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( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:38:00.55 ID:u5JmSIHN0

とある世界にある、とある町ヴィップ

鄙びたその小さな町は穏やかな気候と豊かな自然に恵まれ、人々は長閑な暮らしを営んでいた


そんなヴィップの町に一軒の古めかしい建物が建っている

町の一番の東の外れ、もっとも早く朝日が当るその場所に

建物には魔法道具屋サンライズという看板が出ており、そこには1人の少年が住んでいた

少年の名はブーン


これはヴィップの町で魔法道具屋を営む少年ブーンの物語である




 ( ^ω^)は魔法道具屋さんのようです


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:39:25.61 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「……完成だお」

未だ高熱を発する釜の蓋を開け、鉄板を引き出す。
そこに均等に並べられた円形の物体はうっすらと湯気が立ち、黒味がかった光沢を放っている。

僕はその1つを取り上げ、口元に寄せると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。

( ^ω^)「色合い、香り、ともにいい感じだおね」

僕は満足げに頷き、それを鉄板に戻す。
その時、背後でドアが開くベルの音が鳴った。

ξ゚听)ξ「おはよう、ブーン……って、何やってんの?」

ドアを開け、店に入って来たのは隣に住む幼馴染のツンだった。
隣といっても若干離れてはいるが、それでも徒歩数分ぐらいの距離である。
朝、まだお店の開店時間前だが、ツンが来るのはほぼ毎朝の事なのでドアの鍵は既に開けてあった。

( ^ω^)「おはようだお、ツン。何って、昨日話してた新製品を作ってたんだお」

ξ゚听)ξ「ああ、あれね。もう作ったの? あんたにしては早いわね。感心感心」


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:40:37.81 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「僕だってやる時はやるんだお」

ξ゚听)ξ「はいはい。それで、どんな物を作ったのよ?」

( ^ω^)つ○「これだお」

ξ゚听)ξつ○「何これ……? パンみたいだけど?」

( ^ω^)「その通りだお。名付けて薬草パン! 味は保証するお」

ξ゚听)ξ「へー……って、アホかぁぁぁぁッ!」

                        ゲフゥッ!?
           ξ#゚听)ξ三⊃(#)゚ω゚).・。 ’



     第一話 ようこそ、魔法道具屋サンライズへ


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:42:13.46 ID:u5JmSIHN0

僕の横っ面にツンの左フックが綺麗に突き刺さる。
ツンの家は道場を営んでおり、ツンもそこで幼い頃から鍛われているので、その拳は純粋な凶器だ。
勿論、手加減はしてくれているのだろうが、それでも健康な少年1人張り倒す程度の威力はある。

(;^ω^)「ツンしゃん、いきなり何ばしよっとですかお?」

ξ#゚听)ξ「何って、あんた何でこんなもん作ってんのよ?」

何故作ったかと言われればそれは、この店の商品のラインナップ不足の解消の為である。
昨日、今の品揃えじゃ客は増えないって言ったのはツンなのだが、それを忘れているのだろうか。

ξ#゚听)ξ「確かに言ったわよ。でも、何でパンなのよ?」

( ^ω^)「そりゃ、その形が一番いいかなと思ったからだお」

単に薬草といっても数多くの種類がある。
それをブレンドし、煎じて液状や粉末にしたものを商品としての薬草という名前で扱っている。

液状の方は止血をしたり傷の治りを早める塗り薬タイプ。
粉末の方は体力、疲労の回復と傷の治りを内部から早める飲み薬タイプだ。
区別する為、液状の方を傷薬と呼ぶ事もある。

( ^ω^)「で、今回はその飲み薬タイプの難点を改善する為、パンという形に仕上げたんだお」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:44:13.87 ID:u5JmSIHN0

ξ゚听)ξ「飲み薬タイプの難点って何よ?」

( ^ω^)「そりゃ、苦くて不味い事だお。その点、パンに混ぜると苦味は分散出来て美味いお」

ξ゚听)ξ「なるほどねー……って、アホかぁぁぁぁッ!」

                        ゴハァッ!?
           ξ#゚听)ξ三⊃(#)゚ω゚).・。 ’


再びツンの拳が舞い、崩れ落ちる僕。
全く、この暴力娘は今の説明の何が気に入らないと言うのだ。
この上なく理に適った素晴らしい発明だというのに。

ξ#゚听)ξ「これってどのくらい持つのよ?」

( ^ω^)「出来れば焼き立てで食べて欲しいけど、まあ、半日が賞味期限だおね」

ξ#゚听)ξ「あんたねえ……、半日しかもたない薬草のどこに使い道があんのよ?」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:44:21.35 ID:ZUfCKcub0
期待

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:45:17.84 ID:lzQU6kC2O
同じく期待させてもらおうか

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:45:34.44 ID:u5JmSIHN0

ξ#゚听)ξ「薬草は旅やクエストの非常時に備えて持って行くものでしょうが」

( ^ω^)「……それは盲点だったお」

ツンの言う通り、薬草は怪我をした時や疲れた時など、いつ使うかわからないものだ。
その点を考えると、確かに薬草パンは使い勝手は悪いかもしれない。

( ^ω^)つ○「味は良いのに残念だお……」

ξ゚听)ξつ○「あんたの発想が残念過ぎるわよ……あ、ホントだ、美味し」

(*^ω^)「だお? ふっくら焼き上がるように色々と試行錯誤を重ねたんだお!」

ξ;--)ξ「そんなとこに力入れてないで、せめて回復効果を高めるとかに力入れなさいよ……」

呆れた様にうなだれるツン。
それでもしっかりと薬草パンを口に運んでくれている事から、味の方はやはり上々だったようだ。
他にも薬草の臭みが消えるように色々と手間をかけたりしているので、このまま没にするには惜しいと思う。

