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(*゚ー゚)夢幻魔術師と箱庭の歌姫のようです

1 名前: ◆MBauHxncAc :2009/01/31(土) 23:55:46.53 ID:pGmxXw5kO
地球上に蔓延る矮小なる種族が、病的な機械文字の羅列により築き上げた『形無き海』
形無き海の一角では、矮小なる種族が白痴の魔王すらも凌駕するほどの、冒涜的な言葉の数々を喚き散らし続けている。

しかもそれだけでは飽きたらず、彼らは狂えるアラブ人アブドゥル・アルハザードでさえも驚くに違いない巧妙な手口を使い、
この0と1とで形成された不定形の海に、自らが思い描いた物語を書き連ねている。
私達の心を捕らえて、決して逃してはくれない独創的で、
かつ神秘的な匂いを発散させる物語群を纏める恐るべき秘密教団が存在した。

名状しがたきまとめサイト様
人類の声帯を用いての発音では、どうやらこの教団はブーン芸と呼べるらしい。
http://boonsoldier.web.fc2.com/hakoniwa.htm

長々と間を空けてしまいました。
前スレで一月には投下するって言ってましたけど、まだ余裕でギリギリセーフですね。よかった。
ちなみに、今回も後半ながらです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 23:57:35.04 ID:uDGdTwM60
言い回し吹いたwwwww
支援

3 名前: ◆MBauHxncAc :2009/02/01(日) 00:00:19.20 ID:R7IAZqOBO
どこか懐かしい暗闇の中。
その闇の中で焔が踊っていた。
見つめる僕は、踊る焔に侮蔑と憤怒の感情を抱いていたが、
それ以上に焔が放つ煌めきに心惹かれてしまっていた。

腕の中には儚い命。
今にも尽きようとしている、吹けば掻き消えてしまう小さな灯。
ああ、人の命のなんと脆いことか。
それに比べて、そんな僕らに比べて、
眼前で舞う焔は、なんと大きく力強いのだろう!

踊る焔は――燃え盛る焔と見間違うほどの赤い髪を頭に点した女は、
揺れ動く僕の心を読んだのか、顔面をくしゃくしゃに歪め、ケタケタと狂った笑い声を上げた。
人間の出すそれとは、あまりにも掛け離れた音の響きに、
はたと気を失いかけたが、すんでの所で意識を保つ。
だからといって状況が好転する訳でもなく、いよいよ僕は赤い女に立ち向かわなければならなくなった。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:02:36.11 ID:R7IAZqOBO
しかし、僕にできる事なんて高が知れていて、
腕の中で眠る少女の体を、より強く抱き留める事しかできなかった。
少女は瞼を閉じたまま、弱々しく呼吸を繰り返している。
それは少女がまだ生きている証であり、死にかけている証でもあった。

赤い女は血染めの手でゆっくりと僕の頬を撫でる。
頬から首へ、首から胸へと指先を這わせ、
女の手は死にかけの少女の唇へと辿り着いた。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:02:48.76 ID:qbZcNESHO
中二臭がプンプンだぜ

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:03:42.94 ID:AH/981m+O
邪気眼支援

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:04:55.18 ID:R7IAZqOBO

「この小娘は間もなく死ぬ」

解っている。

「あの魔術師と騎士はここには来れない。今頃は私の愛らしい獣達と戯れているだろう」

解っている。

「この小娘を救えるのは私だけだ」

解っている。

「それでは返事を聞かせてもらおうか、ホライゾン・ナイトウ博士」

全て解っているから僕は、

(  ω )「僕は――」

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:05:00.65 ID:8KoVM1YsO
支援

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:07:21.02 ID:R7IAZqOBO
 ・
 ・
 ・

(*゚ー゚)「お兄ちゃん! 朝よ、起きて!」

( ゚ω゚)「ブッフォァ!」

腹部に鈍痛が走ると同時に、僕の意識は急速に覚醒した。
何事かと目を見開けば、鳩尾にしぃの細腕が突き刺さっていた。
僕は込み上げる吐き気と怒りを抑え、彼女の手を払いのける。

(#^ω^)「君は何をしているんだお?」

(*゚ー゚)「あなたが悪夢にうなされているようだったから、起こしてあげたまでよ」

(#^ω^)「ハートフルな目覚ましをありがとう。お礼に南極大陸のど真ん中に置き去りにしてやるお。
       というかお兄ちゃんってなんだお」

(*゚ー゚)「だってあなた、妹キャラが好みだって仄めかしていたじゃない。
     だから私は、あなたへの日頃の感謝の意味も込めて妹キャラで起こしてあげたのよ」

( ^ω^)「そんな性癖はないお。君は感謝する時に、人の社会的立場を危うくするのかお」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:09:40.20 ID:R7IAZqOBO
この場にはモナー氏もいるというのに、この娘は何と言う戯言を……。
僕がそういう類の人種だと勘違いされたら、後の人生にある意味恐ろしい支障をきたすではないか。
チラリとミラー越しにモナー氏の表情を窺ってみると、酷く曖昧な笑顔を返された。
いやいや、なんなんだその表情は。
氏が今の会話をどう受け止めたのか本気で解らない。
隣でクスクスと笑う悪魔を断罪する方法を考えてから、僕は諦めてうなだれた。

(*゚ー゚)「ところでナイトウ」

ふて腐れていた僕に、しぃは思い出したように声をかけた。

( ^ω^)「なんだお」

(*゚ー゚)「どんな夢を見ていたの?」

言葉に物理的な重量があるならば、この一言で僕は膝を折って地に這い蹲っていたに違いない。
それほどまでに彼女の質問は僕にとって堪えがたいものだった。
鮮明に脳裏に浮かぶ夢の光景。
闇に踊る焔、死に逝く少女、あの頃の僕。
忘れたくとも忘れられない記憶の一部分。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:12:25.70 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「……どうして夢の話なんか聞きたがるんだお」

(*゚ー゚)「気になったからよ。さあ、勿体振らずに教えて頂戴」

僕は数秒考える振りをしてから、

( ^ω^)「夢の内容なんて忘れたお」

とだけ言って、会話を強制的に終了させた。
尚も不満げにするしぃを無視して、僕は僕の夢について考える。
あれは確かに忘れ去りたい記憶だ。
だが、なかった事にしたいとは決して思わない。
何故なら、あの事件があったからこそ、僕としぃは出会えたのだから。

