以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:04:57.46 ID:9eXY6xo70, 勝負を決するまでの時間、実に一分にも満たないそも間に、選手の熱意は幾重にも交錯する。


太ももは震え、ひたすら強く握った手は痺れて感覚が無くなる。

バランスを取るのでさえ危うくなるほどに、体は限界に近づき、朦朧となる頭は「諦めろ」と悪魔の囁きを投げかけてくる。



諦めるか。



何人に抜かれたかを考える余裕などない、息を吸うたび疲労が体に強くのしかかり、呼吸すら億劫だ。

ゴールが近づいているはずだが、時間の経過は二次関数的に遅くなる。


ゴールが遠い――


次第に選手に抜かれていく――


ここまで重ねてきた、あの悪夢のような練習は……一体何のためだったのか……

自分は、ピエロじゃない。


『選手たちは最終コーナーに差し掛かりました!』 ,( ^ω^)が競輪に挑戦するようです 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:06:44.26 ID:omt2S1/sO, 推敲した? , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:07:17.65 ID:9eXY6xo70, 足を一度上げるだけで体の全神経を集中させなくてはならない、この朦朧とした意識の中で、だ。

あと幾度膝を上げろと言うのか、一向に近づかないゴールを通過することはできるのだろうか。


熱を持ったももが爆発しそうだ、体は腹筋と背筋では支えきれず、左右に大きくぶれだした。
競技中の格好いい写真など嘘っぱちだ、目をこれでもかと見開いて、歯茎から血が出んがばかりに限界まで歯を喰いしばった。
地に足をついては、衝撃が体の隅々にまでいき渡り、肌から筋肉に至るまでがボロボロと崩れ落ちる錯覚に陥った。

酸素が欲しい、しかし酸素とともに感じる疲労、体は呼吸回数に応じて重くなり、動きを鈍らせゴールを遠ざける。
息を吸うたび無数の細胞が覚醒し、疲弊を感じては壊死していく。
鋭敏となった感覚は疲労を余計にとらえては、死んでいく細胞をひとつひとつに至るまで感じ取る。

数多の犠牲を伴いながら、それでも振り返ることはせず、ひたすらに体を動かして前へ前へと進んだ。

酸欠からか世界が黒く蓋されようとしている、いけない、ゴールよ、消えるな。

自分の走った軌跡が大きくぶれだす。


ゴールはまだなのか、もう駄目だ、もう疲れた、もう走れない、もう……



『VIP地方大会優勝のブーン選手は一歩届かず、無念の7位ゴールです!』


              ( ^ω^)が競輪に挑戦するようです , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:09:27.36 ID:s+kiytov0, wktk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:10:03.68 ID:9eXY6xo70,      第一レース「無数の齟齬」


走り終わると、場内に流れたアナウンスと電光掲示板にて自分の順位を確認し、内藤は眉をひそめた。

順位は7位、全国大会へ上るには6位以上の成績が必要だった。
とうとう決勝までこぎつけたというのに、予選準決勝と痴呆の戯言に我慢をしてきたというのに、結局はこの結果だ。
これならいっそ予選で華々しく散ったほうが、耳に作るタコの数を減らせられたことだろう。

あと一歩届かなかった、しかしその一歩は深い地割れのように、内藤の立ち位置とその前方を隔てていた。

酸欠寸前の頭を落ち着かせると、大きく呼吸をして体も興奮を静めた。


そして別のプレッシャーの中、足を進めると、前には体躯のいい男が一人、仁王立ちしていた。
内藤は有無を言わず、その前に立つと肩を狭めた。

(@`@`゚Д゚)「おつかれといいたいが……全然疲れてないだろ、なんだ今の腑抜けた走りは」

(;^ω^)「……」

予選準決勝と同じ言葉を耳にしていた内藤は、耳にまた新しいタコを作ることとなった。
講演会でもあるまいのに毎度毎度同じことを言っていて、よく飽きないものだ。
少なくとも聞かされるほうの身になってもらいたい、何が楽しくて基礎も知らない現役を退いた人間の話へ耳を傾けなくてはならないのだ。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:11:41.37 ID:9eXY6xo70, (@`@`゚Д゚)「おい、分かってんのか?」

(;^ω^)「はい、すみませんお」

(#゚Д゚)「謝れば済むと思っているんだろう、そんなだから負けるんだよお前は!
  俺に謝ってどうするんだ、バカか!?」

だったら自分を怒ってどうすると言うんだ、内藤は悪態をついた。
いい加減にしてもらいたい、うんざりだ、と。

地方を代表して出場した、全国大会への最後の登竜門、なまじ大きな大会だけに平謝りで済むだろうという浅はかな考えは通用しなかった。
これはいつも以上に長くなりそうだ、いつもは30分ほどの説教だが、今日は1時間は覚悟が必要だろうか。

(;^ω^)「色々と僕をコーチしてくれたので、それを結果で返せずに申し訳なく……」

(@`@`゚Д゚)「心にもないことはいい、お前の態度を見ていれば思いも分かるってもんだ。
  俺の言うことも聞かない、今のままだとここが関の山だ、これ以上は絶対に登れない」

陸上のりの字も知らない、本で読みかじった知識を振りかざすだけの人間が何を言うか。
だったらこの男の無味乾燥な説教を聞くより、陸上専門書を読み漁ったほうがストレスも溜まらずよっぽど有意義だろう。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:12:25.94 ID:s+kiytov0, 久しぶりに文のうまい>>1が読めると聞いて , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:14:18.75 ID:9eXY6xo70, (@`@`゚Д゚)「内藤、お前、200m地点では何位だった?」

(;^ω^)「2位ですお」

(@`@`゚Д゚)「ゴールした順位は?」

(;^ω^)「7位ですお」

(#゚Д゚)「ラスト200mで5人にも抜かれる400m選手がどこにいるんだ!」

余計な御世話だ、ここにいるのだ、目の前に。

ユニフォーム姿のまま汗も拭かずにいるものだから、内藤の体が冷え出して、膝や肘といった節々が痛みだした。
ダウンを行わなくてはならない、しかしコーチはそんな初歩も知らないのだろう、まだクドクドねちっこく罵詈雑言を口にしている。

レース後すぐに説教、せめてそれくらい止めてもらえないだろうか。
そんな常識も書いていないような専門書しか読んでいないようであれば、なるほどこのコーチの実力もたかが知れている。
彼は内心で牙をむき出しながらも、表面上はコーチに従うしかなかった。

そこに、助け舟とばかりに女性の声が割って入る。

(*ノωノ)「コーチ、そろそろ最終種目が終わります。
  内藤先輩もダウンはまだのようですし、そろそろ……」

(@`@`゚Д゚)「ん、そうか、仮にも決勝だったからな、完敗したが」

棘のある言い方だったが、ここでむやみやたらに食い下がってはいけない、内藤は俯いたままこぶしを握り締めた。
スポーツ推薦で大学へ入った彼にとっては、スポーツこそ大学にいる意義なのだ、部活を辞めることなど許されない。
もっともそうでなければこんなコーチ、すぐにも殴り倒していただろうが。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:14:27.75 ID:ycbzN10g0, こういうのが、期待出来るっていうもんよ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:14:58.96 ID:omt2S1/sO, C , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:16:33.99 ID:9eXY6xo70, 陸上では決勝種目はプログラムの最後にかためて設けられる、お陰でいつもより早い10分ほどの説教で済んだ。
頭ごなしに怒っておけば選手は成長するのだろうか、本当にあのコーチはどの出版社の参考書を読んでいるのだろう。
もしかすると競技ルールや練習法ではなく精神論の本だけを読んでいるのかもしれない、ならば口うるさい理由にも合点がいく。

(*ノωノ)「内藤先輩、決勝レースお疲れ様でした。
  ……コーチは大丈夫でしたか?」

( ^ω^)「いつものことだお、別に気にしないお」

(*ノωノ)「最後の集合まであと30分くらいですが、ダウンしたほうが良くないですか?」

( ^ω^)「言われなくてもするお」

(*ノωノ)「これ、内藤先輩のジャージです。
  あ、あとタオルと飲み物も持ってきました、……邪魔でなければですが」

( ^ω^)「貰うお」

そんな上目づかいで懇願されては、否応なく良い返事しかできない。

若干疎くも感じながら、マネージャーの風羽(ふう)からタオルと飲み物を受け取る。
怒られている姿を見られていたと思うと、屈辱的でもどかしく感じるが今に始まったことでもないかと、胸中に押し込めた。
いつものように形振り構わず八つ当たりしてはいけない、それが先のように彼女を委縮させてしまっていたのだから。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:19:19.04 ID:omt2S1/sO, ('A`) , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:20:01.51 ID:9eXY6xo70, 内藤が自制しながら良い返事をすると、つぼみの様におずおずとしていた彼女は、途端に笑顔の花を開花させた。

(*ノωノ)「どうぞ」

( ^ω^)「ありがとうだお」

(*ノωノ)「それじゃ、部活のテントの片づけをしてきますので、また」

内藤は飲み物を含みつつ彼女を見送ると、手早く汗を拭いて着替えた。
それから軽くジョギングを入れてストレッチをしていると、時間はすぐにも経過する。
試合直後の説教のためか、筋肉は完全に固まってしまっていたので、強い目に柔軟した。


終わりの集合ではまたコーチが嫌味をたんまりまぶした締めの言葉を放ち、静まり返った嫌な空気で大会終わりを迎えた。

解散となるや否や内藤は荷物を背負い、バイクのキーを取り出した。
居心地の悪い競技場をさっさと後にして、わだかまりをすっきりとさせたかった。

( ^ω^)「風羽、帰るお」

(*ノωノ)「内藤先輩、ごめんなさい、ちょっと待ってもらえませんか?」

しかし彼女は内藤の誘い入れをいなすと、周囲の写真撮り係をかってでる。
どこまで周囲の気遣いをするのだろう、内藤はそこに惚れたわけでもあるが、付き合い始めて以来そこがまた不愉快に感じ始めてもいた。
もっと自分のことを優先できないのだろうかと、もどかしく、見ているだけでもイライラが募る。

風羽を放っておいて、バイクに跨ると、ヘルメットをかぶった。
嫌がらせのようにエンジンを力強く鳴り響かせたが、風羽は申し訳なさそうに「ごめん」とジェスチャーするだけでやって来ようとはしない。

大方彼女はこれもマネージャーの仕事と思い込んでいるのだろう、本気で放っておいて先に帰ろうかと考えながらも、内藤は渋々付き合った。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:20:10.09 ID:s+kiytov0, もうちょっと投下速度うpしてくれ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:22:05.00 ID:9eXY6xo70, ゆうに十分は待ったか、自分の写真を何一つと撮らずに風羽は戻ってきた。

(*ノωノ)「すみません先輩、お待たせしました」

( ^ω^)「風羽は付き合いが良すぎるお」

(*ノωノ)「そんなことないですよ、マネージャーとして……でしょうか?」

( ^ω^)「早くヘルメットかぶるお」

急かしてヘルメットを被らせると、すぐにもバイクを発進させて忌々しい競技場を後にした。

風が顔に覆い被さり、ようやくすっきりとしたところでいよいよ、内藤は「負けた」現実に対面すること叶った。
悔しさ、情けなさ、不甲斐なさ。
彼が一番悔しいのだ、コーチに論われるまでもない、苦渋な練習に耐え忍んだのは彼自身であって、もっとも辛いのは彼自身なのだ。

内藤は柄にもなく目縁に涙を溜めた。

スポーツの世界は過酷で非情だ、それゆえ感情はすぐに高まり、涙することもままある。
しかし彼の流す大抵のそれは、コーチに怒られて自分の情けなさを再確認してしまうがための悔し涙だった。
試合に負けての悔しさか、それともコーチに勝手気ままに叱られる理不尽な悔しさからなのか分からない、もどかしい涙。

後ろで内藤に捕まる風羽が、その腕の力を強めた。

(*ノωノ)「内藤先輩が一番辛いのにね、コーチも人が悪いよ……。
  でもね、みんな分かってるから、内藤先輩が頑張っていること。
  今日の先輩は格好良かった、先輩の頑張りは誰よりも私が知っているんだから」

( ^ω^)「……」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:23:41.49 ID:9eXY6xo70, 風羽の優しい言葉が彼の傷心を突き刺した。
髄にまで響き渡る痛味だった。

