266名無しさん :2018/07/27(金) 21:41:26 ID:ODOo7f.g0



11ヶ「生まれゆく光」




陽が昇り、日差しもより強くなり始めた頃。

街道が続く荒野には、また大勢の人並みが列を成して歩いている。

そんな彼らの手元からは、剣や珠が燦然と日を反射して輝いていた。

目指す先はヒルト、その麓に集結しているという敵集団。

前回の争いにおいて、管理者含め被害は大きいものではあったが、今尚士気は高い。

なにせ結果だけを見れば敵は無様にも敗走した、数の点で言えば当然の事だ、
あれから更に管理者も増員し、体制は磐石、それぞれ最後となるのを感じながら前を向く。


じきに相手の姿も見えるだろう、また同じような人の垣根が現れる。

それが、これまでの定石、覚悟をしてきた戦場の光景だ。

しかしその日は、何処か様子が違った。

遥か遠い先に、何も居ないのだ。


大群である筈の姿が、どれだけ進み、どれだけ目を凝らそうとも見えてこない。

267名無しさん :2018/07/27(金) 21:41:57 ID:ODOo7f.g0

いつしか、まるで決められていたように先頭をゆく者たちが足を止めた。

何故ならこれ以上進めば、人の生活圏に踏み込むことになる。

侵略や略奪、更には殺戮が目的ではない彼らにとって、
そもそも戦の決まりごとにおいても、集落や街中を戦場とするのは良しとされない。

特異な場合を除いて、公的に宣言したものは特に、示し合わせたように無人の荒野を選ぶ。

そして踏み込む時というのは、全てに決着がついたその時に。

今回もそんな伝統に則って、彼らは迎え撃つべく足を止めたのだ。


街道の先に、相変わらず人の姿は無い。


やがて進軍か待機かと、ざわめき立つ集団の中、一人が声を荒げた。

混乱、あるいは困惑ともとれる声だった。

示すのは街道の先、そこに大きな煙を上げながら大地を駆ける姿があった。

船である事は理解できるが、しかし感嘆と悲鳴の入り混じったような声が上がる。

何故なら周りの物と比較しても、明らかにサイズがおかしい、まるで走る城砦。

その陸船と思わしき存在から比べれば、木々はまるで道端の雑草のよう、
更によく見れば、船の上にはまた小さな影が大量に蠢いている。

268名無しさん :2018/07/27(金) 21:42:36 ID:ODOo7f.g0

そしてその巨大な船が、真っ直ぐに自陣に向けて突っ込んでくるのだ。

あれが何であるかは最早関係なく、混乱はすぐに波紋のように広がっていく。

向かってくる姿に先頭をゆく集団はすぐさま散り散りに、そんな様を見た後方もまた同様に、
訳もわからないまま、釣られるように右往左往、戦列は瞬く間に崩れてしまう。

しかしすぐに号令が飛ぶ、声は言う、避けろと。

そして一切速度を落とすことなく船は、ついに彼らの目の前までやってきた。

まるで地震、土砂崩れを前にしたような感覚だった。

砂塵を巻き上げ、後部の煙突状の箇所から大量の煙を上げ、しかし帆を張り、
車輪の音は轟と鳴り、地面に深く大きな跡を残し、船が横切る。

だがすぐに通り過ぎることはなく、巨大過ぎる船体は中々尾を見せない。
いくつも並んだ巨大な車輪が通るたび、がたんたんと規則正しい音が鼓膜を叩く。

そしてようやく船尾を見送った頃、呆然とそれを眺める人々は、己が生に遅れて安堵すると共に、
あの船が敵国のものである事、そしてそんな彼らの向かった先が何処であるかを思い出し、

未だパニックを起こす後方へと呼びかけながら、その船の後を追いかけた。

269名無しさん :2018/07/27(金) 21:43:37 ID:ODOo7f.g0

前回の戦いで自分達がそうしたように、目的は殲滅ではなく、
その中心となるもの、王とその居城の制圧にあるのだと叫び急ぐ。


だが船はその巨体にも関わらず、あまりにも速く、みるみる遠ざかっていく。


そんな奇妙な追いかけっことなった、追われる側。
船上では見下ろす光景に目を奪われながらも、大きな歓声を上げていた。


「こいつはやべーい!」

「すげーい!」

「ものすげーい!!」

<_フ*゚Д゚)フ「ははっ見ろよ、慌てふためきようったらないぜ」

( 凸)「そりゃそうだろ、こんな状況誰が想像できるよ」

( 凸)「ああ、バーニング、サンダーと来たらアイスもソードかと思ったらスケートだったみたいな」

( 凸)「バーニングアイスが極大消滅系かと思ったら対消滅オチだったみたいな」

火<_フ;゚ー゚)フ「そのカービィネタは分かり辛いんじゃねぇかな?」

('、`;川「ここまで来てもそのノリは続くのね」

火<_プー゚)フ「ま、余裕ってのは大事じゃん? なんつーか、それが俺らなりの覚悟みたいな」

270名無しさん :2018/07/27(金) 21:44:26 ID:ODOo7f.g0

('、`*川「余裕があっても視野が狭くちゃ意味ないわね…うしろ見なさいよ、燃えてるわよ」

炎_フ;゚Д゚)フ「は? なn…ぶわちゃちゃちゃ! あっちぃーーーー!!」

( 凸)「おお、エクストのやつ燃えてんな」

( 凸)「これが 火属性付与(エンチャントファイア)…気合入りすぎだろ」

メ_フ;゚д゚)フ「死にそうなんですけど!?」

('、`*川「さあお遊びはそこまでにして、消化と迎撃用意、いいわね?」

<_プー゚)フ「ま、流石にすんなり通してはくれねーか……!」

甲板の際から見えるのは、流れていく景色と、いくつもの火球。
目下からはいくつもの発光と、駆動音に混ざって破裂音が響いていた。

混乱はあれども、その船が敵の操るものである事は明白であり、
ただ追いかけ、あるいは見逃すばかりではなく、早々に気付いたものたちは、
すぐさま迎撃の姿勢をとり、船を止めるべく攻撃を開始した。

