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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:04:24.28 ID:X7n6Y3cm0
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(´・ω・`)「では、今日は2楽章いくぞ」
その次の放課後、音楽室。
もはやこのアンサンブルのリーダーと化したショボの指示に従い、全員が楽器を構える。
ジョルジュはバンドの合奏を練習をしているため、現在はここにいない。
(´・ω・`)「……」
2楽章開始の合図である、ショボの静かなトリル。
それにテンポを作り、トロンボーンがトリルを重ねる。
( ^ω^)「……」
トロンボーンはピストンやロータリーを備え付けていないため、トリルをするときは、リップトリルといわれる超難関テクニックを要する。
これはアンブシュアの形、息の流れを高速で変化させ、通常そのポジションで出せない音をベンディングで無理やり出し、トリルのようにする技法だ。
だがこのテクニック、プロの奏者でも難しい。
そこでトロンボーンのトリルを可能にするのが、追加バルブだ。
このバルブを素早く押し離しする事で、特定の音のトリルを可能にする。
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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:05:31.52 ID:X7n6Y3cm0
- とはいえ、バルブを連打するとき、息は主管とバルブ用につけられた管を交互に行き来することとなる。
その為、その技法でトリルをするときに必要なのは、安定した口の筋肉、腹の支え。
ブーンだからこそ、できたトリルである。
そしてホルン、フリューゲル、トランペットのトリルが重なり、ツンのグリッサンドに入る。
まるで風のようにゆっくりと上昇と下降をつなげるグリッサンド。
( ^ω^)「!」
そしてブーンの主旋律が入ったとき、ショボがメトロノームを止めた。
(´・ω・`)「う〜ん、やっぱブーンのトリルに息がしっかり入ってないね」
( ´ω`)「練習しておきますお」
ショボの厳しい突っ込み。
ブーンも自覚していたのか、やるせない表情になった。
('A`)「ブーンが入って、初めて不協和音の味が出るみたいだな。
頭のトリルもブーン、お前が一番重要だ。練習しとけよ!」
( ^ω^)「おk」
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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:06:48.73 ID:X7n6Y3cm0
- ξ゚听)ξ「でも、思ったより悪くないわね?」
(´・ω・`)「意外とね。あとさツン、君のグリッサンドがちょっと迫力ないな。
ホルンのグリッサンドなんだから、バリバリに割るくらいの勢いで吹きなよ」
ξ;゚听)ξ「わかったわ」
各々が耳を使い、評価しあう。
曲の中で作曲者が意図することを読み、共通のイメージを音に持つことで、一つのまとまりとなっていく。
(´・ω・`)(しかしまあ、この調子で行けば、何とかなりそうだな)
(´・ω・`)「では、今日は2楽章の練習を中心にやろう。
ブーンとツンは掛け合いの部分をやっといてくれ。後は個人練習ね」
ξ゚听)ξ ( ^ω^)「おk」
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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:08:29.31 ID:X7n6Y3cm0
- ξ゚听)ξ「さて、やりましょうか」
放課後の静かな教室。
アンサンブルに出ない一般の部員は、音楽室で合奏をしている上、ドクオたちは自分たちと同じ階にはいないため、ひどく静かに感じられた。
( ^ω^)「……」
そんなことだから、こいつの頭の中ではフラグという言葉が渦巻いていた。
ξ゚听)ξ「きいてんの?」
(;^ω^)「あ、ああ」
ツンの呆れたような声に、慌てて我に帰るブーン。
( ^ω^)「どうするお? どっからやるお?」
ξ゚听)ξ「私のグリッサンドからやりましょう。メトかけるね」
ツンが教卓の上にメトロノームを置き、鳴らす。
ブーンはそれが見えるようにメトロノームの正面に移動し、やがてツンも横に立つと、静かに楽器を構えた。
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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:09:38.13 ID:X7n6Y3cm0
- ξ゚听)ξ「ブーン、カウントお願い」
( ^ω^)「1、2、3」
一拍間おいて、ツンの激しいグリッサンドが駆け巡る。
ブーンとツンはしっかりとアイコンタクトをし、やがてトロンボーンへと主旋律が受け渡される。
ホルンの上昇グリッサンドとタイミングを同じくして、トロンボーンも勢いよくグリッサンド。
ホルンは段々と音量を落とし、トロンボーンとの掛け合いメロディを奏でる。
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「……」
今はメトロノームでテンポを作っているから良いものの、実際のアンサンブルではリズムを合わせるための打楽器などはない。
この場面では激しいリズムを刻んでいるチューバがいるが、それ以上に主旋律を奏でるホルンとトロンボーンの出だし、切りなどに正確さが求められる。
その為のアイコンタクトだ。目でものを訴え、体でリズムを刻む。
ξ゚听)ξ「……」
やがてツンのホルンは静かに響きを作り、ブーンのメロディは激しさを抑え、本来ならばドクオのフリューゲルにそれを受け渡すところまで到達した。
そこで、ツンは静かにメトロノームを止めた。
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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:11:10.36 ID:X7n6Y3cm0
- ξ゚听)ξ「う〜ん……。なんか吹いてるだけって感じね」
( ^ω^)「同じ事を思ったお。なんか、なんかだお」
ξ゚听)ξ「この場面、ブーンはどんなイメージがある?
ショボも迫力を出せって言ってたけど、私のグリッサンドがきっと激ししい風、嵐の幕開けだと思うの」
( ^ω^)「タイトルの日本語訳は『侵略』だったお。まあ、そんな感じなんだろうお」
ξ゚听)ξ「ショボの激しい刻みは、兵隊の行進か稲妻かしらね?
ならブーンのメロディはきっと、戦いを表現しているんじゃないかしら」
( ^ω^)「戦いかお。ならきっとドクオたちのトリルは、兵士たちの声だお」
統一見解を話し合う二人。
曲を理解するうえで、こういった共通の理解はとても重要なのである。
ξ゚听)ξ「じゃあそんな感じで、もう一回吹いて見ましょ」
( ^ω^)「おk」
再度楽器を構えなおし、二人は音楽をかなで始める。
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名前: ◆MAMEOLw4rQ
:2007/09/23(日) 23:12:24.14 ID:X7n6Y3cm0
- 先ほども聞いたツンのグリッサンドが抑揚をつけて、風のように手前に引いたり、前に出たりする。
そしてブーンの旋律。戦い。
まるで剣を打ち鳴らすかのように。そういうイメージでブーンは音符を並べた。
ξ゚听)ξ「……」
やがて、それにまとわりつくツンの掛け合い。
このソロの掛け合いは、兵士同士の戦いなのだろうか。
お互いが激しさを増しながら、やがてそれらは段々とひいていき、ツンがメトロノームを止めた。
ξ゚听)ξ「さっきよりはいいんじゃない? ていうかブーン、あんたフラッターへたねぇ」
( ´ω`)「…………」
フラッタートリル。
口蓋垂を振るわせる、もしくは巻き舌を行って、音を超素早くタンギングしているかのようにさせる技法だ。
独特の不気味さをかもし持っており、どこか不安を感じさせる効果がある。
ξ゚听)ξ「練習しときなさいよ〜? じゃあ、ショボも交えて和音を合わせに行きましょうか」
( ^ω^)「わかったお」
そんな感じで、練習は順調に、確実に進んでいった。
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