502 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:01:21 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
(゚A゚*;)「あ……あ………」
 
(´・ω・`)「……」
 
 
 ショボーンが、今までのなかで一番大きな声を発した。
 まるで怒鳴りつけるかのように、言った。
 するとのーは、先ほどまでの威勢のよさが嘘のように、小刻みに震えだした。
 
 もう、血がかたまったのだろうか、銃創から流血は見られなかった。
 代わりに、どす黒い、かさぶたのような塊が見られる。
 ――もう、そんなに時間がたっていたのか。ショボーンは思う。
 
 
(´・ω・`)「………」
 
( A *;)「……っ…!
 
 
 少し、ショボーンは黙ることにした。
 黙って、沈黙をもって、のーを真正面から見つめる。
 そうすることで、彼女のなかにある罪意識を、増幅させるのだ。
 
 
 
 ――そして。
 
 
.

503 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:01:53 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
( A *;)「……違うんや! ウチが悪いんとちゃう!!」
 
 
( A *;)「う、ウチは……なんも悪くないんや!」
 
 
( A *;)「あンの、クソヤローが……モナーが! アイツのせいで!!」
 
 
( A *;)「アイツは……コマなんや!
      あんなオイボレに運営任せるより、ウチらに任せてもろたほうが万年黒字!
      そンためにウチらはあんだけキョーリョクしたったのに!! あのアホンダラは―――」
 
 
 
 
 
 
   『わかるモナ? モナは、ビジネスだの、売り上げだの、考えてないんだモナ』
 
   『せ、せやかて……』
 
   『確かに、ソチラのごキョーリョクは……助かったモナ』
 
   『数々のチェーン店舗。キタコレに展開されるチェーン店は、ほんの少ししかない』
 
   『キタコレの人にとっても、いろんな面において、このホテルは重宝されて然るべきものとなったモナ』
 
   『や、やろ? やから――』
 
 
   『……でも』
 
   『――?』
 
 
.

504 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:02:29 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
   『キタコレに、そんなビジネスだの、発足だの、黒字だの……』
 
   『そんな、裏でドロドロしたものが広がる、偽りの栄光なんて……必要ないモナ』
 
   『……な、なに言うてはんの、シャチョーさん……?』
 
   『モナは、実際にここに住むようになって、わかったものがあったんだモナ』
 
   『わかったもの…?』
 
   『キタコレ民の……その、心の豊かさ。広さ。大きさ。……そして、きれいさ、モナ』
 
   『……え?』
 
 
   『最高級のサービスに、より取り見取りのおみやげに、至高の食事……』
 
   『そんなものじゃあ、キタコレの人の心は、癒せないモナ』
 
   『あ、んなァ……いちお、ターゲットは観光客や! キタコレ民のこと考える必要は、ない!』
 
   『……モナ?』
 
   『な、なんや…? ウチは正論言っただけやで…!』
 
   『……正論、か』
 
   『なにがおかしい言うねん!』
 
   『観光ビジネスというものは、観光する人とされる人とが、ひとつになって……そう』
 
 
   『絆……を築き上げて、互いに笑顔で終わる……そういうものの、はずなんだモナ』
 
 
.

505 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:03:12 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
   『……き、絆…?』
 
   『おまえの話は……ただ一方的に、キタコレを食い散らかそうとするだけの、侵略行為モナ』
 
   『ちゃう…ッ! う、ウチはそんな……』
 
   『キタコレ民の善良な心につけこんで、こちらの都合のいいようにあれこれさせる……』
 
   『絆もへったくれもない、ヒトとしてサイテーな行為モナ』
 
   『こちらは、キタコレ民に了解を得て、こういうビジネスをするわけじゃない』
 
   『でも、キタコレ民からの了解は、ビジネスの「これから」を見てもらった上で……得る』
 
   『それが、観光ビジネスという、人様の恩恵をお借りした上で運営させていただく者にとっての、最低限の礼儀モナ』
 
   『な、なに言うとんねん! んなキレイゴトで、このご時世、やってけるゥ思うてんのか!!』
 
   『……なんだって…?』
 
 
   『なにが絆や! なにが礼儀や! なにが、ヒトとしてや!』
 
   『んなもん、ゼンブはりぼて! 商業の自由が許されてる以上、ヨウはカネもっとるもんのほうがエライんや』
 
   『やから、キタコレ民がウチらのビジネスに反対やろーと、カネがない限りは知るかいな!』
 
   『エサはエサらしく、そこでおとなしゅーしとけっちゅーハナシやねん!』
 
 
   『………黙れ……』
 
 
.

506 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:03:43 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
   『シャチョーさん、あんたトコの営業方針見せてもらったからハッキリ言わせてもらうけどな』
 
   『こないな、ドーラク同然のビジネスに、ウチは手ェ貸されへん』
 
   『せやから、ウチが誘致した企業は、ゼンブ撤廃させてもらう』
 
   『困るやろ? 困るやろ。でもな、ビジネスっちゅーんは、つまりそーゆーこっちゃねん!』
 
   『強いやつが生き残り、弱いやつが死に絶え、強いやつに食われる……それが、ビジネスの大前提や!』
 
   『……とか言うても、企業誘致するだけで、コッチもケッコーカネはろてんねん』
 
   『求人とか、店呼んだり、宣伝費もアホほどかかっとるし』
 
   『何より、このビジネスが成功するっちゅー前提でコッチはカネ用意してんねん』
 
   『やから、ウチらの言うこと聞いてもらわれへんねんっちゅーやったら……』
 
 
   『………!!』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

507 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:04:18 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
( A *;)「う、ウチは、正論しか言うてへん!!」
 
( A *;)「確かに、聞こえは悪いわ。食い散らかしとるだけェ言われてもしゃーない」
 
( A *;)「でも、ビジネスや! これは遊びやないねん! 慈善事業でもないんや!」
 
( A *;)「それを、アイツは……!」
 
 
 
.

508 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:04:50 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
   『――――ッギ――!』
 
   『だ……黙れ…! おまえは、何もわかっちゃいない!!』
 
   『――――――ッ…――』
 
   『自分たちが偉かったら、ほかの人のことは考えないつもりか!!』
 
   『おまえの言うビジネスは、やりすぎだ! いきすぎだ!』
 
   『そこまでカネを稼いで、することと言えば、高いサケを飲んで、高い家で寛いで……』
 
   『一般人からカネを搾取して、それで一人だけがのうのうと暮らす!』
 
   『奴隷の上に君臨する暴君……それが、ほんとうにビジネスだとでも、言うのか!!』
 
   『――ガ――ッ―――――』
 
   『その高いサケも、高い家も、ぜんぶ……全部! ほかの人との助け合いのもとで、つくられてるんだ!』
 
   『なのに、それを当然だと思い込んで、その人のことは何も考えず、毎日カネと大切なものを奪っていく……』
 
   『――――――』
 
   『………許さない……ッ……!!』
 
   『          』
 
 
 
 
.

