('A`)童貞学生ドクオがジャスコでレゴブロックをひたすら遊ぶようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:11:07.39 ID:EZGm6LMp0
- 第二話
タイトルに反してジャスコは出てこないです。イオングループのファンの人、ごめんなさい
前回の投下からすごく時間が空いて、申し訳ないです
まとめはブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/lego.htm
- 2 名前:うぃうぃ ◆wiwi/epkjU :2009/07/22(水) 23:11:22.48 ID:zjI448Av0 ?2BP(3575)
- sssp://img.2ch.net/ico/anime_loop.gif
\ ヽ | / /
\ ヽ | / /
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殺 伐 と し た ス レ に 鋼 の 遊 撃 手 が ! !
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y' `ヽ/ / | | | | ヽ ヽ '´ イ
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:12:03.02 ID:A0+s3YcwO
- にげと
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:12:20.81 ID:EZGm6LMp0
- 暗い叢雲が垂れ込める下に、城は高い塔を突きだしていた。
紫色の雷雲が天を覆い、塔の屋根の向こうで渦巻くように群れている。
瞬間、稲妻が空を引き裂いた。
まばゆい光が城の外壁を染めあげ、闇夜に浮かんだその輪郭をさらけ出す。
一見して、中世ヨーロッパの古城を思わせる外観だった。
いくつもの直立した塔が空を貫き、尖った屋根がその先端を飾っている。
その中央には、四隅を小さな塔に縁取られたひときわ高い楼閣がそびえていた。
闇の中に立つ城を、閃光が再び染めあげる。
雷鳴が続けざまに空を走り、それが何で作られているか――を白日のもとに照らしだした。
直径数センチの、凹凸のあるブロック。
あろうことか、城はレゴブロックで構築されていた。
堅牢な外壁も、垂直に伸びた塔も、丘の上に建つ門でさえも、全てがレゴブロック製なのだ。
ふいに、その塔の一つで足音が響きわたった。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:13:01.66 ID:EZGm6LMp0
- ――そこは、塔の最上部に位置する広い空間だった。
本来は鐘楼だったらしい。だが、かつて時を告げていた鐘は撤去され、代わりに天井からは無数の鎖が伸びている。
その先で、一台の車が宙に吊り下げられていた。
未来的なデザインのスポーツカーだ。曲面で構成された車体は流麗なラインを後部に向けて流し、
鳥の尾翼のように水平に突きだしたリアウイングの下に、赤いテールライトが嵌め込まれている。
グリルの脇のフロントでは、細い眼のようなヘッドランプが青白い光を放っていた。
しかしながら、本来は鉄かカーボンで作られるはずの車体は、城と同様にレゴブロックで構成されている。
タイヤは一体成形の巨大なブロックで、キャノピーは半透明のブロックを組み合わせたものだ。
「ダブルペニス」
ふいに美しい唇が、卑猥な名前を呼んだ。
天井から吊り下げられた車の前に、一人の少女が姿を現す。
ゆっくりと歩み寄ってきた娘は、息をのむほどに美しい。
雷鳴に照らされた髪は絹のように滑らかで、ふわりと風をはらんでケープのように広がる。
少女はゴシック調のドレスを身に纏い、ベルベットの靴でレゴブロックの床を踏みしめていた。
ドレスの袖口に結んだリボンが、可憐に揺れる。
胸元を覆うコルセットの下で、黒いスカートの裾が舞うように翻った。
「クリエイター……」
スポーツカーが、少女の呼び声に答えた。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:13:46.64 ID:EZGm6LMp0
- 漆黒のドレスに身を包みながら、クリエイターと呼ばれた少女は瞳を細める。
白い肌と、華奢な体つきがあいまって、その姿はまるで作り物の人形のようだ。
レゴブロックの城の中でまがい物の車を見つめる、現実感に乏しい美少女――。
「俺に、何の用だ……?」
再びスポーツカーは言葉を発した。ボディに絡みついている鎖も、やはりレゴブロック製だ。
それが、地上数メートルの高さに車を吊り下げ、一切の自由を奪っているのだった。
「……ブラックアナルが、破壊されたわ」
少女の唇が、またもや卑猥な単語をつむぐ。
その名を聞いたとき、スポーツカーのヘッドランプがわずかに翳った。
「あいつが……死んだだと!?」
赤みがかった褐色の瞳が、驚愕した声をあげた車に絡み付くような視線を向ける。
口元を不機嫌そうに結ぶと、少女は言葉を続けた。
