- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:42:04.04 ID:VPfhsdXZ0
- 1.
僕はさりげなく金をカバンにしまった。
見られたか?
いや、アタッシュケースの蓋が邪魔になって見えなかった筈だ……多分。
( ・∀・)「何だ? 忘れ物でも取りに来たのか」
ζ(゚ー゚*ζ
彼女は寝巻き姿で、寝室へ続く廊下のところに立っていた。
どこか所在なげで、おどおどしているように見える。
僕の視線を恐れているようだった。
君だけが僕の天使のようです 後編
(原作 ジム・トンプスン『死ぬほどいい女』)
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:44:04.90 ID:VPfhsdXZ0
- 2.
ζ(゚ー゚*ζ「う、ううん。そうじゃないの」
( ・∀・)「そうかい。じゃ何で戻って来た?」
ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、そんな事言わないでよ」
(#・∀・)「ふざけんな!! 僕の一張羅を便器に突っ込んだのは誰だ、ああ!?」
いや、落ち着け、落ち着けって。
金を見られてたんならこんな態度はマズイよ。
今日から一ヶ月間、僕は何一つとして問題を起こしちゃいけないんだ。
( ・∀・)「いや……うん、悪かった。話があるなら聞いてやるよ」
ζ(゚ー゚*ζ「スーツのことはごめんなさい。悪かったと思ってるわ」
( ・∀・)「そうか。まあ、いいよ。過ぎた事だ。座ったら?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
デレは僕の隣に座り、肩を縮めて俯いた。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:46:04.52 ID:VPfhsdXZ0
- 3.
何から喋っていいのかわからないみたいだった。
( ・∀・)「家を出てから、どうしてたんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うん……色んなとこに行こうとして、何かをしようとしたけど、みんなダメだった。
だって、誰も……」
( ・∀・)「うーん」
ζ(゚ー゚*ζ「あのね、あたしが前に何の仕事してたか知ってるでしょう。
みんなあたしの顔を見るとその事を思い出して、耳元で……
いくらでやらせるんだって……」
肩を小さく震わせる彼女に、僕は首を振った。
( ・∀・)「いや、ああ。やめなよ、そんな話」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
( ・∀・)「う、うーんと、それから?」
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:48:05.01 ID:VPfhsdXZ0
- 4.
ζ(゚ー゚*ζ「考えてみたら、あたしを人間として扱ってくれた男の人って、あなただけだった」
僕は自分の内側で息を吹き返そうとしている感情を否定した。
外へ追い出してドアを閉じようとした。
でもそれは、何をどうしたって僕の中へ忍び込んできた。
(;・∀・)(同情はしない……もう絶対にしないぞ……)
ζ(;ー;*ζ「モララー、みんなあたしが悪かったわ。だから許して」
最悪だ。
何故出て行って、それっきりでいてくれなかったんだ。
何だってわざわざ戻ってきて、そんなことを言うんだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
で、どうしたかって言うと、結局僕は彼女を許してしまった。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:50:36.91 ID:VPfhsdXZ0
- 5.
ぶん殴って追い出すべきだったんだろうけれど、それじゃあんまり……デレが……
(;・∀・)(畜生、女に同情するなってのに! 僕は大バカだ)
翌日はもう、朝目覚めた瞬間から自己嫌悪でうんざりしていた。
ところがそれも長くは続かなかった。
( ・∀・)「お?」
家中が新品同様、ピカピカに片付いてたんだ。
おまけに食卓には見事な朝食まで用意されていて、湯気を上げてるじゃないか。
( ・〜・)ムシャムシャ「んまい、んまい」
ζ(゚ー゚*ζ「そう? 良かった」
( ・∀・)「こんなに料理が上手なのに、何で今まで腕前を見せてくれなかったんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「んーとね、あなたがいつもどっかで食べて来ちゃうから」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:53:29.08 ID:VPfhsdXZ0
- 6.
( ・∀・)「んじゃ、今夜からはまっすぐ帰って来よう」
ζ(゚ー゚*ζ「いやーん、デレうれしー!」
何だこのバカップルは? 本当に僕らなのか?
きっちりアイロンをかけられた背広を着て家を出る前、デレは弁当を持たせてくれた。
ζ(゚ー゚*ζ「はい、特製ハンバーガー」
( ・∀・)「ベーコン入り?」
ζ(゚ー゚*ζ「卵も入ってるわよ。じゃあね、行ってらっしゃい」
車に乗って店に出ると、すっかりいい気分になっていた。
何だか新婚の頃……いや、デレと出会ったばかりの頃を思い出すようだ。
(;‐∀‐)「うーん……うーん」
だがその裏の僕の苦悩がわかるかい?
