- 3
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 00:16:13.39 ID:g6sXzJeC0
- 川 ゚ -゚)「時に、しぃ。」
(*゚ー゚)「…なに?そんな改まった顔して」
川 ゚ -゚)「もしもの話だが…」
(*゚ー゚)「?」
川 ゚ -゚)「もし、モナーさんは殺されたんだとしたら?」
- 4
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 00:17:21.56 ID:g6sXzJeC0
【◆( ´_ゝ`)ゲームに集うは、切り札のギャング達のようです◇】
- 5
名前:トリ忘れすまぬ
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
00:19:26.20 ID:g6sXzJeC0
◆4:ナポレオン 前編
3日目
―07:21:01―
( ´_ゝ`)「なあ」
指先をカタカタと動かしながら呟く。
キーボードから左手だけを離し、マグカップに手を伸ばすと、思ったよりもその取手は軽かった。
そうだ。コーヒーはもう飲み干したんだったな。
(´<_` )「なんだ?」
背後から返事の声がした。よかった。まだ生きていたか。
そういえばこの声を聴くのは一日ぶりだな。
( ´_ゝ`)「そろそろ…兵糧が尽きそうだ。買い出しへ行かないと」
実を言えばもうきれている。
大きなバウムクーヘンを真っ二つに切ったような2つのデスクの中に、俺達は二泊三日閉じ籠っていた。
この部屋に戻る前に買い占めておいた某乾燥栄養食品も、気付けば一袋のチョコレート味だけだ。
(´<_` )「すまない。今は手が離せないんだ。兄者が行ってきてくれ。」
俺が言いたかった言葉をコイツはごく自然に言った。
- 8
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:20:51.76 ID:g6sXzJeC0
- ( ´_ゝ`)「そうか…俺もだ。」
ここの所、外に出るのがとても億劫になっていた。
先日も、モナーさんの葬式が無ければ俺達は、2ヶ月と12日の世間交信遮断記録をマークしていただろう。
今も、喪服から着替えることなく作業に向かい、風呂に入らず、掃除もせず。
気付けば部屋は濁りに濁り、足元にはカップ麺やスナック菓子、弁当、サンドイッチのゴミ。
歩く獣道はあるが、腐った汚物を踏まないように注意が必要だ。
何処からかやって来たショウジョウバエやゴキブリが楽園を求めてこの異空間に安住し、ディスプレイの周りを飛び回っている。
(´<_` )「まさか…兄者は俺に買いに行けと言ってるのか?」
( ´_ゝ`)「そう解釈してくれると、水不足の村人も大喜びするだろう。」
(´<_` )「おいおい…冗談だろ?こっちは手がもう2本必要なくらいなんだが」
( ´_ゝ`)「俺はあと3本は必要だな。溜まりすぎて仕方がない」
(´<_` )「そうか。床でしてろ」
( ´_ゝ`)「あん♪もう意地悪☆」
再び沈黙。
キーが跳ねる音だけは途絶えること無く続き、虚しさだけが残った。
- 9
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:22:33.98 ID:g6sXzJeC0
- ( ´_ゝ`)「どうしても駄目か?」
ここで初めて俺は手を止めた。
やはり人にものを頼むにはそれなりの礼儀が必要だろう。
後ろを振り向き弟の背を見る。
(´<_` )「じゃあ一つだけ問題を出そう」
それでも弟者は指の運動を止めなかった。
羽虫が飛び交うその背中から質問に沿わない答えが返ってきた。
(´<_` )「俺と兄者。どちらが席を立たなかったら利益がでるのか。」
( ´_ゝ`)「それをマジで言ってるなら俺は泣く」
(´<_` )「大マジだ。どちらが有益か。」
