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四月二十五日 午前〇時三分
市営地下鉄
─━┛
( 、 'トソン 「……」
生まれて初めて、飲みというものを経験した。
お酒を飲んだことはおろか、アルコール検査すらしたことがない。
もとより男子と話すことはあまりなかった人生、
多少浮かれていたのは認めるが、やはり自分には似合わないと痛感した。
・
(゚、゚'トソン ’
地下鉄が揺れるたびに、吐き気がこみあげてくる。
執拗にキュウケイ、キュウケイとつぶやいてくる男子は、
腹の底からの憎悪を吐しゃ物と一緒にぶちまけることで撒くことができた。
(゚、゚'トソン 「……」
大学って、怖いところだ。
入学して一ヶ月、私は闇を見た。
.
-
地下鉄、それも終電だ。
ひとがいなければソファーに座りたい、などと思っていたのが、
なんと街の地下は日をまたいでも人でいっぱいのようである。
派手な見てくれの人も多い。
きっと、夜の街を楽しんだ帰りなのだろう。
目を逸らすなトソン、自分も同類なんだ。
(゚、゚'トソン 「…」
スマホをいじれば、多少は吐き気が収まる。
明日は一限からだ。
トソン、人生初のサボタージュを実行に移そうと思う。
(゚、゚'トソン 「…」
服に煙草の臭いが染みついている。
待て、そういえばおかしい。
私は、度重なる浪人時代を経て成人しているものの。
飲みにきた男子は皆、十八のはずだ。
もう忘れよう。
次の駅で、見慣れた景色が目に飛び込んでくるのである。
.
-
いや、まだ引っ越して一ヶ月だった。
男子はおろか、友人すら呼んだことがないアパート。
日頃は張り切って自炊をしているはずなのに、
今日の日に限って私は、料理を作り置きしていない。
明日朝起きたら、なるったけ健康にいいブレイクファーストを作るのだ。
そうしたら、ああ、昨日は疲れた。
しばらく酒は見たくもない。
そういえば、一緒に授業を受けている友人一向にサボリを告げなければ。
こんなにも疲れているというのに、続々と明日の予定が浮かんでくる。
(゚、 'トソン 「…」
かくん、かくんと首が座らない。
視界の端では、つり革を握っていた乗客がひとり、膝からくずおれた。
少しノイズが聞こえると、女性の、文字にならない悲鳴が響き渡った。
(゚、 'トソン 「…」
車両の、先頭のほうだ。
人ごみに溢れているため、詳細には見えない。
ただ、ある点を中心に不自然な空間がつくられていっているのはわかった。
人が、倒れたようだ。
.
-
私もつられて、倒れそうになった。
腹の底にたまった憎悪を吐しゃ物と一緒にぶちまけたいのだ。
しかし、どうにも事情が違った。
酔っているはずの私の脳が、少しずつ冴えわたっていくのがわかる。
冴えわたっているのではない。
血の気が引いていっているのだ。
そのくずおれた乗客を中心に、赤い円が広がっていくのだ。
(゚、 'トソン
(゚、゚'トソン
吐しゃ物から逃れるかのように、
周囲の人はその円から逃れようとする。
ほどなくして、私の近くにいた泥酔していない乗客たちも皆、視線をそちらに向けた。
立ち上がったり、スマホを構えたり、周囲の初対面の人と話したりしている。
(゚、゚'トソン
(゚、゚トソン
香りは、しない。
ただ、見覚えのある色合いはしていた。
あれは血だ。
.
-
(゚、゚トソン
事件だ。
そう思った直後に、扉は開かれた。
私の目的地に着いた。
しかし、当分帰れそうにはなかった。
冴えわたった脳裏を、ちらり。
懐かしい面影が、顔を出した。
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イツワリ警部の事件簿 File.4
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イツワリ警部の事件簿 File.4
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(´・ω・`)は偽りの香りを
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イツワリ警部の事件簿 File.4
(´・ω・`)は偽りの
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イツワリ警部の事件簿 File.4
(´・ω・`)は偽りの亡霊を捕まえるようです
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◆
かつての喧騒はどこへやら、
旧都ヴィップは郊外同然の田舎模様へと姿を変えた。
データで見ても明らかなように、
ヴィップからソーサク、やがてファイナルへと人は栄華を求め居住地を移していった。
.
-
(´・ω・`) 「殺人?」
女将 「××駅でよ」
(´・ω・`) 「やーーめてくれよ」
(´・ω・`) 「最近、やっと休み取れてきたのに」
当然、人が多いところには犯罪も集まる。
連日、痴漢や強盗、殺人が巻き起こる。
女将 「なんでい」
女将 「ボンちゃん、聞いてないのかい」
相対的に、田舎と化したヴィップの犯罪件数は減少の一途を辿っていった。
しかし、人のいるところに犯罪は起こる。
いくら罰則を強めても、やる者はやるのが世の常だった。
.
-
(´・ω・`) 「ボンちゃん聞いてなーい!」
女将 「なんでい、ヴィップでコロシよ?」
(´・ω・`) 「だいたいのヤマは、所轄がすべて済ましちまうんだよ」
(´・ω・`) 「最近の僕らの仕事はね、情報提供くらいだね」
ただ、僕は正義を目指して刑事になったのではない。
まして、仕事が大好きなタチでもなかった。
女将 「あたしも、いい情報やろうか。
いま三十で、ホテル勤めなんさけどさ」
( ;´・ω・) 「いーから!」
女将 「サトミちゃんとはうまく行ったの?」
(´・ω・`) 「はん!」
酒と煙草、それと軽口をぶつける相手。
僕の大切なものベストスリーに、仕事が付け入る隙はない。
.
