◆5rua49HN2. <><>2011/12/24(土) 22:31:42.47 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「……完成だお」

白光りする棒状のそれを掲げ、出来を検分する。
元はくすんだ色ではあったがいくつかの材料を混ぜ合わせる事でその輝きを得た。

( ^ω^)「色艶良し、固さも固過ぎず、さりとて柔らかすぎず抜群の出来具合だお」

一見硬質な様にも見えるが、僅かに弾力性に富み、肌にやさしい。
大よそ僕の理想通りの出来に仕上がったといえる。

( ^ω^)§「名付けて、薬草骨っ好(ほねっこう)だお!」

ξ゚听)ξ「……」

(∪*^ω^)「わんわんお!」



     第五話 湖畔に秘する賢者の庵


 まとめて頂きました。感謝です。
 ブーン文丸新聞さん
 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/magic_item/magic_item.htm
<>( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:32:47.68 ID:L6koSrIl0<> きたきた <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:33:12.59 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「……今日はツッコミなしかお?」

ξ゚听)ξ∩「何? 突っ込んで欲しいわけ?」

(;^ω^)「そ、そういうわけじゃないお」

僕は呆れた表情で拳を固めるツンに、慌てて激しく首を振って否定の意を返す。
まあ、今回は商品を作ってたわけではないし、突っ込まれる筋合いはないのだが。

(∪*^ω^)「わんわんお! わんわんお!」

( ^ω^)つ§「おっと、そうだったお。ほれ、あげるお」

匂いが気になるのか、先ほどから僕の手の中にあった骨っ好に興味深々だった子犬、もとい、わんわんおに骨っ好を渡す。
わんわんおは嬉しそうにそれにかぶりついた。

(∪*^ω^)§「わんわんお!」

(*^ω^)「おお、美味そうに食べてるおね」

僕の自信作、薬草入り犬用骨形食料、骨っ好を一心に食べるわんわんおを見て悦に浸る。
やはり自分が作ったものを気に入ってもらえると嬉しいものである。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:34:25.97 ID:/e6QOQH10<> 黒光りする棒状のそれを掲げ支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:34:58.19 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「さてと、それじゃあ何から突っ込んで行きましょうかね……」

(:^ω^)「特に突っ込まれる事もない、ごく当たり前の朝の風景だお」

ここはヴィップの町にある魔法道具屋サンライズ。
例によって例の如く、いつも通りの朝の風景だ。

いや、いつも通りというわけではない。
一昨日から、この店には同居人が増えたのだから。

ξ゚听)ξ「結局この子、わんわんおって名前にしたの?」
つ∪^ω^)§

ツンがわんわんお、僕の新しい同居人を抱えて尋ねて来る。
ツンに抱えられながらも器用に骨っ好を食べ続けるわんわんおは、どこからどう見てもただの犬ではあるが、
実際はちょっと違っている。

( ^ω^)「特徴的な鳴き方するし、流石に天空竜って呼ぶのはまずいお?」

犬というのは仮の姿、わんわんおは竜の中でも最強の部類の天空竜なのである。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:36:20.80 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「そりゃそうでしょうけど……もう少しマシな名前なかったの?」

( ^ω^)「僕のセンスにケチを付けるのかお?」

ξ゚听)ξ「まあ、今更付けようもないほどあんたのセンスは壊滅的でしょうけど」

( ^ω^)「そんな事ねーお。僕ほどハイセンスな若人はなかなかいねえお」

(∪;^ω^)§ ゲフォッ ヒャンヒャンオ!

ξ゚听)ξ「ほら、この子もセンスないって言ってるじゃない?」

(;^ω^)「たまたま咳き込んだだけだお、たまたま。つーか慌てて食べ過ぎだお」

僕はツンの手からわんわんおを奪い、床に降ろす。
骨っ好をいったん取り上げ、目の前に水の入った器を置いた。

(∪^ω^) ゴクゴクオ

( ^ω^)「お水も慌てて飲むと咽るから気を付けるお?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:38:24.22 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「しっかし、この子って全く天空竜の面影ないわよね」

一心不乱に水を飲むわんわんおを見ながらツンが呟く。
僕もそう思うが、それは仕方のない話だ。

わんわんおは元天空竜ではあるが、今は転生したてで知性は赤ん坊のようなものなのだ。
姿は魔法で決めたので子犬になっているが、その中身は推して知るべきである。

ξ゚听)ξ「ふーん。それで、この子はいつ力を取り戻すの?」

( ^ω^)「それは全くわからんお」

ξ゚听)ξ「犬の成長って早いじゃない? 1年か2年で何とかなるくらい?」

( ^ω^)「さあ? ひょっとしたら10年、いや、100年とか……」

ξ:゚听)ξ「そんなに?」

( ^ω^)「まあ、何年だろうがちゃんと守ってみせるお」

ξ:゚听)ξ「いや、100年先ならあんたは多分死んでるでしょ?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:40:26.58 ID:u4Xu/11u0<> 来たね
支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:40:28.03 ID:ji5n2T8Q0<>
流石にそこまで子犬の姿のままであれば色々と不自然な点とか不都合が生じるだろうが、
守る事に関しては何とかなるだろうとも思う。
僕がじいちゃんから天空竜の事を託されたように、今度は僕が子孫に託せばいいだけの話だ。

