- 303 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:45:38
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「―――な」
(;´・ω・`)「なんですって!? 詳しく聞かせてください!!」
ショボーンは思わず、取り乱してしまった。
ずいと身を乗り出して、ヲタに顔を近づける。
シンと静まり返った部屋の中で、ショボーンの荒い呼吸だけがきわだっていた。
(∴);◎∀◎∴)「ちょ…順を追って説明するから、落ち着いてほしいヲタ」
(´・ω・`)「……失礼」
はッとして、いまの自分の取り乱した様を、詫びる。
きわだっていた呼吸はすぐに存在感を消して、再び静けさが鼓膜を襲うようになった。
ショボーンは乗り出した身を引っ込め、言われたとおり、落ち着いた。
ヲタが口を切ったのは、それを確認してから、だった。
(∴)◎∀◎∴)「……小生が席をはずしたのには、理由があるヲタ」
(´・ω・`)「両替の話は嘘、と」
(∴)◎∀◎∴)「そのとおりヲタ。でも、聞いてほしいヲタ」
(´・ω・`)「わかってますよ。どうぞ」
.
- 304 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:46:10
ID:yIq06eDU0
-
(∴)◎∀◎∴)「バトルを終えたところで、ふう、と一息ついたヲタ」
(∴)◎∀◎∴)「すると気のせいか、物音が聞こえたんだヲタ」
(´・ω・`)「どんな音でした? また、それはどこから?」
(∴)◎∀◎∴)「クレーンゲームが並んでるところだヲタ。音は……」
(´・ω・`)「……? 思い出せませんか?」
(∴)◎∀◎∴)「……わ、笑わないヲタ?」
(´・ω・`)「ええ。どうぞ」
なぜ、ここでもったいぶるのだろう――
このときはそう思ったショボーンだが、続けて放たれたヲタの言葉を聞いて、それも納得した。
ヲタは頬を紅潮させ、にやにやとしたのだ。
(∴)*◎∀◎∴)「お……おにゃのこの……喘ぎ声みたいな、声だったヲタ」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「は?」
.
- 305 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:46:46
ID:yIq06eDU0
-
思わず、ショボーンがきつく言う。
一瞬、冗談にしか聞こえなかったのだ。
「おにゃのこ」とは、「女の子」と言ったつもりなのだろう。
そこまではよかったのだが、「喘ぎ声」のほうに納得がいかなかった。
しかし、その反応を読んでいたのか、ヲタはすぐさま困ったような顔になった。
(∴)◎д◎∴)「ほッほんとうに聞いたんだから、しかたがないヲタ!」
(´・ω・`)「……」
(∴)◎д◎∴)「悲鳴をかみ殺したような……」
(∴)*◎д◎∴)「ちょ、ちょっぴりえちぃ声でござった」
(´・ω・`)「は、はあ。それで」
(∴)◎∀◎∴)「気になって、小生は声のしたほう……クレーンゲームのエリアまで行ったヲタ」
(´・ω・`)「じゃあ、僕が来たときにあなたがいなかったのは」
(∴)◎∀◎∴)「たぶん、そのときだヲタ」
(´・ω・`)「わかりました」
.
- 306 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:47:18
ID:yIq06eDU0
-
(∴)◎∀◎∴)「えっと……そ、そうそう!」
(∴)◎∀◎∴)「最初は、その…けッけしからん声は、聞き違いだと思ったんだヲタ」
(´・ω・`)「まあ、そう思いますよね」
(∴)◎∀◎∴)「だから、こっそり、そこに行って真偽を確かめようと思ったら……」
(´・ω・`)「……」
(;´・ω・`)「…! ま、まさか、そこに――」
(∴)◎∀◎∴)「モナー氏の後ろ姿と……黒髪の女性が、見えたんだヲタ」
(;´・ω・`)「………一応聞きますと、その二人は、いったい……?」
問われるだろう、と思っていたことを問われて、ヲタは上機嫌になりながら答えた。
(∴)*◎∀◎∴)「せッ………、……」
(´・ω・`)「……せ?」
(∴)*◎∀◎∴)「セップンを……交わしてたヲタ!!」
(´・ω・`)
.
- 307 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:47:49
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「え?」
(∴)◎д◎∴)「ほんとうヲタ! なんだ、その目はァ!」
(´・ω・`)「……いやいや、その」
ショボーンは、自分の耳を疑いながら、呆れた様子で訊いた。
しかし、どうやら聞き違いではなかったようだ。
(´・ω・`)「セップンって……その。いわゆる、キスですか?」
(∴)*◎∀◎∴)「そそッそんなストレートに言わないでほしいヲタ!
. こう見えて小生、ふぁーすときっすはまだでござって……」
(´・ω・`)「……えぇぇ…?」
にわかには信じがたい話だった。
モナーと黒髪の女性は、どうやら接吻を交わしていた、というのだ。
黒髪の女性、と言えばのー、ガナー、レモナの三人がいるが
三人とも、モナーの妻や愛人、というわけではない。
ガナーなら娘だから、考えられるかもしれなかったが
それでも、モナーの性格や二人の仲を考えると、考えにくい話だった。
しかし、ヲタが嘘をついているようには見えなかった。
そうでなければ、顔を真っ赤にしながらここまで饒舌に話すわけがないだろう。
そのため、よけいに、ショボーンは混乱してきた。
.
- 308 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:48:37
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「一応、見た光景を、もっと詳しく話してください」
(∴)◎∀◎∴)「いいヲタが……細かいところまでは見れてないヲタよ?」
(´・ω・`)「え? どうして」
(∴)◎∀◎∴)「小生、クレーンゲームのガラスケース越しで見たんだから。
しかも、そのお二人さんは、そこから五メートルほど離れたところにいたんだヲタよ」
(´・ω・`)「(ガラスケース越し……とすると、見える光景はぼやけることになるな)」
(´・ω・`)「しかし、だったらなぜ、二人がキスをしてた、ってのがわかったんですか」
(∴)*◎∀◎∴)「そりゃあ、二人が顔を……あッあそこまで、近づけてたら……」
どうも、話がすっきりしない。
ショボーンは本題を衝くことにした。
左手を右肘に、右手を顎に当て、ショボーンは改まった声を出す。
.
- 309 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:49:09
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「その光景を、あいまいでいいので詳しくお願いします」
(∴)◎∀◎∴)「えっと……モナー氏が小生に背を向けてて、その向こうに、おお、おにゃのこが……」
(´・ω・`)「モナーさんはどんな体勢でしたか?」
(∴)◎∀◎∴)「そうヲタね……。相手の頭を両手で押さえて……みたいな感じだったような」
(´・ω・`)「…!」
(∴)◎∀◎∴)「おにゃのこのほうも首から上が見えていたヲタけど……
位置的に、どーもセップンをしているようにしか見えなかったヲタねぇ。
さッ、最近のワカモノは、貞操が乱れているから困る! けしからんでござる!!」
(´・ω・`)「(若くないだろ、モナーさんは……)」
しかし、そこまで具体的に言えるということは、やはり、あるがままを見たのだろう。
認めたくなかったが、ショボーンは彼の証言を認めざるをえなかった。
認めるからこそ、彼はひとつ、確認しなければならないことがあった。
言うまでもない。その「おにゃのこ」が誰か、である。
(´・ω・`)「ところで、ヲタさん」
(∴)◎∀◎∴)「ヲタ?」
(´・ω・`)「ずばり訊きますよ」
(´・ω・`)「その、相手の女性………だれ、でしたか」
(∴)◎∀◎∴)「……」
.
