- 3 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:50:42 ID:EHNAL7Lo0
- 0日目
―23:11:54―
灯台の明かりは港を照らしては消え、照らしては消え。
あの明かりに決して見つかってはならない。
いや、どんな明かりでもだ。
見つかってしまえば、残りの一生を檻の中で過ごし、その日の後悔で悶える日々を送る事になるだろう。
それが私達の職業だから。
3m満たない距離にいる相手の目の位置もわからない程の真っ暗な倉庫の中。
建物の大きさは市民体育館ぐらいだろうか。
埃被った機材や木箱が端の方に積まれ、中央にはバスケットコートサイズの空間がある。
その空間に、たくさんの箱を積んだ4tトラックがシャッターを越えて入ってきた。
暗闇の中でひっそりと出会う二人の男。
( `ハ´)「これで全部アルね」
(∴゚ з゚ )「ああ。一応中身を確認させてくれ」
( `ハ´)「了解アル。まだ時間はたっぷりあるアル」
そう言って2人の男達は倉庫に搬入された巨大な箱の元へ行った。
髭を長く伸ばしているあの男はたった今、船に乗ってこの港へやってきたようだ。
あの大きな荷物を持ってきて。
- 4 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:52:40 ID:EHNAL7Lo0
- (∴゚ з゚ )「ああ。どうやら本物のようだな」
もう一人の男はこの港で待機していた男。
先程からその荷物をまだかまだかと待っていた。
ここからでは分からないが、小刻みにタップを踏んでいる。興奮しているのだろうか。
(∴゚ з゚ )「おぉ……こんな数を買うのは本当に初めてだ。震えが止まらないぜ…」
箱に積まれていたのは30tのコカイン。
中にはびっしりと白い粉が入った袋が敷き詰められており、その箱が全部で20箱。
密輸―。
売人よりも生産者よりもリスクの高い仕事。
海外というルートでは少量の密輸ではコストが悪く、かといって大量に運んでは犬に嗅ぎつけられる可能性が高い。
そのクリアランスの中、私達密輸人は生きているのだ。
( `ハ´)「さぁ、代金を出すよろし」
(∴゚ з゚ )「…そうですね」
- 6 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:54:43 ID:EHNAL7Lo0
- 男は箱のふたを閉じると髭面の男と向かう。
そしてポケットから1丁の拳銃を取り出した。
(; `ハ´)「…何の真似アルか?」
(∴゚ з゚ )「何って…見てのとおり。交渉ですよ、交渉」
(; `ハ´)「交渉…?」
(∴゚ з゚ )「あなた達がこちらに提示した額は300万タポ…まぁモリ換算すると2億モリ程度か」
倉庫の影から黒い服を着た数十人の男が現れた。
手には機関銃、ライフル、ベレッタ、家畜用スタンガン…。
まともな交渉をする気が無いのは明白だった。
- 7 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:56:04 ID:EHNAL7Lo0
- (∴゚ з゚ )「これをね…50万タポで売ってほしいんですよ」
(; `ハ´)「ば、馬鹿言え!!そんな額で売れるわけがないアル!」
(∴゚ з゚ )「馬鹿はどっちですか?まだこの状況が分からないのですか?」
(; `ハ´)「ぐっ……!」
(∴゚ з゚ )「ここであなたが死んでしまったら我々は無料でこれを引き取ることだってできるんですよ」
(; `ハ´)「そ、それだけは…!」
(∴゚ з゚ )「まぁ、生き存えたその口であの高飛車な美人女上司に失敗のご連絡すればいいじゃないwww」
(; `ハ´)「うぅ………………ん?」
(∴゚ з゚ )「ん?」
- 8 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:56:52 ID:EHNAL7Lo0
- (; `ハ´)「ミーのボスは男アルよ?」
(∴゚ з゚ )「いやいや、あの女だよ。髪の巻いた金髪の」
(; `ハ´)「それはそっちの上司じゃ無いアルか?取引の時にあったアル」
(∴゚ з゚ )「え」
(; `ハ´)「え」
(∴゚ з゚ )「いやだって俺はそいつと取引したぞ」
(; `ハ´)「ミーもそっちの上司の女と商談を交わしたアル」
(;∴゚ з゚ )「!?一体お前は何を言って…」
( ゚∋゚)「そこまでだ!!」
その時、眩いばかりのライトが倉庫一帯に向けられた。
- 9 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:57:38 ID:EHNAL7Lo0
- (; `ハ´)「な、なにアルか!?」
( ゚∋゚)「一人も逃がすな!周囲を全て囲め!」
(;∴゚ з゚ )「警察だと!?どうしてここが…!」
その集団は黒い制服と帽子。そして胸に掲げられた国家権力の象徴。
その後ろで特殊なペイントを施した乗用車に取り付けられた赤と青のランプが点滅する。
数百人の警察が一斉に倉庫へ突入してきた。
彼らに嗅ぎつけられてしまったら最後。
この取引には何も残らなくなってしまう。最後に足掻きに足掻いて逃げ惑うが、
あっという間に二人は取り押さえられてしまった。
(; `ハ´)「ぐっ…騙されたアル!!何でミーはこんなことに!!」
(;∴゚ з゚ )「そいつは俺のセリフだ!!何が起きたんだ…!!」
何が起きた?そんなこと…あなた達が知る必要なんて無いでしょう?
