- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:24:36.67 ID:i7wkESGoO
- 第一話「分からない事は先生に質問しましょう」
18年生、と書かれたプレートが廊下にかかる教室。
その中で、ひとりの教師が熱弁を振るっていた。
( ´∀`)「いいモナか?まずはこの世界と、この『学校』について説明するモナ。よく聞いておくモナよ」
教壇に立つモナーは、黒板に歪で大きめな四角を書いた。
教室にいる生徒は、皆冷めたような目でモナーと黒板を見る。
この説明、もう毎日毎日聞いているのだ。
( ´∀`)「この世界は、四つに分かれているモナ。北にひとつ、西にひとつ、といった具合にモナね」
黒板に書かれていた四角の中に、適当な大きさの楕円を足す。
それが大陸のつもりなのだろう。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:26:01.64 ID:i7wkESGoO
- (,,゚Д゚)「先生、その説明もう俺たち全員何度も何度も聞いてます。それにプロローグにも書いてありますけど」
挙手をしながら、モナーの説明にかぶさるようにギコが発言した。
そしてそれが、本日の彼の最後の言葉になる。
ばきっ
黒板に図を足していたモナーは、笑顔でギコに近寄る。
音を立てて砕け散ったチョークが、無残に風に乗って何処かへ流れていく。
そんな事はお構いなしに、モナーはギコに近づき―――
その右手を振り上げた。
(,,゚Д゚)そ「!」
(#´∀`)「これは大人の事情って奴モナ。余計な口を出すんじゃないモナ」
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:28:42.25 ID:i7wkESGoO
- モナーの右手が振り下ろされ、ギコの口を塞ぐ。
心底同情するような視線が、教室の至るところからギコに寄せられた。
モナーはギコの口から手を離し、
( ´∀`)「授業を続けるモナよ」
そう言いながら教卓へと戻る。
しかし、教室の視線はギコに集中していた。
モナーに付けられたであろう赤い×印は大きく口を覆い、ギコは口を開く事すら出来ない。
何かを喋ろうともがくギコを、生徒の全員が見ていた。
( ´∀`)「…授業を続けるモナよ?」
モナーは新しいチョークをどこからか取り出し、黒板を軽く叩く。
それでやっと生徒の集中がギコから離れた。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:30:32.09 ID:i7wkESGoO
- (,,゚×゚)「―――――――」
( ´∀`)「他の大陸はどうか知らないけど、とにかく今僕たちがいるニュー速大陸の、大国VIP。その中心に、真っ白な柱があるんだモナ。
その柱を造ったのは、『物質形成』の症状を持った人だと言われているモナよ。
ちなみに、僕達はこの施設を『学校』だと言っているけど、下の人達は総じてここを『隔離病院』だと言っている。
何故ここが『隔離病院』と言われているか、分かる人はいるモナ?」
(,,゚×゚)「―――――」
ζ(゚ー゚*ζ「私達の持つ変な力が、彼らには『病気の症状』だと映るからです!」
モナーの質問に即答したのは、クラス一番の金持ちのデレ。
教科書どおりの回答を聞き、モナーは満足そうに頷いた。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:31:43.65 ID:i7wkESGoO
- ( ´∀`)「正解モナ。僕や君達だけじゃない、この施設や僕達が立っている天空地盤、ラウンジにいる人は皆、『病気』を持っているんだモナ。
『病気』っていうとなんだか嫌な感じはするけど、僕達は別に命に別状はないモナね。ただ単に、普通の人達とはちょっとだけ違う。
だから、このラウンジに『隔離』された」
(,,゚×゚)「―――――」
( ´∀`)「詳しい事はほとんど分かっていないけど、この『病気』っていうのは人間である以上、誰にでも持っているものらしいモナ。
発病するかしないかの境目と言いますか、境界線というのが一体何であるかは、これからの研究に注目されているモナよ。
