- 3
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:24:48.69 ID:pa8nWEeL0
('A`)と( ^ω^)は異世界で絆と出会うようです
05「夢で逢えたら」
- 4
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:25:42.55 ID:pa8nWEeL0
影も無く、人の姿以外には何の輪郭も見当たらない白の世界。
ドクオはそんな世界に現れた二人を前に、息を飲んで言葉を探していた。
と、そんな様子を見越したように"ギコ"は一度目を伏せるように笑みを浮かべる。
(,,゚Д゚)「久しぶりだな、ドクオ」
そして、何ともなしに続く言葉と声は、ドクオに強烈な既視感を与えた。
瞬間、色々な気持ちが溢れた。ずっと思っていた、叶うならもう一度、と。
自然と足は彼の元へと向かい、すぐさま駆け足になっていく。
その過程において、ドクオはモララーの横を通り抜ける。
今にも泣き出しそうな声で名を呼ぶ姿と、それを笑顔で見送る姿は、
奇しくも、あの最後の日と似た絵となる、されど、想いは真逆の物となったいた。
そんなあり得ない構図の果てに、ドクオはついぞ彼等の正面に立つ。
( A )「……っ」
けれど、言葉は見つからず、ただ立ちすくんだ。
- 6
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:27:04.32 ID:pa8nWEeL0
分かっている、確かにここに居るけれど、目の前でこうして自分を見つめていても、
それでも、彼らは居ないのだと、心のどこかでそれを理解していたから。
しかし、あの時のままの姿で、今も耳に残るあの声で呼ぶ自分の名を聞いて、
嬉しさと悲しさの入り混じった奇妙な感覚のままに、小さく嗚咽が漏れ、頬は涙が伝っていた。
(;゚Д゚)「おいおい…いきなりどうした」
(;A;)「…………ギコ……さん…だって、俺…」
そして、ギコはそんなドクオの頭に手を乗せた。
撫でるでもなく、ただ乗せただけ、しかし感触はしっかりとそこにあった。
(,,-Д-)「全く、そんな所まで似る必要は無いのになぁ」
ミ;゚Д゚彡「……ど、どういう意味…?」
(,,゚Д゚)「そういう意味だよ、馬鹿」
ミ;゚Д゚彡「と、特に意味もなく馬鹿扱いすな!!」
- 8
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:28:45.71 ID:pa8nWEeL0
(,,゚Д゚)「もう泣くなドクオ、あまり泣いてるとこれと同類になるぞ、な、嫌だろ?」
(;A;)「……はい」
ミ;゚Д゚彡「はい!?」
(;'A`)「はっ…あ、いや、今のはそういう意味じゃ」
ミ,,;Д;彡「……俺のイメージって……」
(,,゚Д゚)「まあこんなのはどうでもいいとして、だ」
言って、ギコはすすり泣くフサよりも一歩前に踏み出した。
見れば、いつしか手には剣が握られていて、疑問譜と共にドクオはたじろぐ。
しかし意に介することなく、ギコは切っ先を向けながら、睨むように見据えた。
(,,゚Д゚)「剣を取れドクオ、まずは、お前の勘違いを正してやる」
(;'A`)「……!!」
その言葉にも、瞳にも、冗談の類は含まれていない。
再会の喜びはつかの間、一転して空気が凍りつく。
- 10
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:31:27.21 ID:pa8nWEeL0
しかしそれは、動揺によるものではなかった。
自分がここに居る事と、目の前の人たちの存在と、先のモララーが言った言葉。
不思議と、ドクオはその意図をすぐに理解することができた。
そう、自分は、この人を超えなければならない。
だからこそ、恐怖に足が後退する。
無理だ、という思いと。
駄目だ、という迷いが、身体を石のように固めてしまう。
(;'A`)「うぅ…」
(,,゚Д゚)「……もう分かっていると思うが、俺は……もう、ここに居ない存在だ、だから―――」
づん、と胸の重みが増す。
( A )(……そうだ、きっと…俺の目の前に居るのは…)
人の記憶という欠片が、いくつも折り重なって造り出された偶像。
だから何も気にする必要はない、気にかける必要もない。
- 13
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:33:44.99 ID:pa8nWEeL0
留めず、この人に勝つ、足りない何かを補うために、
今度こそ過去を振り切るために、勝たなきゃいけない。
そうして、戦うんだと自分を奮い立たせると、腰に重みを感じた。
見ればそこには、一振りの剣がある。どこにでもあるような、普通の剣だ。
ずしりと重いその両刃の剣は、鞘から抜けば支えきれず、切っ先はすぐさま下へ落ちた。
刀身は鏡のように磨きこまれており、ふと見れば自らの顔が映る。
弱々しく、不安気な目をした姿がそこにはあった。
(:'∀`)「…は」
あまりにも、そんな自分は情けなく見える。
自嘲するように小さく笑みを作り、再び前を見据えた。
(; A )(しっかりしろよ俺…!
