390◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:47:12 ID:5yZYcoEU0

 エピローグ 「遠く離れていても」






(´・ω・`)「やっぱりだ、やっぱりこうなった………」



書類の山が詰まれたデスクの上を見ながら、ショボンは愚痴るように呟いた。
その背後には兄者さんが目を光らせ、そんな動向を見守っている。


( ´_ゝ`)「まだ言ってるのかい?」

(´・ω・`)「何度だって言いますよ、こんな若造をいつまでこんな政策の場に置く気ですか?」

( ´_ゝ`)「そうだなぁ……君がもってる知識が枯れるまで、かな」

(´・ω・`)「労働基準というものがありましてね」

( ´_ゝ`)「でも君、捕虜だし」


人が、世界の終わりを見たあの日。

いつしか終末の戦いと呼ばれるようになった、あの戦争から半年も過ぎたころ。

クーが行った演説は、やがて討論の場となり半信半疑ながらも連合国側は、
王が討たれたこともあってか、降伏を宣言し、戦場は終わりを迎えた。

391◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:47:41 ID:5yZYcoEU0

そして流石兄弟が結託し、双国と王国の連合からの離反と彼の王への糾弾。

これにより、戦争の勝者と敗者が決まる事になる、と誰もが思った。


だが同時に、ヒルト本国からも全面的な降伏が発表される事になる。


これはショボンも知らなかった事らしく、酷く動揺していた。

彼は勝者として君臨した後、自らの首を刎ねる事で決着を考えていたらしく、
そうなる事を見越したヒート女王が、自ら先に下していた命令だった。

その結果。

勝者なき戦争に残されたのは、第三勢力となった双国と王国。


そして、各国の代表を集め、初の世界会議が行われた。


そして二人の王は、戦争の主犯格と思われる人物等をまず捕虜とし、
各国に対し、傘下ではなく、共和国としての参加を求めることを発表した。

強制ではないが、参加するなら補助を約束すると条件をつけて。

共に目論んでいたエッダ、ヒルトはすぐにそれを了承。

指導者を失くしたルファウスも混乱の中それを受諾。

振り回された結果、国力を衰えさせた日陽と湖鏡も同様に。

392◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:48:35 ID:5yZYcoEU0

そして、一番の問題になると思われていた神教国に関しては、
意外にも王自らが参加し、協力したいと申し出てきた。


こうして、どの国も傷を抱えながら、新しい世界が始まった。


しかし、なにせ初めての試み、長きに渡る大混乱が予想された。


だが、いくつもの約束事からなる条約の形成や、共通通貨の製造から交易産業等、
次から次へと革新的な意見が提出されるにつれ、むしろ安定化の道を辿り始める。

時代は少しずつ、力とはまた違う国力を求める流れが生まれつつあった。

そしてそうなれば、一体誰がこのような知識を発信しているのか、当然の疑問となった。


当初こそ隠されてはいたものの、復興に悩むとある地域で起きた、
『お湯が沸いてるのに何で温泉事業しないんですか?』事件から露呈する事になる。


以来、要はショボンは、あらゆる場所から知識を求められるようになっていた。


(;´・ω・`)「それなら尚、条例を! 頑張って用意したでしょう!? ちゃんと読みました!?」

( ´_ゝ`)「ああ勿論だ、だから問題ないだろう、最低限の人権は遵守している」

393◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:49:18 ID:5yZYcoEU0

(;´・ω・`)「くっ……やはり戦犯としてあの時に処刑されていれば…っ」

( ´_ゝ`)「馬鹿な事言ってないで、街道工事のだけでも早急に確認してくれるかい?」

( ´_ゝ`)「明日にはまた、神教へと向かうんだろう?」

(´・ω・`)「……そう、ですね、不本意ながら」

( ´_ゝ`)「先方はとても楽しみにしているそうだよ」

(´・ω・`)「はぁ……そうなんでしょうね、でも僕、ちょっと苦手で…」

( ´_ゝ`)「君は特にもてなされてると聞いたけど?」

(;´・ω・`)「いや、まあ……なんていうか、親切の押し売りが凄いっていうか…」