……それでも、やはり口に出して語るような話ではない。
自分の中でどれだけ美化しようとも、所詮はふがいない僕の失敗の物語に過ぎない。
いつかは語るのを避けられない日がくるのかも知れない。
今がその時でない事だけは確かだ。
いつも通りの結論に至った僕は、それ以上考えるのを止めた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:14:47.12 ID:R7IAZqOBO
腕時計を見れば、眠りにつく前よりも短針が二時間近く進んでいた。
間もなく目的地に到着する。
そろそろ気持ちを切り替えなくては。
思考の余韻から逃げるために、僕は食料のビスケットを口に含んだ。
口いっぱいに広がったほど好い甘味が、沈みかけていた僕の心を回復させる。

( ^ω^)「さて……鬼が出るか、蛇が出るか」

開かずの扉の向こう側に待ち受けるロマンに胸をときめかせ、僕は一人覚悟を決めた。
二週間前から続いていた嫌な予感は、とうとう払拭出来なかったが。

不規則に振動する雪上車のフロントガラスから雪原を見渡せば、
遠くに黄色い大型のテントが展開されているのが見えた。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:16:47.93 ID:R7IAZqOBO


――うなされている者を起こしてはいけない?


2.『氷下に眠る狂気』


そもそも、眠っている者を起こす事が間違いなのだ――



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:17:29.31 ID:QY9XHD6qO
キタ━(゚∀゚)━━!!

待ってたぜ!支援!

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:19:25.04 ID:R7IAZqOBO

( ´∀`)「長旅ご苦労様モナ、到着しましたモナ」

(*゚ー゚)「あー疲れたわ。何もしないでじっとしているのって、苦痛以外の何物でもないわね」

( ^ω^)「君は一所に留まる習慣を身につけたらどうだお」

僕としぃとモナー氏は車を降りた。
暖房の恩恵を受けた車内から、凍てつく南極の風が吹き荒ぶ車外へと。

( ^ω^)「……寒いお」

( ´∀`)「モナ」

(*゚ー゚)「南極ですもの、当然でしょ」

防寒着から露出した肌を容赦なく刺す外気。
吸い込んだ空気の冷たさ。
靴底に感じる雪の感触。
南極という名称。
どれを取っても寒がりの僕を二重の意味で震え上がらせるには、充分な破壊力を備えていた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:21:46.73 ID:R7IAZqOBO
( ´∀`)「とりあえず、テントに荷物を運ぶモナ」

この場所にテントは三組あって、その内の一つを指差してモナー氏は言った。

( ^ω^)「了解ですお」

僕は頷いてから、改めて周囲の様子を観察してみる。
白銀の大地に穿たれた特異点。
真っ白な世界に、濃いめの黄色をしたテントが三つ、等間隔で設置されている。
すぐ側にはトイレもある。
そして、テントの出入口付近に犬が繋がれているのが目に入った。
良い毛並みのハスキー犬が、モナー氏に向かって尻尾を振ってはしゃいでいた。
今まで放置されていたなんて事はなく、餌も与えられてちゃんと世話をされているようだ。

ふむ、という事はやっぱり他にも人間が居るのか。
僕達だけで南極の遺跡を探索なんて無理があるので、当たり前と言えば当たり前だ。
僕が乗ってきた雪上車以外にも、似たような大型車が一台止まっているし。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:23:55.45 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「留守番をしているのは、モナーさんの部下の方ですかお?」

( ´∀`)「はい、信頼のおける人間を集めてあります。すぐに紹介してあげますモナ。
       ああ、お嬢さん足元に気をつけて」

モナー氏は背中にリュックを背負い、老いを感じさせないしっかりとした足取りでテントに向かう。
僕は、僕としぃの分の荷物を担いで、モナー氏の後ろについて行く。
しぃは手ぶらの状態で僕に並んで歩いている。
正確に言えば、左手に杖を持っているので手ぶらとは違うのだが。

しぃと初対面のモナー氏などは、杖を見て真っ先に勘違いをしてくれたが、
彼女はやや発育に難があるものの、身体的には何ら不自由のない元気な少女だ。
彼女が杖を持っているのには、特別な理由がある。
それは彼女の正体を考えれば納得するしかない理由なのだが、
やはり裏の世界と無関係の人間からしてみれば、足腰の悪い薄幸少女にしか見えないのだろう。

彼女が常に肌身離さず持ち歩いている、純銀の杖。
この杖が、今回の探索の中で振るわれる事はあるのだろうか。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:24:54.19 ID:QY9XHD6qO
名状し難き支援

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:27:02.48 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「……」

モナー氏の後からテントに入った僕は、絶対に実行には移さないが、今すぐに帰りたくなった。
テントの中は期待していたよりも暖かくなく(それでも外よりは遥かにマシだが)、
僕は自宅の暖炉がたまらなく恋しくなり、カイロをもっと大量に持ってこなかった事を後悔した。

と、僕がどうしようもなく間抜けな思考に囚われている間に、
モナー氏は荷物を置いて、しぃはテントに居た先客と挨拶を済ませてしまっていた。
その先客はしぃと握手を交わしてから、僕の方にも握手を求めてきた。

しぃはあくまでも僕の友人としてこの場に招かれているだけであって、
彼女の前にまず僕に挨拶をするのが礼儀ではないのか。
僕は手を差し出す若造に説教をしたい衝動を我慢して、握手に応じた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:29:24.72 ID:R7IAZqOBO
  _
( ゚∀゚)「オッサンがナイトウ博士?」

( ^ω^)「……」

我慢したいのは山々だが、どうにも最近の若者は人生の先輩を苛立たせる言動を好むようだ。
このままで終わってしまうのは、僕としては非常に面白くないので、
やはりまずは、この礼儀知らずな若造に、年配者を敬う事を教えてやろうと意気込んだ。

だが、そのカビの生えた年寄り臭い感情も、
青年の背後で試すような、或いは呆れるような眼差しを僕に向けるしぃを見付けた途端、
喉から出かかっていた言葉の数々と共に、どこか心の奥底に沈んでいった。

( ´∀`)「ジョルジュ君!」

( ^ω^)「ああ、いや、構いませんお」

すかさず窘めるモナー氏を制して、僕は青年の質問に答える事にした。

( ^ω^)「僕がホライゾン・ナイトウで間違いないお、君は誰だお?」
  _
( ゚∀゚)「俺はジョルジュ・ウィリアムズ。モナーさんに選ばれたチームの一員だ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:31:30.70 ID:QY9XHD6qO
支援