託された云々は、実際は僕の勝手な思い込みの様なものだけど。

ξ゚听)ξ「というかさ、もう少し色々と天空竜から詳しく話を聞いておくべきだったんじゃないの?」

(;^ω^)「それはねー。僕もそう思ってちょっと後悔してるとこだお」

あの時は僕がやらねばという使命感と、時間がないと思しき天空竜を慮って勢いで転生魔法を引き受けたけど、
もう少し今後の事や現在の状況を含め色んな事を聞いておくべきだったと今にして思う。
時間がないといっても、一刻を争う事態でもなかったはずだ。

(;^ω^)「何か妙にテンション上がっちゃったからなー」

ξ;゚听)ξ「私も雰囲気に呑まれた気がするわ」

とはいえ、目の前に伝説的な存在ともいえる天空竜が突然現れたのだから、
僕らが浮き足立ってしまったとしてもそれは仕方のない話だ。

そんな中でちゃんと結果を残せた僕を褒めてあげたいぐらいである。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:41:28.70 ID:X3OnDCuiO<> さあ、支援しようか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:42:27.63 ID:ji5n2T8Q0<>      グルグル
(((^ω^∪三∪^ω^)))「わんわんお! わんわんお!」

( ^ω^)「お? ああ、骨っ好かお」

水を飲み終え、僕の周りをぐるぐる回るわんわんおに骨っ好を再度手渡す。
またも嬉しそうにかぶりつくわんわんおだが、また咽られる可能性を考えると、
もう少し小さめに改良すべきかもしれない。

ξ゚听)ξ「そもそも何なのよ、骨っ好って」

( ^ω^)「薬草入り犬用骨形食料だお」

基本は犬が好む肉や骨をベースに、栄養バランスを考えて野菜を練りこんだ物を焼き上げて固くしたものである。
犬が好きそうな骨の形に整え、疲労回復用に薬草も配合したこだわりの一品だ。

ξ;゚听)ξ「相変わらず妙な部分にこだわるわよね」

( ^ω^)「自信作だお!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:43:31.23 ID:KpBRdwyrI<> わんわんお! <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:44:15.44 ID:ji5n2T8Q0<>
天空竜が何を食べるのか、そもそも竜基準なのか犬基準なのかとかその辺も天空竜に聞いておくべき点だったが、
取り敢えずわんわんおは犬基準で大丈夫そうだ。
犬基準なら多分、人間のご飯と同じでも大丈夫であろう。

( ^ω^)「とはいえ、作る暇がない時もあるかもしれないから、保存のきく食料を作ってみたんだお」

ξ゚听)ξつ§「それがこの骨っ好ってわけね」

ツンはテーブルに並べておいた予備の骨っ好を手に取り、それをしげしげと眺める。
それに気付いたのかわんわんおが、ツンの周りをぐるぐる回りだした。

      グルグル
((§(^ω^∪三∪^ω^)§))「わふわふお! わふわふお!」

ξ;゚听)ξ「いや、あんたまだ口の中にそれ入ってるでしょ?」

(;^ω^)「コラ、それ食べてしまってからにするお?」

骨っ好を口にくわえた所為で変な鳴き方をしているわんわんおから見えない位置に骨っ好を隠すと、
わんわんおは少し悲しそうな顔をしながらも最初の骨っ好を食べ続ける。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:46:15.65 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ;゚听)ξ「何だか天空竜とのギャップがあり過ぎて、ちょっと面食らうわね」

( ^ω^)「まあ、仕方ないお。その内もっと賢くなるお」

僕は椅子に腰掛け、自分の分の朝ご飯に手を伸ばす。
転生を終えたその日とその翌日、僕もわんわんおも疲れ果てて丸1日ちょっと寝込んでしまったので、
僕自身もかなりお腹は空いていた。

ξ゚听)ξ「体調はもういいの?」

    モグモグ
( ^ω^)○「へひびばほ」

ξ;--)ξ「食べながら話さないの、つーかあんた、わんおと同じレベルよね」

わんわんおだと長いからとわんおと呼ぶと言うツン。
呼びやすいしそれでも構わないが、僕を子犬と同等に扱わないで欲しいものだ。

ξ゚听)ξ「いや、少なくとも食べ方に関しては同じレベルよ」

    モグモグ
( ^ω^)○「ぼほばばほ? ぼふのぼふばぶうばな……」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:47:48.32 ID:HGUC3px90<> 性なる夜にVIPPERからプレゼントだおwwwwwwwwwwww

       /⌒ヽ
⊂二二二( ^ω^)二⊃
      |    /      ブーン
      ( ヽノ
      ノ>ノ
  三  レレ

http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1324731802/ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:48:32.96 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ#゚听)ξ∩「この拳を腹に刻まれたくなかったら口の中に物がある時は喋るな」

(;^ω^)「ば……ゴクン、はい」

食事も終わり、一息吐いた所で僕は今後の予定についてツンに相談する事にした。
わんわんおは物珍しそうに店の中を徘徊しているが、危ないものは特にないので放っておいても平気だろう。

( ^ω^)「取り敢えず、基本的にわんわんおの事は皆には秘密だお」

ξ゚听)ξ「まあ、それがいいでしょうね」

元々、隠す為に擬態したのにそれを方々に言いふらしては意味がない。
しかしながらこれから先の事を考えると、一部には話しておく必要もある。

( ^ω^)「まずはドクオさんに相談するのが無難かおね」

ξ゚听)ξ「それが最適……のはずなんだけど、いまいち頼りないのよね」

何かの時の為に、実力もあり、じいちゃんとは浅からぬ関係にあったドクオさんには打ち明けるべきだろうと僕は思う。
僕1人で何とか出来るつもりで引き受けたが、事が事だけに万全を期したい。
それに、打ち明けなくてもドクオさんが僕の店に来た時にわんわんおを見て何か気付く可能性もある。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:50:33.40 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「見て気付かれたら封印失敗してるみたいで、それはそれでまずいんだけどね」

