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ヽiリ,,゚ヮ゚ノi Channelers のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:29:19.39 ID:XGk/qsds0
 

 日常活動時間のおよそ8割以上を、鬱屈とした思いの中で過ごしている。
 仮にそんな人間がいたとして、
 その事実を 『 不幸 』 だと定義するのであれば。

 井戸中サダコは、紛れもなく 『 不幸な少女 』 の一人であった。



2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:32:03.50 ID:XGk/qsds0
 
 VIP学園2年B組、出席番号3番。
 細身で猫背。  病的にも映る青白い肌。
 歩くたび、無造作に伸びた黒髪が、海草のごとくゆらゆら揺れる。

 近寄り難い雰囲気をまとう彼女にとって、
 他人と会話を交わさず一日が終わることなど、さして珍しくもない。


 そんなサダコが、一部の生徒に目をつけられるのも、無理からぬことではあった。
 もとより孤独には慣れていた彼女だが、
 級友たちによる陰湿な嫌がらせは、日に日にその精神を削っていった。


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:35:14.78 ID:dGXhZfwA0
ほう

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:35:31.60 ID:XGk/qsds0
 
 自宅では、不仲な父と母の板ばさみが彼女を待っている。
 家族関係はとうの昔に冷え切っていた。
 頻発する両親のいがみ合い。 一度始まれば、ヒステリックな応酬は深夜まで続く。

 父に罵倒され。 母に邪険にされ。
 またあるときには、理不尽極まりない理由で、怒りの矛先を向けられて。

 はじめのうちこそ、必死で彼らを嗜めていたサダコだが、
 二人の仲が険悪になるにつれ、速やかに自室へ退避するようになった。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:37:09.74 ID:2wQV6dsq0
支援

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:37:10.72 ID:3MfN5O9s0
久しぶりだな!

7 名前:>4訂正:2010/12/05(日) 23:37:57.47 ID:XGk/qsds0
 
 自宅では、不仲な父と母の板ばさみが彼女を待っている。
 家族関係はとうの昔に冷え切っていた。
 頻発する両親のいがみ合い。 一度始まれば、ヒステリックな応酬は深夜まで続く。

 父に罵倒され。 母に邪険にされ。
 またあるときには、理不尽極まりない理由で、怒りの矛先を向けられて。

 はじめのうちこそ、必死で彼らを宥めていたサダコだが、
 二人の仲が険悪になるにつれ、速やかに自室へ退避するようになった。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:40:23.06 ID://vOraL+O
支援!

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:40:59.73 ID:2wQV6dsq0
しえしえ

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:42:45.20 ID:XGk/qsds0
 
 口汚い罵声を背で受け止めながら。
 鍵をかけた部屋の中、彼女はひとり、念仏のようにつぶやき続けるのだ。


 どうしてなの?
 どうしてわたしがこんな目に遭わなくちゃならないの?
 わたしの居場所はどこにあるの?

 ねえ?
 答えてよ。
 誰か

 答えろよさっさと


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:43:47.86 ID:XGk/qsds0
 

 ねえ。
 どうして

 ──どうして、

 あいつはわたしを裏切った?



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:45:19.79 ID:XGk/qsds0
 
 学校では嘲笑の的となり、家に戻れば、故なき悪罵を浴びせかけられ続ける。
 それが彼女の毎日。
 ただ、それだけの毎日。

 うつむき、歯噛みし、眉根を寄せて。
 彼女は日々をじっと耐え、過ごしていた。

 彼女に現状を変えるだけの力はなく、
 他に悩みを打ち明けられる相手もいなかったから。


 そう、
 誰も。

 彼女の 『 他 』 には。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:45:41.93 ID:2wQV6dsq0
ふむ

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:47:10.47 ID:BEcBbEaQ0
支援

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:47:57.40 ID:XGk/qsds0
 
 そんな日常を、繰り返し繰り返し──耐え忍んだ果てに。


 いつの頃からだろうか?

 彼女の虹彩が、怪異の色に染まったのは。
 彼女の呪詛に、しゃがれた男声が混じるようになったのは。
 彼女の憤りが、瘴気となってその体を包むようになったのは。


                     許さない。

          消えてなくなれ、なにもかも。


            殺してやる。
              殺しテやル。

                  コロシテヤル。



 ── だらり垂らした長い髪の奥、その瞳には、憎悪の光が揺らめいていた。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:51:24.03 ID:2wQV6dsq0
ほほう

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:52:00.50 ID:XGk/qsds0
 
 そして、彼女の夥しい怨念が “ 異能 ” に形を変えて表出した日。
 その能力の最初の犠牲者は、彼女を生み育ててきた──、


『 何が……サ、サダコ!? 』


 ある意味では、
 “ もう一人の彼女 ” を生み出したともいうべき相手だった。


『 あ……か、はッ 』


                           “ ダ マ レ ”


『 く、来るな、バケモノ! 来るなァ! 』

『 助……け……! 』


 他者の肌に触れることで、幻惑と混乱をもたらす、奇怪な能力。
 憎しみを糧に、彼女を突き動かす “ 片割れ ” の人格。
 彼女の中で分かたれた、復讐のためだけに生まれた、もう一人のサダコ。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:54:09.87 ID:XGk/qsds0
 
 喉元を押さえ、苦しげに床でのた打つ自分たちの姿を見下ろしながら、
 立ち尽くす一人娘が何を思っていたのか。

 彼らがそれを知ることは、ついになかった。


                        ──── “ 見るな ”


 けれども、確かに。
 蔑むような瞳からは、雫が溢れ、二つの筋となって頬を伝っていたのだ。

 そう。
 彼女は泣いていた。
 肩を震わせ、怒気を孕んだ表情で睥睨しながらも、涙は止め処なく流れ続けていた。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:55:20.26 ID:2wQV6dsq0
支援

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:55:56.63 ID:xXWrt18l0
しえ

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:56:57.35 ID:XGk/qsds0
 
 でも


                            “ そんな目デ ”

                        “ わタシを ミ ルナ ”


 それは

 ひょっとしたら




                         “ コ ロシテ ヤル ”


 必然のことだったのかも、知れない。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/05(日) 23:59:11.33 ID:XGk/qsds0
 
 
         http://logsoku.com/thread/yuzuru.2ch.net/news4vip/1282485572/
           http://logsoku.com/thread/yuzuru.2ch.net/news4vip/1282132156/
    21・22     http://logsoku.com/thread/yuzuru.2ch.net/news4vip/1278861265/

  http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
    http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html     纏



              彼女もまた 特別な力を手にしてしまった人間のひとりなのだから。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:01:13.69 ID:oSCpSRo7O
なんというか凄く久々だな
支援!

