えられますが」
例によって推測だけならいくらでも可能性が考えられ、答えに近付いているかどうかはわからない。
決め付けて視野を狭める事は避けねばならないと思う。
(‘_L’)「何にせよ、我々の威信にかけて、そして亡くなった団員達の為にも私はやつを捕えねばならない」
そう宣言するフィレンクトさんの声はとても静かなものであった。
しかし、同時に断固たる思いも感じ取れた。
- 670 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:06:12 ID:1tAp3y.k0
( ^ω^)「僕に出来る事があるなら、協力しますお」
(‘_L’)「ありがとうございます」
(‘_L’)「しかし、勝手ばかり言うようですがこの件にはあまり深入りしない方が賢明だと思います」
(‘_L’)「とんでもなく危険な相手です。貴方達若い身の上に何かあっては私は償っても償い切れない」
(‘_L’)「何かわかったら知らせてくれる程度でかまいません」
(‘_L’)「それも危険だと思われるなら、今日の件は忘れてください」
(‘_L’)「こちらから呼び出しておいて勝手極まりないと思われるでしょうが、誠に申し訳ない」
( ^ω^)「……流石に忘れる事は無理ですお」
( ^ω^)「亡くなった騎士さんの中には、僕とそう変わらない若い人もいたんですお」
亡くなった騎士達は総勢16名。
護衛の任務に当たっていたのは第8騎士団の騎士で、うち半数は経験を積ませる為に若い騎士だった。
その中にあのトラギコさん他、訓練場で共に過ごした数名の騎士がいたのだ。
- 671 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:07:12 ID:3gZk8bGA0
- 支援なり
- 672 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:07:54 ID:1tAp3y.k0
(-_L-)「自分より若い者に逝かれる時が、一番この身の不甲斐なさを痛感致します」
(-_L-)「前途ある若い騎士が、私の見通しが甘かったばっかりに多数その生命を落としてしまった」
フィレンクトさんの所為ではない、そう言ってあげるのは簡単だ。
実際、こんな事は想定外も甚だしい事だと思う。
用心の為に魔法使いまで帯同させての結果なのだ。
これをフィレンクトさんの所為だとは思うのは騎士団の中にも誰もいないだろう。
しかし、そんな事を僕が言った所で何の意味も無い。
部外者で子供の僕が、騎士団長の責任を軽くしてあげられるなんて思っていない。
(‘_L’)「この件は聖騎士団の協力も仰ぎ、精鋭をもって当たるつもりです」
(‘_L’)「ですから、貴方方はこの件は深く関わらぬよう、お願いします」
( ^ω^)「わかりましたお。師には聞いてみますが、それ以上は控えますお」
(-_L-)「よろしくお願いします。理不尽な物言いばかりで誠に申し訳ない」
再び深々と頭を下げるフィレンクトさんに、僕も立ち上がり、同じく頭を下げて部屋を辞した。
- 673 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:10:53 ID:1tAp3y.k0
礼拝堂に戻ると、そこにはジョルジュさんとミルナさんが並んで立っていた。
どうやら僕達を待っていてくれたらしい。
_
( ゚∀゚)「話は終ったのか?」
( ^ω^)「ええ、これといって役には立てませんでしたけど」
( ゚д゚)「一旦屋敷に戻ろうか」
ξ゚听)ξ「はい」
交わす言葉も少なく、僕達は教会を出る。
外に出ると、空は灰色に満ちていた。
この分なら直に雨になるかもしれない。
_
( ゚∀゚)「ブーン、お前らはいつヴィップに戻る予定だ?」
( ^ω^)「数日後、明後日位でしょうかおね。でも……」
_
( ゚∀゚)「明後日か、わかった。それならヴィップまで俺とミルナも護衛について行くから」
- 674 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:13:50 ID:1tAp3y.k0
ジョルジュさんは僕の言葉を遮り、明後日の出発を決定事項の様に捲し立てた。
僕はそれに短く礼を述べるだけに止め、口をつぐんだ。
フィレンクトさんにはああ言ったが、僕は心のどこかにこの件を詳しく調べる気があった。
その為、ソクホウにしばらく留まる事も考えていたが、恐らくジョルジュさん達はそうして欲しくないのだろう。
理由はきっとフィレンクトさんと同じで。
( ^ω^)「ジョルジュさん達はどうするんですかお?」
_
( ゚∀゚)「俺達はしばらくアニジャ待ちだからなあ」
_
( ゚∀゚)「お前らを送った後はまたソクホウに戻って適当にクエストでもやってるよ」
_
( ゚∀゚)「武器の改造中、代わりの武器はアニジャから貸して貰ってるしな」
( ^ω^)「そうですかお……」
それが嘘だという事は僕にはわかっている。
ジョルジュさん達はきっとこの件を調べるつもりなのだろう。
ジョルジュさんも僕がそれを理解している事に気付いているかもしれない。
_
( ゚∀゚)「……酒でも飲もうって約束したのにな」
( ^ω^)「……薬草パン、食べて欲しかったですお」
- 675 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:15:56 ID:1tAp3y.k0
言うつもりはなかった事なのだろう。
それでも、思わず漏れてしまったジョルジュさんの心の内。
言ってしまってちょっと顔をしかめてしまったジョルジュさんに、僕は努めて平坦に聞こえるように返した。
_
( ゚∀゚)「全く……騎士様が約束破りやがって」
ジョルジュさんは空を見上げ、悪態をつく。
僕はただ、何も言わずに歩く。
_
( ゚∀゚)「明日は雨かな、こりゃ……」
( ^ω^)「かもしれませんお……」
晴れ渡らない空がこんなにも重苦しく感じたのは、じいちゃんが亡くなったあの日以来だ。
そんな灰の空の下を、僕達はただ歩き続けた。
第二十三話 帰する空は灰色に 終
- 676 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:18:17 ID:1tAp3y.k0
二十三話は以上です
これでひとまず今回の旅シリーズ終わり
今後はまた数話、1話完結話をやって、またシリーズといった感じになると思います
二十七話までの流れは大体決まってます
次話の投下は未定です
一応、書き上がってはいますので、時間が取れた時にでも
支援とか感謝です
- 677 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:32:21 ID:5cAK1A1I0
- 乙!
- 678 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 00:37:20 ID:330WwKCoO
- 乙
シリアスになっていくのかな?
- 679 名前:!ninja:2012/04/10(火) 00:54:40 ID:eB0nf0lEO
- おパンつ!!
パンや道具売ってる場合じゃねぇwwwwwwwww
- 680 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 02:50:25 ID:1Ii1.hPs0
- 乙
元々これ好きだったが
最近はさらに面白さに磨きがかかっているな
続きを楽しみにしている
- 681 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 07:11:19 ID:.zRByioYC
- 乙
個人的にマジ神作品
ほんま毎回楽しみやわ
- 682 名前:名も無きAAのようです:2012/04/10(火) 13:58:40 ID:zNCM/0v60
- フィレンクトの口調でとんでもなくとかいうと違和感あるな
- 683 名前:名も無きAAのようです:2012/04/11(水) 13:30:42 ID:o10b/ISc0
- 乙
さらっと次の話書けてるって言うけど、すごいペースだな
- 684 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 11:52:42 ID:LPCBbJsU0
- 続きにwktk
- 685 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 16:26:30 ID:zk.S8/ww0
- 乙!
- 686 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:23:14 ID:FnHMrnZY0
〜 ヴィップの町 南門 〜
( ^ω^)「帰って来たお、ヴィップの町」
ξ゚听)ξ「随分と久しぶりな気がするわね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ゚д゚)「うまい具合に雨も上がったか」
_
( ゚∀゚)「旅の間中降り続いて、鬱陶しい事この上なかったな」
第二十四話 ようこそ、魔法農具屋サンライスへ
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 687 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:24:29 ID:B0mdYs3U0
- きったああああああ
- 688 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:24:55 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「晴れたお陰で、荷物運び入れるのが楽に済みそうですお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
_
( ゚∀゚)「人手がいるなら手伝うぞ?」
彼の名前はジョルジュさん。
僕の顔馴染みの冒険者で、気さくで悪ふざけ好きの愉快な人だが、実力は確かで意外と根は真面目だったりする人だ。
( ^ω^)「大丈夫ですお。大した物はないですから」
僕達はソクホウへの旅を終え、ヴィップの町へ戻って来た。
2週間程度の予定の旅だったが、結局3週間以上かかってしまった。
かかった事には理由はあったし、それによって得られた物や経験は大きかったので僕としては満足しているが、
長期間店を閉めてしまった事は少し気掛かりだ。
( ゚д゚)「そうか。それなら俺達はここで失礼させてもらう」
ξ゚听)ξ「すぐソクホウに戻るんですか?」
- 689 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:26:06 ID:FnHMrnZY0
- _
( ゚∀゚)「1度シャキンの顔見てからな。馬の手配もしてもらおうと思ってるし」
ジョルジュさんとミルナさんは僕達の護衛でここまでついて来て貰ったが、またソクホウに戻る予定だ。
ソクホウでアニジャさんに武器の強化依頼をしている最中だし、負傷しているハインさんも残して来ている。
幸いにも帰路では特に何も起こらず、無事ヴィップに帰り着く事が出来た。
ハインさん最後までついて来ると駄々をこねていたが、ジョルジュさん達はソクホウへの帰りは馬を使う予定で、
肋骨にひびが入っているハインさんに馬の旅は無理だという事で却下された。
( ^ω^)「そうですかお。それじゃあ、色々とありがとうございましたお」
_
( ゚∀゚)「なに、お互い様さ。俺らもお前らのお陰でかなり助かったからな」
( ゚д゚)「俺達はしばらくソクホウに留まるが、何かあったら呼んでくれ。お前達の為ならすぐに駆けつけるからな」
ξ゚ー゚)ξ「ありがとうございます。お2人の旅の無事を祈ってます」
(∪^ω^)「わんわんお!」
(* ゚д゚)「またね、わんおちゃん」
つ∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)ノシ「またですお」
- 690 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:27:04 ID:FnHMrnZY0
僕達は2人と別れ、ヴィップの町中を馬車で進む。
荷物を降ろし終えてから馬車は返却するので、まずはサンライズに向かう事にする。
( ^ω^)「しっかし、随分と久しぶりな気がするお」
僕個人としては最長の長旅だったとはいえ、1ヶ月にも満たない期間だ。
ヴィップの町の風景もどこも変わった所はないのに、何故だがすごく懐かしいものの様に感じてしまう。
ξ゚听)ξ「そうね。どこも変わってないのに、何だか懐かしく感じるわね」
(∪^ω^)「わんお!」
僕だけでなく、2人もそんな気分なのか、馬車の上から町をきょろきょろと見回している。
時には住み慣れた町を離れてみるのも、新しい気持ちで今の暮らしを見詰め直せていいのかもしれない。
ξ--)ξ「まあ、私はしばらく旅はいいけどね」
( ^ω^)「取り敢えず僕も、今は自分の部屋のベッドが恋しいお」
馬車は町中を過ぎ、東に向かって走る。
もう間もなく、懐かしの我が家、サンライズが見えて来る頃だ。
- 691 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:28:48 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「さあ、着いたお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
店の前に馬車を停め、御者台から飛び降りる。
逸る気持ちを抑え、感慨深い思いで店を見上げた。
( ^ω^)「……あれ?」
(∪^ω^)「わんお?」
店は営業しているようだ。
クーに鍵は渡してあるし、必要に迫られたら店を開けても良いという許可も出してはいた。
その場合は、クーとトソン君の2人でお店をやってもらうという条件付きではあったが。
( ^ω^)「営業してるのはいいんだけど、何か違和感が……」
(∪^ω^)「わんおー」
僕は再び店を見上げる。
そこには店の看板があり、店の名前もちゃんと書いてあるのだが、よくよく見ると何かおかしい。
- 692 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:29:42 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「見間違いかおね? 何かお店の名前が……」
ξ゚听)ξ「見間違いじゃなく、変わってるわね」
【魔法農具屋 サンライス】
(;^ω^)「魔法農具屋? サンライス? 何だお、これ?」
目を擦り、何度も確認するもやはりそこには魔法農具屋サンライスの文字がある。
間違って違う店に来てしまったのかと思うも、物心付いてからずっと過ごして来た我が家を忘れるはずはない。
(;^ω^)「何だお、これ? 何が起こってるんだお?」
ξ;゚听)ξ「私にわかるわけないでしょ? とにかく、入ってみればわかるわよ」
何だかよくわからないが、現にこうやって目の前にサンライスというお店がある以上、これは現実の事だ。
ツンが言う様に入ってみるしかないだろう。
(;^ω^)「うーん……まあ、それしかないおね」
僕は恐る恐るまだ新しいが見覚えのあるお店のドアを開けた。
- 693 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:31:24 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「いらっしゃいませ。魔法農具屋サンライスへようこそ」
(;^ω^)「……どちら様?」
店に入ると、聞き覚えのあるドアベルの音と共に聞き覚えのない声が出迎えてくれた。
声の主に目を向けると、エプロン姿の女性が1人。
年の頃はよくわからないが僕より上だろうという雰囲気の、小柄で細い目をした見覚えのない若い人だ。
lw´‐ _‐ノv「魔法農具屋サンライスの店長のシューと申します。お客さん、旅人さんかな?」
(;^ω^)「旅人じゃなくて、旅から帰って来た人だお」
lw´‐ _‐ノv「ほう」
(;^ω^)「ここ、魔法道具屋サンライズで僕、ブーン=ナイトウのお店だお? あんた、一体何なんだお?」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、なるほど。そういう事か。はいはい、それならちょっと待っててね」
(;^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんお?」
- 694 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:33:34 ID:FnHMrnZY0
シューと名乗った女性は、何かを理解した風でカウンターから出てこちらに近寄ってくる。
何だか嫌な予感がし、身構えようとした時には既にその顔が目の前にあった。
(;^ω^)「えっと、だからあんたは何者……」
lw´‐ _‐ノv「ぐっない」
(;^ω^)「え……」
彼女は右手の人差し指を僕の顔に向け、突き出す。
僕はその指を凝視しながらも1歩下がった。
(;^ω^)「何を……?」
不意に視界が闇に覆われた。
それが自分で目を閉じたからだと気付いた時には、意識も同じく闇に覆われていく。
( -ω-)「……」
遠くで僕を呼ぶツンの声とわんわんおの鳴き声が聞こえた気がしたが、僕の意識は既に閉ざされていた。
- 695 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:34:24 ID:FnHMrnZY0
〜 魔法農具屋サンライス 〜
( ^ω^)「新しい朝が来たお! 今日も1日がんばるお!」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法農具屋サンライスを営む魔法使いだ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はこめにしき。
僕のペットというか家族で、お店のマスコット的な子犬だ。
lw´‐ _‐ノv「ブーン店長は朝から元気だねえ。うむ、お茶が美味い」
彼女の名前はシュー。
サンライスの店員で、マイペースでちょっと変わった人だ。
(;^ω^)「いきなりサボるなお。ご飯はもう炊いたのかお?」
- 696 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:36:03 ID:FnHMrnZY0
僕の朝の仕事は、おりぎりを握る所から始まる。
魔法農具屋と銘打っているように、ここでは扱うものは主に農具、それも魔法を使って強化したものだが、
農具なんてそうそう毎日売れるような物ではない。
故に肥料なんかの消耗品や、農具を使って出来た成果、つまりは農作物なんかも取り扱っており、
売れる機会が多いのはそちらの方だ。
中でも売れ筋なのが、お店のオリジナルの薬草をブレンドして握り込んだおにぎりである。
よって朝はまずそれを作らねば始まらない。
lw´‐ _‐ノv「そこは抜かりないっスよ、店長。きっちり5升炊き上がっておりますぜ?」
( ^ω^)「助かるお。シューの炊いた米は美味いからね」
lw´‐ _‐ノv「お褒めに預かり光栄ですな」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「それじゃあ、早速握るかお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 697 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:37:14 ID:Vh3DPzvIO
- こめにしきwww
支援
- 698 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:37:29 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「こらこら、こめにしきは握らなくていいお」
キョロキョロ
? (^ω^∪三∪^ω^) ?
(;^ω^)「こめにしきはお前だお。何で名前覚えてくれないんだお」
こめにしきの名前は有名なお米の銘柄から取っている。
真っ白の毛並みがお米を髣髴させるからだ。
しかしながらこめにしきはなかなか自分の名前を覚えてくれない。
ひょっとしてこの名前が気に入ってないのだろうか。
(∪´ω`)「わんおー」
( ^ω^)つ刀uこのお米ライス棒あげるから、こっちで食べててお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
心意気はありがたいが、犬であるこめにしきにおにぎりを握ってもらうわけにはいかない。
衛生的には毎日お風呂に入れて常に清潔な状態を保っているが、流石におにぎりを握るのは無理だ。
僕はご飯を固めて骨の形を模したおやつをこめにしきにあげ、カウンターの上に座らせる。
(∪;^ω^)刀uわん……お……?」
- 699 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:38:37 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「まずはプレーンを握るお。日替わりは何にしようかお」
lw´‐ _‐ノv「それなんだが店長、今日はこれを使ってみないかね?」
( ^ω^)「お? 何だお、これ?」
そういってシューが差し出したのは緑の薄い紙の様なものだった。
( ^ω^)「これはひょっとして、海苔かお? それも薬草で作った」
lw´‐ _‐ノv「ざっつらい。流石店長だ。よくわかったね」
シューの説明によると、薬草を煮詰めて敷き伸ばした物を天日で乾燥させ、塩を振った物らしい。
いわゆる海苔だが、海藻ではなく、薬草である所がミソだ。
( ^ω^)「なるほど、これで巻いてみるのは新しいかもしれんお」
新しさはあるが、商品になるかどうかは味を見ないと何とも言えない。
僕は炊き立てのご飯に粉末の薬草をまぶし、薬草海苔で巻いてみた。
( ^ω^)「見た目は悪くないお」
lw´‐ _‐ノv「緑の様な緑色だね」
- 700 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:40:12 ID:FnHMrnZY0
僕は薬草海苔巻き薬草おりぎりをがぶりとかじる。
薬草海苔のパリっとした食感とお米のやわらかな口当たりが心地良い。
味も薬草海苔の塩と米の甘み、
それに薬草のほのかな苦味が合わさって複雑だが絡み合った見事なハーモニーを奏でている。
(*^ω^)「美味いお、これ。これなら日替わりじゃなくってレギュラーメニューでも行けそうだお」
lw´‐ _‐ノv「お褒めに預かり光栄ですな」
( ^ω^)「売れ行き見て感想聞いて、レギュラー入りを検討するお」
僕とシューはせっせとおにぎりを握り、開店に備える。
何気に朝一の売り上げがかなり大きいので、朝は結構な数を準備する必要がある。
冷めても美味しいのがおにぎりのいい所とはいえ、炊きたてでまだ温かいおにぎりを好きな人も多いのだ。
( ^ω^)「こんなもんかお」
lw´‐ _‐ノv「みっしょんこんぷりー」
おにぎりを握り終わり、汗を拭っているとシューがお茶を淹れてくれる。
暑いのに熱いお茶はどうなのかと思ったが、意外と飲めるというか却って汗が引くことがわかった。
- 701 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:41:35 ID:zmzVYdo60
- 支援
- 702 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:41:38 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「さて、そろそろお店を開けるかお。今日も完売目指すおー!」
チョイ チョイ
(∪;^ω^)っ
( ^ω^)「お? こめにしき、お腹空いてないのかお? お米ライス棒、好きだお?」
フルフル
(((∪;^ω^)))刀uわんお……」
( ^ω^)「まあ、後でお腹空くだろうからその時食べればいいお。さあ、開店だお」
lw´‐ _‐ノv「おーぷん ざ すとあー」
開店と同時に数人の客が店を訪れる。
そのほとんどが顔馴染みの客だ。
そう大きな町でもないので、顔馴染みでない人の方が少ないのだが。
( ^ω^)「いらっしゃいませですお! 今日の日替わりは新作ですお! 是非買ってってくださいお!」
そんなアナウンスをするまでもなく、ほとんどのお客は日替わりおにぎりを買ってくれる。
新作とあらば試してくれるお客さんは多い。
- 703 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:43:01 ID:FnHMrnZY0
しかしながら、その審美眼はなかなか厳しく、中途半端なものだともう2度とその商品は買ってもらえなくなる。
その代わり、出来がいいとまた戻って来てお昼の分まで買って行ってくれたりするのだ。
( ^ω^)「どうでしたかお? って、聞くまでもなさそうですおね。日替わり3つですね。少々お待ちくださいお」
早速外で食べてまた買いに来てくれたお客さんがいる。
どうやら今日の新作日替わりおにぎりはお客さんの眼鏡に適ったようだ。
( ^ω^)「お待たせしましたお。またお越しくださいお!」
僕とシューは協力してお客を捌き、品物を売る。
ただの薬草を買いに来た冒険者の人や、何を勘違いしたのか、遠方から薬草パンなるものを買いに来たお客もいた。
どこで誤解したのかわからないが、ここで売ってるのは薬草パンではなく薬草おにぎりである。
ただの薬草は売っているが、薬草パンは売っていない。
そういうお客さんにはシューが懇切丁寧に説明し、薬草パンの代わりに薬草おにぎりを買って帰ってもらった。
( ^ω^)「ふぅ……お昼はこんなとこかおね」
lw´‐ _‐ノv「お疲れさんした。午後の分はどうするかね?」
- 704 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:44:02 ID:FnHMrnZY0
朝からお昼にかけて大体のおにぎりは売り尽くしてしまった。
夕食用におにぎりを買って行く客は少ないので、今日の所は売り切れにしてもいいのだが、
この客足からすると、もう1升分ぐらいは仕込んでおいてもいいかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「そうだね、まだお客さん来そうな感じはあるね」
( ^ω^)「んじゃ、よろしく頼むお」
lw´‐ _‐ノv「おっけー、店番よろしゅうに」
そう言うとシューは店の奥に引っ込んだ。
僕は商品の点検をしながら店番を勤める。
そんな折、ドアが開く音がして1人の客が入って来た。
('A`)「何だ、やっぱ帰って来てたんだな」
( ^ω^)「お、ドクオさん、今日は珍しく普通に入って来ましたおね」
(∪;^ω^)「わんおー」
- 705 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:46:05 ID:FnHMrnZY0
('A`)「俺はいつも普通に入って来てるよ。お前が気付かないだけだ」
( ^ω^)「無意識に視界から外そうとしてるのかもしれませんお」
('A`)「うん、無視は止めてね、心折れるから」
相変わらずのくたびれた顔で、ドクオさんは溜め息を吐く。
そして店内を見回すと、眉をひそめた。
('A`)「何だこりゃ? 随分様変わりしたな」
( ^ω^)「何の事ですかお? いつも通りのサンライスですお?」
(;'A`)「サンライス? サンライズじゃなくて?」
( ^ω^)「魔法農具屋サンライスですお。いつも通りですお」
(;'A`)「いや、農具って……確かにそれっぽいのあるな。お前、旅先で何かあったのか?」
( ^ω^)「旅? 何の話ですかお? 僕はずっとヴィップでお店やってましたお?」
- 706 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:47:27 ID:FnHMrnZY0
僕の言葉に何故かドクオさんが険しい顔をした。
何だか今日のドクオさんは変だ。
よくわからない事ばかり口走っている。
('A`)「変なのはお前だよ。何をされた? 誰の仕業だ?」
(;^ω^)「仕業って……話が見えませんお?」
ドクオさんが真面目な顔で僕の両肩に手を乗せる。