「<フォージ>の探索中に連絡が途絶えた。完全に破壊されたようで、再生は不可能だわ。
私の芸術作品がまたひとつ、失われたことになるわね」
「誰だ」
ヘッドランプを青白い炎に彩りながら、スポーツカーが問いかける。
「ブラックアナルを破壊したのは、どこのどいつだ――?」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:14:32.10 ID:EZGm6LMp0
- 少女の手のひらから、赤い光が立ちのぼる。
それが、次第に一人のロボットの姿を形成していく。立体映像だ。
「こいつは……?」
「私がブラックアナルを<フォージ>の探索に向かわせた、別の世界のロボットよ。
偵察用の小型ヘリもろとも、ブラックアナルはこのロボットに破壊された」
赤い立体映像のロボットは、砲撃形態に変形する能力を有しているようだった。
図太い腕がブラックアナルの顔面を掴み、砲身へと姿を変えていく。
次の瞬間、ゼロ距離で砲撃が炸裂した。ブラックアナルの身体が粉々に吹き飛び――そこで映像は終わっていた。
「クリエイター」
スポーツカーのボディから、重苦しい声が響く。
「この鎖を解いてくれ。奴は盟友だった。ブラックアナルの敵を俺に討たせてくれ。
確かに俺は命令違反をして、ここに幽閉された――その償いもこめて、俺を行かせてくれ」
漆黒のドレスを身に纏った少女は、満足げに吐息を洩らした。
瞬時に、鎖が崩壊する。ブロックが床に砕け散り、スポーツカーのタイヤが地面を噛む。
「では、行きなさい。ダブルペニス」
ゴシック調のドレスを華麗に翻して、少女は命令を言い放つ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:16:34.40 ID:EZGm6LMp0
- 「あなたと同じブロックのロボットが存在しているのだから、<フォージ>はその世界にある可能性が高いわ。
他のクリエイターがそこにいるはずよ……。あれを完成させてから、私も後を追うわ」
少女は、塔の窓の向こう――雷雲立ちこめる空に向かって伸びた城の楼閣を指さす。
赤褐色の瞳が遠くを見つめ、白い歯を噛みしめたのが分かった。
「そして、ブラックアナルを倒したロボットを破壊し、奴を造り出したクリエイターを殺しなさい」
「だが、どうやってそいつを見つければいい?」
車がたずねる。少女は事もなげに答えた。
「あのロボットは、ブラックアナルのブロックを体内に取り込んでいるわ。
私の作品にはお互いを識別する機能が備わっている。ブラックアナルの反応を追えば、奴に辿り着く」
そして、冷たい声で告げる。
・ ・ ・
「この私を――ドクオの作った芸術作品を破壊したことを、奴らに後悔させてやるのよ」
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:17:33.01 ID:EZGm6LMp0
- 「……クリエイター」
オプティアヌスがため息をつくように言った。
超精巧な1/1レゴブロック製戦車には鎖がかけられ、目立たないようにシートが被せられている。
そして、その巨体はトレーラーの上に縛り付けられていた。
「私はいつまで……こうしていればいいのだ?」
('A`)「さあな? こいつが止まるまでじゃないか」
ジャスコの外に連れ出された三人と一体は、無理矢理輸送用のトレーラーに乗せられたのだった。
レゴブロック戦車――オプティアヌスの横で、ドクオは風に頬をなぶられている。
( ・∀・)「わーいわーい、じどうしゃがいっぱいだー!」
モララーが、次々に隣の車線を追い抜いていく車をみてはしゃいた。
トレーラーはオプティアヌスを搭載してもまだ余裕があるほどの大きさを誇るが、それほど速度は出ないようだ。
吹き抜けていく風に冷たさが混じりはじめたのを感じて、ドクオは身を震わせた。
ξ゚听)ξ「どこまで連れて行く気なのかしら……」
ところどころが赤くなり始めた空を見つめて、ツンが不安そうな声をあげる。
ドクオは、三人を監視するかのように座っていた女兵士の方を向いた。
('A`)「なあ、いい加減話してくれてもいいだろ? あんたら、何なんだ?」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:18:37.86 ID:EZGm6LMp0
- 川 ゚ -゚)「自衛隊だ」
女兵士――いや、自衛官と呼ぶべきか――が結んだ髪を風に舞わせながら分かりきった答えを返す。
やや押し黙ったあとで、言葉を続けた。
川 ゚ -゚)「……その、特殊災害対策課――市民をあのような特殊な災害から保護するのが、
私たち<ハザード・フォース>の仕事だ」
('A`)「さっきの巨大なロボットに対する、あんたらの対応は妙に早かったよな」
追求するように、ドクオは言葉を続ける。
ξ゚听)ξ「そう言えば、そうだわ。あの小型のヘリがおもちゃ売り場を襲ってから、
十五分足らずのあいだに、あなた達はジャスコを包囲してた」
( ・∀・)「へいたいさん、いっぱいぶきをもってたよー!」
モララーの言葉に、ドクオも頷く。
('A`)「いきなり自衛隊が出動してきたのも妙だ。普通、ああいう事件の場合は警察が出てくるもんだろ?
