全部 1- 101- 最新50  

从 ゚∀从は鋼鉄の処女のようです

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:12:48.43 ID:VYWepxhE0
代理店

2 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:17:52.81 ID:N2kHFABtO
>>1

まとめサイト
http://boonsoldier.web.fc2.com/maiden.htm

↓初北産業↓
サイバーパンク
オムニバス
エンターテイメント

本日の投下はかなりの長丁場となります。猿避けの為に途中、少し休憩を挟もうと思っていますので、御容赦のほどお願いします

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:18:15.57 ID:YZXz5zEg0
oh....miss spel

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:19:22.89 ID:CrOwjBtNO
キタワァ(n‘∀‘)η゚・*!!

5 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:20:41.72 ID:N2kHFABtO
track-ε

──黒地の幌をくぐった先は、某有名チャットルームを凌駕する程に広大なホールだった。

(;'A`)「おいおい…こりゃマジでサーカスの公演が出来るんじゃねえか?」

ローブについたフードをかぶりながら、辺りを一望する。
ホール内はオレ達と同じように黒いローブを纏った“団員”達で溢れかえっていた。

(;'A`)「つうかこんなにメンバーがいたのかよ」

从 ゚∀从「これでも大分減った方だがな。実働班はもう既にログアウトして準備に取りかかって居るはずだ」

魔女のようにローブを着込んだ相棒が、さもありなんとした口調で言う。

('A`)「どうでもいいけど、君のその格好、なかなか様になってるぜ」

从 ゚∀从「……」

鋼鉄魔女は何故か呆れたように肩を竦めると、直ぐに目を細めた。

从 ゚∀从「…あまり時間が無い。早急に行動するぞ」

擬似視界の隅に表示された時計を見やる。
ブーンから聞いた襲撃結構時間まで、残り一時間を切るところだった。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:21:37.79 ID:HKne1HJt0
支援

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:26:28.17 ID:+QHfx48sO
支援

8 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:28:46.15 ID:N2kHFABtO
('A`)「と言われましても、どうやってジョーカーと話をするんだ?」

説得する、と言ってもその相手と接触する手段が思いつかない。

从 ゚∀从「“代弁者”を通すしかないだろうな」

('A`)「で、その“代弁者”と会うにはどうすればいい」

从 ゚∀从「貴様は自分で考えるということをしないのか」

('A`)「だって……」

言いかけて、思いとどまる。

オレが蚊帳の外の人間だとは言え、ブーンはこのオレを頼ってくれたのだ。

それならば、出来る限りであいつの力になってやるというのが筋なんじゃないだろうか。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:29:56.84 ID:EQkZp+Mb0
支援

10 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:35:02.70 ID:N2kHFABtO
('A`)「へっ。“親友”を持つってのも色々と面倒くせぇな」

从 ゚ー从「……」

('A`)「おい、なんだその生暖かい視線は」

从 ゚ー从「ダメ息子を持った母親の心境というものが理解出来た」

('A`)「保護者気取りウザいです」

从 ゚ー从「反抗期か?よしよし、あとでハッピーターンを買ってやるからな」

(#'A`)「こいつはめちゃ許せんよなぁ」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:39:03.24 ID:HKne1HJt0
支援

12 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:41:42.35 ID:N2kHFABtO
なんて馬鹿なやり取りをしている暇はない。
オレには、ジョーカーを説得する他に、もう一つしなければ確かめなければならにことがあるのだ。

('A`)「取りあえず、そこらの奴らに聞いてみるしかないか」

フードを正し、近くにいた団員の一人にオレは歩み寄る。

('A`)「なぁ、ちょっと聞きたいんだが」

(-@∀@)「なんでしょうか?」

('A`)「ジョーカーに会うにはどうすればいい?」

(-@∀@)「…はぁ?」

何を言ってるんだこいつはって感じの視線。

从 ゚∀从『敬称をつけろ。私たちが団員を装っているということを忘れるな』

脳核回線ですかさず指摘してくる鋼鉄魔女。なるほど。こいつはうかつだった。

('A`)「あー、えーと、失敬。ジョーカー様にどうしてもお伝えしたいことがあってな。その、あー……」

(-@∀@)「伝えたいこと?」

明らかにいぶかしむような声音で眼鏡の団員は聞き返してくる。さて、どう切り返したものか。

('A`)「ああ。今回の作戦について、大至急進言しておきたいことがあるんだ。早くしないと間に合わない」

(-@∀@)「……」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:46:28.98 ID:2yqTO0yqO
しえ

14 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:47:24.85 ID:N2kHFABtO
('A`)「それで、えーと…」

“代弁者”の名前は何と言ったか。

从 ゚∀从『“マスター”としか言われてなかった。こればかりはどうしようもないな』

('A`)「マスターに、取り次いでもらえないだろうかと…だな……」

(-@∀@)「……」

眼鏡の団員は最早不信を隠そうともせずに、オレの体に視線を這わす。

(-@∀@)「…何を進言するというのだ?」

('A`)「えと……」

言っていいものか。刹那の逡巡。沈黙は立場を悪くすると判断し、オレは思い切って口を開いた。

('A`)「今回の作戦の中止を提案したいのだ」

団員の目が、大きく見開かれる。

(-@∀@)「……どういう意味だ」

('A`)「そのままの意味だ。今すぐ、シベリア襲撃を中止させたい」

こうなった以上、こいつを説得して“代弁者”に繋いでもらった方が早いと思い、オレは続けた。

('A`)「お前もシベリアの力は知っているだろう?市街戦で強化装甲服(アーマーギア)の一個小隊を持ち出すような奴らだ
。幾ら我々の電脳班が優秀でも、分が悪い」

15 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:48:18.18 ID:N2kHFABtO
('A`)「“氷の旅団”と言えば、灰の二年間で最後まで“ロイヤルハント”に抵抗していたゲリラ戦のスペシャリストばかりだ」

('A`)「そうなれば、電脳戦だって経験しているに違いない。本職の軍人達を相手取っての攻城戦となる。我々の被害は尋常なものでは済まされないだろう」

オオカミと陣龍の一件から、オレも少し“氷の旅団”について調べてみた。
未だ日本以外に電脳装備が普及していなかった“灰の二年間”当時。
とんでもないことに、奴らは旧式兵器と敵から奪った電脳装備だけで、三ヶ月もの間日本軍の精鋭部隊であるロイヤルハントの侵攻に抵抗していたという。
日本軍士官学校の戦史の教科書には、“カラフトのバーバ・ヤーガ”として名前まで載っている始末だ。
分が悪いなんてもんじゃない。彼らは、生ける伝説に戦争をふっかけようとしているのだ。

('A`)「今ならまだ間に合う。マスターに会わせてくれ。奴らに正面切ってぶつかるのは不味い」

16 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:51:26.32 ID:N2kHFABtO
説得に熱が籠もってしまい、声が知らず知らずのうちに大きくなっていたのだろうか。
気付くと、オレ達の周りには何人もの団員達が集まってきていた。

「なんだ。何を言っているんだ?」

「作戦中止?何を寝言を……」

「怖じ気づいたか。笑わせる」

呆れるもの、嘲笑するもの、罵声をあげるもの、皆がオレを取り囲み、思い思いの言葉を吐く。

(;'A`)「おい、わかってんのか?相手は“シベリア”なんだぞ!?」

我慢出来ずに声を張り上げた。

从 ゚∀从『おい貴様…』

誤算だった。こんな所でこいつらの相手をして手間取っている暇など無いというのに。

刻々と迫るタイムリミット。進展しない状況。

焦る心とは裏腹に、オレの脳裏をどうでもいい疑問が掠める。

どうして彼らは、こうも自分達の勝利を信じて疑わない?

何か、秘策でも用意してあるのか?