何でそんな深刻な風なのかはわからないが、あまり顔は寄せないで欲しいと切に思う。
lw´‐ _‐ノv「おーい、店長、そろそろ薬草採集に行かねばならんようだな」
( ^ω^)「お、シュー。そうなのかお?」
ご飯の仕込みを終えたのか、シューが店内に戻って来る。
それを見たドクオさんは僕を押しのけ、シューの方に向かう。
('A`)「てめえは何もんだ?」
lw´‐ _‐ノv「何だこのモンスター?」
- 707 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:49:15 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「シュー、ドクオさんは一見モンスターだけど僕の師匠で人間だお」
( ^ω^)「ドクオさんも、何もんだって、シューはシューだお? うちの店員の」
('A`)「……てめえがやったのか」
lw´‐ _‐ノv「……ふむ、仕方がないね。君も眠ってもらおうか」
2人はよくわからないやり取りし、シューがドクオさんの前に立つ。
そしてシューはドクオさんに指を突き付けるが、いくら気持ち悪いとはいえいきなり目潰しはひどいと思う。
lw´‐ _‐ノv「ぐっない」
('A`)「!?」
シューが何事か呟くと、ドクオさんの動きが止まる。
シューは満足げに頷いて指を下ろし、こちらを向いた。
lw´‐ _‐ノv「さて、店長の方も少し眠ってもらおうか」
(;^ω^)「シュー、ドクオさんに何したんだお?」
- 708 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:50:02 ID:FnHMrnZY0
('A`)「チャームか」
lw´‐ _‐ノv「!?」
( ^ω^)「お?」
動きが止まったと思ったドクオさんが呟くように言う。
驚いたのかシューの目蓋がぴくりと動き、ドクオさんの方に向き直った。
lw´‐ _‐ノv「きいていない? 何故……?」
('A`)「生憎、俺には魅了の魔法は一切きかねえよ」
理由はよくわからないが、ドクオさんの言葉から察するに、シューがドクオさんにチャームの魔法を使ったようだ。
ドクオさんを魅了してどうするのかと正気を疑うが、ドクオさんはチャームが一切きかない体質なので意味がない。
lw´‐ _‐ノv「随分と変わった人間がいたものだねえ……」
('A`)「そう言うてめえのその力、人間のものじゃねえな」
lw´‐ _‐ノv「おまけに勘もいいと来てるね」
('A`)「一応、巷じゃ賢者という事になってんでね」
- 709 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:51:31 ID:FnHMrnZY0
ドクオさんが身構え、シューと距離を取る。
何が起こっているのか全くわからないが、何だか不穏な空気だ。
(;^ω^)「2人とも、落ち着いてくださいお。生理的に受け付けないからってケンカは駄目ですお」
(#'A`)「お前はいい加減戻って来い! ほら、これ飲め!」
ドクオさんがこちらに走りより、懐から何かを取り出す。
何かの粉の様だが、ドクオさんの清潔とは言い難いローブに収まってたものを口にするのは勘弁願いたい。
(#'A`)「いいから飲め!」
(;゚ω゚)「ちょ、止め──何これ? 苦ッ! うごげおばべべぐえおあい──」
(∪;^ω^)「わんわんお!?」
無理矢理口の中に押し込まれたそれから、すさまじい苦さが広がり、僕は思わず倒れ込む。
とんでもない頭痛が襲い、意識が白濁して行く。
lw´‐ _‐ノv「あーあー、無茶するねえ」
ガブッ
(∪^皿^)}'A`)「俺の弟子はこのくらいで死にやしねえさ。それよりてめえ……」
ガジガジ
(∪^皿^)}'A`;)「あの、ブーンは大丈夫だから離してくれる? いや、気絶してるだけだかさ、ホント、ね?」
- 710 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:52:40 ID:B0mdYs3U0
- キャードクオサーン
- 711 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:53:22 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「うん? 戦うつもりかい?」
{'A`)「いや、出来れば避けてえな」
lw´‐ _‐ノv「懸命だね。勝てないという事は理解していると」
('A`)「無駄な事はしない主義でね」
lw´‐ _‐ノv「ふむ……、とはいえ、私が店長に害を加えようとするなら戦うのだろ?」
lw´‐ _‐ノv「それに、今の君なら恐らく私に勝てるだろうしね」
('A`)「……買い被り過ぎだな」
lw´‐ _‐ノv「ま、多くは聞かんよ。ただ、溜め込み過ぎは身体に毒だと言っておこう」
('A`)「そりゃどうも」
('A`)「そんじゃ、改めて言わせて貰うぜ」
('A`)「どうせこいつ以外にもチャームをかけてんだろ? そいつを解いてここから去るなら見逃してやる」
- 712 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:54:56 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「見逃してやる、か。随分と上からだねえ。……嫌だといったらどうするのかね?」
('A`)「……決まってるだろ? お前──」
(;゚ω゚)「ぶるあああああああああああああああああああああッ!?」
(∪;^ω^)「わんお!?」
衝動のままに叫びながら飛び起きると、そこはサンライズの店内だった。
しかしながらどことなく馴染みのない物が置いてあり、馴染みのある変な顔と馴染みのない顔が向かい合っている。
(;^ω^)「あれ? えっとここは……」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
('A`)「やっと起きたか。ここがどこかわかるか?」
(;^ω^)「サンライズの中? ですおね、ちょっと変わってるけど天井とか同じだし……」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、解けたのか。なかなかやるねえ」
('A`)「伊達に賢者やってないんでね。おい、ブーン、状況理解してるか?」
- 713 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:56:16 ID:FnHMrnZY0
目の前の女性、シューの姿とドクオさんの言葉で、混濁していた僕の頭の中の靄が晴れた。
ソクホウから帰ってから今までの流れを思い出すに、僕はどうやらシューに魅了されていた様だ。
lw´‐ _‐ノv「そゆことだね」
('A`)「チャーム中の記憶も残ってるのか」
lw´‐ _‐ノv「まあ、過去の記憶に少し足しただけだからね」
lw´‐ _‐ノv「消したりはしてないし、新たに増える分はそのままだね」
('A`)「過去を消さなきゃ、どこかで矛盾が出るだろ?」
lw´‐ _‐ノv「そこは後乗せの分の優先度を上げてね、誤魔化してるね」
('A`)「そりゃ便利な事で」
(;^ω^)「よくわかんないような、わかったような感じですけど、取り敢えず何でこんなことしたんですかお?」
それだけ高度なチャームを使っておきながら、シューがやっていた事は単にお店の手伝いだ。
店の名前や扱う商品は変えたが、誰にも危害を加えたりとかはしていない。
何らかの物が盗まれたわけでもなさそうだし、むしろ物は増えている。
- 714 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:57:28 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「話せば長くなるが聞きたいかい?」
(;^ω^)「ええ、それはもう」
僕はドクオさんの方を見る。
ドクオさんは不満げな顔をしてはいたが、反対はしなかった。
lw´‐ _‐ノv「最初はね、頼まれただけだったんだよ」
(;^ω^)「頼まれた? 誰にですかお?」
lw´‐ _‐ノv「誰って、クーとかシャキンとか、この町の人間にだよ」
(;^ω^)「はい!?」
シューの話によると、シューは旅の途中でヴィップの町に立ち寄っただけだったらしい。
それでバーボンハウスで食事をしていると、何やら町の魔法道具屋がなかなか帰って来なくて、
薬草とかの道具がそろそろ底を尽きそうでどうしようという話が聞こえてきたという。
lw´‐ _‐ノv「私がちょっと魔法使いっぽい格好してたからだろうね。クーが話しかけて来たよ」
lw´‐ _‐ノv「お前、薬草作れるかってね」
- 715 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 22:58:37 ID:FnHMrnZY0
どうやら僕がいない間に、ヴィップの町のクエストが活発になっていたらしい。
僕が用意した分では足りないくらい道具を消費した様だ。
その場合は別の町から仕入れて来るとか、別の人に作ってもらうとか手段は考えられるが、
シャキンさん達は後者の手段を選択したのだろう。
lw´‐ _‐ノv「まあ、作れるし、別に行く先も決めてない旅だったんでオーケイしたのよね」
('A`)「人間の頼みをか?」
lw´‐ _‐ノv「君の疑う気持ちはわかるがね、こんな格好してる時点で少しは察してもらえんかね?」
シューの格好はごく普通の服装だ。
ドクオさんの質問の意味も、シューの言う察する所も僕には理解出来ない。
('A`)「いい加減気付けと言いたい所だが、ここまで魔力を隠されているとお前にはまだわからんか」
(;^ω^)「お?」
('A`)「この女は人間じゃねえよ」
(;^ω^)「へ……?」
- 716 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:00:44 ID:FnHMrnZY0
むしろ顔的にはドクオさんの方が人間じゃない気もするが、冗談を言っている素振りはない。
シューもごく普通に頷いている。
lw´‐ _‐ノv「店長にもっともわかりやすく言えば、悪魔ってとこだろうね」
(;^ω^)「悪魔って……マジすか……」
lw´‐ _‐ノvv「マジマジ」
ピースサインでさらっととんでもない事をいうシューだが、僕には何というか実感がない。
人間の姿をしている事を差し引いても、この半日を共に過ごした経験から言うと、ちょっと変わってるけどいい人だ。
(;^ω^)「実感ないけど、取り敢えずこの姿ならシャキンさん達が旅の魔法使いと勘違いしてもおかしくはないお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、理解が行き届いた所で話を続けよう」
lw´‐ _‐ノv「それで頼みを引き受け、短い時間で結構な数の薬草を作った」
lw´‐ _‐ノv「評判も悪くなかったし、これなら店を開けるというクーの提案の元、ここで薬草の販売を始めたのね」
('A`)「店名を変えてか?」
lw´‐ _‐ノv「いやいや、最初は普通に魔法道具屋サンライズで薬草とか売ってただけだったんよ」
- 717 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:02:04 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「それが何で途中から変わったんだお?」
lw´‐ _‐ノv「それを話す為に、まずは私が何故人間の姿でこの世界を旅をしているかを語ろうか」
シューの話を要約すると、シューは悪魔でも農業とか豊穣を司る悪魔らしい。
何だか悪魔っぽくないが、何でも人間の世界でも割と有名な悪魔の子供という事だった。
個人的には悪魔というと、悪事を働いて略奪して生きてくイメージしかないから、
農業をやる悪魔というのは全くイメージが湧かない。
lw´‐ _‐ノv「それだと結局、奪い奪われの繰り返しで不毛じゃないか」
('A`)「正論だが、悪魔に言われるとな……。享楽のままに自分勝手に生きるのが悪魔だろ?」
lw´‐ _‐ノv「我らの一族が我らの世界の中で異端な考えを持っているのは否定しない」
lw´‐ _‐ノv「だが考えてもみたまえ」
lw´‐ _‐ノv「奪い合いの生き方は、常に奪われる事に怯え、備えて生きていかねばならないのだぞ?」
lw´‐ _‐ノv「はっきり言ってめんどくさいじゃないか」
- 718 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:03:38 ID:FnHMrnZY0
要するに、皆で農業やって暮らす生き方の方が、奪い合いの生き方より面倒が少ないからそうしているという事らしい。
こっちの方が楽な上、楽しいからある意味享楽のままに生きていると。
lw´‐ _‐ノv「更に言えば、農作物は美味い。野菜も美味いが特に米が美味い」
( ^ω^)「何となくそこは理解出来たけど、農業も結構大変だお?」
lw´‐ _‐ノv「うむ、確かにね。故に私はこうやって人間界を旅してるのだよ」
lw´‐ _‐ノv「人間界は農業が発達してるだろ? より良い農業の仕方を探る為、私は旅をしている」
(;^ω^)「でも、農業を司ってるなら、そんな事しなくても何でも出来そうな気がするお」
lw´‐ _‐ノv「あれは担当制というか、適当に割り振られただけだからねえ」
lw´‐ _‐ノv「割り振られてからは興味を持って調べるようにはなったけど、大した事は出来ないね」
('A`)「それで、旅の理由はわかったが、店名を変えた理由は何だ?」
lw´‐ _‐ノv「君はやけに店名にこだわるね。安心したまえ、ちゃんと説明はするよ」
シューの話によると、店を開けてしばらくは何の変哲もない魔法道具屋として営業していたらしい。
これといって問題もなく、客足もぼちぼちといった所らしかった。
- 719 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:04:39 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「だがある時、遠方から来たという客がこんな事を聞いて来たんだ」
lw´‐ _‐ノv「『薬草パンは売ってないのですか?』とね」
(;^ω^)「お、それってひょっとして……」
lw´‐ _‐ノv「やはり店長、君かね? 客はここで売ってると聞いて来たらしいが、私には何の事かさっぱりでね」
どうやらメシューマやソクホウで行った宣伝活動が実を結んでいたらしい。
ツンが危惧してたように、少し違った方向で広まってしまったみたいだけど。
lw´‐ _‐ノv「残念ながら私はパンは作れない。パンも農作物の成れの果てだが、同じ農作物なら私は米を推す」
lw´‐ _‐ノv「というわけで、ここの壁に貼ってあったレシピを元に薬草おにぎりを作り、パンの代わりに売った」
lw´‐ _‐ノv「そしたら、思いの他好評でね。そこで少し欲が出てしまった」
lw´‐ _‐ノv「自分の可能性を試したくなったとでも言うべきなのかね? いや、お米の可能性かな?」
そこから新作おにぎりを売りに出したり、自分が考案した農具を置いたりし始めたらしい。
勿論、そこまで勝手な事をするほどの権限はないから、町中の皆にチャームをかけ、
元からそうであったように錯覚させたと。
- 720 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:06:08 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「そして店長が帰って来て今に至るわけだね」
( ^ω^)「流れは把握したお」
(;^ω^)「……したけど、僕は何て言っていいかわかんないお」
lw´‐ _‐ノv「まず私は謝るべきだろうね。ごめんね、色々と勝手な事をして」
(;^ω^)「まあ、正直な所、謝られる事とお礼を言うべき事と相殺しそうな割合だお」
( ^ω^)「こちらからもごめん、そしてありがとうだお」
店名を変えたり、違うものを売られたりもしたが、
シューはヴィップの町にとって必要だった薬草とかの道具の供給もしてくれたのだ。
それに付いては僕のみならず、町の皆も感謝しているだろう。
僕が帰って来て以降もそれを続けようとしたのは怒るべき所かもしれないが、一緒に仕事をした記憶もある今、
そんな気にもなれない。
シューの仕事振りは見ていて清々しいものがあり、悪魔とかそういうの関係なしにいい店員だったのだ。
lw´‐ _‐ノv「そう遠くない内に返すつもりだったと言って信じてもらえるかはわからないがね」
- 721 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:07:20 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「せめて1つぐらいは自作の農具が売れるのを見たかったんだが、売れなかったねえ」
(;^ω^)「まあ、何かよくわかんない形してるし、魔法農具ってのがそもそもよくわからんお」
( ^ω^)「しかし、シューの言葉は信じるお」
( ^ω^)「店を本気で奪う気なら、僕を店長にする必要もなかったはずだしね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
lw´‐ _‐ノv「そう言ってくれるとありがたいね。こめにしきもすまなかったね」
(;^ω^)「この子はこめにしきじゃなくってわんわんおだお。つーかごめんお、変なご飯あげたりして」
つ∪*^ω^)「わんお!」
わんわんおは犬だから、チャームをかける必要はないとシューは判断したようだ。
別の名前で呼んだり、味の付いてないお米の固まりをあげたり、色々とかわいそうな事をして申し訳なかったと思う
ただ、わんわんおの正体を考えれば、シューがチャームをかけなくて助かったのかもしれない。
かけていたらどうなっていたかわからないが、シューはわんわんおに何らかの疑問を感じた可能性はある。
( ^ω^)「これで大体の説明は終わりだおね」
一通りの事情は理解し、シューもこれから全員のチャームを解くという事なので一件落着となりそうだ。
ドクオさんだけは未だに眉をひそめた渋い顔をしているが。
- 722 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:08:54 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「何でそんな苦虫みたいな顔してるんですかお?」
('A`)「苦虫を噛み潰した様な顔な。いや、お前の甘さにほとほと呆れ果ててるんだよ」
( ^ω^)「そうは言いますけど、実害はなかったわけですし、怒る理由もないですお?」
('A`)「お前は……。まあいい、とにかくお前は物事に対する危機感というものをだな……」
lw´‐ _‐ノv「店の看板版は戻しておいたぞ、苦虫君。君にも手間をかけさせたね」
('A`)「誰が苦虫だ。……もういいや、俺は帰る。あとは知らん。勝手にしろ」
そう言うとドクオさんはさっさと店を出ていってしまった。
ドクオさんにもちゃんとお礼を言いたかったが、また今度でいいだろう。
改めて色々と話をしにドクオさんの庵に向かう予定だし。
lw´‐ _‐ノv「それじゃあ、私も行こうかね」
( ^ω^)「お……」
シューはこれから全員のチャームを解き、村を出るという。
1人1人に謝罪をしたい所だが、自分の正体を思えばもう会わない方がいいだろうとシューは言った。
- 723 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:11:13 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「別に、チャームを解いたからってシューの正体はバレないお?」
lw´‐ _‐ノv「店長は私の正体を言わないつもりかね? それでどう町の皆に説明するつもりかな?」
チャームが解けてもここしばらくの記憶はあるのだから、多分皆は色々と僕に聞きに来るだろう。
しかしながら、別にシューの正体は明らかにしなくてもいくらでも説明は出来る。
なんせシューは普通に商売していただけだ。
高度な魔法を使う魔法使いとでも言えばそれで済む。
lw´‐ _‐ノv「説明は付くが、それでいいのかね?」
( ^ω^)「でも、悪魔だって知られればヴィップに来辛くなるお?」
僕はシューが悪い悪魔ではない事を理解したが、普通の人は悪魔という言葉にまずいいイメージは持たない。
シューに悪意がないのなら、無用な争いを避ける為にも隠しておく方がいいと思う。
例によってツン達数人には話しておこうと思っているが。
lw´‐ _‐ノv「店長は私を信用してくれるんだね」
( ^ω^)「短い時間だけど一緒に働いたお。それに、あの薬草海苔もすごく良く出来てたお」
( ^ω^)「あんな美味しいものを作れる人が……人じゃないけど、とにかく悪い悪魔じゃないお!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 724 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:14:05 ID:Vh3DPzvIO
- ちょいちょいドクオさんdisられるな
- 725 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:14:08 ID:FnHMrnZY0
lw´‐ _‐ノv「……旅はもう諦めて帰らねばならんと思っていたが。私は店長の厚意に甘えていいのかね?」
( ^ω^)「もっともっとこの世界の農業を学んで、シューの世界の為に役立ててくれお」
lw´‐ _‐ノv「ありがとう。折角の厚意だ、乗っからせてもらおう」
折角だから、しばらくここで働いてみるかと提案もしたが、流石にそこまでは甘えられないとシューは断った。
また旅に出ると言うシューだが、それには1つ問題がある。
(;^ω^)「この農具、どうするお?」
lw´‐ _‐ノv「ここで売ってもらうのは店に合わないし場所取るだろうから、出来れば持って行きたいが……」
店内に所狭しと並んでいる魔法農具は結構な数があり、大きさも重さも徒歩の旅に携帯するのは無理がある。
悪魔ならそれくらい何とかなりそうだが、悪魔の力で何とかしたら悪魔だとバレる可能性も出て来てしまう。
lw´‐ _‐ノv「残念ながら処分するしかないかね……」
( ^ω^)「お……」
これまでほとんど表情を変えなかったシューだが、その眉尻が少し下がる。
折角作った魔法農具を処分するのは忍びないのだろう。
- 726 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:16:07 ID:FnHMrnZY0
正直な所、この魔法農具がどういう使い方でどう従来の物と違うのかはよくわかっていない。
しかしながら開店前にこれらをシューが熱心に掃除して点検していたのは目にした。
それらを処分するのは僕も気が進まない。
( ^ω^)「そうだお、どうせなら馬車借りて商売しながら旅すればいいお」
( ^ω^)「農具だけじゃなく、おにぎり売ったりも出来るお」
lw´‐ _‐ノv「馬車か……なるほど、それは魅力的な話だが、私は馬車を持っていないね」
( ^ω^)「借りれば……いや、シューの境遇なら専用の馬車があった方がいいおね、物を置く家がないんだし」
lw´‐ _‐ノv「買えと? 私は人間界の通貨は大して持ち合わせていないぞ?」
lw´‐ _‐ノv「馬ぐらいなら向こうの世界から召喚出来ると思うが。首がなかったりするけど」
(;^ω^)「普通の姿の馬はいないのかお?」
lw´‐ _‐ノv「角が付いてたり、羽があったりも駄目?」
( ^ω^)「駄目……でもないかお。羽は厳しいけど、角ぐらいなら使い魔って事で誤魔化せなくも……」
- 727 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:18:50 ID:FnHMrnZY0
竜を従えていたじいちゃんのような魔法使いもいる事だし、角のある馬、
ユニコーンとか従えている魔法使いがいてもおかしくはない。
ただ、珍しいので人目は惹くしトラブルの元になりかねないが。
( ^ω^)「それが出来るなら馬車本体は何とか出来ると思うお」
lw´‐ _‐ノv「まさか店長、私に馬車を無償提供しようとかお人好しな事を考えているのではないかね?」
(;^ω^)「お、馬車本体だけならそこまで高くないのはあるお」
図星を指されてしまったが、シューのこれまでの働きを思えばこのくらいはしてあげてはいいのではと思う。
確かに、またツンやドクオさんからお人好し過ぎると怒られそうだし、結構な赤字になるがそういう問題ではない。
人間界で他に頼れる人がいないとしたら、ここで無下に放り出す事は僕には出来ない。
( ^ω^)「貰うのが嫌なら、貸すって形でもいいお」
世界を旅して回り、利益が出たならいつか返してくれればいいと僕は提案する。
商売がうまくいかなくて行き詰って諦める事になったら、その時は馬車を返してくれればいいと。
lw´‐ _‐ノv「ふむ……やるとなったら諦める気はないが、それでも返済には相当時間を要すると思うぞ?」
- 728 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:21:37 ID:FnHMrnZY0
( ^ω^)「どうせシューは僕らよりずっと長生きなんだお? だったら、いつかはきっと返せるお」
( ^ω^)「代金は僕の子孫が受け取ってくれるお」
(∪^ω^)「わんお!」
lw´‐ _‐ノv「君は本当にお人好しだね。……しかしながら、私はそれが好ましくも思うよ」
( ^ω^)「お人好しなのは自覚してるお。提案を受け入れてくれてありがとだお」
僕は笑ってシューに右手を差し出す。
シューは軽く肩をすくめ、その手を握り返してくれた。
( ^ω^)「お、そうだお。あの薬草海苔の作り方教えてくれお」
lw´‐ _‐ノv「む、これから商売敵になろうというやつに……まあ、いいか。あれはだな……」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
第二十四話 ようこそ、魔法農具屋サンライスへ 終
- 729 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:22:52 ID:zmzVYdo60
- つ■←薬草海苔
- 730 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:23:41 ID:zmzVYdo60
- 乙
- 731 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:28:11 ID:Vh3DPzvIO
- 乙わんお
- 732 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:28:37 ID:dNGhnx6I0
- 乙!
- 733 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:30:01 ID:IFUy/M3I0
- ふっくーら つやつーや サーンライス
- 734 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:31:23 ID:B0mdYs3U0
- 乙
- 735 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:40:13 ID:FnHMrnZY0
二十四話は以上です
次話の投下は未定です
次話も書き上がってますので、それほど間は空かないかと
あとがきまで投下した気になってたのは秘密
支援とか感謝です
- 736 名前:名も無きAAのようです:2012/04/14(土) 23:43:04 ID:B0mdYs3U0
- 書くペース早いな
- 737 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:12:06 ID:cpt9MoLg0
- 乙
- 738 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 01:38:41 ID:0DTraApg0
- おパンツん
- 739 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 05:57:24 ID:ms4g0Kq.C
- こめにしきは吹いたwww
乙!
