以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:34:57.72 ID:B/+gtiDx0<> 来てくれてありがとう。だが、見ての通り代理なんだ。
さぁ、それじゃスレ主が来るのを待とうか。 <>川 ゚ -゚)は探しているようです
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2008/12/15(月) 21:37:26.03 ID:pf3AXSgz0<> √√
川 ゚ー゚)
<< >>
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2008/12/15(月) 21:38:03.47 ID:070lbe620<> 待ってたぜ <>
afo ◆2z7bKNbsWo <><>2008/12/15(月) 21:39:10.38 ID:9EbHCLoc0<> こんばんは
>>2ワロタ
代理ありがとー!! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:40:08.98 ID:9EbHCLoc0<>
気づけば私は目を開けていた。真っ暗で、ただっ広い場所で。
波の音が聞こえる。
船体に寄せた波が砕け、重い響きが室内に反響する。
潮の匂いがする。
川 ゚ -゚)は探しているようです 第二話
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:40:45.32 ID:siHgqvUV0<> 何気なく気になってたんだ支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:43:01.53 ID:9EbHCLoc0<> 一.
川 ゚ -゚)(…夜?)
気絶から覚めたクーは、ふるふるとかぶりを振って、あたりを見回した。
真っ黒な空間。
波の音と潮の匂い。ゆらゆらと揺れている、木製の床。
川 ゚ -゚)(ここは?
船の中だろうか? なぜ私はこんなところに…)
ずきん、と頭が痛む。
慣れ親しんだ暴力による痛みとは、また違った性質のもののようだ。
川 ゚ -゚)(なんだ、この痛みは…?)
痛みの原因について考えたところで、クーの記憶が、閃くようによみがえった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:45:58.70 ID:kKJsxI5xO<> wktk <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:46:00.24 ID:9EbHCLoc0<>
不思議なことに、記憶がよみがえって最初にクーの脳裏に意識された映像は、
最後に見たあのハインの、あきらめにも似た、シニカルな笑い顔だっだ。
川 ゚ -゚)(そうか、私はフサとかいう海兵に攫われて、どこかに連れて行かれたのだったな。
ふむ、とすると、ここは私の全く知らない場所なのか…)
周りには誰もいないようだ。
川 ゚ -゚)(私は、攫われた…)
木張りの船底に座り込み、クーは頭の中を整理してみた。
これから自分がとるべき行動を見定めるため、クーは状況を冷静に分析しようと、考えをめぐらせた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:49:52.33 ID:vEKO2br70<> きたー!支援する <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:52:15.41 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)(ここは海の上だな。波の反響の具合から考えるに、私がいま居る場所は、大きな船の船底だろう。
そして、あのフサとかいう海兵に攫われたんだから、この船は軍艦だろう)
あらためて周りを見渡してみた。
漆黒の闇かと思われたこの場所も、目が慣れるにしたがって、わずかばかりの光がどこかから漏れ注いでいるのが判る。
そのおかげで、クーは自分の眼が開かれていることを、かろうじて認識できるのだった。
川 ゚ -゚)(船底…。つまり私は、監禁されているのだな。
軍船の乗組員が、女を攫って船底に監禁する。以上の状況を考えれば、フサが私を攫った目的は明らかだ。
となれば、身体の無事を望むのならば、私がいま取るべき行動も、明らかだ。
すなわち、脱走……。フサの支配領域を脱し、安全な場所へと逃れる…)
クーは床に手をついて立ち上がった。
縛られていた手首が、ずきんと痛む。
川 ゚ -゚)(ん…?)
クーは暗闇の中、自分の手首に手をやり、それを縛る縄が既に無いことを知る。
川 ゚ -゚)(攫われたにしては、私は手錠も鎖もされていないのか。
たかが女一人、縛めておく必要も無いということか?
…舐められたもんだ)
クーは顔を上げて、船倉中央にぼんやりと見える、上へと向かう階段のほうに向かって足を踏み出した。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:55:54.24 ID:P88AfVt+0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:56:21.49 ID:siHgqvUV0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:56:42.65 ID:9EbHCLoc0<>
その時だった。
「どこへ行くの?」
暗闇からとつぜん声がした。
ここには誰もいないと思っていたクーはおどろいて、全身をびくりと震わせて、声のしたほうを振り返った。
真っ暗な船倉の隅に、ぼんやりと人影が浮かび上がってきた。
壁を背に、両足を抱えて座り込んでいるようだ。
(#゚;;-゚)「あなた、どこへ行こうとしてるの?」
人影はクーにもう一度同じ問いを投げかけてきた。
若い女の声だった。
クーとその人物は、広い船倉の暗闇を通して、しばらくの間、向かい合っていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 21:59:19.51 ID:9EbHCLoc0<>
クーは無言のまま踵を返し、壁際の人物に背を向け、階段へと向かおうとする。
(#゚;;-゚)「…逃げるつもり? この船底から」
クーは足を止める。
そして、声を出す準備作業に、いつものように二、三度軽くせきばらいをした。
川 ゚ -゚)「手錠もされず、縛られもせず。
これでは逃げようと考えないほうがおかしいじゃないか」
がらがら声で舌をもつれさせながら、クーは早口に喋った。
川 ゚ -゚)「まったく船の連中は何を考えているんだ。攫ってきた女を、縛りもせずに放っておくなんて」
でぃは置物の人形のように姿勢を変えない。
ただクーのほうを見るともなしにぼんやりと眺めながら、生気の無い声で喋り始めた。
(#゚;;-゚)「あなた、見たところ、まだ子供ね、可哀想に。
あなたも騙されるか攫われるかして、ここに来たんでしょう?
でも残念ね。あなたはもう、ここからは逃げられないわ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:02:49.13 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)「…どういうことだ」
(#゚;;-゚)「仮にこの船底を抜け出して、運よく誰にも見つからずに、甲板まで上がったとしましょう。
でも、それからあなたは、どこへ行くつもり?」
川 ゚ -゚)「む」
(#゚;;-゚)「あなたは気を失っていたたから知らないでしょうけど、この船は港を出てから、もう三日も外洋を航海してるのよ。
ここは海の上。私達に与えられた陸地は、船の板の上だけなの。
たとえ甲板に上がろうと、船室に隠れようと、この船の中には私達の居場所なんてどこにもない。
どこにいっても同じこと。私達を襲って慰み者にしようとする、荒れくれ水夫どもがいるだけよ」
クーは喋るでぃの姿をじっと観察した。
ぼろ、といっていいような服を、肩からかけただけの姿。
川 ゚ -゚)「おい。お前は何者だ?」
(#゚;;-゚)「私? 私はでぃ。あなたは?」
川 ゚ -゚)「…クー」
(#゚;;-゚)「クー。そう」
しばしの沈黙の後、クーはでぃのほうに足を進め、暗闇にも慣れてきた眼でその姿を眺めた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:03:35.22 ID:vEKO2br70<> しえn <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:05:45.27 ID:9EbHCLoc0<>
でぃが何も語らずとも、クーはおおよそのところを理解した。
このでぃという女がなぜここにいて、そして、この船の中でどういう立場にいて、
そして、水夫たちにどういう扱いを受けているのかを。
細身で優雅な体つきのでぃ。
察するに、以前はきっと美しい女だったに違いない。
だが今では、その美貌の面影は、もはやどこにも残されてはいなかった。
顔は殴られて腫れ、眼は栄養不足と不衛生な環境のために落ちくぼみ、唇の端が切れ、ねじれて変形している。
ぐしゃぐしゃの髪で隠した左の耳の端は、乱暴に噛み付かれでもしたのか、半月状に欠損しているようだ。
(#゚;;-゚)「船の連中、私で遊ぶのに飽きたのね。だから新しい玩具としてあなたを攫ったんだ、きっと」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:07:26.61 ID:PfQSVaQAO<> キタキタキター!!