509 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:05:22 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
( A *;)「――いきなり、首を絞めてきよった! 殺されるか思ったわ!!」
 
( A *;)「あの目……あの声……あの力……どれも、……怖かった……ッ!!」
 
(゚A゚*;)「でも、なんとかウチは目を覚ました。よかった、生きてたんやァ思った矢先で――」
 
(゚A゚*;)「アイツが、おったんや!!」
 
(´・ω・`)「……で、持っていたナイフで…?」
 
(゚A゚*;)「ちゃう、違うんや…! もともと、このナイフはただの脅し用やってん!」
 
(゚A゚*;)「脅し用やってんけど―――」
 
(´・ω・`)「気がついたら……刺していた、と」
 
(゚A゚*;)「……やって、しゃーないやん!! 目の前に、ひッ…人殺しが、おってんで!」
 
(゚A゚*;)「……そうや。これは、正当防衛や!! 計画もクソもない、ただオノレ守るためだけに……仕方なく!」
 
(´・ω・`)「……」
 
(゚A゚*;)「確かに、刺した。取り調べも、されるやろ思う」
 
(゚A゚*;)「でも、事実として、モナーはウチを殺しにかかった。やから、正当防衛が適用されて、ウチは無罪や!」
 
 
(゚A゚*;)「そーやろ!? 刑事さん!!」
 
(´・ω・`)「……」
 
 
.

510 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:05:57 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 のーが、身を乗り出して訊く。
 その勢いに圧倒され、トソンはちいさく悲鳴をあげながらショボーンの後ろに隠れた。
 
 のーに問われた、ショボーンは。
 少し残念そうな顔をして、答えた。
 
 
(´・ω・`)「……確かに、事実としては正当防衛だったのでしょう」
 
(゚A゚* )「! ほ、ほら――」
 
(´・ω・`)「しかし」
 
(゚A゚* )「ッ」
 
 
 
(´・ω・`)「あなたのそれは、『過剰防衛』に値するのですよ」
 
(゚A゚*;)「……過剰防衛……?」
 
 
.

511 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:06:28 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 なにやら聞きなれない単語を放たれ、のーはきょとんとした。
 だが、その言葉から予測できる意味とショボーンの様子から、のーは嫌な予感がした。
 
 
(´・ω・`)「いまの話は……おそらく、ただしい。激情したモナーさんが、あなたを絞め殺そうとした」
 
(´・ω・`)「それに命の危機を覚えるのは、しごく当然のことと言えるでしょう」
 
(´・ω・`)「ナイフでモナーさんを攻撃した――ここまでは、やはり男女差もあり
.      モナーさんも確実に絞殺する、という理由で
.      紐を使っている以上『武器対等の原則』…にとやかく言われることはないでしょう」
 
 
 
(゚A゚*;)「じゃ、じゃあなにがあかんのや……」
 
(´・ω・`)「『モナーさんが失血死するからくりをつくった』ことですよ」
 
(゚A゚*;)「!」
 
 
.

512 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:07:05 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(´・ω・`)「ナイフで抵抗する、まではよかった」
 
(´・ω・`)「でも、あなたはナイフと扉を紐でつないで、
.      モナーさんが必ず失血死するようなからくりを用意してしまった」
 
(´・ω・`)「腹にナイフを刺して気絶させた時点で、防衛はできてたんですよ。
.      でも、あなたはそれ以上のことをしてしまったから……」
 
(゚A゚*;)「……」
 
 
 
(゚A゚*;)「………ほな、アレか。ウチは、人殺しになるわけか」
 
(´・ω・`)「……」
 
(゚A゚*;)「………ツが」
 
(´・ω・`)「…?」
 
 
 
.

513 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:07:38 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚A゚*;)「アイツが……アイツが!」
 
 
( A *;)「全て、モナーが!! ハナシはパーティのあとォ言ってたのに!!」
 
 
( A *;)「『ちょっと話をしよう』やと!?」
 
 
( A゚*;)「アイツのせいで!! アイツが、あんときにウチに話を持ちかけへんかったら!!」
 
 
( A *;)「ほんまは、パーティのあとで! プギャーと二人がかりで落とすはずやったのに!」
 
 
( A *;)「ウチは!! ウチは……!!」
 
 
 
 
( A *;)「ウチはああああああああああああああああああああああああああああああああ
      あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
      あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
      ああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

514 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:08:20 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
    イツワリ警部の事件簿
    File.3
 
           (´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
              第十幕 「 ほんとうの絆 」
 
 
 
 
 
.
515 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:08:50 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
(;A;* )「―――ッ……、……っ…!」
 
(´・ω・`)「……」
 
 
 のーは、胸のうちに潜んでいたものを全てぶちまけて、そのまま床に突っ伏した。
 年齢をごまかすための化粧など、もはや意味を成さなくなっている。
 むしろ、実年齢よりも老けて見えるようになっていた。
 
 ショボーンは、彼女に手を差し伸べるべきかどうか、悩んだ。
 確かに、彼女は、モナーに殺されかけたのだ。
 一方で、彼女は正当防衛という名の殺人トリックをモナーに仕掛けた。
 
 また、そもそも、彼女がモナーを脅すつもりがなければ、ナイフはなかった――
 つまり、殺人事件そのものが起こりえなかったのだ。
 そう考えると、彼女の「正当防衛」を肯定するわけにはいかない。
 
 
 ――なんてことを考えていると、トソンがショボーンのスーツの裾を引っ張った。
 
 
.

516 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:09:27 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚、゚;トソン「警部、警部」
 
(´・ω・`)「…? なんだい」
 
 
(゚、゚;トソン「な…なんだろう。ケムリが……」
 
(´・ω・`)「……ケムリ……?」
 
 
 ショボーンはトソンに言われて、彼女の指さす方向を見てみた。
 すると、バーの扉の隙間と、背後の扉から、黒い煙が見えた。
 
 
 ショボーンは悪寒が走った。
 
 
 
.

