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┏━─
五月六日 午後十六時二三分
捜査本部
─━┛
'_
(´・ω・`) 、
('、`*川 「警部!」
じきに着く、という連絡をもらって、十分後。
白衣をなびかせながら、颯爽とペニーが部屋に入ってきた。
('ー`*川 「キンッキンのコーヒー、ありますか?」
(´・ω・`) 「ワカッテマスが買っといてくれてるぞ」
('、`*川 「おおッやるう!」
(´・_ゝ・`) 「…!」
( ;´_ゝ`) 「…!」
.
-
参考人を放置し、いの一番にコーヒーに飛びついた。
喉がからからだったのだろう、喉を鳴らして飲み干すが、
空き缶を机のうえに叩きつけてから大声で
「ぬるい!」 と叫んだ。
(´・ω・`) 「一時間前は冷たかったんだがなァ」
('、`#川 「一時間前ェ!?」
(´・ω・`) 「それはそうと……」
( ;´_ゝ`)
(´・ω・`) 「彼が、その?」
落ち着きがない長身の男に歩みかけて、言った。
ペニーは、言葉を詰まらせながら頷いた。
('、`*川 「流石兄者」
('、`*川 「くだんのアウトドアサークルの創設者にしてリーダー」
('、`*川 「アルプス神経病院に来館していたところ、任意同行に応じてもらいました」
.
-
そうか。
短く言って、咳払いをする。
彼は、重要な参考人なのだ。
(´・ω・`) 「はじめまして。 捜査一課のショボーンです」
( ;´_ゝ`) 「……流石兄者です」
(´・ω・`) 「そうカタくなさらんでも」
(´・ω・`) 「別に、逮捕でも取り調べでもないんだから」
( ´_ゝ`) 「………まあ。」
せわしなく、視線をデミタスに向ける。
およそ十年ぶりの再会なのだ、気になるのも仕方ないだろう。
デミタスも、様子を伺ったのち、歩み寄ってきた。
(´・_ゝ・`) 「……久しぶりです」
( ´_ゝ`) 「マジでな」
.
-
(´・ω・`) 「まあまあ」
(´・ω・`) 「立ち話もなんだし、適当なとこに座って」
言うと、しぶしぶ二人は腰を下ろした。
舞台が県警でなければ、
二人は当時の仲を想起させるようなやり取りを見せていたのだろうか。
デミタスは既にこの空気に慣れているけど、
連れてこられたばかりの兄者はまだそわそわしていた。
適当な部屋を押さえたりしてもよかったのだけど、
一番情報が集約されているのが捜査本部だ。
動くのが億劫で、時間が惜しまれる局面、わがままは言わせない。
(´・ω・`) 「エット」
(´・ω・`) 「確認だけど、十年前のアウトドアサークル……」
(´・ω・`) 「そのふたり、で間違いないんだよね」
.
-
(´・_ゝ・`) 「そうですね」
(´・_ゝ・`) 「この人は、間違いなく、流石兄者です」
( ´_ゝ`) 「別に言わんでも。
身分証明くらいできるわ」
(´・_ゝ・`) 「あ。 やっと免許取ったんですか!?」
( ´_ゝ`) 「バカにしやがって」
( ´_ゝ`) 「マイナンバーよ」
(;´・_ゝ・`) 「取ってねえのかよ!」
( ´_ゝ`) 「ガッハッハッハッハッ!」
(´・_ゝ・`) 「何わろとんねん」
(´・ω・`) 「……」
( <●><●>) 「どうやら、仲が良かったのは違いないみたいですね」
('、`*川 「疲れたし、ちょっと休憩いただきまーす」
('、`*川 「今日は豚骨の気分だな」
( <●><●>) 「きみの分の弁当も買ってるぞ」
('、`*川 「なッ……くそッ……」
.
-
放っておくと、デミタスと兄者は延々と雑談のひとつ始めるだろう。
それはそれで悪いわけではないが、事が事だ。
これは常に手綱を握っておかないと、メンドウなことになりかねない。
(´・ω・`) 「兄者さん」
(´・ω・`) 「今回、どうしてここに呼ばれたか、ご存じ……ですよね」
( ´_ゝ`) 「ッ……」
笑っていたのも束の間、
一言そうかけるだけで、兄者は真剣な面持ちになった。
(´・ω・`) 「ただ、どこまで事を把握できているか、わからない」
(´・ω・`) 「おさらいも兼ねて、いま警察がわかっていることを共有します」
(´・ω・`) 「かいつまんで、だけどね」
( ´_ゝ`) 「……どうぞ」
.
-
レーザーも、指示棒もいらない。
視線をホワイトボードにやれば、二人は勝手に目で追ってくれるだろう。
(´・ω・`) 「すべての発端は、四月二十五日の深夜」
(´・ω・`) 「地下鉄にて、ひとりの男が刺殺された」
(´・ω・`) 「フッサール擬古」
(´・ω・`) 「心当たりは?」
言うと、兄者もデミタスも、頷いた。
( ´_ゝ`) 「大学時代のサークルの、一員でした」
( ´_ゝ`) 「言って、大学以来しゃべることはなかったけど」
(´・_ゝ・`) 「同じく」
(´・ω・`) 「この件に関して、犯人は未だ逃亡中」
(´・ω・`) 「目下捜査中、といったところだ」
.
-
(´・ω・`) 「続けて、二件目」
(´・ω・`) 「四月三十日、あるビジホでひとりの男が殺された」
(´・ω・`) 「毒殺……に近しい形でね」
(´・ω・`) 「ヒッキー小森。 心当たりは」
( ´_ゝ`) 「あるに決まっている」
兄者は迷いなく答えた。
二人でサークルを立ち上げた、という話は嘘じゃないと見ていいだろう。
( ´_ゝ`) 「俺の、昔からのダチだ」
(´・ω・`) 「ちなみに、直近の交流は?」
( ´_ゝ`) 「ええと………」
'_
(´・ω・`) 、
.
-
ずっと交流があった、とでも言うかと思ったが。
想像に反して、兄者は思考に耽りながら、ぽつぽつ、と言葉を紡いだ。
( ´_ゝ`) 「……そうだな」
( ´_ゝ`) 「少なくともここ数年は話してなかったけど……」
( ´_ゝ`) 「………ああ。 七年くらい前かな」
七年くらい前か。
大学を出た後も、別に絶縁したわけではない。
しかし、疎遠には違いなかった、といったところ。
(´・_ゝ・`) 「なんで七年前?」
( ´_ゝ`) 「コミケがあったんよ」
( ´_ゝ`) 「ほんとグーゼン再会してさ。
ほら、中の人事件の年の」
( ´_ゝ`) 「ピンクレンジャーのやつ」
(´・_ゝ・`) 「あれかwwwwあれかwwww」
( ´_ゝ`) 「紅一点ならぬウン紅一点wwww脱糞事件www」
(´・_ゝ・`) 「くさそう(確信)」
.
-
(´・ω・`) 「七年前。 それはわかった」
(´・ω・`) 「つまり、ここ最近はさっぱりだった、と」
( ´_ゝ`) 「そ、そうですね」
(;´・_ゝ・`) 「失礼」
ここはお前らのだべる場所じゃねえぞ。
ポケットに手を突っ込み、ぎろりと睨むと我に返った。
これは手間がかかりそうだ。
(´・ω・`) 「次。 これは有名だね」
(´・ω・`) 「ライブ殺人事件。 被害者は、三階堂クックルだ」
( ´_ゝ`) 「それで、俺も事件を知った」
( ´_ゝ`) 「……身震いしたね。 正直」
(´・ω・`) 「ちなみに、その頃あんたはどこで何を?」
.
