◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:05:22 ID:Xh1v.ZI6O<>序章「その名をイツワリ警部」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1314420405/

1章「銃声」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1314598605/


  ※注意
・刑事が中心の小説ですが、どちらかと言うと
 某名探偵なコナンの漫画や、某逆転する裁判のゲームに近い小説です。
 従来の刑事物ではないのを予め留意していただければ嬉しいです。
・携帯からの投下ですので、改行が変だったりAAがずれたりする事が多々あります。
・トリックにやや無理がある表現が多数あります。
 これは小説だから、と軽い気持ちで流してほしいです。
・物語に関する質問は全て完結後に承ります。


誤字のないよう、ゆっくり投下しますー<>(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:13:28 ID:Xh1v.ZI6O<> 


2章「二人の刑事」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:15:02 ID:Xh1v.ZI6O<>

( <●><●>)「静かにしろ! 警察だ!」

(´・ω・`)「あ」

(゚、゚トソン「あ」


皆が静かになり静寂が生まれるなか、
私と警部は同じタイミングで声を漏らした。
まあ、なんとグッドタイミングというか。


警察だと言い放った深緑の男は、
胸に入ってある警察手帳と思わしき物を警部と同じような仕草で見せ、
後ろで怯えているベージュの男を引き連れて
どかどかと一号車に乗り込んできた。


先程まで騒がしかった乗客は静かなのだが、
私と警部だけがその緊張を感じていない。
私のちょうど横くらい、ワゴンの向かいに
立った男が何かを言おうとしたとき、私と警部が声をかけた。
いや、かけたというより、自然と口から出たというべきか。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:17:46 ID:Xh1v.ZI6O<>


(゚、゚トソン「刑事!」

(´・ω・`)「ワカッテマス!」

( <●><●>)

(<●><●> )

(<●><●> )



(<●><●> ;)「ぬわっ! え、嘘! 警部!?」


今は説明は省くが、彼は私や警部の知り合いで、
刑事(部長刑事だった気がする)をしている若手ワカッテマスさんだ。
彼が私たちの存在を認識し、驚くまでの間およそ1秒。
そして後ろから入ってきたベージュの男は、彼に声をかけた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:21:59 ID:Xh1v.ZI6O<>

( ><)「どうしたんですか」

(゚、゚トソン



(゚、゚トソン「刑事!」

(´・ω・`)「ワカンナインデス!」

( ><)

(>< )

(><;)「ぎゃあああ! なんであなたが!」
   、_
(´・ω・ )


同様に、彼も派出所勤務の巡査……いや、今は刑事の道を歩んでいるのか。
駆け出しの刑事の稚内ワカンナインデスさんであり、
彼も私たちの存在を知るや否や、大声で私たちの存在を否定しようとしてきた。
思わず警部も顔を歪ませる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:24:14 ID:Xh1v.ZI6O<>

しかし、今は一刻を争う事態であるためか、
ワカッテマスさんは一瞬は躊躇ったものの、
警部に話を伺った。

聞くまでもない、今の銃声の件だろう。
乗客の皆が彼らを見つめるなか、
私も黙って彼ら警察の動きを見届ける。


( <●><●>)「……警部、今の音は……」

(´・ω・`)「銃声で間違いない」

( <●><●>)「風船が割れる音や、クラッカー類のものでもなく?」

(´・ω・`)「火薬の臭いがする。こいつは銃で間違いないな」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:26:32 ID:Xh1v.ZI6O<>

ありがとうございます、
と小声で謝礼を述べたワカッテマスさんは、
再びあのよく通る大きな声で
一号車の乗客にアナウンスを開始した。


( <●><●>)「只今ここで発砲がなされた。
       その場を動かず、我々警察の指示に従ってください」

(´・ω・`)「二号車以降の人は?」

( <●><●>)「いや、まず銃声に気づいてません」
(´・ω・`)「………」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:28:22 ID:Xh1v.ZI6O<>

警部は、一瞬ワカッテマスさんを見る目が変わった。
が、特になにも言おうとはしていない。


あれだけ混乱状態にあった乗客が、
嘘のように静まり返っては、立っている者も自分の席に着いた。
静まり返るといっても多少はざわめきが聞こえるものの、
当初の騒ぎ声に比べては充分すぎるほど静かと言える。


皆の沈黙を確認したワカッテマスさんは次に、
ワゴンを持っていて尚且つ制服姿である乗務員を見つけ、ワゴンの横を通り彼女に歩み寄った。
そっと手を差し伸べている。
よく見ると、女性の方は腰が抜けたのか、床にしゃがみ込んでいる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:29:35 ID:Xh1v.ZI6O<>

(#゚;;-゚)「……」

( <●><●>)「ご心配なく、警察です。
       立てますか?」

(#゚;;-゚)「……」

( <●><●>)「どうしました?」

(#゚;;-゚)「顔怖い人!」

( <●><●>)

(´・ω・`)「ぶっ」


どうやらこの乗務員は、思ったことを
ずばずばと言ってしまうタイプの人間のようだ。
普段は営業スマイルでそれを押し隠しているが、
不意を突かれるとつい素が出てしまう、という感じだろう。
その思わぬ出来事に、不覚か警部はつい吹き出してしまった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:30:51 ID:Xh1v.ZI6O<>

ワカッテマスさんは表情を変えず、
そのまま女性を立たせては本題に入ろうとしている。
しかし、自分でも不意を突かれたのか、若干声がぶれている。


( <●><●>)「あなたはアテンダントですね?」

(#゚;;-゚)「はい……えっと、今のごめんなさい、癖なんです」

( <●><●>)「気にシテナいのでご心配なく」


嘘つけ、思いっきり声が裏返っているぞ。
誰一人そう突っ込むことなく、話は進んだ。



(´・ω・`)「嘘つけ、気にしてるくせに」

( <●><●>)

(#゚;;-゚)

(゚、゚トソン

(´・ω・`)



(´・ω・`)「ごめん続けて」

おいコラ警部。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:35:16 ID:Xh1v.ZI6O<>

( <●><●>)「今からあなたは責任者……車掌長というのですかね、その人に発砲の事実を伝え、
       車内アナウンスを通し、誰一人一号車に入らないよう告げてください。
       また、ジャックではない以上はこの運行に支障を来さないよう伝えるように」

(#゚;;-゚)「は、はい」

( <●><●>)「それと……」


ワカッテマスさんは、この車両に乗っているただ一人の
乗務員である彼女にテキパキと的確な指示を送っている。
それを反論も意見もすることなく彼女は頷いて、
首を事細やかに動かしている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:36:55 ID:Xh1v.ZI6O<>

警部も乗客もそれを見守るなか、私はその後ろで
脳天気な顔をしているワカンナインデスさんに小声で話しかけた。


(゚、゚トソン「ねえ刑事」

( ><)「なんですか?」


中性的といえば聞こえはいいかもしれないが、
どう見ても幼い顔立ちである彼は、
例の高校生男子のような声で応対する。
噂によれば、コンビニでお酒を買う際に年齢認証を求められた
とかいう武勇伝を持っているそうであるが、どうでもいい。


(゚、゚トソン「よく銃声が聞こえましたね」

( ><)「え?」

(゚、゚トソン「ただでさえガタゴト煩い列車の、しかも車両を隔てた状態で聞こえるとは」

(;><)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:38:49 ID:Xh1v.ZI6O<>

返答に詰まった、冷や汗を浮かべて彼はおろおろしている。
後ろめたいことでもしているのか、ただの勘かはわからないが、
見た感じ、すんなり答えてくれそうではなかった。
と思ったのだが、存外すんなりと教えてくれた。



( ><)「我々刑事の耳は、銃声を聞き分けるためにあるようなものですから」


彼がこう格好イイ格言じみたことを言うときは、
だいたいが何かを隠している時である。
そもそも、新米刑事のくせに生意気なことを
言っている時点で、それが嘘であるのはわかる。


(゚、゚トソン「本当は?」

( ><)「テンさんの後をつけてきただけです」

(゚、゚トソン「ズコー」

( <●><●>)「9煩いッ!」

(;><)「すみません!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:40:52 ID:Xh1v.ZI6O<>

今し方二人は「テンさん」「9」と呼び合ったが、
これは二人の間で定められた呼び名と聞く。
一刻を争う現場において、いちいちワカッテマスだのワカンナインデスだの
呼びにくい名前だと、いざという時に名前の長さがネックになりかねない。
だから、由来は知らないが、二人の間ではそう呼び合っているのだ。
聞いた話、ワカンナインデスさんの「9」には
バカという意味も込められているらしいが、詳細は知らない。
このふたりのことは、また機会があればその歴史が
語られることになるだろうなので詳述はしない。


(゚、゚トソン「えっと、じゃあワカッテマスさんが何かしらの方法で銃声を聞き分け、
     急にこっちに着ちゃうもんだからついてきた、と」

( ><)「そもそも、こちらに就いてみつきで銃声を聞き分けるなんてとてもとても」

(゚、゚トソン「自慢するなよ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:42:30 ID:Xh1v.ZI6O<>

まあ何はともあれ、
この人に事件のことを聞くのは不適だということがわかった。
しかし、発砲されたというだけでこれほど大事になるとは到底思えない。
もともと、よく事件を呼ぶ体質だから、神経が麻痺しているだけなのかもしれないが、
持ち物チェック程度でいいのでは、とすら思えてくるのだ。


(゚、゚トソン「しかし、いやに大袈裟ですね」

( ><)「何を言ってるんですか」

(゚、゚トソン「え?」


私のさりげない一言に、ワカンナインデスさんは食いついてきた。
いつになく真剣な顔つきをしていて、
この時の顔なら彼女がいると聞いても不思議ではない。
いや、彼女はいるらしいのだけど。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:44:08 ID:Xh1v.ZI6O<>

( ><)「銃刀法でこの国は拳銃の使用が禁じられて、
     更にそれが長距離走行の列車内で発砲されるような事件があれば
     それはもう一大事ですよ」

(゚、゚トソン「なんで長距離だったらなおだめなんですか?」

( ><)「はぁ……」


ヤレヤレ、と言うような仕草を見せ、
一度ため息をついてから私に説明をしてくれた。
しかし、この人に限ってそれをされると、非常に、うざい。


( ><)「考えてもみてください、
     長距離走行タイプの列車といえば、
     長い間同じ乗客が乗っているわけです」

(゚、゚トソン「うん」

( ><)「そこで発砲し得る状況が生まれる……」




( ><)「そう、そこはまさに特定の人物間でのトラブル、
     若しくは殺し屋の仕事が行いやすい条件ではないですか」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:45:51 ID:Xh1v.ZI6O<>

(゚、゚;トソン「ころ……ッ」

それは意外な結論だった。
言われてみれば、各駅ごとに乗客が入れ替わる
普通列車なら、特定の人物の殺害には向かない。


ところが、このオオカミ鉄道でのラウンジ−VIP間においては、
列車が着く2時間の間、常に乗客は固定されているため、
如何なるタイミングでも見られさえしなければ安全に殺しを実行できる。


殺し屋も二時間の間列車に閉じこめられているわけだが、
今回のケースとは違い普通は警察の人間、
まして刑事という現場慣れしている人物が三人もいるなんていることは珍しい。
到着後にその列車は缶詰めのごとく封鎖され、一人一人取り調べを受けるわけだが、
事前にその対策をとれば問題はないだろうし。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:47:26 ID:Xh1v.ZI6O<>

(゚、゚トソン「じゃ、じゃあ今回の発砲は殺し屋が……?」

(;><)「いや、あくまで譬えですよ!」

(゚、゚トソン「え? どっちなんですか」

( ><)「殺し屋が、いくら揺れる列車内だからって、殺し損ねると思います?」

(゚、゚トソン「あ、ああ……そうか」


怪我人は、いない。
これは如何なる仮定を組み立てるにしても
直面しなければならない前提だ。
そう考えると、やはり殺し屋である可能性は低いか。


( ><)「しかし……」

( ><)「今の発砲で、誰かが狙われましたなんて叫んでない以上、ひょっとすると……」

(゚、゚トソン「は?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:49:06 ID:Xh1v.ZI6O<>

ワカンナインデスさんは再び、
自分で発案し否定した殺し屋である可能性を、
なぜか引っ張り出した。
結局、話はどちらに向かうのかだけでも前置きしてもらいたい。


( ><)「いや、個人間のトラブルなら、
     当然殺人未遂の被害者は撃たれそうになった、
     と自覚してるわけでしょ?」

( ><)「自覚しているのに名乗り出ないとなると、
     それは個人間のトラブルじゃないかもしれないですからね」

(゚、゚トソン「結局どっちなんですか」

( ><)「……今の段階では、どちらかわかんないんです。不安をさせちゃいますが」

(゚、゚トソン「まったく……」


ワカンナインデスさんは、恐縮し、
縮こまりながらも、一通りの考えられることを挙げてくれた。
しかし、どこか頼りない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:52:05 ID:Xh1v.ZI6O<>

(>< )「……」チラ

(゚、゚トソン「ん」


私と話を終えたワカンナインデスさんが、
一段落終えたであろうワカッテマスさんとアテンダントの方を向いた。
私もつられてそちらを見るときには、アテンダントは運転室へ駆けていた。


それを見送ったワカッテマスさん、彼に声をかけたのは警部だった。
いつになく真剣な表情で――でもあれが事件を扱う時の
彼の風格で――そんな警部が、警部として動こうとしている。


(´・ω・`)「とりあえずここはVIP県警が仕切るんだな?」

( <●><●>)「はい。そういうわけですので警部は……」

(´・ω・`)「じゃあ僕もだな」

( <●><●>)



(; <●><●>)「……仰る意味がわかりません。
       あなた、確かラウンジの方に
       異動なされていたのでは?」

(´・ω・`)「いや、だから」

(´・ω・`)「帰ってきたんだよ、今日」

( <○><○>)



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:54:07 ID:Xh1v.ZI6O<>

警部の復帰を聞くと、ワカッテマスさんは、急に顔色を悪くした。
理由はなんとなくでわかる。


実は、ワカッテマスさんとワカンナインデスさんのふたりは、警部のことがニガテなのだ。
警察の上司としては尊敬しているだろうが、人としては関わりたくないらしく、
ワカッテマスさんなんか、事件で警部の組み立てる推理から
必ずと言っていいほど粗を見つけだして反論してくる。
まあ、結果として、それは全部プラスに傾いてしまうのだが、
それでも彼らは警部に反抗するのだ。
ちなみに、ワカッテマスさんはひどくショックを受けるとしょっちゅう白目をむく。


(; <●><●>)「………あなたには、常に驚かされます」

(´・ω・`)「上の人が決めたんだから。抗えないしぃ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:55:35 ID:Xh1v.ZI6O<>

( <●><●>)「……ええと、それでなんでしたっけ」

(´・ω・`)「ああ、VIP県警が仕切るって話」

( <●><●>)「……しますか? 捜査」

(´・ω・`)「当然」


そう言った警部は、どっこいしょと言ってその重い腰をあげ、
肩を回して本格的に行動する準備運動をしている。
肩を回し、手首を捻り、首を右に左に倒して回転し、
最後に深呼吸して「よし」と呟いた。


(´・ω・`)「おいバカ」

(;><)「はい!」

(´・ω・`)「邪魔にならんよう隅っこで座っとけ」

( ><)

(;><)「捜査に付き合わせてくださいよ!」

(゚、゚トソン「(もっともだ)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 20:58:11 ID:Xh1v.ZI6O<>

ワカンナインデスさんが警部にツッコむと、
警部は嫌そうな顔をしつつもワカンナインデスさんを手招きした。
余談だが、警部はワカンナインデスさんのことを「バカ」と呼ぶ。
深い理由があるのかと思い、
一度なぜそう呼ぶのか聞いたら「ただ無能だから」とだけ言った。
なるほど納得、するわけにはいかないぞオイ。


(´・ω・`)「じゃあ、お前に特別捜査を課する」

(*><)「なんですか?」

(´・ω・`)っ「耳貸せ」

(;><)「痛い痛い! 貸しますから引っ張らないで!」


半ば強引にワカンナインデスさんに耳打ちし、
彼だけの「特別捜査」を指示する。
しかし、この手口は、決まって警部が
彼をつまみ出したい時に使うものであって、
指示というより単純にワカンナインデスさんのことを面倒くさく思っただけだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:01:57 ID:Xh1v.ZI6O<>

(´・ω・`)「……………の血液反応、あと硝煙反応とかも調べとけ」

( ><)「はい! 行ってき……」


指示され、嬉しそうな笑みを浮かべる
ワカンナインデスさんは急いでその場所へと向かおうとするが、
思いとどまってその足を止め、警部に素朴な質問を投げかけた。


( ><)「……あの、試薬とか持ってないんですけど」

(´・ω・`)「親からもらった鼻があるだろ! それで嗅げ! 嗅いで探せ!」

(;><)「!?」

(゚、゚;トソン「(なんという外道!)」


その捜査に臨むべく、泣き顔ながらも
早速扉を開いて駆け出そうとしていた。
本当に鼻で捜査するのかよ、と思うと、
今度はワカッテマスさんが彼を呼び止めた。

( <●><●>)「9、私のアタッシュケースに試薬があるから持って行け」

(´・ω・`)「ほう、常に持ち歩いているのか。鑑識課じゃあるまいし」

( <●><●>)+「これでも部長してますから」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:03:41 ID:Xh1v.ZI6O<>

( <●><●>)「……あと、指紋検出の道具も一式あるから、ケースごと持って行くといいぞ」

( ><)「はい、わかりました! 行ってきます!」


そう言い残して、彼は笑顔のまま走っていった。
しかし警部も人が悪い、特別捜査と言っていい具合に追い出すなんて。
まあ、彼はよくトンチンカンな推理を
展開したりするので、わからなくもない。

それよりも、元巡査であるのを活かした
落とし物捜索の方が得意らしいから、
そちらをさせた方がいいと警部の言葉だ。
……ほんとうだろうか。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:05:25 ID:Xh1v.ZI6O<>

(´・ω・`)「……40分、か」

(´・ω・`)「事件発生から10分弱掛かったが、捜査を開始する」


腕時計を見て、彼は誰に言うでもなくそう呟いた。
そういえば、迅速にワカッテマスさんたちがここに来たのはいいものの、
現状把握と指示だけで結構時間が経ったような気がする。
私はワカンナインデスさんと話していたから時間はそう長く体感しなかったが、
静かに進行を見守る乗客にとっては
非常に長く、不安な時間だっただろう。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:12:33 ID:Xh1v.ZI6O<>

しかし、今から捜査がはじまる。
しかも担当するのが敏腕警部と抜け目のない刑事だ、
更にふたりとも護身術をマスターしているので
いざ犯人が暴れても取り押さえてみせるだろう。

私のなかの不安は、拭いきれた。

ただ、何も把握できてない乗客にとっては、
発砲の犯人が見つかるまで不安は拭いきれないだろう。
一刻も早い解決を望んでいるはず。

(゚、゚トソン「(警部なら、きっと……)」

ワカンナインデスさんの言ってた、殺し屋の存在も考えると、
逃走されないように列車がVIPに到着するまでの間一時間で解決をしてほしい。
それはいたって容易いことのはずだ。


そう、それは容易いことのはずだったのだ。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:13:54 ID:Xh1v.ZI6O<>

(´・ω・`)「ワカッテマス」

( <●><●>)「はい」

警部は、手始めにとワカッテマスさんを呼んだ。
呼んだと言ってもすぐ隣に立っているので、
単純に話をするぞ、と呼びかけただけだろう。

(´・ω・`)「鑑識は……いないだろうけど、お前、できるか?」

( <●><●>)「道具は全部9に渡したので、
       今の私にできるといえば聞き込みくらいです」

(´・ω・`)「ふーむ……」

警部は考え込み、その数秒後、
自信なさげな声ながらワカッテマスさんに質問をした。
しかし、その答えは警部の予想できたものだったわけだ。

(´・ω・`)「このワゴン、調べられるか? 指紋やらなにやら」

( <●><●>)「あー…… 無理です。
       しかし、なぜワゴンを?」

(´・ω・`)「ちょいと気にかかってね。
      じゃあバカが戻ってきたら調べさせるか」


そう言って警部は視線をワゴンからはずす。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:21:51 ID:Xh1v.ZI6O<>

ワゴンの事なら、調べるよりかは
あのアテンダントに訊けばいいのに。
そう思ってはみるものの、なぜか言い出せない。

( <●><●>)「なら、先に位置取りをメモしておきますよ」

(´・ω・`)「ん?」

( <●><●>)「この列車は、二列編成で一列につき八つの席があります。
       各席の情報でもあれば、聞き込みがラクになりますし」

(´・ω・`)「はーん。
      ついでに、乗客のデータも調べといてくれよな」

( <●><●>)「はい。まあ、寝てる人もちらほらいるようですから、
       そちらは後回しにしますけど」

(´・ω・`)「起こせよ!」

警部は、半ば笑いながらワカッテマスさんの肩を叩き、言った。
顔色は変わらず、淡々とワカッテマスさんは答える。

( <●><●>)「パニックになり、無駄に騒がれて捜査の妨害をされるよりかは
       先に全体図を頭に叩き込んでおきたいのです」

( <●><●>)「まあ、あのアテンダント、椎名さんに訊けば早いですが」

(´・ω・`)「ばかだなー。それじゃあだめなんだよ」

( <●><●>)「?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:24:36 ID:Xh1v.ZI6O<>

ワカッテマスさんが事件発生直後、
あの時乗務員に指示をいろいろしたが、
その際名前とちょっとしたデータも聞き込んでいる。
そのさりげなさはなかなかで、詰まることなく淡々と進んだ。
名前は椎名でぃで、銃声をすぐ近くで聞いた、と証言している。

警部が、そのでぃさんが戻ってくるのを半ば懼れている。
しかし、ワカッテマスさんはあまりそこには突っ込まず、先に行動にでた。


( <●><●>)「まあ……とりあえず先に位置取り確認しておいた方がよさそうですね。
       少々お時間をいただきます」

(´・ω・`)「あいよー」

(´・ω・`)「……よし」

(゚、゚トソン「警部、警部」

(´・ω・`)「あ、なんだいたの?」

(゚、゚;トソン「いましたよ!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:26:18 ID:Xh1v.ZI6O<>

ワカンナインデスさんにはどこかで特別捜査を指示し、
ワカッテマスさんは位置取りの確認に動いた。
彼らのそのすばやさはすごいが、
いまいち彼らの言動には腑に落ちない点がいくつかある。
しかしそれを言う前に、警部が先に口を開いた。


(´・ω・`)「ねえ、カメラ持ってる?」

(゚、゚トソン「か……ケータイのでよければ」

彼は思考と同時に「あー……」とえらく長い間声を漏らすも、
それが止まると同時に否定された。

(´・ω・`)「ケータイじゃなくて、普通のがいい。ケータイでも構わないけど……」

(゚、゚トソン「うう……ワカッテマスさんは持ってないの?」

( <●><●>)「え?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:30:55 ID:Xh1v.ZI6O<>

いきなり話を振ると、えらく拍子抜けな声を発し彼はこちらに向いた。
指紋検出セット、ルミノール試薬、
そんな捜査グッズを持ち歩いている彼ならカメラくらい……
そう思っていたが、違った。


( <●><●>)「……カメラはないですね。
       ケータイのでしたらありますけど」

(´・ω・`)「だぁからそれじゃだめなんだってバーカ」

( <●><●>)「……失礼。では作業に戻ります」


警部、よく平然と毒を吐けるな。
ワカッテマスさんは警部よりも背が高く、
がたいもよくて顔も厳ついのに。
それに食いつくこともなく、ワカッテマスさんは
再び手帳に図やらを書き込み始めた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:32:48 ID:Xh1v.ZI6O<>

(゚、゚トソン「なぜケータイのカメラだとだめなんですか?」

(´・ω・`)「ん? 画素数にもよるけど、細かいところまで撮影しきれないからね」

(゚、゚トソン「画素数?」

(´・ω・`)「情報の授業で習わなかった?」


情報と言えば、常にキーボードを叩いては
演算の練習をしたりHTMLで文章を作成したりはしたけど。
返事を言う前に彼は先に言った。


(´・ω・`)「簡単に言えば、ケータイでイラスト見るときあるじゃん?
      そのイラストを構成するひとつの粒みたいな感じ。ドット?」

(゚、゚トソン「あー」

(´・ω・`)「ちなみにトソンちゃんのそれ、画質いい?」

(゚、゚トソン「結構ぼやけますね」

(´・ω・`)「じゃあだめだ」

つまり、より高画質で鮮明な写真でないとだめだから、ということらしい。
しかし、今この現場にて写真を撮るべき場所など、
はたしてあるのか、それは私にはわからない。
細部まで見えないとだめという点では、
細々としたものを撮るつもりなのだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:34:26 ID:Xh1v.ZI6O<>

そして警部が腕組みをし、
ワゴンを調べようとしてしゃがみ込んだ時。

(´・ω・`)「むっ」

(゚、゚トソン「どうしました?」

(´・ω・`)「パルファンの匂い……ここからだったか」

警部が、手袋をしてワゴンを物色しようとした矢先、そう言った。
パルファンといえば、でぃさんから香ったと言うあの香水のことか。
しかし、なぜワゴンから?

(゚、゚トソン「うーん……確かに。
     でぃさんのより強烈です」

(´・ω・`)「………」

警部がワゴンの中に手を伸ばそうとした時、
一号車の前方、運転室へと続く部屋が
大きな音をあげて、一気に開いた。
乗客もワカッテマスさんも私たちも、皆そちらを向いた。

(#゚;;-゚)「刑事さん、全ての報告を終え、こちらから伝言があります」

( <●><●>)「はい。なんですか」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:37:19 ID:Xh1v.ZI6O<>

ふたりのやりとりを気にせず
警部がワゴンを漁ろうとするとき、
でぃさんから大声が発せられた。
それに動揺して警部もぴたりと手を止める。

(#゚;;-゚)「警部さん!」

(´・ω・`)「ム」ピタ

(#゚;;-゚)「……ええと、言いにくいのですが」




でぃさんから放たれた言葉は、
あまりにも意外だった。




(#゚;;-゚)「車掌長命令により、
     令状がない限り無駄な捜査は省かせていただきます」





 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 2章
  「二人の刑事」

    おしまい



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/30(火) 21:42:06 ID:Xh1v.ZI6O<>2章終了にて、やっと全体の1/6投下し終えたかなーという感じです。
前まではVIPで投下してたのですが、携帯からだと何かと不便ですので移住しました。

次回、3章投下は少し遅れるかもしれません。
が、できる限り9月上旬(できれば来週中)には投下します。

読んでいただきありがとうございました!<> 29日・30日「納涼夏祭り」<><>2011/08/31(水) 14:19:20 ID:0bafkTuoO<>あれ?これGREEでみたことある気がする<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/08/31(水) 14:25:36 ID:HZOIkU2kO<>そりゃ、一度あそこで推敲もかねて投下してるからね
だから内容はちょっと違う<> 三月<><>2011/08/31(水) 14:55:49 ID:0bafkTuoO<>やっぱそうだったか<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/02(金) 09:16:49 ID:5jxkdzUg0<>こっち来てたのか
乗務員から刑事まで怪しい奴しかいないな<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:20:12 ID:hZF5R6oIO<>


3章「アーボンオレンジ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:23:14 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「車掌長命令により、
     令状がない限り無駄な捜査は省かせていただきます」



(; <●><●>)「!?」

(´・ω・`)「……なんだって?」


一度深呼吸を挟み、
でぃさんは落ち着いた様子で、彼ら警察に説明をする。
落ち着いているのだが、どこか焦りを感じる。
まあ、当然だろう。


(#゚;;-゚)「だから、正式な手続きを踏んだ上でないと捜査を認めない、と。
     これは本社の方からの判断でもあります」


警察相手に、捜査をするな、と対抗してきているのだから。
しかもそれは彼女の意志ではなく、ただの言伝にすぎないのだから。


(; <●><●>)「しかし……」

ワカッテマスさんは戸惑う。
オオカミ鉄道本社の方から、ストップがかけられたのだ。
当然、腑に落ちないだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:24:58 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「発砲があったのは事実――」

(#゚;;-゚)「――ではないですよね?」

(´・ω・`)「……!」

珍しく、警部が口ごもった。
そして、建て前強気な彼女は
続けてその事情を説明する。
これも上の人からの伝言なのだとすると、非常に不利となる。


(#゚;;-゚)「確かに私自身は銃声“らしき”音は聞きました、
     硝煙の匂いがするの“かも”しれません」

(#゚;;-゚)「……しかし、その証拠がないのも事実です」

(´・ω・`)「それを今から――」


警部が反論するも、それもまた彼女によって制止される。

(#゚;;-゚)「その事実関係の追究に、
     ワゴンの捜査は必要ありません」

(;´・ω・`)「………遅かった、か」

そうつぶやき、落胆する警部に
追い打ちでも仕掛けるのか、
そのまま彼女は続けた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:26:15 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「しかし、怪我人は不在、弾痕も見当たりません」

(#゚;;-゚)「捜査の必要性はない、そう判断なされたようです」

( <●><●>)「それは違います」

(#゚;;-゚)「……刑事さん」


ふたりの言い合いの間に、
一旦手を止めていたワカッテマスさんが口を挟んだ。
きょとんとするでぃさんに、彼が食ってかかる。
少しでぃさんがかわいそうだとは思うが、
彼が納得いかないのは当然であるわけで、
とても擁護しようとは思えない。



( <●><●>)「弾痕がすぐ見える場所にないだけの可能性が非常に高いのです」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:28:47 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「……と、もうしますと?」

( <●><●>)「この列車は、ご存じの通り揺れがやや激しい。
       撃ち損ねを考慮する必要があるのですよ……
       たとえば、誤ってソファーを貫いてしまった、とか」

(#゚;;-゚)「……」


まあ、言われてみれば筋は通っている。
ソファーに弾丸が埋もれた場合、
摘出にはひと手間かかる上に、
ソファーは黒地の布を使われているので
まず弾痕も見つけにくいと言える。

しかし、反論の手だてでも考えているのか、
仕切りにでぃさんは時計で時刻を確認している。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:30:07 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「……それは、列車が到着したのちに捜査をすればいいのでは?」

( <●><●>)「……」

この彼女の提案に、ワカッテマスさんは一瞬動きが止まった。
しばらく悩み、なにやら唸っている。

(; <●><●>)「―――……!」

(#゚;;-゚)「でしょ? なにも今捜査をする必要性は……」

(; < >< >)「〜〜〜〜……」

(#゚;;-゚)「……聞いてます?」


しきりに唸っているワカッテマスさんを
心配したのか、でぃさんが彼に応答を求める。
尚もなにやら思考に耽るなか、
彼は一度目を瞑って深呼吸してから答えた。

それはでぃさんが予想していた答えよりも
遙かに斜め上をゆく答えだっただろう。




( < >< >)「……」

( <●><●>)「わかりました、いまここで言いましょう」

(#゚;;-゚)「はい」

( <●><●>)「……実は」




( <●><●>)「この場に、殺し屋が存在しているのかもしれないのです」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:31:55 ID:hZF5R6oIO<>

彼は、そう言った、乗客皆に伝わるよう大声で。
私は、偶然そのような話を予め聞いていたため
驚かなかったものの、普通こんな事を聞かされては


(;#゚;;-゚)「なっ!?」

(´・ω・`)「なんだと……?」

「え?」
「殺し屋だと!?」
「きゃっ……きゃあああああ!」


(゚、゚トソン「………」

当然、パニックに陥る。


( <●><●>)「……可能性、の話です」


彼はそう前置きして、ゆっくり彼は
ワカンナインデスさんが私にしたような説明をした。
彼の数倍はわかりやすい説明の仕方で。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:33:37 ID:hZF5R6oIO<>

それを興味深く聞いていたでぃさんは、
またも時計を見、そして彼に返す。

(#゚;;-゚)「……根拠は、それだけですか?」

( <●><●>)「はい」

(#゚;;-゚)「………では、捜査を認めます」

( <●><●>)「じゃあ――」


「ただし」と、大きな声で彼女が遮った。
殺し屋の下りで一瞬焦りが窺えたのだが、
今はもうそのような様子は見られない。


(#゚;;-゚)「発砲があった事実関係のみ、
     それに関する捜査を許します」

(#゚;;-゚)「一号車以外に捜査のメスをいれたり、
     関係のないと思われるものへの
     執拗な捜査は許しません」

( <●><●>)「……」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:35:26 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「それで結構」

ワカッテマスさんが言葉を詰まらせるなか、
警部は軽くそう告げた。

彼はワゴンに執着していたので
少しは反論をすると思ったが、
そんなことはなかった。




しかし、警部は彼女に提案をする。

(´・ω・`)「聞き込みは、していいんだね?」

(#゚;;-゚)「発砲に関する事情徴収、
     及び持ち物検査に限らせていただきます」

(´・ω・`)「そうか」

警部はやけにあっさり認めた。
こんなに軽い人だったっけ、と思っていると、
早速条件を破綻させるようなことを聞きだした。



(´・ω・`)「でぃちゃん、このワゴンのことなんだけど……」

(#゚;;-゚)「却下させていただきます」

(´・ω・`)


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:37:12 ID:hZF5R6oIO<>

(;´・ω・`)「いや、これは単なる疑問なんだ。
      妙に匂うからね」

(# ;;-゚)「………臭う?」

(´・ω・`)「ぱるふぁ……香水の、ね」

(´・ω・`)「心当たりない?」

(#゚;;-゚)「えっ?」


パルファンの件について警部が「質問」すると、
不意を突かれたのかでぃさんは再びきょとんとする。
なんのことかわからない、みたいな顔だったのだが、
意味を理解したのか彼女は軽い口振りで警部に返した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:40:06 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「あ、ああ……お恥ずかしい話、こぼしちゃいまして」

(´・ω・`)「こぼす?」

でぃさんは若干顔を赤らめた。
そのことを警部を追究すると、
言葉を濁らせつつも、彼女は香水の件を説明した。

(#゚;;-゚)「その……ワゴンの近くに私物の香水を置いてたのですが、
     例の揺れで中身をぶちまけちゃいまして」

(´・ω・`)「はーん。それが、このくさい原因か」

(#゚;;-゚)「も、申し訳ありません」

でぃさん曰く、
ワゴンの近くの台に私物の香水を置いていたのだが、
それがおよそ30分前に起こった強い揺れのせいで
ワゴンの中心部(収納スペース)に落下、
割れはしなかったものの中身の大半がそこにこぼれたと言う。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:41:39 ID:hZF5R6oIO<>

しかし、その事情を聞き終えた警部は謝礼を述べ、
身を一旦引いた警部に代わりワカッテマスさんが話を伺っている。



(´・ω・`)「……こぼした、か」

(゚、゚トソン「しかし警部、パルファンがどうしたんですか?」

(´・ω・`)「え?」

(゚、゚トソン「何度も諄いようですが、
     たかだか匂いでそんな……」

(´・ω・`)「……」


警部は近くに歩み寄り、
私の耳にそっと顔を近づけぼそぼそしゃべった。

(´・ω・`)「……限りなく怪しい」

(゚、゚トソン「しかし、ワカッテマスさんも気にしてないようですよ」

(´・ω・`)「わかってないなー」

(゚、゚トソン「ム!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:45:33 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「パルファンは、香水の中でもとにかく濃度の高い高級品なんだ」

(´・ω・`)「一滴たらすだけですばらしく香るのに、そんな大量にこぼしたって……」

(´・ω・`)「それじゃあこんな程度の匂いじゃ済まないよ」


私は一度、注意深く、且つでぃさんにバレないように鼻を利かす。
微かに匂う香水の香り、
それとよくわからない悪臭も漂っているのがわかる。
もし大量にこぼしたならもっともっとすごい匂いがする、
と警部は言うが、果たしてそうだろうか。


(゚、゚トソン「警部が勘違いしてるんじゃないんですか?
     コロンか何かと」

(´・ω・`)「最初は僕もそう思ったよ」

「でも……」と逆接を挟み、彼は続けた。


(´・ω・`)「さっき、僕はパルファンと口走ったのに、彼女は否定しなかった。
      これはパルファンで間違いない」

(゚、゚トソン「聞き取れなかっただけじゃ……」

(´・ω・`)「じゃあ聞き返すだろうよ。
      『パルファン?』って」

(゚、゚トソン「!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:47:27 ID:hZF5R6oIO<>

そこで先程の会話が生きてくるのか。
後から、これがパルファンでないとわかれば、
限りなくでぃさんは怪しくなる。

それは本件となんら関係のない話だと思うのだが、
嘘をつく以上は何かワケがあるはずだから
それを口実に証言を聞き出せる。

もちろんそれも本件とは一見関係のない話の可能性が高いが、
警部は、何度も、そういうどうでもいい証言から事実を導き出してきた。



(#゚;;-゚)「さて……」

ワカッテマスさんと話を終えたでぃさんは、
一段落終えたような顔で、警部に歩み寄る。
警部もそれに気づき、中腰だったのを
背筋を伸ばしてまっすぐ立つ。

でぃさんは、ワゴンに手をかけて一言。


(#゚;;-゚)「片付けさせていただきますね」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「は?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:49:04 ID:hZF5R6oIO<>

彼から、なんと拍子抜けな声が出たものか。
警部は完全に呆れかえった顔で、
私やワカンナインデスさんに毒を吐く時に近い声色になっている。
一方でぃさんは、相変わらず時計を気にしながら
警部の出方をうかがっている。


(´・ω・`)「いやいや、いやいやいやちょい待ち」

(#゚;;-゚)「なぜですか?」

あまりにも唐突な一言に、警部は混乱したのか、
顔を俯かせて両手掌を見せ「まあ待て」とハンドサインを送っている。
数秒して、反論の手だてが思い浮かんだのか、顔をあげた。


(´・ω・`)「なんでさ、証拠物件と――」

(#゚;;-゚)「――なりません」

(´・ω・`)「え?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:52:17 ID:hZF5R6oIO<>

((#゚;;-゚))「先程も言いましたが、この件に関して、ワゴ……ん……」グラグラグラ…

((゚、゚;トソン「きゃっ!? 今度はなに!?」ガッタン

でぃさんがまたさっきの話をしてワゴンを持って行こうとすると、
30分前感じたのと同じくらいの激しい揺れが電車を襲った。
その揺れは、一度目同様に一瞬で、
縦に数十センチはいくのではないかと思う程に揺れた。

ひどい轟音が車内を駆け巡り、静かだった乗客もざわついてきた。
その衝動の余韻に駆られつつも、皆が落ち着きを
取り戻しつつあるタイミングででぃさんは言った。


(#゚;;-゚)「……失礼、最近決まった時刻に、
     ご覧のような激しい揺れが当列車を襲うのです」

(;´・ω・`)「一応聞きたいんだけど、なんで?」

(#゚;;-゚)「線路の老朽化に伴い、少々ぼろが出てきたのでしょうね」

申し訳なさそうな顔色で頭を下げる。
警部がその点に突っ込みたさそうな顔をするも、
無視して彼女は本題に入った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:54:19 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「とにかく、本件と関係ない以上は
     このワゴンは撤収させていただきます」

(´・ω・`)「いや、弾痕の調査を終えるまでは……」

(#゚;;-゚)「その必要には及びません」


なぜ、
なぜ彼女はそこまでしてワゴンを隠すのだろう?
これも上からの命令か?


(#゚;;-゚)「もしワゴンのボディに弾丸が当たれば、
      少なからずや金属音がします」

(#゚;;-゚)「お菓子に被弾したのならその中身のお菓子が散乱するだろうし、
     ドリンクの容器に当たれば間違いなく中身が吹き出ます」

(´・ω・`)「だけど……」

(#゚;;-゚)「……すみません、持って行かないとだめですので」


彼女が、最後にぼそっとそう言い残し、
強引にワゴンを引っ張って私の横を通り、
そのまま一号車から出て行った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:56:36 ID:hZF5R6oIO<>

腑に落ちない、と言いたげな警部の気持ちはわかるのだが、
これも「命令」であるなら彼女に同情しないでもない。
彼女がワゴンにしたことと言えば
香水をぶちまけた程度、さして別に問題はなく、
おそらく彼女は、ワゴンを調べさせても問題ないと
思っているに違いないが、どこの世界も上司には逆らえないのだ。


(´・ω・`)「……まあ、あとで無理矢理にでも調べて見せるさ」

「………おい」

(´・ω・`)「はい?」


でぃさんが退室したあと、
静かだった乗客のうちひとりが警部に声をかけた。
席で言うと警部の隣のB−7、あのお茶の人だろう、
ちょうど警部も彼の横に立っていたので
声をかけやすかったのかもしれない。



(`・ω・´)「……結局、話はどうなったんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:58:20 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「なにが、ですかな」

(`・ω・´)「殺し屋の件だよ。
      もしそうだとすると、怖くて
      ここには居られないのだがな」

(゚、゚トソン「(お茶の人って彼だったんだ……)」


私の隣に座っていた人、それは私も面識がある人だった。
トイレから戻ってくる際、ぶつかってしまった人である。

この強面っぷり、ドスの利いた低い声、
視線だけで人を殺せそうな鋭い目つき。
私が警部ならとっさに「おまえが犯人だ!」
と、特定してしまいそうな程に怖かった。

しかし、お茶の人と声が若干……
いや、全然違う気がする。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 16:59:51 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「ハハ、ご心配なく」

(´・ω・`)「もし殺し屋があなたを狙っても、
      返り討ちにしそうですからね、見た目的に」

(`・ω・´)「……私が銃に勝てる、と」

(´・ω・`)「第一印象です」


こんなに怖い人相手でも平然と毒を吐ける
警部にある種の尊敬の視線を送っていると、
警部は、またも鼻を利かせ、
執拗に彼のまわりの匂いを嗅ぎだした。



(`・ω・´)「何してんだ」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「……匂いますねぇ」


警部が、笑った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:02:41 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「あなた、シトラスの香りが漂っていますけど」

(´・ω・`)「もっと具体的に言うと、みかんのような……」

(;`・ω・´)「……だから、どうした」


あれほど威圧感を発していた男から
僅かながらの焦燥感が感じられた。
そして警部は、続けて「シトラス」について話を進める。


(´・ω・`)「これは……そうですね、
      こんな香水じゃないですか?」

そういって彼が何気なく出したもの、
男は当初それの意味するところがわからず、
彼がとりあえずでそれに貼られてある文字を
読んでみたところ、途端に顔色を悪くした。


(;`・ω・´)「……あ、『アーボンオレンジ』……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:04:36 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「香りますねぇ、このみずみずしさ、
      酸味を感じさせる高濃度な……」

一度男が彼にとてつもない焦りを感じていたであろうはずが、
男は開き直ったか元の威厳のある顔をして反論した。

私は、そもそもこの香水のなにが悪いのかがわからないのだが、
黙ってふたりのやりとりを見つめている。

(`・ω・´)「ハッ! アーボンオレンジがなにかあるかね?」

(`・ω・´)「私はこの香水をよくつけているのだ、
      ミストタイプで使いやすいしな」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「………ぷっ」

(`・ω・´)「あ?」


まあもっともな反論をする男に、
警部はなにか言うのかと思えば、
その直後、私の想像できる展開とは
全く別の展開となった。



(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃひゃ!
      あ、アーボンオレンジをですか!? ぶひゃひゃ!」

(`・ω・´)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:07:39 ID:hZF5R6oIO<>

ああ、睨んじゃってるよこの人。
そして睨まれちゃってるよ警部。

ここで殴り合いでも起これば、
たぶんだれも止められないと思う。


(´;ω;`)「いまのあんたの態度を見てわかった!」

(`・ω・´)「ハ?」

(´・ω・`)「あんた……」



(´・ω・`)「“生の”アーボンオレンジを塗ったな?」


(`・ω・´)「……ハ?」

警部は、彼の何からそんなことを
断言したのかはわからないが、
少なからずや男はなにかに動揺していた。
根拠はわからずも、男は、警部の言った
自分が“生の”アーボンオレンジを使ったことを否定する。


(`・ω・´)「なにを急に」

(´・ω・`)「……実は、ね」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:09:37 ID:hZF5R6oIO<>

男の前で挑発でもするかのように、
アーボンオレンジの香水を左右に揺らす。
ちゃぷちゃぷと音を鳴らし、その存在を
存分にアピールした上で、語った。


(´・ω・`)「“ミストタイプ”の『アーボンオレンジ』の香水なんて、存在しないんだ」

(;`・ω・´)「………なんだと?」


警部は確かに言った、
“ミストタイプ”の『アーボンオレンジ』の香水は存在しない、と。
しかし、今、彼が持っているその香水が
その“ミストタイプ”の『アーボンオレンジ』ではないのか。

私は不思議に思うも、警部は
依然怪しい笑みを浮かべている。


(;`・ω・´)「……意味が分からないな」

私も、男とは違う点でだが
意味が分からないことがある。
警部は、あからさまに嘘をついている。
なぜ、嘘をつくのかがわからないのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:11:40 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「存在しない香水で香らせる……」

(´・ω・`)「生の、でないとあり得ない」

(;`・ω・´)「……」


男は、暫く黙った。
しかし、少しして彼は開き直ることに決めたのか、大声をあげた。


(`・ω・´)「ああ、そうさ。
      私は生のアーボンオレンジを使った。
      それで、何かあるのか?」

(´・ω・`)「……」


彼の言っていることは理に叶っている。
嘘をついた(?)のはいただけないが、
所詮「だからどうした」なのだ。

そういう私の考えとは裏腹に、
警部は彼に確認をとった。


(´・ω・`)「……ほんとうに、生、ですね?」

(`・ω・´)「男に二言はない」

(゚、゚;トソン「(嘘つけ!)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:13:26 ID:hZF5R6oIO<>

男が完全に開き直りそう断言した。
これで警部の気が済むと思ったら、
真逆に事が運ばれることになってしまう。

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「ぶぷっ」

(`・ω・´)「あ?」


警部は唇を噛みしめ、顔を歪めている。
端から見れば、ただ悔しいだけのように窺えるが、実は違うのだ。
彼がこんな顔をするとき、それは。




(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!
      あ、あんたサイッコーにぶぁーか! ぶひゃひゃ!!」


笑い狂う。




(#`・ω・´)「貴様何のつもりだ、さっきから人を見下すような事を!」

男はついに我慢の限界になったのか、
座席に取り付けられているテーブルを強く叩いた。
その打撃音が車両内に響き、一瞬だがその場は静まり返った。
男の怒りは当分おさまらないだろうと皆が思う中、
警部は大笑いの余韻に尚も浸っている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:15:04 ID:hZF5R6oIO<>

(´;ω;`)「ひー…ひー…」

(´・ω・`)「……うぉっほん」


独特の咳払いをして、呼吸をととのえている。
男が静かに警部を見守る中、警部は口を開いた。


(´・ω・`)「……今のが、嘘。
      これは歴とした“ミストタイプ”の『アーボンオレンジ』の香水だ」

(`・ω・´)「……貴様、何が言いたい?」

(´・ω・`)「僕はね、あんたからほんとうの証言を
      引きずり出そうとして、鎌掛けたの」

(´・ω・`)「そして、今証言したよねぇ?
      『生のアーボンオレンジを塗った』と」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「今更前言撤回なんてさせないよ? ここにいる乗客みーんなが証人だ」

(`-ω-´)「……」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:17:02 ID:hZF5R6oIO<>

依然男は黙って、警部の話を聞いていた。
結局、警部は、その巧妙とも言い難い作戦にて
一見どうでもいいような証言を引き出したにすぎない。
それも、相手が逆上して殴りかかるかもしれないハイリスクな現場において。


(`・ω・´)「……」

(`・ω・´)「フン。それがどうした。
      “生のアーボンオレンジを使いました”なんて証言、なんの需要もないように思えるが?」

( <●><●>)「そうですよ警部」


男に加算するように、ワカッテマスさんが賛同した。
ワカッテマスさんが、というより、
おそらくここにいる皆がその点を不審に思っているだろう。
なぜ、そこまでしてそんな証言を得たかったのか。

.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:18:26 ID:hZF5R6oIO<>

( <●><●>)「生だからって、何が変わるのですか」

(´・ω・`)「じゃあワカッテマスにクイズだ」

(; <●><●>)「……フリーダムですね」



(´・ω・`)「生のアーボンオレンジ、
      香水のアーボンオレンジ。
      さて、相違点はどーこだ?」


警部は彼にそうクイズをだし、
両手で人差し指のみを突きだして、
あたかも写真を撮る際にピースを
するときのような構えをとった。


このクイズの意味するところ、
「生のアーボンオレンジを使うことでなにが変わるのか」
を証明しようとしているに違いない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:19:31 ID:hZF5R6oIO<>

( <●><●>)「……」

( <●><●>)「やっぱり、香水用に加工されたのと
       そうでない、の違いですかね」

(´・ω・`)「言い換えると?」

( <●><●>)「天然と人工の違いくらいしか……」

ワカッテマスさんがそういうと、
警部は軽く拍手をした。
手と手を叩く音だけが響く。
しかし、やはり警部の意図は読めない。


(´・ω・`)「そう、いい言葉で表現してくれた」

(´・ω・`)「人工と天然……
      市販のりんごジュースを飲むのと生のりんごの果汁を飲むくらいに違うよね」

(゚、゚トソン「それがどうしたんですか……」

(´・ω・`)「おっ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:20:39 ID:hZF5R6oIO<>

警部の考えが読めないまま、ついに本音がぽろっと出てしまった。
しかもそれを警部にもろに聞かれ、こっちに振り向かせてしまった。
余計なことしたかなぁ、と反省するが、
意外に彼はちょうどいいやと言って私に歩み寄ってきた。


(´・ω・`)「じゃあ次はトソンちゃん」

(゚、゚トソン「えっ」

(´・ω・`)「“香水のアーボンオレンジ”にはなくて
      “生のアーボンオレンジ”にあるもの、なーんだ?」

(゚、゚トソン「えっ」


急に乗客の視線が私に集まったのを実感した。
嘘、こんななかではずしたら恥曝しもいいところではないか。
しかし、黙っているわけにもいかない。
答えを必死に考えるも、事件に関係しそうな答えは思い浮かばない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:21:49 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「難しく考えなくていい。
      さっき僕が言ったことを思い出して」

(゚、゚トソン「さっき……」


記憶は数十分前に遡る。
椅子に座っていて、警部の香水の自慢を聞かされていたのは覚えている。
ウン十万はする高級な香水を撒かれ、リラックスできたのも覚えている。
そういえばあのとき、いろいろと豆知識を得意げに語られていた気がする。


(゚、゚トソン


(゚、゚トソン「キタコレでのみ手に入る!」

(´・ω・`)「バーカ」

(;、;トソン「えっ違うの!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:23:21 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「それは両方一緒じゃないか。
      100%の果汁にはある作用があったよね?」

(゚、゚トソン「ひゃく……」

(゚、゚トソン「あ、治癒とか?」


このとき、私はちょっぴりボケたつもりで言ったのだ。
正解がわからないのだから、ここは無能な振りをして
警部に呆れさせ、とっとと話を戻してもらおう、と。

そう、思ったのに。



(´・ω・`)「そう、アルコールなどいっさい化合されていない
      生粋のアーボンオレンジ、それの意味するところ」

(´・ω・`)「それは、治癒力の有無だ」

(゚、゚トソン「あってたんだ……」

(´・ω・`)「なんだって?」

(゚、゚;トソン「なんでもないです」


慌てて首を振る。
警部が自慢げな顔をするなか、勘で当てました、
だなんて言えそうにもない。
警部はすぐに本題に戻った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:24:48 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「それは数%でも他の物質を許さない、
      完璧な純度を誇る場合のみ効力を発揮する」

(´・ω・`)「しかし、あくまで香りを目的として使うなら、
      それ専用に化合された香水を使えばいいのだが、
      そうしなかったんだあんたは」

(´・ω・`)「つまり、香りなんかどうでもよかった、
      別の用途で使いたかったんだろ?」

( <●><●>)「……治癒」


黙り込んだ男を前に淡々と解説を続ける警部に、
ワカッテマスさんが補足を入れた。
いや、解説をスムーズに進めるための策だろう、
彼もこの話の必要性を感じていないと思っているのだろうか。


(´・ω・`)「そうさ。
      あんたは治癒を目的でアーボンオレンジを塗った」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:27:07 ID:hZF5R6oIO<>

(`・ω・´)「なにを根拠に!」

この流れになってはじめて男は口を開いた。
だがそれに動じることなく、
寧ろ逆手にとったのは警部だ。


(´・ω・`)「それを今から調べるのさ」

(´・ω・`)「ワカッテマス、こいつの身体チェックをしろ」

( <●><●>)「え?」


警部のまさかの発言、
彼が事の如何を問う前に警部が動いた。




(´・ω・`)「こいつは身体のどこかに大きな傷を持っている!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:29:32 ID:hZF5R6oIO<>

(゚、゚;トソン「(そ……そっかぁ〜!)」

警部は、端から香水なんてどうでもよかったのだ、
なにかと理由をこじつけて、
男の身体チェックに乗り込みたかったのだ。
あの「生のアーボンオレンジを塗った」という証言が嘘でも、
身体チェックに乗り出せる事には違いない。

普通にチェックするのに持ち物は許されても、
身体の異常を調べたいのですなんて言ったって
令状も警察本部からの報告もない今、却下されるに違いない。
傷がなかろうと乗客が見守る中、
服を脱ぐことすら躊躇われる。

まして彼はひょっとするとヤのつく人かもしれない、
その抗争の際の傷があったりすると、非常に気まずいことになる。
ワカッテマスさんも警部の発言の真意がわかったのか、彼に続いて動いた。



(;`・ω・´)「な、やめろ! さわるな!」

( <●><●>)「しかし、傷があったらなんなんですか?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:31:33 ID:hZF5R6oIO<>

そう警部に反論するも、手は男を捕らえようとしている。
一応上司の命令だからそのように動くも、
彼は真意がわかったはずなのにまだ食らいつく。
しかし警部は、たった一言で、ワカッテマスさんの
刑事としてのモチベーションをマックスにまで引き立てる。


(´・ω・`)「生のアーボンオレンジを使っている以上、
      出血するような傷はあるはずなんだよな」

(´・ω・`)「……たとえば、弾丸が貫通した穴とか、ね」

( <●><●>)「!」


それ以上、ワカッテマスさんは反論しなかった。
男と取っ組み合いになり、男の腕っ節のよさから若干ワカッテマスさんが押されるも、
腕っ節のよさならワカッテマスさんもそう容易く負けるはずがない。

彼は身長は180を超え、
上腕二頭筋は1リッターのペットボトル並にはあるのだから。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:38:22 ID:hZF5R6oIO<>


刹那、男に異変が生じた。



(;`・ω・´)「―――ッ!」

( <●><●>)「! ここか!」


ワカッテマスさんが男の右腕に触れた瞬間、
男は声にならぬ悲鳴をあげた。
汗は一気に吹き出し、右腕も後ろに引いた。
何より、顔が苦痛で歪んでいる。
それを見逃さなかったワカッテマスさんは、
彼よりも速く右腕を強く握った。



――瞬間、男は凄まじい悲鳴をあげた。



(;` ω・´)「ぎゃああああああッ!!
       このッ!」


握っているワカッテマスさんの手を執拗に殴るも、
全く威力がなさそうで、ワカッテマスさんも全く怯んでいない。
しかしそれでも反撃を繰り返す男を、警部が制した。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:41:32 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「よし、そこを調べろ」

( <●><●>)「袖、めくらせてもらうぞ」

殴ってくる男の左腕を警部の左手で、
のたうち回り、蹴ってくる足をワカッテマスさんが上から覆い被さるようにして押さえる。
そして急ぎながらも丁寧に、ワカッテマスさんは
男の左腕に通されている上着の袖をあげていく。

その生地は若干ぶ厚めなようで、
傷口に刺激を与えないように捲るのは難しそうだった。


(;`-ω・´)「………」

(; <●><●>)「け、警部、これは……」

(;´・ω・`)「……ひどい、な」


ワカッテマスさんが、
こう腑に落ちない顔色を見せる中、
警部も同じく辛辣な表情を浮かべている。

男は諦めたのか、静かに彼らに「ソレ」を見せていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:45:29 ID:hZF5R6oIO<>

腕には、かなり大きな、しかも
いくつもの「切り傷」が刻まれていた。

それは昔の古傷なんてものではない、
真新しい、それはついてから一時間もしていないであろう生々しい傷だった。
止血が施されているようで血が垂れることはなけれど、
ワカッテマスさんが強く握ってしまったせいか血が滲み出てきている。
膜は張っているのでまだましかと思われるが、膜が見えるということは、
すなわち肉が見えているということだ。

乗客のなかにはひぃっと悲鳴をあげるものもいたが、
警部が彼の傷を見て笑うことはできなかったという。
なぜか、なんて言うまでもない。
これはどう見ても……


( <●><●>)「しかし……
       これは『弾痕』ではないですね、どこからどう見ても」

(;´・ω・`)「明らかに、鋭利な刃物できられたような傷だな」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:47:15 ID:hZF5R6oIO<>

二本、三本と線がいっているその傷は限りなく怪しくて、
まさに非日常的なものでこそあるものの、
ワカッテマスさんがそれを責めることはできなかった。


もともと、警部も「弾痕は彼に当たったのだろう」という推理を
誰に言わずともしていたのだから。


( <●><●>)「……一応、メモしておきますか」

先ほど警部によって指示されていた、
位置取りの記入はとうに済んでいて、
今はそこにデータを書いている。

それを横目で見ながら、
男は依然冷や汗を流し、警部に訴えかけた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:49:15 ID:hZF5R6oIO<>

(;`・ω・´)「……確かに、治癒目的で生のアーボンオレンジを塗った。
       あまりおおっぴらに見せられる代物でもない」

(;`・ω・´)「しかし」

(;`・ω・´)「この傷は、発砲事件と全く関係のないものだ」

(´・ω・`)「……」


警部が、はじめて彼に対し口を閉ざした時だった。


(`・ω・´)「だから、このことは忘れ――」

( <●><●>)「――るわけにはいきません」

(´・ω・`)「…ワカッテマス」


すっかりしょぼくれた(?)警部と
バトンタッチしたのか、ワカッテマスさんが彼と対峙した。
どうやら、そう簡単に退くわけにはいかないらしい。
当然男も反論する。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:52:44 ID:hZF5R6oIO<>

(`・ω・´)「ハ? 切り傷があったら、なにが問題なんだよ」

( <●><●>)「その前に、お名前をお聞かせください」

(`・ω・´)「……唐突だな」


急に彼が名前を聞いてきたので驚いたことだろう。
しかし、名前もわからぬままこうして張り合っていたこと自体が珍しい。
男は少し間を置いて名を述べた。


(`・ω・´)「本田シャキーン、と人は呼ぶ」

( <●><●>)「本田、シャキーンさん、ですか。
       私、VIP県警の若手ワカッテマスと申します」

(`・ω・´)「そりゃーどうも」


ワカッテマスさんも自己紹介をし、軽くお辞儀をした。
男改め、シャキーンさんの名前を書こうと、ワカッテマスさんは手帳を開いた。
彼がメモし終え、すぐに本題へと軌道修正がなされた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:54:44 ID:hZF5R6oIO<>

(`・ω・´)「……でよ、この傷は発砲事件と何ら関係ないのは自明の理であろう。
      何か問題でも?」

( <●><●>)「……なにか、錯覚なされてますね」

(`・ω・´)「ハ?」

( <●><●>)「わからないのですか?
       今がたとえ発砲事件の捜査中であれど、
       このような傷の存在意義に変化はありません」

( <●><●>)「お尋ねします、なぜこのような傷を?」

(;`・ω・´)「あぁ!? 悪いかよ自分で誤って腕きっちゃあ!」



「お待ちください!」



(`・ω・´;)「誰だ!」


ワカッテマスさんは、事件とは関係ないと思われる、
いや実際関係ないであろうこの傷のことを尋問した。
ただ、おおっぴらに見せられる傷ではないという以上、
当然後ろめたい出来事があったに違いない、


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:56:16 ID:hZF5R6oIO<>

男は自分で腕を切った、と過失である旨を
主張したが、それをワカッテマスさんが疑う前に、
私の右後ろ、扉が大きな音をあげて開き、
そこから制止を求める声が放たれた。


今度は誰だ、と皆がそちらを向くと、
見慣れた人物が立っているではないか。


(#゚;;-゚)「その取り調べ、私にも同席させていただきます」

警部に散々匂われていたワゴンの行方は人知れず、
手ぶらの彼女は女性とは思えぬ凛々しさを醸し出していた。
それは警察の捜査に一般人が干渉するのと同義、
警部が許すはずもない。
そう思ったのだが、今は条件が違った。

彼女も、代理ではあるが立派な関係者ではある。
そして、もしワゴンの「ハプニング」もふまえ
この事件に関係があるのなら、彼女の同席は
警部にとっては願ってもない展開ともなりうる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:57:24 ID:hZF5R6oIO<>

(´・ω・`)「……ハ?」

(#゚;;-゚)「私を差し置いての捜査は
     許されてないのですよ?」

(´・ω・`)「……ふぅん」

でぃさんが警部のもとへ駆けよった。
それと同じ頃に、尋問を喰らっていた
シャキーンさんも怒鳴り散らす。
自分が発砲の犯人だ、と決めつけられたのを
前提にされているのが気にくわないのだろう。


(;`・ω・´)「自分で切ってしまったんだよ、この傷は……文句あるか!?」

(´・ω・`)「でもねぇ」

(#゚;;-゚)「警部さん」

(´・ω・`)「ん?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 17:58:44 ID:hZF5R6oIO<>

シャキーンさんの主張は、でぃさんの一声でかき消された。
早速彼女はなにをしでかすのかと思えば、

(#゚;;-゚)「えっと、この傷……どうなさったんですか」

(´・ω・`)「え?」

(#゚;;-゚)「由々しき事態です、説明をお願いします!」

(゚、゚トソン「ズコーッ」


状況の説明を要求してきた。
こういう場面でそういうのは、
時間の無駄になって迷惑なのだが。

しかし、かといって彼女の監視下においての捜査でないと
許されない手前、警部もしぶしぶ応じる。

(´・ω・`)「弾痕の捜索にあたってたら、こんなもの見つけちゃって」

(´・ω・`)「確かに弾痕ではないのだけど、なにかありそうだし」

(;`・ω・´)「だからこれは関係ないっつってんだろ!」

(#゚;;-゚)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:00:41 ID:hZF5R6oIO<>

シャキーンさんがしびれを切らしたのか、
徐々に口が悪くなっている。
怒鳴る機会が多くなり、
彼が言葉を発そうとするたびにその場の空気が揺らぐ。
その怒声を間近で聞いても怯むことなく、
でぃさんも応戦する。


(#゚;;-゚)「これは、当列車で……?」

(`・ω・´)「それがどうした!」

(#゚;;-゚)「………」

(#゚;;-゚)「……失礼、あまりにも非現実的すぎて目が眩みましたわ」

(`・ω・´)「ハ?」

間髪入れずシャキーンさんが返す。
すると、でぃさんは少し嘲るような笑みを浮かべ、
手で口を少し隠すようにして話す。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:03:02 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「だって、そのような大きな怪我を、しかも発車後に負うなんて、
     よっぽど大層な『事件』がない限り、ありえないでしょ」

(;`・ω・´)「―――あ」

(#゚;;-゚)「警部さん」


シャキーンさんが間抜けな顔をした時、
でぃさんはその顔を拝めないように立ち回り警部に話しかけた。
シャキーンさんは呆然となり、じっと傷を見ている。


……しまった。
それが彼の心情だろう。
発砲事件にとらわれすぎて、
その傷の意味の在り方を忘れてしまったのか。
本来なら事実関係を追究されるのがオチだ。
ワカッテマスさんの「錯覚」とはこのことだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:05:29 ID:hZF5R6oIO<>

(#゚;;-゚)「……持ち物検査、すべきですね」

(#゚;;-゚)「このような傷を負えるような鋭利な刃物、
     当然ながら売店でも車内販売でも取り扱っておりません」

(´・ω・`)「そういってくれると思ったよ」

(;`・ω・´)「ちょ……待て!
       誤解だ、私はナイフなどもっていない!」


その彼の訴えに、
警部でもワカッテマスさんでもなく、でぃさんが反応した。

(#゚;;-゚)「あら、ご自身で負ったんじゃないのですか?」

(#゚;;-゚)「でしたら、争いがあったこととなる」

(#゚;;-゚)「発車後の列車内にて血を流す争い……放っておけませんね」

(;`・ω・´)「……」



(゚、゚;トソン「(……おかしい!)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:06:37 ID:hZF5R6oIO<>

でぃさんは、どこかがおかしい。
ワゴンの件で執拗にワゴンを隠そうとしたり、
明らかに捜査の妨害にも努めていた。
そのくせ戻ってきたら、今度は
シャキーンさんを徹底的に責めている。
彼女の言動、行動、態度、どれも腑に落ちない。
それはおそらく警部も不審に思っているだろう。

だが、シャキーンさんに対して言っていることも正論だ。
シャキーンさんは、よほど「持ち物検査」が困るらしい。


(`・ω・´)「……」

(`・ω・´)「いいだろう。
      しかし銃は持ってないからな」


――はずが、彼はえらくあっさりと持ち物検査を認めた。
その言葉を聞いた警部、ワカッテマスさんの二人は彼に歩み寄る。
その際、ワカッテマスさんが再びアナウンスをはじめた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:10:02 ID:hZF5R6oIO<>

( <●><●>)「えーと、予定よりだいぶ遅れましたが、
       皆さんにも後々持ち物検査を行います」

( <●><●>)「決して物を隠す、などしないように」

(´・ω・`)「じゃあ、調べるぞ」

(`・ω・´)「好きにしろ」


ワカッテマスさんがお得意のアナウンスをする中、
警部は真っ白な手袋の裾をきゅっと引っ張り、
足下に置かれていた赤茶色のカバンに手を伸ばした。

それは一概にカバンと言っても、従来のショルダーバッグらよりも大きい。
ボストンバッグが1/4スケールになったようなものだ、
と考えていただければ語弊は生まれないだろう。
ボタンをはずしてジッパーをゆっくり引っ張る。

なかからハンカチや手帳などが見える。
それをシャキーンさんもじろじろ見ていた。
自分がこの持ち物検査に引っかかるはずはないだろう、
そんな自信に満ちた顔をしている。
が、それでもそわそわとして、落ち着きがない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:11:19 ID:hZF5R6oIO<>

そして中を漁る警部。
慣れた手つきで物色するも、ケータイや免許証など
身分を証明するものは入ってなかった。
これはハズレか、そう懸念された持ち物検査だが、
警部が一番奥に手を突っ込んだとき、それは翻った。


(´・ω・`)「!」

その何かが警部の手に触れたとき、
警部のしょぼくれた顔は一気に活気に満ちた、
しゃきんとした顔にみるみる変わっていった。


(;`・ω・´)「ま……まさか……」

シャキーンさんがそう呟いた時、警部が叫んだ。



(´・ω・`)「おいワカッテマス、これを見ろ!」

(;`・ω・´)「なに!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:14:10 ID:hZF5R6oIO<>

カバンの奥から取り出したソレは、緑のタオルに包まれている。
それに包まれている物はひとつだけではない、
ふたつくらいの何かが包まれている。

ちょうどアナウンスを終えていたワカッテマスさんもそれを見る。
タオルを開き、中に入っているものを視認した。



(´・ω・`)「……血の付いたナイフ、それと」

( <●><●>)「“拳銃”ですね」

(`・ω・´)「な……」






(;;`゚ω゚´)「 な ん だ と ォ ォ ォ ォ ォ ォ ! ? 」




(;´・ω・`)「ワカッテマス、身柄を拘束しろ!」

(; <●><●>)「しかし手錠は持ってません」

(;´・ω・`)「こんのばかたれぇぇぇ!」





 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 3章
  「アーボンオレンジ」

    おしまい



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 18:16:56 ID:hZF5R6oIO<>例によって、次回投下の予定日はわかんないんです。


ここら辺りから、長ったらしい推理やトリックが飛び交うので、
退屈になるかもですが、ご了承ください。

読んでいただきありがとうございました!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/02(金) 18:19:46 ID:Us9hujYs0<>張り付いて読んでいたおれに隙はない
乙乙

なんか複数のなんかが絡んでる感じだな
推理パートwktk<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/02(金) 18:33:09 ID:5jxkdzUg0<>来てたか乙
今のところ完全に謎

楽しみにしてる<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 22:13:45 ID:hZF5R6oIO<>すまん、投下じゃなくて質問なんだけど、今の俺の文って改行多い?
一行20字を基本に、改行多めにしてるんだけど、PCからだと読みにくい?
携帯だとわからないんだ。
あとたくさんの乙ありがとう…<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/02(金) 22:21:31 ID:5jxkdzUg0<>大杉ってほどじゃないが読点の後にまで改行すると変に切れて読みにくい時もある<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 22:25:43 ID:hZF5R6oIO<>読点のあとか。
>カバンの奥から取り出したソレは、緑のタオルに包まれている。
>それに包まれている物はひとつだけではない、
>ふたつくらいの何かが包まれている。
↑こことか?



