◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 18:59:16.97 ID:a/eTOM7X0<> 僕にだって意地がある! <>从 ゚∀从は鋼鉄の処女のようです ◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:02:54.56 ID:a/eTOM7X0<> ↓初北産業↓
サイバーパンク
オムニバス
ノワール

まとめ(ブーン芸さん)
http://boonsoldier.web.fc2.com/maiden.htm

おっしゃーいくぞこの野郎 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:03:50.47 ID:bv4NHFNC0<> だそうですがどう思います? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:04:14.87 ID:n/y9l2O60<> 支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:05:22.69 ID:a/eTOM7X0<> track-ε

――冷やりとした岩肌の感触を尻に敷き、目の前の焚火の揺らめきをぼんやりと見つめる。
脳核時計を見れば、約予定の時間まで残りニ十分を切るところだった。

('A`)「……なぁ、聞いてもいいか?」

焚火の向う、こちらに背を向けて夜空を見上げる“歯車の王”に呼び掛ける。
やはり、どうしてもオレには納得がいかなかった。

|::━◎┥「ナンダ?」

('A`)「あんたは、死ぬのが怖くは無いのか?」

|::━◎┥「……」

広大な夜の砂漠を背にして振り返った彼は、オレの質問に俯く。
“祖国の為に自分の首を捧げる”。三日前、出発の直前に彼がそう宣言した時、兵士達はオレの想像以上に動揺していた。
誰も彼もが反対を叫び、中には泣き出すものまで居たのだから、この男が“ウヒッブ派”の中でどれだけ大きな存在だったのかがわかるというものだ。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:06:43.77 ID:lY6L8Um1Q<> 私怨 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 19:06:48.98 ID:V1nEMSFO0<> 支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:08:37.10 ID:a/eTOM7X0<> |::━◎┥「……怖イトモ」

表情も何もない彼の顔からは、彼がその一言をどんな気持ちで音にしたのかは分らない。

|::━◎┥「死ヌノハ何時ダッテ怖イ」

ただ、ゲリラの首領を張る豪傑のものとは思えないその言葉に、オレは何故だか少しほっとした。

|::━◎┥「安イ言葉デ取リ繕オウトハ思ワン。正直ニ言オウ。死ヌノハ私ダッテ怖イ」

('A`)「逃げ出したいと思った事は?」

|::━◎┥「何度モアッタトモ。今ダッテソウダ」

('A`)「それは嘘だな。少なくとも、“今だって”の部分は」

|::━◎┥「フハハハ、分ルカ?」

“歯車の王”がしゃがみ込み、岩の窪みに溜まった砂を掬う。
月明かりに照らされたそれは、銀の燐粉のようにも見えた。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:11:24.34 ID:a/eTOM7X0<> |::━◎┥「初メテ義体化手術ヲ受ケタノハ、十八ノ誕生日カラ一週間タッタ日ノ朝ダッタ」

|::━◎┥「当時、既ニげりらノ構成員トシテAKヲ握ッテイタ私ハ、ソノ前ノ晩、哨戒任務ニアタッテイタ」

|::━◎┥「月ノ綺麗ナ夜ダッタ。前日ニ大キナ戦闘ガ有ッタカラ、今日ハ敵モ大人シクシテイルダロウ。ソンナ油断ガアッタカラカ」

|::━◎┥「私ガ踏ンダノハ、渡辺ノ置キ土産ノ跳躍地雷ダッタ」

|::━◎┥「一緒ニ任務ニアタッテイタノハ私モ含メテ三人。ソノ中デ私ガ最年少ダッタ」

|::━◎┥「地雷ハ、踏ンダ本人ノ私ダケデナクソノ場ノ全員ヲ巻キ込ミ爆発シタ」

|::━◎┥「信ジラレナイコトニ、私ガ目ヲ覚マシタノハ其処カラ三きろモ離レタ自分達ノ拠点ノ簡易手術室ノべっどノ上ダッタ」

|::━◎┥「後カラ聞イタ話デハ、アノ時一緒ニ哨戒任務ニ当タッテイタ二人ガ、私ヲ拠点マデ運ンデクレタトイウ」

|::━◎┥「彼等ハ、最年少デアル私ヲ手術室マデ運ブト、どあノ前デ事切レタソウダ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:11:43.26 ID:NLEKrcxx0<> 支援させてもらおう <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:13:45.38 ID:a/eTOM7X0<> “歯車の王”はそこで言葉を切ると、砂を乗せた掌を裏返した。
零れ落ちる銀砂は、夜風に乗りヴェルヴェットブルーの砂漠の上を舞う。
LEDの瞳でそれを見送りながら、“歯車の王”は言葉を次いだ。

|::━◎┥「ソレ以降、私ハ今ニ至ルマデコノ鋼ノ体デ戦場ヲ駆ケテキタ」

|::━◎┥「アノ時、ドウシテ私ダケガ助カッタノカ。今デモ私ハ考エル」

|::━◎┥「当時ノ私ノ上官ハ、私ガ最年少ダッタカラ、彼等ハ私ヲ優先シタノダロウト言ッテイタガ、私ハソレデハ納得ガイカナカッタ」

|::━◎┥「……ダガ、此処ニ来テヤット彼ラノ気持チガ分ッタヨウナ気ガスル」

('A`)「……」

|::━◎┥「死ヌノハ怖イ。ダガ、ソレ以上ニ自分ノ役目ヲ果タセナイママ死ヌノガ怖イノダ」

……結局、どんなに他人を嫌おうと、人間は人間の中でしか生きられない。
コミュニケーションを厭い、一人で自分の好きな事をしているのは、確かに心地よいだろう。
だが、“自分”という畑の中だけで育った心は、やがてゆっくりと腐敗していく。“他人”という風雨が無ければ、心は簡単に“死ぬ”のだ。
部屋に閉じこもり、窓を閉め切って扉に鍵をかけても、結局その扉は自分から開けることになる。
それだけ、人間という生き物は弱い。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:16:03.75 ID:a/eTOM7X0<> ('A`)「そう…だな……」

自分の役目。
オレの役目はなんなのだろうか。
少なくとも今はキュートの命を守りぬく事だ。それがオレの仕事だ。
だが、それにオレは命を賭けられるか?
護衛とはいえ、彼女とは所詮書類上の関係。彼女の命がオレのそれより重くなることは無い。
オレが命を賭けられる事……。