すぐにもバイクのスピードを上げて、風羽の声を風に流して聞こえないようにした。

(*ノωノ)「きゃッ!」

狭い路地から出てきた自転車と衝突しそうになるも関係なしに、内藤はスピードを上げ続けた。

(*ノωノ)「先輩、危ないですよ……っ!」

( ^ω^)「でもそんなの関係ねーお!!」

明日からまたあのコーチのもとでの辛い練習が始まる、今日の辛さは今日精算して、明日から心機一転臨まなくてはならない。
内藤は鬱憤をすべて晴らすかのように、スピードをぐんぐんと上げていった。


この気持ち良い風が、爽快にすべてを払拭してくれるから。


彼はこの風が……好きなんだ。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:24:04.53 ID:/G7SrskW0, 期待 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:25:43.42 ID:9eXY6xo70, (;'A`)「あぶねーな、あのバイク……」

通りから顔を出すと、途端バイクが目の前を走って行った。
制限速度を守っているとは思えない、姿はもう小さく路地の奥へと行ってしまった。

(;'A`)「ピストだったら事故ってたぞマジで……ロードでよかったぜ。
  しかし悪いことは続くもんだな、芳しくないレース成績残したばっかりだってのに、やってられないぜ」

最近はツーキニストだか知らないが、ロードバイカーが増えている。
それ自体は喜ばしいことだが、それに比例して無謀運転も増えて、真面目に練習に取り組む者としては肩身が狭くなってきている。

しかしそれは別問題、マナーがなってないライダーはロードバイクだろうと車だろうと、変わらない。
毒男(どくお)という青年は小さくなった原付の影を見て、毒を吐いた。

('A`)「まったく、気分悪いったらありゃしないぜ……」

いつまでも愚痴っていたって仕方ない、バイクシューズをペダルに固定すると、改めて毒男は走り出した。


この風を感じるのが気持ちいいのだ。

今日の結果も、さっきの出来事もすべてを忘れさせてくれる、この風こそが。


彼はこの風が……好きなんだ。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:27:14.93 ID:omt2S1/sO, 専門用語はわからないんだな , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:28:12.18 ID:9eXY6xo70, 内藤は若干の筋肉痛を伴って、次の日を迎えた。
授業中は半分うつろになりながら、一日の勉学業務をクリアする。

試合の次の日ということで体を労わって朝練を行っていなかったが、完全休養を取るつもりもない。
放課後になればグラウンドに出て、ほとんど人がいない部活へと向かった。

(*ノωノ)「あ、内藤先輩」

( ^ω^)「どうもだお」

(*ノωノ)「昨日大会だったのに、体は大丈夫なんですか?
  無理はいけませんよ、休む時はしっかり休まないと」

( ^ω^)「だから朝練はなしにしたお、もう大丈夫だお」

(*ノωノ)「相変わらず丈夫ですね」

風羽こそ、休みの日までマネージャー業務大変だなと、内心ぼやいた。
おそらくこれから昨日の大会の記録をまとめるのだろう、ほかの部員すら休む日にまでご苦労なことだ。

ご苦労というならば、顧問も同様だ。
一体どこで内藤が本日の部活に顔を出すと知ったのか、いちいち休みの日まで顔を見せて、本当にどこまで内藤の気分を盛り下げれば気が済むのか。

(@`@`゚Д゚)「おう、昨日ので限界だったんだろう、今日くらい休んどけ」

昨日の結果が限界だとは、随分棘のある言い方だ。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:28:27.85 ID:X/5NwrokO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:29:45.55 ID:9eXY6xo70, ( ^ω^)「全然ですお、不完全燃焼だったので今日もいつも通り大丈夫ですお」

(@`@`゚Д゚)「そうか、だったら今日のメニューは300×10を45"でやっとけ」

( ^ω^)「はいですお」

挑戦状のつもりか、顧問は随分と腑抜けた練習を要求してきた。
元気よく挨拶したのち、内藤は口をとがらせながらアップを始めた。

仮にも試合後だ、ジョギングを長くとり、ストレッチも入念に行っておく。
内藤は顧問がグランドから姿を消したことを確認し、ようやく本格的に体を動かし始める。
試合に体を合わせただけあって、試合後は意外にも体が動くから不思議だ。

(*ノωノ)「先輩、300m計りましょうか?」

( ^ω^)「別にいいお、今日は坂道ダッシュしてくるお」

(*ノωノ)「え……でも、試合後だし、コーチは……今日くらいは落とし目でもいいんじゃないですか?
  また明日から練習はありますし」

( ^ω^)「大丈夫だお。
  また、いつも通り適当にタイム書いておいてくれお」

練習を勝手にやったとばれると、また顧問が口うるさい。
風羽に頼んでタイムを捏造してもらうのは、コーチがいない日では当たり前になっていた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:31:22.03 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「先輩がそう言うならそうしますが……」

( ^ω^)「さすが風羽、助かるお」

大丈夫だと自信満々の笑顔を向けてやると、つられて風羽も笑顔を見せた。

そのまま内藤はスタート地点に向かい、スタートダッシュをして体の調子を再確認。
やはり体は快調だ、太もももよく上がるし、腕の回転も良く体の軸が安定している。
スムーズな前傾スタートが、気持ちよくきれた。

50mほどのダッシュを数回行うと、覚醒し始めた体のまま近場の坂道へとジョギングで移動した。
おおよそ200mの勾配のきつい坂道が、2キロほど離れたところにある。

( ^ω^)「300mを十本……それじゃあ坂道ダッシュは十五本行うかお」

その本数にゲンナリとしながらも、コーチの言葉を思い出し、胆を舐める思いで鼓舞をしてジョギングをした。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:32:26.77 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「……コーチ」

(@`@`゚Д゚)「あの馬鹿は、今日も自主練か」

(*ノωノ)「はい、すみません……私も言ったのですが、聞かなくて……」

(@`@`゚Д゚)「いいよ、もうあいつには構っちゃいられない、何言っても聞きやしない。
  それで、今日のメニューは何だって?」

(*ノωノ)「坂道ダッシュって言っていました」

(@`@`゚Д゚)「そうか。ああ、昨日の結果は?」

(*ノωノ)「これです」

風羽は胸に抱いていた数冊のノートから一冊を選り、コーチに手渡した。
そこには昨日のタイムが細かに書かれている。
手動計測のため参考タイムだが、100m単位で選手の記録が書かれていた。

(@`@`゚Д゚)「やっぱりこいつは短距離だけだな、そもそも400を走る体じゃないよ。
  走り方も、スタイルも……これ以上我を貫いているようじゃ、もう絶対に伸びない。
  何か陸上に改めて向かう、いい方法でもあればなぁ……」

コーチは諦めたような深いため息を吐いて、その場は重苦しい空気に支配された。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:33:13.02 ID:omt2S1/sO, あぷー , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:35:14.94 ID:9eXY6xo70, ('A`)「まったく、日本の公道は危ないったらありゃしないな」

歩道すら満足に整備されておらず、路上駐車の団子となっている公道に嫌気がさしたドクオは、ビルの隙間にロードバイクをカーブさせた。
田んぼの多い、山へ向かう道にコースを変更するのだ。

('A`)「本当は歩道じゃなくて道路を走らなきゃいかんはずなんだがな」

日本の道路は、ロードバイカーに優しいとは言えない、むしろ心配りなど何一つないと言っても誤謬ないだろう。
道を走っていてはクラクションを鳴らされ、どやされる。
デコボコな歩道を走っていてはスピードも出せず、タイヤの細いロードバイクではとても危ない。

どこへいっても煙たがられる、国民の理解が得られていないのだ。

('A`)「……ん?」

前で、坂道へ向かって構えている男がいた。
近くの大学の運動部だろう、力強く走り出したその男を、後ろから勢いよく抜き去った。


(;^ω^)(……! ロードバイクかお……危ないお)


(;'A`)「ふっ、ふっ……、やっぱこの坂はきっついな……!」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:37:25.49 ID:9eXY6xo70, とりあえず第一話終わりで、このまま続けます。
専門用語については後述しますので、今は流しておいてください。
投下速度はすみません、頑張ります。

あと、22行規制でしたかkwsk教えてもらえると助かります……。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:39:40.02 ID:9eXY6xo70,      第二レース「発端の事件」


10月末、肌寒いこの時期に、一年を通して最後の主要陸上競技大会となる秋季試合が行われた。
新人である一年生もここから試合に出る人が多く、試合は予想以上の人数とともに、一層の白熱を見せる。

太陽が真南に向かう途中、まだ風が強く吹きすさぶ中、内藤は200mのスタート地点で体を動かしていた。
今しがた一組目が出場したばかり、内藤の出番は十組目、今しばらく時間がある。
体を冷やさないようにと、軽く足踏みを繰り返した。

九組目が用意するころ、着ていたウインドブレーカーを荷物置き場に投げつけて、地面を思いっきり踏みつけた。

( ^ω^)「……」

大きく呼吸をし、また地面を思いっきり踏みつける。
そのまま体ごと、垂直に大きく跳ねた。

バネは十分に溜まっている、体調も悪くない。
唯一悪いものがあるならば、気分だった。

本来であれば内藤はこの試合も400mに出場するはずだった、それが3週間前、突然コーチから200mに出すと言われた。
寝耳に水だったが、すでに登録したと言われてしまえばそれまでだ。

棄権する気でいたのだが、「コーチには考えがあるんだよ」と風羽にたしなめられて、渋々参加することになった。
ここで情けない記録を出せば、コーチも諦めるだろうという浅はかな魂胆もあったのだが、そこはやはりスポーツ選手。
出場確認を済ませれば、負けたくない気持ちが先立ち、走る気満々となってしまった自分への嫌悪感が不機嫌に拍車をかけていた。

  「十組目、準備して」

内藤はゆっくりと、自分のレーンへ向かって歩き出した。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:40:39.94 ID:76wUivZl0, 一行目に文かスペースを入れておけば30行まで書ける
一行目が空行だったら22行以上かくと弾かれる
以上だ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:40:59.47 ID:omt2S1/sO, wktk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:41:30.58 ID:9eXY6xo70, 内藤がスタートブロックの足位置を合わせている姿を、風羽はゴール地点から見守っていた。

今回内藤が200mに出場するのは、風羽とコーチの取り計らいだった。
これで内藤が良い記録を出してくれれば、気分を良くし、少しでも仲違いが収まるだろうかと淡い期待を込めながら。
レースを楽しめるようになってくれればという、光明を抱きながら。

(*ノωノ)(先輩、頑張ってください……)

内藤のスタート練習を見る限り、やはりいい感じだ。
周りの選手と比べても遜色ない、200mの参考記録を持たないために一番内側のレーンを走ることとなっているが、十分に期待の持てるフォームだった。


このレースが、内藤の転機となることを信じて。

  「位置について」

選手がそれぞれ、スタートで構えた。
内藤は一番最後にクラウチングの形を作る、それだけ落ち着き、自分のペースで勝負しようという意思の表れだ。
彼が本気で走る気で走ることを理解し、風羽は安堵の息をついた。

  「ようい……」

大丈夫だ、彼のことは誰よりも彼女が知っている。

彼ならいける、勝てる。


大きくピストルの音が響き、続いて盛大な応援が競技場に轟いた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:43:14.20 ID:9eXY6xo70, スタートの五歩ほどで、内藤の速さは突出していた。

他と比べても一倍前傾で、腕の振りも力強い。
腰の位置も安定しており、一歩の力強さも飛びぬけていた。


体を上げきった時には、カーブの関係上少し前方からスタートしている隣レーンの選手に並んでいた。

ここで突然膝の上りが抑え気味になる。
軸はしっかりしている、腕も振れている。

内藤の表情を見れば、息を乱しながらも辛さをおくびにも出さず、隣レーンの選手をうかがう素振りすらあった。


余裕なのだ。


勝利を確信し、どれくらいの速さで走ってゴールするのか算段に入ったのだ。
まだ準決勝と決勝が残っている、予選で全力を出し切ってしまってはいけない、どの程度で走ればよいのかと、選手と自分を見比べているのだ。


2位までが準決勝に残れる、内藤はメインのストレートで再びスピードを上げ、危なげなく2位で予選を通過した。



風羽ですら予想だにしないほどの快走を、彼は魅せた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:44:40.58 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「内藤先輩、お疲れ様です!」