- 310 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:49:44
ID:yIq06eDU0
-
先ほどから、彼は「おにゃのこ」と、代名詞しか使っていなかった。
確かにこの男が、今日このホテルにいる女性と面識を持っているとは思えない。
しかし、それでも名前――せめて、どんな人か、は言えるのではないか。
そう思ったがゆえの、質問だった。
しかし、ヲタはヲタで、なんとかそれを思い出そうとしているようだが
ショボーンの納得のするような答えを言うことは、できなかった。
(∴)◎∀◎∴)「髪の毛が黒くて、スーツみたいな畏まった服を着てた……までは、わかってるヲタけど……」
(´・ω・`)「ここに女性は四人いますが、その条件だけだと三人が当てはまりますよ」
(´・ω・`)「秘書の、レモナさん。娘のガナーさんに、えっと……のーさん」
(´・ω・`)「一方で、レモナさんとガナーさんは、ずっと10Fにいた、とされている。
. 少なくとも、17時20分頃だと、この二人が10Fにいたことは証明されていますね」
(´・ω・`)「……とすると、その女性は、のーさん……ってことで、大丈夫ですか?」
ショボーンは、自然な推理をして、そう訊いた。
トソンの証言から、17時以降にはレモナもガナーもいたことは確かだ、となっている。
一方でトソンの髪は、茶髪だ。
とすると、その接吻をしていた、とされる女性は、のーしかありえない――となるのだ。
しかし、ショボーンが驚いたのは、ヲタの反応だった。
彼は、目を丸くしたのだ。
.
- 311 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:50:19
ID:yIq06eDU0
-
(∴)◎∀◎∴)「………え?」
(´・ω・`)「え?って……」
(∴)◎∀◎∴)「いや、その……」
(´・ω・`)「なんですか?」
(∴)◎∀◎∴)「のー氏って……あの、おばちゃんヲタよね?」
(´・ω・`)「ま、まあ。三人のなかで年長であることは確かです」
(∴)◎∀◎∴)「ヲタも、そのおにゃのこが誰か、を考えてたんだヲタけど……」
(∴)◎∀◎∴)「のー氏だけは、違う。……そう思っていたヲタよ」
(´・ω・`)「……え?」
(∴)◎∀◎∴)「なぜかはわからないけど……あの人じゃあないな、って、気がするんだヲタ」
(´・ω・`)「いや、そんなはずが」
ショボーンが動揺する。
ヲタはそれを見て、なぜそう言えるのかを自分なりに説明しはじめた。
(∴)◎∀◎∴)「18時になってみんなが10Fに集まったヲタね?
そのとき、おにゃ……女性を、見てったんだヲタ」
(∴)◎∀◎∴)「で、のー氏を見たとき……『コレジャナイ』感がしたヲタ。
なぜかはわからないヲタが……」
(´・ω・`)「い、いやいやいや……だとしたら、誰だと言うんです」
(∴)◎∀◎∴)「小生に聞かれても困るヲタ。誰かわかってたらそう言うヲタよ」
(´・ω・`)「………妙だ」
.
- 312 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:50:50
ID:yIq06eDU0
-
むろん、証言とは当人の主観を介して話されるものであるため、
鵜呑みにするわけには、いかないときがある。
そして、平生のショボーンなら、今回がそうであろう、と割り切っていた。
しかし、どうしてか、今回はそれを信じるしかないような気がした。
ヲタは、接吻という、非日常的な光景を目の当たりにしている。
見慣れない光景だからこそ、そこに主観を挟む余地など、ないのではないか――そう思ったのだ。
やっぱり、そう反応されるか――ヲタはそう思って、ため息をついた。
うなだれるかのように、少し、顔をうつむける。
そして、力なく、声を発した。
(∴)◎∀◎∴)「……わかってるヲタ。どーせ、信じてもらえないヲタ。
だから最初は話すつもりなんてなかったヲタ」
(´・ω・`)「そ、そんなことは」
(∴)◎∀◎∴)「とりあえず、小生が話せるのはここまでヲタ」
(´・ω・`)「ちなみに、ソレを見てからの行動は?」
(∴)◎∀◎∴)「もう一度JKFをやろうと思ったけど、そんな気になれなかった上に
もう時間も押してきてたゆえ、小生はそのまま10Fに向かったヲタ」
(´・ω・`)「時間は覚えてますか?」
(∴)◎∀◎∴)「わからない……いや、17時40分くらいでござろうか。たぶん」
(´・ω・`)「まあ、わりと早い時間だった――と認識しておきます」
.
- 313 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:51:23
ID:yIq06eDU0
-
(∴)◎∀◎∴)「……け、刑事さん」
(´・ω・`)「はい」
(∴)◎∀◎∴)「もう話すことはないヲタ?」
(´・ω・`)「(一応、なにをしていたかも聞いたし……ないかな)」
(∴)◎∀◎∴)「ないなら、はやく出てってほしいヲタ」
( ;´・ω・)「え、えぇぇ……、……」
(´・ω・`)「………! いや、ヲタさん、まだ、話していただなければならないことがあります」
(∴)◎д◎∴)「ヲタぁぁ……」
そこで、ショボーンは思い出した。
自分がここにきたときの、ヲタの奇行を。
(´・ω・`)「ヲタさぁん。あなた、僕に隠し事をしてると、ロクでもないことが起こりますよ」
(∴)◎д◎∴)「おッ脅しヲタか!?」
(´・ω・`)「違いますよ。ひとつ、あなたは隠し事をしている」
(∴)◎д◎∴)「小生の見たことは、全部言っ――」
「違います」。
冷静に、しかし不敵な笑みを浮かべて、ショボーンは短く言った。
.
- 314 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:51:54
ID:yIq06eDU0
-
(∴)◎д◎∴)「じゃ、じゃあ――」
(´・ω・`)「あなた、誰かを待ってますね?」
(∴);◎д◎∴)「を、ヲタッ!!? どーしてソレを……あっ」
(´・ω・`)「僕がここにきたとき、すぐに扉は開かれた。
. どうも、すぐに応対できたのは、グーゼンとは思えないのですよ。
. 開いたかと思えば、僕の顔を見ては、すぐに閉めたんだから」
(´・ω・`)「とすると、あなたは誰かを待ってて、ドアの前で待機していた、と捉えるほうがいい。
. ……あなたが呼んだ、誰かを待つため、に」
(∴);◎д◎∴)「………」
(´・ω・`)「そこで、だ」
(´・ω・`)「誰を呼んだのか――それを、言ってもらいましょう」
(∴);◎∀◎∴)「事件とはカンケーないヲタ!」
その動揺は、「なにかあるな?」とショボーンの目を光らせるのに、充分だった。
そして、やはり言ってはくれないか、と思いつつ、ショボーンは腕を組んだ。
目を細め、睨むかのようにヲタを見る。
.
- 315 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:52:32
ID:yIq06eDU0
-
(´-ω-`)「(……もっとも、だいたいの予想はつくんだけどな……)」
(∴);◎∀◎∴)「た、確かに小生は人待ちヲタ! でも、でも……ッ」
(´・ω・`)「(さっきこの人が口走った、あの言葉。
. 本来なら、言うはずのない言葉が、全てを物語っている)」
(´・ω・`)「(一方で、いま思えば、あのときのあの人の言葉も、これを示唆してたのかもしれん)」
(´・ω・`)「(動機も……まあ、この人だったら、言わなくてもわかるな)」
脳内で推理を再確認する。
その間、ヲタはそわそわとして、なんとかショボーンを追い返そうとする。
それを煩わしく思ったショボーンは、本人にはかわいそうだが、その隠し事を暴いてみせようと思った。
事件とはなんら関係がない。
ただ、胸中のモヤモヤを晴らしておきたかったのだ。
(´・ω・`)「まあ、あなたが誰を呼んだのか、だいたいの目星はついてますよ」
(∴);◎∀◎∴)「ヲタァァ!?」
(´・ω・`)「当ててみせましょう」
(∴);◎∀◎∴)「わかるはずが――」
(´・ω・`)「都村、トソン。違いますか?」
.