( ^ω^)「乾燥パンに改良すれば何とかいけるかも……」

ξ;゚听)ξ「パンって発想から離れなさいよ……」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:46:01.15 ID:PuNivYC50
支援するよー

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:47:09.14 ID:u5JmSIHN0
  _
( ゚∀゚)ノ「おーっす。もうやってる?」

再びドアのベルが鳴ると同時に、大きな声が店内に響き渡る。
開いたドアの前には片手を上げたがっしりした背の高い1人の男、冒険者のジョルジュさんが立っていた。

( ^ω^)「おはようですお、ジョルジュさん。まだ開店前ですけど、大丈夫ですお」
  _
( ゚∀゚)「そうか? 悪いな。急なクエストが入っちまってな」

ジョルジュさんは最近この街に来た、冒険者と呼ばれる職業の人である。

( ^ω^)「急なクエストですかお? この町では珍しいですおね」
  _
( ゚∀゚)「みてえだな。まあ、調査だし、それにちょっと漠然としたクエストなんだよな……」

冒険者とはギルドと呼ばれる冒険者の組合からクエスト、仕事を請け負って生計を立てている人達の総称だ。

冒険者と一口に言っても、色々なタイプの人達がいる。
また、ギルドからのクエストも人や物探しから、護衛、モンスター討伐、財宝探し等多岐に渡る。

ジョルジュさんはいわゆる戦士寄りのタイプの人で、武器による戦闘を得意としており、
主にモンスター討伐等のクエストを請け負って暮らしているらしい。


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:48:16.72 ID:u5JmSIHN0

ξ゚听)ξ「調査ですか? それも珍しいですね」
  _
( ゚∀゚)「それはクエストの方で? それとも俺の方で?」

ここ、ヴィップの町はお世辞にも都会とは言えない、町と呼ぶのもおこがましいぐらいの小さな田舎町だ。
これといった特産品もなければ観光名所もなく、人の行き気も多くはない。
従って、人にしても場所にしても調べる対象は稀で、調査という名目のクエスト自体が珍しい事だ。

更に請け負ったジョルジュも、モンスター討伐を主な仕事としているので、
その彼が調査クエストを請け負うのも珍しい事だ。

というわけで、ジョルジュの質問に対する答えは両方だと言える。
  _
( ゚∀゚)「まあな。普通の調査なら俺達が請け負う仕事じゃねえわな」

( ^ω^)「って事は、モンスター絡みですかお?」

人の少ない田舎町のヴィップだが、モンスターは近隣に数多く生息している。
町自体がモンスターに襲われる事はまずないが、中央方面に比べればその生息地息は格段に多い。
故に、ジョルジュさんの様に、モンスター討伐の仕事目当てでこの町を拠点にする冒険者もいる。


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:49:22.84 ID:PuNivYC50
wkwktktk

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:50:04.19 ID:u5JmSIHN0
  _
( ゚∀゚)「そういう事。この近くでとあるモンスターの目撃情報が報告されたんで、その真偽を確かめる調査ってわけだ」

ξ゚听)ξ「なるほど。それで、そのとあるモンスターって何なんです?」
  _
( ゚∀゚)「……一応、極秘クエストではあるんだが、まあ、お前らならどうせその内耳にするだろうな」

( ^ω^)「お?」
  _
( ゚∀゚)「目撃されたのは竜だ」

ξ;゚听)ξ「な……!?」

( ^ω^)「竜……ですかお……」

竜、一言で言えば強力なモンスターだ。
いくつかのタイプが存在するが、トカゲを巨大化させたような体型に、
角と羽を付けたような姿のものが一般的にはよく知られている。

竜は存在を確認されているモンスターの中でも屈指の力を有し、また知性も高い。


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:50:46.27 ID:ZUfCKcub0
いいねコッテコテのファンタジー

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:51:03.54 ID:lzQU6kC2O
いい感じ

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:51:13.36 ID:u5JmSIHN0

ξ゚听)ξ「どうして竜がこんな所にいるんです? 有り得ないわ」
  _
( ゚∀゚)「普通に考えればそうだよな……っと、悪い、あいつら待たせてるから買い物いいか?」

( ^ω^)「お、すみませんお。ご注文をどうぞですお」

あいつらとは、ジョルジュさんと行動を共にしているハインさんとミルナさんの2人の事だろう。
3人とも20を少し越えたぐらいの年若い冒険者ではあるが、腕はなかなかのものらしい。
  _
( ゚∀゚)「薬草両方を12ずつと、火の護符を3枚頼む」

火の護符とは、火に依る攻撃からの耐性を高める魔法の道具だ。
これを買って行くという事は、少なからず竜の存在をジョルジュさんが信じているという事なのだろう。
竜の攻撃手段としてもっとも有名なのが、口から吐く火の息、ファイアーブレスである。

