◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:21:51.18 ID:bLG+B6IJ0<> 愚かな科学者が手に手を取り合い、危篤な開発が発展し続けた時代。
戦に使われるものだけが進化し、進化し、ひたすらに進化したその末。
例えば女性だけに感染する細菌。例えば小指程度の大きさをした爆弾。例えば人間の体を基に作られた殺戮兵器。
そんなものが「沢山」という単位では数えられない勢いで生み出された世界。
 
戦、戦を! 戦、戦を! 戦を、戦を、世界に戦を!
 
―――最早科学者は盲目の域にあった。戦は愛されるべき、最も尊重されるべきが当然。
しかしその時代の流れをことごとく無視し、ただ過ぎていく日々を各々の思うままに過ごそうとする者達が存在した。
科学者を含めた人民すべての自由が許されないこの時代に、彼らは戦場に赴こうとせず、武器すら持たなかった。

何故なら、彼らは。
「人民」である事を否定し、否定されたからだ。 <>( ^ω^)と無人の城のようです 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:22:16.69 ID:XfC4Clku0<> wkwk <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:23:45.86 ID:eB58wztb0<> wktk <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:24:14.89 ID:bLG+B6IJ0<> 第一話 ― 弦月の騒動、引き金たるそれは




( ^ω^)「おっお、やっとこ見えて来たお、おっおっおっ!」


月がぎらぎらと、赤みを帯びて輝く夜。

一人の青年が、ゆるりとした坂を軽やかな足取りで上ってゆく。
青年の進む道の先―――その丘の天辺には、ふもとの町の住人に「無人の城」と呼ばれる建物がある。
屋敷と呼ぶには豪奢すぎて、また大きすぎて、しかし城と呼ぶにしても少し飾り気が無い。
そんな外観の建物だ。

青年は歩くのを止め、先に見える城を遠目でじっと見つめる。
半分に欠けた赤い月を後ろに控えた城は、黒い影を増して大きな怪物のように見える。
タイミングを見計らったように聞こえて来るふくろうの鳴き声に、青年は身震いした。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:28:56.16 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「…立ち止まってちゃだめだお、僕。ぜんとようよう!」

すぐに顔をぷるぷると振ると、再び軽やかな足取りを取り戻す。
少し経つと、今度は両手を広げて「ブーン!」と声を上げ、雑草に覆われた道を走り出した。

目的地への距離は縮まり、比例して怪物のような城がより大きさを増してゆく。
青年は不安と小さな期待を胸に、誰もいない丘を走る。



事の始まりは、丁度その日の太陽が沈んだ時だった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:30:31.02 ID:b9fAtbFQO<> たる <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:31:21.50 ID:j8N8LMzrO<> これは支援だ <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:32:41.22 ID:bLG+B6IJ0<> ************



( ^ω^)「おっ?」

ふと、青年は目を覚ます。


はっきりとしない視界に紺から緑のグラデーションが映える。
ぼやけた目を擦ってようやく、その紺と緑が周囲一杯に広がる草原、そして黄昏を終えた空だと分かった。

背中にかかるような堅い感覚から後ろを向くと、自分が木にもたれていた事に気付く。
周囲の草原は夜を迎えようと静まり返り、少し冷たい風が吹き抜けている。
青年は起き上がる訳でもなく、ただぼうっとその風に頬を撫でられながら、風景を見渡していた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:34:39.52 ID:8J4BMnaTO<> (´゚ω゚) <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:34:54.97 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:35:19.33 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:37:27.94 ID:b9fAtbFQO<> 支援妖精自重しろ <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:38:21.51 ID:bLG+B6IJ0<> 隣には小さな老人が同じように木にもたれて、目を閉じている。
肩が擦れ、老人の低い体温が伝わって来た。

( ^ω^)(あ、一番星みっけだお)

雲がかって月の姿が見えないが、小さな星が輝いているのを彼は見つける。
星の周りだけ雲が晴れており、それは誇らしげに瞬いていた。

草原は涼しい。

青年はふう、と一息つくと、その星と暫く見つめ合う。
良い夜だ、青年は心の中でそう呟き、微笑んだ。



(;^ω^)「いやいやいや違う違う和む所じゃない和む所じゃない」


急に顔を左右にぷるぷるぷると振る青年。
態度を変え、もう一度周囲を見渡す。つい今までの和やかな目の色は消え失せている。
起こそうと考えたのか、隣の老人を肩を掴むとゆるく揺さぶり始めた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:39:10.87 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:39:29.17 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:39:46.57 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:41:12.18 ID:bLG+B6IJ0<> (;^ω^)「お爺さん、お爺さん!起きてお!」

/ ,' 3「……」

常人であればすぐ目覚める揺らし方だが、しかし老人の瞼は微動だにしない。
単なる表現ではなく、青年には呼吸すらもしていないように見えたのだ。

(;^ω^)「…ちょ、お爺さん?」

今度は少し強めに、老人を揺らす。やはり老人は目を覚まさないままである。
青年の額から頬にかけて、たらりと嫌な汗が垂れる。

( ^ω^)「い…生きてるおね…?」

/ ,' 3「……」

青年は半ば祈るように、老人に声を掛け続ける。
ぴくりとも動かない老人。その頭が力なく垂れ下がった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:41:27.54 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:41:44.76 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:42:03.32 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:44:03.48 ID:bLG+B6IJ0<> 頬に伝った汗が顎へ到達し、青年の腕へ滴り落ちる。


(;^ω^)「うおおおおおおおい!?おっお、お、お爺さん!おじいたーん!」

叫ぶや否や、再び老人を必死に揺さぶった。前へ後ろへ、老人の首が揺れる。揺れる。

/ ,' 3「……ゲエッホ!オエッ、ゴホ!ゲーホゲホッ!」

老人は突然大きく咳き込み、その口から恐ろしい勢いで、握りこぶし程の大きさをした何かを吐き出した。
青年が目を凝らす。草の上にボトリと落ちたそれは、よく見ると入れ歯だった。

( ^ω^)「よ、良かった!おじいたん生きてたお……!」

/ ,' 3「ないをひゅうおるふあ!むぁっひゃふほふひゃふえ、はふっ、もがもが」

安堵する青年とは違い、老人はふにゃふにゃの口で何やら喚いている。
青年は焦って入れ歯を拾うと、老人の開いた口にそれを押し込めた。
老人は目を見開いて少しの間静止したが、キツと視線を鋭く尖らせ、またすぐに喚き始める。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:45:21.99 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:45:41.44 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:46:05.78 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:47:26.72 ID:XfC4Clku0<> 様子見支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:47:32.34 ID:bLG+B6IJ0<> / ,' 3「何を言うとるか!全く、最近の若いもんはなっとらん!」

言葉を言い直すと、老人はふんっと鼻息を荒げた。

/ ,' 3「全く、まあったく理不尽!つくづく礼儀に欠けとる!
わしゃあの、午睡を楽しんどっただけじゃ!戯れか、小童!」

午睡にしては日が暮れきってしまっているが、そんな事を突っ込む余裕は青年に与えられない。
老人は説教じみた口調で、がみがみと青年を叱り始める。
青年は何かを言いかけたが、思わず姿勢を直し、正座になってしまう。

/ ,' 3「大体の、いきなり揺らすもんがあるか!お陰で入れ歯が草原の香りじゃわい!
悪戯にしてももう少し可愛いやり方があるじゃろうに、おい聞いておるのか!」

(;^ω^)「ご…ごめんなさい、だお…」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:48:23.90 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:48:39.97 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:49:09.69 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:50:06.26 ID:bLG+B6IJ0<> 老人の説教に圧され、しょんぼりとうつむく青年。
しかしはっと顔を上げ、また老人の肩に掴みかかった。

(;^ω^)「そ、それ所じゃないんだお、お爺さん!
聞きたい事があるんだお、今ぼく達がいるここは…その、どこ、なんだお!?」

/ ,' 3「何じゃ小童、人の話は最後まで…」

(;^ω^)「お願いだお、教えて下さいお!!」

逆に老人が青年の威圧感に圧され、出掛かった説教を喉の奥へ押し込める。
不安が湛えられた瞳とその眼差しに、老人は視線を横に流してぼそりと答えた。

/ ,' 3「どこも何も、ヴィップの丘じゃろうに」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:50:20.69 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:50:38.92 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:51:08.75 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:52:09.99 ID:bLG+B6IJ0<> (;^ω^)「ヴィップ…、ヴィップ…?それじゃお爺さん、僕を知ってるかお?」