支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:08:00.25 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)「…この船は、一体何なんだ?」
(#゚;;-゚)「軍船よ。ニューソク帝国のね」
川 ゚ -゚)「なに? 海軍の軍船なのか」
クーは意外そうに言った。
川 ゚ -゚)「それはおかしい。
100年前の海賊時代ならともかく、いまではニューソク海軍は正規軍としての編成がなされ、
こんな人攫いまがいの女の連れ出し方など、しないと思うのだが…」
暗闇の中で、でぃがふふっと笑った。
(#゚;;-゚)「懲罰船、って知ってる?」
川 ゚ -゚)「懲罰船…」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:10:11.63 ID:9EbHCLoc0<>
(#゚;;-゚)「規律違反を犯した水兵や、手のつけられない暴れ者ばかりを寄せ集めて、一隻のボロ船に乗せるの。
ようするに海軍の中における、体のいい刑務所。それが、懲罰船よ」
川 ゚ -゚)「なるほどな…。この船が、そうか」
(#゚;;-゚)「そう。この船に乗り組んでる連中は、人間の心なんて持っていない。みんな獣と同じなの。
だから、逃げようなんて考えないことね。
もうだめなの。ここにつれてこられた時点で、あなたはもう、どうしようもないの」
ただ淡々と、でぃは語った。
その声は川を流れていく水のように淡く、か細く、何の感情もこもっていないものだった。
怒りはもちろん、悲しみでさえも、ここでは何の役にもたたないものなのだ。
言葉の合間に、そう、でぃは語っているようだった。
(#゚;;-゚)「言っておくけど、彼らにお願いをしたり、取引をしたりしようとするのは、全くの無駄な努力よ。
何をしても、何を言っても、ここでは無駄。
あなたはもうここから出られない。あなたの意向は、ここでは一切尊重されない。
あなたはもう、生涯、太陽の光を浴びることはないの」
あきらめきった口調で語り続けるでぃを、クーは冷たい目をして、黙って見つめ続けていた。
でぃが口を閉じてしまうと、長い沈黙が、二人を支配した。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:10:22.52 ID:9HyjReIg0<> ktkr支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:13:10.46 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)「…それでお前は、いままでの時間を、この船底で無駄に過ごしてきたってわけか」
(#゚;;-゚)「え」
クーはでぃの前を離れた。
ふたたび踵を返し、中央の階段に向かって、一歩一歩、足を進める。
闇の中ででぃが立ち上がる気配がした。
(#゚;;-゚)「無茶よ。これだけ言っても判らないの?
あなたには武器もないし、上には無数の屈強な男達がいる。
この懲罰船には60人近くの戦士と、たくさんの水夫が乗り込んでるのよ」
クーは振り返ることもせずに歩み続けた。
(#゚;;-゚)「クー… 本当に、あなた本当に逃げる気なの?
あいつらに逆らったりしたら、それこそすぐにその場で殺されるのよ?
人殺しなんて、なんとも思っちゃいない奴らなんだから」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:16:49.86 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)「ふん」
クーは階段にたどり着いた。
最後に、顔だけをわずかにでぃのほうに向けて、言った。
川 ゚ -゚)「でぃ、哀れな女。お前は一生ここにいろ。
おまえにはこの船倉がお似合いだ。
自分の不幸を、いつまでも自分の環境のせいにしながら、神と運命を呪って生き続けろ」
(#゚;;-゚)「クー!」
でぃは一声叫ぶ。
その声を背にして、クーは階段を駆け上がり、船底を出て行った。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:17:26.03 ID:P88AfVt+0<> 期待支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:19:01.49 ID:9EbHCLoc0<> ニ.
川 ゚ -゚)(逆らったら殺される、だと?)
さっきのでぃの言葉を思い出し、クーは思わず笑いがこみ上げる。
川 ゚ -゚)(これは滑稽だ。あいつはあんな船倉にぶち込まれて、毎夜毎夜水兵たちの慰み物にされながらも、
それでもまだ、「自分は生きている」などと言いたいのだろうか)
クーは船底から続く長い階段を駆け上がる。
川 ゚ -゚)(私は違うぞ。
逃げてやる。私はこんなところから逃げてやる。
もし逃げられないなら、それもいい。私に縄を打っておかなかったことを、ここの水夫どもに後悔させてやる。
殺してやる。今となっては、目に付くやつは誰であれ、私の敵だ。敵は殺す)
ぎり、と噛み締めた奥歯が鳴った。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:19:37.67 ID:9HyjReIg0<> しえ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:21:06.50 ID:9EbHCLoc0<>
クーは船の構造についてはよく知っていた。
売春宿にくる客のほとんどが海の男たちだったからだ。
いろんな種類の水夫が、クーの勤めていた売春宿を訪れていた。
帆を担当する者、砲を担当する者、操舵手、海兵、そしてときには尉官など……
彼らは酔っ払うときまって船の話をした。
「ったく掌帆長のバカがよお。あいつはあの海域の風のことをまるでわかっちゃいねえんだ。
そのくせ船足が遅いのを全部俺達のせいにしやがってよお…」
「貴族のぼっちゃん士官のバカだけはどうしようもないんだ。火薬庫までの通路は狭くて細いってのに、
あいつらはこないだ、砲撃戦闘の真っ最中に、通路に立ちふさがって俺達にあれやこれやと口出ししてやがったんだぜ」
「トップの見張り台には風除けをつけろって、俺は何回、意見具申したかわからねえ。だが上のやつらは聞く耳持たない。
あいつら、自分が見張りに立つわけじゃないと思って、俺達が寒いのはお構いなしなのさ」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:23:03.30 ID:9EbHCLoc0<>
だからクーは、この船の内部構造についても、ある程度のことは推測できた。
川 ゚ -゚)(このサイズの船は、ニ階建ての建物と同じ構造になっている。
つまり、私の最初にいた船底を一階とすれば、次の船室層が二階、そしてその上が屋上、つまり甲板だ)
クーが駆け上がっている階段は、アッパーデッキと呼ばれる船室層に通じている。
川 ゚ -゚)(アッパーデッキは通常、居住区と倉庫に使われる。ハンモックには休憩中の船員が何人かいることだろう。
最初に出あった海兵を殺して、そいつの武器を奪い取ろう)
階段の上を塞いでいた板切れを跳ね除けて、クーはアッパーデッキへと飛び出した。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:25:04.50 ID:9HyjReIg0<> なんというメタルギア <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:25:58.39 ID:9EbHCLoc0<>
あるいは階段を上りきったところに見張りの一人や二人でもいるかと思っていたが、
予想に反し、踊り場には一人の人影もなく、がらんとしている。
川 ゚ -゚)(…?)
クーは広い階段室を出て、手当たり次第に見つけたドアをあけまくり、船の乗組員の姿を求めた。
ある部屋にはたくさんのハンモックが垂れ下がっていた。
ある部屋には大量の樽と鋳鉄製の砲丸が並べられていた。
ある部屋には吊るされた豚肉が揺れており、ある部屋には大きな木箱がいくつも積み上げられていた。
だが、アッパーデッキ船室内のどの場所、どの部屋にも、水兵たちの姿は見当たらなかった。
川 ゚ -゚)(どういうことだ。なぜ、誰も居ない)
がらんとして静寂を保つ階段室に戻り、クーは足を止めて、考える。
川 ゚ -゚)(仮にも私は誘拐されたのだぞ。
逃げ出さないよう、見張りの一人や二人くらいは置くはずだと思うんだが…)
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:28:03.49 ID:9EbHCLoc0<>
突如、クーは倒れた。
船が無茶苦茶に震えた。
轟音が、船室内の空間を完全に埋めて、クーの無防備な耳をつんざく。
クーの痩せた体が、木の床にしたたかに打ちつけられる。
と同時に船が大きく傾き、クーの体はごろごろと床の上を転がり、壁に激突する。
川 ゚ -゚)(な、なん…)
ぼう、という耳鳴り以外には何も聞こえない状態で、それでもクーは跳ね起きた。
やや遠い場所から、同じような轟音が断続的に響いている。
耳は聞こえないが、体に低周波の震えを感じる。
川 ゚ -゚)(…これは!)