薬草の量も町周辺のクエストに携帯するには多い。
  _
( ゚∀゚)「ま、念の為な」

僕の表情の変化に気付いたのか、ジョルジュさんは心配するなというかのように明るく笑う。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:52:46.13 ID:/lmEysD20


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:53:06.03 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「お代は全部でこんな感じですお」
  _
( ゚∀゚)「おk、相変わらず安いな、この店」

( ^ω^)「需要と供給を考えた適正価格ですお」

僕は代金を受け取り、商品をジョルジュさんに渡す。
まとめ買いによる多少の割引きはしているが、言葉通りこの町の適正価格で提供している。

ツンに言わせれば、ヴィップにこの手の道具屋は一軒しかないんだし、
少ないが必須需要もあるんだからもう少し値上げしてもいいとの事なのだが、あんまり儲けたいわけでもないし、
材料の入手も難しくないものばかりだから、このくらいでいいと思っている。

まあ、新商品を開発して客を増やすぐらいはやってもいいかなと思ったのだが、
今日の薬草パンは商品には向かないと先ほど酷評されてしまったばかりだ。

( ^ω^)「あ、それとこれ、おまけですお」
  _
( ゚∀゚)「何、これ? パン?」

( ^ω^)「新商品にする予定だった薬草パンですお。ツンに駄目出し食らったんでお蔵入りですけど」

ξ゚听)ξ「誰だって駄目出しするわよ。ちゃんと用途を考えて作りなさいよね」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:53:11.70 ID:VfPhE/VCO
支援

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:54:16.19 ID:u5JmSIHN0
 _
(;゚∀゚)「え? 失敗作って事は不味いのか、これ?」

( ^ω^)「味は保証しますお」

ξ゚听)ξ「味はね。でも、薬草と名の付くくせに日持ちがしないんですよ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、そういう事か。確かになー、薬草なら美味くても持たないとちょっとな」

( ´ω`)「やっぱ駄目ですかお……」

ひょっとして実際に使う現場の人なら僕の考えに賛同してくれるのではと、一抹の期待を抱きもしたのだが、
残念ながらツンの意見が正しいようである。

ξ゚听)ξ「そんなに落ち込まないの。また違うの考えればいいだけでしょ?」

そういって僕の肩をバシバシと叩くツン。
自分の腕力を理解してその行動を取っているのかと問い詰めたくなるくらい痛い。

(;^ω^)「落ち込んでないから叩くの止めてくれお」
  _
( ゚∀゚)「相変わらずお前らは仲良いな。んじゃ、俺は行くぜ。パン、サンキューな」

ξ;゚听)ξ「別にそんなんじゃ……気を付けてくださいね」


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:55:43.43 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「ありがとうございましたお。またのお越しをお待ちしておりますお」

来た時と同じ様に片手を上げ、にこやかな笑みを残して去っていったジョルジュさん。
ジョルジュさんがこの町に来てからまだ3ヶ月ほどだが、人当たりのいい彼の性格もあり、
すっかり数十年来の既知の様な間柄だ。

ξ゚听)ξ「にしても、竜か……有り得ないわよね?」

先のジョルジュさんの話が気になっていたのか、ツンが真面目な顔で聞いてくる。
普通に考えればこんな辺境の何もない町に竜が現れるなんて有り得ない話だが、
可能性がないわけではない。

それに……

ξ゚听)ξ「盟約もあるし、はぐれ竜かしらね?」

( ^ω^)「可能性としてはそれが一番高いおね」

ツンが言う盟約とは、人と竜の間に結ばれた不可侵条約のようなのものだ。
30年ほど前、人と竜との争いが起き、その終結の際に結ばれたものである。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:56:45.30 ID:EZ0pkcuY0
お、面白そうだ。
wktkwktk

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:57:05.88 ID:u5JmSIHN0

それにより、現在竜族は北の大陸で静かに暮らしているはずなのだが、一部の竜の中にはそれを良しとせず、
人里を襲う事もあったが、大半は人または竜族自身によって滅ぼされた。

その時の生き残りがはぐれ竜として現在も稀に見付かる事があるのだ。

( ^ω^)「もしくは亜竜の見間違いか……」

亜竜とは竜に似た姿をしているが、種族的には別のモンスターを指す。

こちらは知性が低く本能のままに振舞うだけの物が多いが、
中には本家竜族に並ぶ力と知性を持つものも確認されているので、侮れないモンスターだ。
亜竜なら世界中の至る所にいるが、竜と見間違うぐらいの大物だとそうはいない。

( ^ω^)「本物の竜かだおね」

ξ--)ξ「……本物の竜がこんなド田舎の町に来るわけないでしょ」

声のトーンを一段落とし、静かにそう宣言するツン。
僕もツンも、その言葉が嘘だとわかってはいるが、今はツンの言葉に頷いておく事にする。

( ^ω^)「まあ、そうだおね。一番可能性が高いのは何かの見間違いだと思うお」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:58:09.91 ID:PuNivYC50
ペースいいねぇ!

