- 577 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:13:51
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚トソン「!!」
(;´・ω・`)「押せっ!」
炎との距離、目測―――
(>、<;トソン「――ッ!!」
―――トソンが、少し荷台から距離をとったかと思えば
ショボーンの合図と同時にダッシュし、荷台に突進して、体当たりを決めた。
またショボーンも荷台を横から持ち、前に滑らせる。
エレベーターに入って、荷台を完全になかに入れてから
トソンを引っ張り、同時に扉を閉じるボタンを押す。
.
- 578 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:14:22
ID:6.gT5oTU0
-
――その、わずか一瞬あとを
――――炎が駆け巡っていった。
.
- 579 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:14:53
ID:6.gT5oTU0
-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
イツワリ警部の事件簿
File.3
(´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
終幕 「
愛されたくて 」
.
- 580 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:15:29
ID:6.gT5oTU0
-
(;、;トソン「……ああああああああああっ!!」
(´・ω・`)「よく、がんばった。君のおかげで、みんな助かった」
エレベーターの扉が閉まったところで、トソンはその場にへなへなと座り込んだ。
すると、とたんに目から涙が大量に溢れてくる。
ショボーンがそれに気づくと同じ頃、トソンは大きな声をあげて泣き始めた。
先ほどまでずっと緊張状態にあったなか、こうして危機から脱出できたとわかると
その緊張はみごとにゆるみ、ショボーンは脱力、トソンは号泣――へと至ることになった。
(´・ω・`)「…ひゅー」
額から脂汗がぶわっと噴き出してくるのが、わかった。
スーツの腕の部分でさッとそれを拭い、壁に背をあずける。
すると、そんな間抜けな声が、無意識のうちに出てきた。
しかし、それを情けないとは思わなかった。
ただ――安堵を、実感することができた、のだから。
(;、;トソン「…っ……、…ッ………!」
( ;´・ω・)「そろそろ泣きやみなって。みんなと合流するんだから」
(ぅ、tトソン「……げいぶッ…に、は……わがんない……、…ッんです……!」
(´・ω・`)「ハハ……そーだな。確かに、そうだ」
.
- 581 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:16:02
ID:6.gT5oTU0
-
――まず、制御室に仕掛けられた、爆弾。
それが爆発することで、メインの動力源は破壊され、ショボーンとトソンは逃げ道を失った。
続いて、バーから聞こえた、発砲事件。
レストランからの裏口を発見したおかげで、なんとか殺人事件を食い止めることができた。
バーのなかに入ることこそできたが、次は、興奮したレモナと対峙。
間近で銃声を鳴らされては、とても冷静なままではいられない。
そこから、モナーを殺した犯人――のーとの、対決。
このときの彼女の気迫に、トソンはずいぶんと参っていただろう。
そして、煙と炎が、同時にやってきたのだ。
逃げようにも、動ける人が大人一人と女子高生一人。
とてもではないが、この状況から脱出するのは、ほぼ無理だった。
フォックスの言っていた、荷台の存在に気づかなかったら。
フォックスの言葉とのーの行動から推理した結果、その荷台を見つけ出すことで
そこから、いったんは悪魔の手から逃げ出すことはできた。
このときは、これで脱出できる――と、二人とも、信じて疑わなかった。
しかし、だ。
最後の最後で待ち構えていたのは、人間でも自然でもない、機械。
「モナー」という人間を知っていなければ、やはり、ここでおしまいだったに違いない。
そんな、いくつもの苦境を、一時間もしないうちに経験してきたのだ。
ショボーンならともかく、まだ成人すらしていないトソンが、それらに精神的に耐えられるはずもない。
.
- 582 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:16:32
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「…ついた。降りるよ」
(゚、゚;トソン「ま、待ってください」
チャイムではなく、ブザーが鳴って扉が開かれた。
二人は荷台を持ち、完全に扉が開かれたときに、ゆっくり引っ張る。
――二人にとって予想外だったのは、そこで肉声が聞こえたことだ。
「警部!!」
「よかった! ほんまに、よかった!」
(´・ω・`)「…え?」
ショボーンが顔だけを後ろに向ける。
すると、そこに
.
- 583 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:17:02
ID:6.gT5oTU0
-
(;´W`)「助かったのですね……」
爪'ー`)「さすがは、ぼくの見込んだ刑事だ」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「よぅ言うわ。さっきまで泣き叫んどったクセに」
黒井シラヒーゲ。
大神フォックス。
榊原マリントン。
(∴)◎∀◎∴)「ぶ、ブジだっ――」
(゚、゚トソン「あ」
(∴)◎∀◎∴)
(∴);◎∀◎∴)「コポォwwwwwヒィwwwwwwwwwwww」
(゚、゚トソン「…逃げた」
(-@∀@)「騒がしいな……」
ヲタ、アサピー。
ホテルに招待された皆が、西のエレベーター前にまで集まっていたのだ。
歓喜と祝福で、なにやら騒がしい。
が、それは、心地の良い騒がしさだった。
.
- 584 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:17:33
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「…! みんな、来てたのか……」
( <●><●>)「応援も、きていますよ」
(´・ω・`)「へ」
荷台を引きずりだしながらその場に立つと、思いのほか冷え込みを感じた。
暖房が途絶えている上、ここは1Fである。それも仕方のないことだろう。
だがこのとき、ショボーンはとても寒さなど感じられなかった。
(;`・д・)ゞ「み、耳から血が!」
(;`・ー・)ゞ「なッ――死人が、こんなに!?」
(*`・∀・)ゞ「腕がなる!! いくぞてめぇらアアアアアアア!!」
( `・д・)ゞ「お…応!」
(´・ω・`)
(;´・ω・`)「―――! ま、待て! 死人は男性だけだ! それと搬送は待ってください!」
( <●><●>)「…え?」
.
- 585 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:18:03
ID:6.gT5oTU0
-
駆けつけたレスキュー隊が、荷台に載っている四人を全員運び出そうとした。
しかし、実際にモナーは死に、のーとガナーは銃創を負っている。
様態はどうであれ、いますぐにでも搬送しなければならないのだが――
ショボーンはまだ、彼らを搬送させるわけにはいかなかった。
( <●><●>)「警部。見たところ、流血沙汰があるじゃないですか。いますぐ、搬送させないと」
(´・ω・`)「いや……それじゃあ、だめなんだ」
( <●><●>)「え?」
(´・ω・`)「というのも――」
(;`・∀・)ゞ「くッくそ! ここに、オレたちの伝説を妨げるやつが!!」
(;`・ー・)ゞ「なんて、なんて非道! これがゲスの極み!」
(´・ω・`)「――まずはコイツらを黙らせてくれ!」
( <●><●>)「あーはい。すみません、ちょっと下がって――」
.
- 586 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:18:35
ID:6.gT5oTU0
-
そして、ショボーンはこのときになって疲労感が
押し寄せてきたのか、身体が重くなっていくのを感じた。
そのため、荷台に背を預けるように、しゃがみこんだ。
すると近くに、この騒ぎについていけないトソンがきた。
頬に汗を垂らし、「わけがわからない」と言いたげな顔をする。
ショボーンは笑った。
(´・ω・`)「……」
(゚、゚トソン「……」
なんとなしに、二人はその光景を見る。
ワカッテマスはレスキュー隊三人と情けない諍いを交わし
マリントンとフォックスも似たような諍いをして、シラヒーゲがそれを宥める。
アサピーは手帳を取り出し、なにやら大量の文章を書き上げていた。
ヲタは――近くの建物の陰から、トソンに熱く湿った視線を送る。
これで一応――最悪の事態は回避できたのだな、と、心の底から実感できた。
そのため、二人とも、意識せずとも柔和な笑みを浮かべた。
すると、レスキュー隊に勝ったワカッテマスが、やってきた。
ショボーンもそれに応じて立ち上がる。
トソンも、意味はなくとも立ち上がった。
.
- 587 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:19:06
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……で」
(´・ω・`)「ああ、そうそう。まずは報告からいこうか」
( <●><●>)「簡潔にお願いします」
(´・ω・`)「まず、制御室で爆発が起こった。ダイナマイトだ」
( <●><●>)「…!」
(´・ω・`)「で、逃げ道を封鎖された僕とトソンちゃんは、バーに向かった」
(´・ω・`)「バーに着くと――発砲事件。撃ったのは、レモナさんだ」
( <●><●>)「…」
(´・ω・`)「ガナーさん、レモナさんがともに気絶したのを好機に、僕はのーさんと対決したよ」
(´・ω・`)「ま、僕の完全勝利?」
(゚、゚トソン「よく言いますよ…」
( <●><●>)「あとで聞かせてください」
(゚、゚トソン「はーい」
(;´・ω・`)「! ちょ――と、とりあえずだ!」
.
- 588 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:19:36
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「とりあえず――そこからこの荷台を見つけて、このエレベーターで脱出してきた……
. こんなところかな」
( <●><●>)「下呂さんが、ハンニンで?」
(´・ω・`)「そうさ」
( <●><●>)「彼女は――」
(´・ω・`)「……荷台で、倒れている。おそらく、気絶しているんだろう」
そう言って、二人は荷台に横たわるのーを見る。
もう、暴れだしそうな気配は感じられなかった。
( <●><●>)「では、もう何もすることはないのでは――」
(´・ω・`)「……違うんだ」
( <●><●>)「?」
(´・ω・`)「のーさんは、確かにハンニンだ」
(´-ω-`)「……モナーさんを殺したこと、においてな」
.
- 589 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:20:09
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「…?」
( <●><●>)「……!」
ショボーンが意味深な声色で言う。
最初、ワカッテマスは彼の言いたいことがわからなかったが、じきに、その意味が理解できた。
そのため、徐々に顔が青くなっていく。
(; <●><●>)「ちょっと待ってください。
. 笑野さんを殺したのは……彼女じゃないというのですか!?」
(´・ω・`)「のーさんがプギャーさんを殺す動機は、ない。
. 彼女とプギャーさんは、いわば協力関係にあったんだから」
( <●><●>)「協力関係……」
(´・ω・`)「プギャーさんが副支配人になることで、
. アンモラルグループがWKTKホテルを操れるように、ってね。
. その点はのーさんから直接聞いたから、間違いない」
( <●><●>)「では、だれが―――」
ワカッテマスが当然のことを訊こうとしたとき
荷台のほうで、物音が聞こえた。
のそり、と、誰かが起き上がる音だ。
ショボーンとワカッテマス――と、レスキュー隊がそれを見遣る。
すると、この騒がしさで目が覚めたのか――
.
- 590 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:20:42
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ; ∀ )「……ッ、………?」
(´・ω・`)「……」
( <●><●>)「――?」
レモナが、目を擦りながら上体を起こした。
それを見計らって、ショボーンが手を差し伸べる。
レモナはその手の意味を理解したのか、意識が覚醒してから、その手に右手をのせた。
ショボーンはぎゅっと握って、そのままレモナを立ち上がらせた。
まだどこかふらついている。
目には依然、泣き腫らした跡が残っていた。
レスキュー隊が駆け寄ろうとするのを、ワカッテマスが制する。
彼は、ショボーンの眼を見て、いったいこれから彼がなにをするのか、わかったのだ。
.
- 591 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:21:12
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「……レモナ、さん?」
|゚ノ; ∀ )「……」
|゚ノ;^∀^)「………あ、ショボーンさん……」
(´・ω・`)「もう、大丈夫ですか?」
|゚ノ;^∀^)「じゃっかん頭に血が足りませんが……」
( `・∀・)ゞ「! 輸血パックだ! 輸血パックを用意しろ!」
( `・д・)ゞ「しかし、何型だ?」
( `・ー・)ゞ「この淑やかさ……わかった、Rh+Oだな?」
|゚ノ ^∀^)「? …あ、私は――」
(´・ω・`)「A型。違いますか?」
|゚ノ ^∀^)「――! ど、どうして……」
レスキュー隊が威勢のいい声を放って、近くのバッグのようなものから輸血パックをさがす。
その隙に、ショボーンはレモナと数メートルの距離を開けて、対峙した。
――自分が発砲したこと、覚えていないのか?
そう思うが、混乱のせいでそこらの記憶が飛んだのだろう、と割り切ることにした。
いまはそれよりも追究するべきことがあるのだ。
(´・ω・`)「とりあえず、レモナさん」
|゚ノ ^∀^)「は、はい」
.
- 592 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:21:45
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「あなたを、笑野プギャー殺害容疑で逮捕する」
.