/ ,' 3「戯け、さっきから訳の判らん事を。お前のような小童の顔なぞ知らんわ」

それを聞くと、青年は老人から手を離し、困惑したように頭を抱えた。
説教をする気も失せたのか、老人は怪訝そうな目で青年を見る。

/ ,' 3「どうした、何が言いたいんじゃ」
(;^ω^)「……」

不穏な間を置いて顔を上げると、行き場を無くしたように震えていた手を垂らす。
蚊の鳴くような声で、青年はたった一言こう返した。


(;^ω^)「……、なんにも、覚えてないんだお」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:52:45.49 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:53:31.39 ID:8J4BMnaTO<> 支援、 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:53:50.56 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:54:54.15 ID:bLG+B6IJ0<> ************



( ^ω^)「おっお、おっお、おー」

ギャロップで丘を往く青年。
先程までのうろたえ様が嘘だったように、道を行く彼は楽しげである。

結局、彼がはっきりと覚えていたのは自分の名前だけだった。
ブーン。誰かがそう呼んでいる、その様々な声を彼は覚えていたのだ。
声の主の顔や情報は思い出せないにしろ、それは今の彼に支えを成していた。

( ^ω^)「いやー、しかし良いお爺さんだったお。
無理やり起こしちゃったのに、有名なお城の事まで教えてくれるなんて」

あの後老人に近辺の情報を教えて貰い、青年もといブーンはその中にあった城へと向かっていた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:55:08.58 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:55:38.70 ID:8J4BMnaTO<> 支援、 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:56:01.30 ID:JxYyheoC0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:56:11.38 ID:8J4BMnaTO<> 支援。。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 21:57:54.89 ID:bLG+B6IJ0<> 無人の城、トールヒル。

その城が無人の城と呼ばれる理由を、ブーンは聞き取る事が出来なかった。
老人の言葉は難しかったらしく、ブーンの耳は見事にその話の途中経緯を左から右へすっぽ抜かしていたのである。

本当は「城へ近寄るな」という意味を込め、注意として老人が教えたものだったのだが。


( ^ω^)「うおお、すげー。無駄にでけー」

城に到着してすぐ、ブーンはその城を見上げた。
看板にはブーンの知らない字で、しかしながらいかにも様式的な字体で何かが書かれている。
本来ならば「はいるな!」とと書かれてあるその字も読めず、ブーンは大きな鉄柵の扉を開きにかかった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<>sage<>2008/05/25(日) 21:58:19.28 ID:VSaiwHQd0<> 高岡支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:58:23.53 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:58:40.19 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 21:58:57.15 ID:8J4BMnaTO<> 支援、 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:00:38.23 ID:JxYyheoC0<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:00:57.12 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「鍵開いてるけど、勝手に入っちゃっていいのかお?」

半分程開けて、ふとブーンの手が止まる。
城と言うからには、きっとお偉いさんとかそういう部類の人が住んでいるに違いない。
しかし、明かりや警備はどこにも見当たらない。ブーンは首を傾げた。

( ^ω^)「こんばんはですおー!誰か居ませんかおー?」

声を張り上げてから様子を見てみるが、どうも応えが返って来そうな雰囲気ではなかった。
城壁に使われた黒い石のせいでもあるのだが、城全体に暗い雰囲気が纏わり付いている。

( ^ω^)「……ま、お爺さんが紹介してくれる位だし、きっと優しい人が住んでるおね」

一度ためらった手を一気に押し、鉄柵の扉は音を立てて左右に開く。
ブーンは内側に入り込んで扉を閉めると、周囲を見渡した。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:02:02.19 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:02:19.88 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:02:42.02 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:05:09.18 ID:bLG+B6IJ0<> 白い石畳の道が、城の内部へ繋がるものと思われる扉へ続いている。
道の脇には小さな赤い花が点々と咲き、その中に時々色の違う綺麗な花弁が見えた。

( ^ω^)「おっお……それにしても、松明とか点けてないのかお?」

その道の石畳に所々月明かりが反射するだけで、道の先にも照明は見当たらない。
道を外れると、暗さでどこまで広がっているのかも判らない雑木林が広がっている。

(;^ω^)(真っ暗だお)

彼は小さな声で、ぜんとようようぜんとようよう…と呪文を唱えるようにして呟いた。
今度は大人しめのスキップで、石畳の道を進み始めた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:05:31.43 ID:JxYyheoC0<> ッ支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:05:41.41 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:05:59.83 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:06:15.37 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:06:17.11 ID:NP/ScVzqO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:07:28.91 ID:bLG+B6IJ0<> 獅子の装飾が施された扉の前に立つと、ブーンはまた上を見上げる。
やはり窓に明かりが点っている様子は無く、所々蜘蛛の巣がちらついていた。

( ^ω^)「ごめんくださーい!」

獅子の口から下がったノッカーで扉を叩き、声を張り上げた。
声がこだました後、すぐに静寂が戻ってくる。

( ^ω^)「誰か居ませんかおー、宿を貸して貰えませんかおー!」

ノックを続けるが、中からは誰も現れないどころか人の声すら聞こえて来ない。
ふとブーンは、ノックの反動から扉に隙間が空いている事に気付いた。

( ^ω^)「ここのドアも開けっぱなのかお?」

試しにノブを引くと、重々しい音を立てたものの鉄扉はすんなりと開く。
呆気に取られたブーンは、口をぽかんと開けた。



扉の中を覗くと、入り口から赤い絨毯がずっと敷かれており、舞踏会でも開けそうな大きさをした広間があった。
左右対称に階段があり、天井の高い部屋を見上げるとステンドグラスが目に入る。
その大きなステンドグラスから入る月明かりだけが、広間をぼんやりと照らしていた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:08:05.22 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:08:29.70 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:08:46.94 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:10:26.96 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「誰か居ませんかおー…」


呼びかけるように言うブーンに、返事変わりに酒の匂いが漂って来る。
しかし広間に人の姿は無い。よもや誰も城に居ない訳では、とブーンは思った。

( ^ω^)(そういえば、さっきのお爺さんが無人の城がどうのって言ってたような)

でも、それってそのままの意味じゃなくて、なんか由来があるとか言ってなかったっけ?

( ^ω^)(うーん…忘れちゃったお、どうしよ。うーん、うーん、)

思い出せそうにないお、とりあえずここで寝かせて貰うとするかお。

( ^ω^)(そうするお。もし誰か居たって、きっと謝れば大丈夫だお。
明日になったらどうせ町へ降りるだろうし、せめて外で寝なくて済んだって事で)

脳内会議を終えたブーンは、中へ入り込んで鉄扉を閉めた。広間に扉の音が響く。
足音から衣擦れまで、ブーンの発する全ての音が広間に響いた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:11:11.72 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:11:27.90 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:11:45.68 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:13:16.27 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)(それにしても、本当に誰もいないのかお)

階段の上や室内のドアの奥にはきっと別の部屋があるのだろう。
そう考えるのが当たり前だが、それすら疑いたくなる程城の中は静かだった。

ふとブーンは、根拠のない視線のようなものを感じる。
きっと不安なせいだと理由を付けると、ブーンは広間の端に座り込んだ。

首をもたげると、明かりの灯されていないシャンデリアがいくつも目に入る。

( ^ω^)(……)

無機質だがどこか寂しげなそのシャンデリアを、ブーンは暫くの間見つめていた。

記憶が無い事に気づいてから数時間。
楽観的にここまでの道のりを来た彼は、ほんの少しの寂しさを覚える。

両親はいたのだろうか。 ―――思い出せない。
兄弟はいたのだろうか。 ―――思い出せない。
故郷は、家は、仕事は。 ―――思い出せない。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:14:48.71 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:15:03.93 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:15:22.25 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:16:06.01 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「なんにも、覚えてないんだお…」

不思議なようで、本当に覚えていないのだから仕様が無い。
足を弾ませていたのが何とも虚しくなり、ブーンはため息をつくとあぐらをかいた。


ぜんとようよう、前途洋洋。
良いじゃないか、記憶喪失って事はまっさらって事で、これから新しい生活が始められるという意味もあるんだ。
それに、きっと記憶を失う前にいた自分の身内や友達、自分を好いてくれている人間を探す事だって出来るんだ。
それは楽しみで一杯って事なのかもしれないんだ。そう考えていた時期が僕にもありました。

彼自身の持つ楽観さは大きいが、それこそ根が、そう至るきっかけが無い訳ではない。
ここまで楽観的であれたのはお爺さんの良心的な解きと、この城への期待があってこそだったのだから。
それに加え静けさの中で過ごす夜は、全ての人間に等しく悲観をもたらす。

何度も絡み付いてくる視線を無視し、ブーンは夢の船を漕ぎ始める。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:16:14.54 ID:8KyAOoLT0<> あれ、もしかしてこれは残念私の冒険はここで終わってしまった、
があちこちに有るあの城か? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:16:54.68 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:17:11.65 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:17:27.27 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:20:31.15 ID:bLG+B6IJ0<> やがて懐かしいような、ぼやけた風景が見えて来る。
茶色がかったセピアのその風景から、錆びた鉄の香りが漂って来る気がした。
これは僕の故郷なのだろうか、もしかしたら仕事場なのだろうか、いやもしかすると―――。



「気付いてるか?」

「寝てやがるんじゃねえかっぽ」

「君が追い出してくれよ、いつもそうしてるんだろう」
「ヤだよ、酒臭い。俺入りたくない」

「ボクだって嫌なんです」
「なら私が!」

「お前らじゃムリムリ、俺が行く」
「やりすぎちゃ駄目だよ、目的は追い出す事なんだからね」

「判ってんよ。ふふっ、任せとけって……」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:21:06.54 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:21:29.82 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:21:45.82 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:23:39.23 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「……?」


不意に聞こえた声に、ブーンは船を急停止させる。
夢だろうか。男性の声だったような、女性の声もあったような。

( ^ω^)(気のせいかお?)

