526 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 20:54:01.91 ID:IkGv3Ac2O


彼は王様になりました。

使用人を見つけました。

コックを見つけました。

庭師を見つけました。

商人を見つけました。


彼は、自分の目標としていた王様になったのです。



531 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 20:55:58.74 ID:IkGv3Ac2O


ξ゚听)ξ「それで?」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「あなたの本当の願いは、」


王様が、本当に、本当に、願っていたことは、


ξ゚听)ξ「叶ったの?」

( ^ω^)「……まだだお」


未だに叶ってはいませんでした。




532 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 20:58:08.71 ID:IkGv3Ac2O


ξ゚听)ξ「……」

( ^ω^)「……」


こうして魔女と話す事は何回目でしょう。

毎回おんなじ内容です。


「あなたの願いは叶ったの?」


答えはいつも同じでした。


535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:00:17.43 ID:IkGv3Ac2O


ξ゚听)ξ「ま、どうでもいいけどね」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「でもね、」

( ^ω^)「……」

ξ゚听)ξ「時間はどんどん近づくわ」

( ^ω^)「わかっているお」


終わりはいつもこの会話。

そうして魔女はどこかへ行ってしまうのです。


538 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:03:08.58 ID:IkGv3Ac2O


( ^ω^)「……」


王様一人の部屋に、響く音。


コンコン、げほげほ、

コンコン、げほげほ、


(  ω )「……」


王様の、咳込む音でした。

誰にも聞かせていない、音でした。


542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:05:38.90 ID:IkGv3Ac2O


(*゚ー゚) 「ねえ王様!今日はお皿をピカピカにしたんですよ!」

( ^ω^)「これは凄いお!輝いているお!」


それでも毎日は続きます。


(*゚ー゚) 「今日はお部屋の隅々まで磨いたんですよ!」

( ^ω^)「おおう!滑ってしまいそうだお!」


毎日は、続きます。


545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:08:14.87 ID:IkGv3Ac2O


<ヽ`∀´> 「王様!新しいキムチ料理ニダ!」

( ^ω^)「おっお!これは辛くて美味しいお!」


王様はそんな毎日を、


<ヽ`∀´> 「王様!キムチ以外の料理を作ったニダ!」

( ^ω^)「流石我がコックだお!これで僕もより一層偉くなるお!」


いつしか好きになり、


548 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:10:36.06 ID:IkGv3Ac2O


(´・ω・`)「どうですか王様」

( ^ω^)「流石ショボンだお。美しい庭だお」


いつしか大切に思うようになり、


(´・ω・`)アイカッチュー

(;^ω^)「ん?」

(´・ω・`)「いえ、なんでもないです」


いつしか、


550 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:12:09.98 ID:IkGv3Ac2O


/ ゚、。 /「今日は美味しいお肉ですよ」

( ^ω^)「素晴らしいお!夕食が楽しみだお!」


そんな毎日が、


/ ゚、。 /「まあキムチ……」

( ^ω^)「キムチ……」


何より愛おしく思うようになりました。


552 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:13:19.17 ID:IkGv3Ac2O





でも、







561 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:15:04.72 ID:IkGv3Ac2O





大切で

愛おしくて、

かけがいの無いものでも、






563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:16:39.67 ID:IkGv3Ac2O


王様の願いには変わりません。


コンコン、げほげほ、

コンコン、げほげほ、


(  ω )「……」


だから、だから、


だから王様は……



566 :ゴメン「アイカッチュー」はただのパロ:2010/07 /06(火) 21:20:21.45 ID:IkGv3Ac2O


( ^ω^)「おまえら全員クビ」

(*゚ー゚)

<ヽ`∀´>

(´・ω・`)

