从 *∀从はポンコツの処女のようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:13:34.86 ID:MwT6mdNE0
- 代理
- 2 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:15:07.74 ID:Xg4vEpT5O
- >>1乙
やあ (´・ω・`)
ようこそ、番外編スレへ。
この前書きはサービスだから、まず読んで落ち着いて欲しい。
うん、「釣りスレじゃない」んだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、今すぐ本編を書いて許してもらおうとも思っていない。
でも、このスレタイを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「安息感」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした本編の世界観の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この番外編を書いたんだ。
じゃあ、投下を始めようか。
- 3 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:16:22.09 ID:Xg4vEpT5O
- bonus disc 99. Each the season's
“明日をむかえる不安と戦いながら 夜明けを待ったこともある
「どこかであいつも頑張ってる。だから…」と
奮い立たせてまた歩き出した”
……ポルノグラフィティ/そらいろ
- 4 名前:やるお57人目?ジンギスカン ◆RJeUr5GW2s :2009/09/30(水) 21:19:09.18 ID:/qVPP4pO0
- 釣りじゃ無いだと?
- 5 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:19:28.60 ID:Xg4vEpT5O
- prologue
──ニコチンの臭気が充満したワンルームに、柔らかな光が差し込む。
部屋にただ一つの小さな窓から覗けば、猥雑な看板群の上で雀達が挨拶を交わし初めていた。
从 ゚∀从「……この汚染された空気の中でも、彼らは変わらないものだな」
欲望と、快楽と、汚濁の街、「VIP」。
この五十年余りの間、血と小便と涙を吸い続けてきたこの街の路上の上にも、朝の光は変わらずに降り注ぐ。
傲慢な人間の矮小な欲望は、そのうちこの寛大な太陽すらも自らの手で破壊してしまうのではないかと考えて、自らの下らない思考プロセスに気付いた。
从 ゚∀从「……やれやれ、だ」
待機電力モードから通常運用に切り替え、関節部の駆動チェックを行う。
先よりもフレキシブルに動く事を確認して、カメラモードも暗視から通常に変えた。
从 ゚∀从「……さて」
毎朝恒例のセルフメンテナンスを終えた私は背後を振り返る。
(^A^)・・Zzz「…ぶひひ…くーにゃん…そこはおちんぽでしゅよ…むにゃ…」
おめでたい寝言をほざく主の寝顔に、顔面の筋肉が引きつった。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:20:51.61 ID:DekbaOJ7O
- 待ってた 支援
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:23:33.65 ID:EEw59pSr0
- シエンタ
- 8 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:24:02.19 ID:Xg4vEpT5O
- 从 ゚∀从「おい、朝だ、起きろ、資本主義の敗北者」
これまた毎朝恒例のモーニングコールに、主が寝返りを打つ。
何時もの朝、変わらない日常。
今日も、一日が始まる。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:24:49.38 ID:t/dqvWRbO
- 鋼鉄処女ktkr
- 10 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:25:03.31 ID:Xg4vEpT5O
- track-01. 狼とシャム猫のメヌエット
──薄紫の空がコバルトブルーに変わっていく様を見届ける。
雀達の囁きと朝露の微かな輝きが、夜毎に繰り返される血と硝煙の饗宴を、束の間忘れさせてくれた。
ニーソク区、貧民街。
混沌の巣窟たる「万魔殿」も、早朝のこの一時だけは静謐の中にまどろんでいるようだった。
(,,゚Д゚)「……さて」
建設途中で投げ出されたマンションのなれの果て。
ガラスの無い窓枠から日の出を拝んだオレは、寝床である梁の上から身を踊らせた。
(,,゚Д゚)「……おはようございます」
返ってくる言葉など無いと知りつつも、習慣は変えられない。
虚しい呟きを自嘲しながら、足元のバケツに溜めておいた雨水をすくい顔を洗った。
ここ数ヶ月の間洗顔料の触れることのない顔面は、さぞかし脂でギトギトとしていることだろう。
“ギコ兄ぃはハンサムなんだから、もうちょっと身嗜みに気を使ったらモテるのに”。
何時ぞやの妹の言葉を思い出す。
色恋などとは洗顔料共々御無沙汰だった我が身を振り返り、苦笑が漏れた。
- 11 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:26:04.76 ID:Xg4vEpT5O
- (,,-Д-)「そうだな……たまには、まともに顔を洗わねばな」
今日、街に出たら薬局にでも寄ろうと思い、壁際へと歩み寄る。
放り出したままの整備工具の中から潤滑油を抜き出した。
八年前からオレの“肉体そのもの”となった外骨格。その関節部に、丁寧に油をさしていく。
(,,゚Д゚)「そろそろ、こいつも新調せんといかんかもな」