風羽がタオルと着替えを持って内藤に駆け寄ると、彼は不思議そうな顔で、地面に足を当てたり離したりを繰り返していた。

( ^ω^)「ん……どうもだお」

(*ノωノ)「どうしたんですか、足?
  もしかして、痛めちゃったんですか?」

( ^ω^)「そうじゃないお」

(*ノωノ)「でも、いきなり200mなんて……やっぱり無理はいけなかったですよね……。
  準決勝、棄権しますか?」

( ^ω^)「そうじゃないお、ただ……」

内藤は風羽に向かって、含んだ言葉の先を放った。

( ^ω^)「ただ、想像以上に足が動いて驚いているだけだお」

そして内藤は、どれだけぶりになるだろう、走り終わった後に滅多に見せることのない、満面の笑みを見せた。
いつも自分の走りやタイムを見返してはしかめっ面をし、コーチの説教へ気力なく向かうばかりだった彼。
練習でもサボったり力を抜くことを知らず、愚直に自分を追い込むことしかできない不器用だった彼。

走ることの楽しさを忘れていたとしか思えなかった彼が、とうとう見せた笑顔。
内藤が200mに出場したことはやはり正しかったのだと、風羽は確信した。

思わず彼女からも笑顔がこぼれる。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:45:13.66 ID:TIsWvJtsO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:46:03.88 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「何調子いい事言っているんですか、次も期待していますからね。
  先輩、格好良かったですよ、余裕まで見せて最高の走りでした」

( ^ω^)「仮にもVIP地域じゃ400mで優勝しているんだお、200mでも余裕だお」

言いながらガッツポーズとともに見せる笑顔は、やはり内藤が滅多に見せることのない、最高の笑顔だった。




予選を2位のギリギリで突破したからだろうか、内藤は準決勝も一番内側からのスタートだったが、
まだ余力を残しているだろう走りで2位通過し、決勝進出を果たした。

カーブでは予選同様減速して見せたが、そこで周りを見て、直線で抜き去る見事な走りだった。
準決勝と決勝の間は休憩時間が少ないも、彼は平気そうにダウン、そして空き時間にはストレッチを繰り返してた。


風羽は手応えを感じていた。

内藤の走りは、十分に決勝で通用すると。

優勝とまでいかないだろう、それでも全力を出せば3位には十分食い込めるだろうと。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:47:30.95 ID:9eXY6xo70, 時刻は15時を過ぎたか、競技場に200mの決勝アナウンスが鳴り響いた。

内藤は2レーン、内側から二番目だった。

(*ノωノ)(……?)

風羽はふと、その違和感に気付いた。
内藤から今までのような覇気を感じない、かといって不穏が感じられるわけでもない。
気だるげ、いや、その表現も的を得ていない。

(*ノωノ)(先輩……?)

走る前の集中している姿は400mの出場で幾度と見ている、それとは全く別物だった。
その証拠に、スタートの練習からも、気力は感じられない。
目つきこそ真剣だが、どこを見ているのかが分からなかった。

審判が、ピストルを構えてスタートラインへ並ぶよう指示をした。


  「いちについて」

杞憂に終わるならばいい、しかし何だろうか。
今までに見たことのない内藤の感じに、風羽の気持ちは煽られるばかりだった。
審判の合図が殊に遅く感じた。

  「よーい……」


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:49:29.58 ID:9eXY6xo70, ピストルの音とともに、内藤はありったけの力を足に込め、スタートブロックを蹴った。
地面に激突するのではないかというほど体を前のめりにし、腕を回転させてむりやり太ももを動かす。

地面をとらえているのが分かる、力の限り地面を蹴れている。
ぐんぐんとスピードが上がっていくのを自分自身でも感じる、最高の出だしだった。

ぐっと顔をあげると、さすがは決勝か、右にいる選手が目に入った。

レーンごとのスタートラインの距離差を考えると、走行距離でみれば同じくらいか。
しかし相手はスピードを落とす気配を見せない。
さすがの内藤とて、予選や準決勝のようにカーブでスピードを落としていては、勝利を手中に収めることはできない。


――負けたくない。



さらに内藤はグイと足を上げ、腕を回した。


カーブを回りながらも、スピードは落ちない、むしろ上がっていく。



瞬間、内藤の体が浮いた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:50:18.74 ID:W6Ngj985O, まさかあの人じゃないよな
支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:50:55.00 ID:TIsWvJtsO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:51:31.57 ID:omt2S1/sO, 内藤怪我→競輪に転向? , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:52:07.53 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「せんぱっ……」

腰が高い、着地足が地面を捉えない、内藤の体はそのスピードを保ちつつ、頭から突き刺さるように倒れ込んだ。

肩と側頭部を競技場に敷かれた硬いゴムに激突させる。
恐ろしいまでの圧力によって、皮膚が擦り剥けたのが感知できた。

それでも勢いは衰えず、顔で一度弾み、首を軸に体は頭を追い越す。
とっさの反応で体をひねり、横向きに派手に転がった。

操り人形のように、面白いくらいに体全体はバラバラに動き、勢いに身を任せるばかりだった。

始めの頭部の激突ですでに目の前は真っ暗だ、頭も回らず、チクッと針に刺されでもしたかのような痛みしか知覚できなかった。


進行方向に頭を転がした内藤を見て、隣のレーンを走っていた選手が慌てるも、走る勢いは止まらない。

選手はスパイクを履いている、これで踏みでもすれば傷程度では済まない、骨に穴があく。
しかもその前にあるのは頭だ、踏みつけたなら死んだとしても不思議ではない。

避けようとするも、慌てての回避行動のため、バランスを崩す。
つい踏みとどまろうと出した足が、内藤の体に向かう。

ギリギリで内藤の手前で踏みとどまるも、続いて出した足が内藤の後頭部をものの見事に蹴り上げた。


意識のなくなった内藤はなす術もなく、再び数度、跳ねた。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:52:19.83 ID:rEsDoRxz0, まさかのあの人と聞いて , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:53:12.12 ID:9eXY6xo70, 川沿いのなだらかな道を、毒男はゆっくりと走っていた。
練習後の疲労抜きとしてロードバイクはいい、実際に外へ出れば気持ちもさっぱりして一石二鳥だ。
ローラー台だけではこうも涼しく爽快にとはいかない。

('A`)「もうすぐふるさとダービーだからか、今日の高良(たから)師匠は気合入っていたなぁ……。
  しっかし練習きつくなるのも参ったもんだ」

愚痴を言いながらロードバイクをまったり運転させていると、長閑な風景に似合わぬ音が大きく近づいてきた。

('A`)(救急車……?)

そのまま救急車は川沿いにある、市営競技場へと大慌てで入っていく。


('A`)「……おーおー、物騒な世の中だな」

そんな的外れな事を思いながら、自分こそ事故してはいけないなと気を引き締めた。
試合中の事故ならいざ知らず、練習中の事故はファンへの冒涜ともなりかねない。
信頼を失っては、斡旋を受けられにくくもなるだろう。

('A`)(やっぱり疲労抜きはピストより、ロードバイクで安全に、だな……) , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:55:37.38 ID:9eXY6xo70, とりあえず二話終了です。
こうやって見ると地の文ばかりで読みにくく申し訳ないです。
少し休憩いただきます、次は22時くらい投下再開させていただきます。

>>29
ありがとうございます、中々書き込みが反映されなかったので……肝に銘じて投下します。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 21:58:32.65 ID:SicIFC+t0 <:496276782>?2BP(0), 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:00:46.68 ID:9eXY6xo70,      第三レース「狂乱の歯車」


事故当時の内藤は体全体が血だるまとなっており、側頭部からの出血が殊にひどかった。
両足がつった状態で痙攣しており、意識がないにも拘らず体は小刻みに動いていた。
驚きつつも、悲鳴が上がるばかりで、誰もが近づくのを憚られる異様な光景だった。


病院に搬送されてから、早急な処置を施され、頭部を5針も縫った。
しかしながら不幸中の幸いにも、後々に響くことはないそうだ。


それでも過度な運動は禁止させられ、筋トレすら許されぬ薬づけの生活が、3ヵ月間も一方的に約束された。


内藤はおよそ3週間の入院生活を送り、ようやく待ちに待った帰宅許可が出された。
ようやくの外出だったが、気が滅入りそうな入院生活にストレスは異常なほどに積もり溜まっていた。
本来であればすぐに大学の講義へ向かうべきだろうが、これ以上黙々と座り込んでいては、ストレスで体がどうにかしてしまう。

結局昼過ぎまで町中をうろついて、部活動が始まるだろう時間を見計らって大学へと向かった。

久方ぶりになる部活動への参加だったが、部員は歓迎どころか驚愕した顔しか向けなかった。
内藤は顔の左半分に布をあてがった痛々しい姿だ、それも当然だろう。
長袖で隠してはいたが、体中が包帯で雁字搦めなのも明白だった。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:02:01.69 ID:X/5NwrokO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:02:40.79 ID:/G7SrskW0, 大支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:02:57.75 ID:9eXY6xo70, ( ^ω^)「……」


その上露骨に不機嫌をアピールしてくるものだから、誰一人として話しかけられるわけがない。
彼自身、もともと他人とつるむ性格ではないのだから尚更だ。

内藤の登場に、明らかに邪険な素振りを見せる人間ばかりだった。


部活動の開始として、主将が集合をかける。
それぞれ自由に散っていた蜘蛛の子が、一か所に集まって大きな円を作った。

  「本日の練習を始める前に……今日はようやく、内藤先輩が復帰しました。
  それじゃ、内藤先輩、何か一言」

( ^ω^)「……」

内藤の一言となっても、主将以外の誰もが内藤のほうを見なかった。
囃す者もいなかったが、一瞬にして空気が重く気まずいものとなった。

( ^ω^)「痛々しい姿で済まないけど、ようやく復帰しましたお」

以上で終わりだと合図すると、主将は驚いて目を丸くした。
しかし内藤だって、こうも邪険にされているのに、「改めてよろしく」などと気の利いた言葉を放つ気になどなれやしなかった。

  「……内藤先輩、ありがとうございます。
  運動できるのはしばらく後のようですが、たまにはこうやって顔を見せては、我々へ激を飛ばしてもらいたいです。
  それでは、今日もよろしくお願いします!」

  「「おねがいしまーす!」」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:05:12.22 ID:9eXY6xo70, 挨拶が終わり輪から抜け出すと、すぐにも風羽が内藤の元へと駆けてくる。

(*ノωノ)「先輩! 病院良かったんですか?」

( ^ω^)「今日にようやく許可が出たお」

(*ノωノ)「先輩……」

怒られるのだろうか、厄介だとすぐに去ろうとした内藤の腕を、風羽は掴んだ。
しかし彼女はその目を背け、ぐっと口を強く締めて言葉を飲み込む。

( ^ω^)「なんだお」

(*ノωノ)「……。なんで、そんなこと黙っているんですか?」

( ^ω^)「……」

(*ノωノ)「私、心配していたんですから、すっごく、ずっと。
  その、次からは……ちゃんと教えてほしい、じゃないと私、悔しい……」

それだけ想ってもらえることへの嬉しさと、今にも泣き出しそうな表情への疎ましさが、内藤の中で衝突した。
恋人同士だからといって、特別に互いを報告し合う必要がどこにあるのか。

( ^ω^)「すまないお……」

紙一重、内藤は風羽の気持ちを尊重した。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:07:02.69 ID:9eXY6xo70, 風羽は自分を語らない女性だった。
そして常に己の意見を表に出さず、相手の顔色ばかりを窺って話をしていた。
それは彼氏となった内藤とて例外ではない、むしろ恋人となったことでその傾向が強くなったようにすら感じた。

そここそが内藤の鼻についた。
付き合い始めこそその気遣いに居心地の良さを覚えていたが、ひと月もすればどこかで自分を警戒しているのではないだろうかと勘繰ってしまうのだ。
一方的に気を使われているようで、面倒を見られているようで気分悪く感じることが多くなった。

いつからだろうか、彼女の意思が分からなくなったのは。

今でも彼女の居心地の良さは変わっていない。
しかし一言一言が、時に内藤の精神を強く刺激した。


( ^ω^)(自分のことを語らないくせに、僕の事は教えろかお。
  随分と身勝手なものだお)