- 740 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 08:24:41 ID:txUGxUIc0
- ドクオさんの見せ場がとうとう……と思ったらそうでもなかったでござる
- 741 名前: ◆5rua49HN2.:2012/04/15(日) 22:21:17 ID:/IGpyouk0
- 細かいけどミス
>>722
×シューはこれから全員のチャームを解き、村を出るという。
○シューはこれから全員のチャームを解き、町を出るという。
- 742 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:28:20 ID:/IGpyouk0
〜 ドクオの庵 〜
( ^ω^)「先日は助かりましたお」
('A`)「ああ、わかったから帰れ」
( ^ω^)「サンライズは元に戻ったんだし、機嫌直してくださいお」
('A`)「戻りはしたがな……、お前は色々とお人好し過ぎるんだよ。そもそもだな……」
( ^ω^)「そういえばドクオさんにお土産あるの忘れてましたお。モテモテ通信の最新号ですお」
(*'A`)「何!? 発売日はまだ先だぞ? うお、マジ最新号じゃねえか!」
( ^ω^)(これでお小言は回避と……)
第二十五話 憂う賢者の語る世界
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 743 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:30:26 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「ソクホウに行った時、世話になった人がそれの著者だったんですお」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
(*'A`)「ホントか? それはすごいな。あの流石小町と知り合いになったのか」
彼の名前はドクオさん。
巷では賢者と称される魔法使いで、僕の師匠に当たるが見た目は残念な人だ。
(∪^ω^)「わんわんお」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
サンライス騒動から数日後、僕とわんわんおはドクオさんの庵を訪れていた。
シューの事の説明や旅から帰っての色々な物の整理などが一段落したので、ようやく話をしに来れたのだ。
( ^ω^)「流石小町? ああ……」
僕は結局アニジャさんから無理矢理押し付けられたモテモテ通信の裏を見て、ドクオさんの言葉の意味を理解した。
どうやら流石小町というのがアニジャさんのペンネームらしい。
武器職人とモテモテ通信の発行人で名前を使い分けているのだろう。
しかし、オトジャさんのペンネームもあれな感じだったが、アニジャさんのも大概だ。
- 744 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:31:43 ID:/IGpyouk0
(*'A`)「どんな人だった、小町ちゃん」
( ^ω^)「小町……ちゃん……?」
(∪^ω^)「わん……お……」
ドクオさんは名前の響きでアニジャさんの事を女性だと誤解しているようだ。
こんな頭の悪い本を妙齢の女性が書いてるとは思い難いのだが、
わざわざ夢を壊すのも無粋なので適当に誤魔化す事に決めた。
( ^ω^)「気さくないい人でしたお」
(*'A`)「そっかー。そうだよな、この詩集とか見ると、飾り気のない人っぽいもんなー」
( ^ω^)「アニ……小町さん、詩集とか出してんですかお」
(*'A`)「おう、出してるぞ。その筋では有名なやつだ」
僕はドクオさんがこちらに差し出した、『サスガ記念日』という詩集をタイトルだけ見て慎んでお返しした。
正直、ろくな事は書いてないと思う。
- 745 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:33:37 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「それはそれとして、ちょっとドクオさんに聞きたい事があるんですけど」
('A`)「ああ、何だ? あのシューってやつの事なら俺から言う事はもうないぞ」
シューの話をしたかったわけではないのだが、ドクオさんはもうシューの事を危険視はしていないようだ。
あの時は難癖をつけてばかりだったが、一応はシューの言葉を信じているらしかった。
('A`)「話の筋は通ってたからな。馬鹿馬鹿しい理由だったが」
( ^ω^)「いいじゃないですかお。真っ当に働きたがってるんですお?」
('A`)「人じゃねえけどな。……まあ、人間を襲うつもりはないようだから、放って置けばいいだろ」
関わりたくないというのがドクオさんの本音らしい。
大体の人と関わりたくないと思うのがドクオさんの本音だから、いつも通りといえばいつも通りだ。
('A`)「一応釘は刺しておくが、間違ってもあいつと戦うなよ?」
あの様子なら戦うことにはならないだろうが、もしそうなったら逃げろとドクオさんは言う。
ドクオさんの見立てによると、シューは相当強い悪魔らしい。
シューを見ていると全くそうは見えないのだが、ドクオさんが嘘を吐く理由もないので本当なのだろう。
- 746 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:35:38 ID:/IGpyouk0
('A`)「ついでに言えば、あいつは例外中の例外だからな? 悪魔が皆あんな友好的だと思うなよ」
( ^ω^)「それはそうでしょうお。悪魔自体が滅多に会うものじゃないでしょうけど」
悪魔は高い魔力と高度な知性を有し、人間に害するものがほとんどだ。
僕は遭遇した事はなかったが、文献や一般認識ではそう伝わっている。
('A`)「くれぐれも関わり過ぎて余計な事に巻き込まれるんじゃねえぞ?」
(;^ω^)「善処しますお」
(∪^ω^)「わんわんお」
無論、厄介事に巻き込まれるのは勘弁願いたいのだが、
これから別の厄介事の話をするとなるとドクオさんはどんな顔をするだろうか。
そのまずい顔が更に歪みそうなのは容易に想像出来る。
( ^ω^)「で、今日ここに来た本題なんですけど」
とはいえ、フィレンクトさんとの約束もあるし、聞かないわけにもいかない。
僕はソクホウでの話をドクオさんに順を追って説明した。
- 747 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:38:22 ID:/IGpyouk0
('A`)「……」
( ^ω^)「……というわけで、その灰衣の魔法使いについて知ってる事ないですかお?」
僕の話が終わっても、ドクオさんは両手を組んで額に当て、俯いたまま黙り込む。
しばらくの後、ドクオさんから大きな溜め息が漏れた。
('A`)「お前さ……」
( ^ω^)「お?」
('A`)「何でそう行く先々でトラブルに巻き込まれてんの?」
(;^ω^)「いや、それは僕の所為ではないというか、むしろ僕が聞きたいとこですお」
ドクオさんは普段の3割増しぐらいの疲れた顔で僕を問い詰める。
しかしながら僕も好き好んで厄介事に巻き込まれているわけではないし、不可抗力みたいなものだ。
今回の件にしたって、襲われている馬車がいたら助けないわけにも行かないだろうから、ある意味不可避の事だ。
('A`)「しかも騎士団長かよ……。ばっちり王宮と関わる事になりやがって……」
- 748 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:39:23 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「そういえば、ドクオさんの兄弟子って人にも会いましたお」
('A`)「……お前、ビコーズさんとも会ったのか?」
ドクオさんは僕の言葉にさらに険しい顔をする。
やはり自分の兄弟子が何を言っていたのか、ドクオさんでも気になるものなのだろうか。
( ^ω^)「ええ、僕がソクホウに来たと聞いたらしくて、向こうから会いに来られましたお」
('A`)「何を話した?」
( ^ω^)「思い出話とか世間話とか、これといった用事はなくて、会ってみたかっただけらしいですお」
('A`)「そうか……」
どことなく安堵したような顔でドクオさんは呟くように言う。
そんなに心配しなくても、ビコーズさんはドクオさんの事を大層褒めていたのに。
('A`)「褒めていた……か」
( ^ω^)「じいちゃんが最後まで側に置きたがったくらい、良い弟子だったって言ってましたお」
- 749 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:40:43 ID:/IGpyouk0
('A`)「……そうか」
( ^ω^)「お?」
そんな話を聞いても、ドクオさんはあまり嬉しそうには見えず、どちらかといえば苦しそうな表情を見せた。
理由を聞いていいものか迷ったが、ドクオさんはすぐに何でもなかったかのように普段の冴えない表情に戻り、
それは良かったと頷いた。
( ^ω^)「そうそう、ドクオさん、もう1人兄弟弟子もいるって話じゃないですかお」
('A`)「ああ……、モララーの事か」
( ^ω^)「何でも、ライバルみたいな人だったって聞きましたお。どんな人だったんですかお?」
('A`)「自信家でいけ好かない野郎だな。……何でもそつなくこなす優秀なやつだったが」
( ^ω^)「今はラウンジにいらっしゃるとか」
('A`)「ずっと連絡取ってねえから知らんが、まあ、今もラウンジの国政に携わってるんだろうな」
面倒臭いと返答を渋られるかと思ったが、今日はやけにちゃんと答えてくれる。
ドクオさんも2人の事を懐かしく思っているからなのだろうか。
- 750 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:42:49 ID:Em9XRZMI0
- 連チャンでキテタ━━━━(゜∀゜)━━━━ !!!!!
支援
- 751 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:43:42 ID:/IGpyouk0
しかし、ビコーズさんもモララーさんもそれぞれの国で要職に就いているとなると、
ドクオさんの境遇が少し不憫に感じる。
ひょっとしてドクオさんの王族嫌いはその辺りの劣等感から来てるのだろうか。
だとすれば僕はドクオさんに対して申し訳なく思う。
恐らくじいちゃんは僕を育てる為に、自分の弟子を1人側に置いていたのではないかと思われる節がある。
ビコーズさんはその事を羨んでいたが、同様にドクオさんはビコーズさんやモララーさんを羨んでいたかもしれない。
('A`)「それはねえから心配するな。少なくとも、俺は……その……何でもねえ」
( ^ω^)「何ですかお? はっきり言ってくださいお」
(A` )「何でもねえよ。……べ、別に、サンライズで過ごした時間が悪くなかったとか思ってねえから」
( ^ω^)「何、この嬉しくないツンデレ?」
(∪^ω^)「わんおー」
冗談はさておき、ドクオさんはじいちゃんと共にヴィップで過ごした事を後悔していないようだ。
だとしてもやっぱり色々と疑問点はあるのだが、それに答えてくれる気はないらしい。
- 752 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:44:59 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「それならドクオさんが店長で、サンライズを一緒にやってくれてれば良かったのに……」
('A`)「うるせえな……ああいうのは俺の性に合わねえんだよ」
('A`)「つーか俺の話はどうでもいいだろ? お前が聞きたいのはその、何だ、灰衣の男だっけ? それだろ?」
強引に話を打ち切られ、最初の質問まで話を戻される。
もう少しじいちゃんのお弟子さん達の事とか聞きたかったが、
こっちの話を面倒臭がらすちゃんと取り合ってくれるなら、ある意味ラッキーかもしれない。
('A`)「だが、俺に心当たりはない」
(∪^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「実力とか、そういう点から見たらどうですかお?」
('A`)「俺、ビコーズさん、モララーなら出来るかもしれないな」
( ^ω^)「かもしれない、ですかお? 断言ではなく」
('A`)「断言出来ないのは、感知されずにってとこがあるからだ」
- 753 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:47:45 ID:/IGpyouk0
('A`)「強大な魔力を隠して魔法を撃つなんて事は、はっきり言って人間には不可能に近い」
( ^ω^)「それは確かにそうかもしれませんお」
('A`)「しかし、可能性として考えられる事はいくつかある」
1つ目は感知されないほど遠くから魔法を撃った場合。
この場合は制御の面から考えると、正直無理があり過ぎると思う。
それだけ高威力の魔法を長距離から放ち、それを制御するなんてどれほどの膨大な魔力が必要だろうか。
('A`)「まあ、そうだな。遠視の魔法も同時に使う必要もあるだろうから、かなり無茶だ」
2つ目は感知させる暇がないほどの高速詠唱が出来る場合。
先ほどに比べると有り得る話だが、過去にそれが出来たのはじいちゃんぐらいのものだ。
並大抵の魔法使いでは無理だろう。
('A`)「無理かもしれないが、世にはまだ俺らの知らない実力者がいてもおかしくはない」
( ^ω^)「そうですおね」
- 754 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:49:47 ID:/IGpyouk0
3つ目はそもそも感知しなかった場合。
( ^ω^)「これはどういう事ですかお?」
('A`)「簡単な話だ。まず先に魔法使いだけを殺した」
( ^ω^)「あ……なるほど……」
('A`)「殺さずとも、買収したって方法も考えられるが、その魔法使いも殺されてるんだよな……」
( ^ω^)「どちらにせよ、実現の可能性が一気に高まりましたお」
1人だけ先に殺しておいたとしても、その後広範囲魔法で全てを巻き込むなら殺された順番とかわからないだろう。
これが一番可能性は高いかもしれない。
とはいえ、実際に行われた手段がこれだったとしても、
結局犯人はそれなりに高い実力を持った魔法使いである事は変わらないのだが。
('A`)「ま、今の仮定だと俺ら3人なら実行出来たという証明になるだけだな」
(;^ω^)「確かに……話はあんまり進展してないのかもしれませんお」
- 755 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:51:08 ID:/IGpyouk0
('A`)「さらに言えば、この位は既に騎士団長様は考え付いてる可能性もある」
('A`)「可能性を論じるなら、実際は複数犯だった可能性もある。証言したやつが気付かなかっただけとかな」
(;^ω^)「うーむ……結局、確かな何かが無い事には決め手にかけますおね」
('A`)「だからといって、下手に首突っ込んで調べようと考えてないだろうな?」
(;^ω^)「それはフィレンクトさんにも釘刺されましたし、やるつもりはないですお」
('A`)「……それならいいが」
そう言うとドクオさんは顎に手を当て、考え込むような素振りをみせる。
この話はこれでお仕舞いかと思ったが、ドクオさんが徐に口を開いた。
('A`)「……関わるなと言っておきながらこれを言うのもなんだが」
( ^ω^)「お?」
('A`)「あいつなら、ひょっとしたら1の場合でも2の場合でも出来るかもしれない」
( ^ω^)「あいつって、誰ですかお?」
- 756 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:53:33 ID:/IGpyouk0
('A`)「シューだよ」
(;^ω^)「お……それは……」
言われて気付いたが、確かにシューがドクオさんの見立て通りの強さなら可能なのだろう。
それでいて魔力を隠せるなら、ひょっとして魔力を隠したまま呪文の詠唱も可能なのかもしれない。
( ^ω^)「あ、でもその日時にはサンライズにいたみたいですお」
シューのチャームは、チャームをかけた以降の記憶はそのまま残っているという話だった。
確かクーがその時間にシューがいたのを証明出来るだろう。
('A`)「だからお前はお人好しだって言うんだよ」
(;^ω^)「お?」
('A`)「あいつがその日その時間の記憶を捏造した可能性もあるだろ?」
('A`)「そこだけチャームをかけたままの残しているかもしれない」
(;^ω^)「それは……」
- 757 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:54:44 ID:/IGpyouk0
('A`)「そもそもそんな事をせずとも、悪魔なら何らかの手段で瞬時に移動出来る可能性もある」
(;^ω^)「……」
ドクオさんの言い分は間違っていないと思う。
しかしながら僕には、あのシューがそんな事をするとは思えない。
シューの働きぶりや農具についての反応を見る限り、そんな事をするようには見えないのだ。
('A`)「甘い……と言いたい所だが、それについては正直俺も疑問はある」
('A`)「そんな事はしそうにねえかなと思ってはいるのが本音だ」
(*^ω^)「お……」
('A`)「取り敢えず、そのシューの事を証言したやつにこの薬を飲ませろ」
ドクオさんはまた懐から例の僕が飲んだ粉薬を取り出した。
なるほど、これならもしチャームが残っていても打ち消す事が出来るだろう。
(;^ω^)「あの苦いやつですかお。飲ませたら殴られそうだお……」
(∪^ω^)「わんおー」
- 758 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:57:23 ID:/IGpyouk0
('A`)「良薬は口に苦いもんだ、我慢しろ」
僕としては、その理論が気に入らないから色んな薬草を開発しているので、素直に首を縦に振りたくはない。
効果も飲み易さも両立させるのがベストだ。
とはいえ、そんな話をしに来たわけでもないので今それを主張するのは止めておく。
( ^ω^)「それで、シューじゃなかったとしても、他の悪魔の仕業って事も考えられますかおね?」
('A`)「そうだな。ひょっとしたら、それが一番有り得る話かもしれないな」
目的がわからないことには推測の域を出ないが、
悪魔または、悪魔を使役している人間の仕業である可能性も考えられるとドクオさんは言う。
('A`)「まあ、使役する場合は自分より弱い悪魔しか従わせられないだろうから、あまり考えられないが」
( ^ω^)「協力関係なら有り得ると?」
('A`)「師匠と天空竜みたいな関係も過去にはあるからな。有り得ない話ではないな」
珍しく渋らず答えてくれるドクオさんだが、最後はやはりお前は関わるなよと釘を刺して来る。
心配しなくても情報提供だけに止めるつもりだから安心して欲しい。
そりゃ何とかしたいという気持ちもあるが、これが自分の手に余る問題だという事ぐらいは理解している。
- 759 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 22:58:47 ID:/IGpyouk0
('A`)「ならいい。くれぐれも馬鹿な事は考えるなよ?」
( ^ω^)「自分の力の無さは重々承知してますお」
深入りする気がないのは本心だ。
皆に心配をかけてまで背伸びをしようとは思っていない。
亡くなった若い騎士たちの事を思えば何とかしたいと思ってしまうが、それで迷惑をかけるのは本末転倒だ。
('A`)「そんなとこだな。まあ、俺も少し調べてみるわ」
( ^ω^)「お願いしますお」
いつもの事とはいえ、結局ドクオさん預かりになってしまうのは少し申し訳なくも思う。
ドクオさんが言うように、僕は厄介事ばかり持ち込んでいるような気がする。
( ^ω^)「っと、そういえばもう1つ聞きたい事があったんですお」
そんな事を考えながらも、もう1つ厄介事の話があったのを思い出した。
と言っても、新しい厄介事ではなく、前のやつが進展した話だが。
( ^ω^)「行き掛けにメシューマで、あのヴィップの教会で会ったデレって子にまた会ったんですお」
- 760 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:00:08 ID:/IGpyouk0
僕はデレから聞いた事をドクオさんに話す。
大した事は聞けなかったが、1つ気になる事があった。
( ^ω^)「やっぱりデレは教会から盗まれた物が何か知ってるようでしたお」
('A`)「ふむ……、その件なら俺の方も1つわかった事があったぞ」
('A`)「と言っても、大した事じゃないが、どうやらその件は協会本部でも結構問題になってるようだな」
('A`)「その盗まれた物の捜索隊が近々組まれるらしい」
多分、ヒッキーさんが出した報告を教会本部が受け取って、それから話が大きくなったのだろう。
ヒッキーさんも本部から査察が来るかも知れないと言っていたが、その件はどうなったのか聞いていない。
( ^ω^)「となると、盗まれた物は何か重要なものだったんですかおね」
(;^ω^)「じゃあ、何で無人の教会に放置してたんだって話ですおね」
('A`)「さてな。ひょっとしたらそこにあった事を教会本部は知らなかったとかな」
(;^ω^)「盗品でも保管してたって事ですかお? 教会に? ちょっと無理ありませんかお?」
- 761 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:01:43 ID:/IGpyouk0
('A`)「ちょっと思い付いただけだ。あまり深く考えるな」
( ^ω^)「あと、デレは少し気になること言ってたんですおね」
( ^ω^)「『危険なものとかじゃないから、今は』、って」
(∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「それって、いつか、もしくは過去に危険な物だったって事ですおね?」
('A`)「その言い方だとそう取れるな。まあ、結局盗まれた物が何かわからないことには何とも言えんが」
仮に危険なものだったにしろ、今はヴィップの町には無いのだからどうという事もないのだが、
どういう風に危険な物なのかは気になる所だ。
例えば世界を滅ぼすような危険な何かなら、誰もが無関係だとか言ってられなくなる。
('A`)「そんな都合のいい強力な道具があるわけ……いや、そうか、それがあったな……」
( ^ω^)「何ですかお、その意味深な感じは?」
('A`)「もう、千年紀を回ったのか……? それとも、ただ集めているだけか?」
- 762 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:03:39 ID:/IGpyouk0
ドクオさんは僕の問い掛けには答えず、1人で何事かをぶつぶつと呟いている。
聞き覚えのない単語がいくつも聞き取れるが、どれも何か不穏な響きがあるのは気の所為だろうか。
('A`)「……」
( ^ω^)「ドクオさん? 聞こえてますかお? ドクオさん?」
('A`)「ん……? ああ、すまん。聞こえてるよ、迸る俺の魅力について聞きたいんだよな」
( ^ω^)「そんな無い袖を振らせる様な事はしませんお。何ですかお、その千年紀とかって?」
('A`)「あれだ、顔を洗う時に水を溜めておく……」
( ^ω^)「そりゃ洗面器ですお。誤魔化そうとしても無駄ですお? ちゃんと聞こえたんですから」
つ∪^皿^)
露骨に誤魔化してくるドクオさんに、わんわんおをけしかけようとしてみせる。
(;'A`)「わかったって。ちゃんと話すからそいつをこっちに向けるな」
('A`)「……といってもまあ、別に隠すような話でもないんだがな」
( ^ω^)「お?」
- 763 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:04:44 ID:wghgvI3cO
- 連日か
支援
- 764 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:04:47 ID:/IGpyouk0
('A`)「千年紀の王、いわゆる魔王の話さ」
( ^ω^)「魔王……」
ドクオさんの話を簡単にまとめると、この世界には魔王と呼ばれる強力な悪しき存在が過去にいて、
人間を滅ぼそうとしたとの事だ。
そして戦いの果てに人間の手によって倒されたらしい。
しかし、魔王はその千年後、また復活したという。
('A`)「倒しても倒しても、その千年後には復活する迷惑極まりない存在さ」
( ^ω^)「それはまた、大変なお話ですおね」
千年紀が何を指すかはわかったが、それについて少し疑問がある。
何でそんな何度も繰り返し起こった歴史上の事を、僕が知らないのかだ。
僕は魔法使いで魔法道具屋という事もあり、魔法の勉強や道具の鑑定の為に歴史も一通り抑えてある。
それほど大きな事件がどこにも記されていないのは不自然だ。
見落としたとは思えないし、僕だけじゃなくもっと広く世間一般に知られていて然るべき話だと思う。
('A`)「簡単な話だ。意図的に歴史から削除されているからさ」
(;^ω^)「何でですかお?」
- 765 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:06:56 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「千年ごとに復活するのが確定なら、広く知らしめてそれに対して備えるべきじゃないですかお?」
('A`)「少々言い方が悪かったな。千年ごとに復活するのは確定というわけじゃないんだ」
ドクオさんによると、千年ごとに復活可能な条件が揃うだけで、自然に復活するわけじゃないらしい。
しかしながら、千年ごとに魔王は復活している事実もあるという事だ。
('A`)「これがどういう事かわかるか?」
( ^ω^)「……誰かが復活させたという事ですかお?」
('A`)「正解だ」
それは力を欲した誰かであったり、世界に絶望した誰かであったり、はたまた権力の虜となった誰かであったりと、
過去に必ず人の手によって復活させられたのだという。
(;^ω^)「何だお、それ……馬鹿げてるお……」
人間がそこまで愚かだとは思いたくないが、残念ながらこれは事実なのだとドクオさんは冷たく言い放つ。
だからこそ先人達は歴史からその事を削除し、魔王を復活させようと考える者が出ないようにしたという事だ。
- 766 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:08:48 ID:/IGpyouk0
('A`)「しかしまあ、俺のように知ってるやつもいるんだから、根本的な解決策にはなって無いんだがな」
('A`)「とにかく、その復活の条件が整うのが千年期で、それが遠からず訪れるって話だ」
( ^ω^)「それが訪れたらどうなるんですかお?」
('A`)「あくまで条件の1つだからな。残りの条件を満たさない限りは魔王の復活はない」
( ^ω^)「残りの条件って何ですかお?」
('A`)「ここから先は本来無闇に話すべき話ではないんだが……お前は知っておくべきだろうな」
('A`)「魔王の復活の鍵となる道具を集め、復活の儀式を行う」
('A`)「そうすると、その儀式の場にいたもっとも欲深き者が魔王に選ばれるって寸法さ」
( ^ω^)「欲深き者? それに選ばれるってどういう事ですかお?」
ドクオさんの話によると、魔王というものはその魔王というモンスターがいるわけではなく、
人間に取り憑き、魔王に変えてしまう物らしい。
- 767 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:11:16 ID:/IGpyouk0
('A`)「で、欲深き者といってはいるが、儀式を開いたやつといってもいいんだろうな」
('A`)「欲深いからこそ魔王の力を欲するんだからな」
( ^ω^)「把握。何か意外と簡単っになれるっぽいですおね。どんな儀式かは知りませんけど」
(∪^ω^)「わんおー」
('A`)「実際、儀式といっているが道具を集めて願う程度の簡単な物のはずだ」
( ^ω^)「となると、魔王復活の為にはその道具集めが一番の肝となるわけですおね」
('A`)「そういう事だな」
(;^ω^)「おー、ようやく話が繋がりましたけど、ひょっとして教会の件はそういう事ですかお?」
つまりドクオさんは、教会から盗まれたのがその魔王の復活の鍵となる道具なのじゃないかと危惧しているらしい。
何故それがヴィップの教会にあったかは定かではないが、可能性の1つとしては有り得ると。
('A`)「ちょっと話が飛躍し過ぎているし、あくまで可能性の1つだがな。全く関係ないかもしれない」
( ^ω^)「でも、その千年紀ってやつが近いって事は、今後そういう話を聞く可能性もあるんですおね」
- 768 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:13:53 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「ちなみに、その道具ってどんなやつなんですかお?」
('A`)「俺も実物は見た事がないから形とかはわからないな。名前だけなら知っているが」
何でも、魔王の頭骨、魔王の朱玉、魔王の衣という揃いも揃って物騒な名前らしい。