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:55:15.87 ID:VPfhsdXZ0
- 7.
あの優しさが全部嘘だったら……僕の金が目的なのだとしたら……
だが嘘じゃなかったとしたら、だとしたら、僕はどうすればいいんだ。
(;・∀・)(デレとトソン……うぐぐ、うぐぐぐぐ。
うーん、うーん。これは一体、僕はどうすればいいんだ)
その日も仕事にはならなかったけれど、まあ、問題ない。
回収出来た金はちょこっとだけど、それに五千万の一部を足した。
一日の売り上げとしては悪くない金額だ。
('A`)「ふむふむ。いいね、やる気を出してくれて嬉しいよ」
( ・∀・)「そりゃどーも。おかげでクタクタだ」
奴は金を数えながら、ちらりと僕の方を見た。
('A`)「ところで見たか、新聞」
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/28(土) 23:57:29.45 ID:VPfhsdXZ0
- 8.
( ・∀・)「ん? 何かあったの?」
('A`)「ほらよ」
ドクオは僕に新聞を渡し、記事の一つを指差した。
町の外れで押し込み強盗があり、住人の老婆が殺されたとある。
強盗自身も老婆に撃たれて死んだそうだ。
強盗は数度の逮捕歴があるチンピラで、老婆に恨みがあったらしい。
( ・∀・)「ありゃりゃ……うちの客じゃないか」
僕が精一杯驚いた顔をして見せると、ドクオは眉をしかめた。
('A`)「おっかねえ世の中だよな。うーん、しかし妙だな」
( ・∀・)「何が?」
('A`)「この記事によると、老婆は貧乏だった。
その貧乏人が、お前から毛皮のマフラーを買ってるんだよ」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:00:24.87 ID:m1hnz9rM0
- 9.
(;・∀・)「あっ? ああ……そうだったな、そう言えば」
('A`)「お前、どう思う?」
( ・∀・)「どうってそりゃあ」
そりゃあ……何だ?
( ・∀・)「屋根裏に札束でも隠してあったんじゃないか?」
('A`)「まさか」
( ・∀・)「どっちにしろ、頭のまともな奴がうちみたいな店で買い物をするかよ。
貧乏人が辻褄の合わない行動をするなんてありきたりだろ?」
('A`)「おいおい。だが、まあ、そうかもな」
( ・∀・)「連中の頭がまともだろうとそうでなかろうと、金さえ払わせりゃいいんだ」
('A`)「うむ、その通りだな」
僕は別れを言って店を出た。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:02:40.79 ID:m1hnz9rM0
- 10.
(;・∀・)(あぶねえあぶねえ、ボロを出すところだった)
それにしてもあの野郎、何か様子がおかしかった。
まさか、何かに気付いて……いや、そんな筈ないか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
家に帰ると、夕食の用意が出来ていた。
それにデレがお帰りなさいと言ってくれた。
( ・∀・)(うーん。久しく感じてなかったが、家に帰るというのはいいもんだな)
ζ(゚ー゚*ζ「お弁当、どうだった?」
( ・∀・)「美味かったよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そ。良かった。さあ、食べて食べて」
もちろん、食べた。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:04:16.01 ID:VPfhsdXZ0
- 11.
シチューにパンにコロッケ。どれも最高に美味かった。
( ‐∀‐)「あー、もう食えない。こんなうまい飯、久し振りだ」
ζ(゚ー゚*ζ「テレビでも見ててよ」
( ・∀・)「いや、手伝うよ」
二人して洗い物を済ませ、ソファに並んで座った。
ζ(゚ー゚*ζ
( ・∀・)
しばらく黙って、二人で酒を飲んだ。
デレは何か思い詰めているようだった。
ζ(゚ー゚*ζ「あのね、あのね……」
( ・∀・)「ん? 何」
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:06:08.51 ID:m1hnz9rM0
- 12.
ζ(゚ー゚*ζ「あたしの事、怒ってない?」
( ・∀・)「あんなうまい飯を作ってもらったんじゃ、怒れないな」
彼女はちょっと笑ったけれど、すぐにまた表情を固くした。
ζ(゚ー゚*ζ「嘘、つかない?」
( ・∀・)「うん。どうしたの?」
彼女は息を吸い込み、それから吐き出した。
そして、言った。
ζ(゚ー゚*ζ「あのお金……あのお金は……」
( ・∀・)
ζ(゚ー゚*ζ「どこから持ってきたの?」
さあ、どうする?