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:51:32.37 ID:+QHfx48sO
支援

18 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:53:40.38 ID:N2kHFABtO
(-@∀@)「おい、お前本気で言ってるのか?」

(;'A`)「ほ、本気も何もあの“氷の旅団”なんだぞ!?」

オレがそう言ったまさにその瞬間。

「 だ か ら ど う し た 」

一筋の声が、喧騒の中に凛と響いた。

途端に場は水を打ったように静まりかえる。

(;'A`)「!」

オレを取り囲んでいた団員達が一斉に振り返り、そして。

从*‖*从「だからどうしたと聞いている」

そいつに向かって、頭を垂れた。

19 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:55:27.55 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──変わらない。何一つ、変わらない。
床に浮いた染み、卓袱台の位置、壁に貼られた一昔前のアイドルのポスター。

時の流れから取り残されたのか。

その部屋は。ぃょぅが最期を迎えたその部屋は、何もかもが七年前のあの日とそっくり同じまま、そこにあった。

( ^ω^)「……」

生唾を飲み込み、一歩を踏み出す。
あいつがこの世を去ってからほどなくして、このアパートは経営不振で大家が夜逃げし売りに出されたらしい。
いい加減な不動産屋の管理の手は、結局最後まで動くことは無かったのだろう。
今は、彼らに感謝だ。

( ^ω^)「さて、と」

僕は、ジョーカーを説得して欲しいと、ドクオに言った。
かつての仲間が、“シベリア”なんて化け物を相手に戦争を始めるのは放っておけなかった。
ドクオは言った。「お前自身が説得した方が早いんじゃないか」と。

20 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:56:45.49 ID:N2kHFABtO
僕も、そう思う。
本当なら、今すぐにでもあのストラクチャに引き返して、声を張り上げたい。

しかし、僕にはやらなければならないことがある。

僕にしか出来ないことがある。

( ^ω^)「ジョーカー……お前は、誰なんだお」

ジョーカーの正体を突き止めるという、僕にしか出来ない大仕事が。

……手掛かりは、「ジョーカーがピーチガーデンの誰か」というその一点だけ。

あの頃のメンバーの中でリアルでも会ったことが有るのは、ぃょぅ、ヒート、シュール先輩の三人。
その中でも僕が住所を知っていたのは、今は亡きぃょぅだけだ。
シュール先輩以外に、他のメンバーが今、何処で何をしているのかすらも分からない。
頼みの綱のシュール先輩も、ここのところ連絡が付かない。

僕が取れる行動は、必然的に一つしか無かった。

( ^ω^)「何か…手掛かりでもあればいいけど……」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:58:39.15 ID:e+warG/UO
支援

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 21:59:33.11 ID:e+warG/UO
もひとつ支援

23 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 21:59:46.18 ID:N2kHFABtO
主無き部屋の中を見回す。
六畳一間の狭い空間には、卓袱台と情報端末(ターミナル)の他は何も無い。
埋め込み式のキッチンオートメーションと、同じく埋め込み式のクローゼットが、壁に埋まっているだけだ。

( ^ω^)「……」

部屋に一つだけの窓の下に置かれた、カスタム仕様の情報端末に歩み寄る。
スイッチを押し立ち上げようとして、電気が通っていないことを知り、僕は肩を落とした。

期待してはいなかったとは言え、情報端末ぐらいしか他のメンバーの手掛かりに心当たりは無い。

( ^ω^)「そう簡単に行くもんじゃないかお……」

落胆から溜め息をついて、僕は最後にぃょぅが腰掛けていた端末の前の椅子に腰を下ろす。
何も無い部屋は、たったこれだけでもう半分以上調べてしまったと言える。

( ^ω^)「……あとは、クローゼットぐらいかお」

半ば諦め気味に立ち上がった所で、視界の端で何かが落ちるのを見、僕は振り返った。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:00:32.49 ID:EC5546TUO
支援

25 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:00:47.62 ID:N2kHFABtO
( ^ω^)「紙……?」

フローリングの上にひらりと舞い落ちたそれは、掌大のメモ用紙。

( ^ω^)「何処から落ちたんだお?」

不思議に思いながらも屈んでそれを拾う。
端にセロハンテープがついているのを見て、大方情報端末の何処かに貼り付けられていたのだろう。
何の気なしにそれを裏返した僕は、そこに 走り書きされた文字を認識した瞬間、背筋に冷たいものが走るのを自覚した。

( ;^ω^)「こ…れ…は……」



26 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:02:19.81 ID:N2kHFABtO
ここで一旦トイレタイム

30分程インターバルを置いて、続きを投下したいと思います

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:05:07.32 ID:e+warG/UO
焦らすなよw

ゆっくり出すもん出してこい

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:06:59.47 ID:EQkZp+Mb0
トイレに30分かかるのか

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:07:44.73 ID:RX+ZOxeO0
おお、来ていたか

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:16:53.83 ID:HKne1HJt0
ほす

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:29:55.69 ID:h91+cqPiO
保守

32 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:34:18.77 ID:N2kHFABtO
ごめんねほんとはおまけ書いてたの許して

保守有り難うござます

というわけで続きいっくぜー!

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:34:57.38 ID:e+warG/UO
おー来た来た

34 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:35:29.05 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──ホールの中が静まり返った。

从*‖*从「だから、それがどうしたというのだね?」

ホールの中央。
空中に浮かぶようにして現れた道化の仮面が、耳障りな電子音声で問いかけてくる。

从 ゚∀从『目的の人物のお出ましだ』

脳核回線から聞こえてくるハインの呟き。
こいつが。この馬鹿でかいピエロの仮面のアバターが、オレ達が接触しようとしていた“代弁者”ということなのか。

('A`)「……マスター」

从*‖*从「なんだね」

“代弁者”、というからにはこいつがジョーカーの意志を団員達に伝え、“サーカス”を動かしているのだろう。
軍隊で言えば現場指揮官だ。こいつを何とか丸め込みさえすれば、シベリア掃討作戦なんて戯けたことを中止させられるかも知れない。

('A`)「氷の旅団は明らかに分が悪すぎます」

从*‖*从「分が悪いとは、これまた……どうしてそう思うのだね?」

('A`)「ですから向こうは……」

从*‖*从「ああ、ああ、それは聞かせて貰ったとも。相手はゲリラ戦のプロだから。そうだったね?」

('A`)「そうです」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:35:31.38 ID:EQkZp+Mb0
おかえりー

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:35:38.58 ID:yvCkGpbs0
しえーん

37 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:38:42.13 ID:N2kHFABtO
从*‖*从「だから、それの何処が不安材料足り得るのかな?」

(;'A`)「……え?」

从*‖*从「こっちにも、その手のプロが居るのを君はお忘れなのかな?」

その手のプロ…?

从*‖*从「確かに、このような大掛かりな作戦を前にして弱気になるのも分かる」

どういうことだ?“黒山羊のサーカス”ってのは単なるハッカー集団じゃないのか?
それとも、実働班ってのは戦闘の訓練を受けた傭兵集団か何かなのか?

