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五月四日 午後十四時三九分
捜査本部
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ミセリにそう告げると、彼女は存外素直に、同行してくれた。
いまは、事務を担当する同年代の女性を同伴させている。
近くの喫茶店で、軽く探りを入れてもらいながら、雑談しているだろう。
まずは緊張状態なのをほぐさせないといけない。
それも、無機質な部屋に収めるより、華やかな喫茶店で寛がせるのがいい。
( <●><●>) 「いま、他のふたりは」
(´・ω・`) 「ひとまず、引き続き害者まわりを洗ってもらってるよ」
ライブ殺人を捜査していたふたりは、捜査本部に呼び寄せた。
先に到着したのはぎょろ目だった。
というのも、夜通し捜査していたのだ、
時刻で考えれば、二十時間ほど経過している。
だいたいの情報は、あらかた洗い出せているだろう。
.
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近況の共有も兼ねて、僕は数時間、捜査本部でデータをまとめた。
ホワイトボードには、関係者の相関図を展開させている。
他の害者がスカスカなのに対して、ミセリとクックルの周囲だけ、文字が多い。
これから、このホワイトボードに、次々と情報が付け足されていくことだろう。
そして先ほど、ワカッテマスが帰還した。
( <●><●>) 「なるほど」
(´・ω・`) 「さて、あんたにも共有しよう」
(´・ω・`) 「四人目の殺人予告が、数時間前に届いた」
ぎょろ目は、パイプ椅子を並べ、仰向けに寝ている。
売店で買ったであろう新聞を顔に載せている。
その一面でも、やはり連続殺人事件がありありと報道されていた。
ワカッテマスは、まだ寝なくてもいいらしい。
というより、本部に戻る際、巡査にハンドルを任せ、数十分ほど仮眠をとったんだとか。
(´・ω・`) 「四人目の、ターゲット」
(´・ω・`) 「それは、三人目の被害者、クックル三階堂の配偶者」
(´・ω・`) 「芹澤ミセリ、すぐそこの喫茶店に控えさせている」
.
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( <●><●>) 「芹澤…ですか」
(´・ω・`) 「籍を入れる時、苗字は変えなかったらしい」
( <●><●>) 「なるほど」
(´・ω・`) 「さて、媒体だが、今回は電話だった」
( <●><●>) 「はがきではないんですね」
(´・ω・`) 「ン…そうだ」
言われてみれば、それまでの予告は、すべてはがきで届いていた。
しかし、考えると、そもそも今回はフォーマルな予告ではなかった。
、
、 、
(´・ω・`) 「注意してもらいたいのは、これは実質的な予告だ、ということだ」
(´・ω・`) 「十二時前、だったかな」
(´・ω・`) 「嫁さんに、一本の電話が入った」
.
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(´・ω・`) 「その相手は、自らをクックル殺しの犯人と名乗り、」
(´・ω・`) 「明後日五月六日、ヴィップの滝公園に十六時頃、ふたりで会いたいと言った」
( <●><●>) 「ほう」
ワカッテマスは、ホワイトボードやセミナーの上に並べられた資料、
そのすべてを適宜見やりながら応じる。
(´・ω・`) 「ポイントは、みっつ」
指折りしながら教える。
(´・ω・`) 「ひとつ、相手はボイスチェンジャーを使っていた」
(´・ω・`) 「男か女か、そもそも誰なのか、なんてのはわからない」
( <●><●>) 「古典的ですね」
(´・ω・`) 「ふたつ、相手は嫁さんの番号を知っていた」
(´・ω・`) 「ここから、クックルの殺害が行きずりでないことは確定だ」
.
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、
、
、 、 、
ライブ殺人は、観客が予告されていたにも関わらず、警備員のクックル三階堂が殺された。
この点から、ぎょろ目と少し話した通り、幾分かの疑念を残していた。
それがまだ晴れてはいないが、何にせよ、犯人視点で言えば
確固たる計画性、殺意のもと、クックルを殺したと言える。
でなければ、ミセリにあのような電話をするはずがない。
(´・ω・`) 「みっつ、ッてかここが肝心だ」
(´・ω・`) 「その電話は、050番号でかけられたわけだがね」
(´・ω・`) 「身元が特定できない、いわゆる名義貸しの端末からかけられたんだ」
( <●><●>) 「ほう…」
(´・ω・`) 「更に、その番号は、」
ホワイトボード、ヒッキー小森の項目から線を伸ばしている。
050番号から謎の電話、と書き足している。
その隣に、十一ケタも追記しておいた。
(´・ω・`) 「この、ホテル殺人で登場した謎の番号と合致している」
( <●><●>) 「!」
.
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ワカッテマスが、嫌な顔をした。
この事件の片鱗が、あからさまに顔を出してきたからだ。
それにより事件が解決の方向に向かうならともかく、
いっそう謎が深まるとなれば、話は別だ。
(´・ω・`) 「さて、殺人予告とは言ったが、」
(´・ω・`) 「正確には違う」
( <●><●>) 「犯人、と思しき人物が、芹澤ミセリに個人的に会いたい、と言った」
( <●><●>) 「……確かに、殺人のサの字もありませんね」
だが、ワカッテマスはそこを突っ込んだりはしなかった。
突っ込むだけ、野暮なのだ。
(´・ω・`) 「どう考えても、次の標的は嫁さん、となった」
(´・ω・`) 「前もって言っておきたいのは、動機が定かでないことだ」
.
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( <●><●>) 「その嫁が、クックル三階堂から何か聞いてはいけないことを聞いた、とか」
( <●><●>) 「そういった、口封じ狙いではなさそうですが」
(´・ω・`) 「いや、わからねえぞ」
(´・ω・`) 「そこも含めて、動機が不明、というのが難しい」
口封じかもしれないし、
最初からクックルの次はミセリを殺すつもりだったかもしれない。
もとより、どうしてフッサール擬古、ヒッキー小森を殺してきたかがわかっていない。
今、ようやく繋がり、というものが見えてきたところなのだ。
ここからが忙しいぞ。
( <●><●>) 「先に伺いますが」
( <●><●>) 「当日、嫁には、どうさせるおつもりで」
(´・ω・`) 「…」
.
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先に伺うなよ。
僕だって、考えているところなんだ。
(´・ω・`) 「幸い、すぐに警察に知られたッてのは、向こうはわかっちゃいない」
(´・ω・`) 「だが、だからこそ、警備させるか、行かせないかが、悩ましい」
( <●><●>) 「これから次第、というところですか」
( <●><●>) 「猶予が限られている分、難しいですよ」
(´・ω・`) 「わかっている」
(´・ω・`) 「とにかく、ライブ殺人、続いてのミセリの一件を踏まえて」
(´・ω・`) 「共通点が浮き彫りになってきたから、そこを押さえるぞ」
ホワイトボードを睨みつけた。
ここにきてようやく、捜査に光が見えてきたのだ。
、 、
(´・ω・`) 「まず年齢だ」
( <●><●>) 「擬古が三十二、小森が三十四、クックルが三十二歳」
(´・ω・`) 「クックルの嫁さんは、三十二歳。
同い年だ」
.
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( <●><●>) 「小森は三十四歳だが、なんにせよ他はほぼ同じ」
( <●><●>) 「二歳差というのも、同年代の範疇です」
(´・ω・`) 「さて、僕は二つのパターンを想定していた」
(´・ω・`) 「まず、犯人と被害者一同は同一のグループにあって、」
(´・ω・`) 「誰かが、そのメンバーを次々殺していく構図」
(´・ω・`) 「もう一つは、被害者たちの間に関わりがないパターン」
(´・ω・`) 「殺意が芽生えた奴らを、片っ端から殺していく構図だな」
犯人と被害者をつなぐ形状が、輪かひげ根か。
しかし、いまとなっては考えるまでもなかった。
( <●><●>) 「前者でしょう」
( <●><●>) 「芹澤ミセリへの電話が、いい証拠です」
(´・ω・`) 「同年代で、更にクックルとミセリの関係も知っている……確定だ」
.