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:08:11.94 ID:m1hnz9rM0
- 13.
( ・∀・)「何?」
ζ(゚ー゚*ζ「お金よ。わたしが帰って来た時、あなたが数えてた」
( ・∀・)「うん。いや、実は話そうと思ってたんだけど。
あれはさ、拾ったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ
( ・∀・)「そんな顔するな。拾ったって言っても、道端に落ちてたんじゃない」
僕は途方もない嘘をついた。
もう嘘に嘘を重ねるしかなかった。
( ・∀・)「取り立てに行ったマンションで……どえらい高級なところだったな、そこの一室に
入ったんだ。鍵かかってなかったから。
中では男が二人ばかり撃ち殺されてて、それで金の入ったバッグが置いてあったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「ええっ……どういう事?」
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:10:04.83 ID:m1hnz9rM0
- 14.
( ・∀・)「僕が知るもんか。連中はきっとギャングで、何かでモメたんだ。
新聞に載ってないところをみるときっとヤバイ金だな」
ζ(゚ー゚;ζ「そ、そんな危ないお金を持ってちゃいけないわ!」
( ・∀・)「でも、五千万もあるんだよ。これだけあれば……」
ζ(゚ー゚*ζ「あれば」
( ・∀・)「……新婚旅行、行ってなかっただろ?」
ζ(゚ー゚*ζ「モララー……」
僕は立ち上がり、彼女を抱き上げた。
ζ(゚ー゚*ζ「きゃっ!?」
( ・∀・)「ほら、もう寝よう」
ζ(゚ー゚*ζ「え!? ま、まだ家事が……」
( ・∀・)「んー。それはこれから始まることより大事かな?」
ζ(゚ー゚*ζ「んーと……そうでもないかも」
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:12:14.16 ID:m1hnz9rM0
- 15.
彼女を運んだまま、足で寝室のドアを開けた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌日。
僕の不安は、恐れは、そして愛しさと矛盾は、日に日に大きくなってゆく。
( ・∀・)(デレはまだ僕を疑ってる感じだな。
まあ、あんな話をいきなり信じるのは無理だろうけど)
朝刊を広げると、例の事件の続報が載っていた。
―――警察は単純な強盗殺人事件と結論付け、捜査の打ち切りを発表し……
このニュースはちょっとだけ僕の気分を良くしてくれた。
( ・∀・)(いいぞ、いいぞ。そうしてくれなきゃあ)
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:14:02.96 ID:m1hnz9rM0
- 16.
( ・∀・)「いや、何でもない。そろそろ行くよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ん、はいお弁当。それからね……」
( ・∀・)「何?」
ζ(゚ー゚*ζ「あのお金だけど、持って行って」
( ・∀・)「へ?」
ζ(゚ー゚*ζ「うちにあるとあたし、不安でおかしくなっちゃうわ。
あなたが持ち歩いてるのが一番いいと思う」
( ・∀・)「そ、そうかな」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ」
( ・∀・)「まあ、実はずっとそうしてるんだけど。じゃ、行って来ます」
車に乗ると更に妙な気分になった。
何だってあんな事を? デレは金が目的じゃないのか?
(;・∀・)(くそっ、わからない!)
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:16:23.26 ID:m1hnz9rM0
- 17.
僕が出勤すると、ドクオの野郎が妙にいい気分でいた。
('∀`)「ようよう! おはよう!」
( ・∀・)「ん。どうかしたの」
('∀`)「いや何。ちょっと古い知り合いと会って来たのさ!」
( ・∀・)「ふーん。どんな人?」
('A`)「まあ何だ、ちょっとした施設にいてね。公共の。
ほら、留置所のすぐ隣にある……まあいいだろ、こんな話」
( ・∀・)「???」
('∀`)「今日も一日張り切って稼いで来いよな!」
変な奴だ。まあ、いつもだけど。
この日は大変だった。
仕事なんかもうする気はないけど、時間は潰さなきゃなんない。
行く当てもないのに車で走り回ってるなんて、これ以上疲れる事があるだろうか。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:18:33.44 ID:m1hnz9rM0
- 18.