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:01:29.89 ID:E89K3OnO0
 

==
===


【 ドクミサイド: 2F廊下 中央階段付近 】


从゚、゚ilリル 「……」


川:д::川 「……」


 短い沈黙を破ったのは、目の前の女の子── “ 感染能力者 ” のほうだった。


川д川 「動……かないで……!」


 微動だにせず。  ぼそり、呟く。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:04:03.91 ID:y+oxzrH60
やったー
支援やでー

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:04:13.13 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「あなた……“ チャネラー” ?」

从゚- ゚ilリル 「────!」


 小さい声ではあったが、はっきりと聞こえた。
 “ チャネラー ” 。  ──確かに、彼女はそう言った。
 その単語を耳にした途端、背筋を駆けていた悪寒が、全身の震えへ変換される。

 にわかに肌は粟立ち。  膝ががくがく笑う。
 土踏まずに力を込めた。
 そうしてないと、立っていることすらままならないように感じられた。


从゚O゚;リル 「やっぱりキミが、この事態の首謀者なのか。
       な、何の目的があって、こんなこと」

川д川 「それは “ Yes ” と……捉えて……いいのよね?」


 互いに質問を質問で返しあったものの、不思議なことに会話は成立している。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:06:42.11 ID:E89K3OnO0
 
 感染能力者はやはりこちらを振り向くことなく、言葉を続ける。


川д川 「カマを……かけてみて、正解だった。
      動かない……でね?
      あなたには……わかる……でしょうけど」

从'。`;リル 「?」

川д川 「わたしの…… “ もう一つ ” のチカラ……があれば。
      あなたを……動けなくすることが、出来る。
      いい? “ 動けなくできる ” の……」

从゚、゚;リル 「……」 ゴクリ


 彼女は語気を強めてその部分を強調した。
 『 だから、それ以上近づくな 』 とでも言いたげに、左手をこちらに向け。


川д川 「わたしの目的は、ひとつだけ……」


 首をがくんと垂らすと、おもむろに斜め方向を睨めつける。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:09:04.12 ID:E89K3OnO0
 
::ヽiリil;д;ノi:: 「ひいいぃ! やめっ、やめてぇ!」

Σ从゚□゚リル (スパムちゃん……!)


 能力者の視線の先には、青白い顔で後退するスパムがいた。
 “ 感染者 ” たちに取り囲まれ、彼女はじりじりと壁際に追い詰められてゆく。

 見たところ、未だ “ 感染 ” には至っていない様子だが、
 位置関係的に、彼らと触れずに逃げ出すということはできそうにない。

 逆に言えば、周りの “ 感染者 ” たちをどうにかしない限り、
 僕自身、スパムを助けることができない状況だ。


从゚、゚;リル (彼女を──スパムを襲うのが目的ってことか?
       でも……)

川д川 「関係ない……あなたを、巻き込むつもり……ない」

从'。`;リル 「そ、そう、なのか?」


 一応驚いたふりはしてみせたが、この言葉を鵜呑みにするほど僕もバカじゃあない。
 現に、目の前の女生徒・感染能力者は、他の多くの生徒たちを巻き込んでいるではないか。
 無差別に拡散してゆく、はた迷惑なその異能によって。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:10:52.17 ID:v5h/+weO0
しえしえ

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:11:54.92 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「このまま……帰ってくれれば、あなたに危害は加えない……。
      無関係の “ チャネラー ” ……。
      敵対するつもり……ない……」


 女生徒はそう言うと、スッと身を引き、階段の下へ向かうよう視線で促した。


川д川 「忘れて……くれる?
      今日のこと……このこと」


 このまま帰れば危害は加えない。
 それって、彼女なりの駆け引きのつもりなのだろうか。
 その提案は結果的に、僕にとって利する形となるのだが、彼女は理解しているのだろうか。


从'、`illル (敵対……)


 “ 超能力者 ” としての実力は、彼女のほうが数段上だといっていいだろう。
 肌に触れただけで効果を発動し、人を媒介に拡散する “ 精神汚染 ” 攻撃。

 旧校舎内に限定されるとはいえ、能力の及ぶ範囲、スケール。
 なにもかもが常識の範疇を超えており、
 こちらの持つカードでは、対処がままならない、というのが正直なところ。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:13:09.71 ID:y+oxzrH60
支援えん

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:14:13.19 ID:E89K3OnO0
 
「ううう……」
「あああああ……!」


 彼女の周りには数人の、うごめく機雷── “ 感染者 ” が取り巻いている。
 触れるだけでアウトという、非常に厄介な存在だ。

                         スライダー
 一見したところ、僕たちの周りに “ 滑らせての攻撃 ” に使えそうな機材はない。
 当然、水入りのペットボトルも無いし、目の届く範囲に水道も見当たらない。
 問答無用で感染者をけしかけられた場合、今の僕には、逃げる以外の選択肢が無いのだ。

 周囲の犠牲を厭わぬ感染能力者の少女が、
 即座にそれを実行しない理由は、ひとつ。


从 、 ;リル 「出て行くわけにはいかないっ。
       僕は知り合いを、いや」

川д川 「……!」

从゚、゚illル 「友人を、助けにきたんだから」


 相手の神経を逆撫でしないよう、できる限り穏やかに。
 しかしはっきりと、僕は否定の言葉を返した。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:16:23.77 ID:v5h/+weO0
しえーん

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:17:12.37 ID:VrNt8U9E0
ドクミちゃん可愛い

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:17:15.27 ID:E89K3OnO0
 
 自信のある素振りも、外さない視線も、全てはハッタリにすぎない。
 けれどもこれが、敵の優位性を覆す足がかりになるのであれば。


川д川 「……」


 『 カマをかけた 』 感染能力者はそう言った。
 だがそれは間違いだ。
 女生徒が僕から引き出したのは、彼女にとって余計な情報だったと言っていい。
 (第一、誘導にもなっていやしないわけで)

 確かに、チャネラーの抱える脅威とは未知数のシロモノだ。
 ただでさえ厄介な超能力を、二つの人格それぞれに備えているという、異端の存在。

 しかし。

 憶測でしかないが、彼女は “ 能力者 ” として日が浅く、
 他の比較対象をあまり知らないのではないだろうか。


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:17:49.75 ID:oSCpSRo7O
前回の展開を忘れてるからちょっと読み返してくる
支援

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:20:00.65 ID:E89K3OnO0
   _
从゚、゚;リル 「──」 ギュッ…


 なりふり構わず目的へ邁進する意志があるのなら、
 障害を排するために手段を選ばないのなら、
 そして、そのための能力に揺るぎない自信を持っているのなら。
 すぐに何らかの攻撃を仕掛けてくるハズ。

 それをしない、いや、出来ないのは、僕の存在が怖いから。

 無理もない。
 自己を基準として考えるなら、相手はどんな強力な切り札を隠しているのかわからないのだ。
 彼女は、“ チャネラー ” である僕に、得も言われぬ畏怖を感じ、警戒している。

 強力無比な超能力を持つがゆえに、未知の相手の巨大な幻影に囚われ、動けずにいる。


川д川 「……」


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:21:26.48 ID:v5h/+weO0
しえん

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:22:31.65 ID:E89K3OnO0
 
 だからこそ。
 なんとかして、この事実を利用できないものだろうか。

 僕のこの考えは、果たして現状分析と呼んでいいものなのか。
 それとも、単に身勝手な思い込みに過ぎないのか。

 わからない。
 けれど。


:: ヽiリil;д;ノi ::

