以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/03(金) 02:56:51.86 ID:lVhKbQeW0<> http://boonsoldier.web.fc2.com/GE.htm ←ありがたいまとめ様
尚、この物語は某ゲームさんとは関係ありません <>( ^ω^)ゴッドイーターのようです
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:01:09.33 ID:FoRnSLd+0<> ありがたやありがたや
というわけで記念すべき?『第十話 登録会』投下します。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:02:44.46 ID:FoRnSLd+0<>
闇はいつでも其処にある。遥か深海の底、森の老木の虚の中、人家の閉じられた倉庫の中。
日もも差し込まず明かりも灯されぬ、忘れ去られたような闇。
ただ静寂の中で闇は物言わずあるのみだ。
キィ。
錆びた鉄の扉が開く音がして、眩い光が差し込んできた。それはただ一つの蜀台の明かりであった。
外は夜であったのだ。
(*‘ω‘ *)「んーどこに行ってしまったっぽ?」
お転婆そうな張りのある女声が静寂を退けた。
紺色のロングドレスの上に白いエプロンを掛けて背中でリボンを結んでいる。
くせのある肩程の長さの茶髪を片側によせ結び、雑ではあるが団子にしてあった。
見るからに貴族の元で働く女中風貌のその娘は、蜀台の明かりをゆらゆらと揺らしながら短い階段を下り、
暗闇の中で何かを探しているようだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:04:01.31 ID:A1mexNAS0<> なんて時間に投下しやがるwwww
支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:04:19.20 ID:FoRnSLd+0<>
(*‘ω‘ *)「うぅ、見づらいっぽ」
圧倒的な闇の中で、蝋燭の火は弱く頼りない。これでは部屋の形どころか、自分の足元を照らすので精一杯だ。
不安定な足取りで階段を降りきると、不意に顔を顰めた。
酷い臭いだ。埃と黴の中に、生臭く、まるで何かが腐ったような、酸っぱい香りも混じっている。
臭気に眩暈がするような感覚すら覚えて、女中はふらりと二三歩よろけた。
(*‘ω‘ *)「っぽ!!?」
何かを踏んだ。何か弾力のある、柔らかな中に芯のあるようなものに足を取られて、
女中は大きく後ろに仰け反り、階段の上に尻餅を付いた。
(*‘ω< *)「い、いたいっぽ…!」
地べたに座った儘の体制で、左手で丁度階段に打ってしまった腰をさする。きっと青痣になってしまうだろう。
は、と気づいて右手に持っていた蜀台を確認し、安堵の息を吐いた。唯一の明かりは無事だ。
こんな真っ暗闇の中、いくら活発で気丈な自分と言えど、何も見えなくなったら恐ろしい。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:07:40.21 ID:FoRnSLd+0<>
少し安心したところで、無性に腹が立ってきた。こんな階段の真下に転がって、自分に尻餅を付かせたのは何者か。
その正体を見てやろうと、蜀台を翳す。これが悲劇の元だった。
彼女は先ほどまで明かりが無事だったことにあれほど安堵したのに、
今度は自分が明かりを持っていたことを恐ろしく後悔した。
(*゜ω゜ *)「ぁ…ぁあ… あ…!」
頼りない炎は薄っすらと闇を掻き分け、仄かに照らし出して彼女に見せた。
青白く太い蝋燭のような幹の先は、緩やかなカーヴを描き五本の枝に別れ、
その五本の枝先にはそれぞれ桜貝のような爪が付いている。
女中のよく知るフォルム。そうだ。それは幼い者の腕だ。
高まる動悸と共に喉の奥からひゅーひゅーと息を吐き出しながら、左手で心臓の辺りを掴み、視線は釘付けになった。
ゆっくりと蜀台の明かりを昇らせる。上へ―――――
生気の無い虚ろな瞳が幾つもこちらを見ている。
幼くして命を奪われた者たちは、皆白く真裸で、捨てられた人形のように重なり積み上げられていた。
暗闇の中で忘れ去られようとしていた死人の塔は、罪深いものの存在を女中に知らしめ警鐘を鳴らしているかのように。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:09:00.88 ID:FoRnSLd+0<>
( ^ω^)ゴッドイーターのようです!
第一章 『 La Belle au bois dormant 』
第十話 登録会
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:09:05.62 ID:9knKAKYVO<> おやすみ支援
流石に無理 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:11:06.40 ID:FoRnSLd+0<>
VIP帝国のコロッセウム。
収容観客総数五千人とされる巨大な円筒形の建物。
天井部分は解放され、階段状に設けられた客席の上には魔法光装置が間隔的に取り付けられている。
昼は日の光、夜は魔力光が照らし出し、昼夜問わず催しが行えるようになっている。
時に王家の決闘の場ともなったその由緒正しい闘技場は、ロワイエル帝の代より遥か昔から建造されていたという。
VIP帝国の興るより以前。つまり、古くはテラワロスのものではなかったかと囁かれている。
改修され続けてはいるが、古代から同じ目的で使用され続ける数少ない生きた遺跡だ。
今は昼間。普段催し物がなければ解放されている遺跡だが、今期は闘技大会を一ヵ月後に控えて、
各地から名誉と褒章を求めて集まる戦士たちの登録会場となっている。
太陽が血気盛んな猛者達で溢れる中央の円形広間を照らし出す。
( ゚∋゚)「にゃんこちゃんを置いて来るなんてひどいよぉ」
( ;^ω^)「あいつはヒトゴミが嫌いなんだお」
( つ∋゚)「うっ、うっ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:11:56.63 ID:zceuVHn70<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:12:06.82 ID:A1mexNAS0<> ごめんもうダメねるほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:13:42.35 ID:FoRnSLd+0<>
今にも泣き出しそうなクックルを宥めながら、嘆息する。
こんな体たらくだが、周囲の男たちからは優勝候補たる強敵に対する、鋭い視線が集束している。
( ゚д゚ )「クックルさん、相変わらず動物好きなんっすね…」
J( 'ー`)し「ほらほら、名前を記入しないと参加出来ないよ」
カーチャンが背中を叩いて促した。
朝早くから来て参加登録の列に並んでいたのだが、昼間近くになってようやく受付の前に出ることが出来た。
チーム参加ということもあり、例年より人数も多いらしい。
( ><)「この羊皮紙に団体名とそれぞれの名―――あッ!?」
( ^ω^)「おっ!?」
見知った顔が机の向こうにあった。
( ><)「クックルさんなんです!! またお会いできて光栄なんです!!」
( ゚∋゚)「おや、君は…」
( ><)「ワカンナイデス・ビロードなんです! 先日は失礼しましたなんです!」
( ^ω^) ( ブーンはシカトかお… )
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:15:37.90 ID:FoRnSLd+0<>
( ゚д゚ )「ブーン、クックルさんは元VIP軍の中将なんだぜ!」
( #^ω^)「知ってるお、何でミルナがどや顔なんだお」
J( 'ー`)し「おや、ワカンナイデスって、あの泣き虫ワカンナイデスかい?あれまぁ立派になって」
( *><)「たけし君のおかーさんなんです!お久しぶりなんです!」
( ;^ω^)「えぇぇ」
( ><)「今日は僕が当番で登録管理なんです! 皆さんに会えて嬉しいんです!」
ワカンナイデスが羊皮紙とペンを差し出す。
羊皮紙には、団体名を書く欄の下に五人分の名前を記入するスペースがあった。
差し出されたペンは、銀の羽に五芒星が掘り出された随分立派なものだ。
( ゚∋゚)「ふむ、ではここは先に私が失礼しよう」
クックルがペンを受け取り、団体名を書き、二番目の欄に自分の名前を記入する。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:17:42.61 ID:FoRnSLd+0<>
( ;^ω^)「やっぱりブーンが大将なのかお」
( ゚д゚ )「ったく、まだんなこと言ってんのか、いーじゃねーか」
言いながら、クックルからペンを貰い、ミルナは三番目に記入する。
J( 'ー`)し「ふふふ、照れてるんだよきっと。ブーンは」
カーチャンは一番下。つまり先鋒だ。
J( 'ー`)し「はい、ブーンちゃん」