(;‐∀‐)(うう、不安だ。トソンはうまくやってるかな)
下手な事をしでかしてなきゃいいが。
あの子は……あんな環境で育ったんだから仕方ないにせよ、社会性を著しく欠いている。
取り乱さずにいられるだろうか?
(;・∀・)(不安だ、不安だ、畜生!)
適当なバーに入り、一杯飲んだ。
二杯、三杯と立て続けに流し込んでも、少しも気分が良くならない。
( ・∀・)(デレのとこに行きたい)
僕はこんなに不安で震えているのに、何故女房のとこに戻ってはいけないんだ?
彼女の胸に抱かれていたらきっと気分が安らぐだろう。
不安が改めて込み上げてくるのを感じていると、ケータイが鳴った。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:21:01.20 ID:m1hnz9rM0
- 19.
( ・∀・)】「デレ?」
【(゚、゚トソン「えっ? おじさん、わたしだけど。」
( ・∀・)】「あ、ああ。トソンか」
【(゚、゚トソン「デレって誰?」
声色が微妙に冷たい。
( ・∀・)】「いや、女房だよ。あの女、家に帰ってきて僕に金をせびるんだ。
何度も電話してくるからちょっとイライラしてて」
【(゚、゚トソン「そう」
( ・∀・)】「それより、どうかした?」
【(゚、゚;トソン「ああ、うん、あのね、あのね! どうしても話したい事があるの!」
( ・∀・)】「今会うのはマズイよ」
【(゚、゚;トソン「だって、誰かがわたしを監視してるの!」
( ・∀・)】「え?」
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:26:43.30 ID:m1hnz9rM0
- 20.
【(゚、゚;トソン「あのね、だから……うんと」
(;・∀・)】「わかった、とにかく会おう。いつものショッピングモールの前で」
車を回して彼女を乗せると、トソンは関を切ったように喋り始めた。
(゚、゚;トソン「家の回りを誰かがうろうろしてるの!」
( ・∀・)「どんな奴? 誰だい?」
(゚、゚トソン「車よ。車がずっと後を尾けて来たの。
買い物行く時とかね、ずっと……わたしの後を……」
いや、心臓を吐き出すかと思った。
僕はトソンと同じくらい落ち着きをなくしかけたものの、何とかそれを表には出さずにいた。
( ・∀・)「落ち着きなって、そりゃあ過敏になってるだけだよ」
(゚、゚;トソン「違うの! ほんとなの」
( ・∀・)「一から話してくれ」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:30:10.77 ID:m1hnz9rM0
- 21.
角で待ち伏せていたり、家の回りで見かけたりするというその車は、いずれも同車種だと言う。
しかし、この娘に車の見分けがつくだろうか?
話をすべて聞き終えると、大体のところは納得が行った。
( ・∀・)「そりゃあポッツヴィルの生徒じゃないかな。
ほら、ちょっと行ったところにある学園都市」
(゚、゚トソン「え?」
( ・∀・)「君みたいな美少女が一人で歩いてるのを見て、引っかけようとしたんだよ」
(゚、゚トソン「そ、そうかな……」
ポッツヴィルってのは生徒数だけでも1300人近い、どでかい人工島にある学園都市だ。
ここいらはその学生たちがハメを外して遊びに来る繁華街が近い。
まあ、そんなとこだろう。
(;・∀・)(くそっ、ヒヤヒヤさせやがる。この女、頭がカラッポなのか!?)
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:32:20.97 ID:m1hnz9rM0
- 22.
( ・∀・)「それより児童相談所みたいなとこが来なかった?」
(゚、゚トソン「うん、わたしを引き取りたいとか何とかって」
( ・∀・)「どう? 持ちこたえられそう?」
(゚、゚トソン「絶対にイヤだって言い張ってるけど、そのうち連れて行かれるかも……」
トソンはいつ何をしでかすかわからないし、僕自身もものすごく不安だ。
おまけに女房は何を考えてるのかまるでわからない。
性急になってはいけないが、もう持ち応えられそうにないのも確かだ。
( ・∀・)「危険だけど、予定を早めよう。あと二週間、何とか突っぱねてくれ」
(゚、゚トソン「うん。大丈夫かな……」
( ・∀・)「大丈夫」
(゚、゚トソン「ねえおじさん、迷惑だってわかってるけど……」
彼女はスカートのふちを掴み、小さく震えていた。
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:34:05.08 ID:m1hnz9rM0
- 23.