連日のフル稼働に、最近は神経加速装置(イグニッション)との併用も相まって稼働部と人工筋肉の摩耗は、以前の比ではなくなった。
“ニーソク”という“土地柄”故、仕事には困らないが、“貯金”の為に切り詰めた生活をしているオレには、なんとも頭の痛い問題だ。
(,,゚Д゚)「……はぁ」
溜め息をつき、床を見下ろす。
塵と埃の堆積したそこに“オレ以外”の足跡を見付けて、また溜め息がこぼれそうになった。
(,,゚Д゚)「……やっと落ち着けると思っていたんだがな。勘弁してくれ」
“貯金”の為には宿代すらも惜しい。
最低ラインの衣食住を考えて導き出されたのは、この混沌の巣窟での暮らしだったというわけだ。
- 12 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:28:40.20 ID:Xg4vEpT5O
- 幾ら無法地帯と言えども、人の集まる所には相応の「法」が存在する。
ホームレス達の間にもささやかながら共同体というものが存在し、顔役のような人物が住民間の様々な問題を取り仕切っているのだ。
誰が何処にねぐらを構えるか、配給は必要か否か、エトセトラエトセトラ。
故にここでも、プライバシーの権利は最低限では有るが守られている筈だったが……。
ざっと荷物を見た限り、不届き者は物盗りでは無い。
ここのルールを知らない新参か。はたまた、オレの“同業者”か。
(,,゚Д゚)「……またダディに新しいところを探して貰わんとな」
一人ごち、コンクリ壁に突き刺した単分子ナイフに下げたトレンチコートを掴む。
傍らに立てかけてある刀に手を伸ばしたところで、今日が何曜日だったのかを思い出した。
(,,゚Д゚)「……そうか。もう、週末か」
取り敢えずねぐらのことは帰りに持ち越すことにする。
使い古した携帯端末を取り出し、今月の生活費の残りと睨めっこ。
(,,゚Д゚)「……髭は、剃れるな」
物悲しい呟きにも、胸が少し温まる思いのオレだった。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:30:45.86 ID:oL1Dtma4O
- ギコ…w 本編にない表情でいいな
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:30:48.22 ID:DekbaOJ7O
- 支援
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:32:08.44 ID:zRmdDm+AO
- クッソスレを期待してたのに本人だと……!
嬉しいような悲しいような
- 16 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:34:46.72 ID:Xg4vEpT5O
- ──やる気のない店員から包みを受け取ると、オレは薬局を後にした。
(,,゚Д゚)「案外ひげ剃りも高いものだな」
こんなことならナイフで代用すれば良かったか、と思いながらもその足で隣のコンビニへと入る。
休日のニューソク区には学生らしき若者達の姿が多く、週刊誌を立ち読みしている彼らの後ろ姿に気後れを感じた。
(,,゚Д゚)「青春、か」
自らの呟きを振り切り、トイレに入る。
鏡と向き合い包みを開けると、オレは数年振りの“おめかし”に取りかかった。
- 17 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:35:38.73 ID:Xg4vEpT5O
- ──小綺麗になった自分の顔を撫でながら、駅前を歩く。
あれほどしつこかった脂も洗い落とし、手付かずだった無精髭もきっちりと調伏してやった。
最も、全てを剃り落としてしまうのも何だか気が引けたので、顎の部分だけは残しているのだが。
(,,゚Д゚)「……悪くないな」
清々しい気分に浸りながら、街角のショーウィンドーで自分の身嗜みを確かめてみる。
浅黒い顔。短く刈り込んだ頭(無論、さっきコンビニの水道で洗っておいた)。黒いトレンチコート。返り血は付いてない。
(,,゚Д゚)「……よし」
心中でゴーサインを出し、目指す場所を見上げる。
(,,゚Д゚)「おっと、あれがまだだったな」
病院の白い壁に背を向けて、オレは花屋を探した。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:35:45.36 ID:gHL5DWnoO
- ノパ听)支援だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
- 19 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:41:26.42 ID:Xg4vEpT5O
- ──何時もの花屋の看板には臨時休業の文字。代わりの店を探すのに手間取ったせいで、気がつけば太陽は既に南中してしまっていた。
(,,゚Д゚)「…まぁ、急ぐ用事でも無いが」
右手の中の花束を見つめながら、病室を目指す。
午前の診察を終えたニューソク中央病院の廊下に、人影はまばらだった。
(,,゚Д゚)「……」
目的の病室の前で立ち止まると、襟元を正し、改めて自分の姿を省みる。
おかしい所は無い。
(,,゚Д゚)「……ふぅ」
何時も“あいつ”と会うときは緊張する。
“あいつ”の目が、オレの中の“獣”に気付くんじゃないかと、何時もオレは怯えている。
(,,゚Д゚)「情け…ないよな」
真っ当な仕事が出来たのならば、どんなに良かった事だろうか。
返り血を浴びすぎた体は、それを許さない。復讐を求める心が、それを許さない。
- 20 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:45:15.36 ID:Xg4vEpT5O
-
いや、本当は違う。本当は気付いている。
気付かないふりをしているだけだ。
(,,-Д-)「……違う」
違うと言い切れるのか?