たとえば、僕みたいに13歳で『発病』した人もいれば、ブーン君みたいに」
モナーの指が、教室の一番後ろに座るブーンに向けられた。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:33:49.67 ID:i7wkESGoO
- (;^ω^)「お!?」
( ´∀`)「生まれつき『発病』している人もいる。そして、用務員さんの渋澤さんみたいに50代半ばで『発病』する人もいる。
みんな、発病する年齢はバラバラで、大体の人は一生『発病』しないものなんだそうだモナ。
それと、ある一定の症状においては『発生条件』というものがありますモナ。
僕の場合は手が症状の発生条件だけど、たとえばツンさんの発生条件は目、と。
この『病気』について分かっているのは、こんなものだモナね」
(;,゚×゚)「…………」
( ´∀`)「後は、この病気は『発病』したら絶対に完治しない、つまり僕がさっきギコくんにやったような力は、一度発動したらずっと自分に付き纏うものだモナ。
これについては特に困る事はないモナね、中には困る人もいるかもしれないけど…。
大体、みんな僕の目から見た感じでは自分の『病気』とうまく付き合っていけているような感じがするモナ。
これに関しては、みんなの成績に10を付ける事を約束するモナよ」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:35:53.48 ID:i7wkESGoO
- モナーの言葉に、生徒たちはうれしそうな笑顔を見せた。
教室の中が僅かに騒がしくなる。
モナーはその様子を見て大きく頷いた。
( ´∀`)「で、僕達が下の街…VIPで発病してから、ここまで来た、そのルートについてだモナ」
再びモナーが話し出すと、お喋りをしていた生徒は一様に黙る。
ギコのようにはなりたくないのだ。
( ´∀`)「これは個人で全然違うみたいだから、とりあえずは僕の場合。僕は13歳の頃、自宅で『発病』したモナ。
リビングで、母親が口うるさく僕にお説教しているのが煩わしくなって僕は自室に篭った。
そして、頭が冷えてからリビングに戻ろうとドアを開けようと思ったら―――」
(,,;×;)
( ´∀`)「ドアが開かなくなっていたんだモナ。後から聞いたら、僕の部屋のドアは外側から塞がれていたそうだモナ。
そこで、僕は初めて『発病』して『症状』を使ってしまっていたらしい。
部屋から出られなくて困っていたら、いつの間にか僕の部屋には男女が二人いて、女の人が僕の腕を掴んで、言ったんだモナ」
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:37:40.29 ID:i7wkESGoO
- ?『発病したので、あなたは私達と一緒に来なければなりません』
( ´∀`)「彼女が何を言っているのか分からなかったけど、少なくとも僕がやってしまった事に関係しているんだとは思ったモナね。
女の人に手を握られた瞬間、僕はこの学校の前にいた。
彼女と一緒にいた男の人は僕の身の回りの人の記憶を消したらしいモナ。僕に関する記憶だけ、ね」
モナーはにこにこと微笑みながら、教室を見渡した。
生徒の表情は、真面目そのもの。
さっきから暴れていたギコでさえも、今は大人しく椅子でモナーを見上げている。
その顔は少し泣きそうに歪んでいた。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:39:32.65 ID:i7wkESGoO
- ( ´∀`)「母親に謝る時間すら無かったから、あんな態度を取った事を後悔してるモナ。
でも僕は、後何年あるか分からない寿命をこのラウンジで過ごすことになってしまった。
君たちは、僕よりももっと長くだモナね。
だから、せめてこのラウンジの中だけでも楽しく過ごせるように、ラウンジには娯楽施設が結構あるんだモナよ」
( ´∀`)「この学校を卒業したら、君達の中の大体の人はラウンジ役館で働くと思うモナ。
もしかしたら、士官となって『発病』した人を迎えに行く仕事に就く人もいるかもしれないモナね。いずれも大事な仕事だから、みんなには頑張ってほしいモナ」