从*‖*从「だが安心したまえ。我々には、“アンダータスク”という心強い援軍がついている」

(;'A`)「アンダー…タスク……」

从*‖*从「渡辺の懐刀が一個中隊規模で力を貸してくれるというのだ。それに我々の電脳班でのサポートが加われば、如何に氷の旅団と言えども一時間と持つまい」

渡辺の懐刀。アンダータスク。
聞いたことが有る。あの憎たらしい女狐は、非公式の私設武装集団を所有していて、グループの利益になる非合法の工作活動を彼らに行わせているのだと。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:39:04.55 ID:e+warG/UO
支援

39 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:40:57.98 ID:N2kHFABtO
しかし、どういうことだ。何故ここで、渡辺の名前が出て来る。
こいつらは。“黒山羊のサーカス”は、一体どういう組織なんだ。

从*‖*从「心安らかに信じるのだ。我々の勝利を。正義は我々の下に有る」

(;'A`)「しかし……」

尚も抗議しようと上げたオレの言葉は“代弁者”には届かない。
奴は既にオレから視線を外し、ホール中の団員達を見渡し弁舌を振るい始めていた。

从*‖*从「さて、諸君。今し方、実働班から連絡が有り、突入の準備が整ったそうだ」

(;'A`)「なっ……!」

从*‖*从「あとはこの私が合図を出すだけで作戦は開始されるわけだが、その前に作戦の確認といこう」

マズい。冗談抜きでヤバい状況だ。
こうなったら説得どころの話じゃない。何が何でも突入を止めなければ。

从*‖*从「先ずは、電脳班がビルのセキュリティーシステムを“イブリース”でもってダウンさせる」

だが。オレは焦るその一方で、言いようのない違和感を感じていた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:41:41.27 ID:EQkZp+Mb0
支援

41 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:43:08.04 ID:N2kHFABtO
从*‖*从「セキュリティーを掌握したら、いよいよ実働班の突入だ。初動で起点を作り、フロアを制圧する。
その際、諸君等のアシストがものを言うだろう。気張ってくれ」

何だ。この違和感は。

从*‖*从「フロアの制圧が済んだら、次はいよいよ御大将がおわすオフィスの制圧だ。ここでは激戦が予想される。そこで援軍の出番というわけだ」

从*‖*从「アンダータスクの支援はビルの外から行われる。援護射撃を兼ねた陽動というわけだ。
相手の注意が外に向いたのを確認次第オフィスに突入、これを制圧。見事、我々の勝利だ」

違う。

从*‖*从「以上、確認を終了する」

違う。

从*‖*从「諸君。繰り返すが、これは聖戦の序章に過ぎない」

何かが違う。

从*‖*从「我々はこの戦を皮切りに、革命の旗を振りかざして世に立ち上がる」

何か。上手く言葉には出来ないが、決定的な、何かが違うんだ。

从*‖*从「準備はいいか?」

オレの疑問を余所に、ホール中一杯に歓声が響き。

42 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:44:43.25 ID:N2kHFABtO
从*‖*从「さぁ、始めよう!“黒山羊のサーカス”始まって以来の大演目を!」

無情にも、“公演”は始まってしまった。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:45:34.56 ID:yvCkGpbs0
支援

44 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:46:21.33 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──モンテクリストをクリスタルの灰皿にこすりつけた所で、部屋の照明が消えた。

ノ从パ-ナル「やれやれ、安普請はいかんな。五秒と保たない」

手探りで机の引き出しを開け新しい葉巻を取り出す。
横から伸びてきた丸太のような腕が、それにマッチで火を付けた。

ノ从パ-ナルy─~「……それで、状況は?」

闇の中、隣に佇んでいるであろう私の忠実な騎士に向かって問う。

/ ゚、。 /「ビル内の全管理システムが何者かによりダウンさせられています。防弾シャッターも降ろせません」

巌のような声の淡々とした報告。
携帯端末(ハンディターミナル)からジャックインし、セキュリティーにアクセスを掛けるも監視カメラすら機能していなかった。

ノ从パーナルy─~「ふむ。……さて伍長、一つ賭けをしないか」

/ ゚、。 /「と言いますと?」

ノ从パーナルy─~「敵対勢力についてだ。お前はどんな奴らの仕業だと思う?」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:46:22.77 ID:TMi283lPO
支援

46 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:48:01.39 ID:N2kHFABtO
/ ゚、。 /「そうですね……」

ダイオードは思案気に言葉を切ると、ややあってその先を継いだ。

/ ゚、。 /「先に管理システムを落としてきたという時点で、我々と同等かそれ未満の勢力数であることが伺えます」

ノ从パ-ナルy─~「ふむ。……それで?」

/ ゚、。 /「我々を殲滅するのが目的なら、単純にこのビル自体を爆破すれば済みます。
それをしてこないのは、相手にそこまで波風を立たせても平気な権力が無い証拠」

ノ从パ-ナルy─~「つまり?」

私の問いに、彼は少し間を置くと珍しく口の端に笑みを浮かべて言った。

/ ゚、。 /「残念ながら、私が討って出るまでも無い相手だということであります」

ノ从パーナルy─~「それでは賭けは成り立たんな」

/ ゚、。 /「ええ、残念ながら」

二人、闇の中で虚ろに笑う。
遠耳に、同志達が狩りを始める音が響いてきた。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:49:45.03 ID:e+warG/UO
もいっちょ

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:50:27.94 ID:e+warG/UO
支援

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:51:56.34 ID:e+warG/UO
しえん

50 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:52:14.98 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──黒装束達の姿が一斉にして全て消えた。

(;'A`)「っ!」

ホールの中に残されたのは、オレとハインと、そして“代弁者”の三人。

それは即ち、電脳班がハックを開始したということ。

从 ゚∀从『間に合わなかった、か』

淡々とした相棒の呟きに、舌打ちする。
オレ自身、ジョーカーがどうなろうが知ったことでは無い。
オレの心を締め付けるのは、ブーンの信頼に応えてやれなかったという、その事実だった。

('A`)「あぁ。間に合わなかったな」

だが。

その一方で、この事態をどこか遠巻きに見ている冷静なオレが居た。

从*‖*从「……さて。これでゆっくり話せるだろう」

がらんどうになったホールの中に、無機質な電子音声が悠然と響く。
振り返るホールの中央、道化の仮面がオレ達を見下ろしていた。

('A`)「……?」

それが最初、誰に向けられた言葉なのかオレは分からなかった。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:53:03.42 ID:h91+cqPiO
支援

52 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:54:47.62 ID:N2kHFABtO
だが。

从*‖*从「教えて頂けるかな?君たちが、どういった目的でここに乗り込んできたのかを」

(;'A`)「なっ…!」

从*‖*从「私の目を欺けていると思ったのかね?これでも団員全員のIPは覚えているんだ」

どこか誇らしげに言ってみせる“代弁者”に、オレはチェックメイトを悟った。

('A`)「そこまで解っていて、何故オレ達をまだのさばらせて居るんだ?敵側のスパイかも知れないぜ?」

从*‖*从「君達がどんな目的でここに来たのかは分からないとは言え、我々に悪意を抱いていないのは分かる」

余裕の含み笑いを漏らしながら、仮面は告げる。

从*‖*从「君達は我々に対して、“シベリア”への襲撃を中止するよう言ったね」

从*‖*从「君たちが我々を陥れようとするのが目的なら、他にもっと言いようが有るはずだ」

从*‖*从「むしろ、君たちが“シベリア”の手のものだとすれば、そんな事を言うからには“襲撃されたくない理由”が有ると我々に知らしめているようなもの」

53 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:56:51.30 ID:N2kHFABtO
从*‖*从「だが、先に言った通りあの氷の旅団のことだ。どうせスパイを送り込むなら情報の混乱を狙ってくる筈」

从*‖*从「以上のことから、君達はかなり低い確率で“シベリア”以外の人間だと思われるが…さて、如何だろう?」

(;'A`)「……」

ここまでこいつが頭の切れる奴だとは思わなかった。
どうにも、全てを見透かされているような気さえしてくるから気持ちが悪い。

('A`)「見事な推理だよ。分かった。全部話そう」

隣の相棒に目線で是非を問う。

从 ゚∀从「……」

彼女はただ、黙して、道化の仮面を見つめていた。
何も口を出してこないということは、オレに一任するということかと判断し、言葉を継ぐ。

('A`)「オレ達は、あんたらの親玉の古い知り合いに頼まれてここに来たんだ」

从*‖*从「古い知り合いとな…」

('A`)「そいつは、かつての仲間が“シベリア”なんて危ない奴らに喧嘩を売るのを黙って見過ごせなかったんだろう。オレに、説得を頼んだ」

54 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 22:59:01.39 ID:N2kHFABtO
('A`)「はっきり言ってオレはな、あんたらがどうなろうが知ったこっちゃ無い。むしろ、恨みが有ると言ったって過言じゃない」

