( ´_ゝ`)は劣等性のようです
- 1 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 13:49:32.13 ID:G506Z6sj0
- たったら推敲してないけど投下する
愛しのまとめ様方
ブーン芸様
http://boonsoldier.web.fc2.com/rettou.htm
7x様
http://nanabatu.web.fc2.com/boon/anija_rettousei.html
2010年以内に終わらなかった……。
でもこれで終わりです。
- 2 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 13:51:17.11 ID:G506Z6sj0
-
(´<_` )「扉だ」
( ;´_ゝ`)「ようやくか……」
平然としている弟者に対して、兄者は息を切らしている。
階段は思っていた以上に長く、体力のない兄者の膝は笑っていた。
( ;´_ゝ`)「何で金を持ってる奴は無駄にでかい家を建てるんだ!」
(´<_` )「知るか」
扉の前に立ち、兄者は息を整える。
(´<_` )「開けるぞ」
( ;´_ゝ`)「え、待って。心の準備が……」
制止の声など聞こえていなかったのか、弟者は扉を開ける。
暗い道に痛みを伴うような光が二人をさした。
ここが城の最上階とするならば、王の言っていた人物に会えるのだろう。
けれど、会う前に殺されてしまっては元も子もない。二人は魔法の気配を探す。
ようやく目が慣れてきたころ、辺りの光景を二人は目に映した。
王の部屋ということだけあって、高そうな物が多く、無駄に広い。
謁見用の場所ではないので、ベットや剣などの私物が見える。
- 3 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 13:54:18.17 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「誰もいないな」
(´<_` )「会議でもしてるのかもな」
それならばそれでいいと口にする。
会わないのであれば、安全に逃げ出すことができるだけだ。
( ´_ゝ`)「おい」
(´<_` )「何だよ」
( ´_ゝ`)「王の頼みはどうするんだよ。ドクオとブーンも」
(´<_` )「そんなもんは後でも大丈夫だろ」
( ;´_ゝ`)「後でって……そんな悠長な」
今、こうしている間にドクオとブーンが死んでいるかもしれない。
モナーも閉じ込められたままだ。
( ´_ゝ`)「第一、このことを国中に伝えたって信じてくれる人間なんていない。
オレ達には今しかチャンスがないんだ」
(´<_` )「なら王の言っていた奴が帰ってくるまで待つのか?」
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:56:04.10 ID:TpPprFdzO
- 劣等性キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
- 5 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 13:57:40.20 ID:G506Z6sj0
-
死ぬ可能性は上がる。
母者達が帰ってくるであろう家には誰もいないのだ。
( ´_ゝ`)「……」
考えるだけでも寒気がした。
誰にも知られることなく消えていくのは恐ろしい。
(´<_` )「どうした」
(´・ω・`)「そうそう。迷う必要なんてないよ」
唐突に響いた声は、二人の意識を同じ場所に集めた。
( ;´_ゝ`)「ま、まさか……」
(´・ω・`)「こんにちは。脱走者さん達」
にこりと笑うその顔は無邪気に見えた。
見る限り、たしかに歳は近そうだ。だが、まとう雰囲気はあきらかに違う。
(´<_` )「お前が今の王ってわけか」
(´・ω・`)「そういうことになるね」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:59:00.52 ID:jiJdEkHV0
- ずっと待ってたんだからね///
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 13:59:11.76 ID:KavBRTAQ0
- なんか久しぶり?
- 8 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:00:25.12 ID:G506Z6sj0
-
彼が自らの手で顔を覆い、再び二人の前に顔を出す。
先ほどまでのしょぼくれ顔はどこかに消えていた。
( ´∀`)
そこにあるのは温和で人の良さそうな顔だ。
( ´_ゝ`)「精巧だな」
(´<_` )「誰も気づかなくても不思議じゃないな」
( ´∀・`)「でしょ?」
顔の形が崩れ、再び彼自身の顔へと戻る。
(´・ω・`)「ボクは頑張ってここまできたんだ」
広い部屋の中で偉そうにしているのも疲れると続けた。
王の仕事がどのようなものなのか、兄者達ははっきりとしたイメージを浮かべることはできなかった。
けれど、一国を治めるということがそれほど簡単なはずがないだろう。
( ´_ゝ`)「じゃあ、早くその席を返したらどうだ」
(´・ω・`)「やだよ」
- 9 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:03:25.62 ID:G506Z6sj0
-
彼は二人の顔を交互に見る。
(´・ω・`)「よく似てるね。双子の兄弟だから?」
( ´_ゝ`)「ああ」
(´<_` )「胸糞の悪いことにな」
(´・ω・`)「キミ達は兄弟なのに仲が悪いね」
そんな人達にボクの気持ちはわからないよと言う。
暗い瞳は目の前にいる二人ではなく、遠い過去の記憶を探っているようだ。
(´・ω・`)「ボクはただ復讐したいだけなんだ」
(´<_` )「邪魔はしない。だが、オレ達、いや……オレは見逃して欲しいな」
( ´_ゝ`)「弟者!」
(´・ω・`)「ダメ」
耳に届いたのは否定の声と、水分が凝固していく音だった。
ピキピキと高い音をたてて冷たい刃が作られていく。
(´・ω・`)「キミは嘘つきだもん」
(´<_` )「オレが? オレは正直者だぞ」
- 10 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:06:27.86 ID:G506Z6sj0
-
静かにふられる首。
向けられたのは冷たい刃。
(´・ω・`)「嘘つき」
彼が床を蹴る。
弟者は向かえうつように手の中に炎を宿す。
基本的には攻撃する術を持たぬ兄者は空中へと逃げた。
(´<_` )「中々の魔力だな」
(´・ω・`)「どうも」
弟者の炎が氷の刃を徐々に溶かす。
(´・ω・`)「キミは弟者君の方かな?」
(´<_` )「そうだ。あの馬鹿とは間違えてくれるなよ」
(´・ω・`)「わかった。あ、ボクはショボンっていうんだ」
よろしく。と言い終えたとたん、ショボンの手の中にあった氷が急激に溶けた。
煤i´<_` )
弟者の炎が競り勝ったわけではない。
氷を作り出していた魔力が消えたのだ。
- 11 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:09:19.83 ID:G506Z6sj0
-
氷は溶けて水となり、弟者の炎を消し去った。
(´<_` )「頭も回るようだな」
(´・ω・`)「褒めてくれてありがとう」
二人が鋭い視線を相手に向けあう。
兄者はその様子を傍観することしかできない。
浮遊系しか使えない劣等性がこの状況でなにができるというのだろうか。
( ;´_ゝ`)
だが、このままでいいのだろうか。
弟者ならばショボンに勝つこともできるだろう。
何をいっても天才だ。他人の姿をコピーし、多少の氷を操る程度の者に負けるはずがない。
( ´∀`)「悪いことをしたら叱らないとダメモナ」
モナーはそう言っていた。
力で叩きのめすことは、叱ることではないだろう。
( ;´_ゝ`)「いや、でも……うーん」
- 12 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:12:32.35 ID:G506Z6sj0
-
(´<_` )「ならば風で勝負だ」
弟者が風をまとい、ショボンは再び氷を生む。
肌を切り裂く風を氷が阻む。
相手へと向けられた氷のつぶては風により押し返される。
風と氷が舞うこの空間は、いつの間にかとても冷たくなっていた。
目の前にいる敵を倒すために頭を働かし、体を動いている二人とは違い、
ただ傍観しているだけの兄者にはその冷たさが身に刺さる。
今一度炎を使ってはくれないかと思うが、そんなことを口にすれば自分の身が危ない。
(´・ω・`)「キミ強いね」
(´<_` )「なら見逃してくれよ」
(´・ω・`)「それはダメ。ボクのしたいことに支障がでる」
(´<_` )「復讐か?」
(´・ω・`)「そうだよ」
ショボンは眉間にわずかなしわを寄せる。
復讐をする。その言葉は彼の心に深く根付いているのだろう。
- 13 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:15:37.50 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「聞いたんでしょ? ボクのこと」
(´<_` )「あの馬鹿のほうが主にな」
(´・ω・`)「そうなんだ。まあ、大好きな家族のための復讐だよ」
(´<_` )「ありきたりだな」
(´・ω・`)「そうだね」
他愛もない会話をしているようで、彼らの手からは未だに魔力が放出されている。
ショボンの方にはまだ余裕がありそうだが、モナーの手錠を外したり、階段を登ったりと、
ここ最近魔力、体力ともに消費するばかりだった弟者には早くも疲れが見えてきた。
( ;´_ゝ`)
これは不味いと兄者は感じた。
いくら弟者が強くとも疲労には勝てない。
止めるべきか、と自らに問いかけ、それはできないと結論を出す。
あの弟者が自分の言葉に耳をかすはずがない。
ならば放っておくのか。
弟者が負けるかもしれない。勝ったとして、それは本当に理想に叶っているのだろうか。
王の言葉を尊重しているのだろうか。
- 14 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:18:30.42 ID:G506Z6sj0
-
( ;´_ゝ`)「お、おい!」
(´<_` )「あ?」
苛立ったような声と、冷たい視線が返ってくる。
( ;´_ゝ`)「復讐なんてよくないぞ」
(´・ω・`)「ボクに言ってるの?」
( ;´_ゝ`)「ああそうだ」
彼さえ止まればすべて解決するのだ。
弟者も戦わずにすむ。王の言葉だって尊重できる。
( ;´_ゝ`)「お前の家族が復讐を望むとでもいうのかよ!」
本の中でしか見たことがないような台詞だ。
こんなものを自分が口にするとは、今の今まで思ってもみなかった。
自分で言っておいて、と思ったが兄者はこの台詞はあまりにも陳腐だと思った。
(´・ω・`)「……当然じゃないか」
彼の言葉がそれを裏付ける。
- 15 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:21:30.89 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「ボクの大切な家族を馬鹿にしないでよ」
寒気が増した。
ショボンの魔力がわずかに強くなった。
(´<_`; )「っく……」
奥歯を噛み締め、弟者も魔力をさらに放つ。
(´・ω・`)「とっても優しい人なんだ。
お兄ちゃんはいつだってボクのことを心配してくれてた」
ショボンが兄者を見る。
氷を操るために使っていた両手のうち、片方の手を兄者へと向けた。
その一瞬、ショボンの力は弱まり、弟者の風が圧倒する。
( ;´_ゝ`)「うおっ」
だが、それは一瞬のできごとだった。
わずかな時間で、ショボンは兄者へと氷のつぶてを放ち、再び弟者に向けて両手を使った。
(´・ω・`)「だから復讐なんて、そんなこと絶対に望まない。
キミ達と違って、お互いのこともよくわかってるんだ」
口を挟むなとでも言いたいのか。
弟者の瞳よりも、ショボンのそれは冷たい。
- 16 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:24:33.04 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「復讐はボクがしたいの。ボクが家族を忘れないように」
( ´_ゝ`)「でも……」
(´・ω・`)「復讐は復讐を生む?」
( ´_ゝ`)「そうだ」
(´・ω・`)「全部なくなるから、心配しなくていいよ」
(´<_` )「お前は世界を破滅させるつもりか」
(´・ω・`)「まさか。さすがにそこまではしないよ」
笑みが浮かぶ。
(´・ω・`)「いずれボクが復讐のために死んだら、あとは誰もいない。
だからどうなったとしても、復讐はボクで終わるんだ」
( ;´_ゝ`)
嫌な汗が出た。
気味が悪い。
(´・ω・`)「……そんなに引かなくてもいいじゃないか」
- 17 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:27:18.61 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「キミはどう思う?」
(´<_`; )「オレか?」
寒い部屋の中だというのに、弟者の頬には汗が流れていた。
疲れのあまり、手も震えてきている。
(´<_`; )「そうだなあ、よっぽどいい兄貴だったんだろうな」
(´・ω・`)「うん。とってもいいお兄ちゃんだったよ」
弟者の腕がだんだんと下がっていく。
( ´_ゝ`)「弟者!」
(´<_` )「……うるせ」
(´・ω・`)「無理はしないほうがいいよ」
(´<_` )「無理しなきゃ殺されるじゃねーか」
(´・ω・`)「怖いの?」
(´<_` )「怖いっていうか嫌だろ。常識的に」
歯を食いしばり、腕と魔法を維持する。
兄者は自分が劣等性なんだと思い知らされるばかりだった。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:30:21.93 ID:iQMMuirJO
- 劣等性来てたひゃっほぅ
- 19 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:30:29.48 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「……違うだろ」
呟く。
( ´_ゝ`)「劣等性だけど、だからって……」
足に力を入れる。
( ´_ゝ`)「このままでいいわけないよな!」
飛びこむようにして、ショボンの態勢を崩す。
(´<_`; )ハアハア
体勢を崩し、ショボンの魔法を止めたのはいい。
だが、追撃するだけの体力が弟者にはなかった。
兄者には今以上の攻撃の術などなかった。
(´・ω・`)「ねえ、どいてよ」
魔法が使えないような状態でもないはずなのに、ショボンはただじっと兄者を見ている。
不安になる瞳だった。
まるで、ドクオの目を直視しているときのような気分になる。
- 20 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:33:28.53 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「ドクオ君って、キミの友達でしょ?」
( ´_ゝ`)「それがどうかしたか」
(´・ω・`)「ふーん、変な能力を持ってるんだね。ボクなら欲しくないかな」
( ´_ゝ`)「何を突然」
(´・ω・`)「キミが思ったんでしょ? ドクオ君とボクの瞳が似てるって」
( ´_ゝ`)「……え」
(´・ω・`)「どうしてわかった? そうだね。ボクもドクオ君とちょっと似てるからかな」
( ´_ゝ`)「どういうことだ」
ショボンを抑える手が震えた。
彼と同じ。それはやはり恐ろしいことだ。
(´・ω・`)「ボクは感情とかはあまりわからないけどさ」
ちらりと弟者を見る。
(´・ω・`)「今考えてることの一部とかがわかるんだ」
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:36:11.51 ID:KavBRTAQ0
- 読み返してきた
ドクオ勝利だったな
- 22 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:36:20.18 ID:G506Z6sj0
-
戦いにおいて、それほど強力な武器はないのではないか。
( ´_ゝ`)「嘘だろ?」
(´・ω・`)「残念だけど、嘘じゃないんだ」
だから、弟者は逃がさないのだという。
彼を放っておけば、後で計画に支障がでると判断したのだ。
(´・ω・`)「ね、キミはこれからどうする?」
トドメを刺すのか?