-
( ´_ゝ`) 「どうもしませんよ」
( ´_ゝ`) 「ネットライターしてんだけど、ツイッター見ながら仕事してただけさ」
(´・_ゝ・`) 「え、ライターしてんの?」
( ´_ゝ`) 「そうそう。 どこかは言わないけど、普通にでかい攻略サイトのね」
兄者の職業に関しては、そこまで問題はないだろう。
ミセリの一件で、本件が大学サークルのこじれであることはわかっている。
それ以上に、ツイッターという点に引っかかった。
三十代と言えど最近の若者、トレンドはニュースじゃなくSNSで収集しているらしい。
(´・ω・`) 「なるほどね」
(´・ω・`) 「……で、今日」
(´・ω・`) 「クックルの嫁の芹澤ミセリが、殺された」
( ´_ゝ`) 「え」
.
-
兄者が、とたん無表情になった。
刹那、全身をさぶイボが走ったようで、肩を一瞬震わせた。
(´・ω・`) 「知らなかった、ッてことでいいかい?」
( ;´_ゝ`) 「………マジ、で」
(´・_ゝ・`) 「間違いないッスよ」
(´・_ゝ・`) 「………滝公園、あるじゃん。
あそこだよ」
( ;´_ゝ`) 「え、マジ…?」
殺されてまだ日が経っていないということもあるだろうが、
何にせよ、まだ大々的には報じられていない、ということだろう。
それ以上に、ペニーはそのことを伏せて連れてきてくれたのか。
有難い話だ。
.
-
(´・ω・`) 「まず、クックルとミセリが籍を入れていた、ということ」
(´・ω・`) 「ご存じで?」
( ´_ゝ`) 「……そっか」
( ´_ゝ`) 「ケッコン、してたんだなァ……そっか……」
反応を見るに、予感こそあったものの、
入籍そのものは知らなかった、といったところか。
籍を入れた、としか言っていないのに、
短絡的に結婚と考えているのを見れば明らかだ。
(´・ω・`) 「事件は、起こったばかりだ」
(´・ω・`) 「目下捜査中だけど……同一犯の可能性は、非常に高い」
( ´_ゝ`) 「……連続殺人、ッてこと、ですよね」
(´・ω・`) 「ああ」
.
-
(´・ω・`) 「細かい情報はさて置くとして」
(´・ω・`) 「聞きたいことはたくさんある、今日お時間は大丈夫ですか」
( ´_ゝ`) 「入稿は済んでるし、大丈夫ですよ」
言質は取った。
デミタスと兄者、この二人は、事件解決まで僕の監視下に置く。
容疑者でもあり、次の被害者候補でもある。
どんな理由だろうと、もう二度と、ミセリのような犠牲を出すわけにはいかないのだ。
(´・ω・`) 「オッケー」
(´・ω・`) 「僕、堅苦しいのは嫌いだし、なんかつまみながらしゃべろうぜ」
( ´_ゝ`) 「はい……え、え?」
(´・ω・`) 「おい、なんかあったッけ」
.
-
ワカッテマスに聞くと、首を傾げながら、コンビニ袋を漁った。
奴も僕の性格はよく理解している、
どうせこうなるだろうと予測がついていたようで、ある程度の菓子類も買ってくれていた。
(´・ω・`) 「なんか食おうぜ。 何から食う?」
( ´_ゝ`) 「は?」
(´・_ゝ・`) 「あーー、のり塩がいいです」
(´・ω・`) 「本当はビールが飲みたいけど、コーラでいいや」
( ´_ゝ`) 「……」
( ´_ゝ`) 「は??」
.
-
ぐびぐびと喉を鳴らして、兄者はウーロン茶を飲んだ。
緊張のためか、よほど喉が渇いていたようだ。
半ばヤケクソのようにも窺える。
( ´_ゝ`) 「……」
( ´_ゝ`) 「で、何から話せばいいッスか」
(´・ω・`) 「事件で、いま一番気がかりな点がある」
( ´_ゝ`) 「ほう」
(´・ω・`) 「ずばり、ヒッキー小森の案件だ」
( ´_ゝ`) 「…!」
ワカッテマスは、少し離れた位置から
僕らの様子を窺ってくれている。
情報の共有と併せて、僕が気づけなかった何かに気づいてもらいたいところだ。
.
-
(´・ω・`) 「ヒッキーは、毒殺に近しい形で殺された、と言った」
(´・ω・`) 「でも、厳密に言えば、アレルギーを利用したトリックなんだ」
( ´_ゝ`) 「アレルギー?」
ピーナッツオイルが致死量盛られていた、常備薬。
どのタイミングで盛ったかは、まだ見当がついていない。
あれから、近辺の店や駅のカメラのデータを確認させたが、
特段めぼしい情報は見つかっていなかった。
(´・ω・`) 「本件を内部犯の仕業と考えたのは、」
(´・ω・`) 「担当医や一部の人しか知り得ない情報で犯行に及ばれたからだ」
(´・ω・`) 「……ヒッキーのアレルギー。
知ってる?」
.
-
アウトドア、ということは、当然バーベキューなんかも嗜む。
バーベキューに限った話ではない。
花見、月見、ビアガーデン、挙げればきりがないだろう。
となると、どこかしらでその情報を知り得る可能性がある。
ピーナッツ、というピンポイントなアレルギーだから知らない可能性もあり得るが。
少なくとも、酒の味を知ったばかりの学生なら、
肴にナッツ類を用意するのは至って自然で、そこから判明することもある。
( ´_ゝ`) 「……アレルギー?」
( ´_ゝ`) 「そんなの、あったっけ?」
(´・_ゝ・`) 「いや?」
(´・ω・`) 「食物アレルギーなんだ、」
(´・ω・`) 「ヒッキーが露骨に避けてた食べ物とか……思い出せない?」
十年ほど昔の話だ。
当時の光景を思い出すだけで結構な労力だろう。
急かして吐かせるつもりなど、毛頭なかった。
.
-
( ´_ゝ`) 「……」
(´・_ゝ・`) 「あーー。 トマト、無理でしたよね、あの人」
( ´_ゝ`) 「そういや」
( ´_ゝ`) 「イヤ。 でも、アレルギーじゃねえぞ」
( ´_ゝ`) 「ゴロッとした固形がだめで、パスタとか普通に食ってたし」
(´・_ゝ・`) 「ああ、アレルギー……だった」
(´・ω・`) 「アレルギー、となると、基本はエキスもだめだからね」
例外もあるが、話す必要はない。
要は、彼ら、内部の人間がアレルギーを知り得たかどうか、がキーなのだ。
( ´_ゝ`) 「好き嫌い……の話、じゃないんスよね?」
(´・ω・`) 「もちろん」
(´・ω・`) 「好き嫌いなら、過剰摂取して死ぬことはない」
.