('A`)「それは、どうやったら見つけられるんだろうな」

|::━◎┥「ハハ、スグニ見ツカルヨウナモノデハナイサ。焦ルコトハナイ」

“歯車の王”はオレに向き直る。

|::━◎┥「ソウダナ…君ノヨウニ若イウチハ、兎ニ角何ニデモ全力デ取リ組ンデミルトイイ」

|::━◎┥「何ニデモ死力ヲ尽クスノダ。全テヲ守ルツモリデ、全力ヲ出セ」

|::━◎┥「勿論、我々ハ神デハナイ。全テヲ守レルワケガ無イ。ソレデモ、死力ヲ尽クセ」

|::━◎┥「ソウスル内、自分ノ限界ガ分ッテクル。何ガ出来テ、何ガ出来ナイノカ。自分ノ器トイウモノヲ見極メルノダ」

|::━◎┥「ソウスレバ、自分ノ役目モ自ズト見エテクルサ」
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:18:32.89 ID:a/eTOM7X0<> ('A`)「でも、それって、凄く遠回りな気がするんだが」

|::━◎┥「確カニ遠回リダロウ。ダガ、近道ヲシタ人間ニハ絶対ニ分ラナイコトモ有ルモノダ」

そう言って、歪な電子音声で笑う彼はとても大きくて。

('A`)「……」

なんだか、父親みたいな人だな、と不覚にもそう思ってしまったオレが居た。

『シャー・アーラ』

“歯車の王”の持つ時代遅れなレシーバーから、壮年の男ものと思われるざらついた声が零れる。
“作戦参謀”の用意は整ったようだ。

『渡辺との交渉のセッティングは澄みました。奴らは、そこから北東へ1マイルの兵器プラント内を交渉場所に指定してきました』

|::━◎┥「ソウカ。ゴ苦労ダッタナ。貴様ハソノママ中枢ニ帰還セヨ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:18:48.85 ID:X0t6PJBz0<> しえーん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:20:18.05 ID:SeRSXmqC0<> っC <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:20:56.97 ID:a/eTOM7X0<> 『……シャー。私は今でも反対です。貴方ほどのお方がみすみす大敵に首を差し出すのを黙って見ているなんて…他に、策は無かったのですか?』

|::━◎┥「ヨイノダ。最善策、トハ言エンダロウガナ……。私モ覚悟ノウチダ」

『……』

|::━◎┥「コレカラ、むずりーまハ大ナリ小ナリ変動ヲ迎エルダロウ。同志達ノ中ニモ、自ラノ道ヲ見失ウ者ガ出テクルニ違イナイ」

『シャー……』

|::━◎┥「貴様ハ、ソンナ彼ラヲ出来ル限リデイイカラ導イテヤッテクレ」

『私なぞに、そんな事が出来るものでしょうか…?』

|::━◎┥「出来ルトモ。コノ20年、私ノ作戦ニ苦言ヲテイシ続ケタノハ、ドコノドイツダ?」

『……』

<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:23:14.78 ID:a/eTOM7X0<> レシーバーと“歯車の王”。二つの機械――いや、“二人”の間に沈黙が降りる。

長年連れ添った戦友達は、お互いに何を思うのだろう。

その静寂の中には、オレなんかでは計りしれない彼らの積み重ねた時間があって。

|::━◎┥「我ガ祖国ニ、栄光アレ」

それらを振り切るように通信を切った“歯車の王”の姿があまりにも悲壮で。

|::━◎┥「頼ンダゾ…シラヒーゲ……」

オレはただ、彼のその、大きな背中を見つめるしかなかった。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:25:54.24 ID:a/eTOM7X0<> ※ ※ ※ ※

――電子錠の下りる音を背中に、私は室内を見回す。
耐衝撃用コンクリートの壁に掛けられたロココ調のタペストリー、リノリウムの床に敷き詰められた毛足の長い豪奢な絨毯。
手狭とすら言える小さな執務室内を、よくもここまで“自分一色”に塗り替えたものだ。

从'ー'从「さ、座って座ってぇ。生憎紅茶しかないけど、二人は何がいい?」

从 ゚∀从「私は遠慮する」
  _
( ゚∀゚)「僕はアッサムをお願いしようかな」

そそくさと執務机から立ち上がる女総帥を笑顔であしらい、我が“依頼人様”は深々とソファに腰を下ろす。
ここまで来ると、彼の鋼の心臓は一種の国宝級と言っても差支えないだろう。

从'ー'从「はいはぁい。ちょっと待ってねー」

サイズの合わないスリッパをぱたぱたと言わせながら、女総帥は部屋の隅の流し台に駆けていく。
そう言えば、給仕や秘書は居ないのだろうか、とどうでもいい事を考えた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:30:13.38 ID:X0t6PJBz0<> わたしにだって、支援することぐらいはできるさ! <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:33:26.87 ID:a/eTOM7X0<> 女総帥は慣れた手つきで紅茶を淹れると、二人分のティーカップを持って私達の対面のソファに腰掛けた。

从'ー'从「先ずは長旅お疲れさま。色々大変だったでしょー?」
  _
( ゚∀゚)「いやいや、それほどでも」

カップをロ―テーブルに並べながら、談笑するかのうように女総帥は聞いてくる。
へらへらと笑う我が“依頼人様”とも相まって、ここが中東の兵器工場内であることを一瞬忘れるところだった。
  _
( ゚∀゚)「特に、これといった危険もなく、実に優雅な小旅行でしたよ。海底を走るリニアなんて、僕のような小市民にはなかなか縁の無い代物ですしね」

ティーカップの中に目を落とし、へらへらと笑う”依頼人様”。
一度、彼にも”教育“という名目で鉄拳を振り下ろす必要がありそうだ。
  _
( ゚∀゚)「…それで、今からでもお土産話をしたい所なんですが…そうもいきそうにはありませんな」

……と思ったのだが、その私の認識は彼が一瞬の後に目を細めた事で、やはり撤回せざるを得なくなった。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:36:15.61 ID:a/eTOM7X0<> ※ ※ ※ ※

――非電脳の手錠の感触を手首に、オレはその巨大なシャッターをくぐる。
ぬかるむ砂の中を何時間も歩いたため、足はもうくたくただった。

o川*゚ー゚)o「ここが、渡辺の兵器工場……」

傍らを歩く“現相棒”の呟きに、オレは辺りに視線を走らせる。
薄暗い地下格納庫の中には、未だかつて見たことのないデザインの多脚型戦車や強化装甲服(アーマーギア)が、制御ケーブルに繋がれてそこかしこに鎮座している。
恐らくは未だ公式発表されていない兵器達なのだろう。だとすると、さしずめ“秘密兵器工場”という陳腐な肩書も間違ってはいない。