それなのに、あんたらは野戦用のライフルで完全武装した小隊をジャスコに送り込んできた。
まるで、中で巨大なロボットが暴れてるのを知ってたみたいだったぜ?」
川 ゚ -゚)「それほど――私たちは優秀じゃないさ。まさかあんなのがいるとは思わなかった」
意味深な言葉を女自衛官が発したとき、ふいにオプティアヌスの声が響いた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:20:31.64 ID:EZGm6LMp0
- 「クリエイター。悪いがおしゃべりはそこまでだ」
戦車の車体を縛っていた鎖が、ふいに軋んだ音を立てる。
シートがばさばさと風に揺れた。女兵士が、弾かれたように立ち上がる。
川#゚ -゚)「こら、走行中だぞ! 静かにしろ」
「それは不可能だ。敵が来る」
高層ビルが建ち並んだ市の中心部を抜けて、トレーラーは市街地の湾岸部に入ろうとしていた。
護衛するように、前後に自衛隊の装甲車が走っている。ドクオは辺りを見回した。
片側二車線の道路には、特に異常は見られない。
('A`)「さっきの、ヘリに変形するロボットと同じやつなのか?」
「それは分からない。だが、かなりの高速で接近してくるようだ……!」
オプティアヌスの声に、かすかな焦燥のようなものが混じる。
('A`)「くそっ!」
先ほどのジャスコと違って――そこは、交通量の多い幹線道路だった。
ガソリンを満載した無数の車が高速で走っている。もしも、あんな巨大ロボ同士の戦いがまた行われたら――。
(#'A`)「おい、あんた! トレーラーの運転手に、人気のないところに出るように言ってくれ!」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:21:20.12 ID:EZGm6LMp0
- ドクオが女自衛官にそう叫んだとき、モララーが嬉しそうな声をあげた。
目をきらきらさせて、後方の車線を指さす。
( ・∀・)「ねーねー、みて! あのくるま、げーむにでてくるのとおんなじだよ!」
白い獣が、アスファルトの上を疾駆していた。
エンジンが遠吠えのような轟音をあげる。高速で回転するホイール。前面のエアインテークから唸り声とともに、
風を吸い込む。曲線のボディが呼吸し、LEDを搭載したヘッドランプがほのかな光を放つ。
(;'A`)「ゲーム? どんなゲームなんだ!?」
( ・∀・)「ぐらんつーりすもふぁいぶ、ぷろろーぐ!」
悠々と他の車を抜き去りながら、白い車体がこちらに接近してくる。
ドクオは、そのPS3のゲームを持っていなかった。だが、車影を認めた女自衛官が呆然としたように声をあげる。
川 ゚ -゚)「シトロエンGT……!」
青く、美しい光を放つその双眸は、さながら燃え上がる炎のようだ。
優美なボディが内側から歓喜にふるえたように――震動する。
「下がれ!」
オプティアヌスの鋭い声が響き渡った瞬間。
ドクオは、後ろを走っている装甲車の横に並んだその車が、レゴブロックで作られていることに気がついた。
白い車体から、火花が舞う――。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:22:20.05 ID:QZjSpJpo0
- 待ってたぜ、支援
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:22:43.30 ID:EZGm6LMp0
- ふいに、路上を疾走していた後輪が二つに分かれた。
それぞれの車輪が足を瞬時に形成し、ボンネットカバーが背面に収納され、頭部がせり上がってくる。
全身から火花をほとばしらせながら、ガルウイングのドアから腕が突きだした。
ξ;゚听)ξ「へ、変形した……!?」
さながら、その姿は白い甲冑を纏った西欧の騎士のようだった。
ボンネットカバーをマントのように背後に纏いながら、ロボットは華奢な上腕部から鋼の双刀を突き出す。
大地を踏みしめた足が、アスファルトの路面に接触して火花を舞わせる。
周囲を走行していた車が、突如として出現した巨大なブロックの塊に戸惑う。
ハンドルを切り損ねて互いに衝突し――次々とクラッシュしていくのが見えた。
速度に乗ったまま、ロボットの巨大な足がアスファルトの地面を蹴る。
宙に舞った双剣が、真横を走っていた装甲車を切り裂いた。
風防のガラス窓の中で、装甲車を運転していた自衛官が悲鳴をあげる。
圧延鋼板で形成され、小銃の弾程度なら弾き返すほどの強度を持つ装甲材の中を、刃は軽々と通り抜けた。
鋭角に尖った装甲車の車体が、一撃で挽肉にされる。
川;゚ -゚)「そんな、96式が……」
ひしゃげ、両断された車体は火花を撒き散らして路面を滑り――分離帯に激突して炎を吹きあげた。
叫び声とクラクションが響く中に、ドクオは見た。
ゆらめく熱と、燃えさかる炎の中に浮かび上がる、髑髏のような顔立ちのロボットの姿を。
そして、聞いたのだ。悪夢を具現化するかのような、怒れる獣の咆哮を――。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:24:27.05 ID:EZGm6LMp0
- 異変に気づいたトレーラーが、急ブレーキを踏んだ。
車体を揺すぶられ、ドクオたちはトレーラーにしがみつき、振り落とされないようにするのがやっとだ。
川 ゚ -゚)「止まるな! 走り続けろ!」
女自衛官が叫ぶ。だが、その声も衝撃にかき消された。
暴風のごとき斬撃が路上に停車した車を次々に粉砕し、炎と黒煙があたりがら吹きあがる。
髑髏の眼から凄惨な輝きを立ちのぼらせながら、ロボットがこちらを見据えた。
双剣が空を切った。黒煙を突き抜けて、ロボットの巨体がアスファルトの上を飛翔する。
死の風と化した剣先が、ドクオたちの乗るトレーラーに触れようとした刹那――。
力強い両の指が、繰り出された二本の刃を受け止めた。
