1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:08:02.62 ID:JGiCDE9W0
――ジャスコおもちゃ売り場

ワイワイガヤガヤ

    〜♪
 ('A`) 
 )\)\ □
 | |  凸■占


( ・∀・)「あ、れごぶろっくだー、わーい!」

ガチャガチャ

(#'A`)「あっ!おいこのクソガキ!」

(;・∀・)「ひぃい!」

(#'A`)「俺の作品から勝手にブロックを奪うんじゃねえよ!
このゆとり!どんな教育受けてきたんだ!」

(;・∀・)「ご、ごめんなさい……」

('A`)「ったく、これだからガキは……」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:16:15.54 ID:JGiCDE9W0

           ガミガミ
ξ゚听)ξ!  (#'A`) (;∀; )


ξ゚听)ξ「ちょっと!あんたオトナのくせにかっこわるいよ!
そんなどなるなんて!ちょっとはこどもにゆずってあげなさいよ!」

(#'A`)「ああっ!?うっさいわ、まだションベン臭い
ガキのくせしやがって!帰ってママのおっぱいでも
チューチューしてろ!」

ξ゚听)ξ「ツンはもう小学生だもん!おっぱいなんて
吸わないわよ!へんたい!」

(#'A`)「小学生ぐらいでイキがんじゃねえよ!
こちとら大学生だぞ!そうだ、ビビったか!?
大人に逆らうとどうなるか思い知らせてやろうか!?」


( ^ω^)「お客様、店内で騒がれては困りますお」

(;'A`)「あ、す、すみません、ごめんなさい、もうしません」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/29(月) 21:27:12.47 ID:JGiCDE9W0
( ^ω^)「店内ではお静かにお願いしますお、
子供に暴力を振るおうとすることもおやめくださいお、
場合によっては警察も呼びますお」

(;'A`)「いえ、冗談ですよ、いや、その、警察は勘弁して下さい、
本当にごめんなさい、ちょっと熱くなっただけです、ハイ」

( ^ω^)「とにかく、注意してくださいお」

(;'A`)「はい、ありがとうございます、これから生活用品は
全部ジャスコで買います!」

           スタスタ……
(;'A`)     三三( ^ω^)



('A`)「クソ、あのピザ店員が……御意見箱に悪口投稿して
クビにしてやろうか……」



ξ゚听)ξ「おとなって、かっこわるいのね」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:04:16.44 ID:G6IGKHP+0
('A`)「フン、まったくどいつもこいつも俺様の創作活動を邪魔しやがって……」

ぶつくさ言いながら、ドクオはレゴブロックを積み上げはじめる。
なにやら形を成しつつあったそれに、ツンがたずねた。

ξ゚听)ξ「ところでおにいちゃん、なにつくってるの?」

('A`)「こいつか? ああ、こいつはな――」

('A`)「戦車だ! すげー戦車なんだぞぉ……」

嬉々として語りはじめたドクオに、ツンがつぶやく。

ξ゚听)ξ「おにいちゃん、ぐんオタ? きんもー☆」

('A`)「うるせえ。ちょっとこいつを見てみろ、ほら」

ドクオはそう言いながら、制作途中のブロックの固まりを持ちあげる。
背の低いツンの目の前にしゃがむと、ちょっとプロックをひねって見せた。

ぱっくりと音がして、ブロックの表面が割れる。
中から出てきたのは、ロボットの顔だった。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:17:58.32 ID:G6IGKHP+0
('A`)「どうだ! こいつは、ロボットに変形する戦車なんだ。
   さっき大学の講義をさぼって見ていたマイケル・ベイ監督のハリウッド映画から思いついたんだぞ」

ξ゚听)ξ「まいけるべいって、おげひんなぎゃぐと、のうてんきなせんとうしーんのくそかんとくじゃん」

('A`)「……お前、幼児のくせに嫌なこと知ってるな」

( ・∀・)「うわー、とらんすふぉーまーだ! かっこいいー!」

思わず鼻白んだドクオに、さきほどの子供が歓声をあげる。

('A`)「ふふふ、そうだろカッコイイだろ。やっぱり男にしか変形ロボの格好良さは分かんねーもんなんだよな。
   ほれほれ、ここをこうするとキャタピラが引っ込んで足が出るぞ〜」

( ・∀・)「すごいすごーい! ねえねえおにいちゃん、ぼくにもやらせ……」

はしゃいだ子供がドクオの手にした戦車ロボに触ろうと、手をのばした瞬間――。
ぽろり、とドクオの手からブロックの固まりがすべり落ちた。

('A`)「…………」

陶器が割れたような音が、ジャスコの四階のオモチャ売り場に響き渡った。
バラバラになったレゴブロックの破片が、広範囲に散らばる。
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:29:32.63 ID:G6IGKHP+0
('A`#)「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛゛あ゛あ゛ああ゛――!」

