5 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:28:46.75 ID:EbabBS8lP
0日目……の3日前
―02:00:21―

俺は腕時計の振動で目が覚めた。
時計の中に仕込んでいる微弱の電流がアラームと連動し、静電気程度の電流を流す。
ベッドから立ち上がり、髪を数回掻きながら洗面台に向かう。
今日は決行日だ。

髭を剃り、歯を磨く。
服は…このままでいいか。
ここんとこ毎日、同じスーツを着ている。
着替えが無い分けではなく、単純に着替えるのがめんどくさいからだ。

(´<_` )「………………」

洗面所を出て、寝室に戻る。
やはりここは喪服に近い格好で行くべきだろう。
寝室にはたくさんの衣服が散らばっている。
その服の山を、公園の砂場のように漁り目的の黒いネクタイを見つける。
その時、横で物音が聞こえた。兄者だ。

(´<_` )「悪いな。子供の頃から薬は苦手だったろ」




8 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:30:06.76 ID:EbabBS8lP
兄者には5時間前、コーヒーの中に睡眠薬を仕込んでおいた。
なるべく不自然の無いような時間帯、成分を考えて処方した。
起きた時に疑われるのは勘弁だからな。

仕事部屋に戻り俺の机の引き出しの奥からリモコンを取り出す。
これが今回の作戦の采配と言っても過言では無いだろう。
俺はリモコンをポケットに仕舞い、玄関に向かった。
ネクタイを締め革靴を履く。
しばらくぶりに履いたので、靴に埃が被っていた。

(´<_` )「…じゃあな兄者。行ってくるよ」

俺はドアをソッと開け、静かに締めた。
外は闇に染まり、一部の人間のみがせかせかと生きている。

(´<_` )「…………………」

これから一体どうなるのか。
それは俺を含めた11人に掛かっている。
10 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:32:35.02 ID:EbabBS8lP
―03:25:22―

モナーさんの自宅に到着したのは3時半だった。
監視カメラを含め、セキュリティー装置は全て俺が細工を仕込んでおいた。
今宵、モナーさんの自宅に訪ねてきた者は誰もいないのだ。
合い鍵でドアを開け、暗証番号を入力し家内に入る。
室内はしんと静まりかえっており、誰も起きている気配はない。
この家には4人の家政婦がいるが、流石にこの時間は起きていないようだ。

俺はゆっくりと気配を抑えながらモナーさんの寝室に向かう。
扉を開けると、中には一人の老人が死んだように眠っていた。
我等がボス、モナーさんだ。
すやすやと眠っており、流れるような寝息を立てていた。

(´<_` )「……こんばんは。モナーさん」

聞こえぬくらい小さな声で挨拶をした。
俺はポケットからリモコンを取り出した。
このリモコンはX線を用いて、モナーさんの体内にあるペースメーカーを操作する。
ペースメーカーの中には小さな毒薬のカプセルが仕込まれている。
このリモコンを使いカプセルを血液の中に流せば、モナーさんは1発で死ぬだろう。
12 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:34:01.50 ID:EbabBS8lP
俺はモナーさんの寝巻のボタンをゆっくりと外した。
パジャマとインナーをめくり、左胸に向けてリモコンを突き付けた。
数値を0に設定し、設定ボタンを押す。
しばらくは変化はないが次第に呼吸が出来なくなり、苦しむだろうが、それもほんの数秒。
ただでさえ衰弱しきった老体だ。
あまり激しい動きは出来ないだろう。

叫ぶようなら口に毛布を当てればいい。

(´<_` )「!!」

( ;´∀`)「……あ………あ…」

モナーさんが目を開けた。
とても苦しそうだが、叫べないようだ。
俺はいつ暴れ出してもいいように毛布を構える。

しかし、モナーさんは抵抗などしなかった。
変わりにたった一つだけこう言った。
14 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:36:08.01 ID:EbabBS8lP
( ; ∀ )「弟………者……」

(´<_` ;)「!!」

俺は驚いてベッドから離れた。
俺の顔を見て言葉を発しただけなのに、何故か俺にはとてつもなく恐ろしいことのように感じてしまった。
リモコンの操作は終わった。
後は死ぬのを待つのみだ。

(´<_` ;)「……………」

やがてモナーさんは寝息をたてることなくもう一度深い眠りについた。

(´<_` ;)「モナーさん………」

俺はモナーさんが死んだ事を確認すると、服装とベッドを綺麗に戻し、静かにその場を後にした。
車に乗りエンジンをかける。
こうなる事を望んでいたはずなのに体が重い。

(´<_` )「帰ろう………」

アクセルを踏み、モナーさんの自宅から離れた。
早く帰らなければ兄者に疑われるだろう。
次の信号が赤になったのでブレーキを踏みスピードを落とした。
その時だった。

15 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:37:58.76 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「どうやら…ちゃんと殺せたようだね」

突然、背後から声がしたので思わず振り向いた。

(´<_` ;)「なっ…………!」

後部座席には最近、頻繁にやり取りをしている男の姿が。
何故ショボンがここに…?

(´・ω・`)「ああ…本当は車の前で話す予定だったんだけど、鍵が開いてたから…ね」

(´<_` )「…見ていたのか?」

(´・ω・`)「…まあね。御苦労さま」

この男の態度があまりにも癪に障るので醜態を吐きたくなったが
先にこの場を去ることが重要だと考え、シートベルトを締める。

(´<_` )「………始まるのか」

(´・ω・`)「まあね」



(´・ω・`)「君と僕の時代だ」
20 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:40:51.03 ID:EbabBS8lP







【◆(´・ω・`)ゲームに集うは、切り札のギャング達のようです◇】







22 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:42:36.55 ID:EbabBS8lP
9日目
―12:10:39―
  _
( ;゚∀゚)「何…………で?………」

痛みが先行し、思考回路が回らない。
誰か今この状況を説明してくれ。
何が?何が起きた。

(´<_` )「……すまなかったな。もしものことを想定して…保険を掛けていたんだ」

保険?
いったい何のことだ?

(*゚ー゚)「私は弟者と手を組んでいたの。それくらいは見当がつくでしょ?」
  _
( ;゚∀゚)「い………いつからだ」

(*゚ー゚)「『ゲーム』が始まったその瞬間からよ」

糞…とにかくコイツは俺達を裏切ったのか…。
もういい。俺は二人とも殺してやる。
こいつらが俺から全てを奪ったんだ。
33 :>>30ミス ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:46:56.86 ID:EbabBS8lP
(´<_` )「おい、しぃ」

(*゚ー゚)「何?」

(´<_` )「そのゴミを片しておいてくれ」

(*゚ー゚)「命令しないで。私は弟者と手を組んだだけだから」

(´<_` )「わかってる。頼んだだけだ」

しぃはジロリと弟者を睨むと銃を俺に向けた。

(*゚ー゚)「そういう事だから。じゃあねジョルジュ」

俺は必死に体を起こそうとするが、体が言うことを効かない。
銃を……銃を取らなければ。
  _
( ;゚∀゚)「お前…モナーさんを殺し……たの…はそいつ…なんだぞ……!」

虫の息だが無理を打って抵抗する。
口からは大量の血が吹き出し、背中からはとめどない血が溢れ出た。

34 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:48:55.53 ID:EbabBS8lP
(*゚ー゚)「…わかってるわよ。モナーさんが死んだ事は悲しいし、コイツにも怒りを感じてる」
  _
( ;゚∀゚)「だ、だったら…ゴフッ……何故…」

(*゚ー゚)「しょうがないでしょ?弟者とショボンが手を組んだ時点で『Player』の負けは確定なの」

(*゚ー゚)「どっちの味方をすればいいのか何てちょっと考えれば分かるでしょ?」
  _
( #゚∀゚)「て…てめぇ……!!」

俺の脳天は限界に近かった。
どこまで腐っているんだこの女…。
モナーさんに対する忠誠心はこんなものだったのか?

(´<_` )「俺は先にカジノへ行く準備をしてる。思い出話はその辺にしておいて、さっさと殺せ」

(*゚ー゚)「だから命令しないでよ。……まあ殺すけどね」

俺の獲物が……弟者が背を向けて去っていく。
逃がすか。
逃がしてたまるか。
  _
( ;゚∀゚)「に、逃げるな糞野郎!!」

俺が全身の力を振り絞り叫ぶと、弟者はピタリと足を止めた。
37 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:50:34.30 ID:EbabBS8lP
(´<_` )「…褒め言葉として受け取っておくよ」

弟者は振り向き笑いながら俺を見下した。
俺のボルテージはとうとう限界を超えたが、どうすることもできなかった。

(*゚ー゚)「じゃあそういうことだから。さようなら」

しぃは銃を俺に向ける前に、俺の胸倉を掴んだ。

(*゚ー゚)「地獄でお姉さんによろしく」

そういうとしぃは俺の左胸に銃口を突き付けた。
  _
( ;゚∀゚)「…!!」



一発の銃声。


俺が聞いた最後の音だ。
40 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:52:33.73 ID:EbabBS8lP
◆12:ババ抜き 後編

―10:42:18―

( ;ФωФ)「糞っ!!」

我輩は女の攻撃を胸三寸の距離で回避し、地を転がる。
銃を…銃を構えなければ。
しかし、銃は床に落ちているのと太股のホルダーに一丁。
残りは全てドクオが持っている。
やはり先を急ぎ過ぎたか…。

('、`*川「あなたがあの有名な【ダイヤ】ですね」

女は我輩の銃を拾うと二丁拳銃を構え、じりじりと我輩の元へ近づいてきた。
ホルダーから銃を取り出し、安全装置外した後、銃を構え引き金を引くのと、
プロのスパイが相手の行動に反応しそのまま引き金を引くのとでは圧倒的に後者の方が速いだろう。

( ;ФωФ)「すまんな。あいにくサインなど考えていないのだ」

('、`*川「構いませんよ。ならあなたのその天才的な脳を貰うことにします」

安直に死ねと言われたようだ。
どうやら逃げるという選択肢も無いらしい。

さて、どうしようか。

42 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:55:04.69 ID:EbabBS8lP
( ;ФωФ)「………………」

我輩はじっと相手の指先を見つめる。
やや距離はあるものの目を凝らせば指先の動作くらい、追えないことも無い。
人は銃を打つほんの少し前に、引き金に当てた指に力が入る。
それを見極め、寸前に回避する。
苦肉の策だが現状ではこれが最良の対処法だろう。

('、`*川「あなた方は本気でショボン様に勝つつもりなのですか?」

( ФωФ)「……逆にこっちが聞きたいくらいだ。何故貴様は奴と手を組む」

コイツはたしかモララーの秘書だった女。
なぜこんな女がショボンと手を組んだのか。

('、`*川「…どうしましょうか」

( ФωФ)「…何がだ」

('、`*川「考えているのです。冥土の土産に教えてあげると言えばいいのか」

('、`*川「…これから死ぬ人に話す意味などないと言えばいいのか」
45 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:57:16.44 ID:EbabBS8lP
( ФωФ)「だったら、前者を選んでほしい。ぜひ聞きたいものだ」

会話を引き延ばすことで、できるだけ時間を稼ごう。
できる限り隙を見出すように探る。

('、`*川「良いでしょう…ただ、あなた方に有益になる様な情報はありませんよ」

そう言うと女は、静かに語り始めた。
吾輩は銃口と指を意識しつつ、静聴することにした。

('、`*川「…私は元々ラウンジ政府の人間でした」

('、`*川「諜報部員としての能力を買われ、VIPへスパイとして送り込まれたのです」

( ФωФ)「…どうしてラウンジはVIPへスパイなど送り込んだのだ?」

('、`*川「それは申せません。あなた方に何かしらの利益を生む可能性があるので」

( ФωФ)「そうか…」

確かに、とても興味深い内容ではありモララーには重要な事かもしれないが、吾輩にとって必要ではなかった。


46 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 18:58:37.74 ID:EbabBS8lP
('、`*川「しかし、いざVIPとの外交が良くなるや、ラウンジは都合の悪い私の存在を消すことにしたのです」

('、`*川「そして政府から逃げ続けている最中、私はショボン様と出合ったのです」

なるほど。全ての辻褄が合った。
この女は言わば難民だ。
両国に見放され、行き場をなくした哀れな女。

( ФωФ)「ふん…そんな逃亡者を仲間だとショボンは思わないだろうがな」

('、`*川「それでも構いません。あのお方は私に一筋の光を見せて下さいました」

もはや宗教崇拝の域。
ショボンが首を縦に振れば何もかも犠牲にしても構わないと言うだろう。

('、`*川「以上で私の話は終わりです」

話し終えた女の眼にもう一度殺意が映った。
そして、女の指がピクっと動いた。
今だ。

我輩は反射的に脚に力を入れ、そのまま跳び上がり空中で後転した。
女の手に握られていたピストルから銃弾が飛び出したが、寸前で回避した。

('、`*;川「クッ…………!」

女がもう一丁の銃を構えた頃には、我輩の両脚は地に着いていた。
50 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:01:24.49 ID:EbabBS8lP
女が我輩から奪った銃で発砲する。
とっさの判断で対応している相手と比べれば、幾らか我輩に利がある。
じっと銃口を睨み、弾の軌道を予測する。
放たれた弾は我輩の肩上の空間をすり抜けた。

それとほぼ同時に、我輩は女の元へと駆け出した。

('、`*;川「!!」

距離は7m程。
あと1、2発、弾丸を避ける必要が有りそうだ。

女はもう一度我輩に銃を向ける。
この時の距離は5m強。

人間は突然迫って来る脅威に屈してしまう生き物だ。
攻めの状況から一転して守らなければならなくなった場合、相手を討つ事よりも優先して自己防衛になる。
それは、ただ相手を寄せ付けないための無意味な攻撃だ。

( ФωФ)「ふん!」

女の指が動く。
我輩は右膝を曲げ、大きく左に跳んだ。
銃口の軌道を完全に避けた。
53 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:03:51.98 ID:EbabBS8lP
( ;ФωФ)「!!」

その瞬間、銃口はクイっとほんの少し左に向いた。
発砲される銃弾。
その軌道は我輩の右腕を掠めた。

( ;ФωФ)「………流石はプロだな」

('、`*川「………………」

我輩はようやく理解した。
この女はただ者では無いと。
こいつは今、確実に我輩の動きに合わせて銃口を変えた。

すなわち、この女は迫る我輩を脅威とは思わず、ただの標的として考えているようだ。
自己防衛など気にせず、敵を討つ事で己を守ろうとするプロだ。

さらにたった2回の回避を見ただけで、我輩の行動パターンや注目点を見付けだし、それを逆に利用している。
指を動かせば避ける事も完璧に見破られてしまった。
戦闘能力でいえば「Player」と同等の能力を持ち合わせている。

( ;ФωФ)「ショボンがこの女を選んだのも頷けるな…」

54 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:06:52.41 ID:EbabBS8lP
互いの距離が2mまで差し掛かった時、再び銃口は我輩の体に向いた。
この距離では銃口など意味が無い。
どう避けても当たるだろう。

( #ФωФ)「ならば、撃たせないまで!!」

吾輩は右脚を大きく振り上げ、女の腕に当てる。
女は寸前で手を引っ込める。
その隙を見計らい、吾輩は左足で飛びかかり、今度は奴の顔面を目掛けて爪先を顎に向けた。

('、`*;川「なっ……!」

咄嗟に女も腕で顔面をガードする。
吾輩の蹴りは女の腕にめり込み、その衝動で、女は少しだけ後ろに下がった。
しかし、女もその反撃に、浮いた吾輩の腹に目掛けて強烈なキックを入れた。

( ;ФωФ)「ぐっ…!!」

吾輩は弧を描くように飛ばされたが、体を丸めながら縦に一回転し、足から着地した。
58 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:08:31.54 ID:EbabBS8lP
('、`*;川「…流石ですね…」

蹴られた腕を押さえながら、女が語りかける。
どうやらあの蹴りは相当効いたらしい。

( ФωФ)「貴様もな…」

正直、今のは相当効いた。
流石にヒールで蹴られるのには慣れていない。

('、`*川「…しかし、それでも私の勝率に変化はありません」

女は腕をゆっくりと上げ、銃を突きつける。
しかしその時既に吾輩の方が銃を構えていた。

( ФωФ)「それはどうかな?元スパイ嬢」

('、`*;川「…!!」

吾輩は空に浮いている間に、ホルダーに差した拳銃を取り出していた。
そして着地した時には既に撃てる状態になっていた。

( ФωФ)「形勢は逆転だ」

59 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:10:17.12 ID:EbabBS8lP
('、`*川「……それはどうでしょうか」

銃と銃が向きあう空間に心理の戦いが飛び交う。

('、`*川「私が見た限りでは、少なくともあなたは銃を一つしか持っていない」

('、`*川「それでも形勢が逆転したと…?」

その言葉を聞いたとき、吾輩は思わず口元が緩んでしまった。
歯の隙間から笑い声がそっと零れる。

('、`*川「…何がおかしいのです?」

( ФωФ)「いや…すまない。まだ気づいていないのかと思ってな」

('、`*;川「…?何に気付………!!」

どうやら今頃気付いたようだ。
女は左手をさっと見た。
何も握られていない左手を。
61 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:12:39.98 ID:EbabBS8lP
('、`*;川「…いつの間に……」

( ФωФ)「さっき貴様の蹴りを喰らった瞬間だ」

吾輩は女の強烈な一撃を受けた後、瞬時に女の手にある銃を掴み取った。
文字通りの一瞬。常人では目に見えないほどの速さで、だ。

( ФωФ)「こちらには拳銃が2丁…。さらに……」

('、`*;川「……?」

( ФωФ)「この拳銃は吾輩のではない。貴様の銃だ」

('、`*川「え、ええどうやらそのようですね…けど、その銃はそこまであなたの銃と比べ性能に…」

( ФωФ)「ふっ…今ここで注目すべきなのは銃の性能などではない」

( ФωФ)「吾輩達は『自分の銃にいくつ弾が入っているか知っている』事だ」

('、`*;川「あっ!!」

どうやら女もここで気が付いたらしい。
しかし、この作戦は相手にも気付かせないと意味がない。

62 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:15:44.67 ID:EbabBS8lP
( ФωФ)「互いに銃弾の数を知り、且つ吾輩はもう一つの銃を手にした」

( ФωФ)「つまり、貴様は吾輩の銃弾の数が分からないのだ」

ここはエレベーターまで一直線に伸びた無機質な廊下。
隠れる場所もなく、弾を避けれるような場所もない。
そんな状況で長期戦に持ち込むのは明らかに無理がある。
一発の銃弾で全てが決まると言ってもいい。

それは深手を負っている吾輩にとって不向きな戦い方だ。
ならば、互いにリミットを与えればいい。

銃弾という制限ある数を相手にも知らせることで心理的に精神を圧迫させることができる。
実際、弾数など関係ない。
1発撃てば相手は死ぬ可能性もあるのだから。

( ФωФ)「さらに吾輩は貴様の銃の軌道が読める」

( ФωФ)「アドバンテージがどちらに傾いているのか…言わずとも分かるだろう」

('、`*;川「………」

さぁ撒き餌に喰いついてこい。
そして撃つことに怯えろ。
66 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:17:30.16 ID:EbabBS8lP
( ФωФ)「さらばだ」

吾輩は引き金を引く。
完全に相手を捉えていたが当てるつもりはない。
これは威嚇射撃だ。
相手は必ず避け切れるという判断の元の射撃。

('、`*;川「くっ…!!」

女はとっさに伏せ、銃弾をかわす。
その後、彼女は上体を後ろに傾け、地を素早く蹴り後退した。
吾輩と距離を置く為だ。

( ФωФ)「ふん………」

どうやら吾輩の作戦は成功したらしい。
奴は銃を撃つことよりも吾輩から身を守ることを選んだ。
その行動こそが相手の心理をよく体現している。

( ФωФ)「終わったと思うな!」

吾輩はさらに銃弾を女に向けて飛ばす。
ここまでくれば後は銃を撃ち続けるだけだ。
仕留めるのは容易い。

70 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:21:20.61 ID:EbabBS8lP
吾輩は2つの銃で間髪与えず撃ち続ける。
防御の心配など無用だ。
なぜなら相手は銃弾を保持するのに徹しているから。

('、`*;川「うっ…!!」

俊敏にかわし続けていた女もだいぶ疲れが出てきたのか、弾に掠るようになった。
どうやらあの女を倒すのも時間の問題だ。

( ;ФωФ)「………………?」

まて。何かがおかしい。
確かに弾はどんどん当たるようになった。
…いや違う。




『なぜ今まで当らなかったのだ?』






74 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:24:13.39 ID:EbabBS8lP
確かに考えると不自然だ。
相手は「Player」でもないのに何故銃弾を避けることができるのだ。
先程の威嚇射撃とはわけが違う。
吾輩は確実に仕留めるつもりで撃っているのだ。

( ;ФωФ)「まさか………」

('、`*川「…………」

間違いない。
あの女…吾輩の動きを完全にトレースしている。
銃の見切りから、かわす位置まで全て吾輩のテクニックをコピーしていた。

('、`*川「こんなときに、考え事ですか?」

( ;ФωФ)「ぐ……っ!!」

その瞬間、女が銃を吾輩に向けて撃った。
吾輩はとっさにしゃがみ、弾を避ける。
そしてそのまま攻撃態勢に入ろうとしたその時だった。


( ;ФωФ)「ぐわっ…!!」
76 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:26:38.05 ID:EbabBS8lP
強烈な痛みが肩に走る。
吾輩は思わず腕を下げ、膝着いた。
その痛みは先程ショボンに撃たれた銃弾だった。

( ;ФωФ)「糞…!!今さら…!」

それも当たり前だった。
こんな肩の状態で片手で銃を撃っていたのだ。
撃っている間は脳内麻薬が働き、忘れることができたが、もう一度防衛態勢に入った瞬間、
気が緩み、痛みを思い出してしまった。

('、`*川「待っていましたよ…その時を」

女がゆっくりと近づく。
吾輩は銃を構えるが、女が吾輩の銃を撃ち飛ばした。

( ;ФωФ)「っ…!!」

('、`*川「やはりあなたは戦闘経験が乏しいようですね」

女は足を大きく振り上げ、吾輩の顔面を強く蹴り飛ばした。

77 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:27:49.00 ID:EbabBS8lP
( ; ω )「がぁ…っ!!」

口から前歯と血が飛び出した。
顎を狙われたので半規管がまったく機能しない。
頭が揺れ、意識が朦朧とする。
女はそのまま2打、3打と吾輩の腹や顔面を蹴り続けた。

('、`*川「ありがとうございます。良い勉強になりました」

女はそう言うと、銃口を吾輩の額に付けた。
もはや、反撃する体力も残っていなかった。
手足を動かすにも動かせず、まともな脳すら吾輩の体内にはない。

( ; ω )「グフッ………すまぬ」

ドクオ…後は頼んだ。
吾輩は…どうやらここまでのようだ。


('、`*川「…最後の言葉も済んだようですので…では」



女の指が動いた。
81 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:30:28.16 ID:EbabBS8lP










                  「謝るのは俺がボスになってからしてくれよ」











87 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:35:35.27 ID:EbabBS8lP
('、`*;川「なっ………!!」

女はバッと振り返り、廊下の奥を見つめる。
そこには一人の人間が立っていた。

( ;Фω )「貴様………っ!」





('A`)「………………」





('A`*)「……………SM?」




立っていたのは馬鹿だった。
90 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:37:16.53 ID:EbabBS8lP
('、`*川「久しぶりですね…【エース】」

('A`)「よう、依頼人兼、VIPのスパイ兼、ショボンの手下兼、モララーの秘書」

女は立ち上がり、ドクオと対峙する。
どうやら二人は面識があるようだ。

('、`*川「その説ではご迷惑をおかけしましたね」

('A`)「現在進行形だ馬鹿」

('、`*川「……………そうでしたね」

('A`)「…うちの大先輩に色々やってくれたな」

( ; ω )

('、`*川「…仇討ちですか?」

('A`)「いや…………そういうのじゃねえよ」



('A`)「“駆除”だ」

92 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:38:31.01 ID:EbabBS8lP
―10:45:09―

(´・ω・`)「ふふふ……」


(´・ω・`)「君達も頑張っているようだけど………」


(´・ω・`)「ここまでだよ」


(´・ω・`)「……………」


(´・ω・`)「結局、彼らは僕には勝てないんだよ」


(´・ω・`)「……ね?『お父さん』」




95 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:40:09.26 ID:EbabBS8lP
―11:02:57―

('A`)「バトンタッチだ。今度は俺が相手してやるよペニサスさん」

('、`*川「どうぞ、ご自由に」

俺は銃を構え、ペニサスを凝視する。
拳銃は3丁。両手に2つと腰に1つ。
黒いスーツ姿で、下はスカート。

('A`;)「え?……スカート?」

('、`*川「?」

なんてこった。
こいつ…俺の趣味を的確についてやがる。
よりによって就活生のようなスーツを着やがって…。

('、`*川「あなた達は戦闘中に上の空になるのがお好きなようですね」

ペニサスは綺麗に俺の頭を狙い、狙撃してきた。

('A`;)「うおっ!!」

俺は横にさっと避け、体勢を持ち直す。


96 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:41:25.96 ID:EbabBS8lP
('A`;)「糞っ!不覚…!!」

まずい。
まさかこの俺が女と対峙することになるとは…。
こいつがもしよからぬことを仕出かした場合、俺は死ぬかもしれない(いろんな意味で)
俺はマシンガンを取り出し、ペニサスの足元に向けて引き金を引いた。

('、`*;川「!!」

ペニサスは後ろに大きく飛び跳ね、2歩3歩と下がっていった。
その途中で俺に銃口を向け引き金を引いた。

('A`)「おっと…やるな」

最良の判断だ。
こんなに狭い場所ならばマシンガンで追いつめれば確実に弾は当たる。
ならば撃つ側を叩き、撃たせなくすることで己の身を守る事ができる。
攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。

('、`*川「…………」

97 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:42:44.83 ID:EbabBS8lP
あいにく、こっちには武器は腐るほど揃っている。
この勝負も、残すところは時間の問題だ。
ロマネスクは深手を負っていたが俺はそうはいかない。
この女はしぃと違って真面目で堅苦しいタイプだから下攻撃もないだろう。

('A`)「これで分かっただろう?俺とあんたには戦力に差がありすぎるんだよ」

('、`*川「…ええ、どうやらそのようですね」

('A`)「……?」

えらくあっさり認めたな。
諦めたのか?