じっと周りの音に耳を澄ませるが、聞こえたのは遠いふくろうの鳴き声だけだった。
気のせい気のせいと自分に言い聞かせると、またブーンは船を漕ぐ。
視線も声も夢などではない事に、彼はまだ気付かない。



ふわりと黒いマントが、ステンドグラスの前に浮かび上がった。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:23:58.62 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:24:14.41 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:24:32.19 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:26:01.48 ID:bLG+B6IJ0<> 月明かりを受けて黒く影が差すそれは、大きく立った襟から中性的な顔を覗かせる。
邪な笑みを浮かべると、ゆっくりと下降する。首のみを動かしてブーンを見下ろすと、それは笑みを深くした。

( ^ω^)「タイトなジーンズに…、ううん…捻じ込むぅ……」

滑るように宙を移動し、寝言を呟くブーンの頭上へと辿り着く。

「楽しそうな夢見てんじゃねーか」

( ^ω^)「…おっ?」

声に目を覚ますが、ブーンが見渡す視界には誰もいない。
思惑通り、といった風に喉を鳴らした笑い声が響いた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:26:21.53 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:26:39.35 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:26:56.43 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:29:02.02 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「誰かいるのかお?」

「おう、ここにいる。いるとも。無人の城の王様だ」

妙に落ち着いたその声色に、ブーンはぞわりとする。
こちらの出方を知り尽くされているような、見透かされているような声色。
口ではなく別の何か、どこか目には見えない部分から発され、異様な雰囲気を伴っているような。
そんな印象の声色だ。

(;^ω^)「やだな…、お、脅かそうとしてる、のかお?」

「…その通りだ!」


ブーンがおずおずと問いかけると、突如として大声でそう言い放たれる。
ようやく頭上から声が響いている事に気付いたブーンは上を向くが、少し遅かった。
その一瞬の間に声の主はブーンの背後へと回り込み、ブーンの上着の装飾品であるベルトを掴む。

途端、革のベルトが悲鳴を上げた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:31:04.02 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:31:18.73 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:31:40.40 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:32:02.09 ID:bLG+B6IJ0<> (;^ω^)「うお!?…うあっ、うあああああ!!」

上を向いていたブーンの頭は、一気に下へと垂れ下がる。
声の主であろうものの体が、ベルトを掴んだまま上空へと舞い上がったのだ。
どんどん床と自分との距離が離れ、ブーンはくらりと眩暈を起こしかける。

从 ゚∀从「よーお、起きたか少年?」

(;^ω^)「お…おほっ、おひょおおおおっ」

少年、と呼ぶとブーンに顔を寄せるが、宙吊りのショックが大きすぎてブーンはそれに気付かない。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:33:31.82 ID:JxYyheoC0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:34:36.49 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:34:52.78 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:35:09.49 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:35:20.93 ID:bLG+B6IJ0<> 声の主は目を丸めたが、すぐに笑みを取り戻してブーンの顎を掴む。

从 ゚∀从「カッコ悪いぞ?キャーキャー叫んでんじゃねえよ、こっち見ろ」

そのまま引っ張り、自分の方を向かせる。ブーンの首がごきょっと嫌な音を上げた。

(;^ω^)「おげえッ!」

世界がぐるりと回転し、メートルにすら及ばない程の近さで赤い眼と視線が合う。
声の主はブーンの顎から手を離すと、大きく息を吸い込んだ。

从 ゚∀从「良いか少年、よく聞け!人呼んで無人の城トールヒル、たる所以を!」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:35:54.22 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:36:08.07 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:36:26.58 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:39:42.77 ID:bLG+B6IJ0<> 从 ゚∀从「この城に住んでる奴の中にはな、人間なんざ一人だって居やしねえ!
居るのは幽霊に人狼に化け物共がわんさかだ!生きた人間なんかが入ったら皆で煮込んで食っちまうのさ!
そしてそれを束ねる城主こそ、この吸血鬼ハインリッヒ・トールヒル様よ!」


ハインリッヒと名乗った彼もしくは彼女が、そう一気にまくし立てる。

驚いたかと言わんばかりに尖った八重歯を光らせると、少し下降してブーンから手を離した。
変な悲鳴を上げてブーンは地に落ち、”吸血鬼”の一言とその歯にたじろぐ。
壁際へ身を寄せるが、手足が思うように動かない。

从 ゚∀从「くくく、どうだ怖いだろ、逃げたくなったろぉ?」

尻餅をついていたブーンに、ハインリッヒがじりじりと近寄る。
ブーンは震えを大きくするが、いつの間にか腰が抜けており、その場から動けなかった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:40:42.02 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:40:58.87 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:41:14.78 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:44:29.63 ID:bLG+B6IJ0<> (;^ω^)「ひいいいっ、お助け、お助けだおー…!」

从 ゚∀从「そうは行かねえ、ここに入ったのが運の尽きだ!
そーらお前の血を飲みつくしてやる!ほれ逃げてみろ、ほれ!おらおら!」

何やら逃げる事を促そうとするその口調にハッとし、ブーンはすぐ立ち上がろうとする。
しかしブーンの腰はすぐにへたり込み、まるで生まれたばかりのバンビのようにそれを繰り返すだけだった。


( ^ω^)「……」

从 ゚∀从「……」

( ^ω^)「……」

从 ゚∀从「……いや逃げろよ」

(;^ω^)「あ、その……腰が、抜けて」

从 ゚∀从「こッ……」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:45:27.02 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:45:57.32 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:46:12.29 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:46:56.82 ID:bLG+B6IJ0<> 照れたように汗を拭うブーンを、妙に強張った笑顔で見つめるハインリッヒ。

しんと音がする程の静寂が訪れる。
ブーンと視線を合わせたまま、ハインリッヒは何故か硬直した。


背はお世辞にも高いとは言えず、顔立ちからは女性なのか男性なのかの判断が付け難い。
ただ、白すぎる肌と八重歯と険しい表情を除けば可愛い印象の顔をしている。


(;^ω^)(ナンチャッティー、現状確認してる場合じゃないお)

我に返るが、未だ静寂は続いている。
その静寂を堪えているように、ハインリッヒの笑顔はどんどんと硬くなる。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:48:33.36 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:48:49.78 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:49:06.39 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:49:58.72 ID:bLG+B6IJ0<> 様子がおかしい、そうブーンが悟った途端、急にハインリッヒは笑顔をほどく。
困ったように眉間に皺を寄せると僅かに後ずさった。

从 ゚∀从「ううう…、萎えさせんじゃねーよ、ったく!興醒めだ興醒め!」

いきなりの表情の変化に驚くブーンを置き去りにして、ハインリッヒが叫ぶ。

从 ゚∀从「いちぬけた!後は頼んだからな、とっとと出て来いお前らァ!」

ヤケを起こしたような声と、指を鳴らした小気味良い音が余韻を残して高く響く。
するとそれに呼応するように、部屋中のドアがブーンに近いものから順に一斉に開け放たれた。
ただ開かれた訳ではない、何か重さのあるものを思い切りぶつけたような強い衝撃で開かれている。

(;^ω^)「うわ…!」

ドアの奥は空ろ。圧倒的な非科学の光景に、ただただ目を見張る。
明らかに人間を超越したそれの作用である事を理解し、焦ってハインリッヒの方へ視線を戻す。
だが気づけば、ハインリッヒはブーンの眼前から消えていた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:52:10.29 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:52:15.88 ID:bLG+B6IJ0<> ブーンは目だけを動かしてハインリッヒの姿を探すが、広間にあのマントは見えない。
月明かりが当たらない場所に移動したのだろうか、それとも部屋自体から消失したのか。
これから何が起こるのか。

( ^ω^)(…扉からは何も出て来ないのかお?)