ネトゲのレアアイテムの恨みなんて、口が裂けても言えないがな。

('A`)「だけどよ、“そいつ”はオレを頼ってくれたんだ。鼻水たらして泣きついて来やがったんだよ」

从 ゚∀从「……」

('A`)「オレは、基本的にてめぇ以外の人間がどうなろうが知ったこっちゃねぇ。誰が何処で野垂れ死のうが関係ねぇ」

从*‖*从「……」

('A`)「でもよ、そう言って“そいつ”の頼みを断ったら…結局、傷付くのは“そいつ”だけじゃねえんだな」

そうなんだ。オレは、とどのつまり何処まで行っても弱いままなんだ。
自分が原因で誰かに恨まれるのが怖い。自分が原因で誰かに悲しまれるのが辛い。
結局、そんな、エゴイスティックな考え方しか出来ないんだ。

('A`)「だから、オレは、オレの精神衛生上の問題を解決するために、あんたらを止めにきた」

それを罪だと言うなら、それでもいい。だけど、オレが出した答えを変えるつもりは毛頭無い。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 22:59:12.03 ID:EQkZp+Mb0
支援支援

56 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:01:22.84 ID:N2kHFABtO
敢えて言うなら、そう。

('A`)「あいつにだけは、嫌われたくないんだ」

オレは、ブーンに。オレを“慕ってくれる奴ら”に、嫌われたくないんだ。

从*‖*从「……」

“代弁者”は推し量るようにしてオレを見つめる。
やがて奴は、何か得心のいった様子で頷いた。

从*‖*从「……そうか」

果たして信じて貰えたのかどうか。
無機質な道化の仮面からは、伺い知れない。

('A`)「オレからも、あんたに聞きたいことが有る」

だが、オレにはそれを差し置いてでも確かめたい事があった。

从*‖*从「何だね?」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:01:58.41 ID:W+5t620vO
これは支援

58 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:03:26.50 ID:N2kHFABtO
('A`)「あんたらは本当にジョーカーの命令でこんなことをしてるのか?」

瞬間、“代弁者”の仮面がわずかに鼻白んだ。

从*‖*从「なに…を……」

(#'A`)「……くそったれ。やっぱりかよ」

奴の反応に、オレの感じていた“違和感”の正体が浮き彫りになっていく。
同時に、あんなに焦っていた自分が馬鹿らしく思えた。

59 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:05:24.61 ID:N2kHFABtO
('A`)「ブーンから、あんたらがやろうとしている事を聞いてからずっと引っかかってたんだよ」

从*‖*从「…な…あ…」

('A`)「“腐れ切った日本の政治に変革を”なんて右翼思想を掲げてネット、リアルを問わずにテロ活動…」

('A`)「“聖戦”がどうのこうの、“正義”がどうのこうの…なんていかがわしい御題目を掲げ始めた辺りでいよいよ怪しくなってきた」

从*‖*从「貴…様……」

('A`)「オレが知る限りの“ジョーカー”は、そんな分かり易い事の為に動いたりなんかしない」

今になって思えば、ブーンは、このことに気付いていたんだろうか。
気付いていて、その上で万が一の確率の為に“説得してくれ”などとほざいたのだろうか。

だとしたら、なんとも呆れたものだ。

オレの悔しさとか、焦りとか、あまりにも報われない。

('A`)「なぁ。本当の所を教えてくれよ。“ジョーカー”とあんたらの間には、何の繋がりも無いんじゃないのか」

从*‖*从「貴様…貴様…」

('A`)「あんたらは模倣犯にも成り切れない、ただの“スケープゴート”だ。違うか、“代弁者”さんよ」

60 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:07:20.45 ID:N2kHFABtO
从*‖*从「貴様あああぁぁぁああ!!」

“道化”の仮面の絶叫。
叫びに呼応するよう、仮面の周囲に子鬼(インプ)の形をしたウイルスが十数体顕現する。

从*‖*从「そ、それ以上…それ以上我々を…愚弄することは許さあぁぁぁああぁん!」

濁った電子音声がデスボイスのように木霊し、インプが翻った。

その、瞬間だった。

『マスター!聞こえますか!?非常事態です!』

団員の切迫した電脳通信が、ホールに響いた。

从*‖*从「……非常事態だと?何があった」

インプの突撃を中止し、仮面が問う。
それに返って来た答えは。

『援軍が…アンダータスクが…まだ到着しません…』

崩壊の宣告だった。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:08:25.93 ID:xphR0EWu0
支援

62 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:09:18.14 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

── 一際大きい発砲音を最後に、銃声のセッションが止んだ。

ノ从パ-ナルy─~「終わったか」

紫煙を吐き出しながら立ち上がる。

ノ从パーナルy─~「さて伍長、さっきの賭けのことだが……」

視界の端に映る脳核時計を確認すれば、“狩り”が始まってから15分弱が経過していた。

ノ从パーナルy─~「確かお前は、20分でかたがつくと言ったが……」

/ ゚、。 /「私の負けです」

苦笑を漏らしながらダイオードは懐を探ると、葉巻ケースを取り出す。

ノ从パーナルy─~「現場士官として、もっと隊の練度は信頼してやらねばな。土壇場で最後にものを言うのは部隊間の信頼関係だ」

/ ゚、。 /「精進します」

ダイオードの差し出したモンテクリストを受け取りながら、私は執務室のドアを開けた。

(+νΦ)ゞ「や、これは軍曹!」

扉を開けようとしていたのだろう。
目の前で鉢合わせたキリル一等兵が慌てて敬礼する。

ノ从パーナルy─~「無意味でしょうが、一応確認しておくわ。状況は?」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:09:33.21 ID:EQkZp+Mb0
支援

64 名前:sea風ドドドドリア ◆bqVQ4ScH9j.z :2009/09/11(金) 23:10:25.66 ID:XJSIq4s5O
頑張って!!

65 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:11:18.65 ID:N2kHFABtO
(+νΦ)「はっ、目標は40秒前より完全に沈黙しました。現在はイリヤ一等兵以下がビル内のシステム復旧に没入中であります」

ノ从パ-ナルy─~「御苦労様。……ところで、どうだった?楽しめたかしら?」

(+νΦ)「ははっ、こんなんじゃ食後の運動にもなりませんよ。これ、奴らが持ってた得物です。見てください」

そう言って、キリル一等兵が左手に提げていた拳銃を手渡してくる。
飴細工のように粗い造りは“現代のサタデーナイトスペシャル”と呼ばれるケスラー社の旧モデルだった。

ノ从パーナルy─~「はっ!これはこれは!こんな玩具で奴らは私たちに喧嘩を仕掛けたのか!見上げたカミカゼ精神だ!」

(+νΦ)「動きをみる限り、ずぶの素人ばかりでした。指揮系統もろくに機能していたかどうか怪しいものです」

肩を竦め溜め息をつくキリル一等兵。
私は手の中の“サタデーナイトスペシャル”を握りつぶすと、彼に投げ返して告げる。

ノ从パ-ナルy─~「生ゴミは今日中に片付けておけ。残業手当ては弾むと、皆に伝えろ」

灰色の退屈が、胸のうちから這い上ってきていた。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:11:51.66 ID:e+warG/UO
やっぱりか……

67 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:13:18.24 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──断末魔の絶叫が、『SOUND ONLY』と表示された回線の向こうから響く。
音声バーの振幅が尾を引くように揺れ、やがて、無音が跡を継いだ。