- 593 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:22:15
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ^∀^)「…!」
(; <●><●>)「――ッ」
(゚、゚;トソン「え!?」
――先ほどまでお祭り状態という言葉がふさわしかったはずのこの場が
ショボーンがその言葉を放つときだけ、一瞬、静まり返った。
皆が、ショボーンと――レモナのほうに、視線を遣る。
当のレモナは、わけがわからない、と言いたげな顔をしていた。
.
- 594 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:22:47
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ^∀^)「な……なにを、急に……というか、プギャーさん、亡くなった……?」
( <●><●>)「ちょっと待ってください。
警部、彼女の精神はまだ安定しきっていません。いま、その話は――」
(´・ω・`)「今じゃないと……だめなんだ」
(´・ω・`)「ほかの誰にも邪魔のされない、いまじゃないと……」
( <●><●>)「……!」
そう言われて、ワカッテマスは黙った。
彼の声色の背景に、なにか黒く大きなものが居座っているのが感じ取れたのだ。
もっと具体的に表現するなら、ウラの世界で暗躍する――そんな、存在があることを。
.
- 595 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:23:19
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「ま、まず、状況を説明してくださいよ」
(´・ω・`)「いいでしょう。ここでおさらいだ」
ショボーンは腕を組み、渋い顔をした。
(´・ω・`)「笑野プギャー、彼は突き落とされた。5F、制御室からだ」
( <●><●>)「そして2Fの露天風呂に直行、むき出しの岩に頭をぶつけて頭蓋骨損傷――
転落が、直接的な死因と言えるでしょう」
|゚ノ ^∀^)「転落……」
(´・ω・`)「が、この前に一度、犯人とプギャーさんは争っている」
( <●><●>)「笑野さんの首にあった赤い痕……
喉仏を重点的に絞め付けていたのを見ると、人の手によるものと見て問題ありません」
(´・ω・`)「まとめると、だ」
(´・ω・`)「犯人は5F、制御室でプギャーさんを絞め殺そうと――いや、気絶だけでいい。
. 気絶させようと思ったのか、首を絞めた。が、プギャーさんが抵抗。
. そのいざこざの結果か、プギャーさんが気を失ったか――まではわからないが、
. プギャーさんは5Fの窓から突き落とされた。ロックのかからない窓だ、問題ない」
.
- 596 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:23:52
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「で、彼の死体が回収できればよかったんだけど、……回収は」
( <●><●>)「申し訳ありません。生存者を避難させるだけで――」
(´・ω・`)「わかった。だろうなあ、と思ったよ。それこそが犯人の狙いなんだから」
( <●><●>)「……え?」
(´・ω・`)「わからないのかい? 犯人は、プギャーさんを突き落としただけじゃ済まなかった。
. 逃げる際……ダイナマイトを、設置したんだよ。それも、大量に」
( <●><●>)「…!」
(´・ω・`)「そして、逃げた。上に逃げたか、下に逃げたか……は、結果論でいうなれば上だ」
(´・ω・`)「レモナさん、あなたが犯人だからだ」
|゚ノ ^∀^)「……」
(´・ω・`)「じゃあ、僕がレモナさんを逮捕する理由を話す」
(´・ω・`)「文句があったら、言い返していいからね……レモナ、さん」
|゚ノ ^∀^)「………」
.
- 597 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:24:26
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「犯人は、いま僕が言った手順で犯行を進めた」
(´・ω・`)「が、この計画を進める上でひとつ、問題となるものがある。それはなんだ?」
( <●><●>)「言うまでもありません。『ダイナマイト』です」
( <●><●>)「この国で一般人がダイナマイトを手に入れようものなら、
かなり面倒な手順が必要となりますからね」
(´・ω・`)「だが、犯人はダイナマイトを簡単に用意できた」
|゚ノ ^∀^)「……私が用意した、と?」
(´・ω・`)「いや、違う」
( <●><●>)「え?」
当然肯定する――かと思えば、ショボーンは否定した。
思わず、ワカッテマスは疑問に思った。
が、それもすぐ納得した。
.
- 598 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:24:56
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「あなたは、なにもダイナマイトを用意する必要がなかった。
. ……たまたま、譲り受けていたのを使っただけなんだから」
|゚ノ ^∀^)「…っ」
( <●><●>)「ちょっと待ってください。
譲り受けた……と一言におっしゃいますが、なにを根拠に」
(´・ω・`)「思い出せよワカッテマス。僕たちが、このホテルにきた当時のことを」
( <●><●>)「……?」
(´・ω・`)「僕が、レモナさんの案内でホールにきて……だ」
(´・ω・`)「フォックスさんとの会話、そこに答えがあった」
|゚ノ ^∀^)『今回のホテル建設に際しまして、オオカミさんにはいろいろ援助してもらったんですよ』
(´・ω・`)『ほう。具体的には』
爪'ー`)『トンネル開通用などで使うウチのダイナマイトとか。余るほど提供したよ』
( <●><●>)「……あ!」
|゚ノ ^∀^)「……」
.
- 599 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:25:27
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「あなたは、そのダイナマイトを利用することを思いついた。
. 秘書、という立場なら、難なくそのダイナマイトを用意することができたでしょう」
|゚ノ;^∀^)「だ、だとしたら工事担当の人に断らないといけな――」
(´・ω・`)「ダイナマイトは、『余るほど』提供されたんだ。
. それに、ホテルが建設された時点で、もうダイナマイトは用済み。
. あなたは、危機管理の目さえかいくぐれば、意図も容易くそれを用意できたんだよ」
|゚ノ;^∀^)「そ…それなら、私だけじゃない!
ほかの人も、ダイナマイトを手に入れることができる!」
(´・ω・`)「というと?」
|゚ノ;^∀^)「プギャーさんと、フォックスさんですよ!」
爪;'ー`) !?
(´・ω・`)「……まず、可哀想だからフォックスさんのほうから証明しよう」
(´・ω・`)「フォックスさん、彼にはカンペキなアリバイがあるんだよ」
(´・ω・`)「なあ、ワカッテマス?」
( <●><●>)「ええ。爆発の前――でしたら、私は彼と一緒にいました。
途中で数分離れましたが、その数分間では当時2Fにいた彼に犯行は不可能だ」
|゚ノ;^∀^)「あらかじめ、制御室にしかけてたってことは……」
(´・ω・`)「?」
.
- 600 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:25:58
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「あらかじめ、フォックスさんはダイナマイトを
あの時間に爆発するようにセットしておいた」
|゚ノ ^∀^)「それと、プギャーさんの件とが偶然重なった……とは、考えられませんか」
(´・ω・`)「…っ……」
そのとき、ショボーンは軽い戦慄を覚えた。
なにも、この反論が的確だから、ではない。
レモナの内面を、かいま見れたような気がしたからである。
彼女は、気絶からの立ち直りで不調を訴えているが、それは建前なのではないか。
その裏では――
(´・ω・`)「……ここでのポイントは、場所が制御室だってことさ」
|゚ノ ^∀^)「?」
(´・ω・`)「『場所が制御室であること』による、問題。ワカッテマス、答えてみろ」
( <●><●>)「言われるまでもありません」
( <●><●>)「『鍵が盗まれていた』……に尽きます」
.
- 601 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:26:30
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「ああ。ということは、この『鍵を盗んだ人』が『ダイナマイト』をセットし、
. また『プギャーさんを殺した犯人』である、となる」
( <●><●>)「鍵、ダイナマイト、そして動機……
この犯行を可能にしたのは、この三つが条件となりますね」
|゚ノ ^∀^)「だから、何……」
(´・ω・`)「レモナさん。精神に堪えると思いますが……」
(´・ω・`)「この三つを満たせたのは、あなたしかいないんだ!」
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=MDyUvZkJiSc
.
- 602 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:27:03
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「…!」
( <●><●>)「……」
(゚、゚;トソン「れ、レモナさんが…?」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「しかし、『鍵』はなんだったんですか!
ひょっとすると、ワタシがただボケただけかもしれないのですぞ!」
(´・ω・`)「(自分で言うなよ…)」
(´・ω・`)「……そう、『鍵』だ。ここで、『犯人がいつ鍵を盗めたのか』を考えてみればいい」
( <●><●>)「確か、あれは榊原さんが……」
.
- 603 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:27:39
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)『ちなみに、この鍵はどこに置いていたのですか』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『倉庫ですわ、倉庫』
(´・ω・`)『最後に鍵を確認したのは、いつですか』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『16時ちょい過ぎ……だったと、記憶しとります』
(´・ω・`)「彼がホールを去った16時頃から、戻ってくる17時半まで――
. となるのですよ」
|゚ノ;^∀^)「それなら、盗めた人はいくらでもいるじゃないですか!
フォックスさんも、のーさんも、そして……あなたも」
(´・ω・`)「確かに、この条件だけなら、ね」
( <●><●>)「! まだあったのですか?」
.
- 604 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:28:09
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「まず、フォックスさんやのーさんにスポットを当てよう。彼らがホールを出たのはいつかな?」
(゚、゚トソン「……あ! 警部たちが去ったあと、です!」
(´・ω・`)『僕たちが来たときは、ホールにはフォックスさんやのーさんもいた気がするけど……
. あの人たちは、どうしたの?』
(゚、゚トソン『あ、ああ……。警部たちが出て行ったところで、レモナさんとガナーさんが
. 「私たちも準備をはじめましょうか」ってなったので、ホールに残っていたほかの皆さんも出て行きましたね。
. だから、以降から17時半にあのおじいさんが来るまでは、ほかには誰も来ませんでした』
(´・ω・`)「そう。そして、これと同時に、倉庫はある人が入り浸るようになった」
(´・ω・`)「あなただ、レモナさん」
|゚ノ;^∀^)「……!」
( <●><●>)「ちょっと待ってください。それだけでは、まだ弱いです。
彼女が倉庫からでていた隙に、盗み出せた可能性も……」
(´・ω・`)「そもそも、だ」
( <●><●>)「!」
(´・ω・`)「『鍵が倉庫にあった』とは、誰も知らなかったはずなんだよ」
.
- 605 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:28:42
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)『ちなみに、この鍵はどこに置いていたのですか』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『倉庫ですわ、倉庫』
(´・ω・`)『倉庫……料理が運びこまれてた、とか言う?』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『そーそー。いつもはスタッフルームに置いとくんですが、今日だけ臨時で置いてたんですわ』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『モナーさんにバーの鍵を渡したんで憶えとりますわ』
(´・ω・`)『わかりました』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『いやね、あんたのホテルでしょーから勝手にもってけばええじゃないですか言うたら、
「おまえに任せてるから、どこにあるかわかるはずないモナー」、ちゅーんですよ』
(´・ω・`)『鍵は、どこにあった?』
(゚A゚*;)『……な、なんや…そーゆーことか』
(゚A゚* )『マリントンさんが、常に持ち歩いてんねんやろ?』
.
- 606 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:29:13
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「―――ッ!!」
(´・ω・`)「もともと関係者に『鍵のありか』を知らされていたとして、
. 彼らが知っている『鍵のありか』はスタッフルーム!」
(´・ω・`)「今日は、特別な日だ。スタッフルームも閉めることになっていたから、
. マリントンさんは臨時で、また『独断で』倉庫に鍵を置いておくことにした」
(´・ω・`)「関係者ののーさんはおろか、モナーさんですら知らなかった『鍵のありか』!
. どうして、フォックスさんや僕が知ることができたっていうんですか?」
|゚ノ;^∀^)「………ぐ……」
(´・ω・`)「……だが。レモナさんだけは、違う。
. 唯一、誰にも言われずに『鍵のありか』を知ることができた人物なんだ」
( <●><●>)「倉庫を出入りしていた……確かに」
.
- 607 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:29:45
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「……『鍵のありか』を知っていたから、というだけで犯人だ、
っていうのはいささか横暴ではありませんこと?」
(´・ω・`)「ダイナマイトの件もそうだ。仮にマリントンさんなどほかの人が鍵を盗んだとして、
. ダイナマイトを用意することはできなかった。できたとしても、調べればすぐわかる」
(´・ω・`)「あなたは、あらかじめ倉庫で制御室の鍵を盗んだ。
. ……そして、のちに。プギャーさんを、制御室に呼び出した」
|゚ノ;^∀^)「な、なにを根拠に……」
( <●><●>)「そうです。確かに鍵とダイナマイトには説明がいきますが、
どうして彼女が殺害を犯す必要があったのか。その立証が、必要となります」
(´・ω・`)「ああ、そうだ。……動機なんて、簡単だよ」
(´・ω・`)「プギャーさんが裏切り者であると、知ってしまったんだ」
.