-
(´・ω・`) 「仕事より酒を優先する僕だけどね」
(´・ω・`) 「女よりは仕事をとるのさ」
女将 「でも、次の子はいいよ」
女将 「マ、三十まで独身なんだから言うまでもないんだけど、この子も仕事がダイジで…」
( ;´・ω・) 「あい、勘定!」
殺人があった。
オフにそんな話を聞かされて、僕が興味を持つわけがない。
更なる話を聞かまいと財布を出すと、女将が止めた。
もっとも、事件の話を掘り下げるわけではないようだが、
なんにせよ、あまり聞きたくない話には違いない。
女将 「待ちな、財布しまいなよ。 堅物な人がタイプっていうからさ、」
女将 「ほら、ボンちゃんのこと警部ッたら、ちょっと揺らいだみたいで、」
(´・ω・`) 「堅物? 僕が?」
(´;ω;`) 「ぶひゃひゃ! そいつァ面白い!」
.
-
(´・ω・`) 「勘定!」
女将 「写真だけ! 写真だけ見てごらんって!」
なんにせよ、なんにせよ。
僕の長財布と女将のフォトブックを閉じて、僕は店の戸を閉めた。
出た瞬間に、忘れかけていた冷たい風に頬を撫でられた。
高ぶっていた酔いが、一瞬で醒める。
(´・ω・`) 「僕を何歳だと思ってんだ…」
胸元に手を伸ばす。
夜風には煙草が相場なのだが、あいにく煙草は切らしたばかり。
代わりのキャンディーを口に放り、トレンチに手を突っ込んで帰路につく。
ここ数日の、僕のライフスタイルだった。
胸元には煙草、右ポケットには煙草代わりのキャンディー。
携帯するのは、ジッポと警察手帳。
まだ忙しかった数年前と比べて、いやに堕落した毎日を送っているなと自分を毒づく日々。
これでもまだ、僕は刑事を続けていた。
.
-
酔いを噛みしめ、帰ってからテレビをつけるまでがライフスタイル。
ただ今日に限り、それは怠った。
ひょっとすると、さっき女将が言っていた殺人とやらが報道されている可能性がある。
報道されるということは、それなりに大きな事件だ。
となると、僕の耳にまで情報が飛んでくる。
現時点で何もない以上、まだ大丈夫な事件だとは思うのだが。
それでも、僕はあまり、事件に首を突っ込みたくないのだ。
(´・ω・`) 「はあ」
おじさんになって独身。
仕事もそこそこの地位についている。
狭いが贅沢なマイホーム、広めに作らせたベランダに出て就寝前の一杯を楽しむ。
これでいい。
もとより、正義感が強いから刑事になったのではない。
気が付けば刑事になって、気が付けば警部になっていた。
ただそれだけなのだ。
帰り際に口に含んだキャンディーを、噛み砕く。
禁煙用に買い始めたのだが、意外とチェーンスモークのお供として優秀だった。
塩見製菓から取り寄せている、花の香りに拘った飴だ。
(´-ω-`)
っ’・
( ´・ω・)y-~~
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-
田舎ヴィップの夜空は、しかし星がうかがえない。
しかし、静かだ。
こんな夜空のもと、今日もどこかで事件は起こっているのか。
( ´・ω・)y-~~
明日も出勤だ。
早々、ヤマを持ち込まれないことだけを祈る。
( ´・ω・)y-~~
いい風だ。
今日は深い眠りにつけそうだ。
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序幕 「 予告 」
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五月二日 午前九時四二分
捜査一課
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( <●><●>) 「捜査一課」
電話が鳴った瞬間に、ワカッテマスが応じた。
雑務を片手に、淡々と相槌を入れていく。
( <●><●>) 「…いや、扱ってはいないですね」
( <●><●>) 「…それは、いつ?」
(´・ω・`) 「なァー」
(´・ω・`) 「それ先週の案件だよな?」
('、`*川 「わかってますゥー」
ヴィップに籍を持つ容疑者の情報提供。
目下三ヶ月の事件との照合。
警視庁から寄せられる数々の要求は、
事件が少ないはずの捜査一課を翻弄するのに十分すぎる量だった。
.
-
( ゚д゚) 「…」
(´・ω・`) 「先輩を見習えよ」
('、`*川 「だったらパソコンの使い方教えてくださいよ」
('、`*川 「先輩でしょ」
(´・ω・`) 「こッ…僕は上司だぞ…!」
ちょうど雑務を終えて、ふとテレビに目をやったぎょろ目は、
そのままニュースが淡々と報じる内容に釘づけになっていた。
('、`*川 「だいたい、こういうのは下っ端の仕事じゃない?」
('、`*川 「あいつにさせりゃあいいじゃない。
ワカは何やってんのよ」
(´・ω・`) 「本来あんたがするはずだった仕事の三つ目」
('、`*川 「…」
(´・ω・`) 「と、電話対応」
('、`*川 「…」
.
-
,_
('へ`*川 「やりゃーーいいんでしょ!ハイ!」
( ゚д゚) 「ちょっといいですか」
(´・ω・`) 「ん。 なに。
パソコンはだめだぞ」
( ゚д゚) 「見てください」
(´・ω・`) 「ん?」
ペニーの相手は面倒だ。
捜査一課には、機械に強いのがワカッテマスと壁しかいない。
ただでさえ人手が足りないショボーン班、壁は絶賛有給中だ。
( ゚д゚) 「ご存じですか」
( ゚д゚) 「地下鉄の、アレ」
(´・ω・`) 「…?」
ニュースの映像には、やれ予告だの、やれ連続だの、
といったよくわからない文字が躍っていた。
しかしそのどちらにも、続けて殺人、と出ている。
.
