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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:00:54.00 ID:ShTM8SSI0
この生活が始まってついに一月たった。
最初はジョルジュの助ける、と言う言葉に内心すがるつもりで。
でもしばらく一緒に暮らしてあたしの気持ちは変わってきた。
この三人の生活を、今では楽しいと思っている。
ξ゚听)ξ「けほっけほ・・・あ、やっぱりここにあった・・・」
あたしはクローゼットに詰め込まれたダンボールの中からカメラを引っ張り出す。
ブーンが残していったマンションを売り払い、このアパートに引っ越してきたときから、ずっとそのままにしていたのだった。
ξ゚听)ξ「埃かぶっちゃってるけど・・・よし、動く。」
わざわざこうやってカメラを引っ張り出したにはもちろんわけがある。
ξ゚ー゚)ξ「ずっとほったらかしてごめんね。これからは一杯使ってあげるから。」
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:02:15.98 ID:ShTM8SSI0
今日はショボンの誕生日なのだ。
ついにあの子も1歳を迎える。
それで思った、成長していくその姿を写真に残そうと。
いつかショボンが大きくなったときに、気恥ずかしくても幼かった自分の姿を見てほしいと。
カメラは昔写真を撮ることにはまっていたときに買ったものだ。
普通のカメラよりは型は少し古いとは言え性能はいい。
( ゚∀゚)「お、ツンさんいいカメラですね〜。」
ξ゚听)ξ「あら、あんたカメラのことなんかわかるの?」
( ゚∀゚)「いえ、ノリで言ってみましたww」
ξ;゚听)ξ「・・・別にいいけど。」
カメラのレンズを優しく拭くと、ジョルジュが覗き込みながらたずねてきた。
( ゚∀゚)「ところでカメラなんか出してどうするんです?」
- 46
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:03:37.56 ID:ShTM8SSI0
モデルなら引き受けてもよろしいですよ、と言うジョルジュに笑いながら答える。
ξ゚听)ξ「今日はショボンの誕生日なのよ。それで記念にと思って。」
( ゚∀゚)「おお!今日はショボン君の誕生日なのですか!なんたる偶然!!」
ξ゚听)ξ「え、もしかしてアンタも・・・」
( ゚∀゚)「私の誕生日の一月と19日前ですね!」
ξ;゚听)ξ「偶然も何もねーーーー!!」
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:05:49.84 ID:ShTM8SSI0
そして今、今日の晩御飯を気持ち豪華にするため、あたしたちはスーパーに居る。
(´・ω・`)「あぉーー!!」
ξ゚听)ξ「大きなお魚ね〜。」
( ゚∀゚)「活け造りですか!ツンさん太っ腹!」
ξ゚听)ξ「んなわけないでしょうが。大体今日はショボンのために来てるんだから、ショボンが食べれるものじゃなきゃ意味ないじゃない。」
ショボンはだいぶいろいろなものを食べるようになっていた。
だがまだ大人が食べるものと同じ食事を与えるのは気が引ける。
だから今日は三人分のケーキと少しの食材を買い足すだけだ。
今夜のメニューも決め、あたしはレジに並んだ。
ピッピと電子音が耳に届き、値段が表示される。
小銭もぴったりに出し、少しいい気分でスーパーから出ようとした、そのとき。
- 54
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:08:25.57 ID:ShTM8SSI0
川 ;゚ -゚)「や、やめろ・・・!」
( ゚∀゚)「!引ったくりですか!?」
若い女性の声がしたほうをみると、全身黒いタイツを着たような目だけが見える男がかばんを持ち走り去る所だった。
女性は追いかけようとするが苦しそうに座り込む。
おなかが大きい、妊婦だ!
ξ;゚听)ξ「大丈夫!?」
川 ;゚ -゚)「ぐっ・・・痛い・・・!」
女性の肩を抱きながら、あたしはベビーカーを抑えるジョルジュを見る。
( ゚∀゚)「え、ツンさん??」
ξ゚听)ξ「ジョルジュ、お願い!タスケテケスタ!!」
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:10:04.17 ID:ShTM8SSI0
ジョルジュの周りに白い煙幕が広がる。
あたしは自分のそばにベビーカーを引き寄せた。
煙幕から飛び出してきたのは八頭身になったジョルジュだった。
( ゚∀゚)「ジョルジュ長岡、参る!!」
ものすごい速さで引ったくりを追いかけていったジョルジュ。
突然立ち込めた煙幕にまわりは様子が見えなかったようで助かった。
颯爽と飛び出たジョルジュは黒のブーメラン一枚だったからだ。
- 59
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:12:03.22 ID:ShTM8SSI0
数分後、帰ってきたジョルジュは黒い男を無事連れてきた。
盗まれたバッグも無事なようだ。
その間、この妊娠中の女性も何とか落ち着いた。
見ていた人が警察を連れてきてくれたらしく、ジョルジュは黒い男を引き渡す。
( ゚∀゚)「えwwちょww私は犯人違いますwwツンさーん!ツンさーん!!」
どう見ても不審者です。本当にありが(ry
ξ゚听)ξ「そこらへんも何とかしなさい!事後処理も!」
( ゚∀゚)「お助けのうち!?」
その後裏技的な情報操作(?)により、ジョルジュは無事帰還した。
- 60
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:13:09.68 ID:ShTM8SSI0
( ゚∀゚)「全く・・・死ぬ所でした。結婚宣言してなくてほんと良かったですよ・・・。」
川 ゚ -゚)「良かったな、そして助かった。有難う。」
ξ゚听)ξ「いいのよ、お助けがこいつの唯一の仕事なんだもの。それ以外のときはニートみたいなもんだわ。」