( ^ω^)「あれ、何かどこかで聞いたような名前が混ざってるお」
ごく最近、魔王に関する名前のものをどこかで聞いた気がする。
あれはどこでだっただろうか。
(∪^ω^)∩「わんわんお!」
⊃
( ^ω^)「お?」
∩(∪^ω^)「わんお!」
⊂
( ^ω^)「そうだお、メシューマのポスターだお!」
('A`)「……ねえ、何で今ので思い出せたの?」
- 769 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:15:33 ID:/IGpyouk0
そういえばメシューマの町で見た闘技大会のポスターに、魔王の朱玉という名前が出ていたはずだ。
多分、これがその魔王復活の鍵となる道具の1つで間違いないだろう。
('A`)「メシューマか……。何でまたそんな物を商賞品にしたかねえ……」
単に珍しい宝石として出されたなら裏を考える必要はないのだが、用途を知っててその名を出したのなら、
少々面倒な事になるとドクオさんは言う。
('A`)「具体的に言うと、他に魔王の道具を集めてるやつを誘き出すとかな」
( ^ω^)「主催はメシューマの商工会ですお? 商工会が悪巧みしてるって事ですかお?」
('A`)「可能性が無いわけじゃないだろ。あそこの商工会長ほどの要人なら千年紀の事を知っていてもおかしくない」
( ^ω^)「おー……」
('A`)「まあ、それが善意によるものなのか、その逆なのかもわからねえがな」
何だか話が一気に怪しい雲行きになって来た。
ひょっとしたら、今この世界は結構危うい状況にあるのではなかろうか。
誰かが悪意を持って事を進めれば、魔王の復活も現実的に有り得るのだ。
('A`)「だとしても、お前や普通の人達はいつも通りの暮らしをしていればいいのさ」
( ^ω^)「お、でも……」
- 770 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:16:53 ID:/IGpyouk0
('A`)「何の為に王や騎士がいて軍隊がいる? そして俺達のような賢者と呼ばれる者もいるんだ」
('A`)「それにこれはまだ推論だらけの想像の話だ。千年紀の話は本当だが、そう簡単に魔王の復活なんてさせねえよ」
( ^ω^)「ドクオさん……」
いつに無く真面目な熱の篭った口調でドクオさんはそう宣言する。
千年紀の事は不可避の事としてドクオさんは知っていたのだろう。
多分、じいちゃんもその事を知っていたはずだから、何かしら備えがあってのこの自信なのかもしれない。
('A`)「まあ、そんなとこだ。託された物はちゃんと預かってる。心配するな」
( ^ω^)「はいですお!」
(∪^ω^)「わんお!」
僕はドクオさんの力強い言葉に、元気良く頷き返した。
何かあってもドクオさんがきっと何とかしてくれる。
そう思えた事が、僕の心を軽くしてくれた。
それから僕は少し近況の話をし、ドクオさんの庵を辞してヴィップの町に戻った。
- 771 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:18:36 ID:/IGpyouk0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
( ^ω^)「この辺で今日は店仕舞いと行くかお」
川 ゚ -゚)「うむ、お疲れさん」
(∪^ω^)「わんわんお!」
ドクオさんの庵から戻り、店番を頼んでいたクーと共に本日の営業を終わらせ、後片付けをする。
ごく普通の作業だが、何だかすごく久しぶりな気がする。
_,
川 ゚ -゚)「私の出番も随分と久しぶりな気がするな」
(;^ω^)「何の話だお。いいから入り口のとこの掃除頼むお」
実に10話ぶりだとか何だとかぼやくクーをスルーし、本日の売り上げを計算する。
長期間店を離れてたりシューの事とか色々あったが、旅に出る前より僅かに売り上げは増えている。
( ^ω^)「売れ筋が薬草パンと薬草おにぎりってのは、魔法道具屋としてどうかと思うけどね」
(∪^ω^)「わんお」
- 772 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:20:14 ID:/IGpyouk0
薬草パンを買いに来る客が増えたのは、僕が宣伝したから自業自得なのだが、
薬草おにぎりまで買いに来る客が出て来たのは想定外だった。
チャーム中の産物だったとはいえ、薬草おにぎり自体はその味で売れていたようだ。
シューは薬草おにぎりを気に入るようなチャームはかけてなかったらしい。
その結果、元のサンライズに戻っても薬草おりぎりを売ってくれという注文が少なからず出て来たのだ。
( ^ω^)「元は僕のアイデアだし、喜んでもらえるなら売るのは全然かまわないんだけどね」
(∪^ω^)「わんわんお」
あまり派手にやり過ぎると、ヴィップの他の店の領域を侵犯しそうで少し気掛かりだったが、今の所は特に問題はない。
むしろ他の店からも観光客誘致の1つとして歓待されている節もある。
川 ゚ -゚)「掃除終わったぞー。よし、パンもーらいっと」
(;^ω^)「せめて食べていいか断ってからにしてくれお。一応売り物なんだし」
川 ゚〜゚)「いいだろ……ムグムグ……どうせ今日中に処分するんだし……モグモグ……」
- 773 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:24:07 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「まあ、そうだけども。今日は2つ残っちゃったかお。作りすぎたかおね」
2つぐらいなら御の字だとは思うが、理想は少し足りないぐらいにして、購買欲を駆り立てるくらいの方がいい。
おにぎりの方がバリエーションがある為か売れ行きは良いから、パンもバリエーションを増やすべきか。
川 ゚ -゚)っ「そうか? 私はこのプレーンのやつが一番好きだがな? シンプルで美味いぞ」
( ^ω^)「そう言ってくれるのは嬉しいが、2個目は渡さんお」
僕は素早くもう1つ残っていたパンを手に取り、口に運ぶ。
労働の後の食事は美味いものである。
川;゚ -゚)「ぬおっ!? 貴様、私の薬草パンを!」
( ^ω^)「お前のじゃねえお。ほら、わんおにも半分あげるお」
(∪*^ω^)「わんわんお!」
川 ゚ -゚)つ「じゃあ、私はわんおから半分貰おう」
({(^ω^∪)彡「もぐもぐお」
- 774 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:26:58 ID:/IGpyouk0
(;^ω^)「それは人として恥ずかしいから止めろお」
パンをくわえて逃げるわんわんおを追い掛けるクー。
冗談でやってるのかと思いきや、その目は本気だ。
僕は仕方なく、自分の手にあった残りの半分のパンを更に割ってクーに渡す。
川*゚ -゚)「うむ、働いた後の薬草パンは格別だ」
(;^ω^)「お気に召して頂いて幸いだお」
気品の欠片も無く薬草パンにかぶりつくクー。
すっかりヴィップの暮らしに馴染んだ所為か、元からこんなだったかは判断付きかねる。
ただ、少なくとも楽しそうではあるので、王宮暮らしよりは水があっているのかもしれない。
( ^ω^)「そうだお、ちょっとクーに聞きたい事があったんだお」
川 ゚ -゚)「ブーン店長のおごりで晩飯か? 勿論かまわんぞ?」
(;^ω^)「誰もそんな事言ってねえお」
- 775 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:28:07 ID:/IGpyouk0
話なら食事をしながらでもいいだろうというクーだが、王宮の事なので他人に聞かれないような場所の方がいい。
川 ゚ -゚)「王宮の? わかった、聞こうか」
一応、クーやトソン君には街道での騒ぎ、灰衣の魔法使いの話は既にしている。
騎士団が襲われた事はもう、世間一般的にも知れ渡っているので隠す必要はない。
灰衣の魔法使い1人の仕業というのは世間的には隠されているが、クー達には話しておいた。
( ^ω^)「ビコーズさんに会ったんだお」
川 ゚ -゚)「うむ……それで?」
( ^ω^)「あの人、じいちゃんの弟子だったって言ってたお」
川 ゚ -゚)「そうだな。それは別に隠してはいないからな。だからこそ宮廷魔術師になれた部分もあるし」
( ^ω^)「そうだったのかお。まあ、そこはいいんだけど、ほとんど世間話しかしてないし」
(∪^ω^)「わんお」
( ^ω^)「けど、別れ際に言われたんだお、『クー様の事をよろしく』って」
川 ゚ -゚)「ふむ……私がここにいる事を知っているという事か」
- 776 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:30:02 ID:/IGpyouk0
その事自体も別に不自然ではないとクーは言う。
昔から独自の情報網を持ち、情報戦には長けている人だったという事だ。
川 ゚ -゚)「とにかく頭のいい人だったな。無表情で感情が全く読めないから、子供心には少し怖かったが」
悪い人ではなかったとクーは続ける。
真面目で国を思っている人だとも。
( ^ω^)「そんな感じは僕も受けたお。けど、それなら何でクーの事は黙認なんだろうおね?」
川 ゚ -゚)「会ったなら気付いてると思うが、ペンダントの事で言い添えてくれたのはあの人だよ」
( ^ω^)「抜け出す手伝いもしたのなら、黙認するのも当然と?」
そもそも、何故手伝ってくれたかがわからない。
単にクーの気持ちを汲んでくれただけなのだろうか。
川 ゚ -゚)「そうだなあ……、そんなわがままを聞いてくれそうな人ではないと思うが……」
何かしらちゃんとした理由がないと許してくれない人という印象だったから、
クーはビコーズさんには王宮を抜け出す相談はしていなかったという。
- 777 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:31:20 ID:/IGpyouk0
川 ゚ -゚)「でも、どこで聞き付けたのか向こうからアドバイスしてくれたんだよな……」
( ^ω^)「むしろ率先して手伝ってくれたって事かお」
それが何を意味するのか、僕にはよくわからない。
単純に、どうせすぐ諦めて帰ってくるだろうからと、
こっそり見張りもつけて抜け出させたとかいうものならいいのだが。
川 ゚ -゚)「1度外に出て痛い目を見て来いってわけか。それなら納得はいくが」
( ^ω^)「それだと、予想以上に庶民の暮らしに馴染んでるクー見て慌てそうなとこだおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
だがビコーズさんは、クーをよろしくと言ったのだ。
現状を知ってのこの言葉だから、すぐに帰って来る事は期待してないと見るべきか。
川 ゚ -゚)「私の、見聞を広めるという言葉を信じてくれての事だったらいいなあ」
( ^ω^)「本音は堅苦しい王宮が嫌で、適当に世界をぶらぶら見てみたいだったお?」
- 778 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:33:32 ID:/IGpyouk0
ここ最近色々な事があったので、僕は少々勘ぐり過ぎている部分はあると思う。
クーの言うように単純な理由か、監視の届く範囲にあるから黙認されているだけなのかもしれない。
川 ゚ -゚)「自分で言うのもなんだが、私はそこまで期待されてないだろうからな」
能力的な話ではなく、立ち位置的な話だがとクーは言う。
末子な上に女なので王位の継承順位は低く、嫁ぎ先が決まってるという事もないらしい。
川 ゚ -゚)「だからといって、何もせずに遊んで暮らす気はないけどな」
川 ゚ -゚)「今がモラトリアムな期間だとわかってはいるつもりさ」
( ^ω^)「クーもちゃんと考えてはいるんだおね」
川 ゚ -゚)「そりゃな。王族として生まれれば嫌でも考えざるを得ないさ」
( ^ω^)「何と言うか、大変だおね」
川 ゚ -゚)「生まれに関しては、お前だって他人の事は言えないぞ?」
( ^ω^)「お……」
- 779 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:35:14 ID:/IGpyouk0
じいちゃんの名は、下手をすれば王家のそれを上回る威光があるとクーは言う。
ビコーズさんの様な態度を見れば、僕自身もそれは頷かざるを得ない。
( ^ω^)「まあ、でも僕の方は孫だって事を広く知られてないからまだ気楽だお」
川 ゚ -゚)「そうかな? お前自身が結構おじいさんの名に引っ張られてる部分があると思うが」
( ^ω^)「どういう事だお?」
川 ゚ -゚)「単に子供の憧れの様な英雄願望ならいいが、そこに義務感を持つ様になったら考え物だぞ?」
( ^ω^)「それは……確かにそうかもしれんお」
僕自身がじいちゃんの名を特別視し、その孫である自分をも特別視してしまうとクーは言いたいのだろう。
じいちゃんが世界の安定に務めていたからといって、世間を騒がす何かが起こった際に、
僕が何とかしなければと思ってしまうのはどうなのかと。
無論、そんなつもりはないが、そう言われても仕方がないくらい気にしているように見えるのかもしれない。
自分では意識していないのだが、そう見えるからこそ、
ドクオさんにも何にでも首を突っ込むなと毎回釘を刺されている恐れもある。
- 780 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:37:04 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「そうだおね、その辺はもっと気を付けるお」
川 ゚ -゚)「まあ、騒動の種になりかねない私が言うのも申し訳ないがな」
( ^ω^)「いや、今の言葉はちょっとありがたかったお。これからはそういうとこにも気を付けるお」
王族として生きて来たクーは、ひょっとしたら今僕が気付かされた様な事は昔から意識させられて来たのだろうか。
特別である事を意識させられ、しかし、それほど期待もされていないというのはどういう気持ちだったのだろう。
川 ゚ -゚)ヾ「何だ? 私の顔に何か付いてるのか?」
(;^ω^)「い、いや、何でもないお……」
思わずクーの顔を見詰めてしまっていた自分に気付き、慌てて目を逸らす。
別に慌てる必要もなかったのだが、何故かそうしてしまった。
川 ゚ -゚)「む……何か気になる言い方だな? 何か付いてるんだな? パンくずか? わんお、取ってくれ」
(∪^ω^)「わんおー」
(;^ω^)「何でもないお。だから気にすんなお」
- 781 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:38:21 ID:/IGpyouk0
- イーッ イーッ
川 ゚皿゚)(^皿^∪)
わんわんおを抱き上げ、自分の顔の前に持って来るクー。
僕はそれが何だかおかしくて、笑って見ていた。
川 ゚ -゚)「ふむ、取れたようだな」
(∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「取り敢えず、僕の話はそんなとこだお」
川 ゚ -゚)「うむ、では晩飯だな、店長のおごりで」
(;^ω^)「何でそうなるんだお……」
( ^ω^)「まあ、いいお、バーボンハウスにも行きたかったから、ついでにおごってやるお」
川*゚ -゚)「流石店長! よっ、太っ腹!」
(∪^ω^)「わんわんお!」
- 782 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:40:35 ID:/IGpyouk0
僕達は店の片付けを手早く済ませ、外に出る。
ドアの鍵をかけた所で、もう1つ聞きたい事があったのを思い出した。
( ^ω^)「そういえばクーは千年紀って知ってるかお?」
川 ゚ -゚)「顔を洗う時に水を溜めておく……」
( ^ω^)「それは洗面器だお。そのボケはもういいお」
どうやらクーは千年紀の事を知らないらしい。
王族なら全員知っているというわけでもなさそうだ。
知らないのならば今は無理に知らせる必要もないので、僕は適当に誤魔化しておいた。
( ^ω^)「おっと、そうだ、クー、これ飲んでくれお」
川 ゚ -゚)「何だこれ? 何の粉末だ?」
( ^ω^)「チャーム解除の薬だお。念の為、チャームが残ってないかどうか確かめたいんだお」
川 ゚ -゚)「ふむ……、別にかまわんが」
そう言うなりクーはすぐさまそれを口にした。
- 783 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:42:35 ID:/IGpyouk0
( ^ω^)「ただし、すげえ苦いお」
川 ゚〜゚) ゴクン……
川 〜 )
川 - )「そ……」
( ^ω^)「そ?」
川 ;д;)「それを先に言えええええぇおべろぼしゃぶわッ!?」
(;^ω^)「いや、いきなり飲むとは思わなかったんで……って、きたねえ!?」
(∪;^ω^)「わんおー」
僕はクーに咽ながら殴られ、その後、バーボンハウスでしこたまおごらされる事になってしまった。
第二十五話 憂う賢者の語る世界 終
- 784 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:43:43 ID:XhAhVcZ.0
- 乙。ペース早いし嬉しい
- 785 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:43:46 ID:cpt9MoLg0
- 乙
- 786 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:46:57 ID:/IGpyouk0
二十五話は以上です
本当はここまでの総集編的な話になるはずが、それほど振り返らなかったという
次話の投下は未定です
半分以上は書けてますが、次々話の流れを決めてからにしようかと思ってますので少し間が空くかもしれません
支援とか感謝です
- 787 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:47:58 ID:wghgvI3cO
- 乙
重要そうな話が出て来たな
- 788 名前:名も無きAAのようです:2012/04/15(日) 23:49:52 ID:Sg5jJo2sO
- おつおつ
- 789 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 00:08:36 ID:dlVsfye2O
- 乙です!
お米ライス棒
http://imepic.jp/20120415/863610
シュー
http://imepic.jp/20120416/000020
- 790 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 00:32:00 ID:Rm9L4zIg0
- 乙
- 791 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 00:40:23 ID:sp.jzJb2O
- 乙
パンとかおにぎりばっか売ってて
聖水商品化の件が消えていく
- 792 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 00:50:56 ID:N8Jg0d0Q0
- 乙
前話だけど、子供の頃ボロボロの鎌持って草取りやらされたことを思い出すと、魔法農具もありだなー
常にエンチャンテッド鎌状態で刃こぼれしないって凄い
- 793 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 00:51:27 ID:IjDVImv6O
- >>789
こめにしきwww
かわいいな
- 794 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 01:11:47 ID:PG1Lwc6.0
- >>791
聖水で炊けばおk
- 795 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 03:27:29 ID:rxC90.8E0
- お昼ご飯には薬草おにぎりとミネラル聖水で決まりだな
- 796 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 05:55:07 ID:OX4RBkaA0
- てst
- 797 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 19:38:47 ID:1ksGVQKU0
- >>794
何か卑猥だww
- 798 名前:名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 20:34:57 ID:2KSuZ47s0
- それはさすがに心が汚れてるだろw
- 799 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 08:44:47 ID:R3Pysbfw0
- 聖水って食塩水だからコンビニ風のおにぎりになるな
- 800 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:21:50 ID:ejxBY3uY0
〜 魔法道具屋サンライズ 午前 〜
( ^ω^)「今日は客足が鈍いおね」
川;´ -`)「うだー……」
(∪;´ω`)「わんおー」
( ^ω^)「お? どうしたお? 朝から元気ないお?」
川;´ -`)「そりゃ元気もなくなるだろ。何だ、この暑さは?」
(∪;´ω`)「わんわんおー」
第二十六話 姫の想い、騎士の誓い
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 801 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:22:46 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「季節柄、暑くもなるお?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
川;´ -`)「季節柄って言ったってな、ヴィップはソクホウより北にあるし、もう少し涼しいもんじゃないか?」
彼女の名前はクー。
新米冒険者だが僕に借金がある為、普段はサンライズのアルバイトもやっている。
(∪;´ω`)「わんおー」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
ソクホウへの旅からヴィップに戻り、1ヶ月と少しの時が過ぎた。
季節も進み、これから暑い日も多くなるだろう。
僕はいつも通り店を営業しているが、バイトで入っているクーもわんわんおも何だかすごくだれている。
言うほど暑いかなと思ったが、確かにこの時期にしては少し暑くなるのが早いかもしれない。
- 802 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:24:18 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「多分、王宮は精霊で空気の流れを調節したりしてるから、普通のとこより涼しかったんだお」
川;´ -`)「そういえば季節の変わり目は、魔法使い達が忙しそうにしていたな」
王宮とかの大きな建物は、各所に風の精霊を配置し、風を送るように魔法を仕掛けてある事がほとんどだ。
王宮ともなると、暑い時は氷や水の精霊、寒い時は火の精霊なども使って大規模な仕掛けを施してあるかもしれない。
恐らくクーは、今まで世間一般よりは暑い日でも快適に過ごせて来たはずだ。
川;゚ -゚)「なるほど。離れてみてわかる王宮の有り難さだな……」
( ^ω^)「そういう事だおね」
(∪;^ω^)「わんおー」
川;゚ -゚)「しかしだな、この店だって一流の魔法使いがいるわけじゃないか?」
( ^ω^)「風の精霊を設置するぐらいなら出来るけど、熱風をかき回すだけだお」
川;゚ -゚)「氷の精霊は使えないのか?」
( ^ω^)「使えないって言うか、この季節に氷の精霊がどこにいると思うんだお?」
- 803 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:25:32 ID:4olvtvhA0
- 初遭遇記念支援
- 804 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:25:37 ID:ejxBY3uY0
精霊とは基本的に自然界に存在するものだ。
風の精霊なんかだと、屋外ならどこにでも目にする事が出来るくらい多く存在するが、氷の精霊とかはそうはいかない。
特に暑い季節のこの地方では、全くと言っていいくらい自然界で目にする事はないだろう。
川;゚ -゚)「じゃあ、王宮なんかではどうやってたんだ?」
( ^ω^)「多分、氷の精霊と仲良くなって、どこかに囲ってたんだと思うお」
低位の精霊は高度な知性は有さず、言葉を通して意思の疎通を図る事は難しいが、仲良くなる事ぐらいは出来る。
精霊を使役して唱える精霊魔法を使い続けていれば、その精霊と仲良くなり、力を貸してくれやすくなるのだ。
川;゚ -゚)「使われて仲良くなるのか? よくわからんな」
( ^ω^)「顔馴染みになるって感じだお。精霊魔法の詠唱は精霊に対する語りかけでもあるから」
( ^ω^)「何度も話しかけてくる人なら次第に打ち解けもするお?」
(∪;^ω^)「わんお」
川;゚ -゚)「だが、毎回同じ精霊に頼むわけではないだろ? 場所が変わればいる精霊も変わるはずだ」
( ^ω^)「その辺はよくわかってないんだけど、精霊は全体意思みたいなものがあるって考えられてるお」
- 805 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:28:15 ID:ejxBY3uY0
簡単に言えば、風の精霊は自然界の各所に無数に存在するが、その全てが感覚を共有しているという話だ。
( ^ω^)「高位の精霊はまた違ってくるんだけど、低位の精霊はそういう風に考えられてるお」
例えば、ヴィップの教会に憑いていた精霊なんかは高位の精霊で、あれはもう単一の存在と考えるべきであろう。
元は別の精霊だったはずだが、年月を経て固有の意思を持ち、力を付けて独自の姿を形成していったと思われる。
自然界でも稀にそういう事はあり、時にはそれがモンスター化する事さえもある。
川;゚ -゚)「精霊についての講義はいいとして、ブーン店長は氷の精霊と仲良くなったりしてないのか?」
( ^ω^)「数人の精霊と契約してるけど、それは食料保存庫にいてもらってるお」
研究を主とする魔法使いは、基本的に数人の氷の精霊や火の精霊と契約しているのがほとんどだ。
契約といってもそれほど格式ばった物ではないが、
研究の為に温度変化をさせたくない物を保管するのを精霊に手伝ってもらう事はよくある。
川;゚ -゚)「よし、わかった、私も食料保存庫に篭ろう」
( ^ω^)「働かねえとバイト代は出さないお?」
川;゚ -゚)「そんな、ひどいッ!」
(;^ω^)「いや、当たり前だお。馬鹿なこと言ってないで仕事しろお」
- 806 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:32:25 ID:ejxBY3uY0
とは言ったものの、暑さの所為か客足も鈍い。
薬草おにぎりや薬草パンの売れ行きも芳しくない。
ちなみに、おりぎりやパンの置いてあるスペースにも氷の精霊はいるのだが、クーは気付いていない様だ。
あと、僕のローブにも。
川;゚ -゚)「そういえばブーン、何で今日は魔法使いのローブなんか着てるんだ?」
( ^ω^)「魔法使いのローブは温度変化に強いんだお。勿論、魔法使いが着た時限定だけど」
川;゚ -゚)「何だと……? クッ……私も魔法使いを目指せば良かった……」
( ^ω^)つ彡「ほれ、風送ってやるからがんばれお」
つ∪*^ω^)「わんおー」
川;゚ -゚)「ぬるい風は止めろ。余計に不快だ!」
文句を言いながらもクーは仕事を再開する。
しかし、すぐにだれて来て、ぐったりとして動かなくなった。
川;´ -`)「暑い……」
( ^ω^)「暑いおね」
- 807 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:36:08 ID:ejxBY3uY0
川;´ -`)「こんなに暑いと仕事にならないのではないか?」
( ^ω^)「暑かろうが寒かろうが、客はいつでもやって来るもんだお」
川;´ -`)「しかしだな、先ほどから全く客足が途絶えているではないか?」
クーの言う通り、見事なまでにお客が来ない。
急に暑くなったから、皆色々と暑さ対策に忙しかったり、やる気が出なくて涼しい所に篭っているのかもしれない。
川;´ -`)「こう暑い時って、この町ではどうやって涼むんだ?」
( ^ω^)「森の方は比較的涼しかったりするから、そっち行ったり水辺で涼んだりするんじゃないかお?」
川;゚ -゚)「それだ! 水だ!」
( ^ω^)「仕事中だお」
川;゚ -゚)「まだ水しか言ってないだろ?」
( ^ω^)「どうせ店閉めて水浴びにでも行こうって言うんだお?」
そう切り返す僕にクーは言葉を詰まらせる。
どうやら図星だったようだ。
- 808 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:38:46 ID:iE/NS4XMO
- 早い!嬉しい!