そんなの俺の口から出さなくても分かっている。弟者だ。
- 12
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:24:27.85 ID:g6sXzJeC0
- 弟者は俺よりも何倍も優れている。
運動、教養…このハッキング技術もだ。
こうして二人揃って【ポケットテン】を名乗れるのも弟が俺を誘ってくれたおかげ。
弟についていく兄。何とも情けない。
正直、俺は「Player」の中で最も凡人に近い男だ。
( ´_ゝ`)「やれやれ…分かった。行ってくるよ」
(´<_` )「ああ。頼んだよ兄者。ついでに掃除機も買ってきてくれるとありがたい」
…そもそも俺は凡人なのかもしれない。
二日ぶりにこのドアを開ける。ポケットにはクレジットカードだけを入れ靴を履く。
この雑居ビルは俺達が買った牙城だ。一見すればただのテナントの無い廃ビルだが、中には様々な侵入者対策が施されている。
俺達の住んでいる部屋からビルの入口まで戻るには俺達しか知らないルートがある。
( ´_ゝ`)「……あ、煙草も無いのか…」
カードを入れたポケットをまさぐり、初めてその事実に気付いた。買うものが増えてしまったようだ。
- 13
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:25:52.18 ID:g6sXzJeC0
- ―09:05:47―
数十ヶ所のコンビニをハシゴしてビルに戻る。
買い占めた食料だけで2tトラック1台まるまる埋まった。
掃除機はその辺のゴミ捨て場にあった使えそうな奴を持ってきた。
これで弟も文句はないだろう。
買ったばかりの煙草に火をつける。
( ´_ゝ`)「さて…これだけの量を上にあげるのは流石に俺一人じゃ無理だな…」
ひとまず弟者を呼ぼう。
ポストに入った山のような広告を抜き取り、ビルの中へ入る。
裏の隠し階段を使い、最上階まで登った。その時だった。
手に取った広告を見ながら登っていると1枚の手紙に目が入る。
( ´_ゝ`)「おっこいつは…」
その手紙を開けようとした、その瞬間だった。
俺らの部屋のドアの前に、一人の女性が立っているのが見えた。
スタイルが良く、小奇麗な洋服纏った女の年齢は20代前半だろうと伺える。
幸か不幸か、こっちの存在には気付いていないようだ。
その時俺はぶちギレそうになったね。
弟が俺に内緒でデリヘルを呼んだと思ったから。
- 14
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:28:42.55 ID:g6sXzJeC0
- 女は中に入ろうとはせず、ただドアの前で立ち尽くしていた。
まぁそうだろう。そのドアにインターホンは無い。監視カメラはあるが。
しかし変だ。弟者が呼んだのならばすぐに入るはずだが。
だが弟は一向に現れない。ドアの鍵をあける気配すらない。
このままでは、俺もいたたまれない。
素直に入れば、しばらくは弟の処理を見て見ぬふりをすることもできたが。
声をかけてあげねばいつまでたっても進展のないままだ。
( ´_ゝ`)「あの…入らないんですか?」
敬語を使うかどうか迷ったが、ひとまずはこれで。
女が振り返ってこっちを見る。
顔のラインがきれいだったので美人だとわかる。最近のデリヘルはここまでレベルが高いのか。
顔が小さく、靡く髪。それはまるでこの間のしぃを思い出させ…
(*゚ー゚)「あ、いた」
( ´_ゝ`)「チェンジ」
- 17
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:30:58.26 ID:g6sXzJeC0
- 2日目
―19:37:00―
(;*゚ー゚)「こ、殺された…?」
川 ゚ -゚)「ああ。モナーさんは殺されたかもしれないという可能性だ」
クーは何を突然言っているのだろう。
モナーさんが…殺された?