ξ゚听)ξ「あの顔のくせに勘はいいから、あんたの態度で何か勘ぐる可能性はあるわね」

顔は関係ないが、確かに僕の態度やわんわんおが来たタイミングで何かしらドクオさんが勘付くかもしれない。
それならば先に打ち明けておくべきだし、今後の事について僕が現在気付いてない事や危険性など、
色々と指摘して欲しいとも思う。

ただ、ドクオさんに相談する事は若干不安な点もある。
ドクオさんに、というより高位の魔法使いにという事なのだが。

僕はその点はひとまず自分の中だけに収め、ツンとの会話を続ける。

ξ゚听)ξ「消去法でも、取り敢えずドオクオに相談するしかないわね」

その後、誰に打ち明けておくべきかもドクオさんと相談して決めてもいいかもしれない。
僕自身は現状、シャキンさん、つまりはギルドに報告すべきかは迷っているし。

ξ゚听)ξ「ギルド側で保護するとか言われそうよね」

( ^ω^)「あまり情報が広がるのも避けたいお」
つ∪^ω^) クーンオ
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:51:08.37 ID:X3OnDCuiO<> ほうほう <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:51:49.11 ID:GqaHijjy0<> わんわんおの可愛さは異常 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:52:12.48 ID:ji5n2T8Q0<>
僕はこちらに近寄ってきたわんわんおを抱き上げ、頭を撫でる。
気持ち良さそうな顔をするわんわんおに、僕も思わず目を細めた。

ξ゚听)ξ「もうだいぶ情が移ってるみたいね」

(*^ω^)「そりゃこんなにかわいいし」
つ∪*-ω-)

ξ゚听)ξ「……まあ、愛嬌はあるわよね」

どうもツンはわんわんおの顔に若干の不満を抱いている節がある。
このイケメンかつ愛らしい顔のどこに不満があるというのであろうか。
ひょっとしたら、犬らしからぬカッコ良さが過ぎたのが問題なのかもしれない。
  _,
ξ゚听)ξ「……」

(;^ω^)「何で無言で眉をひそめるんだお?」

とにかく、今日はこれからドクオさんの所に出向こうと思う。
ここの所お店を休み過ぎな気がするが、今回は仕方がないだろう。

(;^ω^)「しかし、タイトルの割に全然店にいないし物売ってないしでひどい話だお」

ξ゚听)ξ「異次元発言やめろ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:54:31.39 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「じゃあ、これからちょっとドクオさんのとこ行って来るお」

ξ゚听)ξ「私も行くわ」

( ^ω^)「道場や畑はいいのかお?」

ξ゚听)ξ「今回は行かないわけにもいかないでしょ? 私も一応あの場にいた当事者だし」

今回のツンの申し出は僕としても反対する理由はない。
危険な場所に向かうわけでもないし、今後の事に付いての話し合いにはツンもいてくれた方が都合がいい。

僕は外出着に着替え、採集袋にドクオさんのからの注文の薬草を詰め、背負う。
ツンも一旦準備に戻るらしく、町の南口で待ち合わせする事にした。

( ^ω^)「お前も行くんだお」

(∪^ω^)「わんわんお?」

僕はドアを指差し、店を出ようとする。
わんわんおは僕の後ろをとことこと付いて来た。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:56:05.00 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「そうだお、お外に行くんだお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕が開けたドアからわんわんおは外に飛び出す。
ひょっとしたら、今の状態でも僕の言葉自体は理解出来ていたりするのだろうか?
単に反応しているだけの様にも見えるが。

( ^ω^)「理解してたとしても、行動はちょっとお馬鹿なとこあるおね……」

Σ(∪>ω<)「お?」

僕は飛び出した瞬間、店と地面との段差を見誤り転ぶわんわんおを見て呟く。
先が思いやられそうだが、ほんのちょっぴり嬉しく感じている自分もいた。

( ^ω^)「大丈夫かお?」

(∪*^ω^)「わんわんお!」

わんわんおは元気よく立ち上がり、しゃがみ込んだ僕に抱き付いて来た。
僕はその頭をやさしく撫で、立ち上がる。

( ^ω^)「それじゃ、出発進行だお!」

(∪^ω^)「わんわんお!」

僕は新たに増えた同居人、家族と共に慣れ親しんだヴィップの町を歩いて行った。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:58:34.63 ID:ji5n2T8Q0<>
 〜 モオト湖周辺 〜


ヴィップの町から南に向かって歩くこと約3時間、僕達はドクオさんが住むモオト湖周辺に辿り着いた。

ξ゚听)ξ「ようやくここまで来たわね。あのブサ、もう少し町の近くに住めばいいのに」

( ^ω^)「森の中の隠れ家的な家に憧れてたって話は聞いた事はあるお」
つ∪´ω`)

魔法使いが世間との交流を断ち、隠遁生活を送るのはそう珍しい事ではない。
理由も大体似た様なパターンがほとんどだ。

ξ゚听)ξ「コミュ障だからよね」

(;^ω^)「違……わなくもないけど、研究に専念したいからとかそんな感じだお」
つ∪´ω`)

ツンが言った様な理由とは若干ニュアンスは違うのだが、人に会いたくないからという理由もないわけではない。
特に強力な魔法使いは、国やギルド、それに冒険者といわゆるスカウトされる事もある。
そういった目的で尋ねてくる人が多くて煩わしいから隠遁する人もいるらしい。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 22:59:48.35 ID:X3OnDCuiO<> なんというドクオらしい湖 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:00:19.87 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「ドクオは誘われないでしょ」