とは言え船体は装甲に覆われているため、一度や二度の攻撃ではびくともしていない。

だが全てが防火されている訳ではなく、そこかしこに穴はある、
特に大きな存在は、大量の風珠を取り付けた巨大マスト。
これがやられたら大きく速度を落とすことになってしまう。

271名無しさん :2018/07/27(金) 21:44:57 ID:ODOo7f.g0

と、そんな最中に大きく響き渡る声があった。

同時に、声の主が手にした剣を大きく振るえば、
降り注いでいた火球が、突風によってかき消されていく。

おお、というどよめき、視線は一点へと向かう。


ノパ听)「皆見えているな、ここは敵陣ど真ん中通り越して奥地だ」

ノパ听)「最早退路は無い、進み、この身果てるまで戦うのみ」

ノパ听)「だが、それも今回は、討ち倒すための戦いではない」

ノパ听)「これより我らの戦いとは、守ること、この船を―――その時が来るまで守り続ける事にある」

ノパ听)「皆も知っての通り、その時がいつ訪れるのかもわからない、終わり無きものとなるやもしれない」

ノパ听)「言わばこれより始まるのは、最後の消耗戦だ、どうあっても厳しい戦いになる」

ノパー゚)「―――けれど、王としてこれだけは達する、生き延びることを自覚しなさい」

ノパ听)「今ここに居るのは、これまで決して同じ道を歩んできたわけじゃない」

ノパ听)「異なる世界の者も、他国の者も、かつては争っていた者も、争いによって帰る場所を失った者すらも」

ノパ听)「そう、奇せずして集まった我らだが、こうして同じ先を見据えている」

272名無しさん :2018/07/27(金) 21:46:56 ID:ODOo7f.g0

ノパ听)「誰の命令でも無い、各々の意思で、それを選んでここまで来た」

ノパ听)「彼の王には、世を纏め上げ平和を掲げる様は確かに正義であるのだろう」

ノパ听)「世界が何を望んでいるのか、そんなのものは私にはわからない」

ノパ听)「だが、その為に他を悪と断じ、世を、人をも手中にせんとする行為、私は許容できない」

ノパ听)「あの日、あの者が言った、我らは世界の希望なのだと」

ノパ听)「ならば我らは、真実を知るものとして、この世界に問わねばならない」

ノパ听)「続く世界に、人に、心に、問いかけ続けなければならない、その為に今はこの剣に全てを込めよう」

ノパ听)「生きること、目指すもの、明日を――各々が剣に誓いを立てよ!!」


ノパ听)「我らが剣は―――」


「「「「「 誓約の下に!!! 」」」」」


雄々しく叫んだ声が、大地を抉る轟音よりも強く響く。

幾度も掲げられた剣が、何度も何度も反射しては煌いた。

こうして船上にいるものたちの、最初の戦場が始まった。

273名無しさん :2018/07/27(金) 21:48:33 ID:ODOo7f.g0

(´・ω・`)「上は盛り上がってますね」

ξ゚听)ξ「あの女、自国の問題を片付けるために小細工をしていたそうだが……」

ξ-听)ξ「最初からああしていればよかったのではないのか?」

(´・ω・`)「伝統的なものだったようですし、そう簡単じゃなかったんでしょう」

(´・ω・`)「それに……殷鑑遠からずってのも、あるかと」
  _,
ξ゚听)ξ「なんだそれは?」

(´・ω・`)「僕らに会って、何か思う所があったんでしょうね、って話ですよ」

ξ゚听)ξ「まあ、何かしら覚悟を決めた人間の姿ではあるが」

それにしても、と続け。

ξ--)ξ「ここの女はどうにも肝の据わった者が多いな」

ξ゚听)ξ「なあ、そこのお前も、これから死地に向かうというのに随分と落ち着いたものじゃないか」

川 ゚ -゚)「…いや、そんな事はない」

川 ゚ -゚)「とても恐ろしいよ、ただ…」

布で巻かれた赤い剣の欠片を握り締め、唇には真っ直ぐな横線を描きながら、
時折感じる小さな振動と、遠くから響く人の声や破裂音、
そういった喧騒の中にありながら、真っ直ぐな目で、見つめ返す。