逆に、
>カバンの奥から取り出したソレは、緑のタオルに包まれている。
>それに包まれている物はひとつだけではない、ふたつくらいの何かが包まれている。
これはこれで(読みやすさ的に)大丈夫だったりする?<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/02(金) 22:42:18 ID:5jxkdzUg0<>>>100
そうそういうの
画面で長いの読もうとすると目が滑るから改行はあっていいんだけどね

読点の改行した文もそれほど長く無いしさ
そもそもある程度長い文を読む時に文を一旦区切って読みやすくくるのが読点だから、そういう意味でも違和感あるかな


実際「どう?」って聞かれるまでは気になって読めないって訳でもないから絶対直せってほどでは無いよ、と最後にいっとくけど<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/02(金) 22:54:32 ID:hZF5R6oIO<>それもそうか……
とにかく、改行する文の文末に読点をなるべくつけないようにして、ほかは今のままで投下する。
なにか、読点だの改行だので読みにくかったりしたら、是非言ってほしいです。

いろいろとありがとう。もやもやが晴れた。<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:06:57 ID:lYKs073oO<> 


3章「アンモラル」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:08:40 ID:lYKs073oO<>

タオルがめくられた時、場は騒然とした。
血の付いたナイフは、あって当然なのだ。
本人がそう主張し、それの確認も含めての検査だから。
そしてのちに、このナイフについて
署ででも取り調べがなされたことだろう。


しかし、もう一つくるまれていたのだ。
輪胴式の弾倉を持つ、拳銃が。
それを発見するや否やシャキーンさんは絶叫した。
予期せぬ事態が起きたときにあげる声に、それは似ていた。


当然列車内も騒がしくなる。
発砲事件の犯人が見つかった、そして警部も
用意周到なワカッテマスさんも
手錠をたまたま持っていなかったと言う。


つまり、シャキーンさんがその気になってしまうと、止める術がない。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:11:28 ID:lYKs073oO<>

しかし、シャキーンさんは。


(;`・ω・´)「違う! それは俺のではない!」


素性が出てしまっているというのに
往生際が悪いというか、拳銃が見つかっていながら
それでもなお、否定している。
私物ではない、そう連呼する。

しかしながら警部はそれに耳を貸さず、ジッと拳銃を見ている。
彼の代弁でもするのか、でぃさんが前に出た。


(#゚;;-゚)「あなたのカバンの奥底に、丁寧にタオルで包まれていて、
     更にカバンにもチャックとボタンでしっかりと閉まっていたのにですか?」

(;`・ω・´)「そ、そうだ!」

(#゚;;-゚)「おかしいですね、ではこの拳銃はどなたの?」

(;`・ω・´)「ぐぬぬぬぬ……」

(#゚;;-゚)「まさか、このカバンが“自分のものではない”、と仰います?」

(;` ω ´)「………ぐおおおおおおおッ! このアマァァ!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:13:55 ID:lYKs073oO<>

でぃさんが、ありとあらゆるシャキーンさんの主張を全て
これ以上ないであろう程の正論で打ちのめした。
シャキーンさんは汗がかなり垂れている。
息遣いは荒く、見た感じ動揺がひどい。
言い返す言葉を無くしたか、シャキーンさんは立ち上がり
目の前にいるでぃさんに、襲いかかろうとした。



―――が。


(`゚ω゚´;)「いででデデっ!」

(゚-;;゚*)「言い返せずに暴力とは、なんと滑稽な」


素早い身のこなしで、シャキーンさんの腕に関節技らしき技をかけた。
それは華奢な体つきである女性の見て呉れからは到底考えられぬ動きで、
大男がすっかり押さえつけられていた。
その一連の動きを見ていたワカッテマスさんが止めに入る。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:15:18 ID:lYKs073oO<>

(; <●><●>)「あなたたち、落ち着いてください!」

(`゚ω゚´;)「わかった、殴らないから離せ!」

(#゚;;-゚)「………刑事さん」サッ

(; <●><●>)「……はい」


ワカッテマスさんの仲介に応じ、組んでいた手をさっと解いたでぃさん。
シャキーンさんは力尽きたかのように椅子にぐったりと座り込む。
若干困り顔のワカッテマスさんに、でぃさんが言った。

(#゚;;-゚)「今の態度を見てわかったでしょう?」

(#゚;;-゚)「発砲事件の犯人、確実に彼です」

( <●><●>)「まあ……そうなりますね」

(;`・ω・´)「違うと言っているだろうが……」

(#゚;;-゚)「とにかく、発砲事件の容疑者が見つかった以上
     捜査は切り上げていただけませんか?」

「それはまだできないな」

(#゚;;-゚)「……はい?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:17:22 ID:lYKs073oO<>

発砲事件の犯人は見つかった、だから捜査を切り上げろ。
そう、筋の通った事をでぃさんがワカッテマスさんに要求すると、異議を申し立てる者がいた。
でぃさんがシャキーンさんを見るも、首を振る。

もう一度、声がした。


(´・ω・`)「おい、これはどういうことだ」

( <●><●>)「警部。どうかなさいました?」


異議を唱え、声を発したのは警部。
彼の掌に載っている拳銃、弾倉が見える状態になっていた。
それをワカッテマスさんが見た上で、警部は弾倉部分に指をさした。


(´・ω・`)「……なんで、空きがふたつもあるんだよ、シャキーンさん」

(;`・ω・´)



(`・ω・´)「え? ふたつ?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:18:54 ID:lYKs073oO<>

その輪胴式拳銃は6弾詰められるタイプの、私たち一般市民がよく知る拳銃だ。
リボルバーがずらされているが、そこに詰まれている弾丸は4つ。
空いている2つの空間に指をさし、警部はシャキーンさんに訊いたのだ。
でぃさんを睨んでいたシャキーンさんが
警部の問い掛けに気づき、拳銃を見たとき。
実に情けない声、顔をして聞き返した。


(´・ω・`)「見ての通りだ」


弾倉にふたつ空きがあるということ。
つまりそれまでに2発撃たれた、ということを意味する。
それはわかるのだ。
けど、実に不可解だった。


(#゚;;-゚)「え、発砲は一度だけじゃないんですか?」


そう、私たちは一度しか聞いていないんだ、銃声は。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:21:07 ID:lYKs073oO<>

(´・ω・`)「……ワカッテマス」

( <●><●>)「はい」

(´・ω・`)「僕は、一号車で銃声は一度しか聞いていない。おまえはどうだ?」

( <●><●>)「私も、ここの発砲しか聞いていません」

(´・ω・`)「……フム」


警部がまたも推理に徹している。
拳銃を見つめ、唸っている。

(#゚;;-゚)「はじめから一発だけ余所で撃ったのでしょう」

(´・ω・`)「否」


でぃさんの推理も尤もだ。
というより、普通は誰しもがそう考える。
しかし、それを警部は受け入れない。

(´・ω・`)「さっきのシャキーンさんの顔を見たろう?」

ふたつの空白を見たとき、シャキーンさんはというと
まるで状況が呑み込めていない様子だった。
あの時の顔は、私に言わせてみても
とても嘘をついているような顔には見えなかった。
が、それでもでぃさんは食い下がる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:23:31 ID:lYKs073oO<>

(#゚;;-゚)「納得いきません。発砲事件の犯人の言うことなんて」

(`・ω・´)「………」

ふたりのやり取りを皆が見つめる。
シャキーンさんも黙って聞いている。

(´・ω・`)「そもそも、シャキーンさんはさっきから言動が変なんだ。
      本来銃を隠し持っていたら持ち物検査を断るだろう、なんとしてでも。
      しかしあっさりと許したし、それに拳銃が見つかった時のあの慌て様も妙だ」

(#゚;;-゚)「もともと、彼の拳銃を誰かが見つけ出し、
     彼の鞄にこっそり戻した、というわけでもなく?」

(´・ω・`)「それだと“誰が”“いつ”彼のカバンに入れたんだ?
      しかもどうしてそれがシャキーンさんのだと判別できた?
      いろいろと謎ができるのだよ」

(#゚;;-゚)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:25:13 ID:lYKs073oO<>

(´・ω・`)「そして、仮に発砲したのが彼とすると、様々な妙なことが起こる」

σ(´・ω・`)「どうして警察がいるのに堂々と発砲できたんだい?」

(`・ω・´)


警部は、自分を指差してそう言った。
でぃさんは少し考えて、それに返す。

(#゚;;-゚)「警察だってのを知らなかったのでしょう」

(´・ω・`)「いいや違うね、彼は僕が警部やってるのを知ってる。
      ねートソンちゃん?」

(゚、゚トソン


(゚、゚トソン「え?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:26:29 ID:lYKs073oO<>

何の前触れなく、警部は私に話を振った。
こちらを真剣な眼差しで見つめる警部は、私に同意を求めている。
しかし何のことか心当たりがない。

(゚、゚トソン「なんのことですか?」

(´・ω・`)「ほら、この人と会話したじゃん、お茶の件で」

(#゚;;-゚)「お茶?」


一瞬悩んだが、私は左の掌に右拳をたたいた。
お茶の人が彼とは思えないのだが、位置関係的に彼がお茶の人だ。
確かにあの人は知っていておかしくない。


(゚、゚トソン「あーあー!」

(゚ー゚トソン「そういえば、警部は自己紹介してました!」

(・ω・トソン「おれはけいさつだーもんくあっかー?」

(゚、゚トソン「……って」

(;´・ω・`)「そんな紹介してないよ……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:28:15 ID:lYKs073oO<>

私が実に似ている警部の物真似をすると、
あまりにうますぎて恥ずかしいのか
顔を赤らめる警部だが、一度咳払いをして本題に戻った。

(´・ω・`)「警察の前で堂々と発砲?
      捕まりたいのかって話よ」

(#゚;;-゚)「でも……」

(´・ω・`)「それに、標的がわからない。
      発砲する以上、的は絶対にあるんだ」

一度警部は俯き、深呼吸した。
ワカッテマスさんに一瞥を与え、彼は続ける。


(´・ω・`)「とまぁ、ここまでおかしいことが生まれる以上……見いだせる答えはひとつ」

(´・ω・`)「まだまだ捜査をしないと、真相が暴けない、という事だ」

(#゚;;-゚)「……」

(´・ω・`)「認めてくれるね? 捜査を」

(#゚;;-゚)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:30:04 ID:lYKs073oO<>

暫くの間でぃさんは考えた。
静まり返り、車輪の音だけが響くこの空間で、でぃさんは言った。

(#゚;;-゚)「……わかりました。
     しかし、この人の疑いが晴れたわけではありませんことをお忘れなく」

(´・ω・`)「わかってるさ、刑事に監視させる」

( <●><●>)「了解です」

(`・ω・´)「……逃げねぇよ」


警部が首を回して関節をぽきぽき鳴らし、肩も回す。
スイッチを切り替え、捜査に徹底しようということだ。
ストレッチを終えた頃、ワカッテマスさんも警部に付き合う。


(´・ω・`)「というわけで捜査を再開するぞ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:36:23 ID:lYKs073oO<>

(´・ω・`)「そうだ、ワカッテマス」

( <●><●>)「なんなりと」

(´・ω・`)「あれ、できたか?」

( <●><●>)「アレ?」

(´・ω・`)「位置取り書くって言ってたじゃん」

( <●><●>)「あ、書けてます。起きていた人には名前も伺いました」


そういうと、彼はポケットにしまってあった手帳を取り出した。
ぱらぱらとページがめくられ、特定のページで指が止まった。
そこには微妙な字体で見取り図が描かれており、それを警部に手渡す。


直線が数本ひかれ、またいくつか名前も書いてあった。
まず右列、B−1が空席、その後ろに人生オワタと書いてある。
その後ろも空席、B−4には素直くるう、ふたつ空席が続いてB−7には、本田シャキーン。
年齢や職業も、それぞれに書かれていた。
ちなみにB−8も空席だ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:41:41 ID:lYKs073oO<> 

続いて左列、A−1には橘ルカ、続いてA−2には盛岡デミタスとある。
ひとつ空けて、B−4とB−5だが、前者には不在、後者にはハテナが書かれていた。
この件に、警部もワカッテマスさんに問いかける。


(´・ω・`)「ほう。ところでこのハテナはなんだ?」

( <●><●>)「ああ、それは」

ハテナに指を突きつける警部に、ワカッテマスさんは
なんて事ない、と言いたげな口振りで答える。

( <●><●>)「その後ろの方が眠っていらして、
        起きたときに聞こう、と」

(;´・ω・`)「だから起こせよ!」

( <●><●>)「まあ、あとで起こしますけどね」


最後に、A−7には警部、A−8が私だ。

( <●><●>)「そして前の方が、席をはずしているのか
        荷物だけ残してもぬけのからなのです」

(´・ω・`)「どれ……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:46:13 ID:lYKs073oO<>

警部が進行方向に向かって歩き、そのふたつの席へ向かった。
私も椅子の上から膝で立ち、身を乗り出してそこを覗いた。
惜しくも様子は見えなかったものの、警部が見えない分まで細かく語ってくれた。


(´・ω・`)「アタッシュケースと帽子、あとテーブルには小説も置いてあるな。
      こいつの行方は?」

( <●><●>)「追々捜すつもりでした。どういう人物が乗っていたのかまでは……」

(´・ω・`)「じゃあ、こっちの寝坊助さんは……」

( <●><●>)「さあ?」

(;´・ω・`)「あのなぁ……」

(#゚;;-゚)「ああ、そちらの人は」


未だ眠りについているこの人物について、
警部とワカッテマスさんがあれやこれや言っていた時
「そういえば」と前置きして、でぃさんが話に参加した。
振り向く警部にでぃさんは言った。


(#゚;;-゚)「ご存知ないですかね、
     そちらはかの有名な、斉藤またんきさんですけど」

(´・ω・`)「斉藤またんき?」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/08(木) 19:46:25 ID:y3mZXwRcO<>投下来てた 
C<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:50:00 ID:lYKs073oO<>

(#゚;;-゚)「またんきというよりこう言った方がいいかな……」

(#゚;;-゚)「株式会社『アンモラル』の二代目社長です」

( <●><●>)「あの大手会社の?」

(´・ω・`)「詳しく」

( <●><●>)「『アンモラル』とは、言わば
         今をときめく注目の会社ですよ?」


そう前置きし、ワカッテマスさんは無知な警部に説明を施した。
曰く、もともとはちいさな食堂だったのだが、ある日
グルメライターの目に掛かり雑誌に載ったのを契機に、
その食堂は最後尾で二時間待ちすらあり得た大行列に見舞われた。


そこで大ヒットしたメニューが、大手冷凍食品メーカーの目にも掛かり
そのお偉い人が店長に商品化を提案、店長は喜んで承諾した。
すると毎月入ってくる金がとてつもない数字に。
貯蓄もみるみる貯まり、店を改装することに決行する。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:53:08 ID:lYKs073oO<>

そしてリリースするメニューがどれも売れに売れて
気がつけば、二号店、三号店とチェーン展開がはじまる。
もともと自営の食堂だったのが、店長の提案で雑貨もリリース、するとこれがまた大ヒット。
ちいさな店を従える店長から大手チェーン店の社長となった
一代目社長、斉藤ウララーは、一生かかっても使い切れないだろう金を手にする。
しかしそれで買った贅沢品は時計や車を数個だけ、というのは有名な話だ。


残りは全部新しい商売につぎ込んだ。
研究費に事欠くということは全くなく、
雑貨の次に手を出した家具、インテリアも
雑貨ほどではないがやはり売れる。


そしてほぼブランドと化したその株式会社『アンモラル』は
ついに遊園地、ホテルなども経営し始めた。
しかし、その商売にトコトン貪欲なウララー氏を妬ましく思う連中が増え、
某日、遊園地設立の土地見学の際狙撃される。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:55:57 ID:lYKs073oO<>

そこで二代目に就いたのが、彼の一人息子のまたんき氏だ。
当初、そのカリスマ性や腕の良さを人々が疑った。


しかし、またんき氏もまた商売に貪欲で、テーマパーク設立の次は
ケータイにも手を出し、やはり人々はそれを失敗だと睨んだ。
しかし意外や意外、ケータイにおいての「Un Moral」は
嘗てない業績を誇るビジネスとなり、三大ケータイ会社に仲間入りした。
こうして親子二代揃って経営手腕が優れていたため、株式会社『アンモラル』は
知らない人はいないという程有名な会社となったという。


以上をワカッテマスさんは説明した。
私も無論知っていたのだが、こんな成り立ちなどは知らなかった。
警部も(わかっているかは知らないが)うんうん頷いている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 19:58:55 ID:lYKs073oO<>

( <●><●>)「そんな社長様がどうして民間の列車に……」

(´・ω・`)「そんな社長だったら、早く事件を
      なんとかしないと、また警察の評判が落ちるぞ」

( <●><●>)「……そのうち、狙撃されるかもしれませんからね」


そのまたんき氏に関して、誰も異変を突っ込まなかった。
普段の警部やワカッテマスさんなら
「ボディガードや側近もつけずに」
「自家用車やチャーターしたジェット機に乗らず」
「狙われやすい長距離走行の」
「それも一般人が乗る普通の列車に乗った」
のかを不審に思い、推理合戦でもはじまるだろうに。
本人を起こさない限りは、話にならないからか。


( <●><●>)「しかし、よく気づきましたね」

(#゚;;-゚)「車内販売の際話しかけられ、興奮しちゃって。そのときわかりました」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:00:31 ID:lYKs073oO<>

( <●><●>)「それはいつの事か覚えてます?」

(#゚;;-゚)「ええと……」


ウキウキしているでぃさんにワカッテマスさんが訊いた。
ちゃっかり捜査を続けちゃっている警部を尻目に、でぃさんは返した。

(#゚;;-゚)「ごめんなさい、興奮しすぎて覚えてないです」

( <●><●>)「まあ……気持ちはわからなくもないです」


「30分以降だよ?」


肩を落とすワカッテマスさんに、でぃさんでも
シャキーンさんでも警部でもない男の人がそう言った。
一瞬誰が言ったのかと焦るも、声の方向を向いたとき、彼はこちらを見ていた。


( <●><●>)「あなたは……盛岡さんですね?」

(´・_ゝ・`)「はい」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:03:07 ID:lYKs073oO<>

左列で前から二番目、A−2に座る彼は座席から顔を乗り出して
ワカッテマスさんたちに、その目映い視線を送っている。
席を立とうとはしないのか、そのまま話をしてきた。


(´・_ゝ・`)「車内販売がはじまったのが12時30分くらいだから、
       彼女が会うとしたらそれ以降でしょうね、刑事さん」

(#゚;;-゚)「え、あ、そうなりますね」


不意にニューフェイスが現れたためか、でぃさんはやや動揺している。
盛岡と呼ばれた男は、そう言い切って、紙コップに注がれていたコーヒーを飲みきった。
すると、態度が変わった。


(´・_ゝ・`)「……」

(*´・_ゝ・`)「くぅ〜! 一度言ってみたかったんだ、ドラマみたいに!」

(; <●><●>)「………はぁ」

(゚、゚トソン「(今のはかっこつけかよ)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:05:26 ID:lYKs073oO<>

満足感で満たされている盛岡さんに、ついでと言わんばかりに
ワカッテマスさんが聞き込みに移行した。
盛岡さんは、握り拳をつくってにやにやとしている。


(; <●><●>)「えーと……確かあなたはずっと寝てたんでしたっけ?」

(´・_ゝ・`)「え? それは」

「それは私ですよ?」


盛岡さんの返事を遮るように、その人は言い切った。
私が「今度は誰だ」と思い声のする方向を見ると(といっても
盛岡さんの方角から聞こえたのだが)、座席の上から
顔を覗かせ、ひとりの女性がこちらを見ていた。


从*゚ -ノリ「ちょうど、車体ががったーん!…と揺れるときまで寝てました」

( <●><●>)「あなたは橘ルカさん、ですね」

从*゚ーノリ「はーい」


.<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/08(木) 20:06:39 ID:k00PsxZI0<>支援
いいよいいよ<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:07:09 ID:lYKs073oO<>

片目が長い前髪(揉み上げ?)で隠れている女性が笑顔で返事した。
こんな髪型を見ると、嘗ての事件で見かけた
あの人に似ている、性格は真逆だが。
すると、ワカッテマスさんがでぃさんの方を向き、彼女に関しての補足を加えた。


( <●><●>)「彼女は白で間違いなさそうですよ」

(#゚;;-゚)「なぜ言い切れるのです?」

( <●><●>)「実際、二度目の大きな揺れまでは寝てたんですから。
         それまではなにがあったのか全く知らず、
         その後もシャキーンさんの傷を見て以来失神してましたから」

从*゚ーノリ「さっき刑事に起こされました」


でぃさんは疑心暗鬼になっているのか
疑いの眼で彼女を見るが、私は犯人とは思えない。
実際、よだれのあとが残っていて目に垢もついている。
まあ、寝起きなのは間違いない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:09:26 ID:lYKs073oO<>

ワカッテマスさんもそれを見て判断したのか
ルカさんを白と確信した、その旨を説明し
続いて盛岡さんについても言及した。


( <●><●>)「彼もおそらく白です」

(#゚;;-゚)「なにを根拠に?」

( <●><●>)「彼は発車してから事件に至るまで、ゲームに熱中していたそうで」

( <●><●>)「その履歴を見せてもらったところ、とてもゲームしながら発砲なんて
         できそうなものではありませんでしたからね。内容的にも」


そうワカッテマスさんが言うと、
そのゲーム機だろうか、盛岡さんがそれを見せてきた。
電源をオフにしているのか画面は黒い。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:12:43 ID:lYKs073oO<>

(´・_ゝ・`)「オンラインゲームでリアルタイムで遊んでたからね」

( <●><●>)「……というわけです」

(#゚;;-゚)「そうですか」

(゚、゚;トソン「あー……刑事?」

( <●><●>)「はい、なんでしょう」


取り調べを一旦中断させるのは悪いとは思うが、
それ以上に気になる光景が目の前に広がっている。
だから、恐る恐るワカッテマスさんの話を止め、話題をソレにした。


(゚、゚;トソン「その、うちの警部は、なにしてるんでしょう?」

(<●><●> )「え?」


私から警部と空席を挟んだ先の席で寝ていると聞くまたんき氏の前で、警部が固まっていた。
おそらく起こそうとでもしたのだろう、しかしそれをせずにただまたんき氏を見つめていた。
私が身を乗り出して警部に指差し、ワカッテマスさんもそっちを見る。


(;´゚ω゚`)「……」

( <●><●>)「け、警部どうしました!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:14:04 ID:lYKs073oO<>

(;´゚ω゚`)

(;´・ω・`)「ん! ああ、え、ちょ……」


警部が明らかに動揺しているのを察し、ワカッテマスさんが彼のもとに駆けた。
それと同時に、盛岡さんとルカさんが席から顔を乗り出して警部の視線にあわせた。

すると、どうだ。


(;´・_ゝ・`)「うおっ……!」

从*;Дノリ「きゃあああああああッ!」

从* -ノリ「……」パタ

(; <●><●>)「ど、どうし……」

( <●><●>)「……!」


(;´・ω・`)「あの時、あんたがこいつを起こそうとでもしておけば……!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:15:21 ID:lYKs073oO<>

(#゚;;-゚)「え……ちょ」

(゚、゚;トソン「ど、どうしたんですか!」


明らかな異変に気が付き、私とでぃさんも同時に駆けだした。
シャキーンさんも席からでようとしないものの、立ってその光景を見ている。
私が足を挫きながらもその光景を目の当たりにしたとき、目を疑った。


(゚、゚トソン「きゃっ――!?」

(;ー;トソン「うぎゃわあああああああ!
     ち、ち、血ィィ!!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:17:28 ID:lYKs073oO<>

(´・ω・`)「見るな……
      ところで、ワカッテマス、これって……」

( <●><●>)「……弾痕、ですね」


座席にもたれ、俯いている男性の胸には、
直径2センチにも満たないであろう穴が、あった。
警部がコートをめくったようで、なかから血が溢れている。



(  ∀ )


(´・ω・`)「弾痕……見つけたぞ……!」



 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 4章
  「アンモラル」

    おしまい


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/08(木) 20:24:16 ID:lYKs073oO<>そろそろ、作者の予期せぬ矛盾が出てきそうで、gkbrしながら投下しました。
ちなみに、なぜ4章がこう短いのかって、切る場所がここ以外に見あたらなかったからです。
読み足りねぇよパゲ! って人にはごめんなさい。

あと、ルカさん 从*゚ーノリ 出てますが、
一応虚構の城の人とは別人です。

例によって次回投下はわかんないんです。
読んでいただき、ありがとうございました!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/08(木) 20:31:50 ID:famMAHv60<>いいところなのに(´・ω・`)

乙乙
ちょっと矛盾さがしてくる<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/08(木) 23:30:46 ID:k00PsxZI0<>次は、次はいつかね!?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/09(金) 08:15:43 ID:4mypgRLwO<>次からはまとめさんのURL貼らなきゃね 
文丸新聞とブーン芸両方にあったよ<> 三月<><>2011/09/09(金) 20:07:55 ID:T4lLn66sO<>乙×1000000000000000000000000000000000000000000000<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/09(金) 22:51:41 ID:HGF3h0RsO<>ショボーン血の匂い気付かなかったのかよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/10(土) 18:01:08 ID:RRlLbQZ20<>香水の香りで分からなかったとか?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/10(土) 18:37:48 ID:DghgvaS.0<>何かして血を止めていたとかもありそうね<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/11(日) 15:50:13 ID:kSHC1pfsO<>>>137

確認した嬉しすぎて小便ちびった
各章投下の前にまとめ載せるべき?<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/11(日) 18:22:02 ID:TRD2PMk20<>一回載せればいいんじゃね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/11(日) 18:41:23 ID:rf3AE/1QO<>どっちもメジャーまとめだし時々でいいんじゃない 
あな本の人を参考にしてみたらどうかな<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/11(日) 18:59:10 ID:kSHC1pfsO<>じゃあ忘れた頃に載せる、って感じにする
毎回載せてもしつこそうだし<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/12(月) 11:16:52 ID:xTYhot/oO<>イイヨイイヨー錯綜する事態と怪しいのに取り調べられない人物とか最高だよ<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:16:32 ID:kDBQh9UYO<>どうしよう
今の章分けのペースだと、全13章前後(序章、最終章除く)の構成になりそうなんだけど
長くね?長いよね?そうでもない?そうか。

というわけで投下します<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:20:26 ID:kDBQh9UYO<>

まとめ

ブーン芸さん
http://boonsoldier.web.fc2.com/ituwari.htm

文丸さん
http://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/lie/lie.htm

まとめのお陰で風邪が治りました、ありがとうございます!<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:23:56 ID:kDBQh9UYO<> 


5章「三人の乗客と四つの偽り」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:26:14 ID:kDBQh9UYO<>

その姿は目を掩いたくなるような光景だった。
黄色のシャツに、心臓付近に開いた穴から深紅の血が流れ出て、
その上から羽織っていた白いコートのせいでそれはより妖しさを演出している。
白い帽子を、まるで顔を隠すようにして被っていたので
ワカッテマスさんは彼が寝ているものだ、と勘違いしたのだろう。

白いコートを羽織った状態では、血は伺えないのだ。
いろいろと不審な点はあるも、それが死体であることそのものが不審なのだ。
警部が大声を張り上げる。


(´・ω・`)「おい、検死の道具はあるか!」

(; <●><●>)「ないですよ、私は監察医じゃなくてあくまで刑事です!」

(#゚;;-゚)「まず見るまでもなく銃殺じゃないですか!」

(;、;トソン「………」ガタガタ


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:29:00 ID:kDBQh9UYO<>


( 、 トソン

いつのことだろうか、私が事件に巻き込まれた
という経歴があるのは知ってるはずだ。
犯人扱いされたり、第一発見者だったり。
その、いつしかの事件、いくつかの事件で私は幾度となく生々しい遺体を見てきた。
流血は止まれど固まってはいない、血。

それらは、思春期というデリケートな時期である私の脳に
トラウマとしてしっかり刻むにはじゅうぶんすぎた。

それが、今まさに蘇っている。


(´・ω・`)「トソンちゃん」

(( ( 、 トソン ))

(´・ω・`)「トソンちゃん!」

(゚、゚トソン「は、はい!?」

(´・ω・`)「……席に戻りなさい。
      僕がやっとくから。ね?」

(;、;トソン「………」コク


警部は、私の手を強く握り、
目をじっと見て、そう指示した。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:30:44 ID:kDBQh9UYO<>

(#゚;;-゚)「……警部さん、確か言ってましたよね。
     弾痕がない以上、捜査をしなければならないと」

(´・ω・`)「……」

(#゚;;-゚)「揃いましたね。
     容疑者、凶器、そして弾丸……」

(´・ω・`)「……」


警部は、依然その死体を見つめ黙っている。
でぃさんは冷静に徹底しながら話をすすめている。

(#゚;;-゚)「……では、ここで捜査は終了です」

(#゚;;-゚)「乗客の皆様には申し訳ない限りですが、
     列車の到着を待ち、捜査に臨ま……」

(´・ω・`)「素晴らしい直観力を持つ君のような人材が、
      まさかこんな見落としをするなんてね」

(#゚;;-゚)「え?」

(´・ω・`)「わからないのかい?」




(´・ω・`)「この現場には、偽りが存在する」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:32:15 ID:kDBQh9UYO<>

私が見た一瞬で焼き付いた光景を思い返す。
座席に深く座り、背もたれにぐったりともたれ、
帽子で顔が見えないようになっていた。
血がべっとりと着いた黄色のシャツに上から
それを覆い隠すような白いコート。

ズボンには異変が見あたらず、帽子とコート込みの上
一見すると、それはまるで寝ているだけにしか見えない。
しかし警部は異変に気づき、失敬してコートのボタンを外したのだ。

そして、現在に至る。


(#゚;;-゚)「すみません、ちょっと頭が混乱していて、とても整理できません。
     説明をお願いします」

(´・ω・`)「オーケーだ、ひとつずつ説明しよう」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/12(月) 14:33:19 ID:On3SnWPE0<>いいよいいよ<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:34:58 ID:kDBQh9UYO<>

そして、警部の声が淡々と耳に入ってきた。

(´・ω・`)「まず、位置関係はあとで言うとして、
      犯人をシャキーンさんと仮定する。銃殺だ」

(´・ω・`)「銃殺、胸を貫いて且つこの出血だ、当然即死ね」

(´・ω・`)「ほら、早速一つ目の矛盾が生まれた」

( <●><●>)「わかりました」


その“一つ目”の矛盾にいち早く気づいたであろうワカッテマスさんの声が聞こえる。

( <●><●>)「それだと、なぜコートを着ているのかが問題になります」

(´・ω・`)「そうだ。ワカッテマスは一度遺体を
      見ているのに、死に気づかなかった」

(´・ω・`)「隠されていたんだよ、コートで」

(´・ω・`)「死後に無理矢理着せられたと考えるのが一般的か」


一つ目の矛盾、それはコートの謎だ。
私が遺体を見たときに感じた不審な点、それはおそらくこの矛盾だ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:36:00 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「しかし……」

ワカッテマスさんが疑問を唱える。
警部がそのまま推理を続けた。

(´・ω・`)「ここで二つ目の問題が現れる。
      あの発砲のあと、誰か動いたか?」

(;´・_ゝ・`)「! ぼ、僕はずっと自分の席にいたぞ!?」

間髪入れずに盛岡さんの否定の声が聞こえた。
実際、彼は動いてなかったのを私は知っている。


(´・ω・`)「そうだ。銃声の鳴った直後、
      ワカッテマスたちが乗り込んできた。
      そのとき、不審な動きをしている人はいたか?」

( <●><●>)「いたら9が取り押さえにいきますよ」

(´・ω・`)「ほら。一つ目の問題と食い違う」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:37:31 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)「まさか死体が勝手に服を着まい。
      真犯人の手によって着せられたに違いないのさ」

(´・ω・`)「だけど、それは不可能だ―――ひとりを除いて」

( <●><●>)「……」



ワカッテマスさんが警部から視線をそらした。
その視線を向けた先にいた人物、
彼女に警部とワカッテマスさんの視線は向けられていた。



(#゚;;-゚)「……私、ですか」

(´・ω・`)「まあ決めつけてはいないよ。
      可能性を消していって、残った先にいたのが君だけだから」

( <●><●>)「しかし、
         謎に直面した際、有り得ない事を消していき、最後に残った事が
         どんなに奇妙な事でもそれが真実である、という話もあります」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:38:55 ID:kDBQh9UYO<>

(#゚;;-゚)「でも動機がない、まずこんな死体を
     見たら大声を出さずにはいられません」

(´・ω・`)「その点はあとでまた考慮するとして、次の問題点だ」

(; <●><●>)「ま、まだあるのですか!」

(´・ω・`)「匂わないか? このどギツい香水の香りが」

( <●><●>)「……え? 香り?」


拍子抜けした声が聞こえ、においを嗅ぐ音が聞こえた。
ワカッテマスさんの肺活量はすごい、おそらく思いっきり吸い込んでいるのだろう。
鼻をつまんで彼は苦笑を浮かべている。


(; <●><●>)「これは……コロンなんかとはまた違う。なんというか……」

(´・ω・`)「パルファンだ」

(#゚;;-゚)「!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:40:12 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)「あれ? また関係のありそうな人物が浮かび上がったよ?」

(#゚;;-゚)「……香水、ですか」


香水といえば、彼女……もといワゴンから
微かにパルファンが香ると警部は言っていた。
まさか、こんな場面で香水が話に出てくるとは思わなかったが。

警部が当時の話をぶり返す。


(´・ω・`)「ワゴンに私物の香水をこぼしたって言ったけど……
      あれは嘘、だね?」

(#゚;;-゚)「わ、私は確かにこぼして……!」

(´・ω・`)「じゃあなんでこの遺体から香るんだい?」

(#゚;;-゚)「……ッ!」


でぃさんが、推理合戦になって初めて黙り込んだ。
そして今、警部はでぃさんを疑っている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:42:55 ID:kDBQh9UYO<>

しかし彼女に深くは追究せず
警部の攻めはいったん止まった。

(´・ω・`)「ということだから、まだシャキーンさんを犯人と断定するには早い」

(´・ω・`)「捜査、続けるよ」

(#゚;;-゚)「……」


警部の挙動を、でぃさんは止めなかった。
ワカッテマスさんもその場から動き、彼について行く。
彼に監視されていたシャキーンさん、彼は特に
動くこともなく、ただ呆然と立ち尽くしている。
彼に尋問することがまだあるだろう、私はそう思うも、
それを声として発そうとするとおなかに力が入らず、声にならない。

彼らの跫音が止まった。
私が視線をそこに向けると、黒髪がきれいな女性が座っていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:44:07 ID:kDBQh9UYO<>

川 ゜々゚)

(´・ω・`)「……彼女の名は、素直くるうか」

川 ゜々゚)「くるうはくるうだよ!」

(´・ω・`)「彼女に関するデータは?」

( <●><●>)「彼女は、精神に障害を患っているものと思われます」

(´・ω・`)「ほう……」


警部はそれに深追いをしない。
「くるうだよ」と連呼している女性の甲高い声が、
遠く離れた席に座っている私の耳にもよく聞こえる。
その甲高い声を、ワカッテマスさんの低い声が
かき消すように話しかけた。


( <●><●>)「おそらくはリハビリか何かでしょう」

(´・ω・`)「まあ、精神障害者に頻繁に外出をさせるというのはよく聞くな」

川 ゜々゚)「セーシンショウガイシャじゃないよ、くるうだよ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:46:18 ID:kDBQh9UYO<>

警部が少し彼女から距離を置き、ワカッテマスさんに耳打ちする。
幸い警部の口がこちらに向いていたので、
若干ではあるがその内容を聞き取れた。


(´・ω・`)「……昔、見たことある顔のような気がする」

( <●><●>)「警部も思われますか?
         奇遇ながら、私もです」

(´・ω・`)「まあ、いいか」

耳打ちを終え、彼女と再び向き合った。
相変わらず彼女はふにゃふにゃと自己紹介を続ける。


(´・ω・`)「ええと、くるうさん……持ち物を伺っていいですかな?」

川 ゜々゚)「くるうはなにももってないよ!」

(;´・ω・`)「いやいや、財布とかはあるでしょ」

川 ゜々゚)「サイが謝ってごめんなさい!」

(;´・ω・`)「………」

(´・ω・`)「ワカッテマス」

( <●><●>)「はい」


彼女に話が通じないと察したのか、すぐにワカッテマスさんに話を振った。
動じることもなく彼に応える。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:48:23 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「彼女の持ち物は小銭入れ、あと
         特定の相手にのみ繋がる電話があります」

(´・ω・`)「特定?」

( <●><●>)「俗に言うジュニアケータイで、
         おそらくは保護者に繋がるようになってるのでしょう」

(´・ω・`)「……見た目は20歳前後だがな」

( <●><●>)「ちなみにGPS機能搭載の機種でして、
         もしもに備えての配慮がなされているものです」

( <●><●>)「あと住所と名前と備考が書かれてある
         名刺のような札もありました」

( <●><●>)「銃やナイフは疎か、殺傷能力を持つ
         道具はなにも持ってないようです」

(´-ω-`)「……そうか、ご苦労」


一通りの報告を受け、警部はひとまずの労いの言葉をかけた。
しかし、と言葉を挟んで彼は大声で言った。





(#´゚ω゚`)「調べ終えてるならそれ先に言えやぁぁぁぁ!!」

(゚、゚;トソン「(ごもっともだ!
       警部のくせにごもっともだ!)」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:49:30 ID:kDBQh9UYO<>

(; <●><●>)「なにぶん、言う機会がなかったので……」

(´・ω・`)「……まあ、仕事はできてるということで許す」


この一連の流れで、一気に3歳は老けたかのように、
警部の顔にどっと疲れが溜まったのが見えた。

その席からふたつ前、これまたくるうさんと
同じように騒いでいる男性がいるのだが、
ここからは彼の顔の細かい表情まではわからない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:51:13 ID:kDBQh9UYO<>

\( ^o^)/


(´・ω・`)「人生オワタ?」

( <●><●>)「はい。年齢は18、歴としたヒト科のオスです」

\( ^o^)/「ナメてんのかオラ!」

(゚、゚;トソン「(もっと怒れよ!)」


ワカッテマスさんのボケなのか、またSモードに入っているのかはわからないも、
彼にこけにされたわりにその男性は笑顔だった。
言ってる内容そのものは怒っている(?)のだが、声も明るく手をじたばたさせている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:52:03 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「で、彼の報告ですが……」

\(;^o^)/「オワタ! 俺まじオワタ!」

(´・ω・`)「……なんかこいつ煩いぞ、黙らせろ」

\( ^o^)/「おまえに俺のなにがわかるんでい!」

( <●><●>)「……警部、その件なんですが、
         聞いて驚かないでください」

(´・ω・`)「うん」

( <●><●>)「この男性、ラウンジのプラットホームに
         荷物を忘れてきてるんです」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:54:46 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)

真顔で報告するワカッテマスさん、
その事実を否定しないオワタさん、
彼らの前で警部は一瞬固まった。

私は、彼の推理のロジックが繋がったのか、若しくは
お前は嘘をついている!とか言って尋問するのかと思った。
しかし、彼が発した一瞬の声を聞き逃さなかった。


(´・ω・`)「………」

(´・ω・`)「ぶっ」

\(;^o^)/「?」




(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃひゃ!
      ただのバッカでねーの!」

\(;^o^)/「黙れ! おまえに俺のなにがわかるんでい!」

( <●><●>)「最初は嘘かと思いましたが、臨時でラウンジ駅に配属させていた
         警官に調べさせると、確かにそれらしき荷物がありました」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:55:57 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「人生オワタ、と名前が書いてある下着もあったので間違いないです」

(´;ω;`)「18で、ぱ、パンツに名前ひゃひゃひゃひゃ!」バンバン

\(;^o^)/「だ、黙れ黙れ!
      カーチャンが勝手に書いただけなんだ!」


警部のあの独特な嗤いがオワタさんを刺激する。
手をじたばたして暴れ、黙れと連呼しているも
警部は全く止まる様子が見られない。
それどころかしきりに腹を叩き、涙を流してまで笑っている。
あ、いま咳した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:57:55 ID:kDBQh9UYO<>

(´;ω;`)「ひー… ひー…」

( <●><●>)「いま彼が持っているのは、たまたまポケットに入れてた
         小型の音楽プレイヤーとそのイヤホン」

( <●><●>)「あと夢と希望は持っているはずです」

\(;^o^)/「おまえさっきから俺のことバカにしてるだろー!」ジタバタ

(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃ! ワカッテマスギャグのセンス上がったな!」


いったんは収まった警部の笑いのツボが、
彼のギャグで更に刺激され、再び笑いの沸点まで持ち上げられた。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 14:59:19 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「お褒めの言葉ありがたく頂戴します」

わかった、この人一見無表情だけど
おそらくその裏では腹が捩れるほど笑っているに違いない。
そして帰宅して、家でオワタさんのことを
思い出して声を上げて笑うに決まっている。
彼の笑いなど聞いたことも見たこともないが。


ちなみに私も同じく笑っているも
おなかに力が入らないので声をあげて笑えない、
つまりにやにやしているだけの実に気持ち悪い顔となっている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:01:01 ID:kDBQh9UYO<>

(´ぅω-`)「じゃあ、こいつも、犯行は不可能、
       と見て、いいんだ、な?」

警部は落ち着きを取り戻そうと、涙を拭いて本題に入った。
しかし呼吸が未だ整わず、途切れ途切れの発言となっていた。
しかしワカッテマスさんは更に追い打ちをかける。


( <●><●>)「おそらくは。
         まあ、銃を持ってても彼には銃殺なんて到底できないですよ、
         きっと間違えて自分の腕でも撃ちます」

(´;ω;`)「ひゃひゃひゃひゃ! それもそーか!
      ってかいちいち笑わせるなコラ!」

\(;^o^)/「俺はのび太の何倍も射的の天才だぞ! ナメんな!」



(´・ω・`)




(´;ω;`)「のォォォびィィィ太ァァァァァぶひゃひゃひゃ! ゲホッ、ゲホッ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:02:33 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「グッ……ぷぷ……」

(<●><●> )≡「……失礼」タッ


ついに、ワカッテマスさんも我慢の限界なのか
すぐに一号車前方の乗降口へ向かった。
左手で手すりを掴み顔を俯け、口を右腕で塞いで
必死に笑いを抑えようとしているも、肩がびくびく震えている。

彼の笑う姿を見てみたいものの、見たら
きっと後悔する気がするのでやっぱり遠慮しておく。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:03:29 ID:kDBQh9UYO<>

\(;^o^)/「おい、いい加減に教育委員会に訴えるぞ!」

(゚、゚;トソン「(なぜに教育委員会!?)」

(´;ω;`)「も、もうしゃべるな! 公務執行妨害で捕まえるぞ!」

\(;^o^)/「えっ嘘!? やめてください謝るからこのとーり、ちょ俺まじオワタ!」

(´;ω;`)「ひゃひゃひゃひゃ! ウケる!」


オワタさんが必死に頭を繰り返し下げる。
しかし高速で頭を上下にするので、長めの髪の毛がふわふわと靡く。
しかもそれと並行して両手もバタバタ動かすので、
なんだかもう訳の分からない光景となっていた。
これで私と同い年とは、なかなか信じがたい。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:04:45 ID:kDBQh9UYO<>

見かねたのか、でぃさんがそれを止めに入る。

(#゚;;-゚)「警部、いプッい加減に捜査を再開してください」

\(;^o^)/「いまおまえも笑ったな!? 笑っただろ!」

(#゚;;-゚)「これ以上騒ぐと業務妨害で告発しますよオワタさん」

\(;^o^)/「ひどい! 割とひどい!」

( <●><●>)「そうですよ、早く本題に入りましょう」

\(;^o^)/「おまえにだけは言われたくねーんだよデコスケ野郎!」

●><●> ) 「ちょっと失礼」タッ



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:05:48 ID:kDBQh9UYO<>

(´;ω;`)「……ふぅ……フゥ」

(´・ω・`)「うぉっほん!」

ワカッテマスさんがその場から離れて
またも笑いを堪えることで必死になっている。

でぃさんがオワタさんを制し、その隙に
警部とワカッテマスさんは笑いを必死で止めていた。

警部は少ししてやっと落ち着きを取り戻し、
オワタさんに指を突きつけてキツめに確認をとった。


(´・ω・`)「つまり、銃殺事件に関しては無関係だな?」

\( ^o^)/「そうだっつってんだろ!」

(´・ω・`)「ならいい。おい、ワカッテマス!」

(( < >< >))

( <●><●>)「あ、はい」

(゚、゚トソン「(まだ笑ってたなこいつ)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:06:48 ID:kDBQh9UYO<>

しきりに体を震わせ、両手で自身の体を抱くようにしておなかをさすっていた。
警部の呼びかけに、彼は若干遅れるも返事した。


(´・ω・`)「えっと、そこのルカ……? さんも済んでいるんだな?」

( <●><●>)「一応ざっとは持ち物も検査しましたが……」


警部とワカッテマスさんはルカさんの方に目を向けた。
しかし、ルカさんは答えない。
それもそうか。


从* -ノリ


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:09:03 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「被害者の遺体を見て気絶中です。起こします?」

(´・ω・`)「いや、起こしてもこれからまだまだ気絶する羽目になるだけだ。
      それより彼女の持ち物は?」

( <●><●>)「? ……財布と手帳、あと履歴書が」

(´・ω・`)「履歴書……面接にでも行こうとしてたのか?」

( <●><●>)「さぁ。
         しかし、血を見て気絶するような人に、今回の犯行は不可能かと」

(´・ω・`)「まあ……とりあえず可能性は低い、ってとこか」

( <●><●>)「限りなく低いです」

(´・ω・`)「え?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:10:45 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「彼女は乗車からずっと寝ていたようで、
         それは彼女の顔を見ればわかるかと」

(´・ω・`)「あー今見てた。じゃあ彼女も白か」


気絶しているルカさんを起こすことなく、
彼女への追究はそこで切り上げた。


次に警部は、後ろにいた盛岡さんに目を向ける。
ゲームはしておらず、縮こまっている。



(;´・_ゝ・`)「……」

(´・ω・`)「彼の名は……」

( <●><●>)「盛岡デミタスです」

(´・ω・`)「持ち検したいんだけど……大丈夫か? 顔色悪いが」

(;´・_ゝ・`)「……」

(´・_ゝ・`)「あ、はい。トイレ行きたいだけなので」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:12:08 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)「一応先に調べさせてもらうよ。
      ワカッテマス、彼のデータは?」

ワカッテマスさんは手帳を開き、
細かい字が並んでいるページを上から順に見ていった。
盛岡さんのデータを書いてある欄を見、警部に噛み砕いて説明する。


( <●><●>)「26歳フリーター、発砲騒ぎが起こるまでは
         オンラインゲームを楽しんでいました」

(´・ω・`)「オンライン……」


疑われていると勘違いしたのか、盛岡さんは
汗だくになって警部に弁論を試みた。
この人に一度睨まれると、推理にて
どこまでもつけ回されるから、それだけは嫌なのだろう。
私だって嫌である。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:13:30 ID:kDBQh9UYO<>

(;´・_ゝ・`)「で、でも履歴は残ってますし、
        対戦相手は知り合いだから証言もさせれますよ!」

(´・ω・`)「電車内でオンラインゲームなんてできるのか?」

( <●><●>)「え? あ、そういえば」


警部の何気ない一言で、ワカッテマスさんは
思い出したかのようにでぃさんにその点を尋ねる。
でぃさんはケロッとした顔で答えた。


( <●><●>)「電車内でオンライン通信ってできるのですか?」

(#゚;;-゚)「あ、はい、一応。
     コンセプト上、インターネット通信は完備されてます」


コンセプト……まあ、長距離走行を前提にした列車だからだろう。
盛岡さんも、その機械なのか小さなコネクタを見せる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:15:34 ID:kDBQh9UYO<>

(´・_ゝ・`)「友だちに証言はさせなくていいですか?」

(´・ω・`)「あとで聞くよ。
      あと持ち物を調べている間、
      乗車の動機を教えてください」

(´・_ゝ・`)「はい、カバンです。
      動機……というか、今からオフ会なんですよ」


警部がサックを受け取りながら聞き返した。
サック、というよりリュックと呼ぶ方が相応しいか。

(´・ω・`)「オフ……?」

( <●><●>)「簡単に言えば、ネット上で知り合った人と
         実際に会って遊ぶ行事みたいなものです。
         オフラインで会うからオフ会、です」

(´・_ゝ・`)「詳しいですね」

( <●><●>)「まあ、その手の話については」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:16:28 ID:kDBQh9UYO<>

(´・_ゝ・`)「乗車してからずっとゲームしてたんですが、
      これの大会に出るためにVIPまで訪れたんです」

( <●><●>)「じゃあ、対戦相手というのは……」

(´・_ゝ・`)「大会に出る友だちとの練習試合、というべきか」

( <●><●>)「じゃあ友だちとはネット上の方ですかね」

(´・_ゝ・`)「はい。といっても頻繁にオフで会いますけど」

( <●><●>)「警部、この人はアリバイがありますよ」

(´・ω・`)「え?」

(; <●><●>)「話に入っててくださいよ!」


警部はリュックのなかの物を丁寧に確認している。
ワカッテマスさんと盛岡さんの話をガン無視していたらしい。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:18:40 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「まあ……持ち物はどうですか?」

(´・ω・`)「ノートパソコンとそれの充電アダプター、小説もあるな。
      あとは財布とか乗車券の半券とか」

(;´・ω・`)「それと……なんだこれ?」


警部はやや装丁が雑な本を取り出した。
それを盛岡さんに確認する前に、彼は
顔を赤らめてすぐにひったくった。


(*´・_ゝ・`)「わわっ! こ、これは事件とは無関係ですから!」

( <●><●>)「……同人誌?ですかね、それも成人向けの」

(´・ω・`)「それもオフ会に?」

(*´・_ゝ・`)「じ、実は僕とある同人サークルの一員でして、
       コミケでの売れ残りをその友だちあげようかなと思いまして……」

(;´・ω・`)「同人サークル? コミケ? 売れ残り?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:20:26 ID:kDBQh9UYO<>

警部がオウムに成り下がったかのように、繰り返し尋ねる。
だんだんちいさくなる盛岡さんの声を
ワカッテマスさんが上書きして警部に言う。


( <●><●>)「今度教えますから。
         まあこれも事件とは無関係です」

(;´・_ゝ・`)「助かるよ、これ中身確認されたらまずいからさ……過激だし」

( <●><●>)「表紙だけでじゅウブん察せます」


ワカッテマスさんがそう動揺しながら言う。
私も興味本位でその表紙を見てみたいのだが、
心の声がそれを拒んでいる。


(*´・_ゝ・`)「いえ、表紙は触手だけなんですが
       中はSMありーの獣耳ありーのふたな」

( <●><●>)「口を慎みなさい、逮捕しますよ。
         もう公然わいせつとか関係なく」

(;´・ω・`)「触手? SM? 獣耳?」

( <●><●>)「あなたもです警部」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:22:28 ID:kDBQh9UYO<>

触手ってなんだ!
つーかSMって!
獣って猫耳とか? なんだそれ!


なんて心の中でツッコむも、彼らはそんな事で
いちいち躓いている訳にもいかず、捜査を再開することになった。
盛岡さんは少々がっかりした顔をしている。
余程同人誌について語りたかったのだろう、
しかし語ると捕まるに違いない。


( <●><●>)「ええと、これで全員の取り調べは終わった、んですかね」

(´・ω・`)「まだまだいるだろ」

( <●><●>)「え?」



警部は、一号車後方に向かって歩いてきた。
最初私の番か? と思うも実はそうではなく、
ちょうど私とワカッテマスさんの中間で止まった。


(´・ω・`)「まずはあんただよ、シャキーンさん」

(`・ω・´)



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:23:48 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)「ワカッテマス、こいつのデータはさっぱりだろ?」

( <●><●>)「あ。忘れてました」


平然とそう言ってのけるワカッテマスさんに
合わせてシャキーンさんは舌打ちをした。
そのまま警部を見上げ、目を細める。


(`・ω・´)「カバンの中身は見せただろう。
      あと何がいるんだ?」

(´・ω・`)「証言だよ」

(`・ω・´)「……何の、かな」


シャキーンさんの問いに答えるべく
遺体に指を突きつけて、警部は言う。


(´・ω・`)「あんた、被害者のこと面識があるな?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:25:31 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「え? でも、根拠はな」

(´・ω・`)「もしあんたが銃殺したなら、
      面識は必ずあるはずだ。
      そして―――」



(´・ω・`)「銃殺してなくても、面識があるはずだ」

(`・ω・´)「根拠を聞かせてもらおう」


警部が強気で攻めるも、シャキーンさんも同じくらいに強気になっている。
先ほどまでとは違い、冷静沈着さに拍車が掛かっている。全く動じない。


(´・ω・`)「一つ、撃たれた被害者の見方だ。
      みんな“前方”から見て“弾痕”を見ていた」


眉ひとつ動かさないシャキーンさんに、
警部が「しかし」と言って続ける。

(´・ω・`)「あんたは“斜め後方”……今座ってるその席から被害者の“脇腹”を見ていた」

(`・ω・´)「見ていない!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:27:20 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)「いいや、見てたね」

(´・ω・`)「そして、今の解答がその最たるものだ。
      僕のどうでもいいような質問に『違う』と即答した。
      別に一見どうでもいい質問なのに。それはなぜか?」

(`・ω・´)

(´・ω・`)「……あんたも、知ってるんだな?
      被害者の脇腹のこと」

(`・ω・´)「なんのこと……だね?」

(´・ω・`)「ワカッテマス! 被害者の脇腹を見ろ、右だ!」

( <●><●>)「は、はい? 右脇腹……と」


睨み合う警部とシャキーンさん、
警部のいきなりの指示で戸惑うも、ワカッテマスさんは遺体のコートを払いのけた。

そして「な!?」と声をあげる。



(; <●><●>)「な……なんだこれ?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:28:48 ID:kDBQh9UYO<>

(´・_ゝ・`)「何があったんですか? 騒がしい」

(゚、゚;トソン「(あんたは寛ぎすぎだっつーの!)」


小説を読んでいたであろう盛岡さんが、
後ろで騒ぐワカッテマスさんを見てそう言った。
さっきまでの緊張はどこへやら、すっかり元のオフ会気分に戻っていた。

ワカッテマスさんは彼に構わず、警部とシャキーンさんに
聞こえるようにその有り様を告げた。


( <●><●>)「……ちいさな“切り傷”、またそれによる出血が少々」

(;`・ω・´)

(´・ω・`)「で、もう一つ。
      あんた、持ってたよね? ナイフと、その腕の“切り傷”」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:30:28 ID:kDBQh9UYO<>

警部の推理を止めるが如くシャキーンさんが否定した。
警部は澄まし顔のままだが、シャキーンさんは若干顔がゆがんでいる。


(;`・ω・´)「この傷は事故だ! 自分で……」

(´・ω・`)「なんの?」

(;`・ω・´)「……」



(´・ω・`)「ちいさな傷がひとつ、それならわからなくもない。
      でも、あの時のようにあんな悲鳴出す程の大きな傷が
      いくつもあるのは事故ではない、事件だ」

(´・ω・`)「ナイフ、切り傷、そして発砲の容疑者とそれの被害者……
      関係ありそうだね?」

(`・ω・´)「…………く」




(;`-ω・´)「………言えば、いいんだろ? 言えば……」

(´・ω-`)「そ! それが市民のギム、ってもんでしょ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:31:42 ID:kDBQh9UYO<>

諦めと焦りの意味で片目を瞑るシャキーンさんと、軽い気構えでウインクし勝ち誇る警部。
もう警部には、結末を見透かしているような気がした。


(`・ω・´)「だが、今から言うことは全て事実で、
      尚且つ今回の発砲事件とは全く関係のないことだ!
      そこを留意してほしい」

(´・ω・`)「それを判断するのはこっちさ」


(`・ω・´)「………話すぞ?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:33:56 ID:kDBQh9UYO<>

(`・ω・´)「何分だったかはあまり覚えてない。
      一度目の大きな揺れ以降、また30分より前だ」

(`-ω-´)「トイレで用を足した私が扉を開くと、その男が立っていた……
      いや、たまたまトイレに行こうとしていただけに過ぎないだろうがな」

(;`・ω・´)「俺の顔を見るや否や、奴は腰から何かを抜いた」

(`・ω・´)「それが何か把握できる頃には、扉に手をかけていた私の右腕が切りつけられていた。
      奴が握ったのは、ナイフだったということだ」

(`・ω・´)「俺は咄嗟に持っていたナイフで応戦した。
      しかし、俺は右利き、ナイフを突きつける際にこの腕をまた切られた、
      しかも今度は深くな」

(`・ω・´)「しかし切られたも、退かずに闇雲に
      横に振ると、たまたま脇腹近くに当たった」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:36:44 ID:kDBQh9UYO<>

(`・ω・´)「浅くはなかったものの、それで……」

(;´・ω・`)「すすす、ストップ!」

(`・ω・´)「まだ終わってないぞ」


シャキーンさんの証言を聞きかねたのか、警部が困り顔で証言を止めさせた。
当然納得いかないという表情をするも、警部の心情も当然困ってて当然だった。


(;´・ω・`)「何一つ、嘘をついてない?」

(`・ω・´)「ああ。そう言うと思って前置きしたんだがな」

(;´・ω・`)「だってあんた、その証言はむちゃくちゃだ!」

(`・ω・´)「なんだと?」

(;´-ω-`)「だって……」



(´・ω・`)「今の証言に、最低4つ、おかしいところがある」




( <●><●>)「よ、4つも……?」

(#゚;;-゚)「車内でナイフなんてだめです! 逮捕です!」

(´・ω・`)「今はそれどころじゃないから黙ってて」

(#゚;;-゚)「は、はい」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:39:15 ID:kDBQh9UYO<>

一度深呼吸をして、警部は追究の体勢に入った。
物怖じせず矛盾をひとつずつ暴こうとしているのがわかる。

余談ではあるが、警部はよく「矛盾」を「偽り」と呼ぶ。
刑事時代の通り名からだ。
そして、「矛盾ではあるが偽りでない点、それが事件を解く鍵となる」と本人は言う。


(´・ω・`)「まず一つ目。
      なぜあんた、そして被害者はナイフを常備してるんだ」

(`・ω・´)「被害者はわからないが私に至っては理由は言えない」

( <●><●>)「正直に証言しろ!」

(`・ω・´)「法廷で言うさ。どうせ俺が被告人だろうからな」

(´・ω・`)「本当のことを言ってくれれば、事件が解けるかもしれないし、
      真犯人も見つかるかもしれないんだけど……」

(`・ω・´)「……フン」

シャキーンさんは、一度鼻を鳴らしたきり
警部にその件を言うことはなかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:43:42 ID:kDBQh9UYO<>

(´・ω・`)「…………続いて、二つ目だ。
      なぜ被害者は襲いかかった……というのは野暮として、
      なぜ被害者はわざわざトイレの扉に触れていた右腕を狙ったんだ」

(´・ω・`)「彼の視点で言えば一番遠い位置にあるというのに」

( <●><●>)「確かに……
         襲うのであれば一番近い位置を攻撃すればいいものを」

(`・ω・´)「知るか。襲ったのは私ではないのだから」

(´・ω・`)「ふぅん……」


少し間を置いて、警部は
シャキーンさんの右腕を指し、言った。

(´・ω・`)「……三つ目。なぜあんたの右腕のコートは切れてないんだ」

傷を隠すように伸ばしているシャキーンさんのコートを見て、そう言う警部。
確かに彼もこのまま武力抗争をしていたなら
言うまでもないが、間違いなく、破れている。


(`・ω・´)「私はこの時は脱いでいたんだ。文句あるか?」

( <●><●>)「……って、どれも大したことない食い違いじゃないですか、警部」

(´・ω・`)「……」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:48:33 ID:kDBQh9UYO<>

警部は静かになった。
てっきり、自分が劣勢に置かれているのを確認しただけかと思ったのだが、
実際は逆、ほんとうはこれからの出方を考えていただけだったのだ。
警部の顔から、まだ余裕の笑みが消えてないのだから、そう判った。


(´・ω・`)「四つ目、これが一番妙なんだよ」

( <●><●>)「……もしかして、『コート』ですか?」


首を挟むように、警部に代わりワカッテマスさんが答えた。
「その通り」と、クイズ番組宛らに警部が言った。


(´・ω・`)「本当なら、コートの上から傷がつくんだよ、これ」

(;`・ω・´)「…………」

(´・ω・`)「どうした」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:49:44 ID:kDBQh9UYO<>

警部の指摘に、溜まっていた汗が一気に溢れ出たのか
と思うほどに、シャキーンさんは狼狽えた。
じっと警部の顔を見つめ、彼がそのピュア(?)な瞳の奥を見ては口を開いた。


(;`・ω・´)「……絶対に、信じろよ?」

(´・ω・`)「なんだよ」

(`・ω・´)「……切ったんだ」

(´・ω・`)「え?」

( <●><●>)「切ったって……」

(`・ω・´)「………」



(`-ω-´)「確かに切ったんだ、“コートの上から”確かに」

(´・ω・`)「……妙、だ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:53:38 ID:kDBQh9UYO<>

(#゚;;-゚)「だって、それだったらコートも破けるはずなのに……」

( <●><●>)「破けてませんね、ちっとも」


その場が、瞬く間に騒然となった。
彼が嘘をついている、若しくは彼は
捜査を攪乱しようとしているのかもしれない。
しかし、顔を見る限りはそんな風には見えない。
また、先ほどから水飲み鳥の如く頷いていたでぃさんが、はじめて動揺した。


(;`・ω・´)「だから言いたくなかったんだ! だが確かに、その白いコートから……」

( <●><●>)「あなたと同様に、向こうもコートを脱いでいたとか」

(`・ω・´)「いいや、こいつは間違いなく着ていた」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 15:57:49 ID:kDBQh9UYO<>

( <●><●>)「勘違いでしょう」

(`・ω・´)「間違いない、そいつはコートは着ていた。
      ついでに切ったものもあるからな」

(´・ω・`)「……一応聞く、なんだ?」

(`・ω・´)「『アーボンオレンジ』だよ」

(´・ω・`)「あ……」



(;´・ω・`)「アーボンオレンジぃ?」



警部が聞き返す。
アーボンオレンジといえば、警部が彼の傷を暴く際に用いた、あれか。
高貴な香りが漂い、治癒力に長けているという不思議な果実。


それが、なぜ今に。




 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 5章
  「三人の乗客と四つの偽り」

    おしまい


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/12(月) 16:02:08 ID:kDBQh9UYO<>書きためから転載の際、大幅に話をずらしたからどこか変になってるかも。
そうだとしたら訂正するから教えてくれたら嬉しいです。

6章は、もしかするとものすごく短いかも。
でもドキドキの展開があるから許してね!