-
( ゚д゚) 「続いてるんですよ」
(´・ω・`) 「何が」
( ゚д゚) 「同一犯による、コロシですよ」
(´・ω・`) 「…」
( <●><●>) 「警部」
(´・ω・`) 「なんだ」
( <●><●>) 「ご存じですか」
( <●><●>) 「先週あった、地下鉄の、アレ」
(´・ω・`) 「なんだよ!」
( ゚д゚) 「車両内で…ッてやつか?」
( <●><●>) 「ええ。 …ちょうど、報道もされていますね」
-
手際よく資料を手に取って、僕とぎょろ目の間に割って入った。
なんだよ。 やめてくれよ。
嫌な予感しかしない。
( ゚д゚) 「予告殺人…だな?」
( <●><●>) 「いま、所轄からその件で」
(´・ω・`) 「…」
改めてニュースに目をやる。
ヴィップの某所で、続けて同一犯による殺人予告が寄せられてきたらしい。
一件目は、市営地下鉄。
二件目は、どうやら駅前のビジネスホテル。
( <●><●>) 「明日、十九時から開演するあるライブで」
( <●><●>) 「観客のうち一名を、殺すとの予告が会場に届いたようです」
(´・ω・`) 「なに?」
.
-
-
('、`*川 「なになに」
('、`*川 「ヤマ?コロシ?」
機械作業を投げたペニーまで首を突っ込んできた。
嫌な予感しかしない。
というか、もう的中しているようだ。
( ゚д゚) 「詳しく聞かせろ」
( <●><●>) 「とりあえず、こちらを」
ワカッテマスは、裏紙に走らせた直筆のそれを見せた。
日時、場所、概要などが、几帳面な字で書かれている。
( ゚д゚) 「…」
(´・ω・`) 「出動申請は」
( <●><●>) 「現在状況確認中とのことで」
(´・ω・`) 「手短に、簡潔に教えろ」
( <●><●>) 「はい」
.
-
嫌な予感、嫌な予感、と言っていられる余裕は、なくなった。
どうやら、もう僕たちはひとつの事件に巻き込まれているようだった。
( <●><●>) 「明日、五月三日」
( <●><●>) 「ヴィップスタジアムで、あるアーティストのライブが開催されます」
( <●><●>) 「十九時開演、そしてライブ中に観客を殺す、と」
( ゚д゚) 「会場宛てに」
( <●><●>) 「ええ」
赤ペンで、ワカッテマスが線や丸を書き足していく。
( <●><●>) 「媒体ははがき」
( <●><●>) 「消印から出所は特定していますが、その他は調査中」
( <●><●>) 「ここまでは、殺人予告の案件です」
.
-
( ゚д゚) 「肉筆か?」
( <●><●>) 「はい」
( <●><●>) 「そこで、この…」
ワカッテマスが、一瞬視線をニュースに向ける。
先週起こった地下鉄殺人事件、続けて起こったビジネスホテル殺人事件。
これらはどちらも、同一犯による殺人予告が届いていた。
筆跡を照合したところ、同一人物によるものであることが認められている。
( <●><●>) 「一連の事件が噛んできます」
(´・ω・`) 「…」
( <●><●>) 「照合中でこそありますが、」
( <●><●>) 「肉眼でもわかるほどには筆跡が酷似しているため、」
( <●><●>) 「同一犯のものと見て間違いはないかと」
(´・ω・`) 「続けろ」
.
-
( <●><●>) 「一件目は、陽動と思いつつも所轄が対応」
( <●><●>) 「しかし、駅や時刻まで明示されてなかったためか、防げず」
( <●><●>) 「二件目も、所轄やホテルの制止を振り切った害者が宿泊したのですが、」
( <●><●>) 「常備薬に細工が施されていたようで、即死」
赤ペンによるバツ印が増えていく。
( <●><●>) 「本件、これを受けたヴィップスタジアムは所轄まで通報」
( <●><●>) 「現在、ライブ中止などをアーティスト側に要請しているようです」
( ゚д゚) 「で、今回のはがきが?」
( <●><●>) 「PDFで送られています」
二枚目の紙を指さす。
多少癖のある字体で、殺人予告が書かれている。
「五月三日、十九時より開演される渋沢栄吉のライブ中に、観客一名を殺す」
しかし、何という名前の人物を殺すか。
何分頃に、どうやって殺すか。
そういった具体的なところは伏せられていた。
.
-
(´・ω・`) 「対応は」
( <●><●>) 「まず、ライブ中止要請」
( <●><●>) 「捜査本部も本日正午に立てられます」
( <●><●>) 「報道規制も一応要請はしていますが、こちらは望み薄」
正午。
あと二時間もない。
('、`*川 「正午ね。 オッケー」
というと、ペニーは席を立った。
もう何も言うまい。 勝手にコーヒーを淹れだすのだ。
(´・ω・`) 「午後の檀家まわりは中止だ。
まわしとけ」
( <●><●>) 「もう回してます」
(´・ω・`) 「そ、そう…ありがとよ」
('ワ`*川 「え、檀家まわり中止? やった!」
.
-
ペニーが、二つ、三つとコーヒーを淹れていく。
見かねたのか、ぎょろ目はポケットに手を突っ込みながら席を立った。
煙草の合図だ。
( ゚д゚) 「失礼」
(´・ω・`) 「僕もいく」
('、`*川 「え、ちょ、ちょっと」
('Д`*川 「警部のぶんも淹れて……ちょーーい!」
( <●><●>) 「地下鉄、ビジホの資料、刷っといてくれ」
,_
('へ`*川 「あんたの仕事じゃないの!?」
( <●><●>) 「私は一課長と話が」
,_
('、`*川 「……わかったよ!」
ペニーが、壁にかけてあった白衣を乱雑にとる。
彼女がスイッチを入れる時、いつも着るコートだ。
.