- 10 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:58:40 ID:EHNAL7Lo0
- ( ゚∋゚)「おらぁ!大人しくしろ!」
怒声が倉庫中に響く。
どうやらこの警察の現場指揮をになっているのはこの体育会系の警部らしい。
威厳があり、体格もなかなか。ホモ臭さも漂わせている。
その警部の元に一人の警官がやってきた。
いや、警官とは服装が違う。あの人は鑑識のようだ。
何やら神妙な顔つきで話しているようだが。
《……………》
どれ、ちょっと覗いてみようかしら。
《……―ン。……イーン!》
もしかしたらあの箱の中にあるのは全部本物片栗粉だってバレたのかも…
「【クイーン】!」
- 11 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 22:59:43 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「!!」
ハッと我に返る。
慌てて携帯電話をしまい、顔を上げる。
<ヽ`∀´>「大丈夫ニダか?」
そこには貧相な顔つきの男がいた。
しまった。上の状況が面白すぎるあまり、こっちの話が疎かになってしまった。
ξ゚听)ξ「あ……ええ。気にしないで」
<ヽ`∀´>「それじゃあ、この30tのコカインは我々が貰って行くニダ。金はそれでいいニダね」
ξ゚听)ξ「いいわ。これからもお互いのビジネスの為に」
<ヽ`∀´>「ホルホルww」
- 13 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:07:28 ID:EHNAL7Lo0
- <ヽ`∀´>「それにしても…上がうるさいニダね。この国はこんな真夜中に祭りでもしてるニダか?」
ξ゚听)ξ「さぁ?犬でも吠えてるんじゃない?」
<ヽ`∀´>「ふ〜ん…この『海底港』でも犬の鳴き声は聞こえるニダね」
私達がいるのは、港…の真下にある。私専用の海底港。
貿易相手には4km先に待機させていた専用の潜水艦に乗り換えてもらい、そこから専用のゲートに侵入し、港の真下に開設したここに着く。
ここは余りにも目立ちすぎる商品、それこそ大型貨物船を使わなければならない物のみを預かる場所。
決してこの位置は見つかってはならない。
決して。
- 14 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:08:28 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「ところで。商品確認はしなくていいのかしら」
<ヽ`∀´>「しなくても関係ないニダ。お宅とは5年以上の付き合いニダ。そこには100%の信頼があるニダ」
ξ゚听)ξ「…そう。そう言ってくれるとありがたいわ。これからも御贔屓の事を」
<ヽ`∀´>「よろしく頼むニダww」
そう言うと、彼は潜水艦に乗り込む。
私も帰るとしよう。上では捜査も始まっている事だろう。
慎重に。慎重に。
潜水艦が目的の場所に到達するまで、約30分。
それまでに上の警察に見つかる事無くここを抜け出す。
何故って?
私は荷物の行方を見届けたいから。
- 15 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:09:12 ID:EHNAL7Lo0
- 【クイーン】はもともと私の名前ではなかった。
正確には私を始めとする、優秀な部下との密輸集団の組織名だ。
しかし、部下が何度も私の事をクイーンと呼ぶので、いつの間にか私自身のコードネームになっていた。
私が信用するのは今までもこれからもこの部下達だけだ。
ξ゚听)ξ「さっきの取引先との今までの業務件数はいくつだっけ?」
長く続く地上と地下を繋ぐ為の連絡通路を歩く。
私が不意にそう呟くと、後ろから「31です。」と部下の返事が戻ってきた。
ξ゚听)ξ「やっぱ…多すぎよねぇ…」
後ろから「はい」と一言。
それと同時に私は海底港から2km離れた港に着く。
部下が予め用意していたオペラグラスを受け取る。
多い。彼は私達を知り過ごしてしまった。
- 16 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:09:57 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「みんな。今日はありがとう」
私は振り返り、部下の方へ向く。
ここに今回の仕事に関わった人間が全員揃っているわけではないが、労いの言葉くらいは。
ξ゚听)ξ「今回はけっこう大変だったと思うわ」
ξ゚听)ξ「爆弾の手配も忙しかっただろうし…それに…」
・・
ξ゚听)ξ「片栗粉を60tも用意するのは骨が折れたわよね」
海の遥か遠くで、火柱が立った。
海風の音でよく聞こえなかったが相当な爆発音がおこったに違いない。
当たり前よ。私達が渡した全ての箱の中に火薬を仕込んだのだから。
それは私達が用意した仕事の成功の狼煙。指定した時間丁度に上がってくれたようだ。
彼らは多くを知りすぎた。
私達を強請る計画が浮かんでいたのはとっくに割れていた。
彼らが生きている事で私達に利益が転がる事などもう二度とないだろう。
顧客は私の奴隷。
生かすも殺すも私次第。
- 17 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:10:55 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚ー゚)ξ「それじゃあ、今日はこれで解散。明日の仕事もよろしくね」
私達は軽く挨拶をすると静かに散らばって行った。
部下は私を決して裏切らない。
誰だって自分があの船のようになりたくないでしょう?