- 608 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:30:16
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「……なんだと!?」
|゚ノ;^∀^)「……なんのことだか、さっぱりです!」
(; <●><●>)「警部は下呂さんから聞き出せたとして、だ。
. どうして、レモナさんが笑野さんと下呂さんの関係を知ることができたんですか!」
(´・ω・`)「確かに僕は、のーさん自身から聞いたさ。でも――」
(´・ω・`)「今日、僕が聞いたとき以外で、もう一度だけ、二人の関係を知る機会があった」
(´・ω・`)「そしてレモナさんは、それを聞いてしまったんだ!」
|゚ノ;^∀^)「ッ!」
(; <●><●>)「ちょっと待ってください! いったい、いつ、どこで、誰がそんな話を!」
(´・ω・`)「……プギャーさんと、シラヒーゲさんだ」
.
- 610 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:32:03 ID:6.gT5oTU0
-
(;´W`)「…え?」
(-@∀@)「……そうか!」
(´・ω・`)「アサピーさんはわかったみたいだな」
(; <●><●>)「なにがあったというのですか!」
(´・ω・`)「今日、喫茶店でプギャーさんとシラヒーゲさんが密談を交わしていた。
. ……その内容から推理すれば、自然とわかるんだよ。
. 『プギャーが裏切り者である』ということが」
(´・ω・`)「おそらくレモナさんは、二人が密談するのを知って、
. 陰に隠れてその話を盗み聞きしたんだ」
(; <●><●>)「しかし、何を根拠に、レモナさんがその場に居合わせていた、と」
(´・ω・`)「二つの証言の、食い違いをたどるんだ」
( <●><●>)「…え?」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『ワタシがここに入るときにね、陰に人のケハイっちゅーの、感じたんですわ』
( <●><●>)「はあ』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『で、この人も、ワタシが来る少し前まではプギャーさんと話しとったんですが、
どーやら人のケハイを感じてたみたいなんですよ』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『なるほど、あの記者が隠れておったか。そりゃー感じるわ、ケハイ』
.
- 611 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:32:34
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「…? なにが、おかしいのでしょうか」
(´・ω・`)「順を追おう。まず、シラヒーゲさんが密談中に感じた、『人のケハイ』だ」
( <●><●>)「言うまでもない。この記者でしょ」
(-@∀@)「……」
(´・ω・`)「では一方で、マリントンさんの感じた、『人のケハイ』は?」
( <●><●>)「…? 一緒に決まってるじゃないですか」
(´・ω・`)「おかしいんだよ、それだと」
( <●><●>)「え?」
(´・ω・`)「まず、アサピーさんだ。彼は、密談が終わったとき、すぐにプギャーさんの後を追った」
(´・ω・`)「これに問題はないな?」
( <●><●>)「そりゃ」
(´・ω・`)「一方で、マリントンさんが喫茶店に『入るとき』に感じた『人のケハイ』。
. これを考えてみれば、わかる」
( <●><●>)「『入るとき』……?」
( <●><●>)「……!」
(; <●><●>)「あ…あああああああああああああッ!!」
(´・ω・`)「わかっただろ? この『人のケハイ』は、アサピーさんではありえないんだ!」
.
- 612 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:33:05
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「どういうことですか!」
(´・ω・`)「問題となるのは、『いつアサピーさんが喫茶店を発ったか』だ」
(´・ω・`)「アサピーさんは、プギャーさんを追った。それは、いつか」
(´・ω・`)「プギャーさんが、喫茶店を出て――すぐ。そうでなければ、話があわなくなる」
(´・ω・`)「マリントンさんは、『階段で』プギャーさんとすれ違った。
. このときには既に、アサピーさんはプギャーさんを追いかけていたんだ」
(; <●><●>)「し、しかし! 榊原さんは、アサピーさんを見ていません!」
(´・ω・`)「アサピーさん。……そのときは、どちらに」
(-@∀@)「………答えるしか、ないようですね。いいでしょう」
(-@∀@)「私は、喫茶店から彼が出て行ったのを見て、足音を殺して向かった。
もし私が取材をしようとしているのがばれたら、逃げられますからね」
.
- 613 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:33:42
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「ということは……」
(-@∀@)「彼が階段に差し掛かったところで、彼は――振り向いた。
私のケハイを察知したのでしょう。しかし、私はそこで見つかるわけにはいかなかった。
まだ、距離が十メートルはありましたから。いくら私でも、逃げられる。そう思ってね」
(´・ω・`)「そのときにアサピーさんは隠れて、なんとかプギャーさんの視界からはずれることができた」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「…! じゃ、じゃあワタシが階段ですれ違うたときは――」
(´・ω・`)「問題は、足音です。アサピーさんはきっと、マリントンさんの足音を
. 『こちらに引き返してくるプギャーさんだ』と勘違いした。
. だから、自分の隠れている場所に来るまで、息を殺していたのでしょう」
(´・ω・`)「……だが、違った。やってきたのはマリントンさんで、
. アサピーさんの隠れていることなど知りもせず、まっすぐ喫茶店に向かった。
. だからアサピーさんは、大急ぎでプギャーさんのところに向かった。違いますか?」
(-@∀@)「……やはり、ショボーン警部は違いますね。そのとおりです」
|゚ノ;^∀^)「…………」
.
- 614 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:34:14
ID:6.gT5oTU0
-
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「しかし……それとレモナさんと、どう関わってくる?」
(´・ω・`)「まだ、『二つの証言の食い違い』に触れていません。
. ここで問題となるのは、マリントンさん、あなたの証言だ」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「え?」
(´・ω・`)「あなたが『人のケハイ』を感じたのは、『喫茶店に入るとき』でしたよね?」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「そーですが……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……! ま、待ってくだされ! じゃあ――」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ワタシの感じた『人のケハイ』は、いったい誰だったと言うんですか!!」
.
- 615 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:34:45
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ;^∀^)「ッ!!」
(-@∀@)「…なに?」
(´・ω・`)「そう。人数が、合わなくなるのです。これはなぜか?」
(´・ω・`)「あのとき――」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『ワタシがここに入るときにね、陰に人のケハイっちゅーの、感じたんですわ』
( <●><●>)『はあ』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『で、この人も、ワタシが来る少し前まではプギャーさんと話しとったんですが、
どーやら人のケハイを感じてたみたいなんですよ』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『なるほど、あの記者が隠れておったか。そりゃー感じるわ、ケハイ』
(´・ω・`)「シラヒーゲさんとプギャーさんの密談を聞いていたのは、『二人いた』んだ!」
.
- 616 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:35:19
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「な、なんだと……?」
(-@∀@)「……だから、か」
(´・ω・`)「おそらくあなたは、不思議に思ってたのでしょ?
. 『どうしてケハイを察知されたのだ』と」
(-@∀@)「当然。私がそのようなヘマを犯していたなど、考えられなかったのですよ。
しかし、そこにもう一人いた、と考えれば、納得できる」
|゚ノ;^∀^)「……それが私だった、なんて考えるおつもりですか?」
(´・ω・`)「ええ。あのときのプギャーさんの言葉を聞いて、あなたは確信したんだ」
(´-ω-`)「『笑野プギャーは、アンモラルグループからのスパイである』と」
.
- 617 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:35:50
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚;トソン「――あ! 警部、でもそれはありえないですよ!」
(´・ω・`)「なぜだ」
(゚、゚;トソン「その時間帯、教えてください!」
( <●><●>)「私たちが来た、つまり密談が終わっていたのは……17時頃」
( <●><●>)「……! 警部、確かにありえません! 彼女には決定的なアリバイがあります!」
(´・ω・`)「なにが?」
( <●><●>)「レモナさんは、16時半過ぎから、ずっとホールにいた!」
( <●><●>)「その間、彼女が持ち場を離れていては、すぐにガナーさんと都村さんにばれます!」
|゚ノ;^∀^)「……」
.
- 618 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:36:23
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「……そう、それ」
( <●><●>)「…?」
(´・ω・`)「それとはまた別の、同時刻に起きた妙なできごと」
(´-ω-`)「ずっと、頭にひっかかっていた、『あるハプニング』があるんだけど」
(´・ω・`)「それが、密談を聞いていた『もう一人の存在』を明示していたんだ」
( <●><●>)「なんですって…? そのハプニングとは、いったい、なんですか!」
(´・ω・`)「……トソンちゃん、ごめん」
(゚、゚トソン「え?」
ショボーンはぼそっと、トソンにそう言った。
トソンが理解する前に、ショボーンは続けた。
(´・ω・`)「実を言うと、レモナさんに、その時間帯のアリバイは――ないんだ」
.
- 619 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:36:53
ID:6.gT5oTU0
-
(; <○><○>)「ッ!?」
(゚、゚;トソン「え…ええええええッ!? いや、でも――」
(´・ω・`)「17時以降は、確かにレモナさんのアリバイは確認されている。
. でも、それまではレモナさんの存在を、トソンちゃんは断言できなかった。
. トソンちゃん、それはなぜかな?」
(゚、゚;トソン「え……そ、その」
(゚、゚トソン「お皿を……割ってしまって」
( <●><●>)「皿…?」
(´・ω・`)「そう。ここで一度、お皿のハプニングを思い出してほしい」
.
- 620 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:37:24
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚トソン『17時』
(´・ω・`)『17時?』
(゚、゚トソン『そのときまでは、レモナさんは倉庫から料理やテーブルなどを出して、
. ガナーさんはそれを並べて……って、忙しかったんです。
. ひと段落あって、落ち着いたあたりからは、レモナさんも一緒だった、って断言できます』
(´・ω・`)『17時ねぇ……』
( <●><●>)『一応、アリバイは成立ですね。しかし、都村さん』
(゚、゚トソン『はい?』
( <●><●>)『いくら忙しい、といっても、レモナさんが料理をだして、それをガナーさんが並べて……なら
その受け渡しの段階で、互いに顔を見合わせるか、その作業している背中を見るはずです。
どうして、それがわからなかったのですか?』
.
- 621 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:37:58
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚;トソン『確かに、私は力がないですよ? でもですね』
(゚、゚;トソン『食器って、ほら、軽いって思うじゃないですか!』
(゚、゚;トソン『レモナさんとガナーさんのお手伝いをしようと、皿がいっぱい』
(゚、゚;トソン『載ったワゴンを気合をいれて押そうと思ったんですがね、ほら』
(゚、゚;トソン『なんというか、なにかにつまずいたらしくて? いや』
(゚、゚;トソン『私はつまずいてないですよ。ワゴンの駒が、なにかにひっかかった』
(゚、゚;トソン『みたいなんです。それも、押した瞬間にひっかかったもの』
(゚、゚;トソン『だから、私の体重とかけていた力が一気にワゴ』
(´・ω・`)『つまり、皿を割っちゃったんだね』
( 、 ;トソン『〜〜〜ッ!! 割った、なんて作為的なものではなくてですね、
. ほら偶発的というか、事故というか――』
.
- 622 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:38:29
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……?」
(´・ω・`)「トソンちゃんのこのハプニングで、トソンちゃんとガナーさんは掃除に駆り立てられた。
. だから、掃除にひと段落がつく17時頃まではレモナさんには構えなかった、と捉えるべきなんだ」
(´・ω・`)「だから、レモナさんはその隙に倉庫を抜け出して、喫茶店で例の話を盗み聞きした」
( <●><●>)「警部。ひとつ、決定的な見落としがあります」
(´・ω・`)「なんだ」
( <●><●>)「都村さん自身が言っています。これは、言ったら『偶発的』なハプニングだったんですよ」
( <●><●>)「仮にレモナさんがこの隙に逃げ出すことが可能だったとして、
『計画的』にハプニングを引き起こすことはできないのです」
(´・ω・`)「言いたいことはわかる。つまりグーゼンじゃねーか、ってことだろ?」
( <●><●>)「ム……そうですが」
(´・ω・`)「残念だが、これは『偶発的』なんてモンじゃない」
(´・ω・`)「きちんと、『計画的』に引き起こされたハプニングだったんだ」
.
- 623 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:39:00
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「なんですって…?」
(゚、゚;トソン「っ! わ、私、なにもしてないから! ほんとです、ホント――」
(´・ω・`)「違う。トソンちゃんは、なにもしてない」
( <●><●>)「…! つまり、『どこかにこのハプニングが仕組まれていた』ということですね」
(´・ω・`)「そう」
( <●><●>)「しかし、どこにそんな――」
(´・ω・`)「考えろよ。僕が、ずっとこのハプニングを不思議に思っていた理由を」
( <●><●>)「――というと?」
(´・ω・`)「このハプニングには、決定的におかしいところがある」
.