ドクオは髪をかきむしった。発狂したような叫びが口元からあがる。
さながら母親にWoWのキャラを消された少年のごとく、ドクオは目の前の子供に掴みかかった。

('A`#)「このクソガキ! ゆとり! 両生動物のクソをかき集めた価値もないウジ虫!
    俺が、俺がジャスコの店員や周りの家族連れの冷たい視線に耐えながら作った傑作をブチこわしやがって――!」

(;・∀・)「ご、ごめんなさい、ごめんなさい……」

ものすごい剣幕のドクオを見て、少年の目からぼろぼろと涙がこぼれる。

('A`#)「謝って済むなら警察いらない! この野郎、どうしてくれるん……」

そこで、ドクオは硬直した。

(#^ω^)「ビキビキ……」

イオングループのエプロンをつけた店員が、仁王立ちになってドクオを見下ろしていた。
人の良さそうな顔に青すじが浮き出ている。
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:44:07.82 ID:G6IGKHP+0
('A`;)「スンマセンでした!」

畳の上で、ドクオは目の前の男に土下座した。
ご休憩所という名の部屋で、スーツ姿の男はあぐらをかいたままドクオを見下ろしている。

「おう……兄ちゃん、イオングループを舐めてもろうたら困るけえのう……」

怪しげな広島弁で、男が言う。

('A`;)「ホントに反省してます。だから警察は、警察だけは……」

「子供の胸ぐらを掴んで怒鳴っておいて、それはないやろ兄ちゃん……。
 どうしてもというなら、誠意をみせんかい! 分かっとるんか、コルルァ!?」

今度は怪しげな大阪弁になった。どこの人なんだろう、とドクオは切に思う。

('A`;)「せ、誠意ですか」

「そうやな……」

男の細い眼が、ドクオの肉体を睨めつけるように見つめる。

「兄ちゃん、ええ身体しとるやないか」

そのまま、男はドクオの方にじりじりとにじり寄ってきて――。
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 00:57:30.46 ID:G6IGKHP+0
(;・∀・)「うわ〜んうわ〜ん」

ξ゚听)ξ「ほらほら、なかない。あのキモいおにいちゃんはもういないでしょー?」

男の子の頭を、ツンはなでなでしてあげる。
依然として泣きやまない男の子にため息をついたとき、あの壊れたブロックの行方が気になった。
せめて少しでも拾ってやろうと思って、床を見る。

ξ゚听)ξ「あれ?」

そこには、散乱していたはずのブロックの破片はなかった。
代わりにブロックの固まりが――向こうの床の上に転がっている。
ツンは、それを拾い上げた。

ξ;゚听)ξ「なに……これ?」

あのキモい男がツンに見せたときと、それは寸分違わぬ形状をしていた。
気味が悪くなったツンは、それをレゴブロックが積んであったバスケットの中にもどす。

次の瞬間、ツンは思わず口元を覆った。
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 01:08:34.42 ID:G6IGKHP+0
まるで、砂鉄の山の中に磁石を投げ入れたようだった。
レゴブロックの山が蠕動する。カチカチとプラスチックが触れあう音が響いて、
無数のブロックが固まりに吸い付くのが見えた。

ξ;゚听)ξ「な、なんなのよ、いったい……!?」

固まりから腕が伸びた。瞬時にその表面を別のレゴブロックが覆い、頑強な指が拳を握りしめる。
胴体も、脚も――全てが同様だった。バスケットの中のブロックが空になったとき、
そこにはツンの膝くらいの高さのロボットが、超然と立っていた。

ロボットの顔がツンの方を向く。
その滑らかすぎる動きに、ツンは背筋が寒くなった。

「アナタガ、ワタシノクリエーターカ?」

声が響いた。隣の男の子が、ぽかんとした表情でロボを見つめる。
ツンは――男の子の手を握りしめると、猛然と駆け出した。

ξ;゚听)ξ「な、なんなのよ!? なんなのよー!?」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 01:19:28.75 ID:G6IGKHP+0
('A`;)「ちくしょうイオンめ……今度の国政選挙では、絶対民主党には入れねーからな」

水の付いたモップを動かしながら、ドクオは愚痴を垂れる。
スーツの男は、やや滑舌の回らない舌で、こう言ったのだった。

「兄ちゃん。実はオモチャ売り場の床が、子供のこぼした菓子クズやジュースで、ずいぶんと汚れとるんやけどな。
 ウチの若けえもんにやらせようかと思ってたが、誰ぞやってくれんもんかのう……?」

確かに、100円玉を入れるゲーム機の並んだそこはひどかった。
床にはべとべとした液体が広がり、機械のあいだには菓子袋が挟まっている。

('A`;)「ったく、最近のガキは、親のしつけがなってないんじゃねーのか?」

自分のことを棚にあげてつぶやいたとき、ふいに向こうから走ってくる二人の子供が目についた。

('A`)「おいガキども! 床が濡れてるから、走ると転ぶぞ!」

ξ゚听)ξ「そこのキモいレゴオタ!」

走ってきたツインテールの少女が叫んだ。

ξ;゚听)ξ「あんた、いったいなにをしたの!?」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 01:32:12.15 ID:G6IGKHP+0
(;・∀・)「ブルブルブル」