(,;-Д-)「違…う」
本当は、ただ、単純に
(,;゚Д゚)「違う!」
- 21 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:46:27.38 ID:Xg4vEpT5O
- 自分の怒声で我に返る。
(,;゚Д゚)「あ……」
幸い、誰も聞いて居なかったようだ。
ばつの悪い思いに頭をかきながら溜め息。
まだまだ、オレは青い。
せめてあいつの前だけでは胸を張っていようと居住まいを正し、ドアを叩いた。
「どうぞー?」
猫のような愛くるしい声にドアを開ける。
(*゚ー゚)「やっぱりギコ兄ぃだぁ!」
たった一人になってしまったオレの“家族”が、満面の笑みをたたえてオレを迎えてくれた。
- 22 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:47:31.48 ID:Xg4vEpT5O
- (*゚ー゚)「そろそろ来る頃かなぁって思ってたんだ。でも今日はちょっと遅いね」
(,,゚Д゚)「あぁ、少し買い物をしてたんだ」
言いながら病室に入り、ベッドサイドの花瓶の花を返る。
(*゚ー゚)「ふーん。ってか、髭剃った?」
我が妹は、早速オレの微妙な変化に気付いたようだった。
(,,゚Д゚)「こないだお前に言われたからな」
(*゚ー゚)「あ、気にしてたんだ」
(,,゚Д゚)「オレはこう見えてナイーヴなんだ」
(*^ー^)「うっそくっさー」
しぃのコロコロとした笑い声に、オレも自然と口の端が緩む。
胸の中に蟠り続ける鬼火も、今は忘れられた。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:47:41.06 ID:5OIOov830
- しえんしえーん
- 24 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:50:26.68 ID:Xg4vEpT5O
- (,,゚Д゚)「りんご、食べるか?」
(*゚ー゚)「食べる食べるー♪」
(,,゚Д゚)「そうか」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
(*゚ー゚)「……あれ?剥いてくれないの?」
(,,゚Д゚)「聞いただけだ」
(;゚ー゚)「うわ、何それー……小学生ですか」
(,,゚Д゚)「……冗談だ」
(*゚ー゚)「寒いんだけど。ギコ兄ぃ、冗談の才能ないよ」
(,,゚Д゚)「自覚はしてる」
苦笑を漏らしながら冷蔵庫を開ける。
サイドボードの上から果物ナイフを掴んだところで、脇に立てかけられたキャンパスに目がいった。
- 25 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:51:40.14 ID:Xg4vEpT5O
- (,,゚Д゚)「新作か?」
先週来たときには何も架けられては居なかったイーゼル。
今、そこには一枚の風景画らしきものが架けられていた。
(*゚ー゚)「うん。久し振りに描いてみようと思ってさ」
海を望む草原。
その真ん中に、一本の古木が描かれたそれは、まだ下書きの段階なのだろう。
白と黒の、鉛筆が縁取った景色が、どこか頼りなげにそこに在った。
(*゚ー゚)「ただ、やっぱこればっかりは現物を見てみないことにはねぇ」
- 26 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:54:39.23 ID:Xg4vEpT5O
- そう、あっけらかんと言うしぃの足は、自ら動くことはもう無い。
(*゚ー゚)「今度の日曜日に外出許可貰おうと思ってるんだけどさ、ギコ兄ぃ付き合ってくれる?」
何でも無いことのように振る舞ってはいるが、自分の体が思うように動かない事への葛藤は相当のものだろう。
(,,゚Д゚)「……ああ、わかった」
血友病の治療には、特別な設備が必要だ。
生憎、地上にはまだその技術が存在しない為、手術を受けるには軌道上のオービタルコロニーに行くしかない。
治療費や入院費だけでも天文学的な金額であるし、軌道エレベーターの乗車券だって安くは無い。
オレの“貯金”の先はまだまだ長い。
(*゚ー゚)「ありがと。とか言っておいてあれだけど、ぶっちゃけ外出許可がそう簡単に貰えるか微妙なんだよね」
(,,゚Д゚)「こないだは普通に貰ってたじゃないか」
(*゚ー゚)「あれは、ほら、御葬式だったし……」
たった二人しか遺族の居ないそれを、世間一般で葬式と呼ぶのかはわからない。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:56:04.35 ID:5OIOov830
- しえー
- 28 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 21:57:42.90 ID:Xg4vEpT5O
- 去年の暮れのあの一件で、オレ達の帰るべき家はこの地上から姿を消した。
“シベリア”は噂に違わぬ徹底ぶりを見せたのか。
西村の者も、元ヘブンズゲートの者も、“オオカミ”の構成員という肩書きを持つもの全て。
その誰一人として連絡がつかないことが、“それ”を物語っている。
オレは、しぃにその事を伝え、殴られ、泣きつかれ、もう何処にも行かないと約束させられた。
普通の仕事について、毎週会いに来ることを、泣きじゃくる彼女と約束した。
だが、実のところは何も変わらなかった。
オレは、表面上は車の整備士として彼女に振る舞い、夜毎に人を殺めては、その報酬で得た金を彼女の入院費に当てている。
そうすることしか、馬鹿なオレには考えつかなかった。
(*゚ー゚)「んあー……ギコ兄ぃもなんか考えてよ」
(,,゚Д゚)「考えるって?」
(*゚ー゚)「だーかーらー、婦長さんを納得させる言い訳!」
(,,゚Д゚)「何時も素直に大人しくしてれば、たまの外出くらい多めに見て貰えるだろう」
б(;゚ー゚)「え?あ、まぁ、そうなんだけどねぇ……」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:57:45.29 ID:DekbaOJ7O
- しえん
- 30 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:02:12.91 ID:Xg4vEpT5O
- l从・∀・ノ!リ人「おおーいしぃ姉ちゃーん!探検行くのじゃー!」
(*゚ー゚)「あ、妹者ちゃん」
(,,゚Д゚)「……?」
年の頃は七、八歳といったところか。
癖っ毛が印象的な、ひよこ豆程に小さな少女が、活発な笑みを浮かべて部屋の入り口に仁王立ちしていた。
l从;・∀・ノ!リ人「うお!おっさん誰なのじゃ!」
(*゚ー゚)「はは!ギコ兄ぃおっさんだって!」
(,,゚Д゚)「おっさん……」
子供の弁とはいえ、そこはかとなく胸中を抉られる。
当の本人はそんな事など気にもせずオレの脇をすり抜けると、しぃのベッドに飛びついた。
l从・∀・ノ!リ人「そんな事より、早く早く!」
(*^ー^)「はいはい、わかったわかった」
苦笑しながらも頷くしぃを見ていると、まるで仲のいい姉妹のようにも見えてくる。
(*゚ー゚)「ギコ兄ぃ、にやけてないで早く車椅子用意してよ」
(,,゚Д゚)「ん?あぁ、すまん」
オレは、自分でも気付かない内に口元が緩んで居たのを知った。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:05:21.48 ID:wqO9EkpZO
- 釣りスレじゃない……だと…?