/ ゚、。 /

( ^ω^)「野垂れ死ねバーカ」



そういう道しか選べなかったのです。


571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:22:49.48 ID:IkGv3Ac2O


*****


「しつもんがありまーす」

「なんだい?」

「魔女は伝説だとききました」

「そうだね」

「どうして伝説なのですか?」

「それはね、」



573 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:25:11.91 ID:IkGv3Ac2O


「坊やに、魔女は願いを叶えると教えたね」

「はい、教えてもらいました」

「大抵の願いってのはね、」

「はい」

「魔女に頼む必要なんて無いんだ」

「?」



578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:30:34.32 ID:IkGv3Ac2O


「地位が欲しい男は魔女を呼ぼうとした」

「……」

「だけど魔女を呼ぶよりも、努力して偉くなる方がずっと簡単だったんだ」

「……」


580 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:32:48.46 ID:IkGv3Ac2O


「お金が欲しい男がいた」

「……」

「だけど同じような伝説の錬金術を探すほうが、」

「……」

「ずっとずっと簡単だったんだ」

「……」

「魔女には代償として来世が奪われるからね、みんなそっちを選んだ」


586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:35:16.93 ID:IkGv3Ac2O


「じゃあ、じゃあどうして王様は魔女を選んだんですか?」

「……世界のどこにもね、」

「……」

「人を生き返らせる伝説はなかった」

「魔女なら?」

「魔女でも無理さ」

「じゃあどうして!」

「魔女はね、自分が無いんだ」

「自分が?」



591 :>>583ゴメン「が」だった:2010/07 /06(火) 21:40:17.32 ID:IkGv3Ac2O


「魔女を呼び出すために必要な、悲しみの香辛料、呼び出す者の生き血、」

「……」

「その中にある、気持ちから魔女は、姿を作る、顔も性格も、」

「……」

「魔女の姿がここの文献に無いのはそういう理由なんだ」

「じゃあ、王様は」

「……」


*****




592 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:42:12.71 ID:IkGv3Ac2O





その5

王様の話





599 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:47:54.85 ID:IkGv3Ac2O


それは彼がまだ、幼かった日の事です。


( ^ω^)「僕は王様になるお!」

ξ*゚听)ξ「ふーん」

( ^ω^)「そしたらツンはお妃様だお!」

ξ*゚听)ξ「……ありがとう」

( ^ω^)「約束だお!」

ξ*゚听)ξ「うん……」


それは子供達の約束、

どこにでもある、小さな約束。


603 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:51:09.98 ID:IkGv3Ac2O


二人はとても仲良しでした。


ξ*゚听)ξ「お花の飾りはこうやって作るの」

( ^ω^)「おおー、ツンは物知りさんだお!」

ξ*゚听)ξ「ふ、普通だよ」

( ^ω^)「それでも僕は知らなかったお!だから凄いお!」

ξ*゚听)ξ「ありがとう……」


毎日のように二人は遊びました。

二人は毎日を輝くような笑顔で過ごしていました。


606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:53:55.14 ID:IkGv3Ac2O


やがて二人が大人に近づいていって、

関わり方が変わっても、


( ^ω^)「今日はお仕事だお!」

ξ゚听)ξ「……気をつけてね」

( ^ω^)「おっおwwwwツンにそう言って貰えるだけで百人力だおwww」

ξ*゚听)ξ「バカ……」


二人はとても仲良しでした。




607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:55:46.45 ID:IkGv3Ac2O






だけど……そんな日々は続きませんでした。







611 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:57:12.89 ID:IkGv3Ac2O


西のお城と、

東のお城と、

南のお城と、

北のお城が、

みんながみんな、


戦争を始めたのです。



617 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 21:59:59.99 ID:IkGv3Ac2O


