613 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/10(土) 23:49:43 ID:T3EDqDlwO
 




      ―― END ROLL ――




.

614 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/10(土) 23:58:30 ID:T3EDqDlwO
 

―― (´・ω・`)「ご迷惑をかけ、申し訳ない。                            ――
――.       ほんとうは、僕らが今回で止めるべきだったのですが――」          ――
―― (‘_L’)「そんな。誘拐犯グループのうち二人が判明しただけで、充分な収穫ですよ」 ――
―― (;´・ω・`)「そう言ってもらえると、助かりますが……」                    ――

        ――― フィレンクト警部 ―――



(‘_L’)「元々犯罪件数の少ないシベリアですからね、
     久しぶりに刑事らしい事ができましたよ」

(‘_L’)「それにしても、噂通り彼はすごい人でしたね」

(‘_L’)「なんかこう、事件を追う執念が段違いというか……」

(‘_L’)「聞けば、片腕を負傷した状態で今回の犯人と互角に戦ったとか」

(‘_L’)「もし、自分に片腕が使えないとなると、発狂しますよきっと」

(‘_L’)「推理力、行動力だけでなく、精神力も抜きん出ているのですね」

(‘_L’)「イツワリ警部……彼の名は、決して忘れない事でしょう」



.

615 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:05:21 ID:6eG89uCkO
 

―― ( ゚д゚)「そういえば、年齢はいくつなのでしょうか?」 ――
―― (´Д`)「私は三十七です」                 ――
―― (;゚д゚)「いや、被害者のほうです」            ――

        ―― 八東ススム ――



(´Д`)「先代からコンビニを引き継いで早九年、
     まさか殺人事件が起こるとは思いませんでした」

(;´Д`)「気味悪く思ったお客様たちが減って、
      経営不振になるんじゃないか……!と」

(;´Д`)「恐る恐る、報道された次の日の
      売り上げを確認したんですよ。……すると」

(´Д`)「なんと、七割増!
     サスペンスに飢えていたシベリア民の皆さんが、
     野次馬魂で次々とお買い物にきてくれたのですよ!」

(´Д`)「クルーの皆さんに臨時収入を配っても、まだ余ってるんです」

(;*´Д`)「イチサンっていう……チューゴク国のアイドルがいるのですが……ハァハァ……
      ……そうだ……グッズを買いあさろう……ハァハァ……」



.
617 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:10:17 ID:6eG89uCkO
 

―― ('、`*川「人間、気が弱そうな人ほど、裏の顔は凶暴なのよ」 ――
―― ( `ー´)「ペニーの裏の顔は、お姫様か?」           ――
―― ('、`*川「言ってる意味がわからんね」               ――

        ―― 伊藤ペニサス ――



('、`*川「今回の事件で一番の驚き?」

('、`*川「やっぱり、主犯格が、人質の筈の伊達つーだったことかしら」

('、`*川「私のイメージだと、もっとごつくて、
      筋肉隆々で、睨んだ者を金縛りにしてしまいそうな……」

('ー`*川「それで、顔は割とハンサムなんだけど、
      悪人を演じるためにわざと顔をしかめてる影の苦労人で……」

('ー`*川「……カンペキ……。
      そういう人が犯人だと、取調もきっと楽しいのに……」

('、`*川「ま、実際は女だったから、私の出番はないんだけどね」

('、`*川「あほらし。週刊誌でも読んでおこうかしら」



.
619 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:14:47 ID:6eG89uCkO
 

―― 爪'ー`)y‐~~                ――
―― 爪'ー`)y‐「ふぅ。これがないと、ね」 ――
―― (´・ω・`)「(やれやれ、臭いな)」   ――

        ―― 大神フォックス ――



爪;'ー`)「なに? 悪いけどね、いま君にかまってらんないの。忙しいのよこっち」

爪;'ー`)「爆弾騒動を終えて一週間も経つのに、未だにほとぼりが醒めてないんだよ」

爪;'ー`)「乗客数は急降下の一途を辿るし、キャンセルの人も少なからずいるわけなんだ」

爪;'ー`)「提携を組んでる旅行会社のエラい人にも愚痴を言われてね……提携を切られそうだし」

爪'ー`)「悔やんだって仕方がないさ。キセルでも喫もうかな」

爪;'ー`)「……なに! 鮭弁で食中毒事件!?」

爪;'ー`)「すまないが、更に用事ができた。悪いが帰ってくれ!」



.