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 22:59:04.19 ID:u5JmSIHN0

ξ゚听)ξ「そんなとこよね。それに、私達が気にしたってしょうがない話よね」

僕の返答にツンは満足気に頷く。
あまりツンに心配をかけたくないが、この件は少し調べた方がいいかもしれない。

ξ゚听)ξ「さてと、私はそろそろ行くわ」

( ^ω^)「稽古かお?」

ξ゚听)ξ「ううん、今日は畑の方よ」

ツンは道場で師範代として門下生に、といって町の子供達が大半だが、稽古をつける事の他にも畑仕事もしている。
単純に道場だけでは食えないからという事らしいが、一応、ツンのお父さんはそれなりに腕の立つ事で有名な人で、
たまに遠くからも腕試しや教えを請いに来る人もいるぐらいだ。

( ^ω^)「お疲れさんだお。お昼用に薬草パン持って行くかお?」

ξ゚听)ξ「うーん……そうね、お昼には丁度いいかな。頂くわ」

(*^ω^)「おっおっお」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:00:07.26 ID:u5JmSIHN0

ξ*--)ξ「お弁当としてはいいかもしれないけど、商品としては駄目なのは変わらないわよ?」

( ´ω`)「わかってるお。薬草パンを商品として並べるのは諦めたお」

こんなに美味しいのに商品にならないとは残念でならないが、需要がないなら仕方がない。

ξ゚听)ξ「だから落ち込まないの。それじゃ、ブーン、またね」

( ^ω^)ノシ「まただお。お仕事がんばってお」

僕はドアを開け、外に出て走り去るツンを見送る。
相変わらずの健脚でツンは瞬く間に視界から消えていった。

( ^ω^)「さてと……」

僕はドアにかかった看板を閉店表示のままにして、鍵をかける。
午前中の人の少ない内に先ほどの竜の件を聞いて来ようと思う。

( ^ω^)「じゃあ、ちょっと酒場まで行って来ますお」

僕は無人の店に言葉をかけ、町の中央の方へ歩き出す。
別に誰かが店にいるという訳ではないのだが、ついそうしてしまう。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:01:32.81 ID:lzQU6kC2O
ファンタジーだがゲーム原作じゃなさそうだな
しかしいい雰囲気だ

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:02:17.27 ID:u5JmSIHN0

現在の所家族がいない僕にとっては、この店が唯一の家族みたいなものだからだろうか。

( ^ω^)ノ「おいすー」

歩く事15分ほど、町のほぼ中央辺りに位置する酒場、バーボンハウスに辿り着いた。
まだ午前中だが、店は開いている。

バーボンハウスは酒場だけでなく、ちょっとした料理も食べられるレストランの側面もあり、
更にギルドからのクエストの仲介もしているので営業時間はかなり長い。

(`・ω・´)「おう、ブーンか。飯でも食いに来たか?」

バーボンハウスのドアを開けると、中から野太い声が出迎えてくれる。

声の主はシャキンさん。
このバーボンハウスのオーナーで、元々はこの町の人ではなくギルドから派遣されて来たらしいのだが、
僕が生まれる前からこの町に住んでおり、もうこの町の人といってよいのだろう。

僕はカウンター席に腰掛け、注文をする。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:02:22.44 ID:lMMfNKXG0
しえn

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:03:13.42 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「あ、コーヒーお願いしますお」

(`・ω・´)「おう。飯はいいのか?」

( ^ω^)「今朝はもう食べちゃいましたから、コーヒーだけでいいですお」

程なくして僕の前に1杯のカップが差し出される。
コーヒーの芳醇な香りが僕を包む。

( ^ω^)「今日も美味しそうですお」

(`・ω・´)「世辞はいい。……で、用件は?」

バーボンハウスのコーヒーは酒場とは思えないほど美味い。
お世辞でも何でもないのだが、シャキンさんは僕がこんな時間に食事を取る以外で来た事が気になるようだ。

( ^ω^)「さっきうちにジョルジュさんが来ましたお」

(`・ω・´)「……あの件か」

その言葉だけでシャキンさんは僕がここに来た理由を察してくれる。
シャキンさんがジョルジュさん達に依頼したのだろうだから当然といえば当然なのだが、
それに加えてシャキンさんは僕が竜の件を気にする理由も理解している。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:03:48.50 ID:+8uLYII50
おお、支援
よさそう

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:04:07.43 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「クエストを出したって事は、信憑性のある話なんですかお?」

(`・ω・´)「そうだな……どっちかと言えば低いかもしれない」

( ^ω^)「そうなんですかお?」

そもそもの発端は、昨夜、竜らしき何かを町の西の森の上空に見たと言う人がいたという話だ。

( ^ω^)「夜にですかお? それは確かに見間違いの可能性も……」

(`・ω・´)「更に言えば、見たのはうちのミセリだ」

( ^ω^)「それ、見間違い確定なんじゃないんでしょうかと思いますお」

ミセリさんというのは、ここ、バーボンハウスで働く女性だ。
気立てもよく、元気の良い人ではあるが、ものすごくそそっかしかったりする。
これまで割った皿は数知れず、オーダーミスなんて日常茶飯事だ。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:04:29.80 ID:PuNivYC50
しえーん