- 32 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:05:40.99 ID:Xg4vEpT5O
- (,,゚Д゚)「一人で大丈夫か?」
ベッドの脇の車椅子を広げ、しぃを座らせながら聞く。
l从・∀・ノ!リ人「いもじゃがおすのじゃー!」
(*^ー゚)「だってさ」
元気に飛び跳ねる「いもじゃ」と、悪戯っぽいウィンク。
(,,゚Д゚)「そうか」
それらを微笑のうちに見送ると、オレは毛布を正して数歩遅れて病室を出る。
「今日はおくじょーたんけんなのじゃ!」
遠ざかっていく二人の少女の後ろ姿を見送りながら、オレは病院を後にした。
夕日に陰る駅前通りを歩きながら、何時か必ず、この道を二人の足で踏みしめる事を誓う。
先は長いが、差し当たっては今日出来ることを。
裏道の裏道を選び、闇が濃くなる方へと足を運んだ先、“裏の職安”の扉を開いた。
(,,゚Д゚)「……よう、儲かってっかよ」
一つしかない蛍光灯の灯りの下。顔を突き合わせるゴロツキ達。
酒場の体を取ったジョブ・キラー達の集会所。
カウンター越しにマスターへとチップを放りながら、オレは端の席に付いた。
- 33 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:06:41.67 ID:Xg4vEpT5O
- 「あら、奇遇ね。もしかて常連さんなのかしら?」
背後からの声に振り返る。
ξ゚ー゚)ξ「隣、いいかしら?」
テーブル席から立ち上がってこちらに歩いて来るのは、いつぞやの仕事を共にした女山猫だった。
(,,゚Д゚)「構わんが。何か奢ってくれるのか?」
オレの問いに彼女は含み笑いをすると。
ξ゚ー゚)ξ「そうね。じゃあ、奢る代わりに、一つ御伽噺でもしてさしあげるわ」
どこか上機嫌に席に着き、口を開いた。
(,,゚Д゚)「御伽噺?」
マスターからスコッチを受け取り、オレは先を促す。
どうやら今晩は長くなりそうだった。
-fin-
- 34 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:07:34.21 ID:Xg4vEpT5O
- ちょっとタバコ買ってくる
十分くらいで戻ってきます
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:09:52.44 ID:wqO9EkpZO
- 了解 保守
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:12:05.56 ID:DekbaOJ7O
- 保守
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:12:24.39 ID:gHL5DWnoO
- ノパ听)y-・~~保守だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:18:59.73 ID:pZ3vcFz6O
- 保守
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:23:58.46 ID:uyCjReSs0
- 俺には雪見大福頼むわ
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:25:28.97 ID:oL1Dtma4O
- じゃあ俺はピノで
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:30:04.15 ID:gHL5DWnoO
- ノハ*゚听)アイス饅頭…
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:30:36.62 ID:xBBCDq940
- じゃあ俺ビール
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:30:54.99 ID:pZ3vcFz6O
- 作者まさかどこ駆け見てんじゃないよな?