彼らの体に埋め込まれたチップは私と部下達の信頼の証なのだ。
ξ゚听)ξ「さて…と。明日の打ち合わせをしとかないとなぁ…」
そう思って、私は携帯を開いた。
一件の着信通知と留守番電話。
開かなければよかったのに。
- 18 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:12:08 ID:EHNAL7Lo0
【◆('A`)ゲームに集うは、切り札のギャング達のようです◇】
- 19 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:13:35 ID:EHNAL7Lo0
- ◇5:ラミー
4日目
―02:32:11―
( ^ω^)「…まぁこんなもんかおね」
たくさんの視線が僕に集まる。
テーブルの両サイド、そして僕の背中には一枚10万レスのチップが山のように積み重なっている。
昨日の21時から開店したこのカジノもついに白旗を上げた。
5時間半か…。もっと稼いでおくべきだったか。
( ^ω^)「これ…換えてくれお」
僕はオーナーを呼びだしカードを渡す。
僕の一言がオーナーにはとても恐ろしく聞こえたのだろうか。
目に涙を溜め、数人がかりでこの山の崩しにかかった。
明日からこの店には誰も入れなくなるだろう。最後に一杯ぐらい飲んでおくか…。
( ^ω^)「テキーラくれお。あとクラブサンド」
バーカウンターに行き、酒とサンドイッチを頼む。
こうして見られると僕はサンドイッチが大好きなように思われがちだがそれは違う。
ただサンドイッチしか売って無いだけで、別にサンドイッチが好きなわけじゃ…
- 20 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:16:14 ID:EHNAL7Lo0
- ( *^ω^)「お♪」
サンドイッチが来た。
ちょっと待ってくれ。これを食べてから話す。
酒はひとまず後。
( ^ω^)「お…これはなかなかうまいおね…」
表面を少しだけトーストに掛けた2枚のパンズの中からはみ出したチーズ、レタス、トマト、ベーコン。
パンズの熱で程良い具合に溶けたチーズがシャキシャキのレタスに流れ込む。
塩分の量も申し分ない。スパイスの効いたベーコン、と喧嘩する事無く香ばしさを楽しませてくれる。
それらに潤いを与えてくれたのはこの新鮮なスライストマト。口いっぱいに酸味と甘みが広がり喉元を癒してくれる。
定番の材料だが、具材それぞれがお互いを引き立て、抜群の旨みを生み出していた。
月並みの表現だが今まで食べたどのサンドイッチよりも旨い。
残念。非常に残念としか言いようがない。
今日いっぱいでこのカジノも廃業になるだろう。
このサンドイッチがもう食べられないとは…。
今日の反省…というよりもいつもの反省なのだが。食べる前にテーブルに着いてしまうことだ。
どうしても、あのトランプの摩擦音、裏表に変わるカード、テーブルを滑るチップ…
見ているだけでうずうずして堪らないのだ。
- 21 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:18:27 ID:EHNAL7Lo0
- ( ^ω^)「ごちそうさまだお〜」
ちょうど食べ終えたところでベストを着たスタッフがアタッシュケースを運んできた。
留め具を外し、中を開けると、隙間なくぎっしりと詰め込まれたレス札の束。
周りにいた客はその額に目を飛ばし、ある者は咥えた葉巻を背広に落とし、ある者は口に含んだ酒を盛大に噴き出した。
そのアタッシュケースが4…5…13個。
( ^ω^)「うんうん。問題無いおね。でもこれじゃ運べないから台車を頼むお」
スタッフはそそくさと裏に戻り、台車を取りに行った。
さてそろそろ出掛けよう。
( ^ω^)「………やはりVIPにいるのかお…?」
今、僕の関心は金にいっていない。
ある人物だ。
「Player」のメンバーであるアイツ。
( ^ω^)「…必ず見つけるお…必ず。」
- 22 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:20:01 ID:EHNAL7Lo0
- とその前に
( *^ω^)「サンドイッチもう一個頼むお」
―04:23:49―
VIP最大の高層ビル『VIPエンペラーヒルズ』。
高さ423m、地下34階、地上73階。
この国の様々な一流企業や中枢機関が事務所を置き、名のある著名人が住んでいる。
全てにおいて最大規模を誇る建築物だ。
その地下3階駐車場。ここで行われるのは、決して誇れるものではない裏世界の取引。
今日の仕事は小さいものだった。
VIP国の警察のトップである警視総監。
彼が不正にラウンジから受けた援助金をラウンジまで運べというものだった。
一応、物体であれば何でも引き受けるが…
ξ゚听)ξ「あ〜あ。やりがいの無い仕事」
運ぶが11桁に行くのならばもっと楽しめたのに…。
さすがに顧客の金を強奪するような真似はしない。私の名前に傷が付くから。
まぁ…報酬が9桁なので引き受ける。しぶしぶと。
- 24 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:21:27 ID:EHNAL7Lo0