軍船。外洋航海中。そして突然の轟音と、船の傾き。
初めて聞く音だったが、クーはその轟音の意味を悟った。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:28:24.87 ID:vEKO2br70<> dkdk <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:30:52.52 ID:9HyjReIg0<> dkdk <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:33:47.03 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)(砲撃!)
船が、搭載していた大砲を撃ったのだろう。
船が傾いたのは、舷側砲を片舷一斉に射撃したからだ。
川 ゚ -゚)(そうか、水上では、戦いが始まったのだ。この船は海軍の軍艦だと言っていたな。
船室内に人がいないのは、乗組員全員が戦闘配置についているからだ、と考えられる。
ならば…)
この船が軍船なら、水夫達の注意は、戦闘のほうに向いているはずだ。
川 ゚ -゚)(私にとっては、今がチャンスだ。
甲板上に出て、間抜けな水兵たちの隙をついて、海に飛び込んで逃げてやる)
不意の砲撃音でやられていた聴力が徐々に回復してきた。
砲撃はそこかしこで始まっているようだ。
近くで、また遠くで、雷鳴のように腹に響く轟音がしている。
クーの真上の木の板がどかどかという足音を響かせる。
アッパーデッキのすぐ上は、船の甲板だ。通路にでもなっているのだろう。
「海兵は左舷に退避! 砲手、第二撃用意!!」
くぐもった号令の声が聞こえてくる。甲板の上では、指揮官が声を張り上げているのだろうか。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:36:07.42 ID:9EbHCLoc0<>
クーは階段室に戻ると、上に続く階段をさらに駆け上がった。
この上は甲板。つまり、太陽の降り注ぐ外の世界である。
暗闇の中に四角く切り取られた光があった。
クーの向かう先、階段の端から、眩しい光が容赦なく射込まれてくる。
数十段ある階段をクーは一気に駆け上がった。
階段を上りきり、甲板に出た。
潮の香りが強くクーの鼻腔をくすぐった。
あたり一面を光が満たす、外の世界だ。
クーは目を細めて手をかざし、上から降り注ぐ陽光をさえぎった。
闇に慣れたクーの目には、さすがにあまりに眩しかったのだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:37:00.49 ID:ETkaNIZnO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:37:59.41 ID:kKJsxI5xO<> ヨーロッパ好きだな。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:38:46.03 ID:9EbHCLoc0<> 三.
クーが飛び出した場所は、高く高く、天に向けて聳え立つメインマストの、真下に位置する階段だった。
一面に広がる薄紫色の砲煙と、立ち込める硝煙の香りは、砲撃戦がすでに始まっていることを示していた。
そしてクーが甲板に出て最初に目にしたものは、
目や鼻の粘膜を刺激する煙を吸い込み激しく咳き込んでいる、ギコや、その部下の不良少年たちの姿だった。
(,,゚Д゚)「あっ、おま…!」
階段にいちばん近いところにいたギコは、涙を浮かべながらも、クーの姿を目に捉えた。
あわてて手に持った武器らしいものを構えようとしている。
川 ゚ -゚)(!)
クーはとっさに階段の最上段を蹴って飛び、ギコに襲い掛かった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:42:10.64 ID:9EbHCLoc0<>
クーの動きについていけず、左腕で顔面をカバーするギコ。
クーはその上から容赦なく拳を打ち込んだ。
子供にしては体格に優れたギコも、文字通り全身の体重が乗ったクーの強烈な打撃により、
甲板の上に叩き伏せられてしまう。
ギコが持っていた武器が甲板上に落ち、くるくると回りながら舷側側に滑っていく。
クーは倒れたギコの上にそのまま着地し、馬乗りになる。
そしてさらにギコの顔を殴りつけようと拳を振り上げる。
(,,゚Д゚)「やっ、やめ…」
ギコはクーに組み敷かれながら、両手を鼻の前で交差させ、顔を守ろうとする。
その両手から、じゃらり、と重々しい金属音がした。
川 ゚ -゚)(…ん?)
そこではじめてクーは気がついた。
ギコの両手には、手鎖がはめられている。
クーは振り上げていた拳を止め、あらためてギコの両手を縛り付けている、黒い鉄の手錠を眺めやった。
それからふと思い当たり、ぐるりとあたりを見渡して、まわりにいる少年達の姿を見渡した。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:44:26.25 ID:9EbHCLoc0<>
異様な光景だった。
十人ほどいた不良少年達はみな、その足首に黒光りする鉄の輪をはめていた。
そしてその鉄の輪につながれた鎖は、太い太いメインマストに、ぐるぐると結び付けられている。
全員が武器を持ってはいるが、それは刃が欠けていたり、刀身に錆が浮いていたりする粗末なものばかり。
しかもすべてが大人用のサイズだったので、十歳前後の少年たちでは、持ち上げるのがやっとといったふうに見える。
少年達のなかに見知った顔があった。
いつかの夜、街を行くクーに絡んできた少年の一人だった。
目が合うと、少年は悲痛な響きの声で、クーに話しかけてきた。
「た、助けてくれ、蝙蝠!!」
両目を見開き、背丈ほどもある錆だらけの長剣を両手で捧げ持ちながら、少年は必死に訴えかけてきた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:46:30.76 ID:P88AfVt+0<> 面白くなってまいりました <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:47:28.07 ID:9EbHCLoc0<>
クーはぴんときた。
川 ゚ -゚)(そうか。懲罰船の連中は、この少年たちも無理矢理に誘拐してきて、ここで戦闘に参加させるつもりなのだな)
海上の戦いとは、離れた船の間で大砲を撃ち合うだけで終わるものではない。
この当時は、海戦といっても、最終的には接近した敵船に乗り移り、剣や槍や鉄砲や弓矢で渡り合うのが通常だった。
それは戦う場所が海の上であったというだけで、本質的には陸上での戦いと変わるところはない。
ゆえにこの頃の軍船には、船を動かす水夫たちのほかに、剣や槍を手に戦闘を行う海兵が必ず乗り組んでいた。
川 ゚ -゚)(少年達を鎖で縛りつけ逃げられないようにして、敵がこの船に斬り込んできたときには、
防衛用の白兵戦力として使うつもりか)
そして、わずか2メートルほどの鎖の長さしか与えられていないということは、
川 ゚ -゚)(少年達全員を、この場所に縛りつけ、船倉へと向かう階段の守備兵として使うつもりなのだろう。
もちろん、いつ死んでも全く惜しくない捨て駒として…)
敵艦から白兵戦要員が乗り込んできたとき、略奪目的の敵兵は、きっと船室に入ろうとする。
そんな敵兵たちから船室を「守らせる」つもりのようだ。
逃げられないように鎖で縛られ、粗末な武器だけを持たされて。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:51:59.51 ID:9EbHCLoc0<>
はるか上のほうから口笛が聞こえた。
クーは音のしたほうを向く。
メインマストの見張り台に登った見張り要員の水兵が、クーたちを指差して、何事かを叫んでいる。
川 ゚ -゚)(…私の脱走が見つかったか?)
「蝙蝠! 俺達を逃がしてくれ!」
「た、助けてくれ蝙蝠、頼む!!」
少年たちは泣きながら口々に哀願している。
クーは少年の一人に向き直り、つかつかと歩み寄る。
思わず身を引いたその少年の持つブロードソードに、クーは手をかけて、力任せに奪い取る。
川 ゚ -゚)(こいつら、鎖は叩けば切れるってことを、知らないのかな?)