こんなんでどうする…!!)
(; A )(決めたじゃないか、俺はこの人たちの想いを継ぐんだって!)
(# A )(だから、だから…! その為には……!!)
剣を両手に、しっかりと握り構えなおす。
そして迷いを振り払うように、ドクオは叫びと共に駆け出した。
- 14
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:36:14.00 ID:pa8nWEeL0
対するギコは。
(,,-Д-)「……」
(# Д )「―――この」
はっきりとした苛立ちの目を向け、迫る姿を一瞥した。
しかし、ドクオはそんな視線に気付くことなく、剣を振りかぶり、
(#'A`)「うぁああああああああああああ!!!!!」
ギコへと斬りかかった。
(#゚Д゚)「軽い!!」
だが、その一閃は容易く弾かれ、反動により手から離れたドクオの剣は宙を舞い、
その後方で体育座りをしていたフサの体スレスレに落下した。
ミ;゚Д゚彡「ひぃ!!!??」
(,,゚Д゚)「どうしたドクオ、この程度か」
(;'A`)(……痛っ……手が、痺れる……)
- 16
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:38:46.02 ID:pa8nWEeL0
ミ;゚Д゚彡「ここ、こ殺す気か!!」
ミ,,゚∀゚彡「あ、いや、はははっ、そうは言ってもまあ、もう死んでるんですけど……ねっ」
(#゚Д゚)「…お前は少し黙ってろ!」
そして悪態と軽口を言いながら前髪をかきわけるフサへと、ギコの蹴りが入った。
ミ,,;Д;彡「のおお……」
(;'A`)(………な、何でこの人…こんなに軽いんだろう……)
(,,゚Д゚)「何をしてるドクオ、早く拾え」
(;'A`)「あっ…は、はい…!」
そうして、一方的なままの攻防が、幾度と無く続いた。
弾かれ、飛ばされ、反撃はされずとも、ドクオの攻撃は掠りもしない。
(#'A`)「でやぁあああああああ!!」
(,,゚Д゚)「……!!」
そんな過程において、ドクオは奇妙な感覚を得る。
どこかで、以前にも、こんな事があったような、そんなデジャヴを感じていた。
- 18
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:41:39.90 ID:pa8nWEeL0
どこか、沢山の人が居る場所だ。
皆、同じように剣を手にしていた。
知らない筈の記憶だった、けれど、景色の一部に覚えがあった。
見覚えのある家、見覚えのあるお城、この世界のどこかで見た、古い景色。
そして、今の自分と同じように、誰かが誰かに向かっていき、
また同じように弾かれて、吹き飛ばされていた。
その姿に、弱いと思う反面、心のどこかで、それを楽しいとすら感じていた。
幾度も、幾度も、結果は同じでも、それでも剣を交えて。
それでも決して、互いを憎しみあうことはなかった。
- 19
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:44:26.31 ID:pa8nWEeL0
同時に、苦難を乗り越えてきた。
とても大きな戦いがあった、自分とて生き残れるか定かではないそんな場面ですら、
放っておけない、と思う、思ってしまう人間が隣に居たことを――――。
――――よく、"覚えている"。
(; A )「はあ…はあ……」
(,,゚Д゚)「……まだ、分からないのか?」
混濁する意識の中に、小さくこぼれた言葉が響く。
そんな事はないと、否定した。
(; A )(分かってるさ、勝てるわけ無いって事くらい…最初から…)
(;'A`)「でも、それでも…!!」
- 20
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:46:56.12 ID:pa8nWEeL0
強く、なりたかった。
酷く暗い気分で、何処かの荒野を歩いていた。