517 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:10:04 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´゚ω゚`)「―――ッ!! ああああああああああああああああッ!」
 
(゚、゚;トソン「……気のせいか、息苦し――」
 
( ;´・ω・)「おい、のーさん!」
 
(;A;* )「……」
 
( ;´・ω・)「――ッ」
 
 
 のーは、ついに諦めたのか、そもそもその煙に気づいていないのか、ただ呆然としていた。
 ショボーンが呼びかけても、応じない。
 
 のーを追い詰めることで頭がいっぱいだったが、
 ほんとうは、追い詰めるよりも先にするべきことがあったのだ
 5Fからやってくる黒い悪魔の手に捕まらず、一刻も早く脱出する――
 
 
(・ω・`; )「……チッ…!」
 
 しかし、それには足かせが幾つもあった。
 まず、この場に動ける人が、ショボーンとトソンしかいないのだ。
 
 モナーはついに絶命し、レモナは気絶。
 ガナーも同じく気絶し、のーは自我を保てないでいる、と。
 
 一方で、悪魔――煙は、ついに最上階、11Fにまでやってきている。
 つまり言いかえると、このホテルは5Fより上の全域が煙に支配されているというわけなのだ。
 こうも短時間でここまできたということは、急がなければ、すぐにこの部屋も――
 
 
.

518 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:10:34 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
( ;´・ω・)「くそッ!」
 
(゚、゚;トソン「どうするのですか?」
 
(;´・ω・`)「トソンちゃん、助手としての任務を頼まれてくれ!」
 
(゚、゚;トソン「え…え?」
 
 
 トソンがきょとんとする。
 この事態を前に、認識能力が追いつけていないのだろう。
 ショボーンはモナーを右肩、のーを左肩に担いだ。
 二人を引きずるようにして、ゆっくり歩く。
 
 
(;´・ω・`)「いますぐ、ここを抜け出す! でも、僕だけじゃとても四人は運べない!
       それにこの調子だと、二往復なんてしてるうちに煙に追いつかれる!」
 
(;´・ω・`)「無茶だとは思うけど……二人、持てる? ガナーさんと、レモナさんを」
 
(゚、゚;トソン「やってみます……けど、どうやって抜け出すんですか!?
      エレベーターが動くかどうか、というのは……」
 
(;´・ω・`)「搬送用エレベーターだ!
       あれは、非常時にも稼動する! パンフレットに、あった!」
 
 
 
 
   ( <●><●>)『搬送用なんだから、でかくて当然でしょ。非常時にも動くんだから、大きいほうが有利だ』
 
   (´・ω・`)『非常時には、ねえ……』
 
 
 
.

519 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:11:07 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚、゚トソン「!」
 
(;´・ω・`)「とにかく、急いでくれ!」
 
(゚、゚トソン「は、はいっ…」
 
 
 トソンは駆け寄ってきて、倒れているガナーを持ち上げてみた。
 女性といえど、人間は運ぶ分には重い。
 
 成人女性なのだから、どれだけ少なく見積もっても40キロはある。
 10キロの米袋すら持つのに四苦八苦するトソンで、なにもなしに40キロの人を運ぶのは無理だった。
 
 
(゚、゚;トソン「………」
 
(;´・ω・`)「……できない?」
 
(゚、゚;トソン「も、もう一度がんばっ――」
 
 
 言うと、めらめら、と何かが燃える音がした。
 黒い煙の量も、一気に増える。
 また、意識せずとも悪臭が感じ取れるようになった。
 
 ショボーンは嫌な予感がしたため、そちら――バーの扉をひらいた。
 モナーとのーをいったん降ろし、鍵を開けて。
 
 
 すると。
 
 
 
.

520 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:11:45 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚、゚;トソン「……!」
 
(;´・ω・`)「…………まずい」
 
 
 制御室でも少し、ぼや程度の規模で見ることができた炎が、
 廊下一面を覆う巨大な火事となって、そこまで迫ってきていた。
 制御室――つまり、エンジンルーム。
 なにかに引火したと考えれば、納得することはできた。
 
 しかし。こんなときに、彼は辻褄などを求めるはずもなかった。
 トソンのことを気にせず、大声を出した。
 
 
( ;´・ω・)「のー! 起きろ! のーッ!!」
 
(;A;* )「……………」
 
 再びモナーとのーを背負う前に、のーを揺らしながら、呼びかける。
 しかし、生気すら感じられない。
 ――いや、そうでない。彼女は、きっと、ここで死のうとしているのだろう。
 追い詰めすぎてしまった――と、ショボーンはこのときになって後悔した。
 
 
.

521 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:12:17 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
( 、 ;トソン「きゃあッ!」
 
(;´・ω・`)「な、なん――」
 
 
 トソンの悲鳴を聞いてそちらを見ると
 
 
(;´゚ω゚`)「――――ッ!?」
 
 
 ――もう、バーの扉に炎が移っていた。
 いつまでもここにいると、のーが正気を取り戻す前に、皆焼死してしまう。
 そのため、ショボーンはやむなく二人を担ぐが――
 
 
(゚、゚;トソン「え、えっと、えっと……ッ…」
 
 
 トソンがなんとか片方だけでも持ち上げようとするが、
 うまく自分の体の上にガナーを載せることができない。
 
 細腕の彼女に、人を運ばせることすらお門違いなのだ。
 それはわかっているのだが――
 
 
.

522 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:12:49 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「―――」
 
(;´・ω・`)「――モナー…さん…」
 
 
( ;: ∀`;)
 
 
 そこでショボーンは、傍らに見えるモナーの頭を見て、つぶやいた。
 刑事のショボーンでなくとも、わかる。
 モナーは、もう死んだ。当然のことだ。
 
 当然、緊急事態において取捨選択に迫られる場合、死人よりも、生きている人を優先すべきだ。
 ここでレモナとのーを担いで、トソンがなんとか引きずってでもガナーを運ぶことができれば――
 
 
(;´・ω・`)「………」
 
 
 
 
 ――しかし。
 ショボーンの脳裏を、ある言葉が掠める。
 
 
 
 
.

523 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:13:20 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
   (´・ω・`)『「絆」』
 
   ( <●><●>)『絆?』
 
   (´・ω・`)『モナーさんは、人と人との絆を大事にする。親子でも、夫婦でも、会社の師弟、でもだ』
 
 
 
 
 
(;´・ω・`)「……絆………」
 
(;、;トソン「…い……ッ…もうちょっと……」
 
 
 トソンは、なんとか背中にガナーを載せることはできたが、
 そこから第一歩が踏み出せない状態になっていた。
 これでは、ガナーもろとも焼死体になるか、もしくは一酸化炭素中毒で絶命してしまう。
 
 それはわかっている。
 生きている人のほうを、死んだ人よりも優先するべきなのだ。
 刑事のショボーンは、なにより、人命を優先すべきであり
 それは警察官としての掟である、と、部下のワカッテマスにも何度も言ってきた。
 
 
 
   ( <●><●>)『あなたが無実なら、なにもおそれる必要はない。
            人命最優先です。至急、お願いします』
 
 
 
.