消え入りそうな声で囁く。
(゚、゚;トソン「い、一緒にいられないかな……今夜だけでもいいん、だけ、ど……」
( ・∀・)
もちろん、そうしてあげたかった。
でもデレが……いや、何だって女房の事が?
( ・∀・)「ダメだよ。今、君と一緒にいるところを見られたらまずいんだ。
もし僕と君が一緒にいて、そこに警察が訪ねて来たらどうする?」
(゚、゚トソン「うん……そうだよね。忘れて」
( ・∀・)「ごめん」
僕はしばらく、トソンを抱き締めてあげた。
(゚、゚トソン「ほとぼりが冷めたら、どこへ行くの?」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:36:48.72 ID:m1hnz9rM0
- 24.
( ・∀・)「誰も僕らのことを知らない場所で一緒に暮らそう。
真っ白なビーチのある南国へ行こうよ、浜辺の家を探してさ」
(゚、゚トソン「うん」
( ・∀・)「君が未成年でなくなったら……十八歳か、それ以上になったら……」
(゚、゚トソン
( ・∀・)「その時は、結婚しよう」
(;、;トソン「うん……うん」
彼女の香り。彼女の体温。彼女の存在のすべて。
絶対に、永久に、手放すもんか。
……まあ、そんなふうに考えるのは映画のヒーローみたいでかっこいいよ。
( ‐∀‐)(デレをどうするんだよ……)
デレとトソン、二人同時には手に入らないんだぞ。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:40:27.27 ID:m1hnz9rM0
- 25.
どうする? どうすればいいんだ?
いや、ほんとはもう、この時点で結論は出ていたのかも知れない。
ただ僕は、悩んでいる振りをしているだけで。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
僕は自分の財布から出した金を彼女にやり、家に帰した。
店に寄って売上を報告する。
('A`)「ん。ご苦労さん」
( ・∀・)「ああ」
('A`)「……」
( ・∀・)(何だ、今日はお得意の嫌味はなしか?)
僕は真っ直ぐに家に帰った。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:42:52.00 ID:m1hnz9rM0
- 26.
( ・∀・)「ただいま」
食卓には夕食の用意がしてあったけれど、一人前だ。
僕はアタッシュケースを置いてキッチンの方を見た。
誰もいない。
( ・∀・)「デレ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ん。洗面所」
( ・∀・)「どうしたの?」
ζ(;ー;*ζ「何でもない……」
涙声だった。
僕が洗面所の方に行くと、彼女は顔を洗っていた。
でもそれは、泣いているのを誤魔化しているのだとすぐにわかった。
( ・∀・)「何だ、どうしたんだよ?」
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:44:11.31 ID:m1hnz9rM0
- 27.
ζ(;ー;*ζ「あのね、モララー、お願いだからね、ほんとの事を教えて」
背を向けたまま、彼女は鏡越しに僕を見た。
頬に水に溶けた涙の筋がついている。
( ・∀・)
ζ(;ー;*ζ「あのお金、どこから持ってきたの? あんなに沢山のお金……」
( ・∀・)「デレ、昨日も話したじゃんか」
ζ(;ー;*ζ「あのね、今日掃除したらね、ソファの下からこれが出てきたの」
彼女が手にしているものは、商品の受け取り証明書だった。
片方は僕のサイン。もう片方は、クックルのサイン。
背広を売った時に控えたやつだ。つまり奴の、クックルが控えているべき紙だ。
ζ(;ー;*ζ「ニュースでやってたわ。死んだあの人が、この家にいたの?
いったい、あなたと何をしていたの?」
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:46:58.59 ID:m1hnz9rM0
- 28.
(;・∀・)「それは……えっと……」
あのバカ!! よりによってこの書類を、僕んちに落として行くとは。
僕の中で何かが変わり初めていた。
世界を取り巻くすべてが、そして僕自身が。
( ・∀・)「デレ、デレ。話を聞いてくれ」
ζ(;ー;*ζ「あなたが殺したの?」
( ・∀・)「そうじゃないって、いいから話を聞いてくれよ、な?」
ζ(;ー;*ζ「ひっ! ち、近寄らないで!」
僕は説明しようとした―――
狂人を見るような眼で僕を見る彼女に、それでも何とか説明しようとした―――
そして気が付くと、彼女の顔を洗面所に押し付けていた。
水を張った洗面所に。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:49:17.79 ID:m1hnz9rM0
- 29.