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パイプ椅子が軋む音がした。
ぎょろ目が、器用に寝返りを打ったのだ。
その音を聞いて、僕も近くにあったパイプ椅子に座った。
ワカッテマスは生真面目だ、セミナーから離れようとしない。
(´・ω・`) 「さて、ワカッテマス」
、 、 、
、、、 、 、、
(´・ω・`) 「同年代と聞いて浮かぶコミュニティを、挙げてってくれ」
そうですね、と顎に手を当てた。
何も、正解があるクイズではない。
( <●><●>) 「やはり、真っ先に浮かぶのは、学友」
( <●><●>) 「小中高大、そのどこのグループかは、わかりません」
(´・ω・`) 「擬古と小森は、そこに書いてある通り」
(´・ω・`) 「接点はないが…」
( <●><●>) 「クックル、並びにミセリの学歴は?」
(´・ω・`) 「事態が急だったもんで、まだ洗ってはいない」
(´・ω・`) 「……そうだ、忘れてた」
.
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( <●><●>) 「?」
座ったばかりの椅子から立ち上がって、ホワイトボートに歩み寄った。
水性マーカーを握って、ミセリの隣に書き足す。
( <●><●>) 「ヴィップ大学…?」
(´・ω・`) 「確か、彼女はヴィップ大学の出だと言ってたよ」
言われて、ワカッテマスはホワイトボードを舐めるように見た。
( <●><●>) 「………擬古と、一致しますね」
(´・ω・`) 「そうだな」
擬古はヴィップ大学、小森はアルプス学院大学。
合致していないが、そこにミセリを加えると、おぼろげではあるが共通点が浮かんでくる。
( <●><●>) 「擬古と一緒の大学なのは、なにかあるのでしょうか」
(´・ω・`) 「小森が外れているのが、いささか気にかかる」
(´・ω・`) 「マイナーな大学ならともかく、ヴィップは今や大手だ、偶然かもしれない」
.
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(´・ω・`) 「ただ……」
続けて、ミセリの隣、クックルにも情報を書き加えた。
(´・ω・`) 「嫁さんの言葉を察するに、旦那も、同じ大学の出なんだ」
( <●><●>) 「…!」
クックル、ヴィップ大学?
あえてハテナを付けているのは、確定ではないからだ。
ただ、僕のなかでは、十中八九ヴィップ大学出身だと睨んでいる。
( <●><●>) 「……ヴィップ大学という、共通点」
(´・ω・`) 「その場合、気になるのはヒッキー小森」
(´・ω・`) 「一応、壁には伝えてある。
情報が出てこればいいんだけど…」
( <●><●>) 「十年ほど前の話になりますからね」
( <●><●>) 「しかし、小森を除外すると、他三人は、同い年でヴィップ大学」
( <●><●>) 「加え、小森に限り予告が少々特殊だった」
( <●><●>) 「………ふむ」
.
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ワカッテマスが、独自に推理を展開している。
しかし、ひとつ忘れてはならないことがある。
(´・ω・`) 「予告が特殊なのは、ミセリも同様だ」
( <●><●>) 「ン…ああ」
(´・ω・`) 「そもそも、明確な殺害予告ではなかったからな」
( <●><●>) 「どこか、噛み合うようで噛み合わないですね…」
(´・ω・`) 「つまり、僕らはまだノイズに惑わされてるんだ」
まだ、核心という核心には歩み寄れていない。
もどかしいこと、この上ない。
(´・ω・`) 「大学、という共通点はわかった」
(´・ω・`) 「他には?」
( <●><●>) 「現状、思い当たりませんね」
( <●><●>) 「クックルは警備員だった、ミセリはスーパーのパート」
( <●><●>) 「旧職が繋がっていたわけでもない」
.
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(´・ω・`) 「となると、やっぱり…」
(´・ω・`) 「ホテル殺人が、キーになりそうだな」
( <●><●>) 「大学が接点だったのかどうかだけでも、はっきりさせたい」
(´・ω・`) 「じゃあ、これは壁の働きに期待するとして」
(´・ω・`) 「ライブ殺人の捜査は任せてたけど、どうだった?」
( <●><●>) 「事件自体は、比較的シンプルです」
(´・ω・`) 「というと?」
長くなりそうだったから、僕はパイプ椅子に腰を下ろした。
促しても、ワカッテマスは座ろうとしない。
( <●><●>) 「犯人は、害者を例の植え込みに呼び出した」
( <●><●>) 「雑談でも持ちかけたのか、あるいは後ろ暗いことがあったのか」
(´・ω・`) 「マ、単なるサボリとも見れるしね」
.
-
( <●><●>) 「そこで、隙を突いて刺殺」
( <●><●>) 「ただ、それだけなのです」
(´・ω・`) 「犯人特定が難しいだけで、動き自体に妙なとこはなかったんだ」
そうなのですよ、とワカッテマスは言った。
もし、本当にそれだけの事件なら、まだマシだったんだ。
( <●><●>) 「さて、ここからおかしい点を列挙します」
(´・ω・`) 「列挙……か」
嫌な言い方をするなァ。
実にいい性格をしている。
( <●><●>) 「まず…お伺いされているかと思いますが」
( <●><●>) 「害者のインカムが、操作されていた」
(´・ω・`) 「こいつが言ってたね」
(´・ω・`) 「え、なに、あんたらのやり取りが盗聴されてたって?」
.
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( <●><●>) 「迂闊だったのはもう認めています。
さて…」
(´・ω・`) 「しれっと過失を流すなよ」
( <●><●>) 「まず、一点目」
( <●><●>) 「私と東風さんがインカムを付けていたことは、知らされていない」
( <●><●>) 「二点目、警備員とは違うチャンネルに合わせていた」
(´・ω・`) 「警備員が一番で、あんたらが五番だっけ?」
( <●><●>) 「わかりようがないはずなんですよ、本来」
(´・ω・`) 「本来は…な」
( <●><●>) 「三点目」
( <●><●>) 「まあ、百歩譲って盗聴していたのはいいでしょう」
( <●><●>) 「犯人が、インカムを借りて我々の動向を探っていたかもしれない」
.
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( <●><●>) 「だとしても、どうして逃げる前に、一番に戻さなかったのか」
(´・ω・`) 「急ぐ事態だったにしても、チャンネルくらい、一瞬で戻せるんだろ?」
( <●><●>) 「はい。 ボタンを数回、押すだけです」
というと、セミナーの上にあったインカムを持ち上げた。
そんなものがあったのか、と思い、前かがみになった。
( <●><●>) 「ヴィップスタジアムから、サンプルをお借りしております」
(´・ω・`) 「貸してみろ」
( <●><●>) 「はい」
もとよりインカムというものに疎い僕だが、
なるほど確かに、チャンネルを合わせること自体は一瞬で可能だ。
(´・ω・`) 「…」
( <●><●>) 「警部は、どう見られますか」
(´・ω・`) 「忘れていた、それどころじゃなかった……ッて可能性は否めない」
(´・ω・`) 「あくまで、人を殺した直後なんだからね」
.
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( <●><●>) 「それを言うと、身も蓋もないのですが……まあ」
(´・ω・`) 「インカムはわかった。 続けて」
( <●><●>) 「まあ、いいですが」
( <●><●>) 「次に、犯人ですが、内部の人間の可能性があります」
(´・ω・`) 「内部……というと、なんの?」
( <●><●>) 「ライブ側、警備側、そのどちらかです」
(´・ω・`) 「というと」
( <●><●>) 「監視カメラの死角を、把握していたからです」
(´・ω・`) 「…!」
.
