- 1
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 00:48:52.92 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)"
( ^ω^)「手紙だお……」
( ^ω^)「何々」
---------------------
( ^ω^)へ
今度結婚することになった。
よかったら結婚式来てくれ。
('A`)より
---------------------
- 6
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 00:51:56.07 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)「おっおっ。ドクオもとうとう結婚かお!」
( ^ω^)「写真が入ってるお。これが嫁さんかお」
--------
川 ゚ -゚)
--------
( ゚ω゚)「うおう! カワユス!」
( ^ω^)「うらやまーだお」
ブーンは携帯電話を取りだし、電話帳の“た”の行を探す。
( ^ω^)「久々に会ってみるお」
- 9
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 00:55:21.49 ID:1w3iwjtg0
次の日。
ブーンは待ち合わせ場所の喫茶店で、そわそわした様子でドクオを待っていた。
( ^ω^)(凄いイケメンになってたらどうしよう……)
学生時代は、年中二人でモテない事を愚痴りあっていた仲だった。
ドクオに出し抜かれたのは少々癪だったが、友人の晴れ舞台に心はときめいている。
( ^ω^)「おっ」
('A`)「よう。久しぶり」
やってきたのは、予想と違い学生時代と変わらないドクオだった。
- 10
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 00:58:18.24 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)「座れお。今日は奢ってやるお」
('A`)「そのつもりできた。財布は家だ」
( ^ω^)「なんて野郎だ……」
つもる話はあれど、聞きたい事は一つだ。
(*^ω^)「どうやってあの人とつきあえたんだお?」
('A`)「ふ……」
('A`)「運命ってやつかな」
( ^ω^)「き、きんもー」
ちなみに二人の馴れ初めはこうだ。
チンピラにからまれていたドクオをその人が助け、そこから交際が始まった、との事。
- 14
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:00:54.87 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)「普通逆だお」
('A`)「人と同じ生き方なんて俺には似合わないのさ」
( ^ω^)「きんもー」
('A`)「ひがむなひがむな」
店員がやってきて、二人に注文を聞く。
ブーンはアイスティで、ドクオはランチを注文した。
遠慮が無かった。
( ^ω^)「遠慮ねえなお前」
('A`)「ところで結婚式は来られるのか? 来月末なんだが」
( ^ω^)「ニートに暇じゃない日などあるものか。あるものか決して!」
('A`)「すまんかった」
- 16
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:03:59.73 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)「他には誰を呼んだんだお?」
('A`)「……」
( ^ω^)「?」
('A`)「お前だけだ。お前しか友達いねえし」
(;^ω^)「あ……そうか」
小中高、ずっと共にしてきた二人だが、生活水準は大きく異なる。
かたやクラスのお調子者、かたや教室の空気のような存在だった。
ドクオに結婚式に呼べるような友達など、ブーン以外いなかった。
( ^ω^)「僕はいくお」
('A`)「ありがとな」
- 17
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:05:14.76 ID:1w3iwjtg0
いや、空気ならまだ良かったかもしれない。
*(‘‘)*「お待たせしました。ランチとアイスティです」
( ^ω^)「僕アイスティー」
('A`)「俺ランチ」
ドクオはずっと、いじめられっ子だったのだ。
- 19
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:07:21.83 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)「……」
ドクオと別れた後、ブーンは自分の家で、一人悩んでいた。
このままでは、ドクオ側の出席者がとても寂しい事になってしまう。
( ^ω^)(僕が何とかしてやるお……)
世界でただ一人の親友の為、彼は卒業生名簿を取り出した。
住所と電話番号が書いてあるものだ。
- 22
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:11:12.04 ID:1w3iwjtg0
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「あ、もしもし。杉浦さんのお宅でしょうか?