- 316 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:53:08
ID:yIq06eDU0
-
(∴) 3Д 3∴)「ッ!!」
(´・ω・`)「(やっぱり……)」
(∴)ぅДて∴)
(∴)◎∀◎∴)
(∴);◎д◎∴)「ど、どーして!!」
(´・ω・`)「さっき、あなたがめがねを飛ばしながら絶叫したときのこと、覚えてないのですか?」
(∴)◎д◎∴)「……?」
言われて、ヲタはつい先ほどのことを思い出す。
次々と嘘が見抜かれていって、取り乱したとき――
(∴) 3Д 3∴)『をたあああああああああああああああああああああああああああ
ああああおおおおおおををををアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアイヤアアアアアアアアアアアああああああああああああ
ああああしぃちゅわああああああああああああん!!にぎゃああ
あああひぎィィィィトソンちゅわあああああああん!!!いやああ
あああおおおおおおおヲヲヲヲヲッヲオオオオおおおッッ!!!』
.
- 317 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:53:41
ID:yIq06eDU0
-
(∴);◎∀◎∴)「…ッ!」
(´・ω・`)「見ず知らずの人の名を、それもちゃん付けで呼ぶとは、考えにくい。
. すると、あなたが彼女となんらかの形で接した、と考えるのが適当」
(´・ω・`)「また、僕たちが3Fで会ったときも、あなたは『しぃ』と叫んでいた。
. おそらく、ゲームのキャラクターか、アイドルの彼女か……
. 共通していることは、『自分が好いている』であろうということだ」
(∴);◎∀◎∴)「ぐ…、……ゥゥゥウっ!!」
(´・ω・`)「ということは、あなたはピンチに陥ると、つい自分の好いている
. 女性の名を叫んでしまうクセがあるのかもしれない」
(∴);◎∀◎∴)「所詮、貴殿の憶測ッッ! ショーコは……」
(´・ω・`)「一方で、だ。少し前、僕はあの子の部屋を訪れたんですが……
. あの子もあの子で、妙なことを口走ってたんですよ」
(゚、゚トソン『あ、刑事だったんですか――』
(´・ω・`)「――彼女は当初、その来訪が違う人のものかと思っていた。
. でも、実際は僕ともう一人の刑事だったから、こう言ったんだ。
. そう考えると、全ての辻褄があう」
(´・ω・`)「あんたは、トソンちゃんが可愛いばっかりに
. おしゃべりでもしようと思ったんでしょーけどな、
. 向こうはあんたに構ってくれないから、それでソワソワしていた――」
(´・ω・`)「そんなところでしょ?」
ショボーンは、じゃっかんムキになりながら、そう言った。
その迫力は、犯人を追い詰めるときに通じたものがあった。
ショボーンが無駄に時間を費やしてまでこれを明かしたかった理由は、ショボーン本人にはわからなかった。
.
- 318 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:54:25
ID:yIq06eDU0
-
(∴);◎∀◎∴)「ちょ、ちょっと!! なれなれしく、あの天使ちゅわんを――」
(´・ω・`)「ちなみに、僕、あの子の友だちだけど」
(∴)◎∀◎∴)「!」
(´・ω・`)「…?」
(∴)◎д◎∴)「た、頼みます! トソンちゅわ……トソン氏と、ををを、をしゃべりを……」
(´・ω・`)
(∴)◎д◎∴)「せ、せめて、アイサツくらいはしたい所存でござる…!!」
(´・ω・`)
(∴)◎д◎∴)「……け、刑事殿?」
(´・ω・`)
(´・ω・`)
(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!! ぶッひゃひゃひゃ!」
(∴)◎д◎∴)
.
- 319 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:55:02
ID:yIq06eDU0
-
(´;ω;`)「あ、あんた、なんかアヤシイなって思ったら、ぶひゃひゃ!
も、もしかして、ヒトメボレ……ぶっひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
(∴);◎д◎∴)「わわわ、笑うでないヲタ!! 小生は、小生はァァァッ!!」
(´;ω;`)「ち、ちなみに、……ぶひゃ…、あの子のどこがイイのよ」
(∴);◎д◎∴)「トソン氏をばかにするでない!!
. トソン氏は、二次元から舞い降りた、小生の天使だヲタ!!」
(´;ω;`)「てん……ぶっひゃひゃひゃ!!」
(∴)◎∀◎∴)「茶色がかった、艶のある髪! ポニーテール!!
澄ました顔に、控えめのムネに、イイ感じのくびれ!!
高飛車でエスなお嬢様かと思いきや、実はなかなかのおてんば!!
顔、性格、どれひとつをとっても、スンバラシイものヲタよ!!」
(´・ω・`)「ちなみに、あの子はあんたのこと、キショイって言ってたけどな」
(∴)◎∀◎∴)
(´・ω・`)
(∴)◎д◎∴)
(´・ω・`)「?」
(∴)◎д◎∴)
.
- 320 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:55:36
ID:yIq06eDU0
-
(∴)。◎д◎。∴)「を、ヲタアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
(´・ω・`)「ごめん、嘘」
(∴)◎д◎∴)
(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃ! あ、あんた面白いな!」
(∴)◎д◎∴)「帰れ! さっさと帰るヲタ!!」
(´;ω;`)「ぶひゃひゃひゃひゃ! い、言われな、くても帰るヲタよ!」
(∴)◎д◎∴)「小生のアイデンティティーを奪うでないでござる! 帰るヲタ!」
(´ぅω-`)「あーはいはい……。
(ふう……すっきりした)」
どうやら、ショボーンは、ヲタにただならぬストレスを感じていたようだ。
それを発散し終えて、ショボーンは言われた通り、ソファーから腰を持ち上げた。
ヲタがご立腹のなか、ショボーンはやれやれ、と思い、部屋から出ようとする。
.
- 321 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:56:19
ID:yIq06eDU0
-
そのときだ。
ショボーンの携帯電話が、音を鳴らした。
(´・ω・`)「……? もしもし」
『け…警部!』
(´・ω・`)「……どうした?」
電話をかけてきたのは、いまは2Fにいるであろうワカッテマスだった。
受話口から聞こえてくる彼の声は、ただならぬ焦燥を帯びていた。
事件発生直後、車を出動させることが不可能とわかったときに彼が見せた焦燥よりも、それは強かった。
笑っていたのも忘れて、ショボーンはすぐに、まじめな顔になる。
それを見て、ヲタも、なにかがあったのだろうか、と思った。
『いま、どちらに…?』
(´・ω・`)「ん…? ヲタさんの部屋だから……8FのI号室かな」
(∴)◎∀◎∴)「……?」
ショボーンは、どうしてそれを訊くのか、と思った。
また、こうも焦燥を帯びた声で質問をされることそのものに違和感を持った。
『でしたら、彼を連れて、いますぐ2Fにまできてください!』
(´・ω・`)「待て、なにがあったんだ」
.
- 322 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:56:51
ID:yIq06eDU0
-
たとえ焦るべき状況であっても、近くに自分以上に
焦っている人を見ると、相対的に落ち着く、ということがある。
ワカッテマスが大げさなほどに周章を見せるため、
ショボーンは逆にだんだんと平静を取り戻しつつあった。
――が、そうしていられるのも、ここまでだった。
説明を促されて、ワカッテマスが呼吸を整えてから、なにがあったのか、を説明しだした。
『笑野さんが………』
(´・ω・`)「プギャーさんが?」
『笑野さんが、転落死しました』
.
- 323 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:57:24
ID:yIq06eDU0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
イツワリ警部の事件簿
File.3
(´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
. 第七幕 「
次なる被害 」
.