- 809 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:39:59 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「そういうのは、バイトが休みの時に行けばいいお」
川;゚ -゚)「しかし、ここしばらくはずっと店開けてたし、たまにはいいじゃないか、ほら、慰安旅行って事で」
どうせ客も来ないしと、クーはしつこく食い下がる。
まあ確かに、今日は恐らくほとんど客が来なさそうな気もするから、閉めてもかまわないかなあと少しは思い始めていた。
たまにはわんわんおを遊ばせる為に水浴びに行くのもいいかもしれない。
川;゚ -゚)「ほら、ツン達も誘ってさ。美女と水浴び出来るんだぞ? 男ならそこは乗っかるべきだろ」
( ^ω^)「わーい、嬉しいなーお」
_,
川;゚ -゚)「清々しいまでに棒読みだな。何だよ、なーおって。猫かよ」
(∪^ω^)「わんおー」
川;゚ -゚)「……よし、わかった、脱ごう」
(;^ω^)「何がわかったらそういう結論になるんだお」
川;゚ -゚)「こう、きっちりした格好で仕事してるから暑いんだ。もっとラフな格好なら少しはましだろ」
- 810 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:41:33 ID:ejxBY3uY0
川;゚ -゚)「エプロン着けて前向いてたら見えないだろうし、下着でもかまわんな」
(;^ω^)「止めろお。ここが変な店と勘違いされそうだし、確実に僕がツンに殴られるお」
暑さの所為か、クーの思考がぶっ飛んで来ているようだ。
このままだと何を言い出すかわかった物じゃないし、諦めて涼みに行く事にした方がいいかもしれない。
( ^ω^)「うーん……どうせ今日は赤字になるっぽいし、これをお弁当にして行ってみてもいいかおね」
優に5、6人分の昼食になるくらいは余っている薬草パンと薬草おにぎりを見詰め、僕は呟く。
ついでに魚でも釣って、晩のおかずにするのもありかもしれない。
川*゚ -゚)「うんうん、そうしようそうしよう! それじゃ、私はツン達を呼んでくるからな?」
そう言うが早いか、クーは店を飛び出していった。
まだ行くとは決めていないのだが、どうやら決定事項にされてしまったらしい。
外は余計に暑いだろうに、何だかんだで意外と元気なようだ。
( ^ω^)「ま、たまにはいいかお」
(∪^ω^)「わんお」
僕は肩をすくめ、釣り道具の準備をする為に店の奥へ入っていった。
- 811 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:43:30 ID:ejxBY3uY0
〜 モオト湖北岸 〜
川*゚ -゚)「水だ!」
ξ゚听)ξ「ここに泳ぎに来るのも久しぶりね」
(゚、゚トソン「この辺は泳ぎやすそうな場所ですね」
( ^ω^)「ヴィップではこの辺りが一番メジャーな水遊び場だお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
結局、クーに押し負けた僕は、店を閉めてモオト湖まで遊びに来た。
しかし、来てみたら来てみたで涼しげな風が心地良く、楽しい気分にさせてくれる。
( ^ω^)「さて、美味い魚を釣るお」
川;゚ -゚)「って、ブーン、お前は泳がないのか?」
早速釣りの準備をする僕に、クーは不満げな顔をする。
泳ぎたくないわけじゃないが、今日の売り上げが赤字な以上、晩ご飯分ぐらいは何とかしたい所なのだ。
- 812 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:44:49 ID:ejxBY3uY0
ξ゚听)ξ「釣り下手なのにね」
(;^ω^)「うるさいお、今日こそは大物ゲットしてみせるお! でも、駄目な時はツンさん、お願いします」
何気にツンは僕の数倍釣りが上手い。
せっかちな性格のくせに、釣りの時は打って変わって慎重になる。
子供の頃に釣り対決で、30匹以上の大差をつけられて負けた思い出は今もトラウマだ。
ξ;゚听)ξ「あれは正直すまなかったと思ってるわ」
川 ゚ -゚)「まあいいさ。晩飯はブーンに任せて我々は水浴びを楽しもうじゃないか」
そう言ってクーは森の奥に歩いて行こうとしたが、数歩進んだ所で立ち止まり、こちらを振り向いた。
川 ゚ -゚)9m「おっと、覗くなよ、ブーン? 覗いたら金取るからな?」
( ^ω^)「そんなもん覗かねえお。つーか金で解決しようとすんなお」
川 ゚ -゚)「そんなもんとは何だ、そんなもんとは」
川 ゚ -゚)b「ツンならともかく、私の身体──ごめんなさいごめんなさい、拳を収めてください、ツン様」
- 813 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:46:32 ID:ejxBY3uY0
ξ#^竸)ξ「いいから行くわよ、ほら、トソンも」
( ^ω^)「お? トソン君は別にその辺で着替えればいいお?」
(゚、゚トソン「え?」
( ^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんお?」
僕の言葉にきょとんとした顔をするトソン君。
何故かツンもクーもポカンとした顔でこちらを見ている。
(;^ω^)「何だお? 僕、何か変なこと言ったかお?」
何だか場が変な空気に満ちてしまったが、男同士なんだから別にその辺で着替えてもらってもかまわないと思うのだが。
ξ;--)ξ「ああ……やっぱりそうだったのね……」
(;^ω^)「やっぱりそうって、何がやっぱりなんだお?」
- 814 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:48:52 ID:ejxBY3uY0
川 ゚ -゚)「ひょっとしてブーンはトソンが男だと思ってたのか?」
(゚、゚トソン「え?」
( ^ω^)「お?」
(∪^ω^)「わんおー」
( ^ω^)「ひょっとしなくても男の子じゃないのかお?」
(゚、゚トソン「え?」
( ^ω^)「お? ……あれ?」
僕の言葉に何だか複雑な表情を浮かべるトソン君。
額に指を当て、呆れた顔をするツンに笑いを堪えているクー。
これはひょっとしなくてもやらかしてしまったのだろうか。
( ^ω^)「トソン君……じゃなくて、トソンちゃん?」
(゚、゚トソン「ちゃんと呼ばれるような年でもないですし、僕はどっちでもかまいませんが」
- 815 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:49:49 ID:wuibT.v6O
- 支援
- 816 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:51:04 ID:4olvtvhA0
- 水着回か
絵師に期待だな
- 817 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:51:39 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「でも、『僕』って……」
(゚、゚トソン「騎士は男社会でしたし、家庭の事情もありましてこういう言葉遣いになりました」
( ^ω^)「……」
僕はトソン君と出会ってからの数ヶ月間の事を思い起こす。
男の子なら逞しくならなきゃ駄目だと言い、ご飯をおごる時は大盛りご飯を強要した事もあった。
力仕事を任せた事も……これはまあ、僕よりすごい力持ちだからいいのかもしれないけど、
それにしたって女の子に力仕事を押し付けたのは男としてどうなのか。
他にも男の子だと思って、色々とこき使った覚えがいくつも思い浮かぶ。
( ^ω^)「えーっと……その……」
川 ゚ -゚)「ちなみに、私より年上だからな?」
(;゚ω゚)「えええええええええっ!? マジでええええええっ!?」
(゚、゚;トソン「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
(;゚ω゚)「聞いてませえええええええんっ!」
- 818 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:55:23 ID:ejxBY3uY0
僕は並んで立つクーとトソン君をまじまじと見比べる。
身長は勿論の事、身体の発育具合なんかは圧倒的な大差でクーに軍配が上がる。
何と言ってもあのツン以下だ。
一言で言い表すなら棒だ。
ひのきの棒とひのきの棒+1だ。
ξ#^竸)ξ「おい、今こっち見て何か余計な事考えただろ?」
(゚、゚;トソン「僕はまあ、自覚してますのでどうでもいいですけど」
川*゚ -゚)「この2人の間に立つと優越感が半端ない──ごめんなさいごめんなさい、脛は蹴らないで、ツン様」
これはやらかしたというレベルではない。
僕より1つ年上のクーより年上という事は、確実に僕より年上という事だ。
その年上の人に対して、僕は子供に対するような態度でずっと接してしまっていた。
(;゚ω゚)「お使いとか頼んで、報酬を飴で済ませたりしてごめんなさああああいっ!」
(゚、゚;トソン「いえ、別に、あれはあれで嬉しかったですし……」
- 819 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:56:23 ID:S5sYZaFkO
- マジすか支援
- 820 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:56:35 ID:ejxBY3uY0
その他にも謝る事が色々と山積みなので、僕はひたすら平身低頭して詫びる。
トソン君は特に気にしてないと言うが、僕は申し訳ない気持ちでいっぱいである。
しかも、知らなかったのは僕だけのようだ。
クーは当然としてツンも、更にはショボンすらもトソン君の年の事は知っていたらしい。
(;^ω^)「というか、ツンも僕が誤解してた事に気付いてたなら教えてくれお」
ξ゚听)ξ「あんたが妙にお兄さんぶるのが見てて面白かったんで、つい……」
(;∩ω∩)「やめて! 確かにちょっと弟出来たみたいで嬉しかったのは否めないお」
僕は兄弟はいないし、友達も同年代、仕事で付き合う客も年上という状況である。
ヴィップの町にも子供達はいるが、大体の子供はツンのとこの道場に通っており、
よく師範代に馬鹿にされてる僕の事を兄の様に尊敬してくれる子は皆無なのだ。
故に、真面目で素直なトソン君を弟の様な気持ちで見るようになったのは自然な事だろう。
(゚、゚;トソン「えっと、何かすみません……その、お兄ちゃん?」
(;∩ω∩)「やめて! 人を見る目なくてホントすいません!」
- 821 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:58:15 ID:ejxBY3uY0
僕は両手で顔を抑えたままその場に蹲った。
申し訳ないやら恥ずかしいやらで居たたまれないにも程がある。
そんな僕に、気にしないでくださいというやさしい言葉をかけてくれて、
トソン君はツン達と共に森の奥へ歩いていった。
( ^ω^)「……」
(∪^ω^)「……」
( ^ω^)「……ひょっとして、わんおも気付いてたりしたのかお?」
プイッ
(^ω^∪)「わんおー?」
(;>ω<)「気付いてたんなら教えてくれお!」
つ};^ω^{⊂ 「わんお!?」
腹立ち紛れにわんわんおをくしゃくしゃに撫で、無茶を言ってみる。
客を見る目にはそれなりに自信があったのだが、この様だと説得力が無さ過ぎる。
( ^ω^)「まあ、過ぎた事はしょうがないお。気持ちを切り替えて釣るお」
(∪^ω^)「わんお!」
- 822 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 22:59:21 ID:ejxBY3uY0
僕は釣り竿の準備を終え、湖岸に向かう。
わんわんおもついて来たが、釣りをする僕よりツン達に遊んでもらった方がいいだろう。
( ^ω^)「ツン達が戻って来るまで、しばらく静かにしててお」
(∪^ω^)「わんおー」
泳ぐ場所からは少し離れ、釣竿を構える。
ここに釣りに来るのは久しぶりだ。
( ^ω^)「さあ、いっくおー!」
上段にかまえ、釣竿を勢いよく振り下ろす。
風を切る音と共に錘の付いた針が宙を舞い、ぽちゃんという小さな水音と、どぼんという大きな水音が響く。
( ^ω^)「……どぼん?」
バシャバシャ
゚,゚。(∪^ω^)っ"「わんお! わんお!」
(;^ω^)「ちょ、わんお!? お前まで飛び込んじゃ駄目だお!」
- 823 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:00:07 ID:ejxBY3uY0
投げ込んだ釣り針に反応したのか、わんわんおも湖に飛び込んで釣り針目掛けて泳いで行く。
泳がせるのはこれが初めてだが、なかなか上手な犬掻きだ。
しかしながら釣り針に噛み付かれるのはまずいので、素早く釣り糸を巻き上げた。
(∪:^ω^)「わんお!?」
目標が消えて戸惑ったのか、ぐるぐると回りながら泳ぎ続けるわんわんおを呼び戻す。
陸に上がったわんわんおは、身体を震わせてお約束のように水飛沫を僕に食らわせた。
ブルブルブル
゚・゚。.(((∪>ω<))).。゚・゚
(;^ω^)「それは少し離れてからやってくれお」
結局、ツン達が戻ってくるのを待つ事にして、僕は草むらに横になる。
水辺の木陰は涼しく、昼寝には最適だ。
( -ω-)「たまにはこんな穏やかな午後もいいおね」
(∪^ω^)「わんわんお」
横になって目を閉じた僕の周りをわんわんおはぐるぐる回っているようだ。
折角の外だし、遊びたいのだろう。
- 824 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:01:26 ID:ejxBY3uY0
( -ω-)つ"「その辺走り回って来ていいお?」
(∪^ω^)つ"「わんわんお!」
横になったまま適当に手を伸ばすと、わんわんおはそれにじゃれ付く。
熱中すると甘噛みと犬キックが強烈になって来るので、適度な所で手を隠さねばならない。
川 ゚ -゚)「もう釣りは諦めたのか?」
( -ω^)「んお?」
薄く目を開けると、水着に着替えたクーが僕を上から覗き込んでいた。
そういえば水着なんていつ準備したのだろう。
どう考えてもツンの水着は借りて着れないはずだから、来る前にどこかで買ったのだろうか。
( -ω-)「諦めてないお。釣ろうとするとわんおも水に飛び込んじゃうんで、皆が戻って来るのを待ってたんだお」
僕は再び目を閉じ、じゃれ付いたままのわんわんおごと腕をクーの方に向けた。
川 ゚ -゚)「ふむ、そういう事ならば私が遊んであげようか」
つ∪^ω^)「わんお!」
- 825 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:03:11 ID:ejxBY3uY0
手の中からわんわんおの重みが消えたのを確認し、上半身を起こす。
そして早速釣竿を手にしようと思ったが、何故かクーはまだそこにいた。
( ^ω^)「泳ぎに行かないのかお? 暑い暑いってぼやいてたお?」
川 ゚ -゚)「泳ぐさ。しかし、ここまで来ればもう涼しいしな」
日はまだ高いが木陰は風もあり、確かに泳がずとも涼は取れるだろう。
しかしながら折角水着に着替えたのだから、思う存分泳いで来ればいいと思うのだが。
川 ゚ -゚)「そうなんだが、こういう時は感想の1つも言うもんじゃないか?」
何の話かと思いきや、水着の感想を言えという事なのだろう。
そう言われても、涼しそうですねとか、向こうでひのきの棒+1が恨めしそうに睨んでますよぐらいしか思い付かない。
仕方ないので端的に見たままを言い表す事にした。
( ^ω^)「青い水着ですおね」
_,
川 ゚ -゚)「ブーンは何と言うか、そういうとこ枯れてるよな」
( ^ω^)「そうかお?」
言わんとせんことはわからないわけではない。
ただ、若くして店を継ぐ事になり、そちらの方に傾倒していた僕は若干考え方が老成しているのだと思う。
- 826 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:04:19 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「大体、商売中でもない時に友達にお世辞言ってもしょうがないお?」
川 ゚ -゚)「お世辞じゃなく、本心で言えばいいだろうに」
( ^ω^)「でも、もし僕が……」
_、 _ キリッ
( ^ω^)+「綺麗だお」
( ^ω^)「なんて真顔で言ったら爆笑するお?」
川 ゚ -゚)「そりゃ、するけど」
( ^ω^)「だお? てか、あっさり認めるなら最初から言うなお」
川 ゚ -゚)「まあ、私は笑うが喜ぶやつもいるだろ?」
( ^ω^)「その前に確実に拳が来るから止めとくお」
僕の言葉に肩をすくめ、クーはつまらんとか何とか言いながらツン達の方に歩いていった。
わんわんおも一緒に行ったので、僕は改めて釣りに取り掛かる。
- 827 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:06:46 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「まずは1匹釣るお」
釣り針を投げ込み、その場にしゃがみ込む。
釣りは忍耐が肝要だ。
僕は息を殺し、じっとその時を待つ。
( ^ω^)「……」
待つ。
( ^ω^)「……」
待つ。
( ^ω^)「……」
待つ。
( ^ω^)「……」
待つ。
- 828 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:08:14 ID:ejxBY3uY0
(;^ω^)「いや、これだと手抜きも甚だしいお」
僕は糸を巻き取り、釣り針の状態を確認するも、エサは付いたままだ。
僕はポイントを変えるべく別の場所に投げ込むも、竿はぴくりともしない。
(;^ω^)「エサを取られもしねえお……」
その後もポイントを変えては釣り針を投げ込むが、釣れるどころか全く食い付きもしない。
釣り下手だと自覚はしていたが、ここまで来ると何かの呪いかと勘ぐってしまうほどだ。
||ヽ( ^ω^)>「呪いの釣竿、牙魔威蘇! ブーンは呪われてしまった!」
(゚、゚;トソン「ええと……」
あまりの釣れなさに、おかしなテンションで釣竿片手にポーズを取っていると、いつの間にか側にトソン君が来ていた。
僕は何事もなかったかのように釣竿を降ろし、ごく普通の調子で尋ねる。
( ^ω^)「どうしたんだお? もう泳がないのかお?」
(゚、゚;トソン「今のは……ええと、何でもないです、はい」
- 829 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:09:08 ID:ejxBY3uY0
一通り泳いで来て今は休憩中だとトソン君は言う。
向こうを見ると、クーは岸辺に座っており、ツンは湖の中ほどまで泳いで行っているようだ。
わんわんおの姿が見当たらなかったが、トソン君の話だとツンと一緒らしい。
(;^ω^)「ツン、わんおをどこまで泳がせる気だお」
(゚、゚トソン「わんお君、意外と泳ぎは達者でしたよ」
わんわんおに泳ぎを教えた事はないが、ああいうのは動物の本能として自然に身に付くものなのかもしれない。
しかし、よく考えたらわんわんおの中身は犬じゃないし、天空竜の記憶があるにしても、
竜の泳ぎ方は犬掻きじゃない気がする。
( ^ω^)「まあ、ツンもそこまで無茶はしないおね。……多分」
僕の言葉にトソン君は軽く微笑み、僕の隣に座る。
トソン君は釣りの見学に来たという事らしかった。
( ^ω^)「釣れない釣りほど見てて楽しくない物はそうないお」
(゚、゚トソン「釣果は上がってないのですか?」
- 830 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:10:47 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「見ての通りだお。今日はどうも食い付きが悪いお」
正確には、『今日も』なのだが、そこはわざわざ言う必要もないので黙っておく。
話を聞く所に、トソン君は釣りをした事がないらしい。
ソクホウ近くには海も大陸一の湖もあるというのにもったいない事だと思う。
トソン君は僕が話す、過去に釣り上げた魚の話をさも興味深げに聞き入っている。
主にツンが釣った魚の話なのだが、主語を省いただけなので別に嘘は吐いていない。
( ^ω^)「ちょっとやってみるかお?」
(゚、゚*トソン「いいんですか?」
今日の感じだとなかなか釣れないと思うが、試しに竿を振ってみて気分を味わうぐらいは出来るだろう。
僕はトソン君に竿を渡し、投げ方の説明をした。
( ^ω^)「あんまり遠くまで投げなくていいから、力み過ぎないようにだお」
||⊂(゚、゚*トソン「は、はい! やってみます!」
トソン君は剣を構える時のような綺麗な型で竿を上段に構える。
そのまま1つ息を吐くと、気合の乗った掛け声と共に竿を力強く振り下ろした。
- 831 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:11:58 ID:ejxBY3uY0
ヾ⊂(゚、゚*トソン「えいっ!」
勢い良く飛んで行く針と糸、そして竿。
(;゚ω゚)「ちょ!?」
(゚、゚;トソン「あ……」
遥か遠くで水飛沫を上げる僕の呪われし魔竿・牙魔威蘇。
力み過ぎずを意識したら思わず手を緩めてしまったとトソン君は謝り、すぐに湖に飛び込む。
(;^ω^)「いや、まあ、着水した程度で竿は壊れないと思うからいいけど……」
突然の事に驚いてしまったが、あの程度で折れたりはしないだろう。
トソン君は竿を後ろ手に持って泳いで戻って来た。
(゚、゚;トソン「すみません、これ、大丈夫でしょうか?」
( ^ω^)「大丈夫だお。本体はただの木だし、そのくらいじゃ折れたり……」
トソン君から竿を受け取り、確認しようとしたが何やらずっしりとした重みがある。
もしやと思い、糸を巻き上げるとそこには程よい大きさの魚が1匹。
( ゚ω゚)つ(・|<)< ピチピチ
- 832 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:12:51 ID:ejxBY3uY0
(゚、゚;トソン「えーっと……その……」
( ゚ω゚)「初釣果おめでとうだお!」
(>、<;トソン「ホントすみません! その、こんなつもりじゃ……」
ひたすら謝るトソン君だが、別にトソン君が悪いわけではない。
そう言いながらも僕の顔はだいぶ強張ってたようで、トソン君は何度も頭を下げ続ける。
ムニー
o< ^ω^ >o「ちょっと想定外過ぎて驚いただけで、怒ってないお」
(゚、゚;トソン「は、はい……すみません」
釣れた魚を魚篭に移し、後で美味しく調理してあげる事を約束する。
そう言いながらも、いつの間にか子供に対する様な物言いになっている事に気付き、慌てて口調を改めた。
( ^ω^)「この調子で、全員分釣ってくれるとありがたいですお」
再びエサを付け、釣り竿をトソン君に渡す。
しかし、トソン君はそれを困ったような顔で見詰めていた。
- 833 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:14:00 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「お? 折角だから気にせず釣ってくださいお?」
(゚、゚トソン「……僕って、いっつも空気読めてませんよね」
そんな事はないと言おうとしたが、確かに行動が想定外の事は多々ある。
しかしそれは、どっちかというとそそっかしさから来るミスだったりするので、空気が読めてないわけではないと思う。
(゚、゚トソン「色々気を使わせてしまってすみません」
(゚、゚トソン「先ほどの年齢の話とかも、本来は僕がちゃんと話していれば……」
(;^ω^)「あれはこっちが全面的に悪いと思うお。ホント、すみませんお」
(-、-トソン「僕自身、誤解される事があるのはわかっておきながらの事ですから、やはり僕の所為だと思います」
( ^ω^)「やっぱり騎士やってると、男の様に振舞ってないと大変だったんですかお?」
(゚、゚トソン「実を言うと、そちらはそうでもなかったのですが……」
( ^ω^)「お?」
そちらはそうでもなかったという事は、トソン君が理由に挙げたもう1つの方、家庭の事情の所為という事だろうか。
- 834 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:14:41 ID:ejxBY3uY0
(゚、゚トソン「はい、そうです」
( ^ω^)「……それは、聞いてみてもいい話ですかお?」
(゚、゚トソン「店長……お世話になっているブーンさんになら話してもいいかと思っています」
(゚、゚;トソン「あと、話し方はこれまで通りのフランクな感じでいいですよ?」
(゚、゚トソン「こんな喋り方の僕が言うのもどうかと思いますが、急にそうされると非常に違和感が……」
( ^ω^)「わかったお、そうさせてもらうお。僕もちょっともどかしい感じはしてたお」
僕とトソン君は互いに笑い合い、釣竿を地面に降ろして座った。
(゚、゚トソン「僕の家、トソン家は過去に騎士団長を輩出した事もある、それなりに由緒ある貴族の家系でした」
しかし、トソン君のお父さんの代はそれほどの功績も上げられず、平たく言えば落ちぶれつつあったらしい。
その上子供もなかなか出来ず、ようやく出来た子供は女の子、それがトソン君で、ひどく失望されたらしかった。
(゚、゚トソン「近年は実力主義というか、女性が騎士になったり政治に携わったりするのも容認されていますが」
(゚、゚トソン「20年ほど前は騎士の社会も政治の世界も、完全に男性のものだったとの事です」
- 835 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:15:30 ID:ejxBY3uY0
だからトソン君を男の子のように育てたというのだから、ひどく短絡的だと思う。
別に女の子でも、婿養子を取るとか他にも手段はあったはずだ。
(゚、゚トソン「そうですね。でも、当時の父は周りがよく見えてなかったんだと思います」
これ以上自分に子は望めないと思ったトソン君の父親は、トソン君に期待を込めて家名と同じ名前を付け、
男の子として育てたらしい。
(゚、゚トソン「その事を隠して育てられていたわけではないのですが」
(゚、゚トソン「僕自身、家の事情は幼いながらに漠然と理解していたので、男の子の様に振舞っていました」
幸いな事にと言っていいのかわからないが、トソン君は武芸の才能があったようで、
幼くして王族の警護の任に付く事になったという。
とはいえ、10歳程度の子供に本気で護衛をさせようと思ったわけではなく、
同じ年頃の少々やんちゃなお姫様の遊び相手として選ばれたようなものらしかった。
( ^ω^)「それがクーなんだおね」
(゚、゚トソン「はい、それが私とクー様の初めての出会いでした」
昔からクーは結構無茶する子で、王宮を抜け出してはソクホウの町を出歩いていたらしい。
それを止める為にもトソン君が付いたらしいが、結局引っ張りまわされて自分も抜け出す事が多かったらしかった。
- 836 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:16:47 ID:ejxBY3uY0
(゚、゚トソン「とはいえ子供でしたし、町中でもそれほど遠くまで行けたわけでもないのですが」
( ^ω^)「昔っから、クーに引っ張り回されてて大変だったんだおね」
(゚、゚トソン「はい……じゃなかった、それはそれでまあ、楽しくもありましたし」
最初に本心が漏れているので取り繕ってもしょうがないと思うが、楽しかったのもトソン君の本心の様だった。
クーに付き従うのに必死で、家のこととか忘れていられる時間でもあったからと。
(゚、゚トソン「家の事は重荷というわけでもなかったんですが、回りから奇異な視線を向けられる事もしょっちゅうで」
(゚、゚トソン「否応なしに考えさせられる事が多かったんです」
(゚、゚トソン「でも、そんな事は気にせず遊ぶぞとクー様に引っ張り回されてたのは、ある意味救われてました」
クーは意図してそうしていたわけではないのだろう。
王族として育てられた上から目線の勝手さなのか、本人の性格の問題かは別として、
クーの行動は結果的にトソン君の助けになっていたらしい。
(゚、゚トソン「そんな事もありつつ、僕もクー様も成長し、僕はクー様の護衛の任を辞し、騎士になりました」
- 837 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:18:58 ID:ejxBY3uY0
そのままクーの護衛を務めるという選択肢もあったが、成長したクーが公の場に出る場合の護衛としては、
最低でも騎士の資格を有していないと体裁が悪いという理由もあったらしかった。
(゚、゚トソン「自分で言うのもおこがましい話ですが、僕は武芸の腕には自信があったので」
(゚、゚トソン「騎士として結構な功績を上げる事が出来ました」
トソン君の強さに関しては、僕が実際に戦った経験から見てもかなりのものだと思う。
騎士として真っ向から戦うなら、あの怪力は相当手強いはずだ。
(゚、゚トソン「それで、その頃はもう、女性だからと白眼視されるようなことも減っていたのもありまして」
(゚、゚トソン「聖騎士にならないかとスカウトされたんです」
聖騎士ともなればクーの護衛としての体面も十分だし、何より家としても誇れる職業だ。
行く行くは国家の要職に就く事だって夢ではないはずだった。
(゚、゚トソン「丁度そんな時に、僕に弟が生まれました」
( ^ω^)「お……」
- 838 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:20:40 ID:ejxBY3uY0
どういった経緯でこれ以上諦めていた子供を作る気になったのかはわからないが、
とにかく生まれたのは念願の正真正銘の男の子だったらしい。
(゚、゚トソン「僕は素直にその事を喜びました」
(゚、゚トソン「家督は当然その子に譲ろうと思ってましたし」
(゚、゚トソン「姉として、半分は兄としてもその子の手本になるべく聖騎士として力を尽くそうと思ってました」
しかしながら父親からトソン君に下された言葉は、騎士を辞め、家に戻って来るようにというものだったらしい。
(゚、゚トソン「家に戻り、女らしく花嫁修業をしろ。いい嫁ぎ先を探してやる」
(゚、゚トソン「そんな言葉でした」
( ^ω^)「それは……」
その言葉はトソン君にとって、これまでの人生の全てを否定するような物だったのだろう。
半ば強制的に男の様に育てられ、家の為だとそれに応えて聖騎士にまで上り詰めようとした矢先に、
その全てを捨てろというのはあまりに酷な事だと思う。
- 839 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:22:02 ID:ejxBY3uY0
(゚、゚トソン「その時に思いました」
(-、-トソン「僕は父にとって、家にとって何だったのだろうかと」
( ^ω^)「……」
(゚、゚トソン「そして出た結論は、僕は僕自身の存在を否定されたのだという事でした」
