ζ(゚ー゚*ζ あな素晴らしや、生きた本 のようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:00:21 ID:mEU.RSwwO
- のんびり投下
まとめ様
ブーン芸さん http://boonsoldier.web.fc2.com/ikitahon.htm
ちょいといっぷくさん http://boon.choitoippuku.com/
前スレ http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/37256/1299350826/
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:01:13 ID:qqNebX/60
- すかさず支援
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:01:50 ID:mEU.RSwwO
( ^ω^)『……』
ξ゚听)ξ『……何よ?』
( ^ω^)『……ツンって、すごく綺麗だおね』
ξ;*゚听)ξ『――なっ……! はあ!? ばっ、なっ、き、急に、な、何、』
( ^ω^)『おー。まっかっか』
ξ;*゚ -゚)ξ『……っ! ……っ! か、からかうなっ!!』
( ^ω^)『からかってるわけじゃないお。本当に綺麗だと思うお』
ξ;*゚听)ξ『嘘つき!』
( ^ω^)『……褒めてるのに、何で怒るんだお』
ξ;*゚听)ξ『お! ……怒ってるわけじゃ、ないけど……』
( ^ω^)『褒められたら、お礼言うんだお』
ξ;*゚听)ξ『あ、あう』
( ^ω^)『笑って「ありがとう」って言ってみるお?』
ξ;*゚听)ξ
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:03:18 ID:mEU.RSwwO
ξ;*゚听)ξ『あ』
_, 、_
ξ;*゚ー゚)ξ『……あ、りがと、う』
( ^ω^)『いや何か顔が必死すぎるお』
ξ;*゚听)ξ『ううううるっさいなぁあああ! もう――』
ξ;*><)ξ『――私よりガキのくせに!!』
*****
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:05:22 ID:mEU.RSwwO
ξ#゚听)ξ
(;^ω^)『お、怒らないでおー、ツン』
ξ#゚听)ξ『怒ってないもん』
(;^ω^)『怒ってるお。……何で怒るんだお?』
( ^ν^)『兄ちゃんとハローがキスしたから』
ξ#゚听)ξ『ニュッ君!』
(;^ω^)『ハローとキスしたら何でツンの機嫌が……。
そ、そもそもあれはハローがアドリブかましてきたからだし、
口はぎりぎり当たらなかったお!』
ξ#゚听)ξ『べっつに、どうでもいいわ。ていうかどうしてブーンが主役だったの?
モララーかクックルで良かったじゃない!』
(;^ω^)『モララーは脇役の中学生にぴったりだったし、
クックルはそのお兄さん役に嵌まってたお』
ξ#゚ -゚)ξ『む』
( ^ν^)『だから意地張らないで、おとなしくヒロイン役やれって言ったのに』
ξ#゚ー゚)ξ『……ニュッ君ー? そろそろその口閉じなさいよー。
お姉さん怒るわよ』
*****
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:05:25 ID:BkXbTsScO
- 支援
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:06:09 ID:mEU.RSwwO
ξ--)ξ
ξ゚听)ξ
目を覚ます。
ベッドの中で上半身を起こし、ツンは、つい先程の夢を思い返した。
夢というよりは記憶の反芻に近かったが、第三者の視点で自分を眺めるような――
ビデオカメラの記録を見るような、そんな映像だった。
ξ゚听)ξ「……」
溜め息。
膝を抱える。
笑ってみようと頬に力を入れたが、変に強張るだけで、望む結果は得られなかった。
以前は口だけが素直じゃなかったのに。
今は顔までもが素直になってくれない。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:06:52 ID:mEU.RSwwO
脳裏を過ぎる少女。
デレ。
ζ(゚ー゚*ζ
表情がころころ変わる、愛嬌のある人だと思う。
デレを見ているときの内藤はとても楽しそうだ。
ξ゚听)ξ「……ブーン」
――昨日。
内藤が好きかというツンの問いに、デレは、恋愛は抜きにして好きだと言った。
ξ゚听)ξ「ブーン、ブーン」
だが、もし。もしもだ。
あのとき、彼女が、内藤に恋をしていると答えていたなら。
ツンは、どうにかなっていたかもしれない。
ξ )ξ「ブーン……」
立てた膝に顔を伏せる。
デレは好きだ。
けれども、時折、それを上回る感情が胸を支配する。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:08:16 ID:mEU.RSwwO
ξ )ξ(……ブーンは、どうして私に優しいふりをするの)
決して内藤に愛される筈がない自分には、デレが羨ましくて羨ましくて。
妬ましい。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:08:51 ID:mEU.RSwwO
第六話 あな優しや、SF小説・中編
.
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:10:12 ID:mEU.RSwwO
言ってしまえば、間が悪かった。
o川*゚ー゚)o「おはよー」
从 ゚∀从「おーう。お姉さんから返事来てた?」
o川*゚ー゚)o「ううん、全然。メール気付いてないのかなあ。
電話かけても繋がらないんだよね……」
从 ゚∀从「電源切ったまま忘れてんじゃねえの?
――さあて、今日は何すっかなあ」
o川*゚ー゚)o「どこ行こっか」
彼女が、友人の家に泊まっていなければ。
昨夜、クールが帰宅しなかったことに気付けていただろう。
もっと早く、異変に気付けていただろう――
*****
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:10:51 ID:mEU.RSwwO
やらかした。
寝てしまった。
これ以上隙を与えないように徹夜して見張るつもりだったが、
思っていたより心身共に疲弊していたらしく、気付けば眠りに落ちていた。
で。
目を覚ましたら、これだ。
( ∵)「あの」
川 ゚ -゚)「はい」
( ∵)「何かパワーアップしてるんですけど」
川 ゚ -゚)「眠っている間に着けさせていただきました。
あれだけでは少々心許なかったので」
しっかり布団の中で寝かせられたビコーズの枕元。
正座しているクールが、かくり、首を傾けた。
昨晩ベルトで縛られただけだった両足は、ベルトはそのままに、
臑から膝辺りまでガムテープでぐるぐる巻きに。
両手首はネクタイから革のベルトへ装備を変え、
さらに左右の親指を紐か何かで纏められていた。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:11:57 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「SFだけじゃなくSMにも興味あるんですか、お嬢さん。
他所でやってくれませんかね」
川 ゚ -゚)「鬱血など起こさない程度のきつさにはしておりますが、
何か異常がありましたらすぐにお教えください」
( ∵)「異常ですかー。ありますよー。あなたにいっぱいありますよー」
川 ゚ -゚)「クールは一昨日メンテナンスをしたばかりです」
( ∵)「頭のメンテナンスはしましたか?」
川 ゚ -゚)「ちゃんとしましたよ。
――御主人様、未だ記憶は戻りませんか?」
( ∵)「その設定もういいですって」
川 ゚ -゚)「……まだ駄目なようですね」
( ∵)「駄目ですね、主にあなたが。
ところで、もしや昨夜からずーっとそこにいたんですか」
川 ゚ -゚)「勿論です。御主人様に何かあってはいけませんから」
昨夜、ビコーズを布団に横たわらせたクールは
枕元に座り込んで、ただひたすらビコーズを見下ろしていた。
まさか自分が寝た後も、そのままの姿勢で起き続けていたのだろうか。
もう何度目になるかも分からない悪寒がビコーズの背に走った。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:13:08 ID:mEU.RSwwO
クールから視線を逸らし、目覚まし時計へ顔を向ける。
午前10時。
( ∵)「……やばっ……」
川 ゚ -゚)「どうしました」
( ∵)「仕事が……うわあ遅刻です。うっわ」
川 ゚ -゚)「御主人様の仕事はクールが代わりに行います」
( ∵)「ロボットごっこの次は教師ごっこがしたいんですか」
川 ゚ -゚)「教師? 御主人様の仕事は画家でございましょう」
( ∵)「わー。すごーい。はいはい」
これでは学校に行くのは難しそうだ。
とにかく、何とか拘束を解いてもらわないことには始まらない。
憎々しげにクールを見上げる。
( ∵)「これ取ってくれません?
着替えたいしお風呂に入りたいしトイレにも行きたいんですが」
川 ゚ -゚)「ああ。たしかにそのままでは、いずれも出来ませんね」
( ∵)「そうなんですそうなんです、特にトイレが困るんです本当に。
というか限界が近いです」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:14:09 ID:mEU.RSwwO
川 ゚ -゚)「生理現象は抑えようがありませんからね……」
納得した様子のクールに、ビコーズは心底ほっとした。
「そのまま漏らせ」などと言われていれば、舌を噛み千切っていたところだ。
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「御主人様」
( ∵)「はい」
川 ゚ -゚)「その格好でも、太腿まで下着を下ろすことは出来ましょう。
今クールが桶か何かを持ってきますので、そk」
( ∵)「ざけんな糞電波」
川 ゚ -゚)「御主人様、たまにお口が悪い」
( ∵)「このベルトとガムテープ取りなさい」
川 ゚ -゚)「……ではクールが御主人様をトイレまでお運びして、排泄のお手伝いを」
( ∵)「幼児じゃないんですよ、こちとら」
川 ゚ -゚)「……仕方ありませんね」
(;∵)「は? 何……うわっ!?」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:15:26 ID:mEU.RSwwO
クールは立ち上がり、一旦ドアを開けると、仰向けに転がるビコーズのもとへ戻った。
膝の裏と背中に、クールの腕が滑り込む。
途端、浮遊感がビコーズを襲った。
横抱き。
理解した瞬間、物凄く居堪れない気分になった。
(;∵)(……女の子にお姫様抱っこされました)
ガタイがいいとは言えないが、それでも平均体重ぐらいはある。
なのに、こんな細身の異性に抱えられるとは。
よく分からないショックで脳内が満たされる。
呆然とするビコーズを尻目に歩き出したクールは、真っ直ぐトイレへと向かった。
ドアの前で下ろされる。立ちづらい。
クールが背後に回り、腕に巻いたベルト、親指の紐を外していった。
( ∵)「え?」
川 ゚ -゚)「今だけですよ」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:16:14 ID:mEU.RSwwO
数時間ぶりに自由になった両腕。
好きに動かせる素晴らしさを実感しながら、
ビコーズは足を固定するガムテープに手を伸ばした、が。
(;∵)「ぁああ゙あ゙いだだだだだだ!!」
川 ゚ -゚)「腕だけです」
すぐさま右腕を捻り上げられた。
肩と手首に激痛が走る。
もげるもげると喚くと、あっさり放された。
トイレのドアを開けたクールが、ビコーズの脇に手を差し込み、持ち上げる。
便器の前に置かれた。歩けない彼への気遣いなのだろうが、
こんな面倒なことをするぐらいなら足も解放してほしい。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:17:15 ID:mEU.RSwwO
川 ゚ -゚)「さあ、存分にどうぞ」
( ∵)「はい、存分にします。
存分にしますのでちょっと時間かかると思いますが気にしないでくださいね」
――まあ、いい。
トイレの鍵を閉めたら、ガムテープもベルトも自分で外してやろう。
それから隙を見て逃げ出せば、
( ∵)
川 ゚ -゚)
逃げ出せば解決、なのだが。
( ∵)「どいてくれませんか」
川 ゚ -゚)「立ちづらいでしょうから、我慢してくださいませ」
何故この女はビコーズを支えた状態で固まっているのだ。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:19:14 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「分かります? 先生今からですね、」
川 ゚ -゚)「ええ。どうぞクールにお構いなく」
( ∵)「構うわ。足縛られてても立つことぐらいは出来ますので、
お願いだから1人にしてください」
クールの腕を掴み、引き剥がそうと試みたがびくともしない。
しかもさらに力を入れられた。
川 ゚ -゚)「クールが目を離している隙に足の拘束を解いてしまわれるかもしれません」
( ∵)「ぎっくぅうー。ははは、そんな馬鹿な」
川 ゚ -゚)
( ∵)
川 ゚ -゚)「ちゃんと前を向いてしないと汚れますよ」
( ∵)「……はい」
ままよ、と、ビコーズはスラックスのチャックに手をかけた。
情けない。やる瀬ない。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:20:31 ID:mEU.RSwwO
たとえばトイレから出る際にタックルでもかませばどうなるだろう。
上手くいけば御の字だが――失敗すれば、
最悪の場合、こんな風に便器を使うことすら許されなくなるかもしれない。
それこそ先程言われたように桶でも宛てがわれようものなら、
多分、年甲斐もなく号泣してしまう。
川 ゚ -゚)「不審な動きをしたら用を足している最中だろうと取り押さえます」
( ∵)「はい、もう……もう好きにしたらいいじゃないですか……」
大の方じゃなくて良かった。
今は、まだマシな部類なのだ。少しくらいは我慢しなければ。
――何とか自分を励ましてみたが、これっぽっちも慰められなかった。
*****
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:22:11 ID:mEU.RSwwO
ζ(゚、゚*ζ「アサピー先生。ビコーズ先生、どうしてお休みなんですか?」
(-@∀@)「さあ……連絡は来てないらしいけど。
珍しいなあ。あの人、遅刻すらしたことないのに」
高校。図書室。
デレは、司書教諭のアサピーと話していた。
午前11時。本来なら2時間も前に補習が始まっている時間だが、
肝心のビコーズが不在のために、生徒達の独断で中止となった。
(-@∀@)「ところで長岡さんは帰らないのかい?」
ζ(゚、゚*ζ「んー、後でまた職員室に行ってみようかと思ってます。
何か理由があって遅れてるだけかもしれませんし」
(-@∀@)「そう。熱心だね」
ζ(゚、゚;ζ「熱心っていうか……勝手に帰って、
ビコーズ先生の怒りを買うようなことがあったらと思うと」
(;-@∀@)「ああ……それは恐い」
ζ(゚ー゚;ζ「恐いですよねー……」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:22:41 ID:mEU.RSwwO
(;-@∀@)「僕、あの人ちょっと苦手だな」
ζ(゚ー゚;ζ「あれが得意な人なんていないんじゃないでしょうか」
(;-@∀@)「嫌いじゃないけどさ、何か……話すとライフを削られるよね」
ζ(゚ー゚;ζ「分かります、分かります。
ビコーズ先生に泣かされた人って何人いるんですかね、この学校」
(;-@∀@)「半分以上はいるだろうなあ」
一度、会話が途切れた。
同時に溜め息。
ζ(゚ー゚;ζ「……泣かされた人はたくさんいますけど……。
ビコーズ先生を泣かす人なんて、存在するんでしょうか」
(;-@∀@)「いるとしたら、人間じゃないよ、その人」
*****
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:23:58 ID:mEU.RSwwO
( ∵)(すっげえ泣きてえ)
床の上で目を覚ましたビコーズは絶望した。
服が変わっている。
シャンプーの匂いがする。
手足が、元のように縛られている。
――あの後、クールはビコーズを風呂場へと運んだ。
いきなり服をひん剥いてこようとしたものだから、ビコーズは当然抵抗した。
したのだが、首に腕を回され、数秒後に意識が飛んだ。
そこからの記憶はない。ついさっき気が付いたところだ。
考えるに、多分「落とされた」のだろう。
そして、ビコーズが失神しておとなしくなったのをいいことに
風呂や着替えを――いや、深く考えるのはやめよう。
屈辱のあまりに死にたくなってくる。
しかし、どう落とせば風呂に入れられても目覚めないほど深く気絶するのか。
もしかしたら失神した直後、眠っていたのかもしれない。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:25:24 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「スリーパーホールドってね、あなた。随分な扱いじゃありませんか? ええ?」
嫌味を言いながらビコーズは寝返りを打つ。
てっきりクールがいるものだと思っていたが――
( ∵)「あれ?」
果たして、そこには誰もいなかった。
( ∵)「……おーい。クールさーん。クーちゃーん?」
静寂。
キッチンからも物音は聞こえてこない。
( ∵)「放置プレイですか? まさか帰ったわけないですよね。……ないですよね?」
この状態で1人きりというのも、困る。
溜め息をついて部屋を見回したビコーズの頭に、こつんと何かがぶつかった。
俯せになる。
( ∵)「……書き置き」
開かれたノートと一本のボールペンがあった。
ノートにはたった一文。
「食べ物を買ってきます」、とのこと。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:26:29 ID:mEU.RSwwO
( ∵)(自分だけ呑気に外出しやがってあのガキ)
時計の短針は12時を指している。
学校に連絡を入れていない。
生徒達はどうしているだろうか。
補習を強制された者は今頃喜んでいるとは思うが、
自ら願い出た生徒の方はどうだろう。申し訳ない気分が募る。
ああ、しかも午後からは3年生――の一部への補習もあるのだ。
受験が近い。追い込みをかける時期真っ最中だというのに。
( ∵)(あー、くっそ)
考えれば考えるほどに焦れていく。
じっとしていられなくて、ごろごろ転がった。
壁にぶつかる。
しばし、額を壁にくっつけたまま停止して。
( ∵)(あれ)
向こう側から音がするのに気付いた。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:27:43 ID:mEU.RSwwO
かたかた、キーボードを打ち込むような。
一旦止んだかと思うと、また始まる。
( ∵)
ビコーズは両足で壁を蹴りつけた。
あまり勢いは出なかったが、それなりの衝撃を与えるには充分だった。
かたん、と一際大きい音を最後に、向こうは沈黙する。
続けて何度か蹴り続けると、「うるさい!」という怒鳴り声と共に壁を殴り返された。
隣人、渡辺。
どうやら在宅らしい。
( ∵)「今ほど壁が薄いボロアパートに住んでるのを感謝したことはありません」
『はあ?』
( ∵)「渡辺さん。あなたに頼るのは癪で癪でたまりませんが、助けてくれませんか」
彼女に聞こえるよう、なるべく大きな声で話しかけた。
壁越しに、昨日の昼からの出来事を説明する。
渡辺は時折相槌を打ち、真剣に聞いてくれているようだった。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:29:03 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「……ってわけでして」
『道理で昨日ばたばた騒がしかったわけね〜。
女の子の声もするからてっきり痴話喧嘩かと思ってたんだけど、それは大変ね〜……』
( ∵)「本当に大変です。
で。ちょっと警察でも呼んでくれませんか。こっち、電話壊れちゃって」
『……』
( ∵)「……渡辺さーん?」
『だ』
『だぁあああああれが呼ぶかよバァアアアアアアアアカ!!』
( ∵)
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:30:17 ID:mEU.RSwwO
『あっははははは! 女の子に監禁されるって! なっさけな! あはははは!!』
( ∵)「楽しそうですね」
『うん、楽しい。面白い。
ざwwまwwwwあwwwww』
『日頃の行いって大事よね〜。
あー、生で見たいなあ! 縛られてる奈良場さん見たい! 踏んづけたいわあ。
でも縛るなら裸にして縛ればいいのにねえ。服着せてあげるなんて生温い子〜』
( ∵)「……その様子だと、助けてくれる気はないみたいですが」
『助けませんよ〜。私、今お仕事中で忙しいの〜。
いいじゃないですかあ、かなり愛されてるみたいだし、大事にしてくれそうだし。
そのままにして問題ないと思います〜』
( ∵)「……」
『……』
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:31:17 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「あなたがお隣りさんで、本っっっ当に幸せ者ですよ先生は」
『でしょう〜? こんなに隣人の幸せを願ってあげる天使、私ぐらいなもんですよ〜。
アガペーアガペー』
( ∵)「ははは」
『うふふ』
( ∵)「ははははは」
『うふふふふ〜』
( ∵)「くたばれクソババア」
『一生飼われてろオッサン』
ビコーズが壁を蹴る。渡辺が壁を殴る。
交渉決裂。
どころか、いらぬ娯楽を与えてしまった。
壁から離れ、ビコーズはノートの近くへ戻った。
( ∵)(あれは駄目ですね)
隣が駄目なら上、と天井を見遣る。
しかし、上の住人は先日引っ越したばかりだ。
空き部屋の筈。間が悪い。間が。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:31:20 ID:Z0OFan7UO
- うわあwwwwwww
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:33:48 ID:mEU.RSwwO
さて、いよいよもって自力で逃げる方法を見付けなければいけない。
どうしたものか――。
ちらり、何かが視界に入った。
桜色。四角い。
( ∵)(……本)
例の本。
クールのコートの脇に、鞄と一緒に鎮座している。
そういえば昨晩、クールに押し倒されたときに鞄ごと吹っ飛んでいたんだったか。
片付けた覚えはないから彼女が寄せたのだろう。
( ∵)「……」
クールにばかり気を取られていたが、思えばこいつも奇妙なブツだった。
何故自分の車にあったのか、さっぱり分からない。
ビコーズはボールペンをくわえ、本へ這い寄った。
まるで芋虫。
ペンの先を使って本を開く。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:35:12 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「……『御主人様』」
物語は、主人公の男が女性に話し掛けられるところから始まっていた。
ページをめくっていく内に、主人公は人間、女性はアンドロイドであることが読み取れた。
――舞台は未来。
ロボットが当たり前のように存在し、量産され、生身の人間が減った世界。
『 一昔前のロボットは感情を持つこと等許されていなかった。
無論技術的な理由が大半を占めているとされていたが、
その実、裏側に潜んでいたのは単純で臆病な、人間の都合である。 』
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:36:08 ID:mEU.RSwwO
『 様々な意味での「力」において、ロボットは人間より遥かに勝る。
そんな彼等が更に感情まで備えて、もしも人間に不満を抱こうものならどうなるか。
――それを思うと、今一つ踏み出せなかった。 』
読み進める。
科学の進歩が何たらかんたら。
それなりの感情を持たせつつ絶対に人間には逆らえぬような回路が何たらかんたら。
しかしたまに不具合を生ずる固体が何たらかんたら。
( ∵)(口が怠いです)
ペンを駆使し続けたせいで、顎が疲れてくる。
だが、次に飛び込んできた文に、そんな疲労はどこかへ消えた。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:37:12 ID:mEU.RSwwO
『「乱暴なロボットがおりますから、一人で外に出てはいけませんよ。御主人様」
SO−C001の言葉が耳に痛い。以前も彼女に黙って外出した際、
見知らぬアンドロイドに身ぐるみを剥がされかけたことがあった。 』
( ∵)「……SO−C001……」
聞き覚えのある単語。思わず、ビコーズは呟いた。
実際はペンのせいで「えしゅおーひーぜろえろいひ」と間抜けな響きになってしまったが。
川 ゚ -゚)『SO−C001です。まさかお忘れになってしまわれたわけではありませんよね』
御主人様。ロボット。未来。外。SO−C001。
すべてがクールの譫言と一致した。
目眩がする。
ラーメン屋にて、クールはこの本を頻りに気にしていた。
だが、ビコーズが見ていた限り、彼女は中身にまでは目を通していなかった筈。
以前から内容を知っていた?
読んだことがあったのか。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:38:17 ID:mEU.RSwwO
( ∵)(彼女が作者本人ってことも有り得ますかね? ……それはないか)
ノートの書き置きと比べてみると、筆跡はまったく似ていない。
敢えて筆跡を変えた可能性もないではないが、
そんな面倒なことをする必要がどこにあるのだろう。
本の状態も――何と言うか、古臭い。
クールの年齢を考えると、どうにも彼女が作者だとは思えなかった。
やはり、どこかで読んだというのが妥当なところだ。
ページをめくる。
作中のロボットは、型番の字面から「クール」と名付けられた。
クール。名前。
( ∵)「……むう」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:41:06 ID:mEU.RSwwO
クールは恐らく、この本を読んだことがあった。
たまたま彼女と同じ名前を付けられたロボットに自己を重ね、同一視して。
昨日、ラーメン屋で再び本を見たことで妄想が加速し、
そこに居合わせたビコーズを標的にした。
これで大体合っている、とは思うのだが。
不可解な点はまだある。
何故クールがビコーズの家を知っていたか、
何故ビコーズの車に本が乗せられていたか、の二つ。
前者は「元々ストーカーの類だった」で納得出来なくもないが、
後者に関してはさっぱりだ。
クールは本を持ち去っていなかった。
車は、窓もドアの鍵も閉まっていた。
( ∵)「……」
( ∵)「本が自ら先生についてきた、とか」
言って、あまりの馬鹿らしさに自嘲した。
SFに加えてオカルトか。
結論としては一番手っ取り早くはあるが、除外する。
クールの奇行だけで腹一杯なのに、わざわざややこしい要素を増やしたくはない。
*****
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:41:54 ID:mEU.RSwwO
川 ゚ -゚)「……」
その頃。
クールは、首を捻りながら歩いていた。
両手に買い物袋を提げている。
川 ゚ -゚)(何なんだ、これは。まるで大昔のようじゃないか)
昨日から不思議だった。
彼女がいる――と思い込んでいる――「時代」とは、
町並みも売買の形態も異なるのだ。
貨幣といい道を行く車や自転車のフォルムといい、何もかもが違う。
川 ゚ -゚)(タイムマシンを完成させた企業は未だ存在しない筈。
どうしたと言うんだ)
困惑しっぱなしだ。
道すがら、周囲を観察する。
――と、そのとき。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:43:08 ID:mEU.RSwwO
「お姉ちゃん!」
川 ゚ -゚)「?」
声がした。
立ち止まり、振り返る。
o川*゚ー゚)o「あ、やっぱりお姉ちゃんだ! メール見てくれてた?」
川 ゚ -゚)
o川*゚ー゚)o「ごめんね、ハインの家行って遊んでたらいつの間にか夜になってたから、
ついつい流れで泊まっちゃって」
从 ゚∀从「どうも久しぶりです。キュートの面倒はちゃんと責任もって見ました」
2人の少女がいた。
その内の1人がクールに駆け寄ってきて、手を掴んだ。
――随分馴れ馴れしいなと、クールは眉を寄せる。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:44:10 ID:mEU.RSwwO
o川*゚ー゚)o「今日は夕方ぐらいに帰る――」
川 ゚ -゚)「誰だ、お前は」
o川;゚ー゚)o「……え」
川 ゚ -゚)「私はお前なんか知らないぞ。
放してくれ、早く帰りたい。御主人様が腹をすかせている」
華奢な手を振り払った。
後退り、距離をとる。
o川;゚ー゚)o「な、何言ってんの、お姉ちゃん」
从;゚∀从「ごしゅじんさま?」
川 ゚ -゚)「『お姉ちゃん』とはどういうことだ。私に妹なんてものはいない」
o川;゚ー゚)o「ちょっと――どうしたの? も、もしかして怒ってる?」
川 ゚ -゚)「近寄るな」
o川;゚ー゚)o「っ!」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:47:43 ID:UyUVH2LwO
- しえ
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:49:09 ID:6dnkZhi.O
- しえん
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:50:04 ID:mEU.RSwwO
川 ゚ -゚)「――気持ちが悪い奴だな」
o川;゚−゚)o
少女が目を見開いた。
いかにも傷付いたというような表情。
その顔を見た瞬間、足元に、ぐらりと揺れる感覚が広がった。
何かが胸の内を過ぎる。
前にも。
こんなことが。
川 ゚ -゚)『……何だ?』
o川*;□;)o『お、お姉ちゃ、どうしよ、顔、顔が、』
川 ゚ -゚)『顔がどうしたって言うんだ。……おいおい、触るなよ気持ち悪い――』
.
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:51:19 ID:mEU.RSwwO
川; - )「――っつ、……うう……!」
頭に激痛が走った。
思考が中断される。
痛い、痛い、痛い。
頭が。――胸の奥が、ひどく痛む。
少女に何か言ってやらなければ。
だが何を言えばいい?
o川;゚−゚)o「……あ……!」
从;゚∀从「ちょっ、お姉さん!?」
川; - )(……痛みは危険信号。この少女との接近は危険――)
踵を返し、逃げ出した。
後ろから聞こえる声も無視して、ひたすら。
川; - )(あれは誰だ。私は知らない。知らない……)
*****
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:52:55 ID:mEU.RSwwO
ビコーズが本の半分まで目を通した頃、玄関のドアが開く音がした。
さて文句を言ってやろうと本を閉じる。
くわえていたペンを床に転がすと同時、クールが部屋に飛び込んできた。
川;゚ -゚)「御主人様!!」
( ∵)「おかえりなさい、早速ですがそこに正座しなさい」
川;゚ -゚)「御主人様、どうしましょう……クールが、クールがおかしいのです」
( ∵)「えっ今更……?」
買い物袋を置いた彼女は、言われた通りに正座した。
何やら焦っている様子だったが、それよりも、
ふと沸き上がった疑問の方がビコーズは気になった。
川;゚ -゚)「クールはどうなってしまったのか……」
( ∵)「……あの、あれ、待ってください。それは誰のお金で買ったんですか」
川;゚ -゚)「御主人様のです。
買い物のときには御主人様のお財布を持っていけと言っておられたでしょう」
( ∵)「言ってねえよ。……いや、本の中じゃ言ってたんですかね。畜生」
川;゚ -゚)「……ああ……財布……お金……何なのでしょう、
クールの回路が狂ったとしか……」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:54:41 ID:mEU.RSwwO
頭を抱え、ぶつぶつと呟き始めたクール。
何やらひどく混乱しているようだ。
有無を言わさず自分のペースに持ち込もうと意気込んでいたビコーズだったが、
あっさり失敗に終わった。
どうしたんですか、と声をかける。
川;゚ -゚)「……外が、クールの知る世界と違ったのです……」
( ∵)「違う?」
川;゚ -゚)「お金の形も、店の形も……道や車、何もかも。
まるで……ひゃ、100年も昔みたいで」
( ∵)「……はあ」
( ∵)(今まで、妄想に取り憑かれた生徒は大勢相手にしてきましたが……。
これほどのレベルの子は初めてですね)
演技ではなさそうだ。
信じ込んでいるから、外の様子に怯えているのだろう。
昨日ラーメン屋で見たときは普通だった。
となると、あの直後からここまで壊れてしまったことになる。
自分が考えていたよりも重い「病気」なのかもしれない。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:56:03 ID:mEU.RSwwO
( ∵)(やべえな、これどうするべきでしょう)
参った。
ただの演技なら、説教するなり脅しをかけるなり、何とか出来そうなものだったが。
病気の類は、扱いに困る。
素人が手を出していい領域から外れている。
川;゚ -゚)「ご、御主人様、今は……いつなんですか……」
( ∵)「……西暦2010年の12月22日ですけど」
川;゚ -゚)「う――嘘を。嘘をつきなさる」
( ∵)「本当ですよ。そこのカレンダー見なさい」
川;゚ -゚)「その時代には、だって、く、クールみたいなロボットは
完成されていない筈でしょう。
それならどうしてクールがここにいると言うのですか?」
( ∵)(ああ、動揺してる動揺してる。
このまま崩しちゃっていいんでしょうか。ちょっと恐いんですが)
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:57:05 ID:mEU.RSwwO
川;゚ -゚)「御主人様……答えてください……」
( ∵)「……」
深呼吸。
一か八か、ビコーズは口を開いた。
( ∵)「先生は嘘なんか言ってないし、そもそもあなたはロボットじゃありませんよ」
川;゚ -゚)「……何を」
( ∵)「そういえば、あなた、ご飯も食べなきゃトイレにも行ってませんね。
先生の知らない内に済ませてたんですか」
川;゚ -゚)「クールはロボットです、そんなの――」
( ∵)「じゃあ、お腹すきませんか? 催しませんか?」
川;゚ -゚)「……」
川;゚ -゚)「……催す、という感覚は、よく分かりませんが……」
( ∵)「はい」
川; - )「先程から、か、下腹部が少し……軋むというか……痛む感じは……」
(;∵)「トイレ行けぇええ!! 下手すりゃ漏らしますって! 勘弁してください!!」
川;゚ -゚)「ですからクールは!!」
(;∵)「いいから行けやぁああああああああ!!」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:57:56 ID:mEU.RSwwO
数分経って。
川; - )「……」
( ∵)「出ました? ちゃんと手洗いました?」
川; - )「出ました……洗いました……」
トイレから戻ってきたクールは、血の気をなくしていた。
キッチンと部屋の境に立ち、ドアに寄り掛かる。
( ∵)「ほら。人間なんですって」
川; - )「馬鹿な……」
( ∵)「そんなところにいないで、こっち来なさい。
あなたコート着ないで出掛けたでしょう。体冷えてるんじゃないですか」
川; - )「ロボットですから……風邪は引きません……」
まだ信じないのかとビコーズは嘆息する。
面倒臭い。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/05(日) 23:59:14 ID:mEU.RSwwO
( ∵)「だから、人間だって――」
川;゚ -゚)「――ロボットです!」
突然、クールが叫んだ。
踵を返し、台所、まな板の上にあった包丁を掴む。
(;∵)「ちょ」
川;゚ -゚)「さ、刺せば。刺せば分かります。
人間じゃないから血など出ませんし。死にません」
(;∵)「何でそうなる!?」
包丁を持ったクールがビコーズに近寄った。
彼の腹に跨がり、刃先を己が胸に向ける。
川;゚ -゚)「御主人様。見て。クール、ほら、クールは、ロボット、ですもの。
こうすれば分かってくれるでしょう。御主人様……」
(;∵)「ばっ……」
ビコーズが、さっと青ざめた。
脂汗が滲む。
クールの手に、力が込められた。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:00:36 ID:1vBgP5vQO
(;∵)「だ、駄目ですよ! それ置きなさい!」
川;゚ -゚)「ふ、ふふふ、心配なさっているのですね。お優しい」
(;∵)「優しいっつうか……ちょっと、あの、先生スプラッタとかマジで苦手ですから!
あなたの心配じゃなくて自分の心配してんですよ!」
川;゚ -゚)「安心してください、クールは死にません」
(;∵)「話聞け!」
川;゚ -゚)「いきますよ、御主人様」
(;∵)「や、」
(;∵)「やめなさい――クール!!」
川;゚ -゚)「っ」
怒鳴る。
クールが一瞬動きを止め、それから、ゆっくりと手を下ろした。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:01:42 ID:1vBgP5vQO
川;゚ -゚)「だって、じゃあ、どうやって証明すればいいんですか……」
(;∵)「……いいです、証明しないで……。
ロボットってことで、結構です」
ビコーズが、初めてクールの言葉を肯定した。
そもそも否定すべきではなかったのだ。
彼女の主張を全て突っぱねれば、こんな風にとんでもない行動に出られてしまう。
クールが自分で気付かなければならない。
川;゚ -゚)「……」
包丁を床に落とし、クールは、そのままビコーズの胸へ上体を倒した。
川;゚ -゚)「もう……外に、出たくありません……」
( ∵)「さいですか」
川;゚ -゚)「御主人様、お願いです、ずっと……クールと一緒にいてください」
( ∵)
( ∵)(あれ、悪化した?)
した。
*****
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:02:39 ID:1vBgP5vQO
かちり。かちり。
時計の針が進む。
o川;゚−゚)o
日付はとっくに変わっている。
リビングのソファに1人腰掛け、キュートは姉の帰りを待っていた。
かちり。かちり。
時計の音が響く。
ドアが開く音も、ただいまという声も、何も聞こえない。
かちり。かちり。
*****
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:04:15 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚*ζ(昨日も今日もお休み……)
23日。
またしてもビコーズは学校に来なかった。
アサピーが言うことには、電話も通じないらしい。
無断欠勤――それも連日――するような人間ではない。
何かあったのではないかと、職員室ではちょっとした騒ぎになっているそうだ。
そんな話を聞いては、デレも不安になる。
無事だといいですねとアサピーと話していると、
デレの携帯電話がメールの受信を知らせた。
内藤からだ。
――内容は、デートの待ち合わせに関するものだった。
25日の15時に、駅の西口に飾ってあるクリスマスツリーの前。
ζ(゚、゚;ζ(ああ、そういえばデート)
すっかり忘れていた。
デート。何故自分なのだろう。
ツンでなくていいのだろうか。
ζ(゚、゚*ζ「うむむ……」
唸りながら、携帯電話で時間を確認した。
昼になる。
今日は午後から予定があるのだ。そろそろ出よう。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:05:26 ID:1vBgP5vQO
学校を後にしたデレは、適当にファストフード店で昼食を済ませて、
ケーキ屋に寄って行った。
その後、ある場所へ向かう。
――ショボンの事務所である。
昨日、電話帳で調べた事務所の番号へ連絡を入れておいた。
相談がある旨を伝え、約束を取り付けている。
というわけで午後2時。
教えてもらった道筋を辿り、無事に到着した。
4階建てのビル。
階段を上り、3階へ。
小洒落たステンドグラスが嵌め込まれた木製のドア。
「遮木探偵事務所」と書かれたプレートが下がっている。
ノックをし、デレはドアを開いた。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:07:21 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚ー゚*ζ「お邪魔しま、」
す、までは声にならなかった。
目の前に、透明な液体で満たされたグラスが突き出されたのだ。
ζ(゚ー゚;ζ
(´・ω・`)「やあ。ようこそ」
グラスを持っているのは、八の字眉の探偵、遮木ショボン。
優しく微笑みかけられる。
(´・ω・`)「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いてほしい」
ζ(゚ー゚;ζ「……いや、あのう」
(´・ω・`)
ζ(゚ー゚;ζ
(´・ω・`)
ζ(゚ー゚;ζ「……ごめんなさい未成年なので……」
(´・ω・`)「ノリ悪っ。つまんない奴だな」
ζ(゚ー゚;ζ(ええええええええ)
理不尽ここに極まれり。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:08:41 ID:1vBgP5vQO
当て付けがましく溜め息をついたショボンは、一歩引いた。
室内がデレの視界に入る。
中は普通の造りになっていた。
真ん中にガラステーブル、それを挟む形で置かれたソファが2つ。
奥には3人分の机と、ファイルの詰まった本棚や段ボール箱がある。
ショボンのことだから、妙な遊び心で妙な飾りつけでもしていそうなものだと思ったが。
(´・ω・`)「そう遠慮せずに」
ζ(゚、゚;ζ「わ」
腕を引っ張られた。
ショボンが足でドアを閉め、デレを壁に追い詰める。
(´・ω・`)「ほらほら。景気づけ景気づけ」
ζ(゚、゚;ζ「いっ、いらないですいらないです! 私まだ16歳だし!」
(´・ω・`)「ぐぐいっと。ね。ちょびっとだよ、ちょびっと」
ζ(゚、゚;ζ「駄目駄目駄目っ、テキーラってアルコール度数高いんですよね!?
小っちゃい頃に今みたいな感じで親戚に絡まれてビール飲まされて、
思いっきり酔った挙句に倒れたんです私! た、多分お酒弱い……!」
(´^ω^`)「まあまあまあまあ」
ζ(゚、゚;ζ「むがっ!? ん、んぐぐぐ!!」
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:09:37 ID:1vBgP5vQO
左手で頭を鷲掴みにし、グラスの中身を口に注ぎ込まれた。
物凄い笑顔。
毎回毎回、会う度にわけの分からぬ嫌がらせをされてばかりだ。
ようやく解放されたのは、全て飲み干した後。
涙目のデレに対し、ショボンは楽しそうな表情を浮かべている。
ζ(>、<;ζ「ショボンさんの意地悪……ううっ、くらくらする……」
(´・ω・`)「……ただの水だぜ、おい」
ζ(>、<;ζ
ζ(゚、゚*ζ コホン
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ショボンさん、お土産を買ってきてましてね、ケーキなんですけど――」
(´・ω・`)「くらくらする(笑)」
ζ(;、;*ζ「やめてー! 恥ずかしい!! 何が『くらくらする』だよ! 水なのに!」
(´・ω・`)「前から馬鹿だ馬鹿だとは聞いてたけど、本物を前にすると想像以上すぎて驚くよ」
ζ(;、;*ζ「だ、誰から聞いてたんですか! 内藤さんですか!」
(´・ω・`)「ニュッ君」
ζ(;、;*ζ「あんにゃろう!!」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:11:54 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「それはさておき、そこのソファ座って。
何か飲む? あるのは……紅茶とコーヒーと、えー……オレンジジュース。
水。あと酒ならいっぱい」
ζ(ぅ、;*ζ「さておかれた……。オレンジジュースでお願いします……。
それとお酒はせめて成人に勧めてください」
(´・ω・`)「ほんっとに、つまんない奴」
つまんなくて結構ですと反論し、デレはソファに腰を下ろした。
コートを脱ぎ、膝の上に丸める。
(´・ω・`)「学校帰りなんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
(´・ω・`)「休みじゃないの?」
ζ(゚ー゚;ζ「……部活」
(´・ω・`)「入ってないよね」
ζ(゚、゚;ζ「……ほ、補習」
(´・ω・`)「そんなとこだろうと思った」
ζ(゚、゚;ζ「ちっ、違いますよ! 赤点とったんじゃないですよ!
自分からお願いしたんですよ!!」
(´・ω・`)「へえ、偉い偉い。ちゃんとお勉強した?」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:12:41 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚;ζ「……いえ。ビコーズ先生――あ、私の学校の先生なんですけど。
先生が学校に来なくて、補習開かれなかったんです」
(´・ω・`)「良かったじゃん」
ζ(゚、゚*ζ「でも、昨日今日と続けて無断欠勤してるらしいんですよ。
そんなことする人じゃないのに」
(´・ω・`)「ふうん。それはそれは。
――ビコーズって、英語の先生?」
ζ(゚、゚;ζ「えっ」
ぎょっとする。
ビコーズを知っているとは思わなかった。
ζ(゚、゚;ζ「どうして」
(´・ω・`)「ラーメン屋やってるクソ親父から聞いたことがあっただけだよ。
僕に似てる常連がいるって」
ζ(゚、゚;ζ(似てる……かなあ)
言われてみれば、外見はまったくの別物だが、
性格の悪さやら何やら、内面的に似ているところがいくつかある。
納得した。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:14:10 ID:1vBgP5vQO
オレンジジュースの入ったグラスがテーブルに乗せられた。
ショボンが自分のグラスを口元で傾けながら、デレの向かいに座る。
(´・ω・`)「ちょうだい、それ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、どうぞ」
ケーキ屋の箱を手渡した。
ショートケーキ、モンブラン、シュークリーム、アップルパイが一つずつ。
ショボンの他に3人ほど所員がいると聞いたので、彼らの分も買っておいた。
ショボンが中を覗き、デレに「どれ食べるの」と問いかけた。
ショートケーキに熱い視線を送っている。
ζ(゚ー゚*ζ「私はいいです。皆さんで召し上がってください」
(´・ω・`)「ああ、何、うちの奴らの分? ありがとう」
ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ。どういったのが好きか分からなかったので適当に選びましたけど、
良かったですか?」
(´・ω・`)「うん」
ショボンはショートケーキを持ち上げ、直接噛りついた。
付属のフォークは完全に無視。
男らしいというか、行儀が悪いというか。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:15:11 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「んで、何の話をしに来たの? さっきの先生の話?」
ζ(゚ー゚*ζ「……図書館の、こと」
ショボンの口が止まる。
ソファの背もたれに寄り掛かり、足を組んだ。
(´・ω・`)「もっと、すっぱりはっきり言って」
ζ(゚、゚*ζ「ショボンさんは、『知りたければ調べろ』って言いましたけど……。
どう調べればいいか分かんなくて」
(´・ω・`)「調べ方は自分で考えろ、とも言わなかったかな、僕は」
ζ(゚、゚;ζ「うっ……だってだって」
(´・ω・`)「正直、あんまり僕を頼ってほしくないな。
何かあったときに僕の責任にされたら嫌だし」
ζ(゚、゚*ζ「この間は色々喋ってたくせに」
(´・ω・`)「あのときはカマかけただけだよ。
あれでビビるようだったら二度と図書館に近付けさせないつもりだった」
ζ(゚、゚*ζ「……そんなに、恐いことなんですか?
私が知りたがってる――その、事実とかって」
(´・ω・`)「恐い、かもね。常識なんざ糞喰らえって世界だし」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:16:52 ID:1vBgP5vQO
非常識な出来事など、散々目の当たりにしてきている。
命を宿した本。それに選ばれた主人公達。
デレ本人だって、ホラー小説に巻き込まれた主人公だ。
ζ(゚、゚*ζ「……慣れましたよ、不思議なことは」
(´・ω・`)「君が慣れたのは『本』が引き起こす事件だろ。
もっと、……何て言うかな。根本的なところに問題があるんだよ」
ショボンが、ケーキのてっぺんにあった苺を咀嚼する。
酸っぱいなと眉根を寄せた。
ζ(゚、゚*ζ「根本的?」
(´・ω・`)「うん……ああ面倒臭い。
そもそも、何を知りたいの。何が気になってるの。
まず、そこから教えてくれないか」
ζ(゚、゚*ζ「……ええと」
思考を巡らす。
指を折り、一つ一つ確認する。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:17:50 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚*ζ「本が、どうしてあんな力を持つようになったか、が一番で」
(´・ω・`)「ふむ」
ζ(゚、゚*ζ「あと……私の友達がクックルさんを好きになったんですけど、
貞子さんに、諦めろって言われたみたいなんです」
ζ(゚、゚*ζ「でも、私とニュッさんが結婚するのは――勿論、もしもの話ですよ。
私とニュッさんに関しては、貞子さん、祝福するって言ってました。
どうしてクックルさんと私の友達は駄目なんでしょう」
(´・ω・`)「……気になるのはそれだけ?」
ζ(゚、゚*ζ「……まだあります。
一昨日、内藤さんが、ショボンさんのお父様のところに行ったんです」
(´・ω・`)「親父? 何で」
ζ(゚、゚*ζ「本が見付かったとかで。
それでツンちゃんがついていこうとしたんですけどね、
混乱させちゃいけないから、って、ツンちゃんお留守番させられてました」
(´・ω・`)「混乱。うん。……うん、そうだね。もしかしたら――可能性はあった、かな」
いつの間にか、ショボンはケーキを食べ終えていた。
指に付着したクリームをティッシュペーパーで拭いながら、ぶつぶつ呟いている。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:18:00 ID:99RuZZrc0
- おいついたっ
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:18:34 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚*ζ「……最後の一つ。
ハローさんの言葉が、ずっと引っ掛かってます」
(´・ω・`)「どんな?」
ζ(゚、゚*ζ「図書館に住む『作家』の全ては、ニュッさんのためにある、って」
(´・ω・`)「……」
ζ(゚、゚*ζ「内藤さんからは、作家の皆さんは
ニュッさんのお祖父ちゃんに拾われたんだって聞いてます」
ζ(゚、゚*ζ「ハローさん達からすれば、たしかに感謝して当然なのかもしれませんが、
だからって――そんなに、……何ていうか……」
(´・ω・`)「ニュッ君に尽くそうとするのは変だ、と」
ζ(゚、゚*ζ「はい。……気になってるのは大体これぐらいです。
細かい疑問なら、他にもいくつかありますけど」
(´・ω・`)「んー、そうか。ふん。んん」
(´・ω・`)「はっきり言っちゃう。それらを解明するとなると、
結果的に――『全部』暴くことになるよ」
ζ(゚、゚;ζ「全部」
(´・ω・`)「そう。さっき僕が言った、根本的な問題。
まず間違いなく、誰もが逃げ出したくなるような事実だ」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:19:48 ID:1vBgP5vQO
オレンジジュースで喉を潤し、ショボンはデレを指差した。
眉間の皺が深くなる。
(´・ω・`)「君は、あいつらのことを嫌いにはならないんだろ。
そう言ったよね、前に」
ζ(゚、゚*ζ「……はい」
(´・ω・`)「約束してくれる?」
ζ(゚、゚*ζ「約束?」
(´・ω・`)「絶対に、嫌わないでやって。何を知っても」
真剣な瞳。声。
懇願するような。
怯みもせず、デレは頷いた。
ζ(゚、゚*ζ「――勿論です」
(´・ω・`)「いい子だ」
箱に手を突っ込み、ショボンがシュークリームを取り出す。
それをデレへ放り投げた。
ζ(゚、゚;ζ「ちょぉおおっ!!」
(´・ω・`)「おうナイスキャッチ。食べちゃって」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:20:33 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚;ζ「で、でも、これ……」
(´・ω・`)「いいよ、甘いの好きじゃない奴がいるから」
ζ(゚、゚;ζ「あう。そうなんですか、すみませんでした……。
じゃあいただきます」
何を買えばいいか訊けば良かったなと後悔しつつ、シュークリームを口に運ぶ。
さくり、ふわり、とろり。
軽い生地と甘いカスタードが、歯と舌に心地いい。
ζ(´ー`*ζ「おいひい」
(´・ω・`)「顔が緩みきってますよお嬢さん。
さて、何の話だったか……ええと、調べ方だっけ」
ζ(゚ー゚*ζ「はい!」
(´・ω・`)「そうだなあ……まず、作家やブーンに直接訊いても無駄だよ。
前も言った通り、自分達から話すつもりはないからね」
(´・ω・`)「だから調べなきゃいけないわけだけど。んん……ねえ、デレちゃん」
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:25:05 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「君が会っていない、『図書館の人間』がいるだろう?
そいつが一番の鍵」
ζ(゚、゚;ζ「鍵」
(´・ω・`)「それともう一個。
……誰にも気付かれずにニュッ君かブーンの部屋に侵入出来る?」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、そんなスパイめいたことはちょっと……」
(´・ω・`)「だよなあ」
ζ(゚ー゚;ζ「お二人の部屋に入れば、何か分かるんですか?」
(´・ω・`)「どっちか……あるいは両方の部屋にある、と思う。
僕も話で聞いた程度でしか知らないから、詳細は分からないんだけど――」
(´・ω・`)「――『それ』を見れば、すぐ分かる筈だよ。全部。何もかも」
「それ」って何ですか、と問いかけても、ゆるゆると首を振られるだけで、
明確な答えは返ってこなかった。
これ以上は言えない――言わない、らしい。
(´・ω・`)「僕が出せる、精一杯のヒントだよ。これでも」
ζ(゚ー゚;ζ「えー」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:26:15 ID:1vBgP5vQO
内藤かニュッの部屋に入らなければならないのは分かったが、
だからといって、了解しましたと簡単に実行出来る話ではない。
どうやって部屋に入れてもらえと言うのだ。
内藤なら頼めば招いてくれそうなのだけれど、そうなったらそうなったで、
今度はショボンの言う「それ」を探し出すミッションが待っている。
難しい難しくない以前に、人として、やってはいけない気がするのだが。
ζ(-、-;ζ「うーん……」
(´・ω・`)「まあ、いつか機会は巡ってくる」
ζ(-、゚;ζ「『いつか』、なんですか……」
(´・ω・`)「急いては事を仕損じる、ってさ、ほら、言うじゃない」
立ち上がり、ショボンはデレのいるソファへ移動した。
隣に座り、肩を引き寄せる。
(´・ω・`)「僕だって依頼をすぐに解決出来るわけじゃない。
特に浮気調査なんかはね、証拠が出てくるのを待たなきゃいけないし」
ζ(゚ー゚;ζ「は、はあ……」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:27:15 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「じっと待つのも大事なのさ。
それに案外、向こうの方からデレちゃんのもとに転がってきてくれるかもよ。
分かった?」
ζ(゚ー゚;ζ「わかりました、わかりましたけど、何かショボンさん近い……」
(´・ω・`)「ってなわけで――」
(´・ω・`)「お・か・ね」
ζ(゚ー゚;ζ「え?」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:28:14 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「『え?』じゃないよ。
このショボン様が君なんかのためにわざわざ時間作ってお話ししてあげたんだ。
金でも貰わなきゃやってらんねえって」
ζ(゚ー゚;ζ「お、お金、取るんですか……」
(´・ω・`)「遮木探偵事務所ではお悩み相談も受け付けております。
つまり、これも立派な仕事の内でして」
ζ(゚ー゚;ζ「聞いてない!」
(´・ω・`)「おっと、君の方から押しかけてきといて踏み倒すつもり?」
ζ(゚ー゚;ζ「う」
(´・ω・`)「デレちゃんはそういう子だったのかな?
そんなに悪い子だったのかな? お兄さん悲しいよ、裏切られた気分だ」
ζ(゚ー゚;ζ「うう……」
恨みがましい目と言葉。
観念したデレが、おいくらですかと問う。
ショボンはケーキの入った箱を見ると、右手を広げた。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:29:46 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「500円」
ζ(゚ー゚;ζ「うわあ意外と良心的だ!」
(´・ω・`)「我ながら有意義な答えをあげられなかったのは自覚してるし、
ショートケーキ貰ったしね。あれがなかったら数倍の値段だったよ。
それとも何、もっと高い方がいいの」
ζ(゚ー゚;ζ「そうじゃないですけど……内藤さんには高額吹っ掛けてるから」
(´・ω・`)「金持ちってのはね、僕に搾取されるために金を持ってるのさ」
ζ(゚ー゚;ζ(いみがわからない)
鞄から財布を引っ張り出す。
手持ちの小銭では500円支払うのに不十分であった。
千円札を取り、ショボンへ。
ζ(゚、゚*ζ「ごめんなさい、細かいお金なくて」
(´・ω・`)「お札様大歓迎。毎度ありー」
ζ(゚ー゚*ζ「お釣りは結構ですので」
(´・ω・`)「ひゅう、あざっす」
ひらひらと紙幣を振り、ショボンは元の位置へ戻った。
ソファの上で横になる。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:31:36 ID:1vBgP5vQO
(´・ω・`)「さて、そろそろ無能な手下共が戻ってくる時間だ」
ζ(゚、゚*ζ「あ、それじゃあ……私、失礼します。
お話聞いてくれてありがとうございました、ジュースご馳走様です」
(´・ω・`)「ああ、こっちこそご馳走様」
コートを羽織るデレに、ショボンが横たわったまま手を振った。
鞄を抱えたデレが事務所を出ていく。
ショボンは彼女の飲みかけのオレンジジュースを一気に呷ると、
千円札を顔の上に翳した。
(´・ω・`)(……)
回りくどい、と思う。
本当は、図書館に関する全てを、自分がデレに話してやりたい。
けれど、そのせいでデレが怯えてしまったら。
内藤達が悲しむ結果になったら。
きっと、ショボンは自分を責める。
デレは絶対に内藤達を嫌わないと言ったが、結局あんなのは口約束でしかない。
実際にどうなるかは分からないのだ。
(´-ω-`)
出来るならば。
誰も傷付かないでほしい。
.
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:32:39 ID:1vBgP5vQO
――デレが事務所を出てから、しばらく経った頃。
携帯電話が鳴り響いた。
発信者、VIP図書館。
内藤なら彼の携帯電話からかけてくる。作家の誰かだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「はい」
『あと30分以内に来なかったら捻り潰す』
ζ(゚、゚;ζ「……はあっ!? あ、そ、その声ニュッさんだ!
どうしたんですか急に――って電話切れた! ひ、捻り潰すって何を……!」
通話時間、ものの5秒。
携帯電話を閉じたデレは、慌てて図書館の方向を確認した。
*****
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:33:46 ID:1vBgP5vQO
ニュッがデレに電話をかける、数分前。
彼はバイトに行くべく、林の中、フェンスに続く道を歩いていた。
内藤に「本離れする時間を作れ」と言われて始めたバイトだが、
肝心の仕事場は小さな本屋だ。
本離れ出来ているかは甚だ疑問である。
が、大量の本に囲まれながらも、勤務中に読書をするわけにはいかない。
毎度毎度、「待て」と言われてお預けを喰らう犬のような気分になる。
( ^ν^)(さみい)
吐き出す息が白く濁る。
暑さ寒さには大変弱い。特に今日なんかはいつにも増して冷え込んでいるので、
内藤に車で送ってもらいたいと考えていたのだが。
その内藤は、昼前にツンと共に「本」探しのために出掛けてしまった。
踵を返して図書館に帰ってしまいたい。
暖房の利いた部屋で、温かい飲み物でも飲みながら本を読んでいたい。
( ^ν^)
フェンスの前に差し掛かった。
ニュッの足が止まる。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:34:27 ID:1vBgP5vQO
o川*゚−゚)o
( ^ν^)
鍵のかかったフェンス。
向こう側に、デレの友人、素直キュートが立ち尽くしていた。
潤んだ目で、縋るようにニュッを見つめる。
( ^ν^)
o川*゚−゚)o
( ^ν^)
o川*゚−゚)o
( ^ν^)
o川*゚−゚)o
( ^ν^)(何でここにいるんだ、こいつ)
o川*゚−゚)o(何で固まってるんだろう、この人)
*****
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:35:57 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚;ζ「お邪魔します!!」
図書館に駆け込んだデレ。
手前のテーブルを囲む3人の男女を見付けた。
( ゚∋゚)「来たか」
o川*;−;)o「……デレちゃん……」
ハハ ロ -ロ)ハ「デレ!」
友人のキュートに、作家の堂々クックルとハロー・サン。
ハローはデレに歩み寄ると、左手を伸ばした。
ハハ*ロ -ロ)ハつ「イラッシャイ、デレ!」
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはハローさん、クックルさん。そういえば久しぶりに会いま……」
ζ(゚д゚;ζ「――ひでででででで!!」
ハハ ロ -ロ)ハつ<;д;*ζ イタイイタイイタイイタイ
いつも通りに過剰なスキンシップとして抱きしめられるものかと思いきや、
何の脈絡もなく頬を抓られた。
加減なしに捩られた。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:38:02 ID:1vBgP5vQO
必死で抵抗し、手を引っぺがす。
じんじん痛む頬を押さえ、デレはハローから離れた。
ζ(;д;*ζ「何すんですかぁあ!」
ハハ ロ -ロ)ハ「ニュッ君に、『デレが来たら捻り潰しとけ』って言われたカラ……。
ドコをドウすればイイか分かんなかったノデ、とりあえずホッペ抓りマシタ」
ζ(ぅд;#ζ「さっ、30分以内に来たのに!
あの野郎どっちにしろ捻り潰すつもりだったのか畜生!!
ニュッさんどこですか!!」
( ゚∋゚)「俺らにキュートを預けて、デレに電話してからすぐバイトに行ったぞ」
ζ(゚皿゚#ζ「むがー! 絶対に後でやり返す!」
両頬抓ってやると地団駄を踏んで一頻り喚いたデレは、
クックルの隣でキュートが涙を零しているのに気付き、はっとした。
慌ててキュートの傍に行く。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:39:51 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚;ζ「どうしたのキュートちゃん」
o川*;−;)o「……」
ζ(゚、゚;ζ
ζ(゚、゚;ζ「まさか……しぃさんが……? どうします、そろそろ警察突き出します?」
( ゚∋゚)「お前の中でのしぃの扱いがよく分かった」
ハハ ロ -ロ)ハ「別に間違った認識デモないデスケドね」
真剣な目をするデレに、違う違うとクックルとハローが手を振った。
キュートはミルクティーを飲みながら首を傾げる。
しぃって誰だろうといった顔。
ζ(゚、゚;ζ「いや、でもキュートちゃんを図書館に置いとくのは危なくないですか?
ほら……しぃさんとか、あと……しぃさんとか……それとしぃさんとか……」
( ゚∋゚)「しぃなら執筆のために部屋に篭ってるぞ」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、そうですか。良かっ……」
(*゚ー゚)「飽きたー!! クックル構ってー!」バターン
ζ(゚ー゚;ζ(来ちゃった―――――!!)
噂をすれば影。
美少女に近付けてはいけない女が、大変元気よく現れた。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:40:48 ID:1vBgP5vQO
ハハ ロ -ロ)ハ「飽きたッテ、マダ1時間も経ってマセンヨ」
(*゚ー゚)「もう無理! 飽きた! 始めっから話練り直す!」
( ゚∋゚)「その飽き性どうにかならないのか」
(*゚ー゚)「だあって、思ったように進められないんだもん。
だからクックル、気晴らしに遊ん――」
o川*;−;)o
(*゚ー゚)「でっ……」
o川*;−;)o「……は、はじめまして……」
(*゚ー゚)
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:42:27 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚ー゚;ζ「しぃさん、落ち着いてくださいね。どうどう、どうどう」
(*゚ー゚)「どう……どっ」
(;*゚ー゚)=3「――どどどどっ、どうしたのかな、そこな美しいお嬢さん!!
泣いていては折角の綺麗な顔が勿体ないよ! お姉さんが慰めたげる!
泣くより鳴く方がいいよ! 絶対いいよ! イイよ!」
o川*;−;)o「!?」
(;*゚ー゚)「ねえ知ってる!? 私と気持ちいいことすると将来幸せになれるんだよ!!」
ζ(゚ー゚;ζ「す、すごい勢いで嘘ついた!!」
息を荒げて走り出すしぃ。
キュートに触れかけた手は、クックルによって叩き落とされた。
(;*゚ー゚)「いってえ!」
( ゚∋゚)「ただでさえ泣いてるのに、トラウマ植えつけるようなことするな」
o川*;−;)o「と、トラウマって何が……?」
(;*゚ー゚)「くそっ、それ言われると反論出来ない……人道的に……」
ハハ ロ -ロ)ハ「しぃの行動は全てにおいて人道カラ外れてマスヨ」
(*;ー;)「わーん、人格を否定されたよデレちゃーん!」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ……寄るな!!」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:43:49 ID:99RuZZrc0
- クックルやさしい
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:44:57 ID:1vBgP5vQO
少し、場が落ち着く頃まで時間を進めて。
新たに加わったしぃを含めた4人は、キュートから図書館に来た事情を聞いた。
昨日の昼、外で姉を見付けたこと。
姉の様子がおかしかったこと。
昨夜、姉が帰ってこなかったこと。
o川*゚−゚)o「……お姉ちゃんだって、大学生だし……。
外泊するぐらい全然構わないんだけど」
涙を拭ったキュートが、ぽつぽつ、呟くように話す。
ゆっくりゆっくり、言葉を選びながら。
o川*゚−゚)o「でも、無断でどこかに泊まるような人じゃないの。
特に今は――お母さんがお父さんのところに行ってるから、
何も言わずに私を1人にする筈ないんだよ……」
o川*゚−;)o「……なのに、でっ、電話通じないし、メールも返ってこないし。
それに、昨日……」
また、涙が滲み出た。
うん、とデレが相槌を打つ。
隙あらばセクハラを試みようと目を光らせていたしぃも空気を読み、黙って頷いた。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:46:03 ID:1vBgP5vQO
ハハ ロ -ロ)ハ「……昨日、ナニ?」
o川*;−;)o「わ、私のこと、知らないって言って、それで、
――気持ち悪いって言った……」
テーブルの上に、涙が落ちた。
隣にいたクックルが頭を撫でる。
キュートは顔を真っ赤にさせたが、珍しく、おとなしいままだった。
o川*;−;)o「前……私の顔がおかしくなったときも、
お姉ちゃん、私に、気持ち悪いって、近寄るなって言ったの。
でもデレちゃん達が治してくれた後は、いつもの優しいお姉ちゃんに戻ったんだよ」
ζ(゚、゚*ζ「キュートちゃんがクックルさんの本を持ってたときだね」
o川*;−;)o「……うん。
だから、今のお姉ちゃん、また……あのときみたいになったのかなって。
ここに来たら、何か分かるかと思って」
彼女は「本」のことを、ろくに知らない。
自身が主人公になった事件のことも、クックルや内藤に有耶無耶にされた。
――上手く誤魔化されたというよりは、
自分が踏み込んではいけないのだと察したところが大きい。
教えてもらえないならば、それでも構わない。そういう性格である。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:49:13 ID:1vBgP5vQO
o川*;−;)o「でも。……さっき、考えたんだけど……。
もしかしたら、元々お姉ちゃんは私が嫌いだったのかな。
私と2人きりになるのが嫌で帰ってこなかったのかな……」
そこまで話して、キュートは口を噤んだ。
しゃくり上げる。
( ゚∋゚)「……」
クックルが、もう一度頭を撫でた。
向かいで、しぃが腕を組み、ふむ、と唸る。
(*゚ー゚)「つい最近、お姉さんは本を拾ったり買ったりしたかな?」
o川*;−;)o「本……ごめんなさい、分かんないです……」
ハハ ロ -ロ)ハ「ンー……。キュートのコト、まったく知らない様子デシタカ?」
o川*;−;)o「……あれが演技じゃないなら。
本当に私を知らないみたいに振る舞ってました。
妹なんかいないって……」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:51:07 ID:1vBgP5vQO
キュートが袖で顔を拭う。
――あ、と声を漏らした。
ζ(゚、゚*ζ「どうしたの?」
o川*゚−゚)o「ごしゅじんさま……とか、何か、言ってた気がする」
ζ(゚、゚;ζ「ご、御主人様?」
(*゚ー゚)「ほう! そういうプレイでmんがっ」
いらぬ方向へ話を持っていこうとしたしぃの口を、デレとハローが押さえつけた。
クックルが睨みつける。
自重という言葉を彼女は知らないのだろうか。
o川*゚−゚)o「御主人様がお腹すかせてるから早く帰りたい……みたいなこと。
うちに帰りたいってのじゃなくて、
その『御主人様』の家に帰りたいって口振りだった」
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:52:42 ID:1vBgP5vQO
( ゚∋゚)「……お前の姉さんは、その……」
o川*゚−゚)o「?」
( ゚∋゚)「恋人を『御主人様』と呼ぶような、何か……そういう、あれじゃないんだよな」
o川;゚−゚)o「よ、呼ばないよ! 至ってノーマルな筈だよ!! ……多分……」
ζ(゚、゚*ζ「きりっとしてて、真面目な人だったと思いますよ。
数えるくらいしか会ったことないですけど」
(*゚ー゚)「きりっとした真面目な人を支配して恥辱に染めるのが最高なnむぐっ」
ハハ ロ -ロ)ハ「しぃは一回ぐらい、キリッと真面目になった方がいいデスヨ」
(*゚ー゚)+ 「乳房揉みたい」 キリッ
ζ(゚、゚;ζ「おっぱいを心なしか真面目な響きの乳房に言い換えただけじゃないですか!」
o川;゚−゚)o「……私どうしたらいい?」
( ゚∋゚)「とりあえず、あれは無視していい」
(*゚ー゚)「無視せんといて! 無視せんといて!」
こいつうるせえなあ。
全員が全員、そんな感じの表情をしぃに向けた。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:54:01 ID:1vBgP5vQO
(*゚ー゚)「お前ら何だその目」
ζ(゚、゚*ζ「部屋に帰ってくれないかなあって……」
(*゚ー゚)「あれ、デレちゃんが随分辛辣になってる。
この図書館内での私の扱いを着々と心得てきてる予感」
( ゚∋゚)「いいから黙っとけ」
(*゚ー゚)「酷いや! まあまあ待ちんしゃい。キュートちゃんだっけ?