ドクオの顔を見て、男の子が怯えたように少女の後ろに引っ込む。
さきほどの自分の作品の末路を思い出し――ドクオはまた怒鳴りそうになったが、なんとか堪えた。

('A`)「何だよお前ら。俺は今、誠意を示すためにジャスコの床を掃除してんだ。邪魔するなよ」

ξ゚听)ξ「あんたのつくってたあのロボットが、たいへんなのよ!」

息せき切ったまま、少女は向こうのレゴブロック売り場を指差す。

('A`)「大変? あれはそっちのガキが床に落として壊しちまっただろ」

( ・∀・)「おにいちゃんのつくってたろぼっと、しゃべったんだよ」

男の子が舌足らずな口調で告げる。
心底馬鹿にした笑みを、ドクオは浮かべた。

('A`)「てめーら、もういいから親のところに帰れよ。大人の俺は、お前らみたいなガキの
   たわごとに付き合ってる暇なんか――」

ドクオがそう言いかけたとき、ふいに叫び声があがった。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 01:46:09.82 ID:G6IGKHP+0
飛び散ったガラス片が、ジャスコの床に散乱している。
悲鳴をあげたのは親子連れだった。ガンダム00のプラモの箱を抱えた子供を、親が怯えたように抱きとめている。

大気を引き裂くローターの音が、店内にこだました。
割れたガラスの向こう――高度数十メートルの高空を、小型のラジコンヘリが浮遊している。

('A`)「なんだ……?」

黒光りする鋭角な表面。玩具にしては少々精密すぎるつくりだった。
二重反転ローターを回転させながら、ヘリは舐めるように機体を傾ける。
翼の下に装備されていたミサイルが、ふいに火を噴いた。

('A`)「伏せろっ!」

モップを放り出し、ドクオは思わず少女と男の子を抱きかかえる。
風を切り裂くような金切り音をたてて、全長30センチほどのミサイルは店内を飛翔し――。
次の瞬間、女の子向けの人形を陳列していた棚から、爆音が吹き上がった。

(;・∀・)「びぇぇぇぇ〜ん!」

腕の中に抱きかかえていた男の子が、火が付いたように泣きだす。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 01:57:45.43 ID:G6IGKHP+0
怒号と叫び声、それに泣き声が飛び交う。
黒煙があがる店内に、ゆっくりとヘリは侵入してきた。

火花を散らしながらローターが左右に分かれる。
鋭角なシルエットが裂け、黒光りする腕と足が中から飛び出してくる。
回転を停止したローターが肩に折りたたまれ――そいつは、軽々とジャスコの床を足で踏みしめた。

('A`)「変形した……!?」

よく見れば、そいつの身体は見覚えのある凹凸の形状――レゴブロックで形成されている。
昆虫の眼を思わせる、赤く発光した単眼が滑らかな動作で店内を見回したのが分かった。
人型のロボットだった。ヘリの下部から分離した機銃を腕に抱え、周囲を警戒するように一歩を踏み出す。

ξ゚听)ξ「ちょ、ちょっと重い……! 離れなさいよこのレゴオタ!」

ドクオに抱きかかえられていた少女が、抗議するような声をあげる。
刹那――ロボットの赤く光る眼と、ドクオは視線を合わせてしまった。

('A`)「や、やばい……」

黒光りするロボットの銃口が、ドクオたち三人を捉える。
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 02:15:46.75 ID:G6IGKHP+0
炸裂した銃弾が――文字通り自分たちを穴だらけにするのを想像して、ドクオは身を縮めた。
爆音が轟く。目をぎゅっと閉じて、ドクオは恐怖に震えた。
だが、その瞬間は訪れなかった。

('A`;)「……!?」

おそるおそる目を開ける。
大きな黒い影が、ドクオたちの前に立ちふさがっていた。
戦車だ。どことなく見覚えのあるシルエットの、がっちりとした背の低い砲塔。

火花が舞う。機銃から炸裂した銃弾に対し、そのオモチャ――にしては少々大きすぎる
サイズの戦車は、自らを盾にしてドクオたち三人を守ってくれたようだった。

('A`)「こいつも、レゴブロック……」

砲塔が旋回する。
さながら本物の機械のように回転するギアの音が響き、
次の瞬間、爆風がオモチャ売り場をつんざいた。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 02:31:47.80 ID:G6IGKHP+0
周辺に転がっていたプラモデルの箱が、焼けただれて宙を舞う。
途方もない質量の熱が眼前を駆け抜け、周囲の棚をきしませた。

機銃を放っていたロボットが金切り声をあげる。
腕から黒光りする銃身を離し、体操選手のように身体を側転させて躱そうとした刹那――。
衝撃波とともに炸裂した砲弾が、その足首を掠めた。

まるで、巨大な見えないハンマーを振り下ろされたかのようだった。
ぶざまな格好で吹き飛んだロボットが、床の上に叩きつけられて黒いブロックの破片をまき散らす。

('A`)「す、すげえ……」

戦車は前進を開始した。猛然と床の上を動くキャタピラから火花があがり、
剛直な車体が無数のブロックに分かれる。図太い腕が拳を握りしめ、キャタピラの両輪が脚を形成した。
地響きを立てて、今やもう一機のロボットに変形した戦車が大地を駆ける。