見てたら缶コーヒーな、三秒な
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:33:17.52 ID:wYWYturx0
- 固揚げポテトを
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:34:41.57 ID:DekbaOJ7O
- オレはコーラで
- 46 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:35:39.94 ID:Xg4vEpT5O
- ごめんね、母ちゃんニコチン中毒でごめんね
投下再開しまんこ
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:36:34.16 ID:pZ3vcFz6O
- おかえ淋病
- 48 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:37:36.14 ID:Xg4vEpT5O
- track-02. 弾丸と、熊と、風船と
──穿つ弾丸、放ち、振り向く、背後。
ξ゚听)ξ「シッ!」
飛び出した的、クレー射撃のそれ。
左手首を半回転、トリガーを引き絞り、弾けるマズルフラッシュ。
間髪入れずに右手で軸合わせ。相前後、前方遥か二百メートルで飛び出した的を撃ち抜く。
舞うように上体を捻る。両手の拳銃が放射状にバラまく弾丸の雨、雨、雨。
飛び出す的。四方八方から、乱れ、跳ね、全て散る。
数瞬遅れて追いついて来た下半身。身を伏せ、拳銃を放り、足元のライフルを蹴り上げ、掴んだ。
ξ゚呀)ξ「……」
「ホルスの目」を起動、瞬時にライフルのニューラルネットワークに接続。
射撃場の各所に配置されたカメラにより、私の死角は消える。
背後で的の飛び出す姿。頭上を飛んでいく円盤の軌跡。
全て──。
ξ゚呀)ξ「把握したわ」
身を捻り、肩をよじり、宙を舞う的のその全てを、順番に、一つ、一つ、撃ち落としていく。
着弾点も、射撃角も、全て計算通り。
全て、完璧にいく筈だった。
- 49 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:39:35.41 ID:Xg4vEpT5O
- ξ;゚呀)ξ「しまっ…!」
変化する円盤の軌跡。油断だった。
足元を掠める灰色の円盤。
咄嗟に対応しようとトリガーを引くも遅い。
的は、低い軌道のまま滑空し、滑るように人工芝の上に着地する。
弾丸が抉ったのは、その僅か数ミリ左の地面だった。
耳障りなブザー音が、試験終了の合図を告げる。
ξ゚呀)ξ「……ちっ」
舌打ちと共に溜め息。詰めが甘い。何時も私はこうだ。
「ホルスの目」とライフルの接続を断ち、芝生の上を歩く。
射撃場の中央から観測所の近くまで来て、備え付けのベンチに腰を下ろしたところで全身から汗が噴き出した。
(-@∀@)「やぁやぁ、お疲れ。いやぁ、何時もながら見事な腕だねぇ」
先にベンチに座っていた研究員が、嫌みたっぷりに言葉を掛けてくる。
無視して、スポーツタオルで首筋を拭った。
(-@∀@)「流石は“ホルス・アイズ”。大した空間認識力だ。だが、それに体がついていけなきゃ意味がない」
ξ゚听)ξ「……」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:39:45.27 ID:5OIOov830
- しえん
- 51 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:41:53.80 ID:Xg4vEpT5O
- 返す言葉もない。鍛えているとはいえ、生身のままでは動きには限界が存在する。
(-@∀@)「義体化か、投薬強化をお勧めするよ」
即ち、こういう事だ。
(-@∀@)「うちのラボで丁度新しい薬が開発されてね。良かったら、モニターも兼ねて……」
ξ゚听)ξ「結構よ」
(-@∀@)「…でも君さぁ、今時生身で一体何が出来るっていうの?」
“社長の秘蔵っ子っていう割には、業績も大したもんじゃないしさ”
“うちは、そんな穀潰しを置いとく程甘くないから”
そう、言いたいのだ。正論だ。全く持って、完膚なきまでに、その言葉は正しい。
だから。
ξ゚听)ξ「……急用がありますので、失礼します」
ライフルをケースにしまい頭を下げると、私は踵を返す。
(;-@∀@)「おい、君!」
ξ )ξ「……わかってるわよ。それぐらい」
肩に掛けたライフルが、今日はやけに重かった。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:41:58.54 ID:xBBCDq940
- 支援
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:42:18.86 ID:uyCjReSs0
- 支援
- 54 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:43:37.65 ID:Xg4vEpT5O
- ──大天窓から降り注ぐ日光は、変換器を通している分“外”のそれよりも一段明るいものとなっていた。
完全循環型環境建造都市。
ブラウナウバイオニクス社が誇るこのアーコロジーには、生化学社だけあって自社の技術を生かした様々な環境設備が整っている。
外の太陽の光を取り込み、その光量に応じて適切な量に増幅・削減して室内に照射する変換器、通称「大天窓」。
常に都市内の空気を清浄なものに保つよう、特別に遺伝子改良が施された植物群。
その他にも、私の知らない範囲で様々な設備が備わっていたりするのだろうが、今の私にはどうでも良いことだった。
ξ--)ξ「……はぁ」
体内の幸福を全て吐き出す程に溜め息。
気晴らしに甘いものでも、と思ったがそれもさして意味をなさなかった。
ξ--)ξ「やっぱり…向いてないのかな…」
パーラー「シュネーブルーメ」、ブラウナウバイオニクスアーコロジー店。
ドイツ産のアイスクリームショップは、噴水前広場という景観の中に屋台を出していることもあって、若い女性や親子連れで連日賑わっている。
- 55 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:45:34.31 ID:Xg4vEpT5O
- 仕事上がりにここのクランベリーシャーベットを食べると、その日一日の疲れも吹き飛ぶのだが。
ξ--)ξ「もう…やめちゃおうかな…」
今日ばかりは、そうもいかなかった。
胸の中に落ちた鉛のようなそれは、居座ったままそこをどこうとしない。
自分が“掃除課”の中で、他の社員よりも遅れを取っているのは以前から感じていたことだ。
情報工作は下手だし、団体での特務行動では何時も同僚の足を引っ張ってばかり。
だからこそ、毎日欠かさず肉体の鍛錬を積んできたのだし、戦術ソフトでのVRトレーニングも欠かさなかった。
肉体強化をしていない分は努力で補おうとしてきた。
だが、その結果が“あの様”だ。