キュートちゃんのお姉さんは、たしかに『御主人様』と言ったんだね?」
o川;゚−゚)o「は、はあ」
(*゚ー゚)「ふむふむ。うんうん。御主人様、ね。
妹の存在すら忘れるほど役になりきってるとなると、
よっぽど我慢しすぎて鬱憤溜まった本か、あるいは……名前、かなあ」
ζ(゚、゚*ζ「しぃさん、心当たりあるんですか?」
(*゚ー゚)「ちょいとね。
……キュートちゃん、お姉さんについて色々教えてくれる?」
o川*゚−゚)o「色々?」
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:56:56 ID:1vBgP5vQO
ζ(゚、゚;ζ「まっ、まさかキュートちゃんのお姉さんに手を出すつもりじゃ!」
(*゚ー゚)「違うわい。さあキュートちゃん。カモン!」
o川;゚−゚)o「何を言ったらいいんですか?」
(*゚ー゚)「名前とか歳とか」
o川*゚−゚)o「はあ……名前は素直クール、で、今19歳です。大学生で――」
素直クール。
その名を聞いた瞬間、しぃは立ち上がった。
(*゚ー゚)「クール!」
o川;゚−゚)o「へっ」
(*゚ー゚)「髪は? 長い? 黒い?」
o川;゚−゚)o「黒いです。長い……うん、長い方だと思います」
(*゚ー゚)「よっしゃあ、見えてきたよ見えてきたよ!」
ハハ ロ -ロ)ハ「ワッ」
衝動のままにハローを抱きしめ、しぃが親指を立てる。
その指を、自分へ向けた。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 00:59:21 ID:1vBgP5vQO
(*゚ー゚)「私の本だ!」
ζ(゚、゚;ζ「えっ……しぃさんの?」
( ゚∋゚)「どうして分かったんだ」
(*゚ー゚)「『御主人様』ってところで怪しいと思ったよ。
私の書いたSF……特にロボットものはね、召使ロボットが頻繁に出てくるの。
単純に私の好みなんだけどさ」
ζ(゚、゚;ζ「召使ロボットとな」
(*゚ー゚)「そんでもって持ち主を『御主人様』って呼ぶ奴が多いのさ!
これも私の趣味ね」
o川;゚−゚)o「? 何の話……」
(*゚ー゚)「……っとと。キュートちゃんは知らんのか、『本』のこと」
どうしよう、と、しぃが頭を掻く。
事情を知らない人間にべらべら話すのも良くない。
少し考え、もう一度親指を立てた。
(*゚ー゚)「キュートちゃん、とにかく手掛かりは掴めたよ。後は私達に任せなさい」
*****
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:00:41 ID:1vBgP5vQO
――偶然、ではあるが。
キュートの姉ことクールは、本の登場人物と同じ名前、
かつイメージに近い容姿をしていた。
おかげで「役」そのものにどっぷり浸かってしまった――のであろうと、しぃは推理する。
( ^ω^)「……まず間違いないと思うお」
夜。
デレ、キュートと入れ違いになる形で帰宅した内藤とツンに、
しぃは事のあらましと憶測を話した。
内藤はうんうんと何度も頷く。
ショボンの父から聞いた「店内で本に触れた人間」の中には、
クーちゃんと呼ばれる女子大生がいたそうだ。特徴も一致する。
そのクーちゃんとやらがクールなのだろう。
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:03:10 ID:1vBgP5vQO
(*゚ー゚)「いやはや、何て奇跡。私の本も大喜びだったろうね」
と。
そこで、しぃは首を傾げた。
(*゚ー゚)「でも主人公は『クール』じゃないんだよなあ」
ξ゚听)ξ「そうなの?」
(*゚ー゚)「うん……主人公はロボットの持ち主だよ。
多分、本は最初にキュートちゃんのお姉さんに目をつけて、
それから適当に主人公を選んだんじゃないかな」
( ^ω^)「じゃあ、そのとき『クーちゃん』の近くにいた人が――」
(*゚ー゚)「主人公、かも」
内藤が携帯電話を取り出す。
シャキンに確認をとるのだろう。
ξ゚听)ξ「その話、危険な展開とかはあるの?」
(*゚ー゚)「ないない。ロボットと人間の交流、って話だから。ほのぼのしてるよ」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:04:48 ID:1vBgP5vQO
――そう。
「クール」と「御主人様」の日常を描いた、平和な話なのだ。
(*゚ー゚)「平気だよ。よっぽど酷い拗れ方さえしなきゃあさ」
第六話 続く
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:07:21 ID:1vBgP5vQO
- 今回の投下終わりです
次回は早ければ明日か明後日か、はたまた明々後日か
読んでくれた方、支援してくれた方、まとめてくださってるブーン芸さん、いっぷくさん、
皆様ありがとうございましたー
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:08:21 ID:nHAVKnjkO
- 乙
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:09:27 ID:99RuZZrc0
- 遅くまで乙でーす
鬼畜ビコが見る影もない……
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 01:24:01 ID:3CGTSkXcO
- 乙!
クールの行動といい図書館の謎といい、嫌な予感がひしひしと
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 02:40:04 ID:zhfWAQacO
- 来たら終わってた……
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 09:23:18 ID:3KhaZZJ.O
- 寝たら朝になってた……
続き楽しみ
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 19:43:27 ID:hFRjtIoYO
- 乙です!
続きが気になる!
http://imepic.jp/20110606/700280
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 19:46:09 ID:hFRjtIoYO
- http://imepic.jp/20110606/701120
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/06(月) 21:22:01 ID:1vBgP5vQO
- >>100-101
ほぎゃあああ! 嬉しい!
しぃの擬人化イメージが凄くしっくり来た。ありがとうございます!
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 20:50:26 ID:F/s/JB3.0
- おもしろいね
現行じゃぴか一だ
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 21:48:05 ID:ZaetL/7YO
- ちょっとした仕草なんかの何気ない描写がすごく好きで、読んでて心地よいです
まるでシュークリームを食べたデレたんのようになりますお
さておき、続きも楽しみにしてます
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 22:50:39 ID:thTQ4co.0
- 乙 続き楽しみにしています。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:38:10 ID:SAqEqcAIO
- 第六話後編投下しマラゲーニャ
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:38:46 ID:gcq5ic1Q0
- まさかの木曜に投下キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:39:18 ID:SAqEqcAIO
('A`)「……返事来ないな……」
万年床の上で、ドクオは携帯電話を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返していた。
恋人からメールが来ない。
('A`)「忙しいのかな……それとも、やっぱり嫌だったかな」
不安がぐるぐる巡る。
そうだ、そもそも自分が彼女と付き合えたことからしておかしいのだ。
綺麗で、凛としていて、真っ直ぐな人。
高校生のときに一目惚れしてから、ずっと好きだった。
彼女の好きなところなら、いくらでも挙げられるが――
('A`)(……クーさんは俺なんかのどこが良かったんだろう……)
自分には、人に好かれるようなところなどないように思える。
考えれば考えるほど、何だか悲しくなった。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:39:42 ID:SAqEqcAIO
第六話 あな優しや、SF小説・後編
.
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:41:36 ID:SAqEqcAIO
12月23日。夜。
アパートの一室。
( ∵)「……」
川 ゚ -゚)「……お口に合いましたでしょうか」
( ∵)「ええ。はい。美味しいです」
生姜焼きを飲み込み、ビコーズは頷いた。
クールが、ほっと息をつく。
――昨日に引き続き、今日も学校に行かせてもらえなかった。
四六時中監視されるというのは、きついものがある。
手足が自由になるのはトイレに行くときぐらいで、
それ以外は同じ体勢で転がされてばかり。
しかし不思議と体への負担はない。辛いのは精神面だけだ。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:42:54 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)「御主人様の好み通りの味付けにいたしました」
( ∵)(……もう少し薄味の方が好きなんですが、『設定』じゃ濃いめのが好みなんですかね)
クールは昨日から今朝にかけての間で、
腹が減る、喉が渇く、便意を催す、という生理現象を粗方理解したようだった。
物を食べる度、飲み込む度、トイレに行く度、泣きそうな顔をする。
自身に起きる矛盾を処理しきれていないのだろう。
その表情を見ると、哀れに思えてしまう。
自分が受け持つ生徒達と大して歳の変わらないクール。
認めたくはないが、多少の情が沸いても仕方あるまい。
川 ゚ -゚)「お味噌汁……」
( ∵)「ああ、どうも」
現在、ビコーズはテーブルの前に座らされている。
テーブルに並ぶのは、生姜焼きをメインに据えた至って普通の家庭料理。
クールが一口ずつ箸で運んでくれる。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:43:53 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「あなたは食べないんですか」
川 ゚ -゚)「……クールは、先程おにぎりを食べました」
( ∵)「そうですか」
また辛そうな顔だ。
美味しいですよ、とビコーズは話を逸らした。
川 ゚ -゚)「どんどん食べてください」
( ∵)「はあ」
川 ゚ -゚)「食事の後はお風呂に入りましょう」
( ∵)「いや、いいです、大丈夫です」
川 ゚ -゚)「昨日も入られなかったではありませんか」
( ∵)「昨日は朝に入った……入ったっつうか入れられましたから」
川 ゚ -゚)「今日はまだ入ってませんでしょう」
( ∵)「一日ぐらい入らなくても死にません平気です大丈夫です結構です」
川 ゚ -゚)「クールは、御主人様の裸を見ても何とも思いませんよ」
( ∵)「……それはそれで」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:44:58 ID:SAqEqcAIO
そういえば、この家に来てからクールは一度も風呂に入っていない。
着替えてもいない。
( ∵)(いい匂いするから気付きませんでした)
果たして、その辺りのことを指摘してもいいのやら。
入ったとしても着替えがない。
服はビコーズのもので何とかなるにしても、下着の問題もあるし。
( ∵)「んー……」
そのとき、インターホンが響いた。
クールが、はっと顔を上げる。
川 ゚ -゚)「……」
( ∵)「……人が来ましたよ」
川 ゚ -゚)「御主人様」
( ∵)「……」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:45:58 ID:SAqEqcAIO
ぴんぽん。間の抜けた音。
ここで大声を出せば、客人が異常を察してくれるのでは。
ビコーズが咄嗟に口を開いた――
川 ゚ -゚)
(;∵)「ぅぐ、ぇ゙っ!?」
瞬間。
クールの腕が、ビコーズの首に巻きついた。
スリーパーホールド再び。
(; .)(……手際良すぎ……)
*****
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:46:54 ID:SAqEqcAIO
(´・ω・`)「は? 何? クーちゃん?」
『素直クール。女子大生だお』
事務所のソファに横たわりながら、ショボンは携帯電話を耳に当てていた。
電話の相手は内藤。
素直クールという女性を探してほしい、とのことだ。
(´・ω・`)「舞台は主人公の家なんでしょ? じゃあ、そこ行きゃいいじゃない」
『だから、その主人公が誰だか分かんないんだお』
(´・ω・`)「面倒だなあ……クーちゃんってのは、いつから行方不明なのさ」
『本に触ったのは2日前――21日らしいお。
ちなみに、そのとき彼女はシャキンさんの店にいたお』
(´・ω・`)「……はあ。そう。21日に」
体を起こして、卓上カレンダーを見る。
素直クールの特徴を聞き出し、携帯電話を閉じた。
顎を撫でる。
(´・ω・`)「――なるほどね」
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:48:37 ID:SAqEqcAIO
(゚A゚* )「所長ー、もう上がってもええ?」
(´・ω・`)「おう、帰れ帰れ無能共」
N| "゚'` {"゚`lリ「酷いこと言ってくれるじゃないの」
(゚A゚* )「ニダやん帰んでー」
<ヽ`∀´>「何をさも当然のように一緒に帰ろうとしてるニカ」
荷物を纏めて帰宅の準備をする所員達。
ショボンは、ごみ箱へ目をやった。
(´・ω・`)「無能共」
N| "゚'` {"゚`lリ「何だい、独り寝が寂しいなら付き合うぜ」
(´・ω・`)「お断りします。
……お前ら、差し入れは美味かったか」
(゚A゚* )「ああ、めっちゃ美味かったわ、モンブラン。なあ、阿部のおっちゃん」
N| "゚'` {"゚`lリ「俺が食ったのはアップルパイだったな。美味かった」
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:51:04 ID:SAqEqcAIO
<ヽ`д´>
(゚A゚* )「何やニダやん、その顔」
<ヽ`д´>「ウリだけ……ウリの分だけなかったニダ……。
この事務所で一番甘党のウリに……」
(´・ω・`)「あれ、お前甘いの好きだったっけ」
<#`∀´>「大好きニダ!」
(´・ω・`)「キムチでも食ってろ」
<#`∀´>「辛いの苦手ニダ!」
N| "゚'` {"゚`lリ「おいアイデンティティ」
(゚A゚* )「はいはい。ウチの家に来たら、たらふく甘いもん食わしたるでー。
甘いもんと言わずウチまでも」
<ヽ`∀´>「のーちゃんはウリの飲食物に睡眠薬とか混入してくるから遠慮しとくニダ……」
(゚A゚* ) チッ
ショボンは舌先を軽く噛み、昼に食べたショートケーキの味を思い返した。
苺は少々酸っぱかったが、クリームや生地は文句なしに美味だった。
(´・ω・`)「……美味かったか」
(´-ω-`)「そうか。なら――仕方ないな」
*****
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:52:22 ID:SAqEqcAIO
(;-@∀@)「でさ、すっごく綺麗な女の人が出たんだって!」
ζ(゚、゚;ζ「ええー。意外ですね」
(;-@∀@)「だよね!」
24日。
相変わらずビコーズはやって来ない。
デレが図書室へ行くと、いきなりアサピーが「聞いて聞いて」と話を始めた。
昨夜、ある教師がビコーズの家を訪ねたところ、
若い女性――それも美人――が応対したのだそうだ。
女性は、ビコーズは熱を出して寝込んでいると言い、すぐにドアを閉めてしまったという。
(;-@∀@)「そりゃあビコーズ先生独身だし、恋人いるのが悪いわけじゃないけど。
かなりの美人だったらしいよ。しかも若い!」
身振り手振りでアサピーが驚きを表現する。
凄まじい衝撃だったようだ。
(;-@∀@)「でもビコーズ先生、女運ないから一生独りでいいとか言ってたのになあ」
ζ(゚、゚*ζ「女運?」
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:53:36 ID:SAqEqcAIO
(-@∀@)「去年の忘年会で独り者ばっかり残ったときに聞いたんだけどさ――」
*****
( ∵)『昔……昔っつっても十何年か前なんですが、先生に初めて恋人が出来ましてね。
大学生のとき。いやあ若かった。酔った勢いで付き合ったんですよ。
先生なんかにゃ勿体ないくらい綺麗な人でした。顔と体だけはね』
(-@∀@)『はあ』
( ∵)『けども、まあー我が儘我が儘。
しかもうるさいんです。ぴいぴいぎゃあぎゃあと』
( ∵)『んで、向こうも先生みたいな男は嫌いだったらしくて。つまらないってね。
こんっなに優しくて誠実で完成され尽くした人間が嫌いだなんて変わった人ですよね』
(;-@∀@)『え? 優し……え?』
( ∵)
(;-@∀@) ナンデモアリマセン
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:55:32 ID:SAqEqcAIO
( ∵)『いやはや、その場のノリで付き合うもんじゃありませんね。若気の至り若気の至り。
一ヶ月過ぎた頃には、2人共嫌悪感しかありませんでした』
(-@∀@)『別れたんですか?』
( ∵)『当たり前でしょう。
デートの待ち合わせ場所で互いにプロレス技かけ合って別れましたよ』
(;-@∀@)『プロレス!?』
( ∵)『その後2人ぐらいと付き合いましたが、全部ろくな女じゃありませんでした。
1人目に比べりゃマシでしたけど』
(;-@∀@)『……類友……』
( ∵)
(;-@∀@) ナンデモアリマセン
*****
(-@∀@)「――って」
ζ(゚ー゚;ζ「それは何とも……ビコーズ先生らしい……」
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:57:07 ID:SAqEqcAIO
(;-@∀@)「だよねえ。
いや僕としては、あの人が女性と付き合ったことある方が驚きだったけど」
ζ(゚ー゚*ζ「そう言うアサピー先生はどうなんですか? 恋人とか結婚とか」
(-@∀@)
(@∀@-)
::(∀@- )::
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、ごっ、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
*****
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:58:04 ID:SAqEqcAIO
――黒板。
黒板に、白色の文字が綴られる。
川 ゚ -゚)
('A`)
かつかつ、チョークが音を立てた。
かつかつ。こつこつ。
しゅるり、句点を描いて、彼はチョークを置いた。
うん、合ってるよ――教師が頷く。
一番前の席に座っているお調子者が、やるじゃんドクオ、と彼を冷やかし、
ドクオは照れ臭そうに笑った。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 20:59:11 ID:SAqEqcAIO
高校2年の、古典の時間だったように思う。
教師が黒板に書き付けた古文に、指定された生徒が訳を加える、そんな場面。
クールの隣の席にドクオが戻ってくる。
目が合うと、ドクオはほんのりと顔を赤く染めた。
川 ゚ -゚)『……お疲れ』
(*'A`)『えっ』
いつもはしないのに、この日に限り、クールはドクオに労いの言葉をかけた。
こくこく、ドクオが何度も首を振る。
――字だけは綺麗だよね。
後ろの方から、女生徒同士の囁きと笑い声が聞こえた。
ドクオを馬鹿にするものだったが、クールは心の中で、こっそり同意した。
教師が黒板に解説を足していく。
ドクオの文字に教師の文字が被さる。
それが、ひどく煩わしく感じられた。
すらりと整って、どこか優しく見える、ドクオの字。
クールはノートをとるのも忘れ、ずっと黒板を見つめていた。
- 124 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:00:06 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)『古典のノート貸してくれ』
(*'A`)『え』
休み時間、クールはドクオにそう言った。
真っ赤になる彼に、風邪か、と問うと、違うけど、と小声で返された。
川 ゚ -゚)『さっき、ぼんやりしてしまってノートをとり損ねたんだ。写させてほしい』
(*'A`)『……う、うん。いいよ』
ドクオがノートを手渡してくれる。
ありがとうと礼を言い、ノートを開いた。
黒板に書いたものよりは多少崩れていたが、それでも尚綺麗で、見とれた。
無意識に指先でなぞる。
これまでまったく気にしたことのなかったドクオが、クールの中に居座った瞬間だった。
度々、宿題などを忘れたふりをしては、ドクオにノートやプリントを見せてもらった。
席替えをしてからは借りられなくなったが、気付けばドクオを目で追う日々。
クラスが変わっても、廊下で見かけるのが楽しみだった。
何度か男子生徒に告白されたが、その都度ドクオの顔が脳裏を過ぎった。
何故かは分からぬまま、断る。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:00:50 ID:SAqEqcAIO
――今年の夏。
講義室。目の前に立つドクオ。
(;*'A`)『……』
川 ゚ -゚)『……』
「好きです」。綺麗で、だけど、震えた字。
自分だけに向けられた言葉。文字。
ドクオが好きなのだと気付いたのが、そのとき。
何だか泣きそうなぐらいに嬉しくて。
川 ゚ー゚)『……うん』
けれど泣いてしまったらドクオがびっくりしてしまうだろうから。
誤魔化すように、笑った。
*****
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:01:53 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)
視界が変わる。
頬に布の感触。
慌てて起き上がった。
( ∵)「……寝てるところを初めて見ました」
隣にビコーズが転がっている。
クールは、頭を押さえた。
つい先程の夢が遠ざかる。
目が覚めた傍から、記憶が離れていく。
――夢。夢?
川 ゚ -゚)「……クールは、寝ていましたか」
( ∵)「寝てましたよ。もう昼前です」
川 ゚ -゚)「ロボットは……眠りません……」
( ∵)「……そうですか」
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:04:03 ID:SAqEqcAIO
俯く。
どうして、腹が減る。どうして眠くなる。
ロボットなのに。
さっきのは何だ。
男が――男が、夢の中にいた気がする。大事な人。
川; - )「……っ」
一昨日出会った少女が脳裏に浮かぶ。
あのとき頭を掠めた映像は何なのだ。
( ∵)「クールさん?」
川; - )「御主人様……」
ビコーズの胸に額を擦りつけ、しがみついた。
御主人様。クールの御主人様。
傍にいなければならないのに。
ここにいてはいけない気がしてならない。
*****
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:05:38 ID:SAqEqcAIO
(;^ω^)「一体どれだけ請求されるかお……」
赤信号。車を停める。
内藤はハンドルに凭れかかった。
シャキンの話では、素直クールが本を手にしたとき、
店内には数人の客がいたらしい。
その中の誰が主人公に選ばれたのか、内藤にはさっぱり分からない。
早々に自分で調べるのを諦めた内藤は昨夜、ショボンを頼った。
彼ならすぐに調べ上げてくれるだろう。
しかし唯一にして最大の問題がある。
依頼料だ。
助手席でツンが溜め息をつく。
ξ゚听)ξ「今回は手掛かりが少ないからね。かなり高額になるんじゃないかしら」
(;^ω^)「だおね……」
ξ゚听)ξ「ショボン以外の誰かには頼まないの?」
(;^ω^)「僕はショボンの腕だけは信用してるんだお」
ツンは、そう、と返し、目を閉じた。
信号が変わる。
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:07:14 ID:SAqEqcAIO
万が一を考慮し、こうして内藤もクールを探している――のだが。
彼に出来るのは、せいぜい、キュートが姉を見かけたという道の近辺を
うろちょろするぐらいである。
(;^ω^)「……おー……でも、明日までには何とかしないといけないんだおね」
ξ-听)ξ「明日?」
(;^ω^)「デレちゃんとのデートがあるお。
彼女なら、きっとキュートちゃんや『クーちゃん』のことを気にして
デートに集中出来なくなるに違いないお」
ξ゚听)ξ「ああ、デート」
(;^ω^)「デレちゃんったら真面目でお人よしなんだから……」
ξ゚听)ξ「……ブーンは、ここのところ、デレの話ばっかりね」
言って、ツンは指先で口を押さえた。
眉間に皺を寄せる。
(;^ω^)「お? 何か言ったかお?」
ξ゚听)ξ「いえ、何でもないわ」
ξ--)ξ「――何でもないの。本当に」
*****
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:09:27 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「あっ」
( ^ν^)
昼過ぎ。
図書館へ行ったデレを待っていたのは、ニュッだった。
待っていたというより、ただそこにいただけだろうが。
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんだ!」
本を読んでいるニュッにデレが駆け寄る。
ニュッは一度視線を上げたが、顔を顰め、すぐに本へ意識を戻した。
ζ(゚ー゚*ζ「他の方はいないんですか?」
( ^ν^)「俺じゃ不満かよ」
ζ(゚ー゚;ζ「いやいや、お邪魔しますって電話したときモララーさんが出たから、
てっきりモララーさんが相手してくれるのかと。
それにニュッさん本読むばっかで構ってくれないじゃないですか」
( ^ν^)「お前の相手をすることに、読書以上の価値がない」
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:12:29 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚;ζ「価値がないって……何か心が痛い……。
……そういえばニュッさん、昨日キュートちゃんを、」
隣に座ったデレ。
ニュッは、右腕をデレの頭に乗せた。
そのまま掌を垂らし――
ζ(゚д゚;ζ「――はぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! 鼻フック! 乙女に鼻フックやめて!!
痛い痛い! 指! おい!」
( ^ν^)「手頃なところにあったから、つい」
ζ(゚д゚;ζ「手頃て!!」
遠慮なしに鼻に突っ込まれた指。
デレは力ずくで引っこ抜き、向かい側へ逃げた。
せめてもの仕返しにニュッの足を蹴る。
睨まれたが、それ以上は何もしてこなかった。
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:14:06 ID:SAqEqcAIO
さて、することがない。
鞄からノートと教科書を出して、一応勉強するポーズはとってみる。
( ^ν^)
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚*ζ(……暇)
少しばかり退屈ではあるが――存外、居心地は悪くない。
元々デレは静かな方が好きだ。
それに、今ニュッが読んでいるのは図書館の作家達が書いたものではなく
普通の市販されている本。
最近気付いたのだが、作家の本か市販の本かで、ニュッの集中力は随分変わる。
作家の本を読んでいるニュッにどれだけ声をかけようと反応はまず返ってこないが、
市販のものの場合、彼の意識は本以外にも向けられやすい。
ζ(゚ー゚*ζ
( ^ν^)「……何笑ってんだお前」
ほら、このように。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:16:05 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「え? ……何ででしょう? 分かんないや」
( ^ν^)「気持ち悪い」
ζ(゚、゚*ζ「気持ち悪いって酷いなあ……もう、黙って本読んでてくださいよ」
呆れた目をされた。
ニュッは常に小馬鹿にしたような顔と態度でデレに接するので、
普段と同じといえば同じか。
楽しくなってきた。
馬鹿にされるのが、ではなく、2人きりでゆったりするのが。
何なら、しばらくこのままでもいい気がする。
.
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:17:26 ID:SAqEqcAIO
ζ(-、-*ζ
ζ(-、゚*ζ
――足に触れる感触で、目が覚めた。
瞼を持ち上げる。
視界に入ったのはコートの生地。
気付かぬ内に居眠りしていたようだ。
靴下越しに足を撫でられる。
傷跡の辺りをなぞられ、足が跳ねた。
ζ(-、゚;ζ(ん?)
待った。
誰だ。誰の手だ。
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:19:06 ID:SAqEqcAIO
耳を澄ます。下から微かに聞こえる、荒い呼吸。
ぼうっとしていたデレは、一気に覚醒した。
伏せていた頭を上げる。
ζ(゚д゚;ζ「ニュッさんの変態!!」
( ^ν^)
ζ(゚д゚;ζ「……あれ」
犯人だと思われたニュッは、真向かいに座っていた。
デレが眠る前に見たのとは違う本を持っている。
恐々、視線を落とした。
(;*゚ー゚) ハァハァ
ζ(゚、゚*ζ
よくよく考えれば。
こんなことをしそうのは、こいつか内藤しかいない。
- 136 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:20:38 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚д゚;ζ「ぎゃあああああああ!!」
(;*゚ー゚)「アイザックッ!!」
デレの膝がしぃの顔面にめり込んだ。
顔を押さえ、テーブルの下から転がり出るしぃ。
ζ(゚д゚;ζ「何してんですかぁああ!」
(;*゚ー゚)「だってニュッちゃんを構いに来てみれば
デレちゃんがすやすや眠ってたもんだから、何か、むらっときて……。
足をすりすりもふもふ、略してアシモフしてやろうかと。SF作家だけに」
( ^ν^)「アシモフに謝れ」
ζ(゚、゚;ζ「それ言いたかっただけでしょ絶対!?
もふもふって何か剛毛みたいじゃないですか、ちゃんと処理してますよ!」
(*゚ー゚)「そこを気にするのか」
ζ(゚、゚;ζ「ていうかニュッさん、しぃさんに気付いてたんなら止めてください……」
( ^ν^)「寝てるのが悪いんだろ」
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:24:18 ID:SAqEqcAIO
ところで、と。
テーブルの下で、ニュッの足がデレの爪先を踏んだ。
( ^ν^)「お前は俺を、ああいうことする人間だと思ってたのか」
ζ(゚ー゚;ζ「……あ、あは……だって、さっきまでニュッさんと私しかいなかったし……。
つっ、爪先駄目! 爪先痛い! そこ小指ぎゃあああ!!」
(*゚ー゚)「あのねデレちゃん。ニュッちゃんにはそういう度胸ないよ」
( ^ν^)「度胸とかの問題じゃねえだろまとめて死ね」
けたけた、諸悪の根源が笑う。
自由すぎる。
デレが睨みつけてもまったく気にしない。
(*゚ー゚)「モララーが珍しくお茶の準備してたから何かと思えば、
デレちゃんが来るからだったのねん」
ζ(゚、゚;ζ「あ……モララーさん、どうしたんです?」
(*゚ー゚)「セクハラしてやったら泣きながら引きこもった」
ζ(゚、゚;ζ(ど、どんなレベルのセクハラされたんだろう……)
- 138 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:25:28 ID:SAqEqcAIO
色々と気になるところはあるが、それは一旦置いといて。
ニュッの隣に腰掛けるしぃを見たことで、昨日の会話を思い出した。
彼女の本に目をつけられたらしいキュートの姉、クール。
ζ(゚、゚*ζ「……クールさん、大丈夫でしょうか」
(*゚ー゚)「キュートちゃんのお姉さん? まあ……別に危険な話じゃないし――」
しぃの言葉は、突如流れたメロディに遮られた。
デレがポケットから携帯電話を取り出す。
ζ(゚、゚*ζ「? 誰だろ」
着信。
見知らぬ携帯電話の番号。
首を傾げながら電話に出ると、思いもよらぬ人物の声がした。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:26:59 ID:SAqEqcAIO
『コール3回以内に出なさいな、お嬢さん』
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚*ζ「おかしいな……ショボンさんの声が聞こえる気がする……」
『うん、みんなのアイドル、ショボちゃんだよ』
ζ(゚、゚;ζ「……ちょっと! 何でショボンさんが私の番号知ってるんですか!!」
『事務所の方に電話してきたじゃない、一昨日』
ニュッとしぃがデレを見る。
ショボンなの、としぃが訊ねてきたので、首を縦に動かして返事をした。
『どうせ図書館にいるんでしょ? とっとと出てきなさい。林の前で待ってるから』
ζ(゚、゚;ζ「え? え?」
『――「主人公」の家に連れてってやる』
*****
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:29:06 ID:SAqEqcAIO
夕方。
外が暗い。
窓からカレンダーへ視線を移し、ビコーズは溜め息をついた。
( ∵)「……24日。クリスマスイブですね」
これで無断欠勤も3日連続になる。
色々と恐ろしい。
川 ゚ -゚)「――クリスマス……」
( ∵)「はい?」
ぽつり、クールの口から呟きが漏れた。
振り返る。
川 ゚ -゚)「いえ。何でも」
( ∵)「……クリスマスに用事あるんですか? 恋人か友達とでも」
川 ゚ -゚)「……」
クールは、額に手をやった。
静寂。手を下ろす。
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:30:43 ID:SAqEqcAIO
――何かがある気がするのです、と、か細い声で囁いた。
( ∵)(……おお)
昼から彼女の様子が変だ。
食事や排泄に加え、睡眠まで体験して――気付き始めているのかもしれない。
限界なのかもしれない。
ついでに。
ビコーズも限界である。
( ∵)(どうして先生、こんな小娘の好きにされてんでしょうね)
現状に慣れた上、すっかり弱々しくなったクールを前にして、
段々いつもの調子が戻ってきた。
哀れに思う気持ちは依然ある。
情も沸いたまま。
――だからといって、怒りや焦りが消えるわけでもないのだ。
- 142 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:32:04 ID:SAqEqcAIO
- ちょっと所用で一旦中断します
10分ぐらいで戻るかと
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:44:16 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……ねえクールさん、そろそろ外に出たいんですけど」
川 ゚ -゚)「……駄目です」
( ∵)「1人で出たら駄目なんでしょう。一緒に出ませんか」
川 ゚ -゚)「嫌です」
( ∵)「嫌って、子供じゃないんですから。恐いことなんかないですよ」
川;゚ -゚)「……嫌です!」
叫ぶ。床に手をついた。
ビコーズは一瞬身構えたが、包丁を持ってきそうにはない。
クールは己を疑っている。
誤魔化しようのない証拠だって、彼女が身をもって示している。
一昨日のような凶行に出る気力も見られない。
ここまで滅入っている彼女に付け込むのは気が咎めるが、
今なら、もしかしたら。
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:45:55 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……先生ね、先生なんですよ。……何か変な言葉ですね。まあいいや。
高校の先生なんです」
川;゚ -゚)「……」
( ∵)(おや)
「御主人様は画家ですよ」。
こう返されると思っていたが、意外にも彼女は黙りこくるだけだった。
やはり、認め始めているのではなかろうか。
( ∵)「今は冬休みでして、補習やることになってるんですよ。午前に1年生、午後に3年生。
なのにね、この3日、彼らを放置しちゃってんですよね。3日ですよ3日。
どんだけ教え込めると思います、3日間で」
( ∵)「いい子ばっかりなんですよ。
そんな彼らを裏切ってるようなもんなんです、今」
改めて口に出してみると、ああ、何ということだ。
事前に立てておいた予定やら、作っておいたプリントやら、全て無駄になった。
愛しい生徒達へ施す筈だった「教育」が、ぶっ潰された。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:49:37 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「たとえば1年A組の長岡デレという生徒。基本的に頭は悪いですが、努力はする子です。
1人で勉強したらろくに入らないけど教えられれば頑張れるタイプですかね。
基礎から学び直せば何とかなれそうなんです」
( ∵)「1年C組人生オワタ。これまたどうしようもない成績ですが頭自体は然程悪くない。
ただ、すぐ諦めちゃう悪い癖があるんです。
それさえ直せば平均以上にはいける筈です」
( ∵)「同じく1年C組斉藤またんき。彼は自ら補習を申し込んできた珍しい子です。
元々サボり魔でしたが、秋口にお母様がご病気で倒れられてから心を入れ替えました。
3年までに成績上げて資格取って、少しでも就活の幅を広げたいそうです」
( ∵)「それから1年D組――」
川;゚ -゚)
クールが止めないのをいいことに、ビコーズは矢継ぎ早に教え子について語り出した。
徐々にヒートアップしていく。
ただでさえ数日後には仕事そのものが休みになるというのに、
何故に今の内から家に篭っていなければならないのか。
生徒への教育を邪魔する権利など、クールにはない。
怒りが、言葉が、溢れ出た。
- 146 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:51:14 ID:SAqEqcAIO
(#∵)「――3年E組の田中ポセイドンは英語さえあと少し頑張れば希望大学も何とかなるし
山崎渉は成績上位者で正直鼻ほじりながらでも大学にゃ受かりそうですが
それでも油断なんかしない努力家だし3年F組の狐塚ギンは――」
川;゚ -゚)「ご、御主人様、あの、」
(#∵)「っあああああ! いい加減にしろ!!
なぁあにが『御主人様』だ! 美女に何と呼ばれようが、
教え子に『先生』って呼ばれる方が万倍嬉しいっつうの!!」
川;゚ -゚)「待ってください、チャイム……チャイムが、さっき」
(#∵)「あなたも深い事情がありそうですし可能なら何とかしてあげたいですがね!
ぶっちゃけ! ぶっちゃけ、あなたより生徒達の方が気掛かりなんですよ先生は!」
(#∵)「てめえに構ってるせいで生徒の成績や受験に差し支えがあったら
どぉおおしてくれんだよ!!」
川;゚ -゚)「……チャイム……」
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:53:14 ID:SAqEqcAIO
(#∵)「ていうかね、キュートさんのこと考えてあげてますか?
真面目な優等生……他の先生達は騙されてますが、あれ猫被ってますよね。
まあ猫被ってるのを差し引いても、いい子ですよ」
(#∵)「絶対心配してる筈だろうが! 親父さんは単身赴任中だったっけ?
お袋さんとキュートさんとあんたの3人暮らしだろ、今は。
申し訳ないと……」
ビコーズの口が止まる。
――キュートの名を出した途端、クールが頭を抱えて蹲ったのだ。
川; - )「っ、うあ……っ」
(#∵)「……おーい」
川; - )「……きゅ、ぅと……」
引き攣る声。
苦しげに呻く。
あまりにも辛そうで、ビコーズの怒りが萎んでいった。
( ∵)「……大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかける。と。
――真横から、轟音が響いた。
*****
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:54:10 ID:SAqEqcAIO
その、少し前。
助手席にデレ、後部座席にニュッとしぃを乗せ、ショボンの車は走っていた。
しばし車内は沈黙に包まれていたが、気まずさに耐え兼ねたデレが
ハンドルを握るショボンにおずおずと疑問をぶつけた。
ζ(゚、゚;ζ「……内藤さんに頼まれたんですか? 主人公の家を探せって」
(´・ω・`)「まあ、依頼はされたね」
( ^ν^)「じゃあ兄ちゃんの方に教えてやれよ」
(´・ω・`)「いいじゃない、どうでも」
(*゚ー゚)「館長、まーた金ふんだくられちゃうのねー。ショボン最低ー」
ζ(゚、゚;ζ「お前が言うな」
(*゚ー゚)「やばいデレちゃんが本格的に冷たくなってきた」
- 149 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:55:17 ID:SAqEqcAIO
20分ほど経った頃、ごく普通の――かなり古そうではあるが――アパートの手前で、
車は停まった。
ショボンがメモ用紙と周囲の風景を見比べ、頷く。
(´・ω・`)「そこの奥……奈良場ビコーズの部屋だ。行ってらっしゃい」
ζ(゚ー゚;ζ「ビコ……っ」
ぎょっとした。
早く行けよとショボンがデレを押しやる。
ζ(゚ー゚;ζ「い、行ってきます……ありがとうございましたショボンさん!」
(*゚ー゚)「ショボンは行かんの?」
(´-ω-`)「ここで待ってる。これ以上の仕事は別料金になるからね」
(*゚ー゚)「?」
真っ先にデレが車を降り、ニュッもだらだらと後に続く。
しぃはショボンの言葉が気にかかったようだったが、すぐに降車した。
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:56:52 ID:SAqEqcAIO
1人残ったショボンは、腕を組み、アパートへ駆けるデレを一瞥。
小さく息をつく。
『ビコーズ先生――あ、私の学校の先生なんですけど』
『でも、昨日今日と続けて無断欠勤してるらしいんですよ』
『素直クール。女子大生だお』
『本に触ったのは2日前――21日らしいお。
ちなみに、そのとき彼女はシャキンさんの店にいたお』
過去に父から聞いた、ビコーズという常連。
彼とクールがラーメン屋で鉢合わせた可能性は充分ある。
そして何より、クールが行方不明になったのとビコーズが無断欠勤を始めたのはほぼ同時期。
ショボンの中では、確定したようなものだ。
朝方父に確認をとってみたところ、どんぴしゃり。
彼らは店内で会話まで交わしていた。
確認の後は、奈良場ビコーズの住所を調べるだけとなる。
実に楽な仕事だった。
(´-ω-`)「……余分に頂いた500円と、所員共への差し入れ分の働きはしましたぜ」
*****
- 151 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:58:13 ID:SAqEqcAIO
表札を見て、デレはしょっぱい顔をした。
奈良場。
ζ(゚、゚;ζ「うわあ……本当だ……」
( ^ν^)「どうした」
ζ(゚、゚;ζ「英語の先生なんです。
……だから学校来れてなかったのかな……えー、すごい偶然」
チャイムを鳴らした。
鳴らしたのだが、一向に出てくる気配がない。
――と、いうか。
ζ(゚、゚;ζ「……何か、騒がしくないですか。中」
(*゚ー゚)「喧嘩? どうしたんかな」
チャイムに気付けるのか怪しいほど、ドアの向こうが喧しい。
怒鳴り声に聞こえる。
ドアを叩き、直接声をかけた。
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 21:59:50 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚、゚;ζ「すみませーん!」
(*゚ー゚)「ならばちゃーん、あーそーぼー!」
ζ(゚、゚;ζ「それで出てくんの小学生だけです! ……えっと、クールさーん、いますか!?」
( ^ν^)
うるせえなと言わんばかりの表情で、ニュッが耳を塞ぐ。
それと同時、隣の部屋のドアが開いた。
女性が現れ、じろり、デレ達を睨む。
从'ー'从「もう、うるっさいなあ〜。部屋の中から外から〜」
ζ(゚、゚;ζ「あう……ご、ごめんなさい」
表札を見るに、女性は渡辺というらしい。
渡辺は、ビコーズに何か用かと苛立ちを含んだ声で訊ねた。
ζ(゚、゚;ζ「私、ビコ……えと、奈良場先生の生徒でして。んっと」
(*゚ー゚)「私は奈良場先生の同僚です。
奈良場先生が3日も無断欠勤を続けているものですから、心配になって。
……このように部屋の中が騒がしいのですが、何かあったのでしょうか」
ζ(゚、゚;ζ(うわ、しぃさんが真面目だ)
- 153 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:00:34 ID:SAqEqcAIO
从'ー'从「……ふうん? 同僚さんなら、昨日の夜も来てたの聞いたけど」
(*゚ー゚)「今日も連絡が来なかったので」
从'ー'从「そう……ま、連絡しようにも出来ないらしいからね〜」
しぃがコートを着ていて良かった。
コートの下、無駄に露出の多い服を見られていたら信用されなかったに違いない。
頭を掻いた渡辺。
彼女は、極めて面倒臭そうに、とんでもないことを口にした。
从'ー'从「奈良場さんなら監禁されてるわよう」
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚;ζ「――かん……っ」
从'ー'从「何かねえ、両手両足ふん縛られてるんですって〜。女の子に。
だっさいわねえ〜」
ζ(゚、゚;ζ「かかかかか監禁!?」
(*゚ー゚)「うっそー」
( ^ν^)「……どんだけ話が捻れてんだよ」
- 154 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:01:44 ID:SAqEqcAIO
从^ー^从「助け求められたけど丁重にお断りしちゃった」
(*゚ー゚)「随分クレイジーなお隣りさんだな……」
ζ(゚、゚;ζ「どっ、どうしましょう、ビコーズ先生がっ!!」
当然鍵はかかっていて、ドアはびくともしない。
通報しようかと思ったが、渡辺が言う「女の子」がクールならば、
警察を呼ぶのは避けたい。
クックルの本が引き起こした事件の記憶が蘇った。
キュートといいクールといい、お前ら姉妹は閉じこもるのが好きなのかと問いたい。
問い詰めたい。
ζ(゚、゚;ζ「……ニュッさん、ドアぶち破れます?
クックルさんみたいに足でとは言いませんから、こう、体当たりとか……」
( ^ν^)「……俺に死ねっつってんのか」
ζ(゚、゚;ζ「どんだけ虚弱なんですか」
( ^ν^)「うるせえお前がやれ」
ζ(゚、゚;ζ「や、やりますけど……期待しないでくださいね」
( ^ν^)「いや本当にやらなくていい」
助走をつけようとしたデレにチョップをぶちかまし、ニュッは溜め息をついた。
こうしている間にも、怒鳴り声――あるいは叫び声は大きくなっていく。
これを放っておいたら放っておいたで、ご近所さんに通報されてしまいそうである。
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:03:54 ID:SAqEqcAIO
从'ー'从「……ねえ」
ζ(゚、゚;ζ「は、はい? ああ、どうやったら出てくれますかね……」
从'ー'从「おいで」
ζ(゚、゚;ζ「え?」
渡辺が、デレの手を引いて自分の部屋へ戻った。
しぃとニュッは顔を見合わせ、慌ててついていく。
――部屋に入ると、隣室からの声は一層大きく感じられた。
何を言っているかさえ、くっきり聞き取れるくらいに。
从'ー'从「壁がねえ、うっすいのよ〜。古くてあちこちガタが来てるしね〜」
ζ(゚、゚;ζ「そ、そのようですね」
ビコーズの声。
キュート、という名前が出た。
やはり向こうにクールがいるのだ。
从'ー'从「……生徒さんと同僚さんが心配して来てくれるぐらいには、
他人との信頼関係築けてるのねえ、あの唐変木も」
ζ(゚、゚;ζ「は? ……あの、何持って……」
- 156 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:05:16 ID:SAqEqcAIO
ぶつぶつ呟きながら、渡辺はベッドの下から何かを取り出した。
長い棒状の、光沢のある――
(*゚ー゚)「……金属」
( ^ν^)「バット」
从'ー'从「こうもうるさいと私も仕事に集中出来ないし〜」
渡辺がバットを構える。
どの方向へって、それは勿論。
从'ー'从「特別ね」
ビコーズの部屋側の壁。
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:07:25 ID:SAqEqcAIO
踏み込み、バットが振られた。
完璧なフォーム。
デレの頭に、ホームラン、とかいう言葉が過ぎった。
从^ー^从「えーい☆」
凄まじい音を立て――壁に、穴があく。
从^ー^从「そおれ、にーい、さーん、しーい!」
何度かバットを振り続け、ついには人が抜けられそうな大きさへ。
こうも見事に壊れるものなのか。
デレとニュッ、しぃの3人は言葉を失っていた。
( ∵)
穴の向こうで呆然とする、ビコーズも。
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:07:57 ID:fdULgAjU0
- 渡辺wwwwwwwww
- 159 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:08:34 ID:.FDWnzzgO
- oh……crazy
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:08:54 ID:SAqEqcAIO
从'ー'从「あ〜すっきりした」
( ∵)「あんた何してんだ」
从'ー'从
从;ー;从「wwマwwwジwwでwwww縛られとるwwwwwwぷひーwwwwwww」
( ∵)「え、まさかこれ見るためだけにやったんじゃありませんよね?」
ζ(゚、゚;ζ「すみません、通らせてください! ビコーズ先生……ぶぎゃっ!!」
穴を潜り、デレはビコーズのもとへ転げ落ちる。
ビコーズは状況を一切理解出来ていないようで、デレを二度見どころか三度見した。
( ∵)「……生徒が恋しすぎて幻覚まで見始めたんでしょうか、先生は」
ζ(゚、゚;ζ「幻覚じゃないです、本物です。
大丈夫ですか? い、今、これ外します! えいっ!」
( ∵)「痛い痛い痛い締まってます締まってます。
わーい、この頭の悪そうな感じはたしかに長岡さんだー」
- 161 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:10:53 ID:SAqEqcAIO
川;゚ -゚)「何者だお前ら!」
(*゚ー゚)「はいはい失礼いたしますよーん。
ったく、何がどうなったらここまで物語と違う展開になるのやら……。
本はどこだ、本は」
デレのように落っこちないように気を付けながら、しぃは穴を抜けた。
クールが「出ていけ」と喚いたが、お構いなしに室内を歩き回る。
(*゚ー゚)「ここかにゃー?」
目についた鞄をひっくり返し、中身をぶちまけた。
ファイルやルーズリーフが床に散る。
本はない。
隣にあった別の鞄を掴む。
(*゚ー゚)「おっ」
その鞄を持ち上げると、陰から桜色の本が現れた。
見間違えようもない、しぃの本。
(*゚ー゚)「見っけ!」
- 162 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:12:56 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……長岡さん。どなたですか、あれ」
ζ(゚、゚;ζ「え、えっと」
从'ー'从「同僚じゃないの〜?」
( ∵)「知りませんよ、あんな失礼な人……っつつ、長岡さん優しく取ってください、優しく」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、すみません」
本をめくって確認するしぃ。
ぱらぱらと流し読みし、ぱたり、閉じた。
(*゚ー゚)「ふうむ。ふうむ。本には異常なしだね。
おとなしく演じてりゃあ、さっさと終わってたものを……」
ζ(゚、゚;ζ「しょうがないじゃないですか、ビコーズ先生は何も知らないんですし……。
はい、取れました」
ベルト、ガムテープ、紐の全てを外し終える。
起き上がったビコーズは腕をぐるぐる回し、長い長い溜め息をついた。
( ∵)「ああ、助かりました。ありがとうございます長岡さん」
从'ー'从「私が壁を壊したおかげなのに〜」
( ∵)「大家さんから鍵を借りてくるって発想はなかったんですか」
从'ー'从「私あの大家さん好きじゃないし〜、苛々溜まってて発散したかったから〜」
( ∵)「とことん狂ってますね。修理代は勿論そちら持ちでお願いしますよ」
- 163 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:14:24 ID:SAqEqcAIO
さて、とビコーズはクールを見た。
声をかけようとしたのだが、その口は、結局何も言わずに閉じられる。
川 ゚ -゚)
床に転がった荷物。
その中にあった封筒を持ち、クールが固まっていたからだ。
数秒黙っていたクールは、封筒を開け、中から便箋を抜き取った。
綺麗に折り畳まれているそれを広げる。
誰も動く者はなく、場を静寂が包んだ。
川;゚ -゚)「――!」
時間にして1分ほど。
不意にクールが顔を上げる。
ビコーズと手紙を見比べ――さっと、血の気が引いた。
- 164 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:16:18 ID:SAqEqcAIO
川;゚ -゚)「な……あ……嘘……何……私、そ、そん……」
( ∵)「……どうしまし――」
川;゚ -゚)「すっ」
川;゚ -゚)「すみませんでしたぁああああ!!」
( ∵)「は?」
きっちりと、いっそ美しさすら感じるような。
土下座。
.
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:18:21 ID:SAqEqcAIO
川;゚ -゚)「なななな何だこれ、何なんだ、私は何してんだ!?
ど、どうしよう、犯罪じゃないか……!!
……うわあああっ、ごめんなさい! 申し訳ありません!」
がばりと上半身を起こし、クールは可哀相になるほど慌て出した。
かと思えば、ビコーズと目が合うなり再び土下座する。
頭を上げては土下座、を繰り返すクール。
脳震盪を起こすのではないかと、デレははらはらして堪らなかった。
(*゚ー゚)「何これ新手のヘッドバンギング?」
ζ(゚、゚;ζ「クールさん、落ち着いてください」
川;゚ -゚)「な、長岡さん……」
( ∵)「知り合いですか? ああ、そういや最近仲良かったですね長岡さんとキュートさん」
川;゚ -゚)「……キュート!」
青ざめていた顔が、さらに白くなる。
どうしよう――絶望しきった声が漏れた。
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:22:35 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚、゚;ζ「……元に戻った、んですかね……? 演じ終わったんでしょうか」
デレがしぃを見上げる。
多分ね、と、しぃは曖昧に頷いた。
本の表紙を撫でる。
(*゚ー゚)「飽きたのかも」
ζ(゚、゚;ζ「飽きた?」
(*゚ー゚)「私に似て、飽き性な子が多いの。
あんまりにも思い通りにいかないから、見限ったんじゃないかなあ。
よっぽど強靭な精神してんだね、主人公の人。本の影響を全然受けないぐらい」
( ∵)「……何の話です」
ζ(゚、゚;ζ「えっ、あ、うう……と、とにかく今はクールさんを何とかしましょう!」
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:24:27 ID:SAqEqcAIO
――ひとまずクールを落ち着かせて。
しぃは、ビコーズとクールに謝罪した。
詳しくは言えないが、今回の事件は自分のせいだと。
クールの頭がおかしくなったわけではないので、警察も病院も勘弁してやってほしい。
しぃがそう告げると、ビコーズは腑に落ちないながらも、
面倒事は嫌ですから、と頷いた。
(*゚ー゚)「悪いのは全て私です。責めるならどうか私を責めてください。
縛るなり蝋燭垂らすなり鞭で打つなり、前から後ろから責めてください。
お願いします! 早く!!」
ζ(゚、゚;ζ「しぃさんどんな責めを期待してるの!?」
从'ー'从「縄と蝋燭と鞭なら私の部屋にあるけど〜」
ζ(゚、゚;ζ「いいから! 持ってこなくていいから! ……何で持ってるの!?」
( ∵)「コントしに来たんですか?」
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:26:48 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚、゚;ζ「そういうわけじゃ……――と、とりあえず。
今回の件は、これで終わり……ってことで、いいでしょうか」
( ∵)「ええ、まあ、色々納得はいきませんが、もう何も害がないなら構いません」
川;゚ -゚)「……本当に、すみませんでした」
( ∵)「いいですよ。良くないけど。あなたのせいじゃないんでしょう」
(*゚ー゚)「そう、一種の催眠状態にあったようなもんでね。
悪いのは私。だから早くひん剥いて弄んでくれたまえ!!」
ζ(゚、゚*ζ「しぃさん……本気で黙って……」
(*゚ー゚)「うおお……デレちゃんの目が侮蔑を通り越して慈愛を湛えておる……」
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:30:03 ID:SAqEqcAIO
荷物を鞄に詰め込み、クールは立ち上がった。
コートを拾う。
川 ゚ -゚)「後で、改めて謝罪しに来ます」
( ∵)「結構です」
川 ゚ -゚)「します。――とにかく今は一度、失礼させてもらってよろしいでしょうか。
妹に謝らなければいけません」
( ∵)「早く行きなさいよ。うちの可愛い生徒を不安にさせているなんて許せませんので」
川 ゚ -゚)「……ごめんなさい。ありがとうございます。
絶対に来ますから――これ、預かっておいてください」
( ∵)「いいですって……真面目ですね。どうせ来るなら29日以降でお願いしますよ。
長時間みっちり説教してやりますから」
学生証を床に置く。
深々と頭を下げ、クールは駆け足で立ち去った。
川 ゚ -゚)「……あ、お風呂とトイレのこと、なるべく迅速に忘れますので」
( ∵)「言わんでいい」
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:30:16 ID:A5uWvxtk0
- 変態は大抵みんなこんなんだな!
- 171 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:32:13 ID:SAqEqcAIO
ドアが閉まると同時に、ビコーズは寝転がった。
ああ、だの、疲れた、だのと呻く。
从'ー'从「せめて年明けまではあのままで良かったのに〜」
( ∵)「ごめんです」
( ^ν^)「おい。帰るぞ」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、ニュッさん。……もうっ、蹴らないでください!」
すっかり存在感をなくしていたニュッがやって来て、デレを足で小突いた。
今まで黙っていたのは、関わるのが面倒だったのか、女が多い状況に怯んでいたせいか。
まあ、どっちもだろう。
(*゚ー゚)「おう帰ろう帰ろう。ええっと、奈良場さん? この本は返していただきますね」
( ∵)「え? ああ、あなたのものなんですか? どうぞお好きなように」
言いながら、ビコーズの目がニュッへ向けられた。
視線が固定され、沈黙。
しばらくして、ビコーズは両手をぱしんと打った。
( ∵)「見覚えがあると思ったら、長岡さんの彼氏」
( ^ν^)「は?」
ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ」
- 172 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:34:36 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「ははっ、長岡さん似顔絵上手いんですね。似てる似てる」
(*゚ー゚)「似顔絵?」
( ∵)「前に長岡さんが提出した補習の課題に、この方の似顔絵が描かれてましてね。
その周りに『ばか』とか『おに』とか『もやし』とか『本の虫』とか――」
ζ(゚ー゚;ζ「あれは! ……だってニュッさんがっ」
( ^ν^)
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、やだニュッさん、人がいるところで鼻フックはああああ!!」
*****
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:35:26 ID:fdULgAjU0
- ニュッ、容赦無いなwww
- 174 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:36:54 ID:SAqEqcAIO
全てが終わり、デレ達が帰ってからしばらく経って。
ビコーズは、壁の穴を見てげんなりした。
修理代は内藤とかいう男が出してくれるそうだ。
同僚を騙った女性から去り際に渡された名刺と、クールの学生証を見遣る。
( ∵)「あーあ。やだやだ。これ直るまで、あなたと半同居状態じゃないですか」
从'ー'从「着替えとか寝顔覗いたら、目潰すから〜」
( ∵)「んな気色悪いもん見たら潰されるまでもなく目が腐り落ちますよ」
从'ー'从「言いやがったな」
( ∵)「何か間違ってます?」
睨み合う。
渡辺が右手の親指を下に向けたのを合図に、両者はそっぽを向いた。
( ∵)「……まあ一応、ありがとうございます」
从'ー'从「ふーんだ。助けるのは今回だけよ〜」
从'ー'从「……昔、公衆の面前で私にプロレス技かけてくれた恨みはまだ忘れてないんだからね」
- 175 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:39:36 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「お互い様でしょう、あれは」
从'ー'从「付き合ってきた男は大勢いたけど、
あんな別れ方したの、奈良場さんぐらいだわあ〜」
( ∵)「あれだけ全力で喧嘩したのも、あなたぐらいなもんでしたよ」
从'ー'从「懐かしい〜。
無愛想すぎてみんなから『能面奈良場君』って呼ばれてたのに、
あのときは鬼面のような形相で……」
( ∵)「マドンナ(笑)だった渡辺さんも、相当酷い面して怒鳴り散らしてましたね」
从'ー'从「思い出したら殺意沸いてきた」
( ∵)「奇遇ですね、先生もです」
从'ー'从
( ∵)
从'ー'从「今そっち行くから」
( ∵)「上等です、かかってきなさい」
从'ー'从「性の6時間ならぬ血塗られた6時間をお届けしてあげる〜」
( ∵)「一生忘れられない夜にしてさしあげま……おい待て金属バットは無しで」
*****
- 176 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:41:40 ID:SAqEqcAIO
――12月25日。午前11時。
クールは、駅前の喫茶店へ入った。
店員に待ち合わせをしていると告げ、店内を見渡す。
目当ての人物を見付け、そのテーブルへ移動した。
川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「あ」
川 ゚ -゚)「待ったか」
(*'A`)「う、ううん」
川 ゚ -゚)「そうか、良かった。――映画に行くんだったな」
(*'A`)「うん。ち、チケットは俺が持ってる……」
川 ゚ -゚)「……すまなかった、手紙の返事が遅れて」
(*'A`)「ん、いいよ。……ちょっと不安になってたけどさ。ははは……」
- 177 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:43:35 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)「なあ、映画の後はどこに行く予定なんだ?」
んぐ、とドクオが詰まる。
面目ないといった表情を浮かべた。
(;'A`)「ごっ、ごめん……さっき気付いたんだけど、何も考えてなかった……」
川 ゚ -゚)「だろうと思った」
(;A;)「ごめんなしゃい」
川 ゚ -゚)「泣くな泣くな。――なら、適当な場所でご飯食べて、買い物にでも行こう」
(ぅA;)「買い物?」
川 ゚ -゚)「実はドクオへのプレゼントを用意出来なくてな。
どうせだったら、本人と一緒に選ぼうかと」
(*'A`)「い、いいよ、俺は」
川 ゚ -゚)「遠慮するな」
(*'A`)「うー……うん。じゃあ……よろしく」
- 178 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:44:13 ID:SAqEqcAIO
('A`)「でも本当、大したものじゃなくていいからね。
俺もあんまり良いもの選べなかったし」
川 ゚ -゚)「それこそ大したものじゃなくていい。書ければいいんだ、書ければ」
('A`)「……どうして……あの、日記帳なの? 欲しいもの」
川 ゚ -゚)「ん? ……ああ」
――クリスマスに、映画を一緒に観に行きませんか。
もしも予定が空いていましたら、メールで良いのでお返事下さい。
それと、欲しいものも教えて頂けたら嬉しいです。 ドクオ――
昨日。
ドクオからの手紙を読んだ瞬間、クールは「自分」を取り戻した。
相変わらず綺麗で、緊張して震えてて、どこか優しい文字。
愛しい人の愛しい文字が、クールを呼び起こしてくれた。
実際は、手紙を読んだのと「本」が諦めたのがたまたま同時だっただけなのだが。
クールが知る由もないし――知らなくていいことだ。
- 179 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:47:24 ID:SAqEqcAIO
川 ゚ -゚)「交換日記でもしようかと思って」
('A`)「交換日記? 古風だね。お友達とするの?」
川 ゚ -゚)「お前とだよ」
(;'A`)「……俺と!?」
川 ゚ -゚)「駄目か?」
('A`)「いや、文章書くの好きだし、全然構わないけど……どうして?」
川 ゚ -゚)「別に難しい理由なんかないよ」
川*゚ー゚)「――最初に惚れたのが、君の文字だったってのを思い出しただけだ」
ミセリに交換日記の話をしたら、また呆れられるだろう。
くつくつと笑い、クールはきょとんとするドクオの手を握った。
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:48:36 ID:SAqEqcAIO
(*'A`)「わ」
川 ゚ -゚)「夕方ぐらいになったら……君さえ良ければ、うちに来てくれないか」
(;*'A`)「えっ、く、クーさんの家!?」
川 ゚ -゚)「妹もいるが」
('A`)「あ、そうなんだ……」
川 ゚ -゚)「色々あってな、妹が拗ねてしまったんだ。
目一杯美味しい御馳走とケーキを用意して機嫌をとらなきゃいけない」
('A`)「俺なんかも一緒でいいの?」
川 ゚ー゚)「一緒がいい」
(*'A`)「……じゃあ、お邪魔します」
川 ゚ー゚)「ああ」
ドクオの手がじりじり熱くなる。
それが愛しいやら可笑しいやらで、クールは、また笑った。
*****
- 181 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:51:42 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「クリスマスだし土曜日だし3日間音沙汰なしだったし、
てっきり誰も来てくれないと思ってたんですよ」
高校。ある教室。
全員、とまではいかないまでも、半分以上の生徒が補習に出席していた。
浮かんですらいない涙を拭うような仕草をして、ビコーズは「嬉しいです」と呟く。
プリントの問題を解く生徒達の肩を叩いて回る。
( ∵)「しかしクリスマスに補習って悲しいですね、君達」
\(;^o^)/(誰のせいで……!!)
(・∀ ・)「先生ー」
( ∵)「何ですか、またんき君」
(・∀ ・)「どうして顔に痣が出来てるんですか」
1人の男子生徒が、ビコーズの顔を指差した。
右の目尻と額に青い痣がある。
( ∵)「いやあ、躾のなってない猫……いや女豹がいましてね。……噛むかよ普通……。
一番痛いのは脇腹ですよ。踵が綺麗に決まりやがりましたから」
(;・∀ ・)「?」
- 182 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:54:15 ID:SAqEqcAIO
廊下側、一番前の席。
うんうん唸るデレの隣で、ビコーズは屈み込んだ。
ζ(゚、゚;ζ「もくてきご……ほご……」
( ∵)「長岡さん」
ζ(゚、゚;ζ「うひゃっ!?」
プリントに書かれた一文を指先で示す。
綴りが違うと告げると、デレは恥ずかしそうに消しゴムを手に取った。
しかし、そのまま固まってしまう。どこが間違いなのか分かっていないのだろう。
( ∵)「ここ。『a』じゃなくて『u』です」
ζ(゚、゚;ζ「あっ。ありがとうございます」
礼を言い、書き直す。
本当は綴りどころじゃないレベルで間違っているのだが、それは黙っておいた。
- 183 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:57:31 ID:SAqEqcAIO
( ∵)「……ねえ、長岡さん」
声を潜める。
ペンを止め、デレが耳を近付けた。
ζ(゚、゚*ζ「はい?」
( ∵)「あの本、何だったんです? ピンク色の」
ζ(゚、゚;ζ「え」
( ∵)「昨日変な人が持ち帰った本。……一連の事件の原因なんでしょう、あれ」
――返事は、なかった。
もごもごと口ごもり、俯いている。
どうせ答えてもらえないだろうと予想はしていたのだ。
ビコーズは腰を伸ばし、丸まっているデレの背中を叩いた。
( ∵)「言いづらい事情なのは分かりました。これ以上は訊きません」
ζ(゚、゚;ζ「すみません」
( ∵)「まあ――何をしようと、あなたの自由ですが。
あんまり危ないことに首突っ込まないでくださいよ」
ζ(゚、゚;ζ「……はい」
教壇に立ち、ビコーズは生徒達へ振り返った。
手を叩く。
( ∵)「さあて、皆さん、お時間です。答え合わせをしましょう」
*****
- 184 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 22:59:44 ID:SAqEqcAIO
15時。
駅の西口、クリスマスツリー前。
大勢の人間がごった返す中、デレは内藤を探した。
ζ(゚、゚*ζ(……デートかあ……)
少々、気が乗らない。
決して内藤が嫌なわけではないし、寧ろ誘われたのは嬉しい。
ただ。
ζ(゚、゚*ζ(……ツンちゃんは、どうするのかな)
内藤といえばツン。
デートをするなら、デレよりツンを選びそうなものだ。
それに、4日前――ツンは、明らかに嫉妬していたようだった。
あのとき、右手に覚えた痛み。
ほんの少し背中に走った悪寒。
もしもデレが本当に内藤とクリスマスを過ごしたら、ツンは何を思うのだろう。
いっそ辞退してしまおうか。
けれど、今更断るのは失礼が過ぎる。
- 185 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:00:50 ID:SAqEqcAIO
どうしよう、と悩みながら辺りを見渡したデレは、
浮かれたムードを圧倒するほど、巨大な負のオーラを放つ男を見付けた。
ζ(゚、゚;ζ
( ^"ν^)
ζ(゚、゚;ζ「……ニュッさん?」
ニュッだ。
寒い、うるさい、リア充死ね、などとぶつぶつ呟いている。
デレが声をかけると、物凄く不機嫌そうな顔で振り向かれた。
ζ(゚、゚;ζ「ひいっ」
( ^"ν^)
ζ(゚、゚;ζ「あ、あのう……何してるんです?」
( ^"ν^)「お前こそ何してんだよ」
ζ(゚、゚;ζ「デートの待ち合わせです」
一瞬、ニュッの表情がますます険しくなった。
すぐにそっぽを向いてしまったが。
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:02:36 ID:oj/yhJycO
- これはっ……!
- 187 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:02:47 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「そうかよ」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、デートっていっても内藤さんとですけど――」
( ^ν^)「……ああ?」
ニュッが再びデレに振り返る。
しばし考え込み、頭を掻きながら舌打ちした。
( ^ν^)「んだよ、くっだらねえ……」
ζ(゚、゚*ζ「?」
( ^ν^)「俺は兄ちゃんに無理矢理連れてこられた」
ζ(゚、゚*ζ「内藤さんに?」
内藤に連れてこられたニュッ。
内藤に待ち合わせ場所を指定されてやって来たデレ。
――あの日、何か企むように笑った内藤。
ζ(゚ー゚;ζ(……あー)
合点がいった。
思い起こしてみれば、「誰と」デートをするかは言っていなかった。
なるほど、たしかにくだらない。
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:04:12 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「……」
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさん、どこ行くんですか」
( ^ν^)「帰る」
踵を返したニュッだったが、一歩進むと足を止めた。
着信かメールの受信か、震えている携帯電話を取り出す。
開き、何か操作をして――溜め息。
( ^ν^)「……兄ちゃんだ」
ζ(゚、゚*ζ「内藤さん、何て?」
隣に並んだデレに、ニュッは携帯電話を渡した。
表示されているのはメール。
- 189 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:04:20 ID:2DYxDe1E0
- 誰も傷つかない展開でよかった。
- 190 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:06:17 ID:SAqEqcAIO
いわく。
『今頃デレちゃんと遭遇していることだろう。
そしてニュッ君のことだから帰ろうとしているだろう。
そこで、指令を出す。
作家達とデレちゃんへのプレゼントを買ってくるように。
デレちゃんと一緒にじっくり選んできてほしい。
デートが終わったら、デレちゃん連れて帰ってきなさい。パーティするから。
荷物運ぶのが大変なぐらい増えたら、迎えに行くから連絡よろしく。
追伸
このツンたん可愛くない? 天使じゃない?』
ζ(゚、゚;ζ「デートっていうか、おつかい……」
添付されていた写真――トナカイの角を象ったカチューシャを着けたツン――を最後に、
メールは終了した。
面倒くせえ、と呟き、ニュッが歩き出した。
文句は漏らしても、どうせ言われた通りにするのだろう。
- 191 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:07:59 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「何にします? 貞子さんは……ホラー映画のDVDとか」
( ^ν^)「採用」
ζ(゚ー゚*ζ「やった! クックルさんはどうしましょう?」
( ^ν^)「恋愛映画のDVD」
ζ(゚ー゚;ζ「各ジャンルごとのDVDで済ませる気でしょニュッさん!!」
( ^ν^)チッ
ζ(゚、゚*ζ「もっと丁寧に考えましょうよ。
……んー、私からも、皆さんへのプレゼント準備しなきゃなあ。
一応、内藤さんにはネクタイ買ったんですけど。さっき」
いつもスーツ姿の内藤にあげるプレゼントとなると、ネクタイしか浮かばなかったのである。
ツンやニュッ達へのプレゼントは、内藤とのデート中に一緒に考えてもらうつもりだった。
まあ相手は変わったが、予定自体はそれほど変更せずに済んだか。
- 192 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:09:10 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「別に気遣わなくていい……っつうか、
俺とお前からのプレゼントってことなんじゃねえの」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、そうなんですかね。じゃあ、お金半分出します」
( ^ν^)「いらねえ」
ζ(゚、゚*ζ「だって結構な出費になるでしょう?」
( ^ν^)「お前と違って金なら唸るほど持ってんだよ、こっちは」
ζ(゚ー゚;ζ「事実だから腹立つ! 痛っ、お財布でビンタしないで!
