( ´ω`)ブーンは空腹のようです

⊂二二( ´ω`)二⊃「ブーン…はぁ…おなかすいたお」

僕は力無く空を飛んで餌を探す。
もう何日も何も食べていない。空を飛ぶのは好きだけれど、餌のためと思うとどうにもやるせなくて。

( ´ω`)「だけど…このままじゃ死んでしまうお」

僕の、空を飛ぶことの次に好きなのは食べることだ。

ところが、なぜか最近、ここらには餌がいない。八月初旬なんて、いい匂いをさせた餌が沢山いるものだと、昔先輩に聞いたものだけれど。
ちょっと前までは、張りのある、おいしそうな餌がごろごろいた。あぁ、先輩は嘘つきだ。全く逆じゃないか。

( ´ω`)「僕は…死んでしまうのかお……」

全く餌が見当たらない現実に絶望して、ふらふらと地面に落ちる。ホコリだらけの、タイル張りの床に。
じりじり熱い空気とは逆に、冷たいタイルに身をよじっていると、ついに走馬灯が見えてきた。

( ´ω`)(あぁ、僕は死んでしまうんだお。…しかし、走馬灯には全く良い思い出がないおね…)

ずっと、僕は不幸だった。今まで生きられたことが唯一の幸運。まぁ、それも今終わるんだけど。

僕は汚い場所で生まれた。どぶみたいな汚いところだ。親の顔なんて知らない。物心ついたときにはもういなかったから。
小さい頃は今以上に醜くて、生まれたときから虐げられた。度々、住む場所を追い出された。
それでもなんとか立派に成長して、初めての餌とりにデビューしたんだ。

( ´ω`)(初めて餌を狩ったときの興奮は今でもありありと思い出せるお)

美味しかった――二重の意味で。
だってその餌は、今まで、僕を虐げてきた種族だったんだから。メシウマってやつだ。

僕の持つ槍を、奴らに刺して、溢れ出す血をすすったときの、あの、あの興奮!
奴ら、良い暮らしをしてきたんだろう、たんまり脂が乗ってやがった。

( ´ω`)(そうして、うまい餌だらけのここを見つけて、安心の日々を送っていたんだお…。
       ああ、餌のことなんて考えると余計に腹が減る)

( ´ω`)(餌…食いたいお…死にたくないお…)

餌。
餌。
…にんげん。

(  ω )(にんげん、ほしいお…)

強く願ったそのとき。

かつん、かつん、かつん……

(  ω )「!」

人間の足音が近づいてきた。

( ^ω^)(天のお恵みだお…)

ξ*゚听)ξ「ふんふーん♪」カツン、カツン

(*^ω^)(しかも、こりゃおいしそうな幼女だお…よしよし)

息を潜めて忍び寄る。気づかれたら一貫の終わりだ。
槍を構えて、タイミングを見計らう。動いている間は狩りにくいのだ。
止まった、その一瞬を狙う。それが今まで狩ってきた経験から学んだことだ。
特に今は、これを逃せば待っているのは死しかない。まさに絶体絶命、命懸け。

ξ*゚听)ξ「えーと、どこだっけなぁ」

( ^ω^)「……」ス…

ξ*゚听)ξ「あ、ここだここだ」

( ^ω^)「――!」

今だ!

僕はそのときを確信して飛び付いた。
柔らかい肉の感触、汗の匂い。あぁ、なんて久々。
少しだけその餌に見とれていた。それから槍を振りかざし、いざ、突き刺す。


多分、その『少しだけ』がいけなかった。


突き刺そうとした瞬間、物凄い轟音と暴風が僕に直撃し。
視界は全て肌色に包まれて。
逃げることなんて死にかけの僕には到底できず。
僕は間もなく、押し つ ぶ さ れ

あ゛

パチン。

**************

ξ*゚听)ξ「お、やった。仕留めた」

ξ*゚听)ξ「…それで、えぇと、…見つけた! "夏休みの友"!」

ξ*゚听)ξ「べ、別に忘れてたわけじゃないんだからねっ!」

幼女が走り去った後には、ただ、がらんとした教室に潰れた蚊が転がっているばかりであった。

 

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