- 624 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:39:30
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚;トソン『なんというか、なにかにつまずいたらしくて? いや』
(゚、゚;トソン『私はつまずいてないですよ。ワゴンの駒が、なにかにひっかかった』
(´・ω・`)『(あのホールに……「つまずくもの」なんて、あったか…?)』
(´・ω・`)「『つまずくもの』がないのに、トソンちゃんは『なにかにつまずいた』――この、矛盾だ」
( <●><●>)「しかし、都村さんが張り切りすぎてバランスを崩した、とかは考えられないですか」
(´・ω・`)「確かに、ガナーさんもそう証言していた。だが」
( ‘∀‘)『運ぼうとワゴンを押した瞬間、ワゴンが横転したんですよ』
(´・ω・`)「それだと、少し前に進んで、したがって横転する。
. でもな、ガナーさんもトソンちゃんも、ちゃんと断言してるんだよ」
(´・ω・`)「そうだな、この二つの証言をつなぐと、こうだ」
(´・ω・`)「『運ぼうとした瞬間』に『なにかにひっかかった』から、ワゴンは横転した」
.
- 625 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:40:04
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「………?」
(; <○><○>)「……ッ!! まッ、まさか…!!」
(゚、゚;トソン「え、え…? なに? どういうこと?」
(´・ω・`)「トソンちゃん。お皿のハプニングは、君のせいで起こったんじゃない」
(゚、゚トソン「え…?」
(´・ω・`)「君の運ぼうとした……それも、大量の皿を載せたワゴン。それには、『ある仕掛け』があったんだ」
(´・ω・`)「コマに、ストッパーがかけられていた」
.
- 626 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:40:50
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚トソン「……!」
(´・ω・`)「レモナさんが倉庫から皿の載ったワゴンを運びだしたあと、
. 何者かがそのワゴンの前輪、それも片方にストッパーをかけたんだ」
(´・ω・`)「そうとは知らず、君は思いっきりワゴンを押した。すると、どうなるか――」
(゚、゚トソン「……横転……ッ」
(´・ω・`)「そう。結果、大量のお皿が割れて、その後処理に二人は駆り出される。
. 犯人はその隙をうまく衝いて、4F――密談の現場に向かったんだ」
(゚、゚;トソン「で、でも、どうしてレモナさんが……」
(´・ω・`)「さっき、僕はわざと『犯人』と言ったけど……言うまでもない。
. この現状において、ワゴンにストッパーをかけられるのは、レモナさんしかいないんだよ」
|゚ノ; ∀ )「…………」
(´・ω・`)「そうやって、レモナさんはホールを抜け出した」
( <●><●>)「しかし、その証拠はあるのですか?」
(´・ω・`)「直接的な証拠は――ない」
( <●><●>)「では――」
(´・ω・`)「しかし、だとすると『あのこと』にも合点がいく」
( <●><●>)「――え?」
.
- 627 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:41:35
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)『ツイてないや』
( <●><●>)『誰かがホールに向かったのですね」
(´・ω・`)「僕たちが喫茶店に向かうとき――そう、17時頃。何者かが、エレベーターを使っていた」
(´・ω・`)「それも、1Fや2Fではない。9Fより上のフロア――メインホールだ」
( <●><●>)「大神さんの可能性は……」
爪;'ー`)「! ぼ、ぼくはレストランにはいきましたよ。ええ、エレベーターでね!」
( <●><●>)「この通りですが」
(´・ω・`)「いろいろズレてしまうんだ、それだと。
. まず、彼がエレベーターに乗ったとしたら、それは16時半過ぎの話。
. しかも、乗るとしたらメインホールからだ。9Fにランプがともされるのは、おかしい」
( <●><●>)「じゃ、じゃあ……」
(´・ω・`)「レモナさん……しか、ありえないんだ。時間も、行き先も、結果論的にも」
|゚ノ; ∀ )「……ッ、……」
.
- 628 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:42:18
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「これで、ここまでで見つかった全ての謎をつなぐことができた」
(´・ω・`)「あなたは、プギャーさんの秘密を知ってしまった。だから――」
(´・ω・`)「モナーさんの事件後、唯一人を突き落とせる制御室で……彼を、殺した」
BGMここまで
.
- 629 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:42:49
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ; ∀ )
(; <○><○>)
(゚、゚;トソン
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ
(-@∀@)
(´・ω・`)「……以上、だ」
.
- 630 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:43:40
ID:6.gT5oTU0
-
ショボーンが言うと、その場にいた人々は、
いったい先ほどのお祭り騒ぎはなんだったのだ、と思いたくなるほど、一斉に静かになった。
発言する言葉があるかないか、以前に
そもそも発言したくない、できない、させてくれない――
そんな空気が、その場に充満していたのだろう。
ショボーンにとっては、いつものことだった。
( `・д・)ゞ「…ん?」
その静寂を最初に破ったのは、なんとレスキュー隊だった。
レモナのほうに目を遣ったとき、彼らはようやく見つけたのだ。
ガナーの手のひらあたりに見えた、血痕を。
(;`・ー・)ゞ「――ッ! おい、アレ…」
( `・∀・)ゞ「ポンチョ、いますぐ手当ての用意だ!」
( `・д・)ゞ「おう!」
レスキュー隊は一斉に動き出した。
その飄々とした、まるで緊張感を感じさせない三人ではあるが
その動きの俊敏さ、コンビネーションの巧みさを見れば、確かにレスキュー隊であると思わせられた。
忘れてた――
なんてショボーンが思っているうちに、ガナーへの応急処置が施された。
続けて、のーの応急処理が。こちらは腕であるため、ガナーのよりも手当てはじゃっかん遅れた。
.
- 631 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:44:15
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……警部」
( ;´・ω・)「ん?」
( <●><●>)「さっきの搬送するかどうかのとき……
手当てだけでもさせておいたほうが、よかったのでは」
( ;´・ω・)「は、ハハ……本部には黙っといてくれ」
( <●><●>)「ったく……命に別状がないから、いいものの」
( `・д・)ゞ「ちなみに、拳銃は……」
(´・ω・`)「ああ、僕が預かっている。鑑識がきたら、渡すよ。……で、鑑識は?」
( <●><●>)「キタコレ県警は遠く、もう少しかかるそうです。
所轄署は出動するにできなかった状況で、同じく」
(´・ω・`)「……いまのうちに、レモナさんに罪を認めさせるんだ」
ショボーンが、耳打ちして言った。
ワカッテマスは疑問符を浮かべた。
.
- 632 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:44:51
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「しかし、鑑識を待ったほうが手っ取り早く犯行を証明できるのでは」
(´・ω・`)「それじゃあ彼女は『やむなく認めた』ってことになる。
. そうじゃない。僕は、あくまでここで、それも彼女の自白で事を済ませたいんだ」
( <●><●>)「解せません。なぜ、人がいない今にこだわるんですか。さっきも……」
( <●><●>)『ちょっと待ってください。
警部、彼女の精神はまだ安定しきっていません。いま、その話は――』
(´・ω・`『「今じゃないと……だめなんだ』
(´・ω・`)『ほかの誰にも邪魔のされない、いまじゃないと……』
( <●><●>)『……!』
(´・ω・`)「……それは、今にわかる」
( <●><●>)「しかし……ん?」
.
- 633 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:45:23
ID:6.gT5oTU0
-
( ; ∀ )「……、……?」
(´・ω・`)「ガナーさん」
( ;‘∀‘)「……あれ? 私……」
ワカッテマスが追究しようとすると、ガナーが起き上がった。
手当てをされたり、周囲であれほど騒がれたりしたため、目を覚ますのはむしろ当然だった。
ショボーンがレモナのときと同じように、手を差し伸べる。
ガナーの覚醒ははやかったようで、「あ、すみません」と言ってからその手を受け取った。
( ‘∀‘)「えっと……なにが…?」
ガナーが周囲を見渡して最初に言ったのは、それだった。
自分は先ほどまで、バーにいたはず。
それが、気がつけばまったく別の場所にいて、しかも皆がそろっている――
どころか、血の気が盛んな三人組までいるのだ。
疑問符を浮かべないはずがないだろう。
そして、ガナーは丁寧に処置を施された銃創を見て、ようやく記憶が正常に動き出したようだ。
「あっ」と小声をあげては、近くにいるレモナを見て、一歩後退した。
.
- 634 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:45:54
ID:6.gT5oTU0
-
( ‘∀‘)「……レモナ、さん…?」
|゚ノ ∀ )
思い出したことで傷が疼いたのか、包帯を手で押さえて、呼びかける。
しかし、応答はなかった。
ただ呆然と立ち尽くしては、うつむいていた。
ガナーは撃たれたにもかかわらず、
彼女にそこまで強い恐怖はいだいていなかったようだ。
(´・ω・`)「……さて、ワカッテマス」
( <●><●>)「はい」
(´・ω・`)「僕は、まだここで彼女を逮捕しない。その理由は、わかるか?」
( <●><●>)「犯人に自ら罪を認めさせ、円満に――」
――答えようとして、返ってきたのはショボーンのため息だった。
ワカッテマスは「あれ」と思った。
(´・ω・`)「いつもはそうだが、今は違う」
(´・ω・`)「まだ、立証されてないことが……あるんだ」
.
- 635 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:46:24
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……なんですって!?」
(゚、゚;トソン「え…でも、警部、いまあんなにはきはきと――」
ワカッテマスもトソンも、似たような反応を見せる。
しかし、ショボーンはぽつり、ぽつりと言葉を落とすだけだった。
(´・ω・`)「……まだひとつ、謎があるんだ」
(´・ω・`)「僕はその謎の示すところを、ほぼ確信している」
(´・ω・`)「だが、僕一人の力じゃ、それをカンペキには立証できない」
( <●><●>)「……警部。一応うかがいます」
ワカッテマスが、腕を組みながら、言う。
( <●><●>)「その、最後の謎。それは、なんですか?」
.
- 636 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:46:55
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「いまの、一見一本につながった、ロジック。
. ……そのなかにひとつ、『前提が満たされてないもの』があるんだ」
( <●><●>)「ハ?」
(´・ω・`)「わからないか。その調子じゃ、いつか誤認逮捕するぞ」
( <●><●>)「……もったいぶっているうちに、応援の人がきますよ。言うなら、早く」
( ;´・ω・)「あのなァ」
ショボーンは呆れたような顔をした。
しかしワカッテマスが言うことも事実だ。
ショボーンは「しかたない」とぼやいてから、本題に入った。
(´・ω・`)「……不思議に思わないのか?」
( <●><●>)「なにを」
(´・ω・`)「『どうして、レモナさんは密談を聞こうと思ったのか』だよ」
.
- 637 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:47:30
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……! た、確かに」
(´・ω・`)「アサピーさんのほうは、理由がなかろうとナットクできる」
(-@∀@)「……なかなか、失礼なことをおっしゃいますね」
(´・ω・`)「――が、レモナさんの場合は別だ。
. 二人に美術品の件で話がされる、というのをあらかじめ知っていても、
. 別になにも思わないはずなんだ。秘書として、もともと知っていることなんだから」
( <●><●>)「それもそうです。どうして、レモナさんは密談を盗み聞きしようとしたのですか」
(´・ω・`)「それが、この事件の根底に横たわるんだよ」
( <●><●>)「この事件、というと」
(´・ω・`)「プギャー殺害……よりも、前」
(´・ω・`)「そして、モナー殺害……よりも、前だ」
( <●><●>)「……」
(; <●><●>)「………いま、とんでもないことを言いませんでした?」
(´・ω・`)「なに?」
.
- 638 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:48:00
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「モナー殺害よりも……前ですって!? いったい、どういう……」
(´・ω・`)「……ごめん、それはあとにさせてくれ」
(; <●><●>)「しかし――」
ワカッテマスの当然の質問を、ショボーンがどうしてか遮る。
腑に落ちないワカッテマスではあるが、ショボーンが強引に話を戻した。
自分で切り出しておいて――とワカッテマスは思った。
ショボーンは、レモナと再び対峙した。
レモナは、うつむいている。が、生気を失ったわけではない。
なにも言えないし、動けない。そんな状況なのだろう、とわかった。
だから、ショボーンのほうから口を切った。
しかし、相手は、向かい合っているレモナにではなく隣のワカッテマスに、だ。
(´・ω・`)「さっきの『最後の謎』の答えは、簡単だ」
(´・ω・`)「僕の推理がただしければ――レモナさんは、薄々感づいていたんだよ」
(´・ω・`)「プギャーさんとアンモラルとがつながっていたことを」
(´・ω・`)「……なぜなら、レモナさんは、おそら――」
.