モナーの話が終わる。
それと同時に、学校の鐘が鳴り響いて授業終了の時間であるという事を生徒達に知らせた。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:40:53.28 ID:i7wkESGoO
- 小奇麗な教室から、生徒たちは思い思いの場所へと赴く。
午前はもう授業はないので、大半の者は昼食を食べに行くのだろう。
内藤ホライゾン。通称ブーンも、そのひとりだった。
( ^ω^)「ふぅ」
全く使う気配すら無かった教科書を鞄に詰め、彼は少し席が離れたところにいる友の所へと向かった。
( ^ω^)「ドクオ、ツン、お昼食べに行こうお。僕もうお腹が空きすぎて死にそうだお」
('A`)「お前ちゃんと朝飯食ってるじゃねーか、特に動いてもいねぇのに何でそんな腹減るの?」
( ^ω^)「僕は代謝がいいんだお、アナタとは違うんです!」
ξ ゚听)ξ「分かりづらい物真似なんてしてないで、早くご飯食べに行きましょう。私もお腹空いちゃったわ」
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:42:23.01 ID:i7wkESGoO
- 陰鬱なふいんき(なぜかry)を醸し出しているドクオに、癖のある金髪を二つに結ったツンデレお嬢様(笑)のツン。
そして、特にこれといった特徴のない内藤ホライゾンの三人。
正反対すぎて、逆に気が合ったのだろうか。
入学した時期も、育ってきた環境も全て違うのにも関わらず、ブーンたちは常に一緒に行動を共にしていた。
他愛のない話をしながら3人は、いつも皆で昼食をとる中庭に向かう。
光がよく差し込む廊下を通り、一面ガラス張りの談話スペースの横を通る。
木々や草花が植わっている中庭の隅にひっそりと置かれているテーブルベンチにはいつもの顔ぶれが並んでいた。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:44:44.90 ID:i7wkESGoO
- 川 ゚ -゚)「遅かったな」
ブーンたちと同じ年齢だが、クラスが違うクール。
从 ゚∀从「ま、いいじゃんいいじゃん。食べようぜ」
クールと同じクラスのハイン。
ノリ, ^ー^)|i「テンプレ1の人々と一緒に画面に並べる幸せッ…!私感無量!」
ブーンたちより1歳年下、17年生のジャンヌ。
(´・ω・`)「ジャンヌ何言ってるの?…。うわぁ凄い違和感」
ブーンたちと同じクラスのショボン。
(-@∀@)「もうね、ぶっちゃけ凄い無謀だと思う」
ブーンたちと同じクラスのアサピー。
- 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:46:03.67 ID:i7wkESGoO
- ( ^ω^)「あれ、兄者たちは?」
若干絵ヅラ的に色々映えない一同を見渡し、ブーンは誰ともなしに尋ねる。
川 ゚ -゚)「兄者たちならデルタ先生に呼び出し喰らって職員室に行ったぞ」
('A`)「へぇ、今度は何やらかしたんだ?」
川 ゚ -゚)「何でも授業受けるのが生理的に嫌になって、兄者が少しずつ授業時間を加速させていったらしい」
何でもないように言ってのけたクール。
しかし、言っていることは決して普通ではない。
話を聞いたブーン達は笑い、それぞれ席に着いて持参した弁当を開きはじめた。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:47:36.90 ID:i7wkESGoO
- 春先の温かい陽射しの中での弁当の匂いはとても幸せなものに感じる。
特に人より少しふくよかなブーンは、特に。
一斉に開かれた弁当の匂いにブーンの腹は奇妙な音を立てて鳴った。
ノリ, ^ー^)li「わ、ツンさんのお弁当今日も豪華ですね!」
ジャンヌが身を乗り出し、ツンの持ってきた弁当を覗き込む。
彼女の言葉の通り、テーブルに置かれた弁当はとにかく豪華だった。
お重に詰められたおにぎりやおかずを見て、ブーンの腹は物凄い音を立てる。
ξ ゚听)ξ「放っておくと日の丸弁当しか持って来ない奴がいるからね」