-
(´・_ゝ・`) 「あれですよ、甲殻類」
(´・_ゝ・`) 「ほら昔、サビキで釣る時、オキアミ無理とか言ってた」
( ´_ゝ`) 「いやあれは、単純に臭いがキライってだけだったろ」
(´・_ゝ・`) 「でも、甲殻類食ってるとこ、見たことあります?」
( ´_ゝ`) 「潮干狩りの時、アホほどアサリ食ってたぞ」
(´・ω・`) 「……」
しっかし、よく出るよく出る。
釣り、サビキ、潮干狩り。
動機やメンバーはどうであれ、なるほど確かに、アウトドアを満喫していたようだ。
( ´_ゝ`) 「てか」
( ´_ゝ`) 「そーゆーのッて、司法解剖…?」
( ´_ゝ`) 「とかで、特定できるもんじゃないんスか?」
.
-
チッ。
ここでピーナッツの話が出てきたらよかったのだけど。
これはいよいよ、面倒なネックになりそうだ。
(´・ω・`) 「あれ」
(´・ω・`) 「ああ、ごめんごめん、言ってなかったっけ」
(´・ω・`) 「ピーナッツだ」
(´・ω・`) 「彼は、重度のピーナッツアレルギーだったらしい」
知らないのか、あるいは、とぼけているのか。
どちらにせよ、ホテル殺人を解き明かすうえで、ひとつの障壁となる。
サークルとホテル殺人を結ぶのに、この穴は埋めなければならないのだ。
でなければ、犯人がどうやってヒッキーを殺したのか、が争点となってしまう。
( ´_ゝ`) 「ピーナッツ?」
(´・_ゝ・`) 「知ってました?」
( ´_ゝ`) 「いや?」
.
-
アレルギー、というものは、特に話題がなければ自ら話すことはない。
たとえば、ワカッテマスは軽度のそばアレルギーだ。
花粉症などと違い、食物アレルギーというのはそこまで知られるものではない。
(´・ω・`) 「え、なに」
(´・ω・`) 「あんたら、酒飲む時、ミックスナッツとかつままなかった?」
( ´_ゝ`) 「いやあ……どうだっけ」
(´・_ゝ・`) 「そんな、オッサンじゃないし」
こ、こいつ。
( ´_ゝ`) 「ツマミとなりゃあ、焼き鳥とか卵焼きだったし」
( ´_ゝ`) 「自分らで飲む時も、するめとかポテチだったなァ」
(´・ω・`) 「それは、ヒッキーが選んで?」
( ´_ゝ`) 「いや?」
( ´_ゝ`) 「その時買う人が、適当に買ってたもんですよ」
(´・ω・`) 「……ム。」
.
-
(´・_ゝ・`) 「セリっちは、よくチョコ買ってたけど」
( ´_ゝ`) 「あーー。
クックルはチキン食わなかったな」
(´・_ゝ・`) 「思い出した! キタコレ行った時も、あいつだけニゲット食わなかった!」
( ´_ゝ`) 「あれだ、お前、するめだけ食わなかっただろ」
(´・_ゝ・`) 「するめが好きな野郎とは相容れない」
こ、こいつ。
(´・ω・`) 「なるほど、わかった」
(´・ω・`) 「あんたらは、ヒッキーのアレルギーについては知らなかった、と」
( ´_ゝ`) 「ピーナッツ……ピーナッツ、か……」
( ´_ゝ`) 「食ってた、と言われたらそんな気もするし……」
これ以上詮索すると、勘違いが起こり得る。
早いうちに切り上げることにしよう。
.
-
仮に、ここでピーナッツを食べていた、と言われても、
アレルギーというのは、ある日を境に突然発症することもある。
先天的なアレルギーばかりが話にあがるが、後天的なものも十分あり得る話なのだ。
それよりも問題は、ここで周知の事実だった、という情報が得られなかったことだ。
逆に、ここで知らない、と言っておけば容疑の目から逃れかねない。
もっとも、デミタスも知っていればその回避も防ぐことができたのだけど。
(´・ω・`) 「次」
(´・ω・`) 「この番号、見たことある?」
(´・ω・`) 「こう、着信がきたり、さ」
視線を遣って、例の050番号を見せる。
この番号が犯人だ、ということは書いていない。
犯人の番号だ、と明示しないのも、ちょっとした話術だ。
( ´_ゝ`) 「…?」
( ´_ゝ`) 「いや、ないね」
.
-
一瞬、ピンときた。
取っ掛かり、と言えるほどでもないが、突起はあった。
(´・ω・`) 「ん? 確認しなくていいの? 履歴」
(´・ω・`) 「番号なんて、いちいち記憶してられないっしょ」
( ´_ゝ`) 「いや……これ、IP電話でしょ」
( ´_ゝ`) 「俺、IP電話はチャッキョしてるから」
チッ。
いまいち空回りで、思わず舌打ちが出る。
デミタスもだが、さすがに機械に強そうな若者なだけあって、
050という並びを見ただけで、即座にIP電話とつなげることができている。
(´・ω・`) 「詳しいね」
( ´_ゝ`) 「前に、格安スマホの営業に引っかかってさ」
( ´_ゝ`) 「電話線じゃなくて、050番号にすれば月千円もかかりませんよ!とか聞いて」
(´・_ゝ・`) 「あーーあるある」
.
-
( ´_ゝ`) 「軽く調べたら、実は結構アブナい番号らしいじゃん」
( ´_ゝ`) 「もし、どこかで見てたとしても、覚えてないね」
ポイントは、兄者も050番号には通じている、という点だ。
裏を返せば、その特性を利用して犯行に利用することもできた、ということ。
兄者が犯人と決まってこそいないが、
こういったところからでも、疑うべきかどうか、ということが掴める。
( ´_ゝ`) 「その番号が、どうかしたんスか」
(´・ω・`) 「ああ。 犯人の番号なんだ」
( ;´_ゝ`) 「なッ……」
一瞬、兄者がよろめく。
意図を隠して番号を見せたため、犯人のものだ、と予測つかなかったのか。
あるいは、ただの演技、偽りか。
.
-
(´・ω・`) 「そっか、珍しい番号だから見覚えあるかな、ッて思ったんだけど」
( ´_ゝ`) 「いや……すんません」
(´・ω・`) 「いいよ、もう特定はしてるからね」
( ´_ゝ`) 「え?」
今のも、話術のひとつ。
かけた本人が誰か、なんてのは当然、わかってない。
ただ、名義を貸した人と、それで商売していた暴力団については特定している。
嘘はついていないぜ。
(´・ω・`) 「どしたの?」
( ´_ゝ`) 「いや……え、だったら犯人わかってるんじゃあ……」
クソ。
引っかからないか。
.
-
(´・ω・`) 「まあまあ。 そこらは捜査機密ッてやつさ」
(´・ω・`) 「そうだなあ。 次」
謎、という謎は多岐にわたる。
特に、触れてないところで言えば、ライブ殺人。
クックルを呼び出した方法や、カメラの死角を知っていたこと。
しかし、それらでうまく鎌をかける方法が思いつかない。
(´・ω・`) 「……そうだな」
(´・ω・`) 「根本的なところだ」
(´・ω・`) 「兄者さん」
( ´_ゝ`) 「はい」
.
-
(´・ω・`) 「知っての通り、本件は、」
(´・ω・`) 「十年前、ヴィップ大学にあったアウトドアサークルの面々が織り成す事件だ」
( ´_ゝ`) 「……」
(´・ω・`) 「当時揉める、ならともかく」
(´・ω・`) 「十年経った今になって、大々的な連続殺人が起こっている」
、 、
(´・ω・`) 「その、動機……心当たりはありますか?」
核心だ。
兄者が犯人かどうかなんかより、重要。
というより、消去法以外、彼を指し示す根拠が一切ない。
犯人だったら、その時に追い詰めれば、いい。
目下優先して得るべき情報は、動機、因縁、過去の話だ。
.