――あっ、そ、そういえば、私がまだ会ってない作家さんっていますか?
いるなら、その人にも買わなきゃ」
- 193 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:10:06 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「……1人だけだな」
ζ(゚ー゚*ζ「1人……」
心臓が、大きく跳ねた。
(´・ω・`)『君が会っていない、「図書館の人間」がいるだろう?
そいつが一番の鍵』
デレが会っていない人間。
謎を暴く、一番の鍵。
その作家が鍵?
- 194 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:13:46 ID:SAqEqcAIO
ζ(゚ー゚*ζ「……今日のパーティで会えますかね。ついに全員とご対面なるか」
( ^ν^)「多分出てこねえと思う」
ζ(゚、゚*ζ「えー」
絶賛スランプ中で部屋に篭っているのだと説明された。
デレの声に落胆と安堵が混じる。
今日は、難しいことを抜きにして楽しみたい。
ニュッに携帯電話を返しながら、彼の顔を覗き込んだ。
ζ(゚、゚*ζ「……ニュッさんは何が欲しいですか?」
( ^ν^)「あ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんにもあげますから、プレゼント。やっぱり本ですかね。
でも何か面白みがないなあ」
( ^ν^)「悪かったな、面白みなくて」
ζ(゚ー゚*ζ「他に欲しいものとか食べたいものとかありません?」
( ^ν^)「あー……」
高価なものでも要求されたらどうしよう。
身構えたデレだったが、ニュッの答えを聞いて、ぽかんとしてしまった。
- 195 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:15:16 ID:71eqTVTk0
- これらの話全体が本に操られたものでしたって言う展開が一番怖い
- 196 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:15:33 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「チキンライス」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ^ν^)「お前が作ったやつ」
思わず立ち止まる。
数歩先を行ったニュッは足を止め、どうしたと視線で問い掛けた。
ζ(゚、゚*;ζ
――何か。何だ。何だろう。
よく分からないが、かなり嬉しい。
- 197 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:16:06 ID:gcq5ic1Q0
- キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
- 198 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:17:58 ID:SAqEqcAIO
( ^ν^)「行くぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「……はい!」
ニュッに駆け寄る。
訝しむニュッを促し、歩みを進めた。
ζ(^ー^*ζ「作ります、いっぱい作ります!」
( ^ν^)「いっぱいは作らなくていいけどよ。……にやにやすんな気持ち悪い」
*****
- 199 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:19:12 ID:SAqEqcAIO
川д川「……どうしたの館長、いきなり体中掻きむしったりして……」
( ^ω^)「何か急にむず痒くなったお……」
川д川「?」
( ^ω^)「それにしてもニュッ君達、今頃上手くいってるかお」
川д川「何も進展しないに煎餅5枚……」
ξ゚听)ξ「私も何も進展しないにクッキー10枚」
川д川「賭けにならないじゃない……」
(*゚ー゚)「大穴で、2人がホテルへ直行するにゼリー30個!」
(;゚;;-゚)ノシ
(*゚ー゚)「止めてくれるなでぃちゃん、ギャンブルは無謀さが大事なのだ」
ハハ ロ -ロ)ハ「ズールーイー! ワタシもニュッ君やデレとデートとかシーターイー!」
(;゚∋゚)「ハロー、俺を叩くな」
- 200 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:20:35 ID:SAqEqcAIO
( ・∀・)「あのニュッ君がデートかあ……大丈夫かな……」
ハハ ロ -ロ)ハ「ニュッ君ズルイ、デレもズルイー!」
(;゚∋゚)「だから叩くな!」
(;^ω^)「やめなさいハロー!」
(´・ω・`)「うるせえぞ眼鏡と筋肉。ねえブーン、酒飲んでいい?」
(;^ω^)「そんでお前は何でいるんだお! あとお酒駄目! 酒乱だろうが!」
(´・ω・`)「誰のおかげでしぃの本を回収出来たと思ってんのかな?」
(#^ω^)「……あっ、もしかして金取りに来たのかお!?
今回はいくら巻き上げるつもりだお!」
(´-ω-`)「いりませーん。先客から貰ってますー」
(#^ω^)「先客?」
(´-ω・`)「まあ少し割引しすぎたから、ブーンが金くれるってんなら貰いたいけどね。
モララー、シャンパン開けて」
( ・∀・)「はーい」
(;^ω^)「ばっ、駄目だおモララー! ショボン暴れるからぁああ!!」
*****
- 201 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:22:18 ID:SAqEqcAIO
o川;゚ー゚)o「……どうしようハイン。
身内がビコーズ先生にとんでもないことやらかしたみたい……」
『え、あの悪魔に? つか身内ってもしかしてお姉さん――』
o川; ー )o「冬休みなんて……冬休みなんて明けなければいいのに……!
お姉ちゃんの馬鹿ぁああ……!!」
第六話 終わり
- 202 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:25:47 ID:.r.DAcgIO
- 乙
今回も面白かったわ
キュートは気が気じゃないわなwww
後リア充なニュッ君もげろ
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:26:37 ID:y49EC1REO
- 乙でした!!
ニヤニヤがとまらない!!
http://imepic.jp/20110609/823600
http://imepic.jp/20110609/824100
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:26:42 ID:SAqEqcAIO
- 今回の投下終わりでござい
次回投下は、ええと、いつになるかさっぱりです
割と早いかもしれないし、かなり遅くなるかもしれない
読んでくれた方、支援してくれた方、ブーン芸さん、いっぷくさん、皆さんありがとうございました!
そしてしおり的な目次的な
六話後 >>108
ではでは
- 205 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:27:41 ID:gcq5ic1Q0
- 乙!
クーとドクオの初々しさ素晴らしい
字に惚れただなんてやだもう素敵
キュートもパーティーに呼んであげてくだしあ;;
- 206 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:28:56 ID:FSn41PCw0
- おつーん
いいねえ、青春だねえ
あと先生と渡辺さんwwww
- 207 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:29:47 ID:SAqEqcAIO
- >>203
わああああありがとうございます!!
渡辺さんエロいな……ゴクリ
- 208 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/09(木) 23:51:12 ID:oj/yhJycO
- 乙
大団円でどこもかしこも恋模様
割喰ったのはビコーズを選んだばっかりに玉砕した本だけかwww
- 209 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 00:47:08 ID:7I1hOyoo0
- 読んでて色々な感覚が沸いてきたんだけど、チキンライスのくだりで全部吹き飛んでしまった
ニュッ君かわいいよニュッ君
- 210 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 02:54:35 ID:mIFw4qMQO
- 乙です
ニュッ君と先生が可愛い過ぎる
- 211 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 07:10:59 ID:LuOHc/GQO
- さっき1話から全部読んだ、すごい好きだー。
面白かった。次も楽しみにしてる
- 212 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 17:19:02 ID:OJaA.Fx6O
- どうでもいい事なんだけどさ、ニュッくんはデレに鼻フックした指をどうしたんだろう。
まさか舐mうわなにをするやめr
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 18:42:05 ID:shlsmLy.0
- こんな面白いぶーん小説がやっていたなんて
一気に読ませてもらいましゅうう
- 214 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 19:21:37 ID:ZP2E4tV2O
- ビコーズ先生に惚れたwww
- 215 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 19:54:25 ID:XcRT7xLo0
- しかしニュッはどうにもキモイ
- 216 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/10(金) 20:41:44 ID:a2lYNAkk0
- >>215
だがそれがいい
乙です
- 217 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/13(月) 07:34:26 ID:H/VicsVoO
- チキンライス作ったのは何の話だったっけ?
- 218 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/13(月) 10:32:47 ID:6wZkaiEAO
- >>217
六話前編でござい
- 219 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/14(火) 00:33:01 ID:ivENEZ3gO
- ビコーズとドクオ俺と変われ
- 220 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/15(水) 18:39:26 ID:0O8fUyxIO
- >>219おまえじゃだめー
- 221 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/22(水) 18:48:52 ID:5oCxu1bo0
- 乙
ショボンいい人じゃねえか
- 222 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/23(木) 10:55:30 ID:S0s/J.O.O
- 最近はこれを楽しみに暮らしてる
- 223 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/23(木) 18:46:11 ID:Psz/2zxA0
- 続きマダー?
- 224 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/23(木) 22:22:13 ID:mfw4erlc0
- 実力ある作者だなぁ
- 225 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/26(日) 14:19:00 ID:fvze.bgg0
- 期待hage
- 226 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/28(火) 11:22:40 ID:bFSivwG.0
- マダー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
- 227 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/28(火) 18:12:22 ID:DGN0ToMQ0
- ニュっくん描くの難しい
- 228 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/28(火) 20:14:51 ID:BF403.vAO
- 見せなくていいからね、誰も見たくないから
- 229 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/30(木) 16:23:20 ID:S7FINFzAO
- ヽ人人人人人人人人ノ
< 嫌なら見るな! >
< 嫌なら見るな! >
ノYYYYYYYYヽ
__
/_(S)\
// ∧∧\\
\\(゚Д゚)/ /
\⌒ ⌒ /
L_人_ノ
/ /
∧_∧ ■□( ))
( ;)□■  ̄丶
/⌒ ⌒ヽ ̄ ̄| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
- 230 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/30(木) 22:12:06 ID:8X45B5QgO
- まだー(´・ω・`)
- 231 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/02(土) 08:20:56 ID:TWW4bV0QO
- 現行で一番好きだ
- 232 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/02(土) 19:41:17 ID:XPEXcYn20
- 待ちきれない
- 233 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/03(日) 22:24:02 ID:LQMpAccQO
- >>231
同じく(^ω^)
- 234 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/03(日) 23:38:29 ID:tltpm8do0
- まとめで一気に読んだ 続きwktk
- 235 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/04(月) 21:59:41 ID:fdtFYBX.0
- 今回は間が長いなー
- 236 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/06(水) 00:21:58 ID:ESzjQd9MO
- 間が開くのは仕方ないにしろ報告が欲しいな。
そしたらいくらでも待てる。
作者から反応が全く無いのはキツイ…
- 237 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/06(水) 21:11:37 ID:45Nwc/jcO
第七話、前編は書き上がりました
前編なのにかなり長い
土日か、遅くても来週中には投下したいと思います
投下すると断言は出来ないけど……なるべく……うん……
- 238 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/06(水) 21:56:53 ID:yoUuxtYoO
- 安心してくれ
私の全裸待機はあと3回変身を残しています
- 239 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/06(水) 22:11:29 ID:uxvefrOc0
- 把握した
長くてもいい
むしろその方がいい
- 240 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/06(水) 22:34:55 ID:yji24zb20
- うおおお楽しみだああああああ
- 241 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/07(木) 00:48:20 ID:jcE.5JtU0
- 土曜日まで全裸・・・ か・・・・。
- 242 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/07(木) 13:44:10 ID:xzxSNGkIO
- 大丈夫だ、問題ない。
- 243 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/07(木) 18:49:27 ID:LpNEOxk.O
- おまわりさん。こいつらです。
- 244 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/07(木) 19:15:06 ID:ROJ1L.qQO
- しぃさんのおまわりコスと聞いて
- 245 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/07(木) 22:48:29 ID:zxeT/1z.0
- 全裸待機して待ってる
- 246 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:23:26 ID:ei.HbcMs0
- ,,───────-、
/ ヽ、
/ ヽ
/ _--─ ─────ヽ、 i
i / _===========ヽ、 |
i| i/ / ヾ, |
i| i|. /_,,、 _,,、# ,, i i
!"''"';;イi "゛゛`''‐ ,.-''''゙゙゙゙''ヽ |"y''"i..
!丶_` |! ' 《; ゚;》 i .i 《;。》' {;iゞ ,!
ヽ...\〔: i i |!゙.../ /.
\....| ヽ (,"、 ,゙",! ノ l" /
\ ! ; ,-‐ v ‐-、 ; i/
ヽ i ィュエエェュ、 i |r~ ファアアアアアアアアアアアアアアアアアック!!!!!!
| | | | | |
| | | ! .| ハァハァ
|! ヽLィニニニ 」/ / _____
\___ '_,, | | ̄ ̄\ \
___/ \ | | | ̄ ̄|
|:::::::/ \ | \| | |__|
|:::::::| \____|つ⊂|__|__/ /
- 247 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:23:42 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 248 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:23:57 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 249 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:24:17 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 250 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:24:28 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 251 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:24:49 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 252 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:25:01 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 253 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:25:17 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 254 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:25:36 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 255 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 14:26:22 ID:ei.HbcMs0
- ___
,. '´ `´ ̄`丶、
/ / ヽ \
/ / ヽ ! ヽ ヽ
/ / | !| ヽ l | | l !
/ / !|| | ! | l | !| ! ! ! ! !
/// ! ! ! !| ! |l| !|| | ! | | | | || |
/// | | ,|iillllliil|ト、||ハ/oillllliil ! ! || l
/// ! N ,=・= r ‐、 =・= |/! !l ヽヽ
//l !l ヘ | i i j// ! ゙、\
// || | lヽ! ; ∵; ,|. : : 人; ∵;// / | ! ゙、ヽ!
l/ | ヽ l| |ヘ::`''" `ー- ' ー 彳/ / /リヽ }
ヽ ヽ!Vヽl`トヽ+┼┼+/,. '´l/\,rく l/
/´/〈 ` ーr '´ ! rく/、
/ ヽ 〉、 / l | \
l ノ〈 ヽ _/--―ノ / ヽ
| _f=ニヘ、_,r==一'´ Y ',
', l /⌒ヽヽニ=--- 、\ヽ j
V ``ー '´ ̄`ヽ ヽ! /
'、:: ヽ| ,′
lヽ 、 :o: ! !
l } ヽ、 | |
l/ l |
_,. '´ ,| !
__ _,rァT´ /ハ |
,. -一7 /´ /ノ| ノ ハ{ !
'´ ̄//_,.- j j l ヘ l、ヘ |ヽ
‐¬7´ _/ノ j' ヽ jヽ \___j__}ヽ
_,. -‐// / \ /、}、 `ヽ--‐ァ'´
- 256 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 17:09:26 ID:6uSXC2GgO
- 生存報告があるならいくらでも待つぜ!
伊達にアルファで鍛えられてない
- 257 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 17:15:39 ID:h.A4NYUc0
- アルファは完全になげたよな・・・
- 258 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/09(土) 20:08:44 ID:XBCmK/6k0
- 今日か?明日か?wktk
- 259 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 10:52:58 ID:PUNXe2j.O
- 熱中症で入院age
出て来るキャラみんな可愛いよ
- 260 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:18:08 ID:Yj2McwuAO
- >>259
どうぞお体を大事に
o川*゚ー゚)o「一番可愛いのは当然キューちゃんでしょ? 間違いないでしょ? な?」
というわけで第七話前編投下しマーゲイ
くっっっそ長い上に、投下がゆっくりペースの恐れ有り。途中休憩挟むかも。挟まないかも
六話目同様、前中後編の三部構成になりそう
- 261 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:21:06 ID:Yj2McwuAO
彼はパソコンの前に座っていた。
盛岡デミタス、と打ち込み、検索。
数件ヒットする。
検索結果、一番上を開く。
小さなコミュニティの、数人で回っている掲示板だった。
日付を見るに、昨年の書き込み。
『誰か盛岡デミタスって作家知ってる?』
『シラネ』
『ググっても出てこないんだけど。名前間違ってんじゃないの』
『間違ってねーよ。今日うちにその作家の本売りに来た客がいたんだよ。
中身手書きだし、素人が書いた本なのかも』
『買い取ったの?』
『値段つけられないから、買い取りってか引き取りに近かったな』
『その客が書いたやつだったんじゃね』
『そうなんかな。この本どうしよう。無料ってことにして置いとくか』
- 262 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:21:32 ID:MTQ8grKMO
- いいタイミングできた
支援とwktk
- 263 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:22:52 ID:Yj2McwuAO
そこから話題は別の方向へ移っていった。
スクロール。
再び、盛岡デミタスの名前が出た。先程の書き込みの数日後だった。
『今日あの本貰われてった』
『どの本だよ』
『盛岡デミタス?』
『それ。めちゃくちゃ可愛い女の子が持ってった。
くるくるってした金髪の子で、すっげー可愛かった。
にやけ面の男が一緒だったけど恋人かな。世の中不公平だ』
検索結果のページへ戻る。
他のも見てみたが、盛岡デミタスに関する明確な情報は得られなかった。
手元にある本を撫でる。
赤い表紙。
黒いラベルに白い文字でタイトルと著者名が記されている。
タイトルと「盛岡デミタス」の二つのキーワードで検索し直したが、
今度は何も引っ掛からなかった。
パソコンの電源を落とす。
本を抱えて、席を立った。
- 264 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:25:31 ID:Yj2McwuAO
( <●><●>)「ビロード。帰りますよ」
( ><)「あ、はい! お父さん、調べ物終わったんですか?」
( <●><●>)「ええ。もう充分です」
( ><)「分かったんです!」
( <●><●>)「こら、走らない。はしたないですよ。女の子は静々と歩くものです」
(;><)「うう、ごめんなさい……」
( <●><●>)「さあ、行きますか」
( ><)「はい。――お父さん、何を調べてたんですか?」
( <●><●>)「いえ……ちょっとね」
脇に抱えた本を見下ろし、彼は、小さな図書館を出た。
- 265 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:26:04 ID:Yj2McwuAO
第七話 あな気難しや、ミステリ小説・前編
.
- 266 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:27:20 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚、゚;ζ
私は、懐中電灯に照らされている目の前の光景が、ひどく現実離れしたものに思えました。
死んでいるのか、生きているのかも分からなかったけれど、
「その人」から血が溢れていることだけは分かります。
(;><)「……なんで……」
ζ(゚、゚;ζ「ビロードちゃん……!」
「その人」の、すぐ傍。
パジャマや手を真っ赤に染めた女の子。ビロードちゃん。
彼女に駆け寄って、顔を隠すように抱きしめました。
まだ幼い少女に、こんなショッキングなものを見せ続けるわけにはいきません。
- 267 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:28:12 ID:Yj2McwuAO
部屋に上がり込んだ誰か――ニュッさんが、電気をつけました。
明るくなる室内。
はっきりと視界に入り込んだ、「その人」。
そして、「その人」の向こう側、壁際に立ち尽くす、
( ^ω^)「――え?」
内藤さん。
彼の手には。
( ^ν^)「兄ちゃん」
ξ゚听)ξ「……何で、そんなの持ってるの……?」
血まみれの包丁。
.
- 268 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:28:42 ID:Yj2McwuAO
――少し、長くはなりますが。
事の次第を説明しましょう。
始まりは、私がクックルさんに呼び出された辺りから。
*****
- 269 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:31:06 ID:Yj2McwuAO
12月28日。あと3日で2010年も終わる。
そんな昼下がり、長岡デレは、いつものようにVIP図書館を訪れた。
補習を終えて帰宅した彼女が軽く昼食をとっていたときに、
図書館から電話で呼び出しがかかったのである。
相手は「作家」の堂々クックル。
ちょっとした用があるのだが、良ければ今日の内に来てくれないか、と。
二つ返事で承諾し、食事を手早く済ませ、すぐに図書館に向かい――今に至る。
ζ(゚ー゚*ζ「お邪魔しまーす!」
(*^ω^)「いらっしゃいお」
扉を開けて中に入ると、内藤ホライゾンとツンの2人が目に入った。
椅子に腰掛けて紅茶を飲んでいる。
コートを脱ぎながら、デレは会釈した。
- 270 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:34:16 ID:Yj2McwuAO
ξ゚听)ξ「こんにちは、デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは! クックルさんに呼ばれたんですけど……」
( ^ω^)「2階にいるおー」
ζ(゚ー゚*ζ「2階ですね、お邪魔します」
カウンターの奥に行き、階段へ通じるドアへ手を伸ば――そうと、した瞬間。
勝手に、ドアが開いた。
ζ(゚ー゚;ζ「ぎゃっ!」
( ^ν^)「あ?」
現れたのは内藤ニュッ。
「ぎゃっ」とは何だ、とデレを睨む。
( ^ν^)「人の顔見て悲鳴あげるとは失礼な奴だな」
ζ(゚、゚;ζ「いや別にニュッさん見てびっくりしたんじゃな……ぎゅぶっ」
片手で両頬を圧迫された。唇が突き出る。
とてつもなく間抜けな顔になっているであろう。恥ずかしい。
- 271 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:36:02 ID:MTQ8grKMO
- ( <〇><〇>)
- 272 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:37:19 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚ε゚;ζ「ちょぼっ……にゅ、にゅっしゃんっ、しゅ、しゅみましぇっ」
( ^ν^)
( ^ν^)「く」
ニュッはしばらくデレを眺めていたかと思うと、
手を離し、慌てた様子で後ろを向いた。
肩が震えている。
ζ(゚、゚;ζ「ひっ、人の顔見て笑うとは失礼な!」
( ^ν^)「……ぶっっっさいく」
ζ(゚、゚;ζ「酷い! 今のはニュッさんがやったんじゃないですか!」
(;^ω^)「こらこらニュッ君……。――わざわざ下りてきて、どうしたんだお?」
( ^ν^)「紅茶飲みに来た。クックルが厨房に入れてくんねえ」
ξ゚听)ξ「ああ、なるほど。おいで」
( ^ω^)「余分にカップ用意しといて良かったおー」
ζ(゚、゚#ζ「……ニュッさんのバーカ!」
ニュッが内藤達のもとへ行く。
デレは頬を摩りながら捨て台詞を残し、階段へ駆け込んだ。
- 273 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:38:51 ID:Yj2McwuAO
( ^ω^)「……」
カップを口元で傾け、内藤は、隣に座るニュッを横目に見た。
彼があんな風に図書館の住人以外の異性とじゃれ合うなど、
少し前までなら考えられなかったことだ。
微笑ましいといえば微笑ましいし、喜ばしくもあるのだが、
その分、複雑な感情が沸いてくるのも事実。
他人と関わるのが下手なニュッに好意を抱いてくれているデレの存在は、
従兄弟――よりも、「兄」の方が感覚としては近い――の内藤には大変ありがたい。
是非とも、もっと仲良くなってほしいのだが。
そうなったらそうなったで、後が恐い。
( ^ω^)(……どうしたもんかお)
最近、内藤の胸中に渦巻く不安がある。
未だ彼女に知らせていない「事実」が白日の下に晒されたとき、
彼女は何を感じるのだろう。
- 274 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:40:34 ID:Yj2McwuAO
ξ゚听)ξ「ブーン、おかわりは?」
( ^ω^)「ん。お願いするお」
先程のデレの姿を思い浮かべる。
セーターにジーンズ。至って普通の格好。
怪我をしてから、デレは私服で足を出すことがなくなった。
以前訊ねたときには寒いからだと答えられたのだが、それだけではない筈だ。
傷跡を隠すためか、あるいは「また転んだら」と危惧しているかのどちらか、
はたまた両方だと内藤は考えている。
フラッシュバックする光景。鞄と道路に散った血痕。
内藤は口を手で覆った。
血は――駄目なのだ。嫌な記憶を呼び起こすから。
ξ゚听)ξ「どうしたの?」
( ^ω^)「……いや。何も」
その記憶に関しても、いずれデレの知るところとなる。
深々と、溜め息をついた。
*****
- 275 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:41:27 ID:Yj2McwuAO
2階に上がる。
クックルはどこにいるのだろう。
うっかり聞き忘れた。
ζ(゚、゚*ζ(食堂かな)
とはいえ、おおよその想像はつく。
厨房がどうのこうのとニュッが言っていたし。
それにまさかクックルの部屋に呼び出されるわけが――
ζ(゚、゚*ζ
――部屋。
どくん。
胸が高鳴った。
数日前。内藤の友人、遮木ショボンの事務所で話した内容が脳裏を過ぎる。
ニュッか内藤の部屋に。
全てを知る手掛かりが。
- 276 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:42:50 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚、゚;ζ
振り返る。
内藤らが上がってくる気配はない。
前を向く。
誰もいない。
下を見る。
踏み込みに並ぶ靴の数が少ない。何人か出掛けているのだろう。
鼓動が速くなった。
今。
今なら。もしかして。
そっと靴からスリッパへ履き替え、慎重に足を踏み出した。
これまで進んだことのない、前方――ずらりとドアが並ぶ廊下に向かう。
手前、右側の部屋のドアに、貞子と書かれたプレートが下がっている。
山村貞子の部屋だ。
その向かいは恐らくハロー・サン。ネームプレートは掛かっていなかったが、
銀色の、猫型のシールがドアの真ん中に貼られていた。
- 277 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:43:41 ID:Yj2McwuAO
耳を澄ましながら進む。
貞子の部屋の隣に、「でぃ&しぃ」というプレートがあった。
椎出姉妹は2人で一部屋を共有しているらしい。
向かいに茂等モララーの部屋。
その隣がクックル――
そのとき。
椎出姉妹の隣の部屋、「デミタス」と彫られた板が括られているドア。
それが、ゆっくりと開いた。
- 278 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:44:56 ID:053KUe8E0
- キテター
支援!
- 279 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:45:01 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚、゚;ζ「わっ!」
(´ _ゝ `)
男が、立っていた。
顔が黒い。
色黒というわけではなく――まるで、インクか何かを塗りたくったかのように汚れている。
反対に、手が白い。
色白なわけでもない。手のみが綺麗だから、対比で白く見えるだけだ。
手には大事そうに抱えられた本が一冊。
赤い外装。
作家だ。
デレが今まで会えなかった、最後の1人。
- 280 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:47:19 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚、゚;ζ「……!」
――君が会っていない、「図書館の人間」――
ショボンが言うところの、「鍵」。
(´ _ゝ `)
ζ(゚、゚;ζ「……あのう……」
声をかける。
返事はなし。
(´ _ゝ `)
目の焦点が合っていない。
男が一歩、動いた。
ふらり。
足が揺れる。
- 281 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:49:50 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚、゚;ζ「――あっ」
デレが反応する間もなく、男は倒れた。
受け身は一切とらず、けれど本を守るように腕を頭の上に伸ばして。
顔面から、廊下に倒れた。
ζ(゚、゚;ζ「だっ……大丈夫ですか!?」
男の傍に膝をつき、呼びかけた。
肩を揺らし、頬を叩く。
強烈な臭いが鼻を突いた。
インクや汗やコーヒー、色々な臭いが混ざったような。
身に着けている服をよく見れば、夏用のもの。
肌も服も汚れているし、もしかしたら長いこと――下手をすれば夏から――入浴どころか
着替えすらしていないのではなかろうか。
デレが図書館に通い詰めた約3ヶ月間、影すら見なかったぐらいだから、
ずっと部屋に篭っていたとしてもおかしくない。
ζ(゚、゚;ζ「すみません、あの――誰か! クックルさーん!?」
(;´ _ゝ `)「……うう……」
抱え上げようとしたが、デレの力では足りなかった。
男が呻く。
デレが大声をあげると、ハローが彼女の部屋から飛び出してきた。
- 282 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:53:30 ID:Yj2McwuAO
ハハ ロ -ロ)ハ「デレ?」
ζ(゚、゚;ζ「あ、ハローさん! この人が……」
駆け寄ってきたハローは、デレが抱えようとしている男を見るや足を止めた。
その後ろ、食堂方面の廊下からクックルがやって来る。
( ゚∋゚)「デレか? どうした?」
ハハ ロ -ロ)ハ「デミタス」
(;゚∋゚)「……ああ。――ドーナツあったっけか」
ハローの答えで、全て察したらしい。
さっさと踵を返し、右手を振る。
(;゚∋゚)「デレ、そいつ最低でも3……4ヶ月は風呂入ってないし着替えてない筈だから
触らなくていいぞ」
ζ(゚、゚;ζ「そんなこと気にしてる場合じゃ――」
ハハ ロ -ロ)ハ「大丈夫デスヨ、デレ」
ζ(゚、゚;ζ「え?」
クックルが早足で来た道を戻る。
直後、男が口を開いた。
(;´ _ゝ `)「……コーヒーと……ドーナツを……」
ハハ ロ -ロ)ハ「コーヒー飲んだら、スグ元気になりマスカラ」
*****
- 283 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:56:15 ID:Yj2McwuAO
(*´・_ゝ・`) モグモグモグ
(*´・_ゝ・`) ゴクゴクゴク
(*´>_ゝ<`) プハー
(*´・_ゝ・`)「っあ゙あ! 生き返った」
廊下のど真ん中。
クックルが用意したコーヒーとドーナツを完食した男は、手の甲で口を拭った。
口を拭ったというより、顔の汚れを広げただけに見えるが。
ハハ ロ -ロ)ハ「サッサトお風呂入ってクダサイ」
(´・_ゝ・`)「まずニュッ君に本を」
( ゚∋゚)「異臭撒き散らしてたらニュッ君も近付いてこないぞ。
本なら俺が渡しておくから風呂行け」
(´・_ゝ・`)「ああ、じゃあ頼んだよクックル……。――ええと、そちらは」
男がデレに視線を注いだ。
困惑の色がちらついている。
長岡デレです、と自己紹介し、会釈した。
(´・_ゝ・`)「デレさんか。すまないね、迷惑をかけて。僕は盛岡デミタスといいます。
クックル、後で着替え持ってきて……」
( ゚∋゚)「はいはい」
盛岡デミタスは、ドーナツの乗っていた皿とコーヒーカップをハローに渡すと、
風呂に入ってくると言い残して廊下を歩いていった。
- 284 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:58:25 ID:Yj2McwuAO
その背中をぼんやり眺めていたデレの肩を、クックルが叩く。
( ゚∋゚)「デレ、食堂に来てくれるか」
ζ(゚、゚*ζ「あ。はい……」
ハハ ロ -ロ)ハ「食堂で何するノ?」
ニュッと内藤の部屋に入るのは、結局失敗に終わった。
残念なような――ほっとしたような。
( ゚∋゚)「この間のプレゼントの礼だ」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ……でも、あれ、私は結局お金あんまり出してないんですよ。
一緒に選んだだけで」
( ゚∋゚)「選んでくれただけで充分嬉しいさ」
クックルには腕時計を贈ったのだったか。
今も左手首に着けられている。
ハハ ロ -ロ)ハ「アー。デレ、ワタシともデートしてクダサイー」
ζ(゚ー゚*ζ「今度しましょうねー」
ハハ*ロ -ロ)ハ「ヤッタ!」
( ゚∋゚)「ハロー、食器落とすなよ」
ぎゅうぎゅうとハローがしがみついてくるので非常に歩きづらい。
何度か転びそうになりながらようやく食堂に辿り着く。
- 285 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 22:59:14 ID:4csQn.p2O
- 待ってた
- 286 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:01:19 ID:Yj2McwuAO
ほのかに甘い香りが漂った。
食堂の扉を開き、クックルが言う。
( ゚∋゚)「ケーキを作ってみた」
ζ(゚ー゚*ζ「ケーキ!」
ハハ ロ -ロ)ハ「寒いー」
( ゚∋゚)「ちょっと諸事情で暖房を止めてるんだ」
テーブルに本を置いたクックルはハローから食器を取り上げ、厨房へ引っ込んだ。
適当な席に着き、デレが待機する。隣にはハロー。
少ししてクックルが戻ってきた。
ケーキの乗っかった皿と、ミルクティーの入ったカップがデレの前にやって来る。
ζ(゚ー゚;ζ「うおお……」
本当に素人の手作りなのか、これは。
1人で食べ切れるかどうか、小振りのホールケーキ。
チョコレートでコーティングされていて、つやつやと滑らかな光沢がある。
縁取る生クリームとのコントラストが美しい。
特筆すべきは、中央に鎮座する、所謂飴細工。
小鳥の形をした白い飴が一つ。
その鳥を、琥珀色の網――鳥篭をイメージしているのかもしれない――が囲んでいる。
琥珀色の方は糸飴というやつだろうか、指先で突いただけで崩れてしまいそうなほど
細やかで繊細な作りだ。
暖房をつけていないのは、これのために違いない。
少しでも熱に触れれば崩れてしまうだろう。
- 287 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:02:03 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚ー゚;ζ「すご……」
ハハ*ロ -ロ)ハ「キレイ」
( ゚∋゚)「ちょっと頑張ってみた」
ζ(゚ー゚;ζ(『ちょっと』なんだ……)
そういえばこの男、とても手先が器用なのだった。
デレは携帯電話のカメラでケーキを四方から撮影し、
気が済んでからようやくフォークを手に取った。
ζ(゚ー゚*ζ「勿体ないけど、いただきます」
( ゚∋゚)「持ち帰るための箱も用意してあるし、無理に全部食べなくてもいいからな」
ζ(゚ー゚*ζ「はい!」
飴細工に触れないよう、慎重にフォークを通す。
かりっとした表面の感触を過ぎると、後は、すうっと静かに沈み込んだ。
- 288 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:04:10 ID:Yj2McwuAO
( ゚∋゚)「ああ、それでな、デレ」
ζ(゚ー゚*ζ「何でしょう」
( ゚∋゚)「キュートのことなんだが」
手が滑る。
網の一部が折れ、飴細工が崩れた。
ζ(゚д゚;ζ「ああっ! 壊れた!」
ハハ ロ -ロ)ハ「アー」
( ゚∋゚)「どうせ後で食べるんだからいいじゃないか」
ζ(゚、゚;ζ「そ、それはそうなんですけどお……」
クックルの口から素直キュートの名前が出たことに、デレは少なからず動揺した。
つい先程ショボンとの話を思い出したことで、過敏になっていたようだ。
――クックルとキュートは結ばれない。
それが、この図書館が抱え込む秘密に関係しているという。
- 289 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:06:16 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚、゚;ζ「……」
デレは、じっと飴細工を見下ろした。
ほんの少し突いただけで崩れてしまう。
かといって黙って眺めていても、いずれは壊れる。
デレが動こうと、動かまいと。
いつか『それ』が転がり出てきて、デレに何かしらの影響を与えるのだとしたら。
それなら、まだ自ら行動に出た方が、心の準備もしようがあるというものだ。
問題はタイミング。
じっくり機会を待てとショボンは言っていたが、それをデレが見極められるか否か。
( ゚∋゚)「デレ?」
ζ(゚、゚*ζ「あ、はい」
( ゚∋゚)「聞いてたか?」
ζ(゚、゚;ζ「……すみません、もう一回。ぼうっとしてました」
( ゚∋゚)「ああ。キュートはあれから姉さんと仲良くやれてるのか、と訊いたんだが」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、クリスマスに一緒に美味しいもの食べて、仲直りしたらしいですよ」
( ゚∋゚)「そうか。なら良かった。
いつでもいいからキュート連れてこい。またケーキ作るから」
ζ(゚ー゚*ζ「了解です!」
- 290 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:08:00 ID:Yj2McwuAO
クックルはデミタスから預かった本を拾い上げると、
ちょっと行ってくると言い、食堂を出ていった。
扉が閉まる。
デレはケーキを口に運んだ。
ぱきぱきと小気味よく砕けるチョコレートに、しっとりとしたスポンジ。
淡泊なクリームがケーキの甘みを包み、口の中で程よい味にしてくれる。
美味しい。
秘密がどうのこうのといった悩みは一旦置いて、
デレは目の前のケーキに夢中になった。
ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシもデレへのお返し考えナキャ……」
ζ(゚ー゚*ζ「ですから、私はお返しもらうほどのことしてませんよ。
ほら、ハローさん口開けて。あーん」
ハハ*ロдロ)ハ「アーン」
*****
- 291 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:09:37 ID:Yj2McwuAO
( ^ω^)「デミタス出てきたのかお。4ヶ月ぶりくらいかお?」
( ゚∋゚)「今回はスランプ長かったな、あいつにしては」
ξ゚听)ξ「モララーとデミタスはハマると長引くからね」
( ^ν^)「モララーは元々遅筆だけどな」
1階。
内藤は、ニュッに本を渡しに来たクックルから
デミタスが部屋から出てきたとの報告を受けた。
デミタスには、執筆の間は部屋に篭りきる癖――癖というか、もはや習性――がある。
トイレ以外の用では出てこない徹底ぶりで、
書き始める前には大量の飲食物を部屋に運び込む。
デミタスの部屋は今、ごみやら何やらでとんでもないことになっているであろう。
自分で片付けろと言っても聞かない。どうせ内藤かクックル辺りが掃除する羽目になる。
内藤は、憂いの息を吐き出した。
( ゚∋゚)「それじゃあ、デミタスの着替えを用意してくる」
( ^ω^)「頼んだおー」
クックルが2階へ戻るのを、3人で見送る。
と、その直後。
( ^ω^)「お?」
内藤の携帯電話が鳴り響いた。
*****
- 292 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:12:23 ID:Yj2McwuAO
(´・_ゝ・`)「いやはや、本当にすまなかった」
デレがケーキをハローと分け合い、3分の2ほど食べ終えた頃。
盛岡デミタスが食堂へやって来た。
シャワーと着替えで小ざっぱりした彼は、至って普通の中年だった。
デレの父と大体似通った年頃に見える。
恐らく40代。
クックルに入れてもらったコーヒーを美味そうに飲んでいる。
(´・_ゝ・`)「しかしまさか4ヶ月も経ってたとは……。
驚いたよ、見知らぬ女の子がいるもんだから」
( ゚∋゚)「多分デレの方が驚いてただろうよ」
ζ(゚ー゚;ζ「ええ、まあ……」
ハハ ロ -ロ)ハ「執筆終わった後のデミタスは、ちょっとしたモンスター状態デスカラね」
モンスター。言い得て妙だ。
デレが吹き出すと、酷いなと言ってデミタスが笑った。
この和やかな空気に、デレは少し感動した。
変人の多い図書館はどうにも騒がしくなりがちで、
こんな風にゆったり落ち着けることなど滅多にない。
まあ、賑やかなのも楽しくはあるのだが。
- 293 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:13:52 ID:Yj2McwuAO
( ゚∋゚)「……ん?」
不意にクックルが扉へ振り返った。
どうしました、とデレが問う。
( ゚∋゚)「いや、何か向こう側がやかましい……」
クックルが立ち上がった、瞬間。
(´・ω・`)「デーレちゃん!」
扉が開き、男が現れた。
八の字眉。トレンチコート。遮木ショボン。
――さようなら憩いの時間。こんにちは狂騒。
- 294 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:15:44 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚ー゚;ζ「しょ、ショボンさん」
(´・_ゝ・`)「久しぶりだねショボン君」
(´・ω・`)「おう、デミタスのおっさん出てきたのか。
さあデレちゃん、ちょっと来てもらおう」
ζ(゚ー゚;ζ「どこに……きゃあっ!」
ずかずか近付いてきたショボンは、デレの腕を掴み、無理矢理立ち上がらせた。
開け放した入口から内藤が飛び込んでくる。
(;^ω^)「ショボン!」
(´・ω・`)「デレちゃんは一緒に来てくれるそうですよお。
さあ、どうする? 僕とデレちゃんの二人旅になっちゃうよ?」
(;^ω^)「こ、この下衆がぁあ……!」
ζ(゚ー゚;ζ「? ぐえっ」
後ろからデレの首に腕を回し、ショボンは内藤に何か言い始めた。
話についていけないデレはぽかんとするばかりだ。
- 295 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:17:50 ID:Yj2McwuAO
(´・ω・`)「どうしてもブーンが嫌だってんなら無理強いはしない。
僕もデレちゃんという助手がいるから、大して困らないしね」
(´・ω・`)「でもなあ。デレちゃんだしなあ。
僕の与り知れぬところでトラブルに巻き込まれそうだなあ」
(;^ω^)「お前は……お前はクズだお……!」
(´・ω・`)「はは、今更」
クックルやハロー、デミタスも状況を把握出来ずに固まっている。
それに反し、デレを挟んだ内藤とショボンの睨み合いはクライマックスに達した。
置いてけぼり感が半端ない。
(;^ω^)「くそっ!」
(´・ω・`)「どうするの? ブーン君」
(;^ω^)「……」
(´・ω・`)「ん?」
(;^ω^)「――僕も……行くお……」
(´・ω・`)「よし来た。そうと決まれば早速出発だ」
- 296 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:19:12 ID:MTQ8grKMO
- ショボンwwww
- 297 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:19:59 ID:Yj2McwuAO
(;^ω^)「今から!?」
(´・ω・`)「早い方がいいだろ、回収は。いつ演じさせられるか分かんないし、
特に今回は――デミタスの本だしね。万が一、があるかもしれない」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あのう……」
(´・ω・`)「デミタス。折角だし、お前も来い」
(´・_ゝ・`)「え? 何?」
(´・ω・`)「ちんたらしない。そら来いやれ来い。寒いからコート着ろよー」
引きずられていくデレとデミタス、慌てて後を追う内藤。
彼らが食堂を出ていくと、残されたクックルとハローは顔を見合わせた。
( ゚∋゚)「……本が見付かった、のか? あの様子だと」
ハハ ロ -ロ)ハ「みたいデスネ」
( ゚∋゚)「相変わらず行動が急だな、ショボンは」
ハハ ロ -ロ)ハ「デスネ。……ねえクックル」
( ゚∋゚)「ん?」
ハハ ロ -ロ)ハ「デレが残したケーキ食べてイイ?」
( ゚∋゚)「……ああ。多分、本の回収が終わったら普通に家に帰るだろうしな」
ハハ*ロ -ロ)ハ「ワーイ」
*****
- 298 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:22:07 ID:Yj2McwuAO
デレ達は、3列シートのミニバンに乗せられた。
運転席にショボン、助手席に内藤。
その後ろにツンとデレが並び、さらに後ろにニュッとデミタス。
内藤は口元をひくつかせる。
(#^ω^)「……てんめえ……最初から僕達まとめて連れてくつもりだったお……?」
(´・ω・`)「何を言い出すのやら。人聞きの悪い」
(#^ω^)「わざわざミニバン用意したってことは、そうだろうがお!」
(´-ω-`)「……まあ、本当はデミタスじゃなくてクックル連れてくるつもりだったんだけどね。
デミタス出てきてるとは思わなかったよ」
(´・_ゝ・`)「まさか僕も引きこもり脱却早々ドライブさせられるとは思わなかった」
( ^ν^)「帰りてえ」
(#^ω^)「あー! ちっくしょう、1人で行けお1人で!」
(´・ω・`)「1人じゃ心細いんだもの」
(#^ω^)「こーこーろーぼーそーいい!?
はあーショボン君の口からそんな言葉がよく出てきたもんだおー!」
ξ゚听)ξ「ブーン静かにして」
- 299 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:23:15 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚ー゚;ζ「……ショボンさあん……」
(´・ω・`)「何?」
ζ(゚ー゚;ζ「どこに行くんですか?」
(#^ω^)「あっ、それだおそれ、どこ連れ去る気だお!?」
(´・ω・`)「んー、まあ大雑把に言うなら」
赤信号。
ブレーキを踏む。
ショボンは前方を向いたまま、言った。
(´・ω・`)「お隣りの県」
(#^ω^)「は?」
.
- 300 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:24:24 ID:Yj2McwuAO
一昨日、ショボンの事務所へ電話がかかってきたのだという。
相手は近県に住んでいる探偵仲間であった。
(´・ω・`)『本? 盛岡?』
その探偵は、ある家の人間から仕事を依頼された。
実際に家に上がって話を聞いたそうなのだが――
『盛岡デミタスだったかな。
お前言ってただろ、聞いたことない作家の本見かけたら教えろって』
そこの住人が、盛岡デミタスの名が記された本を持っていたらしい。
ショボンは顎を撫で、眉を寄せた。
(´・ω・`)『ふむ。盛岡デミタス? 聞いたことないね、興味沸いてきた』
嘘をつく。
赤の他人に図書館云々の話をするわけにはいかないが、「本」の情報は欲しい。
そのため、誰も知らぬような、マイナーな作家の本を集めるのが趣味なのだと
周囲に触れ回っているのである。
ちょくちょく無関係な本の報告を受けるが、
たまに、こうして「当たり」を引くこともあるにはある。
- 301 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:25:35 ID:vyBX2zgIO
- きてたー!!
- 302 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:26:20 ID:Yj2McwuAO
『そう言うと思った。
実際に交渉しに行くっつうんなら、住所教えてやるよ』
(´・ω・`)『わお。まじ?』
『ただし俺の仕事を代わりにしてもらうことになるぞ。
……まあ要するに、調査の結果報告を代理で行うって名目でさ』
(´・ω・`)『こっちは全然構わないけど、そっちはいいわけ?』
『一応言っとくが、お前にゃ一銭も入らないからな。
仕事の報酬は全部俺が貰うし、ついでにお前からも情報料をいただくつもりだぞ』
(´・ω・`)『それでいいよ。じゃあそういう方向でよろしく』
ショボンが快諾すると、そんなに楽しい趣味なのかねと相手は呆れた声で呟いた。
曖昧に笑っておく。
どうせ――ショボンは内藤から金を巻き上げる腹積もりでいるのだ。
仕事の概要について色々と教えてもらい、電話を切る。
書類やら何やらは速達で送ってもらうことにした。
持つべきものは友。持つべき友はお人よしである。
.
- 303 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:29:43 ID:Yj2McwuAO
(´・ω・`)「ってわけで。今、その家に向かってるんだ」
( ^ω^)「お前が行っていいのかお、それ」
(´・ω・`)「向こうには知人の方から連絡を入れてもらってるよ。
急用のため、代理人がお話しに行きます、と」
ξ゚听)ξ「どんな家なの?」
(´・ω・`)「若菜家。元豪族、さらには大名主だったお家柄さ」
ξ゚听)ξ「そう。なら立派な家なのね」
(´・ω・`)「でも、これから僕達が行くのは分家筋の方だよ。
土地を譲り受けて分家したところ」
(´・ω・`)「まあ、土地っつっても田舎の田舎、小さな村の中だ。
本家はもっと大きな土地で、もっと大きなお屋敷を構えてるそうだけど。
……このご時世に、本家だの分家だのってねえ……」
ζ(゚ー゚;ζ「ご、ごうぞく? なぬし? ぶんけ? りっぱ?
もしかして凄いお家に行くんですか?」
(´・ω・`)「僕やデレちゃんみたいな下賎の民には無縁の家さ」
ひい、とデレが引き攣った悲鳴をあげた。
ツンの手を握りしめる。
- 304 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:31:11 ID:Yj2McwuAO
ζ(゚ー゚;ζ「どうしよう、無礼を働いたら……!」
ξ゚听)ξ「……首を刎ねられるかもね……」
ζ(゚д゚;ζ「ひぃいいい……!!」
(;^ω^)「ツン、嘘つくなお。デレちゃんも信じない」
( ^ν^)「ばーか」
ζ(゚ー゚;ζ「あ、う、嘘なんですか……良かったあ。あとニュッさんうるさい」
( ^ω^)「僕が正しい作法を教えてあげるお。
まずデレちゃんは僕と手を握ったまま絶対に離しちゃ駄目だお」
ζ(゚ー゚;ζ「て、手を!?」
( ^ω^)「相手に『何も悪いことしませんよ』とアピールするために、
自分達の手を塞いじゃうってわけだお」
(*^ω^)「より不自由感を出すために、こう、指を絡めて……、
所謂カップル繋ぎなんかするとベストだお」
(´・ω・`)「あちらの家に上がったら、まず靴と服を脱ぎ、
一番偉い人の足を舐めなきゃいけないよ。
敵ではないという証明のためにね」
( ^ν^)「喋るときは常に土下座」
ζ(゚ー゚;ζ「こ、恐い! ごうぞくのなぬしのぶんけさん恐い!!」
(´・_ゝ・`)「なるほどデレさんって頭良くないんだね」
ξ゚听)ξ「ええ、見ての通りよ」
- 305 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:35:17 ID:Yj2McwuAO
( ^ω^)「……と、まあ冗談は置いといて。普通でいいんだお、普通で。
変に気張ってたら笑われちゃうお」
(´・ω・`)「そうそう。その地域の人達は頭が上がらないだろうけど、
僕らは全然関係ないし」
ζ(゚ー゚;ζ「え……冗談だったんですか?」
(´・_ゝ・`)(実行するつもりだったのか……)
( ^ω^)「あ、僕と手を繋ぐのは本当――」
ξ゚听)ξ≡⊃))ω゚)「ヨコミゾッ!!」
- 306 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:37:03 ID:Yj2McwuAO
――走ること、実に4時間。
日も暮れた午後6時。
他に車も通らぬような道を進む。
県境を越えた辺りから、雪が降り続いている。
車のライトに照らされた道は白い。
( ^ω^)「ロードヒーター入れとけお……」
(´・ω・`)「事故るなよー。ああ、そこ左に行って」
1時間ほど前、早めの夕食としてファストフード店に寄った際に内藤と運転を代わった。
ペンライトで地図を照らしながらショボンが助手席から誘導する。
内藤が言われた通りにすると、あとは一本道だからとショボンは地図を畳んだ。
振り返る。
(´・ω・`)「阿呆が静かだけど」
ξ゚听)ξ「寝てるわ」
ζ(-、-*ζ
ツンに凭れて、阿呆ことデレが眠っている。
後ろでは、ニュッが腕を組んで俯いていた。
デミタスが口元で人差し指を立てたので、ニュッも寝ているのだろう。
- 307 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:37:16 ID:8Gjzdfy60
- お、きとるー
- 308 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:39:38 ID:Yj2McwuAO
( ^ω^)「……何でデレちゃんまで連れてきたんだお」
(´・ω・`)「んー?」
内藤が、独り言のような声量で問いかけた。
視線は前へ向けられたまま。
ショボンはトレンチコートの襟元を正すと、窓の外でちらちらと降る雪を眺めた。
(´・ω・`)「……慣れさせた方がいいでしょ。『本』に関することは何でも。
長い付き合いになるならさ」
( ^ω^)「――長い付き合い、ね」
ふ、と。
内藤の口から、息が漏れた。
( ^ω^)「そうなれたら、嬉しいおね」
ξ゚听)ξ「……」
バックミラーに映ったツンが、一瞬眉根を寄せた。
その変化に気付いた者はいない。
( ^ω^)「……ところで帰りは何時になるんだお」
(´・ω・`)「手早く仕事を済ませてさっさと帰れば、
日付が変わる少し前には図書館に着くんじゃないの」
( ^ω^)「ふざけんな」
*****
- 309 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:40:40 ID:Yj2McwuAO
それからさらに30分後。
村に到着する頃には、雪でろくに前も見えないほどになっていた。
たまらなくなって車を停めるなり、近付いてくる人影があった。
/ ,' 3「遮木様でいらっしゃいますな」
傘を差し、ライトを手にした年配の男性。
内藤が運転席の窓を開けて応対すると、雪が車内にまで舞い込んだ。
( ^ω^)「僕は付き添いの者ですお。遮木はこっち」
(´・ω・`)「どうも」
/ ,' 3「ああ、そちらが。
私、若菜家の遣いでございます」
(´・ω・`)「えっと――荒巻さんでしたっけ」
/ ,' 3「はい。この荒巻スカルチノフ、お迎えにあがりました。
ここらは雪が降ると、不慣れな者には運転が難しいからして。
私が遮木様を屋敷までお送りするように言われたのですが……」
しかし、と、荒巻スカルチノフと名乗る男は顔を顰めた。
後部座席のツン達を見遣る。
- 310 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:42:32 ID:Yj2McwuAO
/ ,' 3「思っていたより多いですな。
私の車に全員乗り切れるかどうか」
( ^ω^)「心からお詫びしますお。1人で来いっつう話ですおね本当に」
(´・ω・`)「僕を睨まないでくれるかな内藤さん」
/ ,' 3「もしよろしければ、こちらの車を私に運転させていただけませんか。
運転席の……ええと」
( ^ω^)「内藤ですお」
/ ,' 3「内藤さんに、後ろへ回っていただいて」
( ^ω^)「ほいほい。ツンー、そっち座るからスペース空けておー」
ξ゚听)ξ「分かったわ。……デレ、起きて。そろそろ着くわよ」
ζ(-、-*ζ「んー」
(´・_ゝ・`)「おーい。起きな」
( ‐ν‐)「んぐ」
ツンの隣へ内藤、運転席に荒巻が乗り込む。
荒巻がアクセルを踏み込み、車は再度走り出した。
- 311 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:46:31 ID:Yj2McwuAO
(´・ω・`)「すみませんね、こんな遅くに」
/ ,' 3「いえいえ。大旦那様も早く結果を知りたがっておりましたから。
年末年始には本家へ出向かなければならず、時間もとれなくなりますし」
民家が立ち並ぶ通りを抜け、村の奥へ。
小さな山を上る。
しばらくすると、着きましたと荒巻が言い、ブレーキをかけた。
エンジンを切り、ドアを開ける。
ζ(゚、゚;ζ「……これが、ごうぞくのぶんけさん……」
車を降りたデレは、目の前の大きな門に怖じけづいた。
何とも立派な構えだ。
しかし、いざ門が開かれると、その向こうの光景に少し拍子抜けする。
暗さと雪のせいで視界は悪いものの、屋敷の外観ぐらいはそれなりに分かる。
てっきり馬鹿みたいに大きくきらびやかな館を想像していたのだが、
実際はテレビドラマなんかでよく見る、純和風な家屋を思わせる佇いであった。
それでも普通の家に比べれば随分大きいのだが。
- 312 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:49:31 ID:Yj2McwuAO
( ^ν^)「古い家だな」
(´・_ゝ・`)「こら、ニュッ君」
/ ,' 3「ふふ、間違ってはいません。
中の方は何度か改装しておりますがな」
荒巻が門を潜り、デレ達も後に続く。
何となく不安で、デレはツンと手を繋いだ。
ξ゚听)ξ「ブーンの嘘を間に受けなくていいのよ」
ζ(゚、゚;ζ「嘘? ……あ、いや、別に作法とかじゃなくて、ただ繋ぎたかっただけ」
ξ゚听)ξ「そう」
(´・ω・`)「玄関に並んでる靴は、一番若い客人が全て磨かなきゃいけないんだよ」
ζ(゚、゚;ζ「しません! もう騙されませんからね」
( ^ν^)「家に上がるときは『お邪魔します』って言えよ」
ζ(゚、゚;ζ「言いません!」
ζ(゚、゚;ζ「……ん?」
( ^ν^)「デレちゃんの礼儀知らず……」
ζ(゚、゚;ζ「……あっ、いや言います、それは普通に言いますよ!
ていうかデレちゃんって!」
- 313 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:52:38 ID:Yj2McwuAO
/ ,' 3「若い子は元気ですな」
(´・ω・`)「黙らせた方がいいなら眠らせますが」
ζ(゚、゚;ζ「えっ何……? 無理矢理連れてこられた挙句に気絶させられるの私……?」
/ ,' 3「いやいや、賑やかで大変よろしい」
話している内に玄関へ着く。
遣戸を引き、荒巻は「ただ今帰りました」と大きな声をあげた。
デレ達に、雪を払うよう指示する。
ξ゚听)ξ「髪、濡れちゃったわ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ」
広い土間。奥に竃がある。
すぐ左に顔を向けると、式台と上がり框を経た先に、板の間が見えた。
土間との仕切りはない。板の間の真ん中には囲炉裏。
ζ(゚、゚*ζ(囲炉裏なんて初めて見た……)
前を向く。
奥と左の二股に分岐している廊下。
前方に伸びる廊下が非常に長い。
外で正面から見たときに受けた印象よりも、やはり大きいのかもしれない。
- 314 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:53:20 ID:MTQ8grKMO
- お
- 315 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:54:44 ID:Yj2McwuAO
(´・ω・`)「広いですね、やっぱり」
/ ,' 3「いやあ、そんなことはまったく。
本家と比べてしまうと、ここが小屋に思えますよ」
ζ(゚、゚;ζ(小屋……っ!?)
本の目撃情報があったのが、ここで良かった。
もしも「本家」とやらの方だったら、デレは動けなくなっていたであろう。
どれだけ大きいのかとデレが考え込んでいると、
板の間の奥、障子が開いた。
やって来たのは子供だった。小学校高学年くらいの。
( ><)「おかえりなさいなんです!」
ワンピースに黒いタイツ。
可愛らしい顔立ちをしている。
両手にはタオル。
ζ(゚ー゚*ζ(わ、可愛い)
/ ,' 3「ありがとう、ビロード」
(;><)「って、お、思いの外、結構な団体さんだったんです……!」
ビロード、と呼ばれたその子供は、思わぬ人数に困惑したらしかった。
荒巻にタオルを渡す。
- 316 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:56:57 ID:Yj2McwuAO
( ><)「タオル足りないですね、もっと持ってきます」
/ ,' 3「すまないね。
さあ、まずはお嬢さん方が使いなさい」
踵を返し、ビロードが戻る。
荒巻は、ツンとデレへタオルを寄越した。
溶けた雪を拭う2人の隣で、「あの子は」と内藤が荒巻へ訊ねる。
/ ,' 3「若菜ビロード。この家の子供でございます」
( ^ω^)「子供はビロードちゃんだけなんですかお?」
/ ,' 3「ええ。――今、奥様が妊娠されております故、じきに子も増えます」
(´・ω・`)「おや、それはおめでたい」
間もなくビロードが再び駆けてきた。
内藤が、ただでさえ緩んでいる顔をさらに緩ませる。
- 317 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/10(日) 23:59:10 ID:Yj2McwuAO
( ><)「タオル持ってきました! どうぞなんです」
( ^ν^)「ん」
(´・_ゝ・`)「ありがとう」
(*^ω^)「おっお、ありがとうだお。ビロードちゃんは何歳だお?」
( ><)「私ですか? 11歳なんです」
(*^ω^)「5年生?」
( ><)「です!」
(*^ω^)「高校生になったら是非お兄さんのところに来るといいお。
君は将来有望――」
「ロリコン」ξ゚听)ξ≡⊃))ω゚)「セイシッ!!」
:(;∩ω゚):「ロリコンて……ロリコンて!!」
荒巻が土間から上がりながら、何とも言えない目を内藤に向ける。
違いますと内藤が必死に弁解するのを尻目に、ビロードはデレの手を引いた。
( ><)「どうぞ入ってください」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、うん。お邪魔します」
靴とコートを脱ぎ、廊下へ上がり込む。
皆も、それに続いた。
- 318 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:03:07 ID:1nLn37lIO
荒巻が先頭に立って左の廊下を進んだ。
両側を挟むように並ぶ障子から明かりが漏れ、中廊下を照らす。
( ><)「皆さん、お祖父ちゃんのお客様なんですか?」
荒巻のすぐ後ろには、デレと一緒に歩くビロード。
ビロードはショボン達へ振り返りながら、そう訊ねた。
(´・ω・`)「まあね」
( ^ν^)「無理矢理つれてこr」
(´・ω・`)「あ、これ持って」
ニュッの言葉を遮り、ショボンは自分の鞄とコートを彼に押しつけた。
睨むニュッに構わず、デレや内藤、ツンの腕から防寒着を奪い取り、
今度はデミタスに渡す。
(;><)「何かしらの主張を強引に潰しませんでしたか、今」
(´・ω・`)「気のせい気のせい。おい、落とすなよ」
(;´・_ゝ・`)「一応さ、君より年上なんだけどな、僕……」
- 319 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:05:17 ID:1nLn37lIO
( ><)「お祖父ちゃんと何のお話をするんです?」
(´・ω・`)「そこは守秘義務の問題がだね」
( ><)「しゅひぎむ?」
わかんないんです、とビロードが呟く。
ショボンはグレーのスーツの襟を正しながら、内緒ってことさと適当に返した。
無関係の探偵から勝手に仕事を引き受けておいて、内緒も何もないだろうに。
荒巻が、一番奥、右側の障子を開く。
普通の座敷。誰もいない。
すぐ前にある襖に向かって、荒巻が正座をする。
/ ,' 3「大旦那様。遮木様がいらっしゃいました」
「入れ」と、しゃがれた声がした。
荒巻は、静かに襖を引いた。
脇へ寄り、デレ達へ頭を下げる。
ビロードに引っ張られ、まずはデレが室内に足を踏み入れた。
- 320 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:07:35 ID:1nLn37lIO
ζ(゚ー゚;ζ(おお和風……結構広い……)
座敷。床の間がある。
十数畳ほどの広さで、中央に文机が鎮座している。
(‘_L’)
J( 'ー`)し
文机の向こうに着物を着た老人、その隣に割烹着姿の女性が座っていた。
女性の方は、50代ほどだろうか。
(‘_L’)「……遮木殿?」
老人はデレを見るや、訝しげな顔をした。
デレは両手を振り、襖へ振り向く。
(´・ω・`)「遮木は私です。こちらは助手で」
ζ(゚ー゚;ζ「助手……ええと助手の長岡です」
入ってきたショボンの言葉を否定しようとしたが、睨まれたのでやめた。
考えてみれば、助手でも何でもない自分がここにやって来た理由を
若菜氏が納得出来るように説明するのはデレには無理だ。
内藤にツン、ニュッとデミタスも入室し、ショボンがそれぞれを紹介する。
- 321 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:09:51 ID:1nLn37lIO
(´・ω・`)「私が探偵の遮木、これとこれが助手の長岡とツン、
後は運転手と荷物持ちでございます」
これとこれ、と、デレとツンが指された。
運転手は内藤、残る荷物持ちはニュッとデミタスである。
(´・ω・`)「ええと……あなたが依頼者の若菜フィレンクト様?」
(‘_L’)「うむ」
(´・ω・`)「この度は、御依頼ありがとうございます。
荷物持ちその1。鞄を寄越したまえ」
( ^ν^)「……」
その1が無言で鞄を突きつける。
ショボンは、「愛想のない奴ですみませんね」と若菜フィレンクトに頭を下げながら
鞄を受け取った。
- 322 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:11:15 ID:1nLn37lIO
(´・ω・`)「早速ですが、ご報告よろしいでしょうか」
(‘_L’)「お願いしたい」
(´・ω・`)「はい。では、」
ζ(゚、゚;ζ「どわっ!?」
(;^ω^)「おぎゃっ!」
(´・ω・`)「君達は外で待ってなさい」
デレと内藤を隣室へ蹴り飛ばす。
ツンが内藤に駆け寄り、ニュッとデミタスは蹴られる前にと退散した。
(´・ω・`)「君もね」
(;><)「は、はいなんです」
ビロードには背を叩くことで促す。
荒巻に抱え起こされながら、デレは「差別だ」と文句を言った。
そんなデレの顔を引っ掴み、ショボンは耳元に口を寄せた。
彼女にしか聞こえないほどの声で、囁く。
(´・ω・`)「本を探して」
ζ(゚、゚;ζ「え?」
(´・ω・`)「そのために君達を連れてきたんだろうが」
- 323 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:13:23 ID:1nLn37lIO
離れる。
ショボンはフィレンクトのもとへ歩み寄っていった。
(´・ω・`)「すみません、お見苦しいところを……。
報告は2人きりの方が都合がよろしいかと思いまして」
(‘_L’)「うむ。――荒巻、そちらの方々を別室にお通しして」
/ ,' 3「かしこまりました」
(‘_L’)「お前は遮木殿に茶をお出ししろ。済み次第、彼らをもてなすように」
J( 'ー`)し「はい」
/ ,' 3「失礼いたします」
襖が荒巻の手によって閉められる。
荒巻は立ち上がり、デレ達へ振り返った。
/ ,' 3「こちらへ」
廊下に出る。
今度は、一番手前の部屋に通された。
- 324 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:15:40 ID:1nLn37lIO
至って普通の居間といった和室。
長方形のちゃぶ台を囲む座布団に、部屋の隅にはテレビ。
/ ,' 3「どうぞお座りください」
各々が適当に腰を下ろす。
ちゃぶ台の左側にニュッ、内藤、ツン。
右側にデミタスとデレ、そしてビロード。
ビロードがデレをじっと見つめる。
懐かれたのだろうか。思わずデレの頬が緩む。
( ><)「お姉さん、探偵さんの助手なんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ん? んん……うん」
( ><)「そっちの綺麗なお姉さんも?」
ξ゚听)ξ「ええ。お手伝いみたいなものだけれど」
(*><)「へええ……すごいんです!」
( ^ν^)「ツンは『綺麗なお姉さん』で、デレはただの『お姉さん』か……」
ζ(゚、゚;ζ「ちょっ……考えないようにしてたのに今!!」
テレビの横の茶箪笥から湯飲みや急須、茶筒を取り出しながら、荒巻が笑う。
ちゃぶ台の脇にあるポットを引き寄せた。
- 325 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:18:39 ID:1nLn37lIO
/ ,' 3「それにしても、お嬢さん方は高校生ぐらいではありませんか?
その歳でご立派に――」
言い終わるより前に障子が開く。
割烹着の女性が現れ、頭を下げた。
J( 'ー`)し「お待たせいたしました。今お茶の準備を……」
/ ,' 3「わしがやっとる。お前は菓子でも持ってきてくれんか」
J( 'ー`)し「あら。はい、分かりました。
――皆様、お夕飯は召し上がりました?