(;´・ω・`)「あれが何度も他国を侵略しようとした王様とは思えないです」

( ´_ゝ`)「条約にあった宗教の自由ってのがきいたかな、それと何より……」

( ´_ゝ`)「あの日の、光の柱を見て人生観が変わってしまったそうだからね」

( ´_ゝ`)「気持ちはわかるよ、私も今でも思い出せる」

( ´_ゝ`)「絶望の闇を切り裂く光と、天を覆うほどに降り注いだ光の流星群」

( ´_ゝ`)「世界の創生と共に、生まれ変わったような気分にさせてくれたよ」

(´・ω・`)「……本人に聞かせたい話です」

394◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:50:07 ID:5yZYcoEU0

二人、海が覗く窓の外を眺めながら、あの輝きに思いを馳せる。
しかしそんな平穏を裂くように、いくつかの足音が響いて扉が一気に開かれた。

(´<_` )「ショボン君、ちょっち相談したいんだが」

从;゚∀从「ま、待て、こっちが先だ、ショボン! 積荷がまだ来てないみたいだぞ!」

(=゚ω゚)ノ「あの、街道の件はどうなってますかよぅ?」

lw´‐ _‐ノv「ねえ、魚、さ・か・な、ちょっと高いと思わない? 思うよね? あとお米? お米は?」

从・∀・ノ!リ「ひまなのじゃ! あそびにきたのじゃ!!」

川#д川「待ておぬし等、ショボン様に迷惑をかけるでない! ええい許さんぞ!!」










(´・ω・`)「あ、そういえば、あのバカまだ来てないんですかね、もう出航予定日も近いってのに」


(;´_ゝ`)「うん? あ、ああ、そうだね、まだみたいだよ」

(;´_ゝ`)(……日に日にスルーちからが上がってるな…)

395◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:54:04 ID:5yZYcoEU0

…………。



深い渓谷と、白で埋め尽くされた山々が立ち並ぶ合間に、大歓声が起こる場所があった。

かつて国の王を決める闘技場だったその場所は、今は賞金と名誉だけを求め、
あるいはその戦いの熱気にあてられた者たちで今日も賑わい、大盛況となっている。

ノパー゚)「あ、母者さん……? 今までどちらに?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ん、まあちょっとさね、それより今日は話があって来たんだよ」

ノパー゚)「なにかしら?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「そろそろ、この国を出ようと思っている、お別れだよヒート」

ノパ听)「………あ」

ノハ--)「……………」

ノパー゚)「そんな気は、してました」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「アンタも、もう王女さまじゃない訳だし、お役御免ってところさな」

396◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:54:51 ID:5yZYcoEU0

ヒルトと言う国は、共和国加入の際に王制を廃した。

代々受け継いできた文化を捨てようと言うのだ、当然、王直轄のものたちの反対は大きなものだったが、
ヒートはそういった事を悪しき妄執だと一喝し、新たな形を模索し始めたのだった。


ノパ听)「………最後に、聞いても?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「なんだい、聞くだけならいいよ」

ノパ听)「……あの日、クマちゃんに襲われたあの時」

ノパ听)「母者さんがその場に居たのは、偶然ですか?」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ハッ、他にどんな理由があるってんだい」

ノパ听)「いえ、ただ……」

ノパー゚)「知ってましたか? 赤い髪は、私の家系の人間が代々生まれもつ特徴なんですよ」

397◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:55:36 ID:5yZYcoEU0

ノパー゚)「そして、この闘技場の創始者は、とても、とても強い、赤い髪の女性だったそうです」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ふーん、そう、そりゃ知らなかったよ」

