- 2
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 00:55:10.56 ID:2lXxadlX0
- 1日目
―23:03:29―
ξ゚听)ξ「ええ…そうよ…うん。わかった。じゃあ後は頼んだわね」
ふぅ…この国で仕事をするのもいつ以来だろう。
おそらくこのゲームの間だけで、1年分の量は運ぶことになるだろうな…
さっきまでいた高級レストランとは打って変わって、私が今いるのは海風が肌に粘りつく埠頭。
埃っぽい倉庫、うるさい波が港に打つ音、真っ暗で何も見えない。肌寒い風。
やっぱりもうちょっとご飯食べておけばよかったかな、と今では酷く公開している。
ξ;゚听)ξ「それにしても寒いわ…もうちょっと着こんでくればよかった…」
しょうがないじゃない。夕食の後、すぐこっちへ来る羽目になったんだから。
うう…帰りたい…なんで私がこんなとこで人を待たなきゃならないのよ…。
- 3
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 00:58:05.40 ID:2lXxadlX0
- それもこれも全てはあいつのせいよ…。
あいつが急に呼び出すから。
( )「お前に大事な話がある。今すぐ来てほしい。場所は…」
それで着た場所がここ。
話?ふざけるんじゃないわよ。
そもそも私を待たせるなんて5世紀早いのよ。
ξ#゚听)ξ「ああもう!!寒い!」
その辺に転がっていたドラム缶をヒールの先っぽで強く蹴り飛ばす。
ヒールが汚れた。気にしない。
このヒールが高かったことさえも忘れてしまうほど腸が煮えくりかえっている。
- 5
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:02:01.79 ID:2lXxadlX0
- ξ#゚听)ξ「もう限界!!あと10数えてアイツが来なかったら帰る!」
心の中でカウントダウンをスタートさせる。
いーちっ…23456789じゅっ…!
その瞬間、強いフラッシュで目の前が覆われた。
ξ;><)ξ「うっ…」
慌てて眼を腕で隠す。光が強すぎてその光の発光源がわからない。
車のマフラーの弾む音がする。ということはこれは車のライトか。
警察だろうか…?いや、ここは私とその関係者しか知らない特別な港。
警察が来るわけが…
( )「すまない。遅くなった。」
この声には聞き覚えがある。今一番聞きたくない声だ。
散々私を待たしておいて…
- 6
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:05:21.77 ID:2lXxadlX0
- ξ#゚听)ξ「ちょっと、眩しいんだけど!光なんとかしなさいよ!」
( )「…?ああ、そういうことか」
そういうことかって…他に何があるってのよ。
奴はパチンと音をたて車のキーを回した。
眩しかった世界が一転して暗くなったので余計顔が見えにくくなった。
コイツ…どこまで私をコケに扱えば気が済むのかしら。
その元凶はゆっくりとこっちへ近づきてきた……気がする。
よく見えない。
ξ#゚听)ξ「ちょっと、いったいどういうつもりなのよ。こんなところに呼び出して!」
やっと夜目が利いてきた。
だんだんと憎き男の顔が公開されていく。
というか何で私なんか呼んだのかしら。
前は味方だったのに、今は敵なのよ?
しかも…
( ・∀・)「何怒ってんだよ…」
さっきまで私に向かって怒鳴ってた相手を。
- 7
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:06:17.33 ID:2lXxadlX0
【◆( ゚∀゚)ゲームに集うは、切り札のギャング達のようです◇】
- 9
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:09:52.60 ID:2lXxadlX0
- ◆2:ブラック・ジャック 前編
―23:14:59−
ξ゚听)ξ「それで?話って何よ。まさかお互い敵だっていう認識もないの?」
( ・∀・)「まぁそんなカリカリすんなよ。お前、カルシウム取ってないだろ」
ξ゚听)ξ「ほんとアンタって私に嫌われるのだけは得意よね。帰ってもいいかしら」
( ・∀・)「さっきのことは謝る。すまなかった。」
こんな世間話するために呼び出したの?