-
( ´_ゝ`) 「………」
( ´_ゝ`) 「………」
(´・ω・`) 「……」
(´・_ゝ・`) 「……」
兄者が、黙る。
静かになり、デミタスも、菓子をつまむ手を、一旦止めた。
考え込んでいるのかもしれないが、
その割には、その仕草を見せようとしていない。
( ´_ゝ`) 「………」
(´・ω・`) 「……肯定も否定もない、ッてことは」
(´・ω・`) 「あるんですね?」
.
-
「いや」 。
兄者は、その言葉にはすぐに反応を示した。
( ´_ゝ`) 「そりゃあ、いろんな揉め事は、ありましたよ」
( ´_ゝ`) 「でも……それと、十年後ッてのが、いまいちリンクしない」
(´・ω・`) 「まあ、それは」
それは、僕も気になっていた点だ。
十年、とは言うが、厳密には十年きっかりではない。
過去の清算、と言ってきっかり十年後に起こった犯行ではない。
犯人が、形に拘っているわけでないというのはわかっていることだ。
となると必要なのが、どうして今、
十年 「ほど」 昔の関係を、清算する必要があったのか。
その理由づけ、裏づけ、動機づけ。
.
-
(´・ω・`) 「この際、どうして今になって、ッてのは置いとこう」
(´・ω・`) 「サークルであった、でかい事件……何がある?」
( ´_ゝ`) 「……」
またも、沈黙。
含みがあるのかどうかが掴めないのが、もどかしいところだった。
( ´_ゝ`) 「……いや」
( ´_ゝ`) 「あんまし、人に言いたいことじゃ、ないんだけど……」
脅すか。
(´・ω・`) 「はい問題!」
( ´_ゝ`) 「は?」
(´・ω・`) 「ここ、どーこだ!」
( ´_ゝ`) 「え、どこッて…」
.
-
無機質な捜査一課分室。
白い壁の一面、ホワイトボードには、事件の概要が書いてあって、
その手前、セミナーには、生々しい証拠物件の多数が並んでいる。
ふと窓の外を見やれば、パトカーが多く停まっている。
警官服姿の人も多数いるし、なんなら、目の前にはスーツを着込んだ刑事がいる。
( ´_ゝ`) 「………警察」
( ´_ゝ`) 「警察、ですね」
(´・ω・`) 「厳密に言えば、警察本部」
(´・ω・`) 「ポリがうじゃうじゃいる、本丸ど真ん中」
( ´_ゝ`) 「……あのーー」
( ´_ゝ`) 「どんなくッだらねえ話でも、しゃべらないと逮捕されるんです?」
察したか。
しかし、肝が据わっているように見える。
(´・ω・`) 「いや、しないよ?」
.
-
嘘は吐けないんだ。
近年、警察による強引な取り調べが問題になっている。
自白の強要、証言のねつ造、と。
さすがに、そんな悪行に走るつもりはないけど。
何かを察して、あるいは何かに怯えて、
隠し事をしよう、という気さえなくしてくれれば、僕はそれでいいんだ。
( ´_ゝ`) 「まあ、別にいいですけどね?」
(´・ω・`) 「オッいいね~~!」
( ´_ゝ`) 「ただ、まァーーじで、くッだらねえもんスよ」
(´・ω・`) 「ほうほう、たとえば」
.
-
( ´_ゝ`) 「一番ヤバかったの、なんだろう?」
(´・_ゝ・`) 「………あーー」
(´・_ゝ・`) 「あれだ、オナラ事件」
( ´_ゝ`) 「あーーー確かに」
(´・ω・`)
これは本当に、くッだらねえ話しか出てこない可能性もあるな。
もしかすると、本当に、彼らは何も知らないのだろうか。
まさか、現職刑事、それも警部が目の前にいる状況で、
オナラ、え、いまオナラとか言ったか。
そんな品のない話をするつもりというのか。
あるいは、そんなレベルの話しかない、というのか。
勘弁してくれ。
.
-
(´・ω・`) 「………概要だけ、言ってくれ」
(´・_ゝ・`) 「あれですよ」
(´・_ゝ・`) 「キャンプしてた時、みんなコテージで寝たんだけどね」
(´・_ゝ・`) 「この人が屁ェ扱いて……」
( ´_ゝ`) 「うんうん」
うんうんじゃねえ。
( ´_ゝ`) 「ちょっとしたオチャメ心で、俺じゃない、ッて言ったんだ」
( ´_ゝ`) 「でも場所が悪かった。 近くにはセリっ……芹澤さんしかいなくて」
(´・_ゝ・`) 「で、その時セリっちは、おなか壊してたもんで」
タイミングが悪すぎる。
( ´_ゝ`) 「ンもうあの子、バチギレよ」
( ´_ゝ`) 「でも、俺も言ったからには後に引けなくて……つい……」
いや引けよ。
.
-
( ´_ゝ`) 「臭いの実況とかしてたら、あの子、半分泣きながら暴れて……」
(´・_ゝ・`) 「あの時、まじであの子、泥酔だったからなァ……」
なんてことをしてくれるんだ、こいつら。
僕だっていやだぞ、そんなの。
( ´_ゝ`) 「ほら、見てよ、これ」
( ´_ゝ`) 「あの子に突き飛ばされて、ベッドの角に脛ぶつけたんだけど」
( ´_ゝ`) 「まあ、凹んじゃってね。
痕がまだ残ってる」
確かに一大事すぎるが。
もしそれが原因で連続予告殺人になったとしたら、犯人はあんただぞ。
(´・_ゝ・`) 「あれよ、あの子、言ったら姫だったわけじゃん」
(´・_ゝ・`) 「みんな、あの子の家に謝りにいったりしてさァ」
小学生かよ。
.
-
(;´・ω・`) 「……わかった、わかった」
(´・ω・`) 「で、紅一点の彼女にサークルを抜けられたら困る、と」
( ´_ゝ`) 「え、紅一点?」
(´・ω・`) 「ん?」
( ´_ゝ`) 「……いや、なんでもない」
( ´_ゝ`) 「そう。 姫だからね。
オタサーの姫さ」
( ´_ゝ`) 「それもオタクっ娘じゃなくて、マジな陽キャ美人だからね」
(´・_ゝ・`) 「セリっち、まじで可愛かったよね」
( ´_ゝ`) 「そうそう、今だから言うけど、最初女王に目覚めた時、実は勃ってたよ俺」
(´・_ゝ・`) 「ちょwwwww不謹慎だけどwwwwおいwwww」
( ´_ゝ`) 「だってwwwwww」
(´・_ゝ・`) 「自分は毎回勃ってた」
( ´_ゝ`) 「おwwwwまwwwwえwwwwwコラwwwww」
( ´_ゝ`) 「俺もだよ言わせんな恥ずかしい」
(´・_ゝ・`) 「wwwwwwwwwwwwww」
.