ショボンを諭してみるのか。
( ´_ゝ`)「それは……」
(´・ω・`)「何を言って説得する?」
復讐するなという言葉は届かない。
彼は誰かのための復讐ではなく、自分自身の考えで行動に移している。
(´<_`; )「どけ……オレがやってやる」
( ´_ゝ`)「弟者」
(´・ω・`)「ダメだよ。兄者君はそれを望んでない」
- 23 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:39:31.95 ID:G506Z6sj0
-
兄者はモナーの言葉が忘れられない。
( ´_ゝ`)「……殺したらダメだ」
(´<_` )「まだそんなことをっ!」
(´・ω・`)「兄者君は優しいもんね」
( ´_ゝ`)「うるさい」
わかっている。
自分がどれほど愚かなことをしているのか。
(´<_` )「どけ!」
(´・ω・`)「じゃあ手伝うよ」
( ´_ゝ`)「ぐっ……」
ショボンの足が兄者の鳩尾を蹴った。
思わず手を離し、床へ尻もちをつく。
(´・ω・`)「ほら、兄者君はいなくなったよ」
(´<_` )「ああ、そうだな。おかげでやりやすくなった」
- 24 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:42:22.47 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「おい、無理するな」
(´<_` )「腹抑えながら、何言ってんだよ」
(´・ω・`)「そうそう。劣等性はそこで大人しく見てなよ」
天才同士の戦いだとでも言うのだろうか。
兄者は知らずに拳を握る。
魔法が使えないことや、体力がないことをここまで悔やんだことはない。
( ´_ゝ`)「おい!」
(´・ω・`)「いいじゃないか。別に」
( ´_ゝ`)「オレが何のためにきたと思ってんだ」
(´・ω・`)「……ああ、弟者君の身代わりか」
(´<_` )「胸糞の悪い話してんじゃねーよ」
弟者の雷と、ショボンの氷がぶつかりあう。
寒々しい部屋に飛び散る光は美しい。
( ´_ゝ`)「弟者、お前は下がってろ」
(´<_` )「お前が戦ったところで、何も変わらんだろ」
(´・ω・`)「兄者君はボクを殺す気ないしね」
- 25 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:45:31.29 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「オレだって魔法は使える」
部屋にあった大きな壺に手を向ける。
兄者は自分にできることを理解している。
壺はふわりと、宙に浮いてショボンへ向かう。
(´・ω・`)「おっと」
ショボンに当たる前に、氷が壺を破壊する。
細かい破片が飛び散った。
(´<_` )「やっぱりお前には無理だ」
( ´_ゝ`)「いや、考えがある」
(´・ω・`)「ふーん」
冷たい瞳が兄者を見る。
しまった。そう心の中で思った。
(´・ω・`)「ボクの魔力を削ぐの?」
( ;´_ゝ`)「…………」
少しでも弟者と五分五分の状態にしたかった。
そうすれば殺さずともどうにかなる方法が見つかると思っていた。
- 26 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:48:25.40 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「うんうん。いい考えだね」
( ´_ゝ`)「バレたからって、どうすることもできないだろ!」
大きな絵画をショボンへ向ける。
(´・ω・`)「でもさ、こうすればいいだけだって気づいてた?」
薄い氷の壁が絵画を阻む。
ただ、魔力を節約していたのか、氷の壁はすぐに砕けた。
( ´_ゝ`)「もういっちょ!」
(´・ω・`)「氷よ我意思により、鋭き矢となれ」
宙に浮いた壺が床に落ち、無残な姿となった。
同時に、兄者は痛みを感じた。
ショボンが放った氷の矢は、壺だけでなく兄者も射ち抜いていた。
( ;´_ゝ`)「おいおい、勘弁してくれよ」
兄者は自分の手のひらを見る。
見なくても生暖かい液体が流れているのはわかりきっていた。
(´<_` )「あー。やっぱりな」
こうなると思ったと、弟者は呆れたように言う。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:49:59.29 ID:KavBRTAQ0
- 支援
- 28 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:51:31.27 ID:G506Z6sj0
-
兄者の手のひらからは血が流れていた。
これでは魔法を使うことは困難になる。
( ;´_ゝ`)「い、いや……使えないわけじゃない」
手を上げ、今一度ショボンに向けて壺か絵画をぶつけようとする。
(´・ω・`)「やめときなよ。痛みが増すだけだよ」
( ;´_ゝ`)「うるせぇ……」
(´<_` )「風よ刃となり、彼者を裂け」
睨みあう二人を邪魔するかのように、弟者の風がショボンを裂く。
(´・ω・`)「痛いじゃないか」
(´<_` )「痛くしてるからな」
(´・ω・`)「お返ししちゃうよ」
氷のつぶてが弟者を襲う。
魔法でそれらを打ち落とすのは今の弟者には難しい。
魔力がないのならば、運動神経でそれを補う。
- 29 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:54:38.92 ID:G506Z6sj0
- しゃがみ、床を転がりながら氷を避ける。
時折、氷が弟者の体を傷つけたが、致命傷にはいたらない。
(´<_` )「炎よ……!」
(´・ω・`)「氷よ水へと返れ」
弟者の炎はあっけなく消える。
舌打ちをしている弟者を見るショボンの目は楽しそうだ。
(´・ω・`)「兄者君は黙って見てるの?」
( ´_ゝ`)「そうもいかないだろ」
震える声で返す。
手が痛い。寒い部屋の中で、手のひらだけが異様に熱い。
(´・ω・`)「ボクはね、もっと憎んで欲しいんだ」
( ´_ゝ`)「憎んで欲しい?」
(´・ω・`)「そう。その憎しみが力になるんだ」
復讐のための力。
ショボンがどのような能力を持っているのか。
わかっているのは姿を変える魔法と、氷をを操る魔法。そして人の心を読む能力。
他にもう一つくらい能力があったとしても不思議ではない。
- 30 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 14:57:25.89 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「安心して、復讐のための能力はボクにないから」
(´<_` )「お前にはない?」
ならばどうするつもりなのだろう。
貞子のことを知らぬ兄者達は心の中で首を傾げる。
(´・ω・`)「気にしなくていいよ。ボクはちゃんと考えてるから」
( ´_ゝ`)「別に考えてなくていいよ」
(´・ω・`)「そんなこと言わないでよ」
(´<_` )「余所見なんてしてる余裕あるのか」
カマイタチがショボンを襲う。
防御が一瞬遅れたため、ショボンの体には無数の切り傷が生まれた。
(´・ω・`)「ああ、服がボロボロだ」
(´<_` )「お肌の方もボロボロにしてやるよ」
(´・ω・`)「まだ若いんだけどなー」
(´<_` )「そうかい!」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 14:58:02.95 ID:KavBRTAQ0
- 貞子かな?