('、`*川「でしたら…私はこの盾を使います」

そういうと、ペニサスは足元に落ちていたものを拾い上げた。

( ;Фω )「ぐ………っ」

('A`;)「あ……」

('、`*川「もし、あなたがこれ以上私に危害を加えるというのならば、私はこの男を撃ち殺します」
101 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:44:56.57 ID:EbabBS8lP
('A`;)「あの馬鹿野郎……」

完全に忘れていた。
まさかあの男が人質に取られるなど考えもしなかった。
糞…俺が持ってきた武器は全て無駄になってしまった。

('A`;)「ああ…しかたねえ」

ロマネスクが死のうがどうでもいいが、まだ目的を達成していないうちは俺達はパートナーだ。
迂闊に殺すわけにはいかない。
俺は握っていたマシンガンを地面に捨てた。

('、`*川「他の銃も捨てなさい」

('A`#)「ああ…分かったよ捨てりゃいいんだろ捨てりゃ」

俺は背負っていたリュックを捨て、腰につけていたホルダーも投げた。
さらに胸ポケット、上下着ていた服についているポケットから計14丁の銃火器類を出した。

('A`)「これで全部だ」

('、`*川「脱いでください」
104 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:46:57.71 ID:EbabBS8lP
('A`)「は?」

('、`*川「いいから脱いでください。信用できません」

('A`)「………………」

何だこの女、やけに慎重だな。
俺らが「Player」だからか?
俺は上着とズボンを脱ぎ、パンツ一枚のあられもない格好になった。

('A`)「これで………いいか?」

('、`*川「下着も脱いでください」

('A`)「おいおい…流石にそれはギャグだろ」

('、`*川「しなさい。この男を殺しますよ」

('A`)「…………マジかよ」
108 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:48:38.34 ID:EbabBS8lP
確かにこの中には拳銃1つと手榴弾が2つ入っている。
まさか…俺のピストルがこんな形で女性に見せることになるとは…。
まぁそれも一つの人生なのかもしれない。
俺はパンツを掴み、ゆっくりと降ろした。

('A`)「……………なーんてな」

その瞬間、俺は足元に転がっていた小さな箱をペニサスに向かって蹴りつけた。

('、`*;川「!!」

その箱は、上空で光を帯びペニサスの元に辿りつくときに眩いほどの光を発した。

('、`*;川「ぐっ…!!」

('A`)「閃光弾だ」

俺はパンツを上げ、ペニサスの元へ駆け出した。
閃光弾の効力は5秒。
それ以上は相手の目が慣れてしまう。

俺はペニサスの元に着くと、大きく足を上げ、ペニサスの腹に向けて蹴りつけた。
111 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:50:35.26 ID:EbabBS8lP
('、`*;川「あぐっ!!」

閃光玉は輝きを止め、元の玉に戻った。
ペニサスは俺の蹴りの衝撃で吹き飛び、その衝動でロマネスクを離した。

('A`)「まだだ」

俺は相手に隙を与えることなく、攻める。
相手の膝を蹴り、バランスを崩す。
それと同時に両手に握られている銃を張り手で弾き飛ばし、そのまま右手で相手の横っ面をひっぱたいた。

( 、 *;川「がっ…!ぐっ…!!」

肩、脛、腿、腕、腰、腹、踵…あらゆる箇所に強打を打ち込む。
ペニサスは白目をむきバランスを失い、立っていることもままならない状態になった。
そして、俺は腰を落とし、右手を後ろに引いた。

('A`)「あばよ!」

俺はペニサスの胸に、力強く拳を埋め込んだ。

( 、 *;川「あ゛っ!………」

114 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:52:02.87 ID:EbabBS8lP
その瞬間俺はとてつもない衝撃を感じた。

('A`;)「なっ……………!」

これは…この感覚は何だ?
恐怖…?いやもっとおぞましい、言葉にならない感情が俺を包む。

( A ;)「あ……ああ……」

しまった。
俺は攻撃に夢中になるあまり相手の武器のことを忘れていた。
全身に寒気が走り、震えが止まらない。


( A ;)「ああああ…ああああああああああ」

俺の右手…拳を作ったこの手の先に伝わる感触。

これは………。これは………。




( A ;)「おっ………ぱいか……」
116 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:53:04.13 ID:EbabBS8lP
初めて触れた秘境。
俺の指先に柔らかく乗り、弾力のあるその厚みがそっと俺の手に温もりを与えた。
Dカップの凶器…いや狂気と言った方がいいか。
俺はどうする事も出来ず、その場に立ちすくんでしまった。

('A`;)「!!…………ぐっ!!」

その瞬間、思い切り、鳩尾に衝撃が伝わった。
ペニサスだ。
ペニサスが俺の鳩尾に膝蹴りを与えてきたのだ。

( 、 *;川「ハァ…ハァ……ゲフッ!!」

ペニサスは髪を乱し、口から大量の血を吐きながらもそこに立っていた。
その目には揺ぎ無い殺意が込められていた。

('A`;)「この…死にぞこないが…!!」

俺は体勢を持ち直すと、一気にペニサスの元へ駆け出した。
119 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:54:09.97 ID:EbabBS8lP
ペニサスも駆け出し、腰を捻りながら足を構えてきた。
回し蹴りだ。
俺は素早く、しゃがみペニサスを見る。

('A`*;)「なっ!!」

そこには桃源郷…魔の三角地帯があったのだ。
ピンク色のエリアライン、ムチッとした太もも。
分かっていた。
相手がスカートだという時点でこういうハプニングがあることは分かっていたのだ。
だが、俺には避けることができなかったのだ。

( A ;)「ぐっ!!」

頭上から、重い衝撃が来た。
踵を落とされたようだ。

俺は、サッと後退し、頭を押さえる。


( 、 *;川「ハァ…ハァ………フフッ…まさかあなたともあろう人がそんな弱点を持っていたとは…」
122 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:55:16.01 ID:EbabBS8lP
ばれた。
完全にばれた。
俺にとっては致命的な問題ができてしまった。

('∀`;)「な、ななな何言ってんてんだよ…おっおっおお俺がそんなエロ攻げっ撃に屈すすするわけが…」

( ‐ *;川「ふっ…ご説明どうもありがとうございます…」

ペニサスは上着を脱ぎ、シャツも脱いだ。
俺の目がおかしくなければ、そこには上がブラジャー姿の女が立っている。

( A ;)「なっ…あ…あ…」

笑いごとでは無い。
足の震えが止まらない。
鼓動も強くなり、息も不安定になった。

ペニサスはその最後の1枚でさえも外すと、俺にゆっくりと近づいてきた。
何故だ。何故俺と戦う女は全員そんな行動しか取れないんだ。


教えてくれ!モナーさん!!
124 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:56:27.57 ID:EbabBS8lP
( A ;)「く…来るな!!」

('ー`*川「ふふっ…面白い人ですね…あれほどの戦闘能力を持ち合わせていながら…」

( A ;)「だ…黙れ!!黙れ!!」

('ー`*川「こんなことで手も足も出なくなるとは」

ペニサスは俺の顔面を強く殴り飛ばした。
俺の頭は弧を描き、そのまま地面に落ちた。

( A ;)「がっ…!!」

('、`*川「すいません。これから先の攻撃は私のストレスです」

ペニサスは俺の腹の上に跨ると、俺の顔をめいっぱい殴り続けた。

何度も。何度も。

( A ;)「あ…あああ………」

まぶたの上に瘤ができ、頬はありえないほど膨れ上がった。
こけている人間でもここまで腫れるのか。
129 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 19:58:34.15 ID:EbabBS8lP
('、`*川「ありがとうございました。もう充分です」

ペニサスはスカートに掛けていた拳銃を取り出す。
それを俺の首に突き付けた。

糞…。
なんで俺はこの女に勝てなかったんだ。
なんで俺はこんなことで臆してしまうんだ。
なんで俺はここまで女に耐性がないんだ。
なんで俺はこんなにも不細工なんだ。

なんで…。


なんで…。


('、`*川「………?」

( A )「なんで…俺は……」





(゚A゚#)「モテないんだああああああああああああ!!!!!」
133 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:00:16.64 ID:EbabBS8lP
俺は勢いよく腰を上げ、ペニサスを押し飛ばす。
ペニサスは地に尻を着き、その場に座り込んだ。

( A #)「ハァ…ハァ……いいぜ俺は…」

('、`*;川「……?」

( A #)「俺を超える……!!」


【己の視野を制限することは、逆に一つの物を見るのに適している】


モナーさんの教えだ。
ペニサスの胸が視界に入ってしまうのならば入れなければいい。
俺はそっと目を瞑り、深呼吸をした。

( A )「……終わりだ」

分かる。
相手の位置も、相手の体勢も全て。
俺はこの女を倒すまで、決して目を開けない。
135 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:01:27.46 ID:EbabBS8lP
('、`*;川「くっ!!」

ペニサスは俺に向かって銃を発砲した。
俺は素早く反応し、少しだけ体をずらし弾丸を避ける。

('、`*;川「なっ…!!」

( A )「無駄だ。俺にはもう銃弾など通用しない」

('、`*;川「!!」

その後、ペニサスは2回引き金を引いた。
そのうち一つは完全に避けた。
もう一つは…銃口から現れなかった。

('、`*;川「!!」

( A )「弾切れだ。自分の銃弾の数くらい把握していなかったか」

俺はペニサスの元へ駆け出す。
139 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:02:35.03 ID:EbabBS8lP
('、`*;川「くっ!!」

ペニサスは戦闘態勢になり、俺を迎え撃つ準備をした。
来る。
正拳突きからのハイキック。
俺は右に首を傾け、突きをかわした。
そして、右から来るハイキックを右手で受け止めた。

( A )「隙だらけだ」

そのまま左手で足をつかみ、右肘をペニサスの脛にむけて振りおろす。
脛は鈍い音を立て、曲がった。

( 、 *;川「あ゛あ゛あ゛!!」

バランスを失い、ペニサスはよろけた。
もはやこの女は俺の敵ではない。

( A )「…………」


140 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:03:58.50 ID:EbabBS8lP
俺は思い切り力を込めた拳を、ペニサスの喉元に当てる。
そのまま背骨にまで威力は伝わり、骨にひびの入る感触が俺の手に戻って来た。

( 、 *;川「がっ……………!!」

ビリビリと衝撃が全身に伝わる。
ペニサスは首から体が曲がり、吹っ飛んだ。
ボロ雑巾のように地面に落ち、そのまま大量の血を吐いた

( 、 *;川「しょ……ショ……ボ…ン…さ………」



( 、 *;川「ま…………………………」


( A )「……………」


('A`)「………………」

俺は静かに目を開ける。
目の前にはうつぶせに倒れている女がいた。
144 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:05:21.76 ID:EbabBS8lP
('A`)「………あんたの依頼は終わりだ」

('A`)「…世話になったな」

俺はペニサスの胸をもう一度触った後、脱ぎ散らかされた服を拾い上げ、一つ一つ着ていった。
ここまで無防備な状態で戦ったのも初めてだ。
俺は全ての武器を拾い上げると、ロマネスクの元へ向かった。

('A`;)「ロマネスク!大丈夫か!!」

( ;Фω )「あ、ああ…なんとか大丈……」

( ;Фω )「ふっ……なんて不気味な顔だ」

('A`)「黙れ。殺すぞ」

なんとか息がある。
とりあえずは何とかなりそうだ。
俺はリュックから応急処置用具を取り出し、ロマネスクの治療に取り掛かる。

( ;ФωФ)「……………」

( ;ФωФ)「ドクオ……耳を貸せ」

ふとロマネスクが声をかける。
146 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:06:43.74 ID:EbabBS8lP
('A`)「…何だよ」

ロマネスクはとても真剣な眼差しをしていた。
何か重要な話だろうか。

( ;ФωФ)「吾輩の体では…ショボンを討ち取るのは不可能だ」

('A`)「まあそうだな…今のお前じゃ足でm…」

( #ФωФ)「最後まで聞け!!」

いきなり怒鳴り上げ、俺は少しばかり驚いた。
何をそこまで怒る必要があるんだ。

('A`;)「なんだよ…怪我人なんだから少しは黙ってろ」

( ;ФωФ)「いいか?…よく聞け。これから作戦を言う」

('A`)「作戦…ああショボンか」

( ;ФωФ)「お前は…いや、お前が……」



( ;ФωФ)「ショボンを殺せ」

149 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:08:37.61 ID:EbabBS8lP
―11:59:02―

( ;・∀・)「え…………」

俺は自分の耳を疑った。
彼は……フォックスさんは今何と言ったんだ?

( ;・∀・)「し……ショボンが………?え?」

爪'ー`)「……ああ。彼はモナーさんが40歳の時に誕生したモナーさんの実の息子だ」

( ;・∀・)「そ、そんな馬鹿な………!あの人に子供がいたなんて……」

俺は知らなかった。
いや、フォックスさんの口ぶりを見れば恐らくは「Player」誰一人として知らなかっただろう。
何故それが…モナーさんの死後発覚したのだ?
いくらなんでも都合が良すぎる。

( ;・∀・)「そんなことを言われても信じられる訳無いじゃないですか……」

爪'ー`)「……そうかもしれないな…だがこれは真実なんだ。ショボンはモナーさんの血を受け継いだ唯一の子供だ」

150 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:10:11.40 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「………何故そう言い切れるんですか」

爪'ー`)「これは…モナーさんが渡してくれた唯一の証拠だ」

そう言うと、フォックスさんは一枚のギフトカードのような大きさの紙をポケットより取り出した。

( ;・∀・)「何ですかこれ…」

爪'ー`)「…『ダイアモンドペーパー』…というものを知っているか?」

( ;・∀・)「だっ…!!」

俺はフォックスさんからその紙を奪い取った。
紙にはモナーさんとショボンが血の繋がっている関係だと記されていた。

『ダイアモンドペーパー』

これは世界に数本しか生えない珍樹『ダイアモンド』から作られた紙の事だ。
『ダイアモンドペーパー』はとても高価で、発展途上国では国家予算の全額を叩いてもB5サイズ1枚すら買えない程だ。
『ダイアモンドペーパー』はとても丈夫で、燃やしても濡らしても全く紙に影響がおきない。
斬ることも破く事もできない文字通り『ダイアモンドの紙』。

この紙にはダイアモンドの樹液を混ぜた特別な塗料以外は染み込まない。
152 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:11:46.86 ID:EbabBS8lP
世界に全く出回らない上に、高価な事から、複製は不可能。
偽物を作っても直ぐに見破れる程の代物だ。
それゆえに、その紙にかかれた事は絶対であり、存在を消すことができない。

( ;・∀・)「ほ…本物だ………」

俺は大統領という立場上、様々なダイアモンドペーパーを見てきた。
なのでこれが本物かどうかなど一目見ればわかる。
この紙は…この文字は間違い無くモナーさんの字だ。

( ;・∀・)「でも…どうしてこれを…?」

俺が真剣にフォックスさんを見つめると、フォックスさんは一度頷いた後、こう続けた。

爪'ー`)「…直接渡されたんだ。モナーさんから」

( ;・∀・)「なっ………!!」



( ;´_ゝ`)「モララー!」

その瞬間、横の扉を開けて一人の男が入ってきた。
兄者だ。
154 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:13:09.62 ID:EbabBS8lP
兄者は大きなバッグを担ぎ、強く息を荒げていた。

( ;・∀・)「ど、どうした…?」

兄者は一度呼吸を整え、唾を呑みこんでから言葉を発した。

( ;´_ゝ`)「シベリアの洗脳は解除した。もう奴らがVIPを襲うことは無いだろう」

( ;・∀・)「!!……そ、そうか…」

俺は素直に喜べずにいた。
それはシベリア陥落よりも衝撃的な事実を目の前にしていることと、
兄者が安堵を許さない程焦っているような表情でいること、の二つの要因が重なっているからだ。

( ;´_ゝ`)「だからお前はラウンジを落とすことだけを考えろ。俺は………」

その時、ふと兄者の視線が横に逸れた。
その先には、フォックスさんが立っていた。

( ;´_ゝ`)「あ…………」

爪'ー`)「…ずいぶんと慌ただしいね」

( ;´_ゝ`)「フォックスさん………………」


155 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:14:51.59 ID:EbabBS8lP
兄者はだんだんと息を整えながらフォックスさんを見つめる。

( ;´_ゝ`)「すいません……まさか弟が……」

兄者は肩を震わせながら俯いた。
コイツも少なからず、自責の念を抱いていたのだろう。

爪'ー`)「……気にする事はない。君が『Player』を抜けた訳じゃないんだから」

( ;´_ゝ`)「でも………」

爪'ー`)「もし、私の言葉だけでは足りないのならば、今、君がしなければならないことを全力でやりなさい。それこそ、責任を果たすまで」

( ;´_ゝ`)「……………………………」

( ´_ゝ`)「…………はい」

兄者はこっくりと頷いた。
その顔には先程までの焦りの表情ではなく、自信に満ち足りた血色の良い表情があった。

156 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:16:02.02 ID:EbabBS8lP
( ・∀・)「それで…兄者。なんだその荷物は」

( ´_ゝ`)「ああ………そのことなんだが……」


( ´_ゝ`)「俺は今から…シベリアへ向かう」

( ;・∀・)「シベリアに?……何でだよ」

俺は眉間に皺を寄せながら兄者に尋ねた。
一体今更シベリアに何の用があると言うのか。

( ´_ゝ`)「なに、アイツ………いや俺達に精算を着けようと思ってな」

兄者は一度口角を上げると、バッグを担ぎ上げ部屋を出て行った。
兄者の言う精算が何を指すのか分からなかったが、アイツにも何か考えがあるのだろう。
俺はそれ以上奴に詮索をかけようとは思わなかった。
それよりも今、気にかける事は他にある。

160 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:21:51.31 ID:EbabBS8lP
爪'ー`)「…彼は一人でも大丈夫なのかもしれないな」

( ・∀・)「フォックスさん…そんなことよりも…」

爪'ー`)「ああ…君は気になっていたねショボンの事を」

兄者が現れた事により一時話が中断してしまったが、聞かないわけにはいかない。
これは奴と戦う上でも最も重要になる話だ。

( ;・∀・)「ショボンはこのことは……」

爪'ー`)「知らずに育ったんだろう………今までは」

今のショボンは知っているかのような口ぶりだった。
まあそうだろう。
機密情報を手にするのはアイツの専売特許だ。
実力のついたアイツなら充分に可能性はある。

( ・∀・)「モナーさんは…いつフォックスさんに告げたのですか?」

爪'ー`)「………死ぬ前だ」

( ・∀・)「ですからそれは…」

爪'ー`)「死んだその日だよ」
162 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:23:03.43 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「え…………?」

爪'ー`)「…私は……モナーさんが死んだその日に……あの人と会っていたんだ」

フォックスさんは窓際まで歩き、窓の外を見つめる。

爪'ー`)「モナーさんはもう長くは無い。それはあの人が一番よく知っていただろう」

爪'ー`)「だから私にだけそっと話してくれたのかもしれないな」

気が付けば俺は口を開けたまま静聴していた。
まさかあのモナーさんとショボンに同じ血が通っていたなんて…。
これはもう揺るぎようのない事実のようだ。
だが……………。

( ;・∀・)「ショボンの話をしたその日にモナーさんは殺されていたと?」

爪'ー`)「ああ………」

( ;・∀・)「それはおかしいですよ。だったら何故その話の前ではなく後にモナーさんは殺されたんですか?」

俺はその答えを待っていたかのように素早く言葉を返した。
こんな矛盾だらけの小咄、あるわけが無い。
164 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:24:07.05 ID:EbabBS8lP
話を聞く限りでは、モナーさんを殺すきっかけとなったのはモナーさんがフォックスにした会話、
すなわち『ショボンがモナーさんの息子だ』という話のことだろう。
ならば何故その話が人に伝わる前にモナーさんを殺さなかったのだ?