『俺たち……負けたのか?』
周りには、傷だらけの人々の群れ。
身を寄せ合うようにして、何かから逃げていく。
もう終わりなのだろうと、心のどこかで理解していた。
自分に何かが出来るという事を考えなかった頃、漠然とした思いをくすぶらせていた。
けれど、くすぶっていた感情は、すぐに開放される事になる。
たぶん、生まれてはじめて、他の誰かの為に強くなりたいと思った。
- 23
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:49:11.40 ID:pa8nWEeL0
(# A )「だから…!! 負ける訳にはいかないんだ!!」
(#゚Д゚)「だからこそ、お前は分かっていないと言っているんだ!!」
両者の間で、金属音が大きく弾けた。
無我夢中で放ったドクオの剣閃と、ギコの剣閃が重なり合い、
お互いの剣を外側へと弾き返す、幾度もの攻防の中で、初めての事だった。
いつしか、二人の動きは鏡に映したように重なっていた。
一方的だった筈の剣戟は、ここに来て均衡を生み、音が連続する。
(#'A`)「…っ!!」
(#゚Д゚)「……っ!!」
強敵との戦いがあった。
横に居る誰かが、その強敵を打ち倒した。
とても不思議な感覚だったと思う。
決して頼りにはならない、なのに、こいつとならと、そう思えたから。
- 26
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:52:56.17 ID:pa8nWEeL0
――――そう、思っていたのに。
(#'A`)「…!!」
(;゚Д゚)「っ!!」
だが、徐々に均衡が崩れはじめた。
斬りあうたび、打ち合うたびに、ドクオの剣が早くなっていく。
そして、ついにギコは防御に徹した。
歩むものと、歩めぬもの、あたかもその差を哂わすかのように。
- 27
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:54:30.00 ID:pa8nWEeL0
(# A )「……う」
色々なものが変わっていく。
(# A )「あ」
最初の後悔だった。
(# A )「ああ」
分かっているつもりで、つもりでしかなかった。
(# A )「あああ」
もっと。
この気持ちをもっと早く知っていれば、気付けたはずなのに。
- 29
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:56:46.32 ID:pa8nWEeL0
(# A )「あああああ」
気付けた筈だ。
心無い笑顔の、その意味に。
(# A )「ああああああ」
光に消えた、その姿を見る、その前に。
『俺は……どうしてこうまで、無力なんだ?』
(#;Д;)「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!!」
- 33
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 21:59:10.27 ID:pa8nWEeL0
次々に流れてくる映像は、自分の知らない、他の誰かのものだ。
けれど、感情が止まらず、振り払うように叫び続けた。
そんな悲鳴にも似た声に応えるように、ドクオの剣は今までで一番の速さで放たれた。
しかし、金属音は今までよりも軽く、快音が響く。
宙を剣が舞い、その剣が落ちるよりも早く、剣を構えなおしたドクオは、
無防備となったギコへと向け、横薙ぎの剣閃を走らせた。
(# A )(勝った…!!)
同時に思う。
剣を弾かれ、ギコは素手のまま体制を崩している。
避ける術はない、このまま振りぬけば勝てる。
勝てる。
勝った。
- 37
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:01:36.58 ID:pa8nWEeL0
勝つ?
倒す?
倒すって……。
(,,゚Д゚)
また、殺すのか?