結局、父にとっては跡継ぎとなる男子が必要なのであって、
女であった自分は仕方なく使わざるを得なかった代役に過ぎなかったのだとトソン君は言う。
それに対し、僕は何を言うべきか言葉が見付からなかった。
トソン君に対する哀れみ、トソン君の父親に対する憤り、色々な感情は浮かぶが、
今更僕がそう思った所で全ては過去の事なのだ。
そんな僕の表情に気付いたのか、トソン君は少し申し訳なさそうな顔をして言う。
(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。全部終わった事ですしね」
(゚ー゚トソン「当時はそれこそ死ぬほど悩んで落ち込みましたが、今はちゃんと吹っ切れてますから」
父の事や家の事は今でも思う所は色々あるが、恨んではいないし弟の事も大切に思っているとトソン君は言う。
少なくとも、聖騎士にまでなれたのは父のお陰なのだからと。
- 840 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:23:40 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「ひょっとして、その吹っ切れた切欠というのは……」
(゚、゚トソン「はい、姫様……おっと、今はクー様ですね。クー様のお陰です」
トソン君が初めてヴィップの町に来た時、クーに自分が騎士になった理由の事で話をしていた。
あの時の雰囲気からするに、クーが何かしらトソン君の救いになったのは想像出来る。
(゚、゚トソン「その頃は護衛もやっていなかったので、疎遠になっていたのですが」
(゚、゚トソン「ある時、町でばったり出会いまして」
( ^ω^)「また王宮を抜け出していた?」
(゚ー゚トソン「はい、成長しても相変わらずのご様子でした」
(゚、゚トソン「で、その時の僕は相当暗い顔をしていたのでしょうね」
トソン君の顔を見るなり、挨拶もそこそこにちょっと付き合えと言われて町外れまで引っ張られていったという。
(゚、゚トソン「ソクホウの北西側は教会の領分なので、当時まだ騎士だった僕はよく知らない場所だったのですが」
(゚、゚トソン「そこに高台があったんですよ」
- 841 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:25:23 ID:ejxBY3uY0
(゚、゚トソン「これといった施設もない、1本の大きな木があるだけの」
と言っても、その時は2人ともその高台に何があるのかは知らなかったらしい。
聖域とか何とかな位置付けで、立ち入りを禁止されていた区域だったようだ。
クーはそこに何があるのか気になっていたらしく、何度か忍び込もうとしたが悉く失敗していたらしい。
トソン君の話には関係ないが、王族でも立ち入りを禁じられる場所というものに僕は少し興味が湧いた。
(゚、゚トソン「何とか監視の目を潜り抜けてそこに辿り着いたんですが、やっぱり大きな木が1本あるだけでした」
(゚、゚トソン「仕方ないので木に登ってみたのですが、そこは町が一望出来て眺めのいい場所でした」
そこでようやくクーはトソン君に何があったのか話せと言って来たという。
(゚、゚トソン「それで僕は父の事、家の事を正直に話し、自分には何の価値も無いと思っていると打ち明けました」
(゚、゚トソン「しかしクー様は、そんな事は無いと言ってくれました」
(゚、゚トソン「現に、少なくともこの場所に来る為に僕の存在は必要で、価値はあったと」
いたずらの片棒を担がせた事を例に挙げるのもどうかと思うが、その言葉は嘘ではなかったのだろう。
そんなくだらない事でも実を伴っている事には変わりなく、自分が役に立った事を実感出来たとトソン君は言う。
- 842 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:27:05 ID:ejxBY3uY0
(゚、゚トソン「目的を見失ったのなら私が目的になってやる」
(゚、゚トソン「お前は私を守る為に聖騎士になれ、クー様は笑顔でそう言ってくれました」
(゚ー゚トソン「あの時見たクー様の笑顔と町の景色は、きっと一生忘れないと思います」
結局、その後教会の人間に見付かって大事になりかけたらしいが、首謀者が姫という事もあり、
お咎めは無かったという事だ。
(゚、゚トソン「実際、聖騎士になる時もクー様が家の方に口添えをしてくれました」
(゚、゚トソン「それで僕は聖騎士になり、今に至ります」
( ^ω^)「なるほど……。クーもたまには良い事言うおね」
話し終えたトソン君はどこか満足げに見える顔で微笑んでいる。
その顔には迷いは一切見られない。
(゚、゚トソン「そうですね。僕は自分がどうあるべきか、あの時に心に決めましたから」
(゚ー゚トソン「自分の進む道で迷う事はもう無いと思います」
- 843 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:28:26 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「うん、いいお話を聞かせてもらったお」
(゚、゚*トソン「話しておいてなんですが、こう改まって人に話すと少し気恥ずかしいものですね」
実際、いい話だったと僕は思う。
そしてトソン君にぶれない芯がある事は羨ましくも思う。
( ^ω^)「トソン君……っと、しゃべり方はともかく、呼び方はまずいおね」
( ^ω^)「トソンさんと呼ぶべきだおね」
(゚、゚トソン「それもトソン君のままでいいですよ。ブーンさんが店長で偉いんですから」
( ^ω^)「偉くないし、偉いとしても仕事中だけだお」
( ^ω^)「でもまあ、それで呼び慣れちゃったからそうさせてもらうお」
(゚ー゚トソン「はい、これからもよろしくお願いしますね、ブーン店長」
トソン君は笑顔でそう言ってくれるが、
トソン君はあんまりうちではバイトに入ってなかったりするのは今は言わないでおこう。
それでも店長と呼んでくれるのは、クーの雇い主という事だからだろうか。
- 844 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:29:32 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「さて、それじゃあ改めて釣るかお」
(;^ω^)「このままだと晩ご飯がトソン君の以外は無しになっちゃうお」
晩ご飯は任せろみたいな事言っておいて、釣果1匹では顔が立たない。
その1匹もトソン君の釣果なので、全くもって不甲斐ない状況である。
(゚、゚*トソン「……」
( ^ω^)「お?」
そんな事を考えてると、トソン君が何やら熱の篭った視線で釣竿の方をじっと見ている。
どうやらまだ釣り足りないようだ。
釣果はあったが、さっきのは厳密には失敗の産物なので納得いかないのだろう。
( ^ω^)「もう1回やってみるかお?」
(゚、゚*トソン「いいんですか?」
僕が頷くとトソン君は嬉しそうに竿を受け取る。
そしてすぐ様、先ほど同じく綺麗な型で上段に構えた。
- 845 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:31:00 ID:ejxBY3uY0
( ^ω^)「力み過ぎず、緩め過ぎずだお」
(゚、゚*トソン「は、はい!」
( ^ω^)「着水したら竿を持ちやすい位置で固定して待って、引きがあったら釣り上げるんだお」
(゚、゚*トソン「はい、投げる、固定する、待つ、釣り上げるですね!」
( ^ω^)「グッドだお。さあ、行ってみるお」
(゚、゚*トソン「はい、行きます!」
ヾ⊂(゚、゚*トソン「えいっ!」
振り下ろされる竿に従い、勢い良く飛んで行く針と糸。
今度はちゃんとトソン君の手に竿は残っている。
少し力が入ったのか、針は右奥に向かって斜めに飛んで行ったが、湖から逸れてはいないので問題はないだろう。
(゚、゚*トソン「力まず、緩めず、投げる……着水したら……したら……えっと……」
- 846 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:32:41 ID:ejxBY3uY0
(>、<*トソン「釣り上げる!」
(;^ω^)「ちょ、早過ぎるお!?」
トソン君は針が水音を響かせた瞬間、糸を一気に巻き上げる。
流石にそれは何も釣れないだろうと苦笑いを浮かべた瞬間、針に付いていた何かが空中で外れて僕の顔に飛来した。
(;○ω○)「ぬおッ!? 何ぞこれ!?」
濡れそぼった何かが顔に張り付き、僕の視界を奪う。
慌ててそれを引き剥がすが、思いの他柔らかい、布のような感触が僕の手にはあった。
(゚、゚;トソン「あ……」
(;^ω^)つ○=○-「布のようなって言うか、これ、布だおね……」
どこかで見覚えのある青い布に、僕は視線をゆっくりと湖の方に向ける。
_,
川#゚益゚)
つ⊂
そこには両手を胸の前に当てた、般若のごとき形相のクーがいた。
- 847 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:34:22 ID:ejxBY3uY0
(;^ω^)「いや、僕は悪くな……」
ナニヤッテンノヨー!!! ナンカコノオチモヒサシブリー!!!
ξ#゚听)ξ三///つ(#)゚ω゚).・。 ’
(#)゚ω゚)「ぼ、僕は無実だ……お……」ガクッ
川#゚ -゚)「何やってんだ、この駄目騎士がああああっ!!!」
(;、;トソン彡「ひぃぃっ!? ごめんなさああいっ!!!」
(∪;^ω^)「わんわんおー」
僕は薄れ行く意識の中で、今日も釣果はゼロなのだろうなと漠然と考えていた。
第二十六話 姫の想い、騎士の誓い 終
- 848 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:35:57 ID:ejxBY3uY0
二十六話は以上です
単発話は一旦ここまでで、また次回からシリーズっぽい話になると思います
初期に考えてた単発話のネタは、これで全て消化し終えました
次話の投下は未定です
今度こそ間が空く予定です
ホントです
きっと空きます
支援とか感謝です
- 849 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:37:11 ID:iE/NS4XMO
- おつおつ
わんお可愛かった
- 850 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:41:40 ID:wuibT.v6O
- 乙!
- 851 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:42:17 ID:D.MW.lNE0
- 画像も無しに水着回とな…?
おっおつ乙
- 852 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:44:23 ID:S5sYZaFkO
- 乙わんお
キャラが深まるのはいいな
- 853 名前:名も無きAAのようです:2012/04/17(火) 23:44:31 ID:b4RgnENs0
- 乙
- 854 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 00:46:28 ID:MBLTouwAO
- おパンつ
- 855 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 01:22:44 ID:zF9ou8/.O
- いつも楽しく読んでます支援
- 856 名前: ◆5rua49HN2.:2012/04/18(水) 02:14:26 ID:DVbEVo2E0
☆(∪^ω^)なぜなに魔法道具屋さん(^ω^∪)☆
从 ゚∀从「聖水の新商品作りの話はどうなったんだよ?」
(∪^ω^)「わんわんお」
(゚、゚トソン「ブーン店長は何故薬草にこだわってるのですか?」
(∪^ω^)「わんわんお」
川 ゚ -゚)「これから先、私の見せ場はあるのか?」
(∪^ω^)「わんわんお」
(´・ω・`)「ずっと名前だけしか出てないあの人の出番はある?」
(∪^ω^)「わんわんお」
ξ゚听)ξ「この話のヒロインって誰なの?」
( ^ω^)「わんわんお」
lw´‐ _‐ノv「100 + 10 =?」
(∪^ω^)「わんわんおー」
やっぱりつづかない
- 857 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 03:45:23 ID:P4n2q666O
- おりぎり
- 858 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 08:24:37 ID:OAA0I2JwO
- なんで来てるんだよ…
夕方まで読むのを我慢しなきゃならないなんてクソックソッ
- 859 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 12:11:43 ID:PEfz0dV6O
- わんお可愛い可愛すぎる!くれ!!!
乙乙
- 860 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 13:08:56 ID:RGB8hUE.0
- ブーンwww
面白かった乙
- 861 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 17:25:05 ID:ZrIuRMyoO
- 水着回なのに枯れすぎです><
潤いが必要だなあチラッチラッ
- 862 名前:名も無きAAのようです:2012/04/18(水) 22:55:15 ID:ZQvF2I2UO
- もともとこの話を考えていたのか、それとも男か女か聞かれたからこの話を作ったのか…
- 863 名前:名も無きAAのようです:2012/04/19(木) 17:32:12 ID:OCfU8mEY0
- ∩___∩
| 丿 _, ,_ヽ
/ ● ● | ・・・
| U ( _●_) ミ
彡、 ヽノ ,,/
/ ┌─┐´
|´ 丶 ヽ{ .茶 }ヽ
r ヽ、__)ニ(_丿
ヽ、___ ヽ ヽ
と____ノ_ノ
_____
(\ ∞ ノ
ヽ、ヽ /
`ヽ)⌒ノ
 ̄
,_,..._
∩ノ \∩
l________∞_____)
/ ● ● |
| ( _●_) ミ
彡、 ヽノ ,,/
/ ┌─┐´
|´ 丶 ヽ{ 茶 } ヽ
r ヽ、__)ニ(_丿
ヽ、___ ヽ ヽ
と____ノ_ノ
- 864 名前:名も無きAAのようです:2012/04/21(土) 14:39:51 ID:aeVSWRRYO
- キャラも増えて来たし、格キャラの年齢とか強さとか知りたいな
- 865 名前:名も無きAAのようです:2012/04/21(土) 19:44:27 ID:h9wVKUjM0
- 年齢は俺も知りたい
ブーンは少年っていってるし、10代なんだろうけど
- 866 名前:名も無きAAのようです:2012/04/21(土) 19:46:52 ID:hqyKWh8M0
- 酒飲めるってことは基本二十歳か
- 867 名前:名も無きAAのようです:2012/04/21(土) 20:18:02 ID:3UvCskoIO
- ブーンのいる国の法律が何歳以上飲酒可なのか分からんからなんとも
国によっては飲酒の年齢規制ないこともあるし
まぁどうせこめにしきが答えるだろうから分かんないんだろうな
- 868 名前:名も無きAAのようです:2012/04/21(土) 23:49:14 ID:zGruajy.O
- 17歳じゃなかったっけ?
- 869 名前: ◆5rua49HN2.:2012/04/22(日) 02:44:46 ID:eKv78xWg0
- >>862
>>864-867
(∪^ω^) 「わんおー!」
/ |
c( ,,O_UU_つ
……だとお約束過ぎるので、一応少し補足を
この世界ではお酒に関する法的な年齢制限はないことになってます
大人の飲みのものという認識なので、小さな子供は飲みませんが
強さも一応考えてありますが、あんまり段階分け出来そうもないので年齢だけ
上から順に
lw´‐ _‐ノv>|越えられない壁|>( ∵)=(`・ω・´)>(‘_L’)>>('A`)>|30の壁|
(-_-)=( ´_ゝ`)>(´<_` )>( ゚д゚)>( ゚∀゚)>从 ゚∀从=(゚、゚トソン|20の壁|
ζ(゚ー゚*ζ>川 ゚ -゚)>( ^ω^)=ξ゚听)ξ=(´・ω・`)=ノパ听)>>>(∪^ω^)
こんな感じです
確かどこかでショボンの年齢書いた気がしますか、具体的な数字はあまり出さないつもりです
- 870 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 06:50:55 ID:9mMoOzBs0
- (゚、゚トソンが二十歳越え、だと……?
- 871 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 09:55:16 ID:s/PzusKw0
- ショボンは17だっけ
- 872 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 15:38:34 ID:YDPvEz9oO
- ドクオさん意外と弱くね?
もっと強いかと思ってた
- 873 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 16:19:29 ID:Nnt2msG.0
- 作者が書いた順番は年齢の高い順だよ
- 874 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 17:56:37 ID:HolzsR7MO
- 弟者年齢の割に落ち着き無さ過ぎだろwwwおっきい子供かwww
- 875 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 18:27:53 ID:g8v9GOBcO
- トソン成人してんだよな、それでボクはみっともないと思うのだが
社会人なら男女問わず『私』じゃないのかね、職業的にも
トソンの生い立ちに深く関わる重大な部分だけど、年齢設定と職業に合わず違和感
- 876 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 18:37:29 ID:h3f7XNe20
- おまえの存在が違和感だわ
- 877 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 18:44:25 ID:L8kiyt/oO
- 創作物だからなぁ、その辺は割り切らないとしんどいぞ?
- 878 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 20:47:59 ID:10wJXPw20
- 日本の常識が世界の常識だとおもってるのがいるな
- 879 名前:名も無きAAのようです:2012/04/22(日) 23:01:10 ID:IEnYgFwQO
- 改まった場なら男女関わらず【私】でも良いと思うが日常会話で私って使ってる男とか俺は見たことないぞ
- 880 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 00:06:27 ID:pqwDccBk0
- 俺らは魔法のない世界に住んでるからな。
文化もなんもかも違うさ
- 881 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 06:40:29 ID:UU.vQx4o0
- 流石兄弟は双子じゃないの?
- 882 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 12:39:49 ID:eS8O5.qIO
- 私、俺、僕などは、日本語の特徴として個性付けにも使えるからこそ、トソンに『僕』と言わせて、男、少年と思わせるように書いていたんじゃないの?
日本語の特徴を使ってるのに、文化が違うとか舞台が日本じゃないとか言うのは筋が通らない
この物語の世界の中では成人女性も僕と言うのが普通てんなら有りなんだろうけど
- 883 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 12:49:29 ID:ik4cdiFo0
- 日本語の特徴を違う文化の物語に使ってるんだから、日本文化の価値観で違和感があるっていうのはおかしいでしょ
この舞台が日本ならまだしも、明らかに日本じゃないんだし。
- 884 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 12:54:09 ID:On3GUMg.0
- しつこいもしもしがいるな
そろそろ自重してくれ
- 885 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 12:58:34 ID:F5DsiMu.O
- っとりかえばや物語
っリボンの騎士
日本の文化にも家の都合で男装させられる少女やボクっ娘は昔からあるものだぞ。
>この物語の世界の中では成人女性も僕と言うのが普通てんなら有りなんだろうけど
トソン家の環境が普通てんならその理屈も有りなんだろうけど、日本では女性は皆男同然に育てられるの?
- 886 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 13:10:30 ID:BjtK1bjYO
- そこまで気にするものなのか、一人称
個人的にはぜんぜん気にならなかったので、そんな考えの人もいるんだなぁって参考になったけど、トソンの一人称にしか着目してないのが謎
- 887 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 13:45:17 ID:oAwZ33T.0
- そんなことはどうでもいいんだよ
僕っ娘は可愛い。他の理由はすべて後付けだ
- 888 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 14:28:30 ID:yTGUBp3o0
- 嫌なら自分でかけ
- 889 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 15:25:28 ID:oUDZr02U0
- 一人称の問題って大半の漫画、アニメ、小説にいえることだよね
どうでもいいわ
- 890 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 18:28:21 ID:gCwG7uxI0
- 森を見ずに落ち葉ばかり見てると迷子になるから 気をつけろ
- 891 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 18:38:58 ID:2HvzLbd20
- 日本語って面白いよね。
僕私俺オイラわしアタシうちetc…
一人称大杉
- 892 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 20:34:31 ID:mxmGRslM0
- 常識や普通なんて感覚は物語毎に違うと思うのです
親しい人ですら感覚は違うのです
ボクはありのままを受け入れて楽しみたいのです
- 893 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 23:09:31 ID:ahj97NxU0
- 面白いけど誤字脱字の多さが残念だ
- 894 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 23:10:43 ID:x6.m31YQO
- そんなに多いか?
- 895 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 23:22:03 ID:oqi9ByJM0
- そういう話を賛否突き詰めてくと荒れるからやめよまい
こんなときこそパンツマン何しとるん
- 896 名前:名も無きAAのようです:2012/04/23(月) 23:24:54 ID:nTiTb2w.0
- こめにしきー
- 897 名前: ◆5rua49HN2.:2012/04/24(火) 01:32:09 ID:qG1Tb6Ds0
>>870-896
.━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃
わんわんお わんわんお わんお わんわー わんお. ┃
わんお わんお わんおわんお わんわんお わんおー ┃
わんわんお わんわんお わんお わんお わんお わんお. ┃
わんおー わんおー わんおー わんお わんわんお ┃
わんわんお わんわんお わんおわんお わんおわんお ┃
わんお わんおわんお わんわんお わんおー わんお わんお ┃
わんおー わんわんお わんわんお わんお わんおー ┃
わんわんお わんわんお わんわんお わんお ┃
____ ┃
?B■ / □||□ ┃
━ (∪^ω^) /━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
| つ
c( |
∪ ∪
次話は書きあがってるので、週末か連休中にでも投下しようかと
- 898 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 04:21:18 ID:kCoXB4PIO
- やたー待ってる!
- 899 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 05:43:44 ID:zj1zIyEkO
- 期待
- 900 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 13:53:08 ID:TdhTNqrQ0
- >>894
読み返してみると結構凄いぞ
- 901 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 15:57:38 ID:ACcbHmasO
- こめにしきがわんわーと鳴くなんて
- 902 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 16:06:59 ID:FVHxSor6O
- 気になるほどにもないと思うがな、誤字
- 903 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 17:00:37 ID:CJS8Zlr20
- 米錦ってお相撲さんみたい
- 904 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 17:42:28 ID:mYjKJ1RM0
- >>900
っていちいちくどい奴も異常
- 905 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 18:51:31 ID:TdhTNqrQ0
- 誤字多いって言っただけで異常認定されたでござる
殺伐としてるなお前ら
- 906 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 19:04:10 ID:eTuifiXM0
- ここまでの流れをふまえて、あえて言うんだから認定も仕方ないな。
- 907 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 19:14:03 ID:kWYNKZcI0
- 900行ったねえ
- 908 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 19:15:25 ID:2Z0xtbgw0
- 伸びてると思ったら…
- 909 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 19:22:51 ID:fZfJXMlQ0
- この程度で殺伐とか笑わせる
- 910 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 20:37:50 ID:ACcbHmasO
- さすがブーン系上級者様、この程度の争いはお遊戯会のような物ということですかな
- 911 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 21:18:50 ID:kCoXB4PIO
- この時間帯になると夜食にブーンの薬草料理が食べたくなるNE
- 912 名前:名も無きAAのようです:2012/04/24(火) 22:10:09 ID:mNQM47toO
- お腹壊してる時に薬草料理食べたら治るだろうか
- 913 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 01:04:18 ID:U7vWdn6EO
- 魔法料理屋に暖簾替え
- 914 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 01:46:40 ID:u4CfZvhYO
- 薬草料理…便秘解消にはよさそうだが…
- 915 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 03:40:13 ID:1uUrUsWw0
- 「畜生!大ダメージを受けてしまった!手持ちの回復アイテムもない!よーし魔法料理屋に出前を頼もう!」
つまりこういう流れか
- 916 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 04:34:48 ID:J7zZn3OYO
- mother2かよw
- 917 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 08:00:13 ID:/T1qGIfE0
- >>915
( ゚ ∀゚ ) 「おいミルナ、お前最近太ったんじゃねぇの?」
( ゚ д゚ ) 「最近は激戦続きだったからな… それよりわんおちゃんはどこだ?」
( ∪ ^ ω ^ )ドッスドッス
- 918 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 13:13:04 ID:Ic9j5iso0
- WANO'S キッチン
- 919 名前:名も無きAAのようです:2012/04/25(水) 19:04:37 ID:/rJwb1cA0
- MAHO'sキッチン
- 920 名前:名も無きAAのようです:2012/04/26(木) 00:49:29 ID:VIR/3BSMO
- MAHO'Sキッチンチェックシート
・リクエスト無視
・わんわんおの半笑い
・聖水ドバァ
・薬草(ザクザクッ
・魔力ファサー
・荒い盛り付け
・謎の薬草
・追い聖水
・熱い自画自賛
・寒いギャグ
- 921 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 08:27:24 ID:kq0BgbYg0
- 更新はまだかねバンバン!!