( ;^ω^)「か、カーチャン、ちゃん付けはやめてくれお」
親子のようなやりとりをしながら、ペンを渡される。
その銀のペンを受け取った瞬間、少年の腕に電流のような衝撃が走った。
( ゚ ω゚)「おおおおッ!?な、なんだお!?」
つい咄嗟に、ペンを放り投げてしまった。
慌ててワカンナイデスがキャッチして、ブーンに非難がましい声をあげる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/03(金) 03:19:02.02 ID:3q3tQlUDO<> やり始めたから支援する <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:20:43.52 ID:oj/5+mW10<> なんという夜型人間だw支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:20:57.86 ID:FoRnSLd+0<>
( ><)「ちょ!! 気をつけてくださいなんです! 一つしかない貴重なものなんです!」
( ゚∋゚)「む?ブーン君は知らなかったのか」
( ゚д゚ )「だせぇwwwww」
( ^ω^)「ど、どういうことだお?」
J( 'ー`)し「登録用のペンは、あんまり実力の伴わない者が参加できないように、魔法がかけられてるんだよ」
( ><)「田舎者め! なんです!」
( ^ω^)「……(なんでこいつ僕には強気なんだお)」
( ><)「ブーン、不参加、と…」
( #^ω^)「ちょwwwwwwペン貸せおwwwwwww」
( ;><)「きゃん!」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:22:26.13 ID:FoRnSLd+0<>
ワカンナイデスからペンを引っ手繰り、羊皮紙の一番上に名前を記入する。
驚きはしたものの、持ってみれば何のことはない。ちょっと電気椅子にかけられてる程度だ。
( ;^ω^)「…。(皆、全然平気そうな顔してたお)」
ちょっぴり不安になってきた。
不意に、団体名の欄を注視する。
( ^ω^)
( ゚ ω゚ )
( ゚ д゚ )
( ゚ Θ゚ )
( ゚∋゚) プイッ
(゚д゚ ) プイッ
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:24:27.02 ID:FoRnSLd+0<>
( ^ω^)「おいこっちみろwwwwwwwwwwww」
J( 'ー`)し「なんだいこの子たちは。変な子だね」
( ;^ω^)「いや、カーチャンは団体名を見ろお!」
J( 'ー`)し「うん?」
団体名 : た け し
J( 'ー`)し「……何かおかしいかい?」
( ^ω^)( お ま え か ! )
J( 'ー`)し「変な子だよう、まったく」
前途は益々不安である。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/03(金) 03:25:49.05 ID:3q3tQlUDO<> 寝る…頑張ってくれ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:26:09.05 ID:FoRnSLd+0<>
記入が終わると、コロッセウムの中央に案内された。
一段高い客席の上に、ワカンナイデスが歩いてやって来るのが見える。
( ><)「ええと、無事登録を終えた皆さんには、これからさらに参加テストを受けてもらうんです!」
会場内がざわつく。
( ^ω^)「そんなこともするのかお」
( ゚∋゚)「うむ、参加チーム数が多いからな」
( ゚д゚ )「振るい落としってやつだな」
言われてみれば、確かにまだ十を超える団体が残っている。
登録期間中に毎日これだけの参加を許していたら、闘技大会が終わるのにどれだけ掛かるか知れない。
( ><)「ちなみに昨日テストをパスした団体は一組だけだったんです!ぜひ頑張ってほしいんです!」
( ;^ω^)「ひ、一組だけだお!?」
J( 'ー`)し「今年は結構レベル高いみたいだねぇ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:27:55.93 ID:FoRnSLd+0<>
( ゚∋゚)「昨日登録に行った者といえば…プギャー君たちか」
( ^ω^)「おっ」
そういえば、そうだ。ミドリ亀とニダーは振るい落とされてしまったんだろうか。
だとすればメシウマだ。もし次に会うことがあれば散々笑って、いや、プギャーしてやろう。
( ><)「それぞれの団体から一人選出するんです!外のメンバーは客席に上がって欲しいんです!」
喧騒が大きくなる。皆、誰を出すか話し合っているようだ。
選出した者の肩に大会の出場権が握られるからには、慎重なようで、なかなか決まらない。
( ゚∋゚)「ふむ、では私が行こうか」
( ゚д゚ )「いや、クックルさん、ここは俺が」
J( 'ー`)し「何言ってんだい、出場権がかかってんだよ、カーチャンに任せな」
( ^ω^)「…(こ、この展開は…!?)」
( ゚∋゚) ( ゚д゚ ) J( 'ー`)し < じー
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:30:11.01 ID:FoRnSLd+0<>
(;^ω^)「おっ!?」
(;^ω^)「あ、いや…」
( ゚∋゚) ( ゚д゚ ) J( 'ー`)し < どうぞどうぞ!
Σ(;^ω^)「まだ何も言ってねぇお!!!!1111」
( ゚∋゚)「はっは、冗談だよ冗談」
( ゚д゚ )「そうさ、軽いジョークだぜブーン」
J( 'ー`)し「いきなり大将が出張ることもないさねぇ」
(;^ω^)「…ブーンが行くお」
( ゚∋゚)「えっ」
( ゚д゚ )「mjd」
J( 'ー`)し「いいのかい?」
(;^ω^)「どうせ闘技大会になったら役が回って来ないんだお、出場権くらい獲ってくるお」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:35:43.69 ID:FoRnSLd+0<>
絶対仕組んでたろ、と嘆息する。
きっとクックル辺りの提案だ。こんな分かりやすくて間抜けな猿芝居をするのは。
参加登録くらいは役に立ってやろう、という気もあってか、ブーンは了承した。
( ^ω^) ( 本当に何もせずに褒賞だけ、っていうのも気が引けるお )
少年が一人中央の闘技場に残り、他のメンバーは観客席へと上がっていった。
他の団体も一人を選び終えると、続いて扉を潜り、観客席へと上がってゆく。広い観客席がまばらに埋まってゆく。
( ^ω^)「13人、かお」
ブーンの他に、中央の円形リンクに残ったのは十三の団体から選出された十三人。
それぞれを見回す。
長い髭を鼻の下から二本生やした異国風の装束に身を包んだ男。
背の高い、高価そうな甲冑を身に着けて槍を携えている男は、どう見ても貴族だ。
中には聖職者だろうか、黒いガウンに身を包んだ青白い男が立っている。
厳ついいかにも猛者な男たちの中に、一人、女性も混じっていたのには驚いた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:37:47.83 ID:FoRnSLd+0<>
( ^ω^)「女の子がいるお」
燃えるような赤い髪(毛皮?)から大きな三角の耳が一対出ていて、その耳には緑石のピアスが下げられている。
何かの獣人かもしれない。華奢な身体は褐色の肌を露出し、黒い皮を巻きつけたような、身軽そうな格好をしている。
最も目を引いたのは、その両手に付けられた幾何学的文様の掘られた無骨な赤色の腕輪だ。
女の細腕には随分と重そうに見える。
(*゚∀゚)「…ァに見てんだブタ野郎」
Σ( ^ω^)「あ、すいませんお」
(*゚∀゚)「ちッ」
(^ω^;)「…(なんか怖いお)」
(’e’) 「おっほっほ、大丈夫です?」
( ^ω^)「おっ?」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:41:23.85 ID:zceuVHn70<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:41:29.88 ID:FoRnSLd+0<>
黒いガウンの聖職者風の男に話しかけられた。柔和で整った顔立ちの、金髪碧眼の男は、気遣わしげに小首を傾げる。
目じりに寄った皺がさらに優しそうな印象を際立たせていた。矢張りとても、戦闘を好むようには見えない。
(’e’) 「貴方、闘技大会は初めてですか」
( ^ω^)「そうだお」
(’e’) 「私もなのですよ。よろしくお願いします」
( ^ω^)「おっ、おお、よろしくだお」
これから戦うかもしれない相手によろしく、とは。格好もそうだが、不可思議なことを言う男だ。
そうは思ったが、思わず頷いてしまった。不可思議な男はまた話しかけてくる。
(’e’) 「緊張していないのですか?」
( ^ω^)「い、いや、ちょっとくらいはしてると思うお」
自分でも驚くほど緊張はしていない。だがあまり自信家に見られるのも性に合わないので、そう答えた。