風羽と話しながらも、周囲の視線が気になって気が滅入りそうだった。

スポーツ推薦で学校に入った内藤だ、怪我をしてはその価値がない、学校に居場所がないも同義だった。
今まではその足があったから部活でも一匹オオカミを貫き気丈にいたが、いざ足を失ってしまってはなんと孤独でひた向きなのだろう。
どうして今大学にいるのかと言われてしまえば、その答えを何一つとして持ち合わせていなかった。

すべての視線が彼を見下していた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:08:47.32 ID:9eXY6xo70, 内藤は悪態をつきながら辺りを覗うと、コーチと目が合った。
互いにそのまま目を背けることができず、挑戦的な視線と後ろめたい視線が交錯した。

挑戦的な目線の内藤は、思わず出た笑みで風羽に話しかける。

( ^ω^)「風羽、部室にあったストップウォッチを持ってきてもらえるかお?」

(*ノωノ)「あ……はい、今から持ってきますね」

内藤が一緒にタイムを計測してくれるのだと早合点した風羽は、すぐにも駆けて行った。
彼女がいなくなれば怖いものは無い、他の誰も自分を止めようとする者はいないだろうと、内藤はその足をコーチへ向けた。

部員は内藤から逃げるようにアップへと向かい、内藤とコーチは二人きり、ギスギスしい空気で向かい合った。

(@`@`゚Д゚)「足は、どれくらいかかりそうなんだ?」

( ^ω^)「最低二カ月だそうだお」

(@`@`゚Д゚)「そうか……」

一カ月サバを読んだが、その返答をコーチは信じたようだ。

(@`@`゚Д゚)「二ヶ月は運動禁止か、筋トレも駄目だろうな、くれぐれも安静にな」

( ^ω^)「……」

(;゚Д゚)「おい内藤、まさか……!」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:09:52.39 ID:9eXY6xo70, 医者からも同じことを言われていた、人間の治癒能力は安静にしている状態が一番高いから、くれぐれも疲労を溜めるなと。
運動は当然、筋トレだって論外だと直接宣告された。
それでも隠れて、布団の中で上半身を浮かしたり、足を上げたりと内藤なりの方法で、ひっそりと病院内ですら筋トレをしていたのだ。

(;゚Д゚)「二ヶ月は……いや、せめて一カ月は我慢しろ!」

( ^ω^)「よくもそんな口が利けるもんだお」

(#゚Д゚)「わかるだろう、疲労がたまれば治癒力が低下する!
  意地を張る場合じゃないだろ!」

(#^ω^)「誰のせいでこんな目にあったと思っているんだお!
  無理やり練習させて、体を壊させるように誘導していたのは今に始まったことじゃないお!
  ずっと、あんたが僕に練習を指示して積み重ねさせた結果がこれなんだお!」

なまじっか医者と同じ正しいことを言うものだから、へそ曲がりにも内藤は食いかかってしまった。

今まで間違っていたくせに、いまさら正論を振りかざして己の正しさを強調するな。
お前は常に間違っているんだ、命令するな、お前の言う事なんて聞く気はさらさらない。

(;゚Д゚)「そう思うだろう、その件については謝るしかできない、本当にすまない。
  大人気なかったと自分でも分かっている、土下座でもなんでもしよう。
  だからこれ以上自分の体を傷つけるような真似だけはしないでくれ!」

(#^ω^)「なんだお、もう手遅れなんだお、そのくせ何言ってんだお!」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:11:14.28 ID:ycbzN10g0, あぷーを見るとキタイしてしまう支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:11:19.76 ID:9eXY6xo70, (;゚Д゚)「俺だってお前をどう扱っていいのか分からなかったんだ。
  許せとは言わない、だが、自分の体だけは気遣ってやってくれ。
  俺のためだとかそんなんじゃなくていい、だから、頼む」

(#^ω^)「ふざけるなお、僕は退部を言いに来たんだお!
  もうお前なんかについていけないお、こんなときばかり常識を持った大人ぶって!
  お前なんて誰も信用してついてきていないお!」

言い合っている二人をさすがに放っておけないとみたか、主将が慌てて駆け寄ってくる。
しかし内藤は目もくれずに、叫ぶことを止めない。

(#^ω^)「糞コーチが、お前なんてコーチ失格だお、もう二度と人に教えるな!」

  「内藤先輩!」

(#^ω^)「うるさいお、この機にお前も言ってやるお、この糞コーチなんかにこれ以上教わっていても時間の無駄だお!」

  「……」

主将は内藤の言葉を反芻して少し黙ったが、その後、内藤に鋭い目線を向けて口を開いた。

  「内藤先輩、コーチは我々のために色々と尽くしてくれています、その言葉は無いと思います」

(;^ω^)「お……!?」

内藤は味方をつけてコーチを言い負かそうと算段していたが、主将の思わぬ言葉に面を喰らった。
何を言っているんだ、このコーチを言い負かすのは今しかないぞ、これ以上このコーチの言いなりになっていてもいいのか。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:11:24.25 ID:s+kiytov0, wkwk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:13:17.97 ID:9eXY6xo70, (;^ω^)「その言葉も何も、この馬鹿コーチがあり得ないんだお、僕の足を壊させたのもこのコーチだお!
  分からないわけじゃないだろお、今こいつにコーチとしていかに不向きかを分からせないで、一体いつ分からせるのかお!?
  このまま学び続けていいのかお、これ以上言いなりになっていてもいいのかお!?」

  「構いません」

(;^ω^)「……!!」

毅然と言い放った主将に内藤は言葉を失った。
なんだ、結局のところコーチが正しいんだ、主将だってこのコーチに内心何を思おうと、歯向かうなんて思考は出てこないのだ。

ふざけるな、上司には逆らえないものだと脳裏に刷り込まれた下らない人間が。
これ以上は時間の無駄だ、こんな主将のいる部活など、やっていけない。

(#^ω^)「ああ、仲良しこよしな下らない部活だってことはわかったお。
  もういいお、やっぱり僕にこの部活は合わないお。今日限りでさようならするお」

(;゚Д゚)「あ、おい……っ!」

もっと温和に済ませようと、怒りたくない怒りたくないと思っていたが、叶わなかった。

内藤は捨て台詞を残して、止めようとしたコーチの手を振り払い、棒のように折れ曲がらない足を動かしてその場を去った。
思うように稼働しない足がもどかしく、奥歯を噛み締めて痛みに耐えながら、振り向くこともせずに足を動かすことに集中する。

学校へ来た時は退部宣言に心が乗らなかったが、いざその場に立ってみればなんてことはない、我を失って躊躇せず「退部」を宣言してしまった。


歩いていると、ジョギング中の陸上部メンバーとすれ違った。
誰一人からも挨拶は無かった。
, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:15:33.46 ID:9eXY6xo70, 内藤は一人暮らしの住宅へ帰ると、その虚しさに何をする気も起きなかった。

季節は12月半ば、夕刻ともなれば気温はみるみる下がってくる。


寒いと思いながらも、何をする気も起きずに内藤は座り込んだ。


期せずして涙が瞼に溜まった。
そんなに涙もろいわけでもないのに。


走ることを失って――

プライドもなくなって――


歩いているだけで周囲から見下されているように感じてしまう自分の弱さ。
運動推薦で勝ち取った居場所は、走ることがなくなった途端、学校からも部活からも消え去っていった。

唯一残った居場所が、一人物哀しいこの部屋だ。


なんて脆く、上辺ばかりでハリボテのような人生だったのだろう、走れなくなっただけで全てを失ったのだ。
他に誇れるものなど、自身ですら思いつかなかった。


幕切れは、実にあっけなかった。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,sage,2008/03/21(金) 22:16:42.05 ID:/LJ2KWheO, しえん , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:17:10.24 ID:9eXY6xo70, ぼうといつまでも感傷に浸っているところだっただろう、内藤の思考を遮る音が部屋に響いた。


     コンコン


門扉を小さく叩く音。

静寂に響く、優しい音。


淡い期待が内藤の脳裏を掠めた。


     コンコン


催促するでもなく、控え目に、確認するかのようなノック音。


間違いない。


内藤は慌てて立ち上がると、足の痛みも忘れて無我夢中に玄関へと駆けた。

覗き穴から外を確認もせずに、ドアを開けた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,sage,2008/03/21(金) 22:18:52.42 ID:/LJ2KWheO, しえん , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:19:26.57 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「あ、良かったです、先輩が帰ってなかったらどうしようかなって思っていました」

ドアの外には、望み通りの人物がいた。
両手には重そうに、買い物袋を掲げている。

(*ノωノ)「とりあえずの、退院祝いをしようかなって思って。
  部活は無理言って先に帰ってきちゃいました」

ばつが悪そうに笑ってみせる、その笑顔が何よりも可愛かった。
思わず涙腺が緩み、再び内藤の目に涙が溜まる。

泣いている顔を隠したいがばかりに、内藤は咄嗟に風羽を抱きしめた。

(*ノωノ)「え、せん……ぱい?」

(  ω )「……」

内藤が無言でいると、風羽もそれ以上何を言うこともなかった。
彼女も目を瞑り、そっと内藤を抱き返した。


彼女は誰よりも内藤の辛さを感じ取り、受け止めた。
その度量で、彼の悲しみをすべて抱擁した。



しばらく二人は抱き合って、互いに冷えた体と心を温め合った。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:20:55.47 ID:9eXY6xo70, 内藤が腕の力を弱めた時を見計らい、風羽が「荷物、中に入れてもいいかな?」と切り出し、ようやく部屋の中に入る。
小ざっぱりとした部屋は、少し埃っぽさを感じた。

内藤は壁を背に座り、台所に立つ風羽を眺めていた。

(*ノωノ)「家から鍋持ってきましたし、すき焼きでいいですよね」

( ^ω^)「それよりも、こっちに来てほしいお」

(*ノωノ)「……うん」

風羽は笑顔を向けて、内藤の隣に座る。
その風羽に、内藤は寄り添かかった。
いつもの彼ならばまずないだろう、甘え方だった。

風羽に甘えてはいけない、そう自分に言い聞かせる内藤の心内を読んでか、風羽は代弁するかのように言葉を紡いだ。

(*ノωノ)「先輩……やめないで、ください」

( ^ω^)「……走ることをかお?」

(*ノωノ)「はい」

しばらく二人共に無言だった。
頭も回らないまま、考えも決まらずに内藤は口を動かしていた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,sage,2008/03/21(金) 22:22:44.43 ID:/LJ2KWheO, しえん , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:22:55.30 ID:SicIFC+t0 <:1519848277>?2BP(0), これがvipクオリティー???? , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:22:58.85 ID:9eXY6xo70, ( ^ω^)「僕に居場所はもうないお」

(*ノωノ)「そんなことないです」

( ^ω^)「無理しなくてもいいお、僕は風羽みたいに強くもないお。
  交友もなければ、走ること以外に何一つと胸を張れるものもないお。
  走れなくなった僕に、部活は当然学校にいる場所なんてないんだお」

(*ノωノ)「そんなことないです!」

風羽が珍しく口調を強め、内藤に目を向けた。
おどおどしい彼に対し、彼女の眼はまっすぐに彼を捉えていた。

(*ノωノ)「私は先輩が言うほど強くありません、だから一緒に支えあいましょうよ。
  先輩の居場所は私が作ります、私のそばにはいつも、内藤先輩の特等席があります。
  だから先輩も、私の居場所を作ってください。
  つまらなそうな顔ばかりじゃなくて、たまには……私に甘えてくださいよ、ね」

彼女の心からの懇願だった。
普段から意思を見せず、何一つとねだることのない彼女が見せる、初めての我がままだった。

そうだ、内藤は悔しいのだ、そして自分の居場所のなさと自分の価値のなさにこうも嘆き苦しんでいるのだ。
そんな心情をどうしてこうも分かってくれるのだ、どうしてこうも欲しい言葉をかけてくれるのだろう。
どうしてこんな自分のために、彼女は尽力してくれるのだろう。

風羽も、内藤に体を預けた。
内藤はそんな彼女の肩に手をやり、強く自分の方へ寄せた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:24:45.40 ID:9eXY6xo70, (*ノωノ)「私ができる限りのサポートをします、一緒に、支えあいましょうよ」

そうだ、こんなにも近くに居場所はあったのだ。
灯台元暗しとは言ったものだ、内藤はその自分の居場所と居心地のよさ、そして自身の存在価値が見えていなかった。

彼女がいるのだ。

今日、今確信した。
彼女こそが内藤のすべてであって、彼女以上のものなど存在しなかったのだ。
足が壊れたことがどうした、それでも彼女が自分を見てくれるのに、他に何を嘆こうというのか。