僕はブーンという者で、ロマネスク君の……はい、小学生の頃の……」
ドクオと繋がりがあった者ならば、誰でも良い。
手当たり次第連絡し回った。
しかし返ってくる答えは、無残なものだった。
『悪いな。ちょっと学校の勉強が忙しくてさ』
『ごめんねー。旅行に行くのと被っててー』
『ドクオ? 誰だっけ。めんどくせえ』
- 23
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:13:56.49 ID:1w3iwjtg0
どれだけ断られ続けても、ブーンは粘った。
そして一週間の間に数十人と連絡を取る事に成功する。
結果は、
(;^ω^)「うううう……」
ゼロ。
(;゚ω゚)「こうなったら影分身しかねえ……!」
その時、リストにまだ斜線が引かれていない名前が目についた。
彼らはブーンがわざと連絡を避けた者たちである。
ドクオを虐めていたグループだ。
- 25
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:16:28.81 ID:1w3iwjtg0
(;^ω^)「駄目もと……駄目もとだお」
彼らのうちの一人に連絡を取る。
連絡先は実家だったので、彼の母親が電話に出た。
事情を話し、彼の電話番号を教えて貰った。
さっそく電話番号をプッシュする。
(;^ω^)「……」
『はい。モララーです』
(;^ω^)「もしもし、ブーンだお」
『は?』
(;^ω^)「あの……だから」
『あー……あーあーブーンか。急にどうした。誰から聞いたんだ?』
- 28
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:18:31.04 ID:1w3iwjtg0
(;^ω^)「実家に電話して、携帯の番号を教えて貰ったんだお」
『ふーん。あ、もしかして誰か亡くなったのか……?』
( ^ω^)「逆だお!」
『逆? ああ、出産?』
(;^ω^)「ああ、いや逆は言い過ぎた。結婚式があるんだお」
『お前結婚するんだ。いつやんの?』
( ^ω^)「ドクオだお」
『……』
( ^ω^)「ドクオの結婚式があるんだお」
- 30
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:21:05.85 ID:1w3iwjtg0
『で?』
(;^ω^)「……出て欲しいなーって」
『あのなあ』
(;^ω^)「駄目かお?」
電話先の声は、困っているような、苛立っているような口調だった。
『俺がどの面下げてあいつに会えばいいんだよ。俺が何したかわかってんのか?』
(;^ω^)「わかってるお」
『じゃあなんで俺なんだよ』
( ^ω^)「ドクオの結婚式だお! あいつが結婚するんだお! 超めでたくね!?」
『別に。ていうか馴れ馴れしいなお前』
(;^ω^)「ごめん……」
- 34
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:25:25.47 ID:1w3iwjtg0
『そんだけ?』
(;^ω^)「え?」
『用事。そんだけ?』
(;^ω^)「そ、そうだお」
『あっそ。じゃあな。また同窓会でな』
( ^ω^)「あ、待っ……」
受話器から、ぶつっと電話の途切れた音が聞こえた。
ブーンはそっと受話器を下ろし、肩を落とした。
- 37
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:27:54.38 ID:1w3iwjtg0
( ・∀・)「……」
ξ゚听)ξ「ねえ、誰から?」
シーツで胸を隠した半裸の女が、猫なで声を出す。
( ・∀・)「人違い」
ξ゚听)ξ「嘘。親しい人っぽかった」
( ・∀・)「昔のツレだよ」
ξ゚听)ξ「ふーん……やあっ」
モララーは女を押し倒し、口を口で塞ぐ。
答えるのも面倒だっただけだが、女は恍惚した顔で彼を迎え入れた。
- 39
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:30:52.59 ID:1w3iwjtg0
ξ///)ξ「んん……」
( ・∀・)「……」
( ・∀・)(今更会って、どうしろっていうんだよ)
首筋にキスをしながら、昔の事を思い出す。
トイレの中で、泣いて許しを請うドクオ。
背中に張り紙をされた状態で、校内を歩かされるドクオ。
みんなモララーがやった。
モララーが主犯で、それ以外の者は面白がって見ていた。