- 32 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:00:32.19 ID:G506Z6sj0
-
再び風がショボンを襲う。
(´・ω・`)「もういいかな」
(´<_` )「何が」
(´・ω・`)「痛いし、疲れたし」
( ´_ゝ`)「嫌な予感」
思わず、一歩後ろに下がる。
ニコリと笑うショボンに対する感情は恐れだけだ。
(´・ω・`)「バイバイでいいよね」
(´<_` )「だが断る!」
(´・ω・`)「そんなの、ダメだよ」
つぶて。そんなレベルではなかった。
大きなつららだ。それらが弟者に向かって降り注ぐ。
避けようと動くが、先を見透かされてしまっているため、完全に避けきることはできない。
( ´_ゝ`)「う、おりゃ!」
ショボンの集中力を削ぐために、辺りにあったものを浮かせ、ぶつけていく。
(´・ω・`)「危ないじゃない」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:01:26.03 ID:jiJdEkHV0
- >>31
貞子は前回で俺の嫁になりました
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:02:30.93 ID:KavBRTAQ0
- バツ1じゃねーか
- 35 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:03:29.92 ID:G506Z6sj0
-
次に狙われたのは兄者だ。
だが、弟者の声がショボンの意識を兄者から離す。
(´<_` )「……なあショボンさんよ」
(´・ω・`)「なあに?」
(´<_` )「気づかないか」
(´・ω・`)「…………」
つららを落とす手を止め、弟者を見据える。
(´<_` )「オレらの位置関係だよ」
ショボンは弟者から目を離し、兄者を見る。
( ´_ゝ`)
兄者がいるのは弟者とは正反対の方向だ。
心なしか顔が青いのは、手からの出血があるのだからしかたがないだろう。
(´・ω・`)「うまく、考えたね」
自分の不覚に気がついた。
ため息をつきたい気持ちではあったが、今はそれどころではない。
(´・ω・`)「まあ、別に大したことないさ」
- 36 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:06:34.72 ID:G506Z6sj0
-
ショボンの目は二つだ。
兄者や弟者と同じ位置に、二つだけしかない。
(´・ω・`)「正反対にいられたら、片方の考えしか見えないや」
(´<_` )「ドクオと同じなんだ。しかたないな」
(´・ω・`)「うん。しかたないね」
だが、大した問題ではないとショボンは繰りかえす。
片方はろくな攻撃手段を持っていない。
(´・ω・`)「まあ、少しばかり面倒だけどね」
再び大きなつららが宙に作られる。
先ほどよりも多い数のそれは、兄者と弟者の両方を狙っている。
(´・ω・`)「下手な鉄砲数打ちゃなんとやら」
凶器が降り注ぐ。
弟者は炎でそれらを溶かし、兄者は震える手でそれらをゆっくりと降ろす。
(´・ω・`)「ほーら、第二段作っちゃうよ」
二人がつららの処理をしている間にも、ショボンは新たなつららを作る。
このままでは二人の体力がつきる方が早いだろう。
- 37 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:09:20.51 ID:G506Z6sj0
-
(´<_` )「何か、何かないのか……」
頭を働かせる。
弟者の魔力は限界に近い。
兄者に何かを期待することはできない。
絶体絶命。そんな言葉が脳裏を過ぎる。
(´・ω・`)「はい、これで終わりかな?」
( )「させないモナ!」
頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、何者かの声が耳に届いた。
突如現れた何者かは、ショボンの抱き締めるようにして動きを止めた。
予期せぬ事態に驚いたのか、ショボンは氷を形作っていた魔力を解いてしまった。
頭から降り注いだ水はその場にいた者達の体温を奪う。
(´・ω・`)「どうして……ここに」
( ´∀`)「ボクがいるのがおかしいかモナ?」
ここにいて、一番しっくりとくる人物だ。
( ´∀`)「ここはボクの部屋モナ」
穏やかな顔をしている王ではあるが、体のあちらこちらに傷を負っていた。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:12:13.84 ID:KavBRTAQ0
- 魔法使えない王様登場
- 39 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:12:35.14 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「よく、ここまでこれましたね」
( ´∀`)「モナ。よくわからないけど、彼らが急に倒れたモナ」
(´・ω・`)「あの兵が?」
( ;´_ゝ`)「王、危ないです」
抱きかかえるようにして、ショボンの動きを封じてはいるが、あの程度ではすぐに逃げられる。
( ´∀`)「キミ達にばかり任せてはいけないモナ」
(´・ω・`)「……あの兵が、ということは」
ショボンは目線を下げて拳を握る。
体を振るわせる。
( ´∀`)「ショボン?」
(´・ω・`)「ふふふ……」
笑っていたのだ。
小さな笑い声は、次第に大きくなっていった。
(´・ω・`)「あはははははははは!」
(´<_` )「おいおい、これはヤベエだろ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:14:16.17 ID:KavBRTAQ0
- あれは貞子のだったのか
- 41 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:15:25.86 ID:G506Z6sj0
-
誰もが思った。
この様子はただごとではない。まともな人間ではない。
(´・ω・`)「あーあ。もう……ヤダなあ」
冷たい手をモナーの背に添える。
悲しげな瞳は、今にも涙を流しそうだ。
( ´∀`)「モナ?」
(´・ω・`)「本当に、計画が台無しだよ」
その瞬間、ショボンの手からはつららが生み出された。
( ´∀`)「モ……ナ……」
( ;´_ゝ`)「モナー王!」
生み出されたばかりのつららは、モナーの体を貫いた。
腹から突き出た二本の氷は不気味な冷たさを帯びている。
(´・ω・`)「兵が急に倒れたってことはさ」
氷を消し去り、力を失くしたモナーを床に置く。
(´・ω・`)「貞子さん、やられちゃったんだね」
- 42 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:18:30.02 ID:G506Z6sj0
- (´<_` )「貞子?」
(´・ω・`)「ボクの相方。彼女が復讐の力を持っていたんだ」
誰かの悲しみを呪いにする貞子。
呪いの力を使い、世界に復讐するためには彼女の力が必要だった。
呪いの素を作りだすためには、ショボンの能力が必要だった。
復讐を果たすためには、貞子の呪いが必要だった。
利害関係の一致だけが二人の関係を繋ぎとめていた。
(´・ω・`)「なのに、誰にやられたかしらないけどさ……」
倒れているモナーを見下しながら、ショボンは一筋の涙を流した。
(´・ω・`)「もう、終わりだね」
今までやってきたことは無駄になる。
彼にできることと言えば、後は戦争を起こすことくらいしかないのだ。
(´・ω・`)「キミ達がこなければ、こうはならなかったのかな?」
( ´_ゝ`)「終わったなら、モナー王をそうする必要はあったのか」
(´・ω・`)「ただのうさばらしだよ」
ショボンは静かに手を上げる。
(´・ω・`)「これからも、ただのうさばらし」
- 43 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:21:29.92 ID:G506Z6sj0
-
冷たい空気が集まり、床全体が氷はじめる。
(´<_` )「洒落にならんな」
今の弟者ではどうにもできない。
冷汗もでない冷たさだ。
そんなとき、視界の端に映ったのは兄者の姿だった。
(´<_`; )「何やってんだ!」
滑る床を走りながら、ショボンへと近づいていく。
もうどうにもできない状況だとはいえ、敵に真正面から突っ込んでいくなど正気の沙汰ではない。
( ´_ゝ`)「王!」
兄者は王の腕を肩に回し、モナーを移動させようとしている。
(´・ω・`)「優しい人だね」
ショボンは兄者の後ろ姿を見て笑う。
(´<_`; )「馬鹿がっ……!」
真っ直ぐに兄者を狙うつららを弟者が打ち落とす。
( ´_ゝ`)「すまん!」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:23:16.01 ID:KavBRTAQ0
- 支援
- 45 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:24:21.18 ID:G506Z6sj0
-
(´<_` )「本当に馬鹿だな。王とはいえ、今はそれどころじゃないだろ」
( ´_ゝ`)「王だから助けたわけじゃない。目の前で死にかけの奴がいたから助けたんだ」
(´<_` )「ああ、そうかい」
( ´_ゝ`)「弟者、頼む」
(´<_` )「…………今、王を治癒したところで、状況は変わらないぞ」
( ´_ゝ`)「そういう問題じゃないってわかってるだろ」
(´<_` )「はいはい。お優しいこって」
兄者からモナーを預かり、傷口に手をかざす。
暖かな光がモナーの傷口を癒し始める。
( ´_ゝ`)「さて、お前はオレと遊んでもらうぞ」
(´・ω・`)「いいよ。どうせ、すべて真っ白にするしね」
( ´_ゝ`)「恐ろしいこと言うなよ」
いつもと変わらないように見えた。
しかし、兄者の心は今までにないほど荒れていた。
- 46 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:27:34.99 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「ねえ、何をそんなに怒ってるの?」
怒りはショボンの目を通して伝わってくる。
けれど、怒りの根源がよくわからない。
(´・ω・`)「そういえば、キミはお兄さんなんだよね」
( ´_ゝ`)「一応な」
弟者と兄者は双子だ。
兄や弟などという言葉に意味はない。
(´・ω・`)「ボクのお兄ちゃんは優しかったんだ」
( ´_ゝ`)「そうか」
(´・ω・`)「だから、死んじゃった」
キミはどうなの? と問いかけの声と同時に、つららが飛び出す。
避けようと考え、空へ逃げよう足に力を入れる。
だが、つららは兄者を素通りし、後ろにいた弟者とモナーに向かっていた。
( ;´_ゝ`)「笑えねぇって!」
慌ててつららに手を向ける。
数は二本。操れない数ではない。
- 47 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:30:34.80 ID:G506Z6sj0
-
ショボンの放ったつららは、弟者とモナーの上を通り、壁に刺さった。
弟者も肝を冷やしたのか、小さくため息をつく。
先ほどからずっと治療を進めているおかげで、モナーの顔色はずいぶんと良くなっている。
(´<_` )「おい!」
思わず叫んだ。
( ;´_ゝ`)「ですよねー」
兄者は笑った。
(´・ω・`)「お兄ちゃんって、やっぱり優しいものなのかな?」
ショボンは呟いていた。
(´<_`; )「こっちにはオレがいるんだ。余計なことしなくても」
( ;´_ゝ`)「お前はずっと魔力を使いっぱなしだろ」
良い格好くらいさせろ。そう言った兄者の足にはいくつかの細いつららが刺さっていた。
笑っていた兄者はそのまま、床に倒れこむ。
つららに貫かれた足は、その機能を放棄してしまったようだ。
(´・ω・`)「優しいね。反吐がでるよ」
ゆっくりと近づいてくるショボン。
兄者は這い蹲りながらその様子を目に映している。
- 48 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:33:44.96 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「ボクのお兄ちゃんだけでいいんだよ。
キミとお兄ちゃんを重ねるなんて真っ平ごめんだよ」
見下す者と、見上げる者。
( ´_ゝ`)「オレも嫌だわ」
歯を食いしばり、ショボンを睨みつける。
兄者の中の怒りがはっきりと見え始めた。
( ´_ゝ`)「お前みたいな、クズの兄貴なんてよ」
(´・ω・`)「キミの弟も中々だと思うけどね」
( ´_ゝ`)「ふざけんな。オレの弟はオレ以外の家族には優しいんだ」
(´・ω・`)「……失礼だね。ボクはボクの家族を誰よりも愛してるよ」
会話を続けていく間も、兄者の足からは血が流れている。
( ´_ゝ`)「どうだか」
(´・ω・`)「温厚なボクでも怒るよ」
( ´_ゝ`)「あんたさ、王に何したんだよ」
(´・ω・`)「ん?」
( #´_ゝ`)「何したかって聞いてるんだよ」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:35:04.19 ID:rvNdQFeT0
- 追いついた支援!
- 50 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:37:11.34 ID:G506Z6sj0
-
兄者は吼えるように叫んだ。
血が足りていないのに、大きな声を出したせいか、頭が一瞬白くなる。
それでも兄者は続けていく。
( #´_ゝ`)「あの人はお前のこと心配してたんだぞ!