274名無しさん :2018/07/27(金) 21:49:24 ID:ODOo7f.g0

川 ゚ -゚)「それ以上に……私でも、役に立てるかもしれないと思う気持ちが」

川 ゚ -゚)「色んな思いを少しだけ、上回っているんだと、思う」

ξ゚听)ξ「……そうか、いや愚問だったな」

ξ゚听)ξ「お前もまた、国家間に振り回されてきた口だったか」

彼女とて、一度は折れながらも、立ち上がった一人である。
特別な何かがあった訳じゃない、それでも歩き続けた果てに確立した意思がある。

きっかけは何だったのか、今となっては彼女自身も定かではない。

ただ、共にあろうとした少年が、誰かと重ねて居ただけのその者が、
いつしか彼女の中で本当の、本物になっていたこと。

そして懸命に生きようともがく人たちに触れ、広い世界に触れたことで、
遠い日に、彼に説かれた生きる意味が何なのか、同じ思いに至れた事こそが。

人が言う、強さとなって今の彼女を支えていた。

川 ゚ -゚)「それに、もう一度ドクオに会えたときに、ちゃんと言いたいんだ」

川 ゚ー゚)「もう、大丈夫だってな」

ξ--)ξ「やれやれ最後はノロケ話か」

川 ゚ -゚)「いけないのか?」

275名無しさん :2018/07/27(金) 21:50:41 ID:ODOo7f.g0

ξ゚ー゚)ξ「いいや、そういう覚悟も嫌いじゃない」

(´・ω・`)「じゃあその為にも、段取りは覚えてるよね?」

川 ゚ -゚)「わかっている、大丈夫だ、これは……私だけの勇気じゃないのだから」


そして船は街道を行く。

いつしか攻撃の手は止み、追手を一時的でも撒いた頃。
ついに目的地である岩の城砦が、その姿を覗かせた。

大きな岩山に、いくつもの穴が空くシルエット。
正面には入り口を覆うようにして、木組みの城門が立ちはだかる。

だが船はお構い無しに進んでいく、速度に緩みは一切ないまま。

門付近には番兵が点在し、迫る船を見つけるなり慌てた様子で駆け回っていた。

突如として城門よりも大きな船が、あろうことか突撃してくるのだ、
対処法などあるはずも無く、どんどん迫ってくる大きな影を前にして、
すぐに退避の一手をたどることになった。