下らなすぎる…。これが一国の大統領だというのだから驚き。
私は回れ右して帰路に向かう。
( ・∀・)「だから待てって。仕事の話だ」
「仕事」というワードを聞いてピタッと足が止まる。
私の商人魂はまだまだ現役だなと思った。
いろんな意味でため息が出た。
- 10
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:11:10.34 ID:2lXxadlX0
- ξ゚听)ξ「仕事って…何?依頼でもするの」
( ・∀・)「ご明答。お前に運んでもらいたいものがある」
まさか本当に仕事の依頼だとは…。べ、別に何も期待なんかしてないんだから!
ξ゚听)ξ「…へぇ、キングさんにも運べないものがあるなんてね」
半分は皮肉をこめて言ったが内心では気になるところ。
この男、モララーは私の母国である、ここ『VIP』の大統領だ。
わずか32歳で、この国の最年少大統領を司っているのだから、その腕は確かなようだ。
支持率も衰えることなく80%以上を保持し続けている。
「Player」へ送っている金はもちろん綺麗なものじゃないし、彼が裏でやっていることを国民が知れば彼は大統領どころか国外追放もあるだろう。
最悪、現世からも。
- 11
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:15:25.30 ID:2lXxadlX0
- しかし、軍の最高司令官でもある彼が、なぜ、私に仕事を?
私の力なんか借りなくても運べるルートを持っているはずなのに。
( ・∀・)「こればっかりは国を動かすわけにはいかなくてな。どちらかっていうと裏で動いてもらわなきゃならない」
ξ゚听)ξ「なによ…麻薬でも運ぶっていうの?」
( ・∀・)「麻薬なんてかわいいものさ。運んでほしいものは…」
( ・∀・)「5tのプルトニウムだ」
- 12
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:16:55.08 ID:2lXxadlX0
- プルトニウム…名前だけは知ってる元素。
なんか放射線物質がものすごい奴だっけ。
核兵器とかに使われている奴。
ξ゚听)ξ「へぇ…それで?どこへ運べばいいの?あと、差支えなければ理由を聞かせてほしいわね」
( ・∀・)「ものわかりが良い女は嫌いじゃないぜ。このプルトニウム…まぁプルトニウムの金属体なんだが」
( ・∀・)「ラウンジまで運んでもらいたい。」
ξ;゚听)ξ「ラウンジ!?」
ラウンジ共和国―。
VIPと海を挟んで隣に位置する島国で、人口は6000万人程。
VIPとラウンジは国際的にも仲が良く、VIPの輸出、輸入の23%を占めている。
ただ、この国は現在、VIPと反対側にある『シベリア』という民主主義国家と絶賛戦争中であるのだ。
その戦争の火種がVIPに来ることが無いのはVIPはラウンジに軍事支援を一切していないところにあるからだ。
ξ゚听)ξ「あの国にそんなもの運んだら…それこそ戦争に巻き込まれるじゃないの」
・ ・
( ・∀・)「だからこそだよ。密輸のプロッフェッショナルである【クイーン】。」
- 13
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:19:48.25 ID:2lXxadlX0
- …なるほど。やっと内容が理解できた。
軍事支援を一切しないと言ったのは他でもないモララーだ。
その彼が国を動かしてプルトニウムを提供してしまっては元も子もないだろう。
仮にひそかに実行したとしても、5tもある量ならばそれなりの人数が必要だ。人数が増えればそれだけ情報規制にも荒が出る。
表向きは国民の為に働く大統領―。その顔が崩れるのも時間の問題だろう。
ξ゚听)ξ「なるほど…理解したわ。それで?気になるお値段のほうは?」
( ・∀・)「軽く見積もっても30億レスは下らないだろう。」
ξ;゚听)ξ「さ、30億!!?それ確かなの?」
( ・∀・)「まぁ、一国どころか世界を滅ぼしかねない量だ。それくらいでも少ないくらいだ。」
レスとはこの国VIPの国内通貨。
私が今まで担当したどんな荷物よりもはるかに超える額。
これに食いつかない手はないだろう。
- 14
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:22:01.49 ID:2lXxadlX0