爪'ー`)「ああ。確かにその通りだ君がそう思うのも無理はない」

( ;・∀・)「それに何故モナーさんは死に、フォックスさんは生きているんですか?殺すなら情報を得ているフォックスさんを殺すべきだ」

爪'ー`)「……」

( ;・∀・)「……………?」

その時、俺は奇妙な違和感を感じた。
何だ?この腹に重く溜まるような気分は…。

爪'ー`)「機密情報が余所に知られようとした場合、情報が伝わる前に経路を絶つ」

爪'ー`)「これは我々の世界では当たり前の事だ」

その通り。
俺達はガキの遊びをやっているのでは無い。
裏世界の最高峰「Player」なのだ。
その俺達がそんな幼稚なミスをしていいわけがない。
167 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:25:45.56 ID:EbabBS8lP
爪'ー`)「そもそもこの疑問にはある前提となる疑問が存在した」

爪'ー`)「何故、この先長くもないモナーさんはこのタイミングで殺されなければならなかったのか」

( ;・∀・)「もしかして………!」

その時、俺はハッとなった。
俺がこの真実に何故辿り着けないのか。
それは、俺がその場にいなかったからだ。

( ;・∀・)「……遺言には……続きがあるんですね?」

爪'ー`)「………ああ」

その話を聞けば、俺は全てを知ることが出来るだろう。
それこそ、フォックスさんが十分に語らなくとも。

爪'ー`)「モナーさんはショボンの事実を私に伝えた後、こう続けたんだ」

168 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:27:03.84 ID:EbabBS8lP
爪'ー`)「『これから死ぬ人間が謝っても、伝えた側には負の感情しか湧かないだろう』」


( ´∀`)『今までショボンに偽っていた事、隠していたことを謝るつもりはない』


( ´∀`)『ただ…フォックス、君にこれを伝えたのは……頼みがあるんだモナ』


( ;・∀・)「!!……」

俺はその時ようやく気付いた。
フォックスさんの話に感じた妙な違和感。
それはモナーさんの事でも、ショボンの事でも、俺の事でも無い。
語り手…フォックスさんに対してだ。

何故彼は俺にこの話をしたのか。
何故彼はそんなにも悲しそうなのか。


( ´∀`)『もし、ショボンの身に何か災いが降り懸かるのならば…』



爪'ー`)「君が…アイツを、ショボンを守って欲しい』( ´∀`)


そう言うと、フォックスさんは胸ポケットから拳銃を一丁取り出した。
171 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:28:05.14 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「なっ………!?」

俺に向けられた銃。
それを握っているのはフォックスさんだ。
突き付けられた時は何が起きているのか全く分からなかった。
が、数秒後にやっと状況を把握することができた。

( ;・∀・)「…正気ですかフォックスさん…」

爪;'ー`)「すまない…分かっているんだ…こんな事に何の意味も無いことも」

爪;'ー`)「『Player』の掟に反していることも」

( ;・∀・)「だったら何故…」

爪;'ー`)「だが!………できないんだよ」



爪; ー )「あの人が最後に残した言葉を……無下にすることは…」

( ;・∀・)「…………」
173 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:29:08.83 ID:EbabBS8lP

やられた。
真っ先に思った感想だ。
全てはアイツの…ショボンの計画通りだったのだ。

ショボンはなんらかの形でモナーさんの息子だと言うこと、次期ボスは「ゲーム」によって決めるという事を知る。
そこでショボンは弟者と手を組み、モナーさんを殺す計画を立てた。
殺す時期は、モナーさんがフォックスさんに遺言を残した直後。
そしてフォックスさんに他言するような時間を与えない間だ。

ショボンは知られたくなかったのではない。
フォックスさんに伝えたかったのだ。
ショボンは待っていた。
モナーさんの口から発する「ショボンを守ってくれ」という言葉を。


フォックスさんはモナーさんに生涯仕えた人だ。
彼がモナーさんの言葉を全て聞くのは「Player」ならば誰もが知っている事実だ。

ショボンはそのフォックスさんの心を利用したのだ。


174 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:30:11.10 ID:EbabBS8lP
フォックスさんの手によって内部から「Player」を崩壊させる、それがアイツの計画だったのだ。
自らモナーさんやブーンを殺したと自白したのも、
フォックスさんに自分が危機に陥っていると悟らせる為だ。

爪; ー )「頼む…ショボンを見逃してくれ…この通りだ」

( ;・∀・)「…駄目です。いくらフォックスさんの頼みと言えど、それを認めるわけには…いきません」

爪; ー )「頼む……だとしたら……私は…私は」


爪; ー )「君を殺してでも止めなければならない」

ああ…。
この人は…本当にモナーさんを尊敬していたのだ。
この人にとってモナーさんは全てなのだ。

( ;・∀・)「で、できません!……アイツは…ショボンは俺達の誇りを潰したのですから!!」

爪; ー )「………………」

爪; ー )「そうか……」
177 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:31:30.07 ID:EbabBS8lP
爪; ー )「ならば………君を殺すしか無いようだ」

( ;・∀・)「!!」

まずい。
この距離では彼の銃弾を避けることはできない。
かといって俺に対抗出来るような武器がある分けでも無い。
どうする?
どうする!


爪; ー )「すまない……許してくれ」

( ;・∀・)「フォックスさん!!」





一発の銃声が部屋に鳴り響いた。







180 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:33:33.19 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「あ……………」

爪; ー )「!………………」



その銃弾は、俺に当たることは無かった。
いや、そもそも銃弾はその銃から出ていなかった。
銃弾が当たったのは……





フォックスさんだった。






182 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:34:46.46 ID:EbabBS8lP
爪; ー )「な………に……」

フォックスさんは膝を着き、背中から血を流しながらその場に倒れた。
フォックスさんの後ろには、一人の男が立っていた。



( ;><)「あ………ああ……」

( ;・∀・)「び……ビロード」

( ;><)「だ…大統領…!!お怪我は…お怪我はあ、ああありませんか!!」

息を荒げ、歯をガタガタと鳴らし、銃を持った手は震えていた。
人なんかまともに撃った事など無いくせに、俺を守る一心でこいつは銃を握ったのだ。

( ;・∀・)「……………ああ」

ふと、その姿がフォックスさんと被って見えた。
ああ、フォックスさんもこんな感情を背負っていたのか。
184 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:36:05.12 ID:EbabBS8lP
(  ∀ )「フォックスさん………」

俺はフォックスさんのもとに近付く。
背中に当たった弾丸は深く食い込んでいた。
脈はある。
まだ生きているようだ。

( ;><)「き、危険です大統領!」

(  ∀ )「いい…大丈夫だ。それよりも救護の手配を」

( ;><)「へ?いや、でも………」

(  ∀ )「さっさと医者を呼んで来い!!!」

( ;><)「は、はいなんです!!」

俺が怒鳴ると、ビロードはそそくさと部屋を出て行った。
俺は横たわったフォックスさんの手を握る。

(  ∀ )「ショボン………」
186 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:37:54.79 ID:EbabBS8lP
どこまで俺らを馬鹿にすれば気が済むんだ。
どこまで俺らの誇りを…名誉を汚せば済むんだ。

( ;><)「救急車を手配しました!あと3分ほどで着くんです!」

(  ∀ )「何の用だ?」

( ;><)「へ?」

(  ∀ )「さっき部屋に入って来ただろう」

( ;><)「あ、ああ!あの…ラウンジ軍なんですが、どうやら」

(  ∀ )「…見えたのか」

( ;><)「あ、はい!水平線上に!」

(  ∀ )「そうか………」

俺は立ち上がり、フォックスさんの手を離した。

(  ∀ )「ビロード…さっきは助かった。感謝する」

( ;><)「い、いえ!自分は当然のことをしたまでです!」

188 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 20:39:14.88 ID:EbabBS8lP
(  ∀ )「全軍を、海岸につくように手配しろ」

( ;><)「は、はい!!」

ビロードはそういうと小走りに去って行った。
俺は窓際まで歩き、外に広がる広大な海を見た。
この海に奴の駒がいるのだ。

(  ∀ )「……ショボン。受けてやるよ」

(  ∀ )「お前の下らない思想……お前の下らない足掻き……」

( ・∀・)「全て俺が噛み砕いてやる……」





( ・∀・)「お前が使おうとした手段でな」




209 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:07:29.73 ID:EbabBS8lP
―12:39:44―

ξ#゚听)ξ「遅い!!」

( ;´_ゝ`)「すまない。いろいろあって」

俺は車から降り、ツンに駆け寄った。
朝会ったとは思えないほど時間が経過した気がする。

ξ゚听)ξ「あんたが頼んだから用意したんじゃないの…」

( ´_ゝ`)「ああ…助かった」

俺は先程の電話でツンに一つ頼みごとを伝えておいた。

『シベリアに行きたい。一番速く飛ぶ乗り物を用意してくれ』

こんな曖昧な伝言でよく用意してくれたものだ。
深くツンに感謝する。

( ´_ゝ`)「それで…これがその…一番速いという…」


210 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:08:44.90 ID:EbabBS8lP
俺の目の前にはステルス戦闘機のような風貌をした小型飛行機があった。
見るからに速そうだ…。
はたらくくるまに関しては全くのど素人である俺としてはこれ以上の感想を述べることができなかった。

ξ゚听)ξ「速いってもんじゃないわよ最速よ。世界最速」

( ´_ゝ`)「…よくそんなもんを用意できたな」

ξ゚听)ξ「あんたが用意しろって言ったんでしょ」

まさかそんな二つ返事に用意できるものじゃないだろ。
コイツはきっと4次元への入り口を知っている。
そう確信した。

ツンは飛行機のハッチを開け中に入る。
続いて俺も乗り込み、椅子に置いてあったヘルメットを被る。

( ´_ゝ`)「ツン……………」

ξ゚听)ξ「?何よ」

( ´_ゝ`)「………………いや、何でも無い」

ξ;゚听)ξ「…………………?」

今言うのはよそう。
全てが終わってから……ツンに伝えよう。

( ´_ゝ`)「さあ行こう。シベリアに」
212 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:09:50.50 ID:EbabBS8lP
―12:34:36―

目の前に広がる高層ビルの数々。
この建物よりも高く、一番近いものでも200mも離れている。
しかしその大きさがその遠近感を掻き消していた。

(´・ω・`)「やるじゃないかモララー…」

まさかアイツがここまで戦略を張ってくるとは思わなかった。
これには流石の僕も想定外だ。
僕は立ち上がり、窓から離れ監視カメラのディスプレイを見る。

(´・ω・`)「…まあ君との戦いは後日のお預けにしようか」

VIPに攻撃を仕掛けることなどいつでもできる。
問題はこの国…いや、この建物に侵入した2匹の蝿だ。
監視カメラにうつった様子だとどうやらペニサスは殺されたようだ。

無理もない。
相手は「Player」だ。
所詮、常人が勝てるわけもないのだ。

(´・ω・`)「さてと…ここに来るのはドクオか」

彼らの情報は全て耳にした。
壁に耳ありとはよく言ったものだ。
この建物の中で発せられた声は全て僕の耳に入るようにしてある。
君達の作戦も大雑把に把握したよ。
214 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:11:07.23 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「フフフ…ロマネスク……君の作戦、楽しみにしているよ」

どんな仕掛けでも構わない。
僕はそれを打ち崩して見せようじゃないか。
僕の目の前にはとても長いテーブルとそれに沿って置かれた椅子。
部屋の壁一面に巨大な水槽を何十と並べた。
この水槽がある限り、僕が負けることはないだろう。

僕は椅子を引き出してそっと腰を掛けた。
ふと時間が気になり、腕時計を見る。
時計の針は13:40を指していた。

(´・ω・`)「ん……足音が聞こえるね」

もうそろそろか。
あの扉の向こうに、僕が戦うべき人間がいる。


扉がゆっくりと開く。
そこには一人の男が立っていた。



('A`)「…ようショボン」
217 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:12:20.61 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「あれ?ロマネスクは?」

扉の向こうを見渡しても彼の姿は見当たらない。
一体どうしたというのか。

('A`)「アイツは戦力にならないからな。一休みしてからここに来る」

唇を強く噛み締め、笑うことを必死で堪える。
ロマネスクが休憩?
もっとマシな嘘は無かったのか。
君達の情報は全て筒抜けになっていることくらい分かっているだろう。

(´・ω・`)「まさかそんな下らないジョークを言いにここまで来たの?」

('A`#)「……ああ?」

(´・ω・`)「ロマネスクは僕を狙ってる。今はその準備でもしてるんじゃないの?」

('A`;)「………………」

ドクオの額に汗が溜まる。
まあ図星なのだろう。
彼は囮だ。
その隙にロマネスクが何かを仕掛けるつもりだろうけど……。

(´・ω・`)「まあ何を仕掛けて来るかは知らないけど……試してみなよ」


(´・ω・`)「頑張って……出し抜いてあげるから」

218 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:14:00.61 ID:EbabBS8lP
ああ、何て楽しいんだろう。
追い詰めているつもりの人間を追い詰めるのは。
僕はこの国の全てを支配したんだ。
君達の策略を躓かせる事くらい造作も無いさ。

ドクオがこの部屋に来る前に、このビルにラウンジ兵を何十人か手配した。
この部屋以外の全ての部屋を捜索させ、不審な物や人を見つけ次第対処するよう命令しておいた。
ロマネスクが捕まるのも時間の問題だろう。
仮に、既に奴がこの部屋に潜んでいるとしても問題ない。

たかだか瀕死の人間が一人加わっただけだ。
僕一人で何とかなる。

(´・ω・`)「ああ、そうそう。ドクオ」

('A`)「……?何だよ」

(´・ω・`)「その銃は仕舞った方がいいよ」

僕は部屋の全ての壁に配置した水槽の一つを軽くノックした。

('A`)「さっきから気になってたんだが、こりゃあなんだ?」

(´・ω・`)「フフフ……この中にはねえ……液体爆弾が入っているのさ」

('A`)「液体爆弾……?」

219 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:15:20.65 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「無色無臭の液体爆弾だよ。普通にしてれば何も起こらないさ」

(´・ω・`)「……中身が零れたりしない限りはね」

('A`)「………そう言うことか」

ドクオは理解したようで銃をホルスターに仕舞った。
背中に背負っていた荷物を降ろし、全ての武器を捨てた。
理解が早いのはいいことだ。

('A`)「つまり、銃や爆弾……何かしら一度でも水槽に触れた瞬間に俺達はどちらもバイバイってことか」

(´・ω・`)「そうだよ。まあ僕の牙城でどちらもバイバイって事は難しいだろうね……」

('A`)「だが、それだとお前も俺を殺せないんじゃ無いか?」

(´・ω・`)「そうだね。だからこうしよう」

そう言うと僕は部屋に飾られた鎧像に向かった。
中世ヨーロッパで騎士達が着用していたと言う白銀の鎧。
そのガントレットには2本の長剣が握られている。

僕はその2つの剣を取り、そのうちの1本をドクオに向けて投げつけた。
ドクオはその剣のグリップをさっと掴んだ。

('A`)「……?これで斬り合えってか?」

(´・ω・`)「観賞用の剣だけれど切れ味は本物だよ」

220 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:16:55.24 ID:EbabBS8lP
これなら水槽を気にすることなく戦えるだろう。
剣を渡したのは僕なりのハンディだ。
最後の殺し合いは国を操る男と、世界最高の殺し屋の騎士道精神に乗っ取った決闘。
なんて栄える図なのだろう。

('A`)「やる前に一つ聞かせてくれ」

ドクオは何の躊躇いもなく剣を構えた。
剣先を僕にむけて。

('A`)「何でモナーさんを殺した?」

(´・ω・`)「……だから殺したのは僕じゃなくて弟者…」

('A`#)「同じだろうが!!」

つまらない男だ。
せっかく良質なジョークを言ったと思ったその矢先にこれだ。
逆に僕のほうこそセンスのかけらも無い質問を垂れ流す意味を問いたい。

(´・ω・`)「まあ、いいよ。どうせここでどちらかは死ぬんだ。答えようじゃないか」

そもそも今さら動機なんて何の意味も持たない。
彼らが賛同するとは思えないし、僕を更正させようものなら尚更だ。
全く……この情報は高くつくぞ。
222 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:18:10.68 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「実はね……僕はモナーさんの……、あの人の息子だったんだ」

('A`;)「なっ……!!」

瞬時にドクオの額に汗が湧き出た。
あの驚きようは演技ではできないだろう。
まあこの事実を知るのには少々時間が足りなかったか。

(´・ω・`)「本当だよ。むしろそのくらいの理由じゃないと納得できないでしょ?」

('A`;)「どういうことだ……?」

(´・ω・`)「僕はね、今までずっと孤児として育てられたんだ」

親がいない。
「Player」の訓練生の僕らの唯一の共通点だった。
身寄りの無い僕らはあの人の為に必死で訓練に励んできた。
モナーさんは唯一の肉親だったからだ。

彼に見放されたらまた孤独に戻ってしまう。
僕達はそれを恐れていたのかもしれない。
この気持ちは……ドクオ、君にもわかるだろう?

(´・ω・`)「そして……僕は知ってしまった。驚愕の事実に」

僕とモナーさんの血を繋げる一枚の紙。
情報屋として生きている僕がその紙の存在を知るのにそう時間はかからなかった。
233 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:43:34.69 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「僕はびっくりしたよ。まさかこの自分があの人と同じ血が流れているなんてね」

('A`)「なら良かったじゃねえか。俺なら泣いて喜ぶね」

(´・ω・`)「……話はまだ続くんだよ」

僕は喜んださ。
自分の父がモナーさんだったなんて願ったりかなったりだ。
何故モナーさんがその事実を隠していたのかも大人になれば何となく理解できる。
組織運営に個人的な感情を出したくなかったのだろう。

(´・ω・`)「だが……その情報と共に、僕はもう一つの事実を知ってしまった」

('A`)「もう一つの……事実?」

(´・ω・`)「僕はあの人とレモナという女性の間に生まれたんだ」

レモナ。
モナーさんの伴侶となった女性。
僕は彼女の存在を知ってから、その人について徹底的に調べ上げた。
そこで僕は驚愕の事実を知った。

(´・ω・`)「レモナさんは僕を生んだ2ヶ月後に死んだ」



(´・ω・`)「モナーさんが殺したんだ」

234 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:44:48.58 ID:EbabBS8lP
('A`;)「あ?あ?どういうことだ?」

(´・ω・`)「そのまんまさ。モナーさんは僕の母親を殺したんだ」

('A`;)「モナーさんが…?なんで……」

ドクオは信じられないというような顔をしていた。
無理もない。
彼の中ではモナーさんは繋がりを大切にする仁義のある男だからだ。

(´・ω・`)「流石の僕も何故モナーさんがレモナさんを殺したのかまでは分からなかった。だけど……」

(´・ω・`)「僕には殺したという事実だけで十分だった」

繋がりを…親しみを愛した男に僕の母は殺された。
僕の繋がりを奪ったのだ……あの人に。

('A`;)「何だよ……お前の動機はただの仇打ちじゃねえか」

(´・ω・`)「そんな簡単な問題じゃないよ……それに僕は母の為にモナーさんと対峙したわけじゃない」




(´・ω・`)「僕もモナーさんが知らない場所でモナーさんの大切なものをぶち壊したくなっただけなのさ」
237 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:46:25.00 ID:EbabBS8lP
まずい。
今まで我慢していたものが出てきそうだ。

('A`;)「は……?」

(´・ω・`)「彼はもう死んだ。この世界にあれこれ言うことはできない」

('A`;)「なんだよそれ……」

(´・ω・`)「死後の世界には興味無いけどね。でもきっとモナーさんが僕達のことを天国で見ているとしたら……」

堪えろ……。

堪えろ……。


いや……………駄目だ。



僕は口から唾を吐きだし、大声で笑い上げた。



(´・ω・`)「想像しただけで笑いがwwwwwwwwwww止ま、止まらないよwwwwwwwww」

239 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:47:53.56 ID:EbabBS8lP
('A`#)「お前……………!!」

(´・ω・`)「だって考えてみなよwwww自分が大切にしてきた組織をwwwwwww」

(´・ω・`)「組織を大事にするために守ってきた僕への秘密をwwwwwww」

(´・ω・`)「僕に知られたせいでその組織が今まさに潰れようとしているwwwwwwwwww」

なんて我慢の弱い男なんだろう。
つくづく自分が嫌になる。
こんなところで吹き出してしまうなんて……。

('A`#)「黙れ!!『Player』は終わらねえ!!」

ドクオが笑い転げる僕に怒鳴った。
ドクオの真面目な顔を見て、さらに笑いがこみあげてきた。
駄目だ。笑うなと思えば思うほど笑ってしまう。

(´・ω・`)「まさかwwwwwwwwwwもう終わったよwwww」

(´・ω・`)「ブーンもクーも死んでwwwwwwwwwwwww」

(´・ω・`)「弟者と僕は寝返ったwwwwwwwwwwww」

(´・ω・`)「こんな組織になんの未来があるって言うのさwwwwwwww」
242 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:50:05.18 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「フッフフフ……それに……さらにもう2人……」

僕は剣を2度振り、ドクオに向ける。
今日、ロマネスクとドクオが……死ぬ。

('A`#)「いいぜ……もともとてめえに同情なんざ掛けてねえからな……」

ドクオも殺意を僕に向け、戦闘態勢になった。
さあ、同じ釜の飯を食った仲のお話もおしまいのようだ。
これからは敵同士、純粋な殺し合いを楽しもうじゃないか。
試合は少々っ古典的になるけれども。

(´・ω・`)「一つ言っておくけど……僕は接近戦が得意なんだよね」

('A`#)「奇遇だな……俺も殺し合いは得意だぜ?」

(´・ω・`)「さあ始めようか」





(´・ω・`)「どちらが正しかったのか……審判をね」
244 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:51:27.62 ID:EbabBS8lP
僕らは一斉に走り出す。
その目的地は相手の心臓だ。

ドクオは剣を振り上げ、僕の右肩を目掛けて振り下ろした。
僕は膝を曲げ、一気に跳び上がり、ドクオの剣線を避ける。
このくらいの距離を取れば、大丈夫だろう。

('A`)「何だ?逃げんのか?」

ヘラヘラと笑うドクオ。
流石に彼が勝ち誇っているとは思わないが……まあ挑発だろう。

(´-ω-`)「一撃…………」

('A`)「ああ?」

(´・ω・`)「たった一つの攻撃で、相手に致命的な情報を与えることもある」

('A`)「…………今の剣に何の情報があるって言うんだよ」

(´・ω・`)「君の視点ではそれが限界かもしれないね」

断言させてもらおう。
この勝負は僕の勝ちだ。
君はその一振りで僕にたくさんの情報を与えてしまった。
246 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:53:00.34 ID:EbabBS8lP
リーチの長さ、駆け出す速度、最初に出す足の左右、目線、次の判断を決めるまでの時間……。
たった一撃でこの情報量。
次の攻撃を見れば、大方の癖やスタイルは見抜いてしまう。
接近戦とはこうやって相手を見ることに真髄があるんだよドクオ……。

(´・ω・`)「じゃあ、次は僕から行こうか」

僕は駆け出し、ドクオに向かって剣を地面と平行に振る。
ドクオは刃先を真っ直ぐ下に向け僕の攻撃を受け止めた。
すかさず僕は剣を引き離し、別の角度から攻める。

コンマ数秒の差でドクオも反応し、僕の剣に剣を当てた。

('A`)「はっ…!運動は久しぶりか?」

(´・ω・`)「心配かけてごめんね。でも問題無いから気にしないで」

ドクオが切り掛かる。
僕はその攻撃を防いだ。回数は3回。
妥当な数字だろう。

ドクオ……悪いが君の動きは全て見切ってしまった。
戦いの場において最も考えなければならない事は敵の思考だ。
情報はその思考を考慮する上で欠かせないもの。
一つの行動、一つの反応が全て情報となり、それは思考の鏡になる。

(´・ω・`)「君は自分の事だけを考えなよ」

247 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:54:16.34 ID:EbabBS8lP
ドクオのリーチはつま先からおよそ歩幅4.5歩分。
前に出した足の着地から剣を振るまでの時間はおよそ0.54秒。
傷の箇所や深さまでも特定できた。
これだけの情報があれば相手の動きを予測することなど容易だ。

(´・ω・`)「まあ、いいウォーミングアップになったよ」

僕は肩の力を極限まで落とし、剣に意識を寄せる。
ドクオの体を隅々まで見る。
彼が無意識のうちに庇っている場所がハッキリとわかった。

わざわざ狙って下さいと言わんばかりの態度。
これは向かわないと相手に失礼だろう。
僕は手元にあったテーブルの椅子を掴み、一振りにドクオへ投げつけた。

('A`)「!!」

ドクオはとっさに右に逸れ、椅子から避けた。
いい判断だ。
もし椅子に何か仕掛けがあってはいけないからね。
しかし、君の思考はもう読めてしまっている。

(´・ω・`)「こっちだよ」

僕はドクオの着地点まで攻め込んだ。
ピッタリ予想通りと言う訳では無かったが、十分間合いの範囲内だ。
251 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:55:54.42 ID:EbabBS8lP
('A`;)「ちっ!!」

ドクオは直ぐ剣を構え、僕の攻撃を弾いた。
その隙に僕はドクオの脇腹に蹴りを入れる。
ドクオも咄嗟に腕を閉じ、僕の蹴りを防いだ。

('A`;)「ぐっ!!」

(´・ω・`)「まだだよ」

その体勢から僕は剣を振る。
目指すは彼の足。
ドクオは右手の剣を床に突き刺して身を守る。
この流れも予想通りだ。

僕はドクオの剣に当てずに、床に着いている足を軸に回転する。
そのまま剣を伸ばしドクオの肩を狙った。

('A`;)「うおっ!!」

ドクオはしゃがみ込み、僕の斬りを回避。
直ぐさま剣を抜き、真上から振り下ろされる僕の攻撃を防いだ。

(´・ω・`)「ん〜……速いねえ」

('A`#)「てめえが言葉を吐くと耳から腐っていく気がするから辞めろ……」

(´・ω・`)「フフフ……」

252 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 21:57:19.95 ID:EbabBS8lP
僕達は剣を弾き、距離を取った。
ドクオは相変わらず脇腹を庇っている。
一見すると分からないが、重心の傾きや、剣を構えた位置を判断すればよく分かる。
まだペニサスの傷は癒えていないんだろう?