散り散りに逃げていく姿がある。

その合間を縫うようにして船はついに、城門への突撃を敢行した。

木組みの門は一瞬たりともその勢いを受け止めること叶わず、
ぶつかるなり大きく形を歪ませ、そのまま弾かれる様に吹き飛んだ。

いくつもの木端が宙を舞い、巻き起こる粉塵が周囲を埋めていく。

276名無しさん :2018/07/27(金) 21:51:25 ID:ODOo7f.g0

砂煙を纏いながら、減速を始めた船が門と城砦の中央付近で動きを止めた。

そんな有様を眺める人々は、戸惑いながら遠巻きに、
なんだあれは、船なのか、大きすぎる、等と口々に漏らしている。

と、そんな煙の奥に、更なる変化が起きた。

影だ、それも大量の、巨大な船の周囲を埋め尽くさんばかりの影が、
今この瞬間にもその数を増やしながら、蠢いている。

そもそもが異様な光景だ、誰かは怪物が襲ってきたのかとも問う。
しかし続いて聞こえてきた声と、煙の合間に覗く帆に描かれた模様に、その正体を知る。

「あれは…ヒルトの…まさかこれは!?」


『進め!』

『制圧せよ!!』


雄々と叫ぶ声が、文字通りに轟く。

踏み抜く足が地を鳴らす。


現れたのは人の群れ、何百という数が一斉にその空間を埋めていく。
巨大船から比べれば、まるで虫の群れが溢れるような光景だ。

城砦に残っていたのは、最低限の人数のみ。

そんなおぞましくもおそろしい光景に、まともな抵抗を示せたのはほんの僅かであった。

277名無しさん :2018/07/27(金) 21:52:23 ID:ODOo7f.g0

('、`*川「門の制圧は完了したわ」

(´・ω・`)「敵の本隊はどう?」

('、`*川「もう見えているよ、衝突は時間の問題ね」

(´・ω・`)「うん、それじゃあ、次は船の防衛を、手筈通りに」

('、`*川「わかったわ」

<_プー゚)フ「門ぶっ壊したのは勿体無かったんじゃねぇかなー」

(´・ω・`)「……止め方、実は知らないんですよねぇ」

<_フ;゚ー゚)フ「そんな理由かよ!?」

ノパ听)「付近の詰め所もすぐに、と言いたいが何分多い、まだかかるな」

(´・ω・`)「充分です、一度集まってもらって……あとは……」

正面にある、一際大きな岩山の、その最上部を見上げる。
そこに、誰かが見下ろすように立っていた。

('、`;川「……あれを相手に…ツン、本当に一人で……」

(´・ω・`)「本人が大丈夫だって言うんだから、信じるしかない」

(´・ω・`)「それに、あくまで時間稼ぎなんだから」

ノパ听)「ああ、大体殺す気がないという輩の相手より、むしろこちらの方がよほど危険かもしれんぞ」

('、`*川「……そうね、それじゃあショボン君、私も行くわ」

(´・ω・`)「うん、日陽の件もよろしく……それと、なんだ、幸運と」

('、`*川「勝利を、ね、お互いに」

278名無しさん :2018/07/27(金) 21:53:22 ID:ODOo7f.g0

ペニサスはそう言って背を向けた、その進みにもはや迷いもなく、
歩む先にはエクストら同郷のものたちと、ツンの下にいた兵達が集う。

( 凸)「大将」

('、`*川「ええ、それで見えた?」

( 凸)「案の定、今回は道がてらに合流しちまってるみたいだ」

<_プー゚)フ「ま、いくら陣形組んでたってこうなっちまえばなぁ」

('、`*川「前回は意図的に避けられてたようだけど、今度は逃がさないように、ね」

<_プー゚)フ「おうよ、野郎共、説得コマンド忘れんなよ!」

( 凸)( 凸)( 凸)「「「「「おー!!!」」」」」


こうして船を中心とした、防衛のための陣が敷かれた。


そう、こうまで大胆な策を講じておきながら、何故か拠点攻略に踏み込むことなく、
遠方より迫る集団を待ち受けるように、彼らは足を止めた。

城砦内に未だ残る一部のものたちは、そんな異様さに困惑を示しつつも、
じきに到着するであろう本隊を待つことを選んだ。

ゆえに、警戒も薄く、あっさりとその場へたどり着いた者が居た。

279名無しさん :2018/07/27(金) 21:54:00 ID:ODOo7f.g0



ξ゚听)ξ「見張りもつけないとは、無用心ではないか?」


いくつもの天窓から明かりが差し込む空間、その奥に、
目下を眺めながら佇む姿へ、ツンは軽い口調で問いかけた。

( ФωФ)「はは、先日も入り込まれたばかりでな、他の者にも言われたよ」

( ФωФ)「だが不要なのだ、ここは神である我が居城、余分なものは必要がない」

ξ゚听)ξ「余分……人間を、そう称するか」

( ФωФ)「ふむ、ところで一人か?」

ξ゚听)ξ「ああ、今のところな」

( ФωФ)「何をしに来た?」

ξ゚ー゚)ξ「わかりきった事に答える必要があるのか?」

( ФωФ)「そうであるな」

ツンは手にした水晶剣を地に突き立てる。
同じように、ロマネスクも黒線纏う大剣を突き刺した。



踏み込んだのは、ほぼ同時だった。





……………。

280名無しさん :2018/07/27(金) 21:55:27 ID:ODOo7f.g0

ほどなくして、追いついた本隊との戦いが始まった。

人が次から次へと押し寄せてくる、その様はまさに津波のよう。
文字通り、門から船とつづく街道は人で埋め尽くされていく。


ノパ听)「我に続け!!」

「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ」」」


<_プー゚)フ「よし、やるぜ!」

('、`*川「日陽の人間たちは、どのあたり?」

(;凸)「まだ、見えないっす!」

('、`*川「仕方ないわね、今は……!」

('、`*川「皆、声を張りなさい、剣の誓いを今こそ!!」

<_プД゚)フ( 凸)「「「「応!!!」」」」


そして集団が、更に大きな集団に呑み込まれていく。


だが潰されはしない、一度は収縮しかけた形は、
すぐに押し返すように広がりを見せた。

そればかりか、楕円に広がる互いの境界線より奥地、
戦線より後方に、どこからか接続による攻撃が飛来する。

見れば巨大船の甲板や、胴体にはいくつもの珠が取り付けられており、
それぞれ配置した人々が後方より、前線の支援を開始したのだ。

281名無しさん :2018/07/27(金) 21:56:10 ID:ODOo7f.g0

こうして崩れかけた前線は、しかし更に後方から第二第三の波が迫る、
波状攻撃と、三次元からの攻防、戦場はこうして消耗だけがつづく膠着状態となった。


雄叫びと、悲鳴が響く。

金属音と、割れ音が連なる。

轟音と、爆音がそれらを覆う。


川;゚ -゚)「………っ」

川 ゚ -゚)(………これが、戦場、か)

川  - )(わかっては……いた、のに)