- 922 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 14:55:56 ID:YoJAQ3iI0
- >>921
そこは頑張ってAA使おうぜw
- 923 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 16:46:48 ID:PUUBCPkg0
- つまりこういうことか>>922
∧_∧
(・ω・ )
__________(____)___
// ̄ ̄ / ̄ ̄ /\
// ̄ ̄ _ ̄_ノ / \
/  ̄ / /
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ババババ
___ ∧_∧ ________
// ̄ ̄ ( ・ω・)つ /\
// ̄ ̄ ( ∪ ) l||| / \
/ と_)_) つ て / /
/ ⌒) (⌒ / /
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ /
,/__________________\/
- 924 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 19:53:09 ID:UR32lx8k0
- >>923
あらやだかわいい
- 925 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 21:00:01 ID:2jWHzvjEO
- >>923
これいいな、自作のAA?
- 926 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 21:29:14 ID:K92H1mx20
- >>925
バンバンバンバンバン
- 927 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:14:15 ID:bs5HKQgE0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
( ^ω^)「さて、色々と落ち着いて来たし、そろそろ新商品を考える頃だおね」
(∪^ω^)「わんわんおー」
( ^ω^)「結局、ツンに駄目出しされた薬草パンも薬草おにぎりも商品になったし」
( ^ω^)「その路線で考えてみるのもありだおね」
(∪^ω^)「わんお」
( ^ω^)「クエスト向きじゃないのが玉に瑕だけど」
ξ゚听)ξ「正直それって、魔法道具屋の商品として致命傷だと思うんだけど」
第二十七話 神の衣、魔王の衣
まとめさん
ブーン文丸新聞さん
ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
ブーン芸VIPさん
ttp://boonsoldier.web.fc2.com/mdy.htm
- 928 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:15:29 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「でも、薬草パンも薬草おにぎりも売れ筋商品だお?」
僕の名前はブーン。
ヴィップの町で魔法道具屋サンライズを営む魔法使いだ。
ξ゚听)ξ「ここがお惣菜屋さんとかならそれでもいいんじゃない?」
彼女の名はツン。
隣の武術道場の娘で、いわゆる幼馴染というやつだ。
(∪^ω^)「わんわんお!」
この子の名前はわんわんお。
僕のペットというか家族で、見た目は子犬だが実は元竜だ。
いつも通りのサンライズでいつも通りの営業風景。
今日は僕とわんわんおだけで店番の予定だったが、ツンが遊びに来ていた。
稽古や畑仕事はどうしたのかと聞いてみると、こう暑いとやってられないという何ともひどい答えが返って来た。
( ^ω^)「お惣菜屋じゃねえし」
確かに、もう少し魔法道具屋としてクエストに役立つ商品をドカンと売り出したい所ではある。
その為にも何かしらの良いアイデアを考え出さねばならない。
- 929 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:16:38 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「そういえば1つ思い付いてたんだったお」
色々あって忘却の彼方へ飛んでいたが、ソクホウの西の小島で思い浮かんだ商品のアイデアが1つあった。
あれはまだ、商品になるかどうか検討していない。
ξ゚听)ξ「ふーん。それで、どんな商品なの?」
僕はあの迷宮で思い付いた、位置特定用の道具について説明する。
パーティーが分断された時には有効で、特定の需要が望めると。
ξ゚听)ξ「確かに、あんな状況に陥った時は有効かもしれないわね」
( ^ω^)「そうだお。問題は、あんまりそんな状況に陥らないことなんだおね」
未開の遺跡を探索するクエストはかなり珍しい部類で、迷宮ともなると滅多にない。
更に言えば、そのクエストを受けるのはトレジャーハンターが多く、トレジャーハンターは単独で活動する人が多い。
( ^ω^)「とはいえ、僕らの時みたいに護衛として行くケースもあるにはあるお」
ξ゚听)ξ「あると便利だけど、その特定の需要が発生し難いわけね」
- 930 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:18:22 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「ついでに言うと、結構高度なんで、値段も少し高めになるお」
取り敢えず試作してみて売ってみてもいいかとは思っている。
大量生産しないのであれば、時間も費用も許容範囲で賄える。
ξ゚听)ξ「別に遺跡じゃなくても使えるんでしょ? 森とかでも」
( ^ω^)「極端に離れ過ぎなければ大丈夫だお」
ヴィップの周辺では需要はほとんどなさそうだが、万が一のために買ってくれるパーティーはいるかもしれない。
使わなければ半永久的に効果は維持されるから、あっても損はないだろう。
セールストーク次第では、1パーティーに1つぐらいは買って貰う事も出来るかもしれない。
( ^ω^)「うん、作ってみてもいいかもだお」
ξ゚听)ξ「ちゃんとした魔法道具屋の商品っぽいしね」
(;^ω^)「別に、薬草パンとかも魔法道具屋ならではだと思うお?」
(∪^ω^)「わんおー」
- 931 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:19:44 ID:bs5HKQgE0
とにかく、その位置特定用の道具を作ってみるという事で考えは纏まった。
その為にはまずクーからあのペンダントを借りねばならない。
( ^ω^)「なるべく術式をコンパクトにして、携帯の邪魔にならないようにしたいんだおね」
ξ゚听)ξ「流石にあれはブーンのおじいさんの作った物だけあって、かなり高度なのよね?」
( ^ω^)「高度だお。あと無駄に細工が細かいお。すっげえ字が細いし」
あれを再現するのは無理だが、参考にはなる。
前に1度見たからある程度は覚えているので、ちょっとだけ借りれば済むだろう。
( ^ω^)「というわけで、クーが来たら……」
借りようと言おうとした矢先、ドアのベルが鳴る。
噂をすればなんとやらで、良いタイミングで来てくれるものだ。
('A`)「よう」
( ^ω^)「出口はあちらですお」
(;'A`)「え? 何で俺、来てすぐ帰れって言われてるの?」
- 932 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:20:44 ID:bs5HKQgE0
残念ながら来訪者は期待していたクーではなく、ドクオさんであった。
なんとも間の悪い人である。
( ^ω^)「冗談ですお」
ξ゚听)ξ「次回からは出て行かなくていいように、最初から入って来ないでください」
(;'A`)「入店拒否!?」
(;^ω^)「いや、冗談ですからホントに帰ろうとしないでくださいお」
A`)..
ξ゚听)ξ「か・え・れ! あ、それ! か・え・れ! か・え・れ!」
(;^ω^)「ツン、ノリノリで帰れコール連呼すんなお。手拍子も止めろお」
(∪^ω^)「わ・ん・お! わ・ん・お!」
(;^ω^)「わんおも真似しちゃ駄目だお。つーかどんな鳴き方だお」
)...
(;^ω^)「ドクオさんも帰らないで、戻って来てくださいお!」
- 933 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:22:46 ID:sslcKNO60
- しえしえ
- 934 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:22:49 ID:bs5HKQgE0
僕は、トラウマが、トラウマがと震えるドクオさんを店に引っ張り入れる。
悪乗りが過ぎたと思うが、ドクオさんの打たれ弱さも半端ないと思う。
ξ゚听)ξ「で、何の用事なのよ? つまらない用事だったら折るわよ?」
(;'A`)「何をだよ……。いや、大した用事じゃないんだけどさ」
ドクオさんが言うには、遠出をするのでしばらく庵を空けるという話であった。
ξ*゚听)ξ「永久に?」
(;'A`)「ちげえよ! 精々1、2ヶ月だよ! お前が俺の話で目を輝かせたの初めて見たわ!」
( ^ω^)「わかりましたお。ちなみに、何の用事なんですかお?」
('A`)「それは……まあ、お前らが気にするような事じゃねえよ」
一瞬僕の顔を見て、すぐに目を逸らしてぶっきらぼうに言い放つドクオさん。
僕としては、色々と厄介事を押し付けているから気になるのだが、この様子だと聞いても教えてくれないだろう。
素っ気無い態度だが、ドクオさんはドクオさんなりに僕の事を考えてもくれている。
そのドクオさんが言わないと決めたのなら、無理に詮索するのも失礼だろう。
僕はドクオさんの気持ちを汲み、それ以上は聞かない事にする。
- 935 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:24:25 ID:bs5HKQgE0
ξ゚听)ξ「どうせくだらない用事でしょ。耳毛が伸び過ぎたから切りに行くとか」
(;'A`)「ちげえよ! 何だよ、耳毛って。もしそうだとしても、そのくらい自分で切るわ!」
そんな僕の気持ちを余所に、いつも通りツンはドクオさんを全力でなじる。
とはいえ、昔からあんな感じなので、あれはあれでお互いに会話を楽しんでいると見ている。
少なくとも、ドクオさんとまともに口をきいてくれる女の子はツンぐらいだし、ドクオさんは嬉しがってると思う。
確か、ドクオさんの愛読書のモテモテ通信にも、女性から罵倒はご褒美とか何とか書いてあったはずだ。
( ^ω^)「旅の無事をお祈りしておきますお」
('A`)「俺は神は信じてねえっての。それよりも俺がいない間に無茶すんなよ?」
( ^ω^)「しませんお」
(∪^ω^)「わんお」
僕の方にはこれといった用事もなく、遠出の予定もない。
しばらくはここでお店をやってるだけなので、何もしでかす事はないだろう。
あくまで僕はだが。
- 936 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:25:30 ID:LS9HBclUO
- 相変わらずのドクオさんだな
支援
- 937 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:26:50 ID:bs5HKQgE0
僕はドクオさんを見送り、再び新商品の話をツンと始めようとした。
しかしそれはすぐに再び鳴ったドアベルの音に遮られる。
川 ゚ -゚)「クエストに行くぞ!」
_, _,
(∪^ω^)( ^ω^)ξ゚听)ξ
ドクオさんが戻って来たのかと思いきや、今度こそクーであった。
そのクーは店に入ってくるや否や、唐突な提案を持ちかけてくる。
川 ゚ -゚)「ん? どうした? 早く準備しないか」
(;^ω^)「いや、準備ってあんた……何の事だかさっぱりポンだから、もうちょっとちゃんと話せお」
ξ゚听)ξ「いきなりクエストに行くぞって言われてもねえ……私はかまわないけど」
(;^ω^)「行くのかお。せめて概要ぐらい聞いてからにしてくれお」
(∪^ω^)「わんおー」
川 ゚ -゚)「クエストの依頼があった。私が受けた。お前達も手伝え。以上」
(;^ω^)「そこじゃなくて、クエストの内容とかだお」
- 938 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:29:00 ID:bs5HKQgE0
川 ゚ -゚)「面倒だな。取り敢えず今から依頼主のとこに行くんで、ついて来ればわかる」
(;^ω^)「いや、今仕事中だお?」
川 ゚ -゚)「どうせいつも通り暇なんだろ? 店閉めればいいだけの話じゃないか」
(;^ω^)「いつも通りとか言うなお。今日はたまたま客が少ないだけだお」
ξ゚听)ξ「ちなみに、その依頼主って誰なの?」
川 ゚ -゚)「ヒッキーさんだ」
(;^ω^)「え?」
ξ゚听)ξ「随分と意外なとこから出たわね」
ヒッキーさんといえば、言わずもがな、この町の教会の司祭さんだ。
教会の司祭がギルドにクエストを依頼するのはあまり聞いた事がない。
僕は、少し興味が湧いたので店を閉め、クーと共に教会に向かう事にした。
- 939 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:30:41 ID:bs5HKQgE0
〜 ヴィップの町の教会 〜
(-_-)「ようこそお越しくださいました。取り敢えずお茶をどうぞ」
( ^ω^)「いただきますお」
教会に着くと、出迎えてくれたヒッキーさんに礼拝堂に案内された。
礼拝堂の隅の方に、いつの間にか設けられていた談話スペースみたいな場所に僕達は座る。
僕達の他にも今日は教会でのバイトだったトソン君もいた。
( ^ω^)「それで、クエストの話なんですけど、詳しく聞かせてもらってもいいですかお?」
(-_-)「ええ、勿論です。ただ、少々情けないというか、申し訳ない話なのですが……」
ヒッキーさんの話を端的に要約すると、例の教会から盗まれた物を取り戻す事がクエストの目的らしい。
ただ、それを探せという訳ではなく、それを盗んだやつが現れるのでそれを捕まえろというもののようだ。
更にこのクエストには、ヒッキーさんも1メンバーとして同行するとの事だ。
(-_-)「この時点でいくつも質問があるかと思いますので、何でもどうぞ」
川 ゚ -゚)「報酬はどんなもんだ?」
(;^ω^)「最初にそれかお。それは後でもいいお」
- 940 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:32:00 ID:bs5HKQgE0
後でもいいと言ったが、ヒッキーさんの話だと本来の依頼主、報酬の支払い元は教会の本部なので、
それなりに高めになっているようだ。
ξ゚听)ξ「どういった経緯で教会からクエストの依頼を出す事になったんですか?」
(-_-)「以前、お話したと思いますが、この教会の異変について、本部の方へ報告をしました所」
(-_-)「本部の方で検討し、この件に付いての責任を問われ、今回の様な話になりました」
( ^ω^)「責任って、ヒッキーさんにですかお? そんな無茶な」
教会に侵入者があった可能性があるのは、ヒッキーさんの赴任前の話だ。
それをヒッキーさんの所為にするのは筋違いだと思う。
しかし、僕は何となく気付いてしまった。
恐らく責任は前任者に問われたが、それをそのままヒッキーさんが敢えて引き継いだのではないかと。
前の司祭様とヒッキーさんの関係を思えば、それは不自然な事ではないと思う。
(-_-)「大丈夫ですよ。責任を問うといっても、そう重い物じゃないですので」
重い物じゃないからこそ、自分で盗んだやつを見付けろという話ではなく、捕縛の手伝いなのだヒッキーさんは言う。
要は人手として行くだけだからと。
犯人探しなら大変だろうが、確かにそれなら軽い物かもしれない。
- 941 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:33:15 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「ちなみに、犯人はどこにいるんですかお?」
(-_-)「ナカノヒトの町です。そこのオークションに犯人は現れるらしいですね」
(;^ω^)「意外と遠いですおね」
(;^ω^)「しかもナカノヒトのオークションっていったら、闇オークションじゃないですかお」
これは前言を撤回する必要がありそうだ。
全然軽くないかもしれない。
川 ゚ -゚)「ナカノヒトの町っていったら、ここから南に行った所だよな? どんな町だ?」
(゚、゚トソン「大陸一治安が悪いと言われている町です」
トソン君の言葉通り、治安が悪いらしいのであまり好んで近付きたい町ではない。
しかしながら、それで1つヒッキーさんにこのクエストが回ってきた理由がわかった。
ナカノヒトはこの大陸の主要な町の中で、唯一ニューソク正教の教会がないのだ。
現地で人集めが出来ないから、こうやって距離的に本部のあるソクホウより近いヴィップに回って来たのだろう。
直線距離ではソクホウからの方が近いが、ナカノヒトに行くには山を越えるか大きく迂回する必要があるのだ。
- 942 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:35:11 ID:bs5HKQgE0
(-_-)「ええ、そういう事なのでしょうね」
(∪^ω^)「わんお」
(-_-)「ですから、正直な話、失礼ながら皆さん達のような年若い人達に依頼するのはどうかとも思っています」
(-_-)「かなり危険なクエストですので、ヴィップで最も強い冒険者の方に依頼しようかと」
川 ゚ -゚)b「ヒッキーさんの気持ちはわかるが、それなら結局私達になると思うがな」
クーはそう言うと、僕、ツン、トソン君と順々に視線を向ける。
クーの言う様に、冒険者としての経験とかそういうのを考えず、純粋に戦闘力だけを考えると、
ジョルジュさん達がいない今、恐らくトソン君が一番強く、次いで僕やツンになるだろう。
僕やツンは冒険者ではないけども。
加えて言うと、ジョルジュさん達がいても、元聖騎士であるトソン君だけはあの3人より上かもしれない。
(;-_-)「そう言われるとそうですね。しかし、治安を考えると、特に女性は……」
ξ゚听)ξ「大丈夫ですよ。各自、自分の身は守れますし、任せてください」
- 943 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:36:14 ID:bs5HKQgE0
既にツンとクーはかなり乗り気で、トソン君もクーに従うだろう。
これはクエストを受ける事が決定したような物かもしれない。
( ^ω^)「パーティーバランスは悪くなさそうですお」
( ^ω^)「僕とヒッキーさん、魔法の使える人間が2人もいて後衛からサポートできますし」
実際、いつもの脳筋パーティーに比べればバランスはかなりいいと思う。
魔法の使える聖職者が1人パーティーにいると、かなり戦闘は安定する。
ヒッキーさんの守護魔法は戦闘にかなり有用なはずだ。
(゚、゚トソン「一応、僕も魔法使えるんですけど……」
( ^ω^)「それで、盗まれたものって何なんですかお?」
僕はトソン君の主張をスルーし、聞きそびれていた最も肝心な事を聞く。
トソン君の魔法も多分有用なはずだが、スペシャルの件があるので、正直念頭から外しておいて欲しく思う。
(-_-)「聖骸布とのことです」
川 ゚ -゚)「せい……がいふ?」
(∪^ω^)「わんわんお?」
- 944 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:38:16 ID:bs5HKQgE0
皆一様に首を傾げたが、僕はこの言葉に聞き覚えがあった。
聖骸布書物にも載っており、知っている人は知っているような品だ。
( ^ω^)「神の遺体を包んだとされる衣ですおね?」
(-_-)「そうです。それが聖骸布です」
魔法道具屋としての面目を躍如出来て幸いだが、これに関していくつかつっこみたい所がある。
確かニューソク正教の主神アルァは、創始者の夢に出て来てお告げをした神様で、いわゆる現人神ではない。
それなのに遺体を包む衣ってどういう事なのかと。
(;-_-)「そ、それはまあ、教義とか伝承が長く語り継がれる内に、色々と変化していったんだと思いますが……」
そういう風に語り継がれてきた物だから、真偽の程はともかくとして、教会にとっては大事な物なのだろう。
僕としても、そこについてはそういうものだと割り切る気持ちはわかる。
だがしかし、それならそれで何故無人の教会に放置されていたのかはよくわからない。
(-_-)「そこは私も疑問でした。しかし、本部からの回答はありませんね。気にするなとだけ」
ξ゚听)ξ「何か気に入らないわね」
川 ゚ -゚)「随分と適当な物言いだな。何か裏があると見るべきか」
- 945 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:40:15 ID:bs5HKQgE0
ツンもクーもほぼ同時に僕の方を見る。
取り敢えず心当たりはないし、調べようもないが嫌な予感だけはしている。
ドクオさんの話と照らし合わせると、ある部分で合致する箇所があるのだ。
( ^ω^)(衣……魔王の衣かお?)
ドクオさんの推測が当たりならば、これは相当ヤバい道具なのかもしれない。
果たしてこのクエストを受けていいものかどうか。
(;^ω^)(……そういえば、ドクオさんに相談しようにも、今いないじゃんかお)
余計な事に首を突っ込むなと釘を刺されている。
そして今まさに、これは余計な事に首を突っ込む瞬間なのではなかろうか。
(∪^ω^)「わんおー?」
( ^ω^)「お?」
気付けば心配そうにこちらを覗き込む目がいくつもある。
急に黙り込んで仕舞ったので、心配させてしまったらしい。
- 946 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:41:37 ID:bs5HKQgE0
(-_-)「再度言いますが、これは危険なクエストになる可能性が高いですので、断っていただいてもかまいませんからね?」
( ^ω^)「いや、受けますお。皆もそのつもりなんだおね?」
僕の言葉にツン達は頷く。
ヒッキーさんはまだ心配そうな顔をしていたが、僕は大丈夫だと笑いかける。
( ^ω^)(これは余計な事じゃないお。やらなきゃいけない事だお)
義務感ではない。
僕らが断っても、ヒッキーさんがクエストに行くのは確定なのだ。
故に、日頃お世話になってるヒッキーさんを手伝う事が、余計な事なはずはない。
だからこれは義務感ではなく、僕がやりたい事だ。
クエストの依頼を受け、僕達はすぐに今後の予定について話し合う。
今回は魔法道具屋として行くつもりはないので、これといって特別に準備する物はない。
馬車の準備も、ヒッキーさんがやってくれるようだ。
(;^ω^)「さて、僕自身はいいとして、お店の方はどうするかおね」
- 947 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:43:04 ID:bs5HKQgE0
ナカノヒトまで馬車で片道約1週間と少し。
往復と滞在期間を考えれば、また2、3週間は店を閉める事になるだろう。
今回はクー達も来るので、店は全く開けられる状況に無い。
ξ゚听)ξ「今から大量に薬草作って、シャキンさんのとこに置いておくしかないんじゃない?」
( ^ω^)「それしかないおね」
(-_-)「場合によっては1日ほど出発を遅らせる事も可能ですので」
( ^ω^)「そうすると、道中のスケジュールがかなりタイトになりそうですおね」
そう考えると、今からでも夜通し薬草とかを作り続けて出発を早めるべきだろう。
睡眠は馬車で存分に取らせて貰えばいい。
川 ゚ -゚)「ヴィップの南の街道は安全面はどんな感じなんだ?」
ξ゚听)ξ「そうね、メシューマ方面に比べるとモンスターとの遭遇確率は高いと思うわ」
街道の治安は町の力や治安とも比例する。
そう考えると、ナカノヒト方面の街道が、安全面においては今一つなのは納得出来る話だろう。
- 948 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:48:01 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「加えて、例の灰衣の魔法使いの件もあるから、道中の警戒は密にしておく必要はあるお」
そう考えると、夜通し薬草作って馬車で寝るという考えはあまり良くないのかもしれない。
ヴィップを出てすぐはそれほど危険は無いと思うが、どうするべきか。
( ^ω^)「うーん……ちょっとシャキンさんに相談して──」
<「話は聞かせてもらった」
(;^ω^)「お? 誰だお?」
どこからともなく聞き覚えのある声がした。
しかし、周りを見回すも、ここには僕達以外誰もいない。
そう思った瞬間、何かが天井から落ちて来た。
_ ヘロゥ
^/- - ,ml
川;д川 !? !? !? !? !?