- 639 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:48:39
ID:6.gT5oTU0
-
「待って!!」
( <○><○>)「!」
(゚、゚;トソン「!」
(´・ω・`)「…ッ」
( ;‘∀‘)
( ;‘∀‘)「……どうしたんですか…?」
.
- 640 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:49:10
ID:6.gT5oTU0
-
( ;‘∀‘)「れ、レモナ……さん……」
|゚ノ ;∀;)「言わないで! お願い!」
(´・ω・`)「…くっ」
――ショボーンが続きを言おうとしたとき、レモナはショボーンに飛び掛った。
―――ナイフを、喉元につきつけて。
.
- 641 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:49:42
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「――警部ッ!!」
(゚、゚;トソン「警部…!?」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「なッ……」
(;´W`)「また――」
爪;'д`)「ななッナイ――ナイフッ!!」
その場にいた皆に、戦慄が走った。
せっかく和やかになり、皆の緊張が解けてきたときに、だ。
その銀色に輝く鋭利なナイフは、皆に再び恐怖を与えるのに、充分すぎるものだった。
.
- 642 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:50:12
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ;∀;)「……認めッ、…る…! 認める、か…ら……言わないで……ッ!!」
(´・ω・`)「……認める、とは、なにを?」
かつて、のーとガナーを撃ったときと同じように
レモナは目から大粒の涙を流し、ナイフを突きつけながらも、そう言った。
ひび割れ、涙で震えた声を、なんとかしぼりだして。
一方のショボーンは、対照的に、すっかり落ち着いていた。
いや、落ち着いていないと、このように激情した相手の対応などできないのだ。
|゚ノ ;∀;)「殺した! 殺し…ッたか、ら……ぷぎゃ…さんを……!」
(´・ω・`)「残念だが、動機が証明されない限りには……」
|゚ノ ;∀;)「裏切り者! やっぱり、裏切り者だったから……殺し――」
(´・ω・`)「ちょっと待った。『やっぱり』って?」
|゚ノ ;∀;)「……っ!」
.
- 643 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:50:42
ID:6.gT5oTU0
-
そこで、レモナは動揺した。
つい、口を滑らせてしまった――
と、その隙を衝き、ショボーンはレモナの腕を捕らえた。
手首を捻って、ナイフを持つ手を外に向ける。
が、レモナもレモナで強く握っているようで、彼女の持つナイフが下に落ちることはなかった。
少しして、レモナが後ろに下がった。
ショボーンの掴んでいた手は、そのときに離してしまった。
荷台のほうにレモナが後退する。
一番近くにいるショボーンとの距離で、およそ五メートル。
なんとか、ナイフで刺されるという事態を回避することはできた。
――が、本番は、むしろここからだった。
(´・ω・`)「……そう。もともとレモナさんがプギャーさんのことを疑っていないと、
. あのとき、盗み聞きを働こうだなんて思わなかったんだ」
(´・ω・`)「そして、その理由は、なんとなくではあるが――わかっている」
|゚ノ ;∀;)「や………やめて……」
( <●><●>)「一応、訊きましょう」
( <●><●>)「なぜ、ですか」
(´・ω・`)「それは―――」
.
- 644 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:51:14
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「彼女が、モナーさんの娘だからだ」
.
- 645 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:51:46
ID:6.gT5oTU0
-
( <○><○>)
(゚、゚;トソン
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ
(;´W`)
爪;'д`)
( ;‘∀‘)
.
- 646 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:52:16
ID:6.gT5oTU0
-
( ;‘∀‘)「………よ、…呼びました……?」
(´・ω・`)「? 呼んでませんよ」
( ;‘∀‘)「い、いや……だって……」
( ;‘∀‘)「いま、娘……って……」
(´・ω・`)「ああ、娘は呼びましたね。……レモナ、さんを」
( ;‘∀‘)「………え……?」
ガナーの顔が、みるみる青くなっていく。
ショボーンの言っている意味が理解できない――のではなく、理解したくない一心であるようだ。
視認するのも難しいほどちいさく、ゆっくりかぶりを振っている。
ガナーが発狂しないうちに、ショボーンは本題を切り出した。
.
- 647 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:52:46
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「今回の事件を、思い出してほしい。
全て、だ」
(; <●><●>)「……ま、まず、緒前さんが、刺された」
(´・ω・`)「問題は、その次だ」
(; <●><●>)「プギャーさんが、殺された……そして、制御室が爆破された」
(´・ω・`)「のーさんが彼を殺していないことはわかっている。
. だとすると、問題は、どうしてプギャーさんは殺されなくてはならなかったのか、だ」
(; <●><●>)「なんだ、と言うのですか!」
(´・ω・`)「いったんこれは置いといて、次の事件も考えよう。
. ……そうすれば、自ずと見えてくる」
( <●><●>)「……ああ、発砲事件ですね?」
(´・ω・`)『バーに着くと――発砲事件。撃ったのは、レモナさんだ』
(´・ω・`)「そう。それで、狙われたのは?」
( <●><●>)「えっと……」
.
- 648 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:53:20
ID:6.gT5oTU0
-
( ;‘∀‘)
( A * )
( <●><●>)「ガナーさんと……下呂さんです」
(´・ω・`)「そこに、プギャーさんを入れてみろ」
( <●><●>)「はあ」
(´・ω・`)「……共通点が、見えてこないか?」
( <●><●>)「下呂さんと笑野さんだけなら、アンモラルグループからの回し者とわかるのですが
しかしそこにガナーさんが入ると――…、―――ッ!!」
(; <●><●>)「ちょ、ちょっと待ってください! あなた、まさか――」
(´・ω・`)「そう。共通点は『みんなアンモラルグループからの回し者』ということだ」
.
- 649 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:53:59
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「そうはいきません! ガナーさんは、なんの関係も持っていないはずです!」
(´・ω・`)「ああ。ガナーさん自身は、なにも持っていない。
. ……言うなれば、彼女も『被害者』なんだからな」
( <●><●>)「と、いうと……?」
(´・ω・`)「マリントンさんの言葉を、思い出してよ」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『モナーさんチに行ったら、なんか黒服の人がぞろぞろ出てきよって……
入れ違いで家に入ったら、モナーさん、荒れとったな。もう、ものごっそ昔ですが』
(´・ω・`)「当時から、モナーさんはなにやら黒いつながりを持っていた」
(´・ω・`)「おそらく、マリントンさんの話からすると、みんなアンモラルグループだ」
( <●><●>)「そ、それはそうですが……それと、どうガナーさんがつながるんですか」
(´・ω・`)「次に、この証言を思い出してほしい」
( <●><●>)「……?」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『実はね、あの子の首筋、うなじのあたりに、でっかいホクロがあるんですわ。
いやー、もう十何年も見んうちにベッピンさんになりよって……ええのぅ……』
.
- 650 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:54:35
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「それが、いった―――」
(´・ω・`)「ガナーさん、失礼ですがうなじを見せてはくれませんか」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……?」
( ;‘∀‘)「え、え…? 別に、構いませんが……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「………、……」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「――ッ!! ま、まさか――」
ガナーは、なにやらよくわからないと言いたげな様子で
背をショボーンたちに向け、その短い髪を上にあげた。
そして彼らは、うなじを見つめた。
本来あるべきはずのものが、見当たらなかった≠フだから。
.
- 651 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:55:10
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……あ」
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=MDyUvZkJiSc
(; <○><○>)「ああああああああああああああああああああああああッ!!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ホクロが……『ない』!?」
( ;‘∀‘)「え? え?」
(´・ω・`)「……荷台を運んでいたとき。自然と髪が垂れていたガナーさんのうなじを見て、確信したよ」
(´・ω・`)「ガナーさんは、アンモラルグループから送り込まれた、いわば
『最強の刺客』 だったんだ!」
( ;‘∀‘)「えッ!?」
(; <●><●>)「し……しかし! ……いや、つまりこれはどういうことですか!」
(´・ω・`)「ほんとうは……モナーさんのもとに生まれた娘は、レモナさんだったんだ」
.
- 652 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:55:54
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ;∀;)「!!」
(´・ω・`)「しかし、アンモラルグループがモナーさんを操ろうとしたのか、また別の理由か……」
(´・ω・`)「レモナさんとガナーさんとを、取り替えてしまったんだ」
(; <●><●>)「操ろうと……?」
(´・ω・`)「モナーさんは、アンモラルグループにいいように使われてきた。ですよね、マリントンさん?」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「う、ウワサに過ぎぬが……」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『陰でうわさされとるレベルなんですがねぇ……
モナーさん、例のグループにええように使われとるっちゅー話ですわ』
(´・ω・`)『例のって……』
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『アンモラルグループ、ですよ』
.
- 653 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:56:26
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「……モナーさんとアンモラルグループの因縁は、このときからはじまっていたんだ」
(; <●><●>)「しかし、その推理はいささかトッピすぎでしょう!」
(´・ω・`)「しかしこうだとすると、ある点にもナットクがいく。
. ……モナーさんの、ガナーさんに対する扱いのひどさ、だ」
(; <●><●>)「…?」
( ‘∀‘)『当時はすごく忙しかったようで、お酒もギャンブルも女性問題もなかったんですが、
仕事のストレスを、私にあたることで発散させているような……』
( ‘∀‘)『ドラマみたいに「愛を与えない」だけなら、まだよかったかもしれないですが……
とても……この歳になっても、やはり、その畏怖…?は拭えない、って言うのか……』
( ∀ )『ほかの人には温厚に接してる父なのに……
どうして……私には、優しく接してくれなかったのか……』
(´・ω・`)「……モナーさんは、せっかく子どもに恵まれたのに、いわばそれを、取り上げられてしまった。
. いくら温厚で『絆』を重んじるモナーさんでも、これにはさすがに穏やかにはいられない」
(´・ω・`)「だから、やつあたりとは言え、アンモラルグループに対する憂さを彼女に向けるしかなかったんだ」
(´・ω・`)「彼は、なによりも『絆』を重んじる」
(´-ω-`)「こんな、『偽りの絆』を押しつけられて……モナーさんも、ガナーさんも、可哀想だ」
( ; ∀ )「……そんな……ッ…!」
.
- 654 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:56:56
ID:6.gT5oTU0
-
ガナーの顔がだんだん白くなっていく。
――が、ショボーンもここで足をとどめることはできなかった。
心を鬼にして、続きを言う。
(´・ω・`)「レモナさんはなにかがきっかけで、そのことを……自分の境遇を知ってしまった」
(´・ω・`)「秘書になってから知ったのか、そのことを知ったから秘書になったのか――はいいとして、だ」
(´・ω・`)「レモナさんにとって、いわばアンモラルグループとはもっとも憎むべき相手だったんだ」
(´・ω・`)『興味ないや。三日だけ覚えときます』
|゚ノ ^∀^)『いやいや、覚えといても仕方がないですよ。話を続けても大丈夫でしょうか?』
( <●><●>)「あ…っ」
ここにきたときのレモナとの会話を、ワカッテマスは思い出した。
あのときに感じた、レモナから汲み取れたわだかまりの正体は――
.
- 655 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:57:28
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「……そして、モナーさんが刺された」
( <●><●>)「! レモナさんは、そこで――」
(´・ω・`)「ああ。あらかじめ、プギャーさんとシラヒーゲさんの密談から、
. プギャーさんの正体には目星をつけてあったからな」
( <●><●>)「しかしですね、裏切り者だからといって犯人につながるわけでは――」
(´・ω・`)「違うんだ」
( <●><●>)「?」
(´・ω・`)「プギャーさんにとってサイアクの失敗は、この密談の内容ではない」
(´・ω・`)「その発言の……乱雑さ、だったんだ」
.
- 656 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:58:00
ID:6.gT5oTU0
-
(-@∀@)『それですがね……また、小声の会話がはじまって、私は聞き取りづらかったのですが……
シラヒーゲ館長が、言ったんですよ。
「最終的な判断は、モナー支配人とじきじきに交わしたい」と』
(-@∀@)『するとプギャー副支配人は、だ』
(-@∀@)『「俺は、副支配人だ。支配人がいないときは、俺が全権を握るんだからな」……そう言ったんです』
(´・ω・`)『…ッ』
(-@∀@)『当時は、ただプギャー副支配人の裏の顔が見えただけ……
そう思っていたのですが、モナー支配人の殺されたいま、
このセリフの意味が変わってくるように思えるのですよ』
(´・ω・`)『モナーさんが刺される前までは、この言葉は「俺を嘗めるな」程度にしか聞こえないのが……
. モナーさんが刺された今となっては、そんな意味じゃ、捉えにくい』
(-@∀@)『ええ。むしろ、こう聞こえるわけです』
(-@∀@)『 「支配人は、そのうち、俺がなるのだ」
……と」
(´・ω・`)「このとき、裏では、今夜にのーさんとプギャーさんが
. 手を組んでモナーさんを落とす計画が進められていたんだよ」
(´・ω・`)「そう考えると、プギャーさんは、ほんとうはただ
. 『モナーは今夜、支配人をやめる』という意味でしか言ってなかったんだ」
(´・ω・`)「でも、だ。そのあとで、モナーさんが刺された」
.