(;^ω^)「一応賢者だお。……でもまあ、確かにスカウト来ないみたいだけど」
つ∪´ω`)

ドクオさんは控えめに言ってとっつき難い人だから宮仕えは勿論の事、冒険者にも誘われる事はない様だ。
来るのは専ら単独でのクエスト依頼とかである。

ξ゚听)ξ「えっと、ここら辺から曲がるんだっけ?」

( ^ω^)「もう少し先だお」
つ∪^ω^)

ドクオさんの庵は、モオト湖の西のほとりに接する森の中にある。
この辺りは釣り場にも適さず、何もない所なので人はほとんど寄り付かない。
更にドクオさんの庵は魔法によって隠されてたりする。

ξ゚听)ξ「あ、起きたみたいよ?」

( ^ω^)「お?」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:02:06.28 ID:ji5n2T8Q0<>
僕に抱きかかえられてたわんわんおがいつの間にか眼を覚ましていた。
僕は自分からあまり離れない様に言い付け、わんわんおを地面に下ろす。

ξ゚听)ξ「しかし、犬のくせにだらしないわね」

( ^ω^)「まだ子犬だし、3時間の歩きはちょっと厳しかったかもしれんお」

わんわんおも途中までは歩いて、というか走り回って付いて来ていたのだが、疲れたのか歩けなくなってしまった。
仕方なく僕が抱えてここまで来る事になったのだが、確かに犬としては少し情けないかなと思う部分もある。

( ^ω^)「それに、初めての散歩ではしゃぎ過ぎたんだと思うお」

ξ゚ー゚)ξ「まあ、しょうがないわね」

わんわんおは先ほどまでへばってたのが嘘の様に僕らの周りを走り回る。
またすぐバテそうだが、その嬉しそうな顔を見てると僕もツンも微笑まざるを得なかった。

( ^ω^)「さあ、行くお」

ξ゚ー゚)ξ「ええ」

(∪*^ω^)「わんわんお!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:04:22.07 ID:ji5n2T8Q0<>
それからまた10数分歩き、ドクオさんの庵のある場所まで辿り着く。
僕は庵を隠している魔法の結界の一部を解除し、庵に向かう。
ここへの入り方は何かあった時の為に、以前ドクオさんから教わっていた。

ξ゚听)ξ「こういうの見ると、あれもちゃんとした魔法使いなんだなと思うわ」

( ^ω^)「この手の魔法結界は、多分ドクオさんがニューソク大陸一の使い手かもしれないお」

ドクオさんの得意分野である魔法結界は術式に加え、地面に文字や線、
木や柱等を配置する事で魔法の領域を作り出す物だ。
発動に手間は掛かるが、その分持続性が高い。

ドクオさんの庵の周辺に掛けられている魔法結界は、内側にあるものを隠すだけでなく、
近付く者をそれと気付かれず誘導し、庵の方へ向かうのを逸らす効果もあるという高度なものである。

ξ゚听)ξ「引き篭もりには最適な家ね」

(;^ω^)「そういう言い方は止めてあげてお」

ドクオさんは僕が結界を解除した事で、僕達が来た事には気付いているだろう。
いない可能性もあるが、ドクオさんが外出する事は滅多になく、外出したとしても僕の店が大半だろうから、
無駄足を踏む可能性は低い。

僕達3人はドアをノックし、返事を待たずに鍵の掛かっていないドアを開け室内に上がり込む。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:06:17.51 ID:ji5n2T8Q0<>
('A`)「おう、よく来たな。まあ、上がれよ」
つ▽
.  _,
( ^ω^)
  _,
ξ゚听)ξ

(∪^ω^)

室内に入った僕らの目に真っ先に飛び込んできたのは、何故か仁王立ちのドクオさんだった。
バスローブを羽織り、その手にはワイングラスを持った姿で。

('A`)「どうした? ん? ああ、この格好か? 丁度風呂に入っててな、ラフな格好で失礼し──」

ξ#゚听)ξ「セイッ!」

                 ;・。(゚A゚;) ヘブンッ!?
           ξ#゚听)ξ三⊃#) )つ


ドクオさんが全てを言い終えるよりも早く、電光石火の踏み込みからのツン拳がドクオさんの腹部に突き刺さる。
僕は崩れ落ちるドクオさんを余所に、その衝撃で飛ばされたワイングラスを回収にしに走った。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:06:40.33 ID:n+RrGqoR0<> ドクオwwwwww <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:08:27.78 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)つ▽「セーフ!」

(∪^ω^)「わんお!」

;;(;゚A゚);;「おま……いきなり……何を……」

ξ#゚听)ξ「それはこっちのセリフよ。何いきなり気持ち悪いもの見せ付けてんのよ!」

一応、ドクオさんの名誉の為に補足しておくと、バスローブから何かがこぼれていたという事はない。
ツンが言いたいのは、ドクオさんの格好とか雰囲気とかそういったものであろう。
確かに僕はあれは無いと思うが、逆に有りだと思う格好も思い付かないのでどうでもいいかもしれない。

;;(;゚A゚);;「だからって……腹殴んじゃ……ねえよ……」

ξ#゚听)ξ「顔面はキモくて殴りたくないのよ!」

;;(;゚A゚);;「おま……ひど……」

( ^ω^)「ツン、そろそろ落ち着くお。ドクオさん、その格好気持ち悪いんで早く着替えて来てくださいお」

(;'A`)「お前はお前で一切容赦ないよな……」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:10:13.98 ID:X3OnDCuiO<> 安定のドクオさん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:10:16.88 ID:ji5n2T8Q0<>
ようやく立ち直ったドクオさんは、肩を落として奥の部屋に歩いて行った。
勝手知ったるもので、僕らは応接間兼リビングのソファーに座る。