ξ )ξ「生身じゃ…ダメなの…?」
投薬強化の四文字が、脳裏をよぎる。
人体の限界を超えた反応速度と運動能力なら、最後のあの的を撃ち漏らすことは無かっただろう。
社内でも役立たずと罵られることは無くなるだろうし、ともすれば「お父様」の下で働くこともできるかもしれない。
- 56 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:47:26.81 ID:Xg4vEpT5O
- でも。
私は、投薬強化が齎すもう一つの側面を、この目で見て知っている。
ラボの地階、ネットから隔離された強化タングステンの檻の向こうに居る“元”人間が、どんなものなのかを私は知っている。
研究員達は口を揃えて、「あれは稀有な例だ」と言う。
確かに、「まだ処分されずに生きている」という意味でなら、稀有なものだろう。
私は廃人になる危険を侵してまで、“力”が欲しいとは思わない。
肉体を弄くるのは、「ホルスの目」が最後だともう決めていた。
ξ゚听)ξ「はぁ……」
何度目かも分からない溜め息をついた時だった。
私の耳に、水しぶきの上がる派手な音が飛び込んできた。
ξ゚听)ξ「……なに?」
何とはなしに音の出所へ目を移す。
店の前の噴水に、何やら人だかりが出来ていた。
噴水の故障か何かだろうか。
「何かしら…」
「何か降ってきたみたいだったけど…」
野次馬の弁を聞く限り、そうでは無いらしい。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:48:35.05 ID:befBwaa9O
- 支援
- 58 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:49:50.03 ID:Xg4vEpT5O
- 聞く限り、どうも空から何かが噴水の中に落ちてきたみたいだ。
野次馬達は口々にUFOだの隕石だのと好き勝手な事を言っている。
馬鹿馬鹿しい。そもそも“空の無い”このアーコロジーには雨が降ることすら無いのだ。
ξ゚听)ξ「……じゃあ何が降ってくるってのよ」
天井部に設置された機械の一部だろうか、と頭上を見上げてみる。
ξ゚听)ξ「……見えるわけないっつの」
遥か上空、ガラス張りの天井に目を凝らすのも不毛だ。
が、一見した限りここ近辺に機械か何かが設置されている事は無かった。
ξ゚听)ξ「むうぅ……」
となると、ますます何が降ってきたのかが気になる。
あーでもないこーでもない、と私が脳内検証を行っている間にも、野次馬達は次第に興味を失い三々五々に散り始めた。
ξ#゚听)ξ「だー!わかるわけないっつの!」
様々なフラストレーションを込めて私はテーブルを叩く。
ξ#゚听)ξ「つーかんなことどうでもいいっつの!」
我ながら、支離滅裂な性分だと思った。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:50:33.48 ID:DekbaOJ7O
- 支援
- 60 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:51:32.92 ID:Xg4vEpT5O
- 何だか今日は厄日だ。こんな日はさっさと家に戻って寝てしまうに限る。
立ち上がり、支払いの為に携帯端末を取り出した所で、私はそれを見つけた。
ヽ(・(エ)・)ノ
ξ゚听)ξ「──く」
背丈は大体五十センチくらいだろうか。
もふもふとした見た目、水が滴る茶色い毛並み。
そして、私を見上げるつぶらな瞳。
ξ*゚д゚)ξ「くまー!」
テーブルの下。
ずぶ濡れの熊のぬいぐるみが、私の方を見上げていた。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:53:33.94 ID:gHL5DWnoO
- ノハ*゚听)くまー!!!!!
- 62 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:54:24.73 ID:Xg4vEpT5O
- ──取り合えずは状況の把握だ、と私の冷静な部分が告げた。
(・(エ)・)
ξ*´ー`)ξ「くまー…」
そんなわけで、私はテーブルの下に屈み込んで熊ちゃんと向き合っている。
二本の足で立っていることから、この子がペットロイドだということは分かった。
ξ*´ー`)ξ「くまぁ…」
(・(エ)・)
ぱっと見たところ、タグがついているわけでも無ければ認識コードも見当たらない。
所有者が付け忘れたのだろうか。
野良ペットロイドなんて、聞いたことが無い。
ξ*´ー`)ξ「ふにゃぁ…」
(;・(エ)・)
- 63 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:55:46.71 ID:Xg4vEpT5O
- 辺りに所有者らしき人影も見えないし、恐らくはご主人様とはぐれてしまったのだろう。
ξ*´ー`)ξ「お前はどこから来たの?」
(・(エ)・)∩
真綿のように丸っこい腕を、空に向かって上げる熊ちゃん。
ξ*´ー`)ξ「そう。お空からきたの」
( ・(エ)・)))
しきりに丸っこい頭を上下させる熊ちゃん。
ξ*´ー`)ξ「……」
(・(エ)・)
- 64 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:57:23.88 ID:Xg4vEpT5O
- ξ*>∀<)ξ「やぁんもう限界いぃ!」
この子と相対した方ならば、きっとお分かりいただけるであろう。
我慢しろ、というのが酷というものだ。
彼は、あまりにも、その、「魅力的」過ぎるのだ。
ふわふわした体といい、つぶらな瞳といい、ちいちゃな身の丈といい、庇護欲とか母性本能とか、こう、乙女の原発的本能に直球で訴えかけてくるような……。
兎に角、だ。可愛い過ぎる。それがいけない。
で、あるからして、私が何もかもかなぐり捨てて、この子を抱きしめてもふもふとしてしまうのも仕方の無いことなのだ。
情状酌量の余地は十分すぎるだけある。
ξ*´∀`)ξ「もふもふもふもふぅ…」
(;・(エ)・)
そりゃあね。
傍目からすれば、アイスクリームショップのテーブルの下にうずくまって、
熊のペットロイドを抱き締めている女なんて、不審者以外の何者でもないでしょうよ。
ですけどね。
ですけどね。
- 65 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 22:59:13.53 ID:Xg4vEpT5O
- ζ(゚ー゚;ζ「随分とご機嫌そうですね」
そんな冷たい目で、見なくてもいいじゃない。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:59:25.05 ID:ZFsROfrwO
- 支援
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:01:25.52 ID:f4IcVktX0
- ネタスレじゃ…無い…?