- 相手が男だったらこんな場所で商談などしないのだが、今回は女だったので彼女の要望に答え、このビルの駐車場で行った。
商談は10分前に終わり、この駐車場には私だけが取り残された。
駐車場の(正式な)入口は既に閉まっているので、私はシャッターが開くまで車の中で待機することにした。
車の鍵穴に鍵を差し込み捻る。
ガコッという音がして運転席のドアのロックが解除される。
ξ゚听)ξ「………」
取っ手に手をかけた瞬間、不気味な感覚が私の体を這いずり回った。
純粋な悪意。その隙間から見え隠れするあからさまな敵意。
見られている。どこからかはわからないが、少なくとも私に用があるようだ。
ξ゚听)ξ「この感覚…間違いないわね」
招かざれる客の正体もはっきりとした。
獲物を狩り殺すような殺気。
「Player」のメンバーだ。
誰かなんて聞かなくてもわかる。昔ながらの気配。忘れるわけがない。
- 25 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:22:13 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「隠れてないで出てきたら?…ナルシスト君」
_
( ゚∀゚)「………まだ感覚は鈍ってはねぇみたいで安心したわ」
駐車場の柱の陰から一人の男のシルエットが見えた。私はゆっくり振り向く。
そこには今、一番顔面を引き潰してやりたい男が立っていた。
_
( ゚∀゚)「よう。3日ぶりだな」
ξ゚听)ξ「あんた…よく私の前に出てこれたわね」
5mの空間を挟んで対峙する。
この男を前にして一瞬でも気を抜く事は許されないだろう。
_
( ゚∀゚)「俺はイケメンだからな。女性に会うのに躊躇なんか無いね」
ξ゚听)ξ「…そう。どこまでも私の足を引っ張るつもりなのね」
徐々に。沸々と。私の怒りがこみ上げてくる。
何故この男は私の妨害ばかりするのだろう。
何故この男は私の前に現れたがるのだろう。
_
( ゚∀゚)「なんだよ。よくわかってるじゃん」
限りなく不愉快だ。
- 26 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:23:06 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「ジョルジュ…あんた私の部下を何人殺したと思ってるの?」
_
( ゚∀゚)「部下?誰だよそいつらwwちゃんとネームプレートぶら下げさせてたのか?」
ξ゚听)ξ「昨日連絡があったわ。サルベージに向かった私の船に漂流中の男が乗り込み、乗組員を全員殺害。」
一昨日の密輸。
私とした事が人生で初めて任務を遂行できなかった仕事。
モララーと計画した作戦も悉く妨害が入り、結局ロマネスクに横取りされた。
その妨害の中でも先陣を切ったのがこの男。ジョルジュ。
「Player」の中でも最も注目を好み、視線を愛する奴。
昨日、ミサイルによって海に沈むはずだったプルトニウム。
結局は海に沈むどころか飛行機さえ沈まなかったのだが、このプルトニウムの為に私はサルベージ隊をすぐに用意した。
飛行機がミサイルによって爆破することは無かったがサルベージ隊は落下地点へ駆けつけてしまった。
運悪く、落下したのはプルトニウムではなくジョルジュだった。
コイツがどういう経緯でここにいたのかは知らない。というかどうでもいい。
問題なのはコイツがサルベージ隊を全員殺し、船を奪ったということだ。
- 27 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:24:38 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「私の仲間を殺した罪は重いわよ。あなたはゲームの最終日まで生き残れないと思いなさい」
_
( ゚∀゚)「おーおー言うねぇ。自分の状況をわかった上で啖呵をきれる女。嫌いじゃないぜ」
ジョルジュは右手を上にあげる。
その手には黒く光ったリボルバーが握られていた。
怒りの点滴は間隔を速め、どんどん膨らんでいく。
そんな小さな銃で私よりも優位に立ってると思いこんでいる事が。
ξ゚听)ξ「いい?私は必ず『Player』の頂点に立つ。そして…お前を殺す」
_
( ゚∀゚)「残念。ボスになるのは俺だ。あんたは俺専用の娼婦な」
ξ゚听)ξ「いいえ。ボスになるのは私よ」
_
( ゚∀゚)「俺だ」
ξ゚听)ξ「私よ」
- 30 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:26:06 ID:EHNAL7Lo0
- _
( ゚∀゚)「……じきに判る。誰が親父の後を継げるのか」
ξ゚听)ξ「血も繋がっていないのに気安く親父なんて言うのやめてよ。虫唾が走る」
_
( ゚∀゚)「お前も繋がって無いだろ。血なんか関係ねぇ。モナーさんは俺の親父だ」
この男はそれを言いに来たのだろうか。
本当に男ってめんどくさい生き物。
ξ゚听)ξ「言いたいのはそれだけ?そろそろ帰ってもらってもいいかしら」
_
( ゚∀゚)「俺が聞きたいのはあの後だよ」
ξ゚听)ξ「…?あの後?」
_
( ゚∀゚)「プルトニウムはどこへ行った?」
ξ゚听)ξ「…さぁ?知らないわ。私は」
- 31 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:27:07 ID:EHNAL7Lo0
