49 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 22:52:23.65 ID:X7n6Y3cm0
                         2


川 ゚ -゚)「とりあえず、1楽章から練習しよう。一回通してみるか」

クーの言葉に全員がうなずき、各楽器を構える。
そしてクーがメトロノームにあわせ、体でテンポをとり、全員に合図を出す。
それを見た瞬間、1楽章冒頭の3和音が鳴り響き、曲が開始した。


やがてホルンの旋律、トランペット2本による掛け合い、ホルンとトロンボーンの旋律が奏でられる。
音楽の中での情景の移り変わりは目まぐるしく変わり、1楽章は終了した。


川 ゚ -゚)「時間は?」

('A`)「2分14秒。まあ、今のは倍テンポだから、実際はこの半分かな」


ξ゚听)ξ「1楽章の指定テンポは四分音符100よね?
      あまり速くないし、とりあえず音作りから始めましょ」

(´・ω・`)「そうだね。テンポを早くしたときに、崩れないようにしっかりしなければ。
       じゃあ、先ず最初の和音を伸ばしてみようよ」
51 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 22:53:38.66 ID:X7n6Y3cm0
1楽章の頭にある、トロンボーン、ホルン、チューバの長3和音。
C、G、Eの基本的なこの和音からなる冒頭、これの響きが悪ければ、曲がはじまることもできない。

(´・ω・`)「1度、5度、3度の順で4拍ずれで入って」

ショボがメトロノームをいじり、テンポを作る。

単純な3和音は、根音(基準の音)と、その5度上の音、3度上の音の、3つの音で作られる。
例えれば、『ド』を根音とした場合、ド、レ、ミと3つ目に上がったこの『ミ』の音が3度。
さらに、ミ、ファ、ソと5つ目に上がった音である『ソ』が『ド』に対しての5度となる。

その『ド』『ミ』『ソ』を同時に鳴らしたとき、それぞれは美しく混ざり、一つの響きとなる。
この複数の音による響きのことを『和音』と言い、それぞれの音が音程を調整しなければ綺麗に混ざらないので、基本ながら難易度の高い技術だ。

普通は低音楽器が根音(1度)、高音楽器が5度、中音楽器が3度を奏でる。
ここではショボが1度、ツンが5度、ブーンが3度の音を受け持っていた。

(´・ω・`)「クー、カウントお願い」

川 ゚ -゚)「わかった」

ショボがクーにカウントを頼み、3人は楽器をいっせいに構える。
54 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 22:54:45.64 ID:X7n6Y3cm0
川 ゚ -゚)「1、2、3」

4つめのカウントは言わず、その1拍後にショボのCの音が響く。
そこから更に4拍、ツンのGがショボのCと絡み、美しい2和音となる。

( ^ω^)「……」

和音を決める3度。
『ド』の純粋な3度である『ミ』ならば、長和音となる。
だが、その3度を半音下げ、『ミ♭』とすると、この和音は短和音となり、暗く悲しい響きとなる。

この曲の冒頭は、基本的な長3和音。
やがてブーンが静かに息を吸い、Eの音をまっすぐに伸ばした。

川 ゚ -゚)「1、2、3」

そしてクーがもう一回カウントを始めると同時に、全員がそれぞれの音をいっせいに吹きなおす。
綺麗なC音階の3和音が、部屋中に響いた。


('A`)「う〜ん、ブーン音程高いよ」

音が消えた頃、横で聞いていたドクオがアドバイスをする。
3度の音は、1度よりも少し低めにとる(1度と5度に溶け込むようにする)のが主流である。
だからつまり、5度と3度はとにかく1度の音程を気にしなければいけない。
58 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 22:57:17.96 ID:X7n6Y3cm0
しかし、音程というのは非常にわかりにくいものである。
だからこうやって、耳を使える人間がアドバイスをするのだ。