あのとき世界はとても狭く、その狭い世界の中で、モララーは王様だった。
- 43
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:35:04.04 ID:1w3iwjtg0
ξ///)ξ「……」
( ・∀・)「……」
大人になるにつれて、世界は狭くなった。
優等生で、いじめっ子のリーダーで、世界の王だったモララーは、今はフリーターだ。
ξ///)ξ「口でするから……」
何もかもが色あせた世界で、彼はどうしようもなく退屈していた。
( ・∀・)(みんなは、今何やってんだろう……)
昔の友人とは長い間連絡を取ってなかった。
誰かと会いたかった。
その時頭に浮かんだ最初の人物は、彼が一番嫌いな人だった。
- 46
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:39:02.28 ID:1w3iwjtg0
(´・_ゝ・`)「ジョルジュ。携帯ブルってるぞ」
_
( ゚∀゚)「ウス」
工事音がけたたましく鳴り響く中、ジョルジュは首にかけたタオルで、黒くなった顔を拭った。
軽トラックの荷台に放り投げてあった携帯を取って、その場から離れる。
_
( ゚∀゚)「もしもし」
『もしもし、ブーンだお。今大丈夫かお?』
_
( ゚∀゚)「ブーン?」
聞こえてきたのは、懐かしい名前だった。
- 49
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:42:51.46 ID:1w3iwjtg0
- _
( ゚∀゚)「悪いが仕事中……」
(´・_ゝ・`)「おーい休憩すっぞ! スイッチ切れ!」
_
( ゚∀゚)「……だが大丈夫だ。何の用だよ」
『実は、今度ドクオの結婚式があるんだお』
_
( ゚∀゚)「ドクオの?」
『そうだお』
記憶の中のドクオを思い浮かべる。
ダーツの的にされて泣きながら逃げるドクオや、制服を隠されて体操服で授業を受けるドクオ、などだ。
_
( ゚∀゚)「結婚、するんだ」
『是非結婚式に来て欲しいんだお!』
_
( ゚∀゚)「悪いけど……」
- 51
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:45:17.19 ID:1w3iwjtg0
(´・_ゝ・`)「ジョルジュ! 茶買ってこい!」
_
( ゚∀゚)「今行きます!」
_
( ゚∀゚)「仕事が忙しいんだ。嘘じゃなくてよ。
とても結婚式なんて行ける余裕は無いんだよ」
『そこをなんとか……』
_
( ゚∀゚)「あー」
(´・_ゝ・`)「聞こえてんのか!」
_
( ;゚∀゚)「すいません! すぐ行きます!」
_
( ゚∀゚)「悪いなブーン。俺は駄目だ。それじゃ」
電話先でまだブーンが喋っていたが、ジョルジュは携帯を切った。
- 56
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:48:38.12 ID:1w3iwjtg0
- _
( ゚∀゚)「たく……」
駆け足で近くのコンビニへ急ぐ。
後ろでは、先輩たちが地面に腰を下ろして談笑していた。
_
( ゚∀゚)(死ね。クソが)
ジョルジュはモララーと同じグループにいた者だ。
王であるモララーと共に、いろんな悪事を働いた。
中学校では喧嘩で負け無しと恐れられていた。
教師も年上も警察も怖くなかった。
モララーと一緒にいれば、何でも出来る。
彼はそう考えていた。
- 63
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/09/02(火) 01:56:47.05 ID:1w3iwjtg0
しかし彼の王国は長くは続かなかった。
モララーが進学したのだ。
勉強どころか学校にすらほとんど行かなかった彼は、高校に進学する事など考えてなかった。
ブレインを失うと、彼はますます荒れ、警察と家を往復する事が多くなった。
たまにバイトをしても、すぐに辞めるかクビになる。
何でも出来た世界は、彼を縛り付ける鎖となった。
_
( ゚∀゚)「やべ、お茶の種類聞くの忘れてた……クソ」
親にも見放され、ほぼ絶縁状態となった。
生きていくには働かなければならない。
ドカタになった彼は、毎日殴られながらも働き続けた。
この頃彼は、望んでいた未来から、どんどん遠ざかっていく感覚を覚えていた。
中学を出てから今まで、自分の居場所など、何処にも無かった。
_
( ゚∀゚)「……」
見上げた空に、懐かしい男の泣き顔が見えた気がした。
戻る