( ^ω^)「僕は……中学のころは200m選手だったんだお……」

内藤自身、風羽に己の事を何も語っていなかった。
語る必要を感じなかったし、居心地の良さに酔いしれていた内藤にとってそんなものは二の次だったのだ。


そんな彼が信頼の証しにできることは、恥ずかしながら、彼女に甘えることだけだった。


( ^ω^)「その時に右足首を怪我をして以来、トップスピードでカーブを曲がると体が突然跳ねるんだお。
  トラウマになっているんだお、足首を過剰に気にして、体が危険を示すんだお……
  それ以来だお、僕が200mを止めて、400mを目指したのは」

高校時代より誰にも話していない、昔の話。
内藤はずっと一人で抱えてきたのだ、そして自分には400mが天職だと言い聞かせるように、無理やり練習を繰り返したのだ。
躍起になって、逃げただなんて思いたくなくて。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:26:22.43 ID:+haMDGuK0, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:26:24.12 ID:9eXY6xo70, ( ;ω;)「本当は怖かったんだお、あの大会の時、200mが怖くて、予選も本気で走れなかったんだお。
  風羽の笑顔に助けて欲しくて、でも逃げたくなくて、だからただ笑うことしかできなかったんだお。
  そんな気持ちの混沌としていた中、走れるわけなかったんだお、当然の結果だったんだお……」

(*ノωノ)「先輩……私こそごめんなさい、とんだ勘違いでした。
  あの時は先輩が本当に陸上を楽しめていただなんて思っていて、見当違いも甚だしいですよね。
  そんなにも辛かったなんて露ほども汲み取れていなくて……」

( ;ω;)「風羽は悪くないお」

(*ノωノ)「いいえ、私が悪いんです。
  やっぱり先輩、部に戻ってください。
  私はもう何もしませんから、内藤先輩もコーチも、何も悪くないんです」

内藤はコーチが悪くないという言葉にムッとしてしまった。
そればかりは腑に落ちない、できれば聞きたくない単語を、まさか庇う形で出されるとは思わなかった。

( ^ω^)「……それだけは納得できないお、僕がこんなにも悩んで、辛いのはアイツのせいだお……。
  風羽、すまないお、でもそれだけは言わないでほしいお。
  アイツだけは庇わないで欲しいお」

怒鳴り出したいような気持ちを抑えて、内藤は風羽に懇願した。
そうだ、こうも辛い思いをして、風羽を信頼しているとはいえこうも情けない姿を見せる事となっているのはコーチのせいなのだ。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:27:46.93 ID:MY+8ca7x0, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:28:07.74 ID:X/5NwrokO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:28:13.83 ID:s+kiytov0, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:28:18.27 ID:9eXY6xo70, 今までの様にすぐに風羽に怒鳴っていはいけないと自制しながらも、内藤は断固として風羽の擁護を突っぱねた。
なんと庇われようと、それだけは納得できないし認められない。
プライドをボロ雑巾のようにした、あの張本人だけは。

(*ノωノ)「違うんです、内藤先輩を200mに出るように勧めたのはコーチじゃないんです、私なんです。
  渋るコーチに、無理言って……先輩には200mの方が向いているんじゃないかって」

(;^ω^)「お……!?」

(*ノωノ)「内藤先輩の過去についても、実はコーチから聞きました。
  コーチは知っていて止めてくれたんです、でも私が押し切ってしまって……本当に悪いことをしてしまったんだなって。
  ごめんなさい、許されないかもしれないけ――」


内藤の手が、風羽の頬を叩いていた。


痛みを次第に知覚し、信じられないといった様子で風羽は頬に手をあてた。
やはり痛い、現実だ、実際に内藤に叩かれたのだ。


(*ノωノ)「……え、せんぱ……い?」

時間が止まったかのように、風羽は動けなかった。
信じられなかった、信じたくなかった。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:29:39.73 ID:9eXY6xo70, (#゚ω゚)「お前かお、お前が……ッ!!
  なにが互いに支え合おうだお、ずっと自分の意見を隠していたと思ったら、僕以外にはしっかりと意見していたんだお!」

(*ノωノ)「あ、違うの、私は先輩のために」

(#゚ω゚)「言い訳なんかいらないお、僕の過去を知っていたんだお!?」

(*ノωノ)「そうだけど……」

(#゚ω゚)「既知の相手に向かって過去を吐露して甘えていたなんて、とんだお笑い草だお。
  ふざけるなっ、なんでそんなことしたんだお、僕をだまして……
  手のひらで転がして優越にでも浸りたかったのかお!?」

(*ノωノ)「だからそんなじゃないの」

(#゚ω゚)「うるさい!」

内藤は立ち上がると盛大に腕を振るい、風羽をこぶしで殴りつけた。
倒れ込んだ彼女は、静かに泣き声を漏らしたが、それがまた内藤を刺激した。

(#゚ω゚)「泣きたいのはこっちだお、お前のせいで僕の人生は台無しだお!
  陸上の推薦で大学へも入ったのに、もう以前の様に走れはしないんだお!
  返せお! 時間を、脚を返してくれお!」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:30:40.70 ID:AORs/Sx00, なんという…… , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:31:04.61 ID:Vgakpcih0, これは鬱展開 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:31:04.89 ID:+haMDGuK0, まーこんなビッチは叩かれるだろうな , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:31:40.13 ID:9eXY6xo70, 怒鳴りつけるが、相手は嗚咽を零すだけだ。
それでも内藤は止まらない。

(#゚ω゚)「足を返せ、足を、僕の足を返してくれお、今すぐに!
  こんな立っているだけで痛む足なんて僕の足じゃないお、偽物だお!
  本物の僕の足をどこに隠したんだお、返してくれお!」

(*ノωノ)「……ごめんなさぃ、本当に、ごめ……さぃ……」

(#゚ω゚)「謝罪なんていらないお、欲しいのは足なんだお!
  返せお、こんな足いらない、走れない足なんて偽物だお!」

内藤は自分の足を力を込めて何度と殴る。
あまりの激痛で目からは涙が溢れた、それでも殴るのを止めない。

あわてて風羽が止めに入る。

(*ノωノ)「止めて下さい、なんでですか、殴るなら私を殴ってください!」

(#;ω;)「だったら足を返せお、走っていたころの、健康な足を返してくれお!
  今のこんな足いらないお、くそくらえだお!
  お前のせいだ、お前のせいだお!」

そうだ、きっと風羽はコーチと内藤のやり取りも陰から見ていたのだろう。
そしてタイミングを見計らって優しく手を差し伸べて、手玉に取ろうと目論んでいたのだろう。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:32:45.89 ID:9eXY6xo70, なんだこの裏切りは、なんだこれは。
どれだけ可哀そうな人間なのだ自分は、どれだけ惨めな人間なのだ自分は。

殴り続けた足が限界で折れ曲がり、内藤は派手に転んだ。

(#;ω;)「くそぉ……くそっ……」

(*ノωノ)「先輩……」

(#;ω;)「なんだお、さっさと帰れお、もう二度とツラ見せんなお!
  帰れ、早く帰らないとまた殴るお、お前を、足を!」

(*ノωノ)「……ごめんなさい……」


震える言葉で最後に謝すると、風羽は顔に手を当て、ゆっくりと部屋から出て行った。



部屋に本来の静寂が戻った。
その静寂の中で内藤は一人、ずっと涙を流しながら足を殴り続けていた。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:32:52.77 ID:s+kiytov0, 一人称と三人称が微妙に混ざってるような……まあいいかw , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:34:16.81 ID:9eXY6xo70,  
 
(@`@`゚Д゚)『やっぱりこいつは短距離だけだな、そもそも400を走る体じゃないんだよ。
  走り方も、スタイルも……これ以上我を貫いているようじゃ、もう絶対に伸びない。
  何か陸上に改めて向かう、いい方法でもあればなぁ……』

コーチは諦めたような、深いため息を吐いて、その場は重苦しい空気に支配された。


(*ノωノ)『……コーチ、ずっと思っていたんですが』

(@`@`゚Д゚)『なんだ?』

(*ノωノ)『内藤先輩って、短距離のほうが速いんじゃないでしょうか?
  私よく思うんです、先輩っていつも200m地点だとトップと同じくらいじゃないですか。
  もしかして、200mのほうが向いているんじゃないかって』

(@`@`゚Д゚)『そうか?』

記録からしても内藤が400mよりも短距離に向いていることは明白だった。
それでもコーチは風羽の提言にさほども興味を示さずに、記録と睨めっこしていた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:34:30.11 ID:X/5NwrokO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:35:25.30 ID:AORs/Sx00, >>80
三人称一元 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:35:56.19 ID:9eXY6xo70, (@`@`゚Д゚)『あいつは400mでいいんだよ、400mで勝手気ままに走っていれば』

(*ノωノ)『でも……』

風羽は自信があったのだろう、ずっと内藤を見てきたからこそ、彼の走りは頭に染みついていた。
それらが、短距離こそが彼のフィールドであると訴えていたのだろう。
恋人として常に彼と一緒にいて、彼のことを一番に分かっていたからこそ。

昨日の大会も、「もっと距離が短ければ負けない」と、彼が小さく口にしたのを聞き逃さなかった。
きっと、コーチと衝突するあまり固執しているだけで、彼自身も200mに転向したいと思っている。
そうするとコーチに負けたと感じてしまうのだろう、それゆえ言い出せずにいるだけで。

その彼の代弁者として、彼とコーチをつなぐ懸け橋だと自負している風羽は、断固として譲らなかった。
いつも控え目にしていて自分を出さないが、ここだけは譲ってはいけない。
マネージャーとして、彼女として、彼を最高の状態で最高の舞台に立たせるためには尽力を厭わない。


(@`@`゚Д゚)『……そうか、風羽がそう言うなら、次くらいは出して様子を見てみるか』

(*ノωノ)『はい!』

彼の役に立てただろうか、少しでも内藤が楽しめるように、笑えるように役立てただろうか。
風羽は、彼女として、マネージャーとして尽力できただろうか。

彼は陸上の楽しさを改めて感じ、笑顔を戻してくれるだろうか。


風羽はこの上ない満面の笑みを浮かべていた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:36:20.04 ID:SicIFC+t0 <:837467093>?2BP(0), 毒男との絡みにwktk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:38:14.60 ID:O+B8rG7X0, 咄嗟の嘘が悲劇の元か , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:38:25.25 ID:9eXY6xo70, これで三話終了です。
本日は四話まで投下しようと思います。
45分くらいから投下を再開しますので、お時間ある方はおつきあいよろしくお願いします。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:38:47.80 ID:s+kiytov0, おk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:38:54.46 ID:AORs/Sx00, wktkだぜ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:39:53.72 ID:MY+8ca7x0, とりあえず乙 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:40:41.09 ID:hSCBSs33O, アプー使う人はあの人以外見たことない , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:41:35.06 ID:SicIFC+t0 <:248139124>?2BP(0), アプーから説明してくれ麻衣花 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:42:56.48 ID:mHtbhCmBO, まとめ……たいがでしゃばらないでおく

続きwktk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:45:34.26 ID:9eXY6xo70,      第四レース「再会と出会」


次の日の午前、内藤は気だるげに病院の検査を済ませると、バイクを走らせて競技場へ向かった。
耳に強く当たる風の轟音が、すべてを忘れさせてくれた。
期せずして無心になれ、やりきれない思いに耽りたがる気持ちを消し去ってくれる。


風はいい。


陸上でどれだけ本気で走っても、得られる風など高々知れている。
世知辛さを忘れ去ることができるほどの風にはほど遠い。

もう、陸上は諦めるべきだろう。
昔の自分がいる限り、その壁を超えられることは無いのだろう。


かといって自分には何があるのか。
丈夫な体があったとして、だからどうだというのだ。


(;^ω^)(……つっ!)