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:05:29.17 ID:u5JmSIHN0

何で首にならないのか不思議なくらいなのだが、
この長閑なヴィップではそのくらいの刺激があった方が逆に好まれるのかもしれない。

まあ、いい人ではあるんですけどね。

(`・ω・´)「そうも思ったんだがな。しかし、俺が頼んだお使い中で、あいつも酔ってなかったし」

(`・ω・´)「見たのは上空を飛んでいる姿らしいんで、本物かどうかは難しいとこだが、ま、念の為な」

( ^ω^)「そうですかお」

僕はシャキンさんの言葉に納得した顔で頷き、コーヒーを口に運ぶ。
どちらかといえば猫舌の僕は、少し冷めたくらいの温度が好みである。

( ^ω^)「その件、ギルド本部には伝えたんですかお?」

(`・ω・´)「いや。今の所クエストの名目は近隣調査としてるよ」

( ^ω^)「それは……」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:07:17.07 ID:u5JmSIHN0

(`・ω・´)「皆まで言うな。可能性の問題だし、そもそもお前が気にする問題じゃない」

( ^ω^)「……はい」

僕はまた素直に頷き、コーヒーを飲み干す。
気にするなと言われても、気になるものは気になる。

もし実際に竜がこの町に来るとしたら、その目的は僕、正確には僕の祖父、じいちゃんである可能性が高いのだから。

( ^ω^)「それじゃ、僕は行きますお。ご馳走様でしたお」

僕はコーヒーの代金をカウンターに置き、椅子から立ち上がる。
多分僕が納得していない事をシャキンさんは気付いているのだろう。
何かあったらまずうちに来いと念を押されてしまった。

( ^ω^)「町長にはその話はもうしてあるんですかお?」

(`・ω・´)「一応な。見間違いだろうと一蹴されたが」

( ^ω^)「そうですかお。じゃあ、ちょっと顔だけ出して来ますかおね」


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:08:07.47 ID:+8uLYII50
ふむふむ

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:08:18.75 ID:PuNivYC50
読んでるよん

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:08:38.44 ID:u5JmSIHN0

(`・ω・´)「まあ、やる事なくて暇してそうだから喜ぶんじゃねえか?」

ひどい言われ様だが、確かに特に祭りやイベントがある時期でもなく、人の流入流出も少ないこの町では、
町長の仕事はそう多くないかもしれない。

僕はシャキンさんに別れを告げ、バーボンハウスを後にする。

( ^ω^)「さてと、それじゃ町長の所に……」

「やあ、ブーン。おはよう」

バーボンハウスを出て、歩き始めてすぐ背後から声をかけられた。
振り返るまでもなく声の主は誰かわかった僕は、足を止めて振り向くと同時にその名を呼ぶ。

( ^ω^)「お、ショボン。おはようだお」

(´・ω・`)「どうしたんだい、朝っぱらから? 店の方はいいの?」

ショボンはシャキンさんの息子で、僕と同い年だ。
人口の少ないこの町で、同い年の僕達が仲良くなるのはある意味必然の事ともいえた。


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:10:13.46 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「ちょっと野暮用だお。店の方はどうせこの時間に客は来ないお」

恐らく竜の件はショボンも知っているだろうし、ツンと似たような反応を返されるのは予測出来る。
だから僕は漠然とした言葉でその質問に答えた。

(´・ω・`)「やれやれ、サボりは良くないね。ただでさえ少ないお客が逃げちゃうよ?」

( ^ω^)「逃げるほどの客もいないお」

若干皮肉めいた言い方をするショボンだが、別段悪意があるわけではない。
そういう性格なだけだし、むしろすぐにサボりに結び付けられる僕の普段の行動が推し量れてしまう。

( ^ω^)「ショボンは配達の帰りかお?」

(´・ω・`)「うん、今終ったとこさ。ブーンはこれからお店に?」

( ^ω^)「ちょっと町長のとこ周ってから帰るお」

それだけ答え、僕はショボンと別れ町長の家に向かう。
恐らくショボンはまだ別の配達の仕事があるだろうし、僕が町長の家に向かう理由を説明するのも面倒だったので、
そこで話し込むのは避ける事にした。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:11:13.50 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)ノ「おいすー。町長さんいますかお」

町長の家に着くとすぐに執務室に、といっても町長の私室だが、案内してもらえた。
アポイントはなかったが、これまでも必要になった事はないので気にしない。

(’e’)「何じゃ、ブーンか。どうしたんじゃ?」

( ^ω^)「斯く斯く云々だお」」

町長も僕のじいちゃんの事を知っているので、僕が来た理由はすぐに理解してくれた。
加えて町長はじいちゃんに好意的な感情を持ってくれている人間だし、現状の確認程度で話は済んだ。

(’e’)「まあ、お前さんが責任を感じる話じゃないからの?」

( ^ω^)「……わかってますお」

町長からもシャキンさんと同じ言葉をかけられ、僕は町長の家を後にする。
僕が責任を感じる話ではなく、また、責任を感じたとしても何も出来る事はないのだが、
気にしないでいる事が難しい事もわかっている。

( ^ω^)「じいちゃんか……」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:12:45.54 ID:lzQU6kC2O
支援だ

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:12:50.67 ID:THM/e+x80
素晴らしい