幅広な刃を振り上げて、少年の足首から伸びている鎖の上に、思い切り振り下ろした。
がちん。
鎖の輪のひとつから、何粒かの火花が飛ぶ。
クーは何度もそれを繰り返した。
がちん。がちん。
何度目かの挑戦にして、鎖の一つが、ぱちん、という音を立てて、はじけて飛んだ。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:55:08.53 ID:9EbHCLoc0<>
クーはつぎつぎに刃物を振り上げ、少年たちを縛っていた鎖を切断していく。
解放された少年は、自分の足を持ち上げたりして、縛られていない足が自由に動く感覚を堪能していた。
クーはそんな少年達に怒鳴りかける。
川 ゚ -゚)「バカ野郎! ぼさっとしてるんじゃねえ! お前らもほかのやつの鎖を斬れ!! 全員を解放するんだ!」
「は、はい!」
がらがら声で怒鳴りつけられた少年は、はじかれたように直立し、
それから手に持っていたカトラスで手近な鎖をたたき始める。
十人ほどの少年たちはつぎつぎと解放されていった。
クーは最後に、倒れていたギコに駆け寄っていき、足をつなぐ鎖を斬り、転がっていた長剣を手渡した。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:57:20.41 ID:9EbHCLoc0<>
砲撃の音は間断なく響いている。
海上にはいくつもの弾着の水柱が、船の背丈をゆうに越える高さまで上がっている。
クーの乗る船の周りには他にもたくさんの艦船があるようた。
みな船尾にニューソク国旗をはためかせ、水飛沫を立てながら全速で戦闘航行を続けている。
メインマスト上の見張り台の水兵が口笛を鳴らし続けている。
大人たちの怒鳴り声が聞こえる。
「そこだ、ガキどもだ!」
「なにっ鎖を!?」
砲声の合間を縫って、どやどやと騒がしい怒鳴り声が近づいてくるのがわかる。
(,,゚Д゚)「…何のつもりだ、クー?」
立ち上がり服の埃を払い、血の混じった唾を甲板に吐いて、ギコは言った。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:58:01.10 ID:mryLCFfR0<> 超支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:58:54.19 ID:9EbHCLoc0<>
川 ゚ -゚)「一緒に戦え、ギコ」
クーは言って、少年たちのほうに向き直った。
川 ゚ -゚)「おまえら聞け!!
おまえらの中で、いますぐこの船の上で死にたいやつはいるか?!」
がらがら声を張り上げて、クーは渾身の声で少年たちに怒鳴りかけた。
風切り音と砲撃の残響が騒がしい船上で、少年たちは黙って、クーの言葉の続きを待った。
川 ゚ -゚)「いないか? いないんだな!! おまえら全員、生きてこの場を脱出したいんだな?!
ならば戦え! 船員どもと戦って、あいつらを皆殺しにするんだ!
いいか、それが私達が生き延びることができる、唯一の手段だぞ!」
間近で、大人たちの怒鳴り声がした。
「いたぞ、あそこだ! 船倉入り口階段のあたりだ!」
「ふざけやがってガキども!!」
通路の角から、十数人の武装した海兵が姿をあらわした。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 22:59:10.10 ID:oKXnvb12O<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:03:59.81 ID:vEKO2br70<> クーのキャラがわからなくなってきたけど、面白い支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:04:08.15 ID:9EbHCLoc0<>
クーはブロードソードの切っ先をまっすぐに海兵たちに向け、叫び声を上げると、
まっすぐに海兵たちに向かって、剣を振り上げ、駆け出した。
少年たちは戸惑い、指示をあおぐようにギコのほうを見る。
(,,゚Д゚)「…クソッ! もう、やるしかねえよ…!」
ギコがはき捨てるように小さく言い、クーの後ろを追って駆けていく。
それをきっかけにして、少年たちもひとかたまりになって、武器を振り上げて、海兵たちに向かって走り出す。
「なんだこのガキども…やる気か!」「上等だァ!!」
水兵たちも口々に叫び、手に持った抜き身のカトラスを煌かせて、クーたちのほうに向かってくる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:06:42.36 ID:9EbHCLoc0<>
一人の髭面の大男が、水兵たちの先頭に立ち、カトラスを振り回して突撃を指示している。
兜で顔を覆っていたので判りにくかったが、クーはその男の体形に見覚えがあった。
ミ,,゚Д゚彡「おーいおまえら、その女だけは傷をつけずに捕まえろよ!
港をでてからこっち、ずっと警戒配置だったから、まだその女は頂いてねえんだ!」
ひときわ響くダミ声で叫ぶ男。
フサだ。
「了解!」「へへへ、わかってまさあ、班長!」
水兵たちがにやにやと笑いながら、向かってくるクーを待ちうけ、武器を構える。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:08:46.61 ID:9EbHCLoc0<>
ギコも、声を聞いて、先頭の大男がフサであると判った。
(,,゚Д゚)「あっフサか!! …てめえ!!」
ギコは白い歯を剥いた。
自分の腕より長い長剣をふりかぶって、まっすぐに駆け寄っていく。
ミ,,゚Д゚彡「ああん?」
フサは自分のほうに向かってくるギコを見て、兜の下の唇をにやりと上げて笑う。
カトラスを水平に構えて、ギコと対峙する。
(,,゚Д゚)「てめえ、先輩ヅラして俺達を騙しやがって! てめえだけは許せねえ!
…死ねっ!!」
ギコは駆け寄ったときの勢いのまま、まっすぐに剣を振り下ろし、フサに斬りかかった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:09:43.75 ID:P88AfVt+0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:10:16.61 ID:9HyjReIg0<> ギコ〜! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:12:10.65 ID:9EbHCLoc0<>
いっぽうのクー。
大人たちの待ち構える眼前まで駆けた後、突然、持っていたブロードソードを振りかぶり、
水兵たちの群れの中に投げこんだ。
「わっ!」
ぶんぶんと円を描いて飛んでくる剣を避けるため、水兵たちの目線が、注意が、一瞬そちらに向いた。
「あれ…?」
次の瞬間、クーは消えていた。
あっと言う間もあったかどうか。
クーは一人の水兵に真上から降りかかり、まっすぐに伸ばした足で頭を蹴り抜いた。
弓なりの姿勢のまま頭を甲板に打ち付ける水兵。
その手から転がったカトラスを素早く拾い上げ、クーは別の水兵に向かって後ろから飛び掛る。
「わ、わ、わ」
大人たちがクーに気を取られている間に、少年たちの群れが、手に手に鈍重な武器を持って、前から襲い掛かってくる。
水兵たちは算を失い、攻撃意欲も削がれ、ただ少年達の攻撃を防ぐばかりの展開となっていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:14:21.99 ID:9EbHCLoc0<>
いっぽうのギコ。
打ち下ろした長剣は、フサに簡単にかわされてしまう。
(,,゚Д゚)「わ、わっとっと」
そしてギコは、その少年の体には不相応な大きさと重さの長剣に引きずられ、バランスを崩す。
前のめりに二、三歩たたらを踏んだギコを、フサは鼻息と同時に前蹴りで思い切り蹴り飛ばした。
(,, Д )「がっ!」
軽々と宙を舞い、吹き飛ばされたギコ。
その体はメインマストにたたきつけられ、それからずるずる、と甲板上に崩れ落ちた。
フサはそんなギコにすばやく飛び掛り、ギコの喉元に手を伸ばし、服を絞り、喉を絞める。
(,,゚Д゚)「ギギギ… フ、フサ… てめえッ…」
ミ,,゚Д゚彡「ギコてめえ、誰に向かって口を聞いてるつもりだ!!