競技場に着くも、バイクから降りようとすれば、激痛が足全体を駆け抜けた。
今更ながら、昨晩にどうしてああも自分の足を殴り続けたのかと、後悔に見舞われた。
今朝に病院で怒られて、包帯でガチガチに固めてもらったが、痛みは気持ち楽になった程度だ。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:46:59.85 ID:SicIFC+t0 <:1674935069>?2BP(0), しぇん , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:47:17.64 ID:AORs/Sx00, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:47:23.34 ID:9eXY6xo70, 競技場の観客席に上がると、トラックには数人の人影があるだけだった。
平日の昼間からこんなところに来れる人間など限られている、大会でもない限りこんなものだろう。

その人たちを遠い眼で眺めていた。


長距離選手が二人いた、一人はラップを取りながらぐるぐるとトラックを周回しており、もう一人はトラック外の芝生を走っていた。

幅跳びだろう人が砂場を均しており、短距離だろう選手が基本動作を入念に行っていた。


すべてが遠かった。

選手といっても趣味に毛が生えている程度の人達だ、昔の自分とは比べるべくもない。
しかし休みの日を見つけては、好んで練習しているのだろう人たちは内藤と根的に違った。


これが陸上競技なのだ。
辛さを上回る楽しさを見つけ、達成感に酔いしれては己を鼓舞する。
そう、陸上競技とは楽しいものなのだろう、この人たちにとっては。

気づかぬ間に随分と遠くに来ていたようだ、もう陸上競技に戻ることはできないのだろう。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:47:36.19 ID:TIsWvJtsO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:49:33.97 ID:9eXY6xo70, 内藤は心ここにあらずといった様子で黄昏ていると、風に乗って僅かにアナウンス声が流れてきた。

この競技場から少し離れたところに、もうひとつ大きなトラックがある。
競輪場だったか、しかし足を運んだことは一度もなかった。
遠目から眺めては、陸上競技場も同じくらい大きくしてほしいなどと悪態ついていた記憶があった。


競輪とはギャンブルだ、純粋なスポーツマンとして嫌悪しない理由など見つけることの方が難しい。
今日も平日だというのに、どうしてこうも人の声が響き渡っているのか、答えは考えずとも出ることだ。

( ^ω^)(……)

内藤はふと気が向いて足を運んでみることにした。

興味がわいたわけでもないが、今のボロボロの自分を慰めるために、より下の者を見たかった。
この人たちに比べれば自分はなんてことは無い、そうやって傷を舐めて欲しかったのだ。
失ってしまった心の安らぎを、こんな形でもいいから手にしたかった。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:50:27.57 ID:bMRk5sGx0, ギャンブルレーサーと思ったおれは… , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:51:35.31 ID:9eXY6xo70, 現地に到着した内藤は、ただただ驚愕した。

狭い駐車場にはこれでもかと車が敷き詰められ、バスも次から次に何台もが行き来する。
とりわけ駐輪場がものすごい、地平線まで続くのではないかと思うほど長い屋根のある駐輪スペースに、所狭しと自転車が並べられているのだ。
また高級そうなものが多い、マウンテンバイクやクロスバイクという類だろう。

コンクリートに閉鎖されるその空間からは、無数の声が氾濫していた。
いや、競技場内だけではない、外にも幾人もの人が溢れており、何をしているのか、新聞のような資料を片手に唸っている。

陸上競技とは根的に違う、その人数も客層も。
陸上競技では、大会でも選手関係者以外が顔を見せる事などほとんどない、よほど大きい大会でなければ選手であふれかえっているのが常だが、ここはまるで違う。
中年男性が大半だが、今時の若者もいればカップルもいる、まるで運動とは関係のないだろう印象を受ける人間ばかりだ。

陸上競技では知人も出場していないのに来るなど、相当な物好きだと思うものだがこれは違う。

つい惹かれ、中年男性とすれ違いながら正面から中に入ろうとするも、券の購入を求められた。
中に入って見ることも簡単にできないようだ。

しかし当然か、陸上は競技であり、走る・投げる・飛ぶとあらゆるスポーツの基礎であり、紳士的でありながら子供から大人までが嗜める。
一方競輪はギャンブルだ、成人相手でお金ありきの世界に無償サービスを求めるのは見当違いだろう。

内藤はギャンブルやパチンコはもとより、飲酒や喫煙を嫌った。
飲酒こそ部活の飲み会では渋々付き合ったものだが、そのほかでは毛嫌いして一切口にしない。
競輪もそれらと同じだ、どれだけそこにドラマを盛り込もうと、美辞を鏤めようとその事実は覆されない。

働かずして金を得たがる粗暴な人間の手段の一つなのだ、それらは。

( ^ω^)(くだらないお……) , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:53:30.83 ID:9eXY6xo70, 少しでも興味を持った自分を叱咤しながらも、そのまま競輪場の周囲を歩き回った。
競輪場だけではない、そこには建物も幾つとあり、駐車スペースも様々に分けられている。
出入り口だけでも救急車用、工事車用、選手用や関係者用にファンの送迎バス用、一体どれだけの敷地があるのだろうか。

あまりの巨大さに嫌気がさし、踵を返した内藤の前に、一台のロードバイクが向かってくる
目が合うと、そのまま釘付けになり、互いを眺め合った。


(;^ω^)(どこかで……)


ピンとこない、それでもその風体にはおぼろげな記憶があった。

目の前でバイクを止め、サングラスとヘルメットを外せばその感覚は確信に変わった。
絶対にどこかで見たことがある、昔どこかで会ったことのある人間だ。


('A`)「……内藤?」


相手も見覚えがあったようで、内藤の名を口にした、デジャヴではなかったようだ。
名を呼ばれ驚く彼を見て、相手は確信したようだ。

(*'A`)「内藤だろ、毒男だよ、中学一緒だった毒男!」

(*^ω^)「え……毒男!? 本当かお!?」

なにせ6年ぶりの再開だ、互いに半信半疑だったが、喜びが勝った。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:55:09.68 ID:9eXY6xo70, 当時は互いに別段の係り合いもなく、挨拶はせども親友というには程遠い存在だった。
200m選手として活躍していた内藤、野球少年だった毒男。
互いがそれぞれ別分野において、友人を作っていたのだ。


( ^ω^)「それにしても毒男、ロードバイクだなんて洒落てるお。
  こんなところに来るなんて、まさか競輪かお?」

内藤は冗談で言ったが、毒男はぐっと親指を立ててそうだと言ってみせた。

('A`)「ああ、そうだ……と言いたいが、今日は出ないんだ、ここは練習で通る道ってだけだ。
  まぁ実力もまだまだ足りないわけだが、一応はプロ競輪選手やってんだぜ?」

胸を張る毒男に、内藤は一歩引いてしまう。
プロのギャンブラーだと言われたようなものだ、そんな職に自信を持てる彼が、非常識人に感じてたまらなかった。

中学時代の毒男は少し暗さを持つ人間だったが、真っ直ぐな性格で友人が多かった記憶がある。
どうやらどこかで道を踏み誤ったようだ。

( ^ω^)「人間変わるもんだお、あの毒男がねぇ……。
  プロ野球選手になる夢はどうしたんだお」

(;'A`)「昔の事言うなって、恥ずいだろ!
  当時は本気だったが、今から思えば子どもの戯言だよあれは。
  でも今は、ちゃんと自分のやりたい事を見つけ、頑張ってるぜ」

( ^ω^)「そうかお」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:56:38.94 ID:9eXY6xo70, やりたいことが競輪選手か、熱心に語られれば語られるだけ、内藤の気持ちは冷めていった。
競輪がどういった賭け事かは知らないが、しょせんお遊戯なのだろう。
プロレスもそうだ、金をかけるとは表面上、舞台上の演技に一喜一憂して声を張り上げる、カラオケのようなストレス発散だ。

('A`)「そういうお前は、陸上の方どうなんだ?
  中学では怪我したらしいけど、種目変えて活躍してるって聞いてるが……顔の包帯スゲーな。
  また怪我でもしたのか?」

( ^ω^)「……」

毒男は懐から現実というナイフを取り出し、出し抜けに内藤の顔に突きつけた。
しかも中学時代となれば、昨日の言い争いを連想せずにはいられない。
そうだ、昔の友人に会うと嫌でもそうなってしまうのは目に見えていたのに。

顔半分を包帯にうずめているのだから怪我をしていることは明白だったのだろう。
世間話の一環として、尋ねただけだろう毒男に向かい、内藤は鋭い言葉で返答した。

( ^ω^)「もう止めたお」

(;'A`)「え、マジか!?
  大学入っても続けてるって聞いてたのに……いつやめたんだ?」

( ^ω^)「昨日」

(;'A`)「は?」

毒男は狐につままれたような、素っ頓狂な顔をしていた。
中学来の友人に出会うことだけでも出来過ぎた偶然だというのに、その前日に陸上を止めていたとくれば当然だろう。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:58:15.87 ID:9eXY6xo70, (;'A`)「陸上やめんのか……なんかわけわかんねーな。
  他にやりたいことでも出来たのか、大学だったら色々あるだろうに」

( ^ω^)「やりたい事なんてないし、大学ももう止めるお」

(;'A`)「はぁぁっ!?」

学校にも行かず昼間にこんな所を無気力に歩いている、そう考えると内藤がいかに自分を見失っているか分かるだろう。

(;'A`)「本当になにあったんだよ一体……言いたくなけりゃ余計な詮索はしないけどさ」

( ^ω^)「まぁ簡単にいえば失恋だお」

(;'A`)「簡単にいえば、ねぇ……。
  そんで、お前どうするんだよこれから、就職先くらいはあんのか?」

( ^ω^)「残念ながら、フリーターが濃厚だお。
  できればニートが良いけど、僕の家は母子家庭だし、残念ながら叶わなさそうだお」

おどけて言って見せるが、その様が逆に毒男の心配を煽った。
特別なかかわりもないただの旧友に過ぎないが、ここで会ったのも何かの縁だろう。
見ず知らずの他人と同じような薄い関係かもしれないが、見ず知らずの他人の心配をして何が悪い。

包帯が覗ける内藤の痛々しい両腕両足を見ながら、毒男は口を開いた。

('A`)「……なぁ、一体いつから走るの止めたんだ?」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 22:59:52.78 ID:9eXY6xo70, ( ^ω^)「三週間くらい前だお」

('A`)「……」

あまりにあっけらかんとしている内藤に、よせばと思いつつも毒男はお節介に口出しした。

('A`)「内藤、お前は何がしたいんだ?」

「失恋」と濁したが、退学には何か大きな理由があるのだろう、それは分かっていたがやはり納得いかなかった。
理由が何であれ、こうも無茶苦茶な行動をしているようでは赤の他人だろうと心配してしまう。

('A`)「もう二十歳だぞ、現実見ろよ。
  何を見越して大学まで止めんだよ、馬鹿だろ」

(#^ω^)「なんだお、ギャンブルに溺れたダメ人間に言われる筋合いないお!!」

先日の辛いやり取りを知らない人間に何が分かる、好きな人に裏切られた辛さも知らないだろう人間に馬鹿にされる筋合いは無い。

内藤がとっさに毒男に掴みかかったが、毒男は身じろぎ一つしなかった。
逆にその手を掴み返す。

(;^ω^)「!!」

そのあまりの力強さとバランスに驚き、内藤は思わず手を離した。
陸上競技でも特にバランスよく筋力を必要とする400m選手、しかも県内屈指だ、内藤も筋力には自信があった。
特に中学以降何年とかけてずっと速筋を鍛え抜いてきた、その内藤すら目を見張る筋力を、毒男は持っていた。

とりわけ太ももの筋肉など内藤と比べるべくもない、上半身の洗練されたものとは違う、純粋でワイルドな筋肉。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:01:38.98 ID:9eXY6xo70, (;^ω^)「な……どうし……え!?」

理解できないと言いたくも、咄嗟で言葉に詰まった。
中学時代はどちらかといえば貧相な体躯をしていただろう毒男が、どうしてこんなにも変わっているのだ。
筋骨隆々だと自負できる内藤と、肩を並べ遜色ないほどにまでどうして。

(#'A`)「……お前な、競輪なめんなよ」

毒男が声のトーンを落とすと、内藤はびくっと気押された。

(#'A`)「競輪選手はみんな、地獄のような競輪学校を出てきているんだぞ。
  全員丸刈りにされて分刻みのスケジュール、限られた電話時間、週一の外出許可、雨天だって練習内容は変わらない。
  お前は県でナンバーワンだったか知れないが、俺らは学校に入った時点からずっとプロ意識持ってやってんだよ」

ドクオの言葉に圧倒された。
そう、内藤は県で一番となり、全国大会に出たことも数度あったが、それでもプロ意識を持ったことなど一度としてなかった。
世界大会に出たわけでもない、全国大会といってもインターハイやインカレといったしょせん学生、いわばアマチュアという領域でだ。