投下が怖くて仕方がない今日この頃です、
読んでいただきありがとうございました!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/12(月) 18:26:32 ID:PhPHP2ykO<>乙。

オワタが間抜けすぎてワロタ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/13(火) 22:00:23 ID:4HuJW2qEO<>ちきしょう
こんなタイミングで追い付くとは<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/14(水) 02:51:13 ID:0x9N.EdwO<>期待してる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/14(水) 10:26:51 ID:SDWNrqsoo<>面白いじゃない
そして生殺しか…<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/18(日) 22:08:35 ID:5AtekA8AO<>ミスチルのライブ最高だったwwwwwwうひょwww



明日の昼くらいに投下したいです。
6章「二つ目の『   』」(仮)<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/18(日) 23:39:12 ID:j7qWfGFM0<>wktk<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/19(月) 01:46:10 ID:l.AQ0pRIO<>俺も行ったぜ!

最高だったね。
明日も行くけどね。

投下まってま〜す<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:40:33 ID:PZuwl2n.O<>二日連続とか羨ましすぎる
のんびり投下します<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:42:28 ID:PZuwl2n.O<> 


6章「二つ目の『   』」<> >>209訂正
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:43:14 ID:PZuwl2n.O<> 


6章「二つ目の『   』」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:45:49 ID:PZuwl2n.O<> 


アーボンオレンジ、突如としてあらわれたその名前について、
シャキーンさんは別段不思議なことでもない、と言いたげな顔をして、言った。


(`・ω・´)「上着のポケットに入ってたんだ。それを一緒に切り落とした。
      それも含めて続きを話したいんだが、いいか?」

(´・ω・`)「……止めてすまんかったな。続けてくれ」


深呼吸、とまでは言わないにしても、
やや大きく呼吸して、シャキーンさんは証言を再開した。



(`・ω・´)「脇腹を切った時、奴は逃げようとしたが、当然私も許さない」

(`・ω・´)「二号車に駆け込む前に、奴が二号車とトイレ前を仕切っている壁から
      二号車乗客に姿を見せる前に俺が背中を……切りつけた!」

(`・ω・´)「慌てて奴は走り去った。私も追いかけたかったものの……
      如何せん傷がひどい、もう一度トイレに逃げ込んだ」

(`・ω・´)「その際に見つけたのがアーボンオレンジだ。
      上着に入っていたのをたまたま切ってたんだろう」

(`・ω・´)「俺は、それを、塗った。塗ったくった」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:47:33 ID:PZuwl2n.O<>

(`・ω・´)「そして暫く経ってからトイレを出たものの、まだ傷から血が出ていた」

(`・ω・´)「帰る訳にもいかないから、トイレットペーパーで飛び散った微かな血を拭いてまわった」

(`・ω・´)「全部拭き終える頃、そこの女が来たんだよ」


(゚、゚トソン


(゚、゚トソン「え、私ですか!?」


今回、急に話を振られてばかりだ。
彼らの話を聞いていると、やはり何の前触れなく、シャキーンさんに名を指された。
いや、呼んではないも、こちらに一瞥を与えるだけで充分だ。


(`・ω・´)「まあその時こいつは私に気づかなかったがな。
      その後も、私はトイレ前と乗務員のスペースをうろちょろしていた」

(`・ω・´)「仕方ないから帰ろうとすると、急にトイレの扉が開いて……こいつに体当たりされた」

(-、-;トソン「はうっ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:49:01 ID:PZuwl2n.O<>

(`・ω・´)「………こんなところかな」

彼は一言話し終えてこちらを向いた。
しかし睨むこともなければ声をかけることもなく、警部と再度対面する。
正直言って、証言に私が用いられているだけで心臓がドキドキする。

(´・ω・`)「うーん……追究の前にトソンちゃんに2つ確認」

(゚、゚トソン「は、はい?」

(´・ω・`)「彼はその時コートを着ていた?
      あとそれは何分頃の話?」

(゚、゚トソン「え、ええと……」


必死にあの一瞬を思い出す。
とは言っても、第一印象が恐ろしすぎて何も覚えちゃいない。
時刻は、警部に車内販売をやっているかの偵察を要求され、
そして戻ってきたとほぼ同時にワゴンがきたから。

(゚、゚トソン「コートまでは覚えてないですけど、時刻は30分手前です」

(´・ω・`)「わかった、ありがとさん」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:51:06 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「さて……何から言うべきか」

( <●><●>)「おかしい点はあります?」

(´・ω・`)「ある、たくさん。でも……」

(´・ω・`)「これはいったい……」ボソッ

( <●><●>)「え?」

(´・ω・`)「なんでもない。シャキーンさん、ちょいと伺うよ」

(゚、゚トソン「………」


警部はふと口から漏れた独り言のように、確かに言った。
「これはいったい」と。
続きに「どういう事なんだ」と、補完されているのだろう。
それの意味を考えると、ひとつわかることがある。
この事件には、まだまだ明かされていない真実があるという事だ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:54:06 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「その傷を見つけた時も思ったんだけど、
      アーボンオレンジの効能を知ってたのかい?」

(`・ω・´)「ああ。実際、この傷もそれがなければ
      未だに肉が見えていただろう」

(´・ω・`)「……まあ、事実関係はいいじゃない。知ってたの?」

(`・ω・´)「? あ、ああ……おかしいかね?」

(´・ω・`)「いや……じゃあいいんだ」

首を傾げながら、警部は続けて質問内容をかえ
再び平然としているシャキーンさんに問いかけた。

(´・ω・`)「じゃあ“血”について詳しく聞かせてくれませんか」

(`・ω・´)「なにを」

(´・ω・`)「そうですねぇ。その量と、飛んだ箇所だ」

(`・ω・´)「そんなのを聞いてどうするつもりだ」

(´・ω・`)「………あとで調べるからね」

( <●><●>)「9が戻ってきてからですけどね。
         ルミノール試薬はひとつしかないですから」

今思ったんだけど、あの人が捜査の道具ありったけを
持って行ったせいで、割とこっちが迷惑を被ってないか?
これで成果なしなんですとか言って手ぶらで戻ってきたら、
警部の顔が、それはすごい形に変形されそうだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:57:43 ID:PZuwl2n.O<>

(`・ω・´)「……仕方ないな。
      当然トイレの扉、その足下、あと二号車への
      入り口とトイレの中間にも垂れていた気がする」

(´・ω・`)「遠くに飛んでいったとかは?」

(`・ω・´)「ない。銃ならともかく、お互い刃物だ。飛んでせいぜい1メートル。
      ぱっと半径1メートル付近も見たが、目につく程の出血は見当たらなかったな」

(´・ω・`)「その間、トイレ前に訪れたのはトソンちゃんだけで?」

その質問に、シャキーンさんは目を閉じてゆっくり答えた。
老人が、過去を振り返って「あの頃はよかった……」とでも言うように。

(`・ω・´)「運が良かった。交戦の最中や血を拭き取っている時に誰かきたら……」

(`・ω・´)「そいつの口を塞いでいた」

(;ー;トソン「ひぃぃぃぃ!」

(`・ω・´)「なんてな。
      まあ、もし見つかっていたら何らかの策は講じる」

(゚、゚;トソン「……この人ならやりかねない」


この今の証言を聞いて、警部は目の色が変わった。
捕らえるべき獲物が、眼前を横切った時の虎のように、それは素早い反証だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 15:59:11 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「おかしいね。それじゃあ証言に食い違いができる」

(`・ω・´)「もう動じないぞ」

(´・ω・`)「いやいやぁ、あんた嘘ついちゃだめだよ」

(´・ω・`)「目的は知らないけどさ、あんた……」



(´・ω・`)「うろちょろしてた理由、血を拭うためだけじゃないでしょ」

間髪入れずに、ワカッテマスさんが異議を唱えた。
警部の視線が彼に突き刺さり、同様にシャキーンさんの眼光が彼を捕らえる。

( <●><●>)「ちょっと待ってください。血を拭き取る以外になんの目的があってその場に居座るんですか」

( <●><●>)「本来なら、そんな人目につく所からすぐ逃げるべきでしょうに」

(`・ω・´)「そうだ。拭き取る以外に目的なんてない」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:01:02 ID:PZuwl2n.O<>

警部の口角がつり上がった。
この笑みは、オワタさんの時のような嗤いではなく、
物事が順調に進んでいると実感して不意に出る笑みらしい。

(´・ω・`)「言っちゃったねー。言っちゃったよー」

(`・ω・´)「あ?」

(´・ω・`)「じゃあ、なんで乗務員室にも居る必要がある」

(#゚;;-゚)「!」

(;`・ω・´)「! ち――」


「違う!」そう言おうとしたシャキーンさんの口を
警部が手で塞ぎ、私の方を向いた。
にやにやして私に話しかけてくる。


(´・ω・`)「ねえトソンちゃん、その時さ」

(゚、゚;トソン「は、はい!」

(´・ω・`)「“ワゴン”はあった?」

(#゚;;-゚)「え……」

ワゴン、今になって漸くその単語が出た。
でぃさんが必死に隠そうとし、警部が執拗に調べたがっている、代物が。
もしかすると、今回の鍵はワゴン――



(゚、゚トソン「ありました、そしてお菓子も散らばっていましたね」

(#゚;;-゚)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:02:58 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「そして、シャキーンさんもその場にいた、
      しかしトソンちゃんは彼を見ていない」

(´・ω・`)「おかしいんだ……あんなにじろじろワゴンや
      その付近を観察していたトソンちゃんが、
      こんなでーっかい彼を見落とすなんて」

(`・ω・´)


( <●><●>)「三号車にいたのでは?」

(´・ω・`)「いいや、腕の血が滴るうちは脱出を封じられていたから、乗務員室にいたんだ」

( <●><●>)「隠れていたんじゃないんですかね、ワゴンの陰に」

「カァー……」と唸る警部。
ワカッテマスさんはきょとんとして彼を見つめている。



(´・ω・`)「君は僕のセリフ盗るの好きだねー」

(; <●><●>)「えぇ!? そんなつもりは……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:04:46 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「そうだ、隠れていたんだ!」

(´・ω・`)「もしワゴンがあって、その陰に隠れる事が
      できたなら、腕を隠せるし自分自身も隠れられる」

(´・ω・`)「……だけどねぇ」

(;`・ω・´)「なんだ?」

(´・ω・`)「血を拭き取る、その血は二号車から直線上では見えない位置だ。
      つまりトイレに訪れる人の存在を知るには、予め見える位置から視認しないとだめだ」

(´・ω・`)「二号車から直線上で見える位置に、血はない」

(´・ω・`)「トソンちゃんの来訪を予期して、予め隠れるなんて不可能。意味わかる?」

( <●><●>)「つまり『都村さんに見られないようにワゴン裏に隠れられたのは偶然』ってことですね」

(´・ω・`)「そう。だから、トソンちゃんの来訪は関係なく、別にワゴン裏に用があったんだ」

(゚、゚トソン「ややこしい……」

(´・ω・`)「え? もう一回言おうか?」

(゚、゚;トソン「え! あお願いします!」


心の声が漏れていた、
それが警部に聞こえたのか警部はわかりやすく(?)説明を施した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:07:21 ID:PZuwl2n.O<>

・交戦の血はトイレ前にだけある、だからシャキーンさんに用があるのはトイレ前だけ
・私が彼を見つけられなかったのはワゴン裏に隠れていたから

以上の二点が前提となるが、この二点の間に存在する問題は「用がないはずのワゴン裏になぜいたのか」だ。
それは「私に見つからないように隠れるため」と説明がつく。

しかし、血が落ちていたポイントは「トイレ前」から「二号車から直線上で見えないポイント」までの間、
すなわち前提一つ目により彼は二号車から見えない位置にいたことになる。
言い換えると、シャキーンさんからも二号車の様子がわからない、から私が来たというのもわからない。

よって「予め」隠れるのは不可能、しかし実際は隠れていた。
このふたつの点が成立する条件といえば、これしかない。
「隠れる目的ではなく、別の目的でワゴン裏にいた」。
これは前提一つ目と食い違う。

つまり、本当の目的が別にあった、と。
警部は、以上のように言い終えた。


(゚、゚トソン「(わかんないけど別にいいや)」

(゚、゚トソン「よくわかりました」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/19(月) 16:07:27 ID:ODoo/7mko<>来てた<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:09:46 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「『血を拭き取る以外に目的はない』だぁ?
      嘘つけ、ほかにあるんだろ、何かが」

(;`・ω・´)「…………ん」ボソッ

(´・ω・`)「なんて?」

(;` ω ´)「言えん……」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「お前……」

(;`・ω・´)「今は、言えん。時がくれば言うから、今は訊かないでくれ、頼む」

(´・ω・`)「ふざけるのも――」

( <●><●>)「ちょっと待って下さい」

徐々に不機嫌を露わにし、怒りを隠せないでいる
警部を宥めるようにして、ワカッテマスさんが前にでた。
警部の顔から怒りは依然消えないも、ワカッテマスさんは続ける。


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/19(月) 16:10:54 ID:rhFu98nQ0<>リアル遭遇だ<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:11:54 ID:PZuwl2n.O<>

( <●><●>)「そこまで言うのでしたら、現場にて調べるのがてっとり早いのでは?」

(´・ω・`)「……」

( <●><●>)「何処にいるのかはわからないですが、
         9を呼び出して捜査に同行させて」

(´・ω・`)「……しか」


「しかし」、その言葉をでぃさんがすぐさま遮った。
二人の間にでぃさんが割り込み、自分より何十センチも
身長差があるワカッテマスさんと対峙している。


(#゚;;-゚)「それは今回の銃殺事件と何ら関係がありませんし、
     移動の間犯人が動けば次なる事件の勃発や証拠隠滅が図られます」

(´・ω・`)「そうなんだよ、ここで僕たちが動いちゃいろいろとまずい」

( <●><●>)「警部……」

(´・ω・`)「そこでだ」

(#゚;;-゚)「え?」



(´・ω・`)「君が、あのワゴンを持ってきてくれない?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:13:44 ID:PZuwl2n.O<>

(#゚;;-゚)「……?」

(´・ω・`)「このシャキーンさんは、何かと理解がし難い行動をとっている」

(´・ω・`)「ワゴンも、おそらくは彼がなにかしでかしたんだろう」

(´・ω・`)「……銃弾があったり、血痕が付いていたり」

私が思うに、警部のこの推理は全くのハッタリで、
本当は何か別の理由でワゴンを調べたかっただけに過ぎない筈だ。
だから何かとこじつけて、ワゴンを調べる理由をつくりたかったのだろう。
そして結論は「調べてみないとわからない」という事になるので、でぃさんも「事件とは関係ない」と断ることはできない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:15:31 ID:PZuwl2n.O<>

(#゚;;-゚)「……仕方ないですね」

(´・ω・`)「! ということは……」

(#゚;;-゚)「持ってきます、もう一度。許可も得てきます」

(´・ω・`)「ああ。
      ……頼むよ」




(`・ω・´)「……」


( <●><●>)「……」


(゚、゚トソン「(ワゴン、か……)」

でぃさんはそう言い残して軽くお辞儀をし、早足でその場を去った。
すぐさまその場は静かになり、電車の揺れのみが響く空間へと戻った。

(´・ω・`)「……さて」

警部は、その重苦しい空気に耐えかねたのか、
視線を再びシャキーンさんに向けた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:17:59 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「あんたが席をたって、戻ってきた時までの
      数十分くらい?の間の事、もう少し詳しく聞こうか」



(`・ω・´)「………」



(`・ω・´)「ム。失礼」

(`・ω・´)「しかし、なぜ私が席を立った、と?」

(´・ω・`)「気が付いたらあんたどっか行ってたじゃん」

(`・ω・´)「は?」

(´・ω・`)「ねートソンちゃん」



(-、-;トソン「……」

(゚、゚トソン「なんでいちいち話を振るのよぉ……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:20:19 ID:PZuwl2n.O<>

一応、誰かが聞くわけでもないが、
「彼が席を立った時間はわからないが、立ったに違いないと断定できる」理由はわかる。
彼とは一度、お茶の件で、クリーニングだの警察だのと話をした。
そのシャキーンさんは、30分手前くらい?に私と一緒に一号車に戻ってきたからだ。
彼は怪訝な顔をして警部を見つめ、傾かせていた頭を真っ直ぐに戻してその答えを探す。


(`・ω・´)「ム……
      トイレ行って、交戦、血を拭いて、隠れて……戻った。それだけだ」

(´・ω・`)「……」

( <●><●>)「埒が明きませんね。ワゴンの到着を待つとしよう」

(´・ω・`)「まあ待て。まだ質問はあるよ」


ワカッテマスさんの制止空しく、警部は未だ食い下がる。
さすがに疲れたのか、シャキーンさんも徐々に尋問に飽き飽きとしているのが窺える。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:22:10 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「その時、ぱるふぁ……香水の匂いはした?」

(`・ω・´)「男である私に香水の区別がつくとでも?」

(´・ω・`)「これは失礼。しかし、なにか香りませんでした?」

当然といえば当然、香水は匂えどそれの種類までなんて、
とてもではないが香水に詳しい人でない限り特定は難しい。
警部は嗅ぎ分けられたらしいが、やはり常人のシャキーンさんは長い間唸る、考える。


(`・ω・´)「……………。香水はわからん。
      私のまわりには血の匂いが残ってたんだ、嗅ぎ分けることなどできん」

(´・ω・`)「それはご自分の?」

(`・ω・´)「そりゃ、交戦して血を拭いたりしたし、まず私からも
      流血されていたからな。おかしくはないだろう?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:24:23 ID:PZuwl2n.O<>

理に適っている、といえば適っているのだと思う。
普段から血を匂うことなんて滅多にないんだ、だから
少量の出血に対して多少敏感に鼻が利いていても、問題はない。

ないのだけど、


(´・ω・`)「………」


なんだ、警部のこの怪訝な顔は。



(´・ω・`)「……ワカッテマス」

( <●><●>)「はい」

(´・ω・`)「被害者のデータは?」

( <●><●>)「さっぱりです。アンモラルの社長という点以外は」

(´・ω・`)「持ち物は? 見た?」

( <●><●>)「見てない……ですね」


よし、と一言つぶやき、彼は手をたたいて
そそくさと被害者の席に向かって数歩、足を伸ばした。
指名されたワカッテマスさんも手帳を開き、同じくして被害者の席に向かう。


というか、被害者のカバンの中って勝手に漁っていいものなのか?


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:28:04 ID:PZuwl2n.O<>

(´・ω・`)「しかし、大社長ともあろうおかたがこんなちんけなカバン……」

(`・ω・´)「………」

( <●><●>)「身元は特定できてますから、なにか事件に関係しそうなものを探しましょうか」

(´・ω・`)「なーにか、殺されるキッカケをつくったようなモノが……」


(;´・ω・`)「ぬぬ!?」


予め調べてなかったワカッテマスさんを遠回しに責めているのか、小言を並べる警部がカバン
(リュックのようなデザインで、機能面を考えると
 おそらく今回の乗車は外泊を目的としていたのだろう)
を手に取った。
鉤をはずし、豪快に中身を開いた瞬間、警部は声をひっくり返るほどに高くあげ、驚愕した。


異変に気づき、コンマ1でワカッテマスさんが飛びつく。
同じく、彼も言葉を失った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:29:43 ID:PZuwl2n.O<>

(;´・ω・`)「嘘だろ? なあワカッテマス、これはチョコかなにかだよな?」

( <●><●>)「警部、落ち着いてください。
         パラソルチョコやキャラクターを象ったチョコ菓子は実に様々です」




(; <●><●>)「……しかし、さすがにコレはないでしょう」

(´・ω・`)「……なんでさ、なんで」




(´・ω・`)「“二つ目のピストル”が見つかるわけ?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:31:21 ID:PZuwl2n.O<>

(;´・_ゝ・`)「え!?」


(゚、゚;トソン「うっそ?!」


\(;^o^)/「オワタ! まじここオワタ!」


川 ゜々゚)「きゃっきゃ! ピストルチョコ!」


( <●><●>)「静かに! あとピストルチョコではありません!」



恐る恐る警部が取り出した“ソレ”は、紛れもない“輪胴式の拳銃”だった。
ぱっと見、シャキーンさんが持っていたものと瓜二つ、いや一緒の型のものだと思う。

(一人場違いがいるが)当然、驚愕の事態に、私含め乗客の皆は慌てふためく。
オワタさんに限っては、手をじたばたさせすぎて何度か窓に腕をぶつけていた。痛がっている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:32:52 ID:PZuwl2n.O<>

(; <●><●>)「とりあえず、でぃさんも連れてきますか?」

(´・ω・`)「ああ」

落ち着いて状況を整理したワカッテマスさんがとった行動は、すぐにでぃさんを連れてくる事だった。
容疑者ではあろうとこの拳銃に関しては関係ないはず、私はそう思っていた。
しかしよく考えると、そこに拳銃があるというだけで一大事だ、彼女の同伴を望むのは半ば必然か。


ワカッテマスさんが急ぎ足で一号車を飛び出した。
警部は彼を見送り、拳銃を上から下から様々な角度から眺めている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:33:45 ID:PZuwl2n.O<>

(;´・_ゝ・`)「ぼ、僕じゃないですよ!」

(´・ω・`)「わかってますって!」



(゚、゚;トソン「警部……」

(´・ω・`)「落ち着いて、今から調べるんだ」



\(;^o^)/「手が、手が痛い!」

(´・ω・`)「知るか!」



川 ゜々゚)「ピストルチョコは弾がピーナッツなんだ! 定価いちおくせんまん円!」

(;´・ω・`)「漫才させるな!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:35:04 ID:PZuwl2n.O<>

寝ているルカさんを除く、乗客の皆が皆冷静を欠いてる状況にて、
警部は、そっと拳銃のリボルバーをはずした。
弾倉を確認するのだ、もしここで6弾全部補充されていれば問題はない。
しかし、ただでさえシャキーンさんの拳銃の「2発目」の謎が残っているのに、発砲されているわけが……





(;´・ω・`)「……弾は、5つ! 一度発砲されていたんだ!」



(゚、゚;トソン「えぇ!?」

(;´・_ゝ・`)「なんだって!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:38:28 ID:PZuwl2n.O<>

同時に、一号車の扉がかなり強引に開かれた。
ここの慌ただしい、荒れた空気に加え、更に大声で――ワカッテマスさんが叫んだ。




(; <●><●>)「警部!! 死体が、もうひとつ!」



  「ワゴンから、死体が発見されました!」





(´・ω・`)「……… な」

(;´゚ω゚`)「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」





 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 6章
  「二つ目の『   』」

    おしまい


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/19(月) 16:42:59 ID:PZuwl2n.O<>推理パート(>>221)あたりから急にややこしい展開になって申し訳ないです。
何度も推敲と書き直しを繰り返したのですが、うまく行かず。
あと、章分けの結果、章の数が10章、15章と膨大な数になることが懸念されるんですが、大丈夫ですかね?


次回投下はだいぶ先になるかもしれないし、もしかしたら明日になるかもしれないです。
読んでいただきありがとうございました!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/19(月) 16:43:10 ID:rhFu98nQ0<>乙

次回を楽しみにしてる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/19(月) 17:01:35 ID:rhFu98nQ0<>>>239
大丈夫だと思うけど<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/19(月) 17:04:45 ID:GU//w1ww0<>乙乙
まぁワゴンに何かがあるのは予測済みだったけど
ますますわからなくなったなwww<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/19(月) 17:31:41 ID:ehd/2eNcO<>なんかブリーチを彷彿とさせるな
なん・・・だと・・・みたいな展開が多い<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/21(水) 05:53:14 ID:308JUeiY0<>うまく行かないとか言うなよ…<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/21(水) 08:56:43 ID:6.wdxzekO<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/21(水) 23:50:48 ID:rdpFBvb2O<>支援<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/09/23(金) 12:34:08 ID:4y1kKI2.O<>タイトル思いついたら投下はじめます<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/23(金) 12:35:53 ID:d11IkX7s0<>こいやー<> ◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:47:04 ID:4y1kKI2.O<> 


7章「ワカッテマスの推理」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:49:36 ID:4y1kKI2.O<>

私は、その言葉を聞いたときは耳を疑った。
今目の前にある被害者の持ち物から新たな拳銃を発見、それは一発どこかで発砲されていた。
放たれた弾はこれで合計3発も確認された。……否、確認されたのは1発だけだ。
残り2発は未だ所在不明、しかしここで死体が発見されたと報告を受ける。


(; <●><●>)「銃殺です。胸の辺りを……一発。
        即死と思われます」

(;´・ω・`)「銃で命を絶たれた2つの遺体、
      それが別の場所で発見された……か」


残り2発のうち1発、それは別の場所で
発見された遺体、そこに撃ち込まれていた。

問題は発見された場所。
そこは、ワゴンだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:51:11 ID:4y1kKI2.O<>

先ほどまで目の前で悠々と駒を転がしていたワゴンに、死体があったという。
そして、皆のこの慌て様。
私は事の重大性をやっとこさ把握し、震駭した。


(´・ω・`)「……あ、でぃさんは?」

( <●><●>)「連れてきたんですが……」


彼の後ろに人影が見えた。
彼がさっと道を譲るも、その人は動かない。
身体を両手でくるみ、異様なまでに震えている。

((# ;д ))「………」ガタガタガタ



( <●><●>)「ご覧の有様です」

(´・ω・`)「詳しく聞こうか」

( <●><●>)「彼女が上の人に承諾を得てワゴンをこちらに持ってこようとしていた時に私と合流、
         彼女が躓いてワゴンが倒れたのですが、その衝撃でワゴンの内部から死体が現れたのです」

(´・ω・`)「つまりは、ワゴンの内部にはなにかを
      隠せる程の空間があったんだな?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:52:52 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「ええ。それらを持ってきています」

彼がそう言うと、怯えているでぃさんの後ろからワゴンを引っ張ってきた。
乱れたクロース、随分散乱したお菓子に、胸から血で溢れている遺体。
一目見るだけで、それがただ事ではないことを察するのは容易かった。


(  ∀ )


(´・ω・`)「………ん? おい、これ……」

( <●><●>)「お気づきですか。実はこの遺体……」



警部が異変……というより、なにかに気づく。
待っていたと言わんばかりに、ワカッテマスさんが
補足をいれるべく、遺体であるアンモラル社長に指をさし、言った。


( <●><●>)「この2つの遺体、顔が瓜二つなのです」



(  ∀ )

( ∀  )



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:56:03 ID:4y1kKI2.O<>

あまりそのワゴンから現れた死体を凝視すると、また気を失いそうになりかねない。
私は目をそらし、ふたりの会話だけに耳を傾け状況把握につとめた。


新たに見つかった死体、その特徴は
ひとつ、胸に銃弾を撃ち込まれていること。
ひとつ、顔がアンモラル社長と似ていること。
ひとつ、服装も(血の量を除き)アンモラル社長と似ていること。
ひとつ、香水の香りがしたこと。


震えに震えるでぃさんをワカッテマスさんが宥める。
少しずつだが、彼女を襲う恐怖は和らいできたそうで、
一号車乗客が状況を把握できそうな頃には、言葉を話せるまでには回復していた。


(#゚;;-゚)「……失礼」

( <●><●>)「落ち着きました?」

(#゚;;-゚)「は、はい……たぶん」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:57:27 ID:4y1kKI2.O<>

その言葉を聞き、彼女は腹の前で両手をあわせ深々とお辞儀をした。
少しふたりの間に沈黙が生まれるも、それを破ったのはどちらでもなく、警部だった。
やや怖い顔をしていて、怒りを露わにしているのはすぐにわかった。


(´・ω・`)「……ワゴン、調べさせてもらうよ」

(#゚;;-゚)「………」



(# ;;- )「もう、どうでもいいです」


その言葉を聞き、警部はワゴンの前に座り込んだ。
でぃさんにあっち行けのハンドサインを与え、同時に
アイコンタクトでワカッテマスさんをその場に呼んだ。
彼も同様に警部の隣に座り込む。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 12:59:13 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「……なるほど、このワゴン、ほかの会社のものとは造りがまるで違う」

(#゚;;-゚)「一応企業秘密ですから。普段はクロースをかけてるのです」

( <●><●>)「企業秘密?」

(#゚;;-゚)「はい。最近、ニュー速鉄道の方が需要が
     伸びつつあるので、こちらは機能性、内面で勝負すべく」

(#゚;;-゚)「だからニュー速鉄道の台頭以降、社内にて
     いろいろと箝口令が敷かれているのです」

( <●><●>)「箝口令……ですか」


箝口令《かんこうれい》、簡単に言えば、特定の情報を外部に漏らされないよう内部の人間に釘を刺すこと。
昔警部に聞いたことがあるのだけど、とにかくこれは情報規制の基本ということらしい。
ワカッテマスさんが復唱し、でぃさんに確認をとっている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:01:28 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「つまり、ワゴンを見せられなかったのは?」

(#゚;;-゚)「はい。お察しの通りで」


「ふーん」とすら言わない警部、彼は慎重かつ大胆にワゴンを調べ始めた。
私もなるべく事件の内容を把握したいので、
席から顔だけをワゴンに向け、警部と同じ箇所に視線を遣る。


最初にこれを見たときに思ったのが、ワゴンが他社のそれに比べ一回り大きいことだ。
二段構造になっていて、ボディ下部から10センチ離して
取り付けられた針金部分にお菓子が置ける構造になっている。
針金部分にお菓子を置き、ボディの部分にもたれるようにして
配置することで、多くの商品の陳列を成功したとのこと。
また、ボディの部分にはクロースが敷かれており、お菓子は
クロースの上からボディにもたれかかっていることになる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:03:09 ID:4y1kKI2.O<>

皆がこれをワゴンと呼ぶが、実際のワゴンとは違う形状で、
聞いたところ、オオカミ鉄道が特許の許可を申請しているほどの代物らしい。
ワゴンサービスに力を入れている珍しい列車ゆえ、箝口令が敷かれるのはいわば必然だった。


( <●><●>)「乗務員室に放置していたと把握しておりますが、
         それほどの機密事項なら放置はまずいのでは?」

(#゚;;-゚)「………あ、厳密に言うとあそこは車販準備室です。
     都合上、乗務員室と兼用ですが。
     あそこが開放空間になっている理由は、明かせません」

( <●><●>)「むぅ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:04:57 ID:4y1kKI2.O<>

(#゚;;-゚)「元々当社はワゴンサービスは行っておらず、ちょっとしたビュッフェを設けておりました。
     しかし当列車は揺れが厳しいという問題があったのでワゴンサービスに変更、
     当時のビュッフェのあったスペースがそのまま車販準備室となったのです」

( <●><●>)「なるほど」

(#゚;;-゚)「ただ……以前からあのスペースはちいさなお子様方にいい遊び場にされてしまっていて、
     近々改装が余儀なくされていました」

(#゚;;-゚)「しかし、ただでさえ予算が危ういため、常に誰か
     乗務員を待機させる事で補っていたのですが……」


(# ;;- )「……今回の事件で、おそらく改装は決定事項になるでしょう」

( <●><●>)「なぜそれが嫌なのですか?」

(#゚;;-゚)「………狭いところが、怖いのです」

( <●><●>)「閉所恐怖症ですか……これは失礼」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:07:32 ID:4y1kKI2.O<>

ボディに敷かれているクロースを払いのけると、中には
ガラス一枚を隔ててちょっとした空間が広がっていた。
ボディの中は空洞となっているわけだ。
ぱっと見保温性に優れていて、おそらくは弁当類をここに詰めるのだろう。

販売の時、ワゴンの持ち手の下部に備え付けられた取っ手を
下にスライドさせることでこの空間に繋がり、弁当を取り出せる。
このスライド式の扉はボディ部の一番下までおろすことができ、
目一杯開くと、人を一人押し込めるには充分な幅となる。
しかし今、弁当は詰まっておらず、空間の底には血が垂れていた。

遺体が無理やり詰め込まれたような姿勢で入っている。
そして香水と血の混ざった、嫌な臭いが鼻の奥底を攻撃する。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:08:43 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「確かに、従来のワゴンとはえらい違う構造だな」

(#゚;;-゚)「ビュッフェの廃止と同時期にこのワゴンが出来上がったのです。
     クロースをかければ見た目は普通のワゴンですから、車内販売はこれでいこう、と決まって」

(゚、゚;トソン「(クロースを敷いても普通じゃないと思うけど……)」



(´・ω・`)「ワカッテマス、遺体を出すぞ」

( <●><●>)「写真は撮ってますのでいつでもどうぞ」

(´・ω・`)「だからケータイの写真は……まあいいよ」


ぶつくさ文句を呟きながら、遺体を中から引っ張り出した。
私は横目で見ているので詳しくはわからないが、遺体から
血が溢れ出ることはなく、今は少々滴る程度にしか流れてない。


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/23(金) 13:08:59 ID:BYn8obW.O<>読んでるよ。
気になるヨ。
支援<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:10:53 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「……妙だな」

( <●><●>)「妙なのは出血の量、でしょうか」

(´・ω・`)「そりゃそうだ。
      胸撃たれてこんなちょっとの……」

( <●><●>)「おかしいのはそれだけではないです。
         よく背中を見てください」


ゆっくり、床に寝かせた遺体を俯せにする。
コートの上から切り傷が少し確認できるが、それくらいしか異変が思いつかない。


(´・ω・`)「切り傷か。あっちの遺体とそっくりだ」

( <●><●>)「まあそれは偶然でしょう。それより……」


しかし、その異変こそが異変であることを、ワカッテマスさんが説明した。

( <●><●>)「弾が、貫通してないのです」

(´・ω・`)「……あ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:13:16 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「弾丸を摘出できて、なおかつ型が崩れてなければ線条痕を調べるのですが……」

( <●><●>)「おそらく骨に直撃して型がひしゃげてるでしょう」


線条痕《せんじょうこん》とは。
本来弾丸は銃から放たれる際、銃内部のライフリングという
螺旋状の溝によって、弾丸表面に傷跡がつく。
その跡の事を線条痕というのだが、これを調べれば、
どの銃から撃たれたかをぴたりと特定できるのだ。

これも警部からの入れ知恵ではある。



(´・ω・`)「……火傷の痕は、ないか」

( <●><●>)「硝煙反応を調べないとわかりませんが、
         零距離から撃たれたわけではなさそうですね」

(´・ω・`)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:14:43 ID:4y1kKI2.O<>

遺体を仰向けに寝かせ直し、警部がしきりに弾痕部分を嗅いでいる。
少しして、顔を歪めた警部が言った。


(´・ω・`)「くそ……香水の匂いが染み付いていて硝煙を嗅ぎ分けれない」

( <●><●>)「まあ、今重要なのは検死結果ではないはずです」

(´・ω・`)「それもそうだがなぁ」


腑に落ちない、と口には出さずも顔面いっぱい使ってそう表現している警部が重い腰をあげた。
遺体を見下ろし、顎に手をあてて考え込んでいる。



すると、急にワカッテマスさんがとんでもないことを言い出した。




( <●><●>)+「……しかし、これで犯人は特定できたも同然です」




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:16:18 ID:4y1kKI2.O<>


特徴的な目を一際光輝かせて、そう言い放った。
目に迷いが窺えない以上、この人は本気でそう主張したのだ。



(;`・ω・´)「……なに?」

(;´・_ゝ・`)「だ、誰なんだ!?」

(゚、゚;トソン「ホントですか!?」



( <●><●>)「考えてもみなさい。この、ワゴン内部から
         遺体が発見されたという、極めて異例な事態を……」

(#゚;;-゚)「!」


ワカッテマスさんはでぃさんの方に目を遣った。
何のことかわからない、そう言いたげなでぃさんは
睨まれた瞬間、少し身体をびくつかせた。
目が若干潤んでいる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:16:59 ID:4y1kKI2.O<>

(゚、゚トソン「つまり……でぃさんが、ってことですか?」


私は、誰しもがそう推理するであろう結論を言った筈なんだ。
しかし、彼は首を縦ではなく横に振った。


( <●><●>)「違いますよ」

(#゚;;-゚)「え?」

(゚、゚トソン「は?」



( <●><●>)「まだわからないのですか?」




( <●><●>)「……シャキーン、あなただ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:18:17 ID:4y1kKI2.O<>

(;`・ω・´)「なっ!? そこの女じゃないのか!?」

当然ながらも、肯定はしない。
すぐに否定し、私と同じくでぃさんに疑いの眼差しを向けるよう言う。
しかしワカッテマスさんは目を見開いて続けた。



( <●><●>)「状況を考えなさい。
         事件発生は、おそらくあなたが席を離れた十分ほどの間だ」



「私の推理はこうだ」
そう言って、彼はまさしく立て板に水と言えるほど饒舌になって語った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:20:32 ID:4y1kKI2.O<>


 まず、あなたは二十分から三十分までの間にトイレに向かった。
 そこで例のまたんき氏とナイフで交戦、トイレに避難。
 そしてトイレからでて、今度はこの今は亡き人と鉢合わせしたのです。
 理由はいざ知らず、咄嗟に銃で撃ってしまった。

 当然ここで彼は絶命、しかしそのトイレ前は人通りが多い場所、更に車販準備室もあるわけだからいつ誰が来るかわからない。
 そこで思いついたのが、このワゴンだ。
 血を拭き去り、急いでこのワゴンの中に遺体を押し込んだ。
 その時に……都村さん、彼女が訪れたのです。
 シャキーンさん、あなたのような大柄な男性もワゴンの陰に隠れれば姿は見えません。

 では、その陰でなにをしていたのか?

 遺体を押し込み、一時的にだが隠滅を図った。
 そして見つからないうちに撤収しようとすると
 トイレからでた都村さんに遭遇、そのまま席に着いた。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:23:00 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「どうです? 違いますか?」

(;`・ω・´)「ぐぬぬぬぬぬぬ………」



一通り話し終えると、シャキーンさんは悶えていた。
反論したいが反論ができない、反証に移りたいが証拠がない、そんな様子だった。
確かに、ぱっと聞いた感じでは筋が通っている。
私がトイレに訪れた時彼を見つけられなかったのも、その間の
行動と動機も、きちんと筋が通っているように思えた。
ほかの皆も、この推理は別段おかしくない、そう思っただろう。


ただ一人、警部を除いて。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:25:20 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「ワカッテマス、お前しばらく見ないうちに推理力が劣ったんじゃないか?」

( <●><●>)「なんですって?」

(´・ω・`)「穴だらけだっつーの!
      べろべろばー!」

( <●><●>)「………警部、今の私の推理におかしい点などあるはずが―――」



(´・ω・`)「交戦のナイフがキーポイントだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:27:30 ID:4y1kKI2.O<>

思わぬ人からの助太刀に、シャキーンさんが唖然として警部を見つめる中、
警部はそんな彼には目もくれず、ワカッテマスさんのみを視界に据えていた。
今の推理のどこに穴が? 私の疑問は警部の反論によってすぐに拭われた。


(´・ω・`)「最初から銃を持っていたら、またんき氏と交戦する際に使ってるだろ」

(゚、゚トソン

(゚、゚トソン「あ! ほんとだ」


( <●><●>)「ところがそうも行かなかった、なら?」

( <●><●>)「ナイフは、言うまでもないですが短距離戦向け、
         しかもトイレ前のスペースはそれほど広くないため、間合いを縮めるのは容易い。
         銃は自然と封印されていたのです」

(´・ω・`)「追い詰められたからって銃が死んだわけではない。
      詰め寄られようが、一発撃てば……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:28:54 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「ちょっと待ってください」


警部の反証を、ワカッテマスさんが「待ってください」と言って遮った。
待てとは建前、実際は「異議あり」と叫んでるようなものなのだ、彼の場合。


( <●><●>)「服に、目立った火傷の痕なんてないのです。
         少なくとも数十センチは離れたところから撃たれています」

( <●><●>)「一秒で間合いを零距離にできる場にて、
         銃がまたんき氏よりも速かったとでも?」

(´・ω・`)「…そりゃあそうか。すまんすまん」


一瞬警部が口ごもったが、すぐに開き直ったのか、早速自分で言った推理を撤回した。
のだが、逆接を挟んで警部は新たな点をツッコんだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:30:36 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「じゃあ次。なんで機密事項であるワゴンの秘密を
      あろうことかシャキーンさんが知ってる?」

(#゚;;-゚)「! 誰にも機密は漏らしてませんよ!」

( <●><●>)「………」



警部は、
「シャキーンさんがワゴンの中の空洞を
 知っている筈がないから、犯行は不可能」と主張した。
それに間髪入れず、でぃさんが箝口令を守っていることを証言した。
ワカッテマスさんは一旦口を閉ざした。



( <●><●>)「元々、このワゴンは奇抜なカタチをしています。
         乗務員がいないのをいいことに、勝手に調べたという可能性も……」

(´・ω・`)「いつ?」

( <●><●>)「……」

(; <●><●>)「………ム」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:32:36 ID:4y1kKI2.O<>

今度はワカッテマスさんが言いくるめられた。
依然シャキーンさんは黙っているも、彼に証言を求めないまま
ワカッテマスさんは反論すべく、更なる推理を述べた。


( <●><●>)「またんき氏とも会う前、彼は一度トイレを利用しています」

( <●><●>)「そのトイレの前に、ふと目についたワゴンを触ることはできますよね」

( <●><●>)「たまたまワゴンの秘密を知ったわけですが、その
         たまたまのおかげで死体を隠すことに成功した、と」


最初は死体の隠蔽など考えず、興味本位でワゴンを触った。
しかし、そこでワゴンの秘密を知ったおかげで、この
偶然殺してしまった死体を隠すことに成功した、と。
ワカッテマスさんは、あくまで「偶然」と言ってその推理を進めた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:33:56 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「残念だったね、それはシャキーンさん自身の証言が否定している」

(`・ω・´)

(´・ω・`)「彼は言ったよ、『血のせいでワゴンから香水は香らなかった』と」

(´・ω・`)「そして、でぃさんもこう言った。『ワゴンにパルファンをぶちまけた』と」

(´・ω・`)「ワカッテマスの推理通り話を進めると、彼がワゴンの秘密を知り得たのは
      ぜんぜん血が流れなかった時のことだ」


一旦警部はシャキーンさんの方を向いた。
動ずることなく彼は警部と向き合う。


(´・ω・`)「シャキーンさん、さっきの質問の時、
      血の臭いでいっぱいだったから香水はにおわなかった……そう言ってたね?」

(`・ω・´)「……まあ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:34:47 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「つまり、彼がワゴンを触ったとしてもそれは“血が流れた後”の話だ!」

(´・ω・`)「この人を殺害後、ワゴンの秘密を知る?
      そんな都合のいいことが起こるわけがない」


丁寧にワカッテマスさんの推理を打破した警部。
彼はそれらを話し終えたあと、ワカッテマスさんを見下しては、おちょくった。


(´・ω・`)「わかったかい?
      ばーかばーか」

(; <○><○>)「ぐぐぐ……ゥ…」


それが決定打となった。
可哀想に、ワカッテマスさんは悔しくて白目を剥いている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:37:35 ID:4y1kKI2.O<>

(#゚;;-゚)「それより警部さん、私に言いたいことがあるのでは?」

(´・ω・`)「ん? ああ……」

( <●><●>)「……」

警察ふたりの推理合戦に飽きてきたのか、でぃさん自ら
ふたりの言い争いを止めに入った。
警部は苛め足りない(?)のか、少ししょぼんとした。


(´・ω・`)「今の刑事の推理でわかったと思うのだけど、
      この犯行の主がシャキーンさんではあり得ないワケ、わかる?」

(#゚;;-゚)「……ワゴンの、秘密……」

(´・ω・`)「そして、それを唯一にして解決できる存在は?」

(# ;;- )「………わ、たしです」


急に目を細め、彼女は震え始めた。
目はだんだん潤ってきて、そのうち雫が垂れそうな感じだった。
しかし警部は容赦しない。
「おかしい点」を、彼女の反論を許さないまま次々に挙げていく。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:39:17 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「おかしいと思ってたんだ。
      なんで、あれほどワゴンを調べさせなかったのか……」

(#゚;;-゚)「そ、それは機密事項だから……」

(´・ω・`)「じゃあ、なんでワゴンをあんな人目の
      はばかる場所に放置しておいたの?」

(#゚;;-゚)「……っ!」

(´・ω・`)「しかも車内販売の際、中に入ってた死体の存在を知らないでいた」

(´・ω・`)「ワゴンを押す時の重量ですぐにわかりそうなものを」

(# ;;- )「だ、だって……」


ああ、泣きそうになっちゃってる。
確かに彼女に関する情報は、どれもおかしいといえば、おかしいんだけど、
それ依然に、この事件には、まだまだほかにおかしい点がある筈なのに。
警部は、今はそこを突かないでいた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:40:49 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「―――当然、凶器は拳銃だ」

(#゚;;-゚)「……」


静かに、警部は言った。
なにを当たり前な事を、そしてなにを急にそんな事を。
私がそう思ったことは、おそらくでぃさんと一致しているに違いない。


(´・ω・`)「シャキーンさんの席から見つかった拳銃、二発撃たれているのがわかる」

(´・ω・`)「またんき氏の胸に一発、この死体に一発」

(´-ω-`)「これで事件の八割は解決できた ……筈だったんだ」



(´・ω・`)「……それなのに、新しい証拠がでてきた」

( <●><●>)「またんき氏のカバンから見つかった拳銃ですね」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:41:33 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「ワカッテマス、お前にはまだ言ってなかったかな?」

( <●><●>)「なにを?」

(´・ω・`)「……これ」


警部がその拳銃を持ち、リボルバーをはずした。
そしてその部分を指をさして強調させ、ワカッテマスさんに見せる。


(´・ω・`)「一発、発砲された形跡があるんだ」

( <●><●>)「…………な」




(; <○><○>)「なんだとォォォオオ!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:42:31 ID:4y1kKI2.O<>

さすがに衝撃の連続で疲れが見えたのか、
一旦彼は一歩後退りをして、呼吸を整えた。
そして警部に確認をとる。



(; <●><●>)「……念のため聞くと、弾痕は……」

(´・ω・`)「………ああ。見つかっていない」

( <●><●>)「なんてことだ……」

( <  ><  >)「まさか………ぇん…」

(´・ω・`)「ん? 心当たりがあるのか?」



( <●><●>)



( <●><●>)「まさか」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:44:18 ID:4y1kKI2.O<>

警部は少し考える素振りをしてみせた。
それが本当に思考を巡らせているものなのか、ただの建前なのかはわからない。
が、少なくとも無心というわけではないのは確かだろう。


(´・ω・`)「シャキーンさんが犯人、そう仮定すると、ワゴンの方の殺人とまたんき氏の殺人で
      計2発撃たれたんだから、銃の弾数と合う」

(´・ω・`)「しかし、少なくともワゴンの方は彼に犯行は難しい」

(´・ω・`)「トイレに向かった、十分にも満たない時間で交戦からはじまって止血、
      ワゴンの秘密の発見、そして殺人、それの隠蔽……
      さすがに無理があるからなぁ」

( <●><●>)「あの、その件なのですが……」


ワカッテマスさんが、力なくそう呟いた。
あの眼光も弱まっている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:46:08 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「なんだ?」

( <●><●>)「彼と警部が話す前、席を離れていたのであれば、どうでしょう?」

(´・ω・`)

( <●><●>)「その時に殺害、追って隠蔽、一度一号車に戻って警部と会話。
         次にトイレに向かった際またんき氏とナイフを交え、血を隠滅。
         ワゴン内部の死体が気になり確認している間に都村さんが訪れて……」

(´・ω・`)「20分以前に予め殺人していて、
      20分以降にまたんき氏と……ってか」

( <●><●>)「各乗客の、一号車の出入りは見ていました?」

(´・ω・`)「生憎だが全然知らん。
      トソンちゃんは?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:47:22 ID:4y1kKI2.O<>

(゚、゚トソン「え……さぁ。ワゴンが入ってきた時以外は出入りなんて全然……」

(´・ω・`)「フツー見てないよねぇ?」


なぜか、女子高生特有のきゃぴきゃぴした口調で警部は同意を求めてきた。
ワカッテマスさんに苛々が募ってきているのがわかるから、ここで私はなんて答えればいいのやら。
気に障らないようにしなければならないのか。


(゚、゚;トソン「ええと……さぁ、どうでしょうかねぇ!?」

(´・ω・`)「開き直られても……」


警部が文字通りしょぼーんとした顔をする。
見かねたワカッテマスさんが、ここぞとばかりに推理を並べ始めた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:48:49 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「いつかはわかりませんが、彼は20分より以前にトイレ前に足を運んでいたのです」

( <●><●>)「そこでこの人を殺害、偶然見つけたワゴンの弁当収納スペースにそれを突っ込んだ」

( <●><●>)「香水の香りがわからなかったのは、銃殺の際に嫌になるほど血が臭ったから」

( <●><●>)「この時間帯でしたらゆっくり死体を隠す場所を探すことも可能です」

(`・ω・´)「………」


シャキーンさんは疑われる事に免疫がついてきたのか、取り乱したりしないようになってきた。
最初、銃が発見されただけであれほど動揺していたのが嘘みたいだ。


あれ? そういえば……



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:50:53 ID:4y1kKI2.O<>

(゚、゚トソン「刑事、彼が銃を見つけられた時、かなり動揺してましたよね」

( <●><●>)「え? それがなにか」

(゚、゚トソン「いやぁ……」




(´・ω・`)「『隠していたのになんで見つかったんだ!』……とか?」


(;`・ω・´)「!」


シャキーンさんが、ここにきて久々に動揺を見せた。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:51:59 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「あ、図星?」


嘲るように警部が訊く。
額に手を当て、シャキーンさんは静かに言った。

(`ノω-´)「………」

(`ノω-´)「驚いた、に関しては、そりゃあそうだとしか言い様がない」

(`・ω・´)「私の銃ではないのだからな」


真偽の如何はともかくとして、警部は驚くどころか呆れてフンと鼻で笑った。
警部は蔑んだ目で彼をじっと見ている。

(´・ω・`)「なにを血迷ったか。ここがあんたの席である以上、あんたのもの――」



(´・ω・`)「………待てよ?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:53:16 ID:4y1kKI2.O<>

勢いよく攻め立てる筈だったのを掌一枚で返し、急に黙りこくった。
否定されると読んでいたシャキーンさんは、警部の視線を辿る。
警部は、またんき氏の席とシャキーンさんの席を見比べていた。


(´・ω・`)「……ワカッテマス」

( <●><●>)「はい」


警部が、えらくまじめな表情で尋ねた。
思わずワカッテマスさんも身構える。

(´・ω・`)「仮に、またんき氏の殺人もシャキーンさんの仕業だとするにして、だ」

(´・ω・`)「この席から彼の胸を、真正面から撃てるか?」

( <●><●>)「……」


少し静かになった一号車、
同じく静かになってきつつあるワカッテマスさんは自分の考えを述べた。

( <●><●>)「元々、彼の席から銃殺は不可能と見てました」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:54:56 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「しかし拳銃の弾数が、彼がまたんき氏の殺人に
      関与している可能性を示している」

( <●><●>)「…………」

( <●><●>)「その件に関しては、こちらのワゴンの件が解決してから
         当たろうと思っていたので、なにも推理できてないです」


「そうか……」と警部は呟いた。
そして少しの間、左列の窓から見える、右から左へ高速に流れていく景色を見つめていた。

彼が口を開いたのはその数秒後だ。


(´・ω・`)「よく考えるんだ。仮に、シャキーンさんの犯行だとすると、
      当然ながらお互い着席状態だと不可能なんだ」

( <●><●>)「待ってください、だとするとまたんき氏が動かない限り彼に殺人は……」

(; <●><●>)「………あ!」


思い出したかのように、彼の発言を途中で彼自身の閃きが遮った。
そうだ、このふたりは決して無関係という訳ではないことを、ここにいる皆が知っているのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:56:47 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「トイレ前でのナイフの交戦……あのときに一度だけ、彼らは接触している」

(; <●><●>)「ですが、その時銃で撃つと、どうやって自分の席に戻ってきたというのですか!」

(´・ω・`)「それはまた後から追究すればいい」

(´・ω・`)「問題なのは、ふたりが接触したという事実!」


――以前、事の信憑性や起こり得なさそうという客観的意見を
完全に無視して、事実関係のみを追究する「検察官」がいた。
その人と同じようないいぐさをしたため、ワカッテマスさんは一瞬口ごもった。
温和しくなった彼を見て、警部は言った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 13:58:40 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「そもそも、ワゴンの件で一度トイレ前に向かい、間を挟んで
      再びトイレ前に向かって交戦があったとしてだな、不自然なんだよ。
      ただでさえ現場に戻るのはハイリスクなのに、そのリスクを冒してでもトイレ前に向かった理由が」

(`・ω・´)「しかしそれは全て仮定の上で成り立つ話だろう?」

(´・ω・`)「確かに、これは全部仮定の上で成り立つ話だ、しかし
      今はこの線が一番濃厚である事を念頭に置いて、訊くぞ」

(´・ω・`)「二度、トイレに向かった理由は、なんだ?」




(`・ω・´)「……排泄以外になにか?」

やれやれ、と首を左右に曲げ、警部は彼から視線をはずした。
その視線は、ワカッテマスさんと私が一望できるものとなっている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:00:02 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「ワカッテマスはどう考える? 排泄以外でだ」

( <●><●>)「……気晴らしですかね。
         彼の持ち物に娯楽用品はないですし」

(´・ω・`)「なるほど。じゃあトソンちゃんは?」

(゚、゚トソン「お、同じく……」

(゚ー゚トソン「私も、授業中暇になったらよくトイレに行ってますし。意味もなく」

( <●><●>)「私のこんな身近なところで非行に走ろうとしている高校生がいるとは……
         今度補導に向かいます」

(゚、゚;トソン「ちょ、嘘です! 来んな!」

(´・ω・`)「漫才はいらん」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:01:41 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「……まあ、排泄以外でトイレに行く目的なんてこんなもんだ」

(`・ω・´)「だから排泄目的だと言っているに……」


呆れた声で警部にそう言っている。
聞く耳を持たないとはこのことか、その件には触れず
「気晴らし」に重点を置いて警部は話した。


(´・ω・`)「排泄しにいくのにナイフはいらん」

(´・ω・`)「ナイフは護身用とか言ってたっけ?
      ははっ、トイレに行くだけでVIP気取りかい?」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「……だんまりか」



(`・ω・´)「………そう」

(´・ω・`)「え?」


警部が望み薄と見て肩を竦めた時、シャキーンさんがちいさく何かを呟いた。
聞き取れなかったが、「そう」というのは肯定の意で放たれた言葉でない
というのは、私にも警部にも想像がついた。
そのため、彼は聞き直す。


(´・ω・`)「なんて?」

(`・ω・´)「ワラワラ草。そう言ったんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:03:22 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「……? ああ、なんか珍しいアレね」

(゚、゚トソン「?」


私には、なぜこのタイミングで、希少な存在の植物、
ワラワラ草が挙がったのかがわからなかった。
シャキーンさんは話を続けた。


(`・ω・´)「ワラワラ草を見てみたくなって、じっと線路を見てたら、
      無茶な角度で見てたから気分が悪くなったんだ。
      だから外の空気……とまでは言わずとも、せめて歩こうと思ってな」

(´・ω・`)「無茶な角度?」

(`・ω・´)「こんな感じで……」



そう言って、乗車当初私がしてみせたような姿勢で
彼は窓に顔をつけて線路をみた。
少しして窓から顔を離し、再び警部と見つめ合う。

(`・ω・´)「結構眼球が痛むんだ」

(´・ω・`)「ほう。それで?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:05:16 ID:4y1kKI2.O<>

(`・ω・´)「歩き出すと催してきた尿意。
      都合がいいからそのままトイレに向かったんだ」

(´・ω・`)「はぁ……それはいつのことで?」


シャキーンが時計を見る。
この揺れのなか、針を見るのは難しそうと思ったのか
車体前方の壁にかかってあるデジタルの時計に目を向けた。

(`・ω・´)「………いつだっけな。覚えてない」

(´・ω・`)「そこが大事なのにー」

(`・ω・´)「だが、これで充分だろ?
      トイレへの動機を訊いて、なにがしたいんだ?」

(´・ω・`)「………仕方ない。ワカッテマス、今から――」





  「ま、待ってください!」



(´・ω・`)「ハ?」

(`・ω・´)「……誰だ」

( <●><●>)「どうしたんですか?
         ………都村さん」



(゚、゚;トソン「シャキーンさん!」


自然と、腹の奥から飛び出した声、
なぜだか私は、叫ばずにいられなかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:07:02 ID:4y1kKI2.O<>

なんだろう、
どうしてこんな疑問が現れるのかわからないし、その疑問には意味がないのかもしれない。
起こりえる筈のない矛盾だろうから、きっと私の勘違いなのだろうけど、
私はそれでも叫んだ。

でもきっと警部なら、このちょっとした疑問から、反論の糸口を見出してくれるかもしれない、
そう思うと、発言をためらう理由がわからなかったのだ。


(`・ω・´)「なんだ娘」

(゚、゚;トソン「あ、あのー」

(-、-トソン「……こほん!」



(゚、゚;トソン「う、右列からだとワラワラ草は見えないんですよ!?
      なぜ見ようと思ったのですか?」

(`・ω・´)「は?」

(`・ω・´)「……」





(;`゚ω゚´)「……―――――ッ!!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:08:48 ID:4y1kKI2.O<>

彼の顔が、激変した。
銃が見つかり、想定外と言わんばかりのあの時の驚き様とそっくりだった。
声こそでなかったものの、顔だけで驚愕に伴う叫び声が
聞こえてきそうなほど、滑稽なまでに、顔が変貌した。


(;`・ω・´)「み、見えないなんて知らなかったんだ!」

(゚、゚;トソン「嘘だ! ワラワラ草を知ってて、そしてそれを見ようと思うなら知ってる筈なんですよ!」




(゚ー゚;トソン「『ワラワラ草は海側でしか見られない』って!」

(;`゚ω゚´) !!