まだならば、何かお作りしますけど」
ξ゚听)ξ「来る途中に食べてきましたので、大丈夫です」
J( 'ー`)し「そうですか? ではお菓子を持ってきますね」
デレの後ろを通り、女性は部屋を出ていった。
障子が閉まる。
(´・_ゝ・`)「あちらの方は……」
/ ,' 3「私の妻にございます」
( ^ω^)「ほう、荒巻さんの」
- 326 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:21:08 ID:1nLn37lIO
/ ,' 3「大旦那様の奥様は数年前に亡くなられてしまいまして、
身の回りのお世話はすべて私共が」
( ^ν^)「……あの爺さん、片腕なかったよな」
ζ(゚、゚;ζ「えっ」
/ ,' 3「おや、お気付きで」
ニュッの呟きに、デレは目を丸くした。
フィレンクトは隻腕だという。気が付かなかった。
皆に茶を出しながら、荒巻が少し沈んだ声で話し始める。
/ ,' 3「これは私の母から聞いた話でございますが。
――大旦那様が12歳のときでありました。
山で木登りなどして遊んでおりましたらば、足を滑らせて落っこちてしまったそうで」
/ ,' 3「枝か何かで左腕に傷が出来たらしいのですが、
薬を塗り、包帯を巻く程度の処置で終わらせました。そのときは」
――しかし、フィレンクトは高熱を出して倒れてしまったという。
/ ,' 3「腕が痛い、腕が痛いと喚いたのですけれども。
当時、ただ1人の村医者が山を挟んだ隣の村に出掛けていたとかで、
診てもらうまでに時間がかかってしまいました」
- 327 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:23:33 ID:1nLn37lIO
/ ,' 3「ようやく医者を連れてきた頃には、大旦那様の腕は変色し、
痛みも、温度も、触れる感覚もなくなっていたといいます」
ξ゚听)ξ「……壊死してたの? 感染症の類かしら」
/ ,' 3「ええ、何か良からぬ菌が傷口から入り込んでしまったのでしょう。
幼い頃の大旦那様はお体が丈夫な方ではありませんでしたし」
(´・_ゝ・`)「で、切り落としたと」
/ ,' 3「はい。幸い、それ以降からは快方に向かったそうでございます」
デレがビロードの方を横目で見てみると、ビロードは痛そうな表情を浮かべていた。
かくいうデレも、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
何だか、ビロードに対してほんのりと親近感が沸いた。
( ^ν^)「……兄ちゃん、想像しなくていいんだぞ」
(;^ω^)「いやあ……ニュッ君、そう改めて言われてもね」
ζ(゚、゚*ζ「?」
内藤が額を押さえ、俯く。
大丈夫ですかと荒巻が問うと、ツンが片手を緩く振った。
ξ゚听)ξ「血とか苦手なの。この人。その上、想像力豊かで」
/ ,' 3「ああ、それはそれは。どうぞ今のお話は忘れてくだされ」
- 328 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:25:21 ID:1nLn37lIO
言いながら、荒巻は障子を見た。
妻がなかなか戻らないのを気にしているようだ。
腰を上げかける、と。
川*` ゥ´)「お待たー」
両手に盆を乗せた若い女性が、器用にも片足で障子を開け放した。
ビロードの脇にしゃがみ込み、盆の上からちゃぶ台へ皿を移動させる。
それぞれ、羊羹が二切れずつ。
川*` ゥ´)「お客様が来るのすっかり忘れててさあ、お菓子食べちゃって。
羊羹しか残ってなかったよ」
エプロンの上から腹を叩き、女性は笑った。
荒巻の頬が引き攣る。
- 329 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:29:13 ID:1nLn37lIO
/ ,' 3「お前な……」
川*` ゥ´)「はいよー」
(´・_ゝ・`)「あ、どうも」
/#,' 3「こら、ピャー子! さっきから失礼三昧――」
川;` ゥ´)「ぴゃっ! そ、そんな怒らなくていいじゃないか……荒巻さんの石頭」
/#,' 3「石頭だと!」
女性は、逃げるようにビロードの後ろへ回った。
ぼそりと呟いた悪態に荒巻がまた怒る。
その様子がおかしくて、デレは小さく笑った。
川;` ゥ´)「ほらっ、笑われてるよ荒巻さん! そんなに怒らないで。ねっ!」
/#,' 3「笑われてるのはお前じゃないのか?
――申し訳ありませんでした、皆様。
この馬鹿はお手伝いのヒールでございます」
ζ(゚、゚*ζ「……ヒールさん? ピャー子さんじゃなくて?」
/ ,' 3「『ピャー子』はあだ名です。
何か粗相をしたり叱られそうになったりすると、目にも留まらぬ速さで
ぴゃーっと逃げ出すものですから。……ご覧の通り、不躾な娘でございます」
( ^ω^)「いいえ、こちらも大層な客じゃありませんから、
これくらい軽い方が気楽ってもんですおー」
回復したらしい内藤が両手を振った。
でしょう、と頷くヒールを荒巻が睨む。
- 330 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:31:23 ID:1nLn37lIO
/ ,' 3「まったく。――おいピャー子、あいつはどうした?」
川*` ゥ´)「あいつ? あ、カーチャンさんなら台所のお掃除してるよ。
ちょっとお醤油零しちゃってさ」
/#,' 3「敬語」
川*` ゥ´)「お掃除してます!」
ζ(゚ー゚*ζ(かーちゃん?)
先程の、荒巻の妻だろうか。
と、いうことは。
ζ(゚ー゚*ζ「ヒールさんは荒巻さんの娘さんなんですか?」
川*` ゥ´)「は?」
/ ,' 3「む?」
ζ(゚ー゚*ζ「え? ……だって母ちゃんって」
きょとんとする2人とデレ。
ビロードが、羊羹を菓子楊枝で切り崩しながら答えた。
( ><)「あの人は、『カーチャン』ってお名前なんですよ。ややこしいでしょう」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、そういう……ごめんなさい、勘違いしちゃって」
- 331 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:34:56 ID:1nLn37lIO
( ><)「ヒールさんは、僕の叔母さん……お母さんの妹なんです」
川*` ゥ´)「『おばさん』って響き、ちょっと嫌だな……。まだ20代なのに」
ξ゚听)ξ「あら、お嫁さんの妹がお手伝いさんをやってるの?」
/ ,' 3「ええ、まあ。ちょっとした事情が」
事情って何ですか、という疑問がデレの口から零れそうになったが、
ニュッの咳ばらいに遮られた。
何でもかんでも首を突っ込むなと、視線で叱られた気がした。
会話が途切れる。
数秒の静寂の後、荒巻が口を開いた。
/ ,' 3「そういえば、まだ全員のお名前を聞いておりませんでしたな。
内藤さんに、長岡さん、ツンさんと――そちらの方々は何とおっしゃる?」
「そちらの方々」、ニュッとデミタス。
たしかに彼らはショボンからも自らも名乗っていなかった。
- 332 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:36:38 ID:1nLn37lIO
(´・_ゝ・`)「……いいの?」
( ^ω^)「……お。んん……」
デミタスが頬を掻き、内藤に何事か訊ねた。
内藤は一度小首を傾げ、低い声で唸りながら緩く頷く。
――この家に本があるのならば、ここで作家本人の名前を出してもいいのかどうか。
一応、デミタスは探偵の荷物持ちということになっているわけで。
(´・_ゝ・`)「……僕は盛岡です」
少し考え、デミタスは無難に苗字だけを告げた。
盛岡さん、と呟きながら荒巻がニュッへ目を向ける。
無視して茶を啜るニュッの頭を軽く叩き、内藤が代わりに紹介した。
( ^ω^)「こいつは内藤ニュッといいますお。僕の従兄弟でして」
/ ,' 3「内藤ニュッさん――」
ぴたり。
荒巻が、一瞬固まった。
- 333 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:38:19 ID:1nLn37lIO
/;,' 3「内藤ニュッ?」
( ><)「どうかしたんですか?」
/;,' 3「そ、そちらの内藤さん、失礼ですが下のお名前は」
( ^ω^)「ホライゾンですお」
/;,' 3「内藤ホライゾン……内藤ニュッ……」
荒巻の顔色が変わる。
姿勢を正し、彼は恐る恐る最後の質問をした。
/;,' 3「……内藤モナー氏の、お孫様でいらっしゃる……?」
内藤モナー。
その名が出た瞬間、ツンとデミタスの肩が揺れた。
( ^ω^)「――祖父をご存知で」
/;,' 3「大旦那様のご友人であらせられました。私めも何度かお会いしております。
やや、これは――どうも、気付きませんで……。申し訳ございませんでした」
慌てて荒巻が立ち上がる。
そして、駆け足気味に部屋を出ていった。
- 334 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:40:19 ID:YqkX6v32O
- きたのか、今日は徹夜だ
- 335 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:42:29 ID:1nLn37lIO
内藤は湯飲みを持ち、溜め息をつく。
( ^ω^)「……祖父ちゃんの知り合いかお。
なあんか、急にやりづらくなっちゃったおねー」
( ><)「やりづらいって、何をですか?」
( ^ω^)「いや、こっちの話」
川*` ゥ´)「内藤モナーっていうと、あの本好きの爺さん?」
ξ゚听)ξ「ええ、本好きの爺さん」
ヒールも知っていたようだ。
デレとビロードだけが、彼を知らない。
ζ(゚、゚*ζ(……ないとう、もなー)
内藤の祖父の名を、デレは胸中で反芻した。
ニュッのために作家達を連れてきたという祖父。
何故だか、胸がざわついた。
*****
- 336 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:47:29 ID:1nLn37lIO
(‘_L’)「内藤さんにはお世話になっていたものだ。
……葬式に顔を出せず、申し訳なかった」
( ^ω^)「いえ。急なことでしたから」
――デレ達は、初めに通された座敷へと戻っていた。
荒巻から内藤のことを聞いたフィレンクトが、話をしたいと言い出したのだ。
部屋の真ん中に置かれた食卓。
それを、実に10人もの男女が囲んでいる。
客人であるデレ達6人に、フィレンクト、ビロード。
そして。
( <●><●>)「父の代わりに、私と妻がお葬式へ出たのです。
あなた方とも一度お話しをしましたよ。大きくなりましたね、ニュッさん」
ノパ听)「7年前か。あのとき中学生だったっけ、ニュッ君は」
ビロードの父、若菜ワカッテマスと、その妻でありヒールの姉、若菜ヒート。
ワカッテマスは多分40代半ば。ヒートは、夫より幾分か若く見えた。
ヒートの腹が膨らんでいる。妊娠半年だそうだ。
夫妻はニュッに優しげな笑みを向けた。
対するニュッは、ぴんときていない様子。
- 337 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:49:37 ID:1nLn37lIO
( ^ν^)「……」
( ^ω^)「ええと、すみませんお。
当時はニュッ君も僕も、突然のことに困惑しておりまして。
葬式での記憶があまり――」
( ^ν^)「……いや、でもたしかにあのギョロ目には見覚えが……」
( ^ω^)「おっとっとニュッ君ふざけんなおー?」
若菜ワカッテマスに失礼をぶちかますニュッの腕を内藤が抓る。
ようやく口を開いたかと思えば、この男は。
だが、幸い、ギョロ目――ワカッテマスには聞こえていなかったようだ。
( <●><●>)「雨が降ってましたね、お葬式のときは」
ξ゚听)ξ「そういえばそうですね」
(´・_ゝ・`)「だなあ」
(‘_L’)「2人も内藤さんとご縁が」
ξ゚听)ξ「ええ、一応」
- 338 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:54:03 ID:1nLn37lIO
( ><)「私は知らないんです……」
( <●><●>)「内藤さんが亡くなられたとき、ビロードはまだ4歳でしたからね」
(‘_L’)「ああ、そうだ、ホライゾン君――」
さて。
内藤達からほんの少し距離を置いて、並んで座る男と少女。
ショボンとデレ。
(´・ω・`)「寂しそうだねデレちゃん」
ζ(゚、゚;ζ「……だって話に加われないんですもん……」
(´・ω・`)「可哀相に。所詮付き合いの浅い他人だもんね」
ζ(゚、゚;ζ「なっ、何ですか、何ですかその言い方。ねちっこい……」
ショボンから目を逸らし、デレはフィレンクトへ視線をやった。
たしかに着物の左袖がぴくりとも動かない。
心なしか、ぺったりとへこんでいるような気もする。
あまりじろじろ観察しては失礼かと、湯飲みに目を落とした。
- 339 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 00:55:06 ID:1nLn37lIO
- 10分ぐらい空けます
- 340 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:04:34 ID:1nLn37lIO
腕時計を指でなぞり、ショボンが舌打ちする。
8時過ぎ。
(´・ω・`)「あーあ。報告まだ終わってないんだけどなあ。
しかも君達、本も探せてないでしょ」
ζ(゚、゚;ζ「……ですね」
(´・ω・`)「これじゃ探しようもないし……」
胡座をかいている膝を叩き、ショボンは眉根を寄せた。
それからデレに顔を向け、ウインクを一つ。
ζ(゚、゚;ζ「?」
その意図を掴めていないデレを他所に、彼は手を挙げた。
ビロードちゃん、と名前を呼ぶ。
呼ばれたビロードは立ち上がり、ショボンのもとへ駆け寄った。
( ><)「はい?」
(´・ω・`)「このお姉さんがトイレに行きたいらしいんだ。
トイレどこかな?」
ζ(゚、゚;ζ「えっ」
- 341 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:06:59 ID:1nLn37lIO
( ><)「そっちの方から出て、廊下を……」
(´・ω・`)「ああ、説明を聞いてる暇はない。
あと10秒ぐらいで漏らすらしいから連れていってあげて」
(;><)「漏らすんですか!?」
ζ(゚、゚;ζ「漏らしませんよ!!」
(;><)「お姉さん早く! こっちです!
10秒じゃ間に合わないけど、せめて人目のないところで……!」
ζ(゚、゚;ζ「だから漏らさないってば!!」
ビロードがデレの腕を引っ張る。
座敷を出ながらデレが振り返ると、ショボンが再びウインクをかましてきた。
何となく、見当がついた。
この隙に本を探せということだろう。
.
- 342 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:11:11 ID:1nLn37lIO
デレとビロードが出ていった後。
ヒートは、内藤に質問をぶつけてきた。
ノパ听)「お祖父さんの遺産のことで色々揉めたって聞いたけど、どうなった?」
( <●><●>)「こら、ヒート。そんなことを訊くものではありません」
ノハ;゚听)「え……あっ、ごめん。気になっちゃって」
ワカッテマスに窘められ、縮こまる。
まあ、第三者からすれば興味をそそられる話題かもしれない。
( ^ω^)「遺書のおかげで、まあ、かなり助かりましたお」
ノパ听)「へええ……。内藤さんのところは資産家だったし、
相続の話し合いはさぞかし大変だろうなってピャー子とよく話してたんだ」
( <●><●>)「ヒート」
ノハ;゚听)「ごっ、ごめんなさい……睨むなよ、恐いから……」
パパは厳しいな、と、ヒートが腹を撫でながら語りかける。
ワカッテマスは呆れたんだか怒っているんだか、
形容しづらい表情を浮かべてヒートの額を小突いた。
息子夫婦のやり取りに、フィレンクトが苦笑する。
- 343 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:15:54 ID:1nLn37lIO
( ^ω^)「仲の良さそうなことで」
(‘_L’)「ああ。――ホライゾン君は、どうなんだ」
( ^ω^)「え」
(‘_L’)「結婚。まだしていないんだろう。そういう予定のある相手はいないのか」
(;^ω^)「……ええっとですね」
内藤は答えあぐね、空笑いで誤魔化した。
ツンの視線が、とても痛い。
*****
- 344 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:19:33 ID:1nLn37lIO
ビロードと共に廊下を歩く。
廊下というより縁側か。
ガラス戸越しに外へ視線をやると、夜の闇の中、暴れ回る白が見えた。
ζ(゚、゚*ζ「すごい雪……」
( ><)「天気予報で夜中は吹雪になるって聞きましたが、
予報よりちょっと早いですね」
ζ(゚、゚;ζ(……これ、帰れるかなあ)
雪は、この屋敷を訪れたときよりも激しさを増していた。
がたがた、ガラス戸が揺れる。
帰宅する頃には収まってくれてるといいのだが。
不安げに溜め息をつき、それから、デレは己に与えられた任務を思い出した。
ζ(゚ー゚*ζ「……ねえ、ビロードちゃん」
( ><)「はい?」
ζ(゚ー゚*ζ「えっと――デミタスさんっていう小説家さん知ってる? 盛岡デミタス」
さりげなく探る、という思考も技術も、この阿呆は残念ながら持ち合わせていない。
- 345 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:21:12 ID:1nLn37lIO
( ><)「盛岡デミタス?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
( ><)「んんー、わかんないんです……。ごめんなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、いやいや、分からないならいいんだけど。
じゃあさ、んっとね……」
記憶を辿る。
デミタスの本の色は、赤。
ζ(゚ー゚*ζ「真っ赤な本、見たことない?」
( ><)「真っ赤……あ、お父さんの部屋に」
ζ(゚ー゚*ζ「ある!?」
( ><)「分厚くて、いっぱい英語が書いてある辞書なら」
ζ(゚ー゚;ζ「……英和辞書だね、それは。私がこの世で一番嫌いな本だよ」
( ><)「奇遇ですね、私もあれ見てると頭痛くなるんです」
ビロードに訊いても仕方がないらしい。
話している内に、トイレに到着した。
右側に顔を向けると、遠目に玄関が見える。
- 346 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:23:58 ID:1nLn37lIO
( ><)「私、待ってましょうか」
ζ(゚ー゚*ζ「……一応」
( ><)「わかりました!」
木製の引き戸を開ける。
汲み取り式便所などを想像していたが、洋式の水洗だった。
別に催してはいないので、そのまま便器に腰掛け、少し間をあけてから水を流す。
さも用を足しましたよと言わんばかりに「すっきりー」とか何とか呟きながら
デレはトイレを出た。
ζ(゚ー゚*ζ(……何やってんだろう私……)
( ><)「洗面所はこっちなんです」
すぐ隣の戸の前でビロードが手招きする。
洗面所で手を洗い、デレはハンカチで水気を拭った。
脱衣所も兼ねているのだろう。浴室に通じている(と思われる)ドアがある。
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうね、ビロードちゃん」
(*><)「どういたしましてー」
- 347 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:27:06 ID:1nLn37lIO
礼を告げると、えへへ、とビロードが笑った。
可愛らしい仕草にデレの顔も綻びかけたが、笑顔にはなりきれなかった。
何の収穫もなしに戻ったら、ショボンにどんな文句を言われるか。
かといって、ビロードからは本の情報は引き出せそうにない。
はてさて、困った――
ζ(゚ー゚;ζ「……?」
デレは、玄関とは反対の方向へ目をやった。
ビロードも同じ動作をとる。
何か、声――怒鳴り声のようなものがする。
ζ(゚、゚;ζ「だ、誰かな……」
(;><)「……!」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、ビロードちゃん!」
ビロードが駆け出した。
デレは逡巡し、後を追う。
- 348 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:29:20 ID:1nLn37lIO
長い廊下の先は、曲がり角になっていた。
右へ曲がる。
そこに、部屋が一室だけあった。
開かれた障子。廊下に散乱する盆と食器。
ヒールが尻餅をついている。
川;` ゥ´)「いったたた……」
ミ#,゚Д゚彡「いつもいつも……てめえなんか呼んでねえんだよ!!」
(;><)「ヒールさん!」
川;` ゥ´)「ぴゃっ!? び、ビロード――」
ヒールの前に、男がいた。
怒号をあげながら食器やヒールを蹴飛ばしていたが、
駆け寄ってきたビロードを見るなり、男は憤怒の形相を和らげた。
何だか――いやらしい笑みだ。
子供に向けるべきそれではない。
- 349 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:30:38 ID:1nLn37lIO
ミ,,゚Д゚彡「ああ、ビロード……何で来てくれなかったんだよ。
俺はお前に会いたかったのに……」
(;><)「ひ、ヒールさんに酷いことしないでください!」
ミ,,゚Д゚彡「ごめんなあ、お前が来てくれないから苛々しちまってさあ……」
ビロードの頭を撫でようとした男の手を、ヒールが叩いた。
茶碗を投げつける。
川#` ゥ´)「ビロードに触んな!」
ミ#,゚Д゚彡「ああ!? 何しやがる、このブスが!!」
――乾いた音が響いた。
男が、ヒールの頬を打った音。
何も出来ずに眺めていたデレは、びくりと身を竦ませた。
ζ(゚、゚;ζ「っ、」
ミ,,゚Д゚彡「……んああ?」
興奮覚めやらぬ様子で息を荒げ、男がデレを見る。
そこで、男とヒールはようやくデレの存在に気付いたようだった。
- 350 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:33:12 ID:1nLn37lIO
ミ,,゚Д゚彡「誰だ、お前」
川;` ゥ´)「……大旦那様のお客さんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「ふうん……」
じろじろ、頭のてっぺんから爪先まで眺め回し、男は再び笑った。
近付いてくる。
後ずさろうとしたデレの肩が、掴まれた。
ζ(゚、゚;ζ「ひゃっ」
ミ,,゚Д゚彡「中学生か? 高校生か? 最近のガキはあちこち発育いいよなあ……」
川#` ゥ´)「いい加減にしろ!!」
立ち上がったヒールが、男の襟元を思いきり引っ張った。
男が舌打ちし、ヒールに唾を吐きかける。
川;` ゥ´)「っう……!」
ミ#,゚Д゚彡「いい加減にすんのはお前の方じゃねえのか? ああ!?」
(;><)「やめてください! ふ、フサさん、お部屋に戻ってください!!」
ヒールに右手を振り上げる男。
その手が下ろされる前に、ビロードが男にしがみつき、叫んだ。
- 351 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:34:33 ID:1nLn37lIO
ミ,,゚Д゚彡「……びっくりさせたか? ごめんな」
男がビロードを撫でる。
ビロードは苦々しい顔をして、俯いた。
ねっとりと纏わりつくような不快な空気が辺りを漂っている、ような、気がする。
デレは無意識に唇を噛み締めていた。
嫌だ。
この男は――何だか、嫌だ。
ミ,,゚Д゚彡「ビロードが言うなら、戻るよ。
……明日こそはちゃんと来てくれよ?」
(;><)「……」
男が部屋の中へ入り、障子を閉めた。
しばしの沈黙の後、ヒールが食器を拾い集めた。
無言のままデレも手伝う。
盆に全て乗せ終えると、3人は部屋を離れた。
廊下を進む。
- 352 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:35:37 ID:1nLn37lIO
ζ(゚、゚;ζ「……あの人は……」
川*` ゥ´)「居候だよ」
ヒールが忌ま忌ましげに答えた。
男に叩かれた頬が、赤くなっている。
( ><)「一応……私の親戚なんです」
川*` ゥ´)「若菜の本家の人間だけど。ただのクズだ」
ζ(゚、゚;ζ「ほんけさん」
川*` ゥ´)「ごめんよ、あんなもん見せて。さっさと忘れちゃって」
ζ(゚、゚;ζ「……」
そう簡単に忘れられはしない。
困り果てたデレの手を引いて、ビロードは座敷へ戻るために廊下を曲がり、
ヒールと別れた。
*****
- 353 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:36:19 ID:1nLn37lIO
(´・ω・`)「役に立たねえくるくるぱーだな本当に」
ζ(;、;*ζ「えう、ご、ごめんなさい……」
座敷。
里芋の煮っころがしを食べながら、ショボンはデレの耳を引っ張った。
食卓の上には皿が並んでいる。
刺身やら漬物やら煮物やら。
何でも、ニュッが「小腹がすいた」と独り言を漏らしたのをきっかけに、
フィレンクトがカーチャンと荒巻に用意させたのだそうだ。
J( 'ー`)し「余り物でごめんなさいね。ご飯は全部食べてしまったから、
おかずだけなんですけど……」
(;^ω^)「いえいえ! こちらこそ、もう……この馬鹿が図々しい真似を!」
ニュッの膝を叩き、内藤はぺこぺこ頭を下げた。
当のニュッはどこ吹く風、刺身ばかりを口に運んでいる。
- 354 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:37:53 ID:1nLn37lIO
(´・_ゝ・`)「いただきますね」
/ ,' 3「ええ。こんなもので良ければ、お好きなだけ」
(*><)「これ美味しいんですよ!」
ξ゚听)ξ「あら本当。美味しいお漬物ね」
ノハ*゚听)「私が漬けたやつだ」
舌鼓を打っているツン達を見ている内、デレの胃も刺激され始めた。
荒巻が準備してくれた小皿と割り箸を取ろうとする――が。
ζ(゚、゚;ζ「痛いっ!」
(´・ω・`)「働かざる者食うべからず、という言葉があってだね」
その手を、箸で突かれた。
ζ(゚、゚;ζ「わ、私なりに頑張りましたよ!? 働きましたよ!」
(´・ω・`)「世の中結果が全てなんだよ。
お前な、ガキとお話ししてトイレ行っただけじゃねえか。あ?」
ζ(゚、゚;ζ「それ言ったらニュッさんなんかどうなるんですか!?
デミタスさんやツンちゃんだって何も……」
(´・ω・`)「反論は一切許しません」
- 355 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:38:50 ID:YqkX6v32O
- くるくるぱーとか久々に聞いたwww
- 356 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:43:55 ID:1nLn37lIO
これ見よがしに昆布巻を咀嚼し、ショボンは「ああ美味しい」としみじみ呟いた。
本当に美味しそうな表情を浮かべるものだから、デレは羨望の眼差しを向ける。
そんなデレにショボンが差し出したのは、グラス。
透明な液体が入っている。
ζ(゚、゚;ζ「?」
(´・ω・`)「食べ物はあげないけれど、お酒はあげよう。ほれほれ」
ゆらゆら、ショボンがグラスを揺らす。
以前、彼の事務所で仕掛けられた悪戯と同じだ。
ζ(゚、゚*ζ「そんなこと言って、ただの水なんでしょう。どうせ」
(´・ω・`)「今度こそお酒だよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ふんっ、もう騙されませんからね」
ショボンを冷めた目で眺め、デレはグラスを奪った。
得意げに笑い、一気に半分ほど飲み干す。
やっぱりただの水――
ζ( 、 ;ζ「ってお酒だった!!」
普通に酒だった。
綺麗に噴き出し、げほげほ咳き込む。
背中を撫でてやりながらショボンは哀れむような顔をした。
(´・ω・`)「どうだいデレちゃん、こてこてでべたべたなコントを繰り広げた割に
僕以外の誰も見てくれていなかった気分は」
ζ(;、;*ζ「追い討ちかけないでえ!!」
本当に誰も見てくれなかった。
皆、食事や内藤モナー氏の話で盛り上がっている。
- 357 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:45:34 ID:1nLn37lIO
半泣きで突っ伏すデレを尻目に、ショボンがグラスに日本酒を注いだ。
ζ(;、;*ζ「ていうか何でお酒があるんですか……」
(´・ω・`)「こっそり持ってきてもらった」
ζ(;、;*ζ「舌がひりひりするう……」
(´・ω・`)「結構強いお酒だしね」
ζ(;、;*ζ「ううう」
ζ(;、;*ζ「う?」
――酒?
脳の奥から危険信号が飛んでくる。
酒。ショボン。この組み合わせは何か危ないような気が。
アルコールの匂いにぐらつく頭で、必死に考える。
たしかクリスマス。
ニュッとの「デート」を終えて図書館を訪れたデレを出迎えた、凄惨な光景。
ひっくり返ったテーブルや椅子。隅に固まって震えるモララーとハロー、でぃ。
頭からケーキを被った貞子に、ロープで縛り上げられて恍惚としていたしぃ。
顔を腫れ上がらせて気絶する内藤、隣で黙々と紅茶を飲むツン。
その真ん中。
クックルに羽交い締めにされながら眠っていた半裸のショボン。
( ^ν^)『……酒飲みやがったな』
ニュッが、そんなことを呟いていた。
- 358 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:48:14 ID:1nLn37lIO
ζ(;、;*ζ(……お酒……)
気絶から目覚めた内藤から聞いたことには。
ショボンときたら、酒に大変弱い上に、酒乱なのだとか――
ζ(゚、゚;ζ「――ああっ!?」
デレは顔を上げ、ショボンの手を止めようとした。
だが、とき既に遅し。
(´・ω・`)「っぶはぁああ……」
ショボンは空になったグラスを放り、口を袖で拭った。
ζ(゚、゚;ζ「あっ、ああっ、あああ……」
(´・ω・`)「……あんまり上等な酒じゃねえなあ……」
文句を垂れ流しながら、日本酒の瓶を持ち上げた。
そして。
(´・ω・`) ゴッキュゴッキュゴッキュ
豪快に、ラッパ飲みなんぞをおっ始めた。
- 359 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:49:31 ID:1nLn37lIO
ζ(゚、゚;ζ「しょっ、ショボンさん駄目……むぎゃっ!!」
止めようとしたデレを突き飛ばし、ショボンは喉を鳴らして酒を胃に送り続けた。
瓶の中身が減っていく。デレの血の気が引いていく。
慌てて振り返ると、全員がショボンとデレを見つめていた。
内藤が、口を開く。
( ^ω^)「……デレちゃん……」
ζ(゚、゚;ζ「はい……」
( ^ω^)「何だか、僕にはショボンの手にあるものが――お酒に見えるんだけど」
ζ(゚、゚;ζ「……お酒です……」
(;´・_ゝ・`)「酒!?」
/;,' 3「遮木さんに頼まれて持ってきたのですが、何かまずいことを……?」
ξ゚听)ξ「非常にまずいわ」
(‘_L’)「いい飲みっぷりだが……」
(;<●><●>)「ちょっと……中毒起こしませんか、あれ。大丈夫なんですか」
全てを飲み終え、ショボンは瓶を勢いよく畳に置いた。
どん、という音を最後に、室内が静まり返る。
- 360 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:53:05 ID:1nLn37lIO
(´ ω `)
(´ ω `)「……あ゙ー。ああ」
ゆらり。
ショボンが、立ち上がった。
俯いたまま肩を揺らしている。
笑っている。
それから、ゆっくり、顔を上げた。
(*´゚ω゚`)「お前ら順番にしゃぶれよ……」
――その後の惨劇を、デレは知らない。
本能の赴くまま、幼いビロードと妊婦のヒートを連れて部屋を飛び出したからである。
ζ( 、 ;ζ「私は悪くない私は悪くないお酒飲むの止めなかったけど私は悪くない」
(;><)「お姉さんが何か罪の責任から逃れようとしてるんです……」
ノハ;゚听)「なっ、何が起きてるんだ……!?」
縁側。
頭を抱えて蹲るデレの耳に、後方から騒音が飛び込んでくる。
文字にするのも躊躇われるようなショボンの言葉やら、
必死で止める内藤達の声やら、食器が落ちる音やら。
騒ぎを聞きつけたか、ヒールの声もする。
ヒートは気が気でないようで、頻りに後ろを振り返った。
- 361 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:54:34 ID:1nLn37lIO
ζ( 、 ;ζ「……や、やっぱり私が悪いのかな……」
( ^ν^)「どうせお前ごときが止めたところでショボンは聞かねえよ」
ζ( 、 ;ζ「たしかに……」
ζ(゚、゚;ζ「……って、うぎゃあああっ!! ニュッさん!?」
いつの間に避難してきたのか、ニュッが隣に座っていた。
ちゃっかり刺身の皿まで持って。
(;><)「か、体細いくせに食い意地張ってるんです……」
( ^ν^)「あ? わさび食うか?」
(;><)「ひいっ! ご、ごめんなさい!
山盛りのわさびをこっちに向けないでください!」
ノハ;゚听)「大丈夫なのか? あっち」
( ^ν^)「あんだけ飲んだなら、ちょっと暴れればすぐ寝る」
ζ(゚、゚;ζ「すぐって――」
直後。
喧騒が、掻き消えた。
( ^ν^)「ほら、寝た」
ζ(゚、゚;ζ「……はあ」
*****
- 362 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:55:42 ID:1nLn37lIO
で。
ζ(゚、゚;ζ「……何で、こうなったんだろう」
ξ゚听)ξ「何ででしょうね」
洗面所、兼脱衣所。
バスタオルと寝間着の浴衣を抱え、2人は顔を見合わせた。
――酔い潰れたショボンが眠った後。
土下座する内藤に、フィレンクトは「気にするな」と首を振った。
(;^ω^)『もう今すぐ帰りますから!』
(‘_L’)『いや、しかし、調査の報告や報酬の相談がまだ終わっていないし……』
(;^ω^)『うぐ』
そこへ、荒巻がある提案をする。
- 363 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 01:59:41 ID:1nLn37lIO
/ ,' 3『何なら、泊まっていかれてはどうです』
(;^ω^)『とっ、泊まる?』
(´・_ゝ・`)『この上、さらに迷惑をかけてしまうのはどうかと』
/ ,' 3『外も、雪が酷くなっています。
明日になれば天気も落ち着くでしょうし、それまで休まれてはいかがでしょう――』
正直、今から帰るとなると、図書館に着く頃には日が変わる。
吹雪いている中を運転するのも大変そうだし。
デミタスの本だって、未だ見付けられていない。
――内藤は、厚意に甘えることにした。
そうして現在。
デレとツンが、2人で風呂に入る事態と相成ったわけである。
ξ゚听)ξ「早く入りましょう。不快だわ」
ζ(゚、゚;ζ「う、うん……そうだね……」
手早く服を脱いでいくツン。
彼女は、ショボンのせいで煮汁まみれになっていた。
美味しそうな匂いがする。
自分だけ小綺麗なのが申し訳なくて、デレは縮こまりながら服を脱いだ。
胸元に集中するツンの眼差しが恐い。
- 364 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:00:34 ID:1nLn37lIO
全て脱ぎ終え、2人は浴室へ入った。
湯舟にはお湯を張ってもらっている。
ξ゚听)ξ「案外狭いのね」
ζ(゚ー゚;ζ「こらこら、そういうこと言わないの……」
ξ゚听)ξ「ねえ、先にシャワー使っていい?」
言いながらデレを見たツンは、デレの足に視線を止めた。
一瞬、瞠目したような気がする。
ζ(゚、゚*ζ(あら珍しい)
ξ゚听)ξ「何それ」
ζ(゚、゚*ζ「え?」
ξ゚听)ξ「それ」
自分の足を見下ろし、デレは首を捻った。
何、と言われても。
ζ(゚ー゚*ζ「傷跡?」
ξ゚听)ξ「大した跡にならないって聞いてたけれど」
いつぞや、小石で裂けて出来た傷。
膝から臑にかけてぱっくり開いていたそれは、今ではすっかり塞がっている。
残っているのは、跡だけだ。
- 365 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:04:30 ID:1nLn37lIO
ζ(゚ー゚*ζ「うん。だって、靴下とかで充分隠れるレベルでしょ?」
――例えるなら、皮の下に、大きなミミズが這っているような。
そんな跡。
ぷくりと腫れ上がる線条。
そこだけ、皮膚の色が違う。
ξ゚听)ξ「……何て言うか、すごく、――目立つじゃない」
ζ(゚ー゚*ζ「お医者さんは、時間経ったらもう少しマシになると思うって言ってたよ」
ξ゚听)ξ「でも、これじゃあ……。……転んだだけだったんでしょ? 何で、こんな……」
ζ(^ー^*ζ「あははー。怪我した後、何の処置もしないまま走った上に
ちょっと汚いところに座り込んでたからね。悪化してたみたい」
ξ゚听)ξ「……笑い事じゃないわよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッさんは何も言ってなかったの?
一緒に診察室でお医者さんの話聞いてくれてたんだけど」
そういえば、傷跡を見せるのはツンが初めてだ。
デレはしゃがみ込み、足を腕で隠した。
- 366 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:05:14 ID:1nLn37lIO
ζ(゚、゚*ζ「気持ち悪いかな? ごめんね、変なの見せて。
……んー、やっぱり、夏になったら水泳の授業休もうかなあ」
ツンを見上げ、ぎょっとする。
何やら、妙な表情をしていた。
怒りとも嫌悪ともつかぬ顔。
ζ(゚、゚;ζ「つ、ツンちゃん? そんなに嫌だった? これ」
ξ゚听)ξ「違う」
ζ(゚、゚;ζ「?」
ξ゚听)ξ「違うの。違う。……ごめんなさい。ごめんなさい、デレ……」
背を向けられる。
彼女が何を謝っているのか――デレには、さっぱりだった。
*****
- 367 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:08:38 ID:1nLn37lIO
川*` ゥ´)「ここでいいかい?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい、ありがとうございます!」
ξ゚听)ξ「どうもありがとう」
風呂から上がった2人は、板の間の隣の部屋へ案内された。
布団が2組敷かれている。
川*` ゥ´)「隣はビロードの部屋だから、何かあったらビロードに言って。
そっちは縁側。
あと、こっから廊下挟んで左斜め……ビロードの向かいの部屋に男共寝かせるよ」
ζ(゚ー゚;ζ「そのようですね……ショボンさんのいびきが聞こえてきます……」
川*` ゥ´)「そんじゃ、ごゆっくりー。
あんたらの服は乾燥機にかけてるから、それが済んだら持ってくるよ」
ヒールはひらひら手を振って部屋を出ていった。
布団の上にデレが転がり、ツンはストーブの前に座る。
ツンが、浴衣の裾を指でつまんだ。
ξ゚听)ξ「さすがに、これだけじゃ寒いわね」
ζ(゚ー゚*ζ「そう?
浴衣だと何か温泉旅館って感じがするね。……あ、布団ふかふか」
- 368 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:10:14 ID:1nLn37lIO
壁にかかる時計を見る。
もう10時前だ。
そのとき、とんとん、襖が叩かれた。
隣。ビロードの部屋から。
ζ(゚ー゚*ζ「はあい」
開けていいですか、とビロードの声がする。
どうぞと返すと、可愛らしいパジャマを着たビロードが、
おずおずと襖を開けた。
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」
( ><)「私、もう寝ますけど……用があったら、気にせず起こしてくださいね」
ζ(゚ー゚*ζ「起こさない起こさない、ゆっくり寝てて。
おやすみなさい、ビロードちゃん」
ξ゚听)ξ「おやすみなさい」
(*><)「おやすみなさいなんです」
ぺこりと頭を下げ、ビロードが自室へ引っ込む。
デレは、無性に妹が欲しくなった。
*****
- 369 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:11:41 ID:1nLn37lIO
( ^ω^)「――ご存知なんですかお」
ノパ听)「内藤さんの親類から譲り受けたものの中に、一冊あった筈だけど。
なっ?」
( <●><●>)「……ええ」
内藤とデミタスは、若菜夫妻の部屋にお邪魔していた。
本について訊ねてみれば、たしかにデミタスの本を持っているという。
(´・_ゝ・`)「『譲り受けたものの中に』ということは、他にも?」
ノパ听)「えっと、何だっけ。山村とか、ハロー? とか」
(*^ω^)「おお……! よろしければ、見せてもらえませんかお!?」
ノパ听)「勿論。ワカ、どこだっけ?」
( <●><●>)「ここに」
本棚から6冊ほどの本を取り出し、ワカッテマスは内藤の前に置いた。
貞子、クックル、ハロー、モララー、椎出姉妹の本が一冊ずつ。
――デミタスのものは、ない。
( ^ω^)「……盛岡デミタスは?」
( <●><●>)「……どうしてだか、この間から見当たらないんですよ」
(´・_ゝ・`)「見当たらない?」
( <●><●>)「不思議なことに」
内藤は、デミタスと視線を交わした。
――本が移動したのだろうか?
- 370 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:13:56 ID:1nLn37lIO
( ^ν^)「全部、生きてる本じゃねえ」
ニュッは本を布団の上に置くと、そう言った。
内藤が若菜夫妻に頼み込んだところ、あっさり本を返してもらえた。
早速ニュッのもとに行き、本を見せてみる。
その結果が、先の答えである。
どれも、命は宿っていないらしい。
( ^ω^)「残るデミタスの本が生きてるかどうか……」
内藤、デミタス、ニュッの3人は顔を突き合わせ、小声で話し合っていた。
隣室とは襖一枚隔てた距離しかない。聞かれてはまずい話だ、自然とこうなる。
( ^ν^)「タイトルは聞いたか?」
( ^ω^)「覚えてないらしいお。
昔一度読んだっきり、ずっと放っておいてたとか」
( ^ν^)「あらすじは」
( ^ω^)「それもあんまり。冬で、館が舞台だったそうだけど」
( ^ν^)「んなもん、該当する話が多すぎる」
(´・_ゝ・`)「だよね」
- 371 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:14:41 ID:1nLn37lIO
(;^ω^)「う。……でも、ほら。勝手に移動したとするなら、
やっぱり生きてるのかもしれないお」
(´・_ゝ・`)「僕の本はあんまり動きたがらないんだけどなあ」
( ^ν^)「作者も本も引きこもり体質だからな」
俯き、ニュッが考え込む。
生きている本。
絶対とは言い切れないが、ひとりでに移動したわけではないのなら。
( ^ν^)「……隠してんのか?」
( ^ω^)「ワカッテマスさんが?」
( ^ν^)「分かんねえけど」
(´・_ゝ・`)「隠すって、何で――」
( ^ν^)「それも分かんねえ」
(;^ω^)「……ううん……」
- 372 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:16:10 ID:1nLn37lIO
(´・_ゝ・`)「あ、ところで館長」
(;^ω^)「お?」
(´・_ゝ・`)「家に電話しなくていいの」
(;^ω^)「……ああっ!!」
図書館に連絡するのを忘れていた。
きっと心配しているだろう。
携帯電話を開く。
(;^ω^)「うげ」
(´・_ゝ・`)「どうした?」
(;^ω^)「圏外だお……ニュッ君の携帯は?」
( ^ν^)「……俺のも」
部屋の中を歩き回ってみたが、アンテナは一本も立たなかった。
すやすやと寝入っているショボンのスーツに手を突っ込み、携帯電話を引っ張り出す。
と、同時。
「触んじゃねえよカスが!!」(´゚ω゚`)≡⊃))ω゚)「ヤツハカムラッ!!」
物凄い勢いでぶん殴られた。
- 373 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:18:11 ID:1nLn37lIO
(;#)ω^)「いっ、いきなり起きんなおショボン!」
(*´-ω-`) スヤスヤ
(;#)ω^)「えっ嘘! 寝相!? 寝相だったの今!? 目開いてなかった!?」
なんて面倒臭い酔っ払いだ。
ショボンの脇腹を蹴飛ばし、内藤は抜き取った携帯電話を見た。
こちらも圏外。
(´・_ゝ・`)「駄目?」
(∩^ω^)「駄目だお……ああやだ頬っぺた痛い……」
内藤は浴衣の襟を直すと、コートの内ポケットから小瓶――香水を取り出した。
手首に一吹き。バニラのような、甘ったるい匂いが漂う。
(´・_ゝ・`)「すぐ寝るんだから、つけなくてもいいじゃないか」
( ^ω^)「何か、つけてないと不安で」
(´・_ゝ・`)「その匂い嗅ぐとケーキとか食べたくなるんだよな……」
( ^ω^)「おっおっお、たしかに。
――ちょっと、電話借りてくるおー」
( ^ν^)「ん」
- 374 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:20:25 ID:TdpJ23ocO
- C
- 375 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:23:12 ID:1nLn37lIO
障子を開けた内藤は、デレ達の部屋から出てくるヒールを見付けた。
声をかける。
( ^ω^)「ヒールさん」
川*` ゥ´)「んー?」
( ^ω^)「電話貸していただけませんかお? 携帯、電波入らなくて」
川*` ゥ´)「ああ、はいはい。おいで」
板の間の片隅に、固定電話が設置されていた。
ダイヤル式だ。物珍しい心持ちで数字盤を回す。
図書館の番号へかけるとクックルが出た。
事情を簡単に説明し、一泊する旨を告げる。
ついでに二言三言交わし、受話器を置いた。
- 376 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:25:08 ID:1nLn37lIO
( ^ω^)「ヒールさん、ありがとうございまし……。……何か?」
ヒールに礼をしかけ、怪訝な顔をする。
無遠慮に匂いを嗅がれまくっていた。
川*´ ゥ`)「甘い香りがする。いい匂いだ」
( ^ω^)「ああ、そりゃあどうも。香水ですお」
川*´ ゥ`)「ケーキ食べたくなってきた……」
デミタスのようなことを言う。
微笑みながら「おやすみなさい」と挨拶し、内藤は部屋へと戻るべく踵を返した。
早く寝たい。
デミタスの本については明日、改めて探すとしよう。
今日の内に出来ることはもうないだろうし、それに、もうくたくたである。
( ^ω^)(あの垂れ眉糞野郎……朝になったら鳩尾に拳ぶち込んで起こしてやるお)
*****
- 377 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:27:53 ID:1nLn37lIO
足音がした。
ζ(゚、゚*ζ
目を覚ます。
寝返りをうち、デレは、枕元に手を伸ばした。
ヒールが洗濯してくれた私服に触れる。
その上にある携帯電話を取った。
開く。圏外。時間は午前1時過ぎ。
眠ったのが11時頃だったから、大体2時間ぐらい経ったのか。
携帯電話と目を閉じる。
ζ(-、-*ζ
足音は部屋の前を過ぎ、段々と遠ざかっていった。
方向からして、トイレに行くのだろうか。
デレの意識が沈む。
夢現。
揺蕩いながら、落ちていく。
.
- 378 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:29:40 ID:1nLn37lIO
悲鳴。
ζ(゚、゚;ζ「な、何……!?」
ξ゚听)ξ「……」
デレとツンが体を起こす。
立ち上がり、障子に手をかけた。
ζ(゚、゚;ζ「悲鳴だった……よね?」
ξ゚听)ξ「ええ」
「――……か! ――誰か!」
また聞こえた。
廊下に出て、暗がりの中、声のする方へ駆ける。
――屋敷の奥。
あの、ヒールと口論していた男の部屋だ。
嫌な予感がデレを襲う。
- 379 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:31:16 ID:1nLn37lIO
/;,' 3
J(;'ー`)し
川;` ゥ´)
部屋の前でへたり込むヒールを、荒巻とカーチャンが支えている。
ヒールの手には懐中電灯。
ζ(゚、゚;ζ「どうしたんですか!?」
デレとツンは駆け寄り――荒巻達の視線の先、室内を見て、硬直した。
中央。布団の上。
ビロードが、何かを揺り動かしている。
(;><)「フサさん、フサさん……! 起きてください、フサさん!」
ミ,, Д 彡
「何か」――仰向けで倒れている、男。
ヒールに怒鳴り、ビロードに笑いかけた、あの男。
ζ(゚、゚;ζ「……ひ……」
今じゃ胸や腹を真っ赤に染めて、ぴくりとも動かない。
.
- 380 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:35:34 ID:1nLn37lIO
(;´・_ゝ・`)「何かあったの?」
そのとき、デミタスとニュッがやって来た。
部屋の前で立ち竦む。
(;´・_ゝ・`)「うわ」
(;><)「……なんで……」
ζ(゚、゚;ζ「ビロードちゃん……!」
我に返ったデレは中に飛び込み、ビロードを抱きしめた。
ツンが、ふと気付く。
ビロードと男、デレの他に――もう1人、いる。
部屋の中、光から離れた壁際に、誰かが。
ξ゚听)ξ「誰?」
( ^ν^)「……」
動こうとしたツンを掌で制止し、ニュッが部屋に足を踏み入れた。
明かりがつけられる。
- 381 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:38:54 ID:1nLn37lIO
( ^ω^)「――え?」
壁際の人物。
内藤は、呆然と辺りを見渡した。
内藤が着ている浴衣のあちこちには赤い汚れ。
ぬらぬら、血にまみれた手に握られている包丁。
包丁?
( ^ν^)「兄ちゃん」
ξ゚听)ξ「……何で、そんなの持ってるの……?」
.
- 382 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:39:42 ID:1nLn37lIO
ζ(゚、゚;ζ「……ないと、さ……」
何なのだ。
これでは。
これでは、まるで。
内藤が、男を刺したみたいではないか。
.
- 383 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:41:15 ID:1nLn37lIO
――午前1時27分。
吹雪は今も尚、ガラス戸を叩いている。
第七話 続く
- 384 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:43:16 ID:TdpJ23ocO
- 乙
- 385 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:43:37 ID:TsWGuc12O
- (ノ)・ω・(ヾ)モキュ
- 386 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 02:46:40 ID:1nLn37lIO
- やっと! 投下! 終わった!
次回(中編)は、なるべく今週中、遅くて来週には何とか
読んでくださった方々、支援してくださった方々、
まとめてくださってるブーン芸さん、いっぷくさん、皆さんありがとうございました!
しおり的な目次的な
六話後 >>108
七話前 >>261
ではでは
- 387 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 03:06:49 ID:20zlAAtc0
- 乙!!
- 388 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 03:30:30 ID:YqkX6v32O
- うわぁぁぁおつぅぅううう
- 389 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 05:17:17 ID:fRBAamTcO
- 乙です!
- 390 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 09:04:57 ID:LLq.fiO.0
- 乙
探偵役のショボンの腕のみせどころだな
- 391 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 09:41:02 ID:xWcghFM.O
- 乙!
フーダニットかホワイダニットか、何にせよ楽しみだな
- 392 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 14:30:37 ID:wSiOi/FIO
- 相変わらずニュッくんとデレちゃんがもどかしい
中編楽しみ!
- 393 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 18:20:09 ID:KLTBDEEM0
- 乙だっぜー
- 394 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/11(月) 20:39:21 ID:.WG9hmCk0
- 乙乙! 続きwktk
- 395 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 00:35:21 ID:klhhFx8M0
- クオリティ高いな!
読みやすいし!
今一番好きな作品
- 396 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 01:59:45 ID:/ycA6EJEO
- 話面白いし場面想像できるし今までで一番好きだ
- 397 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 10:27:06 ID:mmjAD156O
- 乙乙っ!
やっぱフィレンクトと言えば隻腕だよね!
中編楽しみにしてるよー
- 398 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 15:08:39 ID:Dw5Zb/IsO
- 乙した!続き楽しみだ!
- 399 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 20:35:52 ID:iyMTHzcIO
- もうこれ面白すぎてケツから鼻血出るわwww
- 400 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 20:53:02 ID:flU38K/c0
- >>399
尻血ですよね?
- 401 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 22:23:53 ID:iyMTHzcIO
- >>400
鼻血だろ
何言ってんだ
- 402 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/12(火) 23:03:38 ID:DAKcZ7Z2O
- >>400
鼻血だろ
- 403 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/13(水) 13:14:52 ID:PHbcqguEO
- >>400
鼻血以外に何が出るんだよ
- 404 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/13(水) 19:44:59 ID:g11q0Jvw0
- 乙
次回が待ち遠しい
- 405 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/14(木) 00:25:38 ID:RJXdeTacO
- >>400
尻血だなんていやらしい奴だな
- 406 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/14(木) 09:35:27 ID:25fL3qTcO
- 乙でした
ショボンの流れるがごとくの暴言ぶりが、心地よく感じるようになってしまった…悔しいビクンビクン
次回・遮木探偵回に期待
- 407 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/14(木) 20:38:33 ID:YD/VWrcUO
- その血の成分が仮に鼻血と全く同じだとしてもけつからでたならけつ血だろう
- 408 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/14(木) 20:45:19 ID:.mHjAzCIO
- しぃたんなら「ケツ(血)判」ネタで官能小説が一本書けるよ!
- 409 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/15(金) 22:29:31 ID:mpm3HGz.0
- http://uproda.2ch-library.com/403227dgv/lib403227.jpg
- 410 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/16(土) 01:10:55 ID:Rtz.jRbIO
- >>409
ありがとうございますうひょおおおお! 可愛い
絵にして見てみると奴らがリア充すぎてフラグへし折りたくなってきた
テンション上がったので、ついでに予告
七話中編、今日か明日のどっちかに投下します
また長くなりそう
- 411 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/16(土) 01:19:14 ID:jncdVLyUO
- 投下予告キタ!
俺もテンション上がるわ!楽しみに待ってるよー!
- 412 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/16(土) 01:25:44 ID:nLiF7ghg0
- 期待
楽しみに待ってます
- 413 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 03:04:41 ID:H.m.vs.gO
- 明日のためにもう寝ないと
- 414 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 21:51:18 ID:iMzkrIN.O
- まだかな
- 415 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:28:10 ID:VS/dOPGUO
- 七話中編投下しマスクメロン
・長い
・途中で間取りを説明するための図が入るけど手書き
- 416 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:29:37 ID:VS/dOPGUO
( ^ω^)「……血……」
自分の手と男を視界に収め、内藤はぼうっとしていた。
数秒。
あ、と声を漏らし、目を見開いた。
(;゚ω゚)「あ……うあ、あ……」
包丁が滑り落ちる。
内藤がくずおれる。
気付くと、その場には、ショボンを除く全員が揃っていた。
血に染まった光景に、フィレンクトが息を呑む。
ノハ;゚听)「ビロード!」
叫ぶヒートを押し止めて、ワカッテマスが内藤のもとへ走った。
内藤を取り押さえ、デレとビロードに振り返る。
( <●><●>)「長岡さん、ビロードをここから離れさせてください」
ζ(゚、゚;ζ「は、はい……」
( <●><●>)「……ホライゾンさん? ホライゾンさん、どうしました」
ワカッテマスは、ぐったりとしたまま動かなくなった内藤の頬を叩いた。
気絶しているようだ。目を覚まさない。
- 417 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:30:08 ID:tD5yu8ToO
- リアルタイム初めてだわ
- 418 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:30:59 ID:VS/dOPGUO
困り果てるワカッテマスの傍にツンが駆け寄り、内藤の体を起こした。
浴衣を捲る。
( <●><●>)「怪我は」
ξ゚听)ξ「……してないわ」
( <●><●>)「なら、やはり」
――返り血ですか。
ワカッテマスの呟きに、ツンは唇を噛み締めた。
デレ達と入れ代わる形で、フィレンクトが入室する。
(‘_L’)「……フサ」
フサ。名前だろうか。
( ^ν^)「こいつ、誰だ」
(‘_L’)「本家に頼まれて引き取った男だ。この部屋に住まわせていた」
(´・_ゝ・`)「彼のことは紹介されてなかったな」
ζ(゚、゚;ζ「……わ、私は、会いました。トイレ行ったとき……」
カーチャンへビロードを預けながら、デレが言う。
フィレンクトは、フサへと右手を伸ばした。
と、同時。
「――触らないでください」
声が、その手を止めさせた。
- 419 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:31:27 ID:DEzkLzps0
- リアタイ初。支援だわー
- 420 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:32:30 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「動かないように。子供も妊婦も」
遅れてやって来たショボン。
ずかずか、部屋に上がり込む。
ξ゚听)ξ「……ブーンだけでもここから移動させてあげて」
(´・ω・`)「あれ、何、ブーンも死んでるの? それ。血まみれじゃん」
ξ゚听)ξ「気絶してるだけよ。……そっちの彼は死んでるようだけれど」
( <●><●>)「恐らく、ホライゾンさんが犯人かと」
(´・ω・`)「その小心者が? ははっ、笑える」
ツンがワカッテマスを睨む。
しゃがみ込み、ショボンは死体や包丁を観察した。
首、手首に指を当てる。
死んでるな、と一言。
真剣な表情だ。
デレは、恐る恐るショボンに声をかけた。
- 421 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:33:46 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ「……内藤さん、包丁持ってたんです……」
(´・ω・`)「あっそう。持ってただけでしょ」
あっさり一蹴された。
「だけ」ってことはないだろう、「だけ」ってことは。
(´・ω・`)「ふむ――分かった、分かった」
(;<●><●>)「何がです」
(´・ω・`)「犯人は……」
(´・ω・`)「この中にいる」
.
- 422 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:34:14 ID:VS/dOPGUO
そんな。
分かりきっていることを改めて言われても。
.
- 423 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:34:39 ID:VS/dOPGUO
第七話 あな気難しや、ミステリ小説・中編
.
- 424 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:35:14 ID:vhb7OaAMO
- しょぼんの兄貴かっけー
- 425 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:36:37 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ「あれ? ショボンさんまだ酔ってません?
ちょっと頼もしいかなって思ってたけどすごく不安になりましたよ私」
(´・ω・`)「もう覚めてるし。いいよもうお前が犯人だ」
ζ(;、;*ζ「やってません、私やってませんんん!!」
(;´・_ゝ・`)「理不尽すぎる……」
/;,' 3「――警察……!」
荒巻が慌てて走り出そうとした。
何よりも、まずは警察を呼ぶべきなのだ。
(´・ω・`)「まあまあ、お待ちなさい。
いいですか、今から名探偵ショボン様が華麗なる推理を……」
(;<●><●>)「いやいやいや、この中にいるも何も」
ショボンの言葉を遮り、ワカッテマスが口を開いた。
荒巻が足を止める。
(;<●><●>)「彼が……ホライゾンさんが犯人である以外、何だと言うんです」
皆の視線が、内藤へ向かった。
返り血。包丁。
誰が見ても、ワカッテマスと同じことを考えるだろう。
- 426 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:38:42 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ「でっ、でも……!」
(´・ω・`)「動機がないでしょうよ動機が」
ζ(゚、゚;ζ「それです!」
ショボンの言葉に賛同する。
内藤がフサを殺す理由がない。
(´・ω・`)「寧ろ怪しいのは皆さんの方ですよ。
フサさんと交流があったのなら、過去……あるいはさっきにでも、
殺意を抱くような出来事が起きていても不思議じゃない」
J(;'ー`)し「わ、私やヒート達だって、フサ様とは碌に話したこともありません!」
( ^ν^)「……は?」
/;,' 3「彼は、いつも閉じこもっておりましたし――どうやら他人が嫌いらしく、
ビロードとピャー子にしか心を開いておりませんでした」
J(;'ー`)し「ここへ食事や着替えを運ぶのさえ2人の仕事だったくらいですもの」
ノハ;゚听)「私も、廊下を歩いたり、庭を散歩したりしてるのをたまに見かけるだけだった」
(´・_ゝ・`)「……本当なの?」
(;><)「はい……他人というか、自分より年上な人が苦手だったみたいなんです」
- 427 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:41:31 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「んじゃあ、まずはヒールさんとビロードちゃんから詳しく話を――」
川;` ゥ´)「私」
(´・ω・`)「あ?」
それまで黙っていたヒールが、ようやく声を発した。
懐中電灯のスイッチを切る。
デレは振り返り、ぎょっとした。
ヒールが身に着けているのは普通のパジャマ。
その右袖、二の腕の辺りに染みがあった。
赤黒い。
袖だけではなく、彼女の両手にも血が付いている。
ヒールは懐中電灯を廊下に置き、内藤を指差した。
川;` ゥ´)「私……この人が包丁刺すとこに居合わせた……」
*****
- 428 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:45:05 ID:VS/dOPGUO
一同は居間へと移動し、ヒールから話を聞くことにした。
子供には聞かせるべきではないというニュッの判断により、
ビロードはヒートとカーチャンの2人と共に別室に移動させている。
内藤が起きてからにしろというフィレンクトの意向により、通報は未だしていない。
川*` ゥ´)「……台所にいたら、内藤さんが来たんだ」
荒巻に右腕の手当てを施されながら、ヒールはぽつりぽつりと話し始めた。
傷は浅い。刃物で薄く切られた程度のものが一筋だけ。
横たわっている内藤を一瞬見遣り、すぐに目を逸らす。
ξ゚听)ξ「どうして台所に?」
川*` ゥ´)「ガスとか、調理器具の確認のために」
ξ゚听)ξ「それで、ブーンが来てから、どうしたの?」
川*` ゥ´)「私、荒巻さんかカーチャンさんだと思って、咄嗟に棚の陰に隠れた」
(´・_ゝ・`)「どうして」
川;` ゥ´)「確認ついでに、明日の朝ご飯に使う食材、あの……ちょっと、つまみ食いしてて」
/ ,' 3「……お前は」
( <●><●>)「この際、つまみ食いの件は置いておきましょう。
話を続けてください」
- 429 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:46:24 ID:VS/dOPGUO
川*` ゥ´)「内藤さんだって分かって、声かけようとしたんだけど
すぐに出ていっちゃったよ」
川*` ゥ´)「何だったんだろうって思いながらまな板見たら、
そこに置きっぱなしだった包丁がなくなってた」
そのときは、まさか内藤が持ち出したのだとは考えなかったという。
床に落としたのかと探してみたが、包丁は見付からなかったそうだ。
川*` ゥ´)「朝にまた探すことにして、寝るために自分の部屋に戻ろうとしたんだ」
そしたら、と呟き、ヒールは俯いた。
手当てが終わる。
ぐるりと巻かれた包帯を押さえる彼女に、フィレンクトが続きを促した。
(‘_L’)「そしたら、何だ」
川*` ゥ´)「……廊下で、内藤さんと鉢合わせた」
- 430 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:47:35 ID:VS/dOPGUO
以下は、ヒールの話を簡単にまとめたものである。
ヒールを見るなり、内藤は包丁を構えて向かってきた。
驚いたヒールは自室へ逃げ込むが、内藤は室内にまで迫り、
金目のものを出すよう脅しをかける。
2人は揉み合いになり、その際、彼女の右腕を包丁が掠めた。
内藤が力を緩めた隙に、ヒールは部屋を飛び出し、咄嗟に屋敷の奥へ走った。らしい。
(´・_ゝ・`)「咄嗟に?」
川;` ゥ´)「フサは腕っ節が強いから。助けてもらうつもりだった」
( ^ν^)「寝てるとは考えなかったのか」
川;` ゥ´)「寝酒が日課なんだ、フサ。
あのときは、私がお酒とおつまみ持っていってから大して時間経ってなくてさ、
まだ飲んでる頃だろうと思ったんだよ」
- 431 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:49:23 ID:VS/dOPGUO
フサに助けを求めたヒール。
予想通り酒を飲んでいる最中だったフサは、彼女を追ってきた内藤に掴みかかる。
内藤は、包丁を振り上げ――
(´・ω・`)「――ぐさり」
川;` ゥ´)「……うん」
(´・ω・`)「ヒールさんが奥に行かなきゃ、フサさんは死ななかったわけですね」
ζ(゚、゚;ζ「ショボンさん、言い方……」
仕切ろうとしたのを邪魔されたのが悔しかったのか、
友人を犯人だと言われたのが不愉快なのか。
とにもかくにも、ショボンは少々機嫌が悪かった。
デレが非難する。
( ^ν^)「……ビロードは? あいつはいつからあの部屋にいたんだ」
川*` ゥ´)「内藤さんがフサを刺して、すぐ……ビロードが来て、
『どうかしたんですか』って声をかけてきたんだけど。
どうして奥の部屋に来たのかは知らない」
- 432 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:51:36 ID:VS/dOPGUO
川*` ゥ´)「ビロード、初めは理解出来なかったみたいで固まってたな。
フサに近付いて……ようやくビロードが悲鳴をあげたよ。
何度もフサの名前呼んでた」
ビロードの声で我に返ったヒールは廊下に飛び出し、誰か来てくれと叫んだ。
そして、それを聞きつけた荒巻夫妻やデレ達が到着した、と。
後は誰もが知る通りである。
(‘_L’)「……何てことだ……」
苦々しく呟き、フィレンクトは長息した。
まだ起きる気配のない内藤へ目をやる。
不意に、ずっと内藤の傍で俯いていたツンが顔を上げた。
ξ゚听)ξ「ニュッ君、ブーンの服と香水を持ってきてくれる?」
( ^ν^)「ん」
ξ゚听)ξ「荒巻さん――手が空いてるなら誰でもいいけれど、
洗面器にぬるま湯と、タオルを……2枚ぐらい。
念のため、ビニール袋も」
てきぱきと指示を出すツン。
早く、と急かされ、ニュッと荒巻は席を外した。
- 433 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:53:33 ID:VS/dOPGUO
先に戻ってきたのはニュッだ。
ツンはスーツと香水を受け取り、隣に置いた。
続いて荒巻が洗面器とタオル、袋を持ってやって来る。
ξ゚听)ξ「ありがとうございます。……そこのポット、お湯入ってます?」
( <●><●>)「……多少」
ξ゚听)ξ「良かったらお茶碗にお湯入れて、冷ましておいてもらえるかしら」
( <●><●>)「分かりました」
ξ゚听)ξ「……ブーン。手、綺麗にしましょうね」
洗面器の湯にタオルを一枚浸し、絞る。
そして、ツンは内藤の手を拭い始めた。
宝物を扱うように、丁寧に。
もう一度洗面器にタオルを入れると、湯に赤色が滲んだ。
( <●><●>)「なるべく事件直後の状態を保つべきでは」
ξ゚听)ξ「ブーンは、このままにしてちゃ駄目なんです」
- 434 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:56:48 ID:VS/dOPGUO
両手を粗方綺麗にし終えた頃。
内藤が唸り、瞼をぴくりと動かした。
ξ゚听)ξ「起きた?」
ζ(゚、゚;ζ「内藤さん、大丈夫です……ぎゃんっ!」
ニュッが、デレをデミタスの後ろに突き飛ばした。
顔面から倒れ込む。
鼻を押さえながら起き上がったデレを、デミタスはそのまま自分の背に留めさせた。
静かに視線を彷徨わせていた内藤は、体を起こしかけ――
(;^ω^)「うあ」
浴衣の汚れを見て、一気に青ざめた。
何か言いたいのか、あるいは呻いているだけか。
あ、あ、と小さな声を零し続ける。
やがて。
ぽろり、涙が落ちたのをきっかけに、内藤は畳に伏せて頭を掻きむしり始めた。
( ;ω;)「あっ、あ、あああああ! ああああああ!!」
ξ゚听)ξ「……ブーン、落ち着いて」
叫ぶ内藤の姿に、デレやワカッテマス達は言葉を失った。
デレはデミタスの腕を掴んだが、説明はない。
- 435 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 22:58:55 ID:VS/dOPGUO
ツンが香水の瓶を取り、中身を自分の掌に吹きかけた。
その手で内藤の頬を撫でる。
ξ゚听)ξ「大丈夫よ、大丈夫。血の臭いなんかしないでしょう」
( ;ω;)「ひ、ひ、……あう……」
ξ゚听)ξ「ゆっくり息して。ゆっくり。ね」
ツンの手に鼻先を押しつけて、内藤は深呼吸を繰り返した。
汗や涙が畳に染みを作っていく。
少しすると、呼吸の乱れが激しくなり始めた。
苦しげに咳き込む。
近くにいた荒巻がビニール袋を広げ、内藤の口元へ差し出した。
( ;ω;)「うえ……っ」
嘔吐。
内藤の背を摩りながら、ツンが荒巻に礼を言う。
- 436 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:00:37 ID:VS/dOPGUO
ワカッテマスは、恐々ショボンに訊ねた。
(;<●><●>)「……彼は、どうしたんです」
(´・ω・`)「どうしたもこうしたも。
この通り、血が大の苦手でして」
(‘_L’)「血が」
(´・ω・`)「ええ。――これが人を刺し殺すなんて、とてもとても……。
逆に、こいつの方が死んでしまいそうじゃありませんか」
川;` ゥ´)「っ……」
(´・ω・`)「ねえ?」
ショボンがヒールに微笑む。
目は、笑っていなかった。
*****
- 437 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:03:47 ID:ZbqFbv5E0
- お! 支援。
- 438 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:04:06 ID:JpK4b1ZU0
- わたしまーつーわ
- 439 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:04:50 ID:VS/dOPGUO
(;^ω^)「……お見苦しいものを」
スーツに着替えてようやく落ち着いた内藤は、フィレンクト達へ頭を下げた。
表情は依然辛そうである。
デレは、ニュッが自分をデミタスの後ろにやった理由が何となく理解した。
ビロードを抱きしめたときに付着したのか、浴衣に血の汚れがあるのだ。
それを内藤へ見せないようにしたのだろう。
ヒールも、右腕の袖をワカッテマスに捲り上げられている。
内藤のように彼女の手も拭われた。
(‘_L’)「大丈夫なのか」
(;^ω^)「正直、大丈夫ではないですお」
目を伏せ、頬を掻く。
おっかなびっくりといった様子で、隣のツンに質問した。
(;^ω^)「何があったんだお?」
ξ゚听)ξ「それは私達が訊きたいわね」
ツンの返事に、ワカッテマスが頷いている。
きょとんとする内藤。状況を把握していないらしい。
- 440 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:06:11 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「何がどうなったら、血まみれの包丁持って死体と同室することになるんだよ」
( ^ω^)「え」
皆の顔を見渡す。
それから――内藤の頬が、引き攣った。
(;^ω^)「そんなまさか……僕が疑われてる、わけじゃ、……ないおね?」
誰も答えない。
無言は肯定に等しかった。
内藤のこめかみを伝ったのは、体調が悪い故の脂汗か、それとも冷や汗か。
(;^ω^)「ちっ、違いますお! 僕、用を足しにトイレに行っただけですお!