二人は離れる事になりました。

男は戦場へ、


( ^ω^)「待っててくれお」

ξ;凵G)ξ「絶対…帰って来てね……」

( ^ω^)「もちろんだお!」


彼女を守るために、

戦場へ。



622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:03:38.33 ID:IkGv3Ac2O


殺しました、

何人も何人も、


(# ω )「うおおおおお!!」


ただ、ただ守りたかったから、

ただ、ただ彼女の下へ帰りたかったから、


( ;ω;)「うおおおおお!!!」


その、一心で、

何人も、何人も、

殺しました。



627 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:05:38.35 ID:IkGv3Ac2O





だけど、だけど、

戦争が終わって、

ようやく、ようやく戦争が終わって、






630 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:07:07.02 ID:IkGv3Ac2O





(  ω )「……」


彼が自分の居た場所へ帰った時には、





633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:11:01.60 ID:IkGv3Ac2O


(  ω )「どうして無いんだお……」

(  ω )「僕の家も、向かいのおじさんの家も」

(  ω )「となりのおばさんの家も、公園も、僕の町も」

(  ω )「ツンの、家も……」

(  ω )「どうして……」

( ;ω;)「どうして何も無いんだお!!!」




「どうして!!!!!」





636 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:12:10.36 ID:IkGv3Ac2O






何も、残ってはいませんでした。







641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:15:48.26 ID:IkGv3Ac2O


「あの村?」

「ああ襲われたんだって?」

「きっとみんな■■ちゃいないよ」

「みんなみんな■■じまった」

「酷いことをするよな」


645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:18:43.24 ID:IkGv3Ac2O


不快な言葉を何度も聞きました。

何度も、何度も、


(  ω )「生きてるお」


だけど彼は、


(  ω )「きっとツンは生きてるお」

(  ω )「死体が無いお、墓が無いお」

(# ω )「だから絶対に生きてるお!」


それを信じようとはしませんでした。


648 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:20:22.70 ID:IkGv3Ac2O


彼は探しました。

ツンを、大切な人を、

西へ東へ、

南へ北へ、

彼は探しました。




649 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:22:03.30 ID:IkGv3Ac2O


だけど、


(  ω )「見つからないお」


西も東も、


(  ω )「見つからないお」


南も北も、


(# ω )「どうして見つからないんだお!!!」


どこにも彼女はいませんでした。


651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:24:40.97 ID:IkGv3Ac2O


( ;ω;)「……」


西にも東にも南にも北にも、

どこを旅しても、

彼女はいませんでした。


( ;ω;)「ツン……」


悲しみに沈みそうな、

そんな時でした。

彼がそれを、

思い出したのは。



656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:26:47.15 ID:IkGv3Ac2O


「僕は王様になるお!」

「ふーん」

「そしたらツンはお妃様だお!」

「……ありがとう」

「約束だお!」

「うん……」



それは幼い日の約束。


658 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:28:46.52 ID:IkGv3Ac2O


( ^ω^)「僕は、」


もしも偉くなったら、

もしも王様になったら、

彼女が僕を、

彼女が僕を見つけてくれるかも知れない。


( ^ω^)「王様に、なるお」


もう一度、会えるかも知れない。



664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:33:57.73 ID:IkGv3Ac2O


彼女を探す旅で彼は色々な事を知っていました。

魔法のような事だって、

錬金術だって、

なんだって知っていました。

だけど、

それでも彼は、



( ^ω^)「へいへい!魔女さん!願いを叶えてくれお!」

ξ゚听)ξ「……いいけど、わかっているの?」




魔女を、呼びました。


667 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:38:09.60 ID:IkGv3Ac2O


もしかしたら、