620 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:20:35 ID:6eG89uCkO
 

―― ('A`)「(おれが進んで処罰を与えるわけがないだろう……!)」           ――
―― ('A`)「(オオカミ鉄道や住民からの反発を抑えきれない上司が悪いんだ……)」 ――
―― ('A`)「(……なんとしてでも誘拐犯を捕まえてくれよ……ショボ……!)」      ――

        ―― ドクオ捜査一課長 ――



('A`)「ショボーン君のペナルティーについてだけど、なんとか助かったよ」

('A`)「最後の最後で、犠牲を出さずに犯人を捕獲できたのが効いたみたいだ」

('A`)「というより、腹の傷口を見て、誰も降格を言い渡せなかったというのが本音らしいけどね」

('A`)「僕としても、彼が戦線から抜けられると困るわけなんだよ」

('A`)「あ、それと」

('A`)「ミルナ君から渡されたレコードだけど、男が嗚咽を
    漏らす音が、ほんとうに微かにだけど聞こえたんだ」

('A`)「連絡する頃には既にショボーン君は犯人と張り合ってたし……
    そのせいで連絡が遅れて……なぜかおれが怒られて……」

('A`)「鬱だ……」



.
622 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:31:23 ID:6eG89uCkO
 

―― (-@∀@)「爆弾騒動のことでお話を伺ってもよろしいですかね?」 ――
―― (´・ω・`)「答えられることはありません」                 ――
―― (-@∀@)「隠してるだけじゃないんですか」               ――

        ―― 朝曰新聞アサピー記者 ――



(-@∀@)「私が取材させていただいたオオカミ爆弾襲撃事件ですが……」

(-@∀@)「大変反響を受けまして、私も出世コースが見え始めました」

(-@∀@)「文丸新聞の台頭のなかで、朝曰新聞を支えているのは間違いなく私ですね」

(-@∀@)「ショボーン警部が姿を見せた事件は、
       必ずと言っていいほどサスペンスが盛り沢山なのですよ」

(-@∀@)「ご存じだと思いますが、二十年ほど前の通り魔事件、あれも私の担当なのですよ。
       やはり、担当刑事はショボーン警部です」

(-@∀@)「やはり、ここは売れっ子記者として、
       これからも様々な事件を追っていきたいと思う所存です」

(-@∀@)「まずはオオカミ鉄道での食中毒事件ですな。では、いってきます」



.

623 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:33:15 ID:6eG89uCkO
 

―― リコ-○ー○)リ「ああいう子がね、もっと増えてほしいから、あたしも目くじらたてて     ――
――          じゃんじゃん悪ガキを叱ってんだよ。ほんとう、可愛い悪ガキどもだわ」 ――
―― ('、`*川「あなたも叱られたら?」                                 ――
―― ( `ー´)「ごめんだい」                                        ――

        ―― リコ ――



リコ-○ー○)リ「モカちゃんが仏さんになったのは悲しいけど、さ?」

リコ-○ー○)リ「お陰で、と言っちゃなんだけど、ほかの子供たちに連絡をとるいいきっかけになったんよ」

リコ-○ー○)リ「今度遊びに行くって言ってくれる子ばかりでねぇ……嬉しくて目頭が熱いんよ……」

リコ-○ー○)リ「昔話に花を咲かせて、うんと笑いたいところだねぇ」

リコ-○ー○)リ「……おっと、いらっしゃいませ」

リコ-○ー○)リ「お客さんが来たのでこれくらいで」

リコ-○ー○)リ「どうもありがとうございましたぁ」



.
625 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:39:54 ID:6eG89uCkO
 

―― (゚、゚トソン「どうしたのですか、こんなところで」      ――
―― パセ*゚ー゚)リ「だから、私たちを尾行してたんだよ!」 ――
―― (゚、゚トソン「黙ってて、お願い」               ――

        ―― 岡津パセリ ――



パセ*゚ー゚)リ「トソンちゃんったら、シャイなんだから」

パセ*゚ー゚)リ「ちょっとハグしたくらいで、耳まで真っ赤にして怒っちゃって……」

パセ*>ー<)リ「きゃー! 思い出すだけできゃー!」

パセ*゚ー゚)リ「……え? 金魚の被り物をとれ、ですって?」

パセ*゚ー゚)リ

パセ;゚ー゚)リ「だ、だめ! だめだめ! だめだかんね!」

パセ;゚ー゚)リ「ちょ、待って離し―――」

パセ;///)リ「きゃああああああああああッ!」



.

