- 88
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:27:13.78 ID:ShTM8SSI0
昔からそうだった。
吹きぬける風とやわらかい太陽。
それらに包まれるだけで、どこまでも歩いていけそうだった。
はしゃぐあたしとそれをみて笑うあなた。
それは幼い恋だったのかも知れない。
それでも間違いなく、事実だった。
ξ゚ー゚)ξ「久しぶりに行くわね、あの公園にも。」
木々は赤や黄色に色づいているだろうか。
埋もれるくらいの落ち葉を集めて、ショボンに見せてあげよう。
きっと喜んでくれるはず。
ξ゚听)ξ「あら・・・。」
( ゚∀゚)「うはー綺麗な公園ですねー!並木道もさることながら、良く整備されてますー!」
(´・ω・`)「wktkww」
( ゚∀゚)「ショボンくん、そんなあせらずとも公園は逃げないですよー!」
- 93
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:29:43.83 ID:ShTM8SSI0
久しぶりの公園は、昔よりずっと綺麗になっていた。
ちょっぴり寂れてる感がまた良かったのだけど。
そう思いつつツンは微笑む。
ξ゚ー゚)ξ「そりゃそうよね、あたしがいくら立ち止まろうが、季節はめぐるんだもの。」
ξ゚ー゚)ξ「昨日が過ぎて今日が来てそして明日が訪れるんだわ。」
一抹の寂しさも、悲しみには変わらない。
喜ぶショボンの姿を見れば、数年後、この新しい公園を自らの知る公園として駆け巡る彼が想像できる。
そのそばに居る、笑顔の自分も。
ξ゚听)ξ「さぁ、落ち葉を集めるわよ!アンタも手伝いなさい!!」
( ゚∀゚)「言われずともww」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:33:26.34 ID:ShTM8SSI0
キャッキャとはしゃぐショボンをベビーカーからおろす。
ようやく1人でもスムーズ歩けるようになったショボンはあたしとジョルジュの集めた落ち葉へと駆け寄る。
( ゚∀゚)「ほら、こうやってダイブしてみても楽しいですよww」
(´・ω・`)「ライブ!ライブ!」
( ゚∀゚)「うはwwショボン君アーティスティックww」
ξ*゚听)ξ「落ち葉の量が足りないわよー、ホラ追加ww」
( ゚∀゚)「埋もれるwwツンさん鬼畜ww」
声にだして笑う、ショボン、ジョルジュの笑い声が聞こえる。
カメラを取り出し何度も何度もシャッターを押す。
今この瞬間に夢中になって笑っていた。
自分でも強く実感した。
ξ゚听)ξ(あたし、変わったわ・・・)
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:35:02.06 ID:ShTM8SSI0
ξ゚听)ξ「ほらほら、手がばっちぃからね、ちゃんとお水で流しましょうね。」
(´・ω・`)「あーいww」
( ゚∀゚)「スーパーお弁当タイムww」
お弁当箱を開けると綺麗に整ったおにぎりが顔を出す。
やわらかく煮たカボチャや卵焼きも色あざやかだ。
ξ゚听)ξ「はい手を合わせて!」
(´・ω・`)( ゚∀゚)「「いただきまーす!」」
朝よりも暖かくなった空気の中、お弁当はワレながら本当においしかった。
ショボンの食べこぼしを拭いたり、負けないくらい食べこぼすジョルジュに突っ込みを入れたり。
午後は綺麗な落ち葉を拾って持ち帰り、栞にでもしようかと考えながら。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:37:31.24 ID:ShTM8SSI0
ジョルジュに最後のおにぎりをとられまいと手を伸ばしたそのときだった。
( ^ω^)「ツン!!」
ξ゚听)ξ「・・・え?」
そこに居たのは、不器用で、おっちょこちょいで、私の夫だった男だった。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:39:54.52 ID:ShTM8SSI0
( ;^ω^)「マンションは・・・もう売り払っちゃったのかお・・・。」
ξ゚听)ξ「うん、アンタがあたしに残していったものって言ったらそれくらいだし・・・生きていくにはやっぱりお金がいるから。」
本当、それには感謝してる。
働けないまま半年もしくはそれ以上過ごしても生活できているのは、今までの貯蓄とそれによる所が大きい。
( ^ω^)「それはいいんだお。でももしかして会えるかもしれないと思って公園に来たのは、正解だったお・・・。」
ξ゚听)ξ「そうね。」
( ゚∀゚)「・・・ツンさん。」
声をかけてきたジョルジュに、あたしは振り返って一回うなづく。
ジョルジュはお弁当をしまい、ベビーカーの袋の部分に入れる。
そしてどこにそんな力があるのかはわからないがショボンのこともベビーカーに乗せてくれた。
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:42:32.37 ID:ShTM8SSI0
ξ゚听)ξ「で、あたしに何か用かしら。」
まっすぐにブーンを見る。
若干息を荒げながら話を続けようとするブーンには、どうやら私の後ろの光景は目に入っていないようだ。
( ^ω^)「ツン・・・僕たち、やり直せないかお?」
ξ゚听)ξ「あのオカマ・・・ううんドクコさんはどうなったの?」
( ;^ω^)「き、気づいたんだお!あんなオカマより僕はツンのことをずっとずっと愛してるんだお!」
多分、それはあたしが一番ほしい言葉だった。
一ヶ月前までは。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:45:05.23 ID:ShTM8SSI0
ξ゚ー゚)ξ「ありがとう、うれしいわ。」
( ^ω^)「じゃ、じゃぁ僕たち・・・」
ξ゚听)ξ「でもそれはムリね。」