- 39
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:04:00.90 ID:pa8nWEeL0
(li A )「!!!!!」
瞬間、弾けるように頭が冴え、全身に電気のような危険信号が走るが、
手足が痺れて思うように動かない、当然だ、既に剣は放たれているのだから。
しかし、それでも止まれと願う。
けれど。
無情にも剣は押しつぶすような感触と共に、ドクオの剣はギコの腕を切り落とした。
遠くで剣が転がる音がして、ぼと、と鈍い音が足元から聞こえてきた。
目が自然と、落ちた片腕を追ってしまう。
( A )「…………」
そしてすぐさま、強烈な脱力感に襲われ、ドクオは膝をつく。
手から離れた剣は影をつくることなく、白い世界に落ちていくように消えていった。
- 42
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:06:17.37 ID:pa8nWEeL0
(; A )「お、おれ……なに…を……」
頭を殴られたように、ぐるぐると視界が揺れる。
力なく下げられた両腕から伝っていくように、体が震える。
ふと、上から声が響く。
ドクオは見上げることも、返事をすることもできなかった。
そうして半ば放心状態のまま俯く姿に、ギコは言葉を続ける。
(,,゚Д゚)「なあドクオ……お前は、俺より強くなりたいのか?」
( A )「――――違う、あなたのように、強く…なりたかった…」
(,,゚Д゚)「なあドクオ、お前の言う強さとは何だ?
越えるとはどういう事だ?」
( A )「……………………あなた達に、追いつきたかった」
- 44
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:09:10.74 ID:pa8nWEeL0
(,,゚Д゚)「なあドクオ、俺を倒すことが……俺を超えたという証明になるのか?
それで、お前はちゃんと胸を張れるのか?」
( A )「できない……だって違う…違うんだ、俺はただ憧れてただけなんだ、
今のままじゃ敵わないから、今のままじゃ叶わないから」
(,,゚Д゚)「俺を……俺達を、遥か上の人間だと?」
( A )「同じくらいつよくなりたかった、ならなきゃ、いけなかった」
そうでなければ、同じ位置に立つことなんてできない。
そう思っていた、弱いままの自分だから、何も変えられない。
何も、守ることなんてできないのだと。
(;A;)「でも…違った、こんな形であなたに勝っても何の意味もない!!
当たり前じゃないか、こんな…!
大事な人を傷つけるような、そんな強さなんて……!!!」
胸の痛みと、罪悪感しか残らない強さを。
(;A;)「そんなもの、どう誇ればいいんだよ……」
- 46
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:12:58.70 ID:pa8nWEeL0
(,,゚Д゚)「……確かに、誰かを倒す事は分かり易い強さの証だ、
だが、お前はそうじゃないのだろう?
それを糧にするには、少し……優しすぎる」
(;A;)「……ギコさん…教えてください…じゃあ俺、どうしたらいいんですか…?
どうしたら俺、あなた達のようになれるんですか……」
(,,゚Д゚)「すまんが、その答えは俺には……いや、誰にも教えてやれはしない」
(,,゚Д゚)「その答えは……お前自身が見つけるしかないんだ」
(;A;)「無理ですよそんなの、俺は、皆が言うほど立派な人間じゃないんだ、
本当はいつもびびってばかりで、肝心な時にも役に立てない、俺なんて居ても居なくても」
続くギコの言葉は、ドクオの声を塞ぐように語られた。
(,,゚Д゚)「でもな、一つだけ教えてやれる事がある」
(;A;)「…?」
(,,-Д-)「なあ、ドクオ……俺とお前、何がそんなに違うって言うんだ?」
- 48
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:15:29.02 ID:pa8nWEeL0
(;A;)「何って、それは」
(,,゚Д゚)「お前は俺達のしてきた話を知り、憧れたのだろう?」
(,,゚Д゚)「だが、お前は今、俺達の生きた時間を見たはずだ」
(,,゚Д゚)「なら分かるはずだ、俺とお前の何が違う?
俺は何も悩まなかったか?
俺は何も迷わなかったか?
