91 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:13:30.58 ID:X7n6Y3cm0
                          4


時は変わって、その日の帰りのミーティング後。
突然準備室に呼び出された5人の目の前には、いつもとは様子の違うジョルジュがたっていた。
  _
(;゚∀゚)「まずいことになった」

ジョルジュが眉間にしわを寄せている。
こんな弱弱しい態度、生徒たちは今まで一度も見たことはなかった。
だからもう、それはとても珍しいことなのだ。生徒たちは、焦りを隠さずにはいられなかった。

川;゚ -゚)「何か、不都合でも……?」
  _
(;゚∀゚)「いや。ところで、ラウンジ高校を知っているか?」

(;'A`)「知ってるも何も、県で毎回金賞とってる、支部大会常連の学校でしょう?
    大変なことになったって、ラウンジ高校がどうかしたんですか?」

ジョルジュの渋った表情が更に険しくなる。
94 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:14:34.89 ID:X7n6Y3cm0
  _
(;゚∀゚)「実はな。このアンサンブルコンテストの成績でラウンジ高校に負けたら……吹奏楽部がつぶれるかもしれないんだ」


(;^ω^)「……え?」


全員のあいた口がふさがらなかった。
場の雰囲気は完全に凍りつき、時間が止まったかのような錯覚すら覚える。


川;゚ -゚)「ど、どういうことですか! つぶれるって!」

最初に口を切ったのはクーだった。

(;'A`)「そ、そうっすよ! 何を唐突に!」

(;^ω^)「kwsk」

ξ;゚听)ξ「い、いやですそんなの!」

(´・ω・`)「ふ、ふざけないでくださいよ!」

それからもう、皆が口々にジョルジュを責め続けた。
はじめジョルジュは、やかましさに腹が立ったかのように憤っていたが、次第に顔を俯かせ、腕をだらんと下げてしまった。
98 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:15:40.10 ID:X7n6Y3cm0
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( ゚∀゚)「すまん……きっと、俺のせいだ」

そのジョルジュの様子を見て、やっと生徒たちは冷静さを取り戻せた。
いつも明るいだけのジョルジュが、こんなに落ち込んでいる。本当に、何があったのか。

  _
( ゚∀゚)「今日、校長に呼び出されて……。
     突然、そんな事を言われたんだ。理由を聞いても、とにかくそれしか言わないんだ……」

ばかげた話であった。
校長はこの吹奏楽部、またジョルジュを好いており、野球の応援などに行ったときには、差し入れまでくれたのを覚えている。
そんな人が、唐突に吹奏楽部をつぶすなど。理由が思いつかない。

(;'A`)「……」

だが、ドクオの頭の中だけでは、あらゆる単語が一本の線を結び始めていた。
なぜこの時期になってそんな事が? なぜ校長がそんな事を? そしてなぜラウンジ学園に?

(#'A`)「モ、モララーの野郎だ……!」
  _
( ゚∀゚)「……モララー?」
101 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:17:08.72 ID:X7n6Y3cm0
(#'A`)「そうだ! 俺は昨日、あいつの父親とうちの校長が話しているのを見たんだ!
    このことに違いない! なぜかって? そんなのは考えればすぐわかることなんだ!」

ドクオの怒号が飛ぶ。
その一方で、あっけに取られる他のメンバー。

(#'A`)「知らないのか? このVIP高校は、ラウンジ高校の校長であるモララーの親父の資金援助で建てられてるんだ。
    だから、この学校の校長はモララーの親父には逆らえない。モララーが吹奏楽部をつぶしたいと親父にいえば、それは可能なことなんだ」

ドクオのその解説に、全員が事を全て理解し、はっとした表情をする。

川 ゚ -゚)「つまりなんだ。アンサンブルに乗れなかったモララーが、私たちをひがんで?」

(#'A`)「それっきゃ……ねえだろ!」

ドクオの手がわなわなと震える。

(´・ω・`)「……腹立たしい」

いつもはポーカーフェイスのショボまでもが、いきり立っていた。

今までは、誰かに勝つという目標がなかったから良い。
だが、必ずこの強豪ラウンジに勝たなければいけなくなってしまったのだ。

それはあまりに重荷過ぎて、全員の心を重苦しくするには十分すぎた。
04 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:18:26.63 ID:X7n6Y3cm0
ξ;゚听)ξ「私たちが……ラウンジに勝てるの?」