仁王のような巨体が、床の上に転がった華奢な黒いロボットを見下ろした。
図太い拳が床の上に炸裂する。圧力を最高にまで高められたピストンが、地面を穿つような衝撃。
断末魔のような金切り声が、ジャスコ四階のオモチャ売り場に響きわたった。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 02:44:24.91 ID:G6IGKHP+0
ロボットの太い手が、赤い光を放つ単眼の頭部を無造作に掴みあげた。
身体からブロックの破片がぼろぼろとこぼれる。
まるで――砂鉄がより強い磁力を放つ磁石に引き寄せられるかのように、
それらのブロックがロボットの巨体に同化していく。

「ナゼダ……」

ミシミシと太い指に頭部を押し潰されながら、そいつが声をあげた。

「ナゼオ前ハ……!?」

赤い光を放つ単眼が、ガラス細工のように砕け散る。
ロボットは手を離した。頭部が地面に落ち、黒い破片を周囲にまき散らす。

「問おう」

その――戦車から変形したレゴ・ロボットが、厳かな口調で振り向くのが見えた。

「あなたが、私のクリエーターか?」

青く光る水晶のような両目が、ドクオの事を見つめる。
その手の問いかけは、金髪シニョンへアーの女の子にしてほしかった――と思ったドクオだった。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 02:56:53.24 ID:G6IGKHP+0
('A`;)「お、お前、本当に俺の作ったレゴブロック……?」

確かにそれは、ドクオの芸術作品だった。
サイズがかなり肥大し、身長174cmのドクオよりも巨大になってしまっているが、
自衛隊の90式戦車をモデルにした戦車モードからロボットモードに変形するのは変わっていない。

ξ゚听)ξ「レゴオタ、あんた何者……? というか、なんでレゴブロックが動いてるのよ!?」

少女がギャーギャーとわめく。一方、男の子は、

( ・∀・)「とらんすふぉーまーだ! とらんすふぉーまーはほんとうにいたんだ!」

などと目をきらきらさせてロボットの方を見ている。

「私は……あなたによって作られたのか?」

巨体を響かせて、ロボットがこっちに歩いてくる。
さっきのヘリ型ロボットのブロックを吸収したせいで、頭がもうすぐ天井に届きそうだ。

('A`)「なんかそうみたいだが……ところでお前、まさかオプティマスなんて名前じゃないだろうな?」
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 03:07:01.48 ID:G6IGKHP+0
「オプティアヌスだ」

ロボットが言った。

('A`)「汚い名前だなあ……」

( ・∀・)「ねーねー、おねえちゃん。あぬすってなに?」

ξ゚听)ξ「子供は知らなくていいのよ」

どうみても小学校の高学年には達していない少女が、平然と答える。

('A`)「こっちからも質問させてくれ。オプティアヌス、お前は何なんだ?」

「ブロックの戦士だ。あなたは私を――聖なるブロックで形作ったクリエーターではないのか?」

ロボット――オプティアヌスがそう答えたとき、ふいに爆音が響いた。
割れたジャスコの窓の外に、無数の黒い影が接近してくる。

「クリエーター、この建物から避難するのだ」

('A`)「避難、つったって……」

ドクオはあたりを見回す。呆気にとられた人々が、ドクオたちをぽかんと見つめていた。

「あれは偵察用に過ぎない。本隊が侵攻してくるぞ」
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 03:28:39.01 ID:G6IGKHP+0
群れ集う小型のレゴブロックヘリの向こうに、巨大な影が浮かんだ。
巨大な二重反転ローターから爆音を響かせ、ゆるやかに膨らんだ迷彩色の機体を滞空させる。
翼の下に装填された大型のミサイル。だが、火を噴いたのは機首の機関砲だった。

「クリエーター、早く逃げるのだ!」

火線が、店内を薙ぎ払うように炸裂する。
頑強なスチール製の棚が火花をまき散らしてひしゃげた。天井の照明が空中で四散する。
本物の機関砲と寸分違わぬ威力だった。鉄筋コンクリートの柱が爆散し、白煙とともに鉄骨が剥き出しになる。

('A`)「くそっ!」

ドクオは少年と少女を抱きかかえた。
オプティアヌスが身体から火花を舞わせ、瞬時に戦車形態へと変形を遂げる。
放った砲撃が、大型の攻撃ヘリの付近を周回していた一機のレゴブロックヘリを掠めた。

ブロックが崩壊する。だが、大型のヘリは優雅にそれをかわした。
機体がフロアの正面を向き、翼からフルサイズのミサイルが放たれる。

('A`)「うおおおおおっ!」

ドクオは猛然と走った。ガラス片が散乱する床をスニーカーが駆け抜ける。
背後から、高速で飛翔する金属体が放つ風切り音が響いて――。

次の瞬間、爆風がドクオの背中を打った。
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 03:55:54.57 ID:G6IGKHP+0
振り向いたフロアの向こうには、黒煙が立ちこめていた。
さっきまで大量のオモチャが並び、商品のコマーシャルがビデオで流れながら、
親子連れがショッピングを楽しんでいた光景が嘘のようだ。