もしかしたら、彼はわかっていたのかも知れません。

彼女が、

彼女が、もういない事を。

それでも彼は、王様は、

いびつに歪んだ夢を、それだけを信じて、






(; ω )「ガハッ!ガハッ……ツン」


生きてきたのです。



673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:43:48.13 ID:IkGv3Ac2O


(; ω )「……」

ξ゚听)ξ「……」


それはもう何回目かすらわからない会話の時でした。


ξ゚听)ξ「このまま、終わる?」
(; ω )「……」


ただ、


ξ゚听)ξ「まだ二つ、願いを叶えられるのに……」

(; ω )「……」


今日は少しだけ違いました。



677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:48:25.30 ID:IkGv3Ac2O


それは彼の記憶が魔女に影響したのかもしれません。


ξ゚听)ξ「このままだと、死んじゃうよ?」

(  ω )「……」

ξ゚听)ξ「ねえ、それでもいいの?」

(  ω )「……」

ξ;凵G)ξ「ねえったら!」


それは、

まるで、彼女が言うような言葉、


682 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:51:22.90 ID:IkGv3Ac2O


だけど、


(  ω )「……いいんだお」

ξ;凵G)ξ「……」

(  ω )「もう……いいんだお魔女さん……」

(  ω )「ツンは、ツンはきっと、」


王様は、彼は、


( ;ω;)「死んでしまったんだお……」


疲れてしまっていました。



685 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:54:19.80 ID:IkGv3Ac2O


ξ;凵G)ξ「……」

(  ω )「もう叶えられる願いなんて、しらないお」

ξ;凵G)ξ「……」

(  ω )「……彼等に、」

ξ;凵G)ξ「彼等?」

( ^ω^)「僕が、追い出してしまった彼等のために、」



「使ってくれお」




687 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:55:30.87 ID:IkGv3Ac2O





ふたつめの願いは、

家臣達の幸せ






691 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 22:59:57.30 ID:IkGv3Ac2O


/ ゚、。 /「無くしたい事?」

ξ゚听)ξ「そう、無くしたい事」

ダイオードは城を追い出されても商人でした。

魔女の存在を知っても、

「ああ、そうだったのか」

と納得するだけでした。

いくら願いでも無条件に幸せには出来ません。

だから、代わりに彼等の、

後悔した事や、

忘れたい記憶を、

無くすことにしたのです。



694 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:04:22.97 ID:IkGv3Ac2O


だけど、


/ ゚、。 /「無いよ」

ξ゚听)ξ「無い?」


ダイオードはそれを断りました。


/ ゚、。 /「ああ、私に消したい事なんて無いんだ」

ξ゚听)ξ「……」

/ ゚、。 /「忘れたい過去はあるけどね」

/ ゚、。 /「……でも、それは忘れちゃいけない事だ」

ξ゚听)ξ「……」

/ ゚、。 /「絶対に、忘れちゃいけない事なんだ」



699 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:07:03.54 ID:IkGv3Ac2O


ξ゚听)ξ「そう……」

/ ゚、。 /「ああ、だから他な奴のとこへ行きなよ」

ξ゚听)ξ「……わかったわ」


そういって、魔女が別の家臣の下へ行こうとした時です。


/ ゚、。 /「ああ、代わりと言ったらなんだけど」


ダイオードは言いました。



701 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:08:14.22 ID:IkGv3Ac2O







/ ゚、。 /「王様を幸せにしてやってくれ、彼は私と同じだから」







703 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:10:41.73 ID:IkGv3Ac2O


(´・ω・`)「消したい事?」

ξ゚听)ξ「そう、消したい事」


次は庭師のショボンです。

彼もまた、事情を話すと、

「ああ、知ってるよ」、と言いました。



708 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:13:21.78 ID:IkGv3Ac2O


でも、


(´・ω・`)「消したい事なんて無いよ」

ξ゚听)ξ「……」


ショボンもまた、

消す事を、断りました。


(´・ω・`)「無いんだ、消したい事なんて」


ショボンの両目は、全てを見透かしているようでした。


714 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:19:04.14 ID:IkGv3Ac2O


(´・ω・`)「後悔している事はあるけれど」

ξ゚听)ξ「……」

(ねえショボン!僕は星がいいなあ!)