すると神父は関心したような声をあげ、他方を指差す。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:44:18.49 ID:FoRnSLd+0<>
(’e’)「凄いですねぇ。私なんかもう緊張して。御覧なさい、あの子なんて口も利けないみたいですよ」
そちらを見ると、ブーンや神父より一回り以上も身体の大きな青年が直立して夥しい量の汗を掻いているのが見える。
( ・−・;;) 「……」
(;^ω^)「…うわぁ (ガタイはいいのに、大丈夫かおあいつ)」
*
円状の客席からは、どこからでも中央のリングが見渡せるようになっている。
クックル達は最前列に陣取ることが出来た。
J( 'ー`)し「ちょっと強引だったんじゃないかい?」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:47:44.08 ID:FoRnSLd+0<>
三人が席に腰を落ち着けると、カーチャンがクックルに言った。
ブーンの思ったとおり、あの段取りはクックルが考えたものであったようだ。
( ゚∋゚)「む?そうかね、完璧だと思ったんだが」
( ゚д゚ ;)「いや、完全にバレてたと思いますよ」
( ゚∋゚)「なんと。やるなブーン君。この私の画策を見抜くとは…矢張り期待大」
J( 'ー`)し「あんたは昔っから策略を練ったりすることに関しては下手だったもんねぇ」
Σ( ゚∋゚)「えっ」
J( 'ー`)し「いっつも正面突破しかしなかったじゃないか。ま、あんたが先陣を切るお陰で楽だったがねぇ」
( ゚д゚ )「ユッセの城にも、常に先陣を切り開く勇猛な将がいると声が届いてましたよ」
( ゚∋゚)「いや、私はいつもちゃんと考えて…」
J( 'ー`)し「考えた挙句に結局真正面から突っ込むじゃないか。あんたくらいだよ、あんな戦略もクソもない猪みたいな」
Σ( ゚∋゚) < ガーン
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:49:21.35 ID:XYynsfAOO<> きたな支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:50:03.34 ID:FoRnSLd+0<>
( ゚д゚ ;)「…(カーチャン結構きっついなー)」
(*゚ー゚)「あのー」
( ゚д゚ )「ん?」
遠慮がちな、鈴なりのような声がしてミルナが振り向くと、可憐な乙女が黒目がちの円らな瞳で見下ろしていた。
( ゚д゚ )
(*゚ー゚)「あの、ここが一番見やすそうなので、お隣いいですか?」
( ゚д゚ )「恋」
(*゚ー゚)「えっ?」
J( 'ー`)し「あらやだよこの子は、いきなり来いはないでしょうに。さぁ、どうぞ」
(*゚ー゚)「あ、すみません、ありがとうございます」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:52:16.87 ID:FoRnSLd+0<>
カーチャンに礼を言うと、少女はミルナの隣に座った。
肩くらいまでの黒髪が鎖骨に毀れるように揺れて、白い鈴蘭のような甘い香りが鼻腔に漂う。
( ゚д゚ *)「…」
( ゚∋゚)「おや、一人ですかな」
(*゚ー゚)「ええ、皆見なくても大丈夫って、帰ってしまって…」
J( 'ー`)し「あらあら」
(*゚ー゚)「うちのチームは協調性が無くって…でも、信頼してるんだと思います」
恥ずかしそうに苦く笑って、少女はリングに視線を落とした。
視線の先にあるのは、耳の生えた赤い腕輪の女性だ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:53:02.32 ID:zceuVHn70<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:54:36.78 ID:FoRnSLd+0<>
(*゚ー゚)「つーちゃん、頑張って…!」
ぎゅ、と両手を握り、一言呟いた。なんて優しくていい子だろう。それに可愛くていい香りがする。
( ゚д゚ )「僕もつーちゃんを応援します」
(*゚ー゚)「えっ」
( ゚∋゚)「いやそこは駄目だろ」
J( 'ー`)し「ブーンちゃんも応援してやんなよ」
( ゚д゚ )「そういえばそんな奴いたっけ」
ミルナがリングに視線を落とすと、ブーンが何やら神父みたいな男と話しているのが見えた。
おいおい、テスト前に懺悔でもしているのか?などと思っていると、先ほどのワカンナイデスの声が拡声器ごしに響く。
全員がそちらへと視線を移動させる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:56:16.30 ID:FoRnSLd+0<>
ワカンナイデスはコロッセウムに王族用に用意された貴賓席の丁度真下に設けられた、
司会進行用の箱型の枠席の中に他に二人の兵を従えて立っていた。
( ><)「ええーと、それでは皆さん、各自出揃ったようなので、テストを始めるんです!」
( ><)「本日の団体数は十三なんです!
選び出された十三人には、これから最終参加テストを受けてもらうんです!
ええと、えーと、あれ?なんだっけ」
ワカンナイデスの慣れないもどかしい進行に、場外から罵声が沸き起こる。
( ;><)「ちょ、落ち着いてくださいです、あッ、思い出したんです!
テスト通過条件は、頭です!頭を撫でたら合格なんです!」
( ><)「頭を撫で撫でするんです!じゃあ皆さん頑張ってくださいなんです!」
頭を撫でたら合格。当然、何の頭を撫でたら合格なのか?という疑問が大衆の頭上に沸き起こってくる。
全く要領を得ない駄目司会っぷりだ。説明足らずにも程がある。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:57:57.71 ID:zceuVHn70<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 03:58:20.79 ID:FoRnSLd+0<>
皆が小首を傾げていると、下から突き上げるような地響きが鳴った。
(兵1∵) 「おい! そっち早く引け! 同時に空けるんだ!」
(兵2∵) 「早くしろ!」
一画から、悲鳴にも似た兵士たちの声が上がっている。
闘技場の端の地面の上で、四人の兵が二手に分かれて綱を引っ張っている。
綱の先は地面に繋がっているように見えた。否、石の扉だ。地面に大きな石蓋のような扉がある。
その石蓋が、下に居る何者かによって突き上げられ、震えているのだ。
(兵3;∵)「分かってるんだが、何かいつもと随分違うような…」
(兵4∵)「興奮剤で気が立ってんだろ、もう蓋がもたんぞ!」
(兵2∵)「おい、早くしろ!いくぞ!」
(兵1∵)「せーのッ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 04:02:22.48 ID:FoRnSLd+0<>
ズズズズ、と引きずるような重い音を立てて、石の蓋が砂を落としながら開かれゆく。
闘技場の地面にぽっかりと大きな穴が口を空けたのを見る間も無く、蜘蛛の子を散らすように兵士達が逃げる。
( ゚д゚ )「な、なんなんだ?」
( ゚∋゚)「あれは…!」
クックルが何時に無く険しい声を上げた。
誰もが開いた穴の暗闇をまじまじと見詰めている。誰もが、漆黒の闇が穴から溢れ出たかと思ったその時、
昼の日中に姿を現した闇の正体に息を飲み込んだ。
先ほどまでワカンナイデスに罵声を浴びせていた客席が、咆哮ひとたびに途端に慄きに変わる。
鎖を解かれ、闇からも放たれ、獣は三度咆哮した。
その吼え声はコロッセウム中に轟き、聞くものを鼓膜から身体の芯まで震え上がらせる。
怒りと屈辱に黒曜石のような瞳を血走らせ、己の前に立ち塞がる愚かな十三の小さき者を見つけた。
すぐさま、怒りの矛先はその小さき者たちに向く。
獣にとって、人の顔など大差ない。全てが身の内に湧き上がる怒りと殺意の対象となった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 04:04:22.60 ID:FoRnSLd+0<>
獣は三度咆哮する。
三ツ又に分かれた其々の頭から、各々の怒りの意思を持って、長く突き出た鼻から荒々しい息を吐く。
黒い毛皮を纏った四肢が忌々しげに地を蹴り、巨大な爪が土を抉る。
その姿は狼に似て非なるもの――――
( ゚∋゚)「魔界の門番、ケルベロスだと…!」
( ゚д゚ ;)「け、ケルベロスってあの伝説の幻獣か?なんでそんなのが出てくるんだ!?」
J(;'ー`)し「嘗て伝説の王国テラワロスの魔術師のみが召還しえたという、太古の化け物だねぇ。
本物ならば、正気の沙汰じゃあないよ。頭を撫でるどころか、コロッセウムなんか吹き飛んでしまう…!」
(;゚ー゚)「つーちゃん…!」
( ;゚∋゚)「こんなものを、本当に参加テストで出していたというのか…!?」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 04:08:42.69 ID:FoRnSLd+0<> まだ半分程度だと…?