図太い腕に堰き止められて、舞うように周囲の物を切り刻んでいた白い巨体がふいに静止する。
全身から火花を舞い散らせて、もう一体の巨大ロボがトレーラーの上に立ち塞がっていた。
( ・∀・)「おぷてぃあぬす!」
精悍な顔が、モララーの声に応えるように力強く頷く。
束縛していた鎖を引き千切り、瞬時に戦車から変形を遂げたロボットは、両腕で一本ずつ刃を受け止めている。
睨み合う二機のロボットの双眸が、互いに憤怒の炎を燃やした。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:24:54.91 ID:jORiiXqKO
- 支援
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:25:08.27 ID:EZGm6LMp0
- 灼熱した輝きが、刃の表面を覆う。
オプティアヌスの指先が赤く灼けて、溶解したブロックの破片が路上にこぼれ散った。
同時に、嫌な音がした。鉄と鉄が軋むような、重い音。
「ペニス……」
重々しい響きで、髑髏のような顔のロボットは卑猥な単語を告げる。
オプティアヌスの腕が、鈍い音を立てて軋んだのが分かった。鋭い刃が、その青く燃える目の寸前に迫る。
「俺の名は、ダブルペニス……」
名乗りながら、そのロボットは刃に力を込めていく。
オプティアヌスの足元で、トレーラーの鉄板が陥没した。ドクオたちには、黙って見ていることしかできない。
「私は――オプティアヌス!」
だが、猛然とその巨体が唸り声をあげた。図太い腕が、灼熱した刃を真上に押し上げる。
同時に足がトレーラーの鉄板を蹴って、巨大な鉄球のごとく相手を猛襲した。
致命的なまでに揺れた車体に、ドクオたちは必死にしがみついた。
だが、渾身の蹴りは空しく空を切った。双剣がオプティアヌスの指先から離れる。
ロボットは華麗な動作で後ろに飛び退くと、分離帯を飛び越え、向こうの対向車線に着地した。
同時に、斬撃が周囲を舞った。走っていた車の群れが、一瞬で鉄塊に姿を変える。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:26:16.92 ID:EZGm6LMp0
- 「やるな……オプティアヌスとやら。俺の太刀を止めた奴は、久しぶりだ」
黒煙の向こうに、白い鎧に覆われた華奢な身体がゆらめく。
足元を紅蓮の炎に灼き焦がしながら、そのロボット――ダブルペニスは重い声で告げた。
「それは光栄だな……ダブルペニス」
傷ついた拳を握りしめて、オプティアヌスが答える。
ペニスとアヌス――名前だけならばこの上なくフレンチな取り合わせの巨体どうしが、再び睨み合う。
ξ;゚听)ξ「なんでこいつらって、そんな名前ばっかりなのよ……」
嫌そうにつぶやくツン。モララーが不思議そうにたずねる。
( ・∀・)「ねーねー、ぺにすとあぬすって、たたかうとどっちがつよいの?」
川 ゚ -゚)「……それは、君が大きくなったら分かるかもな」
女自衛官が遠い目をして言う。
そっちの経験もあるのか――と一瞬思ってしまったドクオは、オプティアヌスの巨体が加速するのを見た。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:27:25.83 ID:QZjSpJpo0
- 支援
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:28:04.31 ID:cZUmN+iAO
- ちくしょう待ってたのに敵はペニスかよ
カッコイイとこなのにニヤケちまう
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:28:16.54 ID:EZGm6LMp0
- 地響きを立てて、巨体が疾走する。
路上に転がっていた装甲車の残骸に狙いを定めると、オプティアヌスはそれをサッカーボールのごとく蹴りあげた。
宙を舞った鉄の塊が、ダブルペニスの眼前へと殺到する。
「そんなもので……!」
灼熱する剣先が瞬時にそれを両断し、分かたれた二つの破片になって道路に突き刺さる。
その動作の間隙を突いて――オプティアヌスは片腕を砲撃形態へと変形させていた。
火花が舞い散る。腕部から鈍重に突きだした砲身が、精緻な動作で眼前の敵を捕捉する。
(;'A`)「ぐわっ……!」
次の瞬間、耳をつんざくような轟音とともに、爆炎が砲身からほとばしった。
女兵士が反射的にモララーとツンを抱きかかえる。鼓膜を突き抜けた音の塊が聴覚を麻痺させ、
音のない空間の中で、身をよじったダブルペニスの剣の片方が砕け散るのが見えた。
だが、それまでだ。
「貴様――!」
ダブルペニスが吠えた。片方の刃を砕かれながらも、残された爪牙を振るう。
先程の一撃により、オプティアヌスの指は溶けて固まり、次に刃を受けきることはできそうにない。
仮にできたとしても、あの灼熱する刃にもう一度耐えられるだろうか。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:30:23.79 ID:EZGm6LMp0
- 疾走する斬撃が、砲身と化していたオプティアヌスの腕の先端を斬り飛ばす。
続けざまに刃を切り返し、美しい軌跡を描いた剣先が肩口から、袈裟斬りに殺到する――。
('A`)「オプティアヌス!」
勝利を確信した髑髏の眼が、青白い炎に彩られた。
剣を持った相手に、丸腰で戦いを挑んでいるようなものだ。
辛うじて後退したオプティアヌスの胸元を刃がかすめ、無数のブロックが砕け散る。
「うぬ……!」
刃の軌跡が更に変化した。今度は一直線となって、オプティアヌスの頭部を貫こうと繰り出される。
電光石火の突き。やや体勢を崩した巨体の寸前に、剣先が迫る。
武器があれば。ドクオはそう願った。オプティアヌスにも、敵と同じような剣があれば――!