('A`#)「お前……殺す気あんのか?」

(´・ω・`)「何を言ってるんだい?僕は殺意満々だよ」

('A`#)「だったらちまちま距離なんか取らねえでさっさと来いよ」

(´・ω・`)「……………」

どうやら君は喋るのが本当に苦手なようだね。
君は大分限界が来ているようだ。
挑発をしたのも、できる限り決闘を短く終わらせたいのだろう。

その点に関しては本当に謝らなければならない。
僕はのんびり屋なんだ。

(´・ω・`)「君はちゃんと殺してあげるよ?……でも」

(´・ω・`)「殺すのはじっくり……ゆっくりね」

僕は剣で彼の輪郭をなぞる。
ここまでくれば、僕の組み立てたレールは完成する。
後は彼をそのレールの上に乗せるだけだ。
256 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:03:19.59 ID:EbabBS8lP
('A`#)「ああそうかい!見当違いな結果になって残念だったな!」

ドクオはもう一度駆け出し、僕に剣を振りかざした。
僕もそれに従い剣でガードを……。

(´・ω・`)「いや、違うね」

これはフェイク。本当の攻撃は蹴りだ。
僕は、ドクオの足と僕の腹の間に左腕を挟み、蹴りをガードする。
そして、この攻撃すらもフェイク。

僕は剣を構え直し、突いてきたドクオの剣を払う。
ドクオも足を外し、体勢を整え直ぐに僕に向かってきた。
剣と剣がぶつかり合う。

('A`#)「まだ終わらねえ!!」

(´・ω・`)「僕も終わらせるつもりはないよ」

ドクオは力任せに何度も剣を振ってきた。
僕もそれを一つ一つ丁寧に対応する。

257 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:05:02.39 ID:EbabBS8lP

('A`;)「ぐっ……くそっ!!」

それから10分くらい経った頃だろうか。
ドクオに焦りが見え始めた。
剣に若干のブレが現れ、呼吸が荒くなっている。
そろそろ彼も限界に近付いてきたようだ。

(´・ω・`)「どうしたの?疲れてきたの?ねえ」

('A`;)「ああ?てめえの相手をするのは疲れるに決まってんだろ」

額に脂汗をびっしょりかいて何か言ってるよ。
立っている事すらも辛いくせにね。

さて……そろそろかな。
ロマネスクもまだ仕掛けてはこないようだ。
彼が何か仕掛ける前に、こっちを片付けておいた方が良い。

(´・ω・`)「それじゃあ、ドクオも辛そうだし……終わりにしよう」

('A`;)「は?」

僕はしゃがみこみ、ドクオの足を狙って剣を振った。
261 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:09:51.35 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「もうね、全てタイムオーバーなんだよ」

僕は彼の腹を蹴りつける。
それと同時に剣を持っていた方の腕を掴んで、剣の柄で思い切りドクオの手を叩いた。
その衝撃でドクオは持っていた剣を手放した。

( A ;)「ぐっ……があ!!」

その後、隙だらけになったドクオに何発もの蹴りを入れ、最後に顔面にフックを一発入れた。
ドクオは盛大に吹き飛び、床に転がった。

(´・ω・`)「うん、もうその様子じゃあ……僕には勝てないよね」

( A ;)「くそっ……負けて……たまるかよ……」

僕はずりずりと這い上がろうとする彼の胸倉をつかみ、首に剣を添える。

(´・ω・`)「まだ分からないのかい?君は負けたんだ」

( A ;)「まだだ……負けてねえ」

(´・ω・`)「……ああ、何のことを言っているかと思ったらロマネスクのことか」

なるほど。
どうやら彼はあの死にぞこないに賭けているようだ。
確かに彼が僕を仕留めればそれは君の勝ちだろう。
264 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:12:35.56 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「元々君よりも怪我を追っていた彼に何ができるかなんてわからないけどね」

一体何を仕掛けてくるとういうのだろう。
隙を狙って僕を殺すのかな?
それは無理だ。

いま、この部屋には液体爆弾が等間隔に置かれている。
ネズミにでも変装しない限り、体積的に不可能だ。
屋根の上や下のフロアには見張りを何人も付けている。
天井や床からの侵入も不可能だ。

そして唯一の出入り口であるドアも僕らの前に存在する。
仮にここから入ってきたとしても僕に奇襲をかけることはまずできない。

それじゃあこの建物自体を爆破するのかな?

それも違うだろう。
そもそもドクオは完全に囮じゃないか。
そんな下らない真似をする男とは思えない。

しかも、全ての部屋に捜索隊を手配している。
この建物に何か仕掛けをすることは不可能に近い。

265 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:14:06.26 ID:EbabBS8lP
( ∀ ;)「へっ……負けるのは……お前だショボン」

そう言うと、ドクオは僕の胸に力の無い拳を打ち付けた。
まったくもって意味の無いパンチだ。

( ∀ ;)「へっへへへへ…あっはははははははははは……ははははは」

(´・ω・`)「………………」

(´-ω-`)「……………………ああ、僕の負けだよ」

馬鹿馬鹿しい。
こんな糞みたいな連中と僕は戦っていたのか。
確かに時間を大幅に喰われたという点では僕は負けたようだ。

( A ;)「うっ……!!」

ドクオはひとしきり笑った後、苦しそうに肩を押さえた。
肩に刻まれた傷が相当痛んでいるようだ。
もはや彼に反撃する術はない。
ひと思いに殺してしまおう。



(´・ω・`)「さよならだ」

僕は剣をゆっくりと上げ、彼の首に振り降ろした。

267 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:15:10.32 ID:EbabBS8lP
(´・ω・`)「………………………」

彼の首に当たるほんの寸前、僕は手を止めた。
それは誰かの攻撃を受けたわけでも、ドクオに同情したわけでもない。
違和感だ。
違和感が僕に警報を鳴らしている。

( A ;)「…………………」

ドクオは今、肩の傷を押さえている。
おかしい。
僕はドクオの手を無理矢理肩から外した。

(´・ω・`)「……………?」

何故だ?
何故彼の肩に銃弾の跡がある?

何時だ。

ドクオは何時肩に銃弾を受けたんだ?

おかしい。

おかしい。

何かが……狂って……


パリン
271 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:16:34.17 ID:EbabBS8lP
その音は確かに聞こえた。
グラスが床に落ちて割れたような音。
音の発信源は明らかに僕でもドクオでもなかった。

(´・ω・`)「何が…………………」

その瞬間、僕は足に力が入らなくなり、その場に倒れこんだ。

(´・ω・`;)「な、………なんだ?何が起きた?」

僕は自分の体を確認する。
その時、背中から血が流れていることに気が付いた。
背中に触れた手が真っ赤に染まっている。

銃弾だ。

僕は狙撃されたのだ。

(´・ω・`;)「どこだ!?……ど、どこから………」

咄嗟に目の前に倒れている男を見る。
しかし、ドクオが撃ったような様子は無い。
だが、辺りにはロマネスクも見当たらない。

一体、何があったというんだ?
276 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:18:04.26 ID:EbabBS8lP
( ∀ ;)「お前の………負けだよ」

(;´・ω・`)「!!」

フラフラになったドクオがゆっくりと立ち上がった。
やはり…この男が何かをしたのか。

( ∀ ;)「そこの……窓ガラスを見ろよ。全てが分かるぜ」

(;´・ω・`)「窓……ガラス?」

僕はドクオが指さした方へ首を傾ける。
そこには2つの液体爆弾が入った水槽が2つ並んでいた。

(;´・ω・`)「あ、ああ……」

その2つの水槽の間、ほんの数センチの隙間から見える部屋の窓ガラス。
その窓ガラスに一つの穴が開いていた。
穴の周りはクモの巣のようなヒビが広がっていた。

(;´・ω・`)「まさか………まさかぁ!!」

僕は全ての謎が解けた。
まさか……そんなことが……。
279 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:19:10.70 ID:EbabBS8lP
( ∀ ;)「決めたんだよ……2人で役割を」


(;´ ω `)「あああああ……あああ…あああ」


ドクオ……いや、彼はゆっくりと自分の手を首まで持っていった。


( ∀ ;)「あいつがショボンをスナイパーで撃つ……そして」


(;´ ω `)「まさか……そんな馬鹿な…!!」


顎の端からペリペリと音を立てて何かが剥がれて行った。
そして、その男はかつらを取り、マスクを取った。




( ;ФωФ)「吾輩が………囮になると」


僕が今まで戦っていたのはロマネスクだったのだ。
287 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:21:36.28 ID:EbabBS8lP
肩の銃弾は僕がロマネスクに撃ったものだ。
ロマネスクは僕の目を盗み、ドクオに変装した。
その後、ドクオになり済ましたロマネスクは僕と戦った。
その隙をついて……ドクオが僕を撃ったのか。

(;´・ω・`)「ドクオは……どこに…いるんだ?」

( ;ФωФ)「ドクオは……その窓から見えるビルの屋上にいるのである」

(;´・ω・`)「ば、馬鹿な!!ここから一番近いビルまでどのくらい……!!」

そんな距離から僕を仕留めたというのか?
しかも……液体爆弾に触れることなく。
「天才」……その2文字が頭をよぎった。

( ;ФωФ)「この建物に見張りを付けることなど無駄だったのである……ショボン」

(;´ ω `)「フッ………フフフ……やってくれたねえ……」

負けた。
彼らの言うとおりだ。
僕は負けたのだ。



だが……僕の計画はまだ終わってなどいない。
290 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:23:01.92 ID:EbabBS8lP
(;´ ω `)「フッ……アッハハハハハハハハハ!!」

( ;ФωФ)「……………何がおかしい」

(;´ ω `)「僕は死んでも、僕が残す功績は死なないよ!」

僕は懐に手を伸ばす。
もはや僕に残された足掻きは一つしかなかった。
「ルーレット」でVIP本土を消滅させること。
このリモコンで国を一つ崩壊させるんだ。

( ;ФωФ)「………………………」

(;´ ω `)「モナーさんが育った土地……『Player』が生まれた土地……僕の手で……必ず葬ってやる!!」

僕はポケットの中に手を入れリモコンを探す。
これで全てが終わりだ。
「Player」は僕には勝っても、僕から何も守れやしなかったのさ。
これで……僕は何の悔いも………ん?

(;´ ω `)「あれ……おかしいな……くそ……」

無い。
無い。
「ルーレット」のリモコンが何度探しても見つからない。
293 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:24:30.01 ID:EbabBS8lP
(;´・ω・`)「一体……どこにしまった……」

その時、僕の目の前に、ロマネスクが近寄って来た。
僕は彼の顔を見上げる。

( ;ФωФ)「貴様が探しているのは……………これか?」

(;´・ω・`)「え?ああ…………………は?」



(´・ω・`)




彼の手には長方形の物体が握られていた。

(;´・ω・`)「え?…………」

何故だ?何故奴が「ルーレット」を持っている?
何時……何時取られた?

その時、僕の脳に一つの記憶が蘇った。


彼が力の無いあの拳を突きつけた……あの瞬間だ。

296 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:26:55.65 ID:EbabBS8lP
まさか、あの一瞬の間にスられたというのか。

( ;ФωФ)「吾輩たちの真の目的は貴様を殺すことではない」

( ;ФωФ)「貴様が所有していたこのリモコンを奪うことだった」

(;´・ω・`)「嘘だ……嘘だ………なんで、なんでこんな!!」

( ФωФ)「その為には貴様に吾輩が近付く必要があった」

変装したのはその為だ、とロマネスクは付け加えた。
動悸が、動悸が止まらない。
何故だ。僕の計画は完璧だったはずだ。

( ФωФ)「………貴様に知られること無くこの作戦を運ぶのには少々骨が折れたである」

( ФωФ)「しかし、貴様は自分のテリトリーに過信した。全ての敵の行動を防いでしまったのだ」

( ФωФ)「吾輩達に残されたのは……正面突破しかなかったのである」

( ФωФ)「【正解の選択肢とは、選ばれなかった物に隠されている】」

( ФωФ)「……モナーさんの教えだ」

そう言うと、ロマネスクは落ちた剣を拾い上げる。


297 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:28:16.80 ID:EbabBS8lP
(;´・ω・`)「そうか……僕は負けたのか……」

( ФωФ)「ああ……………お前は負けたのだ」

口にしてやっと状況を読みこめたよ。
僕は負けた。
敗因は他でもない、僕自身の驕りだ。

(;´ ω `)「フ……フフフ」

何だろう。
また来てしまったようだ。


僕の持病の笑い癖。


(´ ω `)「アーーーッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

(´ ω `)「ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

( ФωФ)「さよならだ」




ロマネスクは剣を僕の首を目掛けて振り下ろした。
今日ぐらいは……もっと笑わせてくれよ。
300 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:29:40.70 ID:EbabBS8lP

























301 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:31:50.64 ID:EbabBS8lP
('A`)『おい!ロマネスク、そっちはどうだ』

( ФωФ)「ああ、無事成功した。ショボンも殺したのである」

('A`)『……「ルーレット」はどうした?』

( ФωФ)「ちゃんと回収しておいたである」

('A`)『ああ、…………そうか』

( ;ФωФ)「……………ぐっ!!」

('A`)『?……おいどうしたロマネスク……』

( ;ФωФ)「心配はいらない……少々ダメージを追い過ぎただけだ。直ぐに退散し、治療を受ければ何とかなる」

('A`)『大丈夫か?早くこっちに来い』

( ;ФωФ)「いや……その前に一つやることがある」

('A`)『やること……?』

( ;ФωФ)「ああ……モララーとの約束だからな……」

('A`;)『ばっ…!!お前ふざけんなよ!まさか本当にするつもりか!?』



( ;ФωФ)「悪いな……初めからこうするつもりだったのだ」
303 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:33:39.30 ID:EbabBS8lP
―14:53:20―

気が付けば俺は暗闇の中にいた。
とても心地良い世界だ。
体が軽くふわりと浮かんでいる。
まるで底無しの海にゆっくりと沈んでいくようだ。

『―――――――』

ふと、何処からか声が聞こえる。
誰だ……?
…………分からない。
この甲高い鳥の囀りのような声色は明らかに女性の声だ。

『――――ルジュ…!』

女は俺の名前を呼んでいる。
何故だ。
何故俺を呼ぶ?

『ジョ――ュ!…――ルジュ!』

うるさい。
俺はただこの闇を堪能したいんだ。
疲弊し傷付いたこの体を癒したいんだ。
…………傷?
そういや……俺は何で怪我をしたんだ?


確か……俺は……。
306 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:35:12.06 ID:EbabBS8lP
『ジョルジュ!!』


  _
( ;゚∀゚)「!!」

俺は、その瞬間、飛び上がるように跳ね起きた。
とっさの出来事だったので何がなんだか分からず、ただ何かに驚いたように目を張った。
  _
( ;∀ )「う……………エホッ!ゲホッ!」

途端に喉が詰まり、呼吸がしづらくなりむせ返ってしまった。

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとジョルジュ!?」
  _
( ;゚∀゚)「あ、ああ大丈夫だ。気にすんな」

ツンが背中をさすってくれたお陰でだいぶ呼吸が整ってきた。
深呼吸を繰り返し、少しずつ落ち着いていく。
  _
( ;゚∀゚)「俺は……………」

( ´_ゝ`)「俺達がここに来たときは倒れていた。できるだけの応急処置はすませておいたぞ」
  _
( ;゚∀゚)「あ、ああ……悪いな」
309 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:36:36.65 ID:EbabBS8lP
ξ゚听)ξ「弟者はもう……ここを去ったようね」
  _
( ;゚∀゚)「そ、そうだ!!弟者………………いや、しぃ!!」

ツンの一言で俺は全てを思い出した。
俺はしぃに撃たれて……それで……。

ξ゚听)ξ「しぃ?しぃがどうかしたの?」
  _
( ;゚∀゚)「ってか何でお前らがここにいるんだ!!」

ξ#゚听)ξ「何言ってんのよ!!あんたのサポートをしに来たんでしょ!?」
  _
( ゚∀゚)「は?……何の事だよ……」

( ´_ゝ`)「強がるなよ。お前はツンがいなかったら野垂れ死んでたんだぞ」
  _
( #゚∀゚)「別に強がってねえよ!!………それよりも!」

しょうがない。
コイツらもここまで来てしまえば関係者だ。
いなかった事にはできないだろう。
  _
( ゚∀゚)「兄者……ツン、聞いてくれ」


俺はここで起きた全ての事を話した。
311 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:39:08.45 ID:EbabBS8lP
ξ;゚听)ξ「嘘……しぃが?」
  _
( ゚∀゚)「俺が弟者との一対一で負けるかよ。不意を衝かれたんだ不意を」

( ;´_ゝ`)「……妙だな」

兄者は神妙な顔をして俺の話を聞いていた。
何か俺の発言に違和感があったのか?

ξ゚听)ξ「何が?」

( ´_ゝ`)「仮にしぃが弟者と手を組んでいたとして…」
  _
( ゚∀゚)「仮にじゃねえよ。アイツはグルだったんだ」

( ´_ゝ`)「いや違うんだ。……だったら…どうしてお前は生きているんだ?」
  _
( ゚∀゚)「ああ?」

( ´_ゝ`)「もし俺がしぃの立場だったら……間違い無くジョルジュを殺している」

ξ゚听)ξ「あ……………確かに」

( ´_ゝ`)「しぃがジョルジュを殺す時間は十分にあったんだろ?」
314 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:40:16.62 ID:EbabBS8lP
  _
( ゚∀゚)「いや……だって俺は撃たれたんだぜ?左胸を……」

その時、ハッとなって左胸を見る。
確かに服には焦げ跡がハッキリと残っていた。
胸に手を当てると、何が固い物に触れた。
  _
( ;゚∀゚)「何………………だ?」

それは服の下に仕込まれていた。
俺はジャケットの内ポケットに手を入れる。
中で冷たい物に触れた。

ξ;゚听)ξ「ちょっと……どうしたのよ?」
  _
( ;゚∀゚)「あ……………」

中に入っていたのは1台の携帯電話だった。
ぽっかりと中央に穴が開いており、その中に銃弾が埋め込まれていた。
  _
( ;゚∀゚)「何だこれ……」

身に覚えの無い携帯電話。
いつの間にこんなものがポケットに……。
316 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:42:00.73 ID:EbabBS8lP
その瞬間、ハッとなって気付いた。
しぃが俺の胸倉を掴んだあの時だ。
奴はあの一瞬のうちにポケットに携帯を忍ばせたんだ。

ξ゚听)ξ「携帯が防いでくれたみたいね」
  _
( ;゚∀゚)「待てよ!あんな至近距離で撃たれて、携帯貫通で済むか普通!?」

ξ゚听)ξ「殺傷能力が低くなるように銃を改造していたんじゃないの?」
  _
( ;゚∀゚)「は?な、何でだよ」

ξ゚听)ξ「私の予想だけど……しぃはこっちの味方だと思う」
  _
( ;゚∀゚)「何……?」

しぃが味方?
つまりアイツは弟者を騙していたのか?
  _
( ;゚∀゚)「けど……アイツは詐欺師だぞ!?これこそが嘘の可能性があるじゃねえか」

ξ゚听)ξ「関係ないわよ。しぃがアンタを殺せたのならどんな事情があろうとアンタを殺した筈でしょ?」
  _
( ;゚∀゚)「っ…………!」

317 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:43:06.01 ID:EbabBS8lP
確かにツンの言う通りだ。
仮に、しぃが敵だとすれば、現時点で脅威となる俺は確実にあの場で始末しなければならない。
だが奴は俺を生かした。
この矛盾が指す答えは、しぃが俺達の味方だという事の他無いだろう。

ξ゚听)ξ「だとしたら……もう弟者には決着がついているかもね」

( ´_ゝ`)「……いや、それだけではまだしぃが味方とは断定できない」

( ´_ゝ`)「アイツを追い掛けよう」
  _
( #゚∀゚)「当たり前だ!!アイツを殺すのは俺だ」

しぃの件は保留だ。
兄者の言う通り、まだ断定はできない。
俺達の目で見分けるしか無いのだ。

ξ゚听)ξ「…………そうね。追いかけましょう」

( ´_ゝ`)「ジョルジュ、奴らは何処へ行ったんだ?」
  _
( ゚∀゚)「知るかよ。アイツらが俺に話すわけ無いだろ?」
319 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:44:10.04 ID:EbabBS8lP
ξ゚听)ξ「盗聴器の一つくらい付けなさいよマヌケ」
  _
( #゚∀゚)「あのなあ……お前…………………」

その時、一つの記憶が蘇った。
俺の意識が飛ぶ前、しぃに背中を撃たれた後の記憶だ。
そういえば奴は……弟者は確かに言っていた。

地名?建物?思い出せない。
だが奴は確かに目的地を口にした。

思い出せ。
弟者は何処に行くつもりだったんだ?
確かあの時………。

ξ゚听)ξ「何よ急に黙り込んで……」
  _
( ;゚∀゚)「……………誰だ?」

ξ;゚听)ξ「は?」
321 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:45:15.34 ID:EbabBS8lP
「Player」だ。
俺はその場所を聞いた時、「Player」の誰かの顔が過ぎったんだ。
弟者でもしぃでも無い、別の誰かだ。
誰だ?一体誰なんだ?
俺は頭の中の奥の奥まで記憶を掘り起こす。
思い出せ。

死ぬ気で思い出すんだ。

あの時、あの会話……。



その時、一人の顔が浮かんだ。


( ^ω^)

  _
( ゚∀゚)「…………………カジノ」

( ´_ゝ`)「……ん?」




  _
( ゚∀゚)「アイツは……弟者はカジノに行った」
323 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:47:38.94 ID:EbabBS8lP
ξ;゚听)ξ「カジノ!?」

完璧に思い出した。
あの瞬間、俺の脳裏に過ぎった顔はブーンだった。
恐らくはギャンブル繋がりのなんの捻りもない事だと思うが。
間違い無い、奴はハッキリとカジノに行くと言っていた。
  _
( ゚∀゚)「ああ。弟者はカジノに行ったんだ」

ξ゚听)ξ「何よ!しっかり聞くもんは聞いてるじゃない!」

手掛かりは掴んだ。
後は何処かを調べて…………。

( ´_ゝ`)「いや……それはない」

それを遮るように兄者が声を発した。
俺達は兄者を見る。

( ;´_ゝ`)「本当に弟者はカジノに行くと言ったのか?聞き間違えてないか?」
  _
( #゚∀゚)「間違える訳ねえだろ!!確かにカジノだ!」

何を言っているんだコイツは。
唯一の手掛かりを検証も無しに疑うとは。

ξ゚听)ξ「何か問題でもあるの?」


( ;´_ゝ`)「問題も何も……この国に………カジノは存在しないぞ?」
326 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:49:11.26 ID:EbabBS8lP
  _
( ;゚∀゚)「……は?」

( ´_ゝ`)「間違いない。この国は賭博は違法となっており、厳しく取り締まっている」

カジノが無い?
じゃあ俺が聞いた言葉は何だったんだ?
空耳なわけ無いだろ。

( ´_ゝ`)「マフィアやギャングだって経営をしようとしない。リスクの割に収益は望めないからな」
  _
( ;゚∀゚)「じゃ、じゃあ……弟者が作ったとか……」

( ´_ゝ`)「作ってどうするんだ?すべての国民はアイツの手中にあったんだぞ?」

俺は言葉に詰まった。
疲れているのか、まともなことが考えられない。
じゃあ奴らが言っていたカジノとはなんなのか

ξ゚听)ξ「ねえ……それって…シベリア語ってことは考えられない?」

その時、ツンがぼそっと尋ねた。
俺達は一斉にツンの顔を見る。
カジノが……シベリア語?