先輩に向かってフサたあ何だ!!!」
素早く三つばかり、ぼかりと音がした。
フサがギコの頬を拳で連打したのだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:15:54.08 ID:9EbHCLoc0<>
(,,゚Д゚)「ぐ、が!」
ギコは唇の端から血を流し、ぎりぎりと首元を絞められながら、それでも、強い瞳でフサの目をじっと睨みつけている。
フサも力強い目で、ギコの視線をまっすぐに受け止めた。
フサはギコの首を容赦なく絞め続けた。
(,,゚Д゚)「く…そ……」
目が充血し、口角に泡の浮き始めたギコを見て、フサはまたにやりと笑うと、言った。
ミ,,゚Д゚彡「俺を呼び捨てにしたかったら、俺より強くなれよ。ギコ」
雷鳴のような砲声がまたどこかで起こって、甲板上に残響音が轟いた。
マストに当たる風切り音は鳴り続けていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:17:12.00 ID:siHgqvUV0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:17:34.93 ID:B/+gtiDx0<> しえん <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:19:04.29 ID:9EbHCLoc0<>
見張り台から、またもや口笛の音がした。
今度はさっきまでとは違う音色の口笛だった。
フサははっと顔を挙げ、船の進行方向に目を向ける。
「ちょ、ちょっとタンマ!」
少年達と戦っていた水兵たちも、左手を前に突き出して「待て」の姿勢をして、みんなで船首方向を眺めやっている。
大人たちが、にわかにあせり始めた。
川 ゚ -゚)「は? 何をふざけた…」
見張り台から小銃の射撃音がした。
船尾楼や船首方向からも、マスケット銃の発射音が聞こえてくる。
フサが、締めていたギコを放り出して、あわてた様子で立ち上がった。
ミ,,゚Д゚彡「お、おい、こうしちゃいられねえ! 船首に集合だ野郎ども!!」
「へ、へいっ!」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:24:08.22 ID:9EbHCLoc0<>
海兵たちはいっせいにクー達に背を向けて、通路を船首側へと駆け出していく。
川 ゚ -゚)「おい! 海兵ども、逃げるのか!?」
クーの声にフサが振り返り、言った。
ミ,,゚Д゚彡「ばかやろう、お前らの相手なんざもうしてらんねえよ! 敵船が目と鼻の先にまで迫ってるんだ!!
そうだ、お前らもついて来て俺達と一緒に戦え! すぐに斬り込み戦が始まるぞ!」
川 ゚ -゚)「…はぁ?」
ミ,,゚Д゚彡「いいかおまえら、今回の敵はブラゲ帝国の艦隊なんだ。外国船だぞ。
あいつらからしたら俺達もお前らも、同じニューソク人なんだ。
ブラゲとニューソクは仇敵同士だ。船に乗り込んでくるブラゲ人どもは必ず皆殺しにしろ。
さもなくば、俺達がやつらに皆殺しにされるんだ!! わかったか、わかったら急げ!!」
フサは船首方向に駆けて行った。
水兵たちもクーに背を向け、フサの後を追っていく。
フサの言うことはよく理解できなかったが、クーもとりあえず、武器を手に水兵たちの後を追った。
少年たちもみなクーの後ろをついていった。
激しく咳き込んでいるギコだけが、その場に残された。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:26:05.79 ID:kKJsxI5xO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:30:44.37 ID:9EbHCLoc0<> 四.
太陽が頭上高くあった。快晴で雲ひとつない。
何隻もの大型艦船が帆いっぱいに風をはらみ、砲弾と矢、銃弾が間断なく海上を飛び交い、
水面にはそこらじゅうに、船より高い水柱が立っている。
軍船の群れは、波を蹴立てて全速で進んでいた。
船首に向かうまでの間、クーは、この船に乗り組んでいる男たちが完全に臨戦態勢を取って、
白兵戦のときを今や遅しと待ち続けている姿を、そこかしこで眼にしていた。
帆の操作を行う水夫たちは棒や金属片などの思い思いの武器を手に、帆柱の下にひとまとまりになっている。
砲手は大砲のまわりにひかえ、小銃兵と石弓兵が舷側にずらりと並び、列を成す。
ミ,,゚Д゚彡「よーしここだ、ここに登れ、野郎共!!」
フサが足を止めて振り返り、大声で号令をかける。
船首中央に作られた船橋の上には、すでに数十名の海兵が待機していた。
フサの一隊20人ほどと、クーの率いる子供達10人ほどは、その海兵の群れに合流した形となる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:34:04.45 ID:xCq8RKjiO<> 試演 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:35:03.41 ID:9EbHCLoc0<>
クーは船橋に上り、あたりの海上をぐるりと見渡した。
甲板より少し高い位置にある船橋からは、周りにひしめく艦隊の全容が見える。
川 ゚ -゚)(味方ニューソク艦隊は15隻ほど、敵ブラゲ艦隊は10隻ほどか)
どうやらクーの乗る船がニューソク艦隊の先陣を切っているようだ。
懲罰船の後ろに二隻、その後ろには四隻、といったように、この船を先頭にして楔形の陣形を取っている。
いっぽうの敵は…と、クーは船の進行方向に目を向ける。
10隻ほどのブラゲ艦隊は、硝煙の薄い煙を隔てて500メートルほど向こうに、横一列に並んで船腹を見せている。
船尾にはためいているのは白、緑、黄のブラゲ帝国旗。
各艦ともにさかんに砲煙を吐き出し、迫り来るニューソク艦隊に猛烈な砲撃を加えている。
川 ゚ -゚)(待ち受けるブラゲ艦隊に、ニューソク艦隊が楔形で突っ込んでいく…といったところだな。
数の上ではこちらが勝っているから、突撃しての艦上白兵戦で一気に片を付けようとしているんだろう)
ニューソク艦隊はあいかわらずの進路、速度を保ったまま突っ込んでいく。
クーの乗る船を先頭に、だ。
みるみるうちに彼我の距離が縮まっていく。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:37:28.13 ID:9EbHCLoc0<>
彼我の距離が200メートルを切った頃、目の前のブラゲ艦隊に動きが生じた。
横一列に並んでいたものが、楔形陣形のニューソク艦隊に分断されるような形で、左右に分かれ始めたのだ。
ブラゲ艦の上に立つ敵兵士の白目が見え始めた段階で、フサの号令が響いた。
ミ,,゚Д゚彡「戦闘準備! 渡し板、用ー意!」
海兵「おーう!!」
居並ぶ海兵が野太い声をそろえて応答する。
懲罰船の船橋の上に、敵船に乗り移るための渡し板が林立した。
かくしてニューソク艦隊は、展開中のブラゲ艦隊の群れに突っ込んでいき、
戦闘の火蓋が切って落とされた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:39:52.44 ID:9EbHCLoc0<>
突入からほとんど間を置かず、両軍ともすぐに陣形は崩れ、
ぶつかった両国の艦隊は、渦巻きを思わせる乱戦となっていた。
どの船も敵船と横続きにつながり、両船の間に渡し板がかけられ、白兵戦が行われていた。
あらゆる船の甲板上には怒号が響き、剣や槍が太陽を受けて煌き、
小銃の銃声すらも、うねりのような男達の喚声と鉄の打ち合う音にかき消されるようだった。
なかでもクーの乗る懲罰船では激戦が繰り広げられていた。
陣形の先頭だったこともあり、一船だけで敵の三隻を相手にしていたため、船上は地獄さながらの様相を呈していた。
まわりをぐるりと取り囲んだブラゲ船から、つぎつぎと敵の海兵が乗り込んできて、
フサをはじめとした懲罰船の海兵たちは押され、攻撃どころではなく、防戦一方に追い込まれていった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:43:36.39 ID:0XdzWchUO<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:43:38.58 ID:siHgqvUV0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:43:47.39 ID:9EbHCLoc0<>
懲罰船上には幾多の白刃が舞い、血しぶきが甲板一面を覆っていた。
ミ,;゚Д゚彡「くそ…敵が多すぎる…!」
ブラゲ兵の連撃を防ぎながら、フサは配下の海兵が戦っている戦況にも気を配る。
鉄製の胸甲はすでに赤い返り血でべったりと汚れていた。
フサとその配下の海兵は右舷の敵と戦っていた。
クーはその大人たちに混じって、ブラゲ人の水兵相手に斬り合いをしていた。
右舷で戦うニューソク側の戦士は、少年達を数に入れても、せいぜいが30人ほど。
対するブラゲ側は、右舷から二隻ぶんの船舶の海兵がまるまる乗り込んできていたため、
ざっと見ただけでもこちらの三倍以上の人数がいるようだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:45:12.78 ID:9EbHCLoc0<>
クーは大人用のカトラスを捨てて、斃した敵が持っていた短剣を奪って使っていた。
背丈も体格も小さいクーには、短剣程度の大きさでぴったりのサイズだった。
「なんだ、ニューソクじゃこんなガキまで戦士に使ってるのかぁ!!」
大柄なブラゲ海兵が叫んで、半月刀を振りかざしクーに襲い掛かる。
クーはその刃の下を潜り抜けて、素早く敵の背後に回り、その無防備な背中を短剣で切りつける。
ブラゲ式の薄手の衣服が切り裂かれ、血しぶきの筋が一条、噴出した。
川 ゚ -゚)(…次!)