- 324 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:57:55
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「…………な」
(;´゚ω゚`)「なにイイイイイイイイイイイイイッッ!!?」
――突如としてワカッテマスが放った言葉は、
ショボーンの築き上げた平静を崩すのに、充分すぎた。
予想外を衝かれたショボーンが、絶叫する。
ショボーンが電話を切って、ヲタを引きつれ、
部屋を飛び出してはエレベーターに乗って2Fのボタンを押したのは
ショボーンの絶叫による反響が消えかかったときだった。
ワカッテマスが続けて何か言おうとしたのを、通話を切ることで遮る。
ここで呑気に話す前に、自分が現場に赴いたほうが早い、と思ったのだ。
ヲタは、見た目どおりというべきか、走るのが苦手だったようだ。
いきなりショボーンに連れられエレベーターのところまで走っただけで、呼吸を乱していた。
――いや、それはただ、急に走ったから、だけではないだろう。
わけもわからず引っ張られエレベーターに乗り込まされたヲタは、
エレベーターが5Fを経過するあたりで、ようやく声を絞り出すことができた。
.
- 325 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:58:26
ID:yIq06eDU0
-
(∴);◎∀◎∴)「な……にが、あったヲタか?」
(´・ω・`)「……プギャーさんを、知ってるか?」
(∴)◎∀◎∴)「副支配人でござろう?」
(´・ω・`)「その、プギャーさんが………亡くなった」
(∴)◎∀◎∴)「……」
(∴);◎д◎∴)「―――ナアアアアッ!? まことでござるか!?」
(´・ω・`)「あいにく、僕の部下にユーモアをわきまえたやつはいなくてね。
. 加えて、あいつは、人が死んでるかどうかの判断を違えるようなやつじゃない。
. 信じたくないけど……たぶん、ほんとうなんだろうね」
(∴);◎д◎∴)「……………っ!」
ショボーンは、何度も言うように、刑事だ。
こういった、突然の誰かの死など、何度も経験している。
しかし、ヲタは、たとえ一般人とはどこかズレていても、あくまで一般人なのだ。
モナーが刺されたと聞いただけで動揺しているのに、続けざまに
こうも人が死んでしまっては、とても平生のままでいられるわけがないだろう。
口があんぐりと開かれては、そのまま、顎がガクガクと震えている。
全身の筋肉が強張っているのも見ると、やはり、それほどショックなのだろう。
ヲタのそんな様態を見て、ショボーンも、ただならぬものを感じていた。
.
- 326 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:58:56
ID:yIq06eDU0
-
やがて、エレベーターが2Fにつく。
扉が開かれると同時に、ショボーンは全速力で、言われた場所へと向かった。
――いや、ワカッテマスは2Fとしか言っていない。
それなのに、ショボーンが現場を言われるまでもなく特定した理由は、その死因にあった。
転落死。
2Fにおいて――いや、このホテルの敷地内において、
唯一転落死を実現させることのできる場所がある。
それが、2Fの、屋外――露天風呂、である。
転落死、となると、自然と現場は2Fの北側しかありえなくなる。
ヲタがひいひいと言いながら必死についてくるが、彼のことなどまったく意に介さず
ショボーンは、さげられた案内標識と記憶を頼りに、現場へ急行した。
現場には、四人の男がいた。
一人は、深緑のロングコートを羽織る、若手ワカッテマス刑事。
一人は、腰を抜かして声にならない悲鳴をあげている、大神フォックス。
一人は、目を丸くして、ただ「それ」を見ている榊原マリントン。
最後の一人は――
( ゙Д゙)
( ;´・ω・)「……プギャー…さん……」
.
- 327 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 20:59:27
ID:yIq06eDU0
-
頭蓋骨が砕かれたのか、頭部から大量の血を流してはうつぶせで倒れている、笑野プギャー副支配人だった。
現場は、露天風呂の広がるエリアに、入ってすぐのところである。
2Fの屋内、それも露天風呂専用の更衣室を抜けた先であり、
扉を開いた先で、プギャーが血を流して横たわっていた、というわけだ。
ショボーンがすぐさま駆け寄る。
開かれた扉からは吹雪の成す冷たい風が吹き込まれてくる。
が、それをまったく気にしないようすで、ほかの三人は、皆違ったかたちで焦燥をあらわしていた。
ワカッテマスが、駆け寄ってきたショボーンと合流した。
少しして、ヲタが遅れてやってきた。
これで、現場には六人の男が集ったことになる。
( <●><●>)「死因は、高所からの転落によるものと見られます」
(´・ω・`)「……なにがあったのかを、説明してくれ」
落ち着き払った様子で、ショボーンが言う。
ワカッテマスもそれにあわせた調子で、答えた。
.
- 328 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:00:03
ID:yIq06eDU0
-
( <●><●>)「はい。あのあと、大神さんと私でここまできたのですが、
鍵がかかっていて、入るに入れない状態だったんです」
(´・ω・`)「鍵…?」
( <●><●>)「豪雪のため、榊原さんがあらかじめ鍵を閉めていたようで。
当時も、おそらく榊原さんなら鍵をなんとかしてくれるだろう、ということで
10Fのホールに向かってから、彼に事情を説明した上でここまできてもらった」
( <●><●>)「そこで、榊原さんと大神さんが、雪と温泉をめぐって言い争いをはじめたのです。
温泉に入らせてくれ、雪がひどいからだめだ……そんなやりとりを」
(´・ω・`)「で、その最中に……?」
( <●><●>)「ええ。なにか、大きなものが落ちてきて……
なんだと思ってガラス越しに見てみると、笑野さんが、頭から血を流していたわけです。
……あとは、すぐさま屋外に出て、私が彼を調べてみた、と」
(´・ω・`)「わかった。ほかになにか、わかったことは」
( <●><●>)「まだ死因の特定しかしていないので、ほかのことはさっぱりですが……
これだけは、断言できます」
(´・ω・`)「なんだ?」
( <●><●>)「これは、他殺です」
.
- 329 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:00:56
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「……ッ」
ショボーンが、舌打ちをする。
だがそれは、ただ殺人が起こったから――というわけではなかった。
かねてより抱いていた「不吉な予感」が、かたちこそ違えど、的中してしまったからだ。
連続殺人――なのかは不明だが、それに似たような現状であることには違いない。
そしてやはり、モナーの事件と一緒で、犯人はこのホテルのなかに、いる。
この二点が、ショボーンに舌打ちをさせたのだ。
(´・ω・`)「一応、聞く。どうしてだ」
( <●><●>)「首元に、赤い痕が見られました。おそらく、犯人は当初、絞殺を試みたようです」
(´・ω・`)「首……」
( <●><●>)「しかし、あくまで死因は転落。
窒息が原因ではないので、おそらくは、絞殺を試みるも失敗、
そのため犯人はとっさに彼を突き落とすことにした――
そう見るのが、妥当でしょう」
ワカッテマスは、勝手な憶測でものを話すような男ではない。
彼の推理の背景には、ほぼ必ず、なんらかの根拠がつきまとってくる。
今回の場合もそうで、ショボーンは、その推理でただしいのだろう、と判断した。
そこでショボーンがとった行動は、ワカッテマスの推理にケチをつけたりするものではなかった。
また被害者が出て、その加害者がこのホテル内にいるのだ。
ショボーンとしては、そちらを確保するほうが優先課題となっていた。
屋外、つまり被害者であるプギャーのもとに駆け寄りながら、ショボーンは大きな声を出した。
(´・ω・`)「ワカッテマス、いますぐホテル内にいるみんなをここに集めろ!」
( <●><●>)「わかりました」
(´・ω・`)「僕はこっちで捜査をしておく。いない人よりもいる人を優先して、ここに連れてくるんだ」
( <●><●>)「はッ」
.