川:::д川


从 、 ;リル 「みんなを、解放してくれ」


 怖いくらいに神経が研ぎ澄まされている。
 冷静に考えれば、誰がどう見ても、詰み。
 八方塞がりに近い状況だというのに。


 厚い脂肪に覆われた胸は、悴む右手へ激しい振動を伝えていた。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:24:56.03 ID:E89K3OnO0
 
●第二三話 『 パラノイド・パロット ── VS. サダコB 』


 感染能力者は、ようやくこちらを向くと、口を開いた。


川д川 「見たところ、あなた…… 一年生。
      写真部……? いえ……違う。
      “ わたし達の部 ” の、誰かの……知り合い?」

从'。`リル 「……そうだ」


 わたし達の部 ── つまり、彼女もオカ研の部員だということか。
 胸元のリボンの色から察するに、スパムちゃんやしぃちゃんと同じ、二年生のようだ。


川д川 「さっきも言ったけど……。
      邪魔すると……あなたも、彼らと同じ目に遭う……わ。
      わたしは……あなたを “ 動けなくできる ” んだから」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:26:46.10 ID:v5h/+weO0
支援

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:27:13.63 ID:E89K3OnO0
 
从 。 リル 「その言葉、そっくり返してあげるよ」

川д川 「……え」


 今の僕には精一杯の虚勢だった。
 足の震えをごまかせていないのが情けないところだが。


从゚- ゚;リル 「スパム……スパムさんをどうしたいのかは知らないけど、
       これ以上無駄なことはやめたほうがいい。
       もうすぐ人が来て、おそらくは警察も来て、救助活動は本格的に開始される」

川д川 「……」


 暫しの沈黙。

 感染者たちの発するうめきが、薄暗い廊下の不気味さを際立たせていた。
 不調和なBGMに、ときおりスパムの鼻をすする音が混じる。


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:28:02.59 ID:y+oxzrH60
支援

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:29:42.31 ID:E89K3OnO0
 
从'。`;リル 「知り合いには警備員に連絡してくれるよう頼んであるし、
       校舎にはあと二人、仲間の “ チャネラー ” が乗り込んでる。
       キミ、いや、あなたの目的は、実現しないっ」


 いつの間にか出来てしまった 『 一年生 』 という設定にも、いちおう配慮しつつ。
 僕は少し強気に出ることにした。

 ……しかし。


川д川 「あなた……さっき、この階段を駆け上がっていった……」

从゚o ゚リル 「へ?」

川д川 「そして……東棟のほうから、フラつきながら戻ってきた……。
      時間的に、外に出て帰ってきた……とは、思えない……」

从゚、゚;リル 「あ、それは、その」

川д川 「連絡した……?  いつ……?
      警察……消防……。
      それなら、もう……来ていてもいい頃……よね?」

Σ从゚д゚;リル 「そ、そうっ、なんだけどっ。  えーと」


 簡単に突き崩されてしまうところが僕らしいとも言える。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:32:37.59 ID:E89K3OnO0
 
从'。`;リル 「ちょ、ちょっとばかり到着が遅れてるんだ!
       ……嘘じゃない。 それにっ」

川д川 「あと、ふたり……」

从'ロ`;リル 「そう。 校舎内には僕の仲間がいる。
       僕にだって一応、目の前の障害を排除するくらいの “ チカラ ” はあるし、
       彼らにしても同様だ」

川д川 「チ・カ・ラ……」
   _
从゚、゚;リル 「あなたも、チャネラーならわかるはずですよね?」


 必要以上に挑発的になっていないか、内心ビクビクしながら言葉を紡いでいく。
 さあ、どうなる。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:35:15.54 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「わたし……井戸中サダコ。
      あなたは?」

从'。`リル 「……ドクミ。 ウチダドクミ、です」


 自らフルネームを名乗ったのははじめてだ。
 この瞬間、自分という型紙から、
 『 内田ドクミ 』という、劣化コピー能力を持つ少女の輪郭が切り取られた気がした。

 内藤ドクオの裏側、もう一人の自分。
 ── もう一人の “ 超能力者 ”。


川д川 「内田さん。 ……もう一度だけ、言うわ……。
      お願い。 わたしの邪魔をしないで。
      動けなく……なりたくなかったら」


 “ 動けなくなる ” “ 動けなくなる ” と繰り返しているが、
 それは “ 感染者 ” たちをけしかけるぞ、という脅しなのだろうか。


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:36:00.58 ID:v5h/+weO0
しえしえ

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:37:38.43 ID:E89K3OnO0
 
从'。`;リル 「僕が助けにきたのは別の人だけど……。
       あなたがスパムさんに危害を加えようとしているのなら、
       それを簡単に見過ごすことなんて、できません」


 計五人の “ 感染者 ” たちが、一斉にこちらへ視線を向けた。
 ある者は唸りをあげ、ある者は口の端から泡を吹きながら。


:: ヽiリill;凵Gノi :: 「ひっ! な、何なのよ!? ねえ!」

从゚ロ゚リル 「スパムさん! そいつらに触れないようにして!
       彼らと同じようになりたくなかったら!」

:: ヽiリil;Д;ノi :: 「こ、この人たち何なの!?  何とかしてぇ!」


 廊下の壁に追い詰められたスパムが、かぶりを振って叫んだ。
 取り囲む “ 感染者 ” たちだが、すぐに襲いかかるというわけでもないようで、
 今はただふらふらと、彼女の周りをうろついている。


从'、`ilリル 「ぐっ。 す、スパムさんをどうするつもりですか」


 “ 感染者 ” たちを見るような素振りで、注意深く辺りに視線を走らせる。
 何か、何か手はないものか。


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:40:20.90 ID:k0grUeYRP
定期的に投下してて凄いな

毎回面白いぜ支援

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:40:30.73 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「あなたには……関係、ないこと」

从 ロ リル 「関係なくなんてない!
       罪なき他人を巻き込んでおいて、これ以上好き勝手には……」

川゚д川 「ダ マ レ」


 ……が、その瞬間。
 サダコの声色が明らかに変わった。


Σ从゚、゚;リル ハッ


 どすの効いた恫喝。
 込められた怒気を感じ取った瞬間、全身の皮膚が一斉に粟立つ。


从゚д゚il|ル (しまった、少し強く言い過ぎちゃったかも……)


 僕は腰を落とし、ぐっと身構えた。
 無論、戦いではなく、逃げる体勢のほうだけれど。


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:41:01.51 ID:v5h/+weO0
しえんしえん

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:44:10.35 ID:E89K3OnO0
 
 最低でも “ 感染者 ” たちをけしかけられる覚悟はしていたが、そうはならなかった。
 彼女はふうと一つ息をつくと、深く項垂れ、呟いた。


川д川 「内田さん……。 仲間……。  チャネラー……。
      きっと……友達も、たくさん……」

从'。`;リル 「え?」

川д川 「恵まれた外見……。  幸せな……環境……。
      わたしに無いもの……あなたは、いっぱい持っている。
      ……彼女と同じ」


 そう言うと、スパムのほうを一瞥し、


川д川 「わたシのこと、なンて」

川゚д川 「あなタには……わかラナイ。  邪魔ヲスルナ」


 ゆっくりと視線を戻す。
 髪の隙間から覗いた表情は険しく、あきらかな敵意に満ちていた。


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:44:18.10 ID:v5h/+weO0
ねるしえん

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:46:44.85 ID:E89K3OnO0
 
 ──そうだ。
 目の前の彼女が、以前出会った “ 屋上の男 ” と違うのは、
 害意をもって、その “ 精神汚染能力 ” を揮っているところだ。

 そんなに憎むほどの理由が、スパムにあるというのか?