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┏━─
午前十時二七分 喫煙室
─━┛
( -д-)y-~~
( ´・ω・) 「ずいぶんとノッてないじゃないの」
っ‘・
( ´-ω-)y-~~
( ゚д゚) 「…嫌な予感がね、してたんですよ」
(´・ω・`) 「なんのさ」
会議前にこいつと煙草を吸うのは、もう何年前からだろう。
ショボーン班で、唯一僕より年上。
白髪も、ここ数年でかなり増えている。
警部という肩書がなくても、別に敬語を使おうなんて思わないけど。
風格から、実績から、人柄から、一番頼りになるオトコには違いなかった。
千里眼を持つと言われる男、東風ミルナとは、もう長い付き合いなのだ。
.
-
( ゚д゚) 「ホテル殺人です」
( ゚д゚) 「所轄も、さっさとこっちに振ればよかったのに」
( ゚д゚) 「調査不十分とか言って、投げてこなかった」
(´・ω・`) 「ビジホのって、林ちゃんの管轄でしょ」
(´・ω・`) 「アイツ、僕のこと嫌いだから。
それじゃない?」
( ゚д゚) 「何をおっしゃいますか」
苦い笑いを浮かべる。
備え付けの自販機を眺めながら。
( ゚д゚) 「…何か、思うところはないんですか」
( ゚д゚) 「イツワリさん」
(´・ω・`) 「データが足りない」
(´・ω・`) 「所轄に、丸投げしてたし」
.
-
イツワリさんなんて呼ばれたの、久しぶりかもしれない。
ここ最近、班で大きな事件に臨むことがなかったからだろう。
警察きってのスーパールーキー、若手ワカッテマスが入ってから、
あまり 「イツワリさん」
っぽいことをしてきた記憶がない。
しかしそれでも、思い出すことは多少ある。
地下鉄、と聞いて思い出すのは、オオカミ鉄道の爆破予告。
あれも思えば、同一犯による連続犯行だったと言える。
ただ、一般の命が奪われることは、なかった。
( ゚д゚) 「そうだ」
( ゚д゚) 「鈴木にも出てきてもらいますか」
(´・ω・`) 「いいよ。 どうせ家でゲームしてんだ」
先見の明に長けた、鈴木ダイオードもあの事件を共にした。
壁、と言いすぎて一課長からセクハラを警告されたのも懐かしい。
.
-
(´・ω・`) 「最近、あいつずっとサボってるからな」
(´・ω・`) 「あいつに、無理にでも働かせよう」
( ゚д゚) 「ペニーは…」
苦笑を浮かべる。
いわゆる、刑事っぽいこと、とやらがしたくてこの職に就いたそうだが、
蓋を開ければ、九割の雑務と、一割の本命。
週に一回は退職したいと言いたくなるのも無理はないかもしれない。
ヴィップがまだ荒れていた頃は、白衣の女刑事としてちょっとは名を馳せたものだった。
おじさん二人に若い女二人、頭脳派刑事がひとり。
あまり格闘に向いていない僕の班で、ペニサス伊藤だけが腕に自信を持っていた。
( ゚д゚) 「これ以上、始末書、書かせたかないでしょ」
(´・ω・`) 「僕はどォーでもいいけど?」
( ゚д゚) 「…」
格闘もだいじだ、と思い、いろいろなことを教えた。
手錠をメリケンサックよろしく拳にあてがう方法も教えたりはしたが、
ペニーにとっては逆効果だったようで、おととし辺りからだろうか、
「刑事」 による過剰な応戦が、上層部の機嫌を損ねる事態に進展した。
.
-
もっとも、いる若手の三人目、ワカッテマスも格闘は垢抜けたセンスを持っている。
ドラマのような、過剰で派手で大げさな格闘は不要だ、という気持ちもわかる。
'_
(´・ω・`) 、
(´・ω・`) 「もしもし」
( ゚д゚)y-~~
「そろそろ戻られますか」
ワカッテマスからの、味気ない一言だった。
絵に描いたような天才。
歳不相応に沈着で、頭が切れる。
拳銃の精度も、格闘の心得も持ち、ジョーク以外のセンスは持ち合わせている。
奴から電話がかかってくる時は、得てしてよろしくないことが待ち構えているのだ。
(´・ω・`) 「もーちょいで戻るよ」
煙草を吸いながら、答える。
ワカッテマスは露骨に嫌そうな溜息をこぼした。
(´・ω・`) 「…」
.
-
もう少し、軽口のひとつ叩ければ人生は楽しくなるのに。
煙草を灰皿にこすり付けて、僕は立ち上がった。
(´・ω・`) 「気が変わったから、いま戻るよ」
'_
( ゚д゚) 、
( ゚д゚)φ
ぎょろ目も立ち上がる。
スーツに付着した灰を、しわの増えた手で払いながら。
(´・ω・`) 「おしるこ」
( ゚д゚) 「え?」
(´・ω・`) 「差し入れ、なに買ってやろうかな、って」
( ゚д゚) 「…」
( ゚д゚) 「イツワリさんらしいっすね」
.
-
┏━─
午前十時四〇分 第四会議室
─━┛
(´・ω・`) 「ほれ」
( <●><●>) 「…?」
部屋に入ると、ワカッテマスが十枚ほどある資料に目を通していた。
扉の雑に開かれた音を聞いて奴は振り返ったわけだが、
そこにすかさずおしるこ缶を投げつけた。
( <●><●>) 「…」
( <●><●>) ・,
(´・ω・`) 「こッ…こいつ…」
無言で、それも一口で飲み干されたが。
軽口を挟む間もなく、ワカッテマスが目配せした。
( <●><●>) 「連続予告殺人事件捜査本部」
.