( ゚∀゚)「テラヒドスww」
もうすぐ母親になるその女性はクーさんと言うそうだ。
なんとなくいい母親仲間になれそうな気がした彼女とは、お礼をしたいと言うこともありその後も連絡を取ることを約束した。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:15:30.68 ID:ShTM8SSI0
(*´・ω・`)「ひゃああww」
( ゚∀゚)「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛www」
ξ゚听)ξ「つまみ食いしちゃだめ!!ほら、電気消すから・・・。」
家に帰ってあたしたちはささやかなパーティーを開く。
暗くした部屋に一本だけ立ったろうそく。
狭い部屋の中にはあたしとジョルジュの歌い声、ショボンのはしゃぐ声が響いていた。
ショボンに息を吹くまねをしてみせると見事に一度でろうそくの炎は消えた。
ξ*゚听)ξ「誕生日おめでとう!ショボン!」
( ゚∀゚)「さぁさぁショボン君笑ってww撮影はジョルジュが勤めさせていただきますよ〜!」
- 68
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:17:40.74 ID:ShTM8SSI0
電気をつけるとジョルジュがカメラを構えていた。
ショボンを膝に乗せ笑う。
幸せだ、こんなに愛しい子を抱きしめられて。
あの時、本当に死ななくて良かった。
ジョルジュが来てくれて、良かった。
響いたシャッター音とまばゆいフラッシュ。
聞こえないくらい小さな声で、あたしはありがとう、とつぶやいた。
- 69
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:18:08.49 ID:ShTM8SSI0
( ゚∀゚)(ツンさんたら・・・今日初めて名前で呼んでくれましたねww)
( ゚∀゚)(でも、お助けはあと一回。)
( ゚∀゚)(それに今日のあのお助けは・・・。)
お助けは、残りあと一回。
- 71
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:19:59.08 ID:ShTM8SSI0
一月と少し前まで、あたしは一日に一回、いやそれ以上にあの日のことを思い出していただろう。
毎日が必死だった。
あんなヤツ居なくたってやっていける、絶対にショボンを立派に育てて、二人の家族でやっていく。
生きている理由がそんなことじゃ、決して満足行く結果なんて得られないのに。
そんなこともそのときのあたしはわからなかった。
( ゚∀゚)o彡「おっぱいおっぱいww」
(´・ω・`)o彡「おっぱっおっぱww」
ξ#゚听)ξ「何してんのーーーー!!」
( ゚∀゚)「ホントですよ、ショボンくん。オパオパだと意味が変わってきてしまいます。」
ξ#゚听)ξ「そういうことじゃねーーーー!」
- 76
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:22:17.89 ID:ShTM8SSI0
満足しようと努力するのは大事だ、でも満足の種は案外どこにでも転がっているもので、あたしはそれに見向きもしなかった。
ただうつむいた視線にうつる、形あるものだけに手を伸ばして。
ξ゚听)ξ「あんまり変なこと吹き込むと、今日一日ご飯抜きよ。」
(#)゚∀゚)「ちょww一発殴ったうえにそれはwwいや、文句はないんですけどねwwサーセンww」
(*´・ω・`)「wwww」
満足の種を育てるのが、笑顔だってことにもやっと気づけた。
なんだか、簡単なこと難しく考えすぎちゃってたみたい。
ξ゚ー゚)ξ「本当にバカよね。」
( ゚∀゚)「事実を口にしても虚しいだけですよ・・・」
ξ゚听)ξ「いい加減このやり取り飽きてきたわよ。」
(#)∀(#)「ずんまぜんでじだ。」
- 80
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:23:58.49 ID:ShTM8SSI0
まぁ気づけたのはこいつのおかげといえばそうなのだけど・・・それにしても未だに妖精には見えない。
でも呪文の話は本当で、間近で2度も体験してしまった。
呪文のことも、そしてジョルジュ自身のことも、とても信頼している。
- 81
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:24:21.98 ID:ShTM8SSI0
カーテン、そして窓を開けながら差し込んでくる秋にしては暖かい日差しに目を細める。
まだ暖まりきらない空気と照らしてくれる太陽が気持ちよくて振り返る。
ξ*゚听)ξ「たまにはみんなで外に出ましょうか、お弁当でも持って。」
( ゚∀゚)「ピクニックktkr!!さすがはツンさん!」
(*´・ω・`)「ktkr!ktkr!」
今日の天気のように晴れやかな気分であたしはお弁当を作る。
あたしの分、ショボンの分、見た目の数倍食べるジョルジュの分。
ジョルジュもたまには気が利くのか、さっとベビーカーを準備し、かばんまで用意していた。
気が利く、というより遊ぶことに関して一生懸命なだけか。
自分が楽しむための、周りが楽しくあるための努力は怠らない。
半分あきれつつ、半分見習いたくもある。
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名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/11(木) 22:26:00.08 ID:ShTM8SSI0
ξ゚听)ξ「さ、いざ徒成乃公園へ出発!」
( ゚∀゚)「名前のストレートさに驚愕ww」
ベビーカーを押しながら颯爽とアパートの敷地外に出る。
ショボンとジョルジュはベビーカーの中でご機嫌だ。
釘を刺したから朝方のように変なことを大合唱しないだろうが。
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