ノパー゚)「そうですか」

 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ああ、話は終わりかい? それならもう行くよ」

ノハ--)「…これまでの事、感謝します、どうかお元気で」


 @@@
@#_、_@
  (  ノ`)「ああ、まあ気にするんじゃないよ、すべて、そう、全部、ただの偶然さ」


言って、背中を見せたまま手を上げて、母者は去っていく。
ヒートはその、赤い髪の姿が見えなくなるまで、見送り続けた。

398◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:56:09 ID:5yZYcoEU0

………。


ヒルトの王制廃止に対して、城内でこそ荒れに荒れていたが、
反面、住まう人たちはおよそ歓迎ムードである。

特にその要因となっているのは、そうなれば例の婚姻も無効となること。
そしてもう一つ、あの戦争で彼らの士気を高めるもう一つの要因となった彼女が。

クーという女性が、ヒートと共に、この地で新たな政策を学びたいと申し出たこと。

指導者が統治する国ではなく、条約の下、個人が己を確立して生きる都。

それが彼女たちが目指す、あらたなヒルトの形となっており、
そもそもが自立した国民性をもつこの国では、すんなりと受け入れられた。

そうして街には、新たな区ができあがった。

法や、人、そして街そのものを管理するための、要は役所のようなもの。
それらが並ぶ区画は、行政区とされ、民意の元に召集された人たちが集っている。


そんな行政区の一角。


川 ゚ -゚)「本当はショボンに私も習いたかったが……あれではな」


川 ゚ -゚)「あとドクオ、ご飯おかわり」

(;'A`)「ちょっと食べすぎじゃない?」

399◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 22:57:29 ID:5yZYcoEU0

二人はそこで暮らしていた。

クーが座る食卓には詰まれたお皿と、美味しさが香る料理の品が並んでいる。
そんな彼女へ、エプロン姿でしゃもじを片手にドクオが近づいた。


人を、世界を救う光をもたらした英雄は、近頃めっきり主夫業が板についてきている。


川 ゚ -゚)「仕方が無いんだ……考えるという事は、その分エネルギーが必要なんだ…」

川 ゚ -゚)「あとご飯が美味しいのがいけない……くそう、なんてことだ…」

川 ゚ -゚)「にくいっ、ご飯が、おいしいのが……ああっ!はしが止まらない!」

('A`)「はいはい、でも本当に、いい加減ふと」

川 ゚ - )「――――――」

('A`)ヒッ

('A`)(でも気のせいか……最近、おなかまわりが少し……?)