- _
( ゚∀゚)「……………」
ξ゚听)ξ「…………」
長い沈黙が続く。相変わらずジョルジュは私に向かって銃を構えたままだ。
コイツの考えている事が読めない。いまさらプルトニウムに何の興味があるのだろうか。
_
( ゚∀゚)「…そうか。わかった」
そう言うとジョルジュはリボルバーを下した。
ξ゚听)ξ「何?まだ過去の仕事引きずってんの?馬鹿じゃない?」
_
( ゚∀゚)「あんたには一生わからねーよ。俺の事なんて」
ジョルジュはやれやれと言った態度で、後ろを振り向く。
- 32 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:28:18 ID:EHNAL7Lo0
- ξ゚听)ξ「…次あったら、必ずあんたを殺すから」
_
( ゚∀゚)「意外と早い再会になりそうだな」
ξ゚听)ξ「そうね。あんたが次狙ってるターゲットもわかったし」
_
( ゚∀゚)「いつでも待ってるぜww女は大歓迎だwww」
ジョルジュは高らかに笑いながら去って行った。
静かな駐車場での出会いは、ただ私の怒りのボルテージを上げただけにすぎなかった。
私は握っていた車の把手に渾身の力を入れる。
ミシミシと限界の音をたて把手が揺れる。
ξ゚听)ξ「ふざけやがって…」
把手は折れ、地面に転がった。
指先から感情と血液が流れていく。
潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す
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- 33 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:29:16 ID:EHNAL7Lo0
- ―06:06:03―
ネクタイを結びながら60インチの液晶画面に朝のニュース番組を見る。
どこの局も熱心に報道しているのは昨日のビル占拠事件だ。
ビルの爆破も、サイバーテロも全て連中の仕業にした。全国指名手配中のテロップが流れる。
マスコミに捏造、隠蔽を頼んだ。もちろん札束をちらつかせて。
じきに国際的になり、海外逃亡もままならなくなるだろう。
そこに1本の電話が入る。
ネクタイを締め終え、携帯を持つ。
相手はVIP軍情報伝達部。
( ・∀・)「そうか…逃がしたか」
携帯から聞こえる謝罪の声。
昨日の獲物は悪運強く逃げ切ったようだ。
まぁ当たり前だろう。「Player」があれごときでやすやすと捕まるとは思えない。
どのような魔法を使ったかわからないが、逃げる事だけは評価してやる。
だがこれで諦めたわけではない。
ゆっくりと追い詰め、そして着実に狩る。
- 34 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:30:05 ID:EHNAL7Lo0
- 奴らも長い間身を隠す事などできるわけがないだろう。
今頃、寒空の下、パソコンを持って街を彷徨っているのだと思うと、笑みがこぼれうまくコーヒーを啜る事が出来なくなる。
指名手配を張った。これであいつらの行動範囲も限られてくる。
( ・∀・)「さてと…行くかな」
通話を切り、背広を羽織る。
あくまでも流石兄弟…「Player」の件は序にすぎない。
俺は俺で金を稼いでいかなければならない。
いつまでもハエに構っていたら俺以外の連中にボスの座を奪われてしまうだろう。
そんなことはさせない。
今日のノルマは20億レス。
あいつ等の3回分の報酬だ。到底及びもしない。
俺はそれを一晩で手に入れる事が出来る。群を抜いて勝ち上がれる。
プルトニウムなどほんのボーナスにしか過ぎないのだ。
- 35 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:32:03 ID:EHNAL7Lo0
- ―11:46:13―
真昼間の太陽光が窓ガラス、白いカーテンを越えて私の背中に当たる。
今日は良い散歩日和だ。もちろん外に出る予定など無いが。
相変わらずコイツは外に出たがっているが、コイツの事だ。どこかで迷子になるに違いない。
私は真空パックを開き、中に入ったドッグフードを皿に盛り付ける。
いつもならこのザラザラと零れていく音を目掛けて寄ってくるのだが、今日は違った。
彼は一目散に駆けて行く。画面と面を向かっている男の元へ。
(´<_` )「ふぅ…これで終わりっと……………ん?」
▼・ェ・▼ ヘッ、ヘッ、ヘッ、
弟者の膝元へ目掛けて飛びつく。
(´<_`; )「うぉ!!なんだコイツは!?」
- 36 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:32:51 ID:EHNAL7Lo0
- 弟者は驚き、椅子をひっくり返して倒れた。
未だに何が襲ったのか理解していないようだ。
川 ゚ -゚)「すまない。久しぶりの来客に興奮してるようだ」
( ´_ゝ`)「おっ…そいつはお前のモルモットか?」
川 ゚ -゚)「失礼だな。私の愛犬、ビーグルだ。どうだ?可愛いだろ」
( ´_ゝ`)「なんだ。バター犬の方でしたか」
ビーグルは弟者の体を離れ、私の足元まで元気に駆け寄って来た。