しかし毒男は違った、すでにプロという領域で戦っているのだ。
その走りを見るためにはお金を払わなくてはならず、見ず知らずの人間にお金を賭けてもらって走っているのだ。
内藤には到底想像できない世界の話だった。

(;^ω^)「なんだお、プロ選手がいい気になんなお!
  アマチュアをいびって楽しいのかお!?」

内藤は自身が信じられなくなるほど、自己卑下な反論をしていた。
今の彼が惨めで無残なのは、自身が一番知っていた。
ただ、過去の輝かしい自分までが無様に蹂躪されるのを黙って聞いてはいられなかった。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:01:42.16 ID:O+B8rG7X0, ここのブーンはヤなブーン , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:03:48.04 ID:9eXY6xo70, ('A`)「悪いかよ、お前の心配しちゃ!
  俺だってお節介とも思うさ、ただお前の家母子家庭だろ?
  お母さんとかをどう思ってるんだよ、二十歳も超えて、いつまで親に負担かけて勝手してるんだよ!」

(;^ω^)「カーチャンなんて関係ないお、なんでそんなことまで出すんだお気持ち悪い!」

('A`)「俺の家も母子家庭なんだよ!
  お前の家のことだって、中学の時偶々知ったんだけどずっと覚えてんだよ!
  だから俺、内藤だって見て気付いたし、お前の事も心配しちまうんだよ悪いか!?」

(;^ω^)「!!」

('A`)「俺さ、マザコンって呼ばれるかもしれないけどすっげーカーチャンっ子だったんだ。
  俺のカーチャンってずっと体悪くてさ、そのくせ無理してずっと働いていたんだよ」

毒男は声のトーンを落としながら、遣る瀬無い声を絞り出した。

('A`)「中学で才能もないくせに野球始めたのもそれがきっかけでさ。
  野球選手って並はずれた額の年俸とかテレビでやってるだろ、カーチャン楽させるために将来プロ野球選手になろうってさ。
  当時はただの夢見る少年だよ、才能もなかったくせに、バットやグローブ、ユニフォームを買わせる高い出費に終わったさ」

( ^ω^)「……」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:04:00.19 ID:AORs/Sx00, ブーン…… , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:04:13.14 ID:X/5NwrokO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:05:37.40 ID:zVjL9tCT0, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:05:39.21 ID:9eXY6xo70, ('A`)「野球選手なんてほんの一握りだ、中学から始めただけでも出遅れを強く感じたよ。
  高校になってようやく現実見始めてさ、野球ばっかやってた俺には高卒で大手に行けるような頭もなかった。
  そんな人間が儲けようなんて甘い話だよな」

( ^ω^)「……それで競輪かお?」

('A`)「ああ、結局普通に働いたんじゃそう簡単にカーチャンまで養えない。
  できる限り早く働いてカーチャンに仕事を止めてもらえるくらい儲けていきたかった。
  そう考えてきた時に、競輪に出会ったんだ」

内藤にも大筋は理解できたが、その解決策に競輪が出てくるのがいま一つ理解できなかった。
まるでギャンブル稼業に走った顛末に、後から無理して理由づけしているようにしか思えない。

( ^ω^)「そんなに競輪なんて儲けるのかお?」

詳しく知らないが、競輪選手など数多といるのだろう、それこそ100や200では収まらないほど。
競輪というギャンブル自体がマイナーなイメージもあるためか、さほど儲けられるように感じない。

('A`)「公営ギャンブルはすごいぞ、競馬っていったらぼんやりとでも巨額の富が生まれるってイメージ、沸くだろ?
  宝くじとかもその類だしな、競輪ではプロ選手の平均年収は1300万って言われてる」

(;^ω^)「せんさ……っ!?」

想像していた額を超越しており、つい声が漏れた。
毒男はすでにプロと言っていた、つまりそれほどでないにしろ相応の収入を得ているのだ。
信じられない、まだ二十歳だというのに、だ。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:06:55.31 ID:SicIFC+t0 <:2233246289>?2BP(0), 懐かしい感じだけどニートとか最近の事もあって、興味をそそられます^-^ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:07:13.31 ID:9eXY6xo70, (;^ω^)「競輪学校って言うのは何年あるんだお!?」

('A`)「そりゃすでに俺が卒業してんだ、一年だよ」

(;^ω^)「何人入れるんだお?」

('A`)「通常試験で受かるのは毎年75人だ、脱落者も相応にいるがな」

なんと馬鹿げた話だろう、たった一年で75人もの人間がプロとなり大金持ちへと変貌していくのだ。
野球でさえ、高校からプロへ行ける人間など無数の選手の中から一握り、たかが知れているというのに。
そもそも競輪選手を目指す人間自体、野球選手を目指す人間の数と比べるべくもないだろう。

大学へ4年間も通い、つまらない講義を受けることがどれだけ無意味なことか。

どれだけ頑張ってもプロになれなかった陸上に対し、まるで夢のような話だった。

('A`)「なんだ、興味湧いたか?」

(;^ω^)「……」

正直かなり心動かされたが、敗北感に拒まれ言葉を詰まらせた。

('A`)「……なぁ内藤、お前に何があったか、俺は知る由もないよ。
  でもさ、辛いんだろ、だったら乗ってみろよ」

そう言いながら、毒男はロードバイクを内藤に差し出す。
受け取ってみると、その大きな風貌に反してものすごく軽い。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:09:58.65 ID:9eXY6xo70, ('A`)「すごいだろ、10キロ切ってるんだぜ?
  実際競輪で使う自転車はピストレーサーって言って、もっと軽いしな。
  そのロードバイクは俺の体格に合わせてあるけど、十分に乗れるだろ」

促されるままに跨ぐと、そのタイヤの細さに不安が募った。
つま先立ちでおどおどとし、頼りなさ気にもこぎ始めると、足の力がダイレクトに推進力に変わっていくのが分かる。

体が浮いた、飛んでいるような感覚とまで言っては過剰だろうか、それほどまでに力がスピードに直結する。
普段乗っている自転車が、どれだけ重く非効率なのかを実感した。

気持ち良さに酔いしれ、広い駐車場を大きく回転して走らせる。
メーターは簡単に30km/hを超えた。

( ^ω^)「なんだおこれ、ものすごいお……!!
  こんなに簡単に40km/hも出るお、信じられないお……」

強く吹き付ける風が直に顔に覆いかぶさる。
轟音が耳に纏わりつき、息苦しさを感じるも、気持ち良かった。
やはり風はいい、しがらみをすべて忘れられる。

本当に気持ちがいい。


('A`)「競輪のピストってヤツはもっとスピードに特化していてな、プロでは70km/hとか出すんだぜ?」

(;^ω^)「ななじゅう!?」

またしても度肝を抜かれた、まさか自走で70km/hもの速度を出せるだなんて考えたこともない。
車の世界の話だとばかり思い込んでいた。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:11:22.09 ID:9eXY6xo70, どれだけ走っても陸上では辛さばかりだった、逃げるようにただ走り続けていた。
違う、競輪は風を感じられる、すべてを風化させてくれる。
陸上で何一つと残らず、残せなかった内藤の、新しい道が見えた。


ようやく満足したか、内藤はロードバイクから降りると、爽快な表情でドクオに向いた。

( ^ω^)「……毒男、競輪を教えてくれたことを素直に感謝するお。
  すごく風が気持ち良かったお、新しい自分を発見できそうな気がするお」

('A`)「だろ? 何かの歌であったよな、風を追い越すってヤツ」

( ^ω^)「ハピマテの事かお? 光る風を追い越したら〜」

('A`)「そうそうそれだそれだ、風を追い越して……自力で新しい風を作り、感じてみたくないか?
  自力において最速競技、それこそが競輪だ」

光る風を追い越したら、その先には何があるのだろうか。
何を見出すことができるのだろうか。

('A`)「俺がなってんだしお前ならプロになれるよ、頑張り屋なのは陸上の成績からも一目瞭然だ。
  もしこの世界に来るってんなら、歓迎するぜ。
  まぁすぐには決められることじゃないだろうがな」


電話番号を互いに交換すると、ドクオは再びロードバイクに乗って去って行った。
内藤は興奮冷め止まず、ひとり茫然と立ちすくんでいた……。


, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:12:58.45 ID:9eXY6xo70,  
ξ゚听)ξ「……」

ぼうと立つ内藤を、離れたところから一人の女性が見ていた。
手すりにもたれ掛かりながら、鋭い目線を向けている。

ξ゚听)ξ「普通の靴にお粗末なペダリング、どう見ても初心者よね……。
  あんなにも体ができあがっているのに勿体ないわね」

大きくため息をつくと、すぐにも興味をなくしたか、目線を外した。

ξ゚听)ξ「まぁあの太もも見れば分かるわよね、どう見ても競輪選手じゃないわ」

そして周囲をきょろきょろと見渡すが、ギャンブルに現を抜かした人間が行き来するだけだ。
また大きくため息をつくと、内藤に視線を戻した。

舐めるように体つきを観察するが、やはり行きつく先はその太もも。
バイカーではない、それでも一般人とは比べるまでもないほど隆起する筋肉は目を見張るものがある。

僅かに口元が緩んだ。

ξ゚听)ξ「そうね、どうせならああいうのを育てたいわね……」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:13:36.64 ID:AORs/Sx00, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:15:25.28 ID:9eXY6xo70, 第四話はこれにて終了です。
第五話は説明中心なので、やはりこのまま投下してしまうことにします。
とりあえずすみませんが23時半まで休憩します。

何か質問等あれば、お願いします。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,支援,2008/03/21(金) 23:16:06.40 ID:X/5NwrokO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:17:28.05 ID:wN0ulU5N0, 続きwktk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:17:58.13 ID:AORs/Sx00, wktk。
一応きくけど、これって今日終わるってわけじゃないよね , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:18:09.96 ID:mbffozM00, おもれーな , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:18:17.34 ID:FaoHeWqqO, 関優勝 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:18:25.67 ID:AORs/Sx00, >>123、完結するか、てことです , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:20:14.59 ID:SicIFC+t0 <:248138742>?2BP(0), 全日本選手権は誰が優勝しますか>伏見かと思うんですが。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,sage,2008/03/21(金) 23:23:22.16 ID:/LJ2KWheO, 他スポーツからの転向って結構多いよね , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:25:27.00 ID:9eXY6xo70, >>126
さすがに本日中に完結はできませんね。
話自体もそれなりに長くなりそうです。

>>127
やはりそれは予想してこそでしょうか。
なにより自分は初心者ですので、あてになりませんし。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:26:13.21 ID:AORs/Sx00, 待ち焦がれる楽しみが増えたぜ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:30:37.64 ID:9eXY6xo70,      第五レース「道先の全貌」



次の日、内藤はドクオに早速呼びかけをした。
毒男の練習が終わってからということで、日が落ちてからレストランで会うこととなった。


ドクオとの約束までの時間を使い、朝からは病院で検査をしてもらった。
やはり強烈に殴りつけた代償は大きく、普通に歩けるようになるまでの見込みは大幅に遠のいた。
走れるようになるなど、まだまだ先の話だと強く咎めらる始末だ。


昼には大学の学務課へ行き、退学についての手続きを聞いた。
どうやら親の同意書が必要なようだ、何ともややこしいシステムになっている、近いうちに実家へ帰る必要がありそうだ。

, 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:32:06.75 ID:9eXY6xo70, そして約束の時間の19時ぴったりに、二人は落ち会った。

('A`)「すまん、待たせた」

( ^ω^)「全然いいお」

('A`)「それよりも結果、出したってことか?」

力強く頷けば、その答えを言うまでもなく毒男は理解した。
そして鞄を開けると、A4の大きさの資料を2冊、机に出す。

学校紹介と、入学申込書だ。

( ^ω^)「せっかくだし、色々と教えて欲しいお」

('A`)「何から話すればいいんだろうな」

( ^ω^)「っていうか、競輪選手は学校を卒業しないとなれないのかお?」

('A`)「ああ、競輪選手の登竜門だからな、避けては通れない。
  つっても競輪学校を卒業しても、試験を通らなければ元も子もないがな。
  まぁこのテストはだいたい通る」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:33:53.89 ID:9eXY6xo70, ( ^ω^)「そもそも競輪学校って、毒男は高校卒業してから行ったんだお?
  僕はもう大学生だけど、大丈夫なのかお?」