从゚、゚;リル 「ど、どうしt……」

ヽiリli゚□゚ノi 「どういうことなの!?  なんでこんな事するの!?
       みんながこうなったのはあなたの仕業なの!?
       ねえ、サダちゃん!  どうしてぇっ!?」


 脳裏に浮かんだ疑問を、当の本人が投げかける。


川д川 「どうして、ですって……」


 スパムの問いかけに対し、サダコは一瞬静止すると、


川#д川 「わたしは……あなたが憎い。 憎い。 憎い憎い憎い!」


 感情露わに叫んだ。


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:48:19.55 ID:y+oxzrH60
支援!

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:49:32.62 ID:E89K3OnO0
 
川#д川 「あなたに、復讐するため……今日まで、耐えてきた。
       知ってるでしょう?  わたしには……他に、何もない。
       友達も、安らぎも、居場所も、優しい家族も……」

ヽiリlii゚听ノi 「何それ、嫉妬?!  醜いわね!
        サダちゃんがいじめられてたことは、別に私に関係ないじゃない!」

从'。`;リル (いじめ、復讐……!?)


 なんとなく話が見えてきた気がする。


川#д川 「あなたが憎い!
       わたしから、生きる気力を! 居場所を!
       ……希望を、奪った!」

ヽiリ#>ロ<ノi 「意味わかんない!  私が何をしたっていうのよ!」

川д川 「何を……した?」


 ヒステリックなやり取りのあと、サダコは急に笑い出した。


川::∀川 「はは、あははははははは。
      何をした……自分は何もしてないって、そう……言いたいの」


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:49:36.26 ID:pTIFQAMMO
お帰り支援

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:50:12.26 ID:WNen2KqVO
久しぶりに

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:52:01.75 ID:WNen2KqVO
しえ

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:52:20.32 ID:E89K3OnO0
 
ヽiリill゚听ノi 「当たり前よ!  私があなたに何かした!?
        目に付くところで笑ったわけでもなければ、
        体や持ち物に触れてすらいないわ!
        こないだサダちゃんの鞄にイタズラしたのだって……」

川д川 「そうね。 ……あなたは関係ない。
      他の部員が……やったこと」

ヽiリ;゚听ノi そ 「そ、そうよ」

川゚д川 「知ってて……裏で、笑っテタの……ね」

ヽiリ;゚−゚ノi 「う……!」

从'。`;リル (……)


 いじめられっ子による復讐劇。
 それが、この事件の本質だというのか。
 蓋を開けてみれば、それだけの理由で──こうも多くの生徒が巻き込まれたというのか。

 いや、それだけ、というのは言いすぎか。
 その怒りを目の当たりにした今となっては、
 彼女がこれまでどんな扱いを受けてきたのか、察するに余りあるというものだ。


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:53:15.10 ID:y+oxzrH60
しえしえん

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:54:24.53 ID:oSCpSRo7O
支援

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:55:13.37 ID:y+oxzrH60
なんか悲しいぜ


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:55:29.84 ID:E89K3OnO0
 
 立ち竦む僕の視線の先、彼女はゆらゆらとスパムのほうに近づき、言った。


川д川 「以前みたいに……いけしゃあしゃあと、
      “ 友達でしょう? ” ……なんて……言わないのね」

ヽiリ;゚ο゚ノi 「そ、それは、だって」

川::ー川 「まあ……今更そんな事、言い出そうものなら……。
      ……わたし、本当に、何するかわからなかった、けど」


 くっくっと含むような笑いをこぼし、こちらへ向き直る。


川д川 「内田さん。  ……聞いての、とおり。
      情けない……わよね。
      あなたも、心の中で……笑ってる……でしょう?」


65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 00:58:17.10 ID:E89K3OnO0
 
从゚ロ゚;リル 「笑ってなんていません!
       だって、僕もサダコさんの気持ちはわかるから」

川д川 「嘘。 あなたに、無視される理由なんて……ないじゃない。
      意地悪される……理由なんて、ないじゃない。
      ……わかるわけないじゃない」


 わけないじゃないそんなわけないじゃない。
 心の何かが欠けてしまったかのように、何度もそう繰り返す様は、
 異様としか言いようが無い。


川д川 「でも。……いくら情けなくても、ダサくてもキモくても……。
      それでも、どうしてもわたし、許せないの。
      ……岡戸さんが」

ヽiリ;>ロ<ノi 「だからどうして私なのよ!?  嫌がらせは全部他の子がやったこと!
        私はただ止めなかっただけ!  関わりたくなかっただけ!
        直接的にも、間接的にも、私は何ひとつ悪いことしてないのに!!」


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:00:55.44 ID:WNen2KqVO
支援

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:01:15.59 ID:E89K3OnO0
 
川#д川 「……ふざケルな!」


 威圧的なサダコの声と同時に。
 突如、“ 感染者 ” である男子生徒が、
 雄叫びを上げながらスパムのほうに殴りかかった。
 
 とはいえ、標的の定まっていない、大ぶりなテレフォンパンチだ。
 軌道は横に反れ、後方の窓ガラスが音を立てて破壊される。
 反射的に顔を覆ったスパムの、短い悲鳴が轟いた。


Σ从゚ロ゚liリル 「や、やめろっ!」

川゚д川 「そレ以上近づくナ!
      お前も、“ 動けなくなる ” ゾ……!」

Σ从゚△゚;リル 「わっ!?」


 駆け寄ろうとした僕の前に、“ 感染 ” した女生徒がふらりと立ちはだかる。
 反射的に跳び退り、数歩後退して距離を取る。


68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:03:27.11 ID:E89K3OnO0
 
 女生徒がそのまま迫ってくることはなかったが、これではっきりとわかった。
 やはりサダコは “ 感染者 ” の動きを、自分の意思で、ある程度制御できるのだ。


ヽiリlii;Д;ノi 「ひっ、ひいぃっ」
 
川д川 「知ってるの。  わたし……全部。
      あなたが……どんな風に、……わたしを、見ていたのか!
      だって……見てた、聞いてたのよ、全部。
      ……あの日」