('A`)「……スクープの山を前にして、カメラを握れないってのはジャーナリスト的にはさぞかし悔しいだろうな」

o川;゚ー゚)o「それは……」

オレの皮肉に、彼女は申し訳なさそうに口を噤む。
わかってる。これがただの八つ当たりだってことぐらい。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:38:54.52 ID:a/eTOM7X0<> ('A`)「…わりぃ。なんか、苛々しちまって」

o川*゚ー゚)o「ううん…いいよ」

オレ達の周囲を囲んだウヒッブ派の戦士達は、今、どんな気持ちなのだろう。
オレ達の目の前に立つ鋼鉄の背中は、今、何を思うのだろう。

交渉が成立すれば、この背中はもう二度と、あの太陽の輝きを背負うことはない。
オレ達は渡辺に身柄を保護され、日本の土を踏んで……そこから先、彼らはどうなるのだろう。

o川* ー )o「……何でかな。もう少しで、私は人質から解放されるかもしれないのに……どうしようもなく、悔しいのは、何でかな」

目を伏せた彼女の拳は、強く握られていた。

('A`)「ああ…何で…何だろうな……」

絞り出すようなオレの呟きと同時、格納庫内の照明に電気が通う。

从'ー'从「おっまたせー♪」

“裁判官”の、遅れた到着だった。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:41:32.64 ID:a/eTOM7X0<> ※ ※ ※ ※

  _
(#゚∀゚)「ちょいと失礼!」

叫ぶや否や、ジョルジュがロ―テーブルを蹴りあげる。
宙を舞うティーカップ、空を泳ぐその中身。
エメラルドの光条が、それらを一刹那前まで乗せていたロ―テーブルを貫いた。

从 ゚∀从「二人とも伏せろ!」

背後を振り返り、右手のネイルガトリングを起動。
部屋の隅の天井を這う空調ダクトに向けてマガジンの三分の一を叩き込む。

マズルファイア、後、硝煙。

屑鉄となったダクトの残骸が床に落ちるのを確認。
そこへと駆け寄った。

从 ゚∀从「…逃げられたか」

血の一滴も付着していない鉄片を投げ捨て、ダクトの断面へと首を巡らせる。
幅は精々20センチと言ったところ。とても人一人が侵入出来る広さじゃない。
だからこそ、私も油断した。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:42:02.25 ID:X0t6PJBz0<> 支援させていただく! <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:43:55.68 ID:a/eTOM7X0<> 从 ゚∀从「感謝する。貴様が気付かなければ、危なかった」
  _
( ゚∀゚)「僕は何時も紅茶を呑む前に、茶葉で占いをする癖があってね。…今日は“水面にその結果が出た”」

从 ゚∀从「で、結果は?」
  _
( ゚∀゚)「どうやら、今日は日本で言うところの“大凶”らしい」

戯言を繰る間も、ジョルジュは腰からケスラー社製のワルサ―を抜くと、油断なく周囲を警戒する。
矢張り、鉄火場を潜ってきたのは一回や二回では無いらしい。

从;'ー'从「“彼”ってば、人気者ね。本当、うんざりするくらい」

ソファの足元に屈み込んだ女総帥が、意味ありげにため息をつく。
常に余裕の笑みを浮かべている印象のある彼女だが、今回ばかりはそうもいかないようだった。

从 ゚∀从「――さて、私としては、ここで依頼人と依頼物を受け渡して報酬を受け取ればそれでハッピーエンドなのだが……」

从;'ー'从「新しいお仕事のお知らせ。私とその“依頼物”をなんとしても死守する事」

从 ゚∀从「報酬は?」

从;'ー'从「言い値で結構!」

从 ゚∀从「毎度ご利用ありがとうございます」

女総帥の口惜しげな顔を後ろに、私は右手の関節部に外付けのドラムマガジンを装着する。
この事を、後で主に聞かせてやろう。きっと跳びあがって喜ぶに違いない。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 19:46:10.03 ID:n/y9l2O60<> 支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:46:24.54 ID:a/eTOM7X0<> 从 ゚∀从「ミスタジョルジュ、ミスワタナベを」
  _
( ゚∀゚)「僕なんかに任せちゃっていいのかい?」

从 ゚∀从「これから“上司”になる相手だろう。それとも、貴様はミートロ―フの下に身を寄せるつもりか?」
  _
( ゚∀゚)「あいあいさー。ったく、肉体労働は本職じゃないってのに……」

ぶつくさ言いながらもワタナベの近くへとジョルジュが移動した事を確認。
私は部屋唯一の窓に近づき、外の様子を窺う。
窓外に広がる夜の砂漠は、蒼い静寂の底に沈んでいた。

从 ゚∀从「基地内のセキュリティに異常は?」

从'ー'从「ピクリとも。さっきの貴方のどんぱちで初めて騒ぎ始めたわ」

从 ゚∀从「……随分と厄介なお客人のようだな」

先のエメラルドの光条。
リニア内で見たそれと、同じあの輝き。
第三勢力が、本格的に動き始めたのだろうか。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:48:50.59 ID:a/eTOM7X0<>   _
( ゚∀゚)「ハインちゃん、そこ、危ないぜ」

ジョルジュの言葉に、顔を上げた、その一瞬。

「いいいいいっやほおおおおぉぉぉぉぉぉおお!」

その衝撃は、やってきた。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:51:24.25 ID:a/eTOM7X0<>  ※ ※

――悠然とした足取りで、女悪魔はオレ達へと近づいてくる。
居並ぶ兵器の群れの中を、護衛も付けず。
ゲリラの構えるAKもまるで無視して、ジェラルミンケースを片手に、泰然と、ある種風雅に。
その様は、「自分こそがこの場の支配者だ」と。無言のうちに示しているようですらあった。

从'ー'从「こんばんはー。みなさんお揃いで、ようこそいらっしゃいましたー」

|::━◎┥「我々ノ要求ハモウ聞イテイルナ?」

从'ー'从「人質の解放と、あなたの首を頂戴する代わりに、私達渡辺グループ関連の施設の一部退去、と言ったかしら」

|::━◎┥「イカニモ」

ゲリラの首領が頷くと同時、右に一歩ずれる。
真正面から相対することになったオレ達を見て、女悪魔は面白そうに眼を細めた。

从'ー'从「あー!ドクオさんじゃなーい!久しぶりー。元気だったぁ?」

('A`)「ああ、そこそこな。少なくとも、今てめぇのツラを見るまでは元気だったよ」

从'ー'从「えぇー、何それー。ツンデレ?それってツンデレ?」

(#'A`)「……」
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:53:28.55 ID:a/eTOM7X0<> |::━◎┥「ソレデ、コウシテ直々ニオ出マシニナッタトイウコトハ、交渉ニ応ジルトイウコトト受ケ取ッテイイノカ?」

しびれを切らしたような“歯車の王”の言葉。
ワタナベは、あの酷薄な笑みに口を歪めると、手にしたジェラルミンケースを床に置き、開いた。
ケースの中には、携帯式ホログラファー。
微かな起動音の後、それが一つの映像を映し出す。