瞬間、何かがアスファルトの上から舞い上がるのが見えた。
さっき砕け散ったダブルペニスの刃を構成していた、無数のブロック。
それが、オプティアヌスの腕の周りに集まっていく――。
「何だと……!?」
ダブルペニスの驚愕した声とともに、突き出した刃はオプティアヌスの眼前で停止していた。
すらりとした鋼の長剣が、その切っ先を押しとどめている。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:31:27.39 ID:EZGm6LMp0
- ('A`)「日本刀……!」
ドクオが叫んだとおり、それは日本の伝統的な刀剣の形状に酷似していた。
緩く反り返った長い刀身は鈍い光を放ち、その表面には美しい刃紋が見える。
「ばかな――!」
触れあった刃と刃が、火花を散らして離れた。
自分の右腕から伸びたその刀身を、オプティアヌスが青眼に構える。
もう一度、ダブルペニスが刃を振るった。剣が舞い、オプティアヌスを両断しようとした――瞬間。
オプティアヌスが前に踏み込んだ。
二体のロボットは、ほぼ同時に切り結ぶ。舞い散ったブロックの破片が路上に交錯し、
ダブルペニスの刃にオプティアヌスの肩口が砕けた。
「ぐううう……」
だが――重い呻き声を洩らしたのはダブルペニスだった。
武装を展開したままの腕が、根本から両断されて路上に突き刺さる。
今や双剣の片方は砕かれ、もう片方は刀の一閃によって身体から切り離されたのだった。
「……決着が、ついたようだな」
オプティアヌスが、青く燃える瞳でダブルペニスを見据えた。
伸びていた刀が、今やその身体を構成するブロックの一部となって腕部に収納される。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:32:59.40 ID:EZGm6LMp0
- 「まだだ……! ここで貴様にやられる、俺ではない!」
言葉と同時に、ダブルペニスの身体から白煙が立ちのぼる。
瞬時にそれはロボットの巨体を覆い隠し、目の前を覆った煙に、ドクオは思わず咳き込んだ。
火花が舞う。白煙を引き裂いて、片側のドアのない白いスポーツカーが飛び出した。
「待て!」
オプティアヌスの腕がそれを追うように突き出されるも――破壊された砲身は砲弾が射出できる状態ではない。
川 ゚ -゚)「くそっ!」
女自衛官が拳銃を引き抜き、両腕で射撃する。
リアウイングから火花が飛び散ったが、それは車を止めるまでには至らない。
白いスポーツカーは、すぐに視界の向こうに消えていった。
('A`)「しかし、ひどいありさまだな……」
白煙が晴れはじめて、その場の惨状が改めて明らかになった。
幹線道路の上で、二体の巨大ロボットが激突したのだ。
ボンネットが潰れ――フロントガラスが割れた車などはまだ良い方で、
切り刻まれ、炎上して残骸になった車が、路上に何台も転がっている。
黒煙が、至る所から吹き出していた。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:33:59.49 ID:EZGm6LMp0
- 黄色い車止めが、路上を封鎖していた。
カーキ色の車輌の赤い警告灯が、夕暮れの中に輝いている。
道路脇に張られた臨時テントの中に、ドクオは腰掛けていた。
('A`)「なあ、オプティアヌス……。お前らは、一体何なんだ?」
「私は、ブロックだ。クリエイターのあなたによって命を与えられた」
テントの隣で、戦車の姿になったオプティアヌスが重い声を響かせる。
砲塔は先が欠けたままで、車体はところどころがえぐれている。
川 ゚ -゚)「なあ、さっきから話に出てくる、そのクリエイターってのは何なんだ?」
女自衛官――クーと名乗った――が、オプティアヌスの方を向いてたずねる。
「我々の創造主だ。クリエイターはブロックの塊から私たちを創造し、命を与えてくれる。
おそらく、襲ってきたあのロボットたちも――他のクリエイターによって作られたものだろう」
・ ・ ・
ξ゚听)ξ「だろうって、どういうことよ」
「私にも、よくは分からないのだ」
オプティアヌスが言葉を続ける。
「私は、生まれたばかりの赤ん坊のようなものだ。クリエイターについての知識は持っているが、