ヽiリli゚ο゚ノi 「あ、あの日って……?」

川#д川 「……いいわ。
      覚えてないのなら……教えて、あげる」


 怒りに肩を震わせながら──。
 復讐に燃える一人のチャネラーは、自らの過去を語りはじめる。



===
==



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:06:16.06 ID:E89K3OnO0
 

 去年の……そう、四月。
 入学式の日のこと。 覚えている?
 いえ、あなたにとっては忘れたい出来事かも知れないわね。


川д川 『 …… 』


 中学の頃、周りにいじめを受けていたわたしは、
 地元を避けて、隣のVIP市にある、このVIP学園に入学した。

 無理に遠くの学校を受験したこともあって、親にはさんざなじられた。
 思えば、その時には既に、自宅にわたしの居場所はなくなっていたの。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:06:39.22 ID:BqDBZV6MQ
寝る前支援

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:08:56.29 ID:E89K3OnO0
 
川д川 ( ……1年E組……。
       高校は、一学年に7クラスもあるんだ…… )


 入学式が終わって。
 新しい教室には既に、同じ中学の友達同士を中心とした、
 いくつかのグループができていた。

 当然、わたしと同じ中学出身の人間はいない。
 ──いないはずだった。

 意地悪な知り合いは誰も見当たらない。
 けど、やっぱりわたしは怖かったわ。
 新しい環境が不安で仕方なかった。

 クラスに馴染めないのはもう仕方がない。
 ただ、叩かれたり蹴られたり、意地悪されたり──、
 そんな、以前のような扱いだけは、受けたくない。


川д川 (……ただ静かに、普通に過ごせればいい)


 ──けれども、わたしは。


72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:11:15.96 ID:E89K3OnO0
 
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi 『 あの……井戸中さん、よね? 』

川д;川 『 !! 』


 あなたに出会った。

 出会ってしまったの。


ヽiリ*゚ヮ゚ノi゙ 『 やっぱりそうだ!
        私、同じラウンジ中学の…… 』

川д;川 『 お……岡戸……さん 』

ヽiリ,,^ヮ^ノi 『 あ、知ってたんだ! よかった〜。
        ここ、他に全然知ってる人いないし、
        今日すっごい不安だったの! 』


 一度も同じクラスになったことはなく、
 辛うじて名前を知っている程度の間柄だったのに、
 あなたは、まるで旧知の友人に出会ったかのように、気さくに話し掛けてきたわよね。

 親の都合でこっちに越してきて、VIP市の学校を受験していた。
 誰も知り合いがいなくて、一人ぼっちを覚悟してたけど、まさか井戸中さんがいるなんて。
 会えて本当によかった。  ──あなたはそう言っていた。


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:14:35.26 ID:E89K3OnO0
 
 出席番号のせいで前後の席になったこともあり、
 それから数日の間、わたし達は一緒に過ごした。


ヽiリ,,゚ヮ゚ノi 『 ねぇねぇサダちゃん。 怖い話とか、幽霊とか好き?
        今日の放課後、オカルト研究部の見学に行ってみない? 』

川д川 『 さ、サダちゃん……って…… 』

ヽiリ*゚ヮ゚ノi 『 私さ、占いとか、魔術とか、そういうの超好きなの!
        ここのオカ研ってー、意外に人数多いらしいしぃ、
        どういう活動してるのか、すごーく気になってて 』

川д川 『 でも……い、いいの?
      わたしなんかが……い、一緒に、……行って 』


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:15:22.55 ID:E0yhGH+2O
ちゃねらずきてるぅ

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:17:21.88 ID:E89K3OnO0
 
ヽiリ,,゚ヮ゚ノi 『 何言ってるの! ぜーんぜん構わないわよ。
        だって…… 』


ヽiリ,,^ヮ^ノi 『 私たち、友達じゃない! 』


川*д川 『 ──! 』


 友達。
 その言葉が、どれだけわたしの心を温かくしてくれたか。

 トモダチ。
 その希望は、わたしにとって最大の拠り所になった。


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:20:13.24 ID:E89K3OnO0
 
 あなたに続けてオカルト研究部への入部を決めたわたしは、
 中学の頃に比べると、はるかに充実した日々を送っていた。


 ──けど。
 当然のこととはいえ、そんな毎日が長く続くはずはなかった。

 たとえ同じ中学出身でも。 同じクラスでも。
 オカルトという共通の趣味があって、同じ部活に所属していても。


『 ごめんねサダちゃん。 今日はユッコ達とお昼食べる約束してて── 』

『 え? ああ、今日は部活先に行ってていいよー 』

『 あ、サダちゃんお疲れさま。 ばいばーい。 』

『 あははは! それでね、マユったらさ── 』


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:22:54.14 ID:E89K3OnO0
 
 綺麗で、人当たりがよくて、快活な岡戸さんと、
 地べたを這うミミズみたいなわたしじゃあ、
 ずっと一緒にいられるはずがない。


『 というわけで、3年生の送別会は18日の12時からになりました!
 先輩たちはプレゼント駅前で買うんでしたっけ?
 私も一緒に行っていいですか〜? 』

『 あ、えーと…… 』

『 さ、サダちゃんも、来る? 』

『 ……そっかぁ 』


 わたし達は、少しづつ少しづつ、疎遠になっていった。


78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:22:55.06 ID:Xm2WpzI0O
まとめが更新されなくなってから見てなかったけど進んでたのね。
見てくるわ