(;*゚ー゚)「何をそんな事をアホな事を言ってるの?根拠は?」
川 ゚ -゚)「明確な証拠が揃っているわけじゃないから根拠など無い。…ただ」
(;*゚ー゚)「?」
川 ゚ -゚)「私は医者だ。事実を隠しはするが、誤った判断はしない。必ず」
医者だから。たったそれだけの事が確かな説得力を感じさせる。
しかし、その発言はあまりにも重く、俄かには信じ難い。
- 19
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:32:34.26 ID:g6sXzJeC0
- (;*゚ー゚)「そ、そんなことあるわけないじゃない。だってフォックスさんが心筋梗塞だって…」
川 ゚ -゚)「例えば、芸能人や政治家など表に立つ人間が自殺などした場合、表向きに公開される死因がこれだ」
(;*゚ー゚)「…!!」
川 ゚ -゚)「私は裏で生きる医者だ。その手の業界にも詳しい」
(;*゚ー゚)「まさか…フォックスさんが嘘をついていると言いたいの?」
川 ゚ -゚)「可能性はある。」
フォックスさんが?それこそあり得ない。
私達の恩師をずっとそばでサポートしてきたあの人が私達に嘘など…
(;*゚ー゚)「ウソでしょ?信じられない」
川 ゚ -゚)「今はそれでいい。君はただわたしの言葉もフォックスさんも疑えばいい。」
- 25
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:36:13.08 ID:g6sXzJeC0
- そこでクーは言葉を止めた。
けれど、私にはその言葉に続きがある様な気がした。
(;*゚ー゚)「クー。なんでこの事を私に話したの?」
当然の疑問だ。話の流れから察するに、クーはまだ誰にも話していないだろう。
川 ゚ -゚)「わからない。ただ君は…」
川 ゚ -゚)「しぃは真相を必ず追いかけるだろうと思ったからだ」
(;*゚ー゚)「……」
これは医者でもなく、裏に生きた人間の言葉でもない。
ただ私達が共に過ごした、遠い昔の日々からの信頼。
あの孤児院での日々の事だ。
- 30
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:38:48.11 ID:g6sXzJeC0
- 私は子供の頃クーが嫌いだった。
私は子供の頃から周りの顔色を窺い、人間を観察し、心を読み、周囲の輪に溶け込んだ。
そのうち人の考えている事がわかるようになり、それに合わせる為に自分の感情を押し殺してきた。
クーは私とは真反対の人間だった。
私より3歳も年上の彼女は、毎日読書をするか、勉強をしているかどっちかの毎日を過ごしていた。
私はそれが気に食わなかった。人と接しようとは決してせず、ただ孤高に自分のしたい事をする。
それは私にとって最もやりかったものであり、最も難しいものであった。
私達が孤児院で生活している間、クーはそのことで何度もいじめを受けていた。
内心ざまあみろと思ってた。
それでも彼女は自分の行動を変える事は無かった。
憎い憎い。憎たらしい。
それは真っ黒に染まった嫉妬の塊。
幼い私にはそれがなんなのか気付く事が出来なかった。
あれから10年以上の月日が流れた。
今では彼女の考えも理解しつつある。
クーは私をそこまで毛嫌いしているわけではないだろう。
この女からの情報を私は信じてもいいのだろうか。
- 32
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:40:26.84 ID:g6sXzJeC0
- 川 ゚ -゚)「もし…この真相に辿り着きたいのならば…流石兄弟の所へ行ってみるといい。」
(;*゚ー゚)「…なんでよ」
川 ゚ -゚)「彼らはモナーさんの心臓のペースメーカーを管理していた。」
(;*゚ー゚)「!!じ、じゃあモナーさんを殺したのは…」
川 ゚ -゚)「まだわからない。二人が犯人かもしれないし…片方だけかもしれない」
川 ゚ -゚)「もしかしたら二人は関係なく、この11人のうち誰かもしれない」
(*゚ー゚)「…………流石のとこへ行けば何かわかるのかもしれないのね?」
私は振り向きドアに手を当てる。
川 ゚ -゚)「ああ。少なくとも何も手柄がないなんてことは無いだろう」
(*゚ー゚)「…ありがとう。私のゲームの時間を潰させてくれて」
川 ゚ -゚)「ゲームの長時間の使用は視力によくない。適度な休憩を入れたほうがいいだろう」
その言葉を聞き終える前に私はベンツに戻った。
真っ暗になった夜。
私は傾いた自分の心に何か丸いものが転がっていくのを感じた。
それは金か、愛か。はたまた別のものか。
- 37
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:42:13.18 ID:g6sXzJeC0
- 3日目
―09:19:26-
(´<_` )「確かに俺は掃除機を頼んだが……そいつはバキュームフェラでもしてくれるのか?」
