- 157 : プレアイドル(長屋):2007/03/29(木) 01:49:18.81 ID:GPW3Py7H0
- 22
('A゚)「俺が……負け……ただと?
この、俺が…………」
( ^ω^)「……」
('A`)「……そうか……負け、か」
ドクオはそう呟くと、不気味なほど静かになった。
まるで憑き物が落ちたかのように。
ぼくは、ドクオに声をかけなかった。
他の2人も声をかけることはなかった。
ただぼく自身に関しては、声をかけなかったというより、むしろ、声をかけることができなかったのだ。
人を寄せ付けない凄みが、今のドクオにはあったからだ。
無論、ツンのことは聞ける雰囲気ではなかった。
そして、このターンが終わってから広間の扉が開くまでの間、誰一人とてしゃべることはなかった。
だからだろうか、ドクオの迎えがやってくるまでの時の流れは、非常に遅く感じられた。
- 159 : プレアイドル(長屋):2007/03/29(木) 01:52:16.66 ID:GPW3Py7H0
- 迎えは、ジョルジュのときと同じようにやってきた。
そして、同じように武装していた。
「おい、ドクオ。立て」
広間に入ってきた男達の一人が、事務的にドクオに語りかける。
彼らは、これからドクオを死刑台へと送り込むのだろう。
ぼくには、彼らが死神のように見えた。
('A`)「…………ああ」
「よし、行くぞ」
('A`)「これから……死刑台……か?」
「ああ、そうだ」
男の返事に、ドクオは皮肉な笑いを浮かべる。
('A`)「最期に……少し時間をくれ」
「……いいぞ、少しだけだ」
武装した男とのやり取りを終えたドクオは、視線をぼくに合わせた。
- 162 : プレアイドル(長屋):2007/03/29(木) 01:55:21.79 ID:GPW3Py7H0
- ('A`)「おい、ブーン。いいことを教えてやろう……」
( ^ω^)「な、何だお」
('A`)「他でもない、お前の彼女ツンさんを――津出一家を惨殺した犯人のことだ」
( ^ω^)「なんだと――」
('A`)「そいつは、自分の犯罪の片棒を担いだ津出のオヤジを殺し、
犯行を目撃された口封じに、一家全員を殺害した……。
その真犯人はなぁ………」
('A゚)「このアマだよ!!」
ドクオは近くにいた男が持っていた銃を瞬時に奪い、クーに銃口を向けた。
そして、引き金、を、引いた。
- 164 : プレアイドル(長屋):2007/03/29(木) 01:57:00.95 ID:GPW3Py7H0
銃声は、一向に鳴らなかった。
- 166 : プレアイドル(長屋):2007/03/29(木) 01:59:11.25 ID:GPW3Py7H0
- 「ハハハ、馬鹿だな……我々が二の舞を踏むと思っていたのか」
男達は持っていた銃を捨て、代わりに服の内ポケットから違う銃を出し、ドクオに向かって構えた。
「残念ながら、弾を入れてなかったのだよ、どの銃にも。ジョルジュのときは痛い目に会ったからな……」
('A゚)「畜生ッ……」
「ところで――――どうやら早く死にたいらしいな、ドクオ」
男達は一斉にドクオを睨む。
('A゚)「あ、あ、ああぁあああああぁぁあぁああぁああ」
「撃て!!」
無数の銃声が飛び交った。
ぼくは頭を低くして、音が鳴り止むのを待つしかなかった。
- 169 : プレアイドル(長屋):2007/03/29(木) 02:02:58.47 ID:GPW3Py7H0
- 残ったのは、ぼろ雑巾のような死骸だった。
ドクオを死に追いやったのは、間違いなく、ぼく自身だ。
しかし、ドクオの死体を見ても、何の感慨も沸かなかった。
正直、ドクオの生死は今やどうでもよくなっていた。
そんなことより、ドクオの残した言葉が、ぼくの心を大きく惑わせていた。
真犯人が、
まさか、
クーだなんて。
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