すみません四時までに全投下出来ると思ってたのが浅はかでした。
明日、というか今日の日付が変わる頃また続きを投下します。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 04:12:11.17 ID:zceuVHn70<> 乙です。続き楽しみにしてます。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 04:18:05.29 ID:/7684lhD0<> とりあえず乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/03(金) 04:19:56.10 ID:sHC6ihvL0<> こんな時間なのに支援本当にありがとうございます。必ず戻ってきます。
失礼いたします。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 04:37:20.64 ID:XYynsfAOO<> いったん乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 05:26:06.10 ID:XYynsfAOO<> 保守したほうがいいかな <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 07:21:25.84 ID:G/maTE3r0<> ho <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 08:35:06.33 ID:XYynsfAOO<> ほし <>
虹子 ◆hakushaku6 <><>2010/12/03(金) 10:00:06.65 株 ID:AgMoQYWTP BE:462514728-DIA(178335) 株優プチ(nenga)<> sssp://img.2ch.net/ico/anime_loop.gif
それ僕は自己判断で頓服にしてる <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 11:38:16.30 ID:7wjlQ0EJO<> ひゃっはー <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 12:22:44.29 ID:XYynsfAOO<> ほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 13:33:43.99 ID:XYynsfAOO<> し <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 13:54:13.82 ID:wb1jdyDi0<> が <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 14:13:43.60 ID:ZXUEaO04O<> 綺 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 15:07:26.84 ID:nuVSMYTrO<> 麗 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 15:43:06.43 ID:XYynsfAOO<> と <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 16:14:06.99 ID:hLJRaMI/O<> 囁 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 16:17:07.81 ID:Ub9Kk6LL0<> 第九話いつのまに投下してたんだ? <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 16:54:40.13 ID:hLJRaMI/O<> この前だよこの前 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 17:27:11.73 ID:wb1jdyDi0<> ほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 18:14:32.01 ID:Ub9Kk6LL0<> ふぉ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 18:54:48.64 ID:XYynsfAOO<> ほむ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 19:28:59.30 ID:Ub9Kk6LL0<>
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 20:15:56.61 ID:nuVSMYTrO<> ほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 20:21:06.81 ID:u36IU4saO<> ゲームと何の関係もなかったでござる <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 20:47:11.66 ID:hLJRaMI/O<> >>1にそう書いてあるでござる
まっだかなー <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 20:48:31.85 ID:wb1jdyDi0<> 日付が変わる頃だそうだが <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 21:32:29.75 ID:wb1jdyDi0<> ほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 22:02:49.61 ID:wb1jdyDi0<> ご <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 22:35:33.87 ID:XYynsfAOO<> す <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 23:00:47.52 ID:XYynsfAOO<> る <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 23:19:15.31 ID:HjC4Grrd0<> よ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/03(金) 23:44:42.01 ID:wb1jdyDi0<> ぅ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:02:21.93 ID:bkyALmSl0<> 日付変わったぞこい <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:26:40.19 ID:BxVAXokq0<> ho <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:35:34.39 ID:D2uoOPRW0<> 私は今日ほど電車の一区間を長く感じたことはない。
私はこの時ほど、折り畳める自転車の車輪が小さいことを悔やんだことはない。
だが――――それでもこのスレは待っていた。
数多の保守に感謝して、諸君、それでは投下を始めよう。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:36:08.33 ID:bkyALmSl0<> イ`ヘ
/: :| ヽ
/ : :/ ヽ ___ _,,,:. .-: :´彡フ
_ノ\_∠: : : : : : : : :`: :-: :,:_:/彡 /
( : : : : : : : : : : : : : : `ゝ /
マ r::/: /: : | : : : : : : : : ::\ /
//: /: : : |: : | |: : |: _: : : :ヽ
ジ {/ 7|`\/i: /|:|/|´: : : : :|ヽ
〉 ,‐-‐、`|7 || |_::|,_|: : :|:::|: |
で / r:oヽ` /.:oヽヽ::|: | :|
{ {o:::::::} {:::::0 }/: :|N
っ | ヾ:::ソ ヾ:::ソ /|: : |
!? ヽ::::ー-.. /ヽ ..ー-::: ヽ::| r--ッ
-tヽ/´|`::::::::::;/ `、 ::::::::::: /: i } >
::∧: : :|: |J \ / /::i: | /_ゝ
. \ヾ: |::|` - ,, ___`-´_ ,, - ´|: : :|:::|
ヽ: |::|\  ̄/ /| |: : :|: |