他のロボットが何者なのか、どこから来たのかについての知識は持ち合わせてはいない」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:35:34.17 ID:QZjSpJpo0
- 支援
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:35:42.89 ID:EZGm6LMp0
- 川 ゚ -゚)「ふむ。つまり、君たちクリエイターとやらはブロックを使って戦争をしてるのか?」
胡散臭そうな目で、クーがドクオを見つめる。
(;'A`)「お、俺は誰かと戦ったりなんてしてないですよ。さっき話した通り、ジャスコのおもちゃ売り場で
ブロックを作っていたら、突然こいつが動き出して、他のブロックを吸収して巨大化して――。
その後で、小型のヘリ型ロボットが襲ってきたんです」
慌てて手を振るドクオに、クーは相変わらずのぶっきらぼうな口調で告げた。
川 ゚ -゚)「いい年こいて、君は子供を押しのけてレゴブロックで遊ぶのが趣味なのか?」
('A`)「い……いつもは家で作ってるんです」
川 ゚ -゚)「まあ、それはいい。私が君に聞きたいのはそんな事じゃない。
君は今までにも、作ったレゴブロックが喋ったり、勝手に動いたりすることがあったのか?」
ドクオは、確かにレゴブロックを使って色々な作品を作ってきた。
大航海時代の帆船や、スターウォーズの宇宙戦闘機、果ては原寸大マイケル・ベイ監督の胸像など……。
しかしどれも、動いたり喋ったりすることはなかったはずだ。
('A`)「ないですね……。オプティアヌスにしたって、まさか動くとは思っていなかったもので」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:39:31.59 ID:EZGm6LMp0
- 川 ゚ -゚)「なるほど。つまりドクオ君は、最近クリエイターとやらの能力に目覚めたと言うことだな」
そう言って、クーがテントの外に視線を向ける。
後片付けはあらかた終わったようで、路上に散らばっていた車の破片やら、燃えかすはほとんど撤去されたようだ。
・ ・
川 ゚ -゚)「そのロボットといい、もしかすると――君のその能力が、アレを解く鍵になるかもな」
続いてドクオの方に顔を動かして、うんうんと頷く。
一人で納得されて、ドクオは訳が分からなくなった。
('A`)「な、何の話ですか……?」
川 ゚ -゚)「とりあえず、君たちには我々の基地にまで来てもらう。まあ、最初からそうするつもりだったけどな」
ξ;゚听)ξ「基地に行くって、もう夜よ? あたし、お母さんに六時までには家に帰れって――」
川 ゚ -゚)「心配ない。君たちの身柄は、自衛隊で保護する。親元には適当な理由を告げておくさ」
クーは立ち上がる。そして、三人の顔を見た。
川 ゚ -゚)「それに、基地にいた方が安全かもしれないぞ? またさっきのようなロボットが襲ってきても、
基地は防御がしっかりしている。付近に何もないから、戦っても被害は少なくて済むぞ」
(;'A`)「う……」
さっきの道路の惨状を思い出して、ドクオは言葉をつまらせる。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:40:24.53 ID:EZGm6LMp0
- 一方、そのころ――。
( ^ω^)「お客様、レゴブロックをお探しでしょうかお?」
にこにこと微笑んで、店員は目の前の親子連れに声をかけた。
ジャスコのエプロンではなく、赤いレゴのマークが入った黒いシャツを着ている。
それもそのはずで、店員は町のおもちゃ屋さんで働いていた。
レゴのパッケージが並んだ棚のところで、迷っている親子連れを見かけたのだ。
ジャスコとおもちゃ屋のバイトを、店員は掛け持ちしていた。
(,,゚Д゚) 「よくわかんないけど、かっこいいのがほしいぞごるぁ!」
(*゚ー゚)「この子にも組み立てられるのって、ないでしょうか?
それと、レゴブロックって小さいですよね。子供が飲み込んだりしないか心配なんですけど……」
店員は、子供の顔を見つめた。確かに、普通のレゴブロックにはまだちょっと早いかもしれない。
( ^ω^)「それでしたら、こちらのデュプロはいかがでしょうかお?