見ろ! オレの考えてることがわかるんだろ!」
(´・ω・`)「……知ってるよ。あの人がボクのことを大切に思ってくれていたことくらい」
( #´_ゝ`)「いた。なんて過去形にするな。王は今だって思ってるはずだ。
お前を、実の子供みたいに思ってるはずだ!」
(´・ω・`)「うるさいなぁ」
( #´_ゝ`)「お前は、親を殺そうとしたんだ!」
(#´・ω・`)「もう! うるさいよ!」
ショボンが氷の刃を作り、兄者へと向ける。
ろくに動くことのできない兄者は黙ってそれを見る。
(´<_` )「風よ!」
振り下ろされる刃を砕いたのは弟者の放った風だった。
(´・ω・`)「もう王様の治療はいいの?」
(´<_` )「ああ、最低ラインまでは治療した」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:37:43.56 ID:rvNdQFeT0
- しえん
- 52 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:39:27.65 ID:G506Z6sj0
- 疲れたのか、弟者は肩で息をしている。
(´・ω・`)「無理しないでいいよ。どうせキミもすぐに死ぬんだから」
(´<_` )「ごめんだね」
( ´_ゝ`)「弟者」
自らの体を浮かせ、弟者に近づく。
( ´_ゝ`)「手を貸せ」
(´<_` )「オレは高いぞ」
( ´_ゝ`)「お前の命よりもか?」
(´<_` )「……しかたないな」
( ´_ゝ`)「よし」
ショボンに聞こえぬ程度の音量で言葉を紡ぐ。
その間も弟者とショボンの間では、大きな魔力と小さな魔力がぶつかりあっている。
(´<_` )「それをしろというのか?」
( ´_ゝ`)「頼む」
(´<_` )「…………」
弟者は口を閉じ、ショボンを見る。
- 53 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:42:42.12 ID:G506Z6sj0
- (´<_` )
そこにいたのはショボンではなかった。
(´<_`; )「おお、また嫌なことをするな」
( ´_ゝ`)「何のつもりだ」
(´<_` )「別に? ただ、姿を変えて見たくなっただけだよ」
弟者の顔で、ショボンが笑う。
氷はやんでいた。
(´<_` )「それくらい、いいでしょ? 劣等クズ兄貴」
( ´_ゝ`)「……」
その言葉が兄者の心を抉ると思ったら、大きな間違いだ。
兄者は今までずっと弟者と暮らしてきた。
あの程度の言葉は何度も向けられてきた。
(´<_`; )
しかし、意外にも弟者には効果があった。
誰かが誰かを罵倒している姿というのは、どうにも胸糞が悪い。
自分の姿で、自分の兄をとなるとなおさらだ。
( ´_ゝ`)「人の弟の姿を借りて、何好き勝手言ってんだ」
(´<_` )「いいでしょ? どうせいつも言われてたんだし」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:44:44.33 ID:rvNdQFeT0
- 支援だ
- 55 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:45:26.12 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「弟者が言うのはいい。オレが悪い。
だがお前は許さん」
(´<_` )「見た目は同じじゃない」
( ´_ゝ`)「双子を舐めるな。見た目だけで判断してたら鏡が見れなくなるだろ」
(´<_` )「そういうもの?」
( ´_ゝ`)「そういうものだ」
兄者は弟者にささやく。
自分がショボンの気を引いている間に、先ほどたてた作戦を自行しよう。
(´<_` )「……把握した」
弟者は疑問に思い始めていた。
ショボンが兄者をとぼす度に、嫌な気持ちがつのる理由。それは、一つしかないのではないのか。
(´<_` )「劣等、馬鹿兄」
小さく呟く。自分に言い聞かせるように。
足を進めながら、思い出すのは兄の姿だ。
確かに兄者は馬鹿だった。
考えなしに突っ込み、今回のような危険に巻き込まれる。
そのおかげで弟者が怪我をすることもあった。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:46:07.07 ID:/pNaRAH70
- 最初のほう見てたけど途中から見失ってたよ
これを気に読んでみる
支援
- 57 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:48:23.75 ID:G506Z6sj0
-
だから憎かったのか。
(´<_` )「違うな」
ずっと憎かった。
時を経て、その形はいびつに歪んでいた。
(´<_` )「おい、馬鹿兄者!」
( ;´_ゝ`)「ちょっ、オレの努力!」
ショボンが弟者の方を振り向く。
(´<_` )「何してるの?」
弟者は部屋に飾られていた剣を握っている。
あくまでも装飾品のそれは、殺傷能力を持っていないはずだ。
(´<_` )「よく聞けよ」
眉間にしわを寄せ、ショボンに向かって駆けながら叫ぶ。
(´<_` )「オレはあんたが憎い」
刀身に氷が張りつく。
鋭いそれは飾りの剣を、本物の剣へと変える。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:50:29.54 ID:fHF1E+440
- ひさびさに見たわwwwwこの兄弟www
- 59 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:51:56.21 ID:G506Z6sj0
-
(´<_` )「オレは兄者のできないことはやってやると言った!
だから助けた。だから助けてもらった」
(´・ω`)
ショボンは姿を戻しつつ、弟者に手を向ける。
彼の魔力にも限界が近づきはじめたのか、つららではなくつぶてに変わっていた。
(´<_` )「なのにあんたはいつまでも、いつまでも」
氷のつぶてをその足で避けながら近づいていく。
もう余計な魔力は使えない。体がボロボロになっても構わずに走る。
(´<_` )「罪悪感ばかりだ! イライラする!」
( ;´_ゝ`)「だが、そもそもオレが――」
(´<_` )「そんな話は聞き飽きた!」
(´・ω・`)「キミも八つ当たり?」
苛立ちをぶつけるように、弟者はショボンを睨む。
(´<_` )「いや、お前が余計なことをしたから考えさせられただけだ」
憎いのは兄者自身ではなかった。
兄者の行動が憎かった。
いつまでも罪悪感をまとい、おどおどとして弟者に文句の一つも言わない。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 15:53:28.06 ID:rvNdQFeT0
- ふむ
- 61 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:54:31.29 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「キミ達も、キミ達なりに兄弟を思う気持ちなんてものがあったんだ」
(´<_` )「さてな」
弟者の持つ剣の切先がショボンをとらえた。
(´・ω・`)「ボクはキミのお兄さんが嫌いだよ」
(´<_` )「それは良かった」
(´・ω・`)「だってさ、ボクのお兄ちゃんと少しだけ似てる」
ショボンが大きなつららを生み出す。
最後の魔法になっても構わない。弟者を仕留めることができれば、あとはろくに戦うことのできない兄者だけ
だ。
(´<_` )「それは勘違いだろ」
つららがふわりと浮く。ショボンの意思とは違う。
(´<_` )「うちの馬鹿兄貴は死なないからな」
ショボンの目に映ったのは、弟者が持っている剣の切先と、その後を追っている氷のつぶてだった。
部屋中に散らばったそれらを兄者は操っている。
視線を兄者の方に向けてみると、手は痛みで震えていた。
痛みを耐えるために、歯を強く食いしばっていることまでわかる。
- 62 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 15:57:37.49 ID:G506Z6sj0
-
(´・ω・`)「ボク負けたの?」
(´<_` )「そうだな」
切先はショボンの肩を貫いた。つぶては体中に小さな傷を作る。
ショボンはゆっくりと倒れ、弟者はそのまま剣を押し込む。
(´・ω・`)「痛いよ。痛い……」
(´<_` )「そうだろうな」
ショボンは弟者を見上げる。
弟者は剣を通して、氷を地面に張り巡らせる。それはショボンの手足の自由を奪っていく。
(´<_` )「オレは殺さない」
(´・ω・`)「痛い、冷たい……」
剣から手を離す。
(´;ω;`)「助けて……お兄ちゃん」
(´<_` )「だってよ、兄者」
( ´_ゝ`)「オレがお前の兄なら、言葉は一つだな」
ショボンと似た目線の兄者は言う。
- 63 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:00:29.85 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「だが、断る」
(´;ω;`)「ボクは、ボクはあいつらに復讐を……」
許すことなどできない。
大好きな人が殺された。殺した人間も、そんな人間がいる世界も、すべて許せなかった。
家族のためではない。自分が納得するための復讐をしたかった。
( ´_ゝ`)「お前は本当に世界が憎かったのか」
(´;ω;`)「憎いよ! 憎いんだ!」
( ´_ゝ`)「殺しあいをさせるほど、大切な家族と永遠の別れにさせるほど、
お前を愛してくれた人を殺そうとするほど、憎かったのか」
(´;ω;`)「にく、い……よ」
( #´_ゝ`)「本当だな!」
( ´∀`)「もう、やめてあげて欲しいモナ」
兄者を止めたのはモナーだった。
まだ完全に回復したわけではないのに立ち上がり、ショボンへ向かって足を進める。
(´<_` )「まだ動かない方が……」
( ´∀`)「大丈夫モナ」
- 64 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:03:26.89 ID:G506Z6sj0
-
モナーはショボンの横に膝をつく。
( ´∀`)「憎しみを忘れるのは、悪いことじゃないモナよ」
(´;ω;`)「ダメだよ……お兄ちゃんやお母さん、お父さんが殺されたんだもん」
( ´∀`)「いいモナ。憎しみを持っていたら、ショボンはどんどん傷ついちゃうモナ。
ショボンの心は、もういっぱい悲しんだモナ」
(´;ω;`)「モナーさんなんて嫌いだ……」
( ´∀`)「それは悲しいモナ」
(´;ω;`)「モナーさんが笑う度に、ボクはこの世界を許せるんだ」
許せる自分が憎かった。
優しい人が憎かった。
(´;ω;`)「お兄ちゃん……ごめんなさい」
( ´_ゝ`)「お前は、誰に謝ってるんだ」
(´;ω;`)「え?」
(`・ω・´)「ごめんなさいは、迷惑をかけた人にだろ」
一瞬、兄者とショボンの兄が重なった。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:03:54.97 ID:KavBRTAQ0
- なぜショボンは弟者の姿になったのか・・・
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:05:04.90 ID:rvNdQFeT0
- 支援
- 67 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:06:40.06 ID:G506Z6sj0
-
(´;ω;`)「……うん。ボク、本当は、もう」
最後まで言うことなく、ショボンは気を失った。
モナーは驚いて体を揺すったが、胸が上下しているのを確認して一息つく。
( ´∀`)「ありがとうモナ」
( ´_ゝ`)「いえ」
( ´∀`)「すぐに医者を……」
(´<_` )「あ、あなたも怪我を……って元気だなあの人」
痛む体に鞭をうちながらモナーは部屋から出て行った。
部屋に残っているのは、ボロボロの三人だ。
( ´_ゝ`)「終わったな」
(´<_` )「死ぬなよ」
兄者の隣に弟者も寝転ぶ。
体を支えていることがダルかった。
( ´_ゝ`)「お前もな」
(´<_` )「オレは魔力不足なだけだ」
( ´_ゝ`)「そうか」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:07:52.32 ID:rvNdQFeT0
- しえしえ
- 69 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:09:35.20 ID:G506Z6sj0
-
ひんやりとした部屋の中で、兄者は徐々に目蓋を落としていく。
ここ最近は疲れることばかりだった。
(´<_` )「なあ」
( ´_ゝ`)「ん……?」
(´<_` )「一つだけ、言う言葉があったわ」
( ´_ゝ`)「……ああ、ブーンが言ってたアレか」
血の足りていない頭で思い出す。
ブーンは姉に言えなかった言葉があると嘆いていた。
弟者には同じ思いをして欲しくないと言っていたような気がする。
( ´_ゝ`)「ないって言ってなかったっけか」
(´<_` )「思い出したんだよ」
( ´_ゝ`)「そうか」
どのような言葉が飛び出すのか、兄者には予想もできない。
やはり罵倒なのだろうか。
それとも死を悲しむ言葉なのだろうか。
本当に最期になるかもしれない。
兄者は頭にかかっていた靄を払う。
- 70 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:12:44.12 ID:G506Z6sj0
-
d(´<_` )「流石だよなオレら」
親指を立てて小さく笑う。
ずいぶん久々に見た気がした。
( ´_ゝ`)b「ああ、流石だよなオレら」
拳を突き合わせる。
二人はそのまま、目を閉じた。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:13:39.67 ID:KavBRTAQ0
- そういえば決めゼリフだなwwwwww
- 72 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:15:39.08 ID:G506Z6sj0
-
('A`)「おはよう」
( ^ω^)「おはようだお」
(´<_` )「……おはよう」
( ´_ゝ`)「おはよう」
目を開けたとき、四人はお互いの顔を見て誰も欠けていないことを確認した。
誰もが満身創痍で、無事とはいいがたいものだったが、生きている。
重傷だった兄者も、あの寒い空間のおかげで出血が少なかったため何とか助かった。
( ^ω^)「みんなはこれからどうするお?」
ベットの上でブーンが尋ねた。
('A`)「そうだな……」
各々これからのことを話す。
傷がある程度癒えたら、王が家まで送ってくれると約束した。
その代わり、というわけではないが、今回のことを口にするなと口止めされた。
必ず、自分自身で公表すると、王も誓ってくれたので、四人は素直に頷いた。
( ´_ゝ`)「落ち着いたら手紙でも書くさ」
( ^ω^)「本当かお? 楽しみだお!」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:17:43.77 ID:zIdoH3KM0
- 支援
- 74 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:18:50.47 ID:G506Z6sj0
-
そんな話をしたのが三ヶ月ほど前のことだ。
ドクオは自分の部屋で筆を片手に紙と睨めっこをしている。
いざとなると、何を書いていけばいいのかわからない。
('A`)「うーん」
頭を抱えていると、ノックの音が聞こえた。
('A`)「どうぞー」
(゚A゚*)「お兄ちゃん、何してるのー?」
('A`)「手紙書いてるんだよ」
(゚A゚*)「お友達?」
('A`)「うん。とっても大切な友達だ」
(゚A゚*)「のーも書きたい!」
('A`)「え、何書くんだ?」
(゚A゚*)「お兄ちゃんがお世話になりました! って書くのー」
(;'A`)「お世話にって……」
(゚A゚*)「筆ちょうだーいー」
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:20:36.65 ID:KavBRTAQ0
- これは終わる流れかぁ
- 76 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:22:24.00 ID:G506Z6sj0
-
弟者へ
そっちの方はどうだ?