626 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:41:28 ID:6eG89uCkO
 

―― <;ヽ`∀´>「アイゴー、申し訳ないニダ! まだ帰れないニダよ!」 ――
―― ( `ー´)「なんだあのムサいの」                      ――

        ―― 真山田ネーノ ――



( `ー´)「まあ、なにはともあれ事件は解決したんだけど……」

( ;`ー´)「宝石商という共通点を言うのが遅くて、減給処分喰らっちまったぜ」

( ;`ー´)「警部は未だに怒ってるし……」

( `ー´)「まあ、捜査の時に買ったままだった鮭弁もあるし、これ食って元気取り戻すか!」

( `ー´)「オオカミ鉄道の鮭弁は旨いって言ってたしなぁ」

( `ー´)「じゃ、いっただっきまーす!」



.

627 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:47:16 ID:6eG89uCkO
 

―― <ヽ`∀´>「どうやら……決戦はすぐのようニダ……」 ――
―― ( `ハ´)「カカカ……チョーセンに挑戦するアル……」 ――
―― (´・ω・`)「(……割とノーダメージのようだ)」      ――

        ―― シナー支配人 ――
        ―― ニダー副支配人 ――



<;ヽ`∀´>「ニダァァ!」

( `ハ´)「どうした、朕と将棋で散々に負けた腹いせに年末ジャンボを買いまくった我が右腕、ニダーよ!」

<ヽ`∀´>「……当たったニダ」

( `ハ´)「え?」

<ヽ*`∀´>「当たった、当たったニダ! 年末ジャンボが当たってるニダ!」

( ;`ハ´)「本当アルか! どれ、いくらアル!」

<ヽ*`∀´>「三百円も当たってるニダ!」

( `ハ´)

<ヽ*`∀´>

( `ハ´)

<ヽ`∀´>

( `ハ´)



.

628 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:49:37 ID:6eG89uCkO
 

―― ( ゚д゚)「通り魔事件はどうした」            ――
―― / ゚、。 /「罠を張ったらあっさりひっかかりました」 ――
―― (;゚д゚)「罠、ねぇ」                     ――

        ―― 鈴木ダイオード ――



/ ゚、。 /「途中から捜査に加入しただけあって、あまり事件に関する感想はないですね……」

/ ゚、。 /「え、私の『壁』という徒名の由来ですか?」

/ ゚、。 /

/ ゚、。 /「いい天気ですね。私、休みの日にはおじいちゃんの家の縁側でおじいちゃんと対局するんです」

/ ゚、。 /「はい? 徒名? なんですかそれ」

/ ゚、。 /「言っときますけど、胸は関係ないですからね。
      見ないでください。刑務所にぶち込みますよ」

/ ゚、。 /「違います。まだ成長期なんです。まだ二十――あ、ちょ……」

/ ゚、。 /「ったく、もう……」



.

629 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:56:33 ID:6eG89uCkO
 

―― (#゚д゚)「唯一の肉親なら、金よりも同情よりも、  ――
――      もっと与えるべき物があっただろ!」   ――
―― (#゚д゚)「……なぜ、愛≠与えなかった!!」 ――

        ―― 東風ミルナ ――



( ゚д゚)「間一髪でしたね、あの時は」

( ゚д゚)「咄嗟に拳銃を構えたのはいいものの、
     正直最近視力が落ちてきてて、不安だったのですよ」

( ゚д゚)「歳には抗えないってやつかな、老眼になりつつあるって実感がするんです」

( ゚д゚)「お陰で、目測を誤って伊達氏に当たるのではないかとどきどきしてました」

( ゚д゚)「結果としては、睨んだ場所に銃弾が向かってくれてよかったのですが……」

( ゚д゚)「若い頃に比べ、格段に眼は悪化の一途を辿ってますね」

( ゚д゚)「……千里眼、か……」



.