(;*゚ー゚)「うわっ臭っ!何このゴミ屋敷!ウソでしょ?ここで生活してたの?」
( ´_ゝ`)「こいつは銀行残高しか吸い込まないおんぼろだ。すぐクーリング・オフしてこよう」
(;*゚ー゚)「ねぇ、この白い綿毛見たいの何なの?うねうね動いてるんだけど」
(´<_` )「わー大怪獣しぃドラだーホロコーストが始まるぞー」
(;*゚ー゚)「虫がっ…!!ちょっ…!!ああもう、うっとうしいな!!」
( ´_ゝ`)「わーわー。にげろー」
(;*゚ー゚)「死ね!」
- 41
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:45:00.99 ID:g6sXzJeC0
- (´<_` )「それにしても兄者、どうしてコイツを入れたんだ?」
弟者はもう一度椅子に座り画面に向かう。
( ´_ゝ`)「なぜって…ドアの前にいたら入れるしかないだろ?」
(´<_` )「それだよ」
弟者はまた体を戻してこっちを向いた。
俺と肩を組み、縮こもってひそひそと会話をする。
(´<_` )「ここまで来るには様々な対侵入者トラップを通過しないといけないはずだ。だが、監視カメラを見る限り、誰かが通過した形跡はない」
( ´_ゝ`)「まさか…裏口か?」
(´<_` )「そうだ。しかし裏口から入る為にはまず場所を把握してないと決して通れるような場所ではないし、その入り口には27桁の暗証番号が必要だ」
( ´_ゝ`)「情報が漏れたとは考えにくいな…。ってか全部データなんか取ってないしな。」
(*゚ー゚)「あ〜それなら簡単。わかりやすいから」
明らかに聞こえるはずのない距離にいるしぃがいきなり会話に参加してきた。
なんだその地獄耳は。
- 42
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:47:07.41 ID:g6sXzJeC0
- (*゚ー゚)「君達二人の考えているような事は全部お見通しなのよ。通路の位置も、暗証番号の数字も」
換気扇を求めて一心不乱にうろちょろしている人間からとんでも発言が聞こえてきた。
俺達が造った牙城とはいったいなんだったのか
(*゚ー゚)「二人のやりそうなことだよ。まず最初に暗証番号では使われる事のないアスタリスク。これを14回連続。」
(´<_` )
(*゚ー゚)「そこで3、7、7、2、と入力してまたアスタリスクこれを4回」
( ´_ゝ`)
(*゚ー゚)「最後に8、4と入力したあt」
(´<_` )「もうやめて」
- 45
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:48:26.66 ID:g6sXzJeC0
- ( ´_ゝ`)「というか、お前は何しに来た。一応俺ら敵なんだけど」
答案確認をあしらうように、忘れかけた質問を投げかける。
しぃの作業が止まり、こちらに顔を向ける。
(*゚ー゚)「……」
その瞳はまっすぐ俺らの眼に向けられていた。
そこに映し出される感情は覚悟。そして時々見えるのは怒りや、迷いか。
(*゚ー゚)「…あなた達に聞きたい事があるの」
質問…さてどうしようか。
彼女は「Player」随一の悪女。その女が情報提供を望んでいる。
(´<_` )「兄者どうする?」
( ´_ゝ`)「とりあえず…質問の内容だよな」
そこはそうだろう…聞いてみるだけなんてよくある話で。
情報によっては高く値を付けることだってできる。
(´<_` )「…だ、そうだ。」
弟者は再びしぃがいる向きへ首を戻し、しぃにアクションを求める。
(*゚ー゚)「あなた達は…【ポケットテン】は…」
- 50
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:50:45.01 ID:g6sXzJeC0
- その瞬間、室内にけたたましい程のサイレンが鳴った。
とっさの出来事にモーションが1テンポ遅れる。
(´<_`;)「まずい、侵入者だ!」
弟者が叫ぶ。
俺は慌ててモニターを見ると、そこにはヘルメットを被った集団がぞろぞろとビル内に入ってきた。
よく見ると全員銃らしき物体を手にしている。
(;´_ゝ`)「なんだ?この量は!?」
おかしい。
これは警察ではない。明らかに武装が違う。
まるで、戦時中に首謀者のいる建築物に乗り込むかのような。
(;*゚ー゚)「ま、まさかこいつら…軍!?」
軍だって?まさかこの間のハッキングがバレたのか?
いやいや、ハッキングはバレてもここはバレないでしょう。足跡なんか残してないし。
- 53
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:52:00.92 ID:g6sXzJeC0
- ―09:34:12―
足りない…このくらいじゃ足りないんだ。
奴らには死よりも重い罪を裁きを。しかるべき報いを。
(#・∀・)「このままで済むと思うなよ…双子ぉ…!」
俺の計画はことごとく「Player」の馬鹿どもに潰された。
たった1回の密輸で何人の邪魔が入った?