(´<_`; )「あ〜びっくりした…十二指腸に悪いからやめてくれ」
川 ゚ -゚)「ここをどこだと思ってるんだ?いつでも治すぞ」
(´<_`; )「勘弁してくれ。本当にお前は金の亡者だよな」
川* ゚ -゚)「そういうな。照れる」
▼・ェ・▼ ヘッ、ヘッ、ヘッ、
- 37 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:34:40 ID:EHNAL7Lo0
(´<_`; )「あぁ、そうだ兄者。データのチェック終わったぞ。全部無事だ」
思い出したように、弟者は兄者に声をかけた。
( ´_ゝ`)「おお、御苦労。じゃあさっそく取り掛かるか」
(´<_`; )「ああ。じゃあ俺は休憩がてら、トイレに行ってくるよ。どこ?」
川 ゚ -゚)「奥行って右」
そう言うと弟者は椅子を起こしてトイレに向かい、兄者はコーヒーを飲み干した。
ビーグルもいつの間にか自分の餌に喰らいついた。
部屋に兄者のキーボードとマウスを押す音と、ビーグルの乱雑な食事中の音が混ざった。
私はその姿をソファーで拝見することにした。
( ´_ゝ`)「そうだ。クー」
兄者の口が開く。手は動いたままだ。
- 38 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:36:16 ID:EHNAL7Lo0
- ( ´_ゝ`)「お前…『ゲーム』に参加していないって本当か?」
川 ゚ -゚)「…厳密にいえば参加はしている…が、そこまで熱心に稼ぐつもりは無い」
( ´_ゝ`)「そうか。なら、一つ聞くが」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
カフェラテを口に流す。
甘苦いコクが下の上を滑る。
( ´_ゝ`)「お前は、誰が次のボスになると思う?」
その質問が出るとは意外だった。
私の知っている兄者は、そんな根拠もない推測を語る男ではなかったからだ。
時間とはたまに面白い変化を作るものだな。
- 39 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:37:26 ID:EHNAL7Lo0
- 川 ゚ -゚)「そうだな…やはりブーンじゃないのか?」
( ´_ゝ`)「…理由は?」
川 ゚ -゚)「あれは人間じゃない。あの力は神の力とでもいうべきだろう」
( ´_ゝ`)「…『100%の運』か?…根拠としては薄いな」
川 ゚ -゚)「運というよりは…ギャンブルで負けない力と言った方が正しいだろう。昔は転んでよく私の所に泣きついたものだ」
( ´_ゝ`)「それ20年以上も前の話じゃね?」
20年前―。私達はある孤児院にいた。
「Player」は、その孤児院の中でも特に秀でた子供を集め、天才として育てる。
育て上げたのはもちろんモナーさんだ。
孤児院や「Player」に入った期間は人それぞれだが、最終的にはこのメンバーで第1期となっている。
今でも、新人をモナーさんが鍛え上げていたそうだが、私達ほど出来は良くないらしい。
- 40 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:38:06 ID:EHNAL7Lo0
- ( ´_ゝ`)「確かにアイツは金の事なら最強だ…。だがアイツの能力は完全じゃないだろう?」
兄者は一向に私の顔を見ようとはしない。
まぁその方がお互い会話もしやすいだろう。
川 ゚ -゚)「そうか…君は知らないだろうな」
( ´_ゝ`)「?何を…」
川 ゚ -゚)「アイツが孤児院を抜けてから、『Player』に入るまでの5年間。何をやっていたと思う?」
( ´_ゝ`)「何って……………………………」
そこで兄者の指が止まった。
そういえば。とでも言いたそうな背中をしている。
川 ゚ -゚)「ブーンがやっていたのは私達と違って訓練ではない。検査だ。」
ブーンは5年の間ずっと研究所に隔離されていた。
その検査に私は補佐として立ち会ったが、その内容はあまりにも人間にするものとは思えないものだった。
- 41 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:39:28 ID:EHNAL7Lo0
- ―今日は300種類の錠剤を用意した。この中の1錠は今、君の中に入れたウイルスを完治するための特効薬。残りは劇薬だ。―
―この部屋にある100個のボタンを順番通りに押せ。順番は教えられないがもし1回でも押し間違えると、その部屋に毒ガスが流れる―
―鉄柵を隔てて君の向かい側にいるその男が時限爆弾を何も見ないで解体できるか賭けよう―
―目隠しだが、25×25マスの床のパネルのうち一つだけを選んでくれ。1枚だけ落ちてくる天井から回避できる場所がある―
―今日のギャンブルだが…―
川 ゚ -゚)「ブーンは連日のように検査を受けた。それも死と隣り合わせになるような」
( ;´_ゝ`)「嘘だろ…」
川 ゚ -゚)「それが5年も続いた。しかし、ブーンは今でも生きている。アイツは賭けで負けることは無い」
当時、その現場を見た時は、さすがの私も驚きを隠せなかった。
あれが奇跡の力。運などと比較してはならない。
- 43 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:41:17 ID:EHNAL7Lo0