(ショボン、四角とかはできないかなあ)


その時、魔女にも、声が聞こえました。


(´・ω・`)「声の大切さに気づけた、だから、いらないよ」

ξ゚听)ξ「そう……」


そうして魔女が他の家臣の下へ行こうとした時です。


(´・ω・`)「ああ、代わりに頼みたいんだけど」


ショボンが言いました。


718 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:20:51.80 ID:IkGv3Ac2O







(´・ω・`)「王様を幸せにしておくれ、また声が聞こえたのは彼のおかげみたいな物だから」










723 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:26:07.57 ID:IkGv3Ac2O


そうして次はコックです。


「いまさら何しに来たんだよ!」

<ヽ;`∀´> 「ごめんなさいニダ。本当に、すみませんニダ」


だけれど魔女は彼に近づけません。

彼が沢山の人に謝っていたから。

ずっと、ずうっと。


729 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:29:18.78 ID:IkGv3Ac2O


「これ、お詫びの料理ニダ……キムチじゃないニダ……」

「いらねえよ!そんなもん!」


そんなやりとりを何回もニダーはしていました。

何回も何回も、

そして、


「……まあ、受け取ってやるよ、二度と盗みなんてするなよ」

<ヽ*`∀´>「ありがとうございますニダ!」


許してくれる人も、

出てきました。


740 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:32:27.27 ID:IkGv3Ac2O


そうして、ようやく話せるようになりました。


<ヽ`∀´> 「消したい事?」

ξ゚听)ξ「そう、消したい事」


ニダーも魔女の事を聞いても驚きませんでした。

「王様は凄いから何でも出来るニダ」、と言うだけでした。

ただただニコニコしてました。


747 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:35:44.34 ID:IkGv3Ac2O


そして、


<ヽ`∀´> 「消したい事なんて無いニダ」

ξ゚听)ξ「何も?」

<ヽ`∀´> 「なあんにも無いニダ」


ニダーも二人のように、


<ヽ`∀´> 「後悔している事はあるニダ」

<ヽ`∀´> 「でもそれを忘れちゃいけないニダ」


言ったのです。


755 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:38:28.00 ID:IkGv3Ac2O


<ヽ`∀´> 「さ!まだまだ謝る人は沢山いるニダ!」

ξ゚听)ξ「そう……」

<ヽ`∀´> 「頑張るニダ!」

ξ゚听)ξ「……」


そうして魔女がまた別の家臣の下へ行こうとした時です。


<ヽ`∀´> 「あ!もしよければ!」


ニダーが言いました。



759 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:39:48.64 ID:IkGv3Ac2O







<ヽ`∀´> 「王様に幸せを!王様はウリを助けてくれたニダ!」








768 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:43:36.02 ID:IkGv3Ac2O


(*゚ー゚) 「消したい事?」

ξ゚听)ξ「そう、消したい事」


最後は使用人のしぃでした。


(*゚ー゚) 「……」

ξ゚听)ξ「……」


彼女は、


(*゚ー゚) 「あるよ、消したい事」

ξ゚听)ξ「それは、なに?」

(*゚ー゚) 「……」


彼女だけは、


770 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:44:41.96 ID:IkGv3Ac2O






「王様と会ってからの記憶を消して欲しいな」

消す事を、願いました。








776 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:47:53.74 ID:IkGv3Ac2O


(*゚ー゚) 「あんな楽しい毎日なんてなかった」

ξ゚听)ξ「……」

(*゚ー゚) 「もう、来ない日々なら、消して欲しい」

ξ゚听)ξ「……いいの?」

(*゚ー゚) 「うん……」

ξ゚听)ξ「……わかった」

(*゚ー゚) 「……」


そうして、魔女が魔法を唱えようとしたときです。



790 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:52:40.84 ID:IkGv3Ac2O


「……!!!」

ξ;゚听)ξ「……!!!!」


無理矢理に口を押さえ付けられました。


ξ;゚听)ξ「ちょっと!何するの!」

(*;ー;)「駄目っ!絶対に駄目っ!」

ξ;゚听)ξ「あなたが望んだのよ!?」

(*;ー;)「忘れたい!忘れたいけど!」





「それでも毎日は本当に楽しかった!」





801 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:55:48.50 ID:IkGv3Ac2O


ξ;゚听)ξ「……」

(*;ー;)「私…楽しかった……本当に…楽しかった……」

ξ;゚听)ξ「……」

(*;ー;)「ごめんなさい、わがまま言って」

(*;ー;)「私…やっぱり何も、消したく無い……」

(*;ー;)「忘れたく、ない……」

ξ;゚听)ξ「……」


804 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /06(火) 23:58:35.12 ID:IkGv3Ac2O