ζ(; q;*ζ「やめっ……やめてえええ! モララー、やめてえええ!!」
( ∀ )
ζ(; q;*ζ ゴボッ ゴボゴボ ゲボ
もう僕には届かなかった。
彼女の声も、悲鳴も、この世の何一つ届かなかった。
ζ(;ー;*ζ「あだじっ……妊娠したの、お腹にあなたの赤ちゃ―――ん―――が―――」
やがてデレは動かなくなった。
僕は彼女を車のトランクに詰め込み、山奥に向かった。
車道から離れた場所にスコップで穴を掘り、彼女を埋めた。
“彼女たち”を埋めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:52:57.45 ID:m1hnz9rM0
- 30.
もしも良い事があるとすれば、もうこれ以上は何も起こらないだろうという事だけだ。
家に帰った僕はソファに身を投げ出し、浴びるように酒を飲んだ。
( ・∀・)(ダメだ。もう待てない。明日だ、明日になったら町を出よう)
何もかも終わったわけじゃない。
そうだ、これから全部始まるんじゃないか?
僕は目を閉じ、トソンの事を考えた。
僕の天使。
( ‐∀‐)(彼女の為なら何でも出来る。そうだ、みんな僕の天使の為なんだから)
少しずつ、気分が良くなってきた。
それに何たって金があるじゃないか!
ドアのチャイムが鳴っている。
いつから鳴っていたのだろう?
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:55:10.30 ID:m1hnz9rM0
- 31.
( ・∀・)「トソン!?」
玄関まで飛んで行って、ドアを開くと、そこにいたのは……
(;・∀・)「トソン、聞いてくれ! 今夜にでも……」
('A`)「あ?」
(#・∀・)「ドクオ!? てめえ、何の用だ!!」
('∀`)「何だ、何だってそんなトゲトゲしてんだよ?
入ってもいいだろ?」
( ・∀・)「ごめんだね。帰ってくれ」
('A`)「五千万の事で話があると言っても?」
( ・∀・)「……」
僕は奴を入れた。
そうするしかなかった。
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 00:57:09.71 ID:m1hnz9rM0
- 32.
ドクオは勝手にソファに座ると、「で、だ」と前置きして話し始めた。
('A`)「あー。その前に、奥さんは?」
( ・∀・)「実家に帰ったよ。話ってのは?」
('A`)「そうか。まあいいや。あのな、こないだの話の続きをしてやろうと思って」
( ・∀・)「こないだって?」
('A`)「誘拐事件だよ。本社の社長の子供が連れ去られたってやつ」
( ・∀・)「???」
僕は危うくこいつを殴り殺しそうになった。
(#・∀・)「ふざけんな! 夜中に押しかけといて与太話の続きか、ああ!?」
('A`)「あの事件な、実は企画したのは俺なんだよ」
(;・∀・)「……!?」
何言ってんだ、こいつ?!
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:00:22.46 ID:m1hnz9rM0
- 33.
('A`)「町のチンピラにおあつらえむきの連中がいた。
一家揃って強盗って言う、劣性遺伝の典型みたいな連中だった。
連中に話を持ち掛けてガキを……女の子を誘拐させたんだ」
( ・∀・)「……」
('A`)「最終的には隙を突いて皆殺しにして、金だけ俺が頂く算段だった。
ところがだ! 俺ともあろう者が仕損じた。
息子の二人は始末したものの、人質、母親、金の三つを逃がした」
僕の頭の中で、その三つはぴったり当てはまった。
( ・∀・)「……トソン、あのババア、五千万」
('∀`)「その通り。いや、びびったぜ!
お前が俺に渡した売上の札だがな、ちゃんと見なかったのか?
番号が連続してるって気付かなかったのかい?
あのガキが持ってきた……お前を釈放する為に払った金もそうだ」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:03:28.57 ID:m1hnz9rM0
- 34.
(;・∀・)「まさか、そんな筈……」
('A`)「俺もそう思ったって。まさか俺が番号を控えた金と再会しようとはな!
俺は早速死体安置所に言って、ババアのツラを確認した」
“いや何。ちょっと古い知り合いと会って来たのさ!”
施設。留置所の隣にあるのは……死体安置所か。
('A`)「決め手はガキさ。尾行して写真を撮って、あのガキに違いないとわかった。
かわいくなったもんだよな」
トソンを尾行していたのは―――
車で尾け回してたのは―――
('A`)「で、間違いないと判断した。てめえが……まあ、どういう経緯かはともかくとして、
人の金を横からさらおうとしてるってな」
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:06:26.07 ID:m1hnz9rM0
- 35.