从*‖*从「おい、何があった!答えろ!おい!」

“代弁者”の焦燥した電子音声が、ホールの中に虚しく響く。
結果は既に出ているというのに、“道化”はそれを受け入れようとしない。
どうしようもなく哀れなその姿に、やり場のない溜め息が漏れた。

('A`)「諦めな。あんたらの負けだよ」

从*‖*从「黙れ背教者が!我らは正義の使徒なのだ!正義の旗の下に敗北など存在しない!」

('A`)「今のを聞いてもまだそんな事言うかね」

从*‖*从「あれはきっと、何か…何か…そう、通信トラブルかなにかが……」

教師に咎められた生徒が必死に言い訳を探すようなその口調に、オレは哀れを通り越して呆れ返ってしまった。

68 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:15:47.85 ID:N2kHFABtO
('A`)「わかんないかね……。あんたらは“渡辺”に裏切られたんだ。実働班は全滅、さっきのはその証明だ」

从*‖*从「だが!だがまだ電脳班が……」

『あれれ〜?その電脳班さん達の生体反応が見当たらないよ〜?』

往生際の悪い“道化”の言葉を遮ったのは、場違いに呑気な“奴”の声だった。

从'ー'从『あれれ〜?もしかして、みんなフラットラインしちゃったのかなぁ?』

割り込み通信のウィンドウが、ホールの天井いっぱいに映し出される。
『WAT@NABEИET』という自社専用回線のロゴを背負って悪戯っぽく笑うそのアヴァターは、あの女悪魔に間違い無かった。

从*‖*从「あ、あなたは!これはどういうことだ!何故援軍を寄越さなかった!」

“道化”が、恥も外聞もかなぐり捨てた叫びを上げる。
ワタナベは、あの、何時もの人を食ったような柔らかい笑みを浮かべ。

从^ー^从『だってぇ、上場が見込めない株に投資する人はいないでしょう?』

無邪気に、無慈悲に言い切った。

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:16:37.09 ID:e+warG/UO
支援

70 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:18:43.12 ID:N2kHFABtO
从*‖*从「な…な…な…」

从'ー'从『それにぃ、もとからあなた達には期待なんかしてなかったのぉ。“氷の旅団”のアジトの場所と内部の様子が分かれば、それで良かったのね』

从*‖*从「わ、我々を…斥候に使ったと…」

从^ー^从『ごめんねぇ。あ、因みにもう用も済んだし電脳班の皆さんには退場してもらいました』

从*‖*从「あ…えお…ぅああぅぇ…」

从'ー'从『電脳班の皆さんの視覚野には、うちの社員があらかじめトレースビーコンと時限式の脳核爆弾を仕掛けさせて貰ってたのでした♪あはっ!凄いでしょ?』

从*‖*从「貴様…はぁ…ぁお…お…」

怒りと驚愕がオーバーフローし、既にまともな言葉を紡げなくなった“道化”。

从'ー'从『後は、この件に私たちが関わった証拠を完全に消すだけ』

止めの言葉をワタナベが呟いた瞬間。

从 ゚∀从「DOSだ!」

情報爆発の白光が、ホール内に溢れかえった。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:19:59.47 ID:EQkZp+Mb0
しえーん

72 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:20:32.50 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──白い病室の中に聞こえるのは、微かな寝息だけだった。

( ^ω^)「……」

リネンの香りに混じって、微かなシャンプーの匂いがする。

“こんな状態”になっても髪だけは洗ってもらってるのかな、なんて事を考えると酷く胸が締め付けられた。

( ^ω^)「………」

病室の、真ん中。広すぎる室内にポツンと置かれたベッド。

眠り姫の、昔からすると随分伸びてしまった真紅の髪に、僕は指を絡ませて呟く。

( ;ω;)「ヒート……あぁ…」

ノハ )「……」

幾年ぶりかに再会した初恋の人は、とても美しくなっていて、「大人になったね。見違えちゃったよ」なんて言いたくても、彼女が目を開けることは無くて。

( ;ω;)「ヒート…ヒート…ヒート……」

涙で彼女のベッドを濡らしてしまうのはわかっていても、僕はそれを止めることが出来なかった。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:22:10.94 ID:e+warG/UO
支援!

74 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:22:25.71 ID:N2kHFABtO
夜間勤の看護士は、僕の渡した“袖の下”を受け取りながら言った。

“でも、面会しても意味ないと思うよ。彼女、もう五年も目を覚まさないんだから”

“没入中に何かあったらしいね。事故か、ウイルスか、DOSか……。そこら辺はあたしもよく知らないけどさ”

事故でもウイルスでもDOSでも無い。彼女が目を覚まさない理由は、“他ならない僕が”知っている。

( ;ω;)「許して…くれお…許して…くれお…」

握り締めていたメモ用紙を。あの部屋から持ってきたメモ用紙を開き、再び目を通す。

“お前の罪を、知っている。ニューソククリニックの547号室だ。そこで、お前の罪はまだ眠っている”

( ;ω;)「う…ぅあ…ぁああ……」

彼女がここに入院していたなんて、このメモを読むまでわからなかった。
あの日、彼女を“殺して”しまったことに耐えきれず、大学を逃げるように中退して肥溜めに逃げ込んだ僕には。
恋人を名乗っておきながら、彼女の家すらも知らない僕には。
彼女の、その後を、直視するだけの、勇気なんか、無かった。

75 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:24:29.01 ID:N2kHFABtO
( ;ω;)「ごめん…ごめん…ごめん…ごべ…ぅぅ」

どんなに謝っても。どんなに涙を流しても。
僕の罪は消えない。彼女が目を覚ます事はない。

“お前だけじゃないんだ”

ドクオは、そう言ってくれた。
あいつなりの慰めの言葉のつもりなんだろうが、今、こうして現実に直面すると、僕にはもう、ただ、ただ、泣きじゃくることしか出来なかった。

泣きじゃくって、赦しを請い、だけど、それを聞き届けてくれる人は誰も居ない。

誰か、僕を殺してくれ。それでこの罪が赦されるなら、僕は命すら投げ出そう。

( ;ω;)「ヒート…ヒート…ヒートォォォ……」

絶望を押し殺し、歯と歯の間から掠れた声にして絞り出す。
微かに振動した携帯端末(ハンディターミナル)が、僕の慟哭を中断させた。

( うω;)】「おっ…」

ポケットから取り出し表示を見る。
ディスプレイの“馬鹿ドクオ”の文字に、救われたような気持ちになった。

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:25:56.89 ID:EQkZp+Mb0
ブーン好きだ支援

77 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:26:17.16 ID:N2kHFABtO
( うω^)】「……もしもし」

自分の泣き顔を想像して、サウンドオンリーで受話する。

『もしもし、じゃねぇよてめぇ。結局、ジョーカーなんて何処にも居なかったじゃねーか!』

開口一番からの文句のオンパレードに、僕は思わず苦笑してしまった。良かった。僕は、一人じゃない。

『何が可笑しいんだよ!こっちは危うく死にかけたんだぞ!』

( ^ω^)】「ごめんごめん。つうか死にかけたって?」

僕の問いに、ドクオは“テント” の中での一部始終を嫌みたっぷりに説明すると、最後にこう締めくくった。

『ま、何とかうちの高性能メイドロボのお陰で冥土への片道旅行は中止になったわけだがな。
あ、今のメイドと冥土が掛かってるんだぜ』

( ^ω^)】「その解説はいらないです」

自分の読みが当たっていたことに、肩を落とす。
ジョーカーがただの革命家気取りのテロリストだったら、どれだけ僕も気が楽だったろうか。
ドクオに説得を頼んだのは、そんな“もしかしたら”に僕が縋っていたからかも知れない。

78 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:28:14.20 ID:N2kHFABtO
『そんなこんなで、お前の頼みは一応解決させたことだし、オレはもう寝る』