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:13:18.81 ID:u5JmSIHN0

僕は、今は亡きじいちゃんの事を思い返しながら帰路を辿る。
僕の知るじいちゃんは、いつもやさしい目で僕に微笑みかけてくれていた。

それが僕の知るじいちゃんの顔である。

( ^ω^)「でも、世間一般の認識は違うんだおね」

畏敬、いや、恐らく畏怖という言葉で表されるだろう。
僕のじいちゃん、バーン・ホライゾンに向けられる世間一般の目は。

( ^ω^)「天空の大賢者バーン……か」

この世界でもっとも有名で、力を持った魔法使い、それが僕のじいちゃんだった。
それを証明するかの如く、じいちゃんの逸話は数限りなく知られているが、
その中でもっとも有名なのが恐らく30年前の竜との大戦の話であろう。

じいちゃんは当時、竜族の中でもっとも長命で強大な力を有していた天空竜を従え、竜との戦いを終らせたのだ。

僕自身はまだ生まれてもいない時の事なので、当時の詳しい事はわからない。
昔、じいちゃんから少しだけその時の事を聞いた事もあるが、何でも、天空竜は従えていたわけではなく、
友達になったという事だったのだが、それでもじいちゃんが戦いを終らせた事は確かだ。


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:15:04.11 ID:u5JmSIHN0

学校の教科書にもその事は事実として書かれているぐらいである。

( ^ω^)「あの顔を思い出すと、とてもそんなすごい人には見えないおね」

そんな事を考えつつ歩いていると、いつの間にか店に帰り着いていた。
そのまま店のドアに手をかけた所で、鍵をかけていた事を思い出すが、ドアノブがくるりと回りドアは開かれてしまった。

(;^ω^)「お……?」

店を出る時、確かに鍵はかけたはずだ。
商売をやっている以上、その辺りは常に気を付けている。

しかし現実に鍵は開いていた。
一応、付き合いの長いツンの家には、何かの時の為に合鍵を預けてはあるが、今までに使用された事は1度もないはずだ。

(;^ω^)「……」

僕は音を立てないように静かにドアを開け、周りを警戒しながら店の中に入る。

('A`)「やっと帰ってk──」

(;゚ω゚)「ギャァァァッ! 化け物ぉぉぉぉッ!!!」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:15:08.32 ID:+8uLYII50
ファンタジーものはいつみてもwktk

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:16:07.03 ID:u5JmSIHN0

(;^ω^)「……って、師匠かお」

('A`)「……久しぶりだってのに、随分なご挨拶だな。つーかその呼び方は止めろと言っただろうが」

店の中には、僕の魔法の師匠というかじいちゃんの数少ない弟子だったドクオさんがいた。
僕は小さい頃ドクオさんから魔法を習った事もあったので、実際に師匠に当る人なのだが、
何故かそう呼ばれるのを嫌っている。

(;^ω^)「えー、でも、心の準備無しでドクオさんの顔見たら誰だって驚きますお?」

('A`)「よし、死のう。今すぐ死のう」

ドクオさんもじいちゃんの弟子だけはあって、巷では賢者と呼ばれるくらいにはすごい魔法使いである。
この店の鍵を魔法で開ける事ぐらいは簡単にやってのけるだろう。

ただ若干メンタルが弱いのと、人付き合いが苦手なのと、容姿が非常に残念な事で町から離れた森で隠遁生活を送っている。

('A`)「容姿は関係ないからな?」

( ^ω^)「心を読まないでくださいお」


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:18:17.78 ID:u5JmSIHN0

('A`)「読んでねえよ。お前、口に出してるから」

( ^ω^)「冗談ですお。てか、ドクオさん、今日は何の用事ですかお?」

('A`)「店に買い物以外の用事で来るやつがいるのか?」

( ^ω^)「若干名はいますお。ドクオさんのとことは違って」

('A`)「甘いな。俺の方はここの所、客すら1人も来てねえよ」

隠遁生活をしているとはいえ、ドクオさんは名の知られた魔法使いである。
ギルドからの難解な仕事を請け負う事もあり、一部の人間はドクオさんとのコンタクトの取り方を知っている。

( ^ω^)「それだけ、世が平和って事じゃないですかおね」

('A`)「平和ね……」

30年前の人と竜の大戦が、最後に起こった大きな戦いではあるが、それ以降も散発的に争いは起こっていた。
じいちゃんはそういった各地の争い、人と人との争いにも介入し、それを鎮めていったらしい。
現在、じいちゃんが人々から畏怖の念で見られるのは、少なからずその時の影響がある。

強大な力を有していたじいちゃんとはいえ、戦争を誰1人殺す事無く収めるのは不可能だったから。


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:20:13.34 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「ここ数年、戦争は起こってないですお?」

('A`)「小さな単位ではまだ起こっているさ。ニューソクの馬鹿共は国1つ満足に治められねえのか」

ニューソクはこの地方の名前で、国の名前でもある。
当然、ヴィップの町もニューソクという国の一部だ。

もともとニューソクはそう大きな国ではなかったが、じいちゃんが戦争を鎮めるためにニューソクに協力した結果、
それなりに大きな国になってしまった。

その事にじいちゃんが若干の後悔の念を抱いていたらしい事は僕も知っている。
どこかしらの国の協力は必要だったとはいえ、一国の力が強くなり過ぎるのは避けるべきだったと。

('A`)「あのボンクラ王は何やってんだよ、クソが」

その事を知っているドクオさんは、ニューソク国家を嫌っている。
ニューソクだけではなく、国家、王族といったもの自体が嫌いらしいのだが、その詳しい理由までは知らない。
だから僕はなるべくその話題はドクオさんの前でしないようにしているのだが、今日はちょっと失敗してしまった。