从'ー'从「祖国の為なら自分の首も差し出すその心意気、まさに“サムライ”と言うに相応しいよね。気にいっちゃった♪」

ホログラフが映すは、渡辺の施設の一つと思われる工場。
建物の中から荷物を運び出す人の波は、まるで軍隊アリの行進のようにも見えた。

从'ー'从「御覧のように、この三日間で東部の方は貴方の要求通りもう撤去を進めてるわ。あと一週間もすれば、全部とはいかないまでも我々の子会社の二社ぐらいはこのムズリーマから完全に撤退するよ」

|::━◎┥「ナルホド…勇敢ナ決断ダ」

从'ー'从「後は、貴方が人質を解放して、その堅そうな首を私に差し出してくれれば、交渉成立だねぇ」

“歯車の王”は、覚悟を決めるかのように黙り込む。

交渉成立。

それは、あまりにもあっさりとした、判決。

本当に、これで決着がつくと言うのか?あのワタナベが、こうも簡単に引き下がると言うのか?
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 19:55:32.53 ID:kmoOHEnJ0<> 支援するんだから! <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:55:58.35 ID:a/eTOM7X0<> (;'A`)「……」

違和感。そして、形を持たないもやもやとした予感。
考えが纏まらないうちに、“歯車の王”が動く。
彼は、前にオレから取り上げたカスタムデザートイーグルをホルスターから抜くと、スライドを引き、マガジンを抜きとった。

|::━◎┥「ソウ言エバ、君ニ返シ忘レテイタナ」

振り返り、彼はマガジンをオレに手渡す。

|::━◎┥「随分ト使イ込マレテイルガ、ナカナカイイ銃ダ」

('A`)「そんな……」

|::━◎┥「君ノ愛銃デ、私ノヨウナ男ヲ撃ツノハ失礼ダロウガ許シテクレ」

“歯車の王”の頭に、銃口が押し付けられる。

いいのか?
このまま、彼を死なせて、本当に全てが解決するのか?
このまま、オレは黙って彼が頭を打ちぬくのを見ているだけでいいのか?
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 19:58:25.66 ID:a/eTOM7X0<> |::━◎┥「最後ニ、老兵カラ君ニ、戯言ヲ贈ロウ」

オレの迷いを見透かしたかのように、彼はそのLEDの瞳をオレに向けると。

|::━◎┥「――振リ返ルナ。タダ、嵐ノ夜ヲ往ケ」

引き金を、引いた。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:01:12.24 ID:a/eTOM7X0<> ※ ※ ※ ※

――巡航ミサイルが突っ込んできたのかと、本気でそう思った。
それほどまでに、その衝撃は強大で、暴力的で、圧倒的だった。
  _
( ;゚∀゚)「ハインちゃん!」

もうもうと立ち込める土煙の向うから、ジョルジュの声が聞こえてくる。
先の衝撃は窓を周りの壁ごと破壊し、その近くにいた私をも巻き込んで収まった。
パラメーターを確認する。
今の一撃だけで、ボディの全体破損率は15%を割っていた。

从 ゚∀从「私は無事だ!そっちは?」
  _
( ;゚∀゚)「ノープロブレム!」

从 ゚∀从「“上司”を連れてすぐに逃げろ!このお客は私が引き受け……」

「お喋りしてる場合かにゃあ〜?」

耳元で、粘ついた声が囁く。
同時、左半身を単車の衝突が如き衝撃が襲った。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 20:02:30.11 ID:6yV/2i+40<> しえ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 20:03:25.75 ID:aAbYJuIe0<> カッコよすぎだろおおおおおおおおおんはあああああん!! <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:07:10.09 ID:a/eTOM7X0<> 从;゚∀从「――!」

凄まじい暴力。指向性の浮遊感。背に当たる衝撃。
壁をぶち抜き、錐揉みしながら、私のボディは隣の部屋の床に転がった。

「にゃははは〜♪ほーむらぁん!気持ち良いにゃー」

甘ったるい声が、倒れ伏した私へと近づいてくる。
今にも千切れそうな人工筋肉に鞭打ち立ち上がると、私は“それ”と相対した。

(*゚∀゚)「内臓イっちゃった?骨ぼっきぼき?ぷるぷるの脳みそはご無事ですかー?」

黒革のボンテージと、その上を何重にも巻いた拘束用ベルト。
ドレッドとストレートロングのアシンメトリーヘア。
全身から垂れ下がる血の滲んだ包帯。
狂的で病的な佇まいの中から覗く二つの瞳は、白目と黒目の色が真逆で。

(*゚∀゚)「あ、こいつガイノイドなんだっけ」

だから、彼女がその病的に細い手に、巨大なポールアックスを握っていても、何ら違和感は無かった。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 20:09:39.89 ID:kmoOHEnJ0<> つー支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:10:32.61 ID:a/eTOM7X0<> 从 ゚∀从「これまた、随分濃いお客人だな。渡辺グループはどんなシェアに手を出しているのだ?」

先の衝撃は、あの冗談みたいに巨大なポールアックスの一撃だったのだろうか。
だとしたら、世も末というものだ。
見たところ、この女は義体を入れていない。投薬強化にも限界がある。世界には、私の知らない化け物がまだ居たということか。

(*゚∀゚)「つーちゃんを化けもの扱いしたらめーなのですよっ!つーちゃんは可憐なおとめゆえ、たいへん傷つきやすいのですっ!」

蒼白な唇をアヒルの形に、化け物が戯言を吐く。
およそ構えというものもなくただ棒立ちの彼女は、一見隙だらけのように見えた。

从 ゚∀从「これは失礼した。普段卑しい連中と接する機会が多い故、つい…なっ!」

ネイルガトリングを掃射。
瞬間、視界から消える化け物。
ハイレゾカメラで追うその残像。
“天井に着地した”そいつと、目があった。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:13:15.85 ID:a/eTOM7X0<> (*゚∀゚)「ぶぅっ潰れちゃえっ!」

跳び出し、振りかぶられた、戦斧。
左手、突出式のダマスカス剣を起動。
ギロチンを受け止める。

激突、轟音、火花。

(*゚∀゚)「にゃはは!むだむぅだ!」

つばぜり合いなど、一瞬も成立し得なかった。

从;゚∀从「なんと…!」

ガラスのように砕けるダマスカスの刃。
眼前に迫る戦斧の黒い刃。
バックステップは、ぎりぎりで間に合った。

(*゚∀゚)「おしいにゃ〜。もう少しで脳核ぐっちゃぐちゃだったのにぃん」

床を噛み砕きめり込んだ戦斧を引き抜き、化け物は悩ましげに嘆息する。
この悪鬼を相手に白兵戦は鬼門のようだった。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:15:41.26 ID:a/eTOM7X0<> 兎に角、距離を取ることが先決だ。
幸い、この兵器工場はあのリニアよりずっと広い。逃げながら、作戦を考える余地がある。
ネイルガトリングの外付けマガジンを交換しながら、私は反転、ドアへと駆けだした。

(*゚∀゚)「あー!逃げたー!逃げちゃめっ!めーなのっ!」

駄々っ子のようなわめき声が聞こえた瞬間、右側頭部に風圧。
頭を下げた、その直後、轟音。
左の壁に戦斧がめり込んでいることだろうが、今は確かめている暇など無い。
人工筋肉の稼働率を上げドアに突進、廊下に飛び出すと走り出した。
  _
(;゚∀゚)「ハインちゃん!」