- 68 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:01:33.70 ID:Xg4vEpT5O
- ── 一気に現実に引き戻される、というのは如何なものか。
ζ(^ー^*ζ「お暇そうで羨ましい限りです。私にもそのお時間を分けて頂きたいものですね」
それも、戻ってきた先にこの女の嘲笑が待っているなんて、何かの悪い冗談としか思えない。
ζ(゚ー゚*ζ「それとも、掃除課というのは迷いペットロイドの持ち主探しも担当するようになったんですか?」
ξ#////)ξ「いえ、これは……その……」
慌てて立ち上がろうとした拍子に、テーブルの角に思い切り頭をぶつける。
ξ><)ξ「っ〜…!」
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら、大丈夫ですか?」
恥ずかしさと憤りと痛みとで、頭が沸騰する程に熱くなった。
ζ(゚ー^*ζ「差し出がましい事かも知れませんが、もう少し周囲に気を配った方が宜しいかと思われますよ?」
ξ#゚听)ξ「御忠告、ありがとうございます」
スカートの裾を払いながらなんとか立ち上がり、このいけ好かない嫌み女と真正面から向き合う。
「チルドレン」のエースたるデレ・ツヴァイ嬢は、頬の両脇で緩く巻いた金髪を揺らして薄く微笑んでいた。
- 69 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:03:38.87 ID:Xg4vEpT5O
- ξ#゚听)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……何か?」
細身のシルエット。巻いた金髪。エメラルドの瞳。
毎度のことながら、鏡を見ているような錯覚を覚える。
私と同じ遺伝子から出来ているのだから当然なのだが。
ζ(゚ー゚*ζ「それにしても、何時になったらお姉様も私達と同じ部署に配属されるのでしょうか?」
クローン。
元々、自分と同じ顔の人間が複数存在することは私も知っている。
オリジナルじゃない私がそのことに対して何やかんや言うのはお門違いだろうし、そもそも何の感慨も持ち合わせてはいない。
気に食わないのは、この女がお父様の側付きを任せられた「成功作」であるということだ。
ζ(^ー^*ζ「“家族”なんですもの。せっかくなら、同じ部署で苦楽を共にしたいじゃないですか」
“私”という失敗作があって、“彼女達”という成功作がある。
今更どうこう出来る話じゃない。
結果は既に出ていて、それに文句を言うのは不毛なことだ。それは分かっている。
分かってはいるけど。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:04:51.79 ID:DekbaOJ7O
- しえん
- 71 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:06:21.66 ID:Xg4vEpT5O
- ζ(^ー^*ζ「今度、お父様に直接お話してみますね」
嘲笑を浮かべて楽しそうに去っていくその後ろ姿に、私は拳を強く握らざるを得なかった。
ξ )ξ「──」
やり切れない。ただ、ただ、やり切れなかった。
運命なんて陳腐な言葉は好かない。
認めたく無かった。
努力すれば私にも幸せを勝ち取る権利が有るのだと、証明したかった。
だが、現実はどうだ?
血反吐を吐くような訓練を積んでも、私は“彼女達”を追い越すどころか追い付くことすら出来やしない。
製造番号が違うというだけ。たったそれだけの事実が、大きな、決して超えることの出来ない壁となって私の前に立ちはだかっていた。
ξ;へ;)ξ「……ぅ…ぅう」
涙が滲む。
一滴も流すまいと、顔をしかめて上を向いた。
ξ;へ;)ξ「う……」
アーコロジーの天板が、遥か遠くで滲んでいる。
私自身の限界を暗喩しているように思えて、余計に悔しかった。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:08:24.12 ID:5OIOov830
- しし
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:09:29.45 ID:gHL5DWnoO
- ええ
- 74 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:09:48.91 ID:Xg4vEpT5O
- (・(エ)・)σ))
ふと、スカートの裾を引かれたような気がして目を落とす。
(・(エ)・)?