524 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:13:52 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「なにを悩んでるんだ、僕は……!」
 
 
 
 ここでモナーを見捨てれば、残りの皆が生還できる可能性は高い。
 裁判をするさいに面倒なことにはなるが、裁判と人命とじゃあ、
 刑事のショボーンにとってはどう考えても後者のほうが重いのだ。
 
 ――だが。ショボーンが悩んでいたのは、そういうことではなかった。
 
 
 
 
 
 ここで、モナーとの『絆』を、断ってしまっていいのだろうか。
 
 
 
 
.

525 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:14:23 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;、;トソン「警…ッ部……ご、めんなさい…」
 
(;´・ω・`)「……くそ、くそ……!」
 
 
 
 トソンが自分の責任を感じ、涙を流して、そう言いはじめた。
 このままほうっておくと、彼女ものーと同じように、自我を保てなくなるだろう。
 そうなってしまえば、全滅以外の道はなくなる。
 
 もしモナーを切り捨てるなら、今、この瞬間に捨てなければ、
 ただでさえ引きずっての移動である以上、時間がなくなる。
 捨てろ、置いていけ。自分のなかの生存本能が、そう叫ぶ。
 
 
 
 ――しかし、ショボーンは、モナーの言う『絆』を、むげにすることはできなかった。
 
 
 
 
.

526 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:15:01 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
(;´・ω・`)「(モナーさんも……ほかのみんなも……助ける!)」
 
 
(;´・ω・`)「……ハハ……やることはひとつ……しか、ないじゃないか」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(´・ω・`)「全員脱出……だ!」
 
 
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=MDyUvZkJiSc
 
 
 
 
 
 
.

527 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:15:31 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 その瞬間だけは――いや。
 その瞬間から、この絶望に負けない、強い「希望」がショボーンのなかに生まれた。
 
 ――そうだ、迷うことはなかった。
 モナーが死んでいようが、関係ない。
 「見捨てる」なんて選択肢など、はじめからなかったのだ
 
 刑事の肩書きなど、関係ない。
 一人の人間として――そこに、『絆』を持つ一人の男として。
 断じて、モナーも、トソンも、倒れている女性の皆も、見捨てない。
 
 
(´-ω-`)「(どこかに、活路が……)」
 
 ショボーンは必死に、脳を働かせることにした。
 どこかに、道が――
 
 
 
 自分たちと命とをつなぐ絆がないか、と。
 
 
 
.

528 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:16:02 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(´-ω-`)「(この際、だれがハンニンとか、どうだっていい!)」
 
(´-ω-`)「(バーの扉からの脱出は――無理。だとすると、活路があるとすれば、レストラン)」
 
 
(´-ω-`)「レストラン……レストラン………」
 
(;´-ω-`)「……れすとらん……、………?」
 
 
 
.

529 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:16:41 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
   (.   )『あのとき、のーさんと話していたときにもあがってましたが……要は「接待の下見」ですよ。
         マリントンさんから鍵を借りて、レストランにちょっと、ね』
 
 
 
 
   爪   )『ど、どうりでコックもいないし、冷蔵庫のなかも空っぽだなあ、と思ったよ』
 
 
 
 
   爪; ー )『れ、冷蔵庫の話は聞かなかったことにしてください!
.          つい、ほんの出来心なんですよ! 「どんな豪華な食材があるんだろう」って――』
 
 
 
 
 
 
 
 
   爪;'ー`)『だって、あんな大きな荷台があったら、気になるでしょ? なりませんか?
.          無礼は詫びますから、だから――』
 
 
 
 
 
 
 
 
.

530 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:17:13 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
(´・ω・`)「――――ッ!」
 
(;´゚ω゚`)「!!! 荷台ッ! それだッ!!」
 
 
(;、tトソン「け、警部…?」
 
 
 
 トソンが涙を拭いながら顔をあげると、ショボーンはモナーとのーをその場に乱雑にほうり、走り出した。
 レストランに向かって、一人で。
 
 
(;´・ω・`)「(大きな荷台……それを、フォックスさんが見た!)」
 
(;´・ω・`)「(あるとすれば、それはどこだ――?)」
 
 
 ホール。
 キッチン。
 ステージ。
 入り口。
 
 
 ――大きな荷台があったとすれば、この四箇所のうちの、どこかだ。
 どこかに向かって、そこに荷台がなければ――もう、タイムオーバーと見るべきである。
 
 たった一度の、大きすぎる賭け。
 はずすわけにはいかない、賭け。
 
 
.

531 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:17:48 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「(考えろ……フォックスさんは、大きな荷台を見たからこそ、
       冷蔵庫に、それだけ多くの食材があると思い込んでいた)」
 
(;´・ω・`)「(ならば、キッチンか? ……違う。
       彼は、どこかで荷台を見たから、したがってキッチンに行った、と考えるべきなんだ)」
 
(;´・ω・`)「(ということは、フォックスさんが自然と訪れるような場所に、荷台はあった。
       彼の行動を辿れば、見えてくるはずだ。……荷台の、場所が)」
 
 
(;´・ω・`)「(フォックスさんは……なにをしていた?)」
 
 
 
   爪'ー`)『あ、知ってたんですか。じゃあ話ははやい』
 
   (´・ω・`)『というと』
 
   爪'ー`)『あのとき、のーさんと話していたときにもあがってましたが……要は「接待の下見」ですよ。
         マリントンさんから鍵を借りて、レストランにちょっと、ね』
 
 
 
.

532 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:18:23 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「(……彼は、下見といってこのホールをぐるっと回ってた。
       …でも、それはほんとうなのか?)」
 
(;´・ω・`)「(彼は、ほんとうはレストランからバー――そう、あの裏口を通って、バーに向かったんだ)」
 
 
 
   爪'ー`)『ええと……つまり、どういうことですか』
 
   (´・ω・`)『ひとまずは保留ってことです。
.         それより、念のため、現状をもう一度だけ細かく話してもらっていいですか』
 
   爪'ー`)『いいですよ。そうだなあ……物音がしたから、ぼくはバーに……』
 
 
 
(;´・ω・`)「(……物音!)」
 
(;´・ω・`)「(彼は、物音を聞きつけた。だから、バーに……)」
 
(;´・ω・`)「(でも……それ、よく考えたら、おかしくないか?)」
 
 
 
.