-
( ゚д゚) 「?」
( <●><●>) 「捜査本部の名前…だそうですけど」
(´・ω・`) 「このしょーーもねえネーミングは一課長だ絶対」
( ゚д゚) 「最近一課長、筆がマイブームだそうで」
(´・ω・`) 「くッだらねえ」
ワカッテマスの向かいまで歩いて、資料を一部、拾う。
まだ更新が追い付いていないのか、こちらにはそのナマエはなかった。
しかし、僕の名前は、あった。
( <●><●>) 「なりゆきで、ショボーン班が担当することになったそうです」
(´・ω・`) 「ぶっ」
責任者のところに。
.
-
( <●><●>) 「とりあえず、復習も兼ねて」
( <●><●>) 「まだ確固たる証拠こそないんですが、便宜上」
( <●><●>) 「地下鉄殺人事件、ビジネスホテル殺人事件につながった連続殺人と見なしています」
( ゚д゚) 「どうせ会議中にでも一報あがるだろう」
( <●><●>) 「マスコミでも、ニューストピックの常連ですね」
( <●><●>) 「警部の思っている以上に、重大な事件です」
(´・ω・`) 「…」
マスコミや上層部とは、ちょっとした因縁がある。
そのせいか、話題性のある、
というかいわゆる貧乏くじは、だいたい僕が引くことになっていた。
.
-
( <●><●>) 「地下鉄殺人事件」
( <●><●>) 「四月二十五日〇時頃、ヴィップの市営地下鉄○○-××駅間」
( <●><●>) 「フッサール擬古という男が、何者かによって刺殺されました」
( <●><●>) 「死因は失血死、犯人は目下捜索中」
( ゚д゚) 「…」
うなずきながら、ぎょろ目も資料に目を通す。
ここまでは、確かニュースでも報道されていたはずだ。
たとえ見たくないニュースも、捜査一課では常に垂れ流されている。
昨日の朝、コーヒーを飲んでいる時にふと目に入ってしまったのを覚えている。
(´・ω・`) 「走行中、だったな?」
( <●><●>) 「ええ」
( <●><●>) 「ただ、厳密には××駅到着寸前です」
( ゚д゚) 「どう足掻いても、地下鉄だ」
( ゚д゚) 「カメラの目を盗むことはできねえんじゃないのか」
.
-
ニュースでは、犯人は現場から逃走、としか報じていない。
詳しくは知らないけど、現にこうして
「連続」 殺人と捉えられている以上、
いまもどこかで息を潜めていることがうかがえる。
( <●><●>) 「犯行は、駅に着く直前でした」
( <●><●>) 「駅員が構える前に扉は開かれ、」
( <●><●>) 「カメラが不審な影を捕えることなく、事件は現在まで引き延ばされています」
(´・ω・`) 「マ、乗客に紛れて一緒に出たんだろうな」
( ゚д゚) 「一応、取り調べには引っかかっている、と」
「いえ」
ワカッテマスが、嫌な声で言った。
( <●><●>) 「仕方のないこととはいえ、全体の三割ほどは取り逃がしています」
( <●><●>) 「というのも、現場は終電、翌日も平日です」
( <●><●>) 「駅員の制止むなしく…といった現状ですね」
(´・ω・`) 「だァと思ったよ」
( ゚д゚) 「まあ、最悪カメラには映っているんだな」
( <●><●>) 「最悪、ですが」
.
-
( <●><●>) 「所轄の報告ですが、」
( <●><●>) 「害者は刺されるような恨みを買う男ではなかったそうです」
( <●><●>) 「金品等はもちろんですが一切盗まれておらず、」
( <●><●>) 「行きずりの犯行とも思えない、といったところ」
(´・ω・`) 「人脈を洗うのは所轄に任せよう」
( ゚д゚) 「この時点で、まあまあ面倒な事件だったわけだ」
話していると、捜査本部の扉が開かれた。
ふと時計を見たが、まだ会議より一時間早い。
('、`*川 「うぃーっす」
(´・ω・`) 「ウッス」
( <●><●>) 「…」
白衣をまとったペニーが、遅ればせながらやってきた。
少し語調を強めつつ、ワカッテマスは続ける。
.
-
( <●><●>) 「凶器ですが、一般的なペティナイフ」
( <●><●>) 「指紋など有効な手がかりはありません」
( <●><●>) 「出所も、一応調査してはいますが、望み薄ですね」
(´・ω・`) 「凶器で洗い出せる事件なら、所轄がとっくに解決してらあ」
ペニーが、話に加わろうと必死に資料を読み進める。
ナイフの話題が出た辺りで、ああ、と言って得意げな顔をした。
( <●><●>) 「まあ、共有は概要だけでいいでしょう」
( <●><●>) 「続けて、ビジネスホテル殺人事件」
( <●><●>) 「こちらも同じく、ヴィップの事件ですね」
(´・ω・`) 「知ってるよ。 僕も泊まったことあるもん」
( ゚д゚) 「初耳ですな」
(´・ω・`) 「どーーっかで見た名前だな、って思ったんだ」
.