ξ゚听)ξ「全く……何であんなキモい格好で出迎えてんのよ……」

( ^ω^)「多分これの影響だお」

そう言って僕はテーブルの上にあった1冊の薄い本をツンに手渡す。
開かれた跡が強く付けられているページを指差して。

ξ゚听)ξ「何々……モテる男のおモテ成し術大特集? 何これ?」

ツンは眉をひそめ、本を裏返す。
本のタイトルは月刊モテモテ通信と書かれている。

ξ;゚听)ξ「いや、ホントに何なのよこの本?」

( ^ω^)「見たまんまだお」

月間モテモテ通信は毎月、王都ソクホウの町で発行されているが、一般的な認知度はあまりない。
その筋の人間には有名な本であるらしいのだが、僕にはよくわからない。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:11:22.52 ID:n+RrGqoR0<> もはや哀れ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:12:29.39 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ;゚听)ξ「その筋ってどんな筋よ」

( ^ω^)「モテない人のバイブルらしいお」

モテない人が書いたモテない人の為のモテる為の本であるらしいのだが、結果は見ての通りのモテない本だ。
そのおモテ成し大特集とやらを見ると、アットホームな雰囲気とエレガンスな大人の優雅さを醸し出すスタイルとあった。
それが先のバスローブにワイングラスという格好らしいが、全体的に駄目だろうという感想しか思い浮かばない。

モテ成しは持て成しと掛けてるのだろうが、実行すればモテ無しに繋がる部分はポイント高いかもしれない。

ξ゚听)ξ「所詮、モテないやつが書いた戯言って事ね」

( ^ω^)「身も蓋もないけど概ねその通りだお」

別にドクオさんは僕らにモテたかったわけではないのだろう。
単に人当りを良くしたかったとか、僕らで試してみたとかそんなとこだと思う。

ξ゚听)ξ「というか、何であんたはそんなに詳しいのよ」

( ^ω^)「前に何回かこの本の素晴らしさを説かれた事があるからだお」

正直、大半を聞き流していたのだが、何度も話される内に残念ながら概要は把握してしまっていた。
知識を求めるのが魔法使いの常とはいえ、これほど無駄な知識もそうそうないと思う。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:14:17.71 ID:ji5n2T8Q0<>
(;'A`)「あーいてて……。これ、絶対痣になってるわ。少しは手加減しろよ、ツン」

ξ゚听)ξ「してるわよ。本気なら折れてるし」

(;'A`)「さらっと怖い事言うなよ……」

ようやくドクオさんが普段のローブ姿に着替えて戻ってくる。
古ぼけた黒いローブ姿のドクオさんはその顔と相俟ってより一層貧相に見える。
バスローブとか用意してる暇があったら、もっと普段着をちゃんとすればいいと思うのだが。

(;'A`)「お前、また何か失礼な事考えてないか?」

( ^ω^)「普段通りですお」

(;'A`)「それがどういう意味か聞くのが怖いわ……」

人生に疲れ果てた顔をしながら、ドクオさんは僕らの向かいのソファーに腰を下ろす。
居住スペースは狭く、汚い部屋だが一応僕らが座れるぐらいの場所は空けてある。
反面、研究室はかなり広く、意外と綺麗だったりもするのだが。

('A`)「で、何の用だ?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:16:15.46 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「……僕らが来た理由、わかってますおね?」

一昨日の件です、とだけ僕は言う。

一昨日、天空竜に転生の魔法を使った時、短時間とはいえ天空竜は気配を顕にし、全速力で空を舞った。
恐らくドクオさんなら異変、天空竜の気配に気付いていたはずだ。

('A`)「一昨日か……一昨日は野暮用でちょっと遠出してたんだが、何かあったのか?」

(;^ω^)「お……ひょっとして、気付いてなかったんですかお?」

この様子だと、本当に気付いてなかった様である。
あの時、ひょっとしたら助けに来てくれるかもと期待した僕が馬鹿みたいだ。

同時に、どうやらわんわんおにかかってる魔法はちゃんと効果をなしてる様で安心もした。

( ^ω^)「じゃあ、ちょっと長くなりますけどお話しますお」

僕は一昨日の出来事、天空竜との邂逅から頼みごとの話、そしてその顛末を余す事無く伝える。
ドクオさんは終始無言で、表情1つ変えずにそれを聞いていた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:18:12.59 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「……という事があったんですお」

('A`)「ふむ……なるほどな……」

ドクオさんは大きく頷くと、何かを考えている様だった。
僕は何も言わず、ドクオさんの言葉を待つ。

('A`)「で、それが元天空竜なのか」

そう言ってドクオさんは僕とツンの間に大人しく座っていたわんわんおを指差す。
来る途中、あれほどはしゃいでいたわんわんおがここでは妙に大人しいのが気になるが、
その方が話はしやすいので幸いである。

( ^ω^)「そうですお」
つ∪^ω^)

僕はわんわんおを抱え上げ、ドクオさんの方に差し出す。
ドクオさんはわんわんおにゆっくりと手を伸ばした。

              ガブリ
           (∪^皿^)⊂('A`)
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:19:07.55 ID:X3OnDCuiO<> しえーん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:19:43.79 ID:GqaHijjy0<> ドクオのモテなさが呪いレベルだなwww <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:20:06.57 ID:ji5n2T8Q0<>
(゚A゚)「GYAAAAAAAAAASU!!!」