533 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:18:54 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(´・ω・`)「(物音を聞きつけたからバー……ってことは、フォックスさんはレストランにいたんだ)」
 
(´・ω・`)「(一方で、当時、物音と要因となるもの――それは、のーさんの犯行だけだ!)」
 
(´・ω・`)「(でも、もしフォックスさんが物音を聞きつけてバーに向かったとしたら……のーさんと出会うはず)」
 
(´・ω・`)「(だというのに、フォックスさんは現場から逃げてくのーさんを見てない)」
 
(´・ω・`)「(物音がして現場に駆けつけるまでは数秒のラグがあるけど……見るだけなら、一瞬だ)」
 
(´・ω・`)「(しかし、のーさんはその一瞬よりもはやく現場から逃げ出した……?)」
 
(´・ω・`)「(まさか。レストランに、そんな死角や裏道など、ない)」
 
(´・ω・`)「(だとすると……)」
 
 
 
(´・ω・`)「(フォックスさんが聞きつけた音は、犯行時のものではない。
.      『犯行後の、事件とはまったく別のものが原因で鳴った』と考えるべきなんだ)」
 
 
(´・ω・`)「まったく、別のもの………」
 
(;´・ω・`)「……ッ!!」
 
 
 
 ショボーンは、そこで、走る方向を変えた。
 彼は、いったんキッチンに向かおうとしていた。
 しかし――彼は、『引き返した』。
 
 
 
.

534 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:19:25 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「(そうだ! 荷台は、キッチンとか、ホールとか、そんなところにあったんじゃなかった!)」
 
(;´・ω・`)「(『のーさんの逃走経路』にあったんだ! そうじゃないと、『物音』に辻褄が合わない!)」
 
(;´・ω・`)「(『フォックスさんが目撃できる』ところで
.        『逃走経路の妨げ』となる上
.        『バーの方角』に位置する場所――そこに、荷台はあった!)」
 
(;´・ω・`)「それら全てを満たすのは―――」
 
 
 
 ショボーンは、引き返した。
 その先――観音開きの、バーのステージにつながる扉。
 
 そちらに向かうと、トソンが飛び出してきた。
 ショボーンがなぜ飛び出したのかがわからなかったのだろう。
 ショボーンを慌てて呼ぼうとする。
 
 
(゚、゚;トソン「警ぶ――」
 
(;´・ω・`)「トソンちゃん、その門の奥っ側のほうを、閉めてくれ!」
 
(゚、゚;トソン「え?」
 
 
 
(;´・ω・`)「(僕とトソンちゃんがここにきたときには、気づかなかったけど……)」
 
(´・ω・`)「(さっきの条件のすべてを満たすのは――ここしかない!)」
 
 
 
.

535 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:19:55 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
(´・ω・`)「荷台は、その扉の陰に隠れている!!」
 
(゚、゚;トソン「―――あッ!」
 
 
 
 
 トソンがそちらの扉を閉めると。
 銀色でコーティングされた、確かに「大きな」荷台があった。
 
 ショボーンとトソンがここにきて扉を開けたさい、
 荷台はその開かれた扉の陰に隠れてしまったのだ。
 
 
 
(゚、゚;トソン「警部!」
 
(;´・ω・`)「ああ! 脱出だ!」
 
 
 
 
 
 
BGMここまで
 
 
 
.

536 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:20:32 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 

 
 
 
 トソンのような細腕でも、なんとか人を引きずることはできる。
 彼女にしては切羽詰った声を掛け声に、気合でなんとかガナーを引っ張る。
 ショボーンはモナーとのーとレモナを、一斉に引っ張った。
 
 ――直後。バーの扉から、火が噴き出してきた。
 ショボーンは無意識のうちにこれを予知して、一度に三人を引っ張ったのだろうか。
 真偽のほどはわからなかったが、わかったことは
 
 
(;´・ω・`)「扉を閉めるぞ!」
 
(゚、゚;トソン「はい!」
 
 
 ショボーンが宣言したとおり、「全員脱出」の希望が見えていたことだ。
 いったんバーから動けない四人を引っ張り出しては、観音開きの扉を閉めた。
 これで少しの間は、時間を稼げるだろう。
 
 その間に、ショボーンとトソンは協力し合って荷台の上に四人を載せた。
 そして二人で、荷台を一気に押した。
 
 コマの、さびを感じさせないスムーズな動きが幸いして、
 背後の扉から炎や煙が顔を出す前に、充分速いスタートダッシュを決めることができた。
 
 ショボーンたちにとって幸いだったのは、火の手はバーのほうに向かっていたことで、
 レストランには煙こそあれど火はまだやってきていなかったということだ。
 そのうちに、ショボーンは脳内でパンフレットを開き、搬送用のエレベーターに向かった。
 
 
.

537 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:21:04 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 搬送用のエレベーターは、西にある。
 現在位置が西寄りにあるため、希望は見えた。
 搬送用のエレベーターは、非常時にも動く。
 
 地下に、非常電源でもあるのだろうか。
 その用意周到さが、実際にそういった人たちを助けることに貢献しつつあった。
 
 
(゚、゚;トソン「あとは、この角を…」
 
(´・ω・`)「右だ」
 
 
 二人は息をあわせながら、煙には気をつけて、足を進める。
 先ほどまでの焦燥とは一転、荷台という大きな味方が手を貸してくれたおかげで、
 少なくとも、トソンの精神状態を安定させることはできた。
 
 
(゚、゚;トソン「……」
 
(´・ω・`)「……」
 
 
 自然と、二人の間に言葉はなくなった。
 もともと、この非常事態にそうたやすく口を利けるのもおかしいのだが、
 この二人にしては、沈黙が生まれるなどというのは実は珍しいことだった。
 
 ショボーンにも安心や落ち着きが生まれてきたあたりで、ふと、携帯電話が気になった。
 あのとき――ワカッテマスと通話していたときだ。
 ショボーン側の人間が窮地に立っていたのにも関わらず、一方的にショボーンのほうから電話を切った。
 ワカッテマスという男の性格を考えると、彼から電話が来ている、とは思うのだが――
 
 
.

538 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:21:34 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(´・ω・`)「…あ」
 
 と思ってショボーンが電話を取り出すと、その予想はみごとに的中していた。
 一度、彼からの着信が入っていた。
 
 番号は、見るまでもない。ワカッテマスだ。
 ショボーンはひと段落ついたということで、彼に一報をいれようと電話をかけた。
 一方、片手で、しかし荷台のバランスを崩さないように、それを押し歩く。
 
 向こうも心配でしかたがなかったのだろう、わりかしすぐにワカッテマスは応対した。
 
 
(´・ω・`)「…もしもし、ワカッ」
 
   『警部ですか!』
 
(´・ω・`)「じゃなかったら誰だ。僕だよ」
 
   『現状は』
 
(´・ω・`)「モナーさんを刺…殺したハンニンは、わかった。
.      いまは搬送用エレベーターに――」
 
 
.