子供向けに組み立てやすく、またブロックが大きくなっているので飲み込む心配もありませんお」
(,,゚Д゚) 「このぱとかー、かっこいいぞごるぁ!」
店員の勧めたデュプロの中から、子供がパトカーと警察官のセットを手に取る。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:40:52.74 ID:QZjSpJpo0
- 支援
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:41:20.89 ID:EZGm6LMp0
- ( ^ω^)「ありがとうございましたお」
頭を下げた店員の向こうで、親子連れが店を出て行った。
おもちゃ屋の紙袋を抱えた子供は幸せそうだ。それを見て、店員は温かい気持ちになった。
( ^ω^)「……やっぱり、この仕事はぼくの転職だお」
店員は、知らなかった。
ジャスコでの勤務を終え、服を着替えて後にしたおもちゃ売り場を無数の小型ヘリが襲撃し、
その後、建物の中で二体のロボットが激しく殴り合ったことを。
通りに面したガラス張りの壁の向こうに、ふいに青白い輝きが灯る。
次の瞬間、轟音とともにガラスが砕け散った。白いボディが、店内に乗りあげてくる。
(;^ω^)「な、なんなんだお……!?」
思わず破片から身をかばうように頭を覆った店員に、声が告げる。
「ブロックを、よこせ……」
怯えた眼を向けた店員は、その――突っ込んできた車には左のドアがなく、
車体後部にかけてごっそりとボディが消滅し、車内が剥き出しになっていることに気づく。
そして、驚いたように立ちすくんだ。その車は全て――レゴブロックでできていたのだ。
「ブロックだ……早くしろ」
誰も乗っていない運転席の中から声がする。店員はガタガタと震えながら、それを見つめた。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:42:35.38 ID:QZjSpJpo0
- 支援する
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:42:50.29 ID:SAXAhXrZO
- まさか来てるとはw
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:42:50.27 ID:EZGm6LMp0
- 鉛色の基地のゲートを、レゴブロックの鈍重な車体がくぐった。
ドクオはオプティアヌスの上に座ったまま、周囲を見回す。
自衛隊の基地の中に入るのは、生まれて初めてだ。
ライフルを持った歩哨が、クーの姿を見てぴしっと敬礼する。
装甲車に先導された先で、オプティアヌスはキャタピラの回転を止めた。白いドーム状の建物が、
だだっ広い基地の中心部に建っている。クーが、軽々とレゴブロックの上から降りた。
川 ゚ -゚)「いいタンクデサントだった」
端正な顔がドクオたち三人を振り返り、黄昏のなかで黒髪が舞う。
川 ゚ -゚)「さて、付いてきてほしい。そこの戦車は――待っていてもらえるかな?」
「しかし、クリエイター……」
抗議するような声をあげたオプティアヌスに、ドクオは前方の建物を見た。
どう見ても、人間の入れる大きさの入り口しかない。戦車や巨大ロボットが入ることは、考慮されていないようだ。
('A`)「大丈夫だ。すぐ戻る」
レゴブロックの装甲を撫でて、ドクオは戦車から降りた。
ツンの手を取って降ろした後で、モララーを抱きかかえて地面に立たせる。
そして、クーの後を付いて歩きはじめた。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:44:24.52 ID:EZGm6LMp0
- 川 ゚ -゚)「レゴブロックが生まれたのは1949年のことだ。しかし、オリジナルの発明ではなかった。
元々あの形状のブロックを考案したのはイギリス人で、別の会社から販売されていた。
だが、レゴ社はそれに改良を加え、1958年にはブロックのデザインはほぼ現在のものになった」
ドームの中の細い通路を歩きながら、クーが言う。
鉄の扉の前でカードキーをかざし、装置の前で網膜をスキャンした。赤い光が壁にこぼれる。
川 ゚ -゚)「ブロックの素材が現在のABS樹脂製に変わったのは1963年のことだ。それから、レゴブロックは
基本的な姿をほとんど変えていない。新しい種類のパーツは、年々増え続けているがね」
('A`)「結構、レゴの歴史に詳しいんですね」
分厚い扉が、シリンダーの作動する空気音を立てて開く。
ドクオは目をみはった。扉の向こうでは白衣を着た大勢の作業員が動き回っており、
ドームの内側を目一杯使った広い空間の中に、何かの物体が鎮座している。
ξ゚听)ξ「結構すごいわね……」
その物体を取り巻くように三次元的に伸びた足場から、物体の表面に無数のケーブルが取り付けられている。
どうもドームは、物体を研究するために建設されたようだった。
( ・∀・)「おっきいー!」
モララーが声をあげる。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:46:09.05 ID:QZjSpJpo0
- 支援し
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:46:44.38 ID:EZGm6LMp0
- ('A`)「何なんですか、これ……?」
クーの後に続いて、三人はその物体の根本に歩み寄る。
その物体は、鋭く尖った下部と、そこから伸びた三本のアームによって構成されているようだった。
上方に伸びたアームは頂点で結合し、物体は全体的に菱形のシルエットをしているように見える。
だが――その物体の表面が詳細に観察できるくらいの距離にまで近づいたとき、ドクオは思わず息をのんだ。
無数に積み重なった、凹凸の突起がある全長数センチのブロック。それは、レゴブロックで作られていた。
物体の全長は、優に十メートルを超えている。
実在する何かの模型ならまだしも、誰がこんな意味不明なものを――レゴブロックで作ったのか。
川 ゚ -゚)「二年前だ。海底資源の探査を行っていた海洋研究開発機構の小型潜行艇が、
深度2400mの海底で砂に覆われていたこいつを発見した。引き揚げるのは困難を極めたがな」
('A`)「なんでそんな海の底に、レゴブロックが……?」
川 ゚ -゚)「こいつは、レゴブロックじゃない」
クーが、ドクオの方を見つめる。
川 ゚ -゚)「発見されたとき、物体の上部には岩塊が付着していた。
その中に、生物の化石があったよ。フィリップシアのものだった」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:47:00.81 ID:IuItOVG6O