もう我慢の限界だ。あいつらを全員潰す。
今まで共に暮らしていたのが信じられないほどだ。
ここで俺は引き下がる男じゃない。
俺以外の全ての「Player」を殺す。
あのナルシストも、ビッチも、葬儀屋も、コソ泥も、ギャンブル中毒も全部だ。
俺の全権限を使ってでも奴らを排除し、俺が「Player」を再建するのだ。
(#・∀・)「だが…流石…お前らは一番最初だ」
俺の軍を好き放題荒らした罪は重い。
匿名の通報があったおかげで、奴らのアジトを突き詰める事が出来た。
さぁ、恐怖政治の幕開けだ。
- 57
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:54:18.11 ID:g6sXzJeC0
- ―09:35:02―
(;*゚ー゚)「どうするの!?もう下まで迫ってきているのよ!」
(;´_ゝ`)「わかってる!だが逃げるわけには!」
(;*゚ー゚)「何をいまさら言ってんのよ!逃げ切れるかどうかも分かんないのよ?」
(;´_ゝ`)「だが、こいつらを放置したまま逃げるのは自殺行為だ!」
(;*゚ー゚)「そんなの後でまた買えばいいでしょうが!」
何を渋っているのだろう。
もう絶対絶命というこの状況で、PCの心配なんかしている場合じゃないってのに。
(´<_` )「いや、部外者は黙っててもらおうか」
突然、弟者が割り込んできた。
モニターに向かって一心不乱に何かの作業を行っている。
私には何をやっているのかわからないが。
(´<_` )「俺たちはここを守る。逃げるなら一人で行ってくれ」
- 60
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:55:37.66 ID:g6sXzJeC0
- (;*゚ー゚)「そんなの無理に決まってるじゃない!」
無理だ。私の口からは本心がそのまま出た。
モニターを見るだけでも軍の数は百人以上いる。
対してこちらの軍勢はわずか3。
円周率にすら劣る数。
(´<_` )「兄者。この前とった軍のデータあるか?」
(;´_ゝ`)「あ、ああ。ここに」
そう言うと兄者は小走りにデスクの前に移動した。
この二人はいったい何をしたいのか私にはさっぱり分からない。
(´<_` )「しぃ。いいか」
弟者がいきなり私に話しかけてきた。
- 66
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:57:53.11 ID:g6sXzJeC0
- (´<_` )「俺達はこの要塞を守りきる。お前は…どうする?」
(;*゚ー゚)「どうするって…」
(´<_` )「どちらでも構わないが、お前がここに来た意味を考えれば自ずと答えは出るんじゃないか?」
何という脅し。遠回しでも何でもない。
というか私はそれしか道が残されていないんじゃないのか?
このまま一人で逃げられるとは言い難い。
(;*゚ー゚)「う…わ、私は……」
私の答えは最初から決まっていた。
最初とは
モララーに、流石兄弟の居場所を流した時の事だ。
- 68
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:58:48.36 ID:g6sXzJeC0
- 0日目
―21:00:55―
今日はなんてついてない一日なのだろう。
眼を開けたときに一番最初に目に入ったのは白い天井と白熱灯。
寝心地の悪いソファーでは十分な仮眠をとる事が出来なかった。
川 ゚ -゚)「…もうこんな時間か。」
私はゆっくりと体を起こし、フックに掛けられた白衣を羽織る。
コーヒーメーカーのスイッチを入れ、水道で濡らしたタオルで顔をふく。
普段から化粧をしないものだから、顔を心配する必要もない。
私のラボではない場所はやはり落ち着かない。
これだから出張は嫌なのだ。
川 ゚ -゚)「……モナーさんは大丈夫だろうか」
最近になってさらに体の調子が優れないようだ。
ここ数年でいくつもの病気にかかり、その都度私が直してきた。
あまり、母国を離れるわけにはいかない。
なのにもかかわらず。
まさか、この時間に5人の急患が入ってくる事になるとは…。
- 70
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 00:59:35.13 ID:g6sXzJeC0
- 川 ゚ -゚)「今日はこの5人か」
私の前には裸になった5人の成人男性が立たされている。
彼らは『ボランティア』。自分の体を売って慈善活動に取り組んでいる素晴らしい奴らだ。
彼らには、これからここに来る5人の急患に様々な慈善活動をしてもらう。
是非とも無駄にならないよう、頑張ってほしいものだ。
川 ゚ -゚)「さぁ、始めようか。」
彼らには事前に今回の作業について説明してある。
もちろん同意の上で。
寝台の上に一人ずつ寝かせる。
恐らくとても感激しているのだろう、眼から涙を流し、奥歯を震わせながら横になった。
気のせいかもしれないが、過呼吸でも起こしているんじゃないか?