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:25:15.65 ID:E89K3OnO0
 
『 ちょっ、エリ待ってよ。 早いってー 』

『 あ、知ってる。 大通りに新しくできた店でしょ。 行く行くー 』


 誰からも好かれるあなた、 誰にも好かれないわたし。

 他に友達はいなくて、ともすれば奇異の視線に晒されている、
 そんな一人ぼっちのわたし。


『 サダちゃんもお疲れ、じゃーねー 』

『 あはは……カズ君そんな事言ってたの? やだぁー 』


 あなたの態度が少しづつ変化していっても、
 わたしはそれを、半ば当然のこととして受け止めていた。


80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:27:42.24 ID:E89K3OnO0
 
 月日はのんびり過ぎ去って。
 二年生になって少し経った──。
 確か、五月の半ば頃だったと記憶している。

 クラスも変わったことで、わたしたちは、
 部活でも、挨拶を交わせばいいほう、程度の関係になってしまった。


 三年生や新入部員にも慕われ、オカルトの知識も行動力もあるあなたは、
 既に、次期部長候補としての風格に満ちていた。

 いつも部室の隅で、ひとりカタカタとパソコンをいじっているだけのわたしじゃあ、
 話しかけることすらおこがましい、遠くて、輝かしい存在だった。


81 名前:>80訂正:2010/12/06(月) 01:30:34.01 ID:E89K3OnO0
 
 月日はのんびり過ぎ去って。
 二年生になって少し経った──。
 確か、五月の半ば頃だったと記憶している。

 クラスも変わったことで、わたしたちは、
 部活でも、挨拶を交わせばいいほう、程度の関係になってしまった。


 三年生や新入部員にも慕われ、オカルトの知識も行動力もあるあなたは、
 既に、次期部長候補としての風格に満ちていた。

 いつも部室の隅で、ひとりカタカタとパソコンをいじっているだけのわたしじゃあ、
 話しかけることすら躊躇われるような、遠くて、輝かしい存在だった。


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:33:16.16 ID:E89K3OnO0
 
川д川 『 …… 』


 そして、思い出すのも忌々しい、あの日。

 放課後のことだった。
 部活は休みだったけど、わたしは忘れ物を取りに、部室へ立ち寄ったの。


『 ねーねー、岡戸ぉ。  前から聞こうと思ってたんだけどぉ 』

川д川 『 ! 』

 
 ……そして。
 入口のところで、聞いてしまったの。
 あなたと佐藤さんの会話を。


83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:35:42.31 ID:E89K3OnO0
 
川*` ゥ´) 『 あんた、あの井戸中と同じ中学だったんピャ? 』

ヽiリ,,゚ο゚ノi 『 え? ええ、そうよ 』

川*` ゥ´) 『 ふーん。 あんたあいつの友達なのピャ? 』

ヽiリ,,゚−゚ノi 『 ……私が? 』


川;д川 『 …… 』


 嘲るような、小ばかにするような、そんなノリの問いかけ。
 心臓が跳ね上がったわ。
 調子がよくて八方美人なあなたのことだから、適当にお茶を濁すのかと思ってた。


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:37:29.63 ID:y+oxzrH60
支援!

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:38:08.04 ID:E0yhGH+2O
友だちぃいい

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:38:52.93 ID:E89K3OnO0
 
 ところが。
 一瞬の静寂のあと、あなたが放った言葉は──、




『 そんなわけないじゃない 』


川;д川 『 ! 』



 笑っちゃうくらいの、即答。



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:39:25.14 ID:y+oxzrH60
痛々しい…

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:39:30.73 ID:65VyhBIIO
まとめ死んでるじゃねえか
頼むから違うところでまとめてもらってくれ

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:39:57.81 ID:VJKd+O2S0
yoyo支援ぬ

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:40:56.62 ID:Yzh5VsK/O
ねるしえん

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:42:03.66 ID:E89K3OnO0
 
『 気持ち悪くないのかって?
  キモいに決まってるじゃない。
  まあ、そりゃ……ね? 』



『 ええ、中学のときから、ずーっとあの調子だったみたい 』



『 ダサいし、どもるし、まともに話もできないよね 』



『 逃げてきたんじゃないかな? 彼女 』



『 いじめられてたみたいだから 』



『 そうそう。 確か、中学のときのあだ名は…… 』



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:45:11.70 ID:E89K3OnO0
 
 聞くに堪えない、ひどい話だった。
 あなたはできるだけソフトに伝えたつもりだったんでしょうけど、
 結局それは、当人であるわたしにすれば、陰口以外の何物でもない内容だった。

 頭がくらくらして、すぐにでも逃げ出したかった。
 けれどわたしは、一語一句漏らさないように、
 最後まで、あなたと佐藤さんの会話を聞いていた。


 あなたは言っていたわ。
 一年生のときは付きまとわれて迷惑だったとか。
 相手は友達だと思い込んでるだろうから、今でも気を使うのが大変だとか。

 『 中学時代の友達伝いに聞いた 』 という前置きで、
 わたしが受けていた仕打ちまで──ぺらぺらと。


93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:47:31.75 ID:y+oxzrH60
支援

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:47:31.96 ID:E0yhGH+2O
陰湿よ!

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:48:01.26 ID:CY34/d5bO
ちょいしえ

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:48:11.78 ID:E89K3OnO0
 
川illд川 『 …… 』


 滑稽でしょう。

 あなたの言うとおり、わたしはまだ、あなたを友達だと思っていたの。
 信じていたの。
 勝手に、一人で、……思い込んでいたの。

 だから。

 その全てがポーズでも、いつわりだったとしても、
 本当はこれっぽっちもそう思っていなかったとしても。



『 ソンナワケナイ 』



 友達だと、言ってほしかったんだ。


97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:49:37.39 ID:y+oxzrH60
悲しいよ支援

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:50:59.96 ID:E89K3OnO0
 
 不気味だと思われてもいい。
 気持ち悪いと言われるのも、きっとしょうがない。
 どこかで突き放されても文句は言えない。
 けれど。

 たとえかりそめの、数いる友人の端っこの端っこ、
 どうでもいい存在だったとしても──。


ヽiリ,,^ヮ^ノi 『 私たち、友達じゃない! 』


 わたしに希望を与えてくれた、
 これからは、少しづつ変われるんじゃないか?
 そう思わせてくれた、ひとこと。


川#;-::川 『 …… 』


 それだけは、否定して欲しくなかったの。


99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:51:52.86 ID:y+oxzrH60
支援

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:53:30.73 ID:E89K3OnO0
 
 それからのわたしは、中学のころに逆戻り。
 おそらくは、人気者であるあなたとの微かな繋がりが、精神的な枷になっていたのね。

 あなたに 『 友達じゃない 』 と聞かされ、悪口を共有したことで、安心したんでしょう。
 佐藤さんを中心としたグループは、クラスでも、部活においても、
 わたしを陰湿にいびるようになり、その行為は段々とエスカレートしていった。

 持ち物を隠される程度ならまだいい方。
 昼休みに呼び出されて体育倉庫に閉じ込められたり、お弁当に虫の死骸を詰め込まれたり。
 部室で、ちょっと目を離したすきに、パソコンのデータをいじられたこともあった。


 まるで坂を転げ落ちるかのように、
 周りのわたしへの態度は、どんどんひどいものになっていった。


101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:56:29.40 ID:E89K3OnO0
 
ヽiリ,,^ヮ^ノi 『 私が部長だなんて──感無量です!
        はい、精一杯頑張ります! 』


 わかってたんでしょ。
 わかってたわよね。
 わかってたはずよ。

 別に助けてなんて思ってない。
 見ないふりでも一向に構わない。


 ──けどね。
 そのきっかけをつくったのは、間違いなく、
 あの時の、あなたの一言なのよ!


102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:58:46.57 ID:I9N7YVb3O
あうあー…

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:58:55.90 ID:W9/N9zGN0
@@@@

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 01:59:12.29 ID:E89K3OnO0
 
 元々折り合いの悪かった両親の仲が、本当に険悪になったのも、ちょうどこの時だった。
 引き倒されて殴られたことも、髪を引っ張られて蹴られたこともあるわ。

 あんたなんて産んだのが間違いだった、気持ち悪くて仕方がないって、
 何度も何度も罵られたわ。
 何度も何度も。  何度も何度も何度も何度も!

 学校でもひどい扱いを受けているのに、家にいても心休まることなんてない。
 わたし、何か悪いことした?
 なぜわたしがこんな目に遭わなくちゃならないの?