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/23(金) 14:09:52 ID:YT8r5kAM0<>ふむ<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:10:00 ID:4y1kKI2.O<>


(;;`・ω・´)「知人からワラワラ草の情報を聞いた際、
        右と左を聞き間違えたんだ!」

( <●><●>)「ちょっと待ってください。……なぜヒートしてるのかはさて置き……
         左が海で右が山、というのはこの列車に限った話です。聞き違えるなどないと思いますが」

(゚ー゚;トソン「そーだそーだ!」

(;` ω ´)「ぐ……ぬぬ……」


シャキーンさんはわなわなと身体を震わせながら、俯いてしまった。
それを見、ワカッテマスさんがここぞとばかりに当然の質問をしてきた。


(; <●><●>)「しかし………そのワラワラ草とやらと
         右列左列の関係が、なにが問題でも?」

(゚、゚トソン「ワラワラ草ってのは……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:11:52 ID:4y1kKI2.O<>

私は、以下の2点を説明した。
ひとつ、それを乗車中に見る場合、海側の列に乗った場合のみ見ることができる。
ひとつ、シャキーンさんは山側の席だから、ワラワラ草はどう足掻いても見ることができない。
言い終えても、ワカッテマスさんはうんうん唸っていた。


立ち直ったシャキーンさんがおっかない形相で
私を睨んだ時、警部が動いた。


(´・ω・`)「……詳しく訊こうか」

(;;`・ω・´)「俺は、ずっと、右列に座っていた!
        それはあんた、警部とこン娘が証明している!」

(´・ω・`)「なるほど、左列に座ってたんだね?」

(;;` ω・´)「違う! ワラワラ草の件は、ただの勘違いだ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:14:17 ID:4y1kKI2.O<>

ここにきて二度目の、シャキーンさんの暴走。
興奮状態から醒めず、警部の問いかけも無視して、無実を主張している。
戸惑う乗客、そしてワカッテマスさん。
警部は、私とシャキーンさんとの騒ぎの示す真意を
ワカッテマスさんよりも早く知り、追い詰めに入っている。
のだが、シャキーンさんも底意地を張って、抵抗を続ける。


(; <●><●>)「警部、左列にいたかもしれない、というのは
         わかったのですが、それのどこに問題が?」

(;;`・ω・´)「だから、おれ……いや、私は、左列には」

(´・ω・`)「いいだろう、バカで無能で役立たずの向こう見ず、
      無鉄砲で怖いもの知らずな君に、説明してあげよう」

( <●><●>)「………どうぞ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:15:55 ID:4y1kKI2.O<>

シャキーンさんを宥める仕草をして、そのままワカッテマスさんと向き合った。
しかし、依然シャキーンさんは興奮状態のままである。


(´・ω・`)「……まずまたんき氏殺害について、彼が犯人だとすると、なにが問題か?」

( <●><●>)「言うまでもない、殺害のタイミングです。
         同時に、弾痕の上からコートを着せる必要もあります」

(´・ω・`)「もし、左列のどこか……まあ、自然と場所は限られるが……
      またんき氏より前方に座っていれば、両方の問題が解決する」

(;;`・ω・´)「……………」

( <●><●>)「はあ」


適当に相槌を打つ彼は、その警部の言う、シャキーンさんが
左列にいた場合に、起こり得た状況を脳内にたたき込んでいる。
少しして、整理できたのか若干顔が強張った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:18:16 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「そこで銃殺の問題が解決だ、また移動できた事実が
      出来上がる以上は、服の問題も解決できる」

(´・ω・`)「――依然状況証拠だけだが、逮捕の根拠としては充分だ」

( <●><●>)「ちょっと待ってください、それだとふたつの問題が浮かび上がります」

(´・ω・`)「………ふたつ?」


ワカッテマスさんが、何故かはわからないも、警部の説明に異議を唱えた。
それを、予測していなかったのか、警部は聞く。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:19:25 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「まずひとつ、銃声です」

(´・ω・`)「聞こえたね、“1度“」

( <●><●>)「しかしそのタイミングで、私と9がすぐに
         捜査に介入しました、そのときは既に彼は着席していた……」

( <●><●>)「銃殺と移動はできようが、上から丁寧にコートを着せるのは、まあ難しいかと」

(´・ω・`)「というと?」

( <●><●>)「もし警部の推理がただしければ―――」




( <●><●>)「少なくとも、この場には“2度”の銃殺が鳴らないとだめなのです」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:20:50 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)

(;`・ω・´)


硬直した警部とシャキーンさん、
それは、はたして推理が破られたからなのか、それとも
反論に至るまでの心当たりがあるからなのか。

一度車輪と線路が車体を揺らし、おおきな音が響いてから、ワカッテマスさんは続けた。


( <●><●>)「それに」

( <●><●>)「座席ですが、またんき氏は警部からひとつ席を挟んだ前です」

( <●><●>)「無論殺すなら、彼より前方に座る必要がある。
         空席で考えると、まあ盛岡さんの後ろです」

(´・_ゝ・`)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:22:12 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「問題は………」

( <●><●>)「そこから撃つ場合、懸念事項が生まれるのです」


彼は、強く言い切った。
盛岡さんからの視線も浴びつつ、更に強く、彼は言う。






( <●><●>)「――この、A−4に座る、名もなき死体……
         彼が、見ているはずなのです」

(  ∀ )




(´・ω・`)「………ぐ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:23:06 ID:4y1kKI2.O<>

一瞬、警部は口ごもった。
いつかは解決せねばならない問題、それが早くも彼の目の前に立ちはだかったからだ。
先程までの、余裕のある表情は打って変わって、苦汁を呑まされたような顔となっていた。
ワカッテマスさんが腕組みをして、勝ち誇った――と同時に、若干怪訝な――顔をしていた。


( <●><●>)「同時進行で解決すべきと思いますがねぇ」

( <●><●>)「詰まるところ、またんき氏殺害には、その前の乗客の存在が――」



(´・ω・`)「――なぁーんちゃって」



( <●><●>)「!」

(`・ω・´)「!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:24:59 ID:4y1kKI2.O<>

今日何度目になるのだろうか、
警部が、余裕を感じさせる、あの嫌な嗤いを見せた。
かかか、と高く笑い、一度呼吸をした。


(´・ω・`)「今の問題点、両方とも解決できる」

( <●><●>)「なかなか言いますね」

(´・ω・`)「まずひとつ、銃声だが……」


さっと、ワカッテマスさんから視線を逸らす。
小雨が降っているかの確認をとる際にするポーズをして見せて、視線は泳がせた。
同時に静まる一号車、するとよく聞こえる、この激しい、列車の揺れ。
よくよく考えると、こんなに煩い空間で張り合っていたのか、あのふたり。


(´・ω・`)「……うるさいね」

( <●><●>)「はい」

(´・ω・`)「銃声も、これに呑まれたんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:26:06 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「ちょっと待ってください。
         ……言うのもばかばかしいですが、その推理は通りませんよ、残念ながら」

(´・ω・`)「“煩くとも銃声は聞こえるんだ、証拠に私たちが乗り込んだ”、なら聞かないよ」

(; <○><○>) そ「なァ!?」

(´・ω・`)「今程度の揺れじゃ、当然、聞こえる。
      しかし、銃声が聞こえなくなるほどの揺れを“2度”、僕は確認している」

( <●><●>)「銃声は破裂音だ、そんな多少の轟音など………」




(; <●><●>)「………あ!」

(´・ω・`)「思い出したかい?
      地震をも彷彿とさせる、それはとんでもない揺れが、轟音とともに訪れたんだ、この列車に」

(; <●><●>)「しかしあれは事故、予測して発砲するなんて……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:27:06 ID:4y1kKI2.O<>

2度の揺れ、私の記憶がただしければ、サービスワゴンが訪れる前、
そして銃声が聞こえた後の、2度に渡って列車を襲ったもののはずだ。
並の揺れではない、しかも鼓膜を破りそうなほどの轟音も聞き取れた。
咄嗟にジャックかなにかと勘違いしたほどだから、銃声のひとつやふたつは聞き損ねるかもしれない。


(´・ω・`)「でぃさん、あの揺れですが、あれは今回に限った、事故ですか?」

(#゚;;-゚)「…………」


ふと、警部の視線はでぃさんに向けられた。
しかし、予測できていたのか、動じず、すぐに答えを返した。

(#゚;;-゚)「いいえ。少し前から、ああなんです」

(´・ω・`)「それを前もって知っていれば……」

(#゚;;-゚)「あわよくば、可能でしょう。
     銃声程度の音を隠すなら」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:28:40 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「シャキーンさんの拳銃の中身とも合致する。
      銃声を隠したものと考えれば、またんき氏の……」

( <●><●>)「ちょっと待ってください。
         そもそも、事故ではないものだとして、それを予測できるはずがない」

(´・ω・`)「かァー、そんなのはどうにでもなるんだ」

( <●><●>)「……というと?」

(´・ω・`)「少し前に、ここの列車に乗って、定期的に揺れる時間帯があることを知れば、犯行は可能だ」

( <●><●>)「それもおかしい。定期的に揺れることを知るためには、最低でも2回は乗る必要がある。
         加えて、時間まで知るためには3回」

( <●><●>)「……とてもじゃないですが、無理です」


言いくるめられた、私は警部の心情をそう察した。
しかし、そう思ったのは私だけで、実際はそうでもなかった。
見苦しい反論ではある、しかし否定できない、そんな推理を言い出した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:30:04 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「“暴発した”――
      そうは考えられないか?」

(; <●><●>)「ぼ、
        ……“暴発”ぅ?」

(´・ω・`)「ほんとうは撃つつもりはなかったが、拳銃をまたんき氏に突きつけていた」

(´・ω・`)「そして、あの大きな揺れの時に驚いて、誤って発砲」

(´・ω・`)「已むなしに、急いで服装をただして、席に戻った……」

( <●><●>)「………」


一見筋が通っている推理、それは、こういう推理合戦の時には幾度となく顔を出す。
しかし、私は知っている。それらは全て虚像であることを。
実像を見るためには、ピントを然るべきポイントまでずらさないとだめなのだ。
警部の今の推理だと、ワカッテマスさんはきっと、視点をずらし新たな可能性を持ち出す。


( <●><●>)「……警部、その推理だと、まずいです。
         容疑者が一気に増えます」

(´・ω・`)「あ」

(; <●><●>)「『あ』じゃないでしょ!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:31:24 ID:4y1kKI2.O<>

(゚、゚トソン「容疑者が増えるって?」

( <●><●>)「よくぞ聞いてくれた」

( <●><●>)「今の推理だと、殺人するために必要な条件は
         『またんき氏のそば』にて『銃を握り交渉する』2点です」

(゚、゚トソン「シャキーンさん以外にどなたか?」

( <●><●>)「………お忘れですか?」



( <●><●>)「またんき氏も、銃を持ってたのです」



斉藤またんき、大会社アンモラルの社長である彼は、社長にあるまじきブツを所有していた。
輪胴式の拳銃、そして弾倉から確認するに、1発、撃たれている。
当初は単なる不思議とでしか見られなかったが、はじめてそれが話に加わった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:33:02 ID:4y1kKI2.O<>

( <●><●>)「またんき氏から拳銃を奪い、こめかみに突きつけるのも、不自由しないでしょう」

( <●><●>)「銃声が鳴らなかった理由を、事故と轟音の所為だと
         言うのなら、寝ていた橘ルカさん以外には……可能です」




(;´・_ゝ・`)「まま、待ってよ!」

\(;^o^)/「なんで俺が容疑者になんだよ、あァん!?」


ワカッテマスさんの言いたいことが皆に伝わったのか、すぐに自身の潔白を主張する声で、場が煩くなった。
そりゃ当然だ、犯人はほかにいる!って言われたようなものなのだから。
まあ、それは警部の推理があってこその仮定なため、ワカッテマスさんはさほど気にしていない。


( <●><●>)「そして、やはりまたんき氏の前にこの人がいるわけ
         なのだから、どのみち今の警部の推理は……」

(´・ω・`)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:34:18 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「……トソンちゃん」

(゚、゚;トソン そ「!! わ、私じゃないです! 殺してなんか」

(´・ω・`)「ちげーよ。ちょっくらここでクイズでも」

(゚、゚トソン「は?」

( <●><●>)「警部、ふざけるのも……」



(´・ω・`)「またんき氏が、もしこの一号車の中で撃たれたものとするなら、
      当然“犯人の立ち位置”が重要となってくる」


ワカッテマスさんの制止も振り切り、私にえらく真剣な表情をして、今の状況を話している。
というか、この人、ほんとうにクイズを出すつもりなのか……


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:37:34 ID:4y1kKI2.O<>

(´・ω・`)「当然ながら後ろからじゃ撃てない。
      自然と、前から5つ目までの席から、となる」


言われてみて、振り返ってみると、
A−1、左列の先頭は橘ルカ、ずっと睡眠をとり、今は気絶、という彼女。
その後ろには盛岡デミタス、乗車の目的はオフ会への参加。
インターネット通信をして、オフ会先の友人と、対戦をしていたと言う。
ひとつ空席を挟んで、その次に、今ワゴンの横で倒れている、またんき氏そっくりの死体。
その次が、問題の、斉藤またんきだ。


一方、右列は、見える景色の関係もあって、人数は少ない。
B−2に人生オワタ、文字通り確かに終わっとるかわいそうな人と記憶している。
今回の事件に関して、持ち込みの凶器は、いっさいない。
B−4には、素直くるうさんだっけか、精神障害を患っていると聞いた。
彼女の前後の席は空いている。
ふたつ挟んでのB−7……そこが、今まさに問題となっている、シャキーンさんの席であるわけで。
しかしここからだと、A−5に座っているまたんき氏の銃殺は不可能。


なら、どこから撃つのが、シャキーンさんにとって都合がよく、
尚且つ合理的で筋が通るか、それを聞かれているのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:39:18 ID:4y1kKI2.O<>

まず、A−3は、先程から言われているように、除外。
交渉していた、という仮条件をふまえると、B−1と3は考えにくい。
B−5、くるうさんのひとつ後ろなら向かい合う形となるし、
シャキーンさんも席をふたつ前に進めるだけで、銃殺のチャンスが生まれる。



(゚、゚トソン「またんきさんの右隣、B−5だと思」

(´・ω・`)「はいブー」
  、_
(゚ー゚トソン


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:42:53 ID:4y1kKI2.O<>

今の今までの私の推理はなんだったのか、私がBと言った
辺りから、警部の顔的に正解ムードではなかった。
なら、どこに……?





(´・ω・`)「答えは、A−4だ」




( <○><○>) そ「!?」

(゚、゚;トソン そ「はァ!?」



いきなり、とんでもないことを、この人は言ってのけた。
いやいや、だって、そこは……



(; <●><●>)「警部、そこは!」

(  ∀ )

(; <●><●>)「彼の座席でしょう!」




 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 7章
  「移りゆく推理」

    おしまい


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 14:45:40 ID:4y1kKI2.O<>まず最初に謝らせてくれ
まさかこんなに長くなるとは思いもしなかったんだ。


長くなったが故に、急遽タイトルを「ワカッテマスの推理」から「移りゆく推理」に変えました。
混乱を招くような投下をして申し訳ないです。

ブーン芸さんと文丸さん、申し訳ないですが
まとめの際、7章のタイトルを「移りゆく推理」に変えてほしいです。
すみませんが、よろしくお願いします。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/23(金) 15:04:31 ID:kEFe4YUc0<>現場とかの位置関係がいまいち想像できない
相関図みたいなのがほしいっす<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 15:08:01 ID:4y1kKI2.O<>一号車内部
二−三号車間のトイレ前スペース
同じく、乗務員室

以上の図、ですか?<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/09/23(金) 15:37:55 ID:4y1kKI2.O<>ノートに描いてイメぴたで変換して貼ろうとしたんだ
え、イメぴたってもう終わってるのね、知らんかった


自分携帯から投下なので画像載せられないですがどうすればいいですかね<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/09/23(金) 15:51:20 ID:kIjutVjc0<>乙
こんがらがるね

画像はイメピク使ってんのよく見るけど<> 三月<><>2011/09/25(日) 13:59:03 ID:kQ3ynTs2O<> _n グッジョブーン!!
( l
 \\ (^ω^ )
  ヽ ̄ ̄ ノ
   フ   /
   |  /
   ( 丶ノ
  ノ>ノ
 三レレ
    グッジョブーン!!
    ∩
   ( ⌒)    ∩_
   / ノ   i E)
  / /    //
  / /    //
 / /^ω^)//
(    /
 ヽ   |
  |  /
  ( ヽノ
 ノ>ノ
三レレ
    グッジョブーン!!
  ( ^ω^)   n
⊂二   二二二( E)
  |  /
  ( 丶ノ
 ノ>ノ
三レレ<> 名も無きAAのようです<><>2011/09/27(火) 05:52:54 ID:Zr61a1h6O<>乙<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/09/27(火) 21:12:24 ID:Fmz/sKZ6O<>今度イメピク使って練習してみる


8章、今週中には投下できなさそうです。できたらするけど
おそらく10月半ばまでは更新できないと思う
一応、タイトル(仮)は「入れ替わったもの」です
予告の予告をすると、8、9章あたりからクライマックス突入なので、
それまで長ったらしい推理が続きますが、なんとか耐えてほしいです。ごめんなさい


言うの遅いけど、7章も読んでいただきありがとうございました!<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/02(日) 10:41:56 ID:rIifbkww0<>なにこれおもしろい
更新待ちます<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/08(土) 20:31:00 ID:T4/ka7pMO<>明日早いから、21時頃になるまでできる限り投下します<> ◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:32:08 ID:T4/ka7pMO<> 


8章「入れ替わったもの」


.<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/08(土) 20:37:24 ID:9rxuhyV60<>まさかの遭遇<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:38:15 ID:T4/ka7pMO<> 

ワカッテマスさんが、思わず声を張り上げる。
車輪がレールを蹴る音をもかき消す、いつにもまして大きな声が響き渡った。
しかし、ワカッテマスさんの声を聞いた上でも、
警部は「シャキーンは嘗て他人が座っていた場所に居た可能性がある」と言う推理を曲げる様子は窺えない。


(´・ω・`)「消去法さ」

(´・ω・`)「言った通り、5列目以降は不可能だから除外。脅しを前提とするわけだから、1列目から3列目も除外」

(´・ω・`)「残ったのはA−4とB−4、5」

(´・ω・`)「B−4はくるうちゃんがいるからね、除外」

川 ゜々゚)「……」

警部が横目でくるうさんを見た、その時くるうさんは
先程までの言動とは打って変わって、静かになっている。



(´・ω・`)「さて、B−5だが……見ての通り、この通路は、広い。横幅2メートル弱はある」

(゚、゚;トソン「でも……」

( <●><●>)「……そこは空席ではないです」

(´・ω・`)「面倒だし名前決めとくか。仮名モラルね」



(# ;;- ) そ「!?」

(;` ω ´) そ「!?」



(;´・ω・`)「な、なに? なに? まさか実名?」


.<> >>331訂正
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:39:39 ID:T4/ka7pMO<> 

ワカッテマスさんが、思わず声を張り上げる。
車輪がレールを蹴る音をもかき消す、いつにもまして大きな声が響き渡った。
しかし、ワカッテマスさんの声を聞いた上でも
警部から、彼が「シャキーンは嘗て他人が座っていた場所に居た可能性がある」と言う推理を曲げる様子は窺えない。


(´・ω・`)「消去法さ」

(´・ω・`)「言った通り、5列目以降は不可能だから除外。脅しを前提とするわけだから、1列目から3列目も除外」

(´・ω・`)「残ったのはA−4とB−4、5」

(´・ω・`)「B−4はくるうちゃんがいるからね、除外」

川 ゜々゚)「……」

警部が横目でくるうさんを見た、その時くるうさんは
先程までの言動とは打って変わって、静かになっている。



(´・ω・`)「さて、B−5だが……見ての通り、この通路は、広い。横幅2メートル弱はある」

(゚、゚;トソン「でも……」

( <●><●>)「……そこは空席ではないです」

(´・ω・`)「面倒だし名前決めとくか。仮名モラルね」



(# ;;- ) そ「!?」

(;` ω ´) そ「!?」



(;´・ω・`)「な、なに? なに? まさか実名?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:43:23 ID:T4/ka7pMO<> 

(#゚;;-゚)「………いえ……しかし、なぜ、モラルに?」

(;´・ω・`)「アンモラル社長に似てるから、アン取ってモラルに……」

(#゚;;-゚)「………割り込み失礼、続きどうぞ」

(;´・ω・`)「やりにくいなぁ……」



警部が、ワカッテマスさんの反論を読み、その際、依然名前のわからないままだと面倒だからといって仮名をつけた。
すると、でぃさんとシャキーンさんの顔が、一瞬だけ強張った。
予想だにしない反応だったため、警部も思わずたじろいだ。


警部は一旦咳払いをする。
そして、説明に入った。


(´・ω・`)「モラル氏の死体が、ワゴンから発見されたのは知ってるね?」

(´・ω・`)「乃ち、ずっと席にいたわけではない」

( <●><●>)「ちょっと、それを言っちゃ、いろんな推理ができますよ。
         『事件当時、モラル氏が席をはずしていた』証拠を提示していただいたい」

(´・ω・`)「いいや違う、シャキーンさんがいたと思われる席がここしか考えられないんだから、
      したがってモラル氏も席をはずしていたと考えるしかないんだ」

( <●><●>)「……」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/08(土) 20:43:54 ID:VDWp.gS60<>しえんーん<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:45:55 ID:T4/ka7pMO<> 

(´・ω・`)「シャキーンさんがワラワラ草を見ていた件に話を戻すよ」

(´・ω・`)「眼球が痛んだということは、左列について長らくの間、窓の外を眺めていたことに繋がる」

(´・ω・`)「あとは『シャキーン氏が左列にいた』という証拠があれば……」

(`・ω・´)「………ワラワラ草は、私の、勘違いだ」




(゚、゚トソン「………」

(´・ω・`)「……トソンちゃん、なにか心当たりある?」

(゚、゚トソン「え?」


警部の言っている事は、こうだ。
シャキーンさんがまたんき氏を殺害できる可能性は、あった。
モラル氏が席をはずしている隙にA−4に居座り、銃を突きつけてまたんき氏を脅す。
しかし、あの揺れのせいで暴発、殺してしまった、と。
状況的に可能、だからあとは、実際にシャキーンさんが席をはずし
左列に向かったという証拠があれば、逮捕に決行できる、と。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:47:27 ID:T4/ka7pMO<> 

(´・ω・`)「ワラワラ草の矛盾に気が付いたトソンちゃんならわかるでしょ〜」

(゚、゚トソン「だって、警部がお茶かけた時しか見てないものでして……」

(´・ω・`)

(゚、゚トソン






(゚ー゚;トソン「あ!」

(;´・ω・`)「その手があったか!!」





( <●><●>)「なんですか急に……」

(;´・ω・`)「おい、至急シャキーンの“服”を確認しろ!」




――― シャキーンのとった、“左列への移動”のからくりがわかった!


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:52:00 ID:T4/ka7pMO<> 

ずっと、彼ら警察の捜査がはじまってからも、私の脳内で渦を巻いて、気になって仕方ない事があった。

この列車がおおきく旋回し、遠心力で私たちが振り回されていた時、警部がペットボトルのお茶を取り出した。
キャップを捻ったと同時に、列車旋回を終えて直線に入り、思いきり私から見て右側――つまり通路側――に警部が揺れた。
中身のお茶にもその力が及んで、警部と一緒に飛び、B−7に座っていた“誰か”にお茶がかかったのだ。
その“誰か”はシャキーンさんだと聞かされたのだが、正直納得いかなかった。


がたいの良さがまるで違うし、その“誰か”の声は中途に高かったと記憶している。
そして、私がふと漏らした言葉に、私と警部は本能的に察知した。



「もし、あれがシャキーンではなくて、違う人と入れ替わっていたら?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:56:06 ID:T4/ka7pMO<> 

(;`・ω・´)「ちょ、やめろ!」

( <●><●>)「……」


すぐに、ワカッテマスさんは警部に「服が濡れているか調べろ」と指示された。
意味がわからぬまま渋々調べたが、全体を調べ終えた後も、その顔は明るくならない。
警部が、はずれか、そう思った次の瞬間、ワカッテマスさんは半ば悔しさを垣間見せて言った。


( <●><●>)「……残念ですが、どこも濡れてなんかいません」

(´・ω・`)「…………」

( <●><●>)「いったい、どんな推理をし……」



「どんな推理をしたんですか」 そう言い切る前に、彼は口を止めた。
警部の顔から窺える「もしかしたら」が、顔を見ずとも判るほどに、強く感じられたからだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 20:58:04 ID:T4/ka7pMO<> 

ワカッテマスさんの問い掛けにやっと反応でき、
警部が口を開いたが、声のトーンは明らかに高くなっている。


(;´・ω・`)「………またんき氏の服も調べろ」

( <●><●>)「はい?」

(;´・ω・`)「ここからじゃ見えない、窓と面している部分…… 左半身だ」


そう言われ、再び彼は動いた。
またんき氏の席に足を踏み入れ、ゆっくり身体をずらして、指示されたまたんき氏の左半身を見た。
刹那、声にもならないような、疑問を乗せた声がでた。


( <●><●>)「……ん?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:01:24 ID:T4/ka7pMO<> 

( <●><●>)「……なんでしょう、襟や左肩の部分が、少し濡れてます」

(;´゚ω゚`)「―――――ッッ!」

(; <●><●>)「な、なんですか?」

(;´・ω・`)「………なんてこった……」

(゚、゚;トソン「…やっぱり」

( <●><●>)「ヤッパリ?」





(;´・ω・`)「事件は……180度、ひっくり返った!」


(`-ω-´)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:03:58 ID:T4/ka7pMO<> 

濡れているはずのシャキーンさんの服が濡れていなくて、
濡れているわけがないまたんき氏の服が濡れている、この事実。

これが意味するところの――私はなぜこうなるのかがわからないのだが――結論は、でた。



(´・ω・`)「……シャキーンさんのいた席がわかった。A−4ではない」

( <●><●>)「観念しましたか。ところで、あなたはさっきからなにを……」

(´・ω・`)「A−5。シャキーンさんは、そこに座っていた」

( <●><●>)「はぁ。だから、あなたはいったい……」





(; <●><●>)「……今、一番あり得ない席を提示された、そんな気がしたのですが」

(´・ω・`)「A−5、そこが、シャキーンさんの席だ。間違いない」

(; <●><●>)「なんですって!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:06:18 ID:T4/ka7pMO<> 

(#゚;;-゚)「しかし、そこはまたんきさんが……血を流して倒れています!」

(´・ω・`)「付け加えるとするなら、『元々』シャキーンさんの席だった、というべきか」

(#゚;;-゚)「………え?」


でぃさんも、随分腑抜けな声が出たものだ。
しかし、それも仕方がない。


というのも、だ。
あの時、警部はお茶をこぼした、それは間違いない。
それで“誰か”が濡れた、というのも事実。
問題は“誰か”なわけで、これがシャキーンさんなら問題ない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:08:59 ID:T4/ka7pMO<> 

ここで、以下のふたつの事実が発覚する。
・シャキーンさんは濡れていない。
・またんきさんが濡れている。
以上の条件から導き出されるひとつの真実、それは、こうだ。



(´・ω・`)「シャキーンとまたんき、ふたりは席を入れ替わっていた!」

(; <●><●>)「いやいやいや……おかしいでしょ!
        いつ、入れ替わったのか。なぜ、入れ替わる必要があったのか。
        そしてどうして、それをお互い了承したのか。
        ……様々な問題が浮かびます」

(´・ω・`)「おまえ、何年刑事してるんだ」

(; <●><●>)「……?」

(´・ω・`)「事実を繋げた上で生まれる不可解は、ひとつの真実への鍵なんだ。
      たとえ不可解だろうが、それらには必ず理由がある。それを考えろ」

( <●><●>)「………」


( <●><●>)「センパイ、ふたりが入れ替わっていた事実、どう見ますか?」

(´・ω・`)「……ふむ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:11:54 ID:T4/ka7pMO<> 



(`-ω-´)「…………」

(´・ω・`)「おい、シャキーンさんよ」

(`-ω-´)「………なんだ」

(´・ω・`)「認めるのか? この不可解を」

(`-ω-´)「……」


目をつむり、さながら瞑想でもしているかのようにして呼吸を整え、静かにしている。
揺れに身を任せ、身体を揺らしている。
警部の問いに、やっとこさ目を開き、言い切った。


(`・ω・´)「認める……しかないのだろう?」

(´・ω・`)「諦めがいい子は、嫌いじゃないぜ」

(; <●><●>)「し、しかし……なぜ!」

(`・ω・´)「おい若造、センパイの教えを早速踏みにじるのか。自分で考えろ」

( <●><●>)「………」


すぐにワカッテマスさんは目をつむり、顎に手を当てて考える仕草を見せる。
その隙に警部がシャキーンさんに詰め寄った。
互いに目つきが怖い。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:16:18 ID:T4/ka7pMO<> 

(´・ω・`)「銃が見つかった時のあの驚き……このせいか」

(`・ω・´)「なぜそう思う」

(´・ω・`)「ちったァ、僕の脳内に浮かんだからね、不可解を打破する情景が」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「……シャキーン」

(`・ω・´)「無駄話はそこまでだ。若造を見ろ」


ワカッテマスさんは、顎にあてていた手をおろし、
いつにもまして真顔で、仁王立ちしていた。



( <●><●>)



(´・ω・`)「ワカッテマス、どうした」

( <●><●>)「私の推理は固まりました」

(´・ω・`)「そうかい。で、犯人は――」




( <●><●>)「シャキーン、あなただ」




(´・ω・`)「!」

(`・ω・´)「!」


ワカッテマスさんの瞳が、今日一番の煌めきを見せた。
警部もシャキーンさんも、僅かながらではあるが、驚愕を露わにしている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:20:04 ID:T4/ka7pMO<> 

ワカッテマスさんは、腕組みをし、そのまま右手で深緑のコートを握りしめている。
顰めっ面のまま、目を細め、シャキーンさんに一瞥を与える。
そして、淡々と、ワカッテマスさんの推理ショーがはじまったのだ。


 まず、あなたはA−5に、またんき氏はB−7に座っていた。
 が、今は逆となっている。入れ替わった事実、ここまではいい。

 では、問題は、いつ入れ替わったか。
 言うまでもない、トイレ前での交戦時。
 ナイフを交えたのち、先にまたんき氏が帰り、あなたは傷を癒してから一号車に戻った。
 そのとき、あなたは目を疑ったはずだ。
 自分の席に、あろうことかまたんき氏が座っているのだから。

 今のまたんき氏の席の鞄に銃がある、言い換えれば、元のあなたの所持品に、銃があるわけだ。
 それを見られてはまずいのだが、見られてしまった。
 その時シャキーン、あなたは咄嗟に銃を取り返し、胸にあてた。
 そのまま口止めを要求するも、同時に起こった揺れ。
 誤って射殺したあなたは、見つかってはまずいと思い、コートを弾痕の上から隠すようにして服装をただして、銃を置いていった。


( <●><●>)「違いますか?」

(`・ω・´)「どうしても、私を犯人に仕立て上げたいようだな」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:21:22 ID:T4/ka7pMO<> 

(´・ω・`)「………おいワカッテマス」

( <●><●>)「はい」


長いワカッテマスさんの推理を、一字一句聞き逃さず警部は頭に叩き込み、一旦間を挟んだ。
ぼやくシャキーンさんをよそに、警部は面と向かってワカッテマスさんと対峙した。


(´・ω・`)「その推理以外に、シャキーンさんが殺人を犯せる状況は存在しないのか?」

( <●><●>)「おそらくは。今の推理以外、殺すタイミングが存在しない」

(´・ω・`)「なら………」




「シャキーンさんは犯人ではない」


警部がそう言って、再び車体が揺れた。
揺れたのは列車だけではなく、ワカッテマスさんのメンタルもだった。
彼のメンタルが、揺れ動き始めていた。
考えてみれば、それは当然だったのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/08(土) 21:23:14 ID:T4/ka7pMO<>すみませんが、一旦ここで切ります。
三連休のうちにこの8章は終わらせるので、ご了承ください。<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:25:47 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「当然、殺したのは2度起こった揺れのうちのどちらかとなる」

( <●><●>)「そして、1度目以降というのは警部と都村さんが証明しています」

(´・ω・`)「その時はまだ席が替わってなかったからねぇ」

(´・ω・`)「……そして、2度目の揺れの時、そう言ったな?」

( <●><●>)「なにか問題が?」

(´・ω・`)「問題もなにもさぁ……その時の状況を思い出してみろ」



(#゚;;-゚)「あ」

(´・_ゝ・`)「確かその時はアレですね、警部さん」



( <●><●>)「?」


ワカッテマスさん以外、皆が頷いていた。
少しして、まだわからないか、と警部が言った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:27:35 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「その時は、おまえ含めて皆で捜査に明け暮れていたんだぞ」

( <●><●>)「…………」



(; <●><●>)「………! あああッ!」


2度目の揺れ、それは確か、40分をまわっていた。
ワカッテマスさんとワカンナインデスさんが乗り込んできて、皆を落ち着かせて、捜査。
ワゴンの件で、警部がでぃさんと言い争っていた時のような気がする。
それをふまえてワカッテマスさんの推理を見直すと、とんでもない欠陥が生じる。


(´・ω・`)「あの場面で殺すってか? バカも休み休み言え、その時はもう入れ替わった後だ!
      そしてその時には既にまたんき氏も息を引き取っていた!」

(; < ><●>)「ぐッ……しかし、シャキーンが犯人でないなら……」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/09(日) 15:28:48 ID:.C18LIgQO<>支援<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:29:50 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「1度目の揺れでもない、2度目の揺れでもない。しかし、あと一度、チャンスがあったはずだ」

(; <  ><●>)「しかし、揺れは2度までしか……」

(´・ω・`)「なにも、人を銃で殺すのに轟音が響く必要はない」



(;´・_ゝ・`)「わかりましたよ警部さん、あの銃声ですね!」

( <●><●>)「………!」



(´・ω・`)「銃声が鳴ったのは事実。消去法で考えるなら、あの時しかない」

(´・ω・`)「犯人は、銃声が鳴って刑事たちが乗り込むまでの間に、犯行を済ませたのだろう」

( <●><●>)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:32:39 ID:Qfzfk0O.O<> 

(゚、゚;トソン「でも、あの時はシャキーンさんはじっとしてました!」
(
;´・_ゝ・`)「僕はのほほんとしてました!」

(゚、゚;トソン「知るか!」




(´・ω・`)「唯一殺人が行えた場面にてじっとしていた以上、シャキーンさんに犯行は不可能だ」

(´-ω-`)「………またんき氏に関しては」

(`・ω・´)



(;`・ω・´)「……ハ?」


当然の疑問符だった。
先程から、警部はただでさえ論点があやふやで、推理の対象が定まっていない。
その上、いきなりもうひとつの事件の存在を提示されると、当然シャキーンさんも動揺する。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:34:15 ID:Qfzfk0O.O<> 

もうひとつの事件、それは、モラルと仮名を付けられた、名もなき死体の殺人事件だ。
一度、ワカッテマスさんが推理したものの、それは論破された。
警部の手によって。
しかし、それが、その警部によって再び重要視される事になる。


(´・ω・`)「入れ替わった事実、それは覆せない」

(´・ω・`)「じゃあ、なぜ入れ替わったのか……まだ訊いてない」

(´・ω・`)「それを考えると、どうも、モラル氏の事件が気に掛かる」

(`・ω・´)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:36:17 ID:Qfzfk0O.O<> 



(´・ω・`)「………もっとも」

警部が腕を組んだ。
しきりに首をたてに揺らして、如何にも探偵のように振る舞っている。


(´・ω・`)「考えてみれば、入れ替わった事実を、彼は隠していたかった。
      それは数多くの証拠が物語っている」

( <●><●>)「して、その証拠とは」

(´・ω・`)「まずは持ち物検査だよ。ふつう、鞄に銃が入っていれば、捜査は拒むはずだ」

(´・ω・`)「しかし、すんなりと認めてくれた。……そして、銃は見つかった」

(´・ω・`)「あの驚き様、ちょっと、おかしいと思ってたんだ。明らかに、動揺し過ぎている」

(´・ω・`)「もしここで『二人は入れ替わっていた』という前提を加えると、それも解決するんだ」



(´・ω・`)「『まさか、またんきが銃を持っているはずがなかろう。見せてもさして問題はない』……ってね」

( <●><●>)「!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:37:39 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「しかし、それにはシャキーンさん側にも、ある前提が必要となる」

(´・ω・`)「『俺の鞄には銃が入っているが、またんきの鞄を俺のものとしてしまえば、銃刀法から逃れられる』と」


またんき氏とシャキーンさんは、入れ替わっていた。
しかし、鞄は入れ替わっていなかった。
それを利用した、彼なりな作戦だった、という。
しかし、まだ、本題には入っていないためか、休まず警部は続けた。

.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:39:16 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「シャキーンさんが拳銃を持っていた、と、こんな前提が加わるわけだが……」

(´・ω・`)「ワカッテマス、ここにふたつの拳銃がある」

( <●><●>)「……はい」


A−5から見つかった、1発撃たれた拳銃。
B−7から見つかった、2発撃たれた拳銃。
ふたつを警部が持ち、掲げた。


( <●><●>)「………その前に、鞄が入れ替わってない、どこを見てそう判断できるのですか?
         A−5の鞄が、またんき氏のである可能性がある」

(´・ω・`)「いま言ったじゃん。シャキーンさんの異様な驚き様から……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:41:15 ID:Qfzfk0O.O<> 

( <●><●>)「………A−5の鞄は、あなたのですか?」

(`・ω・´)「………」


警部からの質問を一旦よそに、ワカッテマスさんはシャキーンさんに、そう訊いた。
訊いたのはいいが、いっこうに答える気配がしない。
少しして、諦め、本題に戻った。


( <●><●>)「……そりゃあ、A−5でしょう。もともとここがシャキーンさんの席であるならば」

(´・ω・`)「こっちは、1発だけが撃たれている。
      当然、またんき氏とモラル氏の両者の銃殺は不可能だ」

(´・ω・`)「そして、またんき氏の殺害は難しい、そう考えると、自ずと答えは見えてくる」

(`・ω・´)


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:44:10 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「死体はワゴンの中に隠されていた、そして、彼は現場に訪れている」

(´・ω・`)「動機が謎な、座席の入れ替わりも、トイレ前から戻った時だ」

(´・ω・`)「なんの因果かねぇ……トイレ前での行動がわかれば、全てがわかるんだ」



(´・ω・`)「……今度こそ、嘘偽りなく話してもらうぞ」

(`-ω-´)「…………」


目を瞑った彼は、舌打ちを一度して、かっと警部を睨んだ。
今日で何度目になるだろうか、再びふたりは険悪なムードになる。
しかし、警部曰く、推理は佳境に入った、と言う。
そろそろ、事件をひっくり返す何かが、顔を出すのかもしれない、私はそう思った。


(`・ω・´)「言うがな、私はさっきの証言が、すべて真実である以上、更に語ることはない」

(´・ω・`)「さっきのって、トイレ前でまたんき氏とナイフで……の下りか」

(`・ω・´)「あの数十分……いや、もっと短かったかな? その時間内にて
      交戦から血痕の隠滅、傷の応急処置に加えて殺人・隠蔽するのまでは無理だ、
      とあんたが言ったろう。これ以上なにを言う必要がある」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:46:26 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「それは、あんたの席がB−7だと思ってたからだ」

(´・ω・`)「B−7ではなかった、そうなると、条件が違ってくるんだよ」

(`・ω・´)「条件?」

(´・ω・`)「そもそも、トイレに向かった時間を特定できた根拠は、なんだ?」

警部は少し大きな声でそう問いかけた。
私に振られているのかと思い、咄嗟に手を挙げる。


(゚、゚トソン「あ。お茶、お茶です」

(´・ω・`)「そう。お茶をこぼした時の時間より後、というのがわかっていたから、20分以降というのがわかったんだ」

(´・ω・`)「しかし、お茶の被害者はシャキーンさんではない、またんき氏だ」

(´・ω・`)「つまり『シャキーンは20分以降にトイレに向かった』というアリバイが、崩れたんだ!」



(`・ω・´)




(`・ω・´)




(;`゚ω゚´)「…………あ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:48:23 ID:Qfzfk0O.O<> 

(´・ω・`)「白状しろ!
      ほんとうは、何分にトイレに向かった!」

(;`゚ω゚´) そ「…! ……ッ!」



(;`・ω・´)「20分以降だ!」

(´・ω・`)「証拠がないよねぇ!?」

(;`・ω・´)「都合よく証拠なんてあるわけねーだろ!」

(#´・ω・`)「ほぉら、証明できない! 証言してもらうぜ!」



こうして、ふたりは尚もヒートしっぱなしなのだが、どうも周りは、それについていこうとしていない。
かく言う私も同じで、ただ不安に駆られ、呆然としているだけだった。
ワカッテマスさんもそれに嫌気を感じたのか、止めに入った。


( <●><●>)「警部、すみませんが状況を整理したいので、なにがわかったのか、お願いします」

(#´゚ω゚`)「あぁん!?」

(´・ω・`)「………」

(´・ω・`)「あ、三行で言ってほしい?」

( <●><●>)「過不足なくお願いします」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:50:03 ID:Qfzfk0O.O<> 

警部の言った事を要約すると、だ。
まず前提として、ふたりが入れ替わったという事実を心の隅に置く。

話は大分戻るが、シャキーンさんにモラル氏の殺害が不可能だと思われた理由、それはただひとつだ。
「用を足して、またんき氏と交戦、飛び散った血を拭いて、傷にアーボンオレンジを塗った」までは十分前後で行えても、
「ワゴンの秘密を知り、モラル氏を殺して、なかに詰め込む」までするとなると、到底十分では収まりきらない。
それは逆に考えると、時間があれば、彼にも殺害のチャンスはあったという事だ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:52:14 ID:Qfzfk0O.O<> 

そして、どうしてシャキーンさんに時間に関するアリバイがあるのか、と言うと、
警部のミスでお茶が飛び散ったが、その時にはB−7には人がいて、
そのB−7はシャキーンさんの席だ、
お茶のこぼした時間、その時にB−7に人がいたと証明できたから、彼がトイレ前に向かった時間が特定できた。


その条件が、崩れた。
お茶のこぼした時にB−7に座っていたのは、斉藤またんき。
シャキーンさんが、その時に一号車にいた、というアリバイは、なくなったのだ。
お茶の一件より以前にトイレ前にいたなら、モラル氏の殺害も可能だったはずだ、という。


( <●><●>)「………」

(´・ω・`)「ワカッテマスは、どう思う」

( <●><●>)「……警部、ひとつ疑問があります」

(´・ω・`)「いいよ、言っちゃってー」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:54:56 ID:Qfzfk0O.O<> 

シャキーンさんに勝ったつもりなのか、警部は、すっかり上機嫌になっていた。
今思えば、ワカッテマスさんの怪訝な顔を見ても尚、警部は安堵で満ちあふれていたのが、失敗だったんだ。


( <●><●>)「すなわち、仮にモラル氏を殺害した、そのまままたんき氏と交戦して一号車に戻ってきたなら……」

( <●><●>)「銃は、どうなるんです?」

(´・ω・`)「……………え?」

警部の顔から、余裕の色が消えた。


(
 <●><●>)「いやだから、モラル氏殺害後一度も自席に着席せず、
         そのままB−7に戻ったなら、彼の銃はB−7にあるはずです」

( <●><●>)「A−5から見つかった銃がシャキーンさんのものだ、と仮定している以上、これは決定的な矛盾です」

( <●><●>)「推理がこじれちゃってますよ」



(´・ω・`)「……」




(´・ω・`)「…………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:56:30 ID:Qfzfk0O.O<> 

(;`・ω・´)「ほ、ほれ見ろ!」

(´・ω・`)「………」



ワカッテマスさんが、徐々に体勢を変える。
姿勢よく直立していた状態から、座席頭部に腕をかけ、体の向きを変えている。


( <●><●>)「シャキーンさんに焦点を合わせるから、推理がぐちゃぐちゃになるんです」

( <●><●>)「……もうひとり、容疑者がいるでしょう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/09(日) 15:59:31 ID:Qfzfk0O.O<> 

そう言って、今の今まで静かにして、話にあまり加わらなかったでぃさんを見たワカッテマスさん。
ゆっくりと彼女の方に体を向け、腕を組んで、じっと彼女を睨んだ。
でぃさんは実に落ち着いていて、先程まで顔から窺えたはずの怯えは、いつの間にか取り払われていた。


(#゚;;-゚)




( <●><●>)「椎名でぃ、あなただ」

(#゚;;-゚)






 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 8章
  「入れ替わったもの」

    おしまい



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/09(日) 16:05:55 ID:Qfzfk0O.O<>二日に分けてでの投稿、失礼しました。
まとまった時間がなかなか手に入らなくて。


そろそろクライマックスなので、事件に関係のなさそうな質問があれば、是非言ってください。
例「ショボンの服装はなんで探偵っぽいの?」
→「私服って書くの忘れてたようですごめんなさい。
  でもいっその事、この服装で通そうか悩んでます」


8章も読んでいただきありがとうございました!

あとシベリアの祭りで投下された絵を見て大興奮してます!
絵師の方(司会?)ありがとうございます家宝にします!
虚構の城チックな画風だったせいか、喜びは1.5割増しです!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/09(日) 16:17:32 ID:9.A7CC1w0<>乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/10(月) 20:42:44 ID:aipKIncM0<>乙
絵についてkwsk<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/10(月) 20:58:25 ID:.I6aubvgO<>>>369
シベリアでやってる(本日最終日)絵祭りで、偽りの香りの絵がなんと二枚も!
両方ともトソンが可愛すぎてwwwwwきゃっふぅwwww
元々、キャラ選びの際トソンを選んだのは「デレとか渡辺さんみたいに可愛すぎないから」なのに、これじゃだめだ、萌え死んじゃうwwww
おかげで朝からこんな調子なんです助けてwww<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/10(月) 21:03:30 ID:.I6aubvgO<>今更だけど、>>364のワカッテマスの顔が潰れてるのに気づいた。
これで改行ミス二個目。申し訳ないです。<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 18:55:54 ID:vlIOG62AO<> 


9章「もうひとつの入れ替わったもの」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 18:56:53 ID:vlIOG62AO<> 

名指しされ、畏縮することもなく、彼女は堂々とワカッテマスさんと向き合っていた。
少し流れる、沈黙の、そして張り詰めた空気。
それはとても重苦しくて、私は思わず息を止めていた。
酸素を吸い込んだ時、でぃさんが、強気になって、言った。


(#゚;;-゚)「あなたは、確か彼が犯人だ、と再三言ってたではありませんか」

( <●><●>)「それは新たな真実が発覚したから、撤回されたのです」

(#゚;;-゚)「それに加えて、私が殺した、という証拠……あるんですか?」

( <●><●>)「まずワゴンだ、あなたが一号車にワゴンを運んだとき、既に中に死体は眠っていた」

(#゚;;-゚)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 18:59:45 ID:vlIOG62AO<> 

ワカッテマスさんもだが、意外にもでぃさんも全く退かないで、お互いに強気で言葉を発している。
それは警部とシャキーンさんとの諍いのようなものではなく、たとえるなら、
法廷で味わえる弁護士と検事とのバトル、それに近いものが感じられた。


( <●><●>)「いくら死体でも成人男性だ、60キロほどの重さはワゴンにのしかかるはずです」

( <●><●>)「もし犯人でないなら不思議に思うはず」

( <●><●>)「それを何ら顔色変えず運搬……不自然ですね」


(#゚;;-゚)「ワゴンは、元々、あんな構造ですからね、すごく重量があるんですよ。
     高々60キロ程度の重さ、違和感なんて」

(; <●><●>)「いやいや、60キロですよ!?」


ワカッテマスさんが、あまりの不意を突いた意外な一言に一瞬戸惑った。
そこをでぃさんが見逃すわけもなく、突いた。


(#゚;;-゚)「あら、運んだことがないのに、よく重量に関してあれこれ言えますね」

(#゚;;-゚)「普段はココにお弁当が山ほど積まれるんです。それの差し引き、ざっと数十キロ……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:02:21 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「! お弁当、か……」

(#゚;;-゚)「!」


呆れただけか、言いくるめられたのか、
俯いてぶつぶつ呟くワカッテマスさんに代わり、警部が咄嗟にその一言に反応した。
急に、黙っていた警部が言葉を発したので、でぃさんも少し驚いている。


(´・ω・`)「おっかしいなーって思ってたんだ、もうお昼の12時なのに、お弁当が積まれてないなんて」

(#゚;;-゚)「お弁当は……」



先程までの優勢は一転、今度はでぃさんが静かになった。
予想外な指摘だからか、それとも語るに語れない事情があるのか。
理由は知らないが、でぃさんは反論を必死に考えている、そんな風に窺えた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:11:03 ID:vlIOG62AO<> 


(´・ω・`)「お弁当について、詳しく聞かせてくださいな」

(#゚;;-゚)「……」



(#゚;;-゚)「発車前に、運び込まれたお弁当入りのワゴンを、あちらに待機させるのです。
     そのまま、いろいろ作業して。たまたま、今日は中身が降ろされていたのでしょう」

( <●><●>)「あちらとは?」

(#゚;;-゚)「乗務員室、兼車販準備室です」

( <●><●>)「あそこですか……」


ワカッテマスさんは一度、その場所を訪れている。
2個目の拳銃の発見に、事態の真偽を追究すべく、ワカッテマスさんが機転を利かせて、すぐにでぃさんを連れ戻した時のこと。
うっかり転んでなかから死体が……ということらしいが。


(#゚;;-゚)「………まず、車内販売が行われる頃には既に死体がワゴン内部に入っていた、
     そう決めつける時点でおかしいのでは?」

( <●><●>)「『ワゴンを乗務員室に返したあと、第三者が本件と無関係な殺人を犯してワゴンに押し込んだ』、そう言いたいのですか?」

(#゚;;-゚)「可能性の話ですが、大いにあり得……」

(´・ω・`)「ないな」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:15:05 ID:vlIOG62AO<> 

警部が、すぐにでぃさんの声を掻き消して、言った。
あり得ないと決め付けた時の表情は、なんともいえない難しい顔だった。
そして、渋い顔をしてワカッテマスさんが突っ込む。


( <●><●>)「弁護するわけではないですが、別にあり得ない話ではないでしょう、警部」

(´・ω・`)「匂ったんだよ、香水が。
      車内販売の時には既に、な」

(゚、゚トソン「あっ……」

(´・ω・`)「僕の横を通った時、すぅーっと、ね。それはトソンちゃんも知ってる」

(゚、゚トソン「はい、間違いないです ワカッテマスさん」


警部に言われるまで気づかなかった、とは言えないが。
もし、あれが、血と香水の混じった匂いだとすれば、だが
一発で香水と嗅ぎ分けられなかったのにも納得がいく。
私の嗅覚が衰えているわけではない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:17:04 ID:vlIOG62AO<> 

(゚、゚トソン「彼女がシャキーンさんと話をしている時に、そっと匂おうとしたけど、この警部が……」

(´・ω・`)「いくらなんでも人の話を盗み聞きはだめだよ」




(`・ω・´)「…………え?」



私の何気ない一言に、誰よりも過敏に反応したのは、シャキーンさんだった。
彼は、威厳さをまるで感じさせない、間抜けさ丸出しの声をあげ、私の顔をまじまじと見ていた。



(`・ω・´)「私が、この女と話をした、だと?」

(゚、゚;トソン「え? でも…… ねぇ、警部」

(´・ω・`)「え? 僕に聞かれても……」

(`・ω・´)「私は席に着いている時は、誰とも話などしてないぞ」

(゚、゚;トソン「え、いや、でも……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:22:59 ID:vlIOG62AO<> 


なぜ、ここでこのような矛盾が顔を出したのか、わからない。
私は嘘は吐いてないし、かといってシャキーンさんの言いぐさからすると
彼も、恐らくではあるが虚偽の発言をしている訳ではなさそうだ。
すると、警部がいきなり声を張り上げた。



(´・ω・`)「! そうか、トソンちゃん、先入観を捨てろ!」

(゚、゚トソン「せんにゅー?」

(´・ω・`)「君は勘違いをしている。
      それは……」




(´・ω・`)「君が聞いた声は、シャキーンさんではない。
      ………またんき氏、声の主は彼だ」

(゚、゚トソン「え? え?」


警部曰く、
まず最初に、B−7にいたまたんき氏との間で起こったお茶のトラブル、そこで私はまたんき氏の声を聞いた。
そして、次にB−7を見ると、シャキーンさんが座っていた。
ここで「お茶の人はシャキーン」と思いこみ、同時に「あの甲高い声の持ち主ははシャキーン」とも錯覚した。
その甲高い声の持ち主がでぃさんと話をしていたのだが、甲高い声の持ち主は、シャキーンさんではなくまたんき氏だ。
だから、君は勘違いをしている。
あの時でぃさんと話したのはまたんき氏だ、と。
そう言った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:49:37 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「そしてトソンちゃん、その時B−7は見た?」

(゚、゚トソン「横目で見ても、ワゴンがあったから見えにくくて、
     身体を乗り出して見ようとしたら警部が止めたんじゃないですか」

(´・ω・`)「まあ見えなくとも、僕には当時B−7には誰がいたかを知っている。
      あの話し声が聞こえたのは、30分より後だ。ワゴンがきてたからな」

(´・ω・`)「……シャキーンさん、その時は既にB−7に?」

(`・ω・´)「…………ああ」

(゚、゚トソン「……」




(゚、゚;トソン「え!?」


話を整理すると、こうなる。
私は、一度、でぃさんとまたんき氏の揉めあいらしき会話を聞いている。
あの甲高い声とお茶の人は同一人物(またんき氏)なのだから、私は、またんき氏がB−7にいるものだと思っていた。
しかし、当時B−7にいたのは、シャキーンさんであることは間違いない。
つまり、私の“勘違い”は決定付けられた。


(゚、゚トソン「しかし、それがなにか?」

(´・ω・`)「……」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:51:31 ID:vlIOG62AO<> 



(´・ω・`)「犯人が、わかった」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:53:17 ID:vlIOG62AO<> 


静かに、いつにもまして真剣味を増した声で、言った。




(゚、゚;トソン「え!?」

(; <●><●>)「警部、ほんとうですか!」

(;´・_ゝ・`)「誰なんだ!」

\(;^o^)/「俺じゃねえからな!?」

川 ゜々゚)「真実とじっちゃんはいつもひとつ! きゃっきゃ!」



数名場違いもいるが、当然ながら、場が騒然とした。
一気に騒がしくなり、またんき氏が発見された時以上にざわついている。
私も盛岡さんも動揺を隠せないなか、冷静を装っていたのは警部除く3人だけだった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:54:55 ID:vlIOG62AO<> 


( <●><●>)「警部、我々はただデサえ推理を何度もはずしています。
         当てずっぽうな推理をしていると、また……」


ひとりは、まあ、ワカッテマスさんだった。
一瞬声がひっくり返ったものの、顔はいつものポーカーフェイスのままだ。
否、今日は、結構表情の変動が多いと思われる。

そして、彼らは、言われた通り何度も推理をはずしてきつつある。
それはシャキーンさんの嘘のせいだったり、状況が変わったから
取り消されたものだったりも含まれているが、事実は事実だ。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:56:57 ID:vlIOG62AO<> 


(`・ω・´)「今度は誰を犯人に仕立て上げるんだ? そこの娘か?」

从 ‐ノリ


同じくして――声は少し揺れているが――至って落ち着きを保っているのはシャキーンさんだ。
毒を吐き、皮肉ったことを言う彼は
警部に少なからずや抱きようのない恨みを持っているというのは言うまでもない。
彼が指差した先の人物は、ルカ。橘ルカという名前だったと記憶している。
度重なる気絶のせいで、彼女は事件の件もあまり知らず、ある意味今日一番の被害者と言える。


いや、一番の幸せ者かもしれない。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 19:58:23 ID:vlIOG62AO<> 


そして、警部はそのシャキーンさんの人差し指を見るまでもなく、首を振った。
しかし、そこで、なら誰だ、という問いかけは誰もしなかった。
というのも、ここに来てシャキーンさんでもルカさんでもなく、
盛岡さん、オワタさん、くるうさん、私の4人は無関係とくれば、自ずと答えは見えてくるからだ。



(#゚;;-゚)「今度は、どんな茶番で、私たちを楽しませてくれるのですか」


全く動揺を見せず、平静を保っている彼女、でぃさんもまた、警部に対して皮肉った言い方をした。
顔に貼られた数多くの絆創膏が、まるで仮面の役割でも果たしているのか、表情が全く掴めない。
その冷淡さに、私は寒気さえも感じた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:01:25 ID:vlIOG62AO<> 


(´・ω・`)「………でぃさん、お名前は確か…」

(#゚;;-゚)「……椎名、でぃ」

(´・ω・`)「そうだった、そうだった。
      で、椎名というと、あの歌手と一緒の名字ですか?」

(#゚;;-゚)「………木遍にふるとりで名前の名、です」

(´・ω・`)「一緒だね、うん」


ふと取り出した手帳に、サラサラとその名前をメモする。
名前をど忘れしたのか、漢字を確認しておきたかっただけか。
とりあえずはそれをポケットにしまい、ペンを挟んで、警部は深いため息をした。


(´・ω・`)「椎名、でぃ」





(´・ω・`)「お前を、本件、両者の殺人事件の犯人として逮捕する」




.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:04:51 ID:vlIOG62AO<> 


その一瞬だけは、空気がまるで凍ったかのように、
非常に静かで、ほんとうに寒いと感じるまでに、冷たくなった。
声はあげずとも、顔だけで充分驚きを表現しているのが私と盛岡さん、
常に落ち着かず、捜査が核心を突いても尚煩かったふたりは、今じゃ漸く静かになっていた。
あんぐりと口を広げ、一瞬自我を失ったであろう人が、ワカッテマスさん。


でぃさんだけ、彼女だけがなにも変わってなかった。
告発を受けても、嗤いも悔やみもせず、立ちすくんでいた。
しかし顔色を窺う限り、さほどショックを受けていないのもわかる。


(#゚;;-゚)「侮辱罪……でいいのかな。
     とにかく、証拠不十分などで釈放となれば、私はあなたを訴えますよ」

(´・ω・`)「構わんさ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:07:45 ID:vlIOG62AO<> 


(#゚;;-゚)「なら、私が殺した、という証拠でも提示してください」

(´・ω・`)「…それは検事がするもんだ。
      とりあえず、話を聞け」

そして、私が警部にも恐れを抱くほどに、あまりに順調すぎるほど淡々と物事が手早く進んでいた。
告発に否定をせず、犯人だと言うなら証拠を出せ、と強気のでぃさん、
負けじと立ち向かい、推理を展開する、ショボーン警部。
ワカッテマスさんが間に入るに入れないほど、ふたりの間の空気はほかと違っていた。
違い過ぎていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:15:11 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「まず、今回の一連の流れをおさらいしようか。
      おい、ワカッテマス!」

( <●><●>)「そういう雑用は私が担当なんですか……」


ワカッテマスさんが、ちょくちょく、私たちに表紙だけを見せている手帳を、取り出した。
ぱらぱらと開き、目的のページのところで指を挟み、止めた。
しばしの間手帳を凝視し、脳内にその一連の流れを叩き込んでいる。
何回か独りでに頷き、誰に応答するでもなく、ふむふむと言っている。



(´・ω・`)「トソンちゃんの“勘違い”もふまえて、ね」

( <●><●>)「というと?」

(´・ω・`)「『でぃさんが話をしたのはシャキーンさんではなくまたんき氏だった』事実を、ね」

(゚、゚トソン「…?」

( <●><●>)「はい」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:18:03 ID:vlIOG62AO<> 

( <●><●>)「本日、10月23日の0時3分、オオカミ鉄道、オオカミ中央ラウンジ線、
         中央ラウンジ−北VIP区間の二本目の列車が出発」

( <●><●>)「12分頃に、線路の設備の不備による、発車後1度目のおおきな揺れが当列車を襲撃」

( <●><●>)「20分頃に、警部が当時B−7に座っていた斉藤またんき氏にお茶をかける事故が起こる」

( <●><●>)「20分頃から30分までの間に、二号車と三号車の間のトイレ前のスペースにて、
         予め現場にいたシャキーン氏とトイレに向かったまたんき氏がナイフで交戦、両者ともに軽傷を負う事件が起こった」

( <●><●>)「その時にまたんき氏には脇腹、シャキーン氏には右腕の傷が確認され、
         シャキーン氏はトイレにてまたんき氏の持っていたアーボンオレンジを使用し、応急処置を施しています」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:21:24 ID:vlIOG62AO<> 

( <●><●>)「またんき氏はその足でA−5に着席、
         その後シャキーン氏はトイレ前付近を徘徊したと思われます」

( <●><●>)「そして彼が物陰に隠れたと同時に都村氏がトイレに訪れる、トイレから出たのちシャキーン氏と会う」

( <●><●>)「シャキーン氏と都村氏が一号車に戻った時、シャキーン氏はまたんき氏が自分の席に座っている事を知るも、
         なにくわぬ顔をしてB−7に着席、以後お互いに席を立っていない」

( <●><●>)「31分頃にサービスワゴンとでぃ氏が一号車に到着、
         警部と都村氏が当時ワゴンから香水を感じ取っています」

( <●><●>)「一号車先頭まで進み、折り返しで戻ってくる際にシャキ……
         じゃない、またんき氏とでぃ氏が対談、そのすぐあとに銃声が…………」

( <●><●>)「……」


( <●><●>)「ん?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:23:50 ID:vlIOG62AO<> 


黙々と話すワカッテマスさんが、その下りを説明する時少し腑抜けな声を発した。
すっかり聴き入っていた乗客の皆は戸惑うも、すぐに警部が鶴の一声をあげた。
「構わず続けろ」という警部の声に従い、若干躊躇するワカッテマスさんだが、すぐ元のペースに戻った。


( <●><●>)「……銃声が鳴り、私こと若手と稚内が一号車に駆けつけ、捜査開始」

( <●><●>)「44分頃に当列車を襲う2度目の揺れを確認」




( <●><●>)「………こんなもんですか」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:27:12 ID:vlIOG62AO<> 


一度に長らく話し続けたので、一旦深く息を吸い込むワカッテマスさん。
思い返すと、この一時間にも満たない時間にて、様々な事件が起こったものだ。
最初のお茶の一件が、実に可愛らしく思える。しかし、それのお陰でシャキーンさんの移動のトリックが見破れた。
結局、今のところ「だからなんだ」という問い掛けには答えられないものの、それでもシャキーンさんのアリバイを崩せたのだ。



2度に渡るおおきな揺れは、一度はそれが殺害の証拠にも用いられそうになったが、今のところはノータッチで進められている。
当初は大騒ぎになったシャキーンさんとまたんき氏の交戦も、今じゃちっぽけな事件として扱われている。
時とは残酷なもので、当時強烈に思えたインパクトを徐々に弱めていくのだ。



(#゚;;-゚)「………で、話、とは」

(´・ω・`)「さっき刑事も困惑したから、またんき氏の件から話そう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:29:09 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「銃声の少し前……と言っても、1分もないかな?」

(´・ω・`)「トソンちゃんと僕は、その時に君とまたんき氏との諍いを聞いている」

(#゚;;-゚)「それは証拠にはなりません」

(´・ω・`)「問題は、だ。その時近くにいた、ということだ」



(´・ω・`)「消去法でいくと、当時シャキーンさんは既にB−7にいた、から銃殺は不可能。
      オワタとくるうちゃんは銃がない、ルカちゃんは寝ていた、デミタスさんはアリバイがある」

(´・ω・`)「僕とトソンちゃんは言わずもがな除外する。残ったのは?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:31:50 ID:vlIOG62AO<> 



(# ;;- )「警部さん!」

(´・ω・`)「ん」



(#゚;;-゚)「………もうひとり、いますよ。犯人候補が」

( <●><●>)「なんですって? しかし、もうほかに現場には……」

(#゚;;-゚)「またんきさん自身です」

(; <●><●>)「!! 自殺か!」

(´・ω・`)「ばーか」

(#゚;;-゚)「え?」


先刻まで深刻な、そして重苦しい空気だったのに、警部の罵りで一瞬にして雰囲気が変わった。
ワカッテマスさんは唖然としている。


(´・ω・`)「銃はどうすんだ。彼の周りには、拳銃なんてなかったぞ。
      まして、焦げ痕をみる限り、1メートルは離れている」

( <●><●>)「……ところで警部、またんき氏に使われた拳銃、それは……」

(´・ω・`)「A−5、元シャキーンさんの銃だ。これでおわかりだろう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:33:33 ID:vlIOG62AO<> 

「よっ」という掛け声に伴い、彼はA−5、またんき氏の眠る席の前に向かった。
そして、身振り手振りで、今から述べる推理に味を加えようとしている。


(´・ω・`)「言うまでもないが、何度も言うように彼女は一度またんき氏と揉めていた」

(´・ω・`)「そして、互いにヒートアップし、でぃさんは我を失った!
      すぐに、またんき氏の隙を突いて、鞄から銃を抜き取った」

(´・ω・`)「―――瞬間ッ!」




「パァン!」


……と、警部が指でっぽうで撃つ素振りと一緒に、擬音語を言い放った。
少しして、警部は指でっぽうをやめ推理に戻った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:35:07 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「しかし、はっと気づく彼女、すぐに銃を鞄のなかに突っ込む、服装を正す」

(´・ω・`)「そこで刑事たちが乱入、と」

( <●><●>)「ちょっと待ってください、どうしてでぃさんは
         A−5、シャキーンさんの鞄に銃があるのを知ってるのです?」

(´・ω・`)「それは、言い換えるとこうだ。
      『でぃは予めシャキーンが拳銃所持であることを知っていた』」

( <●><●>)「いや、だから……」


「ちょっと待った」と、警部は掌をワカッテマスさんに向ける。
頭を書きながら、不機嫌そうな顔をして、警部は言った。


(´・ω・`)「使われたからだ」

(; <●><●>)「はぁ!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:37:17 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「……最初から、不思議だったんだ。
      シャキーンさんの銃、またんき氏の銃、あわせて3発撃たれている」

(´・ω・`)「なのに、弾は2発までしか見つかっていない」

(´・ω・`)「『シャキーンが一度でぃに使ってみせた』『だからでぃはシャキーンが銃を所持しているのを知っている』
      そう考えれば、謎の3発目の弾丸の説明も付くし、今の僕の推理も……」




(#゚;;-゚)「その推理だと、私が知っている銃はB−7のものであって、A−5の銃ではありませんが」

(´・ω・`)「…………」




(;´・ω・`)「あっ!」


でぃさんは言った。
もし一度発砲したシーンを見たならば、それはシャキーンさんが持ち帰り、鞄にしまったはずだ、
だから、今の推理だと彼女が知っている銃はB−7の方の銃で、
咄嗟にA−5から銃を取り出して撃つ、というのは不可能だ、と。
そして、ここに来て警部が今までにない、驚きをふんだんに盛った声を発した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:39:22 ID:vlIOG62AO<> 


( <●><●>)「逆に考えてみなさい」

(´・ω・`)「!」

( <●><●>)「でぃさんが進んでバッグから銃を盗ったのではなく……」



( <●><●>)「またんき氏が、銃をでぃさんに向けた、と」


(# ;;-゚)「!」

( <●><●>)「なにも、でぃさんの自発的な犯行と決めつける必要はないのです」

( <●><●>)「またんき氏が銃を取り出し、でぃさんに突きつけた」

( <●><●>)「そこででぃさんが銃を奪い、咄嗟に撃った」

( <●><●>)「これなら、『なぜ銃声が聞こえたのか』『なぜでぃさんは発砲できたのか』の説明が付きます」

(´・ω・`)「……そうか、その手があったか」

(#゚;;-゚)「………」


でぃさんは、黙った。
急遽助け舟を出してくれたワカッテマスさんに礼を言いつつ、
警部は調子をを取り戻して、でぃさんに詰め寄る。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:40:56 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「銃で撃ったのはいいが、なにぶん咄嗟の行動ゆえに銃声の対策がなってなかった」

(´・ω・`)「だから、すぐに鞄に銃を押しつけたんだ!」

(# ;;-゚)「………!」

(´・ω・`)「B−7の方の鞄には、鞄の奥底に銃があったのに対し、
      なぜかA−5の方は浅いところ……というか一番上にあったんだ。これにも説明がつく」

(#゚;;-゚)「でも、状況証拠だらけです。
     まず、それだと服装を正すことができ……」



(´・ω・`)「“入れ替えた”」

(#゚;;-゚)「えっ……?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:42:00 ID:vlIOG62AO<> 

警部は目を細め、
「信じられないことだと思うが」と前置きをし、
文字通り信じられないことを語り出した。


(´・ω・`)「でぃは、またんき氏を殺した」

(´・ω・`)「その時、銃を隠すと同時に咄嗟にとった行動、それが今回の事件の真相を示している!」

( <●><●>)「……“入れ替えた”、ですか?」




(´・ω・`)「なにも、入れ替わったのは座席ではない。
      もうひとつ、入れ替わっていたんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:42:54 ID:vlIOG62AO<> 





(´-ω-`)「死体が、な」





( <●><●>)「……な」

(; <○><○>)「なんですってェェェェェェェェェェェェェェェ!?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:45:00 ID:vlIOG62AO<> 



(´・ω・`)「椎名でぃ、彼女が銃殺の際とった行動は“3つ”だ!」

(; <●><●>)「み、3つも……」


すっかり高揚してきたからか、整わない呼吸のために一旦警部は話をとめた。
目を瞑って静かに深呼吸し、くわっと見開いて、再び大声で続けた。



(´・ω・`)「1つ! 銃を鞄に押し込んだ」

( <●><●>)「それは拳銃の位置が物語っています。リュックのような構造ですから、押し込むむのは簡単だ」




(´・ω・`)「2つ! 左手でワゴン内部の死体を持ち、右手でA−5の死体を持ち上げ、
      交錯するようにして、死体を入れ替えた!」

(; <●><●>)「そこですそこ! あり得ない!」

(´・ω・`)「なぜだ」



.<> >>403訂正
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:46:25 ID:vlIOG62AO<> 



(´・ω・`)「椎名でぃ、彼女が銃殺の際とった行動は“3つ”だ!」

(; <●><●>)「み、3つも……」


すっかり高揚してきたからか、整わない呼吸のために一旦警部は話をとめた。
目を瞑って静かに深呼吸し、くわっと見開いて、再び大声で続けた。



(´・ω・`)「1つ! 銃を鞄に押し込んだ」

( <●><●>)「それは拳銃の位置が物語っています。リュックのような構造ですから、押し込むのは簡単だ」




(´・ω・`)「2つ! 左手でワゴン内部の死体を持ち、右手でA−5の死体を持ち上げ、
      交錯するようにして、死体を入れ替えた!」

(; <●><●>)「そこですそこ! あり得ない!」

(´・ω・`)「なぜだ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:47:42 ID:vlIOG62AO<> 


(; <●><●>)「そりゃ確かに、シャキーンさんのような腕っ節のいい人なら
        できるかもしれない。片手で人を持ち上げるのは」

(; <●><●>)「しかし、でぃさんです! 細腕の彼女が……」




(# ;;- )


(´・ω・`)「考えようによっては、最初にワゴン内部から死体を取り出し、座席の上に乗っけてから
      ひっそりワゴン内部にもう片方の死体をいれることもできるはずだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:50:00 ID:vlIOG62AO<> 




(´・ω・`)「………そして、彼女は力持ちなんだ」

(゚、゚トソン「あ!」



思い返せば、私が乗車した時。
でぃさんにぶつかったのはいいが、私は尻餅を付くほどの大転倒をしたのに対し、彼女はびくともしなかった。
ワゴンにもたれていて、倒れなかった、あの時はそう思っていたが、いま考え直せばわかることだ。
なぜなら―――



(´・ω・`)「こんな重いワゴンを軽々と運び、
      『60キロなんて』と言うほど、人外な感性をしていらっしゃる」



そもそもがおかしいんだ。
仮に彼女が犯人でないとしても、ただでさえ重量が半端なさそうなワゴンを、
なかに成人男性の死体が入っていても、まるでなにも入ってないかのように楽々と運べる。
そしてその一件については、彼女自身が証言している。
「重くてもふつうに運べる」と。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:51:29 ID:vlIOG62AO<> 


(# ;;-゚)「…………め…」

(´・ω・`)「そうして片手にひとりずつ死体を持ち上げ、入れ替えた」




(´・ω・`)「そして、3つ目!」

(; <●><●>)「まだなにか……?」

(´・ω・`)「水をかけた」

( <●><●>)

(´・ω・`)

( <●><●>)

( <●><●>)「はい?」

(´・ω・`)「水を、かけた」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:53:03 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「無論、またんき氏と向き合って話していたのは僕らの証言通り」

(´・ω・`)「その時に、彼女は見たのだろう、左肩にかかっている茶色の液体を」

(゚、゚トソン「お茶? でも……」

(´・ω・`)「トソンちゃんの言いたいことはわかっている。
      『この死体の左肩も濡れている』と」

(´・ω・`)「でぃさんが入れ替わり前の死体を見たとき、左肩は濡れていた」

(´・ω・`)「そこで咄嗟に、もう本能的に危機を感じ、入れ替えた先の死体の左肩にも
      同じように水をかけ、あたかも入れ替わってないかのように……」

( <●><●>)「しかし、証拠が……」

(´・ω・`)「紙コップとか容器はないね。ワゴン撤収時に処分したんだろう」



(´・ω・`)「しかし、証拠……もとい根拠は、ある」

( <●><●>)「……え?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:54:30 ID:vlIOG62AO<> 


(´・ω・`)「今、僕が『水』って言ったわけ、わかる?」

( <●><●>)「いや……」

(´・ω・`)「もう一度、そっちの、椅子に座ってる死体を見てみろ」


そう言って彼は、またんき氏……いや、モラル氏、
……結局どっちだ?