ログアウトしてから直ぐに電話をくれたのだろうか。肩を鳴らす音が端末越しに聞こえてくる。

『最後にお前に渡さなきゃいけないもんがあるんだ。メールで送っとく。……見るかどうかは、お前自身が決めてくれ』

( ^ω^)】「お?」

『……オレ自身、歩くダメ人間の標本だから、強制は出来ないんだが…』

“出来るなら、見た方がいい。お前のためにも。彼女のためにも”

そう言って、ドクオは一方的に通信を切った。

数秒後、再び掌の中で振動した携帯端末には一つのアドレスが添付されたメール。ジッと睨み、ドクオの言葉を繰り返した。

“お前のためにも。彼女のためにも”

( ^ω^)「……」

顔を上げ、目の前の眠り姫を見つめる。
心の中で彼女の名前を呼び、僕は携帯端末の結戦ケーブルを引き出しニューロジャックに突き刺した。

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:28:35.58 ID:HKne1HJt0
支援

80 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:30:07.74 ID:N2kHFABtO
没入の淡い開放感。その後の急速な疾走感。
脊髄が引っ張られるようなネットの旅の果てに辿り着いたのは、ファンシーなデザインの私設構造体。
ピンクを基調として揃えられた家具のアイコンと机の上の日記に、ここが誰かのブログストラクチャだということが分かった。

( ^ω^)「……これを、読めってことなのかお」

勉強机を模したアイコン。その上の日記を手に取る。

( ^ω^)「……」

“ひーとの日記”とポップ体で書かれたタイトルに、心臓が跳ね上がった。

読めと。これを。僕が。彼女のために。僕のために。

一体、僕がこれを読んで、何が得られるというのか。
これ以上、過去の古傷を抉って何をしろというのか。まだ痛みが足りないというのか。

( ^ω^)「“彼女”のためにも……」

胸に突き刺さる言葉。“彼女のため”。

自分のためだけに泣くのは、もう終わらせろということなのか。

ならば、僕は、見なければならないだろう。
せめて、“彼女のため”に涙を流せるように。

81 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:31:48.52 ID:N2kHFABtO
( ^ω^)「ヒート…読ませてもらうお」

もう一度、彼女の名前を、今度は声に出して呼ぶ。
主亡きブログストラクチャでは意味もないことだが、そうしなければいけない気がした。
震える指先でもって表紙を開き、ページに目を落とす。
表紙と同じ丸文字が、彼女の生きた証をそこに綴っていた。

“八月七日 ついにブーンと初デート。明日は何を着て行こうかな。今から緊張してる。変なの。あたしにはこんなの似合わないって。
明日が来ませんように、なんて思いながら、早く太陽が登らないかなっても思ってる。ホント、変な感じ”

“十月二十日 よっしゃああああぁぁ!!!恋人だって!!恋人だって!私たち恋人同士なんだって!
嬉し過ぎて涙出てきた。ダメだ、黙ってるとノロケ話しか出てこない。兎に角幸せすぎる。ヤバい。幸せヤバい”

思い出す、あの頃の僕たちを。
大学に入学したての頃だ。まだぃょぅの事を引きずっていた僕を、彼女は何時も励ましてくれていたんだ。

82 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:33:48.72 ID:N2kHFABtO
あまり勉強が得意でも無いのに、無理して僕のレベルに合わせて同じ大学に入学して。
毎朝、迎えにきてくれて、弁当まで作ってくれて。今思えば、僕はとても想われていたんだな。

日記はそれから暫く、僕たちが幸せだった時の事を彼女の視点から純粋な筆致で書き綴っていく。
今日は僕と牛丼を食べたとか、僕とゲーセンに行ったとか、テストの点数が僕より悪かったとか、たわいもない日常の些細な出来事が、並んでいる。
鮮明に蘇ってくる思い出達は、懐かしさと共に僕の胸を締め付けた。
涙が滲みそうになるのを堪えてページをめくっていくと、“その日”はやってきた。

“十二月十九日 もう直ぐクリスマスなのに憂鬱。ブーンがかまってくれない。どうしてかな?私、何か怒らせるようなことしたっけ?
最近、サークルの飲み会とかで会う時間が減ったからかな?明日、聞いてみよう”

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:34:27.18 ID:QaliphMp0
sien

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:34:39.09 ID:+jkKFW1T0
支援

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:39:38.72 ID:gB2NufKR0
しえん

86 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:40:06.85 ID:N2kHFABtO
ヒートが、サークルの飲み会だと言って僕とのデートをドタキャンすることが増え始めた。
研究室での実験が上手くいってなかったことの苛立ちも相まって、僕は彼女が浮気をしているんじゃないか、なんて下衆なことを考えていた。

“十二月二十日 ブーンの、私を見る目は、あの頃のそれに似ている。ぃょぅが死んだ時の、あの目。
ブーンは言ったっけ。お前らがぃょぅを殺したんだっ、て。どいつが主犯だ、って。”

ぃょぅが死んだのを知ったとき、僕は確かにそんな言葉を吐いた記憶がある。頭に血が上っていたとはいえ、最低だ。
僕は、仲間を、自ら裏切るような言葉を吐いたのだから。

“もしかしたら、ブーンはまだあの日のことに縛られているのかも知れない。ぃょぅの死には謎が多すぎた。
私ですら、どうしてあの構造体(ストラクチャ)の中からあいつが戻って来なかったのか、未だに判らないのだから”

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:41:11.93 ID:QaliphMp0
支援

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:41:17.03 ID:EQkZp+Mb0
支援

89 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:42:02.93 ID:N2kHFABtO
“誰が犯人なのか。この際、調べてみてもいいのかも知れない”

“過去を振り切る為にも。ブーンを、楽にする為にも”

“そうと決まれば、早速明日から調べてみみよう。ブーンと会う時間がまた減るけど、私たちのためにも、このことは後回しに出来ないことだから”

( ^ω^)「ヒート……」

僕がヒートを疑いだしてから、僕たちが二人で過ごす時間と距離は反比例するように減り、そして離れていった。
何もかもが、すれ違っていたのだ、と今更になって僕は知った。
悔やんでも、悔やみきれないとは、まさにこのことだ。

“十二月二十二 捜そうと思えば捜せるものだ。今日、セントジョーンズの奴と会ってきた”

( ゚ω゚)「なっ!」

思わず、驚きに声が漏れたる。
彼女がジョーンズと会っていた?どういうことだ。

“アヴァターとは全然違ったから、最初は本当にジョーンズなのかと疑ったけど、会って直ぐに抱き付いてきたから直ぐにあいつだということが証明された”

90 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:44:16.60 ID:N2kHFABtO
抱き付いてきた。その一言で、ぴんとくる。

僕が、研究室の帰り道にニューソクのセンターアーケードをふらついていた時だ。
見覚えのある後ろ姿に振り返ると、ヒートが見たことのない男ともつれるようにして裏路地に消えるところだった。

(;゚ω゚)「あの時のは…ジョーンズだったのかお……」

僕は、その事実を知って、愕然とした。
驚愕と共に、また一つ後悔の痛みが脳髄をかき回した。

あの時、僕がヒートを追って裏路地に入って行ったら。

僕は、ベッドの中であんな“最悪な解決策”を考え出したりしなかったのに。

( ;ω;)「ああぁ……ぅああ…ああぁあぁ……」

電子の涙が、律儀に僕の頬を濡らす。
胸中で爆発しそうな後悔。叫びだしてしまいそうな喉。荒れ狂う心象風景を飲み下すと、僕は次の行へと目を移した。

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:44:26.80 ID:QaliphMp0
支援だす

92 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:45:54.35 ID:N2kHFABtO
“再会の挨拶もそこそこに、ジョーンズに例の事件について聞いてみた”

“あいつは、苦い顔して「あの事は思い出したくない」なんて言ってたけど、私が食い下がるとこんな事を言ったんだ”

“なんて言ったと思う?”