 ……それにしても、女子のいじめって本当に狡猾で陰湿よね。
 男子の前ではいい顔して、何も知らない天使のように振舞って。
 裏では、わたしをゴミのように扱って。
 暇つぶしの材料に。 ストレスのはけ口に。 おもちゃにして楽しんでいるの。


105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:00:15.14 ID:y+oxzrH60
貞子…

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:02:20.94 ID:E89K3OnO0
 
 それでもわたしは、一日たりとも学校を欠席しなかった。
 部会には必ず顔を出すようにしたし、
 割り振られた仕事は妥協なく、全てきちんとこなしてきた。


 舌打ちされても笑われてもなじられても。
 教室の隅で、部室の傍らで──── じっと耐えていたのよ。


 なぜだか、わかる?



 わたしの耐え忍んできた毎日は、

 全部、

 全部、

 ぜんぶ!


 今日、あなたに復讐するためにあったんだから!


107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:03:00.20 ID:y+oxzrH60
悲しすぎるだろ…

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:05:03.18 ID:E89K3OnO0
 

==
===


 両手で頭を抱え、サダコは腹の底から搾り出すように、憎しみを吐き続けていた。


川#皿川 「誰にでもいい顔して……愛想を振りまいて……いい人ぶって。
       その実……わたしを……わたしだけを、見下して!
       他のヤツラに……どんな意地悪をされるより……!
       あなたの……偽善にまみれた、嘲りの視線が、一番辛かった!」

ヽiリli;д;ノi 「サダ……ちゃん……」

川#Д川 「わたしが気持ち悪いなら! 嫌いだって言うのなら!
       なぜ……最初から、ほっといてくれなかった!
       どうして中途半端に友達ヅラなんてした!
       どうして……どうして、どうして!!」


109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:08:41.94 ID:E89K3OnO0
 
ヽiリli;д;ノi 「ち、ちが……。
        私は、ひっく、本当に」

川#皿川 「嘘よ!  ……あなたの言うことは、みんな嘘ばかり!」


 わたしには、あなたのようなルックスもなければ、カリスマもない。
 仲間もいない、好きになってくれる人なんていない。
 人間としての魅力がひとつたりともない。

 わたしに足りないものを全て持っている。
 そんなあなたに嫉妬を覚えなかったかといえば嘘になるわ。
 けど、そんなことは大した問題じゃない。


川#д川 「……あなたは、わたしのことを裏切った。
      自分の地位を築くまでの足がかりとして、……勝手に、友達ヅラなんてして。
      ……用がなくなったら、笑い話のネタにして。  陰でわたしをあざ笑って」

川#ロ川 「利用するだけ利用して……最後には、わたしの心を踏みにじった。
      それが。 ……そのことだけが、許せない!」


110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:09:47.25 ID:y+oxzrH60
悲しいよう
支援

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:12:07.09 ID:E89K3OnO0
 
 サダコの悲痛な叫びは、僕の胸で残響する。


从 - ilリル (……)


 心を抉られる思いだった。


『 おいドクオ、パン買ってこいよ。 ダッシュな 』
『 あれ? こいつひょっとして泣いてんじゃね? 』
『 きゃははっ。 きもーい 』
『 うわっ、寄るなって。 ドクオ菌がうつるから 』


 その昔、“ ある事件 ” がきっかけとなって友達を失い、塞ぎ込んでしまった僕は、
 中学高校と、思い出したくもない、ひどい扱いを受け続けてきた。


从 、 リル (彼女は……)


 そう、同じだ。
 目の前にいる少女は、僕と同じ種類の人間なんだ。

 サダコは、僕なんだ!


112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:13:11.77 ID:CY34/d5bO
ちょっとくるものが……

113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:14:54.66 ID:y+oxzrH60
どうくるんだ

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:15:07.12 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「知ってる?  ……いや、知ってるわよね……。
      副部長も含めた、オカ研の中枢、数人……」


 ただ、ほんの少しだけ違うのは。


川д川 「聞いたの……次の、学園祭で……、
      わたしに、ステージ上で、ひどい恥をかかそうとしていた……」

ヽiリli;凵Gノi 「……!?」

川#д川 「……わたしが、これ以上オカ研にいられなくなるように……。
      自ら退部したくなるように、
      わたしを嵌める、計画……練っていた」

ヽiリli;凵Gノi 「そ、そんな話、わたし一言も」

川#ロ川 「とぼけないで!
      計画の中心……副部長と……仲の良い、あなたが!
      知らないわけ、ない!」


 いじめに対抗し得る、反則的な力を手に入れてしまったこと。


115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:17:52.01 ID:y+oxzrH60
支援

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:19:00.04 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「それを知ってもなお、わたしが部活に……オカ研に残っていたのは……、
      全部、あなたたちに復讐するため。
      今日、この日のためだけに……! わたしは……」


 でも、その方法は。


从 ロ リル 「──もう、やめてくれ!」

川д゚川彡 「……!?」


 思わず叫んでいた。
 サダコは口を止め、こちらに怪訝な顔を向ける。


川д川 「内田さん……。
      あなたには……わたしの気持ち、なんて」

从>ロ<リル 「わかるよ! だって、僕もあなたと同じだから!
       友達なんていなかったから。
       ……ずっと、いじめられていたから!」

川;д川 「……え」


117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:20:23.97 ID:y+oxzrH60
支援

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:21:29.91 ID:E89K3OnO0
 
 黒髪がふわりと靡き、彼女は僕の正面に向き直った。


川д川 「嘘よ。 ……話、合わせようとしても無駄。
      ……だってあなた、さっき言った。
      仲間を……」

从 、 リル 「ええ、今は仲間がいます。  友達と呼べる人もいます。
       けど、昔はそんなもの、誰もいなかった。
       クラスメイトには罵られ、暴力を振るわれることもしょっちゅうだった」


 生き地獄のようだったあの日々。
 何度も死にたいと思った。 毎日が絶望に塗りたくられていた。
 それでも。

 耐えて、耐えて、卒業した後、僕は出会うことができた。
 こんな自分でも、分け隔てなく接してくれる、本当に素晴らしい人。
 心の底から尊敬できる他人。  ハインさんという女性に会えた。


119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:24:14.56 ID:E89K3OnO0
 
川д川 「そんな……なら、わたしの気持ち……、
      わかってくれるんじゃ……」


 理解できる。
 理解できるがゆえに──。


从 ロ リル 「今の環境を変えようとする努力。
       それを続ける忍耐力、実行に移す行動力。
       本当に凄いと思う。
       僕が昔、出来なかったことだから」

川д川 「……」

从゚□゚;リル 「だからこそ、こんな形の復讐なんてダメだ!
       たくさんの人を巻き込んで……事件なんて起こしてどうなるっていうんだ。 
       ここでキミ自身が未来を閉ざしちゃあ、元も子もない!」

川; д川 「う……」


120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:25:11.83 ID:y+oxzrH60
支援

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:26:59.29 ID:E89K3OnO0
 
从 、 ;リル 「今は辛い毎日かも知れない。
       けど、キミにもきっとこの先、本当に素晴らしい出会いがあるから
       ……絶対!」


 だが、少女は心の迷いを払うがごとく、かぶりを振る。


川liд川 「……おためごかしなんて、聞きたくない。
      あなただって、“ チャネラー ” の力で、
      今の環境を手に入れたんでしょう?」
   ,_
从'、`;リル 「……違います」