そんな音は船内にも届いていた、クーは身を抱くように小さくなりながら、
震える身体に止まれと念じる、あまりにも、自分が場違いであると思う。

今も外では殺し合いが行われている。

顔でも出そうものなら、その瞬間に火に焼かれ、雷に撃たれるかもしれない。
しかし何より恐ろしいのは、状況がわからない事だ。

今甲板に響いた足音は、果たしてどちらの物なのか。

聞こえる喧騒が一つの残酷な結果による物ではないか、想像するだけで恐ろしい。

こんな世界に身を投じられる者たちの、なんと勇敢なことか。

祈るように目を閉じる、しかし震えは止まらない。

282名無しさん :2018/07/27(金) 21:58:06 ID:ODOo7f.g0

どれほど時間が流れたのだろう。

その間、どれだけの音があっただろう。

幾度と無く響くそれら一つ一つが、誰か一人の結末だったのかもしれない。

やがて必死に握り締めていた手のひらに、刺すような痛みが走る、
思わず手放した物が床を転がっていく、すぐには動けず、目でそれを追いかけた。


力を込めすぎて、刃で切ったのかと思ったが、しかしすぐに違うと知る。


川;゚ -゚)「……なんだ……光って…?」

剣の欠片は、これまで見たこともないほど赤い光を強め、
陽炎をもまとうほどに、その熱量も高めていた。

その原因が何であるか、何が起きているのか、思い当たるのはただ一つ。


川 ゚ -゚)「……あ、ぁ、まさか、これは…っ」

川 ゚ー゚)「………お前、なのか?」


「ドクオ」



………………。

283名無しさん :2018/07/27(金) 21:59:48 ID:ODOo7f.g0

( 凸)「あ!」

「あ、お前ら…!?」

<_プー゚)フ「お、やっと見つけたぞ!」

均衡を保つ戦場の最中に、しかし動き回る遊撃隊があった。
ペニサス率いる日陽と湖鏡の混在する兵達だ。

彼らは戦地を駆けながら、ある集団を探していた。
その目的は、同郷の者たちの誤解を解くために。

「くそ、本気で、お前ら!!」

<_プー゚)フ「居たぞ大将!!」

('、`*川「ええ、聞きなさい日陽の者達!!」

「え、ペニサス……さん!?」

「どうして…なんであんたまでそっちに!!」

('、`*川「事情は後で伝える、今は、戦いをやめなさい!!」

('、`*川「我が国の神具をもつ彼らは、私たちを裏切ってなどいなかった」

('、`*川「全ては仕組まれた事だったのよ!」

「何を…何を言ってるんです!?」

「だってそもそも、ペニサスさん、あんたがそう言って…!」

284名無しさん :2018/07/27(金) 22:01:46 ID:ODOo7f.g0

「そうだ、巫女さまのお二人を、あんな……許される事じゃない!!」

('、`*川「違う、違うわ……巫女さまを手にかけたのは………」

('、`*川「私、この私が、あのロマネクスの配下に操られて犯したこと!!」

('、`*川「……とにかく、真実はもうじきにわかる!」

('、`*川「今は戦いをやめなさい、これ以上……こんな戦いで命を捨てては駄目!!」

必死の懇願に、少なくとも戦意は失った日陽の人間たちではあったが、
しかし困惑の色がつよく、どうしたらいいのかと戸惑うばかり、

と、そんな中に一人、ペニサスへ歩み寄る者が居た。

「……俺、あいつらと、宴会で騒いだり、色々、話したりしたよ」

「正直言って……悪い奴らには、思えなかった」

<_プー゚)フ「ああ、俺もそう思う」

( 凸)「少なくとも、友人を平気で傷つけられるような連中じゃないよな」

('、`*川「あなた自身は、どう見えていたの、彼らのことを」

「……………」

「エクスト、ペニサスの大将、俺は……俺たちは、騙されていたのか?」

<_プ -゚)フ「そうだ、裏切っていたのは……お前ら……いや、俺たちの方、だ」

285名無しさん :2018/07/27(金) 22:02:12 ID:ODOo7f.g0

「……本当のこと、話してくれるんだよな?」

('、`*川「その為に、私たちはここに居るのよ」

「…………」

「わかった、どうすればいい?」

('、`*川「まずは同郷の者達すべてに伝えなさい、剣を捨てよと」

('、`*川「他の皆も、まだ信じなくてもいい、だけど真実はじきに明かされる、今は戦いをやめなさい」

カランと、いくつもの剣が地に落ちる音が連なった。
そんな姿に、ペニサスは笑みを浮かべ、頷いた。

<_プー゚)フ「ん? なんだあれ……」

と、そんな折、エクストは遠方に砂煙を引く影を見た。
遠目にも、普通の陸船とは思えないような速度で向かってくる。

( 凸)「増援か…? まだ来る?」

<_プー゚)フ「いやでも一隻…しかも、変だぞ、何かに引かれて…?」

( 凸)「つか、こっち来るぞ!!」

('、`*川「いえあの船、ヒルトのものよ、紋章がある」

<_プー゚)フ「ヒルトから!? ってーことは……」

('、`*川「ええ、きっと――――」

286名無しさん :2018/07/27(金) 22:02:58 ID:ODOo7f.g0

そして四本足で駆ける大きな生物に引かれた船が、勢いそのままに戦場へと飛び込んだ。

生物と船はしかし怯むことなく駆け抜ける、突然の奇襲に敵味方問わず飛び退く人によって、
一本の道が整形され、やがて到達点、巨大船へと突っ込んでいった。


ノハ;゚听)「な、何だ!?」

(*‘ω‘ *)「ポヒヒヒィィィーーーン!!!!!」

「ひ、ひえええ!?」

「ちょ、ぶつかるお!!?」

馬がその場で旋回しつつ急停止、後を引かれた陸船は勢いを止めることなく、
ついには振り回されるような形で、巨大船へと衝突し、事故を起こした。

ひしゃげた船が大きく傾き、ひっくり返った。

しかし寸での所で飛び降りた影が二つ。

甲板に立つショボンは、その一部始終に苦笑を浮かべた。

(´・ω・`)「何をやってるんだか」

相当な勢いからの着地にも関わらず、難なく立ち上がる二人の姿がある。
下で歓待を受けているが、すぐにこちらを見るなり下部の入り口へ、

そして、甲板の扉が勢いよく開かれた。

(;'A`)「ごめんショボン、遅くなった!」

(´・ω・`)「うん、大丈夫だよ、それよりまた会えてよかった」

('A`)「と、そっか、心配かけた、でももう大丈夫だから」

(´・ω・`)「そうみたいだね、なんだか見違えたよ」

287名無しさん :2018/07/27(金) 22:04:52 ID:ODOo7f.g0

('A`)「クーは? 来てるって聞いたけど」

(´・ω・`)「船内に居るよ、会ってくかい?」

('A`)「ん……いや、今はまだ」

('A`)「クーもきっと、自分の意思でここに居るんだろうから」

('A`)「全部終わらせてから、ゆっくりと会いに行くさ」

(´・ω・`)「そうか、うん、でも来た事は伝えておくよ」

(;^ω^)「その……ええと、ショボン?」

(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「ごめん……今更って思うかもしれないけど、だけど、僕も、もう一度…」