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ワカッテマスは、A3の大判カラーを取り出した。
現場近辺の、監視カメラの捕捉範囲が描かれている。
そして、バツ印の付けられている付近、
すなわち現場の部分が、見事に捕捉エリアから外れている。
(´・ω・`) 「でも、害者の持ち場はカメラのエリア内だ」
(´・ω・`) 「なにか、そこにヒントはなかったのか?」
( <●><●>) 「十九時〇八分に、エリア外に向かって歩き出すのが確認されました」
( <●><●>) 「これが、その時の写真です」
(´・ω・`) 「んー…」
大柄の男が、確かにカメラの外に向かおうとしている。
しかし、面白そうな情報は得られない。
(´・ω・`) 「これだけじゃあ、弱いな」
( <●><●>) 「十九時頃には、犯人はもう現場にいたんです」
( <●><●>) 「害者は、携帯などを使った様子が見られなかった」
( <●><●>) 「ぎりぎり見えるところから呼び出したか、最初から示し合わせていたか」
.
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(´・ω・`) 「その点は、どうとでも説明がつく」
(´・ω・`) 「問題は、やっぱり犯人がエリアを把握していたッてことだ」
( <●><●>) 「現状、それらしき解答は見当たりません」
(´・ω・`) 「オーケー、次」
ワカッテマスは、持っていた資料をセミナーの上に戻した。
( <●><●>) 「仮に以上全てのおかしい点を無視したとして」
( <●><●>) 「結論、害者は、犯人の呼び出しに応じているのです」
( <●><●>) 「あるコミュニティの、うち二人が殺されている」
( <●><●>) 「そのうえで、自分が出動するヴィップスタジアムで予告が届いた」
( <●><●>) 「……ふつう、多少は警戒するでしょう」
(´・ω・`) 「そこも、気になる点だ」
.
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( <●><●>) 「害者は、自分が狙われているという実感がなかったんでしょうか?」
(´・ω・`) 「いや、あったんじゃないかな、と思ってる」
( <●><●>) 「というと」
(´・ω・`) 「嫁さんに話を聞いてたんだがね、」
(´・ω・`) 「事件前夜、ふだん無口で感情を出さない害者が、」
(´・ω・`) 「その時に限って、少しだけ、感傷的だったそうなんだ」
( <●><●>) 「……ふむ」
(´・ω・`) 「根拠として弱いッちゃ、弱い」
(´・ω・`) 「ただ、害者は多少はニュースを見る性格だったと聞く」
(´・ω・`) 「知っていてもおかしくないし、勘付いてもいいもんだ」
( <●><●>) 「とすると、この時の害者の心理が問われます」
.
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(´・ω・`) 「ヒッキー小森と一緒だ」
(´・ω・`) 「事件前に、犯人からの、」
(´・ω・`) 「050番号の着信があったなら、説明はついたんだけど」
( <●><●>) 「どうだったんですか?」
(´・ω・`) 「少なくとも、害者のスマホにはなかった」
( <●><●>) 「………ふむ」
( <●><●>) 「とにかく、不審な点が多すぎる」
傍らに置いていた、ペットボトルの緑茶に手を伸ばした。
喉を鳴らして、うまそうに飲みやがる。
( <●><●>) 「どうして、犯人は死角を把握していた?」
( <●><●>) 「どうして、害者は我々の無線を盗聴していた?」
( <●><●>) 「どうして、害者は犯人の呼び出しに無警戒に応じた?」
.
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(´・ω・`) 「何か、根底が狂ってるんだ」
(´・ω・`) 「どこかに、偽りが眠っている」
( <●><●>) 「東風さんが捜査して、これなんだ」
( <●><●>) 「現場以外のどこかに、キーが落ちているはず」
(´・ω・`) 「どこかに、ねえ」
ぎょろ目はさっきから、豪快ないびきをあげて眠っている。
眠いなら、寝ておけばいい。
必要になったら、パイプ椅子を蹴ってでも起こしてやる。
(´・ω・`) 「たとえば、協力者が、いた」
(´・ω・`) 「あんたらにインカムを渡した人ってどいつだ?」
( <●><●>) 「警備チームのチーフリーダーですね」
( <●><●>) 「当日、複数の警備チームが配置されていたのですが、」
( <●><●>) 「言うなれば、彼らの頭です」
.
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(´・ω・`) 「害者、事件との関連性は」
( <●><●>) 「私が取り調べ致しましたが、一切の関連性が嗅ぎ取れませんでした」
(´・ω・`) 「まあ、そうよなあ…」
まだ、犯人がカメラの死角を把握していたのはともかく、
警察がインカムを使用していたなんて、そうそう気づけまい。
警備側の人間に内通者がいれば簡単な話だったのだけど。
こいつが対応して手がかりなし、となればその線はない。
( <●><●>) 「各警備チームのリーダーも、全員私が出ました」
( <●><●>) 「結果は同様です」
(´・ω・`) 「…ふむ」
( <●><●>) 「そもそも、内通者がいたところで、」
( <●><●>) 「害者がインカムを盗聴していた直接的な理由にはなりません」
(´・ω・`) 「まあ、そうなんだがよ」
.
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( <●><●>) 「殺害後、害者のインカムを奪って盗聴したとして」
( <●><●>) 「当時の犯人が知りたがる情報とすれば、我々の動きです」
( <●><●>) 「どこにいる、いつ動き出す、といった具合に」
( <●><●>) 「しかし、それらは犯人が盗聴しなければならない情報ではありません」
(´・ω・`) 「ンなもん、協力者がいたらそいつから聞けばいいだけなんだ」
(´・ω・`) 「見張らせてよ」
( <●><●>) 「この点から、内通者の線は私は切っています」
(´・ω・`) 「…」
着実な歩みこそ進められているが、
根本的なところが霞がかったままだ。
仮定を立てるのは容易いが、そこから何も見出せないようでは、ただの寄り道だ。
いま求められているのは、万歩計のカウントを溜めることではない。
歩みそのものは少なくてもいい、とにかくゴールに近づくことだ。
.
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( <●><●>) 「いま判明していることだけでは、これ以上の推理はできかねます」
( <●><●>) 「第四、ヴィップの滝がキーになると睨んでいますが」
(´・ω・`) 「そりゃあそうだ」
(´・ω・`) 「しかも今回は、犯人にとっては急所を晒すことになり得る」
(´・ω・`) 「予告を第三者に告げたんじゃ、ない」
(´・ω・`) 「個人的な連絡が、隣にいた警察に聞かれちまってンだ」
( <●><●>) 「ちなみに、他言無用の脅しは」
(´・ω・`) 「なかったみたいだけど……どのみち、密告は想定されてないだろうね」
( <●><●>) 「根拠は」
(´・ω・`) 「奥さんのキャラ、態度もあるけど…」
(´・ω・`) 「なにより因縁だ」
( <●><●>) 「因縁…」
.
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(´・ω・`) 「大学、というコミュニティが正しいかはさて置いて」
(´・ω・`) 「とにかく、何かしらのコミュニティ内で、この事件は続いてる」
(´・ω・`) 「その内部の人間……犯人が、」
(´・ω・`) 「クックルを殺したうえで嫁との密談を望んでいる」
(´・ω・`) 「それも確か、犯人は自首するつもりで、その前に話したい……とか。」
( <●><●>) 「自首、ですか。
まあ、期待しないほうがいいでしょう」
(´・ω・`) 「なんにせよ」
(´・ω・`) 「犯人と彼女の間にも、何かしらのつながりがある筈なんだ」
( <●><●>) 「なにより、関係や電話番号を知っていたわけですからね」
( <●><●>) 「害者のスマホをチェックして、わざわざ電話をかけたとは思えない」
どんな因縁があったかは、わからない。
愛憎劇かもしれないし、違うところに要点があったかもしれない。
考えにくいが、クックルを殺したのはただのきっかけ作りで、
本命は芹澤ミセリだった、というケースも捨てるわけにはいかない。
.