(;^ω^)「ちょ、わんお! 駄目だお! ばっちいからペッてするお!」

(∪^ω^)、 ペッ

(;゚A゚)「ちょ……おま……」

言い付け通りすぐにドクオさんの手を吐き出すわんわんお。
聞き分けが良くて助かるが、わんわんおがいきなり噛み付くとは思いもしなかった。
お世辞にも大人しいとは言い難い犬ではあるが、僕やツンに噛み付く素振りは一切見せる事はなかったというのに。

ξ゚听)ξ「まあ、相手がドクオだし」

( ^ω^)「それもそうだおね」

(;'A`)「お前ら俺の扱いが日増しにひどくなって行くよな……」

噛まれた腕を押さえ、恨めしげに呟くドクオさんだが、子犬に甘噛みされたぐらいで大袈裟なものである。

(;'A`)「いや、明らかに本気噛みだったぞ?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:21:40.06 ID:n+RrGqoR0<> ばっちいからワロタ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:22:12.72 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「それはいいとして、今後どうするべきだと思う?」

(;'A`)「よくねえよ。……まあ、お前らの好きにしていいと思うぜ?」

引き受けたのはお前らだろうからと投げやり気味に言うドクオさん。
噛まれた意趣返しとかではなく、僕達に一任しても問題ないだろうからと。

('A`)「無論、有事の際には俺も出張るし、情報操作はしとくがな」

( ^ω^)「いいんですかお?」

('A`)「何がだ?」

( ^ω^)「天空竜を転生させた事、僕の側に置く事、その他色々含めて全部ですお」

('A`)「いいんじゃねえの? もうやってしまった事は今更言ってもしょうがないし、お前はそいつを守りたいんだろ?」

( ^ω^)「はいですお」

('A`)「ならいいじゃねえか」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:22:19.56 ID:IE1zfgMp0<> きてたー <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:24:24.80 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「ちょっと待ちなさいよ。何でそんないい加減なのよ?」

やけにすんなりと、見様によっては適当にも見えるぐらい全て了承してしまうドクオさんの反応にツンが待ったをかける。
確かに僕もドクオさんの態度が少し気になったが、自分は全く関わらないとは言ってないので納得しかけていた。

('A`)「おいおい、別にいい加減ってわけじゃねえぞ? 俺は純粋にそれでいいと思ってるだけだ」

見た所、天空竜の力の封印に問題はないようだし、それならばただの犬として飼う分には問題ないとドクオさんは言う。

ξ゚听)ξ「そうじゃなくて、天空竜がこういう事になって、今後の世界情勢とか竜の動きとか──」

('A`)「そういうのはお前らが気にする話じゃない」

ドクオさんは珍しく強めの口調で言い放った。
普段のどこかやる気の感じられない態度とはどことなく違った印象も受ける。

( ^ω^)「そう言われても、やっぱり気になりますお」

('A`)「まあ、そうだろうな。だがそういうのは大人に任せておけばいい。お前らはお前らの生き方を変える必要はないさ」

ξ゚听)ξ「……」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:26:06.79 ID:ji5n2T8Q0<>
どこか遠くを見る目で言うドクオさんの言葉に、僕もツンも何も答える事が出来なかった。
この件に関してドクオさんがいい加減に応対しているわけでなく、年長者の責務として僕らの事を守ろうとしている事を、
僕は十分に感じ取る事が出来た。

その意を汲んだ僕は、ドクオさんの言葉に答える代わりに一言礼を述べる。

( ^ω^)「ありがとうございますお」

('A`)「礼を言われるような事じゃねえよ。それより無茶させちまって悪かったな」

ドクオさんが僕に向かって軽く頭を下げる。
本来ならじいちゃんの弟子であった自分が何とかすべき事だったとドクオさんは謝罪するが、
僕は自分がした事に後悔はないので気にしないで欲しいものだ。

( ^ω^)「それに多分、じいちゃんは僕にそうさせる為、疾走魔法を教えたんだと思いますお」

('A`)「それは……そうかもしれないな」

ドクオさんの表情が一瞬揺らいだような気もしたが、僕にはその意味はわからなかった。
仮にじいちゃんが僕に天空竜の事を託したとしても、僕の師匠として僕に無理をさせた事を後悔しているのかもしれない。

そのくらいドクオさんはやさしい人だと思う。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:27:53.38 ID:n+RrGqoR0<> いい大人ではあるのな <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:28:20.85 ID:ji5n2T8Q0<>
('A`)「何にせよ、よくやったな」

(*^ω^)「お……」

昔、僕がドクオさんから教えてもらった魔法を正しく使えるようになる度に褒めてくれていたドクオさん。
その時と同じ顔が今そこにある。

僕はそれが素直に嬉しかった。

ξ--)ξ「ま、あんたらがそれでいいなら私からは言う事はないわ」

('A`)「ツンもお疲れさん。あんま無茶すんじゃねえぞ」

ξ゚ー゚)ξ「私は何もしてないわよ。無茶もしてないしね」

( ^ω^)「いや、無茶はしてたお?」

(∪^ω^)「わんわんお!」

それから少し今後の事、誰に天空竜の事を話しておくべきかなどをドクオさんと話し合った。
結論としては、町の人達には話すまでもないだろうという事になった。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:30:31.20 ID:ji5n2T8Q0<>
('A`)「どうせこの姿ならわかんねえし、無駄に心配事を増やす必要もねえしな」