- 77
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:02:43.41 ID:g6sXzJeC0
- 川 ゚ -゚)「一人一台、体を横にしてくれ。今から体を消毒する」
全身に消毒液を塗り、体に麻酔を打つ。これで朝になればめでたく人の為になっているだろう。
慈善活動に熱心になるあまり暴れると困るので体中を固定し、
楽しすぎて叫ばれると困るから口は糸で縫いつけた。
あまりの慈善活動っぷりに興奮して射精されると非常に困るので、まずはじめに性器から切り落とす。
プツッ…プツッ…と切れていく。それは焼きたてのウィンナーを切る感触そのものだ。
ボランティアが一番最初に暴れたくなるのはここだ。
麻酔がまだ回り切っていない奴は、台の上で踊り出し、作業に集中できなくなる。
2、3発お友達が殴りつければ大人しくなるが、ならない奴もいる。
川 ゚ -゚)「おい…あれを持ってきてくれ。」
そいつらには別の痛みで気分を和らげるために、私のペットのハリガネムシを爪の中に潜り込ませ、這わせる。
爪の痛みに気を取られ、じきに股間の痛みを忘れるだろう。
陰茎と睾丸を切り落としてゴミ箱に捨てれば、ボランティア開始だ。
- 81
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:04:54.11 ID:g6sXzJeC0
- 手術室に5人の患者がストレッチャーに乗せられてきた。
彼らは裕福な家柄に育ったにもかかわらず、不幸にも事故や病で治療の難しい病気や怪我を負った
・ ・ ・ ・
可哀相な人達だ。
私の腕を見込んでここに来た。だが、
来たは良いがその手術日が様々なアクシデントのせいで5件も重なってしまった。
どの方も急を要する状態。
そうなれば、私が選べる選択肢も限られてくる。
全員まとめて手術をやってしまえばいい。
- 84
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:06:23.30 ID:g6sXzJeC0
- ここは善だの悪だのを語る場所ではない。
死ぬ人間は死ぬ。生きるべき人間は生きる。それだけだ。
今回用意したボランティアは、集めるのにかなり苦労した。
生活の貧しい人間の中から、同じ血液型、同じ肌の色、性病、薬物反応の有無、…etc.なるべく患者の体に近い人を世界各国から探し出し、
家族の生活や借金返済を保証する代わりに、ここへ招待させていただいた。
外、内、バラバラだがここまで来てしまった以上、引き受けるしかないだろう。
なにより
川 ゚ -゚)「それではこれから術式を開始します」
この患者達の報酬は高額なのだ。
- 85
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:08:36.37 ID:g6sXzJeC0
- 執刀が始まった。
一人の患者を開胸すると同時に、次の患者に気を配り、
ある程度、助執刀医に任せられる状態になったら次の患者へ。
ボランティアから譲り受けた臓器を素早く移し、接合作業に移る。
時間が勝負。一時も気を休めてなんかいられない。
白熱光の下、血に染まる私の手が美しく見えた。
- 90
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:10:22.68 ID:g6sXzJeC0
- ―23:49:10―
術式を開始してからもう3時間は経っただろうか。
あまりの人数の多さに圧倒されてか、7人の補助執刀医も疲れを見せてきた。
4人の術式が完了したところで、私は休憩に入った。
最後の一人は、決して軽い病気ではないが、そこまで急ぐ必要のない患者だったからだ。
だが私に与えられた休憩時間はたったの3分。
補助執刀医も休む間を惜しんでいるというのに私だけが怠けていては示しが付かない。
川 ;゚ -゚)「ふぅ…」
術式の間、私は一度も汗を拭かない。
人に自分の体を触られるのが嫌だから。
だから術中の私の姿は、まるで真冬の雨の日に着るレインコートのようになる。