ξ;゚听)ξ「じゃあ、何も、望まないのね?」

(*;ー;)「……うん」

ξ;--)ξ「……わかったわ」


ああ、またか、

そう思い、城に魔女が戻ろうとした時です。


(*;ー;)「もし、もしよかったら!」


しぃが叫びました。


806 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:00:21.29 ID:zQYqJEL4O







(*;ー;)「王様に幸せを!あの人が拾ってくれたから楽しい日々に会えた!」










807 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:01:51.64 ID:zQYqJEL4O


そうして、

商人と、

庭師と、

コックと、

使用人な願いを抱いて、

魔女は城へ戻りました。



818 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:06:43.09 ID:zQYqJEL4O


(  ω )「……」


そして、


(  ω )(なんだお……)


そして王様の病は治り、


(  ω )(なんだか…暖かいお……)

「…!……!!」

(  ω )(何か、何か聞こえるお……)

「…様!王様!」

(  ω )(みんなの…声?)


そして彼の周りには、
826 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:10:14.76 ID:zQYqJEL4O


(*;ー;)「王様!王様!」


使用人の少女と、


<ヽ*`∀´>「起きたニダ!」


泥棒だったコックと、


(´・ω・`)「よかった……」


心の読める庭師と、


/ ゚、。 /「……」


過去と向き合う商人と、



836 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:13:51.59 ID:zQYqJEL4O

「本当に、」


彼が聞いた声は、


(  ω )(え……)

(  ω )「……まさか」


そして、



「本当に王様になったんだ……」



そしてそれは、彼が求め続けていた、



844 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:15:10.01 ID:zQYqJEL4O








ξ*゚ー゚)ξ「おめでとうブーン」









849 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:16:13.43 ID:zQYqJEL4O






彼女の、声でした。








856 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:18:53.14 ID:zQYqJEL4O
そこで王様は目覚めました。


(;゚ω゚)「ツン!」


聞いた、確かに聞いた。

彼女の声を、求めつづけた、

彼女の声を。


(;゚ω゚)「……」


だけど、彼の周りには誰もいませんでした。

あんなにも、あんなにもリアルに、

声が聞こえたのに。



863 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:21:57.05 ID:zQYqJEL4O


(  ω )「やっぱり……」


嗚呼、何も、何も無いんだ。

僕には、何も、無い。

再び王様が悲しみに染まり始めた時です。


(*゚ー゚) 「王様」


そこに使用人の少女が、いました。



872 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:27:53.35 ID:zQYqJEL4O
(  ω )「しぃかお」

(*゚ー゚) 「悲しい、夢を……見たんですか?」

(  ω )「……そうだお、悲しい、とても悲しい夢だお」

(  ω )「僕に、何も無い事を、実感してしまう……」

(  ω )「悲しい…夢だお……」

(*゚ー゚) 「王様」

(  ω )「なんだお」

(*゚ー゚) 「私には家族がいません」

(*゚ー゚) 「戦争で失いました」

(*゚ー゚) 「コックのニダーさんも、そうらしいです」

(  ω )「……」



878 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:32:54.16 ID:zQYqJEL4O
(*゚ー゚) 「でも、でも私は、手には、まだ残っている物があります」