- 330 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:01:59
ID:yIq06eDU0
-
ワカッテマスが威勢よく返事をすると、コートを風にのせてはその場をあとにした。
そしてショボーンは、すぐさまなにがあったのかを把握するよう努める。
フォックス、マリントン、そしてヲタは、ただ吹雪の音を聞きながら、だんまりとするしかできなかった。
(´・ω・`)「……確かに、首に痕が残ってるな」
ショボーンが最初に目をつけたのは、そこだった。
首に、なにやら赤い痕が残っている。
しかし、紐かなにかではなく、手で絞められたであろうことがわかった。
そこから、犯人のあきらかな殺意を汲み取ることができた。
頭蓋骨が割れているのは、屋外、つまり露天風呂のエリアの地面が
硬い石のようなものでできているから、もあるのだろうが
おそらく、高所から突き落とされたというのもあるだろう。
すなわち、彼は、2Fで殺されたわけではない、ということだ。
彼が突き落とされた場所、つまり犯行現場も、特定しなければならない。
次にショボーンは、頭部ではなく全身に目を遣った。
服装は最後に会ったときと何ら変わらぬ、スーツ姿である。
頭部以外には、異常と呼べる異常はなかった。
(´・ω・`)「……ん?」
すると、死体から少し離れた位置に、なにやら光るものが見えた。
露天風呂に似つかわしくないものなので、嫌でも目に入る。
近寄ってそれを手にとって、嘗め回すように見る。
それは、金色に輝くネックレスのようなもので、鎖の部分がちぎれている。
が、よく見ると、これはネックレスではなく、ロケットであることがわかった。
同じく金色の容器があって、それが開閉されるようになっている。
ショボーンは、おそるおそる、そのロケットを開いた。
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「……ッ! これは……、………?」
.
- 331 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:02:31
ID:yIq06eDU0
-
ロケットのそのちいさな容器のなかには、ある人物の写真がおさめられていた。
ショボーンもよく知っている、人物である。
ショボーンは、無意識のうちに、その人の名を発していた。
(´・ω・`)「これは……どういうことだ」
(´・ω・`)「モナーさん………?」
――ロケットには、緒前モナーの写真がおさめられていた。
それも、若かりし日のものと思われる。
目の横に小じわがないのが、いい証拠だ。
背景を見る限り、おそらく公園で撮られたものであろうことまではわかるが、それ以上のことはわからない。
しかし、写っているのがモナーだ、というのがわかっただけで、充分だった。
それよりもショボーンが不思議に思ったことがある。
現在ホテルにいる人物のなかで、このロケットを所有する可能性のある人が、一人しかいない、ということだ。
(´・ω・`)「……ガナー…さん?」
緒前ガナー。モナーの、娘。
マリントンもモナーとは二十年以上の仲だと聞くが、彼がロケットを持つとは思えないだろう。
すると、やはりガナーの私物、と考えるのが適当だった。
しかし、すると新たな疑問が生まれる。
まず、このロケットの持ち主が犯人であることに関しては、疑問はなかった。
首を絞めようとした、しかし失敗した――というのを考えると、
殺されると思ったプギャーが抵抗しようとして、このロケットを引っ張った、と自然に推理できるのだから。
問題はそちらではない。
持ち主が犯人――とすると、ガナーが犯人となるのだが、
そうだとすると動機がわからない≠フだ。
ガナーとプギャーに、なにか関係があっただろうか――
.
- 332 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:03:04
ID:yIq06eDU0
-
なにはともあれ、ロケットが引きちぎられたのを見ると、犯人とプギャーは争った、と見るのが妥当だ。
そう思い、ショボーンは再び、プギャーの身体を調べ始めた。外傷を探すのである。
しかし、五分たっても、それらしきものは見当たらなかった。
そうなると、別の推理が浮かび上がってくる。
犯人とプギャーは、別に争ったわけではなかった――という、推理が。
犯人は一度、プギャーの首を絞めようとした。
しかしプギャーは、それを振り払い、危険を察知したためか、反撃にでた。
が、そこで犯人は咄嗟に、プギャーを窓の外に突き落とそうとした。
そこでプギャーは手を伸ばして、犯人のつけていたロケットを握り、そのままここまで転落してしまった――
ショボーンがそこまで推理すると、ある疑問にひっかかった。
もしこれが実際に起こっていたとするならば、犯人は見えるところにロケットをさげてないといけない。
しかし、ショボーンの記憶がただしければ、誰も、ロケットはおろかネックレスすらつけていないのだ。
するとますます、このロケットの持つ意味がわからなくなってきた。
(´・ω・`)「……」
そのため、ショボーンは視点を変えた。
ロケットや転落死という状況ではなく、
「殺されたのはプギャーなのである」という点から思考をめぐらせることにした。
というのも、ショボーンは、殺されたのがプギャーと聞いて、ただならぬものを感じたのだ。
ワカッテマスからプギャーの名を聞かされたとき、彼は、まっさきに「あのこと」を思い出していた。
あのこと、つまり、アサピーの証言である。
アンモラルグループとWKTKホテルとがつながっているのではないか、という「トクダネ」だ。
その、プギャーにまつわる「トクダネ」を聞く限り、ショボーンも、
モナーの事件に関して、プギャーが怪しいものだとばかり思っていた。
しかし、そのプギャーが、殺されてしまった。
これはなにを意味するのだろうか――
.
- 333 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:03:41
ID:yIq06eDU0
-
( <●><●>)「警部ッ!!」
(´・ω・`)「…お」
――しかし、それ以降の推理は、ワカッテマスの声によって遮られた。
もう、ワカッテマスが、人を引き連れて帰ってきたのだ。
しゃがみこんでいたショボーンは立ち上がって、彼と合流する。
ワカッテマスの後ろには、集められたであろう人が息を急き切っていたのだが
しかし、その人数を数えると、ショボーンは怪訝な気持ちになった。
あきらかに、頭数が足りないのだ。
というのも、ワカッテマスは二人しか連れてきていなかったのである。
(-@∀@)「また人が……」
( ´W`)「………プギャーさん…!」
アサピー記者と、黒井シラヒーゲ館長だ。
血を流すプギャーを見て、二人とも、より深刻な顔つきとなった。
ショボーンがその二人を見て、事情をワカッテマスに訊いた。
(´・ω・`)「おい、僕は全員を集めろ、と言ったぞ」
( <●><●>)「申し訳ありません。部屋に残っていたのは、この二人しかいなかったのです」
(´・ω・`)「……なに?」
ショボーンは、その言葉にどきっとした。
つまり、ここにいない人物は、ワカッテマスがやってきたとき、部屋を留守にしていた、ということである。
.
- 334 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:04:21
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「ガナーさん、のーさん、レモナさん、そして……トソンちゃん」
(´・ω・`)「どうして、女性だけが皆、消えたっていうんだ」
( <●><●>)「わかりません」
ワカッテマスが申し訳なさそうに言う。
この短時間で、その女性四人を見つけることはできなかったようだ。
ショボーンの指示はあくまで「短時間で」ということだ。
だから、せめてこの二人だけでも連れてこよう、と思い至ったのだろう。
その点については、ショボーンは彼を叱ることができなかった。
(´・ω・`)「ほかの人はともかく……レモナさんは、バーにいたはずだぞ。
. バーにも当然行ったんだろうな」
( <●><●>)「そのことなのですが……」
(´・ω・`)「?」
( <●><●>)「バーにももちろん向かったのですが、鍵がかけられていましたよ」
.