そうだ、扉。
もしかすると、さっきハインリッヒが口走った”化物共”とやらが現れるのではとブーンは考える。
一時の宙の散歩を存分に楽しまされたブーンは、既にその存在を認めてしまっていた。

ドアの奥は、空ろ。何を考え出すにも一拍遅れる自分に、ブーンは苛立ちを覚える。

(*‘ω‘ *)「その通りだっぽ、いちいち反応するのが遅ぇんだっぽ」

(;^ω^)「うおおおおおっ!?」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:52:26.41 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:52:44.64 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:53:06.92 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:53:10.00 ID:KP/q0Y2eO<> しえんー <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:54:56.30 ID:bLG+B6IJ0<> またも上がる、今度は少女の声。
この可愛らしい声ですら化物か化物なのか化け物のものなんだろうか、ブーンは全うな悪態をついた。


(*‘ω‘ *)「るっせえっぽ誰がバケモンだっぽ。騒ぐとミンチにするっぽ」

(;^ω^)「なっ……!?」

(;><)「あんまり脅しちゃ駄目なんです、ちんぽっぽちゃん!」

(*‘ω‘ *)「てめぇは黙ってろっぽ」

いつの間に現れたのか、目の前で寸劇を繰り広げ始める幼い少年少女。
少女に至っては、その可愛らしい声とは裏腹すぎる言葉遣いである。
しかもその少女は、つい今ブーンの考えを読んでいたかのような発言を繰り返した。

人の心を読むだなんて―――いや、読まれたからといって、僕に不利益はあまりないのか。
だがもし本当に、少女にそんな能力があるとすれば。
ブーンはいよいよ、自分の置かれた状況の異常さを把握する。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:56:48.09 ID:8J4BMnaTO<> 支援、 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:57:03.64 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:57:22.29 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 22:58:08.12 ID:bLG+B6IJ0<> ( ><)「ご主人さまからあんなに言われてたのに!」

(*‘ω‘ *)「騒ぐなっつってんだろっぽ、ガチで死ろすぞっぽ」

(;><)「あーん、これじゃまたおやつ抜きにされちゃうんですー!」

「はいはい、それ位にしとけ。奴さんが黙ってるぞ」

更に追加される男性の声。
ブーンの思考はよりまとまりを無くす。パンクしそうな頭が鈍く痛んだ。


ああ、これは確か一番初めに聞いた声だ。
そんな考えが過ぎった途端。


何か冷たい物が、ブーンの体を侵した。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:59:33.09 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 22:59:49.45 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:00:06.31 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:00:55.23 ID:bLG+B6IJ0<> (;^ω^)「っ、あ」

それに気付いた後、白いもやが視界を過ぎ去る。もしくは、ブーンを通り過ぎる。
もやからは痩せた男性が現れ、否、男性がもやを身に纏わせているように見える。
妙な悪寒に襲われて歯を鳴らし、ブーンは両腕で自分を包み込むようにした。

(;><)「うわ、ドクオさん後ろ!」

('A`)「ん?……あぁ、悪いな。見えなかったもんで」

男性はゆっくりと振り返ると、ブーンと視線を合わせた。
その体のあちらこちらが時折透き通り、背景の闇が垣間見える。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:02:49.25 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:03:06.63 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:03:22.70 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:04:55.89 ID:bLG+B6IJ0<> 今、どこからこの男性は現れたのだろう。

ブーンの背後にドアは存在しない。
自分を、壁を通り抜けた?まさか、まさかそんなものが本当にいる筈は。
そんなもの、の部分を明確に描写する事を、ブーンはとにかく恐れた。こんな事って。こんな事って。
恐怖心が喚き出す。否定したくてたまらない。

('∀`)「……寒くなったか?」

意地悪くニィっと口の端を吊り上げて、ブーンが”そんなもの”だと予感した彼が、笑った。




―――もう、着いて行けません。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:05:19.61 ID:KP/q0Y2eO<> うらめしやー <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:06:24.78 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:06:40.23 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:06:55.94 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:09:10.12 ID:bLG+B6IJ0<> ( ><)「ふぇ……」

('A`)「うあ?」

(*‘ω‘ *)「ぽ」



ブーンは口癖の語尾も付けず、うわ言のようにそう呟くと、瞳をのし上げ白目を剥いた。
一斉に上がる三人の声から少し遅れて、あえなく意識を手放し、混濁の海へ投じる。

後にこの一夜が”騒動”と呼ばれ、一つの話題として継がれて行く事を、知る由も無く。
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:09:50.81 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:10:08.99 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:10:26.97 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:11:55.25 ID:bLG+B6IJ0<> 気を失ったブーンの周りに、トールヒルの城と同じ黒をした人だかりが出来ていった。

正しく表現するなら、人が成す野次馬ではなく、人外のわだかまったそれが。






― 第一話 了 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:12:15.80 ID:hkqOIdNe0<> ジサクジエーン <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:12:54.47 ID:Ohc2Spjl0<> ほほう乙
続いて2話どうぞ! <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:13:16.61 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:13:34.88 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:14:06.49 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:14:29.18 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:15:18.88 ID:8J4BMnaTO<> 2話!2話! <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:15:57.91 ID:bLG+B6IJ0<> 第二話 ― 白い朝に再会、メイドと鏡と遅れた混乱




ああ、顔も知らない父さん、母さん。
僕は煮込んだりとかそういう感じでアレコレされて食べられてしまうのでしょうか。

ああ、顔も知らない弟よ、妹よ。
僕はあなたがたの声すら思い出せないままで死んでしまうのでしょうか。

ああ、顔も知らない恋人…は果たして、僕にいたのでしょうか。
故郷に帰って暖かいお布団で眠りたい。それがどこなのかも忘れてしまったけれど。

あんな城、次生まれ変わったらもう絶対行かないお。
僕はそう堅く、胸に誓ったのだった。おしまい。


/ ,' 3「諦めてはいかんぞ」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:16:31.12 ID:Ohc2Spjl0<> ホントにあるしwww <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:17:00.09 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:17:46.01 ID:8J4BMnaTO<> 支援、 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:18:03.53 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:19:21.12 ID:bLG+B6IJ0<> うは?おじいたん何してんの?


/ ,' 3「おじいたんではない、師匠と呼べ。
それより聞け小童よ、お前はこんな志半ばでポックリと逝ってしまって良いのかと」

そりゃ嫌に決まってるお。だけど腰抜けちゃったし、逃げたりとかムリだったもんお。
きっと僕がこうしてる間にも、もっともっと怖くてオワタな展開が続いてるんだお。

/ ,' 3「諦めてはいかん。要はネバギバやね。諦めてはいかんのよ」

ええー。ネギトロも何も僕ただの人間ですお。
だって何か、こう、あの男の人とか。それっぽい感じだったじゃんお。

/ ,' 3「あらあら…うふふ…」

あ、ああ!待って師匠、遠ざかって行かないで!
どこに行くんですかお!僕を一人にしないで下さいお!

……ああ、めのまえがまっしろに――― <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:19:33.37 ID:CPIo2G0P0<> >>142
支援妖精じゃね?

支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:20:19.12 ID:8J4BMnaTO<> 支援、 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:20:35.22 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:20:51.27 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:21:00.34 ID:Ohc2Spjl0<> こういう基地外じみた支援俺もやったことあるなあ <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:23:40.08 ID:bLG+B6IJ0<> ************




ξ゚听)ξ「…あ、起き」

(;^ω^)「おじいた――――――――――んン!!!」

ξ;゚听)ξ「ブフウウゥ――――――――――ッ!!!!」

ブーンが身を起こして叫ぶのと紅茶の虹が架かるのとは、ほぼ同時だった。
赤茶色の虹はブーンの顔面へと橋渡しされ、おじいたんの幻影は見事に消し飛ぶ。
それと同時に何かとても大事なものが吹き飛んだような気がしたが、虹の橋を見ているとどうでも良くなった。

不思議と、はっきり目覚めた瞬間のブーンはとても爽やかな気分だった。
自分が記憶喪失である事実すら忘れ、見知らぬ女性の噴出した紅茶の香りに包まれる。
その時女性に抱いた感情はどこか甘酸っぱかった。ダージリンですね。わかります。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:24:52.67 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:25:09.61 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:25:25.25 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:26:45.58 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)「お……おっお……、あまずっぺ……フヒ」