A−7に座っている死体に指をさし、そう指示した。
ワカッテマスさんが丁寧に死体を傾け、左肩をみる。
そして、最初に見たときと同じ事を言った。


( <●><●>)「……濡れてますよ」

(´・ω・`)「ワカッテマスはまだ気づいていない」

(´・ω・`)「僕は、最初『茶色』っていった。麦茶のね」

( <●><●>)「! 少しお待ちください」



警部の言いたいことがわかったのか、再び死体を見た。
じっくり、食い入るように見て、ワカッテマスさんは言った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 20:56:01 ID:vlIOG62AO<> 

( <●><●>)「…………水です」

(゚、゚トソン「なぜわかるんです?」

( <●><●>)「白いコートにお茶がかかると、当然ですがその色……茶色?が染み付きます」

( <●><●>)「しかし私は、最初の取り調べの際乗客を見回った時も、茶色なんて気づかなかった」

( <●><●>)「気づいていたらそう報告しますから」



(´・ω・`)「僕の指示によって、はじめて濡れている事実がわかったくらいだ、
      そうとうきれいな無色透明の水で濡らしたんだろうなぁ」

( <●><●>)「しかし、なぜですか」

(´・ω・`)「……ごまかすためだよ、入れ替えたのを」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 21:00:37 ID:vlIOG62AO<> 

(´・ω・`)「ワゴンの方の死体を見てみろ」

( <●><●>)「はい」


嫌いなはずの警部に指示される事に抵抗感を抱かず、
彼はワゴン側の死体の左肩をさっとチェックした。
しかし、うーんと長いこと唸り、諦めたのか、死体を元の形に戻して、警部に言った。


( <●><●>)「茶色……はあるのですが、乾いた血痕なのかお茶なのかの見分けはつかないです。
         のちほど、鑑識に調べさせます」

(´・ω・`)「まあ、犯行の際押し込んだんだしなぁ……血だまりのできたワゴン内部に」


残念そうに肩を落とす警部だが、口角をあげている。
それの意味するところ、警部には「死体が入れ替わった証拠」をまだ用意しているのだと見受ける。

でぃさんは、依然黙っていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 21:02:22 ID:vlIOG62AO<> 


(´・ω・`)「ところで、香水、覚えてる?」

( <●><●>)「ワゴンから匂うやつですね」

(´・ω・`)「そのワゴンから見つかった死体は、香水の香りがするのは当然だ。
      だが、この座席に座っている方の死体、彼から匂う香水はなんだ?」

(# ;;-゚)「!」

(´・ω・`)「これも証拠のひとつだ。ワゴン経由で入れ替わった……という」

(# ;;-゚)「や………て……」

(´・ω・`)「そして、ワカッテマス、度々すまないが、ワゴン側の死体の右わき腹を見てくれ」



(`・ω・´)「……わき腹!」

( <●><●>)「…………うーん……
         切り傷? がありますね」

(;`・ω・´)「なにッ! じゃああいつは……」

(´・ω・`)「ご名答」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 21:04:48 ID:vlIOG62AO<> 


シャキーンさんは、一度警部からの尋問を受けている時、奇妙なことを口走っていた。
「コートの上から確かに斬ったのに、コートに切り傷がない」と。

そして、ワカッテマスさんは自発的に上着のポケット内部に手を突っ込んだのだが、
少しもぞもぞとさせたのち、難しい顔をして、なにかを取り出した。



( <●><●>)「………なんだこれ」


それはオレンジ色の、まるで爪を切った後の残骸みたいな、切り屑だった。
それを見てシャキーンさんは困惑した。


(;`・ω・´)「アーボンオレンジ!」

(´・ω・`)「よかったね、シャキーンさんは嘘をついてないって証明された」

(;`・ω・´)「………」



シャキーンさんは、嘘をついていなかった。
それは非常に喜ばしいことなのに、なぜか顔が笑っていない。
それを突っ込むことなく、警部は、肩を震わせるでぃさんの肩をたたき、言った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 21:05:52 ID:vlIOG62AO<> 


(´・ω・`)「でぃさん…?」

(# ;;- )


でぃさんは、先程までの威勢はどこへやら、すっかり縮こまってしまい、静かになっていた。
時折震わせる肩が、彼女の精神状態を物語っている。
幾度となく、こういう現場にはち合わせしてきた私だ、特に悩むことなく、確信した。


これで事件は終わった、と。




.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 21:09:59 ID:vlIOG62AO<> 







  バリバリバリバリッ

(#ノシ;□;)ノッ「ああああああああああああああああああああああッッ!!!」

     バリバリッッ






(゚、゚;トソン「!?」


―――諦めた!

私がそう思った瞬間、でぃさんは、どうしたのか顔をかきむしり出した。
爪をたてて顔を引っ掻き回し、狂気なまでに叫んでいる。
絆創膏、テーピング、それらがぼろぼろと床に力なく落ち、彼女の顔には右頬の大きな絆創膏と
数多くの傷しか残ってなかった(おそらくは過去についたであろう傷で、本件とは関わりなさそうだ)。
涙を思いっきり流し、表情も本来の顔よりすっかり豹変して、顔の筋肉がほぐれた、そんなイメージがした。
現に、口角が伸びている。
これは笑っているのか、泣いているのか、私にはわからない。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/10/21(金) 21:13:14 ID:vlIOG62AO<> 


(#メメ;ー;)「まだです!」

(´・ω・`)「!」

(#メメ;ー;)「香水の匂いが付着? お茶ではなく水が掛かっている?
      ばかばかしい、あくまでそれはワゴンを経由した死体の入れ替わりを証明しただけに過ぎない!」

(;´・ω・`)「死体の入れ替わりがあった以上、殺人をしたのは決定事項なんだぞ! 観念しろ!」

(#メメ;ー;)「それはA−5に限った話じゃん! 全部私じゃないじゃん!
      “モララー”の殺害は、そこの釣り眉毛が犯人だ!」

(;`・ω・´)「! 貴様、なんのつもりだ!」

(#メメ;ー;)「ああ、認めるよ!またんきを殺したのは、私だ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/21(金) 21:19:04 ID:vlIOG62AO<> 

(; <●><●>)「警部、でぃさんが興奮状態にあります! 危険です!」

(;´・ω・`)「………ぐっ! ここで……」



(#メメ;ー;)「またんき、あいつは私が殺した!
      でもこれは正当防衛だ!」




「正当防衛なんだ!」
彼女は、大声で、そう、何度も何度も叫んだ。
誰もが口を閉ざすなか、彼女のその叫び声が、空しくもこだました。
彼女の声が、先程よりも増した、車輪がレールを蹴る音と協調しあって、ひどく騒がしく聞こえた。






 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 9章
  「もうひとつの入れ替わったもの」

    おしまい



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/21(金) 21:22:24 ID:vlIOG62AO<>>>372より9章です。

ついでにテスト
>>372-417<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/21(金) 22:44:49 ID:37kZfsmM0<>おっつおつ
逆転裁判みたいでいいね<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:12:05 ID:eSssrWHUO<> 


10章「偽りを見抜く」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:23:05 ID:eSssrWHUO<> 


警部の推理は大凡が正しかった。
確かに「死体を入れ替えた」と考えれば、犯人は、でぃさんしか考えられなかった。
告発され、どうすることもできないと察したのか
でぃさんは、姿も、口調も、なにもかもが豹変した。


興奮しきっている。いつ暴れ出すかわからない。
ワカッテマスさんが彼女を抑えようと腕を掴むも、
なんと恐るべき剛力か、あの巨漢のワカッテマスさんが細身の彼女に力負けしている。
その間警部は、ただ、まいったとばかり言っていた。


(゚、゚;トソン「警部、なにか証拠はないんですか!?」

(;´・_ゝ・`)「警部さん、はやくしてくれ! オフ会に行かずして死にたくないんだ!」

(゚、゚;トソン「黙れ!」



数少ない常識人である盛岡さんも、やはり警部に事件解決を願った。
いや、常識を持ち併せていようが、腕を振り回す馬鹿だろうが、誰しもが、最後に行き着く考えは一緒だろう。
「犯人をはやく捕まえてほしい」と。


それに応えるよう、警部が更なる追究を

(;´・ω・`)「くそっ……早かった、のか…?」


しなかった。
オーバーなリアクションはしないも、なにやらぶつぶつ呟いている。
警部はでぃさんに次なる発言をせず、顎に手を当て、ただ唸っていた。

オワタさんも事の重大さを今更知り、大慌てして手を振り回す。
あ、また壁に打った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:27:27 ID:eSssrWHUO<> 

(#メメ゚ー゚)「あっはははははハハハハハハ!
      またんきを殺した時の話、してあげる!」

(#メメ゚ー゚)「そもそも、またんきは私の知り合いだ!
      最初は誰かわからなかったんだけど、またんきだとわかり、仕事中なのでお話は後で、と断ったら……」

(#メメ;ー;)「いきなり銃を抜きやがった!
      それどころか、安全装置もはずしてあった!」

(#メメ;ー;)「昔からそうだ! なにかに付けて私の存在を脅かす! あいつは私を殺す気だったんだ!」

(#メメ゚ー゚)「だから、即行でそいつを奪って、殺したの。
      パァン、だって、いい音だったぁ!」

(#メメ゚ー゚)「死体を片すのにワゴンの中を使おうとしたんだけど、既になかに“モララー”がいたんだ!」

(#メメ゚ー゚)「驚いたけど、四の五の言ってる暇はない、
      即行で入れ替えた! お茶の異変に気づいて、水もかけた!」

(#メメ゚ー゚)「ワゴンの中に偶然死体があったんだ、だから私はなにもしてない!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:35:46 ID:eSssrWHUO<> 


でぃさんは、警部を挑発するような、嘗めきった口振りでそう言った。
またんき氏を殺害したのは認めるも、もう片方は知らない、そう証言した。

嘘臭い証言だが、今の私に反論できるほどの能力はない。
でも、どこか、信じられなかった。



( <●><●>)「警部、彼女は私が引き受けます。
         はやく……何か手を……」

(´・ω・`)「………」



ワカッテマスさんが、警部に耳打ちをした。
一方その警部は、腕組みをして其処いらをうろちょろしていた。
なにやってんだ、私がそう声をかけようとする頃には、ワカッテマスさんはでぃさんと対峙していた。
目を見る限りは、やる気だ、この2人。


( <●><●>)「今の証言に、嘘偽りはないですね?」

(#メメ゚ー゚)「ないね! 私はまたんきしか殺してない!」

( <●><●>)「………」

(<●><●> )「……見せてあげますよ、“ブラックジャック”が最強である証拠を」

(゚、゚トソン「…え?」


ワカッテマスさんは、私の方を見て、囁いた。
いや、私の方ではない。視線は虚ろで、一点に定まってなかった。


( <●><●>)「椎名でぃ!」

(#メメ゚ー゚)「あんだよ!」<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:40:27 ID:eSssrWHUO<> 


( <●><●>)「あなたは今、当初ワゴンの中にいた死体の事を、はっきりと“モララー”と呼びましたね?」

(#メメ゚ー゚)「それがどうし……」

( <●><●>)「それは、彼の名前ですか?」

(#;メ゚ー゚)「!」



( <●><●>)「確かに、我々は彼に『モラル』という仮名を付けていました」

( <●><●>)「しかし『モララー』ではない」

( <●><●>)「あなた、彼と面識があるんですね?」

(#;メ゚ー゚)「……ない」

( <●><●>)「ここにはもうひとり、刑事がいます。
         彼に頼んで、オオカミ鉄道の方に問い合わせましょうか?」

( <●><●>)「『この列車に、モララーという人が、一号車に乗ってないか』……とか」

(#;メ゚ -゚)「う……!」

(#メメ;ー;)「がァ!」


でぃさんは、伸びきった爪をたて、自分の左腕を引っ掻いた。
手加減など見られず、力いっぱい引っ掻いたように見えた。
それを見て私は、この人は、自身のミスやストレスを自傷することで解決する人物なのだとわかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:47:04 ID:eSssrWHUO<> 

( <●><●>)「……まだ、観念しません?」

(#メメ゚ー゚)「またんきに聞いたことあるの。
     『俺にそっくりの男がいる。名はモララー』って!」

( <●><●>)「……次です」

(#;メ゚ -゚)「……次?」


( <●><●>)「最初、取調の際から一貫して、あなたはA−5にあった死体をまたんきだと言ってましたね?」

(゚、゚トソン「でも……実際そうじゃないの?」

( <●><●>)「あくまで、身元の特定の根拠は彼女の証言のみです」

(#メメ゚ -゚)「!」

( <●><●>)「ほんとうは、A−5の死体がモララーだったんです。
         それを、彼女は確かに『またんき』と断定した」

(゚、゚トソン「それがなにか?」

( <●><●>)「まだ、わかりませんか?」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/29(土) 17:47:55 ID:NnkiULe.0<>支援だよこのやろう<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 17:55:46 ID:eSssrWHUO<> 


( <●><●>)「もしほんとうに、彼女がモララー氏の殺害に無関係で、且つ彼ら2人と顔見知りなら」

( <●><●>)「最初から『彼はモララーです』と言うはずなんですよ」

(゚、゚トソン「……あ」

( <●><●>)「まして、我々警察を前に、身元の偽証なんてするはずがない。
         ……たまたま、両者とも身元を特定するものがなかったんですけどね」

( <●><●>)「そんなリスクを踏まえての偽証は……」

(#;メ゚ -゚)「ま、間違えたんです」

( <●><●>)+「……ほう」


ワカッテマスさんは不敵な笑みを浮かべた。
目を光らせ、でぃさんを視界の中心に据えて。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:00:00 ID:eSssrWHUO<> 

( <●><●>)「第一、両者の存在を知ってても、だ。
         あなたといいシャキーンさんといい、死人の2人、皆、何度も入れ替わっている関係だ、
         それでも尚、あなたが殺したのがまたんき氏だ、と断定できるのは?」

(#メメ゚ー゚)「さっき言ったでしょ、最初に話してきたんだ向こうから!
      だからこっちがまたんき、その後、当初ワゴンで眠っていた方がモララーってわかったんだ!」

( <●><●>)「尚更おかしい!」

(#;メ゚ー゚) そ


ワカッテマスさんは、いきなり腹の底から大声を出した。
私も、でぃさんも驚き、戦いた。
私は身が竦んだが、でぃさんはそれでも食ってかかる。
とはいっても、ワカッテマスさんも手加減している様子は見られない。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:04:01 ID:eSssrWHUO<> 

( <●><●>)「今の話で言うと、事件後、捜査段階ではあなたはモララーとまたんきの見分けがついていた、
         だから捜査段階にて、A−5にはまたんきがいた、なんて言うはずないんですよ!」

( <●><●>)「……ほんとうに、モララー氏の殺害に無関係なら」

彼は、半ばにやにやして言った。
警部なら相手をからかい、バカにするところだろうが
ワカッテマスさんの場合だと、このように優越感に入り浸るようだ。


(#メメ゚ー゚)「……う」

(#メメ;へ;)「あがガガ!」ビリッ


今度は、右腕、二の腕の部分を服の上から噛みちぎった。
なんという顎の力、その部分だけ、肌が見える。そこもやはり傷が見えていた。
だが、尚もそれに臆することなく、ワカッテマスさんは更に攻め立てた。


( <●><●>)「あなたは考えたはずだ、ここでA−5の死体が
         またんきだという事にしておけば、捜査を攪乱でき」

(#メメ;ー;)「違います! 素で間違えたんです!」

( <●><●>)「……次だ」

(#メメ;ー;)「まだあるの!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:05:46 ID:eSssrWHUO<> 

彼女は泣き声になり、発狂時と同じように顔をかきむしり、ワカッテマスさんの追撃を拒んだ。
まあ、そんな足掻き程度で、あの鬼畜ワカッテマス刑事が手を休める筈がない。


( <●><●>)「ワゴンの中から取り出したんですよね、この遺体は」

(#メメ;ー;)「そうだって!」

( <●><●>)「じゃあ、なんで服に血が付いてない?」

(#メメ;ー;)「………?」

( <●><●>)「もし、殺害当時に止血などせず、すぐにワゴンに放り込んだら、大量にワゴン内部に血が付く」

( <●><●>)「ところが、そのワゴン内部から取り出した死体の衣服は、あまりにきれいだ」

(#メメ;ー;)「……ひぐっ…うッ………!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:08:33 ID:eSssrWHUO<> 

ついに、でぃさんは嗚咽を漏らすようにまでなった。
依然攻撃的な姿勢は解かないも、心は正直だったようだ。


鼻を啜る音、涙が地に墜ちた音、
嗚咽を漏らす際の声、どれもが、彼女の精神状態を表している。


( <●><●>)「入れ替えた際に着替えさせる余裕はない。
         なら、このワゴン内部の血は、いつ付いたのか」

( <●><●>)「言うまでもない、入れ替えた際、あなたが殺した、またんき氏の血だ」

(#メメ;ー;)「それがどうしたのよ!」

( <●><●>)「……問題は、シャキーンさんの証言だ」

(`・ω・´)「え?」


じっと、でぃさんをガン見していたシャキーンさんが、そんな声をあげた。
おそらくは、まさか味方(であるはず)のワカッテマスさんから話を振られるとは、思いもしなかったのだろう。



( <●><●>)「彼の証言を思い出してください」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:10:09 ID:eSssrWHUO<> 


 (´・ω・`)『その時、ぱるふぁ……香水の匂いはした?』

 (`・ω・´)『男である私に香水の区別がつくとでも?』

 (´・ω・`)『これは失礼。しかし、なにか香りませんでした?』

 (`・ω・´)『……………。
       香水はわからん。私のまわりには血の匂いが残ってたんだ、嗅ぎ分けることなどできん』

 (´・ω・`)『それはご自分の?』

 (`・ω・´)『そりゃ、交戦して血を拭いたりしたし、まず私からも流血されていたからな。おかしくはないだろう?』




(#メメ゚ー゚)「……?」

(`・ω・´)「確かに、言ったが……」

( <●><●>)「血の香りがしたから、香水など嗅ぎ分けれない、ということですかね?」

(`・ω・´)「まあ……俺の右腕からも血が流れたしな」

(#;メ゚ー゚)


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:12:39 ID:eSssrWHUO<> 

面目なさそうに、シャキーンさんが頭を下げ、ぼそっと詫びた。
でぃさんは固まっていた。
そして、ワカッテマスさんはちいさく笑った。


( <●><●>)「ばかな。怪我は大袈裟だが、トイレットペーパーで完全に拭き取れる程度の出血で、
         あんな高濃度なパルファンがかき消されるわけがない」

(`・ω・´)「でも……」

( <●><●>)「ワゴン付近、もとい乗務員室付近では、ほかに血が流れたんだ」

( <●><●>)「シャキーンさんのでもなく、モララー氏のでもなく……」

(#メメ;ー;)「や…めて……ょぅ………」

( <●><●>)「……」




(#メメ;ー;)「そこまで言うなら、示してもらおうじゃない!」

(#メメ;ー;)「誰の血!?」

( <●><●>)「…………」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:15:21 ID:eSssrWHUO<> 



( <●><●>)「あなただ、椎名でぃ」




(#メメ;ー;)

(;`゚ω゚´) そ

Σ (゚、゚トソン

(;´・_ゝ・`) そ


ワカッテマスさんの衝撃の発言に、このバトルを傍観していた
私、盛岡さん、そしてシャキーンさんが仰天した。
いきなり、でぃさんも血を流した、なんて言われれば、驚くほかなかろう。



だって、彼女は。
どこにも、流血の痕なんて、ない。



(#メメ;ー;)



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:19:45 ID:eSssrWHUO<> 



(;´゚ω゚`)「っ!」


そのとき、一号車の扉が、凄まじい金属音とともに開かれた。
その音に、車内にいる皆が反応して振り返った。

なかでも、特に警部は飛び跳ねて、すぐさま扉の向こうから来た人物をとっつかまえた。
そこには、ひとりの男が、否




( ><)「不肖ワカンナインデス、ただいま帰還しました!」

(; <●><●>)「9ッ!!」

(;´・ω・`)「おいバカ、どうしてもっと早く来ないんだ!」

( ><)「え、だって…」


すっかり存在を忘れていた、ワカンナインデス刑事が立っていた。
低身長で女顔、柔らかい物腰で刑事など無縁であるかのような見て呉れの彼が、扉の向こうからやってきた。
このワカンナインデス刑事、常に頼りなく、常に役立たずだが、
時にキーマンとなると聞く彼の噂、ここで本当かどうか、是非見てみたい。


(;´・ω・`)「どうだったんだって!」

( ><)「言われた通り、大量の血液反応が発見できました!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:21:32 ID:eSssrWHUO<> 


( <●><●>)「! まさか、警部……」

(゚、゚トソン「刑事に捜査をさせた場所って……」



(´・ω・`)「トイレ前のスペース、トイレ及び、乗務員室内。
      ……この列車の各車両、すべての、だ」

(゚、゚トソン「やっぱり!」

(゚、゚トソン「(多い! 割と捜査の量多い!)」


(#メメ;ー;)「!!」

(; <●><●>)「9、報告しろ!」

(*><)「はい!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:22:55 ID:eSssrWHUO<> 


(#メメ;ー;)「どーして! 捜査禁止って言ったじゃん!」

(´・ω・`)「こいつに常識は通じないんだ」

(゚、゚トソン「(ひどい! 自分で指示しといて扱いひどい!)」


ワカンナインデスさんは、持っていた捜査道具一式を床に置いた。
指紋を検出するアルミ粉にルミノール試薬と書かれたスプレーなど、様々だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:25:25 ID:eSssrWHUO<> 


( ><)「二−三号車間からは、鑑識課もびっくりしそうなほどの、大量でした!」

(;´・ω・`)「具体的には?」

( ><)「まずトイレ、ドアノブからたらーっと、血が垂れているのを確認」


手帳を見ながら、彼は言った。
そして、同時に、どこかからか取り出した写真も、皆に見えるように掲げ、見せた。
見た感じは全面真っ赤で、ドアノブからその下まで一直線の青白い線、
そして地で溜まっている、青白い水溜まりが見て取れた。



( <●><●>)「カメラ持ってたのか!?」

( ><)「たまたま僕のポッケに入ってたんです」

(#´゚ω゚`)「バッキャロめがァァァァッァア!!」

( ><)「ふぇー?」

(#´゚ω゚`)「あンならそれを早く……」

( <●><●>)「警部、まずは報告です!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:27:11 ID:eSssrWHUO<> 


怒りに震える警部を、ワカッテマスさんが正論を言った上で落ち着かせた。
警部が「あとで覚えてろ」とぼやきつつ、ワカンナインデスさんはおどおどしながら続けた。


( ><)「そして、トイレ前には点々と血の痕が……」

(`・ω・´)「………あの時のだ」


どうやら、シャキーンさんの証言は、どれも正しかったらしい。
確かに扉には血が垂れていて、トイレ前には交戦時に付いたと思われる血の痕が見られた。
そのまま、ワカンナインデスさんは手早く次の写真を見せてくる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:29:35 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「これは……」

( ><)「トイレです! 床に大量の血が……」

(;` ω・´)「………俺、だ…」


私も一度訪れた、洋式トイレの床、便器に座って目の前には青白い液体の、ちいさな水溜まりがあった。
トイレットペーパーが設置されている金具にも、手の跡と一緒に微かな血が見える。
おそらく、シャキーンさんはここで、アーボンオレンジを使って応急処置をしたのだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:34:06 ID:eSssrWHUO<> 

( ><)「次は……これです」

(゚、゚トソン「乗務員室の手前に、血だまり…?」


ワゴンがない以外は、乗車時私が見たまんまの乗務員室の光景が、そこには写ってあった。
車販準備室と兼ねているというだけあり、なにやら冷蔵庫らしきものなどいろいろあった。
その入り口付近に、やはり大量の血があった。


(´・ω・`)「!」

( ><)「これの血の量も、びっくりしたんですが、これの方がヤバいです」




そう言って最後の写真、全面が、やはり真っ赤なそれを提示し、刑事は言った。


( ><)「度肝抜きましたよ、まだあったんですから、乗務員室内に反応が」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:39:09 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「……?」

(゚、゚トソン「! ワゴンがあったところのすぐ横に……」

(`・ω・´)「……血」


もともと、ワゴンは、乗務員室内部、向かって奥の壁から1メートルほど離され、右の壁から30センチほどの場所に置かれていた。
持ち手の部分、そして、ワゴン内部への入り口がその奥の壁と面するような形で、だ。


血はぽつぽつとそこに写っていて、一見するとただの鼻血に見える。
しかし、鼻血にしては、これは少し量が多すぎる。
かといってここで銃殺の事件があったなら、もっと血が多いはず。
コレを見て私がそう考えていると、警部は、声高らかに言った。


(´・ω・`)「やはり!」

(´・ω・`)「この血は、モラル……モララー?氏の殺害時についた血ではない」


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/29(土) 18:39:49 ID:.iisz4nY0<>穴本に被せてくるとな
支援<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:44:09 ID:eSssrWHUO<> 

(゚、゚トソン「え……なんで?」

(´・ω・`)「モララー殺害のは、さっきの写真にあった、乗務員室手前の血、これだ」

(#メメ; -;)


そう言って、警部は乗務員室の手前に見える血だまりを指した。


(´・ω・`)「ワゴンの関係上、モララー氏が殺されたのは乗務員室内部で間違いない。
      しかし、銃殺し、その上犯人はご丁寧に止血まで施している以上は……」

最後の写真を指して、警部は眉を顰めた。


(´・ω・`)「こっちの出血の量だと、さすがに釣り合わない。これは、別の事件のものだ」

(゚、゚トソン「別の……!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:50:35 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「血は、4度に渡って流された」

(´・ω・`)「しかも、全員別人ときた」

( <●><●>)「トイレ前がまたんき氏、トイレ内部がシャキーンさん、
         乗務員室手前にモララー氏、そして乗務員室内のワゴン横にある謎の血……」

( <●><●>)「なんの因果でしょうかね」



(´・ω・`)「……まあ、これで、事件が解決したな」

(; <●><●>)「な…… しかし!」

(´・ω・`)「推理ショーの再開と洒落込もうではないか」



ワカッテマスさんは、先程でぃさんを追いつめ、なんとかモララー氏とでぃさんを結びつけようとしていた。
いいところまではいくも、ワカンナインデスさんの登場で結果は有耶無耶、そのままわからず仕舞いだった。


そのことを言おうとしたがったワカッテマスさんを宥め、持っていた写真をワカンナインデスさんに押しつけた。
そして警部は再び真剣な顔つきになり、すっかり豹変してしまったでぃさんと向き合った。
彼女は、大分回復してるとは言え、また今にでも発狂しそうな雰囲気を醸し出している。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 18:53:36 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「まず、12分に“1度目”の発砲事件があった」

( <●><●>)「今の写真の時、ですかね」

(´・ω・`)「そう。当然撃たれた側はすぐに止血に取り掛かり、且つ血を拭く」

( <●><●>)「なぜ、当時撃った人は、とどめを刺したりしなかったのですか?」

(´・ω・`)「殺しては致命的な人だからだ。あとで触れるから、続けさせろ」

( <●><●>)「……失礼」


彼は身を退いて、少し頭を下げた。
特に咎める様子もなく、警部は推理ショーを続行した。


(´・ω・`)「撃った人は逃げた。撃たれた人が血を拭き、止血した」

(´・ω・`)「その時乗務員室を訪れたのが、モララーだ」

(#メメ;ー;)「……!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:01:47 ID:eSssrWHUO<> 


( <●><●>)「ではその、発砲した人と被弾者とは…?」

(´・ω・`)「撃った人はともかく……さ。
      撃たれた人は、この流れでわかるだろう」

( <●><●>)「……犯人!」


ちいさく、こもった声でワカッテマスさんはその存在を言った。
一度目の発砲事件の次に、その場にモララー氏が居合わせた以上、残った被害者が彼と対峙することになる。
犯人はモララー氏とまたんき氏の両者を殺害した、と仮定している以上は、これ以上簡単な話はない。

その場に残った被弾者――犯人が、やってきたモララー氏と鉢合わせ。




(´・ω・`)「ここで、ひとつおかしなことが起こる。今し方発砲した人物は、銃を落としていった」

(`・ω・´)「……………」

( <●><●>)「なぜです?」

(´・ω・`)「それ以外には、どんな推理をしても当てはまらないからだ。
      持ち帰ったなら、銃器がない以上モララー殺害は不可能となる。
      しかしそれだと辻褄が合わないからな」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:04:26 ID:eSssrWHUO<> 


( <●><●>)「……ふむ。続きをどうぞ」

(´・ω・`)「銃を落としていったのだが、モララーは、それを拾った」



(´・ω・`)「そして、撃とうとした」

( <●><●>)「ちょっと待ってください。
         撃とうとしながら、なぜ彼は殺されたのか謎です」

(´・ω・`)「いいか、モララーと向き合った犯人は、一度発砲されている」

(´・ω・`)「モララーは威嚇射撃でもしようとしただろうが、それより前に、
      また撃たれる…! と恐れた犯人が、奪った」

(´・ω・`)「焦ったモララーは逃げようとするが、咄嗟にナイフで追撃した」

( <●><●>)「……おかしい、せっかく奪ったならその銃で……」

(´・ω・`)「通路に出ちまうだろ、血といい、モララーといい。犯人は、それを恐れた」

( <●><●>)「しかし、ナイフなんてそう都合よく……」

(´・ω・`)「思い出せ、現場がどういう場所なのか」


.<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/29(土) 19:06:46 ID:0uUuZJcY0<>きてるううううう読むうううう!<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:08:54 ID:eSssrWHUO<> 

そこは、乗務員室。

兼、車販準備室だったはずだ。
ワゴンの搬入、乗務員の雑務、その他もろもろ。
車販準備室というだけあって、キッチンでも搭載してそうなものだ。
そうでなくとも、そこがどういう場所なのかを考えるだけで、自ずと答えはでた。


(´・ω・`)「包丁なり、フルーツナイフなり、カッターなり。
      刃物なんぞそこらにある。それを使って、攻撃した!」

(´・ω・`)「このとき、傷はコートには付かなかったという事になるな」

(`・ω・´)「……そうか」

(´・ω・`)「人、走って逃げると、コートは風につられて、浮かぶものだ。
      そこを斬って、もし運よく気絶させたなら、どうする?」

( <●><●>)「……」




(; <●><●>)「…………銃、殺……」

(; <●><●>)「しかし、銃声は……」

(´・ω・`)「ただでさえ煩いのに、更に連結器の部分でがたがた煩い。
      犯人は、乗務員室付近でなら銃声が漏れないのを知ってた人物となる」

(#メメ゚ -゚)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:11:57 ID:eSssrWHUO<> 

(´・ω・`)「そして、流れる血を拭き去った、その時に犯人がとった行動は?」

( <●><●>)「……ワゴン内部に、死体を突っ込んだ」

(´・ω・`)「つまり、犯人は『乗務員室の特性をよく知っていて』『ワゴンの秘密を知っている』人物となる」

(#メメ -゚)「………」


警部はここで、おおきく息を吸い込んだ。
でぃさんの様子を窺うこともなく、彼は目を細めた。
彼の仕草のひとつひとつに、苛立ちが感じ取れた。


(´・ω・`)「……ここで犯人がワゴンにモララーを押し込んだ時、別の事件が起こったんだ」

(`・ω・´)「! まさか……」

(´・ω・`)「トイレから出てきたシャキーンさんとまたんき氏が出くわし、ナイフで争う、という事件が起こった」


警部はそう言って、ワカンナインデスさんから、一枚の写真を取った、いや、ひったくった。
トイレ前のスペースにて、血が点々と付いているのがわかる、写真だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:15:24 ID:eSssrWHUO<> 

(´・ω・`)「犯人と違い、シャキーンさんは、相手を仕留め損ねた。
      が、シャキーンさんも腕に負ったおおきな傷があったから、追撃できずに、トイレに再び籠もった。
      それがこの写真だ」


今度は、トイレ内部を写した写真を手にとって、そう言った。
結構多くのの血が流れてあり、見るのに少し抵抗を感じた。


(´・ω・`)「幸いここはトイレだ、水も、拭き取る紙もある。
      彼はアーボンオレンジを使って、手当てをすると同時に、血も拭き取った」

(´・ω・`)「……そして、シャキーンさんは、乗務員室に向かった」

(;`・ω・´)「!」

(´・ω・`)「血の臭いを感じ取ったか、偶然なのかはわからないけど、な」



( <●><●>)「では、その時犯人は?」

(´・ω・`)「その場を離れたとしか言いようがない」

( <●><●>)「それでは推理に穴が……」

(´・ω・`)「お菓子に血が付いたのだからな」

(; <●><●>)「……あぁ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:19:53 ID:eSssrWHUO<> 

(´・ω・`)「袋菓子は拭けばかろうじて大丈夫だ。
      しかし紙パッケージのものは……」

( <●><●>)「………それらの手続きを?」

(´・ω・`)「ああ」





(゚、゚;トソン「ちょちょ、待ってください!」


私は、思わず声を張り上げた。
その私の声に驚いた、警部やワカッテマスさんといった皆が、こっちを見た。

私が推理を中断させたのはなぜかというと、今の話だと犯人の顔が
彼らの間で、既に定まっているような口振りに聞こえたからだ。


(゚、゚トソン「今の話だと……犯人、でぃさんで決まってますよね……」



(#メメ - )



(´・ω・`)「…………最初から、そう言ってる」

(゚、゚トソン「でも証拠が……」

(´・ω・`)「彼女の話では、またんき氏は殺した、そう言っている」

(゚、゚トソン「………」

(´・ω・`)「つまり、またんき氏の方は決まりだ。一方モララーの方だが……
      彼女以外に犯人候補がいない」

(´・ω・`)「その証明を、だな……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:24:00 ID:eSssrWHUO<> 


(゚、゚トソン「でも……」


私は、「決めつけるのはどうかと思います!」と言おうと
思ったのだけど、緊張しているのかうまく言葉にできなかった。






(#メメ - )「……待」

( ><)「待ったァァァァッァア!」

(#メメ゚ -゚)「!」




( <●><●>)「はい?」

(´・ω・`)「なんだよ」

( ><)「この……」


突然叫びだしたワカンナインデスさんは、
警部が持っている、乗務員室内部の写真を指さした。


( ><)「確かに僕、ここに血を見つけました。
      そして、今の推理が、筋が通ってるのもわかります」

( ><)「でも今の推理だと、犯人は一度被弾して、血を流したんですよね?」

(´・ω・`)「ああ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:25:08 ID:eSssrWHUO<> 

(#メメ゚ -゚)

( ><)「彼女……どこにも、弾痕なんてないんです」





(´・ω・`)



( <●><●>)



(゚、゚トソン



(#メメ゚ー゚)




でぃさんが、はじめて、嗤った。
満面の笑みで、警部に、一瞥を与えた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:29:00 ID:eSssrWHUO<> 


ふと、私はでぃさんの全身を見渡した。
顔には右頬のおおきな絆創膏、そして多く刻まれた古傷。
破けた服から見える傷も、細く引き締まった脚も、
被弾の有無で言うなれば、彼女はいたって健康体だった。



( <●><●>)「……あ」

(; <○><○>)「あああああああああッ! 確かに!」




(;´・ω・`)「こ……こんのヤロー……」

( ;><)「ひィ!」


警部が、今までにない、おっかない形相でワカンナインデスさんを睨みつけた。
思わず彼は、情けない声をあげた。
しかし、それを止めたのは、でぃさんだった。


(#メメ゚ー゚)「警部さん、彼の言うとおりです。
      今の推理に欠かせないもの、それは“犯人の被弾”です」

(;´・ω・`)「……」

(#メメ゚ー゚)「私、引っ掻き傷はたくさんあります。
      でも、弾痕なんて大層な傷、ありませんよ」

(;´・ω・`)「…………!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:33:05 ID:eSssrWHUO<> 


(#メメ゚ー゚)「つまり、あなたの推理は、ぜーんぶ、偽り!」

(#メメ゚ー゚)「歪んだ推理で私を逮捕? ばかばかしい!」

(#メメ゚ー゚)「あなたが、あなたが、偽りを生もうとしてるんだ!」


でぃさんは、ひとり、ただ警部に吠え続けた。
屈することなく、警部はワカッテマスさんに向けてちいさくこう言った。

(;´・ω・`)「………この問題を解決するには、ひとり、解明しなければならない人物がいる」

( <●><●>)「え?」

(´・ω・`)「“1度目”の発砲時、撃たれたのはでぃさんで間違いない。では……」

(´・ω・`)「撃ったのは、誰なんだ?」

( <●><●>)「……………あ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:36:05 ID:eSssrWHUO<> 

(´・ω・`)「しかし、このとき撃たれた銃が、A−5とB−7、どっちにあるものだったのか。
      それを考えれば自ずと見えてくる」

(´・ω・`)「ワカッテマス、どっちだと思う?」


( <●><●>)「確か、彼女曰く、またんき氏に関してはA−5の銃を奪って銃殺とのことであり、
         A−5からは合計一発しか撃たれていない……つまり、
         またんき氏が殺されるまではA−5の銃は6弾装備してたわけだから……」

(´・ω・`)「モララー殺害に使われた銃はB−7だ。
      そして、のちにその席に着いたのは……」



警部は、ちらっと、B−7に座っていた人物――シャキーンさんを見た。
彼が、今までにないくらい、そわそわとしているのを確認し、警部は確信を持って、言った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:39:27 ID:eSssrWHUO<> 



(´・ω・`)「でぃさんを撃ったのは、シャキーンさんだ」



(#メメ゚ -゚)

(;;`・ω・´)

(; <○><○>)「!」



(; <●><●>)「なぜ! 動機がない!」

(´・ω・`)「動機は、事件解決時に聞くさ。
      それよりも、シャキーンさん……」

(;;`・ω・´)「………」



シャキーンさんはそっと俯いて、広げた自分の両手を見た。
それを見ているうちに、手から身体と、徐々に全身が震えてきて、最終的に、シャキーンさんは豹変(かわ)った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:40:44 ID:eSssrWHUO<> 



(;;` ω ´)「………どうして」


漢が、哮った。






(#`;ω;´)「どーしてなにもかもバレちまうんだよゴルァァァァァァぁぁぁぁぁァァッァアアアアア!!」




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:42:22 ID:eSssrWHUO<> 


( <●><●>)「! 認めるのですね!」

(#;メ゚ー゚)「シャッ君、冗談……やめて? ね?」

(#`;ω;´)「警部の言う通りだ!
       12分、揺れたとき、俺とでぃは、対峙していた!」

(#;メ゚ー゚)「シャッ君、止して? なにかの勘違いだって……」



たとえるなら、荒ぶる虎、巨漢シャキーンが、明らかに壊れていた。
眉間にはひび割れそうなほどにしわが入っていて、
両手で握り拳をつくり、めいっぱい力を込めている。


発達した腕、服の上からでも、その筋肉の量が窺えた。
必死で落ち着かせようとするでぃさんの説得空しく、
シャキーンさんは、ぽつりぽつりと全てを話し始めた。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:43:59 ID:eSssrWHUO<> 


(#`;ω;´)「列車に乗った時、まず俺は自分の席のA−5に荷物を置いた。
       そして出発後、急に催してきたからトイレに向かったら、でぃがいた!」

(#`・ω・´)「話した、語った。そこまではいい、問題はその後だ」

(#`;ω;´)「でぃは銃を抜きやがった!」



(; <●><●>)「!?」

(#;メ゚ー゚)「ちょ……」



(#`;ω;´)「命の危機を感じたから、すぐにタックルを決めて銃を奪い取った。
       そしてすぐに奴から離れ、銃を構えた」

(#メメ; -;)「………!!」



(#`・ω・´)「でも、俺は、撃つつもりはなかった。ただ構えてみせて、
       返り討ちに遭わないようにしていただけなんだよ、信じてくれ!」

( <●><●>)「……撃ったのですか?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:45:29 ID:eSssrWHUO<> 


隣で制止を要求、否、懇願するでぃさんを無視し、彼は必死に訴えていた。
何度も「撃つつもりはなかった」と、故意でないことを強調させている。
しびれを切らした警部は、ややきつめに、言った。


(´・ω・`)「『つもりはなかった』……つまり、撃っちゃったんだな?」

(`・ω・´)「………」

(´・ω・`)「どうなんだ、答え…」

(`・ω・´)「……それが、よくわからないんだ」

(´・ω・`)「……」


(;´・ω・`)「はァ?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:47:50 ID:eSssrWHUO<> 


自分の右手を、掌を上に向け、じっとその手を見るシャキーンさん。
徐々にその手は震えてきて、ぽつんぽつんと、涙が掌に落ちては弾けていった。


(`;ω;´)「……あのときでけぇ揺れがきて…
      揺れた瞬間、びっくりして、引き金を引いちまったんだ……」

(`;ω;´)「同時に、とんでもねぇ馬鹿でかい轟音が聞こえて、
      俺は最初、それが銃声だと思って、尻尾巻いて逃げちまったんだ……」

(`;ω;´)「怖くて、銃も落としちまって、すぐにトイレに逃げ込んだ」



(#;メ゚ー゚)「と、トイレにいたの!?」

( <●><●>)「撃ったんですね!」

(´・ω・`)「……で、その弾はどうなったんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:50:33 ID:eSssrWHUO<> 

(`;ω;´)「見てねぇよ! 銃なんざ見るのも怖くて、使うのもはじめてなんだ!
      しかも、結構反動がきたから、手元がぶれて、弾がどこに飛んだのかすら知らねぇよ!」

(`;ω;´)「だから、でぃを撃ったかまでは知らねぇんだよ!」


シャキーンさんは繊細なココロの持ち主で、ナイフは扱えても、
銃なんてカンペキに人殺しな道具を、扱うのは無理だった。


それゆえに生じるココロの動揺、銃の反動で手元がぶれ、
1度目の揺れで構えが崩れ、まして焦点は定まってない、
こんな状態ではさすがに命中するはずはないのだが、それ以上に自分が銃を扱ってしまった、という事実が恐ろしくて、
現実から逃げ出すかのごとく、そこから立ち去り、トイレに籠もったらしい。
だから、でぃさんにそれが被弾したかまではわからない、とのことだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:52:46 ID:eSssrWHUO<> 


この証言を聞いて、私はひどく、心を傷めた。
真実がわからないままだから、じゃない。

シャキーンさんが、ここまで真人間で、なのに
今までそれを偽ってきたという、まさに仮面をかぶっていたからだ。





( <●><●>)「警部、ご存じだとは思いますが、ここででぃさんが被弾した、という証拠があれば、
         ロジックは一本に繋がります」

(;´・_ゝ・`)「被弾なんて、見たら一発で判るもんじゃないの!?」

( <●><●>)「そこなんです」

盛岡さんの質疑に、ワカッテマスさんは
でぃさんを指さして、悔しそうに言った。


(#メメ゚ー゚)

彼女は、笑っている。
その表情からは、安堵すらも、感じられる。




( <●><●>)「………弾痕は、未だ見つかっていません」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:56:55 ID:eSssrWHUO<> 



(#メメ゚ー゚)


彼女は、顔には、おそらくストレスの溜まるたびに付けてきたであろ引っ掻き傷が目立つ。
白いシャツの右の袖は先程噛みちぎられたため、そこからも傷が窺えた。
腕も脚も細い、いや細いだけでなく、よく見てみると、
力瘤が目に留まる程度ではないがスポーティに発達していて、引き締まっていた。
ストッキングをはいているが、おそらく素でもきれいなんだろう、と思えた。

そして、何度も全身を見渡してみたが、やはり
彼女の外見に、弾痕なんて、どこにも見られなかった。



(; <●><●>)「警部、彼女はほんとうに被弾したのですか!?」

(;´・ω・`)「そのはずなんだ!
      というより、それ以外には、この一連の事件に説明がつかない!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 19:58:39 ID:eSssrWHUO<> 


( ><)「もしかしたら肩とか腿に当たって、それを制服で隠しているのでは?」

( <●><●>)「だとすると、制服には穴が空いているだろ」

( ><)「着替えたかもしれないんです!」

(#メメ゚ー゚)「調べます? 着替えなんてどこにもないですよ」


( ><)「テンさん、調べましょう!」

( <●><●>)「……無駄だ、彼女がそんなヘマをするはずがない」

(#メメ^ー゚)「賢い刑事さんで助かります」



にぃっとでぃさんは笑った。
その笑顔には、悪魔的なものを感じさせられ、私は背筋が凍るのを感じた。
この自信に溢れた言いぐさからすると、おそらく彼女は着替えてなんていない。
つまり、肌が露出しているところに、被弾していて、なおかつ、それを“隠して”いるんだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:00:48 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「そうだ、バカ、現場から銃弾は見つかったのか?」

( ><)「一応、壁から天井から、すべて見たんですけどありませんでした」

(´・ω・`)「……つまり、今、銃弾は、でぃさんの体内にある」

(; <●><●>)「! はやく摘出しないと!」

(#メメ゚ー゚)「だから、被弾なんてしてないですから」


ワカッテマスさんは、悔しそうにB−7の背もたれを後ろから殴った。
思わずシャキーンさんも驚き戦いた。


ふふっと、嫌味な笑いを見せるでぃさんは、口元を一度手で押さえると、
耐えきれなくなったのか、いよいよ吹き出した。



(#メメ;ー;)「あぁーっはははハハハハハッッ!
      推理、崩れ去ったじゃん! ばっかばかしい! ハハハハ!」

(#メメ;ー;)「シャッ君も冗談キツいなぁ! ハハ!」

(#メメ;∀;)「アヒャヒャ……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:02:27 ID:eSssrWHUO<>と、ここで一旦CMで。
三十分ほど席を外します、ごめんなさい!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/29(土) 20:16:31 ID:VCIK8OQAO<>今日は忙しいな 
支援<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:48:08 ID:eSssrWHUO<> 


(・ω・`;)「………」

警部は、荒れに荒れているでぃさんを見つめている。
彼女は、更に、ヒートアップしていた。


(#`・ω・´)「このアマ……………!
       お前が、お前がまたんきもモララーも殺したんだろ!」

(#メメ;∀;)「アヒャヒャヒャ! 違いますー! アヒャッ!
      銃ごときにビビる小心者のくせに!」

(`・ω・´)「………でぃ…?」


シャキーンさんが、あっさり言いくるめられた。
彼は、怒りでも哀れみでもなく、同情の色をした目で、彼女を見つめた。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:50:14 ID:eSssrWHUO<> 


(´・_ゝ・`)「犯人が見つからないと落ち着けないんだ、
      認めてくれないかな……アテンダントさん……」

(#メメ;∀;)「あンだよキモヲタがよぉ!
      犯人はそこの釣り眉毛ですよ! アヒャヒャ!」

(;´・_ゝ・`)「とほほ、キモヲタときたか……」


貶され、とたんに盛岡さんは黙りこくった。
彼も気づいたのだろう、でぃさんは、徐々に、そして確実に狂いはじめていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:52:43 ID:eSssrWHUO<> 


川  々 )「……くるう、怖い」

(#メメ;∀;)「おじょーさんは黙ろうねェェェェ! アヒャヒャヒャ!」

川  々 )「………」


嘲られ、彼女は、ただ俯いて肩を震わせた。
でぃさんはもう、前が見えないでいるのだと思った。
とにかく、目の前のありとあらゆる存在を否定することしかできないのだろう。
そっと、彼女、くるうさんは涙を流した。


.<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/29(土) 20:52:57 ID:/k2VmDE.0<>支援<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:54:24 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「…………トソンちゃん」

(゚、゚トソン「は、はイ!」

(´・ω・`)「君、乗車した時、すぐにでぃさんと会ったね?」

(゚、゚トソン「は、はい」



(゚、゚;トソン「って、なんで知ってるんですか?」

(´・ω・`)「初対面で、アテンダントが客におドジなんて言うはずがないでしょ」

(゚、゚トソン「う……まあ」

(´・ω・`)「………トソンちゃん」

(゚、゚トソン「はい?」


(´-ω-`) …コホン



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:55:26 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「君だけが、このなかで唯一“事件前の”でぃさんに会ったことのある人間なんだ」

(#メメ;ー;)「!!」

(´・ω・`)「話をおさらいしよう」

(´・ω・`)「彼女は、必ず、撃たれた。
      そして、それを証明できれば、彼女が犯人であることに繋がる」

(゚、゚トソン「しかし、見た感じどこも……」




(´・ω・`)「偽ってるんだ」

(゚、゚トソン「偽ってる?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 20:57:18 ID:eSssrWHUO<> 


(´・ω・`)「ふつう、撃たれたら、ぱっと見ればどこが撃たれたかわかるもんだよね」

(゚、゚トソン「はい」

(´・ω・`)「でも、見て、わからない」

(゚、゚トソン「……」



(´・ω・`)「つまり、ぱっと見ても怪しく思わないほど、自然に隠してるんだ」

(´・ω・`)「しかし、それは事件後に取り繕われた、《偽り》にすぎない」

(´・ω・`)「その《偽り》は、とてつもなく大規模か、
      若しくは、かなりちっぽけなものか……」

(´・ω・`)「とにかく、それを《見抜く》ことができるのは……
      トソンちゃん、君だけだ」

(´・ω・`)「思い出してくれ、乗車時の、彼女の姿を……」




(´-ω-`)「…………頼む」

(゚、゚;トソン「そんな……」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 21:00:05 ID:eSssrWHUO<> 


(#メメ;ー;)「がァァ! やめろぉ!」

( <●><●>)「させるか!」

(#メメ;ー;)「離せ! 離せぇぇ!」




(゚、゚トソン

もとは、私が、VIPに在る親の実家に帰ろうとして、この列車に乗ったのが事の始まりだった。
家を出る直前に、あれやこれやと忘れ物を思い出してしまい
それをバッグに詰め込む間に、刻々と時間が過ぎていった。
慌てて家を飛び出し、駅に着いた時には、発車寸前。
全速力で走り、飛び込んだ。


バッグが背中に乗っかり、重たかったが、それ以上に、乗れたことに安堵を感じた。
はやく席に着こう、そして寝よう。
そう思って足早に向かった先が、あの乗務員室だった。
誤って入ってしまって、その時に、はじめて彼女に出会った。



確か、華奢な腕にきれいな脚、制服といい、
なにも今と変わってない気がするのだけど………



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 21:02:01 ID:eSssrWHUO<> 





 (*゚;;-゚)『す、すみません!』
 (゚、゚;トソン『あ、いや、こちらこそ間違えて入って来ちゃって……すみません!』




 (#゚;;-゚)『あのおドジな人!』
 (;、;トソン『おドジ!?』






  (*゚;;-゚)

  (#゚;;-゚)





.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 21:04:32 ID:eSssrWHUO<> 




( 、 ;トソン「―――ッ!――?!」

(゚ー゚;トソン「ああああああああああああああああああああああああああッ!!!」



(;´・ω・`)「! わかったか!?」

(゚、゚;トソン「警部、ほっぺです!」





「右頬に、銃弾が埋まっています!」







 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 10章
  「偽りを見抜く」

    おしまい



.<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/29(土) 21:07:23 ID:/k2VmDE.0<>乙!
今回はいいテンポで面白かった<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 21:09:56 ID:eSssrWHUO<>これにて10章、タイトルリコール(リコールで合ってる?)の回おしまいです。
ちょっと、書きための元の文章からだいぶ改変したので、
読みにくかったり何かがおかしかったりするかもしれないです。
また、改行を多用しちゃったのは反省点です。


10章も読んでいただきありがとうございました!
ちなみに推定ですが、あとエピローグ含め3章前後はありそうです。ごめんなさい。
ほんとうならすぱっと終わりたいのですが、回収してない伏線が結構残ってるので(いくつかは次回作にまわる)。
穴本読んでくるので失礼します、では!<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/10/29(土) 21:12:24 ID:eSssrWHUO<>10章「偽りを見抜く」
>>420-481<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/29(土) 21:15:28 ID:EZK3z8Pk0<>予想の遥か斜め下!乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/10/29(土) 21:38:19 ID:Cpos8/k20<>本当逆転裁判みたいなテンポのいい解決編だ<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/29(土) 23:10:33 ID:L3SjjbKkO<>乙!<> 名も無きAAのようです<><>2011/10/30(日) 23:33:13 ID:FTBZCDTI0<>期待してまう<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/01(火) 20:08:10 ID:KvrUHeisO<>今一気読みしてきた!
展開にドキドキする<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/01(火) 21:13:54 ID:PqEQkt6AO<>


面白いけどあまりパッとしない
でも話は嫌いじゃないから次回楽しみにする
主乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/02(水) 01:09:33 ID:k5u39Vic0<>もしかしてでぃが顔を引っかきまくってたのは撃たれた痕を隠すためとかか?
というか銃弾が顔の中に埋まってて痛くないのかな…<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/08(火) 22:00:45 ID:4M3WtP/QO<>この作品においての生存報告って、する必要があるのかわからないけど、
次回投下までに結構時間空きそうだったので一応報告。
今月中に投下できるか怪しいけど、できたらしたいです。

というのも、この秋の新刊をただひたすら読みあさっているので、なかなか手が。
うん、章分けもタイトルも決まってるからあと投下するだけなんですが、
まとまった時間がなく、ちょっとした空き時間は全部読書にまわしてるので。申し訳ない。

一応、今月の第三の土日で投下しようとは考えてますので、
それまでは、ゆっくり、療養も兼ねて読書の秋をエンジョイします。


>>491
でぃが顔を引っかき回したのは、あくまで彼女の発狂をあらわそうとしたものです。
ちなみに、捜査の間もずっと絆創膏を自然に貼っていたので、
顔を引っかき回すまでもなく撃たれた後を隠すことはできていたようですよ。

痛いかどうかまでは、私めにも経験がないのでなんとも……<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/08(火) 22:16:21 ID:v861myI6O<>待ってるよー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/08(火) 23:57:04 ID:hva2JziMO<>発狂は逆裁ぽいよね
待ってる<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:21:44 ID:w4/uVoaMO<> 


11章「忌まわしき過去」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:23:56 ID:w4/uVoaMO<> 


(;`゚ω゚´)



(; <○><○>)



(´ ゚_ゝ゚`)



( ><)



川 ゜々゚)



(;´゚ω゚`)




(#メメ;□;)


最初見たときには、紅潮していた右頬が、確かに見られた。
その時から、顔にいくつかの絆創膏はあったのだが、左右ともに、頬には、絆創膏はおろか、傷痕なんてなかった。
次に見たときには、右頬にだけ、おおきな絆創膏が貼っていたのだ。
左頬には貼ってない、しかし右には、あった。
しかし、もともと、彼女の顔には多くの絆創膏や、古い傷が目立っていたので、ぜんぜん気にならなかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:25:34 ID:w4/uVoaMO<> 