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:47:49.15 ID:2yqTO0yqO
さるよけしえん

94 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:47:53.76 ID:N2kHFABtO



   “ぃょぅは、死んでない”





95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:48:36.34 ID:SmKMSH/0O
しえ

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:49:20.55 ID:EQkZp+Mb0
支援!

97 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:50:05.50 ID:N2kHFABtO
“それだけ言って、逃げるようにして帰っちまった”

“今、私は”

今、僕は。

“凄く混乱している”

不思議と冷静だ。

“ぃょぅが生きているのは喜ぶべき事なのに”

ぃょぅが生きているかも知れないというのは、あのメモを見た時点でもしかしたらと思っていた。

“何だかそれが、よくないことの予兆な気がするんだ”

何だか、これは、僕への復讐なんじゃないかんて気がするんだ。

“ブーンはどう思うだろう”

ぃょぅはヒートの事を愛していた。

“私は、どんな顔でブーンにこの事を伝えたらいいんだろう”

僕は、どんな顔であいつに謝ればいいだろう。

僕は。

98 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:52:57.98 ID:N2kHFABtO
(  ω )「僕は…お前に恨まれても当然の事をしたお」

僕は、知っていた。ぃょぅが、ヒートの事を愛していた事を。
あいつのヒートを見る目に、“その感情”が宿っていたのを知っていた。

(  ω )「だけど、僕は……」

“ブーンが、また私に笑ってくれるのなら、私はなんだってするのに……”

( ^ω^)「僕は、もう赦しを請うだけで何もしない男じゃないお」

壊してしまったものはあまりにも多すぎる。
僕の人生は治すことの出来ない傷ばかりで溢れている。
それでも、僕は歩き続けなければいけない。

壊してしまったものたちのためにも。

最期まで、愛してくれた彼女のためにも。

( ^ω^)「ジョーカー……僕が、お前を必ず見つけだしてやるお」

ここに、僕は誓う。

もう、何処にも逃げないと。

99 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:55:35.49 ID:N2kHFABtO
 ※ ※ ※ ※

──星と排ガスの海に浮かぶ摩天楼を望む。
闇の中に点々と光るそれは、心なしか蛍のように儚げに見えた。

(´・ω・`)「わざわざ有り難う。恩に着るよ」

右手に握った記憶素子の菱形を、ひらひらと振る。

<ヽ●∀●>「なに、関根建設はうちの傘下みてぇなもんだ。大した事じゃねえよ」

チャイニーズ・ドンが、僕の背後で肩を竦める気配がした。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:56:16.01 ID:cg7Y0A9v0
C

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/11(金) 23:57:20.85 ID:EQkZp+Mb0
紫煙

102 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/11(金) 23:57:39.41 ID:N2kHFABtO
<ヽ●∀●>「しかし、お前さんも軌道エレベーターの設計図なんて妙なものを欲しがるもんだ。一体、何を始めるつもりだ?」

貸しビルの屋上。手すりから身を乗り出して、僕は闇を睨む。

川 ゚ -゚)「……」

傍らに佇むクーが、目線で僕に微笑んだ。

(´・ω・`)「今は、まだ言えないな」

<ヽ●∀●>「ほお?」

(´・ω・`)「そのうち分かるさ。少なくとも、あなたを退屈させるようなものじゃない」

だから。

(´・ω・`)「“その日”を、楽しみにしていてくれ」

闇を睨む。この奥に眠る、全てのものたちに告げる。

楽しみにしていてくれ。きっと、僕は、君たちを満足させられる。

103 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:00:54.07 ID:h/uKFX8mO
epilogue

──ディスプレイに映し出された『送信完了』の文字を確認して、オレは携帯端末を閉じる。
全ての仕事をやり終えた後に残ったのは、何とも言えない虚しさだった。

('A`)「結局、何が正しいことなんだろうな」

溜め息と共に一人ごちる。

从 ゚∀从「どうした?厨二病がまだ完治してないのか?」

耳敏く聞いていた相棒が、即座に突っ込んできやがった。

('A`)「確かに厨二病かもしれねぇけどよ。何つうか、こう、今、自分がやってることが本当に正しいことなのか…改めて考えると不安になったりするわけですよ」

ソファーに寝転がり、自室の天井を見上げる。
柄にもなくおセンチが入っているのは、きっと長い時間没入していたことによる疲れからだろう。そう思いたい。

从 ゚∀从「先ず、貴様の存在そのものが間違いだと気付こうじゃないか」

<('A`)>「……君は、どう思う」

从 ゚∀从「何がだ?」

<('A`)>「あの、自称代弁者の最後だよ」

104 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:02:54.54 ID:h/uKFX8mO
<('A`)>「……あいつは、テロリストだった。その事実は変わらない。けどよ、自分たちの信じる正義のために命を張ったんだ」

そして、その結果、ワタナベに裏切られ、死んだ。

<('A`)>「オレには、そうまでして自分が“正しい”と思えるものが無いんだ」

从 ゚∀从「……」

<('A`)>「何か、間違っているところは無いか。本当にこれは正しいことなのか?って思ってしまう。
それは、自分の意志を持っていないからなんじゃないかって…さ……」

オレの独白に、相棒はしばらくの間オレの顔を見つめると、顔を逸らして何時ものような平坦な声で言った。

从 ゚∀从「それは、貴様が決めることだ。私は助言してやることも出来ない」

<('A`)>「だよなー」

从 ゚∀从「だが、貴様がその“正しいもの”を見つけるまでは、隣で貴様の尻拭いをしてやるから安心しろ」

その言葉に、彼女が、自らの活動期間をあと二年と言った事を思い出した。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:03:03.99 ID:eyU1G+oZ0
しえn

106 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:05:50.15 ID:N2kHFABtO
<('A`)>「遠回しに、早く一人前になれって言ってますよねそれ」

嫌みったらしく吐き捨て、横目で相棒を伺う。
ベッドに腰掛けた鋼鉄の処女は、しかし、俯いていて。

从 ∀从「……そう…だな」

こいつには感情など無いはずなのに、何故だか泣き出しそうに見えた。

('A`)「まぁ、なんだ、そんなオレでも一つだけ正しいと分かるもんがある」

何となく居心地が悪くなって、立ち上がる。

从 ゚∀从「……何だ?」

('A`)「オレは今、猛烈に腹が減っているということだ」

从 ゚∀从「長期間の籠城生活で食材の備蓄はとうに底を尽きている」

('A`)「そういうわけでコンビニへ行くざます。あと、その籠城生活ってそこはかとなく皮肉が利いてるね」

何時ものことだ、と言いながら部屋を出て行く相棒の背中を見つめながら、オレは胸中で呟く。

その“何時ものこと”が、オレは、堪らなく愛おしいんだ。

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:07:28.07 ID:ry7YoJR00
支援

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:09:01.19 ID:mldtgL4zO
イヨウやっぱ死んでなかったか

109 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:09:10.77 ID:h/uKFX8mO
从 ゚∀从「おい、何をしている。コンビニに行くんだろう?」

だが、そんなことは口が裂けても言えない。

('A`)「あぁ、はいはい今行きますよ」

オレは、“何時も通り”のこの日常が好きなのだから。

あぁ、一つ分かった。

オレは、この日常を守りたい。それが、オレの“正義”なんだ。

だから今、ここに誓おう。

もう、何処にも逃げ出さないと。



-fin-

110 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:11:27.59 ID:h/uKFX8mO
†今週のぃょぅs'ベスト!†
〜そんなまさしに騙されて〜

……

……

ぃょぅさん…出番っすよ…ぃょぅさん…ぃょぅさん…

(=゚ω゚)「えー、今日はなんか気分が乗らないから無しで」

そんな事言わないで下さいよ!ぃょぅさんの出演を心待ちにしてるファンの人、いっぱいいるんですから。

(=゚σω゚)「…つってもさぁー、乗らないもんは乗らないしぃー」

そこをなんとか!今日は堀北真希ちゃんと共演っすよ!