( ´_ゝ`)「……なるほど。確かにその可能性はある」

そう言うと兄者は自前のパソコンを取り出し、電源を入れた。
328 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:50:50.50 ID:EbabBS8lP
( ´_ゝ`)「ちょっと待ってろ。直ぐに調べる」
  _
( ;゚∀゚)「おい……ツンは分からねえのかよ」

ξ゚听)ξ「いや…そりゃあシベリア語は話せるけど……カジノの発音に似た言葉なんて知らないわよ」

それなら分からないんじゃないか?
そもそもスペルさえ分からないんだぞ。
分かるわけがな……。

( ´_ゝ`)「わかったぞ!」

とてつもない早さで兄者は答えを導き出した。
まるで俺が馬鹿みてえじゃねえか。

ξ゚听)ξ「それで……なんだったの?」

( ´_ゝ`)「カジノは何かの単語ではなくシベリアの駅名だったよ」
  _
( ;゚∀゚)「駅……?」

( ´_ゝ`)「ああ」


( ´_ゝ`)「超特急が走る……始発の駅だ」

  _
( ;゚∀゚)「駅……?」

ξ;゚听)ξ「何……?弟者は列車に乗るつもりなの?」

( ´_ゝ`)「それは知らんが……」

何だ?弟者の目的がさっぱり掴めない。
アイツは何のために駅へ向かったんだ?

( ´_ゝ`)「ただ……弟者がその列車に乗るとして、おかしいことが一つ。」

ξ゚听)ξ「何よ」

( ´_ゝ`)「その列車は直通運転なんだ。止まる駅は一つしかない」
  _
( ;゚∀゚)「どこだ?」

( ´_ゝ`)「図書館……シベリア大図書館だ」

ξ゚听)ξ「と、図書館?何でまた……」

( ´_ゝ`)「確かにあの図書館は世界一を誇る蔵庫量だが……今さら何の為に行くんだ…?」
335 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 22:59:06.40 ID:EbabBS8lP
図書館……。アイツらの目的は何なんだ?
考えても分からねえ。
ならもう、答えは決まってる。
  _
( ゚∀゚)「じゃあ…行くぞ」

ξ゚听)ξ「行くって……どこによ」
  _
( ゚∀゚)「決まってんだろ。アイツらを追いかけるんだ」

とりあえず目指すは駅だ。
駅に列車がなければ次を目指す。
アイツの目的なんざ知ったことではない。

とにかくアイツに追いつきゃいいんだ。



  _
( ゚∀゚)「泣いても笑っても……勝利の女神がどっちに微笑もうとも……」




  _
( ゚∀゚)「これで最後だ」
337 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:03:07.59 ID:EbabBS8lP
―13:23:06―

( ・∀・)「そうか……ショボンは死んだか」

( ФωФ)『ああ……』

( ・∀・)「恩に着る」

俺達を欺いた男は、この電話の向こうであっけなく死んだようだ。
天罰とは思わない。
ただ、俺達の死とはこうも軽いものなのかと思わずにはいられなかった。

( ・∀・)「死ぬ前にアイツには1000発程殴りつけたかったんだが……まあいい」

( ФωФ)『それよりも……本当にアレをするつもりか?』

( ・∀・)「ああ。その方が全てにすっきりとする」

( ФωФ)『ドクオは……そうとうキレていたようだが……』

( ・∀・)「構うものか。国家と個人、どっちが大切かなんて一発だろう」

( ФωФ)『わかった……。じゃあ座標を教えてくれ』

俺はロマネスクに正確な座標を伝えた。

( ・∀・)「次に電話が来た時に、押してくれ」


( ・∀・)「『ルーレット』のボタンをな」
339 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:07:45.29 ID:EbabBS8lP
対ラウンジ軍最終攻防線、最大のカギとなるのは「ルーレット」だ。
先程、ショボンが死んだ旨をラウンジ軍の元帥に伝えたが、まったくもって相手にされなかった。
おそらく、引っ込みがつかなくなってしまったのだろう。
まるで子供の喧嘩、国際を何だと思ってるんだ。


【小さい攻撃は敵に希望を持たせてしまう。コストを考えるのならば大きな攻撃で攻めることだ】

モナーさんの教えだ。
撃った撃たれたの繰り返しをしていても、何の進展にもなりはしない。

こうなれば、強力な一撃を見せつけてそれ以上の犠牲を出さないことに限る。
そこで使用することになったのが「ルーレット」だ。
これを使えば、流石のラウンジ軍も降伏をせざるを得ないだろう。

これで全てを終わりにする。

( ;・∀・)「さて……問題は……」

俺が指定した座標に、どうラウンジ軍を追いこむかだ。
ラウンジ軍のいる位置に落とすことはたやすいが、それではこの国の土地に掛る被害が大きすぎる。
俺が指定した座標、それこそが被害を最小限に抑える方法だ。

現段階でラウンジ軍はそのボーダーラインを大幅に侵入している。
これをどうにかしてその規定の場所まで押し込めばいいのだが簡単にそうはいかない。

340 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:09:24.90 ID:EbabBS8lP
俺達の海軍を使えば押し込めることも可能だが、それでは俺達海軍が犠牲になってしまう。
作戦を全軍に説明した以上、彼らを囮に使うことはできない。
そもそも、俺の駒は全て俺のもんだ。
絶対に捨ててたまるか。

( ;・∀・)「考えても始まらない……か」

とにかく軍を出そう。
考えはそれからだ。
俺は海軍に出動命令を出した。
軍はその情報を受け取ると、直ちに出港の態勢に入った。

これからはまさにギャンブル。
どう転ぶかは俺にもわからない。
準備が完了したとの報告を受け、俺は覚悟を決めた。

( ・∀・)「全隊出動!敵艦隊をA地点まで追いこめ!」

その合図とともにVIPの艦隊も戦場に向かった。
こっちも突然のことで物資や準備を万全にしていられなかった。
戦力は五分五分…地の利を考えればこちらに勝機がある。

( ・∀・)「弾の残数は考えなくていい!ただ押し込むことだけを考えろ!」

341 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:11:27.93 ID:EbabBS8lP
具体的な指示は現場の将校に任せる。
俺がやるべきことは総合的な指示だ。
指定した座標点までラウンジ軍を追いこむ。
言葉にすれば簡単な作業だが、これが一筋縄ではいかない。

敵は砲弾を多く揃えている。
おそらくそれらを徹底的に使用し、近づけさせようとはしないだろう。
ならばこちらはそれ以上の戦力で対抗するしかない。
連中の攻撃する手段を失わせれば全てが終わる。

軍艦には30分で全ての弾を使い切るようにと指示を出した。
それぐらいの圧力で行けば相手も引かざるを得ないだろう。

( ・∀・)「まずは空母だな……」

一番危険視すべきは奴らの戦闘機のベースキャンプとなっている空母だ。
アレをどうにかしなければ、何時まで経っても勝機は訪れないままだ。
俺は空母を優先的に破壊するよう指示を出した。
合図とともに放たれる砲弾。


戦争が、始まった。
344 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:13:04.95 ID:EbabBS8lP
( ・∀・)「撃て!惜しむことは無い!一斉に撃ちまくるんだ!」

この作戦で進めれば間違いなく成功はする。
しかし、それも仮定の段階でしかない。
完璧に辿るルートを考えなければ……。

( ;><)「連絡なんです!!」

その時、ビロードが部屋に飛び込んできた。

( ・∀・)「どうした?」

( ;><)「敵艦隊の攻撃により、第1部隊、及び第2部隊の戦艦が破損!航海もままならない状態なんです!!」

( ;・∀・)「な、……何だって!?こんなに早く……」

( ;><)「負傷者多数、死者はわかんないんです!」

( ;・∀・)「ぐっ……!第1第2部隊は他の艦隊に避難させろ!」

( ;><)「りょ、了解なんです!!」

まずい。予想以上に敵艦隊の攻撃力が高い。
第1と第2には多くの物資と兵力を投入させていた。
それがやられたということは、こちらの戦力はグッと縮まってしまった。
348 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:15:46.30 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「くそ……考えろ……!」

どうするんだ。
まだ退避の作戦すらも出来上がっていないんだぞ。
何とかして作戦を組み立てなければ。

( ;><)「さらに報告なんです!」

( ;・∀・)「ど、どうした!?」

出て行ったと思った矢先、直ぐにビロードが戻ってきた。

( ;><)「敵の戦闘機、3機が上陸!!湾岸部に爆撃を受けました!!」

( ;・∀・)「何!?海軍は何をやっているんだ!!」

( ;><)「戦闘機は撃ち落としたようですが!湾岸部隊の被害は大きいみたいなんです!!」

予想を裏切ったなどというレベルでは無い。
まったくもって歯が立っていないのだ。

無理もないと言えば無理もない。
こっちの軍は昨夜、急遽集められたに過ぎないのだから。
編成もへったくれもない。

しかし、ここまで戦力に差が出るとは思わなかった。

349 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:17:33.11 ID:EbabBS8lP
その後、数時間にも及ぶ戦闘が行われたが、その間にビロードから様々な情報が送られてきた。

第3部隊の右翼砲台の壊滅。
3度に渡る戦闘機の上陸
戦艦の爆破……。

どんどん我が国が追いこまれていった。
それに比べて、ラウンジ軍に対しては戦闘開始当初の目的であった空母の破壊すら達成できていない状況であった。

( ;・∀・)「くそ……考えろ……考えるんだ!!」

必死になればなるほど頭が回らなくなるのは分かっていた。
しかし、焦らずにはいられない。
これ以上俺の資産を壊されてたまるか。
頼む、何とかしてくれ、俺の脳味噌……。

( ;・∀・)「思いつけ思いつけ思いつけ思いつけ思いつけ思いつけ思いつ」




( #><)「馬鹿ですかぁ!!」
    ⊂彡);・∀・)「ヘブっ!」

ビロードに全力で殴られた。(あまり痛くは無かった)

350 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:19:14.70 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「び、ビロードお前……」

俺は驚いて、動けなくなってしまった。
ビロードは普段から俺に何か言及するような奴では無かったからだ。

( ;><)「何自分だけの力で何とかしようと思っているんですか!!」

( ;><)「皆の力を借りて下さいよ!」

( ;・∀・)「…………………」

( ;><)「僕を!軍を!国民を!」

( ;><)「みんな大統領を信じているんですよ!!そうでなきゃこんな早く戦闘態勢になれなかったんです!!」

( ;><)「だから……僕達も信用して下さい!!」

( ;・∀・)「………………」

言葉が出なかった。
ビロードの言っていることは紛れもなく事実だったからだ。
353 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:20:29.25 ID:EbabBS8lP
俺は、幼少のころからずっと人を見下し続けてきた。
それは今も変わらず続いている。
誰かに信頼することなんてありえないと思っていた。

( ;・∀・)「…………………」

だが、よくよく考えてみれば俺はこの数日で沢山の人間に信頼をした。

ツンにプルトニウムを頼んだあの時も俺は信頼していた。
ジョルジュに運転を任せたあの日も俺は信頼していた。
兄者にシベリアの洗脳を任せた時も俺は信頼していた。
ドクオとロマネスクならショボンから「ルーレット」を奪い返せるだろうと信頼していた。

その気持ちを……今度は国政に向けるべきなのだろうか。

( ;・∀・)「…………………」

( -∀-)「……………………」


( ・∀・)「ああ、その通りだ」
356 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:23:10.34 ID:EbabBS8lP
その時、部屋のスピーカーから放送が流れた。
内容は敵の空母を破壊したということだった。

( ><)「ほ、ほら!行けるんです!」

( ・∀・)「ああ!行ける」

脳内に蟠った靄が晴れたような気がした。
そうだ。
俺には数億人の国民がいる。
こいつらを守る為にこいつらを信じなければならない。

( ・∀・)「いいか!戦闘機を用意しろ」

敵の艦隊の中で、一つだけ不自然に動かない戦艦がいた。
おそらくこれは司令塔だろう。
これを破壊すれば、一気に押し込めるかもしれない。

( ・∀・)「狙うは一番奥から3番目に位置している戦艦だ」

( ・∀・)「特攻はするな。あくまでも爆撃を狙え!」

俺は今まで戦闘機という選択肢を使いたくなかった。
何故なら戦闘機はパイロットの手腕に頼りきるところがあるからだ。
しかし、今なら任せられる。
358 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:24:47.91 ID:EbabBS8lP
VIP軍の空母から十数機の戦闘機が飛び立った。
上手く砲弾を避けながら、指定した戦艦に弾を撃ち込む。
突然の戦闘機の導入にラウンジ軍も上手く対応できていないようだ。

そのうち、一つの戦闘機が放った爆弾がガソリンに引火し戦艦は大きく燃え上がった。

( ;・∀・)「よし!今だ!攻め込め!」

俺の予感は的中した。
その後、敵の行動は疎らになり、統率性の無い動きになって行った。
そして、数隻の戦艦が破壊されるとラウンジ軍は後退していった。

( ;><)「後退したんです!!」

( ・∀・)「ああ!これで勝っ…………………」

その時、思い出した。
これから先のことを全く考えていなかったことを。

( ;・∀・)「まずい……VIP軍を撤退させても間に合わないかもしれないぞ……」

今からVIPの軍隊を撤退させた場合、安全圏に着く頃には相手の軍隊は指定した範囲を過ぎて行ってしまう。
それに直ぐ退散させたらラウンジ軍は警戒して、二手、三手と別れてしまうかもしれない。
それはこの作戦における最大の失敗となるだろう。

指定先の変更も厳しい。
アイツらがどのような進路で帰るのかなど判断ができないからだ。


359 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:27:28.78 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「まずい……時間が無い……」

今度こそ俺が考えなければ。
……しかし、妙案は一つも思いつかなかった。
まずい。逃げられてしまう。
ここで逃げられては、これから先まで戦争が続くことになるだろう。

( ;・∀・)「ぐっ……どうすれば……」

その時、部屋のスピーチから放送が流れた。
俺はその内容に驚愕した。
何故なら、その内容とは、


『退散途中のラウンジ軍を数十隻にも及ぶ豪華客船が囲んでいる』


という報告だったからだ。

( ;・∀・)「ご、豪華客船……?何で……」

誰がそんなことをした?
いや、それよりもどこから現れたんだその豪華客船は……。


「私が頼みました!!」


その時、背後で大きな声が聞こえた。
361 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:31:16.29 ID:EbabBS8lP
俺は咄嗟に振り返る。
そこに立っていた……いや、正確にはある男が寄りかかっていた。
体中に包帯を巻いており、松葉杖で必死に体勢を維持している。

( ;・∀・)「お、お前は……」

(///Д゚)「は、始めまして!財務省職員のギコと申します!」

その瞬間、こいつについて思い出した。
確か現在行方不明中の職員だ。

( ;・∀・)「……お前がアレを手配したのか……?」

(///Д゚)「はい!……いや……っていうか、手配したのは父なんですけど……」

( ;・∀・)「父?」

(///Д゚)「あ、はい。父はフッサール財閥の会長のフサギコです」

( ;・∀・)「フッサール財閥だって!?」

驚いた。
何故フサギコさんの息子がこんなところにいるんだ。
というか協力しているんだ。


362 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:32:48.70 ID:EbabBS8lP
( ;・∀・)「これはお前の判断か……?」

(///Д゚)「あ、いえ……実は……」

その時、ギコはポケットから一枚の紙を取り出した。
なにやら小さなメモ帳のような紙だ。

(///Д゚)「私の恋人が……貴方に協力してあげてくれって……」

( ;・∀・)「恋人…?」

俺はそのメモ帳を受け取る。
そこには、見覚えのある筆記がずらずらと並べてあった。
VIP軍の情報を教えてくれる人間のリスト、フサギコへ何を頼めばいいのかなどきめ細かくメモに書いていた。

( ;・∀・)「これは……しぃか」

(///Д゚)「しぃ?違いますよ。私の恋人の名前はレイです」

( ・∀・)「……………」

その時、こいつはしぃに騙されているんだということが良くわかった。
365 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:35:05.66 ID:EbabBS8lP

(///Д゚)「父に今回の作戦を相談したら、ぜひ協力したいと言う言葉をいただきました」

(///Д゚)「それで父が所有する客船を全て譲り受けることができました」

なるほど。
これで全ての合点がいった。
そして、これは勝機だと思った。
俺は直ぐ様、マイクに向かって声を吹き込む。

( ・∀・)「全軍に次ぐ、全軍に次ぐ!一斉に撤退せよ!」

豪華客船はラウンジ軍を囲むように設置し、乗組員は一斉に退避させた。
無人の豪華客船がラウンジ軍の行く手を阻む。
これで、奴等の座標は固定された。

ラウンジ軍は豪華客船に砲撃を加えたりしているが、
それが反って仇となっていた。
燃え盛る船にラウンジ軍は近づけず、結局船の周りを火の海に変えてしまった。
その数十分後、全軍が安全圏に移動したという連絡があった。

( ・∀・)「よし…今から、『ルーレット』を発動させる」



俺はロマネスクにコールを入れた。

ロマネスクは俺のコールに従い、「ルーレット」のスイッチを押した。

366 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:36:37.83 ID:EbabBS8lP
上空から一斉にミサイルの雨が降る。



想像を絶する光景だった。



神がいたずらをしたかのように、ミサイルが降り続く。



一瞬にして、その海域一帯を火の雨に変えた。



その様子を、俺が、軍が、国民が、世界が見ていた。



一体あの船に何人の人間が乗っていたのかは分からない。



しかし、この鉄の雨が、この戦争の終わりを告げた。



370 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:38:03.31 ID:EbabBS8lP
( ・∀・)「…………………………」

(;//Д゚)「………………………」

( ;><)「………………………」



( ・∀・)「…………終わった」

俺がそうマイクに吹き込んだ瞬間、国中が飛び上がった。
この戦争を通じて、俺も何かが変わった。

たった数時間の戦争だったが、俺にとっては人生で最も意味のある数時間だった。

残す問題も、シベリア組だけとなった。


( ・∀・)「ジョルジュ…………」


( ・∀・)「頼んだぞ…………」
373 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:40:11.40 ID:EbabBS8lP
―15:19:48―

(*゚ー゚)「思ってたよりも静かに走るのね」

外の景色も殺風景になり、列車に揺られている事に退屈してきた頃、しぃが突然声をかけてきた。
2号車両の中央、俺としぃは通路を挟んだ隣り合わせの席に座っていた。

(´<_` )「この超特急は元々遊覧列車だったんだ。そのためにどれだけ乗客が快適に乗れるか改良に改良を重ねてきたそうだ」

(*゚ー゚)「その割にはつまんない景色ね」

(´<_` )「戦争が始まってからだな」

(*゚ー゚)「戦争…」

(´<_` )「シベリアとラウンジが争うようになってから、シベリアの状勢は一変した。市民はゴミのように扱われ、一部の金持ちだけがのうのうと娯楽に勤しんでいた」

俺がこの国を乗っ取ろうと決めた最大の理由だ。
確立されたヒエラルキー、革命さえ赦されぬ国家暴力。
この構図を砕く事がどれほど美しい事か俺はよくわかっていた。

(´<_` )「この列車だってそうさ。遊覧目的で使われたってのに、戦争が始まれば軍事物資の調達用に成り下がっちまった」
375 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:43:11.63 ID:EbabBS8lP
(*゚ー゚)「まるで貴方みたいね」

(´<_` )「……………………何?」

俺はしぃの方へ振り向く。
しぃはうっすらと笑みを浮かべながら窓の外を眺めていた。

(*゚ー゚)「この作戦を組み立てた瞬間から何もかもを失って、まだその事に気付いていない」

(*゚ー゚)「はっきり言って馬鹿ね」

(´<_` )「その馬鹿について来たのはどこのどいつだ」

(*゚ー゚)「その言い方はやめてくれない?私は貴方にすがった訳じゃ無いわ」

(´<_` )「すがってないとしたら何だ?駆け落ちか?」

(#*゚ー゚)「あのねえ……ここ数日、私が貴方にどれだけの情報をリークしたと思っているの?」

しぃは怒鳴りながら俺の方へ振り向いた。
俺は何故コイツがキレているのかさっぱりわからない。

(*゚ー゚)「私は貴方のためにいろいろ協力してきたわ。今度は貴方が私に尽くす番よ」

(´<_` )「……ああ、考えておくよ」
377 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:44:28.71 ID:EbabBS8lP
その後、沈黙が流れた。
俺はこれ以上、この女と話すことも無かったので会話することを止めた。
しかしその沈黙もあっさりと破られた。

(*゚ー゚)「………………ねえ」

その「ねえ」は明らかに俺へ向けられた物だろう。
こいつはこれ以上俺に何の用だ。

(*゚ー゚)「一つだけ聞いてもいい?」

(´<_` )「……なんだ?」

(*゚ー゚)「どうして……………クーを殺したの?」

その口から発した質問はあまりにもわかりやすい内容だった。
しかし、彼女が何故そんなことを聞いてきたのかはさっぱりわからない。

(´<_` )「邪魔」

(*゚ー゚)「真面目に答えて」

簡潔に答えたらまた怒鳴られた。
わけがわからない。

379 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:45:57.14 ID:EbabBS8lP
(*゚ー゚)「知っていたでしょう?私がクーを嫌いだった事」

(´<_` )「……?なら都合がよかったじゃないか」

(#*゚ー゚)「私は!!」

(#*゚ー゚)「私は私の手でクーを負かしたかった。あの女に私の方が優れていることを証明したかった……」

(*゚ー゚)「なのに全部貴方が奪った………何様のつもり?」

(´<_` )「今更言うなよ。だったら何だ?クーを殺した俺を殺すか?」

(;*゚ー゚)「それは…………」

(´<_` )「死者は復活しない。後悔するだけ無駄だ」

(;*゚ー゚)「わかってるわよ……ここまで来たからにはもう後には戻れないわ」

話のわかる人間は嫌いじゃない。
俺達はもう、元には戻れないのだ。
まあ元々戻りたい過去など存在しなかったが。
俺は胸ポケットから1枚のキャッシュカードを取り出した。