 (((#メメ;□;)っ「ガキぃぃェァァァ!!」

≡( 、 ;トソン「きゃっ!」


(((; <●><●>)「……警部! こいつをおさえてください!」


彼女は、もう口が裂けんばかりに、喉の奥まで見えるほどに開き、私を凝視して飛びかかろうとした。
ワカッテマスさんが必死で抑えるも、彼女の馬鹿力には到底及ばず、
ワカッテマスさんを引きずったまま、徐々にこちらに向かってきている。


(`・ω・´)「手を貸すぞ」

( <●><●>)「! 左腕を抑えてください!」


もう私の前1メートルにまで迫っていた彼女を、横からシャキーンさんが来て、左腕を肩から抑え込んだ。
2人によって両腕は封じられたが、それでも、脚をじたばたさせ、私を攻撃しようとしている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:29:07 ID:w4/uVoaMO<> 


(;´・_ゝ・`)「脚なら持ちますよ!」

(#メメ;ー;)「変態! 変態! 離せエロガキ!」

(;*´・_ゝ・`)「変態じゃない、紳士だ!」


次に、数少ない常識人(だと思っていた)盛岡さんがやってきて、右足を両手で包むようにしてつかみ、持ち上げた。
転けそうな体勢になったが、彼女は、それでも必死に抵抗している。
ただ、私のみを視界に捕らえているのが、よくわかる。
だからこそ、彼女が怖かったし、彼女をおさえる彼らが、とても心強く思えた。


≡\( ^o^)/「面白そうじゃねーか。俺も参加するぜぃ!」

(#メメ;ー;)「やッ……そんなとこまで持つな!」


たとえバカでもだ。
しかし、彼がおさえると、限りなく、頼りなく見えた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:30:43 ID:w4/uVoaMO<> 


こうして、動こうにも動けない姿になった彼女は、大声でひたすら、言葉にもならない声を発していた。
警部がのしのしと歩み寄り、彼女の崩れきった顔を、じろじろ舐めまわすように、凝視した。
右頬に貼られた絆創膏は、床に散らばっているほかのと比べ大きく、
入念に貼られたであろうことが予測できるほど、丁寧に貼られていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:35:24 ID:w4/uVoaMO<> 

(´・ω・`)「……トソンちゃん、ほんとうに、ここ?」

(゚、゚トソン「…………はい」

私は、警部の確認に肯いた。
しかし、首を前に倒そうとすると、身体が硬いことに気がついた。


(´・ω・`)「でぃさん、この絆創膏、はがしていい?」

(#メメ;□;)「だ……ァめぇ! だ、だめ……ァァァァ!」

(; <●><●>)「はやくしてください。こいつの力が尋常ないのです」


四肢を塞がれつつもなお、彼女は持ち前の怪力を用いて、彼ら大の男4人を、引っ剥がそうとすら企むのだ。
その獰猛さ、畏怖を通り越して、滑稽にすら思えると、警部は感じているに違いない。
向こう見ずな彼女に、飄々とした警部は、いつもの皮肉った口振りで、言った。


(´・ω・`)「もしただの傷だったら、隠す必要はない。ただの傷だったら慰謝料払うよ」

(#メメ;□;)「い゙い゙! 慰謝料な゙んかいら゙ない゙から!」

(´・ω・`)っ#「……よっと」


警部が、なんの躊躇いもなく、でぃさんの絆創膏をはがした。
随分濡れていたのか、呆気なくそれははがれた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:38:11 ID:w4/uVoaMO<> 

(;´゚ω゚`)「!!」

(;ー;トソン「ギエアァァァァッァア!」


そっと絆創膏の端をつまみ、一気に引き剥がした。
粘着力はきれてきたのか、あっさりとそれは剥がれたのだが、
そこには、明らかに「ただの傷」ではないものが広がっていた。

その傷を見て、私は、理性もへったくれも関係ないと思えるほど、絶叫した。
私が腹の底から大声を出したのは、いつぶりだったか。
絹を裂くような、と言う言葉は、不適当ではあるが、ほかに適当な言葉が見あたらない。
とにかく、絶叫せざるを、得なかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:39:57 ID:w4/uVoaMO<> 


(Tメメ;ー;)

絆創膏と思ったそれは、よく見ると、ガーゼの部分が非常に分厚く、医療用の特別なものであることが、のちにわかった。
その証拠に、絆創膏をとった瞬間、右の頬骨の箇所から、割とすごい勢いで、血が垂れていった。
そして、私は、人の顔に穴が空いた姿など、見たくもなかった。
瘡蓋もできているのか、肉まではさすがに見えず、どす黒い血の塊が見えた程度だったが、それでもだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:42:05 ID:w4/uVoaMO<> 

その流血を見た、彼女を支えていた男4人が、一斉に彼女を離して、距離を置いた。
推理上当然の結末なのだが、やはり、誰しもが、その現実を受け入れられる訳がなかった。
彼女を野放しにしたことにより、ワカッテマスさんがすぐに危機を感じ、彼女を抑え込もうとするとしたが、同時に
このままでは、彼女が危篤に陥るのではないかと、不安の念も抱いた。

しかし、ワカッテマスさんは動かなかった。
でぃさんは特に抵抗しなかったからだ。



(∩メ;ー;)

彼女はそっと右手を傷口にあて、血が流れるのを抑えようとした。
しかし、指と指の隙間から、まだ少し血が流れている。
彼女はそれを気にせず、そのまま、へなへなと、地に跪き、そっと涙を流した。


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/17(木) 23:45:02 ID:TGeA2yq6O<>唐突に来たな、待ってたよ 
支援<> 503訂正<><>2011/11/17(木) 23:45:03 ID:w4/uVoaMO<>× 彼女を野放しにしたことにより、ワカッテマスさんがすぐに危機を感じ、彼女を抑え込もうとするとしたが、同時に
○ 彼女を離したことにより、ワカッテマスさんがすぐに危機を感じ、彼女をおさえ込もうとしようとしたが、同時に<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:49:04 ID:w4/uVoaMO<> 

( <●><●>)

(´・_ゝ・`)

(`・ω・´)

( ><)

川 ゜々゚)

(´・ω・`)

(゚、゚トソン

从*ノ -ノリ ~゚



(∩メ;ー;)「………」


誰一人、口を開こうとしなかった。
先程までの、焦りや怒りを感じさせてきた、皆の表情が一変、同情の色を帯びたものとなっていた。
そして、いくら残酷な殺人を犯したからといって、誰も、彼女を非難することはなかった。
なぜか、私たちが彼女を咎めるのは、立場上、そして倫理上、不可能な気がしたからだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:51:13 ID:w4/uVoaMO<> 


(∩メ;ー;)「………けいぶさん」

(´・ω・`)「?」

彼女の、すっかり力の取り払われた声を、警部は聞き逃さなかった。
列車の、轟音に呑まれそうな声を、この場にいる皆は、決して聞き逃さすことはなかった。


(∩メ;ー;)「聞いてくれますか? ばかなオンナの一生涯を……」
(´・ω・`)「……」

(´-ω-`)「話したければ、勝手に言えばいい」

(´・ω・`)「責任を持って、聞き届けてやる」



こくんと肯いて、彼女は、ぽつぽつ、弱く語り始めた。
最初に、自分とは、いかに醜く出来の悪い人間であるかから、話の始まりとなった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:54:31 ID:w4/uVoaMO<> 

(∩メ;ー;)「………昔から、恋人なんていない。顔も悪い。天才の姉がいて、比べ地味な私。
      頭も悪くて、逆に、オンナのくせにスポーツが出来過ぎて、気味悪がられたこともあった。
      趣味も特になくて、暇な日は、一日中、自分の存在する意味を考えていた。
      そして、はじめて手首を切ったのは高校の時だった。
      気がつけば、事ある毎に自傷してしまう、ばかばかしいオンナになっちゃって……
      で、高校、大学とでて、就いたのが、オオカミ鉄道。
      それからは、仕事が生き甲斐だった。はじめて打ち込めることができたんだ。
      仕事をしている間が一番輝いている。……間違いなく、そう実感できていた。
      少しして、町のちいさな食堂で、すてきなヒトとも巡り会えた」


最後の2項目を言うあたりから、徐々に彼女はほがらかになってきていた。
しかし、すぐに、声のトーンは落ちた。

.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:57:46 ID:w4/uVoaMO<> 

( <●><●>)「……もしかして、その食堂は?」

ワカッテマスさんは、心当たりがあった。
ワカッテマスさんが、というより、もはや、皆が、だった。
でぃさんは肯いた。

(∩メ;ー;)「そうです。かつて、ウララーが立ち上げた、食堂です。偶然、ここで二代目に会ったわけだけど……」

( <●><●>)「なんという……運命の、イタズラなんだ」

(∩メ;ー;)「この列車で、二代目に会った瞬間、殺意が、芽生えた」

( <●><●>)「その、殺意にいたるまでの、話を聞かせていただけませんか?」

(`・ω・´)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/17(木) 23:59:25 ID:w4/uVoaMO<> 

(∩メ;ー;)「私が、店長のウララーさんと仲良くなる頃、グルメライターの目にとまったのが、チーズおにぎり、だっけ」

(; <●><●>)「ち、チーズ……?」

(∩メ;ー;)「私の案。店長に、提案したんだ。
      バカ売れして、私はうれしくなっちゃって、それからも訪れた。
      でも、ある日、店は改装工事、またチェーン展開をはじめたり、冷凍食品化に勤めたり……
      町角のちいさな食堂、そんな店だったから好きだったのに、
      瞬く間に、私の尊敬していたウララーさんは、私の知らないウララーになっていた。
      まあ、少しして殺されちゃったんだけどね。あはは……
      で、次のまたんき社長……こいつが、サイッテーな男だった」

( <●><●>)「………」

(∩メ;ー;)「ある日、チーズおにぎりが食べたくって、店に訪れると、偶然社長と鉢合わせした。
      あの時、会わなかったら……私は、きっと……」




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:01:24 ID:mEkcAgWAO<> 




―――某日



ドンッ

(*メ゚ー゚)「あ、スミマセン……」

(・∀ ・)「痛ェな……」

(・∀ ・)「んん!? もしかして、あなた、椎名でぃさんですか!?」

(*メ゚ー゚)「私を知っているのですか?」

(・∀ ・)「親父から聞いてるよ。常連さんだったって。
     チーズおにぎりの件、ほんとうに感謝してた」

(*メ゚ー゚)「あはは………」

(・∀ ・)「まあここじゃなんだし、ウチ来て話さない? ご馳走するよ」

(*メ゚ー゚)「じゃ、お言葉に甘えて……」

(・∀ ・)「死んだ親父も喜ぶよ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:02:42 ID:mEkcAgWAO<> 

このとき、彼は、好青年だな、というのが第一印象だった。
ウララーと一緒で、気さくで、怒りっぽい反面人情に脆い、昭和のヒトみたいなイメージだ。
彼の好意をありがたく受け取り、招かれるがまま、見たこともない高級車に乗った。

どこかからか、飴色の瓶のなかで輝く、黄色のラベルに外国語が並んだ、それはそれは高そうなワインを取り出した。
グラスに注ぎ、私に押しつけてきて。

あれを、飲まなきゃよかった。



(・∀ ・)「はいどうぞ」

(*メ゚ー゚)「え、いいんですか?」

(・∀ ・)「客人はもてなせ、これ親父の口癖なんだ」

(*メ゚ー゚)「あはは、確かに。じゃあ遠慮なく……」

(*・∀ ・)「…………乾杯♪」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:03:57 ID:mEkcAgWAO<> 

お酒は、仕事帰りにたまに飲んだりしていた。
でも、ほんとうにたまで、それもアルコール度数が二桁を上回ることはなかった。
市販のチューハイを飲んで、その日を振り返って、寝る。
そんなふうに、チューハイと同じノリで飲んだのが、間違いだった。
別に睡眠薬などが入っていたわけではない、歴とした、ビンテージ物。
アルコール度数は―――


(*メ´ー`)「はらほれ……」

(・∀ ・)「あ、寝ちゃった」

(・∀ ・)「しょーがないなぁ、俺のプライベートルームに招くわけにもいかないし……」

(*・∀ ・)「……」

(*・∀ ・)「おい」

(゚┏┓゚ )「はい」

(*・∀ ・)「進路方向を変えろ」

(゚┏┓゚ )「かしこまりました」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:05:29 ID:mEkcAgWAO<> 

どれくらい車に揺られていたのか、わからない。
でも、酔って寝ちゃったのだけは、わかった。頭が痛い。
とは言っても、またんき社長の前だ、失礼をしてはならない。
起きて、またんき社長を探した。


(*メぅー゚)「はッ!」

(*メ゚ー゚)「……ここ、どこ? もう着いたの?」

(・∀ ・)「オッ起きたか」

(*メ゚ -゚)「あ! スミマセン、あんな高級ワインなんてはじめてでして……」

(・∀ ・)「いいさいいさ」

(*メ゚ー゚)「………で、どうしたんですか、バスローブなんか着て」

(・∀ ・)「朝っぱらからチェーン店舗まわってたから、汗かいてたんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:06:38 ID:mEkcAgWAO<> 

(*メ゚ー゚)「それと、ここ、どこです? 社長の家ですか?」

(・∀ ・)「すまない、さすがに俺のプライベートルームに
     呼ぶわけにはいかなかったから、近いホテルに寄っただけだよ」

(*メ゚ -゚)「ご、ゴメンナサイ……」

(・∀ ・)「気にしないでいいよ、俺も親父の話聞きたかったんだ」



それからは、長い間話していた。
私が常連になるまでの経緯、店長ウララーとの会話、彼のおちゃめなミス、チーズおにぎり、と。
話すと、またんき社長は案外面白く、時間が過ぎるのが早く感じられた。

しかし、ビジネスホテルって、こんなに設備が充実しているものだったんだ、って思っていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:09:14 ID:mEkcAgWAO<> 

(・∀ ・)「え、オオカミ鉄道?」

(*メ゚ー゚)「はい。後輩もできて、楽しい毎日です」

(・∀ ・)「あそこ、うちが買収しようか、という話もしてたんだ」

(*メ゚ -゚)「えっ」

(・∀ ・)「向こうのフォックス総裁が『それだけは困る』って
     泣きついてきてさぁ。面倒だし、そろそろ交渉も終わらせないと」

(*メ゚ -゚)「社長、なんとか穏便なままでいくのは無理なんですか?」

(・∀ ・)「無理だ。ウチの会社の方でも話が進んでるんだから」

(*メ゚ -゚)「オオカミ鉄道がオオカミじゃなくなったら、なんか寂しいです」

(・∀ ・)「一社員として、そう思うのは仕方ないさ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:10:48 ID:mEkcAgWAO<> 

(・∀ ・)「……尤も、現状維持のまま話を進めることもできるけどね」

(*メ゚ー゚)「え、ほんとうですか!?」

(・∀ ・)「そうだなぁ……」


(・∀ ・)「………よし、キミ次第で契約は考えようかな!」

(*メ゚ー゚)「やった……って、私、次第?」

(・∀ ・)「あくまで、適性かどうかの判断として、でぃちゃんを代表に見立てるだけだよ」

(*・∀ ・)「………おっとごめん、手がすべった」

(;メ - )「きゃっ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:13:21 ID:mEkcAgWAO<> 


私は、ふとまたんきに押された。
最初は、暴力や虐めから耐える試験か、そう思ったが、
それが違うとわかったのに、そう時間はかからなかった。

だって、後ろは、ベッドだったのだから。
私は、自然と、押し倒されたカタチになっていた。
のしのしと近寄り、私の身体に手を伸ばす、またんき。
彼がいやらしい笑みを浮かべているのを見て、
私は、今から起こる出来事が安易に予測がつき、恐怖に戦くことしかできなかった。



――――。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:15:54 ID:mEkcAgWAO<> 


話し終えて、でぃさんは、いつの間にか鼻をすすっていた。
ワカッテマスさんは、苦い顔をした。


(; <●><●>)「なんと……!」

(∩メ;ー;)「それから、会う度に私の貞操は汚されていった。
      いくら拒んでも、拒否するとオオカミ鉄道を潰すって脅されて……
      オオカミ鉄道の総裁からも懇願され、私は、首を縦にしか振れなくなっていた」

(゚、゚;トソン「そんな……」

(∩メ;ー;)「人生最初で最後の彼氏に、相談したよ、そりゃ。
      そしたら、怒られて、そのまま、捨てられた。
      当然よね、ハジメテ、とられたし。あのゲスに」

(;`・ω・´)「…………」

(∩メ;ー;)「またんきに会う日の前日、会いたくなくて、胸が苦しかった。
      何度も吐いた。
      顔にたくさん傷ができたのも、この頃からだった。
      寝られず、怖くて、ただ震えるしかできなかった」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:17:31 ID:mEkcAgWAO<> 


(∩メ;ー;)「一度警察にも相談した。
      警察がまたんきを問い詰めると、彼は『合意のもとだ』とかほざきだした。
      そして、あの時見たまたんきの目つき、怖かった……怖かった!
      警察も、あのアンモラルを敵にまわしたくなかったのか、すぐ帰ったし。
      次の日から地獄だった。仕事終わり、またんきが仕事や疲れで無理な日以外は、毎日、汚されたなぁ。
      殴られもしたけど、黙って股を開くと、暴力もおさまった。
      こうでしか自分を護れない、自分が情けなかった。
      彼を殴り殺そうと思えばできたはずなのに、なぜか怖くて、できなかった。
      中学の頃には、既におとうさんにも腕相撲で負けなかったのに」

( <●><●>)「それでも、あなたの怪力は未だ健在なんだ。
         いざとなれば、彼を逆に追いつめて……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:19:29 ID:mEkcAgWAO<> 


(∩メ;ー;)「できないよ……… あいつ、こうも言ったんだもの」

(∩メ;ー;)「私の姉、有名な歌手なんだけど、事務所がアンモラルの網にかかってて、
      『もし次にふざけた真似をしたら、姉を消す』とか言ってきたんだもん……」



(゚、゚トソン「もしかしてその歌手って、あのしぃちゃん?」

(´・_ゝ・`)「え! ……しぃちゃんって言えば、こないだのシングルの初動売上が100万枚突破したとか言う、大物じゃないか」

(∩メ;ー;)「さすがに嘘だ、って思ったんだけど、次の日、おねえちゃんから電話がきて……」





  ―――でぃ、助けて!




(∩メ;ー;)「…………あの天才の姉の、悲願に満ちた叫び声なんて、はじめて聞いたよ……
      あんまり話したことすらなかったのに」

(;、;トソン「……ひどいです」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:22:36 ID:mEkcAgWAO<> 

黙って聞いていた警部が、はじめて顔をあげた。
でぃさんを追いつめる時の、凛々しい顔や
私をからかう時の、あの嫌みな表情と違い、
ほんとうに、心から彼女に同情しているように見えた。



(´・ω・`)「…………そうか。苦労、したんだな」

(∩メ;ー;)「苦労なんて一言で片付けられるほどの物じゃない!
      仕事一筋で生きてきたのに、その仕事でさえ、潰されたんだから!
      どこで話が漏れたのか、同じ職場の人から、毎日浴びる白い視線。
      せっかく見つけた生き甲斐も、やっと出逢えた彼氏も、私という人格も」



(Tメメ;□;)「あいつは潰したんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:26:08 ID:mEkcAgWAO<> 


(´・ω・`)

警部は、静かに、彼女の話を聞いていた。
そして、それについて一言、同情したきり、なにも言わなかった。
彼女を興奮させないためか、将又声をかけるのも酷に思うほど、酷い話だったからか。


鼻をすする音が聞こえる。
しかし、彼女から聞こえるものだけではない。
事の残酷さに、同情し、涙を流す者もいた。
そして警部は、彼女を別段罵ることも、叱ることもしなかった。


大分時間が経った頃、沈黙を破ったのは、ワカッテマスさんだった。



( <●><●>)「……では、今回の殺人とは……」

(∩メ;ー;)「はは。ぜーんぶ、警部さんの言った通り」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:27:58 ID:mEkcAgWAO<> 

( <●><●>)「またんきに関しては、動機は充分です。しかし、モララーは……」

(∩メ;ー;)「……あいつは、影武者なんだ」

( <●><●>)「影武者?」


なんのことか、話の内容が掴めずに、彼は聞き返した。
彼女は、ぐちぐち文句を言うでもなく、すんなり話してくれた。

(∩メ;ー;)「前から、あいつからモララーのことは聞いてた。俺の影武者だ、って」

(∩メ;ー;)「最初、顔に弾丸もらったあと、モララーが運悪くそこにきた。
      私は最初、そいつがまたんきだと思った。
      びっくりするほど似てて、しかも向こうもこっちのこと知ってたみたいで……
      なぜか、銃を撃たれそうだったから、すぐに近くにあったナイフで斬りつけて―――殺した。
      それをワゴンのなかにしまって、血を拭いて、私に絆創膏を貼って、
      車内販売に移った時だった」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:28:50 ID:mEkcAgWAO<> 


 (;・∀ ・)『んん!? でぃか!? よかった、助けてくれ!』

 (#゚;;-゚)『……はい? 私を知っているのですか?』

 (・∀ ・)『冗談キツいな。俺だよ!』

 (#゚;;-゚)『知らないです……』

 (・∀ ・)『お前なぁ、俺をからかってんのか?』

 (#゚;;-゚)『いやですから……』

 (・∀ ・)『だから俺だって! 覚えてねぇのかよ!』

 (#゚;;-゚)『すみません、存じてません』


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:30:12 ID:mEkcAgWAO<> 

(∩メ;ー;)「知るはずないよ、私は、そのときまたんきは既に殺したつもりだったんだから」

( <●><●>)「それはわかるのですが……助けてくれ、とは?」


訊かれて、一瞬でぃさんは戸惑った。
どう言えばいいのかわからない、
若しくは、自分でもよくわからない、
そんなところだろう。少し唸るも、答えた。



(∩メ;ー;)「殺し屋に狙われてる……とか」

(; <●><●>)「殺し屋ァ!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:31:36 ID:mEkcAgWAO<> 

(∩メ;ー;)「だから、刑事さんに『殺し屋が潜伏しているかもしれない』って言われた時、抗うことができなかったんです」

(∩メ;ー;)「もしかしてほんとうにいるかもしれない……
      あいつのあの時の顔は、とても冗談を言えるようなものじゃなかった」


それを聞いて、ワカッテマスさんが、後ろの方で、
のほほんとしていたワカンナインデスさんにアイコンタクトを送った。
それは、何かの質問だったと察する。
ワカンナインデスさんが、うーんと唸って、ゆっくり首を傾げたからだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:33:16 ID:mEkcAgWAO<> 

( <●><●>)「もしかしたら、シャキーンさんを、殺し屋と勘違いしたのかも」

(`・ω・´)「あり得ないな。
      ……俺とまたんきは、知り合いなんだぞ」

( <●><●>)「! じゃあ、彼の言った『殺し屋』とは?」

(∩メ;ー;)「さぁ。ただの戯言でしょ」



長いため息をついたでぃさんが、弾痕を押さえていた手を離して、
そこにべっとりと着いている血を見、ポッケから取り出したハンカチで、それを拭った。
そして、弾痕を隠すために付けていたのと、同じ絆創膏を、ゆっくり貼った。
その上から、絆創膏からはみ出ている血の痕を、拭い、両手を交互にはたいた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:34:24 ID:mEkcAgWAO<> 


(#メメ゜-゚)「………あとは、なにもおかしいことは」

( <●><●>)「……わかりました」

(#メメ゜-゚)「この列車、あと十数分で着きます。そのあと、乗務はどうすれば?」

( <●><●>)「こちらの方で手配しています。
         とにかく、乗客にはパニックを引き起こさないよう、バレなければ」

(#メメ゜-゚)「……」

(#メメ゚ー゚)「………はは」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:37:25 ID:mEkcAgWAO<> 

束の間の、沈黙の空気が、漂った。
でぃさんは、抵抗する様子も、見られない。
思わぬ形で事件と遭遇し、またその場で解決して
疲れたのか、警部はぐったりとB−6の席に腰掛けた。


(´・ω・`)「……VIPでの解決か。3ヶ月振りだよ、全く」

( ><)「! そういや、そうでした! お久しぶりです!」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」



そんな二人の光景に、私は、先程まで感じていた恐怖は忘れ、つい微笑んでいた。
ふと、時計に目を遣った。
13時48分。
発車後、大凡2時間で着く当列車は、
様々な事件と多くの悲しみを背負い、敷かれた長いレールの上を走っていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:38:56 ID:mEkcAgWAO<> 


(#メメ゚ー゚)「………」

(#メメ ー )「……さて」

( <●><●>)「?」


彼女は、ふと俯いて、ちいさく息を漏らす。
そして上に向けた首を、左右に数回揺らして、再び、今度は深い息を漏らした。


次の瞬間、視界が反転した。



(#メメ - )「はッ!」

っ( 、 ;トソン≡「!? きゃッ!」



(; <○><○>)「!!」

(;´・ω・`)「なッ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:40:27 ID:mEkcAgWAO<> 

瞬きをした瞬間に、目の前には、鬼のような形相のでぃさんが、眼前15センチの距離にまで迫っていた。
片手で胸ぐらを掴まれて、私を投げ飛ばす勢いで、一気にA−8から引っ張り出された。
そして一気に警部たちと距離をとられ、彼女と私は、前方から2列目に立っていた。

事態が呑み込めず、狼狽していた盛岡さんとくるうさんを、脅して
各々の自席から追い出し、警部たちのいるところに押し出した。
ライオンから逃げるかのようにして、そそくさと2人は距離をとった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:42:16 ID:mEkcAgWAO<> 

私は、両腕を背中にまわされ、彼女の左腕一本で、両腕を抑え込まれ、
彼女の右手にあるナイフが、私の首に突きつけられていた。

私が腕に力を入れても、関節技でもかけているのか、びくともしない。
脚を動かすも、あまりに腕にかけられた力が強く、痛すぎて、思うように動けない。

その後、でぃさんが大声で言った。



(#メメ - )「どうせ私の人生は終わったんだ、せめて道連れにしてやる!」

(゚、゚;トソン「………え、なに……?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:44:08 ID:mEkcAgWAO<> 

(;´・ω・`)「おい、どうしたんだ! 落ち着け!」

警部とワカッテマスさんが、同時に一歩を踏み出したが、
彼らの歩みを一瞬で止められたほどに凄まじい怒声が、車内に響き渡った。


(#メメ゚ -゚)「それ以上寄ったら、その瞬間、殺す!!」

( 、 ;トソン「……ッ!」



(; <●><●>)「なんのつもりだ、でぃ!」

(#メメ゚ -゚)「報復だ! こいつが、乗務員室に入ってこなけりゃ、私は、私は……」

(#メメ;□;)「私はァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
     ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッァア!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:45:41 ID:mEkcAgWAO<> 


( 、 トソン

目の前が真っ白になり、人の声を、言葉として聞き取れないレベルにまで、耳が機能しなくなっていた。
身体が固くて、思うように動けないし、声帯は震えないので悲鳴もあげられない。
眼球が固定されてしまい、首も回らず、でぃさんと面と向かって話せない。


警部に委せるしかない、のか。


数多くの偽りを見抜いてきた警部だけど、今のでぃさんには、形無しだろうな、と思った。
なんたって、これはおそらく、でぃさんの偽りない、ほんとうの感情だろうから。
守るべき理性が崩壊し、感情が垂れ流しになっているのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:46:58 ID:mEkcAgWAO<> 

(;´・_ゝ・`)「なんてことだ……」

川  々 )「………」



(; <●><●>)「要求はなんだ? 逃走か?」

(#メメ; -;)「こいつを殺して、私も、死ぬ!」

(;` ω ´)「!!」

(;`・ω・´)「バカなことはやめろ!」

(#メメ; -;)「誰がバカだばーか!」

(;`・ω・´)「お前だおまえ! いっつもバカなんだよ! 罪をこれ以上増やすな!」

(#メメ; -;)「私のこと、なーんにもわかってくれやしなかったくせに!」

(;`・ω・´)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:48:08 ID:mEkcAgWAO<> 


警部は、いつ時計を見たのか、
辛辣そうな顔をし、ちいさく、ワカッテマスさんに言った。


(;´・ω・`)「……駅に着くまで、5分をきった」

(; <●><●>)「下手をすれば、都村さんを人質に、逃走を図るかもしれません」

(;´・ω・`)「…………」

(;´ ω `)「万事休す、か………?」


警部が肩を竦め、私を、じっと見つめる。
私と密着している彼女、でぃさんの心臓の鼓動が、
私にもダイレクトに伝わるのだが、非常に、脈打っている。
それにつられて、私も心拍数があがった気がした。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:50:41 ID:mEkcAgWAO<> 






(#メメ; -;)「………ばいばい」

( 、 ;トソン「!」

(;´・ω・`)「や、  ろ!  は若 、まだやり直    ぞ!」

(; < >< >)「    ぅ  」

(;`・ω・´)「    」

(#メメ;□;)「             」



本格的に、周りの声がなにも聞こえなくなった。
それは、私が、本気で死を覚悟したからだ。
私は、警部はワカッテマスさんなど、皆に、囲まれていたから、安心、しきっていたんだ。
だから、こうして捕まって、ナイフを突きつけられて、今にでも、殺されそうに、なって、いる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:51:46 ID:mEkcAgWAO<> 



―――そのときに、唯一聞こえた音が
べりっと、なにかが剥がれる音だった。
続けざまに、男の声が、後ろから聞こえた。





「どうもぉ、しがない殺し屋ですよっとぉ」




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:53:16 ID:mEkcAgWAO<> 



 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 11章
  「忌まわしき過去」

    おしまい



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:57:23 ID:mEkcAgWAO<>次回を終章にして一気に投下するか、
12章と終章(+エピローグ)と、分けて投下するか、悩んでます。

現在、次回作を書きため中ですので、こっちの投下が遅れるかもです。
とりあえず、今月中には終わらせるつもりでいますが、無理なら無理と報告します。


11章も読んでいただき、ありがとうございました!
誤字脱字、また質問等あれば、ある程度受け付けます。<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 00:58:38 ID:mEkcAgWAO<>11章 >>495-540<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/18(金) 01:10:17 ID:4lYR0oMc0<>乙カレー!
どきどきしながら見てたんだぜ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/18(金) 01:11:50 ID:4lYR0oMc0<>途中送信しちゃった
ちょっと質問があるんだけどでぃの頬の傷って具体的にはどのぐらいのものだったのかなって気になった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/18(金) 11:36:56 ID:J1SjloxMO<>悲願に満ちた声ってなに?俺が馬鹿なだけかもしれないけど、日本語不自然じゃね?
おもしろいから支援するけども<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:10:35 ID:mEkcAgWAO<> 


12章「殺し屋」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:13:39 ID:mEkcAgWAO<> 


(#;メ゚ -゚)「だ、誰!?」

( 、 トソン「(でぃさんじゃない、となると……誰だ?)」


でぃさんが、すぐに後ろを振り向いた。
私もそれにつられて動くので、横目でだが、ちらりとその声の持ち主を見ることができた。




( メA`)「おや、テンさん、久しぶりだな」

( <○><○>)「!!」

(;><)「で、出たな、武怨!」


前髪の生え際から顎にいたるまでの、右目部分を経由した、それはおおきな傷痕が特徴的な、青年だった。
黒髪に銀のメッシュをいれて、じゃらじゃらしたピアスに、唇にもリングが2、3個、つけられている。
和尚が着るような和服を着ていて、右手には長い刀、左手には牛刀よりもやや短めな刀が握られている。

その長い刀を、でぃさんの首筋にぴたりとつけている。
峰ではないので、少しでも動かせば、もちろん斬れる。
しかも、頸動脈の部位を狙って、ぴたりとつけているので、少しでも車体に揺れが起これば、危ない、そんな状況だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:15:22 ID:mEkcAgWAO<> 

その、推定年齢19の、どう見ても一般人ではない男と刑事2人以外、皆が戸惑っていた。
当然だ、どこから入ってきたのか、いつからいたのか、まず誰なのか、なにをしているのか、さっぱりわからないからだ。
少なくとも、手にしている刀を見る限り、常識人でないのを理解するのは、容易い。

同じく、驚きを隠せない警部が、隣で、
どうしようもないくらいに焦燥感を剥き出しにしているワカッテマスさんに聞いた。


(;´・ω・`)「おい、彼と知り合いか? あとムエンってなんだ?」

( <○><○>)「…………」



( <●><●>)「……あ、はい。お答えします」

( メA`)


.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/18(金) 19:19:45 ID:FvhOYDBgO<>今日来るとは思ってなかったが 
支援だ<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:20:17 ID:mEkcAgWAO<> 


( <●><●>)「彼の名が『武怨』、一言で言うなれば、殺し屋です」


「それも、私の知る限り、この国最強の」
そう付け加え説明したのち、警部の顔を確認すると、
やはり彼は、信じられないと言わんばかりの表情を見せている。


( <●><●>)「そして、少し前に言ったように、私と9が追っていた人でもあります」

(*><)「極秘事項なんですよねー!」

( <●><●>)「口を慎め。場を弁えろ」



ワカッテマスさんとワカンナインデスさんは、ここに乗り込んできてすぐ、妙なことを言っていた。
「殺し屋がいるかもしれない」と、言って、それを理由に捜査に踏み込んでいた。
一方で、またんき氏も「殺し屋に狙われているかもしれない」と、妙なことを口走っている。
ワカッテマスさんは、その「殺し屋」という語を聞いて、少なからずや狼狽していた。
そして、「殺し屋」が現れたことで、それらの謎が、一本に繋がったのだった。



.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/18(金) 19:21:24 ID:MJfEZ0oo0<>最強の殺し屋が目の前にいるのにあまり焦ってないな<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:25:43 ID:mEkcAgWAO<> 


皆が口を閉じたので、しびれをきらした彼は、冷静に、
そして耳に突き刺さる声で、皆に言った。


( メA`)「おいおい、漫才すんな。こいつ殺すぞ」

(#;メ゚ -゚)「わ、私!?」


私を抑え込んでいる、でぃさんの生殺与奪を握っている「武怨」と呼ばれる男。
彼の登場で、少なからずや、でぃさんは動揺していた。


( メA`)「そりゃ、そうだろう。
    小生の獲物を奪った罪は、重いのだ」

(; <●><●>)「………武怨、もしかして、お前は……」

( メA`)「とある人に頼まれて、任務実行にあたっていたのサ」

(; <●><●>)「“獲物”とは、まさか斉藤またんき氏か?」

( メA`)「ほかに誰かいますかね」

(; <●><●>)「……!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:35:06 ID:mEkcAgWAO<> 


今日、ここでは、奇跡としか言いようがない、とあるひとつ偶然が起きた。
ワカッテマスさんたちが追っていたという「殺し屋」
またんき氏が恐れていた「殺し屋」
更に、またんき氏が「殺し屋」の存在を危惧した事件があった。


 (;・∀ ・)『は、はは……』

 (;`・ω・´)『……くッ!』



影武者のモララー氏が、殺された一方で、
またんき氏は、シャキーンさんと交戦していた。
またんき氏は、シャキーンさんを知っていようといまいと、きっと同じような考えを抱くだろう。


 (; ∀ )「(畜生……モララーは、殺されちまったのか?)」


またんき氏は、シャキーンさんを「殺し屋」と考えただろう。
そして、またんき氏の知らないところでモララー氏が死んで、またんき氏は、その推測を確信に変えた。



「殺し屋」は、2人いた事になっていたのだ。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/18(金) 19:36:36 ID:mEkcAgWAO<>すいません、急用ができてしまったので、少し席を離れます。<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/19(土) 15:56:50 ID:kmpyuyvoO<>待ってるぞー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/19(土) 16:46:54 ID:G.8DNKY.0<>少しってレベルじゃないほど離れてるなw<> ◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/11/19(土) 23:31:19 ID:cE5.BWAwO<>結局投下できなかったんですごめんなさい
明日に投下します、というか、明日中に完結させたいな
待っててくれて、ほんとうにありがとうございます<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/20(日) 23:42:17 ID:2Sr73JucO<>明日って今さ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/21(月) 01:34:47 ID:8iYFLD0Y0<>(´・ω・`)<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 16:58:49 ID:isks7Q2AO<> 


( メA`)「まあ、このアマのせいで、計画がぐっちゃぐちゃ」

(#;メ゚ -゚)「で、でもそれとこれとは……」

( メA`)「小生は無駄な殺しはしないのサ。建前上は、な。
    でもお前、言ったよな?
    『こいつのせいで計画が失敗した、だから報復する』とか」

(#;メ゚ -゚)「言ったけど…………
      ………え、ちょっとそれって……」



彼女が流した汗が、私の首筋についた。
私の腕を抑えている、彼女の手にかかる力も、大分弱まっている。
そして、武怨の言いたいことが、私にもわかった。



( メA`)「お前、殺してやろうか」

(#;メ - )「…………!」



すぐに、私を連れたまま彼女が武怨と向き合い、数歩下がって、
私を盾にするようにして、でぃさんは武怨と対峙した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:01:03 ID:isks7Q2AO<> 


(#;メ゚ -゚)「なんで……私には関係ないことじゃん!」

( メA`)「おやおや、どーした、怖じ気づいたか?
    さっきまで死ぬ気じゃなかったのかよ」

(#メメ - )「………」

(#メメ゚ -゚)「人に奪われる命より自ら絶つ命。それとこれとは話が違うのです」

( メA`)「へっ知ったような口を……」


武怨の挑発にも動じず、彼女は、ゆっくり後ろに下がった。
警部たちと武怨のちょうど中間地点に、でぃさんと私が立つようになっていた。
距離をとっているからだろうか、でぃさんに、少し余裕が感じられた。


(#メメ゚ -゚)「………」

( メA`)「おいおい、そんなちょっと離れただけで勝ったつもりか?」

(#メメ゚ -゚)「……………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:02:32 ID:isks7Q2AO<> 


( <●><●>)「……武怨」

( メA`)「んあ?」

( <●><●>)「我々がでぃと話を終えるまで、待ってくれないか?」

( メA`)「好きにやんな」


殺し屋相手なのに、やけにワカッテマスさんは丁重だ。
しかし、少しでも興奮させると、でぃさんはおろか私まで命の保証はなくなるかもしれない。
まさに一触即発、だから彼も迂闊に攻め込めないのか、と思うと合点がいった。

武怨が手をぷらぷらとさせ、ワカッテマスさんが礼を言った。
警部に眼くばせし、ワカッテマスさんは、一歩下がった。

満を持して、我らが警部が踏み込んだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:04:14 ID:isks7Q2AO<> 


(´・ω・`)「……でぃちゃん」

(#メメ゚ -゚)「……」


少しずつ歩み寄り、彼女の前方2メートル弱、話すには丁度いい距離にまで、詰められた。
近づいたら、殺す。そう言っていたでぃさんなのだが、警部が歩んできても、握られたナイフが動く事は、なかった。
警部が、私をちらっと見て、なにかを訴えかけるような視線を、送ってきたのだが、
残念ながら、私がそれに応える事は、できなかった。
それ以上に、今から物事がどう転ぶかが、心配で、他のことを考えたくなかったのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:06:02 ID:isks7Q2AO<> 


(´・ω・`)「君の事情、少しはわかったつもりだ」

(#メメ゚ -゚)「…わかってないくせに」

(´・ω・`)「せっかく仕事を頑張ってきたのに、たった一人のエゴのせいで、まるまる潰されたんだもんな。
      僕なら泣きわめくさ」

(#メメ゚ -゚)「私たちの血税でぬくぬくと生きてるくせによく言うよ」

と、でぃさんは、毒々しく言った。


(´・ω・`)「……仕事は、楽しかったか?」

(#メメ゚ -゚)「…………」

(#メメ゚ -゚)「またんきと会う日までは、楽しかった」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:11:15 ID:isks7Q2AO<> 


でぃさんは、当時のことを思い出して言ったようで、少し、声のトーンがあがっていた。
しかし、その言いぐさを、警部は、少し不思議に思ったようだった。


(´・ω・`)「今は楽しんでないような物の言い方だな」

でぃさんは、最初は黙っていた。
口を閉ざし、じっと、警部をにらんでいる。
一分足らずして、彼女は、ゆっくり口を開いた。
警部は始終にこやかだった。


(#メメ゚ -゚)「先輩に言われたんだ。『頑張りは認めるが、全てが空回りしている』って」

(´・ω・`)「!」

のだが、でぃさんの言葉を聞いて、顔色をかえた。
彼は、ほんとうに驚いたようで、眉が動いた。

(#メメ゚ -゚)「私は仕事もてんでだめな凡人。ダメ人間」

(#メメ゚ -゚)「だから、殺人現場を、あろうことか職場であるはずのココで………」

(#メメ - )「ほんっと、ダメ人間。ダメダメ。クズ。これじゃあ人間のゴミだ」

(#メメ゚ -゚)「そうでしょ?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:16:08 ID:isks7Q2AO<> 


警部は応えなかった。
しばらくじっとしていたが、でぃさんは、動かない警部の姿を見かねたのか
先程より、更にドスを利かせた声で、言った。

(#メメ゚ -゚)「いくら、生き甲斐だった仕事場とはいえ、抵抗はない」

(´・ω・`)「その仕事場で、君は新しい罪を背負おうとしている」

( 、 トソン「……」

警部は、きっと私のことを指したのだろうが、
私はただ、俯いていることしかできなかった。
警部と視線をあわせるのが、怖かった。


(#メメ゚ -゚)「彼女の事ですか?」

(´・ω・`)「またんきとモララーまでは関係者だとしても、その子は全くの無関係者だ」

(´・ω・`)「なのに、その子まで殺そうとしている。職場で、だ」

(#メメ゚ -゚)「……うるさい!」

(#メメ゚ -゚)「だれも、私の仕事を認めてくれなかった! 職場を汚す事くらい、どうでも……」

(´・ω・`)「ちょっと待ってくれ」


警部は、早口になってきたでぃさんを一旦止め、おもむろにポケットに手を突っ込んだ。
しばらくごそごそして、中からキャンディでも出るのかな、と思って、微笑ましく見ていると、
出てきたのは、いつしか見かけた、赤箱だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:18:35 ID:isks7Q2AO<> 


そして、それはでぃさんにも見覚えのあるであろう物でもあった。
自慢げに掲げるでもなく、さっと自分の目の前に突き出した。
でぃさんが、訳が分からない、と言いたげに、警部を見た。
警部は、なかからチョコをひとつ取り出しては、口に放って、もごもごと動かしながら言った。


(´・ω・`)「……たかが車内販売で、あんなにセールストークされるとは思わなかったよ」

(´・ω・`)「あんな熱心な姿を見て、誰が君を『全てが空回りしている』って言うんだい?」

(#メメ゚ -゚)「……」

(´・ω・`)「僕にチョコひとつ売っただけで、それは業績として認められる。
      僕はそのとき、『この鉄道の社員さんはいい人だ』って印象を持ったんだ。
      そんな君を、誰が責めようものか? いいや、まさか。寧ろ出世安泰じゃないか」

(#メメ゚ -゚)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:25:58 ID:isks7Q2AO<> 


(´・ω・`)「今回は、たまたま、またんきのような汚い人間がいて、それに君が巻き込まれただけなんだ。
      そして、その元凶はいなくなったし、君は、まだまだ若い。
      罪を償うのに、時間はかかると思うけど、出所してもまだ三十だよ。
      そのときに、あらためて生き甲斐を見つけることもできる。
      僕ら警察は、そういう人たちを、社会復帰できるよう導くのが、役目のひとつでもあるんだ」

(#メメ゚ -゚)「……」

でぃさんは、唇を噛んでいた。


(´・ω・`)「君が出所したら、またオオカミ鉄道に就けるよう、僕からも頼むよ。あそこの総裁とは知り合いなんだ。
      その帰りに、君があまり呑まなかったというお酒でも呑んで、互いに仕事の愚痴でもこぼしたいな」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:27:52 ID:isks7Q2AO<> 




(#メメ゚ -゚)「………」



(#メメ; -;)「ぁ………が……う…」



それは、ぽつりとこぼされた言葉であったが、その場にいる全員が聞き取れた。
彼女はへなっとその場に跪き、両手の甲で、決壊された涙のダムを抑えようとしていた。
嗚咽が絶えず漏れ続け、私はそのまま警部のもとへ逃げるように走っていった。

ぎゅっ、と、強く、抱擁された。
そのときの温もりが、私を閉じ込めていた氷を溶かし、その溶け水が、眼から溢れ出した。
頭を、乱暴に、わしゃわしゃと撫で回された。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:31:19 ID:isks7Q2AO<> 


( メA`)「こりゃめでてぇ。ははっ」

( <●><●>)「武怨! ここは密室だ、まして駅には大量の警官を配置している! しんみ――」

( ><)「神妙にお縄につきなさい!」

   ( <●><●>)
      ⊂彡☆);><)

( メA`)「ほう、小生が捕まる、と」

( <●><●>)「なんなら試してみます?」

( メA`)「おいおい、丸腰のくせに小生と殺り合うつもりかい?」

( <●><●>)「………」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:32:45 ID:isks7Q2AO<> 


( ><)「そういや、どこにいたんですか?」

( メA`)「あ?」

( ><)「いや、ここに乗車してた人はみんなチェックしたはずなんですが……」


彼が一号車にいたのは、ほんの少しの間、彼はその隙に、乗車していた人を全員記憶した、というのか。
と言いたいのだが、彼が有能か無能か、それは今は語らない事にしておく。
それよりも、武怨は、彼の問い掛けに、口を尖らせて言った。


( メA`)「ふん。知ったところでメリットはない」

( ><)「あります!」

( <●><●>)「……9」

( ><)「はい?」

( <●><●>)「この前もそうだ。あいつは、変装して、場に紛れ込んでいた」

( ><)「……それは真っ先に考慮しました」

( ><)「しかし、さすがにこの面子では変装とかは……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:34:12 ID:isks7Q2AO<> 


そう言って、ワカンナインデスさんは、車内を見渡した。
私の知っている限り、現在車内にいる、つまり武怨でない人は、
警察の3人、私、盛岡さん、くるうさん、シャキーンさん、でぃさん、ルカさん―――



(((;´・ω・`)))「のわっ!」

(((; <●><●>)))「今度はなんだ!」

(((#メメ; -;)))「……3度目の揺れです」


今までに味わってきた、今回の事件のキッカケともなった
おおきな揺れ、それは、駅が見えてきた段階で車体を襲った。
鳴り響く轟音、巨躯が跳ねるほどの揺れ、どれも、今までのを
凌駕する凄まじさだったため、ほとんどの人は床に倒れ込んだ。

ひとりを除いて。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:35:24 ID:isks7Q2AO<> 


( メA`)「お、もう到着か。じゃあお先に」

(((; <●><●>)))「待て!まだ扉は開いてな……」

( メA`)「フンッ」


揺れが徐々に落ち着いてきた頃に、ちょうど駅がよく見えた。
目を凝らすまでもなく、わかったのは、信じられないほどの量の警官が、盾を装備して待機していた事だ。
プラットホーム全域を埋め尽くす量の警官がいるのだが、
これを全く無関係な乗客が見て、パニックを起こさないわけがないだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:36:35 ID:isks7Q2AO<> 


一方武怨。
唯一、この揺れでさえ微動だにしない男、
彼は、右手に持った、長い方の刀で居合いの構えに入り、掛け声とともにその刀を、横に振った。


するとどうだ。
片手で、しかもこの揺れのなか振るったというのに、刀はきれいな弧を描き、
同時に、扉の“上半分”は飛んでいった。
何事と思い、半ば反射的に扉を見ると、扉はきれいに真っ二つに斬られていた。
その一部始終を見ていた、待機中の警官たちは、ただ呆然と立ち尽くしていた。


(メA` )「あばよ」

≡(; <●><●>)「逃がすか!」


その扉に足をかけ、振り向いた武怨は言った。
体勢を整え終えた刑事2人が、一斉に奴に飛びかかったのだが、
そのほんの一瞬前に、武怨は列車から飛び降りた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:39:58 ID:isks7Q2AO<> 


(; <●><●>)「あ、でぃ! あいつは……」

(´・ω・`)「逃げちゃないよ彼女は」

( <●><●>)「! でも、どこに……」


ワカッテマスさんは、すぐに外にいる警官に連絡をとった。
武怨の追跡を、外の警官に託したようで、刑事2人は、警部のもとへ戻ってきた。
扉が壊され、外からの声がもろ聞こえ、煩いと感じる私だが、
それ以上に気になったのが、でぃさんが、元いた場所からいなかったのだ。
それにワカッテマスさんも気づき、すぐに捜索にあたろうとした。

しかし、それを警部が止めた。
戸惑うワカッテマスさんが、彼の顔を二度見すると、警部は指をさした。
その先の床に、だれかが突っ伏している。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:41:14 ID:isks7Q2AO<> 


(   #)「ぁ……ぅ……」

(; <●><●>)「……彼女は、いったい……」

(´・ω・`)「武怨が去った事で解放感に満ち、同時に絶望を改めて実感したから、精神的に苦痛……
      まあ、そんなとこだろうな」

警部が粗方説明をいれると、ワカッテマスさんは無言で頷き、
一向に顔をあげないでぃさんに、そっと、手を差し伸べた。
しかし、それを、掠れた声が拒んだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:42:47 ID:isks7Q2AO<> 


(   #)「ゃ……めて……」

( <●><●>)「まずは病院だ。君は危篤に曝されているのだぞ!」


頑なに拒む彼女に、いい加減苛々が募ったようで、彼は、がばっと彼女を起こした。
同時に、彼は飛び跳ね数メートル離れた。


(;`・ω・´)「……でぃ…!」

(´ρ;゙#)「……あ…あ…」


彼女は、度重なる精神的苦痛と、殺されなかったとは言え武怨に狙われたという恐怖、
更にこれから刑務所に入るという一連の流れを考えてしまったのか、見るからに精神が崩壊していたようだった。
涎は垂れ、腕は肩から脱力しきっている。
顔は、嘗てのあの美しさから一変、老婆と間違われてもおかしくないほどに、崩れていた。

ふらふらと車内をさまよい歩き、最終的に倒れた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:45:10 ID:isks7Q2AO<> 


そして、減速中だった列車は、プラットホームの端から端までの間に、きれいにおさまっては停車した。
扉が機械的に開かれ、同時に、警官の多くが押し詰めてきた。
瞬く間に、列車のなかは、武装した警官で埋め尽くされた。


(`・д・)ゞ「刑事! 武怨はどちらに!」

( <  ><  >)「……」

ワカッテマスさんは、絶望したというより、完全に呆れかえっていた。

( <●><●>)「おい」

(`・д・)ゞ「はッ!」

( <●><●>)「伝達係をたこ殴りにしておけ」

(`・д・)ゞ「かしこまりました!」

(゚、゚トソン「(かしこまるなよ)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:47:47 ID:isks7Q2AO<> 


―――と、まあ、ここからは、あまりにも順調に物事が進んだ。
停車前に言ったワカッテマスさんの「武怨を追え」という指示についてだが、
全然、警官たちに伝わっておらず、武怨を追ったのは、ほんの数人だった。
当然、逃げられたそうだ。
しかし、それでも、ワカッテマスさんは、あまり悔しそうでなかった。

間もなくしてでぃさんがすぐに保護され、そのまま連行された。
ワカッテマスさんとワカンナインデスさんは、それに同行したが、警部はなぜか同行を拒まれた。
その後すぐに列車は差し押さえられ、警察の捜査のメスがくわえられた。
鑑識課の人間で一号車、トイレ前があふれかえり、その姿を遠くから私は見ていた。
捜査を仕切っているのは、ワカッテマスさんでもワカンナインデスさんでもないのであれば、誰だ。
そう思って、興味本位で、見ていたのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:48:59 ID:isks7Q2AO<> 


「あの……」

警部の後ろから、誰かが声をかけてきた。
不意に呼ばれたので、警部は内心焦って応対した。
私もそれに沿って、振り返った。


\(;^o^)/「警察の人、ですね?」

(´・ω・`)「! オワタ!」

\( ^o^)/「え、おれの名前知ってるんですか?」

(´・ω・`)「なにをとぼけて―――」


警部は、一瞬喉から出かかったものを、無理に呑み込んだ。
そして、目の前にいる人物をじろじろ見た。
男はそわそわして、警部の視線に耐えている。

\(;^o^)/「?」

(´・ω・`)「………」

(´・ω・`)「そうか……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:51:12 ID:isks7Q2AO<> 


\(;^o^)/「なんなんですか! おれ何も悪い事してないですよ!」

(´・ω・`)「悪い悪い。で、どうしたんだ?」


半笑いのまま、警部は、訊いた。
その返答に、警部はにこやかに笑んだ。

\( ^o^)/「おれの知らぬ間に、乗車券が盗まれていて、
      あれこれやり取りしていたらいつの間にかここにいたんです」

(´・ω・`)「トソンちゃん、武怨はこいつに化けていたんだ」

(゚、゚トソン

(゚、゚トソン「は?」

(´・ω・`)「列車のなかにいたオワタが、武怨だったんだ」

(゚、゚トソン「私、絶対に信じませんから」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:52:55 ID:isks7Q2AO<> 


なんの脈略もなしに、警部はいきなりそう断言した。
なんのこっちゃわからない、そう言いたげな目をして、オワタ(?)が警部を凝視している。
オワタの視線を完全に無視し、警部は、言った。


(´・ω・`)「武怨のいた場所、それはB−2だ」

(゚、゚トソン「でも、そこって……」

(´・ω・`)「おいオワタ、乗車前になにかトラブルはなかったか?」

\(;^o^)/「なんでそんな言い方されんだよ……
     トラブルっつか、トイレで個室に入ったら、中に人がいて、鞄盗まれて挙げ句閉じ込められたぞ」

(´・ω・`)「そのあとはどうした?」

\( ^o^)/「駅員さんに言ったら、色々手配してくれた。だからここに来れた」

(´・ω・`)「つまり、それが武怨だ」

(゚、゚トソン「はぁ……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:53:59 ID:isks7Q2AO<> 

(´・ω・`)「バカ曰く変装の名人らしいしな、こんな間抜け面だったら、なりきりも簡単だろ」

\(;^o^)/「おれがなにしたってんだ!
     さっきからヒドいぞ!」


武怨が演じていたというオワタと、全く同じように、本物のオワタは手をじたばたさせた。
武怨がこれを真似たのか、それともバカは決まって手をばたばたさせるのか、そこはわからない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:55:15 ID:isks7Q2AO<> 


―――ああ、そうか。
オワタから荷物を奪って、名前や「オワタとはどういう人物か」を調べ、乗車し、
武怨はオワタに変装して、見た儘バカを演じ、こっそりとまたんきの殺害の機会を、待ったのか。
席を立った時に殺す筈が、シャキーンさんが先にまたんきと交戦、
そのまま機会がなく、気がつけば先にでぃさんに、“獲物”を奪われた。
その“報復”に、彼女を襲おうとしたが、間一髪免れた、と。


(´・ω・`)「さて、担当刑事は誰だ?」


警部が、車内に入ろうとする。
私もついていき、扉から中を覗くと、鑑識がうようよいて、忙しなく動いていた。
その中に、刑事らしき人物が2人、いる。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 17:57:29 ID:isks7Q2AO<> 

( ゚д゚)「! だめですよー入ってきちゃ」


ワカッテマスさんとはまた違う、特徴的な目をした、灰色の渋いコートをまとう人が、警部を止めに入った。
しかし、その、眼力が強いまなこで警部を捕らえた時、男はぎょろ目を剥いて一歩下がった。


( ;゚д゚)「い、イツワリさん!?」

(´・ω・`)「お、出たなぎょろ目」

('、`*川「なに、どうしたのよ」

(´・ω・`)

('、`*川


('、`;川「警部! どうしてここに!」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「2人まとめてぶち殺すぞ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:01:51 ID:isks7Q2AO<> 

今度は、現場には似つかわしくない、白衣を着た女性がやってきた。
白衣のなかに、暗い紺色の制服が着込まれている。
彼女は、ぎょろ目と同じように、警部を一目見てオーバーに驚いていた。
白衣である以上、噂に聞く科学捜査官なのか、そう思って
彼女の服装を見ているときに、警部は不機嫌な声で言った。


(´・ω・`)「『千里眼のミルナ』に『吐かし屋のペニー』か、こりゃ懐かしい面子だ」

( ゚д゚)「イツワリさん、どうしてここにいるんですか」

('、`*川「ラウンジに行ったのでは?」

(´・ω・`)「戻ってきたんだって」

( ゚д゚) そ

Σ ('д`*川


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:04:42 ID:isks7Q2AO<> 

(゚、゚トソン「警部はどんだけ人望ないんですか」

(´・ω・`)「と言われてもなぁ……」


しかし、今の通り名を言われ、ほんのり思い出した事がある。
男の方は、東風(ひがしかぜ)ミルナ刑事、両目とも視力が2を超えるという凄い人で、
聞き込みよりも、証拠物件をひとつ逃さず見つけ出すのが得意、という、ベテランの刑事だった。
『千里眼』という異名は、証拠を見つけだすのが非常に上手く、物をどこに隠しても発見できる有能さから(警部に)付けられた。


女の方、『吐かし屋のペニー』は、
その物腰が柔らかそうな見た目とは裏腹に、尋問が鬼ほど上手い。
別名強請り屋で、取調に彼女が担当した日には、証言を大漁に入手できるという。
その恐さから、部下からは姐さんと呼ばれていた(私もそう呼んでいる)。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:09:46 ID:isks7Q2AO<> 


2人が捜査に荷担すると、ミルナ刑事はありとあらゆる証拠物件を、
姐さんは関係者からありとあらゆる証言を掴み取るので、上の人からの信頼は厚い、と聞く。

ちなみに、言うまでもないが、ワカッテマスさんやワカンナインデスさんと同じように、
彼らも――仕事の面では尊敬は厚いが――警部の事を恐ろしく思っている。


('ー`*川「トソンちゃんはあまり変わってないね」

(゚、゚トソン「胸を見ないで言わないでください。セクハラで訴えますよ」

( ゚д゚)「とりあえず、お2人とも、事件の関係者なんですから、
     はやく署に向かって事情聴取を受けてください。事件は解決したんでしょ?」


早く警部を追い返したい一心かはわからないが、事情聴取を口実に、実質帰れと言ってくる。
警部はそれに応じず、意味深な顔をして、ミルナさんに言い返した。


(´・ω・`)「いや、まだ解決していないんだ」

( ゚д゚)「はい?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:11:46 ID:isks7Q2AO<> 


(´・ω・`)「トソンちゃん」

(゚、゚トソン「はい?」

(´・ω・`)「今回の事件で、いろいろな謎が、型にはまっていった。
      香水、死体の移動、銃殺に……」

(´・ω・`)「しかし、ひとつだけ、不可解な証拠品があるんだ」

(゚、゚トソン「え? でも、そんなのは……」

(´・ω・`)「よし、ぎょろ目に渡すついでに、証拠品を全部思い出してみよう」

( ゚д゚)「困りますよ、勝手に保管されてちゃ」

(´・ω・`)「まあまあ、すぐ終わるから」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:13:15 ID:isks7Q2AO<> 

警部が一つ目に出したもの、それは写真だった。
ルミノール試薬で浮かび上がった血痕を撮ったもので、それらを提示してきた。

次に、説得のトドメになった、チョコのお菓子を取り出した。
その赤箱から、カカオの香りが仄かにする。

三つ目、絆創膏。
でぃさんが受けた弾丸を隠すために用い、
またそれが決め手となり、推理が成立した。

四つ目には、銃。
リボルバーをはずしてくれたので見てみると、一発撃たれたあとがある、
つまりこれはA−5、シャキーンさんの私物とされている銃か。

最後だ、と言って出されたのが、B−7の銃だった。
でぃさんの頬と、モララー。計2発撃たれ、でぃさんの私物だとシャキーンさんが言っていた。


(´・ω・`)「持っとけ」

( ゚д゚)「わっと……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:14:56 ID:isks7Q2AO<> 


全ての物件をミルナさんに押しつけ、警部は手帳を取り出して、
今度は、物件としてではなく、データとして存在する証拠を見せてきた。

一項目目、香水。
ワゴンから香ったのがキッカケだが、調べるとでぃさんがこぼしたと主張。
しかし使われた動機は定かではない。

その次に、計3度起こる事になった、揺れ。
1度目にシャキーンさんが発砲、2度目はなにもなく、3度目がキッカケで武怨を逃がした。
轟音を伴っている。

散乱されたお菓子、その現場を警部だけが知らない。
だから、お菓子の件は、全て証言からなるデータだった。

次には、水で濡れたモララーの服、お茶で濡れたまたんきの服をはじめ、
入れ替わった2人に関する身なりや状態を細かく書いてある。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:15:44 ID:isks7Q2AO<> 


(´・ω・`)「このどれかが、未だに《偽りの香り》に包まれているんだけど、わかる?」

(゚、゚トソン「?」


警部に問われ、私は考えた。

(゚、゚トソン「……」

(゚、゚トソン「あれ?」

そういえば、アレは―――



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:16:27 ID:isks7Q2AO<> 







.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:19:49 ID:isks7Q2AO<> 






10月23日、オオカミ鉄道が贈った、2時間にも満たない短いながらの大事件、
それは、一人の人間としての、仕事、恋愛、社会、そして育まれたストレスという名の憎悪。
これが、2人の命と1人の人生を奪ったというのに、列車は、通常運行で、今日も敷かれたレールの上を走っている。

よく「定められた道筋を歩くのはごめんだね」という意見を聞く。
しかし、定められた道筋を歩むからこそ、人は平凡でいられるものなのだ。
というのに、今回の被害者も加害者も、ともに道を踏み外してしまったのだ。
理由はわからない、しかし、唯一の救いは、裏で、情報規制でも
敷かれたのか、事件が、概要しか明るみに出なかったのだ。
アンモラルは他人の手に渡り、営業方針もがらっと替わった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:21:59 ID:isks7Q2AO<> 



そうそう、関係者の「あれから」を聞くと、実に面白かった。
常識人に見えた盛岡さんは、無事にオフ会に――という訳ではなく、
せっかく身体は無事で到着したというのに、事情聴取でまる1日を潰され、結局参加できず終いだったらしい。
通信対戦していた、オフ会先の友人にどやされただとか。
事情が事情ゆえ、話せないのが逆に向こうのかんに障ったという。
つくづく、不幸だなぁ、と思う。

シャキーンさんは、またんきを切ったという事、でぃさんに発砲したという事、
現場の工作をした挙げ句、銃刀法と、決して潔白のまま終わるわけではなかった。
しかし、彼は、これから罪を償い、改めて人生をリスタートすると言っている。
まあ、でぃさんには事故、またんきには正当防衛が適用されるので、思っているほど罪は重くないという。
私は、少し、ほっとした


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:26:26 ID:isks7Q2AO<> 


くるうさんは、わからない。
いつの間にか忽然と姿を消していて、武怨同様に彼女の「あれから」を知っている人はいないそうだ。
警部、ワカッテマスさんの二人はは、彼女に見覚えがある、そう言っていた。
警部から以前聞いたのだが、刑事を勤めていると、扱った事件の関係者、特に犯人に関しては
事件が終わって、幾多の歳月が過ぎていっても、覚えているものらしいのだ。
もしかしたら、以前別の事件にもいたのではないか、と少し不思議に思っていた。
まあ、彼らも、いつかは思い出すだろう。

肝心のでぃさんだが、今回の一件で、やはり精神が崩壊していて、
尋問にも答えられず、しばらくの間は治療に専念するらしい。
弾丸の摘出は無事に終え、怪我の方は軽くないのだが、彼女の心の傷は、誰にも癒せないだろう。
おそらく、彼女が事件で一番の被害者だと思う。
何事にも全力を尽くして生きてきたのに、それが誰にも認められず、
そして、またんきに、いいように使われてしまったのだから。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:28:34 ID:isks7Q2AO<> 


一方で、事情聴取にも参加せず、捜査にもまったく荷担しないで
そのままどこかへ行ったワカッテマスさんとワカンナインデスさん、
彼らは、当初は、この列車に武怨が乗るという情報を聞きつけたらしく、
その場で、武怨を逮捕するために乗車したらしい。
事件が起こったのちは現行犯、そうでなくともとりあえずとっ捕まえる、とのことだとか。
だから捜査道具を一式持っていたのだ。
シャキーンさんが暴れた時、手錠をかけなかったのは、
おそらく、武怨に使おうと思っていたからだろう、と警部は言っていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:33:48 ID:isks7Q2AO<> 


十月二十七日、時計を見ると、針は一四時〇七分を差していた。
VIPの所轄の警察署、そこの正面玄関に私は立っていた。


(´・ω・`)「あいつら、武怨を捕まえるために、一号車に盗聴器をつけていたらしい」

(゚、゚トソン「盗聴器?」

(´・ω・`)「ああ。だから、すぐに駆けつけた、と」

(゚、゚トソン「なるほど、だから明かさなかったんですね」


というのも、私は、警部に呼ばていたのだ。
すっかり冷え込む季節だと言うのに、署内は暖房が効いていなかった。
また、署内は、職員と思わしき人物や、一般人が、忙しなく動いている。
指名手配のポスターも貼られ、落とし物の保管場所も完備されている。
食堂からは、人の出入りがめっきり減っていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:35:07 ID:isks7Q2AO<> 


(゚、゚トソン「そういや、どうして私は呼ばれたんですか?」

(´・ω・`)「ん? いやぁ、実を言うと、僕も呼ばれててねぇ」

(゚、゚トソン「VIP復帰の手続きとかじゃないんですか?」

(´・ω・`)「違う違う。どうやら、待ち人がいるとの事だけど……」


髭の生えていない顎をさすり、首を傾げてみせた警部だが、
直後、後ろから聞こえた声に、彼はすぐに反応した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:37:31 ID:isks7Q2AO<> 


从*゚ーノリ「警部さぁん!」

(´・ω・`)「!」


後ろから、長い前髪が嫌でも(いろんな意味で)目に入る女性がやってきた。
そういえば、事件には彼女――橘ルカさんもいたな、と、
私は、遠い昔のことでも思い出したかのような、そんな気持ちになっていた。
ただ、事件当時とは違い、やけにきれいなスーツを――

(゚、゚トソン「――って」

(゚、゚;トソン「(これは、警察の服!?)」


いやにスタイルのいい彼女は、私に目をくれる事も全くなく、警部に飛びついた。
自称オンナ好きの警部が、たじろいでいる。


从*゚ーノリ「待ってましたよ」

(´・ω・`)「はい? もしかして、僕を呼んだのは……?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:39:08 ID:isks7Q2AO<> 


从*゚ーノリ「はい! 私です!
     約束、果たしにきました!」


きゃぴきゃぴしていて、警部に無邪気なまなざしを送っている。
まさか、警部に気があるわけではあるまい。
すると、警部は頭を掻きながら、回想に浸っていた。

(;´・ω・`)「あ、そういやこの前、言ってたなぁ……」



 (´・ω・`)『なんて?』

 从*゚ーノリ『……刑事って、いいなぁ、って』

 (´・ω・`)『なりたければ、いつでもなればいい。歓迎するよ』

 从*゚ーノリ『ほんとうですか!?』



(゚、゚トソン

(゚、゚トソン「あー、そういやありましたね」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:44:44 ID:isks7Q2AO<> 


从*゚ーノリ「早速警察官になっちゃいました」

(゚ー゚;トソン「!?」

(;´・ω・`)「いやいや、『なっちゃいました』って!
      一朝一夕でなれるモノじゃないよ警察! 国家公務員嘗めるな!」

从*゚ーノリ「もともと興味はあったんですけど、事件を解決する警部がかっこよくて、つい」

(;´・ω・`)「『つい』って!
      あと警察学校はどうした! 訓練っ!」

从*゚ -ノリ「ほら、国家公務員なんとか試験とか言うのですか?
     それ、受けたんです。訓練はこれからなんでしょうね」

(;´・ω・`)「きゃ、キャリア――」

从*゚ーノリ「ショボーンさんがいるという、VIP県警の刑事部に配属される日を、楽しみに待ってるんです」

从*゚ーノリ「やっぱり、殺人事件の捜査を担当したいもんですよ」

(;´・ω・`)「しかも考え方が過激!」

从*゚ーノリ「正式に配属されたら、その時はよろしくお願いしますね、警部!」

(;´・ω・`)「ぜーったい、やだ! 僕は適当な人間は嫌いなんだ!」

(-、-トソン「(よく言うよ……)」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:48:45 ID:isks7Q2AO<> 


押しに強く、強引な警部をもやりこめてしまう、ルカさん。
ひょっとすると、彼女は化けるかもしれない、私はそうひしひしと思っていた。
つきあっていると、相当疲れるようで、警部は、額の脂汗を拭わないまま、逃げるようにその場を去った。
彼女はビシッと敬礼をして、早足で去る警部を、無垢な笑顔で見送っていた。
私が置いていかれそうだったので、一度ルカさんに一礼をし、そのまま、警部のあとを追いかけた。





 イツワリ警部の事件簿
 File.1

 (´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです

 終章
  「殺し屋」

    おしまい


.<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/23(水) 18:51:54 ID:isks7Q2AO<>急遽、章分けを変更し、完結させました。
芸さんと文丸さんにはお手数おかけしますが、>>546
>12章

>終章
にかえてほしいです。ころころかわって、ごめんなさい。


じゃあ、今から、某逆転する裁判のゲームのスタッフロールみたいな後日談と、続き投下します<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:53:26 ID:isks7Q2AO<>終章
>>546-603<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:56:00 ID:isks7Q2AO<> 


 (´・_ゝ・`)『……』

 (*´・_ゝ・`)『くぅ〜! 一度言ってみたかったんだ、ドラマみたいに!』


>盛岡デミタス(フリーター)



(´・_ゝ・`)「え? あの事件ですか?」

(´・_ゝ・`)「あれは、僕の今までの人生の中で、一番のスリルとサスペンスが盛られた事件でしたね……」

(´・_ゝ・`)「あ! そうだ、次の作品案が決まった!」

(´・_ゝ・`)「電車内でテロリスト出現! 戸惑う主人公のヒロイン!
      テロリストに殺されそうになるけど、主人公のスタイルが良すぎて、テロリストは欲情してしまうんだ」

(*´・_ゝ・`)「そして……そうだな、ピストルの筒部分を……いや、ここは柄で……」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 18:58:23 ID:isks7Q2AO<> 


 \(;^o^)/『おれがなにしたってんだ!
       さっきからヒドいぞ!』


>人生オワタ(学生)



\(;^o^)/「だから、パンツはカーチャンが勝手に書い……」

\( ^o^)/「……え? 殺し屋がおれの真似を?」

\( ^o^)/

\(;^o^)/「うっそ!? おれまじオワタ!」

\(;^o^)/「ちょ、おまえにおれのなにがわかるんでい!」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:00:17 ID:isks7Q2AO<> 


 川 ゚ 々゚)『きゃっきゃ! ピストルチョコ!』

 ( <●><●>)『静かに! あとピストルチョコではありません!』


>素直くるう(?)