ようやく鳴り出した警報。
この数日間で聞き慣れた声が右隣からかけられる。
横目で確認。女総帥の手を引いたジョルジュが追走していた。

从 ゚∀从「無事だったか。兎に角逃げるぞ。あの怪力は話にならない」
  _
(;゚∀゚)「あの女の子も“アレ”を狙ってる奴らの仲間なわけ?道に迷ったキコリの可能性は?」

从 ゚∀从「だとしても、人間と木の区別がついていない。“まき”になりたくなかったら黙って走れ」
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:18:29.27 ID:a/eTOM7X0<> 「こらぁー!逃げんなぁ!逃げるとぉ……こぉだかんねっ!」

頭を下げる。同時、頭上を巨大な質量が通過。
大戦斧が、前方突き当りの壁に突き刺さっていた。
  _
(;゚∀゚)「じゃあ、道に迷った女子砲丸投げメダリストの可能性は?」

从 ゚∀从「いいから走れ!」

振り返らず、後方へとネイルガトリングを目暗撃ちにばら撒く。
着弾を確認せず突き当りを右に曲がったところで、女総帥が突然立ち止った。

从 ゚∀从「どうした?暖炉にくべられたいのか?」

从;'ー'从「違う!違うよぉ!これ!これぇ!」

彼女が指差す先には、壁に埋め込まれた消火器。成程、そういうことか。

从 ゚∀从「二人とも、先に行け!」
  _
( ゚∀゚)「言われなくとも!」

消火器を取り出すと、私は曲がり角から離れた位置で奴を待ち受ける。
背中に遠ざかる足音、曲がり角の向うから迫る靴音。

(*゚∀゚)「つーちゃん華麗に登場っ!」

跳び出した化け物に向かって消火器を投げつけると、ネイルガトリングの弾倉全部を叩きこんだ。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:21:16.04 ID:a/eTOM7X0<> (;*゚∀゚)「にゃ?にゃにゃにゃ〜!?」

爆発、風圧、粉塵、そして衝撃。
彼我の距離は10メートル弱。
消火器は、その小さなシルエットからは想像もできない壮絶な威力でもって、化け物の狂った姿を吹き飛ばした。

从 ゚∀从「ちっ……」

朦々と逆巻く粉塵の中で、動く気配。
決定打には至らず。
ネイルガトリングの弾倉を交換と同時半分叩きこみ、直ぐに踵を返した。

「いっつつつぅ〜…ちょっとぉ、何すんのさぁ…っていないしぃ〜!」

声からして大したダメージでは無い。
化け物、と形容して来たがこれは化け物以上だ。
ネイルガトリングがどれだけ着弾したかはわからないが、あの爆発でも立っていられるとなると、“アレ”を殺しきるには相当な火力が必要となる。
幸い、ここは兵器工場。その手の手段には事欠かない筈。
ここは前を行く女総帥に聞いてみるべきか。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:23:48.89 ID:a/eTOM7X0<> 从 ゚∀从「一つ、尋ねる」

从;'ー'从「ちょっとぉ!いきなり爆発させるってどういうことなの!?」

从 ゚∀从「貴様があの消火器を指差したのだろう」

从;'ー'从「私は目くらましに使えって意味で指差したんだもんっ!」

从 ゚∀从「そんなことはどうでもいい。この工場内で一番火力の高い兵器は何処にある?」

从;'ー'从「企業秘密をそう簡単にばらすわけないでしょ!」

从 ゚∀从「命が掛っている時に何を……」

从'ー'从「それならご安心を」

意味ありげに微笑むワタナベ。
同時、私達の前に虚空から突然白い強化外骨格を纏った一団が姿を現した。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:26:17.59 ID:a/eTOM7X0<>   _
(;゚∀゚)「今度は何だぁ?」

戸惑う私達を無視して彼らは女総帥の下に駆けよる。
白銀に輝く騎士の甲冑のようなフォルムは、現行の兵器のカタログには載っていない非正規品。
彼らが手に手に握るP90に似通った銃器も、同様に未だ目にした事のないデザインとくれば、彼らの正体も自ずと知れよう。

〈ヽ÷〉「到着が遅れて申し訳ありません。目標は?」

从#'ー'从「ホンットに遅すぎぃ!目標は後ろ!ちゃっちゃとやっちゃって!」

〈ヽ÷〉「ヤ―。仰せのままに」

指揮官らしき一人が首で合図をしたのを境に、渡辺の懐刀「アンダータスク」は私達の脇を駆け抜け、廊下にフォーメーションを組む。
無駄のない洗練された動きは、正規軍のそれとなんら遜色がなかった。

(*゚∀゚)「およ?なんか随分増えたね。みんなでつーちゃんを驚かすサプライズ企画かにゃ?」

口元に指を当て、化け物が首を傾げた、その瞬間。

〈ヽ÷〉「ってぇ!」

耳を弄する機銃の掃射音が、廊下を揺らした。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 20:27:28.80 ID:aAbYJuIe0<> しぇんしぇ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 20:27:44.84 ID:n/y9l2O60<> 支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:28:50.61 ID:a/eTOM7X0<> (;*゚∀゚)「にゃにゃにゃにゃにゃぁー!?」

マズルフラッシュと硝煙が視界を埋め尽くす。
両壁際からの一斉十字砲火。
人一人を殺すには、火力過多なそれにも、私の戦術AIは警戒を解くことは無い。

「ほよよ〜!今度は弾幕ゲーかにゃ?かすりボーナス有り?つーちゃんの今のスコアは?」

硝煙が晴れ、奴の姿が露わとなる。

〈ヽ÷〉「なっ――!?」
  _
(;゚∀゚)「ジーザス……こいつぁたまげたね」

「アンダータスク」の指揮官の横に立つそいつは、激しい動きで解けた包帯を腕に巻きつけながら、あっけらかんと笑っていた。

(*゚∀゚)「ほんでもって、ボーナスステージの車は…」

ゆらり、と。
“そいつ”の姿が残像となる。

从;゚∀从「逃げるぞ!」
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:31:25.40 ID:a/eTOM7X0<> 二人の手を取り駆け出した。

「ば、馬鹿な――ぎゃああああああ!」

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!ぼこすかぼこすかにゃんにゃんにゃん♪」

後方で、金属と肉の、硬質でいて湿った断末魔がけたたましく木霊す。

从 ゚∀从「さぁ、聞かせてもらおうか。この工場内で一番火力の高い兵器は何処にある」

从;'ー'从「わかったぁ!話す!話しますよ〜だ!」

どうにも、難儀な仕事だ。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:33:40.74 ID:a/eTOM7X0<> ※ ※ ※ ※