ξ;;)ξ「あなた…」
先のペットロイドが、私を見上げて首を傾げていた。
その様子が「どうかしたの?」と問い掛けてきているようで、私はとっさに涙を拭う。
ξう;)ξ「は、はは…カッコ悪いとこ…見られちゃったね……」
((・(エ)・≡・(エ)・))
熊が有るか無いかもわからない首を、懸命に左右に振る。
ξ゚听)ξ「あのね…お姉さん、少し疲れちゃったの。だから、今日はもうお家に帰ることにするわ」
ペットロイド相手に、私は何をしているのだろうか。自嘲の笑みが、口元をひきつらせる。
きっと、今の私は凄く皮肉っぽい表情をしているのだろう。
ξ )ξ「じゃあね、熊ちゃん。縁があったらまた逢いましょう」
これ以上、涙を堪えきれない。
そう思って、私は駆け出そうとした。
- 75 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:12:34.23 ID:Xg4vEpT5O
- したが。
ξ><)ξ「へぶっ!」
何かにつまづき、見事に転んだ。
ξ;>听)ξ「っ痛〜!」
腰をさすりながら周囲を見やる。
踏んだり蹴ったりな現状に、心が折れそうだ。
∩(・(エ)・)∩
視界の隅で、茶色いもふもふが見え隠れする。
もしや、この子が私の足を引っ掛けたのだろうか。だとしたら、私もついに墜ちるところまで堕ちたものだ。
ξ;∀;)ξ「はは……」
乾いた笑いが口から漏れる。
枯れ木の間を抜ける風のようだ、と他人事のように考えた時だ。
(・(エ)・)∩
私の視界を、真っ赤なまんまるが埋め尽くした。
- 76 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:13:58.88 ID:Xg4vEpT5O
- ξ;゚听)ξ「え?」
突然のことに身を引けば、それの正体は直ぐに明らかに。
赤いゴムの風船が、ふわふわ、ふわふわ。
風船?なんでここに?
視線を下げれば。
(・(エ)・)∩
茶色い熊。
私を見上げる彼の右手に、その紐が握られていた。
ξ゚听)ξ「え…と…」
一体どこから?
私の疑問を余所に、熊は私にその風船を差し出す。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:15:41.88 ID:gHL5DWnoO
- ノハ*;;)くまー
- 78 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:16:39.26 ID:Xg4vEpT5O
- ξ゚听)ξ「……くれるの?」
( ・(エ)・))
こくり、頷き、再び風船を差し出す。
ξ゚听)ξ「……」
少し、戸惑った。
一般的なペットロイドに組み込まれているAIの程度など、たかが知れている。
精々が、「ペットらしく」飼い主にすり寄ったり、愛想を振りまく程度だ。
ξ゚听)ξ「……あなた…」
一体何者?と聞こうとして、私は止めた。
なんだか、それがひどく無粋なことのように思えたのだ。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:16:53.66 ID:/aKDtxfrO
- くま支援
- 80 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:17:52.75 ID:Xg4vEpT5O
- ξ゚ー゚)ξ「……ありがとう」
風船を受け取り、微笑む。
何だっていい。
この子が、私を慰めようとしてくれている。その事実に変わりはないのだから。
(・(エ)・)ノ
熊が、手を振り、背を向ける。
ぽてぽてと歩いていくその後ろ姿を、私は見送る。
ξ゚ー゚)ξ「風船…か」
ふわふわ、ふわふわ。
風に揺られる赤いまんまるに、どこか懐かしい気持ちが滲んできた。
ξ゚ー゚)ξ「ふふ……」
悩みが全部無くなったわけじゃない。
それでも、私の胸は、この赤い風船と同じく、どこかふわふわと軽くなっていたのだった。
- 81 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:20:12.30 ID:Xg4vEpT5O
- ξ゚ー゚)ξ「……ありがとう」
もう一度、小さく礼を言う。
何だか、この不思議な出来事を誰かに話したい。
そんな、気分だった。
-fin-
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:21:03.88 ID:me8/B1myi
- しえ
- 83 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:24:04.86 ID:Xg4vEpT5O
- ξ;∀;)ξ「あはははwwwwアイパーwwwww」
以上で番外編、午前の部はおしまい。
後日、残りのレギュラーキャラ達の分も投下します。
何か質問があればどんぞ。
- 84 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:25:09.58 ID:Xg4vEpT5O
- =index=
【disc 9. 善悪の虚像】
story…正義の意味、絆の形、遅すぎた告発。
真実と虚構が交錯する電子の海、嘲笑う道化が、今、動き出す。
tips…ジョーカーの正体にぐぐんと迫るエピソード。これ単体で読むと全くわけがわからない代物。それ以上でも以下でもない。
↓成分表↓
バトル…☆☆☆☆☆
罵詈雑言…★★★☆☆
シリアス…★★★★★
萌え…★☆☆☆☆
ブーン…★★★★★
ドクオ…★★★★☆
ハイン…★★★☆☆
新キャラ…★★☆☆☆
田所さん…★★★☆☆
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:26:34.59 ID:/aKDtxfrO
- >>83
乙
くまは悪魔の実を食べて再登場しますか?
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:27:46.14 ID:f4IcVktX0
- 乙ー
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:29:13.91 ID:5OIOov830
- おつ
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:29:45.29 ID:uyCjReSs0
- 乙。
質問なんだけど、俺の雪見大福は?
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:30:39.97 ID:gHL5DWnoO
- ノパ听)乙!!!!!
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:32:09.89 ID:DekbaOJ7O
- 乙!
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 23:33:03.29 ID:A1r93Y/z0
- どこ駆けも来てるし最高!!!!
乙
- 92 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/30(水) 23:33:05.92 ID:Xg4vEpT5O
- >>85
御想像にお任せします。ふもふも。
>>88
僕の妹が食べてしまいました。ごめんなさい。
全部
最新50