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:33:06.98 ID:R7IAZqOBO
ウィリアムズ青年は胸を張って誇らしげに答えた。
何らかのスポーツを愛好しているのか、青年は体格が良く、僕よりも身長がずっと高い。
髪は色素の薄い金髪を、オールバックにして後ろで纏めている。
目は両方とも青色、否の打ち所のない整った顔立ち。
青年が街を歩けば、そこいらの男にちょっとした敗北感を与える事も難しくはないだろう。
そんな彼の透き通るようなブルーの瞳に見下ろされ、僕は不快感が甦る気配を知覚した。

いや違う、今考えるべきはそんな事ではない。
ジョルジュ・ウィリアムズと名乗ったこの青年はもしかして。

( ^ω^)「もしかして君は、まだ学生なのかお?」
  _
( ゚∀゚)「そうだけど何か文句ある?」

(;^ω^)「……」

僕は絶句して、言葉が出なかった。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:35:47.07 ID:R7IAZqOBO
( ´∀`)「申し訳ありません、Mr.ナイトウ。
       ジョルジュ君は友人の息子なんですが、国に戻ったおりに遺跡の話を聞かせた所、
       どうしても自分もとせがまれまして」

僕と青年との間に割って入ったモナー氏は、申し訳なさそうに頭を下げた。
僕はすぐに気を取り直して、氏に頭を上げさせた。
だがこれはどうしたものか、対処に困る。

( ^ω^)「モナーさん、あなたが経験の浅い子供を連れてくるなんて、僕は一言も聞いてなかったですお」

子供という単語に、青年が律儀に反応を示したが、僕はあえて不遜な態度で睨み返して牽制した。

( ´∀`)「ですがジョルジュ君一人ぐらいなら、なんとか融通もきくでしょう」

モナー氏は、テントの隅で杖の手入れをしているしぃにさりげなく目を向ける。
僕は小さく舌打ちをした。
モナー氏が、随分とたやすく彼女の同行を許可してくれたのは、こういう企みがあっての事か。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:39:56.96 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「僕は、この探索は非常に危険なものになるだろうと考えていますお。
       そんな所に未来ある若者を連れていくのは――」

僕が心にも思っていない綺麗事を全てを言い終わる前に、モナー氏は唐突に笑い声をあげた。

( ´∀`)「いやいや失礼。確かに遺跡はクレバスの下にあるので、少なからずは危険もありますモナ。
       だがジョルジュ君は、運動神経が抜群に良いので大丈夫ですよ」
  _
( ゚∀゚)「俺は危険なんて望む所だぜ」

( ´∀`)「本人もこう言っておりますモナ」

何が大丈夫なものか、この二人はまるで解っていないのだ。
ここの遺跡に潜んでいるだろう恐怖の正体、深淵の奥底にまどろむ闇の影を。
あんなにも名状しがたい恐ろしい者共が巣くっているかもしれない洞穴に、
足手まといになると解っている、尻の青いガキをどうして連れていかねばならんのか。
それで結果的に、こちらの身まで危なくなったらどう責任を取るつもりだ。
くそっ、無知は罪とは実に的を得た言葉だ。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:41:04.42 ID:QY9XHD6qO
支援

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:43:52.35 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「それでもやはり、ジョルジュ君を連れていくのは」

( ´∀`)「ふむ、Ms.ワーズワースは良くて、ジョルジュ君はダメなのですか。おかしな話ですね」

(;^ω^)「あ……」

すっかり失念していたが、しぃは『中身』はともかく、外見は十五歳くらいの華奢な少女なのだ。
対する青年はスポーツマンの鏡のような体格の持ち主で、
分厚い防寒着の上からでも、彼が日夜激しいトレーニングを重ねているだろう事が解った。

両者を並べてしまえば、違いは一目瞭然。
客観的に見て、無謀で常識外れな要求をしているのは僕の方だ。

(;^ω^)「ですが!」

この至極当然の指摘に、僕が上手に反論できるはずがなかった。
それでも青年を探索に伴いたくないというのは、僕の我侭に他ならない。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:45:08.06 ID:JSFpq+yiO
支援

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:45:13.61 ID:QY9XHD6qO
いあいあ

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:47:21.46 ID:R7IAZqOBO
尚も食い下がる僕に、モナー氏は本当に申し訳なさそうに一言、

( ´∀`)「ジョルジュ君を連れて行けないのでしたら、
       誠に残念なのですが、Ms.ワーズワースの同行は許可できませんモナ」

( ^ω^)「――ッ」

そう言われてしまっては、僕は諦めて青年を受け入れるしかない。
何せ彼女が居なければ、探索者らはみんな確実に死ぬのだから。

( ´∀`)「……モナ、それでは他のメンバーにもあなた方を紹介しましょう、ついて来てくださいモナ」

険悪な空気が場に蔓延する前に、モナー氏は話題を変えて表情を明るくする。
感情の切り替えが早い。とても僕には真似できそうになかった。
押し黙る僕に、モナー氏は謝罪の言葉を述べて、青年と一緒にテントから出て行った。

(*゚ー゚)「不愉快な見世物だったわ」

二人が居なくなるなり、しぃは開口一番に呟いた。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:49:09.10 ID:QY9XHD6qO
モナーは丸め込みを85%ほど取っているわけですね

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:49:38.58 ID:R7IAZqOBO
顔こそ笑っているが、しぃの発言が嘘でない事は分かる。
何処の誰が、今の僕とモナー氏の不毛なやりとりを見て喜ぶというのか。

( ^ω^)「すまなかったお」

僕が謝ると、しぃは気にしてないとだけ言って肩を竦めた。

(*゚ー゚)「あ、でも一つだけ面白い部分があったわね」

わざとらしく手をポンと叩き、思い出した振りをするしぃ。
ひねくれた感性を持ったこの娘が言う『面白い部分』が、僕にとっても面白いなんて保証はない。
というか絶対に面白くない自信がある。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:50:14.46 ID:6u1yornk0
待ってた
支援

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:52:38.13 ID:R7IAZqOBO
だが、しぃはごく稀に僕の予想を良い意味で裏切ってくれる。
先日の一年ぶりの電話なんかもそうだ
それ以前にも、何度か予想の範疇を超えた驚くべき奇跡を見せてくれた。
今回も、もしかしたら? そんな期待に好奇心をくすぐられる。
…………どれ、ちょっと聞いてみるとしよう。

( ^ω^)「どの部分だお?」

(*゚ー゚)「ほら、あなたが言った『未来ある若者を〜』って台詞よ。あれは面白かったわ」

期待が呆気なく裏切られたあげく、予期していなかった攻撃を受けた。
僕は、しぃが僕の古傷を狙っていると理解し、とどめを刺されないうちにテントから出る算段を立てた。

(*゚ー゚)「若者を嫌悪してるナイトウ博士から、そんな言葉が聞けるなんてびっくりよ。
     私とナイトウが始めて出会った時なんて、あなた私に――」

薄い膜を一枚潜っただけで、悪魔の囁きは吹き荒ぶ風に遮られて聞こえなくなった。
僕は追撃を恐れ、モナー氏と青年が待つ別のテントへと避難した。
好奇心、猫を殺すか。
昔の人は上手い事を言ったものだ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:55:01.30 ID:QY9XHD6qO
支援