-
( <●><●>) 「四月三十日、ヴィップの××ホテル」
( <●><●>) 「被害者は、ヒッキー小森という男」
( <●><●>) 「地下鉄同様、ホテル殺人にも予告は出されました」
( <●><●>) 「地下鉄の場合、初、それも公共の場に向けた予告だったので」
( <●><●>) 「対応は難しかったものの、次はホテル宛てです」
( ゚д゚) 「当然、ホテルとしては対応をしたわけだ」
殺人予告の厳しいところは、陽動か否かが掴めないところだ。
だいたいの予告は、犯人を未然に特定して逮捕し、
これ見よがしに報道することで見せしめとするものだが。
ごくまれに、特定されないよう予告を出し、
多少は強化されているはずの警備の網をくぐって本当に殺す人がいる。
続発する殺人予告の一つひとつをクソまじめに対応する警察だが、
ごくまれにあるこういった犯行を許してしまうことで、
国家叩きに飢えているマスコミを活性化させることとなる。
日頃から莫大な費用が、殺人予告に突っ込まれているんだけど。
( <●><●>) 「まず、ホテル側は別のホテルを押さえました」
( <●><●>) 「ホテルが実費負担する、と言ったそうですが、害者はこれを拒否」
( ゚д゚) 「なんだっけ。 確か、予告を鼻で笑ったそうじゃねえか」
.
-
-
('、`*川 「でも確かに、鼻で笑いたくなりますよ」
('、`*川 「フツー、ガキの悪戯って思いますって。
このご時世」
インターネットが流行ったことで、未成年の早すぎる社会進出が問題となっている。
殺人予告が横行する背景には、もちろんインターネットの普及は避けて通れない。
(´・ω・`) 「ということは、当然ホテルの害者も、特段殺される理由がなかったわけだ」
( <●><●>) 「現時点では。
そうですね」
( ゚д゚) 「少しでも、殺される心当たりがあるなら、」
( ゚д゚) 「結構素直にケーサツの声を聞くもんだしな」
('、`*川 「でも、犯人は逃げてンでしょ」
('、`*川 「地下鉄と違って、現場はホテル」
('、`*川 「いっっくらでも取り押さえようはあるんじゃないの?」
.
-
( <●><●>) 「…そうですね」
( <●><●>) 「殺害、という言い方は語弊があります」
( ゚д゚) 「ん?」
ワカッテマスは、資料を直視した。
、
、 、、、、 、 、 、、、、
( <●><●>) 「正確に言えば、害者の死因は、アナフィラキシーショック」
(´・ω・`) 「…!」
( <●><●>) 「害者は喘息を患っていました」
( <●><●>) 「咳止めを飲む習慣があったのですが、これにアレルゲン…」
( <●><●>) 「ピーナッツ、ですね。
この成分が盛られていたようです」
資料に自分で赤マルをつけながら言った。
.
-
(´・ω・`) 「アレルギー…?」
(´・ω・`) 「臭うな」
('、`*川 「そうですよ」
('、`*川 「ピーナッツの匂いとかでわかりそうじゃない?」
(´・ω・`) 「ちげえよバーカ」
('、`*川 「…ッ」
ペニーが、ぎょろっと僕を睨む。
ぎょろ目、ワカッテマスは、意にも介さない。
(´・ω・`) 「つまり、あれだ」
(´・ω・`) 「犯人は、害者のアレルギーを把握してたんだろ?」
(´・ω・`) 「この時点で、いろいろ話は変わってくる」
( ゚д゚) 「他人のアレルギーなんて、そうそう把握できるもんじゃないからな」
( ゚д゚) 「この、小森といったか、害者と浅くはない関係にあった人物が犯人なのは間違いない」
.
-
('ε`*川 「知ってますゥー」
('ー`*川 「てか、そンくらい、テレビでもしょっちゅうやってますよ」
(´・ω・`) 「むしろ気になるのは、どうアレルゲンを盛ったか、だ」
( <●><●>) 「そちらについては、もう結果が出ています」
ホテル殺人のそれに添付されていた資料を表にする。
咳止めの写真と一緒に、鑑定結果が載せられている。
( <●><●>) 「ピーナッツオイル、はご存じですか」
('、`*川 「知ってる。 美容にいいんだよ」
( ゚д゚) 「知ってます?」
(´・ω・`) 「知らない…」
.
-
( <●><●>) 「こいつが瓶内にかけられていたようですね」
( <●><●>) 「害者の担当医曰く、こんなものを経口接種するのはとんでもない、と」
( ゚д゚) 「犯人は、どうにかして害者のクスリに干渉したわけだな」
(´・ω・`) 「…」
殺人予告、ビジネスホテル、アレルギー、常備薬、瓶。
パズルのピースが、次々と形を成していく。
ひとつ目の地下鉄殺人と違い、明確なピースが多数ある。
まして、どれも重要なピースばかりだ。
次から次へと、ピースが成す全体像の候補が浮かび上がってくる。
( <●><●>) 「ホテル、並びに所轄の過失は、」
( <●><●>) 「一件目が刺殺だっただけに、人影ばかりを警戒してしまったことです」
( ゚д゚) 「かといって、未然に防げる案件だったとも思えんな」
( <●><●>) 「まあ、だからマスコミはあまりそこには触れてないんですよね」
.
-
(´・ω・`) 「解くとしたら、そこからだな」
( ゚д゚) 「何かお気づきで」
(´・ω・`) 「いや…ヒントが多すぎるからな。
かえって難しい」
(´・ω・`) 「たぶん、三日もあれば、それなりな答えは出せると思うんだけど…」
もとの、事件の資料に戻す。
ここまでわかりやすいヒントがいくつもあるのに、
依然犯人が捕まっていないのは気がかりだ。
( <●><●>) 「でしたら、こちらの共有もこれくらいでいいでしょう」
( <●><●>) 「そして、三件目です」
( ゚д゚) 「ライブ宛ての殺人予告、だったな」
( ゚д゚) 「規模は、どれくらいなんだ?」
( <●><●>) 「右肩八ページを」
( ゚д゚) 「ん…」
.