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(´・ω・`) 「彼女にも、口外しないだけで、心当たりはあるのかもしれない」
(´・ω・`) 「つまり、犯人にとって、今回の会合に第三者の横やりは想定されていないんだ」
( <●><●>) 「しかし、それだけだと弱い」
( <●><●>) 「計画的な犯行を臨む以上、警察の介入というリスクは捨てきれません」
それもそうなんだけど。
嫌味なやつだ。
(´・ω・`) 「もし、介入前提なら、公園の管理人にでも予告するだろう」
(´・ω・`) 「そうせず、ターゲット個人にだけ予告している以上、」
(´・ω・`) 「少なくとも介入される前提の犯行は、計画されていない」
(´・ω・`) 「介入前提の犯行が計画されてない、ッつーのがポイントなんだよ」
(´・ω・`) 「まだ、付け入る隙が残されてる」
( <●><●>) 「…」
.
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(´・ω・`) 「一緒に、考えてくれ」
( <●><●>) 「何を」
(´・ω・`) 「前提は、みっつ」
(´・ω・`) 「犯人は、ミセリを殺す」
(´・ω・`) 「犯行に警察という前提は想定されていない」
(´・ω・`) 「ただし、警察に張られても、出し抜ける」
(´・ω・`) 「以上の三点から導き出せる犯人の思惑だ」
( <●><●>) 「……」
.
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(´・ω・`) 「そもそも、警察の対応もふたつに分かれるんだ」
(´・ω・`) 「殺されるリスクを消すために、ミセリを現場に行かせない」
(´・ω・`) 「密談を知らないフリをして、急戦に出る」
将棋のように、いくつもの手が考えられる。
犯人は未来人でも超能力者でもない、
警察の進める手を読み切って、見事に思惑通りの犯行をこなせるわけがない。
( <●><●>) 「むろん、警察としては、」
( <●><●>) 「犯人がいるとわかっている現場に、」
( <●><●>) 「関係者を出向かせるわけにはいきませんがね」
(´・ω・`) 「……僕は、違うけどね」
( <●><●>) 「…は?」
.
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(´・ω・`) 「僕としては、彼女に当日、約束通り」
(´・ω・`) 「公園に行ってもらっても構わないところなんだけど」
( <●><●>) 「…」
( <●><●>) 「頭おかしいんですか」
ワカッテマスの冷たい視線が、針のように僕を突き刺す。
捜査一課警部、事件担当者として、確かにあり得ない考えではある。
( <●><●>) 「一警察が、市民を人命の危機に晒すおつもりですか」
(´・ω・`) 「…」
( <●><●>) 「確かに、進展があれば、捜査もより進むでしょう」
.
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( <●><●>) 「ですがね」
( <●><●>) 「マスコミはもとより、上層部、国民が許しませんよ」
ぴりぴりしているのか、疲れが取れていないのかはわからないけど、
ワカッテマスは、平生よりはやや語調を強めて、まくし立ててきた。
( <●><●>) 「我々は、推理パズルをしてるんじゃありません」
( <●><●>) 「長期戦になろうが、我々はミセリを保護し、」
( <●><●>) 「別の方法で、犯人にアプローチするしかありません」
(´・ω・`) 「言うようになったな、ワカッテマス」
( <●><●>) 「トチ狂ったことを言い出すからですよ」
.
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(´・ω・`) 「犯人は一言も、殺す、なんて言ってないんだぜ」
(´・ω・`) 「じゃあ、僕らにできることは、無い」
( <●><●>) 「それは……、……」
( <●><●>) 「…」
( <●><●>) 「いやいやいやいや」
ワカッテマスが、嘲るような顔で大げさに仰け反った。
この男にしては珍しく、感情的な仕草だ。
( <●><●>) 「どう考えても、殺害意図が含まれている」
( <●><●>) 「第一、殺すだろうというのは警部が言い出したことですよ」
(´・ω・`) 「そりゃあ、殺すつもりだろうね」
( <●><●>) 「何が言いたいんですか」
.
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、 、
、、 、 、 、 、 、 、、
(´・ω・`) 「警察は現状、彼女を止める権限がないんだ」
( <●><●>) 「…!」
(´・ω・`) 「え、なに」
(´・ω・`) 「ミセリ視点で言えば、こうだ」
(´・ω・`) 「知らない050番号から、電話がきた」
(´・ω・`) 「相手は名乗らないし、声も変えている」
(´・ω・`) 「明後日、滝公園で会って、話がしたい」
(´・ω・`) 「……彼女自身は何もしていないんだ」
(´・ω・`) 「そんな彼女が、滝公園に行く、なんて言い出したら、」
(´・ω・`) 「それを制止する権利は、法的には、ない」
( <●><●>) 「………どういうことですか」
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(´・ω・`) 「警察視点で言えば、だぜ?」
(´・ω・`) 「その050番号は犯人のものだし、」
(´・ω・`) 「その犯人がクックルを殺したことを認めてやがる」
(´・ω・`) 「どォーー考えたって、こいつァ殺人予告だ、行かせるわけにはいかなくなる」
(´・ω・`) 「むろん、保護に応じることは簡単だよ」
(´・ω・`) 「でも、彼女がそれを拒むようだったら、」
(´・ω・`) 「それは止められないよね、ッて話」
( <●><●>) 「まさか、警部」
、 、、 、
、 、 、 、 、、
( <●><●>) 「あなた、ミセリの意思に委ねるおつもりですか」
.
-
(´・ω・`) 「だって、仕方ないじゃん」
(´・ω・`) 「無理やり止めたら、それは軟禁だぜ」
(;<●><●>) 「…!」
疲労が積もった身体に堪えたのだろう、
ワカッテマスは少し前屈して、セミナーに手をかけた。
そろそろ、上官命令で休ませないといけないな。
寝かせようにも寝ないだろうし、煙草くらい覚えさせてみようか。
(;<●><●>) 「………」
(;<●><●>) 「私は、反対ですよ」
(;<●><●>) 「私のほうから、公園に出向かないよう、説得しますから」
(´・ω・`) 「まあ、それは自由だよ」
.
-
煙草、煙草か。
ちょっと疲れたし、僕も一服したくなってきた。
(´・ω・`) 「あんたは、これから何をする?」
(;<●><●>) 「…」
( <●><●>) 「そうですね。
ちょっと、情報を整理したい」
ちょうどいいや。
ミセリは、まだ喫茶店にいるだろう。
(´・ω・`) 「ちょっくらブレイクタイムとしゃれ込もうぜ」
( <●><●>) 「お言葉はありがたいですが」
( <●><●>) 「少しでも事件に触れていないと、落ち着けないので」
(´・ω・`) 「いいとこ知ってンだ」
( <●><●>) 「申し訳ありませんが、事件を片付けてから、で」
.
-
(´・ω・`) 「奥さんは、まだ近くの喫茶店にいるはずだし」
( <●><●>) 「…!」
(´・ω・`) 「一服がてら、彼女に話でも聞いてみるかい?」
(´・ω・`) 「ほら。 公園に行かせないよう説得するんだろ?」
ワカッテマスが、少し目を開かせた。
疲れが取れたかのように、姿勢を戻した。
( <●><●>) 「………」
( <●><●>) 「人にサボらせるの、だんだんお上手になっていますね」
(´・ω・`) 「当ッたり前じゃん」
(´・ω・`) 「僕があんたくらいの頃、どうサボるかを研究したもんだぜ」
( <●><●>) 「だから警部止まりなんでしょうね」
(;´・ω・`) 「なッ! ……どういう意味だ!」
.