630 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 00:59:54 ID:6eG89uCkO
 

―― (; <●><●>)「あなたは、奇跡を起こそうっていうのですか!」 ――
―― (´・ω・`)「起こしてやろうじゃないの」                ――
―― (; <●><●>)「―――ッ」                        ――

        ―― 若手ワカッテマス ――



( <●><●>)「今回の事件を通して、私は刑事という立場の重要性を改めて知りました」

( <●><●>)「今までは何の気なしに逮捕できていたからと言って、自惚れていたようですね」

( <●><●>)「世の中には殺し屋だの、通り魔だの凶悪な罪人がいるというのに……」

( <●><●>)「今回だけで、警察官としてあるまじき失態を、私はいったいいくつ重ねたことか」

( <●><●>)「つくづく、あの人には適わないと実感させられます」

( <●><●>)「一年。一年もすれば、きっとこの度のようなミスは犯さないでしょう」

( <●><●>)「それまで、私は精進を絶やさず続けるつもりです」

( <●><●>)「……来年の今頃は、私は無能な部下でも持っているのでしょうかね?」



.

631 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:00:39 ID:6eG89uCkO
 














.

632 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:05:06 ID:6eG89uCkO
 







 腹を襲った包丁による傷は思っていたより深刻で、担当医に無茶をしないよう注意を受けた。
 だが、ショボーンは申し訳なさそうに笑むだけで、反省の姿は見られない。
 担当医もあっさりとした淡泊な人で、一通り検診を終えるとすっかり寡黙になった。
 担当医と看護士に連れられ、病室に安置されると、彼女もすぐに病室を退室していった。


〈::゚−゚〉「あくまで幾針も縫った傷だ。無茶をしないよう頼む」

(´・ω・`)「すみませんね」

〈::゚ー゚〉「だが、あれほどの傷で危篤に曝されないというのは、なかなかのタフネスだ」

(´・ω・`)「包丁を抜かなかったのが、幸いしたのでしょう」

〈::゚ー゚〉「いや、医師は、あなたの意志が強かったが故に、身体もそれに応えてくれたのだろうと思っている。
     日頃から身体を顎使するようでは、身体も応えてくれないものだ」

(´・ω・`)「はは、そうかもしれませんね」


.

633 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:06:30 ID:6eG89uCkO
 


 視認できるかわからない程微かに笑んで、担当医は言った。
 思わずショボーンも笑い、口を手の甲で軽く覆った。
 少しの間は現場には戻れないが、それでも従来より早くは復帰できるだろう、とは担当医の言葉だ。

 とはいえ、腹の傷の痛みも収まっており、それ以外はいたって健全なため、
 今すぐにでも新しい事件の捜査に向かいたくて身体がうずうずしてしまう。
 自分を根っからの刑事肌だとはわかっていたが、却ってそれのせいで歯痒い気持ちになるのは、少し皮肉なものだ。

 ショボーンが苦笑いして腹の包帯をさすっていると、担当医が真面目な顔になって、話を切り出した。


〈::゚−゚〉「それと、面会に来たという人がいるので、通してもいいだろうか」

(´・ω・`)「? かまわないですよ」


 誰だろうと思ったショボーンだが、許諾した。
 「どうぞ」と担当医が言っている間に首を傾げていると、扉が開かれ、顔馴染みの人物が入ってきた。
 その人物と入れ替わりに、担当医は足早に病室を去っていった。


.