539 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:22:07 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(´・ω・`)「…?」
 
 ショボーンがなんとなしに言うと、電話の向こうがなにやら騒がしいように思えた。
 騒がしい――その声の主は、マリントンだった。
 ワカッテマスとマリントンが何かを言い合っていたようで、
 少し雑な音が入ったかと思えば、次に耳に入ってきたのは、マリントンの声となった。
 
 
   『も、…もしもし』
 
(´・ω・`)「どうしたんだ――どうしたんですか」
 
   『あ、あんたら、搬送用って――西のエレベーターか?』
 
(´・ω・`)「そう、ですが……」
 
 
 もう、向こうのほうに見えてきた。
 速度を徐々に殺しつつ、ショボーンは言う。
 
 
 
 実際に、エレベーターが目に見えてきたところでショボーンのもとに訪れる、安堵感。
 それが、次の瞬間に途絶えるとは、ショボーンは思ってもみなかった。
 
 
 
.

540 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:22:50 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
   『な……どえらいコトになってしまった……!』
 
(;´・ω・`)「な…なんですか」
 
 
   『ええか、よぅ聞け! そのエレベーターはな……』 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   『今は、ロックがかけられとる!』
 
 
BGM推奨
http://www.youtube.com/watch?v=gDduNMXCTJM
 
 
 
 
 
 
.

541 名前:※今までとBGM違います ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:23:48 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「……! なんだって!?」
 
(゚、゚トソン「警部…?」
 
 
 突如として放たれた、ショボーンの焦燥に満ちた声。
 それを聞いて、トソンは途端に不安げな顔を浮かべて彼の顔を見た。
 彼は彼で、電話の向こうから聞こえてくるマリントンの声に、不安を感じていた。
 
 
 
   『勝手に使われんようにってな、モナーさんがロックをかけたんよ!
.    一応、その場で開けることはできるが――』
 
(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと待ってください! そんなこと言われても――」
 
 
 
 ショボーンは荷台から手を離して、エレベーターに駆け寄る。
 大きい。こんな荷台など、すっぽり収まるだろう。
 そんなエレベーターの、呼び出しボタンのあるほうに向かう。
 
 
 なにか、意味がありそうな機器こそ、ある。
 しかし。
 
 
 
(;´・ω・`)「テンキーとか、そんなのはないですよ!?」
 
 
.

542 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:24:32 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 一般用ではないエレベーターに、いたずらされないようにとロックをかけるのは当然の話だ。
 しかし、ロックを開けるといえば、テンキー――0から9まであるボタン――があって然るべきなのに。
 そこには、そのような「押せるもの」は、いっさいなかった。
 
 「そう」とマリントンが続ける。
 いつの間にか、トソンもショボーンの隣にいた。
 
 
   『ほら、そのエレベーター使うんな、だいたいがギョーシャさんですわな』
 
   『ギョーシャさんは両手が空いとらんことが多いからってことで、認証対象を「声」にしたんですよ』
 
(´・ω・`)「声……?」
 
 
   『暗証番号の代わりに、そのスピーカーみたいなモンあるでしょ、
.    そこに、決められた単語をひとつ言って、認証されたら開くっちゅーシステムですわ。
.    俗に言うところの「合言葉」、ヤマとくればカワってやつですな』
 
(´・ω・`)「スピーカー……」
 
 
 言われて、ショボーンはその機器をよく見る。
 暗くてわかりづらかったが、網状のものがあることから、それが「スピーカーみたいなモン」であることがわかった。
 スピーカーとはいうが、実際はマイク搭載なのだろう。
 
 
.

543 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:25:04 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
   『ほんまは非常時――停電時とかにはロックはかからんようにする予定だったんですがな……
.    今日はほら、特別な日じゃないですか、言ったら』
 
(;´・ω・`)「……だから、非常時でもロックは解けないままになるようにしてしまった、と」
 
   『すまぬ! ワタシが憶えとったら、モナーさんに言っとったばっかりに……!』
 
(´・ω・`)「いえ……。そうか、単語か……」
 
   『スピーカーの下にある赤いボタンを押せば、マイクが反応するようになる』
 
 
 ショボーンはマリントンのその言葉を聞いた途端、即座にボタンに手を触れた。
 もう、考えている暇はないのだ。
 
 
(゚、゚;トソン「ケムリに追いつかれた……」
 
(´・ω・`)「……」
 
 
 たとえ観音開きの例の扉が炎を閉じ込めていても、十分もしないうちに耐え切れなくなるだろう。
 それか、扉の隙間から炎が移ってくる。
 耐火性かはわからないが、耐火性であっても煙がやってくる。
 
 
 時間との勝負は、まだ終わってなかった――否。
 
 むしろ、ここからがほんとうの勝負だったのだ。
 
 
 
.

544 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:25:34 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(´・ω・`)「……一応聞くと、マリントンさんもその合言葉は」
 
   『……すまぬ。ロックをかけたのは、ほかならぬモナーさんですから』
 
(´・ω・`)「モナーさん………」
 
   『………モナーさんは、…やっぱり』
 
(´・ω・`)「いまは憂えている場合じゃない。では、なんとかこちらで合言葉を当ててみせます」
 
(゚、゚;トソン「あい……言葉……? 当てる?」
 
   『ムチャ……言いますな、あんたは。単語ですぞ? 数字よりもその組み合わせはよーけある!』
 
(´・ω・`)「だが一方で、言葉ならある程度まではしぼれる。モナーさんの人間性こそが、ヒントとなるからだ
.      モナーさんが言いそうな言葉を、五十個でも試せば……」
 
   『いや、ワタシが言いたいんはそーいうんじゃないんですわ』
 
(´・ω・`)「…え?」
 
 
 マリントンの、深く息を吸う音が聞こえた。
 そのせいでよけいに、次の言葉が重くのしかかった。
 
 
 
.

545 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:26:09 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
   『いたずら防止用兼セキュリティー重視っちゅーことで……合言葉の認証には、制限があるんですよ』
 
 
   『そうですな……確か、最初の入力から24時間につき、当たるまで反応する言葉は最初の含めて、みっつ』
 
 
 
 
 
 
 
 
   『合言葉を三回連続で間違えたら、その時点でエレベーターは開かんようになる』
 
 
 
 
 
 
 
 
.