- 来てた支援
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:48:42.30 ID:EZGm6LMp0
- ξ゚听)ξ「何ですか、それ?」
クーにだけは敬語なツンが、小首をかしげる。
川 ゚ -゚)「石炭紀前期に生息していたプロエトゥス目の三葉虫の仲間だ。全長は2cmほどで小型なものだが、
生息していたのは約3億5千万年前――我々人類が生まれる、遙か以前の地球の住人だ」
ドクオは、クーの意外な一面を見たような気がした。その表情は、大好きなおもちゃを親に見せる子供のようだ。
川 ゚ -゚)「つまりそいつが生きていたときに、すでにこの物体は地球に存在していた事になる。
デンマークのレゴ社がレゴブロックを発売するよりも、気の遠くなるような昔からな」
(;'A`)「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。でもこれ、どう見てもレゴブロックですよ……」
川 ゚ -゚)「更に興味深い事実がある。我々はこの物体の正体を探ろうと、構成しているブロックのサンプルを
採取しようとした。超硬合金やダイアモンドのカッターを使ってな。だが――」
艶をおびてつるつるになった、ブロックの表面をクーが指さす。
川 ゚ -゚)「ほんのわずかな傷も、表面に付けることができなかった。おまけに、こいつは長い年月を海底で
過ごしていたにも関わらず、まったく腐食していない。現在の人類の技術で、こんなものを作るのは
不可能だ。たぶん、どんなに文明や科学技術が進んだとしても作れないだろうな」
ξ゚听)ξ「まるで、神様が作ったみたいね……」
川 ゚ -゚)「かもな。私は無神論者だが、そういう存在を信じたくもなるよ」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:49:10.51 ID:QZjSpJpo0
- 相変わらず凄い展開
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:50:28.21 ID:EZGm6LMp0
- ('A`)「信じられないな……。だってこれ、どう見てもその辺で売ってるレゴブロックですよ」
乳白色のそのブロックに、ドクオは思わず手を伸ばした。
指先が、滑らかなその表面に触れる。
川 ゚ -゚)「あ。おい! 勝手に触るな――!」
咎めるようにクーが声をあげる。慌てて指先を引っ込めようとしたドクオの心臓が、どくん、と収縮した。
指先からちりちりした痛みが走り、瞬時に上腕を通り抜けて、首の後ろから脳髄に駆け上がってくる。
まるで、電流を流されたようだった。目の前がスパークし、白く包まれていく。
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと、レゴオタ!?」
( ・∀・)「わー。おにいちゃんのからだ、びくんびくんしてるー」
二人の声が聞こえた。
だが、それよりも大きな、無数の声が――脳内に直接響いてでもいるかのように、頭の中で反響する。
それは、正確には声ではなかった。無数の意味不明な音の塊が、ドクオの聴覚を覆っていく。
頭蓋を鷲掴みにされ、その深奥をのぞき込まれるがごとき激痛に、ドクオは叫び声をあげた。
同時に白い、何かの高みに、身体が登っていくような高揚感を感じ始めた刹那――。
後ろからドクオの身体を羽交い締めにした誰かが、無理矢理にブロックに触れた指先を引き剥がす。
背中に柔らかい感触が当たり、女性の体温が自分を抱いているのを感じながら――ドクオは目を閉じた。
意識が黒い闇に飲まれ、全ての感覚が外界から切り離されていく。
やがて、完全な闇の中で、ドクオは意識を失った。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:52:36.15 ID:EZGm6LMp0
- 「来る……!」
同時刻――ドームの前に停車していた戦車は、突如として声をあげた。
太陽は向こうの山かげの中に沈み、黄昏色に燃えた空が薄く、平坦な影を基地全体に落としている。
キャタピラが猛然と回転し、無骨な車体が地面の上を動きはじめた。
珍妙なレゴブロック戦車が走っているのを、ぽかんと口を開けて見ていた若い男の自衛官の前で、
オプティアヌスは急制動をかけた。衝撃とともに車体が静止し、自衛官がさらに目を丸くする。
「おい、そこのお前――!」
突如として響いた声に、思わず自分の事を指さした自衛官に、オプティアヌスは答える。
「そうだ。この基地の武器庫がどこにあるのか、私に教えろ」
先の折れた砲塔が、機械音を立ててゲートの方角を向く。
呆然とする自衛官に、声が追い打ちをかけた。
「私にいい考えがある。武器庫まで案内してくれ」
つづく
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:53:54.66 ID:QZjSpJpo0
- 乙
面白かった
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:56:06.01 ID:EZGm6LMp0
- というわけで今回は終わりです。
夜も遅いのに支援してくれた皆様、本当にありがとうございます。
それと申し訳ないですが、まとめサイトに掲載されている最後の段落、
>>112は無かったことにしてください。今回の>>4-8が書き直されたその部分になります。
次回こそは、もっとマイケル・ベイ的な戦闘シーンがかけるように頑張りたいものです。
それでは、ここまで読んで頂いてありがとうございました。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:59:40.83 ID:e2WkZQQJ0
- まにあわなかった・・・だと・・・
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:03:11.23 ID:aQZAk4pgO
- わぁい
いい考えがある、が聞けた
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:04:32.51 ID:R9VYi1Py0
- おお来てたか
読んでくる、乙
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:07:14.43 ID:pOvdfgLoO
- おつ
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:16:27.62 ID:8x08GVHV0
- 乙
全部
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