(´<_` )「あいつらが『ゲーム』中に稼いだこの金も……あと数時間後にはただの書類上の数字になるんだ」

(*゚ー゚)「…………………そうね」

380 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:47:53.08 ID:EbabBS8lP
このカードの中には奴らがこの数日間に稼いだ全ての金が入っている。
こんな物のためによくもまあ醜い争いをしたもんだ。
俺はキャッシュカードを見つめる。

(´<_` )「……………………」

(´<_` )「…………………………?」

見つめていたらあることに気が付いた。
カード自体は関係の無いことだが……まあいい。
そういう事だったのか。


(´<_` )「俺からも一つ質問をしてもいいか?」

(*゚ー゚)「…………?何よ」







(´<_` )「どうして………ジョルジュを殺さなかった?」


列車は図書館を目指して走り続ける。

381 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:49:34.89 ID:EbabBS8lP
(*゚ー゚)「何を言い出すの急に……」

(´<_` )「いや、ずっと気になっていたんだ。どうして急にクーの話を仕出したのかとね」

さすがの俺も驚いたよ。
この女……悪魔か。

(´<_` )「そんな話題を出したところで、俺達の関係に亀裂が生じるのはわかりきっている事だ」

(;*゚ー゚)「それは単純に貴方が話さなかったから……!」

(´<_` )「違うな。お前は俺達の仲を一度崩そうとした。理由は何でもよかったんだろうな。めんどくさい女でも、馬鹿な女でも」

(;*゚ー゚)「…………………」

(´<_` )「お前が欲しかったのは信頼だ。俺からお前に対する、な」

信頼を得ようとするならば、相手に媚びるか褒めるか……まあ偽善的な行動を取るのが普通だ。
しかし、この女は違う。
俺達の世界を知り尽くしている。

あえて反論を買うような話題を提示し、その後相手の発言に納得することで、信頼意識を短時間で作り上げると言うのだ。
相手の話に納得するということは、それだけで相手の脳に負けたことを証明しているのと同じだ。

思考回路の上下関係を無意識に刷り込み、油断や隙を作る。
さらに納得までしてしまえば、味方意識さえ生まれてしまう。
この女は疑心暗鬼の人間ですらも嵌めることのできる唯一の人間だ。

384 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:52:26.61 ID:EbabBS8lP
(;*゚ー゚)「何で私が貴方の信頼を欲しがるのよ!」

(´<_` )「ああ、それでさらに考えたんだ。何故しぃは俺の信頼を欲しがっているのかって」

(´<_` )「普通に考えれば頼まれた仕事をこなしている人間が信頼など欲しがるわけがない」

(´<_` )「答えは簡単に出た。つまり何か信頼を失うようなことをしたんだ」

(;*゚ー゚)「…………………」

(´<_` )「では信頼を失うようなこととは何か?」

(´<_` )「少なくとも昨日まででそのようなことは無かった。つまり……」

(´<_` )「今日起きたこと……さらに言えば、ついさっき起きたことということになる」


俺が知らない情報でしぃが裏切ったこと。
思い当たる節は一つしかない。


(´<_` )「ジョルジュは……まだ生きているんだろう?」
386 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:55:06.02 ID:EbabBS8lP
(*゚ー゚)「……………気付いちゃったのね」

(´<_` )「悪いな」

(*゚ー゚)「いいの。契約違反なのは私の方だから」

意外とあっさり認めたな。
まあそうだろう。非が無いのならば堂々としている方が話しやすい。

(*゚ー゚)「許してなんて言わないわ。ただ聞いてほしいの」

(*゚ー゚)「私は今まで人を殺したことが無いの。そしてこれからも」

(´<_` )「そんなところで平和主義者か」

(*゚ー゚)「ええ、詐欺師は人の死には近寄れないわ」

(*゚ー゚)「おそらく追いかけてくると思うけど……殺すなら私抜きでやって頂戴」

(´<_` )「……………そうか」

(*゚ー゚)「悪いわね」

(´<_` )「なら……これからも全てお前抜きでやらせてもらうよ」
390 : ◆4972gaB/9o :2011/03/21(月) 23:58:12.36 ID:EbabBS8lP
(;*゚ー゚)「え……………………」

彼女の体が崩れ落ちる。
椅子から滑り、床に倒れた。
俺は握りしめたリボルバーを腰に収めた。

(´<_` )「短い間だったが御苦労。お前はもう必要ない」

(;*゚ー゚)「な………………んで」

(´<_` )「お前が俺を殺す気だったことぐらい馬鹿でもわかる。馬鹿にしないでくれ」

(;*゚ー゚)「そ……………そんな……」

(´<_` )「ああ、わかるわかる。そうじゃないって言いたいんだろう?それこそそうじゃないんだよ」

(;*゚ー゚)「……………?」

(´<_` )「ずっと考えていたのはお前が裏切っているかどうかじゃない」




(´<_` )「お前をいつ殺そうか……それだけだ」

(;*゚ー゚)「!!」
394 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:02:29.83 ID:XLI2EyZAP
俺はしぃの足に向けて引き金を引く。

(;* - )「うぐっ……!!」

(´<_` )「お前は良くやってくれたよ。情報のリーク、隠蔽操作、ショボンの偵察……」

(´<_` )「だが……俺の横に立つには及ばない」

しぃはズリズリと床を這う。
どこへ逃げるというのか。

(´<_` )「滑稽だな。『ハート』さん」

次に俺は背中に弾丸を喰いこませた。
血が石油のようにあふれ出た。

(;* - )「うわあっ……!!」

(´<_` )「苦しそうだな。助けてやろうか?」

(;* - )「こ……このっ……!!」

駄目だ。
これ以上長引かせても邪魔なだけだろう。
手っ取り早く処分してしまおう。

(´<_` )「最後の言葉は……いらねえか」


俺は脳天に向けて引き金を引いた。
397 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:03:50.43 ID:XLI2EyZAP
(´<_` ;)「うおっ!!」

その瞬間、列車が大きく揺れた。
俺は立っていられなくなり、その場に尻もちをついた。
座席の手摺に捕まり、体を起こす。

(´<_` ;)「だ、脱線でもしたのか?」

しかし、列車はそのまま走り続けている所を見ると、どうやら線路関係では無いようだ。
まるで地震が起きたような衝撃だ。
なんだったんだ今のは……。

俺は再びしぃを見る。
最後の弾丸は頭を逸れ、脇の床に潜りこんでいた。

(´<_` )「ふん……生きながらえたか……」

それもたった数十秒の話。
今から殺すことには変わりない。
俺はもう一度、しぃに銃を向けた。

(´<_` )「………………………!!」

しかし、俺は引き金を引かなかった。
……いや引くことを忘れたと言った方が正しいか。
目の前に、立たれちゃあ……そっちに気が行くだろう。


  _  
( ゚∀゚)「……元気にしてたか?……弟者」
400 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:06:25.68 ID:VCdLI0TFP
(´<_` )「…………………随分と早い蘇生だったんだな」
  _  
( ゚∀゚)「まあな」

良く見るとジョルジュの後ろに2人の人間がいた。
兄者とツンだ。

(´<_` )「……なるほど、あんたらが生き返らせたのか」

ξ゚听)ξ「……ええ」

( ;´_ゝ`)「……………………」

(´<_` )「さっきの衝撃もあんたらの仕業か?」
  _  
( ゚∀゚)「なあに、車両に戦闘機を突撃させただけだ。気にすんな。」

本当に……無茶苦茶やるよこの馬鹿共は。
ということはこの列車には今、戦闘機が突き刺さっているのか。

ξ;゚听)ξ「……しぃを……殺したの?」

(´<_` )「ああ、そいつは裏切り者さ。良かったな仲間が増えて」
  _  
( ゚∀゚)「………………だろうな。てめえの下らない思想についていくなんて馬鹿げてるだろ」

402 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:10:17.92 ID:VCdLI0TFP
(´<_` )「どうでもいいが、みんな揃って何しに来た?」

ξ゚听)ξ「それは私が聞きたいわね。この先には図書館しかないわよ」

全く話が噛み合わない。
だが、こいつらが来た理由など大方想像はつく。
そして話を聞く限りでは俺が図書館へ向かう理由はわからないようだ。

(´<_` )「なあに、調べものだよ」
  _  
( ゚∀゚)「こんな状況で何が知りたいってんだよ」

(´<_` )「そうだな……“世界を滅ぼす方法”なんてどうだ?」
  _  
( ゚∀゚)「下らな過ぎてあくびが出るな」

(´<_` )「そう言うお前らはここに何しに来たんだ?」
  _  
( ゚∀゚)「決まってんだろ」





  _  
( ゚∀゚)「ジャックだよ、ラインジャックだ」
405 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:12:06.65 ID:VCdLI0TFP
(´<_` )「なるほど。分かりやすいな」
  _  
( ゚∀゚)「まあ降伏しようがしまいが、お前は死ぬんだけどな」

そう言うと、ジョルジュは銃を構えて俺に突き付けた。
人数で考えると1対3。
俺の方が明らかに不利だ。

(´<_` )「そんなに欲しいならやるよ、この列車」

さあ、どうやってこの局面を切り抜けようか。
策は練ろうと思えばいくらでも練れる。
……タイミングだな。

( ´_ゝ`)「弟者……一つだけ聞かせてくれ」

なんだ?
「Player」では一つだけ聞くのが流行っているのか?

(´<_` )「どうした兄者。さっきは参ったよ、腕を上げたな」

( ´_ゝ`)「お前が『Player』を抜けたのは……俺が原因だったのか?」
407 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:13:25.59 ID:VCdLI0TFP
(´<_` )「………………だったらどうするんだ?」

( ´_ゝ`)「確かに俺は『Player』の中で断トツで才能に恵まれなかった男だ。そう思われても仕方ない」

(´<_` )「ああ、思っていたよ……最初はな」

( ´_ゝ`)「……?最初?なんだ最初って」

(´<_` )「あんたと2つで1つにされるのはめっきりごめんだった。だがそれよりもバッサリと切りたい物があったんだよ」

( ´_ゝ`)「何だよ……」

(´<_` )「俺の過去さ」

「Player」は幼少時代からの付き合いだ。
俺のことをほぼ全員が知っていた。
それは俺にとって最大の欠点であり屈辱だった。

(´<_` )「あんたを含め、全ての人間が邪魔だった。それこそ殺すくらいでは飽き足らないくらいにな」

(´<_` )「だから胸を張って死んでくれよ。『僕は屑人間でした。ごめんなさいってな』。きっと気持ちよく死ねるぜ」
411 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:17:45.05 ID:VCdLI0TFP
( ;´_ゝ`)「…………」

(´<_` )「ああ。そう言うことだだから……」

今だ。
逃げるチャンスは今しかない。

(´<_` )「この列車共々砕けな!」

俺は銃を構えて引き金を引く。
瞬時に構えたので誰にも当らなかったがそれでも構わなかった。
発砲によって連中は怯み、俺自由時間を与えてしまった。
その隙に俺は1号車両へ駆け出す。
  _  
( ;゚∀゚)「あの野郎……往生際が悪いな!!」

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!!」
  _  
( ゚∀゚)「お前らはここにいろ!絶対に手を出すんじゃねえぞ!!」

なるほど。
ジョルジュは絶対に共闘することはないようだ。
ならば俺に勝算が無いわけでもない。
俺は1号車両に入ると直ぐにドアを閉め、ロックを掛けた。
  _  
( #゚∀゚)「おい!ふざけんな!ここを開けろ!!」

412 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:18:56.79 ID:VCdLI0TFP
(´<_` )「残念だが、そのドアは固い。ちょっとやそっとじゃ壊れないぞ」

ジョルジュがドアを強く叩く。
しかし、ドアはびくともしなかった。
俺はその隙に動力室に入り、操作盤を開く。

(´<_` )「お前らじゃあ所詮俺には敵わないんだよ……」

俺は操作盤のスピードメーターを見ながら、列車の速度を最大まで上げる。
これで40分後には終点に着くだろう。
しかしその時、列車に乗っている者は列車と共に壁に激突……。あえなくTHE・ENDだ。

俺は動力室から出ると、すぐに1号車の窓ガラスを開けた。
早い段階でここから脱出しなければ……。
  _  
( ゚∀゚)「させねえよ!」

(´<_` ;)「!?」

その瞬間、頭上から人の生首が降ってきた。
俺は思わず背後に下がる。
その生首は窓からするりと中へ入り込んできた。
  _  
( ゚∀゚)「抜け駆けとは汚ぇ真似をするじゃねえか……」

416 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:24:14.46 ID:VCdLI0TFP
こいつ……外を経由してこっちまで来たってのか。
なんて猿並の発想しか持ち合わせていないんだ……。

(´<_` #)「さっきから下らない持論を押しつけやがって……随分と楽しそうだな」
  _  
( ゚∀゚)「ああ、楽しいぜ。仇打ちはこうで無いとな」

まずい。時間が無い。
早いとここいつを片付けてここから出なければ。
速度を落とすか、ここを出るか。
どの道、こいつがここに居てはままならないだろう。

(´<_` )「自分に奢るなよ……俺がお前に負けることは無に等しいんだからな」
  _  
( ゚∀゚)「俺の脳内を除いてんじゃねえよカス」

俺はジョルジュに向けて引き金を引いた。
ジョルジュは咄嗟にしゃがみ、椅子の下に隠れた。
そして、そこから腕だけを出し、俺に向けて発砲する。
俺も反射的に奴の弾丸を避けた。

さらに連続的に3発ほど、奴のいる椅子に向けて撃った。
撃った弾はどれも手応えが無かった。
撃ったと同時に弾が切れたので、今度は俺が隠れる番のようだ。
  _  
( #゚∀゚)「逃げんじゃねえよ!!」

(´<_` #)「お前が言うなボケ」

417 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:26:37.16 ID:VCdLI0TFP
弾を装填し、銃を持ち直す。
相変わらずジョルジュは乱射を繰り返している。

こんな下らない慣れ合いをしている場合じゃない。
時間は刻々と迫っている。
とっととジョルジュを殺さなければ。
しかし、近付くにも近付けず、撃つにも距離が欲しい。

(´<_` )「……………………」

しょうがない。
一か八か、勝負に出よう。
俺は身を乗り出し、ジョルジュの元へ駆け出した。
  _  
( ゚∀゚)「!!」

(´<_` )「この方がやりやすくて良いだろう?」

俺はジョルジュの目の前で銃を発砲する。
ジョルジュは瞬間的に体をずらし、弾丸を避けた。
「Player」であればこんな至近距離の弾丸も軽々と避けれるのか。
  _  
( ゚∀゚)「なんだよ。そうするなら最初からそうしろ」

ジョルジュは銃を片手に俺の前に対峙する。
こいつさえ片付ければ……こいつさえ片付ければ俺の野望は叶うのだ。

俺はジョルジュに引き金を1回だけ引く。
ジョルジュはそれを大袈裟にかわした。
いや、ただ大袈裟になっただけではない。

その体勢から体をねじり、回し蹴りを仕掛けてきた。
俺もそれを察知し体をしゃがめて回避。
直ぐに銃を向けようとしたが、既にジョルジュが銃を構えているのが分かった。
  _  
( ゚∀゚)「隙だらけだぜ」

俺は脇に飛び込み、銃弾を避けた。
モタモタしている暇はない。
ポケットからナイフを取り出し、ジョルジュに向かって投げつけた。

(´<_` )「どの口が言ってるんだ?」

ジョルジュは咄嗟に銃を盾にしてナイフを弾いた。
その隙を狙い、俺はジョルジュの銃の側面を素手で掴む。
  _  
( ゚∀゚)「ああ?」

そのまま、ジョルジュの腕ごと引き、がら空きになった頭を俺のリボルバーで殴りつける。
ジョルジュの頭から血が流れだした。
420 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:31:08.51 ID:VCdLI0TFP
  _  
( ;゚∀゚)「ぐっ……痛え、なっ!!」

(´<_` ;)「うおっ!」

それに反撃するかのようにジョルジュは首を強く降り、俺の額に頭突きをしてきた。
視界が揺れる。
糞、面倒くさい攻撃をしやがって。

俺は一度、ジョルジュを突き放し、直ぐに拳銃を構えて2発撃った。
ジョルジュは一度椅子の下に潜りこみ、避難した。
もちろん奴も撃ってきたので俺も椅子の下に隠れた。

俺はその隙にリボルバーとピストルを入れ替える。
この状況下でリボルバーはやや辛いものがある。
さて、もう一度攻めよう。
次は決定的なダメージを与える。

(´<_` )「休んでる暇はないぞ」
  _  
( ;゚∀゚)「!!くそっ!」

俺がジョルジュの前に立つと奴はのんきに弾を詰め込んでいた。
これをチャンスと言わず何というのか。
422 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:33:19.85 ID:VCdLI0TFP
直ぐに銃を構え、引き金を引く。
奴も咄嗟に避けるが、数ヶ所体を掠めたようだ。
  _  
( ;゚∀゚)「ぐっ……糞!!」

ただでさえ奴は怪我を追っているんだ。
畳み込むなら今しかない。
俺はさっき投げたナイフを拾い上げ、一気に詰め寄る。

(´<_` )「悪いな。相手の準備が整うのを待つほど心に余裕が無いもんで」

俺はナイフでジョルジュの腕を斬りつけた。
服は避け、中から赤い液体が吹き出る。
  _
( ;゚∀゚)「いってぇ!!この……やろ……」

相手がリアクションを取っている間に俺はジョルジュの顔面にストレートを打った。
鼻にクリーンヒットし、奴の意識を歪ませた。
  _
( ; ∀ )「あがっ!……くっ…くっ!」

さらに続いて頬に2発、胸に1発パンチを打ち込む。
ジョルジュはバランスを失い、その場に倒れこんだ。
427 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:38:48.61 ID:VCdLI0TFP
(´<_` )「苦しそうだな。助けてやろうか?」

そのまま俺は奴の背に銃口を向け、引き金を引いた。
  _
( ;゚∀゚)「そ、そんな心配はいらねえよ!!」

しぃとは違い、直ぐに飛び跳ね弾を避けた。
しかし、それでもまだまだ甘い。
立ち上がった時ほど無防備な人間はいないだろう。
すぐに引き金を引き、銃弾は肩に当った。
  _
( ; ∀ )「がっ……!!」

次は倒れることなく、その場にフラフラと立ち尽くした。
だが、銃弾の入っていない銃を握り、目も朦朧としている人間が俺に立ちはだかったところで何も起こらないだろう。

(´<_` )「悪いな。今回は甚振っている暇はないんだ」

俺は奴の心臓を目掛けて銃を構える。





その瞬間だった。
429 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:40:56.77 ID:VCdLI0TFP
(´<_` ;)「!!」
  _
( ; ∀ )「!?」

車両が急に大きく傾く。
俺もジョルジュもバランスが取れなくなり、その場にすっ転んだ。
何だ?何が起きた?
揺れが収まると俺は直ぐに窓を開け、外を確認する。

どうやら線路がカーブになっていたようだ。
このスピードでカーブを切ればこうなっても仕方がないだろう。
しかし、タイムリミットは刻々と迫っている。

(´<_` ;)「まずいな……」

このカーブを越えてしまえば終点まで一直線だ。
時間にしても20分を切っている。
もう、ジョルジュなど放っておいて脱出に専念した方がいいかもしれない。

(´<_` ;)「!!」

その時、背後から只ならぬ気配を感じたので瞬時に飛退いた。
さっきまで俺の頭があった壁に弾痕が残っていた。
迂闊。
どうやら奴に弾丸補充を許してしまったようだ。
433 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:51:16.34 ID:VCdLI0TFP
  _
( ゚∀゚)「もう俺を仕留める機会はねえぞ」

(´<_` )「そうか?いくらでも作ってくれそうだがな」

いくら奴が拳銃を使えるようになったところで、さっきと何も変わらない。
結局弾切れした瞬間に俺が勝つんだ。
足掻くだけ無駄だ。

(´<_` )「時間が無いんだ。無駄話はやめにしよう」
  _
( ゚∀゚)「お前さっきからどんだけ時間気にしてんだよ。証券マンか」

俺とジョルジュは同時に引き金を引く。
それと同時に避け、また銃撃戦が始まる。
座席を塹壕として扱い、できるだけ銃弾を防ぐようにする。

しかし、防戦していると直ぐにタイムリミットがやってきてしまう。
どうにかしてアイツを殺さなければ。

(´<_` ;)「!!……チッ」

銃を構えて頭を出した時に肩をやられた。
傷口からドクドクと血が流れる。
無駄な傷を負ってしまった。
435 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:52:41.90 ID:VCdLI0TFP
  _
( ゚∀゚)「大丈夫か?」

(´<_` ;)「!!」

その時、ジョルジュが座席を乗り越え、一気に俺の元まで寄っていた。
そして、奴が構えた拳が俺の顔面に差し掛かっていた。
強烈な一撃。

頬に火傷のような熱が広がる。
前歯が欠け、口から血が出た。

(´<_`;;#)「ジョルジュ……てめぇ…!!」
  _
( ゚∀゚)「まだだ」

そう言うと、ジョルジュは腹に一発ブローを打ち、俺を下から上に持ち上げた。

( <_ ;#)「ぐっ…!!」

さらに右と左の頬に1発ずつフックを喰らい、締めとして顎に蹴りを当てられた。
半規管への負担が尋常じゃない。
一瞬でも油断していたら意識を持って行かれたところだ。

俺は蹴りによって背後に倒れる。
しかし、後ろには座席があったのでなんとかそれにもたれかかることができた。
436 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:54:03.66 ID:VCdLI0TFP
  _
( ゚∀゚)「死ね」

( <_ ;#)「!!」

ジョルジュが銃を構える。
その一瞬を見逃さず、俺はジョルジュにナイフを投げつける。
ナイフは綺麗にジョルジュの脇腹に刺さった。
  _
(#;゚∀゚)「うっ……!!お前…!!」

俺は飛び跳ねてジョルジュの腕に蹴りを入れた。
握られていた銃は吹き飛び、通路の奥に滑って行った。
ジョルジュもナイフを抜き、直ぐに俺に向かって投げつけた。

ナイフが腕に刺さりそうだったので、俺は咄嗟に腕を引っ込める。
その隙をついてジョルジュが俺の手を蹴りつけた。
俺もまた銃を床に落とされてしまった。

ジョルジュは拳銃など関係無しに俺を殴りつけた。
俺も対抗してジョルジュを殴る。
防御などもはや意味が無かった。
俺達はただただひたすら相手を殴り続けた。
438 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:55:05.44 ID:VCdLI0TFP
  _
(#;;;∀;;)「はぁ……はぁ……」

(;;<_;;#)「はぁ……はぁ……」

互いに顔は腫れ、血や怪我でボロボロになっていた。
もう何本の歯が犠牲になったのか分からない。
立っているだけでも正直体に負担がかかる。
  _
(#;;;∀;;)「そういやお前……図書館になんの用があるんだよ……」

ジョルジュが突然、話題を振ってきた。
そう言えば、まだ話していなかったな。
まあいい。話したところでこいつらには何もできないのだから。

(;;<_;;#)「ふっ……お前らには分からないだろうな。俺の野望なんて」
  _
(#;;;∀;;)「ああ?」

(;;<_;;#)「あの図書館の地下には……研究施設があるのさ」
  _
(#;;;∀;;)「研究施設……?まさかまたお前感染がどうとかするんじゃないだろうな……」

(;;<_;;#)「いや……パンデミックなんか屁でも無い。もっと壮大なものだ」



(;;<_;;#)「人類の絶滅だよ……」
440 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:56:24.60 ID:VCdLI0TFP
  _
(#;;;∀;;)「……?何言ってんだお前」

所詮こいつらには理解など期待はしていない。
だが、事の重大さだけでも教えてやろう。

(;;<_;;#)「俺は「ゲーム」の最中、ショボンからあるものを貰ったんだよ」

(;;<_;;#)「提携の印としてな」
  _
(#;;;∀;;)「あ?金か?」

(;;<_;;#)「違う。だがお前も知っているはずだ。なぜならお前も関わっていたんだからな」
  _
(#;゚∀;;)「……?何の話だ……」

(;;<_;;#)「おいおい……とぼけんなよ……お前も欲しかったんだろ?」








(;;<_;;#)「プルトニウムさ」
444 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 00:58:13.06 ID:VCdLI0TFP
  _
( ;゚∀;;)「なっ…………!!」

ショボンから譲り受けた時、俺は使えると思った。
それと同時に、これで世界を滅ぼしてみたいと思った。

(;;<_;;#)「あれだけの量があればこの星に生きる全ての生物を浄化することも可能だ」
  _
( ;゚∀;;)「お前……正気か?」

(;;<_;;#)「もちろん。俺はこの地球を滅ぼす第一人者となるんだ」

図書館の地下は核シェルター以上の強度を誇る隔離施設がある。
俺はそこに5tのプルトニウムをぶち込んだ。
さらにそこにいれば、そのプルトニウムの影響だって受けずに済む。

(;;<_;;#)「あと……プルトニウムを大気に発散させる装置も整っている。さらに言えばそのタイマーもな」
  _
( ;゚∀;;)「なっ何言ってんだよ!!今すぐ止めろ!!」

(;;<_;;#)「冗談はよせよ。俺はそうなることを望んで作動したんだぜ?」



(;;<_;;#)「タイムリミットは5時。それで世界は終わる」
447 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:01:04.14 ID:VCdLI0TFP
ジョルジュは酷く青ざめた顔をした。
そりゃあそうだろう。
今生きてる世界を無くすことが現実で起きてしまったのだ。
無理もない。
  _
( ;゚∀;;)「てめえのそれは野望でもなんでもねえよ!!ただの足掻きだろ!」

(;;<_;;#)「足掻きで人類が滅ぶなら越したことは無いな」

(;;<_;;#)「あ、冗談でも止めるなんてことは考えるなよ。無駄だぜ」

(;;<_;;#)「図書館の地下は全て部屋には俺のセキュリティロックが掛けられている。俺の許可なしで開くことは無いからな」
  _
( #゚∀;;)「てめぇ……!!」

(;;<_;;#)「おしゃべりはお終いだ。直に俺達も危うくなる」
  _
(#;゚∀;;)「……?どういうことだ」

(;;<_;;#)「気付いていないのか?この列車は猛スピードで駅に向かっている」

(;;<_;;#)「このままのんきに乗っていたら粉々に吹き飛ぶぜ」
  _
( ;゚∀;;)「!!」

さあケリをつけよう。
この子供じみた「ゲーム」に。

448 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:02:46.48 ID:VCdLI0TFP
俺は大きく弧を描いて足をジョルジュの側頭部に当てる。
油断していたのか、ジョルジュは蹴りをもろに食らった。
  _
(#;;;∀;;)「ぐっ……!!」

おや?
今回は随分と隙だらけだな。
集中力が鈍ったのか?