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:37:30.81 ID:yKudFS6o0<> さてしえんだ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:40:00.79 ID:D2uoOPRW0<> (ここから残虐描写が聊か入ります。ご注意ください。)
その魔獣が穴から這い出て、一軒の家程もある巨大な漆黒の身を震わせてから一分も立たぬうちに、
闘技場のリングの上から十三人居た戦士が半数消えた。
逃げようと最初に動いた者は中央の口から吐かれたどす黒い炎に嘗められ消し炭となり、傍に居た三人が巻き添えとなった。
また別の戦士は果敢にも獣へ飛び掛り前足のひと薙ぎに客席の壁へと叩きつけられ、血の跡を残した。
悲鳴を上げた男は途端に鋭い牙に頭から喰い付かれて足が地を離れ、ぶらぶらと力なく四肢を振り回された。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:41:34.40 ID:BxVAXokq0<> おかえり支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:42:23.31 ID:yKudFS6o0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:44:39.28 ID:D2uoOPRW0<>
(;^ω^)「どういうことだお…」
凄惨な光景を前に、少年は生き残っている。
魔界の門番とは、一級の召喚士ですら呼びよせることの叶わぬ闇の深淵の住人。
ゴッドイーターである限り、遺跡や墓の番人としての魔獣と対峙することも少なくは無い自分ですら、
その存在は書物の中でしか見ることの無い伝説の幻獣。
まさか闘技大会の登録テストで出くわそうとは思いも寄らなかった。
否、ゴッドイーターでなくともそうだろう。
今眼前に広がるこの凄惨な光景は、その想像だにしえない脅威は、誰しも現実を虚実と疑いたじろぐことすら許さない。
額にじっとりと汗が湧く。獣の放つ瘴気は死臭にも似ている。
だが、そんな中ですらブーンの脳にはまだ冷静な部分が残っていた。
書物にあった伝説の番犬にしては随分と小さい。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:46:32.40 ID:BxVAXokq0<> ほうほう <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:48:42.41 ID:D2uoOPRW0<>
確かどんな本にも、ケルベロスの姿は小山ほどあり、と記されている。
この魔獣が本物でない可能性はないが、完全なものであるという確立もまた薄い。
(’e’;) 「や、やれやれ、とんでもないものが出てきましたねぇ」
( ・−・ )「…。」
(’e’) 「あれ?ちょっと君大丈夫?…気絶してますね、これはいけません」
(’e’) 「ちょっと手を貸してくれませんか、彼を安全な場所に―――」
安全な場所など、このリングの上で一体どこにあるというのか。
( ^ω^)「…手を貸すお、急ぐお!」
だが、見過ごすわけにも行かない。気絶しているという時点でリタイアも同じだ。
大男を二人で獣から遠ざけようと引きずる。すれ違いざまに、運良く生き残り立ち尽くしていた受験者が雄叫びを上げた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:50:15.40 ID:BxVAXokq0<> sie <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:51:21.65 ID:D2uoOPRW0<>
( ;`ハ´)「く、くくく、くそッ!行くアルッッ!褒章はシナーのものアルッ!」
長い髭を二本生やした異国風の装束に身を包む男が、少年の横を抜けて走った。
( ノAヽ)「こわいーの、むりなーの!しかし、フォンハウゼン家の名に掛けて参加権はいただくーの!」
やたら弱気な言葉を発しながら、貴族風の男も槍を構えて駆け出す。
( ^ω^)「おおッ!?」
ほぼ同時に身を屈め、獣の左右から両者が獲物を繰り出す。
( `ハ´)「挟み撃ちでアルッ!」
( ノAヽ)「ありえねーのッ!!」
髭の男は、振った両袖の中から抜き出した円月輪を交差させる。
貴族は上半身を屈めて疾走のスピードを乗せた槍を突き出す。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:54:02.34 ID:D2uoOPRW0<>
二人とも狙っているのは両前足の間接だ。一先ず機動力を封じてしまおうというのだろう。
あわよくば、前のめりに倒れる獣の頭を撫でられるかもしれない。
( `ハ´)「ブチ倒れるアルッ」
だが甘かった。
円月輪は鋼のような硬い毛皮に阻まれ、
大槍はばきりと音を立てて矛先が折れる。
( `ハ´)「な…!」
( ノAヽ)「ぎゃああああああああああ!」
貴族のおぞましい悲鳴が耳を劈く。髭の男が見た時には、男の姿は消し炭と化していた。
( ;`ハ´)「あ、…あ、化けm」
言葉半ば、シナーの横に先ほど咥え上げられていた戦士の、首のない躯がどさりと落ちる。
その音を聞いただけでその躯を見ることは無い儘、シナーの視界を羅列した牙が覆い尽くす。
そして、暗闇の訪れとともに、自分の骨の砕ける音を聞きながら、痛みを感じる前に彼は逝った。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:55:45.55 ID:HF0bRp5T0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:56:10.82 ID:5k9FMtbiO<> やべえな支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:56:50.01 ID:D2uoOPRW0<>
次々と犠牲者が増えてゆく。
これが名誉ある闘技大会か?
ミルナのような、覚悟を胸に戦うものが目指す舞台がこの上にあるというのか?
大男を運ぶブーンの目に映るのは、ただの、一方的な虐殺だ。
(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!! すげぇ! すげえな化け物!」
女が、阿鼻叫喚の渦巻くコロッセウムに高らかに狂った笑い声を響かせるに同時。
恐るべき速さで客席の壁をも駆け上がり、軽い音で空気を震わせて跳躍した。
高く、高く―――獣の頭上。
(* ∀)「―――moett chan dot―――」
真赤な蝙蝠の羽が女の背中から飛び出し両の腕輪が光を帯びて変形する。
血のように赤く湾曲した、鎌のような双子の刃が形を成した。
ロ ン ド
(*゚∀゚)「輪舞曲―――ッ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 00:58:28.82 ID:BxVAXokq0<> ほほう <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:00:40.46 ID:D2uoOPRW0<>
二枚の刃を回転させてリズミカルに舞い踊る。その様はまさに舞い踊ると表現するが相応しい。
青い血がケルベロスの中央の首から飛沫き抉られた首根がぐらりと揺れた。
(;゚∀゚)「ちッ、硬ェ…! 断ち斬れねぇか!」
轟かせる咆哮。
六つの碧眼が忌々しげにつーを睨め付け、二つの首が一斉につーを挟んで口を空ける。
(*゚∀゚)「そんな簡単に喰われるかバーカ」
逆上がりする要領で真上へ飛び上がり、すぐ下で二頭がぶつかり合った。
牙がガチガチと音を立てる。
(*゚∀゚)「一度で斬れねーならもっかい試してやる」
つーへの反撃は別の首が向かってきた、ということは。
一度目の攻撃で深く喉を抉られたせいで、おそらく炎を吐く攻撃が暫く出来ない。
少女は再び刃を構えた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:03:29.52 ID:D2uoOPRW0<>
(;^ω^)「すごいお、あの子ケルベロスと一人で戦ってるお」
客席の壁伝いに移動し、扉の前まで漸く男を運び終えると、少年は少女の果敢な戦いぶりに感嘆した。
牧師風の男はそれに目をくれる暇もなく、ワカンナイデスの居る進行席へと声を掛ける。
(’e’) 「今のうちに、この子を場外に預けましょう、おーい!」
だが、返事がない。
(’e’) 「おい!!頼む、扉を開けて下さい! 気絶している者がいるんだ!」
矢張り、返事はない。
(’e’) 「おかしいな…」
( )「扉は開けられないんだ」
漸く声が返った。静かな湖畔に波打つような、若い男の声だ。
落ち着き払った声音は、この場には明らかにそぐわない。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:04:09.80 ID:BxVAXokq0<> しえん <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:06:28.06 ID:D2uoOPRW0<>
(;^ω^)「開けられないってどういうことだお!?」
( )「テストが終わるまでは開けられない規則でね」