- 657 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:58:31
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「レモナさんは、この発言をあらかじめ聞いていた手前、おそらくこう思ったんでしょう」
(´・ω・`)「『プギャーが、支配人になるためにモナーを殺した』……と」
( <●><●>)「!」
(´・ω・`)「いわば、プギャーさんは『カン違いで』殺されたんだ」
(; <●><●>)「しかし、だったら制御室の爆弾や、バーでの発砲事件はどう説明するのです!」
(´・ω・`)「レモナさんは、モナーさんの命までをも奪われた」
(´・ω・`)「きっと彼女は……このホテルで、アンモラルグループの回し者と一緒に死ぬつもりだったんだろう」
(´・ω・`)「制御室の爆弾は、そういう意味で使われたんだ」
( <●><●>)「あ!」
(´・ω・`)「制御室を爆破すれば、それより上にいる人は、逃げることができなくなる。
. あらかじめガナーさんとのーさんをバーに呼び出しておけば……
. これで、あとは死しか残っていない密室を作り出すことができた。
. 警察が出動できない、というのを聞いて、この密室を作ったのかもしれないな」
( <●><●>)「ですが、実際にガナーさんたちが呼ばれたとは――」
(´・ω・`)「それは本人に聞くのがいいんだけど……
. ガナーさんに限って言えば、それは僕でも証明できる」
(; <●><●>)「なんですって!?」
.
- 658 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:59:03
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「僕は一度、制御室に向かった。鍵のことを確認しようと、な」
(´・ω・`)「すると、だ」
( ‘∀‘)『どうしました、こんなところで』
(´・ω・`)『それは僕のセリフ……でもありますよ』
( ‘∀‘)『刑事さんがここに向かってるのを見かけたもので……制御室になにか?』
(´・ω・`)『はは、一応捜査の一環です』
( ‘∀‘)『おかしいな……立ち入り禁止の看板、置いてなかったかなぁ』
(´・ω・`)『見ての通り、ないですよ。まあ、あっても勝手に入ってましたが』
(´・ω・`)「彼女は、『僕が制御室に向かうのを見たから止めにきた』と言ったが、これはおかしい」
(´・ω・`)「彼女の部屋は6Fにあり、『僕が制御室に向かう』のを見ることは本来できないんだ」
( <●><●>)「ガナーさんがあなたを止めたこと。それが、なにを意味するのですか」
(´・ω・`)「簡単だ。……彼女自身が、制御室に向かうところだったんだよ」
( <●><●>)「ッ!」
.
- 659 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 22:59:37
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「おそらく、こういうことなんだ」
(´・ω・`)「彼女はなにかを介して制御室に呼び出された」
(´・ω・`)「で、向かったのはいいが――まだ、そのときに呼び出した本人はいなかった。
. そのときに、彼女は見たんだろう」
(´・ω・`)「立ち入り禁止の看板、を」
( <●><●>)「!」
(´・ω・`)「ガナーさんはあくまで娘であって、関係者ではない。
. それなのに看板があることを知っていた理由はなぜか……これに、納得がいく」
( <●><●>)「……? ちょっと待ってください。警部がそちらに向かったときは……」
(´・ω・`)「……そう、なんだ。あのとき、僕が訪れたとき、そこは―――」
( ;^Д^)『……』
|゚ノ ∀ )『………』
(´・ω・`)「すでに、制御室を訪れたプギャーさんが、命をねらわれていた!」
.
- 660 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:00:08
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「…!」
(´・ω・`)「なにかの手違いがあったのか、単純にすれ違いか……」
(´・ω・`)「だが、とにかくそこでレモナさんは彼を殺すしかなかった。
. おそらくガナーさんには、のちに、制御室ではなくバーにこい、などと手紙かなにかで言ったんだろう」
( <●><●>)「で、爆弾は……」
(´・ω・`)「いくつかの用途があった。まずひとつが、このホテルを密室にすること」
( <●><●>)「まだおありで?」
(´・ω・`)「ワカッテマス、お前現場にいたから知ってるだろ」
( <●><●>)「?」
(´・ω・`)「プギャーさんの死体の上から降りかかってきた――瓦礫だよ!」
.
- 661 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:00:38
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「……あッ…! ま、まさか――!!」
(´・ω・`)「用途、その二。間接的に、プギャーさんに関する殺害の痕跡を消し去ること」
(´・ω・`)「そして、三つ目だ」
(; <●><●>)「まだ、なにかあるのですか……?」
(´・ω・`)「プギャーさんの死体を消し去ったと同時に、犯人はその制御室の痕跡を消したんだ」
( <●><●>)「ああ、確かに……副産物的にではありますが、そうなりますね」
(´・ω・`)「……で、最後」
(; <○><○>)「ッ!?」
(; <●><●>)「じょ、冗談じゃない! まだ、なにがあるというんですか!」
(#´・ω・`)「冗談じゃないのはコッチのほうだ! 危うく、死にかけたんだぞ!」
( <●><●>)「――――ッ!!」
.
- 662 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:01:09
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「犯人がなにより恐れたのは……刑事である僕たち、だったんじゃないかな」
(´・ω・`)「なにも今回の場合、犯人が恐れるべきなのは逮捕、ではなかった」
( <●><●>)「『逮捕ではなかった』、と……?」
(´・ω・`)「考えてもみろよ。犯人は――レモナさんは、ここで死ぬつもりだったんだよ?
. あんたなら、どうする。現場に駆けつけたら」
(; <●><●>)「そりゃあ、止め……あっ!」
(´・ω・`)「……そういうことさ」
(´・ω・`)「プギャーさんをわざと突き落として、その死体を周囲に知らしめることで、人をそこに集める。
. その隙に自分は、共に死ぬ相手――ガナーさんとのーさんを、バーに呼ぶ。
. 時限爆弾が爆発することで、動力源を落とし、退路を絶ち、犯行の痕跡を消して、追っ手も消す」
(´・ω・`)「……これが、爆弾のほんとうの意味だったんだ」
.
- 663 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:01:39
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚;トソン「で、でも警部!!」
(´・ω・`)「なんだい?」
ショボーンの推理に、トソンが首を突っ込んだ。
彼女も――認めたく、ないのだろう。
レモナが、ほんとうはモナーの娘で、このような惨劇を生み出したのだ――という事実を。
(゚、゚;トソン「警部の推理は、ぜんぶ、『レモナさんがほんとうの娘である』という前提で……す、よね?」
(´・ω・`)「ああ」
(゚、゚;トソン「じゃ、じゃあ……まだ、決まってないのでは?」
(゚、゚;トソン「まだ……ほんとうの親子、と立証されたわけでは……」
( <●><●>)「……いや。DNA鑑定をすれば、一発で――」
(´・ω・`)「どうだろうな」
( <●><●>)「け、警部?」
.
- 664 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:02:09
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「そのアンモラルグループとやらは、とてつもなく大きく……そして、後ろ暗い組織なんだろ?」
( <●><●>)「ご存じないのですか。
……いや、後ろ暗いかは知りませんが、とにかく大きいことには違いありません。
いまや、世界をまたに駆ける大企業、と言えるでしょう」
(´・ω・`)「そんなアンモラルグループが、娘を入れ替えた……
. そもそも、血筋もDNAもあるのに、そう簡単に入れ替えることはできないんだ」
( <●><●>)「…」
(´・ω・`)「それをやってのけた、しかもそれをエサにモナーさんを操っていた。
. となれば、血液検査をしようとしたところで、そのグループに事実を捻じ曲げられるんだと思うんだ」
( <●><●>)「……! じゃ、じゃあ……あの――」
( <●><●>)『ちょっと待ってください。
警部、彼女の精神はまだ安定しきっていません。いま、その話は――』
(´・ω・`『今じゃないと……だめなんだ』
(´・ω・`)『ほかの誰にも邪魔のされない、いまじゃないと……』
( <●><●>)『……!』
( <●><●>)「あの、言葉の意味は……!」
.
- 665 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:02:45
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「いま、この場で全てに決着をつければ、そのグループの
. 干渉を受けないうちに『真実』を叩きつけることができる」
(´・ω・`)「だから、血液検査をして隙を見せちゃあだめだ。
『いま』、『ここで』、二人の……
. モナーさんとレモナさんとのつながりを、証明してみせる」
( <●><●>)「! そうか、ホクロが見つかれば――」
(´・ω・`)「それもある。が、ホクロだったらいくらでも言い訳ができる」
( <●><●>)「では――」
(´・ω・`)「語るのは、そんな証言じゃない」
(´・ω・`)「揺るぎようのない、証拠だよ」
.
- 666 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:03:15
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「証拠……!」
(゚、゚;トソン「で、でも、警部は持ってるんですか!」
(゚、゚;トソン「その……証拠を!」
(´・ω・`)「………それが、さっきの言葉につながる」
(´・ω・`)『……まだひとつ、謎があるんだ』
(´・ω・`)『僕はその謎の示すところを、ほぼ確信している』
(´・ω・`)『だが、僕一人の力じゃ、それをカンペキには立証できない』
.
- 667 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:03:47
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「警部一人の力じゃ…?」
(´・ω・`)「僕の推理がただしければ、モナーさんも『あるもの』を持っているはずなんだ」
( <●><●>)「…? モナーさん『も』? 『あるもの』を?」
(´・ω・`)「……レモナさん」
|゚ノ ;∀;)「ッ!」
(´-ω-`)「ここまできて、最後に僕が証明しなくちゃいけないこと」
(´-ω-`)「それは、あなたとモナーさんとの、つながりだ」
(´-ω-`)「それも、モナーさんとガナーさんのような『偽りの絆』ではなく――」
(´・ω・`)「『ほんとうの絆』――だ」
.
- 668 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:04:19
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「それが証明できる、というのですか!」
(´・ω・`)「ワカッテマス。今から言うのを調べてくれ」
(; <●><●>)「……はい?」
そう言って、ショボーンはワカッテマスに耳打ちをする。
ワカッテマスは「え?」と上ずった声を発したが、逆らいはせず、すなおに言われたとおり動いた。
荷台のほうに駆けては、しゃがみこむ。
このときレモナは、荷台よりも後ろ――閉まったエレベーターの扉に背をつけていた。
(´・ω・`)「さあ……これで、最後だ」
|゚ノ ;∀;)「!!」
(´・ω・`)「君とモナーさんとをつなぐ、証拠品……」
(´・ω・`)「………これこそが」
BGMここまで
.
- 669 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:04:55
ID:6.gT5oTU0
-
「 親
子 の 絆 だ 」
ショボーンがポケットから取り出したのは
モナーの写真の入った、ロケットだった。
.
- 670 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:05:28
ID:6.gT5oTU0
-
◆
( <●><●>)「…!」
ショボーンがそれを突きつけた直後、ワカッテマスも声をあげた。
モナーのポケット、血のついてないほうに手を突っ込むと、なにやら硬いものが手に当たったのだ。
丸いものがあって、そこから鎖がつながっている。
それをポケットから抜き出した直後、ワカッテマスはがばっと立ち上がった。
「警部」とやや大きい声を発しながら、ショボーンに駆け寄る。
彼が提示してきたそれは、紛れもないロケットだった。
金色の容器とチェーン。
それは、ショボーンの持っているロケットと同一の形状。
それを見たショボーンは、柔和な笑みを浮かべた。
(´・ω・`)「開けろ」
( <●><●>)「はっ」
ワカッテマスはその容器の開閉部分をいじる。
手袋をつけたままであるため、じゃっかん苦労はしたが、難なく開けることができた。
そこには、女性の――赤ん坊の姿が、おさめられていた。
.
- 671 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:06:04
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……これは」
(´・ω・`)「幼くはいるが……レモナさん、のようだな」
( <●><●>)「と、すると……」
|゚ノ ∀ )
(´・ω・`)「……これで証明ができた、な」
(´・ω・`)「僕が現場で見つけた、このロケットと――」
ワカッテマスのロケットを握るほうの手首を掴んで、前に提示する。
(´・ω・`)「モナーさんが持っていた、ロケット。二つがつながることで」
( <●><●>)「…!」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「じゃ、じゃあ……やっぱり……」
(´・ω・`)「……」
マリントンが、戸惑ったような声で訊いてくる。
それにショボーンは、黙ってうなずくことしかできなかった。
.