俺は何も……間違えなかったか?」
ドクオが見たその生涯は。
(,,-Д-)「人が、憧れに焦がれるほど、完璧な生き方を選べていたのか?」
泣きたいくらい、後悔に溢れていて。
- 49
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:18:45.90 ID:pa8nWEeL0
でも、そんな中にも小さな幸せがいくつもあって。
それを、守るために。
そして、生きるために、必死だった。
自分と同じように。
( A )「………………」
(,,゚Д゚)「だから……いいかドクオ、俺が教えてやれるのはこれだけだ」
(,,-Д-)「お前が気付いていないだけで――――」
( A )「ぅ……っく」
大事な何かを守るために、一人で逃げることを選ばなかった時から。
そして生きるために、ただ必死に抗い続けてきた姿に。
その生き方に、本当の強さの在り処に、違いなんて何も無かった。
「とっくに、俺達と同じ場所に立っているんだよ」
もうずっと前に、目指していた場所にドクオは居たのだから。
- 50
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:21:16.73 ID:pa8nWEeL0
そして、ドクオは堪えきれずに声を上げて泣いた。
理解した今でも、今だからこそ、やはり敬意の思いは消えることは無い。
けれど、その想いは今までとは少しだけ違っていた。
自分を見下した結果として生まれる感情だった物は、純粋に心からの感謝と、尊敬に変わっていたから。
(;A;)「……え?」
と、視界の中にふとした違和感、そこにあった筈の物が無い。
疑問に思い、俯いていた顔を上げると自分を見下ろす姿が三つ。
ギコの他にもう二人、しぃとつーがそこに居た。
だが、それ以上におかしな事がある。
(*゚ー゚)「それじゃあ、ドクオ君」
(*゚∀゚)「クー様のこと、改めてよろしくね!」
(,,-Д-)「……」
三人とも、足が無い。
そればかりか、辺りの白を被せたように色褪せ、徐々に消えていく。
どういう事なのかは、すぐに気付いた。
- 52
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:23:14.16 ID:pa8nWEeL0
(;'A`)「っ!!」
反射的に手が出そうになるが、拳を握ることでドクオはそれを抑え込んだ。
そして俯き、何かを堪えるように強く目を閉じ、少しだけ間を置いてから、
('A`)「……はい…! 必ず……!」
強く、そう答えた。
既に半透明になってしまったしぃとつーは、そんな返事に満足気に頷き。
ギコは黙ったまま、最後に少しだけ笑みを浮かべると。
「じゃあな」
一言だけを残し、消え入るように見えなくなった。
ドクオはその姿から目をそらすことなく、最後まで見送っていた、
そして見えなくなってからも虚空を見つめ続けていた。
('A`)「……絶対に、俺が……」
ミ,,゚Д゚彡「……行っちまったな」
('A`)「はい……」
- 54
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:26:16.28 ID:pa8nWEeL0
(;'A`)「って、あ、ええ!? まだ居たんですか!?」
ミ;゚Д゚彡「まだ!? ひ、酷え!!」
ふと横を見ると、隣で見知らぬ人物が感慨深そうに頷いている。
一緒に消えたものだとばかり思っていたドクオが大層驚くと、男は肩を落としてうなだれた。
ミ;-Д-彡「ナイチャオウカナ」
('A`)「……」
そんな様子が面白くて、何となく、からかい甲斐がありそうだな、なんて思う。
分かってはいる、この人が誰で、こういう人物だということも聞かされていたし、
何より、知っていた。
まるで本で得た知識のように、かつての出来事、その全てがドクオの中に存在していたから。
('∀`)「は、あははっ」
ミ;-Д-彡「うう……そんな笑わなくても……」
- 55
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:28:37.81 ID:pa8nWEeL0
('∀`)「すいません、でも何だか…」
そしてそれが、とても嬉しかった。
フサはそんな姿を何やら複雑そうに眺めていたが、やがてため息を一つに。
ミ,,゚Д゚彡「まあいいや、んじゃ改めて…」
ミ,,゚ー゚彡「はじめまして、でいいのかな、僕はフッサール、よろしくっ?」
新たに芽生えた思い出の映像そのままに、フサは笑顔で言った。