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|`ヽ /|
|. \ /. i
| ヽ / ノ
! `ー‐-
'、
| .、
l
!
r---ゝ !
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イツワリ警部の事件簿 File.4 `,_::::::::::::::::::::`ヽ,
ノ,´αm
く l lへ、:::::::::::::::`'ー、r ||\
第三幕 「 霞 」
' '、-_l ヽ、::::::::::::::::::`>;;::;;:|
` ..‐,,..、 丶、 冫:::::::::::/>;;;;;;;;\
,' /´ ::ヽ.:.:.:::::::::::::::丶_;;::;;::|
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..,,_ .::::::::ノ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::::::::::::l
ヽ」
¦ ! ,;:::: ̄'' 7ー-、_....;.;.;.;、:::://::|
Y ;:::::::::│ / `――\/::::|
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-
┏━─
午後十五時二四分 喫茶店
─━┛
ミセ*゚-゚)リ 「…!」
(´・ω・`) 「やあ」
(´・ω・`) 「向かい、失礼するよ」
ミセ*゚-゚)リ 「……どうぞ」
警察の近く、ということもあって、
警察の関係者やビジネスマンが多い。
事務員を付き添いに出していたはずだけど、
僕が来る少し前に、所用で戻ったみたいだった。
.
-
( <●><●>) 「捜査一課のワカッテマス」
( <●><●>) 「よろしくお願いします」
ミセ*゚-゚)リ 「こ、こちらこそ…」
ワカッテマスは好青年でこそあるが、
無表情にひび割れた眉間、堅物なオーラが多くの女性を敬遠させる。
プライベートではそうでもないらしいけど、
奴とは仕事でしか関わりがないから、全然信じられないところではある。
歳も近いだろうミセリだが、ワカッテマスの着席にあわせて少し畏縮した。
その隣に、僕がだらけた姿勢で煙草をくわえだすものだから、
この上ないぎこちなさに、もやもやするのも仕方ない。
( <●><●>) 「少し、お話よろしいでしょうか」
( ´・ω・) 「ラテとブレンド、あとフレンチトーストォー」
( <●><●>) 「…失礼」
.
-
県警から近いだけあって、この店ができた頃から、僕はよく通っていた。
自宅と県警の間に、僕のなじみの店が結構あるけど、
この喫茶店は、そのうちのひとつだ。
(´・ω・`) 「奥さんは、もう一杯、いかが?」
ミセ*゚-゚)リ 「へッ…」
ミセ*゚-゚)リ 「……じゃあ、抹茶ラテ」
( ´・ω・) 「あと抹茶ラテェー」
主人が会釈で快諾した。
常連の僕には、直接オーダーを取りにこないのが気楽でいい。
( <●><●>) 「…」
( <●><●>) 「ちなみに、トーストは?」
(´・ω・`) 「食え」
( <●><●>) 「お気持ちだけ頂戴します」
(´・ω・`) 「上官命令だ」
.
-
( <●><●>) 「………わかりました」
( <●><●>) 「さて、本題、よろしいでしょうか」
(´・ω・`) 「ひとクチくらい飲んでからにしろよ」
(´・ω・`) 「あんた、声、結構掠れてるぞ」
( <●><●>) 「………」
( ´・ω・)
っ “
ミセ*゚-゚)リ 「…」
主人が飲み物を運んでくるまでの間、三人に会話はなかった。
ミセリはスマホをいじり、ワカッテマスはただ景色を眺める。
ミセリにも一本やろうか悩んだが、特に求められなければ、いいだろう。
女性は、人前で煙草を吸うのを遠慮するものなのだ。
.
-
'_
( ´・ω・)y- 、
( <●><●>) 「結構、遅かったですね」
( ´・ω・)y- 「こういうもんだよ」
ミセリと僕がひとクチ飲んだのを見たところで、
ワカッテマスもゆっくり、ブラックのそれに口を付けた。
呆れたような顔をしながらも、
ようやく、と言わんばかりに本題を切り出した。
( <●><●>) 「確認ですが」
( <●><●>) 「犯人を名乗る人物から電話がきたのは、間違いないですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「そうですね」
( <●><●>) 「具体的に、どんな内容でしたか」
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「…えっと」
ミセ*゚-゚)リ 「自首しようと思う」
ミセ*゚-゚)リ 「明後日、ヴィップの滝公園に来てほしい」
ミセ*゚-゚)リ 「ふたりで、話がしたい…ッて」
( <●><●>) 「旦那を殺害した……犯人から」
ミセ*゚-゚)リ 「そうです、ね」
( <●><●>) 「犯人の、声や特徴は」
ミセ*゚-゚)リ 「機械みたいな声だったので、わかんないですね」
ミセ*゚-゚)リ 「特に訛りはなかったです」
( <●><●>) 「番号履歴が残っていたら、見せてください」
ミセ*゚-゚)リ 「ちょっと待って…」
.
-
( ´・ω・)y-~~
番号、か。
そういえば、184の非通知設定にはしなかったのだろうか。
あまり知られていない仕様なんだ、
犯人が知らなかっただけという説ももちろん考えられるけど。
三件を出し抜く犯人であることを考えると、少し引っかかるところではある。
( <●><●>) 「……確かに」
( <●><●>) 「例の050番号と合致するようですね」
( ´・ω・)y- 「ンだね」
( <●><●>) 「この番号に、見覚えは」
ミセ*゚-゚)リ 「ないですね」
( <●><●>) 「ふむ。 相手に、心当たりは」
ミセ*゚-゚)リ 「……特に」
( <●><●>) 「そうですか」
.
-
これは、ワカッテマスの話術だった。
何度も話されたような、わかりきっている内容も、
確認だ、と言って話させるところから始まる。
相手は、答えなれたそれらを饒舌に繰り返す。
ある程度温めてから、本題にしれっと入るのだ。
そうすれば、聞かれている側に負担をかけることなく、
あわよくば、それまで思い出せなかったことを思い出させられることがある。
ミセ*゚-゚)リ 「ただ、」
( <●><●>) 「はい」
ミセ*゚-゚)リ 「私と、話しなれてる感じはした」
ミセ*゚-゚)リ 「あんまり、話してて、違和感とかぎこちなさが、なかったから」
( <●><●>) 「なるほど」
加えてもう一点、
相手が核心を突くことをポロッと言っても、動じない。
ですよね、といった具合で相槌を打つ。
もっとも、予想外すぎることを聞かされると、
キャラに見合わないオーバーリアクションを取るのだけども。
.
-
( <●><●>) 「ふたりで話したい、と言ってきたわけですが」
( <●><●>) 「芹澤さんとしては、どんな話をされるか予測つきますか?」
ミセ*゚-゚)リ 「………さあ」
心当たりは、なくは、ない。
ただ確信に至る材料が少ないから、言いあぐねている。
そんな口ぶりだ。
( <●><●>) 「既に、旦那が奴の手によって殺されています」
( <●><●>) 「その妻と密談がしたい、なんて申し出……」
ミセ*゚-゚)リ 「会ってみれば、わかるかもしれませんが」
( <●><●>) 「…!」
'_
( ´・ω・)y- 、
.
-
( <●><●>) 「つかぬ事をお聞きしますが」
( <●><●>) 「明後日……犯人の要求通り、公園に行くつもりですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「………」
ミセリの不意を突いた一言に、多少ワカッテマスが焦った様子を見せた。
その証拠に、コーヒーを飲んで一呼吸置いている。
ミセ*゚-゚)リ 「実感は、ありませんが」
ミセ*゚-゚)リ 「主人を殺した相手が、会いたがってるんですよね」
( <●><●>) 「おそらくは」
ミセ*゚-゚)リ 「……」
( <●><●>) 「ただ、呼び出すだけ呼び出して、」
( <●><●>) 「話す前にあなたを襲う可能性も、高い」
.