-
二人が談笑に入った隙に、思わずワカッテマスに一瞥を与える。
同感だったようで、ワカッテマスもすぐ、隣まで寄ってきた。
( <●><●>) 「……いまのは、間違いないですね」
(´・ω・`) 「ああ。」
ついに見つけた、取っ掛かり。
現代の船から、過去の記憶をサルベージするための、きっかけ。
、 、、 、 、、 、 、
(´・ω・`) 「いたんだ。 もう一人。」
( <●><●>) 「それも……察するに、女性」
今までの、デミタス、ならびにミセリとの会話が、フラッシュバックする。
僕が常々引っかかっていた、
しかし取っ掛かりが見つけられないでいた、ひとつのテーマ。
、 、
人数だ。
.
-
>
>( <●><●>) 「擬古、小森、三階堂、奥さん、流石、盛岡」
>
>( <●><●>) 「以上の六人、だったのですか?」
>
>ミセ*゚-゚)リ 「…」
>
>
>( <●><●>) 「サークル、となると」
>
>( <●><●>) 「OBだったり、新入生だったりが考えられますが」
>
>ミセ*゚-゚)リ 「…」
>
>ミセリは、煙草を根本まで吸いきった。
>
>ミセ*゚-゚)リ 「六人だけ、ですよ」
>
.
-
>
>(´・ω・`) 「フッサール擬古、ヒッキー小森、クックル三階堂、芹澤ミセリ」
>
>(´・ω・`) 「あんたと、部長の流石兄者……で全員なんだね?」
>
>(´・_ゝ・`) 「…」
>
>
>(´・ω・`) 「…?」
>
>即答、しないのか。
>ちょっと、嫌な予感がした。
>
>
>(´・_ゝ・`) 「……」
>
>(´・_ゝ・`) 「そうだ、ね。
ウン」
>
>(´・_ゝ・`) 「その六人しかいないよ」
>
.
-
( <●><●>) 「ミセリが人数に言及する時、わずかに、沈黙を見せた」
(´・ω・`) 「デミタスもだ」
(´・ω・`) 「どこか腑に落ちないような、遠回しな言い方だったね」
歯車のひとつが、噛み合いはじめる。
ギシギシと、醜い音を立てて、過去と現代が繋がろうとしている。
しかし、それだけでは、その歯車が成す全体像が窺えない。
ここからは、更に慎重に言葉を選ばなければならない。
(´・ω・`) 「そして、兄者も、それを隠そうとしてるんだ」
今の、紅一点、に対するレスポンス。
明らかに、否定の色を見せていた。
ここまで来ると、ミセリが、デミタスが、といった次元ではない。
サークルの関係者全員が、隠そうとしている事実がある、ということだ。
.
-
それは、言葉を間違えて、閉口させてしまえば、聞き出すチャンスを失うことになる。
現状兄者に法的な容疑がかかっていない以上、
そして容疑があろうが黙秘権は行使できる以上、
至って自然な、しかし強引な形で、情報を引き出す必要があった。
咳払いすると、ワカッテマスは元いた位置に戻った。
下手に刑事が二人並んでいると、いらぬプレッシャーを与えてしまう。
(´・ω・`) 「兄者さん」
( ´_ゝ`) 「ハイなんでしょう、兄者です」
これが、素なのだろう。
飄々とした、掴みどころのない様子を見せた。
(´・ω・`) 「ここでクーイズ!」
( ´_ゝ`) 「いえーい!」
( ´_ゝ`) 「ッてなんですかいったい」
少し笑いながら、返す。
さっきとは全然違うリアクションだ。
.
-
(´・ω・`) 「ここ、どーこだ!」
( ´_ゝ`) 「Police Office」
(´・_ゝ・`) 「いい発音だ…」
(´・ω・`) 「じゃあ、次!」
(´・ω・`) 「僕、だーれだ!」
( ´_ゝ`) 「えっと……」
( ´_ゝ`) 「……ケイージ!」
(´・_ゝ・`) 「だめな発音だ…」
教えてやるよ。
正解はショボーン、またの名をイツワリ警部だ。
(´・ω・`) 「あんた、嘘を吐いてるな?」
.
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|`ヽ /|
|. \ /. i
| ヽ / ノ
! `ー‐-
'、
| .、
l
!
r---ゝ !
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イツワリ警部の事件簿 File.4 `,_::::::::::::::::::::`ヽ,
ノ,´αm
く l lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
第六幕 「 七人目 」
' '、-_l ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
` ..‐,,..、 丶、 冫:::::::::::/>;;;;;;;;\
,' /´ ::ヽ.:.:.:::::::::::::::丶_;;::;;::|
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ヽ」
¦ ! ,;:::: ̄'' 7ー-、_....;.;.;.;、:::://::|
Y ;:::::::::│ / `――\/::::|
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-
( ´_ゝ`) 「嘘って?」
緊張は払拭できたのだろう。
そして、僕の声色を受けて、これがまじめな話であることも察しただろう。
しかし、怯みはしない。
やはり、相当肝っ玉のある男に違いない。
(´・ω・`) 「おさらいも兼ねて、聞こう」
(´・ω・`) 「くだんの、サークル……」
、、 、、 、 、、
(´・ω・`) 「在籍したことのある人は、」
(´・ω・`) 「あんた二人、フッサール擬古、ヒッキー小森、クックル三階堂、芹澤ミセリ」
(´・ω・`) 「以上、六人で、間違いないね?」
( ´_ゝ`) 「ああ」
捕まえたぞ。
.
-
(´・ω・`) 「そっちの彼は、知ってるだろうけど」
(´・ω・`) 「僕、これでも、関係者にはちょっとしたことで知られてるんだ」
( ´_ゝ`) 「なんの話?」
(´・ω・`) 「偽りを見抜くプロ……ッてことを、さ」
(´・_ゝ・`) 「…!」
デミタスが、はッとする。
この男は、かつての密室鉄道で、その姿を見ている。
(´・ω・`) 「これまでの話と照らし合わせると、ひとつ」
(´・ω・`) 「不思議な点がある」
( ´_ゝ`) 「不思議って?」
(´・ω・`) 「どうして、きみは紅一点という言葉に引っかかった?」
.
-
兄者に限らず、事件にかかわる人間は、
何かを隠したり、偽ったりすることがある。
そしてそれらは得てして、事件を解く鍵となり得る。
重要なことほど、関係者諸兄にも深く根ざすファクターだからだ。
それを聞きだすのに、刑事によって、やり方はあるだろう。
巧みな話術で、鎌をかける。
あるいは泣き落とし、同情を誘って、吐かせる。
ペニーのように、相手を圧倒して吐かせる刑事もいる。
ワカッテマスのように、賢いやり口でポロッと言わせる刑事もいる。
だが、僕のやり方は、違う。
ロジックの綱渡り、正面切っての真っ向勝負だ。
( ´_ゝ`) 「……」
(´・ω・`) 「この六人なら、百人中百人が、紅一点と認識する」
(´・ω・`) 「でも、たった一人だけ」
(´・ω・`) 「紅一点じゃない、と認識してしまった人がいるんだ」
.
-
( ´_ゝ`) 「話が、見えませんが」
(´・ω・`) 「あんただよ、流石兄者」
( ´_ゝ`) 「…、」
少しばつの悪そうな顔をする。
なかなか精神的にタフそうな男だ。
( ´_ゝ`) 「聞きなれない言葉だったんですよ」
( ´_ゝ`) 「コウイッテン……コウイッテン……」
( ´_ゝ`) 「ああ、そゆことね、ッて思って」
言うなれば、詰将棋。
コマの進め方を間違えなければ、最終的に相手は白状せざるを得なくなるのだ。
.