('A`)「そうですね、始めまして……話は、色々と聞いてますよ」
ミ,,゚Д゚彡「うんうn、そうだねぇ、まあ……俺と言っても厳密には違うんだけどね」
('A`)「……そう、ですね」
そう、フッサールという人物の記憶はもう、この世のどこにも存在しない。
これはあくまで、他人の記憶が造りだした人物像に過ぎないものだ。
だが、目の前に居るこの人物は、間違いなくそうであると、ドクオは不思議と確信していた。
- 56
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:31:10.30 ID:pa8nWEeL0
ミ,,゚Д゚彡「そういえばクーちゃん、元気でやってる?」
(;'A`)「それは……えーと……」
ミ;゚Д゚彡「って、この状況考えればわかる事かぁ……」
('A`)「…でも、きっと、大丈夫だと思います」
ミ,,゚Д゚彡「そうかなぁ……俺が言うのも何だけど、不器用な子だからさ」
('A`)「ええ、でも――――」
ドクオはフサに色々な事を話した。
あれからの出来事、楽しい事から、辛い事。
そして、彼女がいかに頑張ってきたかを、途中で涙ぐんでいた彼へ伝えた。
意図は違えども、同じ相手に好意をもった者同士、なんとなく話は弾む。
ただの自己満足かもしれない、けれど、その行為が何かを繋げる物だと、そう感じていたから。
- 61
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:33:16.39 ID:pa8nWEeL0
ミ,,;Д;彡「ぐす……ああ、づらかったろうに…」
ミ,,-Д-彡「でも、そっかぁ……友達もできたんだ、よかった…」
('A`)「本当に気にかけてますよね……やっぱり、そういう趣味なんですか?」
ミ;゚Д゚彡「やっぱりって何? 違うよ?
違うからね?」
ミ,,゚Д゚彡「……ただ、その、お兄ちゃんって言われるのが気持ちよくて…」
(;'A`)「……はぁ」
ミ;゚Д゚彡「ああっ!? いやいや!
だから違うんだって! 俺さ、弟が居たんだよ!!
んでそいつったらもう、変な語尾で俺をいつも見下しててさ、ぜんぜん兄貴扱いしてくれねーの!」
ミ;-д-彡「だからこう、ちゃんと頼られて呼ばれたりするのが結構……いやかなり嬉しかったというか」
(;'A`)「そ、そうですか……って、フサさん!?」
ミ,,゚Д゚彡「ん? ああ、そろそろ時間か」
言って、自分の体を見渡すフサの姿は、先ほどのギコ達と同じように、
白のフィルターに覆われて、ゆっくりとその輪郭を失っていく。
- 63
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:36:22.29 ID:pa8nWEeL0
結局、他愛のない話をしただけで、特に得るものは無かった。
けれど、こんな状況なのに笑顔を崩さない姿を見ていると、
何となく、本当に何となくだけど、懐かしいような気分になる。
そして、例え夢でも、会えてよかったと、そう思えた。
ミ,,゚Д゚彡「さて、と……まあ、何だ」
('A`)「…?」
ミ,,゚Д゚彡「俺はさ、ギコたちみたいに、何かいい話とかできないし」
ミ,,゚Д゚彡「ただのイメージの塊みたいなもんだから、気休めにしかならないと思うけど……」
こいこい、と半分消えかけた姿のまま、手招きする。
時と場合によっては結構かなりホラーな姿だが、ドクオは躊躇わずに踏み出した。
ミ,,-Д-彡「……それでも、俺はやっぱり、こう言うと思うから」
- 67
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:39:13.72 ID:pa8nWEeL0
(;'A`)「………!」
そう言って差し出されたのは、刀身が炎のように波打つ赤い剣。
あふれる記憶で紡がれた人の繋がり、その形の名を、神具レーヴァテイン。
フサは消えかけながら、それでも会心の笑顔で言った。
「さ、助けに行こう!!」
はい、と答え。ドクオはしっかりと剣を受け取った。
ふと、風が吹いたような気がした。
- 68
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:41:50.07 ID:pa8nWEeL0
瞬きの合間に、彼の姿は見えなくなって、言葉だけが耳に残る。
不意に訪れた静寂は、途端に寂しさとなって胸を焦がしていた。
他に音もなく、動く姿も無い世界は、つい今しがたの事が嘘のように思わせる、