(  ω )「……」

(*゚ー゚) 「王様、あなたがくれたのです」

(*゚ー゚) 「私だけじゃない……」

(*;ー;)「ニダーさんや、ショボンさんや、きっとダイオードさんだって!」

(*;ー;)「王様がくれた物を持ってるはずです!」

(  ω )「……」

(*;ー;)「王様……それでも、あなたには、あなたの手には、」

(*;ー;)「何もありませんか?」


883 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:34:41.10 ID:zQYqJEL4O





ぽたり、と

涙が落ちました。






893 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:39:43.68 ID:zQYqJEL4O


( ;ω;)「……あるお」

( ;ω;)「僕には…沢山の物が、まだ……」


ハラハラと、王様の目からは涙が落ちていました。


泣いて、泣いて

泣いて。

部屋には二人の泣く音だけが響いていました。

それと、

895 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:40:48.31 ID:zQYqJEL4O


<ヽ;`∀´>「王様泣いてるから励ましに入るニダ!」

(;´・ω・`)「やめなよ」

/;゚、。 /「やめといた方が……」

<ヽ;`∀´> 「な、なんで?」

(´・ω・`)/ ゚、。 /「空気を読んで」


部屋の外では不安そうにしている彼等もいました。
904 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:45:34.96 ID:zQYqJEL4O


一番に取り戻したい、無くした物は帰って来ませんでした。

しぃとニダーの家族、

ショボンのチャンス、

ダイオードの出会った少女、

だけど、だけで、


( ;ω;)

(*;ー;)

<ヽ`∀´>

(´・ω・`)

/ ゚、。 /


彼等には、まだ残っている物もありました。



906 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:46:48.06 ID:zQYqJEL4O







そして








909 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:49:32.37 ID:zQYqJEL4O


ξ゚听)ξ「最後の願いが決まった?」

( ^ω^)「そうだお」


家臣が城に帰ってしばらくした日の事です。

魔女と王様はいつもとは違う話をしていました。


ξ゚听)ξ「まあいいけど、どんな願い?」

( ^ω^)「それは」



915 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:53:40.10 ID:zQYqJEL4O


*****

「魔女はね、可哀相なんだ」

「魔女がですか?」

「呼び出した者から奪うだけ、」

「……」

「魔女には何もないんだ、何も」

「……王様は、どうしたんですか?」

「それはね」

*****


919 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 00:56:51.54 ID:zQYqJEL4O


( ^ω^)「魔女さん、あなたに」

ξ゚听)ξ「私に?」

( ^ω^)「『自分』を作ってあげたいお」

( ^ω^)「それが三つ目の願いだお」


そう、王様が言った時でした。


ξ;゚听)ξ「あ……」


魔女を、光が、包んだのです。



926 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 01:02:25.99 ID:zQYqJEL4O


そして、魔女は、自分を手に入れて、


ζ(゚ー゚*ζ「……」

( ^ω^)「ツンに妹がいたらこんなんだおね」

ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとう」

( ^ω^)「おっおwwwたいした事ないおwww」

ζ(゚ー゚*ζ「私に頼った人は少ないけど、こんな願いあなたが始めてだよ」

( ^ω^)「おっおwwww」

ζ(゚ー゚*ζ「……お礼に、奪わないであげる」

( ^ω^)「お?」


次の瞬間には、魔女はもうそこにはいませんでした。


934 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 01:07:17.64 ID:zQYqJEL4O


*****

老人に近い男は子供に童話を話していた。

話しは時期に終わりそうで子供は興奮し、鼻息を荒げ、話しを聞いていた。


「それで!?それから王様達はどうなったんですか?」

「実はなあ、この先はなあ……」

「ええ!?わからないんですか?教えてくださいよ!王様!」

「おっおwwwwすまないおwww」


だってこのお話は、


937 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 01:08:23.50 ID:zQYqJEL4O





( ^ω^)「僕もよくわからないんだおwwww」

終わっていないのですから。






942 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 01:10:35.86 ID:zQYqJEL4O


むかしむかしのお話です。

周りの人の事など考えない。

自分のためだけに王様になった男がいました。

だけど、男はみんなに慕われて、

みんなからこう、言われました。




「あの王様は最高だよ!」






945 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07 /07(水) 01:11:28.62 ID:zQYqJEL4O






( ^ω^)は最低な王様になるようです






おしまい

戻る

inserted by FC2 system