546 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:26:39 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「……なんだって……!?」
 
 
 ショボーンは、ボタンに触れていた手に、力を籠めようとするのをやめた。
 むしろ、触れているだけで手が震えてきそうだった。
 
 
   『それも、5Fからならその制限は取り払えるんですがな……いやはや、爆破されるとは……』
 
(;´・ω・`)「こ、心当たりは!?」
 
   『…………。』
 
(;´・ω・`)「……ッ……くそ!!」
 
 
(゚、゚;トソン「け、警部! ケムリが……こほっ…。」
 
(;´・ω・`)「! マリントンさん、電話はいったん切ります!」
 
   『だ、大丈夫か? いけるか!?』
 
(;´・ω・`)「切り抜けてみせますよ。これでも、苦境はなんども味わってきた」
 
   『―――みんなを、任せましたぞ!』
 
(´・ω・`)「…………はい。」
 
 
 
.

547 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:27:14 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 そう言い電話を切っては、ふう、と息を吐いた。
 それを見たトソンが、口を利く。
 状況はそこまで把握していないだろうはずなのに、周章を味わっていた。
 
 
(゚、゚トソン「警部……なにがあったんですか?」
 
(´・ω・`)「……合言葉を入れれば、エレベーターは動く」
 
(゚、゚トソン「! じゃあ――」
 
(´・ω・`)「まだだ」
 
(゚、゚トソン「…え?」
 
 
 
(´・ω・`)「合言葉を入れられるのは、三回まで」
 
(´・ω・`)「その三回を失敗すれば………完全に、逃げ道を失う」
 
 
 
.

548 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:27:51 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚、゚;トソン「………っ!」
 
 トソンの手に、汗がにじんできた。
 彼女がそれを言葉にしようとする前に、ショボーンが先に動いた。
 
 
 もう、煙は目に見えてここら一帯をも呑みこもうとしているのだ。
 意識せずとも、その異臭が感じられるようになってきた。
 また、電源が落とされて暖房が効かなくなったはずが、どこか暑く感じられてくる。
 
 しかし――いや、だからこそ、ショボーンは急ぐしかなかった。
 ボタンを押して、一つ目に挑戦する。
 
 
 
 
 
(;´・ω・`)「………『きずな』」
 
 
 
 
 
 
   『ニンショウ シッパイ』
 
 
 
 
.

549 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:28:22 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「……なに……?」
 
(゚、゚;トソン「警部っ!」
 
 
 単調な電子音が、その誤りを言った。
 それを聞いて、ショボーンは絶句した。
 
 
(;´・ω・`)「(待て……このロックをかけたのは、モナーさんだ。
       それも、今日一日限りのロック! つまり、業者と打ち合わせする必要がないから……)」
 
(;´・ω・`)「(ロックをかけるとするなら、
       『自分が日頃から重んじている言葉』をキーにする可能性が高いはず……!)」
 
 
 
(;´・ω・`)「なのに……『絆』じゃないだと……?」
 
(゚、゚;トソン「………っ! 炎が見えてきた!」
 
(;´・ω・`)「なんだって!?」
 
 
 慌ててそちらに目を遣る。
 視線の先にあるのは、曲がり角だ。
 その曲がり角から、炎がちらっと見えた。
 
 ――もう、ここまで燃え移ってきたのか!?
 ショボーンも、手のひらから汗がどんどんにじんできた。
 
 こうしちゃいられない。ショボーンは、そう思った。
 
 
 
.

550 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:28:53 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「(ほかに考えるんだ! 『モナーさんが日頃から重んじていそうな言葉』……を!)」
 
(;´・ω・`)「(しかし、座右の銘……は、知らない。キーワードの、『絆』ではなかった……か)」
 
(;´・ω・`)「(『モナ』……口ぐせや一人称的にはありえそうだが……
       しかし、そんな偶然で開きそうなロックにするか?
       仕様を知らない人でも、『モナーさん』とか言えば勝手に開きそうなもんだぞ……!)」
 
 
 
(゚、゚;トソン「『ガナー』なんてどうですか!?」
 
(;´・ω・`)「ガナー……娘さんか」
 
(゚、゚;トソン「ほら、パスワードとかかけるとき、自分よりも、
      そういった身近な人を語呂合わせにする、とかありますし」
 
(´・ω・`)「……試すか」
 
 
 
 ショボーンは、もう一度ボタンを押す。
 そして、誤認されないようになるべくスピーカーに顔を近づけた。
 
 
 
(´・ω・`)「『ガナー』」
 
 
 
.

551 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:29:23 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
   『ニンショウ シッパイ』
 
 
 
(゚、゚;トソン「そんな……っ」
 
(;´・ω・`)「キーワード…『絆』でもなければ、娘…の『ガナー』でもないだと……!?」
 
(;´・ω・`)「じゃあ、モナーさんはいったい……なにを言ったっていうんだ!!」
 
 
 ついに冷静さも欠けてきた。
 しかし、それも当然だろう。
 
 もう、曲がり角から徐々に、こちらに炎が向かってくるのだ。
 自分たちのいる場所までの距離、目測――二十メートル。
 
 
 また一方で、彼らが焦燥を隠せないはずもなかった。
 
 
 
.

552 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:29:56 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
(゚、゚;トソン「あと、チャンスは………一度……だけ?」
 
(;´・ω・`)「……ッ!」
 
 
 
 それを再認識させられて、焦らないはずがなかった。
 あと一度、間違えてしまえば―――
 
 
 
 
 
 
 永久に、脱出不可。
 
 
 
 
 
 
.

553 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:30:27 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚、゚;トソン「警部、きっと『ワクテカ』ですよ!」
 
(;´・ω・`)「なんだ、それ」
 
(゚、゚;トソン「『WKTKホテル』の、愛称だそうです。パンフレットにあった……」
 
(;´・ω・`)「わくてか……? いや、しかし……」
 
(゚、゚;トソン「ロックなんだから、きっと単調なものです!」
 
(゚、゚;トソン「ホテルの名前なんだから、なにも考えないで出てくる単語じゃないですか」
 
 
 
(;´・ω・`)「(……違う! モナーさんは、そこまで安直な人じゃない)」
 
(;´・ω・`)「(のーさんを絞めるときにも、言ってたじゃないか。礼儀……だの、絆……だの)」
 
(;´・ω・`)「(そこまで情を重んじる人なんだから、きっと……そういった、心的な何かがキーワードとなっている!)」
 
 
 
 炎との距離、目測――十五メートル。
 
 
 
.