634 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:08:49 ID:6eG89uCkO
 


( ゚д゚)「おかげんはいかがですか」

(´・ω・`)「ぎょろ目か」


 扉の向こうから、東風がやってきた。
 灰色のコートは血の色に染まっていない。
 彼は、今回は血を見せずにいられたのだ。

 その彼の後ろから、更に身体の大きい若手が入ってきた。
 東風とは違い、悲しくも傷を負ってしまっている。
 だが、顔色を窺う以上は大した傷ではなさそうだった。


( <●><●>)「私もいますよ」

(´・ω・`)「ワカッテマスも。銃創は大丈夫なのか?」

( <●><●>)「弾丸は無事摘出できたし、警部ほどの重傷じゃあないです」

(´・ω・`)「このやろう」


 隣に立っていた東風が、思わず噴き出した。
 「手術直後なんか、脂汗びっしりでしたよ」と東風が言うと、
 若手は「ちょっと、ミルナさん」と無表情で制した。

 ショボーンも笑い、一段落した所でショボーンが口を切った。


(´・ω・`)「それはそうと、なぜあんたはあの時高速艇まできたんだ。
.      結果としては助かったけど――」

( ゚д゚)「なんと言いますか」


.

635 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:11:02 ID:6eG89uCkO
 

 少し焦らして、東風は言った。


( ゚д゚)「長年の刑事のカン……ってやつですかね」

(´・ω・`)「カンか」

( ゚д゚)「自分とイツワリさんにあって、ワカッテマスには無いものですね」

( <●><●>)「精進します」

(´・ω・`)「よく言うよ」


 再び、ショボーンは笑った。
 声はあげずに、口角を吊り上げていた。
 いったい、若手にカンが身につくのはいつ頃か。
 考えてみると、年老いた若手の姿が浮かんだのだ。

 今回の事件では、若さについていくつもの苦悩が若手を襲っていた。
 キャリアに物を言わせる東風とは対照的で、戦果も対照的に違っていた。
 若手も、彼のミスのお陰でオオカミ鉄道の爆弾事件を未然に防げ、
 また高飛びの可能性も真っ先に考慮できたため、決して成果なしという訳ではなかったが。


 すると、急に若手は態度を改め、堅い口調で話を切り出した。


( <●><●>)「それよりも警部」

(´・ω・`)「なんだい」


( <●><●>)「伊達クール氏の公判の日が決まりました」


.

636 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:14:17 ID:6eG89uCkO
 


(´・ω・`)「………ああ、そうか」

( <●><●>)「それで、警部に証言台に立っていただきたいと、検事が――」


 若手が話している途中で、病室の扉が開かれた。
 ノックもなかったので三人はなんだと思った。
 その人物を見て、若手は「丁度来たようです」と言った。


(´・ω・`)「……あなたは」
  _
( ゚∀゚)「ども」


 暗い紅色のスーツで、茶の長髪を揺らす男がやってきた。
 不遜な態度で歩き、短く挨拶を交わした。
 途端にショボーンも不機嫌な表情になった。

 今の若手の話の流れ、そして紹介からするに、件の検事だろうと予測がついた。
 だが、容姿を見るだけではとてもそのような人間には見えなかった。

( ゚д゚)「あなたは、確か」
  _
( ゚∀゚)「『法廷のナイト』こと、検事をしている長岡ジョルジュです。ま、何卒よろしく」


 三十路前に見える容姿の長岡は、東風にも不遜な態度を見せて挨拶をした。
 歳で言うと、二十程は違うように思われる。
 が、東風は表情を変えなかった。


.

637 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:16:45 ID:6eG89uCkO
 
  _
( ゚∀゚)「エース、どこまで言った?」

( <●><●>)「まだなにも言ってないですよ」
  _
( ゚∀゚)「そっか」


( ゚д゚)「……エース?」

(´・ω・`)「そうだ、思い出した」


 長岡は、若手の事を「エース」と呼んだ。
 当人がそれに違和感を示さなかった事から、公認のニックネームのようだ。
 しかし、ショボーンや東風はその徒名を知らなかった。

 東風がなんだと思っていると、ショボーンが手を打った。
 長岡の事をまじまじと見ながら、ゆっくり言葉を並べた。


(´・ω・`)「長岡検事とワカッテマス……。
.      確か、『法曹界のブラックジャック』と呼ばれていたっけな」

( <●><●>)「ご存じでしたか」

(´・ω・`)「理論派のワカッテマスと行動派の長岡検事のコンビ、何度か法廷で見たことがある。
.      有罪判決への黄金パターン、と呼び声が高い」
  _
( ゚∀゚)「あの『偽りを見抜く敏腕刑事』さんに褒められると、さすがに嬉しいもんですわ」

(´・ω・`)「して、そんな検事が僕になんの用でしょう」


.