ツンが、みなが今一番思っていることを口にした。
ラウンジは支部大会常連校。対してこちらは、普通の学校。
どちらが勝利できるか? やってみなくてもわかるようなものであった。


( ^ω^)「勝てるお」

その不安のオーラが渦巻く中、ブーンのその声がまっすぐに通った。

( ^ω^)「絶対勝てる。いや、勝たなきゃいけないんだお。
      負けることを考えてたら負けるお。ドクオ、昨日お前は僕に自信を持たせてくれたじゃないかお」

('A`)「…………」

ブーンがドクオを見、それから全員を見る。
しかめ面をしていた皆の表情も次第に明るくなり、場の雰囲気は一転した。

川 ゚ー゚)「……勝とう。勝てば、良いだけの話なんだ」

ξ゚ー゚)ξ「そうね。私たちならやれるわよ」

(´・ω・`)「幸い、このメンバーの実力は高いほうだ。どうにかなるだろう」

('A`)「そうだな。やるとこまでやってやるか」

それぞれが、決意を表す。
109 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:20:43.21 ID:X7n6Y3cm0
  _
( ゚∀゚)「……ドクオの話が本当だとして、俺にはどうすることもできない。
     校長をぶん殴ったら吹奏楽部は確実に潰れちゃうし、モララーを呼び出してぼこぼこにしても同じだ。
     だからみんな。俺も精一杯のできることはする。どうか、必ず勝ってくれ……」

ジョルジュの切実な願い。
それに応えるように、全員がうなずいた。


(´・ω・`)「それで先生、ラウンジはどんな曲を?」
  _
( ゚∀゚)「ラウンジ高校が演奏するのは、金管8重奏、高貴なる葡萄酒をたたえて。
     X・フンダドーレと、そしてシャンパンをもう一本だな」

ξ;゚听)ξ「葡萄酒、ポピュラーね」

(;'A`)「でも、有名な曲ってのは審査員の好みで評価が別れる点が微妙だな。
     俺たちの演奏なんて初演なんだから、審査員は純粋に曲の雰囲気を評価してくるだろうな。相当やりこまなきゃだな」


コンテストは、数名の審査員がその曲を評価し、音色、曲の理解など複数の項目における総合点で競い合う。
総合点が高い団体の内、数団体のみが支部代表へとなることが出来る。
が、それは全40数団体のうちの4分の1にも満たないのだ。それほどまでに厳しい世界、それがコンテストであった。

ちなみに金管8重奏とは、金管5重奏の形態にトランペットをもう1本、更にトロンボーンを2本増やしたものが一般的だ。
5重奏よりも音の厚みが増すもの、人数の多さゆえにバランスをとるのが非常に困難であったりもする。
111 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:21:54.90 ID:X7n6Y3cm0

( ^ω^)「絶対負けないお。絶対かつお!」

動揺していた全員が、ブーンの声に勇気をつけられる。

川 ゚ -゚)「そうだな……! 絶対勝とう!」

そして円陣を組み、皆で決意をわかちあった。

 

 

 

 

116 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:25:07.06 ID:X7n6Y3cm0
以上で前半終了です。
ここまでの用語解説をします。


グリッサンド……ある音からある音までに含む、全ての音を滑らかに鳴らしながら、上昇または下降する技術。
           純粋なグリッサンドを行えるのはトロンボーンのみ。ホルンのグリッサンドは、音と音の間の倍音列を鳴らしていくもの。

トリル……ある音と、普通それより2度上の音を素早く交互に出していく技術。

ベンディング……口の形を変え、強制的に音程を下げる技術。


では、後半行きます。


ちなみに、葡萄酒です。

ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm974132

 

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