それでトイレから出たら、ヒールさんが声かけてきて!」
/ ,' 3「ピャー子が? 何と?」
(;^ω^)「『ショボンが奥の座敷に向かっていった、
一緒に捕まえに行ってほしい』って……」
(;^ω^)「ショボンの奴、酔っ払ってたから盗みの一つや二つやりかねないし。
女性のヒールさん1人じゃ危ないだろうと思って、ついていったんですお」
デレは、おろおろ、内藤とヒールを交互に見遣った。
ヒールの話と全然違う。
ショボンはショボンで「人を泥棒みたいに言うな」と不機嫌そうだ。
- 441 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:09:07 ID:VS/dOPGUO
(;^ω^)「そしたら――部屋の前に着くや否や、こう、突き飛ばされて。
生暖かいような感触がしたけど、暗くて何が何だか分かりませんでしたお」
(;^ω^)「たしか、その後に何か握らされて……そうこうしてる内に
ビロードちゃんが来て、悲鳴あげて……それから、……それから……」
フサの死体を思い出したのか、口を覆う。
ツンは白湯の入った湯飲み茶碗を内藤へ渡した。
(‘_L’)「……だいぶ、証言が食い違っているようだが」
川;` ゥ´)「嘘だ、嘘ついてる!」
(;^ω^)「嘘?」
( <●><●>)「ピャー子は、あなたが包丁で彼を刺すところを見たそうです」
内藤が、口に含んだ白湯を勢いよく噴き出す。
思わずデレが拍手しかけたくらい見事な噴き出しっぷりだった。
(;゚ω゚)「はああああ!? それこそ嘘だお、僕は無実だお!!」
川;` ゥ´)「そりゃあ、犯人が正直に『僕が殺しました』なんて言わないだろうさ!」
(;゚ω゚)「なっ……! い、一番怪しいのはヒールさんじゃないかお!
もしかして、僕に罪をなすりつけようってつもり――」
(‘_L’)「ともかく!」
フィレンクトの怒鳴り声。
内藤とヒールが口を閉じる。
- 442 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:11:10 ID:VS/dOPGUO
(‘_L’)「ともかく、どちらかが……あるいは両方が嘘をついている。
2人共、この部屋を出るな」
川;` ゥ´)「私は何も……!」
(;^ω^)「僕は潔白ですお!」
(‘_L’)「聞かん。
こうなっては、自首など期待出来んな。荒巻、今すぐ警察を」
/ ,' 3「かしこまりました」
荒巻が部屋を出ていった。
障子が閉まる音を最後に、室内を静寂が満たす。
1分も経たぬ内、少し駆け気味の足音が近付いてきた。
音の主は、電話をかけに行った筈の荒巻。
/;,' 3「大旦那様!」
(‘_L’)「どうした」
- 443 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:13:31 ID:VS/dOPGUO
/;,' 3「電話が通じません。電話線が……切れておりまして」
ショボンとニュッが立ち上がった。
荒巻から電話の場所を聞き、確認に向かう。
間もなくして戻ってきた2人は、皆の無言の問い掛けに首を振って答えた。
( ^ν^)「切られてた。刃物で切った感じ」
(´・ω・`)「すっぱりぶっつり。――誰が切ったのかなぁああ?」
疑問形ではあるが、ショボンはヒールの肩を叩いている。白々しいことこの上ない。
私じゃない、とヒールが憤慨した。
再度沈黙。
ショボンは溜め息を一つ落とし、腕を組んだ。
(´・ω・`)「ここ、携帯の電波は入る?」
(´・_ゝ・`)「寝る前に試したけど、入らなかったよ」
(´・ω・`)「そう。じゃあ電話は無理だね。
こっちから外に呼びに行かなきゃいけないわけだけれども……」
/;,' 3「この天気では難しゅうございます。
こうも酷いと、地元の者すら外出は儘なりません」
- 444 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:15:04 ID:kSp.0D7w0
- 心理的密室ってやつですか
- 445 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:15:34 ID:VS/dOPGUO
吹雪は勢いを増すばかりだ。
デミタスも、ショボンのように腕を組む。
(´・_ゝ・`)「クローズドサークルだね」
ζ(゚、゚;ζ「くろ……?」
ξ゚听)ξ「ミステリものの小説やドラマなんかで、よく見るでしょう。
何かしらの理由で電話や外出が許されず、
館や孤島に閉じ込められたまま物語が進むやつ」
デレは、眉を顰めた。
小説。物語。
何かが気にかかる。
一方で、ツンの答えを聞いたフィレンクトも何事か考え込んでいた。
物語、と呟き、表情を険しくさせる。
- 446 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:20:53 ID:VS/dOPGUO
直後、ワカッテマスが両手を打ち合わせた。
( <●><●>)「天気が落ち着くまで2人を見張っていましょう。
いずれ、警察が来れば真実も分かります――」
(´・ω・`)「それには及ばない!」
( <●><●>)「は?」
ショボンが畳を叩いた。
怪訝な顔をする面々。
頼むから大人しくしていてくれと内藤が祈るようなポーズをとる。
(´・ω・`)「この探偵、遮木ショボン。事件を解決して御覧に入れましょう」
( <●><●>)「……何を言ってるんですか、あなたは」
(´・ω・`)「犯人が確定出来ないまま過ごすなんて、居心地が悪い。
まあ……最悪、解決は出来なくとも、
内藤ホライゾンが濡れ衣を着せられてることだけでも立証してみせますよ」
( ^ω^)「――ショボン」
(´-ω・`)「勿論手伝ってくれるよねえ、助手達よ」
ウインク。
デレはデミタスの陰から握りこぶしを突き出し、こくこくと首を縦に振った。
- 447 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:23:20 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ「は、はい!
不肖、長岡デレ、内藤さんの無実を晴らし、疑いを証明してみせます!」
( ^ω^)「出来れば疑いを晴らして無実を証明してほしいな、デレちゃん」
(´・ω・`)「よし、決まり。
あ、ご安心を。物には必要最低限しか触れませんし、部屋を荒らしもしません」
( <●><●>)「ですが……!」
(‘_L’)「構わん」
( <●><●>)「……父さん」
ワカッテマスが、フィレンクトを睨む。
ショボンは礼を述べると、荒巻へ話しかけた。
(´・ω・`)「一度、屋敷の中を回らせていただきたい。
良ければ同行してもらえますか」
(‘_L’)「荒巻。案内してやれ」
/ ,' 3「……はい」
(´・ω・`)「どうも。
助手達、部屋に戻って着替えとけよ」
- 448 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:24:32 ID:VS/dOPGUO
( ^ω^)「……ショボン、ありがとうお」
部屋を去ろうとするショボンの背中へ、内藤が声をかける。
彼は振り返らぬまま、手を振った。
(´・ω・`)「なあに。金づr――」
(´・ω・`)「――親友が困ってるんだ、助けるのは当然だろ」
( ^ω^)「お前今『金づる』って言いかけたろ」
*****
- 449 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:27:01 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ
部屋に入るなり、デレは腰を抜かした。
ツンが膝をついてデレの顔を覗き込む。
ξ゚听)ξ「デレ?」
ζ(;、;*ζ「つ、つんちゃ」
縋りつく。
ツンは肩を跳ねさせたが、拒みはしなかった。
頭を撫でられる。
ξ゚听)ξ「今更恐くなったの? 鈍いのね」
ζ(;、;*ζ「だ、だって、だって……」
――あんな、本物の死体など、初めて見たのだ。
どこか遠くにあった現実感が、ようやく戻ってきた。
ξ゚听)ξ「ほら、離れて。くっついてちゃ着替えられないわよ」
ζ(;、;*ζ「うー」
ξ゚听)ξ「手伝えばいいの? 何歳よ」
ζ(;、;*ζ「自分で着替えますう……」
- 450 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:28:30 ID:VS/dOPGUO
ツンから離れ、腰紐を解く。
枕元の服を取り、のろのろと着替えを始めた。
ζ(ぅ、;*ζ「――……ん?」
髪を整えたとほぼ同時に襖が叩かれた。
続いて、ビロードの声。
「いいですか?」
ξ゚听)ξ「どうぞ」
襖が開く。
着替えたのだろう、私服姿のビロードが視界に入った。
後ろにヒートとカーチャンもいる。
(;><)「……内藤さん、本当に犯人だったんですか?」
ξ゚听)ξ「そんなわけないじゃない」
ノパ听)「えっ。違うのか?」
J(;'ー`)し「じゃあ誰が……」
ξ゚听)ξ「分からないわ」
即答するツン。
血の気を失ったカーチャンの肩を、ヒートが支えた。
- 451 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:30:10 ID:VS/dOPGUO
J(;'ー`)し「警察へは連絡しました?」
ζ(゚、゚;ζ「いえ。電話が使えなくなってた上に、
この吹雪じゃ、外に出られないだろうって」
ノパ听)「電話、壊れちゃったのか?」
ξ゚听)ξ「電話線が切られてたの」
ζ(゚、゚;ζ「今、この部屋に来る前に見てきましたけど……真ん中からぷっつり」
J(;'ー`)し「まあ」
頬に手を当て、カーチャンは板の間の方を見た。
誰が切ったの、と問う彼女の顔色は真っ青だ。
殺人鬼。切られた電話線、外出は不可能。
怯えないわけがない。
- 452 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:32:29 ID:VS/dOPGUO
ξ゚听)ξ「それらを今から調べるの。
……私は、ヒールさんが怪しいと思うけれど」
ノハ;゚听)「ヒール!?」
(;><)「どっ、どうしてヒールさんなんです!? 悪い人じゃありませんよ!」
ξ゚听)ξ「彼女、明らかに嘘をついているもの。
犯人はあの人じゃないかしら」
ζ(゚、゚;ζ「ちょ……ツンちゃん!」
ヒートとヒールは姉妹だ。
妹を犯人扱いされたヒートが、どんな気持ちになるか。
デレは、一旦はツンを咎めたものの、すぐに口を噤んでしまった。
常に無表情なツンだが、放っている雰囲気などで感情を推し量ることはそれなりに出来る。
――怒っている。かなり。
ノハ;゚听)「何でヒールを疑うんだ! ……あの子は、そんなことしない……!」
ξ゚听)ξ「ブーンだって、あんなことしないわ」
ノハ;゚听)「ヒールは――」
J(;'ー`)し「ヒート、興奮しないの」
- 453 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:35:40 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ「ま、まだ決まってませんし……ほら、もしかしたら別の誰かかもしれ……」
言葉を引っ込める。
「別の誰か」。
そんなの、余計に恐ろしいではないか。
ビロード達からしてみれば――こうして目の前にいるデレやツンが、
犯人の可能性だってあるのだから。
J(;'ー`)し「……」
カーチャンがヒートを抱き寄せる。
何か言いあぐねているようだった。
ζ(゚、゚;ζ「あっ、いや、私とツンちゃんは何もしてません!」
ξ゚听)ξ「……言うだけ無駄だわ。実際、この人達が犯人の可能性だってあるんだから」
ζ(゚、゚;ζ「そんな……」
ツンは、ビロード、ヒート、カーチャンの順に視線を送った。
居間の方向を指差す。
- 454 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:37:06 ID:H.m.vs.gO
- 追い付いた
早く家に帰ろう
- 455 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:37:16 ID:VS/dOPGUO
ξ゚听)ξ「あなた達、居間か、その隣の部屋にでも行ったら?
その方が安心出来るでしょ」
J(;'ー`)し「……2人共、行こうか。
ヒート、あまり気に病んではいけないよ。お腹の子に障るから」
ノハ;゚听)「は、はい……」
( ><)「……お母さん、大丈夫ですか?」
ノハ;゚听)「うん、大丈夫……ビロードこそ平気か? あんなの見ちゃって」
( ><)「平気です。
実は、びっくりしすぎて……あんまり覚えてないんです、さっきの」
3人が立ち上がったのを合図に、
私達も行きましょう、とツンがデレの手を引っ張る。
デレは、違和感を覚えた。
胸に沸き立つ異物の正体を探るが、明確な形にはなってくれない。
考え込んでいると、ツンが、そっと耳打ちしてきた。
- 456 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:38:19 ID:VS/dOPGUO
ξ゚听)ξ「……誰も、被害者が死んだことは悲しくないのかしらね」
――それだ。
フサ、と呼ばれていた男。
彼の死を悲しむ者がいないのである。
ζ(゚、゚;ζ「……」
荒巻は「ビロードとヒールにしか心を開かなかった」と話していたが、
フサとヒールはひどく仲が悪そうだった。
ビロードには、何か並々ならぬ感情を抱いているようだったけれども、
ビロード自身からは拒絶の意思が覗いていた。
お世辞にもフサが「いい人」だとは言えない。と、思う。
厄介者だったのだろうか。
いや、そもそも、だ。
何故、彼はこの家に預けられたのだろう?
どうして、この家は、彼を預かったのだろう。
*****
- 457 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:39:08 ID:X7lDxuvk0
- はじめてリアルタイムでブーン系を読んだ。
感動だ。
- 458 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:41:07 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「怪しいんだよなあ」
ニュッ達が眠っていた部屋。
家の中を回り終えたショボンは、布団の上に胡座をかき、そう漏らした。
デレとツン、ニュッ、デミタスもいる。
居間から一つ部屋を挟んだ隣にある場所だ。
襖は全て開け放たれており、居間にいるワカッテマスがこちらを監視している。
事件について探偵組のみで話し合いたい、若菜家の面々には聞かれたくない、
というショボンの主張。
最も疑いの強い内藤の仲間達だ、何をするか分かったものではない、
というワカッテマスの主張。
それらの折衷案が、現状である。
居間まで声は届かないが、動きは見える。
- 459 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:42:54 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚*ζ「怪しいって、何がですか?」
(´・ω・`)「あの女だよ。ヒール。臭うね」
( ^ν^)「臭うのはお前だ。体からアルコールが滲み出てんじゃねえのか」
(´・ω・`)「あ? てめえがガキの頃の恥ずかしい話とか色々デレちゃんにバラすぞ」
( ^"ν^)「死ね」
ニュッとデミタスも、浴衣から元の服へと着替えている。
ショボンだけは風呂に入らないまま眠っていたので、スーツが皺くちゃだ。
しかも酒臭い。
(´・_ゝ・`)「僕も妙だと思ったよ、彼女の発言は。ね、ニュッ君」
( ^ν^)「……ああ」
ξ゚听)ξ「まあ、不自然な点はいくつかあったわね」
(´・ω・`)「もろに、ね」
ζ(゚、゚;ζ「?」
まったくぴんときていないデレを無視して、4人は何か話し始めた。
慌ててデレが挙手をする。居間のワカッテマスが、一瞬身構えた。
- 460 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:45:28 ID:VS/dOPGUO
ζ(゚、゚;ζ「私にも分かるように説明お願いします!」
(´・ω・`)「……」
( ^ν^)「……」
ζ(゚、゚;ζ「そこ2人、それが人間に向ける目ですか? 私は畜生じゃないですよ?」
(´・ω・`)「どうせ、分かってないだろうとは思ったけどさ……。
何でこんな奴と仲良くしてやってるんだろう、僕」
( ^ν^)「もう寝てろよお前」
ζ(;、;*ζ「頑張りますからあ! 頑張りますから置いてかないでえ!」
ξ゚听)ξ「よしよし、泣かないの」
(´・ω・`)「非常に面倒だが、哀れなデレちゃんのために説明してあげよう。
――まずは、これを見てほしい。
荒巻さんと一緒に屋敷を回って描いた間取り図だ」
(´・ω・`)「部屋の配置だけを記したものだから、かなり大雑把だけどね。悪しからず」
ショボンがメモ用紙を差し出した。
まずニュッ、デミタス、ツンの3人がメモを回していき、最後にデレの手に渡る。
http://imepic.jp/20110717/801180
- 461 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:47:20 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「『大旦那』がフィレンクト、『若菜夫妻』がワカッテマスとヒートの部屋だ。
フィレンクトと荒巻夫妻の間の部屋は仏壇が置かれてるだけで、
寝室としては使われていない」
ζ(゚、゚;ζ「……『アホ』って私ですか?」
(´・_ゝ・`)「堂々と『俺』とだけ書かれてるのがこの部屋だね。僕らの存在は無視か」
(´・ω・`)「それはどうでもよろしい。
――フサの部屋近辺にあるトイレや浴室はフサ専用だったらしい」
ζ(゚、゚*ζ「ふむふむ」
(´・ω・`)「さあ、本題だ。隣接している和室同士は基本的に襖で仕切られている。
縁側や廊下に面した出入口は障子とか引き戸だね。防音性ってのは期待出来ない」
- 462 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:48:45 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「台所、ヒールの部屋、荒巻夫妻の部屋。これらは近いところにあるよね」
ζ(゚、゚*ζ「はい」
(´・ω・`)「何か気付かない?」
ζ(゚、゚;ζ「えっと……」
(´-ω-`)「……デミタス」
(´・_ゝ・`)「はいはい。――廊下での襲撃、彼女の部屋での揉み合い……。
結構ばたばたしたと思うんだけど、荒巻さん達はまったく気付かなかった。
ビロードちゃん、あるいはヒールさんの悲鳴でようやく起きたんだ」
ζ(゚、゚*ζ「……眠りが深かった、とか」
(´・ω・`)「仮にそうだとしよう。すっかり寝入っていて誰も物音に気付かなかった。
うん。まあ、有り得なくはないね。納得いかないけど。
でも、もっとおかしな点があるだろう?」
ζ(゚、゚;ζ「?」
ξ゚听)ξ「どうして自分の部屋に行ったか、よ」
ζ(゚、゚;ζ「……あ」
( ^ν^)「人のいる場所に逃げ込むんじゃねえか、普通」
- 463 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:51:18 ID:VS/dOPGUO
ξ゚听)ξ「二度目のチャンスにおいても、彼女は少し距離のある奥の座敷へ逃げているし」
台所を出てすぐ目の前に荒巻夫妻がいるにも関わらず、
ヒールはわざわざ無人の自室へ逃げた。
腕を切られた後も同様に、向かいの荒巻達には助けを求めていない。
フサは腕っ節が強いから、とヒールは言っていた。
しかし、まずは一番近い者を頼るのが普通だろう。
――ここについては、デレにも疑問に思う点がある。
デレにも、というか、この場にいる人間ではデレしか気付けなかった点。
ζ(゚、゚;ζ「あのう」
(´・_ゝ・`)「ん?」
ζ(゚、゚;ζ「……フサさんとヒールさん、お互い嫌い合ってたみたいなんですよ。
喧嘩してるの見ました。
フサさん、ヒールさんのこと叩いたり蹴ったりして、怒鳴ってたし……」
(´・ω・`)「ふうん? 仲が悪かったのか。そうなんだ。
なら、フサのところに行くのはますます妙だな」
顎を摩りつつ、ショボンが何度も頷く。
ようやく有意義な発言を出来て、デレはほっと息をついた。
- 464 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:55:02 ID:VS/dOPGUO
(´・ω・`)「……ああ、それからね、ブーンの行動もおかしい。
デレちゃん、ブーンはヒールに何と言って脅したんだったかな?」
ζ(゚、゚;ζ「んっと……金目のものを出せ?」
(´^ω^`)「あっはっはっはっは!!」
出し抜けに、ショボンは大口を開けて笑い始めた。
その声の大きさたるや、居間にまで響き渡るほど。
デレが思わずツンの後ろに逃げる。
(´^ω^`)「笑えない冗談だよねえ。笑っちゃったけど」
(´・ω・`)「なあにが金目のものだよ。あいつの唯一の取り柄だぜ、金は。
第一、吹雪で逃げ場はないし相手に素姓は知られてるし……。
こんなところで危険を冒してまで強盗やる意味も必要も、まったくない」
ζ(゚、゚;ζ「……たしかに」
(´・ω・`)「どうにも、ヒールの話には穴が多いね。
少し調べりゃあ簡単に解決出来そうだ」
- 465 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:56:56 ID:VS/dOPGUO
( ^ν^)「……ショボン」
(´・ω・`)「はい何ですかあ」
( ^ν^)「さっき、デミタスと話したことがあって。
……楽しそうに推理してるとこに、これ言っていいか分からないんだが」
(´・ω・`)「何、ニュッ君がそんな風に言い淀むなんて珍しい」
( ^ν^)「デミタスの本が」
(´・ω・`)「本」
( ^ν^)「……演じさせてるのかもしれない」
沈黙。
徐々にショボンの眉間に皺が寄り、口がひん曲がっていった。
(´・ω・`)「本のこと忘れてた」
ζ(゚、゚;ζ(私も)
そうだ、そうだった。
そもそも、デミタスの本を探しに来たのだった。
先程クローズドなんちゃらの話をしたときに引っ掛かったのは、これか。
- 466 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/17(日) 23:59:57 ID:VS/dOPGUO
ξ゚听)ξ「……本……」
( ^ν^)「兄ちゃんが、寝る前に若旦那から本の話を聞き出してた。
本は行方不明な上にタイトルもあらすじも分からなかったんだが」
(´・ω・`)「この状況に思い当たる話があるんだね?」
( ^ν^)「ある。人数も、舞台も、時期も……一致してる。奇跡的に」
(´・_ゝ・`)「被害者を含め、登場人物は14人。小さな村の中、ぽつんと建つ屋敷。
冬。吹雪。――偶然にも、全ての要素が揃ったからね。
物語が始まってしまったんだろう」
デレは2人の言葉を反芻し、瞠目した。
メモ用紙を握りしめてしまう。
ζ(゚、゚;ζ「内藤さんは演じさせられて――フサさんを殺したんですか?」
(´・ω・`)「まあ、そういうことになるね。
……いや。ちょっと待て。なら、やっぱりブーンは犯人じゃないだろ。
往々にして一番怪しい奴ほど無実だったりするんだ、フィクションの中じゃ」
( ^ν^)「たしかに、真っ先に疑われて濡れ衣を着せられる登場人物がいる。
兄ちゃんがその役なんだと思う」
- 467 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:01:23 ID:AM0GaDYIO
ξ゚听)ξ「真犯人は? ヒール?」
( ^ν^)「演じさせられてるなら、ヒールは犯人にならない……筈」
(´・_ゝ・`)「うん。本の中じゃ、犯人は男なんだよ」
(´・ω・`)「性別ぐらいどうだっていいだろ」
(´・_ゝ・`)「良くない」
( ^ν^)「デミタスの本は、頑固っつうか何つうか……気難しいんだ」
登場人物の数や性別、舞台に季節――それらの条件が物語通りに、
かつ、小細工なしに自然な形で揃わない限り、
デミタスの本自ら「演じさせる」ことは滅多にない。らしい。
受動的だが頑固者。
非常に面倒臭い性格だ。
スランプに陥れば、じっと黙って、納得のいくようなアイディアが降りてくるのを待つ。
降りてこない限りは部屋から出ない。動かない。
そんなデミタスに似たのだろう。
- 468 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:02:38 ID:5ZIoVF2sO
- 支援
- 469 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:03:46 ID:AM0GaDYIO
(´・_ゝ・`)「僕の本は、基本的な設定や大事な展開は譲らないけど、
それ以外――所々の場面は役者達のアドリブに任せたがる」
( ^ν^)「変なところで細かくて、変なところでルーズ」
(´・_ゝ・`)「うん、そんな感じ。
……だからって……ヒールさんもなかなか大胆なことを仕出かしてくれたな。
よく本が許したもんだ」
ζ(゚、゚;ζ「……はっきり分かりやすく言ってください」
頭を押さえるデレ。
デミタスの言わんとすることを、ツンが代わりに口にした。
ξ゚听)ξ「ヒールは真犯人を庇ってるってことかしら。
デミタスの話しぶりからして、本来それは存在しない展開……アドリブなわけね」
(´・ω・`)「……ふむ」
内藤でもなくヒールでもない、フサを殺した「真犯人」の男。
ヒールは内藤に疑いをかけることで、そいつから目を逸らさせようとしている。
- 470 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:05:25 ID:AM0GaDYIO
ショボンがニュッを睨む。
真犯人とやらは誰なのだと問うと、ニュッは、居間の方へと振り返った。
小声で、ぽつり、答える。
( ^ν^)「年齢や立場からして、多分――」
――若菜ワカッテマス。
ζ(゚、゚;ζ「ワカッテマスさん?」
ξ゚听)ξ「……そうか。
お世話をしてる主人だし、義理の兄だし……。
ヒールがワカッテマスを庇う理由はあるわ」
- 471 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:06:28 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「ワカッテマスがフサを殺す動機は?」
(´・_ゝ・`)「フサさんが演じる『被害者』は、色狂いの男って設定でね。
男が妻と娘に手を出そうとしているのに気付き、犯人は彼を殺してしまう」
被害者。フサ。
フサが、妻と娘に。手を。
ζ(゚、゚;ζ「……」
デレの脳裏に、生きていたときのフサの姿が蘇る。
ビロードに向けた表情、声。
ひどく嫌らしい笑み。
不快感が胸に広がった。
デレでさえこれなら、実の父親が殺意を覚えても仕方ない。かも、しれない。
しかし、ならば、フサのあの振る舞いは本によるものだったのだろうか。
それにしては、ヒールやビロードとの溝は深いようだったが。
- 472 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:08:43 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「……ふうむ」
腕を組み、ショボンが唸った。
首を捻る。
ξ゚听)ξ「ショボン、どうしたの?」
(´・ω・`)「うん? ……いや、まあ……うん。ちょっとね」
曖昧な返事をして、溜め息。
それから、ゆっくりと立ち上がった。
(´・ω・`)「さて、と。何時だ? ……2時半か。
夜が明ける前にヒールの嘘をぶち壊してしまおう。本も見付けないとな」
ξ゚听)ξ「そうね。演じ終わる前に見付け出さなきゃ」
ζ(゚、゚*ζ「どうして?」
( ^ν^)「……展開を書き加える」
ζ(゚、゚;ζ「あ」
フサを、生き返らせるためか。
( ^ν^)「『演劇』が終わってから書き加えたところで、何の意味もない。
演じてる最中にやらねえと」
ξ゚听)ξ「一か八かなんだけれどね。デレのときとは色々と状況が違うし、
正直こういうパターンは初めてだから、上手くいくか分からないわ。
でも、やらないよりはマシでしょう」
次々と皆が腰を上げていく。
ツン、ニュッ、デミタス。
デレも続き、ぐっと右手を振り上げた。
- 473 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:10:20 ID:AM0GaDYIO
ζ(゚、゚;ζ「が、頑張りましょう!」
(´・ω・`)「おうおう、一番の無能が張り切っていらっしゃる」
ζ(゚、゚;ζ「無能!?」
(´・ω・`)「さあ、今後の方針だ。
僕とデミタスで、ヒールの嘘を崩すための証拠を集める」
(´・ω・`)「ニュッ君とツン、デレちゃんは本を探せ。
この家にあるのは確かなんだ、死ぬ気で見付けろ」
(´・ω・`)「ってことで――あのさあニュッ君」
( ^ν^)「何だよ」
(´・ω・`)「犯人役はワカッテマス、被害者はフサ。
で、肝心の『主人公』は誰なわけ?」
訊ねながらも、既に見当はついているのだろう。
にやついている。
- 474 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:11:31 ID:AM0GaDYIO
( ^ν^)「……まあ」
(´・_ゝ・`)「探偵、だよね」
デミタスの人差し指が、ショボンを示した。
昔から――本が散り散りになる前から――内藤達と親しかったショボンだ。
過去、図書館で本に触れていた可能性は充分にある。
ショボンは舌を出し、物凄く下衆っぽい笑みを浮かべた。
(´^ω^`)「おい脇役共。せいぜい、主人公様の手足になれや……」
ξ゚听)ξ「……自分が活躍出来るからってテンション上がってるわね」
うひひ、と薄気味悪く笑うショボン。
彼はデミタスと共に若菜夫妻の部屋を通り、居間へと向かっていった。
- 475 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:13:20 ID:AAsaTE6MO
- 下衆が主人公…か
- 476 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:13:28 ID:AM0GaDYIO
ニュッがデレを一瞥する。
( ^ν^)「探すぞ無能」
ζ(゚、゚;ζ「ニュッさんまで!」
――主人公はショボン。
ならば。
ξ゚听)ξ「……まずは、あれかしら」
壁に掛けられたトレンチコート。
その下に転がっているショボンの鞄を開いた。
直後、居間からワカッテマスの怒鳴り声が響き渡る。
驚いたデレがニュッにしがみつき、ビンタされた。
往復で。
一度ツンの手が止まったが、ショボンへの抗議であるのを聞き取るや、作業に戻った。
中身を丁寧に取り出し、畳に置いていく。
封筒やらファイルやらボイスレコーダーやらと、関係のないものばかり。
本の姿はない。
- 477 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:16:11 ID:AM0GaDYIO
ξ゚听)ξ「そう簡単には出てきてくれないようね」
ζ(;、;*ζ「ニュッさん酷い……ビンタって……ビンタって……」
( ^ν^)「……」
ξ゚听)ξ「あ、こら」
大判の封筒を開き、中を覗き込んでいるニュッの頭をツンは小突いた。
それに構わず、ニュッが封筒から書類を引っ張り出す。
ワカッテマスの怒声はいつの間にか止んでいた。
ξ゚听)ξ「ショボンのお仕事のやつでしょう、それ。
勝手に見たのバレたら、後が恐いわよ」
( ^ν^)「……若菜フサの身辺調査」
ζ(;、;*ζ「え?」
呟かれた名前に興味を引かれたか、ツンとデレはニュッに身を寄せ、書類を見た。
たしかに、若菜フサ、という名前がある。
- 478 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:18:00 ID:hQ7.FhcUO
- しえ
- 479 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:20:17 ID:AM0GaDYIO
――今年五月二十九日、……県……町の若菜家より若菜フサを預けられる――
――若菜フサ 三十一歳 男――
――依頼者:若菜フィレンクト
依頼内容:若菜フサが、若菜フィレンクトのもとへ渡された経緯の調査――
( ^ν^)「預けられた理由、知らされてなかったのか」
ξ゚听)ξ「預けられたというより、押しつけられた、って感じかしら」
――調査方法:……県……町での聞き込みが主。許可を得て録音済み。
計六人に聞き込みをしたが、答えてくれたのは二人のみ――
ニュッが、ボイスレコーダーを手に取った。
音量を絞り、再生。
女性の声が聞こえてきた。
躊躇いがちに、言葉を選びながら話している。
時折入る相槌は、ショボンへ報告を任せた探偵のものだろうか。
ζ(゚、゚;ζ「……う……」
ξ゚听)ξ「……そういうこと」
話の内容。書類に記された要約。
デレの胸に、もやもや、どろどろとしたものが溜まっていった。
*****
- 480 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:21:29 ID:AM0GaDYIO
誰も口を開かない。
静かだ。
ヒールは、恐々、隣にいるワカッテマスの顔を見上げた。
目が合う。
慌てて視線を外し、俯いた。
( <●><●>)「……」
川*` ゥ´)(……私が守る……)
彼のことは、自分が守らなくてはならない。
彼の罪は、自分が被らなくてはならない――
そのとき、2つ先の部屋にいた探偵達が動いた。
2人の男が、ワカッテマスとヒートの部屋を通って居間へやって来る。
(´・ω・`)「話し合いは終わりました。今から本格的に調査を始めます」
(‘_L’)「うむ……」
(*><)「ドラマの探偵さんみたいなんです」
ビロードが場違いにはしゃいだが、すぐに「ごめんなさい」と口を閉じた。
内藤が、気にするなと言って微笑んだ――つもりなのか、唇の端を持ち上げる。
顔色が非常に悪い。寧ろ、そっちの方を気にしてしまいそうだ。
- 481 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:23:06 ID:AM0GaDYIO
( <●><●>)「ですから、それは警察の仕事ですよ」
(´・ω・`)「ええ、勿論、最終的には全て警察へ任せることになります。
ですが、ほら……」
(´・ω・`)「……ここは『若菜家』ですから。
真実を隠そうと思えば、出来ないこともないでしょう?」
川;` ゥ´)「……?」
いやに意味深な発言だ。
どういうことだろう。
( <●><●>)「――我々が、事実を隠蔽するつもりだと仰られるのですか」
(´・ω・`)「ええ、まあ」
(;´・_ゝ・`)「ちょっ、ショボン君、その言い方は……」
(#<●><●>)「いい加減にしてください!」
(;´・_ゝ・`)「ああもう、ほら怒られた!」
- 482 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:26:12 ID:AM0GaDYIO
(#<●><●>)「うろちょろするに留まらず、人を馬鹿にして……っ!」
/;,' 3「若旦那様……」
(;><)「お父さん、どうどうなんです」
(#<●><●>)「こんな無礼者に家の中を荒らされて堪るものですか!
もういい、私が警察を呼んできます!」
ノハ;゚听)「この吹雪じゃ無理だよ、ワカ」
J(;'ー`)し「そうです、落ち着いてくださいませ」
(#<●><●>)「っああ、もう!」
ちゃぶ台に拳を叩きつけたワカッテマス。
はらはらしながら見つめているヒール達を他所に、
ショボンは薄く笑う。
(;^ω^)「ショボン、笑ってないで謝れお!」
(´・ω・`)「――前科がありますから」
(#<●><●>)「……は……?」
(´・ω・`)「若菜家――こちらではなく、本家の方ですがね。
あっちの若菜家には前科があります」
(#<●><●>)「前科って……」
(´・ω・`)「……隠匿の」
- 483 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:27:15 ID:AM0GaDYIO
(;´・_ゝ・`)「えっ?」
(´・ω・`)「もしかしたら、こちらでも同じことが行われるかもしれませんから……。
素人の私が手を出せる内に、事件の解決を試みたい」
ワカッテマスの口が、ぽかんと開いたまま固まった。
ゆっくり、フィレンクトへ振り返る。
( <●><●>)「……どういうことですか」
(‘_L’)「……」
(´・ω・`)「まあまあ。とにかく調べさせてもらいますよ。
で、若菜さん。よそ者だけをうろつかせるのは不安でしょう。
ついでに、私も逐一質問出来る相手が欲しい」
(´・ω・`)「そこで、誰かお供していただけませんかね」
(‘_L’)「――荒巻、行け」
(;<●><●>)「父さん!」
/;,' 3「私でございますか」
(‘_L’)「それと、お前も。2人なら大抵のことは答えられるだろう」
J(;'ー`)し「……かしこまりました」
/;,' 3「大旦那様の御命令とあらば」
- 484 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:29:18 ID:AM0GaDYIO
(;<●><●>)「……どうして……こ、こんな、人達に」
(´・ω・`)「ありがとうございます。改めて言っておきますが、
部屋や物には必要最低限にしか触れませんのでご安心を」
どこから出したのか、白い手袋を嵌めながらショボンが言う。
何でそんなものを持っているのだと、内藤が胡散臭そうな顔をした。
(´・ω・`)「なるべく指紋をつけないようにね。ある種のマナーさ」
( ^ω^)「僕が訊きたいのは、そういうことではなくてね」
(´・ω・`)「うるせえなあ、行くぞ」
川;` ゥ´)「あ……」
荒巻夫妻を連れ、ショボンとデミタスが居間を出る。
ワカッテマスは、握った拳を微かに震わせた。
(;<●><●>)「……おかしいですよ、父さん……」
(‘_L’)「……何がだ」
(;<●><●>)「何故彼らに好き勝手させるんですか!
犯人はここにいるし、警察さえ来れば全て明らかになります。
わざわざ部外者の素人が調べ直すのに、何の意味がある!?」
- 485 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:30:19 ID:AM0GaDYIO
(‘_L’)「――少々」
(;<●><●>)「は……?」
左腕。
二の腕から先がないそこを着物の上から撫で、
フィレンクトは、畳を睨んだ。
(‘_L’)「思うところが、あった」
*****
- 486 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:34:07 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「さっさと証拠を集めようか。このままじゃ物語が進まない」
/;,' 3「物語?」
(´・ω・`)「あ、いえいえ。独り言です」
(;´・_ゝ・`)「うわっ、何この臭い」
J( 'ー`)し「ヒールがお醤油の瓶を落としてしまって、中身を丸ごと床に」
(;´・_ゝ・`)「……ああ、そういや本人が言ってたかな。初めて会ったとき……」
ショボンとデミタス、荒巻夫妻の4人は、居間の向かいにある台所の中に入った。
醤油臭い。暗い。
ショボンは荒巻に電気をつけるよう言ったが、出来ない、と返された。
/ ,' 3「丁度、遮木様を迎えに行く直前でしたか、電球が切れてしまいました。
替えの電球もないし店は閉まっていましたから、
未だ明かりをつけられない状態でして」
J( 'ー`)し「ピャー子もそのせいで手元が見えなくて、瓶を落としてしまったのだとか」
ショボンが現場に駆けつけた――だらだら歩いて到着した――とき、
ヒールの手には懐中電灯があった。
なるほど、「台所の確認」とやらを本当に行ったのなら、
あれを明かりとして使っていたのだろう。
- 487 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:35:58 ID:AM0GaDYIO
ショボンはスーツの胸ポケットからペンライトを引き抜き、スイッチを入れた。
室内を一通り照らす。
(´・_ゝ・`)「結構広いね」
(´・ω・`)「ああ」
出入口は3つ。すべて木製の引き戸。
廊下に向かって一つ、土間に向かって一つ。
そして、外に通じる勝手口。
まずは土間方面に着目する。
(´・ω・`)「……ヒールさんは、ブーンが来た際、ここに隠れたんだよね」
土間の引き戸近くに、食器棚がある。なかなか大きい棚だ。
女性1人ぐらいなら、陰に隠れれば簡単には見付からないだろう。
この暗さだから、尚更。
(´・ω・`)「ブーンが去った後、まな板を確認……」
ショボンは流し台の前に立った。
置かれっぱなしのまな板を指差す。
- 488 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:38:22 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「この上にあった筈の包丁がなくなっていた、と。
――下、開けますよ。いいですか」
/ ,' 3「どうぞ」
続いて、シンクの下、収納スペースの扉を開いた。
鍋やフライパンなどの調理器具がしまわれている。
扉の内側に、固定されている包丁が数本。
一本分の空きがある。
(´・ω・`)「普段は、ここに収まってたわけですね。凶器の包丁は」
/ ,' 3「はい、その筈です」
扉を閉じ、次に勝手口へ移動。
引き戸を半分ほど開ける。全開にしたかったが、雪のせいで途中で止まってしまった。
聞いているだけで凍えそうな、鋭い風の音が響く。
身を乗り出させ、ペンライトを持ち直す。
視界が雪で埋め尽くされた。
これでは、足跡などがあったとしてもすぐに消えてしまう。
観察するだけ無駄か。
- 489 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:41:38 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「んー……――ん?」
違和感。目を凝らす。
勝手口の近く、雪に覆われた地面の一部が妙に盛り上がっているのに気付いた。
(´・ω・`)「荒巻さん。そこ、何か埋めてます?」
/ ,' 3「はい? ……ああ、あれは」
J( 'ー`)し「猫です」
(´・_ゝ・`)「猫? お墓ですか」
J( 'ー`)し「ええ。野良猫がね、よく、うちに遊びに来てたんですよ。
ピャー子が甘やかして餌くれるからでしょうね」
(´・_ゝ・`)「可愛がってたのはヒールさんだけ?」
J( 'ー`)し「ヒートやビロードも、ちょくちょく遊んでやってました。
『ちんぽっぽ』って名前付けて」
(´・_ゝ・`)「……それはまた、随分と思い切ったネーミングで」
J( 'ー`)し「思い切りすぎて、結局みんな『ぽぽちゃん』って呼んでましたけどね」
- 490 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:44:13 ID:AM0GaDYIO
猫が埋まっている土饅頭。
ということは、当然。
(´・ω・`)「死んだんですね? 猫」
J( 'ー`)し「そうらしいです」
(´・ω・`)「『らしい』?」
/ ,' 3「私共は見ておりません。
9月頃、ヒートの妊娠を報告するため本家へ行ったときがありました。
その日はピャー子とビロードが留守番をしていまして――」
夕方、荒巻達が帰宅した頃には、既に猫は埋められていたという。
墓を作ったのはピャー子。
ビロードはしばらく塞ぎ込んでいたそうだ。
死因は知らされていない。
(´・ω・`)「猫、ね」
ショボンがデミタスに振り返る。
デミタスは首を振った。
――「本」には、猫など出ていないらしい。
事件には無関係だろう。
だが、一応記憶には留めておく。
敷居に積もる雪を足で払い、勝手口を閉めた。
- 491 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:47:55 ID:S0SugGdIO
- しえ
- 492 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:49:36 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「出ますか」
鼻が麻痺してきた、と呟き、ショボンはいち早く台所から脱出する。
廊下に照明はない。
ペンライトを床に向けながら歩く。
(´・ω・`)「台所を出て、自室へ……」
ヒールの部屋。
入口前の廊下に血痕らしき染みがある。
開けっ放しの障子。電気は消えている。
中には入らずに、ライトの明かりだけで畳や壁を観察した。
微量の血が手前の畳に散っている。
(´・_ゝ・`)「この辺で腕を切られたわけか」
(´・ω・`)「話通りなら」
部屋を離れた。ここは、もういい。
廊下を照らし、光に浮かぶ血痕を辿りながら進む。
(´・ω・`)「逃げたヒールさんをブーンが追った。
……ビロードちゃんは、トイレに来たのかな?
この血痕に気付き、奥の座敷へ向かった――ってとこか」
呟き、ショボンは「ん?」と声を零した。
- 493 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:51:45 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「いや、……ううん……。後で本人に訊くか」
/ ,' 3「?」
突き当たり。
右に曲がれば、真正面にトイレ。右手側に洗面所、左手側にフサの部屋。
(´・ω・`)「……ヒールさんの部屋からここに来るまでで、段々血の量が増えてるな」
(´・_ゝ・`)「そうだね」
(´・ω・`)「そんなに大きな傷じゃなかった筈だけど」
座敷に上がる。
電気はつけられたままだ。
ペンライトをしまい、今度はボールペンを出す。
(´・ω・`)「ちょいと失礼」
部屋の中央で死体を覆うシーツ――フィレンクトが荒巻にかけさせたもの――をめくり、
ショボンはフサをまじまじと見つめた。
寝間着は胸元から腹までが血に染まっている。
最も汚れの酷い箇所を、ボールペンの先で軽く触れた。
- 494 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:53:38 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「胸をぐさり、だね」
(´・_ゝ・`)「他に傷は?」
(´・ω・`)「なさそうだ」
シーツをかけ直し、腰を上げる。
人体に、ましてや死体に造詣が深い者などこの場にはいない。
胸を刺されて死んだ。ショボンに分かるのは、これぐらいだ。
J(;'ー`)し「本当に……。……ああ……」
突然、カーチャンが消え入りそうな声をあげた。
畳の上にへたり込む。
(´・_ゝ・`)「どうしました」
J(;'ー`)し「だ、大事な、本家からの預かり人なのに……。
それに、私達の息子が本家に雇われているんですよ……どうしましょう……」
/ ,' 3「うむ……」
ショボンは彼らに背を向けて、嘲りに似た笑みを浮かべた。
――心配なのは、本家から自分達に下される処分だけか。
フサが可哀相などとは、誰も思っていないらしい。
- 495 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:54:36 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「大丈夫ですよ、多分」
J(;'ー`)し「……大丈夫って……?」
(´・ω・`)「あなた達へのお咎めは、ないと思います」
きっと。
フサの実家である「本家」も、彼の死に心を痛めはしないだろう。
(´・ω・`)(哀れな奴だな、あんた。……若菜フサ)
――どうせ、フサの自業自得だ。
*****
- 496 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:57:38 ID:AM0GaDYIO
『若菜さんのところのね、三男なんですよ。
いい歳して働きもしないで、家に閉じこもってて。外出するのは散歩ぐらい――え?
ああ、はいはい、本題ね……』
『……私が話した、って誰にも言わないでくださいよ?
うん。……絶対ですよ』
『――女の子にね、あのう……いたずらしたんですって』
『誰って。だから……フサさんが』
『女の子っていっても、二十歳とかそこらじゃありませんよ。
本当に子供。小学生』
『しかも、過去のも合わせると1人2人じゃないらしいんです。
ほら、あの家、大きいでしょう? 使用人もいっぱいいるし、
お手伝いさん達が家族揃って住み込みで働いてるんですよ』
『……うん、そう。昔からね、使用人の娘さん達、何人も被害に遭ってたそうです。
子供ばっかり。小学生とか中学生とか。
まあ、それでも内部だけでの問題だったから、隠してきてたみたいなんですけど』
『ついに、今年の……春でしたかね。
使用人とかじゃなくって、外の、一般の女の子に手を出しちゃいまして。
ええ。酷い話です。何考えてるんでしょう。年端もいかない子に――』
- 497 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 00:59:31 ID:viFGsgZg0
- ロリコンゴミ野郎か。
- 498 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:00:40 ID:AM0GaDYIO
『――続き? あ、ごめんなさい。
それで若菜さんね、……ほら、そんな人が身内から出たなんて、公にしたくないでしょう。
お金やコネをいっぱい使って、揉み消したらしいです』
『揉み消しても、私みたいな近所の人間は知っちゃいましたけどね。
口止めはされてますよ。だから、私がバラしたってのは黙っててくださいね、本当に』
『で、肝心のフサさん。
さすがにこのまま置いておくわけにはいかないってんで、親戚の家に預けたとか』
『……ほとぼりが冷めるまで、なんてフサさんには言って聞かせたらしいですけど。
多分ね、帰ってこないと思いますよ。
厄介払い出来たんだから――』
.
- 499 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:03:00 ID:AM0GaDYIO
ニュッはボイスレコーダーの停止ボタンを押した。
もう一回聴くか、とツンにレコーダーを差し出したが、丁重に断られる。
( ^ν^)「……これじゃあ『本』とか関係なく……」
ξ゚听)ξ「ビロードはフサに狙われてたかもしれないわね」
ζ(゚、゚;ζ「うん……」
人差し指でこめかみを掻き、ニュッは書類に目を落とした。
妙だ。
どうにも、腑に落ちぬ点がある。
( ^ν^)「……」
( <●><●>)「――で、あなた方は何をしているんですか」
ζ(゚、゚;ζ「ほぎゃっ!」
デレが肩を跳ねさせる。
ワカッテマスが近寄っていたことに気付かなかった。
隣室、若菜夫妻の部屋から、ワカッテマスが訝しむようにニュッ達を見つめている。
怯えきっているデレの頭を叩いた。
ワカッテマスを疑っていることを、本人に悟られてはいけない。
- 500 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:06:00 ID:AM0GaDYIO
( <●><●>)「遮木さんのお手伝いをしなくていいんですか?」
ξ゚听)ξ「一応、立派な仕事中です」
書類とレコーダーを鞄に戻す。
ニュッが探し物をしているのだと返すと、ワカッテマスは瞳をぎょろりと動かした。
( <●><●>)「探し物?」
( ^ν^)「……丁度いい。あんたの部屋も探させてもらう」
ζ(゚、゚;ζ「あ、ニュッさん」
返事を待たず、ニュッはワカッテマスのもとへ近付いていく。
遠慮も何もない。
デレは小走りに、ツンはゆったりとついてくる。
(;^ω^)「ニュッ君、あんまり変なことするんじゃないおー?」
居間から内藤が釘を刺してきた。
夫婦の寝室である。
たしかに赤の他人が物色するのは、いかがなものか。
後ろでデレが同じことを指摘してきた。
内藤やツンはともかく、デレに注意されるのは癪に障る。
- 501 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:08:57 ID:AM0GaDYIO
(;<●><●>)「こら!」
ノハ;゚听)「ワカ、あんまり怒るなって」
(;<●><●>)「はあ? ……ヒート、あなたの部屋でもあるんですよ?」
ノハ;゚听)「事件の解決に役立つなら、私達の部屋ぐらい好きにされてもいいだろ」
(;<●><●>)「解決が目的だって言うなら尚更ですよ!
何の関係もないのに漁られるなんて……」
(‘_L’)「ワカッテマス」
(;<●><●>)「……っ」
( ^ν^)(……本棚)
まずは本棚を探る。
文庫本、辞書、詩集や画集。
現在では絶版となり、手に入れにくい本まであった。
少しばかり読んでみたくなったが、我慢して棚に戻す。
デミタスの本は見付からない。
- 502 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:10:22 ID:AM0GaDYIO
( ^ν^)「……箪笥」
次に箪笥の中を探そうかと考えたものの、女性の衣類が入っているとなると、
いくらニュッでも怯む。
顎をしゃくり、ツンに指図した。
ξ゚听)ξ「開けていいですか?」
(;<●><●>)「――散らかさないでくださいよ」
諦めた様子でワカッテマスが頷く。
ごめんなさい、と内藤が代わりに謝った。
ζ(゚、゚;ζ「……ニュッさんったら強引……」
( ^ν^)「黙れ」
ツンが箪笥の引き出しを開ける。
しまわれている衣服を両手で押し、本のような硬い感触がないか確かめた。
続いて下の段へ手をかける。
- 503 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:15:04 ID:AM0GaDYIO
その間に、ニュッは文机へ目をつけた。
( ^ν^)「あっちのも開けていいか」
(;<●><●>)「好きになさい」
(;^ω^)「本っ当にごめんなさいお! ニュッ君せめて敬語つかって!!」
(;><)「いっそ尊敬するほどの傍若無人ぶりなんです……」
一段目の取っ手を掴み――ふと、ニュッは机上へ意識を向けた。
気になるものがあったのだ。
透明なプラスチックのケース。
錠剤や吸入薬など、数種類の薬が入っている。
( ^ν^)「……誰の薬だ?」
( <●><●>)「私のものです。喘息の薬と、あと……こっちのは睡眠薬」
ζ(゚、゚*ζ「睡眠薬ですか」
( <●><●>)「一時期、精神的な疲れなどで眠りづらいときがありまして。
今は使ってませんよ」
- 504 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:17:10 ID:AM0GaDYIO
睡眠薬。
物語の中にも、それは登場している。
――真犯人が被害者を殺す際に使用するのだ。
「これです」と言いながら、ワカッテマスは、錠剤が入ったパッケージを拾い上げた。
( <●><●>)「あまり強いものではありませんが――」
口が止まる。
じっと睡眠薬を眺め、ワカッテマスは居間に振り返った。
( <●><●>)「ヒート、飲みました?」
ノパ听)「え? それ? 飲んでないぞ」
( <●><●>)「……勘違いですかね」
川;` ゥ´)「……」
ニュッは、ヒールがそわそわしているのに気付いた。
ワカッテマスの手元と自分の膝を交互に見遣っている。
彼女の様子がおかしいのをデレとビロードも感じ取ったようだった。
- 505 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:19:50 ID:AM0GaDYIO
ζ(゚、゚*ζ「……ヒールさん、何かありました?」
川;` ゥ´)「えっ」
( ><)「お薬、気にしてるみたいなんです」
川;` ゥ´)「いや、別に。何も……」
怪しい。
とてつもなく怪しい。
ワカッテマスの口ぶりからして、減っているのだろう。睡眠薬が。
誰かに使われたというわけだ。
( ^ν^)(……けど)
だが、どうして、わざわざそれを臭わせるような発言をするのか。
彼が犯人だというなら、隠すのが普通だと思うのだが。
実際、本の中で、真犯人は睡眠薬の存在を隠すために色々と工作していたし。
- 506 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:21:31 ID:AM0GaDYIO
嫌な予感がする。
まさか。
とんでもない、勘違いを。
( ^ν^)「おい」
( <●><●>)「何です」
( ^ν^)「他のは全部、喘息の薬なんだな」
( <●><●>)「そうですよ」
ニュッの中で、考えが根底から覆されそうになっている。
しかし覆してしまったら、一から推理をし直さなくてはならない。
最悪の場合、自分達が首を突っ込む理由がなくなってしまう。
彼は焦り始めていた。
何でもいいから、手掛かりが欲しい。
( ^ν^)「喘息って、あんたの症状は軽いのか?」
( <●><●>)「まあ、私の場合は大したものでは――」
(‘_L’)「ワカッテマスは11歳のときに酷い風邪を引いた」
唐突に、フィレンクトの声が飛んできた。
ニュッへの返事なのだろうが、視線はヒールに向けられている。
- 507 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:25:56 ID:AM0GaDYIO
(‘_L’)「そのせいで喘息を発症したんだ。
――かなり重くてな、度々発作を起こしては病院へ連れていった。
そうだろう、ワカッテマス」
( <●><●>)「……はあ。そうです」
( <●><●>)「ただ、大人になってからは、だいぶ軽くなりましたよ。
……ニュッさん、それが何か?」
( ^ν^)「……」
引っ掛かる。
ワカッテマスの話が、ではない。
――何故、いきなりフィレンクトが会話に割り込んできたのか。
単に、喘息持ちだから薬をもらっている、と言えばいいだけの話だ。
恐らくフィレンクトが黙っていたら、
ワカッテマスもわざわざ風邪だの何だのといった説明はしなかったであろう。
(‘_L’)「……荒巻から」
( ^ν^)「あ?」
(‘_L’)「荒巻から、私の腕のことを聞いたそうだな」
( ^ν^)「……」
聞いた。
たしかに聞いたが。
何が言いたいのだ、この老人は。
- 508 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:29:01 ID:AM0GaDYIO
ξ゚听)ξ「あら」
( ^ν^)「……どうした」
ξ゚听)ξ「本が……あ、何だ、アルバムだわ」
ノハ*゚听)「うおっ、懐かしい」
一番下の段から引っ張り出したものを見て、ツンは肩を竦めた。
てっきり本だと思ったが、単なるアルバムだった。
ヒートが居間から寝室へと移動し、見せて、とツンに手を伸ばす。
ノハ*゚听)「ビロードが赤ちゃんの頃の写真が入ってるんだ」
ζ(゚、゚*ζ「えっ、見たいです」
ノハ*゚听)「ほらほら」
アルバムを開くヒートにデレが歩み寄った。
可愛い、と2人できゃあきゃあ黄色い声をあげている。
- 509 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:30:38 ID:AM0GaDYIO
(;<●><●>)「あのねヒート、今はそういうことしてる場合じゃないんですよ?」
ノハ*゚听)「これが生まれてから2週間ぐらいのときで……」
ζ(゚ー゚*ζ「ビロードちゃん可愛いねえ」
(*><)「そうですか?」
(;<●><●>)「さっきから気になってたんですが私の方がおかしいんですか?
殺人事件があったっていうのに、みんな思い思いの行動とりすぎじゃ……」
( ^ω^)「ワカッテマスさん、なかなか苦労していらっしゃるようで」
(;<●><●>)「言っときますが、君も心労の一因ですからね。
……あれ? というか、君が一番のんびりしてちゃいけないんじゃないですか。
君への疑いが一番濃厚なんですよ? 分かってます?」
( ^ω^)「その辺に関してはあんまり心配してませんお。
あのしょぼくれ下衆探偵、腕は確かなので」
ツンが息をついた。
内藤がいつもの調子に戻ってきたので、安心したのだろう。
- 510 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:33:52 ID:AM0GaDYIO
ノハ*゚听)「これ、お宮参り行く前に撮った写真でさあ」
ζ(゚ー゚*ζ「ぷにぷにしてますね! いいなあ、触りたい」
( ^ν^)「てめえもぷにぷにしてんだろうが」
ζ(゚ー゚;ζ「えっ!? し、してなっ……いや……まあ……。
たしかに最近図書館でお菓子たくさん食べてるからちょっと……」
冗談のつもりだったが本気にとられてしまった。
まあ、どうでもいい。
ニュッはデレの傍へ行き、写真を覗き込んだ。
布団に横たわる赤ん坊の横に山吹色の産着が広げられている。
何とも立派で豪奢な柄だ。胸の部分には家紋。さぞ金をかけたのだろう。
その下に、老婦が赤ん坊を抱いている写真があった。
宮参りの様子らしい。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ニュッさんも見ます? 赤ちゃんって可愛へぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
へらへら笑うデレ。
とりあえず、耳たぶを思いきり捩上げた。
ζ(;、;*ζ「急!!」
ξ゚听)ξ「いつも急でしょう、ニュッ君の暴力は」
- 511 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:35:36 ID:AM0GaDYIO
( ^ν^)「……この写真の婆さんは?」
(‘_L’)「私の妻だ」
( ><)「お祖母ちゃん、写真でしか知らないんです」
( <●><●>)「ビロードが2歳の頃に死んでしまいましたからね」
ノパ听)「ビロードのこと、すっごく可愛がってたんだぞ。
あの産着もお義母様が用意してくれてな……」
ニュッは、ヒートの言葉に顔を上げた。
( ^ν^)「こっち――旦那側の実家が用意したのか」
必ずそうでなければならない、というわけではないが、
嫁の実家が準備をするのが一般的ではなかろうか。
少なくとも、こういった家柄ではその辺りにこだわりそうなものだが。
- 512 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:37:42 ID:AM0GaDYIO
ニュッの問いに答えたのは、またもやフィレンクト。
(‘_L’)「ヒートとピャー子には、両親がいない」
川;` ゥ´)「……」
ζ(゚、゚*ζ「いない?」
ノパ听)「私が高校……2年で、ヒールが小学1年生ぐらいだったかな。
両親が死んじゃったんだ」
( ^ω^)「……へえ」
一緒だな、と、ヒートが内藤とニュッへ微笑を向ける
何だか居た堪れなくて、ニュッは俯いた。
ヒートは内藤達の祖父を知っている。
彼らにも親がいないことを、過去に聞いていたのだろう。
ξ゚听)ξ「ご両親が亡くなった後、どうしたんですか」
ノパ听)「うん。で、引き取り手もいなくてさ。
まあ私はもう高校生だったし、1人でも暮らしてはいけたんだけど。
……ヒールがまだ小さかったからな。どうしていいか、分かんなかった」
ヒートの話を聞きながら、ヒールが膝の上に乗せた手を握り込んだ。
先程から挙動不審ぶりが目立つ。
彼女の中に閉じ込められているものは、果たして何なのか。
- 513 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:40:07 ID:AM0GaDYIO
ノパ听)「そしたら、ここに声をかけられたんだ。
旦那様――お義父様の父上が、私達を住み込みで働かせてくれた」
ζ(゚、゚*ζ「ヒートさん、元々お手伝いさんだったんですね」
ノパ听)「ああ」
ヒールが小間使いとして働いているのは昔の名残か。
カーチャンが、「奥様」であるヒートを呼び捨てにしていたのも同じ理由だろう。
( <●><●>)「まだ幼かったピャー子はともかく、ヒートときたら……。
17にもなって落ち着きはないし不器用だし頭は悪いし、がさつ者で。
見兼ねて、私が直々に教育したんですよ」
ノパ听)「お昼は役場で働いて、夜には私の先生やって。
あの頃のワカ、無茶してたなあ」
それが夫婦の馴れ初め。
デレと内藤なんかは興味深そうに聞いているが、
ニュッは、ヒールの方へと注意を向けていた。
若菜家において、ヒールの立場は一番下だ。
地位だけの話ではない。
行き場をなくした幼子の時分に、姉と共に拾ってもらえたという恩義がある。
ニュッはデレの横から手を伸ばし、アルバムのページをめくった。
あの老婦――ビロードにとっての祖母――が、ドレス姿のビロードを抱えている。
- 514 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:40:24 ID:J6gZkRCw0
- これがリアルタイム遭遇…… 感動だ
- 515 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:45:13 ID:AM0GaDYIO
ζ(゚、゚*ζ「……ニュッさん?」
( ><)「どうしたんです? 難しい顔して」
( ^ν^)「……うるせえ」
ζ(゚、゚;ζ「ほぎゃんっ!」
(;><)「あのお兄さんはお姉さんが嫌いなんですか……?
それとも喧嘩中なんですか」
( ^ω^)「通常運転だお」
デレの額に、でこぴんをかます。
痛いと喚くデレを睨みつけてやれば、すっかり黙り込んだ。
集中。思考に専念する。
- 516 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:46:40 ID:AM0GaDYIO
そういえば。
おかしなところがあったように思う。
妙に気になるところが。
( ^ν^)「――……」
とっ散らかっていた要素が、繋がった。
ζ(゚、゚;ζ「ニュッさん!?」
(;^ω^)「どうしたんだお!」
ニュッは居間を抜け、廊下に出た。
早く、ショボンとデミタスに話さなければならない。
*****
- 517 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:48:05 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「これか、酒が入ってたの」
ショボンは、布団の脇にある盆を見下ろした。
徳利と猪口、小皿が乗っている。
フサの日課、寝酒のセット。
徳利を持ち上げ、軽く振ってみる。空だ。
(´・ω・`)「んで、こっちが……つまみ?」
(´・_ゝ・`)「だね。塩辛か」
小皿に盛られているのはイカの塩辛。
ほとんど手をつけられていないようである。
(´・ω・`)「フサさんって塩辛は嫌いでした?」
J( 'ー`)し「いいえ……好んで食べてたみたいですよ。
塩辛を切らしてしまったとき、フサ様に怒られたとピャー子が愚痴っていましたし」
(´・ω・`)「なら、何故こんなに残したんでしょうね」
呟きを漏らし、ショボンは――
- 518 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:50:50 ID:AM0GaDYIO
――塩辛を一抓み、口に運んだ。
J(;'ー`)し「なっ」
(;´・_ゝ・`)「おおおい!? それは駄目だろショボン君!!」
明らかに「必要最低限」の域を越えた行動に、デミタス達が慌てふためく。
ショボン本人はというと、数秒も経たぬ内に顔を歪め、ぶんぶん頭を振り始めた。
無理矢理塩辛を飲み込み、咳をする。
(;´・_ゝ・`)「ショボン君、大丈夫か?」
J(;'ー`)し「ま、まさか毒とか……!」
(;´・ω・`)「くっっっそ不味い!!」
(;´・_ゝ・`)「……へ?」
(;´・ω・`)「何だ、何だこれ……ふざけんな……おい、ちょっと――これって手作りか?
……失礼。手作りですか?」
J(;'ー`)し「いいえ、市販のものですよ。……ですよね、あなた」
/;,' 3「あ、ああ。そんなに酷いのですか?」
- 519 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:53:42 ID:AM0GaDYIO
(;´・ω・`)「……塩と……唐辛子か? 馬鹿みたいに調味料がぶち込まれてやがる」
舌がひりつく。
喉を撫でながら、ショボンは立ち上がった。
この塩辛は、事件の中でどんな役割を果たしたというのだろう。
重要そうではあるが、あまり考えたくない。味を思い出したくない。
腹立たしいほど不味かった。
冷や汗を拭い、視線を移す。
気になったことがもう一つある。先にそちらを済ませてしまおう。
(´・ω・`)「ああー……っと。そこの畳、他のより新しくありません?」
/;,' 3「は……」
部屋の右側、手前の畳。
他の畳に比べて、ほんの少し――ごくごく僅かに――青みが強い。
目敏いというか、細かすぎる。
荒巻とデミタスが、呆れ果てた表情を浮かべた。
/;,' 3「ええ……以前、一畳だけ取り替えましたが」
(´・ω・`)「一畳だけ? そりゃあまた、どうして」
/ ,' 3「さあて。私共も知りません。
理由を知っているのは、ピャー子と業者、フサ様のみでございます」
- 520 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:56:56 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「ふうん……『以前』って、具体的には?」
/ ,' 3「はて……」
J( 'ー`)し「ほら、あれですよ。ぽぽちゃんが死んじゃったのと同じ日」
/ ,' 3「ああ、そうだったか」
J( 'ー`)し「その日に、畳を取り替えたいってピャー子が……」
(´・ω・`)「ほうほう」
カーチャンの答えに、ショボンは浅く頷いた。
猫が死んだ日に畳を替えたがったのか。
その2つの事実同士は、無関係ではなかろう。
( ^ν^)「――ショボン!」
(´・ω・`)「あれ、ニュッ君」
突如、ニュッが駆け込んできた。
彼が急ぐなど珍しい。
- 521 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 01:59:50 ID:AM0GaDYIO
(´・_ゝ・`)「どうした?」
( ^ν^)「これ――本じゃねえ。誰も、演じさせられてなんかないんだ」
/;,' 3「……本?」
きょとんとする荒巻夫妻を置いて、ニュッが、彼の考えを話し始めた。
本の仕業ではないという根拠。
本と現実の相違点。
それを聞き、ショボンは口元だけに笑みを浮かべる。
( ^ν^)「――ってことだと思う」
(´・ω・`)「はあ……なるほどね。
荒巻さん。今のニュッ君の話、間違ってます?」
隣で立ち尽くしていた荒巻は、ゆるゆる、首を横に振った。
正しいです、と、カーチャンが小声で答える。
- 522 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:02:10 ID:.ue5DyN.O
- なんと
- 523 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:04:41 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「ははっ。ニュッ君、でかした。
他に何か気になったことある?」
ニュッは数秒考えてから、睡眠薬や、ヒートとヒールの過去などについて説明した。
新たに得た情報と、これまで自分で調べた情報を脳内で掛け合わせていく。
段々と浮かび上がってくる「真実」に、ショボンは顔を顰めた。
(´・_ゝ・`)「と、なると――真犯人は、ワカッテマスさんじゃないのかな?」
/;,' 3「わ、若旦那様が何か?」
(;´・_ゝ・`)「いや、何でもないです」
( ^ν^)「……誰が犯人かは、まだ分かんねえ」
(´・ω・`)「いや」
( ^ν^)「?」
(´・ω・`)「分かったかもしれない」
ボールペンを、くるり、指先で回す。
そして胸ポケットへしまうと、ショボンは廊下に出た。
- 524 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:06:49 ID:AM0GaDYIO
(´・ω・`)「居間に行こうか。解決編は、全員揃ってこそだ」
さて。
これが終わったら、内藤にいくら請求してやろうか。
そんなことを考えながら、意気揚々と足を進めた。
第七話 続く
- 525 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:08:25 ID:S0SugGdIO
- うおお寸止め
乙
- 526 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:08:34 ID:KvnmGarU0
- 乙ー
- 527 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:09:06 ID:o2OkEo9sO
- おつ
相変わらずのクオリティ……てか作者、字きれいだなwww
- 528 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:09:32 ID:.ue5DyN.O
- おつ!