もちろん、中に着ていたブラウスもびしょびしょに濡れ、汗は下着まで濡らしていた。
まぁ毎度の事ではあるが。
- 94
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:12:42.29 ID:g6sXzJeC0
- ソファーの横に掛けておいた白衣のポケットが光り出した。
どうやら着信を拾ったようだ。
私はポケットから携帯を取り出し中を確認する。
それはフォックスさんからの留守番電話だった。
川 ;゚ -゚)「……モナーさん…」
留守電の内容など聞かなくともわかる。
モナーさんが亡くなったのだ。
川 ;゚ -゚)「そうか…」
私の心は逆にひどく落ち着いていた。医者という立場上、薄々は感じていたのかもしれない。
しかし、このまま帰るわけにはいかないだろう。まだ仕事が終わっていない。
モナーさん…。あなたはここで死ぬべき人間だったのですか。
聞かない留守電に私は留守電で返す。
『今の仕事が片付き次第向かう。そっちの時間で明後日の午前には。』
やはり今日はついていないようだ。
- 98
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/23(火) 01:14:24.57 ID:g6sXzJeC0
- その時、私の所に、看護師が慌てた様子でやってきた。
予備臓器提供者が脱走した、と。
予備臓器提供者とは、ボランティアに選ばれなかった予備ボランティアだ。
万が一に臓器移植に失敗した場合、すぐに別の臓器が必要になる。
いくら私のオペが優れていた者だとしてもそれは完璧ではない。
ましてや人の命。たった一度っきりだ。
そのもしもの為の臓器がこいつらだ。
今日は5人ということもあっていくらか大量に連れてきたが
話によると、他に連れてきたボランティア13名全員が脱走したのだという。
別に、予備が必要になる事は無いがそれよりも問題なのは
奴らがこの病院で暴れているということだった。
怒り狂ったボランティア達は傍らにある武器になりそうなものを片手に病院内を駆け回っているそうだ。
理由は私達に対する報復だろう。彼らに与えた行為は道徳とはかけ離れたものだから。
もちろん警察に連絡することはできない。
私達は脱法者。誰がその訴えを述べる権限があるのか。
- 104 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:16:24.97 ID:g6sXzJeC0
- 私はすぐに着替え、携帯を白衣に戻す。その時、どこかでカチッっという音が聞こえた。
廊下を駆け抜け、手術室に向かう。
しかし、手術室はもぬけの殻だった。
正確には患者1名とボランティア1名を残して。
他の執刀医や、看護師は己の身を案じ全員逃げ出し、術を放棄していた。
川 ;゚ -゚)「くっ…!なんてことだ…!」
私はすぐに真冬のレインコートを身につける。
時間がない。ボランティアが来る前に術を終わらせなければ。
開腹をし、腹直筋にメスを入れる。
この患者の移植臓器は胃。
まともにやれば私一人でも不可能ではないオペだが、いつ妨害が入るかわからない状況だ。
- 106 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:17:09.23 ID:g6sXzJeC0
- 手先をを素早く正確に。
どたばたとした足音がちょっとずつ近くなっていく。この部屋に踏み込まれるのもあとわずかだ。
間に合うかどうか…。本来ならば最低でも1時間はかかる手術を15分以内に収める。いや収めなければならない。
移植が終わり、創の閉鎖に入る。
普段のペースの5倍近く素早くやっているので自分でも自分がしている行為を一つ一つ頭で把握する事が出来なかった。
創を閉鎖し終えたのと、予備提供者が手術室に入ってきたのはほぼ同時だった。
川 ;゚ -゚)「はぁ…はぁ…はぁ・・・」
私は息が上がりながらも無事、術式を終えた。
脅威を前にしても、私の心は達成感で満たされていた。
川 ; - )「ふっ…ふふふふふ…あっははははははははははははは!」
込み上げる沸点。
私はおかしくてたまらなかった。
何にって?