仕方ないので僕は話の方向を変えようとする。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:20:49.59 ID:PuNivYC50
支援

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:21:36.60 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「で、ドクオさん、今日は何を買いに来たんですかお?」

('A`)「あ? ……っと、そうだったな。ほれ、必要なものはこれに書いてある」

( ^ω^)「拝見しますお……ふむふむ……」

ドクオさんからぞんざいに手渡されたメモに目を落とす。
そこには薬草の名前、加工する前の材料である薬草の名前と個数がびっしりと書き詰められていた。

(;^ω^)「流石にこんなにはストックありませんお?」

('A`)「ないなら取って来いよ。商売だろうが」

(;^ω^)「いや、ドクオさんが自分で取ってくればいいじゃないですかお。ドクオさんなら簡単でしょう?」

('A`)「マンドクセ」

結局、面倒臭いの一言で押し切られた僕は期限を設定してもらい、注文を受ける事にした。
量こそあれど、どれも入手はそう難しい薬草ではない。
そのほとんどが町の近くの森で手に入るものばかりだ。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:21:44.36 ID:3LCg9IXf0
スラスラ読めるお

52 名前:創作板否定組織「ストーム・クローク」団長VIP友愛 ◆ihq7GjSWb6 :2011/12/13(火) 23:21:53.95 ID:/Ri1sJcmO
なかなかにいいじゃないか

創作板の糞野郎どもに爪のあかを飲ませたいのう



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:23:05.23 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「届けに行きますかお?」

('A`)「いや、その頃にまた来るよ。どうせ暇だしな」

( ^ω^)「だったら自分で取ってくればいいのに……」

('A`)「うるせえな……そういや、お前、知ってるか?」

( ^ω^)「何をですかお?」

('A`)「最近、この辺りで竜が目撃されたって話だ」

( ^ω^)「一応は。というか、午前中はその話を確かめにバーボンハウスとかに行って来たんですお」

僕はドクオさんに促され、午前中に得た情報を全て伝える。
もし実際に竜がいたとしたら、その対処にはドクオさんが一番最適なはずだ。

('A`)「なるほどな……少々信憑性は低いか」

( ^ω^)「だといいんですが……」

口ではそういったが、僕の中でこの話はだいぶ信憑性が高くなってしまっていた。
他ならぬ、ドクオさんがここに来た事でだ。


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:23:21.58 ID:PuNivYC50
支援します

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:24:24.72 ID:lzQU6kC2O
いいねえ

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:24:42.78 ID:T8WEaXDtO
本当に素晴らしい。最後まで読ませていただきます

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:25:02.26 ID:u5JmSIHN0

今僕が話したような話を聞いていないドクオさんが何故竜の話を知っていたのか、
その理由を考えれば自然とそうなってしまう。

('A`)「まあいいさ。お前は気にするな」

( ^ω^)「気にしないのは無理ですが、多分、気にしても僕じゃどうにもならない話ですお」

('A`)「それがわかってるならいい。まあ、薬草摘みぐらいなら問題はないと思うが、用心はしておけよ」

( ^ω^)「だったらやっぱり自分で取ってくればいいじゃないですかお」

('A`)「それはそれだ」

ドクオさんは取り付く島もなく、お前がやれの一点張りである。
全く、強引な人だ。相手が初対面の人だとキョどったりする癖に。

そんなんだからモテないのだと思うのだが、別にそうじゃなくてもモテないだろうからそれは言わないでおく。

('A`)「お前、今何か失礼な事考えなかったか?」

( ^ω^)つ○「いえ、何も。それよりドクオさん、これ1ついかがですかお?」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:26:33.02 ID:u5JmSIHN0

('A`)つ○「何だこりゃ?」

( ^ω^)「新商品にする予定だった薬草パンですお」

僕は薬草パンを作る事になった経緯と、敢え無く却下された経緯をドクオさんに説明する。

(;'A`)「お前は……何かずれてんだよな」

( ^ω^)「失礼な。ドクオさんの顔に比べればマシですお」

('A`)「あれ、このパン美味いけど何かしょっぱいよ!」

ガラスのメンタルのドクオさんは、涙目でパンをくわえたまま出口に向かった。
その背に深い哀愁を感じたが、ドクオさんならきっと乗り越えられるはずだと他人事のように見送る。

( 'A)「じゃあ、またな」

( ^ω^)「ありがとうございましたお。またお越しくださいお」

僕は静かに閉められるドアに向かって挨拶を送った。
形式的な挨拶ではあるが、心の中では本当に感謝している。

多分、ドクオさんの本当の目的は薬草の注文ではなく、竜の件で僕の様子を見に来たのだろうから。


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:28:05.89 ID:u5JmSIHN0

( ^ω^)「さてと、遅くなったけど開店準備だお」

既に客が2人訪れては来たが、店はまだ閉店状態である。
開店準備といってもそれほどやる事はない。
簡単に掃除し、ドアの看板を開店表示に変えた。

( ^ω^)「しっかし、物の見事に皆に同じ事言われたおね……」

店は開けたが訪れる客もなく、暇な僕は午前中の出来事を振り返る。

( ^ω^)「まあ、確かに僕が気にしても仕方ないんだけど」

既にじいちゃんが亡くなっている今、残された家族である僕が気にするのは必然の流れではあるが、
僕が気にした所で竜の相手は務まるわけもないし、竜も僕に用はないはずだ。
じいちゃんを恨んでいて、その親族を手当たり次第にという事なら用はあるのかもしれないが。