後編wktk
- 529 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:10:01 ID:viFGsgZg0
- 寸止めか! 乙!
次回まで全裸待機しとくわ!
- 530 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:13:56 ID:AM0GaDYIO
- 投下終わり!!
次回投下は今週中……か、来週中
読んでくれた方、支援してくれた方、芸さん、いっぷくさん、皆さんありがとうございました!
しおり的な目次的な
六話後 >>108
七話前 >>261
七話中 >>416
ではでは
- 531 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:15:26 ID:TaFoZ3TwO
- なんとまぁいいところで……!! 乙!!
- 532 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:17:18 ID:Iw.vYurMO
- 乙!
続きが楽しみだー
- 533 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 02:20:18 ID:mo.fM8bIO
- 乙!
すごい気になる
ニュッ君視点が入ったのは初めてかな?
- 534 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 12:20:18 ID:1A5Gm.yoO
- 生殺しとはたまげたなぁ
乙
- 535 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 12:51:30 ID:HjD1xI8QO
- だから男の娘ってのは、横綱番付見たりしてそこに妙な憧れを持っちゃった厨二病が「俺の性癖特殊wwwうはwwwww」ってアブノーマルアピールするためだけの属性だろ。
結局は女顔の女装少年だろ。ホモと何が違うんだよ?
ホモって表現が気に入らないならショタでもゲイでもなんでもいいけどさ。男の娘にしかないものなんてないだろ?見た目が女な分アブノーマルでも比較的ライトな部類だから好きって言ってみてるだけだろ?
- 536 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 12:52:54 ID:qpkqcEVA0
- 誤爆乙
- 537 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 12:53:10 ID:HjD1xI8QO
- 長文誤爆とかwwwww
申しわけない。大変失礼いたしました。
- 538 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 13:07:21 ID:T0NkWmvU0
- 続き気になるなぁ
乙です
- 539 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 21:19:08 ID:fJHEL3cA0
- http://uproda.2ch-library.com/404672vg7/lib404672.jpg
誰が誰だかわかんね
- 540 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 22:44:11 ID:B157Vs8Q0
- 乙
- 541 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 22:45:17 ID:mo.fM8bIO
- スキャナの調子が悪いのか
コピックが悪いのか
http://d2.upup.be/MuccU0qnPL
- 542 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/18(月) 23:05:57 ID:AM0GaDYIO
- >>539
いっぱいいる! ありがとうございます
みんな可愛らしいけど特にキュートがすごく可愛い。右下の椎出姉妹でちょっと吹いたwww
>>541
またもやいっぱいいる! しぃの胸に目が行く。やたら目が行く
ニュッが格好いい。ありがとうございます!
- 543 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/19(火) 07:40:50 ID:J4wKZDd.O
- >>541
下手なせいか下の方よく分からん…
- 544 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/19(火) 09:53:46 ID:FiuMa516O
- 右:モラショボ
左:ハロデミ
だと思ってた。
- 545 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/19(火) 11:26:02 ID:5tG.liGwO
- >>544
ありがとう
- 546 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/19(火) 13:43:19 ID:01DcMnc2O
- 乙です!続きが気になる!
http://imepic.jp/20110719/490360
http://imepic.jp/20110719/490710
- 547 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/19(火) 19:30:44 ID:L2DxjXwAO
- >>546
おお、Wしょぼくれ眉毛。前にも思ったけど、絵の雰囲気がすごく好きです
そしてショボンかっけえええ。ありがとうございました!
- 548 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/20(水) 07:27:00 ID:WYrakRrgO
- >>546
手抜き感がいいよね。楽そうでw
- 549 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 22:57:05 ID:XtKea2ngO
- >>548
さては絵を描いた事ねえな?
あのイラストどんだけのセンスがいるか知らねーから言えるんだよ
- 550 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 23:23:54 ID:IQvzFEHcO
- お互いそういう決め付けは良くない
本人にしかわからないことだし、他人が語るものではないよ
後編の投下楽しみ〜
- 551 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/21(木) 23:51:14 ID:jf1/lVLcO
- >>550
濡れた
抱けよ
- 552 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/22(金) 17:57:10 ID:tPsojB8.0
- まあ簡単っぽそうだけどいざ描くとなると結構難しいんだよな
- 553 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/22(金) 18:02:25 ID:R7X4xH8A0
- 今見たけど、影絵?みたいでなにこれ素敵
俺には描けそうにないな
- 554 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/22(金) 19:38:14 ID:TebxXabUO
- >>529がそろそろ風邪ひくころだな
- 555 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 08:49:57 ID:IvWSWg/kO
- なんでわざわざ擬人化するんだろうか
- 556 名前:!ninja:2011/07/23(土) 17:21:50 ID:kEl/a/PU0
- そりゃおまえショボンの顔がそのまましょぼくれてたら
なんかいやだろ
- 557 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:33:47 ID:O2WumhgwO
- 七話後編投下しマイウェイ
※一部ほんのり閲覧注意
- 558 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:35:29 ID:NSYexOj.O
- うおぉ!!
待ってた!!
- 559 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:35:42 ID:O2WumhgwO
――若菜君。
(‘_L’)『はい』
( ´∀`)『孫とは可愛いものモナね』
十数年前の、夏が近付き始めた頃であったか。
膝に乗せた本を眺めながら呟いた知人の言葉に、フィレンクトは苦笑した。
ふ、と零れた息が、湯飲み茶碗の中身を揺らす。
茶を一口飲み、返事をした。
(‘_L’)『お珍しいことを』
本当に珍しい。
この知人は、可愛いだの何だのといった前向きな褒め言葉を滅多に口にしない。
人嫌いなのだ。
話題になっている孫とさえ、かつては年に一度会うか会わないかといったほど。
今だって、部屋の中にいるフィレンクトに対し、知人は縁側に座っている。
至近距離で向かい合ったことなど、数えるくらいしかない筈だ。
- 560 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:36:02 ID:bE0hGcLE0
- 待ってた!
- 561 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:37:47 ID:O2WumhgwO
( ´∀`)『僕も、あんなに可愛いものだとは思ってなかったモナ』
はて、どうしてこんな人と仲良くしているのかとフィレンクトは首を捻る。
たしか、彼がこの家に押しかけてきたのが出会いだった。
若菜家――ここではなく、本家の方――は、大量の文献を保管している。
それを知った彼が、人嫌いなくせに無駄に豊富な人脈を辿って
フィレンクトのもとに来たのだ。
以来、本家とのパイプとしてフィレンクトと交流を持つようになった。らしいのだが。
最近は、わざわざここまで来て雑談だけして帰るぐらいには
「友」として認識しだしてくれたようである。
その変化は、彼が息子2人を亡くし、孫を引き取ってから始まった気がする。
(‘_L’)『それで、可愛い孫がどうしたんです』
( ´∀`)『……愛情の示し方が、よく分からんモナ』
今度は苦笑に留まらず、笑い声が漏れた。
愛情、と来たか。
( ´∀`)『何を笑ってるモナ』
(‘_L’)『いや、お気になさらず』
( ´∀`)『ったく……。
……彼らの幸せのために尽力したいけれど、その限度が分からないんだモナ』
- 562 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:39:16 ID:O2WumhgwO
( ´∀`)『一から十まで僕がお膳立てしてしまっては、孫のためにはならないモナね。
かといって、程々のラインを判断するのも難しいモナ』
(‘_L’)『ろくに構ってこなかったツケですよ』
( ´∀`)『そうモナねえ……』
こくり。
知人が煎茶を飲む音がする。
ことり。
知人が湯飲みを置く音がする。
( ´∀`)『でも、僕の見立てによれば――君も、結構なジジ馬鹿になりそうモナ』
(;‘_L’)『ジジ馬鹿ですか』
( ´∀`)『しかも君の奥さんなんか特に孫への愛情が凄そうモナ。
君も彼女も、暴走しないように注意するモナよ』
どう暴走するというのだろう。
気を付けます、とだけ返してから、茶のおかわりはいらないか訊ねた。
それから数年後、フィレンクトは、知人の忠告を思い知らされることとなる。
- 563 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:40:29 ID:O2WumhgwO
第七話 あな気難しや、ミステリ小説・後編
.
- 564 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:41:19 ID:O2WumhgwO
舌と喉が、ひりつく。
廊下を歩きながらショボンは後ろの荒巻へ呼び掛けた。
(´・ω・`)「荒巻さん」
/;,' 3「はい」
(´・ω・`)「……ちょっと、水を一杯もらえます?」
/;,' 3「水?」
(´・ω・`)「塩辛がなかなか強力でして」
――さあ、探偵様の晴れ舞台だ。
外の吹雪は、弱まり始めている。
*****
- 565 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:42:38 ID:O2WumhgwO
(;><)「あのお兄さん、どうしたんですか?」
ζ(゚、゚;ζ「さあ……」
ビロードの問いに、デレは答えられなかった。
訊かれても困る。ニュッの考えなど、デレに分かる筈がない。
目を逸らし、文机を見下ろした。
ペンや定規が収まっているペン立て。
大学ノート、メモ帳。
そして薬の入ったケース。
川;` ゥ´)
ヒールは睡眠薬が気になっているようだったが、どうしたのだろう。
( <●><●>)「……何を探してるんですか?」
ζ(゚、゚;ζ「え」
ワカッテマスに声をかけられ、ぎくりとした。
「真犯人」。
涼しい顔をして、その手でフサを殺した――かもしれない男。
- 566 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:44:15 ID:O2WumhgwO
( <●><●>)「アルバムを見付けたときの反応からして、本を探してるようですが」
鋭い。
デレが詰まる。
ζ(゚ー゚;ζ「えっと……」
ノパ听)「私も探すの手伝おうか?」
ζ(゚ー゚;ζ「いえっ、大丈夫です大丈夫です!」
( <●><●>)「ヒートはおとなしくしていなさい。
身重の体で無茶しないように」
ノパ听)「無茶って程じゃないだろー」
その内、複数人の足音が近付いてきた。
若菜夫妻の寝室と居間にいる全員が黙り込み、廊下に注目する。
間もなく、ショボンが現れた。
(´・ω・`)「やあ」
ξ゚听)ξ「ショボン」
(‘_L’)「……そろそろ、終わりか」
川;` ゥ´)「え?」
- 567 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:46:43 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「全員!」
人差し指を立て、腕を真上に伸ばす。
その手を振り下ろし、居間の畳へ向けた。
(´・ω・`)「正座!」
静寂。
内藤が白い目でショボンを見た。
( ^ω^)「……いきなり何なんだお、お前は」
(´・ω・`)「名探偵ショボン様の華麗なる推理をお披露目する。
お前らは拝聴する立場なんだから尊敬と感謝の念を込めて正座しろ」
(;><)「何か急にすごく偉そうなんです!?」
(;<●><●>)「またお酒飲んだんですか?」
ξ゚听)ξ「あれで平常通りです」
(´・ω・`)「これから長いこと話すからね。ちょいちょい地が出るけど、お気になさらず」
どうやら猫を被るのをやめたらしい。
後ろに控えていた荒巻達にも正座を強要している。
- 568 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:48:28 ID:O2WumhgwO
(‘_L’)「――全て、分かったのか」
(´・ω・`)「ある程度。まあ、まず最初に確認したいことがありますが。
おら正座だ正座」
(#^ω^)「ぐぬっ……てめっ、ふざけんなお……!」
内藤の顔面に足の裏を押しつけるショボン。
探偵というよりチンピラだ。
ξ゚听)ξ「正座とは言わないけど、みんな座りましょう。
長い話になるようだし」
(´・ω・`)「犯人さん、名乗り出るなら今の内ですよおー。はい挙手ー」
勿論、手を挙げる者はいなかった。
ショボンは全員の顔を見渡し、最後にヒールを睨む。
(´・ω・`)「いいんだな」
川;` ゥ´)「……」
(´・ω・`)「……よし、じゃあ始めようか」
- 569 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:50:44 ID:O2WumhgwO
ワカッテマスやヒート達が腰を下ろしていく。
ヒールと内藤の2人はショボンの指示により、一番前、皆に向かい合う形で座らされた。
ζ(゚、゚;ζ「あ、ニュッさん……本、どうなったんです?」
居間に上がり込むニュッとデミタス。
デレがニュッに問い掛けると、彼は首を小さく振った。
( ^ν^)「……関係なかった」
ζ(゚、゚;ζ「えっ」
( ^ν^)「本、関係なかった」
ニュッがどっかりと座り込んだ。
彼を眺めながら、デレは首を傾げる。
事件に本が関わっていないとなると。
――真犯人が、ワカッテマスではない可能性があるのか。
(;><)「犯人って誰なんでしょうね」
ζ(゚、゚;ζ「……さあ……分かんないや、ほんとに……」
全員が居間に収まることは出来なかった。
仕方なく、デレとツン、ビロードは若菜夫妻の部屋に落ち着いた。
- 570 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:52:14 ID:O2WumhgwO
デレの両隣にそれぞれツンとビロード。
目の前に胡座をかいたニュッ、その隣にデミタスがいる。
ふと横へ目をやると、ビロードが近くにあった文机に寄り掛かっていた。
もう3時を過ぎている。
状況が状況であるし、子供のビロードにかかる負担は計り知れない。
ζ(゚、゚*ζ「ビロードちゃん、大丈夫? 辛いなら横になってもいいよ。
膝枕しようか?」
( ><)「平気なんです……私も、探偵さんの推理が気になりますし」
(´・ω・`)「いい心掛けだ。――ビロードちゃん、君に一つ訊きたいことがある」
( ><)「何です?」
1人だけ立っているショボンが、ビロードのもとへ歩み寄ってきた。
しゃがみ込み、目線を合わせる。
(´・ω・`)「君はどうしてあの現場にいたのかな?」
( ><)「どうして、って?」
(´・ω・`)「ヒールさんの話とブーンの話、どちらにおいても、
君は突然現場にやって来たことになる。
何のためにフサさんの部屋へ行ったんだい?」
- 571 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:53:58 ID:O2WumhgwO
( <●><●>)「……何が言いたいんですか」
(´・ω・`)「おいおい焦るな焦るな。
言ったろ、最初に確認したいことがあるって」
ワカッテマスとショボンが睨み合う。
不穏な空気に怯えたか、ビロードは慌ててショボンの質問に答えた。
(;><)「あの、トイレに行ったんです」
(´・ω・`)「うん」
( ><)「そしたら、トイレの前に血が落ちてるのに気付いて……。
フサさんの部屋の方に続いてたから、
てっきりフサさんが怪我したのかと思って、様子を見に」
(´・ω・`)「それで?」
( ><)「ヒールさんが廊下にいて――あとは、ごめんなさい、あんまり覚えてないんです」
(´・ω・`)「まあ、思い出したいような光景じゃないしね。ありがとう。
トイレは? ちゃんと済ませた?」
(;><)「あ、そういえば……。すっかり尿意が失せちゃったんです……」
(´・ω・`)「そう。行きたくなったら言ってね」
- 572 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:55:28 ID:O2WumhgwO
ショボンは立ち上がり、内藤の隣へ移動する。
腕を組み、目を閉じ、深呼吸を一つ。
瞼を持ち上げた。
(´・ω・`)「まずはヒールさんの証言を崩そう」
ヒールが身を竦める。
ショボンは、彼女の後ろに立った。
(´・ω・`)「この人の話は、どうにもおかしい。
ブーンとの攻防に荒巻さん達が全然気付かなかったり、
近場にいる人間ではなく、わざわざ遠くにいるフサさんに助けを求めたり、ね」
(´・ω・`)「しかも――うちの優秀な目撃者によれば、
ヒールさんとフサさんは喧嘩をするくらい仲が悪かったそうじゃないですか」
川;` ゥ´)「……う……」
(´・ω・`)「さあ、ヒールさん、何か言いたいことは?」
川;` ゥ´)「……」
ノハ;゚听)「ヒール?」
妹の名を呼ぶヒートの声は、震えていた。
――どうして反論しないの。
ぽつりと落ちた問いに、ヒールは答えない。
- 573 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 18:58:12 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「ところで、ヒールさんとフサさんの不仲について皆さんご存知でした?」
/;,' 3「は……たまに、言い争う声がしましたが……。
ピャー子が『何でもない』と申しますもので、大事には考えておりませんでした」
J(;'ー`)し「それに、フサ様が身の回りの世話をピャー子に頼んでおりましたもの。
ピャー子のことを気に入っていたのだと、てっきり」
ζ(゚、゚;ζ(……そんなわけない)
デレは、心中でカーチャンの言葉を否定した。
フサがヒールに好意を持っていた筈がない。
ミ#,゚Д゚彡『いつもいつも……てめえなんか呼んでねえんだよ!!』
でなければ、あんなことを言うだろうか。
(´・ω・`)「それはフサさんから直接聞きました?」
J(;'ー`)し「いえ……ピャー子から」
(´・ω・`)「へえ」
ノハ;゚听)「――ま、……待って、ヒール、嘘つくような奴じゃないんだ……」
川;` ゥ´)「……姉さん」
- 574 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:00:16 ID:O2WumhgwO
ノハ;゚听)「ヒール、フサさんと仲良かったんだよな? なあ……」
( <●><●>)「……落ち着きなさい、ヒート」
(´・ω・`)「どうなんです、ヒールさん」
川;` ゥ´)「……あ、」
(´・ω・`)「フサさんとの仲」
川;` ゥ´)「――」
川;` ゥ´)「……良く、なかった……」
ひゅう、と、ヒートが息を吸い込む音が鳴った。
ヒールは俯く。
(´・ω・`)「と、いうわけで。
彼女がフサさんの部屋に逃げたってのは少し納得いきませんね」
( <●><●>)「しかし、だからって証言を嘘だと決めつけることは出来ません」
(´・ω・`)「ええ、そうです。もう少し話をしましょう。
――ヒールさん」
川;` ゥ´)「……何だよ」
(´・ω・`)「ブーンが、凶器の包丁を取るために台所に来たんでしたっけ?」
(;^ω^)「なっ……だ、台所なんざ入ってないお!」
川;` ゥ´)「う、うん……来た」
- 575 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:01:22 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「どうしてブーンだと分かったんです?」
川;` ゥ´)「……は?」
(´・ω・`)「台所の電気はつかなかった。真っ暗でしたね」
川;` ゥ´)「懐中電灯――」
(´・ω・`)「荒巻さんかカーチャンさんだと思って隠れたと言ったでしょう。
懐中電灯の明かりは消した筈だ。でなきゃ隠れた意味がないんだから。
ねえヒールさん、何でブーンが入ってきたと思ったんですか?」
(´・_ゝ・`)「……楽しそうだなあ」
ζ(゚、゚;ζ(うん)
デレの斜め前でデミタスが囁く。
詰問するショボンは、実に楽しそうだった。
- 576 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:03:33 ID:O2WumhgwO
川;` ゥ´)「――匂い!」
(´・ω・`)「あ?」
川;` ゥ´)「香水……内藤さんの香水の匂いがしたから!」
内藤が青ざめる。
たしかにあんな甘い香りを放っていれば、すぐに内藤だと分かるだろう。
しかしショボンは動じるでもなく、寧ろ――尻尾を掴んだと言いたげに。
口の端を吊り上げた。
(´・ω・`)「あんた、嘘ばっかりだ」
川;` ゥ´)「……は……?」
(´・ω・`)「香水の匂いがした。ふうん。香水ねえ。……よく匂いに気付けたな」
(´・ω・`)「あんな、醤油くっせえ部屋の中で」
川;` ゥ´)「……!」
- 577 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:07:48 ID:kEl/a/PU0
- 逆転裁判みたいだ支援
- 578 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:08:15 ID:O2WumhgwO
( <●><●>)「醤油?」
(´・ω・`)「ヒールさんは、台所の床に誤って醤油をぶちまけていた。
おかげで台所には醤油の臭いが充満してたんだ。
だよねえ、デミタス」
唐突に話を振られ、デミタスは一瞬ぽかんとしていた。
それから慌てて咳払いをし、こくり、頷く。
(´・_ゝ・`)「うん。鼻が曲がりそうだった」
(´・ω・`)「あの中で、ブーンの香水の匂いを嗅ぎ取れたって?
どんな鼻してんだ?」
川;` ゥ´)「――あう……っ」
ノハ;゚听)「……」
/;,' 3「……嘘だったのか? お前の話、全部……」
(´・ω・`)「嘘でしょうよ、勿論。
ブーンにしたって、あの暗闇の中で包丁を探そうとなんてするわけがない」
- 579 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:09:39 ID:5isNaEGEO
- おお!
wktk
- 580 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:10:16 ID:O2WumhgwO
うなだれるヒール。
ショボンが口を閉じ、しばし沈黙が流れた。
話を再開する。
(´・ω・`)「勝手に喋りますよ。
ワカッテマスさん。たしか、あなたが持っていた睡眠薬が減っていたとか」
( <●><●>)「分かりませんよ。記憶違いかもしれません」
(´・ω・`)「あなた自身は『減っている』と思ったんでしょう」
( <●><●>)「……ええ」
(´・ω・`)「きっと、ヒールさんが持ち出したんです」
J(;'ー`)し「睡眠薬を? 何のために……」
(´・ω・`)「フサさんに飲ませるために」
相手は大の男だ。抵抗されちゃあ敵わない。
フサさんの動きを封じた方が楽に決まってる」
- 581 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:12:21 ID:TZcAUzj20
- 支援支援
- 582 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:13:37 ID:O2WumhgwO
ξ゚听)ξ「どうやって飲ませるのよ」
(´・ω・`)「寝酒だよ。酒に混ぜた。
ワカッテマスさん、酒と睡眠薬を合わせたときの危険性は知ってますね」
(;<●><●>)「……睡眠薬とお酒を同時に摂取すると、薬の効果が強まります」
(´・ω・`)「うん、それを狙ったんだろう。
ついでに、つまみの塩辛にも細工がしてあったね」
(;><)「細工って、おつまみにですか?」
(´・ω・`)「大量の調味料を加えて、とんでもない味に仕上げてあった。
――推測出来る理由は二つだ」
ショボンが、右手の人差し指を立てた。
(´・ω・`)「まず一つ。味を誤魔化すため。
薬を混ぜたことで酒の味に変化が生じた場合、
フサさんにバレてしまう恐れがあった」
(;^ω^)「……だから、フサさんの舌が馬鹿になるようにした、ってことかお」
内藤が続きを口にする。
頷いて返し、2本目、中指が天を差した。
(´・ω・`)「二つ。飲酒のペースを速めるため。
あの塩辛を食ったとなると、さぞ酒を飲みまくったことだろう。
僕だって、まだ水が欲しくて堪らないくらいだ。一口食べただけなのに」
言って、舌先を噛んでみせた。
よほど酷い味だったらしい。
デレは、その塩辛とやらをちょっと食べてみたくなった。
- 583 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:14:41 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「何にせよ、フサさんは睡眠薬を飲み、眠りに落ちる。
後は包丁で刺してしまえば殺害完了だ」
(´・ω・`)「どうです、ヒールさん」
ヒールの肩が跳ねる。
全員の視線が彼女に集中した。
静まり返った部屋。
やがて、ヒールが口を開く。
川;` ゥ´)「……フサが、嫌いだったんだ」
独り言のような。
それは、ショボンの推理を肯定したのと同じであった。
ヒートが隣のワカッテマスに凭れかかる。
デレにはヒートの表情は見えなかったが、その背が震えていることだけは確認出来た。
- 584 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:17:26 ID:O2WumhgwO
J(;'ー`)し「……ピャー子、どうして……」
川;` ゥ´)「あいつ! 私に酷いことばっかり言うんだ!
それだけならまだしも、殴ったり蹴ったり……
――ずっと、ずっと殺してやりたかった……」
/;,' 3「何故わしらに言ってくれなかったんだ」
川;` ゥ´)「言ったってどうにもならないじゃないか。
本家様からの客人なんだから追い出せないし、
誰が叱ったってあいつは聞きゃあしない」
(;<●><●>)「しかし、それなら――彼のところへなど、行かなければ」
川;` ゥ´)「そしたらビロードだけがフサのところに行くことになる!
あんな奴と頻繁に関わるなんて、
ビロードにとって良くないことに決まってるだろ!」
(;><)「……」
- 585 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:18:20 ID:O2WumhgwO
川;` ゥ´)「……だから。こ、殺した……」
ヒールが右腕を押さえる。
腕に巻かれている包帯に触れた。
それを見たヒートはワカッテマスから離れ、身を乗り出させた。
ノハ;゚听)「――け、怪我……」
(´・ω・`)「うん?」
ノハ;゚听)「ヒールは腕に怪我してる!」
(´・ω・`)「ああ、ブーンに切られた……ことになってる傷ね」
ノハ;゚听)「なら、やっぱり犯人はヒールじゃないだろ? その傷を付けた奴が、」
(´・ω・`)「そうやって疑いを逸らすために自らを傷付ける犯人ってのはね、いますよ」
川;` ゥ´)「……そうだよ、自分でやった……」
ノハ;゚听)「……!」
また、沈黙が下りる。
デレはビロードの様子を窺った。
顔色は悪いが、しっかりとヒールを見つめている。
どうにも、ヒートとビロードが気にかかって仕方がない。
特にヒートの動揺が酷い。席を外させた方がいいのではないか。
- 586 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:19:20 ID:O2WumhgwO
(´・_ゝ・`)「廊下の血痕は何のために?」
川;` ゥ´)「内藤さん……いや、内藤さんじゃなくても良かった。
誰かに疑いをかけるために、自分で腕を切って、血を垂らしておいたんだ。
……あくまで、私は巻き込まれた側なんだって演じるために」
川;` ゥ´)「まあ、度胸がなくて深くまで腕を切れなかったから、
結局フサの血を使ったんだけど」
(´・ω・`)「で、丁度ブーンがトイレに来たから利用したんですね」
川;` ゥ´)「あそこに内藤さんが来てなかったら、
……大旦那様を犯人に仕立て上げてたよ。
大旦那様は1人で寝てるから声をかけやすかったし」
- 587 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:20:47 ID:O2WumhgwO
ノハ;;)「う――嘘だ」
(;<●><●>)「ヒート」
ノハ;;)「何かの間違いだ!」
叫ぶ。
嘘だ嘘だと繰り返すヒート。
ワカッテマスとカーチャンが宥めるが、聞く耳を持たない。
悲痛な声が部屋を満たす。
ノハ;;)「嘘だぁああ……」
そのとき。
ショボンが、溜め息をついた。
(´・ω・`)「――ええ、嘘ですよ」
ぽんと放り投げられた言葉。
デレは唖然とした。恐らく、ヒート達も。
一体、何を言い出しているのだ。
- 588 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:23:09 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚;ζ「ショボンさん? とち狂ったんですか?」
(´・ω・`)「私語禁止」
ζ(゚、゚;ζ「いっだあっ! 何で私だけ!?」
投擲されたペンライトが、額にクリティカルヒットした。
さながらチョークを投げる教師のような。
ツンが額を撫でてくれる。ひやりとした掌が気持ちいい。
(;><)「大丈夫ですか?」
ζ(;、;*ζ「うん……」
(;^ω^)「ショボン、嘘ってどういうことだお」
(´・ω・`)「そのまんまの意味さ。
残念でしたねヒールさん、ここまでシナリオ通りだったのに」
川;` ゥ´)「――……何、が」
- 589 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:25:37 ID:Fap0jNmA0
- 追いついた支援
- 590 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:25:43 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「ちょっと気になってたんだ。
あなた、手だけが真っ赤だった」
川;` ゥ´)「真っ赤って……血?
なら、さっき言った通りフサの血を廊下に垂らしたときの……」
(´・ω・`)「掌だけが汚れるのは妙だろう。
あれだけ血まみれだったからね、死体。
包丁を抜いたときに、かなりの出血があった筈だ」
(´・ω・`)「と、なると……返り血くらいは浴びててもおかしくない。
なのにヒールさんは両手と右腕以外は綺麗なもんだ」
川;` ゥ´)「――シーツ……」
(´・ω・`)「ん?」
川;` ゥ´)「シーツ被せて、血が飛ばないように……」
目が泳いでいる。
そんな風に言われて信じる者がどこにいよう。
(´・ω・`)「持ってきてくださいよ、そのシーツ」
川;` ゥ´)「……ぐ」
もう諦めましょうよ、と。
ショボンが笑う。
- 591 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:27:35 ID:O2WumhgwO
/;,' 3「遮木様、しかしピャー子は実際に返り血など――」
(´・ω・`)「ヒールさんは、ね」
ノハ;;)「……何なんだよ、何言ってるんだ」
(´・ω・`)「いたじゃありませんか、血まみれだった人。ヒールさん以外に」
血まみれ。
あのとき、部屋の中にいた人物で血に汚れていたのは。
ζ(゚、゚;ζ(……内藤さん?)
川;` ゥ´)「……うるさい……」
(´・ω・`)「皆さん思い出してみてください」
川#` ゥ´)「うるさい! もう――喋るな!!」
(´・ω・`)「いましたよね、手も服も汚れてた人が」
川#` ゥ´)「喋るなって言ってんだろ!!」
ヒールがショボンに掴み掛かった。
対するショボンは涼しい顔で、ヒールをあっさり引きはがす。
そして、内藤の方へ突き飛ばした。
突き飛ばしたというより、蹴り飛ばした、の方が正しい。
女性相手ということは度外視しているらしい。
- 592 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:28:23 ID:tHNPSKiEO
- デレの膝枕ぁぁぁ
- 593 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:28:54 ID:O2WumhgwO
(;^ω^)「おっ」
(´・ω・`)「押さえてろ」
内藤は咄嗟にヒールを羽交い締めにする。
それでもヒールの興奮は収まらない。荒巻が内藤に加勢した。
川#` ゥ´)「私が殺したんだ! 私がフサを!!」
(;<●><●>)「……」
(´・ω・`)「おや、ワカッテマスさん、気付きましたね」
(;<●><●>)「あなたは――正気で言っているんですか」
(´-ω-`)「僕は常に正気ですよ」
デレの前、ニュッが、ゆっくり振り返る。
目が合ったかと思うと、ニュッは顔を僅かに横へ傾けた。
( ^ν^)「……」
ζ(゚、゚;ζ「ニュッさん?」
彼の視線の先は。
- 594 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:30:32 ID:O2WumhgwO
(´-ω・`)「君は、大胆な方法で返り血を誤魔化したね」
(´・ω・`)「ビロードちゃん」
( ><)「……」
――ビロード。
ζ(゚、゚;ζ「……え……」
気付けば、全員の目がビロードに向いていた。
返り血。
ああ、そういえば。
フサの傍に座り込んでいたビロードには、たくさんの血が――
.
- 595 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:31:06 ID:kEl/a/PU0
- えええええええええ
- 596 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:31:37 ID:bE0hGcLE0
- うわああああ
- 597 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:31:50 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「デレちゃん」
ζ(゚、゚;ζ「はっ、はいっ?」
(´・ω・`)「君が犯人の立場だと考えて。
寝ている男に包丁を刺し……そして引き抜く。
吹き出した血が君にかかるね。さあ、その血をどうする?」
ζ(゚、゚;ζ「どうって……あ、洗う?」
(´・ω・`)「手や顔なら水で落とせるだろうけど、服に付いた分は?
処分するにも少々手間だ。途中で見付かるリスクだってある」
ζ(゚、゚;ζ「えっと……んん……」
(´・ω・`)「――下手に洗ったり捨てたりするよりかは、
『血が付いていて当然』な状況を作り出す方がいいよね」
ξ゚听)ξ「……死体に、縋りつくとか?」
(´・ω・`)「そう」
あれだけ暴れていたヒールが静かになっていた。
内藤と荒巻が解放しても、動こうとしない。
泣きそうな顔でビロードを見つめている。
- 598 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:33:06 ID:WgW3VFgYO
- うひょぉぉぉぉおもれぇぇ
- 599 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:33:24 ID:5kkWfQmc0
- オマエノシワザダタノカ…
- 600 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:34:02 ID:O2WumhgwO
(;><)「ど……どうしてそうなるんですか!? 私は何もしてません!」
(;<●><●>)「遮木さん――」
ワカッテマスの口が緩く開き、そして閉じられた。
宙を彷徨った手が、ヒートの肩を抱き寄せる。
何か言いたいのに言葉が出てこない、といったような。
そんな印象を受けた。
(´・ω・`)「ブーン。君の話のおさらいをしよう」
(;^ω^)「このタイミングで僕かお」
(´・ω・`)「トイレから出た君に、ヒールさんが声をかけてきた。
どうしてヒールさんだって分かったんだい?」
( ^ω^)「そりゃ、声とか……目の前、本当にすぐ目の前にいたから、
顔ぐらいならぼんやりと見えたし」
これぐらい、と、内藤は自分の顔の30センチほど前で手を振った。
いくら暗くても、その距離ならば見えなくもないだろう。
(´・ω・`)「じゃあ、ヒールさんはライトの類を持ってなかったんだね?」
( ^ω^)「多分そうだお。ずっと暗かったから」
(´・ω・`)「なるほど。……で、ヒールさんと共に座敷に行って、
部屋の中――フサさんの死体に向かって突き飛ばされ、
浴衣や手に血を付けさせられた。まるで返り血みたいに」
- 601 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:36:08 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「その後ヒールさんはブーンに包丁を握らせると……部屋を出たのかな?
そこへビロードちゃんがやって来る。
ブーン、もう一つ質問だ」
( ^ω^)「何だお」
(´・ω・`)「ビロードちゃんがどこから来たのかは見た?」
( ^ω^)「……見てないお。ビロードちゃんの声がして、それで……。
急に、ええと、多分懐中電灯だと思うけど、明かりがついたんだお」
そこで内藤は目を伏せた。
眉を顰める。
(;^ω^)「そしたら死体が目に入って――頭が真っ白になって、
……その後のことはあんまり」
(´・ω・`)「充分だ。
きっとビロードちゃんは、近くのトイレか脱衣所に隠れていたんだろうね」
(;><)「だから私は血の跡を追って……!」
(´・ω・`)「どうして血痕に気付けたんだい」
(;><)「え……」
(´・ω・`)「廊下に明かりはない。
まあ、しゃがみ込んで目を凝らせば、染みが見えなくもないだろうけど」
(´・ω・`)「だとしても、どうしてそれが『血』だと分かった?
ヒールさんの部屋にも続いていたのに、
どうして『フサさんが怪我した』と思ったのかな?」
(;><)「……あの、……」
(´・ω・`)「所詮子供だね。浅知恵だ」
ショボンが両手を広げた。
いかにも芝居染みた仕草だ。
- 602 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:37:14 ID:lZ8ikiYQ0
- うわぁマジかよ…
- 603 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:38:32 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「改めて説明しますよ。
ヒールさんが睡眠薬入りの酒でフサさんを眠らせる。
そして、まずは自分の腕を切りつけた」
(´・ω・`)「次にビロードちゃんがフサさんを殺害。
包丁を抜いて血を溢れさせる」
(´・ω・`)「その血をヒールさんが掬い取り、廊下に垂らしていく。
『ビロードちゃんがフサさんの部屋へ行く理由』を作るためにね」
ショボンは、皆の間を歩いていった。
デレの脇を過ぎる際にペンライトを拾い上げる。
結構高かったんだよね、と一言。なら投げるな。
(´・ω・`)「んで、運とタイミングの悪い男、ブーンがトイレにやって来る。
そのとき、ヒールさんはトイレの近く……多分自室かな。
そこに血を散らしているところだったんだろう」
(´・ω・`)「勿論このチャンスを逃す手はない。
トイレから出たブーンに声をかけ、現場に連れていく。
後はさっき言った通りさ」
- 604 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:39:49 ID:TZcAUzj20
- なん…だと…
- 605 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:40:02 ID:O2WumhgwO
/;,' 3「……ビロードに関しては、わざわざ血痕なんて工作をしなくとも、
騒音がしたからフサ様の部屋に行った、といった理由で良かったのでは?
どうせ内藤様に罪を着せるつもりだったなら――」
(´・ω・`)「そこだ!」
/;,' 3「はっ!?」
いきなり指を差され、荒巻は目を丸くした。
そこってどこだ。
(´・ω・`)「ヒールさんの目的はブーンを犯人にすることじゃない。
最終的に、自分が真犯人なんだとみんなに思わせること」
(´・ω・`)「そのためには、騒音がしていたことには出来ない。
あくまで、眠らされたフサさんが殺された、というのが『真実』なんだからね」
川; ゥ )「違う……わ、私、本気で……内藤さんを、犯人に……」
(´・ω・`)「それなら、あんな穴だらけの証言をする筈がない。
まして――ブーンが強盗紛いのことをしたなんて、
あからさまな嘘をつく馬鹿がいるもんか」
屈み、ショボンはヒールの顎を持ち上げた。
目を見なさい、と、声だけは優しく囁きかける。
- 606 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:46:03 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「あなた、知ってたんでしょう? 内藤モナーが資産家だって。
彼の遺産分配について、お姉さんと話したこともあるそうじゃないですか」
(´・ω・`)「それでいながら敢えて金銭目的の設定にしたってことは、ねえ。
疑われるのを前提にしてたんだ」
川;` ゥ´)「……っ」
(´・ω・`)「電話線を切ったのは、時間稼ぎをするため。
警察の介入を遅らせ、現場や関係者の状態を乱して。
ついでに、あわよくば誰かに自分を疑ってもらうため」
(;<●><●>)「自分が犯人だと最初から名乗り出ればいいじゃありませんか!」
(´・ω・`)「まさか二重に嘘をついているなんて思わないでしょう、誰も。
少しでも自分を怪しく見せたかったんですよ」
(´・ω・`)「まあ――詰めが甘かったですけどね」
- 607 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:48:42 ID:O2WumhgwO
ヒールから手を離し、ショボンはビロードを見た。
ビロードの表情が歪む。
目の端から、涙が一粒落ちた。
( 。><)「……私、殺してないです……」
ζ(゚、゚;ζ「ビロードちゃん……」
デレの胸が、ずきりと痛んだ。
これではあんまりだ。
死体を目の当たりにして、こんな話に付き合わされて。
本当に犯人でないのなら、ビロードが可哀相ではないか。
ビロードに限った話ではない。
両親であるワカッテマスとヒートだって、ひどく傷付いている筈だ。
抗議しようとデレが口を開き――すぐに、閉じた。
ショボンがとんでもなく意地の悪い笑みを浮かべていたから。
(´・ω・`)「おーおー、役者だねえ、ビロードちゃん。
……ああ、違うか」
- 608 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:49:44 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「ビロード君、って呼んだ方がいいのかな? ……女の子のふりが上手上手」
( ><)
ビロードの顔から表情が消える。
それから、3秒。
( ><)「……なあんだ……」
――ビロードは、笑った。
.
- 609 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:51:30 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚;ζ(……女の子の)
ふり、と、ショボンは言った。
女の子のふり?
どうして笑っているのだ。
今し方、泣いていたばかりなのに。
まるで、演技だったみたいに。どうして。
分からない。何が起きている。
ショボンの発言の意図は。
ビロードの表情の意味は。
ξ゚听)ξ「――あなた」
ツンの声。
デレが我に返る。
ξ゚听)ξ「男の子なの?」
( ><)「……」
返事はない。
けれど、ビロードは、口元の笑みを深くさせる。
一瞬だけ、寂しそうな笑顔に見えた。
- 610 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:53:42 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚;ζ「おとこのこ……?」
(;^ω^)「はあ?」
(‘_L’)「……ビロードは、男だ」
ずっと黙っていたフィレンクトが、頷きなのか、首を小さく揺らす。
デレは呆気にとられ、ビロードとショボンを何度も交互に見遣った。
デミタスがこれといった反応をしていないので、
どうやら分かっていないのは、デレとツン、内藤の3人だけのようだ。
(´・ω・`)「これはニュッ君の手柄だよ。
ニュッ君、デレちゃん達のために説明よろしく」
( ^ν^)「ん」
ニュッが、面倒臭そうに頭を掻いた。
10秒ほど思考し、話し始める。
- 611 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:55:13 ID:O2WumhgwO
( ^ν^)「初めにおかしいと思ったのは、若菜フサの前科を知ったときだ」
J(;'ー`)し「ぜ、前科……?」
( ^ν^)「女児に対する暴行。被害者は何人もいた」
(;<●><●>)「ぼっ……」
ワカッテマス達が絶句した。
やはりフサの過去を知らなかったのだ。
フィレンクトとビロードは、無表情のまま聞いている。
( ^ν^)「事件は揉み消したが、近所には知られてる。
フサを置いとくわけにもいかなくなって、
本家は、この家にフサを押しつけた」
( ^ν^)「だが――事件が事件だ。
幼い娘がいる家に預けたら、また同じことが起きる可能性があるじゃねえか」
(´・ω・`)「そこは僕も引っ掛かったよ。
親戚なんていくらでもいるだろうに、
どうしてこんな格好の餌食がいるような家に預けたのかって」
(‘_L’)「……本家に出向くときだけは、男の格好をさせていた」
(´・_ゝ・`)「じゃあ、本家は、ビロードちゃん……ビロード君が女装させられてるのを
知らなかったんだね」
難しい顔をするデミタス。
眉間に指を押し当て、そこに寄る皺を伸ばした。
- 612 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:55:33 ID:E126FFjY0
- 始めてリアルタイムで読める! 支援だぁぁぁぁ
- 613 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:56:25 ID:1Xnui0GA0
- 支援
- 614 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:57:07 ID:O2WumhgwO
( ^ν^)「決定的だったのはアルバム。
お宮参りの写真に、産着が写ってるやつがあった」
ζ(゚、゚;ζ「産着がどうかしたんですか?」
( ^ν^)「家紋が付いてたんだ。
基本的に、女用の産着には家紋を入れない。
入れるとしても一つ紋、背中に一個だけってのが普通だ」
( ^ν^)「なのにビロードの産着には、両胸の部分に家紋が入ってた。
ってことは三つ紋か五つ紋……どっちにしろ、男用に仕上げてあった」
ノパ听)「……五つ紋だ。すごく似合ってた」
ヒートの瞳から、力がなくなっていた。
ぼんやりとビロードを眺め、手だけは力強くワカッテマスの腕を掴んでいる。
見ていられなくて、デレは目を逸らした。
(;^ω^)「何で女の子の格好なんかさせられてるんだお?
それとも――ええと、個人の趣味かお」
( ><)「……冗談言わないでください」
ビロードが文机を一度叩いた。
その手を広げ、机上を引っ掻く。
ぎしり。机か、あるいはビロードの爪が軋む音。
- 615 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 19:59:57 ID:O2WumhgwO
( ^ν^)「多分、まじないみたいなもんだと思う。
男児に女の格好をさせる風習は昔からある。日本に限らず、世界的に。
今も続けてるところがあるのかは知らないが」
(;^ω^)「おまじない? どんな意味があるんだお」
( ^ν^)「魔除けとか、健康を願って、とか。
幼児の場合、男より女の方が丈夫ってのはよく聞く話だし、
それもあるかもしんねえ」
昔読んだ本で得た知識だけど、と付け加え、ニュッは一旦黙った。
疲れたらしい。
(;´・_ゝ・`)「あと少しでしょ。もうちょっと頑張ろうよ」
( ^ν^)「あー……。
……だが、就学前には男の格好に戻させるもんだ。一般的に」
ξ゚听)ξ「就学前って、でもビロードは小学5年生よ。もう11歳じゃない」
( ^ν^)「『もう11歳』じゃなくて、『まだ11歳』って認識なんだろ、この家じゃ」
(;<●><●>)「……」
ζ(゚、゚;ζ「?」
ニュッがワカッテマスを一瞥する。
ワカッテマスは、首を縦に振った。
- 616 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:02:21 ID:lZ8ikiYQ0
- 逆じゃね?
- 617 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:02:26 ID:O2WumhgwO
( ^ν^)「まず、若菜フィレンクトが12歳のとき。
傷口から入った細菌のせいで、腕を切り落とす事態になった」
( ^ν^)「次に若菜ワカッテマスが11歳のとき。
重度の風邪を引いて、喘息を発症した」
ξ゚听)ξ「……あ」
(;^ω^)「2代揃って、今のビロード君くらいの年頃に
大きな怪我や病気をしてるお」
( ^ν^)「5、6歳までじゃ、まじないの期間が足りない。
せめて12歳まで――そういう考えになったんじゃねえの」
(‘_L’)「私の」
フィレンクトが口を挟む。
彼は、身じろぎ一つしていない。表情もまったく変わらない。
なのに雰囲気だけが重苦しい。
(‘_L’)「妻が言い出したんだ。
小学校を卒業するまでは、女の格好をさせろと。
せめてビロードだけでも、健康に育ってほしいと」
- 618 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:04:36 ID:O2WumhgwO
(‘_L’)「馬鹿げているとは思ったが、本当にそれで、無病息災で暮らしてくれるのなら。
……やってみる価値があるのではないかと、私も賛同した」
( ><)「私、……。……僕が、それで、どんな思いをしてきたか分かってますか」
/;,' 3「――ビロード。大旦那様は悪くない。
止めなかったのはわしだ」
J(;'ー`)し「そうだわ、それなら私も――」
( ><)「どうでもいいです」
/;,' 3「……、」
あまりにも。
冷ややかな、声だった。
( ><)「荒巻さんが悪いとか、カーチャンさんが悪いとか。
別に、誰に責任があるかなんて、そんなのどうだっていいんです」
( ><)「男の子の格好がしたいって言えば、
お祖母ちゃんの遺言だの僕のためだのと窘められたけど。
……それも、どうだっていいんです」
( ><)「ただ」
ただ。
( ><)「他の子と違う育て方をすることが――どう影響するかくらい、
考えてほしかったんです」
*****
- 619 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:06:16 ID:O2WumhgwO
ミ,,゚Д゚彡『お前、ビロードっていうんだな』
フサが越して来てから、たしか2日目。
ビロードはカーチャンに頼まれ、フサのもとへ食事を運んだ。
( ><)『はい、よろしくなんです!
ご飯どうぞ』
ミ,,゚Д゚彡『おう、ありがとう』
(*><)『どういたしましてなんです』
ミ,,^Д^彡『はは……いい子だな、お前』
てっきり、ビロードの女装については祖父か誰かが説明しているものだと思っていた。
頭を撫でられる。
気のいい人だと感じた。そのときは。
間違いを知るのは、後になってから。
*****
- 620 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:07:32 ID:bE0hGcLE0
- ああ…
- 621 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:07:45 ID:O2WumhgwO
( ><)「片鱗が見えたのは、2週間くらい経った頃です」
*****
ミ,,゚Д゚彡『学校どうだ? 楽しいか?』
( ><)『学校ですか?』
食事を運ぶのはビロードの仕事になりつつあった。
ビロードが家にいない平日の昼食分に限り、ヒールが引き受けている。
フサは、食事の間にビロードと会話するのを好んだ。
( ><)『学校……あんまり、楽しくないんです』
ミ,,゚Д゚彡『何で』
( ><)『みんなに避けられてて。
――あ、これ、お母さん達には内緒にしててくださいね』
フサは箸を持つ手を止め、不思議そうな顔をしていた。
どうして避けられるんだ、と。
- 622 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:09:09 ID:O2WumhgwO
( ><)『どうしてって、……だって、ほら、気持ち悪いでしょう?』
この村に、女装している男と進んで仲良くなろうとする子供はいなかった。
辛うじて虐めの領域にまで達していないのは、若菜という名前のおかげだ。
ミ,,゚Д゚彡『何がだ?』
フサが首を傾げる。
そこで、ビロードは彼が何も知らないことに気付いた。
彼からすれば、ビロードは普通の少女なのである。
話すべきか。
――いや、知らないなら知らないままでいい。
彼を不快な気持ちにさせてしまうのは申し訳ない。
( ><)『……何でもないんです。お気になさらず、ご飯食べてください』
視線を外す。
畳に詰まれた雑誌を何とは無しに開いていると、後ろでフサの動く気配がした。
( ><)『フサさ、』
温かさに包まれる。
同時に、ぞくりと寒気立った。
――抱きしめられている。
- 623 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:10:41 ID:O2WumhgwO
ミ,,゚Д゚彡『可哀相に、ビロード。気持ち悪くなんかないのに』
(;><)『ふっ、フサさん? ちょっと……離れてください!!』
身をよじって逃げ出し、後ずさる。
フサへ振り向いて、再び体が冷えるような心持ちになった。
目付きが、突き刺さるように鋭い。
怒りが見て取れた。
ミ,,゚Д゚彡『何で逃げるんだよ』
(;><)『な、何でって……――!』
フサの手が、茶碗や皿を薙ぎ払う。
ぶつかった食器同士が激しい音を立て、ビロードは縮み上がった。
ミ#,゚Д゚彡『人が優しくしてやってんのに、何で逃げんだよ! ああ!?』
(;><)『ひっ……!』
竦む足を無理矢理動かして部屋を飛び出した。
廊下を走り、台所へ駆け込む。
(;><)『ヒールさん!』
川*` ゥ´)『おわっ、どうしたビロード』
- 624 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:11:52 ID:O2WumhgwO
(;><)『フサさんのこと、怒らせちゃって……どっ、どうしましょう、僕……』
川;` ゥ´)『あー、何、あいつまた怒ってんの? 面倒な奴……』
(;><)『……また?』
川*` ゥ´)『怒りん坊じゃん』
(;><)『僕、初めて怒ってるとこ見ました』
川*` ゥ´)『そうなの? 何だよ、単に私のこと嫌いなだけかよ……。
まあ、後は私がやっとくから。
ビロードは自分の部屋戻りな』
(;><)『……はい』
フサに、「恐い」という感情を覚えたのは、これがきっかけ。
*****
- 625 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:13:10 ID:O2WumhgwO
( ><)「それからはね、気持ち悪かったですよ。毎日毎日。
べたべたしてきて――本当に気持ち悪い……」
(´・ω・`)「誰にも言わなかったの?」
( ><)「荒巻さんもカーチャンさんも、どうせ本家が恐くて何もしてくれません。
お母さんやお父さんには、あんなこと話したくなかったですし。
お祖父ちゃんとは元々会話が多い方じゃなくて、相談するのを躊躇ってました」
( ><)「ヒールさんには、『フサさんが恐い』とだけ話しましたよ。
そしたら、フサの相手は私がやるから、って言ってくれましたけど」
川;` ゥ´)「……何日もビロードが行かない日が続くと、私に暴力振るうんだ」
( ><)「容赦ないんですよね、あの馬鹿。
このままじゃヒールさん死んじゃうなって思って、
3日に一回くらいの割合で僕がフサさんのところに行くことになりました」
文机に肘をつき、ビロードが淡々と話す。
その姿とこれまでのイメージが不気味に食い違っていて、
デレは、ビロードに怯えたような顔を向けた。
今までの、素直で可愛らしい振る舞いは演技だったのか。
- 626 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:14:56 ID:O2WumhgwO
(;<●><●>)「自分は男だって、説明しなかったんですか」
( ><)「しましたよ勿論。けど、『じゃあ服を脱いでみろ』とか言われて。
脱がされそうになって――当然拒みますよね。手を振り払いましたよ。
……そしたら」
( ><)「『ほら、やっぱり嘘だ』って笑うんです。
僕、そんなに女の子ですか?」
喉の奥で笑う。
自嘲の響きがあった。
( ><)「そのときに、言葉だけじゃ絶対に信じてくれないって悟りました。
かといって、あいつの前で裸になるのも嫌でしたから、
もう何も言わないことにしたんです」
肘をついていない方の手で、机を叩いた。
こつり。机が鳴る。
( ><)「――お母さんの妊娠が発覚してから、ますます相談しにくくなりましたね。
みんな……特にお父さんがお母さんに付きっきりで。
僕なんかが割り込んじゃいけないように感じられて仕方なかったです」
ノパ听)「……そんなことないのに……」
( ><)「まあ、気持ち悪いけど、べたべたしてくるだけだったし……。
少しの時間我慢してりゃいいかって諦めてたんです」
- 627 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:16:01 ID:O2WumhgwO
( ><)「けどね、駄目でした。
9月。ついに、あいつ――やらかしました」
*****
(*‘ω‘ *) ポッポ
(*><)『あ、ぽぽちゃん』
ビロードとヒールが留守番をした日の、真昼。
縁側に座って漫画を読んでいたビロードは、聞き慣れた鳴き声に顔を上げた。
野良猫である。
口の中で、ぽっ、と空気を鳴らす癖を持つ猫。
ビロードは、その癖を気に入っていた。愛嬌がある。
(*‘ω‘ *) ニャア
(*><)『ご飯もらいに来たんですか? おいでおいで』
(*‘ω‘ *) ポッ
猫が縁側に飛び乗る。
ビロードが歩き出すと、その後ろをおとなしくついてきた。
- 628 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:17:34 ID:O2WumhgwO
台所。
昼飯の準備をしていたヒールは、猫を見るなり顔を綻ばせた。
エプロンで手の水気を拭う。
川*` ゥ´)『ぽぽちゃーん』
(*‘ω‘ *) ニャンポッポ
( ><)『ご飯あげたいんです』
川*` ゥ´)『おう、猫缶買ってきてあるんだ。そこの棚にあるよ』
( ><)『これですか?』
川*` ゥ´)『それそれ』
ビロードは戸棚から缶詰を引っ張り出し、中身を皿に盛りつけた。
猫の前に置いてやる。猫は匂いを嗅いでから、勢いよく食べ始めた。
川*´ ゥ`)『可愛いなあ』
(*‘ω‘ *) ポポッ
(*><)『よしよし』
- 629 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:17:43 ID:lZ8ikiYQ0
- まさか…
- 630 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:18:48 ID:O2WumhgwO
自分も食事を終えたら、猫と庭で遊ぼう。
何をしようか計画を立てながら、ビロードは目の前の小さな背を撫でた。
同年代の子供達から避けられているビロードにとって、
「友達」などというのは、この猫ぐらいなものだ。
(*‘ω‘ *) ケフッ
川*` ゥ´)『美味しかった?』
(*><)『おそまつさまなんです』
川*` ゥ´)『……あ、ビロード』
( ><)『はい?』
川*` ゥ´)『あのー……フサんとこにさ、ご飯』
( ><)『あ……そうですね、行ってくるんです』
ヒールから盆を受け取る。
今日はビロードが運ぶ日だ。
川*` ゥ´)『渡したらさっさと戻っておいで。引き止められそうになったら、
自分も今からご飯だから、って断りな』
( ><)『分かりました』
どうせ、食器の回収に行ったときにでも捕まるのだが。
- 631 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:19:36 ID:Fap0jNmA0
- しえん
- 632 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:19:51 ID:O2WumhgwO
台所を出ると、足に擦り寄る感触があった。
猫だ。
(*‘ω‘ *) ニァン
( ><)『ぽぽちゃん、ヒールさんと一緒に待っててほしいんです』
(*‘ω‘ *) ポッ
(*><)『もー』
ついてくる。
飯の匂いに釣られているのか、あるいはビロードに懐いてくれているのか。
後者なら嬉しいなと、ビロードはくすくす笑った。
( ><)『ここにいてくださいね。中に入ってきちゃ駄目なんです』
フサの部屋の手前。
ビロードは小声で猫に言い聞かせた。
果たして理解したのか、猫は廊下にごろりと寝転がる。
その動作にまた笑いを零し、ビロードは障子の前でフサを呼んだ。
( ><)『フサさん、ご飯持ってきました』
んん、と、返事だか唸りだか分からぬような声がする。
盆を左手に持ち替え、右手で障子を開けた。
- 633 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:21:16 ID:O2WumhgwO
ミ,,゚Д゚彡『……あんがとさん』
フサは壁を眺めていた。
時折、こんな風にぼうっとしているのを見かける。
何を考えているのだろう。
( ><)『いえ。……じゃあ、僕、これで』
去ろうとしたビロード。
腕を、フサに掴まれた。
(;><)『な、』
ミ,,゚Д゚彡『ゆっくりしてけよ』
(;><)『あの――僕も、今からご飯でして』
ミ,,゚Д゚彡『俺のこと嫌いか?』
そりゃあ。
嫌い、というか。
恐い。
(;><)『べ、別に、嫌いではないですけど』
フサの口角が持ち上がった。
ざわざわ、肌が粟立つ。
- 634 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:23:25 ID:O2WumhgwO
ミ,,゚Д゚彡『俺な、多分、実家にゃ帰れねえと思うんだ』
(;><)『……何ですか、急に』
ミ,,゚Д゚彡『酷い奴らだよなあ……実の息子にさあ……』
(;><)『フサさん、放して――』
ミ,,゚Д゚彡『お前だけだよ、俺に優しいのは』
引き倒された。
畳に頭を打ちつけたせいか、目眩がする。
(;><)『ひ……っ』
服に、フサの手が触れた。
何を。
する気だ。
血の気が失せる。
体が冷える。
至る所が引き攣った。
- 635 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:24:12 ID:O2WumhgwO
(;><)『なに、ふ、フサさ……っ!?』
ミ,,゚Д゚彡『今日さあ』
ミ,,゚Д゚彡『お前と、あのブス以外、みんな出掛けてんだよな』
(;><)『――!』
寒い。
まだ暑い時期なのに。
ひどく寒い。
このまま服を脱がされたとして。
男であるのを知られたら。
フサは、自分から興味を失ってくれるだろうか。
それとも。
- 636 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:24:50 ID:O2WumhgwO
(#‘ω‘ *) ポッ!!
――影が、フサとビロードの間に割り込んだ。
影。猫。
ミ;,゚Д゚彡『うおっ……!?』
(#‘ω‘ *) ニァア!!
ミ;,゚Д゚彡『つっ――』
猫がフサの手に噛みつく。
フサは慌てて猫を振り払った。
畳に叩きつけられる、鈍い音。
- 637 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:25:55 ID:1Xnui0GA0
- フサ最低だな。
- 638 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:26:19 ID:O2WumhgwO
ミ#,゚Д゚彡『いってえな……何だこいつ……!!』
(;><)『ぽぽちゃん!』
舌打ちをして、フサが立ち上がる。
身を起こそうとした猫を思い切り踏みつけた。
(;‘ω‘ *) ニ゙ァッ…!!
ミ#,゚Д゚彡『この糞猫! 糞が! 死ねっ、死ね!!』
(;><)『やっ……やめてください! フサさん!』
ミ#,゚Д゚彡『うるせえ、邪魔すんじゃねえよ!!』
(;><)『うあっ!』
止めるビロードを突き飛ばし、フサは足を動かし続ける。
踏んで、蹴って、踏んで――
- 639 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:27:38 ID:O2WumhgwO
(* ω *) …ポ…
(;><)『ぽ、ぽぽちゃ……』
嫌な音がする。
砕けるような。
潰れるような。
死んでしまう。
死んでしまう。
(;。><)『……あ……ああああっ……!』
頬を伝う涙の感触で、我に返った。
叫び、台所へ駆け出す。
――助けて。
- 640 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:29:37 ID:O2WumhgwO
(;。><)『ひ、ヒールさん、ヒールさん!』
川;` ゥ´)『わっ、何?』
(;。><)『ぽぽちゃんが、ぽぽちゃんが、フサさん、……し、死んじゃう……!!』
単語ばかりが先に出て、文章にはならなかった。
ビロードの様子に異常を察したらしい。
ヒールが顔を強張らせ、座敷へ向かう。
ビロードはというと、すっかり足から力が抜けて床に座り込んでいた。
(;。><)『……』
遠くから聞こえる怒鳴り声。
耳を塞ぐ。
- 641 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:31:25 ID:O2WumhgwO
そのまま数分。
ぎゅうぎゅうと押さえつけられた耳が痺れてきた頃、ようやくヒールが戻ってきた。
川*` ゥ´)『……』
(;。><)『ヒールさん……ぽ、ぽぽちゃんは……?』
ヒールは、何かを抱えていた。
エプロンで包まれた何か。
(;。><)『ぽぽちゃんですか? ぽぽちゃん、無事なんですか?』
川;` ゥ´)『見るな!』
エプロンに手を伸ばすと、ヒールが声を張り上げた。
ビロードの手が、びくりと震える。
勝手口へ急ぐヒールを押し止め、ビロードは、無理矢理エプロンを開いた。
川;` ゥ´)『ビロード……!』
- 642 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:32:38 ID:O2WumhgwO
――これは。
(;;"ω;゚,,)
これは、何だ。
( 。><)
( 。><)『……ぽぽちゃん』
*****
- 643 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:35:32 ID:O2WumhgwO
( ><)「殺されたんですよ、ぽぽちゃん。あいつに」
ζ(゚、゚;ζ「……っ」
デレは、口元を覆った。
――酷い話だ。
(´・ω・`)「その日にフサさんの部屋の畳を取り替えたのは……」
川*` ゥ´)「ぽぽちゃんの血が染み込んでたから」
( ><)「もう……フサの奴、憎くて憎くて」
ξ゚听)ξ「それが、フサを殺した理由なの」
ビロードがツンを横目で見た。
一瞬のことで、すぐに視線を外す。
( ><)「理由は他にもありました。殺そうって決めたのは、つい一週間前です」
――その返事は。
暗に、自分が殺したと認めたのと同じこと。
ヒートが呻いた。
言葉にすらならぬ呻き。
ワカッテマスの手が、ヒートの肩から滑り落ちた。
*****
- 644 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:36:26 ID:O2WumhgwO
――フサが、あの日のような凶行に出ることはなくなった。
以前同様、馴れ馴れしく接してくるだけである。
それでも、ビロードの中のフサに対する憎悪は日に日に増していくばかり。
憎悪につれて、性格までもが捻じくれていく。
時折、残忍な方法でフサを殺してやる妄想をする。
その度、自分はこんなに酷い人間だったかと驚いてしまうのだ。
- 645 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:37:56 ID:O2WumhgwO
ノハ*゚听)『ただいまー!』
( <●><●>)『雪が降る前に帰ってこれましたね』
川*` ゥ´)『おかえりー。どうだった?』
( <●><●>)『母子共に健康。順調だそうです』
( ><)『おかえりなさい』
ノハ*゚听)『おっ、ビロード。ただいまー』
父に付き添われて定期検診へ行っていた母が、帰ってきた。
やけに嬉しそうだ。
出迎えたビロードを抱きしめる。
ノハ*゚听)『ビロード、お前に妹が出来るぞ!』
( ><)『妹?』
川*` ゥ´)『何だ、もう性別調べてもらったの?』
ノハ*゚听)『絶対とは言い切れないけど、女の子だろうって』
( ><)『……女の子ですか』
- 646 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:38:59 ID:O2WumhgwO
祖父に報告するのだろう、廊下を歩いていく両親の背を見送り、
ビロードは、母の腹の中にいる妹について考えた。
男でなくて良かった。
自分のように、女装をして育てさせられたらどうしようかと不安だったから。
女の子ならば安心――
(;><)『……』
川*` ゥ´)『ビロード、どうした?』
(;><)『……いえ……何でもないんです』
駄目だ。
妹なんて。
- 647 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:40:20 ID:O2WumhgwO
(;><)(……もし、フサさんが、ずっと居候を続けたら……)
自分は、どうせ中学生になれば普通の男として暮らしていける。
あと1年やり過ごせばいい。
けれど妹はどうなる?
5年後。10年後。
そのときになっても、ここにフサが居着いていたら。
あまりにも危険だ。
あの男の性的嗜好など、想像はついている。
( ><)
自分や猫だけでなく、妹まで犠牲になるぐらいなら。
フサ。
あんな奴、死んでしまえばいい。
*****
- 648 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:41:25 ID:TZcAUzj20
- oh…
- 649 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:42:50 ID:O2WumhgwO
( ><)「それから数日後……昨日です。ヒールさんに相談しました」
*****
( ><)『僕ね、フサさんのこと殺そうかと思うんです』
ビロードの部屋。
冬休みの宿題をしていた彼は、菓子を持ってきてくれたヒールに突然告げた。
川*` ゥ´)『は?』
( ><)『ヒールさんにだけ話しておきますね』
川;` ゥ´)『ちょっと……待て、待て。何言ってんだよビロード』
( ><)『もう限界なんです』
川;` ゥ´)『……冗談だよね?』
( ><)『本気ですよ』
- 650 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:44:27 ID:O2WumhgwO
いかにフサが憎いか。
いかにフサが危険か。
ビロードがこれまでの経験と感情を全て話し終えると、
ヒールは悲しそうな顔をして唇を噛み締めた。
( ><)『……ヒールさん。嫌なら嫌って言ってくださいね?