フロアには、ドクオ達以外にも何人か客がいた。しかし今は、黒く焦げた壁と瓦礫しか見えない。

('A`;)「オプティアヌス……?」

その中央に、黒ずんだ何かの固まりが鎮座していた。
戦車だ。だが砲身は溶けて垂れ下がり、炭化したキャタピラはぴくりとも動かない。

ξ゚听)ξ「見て! ヘリが来るわ!」

巨大な穴が空いたフロアの壁の向こうに、大型ヘリの姿が浮かんだ。
ローターから火花が噴きあがる。変形パターンはさっきの小型ヘリりものと同じだったが、
焼け焦げたフロアの床に降り立ったそいつの姿はオプティアヌスよりも一回り大きい。

ロボットの太い指が、天井のコンクリートを押し広げる。

やや腰をかがめながら、そいつは炭化した戦車の前に立った。
赤く光る両眼が、興味深げにその表面を見つめた――瞬間。

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 04:10:06.65 ID:G6IGKHP+0
戦車の表面が粉々に吹き飛んだ。
炭化したブロックの破片が宙に舞う。反射的に顔を反らそうとしたロボットの首を、やや華奢になった腕が掴んだ。
もう片腕で猛然と繰り出したパンチが、赤く光るロボットの顔面を撃ち抜く。

土埃が舞い上がった。突然の猛襲に、ロボットは巨体を地面に落とす。
青い眼を憤怒に燃え上がらせながら、オプティアヌスが叫んだ。

「クリエーター! 早く!」

だが、ニ体のロボットの体格差は歴然としている。
戦車の表面を構成していたブロックを失ったオプティアヌスに対し、相手はただでさえ巨大なのだ。
もう一撃を顔面に叩き込もうとしたオプティアヌスの身体が、ふいに宙を舞った。

ロボットの拳が、オプティアヌスの胴体を突き上げたのだ。
天井に叩きつけられ、オプティアヌスの左腕が崩壊する。
続けざまに、ロボットはその顔面を薙ぎ払うように拳を振るった。

横回転しながらレゴブロックの巨体が吹き飛ぶ。鉄筋が剥き出しになった柱に激突し、バラバラと身体が崩れるのが見えた。

('A`;)「オプティアヌス……!」

「行け!」

身体の輪郭を崩しながら、なおも立ち上がるオプティアヌスが叫ぶ。
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 04:20:49.96 ID:G6IGKHP+0
ξ゚听)ξ「あたし、自分で走れる」

少女が言った。ドクオは頷き、男の子を抱える。

(;・∀・)「まけないで、おぷてぃあぬす……!」

だが、男の子の声に応えようとしたオプティアヌスの頭部を、再び拳が突き抜けた。
よろめいた巨体が背後の柱に再び直撃する。こぼれたブロックが、相手のロボットの身体に吸い寄せられるのが見えた。

('A`)「行くぞ!」

ドクオは後ろを振り返らなかった。
ロボットの巨体どうしが殴り合い――鋼鉄と鋼鉄が激しく打ち付けあうような音が響く。
ドクオは少女の手を引き、必死に走った。
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:04:12.93 ID:G6IGKHP+0
「本館の四階で爆発事故が起こりました……。館内におられるお客様は、係員の誘導に従って
速やかに避難してください。繰り返します……」

('A`)「誰もいねーな」

ジャスコから抜け出した三人は、専門店が並んでいるフロアに辿り着いた。
客どころか係員らしき人の姿も見えない。あまりにも避難が早すぎるだろ、と訝しがるドクオに、
少女が下を指差した。専門店街は立体構造の吹き抜けになっていて、建物の外壁はガラス張りになっている。

ξ゚听)ξ「レゴオタ、あのいかにも危険っぽい匂いのする車は何?」

('A`)「ありゃあ化学防護車だ。自衛隊の車輌だよ」

建物の外にいる、いかにもな迷彩色と装甲版に覆われた六輪駆動の車輌を見てドクオは答える。

('A`;)「でも何で、ジャスコの近くにいるんだ? 自衛隊の基地、ここから結構あるだろ」

ξ゚听)ξ「あたし軍オタじゃないから知らないわよ」

(・∀・)「ねーねー、さっきからおとがきこえるんだけど」

ドクオに抱かれていた少年が、ふいにそう言った。

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:12:59.65 ID:G6IGKHP+0
ξ゚听)ξ「音って、何の音?」