- 川 ゚ -゚)「そんなことよりも、私はお前らの方が知りたい。」
( ´_ゝ`)「ん?セフレならまだ枠が余っているぞ」
川 ゚ -゚)「最後に会ったのは1年前だったな。あれから何かあったか?」
( ´_ゝ`)「1年前…?ああモナーさんのペースメーカーの点検した時か」
しぃが残したメッセージを私が潰すわけにはいかない。
必ず彼ら兄弟が隠している事を暴かなければ。
しぃが彼らを連れてきた理由は簡単だ。
私と接触させることで根拠を生み出そうとさせたのだ。
つまり私が彼らを探る事を前提の上で、ここまで連れてきた。
私の性格上、曖昧な疑問は追及できるところまで追求する。
しぃはそこまで全部想定していたようだ。
話を聞く限り、モララーに兄弟のアジトを流したのも彼女だろう。
あの引きこもり達を外に出す方法は一つしかない。
エマージェンシーだ。
- 44 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:42:19 ID:EHNAL7Lo0
- 彼らを私と接触させてしまえばあとは彼女の思い通りだ。
私と接触させた事で何も変化が無かった場合、しぃは私に疑いの目を向ける。
私が流石兄弟が怪しいという根拠を見つければ彼女は二人を探ればいい。
全ては彼女の掌で動かされたにすぎなかった。
これから私は必死で証拠探しに徹しなければならない。
まったく…面倒な仕事を押しつけてくれたもんだよ。
( ´_ゝ`)「最近はもっぱら働きっぱなしだよ。弟の元でな」
川 ゚ -゚)「なんだ。お前が部下なのか」
( ´_ゝ`)「やっぱ行動派の弟を持つと疲れる。俺の意見も言えやしない」
川 ゚ -゚)「そうか、後で伝えておこう」
( ´_ゝ`)「勘弁してくれよ…クーお前もわかるだろ?兄弟の辛さを」
川 ゚ -゚)「双子の苦労なんて私に分かるわけ無いだろう。私に同情を求めるな」
- 45 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:44:19 ID:EHNAL7Lo0
- (´<_` )「ふぅ…スッキリした」
( ´_ゝ`)「随分と長かったな。茶色いほうか?」
(´<_` )「白いほうだ」
川 ゚ -゚)「おい。ここは私の家だぞ」
(´<_` )「そういえば、ロマネスクとしぃの姿が見えないが…」
川 ゚ -゚)「二人は早朝に帰ったよ。君らと違って帰る家があるからな」
(´<_` )「あ…そうか。そういえばそうだな」
( ´_ゝ`)「じゃあ他に行くとこも無いし、俺らはここでしばらく暮らすか」
川 ゚ -゚)「家賃は一人一泊につき2000万レス」
(´<_` )
( ´_ゝ`)
▼・ェ・▼ ヘッ、ヘッ、ヘッ、
- 46 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:44:59 ID:EHNAL7Lo0
- ―14:29:54―
(*゚∀゚)「おししょう!おししょう!今の見た!?」
爪'ー`)「ああ、良い装置だ。よく考えたな」
(*゚∀゚)「だろ!?だろ!?つー1人で考えたんだぜ!!」
爪;'ー`)「すごいじゃないか。これからももっと工夫を重ねるんだぞ」
(*゚∀゚)「まかせな!もっとすげーの考えてくるぜ!もちろんつー1人で!」
ふぅ…。人の褒め方がさっぱりわからない。
モナーさんはいつもこんな事をやっていたのかと思うと、尊敬の念を抱かずにはいられない。
私にはやはりこの仕事は勤まらないようだ。
私は今新しい人材の発掘を手がけている。
「Player」に入るためには、あの孤児院出身で才能のある子供をピックアップ。
そして長い年月の間、専門の訓練、教育を施し、晴れて「Player」のメンバーだ。
- 47 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:47:45 ID:EHNAL7Lo0
- 第1期が結成されてから10年がたった。
次の世代もそろそろ実践の場に出すべきだ。
おそらくこの「ゲーム」が終えた後、第2期の10名は「Player」に所属するだろう。
爪'ー`)「んん…誰がボスになるんだろうか…」
2期を入れるかはボスの采配に委ねられる。
新参者を好まない者がボスになってしまえば、彼らの努力は全てが無駄になってしまう。
できればそれは避けたいが…。
私はつー専用室を出る。
この訓練場は全面禁煙となっている為、外まで足を運ばなければならない。
私が若い頃はモナーさんによく注意されたものだ。
認証番号を押し、自動ドアが開く。
強いビル風が顔に当たる。
咥えた煙草に火をつける為に頭を下げ手でジッポを覆う。
火が付いた事を確認し、顔を上げた。
すると、目の前に私を見つめる人間がいた。
( ФωФ)
人間だが猫目だった。
- 48 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:48:31 ID:EHNAL7Lo0
- すらっとしたスーツを纏い、パーマネントの髪が風で靡く。
その男は私の同期の男だ。
爪'ー`)y-「ロマネスクじゃないか。どうしたんだい?」
( ФωФ)「…………」
神妙な顔つき。こりゃ只事じゃないようだ。
まぁ「ゲーム」中にここに来たんだ。それなりの訳があるに違いない。