-
(´・ω・`) 「日常的に使わない言葉だったとしても、ねぇ」
(´・ω・`) 「数分前……僕は既に、コウイッテンという言葉を聞いたんだ」
( ´_ゝ`) 「え? セリっちの話?」
(´・ω・`) 「違うよ」
>
>( ´_ゝ`) 「コミケがあったんよ」
>
>( ´_ゝ`) 「ほんとグーゼン再会してさ。
ほら、中の人事件の年の」
>
>( ´_ゝ`) 「ピンクレンジャーのやつ」
>
>(´・_ゝ・`) 「あれかwwwwあれかwwww」
>
>( ´_ゝ`) 「紅一点ならぬウン紅一点wwww脱糞事件www」
>
(´・ω・`) 「ピンクレンジャー云々の時さ」
(´・ω・`) 「あんたは、自分のクチで、紅一点、と言ってんのさ」
.
-
( ;´_ゝ`) 「!」
(´・ω・`) 「だというのに、一瞬認識に詰まった?」
(´・ω・`) 「それは、言葉が認識できなかったんじゃなくて、」
(´・ω・`) 「サークル六人の状況と合致していなかっ」
( ´_ゝ`) 「一瞬、聞き取れなかった」
( ´_ゝ`) 「それだけですよ」
当然、そう来るだろう。
王手をかけられた相手玉、前に進めば桂馬が噛んでいる。
囲いの裏を、縫うように逃げるしかない。
しかし、わかっているなら続けて王手を。
王手は追う手、壁に習った言葉だ。
( ´_ゝ`) 「だいたい、六人じゃなかったなんて話、あったんですか?」
(´・ω・`) 「それが、あったんだよ」
( ´_ゝ`) 「…ッ!」
.
-
>
>(´・_ゝ・`) 「そうだ、ね。
ウン」
>
>(´・_ゝ・`) 「その六人しかいないよ」
>
>(´・ω・`) 「…」
>
>何か、隠しているのか。
>それとも、幽霊部員やすぐに辞めた人をカウントするか悩んだのか。
>
>
>(´・ω・`) 「幽霊部員とかも、勘定してほしい」
>
>(´・_ゝ・`) 「ヤ、そんなのはいなかったよ」
>
>(´・ω・`) 「じゃあ、六人でウソじゃないんだな?」
>
>(´^_ゝ^`) 「……………ウソじゃ、ないな」
>
.
-
(´・ω・`) 「彼が、既に証言してくれている」
、 、、、 、
、
(´・ω・`) 「六人で、ウソじゃない」
( ´_ゝ`) 「言ってるじゃないスか」
( ´_ゝ`) 「しっかり、六人だ…ッて」
(´・ω・`) 「六人でウソじゃない、ッて言い方はだね」
(´・ω・`) 「ある捉えようによっては、六人である」
、 、 、 、 、、
(´・ω・`) 「しかし、正確に言えば六人ではない」
(´・ω・`) 「つまり、いたんだよ」
(´・ω・`) 「七人目が、さ」
.
-
( ´_ゝ`) 「これでも、一応サークルですよ」
( ´_ゝ`) 「入ろうとした人、入ったもののすぐ抜けた人…」
( ´_ゝ`) 「そーゆー人は、確かにいましたよ」
無論、そう逃げる。
しかしそれに対する解答も、既に用意してくれていた。
幽霊部員やその類は、いないのだ。
(´・ω・`) 「違うね」
、 、、、 、、
(´・ω・`) 「そのウソじゃない部分に、非正規部員は勘定されてないんだ」
(;´・_ゝ・`) 「…」
( ´_ゝ`) 「…」
.
-
(´・ω・`) 「盛岡デミタスと、芹澤ミセリが証言した内容は、こうだ」
(´・ω・`) 「サークルの正規部員は、確かに六人だ」
(´・ω・`) 「しかし、正規の範疇に入らない、七人目は、いた」
、 、 、
、 、 、 、 、 、、 、 、
(´・ω・`) 「そしてそこに、非正規部員は勘定されない」
( <●><●>) 「ちょっと待ってください」
(´・ω・`) 「…?」
( ´_ゝ`) 「ッ」
静かな部屋に、ワカッテマスの声が響いた。
思わぬ方角からの横やりに、僕はもちろん、ふたりも反応を見せた。
僕の隣に寄り、鋭い視線を僕に向ける。
.
-
(´・ω・`) 「…なんだ?」
( <●><●>) 「矛盾していませんか」
(´・ω・`) 「何がだ」
( <●><●>) 「六人でウソじゃない、とは確かに証言されましたが」
( <●><●>) 「その言葉の意味するところは、非正規部員の存在」
( <●><●>) 「ただし一方で、非正規部員は勘定されてない」
( <●><●>) 「求められる七人目とは、正式に加入し、活動を共にした第三者です」
( <●><●>) 「そんな人物がいたら、最初から七人目として、カウントされています」
( <●><●>) 「しかし、デミタスもミセリも、六人のみを挙げている」
( <●><●>) 「無論、口裏合わせの線はありません」
(´・_ゝ・`) 「……ああ」
.
-
(´・ω・`) 「しかし、ふたりが」
(´・ω・`) 「そして部長サマまで隠そうとしているのも、立証できている」
(´・ω・`) 「それも、口裏合わせなしで、違う形で、だ」
六人でウソじゃない。
それはつまり、七人目のメンバーがいた可能性。
幽霊部員や退部の類ではない。
それはつまり、彼ら六人と行動を共にしてきたということ。
紅一点に示す態度。
それはつまり、芹澤ミセリ以外に女性メンバーがいた。
そして提示されている六人の既存メンバーに、
芹澤ミセリ以外の女性メンバーは認められていない。
(´・ω・`) 「当事者である部員たちが、言外で認めてるんだ」
(´・ω・`) 「七人目、それも、女性!」
.
-
( <●><●>) 「だったら、それを隠す根拠がいる」
( <●><●>) 「デミタス、ミセリ、そして兄者の全員が、」
( <●><●>) 「口を揃えて隠す根拠です」
( ´_ゝ`) 「…」
(´・ω・`) 「ひとつ、面白い屋根を一枚、追加しよう」
( <●><●>) 「屋根…?」
(´・ω・`) 「本件において、外すに外せない、大きな謎がある」
( <●><●>) 「たくさんありますが」
(´・ω・`) 「根底は、動機だ」
( <●><●>) 「…」
.
-
(´・ω・`) 「ただの大学サークルに眠っている、十年越しの殺意」
(´・ω・`) 「それは、彼ら三人皆一様に、予想できないでいる」
(´・ω・`) 「……一方で、サークルには、七人目の女性がいた」
(´・ω・`) 「口裏合わせなしで、隠されてるんだ」
(´・ω・`) 「サークル全体で、ある種の箝口令というものが、あったんだろう」
(´・ω・`) 「それも、十年前に」
(;´・_ゝ・`) 「……兄者氏」
( ´_ゝ`) 「……」
(;´・_ゝ・`) 「……」
少しずつ見えてきた、迷宮に差し掛かる一筋の光。
希望の現れか、青天の霹靂か。
.
-
( ´_ゝ`) 「言っとくがな」
(´・ω・`) 「なんだい?」
( ´_ゝ`) 「俺らは、嘘なんてついていない」
( ´_ゝ`) 「その七人目とやらは、本当はいた?」
( ´_ゝ`) 「いたら、開口一番に言ってやるよ」
( ´_ゝ`) 「じゃねーと、俺が疑われちまうんだ」
(´・ω・`) 「…」
(;´・ω・`) 「…ッ!」
もう一つあった。
根底に眠る 「謎」 。
.