-
開くと、ライブ主催のアーティストと思しき男の写真がまず目に入った。
どこかで見た記憶のある風貌だ。
( <●><●>) 「渋沢永吉、ご存じかと」
(´・ω・`) 「うっわ世代だ」
('、`*川 「抱かれてバラッド…の人でしたっけ」
(´・ω・`) 「うっわーー…まじか」
ハードボイルドな風体に、ハスキーボイス。
僕が二十代の頃に成り上がった歌手だ。
( ゚д゚) 「結構、どころじゃない規模じゃないか」
(´・ω・`) 「え、次のターゲット、つまり同世代??」
( <●><●>) 「地下鉄、ならびにホテルは三十少しと世代も共通していたのですが」
( <●><●>) 「こうなると、いよいよ面倒な気がしてなりません」
.
-
数万人規模の、全国ツアー。
いくら厳重な警備を敷こうが、限界がある。
現に、地下鉄からの脱出を許した相手だ。
さすがに、ライブも中止になるはずだ。
( <●><●>) 「しかし、相手が悪かった」
( <●><●>) 「これをマスコミが嗅ぎ付けないわけがありません」
(´・ω・`) 「今はまだ報道されていないけど……」
('、`*川 「マ、帰る頃にはトピックスが増えてるでしょ」
( ゚д゚) 「初回の地下鉄やアレルギー殺人が防げなかったのはともかく」
( ゚д゚) 「ライブ側がこれに応じないわけがない」
(´・ω・`) 「そして、過去二回の過失が浮き彫りになる、と」
.
-
( <●><●>) 「気になるのは、ホテル殺人」
( <●><●>) 「この時だけ、明確にだれだれを殺す、と名指しだったんですよ」
( ゚д゚) 「計算の上じゃないのか?」
( <●><●>) 「一笑に付すのが目に見えていた、と」
( ゚д゚) 「現に、それで殺されてるからな」
('、`*川 「警部的にはどーなんですか」
(´・ω・`) 「データが足りないな」
(´・ω・`) 「計算の上かもしれないし、あるいは犯行の特異性を裏手に取ったのかもしれない」
( <●><●>) 「出入り口を押さえ、カメラに目を見張ればいい……と思わせて、ですか」
まだ、捜査はまったくしていない。
断言できないいくつもの可能性が顔を出す。
(´・ω・`) 「あるいは、三度目の正直がある」
(´・ω・`) 「三度目こそが、狂言ッてね」
.
-
( ゚д゚) 「あーー」
ぎょろ目が大きな声でうなずいた。
( ゚д゚) 「ここで話題性を高めて、と」
(´・ω・`) 「わかんないけどね」
( ゚д゚) 「しかし、あり得る」
( ゚д゚) 「犯人と害者たちを結ぶコミュニティがあって」
( ゚д゚) 「そのなかの、渋沢ファンである特定個人に向けたアナウンスとも取れます」
(´・ω・`) 「次はお前を殺すぞ、と」
我ながら、すごく嫌味ったらしい笑顔ができた。
わからないことが多くて、少し嫌な気分になったのだ。
(´・ω・`) 「ニュースはもちろん報道するし、今やSNSでもこの手のニュースは流れる」
('、`*川 「ほぼほぼ、宣戦布告ですよね」
.
-
( <●><●>) 「さて、その肝心のコミュニティですが」
( ゚д゚) 「害者ふたりの共通点は、まだ?」
( <●><●>) 「一切ないそうです。
もっとも、所轄調べですが」
所轄と県警、互いの持つネットワークの差は雲泥に及ぶ。
手数から、規模から何まで、所轄は最低限のチカラしか持っていない。
所轄が対応しきれない事件に出くわした時、
僕たち県警、それも捜査一課の出動が余儀なくされるわけだ。
もっとも、地下鉄殺人の時点で要請しておけ、という話だけど。
ふと、腕時計を見た。
まだ会議まで時間はあるが、それ以上に解散が気になったのだ。
(´・ω・`) 「…」
('、`*川 「あと一時間ですね」
(´・ω・`) 「なあ、ワカッテマス」
(´・ω・`) 「会議って、結構伸びそう?」
.
-
( <●><●>) 「過去二回の事件、今回の予告」
( <●><●>) 「そのすべての詳細な共有が挟まれますからね」
ワカッテマスも腕時計を見る。
若いくせに渋いブランドの時計だ。
( <●><●>) 「何時間かかるか怪しいところです」
(´・ω・`) 「ちっ…」
( <●><●>) 「先に一課長に言って、警部は絶対参加を約束しています」
(´・ω・`) 「ちっ…」
先月、仮病を装って勝手に捜査に出たことがあった。
捜査が好き、というよりは、会議が大嫌いなこと、
なにより、蟠りを残したまま数時間拘束されるのがいやだから、なんだけど。
そのせいで、一課長の目が最近厳しい。
あとワカッテマスの目も厳しさを増している。
('、`*川 「あなた、ホントに警部ですか」
( ゚д゚) 「始末書のペニー、悪徳警部のイツワリさん…」
(´・ω・`) 「待て。 悪徳警部ッつったの誰だ」
.
-
┏━─
五月三日 午前七時十八分
捜査一課
─━┛
/ ゚、。 / 「連続殺人? あの?」
(´・ω・`) 「昨日付で僕らが担当することになった」
(´・ω・`) 「メールを送らなかったのはあくまで単なる嫌がらせであることを理解してほしい」
/ ゚、。 / 「…」
/#゚、。 / 「誰が理解できますか!」
.
