147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/06(月) 01:27:51.04 ID:qUrxOtfZ0
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彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「あばばばばばばぶべえ寝坊した―!」

起きて早々、この家の主人は元気がよろしい。
昨晩、見るからに疲れきっていた彼からは考えられない程だ。
こういう健康体な所はまだ衰えていないらしい。

@#_、_@
 (  ノ`)「飯は?」

彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「いらん! いってきます!」

@#_、_@
 (  ノ`)「さっさと稼いできな」

朝の挨拶もそこそこに、彼はいつもの仕事着に鞄を持って玄関へ走り出した。
暫くすると扉に何か固い物がぶつかる音がした。

ある程度は何が起こったかは予想出来るものの
昨日の今日という事もあって心配になり、玄関まで様子を見に行く。
そこにはここ数年で一気にハゲた頭の彼が、額を手で覆い隠すようにしてしゃがみ込んでいた。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/06(月) 01:29:45.93 ID:qUrxOtfZ0

@#_、_@
 (  ノ`)「アンタ、大丈夫かい?」

彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「ぜ、全然大丈夫だぞ! それでは行って来る!」

@#_、_@
 (  ノ`)「いってらっしゃい」

数年振りに口にした送り出しの言葉。
改めて言うと新婚時代を思い出して気恥ずかしくなるけれど、そんな事顔に出すはずもない。
今は一人の女、というよりあの人の妻という立場にいるのだから。
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/06(月) 01:31:12.77 ID:qUrxOtfZ0

∬´_ゝ`)「おはよう母者」

@#_、_@
 (  ノ`)「おはよう、今日仕事は?」

∬´_ゝ`)「休みよ。……それより昨日はどうだったのよ。帰って来るなり父者はさっさとお風呂に入って寝ちゃうし
     母者は何も話してくれないし、つまらないわ」

昨日あの人に問詰めてわかった事だけど、どうやら今回の事に姉者や妹者も荷担していたらしい。
考えてみればあんな頼りない人が、あそこまで自分で動ける訳もない。
唇を尖らせて椅子に座る姉者に、私は姉者の分の朝食を用意するために台所に向かった。

@#_、_@
 (  ノ`)「話す程の事でもないさ」

∬´_ゝ`)「でもー……折角父者に色々協力してあげたのに、結果を聞かされないんじゃ頑張った意味がないじゃない」

@#_、_@
 (  ノ`)「人の恋路に口出しするなって言っていた人のセリフじゃないね」

∬;´_ゝ`)「あれはまた別の話じゃない」

慌てて否定する姉者の前にご飯を盛った茶碗と味噌汁、肉じゃがを置いた。
話を逸らすためだろう、間髪いれずに頂きますと言うと口の中にご飯をかきこんでいる。
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/06(月) 01:33:10.07 ID:qUrxOtfZ0

∬´_ゝ`)「あら?」

既に家から出た兄者達の茶碗を片付けていると姉者が不思議そうな声をあげた。
何事かと思い、振り返ると頬にご飯粒をつけたまま私をじっと見ていた。
正確に言えば、私のちょうど胸元で光っているネックレスの飾りを。

@#_、_@
 (  ノ`)「何だい人の事じろじろ見て」

∬´_ゝ`)「ううん……。
     何か母者が指輪以外のアクセサリーを身に着けてるって珍しいなーって」

@#_、_@
 (  ノ`)「そうだねぇ」

∬´_ゝ`)「それに何かそのリングどこかで見たことあるのよね」

訝しげにネックレスを眺めている姉者に構わずさっさと朝の片づけを終えると
ゴミを出して来るよと姉者に合図をして、そのまま外へと出た。

166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/06(月) 01:35:10.40 ID:qUrxOtfZ0

珍しく誰もいない住宅街の道を歩きながら胸元のリングに触れる。
昨晩家に帰ってから、あまっていた銀のネックレスのチェーンを見つけ
即席で作ったネックレスなのだ。

朝の様子を見る限り、気付いたのは姉者だけなのだろうけど。

@#_、_@
 (  ノ`)「全くとんだサプライズだよ。
     てっきり忘れていたと思っていたのに、まさかこんな粋な事をしてくれるなんてね」

朝の光に照らされた指輪の裏に刻まれている文字を見る。
TtoHだなんてクサい言葉、今時こんな事書く人がいるとは思わなかった。

けれど嬉しいのは事実であって
指輪を眺めているあたしの口元は自然と緩んでいた。

172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/06(月) 01:43:05.39 ID:qUrxOtfZ0

これから先、あと何回あの人とこの日を迎えるだろうか。
もしかしたら今回のような幸せな記念日は暫くないのかもしれない。
けれどそれでもいい。

あの人がどれ程あたしを思ってくれているのかは、あたしが一番良く分かっているのだから。

@#_、_@
 (  ノ`)「……何てね、らしくもない」

少し歪んだ指輪を優しく握り締めると
照れくさくなって誰に言う訳でもなく、バカだねと呟いた。

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