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:56:22.66 ID:R7IAZqOBO


場所は変わって、先程までのテントとは別のテントに僕は居た。
嬉しい事に、このテントにはコンパクトストーブなる物が置いてあり、内部は母親の胎内のように暖かい。
人類の素晴らしい発明品に深く感激して、僕は人知れず涙を流した。

現在このテントの中には、僕を含めて六人の人間が居る。

( ´∀`)
モナー・アイリッシュ。今回の仕事の依頼人だ。
昔は機関投資家の長で、現在は『単なる』米国屈指の資産家。
機関投資家やら米国屈指がどうとか言われても、
一般人以上に経済と世情に疎い僕には、モナー氏がどれほどの人物なのか解らなかった。
ここに来る前に調べた所によると、現役時代のモナー氏の活躍は、業界では伝説になっているほど凄かったんだとか。
引退した今でも、氏は様々な企業の相談役として頼られ続けているという話だ。

そんな大富豪から僕が受け取る手筈になっている報酬は当然の如く法外な額で、
既に口座に振り込まれている前金だけでも、僕の今までの貯えを軽々と上回っていた。
金持ちという生き物は基本的にあまり好きではないが、氏は羽振りだけでなく人柄も良く、
僕のイメージする金持ち像とはズレているので、僕も気兼ねなく接する事ができている。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 00:59:28.66 ID:R7IAZqOBO
  _
( ゚∀゚)
ジョルジュ・ウィリアムズ。
UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)に通う大学生だ。
モナー氏の友人の息子で、そのコネを利用してこの探索についてきたらしい。

聞いてもいないのに、自分が名門校の在学生で、しかも首席だという事を明かしてきた辺りから想像するに、
青年がこの探索に来たがった理由は、恐らく彼がこういったイベントに参加した事実を、
自身のスティタスとして自慢したがる類の人間だからだろう。

はっきり言って、このガキは気に食わない。
僕が若者の事を嫌っているという事実を差し引いたとしても、
この青年の言動には、度し難い点が山ほどある。
まあ、我慢できないほど酷いという訳でもないので、ここは堪えるとしよう。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:02:35.02 ID:R7IAZqOBO
(´・ω・`) ( ^Д^) (゚、゚トソン
そして彼らが残りの三人。
左から順に、ショボン・フリーマン、
プギャー・ハミルトン、
トソン・オックスフォード。

三人とも現役時代のモナー氏の部下で、僕と同じ遺跡探索のためのメンバーだ。
彼ら三人とジョルジュは、僕達よりも二日も早くここに到着して、テントを張ってからずっと待機していたらしい。

垂れた眉毛が特徴的な優男のMr.フリーマン。
カンに障る笑みを、絶えず顔に浮かべているアホ面のMr.ハミルトン。
しぃ以外での唯一の女性隊員で、知的で優しい雰囲気を纏ったMs.オックスフォード。

全員、モナー氏が信頼に値すると判断した人物なのだが、
僕は出会ったばかりの人間をおいそれと信じられるほど、幸福な人生を送ってはいない。
が、ここは別にうたぐり深くなる場面ではない。
これから一緒に探索をしようという仲間達との関係を、空気の読めない行動を取って悪くするつもりはない。
ここで必要なのは信頼する事であり、疑う事ではないのだ。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:03:59.28 ID:R7IAZqOBO
しかし、どんな時でも空気の読めない人間は存在するものだ。
今この場にいない、我が友人のシーキャットがそれに該当してしまった。
テントでの自己紹介が終わるやいなや、
あの娘にしては珍しく不機嫌な顔付きを隠そうともせずに、外へ出ていってしまったのだ。
直後にテント内は言いようのない空気に包まれてしまったのだが、
そんな事よりも僕は、しぃの態度のせいで、ますます不安になっていた。

というのも、普段は笑顔の仮面を被り、ひたすらに本心を覆い隠している彼女が、
素直に感情を表に出すのはかなり稀な事で、
そんな異常事態にお目にかかったのは、僕が記憶している限りでは、やはりあの三年前の事件の時だけだったのだ。
あの時は不機嫌な顔付き、なんてかわいらしいものでは済まなかったのだが。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:07:06.26 ID:R7IAZqOBO
(゚、゚トソン「彼女、随分と苛立っていたようですが、どうしたのでしょうか?」

ふとMs.オックスフォードが、心配そうに呟いた。
眉を寄せて表情を暗くしたMs.オックスフォードを悩ませる原因は、この僕が後で責任を持って処理するとしよう。
今は彼女の心に立ち込める暗雲を、一刻も早く晴らしてあげるべきだ。
そう思ったが、奥手の僕の口からは、気の利いた台詞が魔法のようにポンと出る事はない。
相も変わらず、この手の行動に臆病な自分に落胆する。

( ^Д^)「もしかしたらよぉ」

僕がろくにフォローも入れれずに沈黙していると、Mr.ハミルトンが口を開いた。

( ^Д^)「あの娘、あの日がきてるんじゃねぇか? イライラしてる感じだったしよ」

この発言は、あらゆる側面から見ても、最低なものだったと断言できる。
その証拠に、全員が無神経のプギャー・ハミルトンに軽蔑の眼差しを向けていた。
当の本人は素知らぬ顔で大欠伸をしている。
どうやら彼には、デリカシーのかけらもないようだ。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:09:41.75 ID:QY9XHD6qO
支援

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:10:29.91 ID:R7IAZqOBO
(´・ω・`)「この豚野郎、てめえはいっぺん死んどけ」

優男のショボン・フリーマンが、その人畜無害な見た目にはおよそ似つかわしくない刺々しい口調で、
頭の中身が空っぽな馬鹿を罵倒した。

(#^Д^)「おい、口には気をつけろよショボン」

(´・ω・`)「それはこっちの台詞だ、セクハラ発言を控えろ。さもねえとぶち殺すぞ」

なにやら不穏な空気が漂い始めた。
僕は居心地が悪くなる感覚を覚えたが、
それよりもコイツらは本当に大丈夫なのかと、不安で不安でしょうがなかった。
  _
( ゚∀゚)「おいまたかよ! 喧嘩は外でやれよオッサンども!」