川д川 「嘘よ……。 やっぱり、信じられない。
      いじめられる理由が、あなたにあるなんて……思えない……。
      有り得ない。  ……どん底の状態から、そんなに変われるなんて」


122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:29:17.05 ID:E89K3OnO0
 
从 、 リル 「嘘じゃない。
       今だって、いじめていた相手を許せるかっていうと、許せません。
       思い返すだけでハラワタが煮えくり返りそうになる」


 こいつを刺して俺も死んでやろうか。
 奇声とともに教室中へエアガンでも乱射してやろうか。
 毎日そんな妄想に明け暮れていた。
 そうしないとやっていられなかった。

 実行に移す勇気なんてなかったけど、そんな事をしなくて本当によかったと思える。
 今の自分に満足しているわけではないが、
 学生の頃よりは、ずっとマシな日常を手に入れたはずだから。

 そう思わせるほど、あの頃は本当に毎日が苦痛だったんだ。


123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:32:13.65 ID:E0yhGH+2O
ぬぬ

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:34:25.31 ID:y+oxzrH60
うう…支援

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:43:17.60 ID:I9N7YVb3O


126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:45:42.78 ID:y+oxzrH60
さるり…?

127 名前:SARUTTA:2010/12/06(月) 02:47:02.27 ID:E89K3OnO0
 
川liд川 「ちょっと……悪口を言われたとか……その程度でしょう?
      あなたみたいに……キレイな子が……」

从 ロ#リル 「本当なんだ!
       だって、そいつは……」


 中学時代、輪の中心となって、内藤ドクオを苛め抜いた人物。

 忘れられないその名前。
 許し難いその仕打ち。

 そいつは。

 その男は──


128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:52:01.24 ID:E0yhGH+2O
さる止め支援

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:53:02.86 ID:E89K3OnO0
 






                           ……あれ?







 

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:57:08.08 ID:I9N7YVb3O
支援

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 02:59:09.01 ID:E89K3OnO0
 
 唖然。


从゚□゚リル 「……」


 叫ぼうとして、固まっていた。


 僕の心に深い憎しみを刻んだ、許し難いあの出来事が。
 忌々しいあいつの名前が。


从 □ ;リル 「そ、そいつ、は」


 ……どうして?


 そんな。
 なぜ。


132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:00:35.29 ID:E89K3OnO0
 






                           思い出せない。







 

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:03:33.98 ID:y+oxzrH60
な なんだってー

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:04:31.91 ID:E89K3OnO0
 
 出てこない。
 忘れたくても忘れられなかったはずの、それが。
 トラウマになった痛みが。


川д川 「なぜ……言えないの?」


 高みから僕を笑う、憎憎しいあの表情が。


从゚□゚;リル 「……わから、ない」

川;д川 「?」

从゚、゚;リル 「殴られ……あれ、違う。 
       え、誰、だっけ」

川д川 「……何それ」


 顔が思い出せない。
 名前もよくわからない。
 霞がかかったように、ぼやけている。

 記憶のパズルから、1つのピースが抜け落ちてしまっていた。


135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:08:35.04 ID:I9N7YVb3O
蓋したのか

136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:11:45.33 ID:E89K3OnO0
 
川#д川 「やっぱり嘘だった!
       また……嘘。 嘘。 嘘ウソ嘘つきばっかり!」

Σ从゚ロ゚liリル 「ち、違う、ウソなんかじゃあ」

川#゚д川 「わたシは……モウ、騙さレなイ!」


 長い黒髪をゆらゆらと立ち昇らせ、サダコはがなるように声を張り上げた。
 低いしゃがれ声には怒りの色が滲んでいる。 

 はっとして振り向いた。
 彼女の一喝を合図とばかり、“ 感染者 ” の女子生徒が、すぐそばまで迫っていた。

 慌てて体をかわす。
 だが、さっきとは違って、女生徒はその歩みを止めることがなかった。

 真っ青な表情。 焦点の合わない視線。 小刻みな痙攣──。
 何かを求めるように前に手を伸ばしながら、
 ふらふらとこちらへ近づいてきている。


137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:12:14.91 ID:E0yhGH+2O
ドドドド

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:13:58.26 ID:I9N7YVb3O
しえん!

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:14:13.32 ID:E89K3OnO0
 
从 皿 ;リル 「くっ……!」


 武器が無い以上、彼女達を退ける手段はない。
 どうにかすり抜けたところで、サダコのそばにはあと四人もの “ 感染者 ” が控えている。

 廊下をじりじりと後退する。
 移動は遅くとも、女生徒は確実に僕を目指して進んでくる。
 空手ではどうしようもない。

 このままトイレまで逃げ戻り、ダメ元で水の塊を運んで来ようか……?
 そう考えていたときのことだった。


从゚、゚;リル 「!」


 横の教室の扉が勢いよく開いたかと思うと、
 そこから伸びた手が、僕の手首を捕獲する。


Σ从゚△゚;リル ( しまった! )


 こんなところにも、潜んでいたなんて。


140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:17:09.79 ID:E89K3OnO0
 
从 ロilリル ( まずいっ。 “ 感染 ” した!?)


 抗う暇すらない。 完全なふい打ちだった。
 開いたドアから飛び出した人物は、そのまま肩を引き寄せる形で、
 僕の体を薄暗い教室へ引きずり込む。



「うっ、うわっ!  わあああぁああ……!」



 悲鳴と、扉を閉める乱暴な音が、混じり合い。


 薄闇を裂くように、大きく響き渡った。



 (続く)
 

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:18:49.80 ID:E89K3OnO0
 遅くまで支援サンクス。 難産だった。

 今回でサダコのエピソードは終わる予定だったが、結局また伸びてしまった。
 24話の書き溜めは3分の1程度、次エピソードの導入である25話が5分の1程度。
 おまけが半分程度、といったところ。

 次話は来週日曜の投下を目処に書き進めている。
 (間に合わないかも知れない)
 おまけは次話のあと、もしくはクリスマス近辺に単独で投下するやも知れない。
 何にせよ遅くなってすまんかった。

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:23:56.05 ID:I9N7YVb3O
いい所で切りよる
乙!!

143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:41:03.64 ID:6oZk651fP
ずっと待ってた乙
次も楽しみに待ってるわ

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 03:50:17.72 ID:E0yhGH+2O
うおお乙

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 08:22:21.91 ID:pTIFQAMMO
よむほ

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 09:01:15.48 ID:WNen2KqVO
おつ

147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 11:31:19.34 ID:uKys/YmBO
今読み終わった乙

まとめが止まってるエスカルゴが暫定的にまとめてくれるみたいだね


148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 11:37:23.92 ID:uKys/YmBO
「止まってるから」だった……

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 12:25:00.78 ID:+YE48M6M0
チャネラー来てた!!
次回もwktkしてるぜ!

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/06(月) 13:24:36.42 ID:JD0Pd5R6O
来てたのか。よむほ


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