別のブラゲ海兵がクーに駆け寄り、まっすぐに槍を突き出してきた。
その穂先を、クーは高く跳ぶことによってかわし、そのまま空中から敵に向かって飛び掛かり、
相手の顔面、目のあたりに短剣を突き立てた。
「ぎゃあっ!」
裏返ったような甲高い声で男は悲鳴を上げる。
脳漿と眼球のついた刃を引き抜いて、クーは頭を巡らせ、さらに獲物を求める。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:47:06.14 ID:9EbHCLoc0<>
どれくらい白兵戦が続いていただろうか。
戦っている者にとっては、剣を振り回す時間というのは、永劫に続く間のようでいて、
それでいて全く時間の幅を持たないものであったりもする。
短剣を振るったクーの右頬に血飛沫が飛んでくる。
いっぽうで振り下ろされたブラゲ海兵のサーベルを、なれない手つきで長剣で受けるギコ。
その隣にいるフサが空いているほうの手で拳を振るい、接近したブラゲ兵を打ち倒す。
甲板上の海の戦士たちによる殺し合いは、いつ果てるとも知れず、続いていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:49:04.79 ID:9EbHCLoc0<> 五.
最初にその異変に気づいたのはフサだった。
もう何人目になるかわからない敵兵を斬り伏せた後、他の僚艦の戦況を見ようと、海上をぐるりと見渡したのだ。
ミ,,゚Д゚彡「…あれ?」
フサはとある違和感を覚え、目をぱちぱちとしばたかせる。
血のしたたるカトラスを右手に、荒い息を整えて、フサはもう一度、付近の海上を見渡してみる。
間違いない。
味方艦が、周囲に一隻もいない。
懲罰船の周囲を取り囲んでいるのは、みなブラゲ旗を掲げた、見慣れない大型船ばかりだ。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:50:41.70 ID:9EbHCLoc0<>
ミ,,゚Д゚彡「な、え…?!」
ばかな。
今回の作戦は、接敵後、斬り込み戦を行い、敵を殲滅する…というものではなかったのか?
まわりに一隻もニューソク船がいないとはどういうことだ?
全部、沈められた…?
いや、そんなことはないはずだ。
敵は小型のキャラベル船を中心にした十隻ほどの艦隊。
対するこちらは大型のガレオン船を中心にした十五隻ほど。
そう簡単に全部が沈められるなんてことはないはずだ。
ミ,,゚Д゚彡(ど、どこに行ったんだ、味方の船は?)
フサは僚艦の姿を求めて、きょろきょろと砲煙たなびく海上に目を走らせる。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:50:59.06 ID:Zzagrygv0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:52:05.74 ID:DbTpLJiu0<> 見捨てられたか……支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:52:09.51 ID:q3wa9QSZ0<> クーつええwwwwww支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:53:50.48 ID:9EbHCLoc0<>
すぐに味方艦隊の位置は見つかった。
戦闘海域から遠く離れた場所に、赤と青の特徴的なニューソク国旗がちらりと見えたのだ。
ミ,,゚Д゚彡(やべえ! 戦闘に気をとられてるうちに、俺達、味方からはぐれちまったのかな?
単艦で敵の真っ只中に取り残されちまってら)
懲罰船のまわりはぐるりとブラゲ帝国の船に取り囲まれてしまっている。
いまや敵の接舷攻撃は、離れていったニューソク艦隊主力ではなく、この懲罰船一隻に集中しているようだ。
ミ,,゚Д゚彡(まずいなあ…さっさと移動して味方艦隊に合流しなけりゃ、俺達だけでは到底こいつら全員の相手は…
……?)
ふと、フサの脳裏に、いやな予感が閃いた。
少し離れた場所に、船腹をこちらに向けて砲口を揃え、一列に並んでいる、味方ニューソク艦隊。
団子状に敵ブラゲの十隻が固まっているという、この現状。
ミ,,゚Д゚彡(…まさか)
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:53:57.28 ID:vEKO2br70<> >>78を最初に見たからクーが沈めたのかと思ったじゃないかw支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/15(月) 23:57:56.58 ID:9EbHCLoc0<>
フサの予感がはっきりとした形をとる前に、遠くに見えるニューソク艦隊の砲が、一斉に閃光を発した。
無数の砲丸が、ブラゲ艦隊と懲罰船に浴びせかけられた。
たちまちブラゲ船の横腹は裂け、帆柱は吹き飛ばされ、甲板には大穴が開く。
もちろん同じ場所に浮いている懲罰船も、ブラゲ艦隊と同じように、砲撃の被害を受けた。
ミズンスルの張り綱が切れて、長い綱が突然テンションを失った反動で鞭のようにしなりながら船上を飛び交い、
数人の海兵の体を吹き飛ばし、いくつもの装具を破壊した。
懲罰船の水兵たちは事態に気づき、口々に叫んだ。
「わーっ、おいバカ、砲撃をやめさせろ!!」
「俺達はまだここにいるんだ! 同じニューソク人だぞ!!」
だがそんな声が、遠くから砲撃を行っているニューソク艦隊に聞こえるはずもなく、
砲口をこちらに向けたガレオン船の一隊は、執拗に砲撃を続けている。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:01:05.13 ID:uL0DGbnz0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:01:28.01 ID:0GOpWXfR0<>
周りにいるいくつかのブラゲ船に火の手が上がっていた。
懲罰船の上にも砲弾が雨あられと降り注ぎ、白兵戦闘どころではなくなってきた。
上から降り注ぐ木屑や砲弾の破片を防ぐために手をかざしながら、クーはフサのところに駆け寄った。
そして、洋上はるかから鉄の雨を降らせ続けるニューソク艦隊を指差して、フサに詰め寄った。
川 ゚ -゚)「おいフサ! ど、どういうことだ、これは! あいつらは味方艦隊だろう!