- ξ;゚听)ξ「世界って…そんなもの渡して大丈夫なの…」
( ・∀・)「まぁ…その為にいろいろと罠を張ってるからなぁ。」
( ・∀・)「外交で俺に勝てる国はいないよ。絶対に。」
その不敵な笑みは、体のあらゆる場所を蛇が這うようなおぞましさを感じさせた。
これが天才。努力では決して届かない場所。
ξ゚听)ξ「……とりあえず質問はもうないわ」
( ・∀・)「それで?引き受けてくれるか?」
さて、この仕事引き受けるべきか。否か。
ξ゚听)ξ「そうね…倉庫に隠れている不細工なメガネをかけた連中が私に銃を向けるのを止めてくれれば考えてもいいわ」
( ・∀・)「…お見通しか」
モララーが手を上げると倉庫の奥、建物の影、空き箱の横にいた暗視スコープをかけた男達がそそくさと去って行った。
ξ゚听)ξ「分け前は7:3でいいわね?」
( ・∀・)「…まぁいいだろう。国としてはかなりの利益が望めるからな。その代わり荷物が無事あっちへ届いたらな」
ξ゚听)ξ「ものわかりの良い男性って嫌いじゃないわよ♪」
久しぶりに、やりがいのある仕事ね。
いつの間にか肌寒い風は止んでいた。そろそろ帰りますか。
ξ゚听)ξ「それじゃその荷物、明日の朝3時にニュース国際空港まで持ってきてちょうだい」
(; ・∀・)「ひ、飛行機で運ぶのか!!?」
モララーが意外そうに答える。何を驚いているんだか。
ξ゚听)ξ「当たり前じゃない。このゲームは時間がないのよ?船でちまちま運んでる暇はないわ」
- 16
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 01:26:08.73 ID:2lXxadlX0
- (; ・∀・)「んん…そうだったな…わかった。」
ξ゚听)ξ「それともうひとつ。」
( ・∀・)「ん?」
私はわざと息を溜め、一気に吐き出す。
ξ゚听)ξ「アンタとの協力もこれでおしまい。無事仕事が成功したらすぐに敵同士。」
( ・∀・)「ああ。わかっている。この件が終われば俺は君を国際的指名手配にするつもりだ」
ξ゚听)ξ「写真うつりのいいやつをあとで大統領官邸に送っておくわ」
そう言ってモララーと別れその場を離れる。
また風が吹いてきた。早く家に帰ろう。
もうこんな寒い思いは絶対にしない。
全てを統括するのは、全てを手に入れるのは、
ξ゚听)ξ「私だ。」
- 17
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 01:28:40.75 ID:2lXxadlX0
- 2日目
―03:02:56―
ξ゚听)ξ「しかし…よくこんなのがうちの国にあったわねぇ…」
私の目の前にあるのは巨大な正方形のガラス製の箱だった。
この中にプルトニウムが…。そう思うと鳥肌が立ってきた。
もちろん恐怖など感じていない。沸き起こる奇妙な高揚感…。
( ・∀・)『軍が独自に開発を進めて作ったものだ。関係者でも知っているのはほんの僅か』
電話越しに聞こえる大統領の声。
今思えばこの声の主があれから10年でこの国を舵を切るとは思わなかった。
カリスマ性…そういえば納得できるのだろうか。
( ・∀・)『気密性は大丈夫か。一応外気には触れさせないように手配はしたが。それとそのケースはどんな衝撃にも耐えられる。一応確認してくれ』
ξ゚听)ξ「大丈夫そうよ。ちなみにどのくらいの衝撃なら大丈夫そう?」
( ・∀・)『仮に、その飛行機で爆破が起きたとしても、原爆でもない限りは大丈夫だ』
ξ゚听)ξ「爆破って…この飛行機、普通の旅客機なんだけど。」
- 18
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/17(水) 01:31:49.47 ID:2lXxadlX0
- こんな大きな荷物が入る飛行機を貸し切ることなど不可能だ。
だったら忍び込ませればいい。このサイズが入るジャンボジェット機に隠し、10時のフライトで持ってって貰う。
この手の任務など過去に何度も経験してきた。
隠し場所も、見つかったときの対処まで全て想定の範囲内だ。
( ・∀・)『仮定の話さ。それじゃあ任せたよ。無事を祈る』
ξ゚听)ξ「ってか私は乗らな…あ…」
なんて我が侭な大統領なんだ。つくづく行動が頭にくる。
ちなみに私はマスコミの世論調査に積極的に参加している。もちろん『支持しない』に入れているが。
ξ゚听)ξ「100t分のコカインもアイツ宛てに送っておこうかしら…」