(=゚ω゚)「堀北真希ってあの堀北?」

はい、あの堀北っす!

(=゚ω゚)「……ったく、しょうがねぇなぁ」

あ、有り難う御座います!

(=゚ω゚)「今回だけだかんな?」

有り難う御座います!有り難う御座います!

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:12:15.13 ID:mldtgL4zO
塩豚もバクテリアも成長してるな
面白くなってきた




112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:12:54.10 ID:C9B4zZhMO
乙!
そしてなんぞこれwww

113 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:13:45.96 ID:h/uKFX8mO
……

……

(=゚ω゚)「……」

(=゚ω゚)「……いねぇじゃん、堀北真希」

(=゚ω゚)「……」

(=゚ω゚)「どうも。ぃょぅさんです」

(=゚ω゚)「今日は、TOKYO N◎VAというTRPGを紹介したいと思います」

(=゚ω゚)「TRPGってのは、会話とサイコロと鉛筆で遊ぶ非電源ゲームのことだ。詳しくはggrks」

(=゚ω゚)「基本的にファンタジーな世界観のシステムが多いTRPG。
その中で、TOKYO N◎VAはシャドウランと並んでサイバーパンクな世界観のゲームとして、TRPGの世界じゃちょっと有名なシステムなんだぜ」

(=゚ω゚)「目立った特徴として上げられるのは、やはりサイコロの代わりにトランプを使った特異な判定システムだろう」

(=゚ω゚)「配られた手札の中から、一つ出してその数字で成否を決めるその様は、まるで、“大富豪”で遊んでるみたいにも見えるNE!」

(=゚ω゚)「これにより、TOKYO N◎VAでは自分の行為判定の数字をある程度調整できるようになっている」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:14:06.53 ID:/LfsBJXR0

久々にドクオが成長したな

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:15:18.66 ID:jGEaJ4xQ0
乙!

116 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:23:14.81 ID:h/uKFX8mO
(=゚ω゚)「更に、三つの“スタイル”(ジョブみたいなもん)から成るキャラ再現度の高さは素晴らしいの一言に尽きる」

(=゚ω゚)「ヤクザに走り屋、ボディーガードにハッカーと、サイバーパンクにゃ欠かせないパーソンから、記憶喪失の美少女。
果ては魔界の魔王や破壊神まで、凡そ考えられるあらゆるキャラを再現出来るってえから驚きだ」

(=゚ω゚)「しかもキャラには“神業”と呼ばれる最終奥義を三つも所持していて、飛んでくる銃弾を叩き切ったり、軍事衛星からレーザーを降らせたりとやりたい放題出来るんだ」

(=゚ω゚)「以上のことから、N◎VAにおけるセッション(TRPGで遊ぶことを差す単語)は映画や漫画のようなシナリオを演出することに重点が置かれているんだ」

(=゚ω゚)「とっても面白いゲームだから、興味がある奴はggrks。オレは堀北真希ちゃんが居なかったのでもう帰る。じゃあの」

117 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:25:04.99 ID:h/uKFX8mO
☆マト#>д<)メが、まとめて あ・げ・るっ☆

……

……

マト#>д<)メ「皆さんこんばんわ。おまけコーナーの時間がやって参りました」

マト#>д<)メ「さて、本日は本編の世界における貨幣について解説させていただきます」

マト#>д<)メ「マネーロンダリングやリアルマネートレードなど、本編では未だに現物としての貨幣の取引が主流のように見受けられますが、実際はどうなのでしょうか」

マト#>д<)メ「お答えしましょう。一般市民の間では、既に電子マネーでの売買取引が普通となっております」

マト#>д<)メ「喫茶店でも、自販機でも、普通に買い物をする際には携帯端末(ハンディターミナル)を使ってたいていの人は買い物を済ませます」

マト#>д<)メ「では、どうして本編ではそのようなシーンが少ないのか?」

118 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 00:27:47.31 ID:h/uKFX8mO
マト#>д<)メ「それはひとえに、本編に登場するキャラクターに“かたぎ”のものが少ないからに他なりません」

マト#>д<)メ「電子マネーはウェブ上の講座に保存されているという性質上、常にハッキングの危機と隣あっています」

マト#>д<)メ「さすがにに銀行も易々とハッカーに付け入る隙は与えませんが、残高を改竄されて無一文になる可能性は、決してゼロでは無いのです」

マト#>д<)メ「また、違法組織にとっては常に金銭の動きが監視されている電子貨幣よりも、洗浄し易い現物貨幣の方が好まれるという理由もおおきいでしょう」

マト#>д<)メ「これで、本日の解説を終わります。皆さんも、講座を改竄されないよう、ウェブバンクのアクセスキーは定期的に変更するように心掛けましょうね」

マト#>д<)メ「では、“引き続き読者さんの声”に移りたいと思いま……」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:31:28.16 ID:TGBlQmkEO
マトマト久しぶりだよマトマト

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:35:36.73 ID:KqZpXfy3O
愛してるぜマトマト

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:55:37.16 ID:KnpAwTkQO
な ぜ 途 中 で 切 っ た

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 00:59:03.39 ID:75b7jdvrP
>>121
ニコ厨死ね

123 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 01:08:38.89 ID:h/uKFX8mO
マト#>д<)メ「と思ったけど猿さんに怒られたので今日の鋼鉄処女はここまで!」

マト#>д<)メ「あたしに対する熱い質問は、芸さんの掲示板か、作者ブログまで!」

マト#>д<)メ「じゃあの!」

124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 01:10:01.64 ID:aaA1ePmq0
じゃあの。

125 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 01:32:43.28 ID:h/uKFX8mO
結局、それが彼女の最後の言葉となってしまった。

今になって思えば、彼女は自分の死期を悟っていたのだろう。

だから彼女は、みんなに自分が弱っていることを気取られないよう、あんな素っ気ない別れの言葉だけを残して、僕たちの前から去っていったんじゃないか。

本当のところどうなのかなんて、僕には分からない。今となってはもう、真実を確かめる術はないのだから。

だから、僕は祈ろうと思う。

彼女と。彼女が愛したこのコーナーが、何時までも、読者のみんなの心の中で輝き続けることを。

──某月某日 某作者

マト#>д<)メが、まとめて あ・げ・る☆

─終劇─

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 01:37:12.82 ID:mldtgL4zO
なん……だと……?

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 01:39:04.36 ID:ry7YoJR00
なんぞw

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 01:42:07.57 ID:ZWYdxjlC0
衝撃w

129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 01:43:17.15 ID:Aw5ijkkjO
宇我ぁぁぁぁぁ

130 名前: ◆fkFC0hkKyQ :2009/09/12(土) 01:59:00.07 ID:h/uKFX8mO
というわけで、今回の投下は終了になります

お付き合い頂いた皆様、お疲れ様でした

総合のテンプレをご覧頂ければ解るとおり、マト#>д<)メなんてAAはどこにも居ません

皆さんが見ていたのは、きっと幻だったのでしょう

そう…思いましょう…う…ぅうっ…

つうわけで僕は寝る。寝るったら寝る。次の本編投下はまた来週じゃ

さらば

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 02:21:30.86 ID:OGZd+FwD0


132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 03:35:55.04 ID:CQ6ZeMNkO
イマヨム

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/12(土) 04:18:38.62 ID:ff35vW14O
初遭遇wwwww

いつも楽しみにしてますwwwww
さて読んでくるか


全部 最新50
DAT2HTML 0.35bp Converted.
inserted by FC2 system