そんなのわからないさ。
- 112 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:19:24.93 ID:g6sXzJeC0
- 私の甲高い笑い声に、予備提供者は後ろに一歩遠ざかった。
何がおかしい、と私に問いかける者もいた
川 - )「はははは!…君達にはわからないだろう。私が術式を急いだ理由など!」
私は目に手の平を当て、言葉を繋いだ。
笑いはまだ収まりそうもない。
川 - )「いいか?君達ボランティアの体には予備問わず私が作成したナノマシンが入っている。麻酔を打ちこむときに入れた」
川 ゚ -゚)「そしてそのナノマシンは私が持っているスイッチにより20分後に機能を発動させる。」
川 ゚ -゚)「マシンは一緒にセットされたカプセルの容器を破壊する。カプセルの中身は猛毒だ」
川 ゚ -゚)「今この瞬間、君達はもうタイムオーバーなんだよ」
私は時計を見る。
先程白衣の中に入っていたスイッチを押してから19分と56秒たった。
川 ゚ -゚)「オペは終了だ!帰ろう。我が母国へ」
私はバタバタと倒れていく男達の背中を後にし、手術室から出ていく。
閉まった扉の向こうは今頃文字通りの血の海だろう。
私は医者。
死の四葉の【クローバー】だ。
- 113 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:20:43.11 ID:g6sXzJeC0
- 3日目
―09:36:44―
(;*゚ー゚)「わかったわよ…協力すればいいんでしょ…」
この部屋の花はぶつくさ文句を言いながらしぶしぶ承諾した。
(´<_` )「おーけい。兄者、しぃ。役者はそろった」
そういいながら弟者は両手を俺としぃのほうに向けて手招きをした。
俺としぃはゆっくりと弟者の方へ近づく。
( ´_ゝ`)「よし。今から作戦タイムだ」
(;*゚ー゚)「まだ作戦無かったの!?」
(´<_` )「まず、落ち着いて聞いてほしい。場所が割れた以上、ここを守りきるのは不可能だ」
(*゚ー゚)「私、さっきからそう言ってない?なかったっけ?」
( ´_ゝ`)「そいつは由々しき事態だな…」
(;*゚ー゚)「コントなら棺桶の中でやれよ!」
- 116 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:22:08.16 ID:g6sXzJeC0
- (´<_` )「下のトラップも持って20分。恐らくヘリ隊も来るであろうから俺らの制限時間はさらに縮まる」
( ´_ゝ`)「マジか。そいつは由々しきじt」
(;*゚ー゚)「あなたの言動の一つ一つがリミットを削っている事に気付いて」
(´<_` )「そこで。俺らのライフラインであるこのマシーンだが」
(;*゚ー゚)「その命綱は私の足を引っ張ってr…」
(#´_ゝ`)「部外者は黙ってろ!」
(;*゚ー゚)「当事者兼被害者だよ!」
(´<_`#)「コントなら棺桶でやれよ!」
(#*゚ー゚)「私にツッコませるなあああああああああああああっ!!」
- 119 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:24:29.71 ID:g6sXzJeC0
- (´<_` )「とにかく、こいつらを外に出さない限り、逃げ切れたとはいえない」
(;*゚ー゚)「じ、じゃあどうするのよ…」
(´<_` )「それを今から考えるのさ」
(;*゚ー゚)「無茶でしょ!もう下にいるのに!」
( ´_ゝ`)「それは簡単だ。」
俺の声に声を荒げていたしぃがこっちを見る。
(;*゚ー゚)「?どういうこと?」
( ´_ゝ`)「誰か味方を呼んで、そいつに運んでもらえばいい」
- 121 名前:
◆4972gaB/9o :2010/03/23(火)
01:28:09.21 ID:g6sXzJeC0
- (;*゚ー゚)「いや、だからそういうのはもういいから…」
( ´_ゝ`)「安心しろ。味方はもうこっちへ向かっている。」
俺はポケットから1枚のカードを取り出す。
それは今朝ポストに入っていた手紙の中に入っていた真っ黒の、はがきサイズのカード。
(´<_` )「兄者、何だそれは?」
( ´_ゝ`)「招待状だよ。今日は世紀の大サーカスが見れるぜ」
そのカードを裏返すと、たった一行の文字が並んであった。
【今日の朝10時にあなた達の大切なものを貰います。ダイアより】
◆4:ナポレオン 前編〜END〜 To Be
Continued―
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