オレは実家の方でのーと楽しく過ごしてる。
本当はのーの様子を見て、すぐにそっちに帰るつもりだったのに、
こうして今でも実家にいることがオレ自身信じられない
のーはずっとオレのことを見ていたらしい。
千里眼の恐ろしさを実感したよ。
でも、ちょっと嬉しかったな。やっぱり妹は可愛いもんだ。
オレの顔を見たときの、のーは涙をボロボロ流してて、本当に可愛かった。
お前には絶対にやらん。つか見せるのも嫌だ。
両親の方も、昔と違って優しい気がする。
やっぱり、強い呪術師を打ち負かしたことが大きいみたいだ。
今はオレの目を制御する特訓とかしてる。おかげで他人の気持ち悪い部分を見なくてもすみそうだ。
正直、オレはお前と兄者が仲良く暮らしているところなんて想像もできない。
まだ母者さん達は帰ってきてないんだろ?
ちょっと心配だったりするよ。
だけど、三ヶ月前の別れのときのお前達は本当に普通の兄弟みたいだった。
また機会があれば遊びに行くよ。
ドクオより
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:22:29.71 ID:ep/mo4JD0
- 妹きめぇwww
支援
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:24:16.76 ID:KavBRTAQ0
- ドクオは兄者じゃなくて弟者に送ったのか
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:24:37.03 ID:C+Yr60mn0
- 学校は?
- 80 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:25:41.58 ID:G506Z6sj0
-
(´<_` )「お前の妹なんていらんわ」
朝食の用意をしながら手紙を読む。
テーブルの上には二人分の朝食が用意されている。
(´<_` )「できたぞー」
( ´_ゝ`)「おー」
ふわふわとやってきた兄者は椅子に座る。
(´<_` )「おい、車椅子はどうした」
( ´_ゝ`)「家の中の移動くらいいいだろ」
(´<_` )「そんなこと言って、また魔力が切れても知らんからな」
( ;´_ゝ`)「まだ根に持ってるのか」
(´<_` )「『まだ』? 一度しかないみたいな言い方はやめろ」
( ;´_ゝ`)「数回だろ」
(´<_` )「お前の中で二桁の大台は数回に変換されるのか」
( ;´_ゝ`)モグモグ
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:28:38.99 ID:C+Yr60mn0
- 兄者がパジャマでふわふわやってくるとこ想像したらなんかシュール
- 82 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:28:42.32 ID:G506Z6sj0
-
ブーンへ
姉貴との生活はどうだ?
兄者との生活は疲れるぞ。
足が使えなくなったのはしかたないし、それについて文句を言うつもりはない。
だが、あの馬鹿は自分が浮遊系を得意としているのをいいことに、どこに行くのにも車椅子を使わない。
遠出しすぎて、魔力が切れた。ということがもう十回以上ある。
その度に迎えに行ったり、連れてきてもらったりしなければならん。
たまには這い蹲って帰ってくればいいんだ。
他の家族が帰ってきたときの言い訳も考えないといけないからな。
ブーンは何て言ったのか教えてくれ。
兄者の足についての言い訳を考えてくれ。
真実だけだと、オレ達が母者に殺される。
っと、愚痴みたいな手紙になってしまったな。すまん。
ブーンの方は今頃、例の幼馴染の尻の下だろう。
彼女の回復魔法のおかげで、オレはこうしてここにいられているんだったな。
礼を言っておいてくれ。
家族が帰ってきたら、一度遊びに行こうと思っている。
まあいつになるかわからんから、そっちから来てくれた方が早いかもしれないな。
くることがあったら、彼女になった幼馴染を連れてきてくれよ。
じゃあ、待ってるぞ。
弟者より
- 83 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:31:53.08 ID:G506Z6sj0
-
( ^ω^)「……もうボクが行くことっが確定してるお」
どうせ、近いうちに遊びに行くつもりだったので問題はないが、
遊びに行くと書いていた部分は何だったのだろう。
ξ゚听)ξ「何読んでるのよ?」
( ^ω^)「友達からの手紙だお」
ξ゚听)ξ「ふーん」
( ^ω^)「今度遊びに行くから、ツンも行くお」
ξ゚听)ξ「別にいいわよ」
( ^ω^)(よし、あとはこ、こ、こ……」
ξ゚听)ξ?
(#゚;;-゚)「あら、ツンちゃん」
ξ゚听)ξ「あ、しぃさん」
(#゚;;-゚)「ふふ、ツンちゃんいつ見ても可愛いわね。私の妹にならない?」
ξ*゚听)ξ「え、いいんですか」
( ^ω^)「姉ちゃんの妹……ということは!」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:33:18.80 ID:KavBRTAQ0
- 百合展開だな!
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:34:08.63 ID:C+Yr60mn0
- 義兄妹か
- 86 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:34:32.42 ID:G506Z6sj0
-
兄者へ
ボクだお!
ブーンだお!
兄者は元気かお?
ボクは元気だお。
姉ちゃんも、ギコさんの両親もずいぶん元気になったお。
ツンは……相変わらずだお。
今日も調子に乗るな! って殴られたお……。
遊びに行くときはツンも連れていくお。
兄者や弟者にも紹介したいお。
でも、好きになったらダメだお! 絶対だお!
こうして、姉ちゃんやツンと馬鹿やって、兄者に手紙が書けて、ボクは幸せだお。
あの時、あの会場で兄者と会えて良かったお。
会えてなかったら、きっと今頃ボクはあの地下室で死んでいたお。
本当にありがとうだお。
遊びに行ったら、ありがとうをいっぱい伝えるお。
ボクは言う言葉を忘れないようにしていくんだお。
それが、今回学んだことなんだお。
それじゃあ、また遊びに行くお。
ブーンより
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:39:02.66 ID:C+Yr60mn0
- ドクオ宛ての手紙はなしか
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:40:20.91 ID:KavBRTAQ0
- 俺も心配したけど兄者が出すんだろう
- 89 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:42:18.17 ID:G506Z6sj0
-
( ´_ゝ`)「おお、待ってるぞー」
椅子に座りながら手紙に目を通す。
今は弟者がいない。友人と出かけている。
三ヶ月の間で兄者にも友人と呼べる人間は増えたが、やはり外出に誘ってくれる者は少ない。
暇を持て余していると、ノックの音が聞こえた。
( ´_ゝ`)「はーい」
足が使えないので、ふわりと宙を浮きながら玄関を開ける。
( ∀ )「お久しぶりモナ」
(´ ω `)「久しぶりです」
( ´_ゝ`)「……ああ、久しぶりです。どうぞ」
( ∀ )「いや、ちょっとした挨拶にきただけモナ」
( ´_ゝ`)「そうですか」
( ´∀`)「これから、ボクらは旅に出るモナ」
(´・ω・`)「弟者さんは?」
( ´_ゝ`)「今はいないよ」
- 90 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:45:46.12 ID:G506Z6sj0
-
ショボンはフードを上げて、残念そうな顔をする。
( ´_ゝ`)「ま、あいつにはオレから言っておくよ」
( ´∀`)「よろしく頼むモナ」
モナーはフードを深く被り、背を向ける。
( ´_ゝ`)「気をつけて」
(´・ω・`)「兄者さん、その……」
視線を彷徨わせながら、言葉を紡いでいく。
その目が兄者の足を捕らえると、まぶたを固く閉じてしまう。
( ´_ゝ`)「……ま、気にするな、とは言えないからなぁ」
(´-ω-`)「ごめんなさい」
( ´_ゝ`)「うん。とりあえず、いいよ」
早く追いかけろと、兄者はショボンを反転させて背中を押す。
ショボンは何度か振り向いたが、兄者が笑って頷くと、モナー王へと駆けて行った。
( ´_ゝ`)「あれから三ヶ月……か」
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:47:13.69 ID:0YO9pm2N0
- シエンタ
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:47:26.51 ID:KavBRTAQ0
- 兄者は一生歩けなくなったのか
- 93 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:48:37.87 ID:G506Z6sj0
-
兄者達がそれぞれの家に帰ってから一ヶ月ほどしたとき、国中に大ニュースが広がった。
あの呪いの部屋の話。おぞましい呪術師の影と死。
そして、モナー王の自殺だ。
呪術師に誑かされた自分を恨み、後を息子に任せて自殺したという。
国中が怒りに溢れていた。
息子に丸投げするのかという批判と、死んだ者は返らない悲しみ。
三ヶ月経った今、こうして国が平和なのは新王のモララーが優秀だったからだ。
被害者の家族の家を回り、一人ずつに頭を下げて回ったのだ。
もちろん、補償もおこなっていった。
兄者達に手紙がやってきたのはそんなときだった。
( ´_ゝ`)「誰からだ?」
(´<_` )「読んでみろよ」
手紙は死んだはずのモナーからだった。
自殺というのは国民へけじめを見せるためのフェイクだったそうだ。
('A`)「ショボンも生きてるのか」
ショボンは体中に罪人の証である刺青を施された。
刺青には魔力を消し去る術式が組み込まれている。彼は二度と魔術師を名乗れない。
( ^ω^)「国が落ち着いたら旅に……?」
- 94 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:51:30.08 ID:G506Z6sj0
-
二人で贖罪の旅に出ると、手紙には書いてあった。
魔法を使えない彼に何ができるのかはわからない。
それでも、悲しみを負った人々と会うことこそ、彼への罰だとモナーは書く。
ショボンを止めてくれた四人には真実を話したかったと、手紙は締められていた。
( ´_ゝ`)「オレはいいと思うぞ」
(´<_` )「そうか? オレは死刑でも良かったと思うぞ」
( ´_ゝ`)「元々、王……元王はそれを望んでなかったわけだし」
彼と直接会ったことのある二人はそんな話をしていた。
旅立ちの日がようやく来たのだ。
これから彼らはどのようなものを見るのだろうか。
旅の途中で命を落とすことがないようにだけ祈り、兄者は背を伸ばす。
ドクオ達へ手紙を書かなければならないし、遊びにきたときのために部屋の掃除もしなければならない。
( ´_ゝ`)「あーすることは多いな」
空を見上げながら呟く。
兄者は家の扉を閉めた。
( ´_ゝ`)は劣等性のようです 完
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:52:28.19 ID:0YO9pm2N0
- 乙!
面白かったから今から読み返してくる
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:53:09.23 ID:zIdoH3KM0
- 乙
いいラストだった
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:53:09.66 ID:KavBRTAQ0
- 乙!
ドクオへの手紙が読みたかったよ
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:54:15.23 ID:C+Yr60mn0
- 乙
- 99 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 16:54:53.21 ID:G506Z6sj0
- サブタイ
『兄弟達の物語のようです』
終わりました。
初長編。長々とやってきましたが、支援、乙してくださった皆様ありがとうございました。
一人っ子による兄弟の話でした。
正直、劣等性関係な(ry
川д川の過去話を書く時間がなかったので、しばらくしたらながらでだらだら書くかも。
質問が書き込まれたら先にそっち書くかも。
それではひとまずありがとうございました。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:57:07.63 ID:KavBRTAQ0
- 一人っ子は兄弟を欲しがるとは聞くが
そこのところが関係してるのか
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:57:55.20 ID:ep/mo4JD0
- 乙
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 16:58:52.57 ID:C+Yr60mn0
- 兄者の足は一生駄目なの?