( ;^ω^)「!?」
後ろから視線を感じる。
ジョルジュだろう、そんなに心配そうに見ることないのに。
でもショボンをちゃんとおとなしくさせてくれてるから、それだけでOKだ。
( ^ω^)「なんでだお!?僕はツンを・・・!」
ξ゚听)ξ「ええ、それは本当に嬉しいわ。人に好かれて嬉しくない人なんてそんなに居ないもの。」
それはまさしく本当の気持ち。
小躍りしたくなるくらい嬉しい一言。
でも、今のあたしには違う。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:47:45.32 ID:ShTM8SSI0
ξ゚ー゚)ξ「ねぇブーン、この公園、良く二人で来たわね。」
( ^ω^)「・・・そうだおね、ツンは子供みたいにはしゃいで、僕はそれを追いかけたお。」
ξ゚听)ξ「子供みたいに、は余計よ。」
( ^ω^)「本当のことだおww」
ξ゚听)ξ「・・・でもね、この公園、こんなに綺麗に整備されたの。」
( ^ω^)「僕も驚いたおwwちょっと寂れた感が良かったのに。」
思わず苦笑する。
おんなじことを感じていたんだな、と。
あたりを見渡しながらあたしは続ける。
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:49:28.83 ID:ShTM8SSI0
ξ゚ー゚)ξ「この公園は、変わったのよ。私たちの時代から、この子達の時代に。」
振り返り、ショボンを見つめる。
食べたりないのかジョルジュの頭をかじっているが、前と違い吐き出すことはない程度にかじっているようなので笑ってみていた。
( ^ω^)「ショボン・・・かお。」
ξ゚听)ξ「そうよ、大きくなったでしょ?」
ようやくわかったようだ。
子供の成長の早さが尋常じゃないのはそばにいて知っているが、いったん離れてから見るとまた違う風に感じるのだろう。
ξ゚听)ξ「この子も変わった。公園も変わった。・・・そしてあたしも変わったの。」
そう言ってあたしは笑った。
死のうと思ったこともあった、今では笑い話だけど。
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:52:14.60 ID:ShTM8SSI0
ξ゚听)ξ「あたしわかったのよ、誰でも気付けば変われるんだわ。たった一つの出会いが、自分を変えることだってある。」
変わった、だからわかることもある。
( ^ω^)「ツン・・・なにを・・・」
ξ゚听)ξ「ドクコさんとは、まだきれてないのね。」
( ;^ω^)「お・・・」
人を愛せると、わかることがある。
ブーンの真意が、わかってしまうこともある。
ξ゚听)ξ「ドクコさんに言われてきたのね、おそらくは、お金関係で」
( ;^ω^)「・・・。」
家庭状況を見れば、生活保護のことが思い当たるだろう。
貯蓄の状況はブーンに聞けばわかるだろう。
マンションを売ったことだって、きっと調べてた。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:54:18.93 ID:ShTM8SSI0
ξ゚听)ξ「みつがされてるんでしょ。」
( ω )「・・・。」
ξ゚听)ξ「あたしはブーンがそれでいいなら何も言うことは無いわ。」
( ω )「僕は・・・。」
じっとうつむいてぼそぼそと喋るブーン。
うずくまって、下ばっかり見ている。
まるで誰かみたい。
うしろで、ショボンの笑い声が聞こえた。
- 144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:56:52.48 ID:ShTM8SSI0
ξ゚听)ξ「ブーン!!」
( ^ω^)「!!」
ξ゚听)ξ「あたし、変われたわ。一つの出会いがおしえてくれた。」
ジョルジュが。
そして、ショボンが、あたしに変わるチャンスをくれた。
ξ゚听)ξ「だからアンタも変われるわ!あたしは信じてる。」
( ^ω^)「・・・。」
( ゚∀゚)「ツンさん・・・。」
- 147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 23:00:00.02 ID:ShTM8SSI0
- そして、にっこり笑う。
本当に信じてるから、ブーンならわかってくれる。
彼ならきっと変われる。
( ^ω^)「ツン・・・綺麗だお。」
ξ゚听)ξ「?」
( ^ω^)「綺麗で、まぶしくて、僕ではつりあわないお・・・。」
普段から笑い顔をしては居るが、あたしにはわかった。
ブーンが、笑っていた。
( ^ω^)「僕は弱いから・・・変わるには時間がかかると思うお・・・。」
ξ゚ー゚)ξ「あたしはずっと待ってられるわよ、1人じゃないからね。」
ベビーカーに近づき、わが子の頭を撫でる。
はしゃぐショボンの笑い声が秋の風に乗って広がる。
- 150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 23:02:36.97 ID:ShTM8SSI0
- ( ^ω^)「また、くるお・・・。」
ξ゚ー゚)ξ「うん。」
くるりと振り返って、ブーンは歩き出した。
その後姿を見送りながら、少しの寂しさと希望を感じていた。
(´・ω・`)「ぱーぱー!!」
ξ゚听)ξ「!」
( ^ω^)「!!」
ショボンが、ベビーカーから手を振っていた。
またねと、そう言っているようだった。
ブーンは振り返らず手を振り、あたしはショボンと一緒に手を振り返した。
舞い散る落ち葉の中、その背中が見えなくなるまで。
- 152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 23:05:34.70 ID:ShTM8SSI0
( ゚∀゚)「・・・。」
だからあたしは気付かなかった。
ショボンの横でジョルジュがどこかさびしそうなかおをしてたこと。
何か思い悩んでいたこと。
戻る