(゚、゚トソン「全く、困った二人ですね……」

しかも、ジョルジュとMs.オックスフォードの様子から察するに、
どうやらこの二人は頻繁に衝突しているらしかった。
いきり立つショボンとプギャーは、さしずめ犬猿の仲といった所か。
こんなにも育ちの悪そうな連中と、二日も一緒だったMs.オックスフォードには同情を禁じ得ない。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:11:24.94 ID:NXLOme1RO
支援

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:11:53.39 ID:R7IAZqOBO
この後、モナー氏が巧みに二人をなだめて落ち着かせ、喧嘩を仲裁した。
渋々といった感じで大人しくなった二人だったが、その瞳の奥にはメラメラと怒りの炎が燃えていた。
反省の色は微塵も見られない。

こういった一件があったおかげで、僕は彼らの人となりを漠然と把握できた訳だが、
その成果といえば、ショボンとプギャーの両名は、この仕事以降は二度と係わり合いになりたくない人種だという、
とうてい有意義だとは思えない、くだらない情報だけだった。

閑話はさておき、僕達はこれからの行動についての打ち合わせを始めた。
打ち合わせと言っても、それほどややこしい作戦などを立てるわけではない。
ここで決めることは、実際に遺跡の探索に赴くメンバーを選出する事と、
持ってきた各種装備の確認と点検、及びそれらの装備を誰が使うのかとか、その程度の事だ。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:13:43.49 ID:kimb7TxDO
支援支援

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:14:52.39 ID:R7IAZqOBO
まずは探索部隊と地上待機部隊との割り振りだが、これを決めるにあたって些細な問題が浮上した。
誰がどっちの部隊に入りたいのか聞いてみた所、全員が探索部隊を希望してきたのだ。
野次馬根性が強そうなプギャーとショボンはともかく、
Ms.オックスフォードが遺跡に興味を示していたのは、僕にとっては以外な事実だった。
僕はてっきり、彼女はモナー氏の部下という立場上、仕方がなく南極まで来ていると踏んでいたのだが、
どうやらそれはまるっきり検討外れの考えだったらしい。

聞くところによると、そもそもトソン・オックスフォードという女性は、
イギリスの某考古学グループに所属する、知る人ぞ知る生粋の考古学オタクなのだという。
開かずの扉に拒まれたモナー氏も、最初は知り合いの中でも、最もその分野に長けた彼女に知恵を借りようとしたらしい。

だがMs.オックスフォードは、モナー氏からちょっと話を聞いただけで、それが自分の手に余る事件だと判断した。
そして彼女は、ある人物なら扉を開ける事が出来るかもと、モナー氏に進言したのである。
そのある人物というのが、ちょうどシカゴの自宅で一人寂しく暮らしていた僕だったという話だ。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:18:08.02 ID:R7IAZqOBO
彼女のような美しい女性が、僕みたいなろくでもない男の事を記憶していて、
あまつさえその腕を買ってくれているという現実は、僕には過ぎたる幸福と言えよう。

ささやかな幸せは、また後でじっくりと噛み締めるとして、
僕としては僕と同類の考古学の徒であるMs.オックスフォードには、是非とも探索に同行していただいて、
南極の地下に眠る秘められし文明をともに語り合いたかった。

なにより、強い好奇心と考古学への熱意を兼ね備えている(らしい)彼女をここまで連れて来ておきながら、
古代文明の片鱗も見せずに地上に取り残すのは誠に忍びない。
という理由で、僕は偽善とちょっとした下心をもって、彼女を探索隊のメンバーに推薦したのである。

この時点で探索組と待機組は決定したようなものだった。
リーダーのモナー氏と鍵である僕は、はなっから行く事が決まっていた。
それぞれの付添人である、しぃとウィリアムズ青年も同上である。
そこにトソン・オックスフォードを加えた五名が探索組。
余りのショボン・フリーマンとプギャー・ハミルトンとが待機組となった。

多少妥協しなくてはいけない点があるものの、僕としては満足のいく采配だったように思う。
口々に不満の声を漏らす約二名を黙らせて、続いて装備の点検を行った。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:20:45.12 ID:R7IAZqOBO
( ´∀`)「懐中電灯は人数分あるモナ? 予備の電池の用意は?」

(゚、゚トソン「ちょっと待ってください、えーっと…………はい、大丈夫ですね」

( ^ω^)「非常食はやっぱりビスケットですかお」

(゚、゚トソン「そうなりますね、腹持ちが良いですし手軽に食べられますから。あ、カメラは誰が持ちますか?」

( ^ω^)「僕がカメラマンを努めましょう、ってこれは……」

(゚、゚トソン「? どうかしましたか?」

( ^ω^)「いや、その、こういうカメラはあまり使った事がないので」
  _
( ゚∀゚)「デジカメも使えないとか、アンタまるで化石みたいな人だな。いいか、これはこうやって使う」

(#^ω^)「いいおいいお、面倒だからカメラマンは君がやればいいお」
  _
( ゚∀゚)「何怒ってんだ?」

(;´∀`)「……」

(゚、゚;トソン「そ、そうでした、あと連絡用の無線機も……」

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:22:52.49 ID:R7IAZqOBO
 ・
 ・
 ・

( ^ω^)「……ふぅ」

打ち合わせも一段落付き、僕は外の新鮮な空気を吸うためにテントから出た。
冷風どころか凍風と言って差し支えない風を全身に浴びて、反射的に顔をしかめたが、
一度、意識しながら深呼吸をしてみて、ここの空気が驚くほど澄んでいる事に気が付いた。

景色も環境も抜群に良い。
おまけに僕の知的好奇心を満たしてくれる遺跡まで存在している。
南極も意外と悪い所じゃないのかも知れないな。
でも寒いのは御免だけれど。
それと、奥深くに人に害を為す何かが居るのも嫌だ。枕を高くして眠れない。
前言撤回だ、やっぱり南極なんてろくな所じゃない。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:23:14.40 ID:QY9XHD6qO
ブーンひねくれ杉ww

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:24:25.85 ID:R7IAZqOBO

( ^ω^)「さてと、お姫様は何処に行ったんだお」

いつまでもしぃに臍を曲げられていては、あまり気分が良くない。
彼女の機嫌が悪い理由は、僕にとっては単純明解なもので、
されども一般人には常識の埒外なものなのだ。
そして、理由を知っていても知らなくとも、それがマイナスにしかならない事は明白で、
よって僕は、僕の精神衛生上の都合により、彼女のご機嫌取りをしなくてはと、唐突に思い立ったのである。