あとドクオは学校はやめたの?
- 103 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:08:19.74 ID:G506Z6sj0
- >>100
話には関係してない。
オレは欲しい。
>>102
現時点では一生ダメ。
(´<_` )が「アレは借りだろ」とか言いつつ頑張りそう。
ドクオは学校辞めて実家頑張ってます。
以下、ながらで川д川の過去話
おそらくグロ注意
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:12:09.04 ID:vCl5vnYY0
- しえ
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:12:28.62 ID:KavBRTAQ0
- やる気まんまんか、頑張れ
あとショボとモナーは死んだことにしてるのに会いに行って大丈夫なのか
- 106 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:16:29.37 ID:G506Z6sj0
-
呪術師の家系に生まれた。
それはもはや呪いのようだった。
呪音家に生まれた貞子はずっとそう思っていた。
他人を呪うために生まれ、呪いを返されて死ぬ。
日常的にそんな話を聞かされれば気持ちも落ち込む。
住んでいた場所が山奥なこともあって、貞子は呪術師でない人間との関わりが薄かった。
川д川「お父様、お母様の様子は?」
幼い貞子は問いかける。
彼女の母の腹には、子供がいた。
【+ 】ゞ゚)「大丈夫だ。お前が心配するようなことは何もない」
父は優しく返した。
けれど、貞子は心配など何もしていなかった。
新たに生まれくる妹か弟に同情しているだけだ。
こんな暗い地の底のような場所に生まれるなんて、不幸でしかないだろう。
【+ 】ゞ゚)「そろそろお客様がくる時間だな」
そう言って父は応接間へ向かう。
彼にとっても出産などどうでもいいのだろう。
- 107 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:21:54.23 ID:G506Z6sj0
-
川д川「いってらっしゃい」
父の背中を見る。
いつも見ている背中には、大掛かりな呪術用の道具が背負われている。
普通の子供はあの背中に背負われるらしい。
時折、呪術師にさせてくれと言ってくる人から聞いたことがある。
羨ましいとは思わない。背負われてどうするのだろうという疑問がある程度だ。
今日も父は人を呪うために人と会う。
殺すのだろうか。病にかけるのだろうか。
川д川「今日は何の本を読もうかな」
家にある本は呪術関係のものばかりだ。
それを読み、自分もいつかはと考える。
いつかは、人を殺すのだ。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:23:23.54 ID:ep/mo4JD0
- 支援
- 109 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:28:16.28 ID:G506Z6sj0
-
【+ 】ゞ゚)「貞子、こっちへきなさい」
ある日、本を読んでると父に呼ばれた。
手を繋ぐこともなく、貞子は黙って父の後ろを歩く。
どこへ行くのか。何の用なのか。それすら聞かない。
【+ 】ゞ゚)「入りなさい」
とある部屋の前で父が止まる。
彼は入らないのだろう。
川д川「はい」
貞子は障子を開け、部屋の中へと入っていく。
从 ゚∀从「貞子」
川д川「お母様。どうかなさいましたか」
从 ゚∀从「こちらへ」
手招かれるままに母に近づく。
よく見れば、母の手には何かがいた。
よほど大切なものなのだろう。新しい呪具なのかもしれない。
从 ゚∀从「ほら、ごらんなさい」
母が手に持っていたものを貞子へ差し出す。
- 110 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:31:58.29 ID:G506Z6sj0
-
覗きこむと、そこには赤ん坊がいた。
それを見て、貞子はようやくそれが自分の兄弟なのだと認識した。
从 ゚∀从「あなたの弟よ」
川д川「弟」
母の言葉を繰りかえす。
可哀想な子。と心の中で呟いた。
幸せそうに眠っているこの子が、悲しみに潰れるのはいつなのだろう。
从 ゚∀从「守ってあげてね」
川д川「守る?」
从 ゚∀从「そう。悪い呪いから、悪い人から」
川д川「……私が?」
从 ゚∀从「ええ、お姉さんでしょ?」
川д川「……私が、守る」
生まれたばかりのこの子は呪いを返す術も、呪いから身を守る術も持たない。
守られるべき弱い存在なのだ。
从 ゚∀从「抱っこしてみる?」
川д川「……ううん。今はいい」
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:35:34.63 ID:KavBRTAQ0
- なんてハーッハッハッハインリーッヒ!って笑わなさそうなハインだ
- 112 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:37:11.10 ID:G506Z6sj0
-
从 ゚∀从「あら、どうして?」
川д川「守らなきゃだから」
从 ゚∀从?
貞子は母に背を向け、部屋を出た。
廊下にはもう父はいなかった。
川д川「私が守る?」
こんな地の底で、どうやって守ればいいのだろうか。
知識がない。貞子は本を手に取った。
守るための知識を求めた。
川д川「私が守る」
悲しさに潰れてしまわぬように、楽しいことを見つけてあげた。
人里離れた山奥にも、探してみれば楽しみはたくさんあった。
弟のために楽しいことを探し、貞子は自分にこびりついた闇を落とそうとした。
深い闇の中で、心が麻痺してきた自分では弟の心を守れない。
触れることすら許されないのではないか。
从 ゚∀从「おかえり。今日もお姉ちゃんは遅かったねー」
母は弟をあやしながら、家に帰ってきた貞子を出迎える。
それが貞子は少し嬉しかった。
- 113 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:43:01.73 ID:G506Z6sj0
-
貞子は自分の世界が狭かったと気づいた。
山を探索し、広さをしり始めてから母の優しさに気づいた。
周りが呪いと関わり、悲惨な死を遂げながらも母は凛としている。
綺麗だと思った。
それが例え人殺しでも。
川д川「お母様、ヒッキーは元気ですか?」
从 ゚∀从「ああ、元気だぞ」
生まれた弟はヒッキーと名づけられた。
まだ言葉も話さず、泣くことでしか自己を表現できなかったがとても愛らしいと感じた。
彼がはいはいを始めると、貞子は山へ行かずに家に篭るようになった。
川д川「ほら、こちらへおいで」
(-_-)「うー?」
以前のように、本を読み人を呪うことだけを考えているわけではない。
あちらへこちらへと動き回るようになったヒッキーの面倒を見ているのだ。
母はすでに本職へと戻っており、ヒッキーと共にいるのは危険だという。
川д川「ヒッキー。お母様もお父様も忙しい人なの。
でも、私達を愛してくださっているわ」
自分と同じ間違いをさせないために、貞子は何度も言って聞かせた。
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 17:48:47.94 ID:KavBRTAQ0
- ふむ
- 115 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:53:08.70 ID:G506Z6sj0
-
ヒッキーは言葉を話すようになっても、あまり口を開かなかった。
無口ではあったが、貞子の望んだ通り、心の優しい人間へと育っていた。
川д川「あら、小鳥……?」
(-_-)「……」
ヒッキーは黙って上を指差す。
木の上には鳥の巣があった。
川д川「可哀想に。落ちてしまったのね」
同情はするが、どうしようもできない。
貞子もヒッキーも木登りはできない。
魔法が使えれば話は別なのだろうが、彼らは呪術師だ。
(-_-)「……ボク、頑張ってみるよ」
小さな声でそう宣言すると、ヒッキー服のポケットに小鳥をそっといれ、木を登り始めた。
体力もなく、木登りなどしたこともないはずなのに、ヒッキーは一生懸命上を目指す。
川д川「危ないわよ!」
(-_-)「大丈夫」
聞こえるか聞こえないかの大きさで言い、再び手を伸ばす。
- 116 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 17:56:52.27 ID:G506Z6sj0
-
しかし、努力だけでどうにかなるものでもない。
(-_-)「……あ」
川д川「ヒッキー!」
手を滑らせ、重力に従い落ちて行く。
貞子はヒッキーを助けようと、落下地点へ移動する。
自分のことよりも弟のことの方が大切だ。
从 ゚∀从「下がりなさい」
そんなとき、貞子を後ろに下がらせ、ヒッキーを受け止めてくれたのは母だった。
从 ゚∀从「どこに行ったのかと思えば……。危ないでしょ」
(-_-)「……」
川д川「お母様、ヒッキーは小鳥を……」
从 ゚∀从「小鳥?」
ヒッキーがポケットから小鳥を取り出すと、母は小さく微笑んだ。
从 ゚∀从「そうか。だけど、危ないだろ」
(-_-)「ごめんなさい」
- 117 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 18:01:05.32 ID:G506Z6sj0
-
从 ゚∀从「次からは気をつけなさい」
川д川「お母様、小鳥をどうするんです?」
母は小鳥を手に乗せたまま帰ろうとする。
貞子が尋ねると、母は明るく笑った。
从 ゚∀从「もう人間の匂いがついてるだろうし、家で飼いましょう」
(-_-)「いいの?」
从 ゚∀从「別に鳥の一羽や二羽、問題ないわ」
さあ、と母は手を差し出してくれた。
ヒッキーがその手を握り、貞子はヒッキーの手を握った。
川д川「ヒッキー」
(-_-)?