川 ゚ 々゚)「ピストルチョコの中には、弾を象ったピーナッツがあるんだ!」

川 ゚ 々゚)「で、引き金を引くと、ピーナッツポップガン!」

川 ゚ 々゚)「一口食べると魅惑の犯罪の味、二口食べると絶望のム所の味!」

川 ゚ 々゚)「ピストルを食べ終えると、その苦労の全てが飛んでいくほどあま〜い!
      くるうコーポレーションにて絶賛発売中だよ!」

川 ゚ 々゚)

川 ゚ 々゚)「絶賛発売中だよ!」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:02:13 ID:isks7Q2AO<> 


 从*゚ーノリ『早速警察官になっちゃいました』

 (゚ー゚;トソン『!?』

 (;´・ω・`)『いやいや、『なっちゃいました』って!
       一朝一夕でなれるモノじゃないよ警察! 国家公務員嘗めるな!』


>橘ルカ(警察官)



从*゚ -ノリ「はぁ〜 刑事になったら、毎日のように血を見るんだなぁ」

从*゚ーノリ「でも、弱音吐いてちゃ刑事は務まらないね」

从*゚ーノリ「今回の事件、気絶なんかしてないで、一部始終を見ておくべきでした」

从*゚ーノリ「なんたって、私が刑事を目指すキッカケになった事件なんだから、鮮明に覚えてたいですよ」

从*゚ -ノリ「警部さんに聞こうとしても、ぜんぜん話してくれないし。刑事への道のりは遠いなぁ」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:03:29 ID:isks7Q2AO<> 


 ( <●><●>)『“拳銃”ですね』

 (`・ω・´)『な……』

 (`゚ω゚´;;)『 な ん だ と ォ ォ ォ ォ ォ ォ ! ? 』


>本田シャキーン(美容師)



(`・ω・´)「俺を弁護した姉ちゃんが、また腕がよくてな。罪が軽くなったんだ」

(`・ω・´)「無論、逃げようなどとは思わない。長い時間をかけ、罪を償うつもりだ」

(`・ω・´)「あ? でぃとの関係?」

(`・ω・´)「………俺も、アイツも、ウララーが営んでいた食堂の常連だっただけだ」

(`-ω-´)「……」

(#`・ω・´)「というか、チーズおにぎりはそもそも俺が提案したんだぞ! アイツめェェェェ!」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:05:48 ID:isks7Q2AO<> 


 ( ><)『我々私服警察官の耳は、銃声を聞き分けるためにあるようなものですから』

 (゚、゚トソン『本当は?』

 ( ><)『テンさんの後をつけてきただけです』


>稚内ワカンナインデス(警察官)



( ><)「……実は、あの時撮った写真はもう1枚あったんです」

(*><)「え、見たい? 仕方ないなぁ。ほら、これです!」

(*><)「………」

( ><)「………」

( ><)「あ、はい、僕の顔写真ですけど……」


( ;><)「ああっ! 破らないで!
      きれいに写ったのにィィ!」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:07:10 ID:isks7Q2AO<> 


 (´・ω・`)『お前……』

 ( <●><●>)『ちょっと待って下さい』


>若手ワカッテマス(警察官)



( <●><●>)「残念ながら、武怨は逃してしまいました」

( <●><●>)「しかし、今にはじまった話じゃない。まだ諦めたわけではありませんよ」

( <●><●>)「……はい? なんで9なんかと組んでるのかって?」

( <●><●>)「………」

( <●><●>)「どこか、自分に似ている、そんな気がするのですよ。
         ほっとけないというか、なんというか――」

( <●><●>)「え? 9が私の悪口を?」

( <●><●>)

><●> )   「スミマセン、ちょっと用を思い出したので失礼」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:08:00 ID:isks7Q2AO<> 


 ( メA`)『どうもぉ、しがない殺し屋ですよっとぉ』


>武怨(殺し屋)



( メA`)「またんきを、俺の手で殺せなかったのはプライドが許さないけど、サ」

( メA`)「依頼人曰く目的は果たしたからいい、とか言って、報酬を倍額もくれたんだぜ」

( メA`)「だから、今更あのオンナ殺そうとは思わないね」

( メA`)「……あぁん?」

( メA`)「この傷について聞かせてくれ、って?」

( メA`)「テンさんにでも聞いとけ。じゃあな」

( メA`)「フンッ」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:09:28 ID:isks7Q2AO<> 






(゚、゚トソン「B−7の拳銃……?」

(´・ω・`)「そうだ」

私の、自信なさげな解答に、すかさず警部は大声で肯いた。
私が理由を説明する間もなく、警部は言った。


(´・ω・`)「結論から言おう。シャキーンさんは、たったひとつだけ、嘘を吐いていたんだ」

(゚、゚トソン「え?」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:11:54 ID:isks7Q2AO<> 


シャキーンさん、彼の証言は、結局全てがただしかった、そう思っていた。
実際、警部も私のこの意見に反論をいれる様子は見られなかった。
というのに、彼が嘘を吐いた、と、今更になって言うので、私も当然当惑した。
まして、シャキーンが一番驚きを見せたのも、この拳銃の時だったはずではないか。
警部も、この驚愕の様を見て、推理に踏み込んだのに。


(´・ω・`)「もともと、乗務員室前には拳銃がある筈なのに、でぃさんはそれを運ばなかった」

(゚、゚トソン「運んでたらB−7にある筈ないですもんね」

(´・ω・`)「じゃあ誰がB−7に持って行ったか……」

(´・ω・`)「シャキーンさんしかいない」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:14:21 ID:isks7Q2AO<> 


(゚、゚トソン「でも、なんでわざわざ?」

(´・ω・`)「『またんきがA−5に座ったのは予想外の出来事である』事を付け加えてみな」

(゚、゚トソン「………」

(゚ー゚トソン「あ」

(´・ω・`)「彼は、なにも自分の席に隠す訳がない。
      しかし、自分の席はとられていたんだ」

(´・ω・`)「シャキーンさんが、またんきの席に隠そうとしていたのに、先手をうたれた。
      だから、シャキーンさんは隠す事ができなかったんだ、この銃を」

B−7から発見された銃を、白い手袋で掴んで、ぶるんぶるん振り回す。
ミルナ刑事が止めに入り、警部は、銃をミルナ刑事に再び返した。


(´・ω・`)「オーバーなリアクションをしたが、あれはわざと振る舞った、と見たほうがいいだろう。
      実際、あの二時間で、彼があんなに驚きを見せたのは、あの一度きりなんだからね」


.<> 後日談
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:16:33 ID:isks7Q2AO<> 


(´・ω・`)「まあ、そういう事だから、ペニーもシャキーンさんを取り調べる際はホンキでしなよ」

('、`*川「いっそ警部がすればいいのに……」

(´・ω・`)「そう言うなよ」


姐さんのぼやきに、警部は明るい顔でそう言った。
そう言いますよ、と言った姐さんを余所に、警部は裾を正した。
ミルナさんと姐さんを前に、警部は今までにない明るい顔をして、
また、やはり今までにない華やかさを伴い、おおきく、強く言った。


(´・ω・`)「僕は、偽りを見抜くのが仕事の、人呼んでイツワリ警部だからさ!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:17:41 ID:isks7Q2AO<>後日談
>>606-617<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/23(水) 19:22:21 ID:isks7Q2AO<>これで、(´・ω・`)は偽りの香りを見抜くようです はおしまいです。

支援してくださった皆様、スレ立て代理してくださった皆様、トソンのキャラに指摘してくださった皆様、
書式含むおかしい点を指摘してくださった皆様、絵を描いてくださった皆様、まとめていただいたブーン芸さんと文丸さん、
そして、いままで読んでくださった皆様に、全身全霊をささげ、お礼申し上げます。ありがとうございました!

後半は急ぎ足だったので、日本語が変だったり、誤字脱字が見られたりするかもしれません。
また、後日談で萎えてしまった皆様、申し訳ありません。
もし質問があれば答えたいですが、私のミスや不覚が原因で起こった質問には、ごめんなさいと言います。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/23(水) 20:21:20 ID:P.QcIgzAO<>乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/23(水) 20:33:06 ID:444tQutU0<>乙乙!!<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/23(水) 21:03:30 ID:/J5MX3mU0<>乙

隠れた名作だった<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/23(水) 21:42:25 ID:/NVXDzcY0<>なんか最終回みたいになってるけど続き的なのはもう書かないの?<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/23(水) 21:47:20 ID:50ANxB9M0<>乙乙
楽しく読んだ
推理ものがシリーズ化するのは定番だよね、うん<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/23(水) 22:39:30 ID:LeJTcvhs0<>乙!

ここ最近で一番楽しみだったけどもう終わっちゃったか…
まぁとりあえず乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/23(水) 22:55:13 ID:VgPoLJBIO<>終章&後日談乙でしたー


>>603にFile.1ってあるからまだ終わりじゃないよね?ね?

最初の方で触れたトソンとショボンが知り合うきっかけになった事件とか
今回顔見せで複線っぽいの残してった武怨やくるうやルカとか
全体的にまだまだ序章でまだこれから盛り上がってくって所なのに
読み切りスタイルでぶん投げ終了されたら哀しいです


それにしてもまさかブーン系でびぃの姿が拝めるとは思ってなかった…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/24(木) 01:05:04 ID:DBvIirZQ0<>後日談が逆転裁判みたいで何か感動してしまった

乙!続編を期待してるよ!<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/11/24(木) 19:27:01 ID:SUJ3iC6gO<>続編と言っても、偽りの香りのような推理重視な小説ではなく、どちらかというと、刑事小説の色が濃い小説なので
今作のように、某逆転する裁判のゲームのような展開は、ほぼないと見ていいです。
地の文も第三者視点で、ショボーンのキャラも若干変わってたりと、作風は全く違ってたりするので、
あたかも、全く別の作品であるかような印象を与えそうで、投下するのが躊躇われています。

あと、続編の際、ワカッテマスが巡査部長であるという設定や、ショボーンとトソンがはじめて会ったときに
ショボーンが警部補だった、という設定も、いつかは無視しなければならなくなりそうだったりします。


続編投下予定日は未定。来年かも。
タイトルやあらすじを公開すべきかも悩んでたりします。<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/26(土) 02:37:38 ID:AOF72E/QO<>乙!
続編待ってる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/26(土) 19:59:29 ID:KxFn.eDUO<>乙ァ!乙ァ!
とても面白かった<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/27(日) 15:22:35 ID:vLwlTvvAO<>続編は面白そうだな。とりあえず乙<> 予告編
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/11/29(火) 19:20:19 ID:23OMTV2cO<> 


ショボーン警部に一本の電話がはいったのは、十二月十五日のことだ。
知り合いの富豪で、伊達(だて)クールという男が、ふるえた声で話しかけてきたのだ。
呑みの誘いかと思い、疲れていたショボーンは、うまくはぐらかそうとした。
ところが、伊達から放たれた思わぬ一言に、すかさずショボーンの眉がひくついた。

 『孫が誘拐された』

(´・ω・`)「なんですって?」


―――。

誘拐犯を追う道中にて、殺されていく何人もの被害者たちを見て、ショボーンの怒りは頂点に達していた。
なんとしても誘拐犯を捕らえるべく、ショボーンは大胆な推理を繰り広げ、勘と経験だけを頼りに、誘拐犯と勝負する。

だが、いくら対策を練っても、ショボーンを待っていたのは敗北、敗北の、連敗だった。
狡猾な誘拐犯に翻弄される捜査一課、いくら追えど見つからぬ誘拐犯同士のつながり、そして誘拐犯の巣くう根城。
これは、様々な謎が行き交う、ショボーン警部の実体験をもとに著わした、ミステリー小説である。

(´・ω・`)「わかったぞ、この事件に潜む偽りが」



 イツワリ警部の事件簿
 File.2

 (´・ω・`)は偽りの根城を崩すようです


   − 公開日 未定 −


.<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/11/29(火) 19:24:19 ID:23OMTV2cO<>あくまで未定だから、File.2 はこれじゃなくなるかもしれないし、タイトルも変わるかもしれないです
一応半分ほどは書きためできてるけど、急遽変更するかもしれないし

12月24日の平凡な休日を利用して投下しようかな!
普通の休日だし、代わり映えしない休日だから、投下にはぴったりだろう?<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/29(火) 20:08:04 ID:T5No2xqs0<>24かーちょうど友達つかまらなくて暇なんだよねー
いつもはノリノリなのにたまたまみんな用事あるんだよなー
丁度いいや楽しみにしてる<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/29(火) 20:14:09 ID:AVg0V.b60<>24ならあいてるわ
ただの休日なのにみんな予定いっぱい
こんな偶然もあるんだねえ<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/29(火) 20:54:28 ID:0jYucyh60<>24日って普通の日だよねー
何にもないよねー<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/29(火) 21:17:08 ID:wrBbW0RY0<>イブイブの日の翌日で良かったよ
その日もあいてるよ
それにしてもイブってなんなんだろうね<> 名も無きAAのようです<><>2011/11/29(火) 21:42:46 ID:YxnOZTzY0<>>>637
ただの頭痛薬だ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/11/30(水) 05:23:23 ID:mQ1KW5HA0<>(´;ω;`)お前ら…<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/12/15(木) 20:41:24 ID:GmT8doZ2O<>えっと
File.2書きため完成までは時間かかるし、年末年始は紅白に入り浸るつもりだから
それまでに番外編として、ショボーン警部の扱ったとある事件でも載せようかなと思います。

三日もあれば書きためできるだろうから、できあがったらここで投下
できなかったら紅白か番外編のどちらかを捨てる。おk?<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/16(金) 09:00:39 ID:peEutXNUO<>紅白黒短編合戦優先でOK 
黒組のNo.1の立ち位置優先だ<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/12/18(日) 23:22:15 ID:9afAXb2AO<>くそおおおおおおおおお
紅白はまだすっからかんなのに番外編は八割できたぞ
しかも自分で言うのもあれだが偽りの香りより全然デキいい気がする
くそおおおおおおおおお<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/19(月) 17:16:02 ID:8bBfzMyo0<>そうですか<> 名も無きAAのようです<><>2011/12/21(水) 23:29:35 ID:s23g6KoI0<>番外編楽しみにしてる
今週末は大事な用事があるからリアルタイムは無理だけど<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/22(木) 07:30:44 ID:eH4KHy3AO<>待ってます<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/22(木) 13:40:04 ID:eH4KHy3AO<>番外編は筆が進むあるある<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/23(金) 06:56:06 ID:7V7EI/iY0<>ストーリーあまり関係なくてもいいからな<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:33:31 ID:jhBsMllgO<>ハッピーニューイヤー!
やっぱ年越し一週間前は気分がいいね!
だからみんな忙しいんだなきっと!
というわけで、投下をはじめます!<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:34:31 ID:jhBsMllgO<> 





これは、都村トソンが、まだ高校一年生の頃。
彼女がVIPの女子高校にいた時に起こった事件だ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:53:15 ID:jhBsMllgO<> 


        −1−


都村トソンは、最近推理小説に凝っている。
特に、警部や警部補など、刑事が中心となる小説だ。
見た目に反し、活字を読むのさえ嫌になるほどの知能の持ち主が本を読むことが
できるというのは、それが活字であることさえ忘れさせるほどの魅惑を持っているからだ。

二月の頭頃、放課後に都村は図書室を訪れた。
彼女は、推理小説を返却し、また新しい小説でも借りようと思ったのだ。
だが、図書室を訪れると、彼女は違和感をおぼえた。
図書室に静けさがつきあうのは当然だが、今回の静けさとはそれではない。

図書室には誰もいないのだ。
普段は、図書部の人間含め、二、三人は生徒がいるものだ。
ところが、貸し出しを担当する生徒ないし先生でさえ、そこにはいなかった。
不思議な気持ちになりながらも、都村は図書室に足を踏み入れた。
普段は暖房が効いているはずの室内はひどく寒く、窓も開いてないのに風が吹き込んできていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:54:59 ID:jhBsMllgO<> 


(゚、゚トソン「返しますよー…」


とうとう不安になってきた都村は、とりあえず隣の司書室に向けて声をかけた。
司書室は、廊下からも図書室からも入ることのできる、図書の整理や保管などを請け負っている場所だ。
その扉は閉まっているので、当然向こうに伝わるはずがないが、都村は、とりあえず言ってみた。

受付のカウンターに本を置き、都村は司書室の扉の前に立った。
やけに静かだ。ただ、風の吹く音が聞こえる。
時折、木の葉が風で揺れる音も混じって聞こえてきた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:55:55 ID:jhBsMllgO<> 


(゚、゚トソン「……失礼します」


司書室への扉に、手をかけた。
鏡に映る自分の顔は、ひどく不安げで、
後ろのポニーテールもしおらしかった。


(゚、゚トソン「……先生?」

(    )

(>、<トソン「!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:56:47 ID:jhBsMllgO<> 


司書室を開いた瞬間、都村は激痛に見舞われた。
頭部を、硬い、重いなにかで、思い切り殴られた。

出会い頭であることを踏まえると、相手は扉の向こうで待ちかまえていたのだろう。
それは一瞬の出来事だったため、都村は相手の顔を見ることができなかった。
いや、見ていたとしても、彼女はその名を口にできなかっただろう。

都村は、その場で、床に崩れ落ちた。
相手はそれをじっと見下ろしていた。




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 16:59:25 ID:jhBsMllgO<> 


        −2−


県警への一本の通報が、彼らを動かした。
殺人事件のため、所轄ではなく警察本部が出動することになった。
VIP県警、刑事部、捜査一課前の廊下にて、捜査一課長のドクオに、
不機嫌な顔を見せるショボーン警部は、次々細かな指示を受けていた。


('A`)「舞台となる、鳳凰学園と言えば、この国でも有数のお嬢様学校だ」

(´・ω・`)「そうらしいですね」

('A`)「そこで、向こうの校長も、なるべく事件を公開しないように、捜査を頼んでいらしている」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:01:57 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「目撃者が生徒なら、箝口令を敷くのは不可能に近いですよ」


ショボーンは、ドクオの言わんとしていることを汲み取り、先にドクオにそう意見した。
すると、ドクオは少し硬い顔が和らいだ。


('A`)「その点は問題ないよ。目撃者のふたりとも、教師だからね。
    ただ、被害者のひとりは、生徒だ。くれぐれも、捜査には細心の注意を払うのだよ」

(´・ω・`)「捜査の前に、まずその目撃者の話を聞きたいのですが、どちらに?」

('A`)「男のほうが、真山田ネーヨ(まやまだねーよ)という、数学専攻の教師だ。
    現場である図書室で待っていると聞いた」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:05:02 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「わかりました。
.      では、あとだれか手の空いているやつを連れていってもいいですかね?」

とショボーンが言うと、ドクオは開いている捜査一課の扉を覗き、なかにいる者を確認した。
茶色の髪が揺れる女刑事を見て、ドクオは扉を閉めた。


('A`)「三月クンがいるじゃないか」

(´・ω・`)「三月イナリ(さんがついなり)刑事ですか」

('A`)「確か、あの子はキャリア組だったね。
    ショボーン君、彼女にも丁重に頼むよ」

(´・ω・`)「びしばし鍛えておきます」


ショボーンはにこやかでない顔でそう言うと、ドクオは雑務があるからと言って、帰っていった。
捜査一課に入り、すっかり孤立していた三月イナリを呼んだ。
他の者は、皆、別の捜査をあたっている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:06:46 ID:jhBsMllgO<> 


三月は皆から仲間外れにされていたようで、どこか寂しげだった。
といっても、キャリアの、しかも女刑事となると、こうなる運命なのだと、彼女自身よくわかっているらしい。
ショボーンが呼ぶと、彼女はやはり冷静なそぶりでショボーンのもとへ行き、事件の概要について、説明された。


(´・ω・`)「まあ、概要はこんなとこだよ」

イ(゚、ナリ从「わかりました」

(´・ω・`)「走るぞ。ついて来い」

イ(゚、ナリ从「はい」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:08:09 ID:jhBsMllgO<> 


パトカーに乗り込み、サイレンを鳴らして、舞台となる鳳凰学園へと向かった。
ショボーンがパトカーで運転する隣で、三月は、とにかくメモにびっしり概要を書いていっていた。
空気が冷たくなり、耐えかねたショボーンは、ハンドルをきりながら三月に話しかけた。


(´・ω・`)「いやに仕事熱心だね」

イ(゚、ナリ从「ありがとうございます」

(´・ω・`)「イナリちゃんのおとうさん、確かアルプス県警の警部だよね」

イ(゚、ナリ从「尊敬できる父です」

(;´・ω・)「……あ、そうだよね。うん」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:09:27 ID:jhBsMllgO<> 


三月は、仕事は仕事でプライベートから完全に切り離すタイプのようで、
ショボーンへの応答も、すべて事務的で、ショボーンはおもしろくなかった。
少しくらいおどけてくれても、叱りやしないのに。ショボーンはそう思っていた。

そして、ショボーンのほうも言葉が詰まり、またしてもパトカーは静かになった。
サイレンだけが、けたたましく鳴っていて、緊張感が高まってきていた。
問題の高校に近づけて、先に来ていた鑑識のパトカーの後ろにショボーンたちのパトカーを留めた。
駆け足で図書室に向かった。
確か、図書室は北館の三階だったな、と脳内で復唱しながら、ショボーンは三月をつれてそちらに向かった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:12:15 ID:jhBsMllgO<> 



        −3−



(`・д・)ゞ「警部、お疲れ様です!」

(´・ω・`)ゞ「おう」


既に、図書室及び司書室内は鑑識で溢れていた。
敬礼されるたびにショボーンは応えていくが、
三月に敬礼をする者は、気のせいか、少なかった。
が、彼女はまったく動じる様子を見せなかった。


(´・ω・`)「さて、真山田さんはいるかな」


ショボーンが呟くと、三月は司書室のほうを指さした。
開かれた扉の向こうでは、真山田と警官と、もうひとり女性がいた。

(´・ω・`)「どうも」

(`・д・)ゞ「警部、お疲れ様です!」

(´・ω・`)「おう。ところで、そちらが発見者の?」


というと、男のほうはすぐに返事をした。
比較的痩身で、まるでもやしのような髪型と、
それは数学教師の典型例といった様子だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:14:06 ID:jhBsMllgO<> 


( ´ー`)「真山田です。数学の教師やってます」

(´・ω・`)「県警のショボーンです」

イ(゚、ナリ从「三月です」

(´・ω・`)「そちらは?」


真山田の隣にいた女性にふると、女性もあわてて応えた。

リi、゚ー ゚イ`!「ろ、狼シグン(ろうしぐん)です!」

(´・ω・`)「やはり、発見者ですか」

リi、゚ー ゚イ`!「そ、そうだと思……いや、どうなんだろ…アレ、いったい――」

(´・ω・`)「わかりました、とりあえずは落ち着いてください」

リi、゚ー ゚イ`!「は、はぃ……」


狼のほうは、落ち着きがなかった。
殺人事件となると、やはり動転するのはいたしかたがない。

しかし、男のほうはそうでもなかった。
単に鋼の神経なだけか、程度に思っていた。
どこも、殺人で狼狽するのは女だ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:16:36 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「いきなりで申し訳ないですが、
.      早速事件発見当初の状態から話してもらっていいですか?」


と言うのを聞いて、三月は手帳を取り出した。
これなら、真山田が早口で言っても大丈夫だな、と思った。

( ´ー`)「はい。というか、もともと死体を見つけたわけじゃないんですよ。
      最初は、そちらの狼先生に、生徒が倒れているから来てくれと呼ばれて来て、あ、その生徒は今救急車で運ばれました。
      狼先生がその生徒を介抱している時に、ふと窓の外を見下ろすと、はじめて、死体が――」

(´・ω・`)「おおむね、理解しました」

( ´ー`)「そのあとは、驚いてすぐに警察に電話しました。現場にはいっさい触れていません」

(´・ω・`)「賢明な判断、ありがとうございます」

( ´ー`)「いえいえ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:18:29 ID:jhBsMllgO<> 


速筆な三月は、もう証言内容を書き終えていた。
それを見て、ショボーンは確認作業に入った。


(´・ω・`)「では、いくつか質問をさせていただきますが、よろしいですか?」

( ´ー`)「ええ」

(´・ω・`)「まず、時間ですが――」

( ´ー`)「確か、四時半過ぎだったかな?」

(´・ω・`)「では、外もだいぶ暗かったでしょうね」

( ´ー`)「ええ」

(´・ω・`)「どうして、窓の外を、しかも見下ろそうなんて思ったのですか?」

( ;´ー`)「え?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:19:40 ID:jhBsMllgO<> 


真山田が、狼狽した。
すかさずショボーンが補足説明をした。


(´・ω・`)「その生徒が介抱された、彼女を介抱する、
.      それだけでよかったのに、なぜ窓の外なんかを?」

(;´ー`)「なんで、と言われましても……」


真山田は考え込んだ。
ショボーンは、その彼の動作が怪しく見えた。

( ´ー`)「やっぱり……なんとなく、でしょうか」

(´・ω・`)「なんとなくねぇ」

( ´ー`)「ほら、よくあるじゃないですか。
      分かれ道で、なんとなく右を選んだら正解だったとか」

(´・ω・`)「それは単なる勘です」

( ´ー`)「ぼくはこれでも勘はいいほうですから」

(´・ω・`)「ほう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:21:05 ID:jhBsMllgO<> 


ショボーンが探りを入れようとすると、今度は狼が応えた。
おどおどしながら、ショボーンの顔色を見て説明をした。


リi、゚ー ゚イ`!「えっと、私が図書室に来ると、なぜか生徒が倒れていて、しかも気を失っているものだから、
       びっくりしちゃって、たまたま近くにいた真山田先生に助けてもらったんです」

(´・ω・`)「そうなのですか?」


ぎろっと真山田のほうを見ると、彼は首を縦に振った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:23:17 ID:jhBsMllgO<> 


( ´ー`)「そうです。あ、思い出しました。こういう時って、必ずどこかに証拠とかあるものだから、
      狼先生が介抱している間、図書室内を散策し、そういった証拠を見つけようと思ったのです。
      なにぶん、その矢先で死体をみたので――」

(´・ω・`)「気になったのですが、なぜ、外は薄暗くて、しかもここ三階から
.      見ているのに、それが死んでいるって判ったのですか?」

すると、真山田は「なんだそんなこと」と言いたげな顔をした。

( ´ー`)「血が、ぶわあって広がってるのは、さすがに見れますしね」

(´・ω・`)「そういうことですか」

(´・ω・`)「……ん、転落死で、頭蓋骨粉砕? いや、たかが三階でそんな――」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:25:12 ID:jhBsMllgO<> 


ショボーンが独り言を言っていると、検死官が三月のもとへやってきた。
死体の簡単な検死の結果がでたというので、それを報告したのだ。
三月は、ショボーンのぼやきに対応するよう、手帳にそれを書き並べながら言った。


イ(゚、ナリ从「警部。害者の死因は、転落死でなく、鈍器による撲殺です。
       転落は、死後すぐに起こった一件と見ていいとのことです」

(´・ω・`)「………撲殺?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:26:36 ID:jhBsMllgO<> 



        −4−


ショボーンは怪訝な顔をしたが、三月は淡々と続けた。


イ(゚、ナリ从「そうとう、硬くて重いものと見ていいそうです。
       ……どうやら、目下捜索中のようですね」

(´・ω・`)「じゃあ犯人は、害者を撲殺したのち、わざわざ地面に落としたというのか」


そこは、学校の敷地と敷居との狭間で、三階から落とせば、
万が一ではあるが、通行人から目撃者が出てくることもある。
というのに、犯人がわざわざ図書室から下に落とした理由が、掴めないでいた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:27:47 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「表の道路まで投げ飛ばそうとしたが、
       思いのほか重くてあそこになってしまった、のでは」

(´・ω・`)「そうかねぇ」


怪訝そうにショボーンは言った。
実際、そうだとすると、ますます死体の発見がはやくなる。
ショボーンが、その通りをぱっと見たところ、人通りは少なく、
数十分に一度乗用車が通る程度だが、放課後の図書室と比べれば、発見される確率は格段に高いだろう。
しかも、投げる際に、犯人まで下に落ちる可能性も、少なからずあり得る。
そんなリスクを負ってまで、外部に投げ捨てるわけがわからなかったのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:29:48 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「それと、凶器の行方だ。重くて硬いとなれば、すぐに見つかるんじゃないのか?」

イ(゚、ナリ从「現在、ご覧のように図書及び司書室にて捜索していますが、万が一を考え、
       三階の廊下や部屋全域にくわえ、落とされた場合にあり得そうな場所も捜すよう指示したところです」

(´・ω・`)「それで、まだ見つからないと」

イ(゚、ナリ从「犯人も、そう簡単には見つからない場所に隠したのでしょう。当然の心理です」

(´・ω・`)「しかし、学校にそのようなものの持ち込みは難しいだろう。
.      よくて、野球部のバット程度だが、その野球部じゃない限り、
.      一撃でしとめるのにバットじゃなぁ。さすがに心許ないだろう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:30:42 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「また、報告では、野球部ではそういった紛失されたバットは一本もないようです」

(´・ω・`)「手回しいいね」

イ(゚、ナリ从「ありがとうございます」


このような、冷静でクールな性格の三月は、同僚から避けられている。
それはキャリアだからという嫉妬もあるのだが、それだけでなく、
三月の、仕事に対しての熱意が尋常ないというのもあるのだ。
それと相まって、ますます彼女が孤立する原因となってしまったのだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:32:44 ID:jhBsMllgO<> 


        −5−


(´・ω・`)「ところで、害者のデータだが」


ショボーンが言うと、三月はすぐに手帳を開いた。

イ(゚、ナリ从「名治すー(なちすー)、三十三歳で、家庭科の教師を勤めています。
       死亡推定時刻は現在不明。鈍器のようなもので後頭部を殴られ、
       即死後、高いところから落とされたものと見られます」

(´・ω・`)「おふたりは、亡くなった名治先生とは、どういった関係ですか?」


今度は、真山田と狼を見て言った。
その質問に、真山田から応えた。


( ´ー`)「ぼくとは請け負う学年も、専攻もまるで接点がないので、
      名治先生とはそれほど知り合っていたわけではないですね」

イ(゚、ナリ从「害者の担当は一年、しかも副担任です」

( ´ー`)「そうでしょ?
      ぼくは二年生を持ち、教える相手は二年ないし三年ですから。
      挨拶程度はしますが、言うほど親密じゃあなかったですね」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:34:01 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「では、狼さんは?」

リi、゚ー ゚イ`!「私は、主に三年生に教えています、生物専攻です」

(´・ω・`)「名治先生との交流は?」


と聞くと、狼は少し口ごもった。
ショボーンが続けて尋ねようとすると、応えた。

リi、゚ー ゚イ`!「一応、私も三十三で、独身仲間ですから、一緒にごはんに行くことくらいは――」

(´・ω・`)「その割には、彼女の死亡に、ショックを受けないんですね」

リi、゚ー ゚イ`!「私、彼女が死んだなんて、信じてないんです」

(´・ω・`)「ほう」


ショボーンの様子が少し変わった。
眉をひくつかせ、相手の顔を食い入るように見ている。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:35:02 ID:jhBsMllgO<> 


リi、゚ー ゚イ`!「きっと、いまの医療技術でしたら、彼女は助かるんでしょ?」

(´・ω・`)「……?」

リi、゚ー ゚イ`!「カエルの筋肉に電気ショックをくわえるとびくんって動くように、
       きっと、骨の補強さえできれば、また名治先生も生き返るんでしょ?」

(;´・ω・)「―――」


今度は、ショボーンが口ごもった。
狼は、本気で名治が蘇ると思っているように見えた。

だが、名治は、頭蓋骨が砕け、出血も多量、即死なのに更に三階から突き落とされている。
いくら医療が万能になってきつつある現代でも、名治の治療はあきらかに不可能だ。
それを、狼はわからないのだろうか。
ショボーンは、少しお気の毒に思えた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:36:52 ID:jhBsMllgO<> 


        −6−


目撃者との話もほどほどに、ショボーンは捜査の指揮をとっていた。
この国の警察は優秀だ、普段なら、あっという間に何らかの証拠を持って駆けつけてくる。

しかし、今日は違った。
凶器となりそうな、硬く重いものということで、まずは消火器が調べられた。
ショボーンも、これが凶器ではないか、とにらんでいた。
が、消火器には埃が積もっていて、触られた跡すらなかった。

次に、図書室の入り口付近にある、鷹を象ったブロンズの像を調べさせた。
が、こちらは台にひっついており、台付きでは到底殴ることすらできなそうだったので、指紋だけ採取して切り上げた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:39:14 ID:jhBsMllgO<> 


北館に面している道路や、校内の敷地も捜させたが、やはりそれらしきものは見つからなかった。
ショボーンは、いよいよ顔が渋くなってきた。


(´・ω・`)「妙だ」

イ(゚、ナリ从「凶器は、もしかしたら犯人が持ち去ったのかもしれませんね」

(´・ω・`)「じゃあ、凶器から辿るのはもう少しあとにするか」

イ(゚、ナリ从「では、どうされますか」

(´・ω・`)「図書室に戻ろう」


そう言って、ショボーンは司書室を抜け図書室に戻った。
扉を抜けてすぐそこに、今し方鑑識も調べている窓がある。
ここにある窓は開いてあって、おそらく犯人は近くで
名治を撲殺、のちにここの窓から落としたのだろう。
だが、床を調べている鑑識からは、一向に報告はこない。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:40:47 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「血液が飛び散ったような跡は、見つからないかね?」

(`・д・)ゞ「はッ! 目下捜索中でございます!」

(´・ω・`)「ご苦労。見つければ、すぐに報告するんだ」

(`・д・)ゞ「ははァ!」


血の気の多いこの鑑識は、ショボーンに労いの言葉をいただけて、嬉しそうだった。
鼻歌なんかを歌いながら、四つん這いでそこらを調査している。
ショボーンは三月と向き合った。


(´・ω・`)「犯人は、ここか司書室で名治を背後から襲い、
.      すぐに下に突き落とした。それはなぜだ?」

イ(゚、ナリ从「万が一息の根が残っていた場合のことを考えての、保険でしょう」

(´・ω・`)「それもあるだろう。だが、鑑識の報告がないのを見ると、別の可能性がでてくるよ」

イ(゚、ナリ从「はい?」



(´・ω・`)「犯人は、きっと、現場が図書室であることを、知られたくなかったんだ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:42:59 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「現場に跡を残さないのはわかりますが、なぜそう言えるのでしょうか」

(´・ω・`)「それは、床に血痕が一滴もないところにある。
.      ここで害者が殴られたとしたら、必ず、一滴でも血は飛ぶ。
.      それすらないということは、犯人はよほど工夫して殺したと見ていい。
.      また、犯人が、現場が図書室であることを隠したかったのであれば、
.      なぜここから地面に突き落としたのか、説明がゆく」

イ(゚、ナリ从「しかし、すぐに図書室がばれましたよね」

(´・ω・`)「確か、生徒が倒れているというのを聞いてやってきた真山田さんが、ふと窓の外を見ると――」


言い掛けたことを呑み込んで、ショボーンは「あっ」と言った。
話題を一転させ、ショボーンはあることを聞いた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:45:35 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「そういえば、その生徒に、話聞けないのかな?」

イ(゚、ナリ从「少々お待ちください」


三月は携帯電話を取り出した。
狼が介抱したほうの被害者は、近くの石井病院という大きな病院に搬送されたと聞く。
派出所の警官が応対し、パトカーに乗せて送っていったのだ。

気を失っているだけで、しばらくすれば治りそうだが、
殺人事件に絡んでいるとなると、万が一がある。
電話を終えると、三月はショボーンに言った。


イ(゚、ナリ从「現在こちらに向かっている、というより、もうここに着いたようです」

(´・ω・`)「ちょうどいい。会わせてくれ」

イ(゚、ナリ从「中庭、噴水前のベンチに居ます」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:47:23 ID:jhBsMllgO<> 


        −7−


ふたり揃って図書室を出て、一階に降りた。
中庭にでると、中央に見える噴水がきれいだった。
それのまわりには、ベンチが沿って置かれている。
そのなかのひとつ、警官の隣に、頭に包帯が巻かれた少女が座っていた。


( ><)ゞ「あ、お疲れ様です」

(´・ω・`)ゞ「おう」

警官に、ショボーンは敬礼を返した。
後ろから着いてきた三月は、警官に質問をした。
すると、警官は鼻の下をのばし、答えた。


イ(゚、ナリ从「この子がそうなのか」

(*><)「はッはい! イナリ刑事、お疲れ様なんです!」

イ(゚、ナリ从「うむ、ご苦労」

(*><)「ではこれで!」


警官は三月にもう一度敬礼をして、そのままパトカーに乗って帰って行った。
三月と話すときだけ、妙に気分が昂揚しているように見えて、ショボーンはおもしろくなかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:49:06 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「あいつの名前知ってるか?」

イ(゚、ナリ从「稚内なにがしだったと」

(´・ω・`)「稚内か。まあ、どこかで見たことある奴だ。覚えとけよ、稚内」

イ(゚、ナリ从「とにかく、この子がそうです。名は――」


三月が、頭に包帯を巻いた、全身を白にまとった少女を指さして言った。
ショボーンもようやくその少女を見ると、顔色が豹変(かわ)った。
名前を言われる前に、ショボーンはその名前を叫んだ。


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:50:04 ID:jhBsMllgO<> 




(゚、゚トソン

(´・ω・`)「―――!」




イ(゚、ナリ从「都村――」

(;´・ω・`)「トソンちゃん!」

イ(゚、ナリ从「存じておりましたか」

(;´・ω・`)「ともだちだよ。それよりも、トソンちゃん、無事なのか」

(゚ー゚トソン「?」


かなり周章した様子で、ショボーンは少女を呼びかけた。
だが、少女は天使のような笑顔を見せ、首をかしげただけだった。
ショボーンは、どうも彼女の様子がおかしいと思った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:51:27 ID:jhBsMllgO<> 


(;´・ω・`)「トソンちゃん、傷が響くのか? 言葉を失った?」

(゚ー゚トソン「…?」

イ(゚、ナリ从「警部。そのことなんですが――」

(;´・ω・`)「僕だよ、ショボーン。イツワリ警部。思い出した?」

(゚、゚トソン「……」


ショボーンの友人である少女、都村は、力なく首を横に振り、俯いた。
膝の上に置かれた両手に、力が籠められたのが見て判った。
ショボーンが狼狽えているのを、三月は気にせず、彼女の様態について説明した。


イ(゚、ナリ从「都村トソン、十六歳。鈍器のようなもので、頭部を前から殴られたと見ています」

(´・ω・`)「鈍器――」

イ(゚、ナリ从「幸い、外傷はなし。ですが――」

(゚、゚トソン「?」





イ(゚、ナリ从「彼女は、記憶喪失です」

(´・ω・`)「!」




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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:52:09 ID:jhBsMllgO<> 



 イツワリ警部の事件簿
 Extra File.1

 (´・ω・`)とある忘れられた事件のようです



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:55:29 ID:jhBsMllgO<> 


        −8−


静かな噴水庭園の前で、三月イナリに告げられた様態に、
ショボーンは驚き通り越して、それが嘘ではないのかと疑いもした。
だが、三月は決してジョークを言う人間ではない。
それが仕事中となれば、なおさらあり得ない。

ショボーンは、都村をちらっと見て、確認をとってみた。
彼女は、かなり優しい笑顔を、ショボーンに向けていた。


(´・ω・`)「自分の名前、知ってる?」

(゚ー゚トソン「……知らない」

(´・ω・`)「僕の名前は?」

(゚、゚トソン「……知らない」

(;´・ω・`)「僕はショボーンで、君はトソン! 都村トソン!」

(;、;トソン「……知らない!」

(;´・ω・`)「……なんてことだ」


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:57:33 ID:jhBsMllgO<> 


都村とショボーンとは、半年以上のつきあいがある。
だが、ショボーンの知っている都村とは、クールで知的なイメージ、しかし、本当はドジな、そんな少女だ。
天使のような笑顔は見せないし、ショボーンに刃向かうこともないはずだ。
ショボーンはそれを理解し、いよいよ都村の記憶喪失に疑いなくなった。


(´・ω・`)「イナリちゃん」

イ(゚、ナリ从「はい」

(´・ω・`)「記憶喪失の症状について、把握できているデータを」

イ(゚、ナリ从「病院によると、彼女の記憶障害の原因は、鈍器による脳の損傷と見られます。
       外部性による逆向性健忘であり、殴られるより以前の記憶が一時的に消えてしまったわけです。
       逆に言うと、負傷後、つまり事件発生以降の記憶は生きています」

(´・ω・`)「……俗に言う記憶喪失、というわけだね」


ショボーンは、肩を落とした。
信じたくはないが、彼女は、紛れもない記憶喪失であることが確信された。


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 17:59:23 ID:jhBsMllgO<> 


(゚、゚トソン「私、気が付けば病室にいました」

(´・ω・`)「目を覚ます前までのことは、なにも?」

(゚、゚トソン「はい」

イ(゚、ナリ从「担当医師によると、この記憶障害は一時的なものであるため、
       ふと記憶を取り戻すことがあるようです」

(´・ω・`)「そうか……」

(゚、゚トソン「……ごめんなさい」

(´・ω・`)「気にしないで。トソンちゃんは悪くないんだよ」


と言ったが、ショボーンは内心苛立ちを覚えていた。
証言を聞くことができない以上に、親しい友人が
ひどい目に遭わされたというのが、許せなかったのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:00:56 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「トソンちゃん、君は誰かに殴られたんだ」

(゚、゚トソン「…?」

(´・ω・`)「思い出せないかな。その、君を殴った、相手を」

そのショボーンの追究を止めたのは、三月だった。


イ(゚、ナリ从「無闇に追究すると傷に響きます」

(´・ω・`)「そうか」

(゚、゚トソン「……」

(´・ω・`)「トソンちゃん、ゆっくりでいい。
.      なにか思い出したら、僕を呼んでね」

(゚、゚トソン「……うん」


都村は肯いた。
彼女は、様態は安定しているので、しばらくは病院を離れていても大丈夫と聞いた。
彼女の監視役に、誰か警官をひとりよこしてもらうよう、ショボーンは電話した。
すると、たまたま手が空いていた、稚内とか言う警官が再びやってきた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:01:38 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「彼女がなにか思い出したら、すぐ僕を呼べ」

( ><)「はい」

イ(゚、ナリ从「あくまで記憶障害だ。丁重に扱うようにしろ」

(*><)ゞ「はいッ!」

(´・ω・`)「彼女から目を離すなよ」

( ><)「はい」

イ(゚、ナリ从「喉が渇いたと言ったら自腹でなにか飲み物を与えろ」

(*><)ゞ「イナリ刑事の命令ならッ!」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:06:28 ID:jhBsMllgO<> 


        −9−


ショボーンと三月は図書室に戻った。
階段を上りながら、ショボーンは三月に尋ねた。


(´・ω・`)「そういえば、イナリちゃん」

イ(゚、ナリ从「はい」


堅い三月につられて、ショボーンは一旦咳払いをした。
そして、真顔で、少し改まった口調で訊いた。

(´・ω・`)「確か、君も幼い頃に記憶喪失になったんだね」

イ(゚、ナリ从「……」


三月は眉をひそめた。

(´・ω・`)「君の過去を洗おうというわけではない。
.      ただ、トソンちゃんと同じ記憶喪失者として、
.      話を聞きたいんだ。いいかい?」


最初は、三月は黙っていた。
口を尖らせた姿は、普段冷静な三月と比べると
非常に感情的に見えて、そのギャップが愛らしかった。
三月イナリは、堅い性格ではあるが、顔かたちはとても美しいのだ。


イ(゚、ナリ从「……私は、幼い頃、ある事件に巻き込まれました」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:08:10 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「確か、かなり大きな事件だったね。警視庁、県警と、警察がいくつも動いて」

イ(゚、ナリ从「人伝(ひとづて)に聞いた話では、相手は凶悪な連続殺人犯で、
       最後の犯行の際、私は左目に相手の一撃を受けました」


と言って、左目の創(きず)を、手で、覆い隠すようにあてた。
少し、三月のセンチメンタルな一面が見られて、ショボーンは不思議な気分になった。
おぼつかない様子で、三月は語りを続けた。


イ(゚、ナリ从「左目は完全に機能しなくなり、同時に記憶障害を引き起こしてしまいました。目を覚ましたのは一週間後。
       病院で、目を覚ますと、目の前には右目に創を持つ人が立っていたのです。彼は自らを警部と名乗りました」


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:09:38 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「警部で隻眼の人間と言えば、僕の知る限り一人しかいない」

イ(゚、ナリ从「はい。三月ウサギ警部です。彼は、私と同じく殺人犯に右目をやられたと言っていました」

(´・ω・`)「でも、いざ目の前に立たれても、それが父親とわからなかった……?」


低姿勢でショボーンは聞いてみた。
三月は対照的に、堂々として応えた。

イ(゚、ナリ从「はっきり言うと、そうです。彼が自分の父など、未だに真かはわからないのです」

(´・ω・`)「記憶は戻らないんだね?」

イ(゚、ナリ从「いつか戻る……。そう信じて過ごしてきました。しかし――」


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:11:25 ID:jhBsMllgO<> 


三月が言う前に、ショボーンは「わかった」と言った。
三月は、自分で、口が過ぎたと反省し、俯いた。


(´・ω・`)「トソンちゃんも……そうなる可能性が?」

イ(゚、ナリ从「あり得るのではないのでしょうか」

(´・ω・`)「(……助かってくれよ)」

ショボーンは、ポケットのなかでぐっと握り拳をつくった。
すると、中にキャンディーが入ってあるのに気づき、
ひとつとって、「糖分も必要だぞ」と言い、三月に与えた。
「仕事中なので」と即答で断られたが、ショボーンは強制はしなかった。


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:13:22 ID:jhBsMllgO<> 


        −10−


図書室は、相変わらず鑑識が動き回っていた。
司書室の扉の指紋は採取し終えていたので、次は図書室の指紋を採取していた。
司書室からショボーンと三月は室内に入り、鑑識でごった返す狭い司書室を抜けて図書室に入った。
中に進んでいくと、ショボーンのもとに一件、報告が入った。


(`・д・)ゞ「警部、司書室のほうの扉ですが、図書部員やその顧問など、司書関係の人間の指紋しかありませんでした」

(´・ω・`)「名治、真山田さん、狼さんのものもか?」

(`・д・)ゞ「はい。お二人とも、図書室からふつうに入ったとのことですから、おそらくそちらにあるかと」

(´・ω・`)「至急、調べろ。照合が合わない指紋があれば、すぐに僕を呼べ」

(`・д・)ゞ「はッ!」



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:15:55 ID:jhBsMllgO<> 


そう言って、鑑識のひとりはすぐに作業に戻った。
ショボーンの言った「照合の合わない指紋」とは、都村もしくは犯人のものを指している。
都村の指紋なら問題ないのだが、犯人となると、急遽事件が進展する。
それならまだいい、ショボーンが危惧しているのはそれとはまた別の進展だ。


(´・ω・`)「(指紋が見つからなかった、ということはないよな)」

もし部外者と思わしき指紋が見つからなければ、だ。
犯人は司書の人間で、そうなると更に捜査が必要となる。
しかし、司書の人間ではないのだ、とショボーンは自答していた。


(´・ω・`)「(もしそうなら、トソンちゃんをほったらかしてここから逃げるものか。
.       司書の場合、絶対に現場が図書室とばれちゃあいけないんだ。
.       トソンちゃんも同じように下に落とすなりするだろう)」


都村が倒れていたせいで、犯行現場がすぐに特定できたのだ。
それを考えると、犯人が司書とはとうてい思えない。


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:18:59 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「(それか、トソンちゃんを始末する前に誰かがきた? でも、そうなると凶器はどこに隠したんだ?
.       狼さんが真山田さんを呼んだのも、近くを通りかかったに過ぎないから、
.       ということは狼さんもその場を離れていない。それ以降警察が来るまで
.       ずっと二人はここにいたのだから、そうなると、犯人は犯行から現在に至るまで、逃げられないんだ)」

(;´・ω・)「(これが成立しないとなると、犯人は図書関係の人間ではない……つまり)」

(;´・ω・)「やめだ。考えるのはやめよう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:20:52 ID:jhBsMllgO<> 


ぐったりしたショボーンを見て、三月が声をかけた。
目をしばたたいて、ショボーンは応えた。


(´・ω・`)「司書室も図書室も、扉から指紋を拭き取られた形跡がない以上、
.      もし指紋から部外者が割れなかったら、これは大変な事件になる」

イ(゚、ナリ从「どうしてですか?」

(´・ω・`)「根本的に、犯人は、図書に内通している人間ではないからだ」


と言って、ショボーンは今し方自分が行き着いた推理を説明した。

イ(゚、ナリ从「はあ」

(´・ω・`)「それに、犯人が指紋を拭き取らなかったというのも不思議な話なんだ」

イ(゚、ナリ从「まずは報告です。待ちましょう」

(´・ω・`)「そうだな」


そう言って、鑑識の報告を待った。

まず、図書室に潜んだ犯人は、名治がくるのを待った。
来てから、どうにかして血痕を残さず撲殺、三階から地面に投げ捨てた。
そこに都村がきたのは、偶然か、必然か。
犯人は引き続き都村を殴り、始末しようとした。
しかし、運悪く狼が訪れ、投げ落とせなくなった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:22:26 ID:jhBsMllgO<> 


これが、今のショボーンの推理だ。
しかし、そうだとすると犯人は逃げ出せないし、凶器も隠せない。
図書室全域は隈無く捜査させたため、そのようなことはない。

すると、別の推理ができる。
名治を殺害後、都村を殴った。
狼の姿を見て、犯人は隠れたのではない。
別の、幻のルートから逃げたということだ。

ショボーンが推理していると、後ろから鑑識がショボーンを呼んだ。


(`・д・)ゞ「警部、結果がでました」

(´・ω・`)「報告しろ」

(`・д・)ゞ「はい。司書のもの以外に、狼氏、真山田氏の指紋だけが見つかりました」


その報告に、ショボーンは目をまるくした。
付いていなければならないはずの指紋が、報告になかったからだ。



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:23:36 ID:jhBsMllgO<> 


        −11−

(´・ω・`)「なんだと? ほかにはなかったのか?」

(`・д・)ゞ「以上で間違いありません。拭き取られた形跡も見あたりません」

(´・ω・`)「……わかった、ご苦労」


鑑識がさがったあと、三月が詳細を聞いてきた。
ショボーンが結果を話すと、三月は首をかしげた。


イ(゚、ナリ从「それが、どうしたのですか」

(´・ω・`)「わからないのかい?」


ぶぜんとして、ショボーンは言った。

(´・ω・`)「……ないんだよ、被害者である、名治氏とトソンちゃんの指紋が」

イ(゚、ナリ从「あ」


三月もようやく気づき、駭(おどろ)いた。
ショボーンの懼(おそ)れていた事態が、起こってしまったのだ。



(´・ω・`)「これでは、殺人も、傷害も、無理じゃないか!」



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:25:24 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「ちょっと待ってください」

(´・ω・`)「ん」


ショボーンは、三月の待ったを、まるであの男のような言いぐさだな、と胸中で軽く笑った。
彼とは、優秀で、近寄りがたい存在であるということを踏まえると、お互い似た者同士だな、とも思った。



イ(゚、ナリ从「犯人と害者が、一緒に入室した可能性もあります」

(´・ω・`)「僕もそれを考えた。だがしかし――」

イ(゚、ナリ从「退出する際に指紋が付く――というお考えですか」

(´・ω・`)「ああ」

イ(゚、ナリ从「ですが、元から扉が開いていたなら、その点は問題ないです」

(´・ω・`)「犯人が、犯行をするのに扉を開けっ放しですると思う?」

イ(゚、ナリ从「………」


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:26:44 ID:jhBsMllgO<> 


三月は、口ごもった。
扉に犯人と被害者、両方の指紋がないというのは、まさに奇々怪々なことなのだ。
犯人が図書部などの人間でもなく、狼、真山田を除外すると、
いったい犯人と害者は、どこから進入し、どこから退出したのだろうか?
また、その際の犯行方法、凶器、都村を置き去りにした理由、様々な謎が生まれる。



イ(゚、ナリ从「窓」

(´・ω・`)「ん?」


ふと思い出したかのように、三月は呟いた。
窓を指さし、ショボーンを見て、三月は言った。

イ(゚、ナリ从「窓から出入りした、とかはどうですか」


ショボーンは「いいね」と相づちを打った。
彼は、のしのしと歩き、窓に近づいた。

(´・ω・`)「調べてみよう」


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:29:07 ID:jhBsMllgO<> 


        −12−


窓から外装を見ると、おもしろいことがわかった。
配水管か排水管かは定かでないが、それと思わしき太いパイプが
取り付けられているのだが、それのふとさは直径三十センチはあったのだ。
人が通る分には問題のないふとさだった。

また、パイプをたどって、上下につながるパイプを上り下りすれば、
四階に行ったり、若しくは二回に行ったりできそうだった。
図書室の丁度真上に位置する部屋は家庭科の調理室、真下に位置する部屋は社会科教室だ。
図書室の右隣には、PTAや生徒会が使う会議室で、反対側に行くと階段の踊り場にたどり着く。

もしかしたら、犯人は都村を傷害後、狼に見つかりそうになったため、
ここから上記の三方向に向かい、別の場所に逃げることができたのかもしれない。
それを思うと、検証の価値は十二分にあった。


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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:30:07 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「社会科教室及び調理室も調べますか?」

(´・ω・`)「むやみな捜査は控えるよう言われてるんだ」

イ(゚、ナリ从「では、どうすれば」

(´・ω・`)「まあ、待て。今からしなくちゃいけない実験がある」

そう言って、ショボーンは鑑識に話をして、窓の外に降りた。
パイプに乗ると、足を滑らせてしまいそうで、「おっと」と言ってあわてた。
窓の桟に手をかけ、室内にいる三月に、これから自分がとる行動を目に焼き付けておけ、と言った。


イ(゚、ナリ从「どうするのですか?」

(´・ω・`)「ここから別の場所にいけるか、やってみるんだ」


下から全身を吹き抜ける風が、高所にいるという実感をさせた。
トレンチコートがはためき、少し怖かった。



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:31:29 ID:jhBsMllgO<> 



(´・ω・`)「ここを踏んで上にいけば……」

(;´・ω・)「うおッ!」

イ(゚、ナリ从「!」


パイプを取り付けている金具に足をかけたが、体重を載せたところ、急にパイプが断末魔をあげて軋みはじめたのだ。
これではまずいと思い、すぐにパイプの上に降りた。
金具は錆がひどく、老朽化していたので、もし上に逃げたとすると、金具が耐えられそうになかった。



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:34:27 ID:jhBsMllgO<> 


(;´・ω・)「………上は危ないな」

(´・ω・`)「下は……」


パイプを辿って下に向かったと考えて、パイプを見ていくと、やはり金具が老朽化していた。
上に上るよりかは幾分かは楽そうだったが、それでも難しそうだった。


(´・ω・`)「(難しいな)」


踵を返し、今度は横方向にと、会議室のほうへ進んでいった。
三月の視界からショボーンが見えなくなり、彼女は少しそわそわした。

ショボーンは少し抜けているところがある。
落ちたりでもしたら、大変なことだ。
下にいた警官はいまはもういないので、誰も受け止める者はいない。

しかし、それは杞憂に過ぎなかった。
ショボーンがひょっこりと顔を出したのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:36:05 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「……」

(´・ω・`)「会議室の前まではいけたけど、窓から一メートルほど手前で
.      パイプが行き止まりになったから、中に進入するのは無理だ」

イ(゚、ナリ从「………」

(´・ω・`)「どうした?」

イ(゚、ナリ从「あ、いえ、なんでも」


「どっこいしょ」と声をかけ、ショボーンは図書室に上がり込んだ。
砂埃のついた壁に服を擦っていたため、ショボーンの服は少し黒ずんでいた。
それをはたいて、彼はパイプからの逃走ルートの現状を三月にも伝えた。


(´・ω・`)「ここから外に逃げ、姿を隠すのだけはできるけど、図書室からはどこにも逃げられないよ」

イ(゚、ナリ从「では、逃走ルートははじめからなかった、と」

(´・ω・`)「あのおおきな木には移れたけどねぇ」

イ(゚、ナリ从「木?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:37:34 ID:jhBsMllgO<> 


ショボーンは、図書室から見える、近くに植えられた大きな木を見た。
真冬なのに青々とした葉がついており、ほかの枯れ木と比べて明らかにこの木だけが浮いていた。

その木からとってきたであろう葉を一枚、三月に見せた。
やや硬い葉で、芋虫の餌にはならなさそうだった。


(´・ω・`)「冬なのに、木ってね。珍しい」

イ(゚、ナリ从「あれは確か、世界樹ですね」

(´・ω・`)「世界樹?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:39:23 ID:jhBsMllgO<> 