少女がたずねる。ドクオは耳を澄ませたが、何も聞こえない。

(・∀・)「あのへりこぷたーがぶるぶるいうおと。ほら……!」

次の瞬間、はっきりと、ドクオと少女にもそれが聞こえた。
あの大型のヘリに随伴していた、小型のレゴブロック・ヘリ。

よりによって二機のヘリが、ローターの唸り声を上げながら中空を舞っている。
下に付いていた小型の機銃が、黒光りする銃身をこっちに向けたのが、見えた。

('A`;)「くそおおおっ! またか!」

少女の襟首をひっつかみ、ドクオは近くにあった専門店の店内に駆け込む。
機銃が弾痕をフロアの上に刻み、辛うじてドクオたちの姿を店内に並べられた服飾品が覆い隠した。

そこは、どうも女性物の洋品店のようだった。
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:21:02.22 ID:G6IGKHP+0
ξ*゚听)ξ「ヘンタイ」

少女がぷいっと顔を背ける。頭に被さっていた女性物の下着を取ると、ドクオは憮然として抗議した。

('A`)「仕方ねーだろ。あのままあそこにいたら、撃たれて死んでるぞ」

よりによって――三人が飛び込んだのはその下着コーナーだった。
少女にはだいぶ早く、ドクオにはちょっと魅力的な黒のレースの下着なんかが並んでいる。

(・∀・)「ままがこういうの、はいてるー」

目を輝かせて純白のパンティを伸び縮みさせていた男の子の手から、ドクオは下着をもぎ取った。

('A`)「……お前には、それはまだ早い」

ξ゚听)ξ「しいっ……。二人とも、静かにして」

入り口の方で、床を踏みしめる乾いた音が響いた。
例のミニチュアミサイルは使えないのか――それとも何らかの理由があるのか、
ヘリの一機はロボットに変形して洋品店の中に踏み込んできたようだった。
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:31:58.23 ID:G6IGKHP+0
ξ゚听)ξ「ちょ、ちょっと……」

いきなり、ドクオは少女を棚の中に押し込んだ。
少年を追加して押し込み、服のカーテンを二人の上にかけて、小さな声で囁く。

('A`)「いいか。そこでじっとしてろ……」

ロボットの足音が、次第に近づいてくる。金属のギアとギアが触れあうような音。
ドクオは姿勢を低くして身構えた。洋服を陳列したキャスターつきラックの向こうに、レゴブロックの細い足が見えた。

('A`)「レゴブロックを作り続けて15年の、ドクオ様をなめるなよー!」

プロレスのタックルの要領で、ロボットの足目がけて猛然と突進する。
女物のネグリジェを引き裂いた向こうに――驚愕したような赤い眼が見えた。

衝撃がつたわる。

ドクオとロボットは、そのまま洋品店の床に転がった。
相手の大きさはドクオの腰ほどしかない。だが、凄まじい力で抵抗する。

('A`)「うりゃ〜!」

ドクオは、だがロボットを背後から羽交い締めにした。
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:41:58.91 ID:G6IGKHP+0
だが――そこまでだった。
ローターの轟音を巻き上げながら、もう一機のヘリが洋品店の入り口近くを飛翔しているのが見えた。
機銃の先端が、ロボットと揉み合うドクオを捉える。

('A`)「くそっ……!」

歯を噛みしめる。俺を撃ち殺したこいつらは、すぐに戸棚の中に隠れている二人を見つけ出すだろう。
泣き叫ぶ少女と男の子を、あのフロアにいた客とおなじように――。

羽交い締めにしていたはずのロボットが、ふいに頭部を180度回転させた。
赤い単眼が間近に迫る。ジシジ……と音を立てながら、不気味なまで至近距離で輝く。
次の瞬間、腹部を衝撃がつらぬいた。

('A`;)「げはっ……ごほっ……」

ロボットから手を離し、思わず咳き込む。口元から生暖かい胃液が洩れたのが分かった。
立ち上がったロボットが片足をぶらぶらさせる。器用にも、それでドクオのみぞおちを蹴り上げたのだ。

「シ、ネ……」

オプティアヌスとは比べものにならない機械の声を立て、銃口が眼前に迫る。
だめか――。ドクオは思わず、目をぎゅっと閉じた。
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:51:07.53 ID:G6IGKHP+0
炸裂音が響いた。
だがドクオは、まだ生きている。

目を開けた。身体をぐらつかせたロボットが、洋品店の床に倒れるのが見えた。

川 ゚ -゚)「まったく……民間人が無茶しやがって」

黒光りする銃器を構えた迷彩服の兵士が、店内に駆け込んでくる。
たぶん女だ。だって、お胸がぷるんと揺れたから。

川 ゚ -゚)「どこ見てる」

向こうの方では、飛翔していたヘリが床に落下しているのが見えた。
何人かの兵士が駆け寄って、ショットガンで機体の表面を交互に撃っている。

('A`;)「あ、す、すいません……」

川 ゚ -゚)「どけ」

女兵士はそう言うと、手にしていたライフルを構えた。
閃光が炸裂して、倒れていたロボットの赤く輝く眼球が粉々に砕ける。

いたく恐縮するドクオの肩を、女兵士の腕が乱暴に掴んだ。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 05:57:08.50 ID:G6IGKHP+0
川 ゚ -゚)「こっちに来い。一緒に避難するぞ」