肝心の標的の所在は皆目見当もつかなかったが、ふと耳を澄ましてみれば、
テントの影、ちょうど僕の居る位置から死角になる場所から、なにやら楽しそうな彼女の笑い声が聞こえてきた。

( ^ω^)「そっちかお?」

笑い声に誘われ、ふらりとそちらに足を運んでみれば、そこにはお目当ての少女と馬鹿二人が居た。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:27:22.37 ID:R7IAZqOBO
しぃとショボンとプギャーが、仲良く簡易テーブルを囲んで世間話をしていた。
ショボンとプギャーはいつの間にかテントから消えていたが、こんな所で油を売っていたのか。
しぃは、ちょっと前とは打って変わって、とても少女らしい顔付きで談笑している。
どうやら機嫌は直ったようだ。

ふむ、ショボンとプギャーのような直情タイプは馬鹿で陽気だと相場が決まっているが、成る程、
今回は彼らの陽気な部分が良い方向に作用したのかもしれない。

しぃもこうして見れば、ごく普通の女の子にしか見えない。
けれども彼女を普通という枠に納めるのは、困難かつ不可能だろう。
その表現が過言でないほどに、彼女の内面は、僕達とは掛け離れていて狂ってしまっている。

時折僕は、そんな不憫な少女を力強く抱きしめてあげたくなる。
それは決して変態特有のいかがわしい感情ではなく、言わば父親が愛娘を抱っこするような感覚に近い。
独り身の僕が言うのも、実に滑稽極まりない話だが。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:29:50.13 ID:R7IAZqOBO
しかし残念な事に、僕が彼女を抱きしめるという、口に出すのも恥ずかしいささやかな目標の達成は、
未来永劫有り得ないと断言しても良い。
まず彼女自身が嫌がるだろうし、第一そんな事をすれば、
彼女を慕っているミスカトニックの女学生共に何をされるか解ったもんじゃないからだ。
特にあの黒髪の糞ガキ……パセリだかアセリとかいう名前の娘が煩そうだ。

(*゚ー゚)「あら、ナイトウじゃない。そんな所で突っ立って考え事?」

( ^ω^)「お」

(*゚ー゚)「暇ならこっちに混ざって、お話しましょう」

思考があらぬ方向に脱線している間に、しぃは距離を取って彼女らを観察していた僕を見付けてしまったようだ。
もう少し、我が子を見守る父親の気持ちを味わっていたかったが致し方ない。

( ^ω^)「良いお」

僕は短く答えて、人の暖かみを肌で受け止められそうな小さな輪に身を投じた。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:31:38.82 ID:R7IAZqOBO
それから小一時間ほど、場所と寒さを忘れて、四人で井戸端会議のように盛り上がった。
話のタネはもっぱら例の遺跡に関する事だったが、基本的に各々が遺跡について好き勝手な推測を口にするだけで、
特に目新しい情報や、驚愕に値する発見は一切出てこなかった。

僕は、みんなが僕の土俵に上がってきたので、いつもよりかなり饒舌になっていたと思う。
プギャーは僕の話を右から左へと流しながら、合間を縫っては僕としぃの関係をしつこく追求してきた。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:31:45.19 ID:YrEYlhYzO
面白い
携帯厨にしてはやるな

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:33:47.96 ID:R7IAZqOBO
ショボンはプギャーと反対に中々熱心な男で、
途中で話が南極の遺跡から逸れて、僕が昔インスマスという田舎町の跡地から発掘した不気味な彫像と、
かつてインスマスに住んでいたとされる、インスマス面と呼ばれる奇怪な風貌の住民達の話に変わっていたが、
それでも興味深げに一連の情報から感じた、彼独自の意見を出して、僕を楽しませてくれた。
彼がプギャーの挙動に、度を越えた律儀さで暴力的なツッコミを入れているのも、
馴れてくれば喧嘩というよりも、まるで漫才のようで面白い。

この時点での僕のショボンとプギャーに対する評価は、しぃの機嫌を戻してくれた事も勘定に踏まえて、
馬鹿で低脳な犬猿の仲から、頻繁に喧嘩する仲の良い兄弟くらいのポジションまで上がっていた。
常に本音で接してくれる彼らは、普段は会話の駆け引きによる腹の読み合いばかりしている僕からすれば、
些か物足りない印象を受けたが、その楽しさを馬鹿にする事だけはできなかった。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:37:19.59 ID:R7IAZqOBO
歳不相応な会話しかしようとしない、ひねくれた小娘のシーキャットは、
僕と彼女との関係について、ある事ない事をプギャーに吹き込もうと画策したり、
ショボンのインスマスに関する意見を、予想外の角度からばっさりと切り捨てて、
その上で彼女本人は、考古学の権威である僕に対する挑戦としかとれない、荒唐無稽な推理を披露して、
僕達を困惑の渦中に引きずり込もうと躍起になっていた。


空を見上げれば、日が僅かに傾き、透き通るような蒼穹がほのかに赤みを帯びていた。
それは、夜の訪れと、探索が明日に持ち越しになるだろう事を暗示している。
楽しみをお預けにされるのは愉快ではないが、
極地の危険な夜道を、遺跡のあるクレバスに向けて車を走らせるよりは断然賢明だと言えよう。

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:39:55.51 ID:QY9XHD6qO
支援

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:40:02.64 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「それじゃあ、僕はこの辺で……」

(*゚ー゚)「あら、お喋りはもうおしまい?」

( ^ω^)「ちょっとモナーさんに確認したい事ができたお。
       恐らく今日は暇になるだろうから、続きはまた後で――」

(゚、゚トソン「只今、モナー様は仮眠を取っておられますが」

(;^ω^)「お?」

背中からMs.オックスフォードの麗しい御声。
振り返れば、目と鼻の先にMs.オックスフォードが居て、僕は動揺して掛けていた椅子から滑り落ちた。

(;^ω^)「あいたたた……」

(゚、゚;トソン「も、申し訳ありません。驚かすつもりはなかったのですが」

(´・ω・`)「大丈夫ですか、博士?」

ショボンの手助けでなんとか立ち上がったが、大袈裟に驚いてしまった事による気恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:46:24.45 ID:R7IAZqOBO
書き溜めは以上です、ここよりながら投下。
その前に小休憩です。

できればこの間に、なにか意見があったら聞いておきたいのですが
「地の文が多い」とか「展開もうちょっと早くしろ」とか

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:49:33.30 ID:QY9XHD6qO
>>59
もうちょっと展開早い方が嬉しいかも

作品全体の長さにもよるけど

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:49:55.43 ID:a6WxbI6o0
地の文多いけど読みやすいから気にならない