- 335 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:05:18
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)
(´・ω・`)「な……なんだって!?」
( <●><●>)「緒前モナーさんのこともあるから、
てっきり、警部が手回しされたものかと思ったのですが……」
きょとんとして、ワカッテマスが言う。
どうやら、そう信じては疑っていなかったようだ。
(´・ω・`)「ばかな。僕はなにもしてないぞ!」
(; <●><●>)「……なんですって!?」
そこでようやく、ワカッテマスも事の重大さを把握する。
ショボーンとワカッテマスは、胸に、不吉では済まされない何かを抱き始めていた。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。
彼らは、常に、迅速な行動を要求されているのだ。
そのため、ショボーンは、その要求されている次なる行動にでた。
(´・ω・`)「とりあえずだ。パンフレットを出してくれ」
( <●><●>)「なにをするおつもりですか」
(´・ω・`)「決まってるだろ。プギャーさんが、どこから突き落とされたのかを調べるんだよ!」
(´・ω・`)「幸い、この出入り口の真上に位置する部屋を調べるだけでいいんだ。
. あとは、その部屋の主を……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「言うと思っとったがの、それは無理ですぞ」
(´・ω・`)「……マリントンさん?」
――が、ショボーンのその行動を否定したのは、それまでずっと黙っていた、マリントンだった。
冷静なまま、しかし早口で、言葉をつむいでいく。
.
- 336 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:06:11
ID:yIq06eDU0
-
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「この露天風呂への扉もそうですがの、
今日みたいに雪のひどい日には、客室のベランダへの戸は開かんようになっとるんですわ。
ここは鍵で開くようにしとりますが、客室の場合は、スタッフルームで
ロックを解除せんことにはベランダに出られんようになっとる」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ほいで、ほかに人を突き落とせそうな場所は、ありませんぞ」
(;´・ω・`)「……なんですって…!? じゃあ、プギャーさんはどこから突き落とされたって言うんですか!」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「わ、ワタシに聞かんといてくだされ! ワタシはただ、鍵を預かっとるだけですわ」
もし客室からの殺害が無理だとなったら、いったいどうやってプギャーは突き落とされた、というのだ。
それが、この場における、一番の謎だった。
すぐさま、記憶を遡らせる。
客室以外に、プギャーの頭蓋骨を割るほどの高所で、人を突き落とせる場所など、あったのか――
その答えを真っ先に見つけ出したのは、マリントンでもショボーンでもない、ワカッテマスだった。
( <●><●>)「――ッ! 警部、あるじゃないですか、ひとつだけ『人を突き落とせそうな場所』が!」
(´・ω・`)「な、なに? どこだ」
ショボーンが、その言葉に反射的に食いつく。
( <●><●>)「制御室ですよ! 鍵を紛失した、って言ってたじゃないですか!」
|;;;;| 。゚っノVi ,ココつ「……あッ! そ、それや! アソコなら確かにいけるぞ! 窓もあるさかいに!」
.
- 337 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:06:57
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「制御室……っ!」
言われてすぐに、ショボーンはパンフレットのページを繰った。
5F、北側に配置されている制御室の位置と露天風呂の位置を見比べると、ちょうど二つが重なることがわかった。
そしてワカッテマスの言うように、制御室の鍵は、紛失――いや、何者かに盗まれていた。
それを考えると、プギャーが突き落とされたという犯行現場は制御室で間違いない、とショボーンは思った。
そこからの彼の行動は、はやかった。
パンフレットをワカッテマスに押し付け、そのまま駆け出そうとしたのだ。
思わずワカッテマスが、呼び止める。
( <●><●>)「どうしたのですか!」
(´・ω・`)「制御室を調べるんだよ!」
( <●><●>)「ですが、鍵が開いているとは限りません!」
(´・ω・`)「でも、行かないことにはわからないだろ。それに……」
( <●><●>)「……それに?」
(´・ω・`)「女性をエスコートしないで、男は務まらないからね」
( <●><●>)「……警部?」
(´・ω・`)「じゃあ、あんたは引き続きそこを捜査して、取り調べも行ってくれ。
. 心配するな、すぐに戻ってくる」
(; <●><●>)「けッ警部!」
ショボーンはワカッテマスの制止に応じず、そのまま走り出した。
今度は、ワカッテマスがどんなに大きな声を出そうとも、止まることはなかった。
そしてワカッテマスは、非論理的ながらも、なにか嫌な予感を覚えた。
なにも根拠はないが――なにか、悪いことが起きるのではないか。そんな、不吉なものを。
.
- 338 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:07:37
ID:yIq06eDU0
-
◆
エレベーターを降りたショボーンが真っ先に向かおうとしたのは、当然制御室だ。
北側に位置するので、エレベーターを降りて、少し走らないといけない。
ワカッテマスの抱いたそれとは少し違う、不吉なものを胸に抱きながら、一歩を踏み出した。
(´・ω・`)「………ッ」
そこで、ショボーンの足はぴたりと止まった。
なにかあった、というわけではない。
ショボーンの脳裏を、あるものが掠めたのだ。
(´・ω・`)『ガナーさん、のーさん、レモナさん、そして……トソンちゃん』
(´・ω・`)『どうして、女性だけが皆、消えたっていうんだ』
( <●><●>)『わかりません』
(´・ω・`)「(……そうだ、トソンちゃんも部屋にいなかったんだ)」
そうわかると、同時に、別の面で気になることが浮かんできた。
トソンの取り調べを終えたときの、彼女とのやり取りである。
.
- 339 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:08:25
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)『……だから、部屋で待ってなさい。部屋にこもってたら、
. 少なくともトソンちゃんがなにかひどい目に遭うことはなくなるさ』
(゚、゚トソン『……』
(゚、゚トソン『……はい』
(´・ω・`)「(部屋にいなかった、ってことは、当然どこかに出かけていた、ということだけど……)」
(´・ω・`)「(トソンちゃんの性格から考えて……
. この現状で、特に意味もなくぷらぷらと外にでるとは思えない)」
(´・ω・`)「(だとすると……)」
ショボーンは、向かう先を修正して、南に走り出した。
5-Fは、エレベーターを降りて少し南のところにある。
そして、程なくして、そこについた。
扉に耳をつけるが、中から物音はしない。
しかしショボーンは、中にトソンがいるのではないか、と推理したのだ。
ノックをして、「トソンちゃん」と声をかけながら、思考にふける。
(´・ω・`)「(ワカッテマスはおそらく、何回かノックをして、いないと判断したら次の部屋に向かった)」
(´・ω・`)「(でも、ほんとうはトソンちゃんは中にいたんじゃないかな)」
(´・ω・`)「(たぶん……彼女は、アレだ。寝てるわ、これ)」
.
- 340 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:09:01
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「トソンちゃん、いる? 僕だよ、ショボーン」
彼女の性格を考慮して、ショボーンは、トソンは寝ているか風呂に入っているかではないか、と思った。
そのため、危険を察知して、念のため5-Fに立ち寄ろうと考えたわけだ。
ノックの音が、その場にむなしく響く。
仮に寝たり風呂に入ったりしていても、つい先ほどワカッテマスがやってきたわけだから、
もしショボーンの読みどおりトソンが室内にいたら、いまの応答には反応できるだろう、と思う。
しかし、それも三十秒したあたりから、どうも訝しげに思えてきた。
足音はおろか、彼女の声すら聞こえてこないのだ。
トイレにいたとしても、この呼びかけは聞こえるだろう。
もし彼女が室内にいたら、何らかの反応を示すと思うのだが――
と考えたところで、ショボーンは諦めた。
ひょっとすると、考えにくいことではあるが、やはりトソンは客室から出て、どこかに向かったのではないか、と。
しかし、それはそれで、困ったものだとショボーンは思った。
彼女は、日頃からショボーンと出会うのを見ればわかるように、根っからの「事件体質」なのだ。
考えたくないことだが、もしかすると、トソンは――
(´・ω・`)「……待て待て…。さすがに、それはジョーダンじゃないぞ……」
(´・ω・`)「じゃあ……どこに行った、というんだ」
トソンは、今回の事件の犯人が誰であれ、誰とも、大したつながりを持っていない。
そのため、本件が計画性をはらんだ連続殺人事件だとして、彼女が狙われる可能性はないだろう。
――しかし、運が悪くも彼女が事件を目撃したり、などしてしまえば、その推測は意味をなくす。
そう都合よく事件を目撃する、とは思えないが、彼女の場合だとありえてしまうのだ。
彼女とただならぬ「因縁」にあるショボーンは、そう考えると、全身の毛穴が開き、どこか寒気を覚えた。
.