さて、これで準備は完了だ。出発までしばらく寝てよう。
いつもの要領で仕事をすればいい。私に運べないものなど無い。
それが【クイーン】という名に掲げられたブランドなのだから。
日が明けるまで。良い夢見れますように。
- 19
名前:↑トリつけ忘れた
◆4972gaB/9o :2010/03/17(水)
01:35:00.98 ID:2lXxadlX0
- ―11:23:43―
ξ゚听)ξ『飛行機は今のところ無事よ。あっちには夜の7時には着くと思う』
電話から聞こえるヒステリック女の声。
今日ばかりは感謝しないといけない。
彼女のおかげで俺の計画も着々と組み立ってきている。
電話の向こう、ツンの専門は密輸。とくに彼女の場合
「大量に、いっぺんに」がモットーらしく、単位はkgではなくtに変えないと仕事を引き受けないという。
しかもその大胆な犯行にもかかわらず警察に嗅ぎ付かれたことは一度もない。
まさに完璧を追求したプロ。
( ・∀・)「そうか…わかった。また連絡を頼む」
電源を切り、デスクの上に置かれた書類に目を通す。
デスクに並べられた数十枚の用紙。
- 21
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:40:35.50 ID:2lXxadlX0
- これらは全て他国や企業との良い関係を築き上げるために必要不可欠な契約書だ。
国の中枢であるこの場所で、億単位にもなる金を動かす。俺だけに許された行為だ。
これら全てにサインをすることで俺の元には十億レス以上の金が入るだろう。
さらに件のプルトニウムの密輸に成功すれば、ラウンジから来る報酬も加わり、「Player」の凡人どもには決して追いつくことのできない
額をこのカードに注ぎ込むことができる。
( ・∀・)「ふっ…」
思わず笑みが漏れる。
まさかこんなに早く「Player」を牛耳る事が出来る権限が回ってくるとは。
「Player」は言わずと知れた裏稼業では世界的に名の通ったギャング集団だ。
天才的な素質のある人間に天才と呼ばれるほどの能力を叩きこむ。
俺たちは子供の頃、孤児院からモナーさんに引き取られ、裏で生きる術を叩きこまれた。
この現在、それぞれの分野で格付けをするならば、その頂上に君臨するのは全て「Player」のメンバーだろう。
その、「Player」のトップに立てる。
それはこの世界の頂点に位置したのと同じことだ。
先進国VIPの大統領が実は「Player」のボス。悪くない。
- 22
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:42:54.47 ID:2lXxadlX0
はっと、我に気付くと、秘書が気持ち悪そうな目でこちらを見ていた。
全部顔に出ていたか。口元に垂れていた涎をそそくさとふき取る。
さて、今は作業に集中しよう。ここで油断すると後々痛い目を見るだろう。
それほどまでに恐ろしいのだ。あの「Player」のメンバーは。
一瞬でも気を抜けばのど元から何もかも狩られていく。
横たわったペンを掴み、また作業に戻る。
その瞬間だった。
(;><)「た…大変なんですー!!」
扉がすさまじい勢いで開く。
そこにはスーツを着た男が息を荒くして立っていた。
彼は、伝達係のビロード。
市場や、国内で何か起こった時に真っ先にその情報を知らせる役目をしている。
- 23
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:46:11.81 ID:2lXxadlX0
- ( ・∀・)「どうした、そんなに慌てて。さてはまたサン○リーがやらかしたな?」
(;><)「ち、違います!!その…えっと…あの…」
( ・∀・)「とりあえず、一旦呼吸を整えろ。話はそれからでも遅くはない」
(;><)「は、はい…!!スーッ!ハーッ!スーッ!」
ビロードは落ち着いたのか、ゆっくりと顔を上げた。
( ・∀・)「それで?なにがあったんだ」
(;><)「あの…10時発、ラウンジ行きの旅客機『VSL−AW280』なんですが…」
( ・∀・)「・・・・・・・・え?」
その名前を言われて驚いた。
まさに現在プルトニウムを運んでいる船じゃないか。
額に汗がにじむ。
- 25
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:52:47.60 ID:2lXxadlX0
- まさかばれたのか?