フサさんのお酒に、お父さんの睡眠薬を入れてほしいんです。
……それだけでいいんです。お願い出来ませんか?』
川;` ゥ´)『……フサを、何とかして追い出すだけじゃ駄目なのか……?』
( ><)『フサさんは本家の人間です。追い出すのは難しいんじゃないでしょうか』
本当は。
祖父に全て訴えれば、フサを別の親戚のもとへ回すくらいは出来るだろうと踏んでいる。
だが、一度「殺してやる」と思った途端、それ以外の答えを選べなくなってしまった。
殺すことこそが最上の選択であると、胸の内の何者かが囁くのだ。
( ><)『それに……ぽぽちゃんの仇をとりたいんです』
川;` ゥ´)『……』
黙り込む。
ヒールは目をきょろきょろさせ――何か覚悟したように頷くと、ビロードの手を握った。
- 651 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:45:32 ID:O2WumhgwO
川;` ゥ´)『ビロード。私がやるから。私が、フサを殺すから……』
( ><)『……僕が……』
川;` ゥ´)『駄目だよ、ビロードが人を殺すなんて駄目だ。
姉さんや義兄さんだって、きっと悲しむし』
( ><)『でも、自分の手でやりたいんです。どうしても』
川;` ゥ´)『……じゃあ。せめて』
「私を犯人ってことにして」。
ヒールの提案を聞き、ビロードは、彼女の手を握り返した。
( ><)『……いいんですか……?』
川*` ゥ´)『いいよ。……平気』
( ><)『ヒールさん……』
- 652 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:46:14 ID:O2WumhgwO
――そう言ってくれるだろうと思った。
*****
- 653 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:48:06 ID:Fap0jNmA0
- oh
- 654 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:48:59 ID:bE0hGcLE0
- なんてやつだ…
- 655 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:49:37 ID:1Xnui0GA0
- ・・・。
- 656 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:51:26 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「君も僕に負けず劣らず、なかなかの下衆じゃないか。
ヒールさんの優しさを利用したんだね」
川;` ゥ´)「……ビロード」
(´・ω・`)「騙されたようなもんですよヒールさん。可哀相に」
(;^ω^)「ショボン、そんなのわざわざ言うんじゃないお」
ヒールの瞳が潤む。何に対しての涙なのか、デレには判断がつかない。
しかし、ヒールは目元に力を込め、泣くのを堪えた。
ショボンを睨みつける。
( ><)「それからヒールさんと2人で計画を立てました。
内容は、探偵さんの推理通りなんです」
( ><)「でも……さすがに皆さんが泊まってくのは予想外でした。
しかも勝手に推理までされるし。これだから客って嫌いなんです。
お客さん来ると一人称『私』に変えなきゃいけないし、面倒この上ありません」
(´・ω・`)「日を改めてれば上手くいってたかもね」
( ><)「ですね。でも、次に吹雪が来るのがいつなのか分かりませんでしたから」
(´・_ゝ・`)「吹雪でなきゃ、みんなを足止め出来ないもんな」
( ><)「ええ」
- 657 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:52:39 ID:lZ8ikiYQ0
- これほんとに小学生かよ…
- 658 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:52:59 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚;ζ(……どうして)
どうして、こうも平然としていられるのだ。
フサよりも、ニュッよりも、ショボンよりも、
デレはビロードが恐ろしくて仕方がない。
( ^ν^)「全部、お前が一から考えた計画だったのか?」
( ><)「いいえ。……参考にした本はあります」
*****
- 659 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:55:40 ID:O2WumhgwO
夏。8月まで遡る。
( <●><●>)『読書感想文?』
( ><)『はい。夏休みの宿題でして……。
お父さんの持ってる本、どれか貸してほしいんです』
( <●><●>)『構いませんよ。小説なら、この段です』
父の本棚を物色し、ビロードは、ある本を手に取った。
はっとするような赤色。
何故だか妙に惹かれた。
( ><)『盛岡デミタス……。お父さん、これがいいんです』
( <●><●>)『え? ああ――どうなんでしょう、それ。手書きなんですよね。
市販のものじゃないかもしれません』
(;><)『う。それじゃあ感想文に使えないんです……』
( <●><●>)『……今から隣町の図書館に行くんですが、一緒に来ます?
盛岡デミタスという作家がいるか、調べてみたらどうでしょう』
(*><)『行きます!』
父の車に乗り、隣町へ。
こうして父と出掛けるのは久しぶりだ。
- 660 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 20:58:13 ID:O2WumhgwO
しばらくして、目的地に到着する。
あまり大きくはない図書館。
父は調べ物があるというので、一旦別れた。
( ><)『この……盛岡デミタスって人の本、ありませんか?』
カウンターにいた司書に本を見せ、訊ねてみる。
司書はパソコンを操作した後、見付からないと首を振った。
礼を言ってカウンターを離れる。
次に、ビロードはパソコンが並んでいるコーナーへ向かった。
インターネットで調べよう。
家にはパソコンがない。
不慣れな手つきで「盛岡デミタス」と入力し、検索にかける。
一応引っ掛かりはしたのだが、作家の素姓などはどこにも書かれていなかった。
諦めて席を立ち、父を探す。
- 661 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:00:49 ID:O2WumhgwO
( <●><●>)『ビロード。帰りますよ』
( ><)『あ、はい! お父さん、調べ物終わったんですか?』
( <●><●>)『ええ。もう充分です』
父が後ろから声をかけてきた。
駆け寄ると、はしたない、と注意される。
少しむっとしたものの、とりあえず謝っておいた。
( <●><●>)『さあ、行きますか』
( ><)『はい。――お父さん、何を調べてたんですか?』
( <●><●>)『いえ……ちょっとね』
父は誤魔化したが、おおよその見当はついている。
母のため、妊娠や妊婦に関する本を漁っていたに違いない。
図書館で目ぼしい本を探し出し、後で書店で購入する。
そういう人だ。
ビロードを妊娠したときにも同じことをしたらしいが、
11年前の本より最新の本の方が当てになるとでも考えているのだろう。
ふうん、と生返事をして、ビロードは図書館を出た。
読書感想文は、別の本で書くことになりそうだ。
*****
- 662 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:02:17 ID:1Xnui0GA0
- 冒頭のアレはビロード視点だったのか。
- 663 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:04:57 ID:O2WumhgwO
( ><)「お父さんに本を返すタイミングを逃してそのままにしてたんですが。
……まさか、実際に役立つことになるなんてね」
ねえ、と。
ビロードはデミタスに微笑みかけた。
(´・_ゝ・`)「――僕が作者だって気付いてたのかい」
( ><)「盛岡って苗字だったし。あと、このお姉さんが」
ζ(゚、゚;ζ「えっ」
( ><)「いきなり『盛岡デミタスって作家知ってる?』とか言い出すもんですから。
作者本人があの小説を探しに来たんだなって、ぴんときました」
(´・ω・`)「お前そんな糞みたいな探し方したのか」
ζ(゚、゚;ζ「だ、だって、どう探せばいいか分かんなかったし……。
――ていうか、ビロード……君、『知らない』って答えたのに!」
( ><)「これから実行する殺人の参考にした本を、正直に見せると思いますか」
ζ(゚、゚;ζ「うぐぐ……」
- 664 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:07:11 ID:GXi45LxU0
- デレかわいいwww
- 665 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:08:42 ID:O2WumhgwO
( ><)「まあ、参考っていっても、ほんの一部だけですけどね。
睡眠薬とお酒の効果だとか、包丁の刺し方だとか」
ビロードは頭を掻きながら、あーあ、と呟いた。
溜め息。
( ><)「結局、全部バレちゃいましたね、ヒールさん。残念でした」
川;` ゥ´)「……」
( ><)「それにしても探偵さん、よく僕を犯人だと決めつけられましたね」
(´・ω・`)「ん? ああ、そうだな。
君が真犯人だって確信したのは――ニュッ君から話を聞いたときかな」
(´・ω・`)「フィレンクトさん。ニュッ君にわざとらしくヒントを出したそうですね。
ビロード君が女装させられてる理由を示すようなヒントを」
(‘_L’)「……うむ」
(´・ω・`)「あなた、僕より先に勘づいてたんだ。ビロード君が犯人だって。
だからニュッ君の注意がビロード君に向かうような話をした。
だいぶ遠回しでしたけど」
(‘_L’)「あの内藤さんの孫なら、気付いてくれるかもしれないと考えた」
- 666 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:13:42 ID:O2WumhgwO
J(;'ー`)し「大旦那様――分かっていらしたんですか」
(;^ω^)「どうして分かったんですかお?
こう言っちゃ何ですが、フィレンクトさんは
ずっと居間に座ってただけじゃないですかお」
(‘_L’)「きっかけは、盛岡殿の本だった」
(´・_ゝ・`)「僕の?」
(‘_L’)「あの本は私も読んだことがある。
状況がほとんど一致しているのに気付いたとき、
初めはワカッテマスが犯人なのかと思った。……本になぞらえたのかと」
(‘_L’)「だが、ワカッテマスは私が本を読んだのを知っている。
私に悟られる恐れがあるのに、そんなことをするのかと疑問に感じた」
(´・ω・`)「その次の容疑者がビロード君?」
(‘_L’)「以前、ビロードが縁側で本を読んでいるのを見かけたからな。
……一度ビロードに着目してみると、先程遮木殿が言っていたような
返り血などの点が気になって仕方なくなったんだ」
- 667 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:16:13 ID:O2WumhgwO
(;<●><●>)「……父さん、気付いてたなら、どうして言わなかったんです」
(‘_L’)「……」
(‘_L’)「孫が。可愛かった」
/;,' 3「か、可愛かった?」
(‘_L’)「真実を明かすのが道理だ。それは分かっている。
だが、……」
(´・ω・`)「孫を殺人犯だと糾弾するのが、嫌だった」
(‘_L’)「……そうだ。
それに――責任は私にもあると思った。
私が妻の言うことを聞かなければ、ビロードは普通に生きていけた」
(‘_L’)「私がビロードを非難出来る筈がないだろう」
( ><)「……今更何言ってるんですか、お祖父ちゃん」
(‘_L’)「――すまない……」
( ><)「……」
- 668 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:19:39 ID:O2WumhgwO
暗く沈む空気。
ショボンが掌を打ち鳴らす。
(´・ω・`)「で、『結末』は僕達に託した。
ヒールさんとビロード君のどちらが真犯人となって終わるか、ね。
結果はこの通りです。どうですか、フィレンクトさん」
(‘_L’)「……ありがとう。
これで、――良かったんだ」
ノハ;;)「……」
また、ヒートが泣き始めた。
無表情のまま。
静かに、涙だけが流れ落ちていく。
ぽたり。
雫が畳に落ちると同時、ビロードは机に突っ伏した。
- 669 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:21:46 ID:O2WumhgwO
(´・ω・`)「……ヒールさん。最後に一個だけね、気になることがある」
川*` ゥ´)「何さ」
(´・ω・`)「ビロード君の罪を自分が被ることに、何の抵抗もなかったんですか?」
ヒールはショボンを見上げ、二度三度瞬きをした。
瞳が下を向く。
川*` ゥ´)「……なかった。
ビロードと違って、私は、姉さん以外に家族はいない。
私がいなくなったって、姉さんには義兄さんやビロードがいる」
- 670 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:26:02 ID:O2WumhgwO
川*` ゥ´)「ヒールは……悪者は、私だけで良かったんだ」
――吹雪は、いつの間にやら止んでいた。
探偵様の晴れ舞台。
これにて、閉幕。
*****
- 671 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:28:02 ID:O2WumhgwO
/ ,' 3「私は、これから駐在所に向かいます」
(´・ω・`)「はい。ええと、頑張ってください」
村の入口付近。
雪が積もりきった荒巻の車の前。
荒巻は、ミニバンの運転席に座るショボンへ一礼した。
空は未だ暗い。
/ ,' 3「しかし、本当に帰ってしまわれるのですか」
(´・ω・`)「ええ。ちょっとね、こういう形で警察と関わると、色々と面倒が。
もし何か訊かれても、僕らの存在はなかったことにしてくださいね。死ぬ気で」
/;,' 3「はあ……それでは、お気を付けて」
(´・ω・`)「そちらも」
走り出す。
バックミラーに映る荒巻は、ショボンの車が村を出るまで、頭を下げ続けていた。
- 672 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:30:31 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚;ζ「……はあ……」
デレは、大きく息を吐き出した。
全て終わった。
解決した。
なのに、気分はまったく晴れない。
若菜家の今後を思うと、呼吸をするごとに胸が重たくなっていくような心持ちだ。
背もたれに身を預け、瞼を下ろす。
後部座席のニュッがデレの名前を呼んだ。
( ^ν^)「デレ」
ζ(-、-*ζ「はい……?」
( ^ν^)「平気か」
ζ(-、-*ζ「何がですか?」
( ^ν^)「……色々あったから」
ζ(-、-*ζ「んん……疲れちゃいました」
心なしか。
ニュッの声が優しい。
- 673 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:32:34 ID:O2WumhgwO
( ^ν^)「休んどけ」
ζ(-、-*ζ「はあい……」
一度、頭を撫でられた。
我ながら驚くほど安心出来て、眠気が落ちてくる。
――沈みかけた意識は、ショボンが吹き出す音で浮上した。
(´;ω;`)「やべえwww無理限界wwwww『平気か』ですってwwwwwwww
ブーンさん聞きました?wwwwwwwwww」
( ^ω^)「聞きましたwwwww聞きましたwwwwwww
しかも今バックミラーに映ってたんですけどwwwwwwwwww
頭撫でてましたwwwwwwwwwwww」
(´;ω;`)「きめえwwwwwニュッ君きめえwwwwwwww
ここぞとばかりに株上げようとしてんじゃねえよwwwwwwwwww」
( ^ν^)「頼むから2人仲良く死んでくれ」
ζ(-、-;ζ(うるさい……)
( ^"ν^)「お前もおとなしく撫でられてんじゃねえよ死ね」
ζ(゚、゚;ζ「そのりくつはおかしいいいだだだだだ! 耳取れる取れる!!」
(´・_ゝ・`)「……ああ……」
ξ゚听)ξ「見ての通りよ」
(´・_ゝ・`)「なるほど」
*****
- 674 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:33:51 ID:O2WumhgwO
――すっかり明るくなって。
午前10時。
車は、フェンスの前に停まった。
(´・ω・`)「到着ー」
( ^ω^)「ありがとうお、ショボン」
(´・ω・`)「請求書は後日ね」
(;^ω^)「ぐっ……」
(´・ω・`)「若菜フィレンクトからもらい損ねた報酬分も」
(;^ω^)「はああああ!? それは僕と無関係だろうがお!!」
(´・ω・`)「騒がない騒がない。デレちゃん起きるよ」
(;^ω^)「……くっそう……」
ショボンとデレを除いた4人が降車した。
ニュッとデミタスは、若菜家から回収した本を抱えている。
デミタスの本もビロードの部屋から無事発見された。
- 675 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:34:32 ID:1Xnui0GA0
- ニュッ君ツンデレだな。
- 676 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:36:28 ID:O2WumhgwO
( ^ν^)「眠い……腹減った……」
ξ゚听)ξ「ブーンが、ご飯用意するようにって貞子に電話してたみたいよ」
(´・_ゝ・`)「おお、貞子か。貞子の作るご飯が一番美味しいよね」
ξ゚听)ξ「悪かったわね」
(;´・_ゝ・`)「ああっ、いや、別にツンが下手なわけじゃなくて」
内藤がフェンスの鍵を開けるのを見届けて、ショボンはアクセルを踏んだ。
遮木探偵事務所は年中無休である。
さっさと事務所に向かいたいが、後ろで眠る阿呆を家に送り届けなければならない。
いっそこのまま事務所へ行ってやろうか。
- 677 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:37:29 ID:O2WumhgwO
ζ(-、゚*ζ「……んん」
(´・ω・`)「うわ。起きた?」
ζ(゚、゚;ζ「うわって何ですか」
ハンドルを握り直す。
半ば本気で事務所へ行くつもりだったが、起きているなら仕方ない。
おとなしく長岡家へ行ってやろう。
(´・ω・`)「これから君を家に送るよ」
ζ(゚、゚;ζ「……いくらですか?」
(´・ω・`)「僕に順応してきたね。
500円か――あるいはショートケーキで手を打とう」
ζ(゚、゚;ζ「了解です……」
信号に引っ掛かる。
じっと前を見つめていたショボンは、ふと、デレへ顔を向けた。
(´・ω・`)「デレちゃん」
ζ(゚、゚*ζ「はい?」
(´・ω・`)「どうだった?」
- 678 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:37:33 ID:Jx34z7eA0
- やっと追いついた支援
- 679 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:39:20 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚;ζ「ど、どうって、何が」
(´・ω・`)「今回の事件。
一介の女子高生が経験するには、だいぶハードだったんじゃないの」
ζ(゚、゚*ζ「……そうですねえ……まだ、ちょっと頭が麻痺してる感じです」
(´・ω・`)「――恐くなった?」
視線を交わす。
デレは、きょとんとした様子で首を傾げた。
ζ(゚、゚*ζ「何が?」
(´・ω・`)「これから先、あいつらと関わっていけば……。
今日みたいなことが、また起きるかもしれない」
ζ(゚、゚*ζ「……今回のは、本が演じさせてたわけじゃないでしょう?」
(´・ω・`)「でも関係ないとは言い切れないよ」
ζ(゚、゚*ζ「……ううんと……あ、信号変わりましたよ」
(´・ω・`)「ああ」
- 680 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:40:46 ID:O2WumhgwO
車を走らせる。
ううん、ううん、と隣で唸り続けるデレ。
正直、うるさい。
(´・ω・`)「うんこでも出るのかい」
ζ(゚、゚;ζ「違いますよ!! 言葉探してんですよ言葉!
……えっと、恐いっちゃ恐かったですけど……。
本とかじゃなくて、単純に殺人事件が恐かったわけでして」
ζ(゚、゚*ζ「――皆さんとの付き合いをやめようとは、思いませんでした」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「そう」
心底安堵している自分に気付き。
ショボンは、苦笑した。
*****
- 681 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:42:08 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚*ζ「そろそろ着きますね」
我が家が近付いてくる。
帰ったら何をしよう。
まだ眠い。ベッドに直行するか。
(´・ω・`)「で、現金とケーキ、どっちで払ってくれるの」
ζ(゚、゚*ζ「ケーキ……私が作るのじゃ駄目ですか?」
(´・ω・`)「美味しく作ってくれるなら、それでいいよ」
ζ(゚、゚;ζ「味の保証は出来ませんけど」
ケーキの材料を思い浮かべる。
甘い苺が手に入るといいのだが。
- 682 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:43:45 ID:O2WumhgwO
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚*ζ「ケーキ」
ζ(゚、゚;ζ「ケーキ!!」
(´・ω・`)「何だようるさいな」
ζ(゚、゚;ζ「ショボンさん、図書館に戻ってください!
図書館! 早く!!」
(´・ω・`)「は?」
ζ(゚、゚;ζ「クックルさんのケーキ! 絶品の!
早くぅううう!!」
(´・ω・`)「騒ぐなぶち殺すぞ」
――ショボンにUターンを懇願するデレ。
ケーキは既にハローの胃袋の中だと知らされたときの彼女の反応は、
まあ、言わずもがなというやつだ。
第七話 終わり
- 683 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:44:53 ID:pTVvmpXsO
- 乙でした!
- 684 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:48:27 ID:5isNaEGEO
- 乙。
デレとニュッが相変わらずの仲で安心した。
少しずつデレを気に掛けるニュッ可愛いよ。
- 685 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:49:18 ID:Ewi/X3KwO
- 乙!!
やりきれないな……
- 686 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:49:24 ID:1Xnui0GA0
- 乙!!
- 687 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:50:10 ID:O2WumhgwO
- 今回の投下終わり!
>>535は誤爆ではなかったんじゃないかと思っている
来週から1、2週間程かなり忙しくなるので、その間は来れそうにありません
多分このスレを覗くのすら碌に出来ないかも
なので、もし質問とか書き込まれたとしてもしばらく反応を返せないと思います
悪しからず
読んでくださった方、支援してくださった方、ブーン芸さん、いっぷくさん、
皆さんありがとうございました!
>>616
な、何か間違ってた?
ミスとかあったら指摘お願いします
- 688 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:50:12 ID:lZ8ikiYQ0
- 乙!
初めてリアルタイムで遭遇したよ
- 689 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:51:38 ID:GXi45LxU0
- 乙
ニュッ君とデレちゃん微笑ましい
- 690 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:51:57 ID:Jx34z7eA0
- 過去作とかってありましたっけ?
- 691 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:52:35 ID:O2WumhgwO
あ、しおり的な目次的な
六話後 >>108
七話前 >>261
七話中 >>416
七話後 >>559
- 692 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:53:58 ID:bE0hGcLE0
- 乙でした
謎解けてすっきり
- 693 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:54:40 ID:IfeZV1as0
- 乙です
- 694 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:54:44 ID:xz2p4uz60
- >>687
まさかのシンクロw
乙でした、のんびり楽しみに待ってます
- 695 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 21:58:50 ID:O2WumhgwO
- >>690
長編 ( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
短編
('A`)燃え尽きた後のようです
ξ*゚听)ξふたりはなかよし(^ω^*)のようです
(*'A`)ふたなりなかだし(゚- ゚*川のようです
川 ゚ -゚)日和のようです(乗っ取り)
( ^ω^)の川 ゚ -゚)ルなナイトのようです(乗っ取り)
( ^ω^)が拳の王となるようです(乗っ取り)
( ^^ω)クリスマスには間に合わなかったようです
( ∴)早く人間になりたいようです
('A`)ドクオには幼なじみがいるようです(乗っ取り)
( ^ω^)ドラゴンボールのようです
【+ 】ゞ゚)は異世界で出会ったようです
川д川おばけやしきのようです
(-_-)ストライクヒッキーズのようです
(・ ∀・) また明日、のようです
爪'ー`)y‐小泥棒のようです
( ФωФ)いつでも変われるようです
lw ´‐ _ ‐ノ v 六度目の大量絶滅のようです
( ^ω^)はボクサーのようです(乗っ取り)
/ ,' 3 荒巻老人は80代にして妻以外の女性を愛したようです
('A`)おしりをかじらなければ虫になるようです
ξ゚听)ξ わるいひと! ζ(゚ー゚*ζ のようです
こんな感じで
- 696 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:01:42 ID:Jx34z7eA0
- せいとかいの人だったんですか!
あれめっちゃ好きだった
- 697 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:09:27 ID:UwyVwAHMO
- >>695
( ^ω^)…解せぬ
- 698 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:11:13 ID:TZcAUzj20
- おつおつ
- 699 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:42:24 ID:NSYexOj.O
- 過去作マジでか!?
拳の王大好きだなんだが!!
超乙!!
- 700 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:47:34 ID:kEl/a/PU0
- 乙
- 701 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:53:42 ID:M7WqUHr.0
- 乙
ビロード時々僕になってたのはこういうことか
男の娘……やるせないのう
ニュッ君のデレ期来たな
- 702 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:57:10 ID:1GGXjWSMO
- 乙でした!!
ビロード
http://imepic.jp/20110723/818680
- 703 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 22:59:46 ID:lOOnVrEE0
- 乙
ショボンかっこいい!
>>702
これは自分で書いてるのか?
それともそういうイラストツールでもあるのか?
- 704 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:01:08 ID:pTVvmpXsO
- 小泥棒好きだったわ。
短編で一番。
- 705 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:01:53 ID:YTHfN.BA0
- 乙
フサギコが原因とはいえビロードもゲスだな……
- 706 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:02:07 ID:KpdkatwMO
- 乙でした!
毎回毎回面白すぎる!まさかの( ><)
次回も楽しみに待ってます
- 707 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:06:50 ID:BXM2WWMAO
- マジかよ!
拳の王も人間になりたいようですも大好きなんだが
乙!!!
- 708 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:08:44 ID:O2WumhgwO
- >>702
ありがとうございますぁあああ!!
俺の脳内での擬人化イメージそのまんますぎてビビった
- 709 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:17:54 ID:yoFiSKuQ0
- >>535が怖すぎる
タイミング的にもぴったりだし
- 710 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/23(土) 23:43:17 ID:1GGXjWSMO
- >>703
携帯についてる写メに落書きしたりメモしたりできる機能で描いてます。
- 711 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 00:30:20 ID:/f9GyeMoO
- マジかよwww
- 712 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 01:02:47 ID:f/stscB60
- あーペンタブついてるやつね
すげぇ
- 713 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 03:22:17 ID:8Rqh5MNc0
- ネタバレくさい擬人化ビロード
未読の方は注意
http://imepic.jp/20110724/117750
- 714 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 03:42:12 ID:QrOGaZVA0
- 乙
ちょう面白かった
- 715 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 04:21:34 ID:HeS90oCcO
- 乙
ふたなりなかだしの人だったのか!
あれもいいものだった
あと乗っ取り率高いねwww
ツンさんの謎やらブーンの過去やらニュッとデレの仲やら、本当に興味が尽きないお話だわ
次回デレのケーキに期待
- 716 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 04:56:56 ID:ZiMFSoOQO
- 乙!!相変わらずすんばらしかった!!
またこれを楽しみに一週間、二週間がんばるぞー
- 717 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 07:14:19 ID:jjf3IjnsO
>>713
うひょぉおうありがとうございます!!
表情がすごい。ビロードの性格滲み出てる
そしてミス発見
>>680の二行目、
> ううん、ううん、と隣で唸り続けるデレ。
じゃなくて、正しくは
> ううん、ううん、と後ろで唸り続けるデレ。
だった
- 718 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 07:44:07 ID:VZ0qJjgYO
- 乙
次がどうなるのか楽しみだなぁ
>>713
どことなく怖い
怖いな
- 719 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/24(日) 09:14:04 ID:OPHDWQrMO
- 作者さんお疲れ様、早く人間にから楽しみにしてます
それとちょっとこの場をお借りします
ちょいといっぷくさんへ
409:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします
11/07/15(金) 22:29:31 ID:mpm3HGz.0
http://uproda.2ch-library.com/403227dgv/lib403227.jpg
上記の支援絵、ブーン芸さんにありますよ
多分ニュッくんとデレのツーショットだと思います
もし違っても作者さんが保存してるとおもいます
- 720 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/25(月) 02:09:02 ID:Ap5e2v.oO
- すごくおもしろかった
つーか前のレスで過去作品知ったけど知ってる上に面白いと思ったのばかり
ここまでの流れで今までで初めて( ^ω^)系の作者に興味が湧いた
感情表現やキャラの使い方、構成が素人じゃない
玄人の文章だった
- 721 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/25(月) 05:45:11 ID:tXqOovMw0
- もっといろんな本読んだほうがいいよ
- 722 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/25(月) 11:44:29 ID:XDYHBi4cO
- まぁプロとは言わんでも上手いな
- 723 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/26(火) 12:20:30 ID:XGt21/oE0
- ふたなりなかだしの人か
(´ФωФ)解せぬ
だがそれがいい
- 724 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/28(木) 00:05:53 ID:NxIls28g0
- ニュッ君のツンデレぶりが面白いです
- 725 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/29(金) 02:00:57 ID:rz.33zFwO
- ツンさんはもっとデレてもいいと思うの
- 726 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/07/29(金) 21:42:06 ID:3pGoXqUkO
- あげ
- 727 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/02(火) 06:07:46 ID:W8aalC8wO
- 上げとくー
- 728 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/03(水) 03:09:07 ID:l.OhWQVkO
- 続き楽しみだなぁ
- 729 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/05(金) 20:45:52 ID:0BKk1Fm6O
- あげ
- 730 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/05(金) 20:53:20 ID:0BKk1Fm6O
- あげ
- 731 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 03:53:02 ID:Ux/QUN1wO
- あげあげ(^ω^)
- 732 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 13:12:50 ID:POpmY8b6O
- 毎週末ここに来てしまうよ
- 733 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:03:07 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 734 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:03:19 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 735 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:03:30 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 736 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:03:43 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 737 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:03:55 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 738 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:04:07 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 739 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:07:37 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 740 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:07:49 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 741 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:08:01 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 742 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:08:14 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 743 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:08:28 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 744 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 19:08:39 ID:1Hv7YGRA0
_,,t-‐‐-、,-‐‐-、
三'::::::............... .....::::::`y,.
ナ::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::::::ヾ
| ̄| V::::::::::::::::_{{ ({∫∬ノノjヾ:::::{
| ̄| | ̄| ナ::::::::::::::i`__,,,,,,,ァ_ _,,,,,_ t;;:ヌ
| | | | イヘ::::::(ヾ~!,ャt、 !'''i ィtン )=f }f
| | | | i {t)テ" ヘ' '___,イ ヽ_/ 介'
| | | | _,rヘ_,j|!' /ー--''! |'
|,.ィ―'''' ̄ /| | /二ク ! <作者です! 同人誌とか持ってます!
/;;:::'';;::''::;;:/ { ! 、 ヾニン ノ\
/'''::::;r|''':::;;;| | ! \ _,,./|::;;'''\
/:;;/ |;;;''::;;| 丶\ `__>-ー´ !;;;:'''::iヽ、
i/ |'::;;;;''| 三 ―''" !''::;;;;| /ヽ
/⌒ヽ |;;''':::;| \ !;;::''|/ i
/ \{'';;;::''}  ̄二ニ= !::;;| |
/ヘ |;;:::::;{ ‐- !/ |
/ i |:::;;;''! ー ! / |
/ l |;;'';イ } {、
〉、 ∧テ{ ヽ _ _,,,,;;;;;:::-==ニ;;;_ ノ __,イ´
/ \_ //レ!  ̄  ̄ { ̄ |
/ `ー::v'´/ | i i |
i / ̄ | | i、 |
i / || ヽ |
- 745 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 20:25:29 ID:qFM10oZsO
- あ
- 746 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/06(土) 23:30:24 ID:5rDIpxZ.0
- あげ
- 747 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/07(日) 18:39:40 ID:VSs0EVTA0
- あげあげ
- 748 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 00:25:01 ID:AYfRpzqo0
- なんであげんだよ期待したじゃねーか
- 749 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/08(月) 00:36:27 ID:4O.gcj9k0
- 書き込まないほうがいい
スレ立てられない
- 750 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/12(金) 20:48:22 ID:xEjJmoBsO
(*゚ー゚)「どっかにさ、女の子の口に棒アイス突っ込む仕事とかないかな……」
ζ(゚、゚*ζ「相変わらず糞駄目人間ですね」
(;^ω^)(デレちゃんこんなキャラだったっけかな)
スレ見てくれる人がいるかは分からないけど、一応生存報告を
あと、早ければ明日、遅くて明後日か明々後日に第八話投下予定です
- 751 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/12(金) 21:01:38 ID:k/0s15YwO
- 待ってます! レス消費スマソ…
- 752 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/12(金) 23:56:00 ID:GYBWdysU0
- 来るー
- 753 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/13(土) 15:59:37 ID:BbuV0jts0
- いろんな人が見てるけどレス消費が怖くて書き込めないと思うんだ
- 754 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/13(土) 19:45:06 ID:0FQ7Ggf2O
- 早ければ今日、みたいなこと言っちゃったけど
無理だったわ
明日。明日必ず来ます。よほどのことがなければ
>>753
だったら嬉しい
第八話投下する分には充分余裕あるし、このスレ内では最終話まで行けそうにないし(予定では全十話)、
いずれ余裕が無くなったら http://jbbs.livedoor.jp/internet/13029/ ←こちらにスレ立てるので
もしも質問とか指摘とかあれば、気にせずじゃんじゃん書き込んでください
まさかそれでスレが埋まることもないだろうし
ていうか書き込んでくれたら俺が嬉しい
皆さんのレスが励みになります
とりあえず投下は明日に
- 755 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/13(土) 21:01:32 ID:P47XnAyA0
- レス消費しないようしてたんだが、次スレ先決まってるなら安心だな
更新待ってる
- 756 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/13(土) 22:18:46 ID:NpfmD25.O
- ずっと楽しみに待ってた!お預けくらった犬の気分だったぜ!
質問っていうか、ビコーズ先生が大好き過ぎるからビコーズ先生について色々教えてください!
でもどのキャラも皆大好きなんだからねっ!
- 757 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/13(土) 23:26:49 ID:0WHfGJ9QO
- 全百話か
短いなぁ
- 758 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/13(土) 23:51:03 ID:0FQ7Ggf2O
- >>756
( ∵)「先生が天使すぎるあまりに、また1人魅了されてしまいましたね」
( ∵)
( ∵)「何を教えたらいいんでしょう」
( ∵)「ぶっちゃけ、本来は第三話前編でちょろっと使い捨てるだけだった筈のキャラなので、
これといった設定もないんです」
( ∵)「こんな変な……いや、天使なキャラ付けもされてなかったんですよ、最初は」
*****
( ∵)「補習やりましょう。頑張ってね!」
ζ(゚ー゚;ζ「ひー」
*****
( ∵)「みたいなね、二言三言、補習言い渡すだけの役どころの筈だったんです。
名前すら出ない程度の、ちょい役中のちょい役で終わる筈だったんです。
勿論六話目で主役になる予定なんかもありませんでした」
( ∵)「なのに気付けばあんなことに」
( ∵)
( ∵)「どうしてこうなった」
( ∵)「ちなみに六話の後日、みっちり6時間、クールさんに説教しました」
( ∵)「感動して泣いてましたね、彼女」
( ∵)
( ∵)「ただの裏話みたいになっちゃいましたが、こんな感じでいいでしょうか」
( ∵)「>>757 ちょっと職員室に来なさい」
- 759 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 03:49:52 ID:bYV67f220
- おおぅ待ってる
ビコーズ先生がニュッ君と同じくらい大好きでどうしようかと思っている
- 760 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 07:08:22 ID:BVe4mRY60
- プロローグ全十話か...
- 761 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 07:12:49 ID:GqZKs.iI0
- >>750
ニュッ君に似てきたなデレ……
- 762 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 11:52:36 ID:ZG/EAOoUO
- ビコーズ先生はモテますか?家の壁は直りましたか?その間の渡辺さんと同棲気分はどうでしたか?
ニュッ君とデレちゃんの好きなタイプを教えてください
女性キャラ全員のスリーサイズ教えてくださいしぃさん!
- 763 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 13:34:48 ID:YWNQLZZUO
- いやっほう!
ビコーズ先生に職員室呼ばれたぜひゃっほう!
- 764 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 14:27:35 ID:1u6yV9wwO
- >>762
> ビコーズ先生はモテますか?
( ∵)「あまりモテませんね。何ででしょう。先生ほど素晴らしい男も滅多にいないのに」
( ∵)「あ、でも一時期、毎日下駄箱にラブレター入ってたことはありますよ。
何かね、赤い字で『死ね』ってびっしり書いてあるんです。すごく情熱的でした」
> 家の壁は直りましたか?その間の渡辺さんと同棲気分はどうでしたか?
( ∵)「直りましたよ。先生忙しくてなかなか時間とれなくて、数日後にようやく業者呼びました。
渡辺さんが呼んでくれりゃあいいのに、面倒臭いとかぬかしやがってこのアマ」
( ∵)「そういや修理代について話すために内藤さんって方と会いましたが、
あの人ちょっと前にうちの学校で生徒口説きまくって出入禁止になった人じゃないですか。
長岡さんの交友関係が非常に心配です」
*****
( ;ω;) アノヒト コワイ ショボンヨリ コワイ
*****
( ∵)「というかね、『同棲』はやめてください。『同居』でお願いします」
从'ー'从「この人デリカシーないのよ〜。私が着替えようとしても、席外さないの〜。
それでいて自分が着替えるときはわざわざ脱衣所まで移動するっていうね」
( ∵)「あなたも相当酷いもんですよ。
普通、あの状態の部屋に男連れ込みます? すっごく気まずかったんですけど。
しかも学生かってぐらい若い子でね……」
( ∵)「あんまりにも気まずかったので思わず渡辺さんの実年齢を教えてあげたら、
何もせずに帰っていきましたけどね。彼」
从'ー'从「本当お前いっぺん死ねよ」
( ∵)「それにしても、ポスターとかで穴を隠せば良かったですね。今更ですが」
- 765 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 14:34:23 ID:1u6yV9wwO
> ニュッ君とデレちゃんの好きなタイプを教えてください
ζ(゚ー゚*ζ「んーっと、何でしょう……ううんと」
( ^ν^)「どうせ『人間』とかだろ」
ζ(゚ー゚;ζ「そんな切羽詰まってませんよ!!」
ζ(゚ー゚*ζ「優しい人ですかねえ。……あの、一緒にいて安心する人とか?
ありきたりですけど」
( ^ν^)「曖昧で面白くねえよ」
ζ(゚ー゚;ζ「面白さ求められても!
じゃあニュッさんは具体的に好きなタイプ言えるんでしょうね!?」
(*゚ー゚)「部屋にあったエロ本から判断するに、ニュッちゃんは巨乳派だよね!」
( ^ν^)「帰れ」ζ(゚ー゚*ζ
( ^ν^)「……料理が出来て、それなりに常識人で、そこそこ顔が良くて、
お人よしで年下な奴がいい」
ζ(゚ー゚;ζ「結構欲張りますねニュッさん。女の人苦手なくせに」
( ^ν^)
ζ(゚ー゚;ζ「?」
ζ(゚ー゚*ζ ←胸でかい・料理出来る・それなりに常識人・そこそこ顔がいい・お人よし・年下
( ^ν^)
( ^ν^)「それで頭が良くて馬鹿じゃない奴」
ζ(゚ー゚;ζ「何か今無理矢理付け足しませんでした!?」
- 766 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 14:37:28 ID:1u6yV9wwO
> 女性キャラ全員のスリーサイズ教えてくださいしぃさん!
(;*゚ー゚)=3 「おっしゃぁあああ! 任せろ!!」
(;*゚ー゚)「見ただけでもある程度分かるけど、出来るなら正確な方がいいよね!
実 際 に 触 っ て 測 っ た 方 が い い よ ね ! !」
「というわけでデレちゃアーサーッ!!」
(*゚ー((☆ζ(゚、゚*ζ
ミつ パァアアアン
- 767 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 16:16:34 ID:C1kyKMJ.0
- 声出してワロタ
安心の安定感
- 768 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 16:43:34 ID:tqSpaEwwO
- 何この嬉しいオマケ
今日も期待してるよ!
- 769 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 18:06:40 ID:YWNQLZZUO
- ビコーズ!ビコーズ!ビコーズ!ビコーズぅぅうううわぁああああああ
ああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!
ビコーズビコーズビコーズぅううぁわぁああああ!!!
あぁ!クンカクンカ!
スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!ビコーズ先生の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!(以下略
- 770 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 18:14:31 ID:VFMWL0QIO
- 投下くるなら盆休みの楽しみの一つになりますよー!
待ってる━━━(゚∀゚)━━━
- 771 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 19:03:42 ID:iVeRsVGoO
- 投下前にこんなオマケが読めるなんて、なんて贅沢な休日なんだ!
ショボンより恐れられるビコーズ先生www
なんとなくξ゚听)ξとは気が合う気がする、なんとなく
- 772 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 20:13:21 ID:rmGKWIMoO
- wkwktktk
- 773 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 21:48:03 ID:dcB7fAEY0
- ビコーズ先生の人気ww
キュートとクックルを全力で応援してます
スレは大丈夫そうとの事で遠慮なくwktk
- 774 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:08:12 ID:PYNKjaagO
- ビコーズ先生はどうしてそんな性格はたn…素晴らしい性格と能力の持ち主なのに教師になれ、もといなったんだ…
- 775 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:27:54 ID:1u6yV9wwO
>>774
( ∵)「そりゃああなた、素晴らしい性格と能力の持ち主だからですよ」
>>761
ζ(^ν^*ζ
第八話、ゆっくり投下しマクベス
- 776 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:29:48 ID:1u6yV9wwO
o川;*゚ー゚)o
年が明けて、1月3日。午前11時。
大型公園、「ヴィップ公園」のウォーキングコースの一角、とあるベンチ。
鞄を胸に抱え、深呼吸を繰り返す少女が1人。
素直キュート。
o川;*゚ー゚)o(何でクックルさんに会うだけなのに私が緊張しなきゃいけないの……。
寧ろ、こんな美少女に会えるクックルさんの方が緊張するべきだっつうの。
……まだ来ないのかなあ。そろそろ約束の時間なんだけど)
落ち着かない。
前日に降り積もった雪を踏みつける。
それに飽きると、ベンチ脇にある大きなオブジェを見上げた。
何を表現しているのか、考えるのも億劫になるほど意味が分からない形をしている。
無理矢理例えるなら、ウニのトゲを極端に減らして、紐をぐるぐる巻きつけたような感じ。
大きさの割に支えの部分が妙に細くて、いつか崩れるのではないかと心配してしまう。
- 777 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:34:18 ID:1u6yV9wwO
o川*゚ー゚)o「これ作った人、何考えてたんだろ」
( ゚∋゚)「キュート」
o川;* д )o「うなぁああああああああああ!!!!!」
(;゚∋゚)「!?」
突然かけられた声に、キュートはベンチから転げ落ちた。
通り掛かった人々がぎょっとしてキュート達の方を見る。
声の主、堂々クックルは、挙げた右手を所在無さげに揺らした。
(;゚∋゚)「ど、どうした?」
o川;* д )o ハーッ ハーッ
(;゚∋゚)「具合悪いのか」
o川;*゚ー゚)o「……だいじょうぶ」
真っ赤になって震えている様はどう見ても大丈夫そうではないが、
これでも本人は平静を装っているつもりだ。
立ち上がり、クックルへ振り返る。
o川;*゚ー゚)o「ていうかね、時間ぎりぎりじゃん! もっと早く来るのが礼儀じゃないの?
こんな寒い中で女の子を待たせるなんて男のすることじゃないよ!
あけましておめでとうございます!!!!!」
(;゚∋゚)「あ、ああ、おめでとう。
……寒いなら、待ち合わせ場所、どこかの店の中とかにすれば良かったんじゃ」
o川;*゚ー゚)o「屋内で奇声あげるより、屋外で奇声あげる方がマシでしょ……」
(;゚∋゚)「奇声をあげるの前提なのか……」
- 778 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:35:47 ID:1u6yV9wwO
――キュートは昨日、友人の長岡デレを介して、クックルに約束を取り付けた。
渡したいものがあるから会ってほしい、と。
ζ(゚、゚*ζ『ヴィップ公園で待ち合わせするの? 図書館に行けばいいと思うけど』
o川*゚ー゚)o『察して。デレちゃん。察して』
ζ(゚ー゚*ζ『あ、デートしたいんだ』
o川;*゚ー゚)o『違うし! 2人きりで会いたいだけだし!!』
o川;*゚ー゚)o『……いや2人きりで会いたいって別に深い意味ないけどね!!?』
ζ(゚ー゚;ζ『1人でハッスルしないでキュートちゃん』
こういった感じで。
- 779 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:36:12 ID:C1kyKMJ.0
- Ktkr
支援
- 780 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:36:37 ID:TzEVtVO.0
- きたぁぁぁうげきゃぽラッ
- 781 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:37:18 ID:1u6yV9wwO
自分から言い出したとはいえ、いざ会ってみると目的を遂行出来るか怪しくなってきた。
目的。少し遅めのクリスマスプレゼント。
とてもじゃないが、おとなしく渡せそうにない。
(;゚∋゚)「本当に大丈夫か、お前」
o川;*゚ー゚)o「だから、だい……」
( ^ν^)
o川*゚ー゚)o
( ^ν^)
o川*゚ー゚)o「ちょっと待て」
クックルの隣に立つ男。
何故、内藤ニュッがここにいる。
o川;゚ー゚)o「えっ、何でニュッ君さんがいるの?」
( ^ν^)「ニュッ君さんって何だ」
( ゚∋゚)「ああ、俺が出掛けるって言ったら、ついてきたんだ」
o川;゚ー゚)o「……そうなんだ、へえ……」
( ^ν^)「心配しなくても今から別行動とるぞ」
o川;*゚ー゚)o「しししし心配って、なななな何が!」
- 782 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:38:57 ID:1u6yV9wwO
( ゚∋゚)「ニュッ君は何か用事あるのか?」
( ^ν^)「別に。適当に飯食って適当にぶらつく」
( ゚∋゚)「なら、折角だし一緒に行くか」
o川;゚ー゚)o「ええっ!?」
( ^ν^)「いや駄目だろ。こいつは2人がいいんじゃねえのか」
o川;*゚ー゚)o「ばっ、馬鹿言わないでいただきたい! 2人だろうと3人だろうと構わないし!
寧ろこんな、む、むっさいのと2人きりなんて恐ろしい!!」
( ゚∋゚)「ほら、キュートもこう言ってるし」
o川*;ー;)o「うわああああああ私の馬鹿ぁああああああああ!!」
(;゚∋゚)「……なあ、やっぱり調子悪いんじゃないのかキュート」
いつも通りである。
- 783 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:40:25 ID:rmGKWIMoO
- ニュッ君さんww
- 784 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:40:30 ID:1u6yV9wwO
(;゚∋゚)「これやるから落ち着け」
o川*;ー;)o「へ?」
クックルが何かを差し出した。
掌に乗るくらいの、小さな箱。
o川*;ー;)o「何これ」
( ゚∋゚)「ケーキだ。もっと大きいのにしたかったんだが、
持ち運ぶのを考えて小さめにした」
o川*;ー;)o「あ、ありがとう……」
( ゚∋゚)「俺の手作りなんだが、気に入らないなら返してくれていいぞ」
――手作り。
クックルの。
慎重に受け取り、キュートは箱をゆっくりゆっくり鞄にしまった。
中身が崩れないよう、丁寧に。
(;゚∋゚)「そんな爆弾みたいに扱わなくても……」
o川;゚ー゚)o「話しかけないで。集中が途切れる……!」
一番安全であろう位置に箱を収め、ほっと息をつく。
指先に当たった紙が、かさり、音を立てた。
キュートの肩が揺れる。
紺色の包み紙。
クックルへのプレゼント。
- 785 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:42:35 ID:1u6yV9wwO
o川;゚ー゚)o(ど、どうしよう、今渡すべき?
今なら……今なら『お返し』ってことで渡せるかな……。
それとも雰囲気とか作っ……雰囲気ってどんな雰囲気やねん)
包みへ触れたまま硬直する。
どうしよう、どうしようと考えを巡らせていると――
⌒*リ;´・-・リ「ママ、ママどこお……」
o川*゚ー゚)o「ん?」
⌒*リ;´・-・リ「マ……んぎゃっ」
( ゚∋゚)「うおっ」
o川;゚ー゚)o「あっ」
キュートのすぐ傍を、子供が駆け抜けていった。
直後、雪で滑ったのか勢いよくすっ転ぶ。
よりにもよって顔面から着地した。
運の悪いことに、転んだ先は雪の積もっていない、タイルが剥き出しの場所。硬い。
- 786 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:43:57 ID:1u6yV9wwO
o川;゚ー゚)o「だ、大丈夫!?」
⌒*リ´;-;リ「……いたい……」
( ^ν^)「そりゃあな」
(;゚∋゚)「あー、でこから血が」
クックルが抱え起こす。
少女だ。見たところ、5歳かそこら。
真っ赤なショルダーバッグを肩に引っ掛けている。
擦りむけた額が痛々しい。
(;゚∋゚)「泣くな泣くな」
⌒*リ´ぅ-;リ
o川;゚ー゚)o「ちょっと待って、絆創膏持ってるから」
⌒*リ´ぅ-;リ「しぬ?」
( ^ν^)「死ぬかもしれねえな……」
⌒*リ´;-;リ
(;゚∋゚)「ニュッ君やめろ」
クックルがハンカチで血を拭う。
キュートは、鞄から取り出した無駄にファンシーな絆創膏を貼りつけた。
それから、今度はキュートのハンカチで涙を拭いてやる。
- 787 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:46:09 ID:1u6yV9wwO
⌒*リ´・-・リ「ありがとう」
o川*゚ー゚)o「どういたしまして。
1人? お母さんは?」
⌒*リ´・-・リ「……ママ、迷子なった」
( ^ν^)「迷子なのはお前だろ」
(;゚∋゚)「どこではぐれたんだ?」
⌒*リ´;-;リ「わかんない……」
( ^ν^)「やだクックル君サイテー」
(;゚∋゚)「すっ、すまん――って今のは俺が悪いのか?」
o川*゚ー゚)o「よしよし。どこから来たのかな?」
⌒*リ´;-;リ「ニューソク」
o川;゚ー゚)o「いや、そういうことじゃ……てか結構遠くから来たんだね」
ニューソクは2つ隣の県にある都市だ。
まさか、そこからここまで真っ直ぐ来たわけもあるまい。
時期から考えるに、親の実家がこの街にあるのだろう。
キュートが訊きたかったのは、公園の外と中、どちらから来たのかということなのだが。
- 788 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:48:22 ID:1u6yV9wwO
o川*゚ー゚)o「ううんと、お名前は何ていうの?
あ、私はキュートね。この大きいのがクックルさん、そっちがニュッ君さん」
⌒*リ´;-;リ「……リリ……」
o川*゚ー゚)o「リリちゃん!
大丈夫大丈夫、お姉さん達がお母さん見付けてあげるから泣かないの」
( ^ν^)「俺パス」
o川;゚ー゚)o「うわっ、人非人」
ニュッが踵を返す。
泣いている子供を前にして、よくもまあ、そのような酷いことを。
o川*゚−゚)o「人で無しー。鬼ー。悪魔ー」
( ^ν^)「……」
背中へ文句をぶつけてやると、ニュッは足を止めた。
舌打ちが聞こえる。
( ^ν^)「……うるせえブス」
o川*゚−゚)o
o川*゚−゚)o ブチンッ
それは禁句だ。
- 789 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:52:05 ID:1u6yV9wwO
o川#゚д゚)o「誰がブスじゃああああああああああああああああい!!!!!
よく見ろ! なあ!! こんな美少女が他にいるかよボケェエエエエエ!!」
⌒*リ´ぅ-;リ「!?」
( ^ν^)「俺、ツンが基準だから……」
o川;゚д゚)o「ああああっ、あれと比べないでよ!!
……いやでも、私とツンちゃんなんて紙一重の差だし!」
( ^ν^)「ボール紙か?」
(;゚∋゚)「……3ヶ月かけてようやくキュートに慣れてきた奴が、何言ってんだ」
⌒*リ;´・-・リ , , ,
リリがキュートから離れる。
その後ろで、クックルが溜め息をついた。
( ゚∋゚)「ほら、リリが恐がってるから静かにしろ」
o川#゚ー゚)o「私悪くないもん。ニュッ君さんが悪いもん」
( ゚∋゚)「そうだな、ニュッ君が悪いな。キュートはブスじゃないぞ。可愛い可愛い」
o川;*///)o「ぽぎゃああああああ黙れやぁあああああああああああああ!!!!!」
(;゚∋゚)「えー褒めても駄目なのか」
- 790 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:53:03 ID:C1kyKMJ.0
- なんかニュッ君が
- 791 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:54:39 ID:WdWT08GAO
- 待ってましたいやっほぉおおおおう!!!!\(^o^)/Yahoo!!!!!
リアルタイム更新に立ち会えて感動だー
- 792 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:54:48 ID:1u6yV9wwO
( ^ν^)「じゃあな」
(;゚∋゚)「こら、ニュッ君もさりげなく逃げるな。
……良かったら一緒に来てくれないか。人手が多くて困ることはないだろ」
( ^ν^)「……」
心底面倒臭そうに、ニュッは明後日の方を向きながら舌を出した。
逃げ出さないところを見ると、一応承知はしたようだ。
デレからは「いい人」とよく聞かされているものの、
キュートには、とてもじゃないがそうは思えない。
o川*゚ー゚)o(いい人っていうのは、クックルさんみたいな人を言うんじゃないの)
そんなことを考えていると。
――ぎしり、と、何かの軋む音がした。
音の方、リリへ顔を向ける。
- 793 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:55:26 ID:1u6yV9wwO
o川*゚ー゚)o「え」
あの、不可思議なオブジェが――リリ目掛けて、落ちていった。
.
- 794 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:56:36 ID:1u6yV9wwO
第八話 あな馬鹿らしや、鍵小説
.
- 795 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:56:49 ID:y67c.lAk0
- きてたー!支援!
キュートとクックル応援し隊!!
ニュッ君さんも自分は素直になれないのに、人はからかうのなw
- 796 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:59:24 ID:1u6yV9wwO
(*´・_ゝ・`)「うちじゃ、大掃除は毎年12月29日って決まってたんだけどね。
今年は、ほら、例の事件で館長がお疲れだったからさ」 モシャモシャ
ζ(゚、゚*ζ「あれは、たしかに疲れたでしょうねえ……」
VIP図書館。2階、食堂。
長岡デレは、向かいの席で美味そうにドーナツを貪る盛岡デミタスを眺めていた。
(*´・_ゝ・`)「……はあ。ありがとうデレさん、こんな美味しいドーナツを」
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、お近づきのしるしにってことで。
あんまり食べ過ぎちゃ駄目ですよ、お昼ご飯食べれなくなっちゃいますから」
デミタスに微笑みかけて、デレはコーヒーカップを持ち上げた。
砂糖とミルクがたっぷり入ったコーヒーを口に含む。
食堂には2人だけ。
デミタス――と外出中のニュッとクックル――を除き、
図書館の住人達は、今更ながら大掃除に励んでいる。
ζ(゚ー゚*ζ「デミタスさんはお掃除しないんですか?」
(´・_ゝ・`)「僕の部屋は、ついこの間クックルが片付けてくれたばかりなんだ。
だから軽く整理するだけで終わったよ」
今は各自の部屋を掃除しているところだ。
それが済み次第、手分けをして屋敷全体の掃除へ移るらしい。
デレも手伝うつもりである。
- 797 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 22:59:38 ID:9cf.z1q.O
- 鍵小説って初めて知ったわ。超支援
- 798 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:00:49 ID:1u6yV9wwO
(*´・_ゝ・`)「いやあ、しかし本当に美味しいな、このドーナツ。どこのお店?」
ζ(゚ー゚*ζ「ヴィプデパートの地下にですね――」
それにしても。
盛岡デミタス。普通だ。あまりにも普通だ。
普通すぎて、この図書館内では逆に浮いていそうなくらい普通だ。
ζ(゚、゚*ζ(この人が本当に『鍵』なのかなあ……)
首を捻る。
遮木ショボンの言葉通りならば。
デミタスが、図書館の秘密に関わる重要な人物――「鍵」の筈、なのだが。
彼を観察していても、何も分からない。
ζ(゚、゚*ζ「んんん……」
(´・_ゝ・`)「何かあった?」
ζ(゚、゚;ζ「ん……いえ、別に」
それからしばらく、雑談で時間を潰した。
内容は取るに足らぬ世間話。
学校のことやら、図書館のことやら。
- 799 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:01:10 ID:C1kyKMJ.0
- 鍵小説ググってきた
誰なんだろうなぁ
- 800 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:02:53 ID:1u6yV9wwO
ζ(゚、゚*ζ「そういえばニュッさん、どこに出掛けたんですか?」
(´・_ゝ・`)「ああ、特に用事とかないんじゃないかな。
掃除するのが面倒だからクックルについてっただけなんだと思う」
ζ(゚、゚*ζ「ニュッさんらしい……」
クックルはキュートに会いに行った筈。
ニュッには是非とも空気を読んでいただき、キュート達を2人きりにさせてもらいたい。
ζ(゚、゚*ζ(……ううん……)
クックル。キュート。
彼らのことも気になる。
上手くいってほしいのだが、そう簡単に片付けられる問題ではなさそうだし。
デミタスとの会話が途切れる。
コーヒーカップに目を落として考え込んでいると、食堂の扉が開かれた。
( ^ω^)「さあーて、こっからが本番だお」
館長、内藤ホライゾン。
いつものスーツではなく、動きやすそうな私服を身に着けている。
彼の後からツンや山村貞子、ハロー・サンといった作家達が入室し、
息をつきながら椅子に腰掛けた。
デミタスが席を立ち、厨房へ引っ込む。
- 801 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:04:54 ID:1u6yV9wwO
(*゚ー゚)「めんどいよー」
(メ#゚;;-゚)) コクコク
椎出しぃと椎出でぃの双子が、ぐったりとテーブルに突っ伏した。
もうここから動かない、と、しぃが首を振る。
労いの言葉をかけようとしたデレは、でぃを見るなり失語した。
でぃの顔やら手やらに真新しい傷が出来ているのだ。
ζ(゚、゚;ζ「大丈夫ですか、いつも以上にぼろぼろですが」
(メ#゚;;-゚)ノシ
(*゚ー゚)「掃除中、あっちこっちにぶつかるわ転ぶわで。毎度のことだけどさ」
ζ(゚、゚;ζ「……でぃさん、おとなしくしてた方がいいのでは」
(メ#゚;;-゚)=3
ハハ ロ -ロ)ハ「ヤル気ダケは一人前デス」
( ・∀・)「はーあ……」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、お疲れ様です」
( ・∀・)「ほーんと、疲れちゃった」
茂等モララーが、肩を叩きながら首を左右に傾けた。
ツンがモララーをじろりと睨む。
ξ゚听)ξ「普段から片付けておかないからよ。
……どうして私がモララーの手伝いをさせられなきゃいけないのかしら」
(;・∀・)「う……ご、ごめんなさい」
川д川「あんたもよお、ハロー……」
ハハ ロ -ロ)ハ「反省してマース」
- 802 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:08:16 ID:1u6yV9wwO
(´・_ゝ・`)「よいしょ、っと。水飲む人ー」
デミタスが紙コップと水差しを抱えて戻ってきた。
デレ以外の全員が手を挙げる。
(´・_ゝ・`)「コーヒーもあるけど」
( ^ω^)「あ、じゃあ僕コーヒー」
ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシもー。お砂糖とミルクいっぱーい」
(メ#゚;;-゚)ノ
(*゚ー゚)「でぃちゃんもコーヒーだって。私は水で」
(´・_ゝ・`)「はいはい」
何だかデミタスがみんなの父親みたいで、デレは小さく吹き出した。
作家達は皆、ニュッと近い年頃に見える――実際の歳は知らない――のだが、
デミタスだけは結構離れているように思う。
この年齢の辺りを掘り下げれば、彼が「鍵」たる所以が分かるのだろうか。
- 803 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:11:14 ID:1u6yV9wwO
( ^ω^)「……デレちゃん」
ζ(゚、゚;ζ「あっ、はいっ、何でしょう」
( ^ω^)「本当に手伝ってくれるのかお? 大掃除」
ζ(゚ー゚*ζ「勿論です」
(*^ω^)「おお……ありがたいお。デレちゃんマジ天使。
で、今からする作業は、みんなで取り掛からなければならないお」
ξ゚听)ξ「みんなでって……1階?」
(´・_ゝ・`)「1階の掃除は最初にやったじゃないか」
( ^ω^)「掃除ではなく――整理、と言うのが正しいかもしれんおね」
内藤の神妙な顔つきに、皆は真剣な表情を浮かべる。
何やら、ただ事ではなさそうだ。
(;・∀・)「……整理?」
( ^ω^)「ニュッ君やお前達の部屋にある本を、1階に移動させるんだお」
重々しく告げた内藤。
きょとんとするデレを置いて、作家達は一様に沈みきった様子で溜め息を吐き出した。
- 804 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:12:00 ID:1u6yV9wwO
川д川「……ついに……」
(*゚ー゚)「やるのか……」
(メ;゚;;-゚)「……」
ζ(゚、゚;ζ「あのう、本を動かすだけでは……」
ξ゚听)ξ「何冊あると思ってるのよ」
ζ(゚、゚;ζ「いや、し、知らないけど」
(;´・_ゝ・`)「何だってまあ、クックルがいないときに……」
( ・∀・)「クックルがいなくても、ツンがいるよ」
ξ゚听)ξ「どういう意味?」
- 805 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:13:21 ID:1u6yV9wwO
( ^ω^)「あれ、そういやクックルが見当たらないお。ニュッ君も」
(*゚ー゚)「クックルならキュートちゃんとデート行ったよ。ニュッちゃんは逃げた」
( ^ω^)
( ^ω^)「デー……ト……?」
川д川「……館長、聞いてなかったのお……?」
ハハ ロ -ロ)ハ「デートかは知らないケド、キュートと会うって言ってマシタヨ」
( ^ω^)「聞いてないお。え? デート? キュートちゃんと?
ふざけてるの? うわあ。やってらんねえお。もう掃除とかどうでもいい」
ζ(゚ー゚;ζ「内藤さんしっかり!」
ξ゚听)ξ「……こうやって拗ねるからブーンには言わなかったんだと思うわ」
*****
- 806 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:14:48 ID:C1kyKMJ.0
- 部屋に入るのか……
- 807 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:15:06 ID:1u6yV9wwO
一方、ヴィップ公園。
雪の上に、オブジェやタイルの破片が散らばっている。
(;゚∋゚)「……」
⌒*リ;´・-・リ
――その横で、リリを抱え込んだクックルが呆然としていた。
彼の反応があと少し遅れていたら、リリはオブジェの下敷きになっていただろう。
我に返ったキュートが、急いで駆け寄る。
o川;゚ー゚)o「けっ、怪我は!?」
(;゚∋゚)「俺は平気だ。リリ、痛いとこないか?」
⌒*リ;´・-・リ「んーん……」
( ^ν^)「……いつか倒れると思ってたんだよな」
ニュッはクックル達の心配をするでもなしに、
さっきまでオブジェが乗っていた台座を眺めていた。
支えの部分がぽっきり折れている。
- 808 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:19:19 ID:1u6yV9wwO
( ^ν^)「管理者とかに説明すんの面倒だな……誰か来る前に行くぞ」
o川;゚ー゚)o「そんなのよりクックルさん達の心配ぐらいしなよ!」
( ^ν^)「見た限りじゃ無事じゃねえか」
つくづく、デレが理解出来ない。
何故にニュッを善人だと言うのだろう。もしかして騙されていやしないか。
( ゚∋゚)「あー……母親探さないといけないんだったな。どうしたもんか」
o川*゚ー゚)o「公園一周してみる?」
( ^ν^)「こんな広い場所回るより、管理事務所に預けりゃいいだろ」
o川*゚ー゚)o「あ、それがいいか。放送かけてもらえるし」
ここから管理事務所までは、一本道だ。
3分とかからず到着する筈。
( ゚∋゚)「じゃあ行くか、リリ」
⌒*リ;´・-・リ「わ」
クックルが、リリを肩車した。
予想外の高さに驚いたか、リリはクックルの頭に目一杯しがみつく。
- 809 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:20:30 ID:1u6yV9wwO
(; ∋ )「リリ、前が見えん」
⌒*リ;´・-・リ「こ、こわい……」
(; ∋ )「恐くないから、目を隠さないでくれ」
( ^ν^)「下ろしてやれよ」
(; ∋ )「いや……こうしてれば目立つし、
途中で親に見付けてもらえるかもしれないだろ」
o川*゚ー゚)o「おお、クックルさん、さすが」
o川;*゚ー゚)o「……まあ私も思いついてたけどね! ていうか猿でも考えつくレベルだよね!!
その無駄にでかい図体も役立つことがあるんだなあ!!」
( ^ν^)「こいつ面倒くせえ」
*****
- 810 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:21:11 ID:1u6yV9wwO
――気味が悪い。
来た道を振り返り、キュートは眉根を寄せた。
o川;゚ー゚)o「……ねえ、何なの、これ」
(;゚∋゚)「さあ……」
o川;゚ー゚)o「つい数分前も通ったよね?」
( ^ν^)「いつから迷路になったんだ、ここ」
o川;゚ー゚)o「迷路にすらなってないよ。さっきから真っ直ぐ歩いてるだけじゃん」
(;゚∋゚)「……くそっ、またオブジェだ」
管理事務所を目指して歩き始め、かれこれ20分。
ずっと同じ道をぐるぐる回っている。
もう何度目になるか、崩れたオブジェの前に辿り着いた。
- 811 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:22:44 ID:1u6yV9wwO
o川;゚ー゚)o「私達しかいないしさあ……」
⌒*リ;´・-・リ「?」
しかも人がいないのだ。
遠くから笑い声などは聞こえてくるので、
どうやら、この周辺だけが無人になっているらしい。
キュートは左右を見た。
右側にはオブジェとベンチ、柵、木々。
左側にはクックルより高い垣根。
o川;゚ー゚)o「……この垣根の向こうに行ったら、どうなるかな」
( ゚∋゚)「試すか? ちょっと難しそうだが」
( ^ν^)「いや、それより――」
クックルが垣根に手を伸ばすと同時、ニュッが踵を返した。
人差し指をくいくいと曲げ、「来い」と合図する。
- 812 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:24:37 ID:1u6yV9wwO
( ^ν^)「こっち行ってみたらどうだ」
o川*゚ー゚)o「戻るってこと? どうせ、またここに来ちゃうんじゃないの?」
本来ならば、そちらに進めば公園を出ることになる。
だが、現状からして――理由は分からないが――この道は輪を描く形になっているようだし、
今までと同じ結果になりそうなものだ。
( ^ν^)「いいから」
o川;゚ー゚)o「……もー」
キュートは逡巡したが、クックルがニュッの後へ続いたので、仕方なく彼らを追った。
.