――乾いた銃声が、いやに耳にこびりつく。
落ちていく薬莢は、これ見よがしにスローモーションがかった動きで、床を叩いた。

(;'A`)「あ…あ……」

一瞬、世界の音が消失する。
目の前の鉄の塊が、ぐらりとかしいだ。

(;'A`)「あぁ……」

唾を呑んだ、その刹那。
世界は音を取り戻し、“砂漠の荒鷲”は、一つの鉄塊と成り果て、地に落ちた。

(;'A`)「あ…あ…あ…」

馬鹿みたいに口を開いて、オレはその鋼鉄の骸の上に屈みこむ。
動かなくなった“彼”は、そこらにある旧式の作業用ドロイドみたいで。

(;'A`)「嘘…だろう…?」

今、目の前で、一人の男が死んだという事実を、オレは上手く処理出来ないでいた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 20:35:31.92 ID:kmoOHEnJ0<> ドクオ・・・ <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:35:56.06 ID:a/eTOM7X0<> 「シャー!」

ウヒッブの戦士達が、悲痛な叫びを上げながら駆けよってくる。
どさくさの中で誰かがオレの手錠を外したが、オレはその場から動けないでいた。

(;'A`)「死ん…だ…」

どうしてだろう。
今まで、何人もの死を見てきたのに。彼は、オレを人質に取ったゲリラの筈なのに。
どうして、こんなにも、オレは、衝撃を受けているんだ。

o川;゚ー゚)o「どっくん……」

肩に乗せられた掌の感触に、顔を上げる。
苦しそうに唇を噛んだキュートの瞳が、真っ直ぐにオレを見下ろしていた。

(;'A`)「どうして……」

すがるように、その手を握り返す。

どうして。

その答えは、“爆音”という返事をもって、回答を拒否された。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:39:47.14 ID:a/eTOM7X0<> o川;゚ー゚)o「な、何!?」

遠く、上の方から聞こえる爆発の木霊。何度も、何度も、断続的にそれは響き。
――やがてそれは、激震となって格納庫を、ひいてはこの建物全体を揺るがした。

「何事だ!?一体これは何の騒ぎだ!?」

鳴り響くアラート音に、その場の全員が騒然となる。真っ赤に染まった格納庫内を、幾つもの人影が右往左往する。

『緊急警報発令。緊急警報発令。総員、第一種戦闘配置につけ。現在、未確認勢力が当工場内に侵入している。繰り返す。総員、第一種戦闘配置につけ』

未確認勢力。首領を失い暴走したウヒッブ派の一部が奇襲をかけたのだろうか。
いや、ここに居るゲリラ達の慌てようを見る限りその線は薄い。
じゃあ、一体……。

o川;゚ー゚)o「どっくん……」

袖を引かれる感触に目を向ければ、そこにはキュートの不安げな瞳。

(;'A`)「……」

“振り返るな。ただ、嵐の夜を往け”。

今さっき聞いたばかりの言葉が、リフレインする。

“死力を尽くせ”。

耳元で、そう、囁かれたような気がした。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 20:40:26.64 ID:aAbYJuIe0<> やったれ!!やったれ! <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:42:22.84 ID:a/eTOM7X0<> ('A`)「逃げるぞ!」

彼女の手を取り駆けだす。

オレの役目。彼女を、キュートを、守る事。

たとえ、それが対価交換という名の上に交わされた契約でしかなくても。
今のオレに出来ることは、それだけだから。

o川;゚ー゚)o「逃げるって何処へ!?」

('A`)「何が起こっているのか分らない以上、兎に角今は安全な場所へ!」

o川;゚ー゚)o「それが何処かって…!?」

彼女の言葉を裂くように響く、重々しい駆動音。
視線を巡らす先、その音源。
オレは、アクション映画(ホロ)も真っ青な光景と相対することになった。

【=-∴-】《アクセスコードを確認。認識タグ189706のログインを承認します》

赤く染まった格納庫の隅。
整備用ケーブルと工具の山の中に鎮座する、新型多脚戦車。
その、蜘蛛の如きアイカメラが、緑色に輝き。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:44:40.73 ID:a/eTOM7X0<> 【=-∴-】《駆動系、オールグリーン。火器管制システムチェック終了。武装ロック解除。コンバットインターフェイス、市街戦モードに変更。M9タイプΛ、状況を開始します》

鋼のタランチュラが、立ち上がった。

(;'A`)「おいおい、こいつは本格的に戦争をおっぱじめ……」

《ムズリーマのみなさぁん、アッサラーム・アライクムゥ〜!》

突然響いた、場違いに明るい声に、オレは耳を疑う。

【=-∴-】《みんなでダンスパーティを楽しんでるところ悪いけど、ちょ〜っとごめんなさいねぇ》

何故って、そのふざけただみ声は、他ならぬ多脚型戦車の外部スピーカーから発せられているのだから。

【=-∴-】《えぇーっと、ど・こ・に・い・た・か・し・らぁ〜ん?》

不測の事態の連続に、誰もが戸惑う。
鋼のタランチュラは、そんな人々の顔を一人一人見まわし。

【=-∴-】《いたいたぁ〜ん。さ、もう逃がさないわよん♪》

从;'ー'从「……」

壁際にへたり込むワタナベに、その60ミリ機関砲のついたマニュピレータを向けた。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:47:06.16 ID:a/eTOM7X0<> 【=-∴-】《ホント、ちょこまかちょこまかと逃げてくれちゃって、たまったもんじゃないわ。諦めてさっさと“アレ”、渡しなさいな》

从;'ー'从「何の事を言ってるか、わかりませんね」

【=-∴-】《とぼけんじゃないわよ!“アレ”って言ったら“アレ”!“ヴォルフの尻尾”以外に何があんのよう!》

从;'ー'从「存じ…上げませんね……」

周りの喧騒を無視して睨みあう鋼蜘蛛と女悪魔。
何が起こってるかなんて、オレにはさっぱり理解できない。

【=-∴-】《あっそう。ならいいわん》

ただ一つ言えるのは。

【=-∴-】《じゃあ死ねよ》

このまま、事を静観すれば、あの女悪魔が、死ぬということだ。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:49:22.50 ID:a/eTOM7X0<> 【=-∴-】《ここであんたを殺した所で、別に上司からお咎めがあるわけじゃないしぃー。むしろ、お手柄ゲットで昇給でうはうはかもねん♪》

鈍く輝くガンメタルの砲身に、オレの中で暗い悦びが鎌首をもたげる。

ワタナベが。あの女悪魔が。ヘリカルの仇が。今。オレの目の前で。死ぬ。

意識したことは無かった。ただ、憎悪していた。
長い間、胸の底に沈んでいたその“泥”は、今、その予感を目の前にして、はっきりとした形を伴って、オレの中に固まった。

復讐心とは、また違った、黒く湿り気を帯びた感情。

(;'-`)「は…はは…死ぬ…死ぬのか…」

因果応報。そうだ、これは、あの極悪人に対する天誅なんだ。
死んで当然。あの女は、それだけの罪を今まで……。

o川;゚ー゚)o「どっくん……」

キュートの怯えたような視線に、初めてオレは、自分がどんな顔をしていたのかを知って、恐怖した。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:51:39.17 ID:a/eTOM7X0<> (;'A`)「なんて事、考えてんだよ…オレは……」