なぜ我々に向かって砲撃してくるんだ!」
ミ,,゚Д゚彡「…くそっ、やられた」
川 ゚ -゚)「なに?」
ミ,,゚Д゚彡「司令部のやつら、俺達を騙しやがった。俺たち懲罰船には『斬り込み戦闘を行う』なんていっておいて、
実際は最初から砲撃戦で決着をつける手筈になっていたに違いねえ」
川 ゚ -゚)「なっ……」
ミ,,゚Д゚彡「懲罰船を敵の真っ只中に突っ込ませておいて敵をおびき寄せ、その隙に他の船は船足を止めることなく通過する。
そののち、ブラゲ船どもが一塊になったところで集中砲撃を加え、懲罰船もろとも沈めちまう…。
はじめからそういう作戦だったに違いねえよ」
フサは拳を握り、舷側の手すりを思い切り叩いた。
ミ,,゚Д゚彡「俺達はエサだったんだ。飢えた狼どもの中に投げ込まれた、一片の新鮮な肉だったんだ……」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:01:49.00 ID:2ytKITXgO<> しーえーんっ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:05:47.44 ID:0GOpWXfR0<>
ブラゲ艦隊は一気に浮き足立った。船を一箇所にまとめていては砲撃の格好の的である。
なので、どの船もこの虐殺の現場から遠ざかるべく、懲罰船から離れようとしていた。
哀れなのは、母船に見捨てられたブラゲ人の海兵たちだった。
「お、おい、どこへ行くんだ! なぜ渡し板を外すんだ!」
「待て、待ってくれ! 置いていかないでくれ!!」
自分の母船が懲罰船を離れて遠くへ去っていくのを、甲板の上から、なすすべもなく見守るブラゲ人たち。
もはや秩序も何もなかった。懲罰船に乗り移っていたブラゲ海兵たちは、先を争って逃げはじめていた。
母船がまだ近くにいる幸運な者は懲罰船の船べりからジャンプして、自国の船へと飛び移った。
それ以外の者は武器を捨て、海へと飛び込んだ。
小さな水柱がいくつも懲罰船の両側に立った。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:06:39.89 ID:ffG524OK0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:07:24.96 ID:FknOg5As0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:08:20.92 ID:0GOpWXfR0<>
戦いの喚声は、悲鳴に変わっていた。
母船から渡し板を外されて泣き叫ぶブラゲ兵。引き返す兵士と、押し寄せる兵士に揉まれ、押しつぶされていく者。
盾も胸甲もかなぐり捨ててがむしゃらに海を目指して甲板を走る者。
それら兵士たちの体を、絶え間なく飛び交う砲弾は容赦なく切り裂いていった。
13ポンドの鉄製の弾で貫かれた帆柱は倒れ、通路に居並ぶ兵士たちをなぎ倒した。
砲弾で破壊された鋳鉄製の重い船装具が、混雑した兵士たちの上から降り注ぎ、頭を割った。
それは、さきほどまでとはまた違った形での、地獄だった。
無数の人間の体が簡単に破壊されていく甲板の上の光景を、クーは船橋の上に立ち、眺めていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:13:44.66 ID:0GOpWXfR0<>
川 ゚ -゚)(これは、何だ)
スローモーションを見ているようだった。
現実離れした眼下の光景を眺めながら、クーは呟いた。
懲罰船の近くを砲丸が飛び去り、やや遅れて、空気を切り裂くような音が鼓膜を震わせる。
川 ゚ -゚)(人が死んでいる。
人間が、人間の手により、じつに効率的に、大量に殺されている)
フサが配下の海兵を纏め上げて何か指示を出している。
ニューソク軍の水夫と思しき男達が、帆柱を下りて、海に飛び込み始めている。
クーはそんなフサの姿に目を留めた。
川 ゚ -゚)(フサ。私とギコをだまし討ちにして、この船にまで攫ってきた男。
その男が、最後はその所属する海軍に、船ごとまるまる裏切られたってわけか)
そしてクーは、懲罰船から逃げ出そうとするブラゲ国の水兵たちに目を移した。
川 ゚ -゚)(あのブラゲ人の海兵たちは勇敢に戦った。敵船に真っ先に乗り移り、斬りこみを行った。
なのにどうだ。彼らの母艦は、自身の身が危ういと見るや、さっさと彼らを切り捨てて懲罰船の周りを離れ始めた。
哀れなブラゲ人水兵たち。彼らもまた、祖国に見捨てられ、裏切られたのだ)
一発の砲丸がクーのすぐ近くを飛んでいった。
風が巻き起こり、クーの長い黒髪が跳ね、なびいた。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:16:10.82 ID:0GOpWXfR0<>
(,,゚Д゚)「……いクー。おい。おーい!!
蝙蝠!!!」
自分を呼んでいる声に気づき、クーははっとして船橋の下を見た。
ギコが口に手を当てて、必死にクーに呼びかけている。
(,,゚Д゚)「おーい蝙蝠、何をぼさっとそんなとこに突っ立ってるんだ!
こ、この船は」
懲罰船の中央付近に一発の砲弾が炸裂し、甲板の板を吹き飛ばした。
大量の木屑と火の粉が舞い上がり、ギコやクー、頭を抱える海兵たちや少年たちの上に降り注いだ。
もうもうと立ち込める粉塵に咳き込みながら、ギコはなおも言い募る。
(,,゚Д゚)「この船はもうダメだぜ、蝙蝠ー! お前もさっさと逃げろー!
海だ、海に飛び込むんだー!!」
頭上のフォアセルに火がついたようだ。
キャンバスの焼ける焦げ臭い匂いが漂ってくる。
甲板には大穴が開き、アッパーデッキ船室がむき出しになっている。
付近に転がっていた何体かの死体がバラバラに潰されて、穴の周りに散乱している。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:17:13.41 ID:e6Aj5khcO<> 支援せざるをえない <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:17:58.86 ID:uL0DGbnz0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:18:00.77 ID:0GOpWXfR0<>
川 ゚ -゚)「…いや」
クーは船橋に立ち、下の甲板で叫ぶギコを見下ろしていた。
川 ゚ -゚)「そうだ、いいことを思いついた」
(,,゚Д゚)「…あー? 何か言ってるのか、蝙蝠ー! 聞こえないぞー!!」
ギコが上を向いて大声で叫びかけてくる。
クーは船橋をさらによじ登り、操舵台に上がった。
操舵員は既にいなかった。もうとっくに船から逃げて、海にでも飛び込んだんだろう。
クーは舵輪にとりつくと、それがまだ動くことを確かめて、がっしりと両手で掴んだ。
(,,゚Д゚)「?? 蝙蝠、何を…」
クーは全身の力を込めて舵輪を回す。
何度も何度もくるくると回して、船の向きを変えた。
舳先をぴったりと、ブラゲ艦隊旗艦の、ひときわ大きなガレオン船のほうに、向ける。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:18:14.51 ID:FknOg5As0<> 眠い…けど気になる <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:19:05.34 ID:GM3F5N54O<> やる気か? <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:19:19.02 ID:RXPN+CsL0<> これは <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:19:37.81 ID:ffG524OK0<> あぁん、もうっ支援!! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:20:24.34 ID:0GOpWXfR0<>
甲板からまた別の声が上がった。
ミ,,゚Д゚彡「だ、誰だ! バカヤロウ船の向きを変えるんじゃねえ!! そっちは…」
フサが船橋の下にいたギコの胸倉をつかみ、ゆさゆさと前後に揺さぶった。
(,,゚Д゚)「フサさん、俺じゃねえ、こ、蝙蝠の野郎が上で…舵を……」
ミ,,゚Д゚彡「なにっ」
フサは顔を上げて船橋の操舵台を見上げ、眺める。
降り注ぐ火の粉と黒煙の流れる中、クーが舵輪に取り付いて、船の向きを敵のガレオン船のほうに向けている。
フサは上を向き、叫んだ。
ミ,,゚Д゚彡「おーい! やめろ、舵を戻せ、蝙蝠!!
大型船には近づくな! ガレオンにはいったい何人の乗組員がいると思ってるんだ!