(´・ω・`)「ああ、本当に今更だよ、言ったろ、君の事なんか信じちゃいないって」

( ^ω^)「……それでも、僕も決めたんだ、もうn」

(´・ω・`)「君みたいな考え無しの大馬鹿者が、何もかも諦めて来ないなんて、思っちゃいないさ」

(;^ω^)「にげな………え?」

('A`)「馬車用の道具、ショボンが用意させてたんだろ?」

(´・ω・`)「ああ、ブーンを追いかけて来てたの知ってたからね」

(;^ω^)「………な、なんだお、それ」

288名無しさん :2018/07/27(金) 22:05:18 ID:ODOo7f.g0

(´・ω・`)「それにしたって遅い、ドクオの方は事情がわかるけど君はダメダメだね」

(;^ω^)「ひ、贔屓が、ここまで来て尚贔屓が酷い!」

(´・ω・`)「遅刻の罰としてほら」

言って、指すのは最上部、彼の王が居る場所。

(´・ω・`)「決着をつけてきなよ、今度こそね」

(  ω )「―――――」

( ^ω^)b「がってん承知!」

(´・ω・`)「ドクオも、悪いけど、道を作ってあげてくれるかい?」

('A`)「道を……ああ、わかった」

(´・ω・`)「ちなみに今回の狙いは聞いてるよね?」

(;^ω^)「一応……でも、何時の間にそんなこと進めてたんだお」

(´・ω・`)「子供の喧嘩じゃないんだから、争いの間にだって政策は進むさ、当然だろ」

(´・ω・`)「とは言え、ヒルトっていう国に属しているからこそではあるけどね」

何にせよ、じきに人の戦いは終わる、この戦争はそういうものだと。

(´・ω・`)「というわけで、頼んだよ二人とも」

(´・ω・`)「ああそうだ、あとこれが終わったら、ご飯でも食べに行こうか」

( ^ω^)「おお、行く行く!」

289名無しさん :2018/07/27(金) 22:07:08 ID:ODOo7f.g0

('A`)「飯か…何なら俺作ろうか」

(;´・ω・`)「え、ドクオって料理できたの?」

('∀`)「今ならすげーうまいもんできるぞ、お墨付きだよ」

(;^ω^)「それって……記憶の?」

('A`)「ああ、あの人の生きた証、皆にも、知ってほしいんだ」

( ^ω^)「そりゃ楽しみが増えたお、どんなのだろう」

('A`)「ギンギーとか」

(;^ω^)「ギンギー?」

(´・ω・`)「いいけど、男の手料理を楽しみにするとはこれいかに」

(´・ω・`)「……ま、そんな感じでよろしく」

( ^ω^)「うぃ、そんじゃ、行ってくるとしますか!!」

('A`)「ああ、今度こそ…終わらせよう!」

言って、二人は甲板から下へと伸びるスロープに手をかけ、一気に降下。
かけられた声に応えながら、人並みを抜けて駆けていく。

城砦へ続く道も、すでに人が壁となっている。
けれど、もはや管理者としてもある種の到達点へ達した二人。

ただの一瞬とて、止められる者は居なかった。

290名無しさん :2018/07/27(金) 22:08:22 ID:ODOo7f.g0

そして城砦の入り口へと、あっという間にたどり着いた。
だがそこは重厚な石の扉によって閉ざされている。

二人はそこで一度立ち止まった。

後ろからは、王の下へと向かう二人を止めるべく、また人の群れが押し寄せる。
けれど見向きもしないまま、一人は赤い剣の輝きを強め、もう一人が風を起こす。

次いで、耳をつんざく爆裂音と共に、石の扉は文字通り爆発した。

吹き飛ばされた瓦礫が、長く宙を泳いで地を抉りながら落ちる。
残された扉だった箇所は、ところどころ未だ赤熱し、黒煙を立ち上らせた。

(;^ω^)「相変わらずトンデモ火力だお…!」

('A`)「……よし、道は開いたぞ、行ってくれブーン」

(;^ω^)「へ? ドクオは?」

('A`)「俺はここに残るよ、邪魔されないように、あいつら止めておくからさ」

言って、ドクオは再びこちらへ向かってくる人波を見る。


確かにここで止めなければ、王の下へ向かっても止められてしまう、
それにそんな状況下で奴とまもとにやり合えるとも思えない。


言い分は正しい、だが。

291名無しさん :2018/07/27(金) 22:09:44 ID:ODOo7f.g0

(;^ω^)「そんな、一人じゃ…!」

言いかけて、もう何度も見たあの威力を思う。
あれなら確かに、とは思うが、それでも。

( ^^ω)『むしろお前が居たんじゃ邪魔になるだけだろ』

( ^^ω)『それに、気付いていないのか、船から降りた時もそうだったが』

( ^^ω)『ドクオの奴……今のお前の本気の動きに、ついてきているんだぞ』

それも、息も切らさず。

神具によって人外の力を得ている内藤に対し、ドクオの持つ神具にはそういった能力はない。
しかし、今はもう一つ、その腰にはもう一本の剣が下げられている。

紫色の水晶剣、人の血を吸い、かつて赤く染まっていた呪いの剣だ。

その忌むべく力によって蘇ったドクオは、その恩恵を未だ得たまま、
自覚も無く、常人を遥かに越える体力を身に付けていた。

加えてあの炎の剣だ、もはや囲まれた程度で遅れを取ることはないだろう。

しかし内藤が思うのは、その心配だけではなく。