川д川「絶対にこの手は離さないからね」
(-_-)「お家に帰っても?」
川ー川「そういうことじゃなくて、
ずっと、ずーっと一緒ってことよ」
(-_-)「……嬉しい」
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:07:32.54 ID:KavBRTAQ0
- しえ
- 119 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 18:09:38.28 ID:G506Z6sj0
-
ヒッキーに呪いのことを教えていた貞子は薄々わかっていた。
自分の弟は天才だ。
教えたばかりの術式をすぐにマスターしてしまう。
すぐに自分は追い越されるだろう。
川д川「凄いわヒッキー!」
(*-_-)
ヒッキーからしてみれば、この程度のことはできて当然だった。
けれど、大好きな姉が喜んでくれる。ならばそれは素晴らしいことなのだろう。
貞子もヒッキーの才能を喜んでいた。
【+ 】ゞ゚)「ヒッキー。お前は自慢の息子だ」
父も褒めてくれた。
けれど、母だけはいつも心配そうな目を向けていた。
彼女は知っていたのだ。
恵まれた才能が運んでくるのは、幸せだけでないことを。
从 ゚∀从「貞子、今日はお母さんとお話をしましょう」
ある日、母は貞子を自室へと招いた。
正座をし、貞子は母の言葉を待つ。
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:13:21.17 ID:az04JMH40
- 今追いついた
俺が追ってる現行が最終回を迎えたのはいつ以来だろうか
ちゃんと完結してよかった
- 121 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 18:15:21.65 ID:G506Z6sj0
-
从 ゚∀从「呪術は人の命を奪います」
川д川「はい」
从 ゚∀从「それは、誰かの大切な人を奪うということよ」
川д川「わかってます」
从 ゚∀从「ときに、それは私達にも降りかかってきます」
川д川「……はい」
貞子はまだ誰かに呪いを向けたことはない。
しかし、呪いを返された者や、別の呪術師に呪いをかけられた者を何度も見たことがある。
それらの姿は悲惨なものだ。
自分達はそのことをしっかり刻み込んでおかなければならない。
从 ゚∀从「あなた達は生まれてからずっと、呪術師として育てられたわね」
母は呪音家に嫁いできた人だった。
元々は普通の家庭に生まれ、父に惚れて呪術師の世界へやってきたのだ。
从 ゚∀从「私には想像もできないような思いを、幼いながらにしてきたでしょう」
川д川「いいえ……」
貞子は自分と同じ年の子供が、どのような気持ちを抱えているかなどよくわからない。
从 ゚∀从「ヒッキーは幸せでしょう」
- 122 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 18:20:35.38 ID:G506Z6sj0
-
从 ゚∀从「あなたのような姉がいて、健やかに育っています。
呪術師としての才能にも恵まれているようですしね」
そこまで言って、母は悲しそうに顔をうつ向けた。
从 ゚∀从「けれど、覚えていて欲しいのです」
川д川「お母様?」
貞子はただ嬉しかった。
弟が優秀で、誰よりも素晴らしい呪術師になれるであろうことが誇りだった。
だが、母は悲しそうにしている。
从 ゚∀从「この家はそれほど大きな家ではありません」
敷地のことを言っているのではないことは察することができた。
呪音家は、千里家と呼ばれる家系の一派でしかない。
呪術師の家系の中では千里家は郡を抜いている。
その家系の一派ということもあり、生活には困らない程度に依頼はやってくる。
しかし、弱小と呼ばれてもおかしくないほどこの家は小さかった。
川д川「でも、ヒッキーがいれば」
千里家の上を行くこともできるのではないか。
貞子はそう主張した。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:24:27.16 ID:KavBRTAQ0
- 千里家でかいのにのーちゃんは切れなかったのか
- 124 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 18:24:46.27 ID:G506Z6sj0
-
从 ゚∀从「ええ、あの子がこのまま育てば、それも可能かもしれません」
川д川「……誰かが、あの子の才能を妬むとでも?」
从 ゚∀从「その可能性も十分にあります」
川д川「大丈夫です。あの子は、ヒッキーは私が必ず守りぬきます」
从 ゚∀从「ごめんなさいね」
母はそっと貞子に近づき、優しく抱きしめた。
人肌の温もりと、母の心音が貞子に伝わる。
从 ゚∀从「あなたには苦労をかけるかもしれない」
もちろん、私も努力する。と母は言った。
川д川「お母様が楽をできるように、私も頑張ります」
从 ゚∀从「ええ、そうね」
力強い貞子の声を聞いて、母は少しだけ落ち着いたようだ。
固い表情にわずかながら笑みが浮かんでいた。
从 ゚∀从「……きっと、大丈夫よ」
それでも、悪寒がやまないのは何故だったのだろうか。
- 125 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 18:31:23.60 ID:G506Z6sj0
- ちょっとご飯タイム
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:35:37.18 ID:TpPprFdzO
- いってら
飯うp
- 127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 18:53:42.25 ID:sqMIYsSj0
- ho
- 128 名前:再開 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:13:23.74 ID:G506Z6sj0
-
【+ 】ゞ゚)「はい、ええ、そうですか」
呪いを望む人間にろくな人間はいない。
貞子は後に痛感することになった。
从 ゚∀从「あんた、正気かい?」
【+ 】ゞ゚)「正気だ」
从 ゚∀从「自分の子供よ?」
【+ 】ゞ゚)「ああ、あの子を生んでくれてありがとう」
从 ゚∀从「やめてよ」
【+ 】ゞ゚)「もう決まったことだ」
从 ゚∀从「あなたの中ではね」
二人は睨みあう。
静かで、冷たい空間だ。
そこには誰一人として入ることは許されない。
从#゚∀从「あなたは父親失格よ」
【+ 】ゞ゚)「私は呪術師だ」
从#゚∀从「っ!」
- 129 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:18:11.71 ID:G506Z6sj0
-
从#゚∀从「この……わからずや!」
【+ 】ゞ゚)「わかっていないのはお前の方だ」
感情的に言葉を吐く母と、冷静に言葉を紡いでいく父。
二人は対極的な様子を描いている。
【+ 】ゞ゚)「今さら引き返すことはできないのだ」
从 ゚∀从「……この家のために?」
【+ 】ゞ゚)「そうだ」
从 ゚∀从「……」
母は俯き、拳を握る。
何かを決心したような目をした母、父に背を向けた。
部屋から出ようと、襖を開ける。
【+ 】ゞ゚)「どこへ?」
从 ゚∀从「出て行きます」
愛した人はこんな人だったのか。
昔は優しかったような気がする。
ごく普通の女であった自分を、呪術の世界に惹きこむほどに。
【+ 】ゞ゚)「子供を連れてか?」
- 130 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:22:40.89 ID:G506Z6sj0
-
从 ゚∀从「さてね」
【+ 】ゞ゚)「許さんぞ」
父は彼女の腕を掴み、再び部屋へ引き入れる。
从 ゚∀从「離して」
【+ 】ゞ゚)「離さん」
从 ゚∀从「あんたが今引き止めてるのは何?」
【+ 】ゞ゚)「何だと?」
眉間にしわをよせ、聞き返す。
母の目には決意が映っていた。
言葉では止められないだろう。
从 ゚∀从「あたし? 子供? それとも道具?」
口を開く。
父は言葉を返さない。
ただ黙って母を見下している。
从 ゚∀从「あんたは変わったね」
【+ 】ゞ゚)「お前も歳を取った」
从 ゚∀从「ああ」
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 19:25:15.21 ID:KavBRTAQ0
- ん?生贄にするのか?
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 19:27:04.61 ID:9oNquzN50
- そいつは・・・いっけにぇな・・・
- 133 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:30:10.34 ID:G506Z6sj0
-
【+ 】ゞ゚)「頭が固くなったな」
从 ゚∀从「そうか」
母は笑う。
父が力任せに彼女を床に叩きつけた。
从 ゚∀从「本当に変わったんだな」
【+ 】ゞ゚)「ああ」
父はいつも背中に担いでいた道具を降ろす。
从 ゚∀从「本気?」
【+ 】ゞ゚)「残念ながらな」
从 -∀从「そう」
( メゞ゚)「ずいぶんとあっさりしているんだな」
从 ゚∀从「まあね。覚悟していたし」
小さく笑った母を目に映す。
始めてあったときのように美しい笑みだった。
从 ゚∀从「愛していたわ」
( メゞ゚)「オレもだよ」
- 134 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:35:34.44 ID:G506Z6sj0
-
川д川「お母様が……?」
【+ 】ゞ゚)「泣くんじゃないよ。この世界にいる者は、いずれああなる運命なんだ」
(-_-)「そんな……」
翌朝、二人が聞いたのは母の死だった。
何者かに呪われ、体を腐らせながら死んでいったという。
【+ 】ゞ゚)「私がもっと早くに見つけていればよかったのだが……」
(-_-)「……」
川д川「お父様は悪くないわ」
貞子はギュッとヒッキーの手を握る。
思い知らされる。自分達はいつ死んでもおかしくない場所にいるのだ。
川д川「私が、守ってあげるからね」
(-_-)「…………」
ヒッキーもそれに返すように、貞子の手を強く握った。
【+ 】ゞ゚)「お前達は強いな」
強く育ってくれて嬉しいと、父は言った。
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 19:36:54.19 ID:KavBRTAQ0
- やっぱそれ担いでんのかwww
- 136 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:40:32.30 ID:G506Z6sj0
-
【+ 】ゞ゚)「……こんなことをお前達に言うのは心苦しい」
川д川「何ですか?」
【+ 】ゞ゚)「本来、彼女がするはずだった仕事があるのだよ」
残念ながら、今他の者達は長期的な呪術にかかりきりだという。
【+ 】ゞ゚)「今さら依頼を反故にはできない」
川д川「ええ、わかっています」
ここは小さな家だ。
一度受けた依頼を反故にすれば、たちまち依頼は消えてなくなるだろう。
幼いながらに、貞子は自分の置かれている状況をしっかり把握していた。
【+ 】ゞ゚)「そこでだ、ヒッキーに頼みたいことがあるのだ」
川д川「ヒッキーに……?」
(-_-)
確かに、ヒッキーはもう貞子を越えていた。
簡単な呪術ならば、彼にもできるだろう。
だが、まだ幼い身だ。いくら術式が上手くとも、呪いの反動を受けないとは言いきれない。
【+ 】ゞ゚)「恐ろしいだろう。その気持ち、よくわかる」
父はヒッキーと貞子を見下ろしながら言葉を続ける。
- 137 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:45:34.11 ID:G506Z6sj0
-
【+ 】ゞ゚)「やってはくれないだろうか」
川д川「お父様、無茶です……!」
【+ 】ゞ゚)「貞子。お前は先ほど何と言った?」
川д川「え……」
【+ 】ゞ゚)「依頼を反故にすれば、この家がどうなるか……わかっているのだろ?」
川д川「そ、それは……」
(-_-)「お姉ちゃん、困る?」
川д川「え?」
(-_-)「ボクがお父様の言うことを聞いたら、お姉ちゃんは幸せ?」
川д川「ヒッキー……」
手を握る力が強くなる。
貞子を見るヒッキーの目はただ優しいものだった。
川д川「あなたの好きなようになさい」
父の言うことに逆らってもいい。そうは言えなかった。
自分達の生活が失われることが恐ろしかった。
情けないとも思ったが、貞子もまだ子供なのだ。
- 138 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:49:01.28 ID:G506Z6sj0
-
(-_-)「お父様、ボクするよ」
【+ 】ゞ゚)「そうか……すまんな」
ならばこちらへ、と父はヒッキーを誘う。
川д川「あ、私は……」
【+ 】ゞ゚)「お前は待っていなさい」
(-_-)「お姉ちゃん」
ヒッキーは貞子の耳元で囁く。
もしもの話だった。
けれど、そんなもしもは考えるのも嫌だった。
川д川「待って!」
(-_-)「お願い、だよ」
川д川「どういうこと? ねえ!」
貞子の質問に返事はなかった。
返ってきたのはヒッキーの笑顔だけだった。
- 139 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:54:04.59 ID:G506Z6sj0
-
もしも、ボクが戻ってこなかったら――。
川д川「そんな……そんなっ……」
貞子は一人、部屋で泣いていた。
彼女の耳に届いたのはまたしても訃報だった。
【+ 】ゞ゚)「貞子。いつまで泣いているのだ?」
川д川「だって……あの子がっ……」
守ると約束したはずだった。
なのに、自分の生活のためにヒッキーを売ってしまった。
あの時止めていればよかった。
貞子の中には悲しみと自己嫌悪だけが渦巻く。
【+ 】ゞ゚)「……明日はあの子の死体を燃やす」
川д川「うっ……うう……」
布団に顔を押し付け、涙を流す。
このまま体中の水分が流れてしまうのではないかというほどだった。
- 140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 19:55:45.89 ID:KavBRTAQ0
- 立て続けか
想像もできんね
- 141 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 19:59:53.52 ID:G506Z6sj0
-
川д川「……」
夜、貞子は起き上がる。
もう涙は流しつくした。
川д川「あの子が言っていた本……」
(-_-)「もしも、ボクが戻ってこなかったら、部屋にある黒い本を読んで」
川д川「ヒッキー……」
ふらふらした足取りでヒッキーの部屋へ向かう。
何となく、誰にも知られたくなかった。足音をたてないように静かに足を進めていく。
ヒッキーの部屋の前で、立ち尽くす。この襖を開ければ、いつも通りヒッキーが寝ているのではないだろうか。
そんな幻想を抱いて襖を開けた。
川д川「……そう、よね」
そこには誰もいない。
主を失った空虚な空間があるだけだ。
貞子はそっと本棚をなぞる。
電気はつけない。代わりに持ってきたロウソクに火を灯す。
川д川「あ、これ……?」
- 142 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:04:33.81 ID:G506Z6sj0
-
たった一冊だけ、黒い本があった。
題名もなにも書かれていない。
川д川「こんな本、あったかしら?」
ロウソクを机に置き、本を開く。
そこには印刷された文字ではなく、よく知っている字体があった。
川д川「ヒッキー?」
間違いないく、ヒッキーの字体だった。
丁重で、小さな字。
貞子は再び溢れでそうになる涙を抑えて、文字を読んでいく。
川д川「どういう、こと……?」
そこに書かれていたのは、貞子も知らない禁呪だった。
禁じられていることが相応しいと思えるほど、それはおぞましいものだった。
川д川「どうして、あの子はこんなものを知っているの?」
最後のページには、ただ一行だけ文字が書かれていた。
ボクを、食べて。
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:06:56.76 ID:zIdoH3KM0
- 私怨
- 144 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:07:32.77 ID:G506Z6sj0
-
吐き出しそうになる。
思わず本を投げ捨て、ロウソクの火を消して静かに部屋を離れる。
川д川「う……」
口元を抑えながら、自分の部屋へ帰ろうとする。
だが、錯乱していたのか、歩いていた方向は自室とは逆方向だった。
川д川(あ、こっちはお父様の……。
こんな時間に起きてたら起こられるかもしれない)
貞子は体を反転させ、今度こそ自分の部屋に帰ろうとした。
「――――」
だが、不意に聞こえてきた声に足を止める。
よく見れば、父の部屋には明かりが灯っている。
人影の数はニ。
誰かがいるのは間違いないようだ。
川д川?