( ^ω^)「この封印って、どれくらいで破れるものなんですかお?」

('A`)「さあな……。古代竜がどれくらいで力を取り戻すかなんて本人達にぐらいしかわかんねえんじゃね?」

ξ;゚听)ξ「やっぱもうちょっとちゃんと天空竜から話聞いておくべきだったわね……」

(;^ω^)「過ぎた事はもう、しょうがないお」

('A`)「古代竜の転生なんて、目撃した人間はお前が初めてなんじゃねえか?」

('A`)「そもそも古代竜が転生する事自体、ほとんど知られてないはずだ」

(;^ω^)「ですおねー。もっと色々聞いておけばよかったですお。そういった事とか、じいちゃんの事とか」

('A`)σ「……まあ、師匠の事はそいつが力と記憶を取り戻したら聞けばいいだろ」

(∪^皿^)

(;'A`)「何でこいつは俺にこうも攻撃的なんだよ? 指差しただけで噛み付こうとしやがったぞ?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:31:40.34 ID:X3OnDCuiO<> ドクオさん不憫 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:32:29.93 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「敵に見えるんじゃない?」

( ^ω^)「わんお、それは汚いからかじっちゃ駄目だお」

(∪^ω^)「わんわんお!」

('A`)「お前らのその俺に対する揺ぎ無い態度は何なの?」

ドクオさんが言う様に、竜に対する研究は他のモンスターに比べて進んでいるとは言い難い。
古代竜ともなると尚更だ。

人と竜との盟約がある今、遭遇する事がなく、かといって研究協力するような間柄でもない。
あくまで不可侵条約で、お互い関わり合わないと取り決めた様なものだ。

ξ゚听)ξ「古代竜って、天空竜以外もいるのよね?」

( ^ω^)「大地竜ってのがいるのは知ってるお」

('A`)「正確な数は知らんが、名が知られているのは5体だな」

空竜、地竜、炎竜、氷竜、雷竜の5体がいるという事だ。
それぞれ名に冠する特徴を持っているらしい事はわかっているとドクオさんは言う。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:34:12.37 ID:ji5n2T8Q0<>
ξ゚听)ξ「確か、天空竜の話だと対立してんのよね?」

('A`)「その内訳までは知らん。この中で空竜、地竜が頭1つ抜けて強力なのは確かだが」

竜との大戦は30年ほど前だ。
ドクオさんもまだ子供だった頃の話なので、詳細は知らないらしい。

('A`)「ただ、炎竜はもういないはずだ」

( ^ω^)「いない? 死んじゃったんですかお?」

('A`)「恐らくな。その死が大戦終結に繋がったというような話は昔師匠に聞いた覚えがある」

永劫を生きる古代竜とて、不死身ではない。
転生は寿命による死を回避するだけだとドクオさんは言う。

( ^ω^)「……僕も気を付けなきゃいけませんおね」
つ∪^ω^)「わんお?」

自ずとわんわんおを抱く手に力が入った。
この小さな生命を守るのは、僕の役目だ。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:35:09.79 ID:n+RrGqoR0<> ほう <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:36:15.35 ID:ji5n2T8Q0<>
('A`)「まあ、そいつは普通の犬よりはかなり丈夫なはずだ。外見は犬でも、内にある生命力は古代竜だからな」

ξ゚听)ξ「すぐバテるし、体力ないみたいだけどね」

('A`)「能力的な話じゃないんだが、その辺の説明はめんどくさいからパス」

ニュアンス的な物は何となくわかるし、今は転生したてで不安定な所為もある事は理解出来た。
認識としてはケガや病気をし難い、飼いやすい犬って事で良さそうだ。

ξ゚听)ξ「この子、能力が戻るに連れて大きくなるの?」

('A`)「いや、これは仮の姿だろうからな。このままだ」

じいちゃんなら封印をし直す事で年齢に合わせて外見を変えたりも出来るのだろうが、僕に再度あの魔法を使うのは無理だ。
したがって力を取り戻すまでは成長せずにずっとこのままの姿という事になる。
ただ、ケガで傷つく事もあれば、食べ過ぎで太る事もあるみたいではあるので、全く変わらないわけではなさそうだ。

ξ゚听)ξ「どのくらいで力を取り戻すかにもよるけど、やっぱり不自然よね」

('A`)「それはブーンと使い魔契約を結んだ犬って事にしておけばいい」

使い魔とは、魔法使いが使役する魔力によって力を与えられた動物の事だ。
ただの動物を使い魔にする事もあれば、自分で作り出した物に生命を与えて使い魔にする場合もある。
大体において使い魔は何か1つに特化した能力を持たせ、手伝いをさせる場合が多い。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:38:18.29 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「その手があったお」

(;^ω^)「でも、使い魔にしては少々用途が……」
つ∪^ω^)

現在のわんわんおに、何か役目を与えてやらせる事は厳しいように思える。
実際にやらせるわけではないのだが、何の為に僕がわんわんおを使い魔にしたかの説明がつかない。

ξ゚听)ξ「それはあんたが大ケガした子犬拾って、かわいそうだから使い魔にしたって言えば皆信じるわよ」

高度な使い魔は人と生命を共有し、主人が死ぬまで生き長らえる事が出来る。
それが姿が変わらないわんわんおを使い魔扱いにする理由だ。

ちなみに生命を共有するといっても、使い魔が戦闘で倒されたりしても主人はダメージを負うが死ぬまでには至らない。
生命の総量の大きさとか、力の貸与の方向とか色々と難しい理論が働いている。