俺はジョルジュの首を目掛けて肘を打つ。
ジョルジュは2歩ほど後ろに下がった。
  _
(#;;;∀;;)「げほっ!がはっ!!」

もはや敵ではない。
俺は拳を握り、一斉に攻め込む。

肩、腹、胸、頬、鼻、額、腿、脛、腕、首……。
全ての個所を絶え間なく殴り続ける。
車両の中心でやっていた殴り合いも気付けば隅にまで追い込んでいた。
  _
(#;;;∀;;)「…………………う、うう……」

全てを打ちこんだとき、ジョルジュは活気も無く、ぐったりと倒れこんだ。

(´<_`;;#)「これで終わりだ」

俺はポケットから1発の手榴弾を取り出す。
ここぞというときの最終手段だ。

449 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:04:01.99 ID:VCdLI0TFP
ピンを外し、ジョルジュの足元に落とした。
そのまま大急ぎで、その場を離れる。
あの距離で喰らえば、健康体の人間でも一溜りもないだろう。
俺が、車両の反対側の端までたどり着き、振り向いたその瞬間、手榴弾は大きな破裂音を立てて爆発した。

(´<_`;;#)「…………………」

椅子に火が移り、炎と煙が辺りを包みこんだ。
まあ、直ぐに脱出する列車だ。
火災など気にしなくても大丈夫だろう。

煙でジョルジュの死体は見えないが、どの道死んでいる。
俺は急いで窓を開け、脱出を試みる。
まずい、もう残り時間は3分も無い。

(´<_`;#)「ここから飛び出せ………」

窓の縁に足を掛けたその瞬間、ジョルジュが倒れている場所から異様な影が見えた。
俺はその方へ振り向く。
そこには煙の中に映る縦に長い長方形のシルエットがあった。

何だ?あれは……。
450 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:05:31.48 ID:VCdLI0TFP
(´<_`;#)「まさか………生きているのか?」

ありえない。
一体どうすればそんなことが……。
それにあの形は何なんだ。

(´<_`;#)「!!」

その時、その長方形がゆっくりと動いた。
シルエットは徐々に変化を遂げ、人の姿のようなものが映し出されている。
まさか……本当に生きていたのか。
  _
( ゚∀ )「姉貴が……モナーさんが受けた痛みを……苦しみを……」
  _
( ゚∀ )「お前は知っているのか?」

あの長方形の物体の正体がやっとわかった。
並べていた座席だ。
アイツは座席を持ち上げ、それを盾にしたのだ。
おそらく、それだけでは足りないから手榴弾も蹴り飛ばしたのだと思うが。

(´<_`;#)「お前……それ……」

ジョルジュはその3人がけの座席を持ち上げ、ゆっくりと俺の元へ向かって来た。
453 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:07:37.75 ID:VCdLI0TFP
(´<_`;#)「ぐっ…!!」

反撃しようと腰に掛けていたリボルバーを取り出す。
そしてジョルジュに向けて引き金を引いた。
弾は腹と肩に当った。
しかし、ジョルジュは倒れなかった。

(´<_`;#)「なっ…?」
  _
(#;゚∀;;)「こんな痛みじゃねえ……こんな苦しみじゃねえ……!」

ジョルジュは大きく振りかぶり、座席を俺に向かって投げつける。
席は頭から胸にかけて命中し、俺はそのまま床に倒れこんだ。

(;;<_;;#)「ぐあああっ!!」

まずい……体力が……。
体勢が体勢なだけあって、椅子を起こす力も残っていなかった。
ジョルジュが俺の元へ近づいてくる。
来るな。近寄るな。
時間が。体力が。野望が。限界が。

(;;<_;;#)「く、来るなあああああああああああああああ!!」

454 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:09:47.37 ID:VCdLI0TFP
ジョルジュの拳が俺の顔面に叩きつけられる。
口と鼻、両方から血が噴き出した。
痛みさえ感じない、意識が遠退いていく。
俺は………負けたのか?

(;;<_;;#)「あ………………がっ…………」


  _
(#;゚∀;;)「……………………」




ジョルジュの顔を見ることなく、俺の意識は飛んでしまった。




最後に聞こえたのは窓から入ってくる風を切る音だった。
457 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:10:55.13 ID:VCdLI0TFP
―16:23:13―

勝った。
俺は仇を討ったのだ。
  _
(#;゚∀;;)「………………………」

目の前に転がる俺の敵。
あっさりとまではいかなかったが……終わってみるとこうも弱い存在だったのかと思ってしまう。
  _
(#;゚∀;;)「………………そうだ……逃げねえと」

弟者が言ってたな。
この列車はもうすぐ終点に着く。
早く脱出しねえと、列車もろとも潰れちまう。

俺は大きく開けられた窓の縁に足を掛け、外に身を乗り出す。
進行方向を見ると、もう駅が見える位置まで来ていた。
さて、ここから出よう。
俺は列車から飛び降りた。

列車は止まることなく終点駅を目指す。

ξ;゚听)ξ「ジョルジュ!!」

その時、後ろから声がした。
ツンだ。

458 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:13:06.08 ID:VCdLI0TFP
行きで使用した戦闘機に乗ってツンと兄者がやってきた。
戦闘機を着陸させ、ツンが下りてきた。

ξ;゚听)ξ「お、弟者は…?」
  _
(#;゚∀;;)「ああ、弟者なら……」

その瞬間、駅の方から大きな爆発音が聞こえた。
俺達は一斉にその方向へ振り向く。
燃え盛る超特急。
俺もあと少しあの中にいればアレに巻き込まれていたのか……。
  _
(#;゚∀;;)「……………あの中だ」

ξ゚听)ξ「…………………」

ξ゚听)ξ「そう………………」

終わったんだ。
俺達は戦いに勝利して………。


  _
( ;゚∀;;)「無い!!」

ξ;゚听)ξ「!?な、何が?」
462 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:15:10.88 ID:VCdLI0TFP
まずい。すっかり忘れていた。
あの図書館の中にはまだプルトニウムが残っている。
あれをどうにかしねえと俺達……いや世界が滅ぶ。
  _
( ;゚∀;;)「ツン、兄者!聞いてくれ!あの図書館の中に……」

( ´_ゝ`)「プルトニウムがあるんだろ……?」

その時、戦闘機の中から兄者が現れた。
  _
( ;゚∀;;)「し、知っていたのか?」

( ´_ゝ`)「お前らが戦っている間、盗聴器で話の内容は聞かせてもらったよ」

こいつ……何時の間にそんなもの……。

( ´_ゝ`)「その話を聞いてから急いで弟者のシステムに侵入してみた」
  _
( ;゚∀;;)「!!、セキュリティは解除できるのか!?」

ξ゚听)ξ「ちょ、ちょっと待ってよ!何の話!?」

俺は一からツンにプルトニウムの説明した。
ツンも自分が運んだプルトニウムがこんなところで出てきて驚いていた。
465 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:16:19.36 ID:VCdLI0TFP
( ;´_ゝ`)「すまない………やはり弟者のプログラムは手強い……完全に解除することはできなかった」
  _
( ;゚∀;;)「じゃ、じゃあどうするんだよ!!」

こいつだけが最後の頼りだと思ったがこれじゃあ意味が無い。
どうするんだよ。世界の危機が迫っている。
死ねるかこんなところで。

( ;´_ゝ`)「いや、完全には無理だったが、一部のシステムを変更することは成功した」
  _
( ;゚∀;;)「何……?」

( ;´_ゝ`)「セキュリティの一部だけを変更した。完全ではないが十分に使えるだろう」

そう言うと、兄者は一枚のカードを渡した。
  _
( ;゚∀;;)「なんだこれ」

( ´_ゝ`)「これは俺が昔自分のアジトで使っていたセキュリティカードだ」

何でそんなもの今渡すんだ?
もらったところで意味がないだろ。
470 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:23:56.73 ID:VCdLI0TFP
( ´_ゝ`)「この磁気コードをシステムに読み込ませた。ここのロックにはこのカードが使える」
  _
( ;゚∀;;)「あ?あ?つまりどういうことだ?」

( ´_ゝ`)「あの図書館の地下は全てカード認証になっている。その認証コードをこのカードに組み込んだんだ」

何だよ。
全然心配ねえじゃねえか。
これさえあれば、地下の研究室に全て出入りできるってことだろ?

( ;´_ゝ`)「ただ気をつけてくれ……。それには有効回数がある」
  _
( ;゚∀;;)「は?何のことだ?」

( ;´_ゝ`)「もちろん俺のカードと実際のカードは違う。普通だったらエラーとなるだけだ」

( ;´_ゝ`)「俺がいじったのはそのエラーコードの方だ。エラー認識を無視するシステムに書き換えた」
  _
( ;゚∀;;)「じゃあなんの問題もねえじゃねえか」

( ;´_ゝ`)「表面上はな。だが実際にはエラーは起こっているんだ」

何が駄目なのかが分からん。
エラーが起きていても、それを無かったことにできるんだろ?

471 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:25:32.60 ID:VCdLI0TFP
( ;´_ゝ`)「通常のカード……本来のカードでも破損や磁気の故障によってもエラーが生じる」

( ;´_ゝ`)「つまりどんなカードでもエラーは起きるってことだ」
  _
( ;゚∀;;)「だから何が言いたいんだよ」

( ;´_ゝ`)「このシステム……10回のエラーが積み重なるとカード自体を受け付けなくなるらしいんだ」
  _
( ;゚∀;;)「………………は?」

( ;´_ゝ`)「システムは誤魔化せるんだが、カードの方は誤魔化せない。つまり10回扉を開くとカード自体が無効になってしまう」

なるほど、ようはパスワードを3回ミスると入力できなくなるあれか。
10回までは扉を開くことができるがそれ以上は開けない。
つまり、10回扉を開く前にプルトニウムが眠っている研究室を見つければいいわけか。
  _
( ;゚∀;;)「それで……プルトニウムのある部屋はどこにあるんだ?」

( ;´_ゝ`)「すまん……そこまでは……」

ξ;゚听)ξ「どうすんのよ!手当たり次第にドアを開けていかなきゃいけないわけ!?」

そんなことをしては10回なんてあっという間に消費してしまう。
473 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:27:01.96 ID:VCdLI0TFP
( ;´_ゝ`)「だが、大方の見当は付いている」

ξ゚听)ξ「ど、どこよ」

そう言うと兄者はPCを取り出し、図書館の地下の地図を開いた。

( ;´_ゝ`)「5tのプルトニウムを保管し、なおかつそれらを気体にして空気中に拡散させる装置……」

( ;´_ゝ`)「そんな大掛かりな装置を置く場所はだいたい限られている」

確かにそうだ。
実物を見たわけではないが、それだけの量となると、普通のセミナールームでは限度がある。
地図には数百にも及ぶ研究室が敷き詰められていた。
そのうち、兄者はいくつかの研究室を赤く光らせた。

( ;´_ゝ`)「広さとして可能性のあるのはこの13の部屋だ」

ξ;゚听)ξ「10回の制限と13の部屋か……」
  _
( ;゚∀;;)「約70%……際どいな……」

( ;´_ゝ`)「すまん……もう少し時間があればカードをもう一枚ぐらい作れたんだが……」

今さら泣き言を言っても仕方が無い。
制限の17時までもう30分と少ししか無い。
475 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:28:28.73 ID:VCdLI0TFP
  _
( ゚∀;;)「ここまできたら、プルトニウムは俺が止める。図書館ぐらいジャックしてやるよ」

傷は辛いがまだまだ動ける。
最後の最後は俺様が締めてやるよ。

( ;´_ゝ`)「このPCはツン……お前に預ける」

ξ;゚听)ξ「え、わ、私?何で」

( ;´_ゝ`)「お前はここにいて帰路の準備とジョルジュのサポートを頼む」

ξ;゚听)ξ「………………わかった」

( ;´_ゝ`)「その地図は真上から全ての階を透き通して表示する。地下だけを見ないと他のフロアの壁まで移ってしまうから気をつけろ」

ξ゚听)ξ「ええ、分かったわ」

ツンは強く頷くと、戦闘機に戻った。
こいつの指示の元、俺は地下を駆け巡る。
  _
( ゚∀;;)「お前はどうするんだ?」

俺は兄者に尋ねる。どうせだったらこいつがサポートをやればいいのにとは思うが……。

( ´_ゝ`)「俺は消火をしてくる。あの状況じゃあ……列車の火が図書館に移るのも時間の問題だ」

確かに……そうだ。
既に駅のホームは燃え盛り、周辺の木々に引火していた。
俺達がいくらプルトニウムを止めても火事で死んでは意味が無い。
477 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:29:49.66 ID:VCdLI0TFP
( ;´_ゝ`)「仮にプルトニウムを止めた後、図書館に引火しても気にすることなく脱出しろ」

( ;´_ゝ`)「地下の研究施設の壁は特殊な構造になっている。火が移ることは無い」

プルトニウムは後々回収すればいい。
しかし、地上の図書館は危険なのでその場に残ってしまえば生き埋めになる可能性もある。
だから任務を果たしたら直ぐに帰ってこい、と兄者は言った。
  _
( ゚∀;;)「よし……とにかく残り30分が全てだ」

( ;´_ゝ`)「ジョルジュ……とにかく1発だ。作動装置のどこか一ヶ所で良いから破壊しろ」

( ;´_ゝ`)「そうすれば止まる……精密機械なんてそんなもんだ」

つまり、問題となるのは部屋探しだけってことか。
  _  
( ゚∀;;)「…………………ああ、分かった」

俺はツンと兄者と別れ、図書館に向かう。
残された時間で必ず止めてやる。


30分の時間制限、10回のカードの制限、13の確率……。
厳しい状況ではあるが、俺たちの明日の為だ。

  _
( ゚∀;;)「これで……終わりにするぞ」
479 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:31:49.70 ID:VCdLI0TFP
―16:31:55―

(;;<_`;#)「う……………………」

燃え盛る火の海の中、俺は目を開けた。
辺りは瓦礫と火が入り混じり、どこまでも同じ景色が続く。
地獄かと思ったが、この壊れた座席には見覚えがある。

幸か不幸か俺は生き残ったようだ。

瓦礫は上手いこと積み重なっており、簡単に潜り抜けることができた。
問題はこの列車の中から出ることだが……これもまあ問題は無いだろう。

(;;<_`;#)「行かなければ……」

立ち上がった時に少しだけ、視界が歪んだ。
感覚神経に大分ダメージが行っているようだ。

とにかく俺は生き残る。
まだプルトニウムの発動まで時間がある。
それまでに……地下へ避難しなければ。
481 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:33:05.92 ID:VCdLI0TFP
―16:38:23―

ξ゚听)ξ『どうだった?』
  _  
( #゚∀;;)「糞!また外れだ!」

2つ目の研究室も外れに終わった。
俺は直ぐに次の目的地を目指す。

ξ゚听)ξ『その先の突き当たりを左に曲がって!そこから100mほど先にある134号って部屋がそう!』
  _  
( #゚∀;;)「おーらい!次こそ頼むぜ!」

夕暮れ時の日の光も届かない程の暗い地下階。
居るのは俺一人。
俺はペンライトを片手に全速力で迷路のような廊下を駆け抜ける。

探して気付いたことがある。
俺は10回で部屋を見つければいいと思っていた。
しかし、実際はそうはいかなかった。

まず図書館に入るのに1回、そして地下室に入るのに1回分使ってしまった。
これだけで残りあと8回。
確率はもっと少なかったのだ。

そして今、2つの部屋を見たがプルトニウムは見つからなかった。
この時点で4つも消費してしまった。
これ以上、無駄はできない。
483 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:34:10.02 ID:VCdLI0TFP
  _  
( #゚∀;;)「ここか」

134号の部屋の前に到着し、俺はカードを取り出す。
ドアの横の壁に取り付けられた機械にカードを当てる。
ピッと言う音の後、赤く点灯していた光が緑に変わる。

俺はドアノブを掴み思い切り引く。
そして、勢いよく中に入った。
  _  
(;#゚∀;;)「………………」
  _  
(;#゚∀;;)「糞…………」

しかし、中は綺麗にスッカラカンで文字通り何もなかった。

ξ;゚听)ξ『どう!?あった!?』

インカムからツンの声が聞こえる。
アイツには俺の光景が見えていないから、知らせる必要がある。
  _  
(;#゚∀;;)「外れだ。次へ行くぞ!」

時間が無い。
俺達には残り回数に怯える時間も、迷っている暇もなかった。
484 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:36:29.05 ID:VCdLI0TFP
―16:43:10―

軋む体を押さえながら図書館の中へ入る。
図書館の中はとても静かで、夕焼けの光が綺麗に窓ガラスから差し込んでいた。
中は4階まで吹き抜けており、天井がとても高く、その壁一面にあらゆる本が並んでいた。

ここが世界最大の図書館。
名前なだけあって蔵書の数は目を張るものがある。

(;;<_`;#)「……何度来ても飽きないなここは」

俺は地下を目指して階段を目指す。
その時だった。
目の前に本を持った一人の男が立っていた。

(;;<_`;#)「!!」

まさか……ここでまた会えるとはな。





( ´_ゝ`)「…………………」
486 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:38:41.88 ID:VCdLI0TFP
(;;<_`;#)「よう……」

( ´_ゝ`)「ああ……」

(;;<_`;#)「俺が生きていたのは知っていたのか?」

( ´_ゝ`)「ああ。ジョルジュに付けていた盗聴器がどうやら戦闘中に列車内で取れてな。それでお前の声を聞くことができた」

(;;<_`;#)「……笑うか?笑ってもいいんだぜ」

( ´_ゝ`)「いや……今はそんな気分じゃない」

(;;<_`;#)「また紙の端で指を切ったのか?」

( ´_ゝ`)「いや、自転車の鍵を無くしてしまってね」

(;;<_`;#)「だからジャケットのポケットの穴を直せって言ったんだよ」

( ´_ゝ`)「そう言うなよ。一緒にお前のペンケースも落としたんだから」

(;;<_`;#)「……………ふっ」

( ´_ゝ`)「フフフ……懐かしいな」

相変わらず。
俺達はいつもこうだった。
下らない会話。下らない駆け引き。
何時どんな時も共に行動しているうちに相手のことを全て知り尽くしてしまった。
491 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:46:59.43 ID:VCdLI0TFP
(;;<_`;#)「なあ兄者……」

( ´_ゝ`)「…………何だ」

(;;<_`;#)「俺は……楽しかったよ……今までずっと」

( ´_ゝ`)「ああ、俺もだ」

(;;<_`;#)「VIP銀行で200万盗んだ時を覚えてるか?」

( ´_ゝ`)「ああ、覚えているよ。あの時は大喧嘩をしたな」

(;;<_`;#)「もっと盗んでおくべきだったと、これぐらいがちょうどいいってな」

( ´_ゝ`)「あの時は2日間にわたって殴り合ったな……」

(;;<_`;#)「結局どっちも気絶して終わったな」

( ´_ゝ`)「……………今まで、すまなかったな」

(;;<_`;#)「俺こそ……悪かったよ」

(;;<_`;#)「だが……………もう俺はここまで来ちまったんだ。元には…『ポケットテン』には戻れねえさ」
494 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:48:22.64 ID:VCdLI0TFP
( ´_ゝ`)「………………ああ」

(;;<_`;#)「……そこをどいてくれ。俺は行く」

( ´_ゝ`)「……………………」

兄者はピクリとも動こうとはしなかった。
まあそうだろう。
だが、俺は通らなければならない。

(;;<_`;#)「もう一度言う。どいてくれ。どかなければ……俺はあんたを撃つ」

俺はポケットから拳銃を取り出した。
それを兄者に向ける。

( ´_ゝ`)「いや………………もういいんだ」

(;;<_`;#)「……?何のことだ」

( ´_ゝ`)「………終わりにしよう」

そう言うと、兄者はポケットからライターを取り出し、火をつける。
その火を手に持っていた本に近づけた。




( ´_ゝ`)「『ポケットテン』は……終わるんだ」
496 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:49:52.06 ID:VCdLI0TFP
―16:53:45―
  _  
(;#゚∀;;)『糞!!また外れだ!!』

インカムの向こうからジョルジュの不貞腐れた声が聞こえる。
無理もない。
これで5つ連続で外れ。
残された回数は3回。

ξ;゚听)ξ「待って……これ以上は慎重に進めないと……」
  _  
(;#゚∀;;)『んなこと言ってる場合かよ!!あと6分しかねえんだぞ!?』

時間が無い。
そんなの分かっている。
でもこれ以上運に任せるのも危険だ。
私はディスプレイに映る地図をじっと眺める。
しかし、答えはどこにも書かれていなかった。

ξ;゚听)ξ「分かってるわよ!!でも………………」





ξ;゚听)ξ「………………………」

498 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:51:18.79 ID:VCdLI0TFP
  _  
(;#゚∀;;)『……?おい、どうした?』

あれ?
この地図……もしかして……。

ξ;゚听)ξ「ねえ……この図書館って……地下は1階だけ?」
  _  
(;#゚∀;;)『あ?当たり前だろ?だってその地図は全階を表示するんだろ?』
  _  
(;#゚∀;;)『もう一個下にあるなら、下の研究室の壁が一緒に現れるはずじゃねえか』

ξ;゚听)ξ「!!」

そうだ。
やっぱり間違いない。
私は地図の中から階段がある部屋を探す。

ξ;゚听)ξ「ジョルジュ!今すぐ引き返して階段に向かって!!」
  _  
(;#゚∀;;)『ああ?何だよ急に……』

ξ;゚听)ξ「ここには地下2階があるの!!」
  _  
(;#゚∀;;)『な、何だと!?』

499 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:53:30.19 ID:VCdLI0TFP
間違いない。
プルトニウムもそこにある。
  _  
(;#゚∀;;)『おい!さっきの話聞いてたか?地図には地下2階らしきものは何にも映って無かっただろ?』

ξ;゚听)ξ「違うのよ!地下2階にはたった一つしか部屋が無いの!」
  _  
(;#゚∀;;)『!!』

私の予想が正しければ、地下2階には何の壁も無い。
ドームのような空間がある。
その広さはこの図書館の分だけあるに違いない。
図書館と同じなら、地図にも表示されないだろう。

ξ;゚听)ξ「今いるところを引き返した所に、連絡通路の部屋がある!その中に階段があるわ!」
  _  
(;#゚∀;;)『つまり連絡通路にカードを1回使えばいいわけだな』

ξ;゚听)ξ「そう!……確証はないけど……合っていると思う」
  _  
(;#゚∀;;)『構わねえよ!俺を信じろ!!』

ξ;゚听)ξ「!!」

ジョルジュはそう言うと、また駆け出し、私の指示通りに走り出した。
まさか……あの男から信じろなんて言葉が出てくるとは思わなかった。
501 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:54:58.07 ID:VCdLI0TFP
―16:56:27―

(;;<_`;#)「………………………何の真似だ」

( ´_ゝ`)「見たまんまだよ。この図書館と共に……おしまいだ」

何を言っている?
終わり?おしまい?