638 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:18:44 ID:6eG89uCkO
 

 ショボーンは先を促した。
 特に長岡と雑談を交わすつもりはないのだ。
 凛々しい眉を顰めて、長岡は言った。

  _
( ゚∀゚)「伊達氏が、準強姦罪及び戸籍の偽造の容疑で公判にかけられるのはご存じですね?」


 それは、ショボーンの入院が決まった初日に知らされたニュースだった。
 さすがのショボーンも、これには驚きを隠せなかった。
 つーの公判はもう少し先だが、伊達はあまりにも早すぎる。
 何か裏がありそうだ、と思っていたのだ。
  _
( ゚∀゚)「実を言うと、密輸や裏帳簿の噂もあったんですよアイツには。
     なかなか捜査のメスを入れられなかったところ、
     奴に拘留させる理由をつくっていただいて、感謝しますよ」

(´・ω・`)「………」


 無論、ショボーンはそんなつもりは全くなかった。
 つーを追い詰める上で明かされた真実だが、伊達をいたぶるつもりは毛頭なかった。


.

639 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:20:43 ID:6eG89uCkO
 

 まるで、最初から伊達を捕まえる理由をつくるためにショボーンが
 出向いたかのような物の言い方だったため、ショボーンも東風も不機嫌になった。
 よく法廷で共にする若手は、こんな長岡に慣れているのか、平生のままでいる。


(´・ω・`)「それで、どうかしましたか」
  _
( ゚∀゚)「伊達をよく知る人物として、証言台に立ってもらいたいのですよ。
     さんざん黒い事をしでかしてきた、伊達の素性を明かすつもりで、ね」

 眉ひとつ動かさず、ショボーンは聞いた。
 同じ顔色のままで、ショボーンは冷静に言った。


(´・ω・`)「生憎ですが、そんな事実など存じてませんから」
  _
( ゚∀゚)「頼みますよ、イツワリ警部」

(´・ω・`)「ワカッテマスだけで事足りるでしょ」

( <●><●>)「そうですよジェイ。警部は見ての通り、怪我人ですから」


 若手が長岡の事をジェイと言った時、東風はまたも不思議な気分になった。
 だが、ジェイとエースでブラックジャックか、と思って、独りでに納得していた。


.

640 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:23:20 ID:6eG89uCkO
 
  _
( ゚∀゚)「そうかいそうかい。またブラックジャックで挑む法廷か」

( <●><●>)「悔しそうですね」
  _
( ゚∀゚)「俺とお前がでると、ぜってー有罪判決もぎ取れるからつまんねーんだよなあ」

( <●><●>)「法廷はゲームじゃないですよ」
  _
( ゚∀゚)「わかってら。まあ、イツワリ警部さんも考えといてくださいね」

(´・ω・`)「………」


 ショボーンは、始終黙っていた。
 個人的に、長岡を好きになれないというのもあるが、
 どこか、長岡が怪しい人物のように感じられたのだ。
 その、脳内の霞がかって実体の見えない何かを考えていると、自然と無口になっていた。

 長岡がショボーンのベッドを離れ、病室を出た。
 去り際に「頼みますよ」と言い残して。


.

641 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:27:59 ID:6eG89uCkO
 

  「きゃっ!」
  _
( ゚∀゚)「いてッ」


 長岡が病室を出ようとすると、出入り口で人とぶつかった。
 声の高さからして女性、しかも高校生とみた。
 急いでいたようで、室内の様子を確認する事がなかったため
 結果長岡に体当たりするはめになってしまったようだった。