ξ;゚听)ξ「ひッ!!」

自分の両手を見つめ、笑い声を漏らしつつダージリンの余韻に浸るブーン。
目の前の椅子に腰掛けているメイド姿の女性が、おぞましいものを見るように小さく震え出す。

( ^ω^)「ところで、貴女は―――」

首だけを回転させ、笑顔で女性へと声を掛ける。
その瞬間、女性は何かの線がはち切れたように椅子から立ち上がり、数歩退いた。

ξ;゚听)ξ「イヤあああああ!!ハイン様!ハイン様ー!!」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:27:10.59 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:27:26.79 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:27:41.57 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:28:56.36 ID:KP/q0Y2eO<> しえすた <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:29:39.50 ID:bLG+B6IJ0<> 金切り声でそう叫ぶや否や、部屋の脇にある扉を蹴飛ばし、ティーカップを手にしたまま逃げる様に去ってしまった。
それにしても可愛らしい声だとブーンはしみじみ考える。金切り声と表現するよりは雀の囀りである、と。

(*^ω^)「誰だか知らないけどおちゃめさんだお…んもう」

ゴシゴシと目の周りを服の袖で拭き取ると、ブーンは爽やか気分のまま現状確認を始める。

今の自分はやたらと軋むベッドに寝かされており、すぐ隣の小窓から淡い光が差し込んでいる。
小窓から外を覗くと、上り始めた太陽と色の黒い森、そして石畳が見下ろせる。ここはどこかの上階らしい。
今いる部屋自体は少々小さい。扉は重そうな鉄製のもので(女性が蹴飛ばせていたが)、机や椅子、ベッドは全て木製だ。
というよりは、その机と椅子とベッド以外には家具が見当たらないのである。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:29:59.08 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:30:27.05 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:30:41.91 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:32:07.06 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)(…しかし僕、昨日お爺さんと別れてからどうしたんだったかお?)

頭上にクエスチョンマークを浮べ、ふとブーンは考える。
さっきの女性が呼んだ”ハイン”という名前にどこか聞き覚えがあるが、顔を思い出せはしなかった。
よし、とその名前から思考を切り離す。自分は記憶喪失であるという事を再度確認し、ブーンは伸びをする。


もしかしたら優しい旅人さんとか、お爺さんが言っていたふもとの住人さんが助けてくれたのかもしれない。
お爺さんと話し終えて歩き出したあたりで急に記憶が途切れているので、経緯は良く分からないが。
妙にお腹が空いているので、多分行き倒れか何かだろうとブーンは自己完結した。
状況関係無くポジティブであれる事は実に好ましい事である。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:32:17.55 ID:Ohc2Spjl0<> ダージリンって酸っぱいのか? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:32:23.81 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:32:45.81 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:33:00.68 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:35:15.13 ID:bLG+B6IJ0<> ふと、先程蹴り飛ばされていた扉が重い音を立てた。
ブーンが目をやると、さっきの女性が金色のツインテールを揺らしながらこちらを見ている。
警戒されているのか眉間に皺を寄せており、微塵も友好的なオーラを受け取ることが出来ない。


(;^ω^)「……ええと、こんにちはーですお」

ξ゚听)ξ「……」


こんにちは。しまった色んな意味で失敗した、とブーンは直感する。
女性は何かを疑るように目を細めると、ベッドから身を起こしたブーンへ向かい何かを放り投げた。
「お、お!」と声を上げ、その何かを落とさないようにキャッチすると、ブーンはそれが紐で結ばれた衣類である事に気づく。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:35:59.67 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:36:23.12 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:37:05.81 ID:8J4BMnaTO<> 支援。。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:37:33.45 ID:KP/q0Y2eO<> 支援! <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:38:50.74 ID:bLG+B6IJ0<> ξ゚听)ξ「大浴場はここ出てずっと左。お風呂入ったら一階の広間に来て、ハイン様がお呼びよ。……顔、ごめ……なさい」

淡々と述べ、謝罪の部分は幾分か小さな声で言う。
状況が読めずブーンが呆けた顔で女性を見つめていると、急に女性は頬を紅潮させた。

ξ*゚听)ξ「っ、勘違いしないでよね!ご命令なのよ、私から持って来てあげた訳じゃないんだから!
……あっ、ああでも顔の事はちゃんと、その……あ、謝る、から……あー、もうっ!!」

女性は行き場無さげに両手を右往左往、一気に一人で喋くると、再び鉄扉を蹴飛ばして駆けていった。
鉄扉が哀愁を放ち、未だに音を立てて揺れている。ブーンは扉と手元の衣類に繰り返し目配せする。

ブーンの呆けた顔が、ふにゃりと惚けた顔になる。

読みは同じでも、その表情は相当に違うものだ。
女性が駆けて行く音が、小さく遠ざかっていった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:39:30.90 ID:Ohc2Spjl0<> しえーん <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:40:10.66 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:40:36.35 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:40:55.27 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:42:24.78 ID:bLG+B6IJ0<> ( ^ω^)(それにしても大きなお屋敷だお、さっきの女の子はメイドさんか何かなのかお?
それにハインさんて名前、なんとなく聞き覚えがあるような気がするお。ここのご主人さんあたりかおね)


適当な予想を浮べながら、ブーンは着替えを持って長い長い廊下を一人歩いていた。
いくつもの鉄扉が並んでいるが、どの部屋からも談笑する声は一切聞こえない。
早朝だから当たり前か、そう考えながらブーンは静まり返った廊下を見回して歩く。

( ^ω^)(これからどうしたもんか、僕がここに来るまでの経緯が本当に思い出せないお。
どう挨拶すれば良いかお…、初めまして?お邪魔してしまったみたいで申し訳ありません?うーん、何か違うお)

自分からここへ来た事はまず無いだろうが、拾われたにしても説明の仕様がない。
とにかく深く考えるより、そのハインさんとやらの人柄で判断しようとブーンは決めた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:44:38.92 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:45:07.79 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:45:26.20 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:46:05.98 ID:bLG+B6IJ0<> その内廊下の果てへ到着し、石鹸の香りが漂って来た。
そこだけは鉄扉ではなく、女性と男性のシルエットが描かれた幕の下げられている入り口が二つ並んでいた。

ブーンは男性のシルエットが描かれた紺の幕を開き、中へと入る。


まず、ステンドグラスで上手く中を見えないようにした硝子の扉が目を引いた。浴場へ繋がっているのだろう。
後はどこかで目にした事のあるような、着替えを入れるための籠が無数に置かれた棚がずらりと並んでいる。

脱衣所だ。

ブーンはその棚の内の一つを拝借すると、上着のジャケットとシャツを一気に脱ぎ、籠へ投げ入れた。
上着のポケットに重みを感じたが、後で見れば良いかとブーンはそれを入れたままにしておく。

ズボンのベルトを外し終えると、棚の中に小さな手鏡が置かれている事に気付く。
ブーンはそれを手に取り、ふーむ、と一言呟くと、目を閉じた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:47:17.27 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:47:48.06 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:48:06.65 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:48:23.17 ID:yYEJnwKlO<> 追いついた
支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:48:48.84 ID:bLG+B6IJ0<> そういえば、自分の顔を知らない。

やはり見た後で落胆するのだろうか。しかしここで見ない訳にも、とブーンは目を閉じたまま手鏡をこちらへ向ける。
決心したように瞼を開くと、どこか頭の弱そうな丸い顔がこちらを見つめていた。
ブーンは暫くその顔と見つめ合うと、笑顔を作ってみたり、目を凝らしてみたりと表情をころころ変える。

ふむ、と短く切った音をブーンは呟く。

( ^ω^)「うん、うん。僕ってば、思ったよりマシな方なんじゃないかお」

一人頷くと、最後にもう一度だけ自分と目を合わせ、棚へ手鏡をそっと戻しておいた。
ズボンのチャックへ手を掛け、脱衣を続ける。石鹸の匂いが心地良い。

「……ぷふっ」

( ^ω^)「おっ?」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:49:00.10 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:49:21.31 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:49:37.68 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:51:14.86 ID:bLG+B6IJ0<> 堪え切れずに漏れたような、息を噴出す笑い声がブーンの耳に入る。
浴槽へ向かおうとした足が思わず止まり、ブーンは辺りを見回す。


( ^ω^)(やっぱり誰かいたのかお…?)