( ´_ゝ`)「もう駅の炎も図書館を包んだ。全て時間の問題だよ」

(;;<_`;#)「気でもおかしくなったか」

( ´_ゝ`)「正常だ」

そう言うと、兄者は火のついた本を捨て、俺の元へ近づいてきた。
突然、兄者の存在が恐ろしくなり、俺は後ろに後ずさる。

(;;<_`;#)「あんたおかしいよ!こんなところで俺と心中でもするってのか?」

( ´_ゝ`)「………ああ」

駄目だ。
コイツは話しても何も通じない。

俺は兄者の頭に向けて引き金を引く。
503 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:56:52.64 ID:VCdLI0TFP
( ´_ゝ`)「……無駄だ」

兄者は何も動じずに歩き続けた。
弾丸は兄者の頬を掠め、飛んでいった。
そしてそのまま歩き、近付くことを止めなかった。

(;;<_`;#)「おい!来るな!撃つぞ!!」

( ´_ゝ`)「……撃てよ。それでお前の気が済むならな」

(;;<_`;#)「ぐっ……!!」

俺は2発、兄者の体に撃った。
弾は二つとも体に命中した。

( ;´_ゝ`)「うっ……!!」

だが、兄者は歩くことを止めなかった。
その姿がさっき戦ったジョルジュとぴったり重なる。

( ;´_ゝ`)「弟者……もう終わりにしよう……」

兄者が俺の体にしがみ付く。
俺はバランスが取れなくなりその場に倒れこんだ。
505 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:57:58.44 ID:VCdLI0TFP
(;;<_`;#)「どけ!もうすぐプルトニウムが作動するんだよ!!」

( ;´_ゝ`)「プルトニウムは作動しない。お前はここで俺と一緒に焼け死ぬんだ」

(;;<_`;#)「は!?ふ、ふざけるな!!俺がこんなところで死ぬわけがないだろう!?」

俺は兄者の背中を何度も叩くがびくともしない。
強い力で体を掴まれ、圧し掛かられた。
耐えられなくなり、背中に銃弾を撃ち込んだ。

( ; _ゝ )「ぐあっ……!!」

だが、兄者の力は緩むことなく、むしろ先ほどよりも強く締まった。

( ; _ゝ )「いいんだ……これで……全てが終わる……!」

(;;<_`;#)「ふざけるな!!お前が良くても俺が良いと思ってんのか!!ああ!?」

( ; _ゝ )「………………………」

(;;<_`;#)「おい!どけ!俺はここで死ぬわけにはいかねえんだよ!!おい!!」

俺は背中にさらに銃弾を当てる。
当りどころの悪い弾は貫通して俺の腹にまで当った。

(;;<_`;#)「ぐっ………おい!!いい加減にしろ!!」
507 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 01:59:20.83 ID:VCdLI0TFP
―16:57:34―
  _  
(;#゚∀;;)「まさか本当にあるなんて………」

俺は今、階段を降りてすぐのところにあった地下2階の扉の前にいた。
この向こうにプルトニウムがある……かもしれない。

ξ;゚ー゚)ξ『その向こうに必ずあるわ!絶対!』

ツンの声が耳に届く。
俺も同意見だ。
  _  
(;#゚∀;;)「ああ、ここに無くてもまだ1回カードは使える」

俺は時間を見る。
ギリギリセーフだ。
なんとか間に合ったようだ。
  _  
(;#゚∀;;)「じゃあ空けるぞ……」

ξ;゚听)ξ「ええ………」


俺は機械にカードをあてる。
ピッと言う機械音が響いた。
510 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:02:04.46 ID:VCdLI0TFP
扉のロックが解除され扉が開くようになった。
俺はドアを強く引き、中に入る。
頼む……。ここにあってくれ。

  _  
(;#゚∀;;)「………………………」


時が止まる。
俺は自分の目を疑った。

ξ;゚听)ξ『ど、どう?プルトニウムはあったの?無かったの?』

ツンのインカムの声だけが頭をめぐる。
  _  
(;#゚∀;;)「な……………何だよこれ…………」

ξ;゚听)ξ『……?どうしたの?……ジョルジュ?』
  _  
(;#゚∀;;)「何で……………………」






  _  
(;#゚∀;;)「何でドアが……あるんだよ……」
512 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:04:12.86 ID:VCdLI0TFP
部屋に入って俺の目に最初に映ったのは2つのドアだった。
地下1階の研究室の無機質なドアとは違って、アンティークな額縁のような模様が刻まれた2つのドア。
2つともドアの横にカード認証の機械が取り付けられており、2つのドアは全く同じ姿をしていた。
たった一つの個所を除いて。

ξ;゚听)ξ『ど……ドア?』
  _  
(;#゚∀;;)「2つもだ……何だよこれ……」

2つのドアの中央にそれぞれ、言葉が刻まれていた。
一つは『heads』、そしてもう一つには『tails』。
  _  
(;#゚∀;;)「『表』……と『裏』……?なんだよこれ……ふざけんなよ…」

時間が無い。
いや時間どころじゃない。
カードもあと1回しか使えないんだ。

ξ;゚听)ξ『待って!そこにドアが2つあるのね!?』
  _  
(;#゚∀;;)「ああ!!無駄に装飾の凝ってる奴がな!」

ξ;゚听)ξ『だったら間違いないわ!そのどちらかの向こうにプルトニウムがある!』
514 :装飾残ってる→装飾の凝ってる:2011/03/22(火) 02:06:00.80 ID:VCdLI0TFP
  _  
(;#゚∀;;)「そ、そうなのか!?」

ξ゚听)ξ『だって地図には表示されていないのよ。いかにも弟者が考えそうなことじゃない!』

確かにそうだ。
アイツなら地図には表示しないエリアに新たなトラップを仕掛けることもやりかねない。

ξ;゚听)ξ『冷静に考えて……!確率は2分の1よ』

ツンのナビゲートもここまでのようだ。
当たり前だ。
ここは地図には存在していないのだから。

「表」と「裏」……どちらのドアを俺は開ければいいんだ。

たった2つの文字を俺の脳内が駆け巡る。

表裏表裏裏表裏表表表裏表裏裏裏表裏表裏表表裏裏表表表裏裏表裏表
表裏裏表表表裏表裏裏表裏表裏表裏表裏表裏表表裏表表裏裏表裏表表

            表              裏

裏裏表裏表表裏表表裏表表裏裏表裏表表裏裏表裏表裏表裏裏表裏表裏
表裏裏表裏裏表裏表表表裏表表裏裏表裏表裏表裏裏表表裏裏表裏表表

516 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:07:02.79 ID:VCdLI0TFP
弟者だったらどっちに入れる?

表か。
確かに裏組織を抜け、表舞台に立ったんだ。
そういう意味では表かもしれない。
それにプルトニウムをばら撒けば世間に表沙汰になるだろう。

それとも裏か。
裏切るという意味では裏だ。
どちらかと言えばアイツは裏を好みそうだ。
そもそもこんな施設に隠していたんだ。
裏にあるという意味では裏かもしれない。
  _  
(;#゚∀;;)「ぐっ………………駄目だ……!!わかんねえ!!」

襲いかかる絶望感。
まさか俺の運で世界が左右されるなんて思いもしなかった。

俺はズボンを握り、上体を下げながら思い切り目を閉じる。
生まれて初めて選択すると言うことに恐怖を覚えた。

畜生……。俺はどうすればいいんだ……!!
519 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:09:49.56 ID:VCdLI0TFP
  _  
(;#゚∀;;)「………………………?」


その時、ズボンのポケットに何かが入っていることに気が付いた。
丸くて平べったくて固い……何かだ。


  _  
(;#゚∀;;)「何だ……………?」


何故かその時その物体が無性に気になった。
それほどまでに引き付ける何かがあったのだ。
俺は恐る恐るポケットに手を入れる。
そしてその物体を取り出した。


  _  
(;#゚∀;;)「これは………」




それは、俺が数日前に飛行機の中でブーンから貰った、1枚の金貨だった。
528 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:13:28.06 ID:VCdLI0TFP
  _  
(;#゚∀;;)「…………………そうだ」

俺達「Player」にはあの男がいたんだ。
あの奇跡の運を持つあの男が。

あの男が俺に託したこのコイン……。
今、この為にあるとしか思えない。

( ^ω^)
  _  
(;#゚∀;;)「ブーン…………」
  _  
(;#゚∀;;)「お前の力……借りるぜ……」


【切り札とは、まったくもって思いがけない物であることが多い】


モナーさんの教えだ。
これが……俺の最後の切り札だ。
この硬貨にブーンの能力が宿っている確証は無い。
いやむしろそんなことは無いだろう。

だが、俺はその全てをこの1枚に賭ける。
これは……ギャンブルなんだ。


俺はコインを親指で強く弾いた。
531 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:14:44.14 ID:VCdLI0TFP









―17:00:00―















535 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:16:03.50 ID:VCdLI0TFP
―17:00:34―

おかしい。
もう時間はとっくに過ぎたはずだ。
何故だ?

何故……プルトニウムは発射しない?

(;;<_`;#)「なっ………………なんで……」

( ;´_ゝ`)「ジョルジュとツンがやってくれたんだ」

(;;<_`;#)「なっ!!?はあああああああああああああ!?」

何だと?
俺のプルトニウムが……失敗?

(;;<_`;#)「ふ、ふざけるなああああああああああああああああ俺が!!俺の野望が!!」

( ;´_ゝ`)「もう……終わったんだ…よ」
536 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:17:23.71 ID:VCdLI0TFP
(;;<_`;#)「あ、兄者……………!!」

そうだ。元はと言えば全てはこいつのせいだ。
こいつさえいなければ、俺の計画は全て円滑に進んでいた。

(;;<_`;#)「お、お前のせいだ……お前さえいなければ……!!」

( ;´_ゝ`)「!!」

俺は兄者のこめかみに銃口を当てた。
そして引き金を引く。

兄者のこめかみに穴が空き、反対側のこめかみから血が吹き飛んだ。
こいつだ。全てこいつが悪かったんだ。

(;;<_`;#)「お前だ!!お前が死ねばよかったんだよ!!」

(;;<_゚;#)「ふっふふふふ……あっははははははははは!!」

(;;<_゚;#)「俺は自由だあああああああああああああ!!」

(;;<_゚;#)「この世界は……!!俺のものだああああああああああああああ!!」
539 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:18:34.61 ID:VCdLI0TFP
さあ、俺の計画はまだ終わらない。
幸いにもまだプルトニウムは生きている。
俺は再び、この世界を滅ぼすんだ。

(;;<_`;#)「あばよ!兄じ…………」

どんなに力入れても兄者の死体は動かなかった。
どうなってやがる。何でこんなに固いんだ?

(;;<_`;#)「まさか……………」

死後硬直だ。
兄者は死ぬその瞬間にめいっぱいに俺の体を抱きしめたんだ。
コイツ……死ぬ寸前で無駄なことを……。

(;;<_`;#)「!!」

その時、兄者が落とした本の火が棚に引火して燃え始めた。
本が燃えるスピードはすさまじく、一気に棚一つが燃え始めた。
焼けた本がどんどんと降ってくる。

(;;<_`;#)「く、糞!!おい!離れろ!兄者!!」

火の手はどんどん俺の方へ近づいてくる。
本当に来てほしくないもの程俺の元へ来やがる。
541 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:20:23.66 ID:VCdLI0TFP
(;;<_`;#)「どけ!!どけええええええええ!!」


動かない。


(;;<_`;#)「俺は……!!俺はああああああああ!!」


動かない。


(;;<_`;#)「俺がこんなところで死ぬわけにはいかねええんだよおおおおおおおおお!!」


動かない。


(;;<_`;#)「!!」

その時、兄者の服に火が引火した。
まずい。来るな。俺はこんなところで死にたくない。

(;;<_;#)「熱い!!熱いい!!火が!やめろおおおおおおおおお」

そしてついに火は俺の服に移った。


(;;<_ ;#)「う、………うわあああああああああああああああああああああ!!」
544 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:22:58.55 ID:VCdLI0TFP















546 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:24:21.12 ID:VCdLI0TFP
―17:04:33―

ξ;゚听)ξ「な、何なのこの火事は……!!」

私の目の前に映るのは燃え盛る図書館。
こんな状況では助けにも行けない。
まだジョルジュも兄者も帰ってこない。

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと…………」
  _  
(;#゚∀;;)「うわああああ!!」

ξ;゚听)ξ「きゃあああああ!!!」

突然、足元のマンホールから、人が飛び出してきた。
私は驚いて、尻もちをついた。
  _  
(;#゚∀;;)「な、何だよあの炎は!!」

ξ;゚听)ξ「ジョ、ジョルジュ!!」

現れたのはジョルジュだった。どうしてこんなところから……。
  _  
(;#゚∀;;)「地下2階が下水道に繋がってたんだ。そこを通ってきた」
553 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:28:32.89 ID:VCdLI0TFP
なるほど。
弟者はそこからプルトニウムを外に放射するつもりだったのね。
本当に止まって良かった。

ξ;゚听)ξ「それよりも…!兄者は!?兄者は知らない?」
  _  
( ゚∀;;)「ああ?こっちへ来てないのか…?」

ξ;゚听)ξ「この火の量……こっちも危ないわよ……!」

兄者は、兄者はどこへ行ったの?
このままでは逃げるにも逃げれないじゃない。
  _  
( ゚∀;;)「おい!そんなことは後だ!とにかく飛べ!」

ξ;゚听)ξ「勝手なこと言わないでよ!兄者はどうすんのよ!?」
  _  
( ゚∀;;)「上空から探した方が早いだろうが!!」

ξ;゚听)ξ「た、確かにそうだけど……」
  _  
( ゚∀;;)「急げ!早くしねえと全滅かもしれねえぞ!!」

ジョルジュの提案により、私とジョルジュは戦闘機に乗りこんだ。
557 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:32:48.68 ID:VCdLI0TFP










559 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:34:21.65 ID:VCdLI0TFP
結局、2時間以上兄者を探したけれど、兄者は見つからなかった。
ジョルジュは子供じゃねえんだから帰ってこれるだろう、って言っていたが私はそうは思わなかった。
何か、胸騒ぎがする。
  _  
( ゚∀;;)「なあ……」

ξ゚听)ξ「……何?」
  _  
( ゚∀;;)「コイツ……連れてきたのか」

ξ゚听)ξ「……ええ」

運転中のジョルジュが指さしたのはしぃだった。
戦闘機の中には私と、ジョルジュとしぃが乗っている。

私達が列車から脱出する時に、兄者と相談して連れていくことにした。
彼女は裏切ったのかもしれないが、それは私達には判別することができなかった。
決めるとすれば、それはジョルジュくらいか。

ξ゚听)ξ「生かすも殺すも全てあんたに委ねるわよ」
  _  
( ゚∀;;)「…………………」
562 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:36:03.84 ID:VCdLI0TFP
  _  
( ゚∀;;)「俺は許した」

ジョルジュはそっけなく答えた。

ξ゚听)ξ「……それでいいの?」
  _  
( ゚∀;;)「俺は目的を果たした。それ以外には何も要らねえよ」

ξ゚听)ξ「そう…………」

その時、兄者のPCから突然音が鳴った。
あまりにも突然なったので、驚かざるを得なかった。
  _  
( ;゚∀;;)「んあ!?な、なんだ?」

ξ;゚听)ξ「!!」

私は急いで画面を見る。
兄者が何かしらのコンタクトを取ったのかもしれない。
ディスプレイには一行の文章が流れていた。

ξ;゚听)ξ「メール……?」

一件のメールを受信していた。


送り主は「兄者携帯」
件名は「ツン、言いそびれた事」

567 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:38:32.95 ID:VCdLI0TFP
ξ;゚听)ξ「わ、私……?」

一体なんだろう。
このメールはあらかじめ書いておいて、指定時間に送るタイプのメールだった。
私は恐る恐るメールを開いた。


そこにはたった一行、こう書かれていた。








「ちょっと兄弟喧嘩をしてくる。運が良ければお前に必ず会いに行く」









571 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:40:18.46 ID:VCdLI0TFP
ξ;゚听)ξ「……………………」

ξ )ξ「………………………」

ああ、そう言うことか。
私は全てを理解した。

ξ;凵G)ξ「馬鹿ね………………」

涙が止まらなかった。
「Player」になった時に、どんなことがあろうと泣かないと決めていた。
だけど……こんな……こんな……。
  _  
( ;゚∀;;)「おい……どうしたんだ?」

ξ )ξ「帰るわよ」
  _  
( ;゚∀;;)「は?」

ξ )ξ「兄者は……乗らないわ」
  _  
( ゚∀;;)「………………………」
  _  
( ゚∀;;)「そうか…………」

ジョルジュは全てを理解したように返事をした。
私達は帰るんだ。VIPへ。
575 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:43:13.57 ID:VCdLI0TFP
―21:34:11―

( ФωФ)「来たか」

俺達がVIPに帰って来た時、3人が待っていた。
なぜかロマネスクは車椅子に座っていたが。

('A`)「おせーよ馬鹿」

( ・∀・)「お疲れ」
  _  
( ゚∀;;)「何だよモララー……気持ち悪いな」

( ・∀・)「黙れ」

やっと訪れた平穏。
俺達は戦いに勝利した。
普段、何も見せない俺達が、全てを出し切った瞬間だった。

( ФωФ)「……?兄者はどうした?」

ロマネスクが辺りを見渡す。

ξ゚听)ξ「…………死んだわ」

( ;・∀・)「なっ!!」

('A`;)「兄者が!?」
577 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:44:15.69 ID:VCdLI0TFP
ξ゚听)ξ「弟者との戦いで……それで」

( ;ФωФ)「そ、そうだったであるか……」

3人は驚きを隠せない様子でいた。
それもそうだろう。
俺達の中で唯一の死者だ。

本来ならば全員死んでもおかしくない状況だったんだ。
それに兄者も本望で死んでいったに違いない。
俺には分からないがな。
  _  
( ゚∀;;)「とにかく……弟者とショボンはこれで死んだんだ。俺達の勝利だ」

('A`#)「勝利なわけあるかよ!俺の『ルーレット』を勝手に使いやがって……」

( ・∀・)「まだ言ってんのかよ。良いじゃねえかそれでラウンジとの交渉も上手くいきそうだ」

('A`#)「おめえの仕事の話なんざマジでどうでもいいんだよ!」

ドクオは酷く立腹している。
何があったのかは良くわからんが。

(*゚ー゚)「……………みんな」

その時、戦闘機の方から声が聞こえてきた。
どうやらしぃも目覚めたらしい。

578 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:45:21.46 ID:VCdLI0TFP
( ФωФ)「しぃ………」

('A`)「なんだ、お前もシベリアに行ってたのか」

そうか、こいつらは知らなかったんだな。
こいつが何をしていたのかなんて。

(*゚ー゚)「あの……実は……わt」

( ・∀・)「しぃ!!よくやった!」

しぃの話に食い込むようにモララーが声を掛けてきた。

( ・∀・)「お前のおかげでラウンジ軍を追いこむことに成功した。感謝するよ」

(;*゚ー゚)「え?あ、いやうん……あれはギコが……」

( ・∀・)「お前の手助けが無ければ、戦争は長期的なものになっていたな……本当に助かった」

('A`)「やっぱ今日のモララー気持ち悪いわ」

( ・∀・)「死ね」

(;*゚ー゚)「………………」

どうやらコイツらはしぃを受け入れる気でいるらしい。
まあ……こいつらが良いのなら俺もとやかくは言わん。

ξ゚听)ξ「それよりも……どうするの?」

579 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:46:59.55 ID:VCdLI0TFP
ツンが突然声を張り上げる。

( ФωФ)「何だ?どうすると言うのは……」

ξ゚听)ξ「何だじゃないわよ。『ゲーム』よ『ゲーム』。まだ途中でしょ?」

( ・∀・)「あ…………」

そう言えばと、思い出した。
俺達はまだ勝負の真っ最中だったことをすっかり忘れていた。
  _  
( ゚∀;;)「どうもこうもねえよ。続行だ」

俺の考えは一つだ。
今からでも俺はボスを目指す。

('A`)「でもなあ……俺達が今まで稼いだ金、全部弟者がパクったんだろ?」

(*゚ー゚)「うん。全部ね」

ξ゚听)ξ「そうよ。やるとしたらまた一からやり直し」

( ・∀・)「良いんじゃねえの?それでも」

( ФωФ)「たった一日でどこまで稼げるか……か、面白い」

('A`)「しゃあねえな……乗ってやるよ」

結局、全員一致で勝負を続行するに賛成した。

580 : ◆4972gaB/9o :2011/03/22(火) 02:48:08.23 ID:VCdLI0TFP
( ・∀・)「それじゃあここにいる6人でひと踏ん張りだな」

( ФωФ)「……期限は明日の0時0分」

('A`)「勝者はカードに入れた額が一番でかい奴だな」

( ・∀・)「さあ、最後の勝負だ」

ξ゚听)ξ「最終日ぐらいは邪魔しないでよね」

(*゚ー゚)「さあ?どうかしら」

今日の友は明日の敵。
これから俺達は1日かけて金を稼ぎまくる。

  _  
( ゚∀;;)「じゃあ……『ゲーム』再開だ」


この勝負は全て明日で決まるんだ。



◆12:ババ抜き 後編 END To Be Continued-

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