( ^ω^)「わかったお」

ブーンはすばやく鉛筆を取り出し、出だしの音に下矢印を書きこむ。
次に吹くとき、この音は音程が高くなっていた事がわかるようにするための目印である。

('A`)「で、ショボは音程いいね。ツンは、もうちょっと1度に合わせようとしてみな」

ξ゚听)ξ「わかったわ」

川 ゚ -゚)「では、もう1回」

クーが再度カウントを始め、またそれぞれの音が分散で入り、和音となる。

('A`)「うん、さっきよりいいよ。常に注意しなよ」

そんな感じで、練習は夜遅くまで続いていった。



61 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 22:58:13.63 ID:X7n6Y3cm0
それから学校の帰り、ドクオとブーンは帰り道にあるハンバーガーショップへ立ち寄っていた。

( ^ω^)「うめぇwww」

メガマッ○をほうばるブーン。
口の周りには特製ソースがこびりつき、手は油でべたべただ。

('A`)(キメェ……)

ドクオはそんな事を思いながら、ポテトをつまんでいた。
そのポテトに突如忍び寄る、ブーンの魔の手。

('A`)「あ、俺のポテト!」

( ^ω^)「ケチなこというなおwww」

('A`)「黙れピザ」

(#^ω^)「ビキビキ」
64 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 22:59:24.64 ID:X7n6Y3cm0
( ^ω^)「なあ、ドクオ」

('A`)「あ?」

( ^ω^)「アンコンどう思うお」

突然、ブーンが神妙な表情をした。

('A`)「えー……いいんじゃないの? 力量試せるし」

( ^ω^)「そうかお。
      でも、僕は不安なんだお。モララーのほうがどう考えても僕よりうまいし……」

しんみりするブーン。
彼は彼なりに、色々とネガティブな面がある。ドクオは、それを察していた。

('A`)「コンマスの俺が言ってやろう。お前もモララーも、良いところを持ってる。
   うまいとか下手じゃなくて、この曲にはお前の音色があっている。だからジョルジュ先生もお前を選んだんだろ」

ドクオがブーンの肩に手を置き、言葉をかける。
ブーンは振り向き、まっすぐな目でドクオを見つめた。

( ^ω^)「……そうかお!」
66 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:00:42.75 ID:X7n6Y3cm0
勢いよくジュースを飲み干すブーン。
今までうじうじしていた自分の態度と決別したその様子を見て、ドクオは小さく笑った。

('A`)「おし! その調子で明日もがんばろうn」

( ^ω゚)「ぐっ! おおおあ!!」

(;'A`)「ど、どうした!」

ブーンが突然、顔をゆがませる。
眉間にしわを寄せ、冷や汗をだらだらとたらすその姿は、不気味さを覚えてしまうようなものであった。

( ^ω゚)「も……もれる」

やがて腹をさすりだすブーン。
どうやら、下ったようだ。

(;'A`)「ったく情けねえ。トイレ行けよ」

( ゚ω゚)「いやだお!!」

ブーンの目が見開かれた。
ドクオはあまりの迫力に、仰天した。
68 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:01:56.14 ID:X7n6Y3cm0
(;^ω゚)「ウォシュレットがないといやだお。帰ろうお」

(;'A`)「いいじゃねえかよ」

(;;^ω゚)「いや……だお……」

(;'A`)「わかったわかった」

ドクオがため息をつき、席を立ち上がったときだった。



「……けで……すよ……」

('A`)「ん?」

ふと、聞き覚えのある声。
慌ててそちら……トイレ側の席に顔を向けると、見知った顔がいた。

(;'A`)「あれはモララー? それにモララーの親父に……うちの校長までいるぞ?」

柱を死角にし、そちらをじっと伺うドクオ。
そこにいたのは、間違いなくモララー。そして、以前コンクールで見た彼の父親。
更に、何故か自分たちの学校長がいるのだ。

69 名前: ◆MAMEOLw4rQ :2007/09/23(日) 23:02:45.38 ID:X7n6Y3cm0
(;^ω^)「ドクオ、早く……」

('A`)「あ、ああ」

だがドクオは、深く追求せず、さっさと店を出ることにした。
酷く、嫌な予感がしたからだ。

('A`)(なにもなければいいが……)

店を出、ドクオは腹をさすり続けるブーンとともに、自転車をこぎ始めた。


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