奴は上着を何気なく跳ね退け、その下にある銃を見せびらかした。
マネー・ロンダリング
('A`)「あのババア最大の不幸は、 洗 濯 のやり方を知らなかった事だ。
だから番号の控えてある金を使うに使えず、貯め込んだままにしてた」
あれだけの金がありながら、あんなに惨めな生活をしてた理由―――
僅かな金の為にトソンに売春させてたのは―――
('∀`)「もちろん、俺は違うぜ。さて、俺の金はどこかな?」
( ・∀・)
('A`)「言っとくが、俺が時間内に無事に帰らなかったら、お前は終わりだぜ。
そういうふうに手配しておいた」
僕はしばらく、身じろぎも出来なかった。
だがドクオが腕時計を見る素振りをしたから、アタッシュケースからカバンを取り出した。
奴はそれを受け取り、中身を数えた。
- 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:08:44.28 ID:m1hnz9rM0
- 36.
満面の笑みを浮かべて猫のように喉を鳴らすと、金をしまいこむ。
('∀`)「少し減ってるが、まあいいだろう。じゃあな、ご苦労さん」
(;・∀・)「待ってくれ! 僕の分け前―――」
ドクオは銃を抜いた。
('A`)「口は閉じてろ。てめえにゃうんざりなんだよ、ゴキブリ野郎が」
(;・∀・)「だって殺しも計画も全部僕がやって……」
('A`)「ああ、そうか。まあ、そうだったな」
ドクオは懐に手を入れた。
('∀`)「実際俺としても、てめえにすぐ捕まってもらっちゃ困る。
ほらよ。頑張って逃げろよ」
奴は懐から封筒を取り出し、地面に投げ捨てた。
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:10:42.86 ID:m1hnz9rM0
- 37.
はした金が中から覗いている。
ドクオは出て行った。
車の音がして、それが遠ざかって行く。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
逃げるしかなかった。
もう一刻の猶予もなかった。
翌朝一番に僕は車でトソンの家に行き、彼女を連れて町から飛び出した。
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「金だけどな、ダメだった。盗られちまった」
(゚、゚トソン「そう」
それだけだった。
別にトソンは怒ったり悲しんだり、がっかりしたりしなかった。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:13:22.33 ID:m1hnz9rM0
- 38.
……少なくとも、しばらくの間は。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
悪いことは続けざまに起きた。
何だって……何だって、あの山、デレを埋めた山の再開発が翌日に始まったんだ!?
おかげであっという間に死体が見つかった。
おまけにあのクソ女、僕の腕を強く掴んでいたから、爪の間に僕の皮膚組織が残っていた。
警察は行方不明の夫を指名支配したと新聞に―――
( ・∀・)
(゚、゚トソン
僕とトソンは逃げ続けた。
ドクオが置いて行った百万ばかりの金はすぐに底を尽き、後は車を売るしかなかった。
その日の飯代にも事欠く日々だった。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:17:05.39 ID:m1hnz9rM0
- 39.
それでもトソンは文句を言わなかった。
だけどある日―――そう、コンビニのゴミ箱をあさっていた時だ。
( ・∀・)「なあ」
(゚、゚トソン
( ・∀・)「客を取れよ」
この時初めて、トソンは息を飲んだ。
あの日以来、弱音を吐かなかった彼女の顔色が変わった。
( 、 トソン「……それって……どういうこと?」
( ・∀・)「しょうがないだろ。他に何か方法があるのか?」
トラック運転手とか学生とかに、彼女はかなりいい値段で売れた。
でも、逃げ続ける金が確保出来るほどじゃなかった。
もうトソンは喋らなくなった。
- 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:20:02.42 ID:m1hnz9rM0
- 40.
一言も口を利かなくなり、ただ僕の後をついてくるだけだった。
( ・∀・)
(゚、゚トソン
( ・∀・)「何か文句があるのか?」
(゚、゚トソン
あるに決まってる。
あの無表情の下には、不平と不満が爆発しそうになってるんだ。
( ・∀・)「僕がお前の為に何人殺したと思ってるんだ……
道端に放り捨てられていたお前を、誰が助けてやったと思ってる……」
(゚、゚トソン
(#・∀・)「ああ、口に出さずともわかってるさ!
お前が何を言いたいのか。お前も僕の女房と、他の女どもと一緒だ!」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:22:45.11 ID:m1hnz9rM0
- 41.