('A`)「大丈夫って何がだ?
  俺も二回目の受験で受かったんだ、そもそも二十超えている人なんてざらだぜ?」

それを聞いて安堵の息を吐く。
さすがに高校上りばかりの場に放り込まれては、どれだけ自己を持って挑もうと、いらぬ圧迫を受けることとなるだろう。
しかしそうでないのならば話は早い。

( ^ω^)「入学ってやっぱりテストかお?
  推薦とかないのかお?」

('A`)「ああ、まずは推薦の話からするか。
  ちょうどお前は陸上の400m選手だったよな」

( ^ω^)「ちょうど?」

首を傾げる内藤を傍目に、毒男は資料をぺらぺらとめくる。
言い方からすると推薦はあるのだろう、全国大会にまで出場しているのだ、腐っても経歴は残っている。

('A`)「お、あったあった、推薦。陸上の欄、読むぞ?」

( ^ω^)「頼むお」

こういったものは、得てしてアバウトな表記の場合が多い。
「いずれかのスポーツにおいて優秀な成績を収めているもの」だなんて抽象的な条件を、大学の推薦では頻繁に見かけた。
期待せずにも、音読してくれるらしい毒男の声に耳を傾ける。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:34:08.87 ID:350yMnpkO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:36:10.79 ID:9eXY6xo70, ('A`)「オリンピックの個人種目に出場して、陸上の200mか400mで第八位以上の成績を収めた者」

( ^ω^)「……いや、さすがにそれは無いお」

('A`)「世界選手権競技大会に出場し、陸上競技の200mか400mで第三位以上」

(;^ω^)「いやいや、世界大会自体が……」

('A`)「ワールドカップ大会に出場して200mまたは400mで優勝」

(;^ω^)「……」

('A`)「その他、本財団が特に認める者」

内藤は呆気にとられると同時、改めていかに自分の今までが価値のないものであったのだろうかと再確認する羽目となった。
すべてを投げ出して打ち込んできた陸上競技であったが、それ程度の成績では歯牙にもかけられないのだ。

声すら出なかった。

('A`)「どうだ、さすがに無理か?」

(;^ω^)「というかそんなのがゴロゴロいるのかお?
  自信喪失しそうだお……」

('A`)「そんなわけねーって、そんなの俺だって勘弁だ。
  上はすごいが、ピンキリだぜ」

ピンキリなことくらい直感で分かる、それでも人生を投げうって努めた甲斐虚しく己が一蹴されては、意欲も失せてしまうものだ。
毒男は気を使ってか、資料のページを遡って説明を続ける。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:38:25.16 ID:9eXY6xo70, ('A`)「一般入試行くぞ、一般合格者は75名、そのうち技能試験と適性試験があって、内訳は60人と15人だ」

( ^ω^)「お、技能か適性かどっちかを通ればいいのかお?」

('A`)「そういうこと、ってかどっちかしか受験できないんだけどな。
  技能ってのは競輪ないし自転車レースの経験者を対象とした試験で、適性試験って方は自転車経験の有無は問われない。
  両方二次試験まである」

( ^ω^)「ってことは僕は適性試験を受けることになりそうだお。
  テストってセンター試験みたいな一般問題も出るのかお?」

('A`)「いや、学力は一切関係ない、スポーツ測定みたいなもんだ。
  適性試験は一次で垂直跳びと背筋力、二次試験で固定自転車による最高速度と最高回転数、総仕事量の計測だ。
  あと強いて言うなら、人物考査もあるが」

適性試験というのは、本当に未経験者が対象のようだ。
内藤には何とも嬉しい条件だった、垂直跳びと背筋力は人一倍自信があったし、怪我や雨の時に室内バイクを何度とこいでいる。

負けるイメージが沸かなかった。

('A`)「試験は半年後だな、4月だ」

( ^ω^)「お? 入学まで一年もあるのかお?」

('A`)「いや、一次試験が4月、二次試験が5月で、入学は11月、そこから競輪学校を一年だ。
  一年に二回、春入学組と秋入学組の入学と卒業があるんだよ。
  今からだったら、春に試験を受けて秋入学だ」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:38:29.32 ID:350yMnpkO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:40:09.13 ID:9eXY6xo70, ( ^ω^)「秋入学ってオーストラリアかお……そういえば、学費はどうなのかお?」

入学の話が出たところで、最も気になっていることに踏み込む。

内藤の親はギャンブルを酷く嫌悪していた。
内藤自身がギャンブルをこうも毛嫌いしていた理由は、幼少より親に擦り込まれたイメージが最たる要因だった。

そんな親から援助が貰えるとは到底思えない、しかし競輪選手は非常に儲けるという話も聞いてしまった。
儲け話とは、何事もそれ相応のリスクが必要なものだ。
たった一年とはいえ、医学部生など比でないほどの金額が必要なのだろう、勝手にそんなイメージに支配されていた。

( ^ω^)「親からの支援は期待できないから心配なんだお……」

('A`)「ああ、金はかからないぞ」

( ^ω^)「……お?」

今なんと言った、お金がかからない?
ただ?

('A`)「ああ、それはちょっと誤謬あるわ、授業なんかの学費はかからない。
  ただ、施設使用や物品には必要だぜ?」

(;^ω^)「え……お……」

('A`)「あと昼飯代もいるな……そう考えるとやっぱりタダとは言えないか。
  いやでも奨学金制度もあるし、出世返しで団体から借りることもできるから、心配しなくても大丈夫だと思うぜ」

(;^ω^)「いやいやいやいやいや、ちょっと待つお!」 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:42:20.52 ID:9eXY6xo70, 毒男が自分の言葉を訂正し、慌ててフォローしているがそんな問題ではない。
つまり学校外の費用が必要なだけで、実質の学校は無料ということか、そんな馬鹿な。

卒業生の話を聞いてもなお、半信半疑だ。

('A`)「あー、そうか、あと受験にも一万二千円が必要……」

(;^ω^)「そうじゃないお、学校はタダなのかお!?」

('A`)「ん……ああ、かからないぜ? でも、言ったとおり昼飯代や施設使用料で……」

(;^ω^)「それはどうでもいいんだお、授業料タダって、え?」

('A`)「……競輪選手が相応に儲けているんだ、競輪業界には金あるんじゃねーか?」

簡単に言ってくれる、きっとドクオもはじめは授業料無料に驚き、惹かれた筈だというのに。
感覚が麻痺しているのか、昼飯代などと拘るところが内藤の疑問とはてんで的外れだ。

陸上では大会や合宿、シューズやユニフォームと出費は枚挙にいとまがなく、バイトをする時間もなかった。
薄っぺらい講義のために学費を払って、無賃無償で浪費だけを重ねた挙句に嫌々走り続けていたのが、今までの内藤なのだ。
なんとバカなことをしていたのか、その結果何が残せたのかと後悔に苛まれてしまう。

信じ難い事実だったが、内藤にとって学費がかからないことは非常に助かる。
母はいまだにギャンブルが父を殺したのだと、異常に恨みを持っている。
施設使用料がどれほどのものか知らないが、出世返しもあるそうで安心した。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:43:44.26 ID:9eXY6xo70, ('A`)「そういやお前、乗り気だから大丈夫かと思っていたけど、足はいいのか?
  怪我したんだろ?」

( ^ω^)「今朝医者と話して、走るのは難しいだろうけど、しばらく療養すれば自転車なら大丈夫だろうって話だお。
  一応スポーツ選手御用達の病院も知っているから、またそこで話聞いてみるけど多分どうにかなるお。
  もともとバイクっていえば、怪我したときの練習ってイメージが強いお」

('A`)「そうなのか、それは初耳だわ。
  やっぱすげーんだな、陸上選手ってのも」

今まで上手に出られていた気がしていたが、そんなドクオからの何気ない一言が内藤の気をよくさせた。
陸上人生丸々否定されている錯覚に陥っていたが、その一言だけで幾分と気楽になった。

( ^ω^)「ああ、授業ってどんななんだお?
  規則って、分刻みって言っていたけど本当かお?
  携帯は持つこともできないのかお?」

('A`)「その辺りは面倒だ、資料あるんだから自分で調べやがれw
  とりあえず厳しさは半端ないが、試験に受かることがまず先だろ。
  鬼に笑われるぞ」

( ^ω^)「面倒だけど、読んでみるお……分からないことはまた聞くからよろしく頼むお」

('A`)「おう、そんときゃ連絡してくれ」

言うと、毒男は荷物をまとめ出す。
すでに一時間あまり話し込んでいたか、熱くなり時間感覚がなかった。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:44:53.59 ID:9eXY6xo70, 毒男が伝票を持ってくれたので、それに続いた。
奢ってくれるとの言葉に、内藤は素直に従っておく。

('A`)「それで、最後にお前に言いたいことがあるんだ」

( ^ω^)「なんだお?」

('A`)「親と確執あるのか知る由もないが、競輪の世界に飛び込むつもりならちゃんと伝えておけよ。
  そして納得し合ってから、改めて決断してくれ、くれぐれも無断だったり、無理やりはするなよ。
  たった一人の親なんだ、大切にしてくれ」

毒男の提示したお願いがあまりに意外で、唖然とした。

いや、その願いばかりは聞けないだろう、無理に決まっている。

あの自分の意見も言えないような母親が唯一目の色を変えて否定するのがギャンブルだった。
息子の言うことにも何一つと反論しない弱気な母が、たったひとつ嫌悪をありありと見せつけるもの……。
競輪には内藤自身ですら初めは相当な嫌悪を覚えたというのに、そんな母親を説き伏せられるわけがない。


( ^ω^)「分かったお、約束するお」


無理だと分かり切っていれば諦めはつく、逆にすがすがしい笑顔で、彼はドクオに返事を返した。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:45:58.53 ID:9eXY6xo70, 以上で5話は終わりです。

とりあえず本日はここまでにします。
長い時間おつきあいいただきありがとうございました。
質問などありましたら、お願いします。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:46:14.67 ID:350yMnpkO, 支援 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:47:14.44 ID:UNm8lQuU0, まとめある?無いならどっかにまとめ依頼してみたらどうでしょう? , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:47:44.04 ID:350yMnpkO, 乙!
面白かった , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:48:33.83 ID:AORs/Sx00, 乙! , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:50:02.15 ID:76wUivZl0, 乙 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:50:40.71 ID:zVjL9tCT0, 乙 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:52:49.85 ID:9eXY6xo70, >>144
ありがとうございます、でも自分からは恐れ多いですね。
だれかまとめて頂けるならありがたい話ですし、なければ再投下は億劫ですので、自分でログを取ります。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:55:05.93 ID:AORs/Sx00, なら自分がまとめ依頼を、芸さんにお願いしてみます , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:56:44.31 ID:bMRk5sGx0, >>149
過去ログ
http://www7.atpages.jp/mesimarja/boon/1206/1206101097.php , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/21(金) 23:57:34.70 ID:AORs/Sx00, しときますた , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:01:40.86 ID:+6kzELqQ0, おお、色々とありがとうございます。
もしまた何かありましたら書き込みよろしくお願いします。

それではとりあえず、支援に乙など色々とありがとうございました。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:04:32.57 ID:qCg33KaZO, 乙、wktk , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:05:46.30 ID:ZrEVGgwU0, 乙 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:05:53.48 ID:AUkzVUPKO, 長かった、ようやく追い付いた
乙 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:07:57.37 ID:1LUyG4/xO, つづきはあした?
おつでした! , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:16:19.77 ID:+6kzELqQ0, >>157
明日は無理ですが、3月中にまた一度投下する予定です。
その折はよろしくお願いします。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:18:30.33 ID:K1uFj2cvO, 乙!
面白かった , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:22:55.03 ID:1ExvCiXf0, 乙
期待 , ブーン芸 ◆YSnySkGF.o ,,2008/03/22(土) 00:28:29.21 ID:kE51YZzS0, どうも、ブーン芸です
依頼頂きましたが、まとめさせていただいてよろしいでしょうか , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 00:34:17.88 ID:+6kzELqQ0, >>161
ありがとうございます、お眼鏡にかなうのであれば、是非によろしくお願いします。 , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 01:03:36.61 ID:s1mliQjn0, ほ , 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。,,2008/03/22(土) 01:12:10.38 ID:EAn1S5Ou0, 今読み終わった

作者乙ー ,