ただ、じいちゃんが既に亡くなっている事は広くは知られていない。
その辺りには色々と政治的な事情があるらしいが、僕は漠然としか理解していなかったりする。

その関係上、じいちゃんを探していてこの町に辿り着く事は有り得るかもしれないが、
それがそのまま僕に繋がるわけではない。


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:29:05.51 ID:u5JmSIHN0

僕がじいちゃん、バーン=ホライゾンの孫である事を知っている人はごく一部なのだから。
昔のじいちゃんを知っている人とか、ギルドの一部の人間、それとニューソクの王族の人達ぐらいだろうか。
僕自身もホライゾン姓は名乗っていない。

それに加えて、じいちゃんがこの地方の出身である事は知られているが、この町の出身だという事は伏せられている。

( ^ω^)「竜にそんな理由が通じるかはわからないけどね」

竜がどういう仕組みで人間を見分けているのかわからないし、
ひょっとしたら見ただけで僕とじいちゃんの繋がりを見抜いてしまう可能性もある。

特に、天空竜のような古代竜、エンシェント・ドラゴンと呼ばれる強大な力と高度な知能を持った竜なら、
そのくらいはやってのけそうではある。

( ^ω^)「何にせよ、現時点では全部想像の話だから考えても仕方ないお」

そう独り言を締め括ると、僕は視線をドアに向ける。
依然としてドアは微動だにせず、備え付けられたベルも沈黙を保つ。

( ^ω^)「……真面目に新商品を考えるべきかおね」

薬草パンも真面目に考えた一品ではあったのだが、確かに用途を考えれば問題があったかもしれない。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:29:17.00 ID:0vUOr/VO0
心理描写がちょっと多過ぎる気がするな
情景描写はこのくらいでいいだろう
ファンタジーはどうしても展開が遅くなるから難しい
頑張れよ

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:31:07.22 ID:u5JmSIHN0

食べて行くだけなら今の稼ぎでも問題はないのだが、一応僕も魔法使いである。
道具屋兼ではあるが、魔法使いとしての研究心は多少なりとも持ち合わせている。
失敗したままというのは、魔法使いとしてのプライドに多少引っかかる物があるのだ。

( ^ω^)「うーん、やっぱり品揃えとしてはちょっと寂しいおね」

現在、この店で扱っている商品は先の薬草2種の他には、毒消しと麻痺治しの治療薬、
各種の魔法耐性を高める護符である。

本当は魔を払ったり各種のお清めに使われる聖水もあったのだが、現在この町には司祭さんがいないので、
入手経路が断たれた状態だ。

どうしても欲しがっている客が来た時は、別の町に仕入れに向かう事もあるが、現在は店に並んでいない。

他に魔力の込められた道具の鑑定という仕事もやっているのだが、最近そういった道具の持ち込みは1件もない。

( ^ω^)「薬草パンは味が良かっただけに惜しいお……」

やはり着眼点を変えるべきかと思うが、その点を放棄するのも惜しいと思う。

( ^ω^)「更に味で凌駕するとか……いや、それプラスアルファで……」

結局その日はそれ以降、1人も客が訪れる事はなかった。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:32:06.27 ID:xDsJTpkx0
支援

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:33:02.86 ID:+wO33T020
これは好きなタイプの話

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:33:06.62 ID:u5JmSIHN0

 〜 翌日 〜


( ^ω^)「……完成だお」

( ^ω^)△「名付けて、薬草おにぎりだお!」

ξ゚听)ξ「あら美味しそう……って、アホかぁぁぁぁッ!」

                        オウフッ!?
           ξ#゚听)ξ三⊃(#)゚ω゚).・。 ’



     第一話 ようこそ、魔法道具屋サンライズへ 終


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:34:04.01 ID:czQOpkud0
良い長さだわ



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:34:05.89 ID:7Cq2XsYPO
おにぎりってパンより日持ちしなさそう

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:35:26.51 ID:PuNivYC50
おつでし

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:36:46.76 ID:+wO33T020

ヨモギ餅みたいなのにすれば長持ちしそう

ペース早いし読みやすいしで楽しめた
まだプロローグっぽいけど期待してる
乙乙

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:36:53.85 ID:lzQU6kC2O
乙ー
続きに期待するよ

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:38:06.67 ID:u5JmSIHN0

一話は以上です
原作は特になし
世界観はこれまで読んできたファンタジー小説やゲーム影響だと思う
その辺独自解釈多いので、序盤は説明過多になるかもしれません
あまりテンポを落としすぎぬ程度にしたいとは思ってます

次話は書きあがってるので、時間が取れたら近い内に投下します
支援とか感謝です


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:39:15.05 ID:EZ0pkcuY0
乙乙!
面白くて続きが気になる!
頑張れマジ頑張れ支援

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/13(火) 23:40:35.37 ID:+8uLYII50
乙 VIPに良現行が増えたな
薬草おにぎり食ってみたいが


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