川 ゚ -゚)「さーて、これ食べたらまた缶詰だな、ヒートのところに行かないと」

('A`)「夕飯は遅いほうがいい?」

川 ゚ -゚)「いや、しばらく要らないな、言ったろ、缶詰って」

400◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:00:06 ID:5yZYcoEU0

(;'A`)「え?」

川 ゚ -゚)「あー、だからしばらく家にも帰れないなー、もう数ヶ月はだめかもなー」

川 ゚ -゚)「帰らない間に、ドクオが長めの旅に出ていたとしても、わからないかもなーぁ」


('A`)「………………………」


川 ゚ー゚)「…行きたいんだろう? 彼と一緒に、見てみたいんだろう?」

('A`)「クー…」

川 ゚ー゚)「ドクオ、私のために、自分を殺すようなことはしないでくれ」

川 ゚ー゚)「そうしたい事は、ちゃんと言って教えてくれ」

川 ゚ー゚)「私も、したい事は、ちゃんと言うから」

川;゚ -゚)「そしたら、ちゃんと聞いて……あげ……あ、げ……」

川 ゚ -゚)「……何もかも、は、無理かも、だけどなっ」

川 ゚ -゚)「だからな」

('∀`)「……ありがとう」

401◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:02:19 ID:5yZYcoEU0

('A`)「ああ、俺、あいつと行きたい」

('A`)「この世界を、もう一度、ちゃんと……真っ直ぐに、見てみたい」

('A`)「そしてもっと広い世界に、出会いたいんだ」

川 ゚ー゚)「ああ、いってらっしゃい、私は……待ってるから、いつだって」

('A`)「うん、いってきます」

川 ゚ -゚)「だから最後に」


言って、クーが両手を差し出した。


(;'A`)「ああ……おかわり? ちょっとまって」

川 ゚ -゚)「違うぞ」

川*  - )「その、抱きしめて、ほしい……な」

ああ、これはもう、一生勝てないな、と思いながら、ドクオはその手を取った。
身を寄せ合いながら、惜しみながら、それでも、まだ見ぬ何かを求めて。

そしてクーは思う、帰ってくる頃には、きっと、
もっと大きくなっているだろう箇所に、彼はどう反応するのだろう、と。

402◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:03:34 ID:5yZYcoEU0

………。





「………あんた、何者なんだ?」


J(;'ー`)し「見ての通り、ただの孤児のお世話をする者ですけど……」

「それにしちゃ、世論に通じすぎだろ……こんな場所で、なぜそんなことまで知ってる?」

J(;'ー`)し「ええと、そういうの、詳しい知り合いが居るもので」

J( 'ー`)し「あ、今もちょうど外に……」

旅人風の男と話す女が、表の庭を覗いた。

しかしそこには、子供が一人、棒切れを持って遊んでいるだけ。
先ほどまで、子供と一緒になって振り回していた人間の姿がない。

代わりに、一人の女性が立っていた。

この国で、彼女を知らぬものは居ない、女は慌てて外へ出た。


J(;'ー`)し「あ、あの! 何か御用でしょうか?」

('、`*川「いえ、人を探していて、ここに来てると聞いたのだけど」

403◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:04:28 ID:5yZYcoEU0

マト*・д・)メ「兄ちゃんならさっき、変なのつれた人といそいでいっちゃった」

('、`*川「変なの……顔の細長い、大きな動物?」

マト*・д・)メ「そう、それ!」

J(;'ー`)し「あらあら、忙しないのね、来たばかりで」

マト*・д・)メ「なんか、ひづけ、まちがえた、とか言ってた」

J(;'ー`)し「あの、それで、あの子が何か……」

('、`*川「いえ、まさにその日付を伝えにきたのだけれど」

('ー`*川「ふふ、相変わらずみたいね」



………。









(#´・ω・`)「遅い」

404◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:06:02 ID:5yZYcoEU0

ζ(゚ー゚;ζ「…あ、ははは」

(;'A`)「まさか、まだ来てないとは思わなかったよ…」


双国、その船着場に今、たくさんの人が群がっている。


海上には、かつて戦場を駆けたあの巨大陸船が、本来の名を現す姿となって浮かんでいた。

今も船内と地上を行き来する姿はあるが、積荷などは大部分が完了し、
あとは乗り込むだけとなっている、とはいえ、それもほぼ済んでいる。

なら何かを待つのかと言えば、航海に必要な要員ではなく、
行楽観光気分でいるだけの、お客様である。


(#`・ω・´)「こっちがど・れ・だ・け・忙しい中準備したと思ってんだあの野郎……!!」

ショボンがその辺に転がっていた樽を蹴り飛ばした。
普段感情を顕にしない彼の荒れた姿に、周囲は困惑を示す。

「うおおっーーぐああーーーーざけんなぁあああああ!!!」


(;'A`)「俺、あんなショボンの奴はじめて見たかも……」

ζ(゚、゚;ζ「い、意外な一面、ですね」

(´<_`;)「……いや、多分、日ごろのストレスが……ほら、だからやりすぎだって、兄者?」

(;´_ゝ`)「う、うーん……申し訳ない」

405◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:06:58 ID:5yZYcoEU0

/ ,' 3 「デレや、ワシらは先に乗船させてもらおうかの」

ζ(゚ー゚;ζ「えっ……あ、そう、ですね……」


船にかけられた階段を上る、デレはふと振り返る。
高所から見る町並みは、見慣れたはずが新鮮に思えた。

そしてそんな中に、その姿を見つけた。

ζ(゚ー゚*ζ「あっ、来ましたよ!」


馬に引かれる船の上から、たどり着くなり慌てた様子で駆けてくる数人の姿があった。


(;^ω^)「ありがとうワカン、ぽっぽちゃん! 助かったお!!」

ξ゚听)ξ「世話になった」

<_プー゚)フ「支払いはツケでヨロ!」


( ><)「気をつけて、無事を祈るよ」

(*‘ω‘ *) 「ぽヒヒィィィィん!!」

406◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:07:59 ID:5yZYcoEU0




船着場を走り、雑踏を抜け、そして内藤は。




(;^ω^)「みんな久しぶり、ごめん、遅れちゃっt―――」
(#´・ω・`)「見つけたぞ死ねえええええええええええええええええ!!!!!」
(;゚ω゚)「死ね!? ショボ!? ちょ、飛び蹴りぃ!!??」