自己嫌悪の波が押し寄せる。
自分にもまだ人並のモラルが残っていた事に、少しほっとした。
だが、奴が死ぬことに対しては一片の同情も無い。
死んで当然な屑ってのは、居るもんだからな。“オレ自身”が、それはよく知ってる。

【=-∴-】《というわけでぇん!ワタナベしゃっちょさんには、ちょこーっとハチの巣になってもらいまっすん♪》

60ミリ機関砲の砲身が、ゆっくりと回転を始める。

从;'ー'从「……」

ハチの巣、とあのお喋り戦車は言ったが、そんなものではすまない。
対戦車用機関砲の掃射を人間がまともに食らったら、後に残るのは文字通り“人間だった肉片”だけだ。
アイドリングの回転が終わる数刹那の後に、それは実現される。
オレは、その凄惨な光景を見せまいと、隣のキュートの目に、自分の掌を――。

――銃声とは違う爆音。

(;'A`)「今度はなんだぁ!?」

音源は件の戦車達から50メートル程離れたシャッター。
向うから破られたそこから、朦々と煙が立ち込めていた。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:53:54.23 ID:a/eTOM7X0<> 「うぇっほ!うぇっほ!もっと…うぇっほ!もっと穏やかな解錠手段は…無かったのかい…」

どこかで聞いた事のある声が、煙の向うから聞こえる。

「すまない。解錠も兼ねて試射も済ませておこうと思ってな。この威力なら申し分ないだろう」

ここに居る筈の無い声が、その後に続く。

(;'A`)「は…」

「オーライ、確かに凄まじい火力だ。こいつがあれば、戦車と道端で会っても“穏便”に済みそうだ」

(;'A`)「は…」

「ああ。後は、その“戦車”を借り受けられれば、あの化け物相手にも……」

薄れ行く土煙の中、ここに居る筈の無いシルエットが、浮き彫りになっていく。
信じられない。そんな気持ちを最大限に乗せて、オレはその名を呼んだ。

(;゜A゜)「ハイン!」

从 ゚∀从「ん?」
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:56:16.54 ID:a/eTOM7X0<> 振り返った、銀髪に象られし白雪の輪郭。その中の深紅の双眸が、見開かれ。

(;゜A゜)「「どうしてここに!?」」从∀゜;从

気付けば、オレ達は、二人同時に叫んでいた。

(;'A`)「君には事務所の留守を頼むって言ったじゃないか!?それがどうして……」

从;゚∀从「貴様が発った後、そこの優男が仕事を持ってきて…それで…」
  _
( ゚∀゚)「お二人さん、積もる話もあるだろうが後にしてくれないか?」

「そうそう。今はそんな場合じゃないよぅ」

ジョルジュに次いでオレ達の間に割って入る声。
振り返る。

从'ー'从「勤務中の私語は厳禁。それとも、お宅の事務所の運営方針はそうじゃないのかしら?」

女悪魔が、もう一匹、そこに居た。

(;'A`)「なっ――!なんで!」

どういうことだ。
ワタナベはさっきまで、あのお喋り蜘蛛と相対して――。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 20:58:33.08 ID:a/eTOM7X0<> 【=-∴-】《これはこれは……どういうことかしらぁん?》

視線を向ける。
鋼の蜘蛛は、目の前の“ワタナベ”と、こっちの“ワタナベ”を交互に見やって困惑していた。

【=-∴-】《ジャパニーズ“カゲムシャ”ってやつぅ?どっちが本物?》

从'ー'从「さぁ…どうでしょうね…ご判断はおまかせします」

【=-∴-】《うーん…迷っちゃうわぁん…》

鋼の蜘蛛はそれでも余裕を崩さない。
値踏みするように一対の機関砲を彷徨わせていたが、やがて、くつくつと底冷えのする笑いを漏らし。

【=-∴-】《どっちも殺しちゃえば早いじゃなぁイ!》

両の機関砲を、それぞれの“ワタナベ”にポイント。
アイドリングもそこそこに、60ミリ対物鉄鋼弾の雨を――。

从'ー'从「させません」

――銀線が、閃いた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 21:00:07.36 ID:kmoOHEnJ0<> 支援ったら支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:00:50.34 ID:a/eTOM7X0<> 【=-∴-】《え》

お喋り蜘蛛の、間の抜けた声。
一拍遅れて、その機関砲が床に落ち、マニュピレータが、配線の詰まった切断面を晒す。
動いたのは、鋼蜘蛛の目の前の女悪魔だった。

【=-∴-】《いやぁぁぁぁああん!あたしのお手々がああぁぁぁぁあ!》

鋼蜘蛛のふざけた悲鳴。
跳躍する女悪魔。空中で弧を描き右手を振りかぶる。

はっきりと見えた。

その、右手の先端、指先が、白銀に輝き。

【=-∴-】《――ッガ》

鋼蜘蛛の頭に着地するのと同時、女悪魔はその右手を手刀の形で突き入れる。
激しい明滅と火花。鉄の焼け溶ける音。
光の失われた蜘蛛の複眼。
右手を引き抜いた女の顔は。

(゚、゚トソン「アヤカ様、やはりこの機体は白兵性能に改善の必要がありますね」

鋼鉄の秘書の、それだった。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:03:19.01 ID:a/eTOM7X0<> 从'ー'从「しょうがないよー。アイアンメイデンとの白兵戦なんて想定してないもぉん。ま、アンチクラッキング性能は確かに及第点には達してないみたいだけど」

《そゆことねん♪》

野太くふざけた声に、オレの背筋が震える。

【=-∴-】《お宅のセキュリティって、てぇんでダメダメね。ザルよ、ザル》

鋼蜘蛛の背後。もう一機の多脚型戦車が、ゆっくりと立ち上がるのが見えた。

【=-∴-】《そぉんなお宅らにあたしからのアドバイス》

お喋り戦車はその背中に背負った150ミリ戦車砲を起動させると。

【=-∴-】《使わない兵器からは弾を抜きましょう!お姉さんとのや・く・そ・く・よん♪》

その砲口を、咆哮させた。

o川;゚ー゚)o「――!」

(;'A`)「ぬううぅぅぅおおお!?」

とっさに背後のキュートを庇い、床に倒れ込む。
対戦車榴弾は、オレ達とトソンとの丁度真ん中に着弾。
轟音と爆炎と破片をまき散らした。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:07:02.02 ID:a/eTOM7X0<> 強烈な熱波が頬を打つ。
背中に突き刺さる無数の破砕片。
壮絶な痛みに叫びそうになるも辛うじてそれを噛み殺し、オレは押し倒したキュートの様子を窺った。