貞子は誘われるがままに足を進める。
自分の影が映らぬように、四つんばいになって声を盗み聞きする。
- 145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:19:40.66 ID:ep/mo4JD0
- 支援
- 146 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:26:53.95 ID:G506Z6sj0
-
(・∀ ・)「いやっ、ありがとーございます」
【+ 】ゞ゚)「いいえ。私共の仕事ですから」
(・∀ ・)「本当、あの忌々しい奴の訃報を聞いたときの喜びといったら!」
【+ 】ゞ゚)「ええ、わかりますよ」
(・∀ ・)「でも、あの呪術、難しいって聞きましたよ」
【+ 】ゞ゚)「そうですね。呪力のある人間が必要ですしね」
(・∀ ・)「なんでしたっけ? あのー」
川д川(……え?)
依頼人の口から聞こえてきた呪術の名前は、聞き覚えがあった。
確かに、その呪術は難しい。
かなりの呪力を持った人間が行わなければならない。しかも、反動が大きいために、術者の死亡率は高い。
川д川(そんな呪力を持った人、いたかしら……)
思い浮かべる。
浮かんだのは、ただ一人だった。
川д川「ま、さか……」
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:28:03.44 ID:RSMGpEUb0
- ハインか
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:33:34.94 ID:RfzwHCMS0
- まってたぜ
支援
- 149 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:37:38.54 ID:G506Z6sj0
-
(・∀ ・)「そういえば、以前きたときにいた美しい奥さんは?」
【+ 】ゞ゚)「ああ、彼女は死にました」
(・∀ ・)「え、それは残念だなあ……」
【+ 】ゞ゚)「彼女はあなたの依頼を反故にしようとしたので」
(・∀ ・)「え、やっちゃったんですか」
【+ 】ゞ゚)「それはあなた様のお心の中に」
(・∀ ・)「うわー、うわー。怖いなぁ」
【+ 】ゞ゚)「ここでのことは他言無用ですよ」
(・∀ ・)「……わかってるよ。ボクだって罪に問われたいわけじゃないしね」
川д川「…………」
もう流れないと思ってた涙がポロポロと溢れだした。
何も言うことなく、静かにその場を去る。
向かうのは自分の部屋ではない。
父の部屋の先にある広間だ。
あそこにヒッキーの死体がある。
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:40:18.62 ID:ep/mo4JD0
- うわー、うわー。こわいなぁー
- 151 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:40:43.94 ID:G506Z6sj0
-
川д川「ヒッキー」
(-_-)
死体は綺麗だ。
腐ってもないし、石化しているわけでもない。
川д川「あなたはどこまで知っていたの?」
あるいは何も知らなかった?
ただの直感であの本のことを伝えた?
川д川「……私、あなたのことが大切だったわ」
(-_-)
川д川「あなたが望むことは何でも叶えてあげたい」
(-_-)
死体は言葉を口にしない。
言葉を使うのは生者だけだ。
川д川「復讐、してあげるからね」
優しい子だった。
呪術師とは思えないほど暖かい心を持った子だった。
- 152 名前:この辺りグロ注意 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:45:13.45 ID:G506Z6sj0
-
大切な家族だった。
川д川「ヒッキー。あなたは生きるの。私の中で」
彼が残した本に記されていたのは、能力を他人へ受け渡すものだった。
そのおぞましさのあまり、方法は『禁呪』として記されていた。
川;д川「……」
最後に、一筋の涙を流す。
口に含んだのは、細い指だった。
少し力を入れてみても、それは千切れない。
さらに力を入れると、悲しみの味が広がった。
部屋には嫌な匂いが充満していた。
死臭と、血の匂い。かすかな呪いの香り。
貞子は黙々と口に含む。
よく噛み、肉を飲み込む。
胃がそれを拒否し、吐き出そうとしても、貞子はそれを止める。
川д川(よく考えたら、今日は何も食べていなかったわね……)
ぼんやりとした頭でそんなことを考える。
- 153 名前:この辺りグロ注意 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:48:45.35 ID:G506Z6sj0
-
ヒッキーの体は小さい。
貞子の体も小さい。
胃がいっぱいになってもまだ貞子は食べた。
食べなければならない。
彼がそれを望んでいるのだから。
ある程度食べ終わったころ、貞子は自分の変化に気づいた。
一口含み、飲み込むたびに力がわく。
頭が冴えてくる。
川д川(あの子はいつもこんな感覚だったのかしら)
(-_-)
少しも触れていない、まだ綺麗なままの顔を見る。
川д川「もう、お腹いっぱい……」
でも、まだまだ肉は残っている。
このままでは、朝がきてしまう。
貞子はボロボロになったヒッキーの体を抱きかかえた。
始めて抱っこしたときのことを思い出す。
あれからずいぶん大きくなったような気がしていたが、とても軽かった。
川д川「山に、行こうね」
- 154 名前:この辺りグロ注意 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:51:49.80 ID:G506Z6sj0
-
貞子はヒッキーの死体を洞窟へ運び込んだ。
洞窟からは、いつだったか小鳥を拾った木が見えた。
川д川「懐かしいわね」
あのころは幸せだった。
母がいて、弟がいて、暖かい気持ちでいっぱいだったことを覚えている。
川д川「……ヒッキー」
彼女は何度もヒッキーに言って聞かせていた。
母も、父も、自分達のことを愛しているのだと。
母は愛してくれていただろう。いつも暖かかった。
だが、父はどうだろうか。
あの人はヒッキーを殺した。母も殺した。
そこに、愛はあったのだろうか。
貞子はヒッキーを抱き締め、目を閉じる。
嫌な匂いにはもう慣れてしまっていた。
川д川(ああ、血の匂いに誘われて獣がくるかもしれない。
私はもう目覚めないかもしれない。でも、それでもいいかも)
ゆっくりと貞子は闇に落ちた。
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:52:40.22 ID:RfzwHCMS0
- /\___/ヽ ヽ
/ ::::::::::::::::\ つ
. | ,,-‐‐ ‐‐-、 .:::| わ
| 、_(o)_,: _(o)_, :::|ぁぁ
. | ::< .::|あぁ
\ /( [三] )ヽ ::/ああ
/`ー‐--‐‐―´\ぁあ
しえん
- 156 名前:この辺りグロ注意 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 20:53:53.47 ID:G506Z6sj0
- グロいところで止めてごめん
風呂に入ってくる
30分くらいで帰ってくると思う
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 20:55:00.83 ID:rvNdQFeT0
- しえん
- 158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:03:14.40 ID:OcE2PZ/L0
- 追いついた
完結してほんとによかった
- 159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:13:24.52 ID:KavBRTAQ0
- 保守
- 160 名前:再開 この辺りグロ注意 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 21:31:57.80 ID:G506Z6sj0
-
目を覚ましたとき、ヒッキーの体は変わらずにそこにあった。
獣の姿は見えない。
川д川「……呪いの、匂いかな」
野生動物は呪いの匂いに敏感だ。
それが自分達の害になるとよく知っているのだろう。
朝一番にお腹がなった。
昨日吐きそうなほど食べたというのに、おかしなことだ。
川д川「いただきます」
手をあわせ、再びヒッキーを食べていく。
美味しいとは感じない。一般的に人肉は不味いと聞いていたが、それほど不味くもない。
足を食べる。
心なしか硬かった。
お腹の柔らかさが懐かしい。
どれほど血の匂いを出しても、獣が寄ってくる気配すらない。
好都合だと貞子は笑う。
川д川「ヒッキーは私のものだから。
私が全部、全部食べるの」
- 161 名前:この辺りグロ注意 ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 21:48:54.84 ID:G506Z6sj0
-
もう一度眠って、起きて、ヒッキーを食べた。
髪の一筋まで残さずに、綺麗に。
川д川「……ヒッキー。これから、どうしようか」
お腹をさする。
ここにあの愛しい子はいるのだ。
川д川「うん。うん。そうね」
貞子は立ち上がり、洞窟から出て行く。
背を伸ばし、迷うことなく足を進めて行く。
向かうのは我が家だ。
見れば、家の中はバタバタと騒がしい。
それもそうだろう。
娘と死体が消えたのだ。騒ぎにならない方がおかしい。
川д川「お父様」
玄関を通り、父に会う。
【+ 】ゞ゚)「貞子?! お前、今までどこに!」
駆け寄ってきた父を見て笑う。
心配そうに見えるが、どこまでが本心なのだろう。
こう見てみると滑稽だ。
- 162 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 21:53:30.83 ID:G506Z6sj0
-
川д川「お父様、私、知ってしまいました」
【+ 】ゞ゚)「何をだ?」
首を傾げる父。
不思議そうな父。
憎い父。
川д川「人を、呪うということです」
貞子が呪具を取り出し、父へ投げつける。
ここへくるまでの道中で、仕掛けは万全だ。
【+ 】ゞ゚)「さだ……」
川ー川「さようなら」
【+ 】ゞ )「あ、ああああああ!」
指先から電流が走るような痛みが父を襲う。
これが呪いだということはすぐにわかった。
同時に、自分がすぐにでも死んでしまうということも察しがついた。
川ー川「さて、ここをぜーんぶ失くしちゃいましょ」
- 163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:55:37.76 ID:KavBRTAQ0
- こえーよ
実際こういう肉体とともに能力を受け継ぐってありそうで怖いよ
- 164 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 21:56:01.22 ID:G506Z6sj0
-
呪いが蔓延する場所で、貞子はケラケラと笑う。
これはヒッキーと、自分の力だ。
兄弟の力だ。
川д川「さあ、ヒッキー次は世界を失くしましょう」
母と彼を奪った世界に復讐を。
彼女はふらりと足を進める。
どのような呪いを使おうか。
どのような絶望を作り出そうか。
それを愛しの弟が望んでいたかどうかはわからない。
( ´_ゝ`)は劣等性のようです
番外編 川д川が復讐を考えるようです 完
- 165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:57:18.62 ID:KavBRTAQ0
- グロい話乙・・・
- 166 名前: ◆UJEaB9eZsVvR :2011/01/10(月) 21:58:33.22 ID:G506Z6sj0
- 一応、考えていたのは全部書きました。
これで本当に終了です。
お付き合いくださりありがとうございました。
>>132は後で職員室な
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 21:58:43.26 ID:zIdoH3KM0
- 一気にここまで終わらせるとは・・・乙
- 168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:06:46.61 ID:OcE2PZ/L0
- 面白かった乙!
- 169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:13:06.92 ID:INXJjmkR0
- まだ200も言ってないのに100回もまとめて落として
スレ伸ばしとかじゃなく、純粋に読んでほしかったんだね
こっちも一気に読めたし、良かった。他のSS主の見習ってもらいたいね。
話も面白かったよ、乙
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/10(月) 22:17:37.38 ID:AS7TOjen0
- 去年のうちに来なかったからちょっと心配したが
完結乙
全部
最新50