(#^ω^)「ふざけるなお!!!! 皆死ぬまで開けない気かお!?」
身を乗り出してブーンが進行席を見上げる。そこに居たのは、ワカンナイデスではない。
いつの間にか真っ黒な黒衣が柳のように揺れている。
男が言葉を返す様子は無い。
(’e’;) 「どうやら、本当に出してくれない気のようですね」
(#^ω^)「何が闘技大会だお!こんなの―――」
憤りを露わに叫びかけたブーンの耳に届いたのは、少女の悲鳴だ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:07:55.23 ID:D2uoOPRW0<>
(*; ∀)「くッそおおおお――――!!」
即座に振り向き仰ぐ。
先ほどまで勇猛果敢に戦っていた少女の両腕が獣から伸びた二つの頭に両側から噛み付かれ、
千切られんばかりに引っ張られている。
少女の眼前の中央の首は、既に粘着質なものが泡立つような音を立てて再生し始めていた。
そうして、時を待つようにゆっくりとケルベロスが口を開く。
煌々とその喉の奥に漆黒の焔が垣間見える。
( ^ω^)「不味いお…!」
少年は言葉より先に駆け出していた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:10:55.61 ID:BxVAXokq0<> らすと支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:12:35.46 ID:D2uoOPRW0<>
(;゚ー゚)「だめ、つーちゃんッ!!」
少女が立ち上がり駆け出そうとするのを、
( ゚д゚ )「お、おい!」
ミルナが慌ててはしと腕を掴む。
咄嗟に掴んでしまって自分でも驚いたが、振り返る少女に睨み付けられドキリとした。
(#゚−゚)「放して! つーちゃんが死んじゃう!」
観客席は混沌としていた。突然顕れた圧倒的な伝説の魔物が蹂躙する、瘴気と血飛沫の蔓延するリングを見下ろし、
いつその矛先がこちらに向くか知れない恐怖と、仲間が次々に殺されている惨劇に、狂ったように悲鳴を上げ続ける者、
闘技場から逃げ出そうとする者、怒りをむき出しに兵に迫る者―――
( ゚∋゚)「こんなものが参加テストの筈がない、今すぐにやめさせよう!」
クックルも立ち上がり、司会進行席をきと見据える。
だが、ワカンナイデスの姿は見当たらない。それどころか、人の立ち姿が一向に無い。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:14:14.43 ID:D2uoOPRW0<>
J( 'ー`)し「お待ち」
カーチャンが、鋭く言い放つ。
その眼は剣呑に細められ闘技場を見渡している。
J( 'ー`)し「よく見ておいで」
観客席とリングを隔てる柵の前に立ち、懐から取り出した小さなナイフをリングに向かって投げた。
空中で、青黒い火花が舞い散る。銀色の刃先は火花に弾かれてカーチャンの足元に落ち戻る。
( ゚д゚ )「ど、どういうこった…!?」
( ゚∋゚)「対物用結界か」
J( 'ー`)し「邪魔はさせないということだろうね。だが何時の間にこんなものを…」
(*゚ー゚)「つーちゃん…!」
( ゚д゚ )「くそ…! ふざけやがって。ブーン…!」
リングを見下ろすと、ブーンが漆黒の獣に向かい疾走していた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:18:33.96 ID:hjiz9q64O<> ( ^ω^)オモスレー <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:19:45.63 ID:Wx+cLvq90<> きてた支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:19:56.47 ID:D2uoOPRW0<>
走りながら、腰から常備して持ち歩いている聖水の瓶を取り出す。
小さな小瓶だ。だが、相手が深淵の住人であれば水は硫酸となる。
(#^ω^)「デカブツ!!!!!11こっちだお!!!!」
つーに向かって口を空ける中央の頭部に下から投擲する。
小瓶が放物線を描いて獣の牙に当たって爆ぜる。
肉を焦がし溶かす臭煙が立ち上り、ケルベロスは突然の口内の痛みに仰け反り咆哮を上げた。
(*゚∀゚)「ッ!」
両腕を引き絞る力が弱まったが好機、少女は比翼を力強く羽ばたかせる。
自らの血に塗れてはいるが刃は無事だ。その場で空を抱くように両腕を広げ身を捻らせて回転する。
(*゚∀゚)「オラオラオラオラオラァァァァアアア!」
少女の舞は先程まで己を磔けていた両脇の狼頭を切り裂く。
三本の首が慄いてのたうち、四肢でたたらを踏みコロッセウムを揺るがす。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:25:23.94 ID:D2uoOPRW0<>
獣の体が後退する。
怒りに燃える六つの碧眼と三つの頭を我武者羅に振るい、牙を剥き出し魔界の門番は全ての頭で一斉に咆哮した。
轟く獣声にコロッセウムが震える。
(;^ω^)「くッ、駄目だお、こんなんじゃアレは倒せないお!」
聖水も小瓶をいくつぶつけ様が焼け石に水だ。聖水の海にでも落とさない限りあれを滅ぼすことは不可能だろう。
三つの首を斬りおとすしかない。が、余りに硬く頑丈な毛皮を貫くには並の武器では通用しない。
長期戦に感けている余裕はない。
可能性は低いが万が一この怪物が自分たちに興味を失って、コロッセウムから飛び出てしまえば
帝都の市民への被害は予想だにしえない。
それにそもそも不利なのだ。狼の魔物、特にケルベロスともなれば、傷の再生スピードが異様に早い。
一度に片を付けなければ勝機は薄い。
考えあぐねるブーンの頭上に蝙蝠女が羽ばたきが聞こえる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:27:05.42 ID:D2uoOPRW0<>
(*゚∀゚)「おい! てめぇ!」
( ^ω^)「おッ!?」
(*゚∀゚)「さっきの水!」
( ^ω^)「せ、聖水だお」
(*゚∀゚)「まだあるか!?」
(;^ω^)「あ、あと三本しかないお」
(*゚∀゚)「よし、全部よこせ!」
女は隣に着地するなり、随分横柄に言い放ってきた。
( ^ω^)「何か手があるのか―――おおっ!?」
腰から三本の聖水を取り出すと、すぐさま引っ手繰るように取られてしまう。
女はあろうことかその聖水の蓋を開けると、次々に己の腕から生えた剣にぶっかけた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:31:50.73 ID:D2uoOPRW0<>
(;^ω^)「(うわこえぇ) あ、あいつは深淵の住人だお!」
(#゚∀゚)「ちんまんのじゅーりん?何言ってんだおまえ殺すぞ」
ツーは苛立っている。早く追撃を仕掛けねば、またあの狼は恐るべきスピードで回復してしまうからだ。
ブーンもそれは分かっているが、聖水で刃を長くしたとはいえあの獣を一人で倒し切れるかは可能性が低い。
そして、ブーンには一つの確信があった。
( ^ω^)「あいつは魔界の化け物なんだお、誰かが呼ばない限り現世に現れないお」
(*゚∀゚)「だから何だっ!?」
( ^ω^)「召喚士を見つければあいつを深淵に戻せるお!」
(*゚∀゚)「ふん。なるほど―――じゃあ俺があいつをブチ殺す間にやっておけ!」
少女は吐き捨てて直ぐ様飛び立つ。
ブーンはそれが彼女の"時間稼ぎは引き受けた″という意味だと理解した。
先ほどの戦いぶりから、彼女ならば魔物を翻弄し引き付けるに十分な実力だろう。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:33:08.80 ID:D2uoOPRW0<>
(’e’) 「く、矢張り扉は開きそうにありませんね」
セントジョーンズが両手を当てて黄土色のコロッセウムの扉を押し引きするも、びくともしない。
( ^ω^)「兎に角、術士を探すお!」
牧師風の男に簡単に話し、共に探してくれと頼む。男は険しい顔をしてすぐ頷いてくれた。
(’e’) 「ですが一体どうやって探せば…」
( ^ω^)「あんな強力な魔獣を戦わせてるんだお、術士は必ず近くに居るはずなんだお」
深淵の住人を召喚し、使役するにはそれなりの手順と魔力が要る。
魔界の門番ケルベロスともなれば、卓越した魔術の使い手であり、膨大な魔力を消費する筈だ。
そして必ず、体の何処かにある契約の証が―――刺青が、光を帯びて魔力を放っている筈なのだ。
ブーンは其れをよく知っていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:35:56.95 ID:5k9FMtbiO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:36:13.96 ID:D2uoOPRW0<>
( ^ω^)(そもそもケルベロスなんて魔獣を召喚出来るのは―――)
伝説のテラワロスの魔術師。
VIP皇帝に捕らえられている筈の魔術師の末裔が、この魔獣を呼び寄せているのか?
何のために?浮かび上がる疑問は、だがしかし今それを熟考する余裕はない。
一体どこに?