554 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:31:00 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「思い出せ……今日一日の、モナーさんの………言葉」
 
(;´・ω・`)「モナーさんが、『絆よりも、ガナーよりも大切にしていたもの』……」
 
(;´・ω・`)「僕の直感でいえば……それが、合言葉だ!」
 
 
 
 
 
   |゚ノ ^∀^)『実を言うと、ショボーンさんみたいに恩で呼ばれる人はほかにはおらず、
.         残りの人はフォックスさんみたいに、何らかの形で援助していただいた人を招待してるんですよ』
 
 
 
 
(;´・ω・`)「(しかし……トソンちゃんの考えた、『人名』。これは、いいぞ。人名の可能性は、高い)」
 
(;´・ω・`)「(人が一番情を感じることができるのは……人。人間に、礼儀とか、絆を感じるんだ)」
 
(;´・ω・`)「(そしてそれは、このパーティに呼ばれた人の可能性が高い、と見ていい)」
 
(;´・ω・`)「(もし、モナーさんがそこまで絆を感じていた人なら呼ばれるからな)」
 
 
 
(;´・ω・`)「(しかし、一方で……)」
 
(´・ω・`)「(『恩で招待された人』は、僕しかいない)」
 
 
 
(´・ω・`)「(……僕が、合言葉なのか……?)」
 
 
 
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555 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:31:32 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(゚、゚;トソン「はやくしないと、アウトですよ!」
 
(;´・ω・`)「チッ!」
 
 
 炎との距離、目測――十メートル。
 
 
 
(;´・ω・`)「トソンちゃん、なにかないか! 人名だ!」
 
(゚、゚;トソン「人名……?」
 
(;´・ω・`)「モナーさんが、一番『絆』を感じていた人物だ!」
 
(゚、゚;トソン「絆………やっぱり、ガナーさんでは……? 親子の絆は……カタいですし」
 
 
(;´・ω・`)「(――そう。僕じゃ、ないんだ。あくまで、僕とモナーさんは、あの事件一回きりの仲。
       恩義を感じていても、さすがに娘以上の『絆』を持つとは、考えられない)」
 
 
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556 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:32:04 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
(;´・ω・`)「こうなったら……絞り込む!」
 
(゚、゚;トソン「なにをっ?」
 
(;´・ω・`)「なんの証拠もないけど、『このホテルに招待された、
       ガナーさん以上の絆でモナーさんとつながっている人物』!!
       ……合言葉、最後の一つはそれで決めよう!」
 
(゚、゚;トソン「む――ムチャです! 親子以上の絆!? それだったら、夫婦とか――」
 
 
 炎との距離、目測――七メートル。
 
 
( 、 ;トソン「――きゃっ!」
 
(;´・ω・`)「(思い出せ、今日一日の、モナーさんにまつわるエピソードを!)」
 
 
 
 
 
 
(´・ω・`)「(そのなかに、きっと……!)」
 
 
 
 
 
 
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557 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:32:34 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
   ( ‘∀‘)『私……父のことは、好きじゃないのです』
 
 
 
   |;;;;| ,'っノVi ,ココつ『なんとか……モナーさんを刺したヤツを、捕まえてはくれませんか』
 
   |;;;;| ,'っノVi ,ココつ『モナーさんとは、昔からの……昔からの仲なんですわ』
 
 
 
 
 
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558 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:33:06 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
   ( ‘∀‘)『昔から……父には、キツくあたられてきて……それが、怖かったんです……』
 
 
 
   |;;;;| ,'っノVi ,ココつ『陰でうわさされとるレベルなんですがねぇ……
               モナーさん、例のグループにええように使われとるっちゅー話ですわ』
 
 
 
 
 
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559 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:33:37 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
   ( ‘∀‘)『当時はすごく忙しかったようで、お酒もギャンブルも女性問題もなかったんですが、
         仕事のストレスを、私にあたることで発散させているような……』
 
 
 
   |;;;;| ,'っノVi ,ココつ『モナーさんチに行ったら、なんか黒服の人がぞろぞろ出てきよって……
               入れ違いで家に入ったら、モナーさん、荒れとったな。もう、ものごっそ昔ですが』
 
 
 
 
 
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560 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:34:07 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
   ( ‘∀‘)『ドラマみたいに「愛を与えない」だけなら、まだよかったかもしれないですが……
         とても……この歳になっても、やはり、その畏怖…?は拭えない、って言うのか……』
 
 
 
   |;;;;| ,'っノVi ,ココつ『実はね、あの子の首筋、うなじのあたりに、でっかいホクロがあるんですわ。
               いやー、もう十何年も見んうちにベッピンさんになりよって……ええのぅ……』
 
 
 
   (   ∀ )『ほかの人には温厚に接してる父なのに……
         どうして……私には、優しく接してくれなかったのか……』
 
 
 
 
 
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561 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:34:40 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
   (´・ω・`)『……』
 
   (´・ω・`)『……ッ! これは……ロケット…?』
 
   (´・ω・`)『これは……どういうことだ』
 
   (´・ω・`)『モナーさん………?』
 
 
 
 
   ―――あのロケットは、いったい―――
 
 
 
 
 
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562 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:35:11 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
(´・ω・`)「―――ッ!」
 
 
 
(;´・ω・`)「!! も、もしかして―――ッッ!」
 
(゚、゚;トソン「へ?」
 
 
 
 炎との距離、目測――四メートル。
 
 ショボーンは、突然振り返った。
 ガナー、レモナ、のー、そしてモナーを載せている荷台のほうに。
 急いで載せたためか、うつぶせのまま、頭や足が荷台からはみ出ている。
 
 
 
 
 ――その光景の、ある点を見て、ついに、この結論にたどり着いた。
 
 今までの『絆』を、根底からひっくり返すような―――結論、に。
 
 
 
 
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563 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:36:06 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
BGMここまで
 
 
 
 
(;´゚ω゚`)「!!! そ……そうか! そういうことだったのか!!」
 
(゚、゚;トソン「け、警部! もう火が! そ、そこぉ!!」
 
(;´・ω・`)「ま、待ってね。いま、開けるから」
 
(゚、゚;トソン「………え……? わかった、のですか?」
 
 
 
 
(;´・ω・`)「(―――見つけた! 偽りの絆なんかじゃない、ほんとうの―――)」
 
 
 
(´・ω・`)「(ほんとうの―――絆を!)」
 
 
 
 
 ショボーンは、トソンに荷台を押す準備をしろ、と指示した。
 一方のショボーンは、ボタンを押して、マイクに口を近づける。
 
 
 
 
 そして
 
 
 
 
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564 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:36:38 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(´・ω・`)「『レモナ』」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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565 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:37:39 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   『ニンショウ セイコウ』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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566 名前: ◆wPvTfIHSQ6:2013/03/20(水) 20:38:13 ID:bOUc1VgI0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     イツワリ警部の事件簿
     File.3
 
         (´・ω・`)は偽りの絆をつなぐようです
 
 
      第十幕
        「 ほんとうの絆 」
 
 
                 おしまい
 
 
 
 
 
 
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