いや…あれは外側からでは分からないし、鍵はツンに預けた。
では…プルトニウムが漏れたとか?
それはない。気密性は確認済みだ。さらに言えばまだ金属体。
化学反応が起こるわけがない。
では一体…?
(;・∀・)「で?その飛行機がどうした…」
(;><)「あの…じゃ…」
(;・∀・)「じゃ?…ちゃんと言え!!」
(;><)「すいません!!あ、あの…じゃ…」
(;><)「ジャックされました!!」
……なんだと?
- 26
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 01:54:42.26 ID:2lXxadlX0
- (;・∀・)「ジャック…というと、あの?」
(;><)「はい!!ハイジャックなんです!」
(;><)「人質となっているのは乗客、パイロット、客室乗務員含めて121人、犯人の身元、国籍、目的はまだわかってないです!」
ハイジャックだと?
なんでこんなタイミングで…
そこで思い出した。俺が心当たりのあるハイジャック犯が。
(;・∀・)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まっ」
まさか…。
―11:34:10―
ふふん。今日はいささか客が多いじゃねぇか。
そりゃ俺のテンションも上がるってもんよ。
声の調子もばっちりだ。よし。
それでは【人質前のガイダンス】スタート。
- 27
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:01:21.16 ID:2lXxadlX0
- _
( ゚∀゚)「皆さん、初めまして。私の名前はジャック。見ての通りのハイジャック犯です」
ハイジャックは嫌いだ。
どこの国の人間が乗っているのかわからないから恐らく乗っている人が使っているであろう言語を片っ端から伝えなきゃならない。
まぁ、そこら辺はちゃんとしとかないと紳士でクールなキャラを維持できないからな。
_
( ゚∀゚)「いいですか?この飛行機『VSL−AW280』号は只今進路を戻してVIPに向かっております。」
_
( ゚∀゚)「時間はわずか1時間半。それまでは僕の指示に従ってください。でないと死ぬので」
機関銃を客席へ向ける。まず初めに自分達は命の危険に晒されている事を理解してもらわないといけない。
そうしないと、100人以上の人間なんかまとめきれないだろう。
いつもはまだ殺さないんだが…
今日は例外だ。
- 30
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:03:37.95 ID:2lXxadlX0
- _
( ゚∀゚)「いいですか?皆さん。もし万が一ですが、私に危害を加えようとしている人間がいるならば…」
俺の後ろに人間がいる。明らかに殺意のこもった威圧感を持っている。
こんなに殺気立っていたら、振り向かなくてもわかる。
そいつと俺の距離は約3m。身長は恐らく…178cm。男性だな。俺より若干高いようだ。
腕に自信があるのだろうか、武器は持たず、わずかに聞こえる服の擦れる音の種類から、スーツを着ていると推測できる。
ヒーロー気取りの乗客だな。犯人が一人だと思って、油断している。
これは正当防衛。俺は悪くない。
_
( ゚∀゚)「こうなりますよ。」
後ろにいたソイツが飛びかかってきた。右のフック。
俺は決して振り向くことなくその場にしゃがみ、最初の一撃を回避。
そのまま機関銃の銃口をその乗客の顎に目掛け、引き金を引く。
パパパッと3発だけ銃弾を撃ち込み絶命させる。
馬鹿が。俺より目立とうとするからそういうことになるんだよ。
- 34
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:07:36.05 ID:2lXxadlX0
- 女性の裂くような悲鳴が響く。
近くに座っていた乗客は慌てて逃げ出そうとする。パニック状態に陥ってしまったようだ。
あ〜めんどくせぇな、もう。だから殺したくなかったんだ。逃げないでくれよ頼むから。
静かにしてくれよ頼むから
_
(;゚∀゚)「はい、いいですかー!!今からすぐ席に座ってください。でないと…」
ま と め て 殺 す ぞ
慌てふためいた乗客がピタッと止まる。叫び声も一気に収まったようだ。
ここからではよくわからないが、かすかに震えているようだ。