「ぎゃああああああああああ」





歓迎の蹴りを受け、ショボンもろとも海に落ちた。

407◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:08:51 ID:5yZYcoEU0

そんな姿に呆れる者、心配する者、笑う者、反応は様々。
けれど、それはもう、これ以上ないほど、平和な時間そのもので。


(;゚ω゚)「ぷはっ、え、なになになに!? 何で!? どういうこと!?」

(;´・ω・`)「冷たっ……はっ……僕は何を………」


ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!? だ、大丈夫!?」

ξ゚听)ξ「何をしてるんだ?」

<_プー゚)フ「変わった挨拶だな、やめてね?」

(´<_` )「兄者」

(;´_ゝ`)「……休みを、あげるよ、うん、ちゃんと」

从 ゚∀从「というわけで、今度は海だ、よろしくな」

ξ-听)ξ「まあ、ほどほどにな」

<_プー゚)フ「捕虜はつらいぜ」


知る者は一部とは言え、世界を救ったドクオは特例として、
捕虜として双国でお世話になっている者たちは、それぞれ仕事が与えられている。

408◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:10:00 ID:5yZYcoEU0

そして、特に体力ばかりが取り得の彼らに与えられているのは、測量の旅だった。

世界をより狭めるため、街道工事の都合のために、改めて地図をつくるための旅である。


今回こうして集められたのは、更に、世界を知るための行為だ。


これまで、ひとつなぎの大陸を旅してきたが、この海上の船が示すとおり、
外洋にはおそらく、他の、外の大陸というのも存在している。


今回の遠征は、その第一歩。


たくさんの国と、たくさんの人が手を取り合い進められた計画。

内藤達はそれに乗り込み、世界を見るため、新しい旅に出ようとしていた。


(´・ω・`)「…? なんで僕、海の中に居たんだろう?」

(;^ω^)「こっちが聞きたいお……」

(´・ω・`)「まあいいか、それより早く乗りなよ、もう出航時刻は過ぎてるんだから」

( ´_ゝ`)「その前に、渡しておこうか」

(´<_` )「そうだな、内藤君?」

409◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:11:22 ID:5yZYcoEU0

( ^ω^)「はい?」

(´<_` )「これを、君に貸し出そう」

(;゚ω゚)「……っ!? これ、え、なんで!??」


差し出されたのは、捕虜として連行された際に回収されたはずの、黄金の剣。

当初の目的どおり、神具はすべて集められ、あの日。

すべて消滅させるという宣言の後、各代表が見守る中、永光の力によって消された筈だった。

現に内藤も、光の柱がもう一度空にかかるのを見ていた。

もう二度と、目にすることはないと思っていた、その剣が目の前にある。


(;゚ω゚)「ど、どうして、いや、なんで今僕に…?!」


(´・ω・`)「実は、まだ神具は残ってるんだよ、三つだけね」


一つは、まだ存在するかもしれない神具を消滅させる必要がある事から、レーヴァテインを。

もう一つは、物質としての剣は消えても、再びあの触れられない姿となった、フレイを。

そしてもう一つは、本当に、どうにもならない脅威が迫った場合を考え、コールブランドを。


そんな理由もあり、世に称されることの無い英雄たちの武器を、せめて称えようと、
各国の代表が持つ鍵を使わなければ、解錠される事の無い場所で、保管されている。

410◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:12:54 ID:5yZYcoEU0

それが今、内藤の手に再び渡された。


( ´_ゝ`)「初の外界調査だ、何があるかわからない」

(´<_` )「もしもの時があったら、迷わず頼むぜ?」


内藤は受け取ると、目を閉じる。

意識を深く、手の先へ、剣のなかへ。



声は――――――聞こえない。



(  ω )「…………ああ、行こう、瀬川…約束、したもんな」



けれど。




『見ているから』




その言葉を、誰より、何より、信じている。


絶対に、忘れない。

411◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:16:40 ID:5yZYcoEU0

生きる力を、戦う力をくれた。



そして、いつだって、すぐ側で見ていてくれた。



どれほど救いだっただろう、どれほど信頼を寄せたのだろう。




この想いは、届いていたのだろうか。


ちゃんと、届いてくれたのだろうか。



ずっと言えなかったけれど、ありがとう。




だから。





( ;ω;)「一緒に、行こう、これからを、見に行こう――――!!」

412◆6Ugj38o7Xg :2018/08/22(水) 23:17:05 ID:5yZYcoEU0



帆を全開に広げた船が、今ゆっくりと動き出す。



広い世界の、更に広い世界へ。



これまでとは、違う世界へ。





また、新しい、異世界に出会う、そのために。










                                       ――― 完 ―――

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