('A`)「いえまだ、あと二人いるんです」

ドクオは向こうの洋服棚を指差した。少女と男の子が、もぞもぞと這い出してくる。

(・∀・)「おねえちゃん、かっこいいー!」

ξ゚听)ξ「本当にあんたってレゴオタで軍オタなだけで、役に立たないわね」

('A`)「う、うるさい」

川 ゚ -゚)「民間人君。君の勇気は認めるが、あのざまでは隠れていた方がよかったかもな」

さらに女兵士にまで止めを刺されて、うなだれるドクオに、

「敵襲――!」

兵士の一人が引きつった顔で叫んだ。

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 06:09:13.79 ID:G6IGKHP+0
赤く輝く目が、憎悪と憤怒に染まるのが分かった。
唸り声が洩れる。そいつの身長は、先ほどジャスコで見たときよりも更に肥大化していた。

(;・∀・)「お、おぷてぃあぬす……!」

男の子が泣きじゃくりそうな顔で叫ぶ。
そいつの右腕に握られた、首だけのロボットは――!

('A`)「嘘だろ……」

ロボットの首が、フロアの床に落ちる。
先程まで青く輝いていた目は光を失っていた。赤く煮えたぎった目が、残忍にそれを見つめる。
次の瞬間、巨大な足がその上に振り下ろされた。

ブロックが砕け散る。宙に舞い上がったそれらが、ロボットの胸部に同化するのが見えた。

川 ゚ -゚)「ひるむな! 撃て!」

兵士達がライフルを構える。だが、オプティアヌスの鋼の巨体をもってしても倒せなかった相手に、
人間が持てる口径の銃砲が役に立つとは思えなかった。

('A`)「だめだ……!」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 06:17:21.16 ID:G6IGKHP+0
川 ゚ -゚)「君らは逃げろ!」

女兵士が、ライフルを撃ちながら叫ぶ。

川 ゚ -゚)「4フロアほど進んだ先に非常階段がある。そこを降りて脱出しろ。
     こいつは我々が何とかする――いや、してみせる!」

ブロックの表面を空しく叩く鉄の音。ほとんどの目標を沈黙させるはずの、ライフル弾がまるでおもちゃの鉄砲のようだ。
ロボットは猛然と腕を振るった。兵士が二人ほど、悲鳴を上げて宙に舞いあがる。

('A`)「だめだ!」

ドクオは叫んだ。

川 ゚ -゚)「いいから行け! 武器も持ってないお前に何ができるッ!」

オプティアヌスの最後の姿が脳裏に浮かんだ。
ドクオたちを逃がそうと、猛然と体格で勝る相手に向かっていった姿――。

('A`)「俺は……もう逃げない!」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 06:29:14.11 ID:G6IGKHP+0
「なあ。あいつってキモいよな?」

ブレザーを着た男子高校生が、後ろの方の席に座っている生徒を指差す。

('A`)「あ、ああ……」

ドクオはしぶしぶながら頷いた。
ちょっと暗い感じのする生徒だった。微妙に太っていて、運動も苦手。
何よりもそいつの趣味が――どうもレゴブロックであるらしいことが、周囲の嘲笑をかった。

「あいつ、休み時間になるとずっと、レゴブロックのカタログ見てるんだぜ?」

「レゴって子供のオモチャだろ? そんなのに夢中になるなんて、頭おかしいんじゃねえの?」

('A`)(ち、違う……)

マニアのドクオには分かった。その生徒が見ていたのはマインドストーム――コンピューター制御で動かせる
レゴブロックのカタログであり、それは子供向けのオモチャながら無限の可能性を秘めた代物だった。

現に海外のギーク(オタク)サイトでは、マインドストームを使っていい年した大人が動く戦車を作ったり、
完全に可動するエンジンの模型を自作したりして楽しんでいるのだ。

('A`)「そ、そうだな。レゴなんて子供のオモチャだもんな……」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 06:37:00.08 ID:G6IGKHP+0
だが――ドクオは分かっていながら、クラスメートにそう言うことができなかった。
一度あの生徒を庇うそぶりを見せれば、連中は次にドクオを標的とするだろう。
それが怖かったのだ。

「おい、○×!」

喋っていた生徒の一人が、その男子生徒の机に駆け寄る。

「お前、何一人でずっと見てんの? レゴブロックのカタログぅー? 高校生にもなって、馬鹿じゃねーの」

ゲラゲラと、おどけたようにそう言った男子生徒に、クラス中から嘲笑が洩れる。

('A`)「…………」

黙ったままのドクオと、男子生徒の目がふいに合った。
悲しそうな目だった。ドクオはだが、何も言わなかったし言えなかった。

ドクオは逃げたのだ。クラスで孤立することが怖くて、友人になれたかもしれなかったレゴブロックマニアを見殺しにした。
その男子生徒は、半年ほどして高校に来なくなった。
退学したと知ったのは、夏休みが開けたあとだった。
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 06:46:31.13 ID:G6IGKHP+0
赤く憤怒する目が、銃を撃ち続ける兵士達を見つめる。
口元から咆哮とともに、蒸気が噴き上がった。