ブーンの脳裏に先ほどの黒衣の姿が過ぎった。
どう見ても兵士のようには見えなかった、あの黒衣の下に輝く印を隠しているのだとすれば。
( ^ω^)「司会席だお!」
見上げる席は高い。とても昇ることは出来そうに無い。ならば、観客席に居る者達に頼むしかない。
ブーンは駆け、あらん限りの声で上を目指し叫んだ。
( ^ω^)「ミルナ!クックル!カーチャン!!!!!」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:37:55.85 ID:hjiz9q64O<> ( ^ω^)オモスレー
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:39:16.90 ID:Wx+cLvq90<> カーチャン! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:40:25.63 ID:7uO+ol80O<> ドッコイダーに見えた <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:40:58.86 ID:D2uoOPRW0<>
彼らは、すぐさまその声に答えを返してきた。
( ゚д゚ )「ブーン!大丈夫か!?」
( ^ω^)「全然大丈夫じゃないけど、頼みがあるお!」
( ゚∋゚)「そちらに行きたいのは山々だが、結界があって行けないんだ!」
結界?その言葉に眉を顰める。
( ^ω^)「兎に角いいお!そっちでお願いしたいんだお!司会進行席にそこから行けるお!?」
J( 'ー`)し「進行席に?」
( ^ω^)「そこにこの魔獣を召喚した奴がいるかもしれないんだお!」
( ゚∋゚)「いや、しかしブーン君…」
クックルが返した答えは、ブーンを打ちのめす。
( ゚∋゚)「誰の姿も、見えないんだ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:41:02.90 ID:PRhxkAdlO<> しえしえ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:43:00.52 ID:D2uoOPRW0<>
振り仰ぎ、進行席を見る。居ない。誰も居ない。
(;^ω^)「そ、そんな―――」
馬鹿な。
まるで思考を次々に先回りされるかのように、伸ばした手が宙を掻く。
他方ではつーがケルベロスと戦っている。だが、その眼に焦りの色が見える。
矢張り彼女一人では辛いのだ。
どうする。どうしたらいい?
答えは一つだ。
( ^ω^)「皆!黒衣の男を捜してくれお!まだ遠くには行って無いはずだお、客席に紛れてるかもしれないお!」
( ゚д゚ )「黒衣の男が術士なのか!?」
( ^ω^)「多分そうだお!体のどこかに光る刺青がある筈だお!」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:44:36.48 ID:Wx+cLvq90<> 俺が黒衣だ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:46:46.56 ID:D2uoOPRW0<>
( ゚∋゚)「分かった、手分けして探そう!進行席には私が行く!」
(*゚ー゚)「わ、私も手伝います!」
J( 'ー`)し「死ぬんじゃないよブーン!」
観客席の上で、各々散り散りになってゆくのを見送り、少年は漆黒の魔獣を振り返った。
赤い戦士が接近しては離れ、翻弄するように戦っている。
ブーンは静かに息を吸い、吐き出した。
皆が術士を探し当てるまで頼り待つのは危うすぎる。
だから、己が何をするべきか、ブーンには一つしかなかった。
腰の短剣を抜く。
装飾も何もない使い古して飴色に艶めく柄皮を握る。
幅広の刃にはシンプルな柄とは対照的に、幾何学的な文様が微細に彫り込まれている。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:50:55.35 ID:D2uoOPRW0<>
実戦というよりも、それは儀式向けの短剣だった。
その刃を左の手首に当て、躊躇い無く引いた。鮮血が溢れ出す。
―――――不滅の道を行きし滅びの呼び水
ぼたぼたと真紅が闘技場の土に染み込む。
―――――汝は絶えず尽きることなく 絶えず飽くことなく 永久に求め彷徨いし
ぼた。ぼた。ぼた。ぼた。
―――――暗黒の深淵の扉より深く 最も暗き底に繋がれし 罪深く逆巻く欲望と混沌の王
ぼた。ぼた。…ズズ。
―――――血と魂の盟約に於いてその者の名を呼ぶ
土に、染み込み、真紅の血はさらに奥深く、吸い込まれるように消える。
( ^ω^)「――――来いお!ロマネスク!」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:52:19.30 ID:D2uoOPRW0<>
( ФωФ)「呼んだである?」
(;^ω^)「兎に角あいつをどうにかしてくれお!」
( ФωФ)「む?」
(;゚∀゚)「くッ、なんつー再生力だ、次から次へと回復しやがって…!」
( ФωФ)「ふむ。ケン坊であるな。懐かしいのである。昔は散々苛めてやったのであるが、随分小さくなったな」
(#^ω^)「そんなのどうでもいいから早く魔界に送り返してくれお!!!!」
( ФωФ)「術士を殺せばいいではないか」
(#^ω^)「見つからないから言ってるんだお!! 早くしろお!!」
( ФωФ)「じゃあいい?」
(#^ω^)「おっ!?」
( ФωФ)「我輩喰っていい?」
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「GO」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:54:06.69 ID:Wx+cLvq90<> ロマかわいいよロマ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 01:56:20.83 ID:D2uoOPRW0<>
まだか。まだなのか。振るう両腕に力が徐々に伝わりづらくなる。
先ほど喰い付かれた傷口から瘴気が回り始めているのだ。それに血も流しすぎている。
(#゚∀゚)「くそッ!調子に乗ってんじゃねーぞ!!!11」
右手から来る牙を左に良ければ、左手から来る牙を下に避ける。上に避ければ炎の餌食だ。
(* ∀)「ぐッ!?」
だが下に避けた途端身体を弾き飛ばされた。前足の鋭い爪が少女の身体に血の花を咲かせる。
翼を羽ばたかせ宙で留まろうとするが、その判断は過ちだった。
(*゚∀゚)「しまった…!」
先ほどの一撃で翼にダメージを受けた。
バランスを崩すつーの体を目掛け、中央の首が炎を吐き出す。
最早、これまでか。
( ФωФ)「食事の時間である、犬っころ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:01:45.11 ID:Z+GpvnzuO<> つC <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:02:12.81 ID:Wx+cLvq90<> 眠いけど見届けたい <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:03:01.67 ID:D2uoOPRW0<>
( ФωФ) ニィ 「我輩のな」
壮年の声を聞いた。穏やかな中に軽妙で、蠱惑的に鼓膜を震わせる、不思議な声だった。
眼を開けると、一面に漆黒の色が広がっている。唐突に夜が訪れたのかと思ったが、それは毛並みだった。
ケルベロスのものと似ているが、ずっと繊細で艶やかな冷たい漆黒の毛皮。
自分の身体が、それにへばり付いているのを理解するのに、数秒かかった。
(*゚∀゚)「…」
青く炎のような鬣をざわめかせ、
太く逞しい鋼の筋肉を漆黒の滑らかな毛皮で覆い、
その四肢は銀色の鋭い爪を携え、
背には鴉に似た七枚の濡羽が黒曜石の如く鈍く輝く。
金色の瞳は縦長の瞳孔が収縮して眼前の獲物を捕らえ、嘲笑うように牙の羅列する口を開くと真赤な舌が舌なめずりをした。
まさにその身の丈は易々とケルベロスを超え、見下ろしている。
見上げる狼の姿を模した魔獣の眼が、初めて怯えにその色を変えた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:03:57.78 ID:ID//VTzb0<> sien <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:04:55.31 ID:hjiz9q64O<> ( ^ω^)オモスー <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:06:17.78 ID:D2uoOPRW0<>
( ФωФ)「矢張り小さい。さてはお前、我輩と同じ『片鱗』か」
番犬が吼える。獅子は意にも介さない。
( ФωФ)「まぁそれでも腹の足しくらいにはなる。」
たった一瞬だった。
( ФωФ)「お前は前菜である」
自分があれほどまでに苦戦していた化け物を、このさらに巨大な化け物が、
まるで、蛇がネズミを飲み込むかのように三つの頭を上から一口に喰らいついて、
そのとき、獅子の口は酷く広がった。
歪に、元より形などないかのように、闇がただ獅子の形をたまたま象っているだけで、
捕食する時にその本性を現したかのように、喰らい付いて、んぐんぐと、咀嚼もせずに飲み込んでゆく。
悪夢を見ているようだ。
だが、これが悪夢だとしたら、最高に爽快だ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:08:14.62 ID:Y3CSWYGr0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:08:15.07 ID:Wx+cLvq90<> ロマネスクさんマジぱねぇっす <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:09:16.95 ID:Y3CSWYGr0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:09:44.15 ID:D2uoOPRW0<>