脱衣所の棚に隠れて見えなかったのかもしれない、と棚と棚の間にある通路に入り込む。
冷たい床を裸足で歩いて行き、自分以外の人影を探すが、しかし未だ見ぬ住人の姿は無かった。

気のせいだと思うしかないか。
まだ鮮明に思い出せる小さな笑い声を頭の中で反芻しながら、ブーンは来た通路を戻って行った。

浴場の扉の前へ戻ると、一度ステンドグラスの前で立ち止まる。
ステンドグラスは青を貴重に、薄紫、水色、所々に散りばめられた黄色で、羽が生えた女性を模してある。
女性は赤子をその腕に抱きかかえ、愛おしそうに目を閉じて笑みを浮べていた。


綺麗だ。
そう素直に心の中で感想を述べてから、ブーンは扉を開き浴場へ入っていった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:51:17.49 ID:Ohc2Spjl0<> もう支援は任せるわww <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:51:39.51 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:52:06.71 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:53:00.70 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:54:20.73 ID:bLG+B6IJ0<> 「……もう行っちゃったかな?」


( ><)「ふー、びっくりしたんです!ご主人さまったら声出しちゃ駄目じゃないですか、なんです!」
(*‘ω‘ *)「声がデケエんだっぽ。またあの野郎が戻って来たらどうするつもりだっぽ」
(;><)「ご、ごめんなさいなんです…」

「ふふ、諭してくれたんだよね。ごめんね二人共、手伝ってくれてありがとう」

(*‘ω‘ *)「礼には及ばねえっぽ」
( ><)「ボクもあの人の様子が見たかったから、全然大丈夫なんです」

「いや、元気そうで良かったよ。昨日の騒動のせいで腰抜かしたままだったらどうしようかと思ってね」

(*‘ω‘ *)「……見たところ、あいつは昨日あったここでの記憶が抜け落ちてるっぽ」

「そうなの?」

(*‘ω‘ *)「どうも一時的なものみたいだっぽ。今に何かのショックで全て思い出す、心配しなくていいっぽ」

「へえ、ありがとう。……そっか、うん。それじゃ、今の内に僕達は部屋に戻ろうか」

(*‘ω‘ *)「おら、戻るっぽビロード」
( ><)「わかったんです!あ、ご主人さま!大鏡、久しぶりにお掃除したから今ならピカピカなんです!」

「本当かい?楽しみだなぁ……」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:54:31.13 ID:zvnnHlBS0<> 良作に支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:54:38.08 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:54:41.13 ID:KP/q0Y2eO<> >>202
うぉいwww <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:55:03.48 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:55:19.03 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/25(日) 23:57:12.26 ID:bLG+B6IJ0<> 大浴場の名の通り、そこは巨大すぎる程に巨大だった。

見回すが、ブーン以外には誰も入っていない。
ここまで来ると、よもや自分のためにこの階全体が貸切られているのではないかという不安すら感じる。

壁沿いに沢山並ぶ小さな鉄製の椅子(不思議な事に錆は全く見当たらない)の一つにブーンは腰掛けた。
着替えに挟まっていたタオルの一つを脇に置くと、ブーンは眼前の鏡の隣に取り付けられているレバーを引いた。
壁から重い水の音が響く。シャワーが一度震え、一気に湯水が噴出する。

(*^ω^)「おっひょおおお!」

初めてではない筈なのに、シャワーを浴びる感覚がどこか新鮮で、ブーンは妙な悲鳴を上げた。

この時代でのシャワーは井戸から汲まれた水を暖房機関で温めているだけで、細かな温度調節は出来ない。
熱々のシャワーで体を流し終えると、ブーンは石鹸を使い軽く顔を濯ぐ。
洗い終えてからダージリンの匂いが取れた事を確認し、シャワーを止めると、早足で浴槽へと向かった。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:57:39.32 ID:4Gfyz3I4O<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:58:29.07 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:59:12.94 ID:8J4BMnaTO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/25(日) 23:59:29.94 ID:8J4BMnaTO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:00:13.56 ID:+ITtANxfO<> そんなに連打しなくても猿食らわないだろjk・・・ <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:00:22.75 ID:H80sxW5B0<> 少しもったいぶって、ブーンは右足からゆっくりと浴槽へ浸かる。
おおおおお…と浴場に声を響かせ、全身を受け入れる湯の温もりを味わい始める。

(*^ω^)(早く行った方が良いのかもしれないけど、こんなにおっきいお風呂見せられたらたまらんおっおっ。
にしても金持ちにも程度ってものがあるお、こんな浴場持つ位なんだからきっとハインさんて凄い人なんだお。
僕の予想では髭のカールしたオジサマか、やたら悲しそうな目ぇしてる超白髪のオジイサマだお)


暫く意味の無い考えを巡らせ、ブーンはのんびりと浴場を見渡した。
大きな窓からは、先程部屋の小窓から見たものと同じ風景が広がっている。
先刻より太陽が上へ昇り、全体的に景色が白い。不気味だった黒い森がやんわりと照らされ、幻想的に見えてくる。

ややあって浴槽を出ると、再びさっきの椅子に座り、シャワーで一度体を流す。
タオルに石鹸を馴染ませ、腕から肩に掛けて体全体をくまなく洗い始めた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:01:43.28 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:02:16.28 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:02:38.41 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:05:42.06 ID:DVt16Q7kO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:06:06.40 ID:H80sxW5B0<> ( ^ω^)(……なんだろう。この感じ)


奇妙な、しかし気持ちのいい違和感がブーンに纏わり付く。
さっきシャワーを浴びた時もそうだったが、まるで生まれて初めて体を洗ったような爽快感があるのだ。
タオルが体を滑る感覚を身近なものとして感じられない、そう表現してもいいかもしれない。

( ^ω^)(気持ちいいけど、変な感じだお)

記憶を失った人間は皆こういう思いをしているのだろうかと疑問を抱きつつ、ブーンは再びタオルを持つ手を動かす。
せっかくだし、頭まで洗ったらもう一度だけお湯に浸かっていこう―――そう考えながら。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:06:31.00 ID:DDq4f/2ZO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:06:31.17 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:06:52.64 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:07:00.28 ID:MnpJqiLpO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:07:08.12 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:08:29.74 ID:H80sxW5B0<> (*^ω^)「ふおー、すっきりさっぱりだお!」


ステンドグラスの扉を開けると、浴場から脱衣所へ湯気が侵入していく。
犬のように体を小刻みに震わせて水を撒くと、さっき着替えを置いた棚へと歩き出す。
相変わらず床は冷たい。大理石か何かだろうか、マーブルの光沢がいかにもな高級感を醸し出している。

棚の前へ辿り着くと、改めて着替えを手に取る。やけにふわふわとした生地のバスローブだった。
一旦それを棚へ戻し、バスローブと同じ位にふわふわしたタオルで乱雑に頭を拭く。
体全体の水気をしっかりと拭き取り、バスローブを再び手に取って袖を通していく。

ううむ実に有意義。

記憶喪失の人間がこんなにのんびりしちゃって良いのかな、まあいいや。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:09:18.51 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:09:47.82 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:10:22.65 ID:LlgSbsRzO<> 支援。。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:12:57.05 ID:H80sxW5B0<> 少し大きめのバスローブの袖を弄びながら、ブーンは紺の幕をめくって脱衣所を後にする。
目指すは一階、広間とやら。
一応着替えを入れた籠は持参して来たが、妙に手に余り、籠を右手左手に持ち替えて廊下を歩いて行く。


さっきまで自分が居た部屋の前まで来ると、ブーンはその部屋のすぐ隣に階段があった事に気付いた。
成る程、僕が居た部屋は最後尾だったわけか、と廊下の長さに納得する。

螺旋状になっている階段を見下ろす。ある程度からは黒く影が差しており、一階毎に相当の長さがありそうだ。
大浴場のあった階が何階だったのかが分からないので、今から何階下るか数えておこうと意気込んで階段を降りて行った。
浴場で拝借した客人用の靴が、やけに音高く響く。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:13:02.62 ID:LCrB90Nc0<> 作者さん死んじゃったの? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:13:08.92 ID:ujpcJsuoO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:13:16.54 ID:u52z/AhEO<> 支援!


…なんでだろ、支援妖精が可愛く思えてきた <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:14:11.90 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:14:40.26 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:14:58.19 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:16:06.68 ID:H80sxW5B0<> 一、 

柵は尖り、細工のされた獅子の飾りが間隔を置いて取り付けられていた。

二、

階層毎に一つしか窓が無いため、階段へと入り込んだ途端に薄暗くなったような印象を覚える。
窓は廊下に付けられたものよりは大きめだが、長い階段を照らすには小さすぎる。

三―――。

ようやくそれ以上階段が無い地点が見えてくる。踊り場にあたる場所には大きな鏡が設置されていた。


( ^ω^)「よん!」

思わず声に出してしまい、少し気恥ずかしくなる。ここが一階だろう。
どうやらブーンが居る棟は四階まであるらしい。小窓の景色を思い出し、あの高さならそれ位なんだろうな、と考える。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:16:21.32 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:16:41.16 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:16:58.61 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:18:44.34 ID:H80sxW5B0<> 階段を降り切ると、廊下は三叉に分かれていた。


ブーンの立ち位置から見て丁度右、左、そして正面の三つ。
どうも正面からは、微かにだが数人の話し声が聞こえて来る。

( ^ω^)(お……、そういえばあの女の子、広間の場所までは教えてくれなかったお)