(;'A`)「大丈夫か?」

o川;゚ー゚)o「私は全然……それよりもどっくんは!?」

今にも泣き出しそうなそのうるんだ瞳に真正面から見つめられ、オレは不覚にも「ああ、こいつを庇って良かったな」などと思ってしまった。

(;'A`)「大丈夫だ。全然…大丈夫」

o川*゚ー゚)o「日本語、おかしいよ」

(;'A`)「へへっ…元アナウンサーさんには…分っちまうか」

虚勢を張りながら身を起こす。
爆炎に包まれた格納庫内には、機関砲のけたたましい銃声が木霊している。
最早完全に統制を失った“ウヒッブ”の戦士達は、手にしたAKを鋼蜘蛛に向けて一心不乱に引き金を引いていた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 21:10:52.05 ID:yhOVI3un0<> ktkr支援 <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:11:47.07 ID:a/eTOM7X0<> 【=-∴-】《ほほほほ!どうしたのおちびちゃん達?そぉんなにあたしと遊びたいってわけぇ?》

揺らめく紅蓮の炎の中で、お喋り戦車が哄笑する。
対物鉄鋼弾ならいざ知らず、戦士達が握る粗悪なアサルトライフルでは渡辺の新型に傷をつけることなど出来るわけがない。
群がる蠅を追い払うよう、鋼蜘蛛が機関砲を左右させる度、アラブ人達はボロ布のように吹き飛んだ。

【=-∴-】《ノミが人間に立ち向かうのを“勇気”と言うか?》

掃射。掃射。掃射。

【=-∴-】《ンノォォオォォォオよ!それ即ち“無謀”!ナンセンス!ひっじょーにナンセンスッ!》

悲鳴。悲鳴。悲鳴。
阿鼻叫喚の地獄絵図。それは一方的な蹂躙。逆らうことの出来ない、圧倒的な暴力。

(;'A`)「胸糞の悪い野郎だ…」

50年前の大戦で、当時の日本もこのような所業を行ったのだろうか。
だとしたら、今、オレは、初めてウヒッブの戦士達の「怒り」というものを理解したと言えよう。

o川;゚ー゚)o「ねぇ、どうするの?」

キュートも思うところは同じなのか。凄惨な殺戮撃を睨みつける瞳が、口惜しげに滲んでいる。
オレはそれを努めて正面から見つめると、彼女の手を引いた。
<>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:14:41.03 ID:a/eTOM7X0<> ('A`)「気に入らねえ糞ったれだが、逆にこれはチャンスだ。奴が遊びに興じている間に逃げるぞ」

o川;゚ー゚)o「でも!」

('A`)「でもじゃない。あの鉄火場の中に飛び込んで行ったところで、オレ達に何が出来る。ひき肉にされるのがオチさ」

o川;゚ー゚)o「だからって!」

彼女の想いは、偽善なんかじゃない。
なんとなくだが、わかるのだ。
きっと、オレがこの手を離せば、彼女は躊躇わずにあの鋼蜘蛛に一直線に向かっていく。
信じられない事に、それだけこの女はアマちゃんで、お人よしで、どうしようもなく純粋なのだ。

だが、オレにもさっき出来たばかりだが“覚悟”がある。

(#'A`)「甘えてんじゃねぇ!」

o川;゚ー゚)o「っ!」

('A`)「オレ達が出て行ったって、あいつらは喜ばねえよ。祖国の大敵である日本人に手助けされたとあっちゃあ、やつらの誇りと覚悟に傷がつく。オレ達に出来ることは、何もないのさ」

o川;゚ー゚)o「そんな…日本人なんて…関係ないじゃない……」

('A`)「オレ達はな。だが、向こうにとっちゃ大問題なのさ。いいか、人間が分りあえるなんて綺麗事は幻なんだよ」
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 21:17:04.96 ID:aAbYJuIe0<>   <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:17:06.37 ID:a/eTOM7X0<> o川;゚ー゚)o「私だって、そこまで信じてるわけじゃ……」

('A`)「だったら話は早い。さっさと逃げるぞ」

o川;゚ー゚)o「……」

まだしぶるキュートの手を無理矢理引いて、出来るだけ姿勢を低くしてオレは駆けだす。
銃弾の雨と爆発の熱波。絶叫と哄笑。
混沌の坩堝の格納庫を駆け抜け、破れたシャッターの隙間へ滑り込むと、オレ達は壁に背を預けてへたり込んだ。

('A`)「とりあえず君はここに居ろ。オレはちょいと野暮用を済ませてくる」

o川* ー )o「……」

俯いたキュートの膝の上に、水滴がぽたぽたと落ちる。

無垢で、無知で、幼い彼女は、それ故穢れを知らない。
出来ればオレは、彼女にはそんな彼女のままで居て欲しいと思うから。

('A`)「何があっても、オレは君を守る。それだけは、信じてもらってかまわない」

破れた自分の上着を、そっと、その肩にかけた。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 21:17:58.53 ID:aAbYJuIe0<> しぇn <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:19:35.54 ID:a/eTOM7X0<> o川* ー )o「何処に…行くの?」

('A`)「相棒の様子を見てくる。大丈夫そうならすぐに戻ってくるさ」

o川* ー )o「そう……」

('A`)「それまでここで大人しく……」

o川* ー )o「……信じるよ」

('A`)「え?」

問い返すオレに、彼女はその顔を上げると。

o川*うー^)o「どっくんのこと、信じるよ。だから、必ず戻ってきて」

泣き笑いに歪んだ面で、そう言った。

('-`)「…りょーかい」

そんな彼女に微笑み返し、オレは踵を返す。
腰のホルスターに収まるカスタムデザートイーグルの感触を確認。
一羽の気高い“砂漠の荒鷲”から教わった事を守るために、歩きだした。



next track coming soon...
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 21:21:46.30 ID:aAbYJuIe0<> おつん <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 21:23:06.22 ID:a/eTOM7X0<> 今日の投下はここまで

皆さんお疲れ様です

次の投下は明日の19時頃から開始です

次で、やっとアラブ編も完結。いやあ、長かったね


質問がある人はお気軽にドウゾ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 21:23:22.55 ID:n/y9l2O60<> どっくん何時からイケメンになったん!? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2010/02/04(木) 21:40:02.51 ID:yhOVI3un0<> 乙と言わせてもらおう <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2010/02/04(木) 21:43:53.94 ID:oCw0gIAU0<> 乙
ワタナベが何だか憎めなくなったから困る <>
◆fkFC0hkKyQ <><>2010/02/04(木) 22:12:23.70 ID:a/eTOM7X0<> >>76
え?最初からイケメンだよ?

>>78
その気持ち…忘れないであげてください……

じゃあの みんなあらためて乙 <>