-
自然な会話の流れを潰さないように、しかし説得を試みている。
ただ、ミセリの目はどこか虚ろで、ワカッテマスに焦点を合わせていなさそうに見える。
ミセ*゚-゚)リ 「……」
( <●><●>) 「既に、相手は三人も殺してるんです」
ミセ*゚-゚)リ 「でも、自首しようと思ってる、って」
( <●><●>) 「自首する、と言って本当に自首する犯人は、滅多にいません」
ミセ*゚-゚)リ 「……まあ。」
その空虚な瞳に気づいたのか、
ワカッテマスは、もう一度コーヒーを飲んで、前傾姿勢になった。
( <●><●>) 「………そういえば」
( <●><●>) 「本件は、連続殺人です」
( <●><●>) 「ご主人のクックル三階堂は、三人目なのですが…」
.
-
( <●><●>) 「フッサール擬古、ならびにヒッキー小森」
( <●><●>) 「彼らの名前に、心当たりは?」
ミセ*゚-゚)リ 「…!」
( <●><●>) 「!」
( ´・ω・)y- 「!」
ワカッテマスが、目を見開いた。
僕も、ついラテを飲んでお茶を濁した。
感情的になっていたミセリを前に、そのことはまだ、聞かないでいた。
( <●><●>) 「……ご存じ、ですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「……」
( <●><●>) 「ご存じ、ですか?」
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「え、あっ」
ワカッテマスが、語調を強めて再三尋ねる。
少し放心状態だったようで、ミセリはぽかんとしていた。
ミセ*゚-゚)リ 「………え、その。」
ミセ*゚-゚)リ 「連続殺人……殺されたのッて……」
( <●><●>) 「フッサール擬古」
( <●><●>) 「ヒッキー小森」
( <●><●>) 「そして……あなたの、ご主人です」
ミセ;゚-゚)リ 「…………えっ?」
.
-
ミセ;゚-゚)リ 「ちょ……まじで言ってンの?」
( <●><●>) 「逆に、散々ニュースで報じられていますが…」
ミセ;゚-゚)リ 「ごめん、全然、ニュース見てなくって…」
( <●><●>) 「と、いうと…」
(´・ω・`) 「ミセリさん」
ミセ;゚-゚)リ 「!」
(´・ω・`) 「これは、重要なことです」
(´・ω・`) 「フッサール擬古と、ヒッキー小森」
(´・ω・`) 「いったい、誰なんですか?」
.
-
ミセ;゚-゚)リ 「誰、って……」
ミセ;゚-゚)リ 「……」
ミセ;゚-゚)リ 「大学時代の……」
( <●><●>) 「!」
ミセ;゚-゚)リ 「サークルの……友だち……だけど」
(´・ω・`) 「……そうか」
ヴィップ大学、という読みは、的中していた。
しかし、ヒッキー小森だけ違うところがネックでこそあったが。
( <●><●>) 「しかし、ヒッキー小森はヴィップ大学ではないと聞きますが」
ミセ;゚-゚)リ 「そう、ですけど」
.
-
ミセ;゚-゚)リ 「部長の、知り合いで」
( <●><●>) 「部長…」
ミセ;゚-゚)リ 「流石、って人…ご存じですか?」
( <●><●>) 「サスガ、ですか」
ワカッテマスが眉間にヒビを刻み、捜査手帳を開く。
僕の記憶が正しければ、そんな名前の人間は、本件には関わっていない。
ただ、重要な手がかりとなり得るのは明白だった。
ワカッテマスは、記憶をあてにせず、過去のデータと参照した。
( <●><●>) 「…」
( <●><●>) 「いえ。 警察は、把握していませんね」
ミセ;゚-゚)リ 「そう…ですか」
.
-
(´・ω・`) 「僕、大学は出てないから」
(´・ω・`) 「その、サークルっていうのが、よくわかんないんですけど」
(´・ω・`) 「クラブ活動、みたいなもの?」
( <●><●>) 「要は、同じ趣味趣向を持つ人たちが、」
( <●><●>) 「プライベートの時間を共にする集まりですね」
(´・ω・`) 「クラブ活動、みたいなものか」
ミセ*゚-゚)リ 「私たちは…」
ミセ*゚-゚)リ 「いわゆる、アウトドアサークル、ですね」
ミセ*゚-゚)リ 「バーベキューとか、スキーとかを、楽しんでました」
( <●><●>) 「アウトドア、ということは、釣りなども?」
ミセ*゚-゚)リ 「そうです、ね」
ミセ*゚-゚)リ 「みんな好きだったワケじゃないけど、何人かは」
( <●><●>) 「…」
(´・ω・`) 「釣り、か…」
.
-
ペニーが見つけてきてくれた。
一件目、地下鉄殺人のフッサール擬古は、釣りが好きだった。
釣りも、むろんアウトドアの範疇にある趣味だ。
バーベキューの傍らで楽しんだりすることもある。
アウトドアサークル、となると、合点がいく情報だった。
足音がしたので振り返ると、後ろから主人がフレンチトーストを持ってきてくれた。
僕とミセリはそれに気が付いたが、ワカッテマスだけ、険しい顔をしていた。
( <●><●>) 「その、アウトドアサークルについて」
( <●><●>) 「少し、詳しく教えていただけないでしょうか」
ミセ*゚-゚)リ 「ア……はい。」
(´・ω・`) 「そう慌てなさんな」
( <●><●>) 「なんですか、これ」
(´・ω・`) 「食え」
( <●><●>) 「……」
.
-
ワカッテマスは、出来立てのそれを訝しげな顔で見つめた。
少し、呆気にとられたような顔をしている。
(´・ω・`) 「僕から、聞きましょう」
(´・ω・`) 「そうだなァ……」
煙草に手をやる。
緊張がほぐれてきたのか、逆に緊張が押し迫ってきたのか、
ミセリがそれを物欲しそうな目で見つめてきた。
なるほど、甘え上手な女性らしい。
ミセ*゚-゚)リ 「ども…」
(´・ω・`) 「昔話をするには、酒と煙草、ッて相場がキマっている」
( <●><●>) 「…いただきます」
(´・ω・`) 「まだ食ってなかったのかよ、さっさと食え」
( <●><●>) 「…」
.
-
少し躊躇うワカッテマスを見て、
そういえば奴がパンの類を一切食さない男であることを思い出した。
時間に余裕がない時の食事は、決まってエネルギーを補給するタイプのゼリーだ。
(´・ω・`) 「さて」
(´・ω・`) 「えっと、ヴィップ大学の人らで組まれたサークルだった?」
ミセ*゚-゚)リ 「そうですね」
ミセ*゚-゚)リ 「小森さん以外…は」
(´・ω・`) 「で、その小森サンは、部長の知り合いだった」
ミセ*゚-゚)リ 「うん」
(´・ω・`) 「サスガ、さんだっけ」
(´・ω・`) 「どんな人なんですか?」
互いに煙草を持つと、心なしか、距離が縮まる心地がする。
ミセリも、少し砕けつつあった。
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「変…な人ですね」
(´・ω・`) 「変」
第一の印象がそれか。
ミセ*゚-゚)リ 「なんか変なんだけど……憎めない人」
ミセ*゚-゚)リ 「みんなより二歳上だったけど、そんな感じはしなかった」
(´・ω・`) 「みんな……フッサール擬古もだったか」
ミセ*゚-゚)リ 「部長と小森さん以外、みんな同い年なんです」
(´・ω・`) 「…ふむ」
これは、帰ってからホワイトボードに書く内容が一気に増えるぞ。
人物の相関図は、ワカッテマスに書かせることにしよう。
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「背が高くて、細くて、でも声は太くて…」
ミセ*゚-゚)リ 「いじられ役を買って出る、まとめ役…って感じで」
ミセ*゚-゚)リ 「基本的に、あの人がいないと、サークルは回らなかったですね」
(´・ω・`) 「なるほど」
(´・ω・`) 「まとめると、イイ人、だったんだ」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ…そうなりますね」
いるよな、そういう人。
言いながらワカッテマスのほうを見ると、奴はもうフレンチトーストを平らげていた。
ハムスターのように膨らんだ頬を見るに、一気に食べようとして失敗したらしい。
写真だけ撮っておいた。
ワカッテマスが露骨に嫌そうな顔をしたが、これは面白いものが手に入ったぞ。
.