-
( ´_ゝ`) 「確かに、正確に六人だったのか、と問われると」
( ´_ゝ`) 「本当は、違うんだ」
( <●><●>) 「…! なら、」
( ´_ゝ`) 「言いたくないんだ」
( <●><●>) 「しかし!」
( ´_ゝ`) 「言いたくないし、なんなら、これだけは断言できる」
( ´_ゝ`) 「そいつは、この事件とは、一切、関係がない」
( ´_ゝ`) 「絶対に、関係はないんだ」
( <●><●>) 「それは我々が判断することです」
( ´_ゝ`) 「あり得ねえよ」
( ´_ゝ`) 「物理的に、関係することができない」
( <●><●>) 「それって…」
.
-
七人目は確かにいて、部員は皆、彼女を隠していた。
たった今、兄者も、認めた。
しかし、解せない謎がまだ、あったではないか。
デミタスも、兄者も。
自分が疑われかねない状況下に置かれてもなお、
真犯人の存在を、推測できないでいる。
彼女がどんな人物であっても、
殺人という事件を前に、隠し通す、あるいは守り抜くなんてことが、できるのか。
( ´_ゝ`) 「おたくらが七人目とやらを見つけ出したとして、だ」
( ´_ゝ`) 「完ッ全に、空回りだぜ」
意図して、七人目をかばっているのではない。
ほんとうに、その七人目は、この事件に関わることができないんだ。
.
-
たとえば、海外在住なんてどうだろうか。
物理的に、距離的に、という視点。
しかしそんなもの、無断で帰国して、殺害することができる。
たとえば、懲役十年以上の大罪を犯し、投獄中の線。
脱獄の話なんて僕は聞いてない以上、アリバイは成立するかもしれない。
しかし、刑期は縮まることもあるし、それらを彼らが知る由もない。
兄者の言葉を言い換えれば、七人目は完全なアリバイに守られていて。
更に、サークルが一丸となって避けたがる禁忌でもある。
となると、この線から辿ればいい。
刑事だから断言できる。
完全なアリバイなどというものは、滅多に存在しない。
しかし、それでもごく稀にあり得る、完全なアリバイ、となると。
(´・ω・`) 「ッ!」
.
-
( ´_ゝ`) 「…」
(´・_ゝ・`) 「…」
閃きかけた時。
けたたましい着信音が、室内に鳴り響いた。
(´・ω・`) 「……誰だ、こんな時に!」
半ば乱暴に、応答する。
大した情報があがってきたわけでないのなら、僕は即座に切る。
(´・ω・`) 「もしもし、ショボーンだ」
『はじめまして、ショボーン警部』
(´・ω・`) 「いま忙しいから、手短に言え」
誰だ。
そういえば番号は見ていなかったが。
.
-
『捜査は順調ですか?』
苛立っている時に、神経を逆撫でしてくるような言葉づかい。
といったところで、僕はいよいよ、違和感に苛まれた。
この声は、なんだ?
(´・ω・`) 「…ッ」
待て。
こいつは、誰だ。
壁でもぎょろ目でも、所轄の誰かでもない。
そもそも、はじめまして、とか言ったか。
はじめましてだと。 誰だ。
『失礼しました』
『名刺を失敬しましたので、つい』
名刺だと。
僕の名刺は滅多なことでは出していないぞ。
.
-
(´・ω・`) 「待て」
(´・ω・`) 「あんたは、誰なんだ」
(´・ω・`) 「どうして僕の名刺を持っている」
すると、声の主は、くすくす笑った。
『持っていたのですよ』
『芹澤ミセリさんが』
(´・ω・`) 「 ッ! 」
(;´・ω・`) 「 な… 」
(;´・ω・`) 「おいッ!どういうことだ!」
(;´・ω・`) 「彼女のことを……何か知っているのか!」
.
-
手に汗が滲んできた。
ここまで来たら、答えはひとつしかない。
しかし、それはここまでの積み重ねすべてをぶっ潰す答えとなる。
兄者、デミタスは、きょとんとした面持ちで僕を見つめている。
当然、電話なんてかけていない。
一言も言葉を発していない。
『当然ですよ』
『同じサークルのよしみですから』
大きく喉を詰まらせた。
考えに整理がつかず、混乱してしまっている。
(;´・ω・`) 「………」
(;´・ω・`) 「ひとつ、疑問なんだが」
『なんですか』
ちぎれそうな、細い声だ。
機械で声を変えているのはわかるが、女性的な言葉づかいだ。
.
-
(;´・ω・`) 「僕は、確かに彼女に、名刺を渡した」
(;´・ω・`) 「でも、それは……一昨日の話」
(;´・ω・`) 「そして彼女は、今日、殺されたんだ」
『はい』
確定した。
ここに、いま、事件の犯人がいる。
(;´・ω・`) 「………そうか、わかった」
『それが、どうかしましたか』
(;´・ω・`) 「ひとつ、聞きたいことがある」
『なんですか』
(;´・ω・`) 「きみはいったい、誰だ?」
(;´・ω・`) 「そして、僕に電話をかけた理由は、なんだ?」
.
-
『予告です』
(;´・ω・`) 「予告だと?」
ふざけているのか?
(;´・ω・`) 「僕は、警部だぞ?」
(;´・ω・`) 「傍受される可能性があるんだ、それをどうして、わざわざ…」
『大丈夫ですよ』
一切、動じない。
傍受や逆探知といったリスクは、捜査技術に疎くてもなんとなくで察せるはずだ。
しかし、一切の動揺が感じられない。
特定される、なにかしらの情報が抜かれるリスクを考慮していない。
(;´・ω・`) 「大丈夫? なにがだ?」
『誰にも、私を捕まえることは、できませんから』
(;´・ω・`) 「………なに?」
(;´・ω・`) 「どういうことだ」
.
-
『どんな刑事でも、捕まえられない罪人』
『いると、思いますか?』
(;´・ω・`) 「………何の話だ」
『物のたとえですよ』
どんな刑事でも、捕まえられない罪人。
このなぞなぞの意味するところが、わからない。
(;´・ω・`) 「……いない、とは、言いきれない」
『へえ、たとえば』
考えを、整理しなければいけない。
そのためにも、話を長引かせる必要がある。
ワカッテマスは知らずのうちに僕の隣に待機し、
通話口から聞こえてくる微かな機械音に耳を澄ませている。
(;´・ω・`) 「たとえば、治外法権」
(;´・ω・`) 「罪人を罪人足らしめるのは、法だ」
(;´・ω・`) 「その法を潜り抜けられてしまえば、逮捕はできない」
.
-
すると、女は笑った。
アハハ、と力ない笑い声だ。
『誰も、逮捕なんて言ってませんよ』
(;´・ω・`) 「なに?」
『捕まえられない、罪人です』
『物理的に、捕まえられない罪人、なんです』
(;´・ω・`) 「………そんな罪人が、いるのか?」
『そうですね……』
『……安心しました』
(;´・ω・`) 「何がだ?」
『すぐにわかるようなら、あるいは、と思いましたが』
『その様子なら、私を捕まえることは、できそうにないので』
(;´・ω・`) 「言いたいことは、はっきり、言ってくれ」
『簡単ですよ』
.