けれど、自身の手に抱かれた存在が、確かな熱を伝えていた。
目を閉じれば、いくつもの不安という穴を、様々な記憶が埋めていくのを感じた。
(-A-)「俺も、行かなきゃ」
俯きかけた顔を上げれば、視線は上へと目指していた。
胸に溢れるような温かさが宿り、体はそのまま飛べそうな程に軽く。
- 70
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:44:24.22 ID:pa8nWEeL0
見上げたまま、手をかざし。
('A`)「俺! 絶対に……」
('A`)「そうだ、待ってろよブーン!ショボン!みんな!」
('A`)「そしてクー……会いに行くよ、何度でも、何度だってさ!!」
('A`)「遠回りばかりしていたけど、今度は違う!!」
('A`)「俺はもう…もう二度と迷わないから!!!」
('A`)「だから……
言って、ドクオはふりむいた。
そして、先ほどされたように、手を伸ばす。
- 71
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:47:09.51 ID:pa8nWEeL0
ずっと後ろで見守っていた、その人間に向けて、手のひらを差し出した。
('A`) 一緒に、行きましょう
( -∀-) ……君は、僕を許すとでも言うのかい?
問いかけに、ドクオは首を横に振ることで答えた。
('A`) どんな事情があろうと、してきた事を認めるつもりなんてありません
( ・∀・) なら、どうして
('A`) ……個人としては、やっぱり…許すことはできない
( ∀ ) ああ、そうだろう、ね
('A`) でも、許すとか許さないとか、そんな分かり易い形で、答えを出すことも、出来ない
( ∀ )
('A`) 俺は、責任の在り処は本人が決める物だと思うから、だから……
もしもあなたが償うことを望むなら……いや、望んでいるから、分かるから
('A`) だから俺は、その思いまで否定する事だけは、絶対にしない
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名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:50:41.38 ID:pa8nWEeL0
それに、あの日。
確かに利用した結果だったのかもしれない。
それでも、俺が今ここい居る事が出来る要因の一つに、確かに彼の存在があったのだ。
('A`) だから……もう一度、一緒に行きましょう、モララーさん、今度は……俺が力になりますよ
互いの姿が徐々に霞んでいく中で、光のような白い世界の真ん中で、
二人は向き合い、どちらも複雑な思いを込めながら、それでも、言葉無く笑顔を作る。
( ・∀・) ……ありがとう
('A`) ……全部終わったら、もう一度話をしましょう、その時は、みんなで
( ・∀・) ははは、きっと殴られるな
('A`) それで済めばいいですけどね
( -∀-) 違いない
そして、この世界にも変化が起きた。
白の世界に影が生まれ、黒が空を染めていく。
- 79
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:54:54.71 ID:pa8nWEeL0
終わりのようで、始まりを示す、その様はまるで夜が来るように。
そして点となって残る白の世界の欠片は、夜の隙間を埋める星のように。
その時だ。
手にしていた剣から、眩い光が放たれる。
夜明けのようだと思ったとき、自分が目を閉じていることを自覚した。
しかし、開き方が分からない、忘れてしまった。
だからドクオは歩き出した、どこへともなく前へと向けて。
('A`) ……?
けれど、そこで奇妙な違和感を覚えた。
- 82
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 22:58:04.40 ID:pa8nWEeL0
横を見れど、誰も居ない。
ふりむいた。
( -∀-) ……最後に……君の力になれて、よかった……それだけでも……僕は……
何故かモララーは、立ち止まったまま遥か後ろに居た。
何をするでもなく、力無く肩を下げ、俯いていた。
「でも」
そして、次に顔を上げたとき、彼はどこか悲しそうに微笑を浮かべ。
「………ごめんね」
そう、口にした。
- 85
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 23:01:39.01 ID:pa8nWEeL0
え?