ここまで来てそれに気付き、ブーンは首を傾げた。

( ^ω^)(広間っていう位だし、人が集まってそうなイメージだお……とりあえず声のする方に行くかお?
……うん、そうするお。間違ってるみたいだったら、そこにいる人たちに広間の場所を聞けばいいお)

即決。
二度目だが状況関係無くポジティブであれる事は実に、実に好ましい事である。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:19:26.23 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:19:53.22 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> のこぎる
◆jGPoKsD4QM <>sage<>2008/05/26(月) 00:20:00.92 ID:F8jp6QDR0<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:20:12.04 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> ◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:21:25.62 ID:H80sxW5B0<> 正面へ向かい歩き出すと、話し声は少しづつ大きくなる。時々笑い声が混じり、和気藹々とした様子だ。
ブーンはその楽しげな会話に耳を傾けるよう意識し、廊下の奥に見える大きめの鉄扉を目指した。



「―――そ、そそそれはアレか!?乙女の秘密って奴なのかああああああっ!?」
「だーっ、一々煩いのよ!そうよ秘密なの、だから静かにして!」
「はははは、可愛いとこあるじゃねーか!どーれ、この俺が直々に聞いてきてやるよっ」
「は、ハイン様ダメ!それは本当にダメぇぇ!!」



(*^ω^)「……」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:21:50.53 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:22:13.02 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:22:30.76 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:24:20.62 ID:H80sxW5B0<> 思わず頬が緩む。
このノリ、そして乙女の秘密という甘ったるいワードからして、ブーンは恋話だと確信した。
しかし秘密にしては声が大きい。鉄扉を一枚挟んでいるのに、十分に声が届いてくる。
早朝である事に油断しているのだろうか、と考えると今以上に頬が緩んだ。

どうやら、さっきの女性の声が混じっているようだ。
更に”ハイン様”と呼ばれたと思われる人間の声は、少し中性的ではあるが、決して低くはない。
どうもブーンが想像していた様な壮年の男性や、悲しい目をした老人ではなさそうである。

この様子だと、広間は多分自分が向かっている部屋で正解だったのだろう。
面倒を逃れた事に少し気分を良くしていると、ふと鉄扉の向こうから届いていた話し声が止む。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:24:54.06 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:25:21.39 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:25:38.72 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:28:09.88 ID:H80sxW5B0<> 不意に扉が軋み、重い音を立てて開いた。
ブーンが扉に注目していると、中からはあの女性が現れ、様子を伺うようにして半開きの扉の外へ上半身を見せる。
女性はブーンに気付くと、ほんの一瞬驚いたように目を見開き、すぐにその目を細めて視線を逸らした。


ξ゚听)ξ「足音が聞こえると思ったらあんたか……。遅かったわね、ハイン様がお待ちよ」
( ^ω^)「あ……えへへ、ごめんなさいだお」

女性はメイド服の裾を翻すと、「ふん」と再びそっぽを向いてから扉を開ききって、ブーンを手招いた。
少し早足にブーンは廊下を進むと、女性は先に扉の中へ入ってしまう。

( ^ω^)(相変わらずつれないお)

だがそれがいい、と脳内で呟き、次いでブーンは扉の中へと入って行った。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:28:24.34 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:28:51.09 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:29:10.50 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:30:44.62 ID:H80sxW5B0<> 聞いていた通り名の通り、中は広間だった。
大浴場もそうだったが、一々部屋が大きすぎて、つい都会へ来たばかりの田舎者のように見上げてしまう。
さっき大浴場の入り口で見かけたからだろうか、大きなステンドグラスに既視感を覚えた。

だだっ広い中にいくつかの段差と絨毯があるだけの空間、その中央に先程聞こえた話し声の主達がいた。
一人は鮮やかな赤い髪色をした女性、そしてさっきのツインテールの女性。
前者の女性はなぜか犬の耳と尻尾を付けており、こちらを期待するような眼差しで見つめている。

そしてその二人に挟まれるようにして、話し声の主の内、最後の一人が立っていた。

ブーンと目が合うと、ぱあっと表情を明るくして手を振る。
たかたかとこちらへ駆け出し、どちらかというと小さめの体躯が、黒いマントから覗いた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:31:32.90 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:31:43.62 ID:WwOL2ogW0<> シエーン <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:32:09.64 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:32:30.85 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:33:30.54 ID:H80sxW5B0<> 从 ゚∀从「おおっ、起きたか少年!」




”―――よーお、起きたか少年?”




鉄よりも硬くて重い何かで出来たハンマーで、思いっ切り頭を殴り飛ばされる。
ブーンはその誰かが放った一言で、そんな感覚を覚えた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:34:18.75 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:34:49.00 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:35:07.34 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:35:24.88 ID:u52z/AhEO<> 支援! <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:36:50.20 ID:H80sxW5B0<> (;^ω^)「お、も、い、だ、し、……ったああ―――――――ッ!!!」


ブーンが絶叫する。


(;^ω^)「メイドさんが言ってたハイン様ってそういう事かお!しかも何、ここあの城じゃないかお!
ステンドグラスとか絶対見た事あったもんお!何で今の今まで忘れてたんだお、僕のヴァカヴァカヴァカ!
んじゃ君はやっぱり、ハインってハインって……ハインリッヒ・トールヒルうううううぅ!!」

なだれ込む様に思い返される昨日の出来事に、ブーンが一気に声を上げた。
トールヒル、トールヒル、トールヒル…と、広間内にその声がこだまする。

眉間の皺を増やした金髪の女性を除いて、ブーンに視線を寄せていた二人は特に驚いた様子も無く、平然としている。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:37:05.98 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:37:35.23 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:37:53.32 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:38:54.49 ID:H80sxW5B0<> 从 ゚∀从「んー、ここは……”フルネームかよ”?」
ノパ听)「違うぞハインっ、こういうノリは多分”長いんだよ”の一言だっ!」

ツッコミ談義を始める二人をよそに、ブーンは頭を抱え混乱する。
どういう事、どういう事?僕はなんで無事なままなんだお?煮込んで食べちゃわれてないんだお?
もしかして風呂に入らせて、体を綺麗にしてから食べるつもりだとか?

とにかく逃げなきゃ、早くここから逃げないと―――何となく、キケンが危ない、気がする!

ξ゚听)ξ「あ!」

脱兎の如く、両手を広げて駆け出すブーン。
手にした籠が床へ転がる。こちらに気付いたのか、声を上げる金髪の女性。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:40:18.17 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:40:40.05 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:41:01.20 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:41:31.48 ID:H80sxW5B0<> 鉄扉から外へ出ると、大きめの窓を探す。
自分が知っている城の出口は、広間の扉だけ。
しかし、あのハインリッヒの隣を無事に駆け抜けられる自信はブーンには無い。
ならば一番単純な出口として、脱出口として考えられるのは、窓。

廊下に付いているものは、ほとんどブーンの頭程度の大きさの小さなものばかり。
どこか、どこかに窓は無かったか。螺旋階段前の分岐へ辿り着くと、ブーンは周囲を見渡す。

从 ゚∀从「うおーい!どこ行くんだよ、こら!」

背後からハインリッヒの声と、歩調の遅い足音が響いてくる。
ブーンの焦りが増し、頭の中の警報がかき鳴らされる。とにかくアレに捕まる前に逃げなければ。

その時ブーンの目に、螺旋階段の窓が目に入る。
他の窓よりは、多分自分が抜けられる程度には大きい。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:42:30.14 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:43:00.55 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:43:22.32 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:43:57.02 ID:H80sxW5B0<> ブーンは無我夢中に窓へと駆け寄る。

(;^ω^)(早く、早く、早く!)