- 813 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:26:09 ID:1u6yV9wwO
――そして僅か1分後。
o川;゚ー゚)o「うっそ」
4人は、無事に公園から脱出した。
さっきのは何だったのだろう。
頭から足元まで染み込んでいく恐怖に、キュートは身震いした。
( ^ν^)「……公園にいたら話が進まなかったのか、
それともリリが管理事務所に預けられちまうのが厄介だったのか……」
o川;゚ー゚)o「へ?」
ニュッが妙なことを呟いている。
何の話かと訊いてみたが、無視されてしまった。
- 814 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:27:04 ID:1u6yV9wwO
( ^ν^)「リリ」
⌒*リ´・-・リ「?」
( ^ν^)「本持ってねえか」
唐突な問いに、クックルの肩の上にいるリリは首を傾げた。
ニュッの視線の先は、リリというより、彼女のショルダーバッグ。
⌒*リ´・-・リ「ほん?」
( ^ν^)「……鞄見せろ」
⌒*リ;´・-・リ「! やだ!」
(;゚∋゚)「ちょ、リリ! 暴れるな!」
ニュッの手が鞄へ伸びると、突然リリが激しい抵抗を見せた。
無理に後ろへと体を反らせ、足をばたつかせる。
肩車の状態でそんな風に暴れれば、まあ、当然ながら。
⌒*リ;´・-・リ「ひゃっ!」
ずるりと、リリが真っ逆さまに滑り落ちた。
- 815 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:29:01 ID:1u6yV9wwO
o川;゚ー゚)o「リリちゃん!」
――このままでは、コンクリートに頭を打ちつけてしまう。
下手をすれば首が折れる。
キュートは咄嗟に目を覆った。
数秒。
何の物音もしない。
恐々、手を下ろす。
o川;゚ー゚)o「……おうふ」
(;゚∋゚)「……危なかったな」
⌒*リ;´・-・リ
クックルがリリの両足を握っていた。
リリは真っ青な顔をして、ぶらぶら揺れている。
( ^ν^)「ナイスキャッチ」
o川;゚ー゚)o「……そもそもニュッ君さんが鞄のこと言わなきゃ落ちなかったんだけどね?」
*****
- 816 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:30:45 ID:Q0Bd5wJI0
- リアルタイム遭遇ktkr
- 817 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:32:15 ID:1u6yV9wwO
ζ(゚、゚;ζ「ほわあ……」
デミタスの部屋の隣。
ニュッの部屋。
デレは、吐息混じりに感嘆の声を漏らした。
人の部屋というより――まるで、本の部屋だ。
壁に寄り添う形でずらりと並んだ本棚。
床から天井まで届く高さのそれらには、ぎっしりと本が詰まっている。
踏み台が一つ。上の方にある本を取るのに使うのだろう。
床も凄い。足の踏み場もないとは、正にこのこと。
雑に積み上げられた大量の本は、何冊あるか数えるのも億劫なほどだ。
人の落ち着けるスペースといったら、椅子とベッドだけ。
( ^ω^)「案の定溜め込んでやがったお」
鍵の束を指先で振り回しながら、内藤が呆れ返ったように言った。
各自の部屋の鍵らしい。先程、その内の一つでここのドアを開けていた。
- 818 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:35:33 ID:1u6yV9wwO
(*゚ー゚)「この量は、もう私達の部屋で引き取れる量じゃないねえ」
( ^ω^)「だから1階に移すんだお。これじゃあ、いつ床が抜けてもおかしくないお」
ζ(゚、゚;ζ「移すって、あの、やっぱり……」
( ^ω^)「地道に運ぶしかないおー」
デレの体から力が抜けかけた。
想像しただけで疲れる。
( ^ω^)「本棚に収まってる分はいいとして……床に積まれてるのを運ぶかお」
内藤は手近なところにあった本を20冊ほど抱え上げ、しぃに渡した。
しぃが、わざとらしくよろけてみせる。
( ^ω^)「とりあえず1階の……テーブルとか床にでも置いといてくれお。
整理するのは、全部移動させてから」
(*゚ー゚)「はいはーい」
( ^ω^)「ほい、でぃ」
(メ#゚;;-゚)) コクン
でぃ、ハロー、モララー、デミタス、ツン、貞子。
次から次へと本が手渡されていく。
- 819 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:38:44 ID:1u6yV9wwO
( ^ω^)「デレちゃんもよろしく」
ζ(゚、゚;ζ「は、はい」
全て市販の本だ。
もしやと思って確認してみると、やはり、本棚にしまわれているのは
ここに住む「作家」の本のみ。
ニュッの中での優先順位が容易に把握出来た。
( ^ω^)「どっこいせ……。デレちゃん、行くおー」
ζ(゚ー゚*ζ「はあい」
*****
- 820 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:39:43 ID:CB31V8c.0
- 初遭遇だと!
- 821 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:39:58 ID:1u6yV9wwO
( ゚∋゚)「リリ。ほっぺにカレーが付いてるぞ」
o川*゚ー゚)o「こっち向いてリリちゃん、拭いてあげる」
⌒*リ´・-・リ「んむ」
ファミリーレストラン。
並んで座るキュートとリリ、その隣にニュッとクックル。
ニュッは腕を組み、溜め息を漏らした。
( ^ν^)(……飯なんか食ってねえで、さっさと本を回収したいんだが)
あの後、リリが空腹を訴えてきたため、近くにあったファミリーレストランにやって来たのだ。
それよりも交番に連れていく方がいいのではないかとキュートが提案したが
(そしてニュッも賛成したかったのだが)、
思わぬ事情により、そうもいかなくなってしまった。
恐らく、リリはVIP図書館の「本」を持っている。
主人公として演じさせられている可能性が高い。
- 822 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:42:49 ID:1u6yV9wwO
( ゚∋゚)「……ニュッ君」
( ^ν^)「あ?」
クックルが耳打ちしてくる。
まだ彼には自分の考えを話していないが、きっとクックルも勘づいているだろう。
先程、公園内で同じ道ばかり歩かされたのも本の仕業の筈。
演じさせるためとはいえ空間を捩曲げるとは、随分と欲求不満だったらしい。
( ゚∋゚)「誰の本か、見当はついてるのか?」
( ^ν^)「……モララーの本だと思う」
小声の問いに、同じく小声で返す。
時代小説か、と訊ねるクックルへ、首を横に振って答えた。
――ニュッは、これまでのリリの状況に既視感を覚えていた。
たしか、9年前にモララーが書いた本。
5度ほど読み返した記憶がある。
- 823 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:44:23 ID:rmGKWIMoO
- キュートとクックルが微笑まし過ぎる
- 824 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:44:26 ID:1u6yV9wwO
( ^ν^)「コメディ小説。やたらと不運なガキの話だ」
( ゚∋゚)「不運?」
( ^ν^)「歩けば転ぶ、像の前にいれば像が倒れる、高いところにいりゃ落ちる――」
o川*゚ー゚)o「2人で何話してるの?」
紙ナプキンを折り畳みながら、キュートが怪訝そうな目を向けてきた。
別に、と誤魔化しておく。
从´ヮ`从ト 〜♪
リリの横を、スープバーのカップを持った女性が通った。
湯気を立てるスープに、ふうふうと息を吹き掛けている。
从´ヮ`;从ト「わっ!」
すると、女性が躓いた。
その拍子にカップが宙を舞う。
見るからに熱そうなコーンポタージュが、リリの真上にぶちまけられた――
.
- 825 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:46:21 ID:1u6yV9wwO
――が。
果たして、リリ自身に降りかかることはなかった。
( ^ν^)「……飲食店にいれば、熱々のスープを被るとか」
o川;゚ー゚)o「うひいい……」
キュートが、膝に乗せていたコートを広げて防いだからだ。
ぽたぽたと、コートが吸い込みきれなかったスープが床に滴る。
彼女の素早い反応に、ニュッは呑気にも感心していた。
それと同時に確信する。
――やはり、リリは「主人公」だ。
*****
- 826 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:47:50 ID:1u6yV9wwO
1階。
デレは抱えていた本を床に下ろすと、それに凭れかかる形でへたり込んだ。
ζ(-、-;ζ「ううう……足が……」
(;-;; -)ノシ
(;*゚ー゚)「ああっ、デレちゃんとでぃちゃんが私の目の前でぐったりしてる!
これチャンスじゃないかな!? 色々とチャンスじゃないかな!?」
(;´・_ゝ・`)「何のだよ」
見れば、デレ以外の面々も同じように座り込んでいた。
本を持って階段を何往復もしたのだ、疲れもしよう。
何度1階と2階を行き来しただろうか。
数えたくもない。
ζ(゚、゚;ζ「ふう……」
振り返る。
山だ。本の山。
この量、ちょっとした書店に収まっている分よりも多いだろう。
全て、ニュッと作家達の部屋にあった市販の本である。
今まで床が抜けなかったのが不思議だ。
- 827 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:49:18 ID:1u6yV9wwO
(;^ω^)「おー、おおお……」
ξ゚听)ξ「お疲れ様、ブーン」
(;^ω^)「これで最後だお」
2階から下りてきた内藤が、カウンターに本を置いた。
テーブルや床に積み上げられた本を眺め、壮観だお、と呟く。
(;・∀・)「全部本棚にしまわなきゃいけないの?」
(;^ω^)「そりゃあ、このままにもしておけんだろうし」
ハハ;ロ -ロ)ハ「ヤダー! モウ動きたくナーイ!」
(;゚;;-゚)) コクコク
川д川「お腹すいたしい……」
ζ(゚、゚;ζ「そういえば、もうお昼回ってますね」
時間を確認した途端、ぐう、とデレの腹が鳴った。
かなりの音量だ。
デレは頬を染めたが、直後、モララーやハローの胃袋も主張し始めた。
- 828 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:51:19 ID:1u6yV9wwO
(;^ω^)「あれまあ、腹の虫の大合唱……。……休憩も兼ねて、ご飯とするかお」
(*゚ー゚)「やっほう、飯だ飯!」
(#゚;;-゚) グー
(;´・_ゝ・`)「誰が当番だっけ?」
ξ゚听)ξ「今日は――クックルね」
川д川「いないわよお……」
(;・∀・)「えー。じゃあ誰が作んの? 俺やだよ、疲れた」
ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシもパス。コレ以上体力使いたくアリマセン」
(;^ω^)「お前ら……」
ζ(゚、゚;ζ「私、何か作りましょうか?」
(;^ω^)「それは魅力的な話だけど、遠慮しとくお。デレちゃんも疲れてるおね?
……えっと、ツンちゃーん」
内藤が両手を合わせ、顔を傾けた。
疲労困憊といった面々に対し、ツンだけは平然としている。
一番よく働いていた筈なのだが。
- 829 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:53:20 ID:1u6yV9wwO
ξ゚听)ξ「……手の込んだものは面倒だわ。
おにぎりとサンドイッチ、どっちがいい? 多数決」
( ・∀・)「おにぎりー」
川д川「おにぎり……」
ハハ ロ -ロ)ハ「サンドイッチ!」
(*゚ー゚)「サンドイッチで」
(#゚;;-゚)ノシ
(*゚ー゚)「むむっ、でぃちゃんはおにぎりか」
(´・_ゝ・`)「サンドイッチがいいなあ。コーヒーと一緒に」
( ^ω^)「おー、3対3かお。僕はツンたんが作ってくれるなら何でも嬉しいお」
ξ゚听)ξ「……デレは?」
ζ(゚ー゚*ζ「私も、どっちでも」
ξ゚听)ξ「じゃあサンドイッチね」
(;・∀・)「結局ツンの判断じゃんか」
- 830 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:54:17 ID:YWNQLZZUO
- 支援wktk
- 831 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/14(日) 23:56:05 ID:1u6yV9wwO
ハハ*ロ -ロ)ハ「ホットサンドがイイ、ホットにシテ、ツン。チーズいっぱい」
川д川「玉子……」
(*゚ー゚)「甘いの食べたいなあ。りんごと蜂蜜とシナモンとかさあ」
ξ゚听)ξ「要望は上で聞くわ」
2階へ行くため、皆が腰を上げる。
デレの隣で、でぃが立ち上がろうとして――よろけたのか、本に向かって倒れ込んだ。
ζ(゚、゚;ζ「でぃさん!」
(;゚;;-゚) イタイ
(*゚ー゚)「さすがでぃちゃん、何もないとこで躓いたね」
ζ(゚、゚;ζ「大丈夫ですか?」
でぃの手を引き、起き上がらせる。
細い指だ。簡単に折れてしまいそうな程。
怪我はありませんかと訊ねながら、デレはでぃの手を見た。
- 832 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:00:28 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚*ζ
ζ(゚、゚*ζ「?」
傷はない。
喜ばしいことなのだが、腑に落ちない。
ζ(゚、゚*ζ(んんー?)
――食堂で見かけた傷すら、なくなっている。
この短時間で完治したと言うのだろうか。
有り得ない。
顔には傷跡があるし、まさか手のみに異常な回復力を備えているわけもなかろう。
ζ(゚、゚;ζ(……んんんー?)
いや、待て。
顔の傷も減っている。ような。
(;゚;;-゚)「っ!」
ζ(゚、゚;ζ「あ、ごめんなさ……――でぃさーん?」
(*゚ー゚)「おう、どうしたでぃちゃん」
デレの目顔に何かを感じたらしく、でぃが手を振り払った。
ばたばた、鈍臭い足付きで階段へと駆けていく。
- 833 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:03:37 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚;ζ(じろじろ見ちゃったの失礼だったかな)
でぃの後に続いてカウンターの奥に消えていく皆を眺めながら、デレは首を傾げた。
傷のことは自分の記憶違いだったのだと結論づける。
その頃には、デレと内藤だけが、本と共に1階に残されていた。
ζ(゚、゚*ζ「内藤さん行かないんですか?」
( ^ω^)「僕は、ちょっと」
内藤が、ポケットからボールペンとメモ帳を取り出した。
ボールペンの先で、空の本棚を指す。
( ^ω^)「どの本棚にどの本をしまうか考えてから行くお」
ζ(゚、゚;ζ「きっちり分類するんですか」
( ^ω^)「折角だし。――ああ、これは僕1人で充分だから、
先に食堂に行っててくれお」
ζ(゚、゚*ζ「……何かお手伝いくらい出来ませんかね」
( ^ω^)「寧ろここまで手伝ってくれてありがたいぐらいだお。
……そうだおねえ、何かしたいってんなら、ツンの手伝いしてくれるかお」
ζ(゚ー゚*ζ「分かりました!」
サンドイッチとはいえ、9人分ともなれば手間取るだろう。
デレは内藤の後ろを通り、階段を上っていった。
.
- 834 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:05:37 ID:IaMypzNAO
靴を脱いでスリッパに履き替える。
足元に向けていた顔を上げ――どきりとした。
無人の廊下。
前と同じだ。
デレの傍には誰もいない。
自由に動ける。
ζ(゚、゚;ζ(寧ろ前より状況は良い……?)
前回はデミタスの登場によって邪魔されてしまったが、
今、彼らは食堂に集まっている。
内藤も、ちょっとした作業をやっているし。
ニュッの部屋の鍵は、開いている筈だ。
中に入って、「手掛かり」を探すことは出来る。見付けられるかは別として。
だが。
ζ(゚、゚;ζ(い、いいのかな……)
いざ実行可能となると気が引ける。
こそこそ嗅ぎ回る後ろめたさ、勝手に部屋の中を漁る心苦しさ。
開き直るには重すぎる。
しかし、この機会を逃すのは惜しい。
好奇心と焦燥。
- 835 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:07:23 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚;ζ(……ええい、行ったれい!)
悩む時間も勿体ない。
デレは、小走りで廊下を進んだ。
5分。5分経ったら食堂へ行こう。
ζ(゚、゚;ζ(お邪魔します!)
廊下を挟んだ右側、奥から2番目。
ニュッの部屋の前で一礼し、ドアノブに手を伸ばした。
ノブを捻る。抵抗なく開いた。
ζ(゚、゚*ζ「……あれ」
前進しかけて、ふと、デレは後ろへ振り返った。
ドアに掛かるプレートからするに、向かいは内藤の部屋。
その隣がツン。
- 836 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:08:46 ID:.9zgNxvEO
- dkdk
- 837 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:09:06 ID:IaMypzNAO
では。
ζ(゚、゚*ζ(こっち、誰の部屋かな)
ニュッの隣。ツンの向かい。
誰の名前も記されていない部屋は、何のための部屋なのだろう。
本を運ぶ際、この部屋は無視されていた。
物置とか。あるいは、単に余って使われていないだけなのかもしれない。
――ああ、いや、とにかく、今はニュッの部屋に集中しよう。
ごくりと喉を鳴らし、デレは足を踏み入れた。
- 838 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:10:51 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚*ζ「……どこ探せばいいんだろう」
床にあった本がなくなってしまえば、何とも殺風景な部屋だ。
本棚、机、ベッド、クローゼットに用箪笥。
それなりに広い室内なのに、置かれているものといえばそれだけ。
娯楽らしい娯楽は、本と、机の上にあるノートパソコンぐらいか。
これは少々手をつけづらい。
机や用箪笥を漁るなど、まるで空き巣狙いだ。
ζ(゚、゚;ζ「ううーん……」
唸りながら、とりあえず歩いてみる。
視界に入る範囲には目を引くものはない。
気になるものといったら、
ζ(゚、゚*ζ「……ここかなあ」
本棚。
貞子やクックルなど、作家ごとに並べられた本。
汚れや傷の激しいものが混じっている。外から回収してきた本だろう。
どれが生きていて、どれが生きていないのか、デレには分からない。
不用意に触れないようにしながら棚の前を進む。
- 839 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:12:48 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚*ζ「――ん」
ある場所でデレは立ち止まった。
窓から一番遠く、日の当たらない場所に置かれた本棚。
その最上段にだけ、ガラス製の戸が設けられていた。
中には8冊の本。
赤、黒、藤色、桜色、花柄、淡黄色に柳色、そして白。
スペースが随分余っている。
ζ(゚、゚*ζ(何で、あれだけ別なんだろ)
踏み台を引き寄せた。
上に乗っかり、ガラスの向こうを凝視する。
背表紙には何も書かれていない。
失礼しますと囁いて、戸を開けた。
おっかなびっくり、黒い本を取る。
貞子の本と同じ外装だ。
表紙にはラベルが2つ。
- 840 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:14:32 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚*ζ「?」
上のラベル――タイトルが記される場所のそこには、「山村貞子」。
そして下には。
ζ(゚、゚*ζ「内藤、モナー……?」
*****
- 841 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:16:05 ID:IaMypzNAO
o川*;−;)o「お気に入りだったのに……」
レストランを出てからすぐ。
キュートはコーンポタージュまみれのコートを眼前に掲げ、瞳を潤ませた。
( ^ν^)「さっきの客に弁償させりゃあいいじゃねえか」
o川*;−;)o「けちけちしてクレームつける女の子なんてね、可愛くないの。
にっこり笑顔で『気にしてませんよ』って言えるのが可愛い女の子なの」
( ^ν^)「ははっ。それはそれは。ご立派なことで」
ニュッが、嘲るような笑い声を零す。
キュートに睨まれた。
( ゚∋゚)「寒いだろ、キュート。俺の貸すか?」
o川;*゚д゚)o「いいいいいいいいいいらんわ!! そんな大きいの着てられっか!!」
- 842 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:19:23 ID:IaMypzNAO
⌒*リ;´・-・リ
( ^ν^)「なあ、リリ」
⌒*リ;´・-・リ「!」
キュートの情緒不安定ぶりに困惑しているリリの前でしゃがみ込む。
警戒されているらしく、リリはショルダーバッグを抱きしめた。
ニュッは、彼女の不安を和らげるため、優しく語りかける。
( ^ν^)「お前が食ったお子様ランチ代、俺が払ってやったんだ。
ギブアンドテイクって知ってるか? 俺の言うこと聞けよ」
優しいのは声色だけだ。
o川;゚ー゚)o「ひええ、何かあの人すごく嫌だ……!!」
(;゚∋゚)「ニュッ君、相手は子供だぞー」
( ^ν^)「知るか。おら、鞄寄越せ」
⌒*リ;´・-・リ「だめ!」
- 843 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:22:19 ID:IaMypzNAO
( ^ν^)「何でだよ」
⌒*リ;´・-・リ「リリの宝物だもん――」
首を振るリリ。
彼女の鼻先を、鋭い氷柱が落ちていった。
⌒*リ;´・-・リ
o川;゚ー゚)o
(;゚∋゚)
( ^ν^)
完全に不意打ちだった。
リリ、キュート、クックルの3人が顔を引き攣らせている。
ニュッは地面で砕けた氷を眺めた後、上を見た。
店の軒に垂れ下がる数本の氷柱。
もし頭の真上に落ちてきていたら、ただでは済まなかっただろう。
- 844 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:24:03 ID:dLnbu2eI0
- ニュッ君が恐い支援
- 845 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:25:59 ID:IaMypzNAO
(;゚∋゚)「……今のは、びっくりした」
o川;゚ー゚)o「店員さんが処理しておくもんじゃないの、普通!」
店員が落とし忘れたのか、はたまた、「本」が作り出したのか。
何にせよ。
( ^ν^)(……放っといても平気そうだな。
かなりハイペースで話が進んでるし)
先の氷柱で分かったが、本は、実際にリリを傷付けるつもりはない。
オブジェのときもスープのときも、クックルやキュートが助けずとも
リリは無傷で済んでいたと思われる。
それに、ちゃっちゃと見所だけを演じさせたがるモララーの本のこと。
この調子だと、今日中に終わらせられるだろう。
リリに害はない。展開も早い。
あと少しの間だけ付き合ってやれば、直に解放される。
( ^ν^)(とはいえ、だ)
しかし、出来るならば今すぐにでも終わらせてしまいたい。
絶対に危なくないとは言い切れないし、何より七面倒臭い。
幸い、主人公以外の脇役には台詞が与えられていない作品である。
リリに主人公の台詞だけを朗読させれば本は満足する。その方が楽だし安全だ。
- 846 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:27:17 ID:M/5aBkoUO
- 続ききてるううう
しえん!
- 847 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:27:29 ID:LRkpIUBY0
- お子様ランチ代代わりに払ってくる支援
- 848 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:28:22 ID:IaMypzNAO
( ^ν^)「……リリ」
⌒*リ;´・-・リ「やあだ!」
ニュッが改めて要求する前に、リリはクックルのもとへ逃げてしまった。
舌打ちしそうになるのを何とか堪え、ニュッは立ち上がる。
o川*゚ー゚)o「どうしてそんなに鞄見たがるの?」
( ^ν^)「うるせえ」
o川;゚ー゚)o「純粋に質問しただけなのに酷くない!?」
事情を知らぬキュートがいる手前、本のことをべらべら喋るわけにもいかないし、
後は自分に任せておけと言っても、どうせキュートは信用してくれない。
どうやって本を手に入れるべきか。
いやはや。
( ^ν^)(困った)
*****
- 849 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:28:30 ID:KsQYoKN.0
- ニュッ君ひでぇ支援wwww
- 850 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:29:59 ID:IaMypzNAO
――意味が、分からなかった。
文字は日本語だし、難しい言葉も大して使われていない。
けれども、デレは、その本の内容を理解出来なかった。
ζ(゚、゚;ζ「……何これ……」
黒い本。
中には、みっしりと字が詰まっていた。
――山村貞子。女。一九八四年五月二六日生まれ。一九九九年四月十日現在、十四歳。――
そんな文章から始まり、当時の身長や体重、肌の色、顔の作りなどが事細かに記されている。
それだけなら、まだ、貞子個人に関するメモと思えなくもなかったのだが。
- 851 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:33:10 ID:IaMypzNAO
――身長、体重の増加・減少は普通の人間と同じように、
年齢、生活習慣等によって変動する。――
これは、どういうことだ。
ζ(゚、゚;ζ(『普通の人間と同じように』って……)
さらに気になるのは、彼女の人格について述べた部分。
性格や、根底にある思考パターンにまで言及しているのだ。
だが、最終的には、
「この先の経験から価値観やものの考え方は変化し得るし、
また、一貫した信念を持つこともあろう。
こればかりは彼女の自主性に任せる」
といった文で締められている。
ζ(゚、゚;ζ(……)
――そんなの、当たり前ではないか。
人間ならば、内外からの刺激に、その時々の感情や思考を左右されるのが常である。
わざわざ書くことではない。というか、書く必要がない。
そもそも何なのだ、この――「彼女の自主性に任せる」という書き方は。
ページをめくっていくと、嗜好や趣味などの項目で、度々似たような記述が見られた。
- 852 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:36:25 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚;ζ(……まさか)
デレの中で、ある推測が組み立てられていく。
あまりにも非現実的で、馬鹿らしい。
けれど一蹴することが出来ない。
ショボンの話が思い起こされる。
――『常識なんざ糞喰らえって世界だし』
『根本的なところに問題があるんだよ』
『まず間違いなく、誰もが逃げ出したくなるような事実だ』――
最後のページを開く。
そこにあった文面に、デレは、全身が一気に冷え渡るような心持ちになった。
.
- 853 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:38:16 ID:IaMypzNAO
――山村貞子が死ぬ(消える)のは、
この本が燃え尽きる・内藤ニュッにとって山村貞子が不要な存在になる・内藤ニュッが死ぬ。
これらの内、いずれか一つの条件を満たしたときだけである。――
ζ(゚、゚;ζ
ショボンの言う「根本的なところ」。
作家達の、存在そのもの。
.
- 854 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:40:15 ID:LRkpIUBY0
- Ω ΩΩ<な、なんだってー
- 855 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:40:44 ID:QMLcg1J6O
- うああぁぁ……
- 856 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:40:51 ID:dLnbu2eI0
- あああ……
- 857 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:41:17 ID:IaMypzNAO
混乱しきっていた思考は、意外にも、ここで冷静さを取り戻した。
黒い本を棚に収め、花柄の本を引っ張り出す。
紺色のタイトルと著者名。「堂々クックル」、「内藤モナー」。
中身は、先程の本と大差ない。
最後の一文もだ。
次に赤色の本。盛岡デミタス。
始めと終わりのページだけを確認してみるが、やはり、ほとんど同じ。
藤色の本はでぃ、桜色はしぃ、淡黄色はハロー、柳色はモララー。
ζ(゚、゚;ζ(全部、一緒だ……)
残る一冊、白い本を取る。
デレは瞠目した。
- 858 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:41:42 ID:zrmYVk760
- やはり…作家たちは本によって…
- 859 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:43:36 ID:IaMypzNAO
真っ白な表紙。金色の曲線で模様が描かれている。
他のものと比べてみて、古めかしい印象を受けた。
タイトルは「ツン」。作者は、やはり「内藤モナー」。
デレが驚いたのは、所々にある汚れに対してだ。
黒っぽい、大小の染み。
血痕に似ている。
裏返す。
そろそろと裏表紙を引いた、瞬間。
ζ(゚、゚;ζ「ひ」
喉の奥で、上擦った声が響いた。
文字を塗り潰すように、ページ全体に汚れが広がっている。
インクなのか、それとも――
.
- 860 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:44:29 ID:LRkpIUBY0
- 作家達はモナーによって生み出された人物達という事だろうか
- 861 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:45:11 ID:.9zgNxvEO
- そろそろデレにげてーっ
- 862 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:45:20 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「ツンの手伝いはどうしたんだお?」
ζ(゚д゚;ζ「もわああああっ!?」
肩を叩かれた。
びくりと跳ね上がり、足を踏み外す。
( ^ω^)「おっとっと」
ζ(゚д゚;ζ「……なっ、内藤さん……」
抱き留めてくれた内藤の名を呼ぶデレの声は、僅かに震えていた。
内藤の口元に浮かぶ笑みが、いつもよりも深い。
( ^ω^)「ここの本の中には生きてる奴も混じってるんだから、無闇に触っちゃ駄目だお」
デレの手から本を抜き取って、元の位置に戻した。
戸が閉められる。
彼が本を視界に入れないようにしていたので、やはり、あれは血の跡なのかもしれない。
- 863 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:47:14 ID:Te7NDHQIO
- 面白くて失禁しそうなんだが
どうしようか
- 864 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:48:11 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「……まあニュッ君がキツく言い聞かせてあるし、
演じさせられることはない筈だけど」
ζ(゚、゚;ζ「言い聞かせる?」
( ^ω^)「折角連れ戻したのに、また外に行って
赤の他人を巻き込むようなことがあっちゃ堪ったもんじゃないお。
だから『勝手な真似したら燃やす』って――言い聞かせるっつうか脅しだおね」
至近距離で見つめ合う。
瞳で咎められている気がして、デレは目を逸らした。
( ^ω^)「……ショボンの入れ知恵かお」
ζ(゚、゚;ζ「っ!」
( ^ω^)「デレちゃん分かりやすうい」
内藤が離れる。
てっきり叱られるなり何なりされるかと思ったのだが、
彼は、そのままドアへと歩いていった。
ζ(゚、゚;ζ「……内藤さん?」
( ^ω^)「デレちゃん」
立ち止まる。
内藤は、ドアの向こう――自室を指差し、デレに振り向いた。
- 865 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:50:03 ID:.9zgNxvEO
- ブーンがこわい
- 866 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:50:28 ID:K7MQYVDM0
- ツンだけはニュッ君じゃなくて……
- 867 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:53:07 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「ショボンの奴、僕の部屋にも入れって言わなかったかお?」
ζ(゚、゚;ζ「え」
たしかに、内藤の部屋のことも話には上がっていた。
だが、ここで頷いたら、内藤がショボンに対して怒りを覚えてしまうのでは。
肯定も否定も出来ずにいるデレに焦れたのか、彼は予想外な提案をしてきた。
( ^ω^)「来るかお。部屋」
*****
- 868 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:53:25 ID:dLnbu2eI0
- モララーの本には
性格:うっとおしい とか あんのかな
- 869 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:55:01 ID:IaMypzNAO
⌒*リ´・-・リ
( ^ν^)
ヴィプデパート、地下。フードコート。
ニュッとリリが隣り合って着席している。
ニュッは、洋菓子店の前でアイスやケーキを選んでいるキュートとクックルを眺めていたが、
ふとリリの方へ顔を向けた。
ファミリーレストランからここへ来るまでにも、「不幸」はリリを襲い続けた。
お蔭様で、残す山場はあと一つ。
( ^ν^)「……リリさーん」
⌒*リ´・-・リ「?」
( ^ν^)「鞄なんだけど」
⌒*リ´・-・リ「やだ」
( ^ν^)「……何で」
⌒*リ´・-・リ「おばあちゃんがくれた宝物だもん」
( ^ν^)「取らねえよ。……触りもしないから、中身だけ見せてみてくれねえか」
- 870 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 00:58:28 ID:IaMypzNAO
⌒*リ´・-・リ「……」
疑いの眼差し。
そんなに信用がないか。
( ^ν^)「ちょっとだけ」
⌒*リ´・-・リ「……んー」
リリは少し躊躇った後、ショルダーバッグをニュッへと寄せた。
「本当に取らない?」という質問に頷く。
⌒*リ´・-・リ「……じゃあ、はい」
渋々、という雰囲気を隠しもせず、留具を外して鞄を開く。
中には玩具と人形がいくつか。
それに混じって、
( ^ν^)(やっぱり持ってたか)
柳色の、モララーの本。
タイトルも記憶と一致した。
ニュッは本を指差し、問い掛ける。
- 871 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:00:29 ID:IaMypzNAO
( ^ν^)「この本、お前のか?」
⌒*リ´・-・リ「え?」
鞄の中を覗き込んで、リリは首を傾げた。
あれ、と不思議そうな声をあげる。
⌒*リ´・-・リ「おじいちゃんの」
( ^ν^)「祖父さんの?」
⌒*リ´・-・リ「うん」
本をテーブルの上に乗せ、リリは鞄を閉じた。
辿々しい手つきでページをめくっていく。
どうやら彼女の祖父が所有していたらしい。
リリは何かの折に触れてしまったのだろう。
⌒*リ´・-・リ「おじいちゃんに返さなきゃ……」
返されては困る。
というより、こちらに返してほしい。
焦ったニュッは、リリの肩に手を乗せた。
- 872 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:01:28 ID:K7MQYVDM0
- だいぶ初対面の相手でも柔らかい態度をとれるようになってきたなニュッ君
- 873 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:04:00 ID:dLnbu2eI0
- 柔らかい…かなぁ
またなにかのフラグが
- 874 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:04:24 ID:IaMypzNAO
( ^ν^)「リリ。これ、ええと――俺のなんだ」
⌒*リ´・-・リ
何言ってんだこいつ、というような目を向けられた。
いくらなんでも唐突すぎたか。
( ^ν^)「いきなり何だよっつう話だろうが。
……あれだ。あー……とりあえず、俺が持ってたやつなんだよ。絶対に」
⌒*リ´・-・リ「……」
( ^ν^)「返してくんねえかな」
どう考えても言葉のチョイスとタイミングを間違えた。
たとえばショボンならば上手いこと言いくるめることも出来るのだろうが、
自分にはそういうスキルがない。
頬を掻き、新たな言葉を探す。
( ^ν^)「……んんと」
o川*゚ー゚)o「ただいまー」
――がしゃりと、テーブルに目の痛くなるような配色のトレイが乗せられた。
リリが本を鞄に戻してしまう。
空気読め。
- 875 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:06:30 ID:IaMypzNAO
o川*゚ー゚)o「はい、リリちゃん、シフォンケーキ。……あ、お話の邪魔しちゃった?」
( ^ν^)「……何も」
バニラアイスが添えられたシフォンケーキをリリに差し出すキュート。
その後ろから、もう一つのトレイを持ったクックルがやって来る。
彼はニュッにコーヒーを渡しながら、声を潜めた。
( ゚∋゚)「どうだった」
( ^ν^)「本は確認出来た」
( ゚∋゚)「そうか。……あと少しで終わるんだよな?」
( ^ν^)「ん」
o川*゚ー゚)o「よいしょっと。いただきまーす」
席に着き、キュートが手を合わせる。
彼女の前には小振りの器に盛られた2種類のアイス。
色からして、チョコレートとストロベリーか。
キュートといいリリといい、こんな季節にアイスクリームを食べて寒くないのだろうか。
- 876 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:09:12 ID:p.ONyyP60
- ちっくしょう
今日は朝早く行かないとなのに寝れねぇよ
- 877 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:09:13 ID:IaMypzNAO
⌒*リ*´・-・リ「おいしい」
o川*゚ー゚)o「そう? 良かった。
――これ食べたら、今度こそリリちゃんを交番なり警察なりに預けなきゃね。
正直、今の状況、結構危険だと思うし」
( ゚∋゚)「危険って何が?」
o川*゚ー゚)o「迷子連れ回してさ……下手すりゃ誘拐と判断されかねないよ、このご時世。
何でデパートに寄る必要があるかなあ」
キュートの視線がニュッに突き刺さる。
気付いていないふりをして、コーヒーカップを口元に運んだ。
o川;゚ー゚)o「……しっかしまあ、リリちゃん、随分ツイてないよね。
植木鉢が降ってきたり石が飛んできたり階段から落ちかけたり……。
どこかの組織にでも狙われてんの?」
( ゚∋゚)「全部ぎりぎりで躱せてるし、ある意味ツイてるんじゃないか」
クックルには、リリが怪我をする恐れはないということを既に伝えておいた。
しかしキュートはそれを知らない。
今や、リリ以上にびくびくしている。
不運さで言えば、折角のデートなのにこんな羽目になっているキュートも
なかなかのものだと思うが。
( ^ν^)(そういや、こいつら本来なら仲良くきゃっきゃきゃっきゃデートしてたんだよな)
( ^ν^)
( ^ν^)(メシウマ)
*****
- 878 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:09:54 ID:KsQYoKN.0
- メシウマwwwwwwww
- 879 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:11:45 ID:HD.kPqtI0
- こらニュッ君
- 880 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:11:53 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「僕もね、恐いんだお」
内藤の部屋。
椅子に腰掛けたデレ、向かいのベッドに座る内藤。
デレの手には一冊の大学ノート。
部屋に入るなり、内藤に手渡されたものだ。
ζ(゚、゚*ζ「恐いって……」
( ^ω^)「初めは――こんな言い方じゃあ気分が悪いかもしれないけど、
本探しに役立ってくれればそれでいいと考えてたんだお。
……君のことだお、デレちゃん」
( ^ω^)「素直だし、僕らの話を信じてくれるし、ショボンみたいに金を要求しないし。
頭も良くない。こんな人材、なかなかいないお。
会えてラッキー、程度の認識で……」
( ^ω^)「いずれ君が離れていくまでの間だけ、利用しようと思っていたお」
ζ(゚、゚;ζ「……離れてなんかいきません」
( ^ω^)「うん。離れるどころか、君と僕達の関係はどんどん深くなっていったお。
どんな事件に巻き込まれても逃げなかった。嬉しかったお」
( ^ω^)「だからこそ、恐くて仕方なくなっていったんだお」
内藤の気持ちは、デレにも分かった。
ショボンがしていた心配と同じこと。
デレが真実を知ったときに、怯えて離れていってしまうのではないか。
そんな不安。
- 881 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:12:20 ID:p.ONyyP60
- どんだけリア充嫌いなんだよクズ野郎wwwww
- 882 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:12:27 ID:dLnbu2eI0
- ニュッ君wwwwこらwwww
- 883 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:12:31 ID:M/5aBkoUO
- ニュッくんwww
- 884 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:14:52 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「デレちゃんといるのは楽しいお。
出来れば、何の疑問も持たずに、ずっと僕達と仲良くしてほしかった」
( ^ω^)「――けど、そんなの、当然不可能だおね。
僕だっていつまでも隠し通せるとは思ってなかったし」
( ^ω^)「なら、いっそのこと、さっさと説明してしまおうかとも思ったけど。
やっぱり、一歩踏み出す勇気がなかなか出なかったお」
だから、と。
内藤は言葉を繋ぐ。
( ^ω^)「デレちゃん。テストをしてみるお」
ζ(゚、゚*ζ「テスト?」
( ^ω^)「君に、僕らを受け入れられるだけの器があるか。
それとも、ただ単に阿呆すぎて、事を深刻に考えていないのか。
確かめるんだお」
さりげなく馬鹿にされた気がしたが、余計な口を挟む空気ではなかったので
はあ、と生返事で答えておいた。
内藤が、デレの持つノートを手で示す。
色褪せた表紙には何も書かれていない。
- 885 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:15:34 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「僕が書いた小説だお。
流し読みでいいから、軽く目を通してみてほしいお」
しばらく内藤と見つめ合い、小さく頷いた。
ノートを開く。
横書きの文章。
静かに、デレは文字を追っていった。
*****
- 886 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:16:06 ID:K7MQYVDM0
- ニュッ君のいいところは色々と抱えてる筈なのに
哀愁をまったく感じさせないところだなwwwwww
- 887 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:18:13 ID:IaMypzNAO
⌒*リ´・-・リ「いいよ」
ニュッは、思わずリリを二度見した。
彼女の答えを反芻し、その意味を理解して。
あまりの呆気なさに、二の句を継げずにいた。
――現在、4人は、交番へと向かっている。
前を歩くクックルとキュートの後ろを、少し離れてニュッとリリが追うような並びだ。
道すがら、ニュッはリリに、件の本を譲ってもらえないか交渉した。
それに対する返事が、先程のリリの台詞である。
どうやら決め手となったのは、
( ^ν^)『俺の宝物なんだよ』
ニュッの、この一言らしい。
リリがショルダーバッグを宝物だと称していたのに乗っかった発言だったが、
ニュッ本人は、言った直後に「自分のキャラじゃない」と内心身悶えしていた。
そこへ「いいよ」などと返されたものだから、様々な感情が押し寄せて
妙な間が生まれてしまった。
- 888 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:21:46 ID:dLnbu2eI0
- 抜けた?
- 889 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:22:41 ID:IaMypzNAO
⌒*リ´・-・リ「宝物なんでしょ。
リリも、鞄、他の人に取られたら嫌だもん」
⌒*リ´・-・リ「おじいちゃんに、人のもの取ったら駄目だよって言っておくね」
( ^ν^)「……それは、やめてやれ」
孫から謂れないお叱りを受けるのは少々可哀相だ。
どうせ叱るなら、こちらの親戚を叱ってほしい。
リリは鞄を開け、ニュッに本を突きつけた。
受け取ったニュッが前方を見遣る。クックルと目が合った。
クックルが声を出さずに口を動かす。
何を言ったかは分からないが、恐らく「成功したか」とか、そんなところ。
顔の横に本を掲げてみせると、彼は親指を立てた。
横断歩道に差し掛かる。
歩行者用の信号は赤色。4人は足を止めた。
( ゚∋゚)「キュート」
o川*゚ー゚)o「ん? 何?」
( ゚∋゚)「ちょっとだけ時間をくれ」
o川;゚ー゚)o「えー。今度は何さ」
- 890 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:25:46 ID:IaMypzNAO
ニュッは、屈みながらリリの肩を叩いた。
残る「不幸」は一つだけだが、内容が内容だ。
下手をすれば、今すぐにでも起こりかねない。
朗読で終わらせておいて損はないだろう。
( ^ν^)「リリ、ちょっと、俺が言うことを繰り返してくれるか」
⌒*リ´・-・リ「? うん」
( ^ν^)「それじゃあ……」
「――リリ!」
不意に、聞き慣れぬ声が飛んできた。
横断歩道の向こう。
女性が、ニュッ達を――リリを、見つめている。
- 891 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:27:35 ID:IaMypzNAO
リハ;゚ー゚リ「リリ! どこ行ってたの!」
⌒*リ´・-・リ「……ママだ」
o川*゚ー゚)o「え、ママ?」
リリの頬に、朱が差した。
瞳が潤む。
これは――まずい、かもしれない。
( ^ν^)「リ……」
⌒*リ*´・-・リ「ママ!!」
制止しようとしたニュッの手を避けて。
リリは、道路に飛び出した。
.
- 892 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:29:45 ID:IaMypzNAO
リハ;゚ー゚リ「……リリ!」
⌒*リ*´・-・リ「ママ、ママぁ!」
リハ;゚ー゚リ「駄目! 戻って、リリ――」
⌒*リ*´・-・リ「――え?」
横断歩道の中程に到達したリリ。
その真横から、車が。
.
- 893 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:30:47 ID:.9zgNxvEO
- ぎゃあ
- 894 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:31:29 ID:IaMypzNAO
.
- 895 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:32:50 ID:IaMypzNAO
o川*゚−゚)o
悲鳴と、複数のブレーキ音が場を支配している。
立ち尽くすキュートの横を、ニュッが駆け抜けていった。
( ∋ )
⌒*リ;´・-・リ「……くっくる……?」
道路の真ん中。
リリを抱え、頭から血を流して倒れている大男。
おかしなことに、キュートはしばらく、彼がクックルであるのを認識出来なかった。
飛び出す瞬間を見ていたにも関わらず、だ。
- 896 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:36:15 ID:IaMypzNAO
( ^ν^)「クックル」
( ∋ )「……ああ……」
ニュッがクックルの腕を引く。
クックルは頭を押さえ、息も絶え絶えといった様子で身を起こした。
居合わせた通行人の1人が、おとなしくさせておけと叫ぶ。
その声で我に返ったキュートは、ニュッ達のもとへ近寄って携帯電話を取り出した。
o川;゚−゚)o「きゅ、救急車!」
( ^ν^)「いらねえ」
o川;゚−゚)o「はあ!? ――あ、ちょっと!!」
ニュッの手が携帯電話を叩き落とす。
彼の横で、クックルはよろよろと立ち上がった。
(; ∋ )「……リリ、母さんのところに行け。見付かって良かったな」
⌒*リ;´・-・リ「え……」
リハ;゚ー゚リ「リリ……!」
クックルを撥ねた車の運転手に、ニュッが何か渡している。
現金に見えたが――何故、そんなものを。
リリの母親が娘を抱きしめた。
彼女もニュッやクックルの行動を不可解に感じているのか、
口をぱくぱくと開閉させるだけで、何も言えずにいる。
- 897 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:36:16 ID:nsfw.a3gO
- アイヤァァァァァァァァァァ
- 898 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:40:21 ID:IaMypzNAO
クックルが歩き出す。
先程まで呼吸するのも辛そうだったのに、足取りは存外普通だ。
野次馬達は呆気にとられた様子で道をあける。
o川;゚−゚)o「どこ行くの!?」
キュートは慌ててクックルに手を伸ばしたが、後ろからニュッに肩を掴まれた。
それから、突き飛ばすような勢いで押し退けられる。
( ^ν^)「来るな」
o川;゚−゚)o「……!」
立ち竦む。
ニュッの声や目が、ひどく、冷たい。
( ^ν^)「……悪いなリリ。クックルなら大丈夫だから」
一方で、リリに対しては気遣うような素振りを見せた後、
彼はクックルの後を追っていった。
- 899 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:42:36 ID:IaMypzNAO
数分前までの喧騒はどこへやら、現場に残された人々はぽかんとしたまま硬直して。
⌒*リ;´・-・リ「……クックル……」
そこに、リリの呟きだけが、零れ落ちた。
.
- 900 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:44:45 ID:IaMypzNAO
人気のない路地裏。
ニュッは携帯電話を閉じた。
( ^ν^)「ショボンに電話した」
(;゚∋゚)「ああ、ショボンか……」
( ^ν^)「今から来るそうだ」
(;゚∋゚)「すまん、ニュッ君」
( ^ν^)「……わざわざ助けなくても、リリは轢かれなかった」
(;゚∋゚)「そうは言っても、いざ目の前であんな状況になられるとな。
……あの運転手にも悪いことしたな」
( ^ν^)「口止めはしといた。意味があるかは知らねえが」
クックルが顔の血を乱暴に拭った。
血は、とっくに止まっている。
( ^ν^)「怪我の具合は?」
(;゚∋゚)「ああ――」
(;゚∋゚)「もう、消えたと思う」
*****
- 901 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:45:45 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚*ζ
デレはノートを閉じた。
小説は、ジャンルで言うならばファンタジーに近いものだった。
幼い姉妹が、魔法を使える祖父と共に生活するという話。
可愛らしい動物なども多く登場していた。
( ^ω^)「みんなに比べたら文章も酷いもんで、お恥ずかしい代物だけど」
ζ(゚、゚*ζ「そんなこと……」
( ^ω^)「で。何か、感想はあるかお」
ζ(゚、゚*ζ「感想ですか?」
感想。
と言われても、内藤の指示通りに斜め読みしただけだから、
内容についてのコメントを求められても困る。
黙り込むデレ。
内藤は優しく微笑んだまま、足を組み、じっと答えを待っている。
- 902 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:47:46 ID:IaMypzNAO
ζ(゚、゚;ζ(んー)
これはテストだという。
ならば当然、図書館に関係ある話の筈。
改めて最初のページを開いた。
主な登場人物は姉妹と祖父。
祖父?
ζ(゚、゚*ζ「……おじいさん」
( ^ω^)
内藤が、足を組み替える。
- 903 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:49:48 ID:IaMypzNAO
祖父。
子供達。
魔法。
不思議な祖父。
不思議な力。
不思議な――話。
.
- 904 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:50:12 ID:LRkpIUBY0
- ニュッの意思以外では死なないように作られてたのか
- 905 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:50:46 ID:IaMypzNAO
かちりと、鍵を回す音が響いたような気がした。
.
- 906 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:51:52 ID:IaMypzNAO
――ショボンめ。
意地の悪い言い方をしてくれたものだ。
ショボンに相談した時点で、デレが対面したことのない図書館の住人は2人いた。
「鍵」はデミタスではない。
もう1人の方。
デレと会ったことがなく、これから先も会うことは叶わない人物。
ζ(゚、゚*ζ「これに出てくるお爺さんのモデルって、もしかして――」
内藤モナー、その人。
.
- 907 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:52:40 ID:dLnbu2eI0
- 核心だなぁ
- 908 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:53:46 ID:IaMypzNAO
( ^ω^)「……これで気付かないくらい頭が悪かったら、どうしようかと思ってたお」
良かったと、内藤が笑う。
いつもの笑顔なのに。
どこか、怯えの色が浮かんでいた。
( ^ω^)「鍵小説、ってのに近いかもしれないお。
厳密に言えば違うだろうけど」
ζ(゚、゚*ζ「……何です、それ」
( ^ω^)「実際にあった出来事を、人物の名前を変えたり年代をずらして描写することで
フィクションに見せかけた話のこと……だったかお。たしか」
ζ(゚、゚*ζ「――実際にあった出来事……」
なら、この姉妹は内藤とニュッのことで。
動物は、作家達。
内藤は棚の上から写真立てを取ると、中から写真を引き抜いてデレに渡した。
( ^ω^)「少し、話が長くなると思うから。
ツン達に、先にご飯を食べとくよう言ってくるお」
- 909 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 01:55:30 ID:IaMypzNAO
内藤が部屋を出ていく。
ドアが閉まると同時に、デレは写真を見下ろした。
前列に座る5人と、後列に立つ6人の計11人の男女。
後ろの6人は、左からクックル、貞子、でぃ、しぃ、ハロー、モララー。だと思う。
10代半ばから後半、ハローとモララーに至っては小学生ほどに見えるが、
今の面影もちゃんとある。
前の5人は左からデミタス、ツン、ニュッ、内藤、老人。老人は恐らく祖父だろう。
ニュッはハロー達同様に小学生くらい。
内藤は高校生かそれより少し上といったところ。
ツン、は。
ζ(゚、゚*ζ「……」
デレは何度も瞬きをした。
ぎゅっと閉じた瞼に力を込め、ゆるゆると開く。
それをいくら繰り返そうと、写真の中のツンは変わらない。
- 910 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:00:47 ID:IaMypzNAO
ξ゚ー゚)ξ
今とまったく同じ、16歳の姿のままだ。
ただ一つ違うとすれば、デレが見たこともないような、
柔らかな笑みを浮かべているという点だけ。
多分、写真を撮ったのは大体10年くらい前。
当時のツンは5、6歳程度の筈である。
デレは、動じない自分に驚いていた。
動じないというよりは、思考がぼんやりとしている、の方が正しい。
核心めいた部分に勘づいてはいるのに、それをはっきりと認めることを躊躇ってしまう。
単に焦りを感じていないだけで、一応混乱はしているのかもしれない。
- 911 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:02:23 ID:IaMypzNAO
数分間、デレは写真に目を落としていた。
凍りついていた思考は、ドアが開く音で動き出す。
( ^ω^)「……あいつら、既に食事始めてやがったお……」
愚痴りながらドアを閉める内藤。
右手に、サンドイッチと2本のペットボトルが乗った盆を持っている。
( ^ω^)「お腹すいてるだろうし、食べながら聞いてくれお」
デレの傍らにある机に盆を置き、内藤はペットボトルを一本差し出した。
小さめのもの。
パッケージからするに、ストレートティーらしい。
( ^ω^)「ちゃんと茶葉から入れる方がいいかお?」
ζ(゚、゚*ζ「これでも構いません。……ありがとうございます」
( ^ω^)「うん。じゃあ――話を始めるかお」
サンドイッチを一つ咥え、デレの手から写真を取り上げて
内藤は先のようにベッドに腰を下ろした。
- 912 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:04:14 ID:dLnbu2eI0
- デレ頑張れ
- 913 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:05:14 ID:IaMypzNAO
デレは、膝に乗せていた開きっぱなしのノートを持ち上げる。
鍵小説。
人物の名前や性別などを変えているが、物語は事実に即したもの。
これは、ある種の私小説だ。
( ^ω^)「途中で聞くのが嫌になったら、言ってくれお」
ζ(゚、゚*ζ「……最後まで、聞きます」
内藤が頷き、サンドイッチを咀嚼していく。
きっと、それを食べ終えたときに、話は始められるだろう。
覚悟を決めるため。
ノートの最初の一文を、再度頭の中で読み上げた。
- 914 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:07:50 ID:IaMypzNAO
『 私の祖父は、まるで神様のようだった。 』
第八話 終わり
- 915 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:09:07 ID:nsfw.a3gO
- おつ!
ニュッ君コワイヨー
- 916 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:09:28 ID:Te7NDHQIO
- えっ?
終わり?
えっ?
- 917 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:09:47 ID:M/5aBkoUO
- おつです!
続き気になるー
- 918 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:09:48 ID:dLnbu2eI0
- 乙!!
次が来るのがこわい
- 919 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:10:13 ID:xriWmFbE0
- 乙!!
続きが楽しみだ
- 920 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:10:35 ID:jWK7BiAoO
- ここで終わりとな…
乙!
- 921 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:10:40 ID:VcUGd5tE0
- いいとこで切りやがって…
焦らし方分かってるじゃねぇか…
- 922 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:12:44 ID:KsQYoKN.0
- ここで切るか!おつ!
- 923 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:15:38 ID:IaMypzNAO
- 今回の投下終わりでっす。思ったより長かった
次回は今週中か来週中……かなあ……
思ったより八話の量が多かったので、次は創作板にスレ立てて投下するかも
支援してくださった方々、読んでくださった方々、ブーン芸さん、いっぷくさん、
皆さんありがとうございました!
>>888
レスは多分抜けてない。多分
しおり的な目次的な
六話後 >>108
七話前 >>261
七話中 >>416
七話後 >>559
八話 >>776
ではでは
質問、指摘などありましたら、いつでもお願いします
答えられない・答えたくない質問はスルーするかも
- 924 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:18:11 ID:QMLcg1J6O
- 乙!
すんごく面白かった!!
続き楽しみにしてます。
- 925 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:21:39 ID:dLnbu2eI0
- >>923
すまん
読み返して自己解決した
読解力つけてくる
- 926 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:39:26 ID:M/gIHUNs0
- 乙!
次も期待してる!
- 927 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:42:49 ID:HPDNpn9g0
- 続き気になりすぎる
次回投下日までワープしたいくらいだ...
- 928 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 02:46:47 ID:CVMhrgu60
- おおおっ、乙!
- 929 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 06:43:44 ID:K7MQYVDM0
- 乙
どうなるのやら
- 930 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 08:13:10 ID:DQsaaFLI0
- 寝てしまってた・・・乙!
- 931 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 08:23:27 ID:CXmxpF4QO
- 来てたのか
続きに期待
- 932 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 08:24:53 ID:IZjC6eP.O
- 続きが気になるううううううう
- 933 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 11:25:30 ID:BgcMLIXIO
- うわああぁぁ!!!
来てた!!乙です!!
キュート
http://imepic.jp/20110815/393820
クックル
http://imepic.jp/20110815/396500
でい
http://imepic.jp/20110815/397030
貞子
http://imepic.jp/20110815/397650
モララー
http://imepic.jp/20110815/404910
ハロー
http://imepic.jp/20110815/399240
ツン
http://imepic.jp/20110815/400050
- 934 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 13:41:08 ID:IaMypzNAO
- >>933
何と言う大量入荷。ありがとうございます!!
ツンだけ今までのと雰囲気が違う感じがしてどきどきする
そして鼻と口しか描かれていない筈なのに、モララーからイケメン臭が漂ってきやがる
- 935 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 14:30:34 ID:yrCIZehoO
- >>933
ハローのスタイルがすげぇ
すげぇ
- 936 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 15:38:10 ID:Dy9kZOdEO
- 来てたんだ
次回も楽しみ
- 937 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 16:45:56 ID:pnG/ruVo0
- 投下来てたんだ! 乙!!!
- 938 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/15(月) 20:59:56 ID:WA0pzeAI0
- せいとかいの人だよね?
せいとかいの続編とかってもうないの?
- 939 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/16(火) 00:16:45 ID:huPVvrEQO
- >>938
個人的には、綺麗に終わらせられたかなと思ってるので続編は考えてないです
ξ;゚听)ξ「ここどこ!? 私のミルナは!? 美少年は!?」
(;^ω^)「えっ、どうしたんだおツン」
ξ;゚听)ξ「いやあああああ何かブーン老けてる!!」
( ^ω^)「精神攻撃やめてよ」
(;・∀・)「ツン、落ち着いて」
ξ゚听)ξ「住み処(トイレ)に帰りなさいよ糞マント眼鏡」
(;・∀・)「何で俺見た瞬間に冷めたの!? てかトイレって……えっ、住み処!? え!?」
*****
(;゚д゚ ) ビクビク
ξ゚听)ξ(ここ、学校かしら……。というか、何でブーンが若返ってるのよ)
(;^ω^)「ツンがミルナ君を前にして平然としている……!?」
(;'A`)「おいツン、ミルナだぞ? いつもみたいにセクハラしなくていいのか?」
ξ゚听)ξ「セクハラはブーンの専売特許でしょ」
(;゚ω゚)「ええええええええええ!!? ツンの中で僕どんなイメージ!?」
<_プー゚)フ「ブーンはツンやドクオみたいな変態じゃないからセクハラなんかしないだろー」
ギリギリギリ
「誰が変態ですってこの人魂」ξ゚听)ξつ∝_フ;゚ー゚)フ「いつも通りだ! いつものツンだ痛たたた!」
続かない
- 940 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/16(火) 00:26:54 ID:pkv8JHV.O
- うわああぁぁぁwwww
入れ替わりネタwwwwwwww
ブーンツン全然違うな
- 941 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/16(火) 05:20:49 ID:lTrS8AoQ0
- 何故か泣けた
もっとやってください
- 942 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/16(火) 08:17:00 ID:trizkD5Q0
- あれ?
ビコーズ先生のクー説教編はまだ?
- 943 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/16(火) 09:11:43 ID:iFbkjicUO
- 番外編のモララー可愛すぎだろwww
- 944 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/16(火) 20:37:50 ID:jiuGkLVkO
- >>942
確か50レス以上に渡ってビコーズ先生の嫌m…愛溢れるありがたいお言葉が綴られるんだよな
- 945 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 03:58:22 ID:AtBQEOYM0
- なにそののび太のパパの2ページ以上に渡るお説教みたいなの
- 946 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 11:08:31 ID:7yfFOaS6O
- 読者もクーと同じ気分が味わえる粋なサービスとな
- 947 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 14:32:27 ID:EtP75tpk0
- もれなく('A`)も横で説教だろ
んでいつの間にか渡辺とクーがガチバトル
- 948 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 14:56:25 ID:4mFemkAEO
- 作者が死ぬから勘弁してやれwwwww
- 949 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 15:26:38 ID:7vKlT9e6O
- ヒート乱入で事なきを得るんですねわかりますん。
- 950 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 18:24:00 ID:7yfFOaS6O
- >>947
彼女が知らない男を監禁してそいつをご主人様と呼びながら食事や風呂からトイレの世話までしてたことを知らされた上に説教されるとかどんなプレイだwww
- 951 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 20:50:23 ID:xg8c.vX.O
>>942
( ∵)「独り身三十路男の家に彼氏同伴で来るとはいい度胸ですね」
川;゚ -゚)「……キュートが、1人で行ったら精神が持たないとアドバイスしてくれたので」
(;'A`)「は、はじめまして、鬱田ドクオです。事情は聞きました……」
川;゚ -゚)「ドクオ……手を握っててくれないか……」
(;'A`)「う、うん」 ギュッ
川*゚ -゚)「……」('A`*)
( ∵)「ははは、手加減してあげようかと思ってましたが、遠慮なくいかせてもらいますね」
( ∵)「〜50レス以上に渡るビコーズ先生の愛溢れるありがたいお言葉〜」
*****
o川;゚ー゚)o「あ、お姉ちゃん、ドクオさんおかえり……。……どうだった?」
( A ) シニタイ
川 - )「クーちゃんね、人生やり直したい……」
o川;゚ー゚)o「お姉ちゃん……」
川 - )「子宮に帰りたい……」
o川;゚ー゚)o「お姉ちゃん……!!」
- 952 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 21:57:47 ID:3wdQSSwkO
- クーちゃんねwww
- 953 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/17(水) 23:33:18 ID:9Q49iZ4UO
- 先生wwww
何を言ったwwwwwwww
- 954 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/18(木) 00:31:46 ID:LFyO6ySA0
- こいつぁひでぇ……
本当に遠慮手加減一切ナシで行ったなこりゃあ……
- 955 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/18(木) 01:09:45 ID:RKwy.bT2O
- 斬新なカット方法を見たw
- 956 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/18(木) 14:49:56 ID:RKwy.bT2O
- キュート学校始まったらビコーズ先生に怒られるみたいに怖がってたけど大丈夫なのか
もしくは防衛本能でなかったことにしてるのか
- 957 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/18(木) 21:46:57 ID:lvH758CUO
- 次回が待ち遠しいです
http://imepic.jp/20110818/780610
- 958 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/18(木) 22:48:08 ID:o4jD7PeYO
- >>957
おぎょひょわあああ! デレ可愛い! ありがとうございます!!
作中で鼻フックされたりビンタされたりしてるのが申し訳なくなってきた
あと小さいニュッまで可愛いと思ってしまったのが悔しい
>>956
o川*゚ー゚)o「忘れてたのに……忘れてたのに……」
川 ゚ -゚)「キュートは昔から男性教諭には甘やかされてきたじゃないか」
o川*゚ー゚)o「……あの人、キューちゃんスマイルが通用しないんだよね……」
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「枯れてんじゃねえのかあの野郎」
川;゚ -゚)「おまっ……や、やめとけ、どこで聞いてるか分からんぞ……」
- 959 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 05:24:44 ID:xL4BV8FQO
- ()
- 960 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 12:13:50 ID:MTkQen0wO
- ツッコミがクーちゃんwwww
- 961 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 13:03:32 ID:IsG2MSMQ0
- ホモなんだよきっと
- 962 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 14:02:35 ID:24JKH8Sw0
- このスレ埋まっちゃったらどうするの?
- 963 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 16:00:16 ID:xL4BV8FQO
- ああなるほどホモか
確かに普通あんないい先生に彼女がいないわけないもんな
- 964 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 18:34:47 ID:ks0Y/yug0
- >>963
彼女?隣に住んでるじゃないk
何だよ……さっきからチャイムがうるさいな
見てくる
- 965 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 19:46:13 ID:o9QF95FsO
- >>962
http://jbbs.livedoor.jp/internet/13029/
↑こちらの、創作板の方でスレを立てようかと思ってます
- 966 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 20:21:08 ID:o9QF95FsO
>>961
N| "゚'` {"゚`lリ ハッ!!
(´・ω・`)「どうした、阿部のおっさん」
N| "゚'` {"゚`lリ「尻とマイサンが疼いた」
(´・ω・`)「わけ分かんないこと言ってんじゃねえぞ。
……さて、久々のデカい仕事だぞ無能共。
成功すりゃ、かなりの報酬が貰える筈だ」
<ヽ゚∀゚>「金ぇえええええええええ!!!!!」
(゚A゚* )「金ぇえええええええええ!!!!!」
N| "゚'` {"゚`lリ(部下は上司に似るな……)
>>963
N| "゚'` {"゚`lリ「!!」ガタンッ
(´・ω・`)「もう訊きたくないけど、どうした」
N| "゚'` {"゚`lリ「もう我慢出来ん、ちょっと行ってくる」
(´・ω・`)「どこに……ちょ、待てって。おーい」
- 967 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 20:25:33 ID:nDaOGMzAO
- やっとせいとかい読める道みつけたよ!
先人達の意地悪なこと意地悪なこと…
ログ速(携帯の友へ)
- 968 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 21:04:53 ID:ix4hmRwsO
- >>967
まとめさんで読むのはだめだったの4つぐらい纏めてるよ
ちなみに自分は盛り上がった最終回のやり取りを読んで
それから一話から読んだくち同時期には違うのをリアル読んでた
何の作品だったか今は作品名出てこないけど
- 969 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 21:31:01 ID:jgDTXLVcO
- 先生逃げてー!!
- 970 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 21:34:24 ID:nDaOGMzAO
- >>968
うらやましいです
俺様はブーン系にはまるべく拳の王が好き
俺がはまるまえによんだ作品にかなり混じってて
なかだしのクーさんが
- 971 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 22:40:57 ID:kwtxgLlM0
- >>967>>968>>970
ここまで読みづらい文章も珍しい
日本語習いたての外国人か?
- 972 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/19(金) 23:35:08 ID:6JpC7atYO
- 968は句読点と改行さえちゃんとすればまともだと思う
ID:nDaOGMzAOはなんか恐い
- 973 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/20(土) 00:24:19 ID:XWsFG5xQ0
- この改行の多さは某スレで見た
- 974 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/20(土) 00:51:57 ID:LvpXlaqYO
- ビコーズ先生VS阿部さん
ワクワク感ハンパないなw
- 975 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/20(土) 21:34:17 ID:XWsFG5xQ0
- うわ・・・こんなひどいブーン系は初めて見た・・・・・
嘘です
- 976 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/20(土) 22:29:27 ID:9KP2jSiQO
- あんま上げすぎっと荒らしくるぞ
- 977 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/20(土) 22:53:42 ID:O77FjvtYO
- >>976
荒らされた方が移動が早くていいじゃないか
- 978 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 00:34:14 ID:2JgvL/9w0
- 独裁主義の管理人はなぁ
- 979 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 01:50:03 ID:02EkmNbkO
- この質問の答えとかはまとめにのらないんだよな…もったいない
- 980 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 11:20:24 ID:.NWlsUP20
- ちょっといっぷくさんまとめるのやめちゃったのかな?
読みやすくて好きなんだけどなー
- 981 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 12:28:30 ID:ksvYlK9kO
- 作者が次回から移転て書いてんだしいいじゃないか
- 982 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 19:56:45 ID:L5sbL4ok0
- しねしねえええええええええええええええええええええええ
- 983 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 19:57:54 ID:L5sbL4ok0
- ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11ハハハハ!!!!!!!!!!!11
- 984 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/21(日) 19:58:16 ID:L5sbL4ok0
- すみませんやりすぎました
- 985 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/22(月) 15:45:34 ID:0bpSOhAsO
- あげるなよー
- 986 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/22(月) 23:01:56 ID:5sh4BNNIO
- 似た名前の話に影響受けてたりする?
- 987 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/22(月) 23:09:08 ID:zgitQxjEO
- >>986
似た名前の話って何ですか?
- 988 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/23(火) 06:08:46 ID:y/bgUlEwO
- >>987
おそらくリビングライブラリーの事、詳しくはググれ
- 989 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/23(火) 19:44:35 ID:H9Zyy6.sO
- すまん違う、ブーン系の話
読んだら所々こっちを彷彿とさせる話だったから気になったんだ
- 990 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/23(火) 22:21:37 ID:kShQSjO2O
- >>989
マジか……
ごめんなさい、どの作品なのかピンと来ないので、知らない内に被ってしまっただけかと思います
あるいは過去に読んだ話を無意識にパk……真似てしまってたのかもしれない
>>988
勉強になりました。人間を本として「貸し出す」って表現が面白いと思った
元々、ネタを思いついた当初は本が人間になって暴れ回るっていう設定だったんで、
何となく近い気がしないでもない
完全に余談ですが、初期設定じゃ主人公はデレじゃなくてクーだったしニュッも登場してなかったし
ブーンが探偵でツンが助手、という設定の、今と全然違う話でした
- 991 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/23(火) 23:45:54 ID:AEm0KaMM0
- ここが埋まる前に新スレ立ててくれ
- 992 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/25(木) 20:10:05 ID:rDagKTC.O
- 更新まだ?
- 993 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/25(木) 23:45:13 ID:mgeIoKpQ0
- ふええ
- 994 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 14:33:29 ID:LIUdGjmwO
- まだかなあ
- 995 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 17:23:35 ID:21PAnOps0
- いっそ埋めればいいんじゃネーノ
- 996 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 17:53:11 ID:6fm.vwjM0
- 埋めちゃうっぽ(*‘ω‘ *)
- 997 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 18:37:25 ID:m0Odrj36O
- 間に合った!
↓こちらで投下します
ζ(゚ー゚*ζ あな素晴らしや、生きた本 のようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1314437739/
- 998 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 18:42:13 ID:H4nzfku.0
- ゚ (_ヽ +
' * /⌒ヽ.| | +
. ( ^ω^ / / 。
+ y'_ イ *
〈_,)l | * 。
ガタン lll./ /l | lll +
- 999 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 20:08:29 ID:MReUL50Y0
- さぁ、私を踏むんだ!
- 1000 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/08/27(土) 20:16:05 ID:vXEW6Szc0
- 1000なら今からVIPで投下する
全部
最新50