あんな大型艦とまともに斬りあったら、うち程度の人数じゃ到底太刀打ちできんぞ!!」
ブラゲ国の大型ガレオン船は風下にあった。
小さな懲罰船は、順風を受け、滑るように敵船のわき腹へと近づいていく。
ミ,,゚Д゚彡「おい、聞いてんのか!! いっとくけどな、ガレオンに体当たりなんかしても無駄だぞー。
いったい何をするつもりなんだ、蝙蝠ー!!」
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:22:53.66 ID:0GOpWXfR0<>
フォアスルの一部が焼け落ちた。
まだ火のついている大きな帆布が、クーの横に、ばさりと落ちてきた。
燃えているその切れ端を拾い上げ、手近な木の棒にくるくると巻きつけて、クーは大きな松明をひとつ、作った。
ガレオン船はすでに目と鼻の先の距離にあった。
クーはしっかりと敵船のほうを見据えながら、
手に持っていた松明を、操舵台の上から、甲板に開いていた大穴の中に投げ込んだ。
ミ,;゚Д゚彡「あっ!!」
フサの顔色が、さっと青くなった。
甲板の穴は船倉に通じている。
アッパーデッキの中央部付近は、どの船でもだいたいが倉庫として使われているものだ。
そしてそこには、軍船にとっての必需品、重要な物資を格納してあるのだ。
たとえば、大砲用の火薬とか。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2008/12/16(火) 00:23:57.99 ID:duLAoLma0<> wktk <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2008/12/16(火) 00:24:20.61 ID:9/U2yy8D0<> 支援を忘れて読み耽ってしまうな <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:25:30.87 ID:RXPN+CsL0<> くっそ今日は早く寝るつもりだったのに
支援しえん <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:27:07.80 ID:oVlup9grO<> しえん! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:27:10.04 ID:0GOpWXfR0<>
とっさにフサは持っていた剣を投げ捨て、甲板を蹴った。
弓なりの軌跡を描いて、フサの姿は海面へと吸い込まれるように落ちていく。
(,,゚Д゚)「あ、あ、あ…」
ギコは呆然として、操舵台の上のクーを見上げた。
笑っていた。
操舵台の上の少女は、長い黒髪を全速の風になびかせ、折れた舵輪を手に、口を大きく開けて、高らかに笑っていた。
風の音と砲弾の飛ぶ音、火の燃える音。
それらにかき消されてクーの声までは聞こえないものの、
硝煙の煙が漂う船上で、遠目に見えるクーの顔は、たしかに笑っていた。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:29:02.93 ID:PgKxPmRe0<> 面白いな、面白いわ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:29:13.23 ID:s1KnSF/HO<> 寝かせて支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:29:15.62 ID:uL0DGbnz0<> 支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:30:09.04 ID:0GOpWXfR0<>
地震のような衝撃が懲罰船を駆け抜けた。
ガレオン船の横腹に、懲罰船の船首が体当たりしたのだ。
木の裂ける音と、船胴を叩く鈍い音が、あたりに響き渡った。
(,,゚Д゚)「…わあ――――――っ!」
ぽかんと口をあけてクーを見守っていたギコは、ガレオン船との衝突のことをすっかり忘れてしまっていたため、
その衝撃で一気にバランスを崩し、甲板上から投げ出され、舷側を越えて海にまっさかさまに落ちていった。
細い叫び声の尾をたなびかせながら、ギコの姿が海面へと吸い込まれていく。
懲罰船の甲板の上にはもう動くものは残っていなかった。
ぴくりとも動かない死体と、焼け焦げた船体の破片と、戦士たちが捨てていった銀色の武器ばかりとなった船の中、
操舵台の上で高らかに笑うクーの目は、もはや何物の上にも焦点を結んではいなかった。
そして――
懲罰船の火薬庫で、爆発が起こった。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:31:20.84 ID:uL0DGbnz0<> 編集長支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:32:07.62 ID:0GOpWXfR0<> 六.
かもめが飛んでいた。
海がワインのような色に染まっていた。
斬り死にした戦士たちの血が海水と混ざり合い、海面を染め上げるのだ。
波の上下にあわせて、死体や焦げた木片などが、ぷかり、ぷかりと漂っている。
硝煙の匂いがいまだ濃い中を、何隻かのカッターボートが、海面を滑っている。
ボートの上では、救助された海兵が毛布に包まって、寒さでがたがたと震えている。
「あれ? おい、ちょっと…」
カッターを指揮する士官が、少し離れた海面を指差した。
水夫たちは指差された方向を注視する。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:32:08.98 ID:IGiIyzBYO<> クーかっけ〜 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:32:38.45 ID:FknOg5As0<> そういえばBNMの更新がさっぱりないな
支援 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:33:47.57 ID:0GOpWXfR0<>
それは奇妙な光景だった。
まんまるな船の舵輪に片腕を突っ込んで、一人の子供が、死体と船の破片の間を漂っていたのだ。
顔はよく見えない。
黒い長い髪が、海面に流され、広がっている。
「何だあれは?」
「女か?」
「いや、女だが、子供みたいだぞ…。なんで舵輪なんかに掴まって…
いや、そもそもなんでこんな戦場に子供が…」
艇の上の水夫たちは、口々に言い合う。
<>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:34:44.25 ID:s1KnSF/HO<> ギコ死んだか… <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:35:22.96 ID:P7KhxmVv0<> 今追いついた
数日前立てられたやつ落ちてたから気になってたんだ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:35:24.34 ID:0GOpWXfR0<>
「どうします? 拾います?」
櫂を操っていた船頭が、士官に聞いた。
立派な身なりをした士官は、帽子のぐあいをちょっと直してから、腕組みをして考える。
「うーん、軍人以外の救助は後回し、ってのが原則なんだがなあ…
まあいいか。ガキ一匹くらい拾ったところで、別に救助に支障はないだろ」
「ようそろ。んじゃ、拾っときますか」
漕ぎ手が腕に力をこめて櫂を動かし始める。
カッターは滑るように正確に進み、波間を漂うクーに近づいていく。
「よっ、と」
船頭が船べりから腕を伸ばして、クーのやせ細った体を、軽々と艇の上に抱き上げた。
第二話 ここまで――
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以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:36:16.84 ID:RXPN+CsL0<> 乙
あいかわらずのお手前で <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:36:40.98 ID:e6Aj5khcO<> 乙と言わざるをえない <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:37:06.28 ID:P7KhxmVv0<> おつでした <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:37:28.87 ID:2ytKITXgO<> ξ ゚听)ξおっつんつーん <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:37:38.41 ID:RmGWmVnaO<> お疲れ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:38:27.89 ID:uL0DGbnz0<> 乙 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:38:48.98 ID:s1KnSF/HO<> 乙と言わざるをえない <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:39:29.01 ID:sIDKtDGcO<> 乙です <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:39:57.22 ID:FknOg5As0<> 乙!!相変わらずいいとこで切るな〜 <>
afo ◆2z7bKNbsWo <><>2008/12/16(火) 00:40:35.91 ID:0GOpWXfR0<> 支援ありがとー!!!
なんかえらく長丁場になってしまってすまんことなのです
ひさしぶりだから感覚がわからんですよ
それではまたー <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:41:34.38 ID:IGiIyzBYO<> これからの展開にwktk <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:50:55.72 ID:ffG524OK0<> オツカレー(_´Д`)ノ~~
今回も楽しませていただいた!! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 00:52:13.02 ID:Cbw8jX5sO<> とりあえず乙!
よむほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 01:10:02.56 ID:WRI8hB/N0<> 乙!
仲間になったり敵になったりいそがしい連中だなw <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 01:28:26.54 ID:Cbw8jX5sO<> wktkwktkwktk
久々に燃えるブーン系に出会った。 <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 02:58:43.08 ID:GM3F5N54O<> 乙! <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<>sage<>2008/12/16(火) 05:51:42.61 ID:DAAuJPTbO<> ほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 09:03:42.26 ID:N8YSEYk9O<> ほ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 11:21:15.14 ID:CT9SfL7HO<> あたぁ <>
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします<><>2008/12/16(火) 12:56:46.94 ID:Is+oTYxfO<> あげ <>