- 341 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:09:48
ID:yIq06eDU0
-
(;´・ω・`)「…………クソッ!」
だが、たとえトソンが心配だとしても、自分は刑事だ。
私情に踊らされて一人の少女を優先させる、なんてことがあってはだめだ。
ショボーンは、刑事として、
ワカッテマスの言葉のなかにあった、ひとつの違和感――
( <●><●>)『バーにももちろん向かったのですが、鍵がかけられていましたよ』
その、鍵の閉められたバー、について調べなければならない。
ショボーンの推理――いや、「不吉な予感」がただしければ、あることを断言できるからだ。
(´・ω・`)「(そこに……犯人が、いる)」
――まず、バーには、モナーの重体が横たわっている。
が、救急車の到着が望めない今、おそらく、もうモナーは命を落とすだろう。
一方で、バーには、第二の被害者、プギャーがいた。
彼が殺されたのを踏まえると、どうも、バーの鍵が閉まっていた、というのは、不自然すぎる。
この三転を踏まえれば、非論理的であろうと、そこに犯人がひそんでいる――と考えられるのだ。
ショボーンは刑事としてのカンとその義務を感じて、5-Fから走り出そうとした。
バーも気になるが、まずは制御室だ。
トソンのことは、とにかく、無事を祈るしかない。
自分のなかの邪念を振り払いながら、ショボーンは駆け出した―――
(゚、゚トソン「あ、警部」
(´゚ω゚`)「ハァァ―――ン!!?」
(゚、゚;トソン「ッ!?」
.
- 342 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:10:19
ID:yIq06eDU0
-
――直後、背後から、トソンに声をかけられた。
一瞬思考回路が停止し、ショボーンは大げさに転んだ。
駆け出そうとした足が、もつれたのだ。
ショボーンの突然の転倒に、トソンがぱたぱたと駆け寄ってくる。
「痛てて…」と額をさすりながら、ショボーンは起き上がった。
そして、傍らにやってきたトソンの顔を見る。
なにがあったのかわからない、と言いたげなその表情が、ショボーンの緊張を少しほぐした。
(゚、゚トソン「えっと……なにしてるんですか?」
(´・ω・`)「こっちのセリフじゃ……いてて」
(´・ω・`)「さっき、ワカッテマスが部屋に向かったろ。なにしてたんだ」
(゚、゚トソン「…? あ、ああ……」
すると、トソンはきまりの悪い顔をした。
(゚、゚;トソン「えっと……えっと、ですね」
(´・ω・`)「…?」
(゚、゚;トソン「その……」
時間がないんだ。
そう言おうとしたときに、トソンがようやく、答えた。
.
- 343 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:11:13
ID:yIq06eDU0
-
(゚、゚;トソン「部屋に、オートロックがかかる、だなんて知らなくて……」
(´・ω・`)
( <●><●>)『これ、オートロックですよ。皆さんには知らせてないのですが、大丈夫ですかね』
(´・ω・`)『………まさか、そんな「ドジ」が……、……あっ』
(´・ω・`)
(´・ω・`)「嘘……だろ……」
(゚、゚;トソン「で、で、どうしよう、と思って……」
(´・ω・`)「なんで、部屋を出ようと思ったんだい?
. 部屋にいな、って言ったつもりだったけど……」
(゚、゚トソン「その……あの、からだのおっきな男の人、いるじゃないですか。あの人に、パーティのとき呼ばれて。
. 最初は会いに行くのをためらってたんだけど、心細くなったから会ってみようかな、って」
(´・ω・`)「でも、いなかった」
(゚、゚トソン「はい。だから帰ってきたんですが……その、ドアが閉まってて」
(´・ω・`)「ふーむ……」
辻褄はあっている――というより、トソンならやりかねないことだったため、何ら不審なことはなかった。
それよりも、その「トソンを呼んだ人」が気になった。
その人物について、一人、真っ先に浮かんだ人がいたため、
ショボーンはその予想があっているかを確認する。
.
- 344 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:11:45
ID:yIq06eDU0
-
(´・ω・`)「……ところで、その、君を呼んだ人って、デブ?」
(゚、゚トソン「デ……ウエストの、大きな人」
(´・ω・`)「もしかして、めがねをかけて、息が臭い人?」
(゚、゚トソン「あ、はい。……息は知らないですけど」
(´・ω・`)「……やっぱり」
トソンの言う特徴を聞くと、真っ先に、あの人物が浮かんだ。
トソンにひとめぼれした、格闘ゲーマー、自称「ヲタ」だ。
そしてその人物は、みごとに、ショボーンの予想と合致していた。
(´・ω・`)『まあ、あなたが誰を呼んだのか、だいたいの目星はついてますよ』
(´・ω・`)『都村、トソン。違いますか?』
(∴) 3Д 3∴)『ッ!!』
(´・ω・`)『(やっぱり……)』
(´・ω・`)「あんニャろ……」
(゚、゚;トソン「…? ……?」
(´・ω・`)「…いや、こっちの話。続けて」
そうとわかった途端、ショボーンはヲタに苛立ちを感じた。
その理由ははっきりとしないのだが、生理的に、彼を悪く思った。
が、それはいま考えるべきことではないので、ショボーンは先を促す。
そもそも、ここでしゃべっている暇すら、本来はないのだ。
.