('A`)「それでいいと思うぞ。あながち嘘でもないしな」

( ^ω^)「じゃあ、そういう事にしときますお」
つ∪^ω^)「わんわんお!」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:38:23.32 ID:X3OnDCuiO<> 支援す <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:40:15.46 ID:/4h/ukCT0<> このシリーズすきだー!
前もかいたひとかな?
是非完結させてください <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:40:20.07 ID:ji5n2T8Q0<>
僕の言葉に答えるように鳴くわんわんお。
話の意味は理解してないと思うが、自分に向けられる想いには気付いてくれているのかもしれない。
僕はわんわんおの頭をやさしく撫でる。

ξ゚听)ξ「能力って、一気に戻るわけじゃないのよね? この姿のままで一部の能力が使えたりしないの?」

('A`)「完全に封じてるから使えないはずだ」

封印を凌駕する力があれば別だがとドクオさんは続ける。
もっとも、その場合は天空竜の姿を取り戻しそうではあるがと結んだ。

ξ゚听)ξ「まあ、この顔で口から炎とか吐かれてもシュールなだけだしね」

( ^ω^)「羽生えたら、僕を乗せて飛んで欲しいお」

ξ;゚听)ξ「いや、あんたがわんおに乗ったら潰れるでしょうが」
つ∪^ω^)

そう言ってツンは僕の腕の中からわんわんおを取り上げる。
何だかんだ言いながらも、ツンもだいぶわんわんおの事を気に入ってるようだ。
わんわんおに向けられるツンの視線は穏やかである。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:42:16.06 ID:ji5n2T8Q0<>
( ^ω^)「そんなとこかおね」

('A`)「そうだな」

僕が聞きたい事は粗方聞けたと思う。
不安だった事が色々と解決して心が軽くなった。
ドクオさんに相談して良かったと思う。

ただ、若干気になる点も残ってはいる。

( ^ω^)「ドクオさんはわんわんおの事が気にならないんですかお?」

('A`)つ「気になるもならないも、俺が近付くとそいつ、露骨に牙を剥くじゃねえか」

(∪^皿^)

ドクオさんがわんわんおに嫌われるのは想定の範囲内としても、僕が言いたいのはそういう事ではない。
魔法使いとして、古代竜の転生した姿が気にならないのかという事である。

僕がドクオさんに相談する事に若干の不安を抱いていた点、魔法使いとしての研究心という点だ。
ドクオさんもこんな庵に篭って暮らしているぐらいだし、研究は好きな部類のはずである。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:43:43.02 ID:X3OnDCuiO<> 支援支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:44:07.25 ID:ji5n2T8Q0<>
そんなドクオさんが古代竜という未知の塊に興味を抱かないはずがないと踏んでいたのだが、
実際の反応は思ったより淡白であった。

結局僕はその事は口にせず、気にしない事に決めた。
ドクオさんも分別のある大人なのだから、空気を読んでそんな事は言い出したりしないのだろう。

('A`)「ん? どうした? 人の顔をじっと見詰めたりして」

( ^ω^)「いえ、相変わらず正視に堪えがたい顔だなと」

僕は適当に誤魔化し、考え事を悟られない様にした。
ドクオさんが目に見えて沈んで行くが、気の所為という事にしておく。

ξ゚听)ξ「そういえば、結局一昨日の用事って何だったわけ?」

('A`)「……野暮用だよ」

( ^ω^)「何か依頼でもあったんですかお?」

('A`)「そういうわけじゃないが、まあ、何だ……」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:46:12.60 ID:ji5n2T8Q0<>
何だか歯切れが悪い返事しかしないドクオさん。
僕らに話せないような重大な依頼でも受けたのだろうか。

ξ゚听)ξ「私達に話せないこと?」

( ^ω^)「ひょっとして、今回の件で陰ながら何かやっててくれたんですかお?」

('A`)「いや、ちょっとメシューマの町までだな……」

メシューマの町はモオト湖から南西方面にある町の事だ。
ヴィップの町よりは大きく、人の行き来も盛んでかなり発展し、ニューソク大陸の交通の要所となっている。

ここからは結構距離があり、歩いて行くと数日は掛かるはずだ。
ドクオさんならもっと早く着ける手段を持ってそうだが、基本、
引き篭もりなドクオさんがそんな遠出をしていたとは意外な話だ。

ξ゚听)ξ「メシューマに?」

( ^ω^)「何をしに?」

(∪^ω^)「わんお?」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:48:27.17 ID:ji5n2T8Q0<>
('A`)「その……」

ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」

(∪^ω^)「……」

('∀`)「月間モテモテ通信の発売日だったんで、ちょっと買いに──」

ξ#゚听)ξ「はッ!」

                 ;・。(゚A゚;) ボゲロッ!?
           ξ#゚听)ξ三⊃#) )つ



     第五話 湖畔に秘する賢者の庵 終
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:50:15.28 ID:X3OnDCuiO<> 乙ー
ドクオさんはいい人なんだか残念な人なんだか <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2011/12/24(土) 23:52:26.04 ID:ji5n2T8Q0<>
五話は以上です
第一部補完的なお話でした
次からは新しい話になると思います

折角の連休なので投下してみました
次話と次々話も書き上がってはいますが、投下予定日は不明です
最短は明日

それ以降は紅白避けて、帰省するとしたら年末正月は無しで、
帰れなかったら年末か年始にでも投下するかもしれません

支援とか感謝です
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:52:51.07 ID:KpBRdwyrI<> 乙
ドクオの扱いぶれねぇな <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:53:03.88 ID:90GjvFpK0<> 面白いよ
おつ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:53:11.37 ID:n+RrGqoR0<> 書くの早いな、乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2011/12/24(土) 23:54:46.64 ID:BOF6zMgr0<> ドクオさん不憫すぎるだろjk
乙乙ー <>