-
(´・ω・`) 「続けて」
ミセ*゚-゚)リ 「ア…はい」
ミセ*゚-゚)リ 「部長でしょ、小森さんでしょ、ギコくんでしょ…」
ミセ*゚-゚)リ 「旦那に、私に……あと、盛岡さん」
(´・ω・`) 「盛岡さんも、同い年で」
ミセ*゚-゚)リ 「はい」
(´・ω・`) 「どんな人だったの?」
ミセ*゚-゚)リ 「……オタク?」
(´・ω・`) 「オタク」
もっとマシな第一印象はないのか。
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「その……なんていうか」
ミセ*゚-゚)リ 「サークル自体が、インドアなみんなでアウトドアしようぜ…」
ミセ*゚-゚)リ 「そんなコンセプトのサークルだった…んで」
(´・ω・`) 「インドア、っていうと、読書とか」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ、そうですね」
隣で、せき込む音が聞こえた。
ワカッテマスがぎょろッと目を開いて、コーヒーを流し込んでいる。
実に愉快だ。
次は、ベーカリーのバイキングにでも連れていってやろう。
ミセ*゚-゚)リ 「アニメキャラがどう、とか」
ミセ*゚-゚)リ 「そんな話を、部長や小森さんと盛り上がってました」
(´・ω・`) 「そ、そうなの」
.
-
確かに、インドアが集うアウトドアサークル、というのはありそうだ。
ただ、偏見かもしれないけど、ミセリがそのインドアに属する人間とは思えなかった。
休日には、友人とのランチを楽しみそうな、
比較的活発な趣味を持つイメージを持たせられる。
(´・ω・`) 「奥さんも、そういったものが好きで?」
ミセ*゚-゚)リ 「いや、全ッ然」
(´・ω・`) 「そ、そうなんですか」
ミセ*゚-゚)リ 「しょーじき、無理でした」
(´・ω・`) 「え、じゃあなんでサークルにいたの?」
( <●><●>) 「…」
ワカッテマスが、ハンカチで涙を拭く。
想像以上に咽たらしい。
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「部長に勧誘されて」
(´・ω・`) 「知り合いだったの?」
ミセ*゚-゚)リ 「いや…」
ミセ*゚-゚)リ 「……そういえば、どうしてだろう」
(´・ω・`) 「思い出すのは、ゆっくりでいいよ」
そうすれば、煙草も自然に吸える。
思えば最近、喫茶店で羽を伸ばすことも少なかった。
サボリと言えば聞こえは悪いが、深刻な事件の傍らで寛ぐのも、大切なのだ。
( <●><●>) 「…サークル、ですか」
(´・ω・`) 「何か、閃いた?」
( <●><●>) 「いや」
( <●><●>) 「自分には縁がなかったな、と思い」
.
-
(´・ω・`) 「まあ、あんたがサークルってのも、想像できんわ」
(´・ω・`) 「ちなみに、大学でサークルに入るのって、普通なの?」
( <●><●>) 「大学にもよりますが、全然珍しくはないです」
ミセ*゚-゚)リ 「あ、そうだ」
ミセ*゚-゚)リ 「ビラ撒きで何回か会って、」
ミセ*゚-゚)リ 「顔を覚えられたのか、あの時の人かい? って声かけられて」
(´・ω・`) 「サスガ、さんが」
ミセ*゚-゚)リ 「で、少し話して、」
ミセ*゚-゚)リ 「気がついたら加入させられてた…ッて感じです」
(´・ω・`) 「結構なヤリ手だね。
クチがうまかったんだ」
ミセ*゚-゚)リ 「実際、あの人、かなり話がうまいですから」
.
-
(´・ω・`) 「インドアが集まる、とかは知らなかったんだ」
ミセ*゚-゚)リ 「いや、予想はできましたね」
ミセ*゚-゚)リ 「ただ、無理に酒を飲まされるとか、メンドウなことはないから楽だよ、って」
(´・ω・`) 「無理に?」
( <●><●>) 「サークルのなかには、無理やり酒を飲ませたりするところもあります」
( <●><●>) 「浮かれた大学生のノリ、というのですかね」
ミセ*゚-゚)リ 「そうそう」
ミセ*゚-゚)リ 「確かに、アウトドアには興味あったけど、」
ミセ*゚-゚)リ 「どこも、面倒臭そうな感じだったから…」
(´・ω・`) 「奥さんは、それがイヤだったんだ」
ミセ*゚-゚)リ 「ナンパされたり、ホテル誘われたりが、本当に、だるかった」
.
-
大学生、話には聞くけど、想像以上に浮かれているらしい。
僕のなかの、博士号をとる場所というイメージからは随分離れていた。
ミセ*゚-゚)リ 「で、部長は、クチが達者だから」
ミセ*゚-゚)リ 「私としても、気楽に遊べるならいいかな、ッて乗せられて」
(´・ω・`) 「でも、すぐ抜けなかったんだ?」
ミセ*゚-゚)リ 「まあ…」
というと、少しミセリは口ごもった。
ミセ*゚-゚)リ 「なんだかんだ言って、居心地は、よかったので」
ミセ*゚-゚)リ 「旦那とも、そこで出会って」
(´・ω・`) 「そうだ、旦那さん」
(´・ω・`) 「旦那さんは、どんな人だった?」
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「当時はお調子者、でしたね」
ミセ*゚-゚)リ 「部長と一緒にイジられる感じ」
クックルは、免許証の写真で見た感じ、好青年そうだった。
インドアのイメージがつかない、整った顔立ちだったと記憶している。
(´・ω・`) 「旦那さんも、アニメとか好きだったの?」
ミセ*゚-゚)リ 「いやあ…サッパリでしたね」
(´・ω・`) 「ほう」
ミセ*゚-゚)リ 「旦那も、部長に乗せられて入ってきたクチです」
ミセ*゚-゚)リ 「ただ、ノリがいい人だから。」
ミセ*゚-゚)リ 「趣味は合わなくても、溶け込んでましたよ」
.
-
( <●><●>) 「趣味は合わなくても、ですか」
( <●><●>) 「アウトドアの趣味はなかったのですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「お祭りごとは好き、ッて感じでしたね」
ミセ*゚-゚)リ 「バーベキューとか、スポーツはどれも好きだし」
ミセ*゚-゚)リ 「野外ライブとかも、彼が率先して人を集めてました」
(´・ω・`) 「野外ライブ?」
ミセ*゚-゚)リ 「アウトドアサークル、なんて言ってるけど」
ミセ*゚-゚)リ 「要は、部屋に引きこもってないで、遊ぼうぜ、ってトコなので」
ミセ*゚-゚)リ 「場所が野外なら、なんでもありでしたよ」
(´・ω・`) 「へえ…」
.
-
( <●><●>) 「じゃあ、小森の」
( <●><●>) 「ギター趣味というのも、そこから?」
ミセ*゚-゚)リ 「ギター?」
( <●><●>) 「どうやらギター趣味があったようですが
ミセ*゚-゚)リ 「ふうん……そうだったんだ」
(´・ω・`) 「家でしか弾いてなかったのかな」
(´・ω・`) 「キャンプなんかの傍らで弾いてても、おかしくないものの」
ミセ*゚-゚)リ 「あいつ、名前のとおり、引きこもりだから」
ミセ*゚-゚)リ 「で…どこまで言ったっけ」
( <●><●>) 「メンバーについてですが、」
( <●><●>) 「あなた、擬古、小森、三階堂、、流石、盛岡」
( <●><●>) 「以上の六人、だったのですか?」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
.