爪'ー`)y-「とりあえずここは寒い。中に入ろうか」
私はロマネスクの肩を掴む。
しかしその手は強い力で振り払われてしまった。
( ФωФ)「…フォックス。貴様…」
振り払われた腕はまだ掴まれていた。
その力強い手を見た時に、もうあのころに戻れない、と強く感じた。
(#ФωФ)「貴様がモナーさんを殺したのか?」
- 49 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:49:35 ID:EHNAL7Lo0
- 爪'ー`)y-「………」
激昂する男を前にして煙草を握っているのは失礼だろう。
私は足元に吸いかけのニコチンを捨て、革靴で踏み潰した。
ついに…ついにそこまで辿り着いてしまったか。
言葉から察するに、彼は誰かから伝えられたのだろう。
その誰だかもだいたい予想はつく。
爪'ー`)「…怪盗がこんな昼間っから騒ぐなよ。」
私は、掴んだロマネスクの掌を剥がす。
そのまま回れ右をして、自動ドアの方へ向いた。
爪'ー`)「ロマネスク…真実を話そう。中に入ってくれ」
( ФωФ)「……わかった」
別に隠すつもりは無かった。
ただこの前の夕食会で伝えるのはふさわしくなかったんだ。
- 51 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:51:08 ID:EHNAL7Lo0
- ―20:00:10―
8時はこの街のネオンが最も活発になる時間だ。
色とりどりの光が、この腐りきった街を洗う。
この街が腐った原因は分かっている。
向かいのホーム、路地裏の窓、
交差点でも、夢の中でも、
急行待ちの踏切辺り…
どこを見てもカップルカップルカップルカップルカップル…
(#'A`)「誰か俺に依頼しろおおぉ…!!」
俺は両手を前に差し出し、少しだけ指を曲げ、すれ違うカップルに向けて呪いをかける。
もちろんカップルは汚物を見るかのような目でこっちを見てくる。
カップルのいちゃつきデーはクリスマスだけじゃねーのかよ。
- 52 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:51:50 ID:EHNAL7Lo0
('A`)「それにしても…遅いな」
こんなカップルの多い駅前にいるのも、どうってことの無い理由、待ち合わせだ。
だが…、ただの待ち合わせじゃない。
待ち合わせの相手は女だぞ。女。
さすがの俺でも緊張で手汗がやばい。
ポケットに突っこんだ手から汗が染み出し、ポケットからザバザバと流れでてきた。
('A`*)「し…仕事だからな!甘い期待なんてしちゃダメd…」
「お待たせしました」
独り言を呟いている間に不意に後ろから声が聞こえた。
その声を聞いて俺は現実に戻った。
('、`*川「遅くなって申し訳ありません」
- 53 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:52:55 ID:EHNAL7Lo0
- 「VIPエンペラーヒルズ」の最上階。
ここにあるテナントは一つ。フレンチレストランだ。
全世界のVIPなお方が食事会をする時、この店が開かれる。
世界で指折りの高級レストラン。
味はもちろん、そこから見える夜景、店の雰囲気。
全てをとってもVIPの名に相応しい食事ができる。
駅から車で20分。なぜか俺はそこにいた。
('A`)「…で?どういうことだ。ターゲットを殺し損ねた事は伝えたが」
('、`*川「ええ。その旨は聞かせてもらいました」
この女はペニサス。
ギコ殺しの依頼人だ。
- 54 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:53:37 ID:EHNAL7Lo0
- 真っ白なドレス。胸元に並べられた宝石がライトに照らされて輝く。
スタイルも良く、控えめな化粧がより美しさを引き立てる。
正直に言う。勃起しそう。
ソムリエがグラスにビンテージもののワインを注ぐ。
ここの会計はこの女持ちらしいが…払えるのか?
('、`*川「しかし、ギコは現在重体…なのでしょう?」
('A`*)
('A`;)「! あ、ああ。しばらくは満足に動けないだろう。大丈夫だ」
いかん。谷間に目がいってた。
('、`*川「それにより、依頼金も無し。これがあなたがこの前電話で申した条件でしたよね?」
('A`)「そうだよ。これ以上何か文句でもあるのか?」
この女…何をたくらんでやがる?
('、`*川「その件は終了しました。私が呼び出したのは別の件です」
- 55 : ◆4972gaB/9o:2010/04/02(金) 23:56:12 ID:EHNAL7Lo0
- ('、`*川「無効になった依頼金。これを使って再度、依頼をお願いしたいのですが」
('A`;)「…なに?」
依頼?
失敗を犯した男に依頼だと…?
('、`*川「不可能でしょうか?」
('A`)「いや…大丈夫だが、ギコは無理だ。他のターゲットなら構わない」
('、`*川「ええ。安心しました。ターゲットはギコではありません」
('、`*川「この国…VIPの大統領であるモララーです」
◇5:ラミー 〜END〜 To Be Continued―
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