- 672 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:07:18
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「……おそらく」
(´・ω・`)「パーティがはじまる18時になっても姿を現さないモナーさんを見て、あなたは不安がったのでしょう」
(´・ω・`)「そのまえに、プギャーさんの密談を聞いてしまっている」
(´・ω・`)「密談を聞かされていた上での、モナーさんの遅刻」
(´・ω・`)「……もしかして、プギャーさんになにかされた……? って」
(´・ω・`)「……今思うと、あのときの――」
|゚ノ;^∀^)『ショボーンさん!』
(´・ω・`)『は、はい。なんですか』
|゚ノ;^∀^)『社長がまだお見えにならないんですよ。どこかで見かけませんでした?』
(´・ω・`)『いや、ここで別れたきり見てないですけど』
|゚ノ;^∀^)『そ、そうですか……』
.
- 673 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:07:49
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「あなたが見せた焦燥。あれは、人を待たせることによる焦りじゃなくて……」
(´・ω・`)「モナーさんの身になにかあったのではないか、という危惧……だったんじゃないのでしょうか」
(´・ω・`)「だから、マリントンさんの同伴は断っておきながら、刑事である僕の同伴は認めた」
(´・ω・`)「限りなく、嫌な予感が、したから」
(´・ω・`)「でも――いや、やはり、というべきか。その不安が的中してしまった」
(´・ω・`)「だから、僕が去ったあと、プギャーさんにあなたは問い詰めたのかもしれない」
(´・ω・`)「殺したのはあなただったのか、と」
(´・ω・`)「――だが、そのときの場所はバーだ」
(´・ω・`)「結果的にプギャーさんは無実だったが、実際には後ろ暗いことがある身」
(´・ω・`)「いつ刑事が来るかわからないこの場所で、その話をするのは好ましくない」
(´・ω・`)「そこであなたは、制御室でモナーさんの話をすることを持ちかけた」
(´・ω・`)「ひょっとすると、自分がほんとうの娘であることを明かしたのかもしれないね」
(´・ω・`)「プギャーさんもプギャーさんで、自分が支配人になる話を内密にレモナさんと進めておこうと思っていた」
(´・ω・`)「利害の一致から、二人は一緒に向かった――いや、時間差をつくって、別々で向かった」
(´・ω・`)「そうしないと、レモナさんがガナーさんとのーさんを呼ぶチャンスがないからね」
(´・ω・`)「その隙にダイナマイトを設置して……あとは、さっき僕が言ったとおり」
.
- 674 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:08:19
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「しかし、だとするとあのロケットは……?」
(´・ω・`)「あの、って、どっちだ」
( <●><●>)「現場に落ちていたほうですよ」
( <●><●>)「私の記憶がただしければ、16時半にレモナさんと会ったとき、
彼女はそのロケットを首からさげていなかった」
( <●><●>)「だとすると、どうやって笑野さんはあのロケットを……」
(´・ω・`)「簡単だ。首からさげてなかった、ということは、ポケットとかにいれてたことになるな」
(´・ω・`)「プギャーさんに問い詰めるとき、自分がほんとうの娘であることを、明かしたのかもしれん」
(´・ω・`)「……ロケットを、前に突きつけて」
( <●><●>)「…!」
.
- 675 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:08:55
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「プギャーさんは、『レモナさんがほんとうの娘である』という真実を恐れて、
. おおかた、そのロケットを奪おうとでも思ったのだろうな」
(´・ω・`)「そのやり取りのさい、レモナさんが窓から突き落とした――そう考えたら、辻褄は合う」
( <●><●>)「ちょっと待ってください。なら、拳銃はどう説明するのです」
(´・ω・`)「というと?」
( <●><●>)「レモナさんは一度、彼の首を絞めています」
( <●><●>)「拳銃があれば、最初からそれを――」
(´・ω・`)「僕が思うにね、この拳銃は、最初はプギャーさんの持ち物だったんだと思う」
( <●><●>)「――え?」
(´・ω・`)「のーさんとプギャーさんは、今夜、モナーさんを脅すつもりだったんだ」
(´・ω・`)「そのさい、のーさんはナイフを用意していたが……
. なら、プギャーさんもなにか用意していたんじゃないか。
. そう考えたら、真っ先にこの拳銃に行き着いた」
( <●><●>)「ああ……なるほど」
.
- 676 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:09:38
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「あのとき、レモナさんはロケットを突きつけた。
. 自分の身分を明かすことで、相手にほんとうのことをしゃべらそうとしたのか……」
(´・ω・`)「プギャーさんにとって、レモナさんの存在ってのは、言っちゃあ最悪の弱みだ。
. まして、この場にはあのアサピーさんがいる。
. 彼に自分の身分と今回のプギャーさんたちの計画を一緒にばらされてしまえば、その時点でプギャーさんたちはアウトだ」
(´・ω・`)「だから、プギャーさんはモナーさんに使う予定だった拳銃を、突きつけたんだと思う」
( <●><●>)「はあ」
(´・ω・`)「……ひょっとすると」
( ‘∀‘)『どうしました、こんなところで』
(´・ω・`)『それは僕のセリフ……でもありますよ』
(´・ω・`)「プギャーさんが拳銃を突きつけた直後に、
. 僕とガナーさんが運よくあそこにきてたのかもしれないな」
(´・ω・`)「なんせ、拳銃を抜いて、返り討ちにあうなんて――考えにくい」
( <●><●>)「警部が制御室にきたことで、どうしてレモナさんに反撃のチャンスがきたことになるのですか」
(´・ω・`)「あのな、僕は刑事だぞ? なのにそこで銃声がしてみろ。
. 一般人ならなにかの音と勘違いするかもしれないが、僕は銃声くらい聞き分けられる」
(´・ω・`)「あのときにプギャーさんが発砲していたら、その時点で逮捕される。
. プギャーさんはおそらく、あのとき、行動を制限されていたんだよ」
(´・ω・`)「証拠こそないが、な」
.
- 678 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:10:10
ID:6.gT5oTU0
-
( <●><●>)「……! そうか、それで笑野さんが動けないのを見て、レモナさんが飛び掛って――」
(´・ω・`)「首を絞めた。その反動で笑野さんは拳銃を落としてしまった」
( <●><●>)「そして、必死の抵抗のすえ――」
(´・ω・`)「レモナさんのロケットを掴んで、そのまま2Fまでまっさかさま――こんなところだろう」
(´・ω・`)「……違いますか、レモナさん」
|゚ノ ∀ )
|゚ノ ^∀^)
|゚ノ ^∀^)「………」
.
- 679 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:10:43
ID:6.gT5oTU0
-
レモナは、顔をあげた。
涙は長さず、若干いびつな笑みを浮かべている。
ショボーンは、黙って彼女を見つめた。
彼女とショボーンの間にはなにもなく、彼女の後ろに荷台、そしてエレベーターがある。
ワカッテマスも、いまは彼女から離れて、自分のすぐ後ろに控えている。
今、ここから歩み寄って、連行の旨を告げるべきなのか――
そう思っていると、レモナはいびつだった笑みをやめ、くっきりとした笑みを浮かべた。
|゚ノ ^∀^)「……ええ」
(´・ω・`)「……そう、ですか」
その笑みを見て、ショボーンは、ようやく安堵というものを手に入れたような気がした。
ついに、彼女が罪を認めてくれたからだ。
笑野プギャーの、殺害。
WKTKホテルの、爆破。
ダイナマイトの不当所持。
拳銃の不当所持及び発砲。
彼女の残した罪は、ショボーンのように刑事でなくともわかる。
あまりにも、多く、あまりにも、重い。
だから、ショボーンは今すぐにでも逮捕して、連行しなければならない。
だが、それもそれで酷だ、と思う自分がいた。
「捜査に私情を挟むのはタブーだ」と日頃から言っているのだが、やはり、非情には成りきれない。
ここに来る船に乗っていたときのように、またワカッテマスに笑われるな、とショボーンは思った。
.
- 680 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:11:14
ID:6.gT5oTU0
-
すると、レモナは口を切った。
|゚ノ ^∀^)「だから――」
(´・ω・`)「?」
|゚ノ ^∀^)「さよなら」
(´・ω・`)
――そして、持っていたナイフを、己の首の、頚動脈にまで近づけた。
.
- 681 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:11:47
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=gDduNMXCTJM
(;´・ω・`)「―――ッ!! な――」
|゚ノ ^∀^)「こんなことなら……最初から、あなたに頼ればよかったです」
(;´・ω・`)「………ど、…どういう意味ですか?」
|゚ノ ^∀^)「最初からあなたにだけはほんとうのことを言って……」
|゚ノ ^∀^)「アンモラルグループの後ろ暗い部分を、次々明かしていってもらえばよかった」
(;´・ω・`)「……?」
.
- 682 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:12:27
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ^∀^)「――あ。でも、それもだめか」
|゚ノ ^∀^)「どうせ、アンモラルの人らに、情報を消されるんだから」
|゚ノ ∀ )「………アッハハハハハハハハハハハハハハ!!」
|゚ノ ∀ )「ハハハハハッ…アッハハハハハハハッ! ハハハ!!」
|゚ノ ∀ )「ここで、私もろとも、あの三人と共死にできていたらなあ!!」
(; <●><●>)「警部、彼女は――」
(;´・ω・`)「………頚動脈を切って、自殺するつもりだ」
(; <●><●>)「―――ッ!」
現状を把握して、ワカッテマスもとたんに顔一面に焦燥を張り巡らせた。
――まだ、ナイフを持っていたのか。
そのことに気づくにしては、あまりにも、遅すぎた。
.
- 683 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:12:58
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「そうだ、拳銃で腕を撃てば――」
|゚ノ ∀ )「一歩でも動いたら!」
( <●><●>)「ッ!」
ワカッテマスが言うのを、レモナが大きな声で制した。
――が、威勢には満ちていなかった。
涙声で、枯れていたのだから。
|゚ノ ∀ )「一歩でも動いたら―――」
|゚ノ ;∀;)「―――死ぬ」
.
- 684 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:13:47
ID:6.gT5oTU0
-
(;´・ω・`)「な、なぜだ! なぜ、死ぬ必要がある!」
(;´・ω・`)「おとうさんの仇を討たなくて、いいのか!?」
ショボーンが遅れて、説得に入った。
だが
|゚ノ ;∀;)「アッハハハハハハハハハハハハハ!! 無駄じゃない!
. あんな大きい組織相手に、仇討ちなんてできるはずないじゃん!
. 実際に、こうして戸籍とかちょろまかされたんだから!!」
――レモナには、まるで効きそうにはなかった。
そのため、ショボーンも、徐々に手のひらに汗がにじんできた。
ここで、レモナを止めなければならない理由は、いうまでもなかった。
彼女に罪を償わせる必要がある、のも当然だが、
大前提として、警察官として、人命をいたずらに捨てさせるわけにはいかなかったのだ。
.
- 685 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:14:20
ID:6.gT5oTU0
-
(;´・ω・`)「君の要求は、なんだ! なにをしたら、そのナイフを下ろしてくれるんだ!?」
|゚ノ ;∀;)「アハハ……じゃア、…え、えっと、ね。
こ……ッ…ここで―――」
(・ω・`; )「……?」
レモナは開いているほうの手で、奥のほうに指をさした。
その腕はひどく震えていて、彼女の精神状態が崩壊寸前であることをあらわしていた。
ショボーンは指の向けられるほうに、顔を向けた。
そこには、真っ白な顔のガナーが立っていた。
ショボーンはまさか――と、思った。
――そして、それは、的中していた。
|゚ノ ;∀;)「彼女が、し、死んでくれたら――」
.
- 686 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:14:50
ID:6.gT5oTU0
-
( ; ∀‘)「……………、………え……?」
(;´・ω・`)「ば、ばかげたことを言うな!
どうして、彼女の命がいるんだ! 彼女は被害者だ、って、言っただろ!」
|゚ノ ;∀;)「じゃあ――」
レモナが、ぐい、と頚動脈にナイフを近づける。
その様子に躊躇はなく、ほんとうに、ここで死ぬつもりのようだった。
(;´・ω・`)「―――くッ」
(; <●><●>)「警部!」
(;´・ω・`)「……なんだ」
事の重大さを理解したワカッテマスが耳打ちをした。
視線はレモナから逸らさず、ショボーンは耳を傾ける。
.