へばり付いている黒い毛皮を、両手で強く握った。
黒獅子はつーの存在など微塵も感じていない。
(*゚∀゚)「(すげぇ…!)」
( ^ω^)「赤い人、退くお!!!」
( ^ω^)「血と魂の盟約によりて名を呼びし者ブーン・バロスがその手綱を取り縛鎖する」
少年の口調は、余りに早すぎてその言葉を聞き取ることが出来ない。
だが何をしようとしているのかはおぼろげに察しが着いた。
少年の腕から流れる血が細い赤糸となり傷から放射線状に飛び出す。
理の異なる者は還さねばならない。
(*゚∀゚)「ちっ」
ば、と毛皮から手を離し、重たい翼を何とか羽ばたかせてその背を離れる。
当のロマネスクはまだケルベロスの足先を飲み込めていない。捕食しているうちにやってしまおうというのだろう。
巻き添えになって闇の住人にされてはたまらない。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:13:31.41 ID:D2uoOPRW0<>
つーが背から離れた途端、幾十重もの真紅の糸が通り過ぎた。
独りでに動く生糸のような其れは極細の鎖。
黒獅子を覆い囲むようにして地面に降り立ち、
ずるずると這い回って巨大な赤の五芒星、幾何学的模様、数字を描き出し―――
封印の魔方陣を、結成する。
( ФωФ)「む。卑怯であるな、メインディッシュめ」
まだ食事中の獣は、残りの足を口の中に納めると、少年を振り向いて舌なめずりした。
( ^ω^)「お前とまともにやりあうくらいなら、ケルベロスの相手をするお」
( ФωФ)「ひひひ、利口だ」
( ^ω^)「汝ロマネスク 我が戒めの下に!!!!11」
力ある言葉を少年が一言呟くと、血の魔方陣が歯車を回すようにぐるりぐるりと回り、光を放つ。
立ち上った光は獅子の全身を覆い、魔方陣が一際大きく広がったかと思えば、ぎゅうと収斂して光ごと魔物の身体を縮めた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:14:44.10 ID:7+zZP9zdO<> しえ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:16:03.99 ID:D2uoOPRW0<>
( ω )「―――」
黒獅子がただの猫の姿に戻るに同じくして、少年はその場に倒れ付す。
血を使いすぎているのもあるが、短い時間とはいえ、随分魔力も使った。
(*゚∀゚)「お、おい!」
すぐ傍に降り立ったつーが少年を揺り動かした。意識はないが、息はしている。
(’e’) 「…」
少年の血は封印。血は強大な魔物の力を封じ込めて使役するための礎であり、繋いで置く為の鎖だった。
だがこんなにも大きな力を繋ぎ止めるには、血だけでは到底足りるまいに―――一体あの少年は何者だ?
そしてあの化け物は―――?
巨大な化け物の消えたコロッセウムは静まり返っていた。
ただの数瞬のことであったが、コロッセウム中の者が悪夢の真っ只中に居たようにただ呆然としている。
機から見ていた者たちは、テスト用の化け物を、さらに巨大な化け物が突然現れて食い殺したようにしか見えなかったろう。
ただ同じリングの上で、生き残った者の二人だけが僅かながらに感づいている。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:17:41.66 ID:D2uoOPRW0<>
怯え呆然とする兵士を押しのけ、進行席に踏み込んだクックルが見たのは。
( ゚∋゚)「――――!」
机の下に静かに眠らされている、ワカンナイデスと二人の兵士の姿だった。
第十一話へ続く <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:19:47.13 ID:ID//VTzb0<> 乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:24:54.19 ID:5k9FMtbiO<> 乙乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:25:07.10 ID:D2uoOPRW0<> 以上、「第十話 登録会」投下終了です。
やっとゴッドイーター戦闘パートがはじまたようです。
皆さん二日に跨いで支援と保守本当に有難うございました。
もう感謝しきれないので続きを夢中で書くことでお返し出来たらと思います。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:26:23.32 ID:he5KnroLO<> 華麗なるロマネスクの華麗なる伝説
堪能したよ乙
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:26:30.14 ID:Fdi+E0pi0<> おつおつ待ってるよー <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:30:52.35 ID:uZDgWzhd0<> 乙なんです <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:32:37.87 ID:D2uoOPRW0<> 何かもう( ФωФ)←こいつ主人公みたいになってますが、
まだ( ^ω^)にも活躍して欲しいですね!
無いかもですが質問あれば <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:38:35.34 ID:lpQ87p0JO<> いいねいいね。次回も楽しみ
乙! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:38:47.54 ID:7+zZP9zdO<> 聖水ってそんなパンパカ使えるような安価なもんなの? <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 02:43:49.78 ID:Z+GpvnzuO<> 乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:45:39.93 ID:D2uoOPRW0<> >>142 世界観としては、値段は安くはないですがそこまで高くないと思います。
RPGによくあるように売店で売っているのではなく、教会や何かで譲ってもらっているっぽいです。
ブーンは仕事上常に四、五本持ち歩いています。
ちなみに今回は持ってるの全部つーにぶん取られた感じです。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:48:19.45 ID:he5KnroLO<> >>142
ロマネスクの好物が気になります
やっぱ少女趣味なんですか? <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 02:54:14.41 ID:D2uoOPRW0<> >>145
( ФωФ)「無垢なる魂とその生きた血肉は我輩の好むところとするものなのである」
*(‘‘)* ビクッ
(*゚ー゚) ビクッ
ξ゚听)ξ ビクッ
川 ゚ -゚) ビビビクゥッ
トン ( ^ω^)つ川 ゚ -゚) そ
川 ; -;) ブワ
でも特に何でも喰ってしまいます。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 03:00:00.80 ID:D2uoOPRW0<> さて、そろそろ風呂入って寝ます。
クリスマスなので次回は十一話とセットで何かを投下出来たらいいなと思ってます。
重ねて皆さん支援有難うございました。乙って暖かくて、きもちいいよぉ…おやすみなさい <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 03:36:44.85 ID:D2uoOPRW0<> 連投すいません。チェックしてたらとんでもないミスに気づきました。
以下の部分を>>103と>>104の間に入れて読んでください。そして本当におやすみなさい。
(*゚∀゚)「―――nant cott」
何事が呟く。あわや地面に落ちかけた聖水の流れが留まり、ぶるぶると震えて重力に逆らい、
真赤な刃を包み込んだ。
(;^ω^)「…!(見たことも無い魔術だお)」
(*゚∀゚)「―――tera cott ! 」
力の篭った言葉と共に、両腕を勢い良く振るい上げる。その腕には、先ほどの真赤な刃が
否、双子の曲刀はさらに赤く精錬な輝きを帯びて、倍程も長く伸びている。
(*゚∀゚)「っし、さっきよりかはイケるな」
確かめるように頷くと、再び翼を広げて女が飛び立とうとしているのが分かった。
( ^ω^)「ま、まつお!」
(*゚∀゚)「あァ!?」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 05:32:58.69 ID:yKudFS6o0<> 乙! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/12/04(土) 10:28:00.79 ID:9PUikqqcO<> おはよう
すげえ盛り上がってきてるな
次回も楽しみすぎる、乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 12:14:04.40 ID:hlQcShA3O<> よむほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/12/04(土) 12:25:43.55 ID:BxVAXokq0<> 乙 <>