  _
( ゚∀゚)「……ちっ」

(゚、゚;トソン「ごご、ごめんなさい……」


 舌打ちだけをして、長岡は帰って行った。
 揉め事には至らずに済んだようだったが、後味が悪い。

 ぶつかった女子高生は、頭を何度か下げた。
 上下に揺れるポニーテールを見て、若手は「あッ」と言った。


( <●><●>)「あなたは、確か」

(゚、゚トソン「あ、刑事」

( ゚д゚)「ん……? 客人ですかな?」

(´・ω・`)「あ、僕の知り合いだよ。まさかお見舞いにきてくれたの?」


.
643 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:34:54 ID:6eG89uCkO
 


 オオカミ鉄道の「あさやけ4号」にて出会した都村トソンが、ショボーンの病室までやってきていた。
 東風には面識がないようだったが、若手とショボーンは何度か彼女と会っている。
 なぜか不幸を招く体質で、よく身の回りに厄介な事や事件を引き起こすらしい。

 ショボーンが腹に怪我を負ったと聞いて、やってきたそうだ。
 見舞いの品はなかったが、ショボーンにとっては来てくれるだけでありがたかった。
 中年の男と話すよりかは、女子高生と話したいのだ。


(゚、゚トソン「暇だったから来てみました」

(´・ω・`)「愛の旅行は?」

(゚、゚;トソン「だから愛なんかじゃないです! 私は男の人とお付き合いしたいのです」

( <●><●>)「なんか凄いこと言ってますが」

(´・ω・`)「この子にカレシなんてむりむり」

(゚、゚;トソン「どういう事でひゅ…すか!」

(´・ω・`)


(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃ! 噛んでやんの!」

(゚、゚;トソン「その笑い方、直したらどうですか!?」


.

644 名前:後日談 ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:41:26 ID:6eG89uCkO
 

( <●><●>)「そういえば、久々に警部が笑う姿みましたね」

( ゚д゚)「ん……? あ、ああ……言われてみれば」

(´-ω-`)「ひゃひゃ……え、そうだっけ?」

(゚、゚トソン「あ、そうなんですか」


 ショボーンは、ここ数日間、今のように笑った試しがなかった。
 普段の彼なら、捜査一課内でも鈴木や若手をからかって嫌な笑い声をあげる筈なのだ。
 それが、最近ではその真逆となっていた。


(´・ω・`)「どうしてかな。結構笑ってるつもりなんだけど」

( <●><●>)「寧ろ笑わないでくれるとありがたいです」

(゚、゚トソン「さんせーい」

(;´・ω・`)「どういう意味だ!」

( ゚д゚)「ま、笑うのは健康にいいですがね」

(´・ω・`)「だけどなぁ……そっか、笑ってないか……」


 自分でも、笑ってないなという自覚は、薄々はあったに違いない。
 しかし、その原因をショボーン自身は見いだせなかった。
 思い当たる節が見あたらなかったのだ。

 だが、それもその筈である。
 冒頭でも言ったように、ショボーン警部は疲れていたのだ。









.
645 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2012/03/11(日) 01:52:39 ID:6eG89uCkO
 



………。




疲れたぁぁぁぁぁぁッぁあ!

というわけで、(´・ω・`)は偽りの根城を突き止めるようです はおしまいです。
「え、これで終わり?」と不完全燃焼な方がいるのではと思われますが、このお話を書く前から
>冒頭でも言ったように、ショボーン警部は疲れていたのだ。
で締めくくろうと決め、冒頭で最初の伏線を張ってたので、変えるつもりはありませんでした。
「ぶひゃぶひゃ笑ってたショボーンはどこ行った」との声を頂戴したので、
急遽後日談の内容を変更しましたが…(本当は長岡が去るところで切ってた)。
そんな後日談で萎えてしまった方、申し訳ありません。


後書きと言っても特に私からは言うことはないので、代わりに
「○○ってあれの伏線だった?」とか「パセリの被り物の中身は?」とか、
質問あれば答えて、それを後書き代わりにしたいです。質問ください。お願いします。
あと、序盤から常に伏線を敷き詰めた感があるので、読み返していただくと「ああ、これか」となるところがあるかもです。


なにはともあれ、香りから続けてまとめてくださったブーン芸さんと文丸さん、
香りよりよくなったと褒めてくださった皆様、ツンツンデレデレしつつも投下を待ってくださった皆様、地の文について指摘してくださった皆様、
そして偽りの根城を読んでくださった皆様方に、全身全霊を籠めてお礼申し上げます。
まことにありがとうございました!

戻る

inserted by FC2 system