- 345 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:12:26
ID:yIq06eDU0
-
(゚、゚トソン「それで、9Fにスタッフルームがあるってパンフレットにあったんで
. そちらに向かったんですが、鍵が閉まってて、しかたなく帰ってきたんです」
(´・ω・`)「そもそも、スタッフはいないじゃないか」
(゚、゚;トソン「……はっ!」
ショボーンはその反応を見て、呆れ顔になる。
このときだけは、今が緊急事態なのを忘れられた。
しかし、それもほんの一瞬だ。
トソンの事情を把握できたところで、ショボーンは本題に戻った。
(´・ω・`)「……まあ、いいさ。トソンちゃん、はやく君も2Fに向かうんだ」
(゚、゚トソン「そういえば……なにか、あったのですか?」
(´・ω・`)「人が死んだ」
(゚、゚;トソン「………ッ!?」
その事実を、ショボーンはなんのためらいもなく、言った。
その理由のうちのひとつは、トソンは事件慣れしているから
ショックは受けるにしてもそれほど大きくならないだろう、と考えたため。
もうひとつは、へたに真実をごまかすより、あるがままを伝えて2Fに行かせようと思ったためである。
のー、レモナ、ガナーの三人が未だ行方不明で、その三人のなかに二人を襲った人がいる可能性も高い。
一方で、2Fにはワカッテマスもいるため、ここでうろちょろしているよりもそちらのほうが安全だ、と思ったのだ。
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- 346 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:13:10
ID:yIq06eDU0
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だが。
ショボーンは、トソンという人物を、読み違えた。
(´・ω・`)「僕は、ちっくら捜査を――」
(゚、゚;トソン「い、いやです! 怖い! 私もお供します!」
(;´・ω・`)「なッ――。いいから、はやく2Fにいけ! あっちにはワカッテマスもいるぞ!」
(゚、゚;トソン「でも怖いです! 警部と一緒がいい!」
(;´・ω・`)「―――ッ」
「2Fに死体がある」。
それを知ってしまったトソンは却って、ワカッテマスのところにいるのを拒んだのだ。
先を急ぐ事態であるからといって、ショボーンは、ひとつ面倒なミスを犯してしまった。
本来なら、無理を言ってでも彼女を2Fに連れて行くべきなのだが
トソンの事情を把握する上で、彼は無駄に時間をとってしまった。
背に腹はかえられない――制御室の方角をちらちらと見ながら、ショボーンはそう腹をくくった。
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- 347 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:13:41
ID:yIq06eDU0
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(´・ω・`)「………走るぞ」
(゚、゚トソン「へ?」
(´・ω・`)「これは、『捜査』だ」
(´・ω・`)「今からは、僕はショボーンじゃなくて、イツワリ警部だ」
(´・ω・`)「君の安全は……保証できないからね」
深刻な声で、ショボーンは、そう言った。
トソンに、事の重大さを知らしつけようと思ったのだ。
だが。
ここでもショボーンは、トソンという人物を読み違えた。
彼女はショボーンの読みとは対照的に、不敵な笑みを浮かべたのだ。
(゚、゚トソン「……わかりました」
(´・ω・`)「来い」
(゚ー゚トソン「………はい」
こうして、イツワリ警部の捜査を、臨時的に、都村トソンが手伝うことになった。
向かう先は、5F北に位置し、笑野プギャーを突き落としたと考えられる制御室だ。
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- 348 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:14:23
ID:yIq06eDU0
-
◆
制御室の鍵を持っているのは、制御室の鍵を「盗んだ」人――
つまり、プギャーを殺害した犯人であると思われる。
そして、犯人ということは、現場が捜査されることを望むとは考えにくい。
そのため、制御室には鍵がかけられているだろう――
そんな懸念が、少なからずショボーンのなかにはあった。
しかし、それは杞憂で終わった。
制御室のノブを捻ってもなんの抵抗もなく、そのドアは開かれたのだ。
ショボーンは少し虚を衝かれた気になりつつも、中に足を踏み入れる。
トソンも、ぜえぜえと荒い呼吸をかみ殺しつつ、ショボーンに続いた。
(´・ω・`)「……窓は、ある」
(゚、゚;トソン「…?」
ショボーンが真っ先に目をつけた点は、そこだった。
部屋の北側に、大きな窓が、それも、開かれていたのだ。
そこから、キタコレの冬を痛感させる、冷たい風が少し入ってきていた。
雪は東西にふぶいているため、吹雪が北側に位置するこの窓に直撃することはない。
しかしそれでも、やはり極寒を連想させるにふさわしい寒さが、室内を支配していた。
トソンもそれは同じようで、軽装だった彼女は、腕を胸の前で交差させた。
ショボーンはすぐにその窓に駆け寄った。
窓から身を乗り出そうとはしない。さすがに、それは危険だと思われたためだ。
窓の下で、ショボーンはしゃがみこむ。
ここに、なにかの痕跡が残っていればいいのだが――
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- 349 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:14:55
ID:yIq06eDU0
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(´・ω・`)「………」
(゚、゚トソン「警部、私はなにをしたら……」
(´・ω・`)「…………」
(゚、゚トソン「け、警部?」
トソンが、訝しげに思ってショボーンのもとに駆け寄る。
傍らに就いたとたん、ショボーンはちいさく、しかし重みのある声を発した。
(´・ω・`)「……ない」
(゚、゚トソン「?」
(´・ω・`)「くそ……指紋採取できないのが痛いな」
(゚、゚トソン「警部……」
そこで、ようやくショボーンは彼女の存在を思い出した。
柔和な笑み、の裏にきまりの悪いものを浮かべ、ショボーンは応じた。
(´・ω・`)「ああ、ごめん。なんだっけ」
(゚、゚トソン「私、なにをしたらいいかなって……」
(´・ω・`)「(自分からついてきてこれかい)
. じゃあ、ここに、なにか妙なものがないかを探してくれ」
(゚、゚トソン「みょー?」
(´・ω・`)「『あれ、これってなんだろう』ってなものだね」
言うと、トソンはさっそく、室内をきょろきょろ見回し始めた。
そしてすぐに、トソンは「あっ」と声をあげた。
ショボーンは「いきなりか」と、少し期待を寄せて、躯の向きをそちらに向けた。
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- 350 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:15:39
ID:yIq06eDU0
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(´・ω・`)「なんだい」
(゚、゚;トソン「警部、みょーな機械がいっぱいあります」
言われて、ショボーンはその「機械」の数々に目を遣った。
そして、ショボーンは呆れた。
ここは制御室とあるが、かつてマリントンが言ったように、ここは、このホテルの電力をまかなう場でもあった。
動力室と制御室を兼ねた部屋、という捉え方のほうが正確だろう。
機械が作動している証拠なのだろうか、ゴゴゴゴ、といったような音が断続的に聞こえてくる。
そして、トソンが指をさしたものは、その機械の数々だった。
いくつものつまみやレバー、ボタンのある機材のような大きな機械が、目についた。
(´・ω・`)「……そりゃあ、ねえ」
(゚、゚トソン「あ……なんか、カウントダウンしてるものも」
(´・ω・`)「勝手にさわっちゃだめだよ」
(゚、゚トソン「え、ちょ……」
ショボーンはトソンを適当にあしらって、捜査に戻った。
彼には部下に白髪混じりの刑事がいるのだが、こういう、捜査をしても
なにも見つかりそうにないときに、よく彼の顔が脳裏に浮かび上がる。
やつなら、頼まなくても、ここからなにか有益な情報を見つけ出してくれるだろう。
VIP県警の捜査一課で、唯一自分よりも年かさの増している刑事なだけに、そういった面に関してはワカッテマスよりも信頼が置けた。
だが、歳が歳であるため、定年退職に向けてカウントダウンを刻みつつあるのだが――
(´・ω・`)「―――え」
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- 351 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:16:15
ID:yIq06eDU0
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トソンの言葉と自分の思考のなかの「カウントダウン」というワードが重なったとき、
ショボーンは、ぴたりとしている作業を止めた。
いや、止めさせられた、といったほうがいい。
ショボーンは、がばっと上体を起こして、もう一度トソンのほうに向いた。
しかし今度は、立ち上がって彼女のもとに駆け寄りながら、である。
(´・ω・`)「と、トソンちゃん。カウントダウンって、なんの話?」
(゚、゚トソン「いや、そこの……」
(´・ω・`)「どれ―――」
内心、心臓の鼓動が速まってくる。
どきどきとしながら、しかし慎重さを欠いた所作で、ショボーンは彼女が指をさすほうを見た。
十字に伸びた、黄色と黒のバー。
それに包まれるようなかたちで、黒い箱のようなものが、機材の上に鎮座している。
その十字のバーの中央には、黒字に赤い文字で、数字が映されていた。
そして、その数字は、ストップウォッチのように、デジタルで時間を表示していた。
ストップウォッチと違うのは、それが、カウントダウンを刻んでいる、ということだった。
ショボーンが目をつけたのは、そのディスプレイが、残り五秒を示していたということだ。
――時限爆弾。
.
- 352 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:17:44
ID:yIq06eDU0
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(;´゚ω゚`)「―――ッ!! 危ないッ!!」
(゚、゚;トソン「えッ……?」
――ショボーンのそこからの行動ははやかった。
トソンを抱きかかえ、すぐに制御室から飛び出したのだ。
思わず壁に激突する、ショボーン。
その、直後。
(;´゚ω゚`)「――――ッ」
(゚、゚;トソン「―――!」
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- 353 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/09(土) 21:18:39
ID:yIq06eDU0
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制御室を中心に、大爆発が起こった。
イツワリ警部の事件簿
File.3
(´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
第七幕
「 次なる被害 」
おしまい
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