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 01:59:55.64 ID:R7IAZqOBO
やっぱり展開がちょっと牛歩気味でしたかね
文の読みやすさで褒められるのは、結構照れます。自信がないだけに

あと、12月末と今週に立っていた感想スレで感想書いてくださった方々、ありがとうございます
かなり励みになったって事実を、この場を借りてお礼申し上げます

休憩終わり

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:04:13.48 ID:X42PaF2TO
個性と言われたらそれで終わるんだが、少々厚い
台詞に出来るところは台詞にした方がいい希ガス

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:09:42.24 ID:R7IAZqOBO
( ^ω^)「ああ、いや、僕は大丈夫ですお。それよりもモナーさんは寝てしまいましたか」

七十を過ぎているのに一日にあれだけ動けば、疲労の溜まり具合も半端ではないだろう。
モナー氏も、老後くらいは安楽椅子にでも座って、ゆっくりとして居れば良いのに。

(゚、゚トソン「はい、それで言伝があるのですが、遺跡の探索は明日以降になりますとの事です」

( ^ω^)「ちょうど僕も、その事について尋ねようとしていた所ですお」

(゚、゚トソン「まあ、そうでしたか」

手間が省けて良かった。
これでまた直ぐにでも、安穏とした世間話に興じる事ができる。
そう思った矢先、僕の腹が地に響くような唸り声を上げた。

(゚、゚トソン「えっと、……そろそろ食事にした方が良いみたいですね」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:14:43.88 ID:mNimOyqYO
うおっ 

今俺が1番好きな現行きてた

支援

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:20:13.06 ID:AH/981m+O
なんか古典劇みたいでいいなこれ。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:24:14.57 ID:R7IAZqOBO
( ^Д^)「お、ちょうど俺も腹減ってきた所なんだよ」

(´・ω・`)「トソン、僕達も準備を手伝うよ」

(゚、゚トソン「はい、お願いします。博士とシーキャットさんは――」

言いかけて、Ms.オックスフォードは言葉を詰まらせた。
その表情は何故か酷く困惑しており、視線は僕の背後に釘付けになっている。
訝しみ、僕は首を回して後ろ側を見た。
そこにはしぃが居た。

(*゚−゚)

ただし、又しても不機嫌な空気を、顔面と周囲の大気に散布した状態でだ。
どういう訳か、再び彼女は機嫌を損ねているようだった。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:34:29.45 ID:QY9XHD6qO
支援

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:40:47.24 ID:R7IAZqOBO
(*゚−゚)「私、今はまだお腹空いてないの」

(゚、゚;トソン「え、あ、そうですか」

(*゚−゚)「ええ、だから食事は後で結構よ。
     私は一人で時間を潰してるわ」

しぃの突然の態度の変わりように、僕が呆気に取られている間に、
彼女は自分の言いたい事だけを言って、さっさと何処かに消えてしまった。
後に残された僕達は、先程テントでしぃが、今と同じ事を仕出かした時と同様、
気まずいとしか表現しようのない、世にも微妙な沈黙に襲われていた。

( ^Д^)「これってよぉ」

やがて、プギャーが感慨深そうに口を開いた。

( ^Д^)「やっぱり、嫉妬って奴じゃないかと思うんだよ、俺は」

嫉妬だと?
何を意味の解らない事を言い出すんだ、コイツは。
あの娘が誰に対して、そんな乙女チックで女のドロドロした感情を抱くというのだ。
ああそうだ、こういう時こそショボンがツッコミを入れてくれなければ。出来るだけ強烈な奴を。

(´・ω・`)「まあ、確かに……状況証拠的に考えればね……」

しかし、ショボンは僕の希望とは正反対の言葉を口にした。

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:41:57.71 ID:QY9XHD6qO
なるほど

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:51:40.55 ID:8KoVM1YsO
しえ

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 02:57:04.97 ID:R7IAZqOBO
( ^Д^)「俺も、逐一観察してた訳じゃねえけどよ、
      今のはどう見ても、トソンが来てから機嫌が悪くなってただろ」

(´・ω・`)「そうだね、僕にもそう見えた」

( ^Д^)「だろ? そしてそこから導き出される答えは一つだ」

(*´・ω・`)「ジェラシー」(^Д^*)

つまりこの糞馬鹿二人は、こう言いたい訳だ。
シーキャットが機嫌を損ねた原因は、この僕にあると。
しぃが、僕とMs.オックスフォードが、何でもない業務連絡をしていたのを見て、
この世の中で最も恐れられる、女性特有のあの黒々とした暗黒の、どす黒い漆黒のそれを発現させたのだと。
全くもって、笑えないジョークだ。

( ^ω^)「全くもって、笑えないジョークだお」

( ^Д^)「んもう、博士のニブチン!」

(´・ω・`)「そんなんじゃ嫌われちゃいますよ!」

煩い黙れ死ね。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 03:12:44.82 ID:ZokEykqFO


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 03:14:34.15 ID:R7IAZqOBO
(゚、゚;トソン「あの、本当に私のせいなのでしょうか?」

( ^ω^)「いえ、それは絶対に有り得ませんお。僕が保証しましょう」

馬鹿の妄言に惑わされるMs.オックスフォードを宥め、僕はとりあえず思考を纏める。
プギャーとショボンはやっぱり馬鹿だった。救いようのない馬鹿だ。
僕には、馬鹿な人間に構ってやるような時間はない。

僕にとって大切なものは、無益な人間関係などではなく、有益な人間関係なのだ。
そして今、僕に益をもたらす大事な人間が、気分を害して一人で居るのだ。
ならば成すべき事は一つだろう。
あの状態の彼女と話すのは、できれば避けたいのだが、そうする他ない。

( ^ω^)「……しぃの事は僕に任せて、あなた達は食事の準備をしといてくださいお」

( ^Д^)「そうだな、きっとそれがいいだろうよ」

(´・ω・`)「ああ、同感だな。さあトソン、後は博士に任せておこう」

(゚、゚トソン「はあ……」

妙な所で意気がピッタリな馬鹿に半ば引きずられながら、Ms.オックスフォードはこの場を後にした。
僕はそれとは反対方向に足を進める。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 03:16:59.65 ID:QY9XHD6qO
支援

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 03:31:59.75 ID:R7IAZqOBO
どこまでも続く白い世界。
永遠の死が横たわる不毛の大地の傍らで、しぃは遠方に連なる恐ろしい南極の山脈を眺めていた。
見るもの圧倒する未知の大山脈。
彼女は、あの山脈を見て、一体どんな感情を抱いているのだろうか。