少し転びそうになりながらも右手を窓枠へ掛け、ぐっと腕全体に力を入れて体を引き上げる。
次いで左手を持ち上げると、下を向いている窓の鍵を思い切り上へ向けた。
鍵が外れた事を確認し、窓を開ききる。外へ上半身を出すべく、右の足を窓へ掛けた。

从 ゚∀从「あ、てめ!そんな所から逃げるってのか、ちょっと俺予想外!
おい待て、待てったら……くそ、来いショボン!アレを捕まえろ!」

ハインリッヒの声を聞かないようにし、ただ脱出に集中していると、不意に雫が落ちるような涼やかな音が響いた。

雫が落ちる音―――とは言っても、それはハインリッヒの声を裂いてブーンの耳に入る程の大きさをしている。
違和感に、ブーンは窓に突っ込もうとしていた頭を無理やり後ろへ振り向かせた。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:45:07.38 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:45:33.25 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:45:53.03 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:46:42.33 ID:H80sxW5B0<> ブーンの目に、異形が映る。


少し感覚を空けた場所にある、踊り場の大きな鏡。
そこから自分へ向かって、歪曲しながら伸びる、腕。


(;^ω^)「……!!」

ただ絶句する。
腕はそれ自体が鏡のように周囲を映し、てらてらと光っていた。
それはブーンの片足を握ると、窓枠を掴むブーンの力を遥かに超える力量で、足を鏡の方へと引っ張った。

(;^ω^)「ヘキッ!!ムフォア!!セシヴォ……!!」

ブーンの体が窓から引き剥がされ、半宙吊りで階段へと落ちる。
狙っているのかいないのか、腕はブーンの体と段が確実に衝突する位置を通過して戻っていく。
悲鳴が聞こえなくなる頃、鏡の前へぽてっとブーンの体が置かれた。
遅れて、ハインリッヒが踊り場へ到達する。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:47:56.66 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:48:23.27 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:48:42.09 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:48:42.14 ID:u52z/AhEO<> 支援ー <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:50:39.21 ID:H80sxW5B0<> 「や、や。これで良かったのかな?」

踊り場に男性の声が響いた。
ブーンは薄れかけた意識を必死に繋ぎ止め、顔のみを上げて声の主を探す。

从;゚∀从「相変わらず加減ってモンを知らねぇのな、お前は……」

しかしハインリッヒは鏡へと視線を向け、その声に対する返事を放っている。
ブーンが鏡へ目をやると、鏡の中に映る男性の姿があった。

(´・ω・`)「急だったものだから少し雑なだけだよ、失敬な」

腕を組み、少し不満げに男性が言う。
ブーンは思わず踊り場を見回すが、やはり男性の姿は無い。
まるで鏡の中だけに男性が存在しているようだ、そう考えてしまう。

(´・ω・`)「で、僕はこれからどうすれば良いの」

从 ゚∀从「あー、うーん、どうしよ。もうちょっとそいつ捕まえといて。逃げちまう」

ハインが言うのと同時に、鏡の腕がブーンの足を握る力を強める。
駄目だ拘束される。咄嗟にブーンは喉の奥から、声を捻り出した。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:51:09.30 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:51:41.40 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:52:05.73 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:52:37.00 ID:WwOL2ogW0<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:52:54.34 ID:H80sxW5B0<> (;^ω^)「った、助けて!」


(´・ω・`)「……?」

決死の思いでそう叫ぶ。
聞き入れては貰えないと昨日の思い出が囁くが、これから自分がどうされるかを考えると恐ろしかった。
ハインリッヒと鏡の中の男がきょとんとした顔でこちらを見る。少し怯んだが、ブーンは言葉を続けた。

(;^ω^)「煮込んで食われるのだけは、血を吸い尽くされるのだけは勘弁だお!!
この城の事なんて知らなかったんです!記憶喪失で寝場所が無くて、宿を借りようと思っただけなんです!
だから、だからお願い、だから…!」

だから殺さないで。そう言わんばかりに涙目で訴えるブーン。
その姿を見て、男とハインリッヒは顔を見合わせた。



すると突然、封を切り裂いたような大きな声で、顔を見合わせたまま二人は笑い出す。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:53:09.26 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:53:43.64 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:54:01.54 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:54:39.44 ID:H80sxW5B0<> 从*゚∀从「あーっはははは!!! に、煮込んで食うってお前、あははっ、あはははっ!!」

(*´・ω・`)「ぷく、くくく…!昨日ハインが変な事吹き込んだから、でしょっ、ぶふぅっ!!」



(;^ω^)「……」

ぽかんと口を開けて、ブーンはただただ笑い転げる二人を凝視していた。

从 ゚∀从「あー、いや笑った笑った、ごめんなぁ。アレ嘘」

(;^ω^)「は、はい……?」 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:55:13.86 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:55:32.48 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:55:51.66 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 00:58:07.14 ID:H80sxW5B0<> ひらひらと手を振り、至って軽い口調でハインリッヒが告げる。
突然すぎる一言にブーンは瞬きを繰り返し、目に溜まっていた涙が一筋垂れた。

(´・ω・`)「ハインが吸血鬼だとか、人間は住んでないとかの流れは一応本当だけどね。
人間を食うって話は、悪戯でここに来た人を追い出すための嘘なんだ。だから安心して良いよ」

从 ゚∀从「そーいうこった、逃げてくれるかと思ったんだけど腰抜かしちまうもんだからよ。
すまんかったな、いつも追い出す役は別の奴にやらせてるからさ。酔った勢いでつい張り切っちまって」

(´・ω・`)「いきなり”いちぬけた!”だもの、皆びっくりしてたんだから。
しかも肝心の人間さんが失神しちゃうし、ここから聞いててヒヤヒヤしたよ」

( ^ω^)「そ、それじゃえっと、化け物がどうのって話は…」
慌てて身を起こし、情けなくその場に座り込んでブーンが問う。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:58:52.21 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:59:19.62 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 00:59:37.33 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 01:00:22.98 ID:H80sxW5B0<> 从 ゚∀从「ありゃ本当だ、俺含め皆化け物ばっかさ。こいつを見りゃ判るだろ?
まあ何、人間様に危害加えるような奴は住んじゃいねぇさ。住処の無い奴らばかりここで静かに暮らしてるだけだ。
……ほら、起こしてやるから手ぇ出せ。どうだ、俺友好的だろ」

言いながら、ハインリッヒがブーンに腕を差し出す。
ブーンは少し躊躇し、恐々その腕を取る。体躯に似合わない強い力で引き上げられ、その場に立ち直した。


从 ゚∀从「さ、まずは広間に戻ってくれ。お前に手伝って欲しい事があるんだ」

( ^ω^)「僕、に?」

ブーンは自らを指差して鸚鵡返しにした。
ただの人間に何を頼むつもりなのか、という意味合いでの鸚鵡返しだが、ハインリッヒは至極笑顔だった。
ブーンは昨日感じたものとどこか似た不安を感じる。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:01:03.88 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:01:31.41 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:01:49.82 ID:LlgSbsRzO<> 支援。 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:01:49.88 ID:u52z/AhEO<> 頑張れー <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 01:02:28.44 ID:H80sxW5B0<> (´・ω・`)「そう。君じゃなきゃ出来ないし、」

从 ゚∀从「お前が来たからこそ計画出来た事だ」


そう言うと、二人して邪な笑みを浮べる。
ハインリッヒの言うとおり彼らは友好的なのだろうがやはり怖いに越した事は無い、ブーンは心の中でそう呟いた。




― 第二話 了 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:03:07.60 ID:LCrB90Nc0<> おっつー
続いて3話どうぞ! <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:03:23.91 ID:LlgSbsRzO<> 支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:03:39.78 ID:LlgSbsRzO<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:04:30.54 ID:rJ7SxApO0<> 明日月曜だし終わっとけ支援 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:05:45.86 ID:u52z/AhEO<> 乙、でいいのかな? <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:05:55.53 ID:+ITtANxfO<> 乙
すげぇ続きが気になるんだぜ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:06:23.10 ID:v/oWUelg0<> 乙か <>
◆TARUuxI8bk <><>2008/05/26(月) 01:07:02.37 ID:H80sxW5B0<> とりあえず今日の投下はここまでです、予想外に時間が掛かって内心焦りまくりました
ここまで読んで下さった方、支援下さった方々本当に本当にありがとうございました!
 
名無しで短編ばっか書いてたので初めての長編に心臓跳ね上がってます
続きは多分今週中になると思うので、また見かけたら読んでやって頂けると嬉しいです <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:08:19.79 ID:LCrB90Nc0<> ほほう長編とな?
これは期待 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:09:07.31 ID:WwOL2ogW0<> 乙。
これはまとめられてほしい <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<>sage<>2008/05/26(月) 01:11:08.14 ID:oB4xuiNS0<> 乙 <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<>sage<>2008/05/26(月) 01:15:11.75 ID:Un6FzTWI0<> 乙
ブーン小説……様変わりしたな
悪い意味でも良い意味でもないが
<> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:36:15.31 ID:u52z/AhEO<> まとめ来ないかなぁ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:39:58.33 ID:lUg3beMiO<> 明日まとめるー <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:43:55.23 ID:O42EBxoi0<> http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/soap/1205881992/

このスレに
「レスが全てチョン次郎の書き込みに思えてコピペにも悔しく怯えて長文で釣られまくるオタがいるスレはここでつか」

って書き込むとコピペに長文マジレス連投発狂してワロスwwww

オマエらでも100%釣れるぞw <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 01:47:41.84 ID:u52z/AhEO<> >>328
わーい <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 02:15:26.14 ID:LlgSbsRzO<> 誰かまとめ人来ると思ったが寝てるのかな <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 03:18:25.81 ID:e1LzOPSJ0<> オムライスにまとめきてたなりよ <> 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。<><>2008/05/26(月) 03:46:44.01 ID:iE8ziKWf0<> おう・・・これは面白い <>