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:48:39.64 ID:i7wkESGoO
- そう言うツンの目は思いきりブーンに向けられているのだが、ブーンはじっとお重の中身を見てその視線には気付かない。
まるで餌の前で『待て』をされた犬のようだ、とツンはため息をつき、お重をブーンの方へ少し移動させる。
ξ ゚听)ξ「私に感謝しなさい。それが分かれば食べてよし」
言い終わるが早いか、ブーンは既にお重のおにぎりを二つ掴んで口の中へ放り込んでいく。
ブラックホールに飲み込まれていく星々みたいだ、と、固まった笑顔のままクールは思った。
(´・ω・`)「でも、から揚げと氷と水と宝石だったら今ここでもすぐに出せるからね。便利っちゃー便利だよね、僕達の病気も」
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:50:14.06 ID:i7wkESGoO
- ブーンの食べっぷりに少し引きつった笑みを浮かべ、ショボンは静かに呟いた。
ノリ, ^ー^)li「便利かもしれませんけど、私はこれから先がとても憂鬱ですよ。
唯一私の悩みを分かってくれるのは、シラヒーゲさんだけだと思うし…。」
(-@∀@)「あぁ、そっかジャンヌちゃんは…」
卵焼きを口に運びながら、アサピーは言いよどむ。
ジャンヌの症状は『不老不死』。
誰もが憧れ、それを得るがために起こった戦争も過去にはあった。
ノリ, ^ー^)li「でも、凄いですよね!私、何されても死なないし老いないんですから!」
(´・ω・`)「うん、凄いと思うよ。僕の症状なんてとても地味だし」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:51:18.19 ID:i7wkESGoO
- そう言うショボンの症状は『無重力』。
めったに使うことのない力を、実際にショボンはもてあましている。
アサピーは少し落ち込んだような空気を変えようと、ドクオを指差して二人にささやいた。
(-@∀@)「でもぶっちゃけ二人ともドクオ君よりマシだよ」
('A`)「アサピーお前今俺を馬鹿にしただろ」
(-@∀@)「してません」
飄々とドクオの睨みをかわしてみせたアサピーに、ジャンヌとショボンはあきれたように笑った。
('A`)「お前らな、から揚げの偉大さを全然分かっちゃいねえ。
よく考えてみろ、弁当に入ってる白身魚のフライもまぁ嬉しいけど、から揚げの方が全然嬉しいだろ?
俺はこの症状、誇りに思ってるぜ。………ほんとだよ?」
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:52:42.91 ID:i7wkESGoO
- ドクオの症状は『から揚げ』。
症状の発生条件は、口だ。
つまり、口から自由自在にから揚げを吐き出せるということに……。
('A`)「実際に俺がバイトしてる弁当屋は、俺が働き出してからめちゃくちゃ繁盛してるんだからな」
从 ゚∀从「から揚げ作ってる光景目にしたら、誰も買わねぇだろうな」
('A`)「……でも俺はブーンよりはマシだぜ」
从 ゚∀从「………。………まぁ…」
ハインをも黙らせるブーンの症状は、一体何か。
それは、次回の話で明らかになる。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:54:12.90 ID:i7wkESGoO
- 第一話『分からない事は先生に質問しましょう』
終わり
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/24(月) 19:55:48.25 ID:i7wkESGoO
- 症状と発生条件のまとめ
( ^ω^) 不明 不明
ξ ゚听)ξ 不明 目
('A`) からあげ 口
川 ゚ -゚) 不明 不明
从 ゚∀从 不明 不明
ノリ, ^ー^)li 不老不死 なし
(´・ω・`) 無重力 なし
(-@∀@) 不明 不明
( ´_ゝ`) 加速? 不明
( ´∀`) 物理的妨害 手
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