( ^ω^)「しぃ」

近付く事さえ憚りのある小さな背中に、僕は怖ず怖ずと声を投げ掛けた。

(*゚−゚)「何かしら?」

振り向いた彼女はやはり無表情で、もしかしたらもう機嫌が直っているのかも、といった僕の甘えた考えは、
一瞬で粉々に打ち砕かれた。

( ^ω^)「君の機嫌を直しにきたんだけどね、邪魔だったかお?」

(*゚−゚)「邪魔ではないわよ、少し欝陶しいだけ」

( ^ω^)「そうかお」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 03:48:18.89 ID:R7IAZqOBO
僕は立ち尽くす彼女の隣に並んで、一緒になって山脈を眺めてみた。
しばしの静寂。
この数秒間、僕はしぃと同じ場所に立つ事によって、彼女の考えを読み取ろうと努力した。
しかし、僕とは住む世界が違うこの娘の考えなど僕に解る筈もなく、
結局、重苦しい沈黙に耐え切れなくなり、僕はしょうがなく手探りで会話をする事になった。

( ^ω^)「……君のそういう顔は久々に見るお」

(*゚−゚)「そう、私はあなたと会わなかった一年間、ずっとこんな感じだったわよ」

( ^ω^)「ああ、そうかお」

それは会えなくて良かった。

(*゚−゚)「私は耳が良すぎるから――あなたも知っているでしょう?
     私みたいに変に優れているとね、聞きたくないものまで聞こえてしまうのよ。
     げんに今だって嫌な音が聞こえる」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 04:01:44.68 ID:R7IAZqOBO
嫌な音。
そのフレーズをしぃから聞くのは、これで何度目になるだろう。
僕達が出会って間もない頃は、彼女はしきりにその言葉を呟いていた。
そう、この僕を指差して。何度も何度も。
それこそ嫌というほどに。

だが今は違う。
僕は彼女に認められ、二度とあの嫌味たらしい陰険な仕種で、
僕の事を罵らないと約束させた。
今現在、特異な体質を持つ彼女を悩ませる原因は、僕などではなく、
南極の遺跡に潜んでいるだろう、奴らの眷属なのだ。

( ^ω^)「そう、遺跡だお……あの遺跡の奥底にこそ、君の心を煩わせる原因が」

(*゚−゚)「遺跡? ああ、違うわよナイトウ、その考えは酷く耳障り」

( ^ω^)「は?」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 04:02:21.89 ID:xy69hd2KO
支援

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 04:17:08.53 ID:R7IAZqOBO
僕は二週間以上もの間、モナー氏が見つけた遺跡には、三年前の事件に関わったあの恐ろしい者達――、
ミスカトニックの連中が『反逆者』と呼び、シーキャットが『不良品』と呼称する、
旧き神に反旗を翻した、名状しがたき古しえの崇拝者達の生き残りがいるのだと思っていた。
だがその考えは、たった今シーキャットに否定された。

(*゚−゚)「この南極の地下に居るのは、そんなチンケな虫ではないわ」

(;^ω^)「チンケな虫……?」

彼女は顔色一つ変える事なく、そう言った。
三年前に僕が死ぬ思いで戦った奴らの事を。
あれがチンケな虫ならば、ではこの分厚い氷の下には、一体どれほどの狂気が沈んでいるのだ。
そして、もし本当に、しぃの言う『不良品』がここにいないとするならば、
何故これほどまでに彼女は不機嫌なのだ。

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 04:18:38.75 ID:MmHa+gNWO
地の文長くするのはいいんだが、
もう少し上手くなってからじゃないと読みにくいだけだな

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 04:21:09.25 ID:EfFo/QHL0
なんか無理矢理難しい表現を使おうとしているのが目につくけど
もうちょっと素直に書いたらどうだろうと思わなくもない

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 04:39:15.70 ID:R7IAZqOBO
(*゚−゚)「そうだったわね……あなたは私ほど優れていないから、気が付けるわけがないわね」

しぃが、僕には解らない事を口走った。
いや、彼女の言葉を本当の意味で理解できた事など、僕には一度もない。
僕としぃとの距離なんて、結局の所、昔からちっともさっぱり縮まってなどいないのだ。

抱きしめる?
誰が誰を?
機嫌を直す?
誰が誰の?

自惚れるなよ。
彼女にとって僕の存在は、所詮少し居心地の良い他人程度でしかないのだ。
思い出せ。
僕にとっての彼女は、恐ろしい化け物の一端でしかなかった筈だ。

僕はやはり確実に、闇の世界に惹かれてしまっている。
だからこそ、危険だと予め知らされていた、この探索に出向いた。
だからこそ、狂気じみた性質を秘めた、この小娘との縁を切らずにいる。

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 05:06:54.07 ID:worBbMyVO
支援

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 05:08:00.42 ID:R7IAZqOBO
認めてしまえば、あとは楽なものだ。
僕は、僕を闇へと誘ってくれる有益な存在のご機嫌取りを諦め、
ぐうぐうと唸り始めた腹の音を鎮めるために、さっさとこの場を去ろうと決めた。

しぃに背を向け歩きだした僕に、冷たい風が音を立ててぶつかる。
その腹立たしい風に乗って、しぃの消え入りそうな、
されども低く脅すような恐ろしい声が聞こえてきた。



「嫌な音」



僕は振り返らなかった。
しぃがどんな表情で、どんな仕種で僕を見ているかを知りたくなかったから。

この南極の氷下には恐ろしい狂気が眠っている。
ただ、狂気なんてものは何処にでも眠っているもので、
それはシーキャットの中にも、僕の中にさえも眠っている。
そしていつでも最後に破滅するのは、Sanity(正気)を失い、狂気に堕ちた者だけなのだ。


Prologue.2『氷下に眠る狂気』 了

86 名前: ◆MBauHxncAc :2009/02/01(日) 05:18:38.00 ID:R7IAZqOBO
そんなわけで今回の投下は終わりです
無駄に長引いてしまってごめんなさい

今回指摘を受けた点については、自分もなんとなく思っていた所ですね。
普段文章書かない書いた小説なんて、目の肥えた人からしたら不快なものだったと思います。
ですから、次からはもっと上手く書けるように精進していきます。

言い訳はこのくらいにしておいて、もう誰もいないと思いますが、一応質問・意見等受け付けます。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 05:26:38.28 ID:R7IAZqOBO
何もない、というかもう誰もいないみたいなので、自分も消える事にします
それではまた一ヶ月後くらいに

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/01(日) 07:18:21.38 ID:Yg4dYP3PO



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