(;^ω^)「いいのかお、だって、ドクオにとっても、あいつは……」

('A`)「正直なとこ、一緒に行っても、足を引っ張っちまうよ」

('A`)「わかるんだ、一度は相手をして、そして……傍で、見ていたから」

(;^ω^)「だけど…っ」

292名無しさん :2018/07/27(金) 22:10:35 ID:ODOo7f.g0

('A`)「それに、いいんだ、俺はもう……恨みだとか、憎しみでこの剣は振るわない」

('A`)「そう、決めたんだ」

('A`)「お前だって、そうだろ?」

( ^ω^)「………!」

('A`)「だから俺の願いも、お前に託す、そして今は、よく聞くこの言葉を言うよ」

('∀`)「ここは、俺に任せて先に行け」

( ^ω^)「……ずるい、それ、僕だって言ってみたいのに」

('∀`)「だろ?」

( ^ω^)「うん、だけど、託されたお」

('A`)「ああ、頼んだ」

入り口の方からも、爆発の音を聞きつけて人が姿を見せた。
ドクオはその方向へと火柱を飛ばす、合間には道がある、

もはや言葉もなく、互いに頷き、内藤は友が作った道を駆けた。

そして再び、あの日も歩んだ通路を走る。


同じ目的を。


違う想いで。


白銀に輝く剣を手に、その先を目指した。

293名無しさん :2018/07/27(金) 22:12:59 ID:ODOo7f.g0

('A`)「さて、と……」

右手には折られながらも、その輝きを失わない赤い剣。
左手には彼の生き方を象徴するような、今は空っぽの紫晶剣。

どちらも勝手に受け継いだだけの、借り物の力。
けれどその思い出は今も、確かにこの胸に宿る。

例えるならば、それは光、いつでも道を示してくれる輝き。

どんな暗闇の最中でも、どんな景色が見えても、どんな険しい道であっても、
進むべき道を照らしてくれる光、だからもう、二度と迷わないで進める。

そう、思える。

迫る人波を見据え、剣を構えてドクオは言う。

('A`)「俺たちの狙いは、敵将ロマネスクただ一人!!」

('A`)「この先へは、誰も通さない…!」

輝く赤い剣を一振り。

半円を描いた炎の道が、集団とドクオを隔てるように広がった。
駆けてくる群れは、突然燃え広がった熱に足を止める。

どよめきが起こる、その原因は燃え続ける炎の、その輝きにあった。

何故なら炎は、見たことのないような、幻想的なまでに蒼い光を放っているから。


('A`)「命が惜しければこの線を越えるな、さもなくば、この破壊の剣……炎の風が相手だ!」

294名無しさん :2018/07/27(金) 22:14:22 ID:ODOo7f.g0

伝え聞くその管理者の名、そして先の石扉を一撃で消し飛ばした力。

怯む者は少なくなかったが、すぐに怒声が飛ぶ。

それでも、相手は一人だと。

進めという声に押されるようにして、人波は炎を乗り越え、再び駆ける。

中には異様な形の武器を手にした者も居る、あれも管理者なのだろう。

虹の輝きを放つ剣、光刃を纏う槍など見るからに特別な代物もあった。
更には珠を手にする者たちも大勢居る、それら全てが今、ドクオに向かってくる。

不思議と恐れはなかった。

それよりも、むしろ、今も心の奥底から湧き上がってくるものが。
ドクオの足を死地とも見えるその先、前へと進ませた。
力が漲る、魂が燃える、心のマグマが迸る。


('A`)「今の俺は…!」


(,,゚Д゚) ミ,,゚Д゚彡( ・∀・)( ´∀`)


(#'A`)「負ける気がしない…!!」


雄々と叫び、いつしか眩く輝く光剣を振るう。

黒煙を内包する爆炎がばら撒かれ、呼吸するだけで喉を焼くほどの熱流が起きた。
ドクオを中心に発生したその熱によって、周囲の石はドロドロに溶けて流れ始める。

295名無しさん :2018/07/27(金) 22:16:17 ID:ODOo7f.g0

空間が歪む、黒煙があちらこちで立ち昇る。

肌を焦がすような熱風に当てられた集団には、尻餅をついて後退する姿もあった。

同時に、どうなってるんだと疑問が沸く。

それほどの被害を出しながら、中心に立つドクオはまるで何事もなかったように、
光り輝く剣を携え、今尚熱風を纏いながら、集団に向けて更に一歩を踏み出した。

そして進むたびに、歩いた跡が赤熱していく。


化物と、誰とも無く呟いた。


現に歩みを止めないドクオの姿は、熱でぐにゃぐにゃに歪む背景と相成って異様なものとなっている。


「ひ、引くな! 押せ、行け行け!!!」

勇気によるものか脅えからくるものか、そんな声に応え、集団が行動を開始する。
珠を構える姿がある、それに続いて突撃すべく剣を構えるものが居た。

次いで、一斉に接続の力がドクオ目掛けて放たれた。

突風が砂塵を巻き上げ、数え切れない火球が飛来し、雷が散らばり地をも焦がす。


だが、それらは一つたりとも彼の下へ到達しない。

まるで見えない何かに守られているように、何らかの圧力が近づくだけで炎が爆ぜる。
黒煙纏う炎が幾度も広がり、中空で発生した爆発によって全てが掻き消されてしまう。
296名無しさん :2018/07/27(金) 22:19:05 ID:ODOo7f.g0