(#・∀・)「くそ女、ビッチだ! 犬みたいに誰にでも股開きやがって……」
ちょうど高速道路を渡す鉄橋の歩道の上を歩いている途中だった。
ふと振り返ると、彼女がいない。
( ・∀・)
下の高速道路は、大騒ぎになっていた。
(;^ω^)「僕じゃないお、僕が悪いんじゃないんだお!!
こいつがいきなり上から落っこちて来たんだお!」
大型トラックの運転手が飛び降りて、そんな事を喚いていた。
まるでその事を世界中に言い訳するみたいに。
( ・∀・)(あいつが自分で跳び下りたんだあいつが自分であいつが自分で僕は悪くない僕は
悪くはない僕はあいつが自分で悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くな)
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:24:41.88 ID:m1hnz9rM0
- 42.
一度も振り返らずにその場を去った。
騒ぎはどんどん大きくなって、遠くでパトカーのサイレンが聞こえた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
クックル、ババア、デレ、トソン。
命はこの世の何よりも価値があるなんて言ったのはどこのどいつだろう。
無駄死にだ。みんな無駄死に。
( ∀ )
夕方、町についた。
財布は空っぽで、もう売れるものは何一つ残っていなかった。
( ∀ )(財布だけじゃない。空っぽなのは、財布だけじゃない)
僕はどこへ向かっているのだろう?
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:27:56.23 ID:m1hnz9rM0
- 43.
何をしようとしているのだろう?
何故、何の為に、まだ息をしているのだろう?
( ^Д^)「旦那、旦那。気持ち良くなれる薬どう?」
裏路地の入口で、男に声をかけられた。
( ・∀・)「薬?」
( ^Д^)「ああ。何でも揃ってるよ」
僕は構わず、そいつの頭を酒瓶で叩き割った。
(;^Д^)「てめえ!? 何しやが……」
( ・∀・)
更に割れた瓶で喉をえぐった。
売人は血を吐き、のたうちながら、自分の血の中に沈んで行った。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:31:13.60 ID:m1hnz9rM0
- 44.
懐からありったけの麻薬を奪い取り、鉄橋に戻る。
( ・∀・)シュゴゴゴゴ
( ゚∀゚)「フォォオウ!! 強烈!」
そのすべてを口と鼻に突っ込むと、すっかり気分が良くなった。
手すりの上に昇ってそこに立ち、僕は歌ったり踊ったりした。
最高の気分だった。
ここが世界のてっぺんなのさ。
( ゚∀゚)「ふんふん♪ ふん♪ ふふん♪ 天使、天使、僕のてーんーしー♪」
しばらくするとあらゆる麻薬が僕の中で衝突を始め、すぐに気分が悪くなった―――
けど、気分は良かった。どうなのかな? もうよくわかんないや。
とにかくわかってることは、ゲロすらも美しかったって事。
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:34:30.02 ID:m1hnz9rM0
- 45.
J( ー )し
( ・∀・)「よう、ババアじゃないか!」
手すりの上にババアがいたので、僕は挨拶をした。
( ・∀・)「お前は最高に幸せだろ? 惨めな人生に僕が幕を下ろしてやったんだから」
( ∋ )
( ・∀・)「クックル! クックルもそう思うだろう。
お前なんか生きててもしょうがなかったんだから、死んで大ハッピーだろう」
ζ( ー *ζ
( ・∀・)「デレ、ビッチにしちゃあ悪くない死に様だったよな」
まったく、どいつもこいつも何だって黙りこくってるんだ。
( ・∀・)「あっ」
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:36:51.51 ID:m1hnz9rM0
- 46.
ゲロで足が滑った。
僕は鉄橋から、車がびゅんびゅん走り回る高速道路へと落ちた。
ゆっくり、ゆっくり―――スローモーションみたいに、ゆっくり―――
突然、すべてが真っ暗になった。
闇夜が訪れた。
( トソン
はるか下の方に、潰れたトソンの姿が見えた。
僕はそこに向かって落ちてゆく。
どこまでもどこまでも、落ちてゆく。
( ・∀・)
( トソン
彼女は笑っていた。
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/29(日) 01:38:59.63 ID:m1hnz9rM0
- 47.
グシャグシャになった顔に、にっこりと微笑みを浮かべていたんだ。
( トソン「わたし、最高に嬉しいわ。
あなたのおかげで死ねて、とっても幸せだわ」
( ‐∀‐)
ああ、やっぱり、君だけが僕の天使だ。
おしまい
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