-
『亡霊』
(;´・ω・`) 「!」
亡霊。
亡霊だと。
『亡霊を捕まえることは、できません』
『おわかりいただけましたか?』
(;´・ω・`) 「……亡霊」
(;´・ω・`) 「きみが、その、亡霊と言うのかい?」
『ええ』
切り裂きジャックだ。
.
-
この僕に、堂々と宣戦布告を下す。
犯行を認め、更なる犯行を予告するときた。
切り裂きジャックだ。
亡霊と聞いて、真っ先に浮かんだのがそれだった。
百年以上も昔の、御伽噺だ。
某所で立て続けに猟奇的な殺人事件が発生した。
犯人は声明を送り、更に自らをジャックザリッパーと名乗った。
そして未だに、その連続殺人事件の犯人は、明らかになっていない。
地下鉄殺人、ホテル殺人、ライブ殺人、滝殺人を経て。
自らを亡霊と名乗る、本件の真犯人。
まさしく、切り裂きジャックが先駆けとなった劇場型殺人の、お手本とすら言える。
この上ない、屈辱だ。
(;´・ω・`) 「そうだな。 合点がいったよ」
(;´・ω・`) 「確かに、罪人が既に死んでいたら、捕まえることはできない」
『あなたがどんなに頑張っても、私を捕まえることは、できません』
.
-
(;´・ω・`) 「だったら、犯行手口なんか聞いても、答えられるわけだ」
(;´・ω・`) 「捕まるわけがないから、ッてね」
『……まあ、そうですね』
(;´・ω・`) 「……フッサール擬古は、地下鉄で殺されたんだ」
(;´・ω・`) 「どうやって、殺した、というんだい?」
『どうやって、も何も』
『後ろから刺しただけですよ』
(;´・ω・`) 「乗客に見つからないように?」
『だから亡霊なんですよ』
『私は、見つかりませんからね』
(;´・ω・`) 「なッ………!」
.
-
『いいでしょう。 全部白状しますよ』
『続いてのヒッキー小森は、ピーナッツオイルを使いました』
(;´・ω・`) 「どうして、そんな遠回りを?」
(;´・ω・`) 「素直に、刺し殺せばいいだけじゃないか」
『場所がホテルでしたからね』
『密室が成立してしまうと、後々めんどうになる』
(;´・ω・`) 「だったら、どうしてホテルで殺す必要がある?」
(;´・ω・`) 「そんなもの、自宅にいる時に…」
『私は、あくまでヴィップに移ろう亡霊』
『ヴィップにやってくるその時でなければ、殺せなかったの』
地縛霊、とでも名乗るつもりだろうか。
単なる設定としか思えないが、そもそもの根本が
「亡霊」 だ。
そこを突っ込もうとすら思えない。
.
-
(;´・ω・`) 「……さしずめ、地縛霊だな」
『似たようなものかもしれませんね』
亡霊も、そこまで言及はしなかった。
(;´・ω・`) 「でも、ホテルに入る前に薬を飲まれたら…」
『ホテルに入ってから、薬を飲むのを待ったのですよ』
『幸い、部屋に入ってすぐに飲んだので、待つ手間が省けましたが』
(;´・ω・`) 「なんだと?」
(;´・ω・`) 「ホテルのカメラに、待ち伏せるような人なんて…」
『知っている?』
『亡霊は、人の眼にうつらないのよ』
.
-
(;´・ω・`) 「 」
(;´・ω・`) 「なら……筆跡だ!」
(;´・ω・`) 「事件は、はがきで予告が出されていた」
(;´・ω・`) 「それも、肉筆で……」
言いかけたところで、亡霊が笑った。
『無駄ですよ』
(;´・ω・`) 「なんだと!?」
『一致する筆跡は、ありません』
『だからこそ、わざわざ肉筆で予告したのですよ』
(;´・ω・`) 「そんなバカな…」
『ほんとうなのだから、仕方ありません』
『私は、亡霊ですから』
『亡霊は、たとえ筆跡からだろうが、捕まえることはできません』
.
-
亡霊。
亡霊だと。
既に死んでいるとでも言うのか。
バカバカしい。
ただの比喩だろう。
しかし、比喩となると、なんの比喩なのか。
絶対に捕まらないという自信からそう言っているのか。
バカバカしい。
もとはただの一アウトドアサークルだ。
一般人が為せる行動ではない。
(;´・ω・`)
(;´・ω・`) 「……なら、名前は」
『私のですか?』
.
-
(;´・ω・`) 「亡霊と言えど、名前は永久につきまとう」
(;´・ω・`) 「きみの名前は、なんなんだい?」
『聞いて、どうするんですか?』
(;´・ω・`) 「ただの興味……」
(;´・ω・`) 「………なんて嘘は、いいや」
『?』
ちいさく、咳払いをする。
(´・ω・`) 「きみを、捕まえるためさ」
.
-
すると亡霊は、今までで一番大きく笑った。
それでも、大声というほどでは、ない。
アハハハ、アハハハと、繰り返し笑う。
『私を、ですか?』
『先ほども言いましたが、絶対に、捕まえられませんよ』
(´・ω・`) 「事件が終わるまで、わからないさ」
『そうですか』
『いいでしょう』
(´・ω・`) 「…!」
『はじめまして、ショボーン警部』
『山村貞子と申します』
.
-
(´・ω・`) 「山村…」
( ´_ゝ`) 「!」
(;´・_ゝ・`) 「!」
(´・ω・`) 「それが、きみの名前なんだね?」
(´・ω・`) 「……あれ?」
電子音がするな、と思いよく見ると、電話は既に切られていた。
番号を確認すると、例の050番号だった。
間違いない。
殺されたミセリが持っていた名刺。
僕に対する挑戦状。
そしてその電話番号。
間違いない。
彼女が、犯人だ。
.
-
( ;´_ゝ`) 「……切れた?」
(´・ω・`) 「ん。 ……おっと、失礼」
( ;´_ゝ`) 「なあ、ひとつ、聞きたいことがあるんだが……」
(´・ω・`) 「その前に……僕からも、聞きたいことがある」
( ;´_ゝ`) 「………なんだ?」
(´・ω・`) 「山村貞子」
(´・ω・`) 「……あんたら、知ってる?」
聞くと、兄者とデミタスは、目を見開いて、
この上ないオーバーなリアクションを取った。
兄者は大きく仰け反り、苦痛をかみ殺したような顔をしている。
デミタスは胸辺りを両手で強く握っている。
.
-
(´・ω・`) 「……知ってる、よな?」
(´・ω・`) 「誰なんだ?」
( ;´_ゝ) 「………」
(´・ω・`) 「……付け加えると」
(´・ω・`) 「七人目の女、というのは、山村貞子か?」
( ;´_ゝ) 「………」
(;´・_ゝ・`) 「………」
.
-
( ;´_ゝ`) 「……そうだ」
( ;´_ゝ`) 「当てられたのなら、仕方ない」
( ;´_ゝ`) 「山村貞子……」
( ;´_ゝ`) 「確かに、うちのサークルの、一員だった」
(´・ω・`) 「ほう」
、 、 、
(´・ω・`) 「………だった?」
兄者が、大きく息を吸い込んだ。
何度も繰り返し、深呼吸した。
.
-
( ´_ゝ`) 「山村貞子はな」
( ´_ゝ`) 「十年前に、死んでいるんだ」
.
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