更に進む。

そこへ一人、駆けてくる姿がある。

光刃を纏う槍を持つ人間だった、周囲には同じような輝きを放つ光球が浮かび、
槍の一振りに合わせ、ドクオに向かっていくつかの光が尾を引いて飛翔する。

だが先と同様に、近づくだけで光は爆発に飲み込まれ消滅した。

予想はしていたが、男は戸惑いを隠せない、
その隙をつくように、ドクオは距離を詰めていた。

「な、早い…!?」

('A`)「神具…こんな物があるから…」

防御すべく槍を構える男に向けて、もはや太陽と見紛うほどの輝きを放つ剣を振るう。

衝突は、もはや音にすらならなかった。

男は握る手のひらに感じた強烈な痛みに手を離す。
二つに分かれた槍が、断面を融解させながら地を転がる。

「そんな―――馬鹿な!!?」

('A`)「消えろ…!」

そして転がった槍へと剣をかざす。

発光。

突然のことに目が眩み、再び視界に入ってきたのは、
原型を留めないほどにドロドロに溶けた槍だった物の姿だった。

297名無しさん :2018/07/27(金) 22:21:19 ID:ODOo7f.g0

あまりの事態に、男はその場で固まった。

そんな隙だらけの身体を、ドクオは蹴り飛ばした。
軽く数メートルは吹き飛ばされ、集団にその姿が止められる。

戦慄に、最早動けないのは蹴飛ばされた者だけはなかった。
一体目の前で何が起きているのか、理解できずにざわめきが起こる。


そしてそんな合間に、再び蒼い炎による線が敷かれた。



('A`)「もう一度だけ言う、命が惜しい者は、この線を決して越えない事だ!!」



そしてそんな光景を、巨大船から眺める者たちが居た。
あまりの光景に、防衛にまわる事すら忘れ見入ってしまう。

(;凸)「なにあれぇ……こわぁ」

(;凸)「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」

ノパ听)「お前たち、余所見をするな!」

(;凸)「あ、サーセン!」

(´・ω・`)「………」

ノパ听)「…あれがVIPの炎の風か、一国を滅ぼす力というのも伊達ではないな」

(´・ω・`)「いえ、きっとあれは、その伝説を上回るものですよ、それも遥かに……」

298名無しさん :2018/07/27(金) 22:22:07 ID:ODOo7f.g0

ノパ听)「それでどうする、今こそ好機と見るが?」

(´・ω・`)「いえ、まだですよ、後は……」

言って、見据えるは砦の最上部。

このまま行けば地上は目論見どおり、残る問題は神を名乗るあの男。

先ほど見たように、神具をも消滅させる程の力をもつレーヴァテイン、
その剣でさえ、奴のもつ神具には及ばなかった。

そんな剣を持つ男が、あの時の内藤以上の力を持つというのだ。

恐らく、今の戦局とて奴が出てきたその瞬間に一転する。

裸の王とし、世界の意識を変える事ができたとして、全てが無意味になるかもしれない、
ゆえに残るはロマネスクという最大の難問を、どうするのか。

この点において、ショボンは考えることをやめた。

そしてただ、一人に託すことを決めていた。

これは賭けになる、そう知りながらも。

様々な事実と、要素が教えている、あの二人の関係性。
おそらく唯一対抗できるのは、その友人だけだと、不思議なことに確信をもち。

(´・ω・`)(ここまで道を作ったんだ、意地でも何とかしてもらうよ)

友の名を心で呼びかけながら、その場所を見つめていた。






…………。

299名無しさん :2018/07/27(金) 22:24:15 ID:ODOo7f.g0

あれだけの人数を揃える敵の親玉、そのラスボスが住まう居城にしては、
いっそ不気味なまでに人の気配がしない、思えば以前の潜入の際もそうだった。

それゆえに逃亡ができたのだと、今更ながら知った。

そうして、いくつものランプが描く、多重の影を引き連れて内藤は走る。

だが、それにしても静かすぎる。

聞けばツンが一人で足止めに向かっているはず。
にも関わらずこの静寂。
少なくとも今も戦いが続いているとは思えない。

( ^ω^)「………」

嫌な予感が、おそらくは確信なのだろうと思う。
そもそもが無謀な作戦だ、あの男を一人で相手にするなど不可能だ。

自分がもっと早く来ていれば、いやそもそも、馬鹿な行動さえしていなければ。

口惜しさに歯噛みし、それでも先を急いだ。

やがて、その場所の入り口が見えた。

飛び込んでいく。

いくつもの天窓から差し込む光が美しい大広間。

そこにいくつも、無数の傷痕が刻まれている。

300名無しさん :2018/07/27(金) 22:26:12 ID:ODOo7f.g0

恐らくは剣戟の跡なのだろう、至るところに見えるそれが、激戦の後を思わせる。

だがそれ以上に、正面、その最奥に二つの人影がある。

目を凝らし、ようやく見えたその先には。














思わず声を失うような光景が、広がっていた。






                      つづく。

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