ある女性は、歯をガタガタ言わせ、スカートから伸びた足を蔦って黄色い液体を流していた。
何はともあれ、とにかくみんな聞きわけが良くて助かった。
_
( ゚∀゚)「もう一度言います。大人しくしていれば皆さんに危害は加えません。」
ふぅ…ようやく静かになりそうだ。
- 37
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:13:06.90 ID:2lXxadlX0
- _
( ゚∀゚)「だから、今席を離れているお客様は、 速 や か に 席に着いてください。」
パニックになっていた人々は震えながらも静かに席に戻った。
そして全員が着席した頃には飛行機のエンジン音だけが目立って聞こえてきた。
_
( ゚∀゚)「あっシートベルトもしといてくださいね」
- 38
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:14:51.50 ID:2lXxadlX0
- ―11:44:50―
(;・∀・)「まずい…非常にまずい」
これは不測の事態としか言いようがない。
あれほど警戒したというのにまさかもう手を打たれていたというのか。
ジョルジュ―。コードネーム【ジャック】の名を持つあの男は、文字通りのジャックだ。
飛行機、バス、ターミナル、銀行…等、様々な施設、乗り物を占拠し、国家や組織に自らの要求を半ば強引に押し付ける男。
俺が「Player」で最も警戒すべき筈だった男だ。
俺は奴とまともに戦うことはできない。
国民を人質に取られた場合、大統領という立場は真っ先に国民の命を優先しなければならない。
アイツが人質に取るのは必ず20人以上。しかも必ずそのうち数人は殺すという。
その大胆な行動に俺の表の仮面は手の着けようがないのだ。
(;#・∀・)「くそっ…あの餓鬼がぁ…!」
- 39
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:17:43.54 ID:2lXxadlX0
- デスクを思いっきり叩きつける。
その時、内ポケットから振動が鳴った。電話だろうか。
携帯を取り出し、ディスプレイを見る。呼び出したのはツンだった。
慌てて、秘書とビロードを外に出し、扉が閉まるのを確認してから通話ボタンを押す。
(;・∀・)「もしもし!ツンか?」
ξ;゚听)ξ『どうしよう!荷物を乗せた飛行機が…ジョルジュに…!』
どうやらツンも慌てているようだ。当たり前だ。俺たち二人の計画なのだから。
(;・∀・)「ああ、そのことなら聞いた。今、非常にまずい事態だ」
ξ;゚听)ξ『ジョルジュは一体どうするつもりなの!?』
そこでふと考える。
奴の目的は一体なんなんだ?
あの飛行機に奴の望むものなど…
そこで俺はハッと気付いた。
(;・∀・)「恐らく…ジョルジュの目的は俺らと一緒だ」
- 41
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:19:43.78 ID:2lXxadlX0
- ξ;゚听)ξ『えっ…どういうこと?』
(;・∀・)「アイツは俺たちが密輸をすることを知っていたんだ。それを…」
ξ;゚听)ξ『よ、横取りする気なの…!?』
(;・∀・)「ああ。間違いない。」
恐らく俺の仮説は正しい。
ジョルジュのハイジャックと俺らの密輸。まさか偶然重なったとは考えにくい。
ならば行きつくロジックは1つだ。
ジョルジュもプルトニウムを狙っている。
- 42
名前: ◆4972gaB/9o
:2010/03/17(水) 02:20:59.88 ID:2lXxadlX0
- ξ;゚听)ξ『どうするのよ!このままじゃ、仕事は失敗するし、5tのプルトニウムがジョルジュの手に…』
(;・∀・)「ああ…どうにかしなければ…」
プルトニウムを回収し、且つジョルジュを喰い止める方法…。
ξ;゚听)ξ『でも、ジョルジュは鍵を持っていないわ。だからあの箱を壊される前に何とかすれば…』
その言葉を聞いた時、俺の脳内に電流が走った。
いける…この方法なら。
( ・∀・)「そうだ…これだ」
ξ;゚听)ξ『?…もしかして、打開策が見つかったの?』
( ・∀・)「ああ。完璧だ。」
( ・∀・)「あの飛行機を撃ち落とす」
◆2:ブラック・ジャック 前編〜END〜 To
Be Continued―
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