-
昨日は結局、情報共有やら整理、
残っていた雑務を先に片付けるだけで終わってしまった。
ショボーン班は現場主義の熱血漢が多いせいで、
突如として捜査がはじまる時、一課長の命令で後始末が優先されるのだ。
しかし、いい歳しても平たい乳をしている
この鈴木だけは、デスクワークがメインの刑事だった。
(´・ω・`) 「そう怒るなよ」
(´^ω^`) 「あんたの雑務は、ぜんぶペニーにさせたんだぜ?」
/#゚、。 / 「…」
/ ゚、。 / 「それはありがとう」
('、`*川 「え、あ…ウン…」
.
-
壁には捜査一課に残ってもらいたい気持ちもあるが、
僕の経験で言えば、いまは間違いなく手数がいるステップだ。
壁だろうがまな板だろうが、まずは害者洗いに付きあわせる。
ショボーン班は、メンドウな仕事は、とにかく部下にも付きあわせるスタンスなのだ。
/ ゚、。 / 「えっと、ワカッテマスは?」
('、`*川 「その、予告の出されたヴィップスタジアム」
/ ゚、。 / 「テレビであったあれだ」
懸念された、マスコミによる大々的な報道だが、ものの見事に的中した。
帰る頃にはすっかり今週のトレンドになっていたのだ。
連続する予告殺人、それも今度は人気ミュージシャンのライブ会場。
話題性、という意味ではこの上ないトピックと言えるものだ。
.
-
壁には捜査一課に残ってもらいたい気持ちもあるが、
僕の経験で言えば、いまは間違いなく手数がいるステップだ。
壁だろうがまな板だろうが、まずは害者洗いに付きあわせる。
ショボーン班は、メンドウな仕事は、とにかく部下にも付きあわせるスタンスなのだ。
/ ゚、。 / 「えっと、ワカッテマスは?」
('、`*川 「その、予告の出されたヴィップスタジアム」
/ ゚、。 / 「テレビであったあれだ」
懸念された、マスコミによる大々的な報道だが、ものの見事に的中した。
帰る頃にはすっかり今週のトレンドになっていたのだ。
連続する予告殺人、それも今度は人気ミュージシャンのライブ会場。
話題性、という意味ではこの上ないトピックと言えるものだ。
.
-
(´・ω・`) 「ぎょろ目と一緒に、向こうサンと話し合いッてとこ」
(´・ω・`) 「で、そのまま予告殺人にも対応してもらう」
五月三日。
もし、三件目の今回が狂言でないのなら、犯人は動くはずだ。
まだ、連続予告殺人を相手取っている実感はない。
事件の舞台背景を頭に叩き込んでおかないと、いまいち乗り気になれない。
/ ゚、。 / 「最強タッグじゃないですか」
('、`*川 「そ。 ウチらはあまりものー…」
(´・ω・`) 「おい!ここにあのイツワリ刑事がいるぞ!」
/ `、、 /
(´・ω・`) 「相手は上司だ!そのシツレイな目はやめろ!」
('、`*川 「しっかし、珍しいメンツですね」
/ ゚、。 / 「警部だって、普段ワカかミルさんと一緒じゃん」
('、`*川 「私たちが頼りにされたこと、ある?」
/ `、、 / 「ないねー…」
(´・ω・`) 「ち…違うって…仲良くしようよ…」
.
-
捜査一課でも、異彩を放つ班であることは自覚している。
なかでも異色なのは、ヒラの、警部に対する扱いだ。
普段から罵倒しまくっていたらそうなるか、といった程度であって
特段気にしているわけでもない。
ワカッテマスにも、面と向かってプライベートでは一緒にいたくない、と言われたこともある。
(´・ω・`) 「あ…あ!」
(´^ω^`) 「キャンディー、なめる?」
('、`*川 「気ィつけな、ピーナッツオイルが塗ってある」
/ ゚、。 / 「ピーナッツオイル?」
(´・ω・`) 「ぶっは」
軽口を叩きあいながら、僕は、薄茶色のトレンチコートとハンチング。
ペニーは白衣、壁はストールを手に取る。
仕事に対する勝負着、とでも言うのか、お馴染みの恰好となった。
ペニーが白衣を着だしたのは数年前で、
この時は一課長からさすがに咎められたりもしたが、今はもはや無法地帯となっている。
壁のこれも、去年あたりに勝手に壁が巻いてきたシロモノだ。
.
-
変わってきたものだ。
捜査一課の扉を抜ける時、ふと思った。
捜査一課のなかでも、ひときわ異動の多い僕の班だけど、
今のこの五人体制は、結構長いこと続いている。
人を馬鹿にしたような若い男がいた。
野心に溢れる頭の悪そうな男がいた。
その昔、キャリア組の女もいた。
その更に昔、ずうたいだけがでかい男もいた。
/ ゚、。 / 「とりあえず、私はどこで何をすれば」
(´・ω・`) 「事件の概要知らんだろうから、最初は僕とペアだ」
(´・ω・`) 「一切共有してないのは僕の嫌がらせであることを理解してほしい」
('、`*川 「じゃあ私は」
/#゚、。 / 「流さないでよ! …流さないでよ!」
.
-
(´・ω・`) 「僕は、現状キーとなるホテル殺人のほうを見たい」
('、`*川 「じゃあ、ナントカ擬古さんのほう洗っときますね」
(´・ω・`) 「所轄には連絡をつけてある」
千里眼を持つぎょろ目、東風ミルナ。
白衣をまとった女刑事、ペニサス伊藤。
先見の明に長けた壁、鈴木ダイオード。
警察きっての天才、ワカッテマス。
皆が、戦闘モードだ。
あとは、僕がしっかりしていればいい。
.
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