川 ゚ -゚)「なにを、馬鹿なことを――!」

ドクオは答えずに、ゆっくりとそいつの巨体に向かって歩き出す。
銃撃を行っていた兵士たちが、思わず自分のことを見たのが分かった。

('A`)「オプティアヌス!」

ドクオは両腕を広げる。頼りなさげだった目が、かっと見開かれた。

('A`)「お前は、俺に作られたと言ったな――。そうだ。俺が、レゴブロックの固まりから
   お前を作ったんだ。俺は、ジャスコの店員の痛い視線に耐えながらお前を作った!」

そいつが拳を振り上げる。
目の前に立つ人間など、虫けらと同類であるかのように。

('A`)「いま――俺の目の前にはレゴブロックの固まりがある。どうも少し非友好的みたいだが、
   あの家族連れからの痛い視線に比べれば、そんなものはマシだ!」

('A`)「だから俺は――もう一度、ブロックの固まりの中からお前を作ってやる!」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 07:03:09.01 ID:G6IGKHP+0
川 ゚ -゚)「何を言ってるんだッ!」

女兵士が叫ぶ。だが、ドクオは声の限りに叫んだ。

('A`)「俺は――もう逃げない。レゴブロックを愛してる、心の底から愛してるんだ!
   だからお前も、俺の声に応えろ!」

ロボットの拳が、ドクオの身体を捉える。
大型トラックの激突にも比例する、その衝撃が自分を貫こうとする刹那――。

('A`)「オプティアヌス! 俺は……お前のクリエーターだ!」

拳は、風になってドクオの頬を駆け抜けた。
まるで、見えない壁に激突したかのように、腕を構成していたブロックが崩壊していく。
ロボットは身体をよじった。その半身が二つに裂けて、青白い輝きが炎のように点る。

(・∀・)「おぷてぃあぬす!」

崩壊を経て、高速で組み上がっていくレゴブロック。それが、精悍な人の姿を成していく。
全身から火花がほとばしった。図太い腕が、敵のロボットの顔面を鷲掴みにする。

「私は――オプティアヌス!」

ブロックの破片が舞い上がる。
オプティアヌスは顔面を掴んだまま、ロボットの身体を床に撃ち付けた。

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 07:13:03.05 ID:G6IGKHP+0
オプティアヌスの腕から火花が吹き上がる。
敵の顔面を掴んだまま、肘から先が砲身の形へと変形していく。

「さっきのパンチはずいぶんと効いたぞ」

囁くように、オプティアヌスは敵のロボットに告げる。

「これは――そのお返しだ!」

衝撃波が、フロア中に拡散した。
床が円形に軋む。ロボットの巨体がビクン、と震えた。
噴き上がった火炎とともに、ロボットの肉体を構成していたブロックが砂のようにこぼれていく。

('A`)「すげー……」

巨大ヘリ型ロボットを構成していたブロックは、今や完全にオプティアヌスの肉体へと変化していた。
掃除機で砂を吸いあげるように、オプティアヌスの全身に崩壊したブロックが吸い込まれていく。

「クリエイター。凄いのはあなただ」

やがて、前よりも一回り巨大になったオプティアヌスが口を開いた。

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 07:18:44.81 ID:G6IGKHP+0
「私は、暗い闇の中にいた。それを呼び起こしてくれたのは、あなたの声だ」

('A`*)「オプティアヌス……」

ちょっといい雰囲気になったロボットに、しかし女兵士は銃を向けた。
他の兵士も一斉に銃を構える。慌てて、ドクオは両手を振った。

('A`)「ちょ、ちょっと……。彼は味方ですよ!?」

川 ゚ -゚)「私には同じに見えるぞ」

(・∀・)「おぷてぃあぬすは、てきじゃないよー」

ξ゚听)ξ「何度もあたしたちを助けてくれたし、さっきだって敵のロボットをやっつけてくれたじゃない」

川 ゚ -゚)「どうかな」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/30(火) 07:27:15.46 ID:G6IGKHP+0
川 ゚ -゚)「ともあれ、お前たちには一緒に来てもらう必要がありそうだな」

ドクオは、下のフロアに目を向けた。迷彩服を着た兵士が、次々となだれ込んでくる。

('A`)「おいおい、俺たちを捕まえるっていうのか?」

川 ゚ -゚)「そうだ。お前たちの存在は、我が国の安全保障をおびやかす恐れがある」

女兵士の銃口が、ドクオに向けられる。

川 ゚ -゚)「そこのロボット! こいつを撃ち殺されたくなかったら、おとなしく私の指示に従え!」

「貴様――」

オプティアヌスの両眼が、青白い炎のごとく燃える。

('A`;)「ま、待って……。痛いのヤダから、この人の言うことを聞いて――」

ξ;゚听)ξ「はぁ……。さっきとあんた、全然態度が違うわよ」

少女のついたため息が、ひどい有様になった建造物の内部に響いた。
 

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