"(;-_-)川;゚ -゚)(゚、゚;トソンξ;゚听)ξ(∪^ω^)(;^ω^)
- 949 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:49:19 ID:bs5HKQgE0
それが天井から何か紐のようなもので逆さまにぶら下がったシューの姿だと気付いた時には、
既にシューは僕の隣のわんわんおが乗っていた椅子に腰掛けていた。
lw´‐ _‐ノv「やあ、皆の衆、お久しぶりだね。こめにしきも元気だったかい?」
つ∪^ω^)「わんおー?」
(;^ω^)「シュー、突然出て来んなお。つーか他にも色々つっこみたいとこあるけど、何の用だお?」
ここにいる皆はシューの事を知っているが、唯一ヒッキーさんだけがシューが悪魔だという事は知らない。
悪魔を敵とする教会の司祭様に、シューが悪魔だと教えるのもどうかと思ったので内緒にしておいたのだ。
というかここは教会なのに、悪魔であるはずのシューはどうやって入って来たのだろうか。
lw´‐ _‐ノv「何の用とはご挨拶だね。今の話からすると、用があるのはブーン店長の方ではないかね?」
(;^ω^)「僕がシューに……お、そういう事かお」
何の話かと思ったが、確かにシューなら店を任せる事が出来、僕にとっては僥倖かもしれない。
しかし……
( ^ω^)「いや、結構だお」
lw´‐ _‐ノv「なん……だと……?」
- 950 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:50:47 ID:bs5HKQgE0
大袈裟に驚くシューだが、能力的には店番に申し分ないとしても、また店で違う物を売られるのも困る。
うちの店は農具屋でも米屋でもなく、魔法道具屋なのだ。
lw´‐ _‐ノv「おにぎりとパンは売ってるじゃない?」
( ^ω^)「それはそれだお」
ξ゚听)ξ「というかシュー、あんた何でこんなタイミングで顔出したのよ?」
lw´‐ _‐ノv「このジャストタイミングが気に入らんかね?」
lw´‐ _‐ノv「安心したまえ、北を適当に回って丁度戻って来た所なだけで、他意はないよ」
サンライズを訪れたら僕の姿がなかったので、魔力を追ってここに来たとシューは言う。
いくら魔法使いとはいえ、人間は常時魔力を出してるわけでもないのによくそんな事が出来るものだ。
シューはこれは土産だと北の方の特産らしい、魚の塩漬けの瓶詰めを机の上に置いた。
lw´‐ _‐ノv「茶請けにどうぞ、神父さん」
(;-_-)「ど、どうも。しかしこれ、お茶請けに合うでしょうかね……」
- 951 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:53:46 ID:bs5HKQgE0
川 ゚ -゚)「ふむ、どれどれ……」
クーが瓶を手に取り、蓋を開ける。
そして鼻先まで持ち上げ、その匂いを嗅いだ。
_,
川 ゚ -゚)「む……これはなかなか」
(゚、゚トソン「良い香りなのですか?」
チョイチョイ
川 ゚ -゚)っ"「わんおちゃん、ちょっとおいでなさい」
(;^ω^)「止めろお。臭かったんだお? わんおがかわいそうだお」
;;つ∪*^ω^)ノシ「わんお!」
僕は呼ばれて嬉しそうに駆け寄ろうとするわんわんおを抱き止め、蓋を閉めるように促す。
最初に匂いを嗅いだ時のクーの表情を見れば、あれがどんな匂いだったのかは想像が付く。
lw´‐ _‐ノv「で、話を戻すが断るのかね? 断って他に手はあるのかと問いたいが」
シューが言う様に、他に店番の、それも薬草が作れるような店番の当てはない。
ナカノヒトの町までの移動時間を考えると、ここは背に腹は変えられないと思うしかないのか。
- 952 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:55:00 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「私が違う物を売らないといっても安心は出来ないだろうから、最初から売る事を宣言しておこう」
(;^ω^)「どっちにしろ安心出来ねえお」
lw´‐ _‐ノv「なに、サンライズの店内では売らないさ」
lw´‐ _‐ノv「サンライスの店舗も、といっても馬車だが、店の横に併設させてもらうから」
なるほど、それならば店の中を改装されたりする恐れはなくなるし、共存出来るだろう。
店番が大変だと思うが。
lw´‐ _‐ノv「安心したまえ。2つに分かれれば何とでもなる」
(;^ω^)「聞かなかった事にするから、あんまり派手にやるなお」
最終的に僕はシューに店番を頼む事に決めた。
一抹どころかかなりの不安もあるにはあるが、シューなら何とかなるだろう。
川 ゚ -゚)「それじゃあ、話はこの辺にして、明日の朝の出発に向けて各自準備を進めようか」
クーの一声でその場は解散となり、各自準備に向かう。
僕の方はまずは店に戻り、シューと少し店について話をした後、シャキンさんに話をしに行くつもりだ。
- 953 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:56:32 ID:bs5HKQgE0
〜 魔法道具屋サンライズ 〜
( ^ω^)「で、残りの薬草がここにあるけど、足りなくなったら採集に行くしかないお」
lw´‐ _‐ノv「うむ、その辺は勝手知ったるものだからのーぷろぶれむ」
過去に店番の経験がある事もあり、シューへの仕事の引継ぎは何の問題もなくすぐに終わった。
頼む事を渋りはしたが、いざ頼む事になると話が早くて随分と助かった。
( ^ω^)「言うの遅くなったけどお礼を言うお、シュー、ありがとだお」
lw´‐ _‐ノv「何の何の、ブーン店長には借りがある。これも借金返済の一貫さ、気にするでないよ」
( ^ω^)「そうかお? でもまあ、助かるのは事実だお」
僕はシューに改めて頭を下げ、店の事を頼む。
シューも若干真面目な態度で頭を下げ返した。
こういう態度を見ると、シューが悪魔だとは思えなくなって来る。
( ^ω^)「っと、ついでにちょっと聞いてもいいかお?」
- 954 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 22:58:29 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「ふむ、スリーサイズかね? 上から108……」
(;^ω^)「そんな事は聞いてねえお。しかも今、有り得ないくらい盛ったお?」
lw´‐ _‐ノv「んふ、乙女の嗜みというやつですよん」
シューの冗談を流し、僕は千年紀についてシューに尋ねる。
仮にも魔王と名の付くものの話だ。
悪魔であるシューなら何か知っているかもしれない。
lw´‐ _‐ノv「魔……王……?」
( ^ω^)「あれ?」
(∪^ω^)「わんお?」
しかし、シューの反応は芳しくなく、きょとんとした顔を見せた。
ひょっとして魔王を知らないのだろうか。
lw´‐ _‐ノv「いや、知ってますけど」
(;^ω^)つそ「知ってるんかーい!」
- 955 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:00:18 ID:bs5HKQgE0
じゃあさっきの反応は何だよと問い質したいが、
シューにしてみれば何でそんなごく普通の事を改まって聞くのかという反応らしかった。
lw´‐ _‐ノv「うちのマザーさんも魔王だし」
(;゚ω゚)「マジで!?」
さらっと飛んでもない事を言うシューだが、その言葉には1つ気になる点があった。
(;^ω^)「も?」
lw´‐ _‐ノv「ん? 魔王なんていっぱいいるぞ?」
lw´‐ _‐ノv「向こうの世界のそれぞれの国を治めてるのは大体魔王だし」
(∪^ω^)「わんおー」
シューの話によると、魔王というのはこちらでいう所の王様のようなものらしかった。
それなら確かに、少なからずいる事になる。
lw´‐ _‐ノv「まあ、魔王なんかが人間界に来る事はまずないけどね」
lw´‐ _‐ノv「一番の問題は国を空ける事で、他国から攻められる可能性が出て来るし」
- 956 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:01:53 ID:bs5HKQgE0
なるほど、納得のいく理由ではある。
ただ、そうなるとあの千年紀の王には不自然な所がある事に気付く。
( ^ω^)「どこの国の魔王なんだお?」
lw´‐ _‐ノv「さあね。戦争に負けて滅んだ国もあるし、はぐれ魔王がいてもおかしくはないけど」
僕の説明を聞いた限りでは、千年紀の王は魔王というには不自然な点が目立つとシューは言う。
lw´‐ _‐ノv「今の話だと、思念体みたいなもののようだね」
lw´‐ _‐ノv「ただ、そこに自分の意思を感じられない。どっちかというと低級な悪魔の様にも感じるね」
魔王というには少し違う物のように思うというのがシューの見解らしい。
なるほど、そう言われてみると確かにそこに主体性はなく、随分と他人任せの復活だし、
どちらかといえば道具の呪いとか言われた方がしっくり来る。
lw´‐ _‐ノv「まあ、人間にとってそこは割とどうでもいいのだろうね」
( ^ω^)「正体はどうでもいいお。知りたいのは復活させない方法とか、倒し方だお」
(∪^ω^)「わんわんお」
僕の言葉にシューは珍しく眉根を寄せ、優れない顔を見せる。
滅多に表情の変わらないシューがこんな表情をするのはよっぽどの事だ。
- 957 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:03:08 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「まず、私はそれについて知らないという事を念頭に置いて聞いて欲しいのだが」
( ^ω^)「お……」
lw´‐ _‐ノv「無闇に悪魔に知識を求めるのはお勧めしないと言っておくよ」
悪魔は人間から見るとモンスターに分類されるが、その知性は高く、人間の言葉を理解する者が多い。
その知識も豊富で、人間が知り得ない知識も有している。
魔法使いの中にはそういった悪魔を違う世界、魔界と呼ばれる世界から呼び出し、知識や力を得たりする者もいた。
そういう人たちを魔法使いの中でも召喚士と呼んでいる。
lw´‐ _‐ノv「そう、召喚士だ。一般的に悪魔は彼らによって召喚されてこの世界に来る事が多い」
中にはシューのように自発的に人間界に来る者もいるが、それはなかなか大変な事らしい。
移動に膨大な魔力を必要とするのがその最たる原因の様だ。
lw´‐ _‐ノv「そもそも、この世界は悪魔にとって住みやすい世界ではないからね」
主な要因は空気に含まれる魔力量の違いで、それが低い人間界では魔力を放出する一方で、
強大な悪魔ほど長くはいられないらしい。
- 958 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:04:54 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「召喚された場合はその限りでなく、召喚者から対価を貰い、存在していられるんだがね」
( ^ω^)「その辺りは一応、召喚士としての一般知識として人間界でも知ってる人は知ってるお」
( ^ω^)「けど、今の話でいくつか疑問点があるのにも気付いたお」
まず、今の話だと低級な悪魔が何故人間界に存在しているのかがわからない。
弱いが故に長く存在は出来るのかもしれないが、自発的には人間界に来れないのではなかろうか。
lw´‐ _‐ノv「そういうのは上のランクの悪魔が呼んでるか、一緒に連れてきてるんだろうね」
( ^ω^)「なるほど、そういうわけかお」
さらっとシューは言ったが、つまりは低級の悪魔がいるという事は、
ある程度上級の悪魔も人間界に潜んでいるという事なのだろう。
その目的がシューのようなものなら良いが、一般的な悪魔ならそうじゃないのがほとんどのはずだ。
lw´‐ _‐ノv「悪魔は元来、人の負の感情を好むからね。あるいは、人の肉体そのものを」
lw´‐ _‐ノv「ここは悪魔にとって存在し辛い世界だが、それを差し引いても得られるものは大きいのだろうね」
あまりそういった輩には近づかない事をお勧めするとシューは言う。
勿論、近付きたくはないので僕は頷いて返す。
- 959 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:06:04 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「で、次の疑問だけど、シューはいわゆる高位の悪魔なんだおね?」
そうであるなら、先の話と少し矛盾がある気がする。
召喚者の存在なしには長期間人間界にいられないのではなかったのか。
lw´‐ _‐ノv「私は割と特殊な部類でね。限りなく魔力の放出を抑える事が出来るんだよ」
( ^ω^)「あ、そういえばそうだおね」
シューからは悪魔だと気付かないくらい魔力を感じない。
なるほど、それならば長く人間界にいる事も出来るのだろう。
過度の魔力の放出がなければ、教会へ入るのも特に問題はないはずだ。
lw´‐ _‐ノv「むしろこういう体質だったからこそ、人間界に来てみようと思ったんだけどね」
例外的に魔法なんかを使う時は、当然の如く大きく魔力を放出するからあまり使いたくないとシューは言う。
lw´‐ _‐ノv「あの苦虫君は、チャーム時の魔力と普段の魔力の差か何かで私の正体に気付いたようだね」
あの時苦虫さん、もとい、ドクオさんはそうやってシューの強さを判断したのだろう。
ドクオさんと戦う事にならなくて良かったとシューは言う。
戦えば勝とうが負けようが魔力を多大に使う事になったであろうから、長く人間界にいられなくなると。
- 960 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:07:28 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「故に私は、人間界の争い事には極力干渉したくないのだよ」
本来の目的を考えれば、滞在期間を短くするだけの争い事は避けたいのだろう。
このシューの答えは、例の灰衣の魔法使いとの関係性を否定する事に繋がりそうだと思う。
クーの記憶もドクオさんの薬を飲んでも変わらなかったので、きっと無関係だと判断する。
lw´‐ _‐ノv「まあ、それでも目の前で店長がヤバい事に巻き込まれてたら手を出してしまうかもしれないね」
( ^ω^)「ありがとだお。極力自分で何とかするから、安心してお」
(∪^ω^)「わんお!」
ありがたい言葉だが、シューを関わらせると色々とややこしい事になるのは目に見えてるから、それは避けたいと思う。
事情を何も知らない人が、悪魔と聞いて見せるであろう反応は想像が付く。
lw´‐ _‐ノv「で、だいぶ話が逸れたが……」
( ^ω^)「いや、シューが言いたい事は大体わかったお」
気軽に聞くなというのは悪魔に対する一般常識の話で、本来なら対価を要求されたり、
嘘をつかれる危険性を考えろという事であろう。
そしてシューに色々聞く事は、それらの問題は無いとしても、シューを人間界の問題に関わらせてしまう事になる。
- 961 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:08:49 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「手伝いたい気持ちもあるが、私はそもそもこの世界ではイレギュラーな存在だからね」
( ^ω^)「気持ちだけ頂いておくお」
それでも、どうしても力が借りたい時は召喚契約を結ぶ事を考えた方がいいだろう。
そういう状況にならないように立ち回りたいとは思うが。
lw´‐ _‐ノv「召喚も性質の悪いやつを呼んでしまえば、大事になってしまうからね。気を付けないと」
( ^ω^)「自分の力を見誤って、召喚した悪魔に取り殺された召喚士の例は多々あるお」
(∪^ω^)「わんおー」
何にせよ、悪魔は人間にとって危険なものだから気をつけろとシューは話を結ぶ。
その事を悪魔であるシューから言われるのは何だか変な感じだが、
きっとシューはドクオさんと似たような心配をしているのだろう。
自分に慣れ過ぎる事で、僕が悪魔に対する警戒心を無くしてしまう事を恐れているのだと思う。
lw´‐ _‐ノv「さて、それではサンライスの方の開店準備に取り掛かろうかね」
- 962 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:10:54 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「今からかお? 今から開けても閉店まであんまり時間ないお?」
lw´‐ _‐ノv「明日一番で開けられるように準備するだけさ」
随分と張り切っているようだが、あれから少しは農具は売れたのだろうか。
僕はシューとわんわんおと共に店を出て、シューの馬車に向かう。
( ^ω^)「農具、いくつか売れたのかお?」
lw´‐ _‐ノv「……明日も晴れるといいなあ」
(;^ω^)「売れてないのかお……」
(∪^ω^)「わんおー」
シューの馬車の中を覗くと、相変わらず使い道のよくわからない農具が綺麗に整理されて仕舞ってある。
サンライズに置いていた時より種類も増えているようだ。
( ^ω^)「思うに、一般的な農具を魔法で強化しただけとかの方がまだ売れるんじゃないかお?」
lw´‐ _‐ノv「人間、オリジナリティというものを忘れてしまってはいかんと思うのだよ」
( ^ω^)「独創的過ぎるのも、誰もついて来れないと思うお」
- 963 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:12:31 ID:bs5HKQgE0
僕は孫の手のように見えて、それぞれの指が更に枝分かれする謎の農具を手に取る。
どこから見ても使い道がさっぱりわからない。
lw´‐ _‐ノv「それは虫除けというか、虫退治の農具だね」
(;^ω^)「これがかお? どう使うんだお」
シューの説明を極めて短くまとめ直すと、枝分かれしたハエ叩きという事らしい。
多方向をカバーしようとした結果らしいが、重い上に隙間が大きくて使い辛いと思う。
( ^ω^)「こういうのは軽量かつコンパクトな路線の方がいいと思うお」
lw´‐ _‐ノv「むぅ……、一網打尽に出来て良いと思ったのだが」
(∪^ω^)「わんわんお」
色々と考えてはいるようだが、それが実を結ぶのはまだまだかかりそうだ。
借金返済の道は遠そうである。
lw´‐ _‐ノv「ではこの、狭い所をピンポイントで耕せる鍬はどうかね?」
( ^ω^)「小さ過ぎるお。耳掻きかお。何でもコンパクトにすればいいってもんじゃないお」
- 964 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:13:38 ID:bs5HKQgE0
その後もいくつか商品説明を受けたが、どれも売れそうな感じはしない。
何と言うか、着眼点がどこかずれている気がする。
lw´‐ _‐ノv「農業の道は険しいねえ」
( ^ω^)「わざわざ道無き道を突っ走ってる感がひどいお。せめてもう少し人のいそうな道を行けお」
(∪^ω^)「わんお」
lw´‐ _‐ノv「我が前に道無し、我が後にも道無しだよ」
(;^ω^)「後には道を作れお」
( ^ω^)「つーかこの後も用事あんだから、さっさとこっちの店の準備も終わらせるお」
lw´‐ _‐ノv「こっちは私の店だし、準備は私1人でもいいんだがね」
( ^ω^)「もう、ついて来ちゃったし、2人の方が早く終わるお」
そういって僕はシューの店の準備を手伝う。
言葉通り2人ならそれほど時間もかからずに終わった。
- 965 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:15:15 ID:bs5HKQgE0
( ^ω^)「この展示台いいおね。どこで買ったんだお?」
lw´‐ _‐ノv「あら嬉しい。ハンドメイドですよん。稼ぎが少ないんだから、節約節約」
シューの意外な才能に驚いたが、よくよく考えたら農具を自作しているくらいだ。
この位はお手の物なのだろう。
( ^ω^)「何かホント、シューは悪魔の既成概念をぶち壊すおね」
lw´‐ _‐ノv「悪魔だって家に住むんだぜ? 壊すだけじゃなく作る事も当然可能だ」
( ^ω^)「そう言われるとそうだおね。先入観に捕らわれ過ぎるのは良くないって事かお」
僕達は開店準備を終えて馬車を出る。
日はだいぶ傾き、そろそろ夕餉の香りが町中に漂ってくる頃だ。
( ^ω^)「さて、それじゃあ僕はバーボンハウスに行って来るお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
lw´‐ _‐ノv「晩ご飯までには帰って来てね」
- 966 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:17:35 ID:bs5HKQgE0
(;^ω^)「いや、ついでに晩ご飯も食べてくる予定だけど」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、亭主元気で留守ばかりというやつかね」
(;^ω^)「あらゆる点で間違ってるお。というかシューも来るかお? シャキンさんに店の事説明する必要あるし」
lw´‐ _‐ノv「そういう事なら手土産を持参して行こうかね」
そう言ってシューは馬車の中に戻り、何かを手に戻って来た。
( ^ω^)「それは何だお?」
lw´‐ _‐ノv「ああ、さっき神父さんに渡したやつの別のタイプだね。こっちはご飯のおかず用」
シューの手にあった小瓶の中身は、先ほどと同じく魚の塩漬けらしい。
しかし、ご飯のおかずの方はまだわかるが、茶請け用の魚の塩漬けなんてあるのだろうか。
( ^ω^)「ヒッキーさんに渡した方は甘かったりするのかお?」
lw´‐ _‐ノv「いや、塩辛いよ」
- 967 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:19:22 ID:bs5HKQgE0
(;^ω^)「それで茶請けになるのかお?」
lw´‐ _‐ノv「おいおい、漬物が茶請けになるんだから、魚の漬物も茶請けになるんじゃないか?」
(;^ω^)「茶の種類によると思うお。少なくとも、教会で出されるようなお茶には合わない気がするお」
塩辛い魚をコーヒーや紅茶と一緒に食べたくないと思うが、確かに緑茶なら許容範囲かもしれない。
僕はシューから小瓶を受け取り、蓋を開けてみた。
lw´‐ _‐ノv「こっちはかなり濃い味だ」
( ^ω^)「ふーん……って、すごい匂いだお。生ぐせえ」
lw´‐ _‐ノv「だがそれがいい。そうだよな、こめにしき?」
(∪^ω^)「わんお?」
( ^ω^)「あ……」
シューは僕が制止する暇もなく、僕の手から小瓶を取り、わんわんおの鼻先に突きつけた。
- 968 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:21:17 ID:bs5HKQgE0
- クンクンオ
"(∪^ω^)[]
ヘブチッ!?
(∪>ω<)。・,゚
(;^ω^)「あーあ……」
(∪TωT)「わんわんおー」
僕は咽て涙目になるわんわんおの背中をさする。
人の何倍もの嗅覚を持つ犬には相当厳しい匂いだっただろう。
lw´‐ _‐ノv「こめにしきにはお気に召さなかったか」
(;^ω^)「当たり前だお」
つ∪TωT)「わんおー」
シューは申し訳なさそうに僕からわんわんおを受け取り、頭を撫でた。
lw´‐ _‐ノv「ふむふむ……ほうほう……ほほう……」
つ∪´ω`)「……わんお……わんわんお……わんおー」
(;^ω^)「って、シュー、わんおの言葉がわかるのかお?」
- 969 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:22:44 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「いや、全然」
(;^ω^)つそ「わからんのかーい」
:いかにもわかったようなタイミングで合の手を入れているので、
てっきりわんわんおの言葉がわかるのかと思ったら違った様だ。
わかられたらわかられたで問題が出そうなので、わからなくて良かったと思うべきか。
lw´‐ _‐ノv「ただ……」
( ^ω^)「ただ、何だお?」
lw´‐ _‐ノv「この子がご主人様の事を大切に思っている事はわかったよ」
つ∪^ω^)「わんお!」
( ^ω^)「お……」
lw´‐ _‐ノv「だからこれはお守りだ」
つ''∪^ω^)「わんお?」
シューの言葉と共に、薄く白い光がわんわんおを包む。
何をしたのかとシューに聞くと、ちょっとした守護の魔法をかけたとの返事だった。
- 970 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:24:49 ID:bs5HKQgE0
lw´‐ _‐ノv「まあ、いつか役立つ日も来るだろう。その時はこめにしきの気持ち次第だがね」
(∪^ω^)「わんわんお!」
( ^ω^)「つーか、こめにしきじゃなくてわんわんおだお。いい加減覚えてくれお」
lw´‐ _‐ノv「ふむ、では間を取って『わんにしき』、もしくは『おこめわん』と呼ぼうか」
( ^ω^)「却下だお。わんわんおはわんわんおだお」
(∪^ω^)「わんわんお!」
僕達はそんな言い合いを続けながらバーボンハウスに向かって歩く。
明日からはまた旅路の空の下だ。
今日はゆっくりと自分の部屋の布団を堪能しようと思う。
lw´‐ _‐ノv「では、大負けに負けて『きしめん』というのはどうだろうか?」
(;^ω^)「もう、原形止めてねえじゃねえかお……」
(∪^ω^)「わんわんおー」
第二十七話 神の衣、魔王の衣 終
- 971 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:26:05 ID:UMOjp0660
- 最速の乙
- 972 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:26:09 ID:1ZT5Q7nQO
- この作品のドクオ見てると
顔が悪かったらどんなに能力あっても駄目なんだなぁと鬱になる
- 973 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:28:21 ID:sx0ne.gg0
- 乙
- 974 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:29:05 ID:bs5HKQgE0
二十七話は以上です
導入回という感じです
次話は一応書き上がってるので、そう遠くないうちには
まだ次話のタイトルが決まってなかったりしてますが
支援とか感謝です
次話が40レスないぐらいですが、このスレ内に収まらなさそうなので投下する時は次スレ立てます。
- 975 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:37:29 ID:bhq53RZA0
- 乙!
- 976 名前:名も無きAAのようです:2012/04/28(土) 23:46:56 ID:LS9HBclUO
- 乙
次スレも期待
- 977 名前:名も無きAAのようです:2012/04/29(日) 09:03:55 ID:wydvAlmAO
- >>972
高い能力すら相殺してなお有り余るほどの顔面崩壊具合なんだろ、おまえは大丈夫さ
- 978 名前:名も無きAAのようです:2012/04/29(日) 12:43:13 ID:CmE2BtUw0
- ここまでdisられてるともはや伏線なんじゃないかとすら思うわwww
- 979 名前:名も無きAAのようです:2012/04/29(日) 12:46:40 ID:nul3eBpcO
- ('A`)が顔で弄られるのはブーン系の鉄板ネタでもあるしな
その顔のお陰でチャームがきかないってネタも消化された
- 980 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 08:12:13 ID:yKR175wMO
- ただこの作品のドクオへの顔ネタはやりすぎで正直不愉快
- 981 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 08:41:04 ID:tAxKETOI0
- 嫌なら見るな(AAry
- 982 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 09:23:50 ID:52hOGzIwO
- 顔面グロってほどの顔じゃないのかもな
本当は女受けしない程度の残念フェイスだけど、
チャームが効かない特殊な造形ゆえに魔力みたいなのが発生していて、
その魔力に嫌悪感を覚えてしまう、みたいな
ドクオは顔より嗜好が残念www
- 983 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 09:27:25 ID:bGelNO820
- ブーンにもボロクソ言われてるけどな
- 984 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 11:40:59 ID:GABiR166O
- ブーンは慕っている描写も多いから、かまって欲しさの裏返しみたいなものに見える
- 985 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 11:44:58 ID:FJtz0RJI0
- まぁ俺も不愉快派だけど…
他は楽しいから読む!!
- 986 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 12:50:19 ID:uiw9esQsC
- なんだよ不愉快派って……w
自分の考えを人に強要させるなよ
- 987 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 14:31:50 ID:u6driK4g0
- >>986
別に強要してないだろ
力抜けよ
- 988 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 16:50:59 ID:jfiumiVIO
- 自分のこと言われてるようで嫌なんだろ言わせんな恥ずかしい
- 989 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 20:52:58 ID:n1yvNhQc0
- 力抜けよとか言わせんなとか
…若いな
- 990 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 21:48:53 ID:bGelNO820
- …若いな
- 991 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 21:56:03 ID:O6rWX.I.0
- 若返りたいです
- 992 名前:名も無きAAのようです:2012/04/30(月) 22:57:32 ID:p9Ex3C560
- lw´‐ _‐ノv>|越えられない壁|>( ∵)=(`・ω・´)>(‘_L’)>俺>('A`)
…はぁ
- 993 名前: ◆5rua49HN2.:2012/05/01(火) 00:07:12 ID:hkL8rdJw0
- そんなことより( ^ω^)のおじいちゃんのAAどれがいいと思う?
というスレ埋めついでに質問
@ ミ `ω´)
A ィリァ`ω´)ァ
B ミ `ω´ ミ
C バ`ー ン
D ( ・□・)
3〜5日のどれかに次話投下すると思います
- 994 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:13:52 ID:BnTRHa6U0
- 4かな
- 995 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:18:42 ID:XdEKQ77Y0
- 1
- 996 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:20:13 ID:M.7R0/uQ0
- 2か3
- 997 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:21:13 ID:sXUz2bwsO
- 1
- 998 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:47:29 ID:gBKpbo22O
- 1か5
- 999 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:49:17 ID:FogDP0Ls0
- 2かな(^、^ビョーン
- 1000 名前:名も無きAAのようです:2012/05/01(火) 00:54:02 ID:oUOqNBM.0
- 5
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