-
( <●><●>) 「サークル、となると」
( <●><●>) 「OBだったり、新入生だったりが考えられますが」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセリは、煙草を根本まで吸いきった。
ミセ*゚-゚)リ 「六人だけ、ですよ」
ミセ*゚-゚)リ 「部長が創ったサークルで、」
ミセ*゚-゚)リ 「その六人の代で、終わったので」
( <●><●>) 「終わったのは、部長が卒業して、」
( <●><●>) 「取りまとめ役がいなくなったから、でしょうか」
ミセ*゚-゚)リ 「そんなとこです」
.
-
( <●><●>) 「わかりました」
( <●><●>) 「メンバーについて、もっと詳しく聞きたいのですが…」
ミセ*゚-゚)リ 「後日じゃあ、ダメでしょうか」
( <●><●>) 「どうしてでしょう」
(´・ω・`) 「…?」
ここにきて、ミセリの態度が変わったな、と思った。
いや、表情は変わっていない。
声色というか、声に含まれる感情が、険しいものになった。
もとより、そのアウトドアサークルというコミュニティで、
このたびの連続予告殺人が起こっている。
何もない、はずはないのだ。
逆に捉えると、ここで言い渋るのは、確実に何か裏があった、ということ。
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「思い出したくないこと、思い出しちゃって」
( <●><●>) 「思い出したくないこと、とは」
ミセ*゚-゚)リ 「旦那殺されたんですよ、私。」
( <●><●>) 「……失礼」
食い気味だったワカッテマスが引いた。
しくじったか、と言わんばかりに、コーヒーカップを手に取る。
( <●><●>) 「連絡先が残っていたら、教えていただきたいのですが」
ミセ*゚-゚)リ 「何もないですよ」
( <●><●>) 「……はい?」
ミセ*゚-゚)リ 「卒業して、連絡とらなく、なって」
ミセ*゚-゚)リ 「いま、どこで何してるかも、知らないんですよ」
.
-
( <●><●>) 「そう、ですか」
(´・ω・`) 「マ、そんなもんよなァ」
(´・ω・`) 「僕だって、高校時代の友だちと、一切連絡ないもん」
( <●><●>) 「…まあ」
腑に落ちないのは、わかる。
だが、今は突っ張る場面じゃないぞ、と目配せした。
ワカッテマスも汲み取ってくれたようで、これ以上食い下がりはしなかった。
ミセ*゚-゚)リ 「…あの」
ミセ*゚-゚)リ 「話は、終わりでしょうか」
( <●><●>) 「今日のところは、とりあえず」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
.
-
( <●><●>) 「ただ」
( <●><●>) 「本件の、犯人」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
( <●><●>) 「間違いなく、そのサークルの誰かだとは思うのですが」
( <●><●>) 「心当たりは、ありますか」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセリの言葉を信じるなら、残るは、盛岡と流石の二人だけだ。
ただ、言い渋っているのを察するに、まだいる可能性も高い。
ミセ*゚-゚)リ 「あったら、とっくに言ってます」
( <●><●>) 「では、不明、と」
わざとらしく、手帳に書き込む仕草を見せる。
ワカッテマスの、何か心理的な作戦だろう。
.
-
( <●><●>) 「本件は、当該サークル内の犯行だと思われますが」
( <●><●>) 「動機になり得る何かに、心当たりは」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセ*゚-゚)リ 「ありません」
( <●><●>) 「ふむ…不明、と」
ワカッテマスをよく知る僕から見れば、不自然な演技だ。
ただ、初対面のミセリには気づかれないか。
少し緊張しているのか、
これ以上追究しない、という姿勢を見せているつもりか。
( <●><●>) 「最後」
( <●><●>) 「犯人の呼び出しに、応じるつもりは」
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「 …。」
( <●><●>) 「………、」
さて、どう出るか。
ワカッテマスとしては、首を横に振ってもらいたいところだろう。
ただ、僕の経験と勘で言えば。
ミセリは、縦にも横にも、振らない。
ミセ*゚-゚)リ 「わかりません」
( <●><●>) 「ッ」
ミセ*゚-゚)リ 「そもそも、今回の電話すら、信じられないので。
私。」
(´・ω・`) 「イタズラなのかどうか、ッてこと?」
ミセ*゚-゚)リ 「犯人なのか、自首するのか、話したいだけなのか」
ミセ*゚-゚)リ 「なにもわからない」
.
-
ミセ*゚-゚)リ 「だから、また折り返し、電話しようと思います」
( <●><●>) 「…!」
そう来たか。
確かに、ミセリの視点からすれば、そう動くのが自然になるか。
( <●><●>) 「犯人が、素直に電話に応じるかわかりません」
( <●><●>) 「むしろ、折り返し電話こそが狙いの可能性もある」
ミセ*゚-゚)リ 「そもそも、本当に犯人なのか、が怪しいんですよ」
( <●><●>) 「それは、そうですが 」
ミセ*゚-゚)リ 「……詳しいことは」
ミセ*゚-゚)リ 「それから、また、警察に相談しようかと」
(´・ω・`) 「そだね。 じゃあ、コレ」
ミセ*゚-゚)リ 「…?」
僕は、そっと名刺とキャンディーを渡した。
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(´・ω・`) 「110に電話するのって、実は結構メンドウなんだ」
(´・ω・`) 「僕に直接かける方が、信用もできるでしょ?」
ミセ*゚-゚)リ 「それはいいんですが、コッチ…」
紫色の包みを指さした。
(´・ω・`) 「僕、キャンディーが好きでね」
ミセ*゚-゚)リ 「あ…飴?」
(´・ω・`) 「これは、アネモネって花の味がするんだ」
(´・ω・`) 「……アネモネ、食ったことねーけど」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセリは少し、難しい顔をしたが、
少しすると顔を歪めて、噴き出して笑った。
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ミセ*゚-゚)リ 「アネモネ、ですか」
(´・ω・`) 「僕も、妻を、事件で亡くしたんだ」
( <●><●>) 「…!」
ミセ*゚-゚)リ 「え…」
(´・ω・`) 「その妻は、花が、好きだった」
(´・ω・`) 「いろんな花を知っていて、いろんな花言葉を知っていて」
( <●><●>) 「……警部」
部下の前でしたい話ではなかったな。
だけど、ミセリには、先に言っておきたかった。
(´・ω・`) 「塩見製菓ッて知ってる?」
ミセ*゚-゚)リ 「大福とか売ってるとこですよね」
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(´・ω・`) 「これ、あそこの花飴ってやつなんだ」
(´・ω・`) 「お徳用のが、通販でしか売られてないんだけど」
(´・ω・`) 「いろんな花の味があるから、オススメしとくよ」
ミセ*゚-゚)リ 「…」
ミセリは、顔を俯けた。
ミセ* ー)リ 「……いい花言葉のがあったら、旦那の墓に備えとく」
(´・ω・`) 「マ、そこまで美味しくないけどね」
ミセ* ー)リ 「お、美味しくないんですか、コレ…!」
(´;ω;`) 「ぶひゃ、ひゃひゃ!」
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そして、ミセリとはそこで別れた。
明言はされてないけど、おそらく彼女は、犯人に会うだろう。
すぐに、対策を進めておかないといけない。
暮れに、みんなを招集した。
眠気がすっかり取れたぎょろ目、
進展を前に俄然やる気になっているペニー、
冷静に大局をうかがっている壁、と。
それぞれが持ち寄った情報や推理で会議は長引いたが、
唯一、ワカッテマスだけは、口数が少なかった。
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