- 687 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:15:20
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「もうじき、応援がきます。そのときに、確保してもらうのが――」
(´・ω・`)「………たぶん、ここにほかの誰かがきたら、彼女は迷わず死ぬだろう」
(; <●><●>)「じゃ、じゃあどうやって彼女を止める、というのです!」
(´・ω・`)「僕に聞くな。そんな方法があれば、とっくにしてるさ」
(; <●><●>)「…………ッ!」
ショボーンに殴られたかのように、ワカッテマスは怯み、よろめいた。
ここで、プギャーの持っていた拳銃を彼女に撃つことができれば
その隙を衝いて、彼女の動きを拘束することもできるのだが――
まえもって彼女に動きを制されていては、どうしようもない。
ワカッテマスは、どうすればいいのか、と、頭を悩ませた。
彼が事件の捜査で頭を悩ませるなど、めったにないことなのに。
.
- 688 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:16:15
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ;∀;)「ほら、ほら! ほらッ!!」
(;´・ω・`)「………」
レモナが、急かすようにショボーンに言ってくる。
彼女は、いま、冷静な思考ができないでいる。
時間をかけて頭を冷やさせれば、なんとか彼女を自害から救い出すこともできるのだが
それは、そのうちやってくるであろう警察の応援によって妨げられるだろう。
この短時間で、彼女を自害させずに済むには―――
ショボーンはわき目で、ガナーをもう一度見た。
ガナーは自分の出生の事実を知り、なにも考えることができないでいるようだ。
半ば放心状態に近いものの、辛うじて自我だけは保っている――そんな様子だった。
警察官として、人命を犠牲に人命を救うなどは、決してしない。
もとより、レモナの要求など呑むつもりがない。
しかし―――
(;´・ω・`)「(どのみち……誰かが死ぬ、ということなのか)」
.
- 689 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:17:24
ID:6.gT5oTU0
-
考えてみるまでもなかった。
いま、レモナは、頚動脈を切って自害する素振りを見せており
また、その意志はかたく揺るがないものとなっているようだ。
実の父親だったモナーの死去を前に自害するなど、考えられないことではない。
一方で、彼女の要求は、モナーの偽りの娘だった、ガナーの死。
つまり
(;´・ω・`)「(レモナさんか、ガナーさんの……どちらかが、死ぬ)」
ふざけるな――と、ショボーンは大声で怒鳴りたくなった。
しかし、その衝動でレモナの握るナイフに力が入ってしまえば、おしまいである。
また、どこか不自然な挙動を見せるだけで、おそらくレモナはためらいなくナイフに力を入れるだろう。
タイムリミットも、ある。
行動に制限も、ある。
許される行動は、レモナの自害を見届けるか、ガナーを差し向けるか、のどちらかだけ。
ショボーンは、両者の生還しか考えていない。
しかし――それを実行させるのは、不可能のように思えた。
.
- 690 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:18:09
ID:6.gT5oTU0
-
(;´・ω・`)「………ハハハ……。なんだ、僕、ほんとうに刑事かよ」
( <●><●>)「け、警部?」
(;´・ω・`)「人命最優先ってポリシーの僕が、まさか………」
(;´-ω-`)「人命の放棄、を考えるなんて……な」
.
- 691 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:18:51
ID:6.gT5oTU0
-
(゚、゚;トソン「!」
(; <●><●>)「警部!?」
|゚ノ ;∀;)「………そ、うですか。わかりました」
|;;;;|;,'っノVi ,ココつ「ッ! 待ちなされ、レモナさん!」
爪;'ー`)「なんだったら、ウチの秘書にでもなるかい? 厚遇を約束するから、さ!」
(;´W`)「………刑事さん……。」
.
- 692 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:19:23
ID:6.gT5oTU0
-
ショボーンは目をつむって、ちいさく、しかしその場にいる皆に聞こえるような声で言った。
それは、要求を呑まない――つまり、レモナの命を捨てることを、意味する。
その言葉を聞いて、ワカッテマスとトソンは、驚愕した。
いや、この場にいた誰もが、驚愕した、と言ってもいいだろう。
ショボーンのこの言葉に、作為は感じ取れなかった。
油断させた隙に、レモナを――などという裏は、ないように思われた。
彼が、ほんとうに落胆を感じさせるような声を放ったためだ。
慌てて彼女の自害を防ごうと、マリントンたちも説得を試みる。
が、ほんの一定期間の間でしか関係を持たなかった彼らに、それを成功させるのは不可能だった。
彼女を止めるには、やはり、彼女を今もなお苦しめ続けている『偽りの絆』を――
ガナーとモナーとの関係を、断ち切るよりほかにない。
そしてショボーンは、それをすることが、できなかった。
.
- 693 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:19:59
ID:6.gT5oTU0
-
|゚ノ ;∀;)「………」
|゚ノ ∀ )「…………じゃあ」
BGMここまで
.
- 694 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:20:32
ID:6.gT5oTU0
-
「………さようなら………」
.
- 695 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:21:14
ID:6.gT5oTU0
-
.
- 696 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:22:37
ID:6.gT5oTU0
-
「そう簡単には死なさせへんで」
.
- 697 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:23:07
ID:6.gT5oTU0
-
(; <●><●>)「ッ!」
(゚、゚;トソン「っ!」
( ; ∀‘)「……!」
―――レモナの持つナイフが、頚動脈に食い込もうとしたとき
そんな、しわがれた声が放たれた。
.
- 698 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:23:37
ID:6.gT5oTU0
-
(;´・ω・`)「………?」
(´・ω・`)「……っ! あ、あなたは――!」
(゚A゚*;)「よう撃ってくれたなァ、レモナさん」
|゚ノ; ;∀;)「―――ッ!!」
.
- 700 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:24:08
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「ッ!!」
(; <●><●>)「あッ! ……そういえば、荷台には―――」
( <●><●>)『彼女は――』
(´・ω・`)『……荷台で、倒れている。おそらく、気絶しているんだろう』
――荷台で倒れていたのーが、彼女の傍らに忍び寄っては、レモナの両腕を捕らえていた。
レモナははッとして後ろを横目で見やるが、もう遅い。
のーの両腕は、確かに、レモナの腕を固定していた。
当然、ナイフも、頚動脈に近づくことはなくなった。
|゚ノ ;∀;)「―――――!! ッッ!」
(゚A゚*;)「刑事さん、はよきてや! こっちはケガ人やで!」
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- 701 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:25:02
ID:6.gT5oTU0
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(´・ω・`)「!」
( <●><●>)「!」
「今だ!」
そう声にすることはなかったが、のーの声を聞いて、二人は一斉にレモナに飛び掛った。
のーを横目で見ていたレモナが、視線を前方、刑事二人に向ける。
その瞬間、レモナは、恐怖の真髄を目の当たりにしたかのような顔をした。
(´・ω・`)「――よし!」
( <●><●>)「緒前、レモナッ! ……殺害等の容疑で、身柄を拘束する!」
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- 702 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:25:34
ID:6.gT5oTU0
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|゚ノ ;∀;)「―――ッ!」
|゚ノ ;Д;)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
. あああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
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- 703 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:26:06
ID:6.gT5oTU0
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「……なんで! どうしてッ!!」
「気がついたら、孤児として育てられてて……」
「どんなおとうさんか……どんなおかあさんかがわからないなか……」
「あの、ロケットが……ロケットだけが、私の、ほんとうのおとうさんで……!」
「ずっと、いつか、また、このロケットのなかのおとうさんと暮らせる、って信じてて……!」
「そのおとうさんが、ちょっとしたグループの社長だって知って…」
「でも、あの人は私のことを知らないみたいで……だから、他人のそら似かな、って思って……でも!」
「それでも、一緒にいたいって思えたから、秘書になるように一生懸命がんばって………」
「そしたら、秘書になることができて、おとうさんと一緒に働くことができて……」
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- 704 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:26:40
ID:6.gT5oTU0
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「幸せだった……そのときは、幸せだった………けど……」
「ある日、知らない人から手紙がきて……そのときに、『真実』を教えられて……」
「『モナーはお前の実の親だ』『ガナーはアンモラルから差し向けられたニセの娘だ』って……」
「だ、だから、それからは毎日、ずっと、ずっと、アンモラルとおとうさんとの、関係を、調べて………!」
「で、今日、例の、美術品の話を、することは、最初から聞いてたから、念のためにって、ダイナマイトも用意して……」
「そしたら、ほ、ほんと……ッ、ほんとうに、アンモラルから、の、差し金で……」
「お、とうさ、んが……ッ、……あ……もら…にッ……ッ……して……、――…殺され………ッ!……」
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- 705 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:27:20
ID:6.gT5oTU0
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|゚ノ ;Д;)「ね゙え! 教え゙てよ!」
|゚ノ ;Д;)「どうじて、わたじは、おとうざんと暮らすことを、ゆる゙されなかったの!?」
|゚ノ ;Д;)「どゔして、おとゔさんば、わたじを――」
|゚ノ ;Д;)「わ゙たしを、愛しでくれな゙がったの゙!?」
(´・ω・`)「……」
|゚ノ ;Д;)「こだえてよ!! ジョボーンざん!!」
ワカッテマスに両手首をつかまれ、抵抗が許されない状態になって
レモナは、今までにないくらいの涙を流し、顔をくしゃくしゃにさせた。
そして、ショボーンが彼女と向き合うと、レモナが、そう、悲観に満ちた声をもって言い放った。
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- 706 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:27:51
ID:6.gT5oTU0
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|゚ノ ;Д;)「ずっと、ずっとイ゙どりぼっちで!!」
|゚ノ ;Д;)「お゙ど……ざんは、ずっどたイ゙んのふりで!!」
|゚ノ ;Д;)「わ゙だじがきらいだがらずてたんたああ゙あ゙あ゙あ!!」
(´・ω・`)「………」
(´・ω・`)「………これは、なんの論理性もない、当てずっぽうな推理ですが」
|゚ノ ;Д;)「……?」
ぜェ、ぜェ、とレモナが荒い呼吸をする。
一方で、向かいのショボーンの呼吸音は、ほとんど聞こえなかった。
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- 708 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:28:25
ID:6.gT5oTU0
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(´・ω・`)「今日の昼も……あなたとモナーさんとで、意見の食い違いがありましたよね」
(´・ω・`)「……そうそう、確か―――」
( ´∀`)『どーせオープンは来週だモナ。柱を折ったりされない限り、問題ないモナ』
|゚ノ ^∀^)『だから、来週だと早いですって。いい加減諦めてください』
( ´∀`)『モナは来週がいいモナ!』
( ´∀`)『予定は意地でも貫き通すモナ。しょっぱなから気候に負かされてちゃあ、幸先が悪いモナ。
それに……』
(´・ω・`)『それに?』
( ´∀`)『……まあ、とにかくなんとしてでも来週にはオープンさせてみせますモナ』
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- 709 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:29:00
ID:6.gT5oTU0
-
(´・ω・`)「――来週――に、オープンさせる、と」
|゚ノ ;Д;)「………ぞれが……」
「どうした」
そう言う前に、ショボーンが続けた。
(´・ω・`)「ひょっとすると……来週の………そう、『二月二十四日』……って」
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ『二十年ちょっと前の、ちょうどこないなふうに雪のひどい日ィでしたわ。
誕生日はいつやったかのォ……まあ、それはエエとして』
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- 710 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:29:33
ID:6.gT5oTU0
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(´・ω・`)「あなたの、誕生日じゃないんですか?」
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- 711 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:30:07
ID:6.gT5oTU0
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|゚ノ ;Д;)
|゚ノ ;Д;)「 」
|゚ノ ;Д;)「 ‥‥‥
! 」
(´・ω・`)「あなたの誕生日に、みごとオープンさせたときに」
(´・ω・`)「ひょっとするとモナーさんは、あなたに、ほんとうのことを打ち明けるつもりだった――」
(´・ω・`)「……そうだった……んじゃないかな、って、思います」
|゚ノ ;Д;)「ッ!! ……、―――――………。」
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- 712 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:31:18
ID:6.gT5oTU0
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―――まだ、その場に聞こえる雪の調べは、消えそうにない。
むしろ、ここから、その旋律は見せ場にはいるのではなかろうか。
雪の持つ、淡く、儚いその音色は、クライマックスになろうとしている。
しかし、そうだというのに。
その雪の音を、レモナの泣き声が、すべて掻き消してしまった。
が、だれも、それに顔を歪める者はいなかった。
そのときのレモナの、涙の絶叫は
この雪の調べよりも、淡く、儚く、そしてさみしいもののように聞こえたのだから。
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- 713 名前:
◆wPvTfIHSQ6:2013/03/23(土) 23:32:01
ID:6.gT5oTU0
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