という疑問の間もなく、急激に意識が浮上する。
(;'A`)「……っ!!」
目を開くと、薄暗い空間が視界に広がった。
横から差し込んでくる細い光が照らすのは、苔の生えた岩肌。
どこかの、洞穴のようだと、そう気付くのに時間はかからなかった。
だが、それ以上が分からない、しばしの混乱。
身を起こそうとするが、手足は痺れ、
胸元から腰にかけてまで、猛烈な痛みが熱と共に襲う。
酷い眩暈がして、天地もわからない。
身体は重く、思うように動かない。
- 87
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 23:03:33.27 ID:pa8nWEeL0
ドクオはただ、それらの重なり合う苦痛に呻き声をあげる事しかできなかった。
ずきん、ずきん、と鼓動のような痛みは尚も続く。
無限にも思える時間だった。
けれど、その最中、この痛みが何であるかを思い出した。
(; A )(そうか……俺……)
最後と思われた戦い、色々な人の力があって、ついに対峙した最後の敵。
しかし、ようやく倒したと思った直後に現れたのは、もう一人の、神を名乗る男。
そして知ったのは、本当の、憎むべき相手だった。
(; A )(あいつに……負けた……のか)
とまで考えて、悪寒が走る。
折れた剣、体の内側から耳に響いてくる嫌な音。
それら全てが実感となって襲い、堪えきれず嘔吐するが、
出てくるのは胃液ばかりで、喉と鼻に更なる痛みを与えた。
- 91
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 23:06:32.13 ID:pa8nWEeL0
その時、ふと横を見ると、誰かが居ることに気がついた。
( ∀ )
モララーだった、見れば横たわったまま、手をドクオへと伸ばしている。
それで、夢の中での出来事をはっきりと思い出した。
(;'A`)(……俺、この人に助けられたのか…)
まだ痛みは続くものの、少しだけ収まってきたのを感じ、
ドクオはおぼつかない様子ながらも、どうにか身を起こした。
('A`)「……モララー、さん?」
そして名を呼ぶが、横たわる姿が動くことはなく。
何かがおかしい、そう思わせるほどに、どこか存在が薄い。
(;'A`)「え……いや、そんな、いやいやいや……」
手に触れてみた、酷く冷たかった。
辺りの岩肌と、同化してしまった様に。
- 94
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 23:10:15.98 ID:pa8nWEeL0
押しても、押した箇所がへこむばかりで、反応がない。
まるで、糸の切れた人形のように。
ドクオは、自分の表情がひきつるのを感じていたが、
それ以上に湧き上がる一つの結論を、必死に抑え込んでいた。
( A )「お、おかし…くね? これ? だって、そんな、一緒に…って」
外から差し込んでくる柔らかな光が、その肌をぼんやりとあらわにする。
赤みの一切を失ったような、奇妙な色をした姿だった。
( A )「……ありがとう、って……それに……」
顔を覗いた。
( A )「なん……なん、で……?」
とても、満足そうな笑顔が、凍りついている。
- 95
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 23:12:22.37 ID:pa8nWEeL0
夢の中でいくつも語られた、記憶の欠片。
その正体は、自らの傍らに転がる紫色の綺麗な水晶剣が教えていた。
自らも見た記憶の中にあるその呪われた剣は、人の生命を吸う事で、黒く染まっていたものだから。
やがて、言葉を詰まらせ、その全てを理解したドクオは。
「何でだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
突きつけられた、どうしようもない現実に、
やり場の無い憤りを、ただ、叫ぶ言葉に変える事しかできなかった。
05「夢で逢えたら」 終
- 97
名前: ◆6Ugj38o7Xg
:2010/10/31(日) 23:14:07.34 ID:pa8nWEeL0
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五ヶ「夢で逢えたら」済
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