        −13−


イ(゚、ナリ从「警部は、神話の、ユグドラシル……『世界樹』をご存知ですか?」

(´・ω・`)「神話のほうは、名前だけ」

イ(゚、ナリ从「昔、この国でも最北端に位置する地域、キタコレにてこの木が見つかったと聞きます。
       極寒の地、キタコレの、しかも冬だというのに、青々とした葉をつけていたのが、とても神秘的だったそうです。
       くわえ、樹齢何百年も生きることから、当時の人々は神話になぞって『世界樹』と名付けたようですね」

(´・ω・`)「……」

(;´・ω・)「神話関係ないじゃん!」

イ(゚、ナリ从「私に言われましても」


三月に、その世界樹の説明を受けて、ショボーンはもう一度窓の外にそびえる世界樹に目をやった。
三階部分にまで幹が見えることから、ずいぶん大きく見えるが、ほんとうはまだまだ大きく育つのだろう。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:41:00 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「あそこから木登りのように降りれないかな」

イ(゚、ナリ从「難しいでしょうね。掴む場所もないし、足をかける場所もない。幹の表面に、刃物の跡も残っていない。
       しかも、誰かに見つかりやすいため、リスクが高く、犯罪者の心理に適っていません」

(´・ω・`)「じゃあ、幻のルートはなかった、ということか」


ショボーンは露骨に肩をすくめ、ため息をついた。
脱出ルートがなかったことは、犯人は都村を始末せず
逃走したこととなり、司書関係の人間ではないことを指す。
これでは、犯人を割り出すのは難しくなった。

なぜなら、図書室と司書室の扉には、司書関係の人間と狼、真山田の指紋しかなかったからだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:42:05 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「まいったな……これじゃあ密室同然じゃないか」

イ(゚、ナリ从「もっと単純だったのでは?」

(´・ω・`)「ん?」

イ(゚、ナリ从「犯人が、目撃者というケースです」

(´・ω・`)「……そうなりますぅ?」

イ(゚、ナリ从「そうなります」


三月はきっぱりと言った。
ショボーンは対照的に、漠然と応えた。

犯人が狼と真山田のうち片方だけとなると、立証は簡単そうだが、
共犯だと、立証は物証だけしか頼りにならないから、面倒なのだ。
ショボーンは、司書室で待機している狼と真山田に、話をうかがいに行った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:43:28 ID:jhBsMllgO<> 


        −14−


( ´ー`)「ぼくのアリバイ、ですか」

(´・ω・`)「ええ」

真山田は、頭を掻いた。
いずれ自分にも疑いの目がかかると思っていたが、
それが、自分が思っていたよりも早かったからだ。


リi、゚ー ゚イ`!「アリバイって?」

イ(゚、ナリ从「アリバイとは、現場不在証明です。
       四時半頃、もといあなた方が現場を訪れるまでにとっていた行動をお教えください」

リi、゚ー ゚イ`!「ほえぇ……」


三月が、丁寧に説明を施した。
狼も、急にアリバイを求められ、戸惑っていた。
すると、真山田が先に応えた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:46:36 ID:jhBsMllgO<> 



( ´ー`)「もともと、ぼくは補習を請け負ってたのですよ。
      北館の教室で教えていたのですが、復習用のプリントを
      取りにいこうと本館三階の数学準備室に向かって、
      その帰りに、狼先生に呼ばれまして」


そう言って、近くの机の上に置いていたかごに指をさし、「これが例のプリントです」と言った。
何種類もあるアルファベットが、ショボーンの目を刺激した。
それが十枚弱ある。
おそらく、補習を受けていた生徒は七、八人程度だろう。
このことには、偽りはなさそうだった。
だが、この程度ではアリバイとしては弱かった。


(´・ω・`)「では、その生徒に聞けば?」

( ´ー`)「はい。といっても、数学準備室でだいぶ時間を喰ってしまったので、時系列は多少ずれますが」

(´・ω・`)「はあ。では、犯行時刻は、廊下を歩いていたか、数学準備室にいたかですかね」

( ´ー`)「はい。ただ、数学準備室にはほかに誰もいなかったので、証明はちょっと……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:48:05 ID:jhBsMllgO<> 


(;´・ω・)「(今回の犯行は、極端な話、一分もあれば充分に行えるんだ。
       プリントをとった帰りにでも、殺せる。
       この程度じゃ、アリバイにはならない……。)
      では、そちらは」

リi、゚ー ゚イ`!「受験科目に生物を選んでいる生徒に、みっちり知識を叩き込んだあとです」

(´・ω・`)「と、言うと?」


ショボーンが促すと、狼は流暢に答えた。
心なしか、眼が輝いていた。


リi、゚ー ゚イ`!「週末に、多くの大学での、最終の受験が待ちかまえているのです。
       放課後も使い、生徒に生物を、また要望があれば地学等も教えています。
       私、担当科目、毎年のように替わりますから」


と言って、照れくさそうな笑顔を見せた。
この言葉にも、偽りはなさそうだった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:49:28 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「では、今日も?」

ショボーンが言葉を濁して訊くと、狼は少し狼狽えた。
ショボーンは「おや」と思った。


リi、゚ー ゚イ`!「今日は、その。四時で切り上げて……」

(´・ω・`)「ほほう。それはなぜですかな?」

リi、゚ー ゚イ`!「コピーしてたはずのプリントが、なくなってたんですよ。
       教科書の範囲外の要点を押さえるプリントだから、なくては補習ができないため――」

(´・ω・`)「……なくなった?」

リi、゚ー ゚イ`!「原板は家だから、コピーもできなかったので。
       職員室か生物準備室を捜せば、ひょっこり出てくるかもですが……。
       あ、そうだ、警部さんも捜していただけませんか?」

(;´・ω・)「結構です。じゃあ、四時半頃のあなたは?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:51:07 ID:jhBsMllgO<> 


リi、゚ー ゚イ`!「半泣きのまま、プリントを捜してました。
       いや、ぼろぼろに泣いてたなあ」

(;´・ω・)「は、はぁ……」


言われてみれば、狼の目尻のほうに、うっすらと涙の跡が見えた。
本気で捜していたのだなとは思えたが、それでもアリバイとしては弱かった。

ショボーンは礼を言って、司書室をでた。
今の彼は、かなり難しい顔をしており、隣にいる三月が彼に畏怖の念を抱いていた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:53:50 ID:jhBsMllgO<> 



        −15−



(´・ω・`)「妙だ」

イ(゚、ナリ从「どうされました?」

(´・ω・`)「目撃者が疑われるというのはよくあるケースだ。
.      もし犯人が目撃者だとすると、犯人もそれをわかっているはずなんだ。
.      なのに、二人ともアリバイがないとなると、あの二人は犯人じゃないのかもしれんな」

イ(゚、ナリ从「強固なアリバイほど崩しやすいですが、あやふやなアリバイほど崩せないものはないですしね」

(´・ω・`)「ああ」


二人は図書室をでて、ショボーンは腕を組みながら廊下を行ったり来たりしていた。
眉をひそめ、頭の中で、今回の事件の内容を整理しているのだ。
それは、言い換えれば、数々のちいさな状況証拠の末端をつなぎ合わせ、
か細くてもいいから、なにかロジックの繋がりを求めているのだ。
だが、ロジックを追うには、なにかが足りなかった。

ショボーンにいらいらが募りはじめた頃、三月の電話が鳴った。
初期設定のまま変更していない、シンプルな着信音だった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:55:01 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「三月です。……ああ、ご苦労」


二、三言話すと、三月は電話をきった。
部下との通話のようで、なにか報告を受けたようだった。

電話をポケットに入れると、彼女はショボーンに走るよう促して、中庭に向かった。
ショボーンは、報告の内容が、うっすらと掴めた。
それがいいことか悪いことかは、わからなかったが。


(´・ω・`)「トソンちゃんが?」

イ(゚、ナリ从「ええ。思い出したことがある、と」

(´・ω・`)「なるほど。急ごう」


(´・ω・`)「(……なんで僕に電話しないんだ!)」


階段を駆け下りながら、ショボーンはそう思った。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:56:57 ID:jhBsMllgO<> 


        −16−


噴水がきれいな、中庭にでると、やはり寒かった。
トレンチコートを着込み、ショボーンは噴水前のベンチに歩み寄った。
そこには、稚内と、病人の姿の都村がいて、都村も、立っていた。



(´・ω・`)「報告しろ」

( ><)「彼女が、頭が痛いというので、どうしたのかと聞くと、
      なにやらうっすらと思い出したことがあるみたいなんです」

(´・ω・`)「トソンちゃん?」


都村を見ると、先程までとは違い、きりっとした、まじめな顔になっていた。
この顔だけ見ると、記憶喪失者とはとうてい思えなかった。


(゚、゚トソン「……」

(´・ω・`)「どうしたんだい? 思い出した?」

(゚、゚トソン「……」

(゚、゚トソン「私、図書室に行った」

(´・ω・`)「!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 18:59:31 ID:jhBsMllgO<> 


都村は、ゆっくり言った。
自分の身体を抱き、続けて


( 、 トソン「寒い。図書室のなか、寒い」

(´・ω・`)「さ……寒い?」

(゚、゚トソン「図書室には、だれもいなかった。
.     だから室内から司書室に行こうとした」

(´・ω・`)「(待て、報告にトソンちゃんの指紋は――)」


廊下と繋がる図書室、司書室の扉、及び二つを直接つなぐ扉のどれにも、
都村の指紋はなかった。しかし、都村は開いたと言っている。


(゚、゚トソン「開いた瞬間――」

(´・ω・`)「瞬間?」

(゚、゚トソン「……」

( 、 トソン「うう……」

(´・ω・`)「無理はしなくていい。思い出せないなら、そう言っていいよ」


そこで、出会い頭に殴られたのだろう。
都村は、当時のことを思い出したのか、頭を押さえ、少し悶えた。
ショボーンはすぐに彼女をなだめた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:01:27 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「図書室には、ひとりだった?」

(゚、゚トソン「………えっと」

(゚ー゚トソン「うん。ひとり」

イ(゚、ナリ从「そう」

(;´・ω・)「ま、待て。
      (データと食い違いすぎるぞ)」

イ(゚、ナリ从「はい?」

(´・ω・`)「戻るぞ。現場を見直す」

イ(゚、ナリ从「はい」


三月が返事をすると、都村が心配げに

(゚、゚トソン「私は?」

(´・ω・`)「トソンちゃんも、よかったらついてきて」

(゚ー゚トソン「………はい!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:02:22 ID:jhBsMllgO<> 


都村は、とびきりの笑顔で、応えた。
それを見て、ショボーンは都村の手をひいて、一緒に駆けだした。
三月も、彼女のスピードに合わせた。


( ><)

( ;><)「え、僕は!?」


遠くのほうで、稚内の声が聞こえた。
しかし、ショボーンは「知るか!」とだけ言って、彼を置いてけぼりにした。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:03:20 ID:jhBsMllgO<> 



        −17−


三月が、図書室にいる鑑識のひとりを捕まえ、話を聞いた。
鑑識は三月の美貌に見惚れるも、すぐにはっとして応えた。


(`・д・)ゞ「はい。確かに、三つの扉全てを調べましたが、都村氏の指紋は見つかりませんでした」

イ(゚、ナリ从「拭き取られた跡もだな?」

(`・д・)ゞ「はい。間違いありません」

イ(゚、ナリ从「……とのことです」

(´・ω・`)「……妙だ」


ショボーンは、腕を組んで、考えた。
都村が嘘を言ったようには見えなかったし、そもそも彼女が嘘をつく理由はどこにもない。
記憶喪失しているのだから、つくはずもないのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:04:51 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「(いや、記憶喪失しているからこそ、なにか記憶違いをおかしているかもしれないんだ)」

記憶を失う前の、ある二つの場面での出来事が一つに重なり、
いまのように、現実と矛盾したのかもしれない。
そう考えると、都村の記憶は、まるであてにならないのだ。
と、ショボーンは、真っ先にこの結論に至った自分を、悲しく思った。


イ(゚、ナリ从「ほんとうに、ここを開いた?」

(゚、゚トソン「たぶん……」

(´・ω・`)「トソンちゃん、ちょっとここをうろちょろしてみなよ。なにか思い出すかも」

(゚、゚トソン「……うん」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:05:49 ID:jhBsMllgO<> 


都村は、言われるがまま、図書室を散策しはじめた。
ショボーンは、それほど現場保存を徹底しない刑事のため、
別にたとえ彼女が本に触れようが、さほど気にしないのだ。
それよりも、三月はショボーンの真意に気づいた。


イ(゚、ナリ从「人払いをしてまで言いたいことは、なんでしょう」

ショボーンが三月に言おうとしたことは、都村の記憶に関するものだ。
言及される側としては、おもしろくないことこの上なしだろう。
脳に障るかもしれないことを配慮して、ショボーンは都村に
聞こえないように、彼女に散策を勧めたのだ。
それを、三月は一瞬で見抜いた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:06:33 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「この扉を開いた瞬間、殴られた。彼女の記憶では、そうだ」

イ(゚、ナリ从「しかし、気のせいでしょう。指紋がありません」

(´・ω・`)「発想を変えるんだ。気のせいでは、この証言は生まれない」

イ(゚、ナリ从「と、仰ると」

(´・ω・`)「この証言で、確実にわかることがひとつ、あるんだ」


ショボーンは両手でピースをつくって、ニッと笑った。
彼がこうする時は、決まってなぞなぞを出すときだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:07:54 ID:jhBsMllgO<> 


(´・ω・`)「ここでクイズ。トソンちゃんの
.      『図書室から司書室に向かおうと扉を開いた瞬間、出会い頭に殴られた』
.      という証言から、実際にはなにがあったのか、わかることはなんだと思う?」

イ(゚、ナリ从「実際には……というと?」

(´・ω・`)「彼女は、記憶違いを起こしている。それは、指紋の件からして、間違いない。
.      では、彼女の身に関して、ほんとうはなにが起こったんだと思う?」


三月は、ショボーンの言っている意味がよくわからなかった。
記憶違いを起こしている都村は、なにかを勘違いしているため、証言を鵜呑みにはできない。
しかし、証言のある一部分だけは、紛れもない事実を述べている。
ショボーンは、それを答えろ、と言っているのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:09:24 ID:jhBsMllgO<> 


イ(゚、ナリ从「図書室、司書室というのは記憶違いです」

(´・ω・`)「だから、図書室の扉を開いた瞬間殴られた、これは違う」

イ(゚、ナリ从「では……?」




(´・ω・`)「トソンちゃんはどこかの#烽開いた瞬間に殴られたんだ。
.      そこが、ほんとうの殺人現場だったんだ!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/24(土) 19:10:51 ID:jhBsMllgO<>いったん休憩します。

なんか人が少なすぎる気がするが、気のせいだよな
なんだよ、大晦日の大掃除、一週間前からすんのか?皆忙しすぎだろ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/24(土) 19:36:56 ID:juMHSd5M0<>>>728
俺は見てるぞ!ただの平日だしな!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/24(土) 19:41:44 ID:hWluNAFo0<>おお投下来たか
確かに人が少ない気がするな・・・年賀状でも書いてんのかな?<> 名も無きAAのようです<><>2011/12/24(土) 19:43:05 ID:.ydp5s1E0<>>>728
俺も居るんだぜ
平日は暇だからな<>
◆wPvTfIHSQ6<>sage<>2011/12/24(土) 22:52:53 ID:jhBsMllgO<>十二月のセントラルパークブルース / Mr.Children

毎年これを聴くことにしてるんだ
というわけで後編は明日投下します
同志の皆さま、また明日お会いしましょう<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:03:50 ID:ESs.Bz4MO<>ハッピーニューイヤー!
え、まだ早い?
でも今日使う、似た感じの響きの挨拶はあるよね?忘れたけど。

というわけで後編(定義はしてないけど)投下します。<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:06:22 ID:ESs.Bz4MO<> 



        −18−



イ(゚、ナリ从「なるほど」

(´・ω・`)「それは隣の会議室かもしれないし、どこかのトイレかもしれない。
.      とにかく、そこで扉を開いた瞬間に、殴られたんだ」

イ(゚、ナリ从「では、校内全域を捜せば――」


三月が言いかけたのを、ショボーンはとめた。
苦い顔をして、彼は続けた。

(´・ω・`)「無理なんだ。むやみに捜査すると、上の人のかんに障る。
.      捜査に踏み出すには、なにか納得されるような根拠がいる」

イ(゚、ナリ从「……そう、ですか」

(´・ω・`)「確実なのは、トソンちゃんが思い出してくれることだが――」

(´・ω・`)「……待てよ?」

イ(゚、ナリ从「どうしました?」


ショボーンの顔に変化が見られた。


(´・ω・`)「ひとつ、気がかりなことを思い出してね」

イ(゚、ナリ从「なんでしょう」

(´・ω・`)「彼女の証言を思い出してよ」

イ(゚、ナリ从「扉を開いたら――」

(´・ω・`)「違う違う。もっと、前。
.      彼女は、不思議なことを言ったんだ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:07:02 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「―――寒い≠チて、ね」



 ( 、 トソン『寒い。図書室のなか、寒い』

 (´・ω・`)『さ……寒い?』



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:08:05 ID:ESs.Bz4MO<> 


都村は、回想の際、図書室の気温に言及した。
だが、ショボーンはそれをずっと怪訝に思っていたのだ。

なぜなら

(´・ω・`)「図書室は、というより、校内全域は、どこも暖房がかかっているはずなんだ」

イ(゚、ナリ从「それも記憶違いでは?」


ここが公立学校なら、あるいは異なったかもしれない。
しかし、ここは、違う。
私立の学校で、部屋のほとんどには空調設備が備わっている。
図書室であれ、教室であれ、室内にいれば寒いと思うことはないのだ。

三月の当然の推理に、ショボーンは賛同しなかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:09:19 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「この証言には、ふたつの問題点がある」

イ(゚、ナリ从「ひとつは、場所の問題ですね」

(´・ω・`)「そうだ。仮に図書室で寒さを感じたのなら、図書室で窓を開けていないとだめだ。
.      しかし、それだと犯人はトソンちゃんを下に突き落とす機会があった、ということ。
.      なのに、犯人はトソンちゃんを始末していない。寒さを感じたのは、少なくとも図書室じゃないんだ」

イ(゚、ナリ从「では、もうひとつは?」

(´・ω・`)「この校内で、寒さを感じる場所が、室外しかない、ということだよ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:12:12 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −19−


(´・ω・`)「しかも、あの言いぐさでは、一瞬だけ外にいたとは思えない。
.      少なくとも一分は、寒さを感じていたような言いぐさだ」

イ(゚、ナリ从「でも、彼女は――」

(´・ω・`)「殴られるより前は、通常の思考なんだから、意味もなくじっと寒いところにいるはずがない。
.      ということは、殴られたあとに、寒いところにいたと考えるべきなんだ」

イ(゚、ナリ从「待ってください、彼女は図書室に横たわっていたはずですし、
       図書室内では、このように暖房もかかっているのですよ」


耳をすませば、空調機が温かい風を吐いているのが聞こえる。
図書室全域の室温を均一に上げるため、風向はあちこち変わる。

そして、問題だが、この暖房は生徒が自由に触れるものではないし、
犯人に言わせても、わざわざ暖房を切る意味は全くない訳である。
ということは、都村は殴られてから狼と真山田に介抱されるまでの間、
図書室とは違う、どこか寒い場所にいた、ということになるのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:13:27 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「………もしかしたら、それが今回の事件だったのかもしれないな」

イ(゚、ナリ从「今回の、というと?」

(´・ω・`)「トソンちゃんの件だよ。
.      この、トソンちゃんの寒い≠フ真意がわかれば、事件は解決するはずなんだ」

イ(゚、ナリ从「警部はどうお考えですか」

(´・ω・`)「データが足りないな」


口を尖らせて、ショボーンは言った。
解決は目の前だと言うのに、なにかがショボーンの
行く手を阻んでいて、それがもどかしかった。
なぜ、都村は感じるはずのない寒さを感じたのか。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:20:10 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「(考えろ……。トソンちゃんは図書室に入り、司書室に向かった。
.       そこで、扉を開いた瞬間に、殴られて……)」

(;´・ω・)「(違う違う。少なくとも図書室では襲われてないんだった。
       彼女は、どこか別の場所で襲われて、そこから……そこから……?)」

(;´・ω・)「そこから……移動させられた?」

イ(゚、ナリ从「?」


ショボーンが、ぼそっと独り言をつぶやいた。
聞き取れなかった三月が振り向くと、ちょうどショボーンの後ろのほうに都村が見えた。
うろちょろしていて、きょろきょろしている。
彼女は、鑑識に話しかけられると、笑顔で返していた。
そして、彼女が踵を返したとき、彼女の身体からなにかが落ちるのを、三月は見た。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:21:30 ID:ESs.Bz4MO<> 


(;´・ω・)「なぜだ……犯人は、なぜ?」

イ(゚、ナリ从「(あれは……なんだろう)」

三月が、その都村の身体――もしくは、着ている服――からはらりと
落ちたものに気をとられ、ショボーンをほったらかして、それを確かめにいった。
都村も三月が近寄るのに気がついて、笑顔で三月に挨拶をした。

(゚ー゚トソン「どうされました?」

イ(゚、ナリ从「これ……」


手袋をつけ、それを拾った。
やや硬い質感の、葉っぱだった。
それを見て、都村は首をかしげた。


(゚ー゚トソン「なんですか、それ」

イ(゚、ナリ从「さあ。君の身体から落ちたのだぞ」

(゚、゚;トソン「え? うそだ」

イ(゚、ナリ从「これは――世界樹の葉?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:22:44 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −20−


三月は、図書室からすぐそこに見える大木、世界樹を見た。
間違いない、この葉っぱはあそこにある世界樹のものと同一だ、と三月は確信した。
しかし、なぜ葉がそこに、しかも都村の身体から見えたのか、それはわからなかった。


イ(゚、ナリ从「つむ……おほん。トソン、ちゃん」

(゚ー゚トソン「はい?」

イ(゚、ナリ从「まさかと思うが、君、稚内と一緒に木登りでもした?」

(゚、゚;トソン「ま、まさか!」

イ(゚、ナリ从「(だろうな……)」


稚内が付き添っていたらあり得そうだったが、まあ病人が木を登るわけあるまい。
すると、三月はもしやと思い、都村を奥に誘った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:24:02 ID:ESs.Bz4MO<> 


イ(゚、ナリ从「すまない、カーディガンをとってくれないか?」

(゚、゚トソン「は、はい」


病人の着用する、清潔な服の上から羽織られた、
紺のカーディガンを指して、三月は言った。
都村は言われた通りカーディガンをとった。
首をかしげる都村の、服に手をかけた。


イ(゚、ナリ从「無礼を承知で頼むが、ちょっとだけ脱いでくれ」

(゚ー゚トソン

(゚、゚;トソン「え!?」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:27:04 ID:ESs.Bz4MO<> 


周りには、少なくなったとはいえまだ鑑識がうろちょろしている。
皆、成人の男性だ、女子高生の都村が抵抗をおぼえるのもしかたがない。


イ(゚、ナリ从「語弊が生じたか。
       ただ、ちょっと服を揺すってくれ。
       まだ葉っぱが付いているかもしれない」

(゚、゚;トソン「こ……こう?」


都村は恥じらいながら、ちょこんと服をつまみ、上下に揺すった。
少しすると、はらりと、葉が足下に落ちたのが見えた。

下着か、インナーか、定かではないが、世界樹の葉が付いていたようだ。
その葉を拾い上げ、三月はますます怪訝な顔をした。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:28:16 ID:ESs.Bz4MO<> 


イ(゚、ナリ从「これはいったい……」

(゚、゚;トソン「私、病院でこの服に着替えたんですが」

イ(゚、ナリ从「いや、葉っぱはこの服の内側に付いている。
       病院に搬送される前に付いた、とみたほうがいいだろうな」

イ(゚、ナリ从「ただ……」

イ(-、ナリ从「(それだと、事件当時、または事件直後の出来事だ。なぜ、世界樹が関連する?)」


三月は少し考えていたが、いくら思考に耽っても、一定の結論には至らなかった。
とにかくショボーンにこのことを伝えようと、葉を持ち、都村と一緒にショボーンのもとへ戻った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:30:10 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「ん?」

イ(゚、ナリ从「あの世界樹の葉ですが、都村さんも持ってたのです。
       いや、たまたま身体にくっついていた、ですが」

(´・ω・`)「なんで?」

イ(゚、ナリ从「病院に搬送されるより以前に付いたのだけは確かです」

(´・ω・`)「ふつう、そんなのが付いてたら気づくな。
.      それが付いてた、ということは、それは事件と同時に付いたと見ていいな」

イ(゚、ナリ从「私もそこまでは考えたのですが、いったい、なぜかは――」


すると、ショボーンは「あっ!」と大きな声を出した。
都村と三月は同時に肩をびくつかせ、ショボーンを見た。
近くにいる鑑識に聞こえるように、ショボーンは言った。

そのときのショボーンの姿だが、三月の目には、立派な刑事として映っていた。


(´・ω・`)「手の空いている者は、僕についてこい。
.      指紋の照合の用意をして、だ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:31:17 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −21−


そう言って、ショボーンは急に駆け出した。
そのため、三月と鑑識は驚いて、慌てて彼のあとに続いた。

足の速い三月は、すぐにショボーンと並んだ。
息を弾ませながら、三月はショボーンに聞いた。


イ(゚、ナリ从「どうしたのですか」

(´・ω・`)「わかったんだ。トソンちゃんが、事件後ほんとうにいた場所が!」

イ(゚、ナリ从「ほ、ほんとうの?」

(´・ω・`)「世界樹の根本を調べるぞ。それで事件は解決する」

イ(゚、ナリ从「は……はい!」


このときに三月の目に映ったショボーンの姿は、とても格好良かった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:33:38 ID:ESs.Bz4MO<> 


冬でも枯れない木として有名な世界樹だが、さすがに落ち葉も多かった。
ショボーンは、この落ち葉に付いてある指紋を片っ端から調べていけ、と指示した。
だが、枚数として、ざっと百、二百枚は超えている。
この寒さの中、そんな作業を強いられ、鑑識たちは狼狽えたが、それを見てショボーンは喝をいれた。


(´・ω・`)「僕の推理が正しければ、この落ち葉のなかに必ず犯人の指紋がある。
.      犯人を追い詰める、唯一の証拠かもしれないんだ! 気を抜くな!」

(`・д・)ゞ「は……はい!」

(´・ω・`)「散れ!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:35:54 ID:ESs.Bz4MO<> 


鑑識の士気をあげ、ショボーンは踵を返した。
三月は「おや」と思い、彼にどうしたのかと聞いた。

イ(゚、ナリ从「世界樹の根本を調べるのでは?」

(´・ω・`)「まだ調べてない場所がある。そこに残りの鑑識を全員動員させる」

イ(゚、ナリ从「全員……」


荒っぽいやり方だな、と三月は思った。
図書室は調べなくていいのか、と聞くと、ショボーンは即答した。

(´・ω・`)「あそこはあれ以上調べてもなにもでない。
.      おい、おまえ!」

(`・д・)ゞ「はい」


ショボーンは、近くを通りかかった鑑識を捕まえた。
彼は慌てることもなく、ショボーンの指示を仰いだ。

(´・ω・`)「残りの鑑識を全員連れて、四階、ちょうど調理室の辺りを調べろ。
.      そこで凶器になりそうなものは全て、血液反応を調べるんだ」

(`・д・)ゞ「はい!」

イ(゚、ナリ从「……四階?」

(´・ω・`)「いくよイナリちゃん。僕らも行くんだ、ほんとうの現場に」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:37:18 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −22−


四階、丁度図書室の上に位置するところへと向かった。
報告では調理室と聞いたが、そこは厳密に言えば調理準備室だった。

調理室というだけあって、凶器になりそうなものはかなりあった。
包丁にはじまり、ピック、ピザカッターなど、刃物ならいくらでもあるのだ。
ただ、被害者である名治も都村も、鈍器のようなもので殴られている。
鈍器に限って言うと、そこには凶器になり得そうなものは少なかった。


(´・ω・`)「調理準備室の真下は……」


調理準備室の窓から顔をのぞかせ、真下を見た。
風が自分の顔を攻撃し、冷たかったが、そんなことは今は気にならなかった。
それよりも、ショボーンがガッツポーズを見せたのは、
丁度目の前に、世界樹がそびえ立っていたからだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:40:08 ID:ESs.Bz4MO<> 


続いて、ショボーンは目測で窓の大きさを調べた。
窓はガラス製による横開きのもので、大きさは総合して二メートルはある。


(´・ω・`)「やはり……」

(`・д・)ゞ「警部!」


調理準備室の扉を強く開き、続けて鑑識が声を張り上げた。
待ってましたと言わんばかりにショボーンが応えた。
鑑識の顔色はとてもよかった。


(´・ω・`)「お。見つかったか?」

(`・д・)ゞ「ええ。消火器の角に、うっすらと。これが凶器でしょうか?」

(´・ω・`)「その消火器の、重量は」

(`・д・)ゞ「割と重たいです。まあ、この程度なら子どもでももてますが。
.       しかし、遠心力を付ければ、殺害など簡単と思われます」

(´・ω・`)「指紋はなかったんだな」

(`・д・)ゞ「ええ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:41:27 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「……よし。よく見つけた。ご苦労だったな」

(`・д・)ゞ「いたみいります」


報告を終え、鑑識は退室した。
未だに現状を把握しきれていない三月が、
ショボーンの顔を見ると、彼のほうは実に満足げな表情をしていた。


(´・ω・`)「イナリちゃん、いくよ」

イ(゚、ナリ从「今度はどちらへ?」

(´・ω・`)「決まってるじゃない」


三月に歩くよう促し、一緒にショボーンも歩き始めて、同時に言った。



(´・ω・`)「犯人を捕まえにだよ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:42:21 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −23−


 時折、三月の目の前に浮かぶ、地獄絵図のような光景がある。
 それはいつの記憶かもわからぬ、遠い日の記憶である。

 左目から見える光景は、真っ赤だ。
 右目から、かろうじて見えた光景がある。

 生命の灯火が消えたあとも、決して娘を離さず抱擁する母。
 右目の近くを斬られ、血を流し、気を失った、姉か妹かもわからぬ、己の姉妹。
 そして、絶えず声をかける、父の姿。


そのときの父の姿と、ショボーンの今の姿が、どこか、重なって見えた。
犯人を追い詰める時のショボーンの顔は、どことなく、惹かれるなにかを感じさせたのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:44:56 ID:ESs.Bz4MO<> 


無口になった三月を連れて、ショボーンは司書室に向かった。
狼と真山田の二人は、呑気に談話をしていた。
その姿を見て、ショボーンは彼らに歩み寄った。


(´・ω・`)「いいですか」

( ´ー`)「はい」

リi、゚ー ゚イ`!「アリバイの話ですか?」

(´・ω・`)「いや、アリバイはいいんだ。……もう」

リi、゚ー ゚イ`!「?」


悲しそうに、言って、ショボーンは俯いた。
そして、ゆっくり後ろに手を回し、ベルトのホルダーから手錠を取り出した。
じゃらじゃらとした鎖の音は、何度聞いても聞き慣れなかった。
その取り出した手錠の意味することがわかって、真山田はぎょっとした。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:45:48 ID:ESs.Bz4MO<> 


( ´ー`)「……もしかして」

(´・ω・`)「お迎えにあがりました」

( ´ー`)「……」


真山田の額に、脂汗がびっしょりと浮かんできたのが見えた。
三月はもしや、と思った。


イ(゚、ナリ从「警部、犯人は――」

(´・ω・`)「――今回は、いたってシンプルな事件でした」

イ(゚、ナリ从「!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:46:55 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「図書室で、名治氏を撲殺。現場が図書室であるという事実を隠すために、更に突き落とした。次いで、都村氏が襲われた。
.      この、なんの変哲もない事件を解決するのに、たいへんな労力を要しました。それはなぜか?」

( ´ー`)「……」

(´・ω・`)「犯人によって、事実が工作されたからです」

リi、゚ー ゚イ`!「……!」

(´・ω・`)「おわかりですね?」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:47:44 ID:ESs.Bz4MO<> 



ショボーンは、そっと手錠を突き出した。


(´・ω・`)「狼シグン。名治殺害容疑、及び傷害の疑いで逮捕する」




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:48:45 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −24−


ショボーンの言った言葉は、決して大きな声で放たれたものではなかった。
当人に聞こえるよう、つぶやきに近いものだった。
なのに、その言葉は、三月、真山田、そして狼、皆の胸の奥底に、深く、重くのしかかった。
数秒ばかしの静寂が生まれるのも、仕方がないことだった。


リi、゚ー ゚イ`!「……え?」

( ´ー`)「狼…先生?」

(´・ω・`)「異論はあるか?」


ショボーンが聞くと、狼は少したじろいだ。
顔をやかんのように紅潮させ、荒い息遣いで、ショボーンにくってかかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:49:41 ID:ESs.Bz4MO<> 


リi、゚ー ゚イ`!「しょ、証拠でもあるんですか?」

(´・ω・`)「証拠じゃない。犯人が、あなた以外にはあり得ないんだ」

(´・ω・`)「第一発見者……だからな」

リi、゚ー ゚イ`!「第一発見者だからって犯人になれば、警察はいりませんよ」

ぶぜんとして狼は言い返した。
かなり熱り立っていて、まさに一触即発と言えるような状態だった。


(´・ω・`)「違うんだ」

リi、゚ー ゚イ`!「はい?」

(´・ω・`)「今回の犯行トリックを使うには、自身が第一発見者になるしかないんだ」

( ´ー`)「え……」

イ(゚、ナリ从「警部には、その犯行トリックがおわかりで?」

(´・ω・`)「ああ」



(´・ω・`)「明かしてやろう、ほんとうの殺人ルートを」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:53:08 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「ほんとうの殺人現場は、ここ、図書室じゃない。
.      四階の、調理準備室だ」

(;´ー`)「なんですって!? ここじゃないのですか!」

(´・ω・`)「それが、犯人――狼さんの策略です。
.      おかげで、ずいぶんと時間を無駄にしてしまったものだ」

リi、゚ー ゚イ`!「どうして調理準備室が殺人現場なんですかっ!」

(´・ω・`)「じゃあ逆に聞こう。現場が図書室であるという根拠は?」

リi、゚ー ゚イ`!「都村さんが倒れていて……」

(´・ω・`)「ほかには?」

リi、゚ー ゚イ`!「……」

リi、゚ー ゚;イ`!「……ぁぁ…」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:54:45 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「そうだ、図書室が現場だと思った理由はトソンちゃんの有無。
.      ……逆に言うと、それだけなんだよ。
.      つまり、彼女をあそこに寝かせておくだけで、現場を偽れたのさ」

イ(゚、ナリ从「!」

(´・ω・`)「僕らは、名治さんの一件から、犯人は、図書室が現場であるということを隠したがっていた
.      ふしがあったのではないか、と思っていた。だが、実際は逆だった」

(´・ω・`)「犯人は、図書室が現場であるということにしたかったんだ」

(;´ー`)「なぜですか!」

(´・ω・`)「そうすることで、事件を錯乱できる。自分を容疑者からはずせるからです」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:56:09 ID:ESs.Bz4MO<> 


リi、゚ー ゚イ`!「でも、所詮それは独りよがりな推理でしょ!」

(´・ω・`)「ところが、これが見つかると、どうもそう言ってられないんですよね」


と言って、持ってきた、凶器の消火器を見せた。
血は拭き取られていたが、それは、現代の科学力では、いとも容易く発見できる。
指紋も拭き取られていたが、犯人がわかっていれば、それはどうでもいいようなことなのだ。

ショボーンは手袋をはめ、消火器を逆手に持った。
振ってみるだけで、Gが腕の全体にかかるのが実感できた。


(´・ω・`)「これ。四階、調理室前にあった消火器ですが、こいつが凶器です。血液反応がでました」

リi、゚ー ゚イ`!「……」

(´・ω・`)「犯人は、名治さんをこいつで殴り、下に突き落とした。
.      次いで、トソンちゃんを気絶させ、三階に運んだ」

リi、゚ー ゚イ`!「待ってください、警部さん」


狼が、にんまりと笑った。
彼女には、まだまだ余裕があるように思えた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:58:26 ID:ESs.Bz4MO<> 



        −25−


リi、゚ー ゚イ`!「彼女、スリムですが、人間なのだから、消火器に比べるとすごく重いです。米袋を持つのとではわけが違います。
       細腕の私が、彼女を抱いて、誰にも見られずに素早く運べると思いますか?」


狼の腕は、確かに女性らしいしなやかなものだった。
消火器を振ることは、遠心力を用いるなり加速させるなりと
なにかと説明がつくが、こればかりはどうしようもなかった。

四十キロを超えるとなれば、数秒は引きずるようにして運べても、
抱きかかえ、そして手早く運ぶのは、彼女には不可能だろう。
腕力、スピード、時間、人目。四つの条件が立ちはだかるのだ。

ところが、ショボーンは狼以上ににんまりと笑った。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 15:59:39 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「それが、今回の事件で一番の謎でした。
.      彼女の移動ルートが、掴めなかったのです」

( ´ー`)「移動って、抱いて廊下をわたる以外にあるのですか?」

(´・ω・`)「あったのですよ。
.      幻のルート≠ェ」

(;´ー`)「幻……?」


ショボーンは、司書室の窓を思い切り開いた。
冬の冷たい風が吹き込んできて、室内の暖房による熱が逃げた。
そしてショボーンは、前方に見える、世界樹を指した。



(´・ω・`)「信じられないことだが」

(´・ω・`)「犯人は、トソンちゃんをこの樹に投げたんだ」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:02:21 ID:ESs.Bz4MO<> 


リi、゚ー ゚;イ`!「……っ!」

( ;´ー`)「な…投げたって、信じられない!
      あなたの話では、確か都村さんを三階に移動させて――」

(´・ω・`)「ここから、窓の外にでて、パイプを伝うと世界樹の枝に乗れるのですよ」

( ´ー`)「!」


(´・ω・`)「いくら四十キロ、五十キロあっても、投げるのは簡単だ。振り子の原理さえあればな」

イ(゚、ナリ从「……まさか」

(´・ω・`)「そう。ここから世界樹に目掛けてトソンちゃんを投げ、単身になった犯人は
.      一人で三階図書室に移動し、パイプを伝ってトソンちゃんを回収した。
.      これが幻のルート≠セ!」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:03:04 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「吊すようにトソンちゃんを持ち、壁に体重をかければ、足を踏み外さない限りは回収に成功する」

(´・ω・`)「あとは、彼女を図書室に寝かせて、誰でもいいから目撃者≠連れてきた」

( ´ー`)「!」

(´・ω・`)「あくまで、名目上は『女の子が倒れている。助けてほしい』と言って……」

リi、 ー ;イ`!「………」



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:05:44 ID:ESs.Bz4MO<> 



(´・ω・`)「真山田さんが死体を発見したのは偶然だろうが、それでもいつかは警官が見つけるでしょう。
.      そこで、殺人事件発覚だが……狼さん、あなたは、ここで錯覚をねらった」

( ´ー`)「錯覚、とは?」

(´・ω・`)「ふつうに第一発見者となれば、疑いがかかるのは必然だ。
.      だが、彼女の場合、違う。彼女が見たのは、倒れているトソンちゃんだ。
.      名治殺害の件については、さほど追究されなかったでしょう」

(´・ω・`)「そして、錯覚とは現場の錯覚です。
.      トソンちゃんの件で、現場が図書室であると思われ、図書室が重点的に調べられる。
.      狼さん、あなたはこれをねらったんだ。図書室を調べようが、なにも出てこないんだからね……」

リi、゚ー ゚;イ`!「……」

(´・ω・`)「この犯行は、自身が第一発見者にならないと成立しないんだ。
.      すなわち、狼さん」



(´・ω・`)「あなたが、犯人だ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:07:38 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −26−


狼は、思わずショボーンから顔を背けた。
時折肩を震わせ、自分で自分を抱いている。

真山田が心配そうに見つめるが、彼女はだんまりとしていた。
ショボーンが、「終わった」と一息ついた時だ。
狼が、吠えた。



リi、゚- ゚イ`!「ちがうっ!!」

(´・ω・`)「違う、とは?」

リi、゚- ゚イ`!「なによ、あなたのへっぽこな推理。証拠のかけらもない!
       世界樹を経由した移動ルート? そこを通った、という証拠があるのですか?」

ショボーンは一度口を閉じた。
狼が、熱り立っているからだ。


(´・ω・`)「……ありますよ」


そしてショボーンは、ビニル袋に入った、ある一枚の葉を見せた。
この時期に、青い葉を見せることができるのは、世界樹だけだ。
その葉を、狼に突きつけた。


(´・ω・`)「彼女の服に、付いてましたよ」

リi、゚- ゚イ`!「えっ…」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:09:52 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「服と言っても、今着ている服ではない。……制服からだ。
.      妙ですね、なぜこのようなところに、世界樹の葉っぱが?」

リi、゚- ゚;イ`!「きっと……付いたのに気が付かなかったのでしょう」

(´・ω・`)「登校中の話なら、確かに合点がいきます。
.      ただ、そうだとすると必ずクラスメートがそれに気づく。
.      登校中に付いたものだとすると、おかしいのですよ」

(´・ω・`)「そして、体育の授業があったとして、それでもクラスメートが気づく。
.      トソンちゃんの服に世界樹の葉が付いて、誰も気づかないのは放課後だ。
.      ……おわかりですね?」

リi、゚- ゚;イ`!「移動の際に付いた……とか言わないでしょうね」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:11:04 ID:ESs.Bz4MO<> 


すると、ショボーンは掌を強くたたいた。
乾いた、おおきな音が狼の鼓膜を揺らした。


(´・ω・`)「その通りですよ。ほかに付くタイミングがないからね!」


ショボーンは、したり顔で言った。
だが、狼は思いのほか動揺していなかった。


リi、゚ー ゚イ`!「待ってください。放課後と言っても、事件は四時半より少し前。
       放課後になって、一時間もあるのです。その間に彼女が世界樹の下を歩き、葉が付いたら?」


(´・ω・`)「……」

リi、゚ー ゚イ`!「それが、たまたま今の今まで付いたままだった。それだけです」

(´・ω・`)「………」


ショボーンは、急に黙りだしてしまった。
狼の反論に、異議を唱えようともしない。
狼は、これでショボーンの推理ショーはおしまいか、と安堵した。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:12:48 ID:ESs.Bz4MO<> 


リi、゚ー ゚イ`!「……もしかして、茶番劇はこれでおしまいですか?」

(´・ω・`)「………」

リi、゚ー ゚イ`!「なぁんだ、おしまいかぁ。いきなり犯人扱いしてくるから、びっくりしちゃった」

(´・ω・`)「………」

リi、゚ー ゚イ`!「じゃ、帰っていいですか? 帰って、復習プリント捜さなくちゃ」

(;´ー`)「狼先生……」

リi、゚ー ゚イ`!「やだなぁ真山田先生。私が犯人なわけ、ないじゃないですか」

(´・ω・`)「………」

リi、゚ー ゚イ`!「……はい。では、これで――」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:13:54 ID:ESs.Bz4MO<> 


狼が帰路に着こうと、足を踏み出した時だ。
司書室の扉が、いきなり強く開かれた。
ショボーンは「やっときたか」とぼやいた。


(`・д・)ゞ「警部、こちらにおられましたか!」

(´・ω・`)「どうした」

(`・д・)ゞ「差し入れです。とびきりホットな……」

(´・ω・`)「報告しろ」

(`・д・)ゞ「はい!」


ユニークな鑑識は、さっとビニル袋に入った葉を一枚、ショボーンに見せた。
狼はぎくりとした。
嫌な予感しか、しなかったのだ。
まるで、いまから一秒、時が進めば、なにもかも終わってしまう、そのような不思議な気持ちになっていた。
だが、無惨にも、狼のタイムリミットは、定刻通り一秒後に来てしまった。



(`・д・)ゞ「世界樹の落ち葉のうちひとつに、狼シグン氏の指紋が見つかりました!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:16:01 ID:ESs.Bz4MO<> 



        −27−



(´・ω・`)「……あなたは、放課後も、受験生のためにずっと講義を開いてましたね」

(´・ω・`)「つまり、放課後はトソンちゃんとは違い、室外には出ない」

(´・ω・`)「まして、教師であるあなたが、こんな、校舎と塀で囲まれた裏道を歩くはずがない」

(´・ω・`)「仮に、出勤中にたまたま付いたなら、それは払うでしょうから、指紋も付く。
.      しかし、その葉が見つかるのは、学校の敷地内でなく、塀を隔てて反対側、一般道路だ」

(´・ω・`)「以降に関しても、あなたは体育教師でもないのだから、外にでるはずがない」

(´・ω・`)「もし、もしですよ。あなたが自身の身の潔白を訴えるなら」

(´・ω・`)「この葉に付いた指紋は、いったい何なのか」



(´-ω-`)「……答えていただきましょう」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:17:05 ID:ESs.Bz4MO<> 


リi、゚ー ゚イ`!「……」

リi、゚ー ゚イ`!「う…嘘だ…」

リi、゚- ゚イ`!「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……」

リi、 - イ`!「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」

リi、;д;.イ`!「うそだぁぁぁぁぁぁァァァァァぁぁぁっぁあ!!」



狼は、その場に、へなへなと跪いた。
そして、最終的に絶叫した。
それは、野生のオオカミが、孤独を嘆き、夜な夜な遠吠えをするかのように。
彼らのその遠吠えのように、それは、悲観に充ちた、哀しい、彼女の最後の絶叫だった。




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:18:11 ID:ESs.Bz4MO<> 








.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:19:12 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −28−


狼は、個人的な用件のもと、名治を呼び出した。
名治の専攻である家庭科の、調理室に。
名治が調理室から準備室に入ろうとした瞬間に、消火器で思い切り殴るつもりなのだ。


(    )

リi、 - イ`!『(きた!)』



扉が開かれた瞬間に、狼は消火器を振り下ろした。
ほんとうなら、これで終わるはずだったのだ。
彼女が名治を始末すれば、あとはなにも起こらずに済んだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:20:10 ID:ESs.Bz4MO<> 


しかし、狼はここで思わぬ誤算が生じていたことに気が付いた。
扉の向こうに立っていたのは、待ち人、名治ではなかったのだ。


(>、<トソン『きゃっ』

リi、゚ー ゚;イ`!『あっ!』


名も知らぬ我が校の女子生徒が立っていたのだ。
誤って殺めるわけにはいかない。
慌てて勢いを殺そうとするも、元から勢いのついていた消火器の威力は落ちなかった。

殺害するまでには至らなかったが、少女は倒れてしまった。
狼はたいへんなことをしてしまった、と、後悔で青ざめた。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:21:19 ID:ESs.Bz4MO<> 


準備室に彼女を運び、安静にさせておくと、調理室に誰かが入ってきたのがわかった。
誰だと思うと、その人は「狼さーん」と、よく通る声で狼を呼んでいた。
しまった、よりにもよって今着いてしまったのか。

狼は慌てた。
計画通り殴り殺すには、扉の前で消火器を構え、出会い頭を討つしかないのだが、
狼は扉の前から離れているので、いま準備室の扉を開けられると、非常にまずいことになる。
名治を殺せないだけでなく、この少女について、様々な尋問を受けるだろう。



リi、 - イ`!『(そうだ)』

狼は、陽動作戦をとることにした。
少女を世界樹に目掛けて投げるのだ。
誤って枝の上には乗らず、そのまま落ちてもいい。
とにかく、名治の注意を世界樹に向けるのだ。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:22:00 ID:ESs.Bz4MO<> 


世界樹の葉が散る音が、うるさく聞こえた。
同時に、どんっと何かが落ちた音も聞こえたので、名治は何事かと思い、窓の外を見た。

そこには、世界樹の上に眠る生徒がいるではないか。
名治はただ事ではないと思い、生徒に呼びかけた。
狼は、今だ、と思った。


ハソ;゚−゚リ『君、だいじょ――』

リi、゚- ゚イ`!『……っ』

ハソ − リ『ぶッ……!』


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:23:41 ID:ESs.Bz4MO<> 


狼は、渾身の力を籠め、消火器を振り下ろした。
名治の後頭部を砕き、一撃にして名治の意識は失われた。

だが、問題はここからだった。
名治は、世界樹の枝に横たわっている少女を案じ、窓から身を乗り出していた。
上半身は、窓の外に出ていたと見ていいだろう。

狼は、その後頭部を殴った。
絶命し、身体を支えていた手に力が入らなくなった名治は、重力に従い真っ逆さまに墜落してしまったのだ。
これでは回収はおろか、名治のもとに向かうことさえ難しい。
また、死体を回収しようにも、出血が地面についてしまったのだ、これはさすがに隠しようがない。
そして、少女も回収しなければならない。
気絶した少女があんなところにいるのは、きわめて不自然で、すぐに見つかりそうなものだからだ。

狼は頭を抱えた。
どうしたものか、と。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:25:30 ID:ESs.Bz4MO<> 


すると、この少女を利用した、ある作戦が思いついた。

リi、 - イ`!『(図書室を使えば……)』


この調理室の真下に、図書室が在る。
狼の考えた作戦は、こうだ。

少女を図書室に安置し、自分は「この少女の」発見者を装う。
少女の救済を名目に、誰かに助けを求める。
その誰かは、きっといつかは名治の死体を見つけるだろう。
自然なかたちで、事件を発覚させ、且つ疑いのかからない第一発見者となることができるのだ。
今日が司書のいない日であること、パイプを伝って、世界樹の枝まで向かえることができるのは調査済みだ。
少女を回収し、図書室に寝かせ、自分はあくまで悲劇の発見者として、演じさえすればいい。


狼の、自分のこの作戦は、完璧だった。



.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:26:52 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −29−


リi、゚ー ゚イ`!「……その葉っぱ」

(´・ω・`)「これですかな」

リi、゚ー ゚イ`!「私じゃなくて、あの女の子に付いてたの。
       真山田先生に警察への通報を委(まか)せたあと、葉っぱが付いてるのに気が付いてね。
       とにかく、世界樹を使った移動ルートがばれるわけにはいかなかった。
       凶器の消火器も見つかるモトだし」

(´・ω・`)「それで、つい」

リi、゚ー ゚イ`!「ええ。真山田先生を呼ぶときは手袋もはずしたし……。
       まさか、葉っぱが致命傷になるなんて、信じられなかった」

(´・ω・`)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:28:32 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「世界樹は、生命の尽きない植物として有名です」

リi、゚ー ゚イ`!「そう、なんですか」

(´・ω・`)「ですが、木というものは、葉を散らさなくてはならない。枯れ木に成ることのない木は、魅力的ではないのですよ。
.      人間も、一緒。潔白を散らさない人間は、いないものだと僕は思ってます。
.      少しばかし葉を散らしてこそ、人間ですから。
.      ただ、あなたは散らすものを間違えた。……それだけだったのです」

リi、゚ー ゚イ`!「……」


束の間の静寂が生まれた。
ショボーンも狼も、なにも話さなくなった。

そして、ショボーンが狼に手錠をかけようと近づいた時だ。
いきなり、司書室に誰かが入ってきたのが、その場にいる人間皆、わかった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:30:01 ID:ESs.Bz4MO<> 


(゚ー゚トソン「先生!」

リi、゚ー ゚イ`!「?」


元気いっぱいの声で、少女、都村トソンがやってきた。
すっかり、体力も万全に戻ったようだ。

ショボーンがぽかんとして見ていると、都村は狼に近づいては


(゚ー゚トソン「チョコの作り方教えてくれるって、家庭科の授業中言ってましたよね。教えてください!」

(´・ω・`)「え?」

ショボーンが言葉を詰まらせた。


イ(゚、ナリ从「確か彼女は、生物専攻の――」

と、三月が言いかけたのを止めたのは、狼だった。
目に涙を浮かべながら、狼はささやいた。


リi、゚ー ゚イ`!「私……といっても去年の話ですが、もともとは、家庭科の先生だったんです」




ショボーンは、彼女に手錠をかけられなかった。
任意同行というかたちで、彼女を、連れて行った。



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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:31:15 ID:ESs.Bz4MO<> 








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◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:32:57 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −30−


署に向かった、その帰りのパトカーにて、ショボーンは運転席でハンドルをさばいていた。
隣にいる三月は、事件は終わったというのに、やはり静かだ。
息が詰まったショボーンは、世間話でもしようか、と婉曲に持ちかけたが、拒まれた。
しばらく静寂が続くと、沈黙の均衡を破ったのは、三月のほうだった。


イ(゚、ナリ从「警部」

(´・ω・`)「なんだい」

イ(゚、ナリ从「警部は、あの事件の担当刑事だったんですね」

(´・ω・`)「あの事件というと」

イ(゚、ナリ从「私が記憶を失った、猟奇殺人事件です」

(´・ω・`)「……」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:34:23 ID:ESs.Bz4MO<> 


それは、二十年ほど昔の話だ。
アスキーアート、ラウンジ、アルプス、そしてVIPと、各地で殺人事件が起こった。
警察の捜査により、犯人を特定できたらしいのだが、追い詰める際、警察はミスを犯した。
そのせいで、VIPにて、襲われた家族があった。
結果、その家族の事件が決め手で、犯人をようやく追い詰めた、と捜査資料には綴られている。
その、最後にねらわれた家族というのは、三月の家族だった。

一方で、担当刑事は若かりし日のショボーン刑事である。
三月は、このことが常に頭の中で引っかかっていた。


イ(゚、ナリ从「担当刑事なのだから、私の、記憶を失う以前の、私のことを知っているのではないのですか?」

(´・ω・`)「また、その話か」

イ(゚、ナリ从「話してほしいのです。……お願いします」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:35:24 ID:ESs.Bz4MO<> 


ショボーンはハンドルをきった。
タイヤの擦れる音に続いて、三月が言った。

イ(゚、ナリ从「……それと。私の父は、ほんとうに三月ウサギなのでしょうか」

(´・ω・`)「……」

イ(゚、ナリ从「違う気がして、ならないのです。事件のこと、全然知らないのだから……」


それを言うとき、後半の声がぶれたように聞こえた。
すぐに咳き込んだ三月だが、ショボーンはその声を聞き逃さなかった。
この三月イナリ、仮面をつけると非常にクールで冷静なのだが、内面は、ひどく脆いのだろう。
ショボーンは言葉を選んだ。


(´・ω・`)「……思い出したくないんだろう」

イ(゚、ナリ从「でも、娘であり、被害者でもある私にくらい――」


と、三月が言いかけたのを、ショボーンは遮った。



(´・ω・`)「誰にだって、忘れたい記憶は、あるのさ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:36:39 ID:ESs.Bz4MO<> 


        −31−


二月八日、ショボーンは石井病院を訪れた。
都村の件で、ショボーンに用があるそうだ。

記憶が戻ったのか、もしくは様態が変わったのか。
それはわからなかったが、ショボーンは不安しか感じなかった。

受付に都村の件で来たと言い、待合室でコーヒーを呑んでいる時だ。
後ろから、肩をトンとたたかれた。
振り返ると、天使のように可愛い笑顔を見せる、都村が立っていた。
彼女には、隣に担当医であろう医者が付き添っていた。
ショボーンは反射的に立ち上がった。


(;´・ω・`)「トソンちゃん、治ったのかい?」

(゚、゚トソン「……」

(´・ω・`)「トソンちゃん?」

(゚、゚トソン「……警部」

(´・ω・`)「!」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:38:00 ID:ESs.Bz4MO<> 


(;д;トソン「あぁぁぁっぁ……けいぶぅ!!」

(;´・ω・`)「おわっ!」


都村がショボーンのことを認識すると、顔をくしゃくしゃにして泣き、ショボーンに抱きついた。
都村が、自分のことを警部と呼べた以上、記憶は戻ったのだな、そう思うと、ショボーンは嬉しかった。


〈::゚ー゚〉「若干の後遺症が残ることはあるが、いたって健康な状態に回復したぞ」

(´・ω・`)「じゃあ、記憶は――」

〈::゚ー゚〉「問題ない、戻ったぞ。なにかあれば、また医師に頼めばいいのだ」

(;д;トソン「こわかったぁぁ……ッ!」

(´・ω・`)「……」

(´-ω-`)「ありがとうございます、先生」

〈::゚ー゚〉「彼女の、治りたいという意志が強かっただけだ。医師は、患者の意思を尊重して当然だ」

(´・ω・`)「なにかあれば、また。先生」

〈::゚ー゚〉「石のようにカタい信頼関係を。石井しいし医師だ」


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:39:03 ID:ESs.Bz4MO<> 


ショボーンは石井医師に礼を言い、都村を連れて病院をでた。
パトカーに乗り、事情聴取に応じるためにと、所轄まで向かった。
ショボーンが、ほっと胸をなで下ろすと、都村も、少しずつ泣くのをやめてきた。
嗚咽はまだ聞こえるが、都村は顔をあげた。


(゚、゚トソン「警部、なにからなにまでありがとうございます」

(´・ω・`)「……これが仕事だからな」

(゚、゚トソン「カッコつけても、惚れませんよ」

(;´・ω・`)「べッべらぼうめ!」

(゚ー゚トソン「……くすっ」

(´・ω・`)「ったく……」


都村の復活ということで、ショボーンも、この事件以来はじめて安堵することができた。
事件の最中は苛立っていたのが、今ではすっかり穏やかな気持ちでいられる。
都村も、かなり晴れやかだった。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:39:58 ID:ESs.Bz4MO<> 


(´・ω・`)「そういや、なに読んでたの?」

(゚、゚トソン「へ?」

(´・ω・`)「事件より以前、図書室に、本を返しにきたんだろ?」

(゚、゚トソン「ああ……」


都村は顎に手をあてた。
まだ記憶が戻ったばかりだから、脳の回転は遅いのだろうか。
少しして、彼女は手をたたいた。


(゚、゚トソン「推理小説」

(´・ω・`)「ん?」

(゚、゚トソン「すっごくおもしろい推理小説です。刑事が主役の」

(´・ω・`)「刑事ものねぇ」


ショボーンは苦笑した。
現役の刑事としては、複雑な心境なのだ。
どうも、刑事小説にはフィクションの色が強い。


.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:41:24 ID:ESs.Bz4MO<> 


(゚、゚トソン「とってもおもしろいんですよ。オチ教えてあげますね」

(;´・ω・`)「あ、おいそれはだめ――」


都村はいじわるで話のオチをばらそうとした。
ショボーンはその本を読むことはないだろうが、
オチだけ言われるのは、気分的にいいものではない。
制止しようとすると、都村が「あれっ!?」と大声をあげた。


(´・ω・`)「どしたの」

(゚、゚;トソン「あ……あ…。小説のオチだけ忘れちゃった……!」

(´・ω・`)

(´・ω・`)「ぶぷっ」



「あああああああッ! 読み直さないと!」

パトカーのなかで響きわたる、都村の嘆きを聞いて、ショボーンはつくづく思った。

「やっぱり、忘れちゃいけないことのほうが多いか」



パトカーは、ゆっくり署へと向かう。
青信号にかわったので、ショボーンはゆっくりペダルを踏んだ。




.<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:42:19 ID:ESs.Bz4MO<> 



 イツワリ警部の事件簿
 Extra File.1

 (´・ω・`)とある忘れられた事件のようです


 おしまい



.<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/25(日) 16:44:57 ID:MviDn9Nc0<>乙<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2011/12/25(日) 16:46:36 ID:ESs.Bz4MO<>番外編投下終わりました。

もともとは、シリーズの本編で
「ショボーンは偽りの忘却と戦うようです」というタイトルのもと書こうと思ったのですが、
微妙に短かったので、編集して、このような番外編として製作しました。
石井しいし医師(いしいしいしいし)が凄く好きです。これからもいっぱい出したいです。

では、私も皆と同じように、大掃除や年賀状やおせちなど、年末に向けてあれこれします。<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/25(日) 17:03:47 ID:k0gac5lQ0<>おつ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/25(日) 17:22:39 ID:Jzy3FYJkO<>乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/25(日) 20:29:40 ID:sfIypTdk0<>石井しいし医師が男性なのか女性なのか気になるぜ!
凄く読んでて楽しい、いい話だった!
乙!<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/26(月) 14:20:15 ID:X53psVPgO<>いしいしいしいしのネーミングが実に逆裁
乙<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/27(火) 03:53:16 ID:SMRCIRbMO<>面白かったぜ!
乙!<> 名も無きAAのようです<><>2011/12/31(土) 01:41:01 ID:QxNOoHeo0<>武怨(笑)とか出てきたのが意味不明過ぎる……
なんで急に中二ラノベみたいなとってつけたような展開になるの

真剣の読んでたのが一気にアホ臭くなったわ<> 名も無きAAのようです<><>2011/12/31(土) 01:42:57 ID:QxNOoHeo0<>マジで時間返してくれよ
なんなんだよコレ<> 名も無きAAのようです<><>2011/12/31(土) 04:54:17 ID:zaSMK0fo0<>ルパンレベルの変装とあの名前は僕もどうかとおもいました<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/31(土) 09:25:20 ID:iPP9lRhY0<>まあ普通の推理物にしたほうがよかったんじゃないか感はある<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/31(土) 09:36:59 ID:hvEVKZeEO<>>>1読んだんかい<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/31(土) 10:04:12 ID:1sO22fPU0<>なにこの普段テンプレ無視して住民に叩かれてそうな人達

麻酔薬ガンガン使う作品とか霊媒師の力を借りて裁判する作品に近いって書いてあるのに、非現実要素の拒絶するなら最初から読むなよ<> 名も無きAAのようです<>sage<>2011/12/31(土) 13:12:45 ID:kGZZ4v0g0<>普通の推理物じゃねぇっつってんのに
読んでから普通の推理物が良いってどうかしてんのか
というか推理の時点ではちゃんとしてたじゃねぇか
しかも変装も名前も犯行トリックに関係無い
大体会ったこともない人間に変装してるって誰が気付くんだよ
武怨が居なきゃ他の警察が張ってた理由がつかねぇだろうがよ
武怨の行動、理念全て話の流れとして合ってた
ありえないような「偶然の産物」が無いだけ某裁判物よりちゃんとしたストーリーだと思う

長々とすまん、とにかく>>1
続き期待してる<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2012/01/02(月) 17:31:03 ID:bG3WxHIcO<>武怨についてはノーコメントで


あけましておめでとうございます
年賀状一枚も届かなかったけどおめでたいですね
File.2ですが、第一章だけでもVIPで投下するか全部創作板でするかを悩んでます
なにか意見ください<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/01/02(月) 17:38:07 ID:JQzGq2gUO<>個人的には、ここなら落ちないし見つけやすいからここがいいけど、投下予告してくれればVIPでもいいって思ってる<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/01/02(月) 18:12:07 ID:h43Y7eog0<>どっちでもかまわんよ
もしVIPならできればURL貼ってほしい<> 名も無きAAのようです<><>2012/01/02(月) 18:12:55 ID:8ckIR.l2O<>>>809
VIP見れないからここでやってほしい(´・ω・`)<>
◆wPvTfIHSQ6<><>2012/01/02(月) 18:43:29 ID:bG3WxHIcO<>把握しました
今回は全部創作板で投下してみます

今日の八時ごろに投下できたらなぁ…<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/01/07(土) 01:42:58 ID:PqA4UL7EO<>まーだっかな<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/01/31(火) 18:01:46 ID:h0IJSdOs0<>随分引っ張るじゃないの<> 名も無きAAのようです<>sage<>2012/01/31(火) 21:47:59 ID:m.hKtqCE0<>スレ移ったぞ<>